(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109542
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】抗炎症経口組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20240806BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20240806BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240806BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P43/00 121
A61P29/00
A61K38/39
A61K31/12
A23L33/10
A23L33/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012693
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023014042
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100129414
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 京
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ひかる
(72)【発明者】
【氏名】嶋岡 雄大
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018MD08
4B018MD20
4B018ME14
4B018MF08
4B018MF14
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA40
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZB11
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】新たな抗炎症経口組成物を提供する。
【解決手段】コラーゲンとポリフェノールとを有効成分として含有する、抗炎症経口組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンとポリフェノールとを有効成分として含有する、抗炎症経口組成物。
【請求項2】
高速液体クロマトグラフィーにて測定される、一日摂取量あたりの総コラーゲン量が、1mg以上100mg以下である、請求項1に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項3】
前記コラーゲンが、II型コラーゲンを含む、請求項1または2に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項4】
前記コラーゲンが、非変性II型コラーゲンを含む、請求項1または2に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項5】
一日摂取量あたりの前記非変性II型コラーゲンの量が、0.1mg以上100mg以下である、請求項4に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項6】
前記ポリフェノールが、プロアントシアニジンおよびクルクミンを含む、請求項1または2に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項7】
一日摂取量あたりの前記プロアントシアニジンおよび前記クルクミンの合計量が、10mg以上1000mg以下である、請求項6に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項8】
当該抗炎症経口組成物中の前記コラーゲンの含有量に対する前記ポリフェノールの含有量の質量比(ポリフェノール/コラーゲン)が5以上200以下である、請求項1または2に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項9】
当該抗炎症経口組成物が錠剤であり、
一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる非変性II型コラーゲンの量が、0.3mg超25mg未満である、請求項1または2に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項10】
当該抗炎症経口組成物が錠剤であり、
一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる前記ポリフェノールの量が、50mg超250mg未満である、請求項1または2に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項11】
当該抗炎症経口組成物が錠剤であり、
高速液体クロマトグラフィーにて測定される、一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる総コラーゲン量が、0.5mg以上50mg以下である、請求項1または2に記載の抗炎症経口組成物。
【請求項12】
コラーゲンとポリフェノールとを有効成分として含有する抗炎症経口組成物であって、
前記コラーゲンが、非変性II型コラーゲンを含み、
前記ポリフェノールがプロアントシアニジンならびにクルクミンを含み、
錠剤であり、
当該抗炎症経口組成物中の前記コラーゲンの含有量に対する前記ポリフェノールの含有量の質量比(ポリフェノール/コラーゲン)が5以上200以下であり、
高速液体クロマトグラフィーにて測定される、一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる総コラーゲン量が、0.5mg以上50mg以下であり、
一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる前記非変性II型コラーゲンの量が、0.3mg超25mg未満であり、
