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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109520
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】結晶相を含むガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/12 20060101AFI20240806BHJP
   C03C 10/14 20060101ALI20240806BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C03C10/12
C03C10/14
C03C3/097
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002903
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023014181
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023120155
(32)【優先日】2023-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 康平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠那
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062AA11
4G062BB01
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC01
4G062DD02
4G062DD03
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA03
4G062EA04
4G062EB01
4G062EC01
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EF01
4G062EG01
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FC01
4G062FC02
4G062FC03
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM12
4G062NN16
4G062NN34
4G062QQ02
4G062QQ09
(57)【要約】
【課題】高い透明性を有する結晶相を含むガラスを提供する。
【解決手段】X線回折法で得られるX線回折スペクトルにおいて、
回折角2θ=23.50°~24.00°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=24.05°~24.55°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=24.60°~25.05°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=25.20°~26.60°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、
(I+I)/(I+I)が1.60以上である、
結晶相を含むガラス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折法で得られるX線回折スペクトルにおいて、
回折角2θ=23.50°~24.00°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=24.05°~24.55°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=24.60°~25.05°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=25.20°~26.60°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、
(I+I)/(I+I)が1.60以上である、
結晶相を含むガラス。
【請求項2】
(I+I)/(I+I)が4.50以下である、請求項1に記載の結晶相を含むガラス。
【請求項3】
がIより大きい、請求項1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
【請求項4】
がIより大きい、請求項1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
【請求項5】
がIより大きい、請求項1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
【請求項6】
がIより大きい、請求項1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
【請求項7】
~IのうちIが最大である、請求項1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
【請求項8】
X線回折スペクトルにおける回折角2θ=26.60°~27.10°の位置において回折ピークを有さない、請求項1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
【請求項9】
結晶化ガラスである、請求項1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
【請求項10】
原ガラスの組成が酸化物換算の質量%で、
SiO成分の含量 65.0%~85.0%、
Al成分の含量 3.0%~15.0%、
成分の含量 0%超~5.0%、
LiO成分の含量 5.0%超~15.0%、
ZrO成分の含量 0%~10.0%、
MgO成分の含量 0%~5.0%
