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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109538
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】生体の位置の検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/88 20060101AFI20240806BHJP
   G01S 13/56 20060101ALI20240806BHJP
   A61B 5/113 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
G01S13/88
G01S13/56
A61B5/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024011845
(22)【出願日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】202310095924.3
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リ・ホォンチュヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ・チエヌ
(72)【発明者】
【氏名】シエ・リリ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン・ジュン
【テーマコード(参考)】
4C038
5J070
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB33
4C038VC20
5J070AB24
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD05
5J070AE09
5J070AF01
5J070AH19
5J070AH35
5J070AK14
5J070BA01
(57)【要約】
【課題】本発明の実施例は、生体の位置の検出方法及び装置を提供する。
【解決手段】該生体の位置の検出方法は、レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得するステップと、該レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定するステップと、該距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、該距離範囲内に生体が存在するか否かを決定するステップと、生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定するステップと、を含む。これによって、人体の生理的な微動によるレーダ信号の特性を利用して生体の所在する位置を決定し、検出の正確率が高く、計算の複雑度が低い。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の位置の検出装置であって、
レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得する取得部と、
前記レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定する第1の決定部と、
前記距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、前記距離範囲内に生体が存在するか否かを決定する第2の決定部と、
生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定する第3の決定部と、を含む、装置。
【請求項2】
前記第1の決定部は、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定する際に、
前記レーダ検出範囲内の全ての距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動を計算し、
各前記距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動の平均値を計算し、前記平均値の局所ピーク値が所在する距離の近傍範囲を決定し、
前記近傍範囲内の少なくとも1つのアンテナのレーダ信号に基づいて、前記局所ピーク値が所在する前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記局所ピーク値が所在する前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する際に、
前記近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定し、
前記近傍範囲内に生体が存在する可能性のあるアンテナの割合が第1の閾値よりも大きいと決定された場合、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があると決定する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記局所ピーク値が所在する前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する際に、
前記近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、レーダ信号の変動が最も大きいアンテナを決定し、
前記レーダ信号の変動が最も大きいアンテナのレーダ信号に基づいて、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記距離におけるレーダ信号の変動は、前記レーダ信号の振幅の標準偏差又は平均偏差であり、
前記距離におけるレーダ信号の相対変動は、前記レーダ信号の変動と振幅との比率である、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の決定部は、前記距離範囲内に生体が存在するか否かを決定する際に、
各空間位置におけるレーダ信号の変動を計算し、
空間位置における異なる距離間のレーダ信号の変動の相関係数を計算し、
前記距離範囲内において、各距離と他の距離との前記相関係数の平均値を計算し、
前記平均値のうちの最大値が第2の閾値よりも大きい場合、前記距離範囲内に生体が存在すると決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記空間位置におけるレーダ信号の変動は、前記空間位置におけるレーダ信号の振幅の標準偏差又は平均値である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第3の決定部は、生体が所在する位置を決定する際に、
前記距離範囲内におけるレーダ信号の変動が最も大きい位置を、生体が所在する位置として決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