一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる前記ポリフェノールの量が、50mg超250mg未満であり、
抗炎症が、経口免疫寛容による炎症抑制である、抗炎症経口組成物。
【請求項13】
請求項1または2に記載の抗炎症経口組成物が包装容器内に収容されている、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関節炎や関節痛の緩和にコラーゲンを用いる技術として、特許文献1(特開2009-51833号公報)に記載のものがある。同文献には、コラーゲン、メチルスルホニルメタン、グルコサミンおよびコンドロイチンを含む関節痛改善用組成物であって、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンを含む組成物について記載されている(請求項1)。
【0003】
一方、特許文献2(特開2013-226140号公報)には、カロリー制限による少なくとも1つの長寿促進効果を模倣することによって寿命を伸長させる成分の抗酸化剤、抗糖化剤、体重又は体脂肪の低減剤、高インスリン感受性又は低血中インスリン若しくは低血中グルコースの促進剤ならびに抗炎症剤のうちの異なるカテゴリーに各々が属する少なくとも3種の成分を含む食餌処方物について記載されており(請求項1)、抗酸化剤としてポリフェノール、プロアントシアニジン等の複数の成分が例示されており(段落0036)、抗炎症剤としてクルクミン源等の複数の成分が例示されている(段落0015)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-51833号公報
【特許文献2】特開2013-226140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たな抗炎症経口組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の抗炎症経口組成物および包装体が提供される。
[1] コラーゲンとポリフェノールとを有効成分として含有する、抗炎症経口組成物。
[2] 高速液体クロマトグラフィーにて測定される、一日摂取量あたりの総コラーゲン量が、1mg以上100mg以下である、[1]に記載の抗炎症経口組成物。
[3] 前記コラーゲンが、II型コラーゲンを含む、[1]または[2]に記載の抗炎症経口組成物。
[4] 前記コラーゲンが、非変性II型コラーゲンを含む、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[5] 一日摂取量あたりの前記非変性II型コラーゲンの量が、0.1mg以上100mg以下である、[4]に記載の抗炎症経口組成物。
[6] 前記ポリフェノールが、プロアントシアニジンおよびクルクミンを含む、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[7] 一日摂取量あたりの前記プロアントシアニジンおよび前記クルクミンの合計量が、10mg以上1000mg以下である、[6]に記載の抗炎症経口組成物。
[8] 当該抗炎症経口組成物中の前記コラーゲンの含有量に対する前記ポリフェノールの含有量の質量比(ポリフェノール/コラーゲン)が5以上200以下である、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[9] 当該抗炎症経口組成物が錠剤であり、
一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる非変性II型コラーゲンの量が、0.3mg超25mg未満である、[1]乃至[8]いずれか一つの抗炎症経口組成物。
[10] 当該抗炎症経口組成物が錠剤であり、
一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる前記ポリフェノールの量が、50mg超250mg未満である、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[11] 当該抗炎症経口組成物が錠剤であり、
高速液体クロマトグラフィーにて測定される、一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる総コラーゲン量が、0.5mg以上50mg以下である、[1]乃至[10]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[12] コラーゲンとポリフェノールとを有効成分として含有する抗炎症経口組成物であって、
前記コラーゲンが、非変性II型コラーゲンを含み、
前記ポリフェノールがプロアントシアニジンならびにクルクミンを含み、
錠剤であり、
当該抗炎症経口組成物中の前記コラーゲンの含有量に対する前記ポリフェノールの含有量の質量比(ポリフェノール/コラーゲン)が5以上200以下であり、
高速液体クロマトグラフィーにて測定される、一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる総コラーゲン量が、0.5mg以上50mg以下であり、
一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる前記非変性II型コラーゲンの量が、0.3mg超25mg未満であり、
一錠の当該抗炎症経口組成物に含まれる前記ポリフェノールの量が、50mg超250mg未満であり、
抗炎症が、経口免疫寛容による炎症抑制である、抗炎症経口組成物。
[13] [1]乃至[12]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物が包装容器内に収容されている、包装体。
【0007】
また、本発明は、以下の態様とすることもできる。
[14] 食品組成物である、[1]乃至[12]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[15] 機能性表示食品である、[14]に記載の抗炎症経口組成物。
