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特開2024-109516災害時現地調査支援システム及び災害時現地調査支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109516
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】災害時現地調査支援システム及び災害時現地調査支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240806BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205804
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2023013841
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】連 惇
(72)【発明者】
【氏名】内山 泰生
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 さやか
(57)【要約】
【課題】災害時に、構造物の重要度を考慮しつつ、複数の構造物の現地調査を効率的に行う。
【解決手段】災害時現地調査支援システム1は、災害が生じた地域の構造物の現地調査を支援する災害時現地調査支援システム1であって、複数の構造物の各々の、被害の程度を推定する被害程度推定手段35と、複数の構造物の各々に対し、その構造物の重要度と、その構造物に対して推定された被害の程度と、を基に、現地調査優先度を計算する、現地調査優先度計算手段37と、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員を割り当てて構造物へ移動させ、調査させる、現地調査指示手段38と、を備え、構造物の重要度は、構造物の用途に応じた係数である用途係数と、構造物を所有する顧客の重要性または顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害が生じた地域の構造物の現地調査を支援する災害時現地調査支援システムであって、
複数の前記構造物の各々の、被害の程度を推定する被害程度推定手段と、
複数の前記構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された前記被害の程度と、を基に、現地調査優先度を計算する、現地調査優先度計算手段と、
複数の前記構造物の中の、前記現地調査優先度が高い前記構造物から順に、調査要員を割り当てて前記構造物へ移動させ、調査させる、現地調査指示手段と、
を備え、
前記構造物の前記重要度は、前記構造物の用途に応じた係数である用途係数と、前記構造物を所有する顧客の重要性または前記顧客が所有する前記構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている
ことを特徴とする災害時現地調査支援システム。
【請求項2】
前記現地調査指示手段は、
前記地域の交通網が機能していない場合には、複数の前記構造物の中の、前記現地調査優先度が高い前記構造物から順に、複数の前記調査要員の中から、現在位置と当該構造物との距離が距離閾値以下の前記調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する前記調査要員を割り当てて決定し、当該調査要員に対して当該構造物へ移動し調査するように指示を出し、
前記地域の交通網が機能している場合には、複数の前記構造物の中の、前記現地調査優先度が高い前記構造物から順に、複数の前記調査要員の中から、現在位置から当該構造物への移動時間が最短となる前記調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する前記調査要員を割り当てて決定し、当該調査要員に対して当該構造物へ移動し調査するように指示を出す
ことを特徴する、請求項1に記載の災害時現地調査支援システム。
【請求項3】
災害が生じた地域の構造物の復旧作業を支援する災害時現地調査支援方法であって、
複数の前記構造物の各々の、被害の程度を推定する工程と、
複数の前記構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された前記被害の程度と、を基に、現地調査優先度を計算する工程と、
複数の前記構造物の中の、前記現地調査優先度が高い前記構造物から順に、調査要員を割り当てて前記構造物へ移動させ、調査させる工程と、
を備え、
前記構造物の前記重要度は、前記構造物の用途に応じた係数である用途係数と、前記構造物を所有する顧客の重要性または前記顧客が所有する前記構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている
ことを特徴とする災害時現地調査支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害が生じた地域の構造物の現地調査を支援する災害時現地調査支援システム、及び災害時現地調査支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害が発生した際に、所有、あるいは管理する構造物が、どの程度の被害を被ったか、現地調査する必要がある。対象となる構造物が複数ある場合には、複数の調査要員が分担して、各構造物を調査するのが望ましい。
これに関し、特許文献1には、地震発生時の被災地域内外の対応要員による震災対応行動を支援するために用いられる震災対応支援システムの構成が開示されている。この構成では、地震発生直後の被災地域の地震動強さ分布情報を取得し、取得した地震動強さ分布情報と、予め登録された個々の建物の属性情報に基づいて、個々の建物の被害可能性を推定し、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計し、領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する。
例えば災害時に、特許文献1に記載されたような震災対応支援システムを用いて、調査要員の各々が、自身で、調査する対象となる構造物を決定することが考えられる。
しかし、この場合においては、複数の調査担当者が個別に、重要な顧客に関する構造物を最優先に調査する必要があると考え、結果として、一部の構造物に、複数の調査担当者が集結してしまう可能性がある。あるいは、例えば複数の構造物の中に、病院等の医療施設や、発電所等のインフラに関わるような、用途が重要である構造物が含まれている場合、このような構造物に複数の調査担当者が集結することも考えられる。このような場合には、複数の構造物の現地調査が、全体として効率的に行われず、一部の構造物に対しては調査が不当に遅れることとなり、結果として、調査が遅れた構造物に重大な被害がある場合に、その発見が遅れてしまう可能性がある。
【0003】
また、特許文献2には、現在位置を緯度経度情報として検出する検出手段を有する携帯端末から、検出された緯度経度情報と、その現在位置での被災状況を表す被災情報とを受信し、受信した緯度経度情報で特定された地点を地図上に表示した被災状況提示画面を作成し、特定された地点に受信した被災情報を関係付けて登録し、作成した被災状況提示画面を配信する構成が記載されている。
特に特許文献2には、地震等の災害が発生した場合には、被災状況の調査担当者が携帯端末を所持して各所へ出向き、建物や構造物の被災状況をカメラ部で撮影し、また、被災情報を入力して、被災状況報告メールを送信することが、記載されている。
特許文献2の構成においても、どの構造物を調査するかは、各調査担当者が独自に決定することになる。このため、特許文献1の場合と同様に、複数の構造物の現地調査を、全体として効率的に行うことが難しい。
