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特開2024-109481水処理方法、水処理装置及び純水製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109481
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】水処理方法、水処理装置及び純水製造システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20230101AFI20240806BHJP
   C02F 1/469 20230101ALI20240806BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20240806BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240806BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20240806BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/469
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/44 H
C02F1/70 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014292
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
(72)【発明者】
【氏名】秋元 良裕
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA17
4D006KA01
4D006KA72
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB15
4D006KB17
4D006KB30
4D006KD02
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB04
4D006PB06
4D006PC02
4D025AA01
4D025AA04
4D025AB33
4D025BA07
4D025BB01
4D025BB04
4D025DA01
4D025DA03
4D025DA04
4D025DA05
4D025DA06
4D025DA10
4D037AA02
4D037AA03
4D037AA05
4D037AB11
4D037AB12
4D037BA18
4D037CA01
4D037CA02
4D037CA03
4D037CA04
4D037CA09
4D037CA14
4D037CA15
4D050AA01
4D050AA02
4D050AA04
4D050AA05
4D050AB13
4D050AB17
4D050BA04
4D050BA06
4D050BA07
4D050BD06
4D050CA03
4D050CA04
4D050CA06
4D050CA07
4D050CA08
4D050CA09
4D050CA10
4D050CA13
4D050CA15
4D061DA02
4D061DB18
4D061DC13
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4D061EB13
4D061FA03
4D061FA04
4D061FA06
4D061FA07
4D061FA08
4D061FA09
4D061FA11
4D061FA13
4D061FA17
(57)【要約】
【課題】被処理水から尿素を効率よく除去する。
【解決手段】水処理方法は、被処理水に還元剤を添加し、還元剤が添加された被処理水に紫外線を照射して尿素を分解する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に還元剤を添加し、
前記還元剤が添加された前記被処理水に紫外線を照射し尿素を分解する、
水処理方法。
【請求項2】
前記還元剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及びスルファミン酸ナトリウムの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記還元剤の添加濃度が、7ppm以上30ppm以下である、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記紫外線を照射した後の前記被処理水に対し脱塩処理を行う、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記紫外線を照射する際の前記被処理水の溶存酸素量が3ppm以上8ppm以下である、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項6】
被処理水に還元剤を添加する還元剤添加装置と、
前記還元剤が添加された前記被処理水に紫外線を照射し尿素を分解する紫外線照射装置と、
を有する水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水処理装置と、
前記水処理装置によって処理された前記被処理水から不純物を除去して純水を製造する純水製造装置と、
