IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109479
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】草刈り刃及び草刈り機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/71 20060101AFI20240806BHJP
   A01D 34/73 20060101ALI20240806BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A01D34/71
A01D34/73 101
A01D34/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014290
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】篠田 萌子
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】伊東 幸奈
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA18
2B083CA03
2B083CA13
2B083CA28
2B083DA03
2B083DA07
(57)【要約】
【課題】植物、特に匍匐茎の根を地表面の広範囲に活着させるとともに、地被植物で地表面を被覆させることを促す草刈り刃及び草刈り機を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る草刈り刃は、回転可能なステージと、前記ステージに取付けられた、草を切断する複数の切断部と、前記ステージに取付けられた、切断された前記草を散布する複数の散布部と、を含み、前記切断部と前記散布部とは、前記ステージの同一面に、前記ステージから垂直に突き出るように取り付けられ、
前記切断部と前記散布部とは、前記ステージに円状に配置される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なステージと、
前記ステージに取付けられた、草を切断する複数の切断部と、
前記ステージに取付けられた、切断された前記草を散布する複数の散布部と、を含み、
前記切断部と前記散布部とは、前記ステージの同一面に、前記ステージから垂直に突き出るように取り付けられ、
前記切断部と前記散布部とは、前記ステージに円状に配置される、草刈り刃。
【請求項2】
回転可能なステージと、
前記ステージに取付けられた、草を切断する複数の切断部と、
前記ステージに取付けられた、切断された前記草を散布する複数の散布部と、を含み、
前記切断部と前記散布部とは、前記ステージの同一面に、前記ステージから垂直に突き出るように取り付けられ、
前記散布部は、前記ステージに第1の円状に配置され、
前記切断部は、前記ステージに第1の円状よりも小さい第2の円状に配置される、草刈り刃。
【請求項3】
回転可能なステージと、
前記ステージに取付けられた複数の切断散布部と、を含み、
前記切断散布部は、前記ステージに、前記ステージから垂直に突き出るように取り付けられ、
前記切断散布部は、草を切断することが可能であり、かつ、切断した草を散布することが可能であり、
前記切断散布部はフック形状を有する、草刈り刃。
【請求項4】
前記散布部は、前記ステージの回転方向に対して前後方向に回転することが可能であり、
前記切断部は、前記ステージの回転方向に対し直角方向に回転することが可能である、請求項1または請求項2に記載の草刈り刃。
【請求項5】
前記切断散布部は、前記ステージの回転方向に対して前後方向または直角方向に回転することが可能である、請求項3に記載の草刈り刃。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の草刈り刃と、
前記草刈り刃が取付けられ、前記草刈り刃に動力を伝達する駆動部と、
前記草刈り機を走行可能とする走行部と、
を備えた草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、草刈り刃及び草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地被植物を用いて、地表面を被覆する研究が進められている。地被植物は、節を含む匍匐茎を有する。地被植物の匍匐茎が押圧されると、節のそれぞれから根が発根する。匍匐茎の節の根が地表面に活着することによって、地被植物は、活着した節の根を介して地表面から養分を吸収すると共に、活着した節を拠点として成長する。よって、地被植物で地表面を被覆させるためには、匍匐茎の節の、より多くの根を、地表面の広範囲に活着させることが必要である。
【0003】
また、地被植物が繁茂すると、複数の匍匐茎が地表面の上に折り重なる。折り重なった匍匐茎のうち、地表面から遠い側の匍匐茎は地表面から離れているため、匍匐茎の節の根が地表面に活着することが困難である。また、地表面から近い側の匍匐茎は、地表面から遠い側の匍匐茎に覆われるとともに日光を遮られ、成長が抑制される。よって、地被植物で地表面を被覆させるためには、地表面から遠い側の匍匐茎を地表面に活着させるとともに、地表面から近い側の匍匐茎に日光を照射し成長を促すことが必要である。
【0004】
一方、例えば、特許文献1には、除草用タインを備えるディスクが連結された除草ロータを含み、前記除草ロータが駆動回転することによって、ディスクに備えられた除草用タインが雑草の根部を攪拌する、水田除草機が開示されている。また、特許文献2には、ロータの軸方向両側に配置された一対のリング、及び、これらのリング同士を連結する複数のスパイラル刃を有するスパイラルロータによって、草刈り作業を行うことが開示されている。さらに、特許文献3には、爪軸Aに刃先上側に刃付を施した爪を複数個取り付けた連を複数個取り付け、爪軸Bに刃先上側をV形に形成した爪Bを複数個取り付けた連を複数個取り付け、前記爪Aは前記爪Bの間にかみ合うように取付られた除草機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-41411号公報
【特許文献2】特開2022-65981号公報
【特許文献3】実全昭50-50714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の水田除草機を用いて草刈り作業を行う場合には、匍匐茎、節又は根が撹拌されるため、匍匐茎、節又は根が土に埋まってしまう。また、特許文献2に記載のスパイラルロータ、及び、特許文献3に記載の除草機を用いて草刈り作業を行う場合には、土が掘り返されるため、匍匐茎、節又は根が土とともに掘り返されて、匍匐茎、節又は根が土に埋まってしまう。その結果、特許文献1乃至3を用いて草刈り作業を行う場合には、匍匐茎の根を地表面の広範囲に活着させることが困難であると共に、地被植物で地表面を被覆させることが困難である。