である、請求項1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶相を含むガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンのカバーガラスや筐体のガラス部材等として結晶相を含むガラスが用いられる場合がある。結晶相を含むガラスは強度を高められる一方、透明性の確保が困難であるという課題がある。特許文献1~4には、特定の組成や物性を有する結晶相を含むガラスの開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-095333号公報
【特許文献2】特開2001-048584号公報
【特許文献3】特開2020-019659号公報
【特許文献4】特開2008-254984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高い透明性を有する、結晶相を含むガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、結晶相を含むガラスについて測定したX線回折スペクトルの形状に着目して鋭意検討を行ったところ、X線回折スペクトル上の特定範囲に現れる複数の回折ピークの強度が特定の関係を満たす場合に、当該ガラスが高い透明性を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は以下を提供する。
(構成1)
X線回折法で得られるX線回折スペクトルにおいて、
回折角2θ=23.50°~24.00°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=24.05°~24.55°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=24.60°~25.05°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=25.20°~26.60°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、
(I+I)/(I+I)が1.60以上である、
結晶相を含むガラス。
(構成2)
(I+I)/(I+I)が4.50以下である、構成1に記載の結晶相を含むガラス。
(構成3)
がIより大きい、構成1又は2に記載の結晶相を含むガラス。
(構成4)
がIより大きい、構成1~3のいずれかに記載の結晶相を含むガラス。
(構成5)
がIより大きい、構成1~4のいずれかに記載の結晶相を含むガラス。
(構成6)
がIより大きい、構成1~5のいずれかに記載の結晶相を含むガラス。
(構成7)
~IのうちIが最大である、構成1~6のいずれかに記載の結晶相を含むガラス。
(構成8)
X線回折スペクトルにおける回折角2θ=26.60°~27.10°の位置において回折ピークを有さない、構成1~7のいずれかに記載の結晶相を含むガラス。
(構成9)
結晶化ガラスである、構成1~8のいずれかに記載の結晶相を含むガラス。
(構成10)
原ガラスの組成が酸化物換算の質量%で、
SiO成分の含量 65.0%~85.0%、
Al成分の含量 3.0%~15.0%、
成分の含量 0%超~5.0%、
LiO成分の含量 5.0%超~15.0%、
ZrO成分の含量 0%~10.0%、
MgO成分の含量 0%~5.0%
である、構成1~9のいずれかに記載の結晶相を含むガラス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い透明性を有する、結晶相を含むガラスが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】X線回折スペクトルにおける回折ピークとピーク強度の関係を示す概略図である。
図2】実施例1で得られたX線回折スペクトルである。
図3】実施例9で得られたX線回折スペクトルである。
図4】比較例1で得られたX線回折スペクトルである。
図5】比較例2で得られたX線回折スペクトルである。
図6】比較例3で得られたX線回折スペクトルである。
図7】比較例4で得られたX線回折スペクトルである。
図8】比較例5で得られたX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の結晶相を含むガラスの実施形態及び実施例について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態及び実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
[結晶相を含むガラス]
本発明の一態様に係る結晶相を含むガラスは、X線回折法で得られるX線回折スペクトルが以下の条件を満たす。すなわち、
回折角2θ=23.50°~24.00°の位置(以下、「範囲1」とも言う。)に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=24.05°~24.55°の位置(以下、「範囲2」とも言う。)に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=24.60°~25.05°の位置(以下、「範囲3」とも言う。)に存在する回折ピークの回折強度をI
回折角2θ=25.20°~26.60°の位置(以下、「範囲4」とも言う。)に存在する回折ピークの回折強度をIとしたとき、
(I+I)/(I+I)が1.60以上である。
以下、上記関係式「(I+I)/(I+I)」を「式(1)」と言う場合がある。
【0011】
上記の結晶相を含むガラスは、X線回折スペクトル上の特定の条件(式(1))を満たすことから、高い光線透過率を発現し、透明性に優れる。このため、スマートフォンのカバーガラスや筐体の部材、タブレット型PCやウェアラブル端末等の携帯電子機器の部材、車や飛行機等の輸送機体で使用される保護プロテクターやヘッドアップディスプレイ用基板等の部材として利用でき、上記ガラスの高い透明性が上記各デバイスの利用価値を向上し得る。
以下、本発明の結晶相を含むガラスに係る各構成について説明する。
【0012】
<式(1)>
本発明者らは、X線回折スペクトルの範囲1~範囲4に現れる回折ピークの強度に着目し、高角側の2カ所(範囲3及び4)に現れる回折ピークの回折強度の合計が、小角側の2カ所(範囲1及び2)に現れる回折ピークの回折強度の合計よりも一定以上大きい場合に、結晶相を含むガラスが高い透明性を示すことを見出した。式(1)はこのことを表現したものである。
【0013】
