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特開2024-109529ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ、液体用フィルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109529
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ、液体用フィルター
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20240806BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240806BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240806BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240806BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20240806BHJP
【FI】
C08J9/28 CES
H01M50/417
H01M50/449
H01M50/489
H01M50/491
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007799
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2023013851
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久万 琢也
(72)【発明者】
【氏名】西村 直哉
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 龍太
【テーマコード(参考)】
4F074
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AB01
4F074AD01
4F074AD12
4F074AG02
4F074AG04
4F074CA03
4F074CA06
4F074CB03
4F074CB17
4F074CB28
4F074CC02X
4F074CC02Z
4F074CC04X
4F074CC04Z
4F074CC22X
4F074CC27Y
4F074CC28Z
4F074CC29Y
4F074CC32X
4F074DA02
4F074DA10
4F074DA23
4F074DA43
4F074DA49
5H021BB20
5H021CC04
5H021EE04
5H021HH00
5H021HH02
5H021HH03
5H021HH06
5H021HH07
(57)【要約】
【課題】 電池用セパレータとして用いたとき耐デンドライト性および出力特性に優れ、液体フィルター用途に用いたとき濾過精度と高透過性に優れるポリオレフィン微多孔膜を提供する。
【解決手段】 ポリエチレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層の少なくとも2層から成る積層フィルムであり、A層を構成する樹脂の粘度平均分子量をMva、B層を構成する樹脂の粘度平均分子量をMvbとしたとき、下記式を満たすポリオレフィン微多孔膜とする。
Mva-Mvb≧100万
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層の少なくとも2層から成る積層フィルムであり、A層を構成する樹脂の粘度平均分子量をMva、B層を構成する樹脂の粘度平均分子量をMvbとしたとき、下記式を満たすポリオレフィン微多孔膜。
Mva-Mvb≧100万
【請求項2】
Mvaが200万以上である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
Mvbが100万以下である請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜
【請求項4】
全層厚みに対するA層の合計厚みの比率が40%以下である請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項5】
A層の合計厚みが4μm以下である請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項6】
A層を構成する樹脂の融点が136℃以下である請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項7】
バブルポイント圧力が2000kPa以上である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項8】
空孔率が40%以上である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項9】
厚み10μm換算の透気抵抗が300秒以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項10】
液体用フィルターに用いられる請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項11】
電池用セパレータに用いられる請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項12】
請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜を用いた液体用フィルター。
【請求項13】
請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜を用いた電池用セパレータ。
【請求項14】
請求項12に記載の液体用ろ過フィルターを用いたろ過ユニット。
【請求項15】
請求項13に記載の電池用セパレータを用いた二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層の少なくとも2層から成るポリオレフィン微多孔膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔膜は、フィルター、燃料電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータなどとして用いられている。特にノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、デジタルカメラなどに広く使用さるリチウムイオン電池用のセパレータとして好適に使用されている。リチウムイオン二次電池において近年は車載用途を中心に電池の大型化および高エネルギー密度化・高容量化・高出力化を目指して開発が進められており、それに伴い一部の電池ではリチウムの析出によるデンドライトが発生しやすくなっており、セパレータへのデンドライト耐性に対する要求特性も一層高いものとなってきている。リチウムイオン二次電池におけるデンドライトとは、充放電に伴い負極とセパレータの界面付近に発生する針状の結晶であり、成長してセパレータを貫通すると短絡の原因になる場合があるため、デンドライトが発生しやすい電池においては、デンドライトが貫通しにくい小孔径なセパレータが求められる。一方で微多孔膜の孔径を小さくすると透過性が低下するため、出力特性が低下する場合があった。
【0003】
また、ポリオレフィン微多孔膜は、その均一微細な孔構造を持つ特徴から、水処理膜、限外濾過膜、精密濾過膜、防湿防水医療などの各種のフィルター用途に広く用いられており、これら用途の中でも特に、耐溶剤性、耐薬品性等が要求される用途においては、十分な耐性を維持したまま、高精度の分離能を維持できるように、ポリオレフィン微多孔膜の性能をより向上させるべく要請が高まっている。例えば、高集積度半導体製造プロセス液体用濾過フィルターとしては、配線ピッチが10数nm~数nmと微細化するに従い、プロセス液体中の微細な異物を捕集するため、より微細な孔径と良好な透過性が要請されている。