【0004】
これに対し、特許文献3には、登録されている物件ごとに、物件の被害調査の進捗管理情報として、第1の進捗度を示す情報、第2の進捗度を示す情報および第3の進捗度を示す情報の何れかを記憶管理し、携帯端末装置における所定操作により、記憶管理している進捗度を示す情報を、第1の進捗度から第2の進捗度、第2の進捗度から第3の進捗度に変更し、携帯端末装置において、地図上で、登録されている物件の所在地情報に対応した位置に、物件の進捗管理情報毎に異なる表示形態の進捗マークを表示する構成が開示されている。このような構成において、表示する進捗マークは、物件の被害調査の進捗管理情報が第1の進捗度である場合は、「未対応」である旨を示すマークであり、物件の被害調査の進捗管理情報が第2の進捗度である場合は、「移動中」である旨を示すマークであり、物件の被害調査の進捗管理情報が第3の進捗度である場合は、「調査中」である旨を示すマークである。つまり、特許文献3においては、担当者の携帯端末装置の表示画面に、自身の現在位置を中心とした防災マップを表示し、その中に複数の物件を進捗マークにより表示する構成となっている。これを基に、担当者は、携帯端末装置の表示画面に表示されている物件のうち、「未対応」の物件を表示している進捗マークを確認し、担当者の現在位置から距離が近い物件や、すぐに行ける物件の調査を行う。
しかし、特許文献3の構成においても、どの構造物を調査するかは、基本的には各担当者が自身で決定するため、仮に、災害が発生した際に、重要な顧客に関する構造物や、用途が重要である構造物を、どの担当者も調査しないという状況も生じ得る。
したがって、災害時に、顧客の重要性を考慮しつつ、複数の構造物の現地調査を効率的に行うことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-91113号公報
【特許文献2】特開2004-240827号公報
【特許文献3】特開2019-179366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、災害時に、構造物の重要度を考慮しつつ、複数の構造物の現地調査を効率的に行うことができる、災害時現地調査支援システム及び災害時現地調査支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の災害時現地調査支援システムは、災害が生じた地域の構造物の現地調査を支援する災害時現地調査支援システムであって、複数の前記構造物の各々の、被害の程度を推定する被害程度推定手段と、複数の前記構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された前記被害の程度と、を基に、現地調査優先度を計算する、現地調査優先度計算手段と、複数の前記構造物の中の、前記現地調査優先度が高い前記構造物から順に、調査要員を割り当てて前記構造物へ移動させ、調査させる、現地調査指示手段と、を備え、前記構造物の前記重要度は、前記構造物の用途に応じた係数である用途係数と、前記構造物を所有する顧客の重要性または前記顧客が所有する前記構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されていることを特徴とする。
上記のような構成によれば、災害が生じた際には、複数の構造物に対して、調査要員の割り当てが決定され、調査要員はこの割り当てに従って現地調査を行う。すなわち、調査する対象となる構造物を、調査要員ごとに独自で判断するのではなく、構造物に対する調査要員の割り当てが決定されるため、例えば一部の構造物に対して複数の調査要員が集結し、他の構造物の調査が後回しにされることが抑制される。
また、上記の構成においては、複数の構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された被害の程度と、を基に、現地調査優先度が計算され、この現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員の割り当てが決定される。ここで、構造物の重要度は、構造物の用途に応じた係数である用途係数と、構造物を所有する顧客の重要性または顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている。換言すれば、現地調査優先度には、用途や顧客に関する性質が反映される構成となっているため、重要な顧客や用途に関する構造物であれば、優先的に、調査要員が割り当てられる。したがって、他の構造物に調査要員が割り当てられた結果として、重要な顧客や用途に関する構造物に調査要員が割り当てられない、という状況の発生が抑制される。
このようにして、災害時に、顧客の重要性を考慮しつつ、複数の構造物の現地調査を効率的に行うことが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記現地調査指示手段は、前記地域の交通網が機能していない場合には、複数の前記構造物の中の、前記現地調査優先度が高い前記構造物から順に、複数の前記調査要員の中から、現在位置と当該構造物との距離が距離閾値以下の前記調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する前記調査要員を割り当てて決定し、当該調査要員に対して当該構造物へ移動し調査するように指示を出し、前記地域の交通網が機能している場合には、複数の前記構造物の中の、前記現地調査優先度が高い前記構造物から順に、複数の前記調査要員の中から、現在位置から当該構造物への移動時間が最短となる前記調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する前記調査要員を割り当てて決定し、当該調査要員に対して当該構造物へ移動し調査するように指示を出す。
このような構成によれば、現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員の割り当てを行う際、災害が生じた地域の交通網が機能していない場合には、現在位置と構造物との距離が距離閾値以下の調査要員を、その構造物の調査を担当する調査要員として割り当てる。また、その地域の交通網が機能している場合には、現在位置から構造物への移動時間が最短となる調査要員を、その構造物の調査を担当する調査要員として割り当てる。したがって、災害が生じた地域の交通網が機能している場合、機能していない場合のいずれであっても、速やかに構造物へ移動して現地調査を行うことができる調査要員を、適切に割り当てることができる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の災害時現地調査支援方法は、災害が生じた地域の構造物の復旧作業を支援する災害時現地調査支援方法であって、複数の前記構造物の各々の、被害の程度を推定する工程と、複数の前記構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された前記被害の程度と、を基に、現地調査優先度を計算する工程と、複数の前記構造物の中の、前記現地調査優先度が高い前記構造物から順に、調査要員を割り当てて前記構造物へ移動させ、調査させる工程と、を備え、前記構造物の前記重要度は、前記構造物の用途に応じた係数である用途係数と、前記構造物を所有する顧客の重要性または前記顧客が所有する前記構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている。
上記のような構成によれば、災害が生じた際には、複数の構造物に対して、調査要員の割り当てが決定され、調査要員はこの割り当てに従って現地調査を行う。すなわち、調査する対象となる構造物を、調査要員ごとに独自で判断するのではなく、構造物に対する調査要員の割り当てが決定されるため、例えば一部の構造物に対して複数の調査要員が集結し、他の構造物の調査が後回しにされることが抑制される。
