(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109472
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車載機器取付用ブラケット
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240806BHJP
F16B 21/08 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60R11/02 C
F16B21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014282
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 匡人
【テーマコード(参考)】
3D020
3J037
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD01
3D020BD02
3J037AA02
3J037BA02
3J037BB01
3J037DA04
(57)【要約】
【課題】車載機器が意図せずブラケットから外れるのを抑制する。
【解決手段】車載機器取付用ブラケットは、車室内に車載機器を取り付けるための車載機器取付用ブラケットであって、前記車室内に取り付けられるブラケット本体と、前記ブラケット本体に設けられ、互いに対向して配置された一対の壁部と、一対の前記壁部にそれぞれ取り付けられ、前記車載機器に設けられた互いに逆方向に突出する一対の突起を受ける受け部を有し、前記受け部に対して前記突起を出し入れ可能な第一位置から、前記受け部からの前記突起の抜け出しを阻止可能な第二位置へスライド移動する移動部材と、各々の前記壁部にそれぞれ設けられ、前記移動部材のスライド移動をガイドするガイド部と、前記移動部材が前記第二位置から前記第一位置へスライド移動するのを阻止する阻止手段と、を有する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に車載機器を取り付けるための車載機器取付用ブラケットであって、
前記車室内に取り付けられるブラケット本体と、
前記ブラケット本体に設けられ、互いに対向して配置された一対の壁部と、
一対の前記壁部にそれぞれ取り付けられ、前記車載機器に設けられた互いに逆方向に突出する一対の突起を受ける受け部を有し、前記受け部に対して前記突起を出し入れ可能な第一位置から、前記受け部からの前記突起の抜け出しを阻止可能な第二位置へスライド移動する移動部材と、
各々の前記壁部にそれぞれ設けられ、前記移動部材のスライド移動をガイドするガイド部と、
前記移動部材が前記第二位置から前記第一位置へスライド移動するのを阻止する阻止手段と、
を有する車載機器取付用ブラケット。
【請求項2】
前記阻止手段は、
前記移動部材に設けられた係止部と、
各々の前記壁部にそれぞれ設けられ、前記第二位置において前記移動部材の係止部と係止する第一被係止部と、
を有する請求項1に記載の車載機器取付用ブラケット。
【請求項3】
各々の前記壁部にそれぞれ設けられ、前記第一位置において前記移動部材の前記係止部と係止して前記移動部材の前記第一位置から前記第二位置への移動方向と逆方向へのスライド移動を阻止する第二被係止部を有する、請求項2に記載の車載機器取付用ブラケット。
【請求項4】
前記ガイド部は、互いに対向する前記壁部の対向面に設けられた溝部によって構成されており、
前記移動部材は、前記溝部に嵌まる本体部を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車載機器取付用ブラケット。
【請求項5】
前記溝部における溝底と反対側の開口部には、前記本体部の抜け出しを阻止する阻止部が設けられている、請求項4に記載の車載機器取付用ブラケット。
【請求項6】
前記受け部は、前記突起と当接する当接部と、前記突起を前記当接部に向けて付勢する付勢部と、を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車載機器取付用ブラケット。
【請求項7】
前記ガイド部は、互いに対向する前記壁部の対向面に設けられた溝部によって構成されており、
前記移動部材は、前記溝部に嵌まる本体部を有し、
前記当接部は、前記本体部において、前記移動部材の前記第一位置から前記第二位置への移動方向と逆方向の端部に設けられ、
前記付勢部は、前記本体部の前記端部から前記当接部よりも前記逆方向へ延びる可撓性を有する板部と、前記板部の自由端側に設けられた突部と、前記突部に設けられ、前記突起と当接する斜面と、を有する、請求項6に記載の車載機器取付用ブラケット。
【請求項8】
