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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010954
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】状態判定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240118BHJP
   G05B 23/02 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G05B23/02 302S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112577
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 堅誠
(72)【発明者】
【氏名】山崎 茂
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 順一
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA15
3C223BB02
3C223EB02
3C223FF03
3C223FF16
3C223FF22
3C223FF45
3C223GG03
3C223HH04
3C223HH08
3C223HH23
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】保守作業が行われ得る設備を計測した計測データに基づいて、その設備が保守作業中であるか否かを判定し、保守動作の有無に応じてその設備が正常であるか否かを判定する。
【解決手段】取得部111は、計測値、学習モデルMを取得する。正常状態判定部112は、正常判定モデルを用いて、取得した計測値を正常か否かに分類する。保守動作判定部113は、保守動作判定モデルを用いて、正常でないと分類された計測値を、保守動作を示すものか否かに分類する。保守正常状態判定部114は、保守正常判定モデルを用いて、正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類された計測値を正常な保守動作か否かに分類する。故障予兆判定部115は、計測値の出現パターンを解析して、設備Jの状態に故障の予兆があるか否かを判定する。出力部116は、判定結果を、それぞれ提示指示装置6に出力する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守作業が行われ得る設備を計測した計測データを、学習済みの正常判定モデルにより正常か否かに分類し、前記計測データのうち正常でないと分類された計測データを、学習済みの保守動作判定モデルにより保守動作を示すものか否かに分類して、前記設備の状態を判定する状態判定装置。
【請求項2】
前記計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類された計測データを、学習済み保守正常判定モデルにより正常な保守動作か否かに分類して前記状態を判定する請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項3】
前記計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類され、正常な保守動作でないと分類された計測データの出現パターンに基づいて、前記状態に故障の予兆があるか否かを判定する請求項2に記載の状態判定装置。
【請求項4】
前記計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものでないと分類された計測データの出現パターンに基づいて、前記状態に故障の予兆があるか否かを判定する請求項2又は3に記載の状態判定装置。
【請求項5】
コンピュータに、
保守作業が行われ得る設備を計測した計測データを、学習済みの正常判定モデルにより正常か否かに分類するステップと、
前記計測データのうち正常でないと分類された計測データを、学習済みの保守動作判定モデルにより保守動作を示すものか否かに分類するステップと、
前記設備を計測した計測データの分類の結果に応じて前記設備の状態を判定するステップ
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守作業が行われ得る設備の状態を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
設備の稼働状態を監視するための監視システムが開発されている。例えば、転てつ機、ホーム柵等の鉄道沿線設備も、効率的な管理を行うためには遠隔からその状態を監視する監視システムが有用である。特に複数の拠点に設置されている設備は、その数が多くなるほど管理が煩雑になり、監視システムの利用が欠かせない。
【0003】
