(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109532
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ケトル
(51)【国際特許分類】
A47J 27/21 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A47J27/21 101G
A47J27/21 101Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024009594
(22)【出願日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】2300916
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャルル マンソー
(72)【発明者】
【氏名】クロエ スマル
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール アルマン
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA34
4B055BA04
4B055BA05
4B055CA39
4B055CB02
4B055CB09
4B055DB03
(57)【要約】
【課題】ケトルが転倒または落下した場合に、熱湯がケトルから排出されて使用者に火傷を負わせる危険性を低減できるケトルの提供。
【解決手段】内部空間(6)を画定し、共通の上縁(8A、10A)を有する外被(8)および内釜(10)を含む容器(4)と、把持ハンドル(12)と、注ぎ口(14)と、蓋(24)とを含むケトル。本発明によれば、内釜(10)は、内側径方向突出部を有し、ケトルは、内側径方向突出部に受容されるシールリング(30)を有し、蓋の下面(26)はシールリング(30)と軸方向にて接触して、内部空間(6)とケトルの外部との間にシールを提供する、ケトル。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 水平面上に載置したときにその中心軸(A)がほぼ鉛直に延びるように構成された容器(4)であって、水を入れてそこで加熱し、とりわけ沸騰させるための内部空間(6)の境界を画定し、前記内部空間(6)へのアクセスのための開口部(16)の輪郭を少なくとも部分的に画定する共通の上縁(8A、10A)を有する外被(8)および内釜(10)を備える容器(4)と、
- 把持ハンドル(12)と、
- 前記容器(4)の前記中心軸(A)に関して前記把持ハンドル(12)の反対側に位置するように構成された注ぎ口(14)と、
- 前記容器(4)を閉じるように構成された蓋(24)であって、前記内部空間(6)と向い合せの位置になるように構成された下面(26)をもつ蓋(24)と
を備えるケトル(2)であって、
前記内釜(10)は、内側径方向突出部(34)を有し、
ケトル(2)は、前記内側径方向突出部(34)に受容されるシールリング(30)を備え、および
前記蓋が前記容器を閉ざしたときに、前記蓋の前記下面(26)は前記シールリング(30)と軸方向に接して、前記内部空間(6)とケトル外部との間の密封を得るのに適する
ことを特徴とするケトル(2)。
【請求項2】
前記内側径方向突出部は、前記内釜(10)の内面(36)に形成されたリブによって形成され、前記リブは前記内釜(10)のプレス成形によって得られる請求項1に記載のケトル(2)。
【請求項3】
前記内側径方向突出部(34)は、前記中心軸(A)に沿って前記内釜(10)の底(37)と前記注ぎ口(14)の水入口ゾーン(38)との間に配置される請求項1または2に記載のケトル(2)。
【請求項4】
前記蓋(24)は、前記内部空間(6)内の水を前記注ぎ口(14)の水入口ゾーンへ運ぶように構成された注ぎ管路(60)を備え、ケトル(2)は、前記蓋(24)に取り付けられた閉鎖弁(27)であって、閉鎖弁(27)が前記注ぎ管路(60)を塞いで前記注ぎ管路(60)を通る水の流れを阻止する閉位置と、閉鎖弁(27)が前記注ぎ管路(60)を開放して前記注ぎ管路(60)を通る水の流れを可能にする開位置との間で可動な閉鎖弁(27)をさらに備える請求項3に記載のケトル(2)。
【請求項5】
前記シールリング(30)の外周面(46)に形成された溝(44)の中に配置された第1のOリング(42)であって、前記シールリング(30)と前記内釜(10)の内面(36)との間に配置される第1のOリング(42)を備える請求項1乃至4のいずれか一項に記載のケトル(2)。
【請求項6】