各々の前記移動部材には、前記車載機器を両側から押圧する押圧部がそれぞれ設けられている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車載機器取付用ブラケット。
【請求項9】
前記ブラケット本体は、樹脂製であり、車両用のフロントガラスに接着され、
前記車載機器は、車両前方を撮影するカメラである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車載機器取付用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載機器取付用ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載機器としてのカメラをカメラ用のブラケットに取り付ける取付構造について開示されている。この取付構造では、カメラに設けられた突起をブラケットに設けられたガイドに挿入することでカメラをブラケットに取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の取付構造では、突起に挿入方向と反対側の力が作用する場合、突起がガイド部を挿入方向と反対側に移動するおそれがある。突起がガイド部を挿入方向と反対側に移動すると、カメラが意図せずブラケットから外れる(抜け落ちる)と推量される。
【0005】
本開示は上記事実を考慮し、車載機器が意図せずブラケットから外れるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様の車載機器取付用ブラケットは、車室内に車載機器を取り付けるための車載機器取付用ブラケットであって、前記車室内に取り付けられるブラケット本体と、前記ブラケット本体に設けられ、互いに対向して配置された一対の壁部と、一対の前記壁部にそれぞれ取り付けられ、前記車載機器に設けられた互いに逆方向に突出する一対の突起を受ける受け部を有し、前記受け部に対して前記突起を出し入れ可能な第一位置から、前記受け部からの前記突起の抜け出しを阻止可能な第二位置へスライド移動する移動部材と、各々の前記壁部にそれぞれ設けられ、前記移動部材のスライド移動をガイドするガイド部と、前記移動部材が前記第二位置から前記第一位置へスライド移動するのを阻止する阻止手段と、を有する。
【0007】
第1態様の車載機器取付用ブラケットでは、第一位置にある移動部材の受け部に車載機器の突起を入れて該突起を受けさせ、その状態で車載機器を押して移動部材を第一位置から第二位置へスライド移動させる。このとき移動部材のスライド移動がガイド部によってガイドされる。移動部材が第二位置へスライド移動すると、受け部からの突起の抜け出しが阻止される。このようにして車室内に取り付けられたブラケットに移動部材を介して車載機器が取り付けられる。
【0008】
ここで、上記車載機器取付用ブラケットでは、阻止手段によって移動部材が第二位置から第一位置へスライド移動するのが阻止される。このため、移動部材が突起を受けて第二位置にスライド移動することで、突起が受け部から抜け出るのが阻止される。これにより、例えば、車両に作用する振動や衝撃によって車載機器がブラケットから外れるのを抑制することができる。すなわち、上記車載機器取付用ブラケットによれば、車載機器が意図せずブラケットから外れるのを抑制することができる。
【0009】
本開示の第2態様の車載機器取付用ブラケットは、第1態様の車載機器取付用ブラケットにおいて、前記阻止手段は、前記移動部材に設けられた係止部と、各々の前記壁部にそれぞれ設けられ、前記第二位置において前記移動部材の係止部と係止する第一被係止部と、を有する。
【0010】
第2態様の車載機器取付用ブラケットでは、第二位置において移動部材の係止部と壁部の第一被係止部が係止することで移動部材のスライド移動が阻止される。このように上記車載機器取付用ブラケットでは、移動部材の係止部を設け、壁部に被係止部を設ける簡単な構造で第二位置において移動部材のスライド移動を阻止することができる。
【0011】
本開示の第3態様の車載機器取付用ブラケットは、第2態様の車載機器取付用ブラケットにおいて、各々の前記壁部にそれぞれ設けられ、前記第一位置において前記移動部材の前記係止部と係止して前記移動部材の前記第一位置から前記第二位置への移動方向と逆方向へのスライド移動を阻止する第二被係止部を有する。
【0012】
第3態様の車載機器取付用ブラケットでは、第一位置において移動部材の係止部と壁部の第二被係止部が係止することで移動部材の第一位置から第二位置への移動方向と逆方向へのスライド移動が阻止される。これにより、移動部材がガイド部から外れるのが抑制される。また、第一位置において移動部材の係止部と壁部の第二被係止部が係止するため、車載機器の突起を移動部材の受け部に受けさせやすく、組付性が向上する。
【0013】
