(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109526
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】歯車機構及び歯車機構の使用
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240806BHJP
F16C 19/40 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16C19/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006604
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】10 2023 101 575.3
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500542240
【氏名又は名称】ヴィッテンシュタイン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ シュライバー
(72)【発明者】
【氏名】マークス シュラウフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より小型の歯車機構を提供する。
【解決手段】本発明は歯車機構(1)、特に同軸歯車機構に関し、固定配置された歯部(3)を有するハウジングと、ハウジングに対して歯車機構軸を中心に回転可能であり、かつガイド(7)を有する歯キャリア(5)と、歯部(3)と係合するためにガイド(7)内に受容される歯(9)であって、歯キャリア(5)に対してそれらの長軸方向に変位可能にガイド(7)内に取り付けられる歯(9)と、歯車機構軸(11)を中心に回転可能であり、かつ歯(9)を駆動するように意図されるカムディスク(13)と、ハウジング内に歯キャリアを取り付けるために歯キャリア(5)とハウジングとの間に設けられた軸受列(35,37)であって、回転軸が歯車機構軸(11)に対して垂直に配置されたアキシャル転動体と、回転軸が歯車機構軸(11)に対して平行に配置されたラジアル転動体とを備える軸受列(35,37)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む歯車機構(1)であって、特に同軸歯車機構。
-固定配置された歯部(3)を有するハウジング、
-ハウジングに対して歯車機構軸(11)を中心に回転可能であり、かつガイド(7)を有する歯キャリア(5)、
- 歯部(3)と係合するためにガイド(7)に受容される歯(9)であって、歯キャリア(5)に対してその長軸方向に変位可能にガイド(7)に取り付けられる歯(9)、
-歯車機構軸(11)を中心に回転可能であり、かつ歯(9)のそれぞれの長軸方向に沿って歯(9)を駆動するように意図されるカムディスク(13)、 及び、
-歯キャリア(5)をハウジングに取り付けるために、歯キャリア(5)とハウジングとの間に設けられた軸受列(35,37)であって、回転軸が歯車機構軸(11)に対して垂直に配置されたアキシャル転動体(45,47)と、回転軸が歯車機構軸(11)に対して平行に配置されたラジアル転動体(46,48)。
【請求項2】
ハウジングが多部品構成であり、かつ、軸受外輪の形態の第1のハウジング部品(24)を有し、内歯(3)を有するリングギヤ(4)がハウジングの第2のハウジング部品を形成する、請求項1に記載の歯車機構(1)。
【請求項3】
前記歯キャリア(5)が1つの部品で構成される、先行請求項のうちいずれかに記載の歯車機構(1)。
【請求項4】
少なくとも1つのラジアル軸受走行面と、少なくとも1つの、特に少なくとも2つのアキシャル軸受走行面とを有する、先行請求項のうちいずれか1項に記載の歯車機構(1)。
【請求項5】
軸受列は、歯キャリアの軸受の第1軸受列(35)であり、軸受は、少なくともアキシャル転動体を有する第2軸受列(37)を備える、先行請求項のうちいずれか1項に記載の歯車機構(1)。
【請求項6】
2つの軸受列(35、37)は、前記歯車機構の軸方向における一方の側において、互いに隣接して、及び/又は歯ガイドに隣接して配置される、請求項5に記載の歯車機構(1)。
【請求項7】
第1軸受列及び/又は第2軸受列の各々のラジアル転動体及び/又はアキシャル転動体は、それぞれ円筒形状の長さよりも大きい直径の円筒形状を有する、請求項5又は請求項6に記載の歯車機構(1)。