を有する純水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水処理方法、水処理装置及び純水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中の溶存酸素の除去方法として、酸素を溶存する水に還元剤を溶解し、紫外線を照射する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-278882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体製造装置等に用いられる純水(超純水を含む)では、尿素が除去されていることが望まれる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術は、水中の溶存酸素を除去する方法であり、被処理水中の尿素を除去するものではない。
【0006】
被処理水中の尿素を分解するためには、たとえば、逆浸透膜等の濾過膜に被処理水を通すことで、尿素を分離する方法が考えられる。また、紫外線照射やペルオキソ硫酸等の酸化剤を用いる分解方法も考えられる。しかし、これらいずれの方法であっても、被処理水から尿素を充分に除去することは難しく、より高い尿素除去率で尿素を除去することが望まれる。また、酸化剤を添加する場合には、多量に添加した酸化剤の一部が被処理水中に残留し、尿素処理装置の後段に備えられている膜装置やイオン交換装置における劣化を引き起こす可能性もあるので、酸化剤を還元剤で処理する必要も生じる。
【0007】
本願の目的は、被処理水から尿素を効率よく除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様の水処理方法は、被処理水に還元剤を添加し、前記還元剤が添加された前記被処理水に紫外線を照射し尿素を分解する。
【0009】
この水処理方法では、被処理水に紫外線を照射することで尿素を分解するが、紫外線照射の前に、被処理水に還元剤を添加する。このように、被処理水に還元剤を添加した後、紫外線照射を行うことで、このような一連の処理を行わない構成と比較して、被処理水から尿素を効率よく除去できる。
【0010】
第二態様の水処理方法では、第一態様において、前記還元剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及びスルファミン酸ナトリウムの少なくとも一つを含む。
【0011】
還元剤が亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及びスルファミン酸ナトリウムの少なくとも一つを含むことで、尿素を効果的に分解できる。
【0012】
第三態様の水処理方法では、第一又は第二態様において、前記還元剤の添加濃度が、7ppm以上30ppm以下である。
【0013】
還元剤の添加濃度を7ppm以上とすることで、尿素を効果的に分解できる。
【0014】
また、還元剤の添加濃度を30ppm以下とすることによって、尿素の分解効率の低下を抑制できる。
【0015】
第四態様の水処理方法では、第一から第三のいずれか一態様において、前記紫外線を照射した後の前記被処理水に対し脱塩処理を行う。
【0016】
脱塩処理を行うことで、被処理水からイオン成分の一部を除去できる。
【0017】
第五態様の水処理方法では、第一から第四のいずれか一態様において、前記紫外線を照射する際の前記被処理水の溶存酸素量が3ppm以上8ppm以下である。
【0018】
溶存酸素量が3ppm未満の被処理水に紫外線を照射する場合と比較して、尿素除去率を高くすることができる。また、紫外線を照射する際の被処理水の溶存酸素量が8ppm超の場合と比較して、この水処理方法による処理後の水に過分の酸素が残留しない。
【0019】
第六態様の水処理装置は、被処理水に還元剤を添加する還元剤添加装置と、前記還元剤が添加された前記被処理水に紫外線を照射し尿素を分解する紫外線照射装置と、を有する。
【0020】
この水処理装置では、紫外線照射装置により被処理水に紫外線を照射することで尿素を分解するが、紫外線照射の前に、還元剤添加装置により被処理水に還元剤を添加する。このように、被処理水に還元剤を添加した後、紫外線照射を行うことで、このような一連の処理を行わない構成と比較して、被処理水から尿素を効率よく除去できる。
【0021】
第七態様の純水製造システムは、第六態様の水処理装置と、前記水処理装置によって処理された前記被処理水から不純物を除去して純水を製造する純水製造装置と、を有する。
【0022】
第六態様の水処理装置を有しているので、被処理水に対し高い尿素除去率で尿素を除去できる。そして、純水製造装置で製造される純水としても、高い尿素除去率で尿素を除去した純水となる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の技術では、被処理水から尿素をする尿素除去率を高くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は第一実施形態の水処理装置を備えている超純水製造システムを示す構成図である。
図2図2は第一実施形態の水処理装置を示す構成図である。
図3図3は被処理水の溶存酸素量と能祖除去率の関係を示すグラフである。
図4図4は被処理水のpHと尿素除去率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して第一実施形態に係る水処理装置24及び超純水製造システム12について説明する。図1に示すように、この超純水製造システム12は、前処理装置14、一次純水装置16、純水タンク18、二次純水装置20、及びユースポイント22を有している。超純水製造システム12は、原水から不純物等を除去し、超純水を製造するシステムである。原水としては、工業用水、水道水、地下水、河川水等を挙げることができる。
【0026】
前処理装置14には原水が供給される。前処理装置14では、活性炭を用いて除濁等の処理を行い、原水中の懸濁物質及び有機物の一部が除去された前処理水を得る。なお、原水の水質によっては、図1に一点鎖線で示すように、前処理装置14は省略し原水を一次純水装置16に送るようにしてもよい。前処理装置としては、砂濾過装置、加圧浮上装置等を備えていてもよい。