本開示の第4態様の車載機器取付用ブラケットは、第1態様~第3態様のいずれか一態様の車載機器取付用ブラケットにおいて、前記ガイド部は、互いに対向する前記壁部の対向面に設けられた溝部によって構成されており、前記移動部材は、前記溝部に嵌まる本体部を有する。
【0014】
第4態様の車載機器取付用ブラケットでは、移動部材の本体部がガイド部を構成する溝部に嵌まってスライド移動する。これにより、溝部の両溝壁面によって移動部材の溝部幅方向の移動が制限され、移動部材のスライド移動に伴う溝部幅方向のガタ付きが抑制される。その結果、車載機器20のガタ付きが抑制される。
【0015】
本開示の第5態様の車載機器取付用ブラケットは、第4態様の車載機器取付用ブラケットにおいて、前記溝部における溝底と反対側の開口部には、前記本体部の抜け出しを阻止する阻止部が設けられている。
【0016】
第5態様の車載機器取付用ブラケットでは、阻止部によって本体部が開口部から抜け出すのが阻止される。これにより、搬送時やブラケット本体の車両取付時に移動部材が溝部の開口部から抜け出すのを阻止することができる。
【0017】
本開示の第6態様の車載機器取付用ブラケットは、第1態様~第3態様のいずれか一態様の車載機器取付用ブラケットにおいて、前記受け部は、前記突起と当接する当接部と、前記突起を前記当接部に向けて付勢する付勢部と、を有する。
【0018】
第6態様の車載機器取付用ブラケットでは、受け部で突起を受けている状態では、付勢部に付勢された突起が当接部に当接している。すなわち、受け部では、突起が付勢部と当接部によって両側から押された状態で保持される。これにより、車両からの振動や衝撃による車載機器のガタ付きが抑制される。
【0019】
本開示の第7態様の車載機器取付用ブラケットは、第6態様の車載機器取付用ブラケットにおいて、前記ガイド部は、互いに対向する前記壁部の対向面に設けられた溝部によって構成されており、前記移動部材は、前記溝部に嵌まる本体部を有し、前記当接部は、前記本体部において、前記移動部材の前記第一位置から前記第二位置への移動方向と逆方向の端部に設けられ、前記付勢部は、前記本体部の前記端部から前記当接部よりも前記逆方向へ延びる可撓性を有する板部と、前記板部の自由端側に設けられた突部と、前記突部に設けられ、前記突起と当接する斜面と、を有する。
【0020】
第7態様の車載機器取付用ブラケットでは、車載機器の突起を受け部に入れると、突起が突部の斜面に当たり、板部が車載機器からの荷重で撓み、板部の反発力により突起が当接部に向けて付勢される。このように上記車載機器取付用ブラケットでは、簡単な構成で車載機器のガタ付きが抑制される。
【0021】
本開示の第8態様の車載機器取付用ブラケットは、第1態様~第7態様のいずれか一態様の車載機器取付用ブラケットにおいて、各々の前記移動部材には、前記車載機器を両側から押圧する押圧部がそれぞれ設けられている
【0022】
第8態様の車載機器取付用ブラケットでは、各々の移動部材に設けられた押圧部によって車載機器が押圧されるため、壁部の対向する方向における車載機器のガタ付きが抑制される。
【0023】
本開示の第9態様の車載機器取付用ブラケットは、第1態様~第8態様のいずれか一態様の車載機器取付用ブラケットにおいて、前記ブラケット本体は、樹脂製であり、車両用のフロントガラスに接着され、前記車載機器は、車両前方を撮影するカメラである。
【0024】
第9態様の車載機器取付用ブラケットでは、ブラケット本体を樹脂製としていることから、軽量であり、フロントガラスに接着により固定できる。ここで、車両前方を撮影するカメラを、ブラケット本体を介してフロントガラスに固定するため、車両前方の情報をより正確に得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、車載機器が意図せずブラケットから外れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車載機器取付用ブラケットから車載機器を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1で示すブラケットに車載機器を載せた状態を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2の矢印3Xで指し示す部分の拡大斜視図である。
【
図4】
図3で示すブラケットから移動部材を取り外した状態を示す拡大斜視図である。
【
図6】
図5の6X-6X線に沿った断面図であり、移動部材が第一位置にある状態を示している。
【
図7】
図6で示す移動部材を第二位置に移動した状態を示す断面図である。
【
図8】
図5の8X-8X線に沿った断面図であり、移動部材が第一位置にある状態を示している。
【
図9】
図8で示す移動部材を第二位置に移動した状態を示す断面図である。