【請求項8】
第1軸受列及び第2軸受列は、それぞれアキシャル転動体及びラジアル転動体を有する、請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載の歯車機構(1)。
【請求項9】
第2軸受列は、アキシャル転動体のみを有する、請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載の歯車機構(1)。
【請求項10】
軸受外輪は、少なくとも1つのアキシャル軸受走行面及び少なくとも1つのラジアル軸受走行面を有する、請求項2から請求項9のうちいずれか1項に記載の歯車機構(1)。
【請求項11】
アキシャル軸受走行面を有するアキシャル軸受リングを備える、請求項10に記載の歯車機構。
【請求項12】
カムディスクが中空軸形状とされる、先行請求項のうちいずれか1項に記載の歯車機構。
【請求項13】
転動体の間に離隔手段(49,50)が挿入されている、先行請求項のうちいずれか1項に記載の歯車機構。
【請求項14】
先行請求項のうちいずれか1項に記載の歯車機構(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯車機構及び歯車機構の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、歯キャリア内で半径方向に変位可能に取り付けられた歯を備える歯車機構を開示する。歯を駆動するために、カムディスクなどのプロファイリングを有する駆動入力要素が使用される。歯は、歯を備える歯キャリアと歯部との間の相対運動が生じるように歯部に係合する。この点において、歯部と歯との間の相対運動は、プロファイリングを有する駆動入力要素の運動より少なくとも1桁小さい。このようにして、高い伝達比を達成することができる;そのような歯車機構の一例がDE 10 2015 119 582 A1に開示されている。
【0003】
しかし、一定の状況において既知の歯車機構は、構造空間の要件が制限される場合、歯車機構のコンパクト性の要件を満たさない。
さらに、一部の用途では、半径方向又は軸方向の振れを改善することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、先行技術から知られる歯車機構よりも改良された歯車機構を特定することであり、特に、中空軸の直径ができるだけ大きく、半径方向又は軸方向の振れ特性が改善された、より小型の歯車機構を提供することである。本発明の別の目的は、そのような歯車機構の使用を特定することである。
【0005】
この目的は、請求項1に記載の歯車機構と、他の独立請求項に記載の使用によって達成される。有益な改良及び実施形態は、従属請求項及び本明細書から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、固定配置された歯部を有するハウジング;ハウジングに対して歯車機構軸を中心に回転可能であり、かつガイドを有する歯キャリア; 歯部と係合するためにガイドに受容される歯であって、歯キャリアに対してその長軸方向に変位可能にガイドに取り付けられる歯;歯車機構軸を中心に回転可能であり、かつ歯のそれぞれの長軸方向に沿って歯を駆動するように意図されるカムディスク; 及び、歯キャリアをハウジングに取り付けるために、歯キャリア(5)とハウジングとの間に設けられた軸受列(35,37)であって、回転軸が歯車機構軸(11)に対して垂直に配置されたアキシャル転動体(45,47)と、回転軸が歯車機構軸(11)に対して平行に配置されたラジアル転動体(46,48)、を含む歯車機構(1)であって、特に同軸歯車機構に関する。
この点に関して、アキシャル転動体は歯車機構の長軸方向に作用する軸受力に反応するように設計され、半径方向転動体は半径方向に作用する軸受力に反応するように設計される。
【0007】
典型的な歯車機構の場合、歯は歯車機構の回転軸に対して半径方向に変位可能に、歯キャリアのガイド内に取り付けられる。
歯の各々の長軸は、典型的には歯車機構又は歯キャリアの回転軸に対して半径方向に配置される。典型的な実施形態において、歯キャリアのガイドは、カムディスクの回転軸に対して半径方向に配置される。典型的には、歯は歯キャリアに対して半径方向に直線的に取り付けられる。この文脈において、「半径方向に直線的に」とは、通常、半径方向のガイドが存在することを意味し、このガイドは、半径方向への歯の移動、特にガイダンスの遊びの範囲内での歯の傾斜のみを可能にする。
