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特開2024-109486難燃性樹脂組成物並びにそれを用いた成形体、電線及びケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109486
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物並びにそれを用いた成形体、電線及びケーブル
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20240806BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20240806BHJP
   C08L 51/08 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240806BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240806BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K3/016
C08L51/08
C08K9/06
C08J5/18 CES
H01B7/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014308
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
5G315
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA33X
4F071AA67X
4F071AA86X
4F071AB17
4F071AE07
4F071AF28
4F071AF47
4F071AH12
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC11
4F071BC12
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB081
4J002BN172
4J002BP021
4J002DA066
4J002DE046
4J002DE206
4J002DK006
4J002DL006
4J002FB086
4J002FB096
4J002FD136
4J002GF00
4J002GQ01
5G315CA03
5G315CB02
5G315CB06
5G315CD03
5G315CD14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、無機難燃剤と少量の添加で難燃性に加え滑り性を向上させることができるシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂を含有したポリエチレン系の難燃性樹脂組成物並びにそれを用いた成形体、電線及びケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】下記(I)、(II)、及び(III)成分を含有する難燃性樹脂組成物。
(I)ポリエチレン系樹脂:100質量部、
(II)無機難燃剤:50~300質量部、及び
(III)下記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと、アクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体から選ばれる少なくとも一つの単量体との共重合物であり、シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂:1~20質量部
を含む、難燃性樹脂組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)、(II)、及び(III)成分を含有する、難燃性樹脂組成物
(I)ポリエチレン系樹脂:100質量部、
(II)無機難燃剤:50~300質量部、及び、
(III)下記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと、アクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体から選ばれる少なくとも一つの単量体との共重合物であり、該ポリオルガノシロキサンとアクリル酸エステル単位及びメタクリル酸エステル単位との質量比が50:50~90:10であるシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂:1~20質量部
を含む、難燃性樹脂組成物
【化1】
(式中、R1は互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、R2はメルカプト基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はビニル基であり、Xは互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、又はヒドロキシル基であり、aは1~10,000の正数であり、bは0.1~1,000の正数であり、cは2であり、ただし、上記式(1)において各シロキサン単位の結合順序は上記に制限されない)。
【請求項2】
上記式(1)において、R及び両末端にあるXの少なくとも一つが、互いに独立に、炭素数1~20の、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基である、請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
上記式(1)におけるXのうち少なくとも2個は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基である、請求項1または2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂が平均粒子径150μm以下を有する、請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
前記シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂が、
(i)上記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと、
(ii)アクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体と、
任意的な前記(ii)成分と共重合可能な官能基含有単量体(iii)と
の共重合物である、請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエチレン系樹脂が、エチレン重合体、エチレンとエチレン以外の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム共重合体、エチレンとエチレン以外の1種又は2種以上のα-オレフィンとのブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体から選ばれる少なくとも一つである、請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
無機難燃剤が、金属水酸化物、表面処理された金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、及び低融点ガラスから選ばれる、請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機難燃剤が、高級脂肪酸又はシランカップリング剤により表面処理された金属水酸化物である、請求項7記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物から成る、チューブ状又はシート状成形体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物から成る層を有する電線。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物から成る層を有するケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物、詳しくは、無機難燃剤とシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂を含有するポリエチレン系の難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形体、並びに電線及びケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線用被覆材などの難燃性材料として、ポリ塩化ビニル樹脂組成物が使用されている。