なお、本発明の結晶相を含むガラスは、結晶相として、例えば、二ケイ酸リチウム(リチウムダイシリケート又はリチウムジシリケートとも言う)に由来する結晶相、ペタライトに由来する結晶相、β石英固溶体に由来する結晶相、及びバージライトに由来する結晶相からなる群から選択される1以上の結晶相を含んでもよい。
一態様において、本発明の結晶相を含むガラスは、二ケイ酸リチウムに由来する結晶相、ペタライトに由来する結晶相、β石英固溶体に由来する結晶相、及びバージライトに由来する結晶相を含む。
一態様において、本発明の結晶相を含むガラスは、二ケイ酸リチウムに由来する結晶相、バージライトに由来する結晶相、及びβ石英固溶体に由来する結晶相を含む。
一態様において、本発明の結晶相を含むガラスは、二ケイ酸リチウムに由来する結晶相、及びバージライトに由来する結晶相を含む。
【0014】
(式(1))
(I+I)/(I+I)は1.60以上であれば特に制限はない。
(I+I)/(I+I)は、例えば、1.70以上、1.80以上、又は1.90以上であってもよい。
(I+I)/(I+I)の上限値は特に制限はなく、例えば、4.50以下である。
【0015】
~Iの大小関係に特に制限はないが、一態様において、I~IのうちIが最大である。
とIの大小関係に特に制限はないが、一態様において、IはIより大きく(I>I)、例えば、IはIの2倍より大きい(I>2I)。
とIの大小関係に特に制限はないが、一態様において、IはIより大きく(I>I)、例えば、IはIの2倍より大きい(I>2I)。
とIの大小関係に特に制限はないが、一態様において、IはIより大きい(I>I)。
とIの大小関係に特に制限はないが、一態様において、IはIより大きい(I>I)。
【0016】
なお、範囲1~範囲4の4つの範囲全てにおいて回折ピークが存在することは必ずしも必要ではなく、例えば、範囲1及び2のいずれかに回折ピークが存在しない場合であっても、式(1)を満たす限り、本発明に属する結晶相を含むガラスである。
【0017】
(X線回折スペクトル)
「回折角2θ=AA°~BB°の位置に存在する回折ピーク」とは、回折角2θ=AA°~BB°の範囲におけるX線回折スペクトルの極大値を示す凸部を言い、当該範囲に2つ以上の回折ピークが存在する場合、そのうちの最大の回折強度を有する回折ピークを言う。なお、上記より自明であるが、回折角2θ=AA°~BB°の範囲に極大値が存在しない場合、当該範囲に回折ピークは存在しない。また、「回折ピーク」は、ノイズと明確に区別できる程度の大きさを有する回折ピークのことを言う。
X線回折スペクトルにおける回折ピークとピーク強度の関係を示す概略図を図1に示す。X線回折スペクトルは実施例に記載の方法により取得する。
【0018】
(他の回折ピーク等)
本発明の結晶相を含むガラスは、X線回折スペクトルにおける回折角2θ=26.60°~27.10°の位置(以下、「範囲5」とも言う。)に回折ピークを有してもよいし、有さなくてもよい(範囲5における回折ピークの回折強度を「I」とも言う。)。
本発明の一態様に係る結晶相を含むガラスは、範囲5において回折ピークを有さない。これにより、より高い透明性が得られるという効果が期待される。
「回折ピークを有さない」とは、ノイズと明確に区別できる程度の大きさを有する回折ピークが存在しないことを言う。
図1図2(実施例1)、図3(実施例9)及び図4(比較例1)に示すX線回折スペクトルは範囲5において回折ピークを有さない例であり、図5~8(比較例2~5)に示すX線回折スペクトルは範囲5において回折ピークを有する例である。
なお、範囲5において回折ピークを示す結晶相として、メタケイ酸リチウム由来の結晶相が挙げられる。
【0019】
<結晶相を含むガラス>
本発明の結晶相を含むガラスは、結晶相とガラス相とを有するガラス材料であり、非晶質材料とは区別される。
本発明の結晶相を含むガラスは、例えば結晶化ガラスである。
本発明の結晶相を含むガラスは、後述する製造方法及び実施例に倣い、原料組成や製造条件を調整することで製造できる。
また、本発明の結晶相を含むガラスは、各種強化法(化学強化法、熱強化法及びイオン注入法等)により表面に圧縮応力層を形成することができる。
【0020】
一態様において、本発明の結晶相を含むガラス(例えば結晶化ガラス)は、厚み10mmのサンプルで550nmにおける光線透過率(%)が70%以上、75%以上、又は80%以上である。550nmにおける光線透過率(%)は実施例に記載の方法により測定する。
【0021】
一態様において、本発明の結晶相を含むガラス(例えば結晶化ガラス)は、厚み10mmのサンプルで400~800nmにおける平均光線透過率(%)が70%以上、75%以上、又は80%以上である。400~800nmにおける平均光線透過率(%)は実施例に記載の方法により測定する。
【0022】
一態様において、本発明の結晶相を含むガラス(例えば結晶化ガラス)は、100~300℃における平均線膨張係数が8×10-6-1以下、7×10-6-1以下、又は5×10-6-1以下であり、例えば、2×10-6-1以上、又は3×10-6-1以上である。平均線膨張係数は実施例に記載の方法により測定する。
【0023】
(結晶化ガラス)
結晶化ガラスとは、ガラスセラミックスとも呼ばれ、ガラスを熱処理することでガラス内部に結晶を析出させている材料である。結晶化ガラスは、結晶相とガラス相を有する材料であり、非晶質固体とは区別される。一般的に、結晶化ガラスの結晶相は、X線回折分析のX線回折図形において現れるピークの角度を用いて判別される。
【0024】
結晶化ガラスは、以下の方法で作製できる。すなわち、各成分が所定の含有量の範囲内になるように原料を均一に混合し、熔解成形して原ガラスを製造する。次に、この原ガラスを結晶化して結晶化ガラスを作製する。
【0025】
(原ガラス)
一態様において、原ガラスの組成は、酸化物換算の質量%で、
SiO成分の含量が65.0%~85.0%、
Al成分の含量が3.0%~15.0%、
成分の含量が0%超~5.0%、
LiO成分の含量が5.0%超~15.0%、
ZrO成分の含量が0%~10.0%、
MgO成分の含量が0%~5.0%である。
また、一態様において、
[Al成分の含量/(KO成分の含量+MgO成分の含量)]が0超~20.0、
[LiO成分の含量/MgO成分の含量]が6.0以上である。
【0026】
