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  • 特開-物質を分類するシステム及び方法 図1
  • 特開-物質を分類するシステム及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109522
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】物質を分類するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/044 20180101AFI20240806BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240806BHJP
   G01N 23/201 20180101ALI20240806BHJP
【FI】
G01N23/044
G01N23/04
G01N23/201
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024003657
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】23154494
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523454913
【氏名又は名称】ジースキャン オーウー
【氏名又は名称原語表記】GScan OU
【住所又は居所原語表記】Maealuse tn 2/1, Mustamae linnaosa, 12618 Tallinn, Estonia
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】マギ マルト
(72)【発明者】
【氏名】アヴォツ エギルス
(72)【発明者】
【氏名】アクタス カディア
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA08
2G001BA11
2G001BA14
2G001CA08
2G001DA01
2G001DA09
2G001FA29
2G001HA14
2G001KA01
2G001LA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】物質を分類するシステムを提供する。
【解決手段】このシステムは、少なくとも1つの第1(二次元)検出器ユニット(104)及び少なくとも1つの第2(二次元)検出器ユニット(106)を有する少なくとも1つのホドスコープ(106)と、ホドスコープに結合されたプロセッサ(114)を備える。第1及び第2検出器ユニットの間にはVOI 110が形成され、物質サンプル(112)がVOI内に置かれる。プロセッサは、複数の空間解像単位(116)を用いてVOIを再構成し、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することにより、VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングし、物質サンプルに関連付けられた特徴を用いてデータセットを作成し、このデータセットを使用して機械学習モデルを訓練するように構成される。物質を分類する方法も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を分類するシステムであって、
・ 少なくとも1つの第1(二次元)検出器ユニット及び少なくとも1つの第2(二次元)検出器ユニットを有する少なくとも1つのホドスコープであって、
前記第1検出器ユニット及び前記第2検出器ユニットは、該第1検出器ユニットと該第2検出器ユニットとの間に関心空間(VOI)を形成するように、所定の第1の距離だけ離間されており、前記VOIは該VOI内に物質サンプルを受容するように構成される、少なくとも1つのホドスコープと;
・ 前記少なくとも1つのホドスコープに通信可能に結合されたプロセッサと;
を備え、前記プロセッサは、
・ 複数の空間解像単位を用いて前記VOIを再構成することと、
・ 高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することによって、前記VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることであって、前記識別された空間解像単位の各々は、前記VOIに受容された前記物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴を示す、前記トラッキングすることと、
・ 前記物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットを作成することであって、前記物質サンプルの各々の前記データセットが一意のデータシグネチャを含む、前記作成することと、
・ 物質を分類するために、前記物質サンプルの各々の前記データセットを使用して機械学習モデルを訓練することと、
を行うように構成される、システム。
【請求項2】
前記VOI及び前記空間解像単位は立方体状であり、前記空間解像単位の各々が体積を有し、複数がまとまって前記VOIを構成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第1検出器ユニット及び/又は前記第2検出器ユニットを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることによって、前記VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングするように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記特徴は、散乱角の測定値と、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位の各々を通過した高エネルギー粒子の数の測定値のいずれかを含む、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、ヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムに対応するベクトル値を定義することによって、前記データセットを作成するように構成される、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、再構成されたVOIを通過する高エネルギー粒子を予め決められた時間トラッキングすることによって前記データセットを作成するように構成される、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記少なくとも1つのホドスコープを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることにより、前記データセットを作成するように構成される、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記物質サンプルは所定のサイズを有し、前記VOI内の所定の位置に配置される、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