【
図10】
図4の矢印10Xで指し示す部分の側断面図である。
【
図11】
図3の11X-11X線に沿った断面図であり、移動部材が第一位置にある状態を示している。
【
図13】
図12で示す移動部材を別の角度から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を用いて本開示の一実施形態に係る車載機器取付用ブラケットを説明する。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の車載機器取付用ブラケット(以下、適宜「ブラケット」と省略する。)30は、車室内に車載機器20を取り付けるためのブラケットである。
【0029】
まず、車両に取り付けられる車載機器20について説明し、次にブラケット30について説明する。
【0030】
<車載機器20>
車載機器20は、
図1及び
図2に示されるように、ブラケット30を介して車室内に固定される電子機器である。本実施形態では、車載機器20として、車両前方を撮影するステレオカメラを用いている。なお、本開示は上記構成に限定されず、車載機器として運転支援用の各種センサー(例えば、モノカメラ、ライダ)を用いてもよいし、ドライブレコーダや電波を受信するアンテナ(例えば、GPSアンテナ、ラジオアンテナ、テレビアンテナ)を用いてもよい。また、車載機器として、上記各種センサー、ドライブレコーダ及びアンテナを種々組み合わせた複合機器を用いてもよい。
【0031】
また、本実施形態の車載機器20は、センサー類が取り付けられるハウジング22と、ハウジング22に設けられる一対の第一突起24と、を備えている。
【0032】
ハウジング22は、センサー類が取り付けられる板部22Aと、板部22Aの後端部から立ち上がる後壁22Bと、を備えている。また、ハウジング22は、長手方向(
図1では矢印EL方向)の両端部からそれぞれ立ち上がる一対の側壁22Cと、を備えている。なお、本実施形態では、センサー類が板部22Aに取り付けられるが、本開示はこの構成に限定されず、一部又は全部のセンサー類が後壁22Bに取り付けられてもよいし、側壁22Cに取り付けられてもよい。またセンサー類のハウジング22への取り付けには、他の部材を介した取り付けも含まれる。なお、車室内に設けられたブラケット30にハウジング22を取り付けた状態では、ステレオカメラが車両前方を向く。これにより、ステレオカメラで車両前方を撮影可能となる。本実施形態のハウジング22は、例えば、樹脂材料によって構成されている。
【0033】
図1に示されるように、第一突起24は、ハウジング22をブラケット30へ取り付けるための部位である。一対の第一突起24は、それぞれピン状の突起であり、ハウジング22の両側壁22Cから長手方向の外側へ向けてそれぞれ突出している。言い換えると、一対の第一突起24は、ハウジング22の両側壁22Cから互いに逆方向にそれぞれ突出している。また、一対の第一突起24は、互いに同軸となるように両側壁22Cに設けられている。一対の第一突起24は、後述する一対の移動部材40のそれぞれの受け部42で受けられる(
図6及び
図7参照)。
【0034】
また本実施形態の車載機器20は、一対の第二突起26と、当接部29とを更に備えている。
図1に示されるように、一対の第二突起26は、それぞれピン状の突起であり、一対の第二突起26は、ハウジング22の板部22Aの両端部から一対の第一突起24とそれぞれ同じ方向に突出している。また、一対の第二突起26は、互いに同軸となるように板部22Aの両端部に設けられている。一対の第二突起26は、一対の第一突起24よりもハウジング22の前方側に設けられている。一対の第二突起26は、後述するブラケット30の両壁部34に設けられる溝部37に挿入される(
図6及び
図7参照)。なお、本実施形態の車載機器20は、一対の第二突起26を備えているが、本開示は上記の構成に限定されない。車載機器20は、一対の第二突起26を備えなくてもよい。また、
図1に示されるように当接部29は、ブラケット30の被当接部39と当接する部分である。当接部29が被当接部39に当接することで、車載機器20の矢印EL方向を回転軸方向とする回転を抑制することができる。本実施形態の当接部29は、一対の側壁22Cにそれぞれ設けられている(
図1参照)。具体的には、当接部29は、側壁22Cの板部22Aと反対側の端部(ここでは上面)によって構成されている。
【0035】
<ブラケット30>
図2及び
図7に示されるように、ブラケット30は、車両用のフロントガラス100に車載機器20を固定するための部材である。なお、本実施形態のブラケット30は、ウインドガラスの一例であるフロントガラス100に接着される。
【0036】
図1及び