【0004】
特許文献1には、高圧力下において高い液体透過性と高い微粒子捕集性の両方を有する液体フィルター基材について記載されており、気・液相置換によるハーフドライ法で測定した平均流量孔径、及び液・液相置換によるハーフドライ法で測定した平均流量孔径dLLPを所定の範囲とした液体フィルター用ポリオレフィン微多孔膜が開示されている。
特許文献2には、細孔径が小さく透気性に非常に優れたポリオレフィン微多孔膜について記載されており、透気抵抗度10~200sec/100ml、バブルポイント細孔径が5~35nmである積層ポリオレフィン微多孔膜が開示されている。
【0005】
特許文献3にはPEおよびPPから成る、樹脂組成の異なる層を積層化した微多孔膜について記載されており、表層に配置した層と内層に配置した層で、樹脂組成や孔構造が異なることにより、電池用セパレータとして用いた場合に透過性や機械的強度、メルトダウン特性、電解液吸収性および電解液保持性のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-167198号公報
【特許文献2】国際公開第2018/168871号
【特許文献3】特開2008-255307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は高い圧力下での孔構造の変形を抑制することにより、高圧力条件でのろ過時に粒子除去性能と透過性が両立できる技術であるが、小孔径化と高透過性のトレードオフ状態を改善できるものではない。
特許文献2、特許文献3は、積層化による機能分離で小孔径、高透過性のトレードオフを改善できる技術だが、小孔径化した層はPEとPPをブレンドした処方となっており、このような異なる樹脂をブレンドした設計では各樹脂が相分離することで孔構造が不均一化するため、小孔径、高透過性のバランスには改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層の少なくとも2層から成る積層フィルムであり、A層を構成する樹脂の粘度平均分子量をMva、B層を構成する樹脂の粘度平均分子量をMvbとしたとき、下記式を満足することを特徴とする。
【0009】
Mva-Mvb≧100万
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、小孔径と高透過性に優れる。その特性により、電池用セパレータとして用いたとき、耐デンドライト性および出力特性に優れることが見込まれるから、電気自動車などの高エネルギー密度化、高容量化および高出力化を必要とする二次電池用の電池用セパレータとして好適に使用することができる。また、液体フィルター用途に用いたとき濾過精度と高透過性に優れることが見込まれるから、半導体工程用などの微小な異物除去が必要とされる高精度液体用フィルターとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の本実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層の少なくとも2層から成る積層フィルムであり、A層を構成する樹脂の粘度平均分子量をMvaとしたとき、Mvaが200万以上であることが好ましい。より好ましくは250万以上、さらに好ましくは300万以上、最も好ましくは350万以上である。Mvaを200万以上とすることにより、A層の孔径を小さく制御可能となり、電池用セパレータとして用いたときに耐デンドライト性に優れ、また、液体フィルター用途に用いたときに濾過精度に優れたポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。小孔径化の観点からは、Mvaは大きいほど好ましいが、大きすぎるとB層を構成する樹脂との分子量さや粘度差が大きくなりすぎ、共押出における製膜性が低下するためMvaは500万以下が好ましく、450万以下がより好ましい。Mvaの値を上記範囲とするには、A層の原料組成を後述する範囲とすることが好ましい。
【0013】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、B層を構成する樹脂の粘度平均分子量をMvbとしたとき、Mvbが100万以下であることが好ましい。より好ましくは80万以下、さらに好ましくは60万以下、最も好ましくは50万以下である。Mvbを100万以下とすることにより、B層の孔径を大きく制御可能となり、電池用セパレータとして用いたときに出力特性に優れ、また、液体フィルター用途に用いたときに液体透過性に優れたポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。大孔径化の観点からは、Mvbは小さいほど好ましいが、小さすぎるとA層を構成する樹脂との分子量さや粘度差が大きくなりすぎ、共押出における製膜性が低下するためMvbは10万以上が好ましく、15万以上がより好ましい。Mvbの値を上記範囲とするには、B層の原料組成を後述する範囲とすることが好ましい。
【0014】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、MvaとMvbの関係が下記式を満足する。
【0015】
Mva-Mvb≧100万
(Mva-Mvb)の値はより好ましくは150万以上、さらに好ましくは200万以上、最もこのましくは250万以上である。(Mva-Mvb)の値を150万以上とすることにより、A層とB層の孔径の差を大きく制御することが可能となり、小孔径と高流量を両立することが可能となる。小孔径と高流量の両立の観点からは、(Mva-Mvb)の値は大きいほど好ましいが、大きすぎるとA層を構成する樹脂とB層を構成する樹脂との分子量さや粘度差が大きくなりすぎ、共押出における製膜性が低下するため(Mva-Mvb)の値は500万以下が好ましく、450万以下がより好ましい。(Mva-Mvb)の値を上記範囲とするには、A層およびB層の原料組成を後述する範囲とすることが好ましい。
【0016】
一般的に多孔膜を小孔径化すると流体の流路が細くなるため圧損が高くなり、透過性が低下するが、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、上述した構成で小孔径層であるA層と高透過層であるB層を組み合わせ、さらに後述する製造条件とすることにより、小孔径と高透過性を高いレベルで両立したものである。
【0017】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、全層厚みに対するA層の合計厚みの比率が40%以下であることが好ましい。より好ましくは35%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは18%以下である。A層の厚み比率が40%を超えると、透過性が悪化し、電池用セパレータとして用いたときに出力特性が低下したり、液体用フィルターとして用いたときに流量が低下する場合がある。透過性の観点からは、A層の厚み比率は低いほど好ましいが、低すぎると濾過寿命が低下したり、積層精度が悪化する場合があるため5%程度が下限である。A層の厚み比率を上記範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、積層精度の優れた品位の良いフィルムを得るためにフィルム製膜時の押出条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