一方、鉄道沿線設備に限らず一般に機械設備は日常保守、及び検査等の保守作業をする必要がある。この保守作業中の設備の動作(以下、保守動作ともいう)は、監視システムにより「通常と異なる状態である」と判定されることがある。監視システムは、保守作業中の作業員の操作により生じた異常状態と、保守作業中でないときの異常状態との区別がつかないためである。その結果、正常に稼働していても保守動作中のため設備が異常状態と判定され管理者等へ誤って通知されてしまうことがある。
【0004】
そこで、保守作業中の不要な警報等を抑制する技術が検討されている(例えば、特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-35160号公報
【特許文献2】特開2018-125578号公報
【特許文献3】特開2017-222485号公報
【特許文献4】特開2013-8092号公報
【特許文献5】特開2013-107417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1乃至3に記載された保守動作を検出する技術は、いずれも作業員、保守端末、保守情報システムに依存しており、設備を計測した情報に基づくものではない。また、特許文献4及び5に記載された保守動作を検出する技術も、保守作業期間がスケジュール通りに行われることを前提としており、設備を計測した情報に基づくものではない。
【0007】
本発明の目的の一つは、保守作業が行われ得る設備を計測した計測データに基づいて、その設備が保守作業中であるか否かを判定し、保守動作の有無に応じてその設備が正常であるか否かを判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、保守作業が行われ得る設備を計測した計測データを、学習済みの正常判定モデルにより正常か否かに分類し、前記計測データのうち正常でないと分類された計測データを、学習済みの保守動作判定モデルにより保守動作を示すものか否かに分類して、前記設備の状態を判定する状態判定装置、を第1の態様として提供する。
【0009】
第1の態様の状態判定装置によれば、保守作業が行われ得る設備を計測した計測データに基づいて、その設備が保守作業中であるか否かを判定し、保守動作の有無に応じてその設備が正常であるか否かを判定することができる。
【0010】
第1の態様の状態判定装置において、前記計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類された計測データを、学習済み保守正常判定モデルにより正常な保守動作か否かに分類して前記状態を判定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0011】
第2の態様の状態判定装置によれば、ユーザは保守動作における異常の発生を見つけることができる。
【0012】
第2の態様の状態判定装置において、前記計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類され、正常な保守動作でないと分類された計測データの出現パターンに基づいて、前記状態に故障の予兆があるか否かを判定する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様の状態判定装置によれば、ユーザは保守動作における異常の発生が見つかったときの故障の予兆を知ることができる。
【0014】
第2又は第3の態様の状態判定装置において、前記計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものでないと分類された計測データの出現パターンに基づいて、前記状態に故障の予兆があるか否かを判定する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0015】
第4の態様の状態判定装置によれば、保守動作でない異常状態のときの故障の予兆を知ることができる。
【0016】
本発明は、コンピュータに、保守作業が行われ得る設備を計測した計測データを、学習済みの正常判定モデルにより正常か否かに分類するステップと、前記計測データのうち正常でないと分類された計測データを、学習済みの保守動作判定モデルにより保守動作を示すものか否かに分類するステップと、前記設備を計測した計測データの分類の結果に応じて前記設備の状態を判定するステップを実行させるためのプログラム、を第5の態様として提供する。
【0017】
第5の態様のプログラムによれば、保守作業が行われ得る設備を計測した計測データに基づいて、その設備が保守作業中であるか否かを判定し、保守動作の有無に応じてその設備が正常であるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】状態判定システム9の全体構成の例を示す図。
図2】蓄積装置4の構成の例を示す図。
図3】状態判定装置1の構成の例を示す図。
図4】状態判定装置1の機能的構成の例を示す図。