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、火災時や廃棄焼却時に燃焼すると有毒なハロゲン含有ガスを生じるという欠点がある。そこで、オレフィン系樹脂を難燃化させ電線用途などに使用する開発が進んでいる。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂に水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム等の金属水和物を配合した樹脂組成物(ノンハロゲン難燃性材料)が提案されており、例えば、国際公開第2013/107971号ではノンハロゲン難燃性ポリエチレン樹脂を開示しており、高温高湿環境下でも機械的特性を維持できることを目的として、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンを含み、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸三元共重合体を含むカップリング剤を用いた樹脂組成物が開示されている。また、特開2015-118817号や国際公開第2018/74233号では、ノンハロゲン系樹脂を用いて、脂肪族アミドやステアリン酸を滑剤として使用している。
【0004】
一方、電線又はケーブル用難燃性材料に求められる難燃グレードとしては、建物の構造の違い等により、欧州や米国等で日本国内よりも高い難燃性が要求されている。ノンハロゲン難燃性ポリエチレン樹脂において、難燃性を向上させるためには、一般的に、金属水和物等のフィラーの含有量を増やす必要がある。特開2012-102307号では、金属水酸化物を高充填しても、優れた耐水性を得ることを目的として、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物の粒子を脂肪酸系材料で表面処理し、これをポリオレフィン系樹脂に添加してなる難燃性樹脂組成物を開示している。
【0005】
しかしながら、ノンハロゲン難燃性ポリエチレン樹脂において、難燃性を向上させるために無機難燃剤の含有量を増やすと、押出成形時における流動性が不足して成形加工性を確保することが難しくなり、また、切断時引張強さ等の機械的特性も確保することが難しくなる。難燃剤として水酸化マグネシウムを用いた従来の難燃性樹脂組成物は、耐炭酸ガス白化性に優れ、且つ、成形加工時の流動性、及び切断時引張強さ等の機械的特性も確保された材料として十分なものとは必ずしも言えない。
【0006】
特開2021-147555号では脂肪酸処理された水酸化マグネシウム及びリン酸エステル処理された水酸化マグネシウムの少なくとも一方を含む、脂肪酸処理された金属水和物とリン酸エステル処理された金属水和物との組み合わせを含んだポリオレフィン系の難燃性樹脂組成物を開示しているが、より手軽に難燃性を向上させることのできる難燃性樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/107971号
【特許文献2】特開2015-118817号公報
【特許文献3】国際公開第2018/74233号
【特許文献4】特開2012-102307号公報
【特許文献5】特開2021-147555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、無機難燃剤と少量の添加で難燃性に加え滑り性を向上させることができるシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂を含有したポリエチレン系の難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形体、並びに電線及びケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、無機難燃剤とシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂を含有するポリエチレン系の難燃性樹脂組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記の難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形体、並びに電線及びケーブルを提供する。
下記(I)、(II)、及び(III)成分を含有する、難燃性樹脂組成物
(I)ポリエチレン系樹脂:100質量部、
(II)無機難燃剤:50~300質量部、及び、
(III)下記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと、アクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体から選ばれる少なくとも一つの単量体との共重合物であり、該ポリオルガノシロキサンとアクリル酸エステル単位及びメタクリル酸エステル単位との質量比が50:50~90:10であるシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂:1~20質量部
を含む、難燃性樹脂組成物
【化1】
(式中、R1は互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、Rはメルカプト基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はビニル基であり、Xは互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、又はヒドロキシル基であり、aは1~10,000の正数であり、bは0.1~1000の正数であり、cは2であり、ただし、上記式(1)において各シロキサン単位の結合順序は上記に制限されない)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の難燃性樹脂組成物はポリエチレン系樹脂にシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂を配合することで、無機難燃剤のみを配合したものに比べ、難燃性が向上し、触感も向上する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、(I)ポリエチレン系樹脂、(II)無機難燃剤、及び(III)上述したシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂を含有する難燃性樹脂組成物である。
以下に、各成分について詳述する。
【0013】
(I)ポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体、及びエチレンを主成分とする共重合体等から選ばれる1種又は2種以上で構成することができる。エチレンの単独重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられるが、軽量且つ成形性に優れさせる観点から、密度0.910~0.965g/cmであり、190℃、荷重2.16kgでのメルトマスフローレートが0.01~200g/10分であるエチレン単独重合体が好ましい。190℃、荷重2.16kgでのメルトマスフローレートが上記範囲内であれば、樹脂組成物の流動性及び成形体の表面外観に不具合が生じるおそれがない。より好ましくは、190℃、荷重2.16kgでのメルトマスフローレートが0.01~60g/10分であるのがよい。メルトマスフローレートは、JIS K7210-1:2014で規定する方法に準拠し、押出し形プラストメータ等を用いて測定される。また、ポリエチレン系樹脂のデュロメーター硬さ(D)は15~90が好ましく、20~85がより好ましく、さらには20~70が好ましい。
【0014】
ポリエチレン系樹脂は市販品を使用することができ、日本ポリエチレン製ノバテックL LUE320、ノバテックLDZE4K、ノバテックLDZF33、宇部丸善ポリエチレン製UBE、ポリエチレンL719、L518、L618、C410、住友化学製スミカセンC215、G201、G109、F236-0、及びF411-0等が挙げられる。
【0015】
エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレンと、エチレン以外の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム共重合体、及びエチレンとエチレン以外の1種又は2種以上のα-オレフィンとのブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体のなかでも、軽量且つ成形性に優れさせる観点から、190℃、荷重2.16kgでのメルトマスフローレートが0.01~200g/10分であるエチレン共重合体が好ましい。190℃、荷重2.16kgでのメルトマスフローレートが上記範囲内であれば、樹脂組成物の流動性及び成形体の表面外観に不具合を生じるおそれがなく、0.01~60g/10分であることがより好ましい。エチレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、及び1-エイコセン等が挙げられる。
【0016】
エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体においては、いずれも、JIS K7210(1999)に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトマスフローレートが50g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは0.05~30g/10分、さらに好ましくは0.1~10g/10分である。メルトマスフローレートが高過ぎると機械特性が低下し、低過ぎると成形性が悪化する。
【0017】
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体における(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~8のアルコールと(メタ)アクリル酸のエステルが挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、及び(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等が例示される。
【0018】
エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、COOR型官能基を含有する。該共重合体は以下の特徴を有する。
(1)熱分解時に脱炭酸反応を起こし、そのままCOになる。つまり燃焼エネルギーを発散することなく不燃性ガスを発生させる。
(2)親水性なので無機難燃剤の金属水和物との界面強度が高く、多量の無機難燃剤を添加しても物性低下の程度が小さい。
(3)エチレンと共重合するコモノマーがバルキーであるので無機難燃剤の受容性が高く、多量の無機難燃剤を添加しても物性低下の程度が小さい。
上記共重合体は、上述した特徴を有する点において非ハロゲン系難燃性樹脂組成物の基材として有利である。また本発明においては、低温での溶融混練により架橋樹脂組成物を製造することに特徴があり、これらの樹脂を用いることによる組成物製造時の接着能の発現による製造性の低下という欠点を抑えることができる。
【0019】
(II)無機難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、及び、低融点ガラス等の、難燃剤用無機粉体等が挙げられる。無機難燃剤の体積基準のD50値を平均粒子径(μm)として用い0.5~5μmであるのがより好まれる。粒子径の測定はレーザー回折型で行った。
【0020】
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、及び、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。好ましくは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムである。なお、金属水酸化物は、ステアリン酸などの高級脂肪酸やシランカップリング剤によって表面処理が施されたものであってもよい。このような表面処理された金属水酸化物を使用することにより、ベースポリマーと混練する際の分散性を高めることができる。金属水酸化物は、市販品であってもよい。シランカップリング剤により表面処理された水酸化マグネシウムが好ましく、市販品としては、例えば、キスマ5L、キスマ5N、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学株式会社製)、及び、マグシーズSシリーズ(商品名、神島化学株式会社製)などが挙げられる。また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、例えば、キスマ5(商品名、協和化学株式会社製)、及び、マグニフィンH5(商品名、アルベマール株式会社製)などが挙げられる。
【0021】
金属酸化物としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、及び、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0022】
金属炭酸塩化合物としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、及び、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0023】
金属粉としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、及び、スズ等を挙げることができる。
【0024】
ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、及び、ホウ砂等を挙げることができる。
【0025】
上記低融点ガラスとしては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO-MgO-HO、PbO-B系、ZnO-P-MgO系、P-B-PbO-MgO系、P-Sn-O-F系、PbO-V-TeO系、Al-HO系、及び、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0026】
上記無機難燃剤(II)の配合量は、上記ポリエチレン系樹脂(I)100質量部に対して50~300質量部であり、好ましくは80~250質量部、より好ましくは100~200質量部である。上記無機難燃剤が上記下限値未満であると、酸素指数や難燃性試験で良好な結果が得られず、上記上限値を超えると成形性が悪くなる。
【0027】
本発明の(III)シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂は、好ましくは、下記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと、アクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体との共重合体である。好ましくは(i)下記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと(ii)(メタ)アクリル酸エステル単量体との混合物、又はこれら上記(i)成分及び(ii)成分と、(ii)成分と共重合可能な任意的な官能基含有単量体(iii)との混合物を、乳化グラフト重合、乾燥して得られるものである。
【0028】
(i)ポリオルガノシロキサンは、下記式(1)で示される。
【化2】
式中、Rは互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、Rはメルカプト基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はビニル基であり、Xは互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、又はヒドロキシル基であり、aは1~10,000の正数であり、bは0.1~1000の正数であり、cは2である。なお、上記式(1)において、シロキサン単位の結合順所は上記に制限されず、各シロキサン単位はブロック単位を形成しても、ランダムに結合していてもよい。
【0029】
上記式においてRは、互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、好ましくは、直鎖状、分岐状もしくは環状の、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニルベンジル基、ビニルフェニルプロピル基等のアルケニルアラルキル基、又は、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アルキル又はアルコキシもしくは(メタ)アクリロキシ置換アミノ基などで置換されたものが挙げられる。R1としては、好ましくはメチル基である。
【0030】