コンピュータプログラムが記憶されたメモリと、プロセッサと、を含む、コンピュータ機器であって、前記プロセッサは、
レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得するステップと、
前記レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定するステップと、
前記距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、前記距離範囲内に生体が存在するか否かを決定するステップと、
生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定するステップと、を含む方法を実現するように、前記コンピュータプログラムを実行するように構成される、コンピュータ機器。
【請求項10】
コンピュータ読み取り可能なプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記コンピュータ読み取り可能なプログラムは、
レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得するステップと、
前記レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定するステップと、
前記距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、前記距離範囲内に生体が存在するか否かを決定するステップと、
生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定するステップと、を含む方法をコンピュータに実行させる、記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、生体検出の分野に関し、特に生体の位置の検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人々が生活品質に対する要求の高まることに伴い、人々の需要を満たすために、各業界は全て積極的に新しい応用(application)を研究、開発している。人の位置情報は、例えば健康モニタリング、スマートホームなどの多くの応用に必要な基礎情報である。
【0003】
図1は、健康モニタリングのシナリオにおける人物の位置特定の一例の概略図である。図1に示すように、人が存在すると検出された場合、人物の位置特定を行い、生命測定及び/又は転倒検出を行う。例えば、人の位置情報及び地面の高さに基づいて、ユーザが床に横たわっているか否か、通常ではない姿勢又は危険な状態が発生する可能性のある姿勢であるか否かを判定することができる。
【0004】
図2は、スマートホームのシナリオにおける人物の位置特定の一例の概略図である。図2に示すように、人物の位置特定を行った後に、部屋の配置図を参照して日常活動の監視を行うことができる。適用シナリオは、トイレを使用する時、ベッドで寝る時などを含む。例えば、居住環境のレイアウトを取得した後に、位置情報に基づいて、ユーザがどこかに行ったことがあるか否かを判定することができる。これによって、トイレ使用状況、睡眠状況などを監視することができるため、ユーザの生活習慣及び健康状態を分析することができる。
【0005】
現在、カメラは、人の監視に広く応用されているが、プライバシーを著しく侵害するため、プライベートの場所に適用できなく、また、照明条件が悪く、或いは遮蔽されるシーンで使用できない。一方、カメラにより取得された人物の位置は、ビデオ又は画像における相対位置であり、実際の空間座標に変換し難く、応用シナリオが制限されている。
【0006】
また、ウェアラブルデバイスに基づいて人物の位置を特定することも可能であるが、この方法は、別個のデバイスを装着する必要があり、且つ頻繁に充電する必要があるため、ユーザの受容度は比較的に低い。
【0007】
なお、上述した技術背景の説明は、本発明の技術案を明確、完全に理解させるための説明であり、当業者を理解させるために記述されているものである。これらの技術案は、単なる本発明の背景技術部分として説明されたものであり、当業者により周知されたものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の発明者の発見によると、ミリ波レーダは、無線電波により人体情報を取得し、画像を生成しないため、ユーザのプライバシーに対する侵害が小さく、光がないシーン又は部分的に遮られるシーンにおいて動作することができ、広く応用することができる。しかし、ミリ波レーダは、点群情報を処理して運動目標の追跡を行うため、人体が静止している場合、レーダは有効な点群を生成できず、従来の点群追跡方法では目標の位置情報を取得できない。
【0009】
上記の問題点を鑑み、本発明の実施例は、人体の生理的な微動によるレーダ信号の特性を利用して目標の位置を決定し、検出の正確率が高く、計算の複雑度が低い、生体の位置の検出方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例の1つの態様では、生体の位置の検出装置であって、レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得する取得部と、前記レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定する第1の決定部と、前記距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、前記距離範囲内に生体が存在するか否かを決定する第2の決定部と、生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定する第3の決定部と、を含む、装置を提供する。
【0011】
幾つかの態様では、前記第1の決定部は、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定する際に、前記レーダ検出範囲内の全ての距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動を計算し、各前記距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動の平均値を計算し、前記平均値の局所ピーク値が所在する距離の近傍範囲を決定し、前記近傍範囲内の少なくとも1つのアンテナのレーダ信号に基づいて、前記局所ピーク値が所在する前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する。
【0012】
幾つかの態様では、前記局所ピーク値が所在する前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する際に、前記近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定し、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性のあるアンテナの割合が第1の閾値よりも大きいと決定された場合、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があると決定する。