図5】状態判定装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
<状態判定システムの全体構成>
図1は、状態判定システム9の全体構成の例を示す図である。状態判定システム9は、鉄道沿線設備等、保守作業が行われ得る設備Jを監視して、その状態を判定し、判定結果をユーザに提示するシステムである。
【0020】
図1に示す状態判定システム9は、状態判定装置1、計測センサ2、保守記録入力装置3、蓄積装置4、学習装置5、提示指示装置6、及び各種の提示装置7を有する。これらのうち図1に示す実線で結ばれた構成は、例えば、専用通信線等によって直接、通信可能に接続されている。
【0021】
また、これらは、例えば、図示しない有線又は無線の通信回線で接続されていてもよい。この通信回線は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、又はこれらの組合せであってもよい。また、通信回線は、公衆交換通信網(PSTN:Public Switched Telephone Networks)、サービス統合デジタル網(ISDN:Integrated Services Digital Network)等を含むものであってもよい。
【0022】
計測センサ2は、設備Jに関する各種の事象を計測するセンサである。設備Jは、状態判定システム9の判定の対象となる設備であり、保守作業が行われ得る設備の例である。
【0023】
計測センサ2の計測対象は、例えば、設備Jに用いられる回路等の決められた箇所に流れる電流、又は決められた箇所にかかる電圧である。また、この計測対象は、設備Jで発生する音、振動であってもよい。また、この計測対象は、設備Jの部材又は周辺空間の温度、湿度であってもよい。また、この計測対象は、可視光線、赤外線等により認識され得る設備Jの外観形状等であってもよい。計測センサ2は、計測対象に応じて、電流計、電圧計、音量計・マイク、振動計、温度計、湿度計、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等が選択され得る。
【0024】
計測センサ2は、計測した結果である計測値(計測データともいう)を蓄積装置4に送信する。この計測値は、例えば、電流、電圧、音(振幅・周波数)、振動(振幅・周波数)、温度、湿度、及び静止画像、動画等である。
【0025】
保守記録入力装置3は、ユーザの入力操作を受付け、この入力操作に応じた、保守作業に関する記録(以下、保守記録ともいう)を蓄積装置4に供給する装置である。保守記録は、例えば保守作業を開始する、又は終了するタイミング等の情報である。
【0026】
保守記録入力装置3は、各種の指示をするための操作ボタン、キー、タッチパネル等の操作子を備えている。これらの操作子に対しユーザの入力操作がなされると、保守記録入力装置3は、この入力操作の内容を解釈して、その内容を示す保守記録を生成し、蓄積装置4に送信する。
【0027】
なお、保守記録入力装置3は、ユーザに入力操作を促すための表示部を有してもよい。この表示部は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示画面を有し、その上にはユーザの入力操作を受付けるための透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。
【0028】
蓄積装置4は、計測センサ2により設備Jに関して計測された計測値を蓄積する。また、蓄積装置4は、保守記録入力装置3によりユーザから入力された保守記録を蓄積する。
【0029】
図2は、蓄積装置4の構成の例を示す図である。図2に示す蓄積装置4は、プロセッサ41、メモリ42、及びインタフェース43を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。
【0030】
プロセッサ41は、メモリ42に記憶されているプログラムを読出して実行することにより蓄積装置4の各部を制御する。プロセッサ41は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0031】
メモリ42は、プロセッサ41に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ42は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ42は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0032】
また、メモリ42は、計測値DB421、及び保守記録DB422を記憶する。
【0033】
計測値DB421は、計測センサ2が計測した設備Jに関する計測値を記憶するデータベースである。
【0034】
保守記録DB422は、保守記録入力装置3によってユーザから入力された保守記録を記憶するデータベースである。
【0035】