はメルカプト基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基置換の炭素数1~6のアルキル基、又はビニル基である。例えば、メルカプトプロピル基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基、ビニル基等が好ましい。
【0031】
Xは、互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基又はヒドロキシル基であり、非置換もしくは置換の炭素数1~20の1価炭化水素基としては、Rで例示したものと同様のものが例示できる。炭素数1~20のアルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、テトラデシルオキシ基等が挙げられる。Xとして、好ましくはヒドロキシル基、メチル基、ブチル基、フェニル基、又はメトキシ基である。
【0032】
上記式(1)において、aが10,000より大きい数では、得られる硬化物の強度が不十分となる。aは1~10,000の整数であり、好ましくは500~6000の整数である。bが0.1未満の数では硬化物の柔軟性が乏しいものとなり、1,000より大きい数であると、硬化物の引き裂き強度が低下する。bは0.1~1,000の正数であり、好ましくは0.1~100の正数、より好ましくは0.5~10の正数であり、さらに好ましくは1~5の正数であるのがよい。cは2である。
【0033】
好ましくは上記式(1)における両末端にあるXの少なくとも2個、より好ましくは2~4個がヒドロキシル基又はアルコキシ基であるのがよい。アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基である。より好ましくはケイ素原子結合ヒドロキシル基を両末端に有する化合物がよい。
【0034】
上記(i)ポリオルガノシロキサンは、エマルジョンの形態で使用されることが好ましく、市販品を使用してもよいし、合成してもよい。合成する場合は、公知の乳化重合法を行えばよい。例えば、フッ素原子、(メタ)アクリロキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基を有してもよい環状オルガノシロキサンあるいはα,ω-ジヒドロキシシロキサンオリゴマー、α,ω-ジアルコキシシロキサンオリゴマー、アルコキシシラン等と、下記一般式(2)で示されるシランカップリング剤を、界面活性剤を用いて水中に乳化分散させた後、必要に応じて酸等の触媒を添加して重合反応を行うことにより容易に合成することができる。

(4-e-f) Si(OR (2)

上記式(2)中、Rは重合性二重結合を有する1価有機基であり、例えば、メルカプト基、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基置換の炭素数1~6のアルキル基、又はビニル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、eは2又は3であり、fは0又は1であり、e+fは2又は3である。
【0035】
上記環状オルガノシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、1,1-ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、フェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1,1-ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラシクロヘキシルテトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(3,3,3-トリフロロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-アクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-カルボキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-ビニロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(p-ビニルフェニル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ[3-(p-ビニルフェニル)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(N-アクリロイル-N-メチル-3-アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(N,N-ビス(ラウロイル)-3-アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。好ましくは、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンが用いられる。
【0036】
シランカップリング剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニルシラン類;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシランなどのアクリルシラン類;γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン類等が挙げられる。又はこれらを縮重合したオリゴマーはアルコールの発生が抑えられより好ましい場合がある。ここで、(メタ)アクリロキシは、アクリロキシ又はメタクリロキシを示す。シランカップリング剤は、環状オルガノシロキサン、α,ω-ジヒドロキシシロキサンオリゴマー、α,ω-ジアルコキシシロキサンオリゴマー又はアルコキシシラン100質量部に対し0.01~20質量部であることが好ましく、0.01~5質量部であることがさらに好ましい。
【0037】
上述した環状オルガノシロキサン等と上記一般式(2)で示されるシランカップリング剤を共重合することにより、(R(R)SiO2/2)単位を有する上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンが得られ、(ii)又は(iii)成分の単量体をグラフトさせる効果が得られる。
【0038】
上記反応において、重合に用いる触媒としては、公知の重合触媒を使用すればよい。中でも強酸が好ましく、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸が例示される。好ましくは乳化能を持つドデシルベンゼンスルホン酸である。酸触媒の量は、環状オルガノシロキサン、α,ω-ジヒドロキシシロキサンオリゴマー、α,ω-ジアルコキシシロキサンオリゴマー又はアルコキシシラン100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~2質量部である。
【0039】
重合する際の界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、脂肪族石けん、アルキルりん酸塩等が挙げられる。中でも水に溶けやすく、ポリエチレンオキサイド鎖を持たないものが好ましい。更に好ましくは、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、脂肪族石けん、及びアルキルりん酸塩である。特に好ましくは、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムである。アニオン系界面活性剤の量は、環状オルガノシロキサン、α,ω-ジヒドロキシシロキサンオリゴマー、α,ω-ジアルコキシシロキサンオリゴマー又はアルコキシシラン100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部である。
【0040】
重合温度は50~75℃が好ましく、重合時間は10時間以上が好ましく、15時間以上が更に好ましい。更に、重合後に5~30℃で10時間以上熟成させることが特に好ましい。また、得られた重合溶液のpHは、6~8であることが好ましい。
【0041】
上記重合反応において、例えば、環状オルガノシロキサンとしてオクタメチルテトラシロキサンと、シランカップリング剤としてγ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランとの共重合は、以下の通りである。
【化3】
【0042】