前記シールリング(30)は、前記蓋(24)の位置合せ用の軸方向凸部(30B)を備え、前記軸方向凸部(30B)は、前記蓋(24)が前記容器を閉ざしたとき、前記蓋の外周面(50)に形成された対応する位置揃え用の凹部(48)に少なくとも部分的に収まるのに適する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のケトル(2)。
【請求項7】
前記シールリング(30)は、前記容器(4)の外側を向いた径方向突起(52)であって、前記内釜(10)を貫いて形成された孔(54)に受容される径方向突起(52)を備える請求項1乃至6のいずれか一項に記載のケトル(2)。
【請求項8】
前記蓋(24)は、前記下面(26)の周囲にパッキン(59)を備え、前記パッキン(59)は、前記蓋で前記容器を閉ざしたときに前記シールリング(30)と軸方向に接するのに適する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のケトル(2)。
【請求項9】
前記シールリング(30)は、前記内釜(10)の内面(36)に対して、とりわけ前記内側径方向突出部(34)に対して、軸方向および径方向に押止されるパッキンを形成する円環部(30A)を備えており、前記円環部(30A)が、前記内釜(10)の底(37)に向かって延びて、前記内側径方向突出部(34)に対して前記シールリング(30)を掛止する少なくとも1つの掛止要素を形成する少なくとも1つの軸方向突片(40)、好ましくは複数の軸方向突片(40)を備える請求項1乃至8のいずれか一項に記載のケトル(2)。
【請求項10】
前記内部空間(6)内に含まれる水を沸騰させたときに前記内部空間(6)内で発生した蒸気を前記内部空間(6)の外へ運ぶように構成された蒸気排出通路であって、
・ 前記蓋(24)に設けられ、前記蓋(24)の下面(26)および前記蓋(24)の下面(26)の周縁付近に開口する第1蒸気導入孔(80)および第2蒸気導入孔(82)であって、前記容器(4)によって境界を画定される前記内部空間(6)と流体連通するように、かつ前記注ぎ口(14)と前記把持ハンドル(12)とを通るケトル(2)の鉛直正中面(P)の両側に配置されるように構成された第1蒸気導入孔(80)および第2蒸気導入孔(82)と、
・ 前記蓋(24)と、前記第1蒸気導入孔(80)に流体連通された第1蒸気入口開口部および内部チャンバ(88)に開口する第1蒸気出口開口部(86)を有する第1蒸気流路管(84)と、第2蒸気導入孔(82)に流体連通された第2蒸気入口開口部および内部チャンバ(88)に開口する第2蒸気出口開口部(92)を有する第2蒸気流路管(90)とによって境界を画定される内部チャンバ(88)と
を含む蒸気排出通路を備える請求項1乃至9のいずれか一項に記載のケトル(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体加熱装置の分野に関し、詳細には電気ケトルの分野に関する。より詳細には、本発明は、外壁を形成する外被と、内壁を形成する内釜とを備えるケトルであって、二重壁構造またはダブルスキンと呼ばれるケトルの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
蓋と、共通の上縁をもつ外被および内釜を具備する容器とを備える二重壁構造ケトルが知られている(例えば、特許文献1参照)。共通の上縁は、水を入れるための容器の内部空間にアクセスする開口部の輪郭を少なくとも部分的に画定する。
【0003】
このようなケトルは、水加熱時の動作において優れた静音性が得られる上に、水の温度維持も最適化される。
【0004】
しかし、このようなケトルでは、ケトルの蓋が容器に対して閉位置にあるときの容器の内部空間の密閉性が保証されない。そのため、ケトルを転倒/落下させたりしたときなどに、沸騰した水がケトルから吹き出して使用者が火傷を負う危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国実用新案登録第216256676号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その欠点を補うことを目的とする。
【0007】
本発明の基本的な技術的課題は、使用時の安全性を向上させた二重壁構造ケトルを提案することにある。
【0008】
そのため、本発明は、
- 水平面上に載置したときにその中心軸がほぼ鉛直に延びるように構成された容器であって、水を入れてそこで加熱し、とりわけ沸騰させるための内部空間の境界を画定し、その内部空間へのアクセスのための開口部の輪郭を少なくとも部分的に画定する共通の上縁を有する外被および内釜を備える容器と、