インタフェース43は、上述した状態判定装置1、計測センサ2、保守記録入力装置3、学習装置5と接続するインタフェースである。プロセッサ41は、計測センサ2によって計測された計測値を、インタフェース43経由で取得し、計測値DB421に記憶させる。また、プロセッサ41は、保守記録入力装置3によって入力された保守記録を、インタフェース43経由で取得し、保守記録DB422に記憶させる。
【0036】
また、プロセッサ41は、状態判定装置1の求めに応じて計測値DB421から計測値をインタフェース43経由で供給する。
【0037】
また、プロセッサ41は、各種の学習装置5の求めに応じて計測値DB421から計測値をインタフェース43経由で供給するとともに、保守記録DB422から保守記録をインタフェース43経由で供給する。
【0038】
学習装置5は、計測値DB421から供給された計測値と、保守記録DB422から供給された保守記録とを用いて、それぞれ機械学習を行う装置である。図1に示す学習装置5は、正常状態学習装置5a、保守動作学習装置5b、及び保守正常状態学習装置5cの3つである。正常状態学習装置5a、保守動作学習装置5b、及び保守正常状態学習装置5cを区別しない場合、これらを単に「学習装置5」と呼ぶ。
【0039】
なお、計測値と保守記録とは、いずれもデータごとにそのデータが得られた時点を示すタイムスタンプが対応付けられている。そのため、学習装置5は、例えば保守記録が示す1つの保守作業の開始から終了までの期間を特定すると、その期間に得られた計測値を特定することができる。また、学習装置5は、取得した計測値に対して、決められた基準を満たすように正規化してもよい。
【0040】
正常状態学習装置5aは、運用時の設備Jの計測値を取得して統計演算を行い、これら個々の計測値、計測値の組合せ、及び計測値の出現パターン等を頻度別に複数のグループに分類する。ここで設備Jの「運用時」とは、設備Jを日常的に運用している期間であって、保守作業をしていない期間をいう。これにより、正常状態学習装置5aは、未知の計測値から設備Jが運用時における正常状態であるか否かを判定するための学習済みの学習モデル(正常判定モデルともいう)を生成する。なお、上述した運用時の設備Jの計測値には、故障等の異常が発生したものが含まれなくてもよい。
【0041】
保守動作学習装置5bは、保守記録に基づいて、設備Jの計測値を保守動作が行われていた期間のものとそれ以外のものとに区別する。そして、この区別されたデータ群を教師データとして利用することで、保守動作学習装置5bは、保守動作における計測値の特徴を学習する。これにより保守動作学習装置5bは、未知の計測値から設備Jが保守作業中であるか否かを判定するための学習済みの学習モデル(保守動作判定モデルともいう)を生成する。
【0042】
保守正常状態学習装置5cは、保守記録に基づいて、設備Jの計測値のうち保守動作が行われていた期間のものを取得する。そして、保守正常状態学習装置5cは、取得した計測値に統計演算を行い、これら個々の計測値、計測値の組合せ、及び計測値の出現パターン等を頻度別に複数のグループに分類する。これにより、保守正常状態学習装置5cは、未知の計測値から設備Jが保守作業中における正常状態であるか否かを判定するための学習済みの学習モデル(保守正常判定モデルともいう)を生成する。なお、上述した、保守動作が行われていた期間の設備Jの計測値には、故障等の異常が発生したものが含まれなくてもよい。
【0043】
3つの学習装置5から生成された学習モデルは、データベースである学習モデルMに蓄積される。この学習モデルMは、個々の学習装置5のメモリに記憶されてもよいし、他のサーバ装置に記憶されてもよい。学習モデルMは、例えば、蓄積装置4のメモリ42に記憶されてもよい。要するに、学習モデルMを管理する装置は、状態判定装置1の求めに応じて3つの学習装置5によりそれぞれ生成された学習モデルを提供可能であればよい。
【0044】
状態判定装置1は、設備Jを計測した計測値を、正常判定モデルにより正常か否かに分類する。また、状態判定装置1は、設備Jを計測した計測値のうち正常でないと分類された計測値を、保守動作判定モデルにより保守動作を示すものか否かに分類する。これにより、状態判定装置1は、設備Jの状態が正常であるか否か、保守動作を示しているか否かを判定する。
【0045】
なお、状態判定装置1は、計測値に対して、例えば、ホテリング理論に準じた統計演算により異常検知を行ってもよい。状態判定装置1は、これらの判定の結果を提示指示装置6に出力する。
【0046】
提示指示装置6は、状態判定装置1による判定の結果に応じて各種の提示装置7に指示を出す装置である。
【0047】
提示装置7は、提示指示装置6の指示に沿って、状態判定装置1による判定の結果の少なくとも一部をそれぞれ提示する各種の装置である。図1に示す提示装置7は、回転灯7a、携帯端末7b、表示装置7c、及びスピーカ7dの4つである。回転灯7a、携帯端末7b、表示装置7c、及びスピーカ7dを区別しない場合、これらを単に「提示装置7」と呼ぶ。
【0048】