本発明において、(ii)アクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体(以下、アクリル成分、あるいは(メタ)アクリル酸エステル単量体ということがある)は、ヒドロキシル基、アミド基、カルボキシル基等の官能基を持たないアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体である。炭素数1~10のアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましく、更にはアクリル成分のポリマーのガラス転移温度(以下、Tgということがある)が40℃以上、好ましくは60℃以上になる単量体が好ましく、かかる単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。なお、Tgの上限は、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。ガラス転移温度は、JIS K7121に基づき測定できる。
【0043】
上記(ii)成分と共重合可能な官能基含有単量体(iii)としては、カルボキシル基、アミド基、水酸基、ビニル基、アリル基等を含む不飽和結合を有する単量体であり、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、アクリルアマイド、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピルが挙げられ、これらを共重合することで相容性を向上させることが可能となる。
【0044】
本発明の(II)シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンは、上記のようにして得られた(i)ポリオルガノシロキサンに(ii)(メタ)アクリル酸エステル単量体、好ましくは上記(ii)成分と共重合可能な官能基を含有する単量体(iii)との混合物を、乳化グラフト重合させる。
【0045】
グラフト重合させる際の式(1)のポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステル単量体との質量比(式(1)のポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル単位との質量比)は50:50~90:10であり、好ましくは70:30~90:10である。シリコーン成分が上記質量比の下限値より少ないと十分な難燃性が得られない場合がある。
【0046】
上記(i)成分および(ii)成分の配合比は(i)成分100質量部に対して(ii)成分を1~100質量部用いることが好ましく、10~100質量部用いることがより好ましく、40~100質量部用いることが更に好ましい。また、上記(i)成分および(ii)成分と(iii)成分とを用いる場合は、(i)成分100質量部に対して、(ii)成分を1~100質量部、(iii)成分を0.01~20質量部用いることが好ましく、(ii)成分を10~100質量部、(iii)成分を0.01~20質量部用いることがより好ましく、(ii)成分を40~100質量部、(iii)成分を0.01~5質量部用いることが更に好ましい。この場合、(i)成分の質量に対し、(ii)成分及び(iii)成分の合計の質量比を50:50~90:10とすることが好ましい。
【0047】
上記反応にはラジカル開始剤を用いてもよい。該ラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過硫酸水素水、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素が挙げられる。必要に応じ、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、L-アスコルビン酸、酒石酸、糖類、アミン類等の還元剤を併用したレドックス系も使用することができる。ラジカル開始剤の量は(ii)成分及び(iii)成分の合計量の0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%が更に好ましい。
【0048】
上述したポリオルガノシロキサンエマルジョン中に含まれている界面活性剤で十分にグラフト重合可能だが、安定性向上のためアニオン系界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、脂肪族石けん、アルキルりん酸塩等を添加することができる。また、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等のノニオン系乳化剤を添加することもできる。界面活性剤を添加する場合の使用量は、(ii)成分及び(iii)成分の合計量の0.1~5質量%が好ましい。
【0049】
更に、グラフトポリマーの分子量、グラフト率を調整するために連鎖移動剤を添加することができる。
【0050】
上記グラフト重合温度は25~55℃が好ましく、25~40℃が更に好ましい。また重合時間は2~8時間が好ましく、3~6時間が更に好ましい。
【0051】
上記のようにして得られるシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂は、(i)成分に(ii)成分や(iii)成分がランダムにグラフトされているポリマーとなる。
【0052】
本発明のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂は、エマルジョンの固形分として30~50質量%が好ましい。また、このエマルジョンの粘度(25℃)は、10~5,000mPa・s以下が好ましく、50~1,000mPa・sが更に好ましい。粘度は回転粘度計にて測定できる。このエマルジョンの平均粒子径は、1μm以下が好ましく、0.1μm(100nm)~0.3μm(300nm)が更に好ましい。pHは、6~8が好ましい。なお、平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置によって測定することができる。
【0053】
得られたシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂は、エマルジョンの形態であるため、例えば、加熱脱水、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の方法により分散液を濃縮した後に、必要に応じて水洗を行い、更に常圧もしくは減圧下での加熱乾燥、気流中に分散液を噴霧するスプレードライ、流動熱媒体を使用しての加熱乾燥などにより水分の除去を行い、一旦乾燥し、粉体化する。なお、乾燥温度は60~105℃が好ましい。得られた粉体が若干凝集を生じている場合には、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル等の粉砕機を適宜使用して解砕を行ってもよい。
【0054】
得られたシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂に残存する環状オルガノシロキサン及び界面活性剤を除去するために、洗浄をしてもよい。洗浄に使用する溶剤は、アルコール系有機溶剤、炭化水素系有機溶剤が好ましく、例えば、炭素数1~4の低級アルコール、炭素数5~20の脂肪族炭化水素が挙げられる。詳細には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、イソドデカンが更に好ましい。洗浄方法は特に制限されないが、例えば、100質量部の粉体をビーカーに採取し、その質量の5倍以上の上記溶剤を加え、数時間撹拌の後、吸引濾過する。その後、同じ溶剤で洗うか、アルコール系など水に溶ける溶剤にて水洗をすると更に効果的である。洗浄は、通常、室温(25℃)で行うが、場合によって加熱してもよい。
【0055】
洗浄した場合は、再乾燥して粉体化するが、濾過した粉体は単純に乾燥機で40℃以上200℃以下の温度で、数時間乾燥したり、流動乾燥機などを用いてもよい。
【0056】
このようにして粉体化したシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂は、平均粒子径150μm以下、好ましくは10~120μm、より好ましくは10~100μmを有することが好ましい。平均粒子径は上記の通り、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定される。また、シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂の重量平均分子量は、5万~50万が好ましい。5万未満では、ゴム配合物表面への析出が激しくなる可能性があり、50万を超えても摩擦低減効果が不十分な場合がある。