【0013】
幾つかの態様では、前記局所ピーク値が所在する前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する際に、前記近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、レーダ信号の変動が最も大きいアンテナを決定し、前記レーダ信号の変動が最も大きいアンテナのレーダ信号に基づいて、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する。
【0014】
幾つかの態様では、前記距離におけるレーダ信号の変動は、前記レーダ信号の振幅の標準偏差又は平均偏差であり、前記距離におけるレーダ信号の相対変動は、前記レーダ信号の変動と振幅との比率である。
【0015】
幾つかの態様では、前記第2の決定部は、前記距離範囲内に生体が存在するか否かを決定する際に、各空間位置におけるレーダ信号の変動を計算し、空間位置における異なる距離間のレーダ信号の変動の相関係数を計算し、前記距離範囲内において、各距離と他の距離との前記相関係数の平均値を計算し、前記平均値のうちの最大値が第2の閾値よりも大きい場合、前記距離範囲内に生体が存在すると決定する。
【0016】
幾つかの態様では、前記空間位置におけるレーダ信号の変動は、前記空間位置におけるレーダ信号の振幅の標準偏差又は平均値である。
【0017】
幾つかの態様では、前記第3の決定部は、生体が所在する位置を決定する際に、前記距離範囲内におけるレーダ信号の変動が最も大きい位置を、生体が所在する位置として決定する。
【0018】
本発明の実施例のもう1つの態様では、生体の位置の検出方法であって、レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得するステップと、前記レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定するステップと、前記距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、前記距離範囲内に生体が存在するか否かを決定するステップと、生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定するステップと、を含む、方法を提供する。
【0019】
本発明の実施例のもう1つの態様では、コンピュータプログラムが記憶されたメモリと、プロセッサと、を含む、コンピュータ機器であって、前記プロセッサは、上記の方法を実現するように、前記コンピュータプログラムを実行するように構成される、コンピュータ機器を提供する。
【0020】
本発明の実施例のもう1つの態様では、コンピュータ読み取り可能なプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記コンピュータ読み取り可能なプログラムは、上記の方法をコンピュータに実行させる、記憶媒体を提供する。
【0021】
本発明の実施例の有利な効果の1つは以下の通りである。本発明の実施例によれば、人体の生理的な微動によるレーダ信号の特性を利用して目標の位置を決定し、検出の正確率が高く、計算の複雑度が低い。
【0022】
本発明の特定の実施形態は、後述の説明及び図面に示すように、詳細に開示され、本発明の原理を採用されることが可能な方式を示している。なお、本発明の実施形態は、範囲上には限定されるものではない。本発明の実施形態は、添付されている特許請求の範囲の主旨及び内容の範囲内、各種の変更、修正、及び均等的なものが含まれる。
【0023】
ある一つの実施形態に説明及び又は示されている特徴は、同一又は類似の方式で一つ又は多くの他の実施形態に使用されてもよく、他の実施形態における特徴と組み合わせてもよく、他の実施形態における特徴を代替してもよい。
【0024】
なお、用語「含む/有する」は、本文に使用される際に、特徴、要素、ステップ又は構成要件の存在を意味し、一つ又は複数の他の特徴、要素、ステップ又は構成要件の存在又は追加を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の実施例の図面又は実施形態に説明されている要素及び特徴は、1つ又は複数の他の図面又は実施形態に示す要素及び特徴と組み合わせてもよい。図面において、類似する符号は複数の図面における対応する構成部を表し、複数の態様に用いられる対応する構成部を表してもよい。
【0026】
ここで含まれる図面は、本発明の実施例を理解させるためのものであり、本明細書の一部を構成し、本発明の実施例を例示するためのものであり、文言の記載と合わせて本発明の原理を説明する。なお、ここに説明される図面は、単なる本発明の実施例を説明するためのものであり、当業者にとって、これらの図面に基づいて他の図面を容易に得ることができる。
図1】健康モニタリングのシナリオにおける人物の位置特定の一例の概略図である。
図2】スマートホームのシナリオにおける人物の位置特定の一例の概略図である。
図3】ミリ波レーダを利用した移動している人物の位置特定の一例の概略図である。
図4】ミリ波レーダを利用した静止している人物の位置特定の一例の概略図である。
図5】人の異なる姿勢でレーダに反射した信号量の一例の概略図である。
図6】本発明の実施例に係る応用シナリオの一例の概略図である。
図7】本発明の実施例に係る生体の位置の検出方法の一例の概略図である。
図8】レーダ信号に基づいて生体が存在する可能性のある距離範囲を決定することの一例の概略図である。
図9】各距離におけるレーダ信号の変動の一例の概略図である。
図10】距離領域内に生体が存在するか否かを決定することの一例の概略図である。
図11】人が所在する位置におけるレーダ信号の変動の一例の概略図である。
図12】レーダ信号の変動の空間位置での相関係数の一例の概略図である。
図13】本発明の実施例に係る生体の位置の検出方法の他の例の概略図である。
図14】6個のレーダを用いて2.5m~5mの範囲内で収集したデータの一例の概略図である。
図15】本発明の実施例に係る生体の位置の検出装置の一例の概略図である。
図16】本発明の実施例に係るコンピュータ機器の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の上記及びその他の特徴は、図面及び下記の説明により明確になる。明細書及び図面では、本発明の特定の実施形態、即ち本発明の原則に従う一部の実施形態を表すものを公開している。なお、本発明は説明される実施形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内の全ての修正、変形されたもの、及び均等なものを含む。
【0028】
本発明の実施例では、用語「第1」、「第2」は異なる要素を名称で区分するためのものであり、これらの要素の空間的配列又は時間的順序などを意味するものではなく、これらの要素はこれらの用語に限定されない。用語「及び/又は」は列挙された用語の1つ又は複数のうち何れか及びその組み合わせを含む。用語「包括」、「含む」、「有する」は、説明された特徴、要素、素子又は部材の存在を意味するが、他の1つ又は複数の特徴、要素、素子又は部材の存在又は追加を排除するものではない。