【0008】
アキシャル転動体及びラジアル転動体は、アキシャル-ラジアル軸受とも呼ばれる軸受を形成する。
【0009】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の典型的な実施形態のうちの1つにおける歯車機構の使用に関する。
【0010】
実施形態は特に、同軸歯車機構に関する。通常、典型的な歯車機構は、駆動入力要素としてのプロファイリングを有するカムディスクと、内歯部を有するリングギア又は内部プロファイリングを有する外部駆動入力要素と、外部駆動入力要素の場合に歯部を提供する内歯車と、を備える。歯部は、典型的には円周上のリングギア歯部である。歯又は歯先は歯部に係合し、典型的には歯は歯キャリアに対して半径方向に変位可能に取り付けられる。
【0011】
典型的な実施形態では、逆の伝達方向にも使用することができる;この場合、カムディスクは駆動出力要素として使用され、歯キャリアは駆動入力要素として使用される。このようにして、例えば、カムディスクを介して発電機を駆動することができ、低回転速度で歯キャリアを駆動するトルクが利用される。ハウジング又はリングギアの歯部を介して、駆動入力することも駆動出力することも可能である。
【0012】
他の典型的な実施形態において、歯キャリアのガイドはカムディスクの回転軸に対して平行に配置される。典型的には、歯は、カムディスクの回転軸に対して軸方向に変位可能に歯キャリアのガイド内に取り付けられる。典型的には、歯は歯キャリアに対して軸方向に直線的に取り付けられる。「軸方向に直線的に」とは、通常、軸線方向のガイドが存在することを意味し、このガイドは、歯部の軸方向の移動のみを可能にする。歯又は歯先は、円周上の歯部に係合する。歯部は、典型的には冠歯車の歯部の形状である。
【0013】
実施形態の典型的な歯車機構は、1つの歯キャリア内に、1列のガイド又は歯を備える。
これは、特にコンパクトな構造を可能にする。他の実施形態において、歯車変速装置は、歯キャリア内に2列のガイド又は歯を有する。
【0014】
典型的には、歯は、各場合において1つの方向に、典型的には歯の長軸方向に変位可能に、歯キャリアに取り付けられる。これは、例えば、特定の長さにわたる、特に歯の長軸方向に沿った特定の長さにわたる歯が、変位方向において一定の断面を有することで達成することができ、ここで、歯キャリア内の歯のガイドは、一定の断面を有するスロット又は開口部の形状である。
【0015】
本発明による歯車機構の典型的な実施形態において、歯の少なくともいくつかは曲げ剛性の高い設計である。この場合の「曲げ剛性が高い」という表現は、典型的には技術的な意味で理解されるべきであり、すなわち、歯の撓みが、歯の材料の剛性に起因して、歯車機構の運動学に関して少なくとも実質的に重要ではない程わずかである。曲げ剛性の高い歯は特に、金属合金、特に鋼又はチタン合金、ニッケル合金又は他の合金製の歯を含む。さらに、特に、以下の部品のうちの少なくとも1つが同様にプラスチック製の歯車機構の場合には、プラスチック製の曲げ剛性の高い歯が提供可能である:リングギア上又は歯車上の歯部、歯キャリア及び駆動入力要素。本発明の典型的な実施形態において、歯キャリア及び歯は金属合金製であり、又は加えて歯部、又はさらに加えて駆動入力要素も金属合金製である。そのような歯車機構はねじれに極めて耐性があり、高い荷重に耐えることができるという利点がある。プラスチック製の歯車機構は、軽量であるという利点がある。「曲げ剛性が高い」という用語は、特に、歯の横断軸周りの曲げ剛性が高いことを意味する。これは特に、歯を歯根から歯側面領域までのビーム(梁)として考慮した場合、歯側面領域と歯根との間の曲げ変形を少なくとも実質的に排除する高い曲げ剛性があることを意味する。高い曲げ剛性の結果として、極めて高い荷重に耐える能力及び歯車機構のねじれに対する抵抗が達成される。
【0016】
典型的な実施形態において、プロファイリング上に配置されるころ軸受上に取り付けられたピボットセグメントが歯とプロファイリングとの間に配置される。典型的には、歯はピボットセグメントに緩く接続される。この点において、「緩い接続」とは、好ましくは歯セグメントがピボットセグメント上のみに、通常は直接的に配置されることを意味する。好ましいピボットセグメントは、歯がピボットセグメントから滑り落ちたり、ピボットセグメントが少なくとも一方向に滑ったりするのを防止するプロファイルを備える。このようなプロファイルは、例えば、歯の歯根の凹部に係合するビードであってもよい。ピボットセグメントの可能な実施形態については、DE 10 2015 105 523 A1を参照されたい。