また、上記の構成においては、複数の構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された被害の程度と、を基に、現地調査優先度が計算され、この現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員の割り当てが決定される。ここで、構造物の重要度は、構造物の用途に応じた係数である用途係数と、構造物を所有する顧客の重要性または顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている。換言すれば、現地調査優先度には、用途や顧客に関する性質が反映される構成となっているため、重要な顧客や用途に関する構造物であれば、優先的に、調査要員が割り当てられる。したがって、他の構造物に調査要員が割り当てられた結果として、重要な顧客や用途に関する構造物に調査要員が割り当てられない、という状況の発生が抑制される。
このようにして、災害時に、顧客の重要性を考慮しつつ、複数の構造物の現地調査を効率的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、災害時に、構造物の重要度を考慮しつつ、複数の構造物の現地調査を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る災害時現地調査支援システムの構成を示す図である。
図2】データベースに記憶されている情報の一例を示す図であり、構造物の用途と、構造物の用途に応じて設定された用途係数を示す図である。
図3】データベースに記憶されている情報の一例を示す図であり、顧客が所有する構造物の数に応じて設定された顧客係数を示す図である。
図4】データベースに記憶されている情報の一例を示す図であり、顧客係数と用途係数との積の値に応じて設定された顧客の重要度のレベルを示す図である。
図5】データベースに記憶されている情報の一例を示す図であり、地震時における最大加速度と、構造物に生じる推定された被害の程度との相関を示す線図の一例を示す図である。
図6】上記したような災害時現地調査支援システムを用いて行う、災害時現地調査支援方法の流れを示すフローチャートである。
図7】複数の構造物に関する情報をまとめた構造物リストの一例を示す図である。
図8】各構造物に対して推定された被害の程度と、現地調査優先度を示す図である。
図9】現地調査すべき複数の構造物と、複数の調査要員の位置関係の一例を示す図である。
図10】上記実施形態の変形例に係る災害時現地調査支援システムを用いて行う、災害時現地調査支援方法において、現地調査員の移動手段を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
図11】人流データの一例を示す説明図である。
図12】災害時の人流データにおいて、徒歩により移動したと考えられる人の、移動距離と移動に要した時間との関係を示すグラフである。
図13】災害時の人流データにおいて、自動車により移動したと考えられる人の、移動距離と移動に要した時間との関係を示すグラフである。
図14】災害時の人流データにおいて、鉄道により移動したと考えられる人の、移動距離と移動に要した時間との関係を示すグラフである。
図15】災害時の人流データにおいて、徒歩、自動車及び鉄道の各々の場合の、移動距離と移動に要した時間との関係の近似曲線を示すグラフである。
図16】調査要員の携帯通信端末に表示された指示内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明による災害時現地調査支援システム及び災害時現地調査支援方法を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る災害時現地調査支援システムの構成を図1に示す。
図1に示されるように、災害時現地調査支援システム1は、複数の調査要員の各々が所持する携帯通信端末2と、災害時現地調査支援装置3と、を備えている。
携帯通信端末2は、外部のネットワーク100を介して災害時現地調査支援装置3と通信可能な、例えば、スマートフォン、タブレット端末等である。ここで、外部のネットワーク100とは、例えば、災害時現地調査支援装置3と無線による通信を行うことのできる公衆無線網や、インターネット等である。
携帯通信端末2は、ネットワーク100を介した災害時現地調査支援装置3との通信が可能な通信部21と、自身の現在位置を検出可能なGPS等の位置検出部22と、災害時現地調査支援装置3から送信される情報を表示するディスプレイ等の表示部23と、を機能的に備えている。
【0013】
災害時現地調査支援装置3は、災害が生じた地域の構造物の現地調査を支援するためのものである。ここで、災害時現地調査支援装置3により現地調査を支援する構造物としては、各種の建物、橋、ダム等が挙げられる。構造物としては、水道、下水道、電気、ガス等のインフラ設備、駅、空港等の施設も含まれ得る。構造物が被る災害としては、地震、豪雨、台風等の天災の他、放射能漏出等の事故、テロ攻撃や戦争等の人災等の、複数の構造物に影響が及ぶようなものが含まれ得る。
特に本実施形態においては、災害が地震である場合を例示して説明する。
災害時現地調査支援装置3は、サーバ、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ端末からなり、予め設定されたプログラムを実行することで、所要の機能を発揮する。災害時現地調査支援装置3は、通信部31と、データベース32と、情報取得手段33と、被害程度推定手段35と、調査要員現在位置取得手段36と、現地調査優先度計算手段37と、現地調査指示手段38と、情報出力手段39と、を機能的に備えている。
【0014】
通信部31は、ネットワーク100を介し、複数の調査要員が所持する携帯通信端末2、及び構造物が位置する地域の災害状況に関する情報を提供する機関のコンピュータ装置(図示無し)との間で、データ通信を行う。
データベース32は、災害時現地調査支援装置3で、災害が生じた地域の構造物の現地調査を支援するための処理を実行するのに必要な各種のデータを記憶している。データベース32で記憶している情報としては、例えば、対象となる構造物に関する情報(所在地、延べ床面積、用途等)、構造物を所有(または管理)する顧客に関する情報、調査要員に関する情報等がある。
【0015】
図2は、データベースに記憶されている情報の一例を示す図であり、構造物の用途と、構造物の用途に応じて設定された用途係数を示す図である。
図2に示されるように、データベース32には、構造物の用途に応じて、現地調査を行う優先度を決める際に用いられる用途係数が設定されている。本実施形態においては、用途係数は、0以上1以下の値として、設定されている。用途係数は、構造物の用途に対して、それが重要なものであるほど、大きな値となるように設定されている。図2においては、例えば、構造物の用途が、病院等の医療施設、福祉施設である場合、用途係数は1と設定されている。また、構造物の用途が官庁施設、災害対策本部に利用される公共施設である場合の用途係数は0.8と設定されている。また、構造物の用途が、上記した以外の一般の建物である場合の用途係数は0.6と設定されている。
【0016】
図3は、データベースに記憶されている情報の一例を示す図であり、顧客が所有する構造物の数に応じて設定された顧客係数を示す図である。