物質を分類するために前記機械学習モデルを訓練するように構成される、請求項1から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記機械学習モデルは、線形判別分析,ニューラルネットワーク,LDA One-vs-One(1対1)の少なくとも1つに基づく、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つの第3検出器ユニットを備え、前記第3検出器ユニットは、少なくとも1つの前記第2検出器ユニットとの間に関心空間(VOI)を形成するように、該第2検出器ユニットから所定の第2の距離だけ離間して配置される、請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
物質を分類する方法であって、
・ 内部に物質サンプルを受容ように構成される関心空間(VOI)を、複数の空間解像単位を使用して再構成することと、
・ 高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することによって、前記VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることであって、前記識別された空間解像単位の各々は、前記VOIに受容された前記物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴を示す、前記トラッキングすることと、
・ 前記物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットを作成することであって、前記物質サンプルの各々の前記データセットが一意のデータシグネチャを含む、前記作成することと、
・ 物質を分類するために、前記物質サンプルの各々の前記データセットを使用して機械学習モデルを訓練することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記第1検出器ユニット及び/又は前記第12検出器ユニットを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることによって、前記VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記データセットを作成することは、
・ 散乱角の測定値と、高エネルギー粒子の数の測定値のいずれかを用いてヒストグラムを作成することと、
・ 前記ヒストグラムに対応するベクトル値を定義することと、
を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記VOIを通過する高エネルギー粒子を予め決められた時間トラッキングすることによって前記データセットを作成する、請求項12から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される事項(以下、本開示という)は、物質を分類するシステムに関する。本開示はまた、物質を分類するための方法に関する。
【背景】
【0002】
大気線トモグラフィは2000年代初頭に登場し、Low-Z検出を含め、近年急速に拡大している。大気線トモグラフィは、自然宇宙線を利用したイメージング技術であり、従来のイメージング技術では画像化不能な多様な物体の特徴を明らかにする。一般的に、大気線トモグラフィを使って画像化されるのは物質である。Low-Z物質は、原子核内の陽子の数が少ない、原子番号が小さい物質である。例えば、水素、ヘリウム、炭素などである。
【0003】
現在、核分裂性物質の不正輸送を防止するため、国境警備の現場では放射線検出器やX線スキャナーが使用されている。しかし、この技術では検出能力に限界がある。X線ラジオグラフィシステムには様々な制約がある。乗用車両に使用できないこと、エネルギーと線量が低すぎて物質の深部を通過することができないこと、非常に大きな関心物の最深部の空間を探ることができないことなどがその理由である。これに対して高エネルギー粒子(ミューオンなど)は深く浸透し、あらゆる物質を通過する。また、ミューオン散乱は、物質の密度や原子番号に敏感である。従って、ミューオン散乱によって様々な物質を識別することができる。しかし、高エネルギー粒子をイメージングや物質検出に利用することは、まだあまり一般的ではない。物質分類能力と高い透過性を併せ持つ大気線トモグラフィは、産業やセキュリティ用途に有用な高感度プローブである。
【0004】
このため、従来のイメージング技術に関連する上述の欠点を克服する必要性が存在する。
【摘要】
【0005】
本開示は、物質を分類するためのシステムを提供しようとするものである。本開示はまた、物質を分類するための方法を提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術で遭遇した問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供することである。
【0006】
ある捉え方によれば、本開示の一実施形態は、物質を分類するためのシステムを提供する。このシステムは、
・ 少なくとも1つの第1(二次元)検出器ユニット及び少なくとも1つの第2(二次元)検出器ユニットを有する少なくとも1つのホドスコープであって、
前記第1検出器ユニット及び前記第2検出器ユニットは、該第1検出器ユニットと該第2検出器ユニットとの間に関心空間(VOI)を形成するように、所定の第1の距離だけ離間されており、前記VOIは該VOI内に物質サンプルを受容するように構成される、少なくとも1つのホドスコープと;