【0018】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、A層の合計厚みが4μm以下であることが好ましい。より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。A層の厚みが4μmを超えると、透過性が悪化し、電池用セパレータとして用いたときに出力特性が低下したり、液体用フィルターとして用いたときに流量が低下する場合がある。透過性の観点からは、A層の厚みは薄いほど好ましいが、薄すぎると濾過寿命が低下したり、積層精度が悪化する場合があるため0.5μm程度が下限である。A層の厚みを上記範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、積層精度の優れた品位の良いフィルムを得るためにフィルム製膜時の押出条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
【0019】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、A層を構成する樹脂の融点が136℃以下であることが好ましい。より好ましくは134℃以下、さらに好ましくは132℃以下、最も好ましくは130℃以下である。A層を構成する樹脂の融点が136℃を超えると、孔径が大きくなり、電池用セパレータとして用いたときに耐デンドライト性が低下したり、液体用フィルターとして用いたときに微細異物の濾過精度が低下する場合がある。A層を構成する樹脂の融点は、低すぎると結晶性が低下して開孔性が悪化し、透過性が低下する場合があるため、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがさらに好ましい。A層を構成する樹脂の融点を上記範囲とするには、A層の原料組成を後述する範囲とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、B層を構成する樹脂の融点が133℃以上であることが好ましい。より好ましくは134℃以上、さらに好ましくは135℃以上145℃以下である。B層の融点を上記範囲とすることにより、B層の透過性を向上することが可能となる。
【0021】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、後述する測定方法により求められるバブルポイント圧力が2000kPa以上であることが好ましい。バブルポイント圧力は、液体を含侵させたポリオレフィン微多孔膜の片面から空気圧をかけていき、空気が初めに貫通した際の圧力を表すものである。空気が最初に貫通するのは、ポリオレフィン微多孔膜の面方向で最も大きな孔を有する部分であるため、バブルポイント圧力が高いことは、ポリオレフィン微多孔膜が小孔径であることを表している。より好ましくは2100kPa以上、さらに好ましくは2200kPa以上、最も好ましくは2300kPa以上である。バブルポイント圧力が2000kPa未満であると孔径が大きくなり、電池用セパレータとして用いたときに耐デンドライト性が低下したり、液体用フィルターとして用いたときに微細異物の濾過精度が低下する場合がある。なお、バブルポイント圧力の上限は特に限定されないが、透過性との両立する観点から、例えば4000kPaである。バブルポイント圧力を上記範囲とするには、A層の原料組成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時の延伸条件や熱固定条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
【0022】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、後述する測定方法により求められる厚み10μm換算の透気抵抗が300秒/100cm以下であることが好ましい。より好ましくは280秒/100cm以下、さらに好ましくは250秒/100cm以下、最も好ましくは200秒以下である。厚み10μm換算の透気抵抗が300秒/100cmを超えると、電池用セパレータとして用いたときに出力特性が低下したり、液体用フィルターとして用いたときに流量が低下する場合がある。透過性向上の観点から、透気抵抗は低いほど好ましいが、50秒/100cm程度が実質的な下限である。透気抵抗を上記範囲とするには、ポリオレフィン微多孔膜の原料組成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時の延伸条件や熱固定条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
【0023】
本発明のポリオレフィン微多孔膜の厚みは用途によって適宜調整されるものであり特に限定はされないが、1μm以上25μm以下であることが好ましい。厚みが1μm未満であると、ハンドリングが困難になったり、電池としたときに安全性が低下する場合があり、25μmを超えると、樹脂量が増加して生産性が低下したり、電池用セパレータとして用いたときに出力特性が低下したり、液体用フィルターとして用いたときに流量が低下する場合がある。厚みは、2μm以上15μm以下であることがより好ましく、2μm以上12μm以下であることが更に好ましく、2μm以上9μm以下であることが最も好ましい。厚みは他の物性を悪化させない範囲内で、押出機のスクリュウ回転数、未延伸シートの幅、製膜速度、延伸倍率などにより調整可能である。
【0024】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、空孔率が40%以上であることが好ましい。空孔率はより好ましくは42%以上、更に好ましくは44%以上、最も好ましくは45%以上である。空孔率が40%未満であると、電池用セパレータとして用いたときにイオンの透過性が不十分となり、電池の出力特性が低下したり、液体用フィルターとして用いたときに流量が低下する場合がある。空孔率は、透過性の観点からは高いほど好ましいが、高すぎると孔径が大きくなり、電池用セパレータとして用いたときに耐デンドライト性が低下したり、液体用フィルターとして用いたときに微細異物の濾過精度が低下する場合がある。空孔率は、透過性の観点からは高いほど好ましいが、ハンドリング性と両立する観点から70%程度が上限である。空孔率を上記範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時の延伸条件や熱固定条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
【0025】
次に本発明のポリオレフィン微多孔膜に用いる原料について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0026】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン原料Aとする)を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン原料Bとする)を主成分とするB層の少なくとも2層から成る積層フィルムである。
【0027】
ここで、本発明において「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは98質量%以上である。
【0028】
本発明のポリオレフィン微多孔膜のA層はポリエチレン樹脂を主成分とする。A層に用いるポリエチレン樹脂の主成分は、粘度平均分子量が200万以上であることが好ましく、250万以上がより好ましく、300万以上が更に好ましく、350万以上が最も好ましい。上限としては500万以下であることがこのましい。