- 把持ハンドルと、
- 容器の中心軸に関して把持ハンドルの反対側に位置するように構成された注ぎ口と、
- 容器を閉じるように構成された蓋であって、内部空間と向い合せの位置になるように構成された下面をもつ蓋と
を備えるケトルを対象とする。
【0009】
本発明によれば、内釜は、内側径方向突出部を有しており、ケトルは、その内側径方向突出部に受容されるシールリングを備えており、蓋が容器を閉ざしたときに蓋の下面はそのシールリングと軸方向に接することができて、内部空間とケトル外部との間の密封が得られる。
【0010】
本発明により、蓋が容器を閉ざしているときのケトルの内部空間の密閉性は確保され、それによってその使用時の安全性は高まる。実際、蓋が容器を閉ざしているとき、内側径方向突出部とシールリングとが協働し、蓋の下面とシールリングとが軸方向に接触することによって、内部空間とケトル外部との間の密封を果たすことができる。シールリングは、特に蓋の下面との接触面積を広げることができ、それによってシールリングと蓋との間の密封を保証する最適化された軸方向の接触面積を得ることができる。そのため、ケトルを転倒/落下させたりしたときに、沸騰した水がケトルから吹き出して使用者が火傷を負うリスクがない。
【0011】
本発明の有利な、ただし必須でない態様によれば、このようなケトルは、以下の1つまたは複数の特徴を、許容されるあらゆる技術的組合せで採り入れたものであることができる。
【0012】
本発明の有利な特徴によれば、内側径方向突出部は、内釜の内面に形成されたリブによって形成され、そのリブは内釜のプレス成形によって得られる。
【0013】
このような措置を講じることにより、内側径方向突出部を有する一体型の内釜を得ることができ、シールリングと内側径方向突出部との間の接触面積を最適化して、蓋の下面、シールリングおよび内側径方向突出部の間の径方向の接触による密封を確保することができる。
【0014】
本発明の有利な特徴によれば、内側径方向突出部は、中心軸に沿って内釜の底と注ぎ口の水入口ゾーンとの間に配置される。
【0015】
このような措置を講じることにより、外部に対する内釜の密閉を保証し、ケトルの転倒/落下時の注ぎ口からの水漏れを防ぐことができる。
【0016】
本発明の有利な特徴によれば、蓋は、内部空間内の水を注ぎ口の水入口ゾーンへ運ぶように構成された注ぎ管路を備え、ケトルは、蓋に取り付けられた閉鎖弁であって、閉鎖弁が注ぎ管路を塞いで注ぎ管路を通る水の流れを阻止する閉位置と、閉鎖弁が注ぎ管路を開放して注ぎ管路を通る水の流れを可能にする開位置との間で可動な閉鎖弁をさらに備える。
【0017】
このような措置を講じることにより、蓋が容器を閉ざしているときの内釜の外部に対する密閉を保証することができ、使用者が閉鎖弁を開位置に動かす操作をしたときには注ぎ口の方に水が流れるようにすることができる。
【0018】
本発明の有利な特徴によれば、ケトルは、シールリングの外周面に形成された溝の中に配置された第1のOリングであって、シールリングと内釜の内面との間に配置される第1のOリングを備える。
【0019】
第1のOリングは、シールリングと内釜の内面との間の密封を果たすことができる。
【0020】
本発明の有利な特徴によれば、シールリングは、蓋の位置合せ用の軸方向凸部であって、蓋が容器を閉ざしたとき、蓋の外周面に形成された対応する位置揃え用の凹部に少なくとも部分的に収まるようにされた軸方向凸部を備える。
【0021】
このような措置を講じることにより、使用者によるケトルに対する蓋の正しい位置決めと、閉位置への蓋の案内とを保証することができる。
【0022】
本発明の有利な特徴によれば、シールリングは、容器の外を向いた径方向突起であって、内釜を貫いて形成された孔に受容される径方向突起を備える。
【0023】
このような措置を講じることにより、内釜に対するシールリングの一体化を果たすことができる。
【0024】
本発明の有利な特徴によれば、蓋は、蓋で容器を閉ざしたときにシールリングと軸方向に接するようにされたパッキンを下面の周囲に備える。
【0025】
このような措置を講じることにより、蓋とシールリングとの間の最適化された密封を果たすことができる。
【0026】
本発明の有利な特徴によれば、シールリングは、内釜の内面に対して、とりわけ内側径方向突出部に対して、軸方向および径方向に押止されるパッキンを形成する円環部を備えており、その円環部は、内釜の底に向かって延びて、内側径方向突出部に対するシールリングの少なくとも1つの掛止要素を形成する少なくとも1つの軸方向突片、好ましくは複数の軸方向突片を備える。
【0027】