【0029】
本発明の実施例では、単数形の「一」、「該」等は複数形を含み、「一種」又は「一類」を意味し、「1つ」に限定するものではない。また、用語「前記」は、文脈上明確に指示されない限り、単数形及び複数形両方を含む。また、文脈上明確に指示されない限り、用語「応じて」は「少なくとも部分的に応じて」を意味し、用語「に基づいて」は「少なくとも部分的に基づいて」を意味する。
【0030】
図3は、ミリ波レーダを利用した移動している人物の位置特定の一例の概略図である。図3に示すように、ミリ波レーダは、点群情報を処理して動いている目標の追跡を行う。しかし、人体が静止している場合、レーダは有効な点群を生成できず、従来の点群追跡方法では目標の位置情報を取得できない。
【0031】
図4は、ミリ波レーダを利用した静止している人物の位置特定の一例の概略図である。図4に示すように、人の胸の動き(例えば呼吸)により、レーダ信号の変動が発生し、空間位置に反応して、変動が最も大きい点の輝度を最も高いため、人が所在する位置を確認することができる。
【0032】
しかし、静止している人物の位置特定の効果は人の姿勢の影響を受け、例えば、レーダは分析環境における反射信号を高めて動作している。図5は、人の異なる姿勢でレーダに反射した信号量の一例の概略図である。図5に示すように、人が立つ姿勢(図5の中央部に示す)では、レーダ信号は人体全体で反射され、より多くのレーダ信号及び高い測位性能を得ることができる。一方、人が横たわっている姿勢(図5の右側部に示す)では、レーダ信号は人体のごく一部でしか反射されず、その結果、レーダ信号は少なくなり、測位性能は低くなる。
【0033】
図6は、本発明の実施例に係る応用シナリオの一例の概略図である。図6に示すように、本発明の実施例に係る生体の位置の検出方法は、ミリ波レーダを用いて静止している人の位置特定を行い、レーダの距離FFT(fast Fourier transform:高速フーリエ変換)データ又はゼロドップラFFTデータのみを用いて静止している人の位置を検出する。距離FFTデータとは、レーダ受信信号に対して距離FFT処理を実行して得られたデータである。ゼロドップラFFTデータとは、レーダの距離FFTデータに対してドップラFFT処理を実行して得られたドップラ周波数点がゼロのデータである。
【0034】
以下は、図面を参照しながら本発明の実施例の各実施形態を説明する。
【0035】
<実施例1>
本発明の実施例は、生体の位置の検出方法を提供する。
【0036】
図7は、本発明の実施例に係る生体の位置の検出方法の一例の概略図である。図7に示すように、該方法は以下のステップを含む。
【0037】
ステップ701:レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得する。
【0038】
ステップ702:該レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定する。
【0039】
ステップ703:該距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、該距離範囲内に生体が存在するか否かを決定する。
【0040】
ステップ704:生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定する。
【0041】
本発明の実施例では、ミリ波レーダの信号の特性を利用して生体の所在位置を特定する。レーダは、動作時に無線信号を周期的に送信し、環境から反射されたレーダ信号を受信する。MIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダは、複数の送信アンテナ及び受信アンテナを備えており、異なる送受信アンテナペア(a pair of transmitting and receiving antenna)におけるレーダ信号は、目標の速度、位置などの情報を反映することができる。送受信アンテナペアのグループは、仮想アンテナ(virtual antenna)と称される。レーダが3個の送信アンテナと4個の受信アンテナを使用している場合、該レーダは、合計12個の仮想アンテナを有する。
【0042】
本発明の実施例では、通常のレーダ信号処理方法により、レーダにより受信された信号を各距離で反射されたレーダ信号に分解して、各空間位置で反射されたレーダ信号に分解する。本発明の実施例では、空間位置座標は(r,a,e)で表され、ここで、rはレーダに対する距離であり、aはレーダに対する水平方位角であり、eはレーダに対する垂直方位角である。レーダ信号は、振幅及び位相の2つの部分を含む複素数で表される。
【0043】
本発明の実施例によれば、まず、レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を選択し、次に、生体が存在する可能性のある距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、該距離範囲内に生体が存在するか否かを判断し、最後に、生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定する。これによって、人体の生理的な微動によるレーダ信号の特性を利用して目標の位置を決定し、検出の正確率が高く、計算の複雑度が低い。
【0044】
幾つかの態様では、レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定するステップ(ステップ702)は、図8に示す方法で実現されてもよい。図8に示す方法は、以下のステップを含む。
【0045】
ステップ801:該レーダ検出範囲内の全ての距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動を計算する。
【0046】
ステップ802:各該距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動の平均値を計算し、該平均値の局所ピーク値が所在する距離の近傍範囲を決定する。
【0047】
ステップ803:該近傍範囲内の少なくとも1つのアンテナのレーダ信号に基づいて、該局所ピーク値が所在する該近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する。
【0048】
上記の態様では、まず、各距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動を計算する(ステップ801)。ここで、ある距離におけるレーダ信号の変動は、所定の期間内の該距離におけるレーダ信号の振幅の変化状況を表す。
【0049】
幾つかの態様では、ある距離におけるレーダ信号の変動は、以下の式(1)に示すように、対応するレーダ信号の振幅の標準偏差で表されてもよい。
【0050】
【数1】