データベース32には、構造物を所有する顧客の重要性、または顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じて、顧客係数が設定されている。本実施形態においては、所有する構造物が多ければ、それだけ、顧客の重要性が高いという考えのもと、図3に示されるように、データベース32には、顧客が所有する構造物の数に応じて、顧客係数が設定されている。本実施形態においては、顧客係数は、0以上1以下の値として、設定されている。顧客係数は、重要な顧客であるほど、大きな値となるように設定されている。図3においては、例えば、顧客が所有する構造物の数が10件以上である場合、顧客係数は1と設定されている。また、顧客が所有する構造物の数が5~9件である場合、顧客係数は0.8と設定されている。また、顧客が所有する構造物の数が1~4件である場合、顧客係数は0.6と設定されている。
顧客係数が、顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じて設定される場合においても、顧客が所有する構造物の延べ床面積が大きければそれだけ、重要性が高い顧客であるといえるため、上記のように顧客係数を0以上1以下の値として設定し、顧客が所有する構造物の延べ床面積が大きければそれだけ大きな値となるようにすることにより、同様な説明が可能である。
【0017】
図4は、データベースに記憶されている情報の一例を示す図であり、顧客係数と用途係数との積の値に応じて設定された顧客の重要度のレベルを示す図である。
上記のように、用途係数と顧客係数は、それぞれ、0以上1以下の値として、かつ重要であればそれだけ大きな値となるように、すなわち1に近くなるように、設定されている。このため、用途係数と顧客係数を乗算した値は、0以上1以下の値となり、用途係数と顧客係数のいずれか一方が大きければそれだけ大きな値となり、また双方ともに大きければより大きく、1に近い値となる。すなわち、用途係数と顧客係数を乗算した値は、用途と顧客の重要性が共に反映された値である。このため、本実施形態においては、用途係数と顧客係数を乗算した値を、顧客係数と用途係数を基に設定された、重要度を示す値として扱う。
図4に示されるように、データベース32には、顧客係数と用途係数との積の値が0.6以上である場合、重要度は最も高い値であるAと設定されている。また、顧客係数と用途係数との積の値が0.4以上0.6未満である場合、重要度は中程度の値であるBと設置されている。顧客係数と用途係数との積の値が0.4未満である場合、重要度は最も低い値であるCと設置されている。
【0018】
図5は、データベースに記憶されている情報の一例を示す図であり、地震時における最大加速度と、構造物に生じる推定された被害の程度との相関を示す線図の一例を示す図である。
図5に示されるように、地震による最大加速度と、最大加速度の大きさに応じて構造物に生じる推定された被害の程度との相関が、例えば線図(グラフ)として、予め設定されている。推定された被害の程度は、例えば、0以上1以下の値となるように設定されている。本実施形態においては、グラフは単調増加の曲線となっており、最大加速度が大きく被害が大きいと推定される場合に、値が大きく1に近くなり、最大加速度が小さく被害が小さいと推定される場合に、値が小さく0に近くなるように、グラフは設定されている。
なお、図5には、IDが1~4の構造物と、これら構造物の被害の程度との対応が図示されているが、これは後の説明において使用するものである。地震が生じる前の段階においては、データベース32には、最大加速度と被害の程度の相関を示すグラフのみが格納されている。
この線図は、災害の種類によって、適宜設定され得る。例えば、災害が豪雨である場合には、例えばこの相関を示す線図は、降水量と、浸水の深さの相関を示すものであってもよい。あるいは、災害が放射能漏出である場合には、放射能漏出の中心部からの距離と、放射能汚染の程度との相関を示すものであってもよい。
【0019】
情報取得手段33は、災害発生時に、災害が生じた地域に設けられた複数の構造物の各々の、被害の程度を推定するのに必要な情報(例えば、震度、最大加速度、降雨量、積雪量、風速等)を、情報を提供する機関(例えば、気象庁等の省庁、気象情報提供会社、当該地域の自治体等)からネットワーク100を介して取得する。また、情報取得手段33は、災害が生じた地域における交通網(例えば、鉄道、バス、道路等)の機能状態に関する情報を、当該情報を提供する機関(鉄道会社、バス会社、道路管理会社、交通情報提供会社等)から、ネットワーク100を介して取得する。
【0020】
被害程度推定手段35は、複数の構造物の各々の、被害の程度を推定する。例えば、被害程度推定手段35は、データベース32に記憶された、各構造物の所在地と、情報取得手段33で取得した各地域における地震時の最大加速度とに基づいて、各構造物に作用した最大加速度を予測する。被害程度推定手段35は、各構造物に作用すると予測した最大加速度に基づいて、各構造物における被害の程度を推定する。被害の程度の推定には、図5に示したような、最大加速度と、構造物に生じる推定された被害の程度との相関を示すデータが用いられる。
【0021】
現地調査優先度計算手段37は、複数の構造物の各々に対し、その構造物の、用途係数と顧客係数を乗算した値として設定された、図4に示されるような重要度と、被害程度推定手段35で推定された、その構造物の被害の程度と、を基に、後に詳述するようにして、現地調査優先度(図8の「現地調査優先度」欄参照)を計算する。
【0022】
調査要員現在位置取得手段36は、複数の調査要員が所有する携帯通信端末2の位置検出部22によって検出される位置情報に基づいて、複数の調査要員の各々の現在位置を、逐次取得する。調査要員現在位置取得手段36は、携帯通信端末2から送信される位置情報を、通信部31で受信することで、各調査要員の現在位置を取得する。
【0023】
現地調査指示手段38は、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員を割り当てる。ここで、現地調査指示手段38は、情報取得手段33で取得された、その時点における、現地調査を行うべき地域の交通網の状態に基づいて、調査要員を割り当てる。具体的には、地域の交通網が機能していない場合には、現地調査指示手段38は、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、現在位置とその構造物との距離が距離閾値以下の調査要員を抽出して割り当てる。地域の交通網が機能していない場合、調査要員は徒歩で移動することになるため、距離閾値は、例えば5kmに設定される。
また、地域の交通網が機能している場合には、現地調査指示手段38は、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、交通網を利用した現在位置からその構造物への移動時間が最短となる調査要員を抽出して割り当てる。
現地調査指示手段38は、調査要員に対し、割り当てられた構造物に移動して構造物の被害状況を調査することを指示するための情報を生成する。現地調査指示手段38は、生成した、構造物の被害状況を調査することを指示するための情報を、ネットワーク100を介して、調査要員が所持する携帯通信端末2に送信する。
【0024】
情報出力手段39は、各調査要員が現地調査を行うことで取得した構造物の被害状況等の情報を、各調査要員が所有する携帯通信端末2から取得し、視覚的に認識できる災害調査結果を生成する。情報出力手段39は、生成した災害調査結果を、災害時現地調査支援装置3に備えたモニタ等に表示させる。
【0025】
図6は、上記したような災害時現地調査支援システムを用いて行う、災害時現地調査支援方法の流れを示すフローチャートである。図7は、複数の構造物に関する情報をまとめた構造物リストの一例を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係る災害時現地調査支援方法では、まず、複数の構造物の重要度を設定する(工程S1)。これには、図7に示すように、複数の構造物を識別するために各構造物に予め割り当てられた構造物IDに対し、構造物の名称、所在地、構造物の基本情報、構造物を所有または管理する顧客の情報、構造物の用途に応じて設定された用途係数(図2参照)、顧客に応じて設定された顧客係数(図3参照)、及び、用途係数と顧客係数とに基づいて算出される各構造物の重要度(図4参照)を関連付けることで、構造物リストを生成する。この構造物リストは、地震等の災害発生前の時点で、事前に生成しておき、データベース32に記憶させておくのが好ましい。なお、構造物リストは、地震等の災害発生後に生成するようにしてもよい。