A層に用いるポリエチレン樹脂の主成分の粘度平均分子量を200万以上とすることにより、A層を構成する樹脂の粘度平均分子量Mvaを上述した範囲とすることができ、A層の孔径を小さく制御することが可能となる。A層に用いるポリエチレン樹脂の主成分としては、超高分子量ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。超高分子量ポリオレフィン樹脂を含有することによって、孔の微細化、高耐熱性化が可能であり、さらに、強度や伸度を向上させることができる。超高分子量ポリオレフィン樹脂(UHMwPO)としては超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)の使用が好ましい。超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外の他のα-オレフィンは上記と同じでよい。
【0029】
本発明に用いるポリオレフィン組成物Aの主成分の融点は136℃以下であることが好ましい。より好ましくは133℃以下、さらに好ましくは130℃以下、最も好ましくは129℃以下である。融点を上記範囲とすることにより、A層の孔径を小さく制御することが可能となる。
【0030】
本発明のポリオレフィン微多孔膜のB層はポリエチレン樹脂を主成分とする。B層に用いるポリエチレン樹脂の主成分は、粘度平均分子量が100万以下であることが好ましく、80万以下がより好ましく、60万以下が更に好ましく、50万以下が最も好ましい。下限としては10万以上であることがこのましい。B層いるポリエチレン樹脂の主成分の粘度平均分子量を100万以下とすることにより、B層を構成する樹脂の粘度平均分子量Mvbを上述した範囲とすることができ、B層の透過性を向上することが可能となる。
【0031】
本発明に用いるポリオレフィン組成物Bの主成分の融点は133℃以上であることが好ましい。より好ましくは134℃以上、さらに好ましくは135℃以上である。融点を上記範囲とすることにより、B層の透過性を向上することが可能となる。
【0032】
ここで、ポリエチレンの種類としては、密度が0.94g/cmを越えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93~0.94g/cmの範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cmより低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられるが、小孔径を目的としたA層の樹脂としては、中密度ポリエチレンや低密度ポリエチレンの使用が好ましく、高透過性を目的としたB層の樹脂としては、高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンの使用が好ましく、これらの樹脂を単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
【0033】
また、本発明のポリオレフィン微多孔膜には、本発明の効果を損なわない範囲でポリエチレン以外のポリオレフィンを少量含んでいてもよい。例えばポリプロピレンを含有させると、本発明のポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合にメルトダウン温度を向上させることができる。また、液体フィルター用途に用いたときに濾過精度に優れたポリオレフィン微多孔膜を得ることができる場合がある。ポリプロピレンの種類は、単独重合体のほかに、ブロック共重合体、ランダム共重合体も使用することができる。ブロック共重合体、ランダム共重合体には、プロピレン以外の他のα-エチレンとの共重合体成分を含有することができ、当該他のα-エチレンとしては、エチレンが好ましい。ただし、ポリプロピレンを含有させると、ポリエチレン単独使用に比べて、機械強度や透過性が低下しやすいため、ポリオレフィン微多孔膜中のポリプロピレンの含有量は、0~20質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0~5質量%がさらに好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0034】
その他、本発明のポリオレフィン微多孔膜のA層およびB層には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリエチレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)等から選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。酸化防止剤や熱安定剤の種類および添加量を適宜選択することは微多孔膜の特性の調整又は増強として重要である。
【0035】
次に、上記原料を用いたポリオレフィン微多孔膜の構成について説明する。
【0036】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層の少なくとも2層から成る積層フィルムである。A層の少なくとも片面にB層が配置され、B層がポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面の表層を形成することが好ましい。更には、B層/A層/B層の3層積層構成であることがより好ましい。3層積層構成とすることにより、ポリオレフィン微多孔膜のカールを抑制したり、積層精度を向上させることができる。
【0037】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、上述した原料を用い、二軸延伸されることによって得られる。二軸延伸の方法としては、インフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、製膜安定性、厚み均一性、フィルムの高剛性と寸法安定性を制御する点において同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、以下の(a)~(e)の工程からなることが好ましい。以下に、上記原料を用いたポリオレフィン微多孔膜の製膜方法について例を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0038】
(a)ポリオレフィン単体、ポリオレフィン混合物、ポリオレフィン溶媒混合物(可塑剤)、添加剤、及びポリオレフィン混練物を含むポリマー材料を混練・溶解してポリオレフィン溶液を調整する、
(b)溶解物を押出し、シート状に成型して冷却固化し、
(c)得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行う、
(d)その後、得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出しフィルムを乾燥する、
(e)つづいて熱処理/再延伸を行う。
【0039】
以下、各工程について説明する。
【0040】
(a)ポリオレフィン溶液の調製
ポリオレフィン樹脂を可塑剤に加熱溶解させたポリオレフィン溶液を調製する。可塑剤としては、ポリエチレンを十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするために、可塑剤は室温で液体であることが好ましい。可塑剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。可塑剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いることが好ましい。溶融混練状態では、ポリエチレンと混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。ただし、固体溶剤のみを使用すると、延伸ムラ等が発生するおそれがある。
【0041】