【0017】
歯部及び歯は、典型的には湾曲した側面を有する。側面の湾曲の例は、円筒形状の湾曲、同軸歯車機構の回転軸周りの螺旋又は螺旋面に沿った側面の湾曲、又は対数螺旋状の湾曲である。対数螺旋状の湾曲の可能な実施様式については、DE 10 2007 011 175 A1を参照されたい。湾曲面は、係合側面が一直線上や特定の点においてだけでなくその表面領域全体にわたって当接する、という利点がある。このようにして、歯部と歯との間で力が伝達される場合、極めて高い剛性が達成される。「側面(Flanks)」は本明細書では特に、歯の歯側面又は歯部の側面を意味すると理解されたい。
【0018】
典型的な実施形態において、ハウジングが多部品構成であり、かつ、軸受外輪の形態の第1のハウジング部品を有し、内歯を有するリングギヤがハウジングの第2のハウジング部品を形成する。さらに、いくつかの典型的な実施形態は、カムディスクを取り付けるための、軸受フランジの形状とされた第3のハウジング部品を有する。
【0019】
典型的な実施形態において、歯キャリアは1部品で構成される。典型的な歯車機構の駆動出力取付けが変速機運動機構の片側に配置された結果、歯キャリアの構造は大幅に簡略化され、全体として非常にコンパクトな設計が可能となる。歯キャリアは、比較的均一な直径を有する。
【0020】
典型的な実施形態において、歯キャリアは、少なくとも1つのラジアル軸受走行面と、少なくとも1つの、特に少なくとも2つのアキシャル軸受走行面とを有する。ラジアル軸受走行面及びアキシャル軸受走行面、又は少なくとも1つ若しくは2つは、典型的には歯キャリアと一体的に、又は歯キャリア内に設計される。典型的には、アキシャル転動体又はラジアル転動体は、それぞれ歯キャリア上又はラジアル軸受走行面上又はアキシャル軸受走行面上を直接走行する。
【0021】
典型的な実施形態において、軸受列は、歯キャリアの軸受の第1軸受列であり、軸受は、少なくともアキシャル転動体を有する第2軸受列を備える。典型的には、歯キャリアは2つのラジアル軸受走行面及び2つのアキシャル軸受走行面を有する。各軸受列は、典型的には合計2つのアキシャル軸受走行面及び2つのラジアル軸受走行面を有し、1つのアキシャル軸受走行面及び1つのラジアル軸受走行面は、典型的には歯キャリアによって構成される。
【0022】
歯キャリアの取り付けは、通常、歯キャリア上に配置されたウェブによって分離された2つの軸受列からなり、断面が小さい転動体、すなわち長さよりも直径が大きい転動体の形状をした円筒ころがウェブに挿入されている。この場合、特別なころ形状は、アキシャル方向及びラジアル方向に配置された転動体を軸受列に同時に収容することを可能にする。したがって、クロスローラー軸受とは対照的に、圧力角は+-45°ではなく、0°及び90°であり、その結果、典型的には、純粋なアキシャル-ラジアル軸受が形成される。異なる配列の転動体をそれぞれの軸受列にまとめることで、高精度でコンパクトな構造が可能となる。
【0023】
典型的な軸受列は、4つの軸受走行面を有する:それはそれぞれ半径方向内側、半径方向外側、軸方向左側及び軸方向右側である。歯キャリアは、典型的には一体化された構成部品の形で、2つの各々のラジアル軸受走行面及びアキシャル軸受走行面を有するか、又はいくつかの実施形態において軸受内輪とも呼ばれ得る。軸受外輪はハウジングの一部であってもよく、典型的には2つのラジアル軸受走行面及び1つのアキシャル軸受走行面、特に1つの第1外側アキシャル軸受走行面、及びアキシャル軸受リングの受容部を備える。別の実施形態において、軸受外輪は歯車機構のハウジング内に受容されてもよい。
【0024】
典型的な歯車機構は、アキシャル軸受走行面を有するアキシャル軸受リングを備える。アキシャル軸受リングは、アキシャル軸受列に予圧するために使用することができる。アキシャル軸受リングは、典型的には最終又は第2外側アキシャル軸受走行面を形成するか、又は備える。軸受列の軸方向の予圧は、隣接するリングギアと協調してアキシャル軸受リングの幅にわたって設定することができる。これにより、予圧を規定通りに正確に設定することが可能になり、一部の実施形態では軸ナットを省略することができる。取付け状態において、アキシャル軸受リングは、好ましくは存在する軸方向突出部によって、隣接するリングギアのセンタリング(芯出し)を提供する。非常にコンパクトな歯車機構構成が可能となる。アキシャル軸受リングの可撓性は、嵌合の調整によって、リングギア又は軸受外輪に半径方向の変形が可能な限り生じないか、又はほとんど生じないことを共同で保証することができる。更なる利点は、横方向に突出するセンタリング(芯出し)手段が必須ではないことにより、リングギア上の2つの平面を高度な平面度及び平行度で容易に製造することができることである。