このような措置を講じることにより、内釜に対するシールリングの一体化を果たすとともに、シールリングと内釜の内面との間の優れた密封性を保証することができる。
【0028】
本発明の有利な特徴によれば、ケトルは、内部空間内に含まれる水を沸騰させたときに内部空間内で発生した蒸気を内部空間の外へ運ぶように構成された蒸気排出通路であって、
・ 蓋に設けられ、蓋の下面および蓋の下面の周縁付近に開口する第1蒸気導入孔および第2蒸気導入孔であって、容器によって境界を画定される内部空間と流体連通するように、かつ注ぎ口と把持ハンドルとを通るケトルの鉛直正中面の両側に配置されるように構成された第1蒸気導入孔および第2蒸気導入孔と、
・ 蓋によって境界を画定される内部チャンバと、第1蒸気導入孔に流体連通された第1蒸気入口開口部および内部チャンバに開口する第1蒸気出口開口部を有する第1蒸気流路管と、第2蒸気導入孔に流体連通された第2蒸気入口開口部および内部チャンバに開口する第2蒸気出口開口部を有する第2蒸気流路管と
を含む蒸気排出通路を備える。
【0029】
ケトルのこのような構成は、ケトルが横倒しになったときなどに、蓋の中の沸騰した水が流れ出るリスク、すなわち第1蒸気出口または第2蒸気出口および注ぎ口を通してケトルの外に流れ出るリスクを減らす。
【0030】
本発明の目的、態様および利点については、添付の図面を参照しながら、限定的でない例としてこれ以降に示す本発明の具体的な実施形態の説明を通してよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】容器および容器の支持台などを備える本発明の実施形態によるケトルの斜視図である。
【
図2】容器の外被を省略した
図1と同様の斜視図である。
【
図3】支持台を省略した
図1および
図2のケトルの分解図である。
【
図4】切断線IV-IVに沿った、
図1のケトルの垂直断面図である。
【
図5】
図1および
図2のケトルの蓋が容器を閉ざした位置にあって、容器に固定されるためのシールリングとの相互作用が得られる状態にあるときの蓋の斜視図である。容器およびケトルのその他の部分は省略してある。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の理解に必要な部品のみを図示している。図面の読取りを容易にするため、同じ部品には図面間で同じ参照符号を付した。
【0033】
本明細書では、ケトルを説明するために使用される「水平」、「鉛直」、「下方」、「上方」、「高」、「低」、「前」、「後」、「長手」、「横断」の用語は、作業面または電源台に平らに置かれて使用状態にあるときの本件装置についていうものである。
【0034】
さらに、用語「上流」および「下流」または「入口」および「出口」は、ケトル内の水または蒸気の循環方向に応じて定義される。
【0035】
用語「外」および「内」、同様に用語「外側」および「内側」もまた、ケトルおよび水を入れるその容器の中心軸に関して定義される。そのため、内側部位/部分は、外側部位/部分よりも中心軸に近くなる。
【0036】
図1および
図2は、本発明の実施形態によるケトル2、より詳細には電気ケトルを表している。
【0037】
ケトル2は、電源コード(
図1、2、4で見ることができるもの)によって給電されるように構成された支持台3(電源台ともいう)と、支持台3上に載置されるように構成された容器4とを備える。
【0038】
容器4は、水を入れるための内部空間6であって、その中で水が加熱され、とりわけ沸騰にまで至るための内部空間6の境界を画定する。
【0039】
容器4は、ケトルの外壁を形成する外被8と、ケトルの内壁を形成する内釜10とを備える。
【0040】
ケトル2は、容器4に固定された把持ハンドル12と、容器4の中心軸Aに関して把持ハンドル12の反対側に位置する注ぎ口14とをさらに備える。注ぎ口14は、例えば容器4の上部給水口16のレベルに位置することができる。
【0041】
上部給水口16は、内部空間6へのアクセス口16とも呼ぶ。
【0042】
容器4の中心軸Aは、容器4が水平面上に載置されると、ほぼ鉛直に延びるように構成される。有利には、容器4は、中心軸Aを中心とする略回転体の形状をなす。
【0043】
ケトル2は、内部空間6の下方、とりわけ内釜10の下方に位置する加熱底20をさらに備える。加熱底20は、内部空間6内にある水を加熱するように構成される。加熱底20には、周知のとおり、電源台3上に容器4が載置されると給電されるように構成された電気加熱要素22が収められている。
【0044】
ケトル2は、容器4を閉じるように構成された蓋24であって、容器4の内部空間6と向い合せの位置になるように構成された下面26をもつ蓋24をさらに備える。