【0026】
その後、地震等の災害が発生した場合、複数の構造物の被害の程度を推定する(工程S2)。これには、情報取得手段33が、まず、災害が生じた地域に設けられた複数の構造物の各々の被害の程度を推定するのに必要な情報として、例えば、各地の最大加速度の情報を、例えば気象庁からネットワーク100を介して取得する。そして、これを基に、被害程度推定手段35は、複数の構造物の各々の、被害の程度を推定する。例えば、被害程度推定手段35は、データベース32に記憶された、各構造物の所在地と、情報取得手段33で取得した各地域における地震時の最大加速度とに基づいて、各構造物に作用した最大加速度を予測する。
被害程度推定手段35は、各構造物に作用したと予測された最大加速度に基づいて、例えば図5に示したような、最大加速度と、構造物に生じる推定された被害の程度との相関を示すデータに基づいて、各構造物に生じた被害の程度を示す値を推定する。
図8は、各構造物に対して推定された被害の程度と、現地調査優先度を示す図である。
被害程度推定手段35は、図8に「推定された被害の程度」として示されるように、図7の構造物リストに対し、推定した、各構造物に生じた被害の程度を入力することで、構造物リストを更新する。例えば、図7に示されるIDが1~4の構造物の各々に対し、図5に示されるグラフを用いて、予測した最大加速度から、被害の程度を推定する。この場合においては、図5を基に、IDが1の構造物に対しては0.9、IDが2の構造物に対しては0.9、IDが3の構造物に対しては0.3、IDが4の構造物に対しては0.8と、被害の程度が推定されている。このため、図8においては、これらの値が「推定された被害の程度」に入力されている。
【0027】
次に、現地調査優先度計算手段37は、複数の構造物の各々に対し、現地調査優先度を計算する(工程S3)。現地調査優先度計算手段37は、各構造物に対し、工程S1において計算された重要度と、工程S2において被害程度推定手段35で推定された、その構造物の被害の程度と、を基に、現地調査優先度を計算する。
具体的には、現地調査優先度計算手段37は、まず、図8に示される構造物リストの中で、A~Cの値として設定された重要度を、重要度が高いほど大きな値となるような数値に換算する。例えば、重要度Aは値1に、重要度Bは値0.8に、重要度Cは値0.6に、それぞれ換算される。
次に、現地調査優先度計算手段37は、各構造物に対し、このように重要度を換算した値と、推定された被害の程度を乗算し、その結果を図8に「数値の積」として示される欄に格納する。重要度が換算された値は、重要度が高いほど大きな値となっており、なおかつ推定された被害の程度の値は、被害が大きいと想定されるほど大きな値となっている。このため、これらの値を乗算して計算された上記の値は、構造物の重要度が高いか、あるいは被害が大きければ、それだけ大きな値となる。現地調査優先度計算手段37は、この積の値が大きいものから順に、各構造物を1から昇順に順序付けすることによって、現地調査優先度を計算する。すなわち、本実施形態においては、現地調査優先度の値が小さい構造物ほど、優先して調査されるべき、優先度が高い構造物である。
【0028】
図8の「現地調査優先度」の欄には、このようにして計算された値が格納されている。
例えば、IDが1の構造物においては、重要度と推定された被害の程度の双方が、他の構造物よりも高い値となっているため、これらの積も値が大きくなり、結果として現地調査優先度は最も高い「1」となっている。
また、IDが3の構造物とIDが4の構造物においては、重要度は同じであるが、IDが4の構造物の方が推定された被害の程度が大きいため、IDが4の構造物は、IDが3の構造物よりも、現地調査優先度が高くなっている。
更に、IDが2の構造物とIDが3の構造物においては、IDが3の構造物の方が重要度は若干大きいものの、推定された被害の程度はIDが2の構造物に比べると大きく下回っている。このため、IDが2の構造物は、IDが3の構造物よりも、現地調査優先度が高くなっている。
【0029】
次に、調査要員現在位置取得手段36は、複数の調査要員の各々の現在位置を、各調査要員が所有する携帯通信端末2の位置検出部22によって検出される位置情報に基づいて、逐次取得する(工程S4)。
図9は、現地調査すべき複数の構造物と、複数の調査要員の位置関係の一例を示す図である。
その後、現地調査指示手段38は、工程S3で計算した現地調査優先度(図8参照)に基づいて、図9に示すように、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員を割り当てる(工程S5)。現地調査指示手段38は、現地調査すべき各構造物に対し、最も早く到着できる調査要員を割り当てる。ここで、現地調査指示手段38は、情報取得手段33で取得された、その時点における、現地調査を行うべき地域の交通網の状態に基づいて、調査要員を割り当てる。これには、情報取得手段33で、災害が生じた地域における交通網(例えば、鉄道、バス、道路等)の機能状態に関する情報を取得する。そして、地域の交通網が機能していない場合には、現地調査指示手段38は、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、現在位置とその構造物との距離が距離閾値(例えば5km)以下の調査要員を抽出して割り当てる。
また、地域の交通網が機能している場合には、現地調査指示手段38は、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、交通網を利用した現在位置からその構造物への移動時間が最短となる調査要員を抽出して割り当てる。
【0030】
現地調査指示手段38は、できるだけ多くの構造物に対して調査要員が割り当てられるように、調査要員の割り当てを決定する。例えば、図9において、構造物S1から距離閾値以内の範囲内には、調査要員P1と調査要員P2の、2名の調査要員がいるのに対し、構造物S2に関しては、距離閾値以内には、調査要員P1のみしか位置していない。ここで、構造物S1が構造物S2よりも現地調査優先度が高く、構造物S2に先んじて調査要員を割り当てられるような場合において、構造物S1からは調査要員P1が最も近く位置しているために、構造物S1に対して調査要員P1を割り当てられる可能性があるが、こうすると、構造物S2に対して調査要員を割り当てることができなくなってしまう。このような場合には、構造物S1に対して調査要員P2を割り当てると、構造物S2に対して調査要員P1を割り当てることが可能となる。
このようにして、現地調査優先度が高い構造物に対して調査要員の割り当てを決定するに際し、より現地調査優先度が低い構造物に対する調査要員の割り当てを考慮することで、より多くの構造物に対して調査要員を割り当てて、全体としてより効率的に構造物の調査を行うことが可能となる。
【0031】
次いで、現地調査指示手段38は、現地調査の対象となる構造物に対して割り当てた調査要員に対し、構造物に移動して構造物の被害状況を調査することを指示するための情報を生成する。現地調査指示手段38は、生成した、構造物の被害状況を調査することを指示するための情報を、ネットワーク100を介して、調査要員が所持する携帯通信端末2に送信する(工程S6)。
【0032】