【0007】
本発明の一実施形態の目的の一つは、上記問題に鑑み、匍匐茎の根を地表面の広範囲に活着させると共に、地被植物で地表面を被覆させる草刈り刃及び草刈り機を提供することである。また、本発明の一実施形態の目的の一つは、地表面から遠い側の匍匐茎を地表面に活着させるとともに、地表面から近い側の匍匐茎に日光を照射し成長を促す草刈り刃及び草刈り機を提供することである。
【0008】
本発明の草刈り刃及び草刈り機は、対象としては匍匐茎の成長を促すことに適している。ただし、本発明の一実施形態の目的の一つとして、植物全般の成長を促す草刈り刃及び草刈り機を提供することも含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る草刈り刃は、回転可能なステージと、前記ステージに取付けられた、草を切断する複数の切断部と、前記ステージに取付けられた、切断された前記草を散布する複数の散布部と、を含み、前記切断部と前記散布部とは、前記ステージの同一面に、前記ステージから垂直に突き出るように取り付けられ、前記切断部と前記散布部とは、前記ステージに円状に配置される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る草刈り刃は、回転可能なステージと、前記ステージに取付けられた、草を切断する複数の切断部と、前記ステージに取付けられた、切断された前記草を散布する複数の散布部と、を含み、前記切断部と前記散布部とは、前記ステージの同一面に、前記ステージから垂直に突き出るように取り付けられ、前記散布部は、前記ステージに第1の円状に配置され、前記切断部は、前記ステージに第1の円状よりも小さい第2の円状に配置される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る草刈り刃は、回転可能なステージと、前記ステージに取付けられた複数の切断散布部と、を含み、前記切断散布部は、前記ステージに、前記ステージから垂直に突き出るように取り付けられ、前記切断散布部は、草を切断することが可能であり、切断した草を散布することが可能であり、前記切断散布部はフック形状を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、植物、特に匍匐茎の根を地表面の広範囲に活着させるとともに、地被植物で地表面を被覆させることを促す草刈り刃及び草刈り機を提供することができる。また、本発明の一実施形態によれば、地表面から遠い側の匍匐茎を地表面に活着させるとともに、地表面から近い側の匍匐茎に日光を照射し成長を促す草刈り刃及び草刈り機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の第1実施形態に係る草刈り刃の構成を示す図であり、第3の方向Zに沿って下方から見た斜視図である。
図1B】本発明の第1実施形態に係る草刈り刃の構成を示す図であり、第3の方向Zに沿って下方から見た平面図である。
図2A】本発明の第1実施形態に係る切断を説明するための図である。
図2B】本発明の第1実施形態を説明するための図である。
図3A】本発明の第1実施形態に係る草刈り刃に含まれる散布部の構成を、ステージの周縁から回転軸に向かう方向に沿って見た図である。
図3B図3Aに示された散布部の構成を、ステージの回転方向に沿って見た図である。
図3C図3Bに示された散布部をA1-A2線に沿った断面で切断した断面図である。
図3D図3Aに示された散布部に含まれる散布部材が回転した状態を、ステージの周縁から回転軸に向かう方向に沿って見た図である。
図4A】本発明の第1実施形態に係る草刈り刃に含まれる切断部の構成を、ステージの回転方向と対向する方向から見た図である。
図4B図4Aに示された切断部の構成を、ステージの周縁から回転軸に向かう方向に沿って見た図である。
図4C図4Bに示された切断部をB1-B2線に沿った断面で切断した断面図である。
図4D図4Aに示された切断部に含まれる切断部材が回転した状態を、ステージの周縁から回転軸に向かう方向に沿って見た図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る草刈り刃の変形例の構成を示す模式図であり、草刈り刃を第3の方向Zに沿って下方から見た平面図である。
図6A】本発明の第1実施形態に係る切断部の第1の変形例(変形例1)の構成を、ステージの回転方向と対向する方向から見た図である。
図6B】本発明の第1実施形態に係る切断部の第2の変形例(変形例2)の構成を、ステージの回転方向と対向する方向から見た図である。
図6C】本発明の第1実施形態に係る切断部の第3の変形例(変形例3)の構成を、ステージの周縁から回転軸に向かう方向に沿って見た図である。
図6D図6Cに示された第3の変形例(変形例3)の構成を、ステージの回転方向と対向する方向から見た図である。
図7A】本発明の第1実施形態に係る切断散布部の構成を、ステージの周縁から回転軸に向かう方向に沿って見た図である。
図7B】本発明の第1実施形態に係る切断散布部の構成を、ステージの周縁から回転軸に向かう方向に沿って見た図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る草刈り機の構成を示し、第3の方向Zに沿って上方から見た平面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る草刈り機の構成を示し、左側から見た側面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る草刈り機の構成を示し、第3の方向Zに沿って下方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0015】
本発明細書において、説明の便宜上、「上」、「上方」、または「上部」もしくは「下」、「下方」、または「下部」という語句を用いて説明するが、各構成の上下関係を説明しているに過ぎない。例えば、草刈り刃及び草刈り機の構成を説明する場合、草刈り機の通常使用する態様を基準とし、草刈り刃が草刈り機に設置される面側(例えば、地表面側)を「下」、「下方」、または「下部」とすることがある。
【0016】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、または「第3」などの文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0017】
本明細書および図面において、同一または類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、大文字または小文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。
【0018】
本願の明細書において、「自走」とは、草刈り機がプログラムに基づく指示によって走行するだけでなく、草刈り機が具備する制御回路による自律走行を含む。