・ 前記少なくとも1つのホドスコープに通信可能に結合されたプロセッサと;
を備え、前記プロセッサは、
・ 複数の空間解像単位を用いて前記VOIを再構成することと、
・ 高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することによって、前記VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることであって、前記識別された空間解像単位の各々は、前記VOIに受容された前記物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴を示す、前記トラッキングすることと、
・ 前記物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットを作成することであって、前記物質サンプルの各々の前記データセットが一意のデータシグネチャを含む、前記作成することと、
・ 物質を分類するために、前記物質サンプルの各々の前記データセットを使用して機械学習モデルを訓練することと、
を行うように構成される。
【0007】
別の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、物質を分類するための方法を提供する。この方法は、
・ 内部に物質サンプルを受容ように構成される関心空間(VOI)を、複数の空間解像単位を使用して再構成することと、
・ 高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することによって、前記VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることであって、前記識別された空間解像単位の各々は、前記VOIに受容された前記物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴を示す、前記トラッキングすることと、
・ 前記物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットを作成することであって、前記物質サンプルの各々の前記データセットが一意のデータシグネチャを含む、前記作成することと、
・ 物質を分類するために、前記物質サンプルの各々の前記データセットを使用して機械学習モデルを訓練することと、
を含む。
【0008】
本開示の実施形態は、従来技術における前述の問題を実質的に解消するか、又は少なくとも部分的に解決し、物質サンプルの分類のための機械学習モデルの学習に利用されるデータセットを実現する。上述のシステム及び方法は、Low-Z物質(原子番号の小さな物質)を検出することができ、高エネルギー粒子の正確なトラッキングを可能にする。
【0009】
本願に開示されるものの更なる側面や利点、特徴及び目的は、添付の特許請求の範囲と共に解釈される、添付図面及び例示的実施形態の詳細説明によって明らかにされよう。
【0010】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることが可能であることも理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上記の摘要、及び例示的な実施形態に関する以下の詳細説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的構成を図面に示す。ただし本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び装置に限定されるものではない。また、図面の縮尺は正しいものではない。同様の要素は可能な限り同一の番号で示されている。
以下、本開示の実施形態を、例として次の図面を参照しながら説明する。
図1】本開示の一実施形態による、物質を分類するためのシステムの概略図である。
図2】本開示の一実施形態による、物質を分類する方法のステップを示す。 添付の図面において、下線付きの番号は、その番号が位置している場所のアイテム又はその番号に隣接するアイテムを表わすために使用される。下線無しの番号は、当該番号から延びる線によって特定されるアイテムに関連付けられる。番号に下線が無く矢印を伴って書かれている場合、その番号は矢印が示す一般的なアイテムを特定するために使用される。
【実施形態の詳細説明】
【0012】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態及びそれらが実施され得る方法を例示する。本開示を実施するための形態をいくつか開示したが、当業者であれば、本開示を実施するための他の形態も実現可能であることを認識するであろう。
【0013】
ある捉え方によれば、本開示の一実施形態は、物質を分類するためのシステムを提供する。このシステムは、
・ 少なくとも1つの第1(二次元)検出器ユニット及び少なくとも1つの第2(二次元)検出器ユニットを有する少なくとも1つのホドスコープであって、
前記第1検出器ユニット及び前記第2検出器ユニットは、該第1検出器ユニットと該第2検出器ユニットとの間に関心空間(VOI)を形成するように、所定の第1の距離だけ離間されており、前記VOIは該VOI内に物質サンプルを受容するように構成される、少なくとも1つのホドスコープと;
・ 前記少なくとも1つのホドスコープに通信可能に結合されたプロセッサと;
を備え、前記プロセッサは、
・ 複数の空間解像単位を用いて前記VOIを再構成することと、
・ 高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することによって、前記VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることであって、前記識別された空間解像単位の各々は、前記VOIに受容された前記物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴を示す、前記トラッキングすることと、
・ 前記物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットを作成することであって、前記物質サンプルの各々の前記データセットが一意のデータシグネチャを含む、前記作成することと、