なお、重量平均分子量は、エマルジョンとイソプロピルアルコール(IPA)を混合し、オイル(オルガノポリシロキサン)抽出乾燥後、その1gをトルエン100mLに溶解した25℃の動粘度を測定し、その値からジメチルシリコーンの分子量換算により算出する。より詳細には、ウベローデ粘度計で測定した粘度の値から、ジメチルシリコーンオイルの粘度と重量平均分子量の相関図を用いて算出した。
【0057】
シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂のガラス転移温度(以下、Tgということがある)は40℃以上、好ましくは60℃以上 上限は好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。ガラス転移温度は、JIS K7121に基づき測定できる。
【0058】
(II)シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂の配合量は、(I)ポリエチレン系樹脂100質量部に対し、1~20質量部であり、好ましくは1~15質量部である。上記下限値未満では成形体の難燃性改善が見られず、上記上限値を超えると成形体の難燃性を大幅に低下させる場合がある。
【0059】
本発明の難燃性樹脂組成物には、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、充填剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0060】
酸化防止剤としては、4,4’-ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、2-メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリル-チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0061】
金属不活性剤としては、N,N’-ビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、2,2’-オキサミドビス-(エチル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが挙げられる。
【0062】
充填剤としては、カーボン、クレー、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0063】
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などがあげられ、なかでも、ワックスE、ワックスOP(いずれも商名、Hoechst社製)などの内部滑性と外部滑性を同時に示すエステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。その中でもステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムは、絶縁抵抗の向上の効果があり、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウムは、目やにを防ぐ効果がある。さらに滑剤として脂肪酸アミドを併用することにより、簡単に導体との密着性を制御することが可能となる。
【0064】
本発明の難燃性樹脂組成物は、上記の各成分を、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど、通常用いられる混練装置で溶融混練して得ることができる。溶融混練する際の撹拌数は好ましくは20~60rpmであり、成形温度としては好ましくは120℃から140℃である。本発明の難燃性樹脂組成物から得られる成形体は、JIS K 7201-2:2007に準拠した方法により測定される酸素指数34超を有し、好ましくは35超である。酸素指数とは、材料が燃焼を持続するのに必要な最低酸素濃度であり、酸素指数の値が大きいほど難燃性に優れる。本発明の難燃性樹脂組成物から得られる成形体は優れた燃焼性を有することができる。
【0065】
本発明の樹脂成形体は電線・ケーブル、空洞のチューブ、シート等の種々の形状に成型できる。電線の場合、導体径や導体の材質などは特に制限はなく、用途に応じて適宜定められる。導体の周りに形成される樹脂組成物の被覆層の肉厚も特に制限はないが0.15~1mmが好ましい。また、絶縁層が多層構造であってもよく、本発明の絶縁樹脂組成物で形成した被覆層のほかに中間層などを有するものでもよい。ケーブルの場合、本樹脂組成物を用いて導体、光ファイバなどの外側に被覆したものを数本束ねた後、撚りあわせた後に外側に本樹脂組成物を被覆してもよいし、他の樹脂組成物を用いて導体、光ファイバなどの外側に被覆したものを数本束ねた後、撚りあわせた後に外側に本樹脂組成物を被覆してもよいし、本樹脂組成物を用いて導体、光ファイバなどの外側に被覆したものを数本束ねた後、撚りあわせた後に外側に他の樹脂組成物を被覆してもよい。
【実施例0066】
以下、製造例、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0067】
下記製造例及び比較製造例において使用した測定方法は下記の通りである。
<固形分の測定>
各例の樹脂エマルジョン(試料)約1gをアルミ箔製の皿に正確に量り取り、約105℃に保った乾燥器に入れ、1時間加熱後、乾燥器から取り出してデシケーターの中にて放冷し、試料の乾燥後の重さを量り、次式により蒸発残分を算出した。
【数1】
R:蒸発残分(%)
W:乾燥前の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
L:アルミ箔皿の質量(g)
T:乾燥後の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
アルミ箔皿の寸法:70φ×12h(mm)
【0068】
<エマルジョンの平均粒子径の測定>
(株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA950V2)を用いて、各例の樹脂エマルジョンの粒子径を測定した。
【0069】
<ガラス転移温度Tgの測定>
ガラス転移温度Tgは、噴霧乾燥で粉体化したシリコーンアクリル共重合樹脂約1gについて、島津製作所製フローテスターを用い、5kgfの荷重をかけ毎分5℃上昇の昇温法によりTgを測定した。
【0070】
<粉体の粒子径の測定方法>
上記実施例及び比較例における平均粒子径の測定方法は下記の通りである。
平均粒子径の測定には、レーザー回折型の粒子径測定機(堀場製作所製 LA-950V2)を用いた。製造例1~5では、樹脂屈折率1.45、メタノール屈折率1.329の設定を用い、製造例1~5で得た粉体をそのまま機器内のメタノールを攪拌しているところに投入し、樹脂の体積基準の平均粒子径を測定した。
<重量平均分子量の測定方法>
オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、十分乾燥させたオルガノポリシロキサン1gをトルエン100mLに溶解しウベローデ粘度計で測定した値から、オルガノポリシロキサンの動粘度と重量平均分子量の相関図を用いて算出した。
【0071】
〈シリコーンアクリルグラフト共重合樹脂の製造例および比較製造例〉
[製造例1]
オクタメチルテトラシクロシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-502」)0.48g、ラウリル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水490gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cmで高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で10~20時間重合反応を行った後、10~20℃で10~20時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpHを中性付近に中和した。得られたシリコーンエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分が45.0%を有し、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは非流動性の軟ゲル状のものである。
上記エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは下記式(1)の構造を有し、
【化4】