【0019】
本願の明細書において、「第1の方向X」、「第2の方向Y」、および「第3の方向Z」は互いに交差する。また、「第3の方向Z」は、「第1の方向X」および「第2の方向Y」に垂直または略垂直である。
【0020】
本願の明細書において、同一、一致、及び平行という表記を用いている場合、同一、一致、及び平行には、設計の範囲での誤差が含まれてもよい。また、本願の明細書において、垂直という表記を用いている場合は、垂直及び略垂直を含むこととする。
【0021】
また、以下では切断する対象を匍匐茎として主に説明をするが、匍匐茎に限らず、匍匐茎のように切断後、活着をして成長をする植物であれば、同様に適用されることは言うまでもない。
【0022】
<第1実施形態>
[1.草刈り刃100の構成]
図1A及び図1Bを参照して、草刈り刃100の構成を説明する。図1Aは、草刈り刃100を第3の方向Zに沿って下方から見た斜視図である。図1Bは、草刈り刃100を第3の方向Zに沿って下方から見た平面図である。また、図2A及び図2Bを参照して、草刈り刃100を用いて匍匐茎を切断すること、散布すること及び押圧することを説明する。なお、草刈り刃を用いて匍匐茎を切断、散布及び押圧することでは、切断することは切断工程と呼ばれ、散布することは散布工程と呼ばれ、押圧することは押圧工程と呼ばれる場合がある。
【0023】
図1Aに示されるように、草刈り刃100は、第1の面112及び第1の面112と第3の方向Zに沿って反対側の第2の面114を含むステージ110、ステージ110の中心に第1の面112から第2の面114に貫通して取付けられた回転軸116、第2の面114に取付けられたn(nは正の整数)個の散布部120、及び、第2の面114に取付けられたm(mはn以上の正の整数)個の切断部130、を含む。草刈り刃100は、後述される第2の駆動部158に取付けられ、第2の駆動部158から伝達される動力によって回転すると共に、切断部130によって匍匐茎を切断し、散布部120によって切断された匍匐茎を散布する機能を有する。
【0024】
ステージ110は、回転軸116の軸芯102を回転軸(回転中心)として、例えば、図1A及び図1Bに示された黒矢印の方向に回転する。ステージ110が回転する方向は、図1A及び図1Bに示された方向に限定されるものではなく、図1A及び図1Bに示された黒矢印の方向と逆方向であってもよい。ステージ110は、n個(図1においてはn=4)の散布部120及びm個(図1においてはm=8)の切断部130を支持する機能を有する。ステージ110の形状は、例えば、ディスク形状(円柱形状)であるが、ディスク形状に限定されるものではない。ステージ110の形状は、回転可能な形状であって、n個の散布部120及びm個の切断部130を支持可能な形状であればよい。
【0025】
n個の散布部120は、ステージ110(第2の面114)の周縁105(円周)より内側であるとともに、ステージ110(第2の面114)の軸芯102を中心とする円107の円周上に位置するように配置される。また、散布部120は、ステージ110と垂直になるように、ステージ110から垂直に突き出るように、ステージ110(第2の面114)に取付けられる。図1A及び図1Bに示される草刈り刃100は、一例として、4(n=4)個の散布部120を含む。4個の散布部120は、直径111と円107とが交わる位置に2個、当該2個の散布部120を円107の円周に沿って90度回転した位置に2個配置される。散布部120は、ステージ110が回転することに基づき、切断部130を用いて切断された匍匐茎を、例えば、引掛けて、草刈り刃100の周囲に散布する(飛ばす)機能を有する。なお、散布部120の個数及び配置は、ここで示される例に限定されるものではない。散布部120の個数及び配置は、草刈り刃100の用途、被覆される地表面108の面積などに応じて、適宜選択することができる。例えば、図1では、1つの円上に散布部及び切断部が配置されるが、円107と同心円の複数の円周上に配置されてもよい。なお、図1A図1B、及び、後述される図5のそれぞれの見やすさを考慮し、符号111は一つの直径にのみ記載され、他の直径への符号111の記載は省略される。
【0026】
散布部120の形状としては、例えば棒状とする。棒状にすることで、切断された匍匐茎を引掛けて周囲に散布することができる。散布部120の横断面形状は、円柱または角柱などがあり得る。散布部120の横断面形状が、角柱であれば、円柱よりも角があるため、角に匍匐茎を引掛けやすい。切断部130は、切断部130の刃部がステージ110の回転方向に向くように配置する。
【0027】
m個の切断部130は、散布部120と同様に、円107の円周上に位置するように配置される。また、m個の切断部130は、ステージ110の円周の所定の点の接線104に平行な線106の線上に配置される。より詳細には、図1Bに示すように、切断部130の刃部132cと、刃部132cと反対側の切断部130の背部132dを結んだ線115が、平行な線106と重なるように配置される。また、切断部130は、散布部120と同様に、ステージ110と垂直になるように、ステージ110から垂直に突き出るように、ステージ110(第2の面114)に取付けられる。図1A及び図1Bに示される草刈り刃100は、一例として、8(m=8)個の切断部130を含む。8個の切断部130は、一例として、散布部120と同様に円107の円周上に配置される。8個の切断部130は、2個の散布部120の間に2個ずつ配置される。2個の散布部120の間の2個の切断部130は、一例として、互いに円107の円周に沿って30度回転した位置に配置される。切断部130は、ステージ110が回転することに基づき、ステージ110と地表面108との間に位置する匍匐茎を、例えば、垂直に切断する機能を有する。なお、切断部130の個数及び配置は、散布部120と同様に、ここで示される例に限定されるものではなく、草刈り刃100の用途、被覆される地表面108の面積などに応じて、適宜選択することができる。なお、接線104及び線106は、例えば、第1の方向X及び第2の方向Yに平行なXY平面上の仮想線である。
【0028】
図2Aに示されるように、切断工程は、草刈り刃100の切断部130を用いて、地被植物11を所定の刈り高さHで切断する工程である。地被植物11の品種は、例えば、ネコハギ等の匍匐茎を含む品種である。地被植物11は、例えば、地表面108から近い側(下方)の匍匐茎13、及び、地表面108から遠い側(上方)の匍匐茎13aを含む。匍匐茎13は節14、根15b及び根15を含み、根15bは地表面108から離れ、活着しておらず、根15は地表面108に活着している。匍匐茎13aは節14a及び根15aを含み、根15aは地表面108から離れ、活着していない。
【0029】
草刈り刃100が回転することに基づき、草刈り刃100は、切断部130を用いて、例えば、地表面108から遠い側(上方)の匍匐茎13aを刈り高さHで切断する。