【0025】
典型的には、2つの軸受列は、歯車機構の軸方向における一方の側において、互いに隣接して、又は歯キャリア内のガイドに隣接して配置される。このような構成の1つの利点は、取付けが容易となることである。
【0026】
典型的な実施形態において、第1軸受列又は第2軸受列の各々のラジアル転動体又はアキシャル転動体は、それぞれ円筒形状の長さよりも大きい直径の円筒形状を有する。典型的には、軸受列は円筒ころ軸受の形状であり、転動体は特に扁平な円筒形状を有する。このようにして、転動体はそれらの走行面上で転動する。典型的な実施形態において、アキシャル転動体及びラジアル転動体は実質的に同一の形状を有し、特に1つの軸受列の転動体は同一の形状を有する。
【0027】
典型的には、第1軸受列及び第2軸受列がそれぞれ、アキシャル転動体及びラジアル転動体を有する。このようにして、2つのアキシャル-ラジアル軸受列が提供される。ラジアル転動体又はアキシャル転動体の2つの軸受列の嵌合を変えることによって、半径方向及び軸方向のそれぞれの耐荷重性及び剛性に関して取付けの特性を変えることができ、それによって使用用途への個々の適合が可能になる。典型的には、以下の境界条件が満たされなければならない:少なくとも1つの軸受列は、半径方向のガイドを確実にするために、最小数のラジアル転動体を有しなければならない。2つの軸受列は、軸方向の予圧を可能にするために、最小数のアキシャル転動体を有しなければならない。典型的な実施形態において、少なくとも1つの軸受列が30%のラジアル転動体を有し、2つの軸受列は少なくとも30%のアキシャル転動体を有する。典型的な実施形態において、第2軸受列がアキシャル転動体のみを備える。
【0028】
典型的な歯車機構は、転動体の間に挿入される離隔手段を有する。離隔手段は、典型的には1つの軸受列の2つの隣接する転動体の間に各々配置される。離隔手段は、「スペーサー」と呼ぶこともできる。離隔手段を用いることにより、最終的なピッチ円の遊びを容易にかつ美しく設定することができる。転動体同士の直接接触を確実に防止することができる。接触における良好なトライボロジー挙動を提供することができる。特に、非常に低い回転速度を有する用途の場合、適切であれば、離間手段を省くことも可能である。離隔手段を伴わないフルローラー占有のこのような実施形態は、典型的には定格荷重及び剛性を増大させるために、スペーサーを伴う実施形態と比べてより多くの転動体を有する。離隔手段を完全に省くことは、特に対称的な占有の場合においては好都合であり得る。
【0029】
転動体の数及び配置を選択することによって、用途に応じた個別対応が可能となり、アキシャル転動体は、傾斜安定性及び軸方向剛性を高めることができる。ラジアル転動体は、半径方向の剛性を増大させることができる。フルローラー構造と呼ばれるもの、特に離隔手段なしのものは、転動体をより多くすることを可能にし、それによって、特に低回転速度における剛性及び耐荷重性を向上させる。
【0030】
種々異なる占有において考えられるシナリオは特に以下の通りである:各々同数のラジアル転動体とアキシャル転動体とが離隔手段によって分離され間隔をあけて配置された均一な交互占有は、特に、予見不可能な又は予見困難な負荷が発生した場合に好都合である。2つの軸受列の同一の占有は、対称占有とも呼ばれる。
【0031】
例えば、対向配置されたピボットブリッジの場合のように、非常に大きな半径方向の力が支配的である場合、ラジアル転動体の方がアキシャル転動体よりも多い実施形態が有利となる。したがって、例えば、各々3分の1のアキシャル転動体及び3分の2のラジアル転動体での列の占有が可能である。この構成では、ラジアル転動体間の離隔手段は必ずしも必須ではない。
【0032】
比較的質量は小さいがレバーアームの長さが長い又は歯車機構軸に対して横方向に力が作用する用途の場合、いくつかの実施形態において、アキシャル転動体をラジアル転動体より多く用いた占有によって、結果として生じる傾斜モーメントを相殺することが可能である。例えば、軸受列をそれぞれ3分の2のアキシャル転動体及び3分の1のラジアル転動体で占有する。