図5に示されるように、ブラケット30は、樹脂製であり、長尺な板状に形成されている。以下では、ブラケット30の長手方向を矢印BLで示し、ブラケット30の幅方向を矢印BWで示し、ブラケット30の厚み方向を矢印BTで示す。また、ブラケット30に車載機器20を取り付けた状態では、ブラケット30の長手方向(以下、適宜「長手方向BL」と記載する。)がハウジング22の長手方向ELと略一致(製造誤差によるずれを含む)する。さらに、ブラケット30をフロントガラス100に取り付けた状態では、ブラケット30の長手方向BLが車両幅方向と略一致し、ブラケット30の幅方向BWが車両前後方向と略一致する。なお、ブラケット30の幅方向BWの一方側が車両前方(
図6~
図11における矢印FR方向)にあたる。また、
図6~
図10における矢印UPは車両上方を示している。
【0037】
図1及び
図3に示されるように、ブラケット30は、ブラケット本体32と、一対の壁部34と、一対の移動部材40と、一対のガイド部36と、阻止手段としての阻止機構54と、を備えている。
【0038】
(ブラケット本体32)
図1及び
図3に示されるように、ブラケット本体32は、ブラケット30の本体部分であり、長尺な板状に形成されている。ブラケット本体32の裏面32Aには、接着剤が付与されており、フロントガラス100の内面(車室内側の面)100Aに押し付けられることで、ブラケット本体32がフロントガラス100に接着されている(
図6参照)。この接着剤は、ブラケット本体32の裏面全体に付与してもよいし、裏面に部分的に付与してもよい。なお、本実施形態では、接着剤をブラケット本体32の裏面に部分的(詳細には、間隔をあけて複数の位置)に付与している。
【0039】
(壁部34)
図1に示されるように、一対の壁部34は、ブラケット本体32にそれぞれ設けられている。具体的には、一対の壁部34は、ブラケット本体32に長手方向BLに間隔をあけて設けられている。また、一対の壁部34は、互いに対向して配置されている。すなわち、一対の壁部34は、それぞれ幅方向BW方向に延在している。なお、壁部34は、ブラケット本体32の表面32Bから突き出た壁である。ブラケット本体32の表面32Bは、裏面32Aと反対側の面である。
【0040】
図4及び
図6に示されるように、一対の壁部34の互いに対向する面(以下適宜「内面」という)34Aには、第二突起26が挿入される溝部37が設けられている。溝部37は、壁部34の幅方向BWの他端(
図10では右端)から一端側(
図10では左端側)へ向けて延びている。
【0041】
(移動部材40)
図1、
図3及び
図6に示されるように、移動部材40は、一対の壁部34にそれぞれ移動可能に取り付けられている。移動部材40は、第一突起24を受ける受け部42を有している。本実施形態の受け部42は、移動部材40の第一突起24が入り込む凹状部分である。本実施形態では、各々の移動部材40の受け部42に、一対の第一突起24が車両上側からそれぞれ入り込むようになっている。移動部材40は、受け部42に対して第一突起24を出し入れ可能な第一位置と、受け部42からの第一突起24の抜け出しを阻止可能な第二位置との間をスライド移動するように構成されている。なお、移動部材40の第一位置は、例えば、
図1及び
図6に示す位置である。また、移動部材40の第二位置は、例えば、
図2及び
図7に示す位置である。なお、本実施形態では、第二位置よりも第一位置が車両前方側に位置する。すなわち、移動部材40は、第二位置から該第二位置よりも車両前方側の第一位置へスライド移動する。
【0042】
移動部材40の壁部34側の側面には、係止部43が設けられている。係止部43は、第二位置でブラケット30の壁部34に設けられる後述する第一被係止部50に係止され、第一位置で壁部34に設けられる後述する第二被係止部52に係止される。係止部43が第一被係止部50に係止されることで、車載機器20をブラケット30の所定位置に拘束することができる。また、係止部43が第二被係止部52に係止されることで、移動部材40の溝部35から抜け出しを抑えられる。すなわち、移動部材40をブラケット30の壁部34に保持することができる。
【0043】
本実施形態では、
図13に示されるように、係止部43が弾性変形可能な係止爪であり、第一被係止部50及び第二被係止部52が溝底35Bを貫通する貫通孔(
図11参照)である。係止部43は弾性板部43Aと爪部43Bとを有する係止爪であって、この係止爪が貫通孔に引っ掛かった状態を係止爪が貫通孔に係止されるという。なお、本開示はこの構成に限定されない。例えば、第一被係止部50及び第二被係止部52を溝底35Bに設けた窪み部としてもよい。この場合には、係止爪が窪み部に引っ掛かった状態を係止爪が窪み部に係止されるという。また、第一被係止部50及び第二被係止部52のどちらか一方を貫通孔とし、他方を窪み部としてもよい。
【0044】
図6及び