式(1)では、Vk,rはk番目の仮想アンテナの距離rにおけるレーダ信号の変動であり、A k,rは時点tにおけるk番目の仮想アンテナの距離rにおけるレーダ信号の振幅であり、E k,rはT期間におけるk番目の仮想アンテナの距離rにおけるレーダ信号の振幅の平均値である。
【0051】
幾つかの態様では、ある距離におけるレーダ信号の変動は、以下の式(2)に示すように、対応するレーダ信号の振幅の平均偏差で表されてもよい。
【0052】
【数2】
式(2)では、|・|は絶対値を求める演算であり、その他の各記号の意味は式(1)と同様である。
【0053】
図9は、各距離におけるレーダ信号の変動の一例の概略図である。図9に示すように、(a)のグラフは、アンテナ1の各距離におけるレーダ信号の変動であり、(b)のグラフは、アンテナ3の各距離におけるレーダ信号の変動であり、ここで、横軸は距離であり、縦軸はレーダ信号の変動である。
【0054】
上記の態様では、全てのアンテナのレーダ信号の変動の平均値を計算し、該レーダ信号の変動の平均値の局所ピーク値が所在する距離の近傍範囲を取得する(ステップ802)。
【0055】
図9に示すように、(c)のグラフは、各距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動の平均値である。ある距離におけるレーダ信号の変動の平均値が該距離の近傍範囲内の他の位置の値よりも大きい場合、該距離は、レーダ信号の変動の平均値の局所ピーク値に対応する。
【0056】
上記の態様では、ある距離の近傍範囲は、該距離の前方R及び後方Rの距離範囲を意味し、例えば、距離rの近傍範囲は、(r-R,r+R)である。図9の(c)のグラフにおいて、r及びrは、レーダ信号の変動の平均値の局所ピーク値の位置にそれぞれ対応し、対応する破線枠は、局所ピーク値の近傍範囲にそれぞれ対応する。
【0057】
上記の態様では、該局所ピーク値が所在する近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する(ステップ803)。
【0058】
幾つかの態様では、ステップ803において、全ての近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定し、近傍範囲内に生体が存在する可能性のあるアンテナの割合が所定の閾値(第1の閾値と称される)よりも大きいと決定された場合、該近傍範囲内に生体が存在する可能性があると決定してもよい。
【0059】
例えば、レーダがn個の仮想アンテナを有すると仮定すると、所定の期間内に各距離にnグループのレーダ信号があり、即ち、各仮想アンテナがレーダ信号のグループに対応する。該態様では、各仮想アンテナにおけるレーダ信号について、所定の距離範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定してもよい。生体が存在する可能性のある仮想アンテナ数の割合が閾値よりも大きい場合、即ち、m個の仮想アンテナにおけるレーダ信号に基づいて生体が存在する可能性があると決定され、且つm/nが閾値よりも大きい場合、該距離範囲内に生体が存在する可能性があると判定し、後続の処理を継続する。そうでない場合、該距離範囲内に生体が存在しないと判定する。本発明は「レーダ信号に基づいて生体が存在する可能性があるか否かを決定する」方法に限定されず、従来の任意の実施可能な方法を本発明に適用してもよい。
【0060】
他の幾つかの態様では、ステップ803において、近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、レーダ信号の変動が最も大きいアンテナを決定し、該レーダ信号の変動が最も大きいアンテナのレーダ信号に基づいて、近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定してもよい。
【0061】
依然として、レーダがn個の仮想アンテナを有することを一例とする。この態様では、各距離についてレーダ信号の変動が最も大きい仮想アンテナに対応するレーダ信号を選択し、所定の距離範囲内において、上記選択されたレーダ信号を使用して、生体が存在する可能性があるか否かを決定してもよい。本発明は「レーダ信号に基づいて生体が存在する可能性があるか否かを決定する」方法に限定されず、従来の任意の実施可能な方法を本発明に適用してもよい。
【0062】
以上は、レーダ信号の変動に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定することを一例としたが、ここで、レーダ信号の変動は、レーダ信号の相対的な変動に置き換えられてもよく、即ち、レーダ信号の相対変動に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定してもよい。
【0063】
上記の態様では、レーダ信号の相対変動は、所定の期間内のレーダ信号の変動の振幅に対する変化状況を表し、以下の式(3)に示すように、レーダ信号の変動と信号の振幅との比率で表されてもよい。
【0064】
【数3】
式(3)では、Kk,rはk番目の仮想アンテナの距離rにおけるレーダ信号の相対変動であり、Vk,rは対応するレーダ信号の変動であり、A’k,rは対応するレーダ信号の参照振幅である。A’k,rはk番目の仮想アンテナの距離rにおけるレーダ信号の平均振幅であってもよいし、距離rの近傍範囲内におけるk番目の仮想アンテナの各距離におけるレーダ信号の平均振幅であってもよいし、k番目の仮想アンテナの距離rにおける各位置のレーダ信号の平均振幅であってもよい。
【0065】
幾つかの態様では、距離範囲内に生体が存在するか否かを決定するステップ(ステップ703)は、図10に示す方法で実現されてもよい。図10に示すように、該方法は以下のステップを含む。
【0066】
ステップ1001:各空間位置におけるレーダ信号の変動を計算する。
【0067】
ステップ1002:空間位置における異なる距離間のレーダ信号の変動の相関係数を計算する。
【0068】
ステップ1003:該距離範囲内において、各距離と他の距離との該相関係数の平均値を計算する。
【0069】
ステップ1004:該平均値のうちの最大値が第2の閾値よりも大きい場合、該距離範囲内に生体が存在すると決定する。
【0070】
上記の態様では、例えば角度FFT(離散フーリエ変換)法、最尤法などの従来の信号処理方法を使用して複数の仮想アンテナのレーダ信号を用いて、空間位置で反射されたレーダ信号を計算してもよい。
【0071】
上記の態様では、時点tにおける空間位置(r,a,e)に対応するレーダ信号は、以下の式(4)に示すように、s r,a,eで表されてもよい。
【0072】
【数4】
式(4)では、A r,a,eは振幅であり、iφ r,a,eは位相である。
【0073】
上記の態様では、まず、各空間位置におけるレーダ信号の変動を計算する(ステップ1001)。ここで、ある空間位置におけるレーダ信号の変動は、所定の期間内の該位置におけるレーダ信号の振幅の変化状況を表す。
【0074】
幾つかの態様では、空間位置におけるレーダ信号の変動は、以下の式(5)に示すように、対応するレーダ信号の振幅の標準偏差で表されてもよい。
【0075】
【数5】