本明細書中において、各成分の含有量は、特に断りがない場合、全て酸化物換算の質量%で表示する。ここで、「酸化物換算」とは、結晶化ガラス構成成分が全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該酸化物の総質量を100質量%としたときの、結晶化ガラス中に含有される各成分の酸化物の量を、質量%で表記したものである。本明細書において、A%~B%はA%以上B%以下を表す。
【0027】
原ガラスは、熱加工により曲面形状へ変形させやすく、結晶化ガラス部材が高い可視域の光線透過率を得るため、上記の組成であることに加え、以下の構成であってもよい。
【0028】
SiO成分は、結晶相を含むガラスを構成する骨格成分であり、安定性を高め、所望の結晶相を析出させるための成分である。SiO成分の含有量が85.0%以下とすると、過剰な粘性の上昇や熔解性の悪化を抑制することができ、また、65.0%以上とすることで、結晶相を含むガラスの安定性を向上することができる。
したがって、好ましくは上限を85.0%以下、より好ましくは83.0%以下、さらに好ましくは80.0%以下とする。また、好ましくは下限を65.0%以上とし、例えば68.0%以上、又は70.0%超としてもよい。
【0029】
Al成分は、無機組成部物品を構成する骨格成分であり、安定性を高めるための成分である。Al成分の含有量が15.0%以下であると、失透性の悪化を抑制することができ、また、3.0%以上であると、安定性の悪化を抑制することができる。
したがって、好ましくは上限を15.0%以下、より好ましくは13.0%以下とし、例えば12.0%未満としてもよい。また、好ましくは下限を3.0%以上、より好ましくは4.0%以上、より好ましくは5.0%以上、より好ましくは7.0%超、より好ましくは8.0%超とできる。
【0030】
成分は、結晶相を含むガラスの結晶形成を促す必須成分である。P成分の含有量が5.0%以下であると、ガラスの分相を抑制することができる。
したがって、好ましくは上限を5.0%以下、より好ましくは4.5%以下、さらに好ましくは4.0%以下とする。また、好ましくは下限を0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上とできる。
成分の含量は3.0%以下、2.7%以下、又は2.5%以下としてもよい。また、P成分の含量は1.5%以上、又は2.0%以上としてもよい。
【0031】
LiO成分は、原ガラスの熔融性を向上させ、製造性を高める成分である。LiO成分の含有量が15.0%以下であると、失透性の悪化を抑制することができ、また、5.0%超とすると粘性の悪化と熔融性の悪化を抑制し、製造性を高めることができる。
したがって、好ましくは下限を5.0%超、より好ましくは6.0%以上、さらに好ましくは7.0%以上とする。また、好ましくは上限を15.0%以下、より好ましくは13.0%以下とし、例えば12.0%以下としてもよい。
【0032】
ZrO成分は、0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に結晶の核形成剤となる成分である。ZrO成分の含有量が10.0%以下であると熔解性の悪化を抑制することができる。
したがって、好ましくは上限を10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下とする。また、3.0%以下、2.5%以下、又は2.5%未満としてもよい。また、好ましくは下限を0%以上、より好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.5%以上とできる。また、0.8%以上、1.0%以上、又は1.5%超とできる。
【0033】
MgO成分は、0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に低温熔融性を向上させる成分である。MgO成分の含有量が5.0%以下であると、化学強化を行う際に強化しやすくなる。
したがって、好ましくは上限を5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%未満とできる。また、好ましくは下限を0%以上、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上とできる。
【0034】
ZnO成分は、0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に低温熔融性を向上させる成分である。ZnO成分の含有量が5.0%以下であると、化学強化を行う際に強化しやすくなる。
したがって、好ましくは上限を5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%未満とできる。また、好ましくは下限を0%以上、より好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上とできる。
【0035】
CaO成分は、0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に低温熔融性を向上させる成分である。CaO成分の含有量が5.0%以下であると、化学強化を行う際に強化しやすくなる。
したがって、好ましくは上限を5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%未満とできる。
【0036】
SrO成分、BaO成分は、それぞれ、0%でも本発明に係るガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に低温熔融性を向上させる成分である。SrO成分、BaO成分の含有量が、それぞれ、5.0%以下であると、化学強化を行う際に強化しやすくなる。
したがって、SrO成分、BaO成分は、それぞれ、好ましくは上限を5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下とできる。
【0037】
Gd成分は、0%でも本発明に係るガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に、屈折率を高め、かつ部分分散比を小さくできる成分である。一方、Gd成分を多量に含有すると、液相温度が下がり、ガラスを失透させてしまう恐れがある。Gd成分を10.0%以下にすることで、失透を低減でき、かつ着色を低減できる。