回転灯7aは、発光体を回転させて周囲の人に注意を促す提示装置7である。回転灯7aは、例えば、発光体としてLED(light emitting diode)を用いており、この発光体をモータによって回転させる。回転灯7aは、提示指示装置6の指示の下、設備Jの状態が異常であると判定されたときに発光体を光らせた上で回転させる。なお、状態判定装置1は、設備Jの計測値が運用時の正常状態でなく、かつ、保守動作を示してもいないと判定するとき、及び、設備Jの計測値が正常な保守動作を示さないと判定するときに、設備Jの状態が異常であると判定する。
【0049】
携帯端末7bは、ユーザが携帯する端末であって、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレットPC等である。携帯端末7bは、液晶ディスプレイ等の表示画面を有し、状態判定装置1により判定された設備Jの状態の判定結果を例えば、文字列、アイコン、図形、画像、写真等によって表示画面に表示する。また、携帯端末7bは、音声を出力するスピーカを有し、これを用いて、設備Jの状態の判定結果を音声によって通知してもよい。
【0050】
表示装置7cは、ユーザが注視する装置であって、例えば、ディスプレイ付きのコンピュータ、スマートテレビ、スマートグラス(メガネ型のウェアラブルデバイス)等である。表示装置7cは、液晶ディスプレイ等の表示画面を有し、これにより設備Jの状態の判定結果を表示する。
【0051】
スピーカ7dは、音声を出力する装置である。スピーカ7dは、提示指示装置6の指示の下、設備Jの状態の判定結果を示す音声を出力する。
【0052】
<状態判定装置の構成>
図3は、状態判定装置1の構成の例を示す図である。状態判定装置1は、プロセッサ11、メモリ12、及びインタフェース13を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。
【0053】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されているプログラムを読出して実行することにより状態判定装置1の各部を制御する。プロセッサ11は、例えばCPUである。
【0054】
メモリ12は、プロセッサ11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ12は、RAM、ROMを有する。なお、メモリ12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0055】
インタフェース13は、上述した蓄積装置4、提示指示装置6、学習モデルMと接続するインタフェースである。
【0056】
<状態判定装置の機能的構成>
図4は、状態判定装置1の機能的構成の例を示す図である。図4に示す状態判定装置1のプロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部111、正常状態判定部112、保守動作判定部113、保守正常状態判定部114、故障予兆判定部115、及び出力部116として機能する。なお、この図4において、状態判定装置1のメモリ12、及びインタフェース13は省略されている。
【0057】
取得部111は、蓄積装置4から設備Jを計測した計測値を取得する。また、取得部111は、学習モデルMを取得する。
【0058】
ここで取得部111は、蓄積装置4から上述した保守記録を取得しない。これは、状態判定装置1が学習モデルMを用いることによって計測値のみから設備Jが保守作業中であるか否かを判定するからである。
【0059】
正常状態判定部112は、取得した学習モデルMのうち正常判定モデルを用いて、取得した計測値を正常か否かに分類する。すなわち、この正常状態判定部112として機能するプロセッサ11を有する状態判定装置1は、保守作業が行われ得る設備を計測した計測データを、学習済みの正常判定モデルにより正常か否かに分類して、設備の状態を判定する状態判定装置の例である。
【0060】
正常状態判定部112は、取得した計測値を正常に分類する場合、その分類に基づく判定結果を出力部116に伝える。一方、正常状態判定部112は、取得した計測値を正常に分類しない場合、その分類の基づく判定結果を保守動作判定部113に伝える。
【0061】
保守動作判定部113は、取得した学習モデルMのうち保守動作判定モデルを用いて、正常状態判定部112により正常でないと分類された計測値を、保守動作を示すものか否かに分類する。すなわち、この保守動作判定部113として機能するプロセッサ11を有する状態判定装置1は、計測データのうち正常でないと分類された計測データを、学習済みの保守動作判定モデルにより保守動作を示すものか否かに分類して、設備の状態を判定する状態判定装置の例である。
【0062】
保守動作判定部113は、正常でないと分類された計測値を、保守動作を示すものでないと分類する場合、その分類の基づく判定結果を故障予兆判定部115に伝える。一方、保守動作判定部113は、正常でないと分類された計測値を、保守動作を示すものであると分類する場合、その分類の基づく判定結果を保守正常状態判定部114に伝える。