式(5)では、Vr,a,eは空間位置(r,a,e)におけるレーダ信号の変動であり、A r,a,eは時間tにおける対応するレーダ信号の振幅であり、E r,a,eは時間tにおける対応するレーダ信号の振幅の平均値である。
【0076】
幾つかの態様では、空間位置におけるレーダ信号の変動は、以下の式(6)に示すように、対応するレーダ信号の振幅の平均偏差で表されてもよい。
【0077】
【数6】
式(6)では、|・|は絶対値を求める演算であり、他の各記号の意味は式(5)と同様である。
【0078】
上記の態様では、空間位置における異なる距離間のレーダ信号の変動の相関係数を計算してもよい(ステップ1002)。その理由として、生体が一定の空間を占有しており、その所在する距離範囲内において、対応するレーダ信号の変動が隣接する空間位置に出現するはずであり、即ち、生体が所在する距離範囲内のレーダ信号変動の空間位置での相関性が大きい。
【0079】
図11は、人が所在する位置におけるレーダ信号の変動の一例の概略図である。図11に示すように、明るい領域ほど該位置におけるレーダ信号の変動が大きいことを示す。ここで、横軸は水平方向角であり、縦軸は垂直方向角である。
【0080】
上記の態様では、下記の式(7)に従って、空間位置における異なる距離間のレーダ信号の変動の相関係数を計算してもよい。
【0081】
【数7】
式(7)では、Ci,jは距離i及びjにおけるレーダ信号の変動の空間位置で相関係数であり、V’及びV’は、それぞれ距離i及び距離jにおける全ての位置のレーダ信号の変動の平均値である。
【0082】
図12は、レーダ信号の変動の空間位置での相関係数の一例の概略図であり、空間位置における距離r0と他の距離とのレーダ信号の変動の相関係数を示す。図12から分かるように、人が所在する距離範囲内において、レーダ信号の変動は空間位置での相関性が大きい。
【0083】
幾つかの態様では、生体が存在する可能性のある距離範囲内について、該距離範囲内の各距離と他の距離との該相関係数の平均値を計算し(ステップ1003)、相関係数の平均値のうちの最大値が閾値Cth(第2の閾値と称される)よりも大きい場合、該距離範囲内に生体が存在すると判定する。そうでない場合、該距離範囲内に生体が存在しないと判定する。
【0084】
上記の態様では、生体が存在する距離範囲内の上記相関係数の平均値が最も大きい距離はrmaxで表される。
【0085】
幾つかの態様では、生体が所在する位置を決定するステップ(ステップ704)は、レーダ信号の変動が最も大きい位置に基づいて決定されてもよい。即ち、該距離範囲内におけるレーダ信号の変動が最も大きい位置を、生体が所在する位置として決定してもよい。
【0086】
例えば、上記の相関係数の平均値が最も大きい距離rmaxの近傍範囲内において、レーダ信号の変動が最も大きい位置を、生体が所在する位置として決定する。例えば、閾値R及びRを設定し、距離範囲(rmax-R,rmax+R)はrmaxの近傍範囲である。生体の所在する位置を決定する際に、距離範囲(rmax-R,rmax+R)の全ての位置においてレーダ信号の変動が最も大きい位置、即ち、生体が所在する位置を決定する。
【0087】
図13は、本発明の実施例に係る生体の位置の検出方法の他の例の概略図である。図13に示すように、該方法は以下のステップを含む。
【0088】
ステップ1301:全ての距離におけるレーダ信号の変動を計算する。
【0089】
ステップ1302:全てのアンテナのレーダ信号の変動の平均値を計算する。
【0090】
ステップ1303:レーダ信号の分散の平均値の局所ピーク値近傍の距離範囲を取得する。
【0091】
ステップ1304:選択された距離範囲内に人が存在するか否かを判断し、YESの場合、人がいないと判断し、処理を終了する。そうでない場合、ステップ1305を実行する。
【0092】
ステップ1305:RAE空間におけるレーダ信号の変動を計算する。
【0093】
ステップ1306:RAE空間におけるレーダ信号の変動の相関係数を計算する。
【0094】
ステップ1307:各距離のレーダ信号の変動の相関係数の平均値を計算する。
【0095】
ステップ1308:上記の平均値のうちの最大値がCthよりも大きいか否かを判断し、YESの場合、人がいないと判断し、処理を終了する。そうでない場合、ステップ1309を実行する。
【0096】
ステップ1309:rmax、即ち、相関係数の平均値の最大値の範囲を取得する。
【0097】
ステップ1310:距離範囲内の最大の信号分散の位置、即ち、人の位置を取得する。
【0098】
なお、以上の図13は単なる本発明の実施例を例示的に説明するものであり、本発明はこれに限定されない。例えば、各ステップ間の実行順序を適宜調整してもよいし、他のステップを追加したり、その一部のステップを削除したりしてもよい。当業者は上記の内容に基づいて適宜変形を行ってもよく、上記の図13の記載に限定されない。
【0099】
例えば、図14は、本発明の実施例の方法に従って、6個のレーダを用いて2.5メートルm~5メートルの範囲内で収集したデータの一例の概略図である。図14に示すように、静止している人は、例えば、立っている姿勢、座っている姿勢、横たわっている姿勢などの様々な位置及び姿勢であってもよい。
【0100】
以下の表1は、従来の方法と比較して、本発明の実施例に係る方法の成功検出率及び失敗検出率を示す。
【0101】
【表1】
表1

表1に示すように、矢印の前の数字は従来の方法により得られた検出率であり、矢印の後の数字は本発明の実施例に係る方法により得られた検出率である。表1から分かるように、立っている姿勢、座っている姿勢、上向きに横たわっている姿勢、及び下向きに横たわっている姿勢の4つの姿勢では、本発明の実施例に係る方法によれば、従来技術の方法に比べて、成功検出率(即ち、検出された位置と実際の位置との差の絶対値が閾値よりも小さい比率)が平均で12%向上し、失敗検出率(即ち、検出された位置が人により占められていない比率)が平均で10%減少した。
【0102】
本発明の実施例によれば、人体の生理的な微動によるレーダ信号の特性を利用して目標の位置を決定し、検出の正確率が高く、計算の複雑度が低い。
【0103】
<実施例2>
本発明の実施例は生体の位置の検出装置を提供する。該装置の問題解決の原理は、実施例1の方法と同様であるため、その具体的な実施は、実施例1の方法の実施を参照してもよく、同様な内容について説明を省略する。
【0104】
図15は、本発明の実施例に係る生体の位置の検出装置の一例の概略図である。図15に示すように、本発明の実施例に係る生体の位置の検出装置1500は、以下の各部を含む。
【0105】
取得部1501は、レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得する。
【0106】
第1の決定部1502は、該レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定する。
【0107】
第2の決定部1503は、該距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、該距離範囲内に生体が存在するか否かを決定する。
【0108】
第3の決定部1504は、生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定する。