したがって、Gd成分の含有量の上限は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、最も好ましくは3.0%以下とする。
【0038】
CaO成分及びMgO成分の合計含有量[CaO成分の含量+MgO成分の含量]は、5.0%以下とすることで化学強化がしにくくなることを抑制でき、0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に熔融性の悪化を抑制することができる。
したがって、[CaO成分の含量+MgO成分の含量]の好ましい上限は5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%以下とする。
また、[CaO成分の含量+MgO成分の含量]の好ましい下限は0%以上、より好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上とできる。
【0039】
O成分、NaO成分は、原ガラスの熔融性を向上させ、製造性を高める成分である。KO成分、NaO成分の含有量が、それぞれ、5.0%以下であると、失透性の悪化を抑制することができる。また、KO成分、NaO成分が、それぞれ、0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に粘性の悪化と熔融性の悪化を抑制し、製造性を高めることができる。
したがって、KO成分、NaO成分は、それぞれ、好ましくは下限を0%以上、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上とする。また、KO成分、NaO成分は、それぞれ、好ましくは上限を5.0%以下、より好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満とする。
【0040】
Sb成分は、原ガラスを製造する際の清澄剤として機能する成分である。Sb成分を過剰に含有すると、可視光領域の短波長領域における透過率が悪くなる恐れがある。したがって、好ましくは上限を2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.5%以下とできる。
また、好ましくは下限を0%以上、より好ましくは0%超、より好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上とできる。
【0041】
成分は、原ガラスの粘性を下げる効果がある。B成分の含有量が10.0%以下であると、失透性の悪化を抑制することができる。また、B成分の含有量が0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に原ガラスの粘性悪化と熔融性の悪化を抑制することができる。
したがって、好ましくは上限を、10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは7.0%以下、より好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下とできる。
また、好ましくは下限を0%以上、より好ましくは0%超、より好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上、さらに好ましくは0.30%以上とできる。
【0042】
O成分及びNaO成分の合計含有量[KO成分の含量+NaO成分の含量]は、0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に粘性の悪化を抑制し、熔融温度が高くなることを抑制することができる。また、5.0%以下とすることで失透性の悪化を抑制することができる。
したがって、[KO成分の含量+NaO成分の含量]は、好ましくは下限を0%以上、より好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上とする。また、好ましくは上限を5.0%以下、より好ましくは4.0%以下、より好ましくは4.0%未満、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満とする。
【0043】
MgO成分、CaO成分、SrO成分、BaO成分及びZnO成分の合計含有量[MgO成分+CaO成分+SrO成分+BaO成分+ZnO成分]は、15.0%以下とすることで化学強化をしやすくすることができる。また、[MgO成分+CaO成分+SrO成分+BaO成分+ZnO成分]が0%でも本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0%超含有する場合に熔融性の悪化を抑制することができる。
したがって、[MgO成分+CaO成分+SrO成分+BaO成分+ZnO成分]は、好ましくは下限を0%以上、より好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上とし、1.0%以上としてもよい。また、好ましくは上限を15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.5%以下とする。
【0044】
[Al成分の含量/KO成分の含量]は、100.0以下とすることで粘性の悪化を抑制することができる。また0.6以上とすることで失透性の悪化を抑制することができる。
したがって、[Al成分の含量/KO成分の含量]の好ましい上限は100.0以下、より好ましくは80.0以下、より好ましくは60.0以下、より好ましくは40.0以下、より好ましくは20.0以下、さらに好ましくは15.0以下とする。
また、[Al成分の含量/KO成分の含量]の好ましい下限は0.6以上、より好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは5.7以上とする。また、KO成分の含量を0とできる。
【0045】
[Al成分の含量/(KO成分の含量+MgO成分の含量)]が20.0以下とすれば、粘性の悪化を抑制することができる。また、0超とすると、失透性の悪化を抑制することができる。
したがって、好ましい上限は20.0以下、より好ましくは18.0以下、より好ましくは16.0以下、さらに好ましくは15.0以下とする。