・ 物質を分類するために、前記物質サンプルの各々の前記データセットを使用して機械学習モデルを訓練することと、
を行うように構成される。
【0014】
別の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、物質を分類するための方法を提供する。この方法は、
・ 内部に物質サンプルを受容ように構成される関心空間(VOI)を、複数の空間解像単位を使用して再構成することと、
・ 高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することによって、前記VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることであって、前記識別された空間解像単位の各々は、前記VOIに受容された前記物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴を示す、前記トラッキングすることと、
・ 前記物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットを作成することであって、前記物質サンプルの各々の前記データセットが一意のデータシグネチャを含む、前記作成することと、
・ 物質を分類するために、前記物質サンプルの各々の前記データセットを使用して機械学習モデルを訓練することと、
を含む。
【0015】
本開示は、物質を分類するための上述のシステム、及び、物質を分類するための上述の方法を提供する。上述のシステムは、Low-Z物質を検出し、高エネルギー粒子の正確なトラッキングを可能にするように構成される。更に、上述のシステム及び方法は、物質の異なるサンプルを区別して分類するように構成される。プロセッサは、データセットに基づいて機械学習モデルを訓練し、物質を容易に分類できるように構成される。
【0016】
本明細書を通じて、「ホドスコープ」という用語は、高エネルギー粒子を検出し、高エネルギー粒子の軌跡を決定するように構成される装置を表す。典型的には、ホドスコープは、高エネルギー粒子の経路をトラッキングするために使用される粒子検出器装置である。少なくとも1つのホドスコープは、平面上に配置された一連の平行な細いワイヤ又は薄いプレートを有する。これらのワイヤ又はプレートは、少なくとも1つの第1の(2D感応型)検出器ユニット、及び、少なくとも1つの第2の(2D感応型)検出器ユニットと考えることができる。このホドスコープは複数のファイバーを有する。これらのファイバーは、少なくとも1つの第1検出器ユニット及び少なくとも1つの第2検出器ユニット内に配置されている。実施形態によっては、上記複数のファイバーはシングルクラッド型シンチレーションファイバーである。動作中、高エネルギー粒子が少なくとも1つのホドスコープを通過すると、少なくとも1つの第1検出器ユニット内の原子及び少なくとも1つの第2検出器ユニット内の原子がイオン化し、パルス(電流など)が生じる。このパルス(電流など)は、複数のファイバー又は検出器ユニットによって検出される少なくとも1つのホドスコープに沿った、様々な点におけるパルスのタイミングと強度を測定することは、高エネルギー粒子の位置と運動量を決定するのに役に立つ。少なくとも1つのホドスコープは、素粒子物理学実験、医療イメージング、放射線検出などに使用される。
【0017】
本明細書において、「検出器ユニット」という用語は、高エネルギー粒子のトラッキングと検出を可能にするアセンブリを表す。通常、検出器ユニットは、高エネルギー粒子が検出器ユニットを通過する際の経路をトラッキングするように構成される。通常、高エネルギー粒子は宇宙空間から飛来する。これらの高エネルギー粒子は、主に陽子、水素原子核、ヘリウム原子核、重原子核(ウラン、プルトニウムなど)である。高エネルギー粒子が地球に到着すると、上層大気中の原子核と衝突し、それによって多くの粒子、主にパイ中間子が生成される。荷電パイ中間子は徐々に崩壊し、ミューオンと呼ばれる粒子を放出する。ミューオンと物質との相互作用は非常に小さく、大気を通過して地下に浸透することができる。一般に、ミューオンは、光速の約0.994倍の平均速度で地球に到達する。面積1cm2あたり1分間に1個のミューオンが通過する。物質とほとんど相互作用しない高エネルギー粒子は、停止する前に何メートルもの高密度の物質を通り抜けることができる。高エネルギー粒子は検出器ユニットを容易に通過する。検出器ユニットは、高エネルギー粒子の移動経路を検出するように構成される。検出した移動経路は物質の分類のために使用される。
【0018】
上述の少なくとも1つの第1検出器ユニット及び少なくとも1つの第2検出器ユニットは、高エネルギー粒子の軌跡を検出し決定するように構成される。また、これら第1検出器ユニット及び第2検出器ユニットは、二次元検出器ユニットである。二次元検出器ユニットは、高エネルギー粒子の位置を測定するために使用される検出器プレートの一種である。二次元検出器ユニットは、粒子の位置を二次元的に決定することができる。典型的には、二次元検出器ユニットの表面上の様々な点で発生する電荷の量を測定することによって、粒子の位置を二次元的に決定する。二次元検出器は、素粒子物理学の実験に用いられることが多いが、医療画像や工業検査など、他の分野でも応用されている。
【0019】
第1検出器ユニットと第2検出器ユニットとは、第1検出器ユニットと第2検出器ユニットとの間に関心空間(VOI)を構成するために所定の第1の距離だけ離間して、互いに積層される。本明細書で使用される「関心空間」という用語は、サンプル(試料)の物質を決定するためにサンプルをそこに置くために利用される空間である。関心空間は、第1検出器ユニットと第2検出器ユニットとの間に形成される。一般に、各物質は、高エネルギー粒子に対して異なる吸収率を有するため、その吸収率に基づいてサンプルを特定することができる。例えば、原子番号92のウランをVOIに入れる。システムは吸収率に基づいてサンプルを特定する。
【0020】