【0109】
幾つかの態様では、第1の決定部1502は、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定する際に、該レーダ検出範囲内の全ての距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動を計算し、各該距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動の平均値を計算し、該平均値の局所ピーク値が所在する距離の近傍範囲を決定し、該近傍範囲内の少なくとも1つのアンテナのレーダ信号に基づいて、該局所ピーク値が所在する該近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する。
【0110】
幾つかの態様では、該局所ピーク値が所在する該近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する際に、該近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、該近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定し、該近傍範囲内に生体が存在する可能性のあるアンテナの割合が第1の閾値よりも大きいと決定された場合、該近傍範囲内に生体が存在する可能性があると決定する。
【0111】
幾つかの態様では、該局所ピーク値が所在する該近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する際に、該近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、レーダ信号の変動が最も大きいアンテナを決定し、該レーダ信号の変動が最も大きいアンテナのレーダ信号に基づいて、該近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定する。
【0112】
幾つかの態様では、該距離におけるレーダ信号の変動は、該レーダ信号の振幅の標準偏差又は平均偏差であり、該距離におけるレーダ信号の相対変動は、該レーダ信号の変動と振幅との比率である。
【0113】
幾つかの態様では、第2の決定部1503は、該距離範囲内に生体が存在するか否かを決定する際に、各空間位置におけるレーダ信号の変動を計算し、空間位置における異なる距離間のレーダ信号の変動の相関係数を計算し、該距離範囲内において、各距離と他の距離との該相関係数の平均値を計算し、該平均値のうちの最大値が第2の閾値よりも大きい場合、該距離範囲内に生体が存在すると決定する。
【0114】
幾つかの態様では、該空間位置におけるレーダ信号の変動は、該空間位置におけるレーダ信号の振幅の標準偏差又は平均値である。
【0115】
幾つかの態様では、第3の決定部1504は、生体が所在する位置を決定する際に、該距離範囲内におけるレーダ信号の変動が最も大きい位置を、生体が所在する位置として決定する。
【0116】
なお、以上は本発明に関連する各構成要素又はモジュールについてのみ説明したが、本発明はこれらに限定されない。生体の位置の検出装置1500は、他の構成要素又はモジュールを含んでもよく、これらの構成要素又はモジュールの具体的な内容について、関連技術を参照してもよい。
【0117】
簡単のために、図15には、個々の構成要素又はモジュール間の接続関係又は信号の流れのみが例示的に示されているが、当業者には、バス接続などの様々な関連技術が使用され得ることが明らかであろう。上記の各構成要素又はモジュールは、例えば、プロセッサ、メモリなどのハードウェア設備によって実現されてもよい。本発明の実施形態は、これを限定するものではない。
【0118】
以上の各実施例は、本発明の実施例のみを例示したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記各実施例に加えて適宜変形することができる。例えば、上記各実施例を単独で使用してもよいし、上記各実施例の1つ以上を組み合わせてもよい。
【0119】
本発明の実施例によれば、人体の生理的な微動によるレーダ信号の特性を利用して目標の位置を決定し、検出の正確率が高く、計算の複雑度が低い。
【0120】
<実施例3>
本発明の実施例は、実施例2に係る生体の位置の検出装置1500を含むコンピュータ機器を提供し、該装置の内容はここで援用される。該コンピュータ機器は、例えばコンピュータ、サーバ、ワークステーション、ラップトップコンピュータ、スマートフォンなどであってもよいが、本発明の実施例はこれらに限定されない。
【0121】
図16は、本発明の実施例に係るコンピュータ機器の一例の概略図である。図16に示すように、コンピュータ機器1600は、プロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))1610、及びメモリ1620を含む。メモリ1620は、プロセッサ1610に接続される。メモリ1620は、様々なデータを記憶してもよく、情報処理のプログラム1621をさらに記憶してもよい。プロセッサ1610の制御により該プログラム1621を実行する。
【0122】
1つの態様では、生体の位置の検出装置1500の機能はプロセッサ1610に統合されてもよい。ここで、プロセッサ1610は、実施例1に記載された生体の位置の検出方法を実現するように構成されてもよい。
【0123】
もう1つの態様では、生体の位置の検出装置1500はプロセッサ1610とそれぞれ配置されてもよく、例えば、生体の位置の検出装置1500はプロセッサ1610に接続されたチップであり、プロセッサ1610の制御により生体の位置の検出装置1500の機能を実現するように構成されてもよい。
【0124】
なお、コンピュータ機器1600は、入力出力(I/O)装置1630及びディスプレイ1640などをさらに含んでもよい。ここで、上記の部材の機能は従来技術と同様であるため、ここでその説明を省略する。なお、コンピュータ機器1600は、図16に示す構成要素の全てを含む必要はない。さらに、コンピュータ機器1600は、図16に示されていない構成要素を含んでもよく、関連技術を参照してもよい。
【0125】
本発明の実施例は、生体の位置の検出装置においてプログラムを実行する際に、該生体の位置の検出装置に実施例1に記載の方法を実行させる、コンピュータ読み取り可能なプログラムを提供する。
【0126】
本発明の実施例は、生体の位置の検出装置に実施例1に記載の方法を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムが記憶されている、記憶媒体をさらに提供する。
【0127】
本発明の以上の装置及び方法は、ハードウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアを結合して実現されてもよい。本発明はコンピュータが読み取り可能なプログラムに関し、該プログラムは論理部により実行される時に、該論理部に上述した装置又は構成要件を実現させる、或いは該論理部に上述した各種の方法又はステップを実現させることができる。本発明は上記のプログラムを記憶するための記憶媒体、例えばハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、DVD、フラッシュメモリ等に関する。