また、[Al成分の含量/(KO成分の含量+MgO成分の含量)]の好ましい下限は0超、より好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.6以上とする。
【0046】
[Al成分の含量/(ZnO成分の含量+MgO成分の含量)]は20.0以下とすることで熔融性の悪化を抑制することができ、3.0以上とすることで失透性の悪化を抑制することができる。
したがって、[Al成分の含量/(ZnO成分の含量+MgO成分の含量)]の好ましい上限は20.0以下、より好ましくは18.0以下、さらに好ましくは17.0以下とし、16.0以下としてもよい。また、好ましい下限は3.0以上、より好ましくは4.0以上とし、5.0超としてもよい。
【0047】
[LiO成分の含量/MgO成分の含量]が150.0以下とすることで失透性が悪化することを抑制することができ、6.0以上とすることで化学強化をしやすくすることができる。
したがって、[LiO成分の含量/MgO成分の含量]の好ましい上限は150.0以下、より好ましくは100.0以下、より好ましくは50.0以下、より好ましくは30.0以下とすることができる。また、25.0以下、又は23.0以下としてもよい。また、MgOを0とすることができる。
一方で、[LiO成分の含量/MgO成分の含量]の好ましい下限は6.0以上であり、7.0以上、8.0以上、9.0以上、9.5以上、10.0以上、又は10.6以上としてもよい。
【0048】
[LiO成分の含量/(MgO成分の含量+CaO成分の含量+SrO成分の含量+BaO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量)]が50.0以下とすることで、熔融性を高め、失透性の悪化を抑制することができる。また、1.0以上とすることで化学強化がしにくくなることを抑制できる。
したがって、[LiO成分の含量/(MgO成分の含量+CaO成分の含量+SrO成分の含量+BaO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量)]の好ましい上限は50.0以下、より好ましくは35.0以下、より好ましくは30.0以下、より好ましくは20.0以下、より好ましくは15.0以下、より好ましくは13.0以下、さらに好ましくは10.0以下とすることができる。
また、[LiO成分の含量/(MgO成分の含量+CaO成分の含量+SrO成分の含量+BaO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量)]を0とすることができる。
一方、[LiO成分の含量/(MgO成分の含量+CaO成分の含量+SrO成分の含量+BaO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量)]の好ましい下限は1.0以上、より好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.0超とすることもできる。
【0049】
[MgO成分の含量/(LiO成分の含量+MgO成分の含量)]は、0.6以下とすることで化学強化がしにくくなることを抑制し、失透性の悪化を抑制することができ、下限が0であっても本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0超とすることで失透性を保ちつつ、低温熔融性を高めることができる。
したがって、[MgO成分の含量/(LiO成分の含量+MgO成分の含量)]の好ましい上限は0.6以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.15未満とする。
一方で、[MgO成分の含量/(LiO成分の含量+MgO成分の含量)]の好ましい下限は0以上、より好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.04以上とできる。
【0050】
LiO成分、NaO成分、及びKO成分の合計含有量[LiO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量]は熔融性を高め、原ガラスの作りやすさの指標である。すなわち、17.0%以下とすることで、失透性の悪化を抑制することができ、3.0%以上とすることで粘性の悪化及び熔融温度が高くなることを抑制することができる。
したがって、[LiO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量]の好ましい上限は17.0%以下、より好ましくは15.0%以下、さらに好ましくは14.0%以下とする。
また、[LiO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量]の好ましい下限は3.0%以上、より好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは8.0%以上とできる。
【0051】
LiO成分及びP成分の合計含有量[LiO成分の含量+P成分の含量]は、18.0%以下であれば失透性の悪化を抑制することができる。また、[LiO成分の含量+P成分の含量]は、例えば8.0%以上である。
したがって、[LiO成分の含量+P成分の含量]の好ましい上限は18.0%以下、より好ましくは17.0%以下とし、例えば15.0%以下、14.0%以下、又は13.8%以下としてもよい。
また、[LiO成分の含量+P成分の含量]の好ましい下限は8.0%以上、より好ましくは9.0%以上、より好ましくは10.0%以上、より好ましくは11.5%以上、さらに好ましくは12.01%以上とできる。
【0052】
LiO成分及びP成分及びAl3の合計含有量[LiO成分の含量+P成分の含量+Al3成分の含量]は、40.0%以下であれば失透性の悪化を抑制することができる。また、[LiO成分の含量+P成分の含量+Al3成分の含量]は、21.5%以上であれば微細結晶の析出を促す効果が期待される。
したがって、[LiO成分の含量+P成分の含量+Al3成分の含量]の好ましい上限は40.0%以下、より好ましくは35.0%以下とし、27.5%以下、25.0%以下、24.5%以下、24.0%以下、23.8%以下、又は23.5%以下としてもよい。