【0045】
ケトル2は、内部空間6から注ぎ口14への水の循環が可能になる位置(開位置という)と、注ぎ口14への水の循環が阻止される位置(閉位置という)との間で可動に取り付けられた閉鎖弁27をさらに備える。
【0046】
ケトルは、蓋24を容器4に対して取外し可能に、すなわち一時的かつ可逆的に、固定するように構成された固定装置28をさらに備える。
【0047】
ケトル2は、容器4に固定することができるシールリング30であって、蓋24が容器4を閉ざしたときに蓋の下面26と密封状態で接するようにされたシールリング30をさらに備える。シールリング30は、有利にはプラスチック材料製である。
【0048】
図2に示すように、ケトルは、外被8と内釜10との間に配置された発光表示装置32をさらに備える。表示装置32には、容器4内に含まれる水の温度のほか、有利には使用者が選んだ加熱モードを表示することができる。発光表示装置32には、電源台3を通して電気エネルギーを供給することができる。
【0049】
図3に示すように、外被8および内釜10は、内部空間6へのアクセス口16の輪郭を少なくとも部分的に画定する共通の上縁8A、10Aを有する。
【0050】
共通の上縁とは、内釜10の上縁10Aが外被8の上縁8Aと接していることをいう。
【0051】
外被8は、好ましくはプラスチック材料製であり、内釜10は、好ましくはステンレス鋼製である。
【0052】
このような措置を講じることにより、内釜はケトルの上部に至るまですべてステンレス鋼製であることができ、それによって水とプラスチック部品との接触を制限することができる。
【0053】
内釜10は、水を入れるための内部空間6を形成する。
【0054】
内釜10は、内側径方向突出部34を備える。内側径方向突出部34は、内釜10の内面36に形成されたリブによって形成される。リブは、内釜10のプレス成形によって得ることが好ましい。
【0055】
有利には、図示されているように、内側径方向突出部34は、内釜10の内周全体に延びる。
【0056】
図4に示されるように、内側径方向突出部34は、中心軸Aに沿って内釜10の底37と注ぎ口14の水入口ゾーン38との間に配置される。
【0057】
シールリング30は、内釜10に固定するのに適したものであり、内側径方向突出部34に受容される/それに対して配置される。
【0058】
内釜10の形状変化によって形成される内側径方向突出部34は、シールリング30を受容するための部品を内釜に別途追加することを回避し、それによってケトル2の構造を単純化することができる。また、そのことにより、複雑な作業であって、それに付随して鋼を酸化させるリスクもある溶接作業を回避することも可能になる。
【0059】
蓋24の下面26は、シールリング30と軸方向に接して、蓋が容器4を閉ざして内部空間6とケトル2外部との間の密封を果たすのに適している。
【0060】
図4から
図6を見るとわかるように、シールリング30は、内釜10の内面36に対して、とりわけ内側径方向突出部34に対して軸方向および径方向に押止されるパッキンを形成する円環部30Aを備える。有利には、円環部30Aは、内面36に対して、とりわけ内側径方向突出部34に対して軸方向および径方向に接する。
【0061】
シールリング30は、蓋24の位置合せ用の軸方向凸部30Bをさらに備える。
【0062】
円環部30Aは、内釜10の底37に向かって延びて、内側径方向突出部34に対するシールリング30の少なくとも1つの掛止要素を形成する少なくとも1つの軸方向突片、好ましくは複数の軸方向突片40を備える。
【0063】
有利には、少なくとも1つの掛止要素は、形状的な協働およびとりわけクリップ留めによって内側径方向突出部34に固定されるのに適したものである。
【0064】
変形形態では、
図5および
図6に示した複数の軸方向突片は、全周にわたって内側径方向突出部34と協働するのに適したシールリング30外周の連続した掛止要素を形成する1つだけの軸方向突片に置き換えられる。この構成は、内釜、とりわけ内側径方向突出部34に対するシールリング30の固定を保証するとともに、シールリングと内面36との間の密封を最適化することができ、その際、軸方向突片は、掛止機能と密封機能とを同時に果たす。
【0065】
ケトル2は、シールリング30の外周面46、とりわけ円環部30Aのレベルに形成された溝44内に配置された第1のOリング42(
図3)を備える。溝44は、中心軸Aに沿って軸方向突片40の上方に位置する。
【0066】