はメチル基であり、Rはγ-メタクリロキシプロピル基であり、各末端においてXのうち二つはメチル基であり、残りの一つのXはヒドロキシル基またはメトキシ基である。a、b、cの構成は表1に示す。重量平均分子量は25万程度である。上記で得たシリコーンエマルジョンに、メタクリル酸メチル(MMA)226gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことでシリコーン樹脂成分(オルガノポリシロキサン成分)へのアクリルグラフト共重合し、不揮発分45.2%のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンを得た。該エマルジョンを市販のスプレードライヤー装置で噴霧乾燥(入口温度150℃)することにより揮発分1.0%まで揮発させて樹脂粉体を得た。
【0072】
[製造例2]
オクタメチルテトラシクロシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-502」)0.48g、ヘキサメチルジシロキサン0.96g、ラウリル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水490gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cmで高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で10~20時間重合反応を行った後、10~20℃で10~20時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpHを中性付近に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分(固形分)が45.0%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは非流動性の軟ゲル状のものである。
上記エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは上記式(1)の構造を有し、Rはメチル基であり、Rはγ-メタクリロキシプロピル基であり、各末端においてXはメチル基である。a、b、cの構成は表1に示す。重量平均分子量は12万程度である。
上記で得たシリコーンエマルジョンにメタクリル酸メチル(MMA)226gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことでシリコーン樹脂成分(オルガノポリシロキサン成分)へのアクリルグラフト共重合し、不揮発分45.0%のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンを得た。該エマルジョンを噴霧乾燥(入口温度150℃)することによって揮発分1.0%まで揮発させて樹脂粉体を得た。
【0073】
[製造例3]
オクタメチルテトラシクロシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-502」)0.48g、ラウリル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水490gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cmで高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で10~20時間重合反応を行った後、5~10℃で10~20時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpHを中性付近に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分(固形分)が45.0%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは非流動性の軟ゲル状のものである。
上記エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは上記式(1)の構造を有し、Rはメチル基であり、Rはγ-メタクリロキシプロピル基であり、各末端においてXのうち二つはメチル基であり、残りの一つのXはヒドロキシル基またはメトキシ基である。a、b、cの構成は表1に示す。重量平均分子量は40万程度である。
上記で得たシリコーンエマルジョンにメタクリル酸メチル(MMA)226gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことでシリコーン樹脂成分(オルガノポリシロキサン成分)へのアクリルグラフト共重合し、不揮発分45.3%のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンを得た。該エマルジョンを噴霧乾燥(入口温度150℃)することで揮発分1.0%まで揮発させて樹脂粉体を得た。
【0074】
[製造例4]
オクタメチルテトラシクロシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-502」)0.48g、ラウリル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水490gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cmで高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で10~20時間重合反応を行った後、10~20℃で10~20時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpHを中性付近に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分(固形分)が45.0%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは非流動性の軟ゲル状のものである。
上記エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは上記式(1)の構造を有し、Rはメチル基であり、Rはγ-メタクリロキシプロピル基であり、各末端において各末端においてXのうち二つはメチル基であり、残りの一つのXはヒドロキシル基またはメトキシ基である。a、b、cの構成は表1に示す。重量平均分子量は25万程度である。
上記で得たシリコーンエマルジョンにメタクリル酸メチル(MMA)528gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことでシリコーン樹脂成分(オルガノポリシロキサン成分)へのアクリルグラフト共重合し、不揮発分45.5%のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンを得た。該エマルジョンを噴霧乾燥(入口温度150℃)することで揮発分1.0%まで揮発させて樹脂粉体を得た。
【0075】
[製造例5]
オクタメチルテトラシクロシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-502」)0.48g、ラウリル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水490gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cmで高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で10~20時間重合反応を行った後、10~20℃で10~20時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpHを中性付近に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分(固形分)が45.0%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは非流動性の軟ゲル状のものである。
上記エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは上記式(1)の構造を有し、Rはメチル基であり、Rはγ-メタクリロキシプロピル基であり、各末端において各末端においてXのうち二つはメチル基であり、残りの一つのXはヒドロキシル基またはメトキシ基である。a、b、cの構成は表1に示す。重量平均分子量は25万程度である。
上記で得たシリコーンエマルジョンにメタクリル酸メチル(MMA)144gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことでシリコーン樹脂成分(オルガノポリシロキサン成分)へのアクリルグラフト共重合し、不揮発分44.3%のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンを得た。該エマルジョンを噴霧乾燥(入口温度150℃)することで揮発分1.0%まで揮発させて樹脂粉体を得た。