また、[LiO成分の含量+P成分の含量+Al3成分の含量]の好ましい下限は21.5%以上、より好ましくは21.8%以上、より好ましくは22.0%以上、より好ましくは22.5%以上とでき、22.8%以上としてもよい。
【0053】
[P成分の含量/MgO成分の含量]は、50.0以下であれば、低温熔融性の悪化を抑制することができる。また、[P成分の含量/MgO成分の含量]は、例えば0超である。
したがって、[P成分の含量/MgO成分の含量]の好ましい上限は50.0以下、より好ましくは30.0以下、より好ましくは10.0以下、より好ましくは7.0以下とし、5.0以下、4.1以下、4.0以下、又は3.7以下としてもよい。また、MgO成分の含量を0とできる。
また、[P成分の含量/MgO成分の含量]の好ましい下限は0超、より好ましくは0.02以上、より好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは1.0以上とでき、1.5以上、又は2.4以上としてもよい。
【0054】
[SiO成分の含量/ZrO成分の含量]は、例えば150.0以下であり、10.0以上とすることで失透性の悪化を抑制することができる。
したがって、[SiO成分の含量/ZrO成分の含量]の好ましい上限は150.0以下であり、100.0以下、50.0以下、40.0以下、37.0以下、35.4以下、35.0以下、33.7以下、又は32.7以下としてもよい。
また、[SiO成分の含量/ZrO成分の含量]の好ましい下限は10.0以上であり、13.0以上、15.0以上、17.0以上、18.0以上、19.6以上、29.9以上としてもよい。
【0055】
[SiO成分の含量/LiO成分の含量]は、17.0以下とすることで低温熔融性の悪化を抑制することができる。また、[SiO成分の含量/LiO成分の含量]は例えば4.0以上である。
したがって、[SiO成分の含量/LiO成分の含量]の好ましい上限は17.0以下、より好ましくは15.0以下、より好ましくは13.0以下、より好ましくは10.0以下、より好ましくは9.0以下、さらに好ましくは7.6以下とする。
また、[SiO成分の含量/LiO成分の含量]の好ましい下限は4.0以上、より好ましくは4.3以上、さらに好ましくは5.0以上とできる。
【0056】
[SiO成分の含量/P成分の含量]は、例えば100.0以下であり、13.0以上とすることで失透性の悪化を抑制することができる。
したがって、[SiO成分の含量/P成分の含量]の好ましい上限は100.0以下、より好ましくは80.0以下、より好ましくは50.0以下、より好ましくは40.0以下、さらに好ましくは39.0以下とする。
また、[SiO成分の含量/P成分の含量]の好ましい下限は13.0以上、より好ましくは17.0以上、より好ましくは20.0以上とできる。また、25.0以上、30.0以上、又は33.0以上としてもよい。
【0057】
[SiO成分の含量/(P成分の含量+ZrO成分の含量)]は、例えば100.0以下であり、4.3以上とすることで失透性の悪化を抑制することができる。
したがって、[SiO成分の含量/(P成分の含量+ZrO成分の含量)]の好ましい上限は100.0以下、より好ましくは80.0以下、より好ましくは50.0以下、より好ましくは42.5以下、より好ましくは35.0以下とし、30.0以下、25.0以下、20.0以下、又は17.99以下としてもよい。
また、[SiO成分の含量/(P成分の含量+ZrO成分の含量)]の好ましい下限は4.3以上、より好ましくは10.0以上とできる。また、13.0以上、15.0以上、又は16.1以上としてもよい。
【0058】
[SiO成分の含量/(NaO成分の含量+KO成分の含量)]は、120.0以下とすることで低温熔融性の悪化を抑制することができる。また、[SiO成分の含量/(NaO成分の含量+KO成分の含量)]は、例えば23.0以上である。
したがって、[SiO成分の含量/(NaO成分の含量+KO成分の含量)]の好ましい上限は120.0以下、より好ましくは110.0以下、好ましくは100.0以下(又は100.0未満)、より好ましくは90.0%以下、さらに好ましくは80.0%以下とする。
また、[SiO成分の含量/(NaO成分の含量+KO成分の含量)]の好ましい下限は23.0以上、より好ましくは25.0以上、より好ましくは30.0以上、より好ましくは35.0以上とし、54.0以上としてもよい。
【0059】
[ZnO成分の含量/(LiO成分の含量+P成分の含量+MgO成分の含量)]は、例えば1.0以下であり、下限が0であっても本発明に係る結晶相を含むガラスを作製することができるが、0超とすることで失透性を保ちつつ、低温熔融性を高めることができる。
したがって、[ZnO成分の含量/(LiO成分の含量+P成分の含量+MgO成分の含量)]の好ましい上限は1.0以下、より好ましくは0.09以下、より好ましくは0.06未満、さらに好ましくは0.05以下とする。
また、[ZnO成分の含量/(LiO成分の含量+P成分の含量+MgO成分の含量)]の好ましい下限は0以上、より好ましくは0超、より好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上とできる。
【0060】
[(SiO成分の含量+Al成分の含量+P成分の含量)/(LiO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量+MgO成分の含量)]は、9.0以下とすることで低温熔融性の悪化を抑制することができ、0.7以上とすることで結晶析出を促すことができる。
したがって、[(SiO成分の含量+Al成分の含量+P成分の含量)/(LiO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量+MgO成分の含量)]の好ましい上限は9.0以下、より好ましくは8.0以下、より好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7.25未満とする。
また、[(SiO成分の含量+Al成分の含量+P成分の含量)/(LiO成分の含量+NaO成分の含量+KO成分の含量+MgO成分の含量)]の好ましい下限は0.7以上、より好ましくは4.0以上、より好ましくは5.0以上であり、6.0以上としてもよい。