第1のOリング42は、シールリング30と内釜10の内面36との間に配置される。より詳細には、第1のOリング42は、中心軸Aに沿ってシールリング30と内釜10の内面36との間に配置され、内側径方向突出部34に対して軸方向に接する/押止される。
【0067】
変形形態では、Oリング42は、内側径方向突出部34に接することなく、内面36に対して径方向に接する/押止される。その場合、シールリング30が内側径方向突出部34との径方向の接触を果たす。
【0068】
蓋24の位置合せ用の軸方向凸部30Bは、容器4における蓋24の唯一の固定位置が画定されるように構成された角度位置揃え機構(フールプルーフ機構ともいう)をなす。
【0069】
図5に示すように、位置合せ用の軸方向凸部30Bは、蓋24が容器4を閉ざしたとき、蓋24の外周面50に形成された対応する位置揃え用の凹部48に少なくとも部分的に収まることができる。
【0070】
シールリング30は、容器4の外側を向いた径方向突起52であって、内釜10を貫いて形成された孔54に受容される径方向突起52をさらに備える。
【0071】
径方向突起52は、好ましくは軸方向凸部30Bに形成される。
【0072】
シールリング30は、シールリング30が内釜に固定されているときは孔54を取り囲む第2のOリング56を備える。第2のOリング56は、シールリング30の外周面46の軸方向凸部30Bのレベルに形成された穴58に受容される。
【0073】
図示した実施形態によれば、蓋24はその外郭に、すなわち外周面50に、蓋24が容器4を閉じたときにシールリング30と軸方向の接触を得るのに適したパッキン59を備える。パッキン59は、蓋24の下面26の周囲に配置され、蓋24が容器4に対して閉位置にあるときにはシールリング30と接触して密封を果たすことができる。
【0074】
有利には、
図3に示すように、パッキン59は、同軸の2つのパッキン59A、59Bを組み合わせたものによって形成される。
【0075】
蓋24は、内部空間6内の水を注ぎ口14の水入口ゾーン38へ搬送するように構成された注ぎ管路60を備える。
【0076】
より詳細には、注ぎ管路60は、蓋24の下面26に開口する水入口開口部62と、蓋24の外周面50に開口する水出口開口部64であって、蓋24が容器4に固定されているときに注ぎ口14とほぼ向い合せの位置になるようにされた水出口開口部64とを備える。より具体的には、水出口開口部64は、蓋24が容器4に固定されているとき、内釜を貫通する開口部65と向かい合う位置となることができ、その開口部65の方は注ぎ口に対して、とりわけ注ぎ口14の水入口ゾーン38に対して向い合せの位置にある。
【0077】
閉鎖弁27は、閉鎖弁が注ぎ管路60を塞いで注ぎ管路60を通る内部空間6内の水の流れを阻止する閉位置と、閉鎖弁27が注ぎ管路60を開放して注ぎ管路60を通る水の流れを可能にする開位置との間で可動に蓋24に取り付けられる。
【0078】
閉鎖弁27は、例えばノック式ボールペンのような双安定押しボタンである。
【0079】
固定機構28は、蓋24に設けられて径方向に対向する指状固定部品のような2つの固定部材66を備える。各々の固定部材66は、蓋24の中に収容されており、蓋24の外周面50に開口するそれぞれの貫通開口部68を通して蓋24から外に突き出るように構成される。
【0080】
図示した例では、固定機構28は、容器4内、とりわけ内釜10内に設けられた固定穴70であって、蓋24が容器4に対して閉位置にあるとき、固定部材66がそれぞれ収まるように構成された固定穴70を備える。
【0081】
固定部材66は、各々の固定部材66がそれぞれの固定穴70と協働して蓋24を容器4に固定するように構成された固定位置と、各々の固定部材66がそれぞれの固定穴70を開放して蓋24を容器4から引き抜くことができるように構成された開位置との間で、摺動方向に沿って蓋24に対して摺動可能に取り付けられる。有利には、摺動方向は、蓋24が容器4上にあるときに容器4の中心軸Aと重なり合う蓋24の中心軸に対してほぼ径方向に延びる。
【0082】
固定機構28は、蓋24内に収容された戻し装置72であって、固定部材66を固定位置に戻すように構成された戻し装置72を備える。
【0083】
ケトル2は、蓋24に設けられた作動機構74であって、使用者が操作したときに固定部材66を開位置に移動させるように構成された作動機構74を備える。
【0084】
ケトル2は、内部空間6内に含まれる水の沸騰時に内部空間6内で発生した蒸気を内部空間6外に、例えばケトル2外に運ぶように構成された蒸気排出通路をさらに備える。
【0085】