【0033】
軸方向の大きな圧縮力又は引張力に反応しなければならない実施形態、例えば、ターンテーブルの上部に駆動出力部が設置され、非常に大きな質量がターンテーブル上に載ってしまう実施形態において、圧縮力を相殺するために、軸受列は純粋にアキシャル転動体で占有され得る。第2軸受列は、アキシャル転動体及びラジアル転動体で交互に等分に占有されることができる。
【0034】
大きな圧縮力又は引張力に曝され、かつ同時に支配的な傾斜モーメントに曝される歯車機構の場合、純粋に軸方向の占有である第1軸受列と、3分の2の軸方向の占有及び3分の1の半径方向の占有である第2軸受列を有する典型的な実施形態は、利点を提供し得る。
【0035】
典型的には、2つの軸受列は、均等に交互に軸方向及び半径方向に配置された転動体を有することができ、2つの軸受列のうちの一方は、均一に又は不均一に交互に配置された転動体を有する。不均一な配置とは、例えば、一の種類の2つの転動体(すなわちアキシャルであってもラジアルであっても)及び他の種類の1つの転動体(すなわちアキシャルであってもラジアルであっても)がそれぞれ、円周方向において後方に交互に一列に設置される配置である。
【0036】
典型的には、軸受外輪は、少なくとも1つのアキシャル軸受走行面、及び少なくとも1つ、典型的にはちょうど2つのラジアル軸受走行面を有する。典型的には、ラジアル転動体及びアキシャル転動体は、軸受外輪上を直接走行する。典型的な実施形態において、カムディスクは中空軸の形態とされる。典型的には、駆動入力軸又は駆動出力軸の形態とされた中空軸は、軸方向の外周上に複数の部分を有する。中空軸及びカムディスクは、一体的に設計することができる。これらの部分のうちの1つは、典型的にはカムディスク上の隆起部の形態である。更に部分は、例えば、少なくとも1つの軸受を受け入れるための軸受部分を1つ以上含んでもよい。いくつかの実施形態において、中空軸は、例えば軸方向に交互に配置された中空軸部品を有する多部品形態とすることができる。これは、軸受部分とカムディスクとの組合せが異なるモジュールを形成することができるという利点を提供する。これは、高い柔軟性及びコスト上の利点がある。様々な部分が、例えば、材料、表面仕上げ、熱処理などにおける異なる要求に応じて、より容易かつ選択的に処理され得るので、製造の簡素化が可能になる。
【0037】
駆動出力取付けが半径方向においてコンパクトであることは、従来の設計に比べてかなり大きな中空軸を可能とする。これは、軸方向構造長さが短い2段構造を実現するために、貫通媒体の用途、又は多段構造の場合に前段を収容する用途に使用され得る。典型的な歯車機構の場合、中空軸は、歯車機構の外径の少なくとも30%、好ましくは少なくとも36%である内径を有する。典型的な実施形態における取付けは、そのような大きな内径を可能にする。パイロットステージはこの場合、遊星プレステージの形態であってもよく、カムディスクは遊星キャリアを形成し、遊星ステージのリングギア歯部は、歯キャリアに接続される。
【0038】
製造上有利なのは、ハウジングを、軸受外輪を有する駆動出力取付け部品と、リングギアの歯部を有する部品とに分割することである。2つの部品は、非常に異なる荷重を受け、したがって、材料だけでなく熱処理に関しても、各々の場合においてそれらの役割に最適に適合させることができる。
【0039】
選択可能な構成要素の結果として軸受予圧の設定が定義されることは、取付けにとって有利である。軸ナットによる調整を省くことができ、したがって、軸受予圧の変動を大幅に回避することができる。
【0040】
実施形態のさらなる利点は、以下であり得る:すべての寸法において非常にコンパクトであり、中空軸の直径の大幅に増大させ、歯車機構の構造長さを低減する、駆動入力取付け。歯車機構の軸に垂直又は平行な軸受走行面のより簡単かつ安価な製造。結果としてより安価な製造とより個別的な処理を可能とする歯キャリア及びハウジング部品のより単純な形状。個々の部品の公差が小さく耐荷重性が高いことによる精密な取付け。一体化された軸受走行面による半径方向及び軸方向の振れの改善。アキシャル軸受リングと選択された部品とを介した、軸受予圧のより簡単な設定。軸ナットは必須ではない。転動体を用いた占有を使用場面に個別に適応させることが可能である。
【0041】