実施形態によっては、物質のサンプルは所定のサイズを有し、VOI内の所定の位置に配置される。この点で、物質サンプルはVOI内に配置された所定のサイズを有する。典型的には、所定のサイズは、サンプルに対して確立されたサイズである。好適には、物質サンプルのサイズは、VOI内に配置する前に決定された固定サイズである。実施形態によっては、物質サンプルは各々同じ寸法を有する。例えば、各辺60mmの立方体の物質がVOIに配置される。予め決められた物質サンプルの大きさが、推定値の精度を高めることに役立っている。更に、物質サンプルは、VOIの所定の位置に配置される。本明細書で使用される「所定のサイズ」という用語は、使用される前に予め選択又は設定されたサイズを表す。予め定められたサイズが、データセットを生成する際のサイズの一貫性を保証している。実施形態によっては、予め定められたサイズはまた、VOI内の物質の各サンプルの同じ場所でのアライメントを保証する。実施形態によっては、物質サンプルは様々なサイズを有し、VOI内の任意の位置に配置することができる。
【0021】
本明細書で使用する「プロセッサ」という用語は、システムの動作を制御するように構成されたハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせを表す。プロセッサは、データセットを生成するための、いくつかの複雑な処理タスクを実行する。プロセッサは、システムの他の構成要素に無線及び/又は有線で通信可能に結合される。実施形態によっては、プロセッサは、プログラマブルデジタルシグナルプロセッサ(DSP)として実装されてもよい。別の例では、プロセッサは、クラウドコンピューティングサービスを提供するクラウドサーバを介して実装されてもよい。実施形態によっては、プロセッサは、通信ネットワークを使用して、第1検出器ユニット及び第2検出器ユニットに通信可能に結合される。通信ネットワークは、有線ネットワーク、無線ネットワーク、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、無線ネットワーク及び電気通信ネットワークが挙げられるが、これらに限定されるものではない。プロセッサは、物質を分類するように構成された少なくとも1つのホドスコープに、これらを制御することが可能なように組み合わされている。またプロセッサは、複数の空間解像単位を用いてVOIを再構成するように構成される。更にプロセッサは、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することにより、VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングするように構成される。更にプロセッサは、物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を使用してデータセットを作成し、物質を分類するために、物質サンプルの各々のデータセットを使用して機械学習モデルを訓練するように構成される。
【0022】
実施形態によっては、プロセッサは、第1検出器ユニット及び/又は第2検出器ユニットを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることによって、VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングするように構成される。プロセッサは、高エネルギー粒子をトラッキングするように構成された少なくとも1つのホドスコープに、これらを制御することが可能なように結合されている。またプロセッサは、物質サンプルを識別するように構成されている。特に、高エネルギー粒子が第1検出器ユニット及び/又は第2検出器ユニットを通過するとき、ホドスコープに組み合わされたプロセッサは、高エネルギー粒子をトラッキングするように構成される。
【0023】
本明細書で使用される「空間解像単位」という用語は、VOIの構築に利用されるピクセル又はボクセルを表す。典型的には、VOIを作成するために複数の空間解像単位が使用される。第1検出器ユニットと第2検出器ユニットとの間のVOIによって形成される複数の空間解像単位を直線が通る。VOIにおいて高エネルギー粒子がトラッキングされ、高エネルギー粒子と相互作用した複数の空間解像単位が登録される。データはデータセットに保存される。このデータセットは、所与の複数の空間解像単位を通過した高エネルギー粒子の総数又は当該複数の空間解像単位における高エネルギー粒子の平均散乱の情報を有する。
【0024】
実施形態によっては、VOI及び複数の空間解像単位は立方体状であり、空間解像単位の各々が体積を有し、複数がまとまってVOIを構成する。つまり、VOIは複数の空間解像単位を用いて形成される。好適には、VOI及び複数の空間解像単位は立方体状に形成される。VOIを形成する空間解像単位の各々は同じ寸法を有してもよい。実施形態によっては、VOI及び複数の空間解像単位は立方体状である。
【0025】
本明細書で使用する「データセット」という用語は、物質の各サンプルに関連する1つ又は複数の特徴についての保存された情報を表す。好適には、データセット(通常はトレーニングデータセットと呼ばれる)は、対応する物質サンプルに関連するデータを保存するように構成される。各物質サンプルのデータセットは、固有のデータシグネチャを含んでもよい。本明細書で使用される「固有のデータ-シグネチャ」という用語は、固有の物質それぞれに関連するデータを表す。通常、固有データシグネチャは物質の分類に使用される。また、固有データシグネチャは機械学習モデルの学習に使用される。
【0026】
本明細書で使用する「機械学習モデル」という用語は、データセットを使用してモデルが学習される人工知能(AI)のサブセットを表す。データセットは、例えば、物質サンプルの各々に関連付けられる1つ又は複数の特徴に関連付けられたデータセットであってもよい。また、固有のデータシグネチャなどのデータであってもよい。これらは機械学習モデルを訓練するためのデータであってもよく、クラウドサーバに格納されていてもよい。機械学習モデルは物質の分類に使用される。実施形態によっては、物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴は、散乱角の測定値と、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位の各々を通過した高エネルギー粒子の数の測定値とのいずれかを含む。実施形態によっては、物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴は、複数の散乱角のいずれかの測定値を含む。ここで散乱角は、高エネルギー粒子がVOIを形成する空間解像単位内の物質サンプルによって偏向される角度である。実施形態によっては、物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴は、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位の各々を通過した高エネルギー粒子の数を含む。プロセッサは、データセットを形成するために、1つ又は複数の特徴に関連するデータを記録するように構成される。