蒸気排出通路は、蓋24に設けられて蓋24の下面26および蓋24の下面26の周縁付近に開口する第1蒸気導入孔80および第2蒸気導入孔82などを備える。蓋24が容器4に固定され、容器4が水平面上に載置されるとき、第1蒸気導入孔80および第2蒸気導入孔82は、容器4によって境界を画定される内部空間6内の容器4の最高充填水位よりも上に開口する。
【0086】
図示されている実施形態によれば、第1蒸気導入孔80および第2蒸気導入孔82は、
図1に見ることができるように、注ぎ口14と把持ハンドル12とを通るケトル2の鉛直正中面Pの両側に配置され、有利には、ケトル2の鉛直正中面Pに関して対称形に配置される。
【0087】
図示した実施形態では、第1蒸気導入孔80および第2蒸気導入孔82は、蓋24の下面26の前方半分の中に位置している。
【0088】
図8により詳しく示されているように、蒸気排出通路は、第1蒸気導入孔80に流体連通された第1蒸気入口開口部と、蓋24によって境界を画定された内部チャンバ88内に開口する第1蒸気出口開口部86とを含む第1蒸気流路管84、および第2蒸気導入孔82に流体連通された第2蒸気入口開口部と、内部チャンバ88に開口する第2蒸気出口開口部92とを含む第2蒸気流路管90をさらに備える。有利には、第1蒸気流路管84および第2蒸気流路管90は、内部チャンバ88内に収められ、それぞれが円形の横断面を有する。有利には、第1蒸気流路管84および第2蒸気流路管90のそれぞれは、その長さに沿ってほぼ一定の流路断面を有する。
【0089】
第1蒸気出口開口部86および第2蒸気出口開口部92は、より詳細には、ケトル2の鉛直正中面Pの両側に配置されるように構成され、有利には、ケトル2の鉛直正中面Pに関して対称になるように配置される。図示された実施形態では、第1蒸気出口開口部86および第2蒸気出口開口部92は、内部チャンバ88の前方部分に位置し、注ぎ口14の方を向くように構成されている。
【0090】
図8に示した実施形態では、第1蒸気流路管84および第2蒸気流路管90は、いずれも全体的にV字形をしている。
【0091】
第1蒸気流路管84は、容器4が水平面に載置されているときは水平に対して傾斜するように構成されて、第1蒸気流路管84内の水を第1蒸気導入孔80の方に導くようにされ、第2蒸気流路管90は、容器4が水平面に載置されているときは水平に対して傾斜するように構成されて、第2蒸気流路管90内の水を第2蒸気導入孔82の方に導くようにされる。このような配置により、蓋24内で水が溜まったり、滞ったりするリスクを抑える。
【0092】
蒸気排出通路は、蓋24に設けられた複数の蒸気排出開口部94であって、蓋24によって境界を画定される内部チャンバ88と流体連通された蒸気排出開口部94をさらに備える。蒸気排出開口部94は、内部チャンバ88内の蒸気をケトル2の外へ、とりわけ開口部65および注ぎ口14を介して排出できるように構成される。
【0093】
より具体的には、蒸気排出開口部94は、外周面50に開口し、水出口開口部64に近接して配置される。そのため、蓋24が容器4に固定されているとき、蒸気排出開口部94は、注ぎ口14に近接した位置に、例えば注ぎ口14と向い合せに位置するように構成される。
【0094】
ケトル2は、
- ケトル2が横転して、把持ハンドル12および第1の側面、すなわち容器4の左側面が水平面上に安定して載置されるとき、第1蒸気導入孔80が内部空間6内の水位より上に位置するように、かつ、
- ケトル2が横転して、把持ハンドル12および第2の側面、すなわち容器4の右側面が水平面上に安定して載置されるとき、第2蒸気導入孔82が内部空間6内の水位より上に位置する
ように構成される。
【0095】
第1蒸気導入孔80および第2蒸気導入孔82のこのような位置取りは、ケトル2が横転して把持ハンドル12および容器4の側面が作業面などに載置された状態にあるとき、それら(第1蒸気導入孔および第2蒸気導入孔)を可能な限り水位から遠ざけることができる。そのため、本発明によるケトル2は、その横転時に沸騰した水がケトル2の外に流れ出すリスクを回避するか、または少なくとも大幅に制限することができる。
【0096】
本発明が、あくまでも例として説明し、図示しただけの実施形態にいささかも限定されるものでないことは言うまでもない。変更、特に様々な要素の構成の観点からの変更または技術的な等価物との入替えによる変更は、本発明の保護領域を外れることなく、なお可能である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 水平面上に載置したときにその中心軸(A)がほぼ鉛直に延びるように構成された容器(4)であって、水を収容および加熱するための内部空間(6)の境界を画定し、前記内部空間(6)へのアクセスのための開口部(16)の輪郭を少なくとも部分的に画定する共通の上縁(8A、10A)を有する外被(8)および内釜(10)を備える容器(4)と、