本発明による典型的な歯車機構は、例えば、ロボット工学、工作機械、包装機械、旋盤又はフライス盤、及び他の産業用駆動機構において使用される。発電機モードでは、風力発電所又は他のエネルギー発電所で使用することができる。
【0042】
それらは、トルクや出力密度、大径の中空軸、高剛性、少ない遊び又は遊びゼロ、又はコンパクト性に関して高い要求を有する用途に特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明は、添付の図面に基づいて以下においてより詳細に説明される:
【
図1】
図1は、典型的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の典型的な実施形態の一部を斜視概略図で示す。
【
図3】
図3は、典型的な実施形態の一部を斜視概略図で示す。
【
図4】
図4は、典型的な実施形態の一部を斜視概略図で示す。
【
図5】
図5は、典型的な実施形態の一部を斜視概略図で示す。
【
図6】
図6は、典型的な実施形態の転動体のみを斜視概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の典型的な実施形態が図面に基づいて以下に説明されるが、本発明は例示的な実施形態に限定されるものではない;代替的に、本発明の範囲は請求項によって決定される。実施形態の説明において、特定の状況下で様々な図面及び様々な実施形態について、同一の参照符号が同一又は類似の部分に使用される。一部、他の図面に関連して既に説明した特徴は、明確とするために再度説明しない。明確さのために、一部において、例えば
図2における転動体や離隔手段のように、関連する特徴の全てに参照符号を付さない部分がある。
【0045】
図1は、本発明の典型的な実施形態の概略断面図である。
図1は、歯キャリア5のガイド7内で変位可能に受容される歯9を備える歯車機構1を示す。歯キャリア5は、歯車機構1の歯車機構軸11を中心に回転可能に取り付けられる。
【0046】
歯キャリア5は、リングギア4の歯部3とカムディスク13との間に配置され、駆動出力を形成する。リングギア4とカムディスク13も同様に、歯車機構軸11に対して同心状に配置される。駆動出力は
図1の右側にある。歯キャリア5は、駆動出力と一体に形成される。全ての実施形態と同様に、歯車機構1は逆方向に動作することもでき、そこで歯キャリア5は、歯車機構1の入力側駆動部を形成する。
【0047】
図1において、ガイド7は半径方向に配列され、歯9は直線的に半径方向に変位可能にガイド7に取り付けられる。特に、歯9は各々の長軸方向に沿って変位可能である。長軸は各々のガイド7に対して平行に配置される。歯9は、リングギア4の歯部3と係合するように半径方向に変位させることができる。
図1において、それぞれの場合において、1つの歯9及び1つのガイド7のみが断面図に断面で示される。構造に関する更なる情報については、DE 10 2015 119 582 A1を参照されたい。
【0048】
図1の歯車機構1において、カムディスク13は、通常、歯車機構1の駆動入力要素として機能する。カムディスク13は、カムディスク13の円周方向にプロファイリングを有する。プロファイリングは円周上に2つの隆起部を有する経路を有し、これらの隆起部は、半径方向に歯9に荷重を加える。
【0049】
図1の実施形態において、カムディスク13は中空軸と一体的に形成される。中空シャフトの内径は、歯車機構1の外周の30%以上である。
【0050】
歯車機構1は多部品のハウジングを有し、リングギア4は、ハウジングの第2ハウジング部品を形成する。リングギア4は、軸受外輪の形状の第1ハウジング部品24とハウジングの第3ハウジング部品14との間にクランプされ、ねじ34は、それぞれの場合において、ハウジング部品14及び24を、中央に配置されたリングギア4に押し付ける。
【0051】
歯キャリア5は、第1軸受列35及び第2軸受列37によって、歯車機構のハウジング部品24に取り付けられる。軸受列35,37は、それぞれ、回転軸が歯車機構軸11に対して垂直に配置されたアキシャル転動体45,47と、回転軸が歯車機構軸11に対して平行に配置されたラジアル転動体46,48とを備える。転動体45~48は、
図1の実施形態の詳細を概略的な斜視部分図で示す
図2に示される。
【0052】
図1において、2つのアキシャル転動体45及び47が図面の上半分に示される。転動体45~48は、それぞれ転動体の長さよりも大きい直径を有する。このようにして、転動体45~48は、円筒形転動体45~48の端面が走行面と荷重接触することなく、走行面上で転動する。