図11に示されるように、本実施形態の移動部材40における受け部42は、第一突起24と当接する当接部46と、第一突起24を当接部46に向けて付勢する付勢部48と、を有している。
【0045】
当接部46は、本体部44において、移動部材40の第一位置から第二位置へのスライド移動の方向と逆方向の端部(以下適宜「後端部」という)に設けられている。なお、当接部46は、第一突起24が当接する部分であるが、その形状は限定されない。例えば、当接部46は、平面でもよいし、平面にリブや凹凸が形成されたものでもよい。
【0046】
付勢部48は、本体部44の後端部から当接部46よりも第一位置から第二位置へのスライド移動方向と逆方向へ延びる可撓性を有する板部48Aと、板部48Aの自由端側に設けられた突部48Bと、突部48Bに設けられ、第一突起24と当接する斜面48Cと、を有する。板部48Aは、可撓(弾性変形)可能な板状部分である。突部48Bは、板部48Aの自由端に設けられた山形状(言い換えると三角形状)の突起であり、本体部44側の斜面が斜面48Cを構成している。この斜面48Cに第一突起24が当接する。
【0047】
また、
図3及び
図12に示されるように、各々の移動部材40には、車載機器20を両側から押圧する押圧部49がそれぞれ設けられている。車載機器20は両側の押圧部49から押圧されることで長手方向の移動が制限される。また、押圧部49は、移動部材40の本体部44に設けられている。具体的には、押圧部49は、本体部44の係止部43が設けられる側面と反対側の側面に設けられている。本実施形態の押圧部49は、係止部43と同じ構造であり、弾性板部49Aと爪部49Bとを有している。車載機器20の側壁22Cと爪部43Bが当接し、弾性板部43Aが弾性変形することで、弾性板部43Aの復元力によって車載機器20の側壁22Cが押圧される。
【0048】
本実施形態では、移動部材40を構成する受け部42(当接部46と付勢部48を含む)と本体部44と係止部43と後述する押圧部49とが樹脂の一体成形品である。
【0049】
(ガイド部36)
図3及び
図4に示されるように、ガイド部36は各々の壁部34にそれぞれ設けられている。ガイド部36は、移動部材40のスライド移動をガイドする。具体的には、ガイド部36は、各壁部34の内面34Aにそれぞれ設けられた溝部35によって構成されている。溝部35は、壁部34の幅方向BWの他端(
図10では右端)から一端側(
図10では左端側)へ向けて延びている。溝部35の溝幅は、移動部材40の本体部44を嵌められる幅である。すなわち、溝部35の両側の溝壁面35Aによって本体部44が支持された状態で、移動部材40がスライド移動する(
図6及び
図7参照)。なお、本実施形態では、溝部35の両溝壁面35Aがガイド部36に相当する。
【0050】
また
図4、
図10及び
図11に示されるように、溝部35の溝底35Bには、第一被係止部50と、第二被係止部52とが設けられている。第一被係止部50は、第二被係止部52よりも車両前方側に位置する。上記したように、移動部材40が第一位置にあるとき、第二被係止部52に係止部43が係止され、移動部材40が第二位置にあるとき、第一被係止部50に係止部43が係止される。
【0051】
図3及び
図4に示されるように、本実施形態のブラケット30は、阻止部56及び被当接部39を更に備える。
【0052】
阻止部56は、溝部35における溝底35Bと反対側の開口部に設けられており、スライド移動する移動部材40の本体部44の抜け出しを阻止する。具体的には、阻止部56は、溝部35の開口部から張り出した張出部分であり、幅方向BW方向に延在している。この阻止部56は、移動部材40の本体部44を溝底35Bとの間で挟むことで、移動部材40が長手方向BLの内側、すなわち、移動部材40が壁部34の内側に脱落するのを抑制している。
【0053】
図8及び
図9に示されるように、被当接部39は、車載機器20とともに移動部材40が第二位置へスライド移動した状態で、当接部29が当接する部分である。被当接部39は、各々の壁部34にそれぞれ設けられている。具体的には、被当接部39は、各々の壁部34の内面34Aからそれぞれ突出した部分である。突出した部分の壁面(ここでは天井面)に車載機器20の当接部29が当接する(
図9参照)。このように、車載機器20をブラケット30に取り付けた状態(移動部材40が第二位置へスライド移動した状態)では、車載機器20の当接部29がブラケット30の被当接部39に当接することにより、車載機器20の長手方向を回転軸方向とした回転が抑制される。具体的には、当接部29が被当接部39に当接することで、第一突起24が付勢部48を更に撓ませる方向にブラケット30が回転するのを抑制する。これにより、ブラケット30に車載機器20を取り付けた状態における車載機器20の姿勢が維持される。すなわち、ブラケット30に車載機器20を取り付けた状態での車載機器20の姿勢が安定する。