[16] 固形製剤である、[1]乃至[12]、[14]および[15]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[17] 錠剤である、[16]に記載の抗炎症経口組成物。
[18] 抗炎症が、経口免疫寛容による炎症抑制である、[1]乃至[12]および[14]乃至[17]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[19]歩行機能における歩行距離のサポート剤である、[1]乃至[12]および[14]乃至[18]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[20] 歩行機能における速度改善剤である、[1]乃至[12]および[14]乃至[19]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[21] 歩行機能における階段の上り下りをする動作のサポート剤である、[1]乃至[12]および[14]乃至[20]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[22] 膝機能におけるしゃがむ動作の改善剤である、[1]乃至[12]および[14]乃至[21]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[23] 膝機能における床に落ちているものを拾う動作の改善剤である、[1]乃至[12]および[14]乃至[22]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[24]膝機能におけるひざの曲げ伸ばしのサポート剤である、[1]乃至[12]および[14]乃至[23]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[25] 膝関節の柔軟性および可動性の少なくとも一つのサポート剤である、[1]乃至[12]および[14]乃至[24]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[26] 膝関節の違和感の軽減剤である、[1]乃至[12]および[14]乃至[25]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[27]膝の不快感、ひざをひねったり回すときの不快感の軽減剤である[1]乃至[12]および[14]乃至[26]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[28]ひざの不快感・不安感を和らげること(活動に対する前向きな姿勢)のサポート剤である[1]乃至[12]および[14]乃至[27]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物。
[29] [14]乃至[28]いずれか一つに記載の抗炎症経口組成物が包装容器内に収容されている、包装体。
【0008】
また、本発明によれば、たとえば、コラーゲンとポリフェノールを有効成分として含む抗炎症剤を提供することもできる。
また、本発明によれば、たとえば、抗炎症経口組成物の製造のための上記本発明における抗炎症剤の使用を提供することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな抗炎症経口組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例におけるアジュバント投与後の経過日数と浮腫率との関係を示す図である。
【
図2】実施例におけるアジュバント投与後の経過日数と左前肢スコアとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、以上、以下を表し、両端の数値をいずれも含む。
【0012】
(抗炎症経口組成物)
本実施形態において、抗炎症経口組成物は、コラーゲンとポリフェノールとを有効成分として含有する。すなわち、本実施形態における経口組成物は、具体的には抗炎症用の組成物である。
【0013】
(コラーゲン)
コラーゲンは、具体的には、皮膚、筋肉、腱、靱帯、軟骨、骨、血管、内臓等の組織に存在するタンパク質である。コラーゲンは、これらの組織からの抽出物であってもよい。
コラーゲンとしては、動物由来コラーゲン、植物由来コラーゲン等の各種由来のものが挙げられる。このうち、動物由来コラーゲンとして、たとえば、ブタ、ウシ、クジラ等の哺乳類由来コラーゲン;ニワトリ(鶏)等の鳥由来コラーゲン;ならびに、サケ、エイ、サメ等の魚およびイカ等の他の魚介類由来コラーゲンが挙げられる。動物由来コラーゲンとして、たとえば軟骨組織由来のものを用いることができる。
【0014】
抗炎症効果向上の観点から、コラーゲンは、好ましくは動物由来コラーゲンであり、より好ましくは鳥類および魚類由来のコラーゲンから選択される少なくとも一種であり、さらに好ましくは鶏胸軟骨由来のコラーゲンである。
【0015】
コラーゲンは、変性および非変性コラーゲンのいずれであってもよい。抗炎症効果向上の観点から、非変性コラーゲンを用いることが好ましい。
ここで、非変性コラーゲンとは、その製造工程において変性処理を施されていないコラーゲンをいい、好ましくは、抽出工程、製剤化工程等のコラーゲンの調製工程中に、加水分解や酵素処理等による低分子化工程を含まないことをいう。一方、非変性コラーゲンは、調製後、不可避的に自然変性されたものであってもよい。また、非変性コラーゲンは、好ましくはその由来組織における高次構造を有するものである。
【0016】
また、コラーゲンは、たとえば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲンおよびV型からなる群から選択される一種または二種以上を含み、好ましくはII型コラーゲンを含む。これらのコラーゲン種は、変性コラーゲンおよび非変性コラーゲンのいずれであってもよい。
【0017】
抗炎症効果向上の観点から、コラーゲンは、II型コラーゲンを含み、より好ましくは非変性II型コラーゲンを含む。
【0018】