【0027】
一次純水装置16は、水処理装置24を有している。図2に示すように、水処理装置24は、第一濾過装置26、第一添加装置28、第二添加装置30、紫外線照射装置32、第三添加装置34、第二濾過装置36、及び脱イオン装置38を有している。
【0028】
第一濾過装置26は、内部に逆浸透膜を備えている。第一濾過装置26は被処理水を濾過し、これによって被処理水中の異物の一部が除去される。したがって、後段の尿素分解において、副反応が起きることによる尿素除去性能の低下を抑制できる。なお、第一濾過装置26は必須の構成要素ではなく、例えば、原水の水質によっては省略することも可能である。
【0029】
第一添加装置28は、第一濾過装置26を通過した被処理水に対し、pH調整剤を添加可能である。本開示の技術ではpH調整剤としてNaOH、HCl又はHSOを用い、尿素の分解に適したpHに調整すればよい。たとえば、被処理水のpHが、NaOHの添加前には5以上6以下の範囲である場合に、NaOHの添加後は6以上8以下の範囲となる。ただし、pH調整剤を添加しない状態であっても被処理水がアルカリ性である場合は、pH調整剤の添加は不要である。
【0030】
また、第一添加装置28の前段に、脱炭酸装置を備えていてもよい。脱炭酸装置を備えることで、炭酸が尿素分解を阻害することを抑制できる。なお、脱炭酸装置としては、常圧脱気装置、及びpH8以上で運転する逆浸透膜装置を用いることが可能である。この脱炭酸装置は、第一濾過装置26の前段、又は第一添加装置28と紫外線照射装置32との間に設置することも可能である。さらに、第一濾過装置26と脱炭酸装置との代わりに、2床3塔式脱塩装置(2B3T塔)を設置することも可能である。
【0031】
第二添加装置30は、pH調整剤が添加された被処理水に対し、還元剤を添加可能である。本実施形態では、還元剤として亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)又はスルファミン酸ナトリウム(NHOSONa)を用いる。亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及びスルファミン酸ナトリウムは、いずれも硫黄原子を含む。第二添加装置30は、還元剤添加装置の一例である。第一添加装置28と第二添加装置30との配置順は逆でもよい、また、pH調整剤と還元剤とを、実質的に同時に添加する方式としてもよい。
【0032】
紫外線照射装置32は、還元剤を添加された被処理水に対し、紫外線を照射することにより酸化分解を促進する。紫外線の波長は、被処理水を酸化することが可能であればよい。たとえば、一般的に紫外線酸化用として用いられる波長185nm程度の紫外線であってもよく、また、殺菌用として用いられる波長254nm程度の波長の紫外線であってもよい。
【0033】
なお、被処理水に添加された還元剤は、紫外線の作用によって、過硫酸ラジカル又はそれに近い形態の酸化剤に変化させられていると考えられる。そして、生じた酸化剤により尿素が分解される。
【0034】
第三添加装置34は、紫外線が照射された被処理水に対し、還元剤を添加可能である。本実施形態では、還元剤として、第二添加装置30と同様に、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)又はスルファミン酸ナトリウム(NHOSONa)を用いる。前述のように紫外線照射によって酸化剤が発生する。また、紫外線照射によって過酸化水素も発生する。被処理水にこれらの酸化剤が残留している場合であっても、この還元剤により、被処理水は還元処理される。なお、紫外線照射によって生じる酸化剤量は尿素の分解に必要な最小限の酸化剤量であり、残留する酸化剤量も少ないため、この段階での酸化剤添加は省略することも可能である。
【0035】
第二濾過装置36は、第一濾過装置26と同様に、内部に逆浸透膜を備えている。そして、第二濾過装置36は被処理水を濾過し、これによって被処理水中の異物の一部がさらに除去される。
【0036】
水処理装置24は、第二濾過装置36の下流側に、さらに、脱イオン装置38を備えている。脱イオン装置38は、被処理水から、残存するイオン等をイオン交換によって除去する。ただし、被処理水の種類や状態によっては、脱イオン処理を行わない構成でもよい。脱イオン装置としては、たとえば、電気再生式イオン交換装置、混床式イオン交換装置(MB塔)、ホウ素選択性イオン交換樹脂塔等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0037】
本開示の技術では、紫外線照射装置32の下流側に、第二濾過装置36及び脱イオン装置38を備えることで、被処理水に対し脱塩処理を行うことが可能である。
【0038】
一次純水装置16は、このようにして、被処理水に対し必要な処理(清浄化処理)を行うことで不純物を除去し、一次純水を得る装置である。すなわち、一次純水装置16は、水処理装置24を含むと共に、この水処理装置24によって処理された被処理水から純水を得る純水製造装置を成す。
【0039】
一次純水装置16で得られた一次純水は、純水タンク18へ送水される。純水タンク18は、一次純水装置16で得られた一次純水を一時的に貯留する容器である。
【0040】
純水タンク18に貯留された一次純水は、二次純水装置20に送られる。
【0041】
二次純水装置20は、たとえば、紫外線照射装置、膜脱気装置及びイオン交換装置(いずれも図示省略)等を有している。二次純水装置20は、被処理水に対し、さらに必要な処理(清浄化処理)を行うことで不純物を除去し、二次純水、すなわち超純水を得る装置である。
【0042】
得られた超純水は、ユースポイント22に送られて、たとえば半導体製造装置等における洗浄水として使用される。
【0043】
次に、本実施形態の水処理装置24の作用、及び水処理方法を説明する。
【0044】