【0054】
本実施形態の車載機器20は、阻止部56及び被当接部39を備えているが、本開示は上記の構成に限定されない。車載機器20は、阻止部56及び被当接部39の少なくとも一方を備えなくてもよい。
【0055】
本実施形態では、ブラケット30を構成するブラケット本体32と一対の壁部34とガイド部36とが樹脂の一体成形品である。具体的には、ブラケット30を構成するブラケット本体32と一対の壁部34とガイド部36と溝部37と被当接部39とが樹脂の一体成形品である。一方、一対の移動部材40はブラケット30に対して着脱可能な部材である。すなわち、移動部材40は交換可能な部品である。
【0056】
(阻止機構54)
阻止機構54は、移動部材40が第二位置から第一位置へスライド移動するのを阻止する機構である。本実施形態の阻止機構54は、上記した係止部43と第一被係止部50とを備えている。
【0057】
以下、車両に車載機器20を取り付ける方法について説明する。
【0058】
まず、フロントガラス100に接着されたブラケット30の各移動部材40が第一位置にあるか確認する。移動部材40が第一位置から移動している場合は、移動部材40を第一位置へ移動させる。
【0059】
次に、車載機器20を持ち上げ、
図6及び
図8に示されるように、各移動部材40の受け部42に車載機器20の第一突起24を車両上側からそれぞれ入れて、各移動部材40に各第一突起24を受けさせる。このとき、車載機器20の各第二突起26をブラケット30の各壁部34の溝部37にそれぞれ入れる。この状態で、
図7及び
図9に示されるように、車載機器20を車両前方側へ押して移動部材40を第一位置から第二位置へスライド移動させる。このとき移動部材40のスライド移動がガイド部36によってガイドされる。移動部材40が第二位置へスライド移動すると、受け部42からの第一突起24の抜け出しが阻止される。具体的には、
図7に示されるように、第二位置では、移動部材40の凹状の受け部42の開放部分が溝壁面35Aによって一部又は全部塞がれるため、受け部42からの第一突起24の抜け出しが阻止される。また、阻止機構54を構成する係止部43が第一被係止部50に係止されて車載機器20がブラケット30に拘束される。このようにしてブラケット30に移動部材40を介して車載機器20が取り付けられる。
【0060】
ブラケット30に車載機器20が取り付けられることで、車載機器20がブラケット30を介してフロントガラス100に固定される。言い換えると、車両に車載機器20が取り付けられる。
【0061】
なお、車載機器20のブラケット30への取付は、車体にフロントガラス100を取り付けた後で実施してもよいし、車体にフロントガラス100を取り付ける前に実施してもよいが、車載機器20の搬送時の不具合等も考慮し、車体にフロントガラス100を取り付けた後でブラケット30へ車載機器20を取り付けることが好ましい。
【0062】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のブラケット30では、阻止機構54によって移動部材40が第二位置から第一位置へスライド移動するのが阻止される。このため、移動部材40が第一突起24を受けて第二位置にスライド移動することで、第一突起24が受け部42から抜け出るのが阻止される。これにより、例えば、車両に作用する振動や衝撃によって車載機器20がブラケット30から外れるのを抑制することができる。すなわち、ブラケット30によれば、車載機器20が意図せず外れるのを抑制することができる。
【0063】
また本実施形態のブラケット30では、第二位置において移動部材40の係止部43と壁部34の第一被係止部50が係止することで移動部材40のスライド移動が阻止される。このようにブラケット30では、移動部材40の係止部43を設け、壁部34に第一被係止部50を設ける簡単な構造で第二位置において移動部材40の抜け出し方向のスライド移動を阻止することができる。
【0064】
本実施形態のブラケット30では、第一位置において移動部材40の係止部43と壁部34の第二被係止部52が係止することで移動部材40の第一位置から第二位置への移動方向と逆方向(抜け出し方向)へのスライド移動が阻止される。これにより、移動部材40がガイド部36から外れるのが抑制される。また、第一位置において移動部材40の係止部43と壁部34の第二被係止部52が係止するため、車載機器20の第一突起24を移動部材40の受け部42に受けさせやすく、組付性が向上する。
【0065】
本実施形態のブラケット30では、移動部材40の本体部44がガイド部36を構成する溝部35に嵌まってスライド移動する。これにより、溝部35の両溝壁面35Aによって移動部材40の溝部幅方向の移動が制限され、移動部材40のスライド移動に伴う溝部幅方向のガタ付きが抑制される。その結果、車載機器20のガタ付が抑制される。