【0027】
実施形態によっては、機械学習技術は、線形判別分析(Linear Discriminant Analysis; LDA),ニューラルネットワーク(NN),LDA One-vs-One(1対1)の少なくとも1つから選択される。実施形態によっては、機械学習モデルは線形判別分析(LDA)である。実施形態によっては、機械学習モデルはニューラルネットワーク(NN)である。実施形態によっては、機械学習モデルはLDA One-vs-One(1対1)である。実施形態によっては、GEANT4モンテカルロシミュレーションと機械学習モデルを使用した分類手段(classifier)が物質の分類に使用される。実施形態によっては、機械学習モデルは、システムからの冗長性を低減するように構成される。1つ又は複数の機械学習モデルがデータセットを使用してトレーニングされる。機械学習モデルは、例えば物質の各サンプルを分類するために訓練される。実施形態によっては、機械学習モデルは新しいサンプルに基づいて再トレーニングされる。通常、LDAは機械学習モデルやパターン認識で使用される手法である。LDAはパターンを生成する際に柔軟で強力である。LDAは、各サンプル間の分離度を最大化するような、特徴の線形結合である。LDAは、1つ又は複数の特徴に基づいてサンプルを予測するように構成されている。NNは相互接続されたニューロンの層で構成され、情報を処理し伝達する。NNは、受け取ったデータに基づいて学習し適応することができ、分類、回帰、クラスタリングなどのタスクを実行することができる。ニューラルネットワーク(NN)は、予測出力間の誤差を最小化するために、データセットと最適化アルゴリズムを用いて学習される。LDA(1対1)では、モデルは物質サンプルごとに学習される。予測中、分類手段はデータセットを取り込み、当該データセットに複数のLDA(1対1)モデルを個々に適用し、その結果を組み合わせて物質サンプルを決定する。LDA(1対1)は、少ない学習データセットで済むため、効率的である。
【0028】
実施形態によっては、プロセッサは、ヒストグラムを作成し、当該ヒストグラムに対応するベクトル値を定義することによって、データセットを作成するように構成される。
【0029】
ヒストグラムは、データ集合の分布のグラフ表現であり、ビンまたは区間内の観測値の頻度又は数を示す。ビンは通常事前に決定され、データは観測値に基づいてこれらのビンに分配される。ヒストグラムに対応するベクトル値は、各ビンに入れられる観測値である。ヒストグラムに対応するベクトル値は、物質の分類に使用することができる。典型的には、プロセッサは、データセットを形成するためにヒストグラムを作成するように構成される。ヒストグラムは、物質サンプルの各々に関連する1つ又は複数の特徴を表すことを可能にする。またヒストグラムは、物質の各サンプルに、それらを分類することを可能にする固有のデータシグネチャを提供する。更に、散乱角に関する情報と、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位のそれぞれを通過する高エネルギー粒子の数に関する情報が、ヒストグラムに保存される。具体的には、物質サンプルの各々について、平均角度ヒストグラムと密度ヒストグラムが形成される。平均角度ヒストグラムは、各空間解像単位を通る平均散乱角値を提供する。一方、密度ヒストグラムは、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位の各々を通過する高エネルギー粒子を提供する。機械学習モデルを訓練するのに十分な大きさのデータセットを得るためには、1回の測定で、物質サンプルごとに、合計4つのヒストグラムを得る。複数回の測定が行われる。ヒストグラムが得られたら、その情報はベクトル値として保存される。ベクトル内の各数値は、対応するヒストグラムのビン値を表す。
【0030】
例えば、対応するベクトルは次のようになる。
角度ヒストグラム: Va = [10; 8; 5; 3; 2; 1; 0; 0; 0; 0; 0]
密度ヒストグラム: Vd = [0; 5; 10; 9; 5; 3; 2; 1; 0; 0; 1]
【0031】
角度ヒストグラムと密度ヒストグラムに関連するベクトルは、次のような形式で1つのベクトルに連結される。
Vc = [0; 5; 10; 9; 5; 3; 2; 1; 0; 0; 1; 10; 8; 5; 3; 2; 1; 0; 0; 0; 0; 0]
【0032】
同様に、すべての値はベクトルidxの中で次のような形で位置を持つ。
idx = [1; 2; 3; 4; 5; 6; 7; 8; 9; 10; 11; 12; 13; 14; 15; 16; 17; 18; 19; 20; 21; 22]
【0033】
1つ又は複数の特徴を提供するために、(教師あり学習などの)アルゴリズムがデータセットで使用される。得られた特徴は、idxベクトルの形で降順に格納される。
Vr idx = [7; 8; 13; 14; 19; 20; 9; 10; 1; 2; 3; 15; 16; 17; 18; 4; 5; 6; 11; 12; 21; 22]
【0034】
ヒストグラムを作成してデータセットを作成し、ヒストグラムに対応するベクトル値を定義することは、ベクトル値を計算に用いることで、行列形式の情報に基づいて計算することがなくなるため、計算が容易になり、計算が高速化するというメリットがある。ヒストグラムには大量のデータがあるため、これをベクトル値に変換して保存することで、計算を簡単かつ高速にすることができる。また、ベクトル化の助けを借りて、計算アルゴリズムの実行時間を短縮することもできる。例えば、前述の次元削減法を分類アルゴリズムに適用することで、物体や物質の分類をリアルタイムで高速に行うことができる。
【0035】