本発明のポリオレフィン微多孔膜はポリオレフィン溶液の調製において、A層のポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計量に対するポリオレフィン樹脂が占める割合(以下、樹脂濃度と記載する)は、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計量を100質量%とした場合に、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。樹脂濃度を高くすることにより孔径を小さくすることが容易となるが、シートの成型性が悪化し製膜性が低下する場合があることから、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。
【0042】
B層における、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計量に対するポリオレフィン樹脂が占める割合(以下、樹脂濃度と記載する)は、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計量を100質量%とした場合に、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。B層における樹脂濃度を低くすることにより、透過性を改善することが容易となるが、低すぎるとシートの成型性が悪化し製膜性が低下する場合があることから、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。
【0043】
可塑剤の粘度は40℃において20~200cStであることが好ましい。40℃における粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリオレフィン溶液を押し出したシートが不均一になりにくい。一方、200cSt以下とすれば可塑剤の除去が容易である。なお、可塑剤の粘度は、ウベローデ粘度計を用いて40℃で測定した粘度である。
【0044】
(b)押出物の形成およびゲル状シートの形成
ポリオレフィン溶液の均一な溶融混練は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン溶液を調製したい場合、二軸押出機中で行うことが好ましい。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤等の各種添加材を添加してもよい。特にポリエチレンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0045】
押出機中では、ポリオレフィン樹脂が完全に溶融する温度で、ポリオレフィン溶液を均一に混合する。溶融混練温度は、使用するポリオレフィン樹脂によってことなるが、(ポリオレフィン樹脂の融点+10℃)~(ポリオレフィン樹脂の融点+120℃)とするのが好ましい。さらに好ましくは(ポリオレフィン樹脂の融点+20℃)~(ポリオレフィン樹脂の融点+100℃)である。ここで、融点とは、JIS K7121(1987)に基づき、DSCにより測定した値をいう(以下、同じ)。例えば、ポリエチレンの場合の溶融混練温度は140~250℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、160~230℃、最も好ましくは170~200℃である。具体的には、ポリエチレン組成物は約130~140℃の融点を有するので、溶融混練温度は140~250℃が好ましく、180~230℃がさらに好ましい。
【0046】
樹脂の劣化を抑制する観点から溶融混練温度は低い方が好ましいが、上述の温度よりも低いとダイから押出された押出物に未溶融物が発生し、後の延伸工程で破膜等を引き起こす原因となる場合があり、上述の温度より高いと、ポリオレフィンの熱分解が激しくなり、得られる微多孔膜の物性、例えば、強度や空孔率等劣る場合がある。また、分解物がチルロールや延伸工程上のロールなどに析出し、シートに付着することで外観悪化につながる。そのため、上記範囲内で混練することが好ましい。
【0047】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層の少なくとも2層から成る積層フィルムである。積層構成は特に限定は無く、好ましい形態は上述の通りである。まず、A層用の原料を二軸押出機に供給し、上述した条件にて混練、押出しする。好ましくはその後、フィルターにて異物や変性したポリマーを除去する。一方、B層用の原料を別の二軸押出機に供給し、上述した条件にて混練、押出しする。そして、好ましくはフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去する。それぞれの溶融押出機から押出された原料をマルチマニホールド型の複合Tダイに供給する。そしてダイにて所定の積層厚み比になるように積層し、キャストドラム上に吐出し、2層構成を有するシートを得る。
【0048】
次に、得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、冷却により、溶剤によって分離されたポリエチレンのミクロ相を固定化することができる。冷却工程において10~50℃まで冷却するのが好ましい。これは、最終冷却温度を結晶化終了温度以下とするのが好ましいためで、高次構造を細かくすることで、その後の延伸において均一延伸が行いやすくなる。そのため、冷却は少なくともゲル化温度以下までは30℃/分以上の速度で行うのが好ましい。冷却速度が30℃/分未満では、結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状シートとなりにくい。一般に冷却速度が遅いと、比較的大きな結晶が形成されるので、ゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成するゲル構造も大きなものとなる。対して冷却速度が速いと、比較的小さな結晶が形成されるので、ゲル状シートの高次構造が密となり、均一延伸に加え、フィルムの強度および伸度の向上につながる。
【0049】
冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。
【0050】
(c)延伸工程
得られたゲル状シートを延伸する。用いられる延伸方法としては、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターによる同時二軸延伸などが挙げられる。延伸倍率は、膜厚の均一性の観点より、ゲル状シートの厚さによって異なるが、いずれの方向でも3倍以上に延伸することが好ましい。面積倍率では、9倍以上が好ましく、さらに好ましくは16倍以上、さらにより好ましくは25倍以上である。面積倍率が9倍未満では、延伸が不十分で膜の均一性が損なわれる易く、強度の観点からも優れた微多孔膜が得られない。面積倍率は100倍以下が好ましい。より好ましくは80倍以下、さらに好ましくは50倍以下である。面積倍率を大きくすると、微多孔膜の製造中に破れが多発しやすくなり、生産性が低下したり、孔径が大きくなる場合がある。
なお、本発明においては、フィルムの製膜する方向に平行な方向を、製膜方向あるいは長手方向あるいはMD方向と称し、フィルム面内で製膜方向に直交する方向を幅方向あるいはTD方向と称する。
【0051】
延伸温度はゲル状シートの融点+10℃以下にするのが好ましく、(ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度Tcd)~(ゲル状シートの融点+5℃)の範囲にするのがより好ましい。具体的には、ポリエチレン組成物の場合は約90~100℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は好ましくは90~125℃であり、より好ましくは90~120℃、さらに好ましくは90~110℃である。結晶分散温度TcdはASTM D 4065に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。または、NMRから求める場合もある。90℃未満であると低温延伸のため開孔が不十分となり膜厚の均一性が得られにくく、空孔率も低くなり透過性が低下する場合がある。125℃より高いと、シートの融解が起こり、孔の閉塞が起こりやすくなり透過性が低下したり、孔径が大きくなる場合がある。