高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)にて測定される、一日摂取量あたりの総コラーゲン量は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは1mg以上であり、より好ましくは5mg以上、さらに好ましくは10mg以上、さらにより好ましくは12mg以上である。
また、入手容易性と抗炎症効果向上とのバランスの観点から、HPLCにて測定される、一日摂取量あたりの総コラーゲン量は、好ましくは100mg以下であり、より好ましくは80mg以下、さらに好ましくは60mg以下、さらにより好ましくは40mg以下、よりいっそう好ましくは30mg以下である。
【0019】
HPLCにて測定される、一錠または一包の抗炎症経口組成物に含まれる総コラーゲン量は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは0.5mg以上であり、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは1.2mg以上であり、また、たとえば2mg以上または5mg以上であってもよい。
また、入手容易性と抗炎症効果向上とのバランスの観点から、HPLCにて測定される、一錠または一包の抗炎症経口組成物に含まれる総コラーゲン量は、好ましくは50mg以下であり、より好ましくは40mg以下、さらに好ましくは30mg以下、さらにより好ましくは20mg以下である。
【0020】
(総コラーゲン量の測定)
ここで、HPLCによる抗炎症経口組成物中の総コラーゲン量の測定は、具体的には、試料中のヒドロキシプロリン含量をHPLC法により測定し、これを総コラーゲン量に換算することによりおこなうことができる。
HPLC法を用いることにより、抗炎症経口組成物中にコラーゲンとポリフェノールとが共存する場合にも、総コラーゲン量を安定的に測定することができる。
【0021】
HPLCによる試料中のヒドロキシプロリン含量の測定は、具体的には、以下の条件にておこなわれる。
(条件)
測定装置:アミノ酸分析計(たとえばLA8080高速アミノ酸分析計、日立ハイテクサイエンス社製)
カラム種:陽イオン交換樹脂(たとえば日立カスタムイオン交換樹脂、φ4.6mm×60mm、日立ハイテクサイエンス社製)
カラム温度:57℃
反応槽温度:135℃
移動相:タンパク質加水分解物分析法用緩衝液(たとえば、関東化学社製、PH KANTOシリーズ(PH-1~PH-RG))
反応液:ニンヒドリン発色試薬(たとえば日立用ニンヒドリン発色溶液キット、富士フイルム和光純薬社製)
流速:移動相0.40mL/min,反応液0.35mL/min
検出系:紫外可視吸光度検出器、440nm
【0022】
HPLC測定の標準物質は、たとえばL-ヒドロキシプロリンとし、これを用いて既知濃度の標準試料(標準溶液)を調製する。
HPLC測定における測定試料は、たとえば抗炎症経口組成物の加水分解物の溶液としてもよい。このとき、抗炎症経口組成物を加水分解して加水分解物を得、得られた加水分解物を含む測定試料を調製し、得られた測定試料をHPLC測定に供して抗炎症経口組成物のHPLCチャートを取得することができる。加水分解は、たとえば、塩酸の酸加水分解とすることができる。
標準試料および測定試料の溶媒の具体例として、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)が挙げられる。
【0023】
HPLC測定においては、具体的には、標準試料および測定試料を測定装置に注入し、各試料のHPLCチャートを取得する。
標準試料のチャートにおけるヒドロキシプロリンのピーク保持時間より、測定試料中のヒドロキシプロリンを同定(定性)し、標準試料と測定試料のピーク高さの比率から測定試料中のヒドロキシプロリン量を算出することができる。
【0024】
測定試料のチャート中のヒドロキシプロリンのピーク高さに基づき、以下の式(I)により試料中のヒドロキシプロリン含量を求めることができる。
ヒドロキシプロリン含量(g/100g)=S×131.13×A/B×V×D×100/W×10-6 (I)
S:標準試料の濃度(μmol/mL)
A:測定試料のピーク高さ
B:標準試料のピーク高さ
V:測定試料の定容量(mL)
D:測定試料の希釈倍率
W:検体採取量(g)
131.13:ヒドロキシプロリンの分子量
【0025】
そして、得られたヒドロキシプロリン含量に所定の係数(ヒドロキシプロリン係数)を乗じることにより、試料中の総コラーゲン量を算出することができる。具体的には、以下の式(III)により試料中の総コラーゲン量を得ることができる。
総コラーゲン量(g/100g)=X×ヒドロキシプロリン含量(g/100g) (III)
X:ヒドロキシプロリン係数
【0026】
ここで、上記ヒドロキシプロリン係数Xは、具体的にはコラーゲンの由来に応じて定められ、たとえば鶏胸軟骨由来コラーゲンの場合、AOAC Official Method 990.26.Hydroxyproline in Meat and Meat Products Colorimetric Method. First Action 1990 Final Action 1993より、X=8である。
【0027】
一日摂取量あたりの非変性II型コラーゲンの量は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは0.1mg以上であり、より好ましくは0.5mg以上、さらに好ましくは1mg以上、さらにより好ましくは1.2mg以上である。
また、入手容易性と抗炎症効果向上とのバランスの観点から、一日摂取量あたりの非変性II型コラーゲンの量は、好ましくは100mg以下であり、より好ましくは80mg以下、さらに好ましくは60mg以下、さらにより好ましくは40mg以下、よりいっそう好ましくは10mg以下、さらにまた好ましくは5mg以下である。
【0028】
また、一錠または一包の抗炎症経口組成物に含まれる非変性II型コラーゲンの量は、抗炎症効果向上の観点から、たとえば0.3mg超であり、好ましくは0.5mg超である。