【0076】
[製造例6]
オクタメチルテトラシクロシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-502」)0.48g、ラウリル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水490gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cmで高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で10~20時間重合反応を行った後、10~20℃で10~20時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpHを中性付近に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分(固形分)が45.0%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは非流動性の軟ゲル状のものである。
上記エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは上記式(1)の構造を有し、Rはメチル基であり、Rはγ-メタクリロキシプロピル基であり、各末端において各末端においてXのうち二つはメチル基であり、残りの一つのXはヒドロキシル基またはメトキシ基である。a、b、cの構成は表1に示す。重量平均分子量は25万程度である。
上記で得たシリコーンエマルジョンにメタクリル酸メチル(MMA)113g、アクリル酸ブチル(BA)113gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことでシリコーン樹脂成分(オルガノポリシロキサン成分)へのアクリルグラフト共重合し、不揮発分44.9%のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンを得た。これを噴霧乾燥(入口温度150℃)することで揮発分1.0%まで揮発させて樹脂粉体を得た。
【0077】
[比較製造例1]
オクタメチルシクロテトラシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-502」)0.6g、ラウリル硫酸ナトリウム6gを純水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水470gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cmで高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で24時間重合反応を行った後、0℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gで中性付近に中和してシリコーンエマルジョンを得た。
上記エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは上記式(1)の構造を有し、Rはメチル基であり、Rはγ-メタクリロキシプロピル基であり、各末端において各末端においてXのうち二つはメチル基であり、残りの一つのXはヒドロキシル基またはメトキシ基である。a、b、cの構成は表1に示す。重量平均分子量は25万程度である。
上記で得たシリコーンエマルジョンにメタクリル酸メチル(MMA)792gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことでシリコーン樹脂成分へのアクリルグラフト共重合し、不揮発分45%のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンを得た。これを噴霧乾燥することで揮発分1.2%まで揮発させて樹脂粉体を得ることができた。
【0078】
[比較製造例2]
オクタメチルシクロテトラシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン0.6g(信越化学工業株式会社製「KBM-502」)、ラウリル硫酸ナトリウム6gを純水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水470gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cmで高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で24時間重合反応を行った後、0℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gで中性付近に中和してシリコーンエマルジョンを得た。
上記エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは上記式(1)の構造を有し、Rはメチル基であり、Rはγ-メタクリロキシプロピル基であり、各末端においてXのうち二つはメチル基であり、残りの一つのXはヒドロキシル基またはメトキシ基である。a、b、cの構成は表1に示す。重量平均分子量は25万程度である。
上記で得たシリコーンエマルジョンにメタクリル酸メチル(MMA)28gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことでシリコーン樹脂成分へのアクリルグラフト共重合し、不揮発分44.2%のシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂エマルジョンを得た。これを噴霧乾燥することで揮発分1.2%まで揮発させて樹脂粉体を得ることができた。
【0079】
上記製造例及び比較製造例における、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンの構成及び物性、エマルジョンの物性、及び得られたシリコーンアクリルグラフト共重合樹脂の物性を表1に記載する。

【表1】
【0080】
<成形方法>
実施例1~7、比較製造例1~2
エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA樹脂、製品名:NUC-6520、エネオスNUC社製)、水酸化マグネシウム(製品名:マグシーズS、神島化学工業社製)、及び実施例又は比較例で得た樹脂粉体を、下記表に示す量にてニーダーにておよそ120℃、50rpmで混錬し、プレスする事で厚さ約4mmの板状に成形し、切削加工により試験片を抜き出した。得られた成型品について、酸素指数、外観、静動摩擦係数、及び触感を評価した。結果を表2及び3に示す。
実施例及び比較例で用いたEEA樹脂の密度は0.94g/cmでありJIS K7210-1:2014に準拠して測定される190℃、荷重2.16kgでのメルトマスフローレートは1.6g/10分であり、エチルアクリレート含有量は24質量%であり、デュロメーター硬さ(D)は85である。
実施例及び比較例で用いた水酸化マグネシウムは、シランカップリング剤によって表面処理された難燃剤用水酸化マグネシウムであり、平均粒径1.0μmを有する。
【0081】
実施例及び比較例において使用した測定方法は下記の通りである。
<酸素指数試験>
上記試験片について、JIS K 7201-2:2007準拠した方法により、成形体の酸素指数を測定した。
試料形状:I形 80×10×4mm
試験条件:A法
測定装置:キャンドル燃焼試験機AC2型を使用
得られた酸素指数により燃焼性を評価した。酸素指数の値が大きいほど難燃性に優れる。
【0082】
<外観>
成型片の外観を目視で観察した。
〇:凝集物の無いきれいな成型片であった。
×:凝集物が見られた
【0083】
<静動摩擦係数測定>
HEIDON TYPE-38(新東科学社製)にて200gの金属圧子を上記各例の塗膜に垂直に接触させ、3cm/分で移動させた時の摩擦力を測定し、摩擦力から静摩擦係数、動摩擦係数を算出した。
【0084】
<触感>
上記静動摩擦係数測定により得た静摩擦係数が0.55未満であり、動摩擦係数は0.50未満であり、かつ静摩擦係数と動摩擦係数の差が0.05以下である場合に、成形体の触感の評価を○とした。触感の評価が〇である成形体は×の成形体に比べて表面の滑り性が良好である。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0087】
上記の通り、本発明の難燃性樹脂組成物からなる成形体は難燃性及び触感に優れる。本発明の燃性樹脂組成物から成る成形体は空洞のチューブ、シート等の種々の形状に成形でき、電線及びケーブルの被覆膜等に好適である。