【0061】
本発明の結晶相を含むガラスは、本発明の効果を損なわない範囲で、TiO、Bi、Cr、CuO、La、MnO、MoO、PbO、V、WO、Y成分をそれぞれ含んでもよいし、含まなくてもよい。これらの成分を含まないことで透過率が悪化することを防ぐ効果がある。
【0062】
さらに結晶化ガラスには、上述されていない他の成分を、本発明の結晶化ガラスの特性を損なわない範囲で、含んでもよいし、含まなくてもよい。例えば、Yb、Lu、Fe、Co、Ni及びAg等の金属成分(これらの金属酸化物を含む)等である。
【0063】
またガラスの清澄剤として、Sb成分の他、SnO成分、CeO成分、As成分、及びF、NOx、SOxの群から選択された一種または二種以上を含んでもよいし、含まなくてもよい。ただし、清澄剤の含有量は、好ましくは上限を3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.6%以下とできる。
【0064】
一方、Pb、Th、Tl、Os、Be、Cl及びSeの各成分は、近年有害な化学物質として使用を控える傾向にあるため、これらを実質的に含有しないことが好ましい。「実質的に含有しない」とは、これらが不可避不純物として含まれるか、又は全く含まれない場合を言う。これら成分の合計量は、例えば、0.1%以下である。
【0065】
(結晶化ガラスの製造方法)
結晶析出のための熱処理は、1段階でもよく2段階の温度で熱処理してもよい。
2段階熱処理では、まず第1の温度で熱処理することにより核形成工程を行い、この核形成工程の後に、核形成工程より高い第2の温度で熱処理することにより結晶成長工程を行う。
2段階熱処理の第1の温度は400℃~750℃が好ましく、より好ましくは450℃~720℃、さらに好ましくは500℃~680℃とできる。また、550℃~650℃とすることもできる。第1の温度での保持時間は30分~2000分が好ましく、180分~1440分がより好ましい。
2段階熱処理の第2の温度は550℃~850℃が好ましく、より好ましくは600℃~800℃とできる。また、650℃~750℃とすることもできる。第2の温度での保持時間は30分~600分が好ましく、60分~400分がより好ましい。
【0066】
1段階熱処理では、1段階の温度で核形成工程と結晶成長工程を連続的に行う。通常、所定の熱処理温度まで昇温し、当該熱処理温度に達した後に一定時間その温度を保持し、その後、降温する。
1段階熱処理する場合、熱処理の温度は600℃~800℃が好ましく、630℃~770℃がより好ましい。また、熱処理の温度での保持時間は30分~500分が好ましく、60分~400分がより好ましい。
【実施例0067】
実施例1~68、比較例1~5
(1)原料の調製
結晶化ガラスの各成分の原料として各々相当する酸化物の原料を選定し、これらの原料を表1~4に記載の組成になるように秤量して均一に混合した。
【0068】
(2)結晶化ガラスの製造
次に、混合した原料を白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1300℃~1600℃で、2~24時間熔融した。その後、熔融したガラスを撹拌して均質化してから1000℃~1450℃に温度を下げてから金型に鋳込み、徐冷して原ガラスを作製した。
得られた原ガラスを表5~8に示す核形成条件及び結晶化(核成長)条件で加熱して結晶化ガラスを作製した。表5~8中、「-」は対応する工程を行わなかったことを示す。
【0069】
(3)X線回折(XRD)測定
(2)で得られた結晶化ガラスを切断加工し、厚さ5mmの板状の測定サンプルとした。当該測定サンプルについて、JIS K0131(1996)に準拠して、自動X線回折装置(ブルカー社製「D8 DISCOVER」)により、CuKα線を使用して、2θ=15~30°の範囲において、0.02°の間隔で、X線回折法による分析を行った。得られた回折パターンから、装置固有のバックグラウンドを除去したものをX線回折スペクトルとした。「装置固有のバックグラウンド」は、測定サンプルを用いずに同条件で測定して得られた回折パターンである。
【0070】
X線回折スペクトルにおけるI~Iを表5~8に示す。表5~8中、「-」は対応するピークが存在しなかったことを示す。I~Iの全てが「-」である実施例はX線回折分析を行わなかったことを示す。
また、上記I~Iから算出される「(I+I)/(I+I)」を表5~8に示す。
実施例1で得られたX線回折スペクトルを図2、実施例9で得られたX線回折スペクトルを図3、比較例1~5で得られたX線回折スペクトルをそれぞれ図4~8に示す。X線回折スペクトルにおいて縦軸は強度(カウント数、無単位)、横軸は2θである。
なお、X線回折分析を行った全実施例では、二ケイ酸リチウムに由来する結晶相、ペタライトに由来する結晶相、β石英固溶体に由来する結晶相、及びバージライトに由来する結晶相が確認され、メタケイ酸リチウム由来の結晶相は確認されなかった。
【0071】
(4)光線透過率の測定
(2)で得られた結晶化ガラスを研磨加工し、厚さ10mmの板状の測定サンプルとした。当該測定サンプルについて、分光光度計(日立ハイテクノロジー製「U-4000」)により、550nmにおける光線透過率(%)と、400~800nmにおける平均光線透過率(%)を測定した。結果を表5~8に示す。「-」は当該測定を行わなかったことを示す。
【0072】
(5)平均線膨張係数の測定
実施例3の(2)で得られた結晶化ガラスについて、日本光学硝子工業会規格JOGIS08-2019「光学ガラスの熱膨張の測定方法」に従い、100~300℃における平均線膨張係数を測定した。
平均線膨張係数は47×10-7-1であった。
【0073】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】

【0074】
表5~8より、(I+I)/(I+I)が1.60以上であることが確認された全実施例では、優れた光線透過率が得られたことが分かる。実施例35、38及び41~51ではガラスの結晶化を行っていないが、これら実施例の原料ガラス組成であれば、他の実施例等を参照しながら適宜条件を調整して結晶化することで、式(1)を満たし、高い透明性を発揮する結晶化ガラスが製造可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8