【0052】
以上のような延伸によりゲルシートに形成された高次構造に開裂が起こり、結晶相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに、フィブリルが開裂して多孔化し孔径が小さくなるため、電池用セパレータや液体用フィルターに好適になる。また、可塑剤を除去する前に延伸することによって、ポリオレフィンが十分に可塑化し軟化した状態であるために、高次構造の開裂がスムーズになり、結晶相の微細化を均一に行うことができる。また、開裂が容易であるために、延伸時のひずみが残りにくく、可塑剤を除去した後に延伸する場合に比べて熱収縮率を低くすることができる。
【0053】
(d)洗浄・乾燥工程
次に、ゲル状シート中に残留する可塑剤を、洗浄溶剤を用いて除去する。ポリエチレン相と溶媒相とは分離しているので、可塑剤の除去により微多孔膜が得られる。洗浄溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン等の鎖状フルオロカーボンなどがあげられる。これらの洗浄溶剤は低い表面張力(例えば、25℃で24mN/m以下)を有する。低い表面張力の洗浄溶剤を用いることにより、微多孔を形成する網状構造が洗浄後に乾燥時に気-液界面の表面張力により収縮が抑制され、空孔率および透過性を有する微多孔膜が得られる。これらの洗浄溶剤は可塑剤に応じて適宜選択し、単独または混合して用いる。
【0054】
洗浄方法は、ゲル状シートを洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、ゲル状シートに洗浄溶剤をシャワーする方法、またはこれらの組み合わせによる方法等により行うことができる。洗浄溶剤の使用量は洗浄方法により異なるが、一般にゲル状シート100質量部に対して300質量部以上であるのが好ましい。洗浄温度は15~30℃でよく、必要に応じて80℃以下に加熱する。この時、溶剤の洗浄効果を高める観点、得られる微多孔膜の物性のTD方向および/またはMD方向の微多孔膜物性が不均一にならないようにする観点、微多孔膜の機械的物性および電気的物性を向上させる観点から、ゲル状シートが洗浄溶剤に浸漬している時間は長ければ長い方が良い。上述のような洗浄は、洗浄後のゲル状シート、すなわち微多孔膜中の残留溶剤が1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
【0055】
その後、乾燥工程で微多孔膜中の溶剤を乾燥させ除去する。乾燥方法としては、特に限定は無く、金属加熱ロールを用いる方法や熱風を用いる方法などを選択することができる。乾燥温度は40~100℃であることが好ましく、40~80℃がより好ましい。乾燥が不十分であると、後の熱処理で微多孔膜の空孔率が低下し、透過性が悪化する。
【0056】
(e)熱処理/再延伸工程
乾燥した微多孔膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)してもよい。再延伸は、微多孔膜を加熱しながら上述の延伸と同様にテンター法等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。多段延伸の場合は、同時二軸または/および逐次延伸を組み合わせることにより行う。
【0057】
熱処理/再延伸の温度は、ポリエチレン組成物の融点以下にすることが好ましく、(Tcd-20℃)~融点の範囲内にするのがより好ましい。具体的には、70~135℃が好ましく、80~125℃がより好ましい。最も好ましくは、90~120℃である。熱処理/再延伸の温度が高いと、孔径が大きくなる場合がある。
【0058】
再延伸で用いられる延伸方法としては、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターによる同時二軸延伸などが挙げられる。再延伸での延伸倍率は延伸前のフィルム面積を基準として0.8倍以上であることが好ましく、0.9倍以上であることがより好ましく、1.0倍以上であることがさらに好ましい。また、1.6倍以下であることが好ましく、1.5倍以下であることがより好ましく、1.4倍以下であることがさらに好ましい。再延伸倍率を高くすることによって透過性が良好となる一方で、孔径は大きくなる傾向にある。尚、倍率1.0倍未満はフィルムを緩和させることを示す。
【0059】
(f)その他の工程
さらに、その他用途に応じて、微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜に対して、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋処理を施すこともできる。電子線の照射の場合、0.1~100Mradの電子線量が好ましく、100~300kVの加速電圧が好ましい。架橋処理によりポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度が上昇する。
【0060】
界面活性剤処理の場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又は両イオン系界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤を水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールに溶解してなる溶液中に多層微多孔膜を浸漬するか、多層微多孔膜にドクターブレード法により溶液を塗布する。
【0061】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、メルトダウン特性や耐熱性、接着性などの機能を付与する目的で、ポリオレフィン以外の他の多孔質層をコーティングや蒸着などにより積層して多層ポリオレフィン多孔質膜としてもよい。他の多孔質層としては、特に限定されないが、例えば、バインダーと無機粒子とを含む無機粒子層などの多孔質層を積層してもよい。無機粒子層を構成するバインダー成分としては、特に限定されず、公知の成分を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。無機粒子層を構成する無機粒子としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、アルミナ、ベーマイト、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ素などを用いることができる。また、多層ポリオレフィン多孔質膜としては、多孔質化した前記バインダー樹脂がポリオレフィン微多孔質膜の少なくとも一方の表面に積層されたものであってもよい。
【0062】
以上のようにして得られたポリオレフィン微多孔膜は、フィルター、燃料電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータなど様々な用途で用いることができるが、特に電池用セパレータとして用いたとき耐デンドライト性および出力特性に優れることから、電気自動車などの高エネルギー密度化、高容量化、および高出力化を必要とする二次電池用の電池用セパレータとして好ましく用いることができる。
【0063】