実施形態によっては、プロセッサは、再構成されたVOIを通過する高エネルギー粒子を予め決められた時間トラッキングすることによって、物質サンプルの各々についてのデータセットを作成するように設定される。この点に関して、プロセッサは、VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることによって、物質サンプルの各々についてデータセットを作成するように設定される。データセットを作成するために、プロセッサは、高エネルギー粒子がVOIを通過するときの動きを設定された時間トラッキングするように構成される。典型的には、上記の予め決められた時間は、物質サンプルがVOI内に配置されることを可能にするように確立された特定の時間の長さである。実施形態によっては、上記予め決められた時間は、秒、分、時間、日、週などの様々な時間単位に設定することができる。更に、プロセッサは、物質サンプルを分類するために、高エネルギー粒子の位置、速度、エネルギー、及び他の特性を予め決められた時間記録するように構成される。収集されたデータは、各サンプルのデータセットを作成するために使用されてもよく、トレーニングデータセットの構築や、データセットのテスト、サンプルを予測するモデルの開発に使用される。
【0036】
実施形態によっては、プロセッサは、少なくとも1つのホドスコープを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることにより、物質サンプルの各々についてデータセットを作成するように構成される。これに関して、少なくとも1つのホドスコープを通過する高エネルギー粒子がトラッキングされ、関連する情報がプロセッサによって収集される。この情報は、各高エネルギー粒子のエネルギー、位置、又は他の特性を含んでもよい。プロセッサは、前記情報を用いてデータセットを作成し、ヒストグラムを形成するように構成される。ヒストグラムは例えば、所与のサンプル中の高エネルギー粒子エネルギーの分布、又はホドスコープ内の様々位置に衝突する高エネルギー粒子の分布を描写する。
【0037】
データから生成されたヒストグラムはプロセッサによって収集され、分析中の物質サンプルのパターン、傾向、又は逸脱(アノマリー)を特定するために使用される。またヒストグラムは、物質の異なるサンプルを比較し、物質の特性に関する結論を導き出すために使用されてもよい。
【0038】
実施形態によっては、プロセッサは、物質を分類するための機械学習モデルを訓練するように構成される。この点に関して、プロセッサは、物質を分類するためにデータセットを使用するようにセットアップされ、プログラムされている。訓練プロセスは、物質を分類するための機械学習モデルにデータセットを投入することを含む。機械学習モデルを訓練することにより、訓練データに基づくパターンと関係に基づいて新しい物質を正確に分類できるモデルを作成することができる。実施形態によっては、プロセッサは、勾配降下法やバックプロパゲーションなどのアルゴリズムやテクニックを使用して、訓練データセットを取得するように構成される。学習プロセスが完了したら、機械学習モデルを別のデータセット(テストデータセットと呼ぶ)でテストして、その性能と精度を評価できる。
【0039】
実施形態によっては、システムは、少なくとも1つの第3検出器ユニットを備える。この第3検出器ユニットは、少なくとも1つの第2検出器ユニットとの間に関心空間(VOI)を形成するように、当該第2検出器ユニットから所定の第2の距離だけ離間して配置される。これに関して、少なくとも1つの第3検出器ユニットは、少なくとも1つの第2検出器ユニットから所定の第2の距離だけ離間される。実施形態によっては、前記第1の距離と前記第2の距離は同じである。実施形態によっては、前記第1の距離と前記第2の距離とは異なる。
【0040】
本開示はまた、上述のような、物質を分類する方法に関する。上に開示された様々な実施形態及び変形例は、当該方法に準用される。
【0041】
実施形態によっては、第1検出器ユニット及び/又は第2検出器ユニットを通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることによって、VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングする。
【0042】
実施形態によっては、高エネルギー粒子の散乱角又は数のいずれかの測定値に基づいてヒストグラムを作成し、ヒストグラムに対応するベクトル値を定義することによって、データセットを作成する。
【0043】
実施形態によっては、VOIを通過する高エネルギー粒子を、予め決められた時間トラッキングすることにより、各サンプルのデータセットを作成する。
【0044】
例えば、247×247×250mmのVOIを持つ3-1構成の4つの検出器ユニットを持つホドスコープを用いて、各サンプルを測定する。サンプルは8時間測定され、30分ごとに分割される。従って、各サンプルに対して16回の測定データが提供される。少なくとも1つのホドスコープを通過する高エネルギー粒子の散乱角は0度から0.9度の範囲にあり、ホドスコープのミューオンの検出値は287.31個/分であり、標準偏差は23.87個/分であった。データセットは物質サンプルごとに用意され、当該データセットは機械学習モデルの訓練に使用される。訓練された機械学習モデルは、物質を分類するために利用される。訓練された機械学習モデルは、例えば、貨物コンテナの検査、鉄や銅のような密度の高い金属に隠された薬物や爆発物の検出などに利用できる。
【0045】
まとめると、物質を分類するためのシステムが開示されている。説明したように、このシステムは、少なくとも1つの第1(二次元)検出器ユニット及び少なくとも1つの第2(二次元)検出器ユニットを有する少なくとも1つのホドスコープを備える。第1検出器ユニット及び第2検出器ユニットは、該第1検出器ユニットと該第2検出器ユニットとの間に関心空間(VOI)を形成するように、所定の第1の距離だけ離間される。VOIは該VOI内に物質サンプルを受容するように構成される。
【0046】