【0030】
散布工程は、ステージ110が回転することに基づき、草刈り刃100の散布部120を用いて、切断部130を用いて切断された匍匐茎13aを、例えば、引掛けて、周囲に散布する(飛ばす)工程である。散布された匍匐茎13aは、時間経過とともに地表面108に根を活着させて、日光が照射され成長することができる。また、地表面108から遠い側(上方)の匍匐茎13aが切断されるとともに散布されることで、地表面108から近い側(下方)の匍匐茎13には、日光が照射されるため、成長が促される。
【0031】
また、押圧工程は、匍匐茎13a及び13を地表面108に押圧する工程である。押圧工程は、散布工程と同時又は散布工程の直後に実施される。詳細は後述されるが、押圧工程は、匍匐茎13aが草刈り刃100の周囲に散布された(飛ばされた)後、例えば、草刈り機200を用いて、匍匐茎13aを押圧するとともに、匍匐茎13aの節14aの根15aを地表面108に活着させる工程である。また、押圧工程は、例えば、草刈り機200を用いて、匍匐茎13を押圧することで、匍匐茎13の活着していない根15bを地表面108に活着させる工程である。散布及び押圧された匍匐茎13a及び13は、図2Bに示されるように、時間経過とともに地表面108に根を活着させて、日光が照射され成長することができる。
【0032】
以上のような構成及び機能を有する草刈り刃100は、匍匐茎の根を地表面の広範囲に活着させることで、地被植物で地表面108を被覆させることができる。また、草刈り刃100は、地表面から遠い側の匍匐茎を地表面108に活着させるとともに、それらの匍匐茎に日光を照射し成長を促し、地表面から近い側の匍匐茎に日光を照射し成長を促すことができる。なお、匍匐茎に含まれる根が地表面108に活着することは、挿し芽と呼ばれる場合がある。
【0033】
[2.散布部120の構成]
図3A図3Dを参照して、散布部120の構成を説明する。図3A及び図3Dは、散布部120を、ステージ110の周縁105から回転軸116に向かって見た図であり、図3Bは散布部120をステージ110の回転方向に沿って見た図であり、図3Cは散布部129の断面図である。図1A図2Bと同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する場合がある。
【0034】
散布部120は、散布部材122、取付座131、及び固定部材133を含む。散布部材122は、第3の方向Zに延在するとともに貫通孔122a、及び、曲面122baを備えた凸状部位122bを含む。取付座131は、第3の方向Zに延在するとともに、貫通孔131aを備えた2つの互いに対向した板状部材を含む。貫通孔131aは、取付座131の2つの板状部材を貫通する孔である。固定部材133は、例えば、ボルト133a及びナット133bを含む。
【0035】
取付座131はステージ110の第2の面114に取付られ、散布部材122は固定部材133を用いて取付座131に回転可能に固定される。取付座131と散布部材122との間には、散布部材122が回転可能な程度の空間が含まれる。具体的には、散布部材122の凸状部位122bが2つの互いに対向した板状部材の間に配置されるとともに、ボルト133aが、互いに重畳した貫通孔122a及び2つの貫通孔131aに挿通され、ボルト133aの一端がナット133bで固定される。散布部材122は、ボルト133aの軸芯を中心として、例えば、図3Aに示された散布部材122の回転方向を示す黒矢印の方向に回転する。散布部材122の回転方向は、図1Bで説明すると、ステージ110において散布部120が位置する円107の接線に沿って前後に回転する方向である。言い換えると、散布部材122が、ステージ110の回転方向に対して前後方向に回転する。このようにすることで、切断した匍匐茎13a(節14a)に効率良く接触することができ、切断した匍匐茎を周囲に効率良く散布することができる。以下、散布部120の回転方向、すなわち、ステージ110の回転方向に対し前後方向を第4の方向と呼ぶ場合がある。
【0036】
第2の面114に取付けられる側の取付座131の形状は、例えば、円柱状であってよく、角柱状であってもよい。また、取付座131は、金属材料、可撓性材料、樹脂材料で形成されてもよく、弾性部材などの変形可能な部材で形成されてもよい。弾性部材は、例えば、硬質ゴム、ばね、などである。図3Aに示された取付座131は、第3の方向Zの上方に円柱状部位を有するとともに、第3の方向Zの下方に円柱状部位と一体的に構成された2つの互いに対向した板状部材(部位)を有し、硬質ゴムで形成されている。なお、取付座131の構成はここで示された例に限定されるものではない。
【0037】
散布部材122の形状は、例えば、円柱状であってよく、角柱状であってもよい。また、散布部材122は、金属材料、可撓性材料、樹脂材料で形成されてよい。図3Bに示された散布部材122は、一例として、第3の方向Zの上方に凸状部位122bを有するとともに、第3の方向Zの下方に凸状部位122bと一体的に構成された円柱状部材を有する。なお、散布部材122の構成はここで示された例に限定されるものではない。
【0038】
ステージ110が回転することに伴い、散布部120の散布部材122がボルト133aの軸芯を中心として、例えば、図3Dに示された黒矢印の方向、つまり第4の方向に回転する。さらに、ステージ110が回転することに基づき、散布部材122は、切断部130を用いて切断された匍匐茎を、例えば、引掛けて、草刈り刃100の周囲に散布する(飛ばす)ことができる。
【0039】
[3.切断部130の構成]
図4A図4Dを参照して、切断部130の構成を説明する。図4A及び図4Dは、切断部130を、ステージの回転方向と対向する方向から見た図であり、図4Bは切断部130をステージ110の周縁105から回転軸116に向かって見た図であり、図4Cは切断部130の断面図である。図1A図3Dと同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する場合がある。
【0040】
切断部130は、切断部材132、取付座131、及び固定部材133を含む。切断部材132は、第3の方向Zに延在するとともに貫通孔132a、及び、曲面132baを備えた凸状部位132bを含む。また、切断部材132は、匍匐茎を切断することが可能な刃部132cを含む。貫通孔132aは凸状部位132bを貫通する孔である。取付座131及び固定部材133の構成及び機能は、「2.散布部120の構成」で説明した構成及び機能と同様であるから、ここでの説明は省略する。
【0041】
切断部材132は固定部材133を用いて取付座131に回転可能に固定される。取付座131と切断部材132との間には、切断部材132が回転可能な程度の空間が含まれる。具体的には、切断部材132の凸状部位132bが2つの互いに対向した板状部材の間に配置されるとともに、ボルト133aが、互いに重畳した貫通孔132a及び2つの貫通孔131aに挿通され、ボルト133aの一端がナット133bで固定される。切断部材132は、ボルト133aの軸芯を中心として、例えば、図4Aに示された切断部材132の黒矢印の方向に回転する。