- 把持ハンドル(12)と、
- 前記容器(4)の前記中心軸(A)に関して前記把持ハンドル(12)の反対側に位置するように構成された注ぎ口(14)と、
- 前記容器(4)を閉じるように構成された蓋(24)であって、前記内部空間(6)と向い合せの位置になるように構成された下面(26)をもつ蓋(24)と
を備えるケトル(2)であって、
前記内釜(10)は、内側径方向突出部(34)を有し、
ケトル(2)は、前記内側径方向突出部(34)に受容されるシールリング(30)を備え、および
前記蓋が前記容器を閉ざしたときに、前記蓋の前記下面(26)は前記シールリング(30)と軸方向に接して、前記内部空間(6)とケトル外部との間の密封を得るのに適する
ことを特徴とするケトル(2)。
【請求項2】
前記内側径方向突出部は、前記内釜(10)の内面(36)に形成されたリブによって形成され、前記リブは前記内釜(10)のプレス成形によって得られる請求項1に記載のケトル(2)。
【請求項3】
前記内側径方向突出部(34)は、前記中心軸(A)に沿って前記内釜(10)の底(37)と前記注ぎ口(14)の水入口ゾーン(38)との間に配置される請求項1に記載のケトル(2)。
【請求項4】
前記蓋(24)は、前記内部空間(6)内の水を前記注ぎ口(14)の水入口ゾーンへ運ぶように構成された注ぎ管路(60)を備え、ケトル(2)は、前記蓋(24)に取り付けられた閉鎖弁(27)であって、閉鎖弁(27)が前記注ぎ管路(60)を塞いで前記注ぎ管路(60)を通る水の流れを阻止する閉位置と、閉鎖弁(27)が前記注ぎ管路(60)を開放して前記注ぎ管路(60)を通る水の流れを可能にする開位置との間で可動な閉鎖弁(27)をさらに備える請求項3に記載のケトル(2)。
【請求項5】
前記シールリング(30)の外周面(46)に形成された溝(44)の中に配置された第1のOリング(42)であって、前記シールリング(30)と前記内釜(10)の内面(36)との間に配置される第1のOリング(42)をさらに備える請求項1に記載のケトル(2)。
【請求項6】
前記シールリング(30)は、前記蓋(24)の位置合せ用の軸方向凸部(30B)を備え、前記軸方向凸部(30B)は、前記蓋(24)が前記容器を閉ざしたとき、前記蓋の外周面(50)に形成された対応する位置揃え用の凹部(48)に少なくとも部分的に収まるのに適する請求項1に記載のケトル(2)。
【請求項7】
前記シールリング(30)は、前記容器(4)の外側を向いた径方向突起(52)であって、前記内釜(10)を貫いて形成された孔(54)に受容される径方向突起(52)を備える請求項1に記載のケトル(2)。
【請求項8】
前記蓋(24)は、前記下面(26)の周囲にパッキン(59)を備え、前記パッキン(59)は、前記蓋で前記容器を閉ざしたときに前記シールリング(30)と軸方向に接するのに適する請求項1に記載のケトル(2)。
【請求項9】
前記シールリング(30)は、前記内釜(10)の内面(36)に対して、軸方向および径方向に押止されるパッキンを形成する円環部(30A)を備えており、前記円環部(30A)が、前記内釜(10)の底(37)に向かって延びて、前記内側径方向突出部(34)に対して前記シールリング(30)を掛止する少なくとも1つの掛止要素を形成する少なくとも1つの軸方向突片(40)を備える請求項1乃至8のいずれか一項に記載のケトル(2)。
【請求項10】
前記内部空間(6)内に含まれる水を沸騰させたときに前記内部空間(6)内で発生した蒸気を前記内部空間(6)の外へ運ぶように構成された蒸気排出通路であって、
・ 前記蓋(24)に設けられ、前記蓋(24)の下面(26)および前記蓋(24)の下面(26)の周縁付近に開口する第1蒸気導入孔(80)および第2蒸気導入孔(82)であって、前記容器(4)によって境界を画定される前記内部空間(6)と流体連通するように、かつ前記注ぎ口(14)と前記把持ハンドル(12)とを通るケトル(2)の鉛直正中面(P)の両側に配置されるように構成された第1蒸気導入孔(80)および第2蒸気導入孔(82)と、
・ 前記蓋(24)と、前記第1蒸気導入孔(80)に流体連通された第1蒸気入口開口部および内部チャンバ(88)に開口する第1蒸気出口開口部(86)を有する第1蒸気流路管(84)と、第2蒸気導入孔(82)に流体連通された第2蒸気入口開口部および内部チャンバ(88)に開口する第2蒸気出口開口部(92)を有する第2蒸気流路管(90)とによって境界を画定される内部チャンバ(88)と
を含む蒸気排出通路をさらに備える請求項1に記載のケトル(2)。
【外国語明細書】