【0066】
本実施形態のブラケット30では、阻止部56によって本体部44が溝部35の開口部、言い換えると壁部34の内面34A側から抜け出すのが阻止される。これにより、搬送時やブラケット本体32の車両取付時に移動部材40が溝部35の開口部から抜け出すのを阻止することができる。
【0067】
本実施形態のブラケット30では、受け部42で第一突起24を受けている状態では、付勢部48に付勢された第一突起24が当接部46に当接している。すなわち、受け部42では、第一突起24が付勢部48と当接部46によって両側から押された状態で保持される。これにより、車両からの振動や衝撃によって車載機器20のガタ付きが抑制される。
【0068】
本実施形態のブラケット30では、車載機器20の第一突起24を受け部42に入れると、第一突起24が突部48Bの斜面48Cに当たり、板部48Aが車載機器20からの荷重で撓み、板部48Aの反発力により第一突起24が当接部46に向けて付勢される。このようにブラケット30では、簡単な構成で車載機器20のガタ付きが抑制される。
【0069】
本実施形態のブラケット30では、各々の移動部材40に設けられた押圧部49によって車載機器20が押圧されるため、壁部34の対向する方向(長手方向BL)における車載機器20のガタ付きが抑制される。
【0070】
本実施形態のブラケット30では、ブラケット本体32を樹脂製としていることから、軽量であり、フロントガラス100に接着により固定できる。ここで、車載機器20が車両前方を撮影するカメラ等のセンサーの場合、ブラケット30を介してフロントガラス100に固定することで、車両前方の情報をより正確に得ることが可能になる。
【0071】
本実施形態のブラケット30では、一対の第一突起24を各移動部材40の受け部42に車両上側からそれぞれ入れ、車載機器20を車両前方側へ押すことで、車載機器20がブラケット30に取り付けられる。すなわち、簡単な操作で車載機器20をブラケット30に取り付けることができる。また、フロントガラス100にブラケット30を接着した状態でも、車載機器20を車両前方側へ押すことで、車載機器20をブラケット30に取り付けられるため、予めブラケット30をフロントガラス100に接着しておくことができる。これにより、ブラケット30をフロントガラス100に位置精度よく接着することができる。これにより、ブラケットに取り付けられるカメラの位置精度もよくなり、車両前方の情報をより正確に得ることが可能になる。
【0072】
[その他の実施形態]
前述の実施形態では、フロントガラス100に接着されたブラケット30に車載機器20を取り付けているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、リアガラスに接着されたブラケット30に車載機器20を取り付けてもよい。この場合には、車載機器20であるステレオカメラが車両後方を撮影する。また、ブラケット30をフロントガラス及びリアガラス以外のウインドガラス(開閉できないウインドガラス)に接着してもよい。この場合には、車載機器20であるステレオカメラが開閉できないウインドガラスから車両外側を撮影する。
【0073】
また、前述の実施形態では、フロントガラス100にブラケット30を接着しているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、車体を構成するフロントヘッダ、又は他の部材を介してフロントヘッダにブラケット30を締結固定してもよい。また、フロントヘッダ又は他の部材を介してフロントヘッダにブラケット30を締結固定する場合、ブラケット30を軽量金属(例えば、アルミニウム)で形成してもよい。
【0074】
また、前述の実施形態では、ガイド部36を壁部34に設けられた溝部35の溝壁面35Aとしているが本開示はこの構成に限定されない。例えば、ガイド部36は壁部34の内面34Aから突出し、幅方向BWに延びる一対のリブの互いに対向する面としてもよい。このような一対のリブ間に移動部材40の本体部44が嵌まることで、本体部44が一対のリブの互いに対向する面によってガイドされる。
【0075】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
20 車載機器
24 第一突起
30 ブラケット
34 壁部
34A 内面(対向面)
35 溝部
35A 溝壁面
36 ガイド部
40 移動部材
42 受け部
43 係止部
44 本体部
46 当接部
48 付勢部
48A 板部
48B 突部
48C 斜面
49 押圧部
50 第一被係止部
52 第二被係止部
54 阻止機構
56 阻止部
100 フロントガラス