【0042】
すなわち、図4A図4Dに示されるように、本実施形態の切断部材132の回転方向は、例えば、ステージ110の周縁105側からステージ110の回転軸116(軸芯)側に向かう方向、または、ステージ110の回転軸116(軸芯)側からステージ110の周縁105側に向かう方向である。図1Bで説明すると、切断部材132の回転方向は、ステージ110の直径に沿って左右に回転する方向(ステージ110の直径に沿った方向)である。したがって、散布部120の回転方向(第4の方向)と切断部130の回転方向(第5の方向)とは、90度異なる。以下、切断部130、切断部材132の回転方向、すなわち、ステージ110の周縁105側からステージ110の回転軸116(軸芯)側に向かう方向、ステージ110の回転軸116(軸芯)側からステージ110の周縁105側に向かう方向、言い換えると、ステージ110の直径に沿って左右に回転する方向、又は、ステージ110の直径に沿った方向を第5の方向と呼ぶ場合がある。
【0043】
図4Cの刃部132cと刃部132cと反対側の切断部130の背部132dを結んだ線115は、一例として、図1B及び図4Cに示すように、第3の方向Zの下方から見た平面視において、図1Bの接線104に平行な線106上に位置するように配置される。刃部132cは、例えば、図4Bに示すように、第3の方向Zに沿って平行又は略平行に設けられるが、この例に限定されない。刃部132cは、第3の方向Zに垂直なXY平面(地表面108側)が刃先となるように構成されていてもよいし、第3の方向Zに沿う方向からXY平面にかけてL字のような刃部として構成されてもよい。また、切断部材132を形成する材料は、金属材料であってよく、可撓性を有していてもよい。
【0044】
凸状部位132bが曲面132baを含み、取付座131が弾性部材で形成されることに基づき、切断部材132は、ボルト133aの軸芯を中心として、例えば、図4Dに示された黒矢印の方向に回転するとともに、ボルト133aを支点として、ステージ110に垂直な状態からステージ110に水平な状態まで遷移可能である。ステージ110が回転する前は、切断部130の切断部材132(刃部132c)は第3の方向Zに平行又は略平行に位置するように配置される。
【0045】
地表面108に、匍匐茎より硬い障害物(例えば、石など)があった場合には、切断部130が障害物に当接するとそれを契機として、例えば、切断部材132がボルト133aを中心として回転する機構とする。このとき、切断部材132が回転する方向は第5の方向である。したがって、刃部132cを障害物から逃がすことができる。その結果、草刈り刃100は、刃部132cの損傷を防ぐことができる。具体的には、切断部材132を障害物から逃がすために、図4Dに示されたステージ110と水平状態になるように回転するのが好ましい。切断部130は、障害物に当接したことを感知するセンサと接続していてもよい。
【0046】
このとき、刃部132cは、例えば、第3の方向Zの下方から上方を見た平面視において、図1Bの線106と垂直又は略垂直な位置に変化し、かつ、ステージ110と平行又は略平行な位置に変化する。また、切断部材132(刃部132c)は、ステージ110と平行又は略平行になることに基づき、主に、地表面から遠い側の匍匐茎を垂直に切断することができる。
【0047】
また、ステージ110の回転に起因する遠心力を受けて、切断部材132は回転してもよい。その回転する角度は遠心力に応じた角度であり、切断部材132が回転していない図4Aの状態から、切断部材132がステージ110と平行又は略平行な位置となる図4Cの状態までの角度となる。
【0048】
切断部130が図4A図4Dに示されるような構成を有することによって、刃部132cが常にステージ110の回転方向を向いた状態で、匍匐茎を切断することができる。
【0049】
なお、切断部130の構成は、図4A図4Dに示される構成に限定されない。例えば、切断部材132がボルト133aを中心として回転する方向は、散布部120と同様に、第4の方向であってもよい。
【0050】
[4.草刈り刃100aの構成]
図5を参照して、草刈り刃100aの構成を説明する。図5の草刈り刃100aの構成は、草刈り刃100の構成の変形例であり、図5は草刈り刃100aを第3の方向Zに沿って下方から見た平面図である。草刈り刃100aの構成は、草刈り刃100の構成と比較して、散布部120が配置される円107の円周よりも、より内側の円109の円周上に切断部130が配置される点で異なる。具体的には、8個の切断部130がステージ110の周囲より内側、かつ、散布部120が配置される円107より内側の円109の円周上に位置するように配置される点が異なる。草刈り刃100aの構成のそれ以外の点は、草刈り刃100の構成と同様であるから、ここでの説明は省略する。また、図1A図4Dと同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する場合がある。
【0051】
切断部130が散布部120より内側の円周上に位置するように配置されることで、切断部130によって切断された匍匐茎が円109の外側に飛ばされ易くなる(散布され易くなる)。その結果、円109の外側の円107の円周上に位置するように配置された散布部120は、内側から飛ばされた切断された匍匐茎を、効率よく、ステージ110外側に飛ばす(散布する)ことができる。
【0052】
また、図5に示されるように、複数の切断部130のうちの一部の切断部130aaは、刃部132cと刃部132cと反対側の切断部130の背部132dとを結ぶ線115が、接線104aに平行な線106bに対して、円109の内側に向かってα度傾くように配置されてもよい。なお、複数の切断部130のうちの全ての切断部130の刃部132cと背部132dとを結ぶ線115が、円109の内側に向かって配置されてもよい。刃部132cと背部132dとを結ぶ線115が、円109の内側に向かって配置されると、切断部130によって切断された匍匐茎が、円109の外側に向かって、より飛ばされ易くなる(散布され易くなる)。なお、草刈り刃100及び100aでは、円107の円周は第1の円周と呼ばれ、円109の円周は第2の円周と呼ばれる。
【0053】
[5.切断部130a、130b及び130c、並びに、散布部の構成]