【0053】
ラジアル転動体46及び48は、歯キャリア5の内側ラジアル軸受走行面56及び57上と、歯車機構1のハウジング部品24の外側ラジアル軸受走行面66及び67上とを走行する。アキシャル転動体45及び47は、歯キャリアのウェブによって形成された歯キャリア5の内側アキシャル軸受走行面55及び58上を走行する。更に、第1軸受列35の転動体45は、歯車機構1のハウジング部品24の第1外側アキシャル軸受走行面65上を走行する。
図1の下半分に示すように、アキシャル軸受リング39は、アキシャル転動体47のための第2外側アキシャル軸受走行面68を形成する。
【0054】
アキシャル軸受リング39は、リングギア4と第1ハウジング部品24とで軸方向に支持され、軸受列35及び37に規定の軸方向予圧を発生させるために、その軸方向寸法について選択可能とされる。
【0055】
図2において、
図1の実施形態のいくつかの詳細が斜視部分図で概略的に示される。リングギアとハウジングは取り外される。
【0056】
第1軸受列35と第2軸受列37とは、それぞれ、1:1の比で、各々アキシャル転動体45及び47と、各々ラジアル転動体46及び48とを交互に有する。各々の離隔手段 49は、転動体の間に配置される。
【0057】
図3~
図5はそれぞれ、さらなる典型的な実施形態の一部を斜視概略図で示す。
図3~
図5の実施形態は、多くの要素において
図1及び
図2の実施形態に対応するので、同一の要素についての説明は省略する。
【0058】
図3は、典型的な実施形態の軸受列35及び37の詳細を斜視概略図で示す。第1軸受列35は、第1アキシャル転動体45と第1ラジアル転動体46とを2:1の比率で交互に有する。第2軸受列37は、第2アキシャル転動体47のみを有し、ラジアル転動体を有していない。2つの軸受列35及び37の転動体の間には、各々離隔手段が配置される。この点において、互いに対称に配置された凹状の凹部を有する離隔手段50が、軸受列37の同一直線上に配列された2つの転動体の間に設けられている。対照的に、軸受列35において、ラジアル転動体とアキシャル転動体との間に配置された離隔手段 49は、互いに90°回転して配置された2つの凹状凹部を有する。
【0059】
図4は、典型的な実施形態の軸受列35及び37の詳細を斜視概略図で示す。第1軸受列35は、第1アキシャル転動体45と第1ラジアル転動体46とを1:1の比率で交互に有する。第2軸受列37は、第2アキシャル転動体47のみを有し、ラジアル転動体を有していない。離隔手段 50は軸受列35のアキシャル転動体間に配置され、離隔手段 49は軸受列37のアキシャル転動体とラジアル転動体との間に配置される。
【0060】
図5は、典型的な実施形態の軸受列35及び37の詳細を斜視概略図で示す。第1軸受列35は、第1アキシャル転動体45と第1ラジアル転動体46とを1:2の比率で交互に有する。第2軸受列37は、第2アキシャル転動体47と第2ラジアル転動体48とを1:2の比率で交互に有する。各々の離隔手段 49は、2つの軸受列35及び37の軸方向及び半径方向に配置された転動体の間に配置される。離隔手段は、半径方向に配置された転動体46,48の間に必然的に存在する必要はない。
【0061】
図6は、典型的な実施形態の転動体のみを斜視概略図で示す。図示されているのは、第1アキシャル転動体45と第1ラジアル転動体46とを有する第1軸受列35であり、それらの間に各々の離隔手段は配置されていない。
【0062】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない;代替的に、本発明の範囲は添付の請求項によって決定される。
【符号の説明】
【0063】
1: 歯車機構
3:(内)歯部
4:リングギア
5:歯キャリア
7:ガイド
9:歯
11:歯車機構軸
13:カムディスク
14:第3のハウジング部品
24:第1のハウジング部品/軸受外輪
34:ねじ
35:第1軸受列
37:第2軸受列
39:アキシャル軸受リング
45:第1アキシャル転動体
46:第1ラジアル転動体
47:第2アキシャル転動体
48:第2ラジアル転動体
49:離隔手段
55:第1内側アキシャル軸受走行面
56:第1内側ラジアル軸受走行面
57:第2内側ラジアル軸受走行面
58:第2内側アキシャル軸受走行面
65:第1外側アキシャル軸受走行面
66:第1外側ラジアル軸受走行面
67:第2外側ラジアル軸受走行面
68:第2外側アキシャル軸受走行面
【外国語明細書】