【0063】
保守正常状態判定部114は、取得した学習モデルMのうち保守正常判定モデルを用いて、正常状態判定部112により正常でないと分類され、保守動作判定部113により保守動作を示すものであると分類された計測値を正常な保守動作を示すものか否かに分類する。すなわち、この保守正常状態判定部114として機能するプロセッサ11を有する状態判定装置1は、計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類された計測データを、学習済み保守正常判定モデルにより正常な保守動作か否かに分類して、設備の状態を判定する状態判定装置の例である。
【0064】
保守正常状態判定部114は、正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類された計測値を、正常な保守動作を示すものでないと分類する場合、その分類の基づく判定結果を故障予兆判定部115に伝える。一方、保守正常状態判定部114は、正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類された計測値を、正常な保守動作を示すものであると分類する場合、その分類の基づく判定結果を出力部116に伝える。
【0065】
故障予兆判定部115は、正常状態判定部112により正常でないと分類され、保守動作判定部113により保守動作を示すものでないと分類された計測値の出現パターンを解析する。そして、故障予兆判定部115は、この出現パターンに基づいて、運用時における設備Jの状態に故障の予兆があるか否かを判定する。
【0066】
故障予兆判定部115は、例えば、運用時における設備Jの異常を示す計測値が連続して発生する回数を用いて、故障の予兆があるか否かを判定する。この場合、異常を示す計測値の連続発生回数が決められた閾値を超えたとき、故障予兆判定部115は、設備Jに故障の予兆があると判定すればよい。また、故障予兆判定部115は、各種のパターンマッチングを利用して、故障の予兆の有無を判定してもよい。また、故障予兆判定部115は、計測値に対して、例えば、ホテリング理論に準じた統計演算を行うことにより、故障の予兆の有無を判定してもよい。
【0067】
すなわち、この故障予兆判定部115として機能するプロセッサ11を有する状態判定装置1は、計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものでないと分類された計測データの出現パターンに基づいて、設備の状態に故障の予兆があるか否かを判定する状態判定装置の例である。
【0068】
また、この故障予兆判定部115は、正常状態判定部112により正常でないと分類され、保守動作判定部113により保守動作を示すものであると分類され、保守正常状態判定部114により正常な保守動作を示すものでないと分類された計測値の出現パターンを解析する。そして、故障予兆判定部115は、この出現パターンに基づいて、設備Jの状態に故障の予兆があるか否かを判定する。
【0069】
すなわち、この故障予兆判定部115として機能するプロセッサ11を有する状態判定装置1は、計測データのうち正常でないと分類され、保守動作を示すものであると分類され、正常な保守動作でないと分類された計測データの出現パターンに基づいて、設備の状態に故障の予兆があるか否かを判定する状態判定装置の例である。
【0070】
故障予兆判定部115は、上述した故障の予兆があるか否かの判定結果を、それぞれ出力部116に伝える。
【0071】
出力部116は、正常状態判定部112、保守動作判定部113、保守正常状態判定部114、故障予兆判定部115から伝えられた判定結果を、それぞれ提示指示装置6に出力する。提示指示装置6は、出力された判定結果の少なくとも一部をいずれかの提示装置7に提示させる指示を出す。
【0072】
<状態判定装置の動作>
図5は、状態判定装置1の動作の流れの例を示すフロー図である。状態判定装置1のプロセッサ11は、蓄積装置4から計測値を取得する(ステップS101)。また、プロセッサ11は、学習モデルMを取得する(ステップS102)。なお、ステップS101とステップS102の順序は問わない。
【0073】
次にプロセッサ11は、取得した計測値から設備Jの状態が正常状態であるか否かを、学習済みの正常判定モデルを用いることにより判定する(ステップS103)。設備Jの状態が正常状態である、と判定する場合(ステップS103;YES)、プロセッサ11は、設備Jの状態が正常状態である旨を提示指示装置6に伝える。これにより、提示指示装置6に制御された各種の提示装置7は、設備Jが正常である旨の提示を行う(ステップS104)。ステップS104の実行の後、プロセッサ11は、処理を終了する。
【0074】