また、液体フィルター用途に用いたとき濾過精度と高透過性に優れることから、高精度濾過が求められる半導体レジスト用向けの液体用フィルターとして好ましく用いることができる。本発明のポリオレフィン微多孔膜は、シート状、管状、プリーツ状などのろ過ユニット用の液体用フィルターとして用いることができ、ろ過面積を大きくできることからプリーツ状ろ過ユニットであることが好ましい。プリーツ状ろ過ユニットに組み込む際は、本発明のポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に樹脂素材を用いたメッシュや多孔質体からなる補強膜を積層することが好ましく、補強膜と加熱ロールなどで貼り合わせた後、山谷の折り目をつけてプリーツ状に織り込み、ろ過ユニットに組み込んで使用することができる。
【実施例0064】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0065】
最初に、測定方法と評価方法について説明する。特に指定がない場合は、以下の評価は温度25℃、湿度65%RHの雰囲気下で行った。
【0066】
[膜厚]
ポリオレフィン微多孔膜の50mm×50mmの範囲内における5点の膜厚を接触厚み計株式会社ミツトヨ製ライトマチックVL-50(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.01N)により測定し、平均値を膜厚(μm)とした。
【0067】
[各層の厚み比]
ポリオレフィン微多孔膜の断面SEM観察によって各層の厚みを求めた。断面試験片はクライオCP法を用いて作製し、電子線によるチャージアップを防ぐため、僅かに金属微粒子を蒸着してSEM観察を行い、各層の厚みを測定し、厚み比を求めた。測定は各サンプルについて3点評価し平均値を用いた。
・測定装置
電界放射型走査電子顕微鏡(FE‐SEM)S‐4800((株)日立ハイテクノロジ
-ズ製)
クロスセクションポリッシャ(CP)SM‐9010(日本電子(株)製)
・測定条件
加速電圧:1.0kV。
【0068】
[空孔率]
ポリオレフィン微多孔膜から5cm×5cm角を切り取ってサンプルを得て、室温25℃におけるその体積(cm)と質量(g)とを測定した。それらの値と膜密度(g/cm)とから、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率を次式により算出した。 なお、膜密度は0.99g/cmの一定値と仮定して計算した。
気孔率(%)=(体積-質量/膜密度)/体積×100
[透気抵抗]
膜厚T(μm)の微多孔膜に対して、JIS P-8117(2009)に準拠して、透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)で透気抵抗P(秒/100cm)を測定した。また、式:P=(P×10)/Tにより、膜厚を10μmとしたときの透気抵抗P(10μm換算)(秒/100cm/10μm)を算出した。
【0069】
[ポリオレフィンの粘度平均分子量(Mv)]
粘度平均分子量Mvは、ISO 1628-3(2010)に準拠し、以下に示す方法によって求めた。まず、ポリオレフィン樹脂20mgを秤量し窒素置換した後、20mLのデカリンを加え、150℃で2時間攪拌してポリオレフィン樹脂を溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、キャノン-フェンスケの粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号-100)を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。樹脂量を10mg、5mg、2mg、0mgに変えたサンプルについても同様に標線間の落下時間(ts)を測定した。以下の式に従ってポリエチレン樹脂組成物の還元粘度(ηsp/C)を求めた。
ηsp/C=(ts/tb-1)/0.1 (単位:dL/g)
濃度(C)(単位:g/dL)とポリエチレン樹脂組成物の還元粘度(ηsp/C)と の関係をそれぞれプロットして、最小二乗法により近似直線式を導き、濃度0に外挿して極限粘度([η])を求めた。次に下記を用いて、上記極限粘度[η]の値から粘度平均分子量(Mv)を算出した。
【0070】
Mv=(5.34×10)×[η]1.49
[ポリオレフィンおよびポリオレフィン微多孔膜の融点]
ポリオレフィン樹脂約5mgを測定パンに封入し、PARKING ELMER製 PYRIS DIAMOND DSCを用いて、10℃/分の昇温速度で30℃から230℃まで昇温した(1回目の昇温)後、230℃で5分間保持し、10℃/分の速度で冷却し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から230℃まで昇温した(2回目の昇温)。2回目の昇温時に得られた融解チャートより、融解エンタルピーが全体の50%となる温度をポリオレフィン樹脂の融点とした。なお1層に2種類以上のポリオレフィン樹脂を用いる場合は、ポリオレフィンの混合比率で原料を調合し、小型混錬機を用いて180℃で10分間混錬して得たポリオレフィン組成物をサンプルとして用いた。
【0071】
[バブルポイント圧力]
パームポロメーター(PMI社製、CFP-1500A)を用いて、ポリオレフィン微多孔膜のバブルポイントを求めた。ポリオレフィン微多孔膜への含浸液体としてGALWICK(表面張力:15.9dynes/cm)を用い、バブルポイント法(JIS K 3832(1990))に基づき測定されるバブルポイント圧力(KPa)を求めた。
【0072】
(実施例1)
A層用のポリオレフィン原料として、粘度平均分子量(Mv)が3.0×10の超高分子量ポリチレン(融点128℃)100質量部を用い、0.5質量部の2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えてポリオレフィン混合物を得た。得られたポリオレフィン混合物15質量%を、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]85質量%を供給し、210℃及び200rpmの条件で溶融混練して、第1のポリオレフィン溶液を調製した。
【0073】
B層用のポリオレフィン原料として、粘度平均分子量(Mv)が3.7×10の高密度ポリチレン(融点135℃)100質量部を用い、0.5質量部の2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えてポリオレフィン混合物を得た。得られたポリオレフィン混合物25質量%を、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]75質量%を供給し、210℃及び200rpmの条件で溶融混練して、第2のポリオレフィン溶液を調製した。
【0074】
第1及び第2のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機からフィルターを通して異物を除去後、三層用Tダイに供給し、第2のポリオレフィン溶液/第1のポリオレフィン溶液/第2のポリオレフィン溶液(B層/A層/B層)の層構成にて、各層の吐出量比が1/2/1(B層/A層/B層)となるよう調整して押出した。押出成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り速度2m/minで、引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。
【0075】
ゲル状三層シートを、延伸機により100℃でMD方向及びTD方向ともに5倍に同時二軸延伸した。延伸後のゲル状三層シートを25℃に温調した塩化メチレン浴中に浸漬し流動パラフィンを十分に除去し、室温で風乾した。
【0076】
得られた乾燥膜を100℃×3分で熱固定処理を行った。得られたポリオレフィン多孔質膜の厚みは35μmであった。構成する各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表に記載した。
【0077】
(実施例2)