【0128】
本発明の実施例を参照しながら説明した方法/装置は、ハードウェア、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュール、又は両者の組み合わせで実施されてもよい。例えば、図面に示す機能的ブロック図における1つ若しくは複数、又は機能的ブロック図の1つ若しくは複数の組み合わせは、コンピュータプログラムフローの各ソフトウェアモジュールに対応してもよいし、各ハードウェアモジュールに対応してもよい。これらのソフトウェアモジュールは、図面に示す各ステップにそれぞれ対応してもよい。これらのハードウェアモジュールは、例えばフィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)を用いてこれらのソフトウェアモジュールをハードウェア化して実現されてもよい。
【0129】
ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、モバイルハードディスク、CD-ROM又は当業者にとって既知の任意の他の形の記憶媒体に位置してもよい。プロセッサが記憶媒体から情報を読み取ったり、記憶媒体に情報を書き込むように該記憶媒体をプロセッサに接続してもよいし、記憶媒体がプロセッサの構成部であってもよい。プロセッサ及び記憶媒体はASICに位置する。該ソフトウェアモジュールは移動端末のメモリに記憶されてもよいし、移動端末に挿入されたメモリカードに記憶されてもよい。例えば、機器(例えば移動端末)が比較的に大きい容量のMEGA-SIMカード又は大容量のフラッシュメモリ装置を用いる場合、該ソフトウェアモジュールは該MEGA-SIMカード又は大容量のフラッシュメモリ装置に記憶されてもよい。
【0130】
図面に記載されている一つ以上の機能ブロック及び/又は機能ブロックの一つ以上の組合せは、本発明に記載されている機能を実行するための汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)又は他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタ論理装置、ディスクリートハードウェアコンポーネント、又はそれらの任意の適切な組み合わせで実現されてもよい。図面に記載されている一つ以上の機能ブロック及び/又は機能ブロックの一つ以上の組合せは、例えば、コンピューティング機器の組み合わせ、例えばDSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサの組み合わせ、DSP通信と組み合わせた1つ又は複数のマイクロプロセッサ又は他の任意の構成で実現されてもよい。
【0131】
以上、具体的な実施形態を参照しながら本発明を説明しているが、上記の説明は、例示的なものに過ぎず、本発明の保護の範囲を限定するものではない。本発明の趣旨及び原理を離脱しない限り、本発明に対して各種の変形及び変更を行ってもよく、これらの変形及び変更も本発明の範囲に属する。
【0132】
また、上述の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
生体の位置の検出方法であって、
S1:レーダ検出範囲内のレーダ信号を取得するステップと、
S2:前記レーダ信号に基づいて、生体が存在する可能性のある距離範囲を決定するステップと、
S3:前記距離範囲内において、異なる距離におけるレーダ信号の変動の空間位置での相関性に基づいて、前記距離範囲内に生体が存在するか否かを決定するステップと、
S4:生体が存在する距離範囲内において、空間位置でのレーダ信号の変動に基づいて、生体が所在する位置を決定するステップと、を含む、方法。
(付記2)
S2は、
S21:前記レーダ検出範囲内の全ての距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動を計算するステップと、
S22:各前記距離における全てのアンテナのレーダ信号の変動又は相対変動の平均値を計算し、前記平均値の局所ピーク値が所在する距離の近傍範囲を決定するステップと、
S23:前記近傍範囲内の少なくとも1つのアンテナのレーダ信号に基づいて、前記局所ピーク値が所在する前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定するステップと、を含む、付記1に記載の方法。
(付記3)
S23は、
前記近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定するステップと、
前記近傍範囲内に生体が存在する可能性のあるアンテナの割合が第1の閾値よりも大きいと決定された場合、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があると決定するステップと、を含む、付記2に記載の方法。
(付記4)
S23は、
前記近傍範囲内の各アンテナのレーダ信号に基づいて、レーダ信号の変動が最も大きいアンテナを決定するステップと、
前記レーダ信号の変動が最も大きいアンテナのレーダ信号に基づいて、前記近傍範囲内に生体が存在する可能性があるか否かを決定するステップと、を含む、付記2に記載の方法。
(付記5)
前記距離におけるレーダ信号の変動は、前記レーダ信号の振幅の標準偏差又は平均偏差であり、
前記距離におけるレーダ信号の相対変動は、前記レーダ信号の変動と振幅との比率である、付記2に記載の方法。
(付記6)
S3は、
S31:各空間位置におけるレーダ信号の変動を計算するステップと、
S32:空間位置における異なる距離間のレーダ信号の変動の相関係数を計算するステップと、
S33:前記距離範囲内において、各距離と他の距離との前記相関係数の平均値を計算するステップと、
S34:前記平均値のうちの最大値が第2の閾値よりも大きい場合、前記距離範囲内に生体が存在すると決定するステップと、を含む、付記1に記載の方法。
(付記7)
前記空間位置におけるレーダ信号の変動は、前記空間位置におけるレーダ信号の振幅の標準偏差又は平均値である、付記6に記載の方法。
(付記8)
S4は、
前記距離範囲内におけるレーダ信号の変動が最も大きい位置を、生体が所在する位置として決定するステップ、を含む、付記1に記載の方法。
(付記9)
コンピュータプログラムが記憶されたメモリと、プロセッサと、を含む、コンピュータ機器であって、前記プロセッサは、付記1乃至8の何れかに記載の方法を実現するように、前記コンピュータプログラムを実行するように構成される、コンピュータ機器。
(付記10)
コンピュータ読み取り可能なプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記コンピュータ読み取り可能なプログラムは、付記1乃至8の何れかに記載の方法をコンピュータに実行させる、記憶媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【外国語明細書】