この水処理装置24を用いた水処理方法では、前処理装置14によって前処理された被処理水が、一次純水装置16に送られる。この被処理水に対して脱気処理は行われておらず、被処理水は酸素が溶存されている状態にある。
【0045】
第一濾過装置26に通水された被処理水に対し、必要に応じて、第一添加装置28によってpH調整剤を添加し、被処理水のpHを6以上8以下の範囲とする。一例として、被処理水のpHが5以上6以下の範囲である場合には、上記したように、pH調整剤としてNaOHを用い、NaOHの添加後のpHを6以上8以下の範囲とする。被処理水のpHが9以上である場合は、pH調整剤として塩酸又は硫酸等を添加する。
【0046】
その後、被処理水に対し、第二添加装置30によって還元剤を添加する。還元剤としては、本実施形態では、還元剤として、上記したように亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)又はスルファミン酸ナトリウム(NHOSONa)を用いる。
【0047】
次に、被処理水に対し、紫外線照射装置32により紫外線を照射する。照射された紫外線の作用により、還元剤から過硫酸等のラジカルが生じ、このラジカルにより被処理水中の尿素が分解される。
【0048】
被処理水に対する紫外線の照射量としては、0.05kW・H/m以上2kW・H/m以下とすることが可能である。紫外線の照射量を0.05kW・H/m以上とすることで、被処理水に対し十分な量の紫外線を照射し、尿素を確実に分解できる。また、紫外線の照射量を2kW・H/m以下とすることで、過度な紫外線照射を行わないので、低コスト化を図ることができる。
【0049】
その後、被処理水に対し、第三添加装置34によって還元剤を添加する。本実施形態では上記したように、還元剤として、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)又はスルファミン酸ナトリウム(NHOSONa)を用いる。これにより、被処理水に酸化剤が残留している場合には、還元剤により、被処理水が還元処理される。ただし、被処理水に残留する酸化剤の量によっては、第三添加装置34による還元剤の添加を省略してもよい。
【0050】
その後、被処理水に対し、第二濾過装置36に通水することにより、被処理水中の異物の一部がさらに除去される。
【0051】
そして、被処理水は、一次純水装置16において、必要な処理(清浄化処理)を行うことで不純物を除去し、一次純水を得る装置である。
【0052】
一次純水装置16で得られた一次純水は、純水タンク18へ送水される。純水タンク18は、一次純水装置16で得られた一次純水を一時的に貯留する容器である。
【0053】
純水タンク18に貯留された一次純水は、純水タンク18を経て二次純水装置20に送られ、さらに必要な処理(清浄化処理)が行われることで、超純水が得られる。
【0054】
以上の説明から分かるように、本実施形態では、酸素が溶存された被処理水に対し、還元剤を添加し、その後に紫外線を照射している。これにより、被処理水中の尿素を効果的に分解できる。
【0055】
本実施形態において、還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)及びスルファミン酸ナトリウムの少なくとも一つを含んでいる。これらはいずれも、硫黄成分を含んでおり、紫外線照射によって過硫酸ラジカルを発生できるので、尿素を含有する被処理水を効果的に処理できる。
【0056】
還元剤の添加濃度は、たとえば、7ppm以上30ppm以下である。還元剤の添加濃度を7ppm以上とすることで、尿素を効果的に分解処理できる。還元剤の添加濃度が30ppmを超えると、尿素の分解効率が低下する。還元剤の添加濃度を17ppm以下とすることで、被処理水に還元剤が不用意に残留することを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、上記したように、還元剤として亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)及びスルファミン酸ナトリウムの少なくとも一つを含む場合に、尿素除去率が高くなる。
【0058】
次に、本開示の技術を、実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本開示の技術は、以下に示す実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例0059】
第一実施形態の水処理装置24を用いて、被処理水から尿素を分解する実際の例を示す。表1には、第二添加装置30により添加される添加剤の種類と添加濃度及び被処理水のpHに応じた尿素除去率が、実施例1~3及び比較例1~4として示されている。
【0060】
【表1】
【0061】
被処理水としては、厚木市水(水道水)に対し、pH=5.5にて運転する常圧脱気塔に通水し、さらに、pH=7.5に調整して、逆浸透膜(第一濾過装置26)に通水し処理した水を用い、この水に尿素濃度が80ppbとなるように尿素を添加したものを用いた。常圧脱気塔は、気液比(G/L)=5で運転した。逆浸透膜は、日東電工製のESPA-LD MAXを用いた。脱気処理後の紫外線照射装置32に供給される被処理水の炭酸濃度は0.1ppm以下、溶存酸素量は8ppmであった。なお、被処理水の溶存酸素量は、HACH社製 Orbisphere510溶存酸素計により測定した。
【0062】
紫外線照射装置32としては、日本フォトサイエンス社製のNPU-1/2を用い、被処理水を0.4l/minで通水した。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム(NaOH)又は硫酸(HSO)を用いた。被処理水のpHは、紫外線照射装置32の入口部分にて測定した。
【0063】