図6A図6Dを参照して、切断部130a、130b及び130c、並びに、散布部の構成を説明する。なお、以下では、切断部130a、130b及び130cが草刈り刃110aのステージ110(第2の面114)に固定される構成について詳しく述べるが、散布部120も同様の機構によりステージ110(第2の面114)に固定される。切断部130aの構成は切断部130の構成の第1の変形例(変形例1)であり、切断部130bの構成は切断部130の構成の第2の変形例(変形例2)であり、切断部130cの構成は切断部130の構成の第3の変形例(変形例3)である。図1A図5と同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する場合がある。
【0054】
図6Aに示されるように、変形例1の切断部130aは、切断部130のように固定部材133を有さず、弾性部材の一例であるばね部140を用いて、ステージ110(第2の面114)に固定される。具体的には、ばね部140の第1の端部142が切断部材132の貫通孔132aに挿通されるとともに切断部材132を支持し、ばね部140の第2の端部141が第2の面114に固定され、切断部130aがステージ110に取付けられる。貫通孔132aは、ばね部140の第1の端部142の太さより大きく形成されているため、貫通孔132aと第1の端部142との間には、切断部130a(切断部材132の少なくとも一部)が回転可能な程度の空間が含まれる。
【0055】
切断部130aはばね部140を介してステージ110に取り付けられているため、ステージ110の回転に伴うばね部140の伸縮により様々な方向へ傾く。例えば図6Aの切断部材132は、垂直な状態からステージ110の回転軸116側に傾くことがあり、垂直な状態からステージ110の周縁105側に傾くことがある。また、図6Aの切断部材132がステージの回転方向に対して前後に傾くこともある。また、刃部132cが障害物に当接したことを感知して、ばね部140により刃部132cを回転させて、刃部132cの損傷を防ぐこともできる。
【0056】
図6Bに示されるように、変形例2の切断部130bは、固定部材133及びばね部140aを用いて第2の面114に固定される。変形例2は固定部材133とばね部140aの両方を用いるため、切断部130よりもより短い時間で、切断部材136を水平状態にすることができる。
【0057】
切断部130bは、切断部材136、取付座137、弾性部材の一例であるばね部140a、及び固定部材133を含む。切断部材136は、第3の方向Zに延在するとともに貫通孔136a、貫通孔136d、及び、曲面136baを備えた凸状部位136bを含む。また、切断部材132はステージ110の回転方向に対して、匍匐茎を切断することが可能な刃部136cを含む。
【0058】
切断部130bの回転については、切断部130と同様であり、障害物に当接した際、および遠心力を受けた際に回転する。
【0059】
切断部130bの貫通孔136a、曲面136ba、凸状部位136b、及び刃部136cの構成及び機能は、切断部130の貫通孔132a、曲面132ba、凸状部位132b、及び刃部132cの構成及び機能と同様であり、ここでの詳細な説明は省略される。
【0060】
切断部130bの取付座137は、金属材料で形成される以外は、切断部130の取付座131と同様の構成及び機能を含むため、ここでの詳細な説明は省略される。また、固定部材133の構成及び機能は、「2.散布部120の構成」で説明した構成及び機能と同様であるから、ここでの説明は省略される。また、固定部材133を用いて切断部130bを取付座137に取付ける方法は、固定部材133を用いて切断部130を取付座131へ取付ける方法と同様であり、ここでの詳細な説明は省略される。
【0061】
切断部130bでは、ばね部140aの第1の端部142aが貫通孔136dに挿通されるとともに切断部材136を支持し、ばね部140aの第2の端部141aが第2の面114に固定されるとともに、切断部130bがステージ110(第2の面114)に取付けられる。その結果、変形例2の切断部130bは、取付座137及びばね部140aを用いて、ステージ110(第2の面114)に固定される。貫通孔136dは、ばね部140aの第1の端部142aの太さより大きく形成されているため、貫通孔136dと第1の端部142aとの間には、切断部130b(切断部材136の少なくとも一部)が動作可能な程度の空間が含まれる。
【0062】
図6C及び図6Dに示されるように、変形例3の切断部130cは、互いに対向する取付座139a及び139b、固定部材133c及び133f、並びに、切断部材138を含む。取付座139aは貫通孔139c及び139eを含み、取付座139bは貫通孔139d及び139fを含む。切断部材138は刃部138cを含む。切断部130cは、2つの互いに対向した取付座139a及び139bを用いて、ステージ110(第2の面114)に固定される。
【0063】
切断部材138が、2つの互いに対向した取付座139a及び139bの間に配置されるとともに、ボルト133dが、互いに重畳した貫通孔139d及び139cに挿通され、ボルト133dの一端がナット133eで固定され、ボルト133gが、互いに重畳した貫通孔139e及び139fに挿通され、ボルト133gの一端がナット133hで固定される。
【0064】
切断部材138、取付座139a及び139bは可撓性の金属材料を用いて形成される。その結果、切断部材138、取付座139a及び139bは、例えば、ボルト133d近傍で、湾曲させることが可能である。そのため、切断部材138(刃部138c)の位置は、図6C及び図6Dのステージ110に対して垂直又は略垂直の位置から、ステージ110に対して水平又は略水平な位置まで、第5の方向に回転可能である。
【0065】
よって、切断部材138は、切断部130と同様に、障害物に当接した場合、及びステージ110の回転に起因する遠心力を受けた場合に、回転することが可能である。
【0066】
以上で説明した切断部130a、切断部130b、切断部130cおよび散布部120は、草刈り刃100aに設ける例を説明したが、図1の草刈り刃100に設けることもできる。
【0067】
[6.切断散布部144及び145の構成]
図7Aを参照して、切断散布部144の構成を説明し、図7Bを参照して、切断散布部145の構成を説明する。図7A及び図7Bは、切断散布部144及び切断散布部145をステージ110の周縁105から回転軸116に向かって見た図である。切断散布部144及び切断散布部145は、「1.草刈り刃100の構成」~「5.切断部130a、130b及び130c、並びに、散布部の構成」において説明された切断部及び散布部が一体的に形成され、切断部及び散布部が一体化された構成を有する。図1A図6Dと同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する場合がある。
【0068】