現地調査の指示を受け取った調査要員は、自らが所有する携帯通信端末2の表示部23に指示が表示されることで、指示を認識する。調査要員は、調査する旨の指示を受けた、調査対象となる構造物まで移動し、構造物に実際に生じている被害の状況等を現地調査する。各調査要員は、現地調査の調査結果を、携帯通信端末2を用いて、ネットワーク100を介して災害時現地調査支援装置3に報告する。ここで、現地調査の調査結果の内容については、何ら限定するものではない。災害時現地調査支援装置3では、各調査要員からの調査結果を受信する(工程S7)。
【0033】
情報出力手段39は、各調査要員が現地調査を行うことで取得した構造物の被害状況等の情報を、視覚的に認識できる災害調査結果として生成する。情報出力手段39は、生成した災害調査結果を、災害時現地調査支援装置3に備えたモニタ等に表示させる(工程S8)。
【0034】
ここで、災害時現地調査支援装置3は、対象となる全ての構造物に、調査要員が割り当てられて、現地調査が終了したか否かを判定する(工程S9)。
対象となる全ての構造物の現地調査が終了した場合には(工程9におけるYes)、災害時現地調査支援装置3は、処理を終了する。
対象となる全ての構造物の現地調査が終了しておらず、調査要員が割り当てられなかった構造物がある場合には(工程9におけるNo)、いったん割り当てられた構造物の調査が既に終了した調査要員を含めた、現在構造物の調査を実施しておらず稼働が空いている全ての調査要員の現在位置を再度取得し、調査要員が割り当てられなかった構造物に対して、調査要員を割り当てる、という、工程4以降の処理を繰り返す。
工程4においては、構造物に対して調査要員を割り当てるに際し、構造物からの距離が、例えば5kmの距離閾値以下の調査要員を割り当てるようにしたが、工程4以下の処理を繰り返すに際し、この距離閾値を徐々に大きくすることで、調査要員が割り当てられなかった構造物に対して、処理を繰り返すたびに調査要員が割り当てられやすくするようにしてもよい。この場合には、例えば図9の構造物S2に関し、仮に調査要員P1が構造物S1に対して割り当てられ、工程4以下の初回の処理で調査要員が割り当てられなかったとしても、次の繰り返しにおいて、距離閾値から僅かに外れて位置している調査要員P3が、初回よりも大きくされた距離閾値の範囲内となって、構造物S2に割り当てられる可能性がある。
このように、複数の前記構造物の中に、調査要員が割り当てられなかった構造物がある場合には、災害時現地調査支援装置3は、複数の構造物の全てに対して調査要員が割り当てられて調査されるまで、割り当てられた構造物の調査が既に終了した調査要員を含めた複数の調査要員の中から、各々の現在位置を基に、その構造物の調査を担当する調査要員を割り当てて決定することを繰り返す。
このようにして、調査要員が割り当てられなかった構造物があったとしても、最終的には全ての構造物に対して調査要員が割り当てられて、全ての構造物の調査が行われた後、処理が終了する。
【0035】
上述したような災害時現地調査支援システム1は、災害が生じた地域の構造物の現地調査を支援する災害時現地調査支援システム1であって、複数の構造物の各々の、被害の程度を推定する被害程度推定手段35と、複数の構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された被害の程度と、を基に、現地調査優先度を計算する、現地調査優先度計算手段37と、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員を割り当てて構造物へ移動させ、調査させる、現地調査指示手段38と、を備え、構造物の重要度は、構造物の用途に応じた係数である用途係数と、構造物を所有する顧客の重要性または顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている。
上記のような構成によれば、災害が生じた際には、複数の構造物に対して、調査要員の割り当てが決定され、調査要員はこの割り当てに従って現地調査を行う。すなわち、調査する対象となる構造物を、調査要員ごとに独自で判断するのではなく、構造物に対する調査要員の割り当てが決定されるため、例えば一部の構造物に対して複数の調査要員が集結し、他の構造物の調査が後回しにされることが抑制される。
また、上記の構成においては、複数の構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された被害の程度と、を基に、現地調査優先度が計算され、この現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員の割り当てが決定される。ここで、構造物の重要度は、構造物の用途に応じた係数である用途係数と、構造物を所有する顧客の重要性または顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている。換言すれば、現地調査優先度には、用途や顧客に関する性質が反映される構成となっているため、重要な顧客や用途に関する構造物であれば、優先的に、調査要員が割り当てられる。したがって、他の構造物に調査要員が割り当てられた結果として、重要な顧客や用途に関する構造物に調査要員が割り当てられない、という状況の発生が抑制される。
このようにして、災害時に、顧客の重要性を考慮しつつ、複数の構造物の現地調査を効率的に行うことが可能となる。
【0036】
また、現地調査指示手段38は、地域の交通網が機能していない場合には、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、現在位置と当該構造物との距離が距離閾値以下の調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する調査要員を割り当てて決定し、当該調査要員に対して当該構造物へ移動し調査するように指示を出し、地域の交通網が機能している場合には、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、現在位置から当該構造物への移動時間が最短となる調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する調査要員を割り当てて決定し、当該調査要員に対して当該構造物へ移動し調査するように指示を出す。
このような構成によれば、現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員の割り当てを行う際、災害が生じた地域の交通網が機能していない場合には、現在位置と構造物との距離が距離閾値以下の調査要員を、その構造物の調査を担当する調査要員として割り当てる。また、その地域の交通網が機能している場合には、現在位置から構造物への移動時間が最短となる調査要員を、その構造物の調査を担当する調査要員として割り当てる。したがって、災害が生じた地域の交通網が機能している場合、機能していない場合のいずれであっても、速やかに構造物へ移動して現地調査を行うことができる調査要員を、適切に割り当てることができる。
【0037】
また、上述したような災害時現地調査支援方法は、災害が生じた地域の構造物の復旧作業を支援する災害時現地調査支援方法であって、複数の構造物の各々の、被害の程度を推定する工程と、複数の構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された被害の程度と、を基に、現地調査優先度を計算する工程と、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員を割り当てて構造物へ移動させ、調査させる工程と、を備え、構造物の重要度は、構造物の用途に応じた係数である用途係数と、構造物を所有する顧客の重要性または顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている。