A層用のポリオレフィン原料として、粘度平均分子量(Mv)が3.5×10の超高分子量ポリチレン(融点135℃)100質量%を用いたこと、第1のポリオレフィン溶液について、ポリオレフィン混合物を20質量%、流動パラフィンを80質量%として二軸押出機に投入し、各層の押出量を調整することにより、積層比を3/4/3(B層/A層/B層)とし、ポリオレフィン微多孔膜の厚みを11μmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0078】
(実施例3)
各層の押出量を調整することにより、積層比を3/2/3(B層/A層/B層)とし、延伸機により100℃でMD方向及びTD方向ともに8倍に同時二軸延伸し、ポリオレフィン微多孔膜の厚みを10μmとしたことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0079】
(実施例4)
B層用のポリオレフィン原料として、粘度平均分子量(Mv)が3.0×10の超高分子量ポリチレン(融点133℃)30質量部及びMvが3.7×10の高密度ポリチレン(融点135℃)70質量部を用いたこと、第2のポリオレフィン溶液について、ポリオレフィン混合物を30質量%、流動パラフィンを70質量%として二軸押出機に投入したことを除いて実施例1と同様に実施した。
【0080】
(実施例5)
A層用のポリオレフィン原料として、粘度平均分子量(Mv)が3.0×10の超高分子量ポリチレン(融点128℃)70質量部、Mvが9.0×10の高密度ポリエチレン(融点132℃)を30質量部用い、0.5質量部の2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えてポリオレフィン混合物を得た。得られたポリオレフィン混合物23質量%を、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]77質量%を供給し、210℃及び200rpmの条件で溶融混練して、第1のポリオレフィン溶液を調製した。
【0081】
B層用のポリオレフィン原料として、粘度平均分子量(Mv)が1.0×10の高密度ポリチレン(融点135℃)100質量部を用い、上記ポリオレフィン樹脂の質量を基準として、0.5質量部の2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えてポリオレフィン混合物を得た。得られたポリオレフィン混合物20質量%を、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]80質量%を供給し、210℃及び200rpmの条件で溶融混練して、第2のポリオレフィン溶液を調製した。
【0082】
第1及び第2のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機からフィルターを通して異物を除去後、三層用Tダイに供給し、第2のポリオレフィン溶液/第1のポリオレフィン溶液/第2のポリオレフィン溶液(B層/A層/B層)の層構成にて、各層の吐出量比が2/1/2(B層/A層/B層)となるよう調整して押出した。押出成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り速度4m/minで、引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。
【0083】
ゲル状三層シートを、延伸機により100℃でMD方向及びTD方向ともに5倍に同時二軸延伸した。延伸後のゲル状三層シートを25℃に温調した塩化メチレン浴中に浸漬し流動パラフィンを十分に除去し、室温で風乾した後、得られた乾燥膜を100℃×3分で熱固定処理を行った。
【0084】
(実施例6)
100℃×3分での熱固定処理中に、TD方向へ延伸倍率1.3倍となるように再延伸を行ったことを除いて、実施例5と同様に実施した。
【0085】
(比較例1)
第2のポリオレフィン溶液を、第1のポリオレフィン溶液と同じ組成としたことを除いて、実施例1と同様に実施した。
【0086】
(比較例2)
第1のポリオレフィン溶液を、第2のポリオレフィン溶液と同じ組成としたことを除いて、実施例1と同様に実施した。
【0087】
(比較例3)
A層用のポリオレフィン原料として、粘度平均分子量(Mv)が3.7×10の高密度ポリチレン(融点135℃)50質量部、粘度平均分子量が(Mv)が1.0×10のポリプロピレン(融点163℃)50質量部を用い、0.5質量部の2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えてポリオレフィン混合物を得た。得られたポリオレフィン混合物30質量%を、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]85質量%を供給し、210℃及び200rpmの条件で溶融混練して、第1のポリオレフィン溶液を調製した。
B層用のポリオレフィン原料として、粘度平均分子量(Mv)が3.0×10の高密度ポリチレン(融点133℃)30質量部及びMvが3.7×10の高密度ポリチレン(融点135℃)70質量部を用い、0.5質量部の2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えてポリオレフィン混合物を得た。得られたポリオレフィン混合物30質量%を、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]70質量%を供給し、210℃及び200rpmの条件で溶融混練して、第2のポリオレフィン溶液を調製した。
【0088】
第1及び第2のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機からフィルターを通して異物を除去後、三層用Tダイに供給し、第2のポリオレフィン溶液/第1のポリオレフィン溶液/第2のポリオレフィン溶液(B層/A層/B層)の層構成にて、各層の吐出量比が2/1/2(B層/A層/B層)となるよう調整して押出した。押出成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り速度2m/minで、引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。
【0089】
ゲル状三層シートを、延伸機により110℃でMD方向及びTD方向ともに5倍に同時二軸延伸した。延伸後のゲル状三層シートを25℃に温調した塩化メチレン浴中に浸漬し流動パラフィンを十分に除去し、室温で風乾した。
【0090】
得られた乾燥膜を110℃×3分で熱固定処理を行った。得られたポリオレフィン多孔質膜の厚みは10μmであった。
【0091】
(比較例4)
第2のポリオレフィン溶液を、第1のポリオレフィン溶液と同じ組成としたことを除き、実施例5と同様に実施した。
【0092】
(比較例5)
第1のポリオレフィン溶液を、第2のポリオレフィン溶液と同じ組成としたことを除き、実施例5と同様に実施した。
【0093】
(評価)
実施例1~6のポリオレフィン微多孔膜は小孔径と高透過性に優れることから、電池用セパレータとして用いたとき、耐デンドライト性および出力特性に優れ、液体用フィルターとして用いた時にろ過精度と透過性に優れたポリオレフィン微多孔膜となる。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、電池用セパレータとして用いたとき、耐デンドライト性および出力特性に優れることから、電気自動車などの高エネルギー密度化、高容量化および高出力化を必要とする二次電池用の電池用セパレータとして好適に使用することができる。また、液体フィルター用途に用いたときろ過精度と高透過性に優れることから、半導体工程用などの微小な異物除去が必要とされる高精度液体用フィルターとして好適に使用することができる。