一方、設備Jの状態が正常状態でない、と判定する場合(ステップS103;NO)、プロセッサ11は、上述した計測値が設備Jの保守動作を示しているか否かを、学習済みの保守動作判定モデルを用いることにより判定する(ステップS105)。上述した計測値が設備Jの保守動作を示していない、と判定する場合(ステップS105;NO)、プロセッサ11は、設備Jの状態が異常状態である旨を提示指示装置6に伝える。これにより、提示指示装置6に制御された各種の提示装置7は、設備Jが異常である旨の提示を行う(ステップS106)。ステップS106の実行の後、プロセッサ11は、処理をステップS110に進める。
【0075】
一方、上述した計測値が設備Jの保守動作を示している、と判定する場合(ステップS105;YES)、プロセッサ11は、上述した計測値が設備Jの正常な保守動作を示しているか否かを、学習済みの保守正常判定モデルを用いることにより判定する(ステップS107)。ここで「正常な保守動作を示している」という状態は、保守正常状態である。上述した計測値が設備Jの正常な保守動作を示している、と判定する場合(ステップS107;YES)、プロセッサ11は、設備Jが正常な保守動作を行っている旨を提示指示装置6に伝える。これにより、提示指示装置6に制御された各種の提示装置7は、設備Jが正常な保守動作を行っている旨の提示を行う(ステップS108)。ステップS108の実行の後、プロセッサ11は、処理を終了する。
【0076】
一方、上述した計測値が設備Jの正常な保守動作を示していない、と判定する場合(ステップS107;NO)、プロセッサ11は、設備Jが正常でない保守動作、つまり、「異常な保守動作」を行っている旨を提示指示装置6に伝える。これにより、提示指示装置6に制御された各種の提示装置7は、設備Jが異常な保守動作を行っている旨の提示を行う(ステップS109)。ステップS109の実行の後、プロセッサ11は、処理をステップS110に進める。
【0077】
ステップS106、及びステップS109の実行の後、プロセッサ11は、設備Jに故障の予兆があるか否かを、上述した計測値の出現パターンに基づいて判定する(ステップS110)。設備Jに故障の予兆がある、と判定する場合(ステップS110;YES)、プロセッサ11は、故障の予兆がある旨を提示指示装置6に伝えて処理を終了する。これにより、提示指示装置6に制御された各種の提示装置7は、設備Jに故障の予兆がある旨の提示を行う(ステップS111)。一方、設備Jに故障の予兆がない、と判定する場合(ステップS110;NO)、プロセッサ11は、処理を終了する。
【0078】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0079】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0080】
<1>
上述した実施形態において、プロセッサ11は、正常状態判定部112として機能していたが、この機能を実現しなくてもよい。この場合、プロセッサ11は、監視した動作データをそのままインタフェース13経由で搬送用記憶媒体に記憶させればよい。
【0081】
<2>
上述した実施形態において、プロセッサ11は、CPUであったが、これ以外の構成でもよい。例えば、プロセッサ11は、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、プログラマブル論理デバイス、等を含むものでもよい。
【0082】
<3>
上述した実施形態において、状態判定装置1は、蓄積装置4、学習装置5、提示指示装置6、提示装置7の機能を有してもよい。
【0083】
<4>
状態判定装置1のプロセッサ11によって実行されるプログラムは、磁気テープ及び磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線経由でダウンロードされてもよい。
【0084】
すなわち、プロセッサ11によって実行されるプログラムは、コンピュータに、保守作業が行われ得る設備を計測した計測データを、学習済みの正常判定モデルにより正常か否かに分類するステップと、前記計測データのうち正常でないと分類された計測データを、学習済みの保守動作判定モデルにより保守動作を示すものか否かに分類するステップと、前記設備を計測した計測データの分類の結果に応じて前記設備の状態を判定するステップを実行させるためのプログラムの例である。
【符号の説明】
【0085】
1…状態判定装置、11…プロセッサ、111…取得部、112…正常状態判定部、113…保守動作判定部、114…保守正常状態判定部、115…故障予兆判定部、116…出力部、12…メモリ、13…インタフェース、2…計測センサ、3…保守記録入力装置、4…蓄積装置、41…プロセッサ、42…メモリ、421…計測値DB、422…保守記録DB、43…インタフェース、5…学習装置、5a…正常状態学習装置、5b…保守動作学習装置、5c…保守正常状態学習装置、6…提示指示装置、7…提示装置、7a…回転灯、7b…携帯端末、7c…表示装置、7d…スピーカ、9…状態判定システム。
図1
図2
図3
図4
図5