図7Aに示されるように、切断散布部144はフック形状を有し、切断散布部材144a、取付座131、及び固定部材133を含む。切断散布部材144aは、貫通孔144bを含む板状部材144d、及び、板状部材144dと一体的に構成された、円弧状の刃部144cを有する湾曲部材144eを含む。貫通孔144bは切断散布部材144aを貫通する孔である。切断散布部144は、切断散布部材144a(円弧状の刃部144c)によって、匍匐茎を引掛けるとともに切断し草刈り刃100の周囲に散布する(飛ばす)機能を有する。すなわち、切断散布部144は、切断部130及び散布部120の両方の機能を有する。取付座131及び固定部材133の構成及び機能は、「2.散布部120の構成」で説明した構成及び機能と同様であるから、ここでは、必要に応じて説明される。
【0069】
切断散布部材144aは固定部材133を用いて取付座131に回転可能に固定される。取付座131と切断散布部材144aとの間には、切断散布部材144aが回転可能な程度の空間が含まれてよい。具体的には、板状部材144dが取付座131の2つの互いに対向した板状部材の間に配置されるとともに、ボルト133aが、互いに重畳した貫通孔144b及び2つの貫通孔131aに挿通され、ボルト133aの一端がナット133bで固定される。切断散布部材144aは、例えば、ボルト133aの軸芯を中心として、回転自在に固定される。また、切断散布部材144aは、金属材料、可撓性材料で形成されてよい。
【0070】
ステージ110が回転することに基づき、切断散布部材144aは、ボルト133aの軸芯近傍を支点として、例えば、紙面の奥行方向と手前方向、すなわち、第5の方向に回転する。さらに、ステージ110が回転することに基づき、切断散布部144は、円弧状の刃部144cを用いて匍匐茎を引掛けるとともに切断し、草刈り刃100の周囲に散布する(飛ばす)ことができる。
【0071】
ただし、切断散布部145の回転方向は、第5の方向に限定されない。切断散布部145の回転方向は、第4の方向でもよいし、第4の方向及び第5の方向の両方でもよい。このようにすることで、切断散布部145は、切断機能と散布機能の両方を効果的に発揮できる。
【0072】
図7Bに示された切断散布部145の構成は、図7Aに示された切断散布部144の構成とは刃部145cの形状が異なり、図7Aの刃部144cよりも円弧状の刃が長く延びている。その他は図7Aと同様であり、図7Bに示されるように、切断散布部145は、切断散布部材145a、取付座131、及び固定部材133を含む。図7Aの刃部144cの形状であると円弧形状が半円であるため、切断する植物に対し刃部144cが垂直に当たりやすくなる反面、円弧が短いため、切断した植物を引掛けにくいという面がある。対して、図7Bの刃部145cは円固形状が半円以上あるため、切断する植物に刃部145cが当たりにくくなる反面、切断した植物を引掛けやすくなるという面がある。
【0073】
切断散布部材145aは、第3の方向Zの上方に位置するとともに第3の方向Zに延在し、貫通孔145bを含む板状部材145d、及び、第3の方向Zの下方に位置するとともに板状部材144dと一体的に構成されたフック状の刃部145cを有する湾曲部材145eを含む。貫通孔145bは切断散布部材145aを貫通する孔である。切断散布部145は、切断散布部材145a(フック状の刃部145c)によって、匍匐茎を引掛けるとともに切断し草刈り刃100の周囲に散布する(飛ばす)機能を有する。すなわち、切断散布部145は、切断散布部144と同様に、切断部130及び散布部120の両方の機能を有する。切断散布部145の切断散布部材145a以外の構成及び機能は、切断散布部144と同様であるから、ここでは、必要に応じて説明される。
【0074】
切断散布部材145aは、切断散布部材144aと同様に、固定部材133を用いて取付座131に回転自在に固定される。また、切断散布部材145aは、切断散布部材144aと同様に金属材料、可撓性材料で形成されてよい。
【0075】
ステージ110が回転することに基づき、切断散布部材145aがボルト133aの軸芯近傍を支点として、例えば、紙面の奥行方向と手前方向、すなわち、第5の方向に回転する。さらに、ステージ110が回転することに基づき、切断散布部145は、フック状の刃部145cを用いて匍匐茎を引掛けるとともに切断し、草刈り刃100の周囲に散布する(飛ばす)ことができる。
【0076】
図7では切断散布部が第5の方向に回転する例を述べたが、切断散布部は第4の方向に回転してもよい。すなわち、切断散布部は、切断機能と散布機能の両方を有するため、第4の方向及び第5の方向のどちらに回転してもよい。また、第4の方向及び第5の方向の両方に回転してもよい。また、ステージ110への取り付けは、取付座131及び固定部材133を利用した例で述べたが、図6で説明した変形例のような取り付け形態とも組み合わせることはできる。
【0077】
切断散布部144及び切断散布部145は、切断部及び散布部が一体化された構成を有するため、例えば、切断散布部144及び切断散布部145の製造にかかる費用は、切断部及び散布部が一体化されずに別々に形成される場合と比較して、抑えることができる。
【0078】
<第2実施形態>
図8図10を参照して、草刈り刃100を含む草刈り機200の構成を説明する。なお、草刈り刃100は第1実施形態で説明された草刈り刃100と同一であり、第1実施形態で説明された草刈り刃100aで置き換えることができる。本実施形態では、草刈り刃100又は草刈り刃100aは、必要に応じて説明される。図1A図7Bと同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する場合がある。なお、草刈り刃100を含む草刈り機200を用いて草を刈ること(草刈り作業)は、第1実施形態で説明された切断工程、散布工程、及び押圧工程を含む。
【0079】
図8は、上方から見た草刈り機200の図であり、図10は下方から見た草刈り機200の図である。破線で囲った四角または円により、草刈り機200内部の構成を示す。図9は草刈り機200の側面図である。
【0080】
草刈り機200は、自走しながら草刈り作業を行う草刈り機である。例えば、草刈り機200は、制御部154に記憶されたプログラムに基づく指示に従って、切断部130及び散布部120を用いて地被植物の匍匐茎を切断するとともに、切断した匍匐茎を草刈り刃100の周囲に散布し(飛ばし)、走行部160を用いて匍匐茎の根を押圧する。また、草刈り機200は、リモコンを用いた遠隔操作に基づき、制御部154に記憶されたプログラムを実行させて、草刈り作業を行ってもよい。
【0081】
図8図10の何れかに示されるように、草刈り機200は、草刈り刃100、筐体150、走行部160、第1の駆動部157、第2の駆動部158、制御部154、バッテリ156、及びカバー部170を含む。
【0082】
筐体150には、走行部160が取付けられる。また、筐体150の第1の面151(図9)には、第1の駆動部157、第2の駆動部158、制御部154、バッテリ156、及びカバー部170が取付けられ、筐体150の第1の面151と反対側の第2の面153には、草刈り刃100が取付けられる。なお、草刈り刃100の回転軸116は、筐体150の第2の面153及び第1の面151を貫通し、第1の面151に配置された第2の駆動部158に取付けられる。筐体150は、草刈り機200の骨格をなすフレームである。筐体150は、例えば、金属材料(例えば、鋼材、アルミニウム材)、又はプラスチック材料を用いて形成されるが、ここで示された例に限定されるものではない。