説明したように、プロセッサが、少なくとも1つのホドスコープに通信可能に結合される。このプロセッサは、複数の空間解像単位を用いてVOIを再構成すると共に、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することによって、VOIを通過する高エネルギー粒子をトラッキングするように構成される。ここで、識別された空間解像単位の各々は、VOIに受容された物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴を示す。前記プロセッサはまた、物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットを作成すると共に、物質を分類するために、前記データセットを使用して機械学習モデルを訓練するように構成される。前記データセットは一意のデータシグネチャを含む。実際、各々異なるサンプル物質は、それぞれ、固有のデータシグネチャ(又は例えば、高エネルギー粒子がVOIをどのように通過するかの軌跡)を形成する。
【0047】
このようにすることで、VOIに置かれたサンプルを分類するシステムを効率的に訓練することができる。このシステムは、様々なまずサンプル物質やサンプルオブジェクトを分類するためのトレーニングデータセットを生成するために使用される。これは、これらサンプル物質やサンプルオブジェクトを、VOIに対して既知の位置に配置し、システムを通過する高エネルギー粒子の軌跡をホドスコープで測定することによって、行われる。一例として、サンプルがどの位置にあり、どのような形状で、何の材質であるかが分かっているため、これらの情報を、(高エネルギー粒子即ち固有のデータシグネチャの)トラッキング情報と共に、システムの訓練に使用することができる。これらの軌跡(固有のデータシグネチャ)は収集され、物体を分類する機械学習/人工知能システムを訓練するための訓練データセットとして使用される。
【0048】
訓練されたシステムは、システム内に置かれた未知の物体を分類(識別)するために使用することができる。未知の物体から軌跡(データシグネチャ)が測定され、訓練されたニューラルネットワークが、形状や材質などに基づいて分類することで、未知の物体の特性を決定するために使用される。
[図面の詳細説明]
【0049】
図1を参照すると、本開示の一実施形態による、物質を分類するためのシステム100の概略図が示されている。このシステムは、少なくとも1つのホドスコープ102を備える。ホドスコープ102は、少なくとも1つの第1(二次元)検出器ユニット104と、少なくとも1つの第2(二次元)検出器ユニット106A、106B及び106C(集合的に106と呼ぶ)とを有する。第1検出器ユニット104及び第2検出器ユニット106は、第1検出器ユニット104と第2検出器ユニット106との間に関心空間(VOI) 110を形成するように、所定の第1距離108だけ離間されている。VOI 110はVOI 110内に物質のサンプル112を受容するように構成される。
【0050】
システムはまた、ホドスコープ102に通信可能に結合されたプロセッサ114を備える。プロセッサ114は、複数の空間解像単位116を用いてVOI 110を再構成する。プロセッサ114はまた、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位116を識別することによって、VOI 110を通過する高エネルギー粒子をトラッキングするように構成される。識別された空間解像単位116の各々は、VOI 110に受容された物質サンプル112に関連する1つ又は複数の特徴を示す。プロセッサ114はまた、物質サンプル112の各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットを作成すると共に、物質を分類するために、データセットを使用して機械学習モデルを訓練するように構成される。データセットは一意のデータシグネチャを含む。
【0051】
図示されるように、VOI 110及び複数の空間解像度単位116は立方体状であり、空間解像度単位の各々が体積を有し、複数がまとまってVOI 110を構成する 110。プロセッサ114は、第1検出器ユニット104及び/又は第2検出器ユニット106を通過する高エネルギー粒子をトラッキングすることによって、VOI 110を通過する高エネルギー粒子をトラッキングするように構成される。物質サンプル112に関連する1つ又は複数の特徴は、散乱角の測定値と、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像度単位116の各々を通過した高エネルギー粒子の数の測定値とのいずれかを含む。プロセッサ114は、ヒストグラムを作成し、ヒストグラムに対応するベクトル値を定義することによって、データセットを作成するように構成される。プロセッサ114は、再構成されたVOI 110を通過する高エネルギー粒子を予め決められた期間トラッキングすることによって、物質サンプルの各々について、データセットを作成するように構成される。
【0052】
図2を参照すると、本開示の一実施形態による、物質を分類する方法200のステップが示されている。ステップ202において、内部に物質サンプルを受容ように構成される関心空間(VOI)が、複数の空間解像単位を使用して再構成される。ステップ204において、高エネルギー粒子と相互作用する空間解像単位を識別することによって、VOIを通過する高エネルギー粒子がトラッキングされる。識別された空間解像単位の各々は、VOIに受容された物質サンプルに関連する1つ又は複数の特徴を示す。ステップ206において、物質サンプルの各々に関連付けられた1つ又は複数の特徴を用いてデータセットが作成される。物質サンプルの各々のデータセットは一意のデータシグネチャを含む。ステップ208において、物質を分類するために、物質サンプルの各々のデータセットを使用して機械学習モデルを訓練する。
【0053】
ステップ204、206、810及び208は単なる例示であって、他の選択肢も提供することができる。すなわち、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、1つ又は複数のステップを加えたり、1つ又は複数のステップを除いたり、1つ又は複数のステップを別の順序で実行したりすることができる。
【0054】
添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、前述の本開示の実施形態を変更することが可能である。本開示を説明及び請求するために使用される「含む」、「備える」、「組み込む」、「有する」、「である」などの表現は、非排他的に解釈されることを意図しており、すなわち、明示的に記載されていない項目や部品、構成要素が存在することを許容する。要素が複数であることを明示しなかったとしても、当該要素が複数存在することを妨げない。
図1
図2
【外国語明細書】