上記のような構成によれば、災害が生じた際には、複数の構造物に対して、調査要員の割り当てが決定され、調査要員はこの割り当てに従って現地調査を行う。すなわち、調査する対象となる構造物を、調査要員ごとに独自で判断するのではなく、構造物に対する調査要員の割り当てが決定されるため、例えば一部の構造物に対して複数の調査要員が集結し、他の構造物の調査が後回しにされることが抑制される。
また、上記の構成においては、複数の構造物の各々に対し、当該構造物の重要度と、当該構造物に対して推定された被害の程度と、を基に、現地調査優先度が計算され、この現地調査優先度が高い構造物から順に、調査要員の割り当てが決定される。ここで、構造物の重要度は、構造物の用途に応じた係数である用途係数と、構造物を所有する顧客の重要性または顧客が所有する構造物の延べ床面積に応じた顧客係数と、を基に設定されている。換言すれば、現地調査優先度には、用途や顧客に関する性質が反映される構成となっているため、重要な顧客や用途に関する構造物であれば、優先的に、調査要員が割り当てられる。したがって、他の構造物に調査要員が割り当てられた結果として、重要な顧客や用途に関する構造物に調査要員が割り当てられない、という状況の発生が抑制される。
このようにして、災害時に、顧客の重要性を考慮しつつ、複数の構造物の現地調査を効率的に行うことが可能となる。
【0038】
(上記実施形態の変形例)
上記実施形態においては、図6に示される工程S5において、地域の交通網が機能している場合には、現地調査指示手段38は、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、交通網を利用した現在位置からその構造物への移動時間が最短となる調査要員を抽出して割り当てていた。ここで、仮に地域の交通網が機能していたとしても、道路が渋滞している場合には、調査要員は、自動車よりも徒歩で移動する方が、割り当てられた構造物に、より速く到着することができる可能性がある。あるいは、鉄道のダイヤが大きく乱れて鉄道が遅延している場合には、調査要員は、鉄道よりも自動車や徒歩で移動する方が、割り当てられた構造物に、より速く到着することができる可能性がある。
本変形例においては、上記のような場合を考慮し、地域の交通網が機能している場合に、現地調査指示手段38は、構造物の調査を担当する調査要員を割り当てて決定した後に、各調査要員の、割り当てられた構造物への移動手段を、徒歩、自動車、及び鉄道の中から決定し、各調査要員に対して、決定された移動手段により、割り当てられた構造物へ移動し調査するように指示を出す。
【0039】
図10は、本変形例に係る災害時現地調査支援システムを用いて行う、災害時現地調査支援方法において、現地調査員の移動手段を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
本変形例においては、上記実施形態の図6に示される工程S5の、複数の構造物に対して調査要員を割り当てる処理を実行した後の、工程S6における、現地調査の対象となる構造物に対して割り当てた調査要員に対し、構造物に移動して構造物の被害状況を調査することを指示するための情報を生成するに際し、以下に説明するような手順によって、各調査要員の、割り当てられた構造物への移動手段を決定する。
【0040】
まず、現地調査指示手段38は、地震等の災害が発生した地域周辺の、人流データを取得する(工程S11)。
図11は、人流データの一例を示す説明図である。図11に示される人流データにおいては、個人により所有されるスマートフォン等の識別ID、当該データの取得された時刻、当該個人(が有するスマートフォン等)が当該時刻において位置していた緯度及び経度、当該個人の年齢、及び移動速度に関する情報が含まれている。このような人流データは、データ提供事業者から入手することができる。図11においては、異なる2つの時刻(及びこれら2つの時刻の間の時刻)における、3種類の識別IDに対応する、3人の個人に関するデータが取得されたことが、示されている。
現地調査指示手段38は、このような複数の時刻における、各個人の位置を参照し、時間の経過に伴う緯度及び経度の変化を観測することで、各個人の移動方向を計算し、当該個人に対応付けて記録する。
【0041】
次に、現地調査指示手段38は、人流データの中から、移動手段の決定に使用することができる、関連するデータを抽出する(工程S12)。
具体的には、現地調査指示手段38は、ある調査要員の移動手段を決定するに際し、当該調査要員と、当該調査要員に割り当てられた構造物との間に位置する個人(識別ID)の人流データを抽出する。現地調査指示手段38は、例えば、調査要員の現在位置周辺、当該調査要員に割り当てられた構造物の周辺、あるいは調査要員の現在位置周辺と当該調査要員に割り当てられた構造物の間の、いずれかに位置している個人(識別ID)で、移動方向が、調査要員の現在位置周辺から、当該調査要員に割り当てられた構造物が位置する方向へと向かうような、人流データを抽出する。
【0042】
続いて、現地調査指示手段38は、工程S12において抽出された人流データの各々に対し、個人(識別ID)の各々が、どのような移動手段で移動しているかを、推定する(工程S13)。本変形例においては、移動手段は、徒歩、自動車、及び鉄道のいずれかである。移動手段は、例えば自転車等、これら以外を含むように構成されても構わない。
現地調査指示手段38は、例えば、個人(識別ID)の人流データにおける移動速度が、時速4km以上、時速7km以下である場合には、当該個人の移動手段は徒歩であると推定する。
また、現地調査指示手段38は、例えば、個人(識別ID)の人流データにおける移動速度が、時速7kmより大きく、時速100km以下である場合には、当該個人の移動手段は自動車であると推定する。自動車は、時速30km以上で走行する場合も多いが、災害時においては道路が渋滞して自動車の平均速度が大きく低減することもある。このため、移動手段が自動車である否かを判定するための下限値を、上記のようにより小さい値として設定しても構わない。
更に、現地調査指示手段38は、例えば、個人(識別ID)の人流データにおける移動速度が、時速7kmより大きく、時速300km以下であり、なおかつ移動経路が鉄道の路線に沿ったものである場合には、当該個人の移動手段は鉄道であると推定する。鉄道は、時速30km以上で走行する場合も多いが、災害時においてはダイヤが乱れて鉄道が遅延し、鉄道の平均速度が大きく低減することもある。このため、移動手段が鉄道である否かを判定するための下限値を、上記のようにより小さい値として設定しても構わない。
【0043】
上記のように、抽出された人流データの各々に対する、移動手段の推定が終了すると、現地調査指示手段38は、移動方法ごとに、移動距離と、移動に要した時間との関係を表すグラフを作成する(工程S14)。
図12は、災害時の人流データにおいて、徒歩により移動したと考えられる人の、移動距離と移動に要した時間との関係を示すグラフである。図13は、災害時の人流データにおいて、自動車により移動したと考えられる人の、移動距離と移動に要した時間との関係を示すグラフである。図14は、災害時の人流データにおいて、鉄道により移動したと考えられる人の、移動距離と移動に要した時間との関係を示すグラフである。
【0044】
現地調査指示手段38は、移動手段が徒歩であると推定された人流データの各々に対し、移動距離と、当該移動距離を移動するのに要した時間と、を計算する。現地調査指示手段38は、例えば、移動手段が徒歩であると推定された人流データの識別IDに対応する、抽出された人流データの中の、時刻が最も古いものと、最も新しいものとの間で、時刻と、緯度及び経度との差分を計算することで、上記のような移動距離と、当該移動距離を移動するのに要した時間と、を計算することができる。現地調査指示手段38は、このようにして計算された、移動距離と、当該移動距離を移動するのに要した時間と、の関係を、図12に示されるようにグラフ上にプロットする。