尿素除去率の算出にあたっては、紫外線照射装置32の出口位置においてLS/MS/MSシステム(SCIEX社製4000QTRAP)により尿素濃度を測定し、この測定値と添加濃度である80ppbより算出した。
【0064】
実施例1のように、還元剤として亜硫酸ナトリウムを用いた場合には、表中で高い尿素除去率となっている。また、実施例2のように、還元剤としてスルファミン酸ナトリウムを用いた場合であっても、表中で実施例1に次ぐ高い尿素除去率となっている。このように、尿素除去率が概ね60%以上であれば、十分に尿素が除去されていると言える。実施例3では、実施例1の亜硝酸ナトリウムに代えて、還元剤として亜硫酸水素ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様の条件とした例である。実施例3の場合は、実施例1と概ね同様の結果が得られている。
【0065】
これに対し、比較例1のように、還元剤を添加しない場合には、pHの値が大きくても、尿素除去率は低い。また、比較例2のように、添加剤(酸化剤)としてクロロスルファミン酸ナトリウムを用いた場合には、pHの値が高くても、尿素除去率は低い。
【0066】
比較例3は、添加剤として、還元剤でも酸化剤でもない硫酸ナトリウムを用い、且つpHの値が高い場合である。この場合は、比較例2よりも高い尿素除去率であるが、実施例2よりは低い。
【0067】
比較例4は、添加剤として、還元剤の一種である亜硝酸ナトリウムを添加した場合である。この場合には、尿素分解率が低い。
【0068】
以上の結果から、本開示の技術では、尿素分解には過硫酸ラジカル又はそれに近い形態の酸化剤が生じて尿素分解に作用していると考えられる。そして、この成分を生じさせるためには、還元雰囲気が好ましいか、又は硫黄成分を含む還元剤の添加が好ましいことを示唆していると考えられる。したがって、還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、スルファミン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、及び、これらの、カリウム等のアルカリ金属塩が例示される。なお、これらの還元剤は、市販されている水溶液を用いてもよい。
【0069】
還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、スルファミン酸ナトリウムがより好ましく、高尿素除去率を得るためには、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムがさらに好ましい。
【0070】
また、本開示の技術では、被処理水における溶存酸素量を高くすることで、高い尿素除去率を得ることを可能にしている。図3には、かかる観点から、実施例1において、被処理水の溶存酸素量を変化させた場合の、尿素除去率が示されている。
【0071】
このグラフから、被処理水の溶存酸素量が高いほど、尿素除去率も高くなることが分かる。特に、溶存酸素量が概ね3ppm以上で、飽和濃度である8ppm以下において、尿素除去率として50%以上の値が得られることが分かる。
【0072】
この結果から、尿素の分解には、硫黄成分を含む還元剤が酸素と反応して、活性種(おそらく過硫酸ラジカル又はそれに近い形態の酸化剤)が生じているものと考えられる。
【0073】
図4には、被処理水のpHと尿素除去率との関係について行った実験結果の一例が示されている。図4における実験例1は、表1に示す実施例1と同条件で、pH調整剤を適宜調整してpHを変化させ、尿素除去率がどのように変化するか、を実験した結果である。図4における実験例2は、実験例1に対し脱気膜による処理を行わない点以外は同じ処理を行った場合である。実験例1では、被処理水中の炭酸がほぼ除去されている(1ppm以下)のに対し、実験例2では、炭酸濃度は4ppmである。
【0074】
実験例1より、被処理水から炭酸がほぼ除去されている場合、効率よく尿素分解を行うには、被処理水のpHとして5.0以上7.7以下が好ましく、6.5以上7.5以下がより好ましいことが分かる。
【0075】
また、実験例2より、被処理水から炭酸が除去されていない場合、効率よく尿素分解を行うには、被処理水のpHとして3.0以上5.0以下が好ましいことが分かる。これは、被処理水中の炭酸が炭酸イオンまたは重炭酸イオンとして存在する場合には、これらが捕捉剤(スカベンジャー)として機能し、発生された硫酸ラジカルを消費するためであると考えられる。
【符号の説明】
【0076】
12 超純水製造システム
14 前処理装置
16 一次純水装置
18 純水タンク
20 二次純水装置
22 ユースポイント
24 水処理装置
26 第一濾過装置
28 第一添加装置
30 第二添加装置
32 紫外線照射装置
34 第三添加装置
36 第二濾過装置
38 脱イオン装置
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本開示の技術では、被処理水から尿素を効率よく除去することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
図1図1は第一実施形態の水処理装置を備えている超純水製造システムを示す構成図である。
図2図2は第一実施形態の水処理装置を示す構成図である。
図3図3は被処理水の溶存酸素量と尿素除去率の関係を示すグラフである。
図4図4は被処理水のpHと尿素除去率の関係を示すグラフである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
その後、被処理水に対し、第二添加装置30によって還元剤を添加する。本実施形態では、還元剤として、上記したように亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)又はスルファミン酸ナトリウム(NHOSONa)を用いる。