【0083】
走行部160は、進行方向に対して左右に一対で設けられる駆動輪162a及び162b、並びに、進行方向に対して左右に一対で設けられる従動輪164a及び164bを含む。走行部160(一対の駆動輪162a及び162b並びに一対の従動輪164a及び164b)は、草刈り機200の走行手段として機能する。また、走行部160(一対の駆動輪162a及び162b並びに一対の従動輪164a及び164b)は、切断工程及び散布工程を経て、草刈り刃100の周囲に散布された匍匐茎を押圧する押圧工程を実行するとともに、匍匐茎に含まれる根を地表面108に活着させる機能を有する。一対の駆動輪162a及び162bは、筐体150に設けられた第1の駆動部157に取付けられるとともに、第1の駆動部157から伝達された動力により回転し、草刈り機200を走行させる。第1の駆動部157は、筐体150に設けられたバッテリ156に接続されるとともに、バッテリ156に蓄積された電力を電源として駆動される。第1の駆動部157として、例えば、モータが用いられる。一対の従動輪164a及び164bは、一対の駆動輪162及び162bが回転することに基づき回転し、例えば、一対の駆動輪162及び162bとともに草刈り機200を走行させる。
【0084】
第2の駆動部158は、草刈り刃100の回転軸116に取付けられるとともに、回転軸116(草刈り刃100)を回転させるための動力を発生する部位である。第2の駆動部158は、第1の駆動部157と同様に、筐体150に設けられたバッテリ156に蓄積された電力を電源として駆動される。第2の駆動部158として、例えば、モータが用いられる。
【0085】
制御部154は、図示が省略されるが、例えば、演算回路、記憶回路、及び通信回路を備えた電子回路基板を含む。制御部154は、演算回路を用いて記憶回路に記憶されたプログラムを実行し、草刈り刃100、走行部160、第1の駆動部157、第2の駆動部158、及びバッテリ156を制御する機能を有する。また、制御部154は、リモコン(図示は省略)から受信した信号に基づき、演算回路を用いて記憶回路に記憶されたプログラムを実行し、草刈り刃100、走行部160、第1の駆動部157、第2の駆動部158、及びバッテリ156を制御する機能を有する。制御部154は、走行部160及び草刈り刃100を制御し、草刈り機200を走行させるとともに、草刈り機200が、切断工程、散布工程及び押圧工程を含む草刈り作業を実行可能に制御する。
【0086】
バッテリ156は、バッテリ156に蓄積された電力を、走行部160を駆動する第1の駆動部157に供給するための電源として機能するとともに、バッテリ156に蓄積された電力を、草刈り刃100を駆動する第2の駆動部158に供給するための電源として機能する。
【0087】
カバー部170は、筐体150を覆うように筐体150に実装される(取付けられる)。カバー部170は、筐体150、並びに、筐体150に実装された草刈り刃100、走行部160、第1の駆動部157、第2の駆動部158、制御部154、及びバッテリ156を覆うとともに、壁又は石など地表面108上の障害物から受ける衝撃、又は、落下時の衝撃などから筐体150、並びに、筐体150に実装された草刈り刃100、走行部160、第1の駆動部157、第2の駆動部158、制御部154、及びバッテリ156を保護する機能を有する。
【0088】
草刈り機200は、以上のように説明された構成及び機能を有し、第1実施形態で説明された切断工程、散布工程及び押圧工程を含む草刈り作業を行うことができる。また、草刈り機200は、匍匐茎を切断するとともに、切断された匍匐茎を散布し、散布された匍匐茎を押圧することに基づき、匍匐茎に含まれる根が地表面に活着することを促すことができる。
【0089】
本発明の実施形態として上述した草刈り刃及び草刈り機、並びに、草刈り刃及び草刈り機の構成及び機能は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することが可能であり、適宜入れ替えて組み合わせることも可能である。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、または設計変更を行ったもの、もしくは工程の追加、省略、または条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0090】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0091】
11:地被植物、13:匍匐茎、13a:匍匐茎、14:節、14a:節、15:根、15a:根、100:草刈り刃、100a:草刈り刃、102:軸芯、104:接線、104a:接線、105:周縁、106:線、106b:線、107:円、108:地表面、109:円、110:ステージ、111:直径、112:第1の面、114:第2の面、115:線、116:回転軸、120:散布部、122:散布部材、122a:貫通孔、122b:凸状部位、122ba:曲面、130:切断部、130a:切断部、130aa:切断部、130b:切断部、130c:切断部、131:取付座、131a:貫通孔、132:切断部材、132a:貫通孔、132b:凸状部位、132ba:曲面、132c:刃部、132d:背部、133:固定部材、133a:ボルト、133b:ナット、133c:固定部材、133d:ボルト、133e:ナット、133f:固定部材、133g:ボルト、133h:ナット、136:切断部材、136a:貫通孔、136b:凸状部位、136ba:曲面、136c:刃部、136d:貫通孔、137:取付座、138:切断部材、138c:刃部、139a:取付座、139b:取付座、139c:貫通孔、139d:貫通孔、139e:貫通孔、139f:貫通孔、140:ばね部、140a:ばね部、141:第2の端部、141a:第2の端部、142:第1の端部、142a:第1の端部、144:切断散布部、144a:切断散布部材、144b:貫通孔、144c:円弧状の刃部、144d:板状部材、144e:湾曲部材、145:切断散布部、145a:切断散布部材、145b:貫通孔、145c:フック状の刃部、145d:板状部材、145e:湾曲部材、150:筐体、151:第1の面、153:第2の面、154:制御部、156:バッテリ、157:第1の駆動部、158:第2の駆動部、160:走行部、162:駆動輪、162a:駆動輪、162b:駆動輪、164a:従動輪、164b:従動輪、170:カバー部、200:草刈り機
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8
図9
図10