現地調査指示手段38は、移動手段が自動車であると推定された人流データの各々に対しても、移動距離と、当該移動距離を移動するのに要した時間と、を計算し、移動距離と、当該移動距離を移動するのに要した時間と、の関係を、図13に示されるようにグラフ上にプロットする。
現地調査指示手段38はまた、移動手段が鉄道であると推定された人流データの各々に対しても、移動距離と、当該移動距離を移動するのに要した時間と、を計算し、移動距離と、当該移動距離を移動するのに要した時間と、の関係を、図14に示されるようにグラフ上にプロットする。
【0045】
更に、現地調査指示手段38は、移動手段ごとに、移動距離と、当該移動距離を移動するのに要した時間と、の関係の、近似曲線を導出する(工程S15)。
現地調査指示手段38は、図12に示されるように、移動手段が徒歩に相当するものに対して作成されたグラフに対し、当該グラフ中にプロットされた点の各々の、できるだけ近くを通過するような、近似曲線L1を導出する。
現地調査指示手段38は、図13に示されるように、移動手段が自動車に相当するものに対して作成されたグラフに対し、当該グラフ中にプロットされた点の各々の、できるだけ近くを通過するような、近似曲線L2を導出する。
現地調査指示手段38は、図14に示されるように、移動手段が鉄道に相当するものに対して作成されたグラフに対し、当該グラフ中にプロットされた点の各々の、できるだけ近くを通過するような、近似曲線L3を導出する。
【0046】
そして、現地調査指示手段38は、調査要員が、最も短い時間で、当該調査要員に割り当てられた構造物まで到着することができるような移動手段を選出する(工程S16)。
図15は、災害時の人流データにおいて、徒歩、自動車及び鉄道の各々の場合の、移動距離と移動に要した時間との関係の近似曲線を示すグラフである。
現地調査指示手段38は、調査要員と、当該調査要員に割り当てられた構造物までの距離を計算する。現地調査指示手段38は、計算された距離を、上記のようにして導出された、移動手段が徒歩の場合の近似曲線L1と、移動手段が自動車の場合の近似曲線L2と、移動手段が鉄道の場合の近似曲線L3と、の各々を基に適用して、当該距離を移動距離とした場合の移動時間を、移動手段の各々に対して計算する。現地調査指示手段38は、このようにして計算された、移動手段の各々における移動時間のなかで、最も値が小さいものに対応する移動手段を、調査要員が採用すべき移動手段であるとして選出する。
【0047】
現地調査指示手段38は、図6において工程S6として説明したように、現地調査の対象となる構造物に対して割り当てた調査要員に対し、構造物に移動して構造物の被害状況を調査することを指示するための情報を生成するに際し、上記のようにして選択された移動手段を含み、当該移動手段による移動を調査要員に促すような指示を、生成する。
図16は、調査要員の携帯通信端末に表示された指示内容を示す説明図である。
その後、現地調査指示手段38は、生成した、構造物の被害状況を調査することを指示するための情報を、ネットワーク100を介して、調査要員が所持する携帯通信端末2に送信する。
現地調査指示手段38は、調査要員の各々に対して、上記のような処理を実行する。
【0048】
上記のような変形例においては、現地調査指示手段38は、地域の交通網が機能していない場合には、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、現在位置と当該構造物との距離が距離閾値以下の調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する調査要員を割り当てて決定し、当該調査要員に対して徒歩により当該構造物へ移動し調査するように指示を出し、地域の交通網が機能している場合には、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、現在位置から当該構造物への移動時間が最短となる調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する調査要員を割り当てて決定し、当該調査要員の、当該構造物への移動手段を、徒歩、自動車、及び鉄道の中から決定し、当該調査要員に対して、決定された移動手段により、当該構造物へ移動し調査するように指示を出す。
上記のような構成によれば、調査要員に対し、割り当てられた構造物までの移動手段が指示されるため、調査要員が、適切な移動手段を用いて、割り当てられた構造物へと移動することができる。
【0049】
特に本変形例においては、現地調査指示手段38は、地域の交通網が機能している場合には、複数の構造物の各々に対して、当該構造物の調査を担当する調査要員を割り当てて決定した後に、地域周辺の、人流データを取得し、人流データの中の各個人の移動手段を推定し、移動手段ごとに、移動距離と、移動に要した時間との関係をプロットしたグラフを作成して、移動距離と、移動に要した時間との関係の、近似曲線を導出し、移動手段ごとに導出された近似曲線を基に、調査要員が、最も短い時間で、当該調査要員に割り当てられた構造物まで到着することができるような移動手段を決定する。
上記のような構成によれば、災害が生じた時点における、移動手段の各々の、実際の移動時間を推定することができる。したがって、自動車の渋滞や鉄道の遅延等の、実際の交通状況を考慮したうえで、最も適切であると考えられる移動手段を、調査要員に提示することが可能となる。
【0050】
(上記実施形態の更なる変形例)
なお、上記変形例においては、現地調査指示手段38は、地域の交通網が機能している場合に、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、複数の調査要員の中から、現在位置と当該構造物との距離が距離閾値以下の調査要員を抽出することで、当該構造物の調査を担当する調査要員を割り当てて決定し、決定された調査要員と構造物の対に対して、当該調査要員が割り当てられた構造物へと向かうに際し適切な移動手段を計算したが、これに限られない。
例えば、現地調査指示手段38は、地域の交通網が機能している場合に、全ての調査要員と、全ての構造物の組み合わせに対し、調査要員が構造物へと向かう際の移動時間と移動手段を計算し、この結果を基に、複数の構造物の中の、現地調査優先度が高い構造物から順に、当該構造物に対する移動時間が短くなるように、複数の調査要員の中から調査要員を抽出して割り当てるようにしてもよい。
【0051】
(その他の変形例)
なお、上記実施形態では、用途係数、顧客係数、重要度、推定された被害の程度を示す値等を例示したが、その数値等は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、調査要員に関しては、その位置情報のみを判断基準として、各構造物への割り当てを決定したが、これに限られない。例えば、各構造物への調査要員の割り当ては、調査要員の位置情報に加え、調査要員の調査経験や業務評価等を基に、決定されてもよい。このようにすれば、調査経験が多い、あるいは業務能力が高い調査要員を、調査優先度が高い構造物に優先的に割り当てることが可能である。
また、上記実施形態では、用途係数と顧客係数との積により、重要度を算出するようにしたが、例えば、用途係数、顧客係数、推定された被害の程度を示す値等を加算することで、現地調査優先度を算出するようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 災害時現地調査支援システム 37 現地調査優先度計算手段
35 被害程度推定手段 38 現地調査指示手段
36 調査要員現在位置取得手段
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