また、入手容易性と抗炎症効果向上とのバランスの観点から、一錠または一包の抗炎症経口組成物に含まれる非変性II型コラーゲンの量は、好ましくは25mg未満であり、より好ましくは20mg以下、さらに好ましくは15mg以下、さらにより好ましくは10mg以下、よりいっそう好ましくは5mg以下であり、また、たとえば1.2mg以下であってもよい。
【0029】
(非変性II型コラーゲン量の測定)
抗炎症経口組成物中の非変性II型コラーゲンの含有量の測定は、具体的には、HPLCを用いておこなわれる。さらに具体的には、上述の総コラーゲン量および非変性II型コラーゲンの規格値に基づいて、非変性II型コラーゲンの含有量を算出することができる。上記規格値は、好ましくは、非変性II型コラーゲンを含むとともにポリフェノールを含まない対照組成物中の総コラーゲン量に対する上記対照組成物中の非変性II型コラーゲンの含有量の比である。ポリフェノールを含まない対照組成物に基づく規格値を用いて非変性II型コラーゲンの量を算出することにより、抗炎症経口組成物にポリフェノールが含まれる場合であっても、より安定的な測定が可能となる。このとき、測定試料中の非変性II型コラーゲンの含有量は、具体的には、以下の式(II)により得ることができる。
組成物の単位量あたりの非変性II型コラーゲン含量(mg)=P×X×(Q÷R) (II)
P(mg/単位量mg):組成物の単位量あたりのヒドロキシプロリン量
X:ヒドロキシプロリン係数
Q(%):対照組成物中の非変性II型コラーゲン含量
R(%):対照組成物中の総コラーゲン含量
なお、式(II)中のXは、式(III)におけるXと同じである。
【0030】
ここで、対照組成物中の非変性II型コラーゲン含量は、公知の方法、たとえば酵素免疫測定(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay:ELISA)法により測定することができる。
【0031】
(ポリフェノール)
本実施形態において、ポリフェノールは、具体的には、プロアントシアニジン、クルクミンおよびケルセチンからなる群から選択される一または二以上の成分を含み、抗炎症効果向上の観点から、好ましくはプロアントシアニジンおよびクルクミンを含む。
【0032】
一日摂取量あたりのクルクミンの含有量は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは0.05mg以上であり、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは3mg以上、さらにより好ましくは6.25mg以上である。
また、他の薬物等との相互作用リスク低減の観点から、一日摂取量あたりのクルクミンの含有量は、好ましくは100mg以下であり、より好ましくは50mg以下、さらに好ましくは30mg以下、さらにより好ましくは15mg以下である。
【0033】
一日摂取量あたりのプロアントシアニジンの含有量は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは0.05mg以上であり、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは10mg以上、さらにより好ましくは100mg以上、よりいっそう好ましくは162.5mg以上である。
また、他の薬物等との相互作用リスク低減の観点から、一日摂取量あたりのプロアントシアニジンの含有量は、好ましくは900mg以下であり、より好ましくは700mg以下、さらに好ましくは500mg以下、さらにより好ましくは300mg以下である。
【0034】
一日摂取量あたりのプロアントシアニジンおよびクルクミンの合計量は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは10mg以上であり、より好ましくは50mg以上、さらに好ましくは100mg以上、さらにより好ましくは150mg以上である。
また、他の薬物等との相互作用リスク低減の観点から、一日摂取量あたりのプロアントシアニジンおよびクルクミンの合計量は、好ましくは1000mg以下であり、より好ましくは800mg以下、さらに好ましくは600mg以下、さらにより好ましくは500mg以下、よりいっそう好ましくは400mg以下である。
【0035】
また、一錠または一包の抗炎症経口組成物に含まれるポリフェノールの量は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは50mg超であり、より好ましくは60mg以上、さらに好ましくは70mg以上、さらにより好ましくは80mg以上である。
また、他の薬物等との相互作用リスク低減等の観点から、一錠または一包の抗炎症経口組成物に含まれるポリフェノールの量は、好ましくは250mg未満であり、より好ましくは200mg以下、さらに好ましくは180mg以下、さらにより好ましくは150mg以下である。
【0036】
抗炎症経口組成物中のコラーゲンの含有量(総コラーゲン量)に対するポリフェノールの含有量の質量比(ポリフェノール/コラーゲン)は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは5以上であり、より好ましくは6以上、さらに好ましくは6.25以上である。
同様の観点から、上記質量比(ポリフェノール/コラーゲン)は、好ましくは200以下であり、より好ましくは175以下、さらに好ましくは150以下である。
【0037】
(その他の成分)
抗炎症経口組成物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。その他の成分は、たとえば食品に用いられる成分から選択することができる。また、その他の成分は、たとえば抗炎症経口組成物の剤形に応じて選択することができる。
その他の成分は、たとえば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤(ポリフェノールを除く。)および矯味剤からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0038】
賦形剤として、たとえば、コーンスターチ、結晶セルロース、炭酸カルシウム、寒梅粉、デヒドロ酢酸Na、ヒプロメロース、薬用炭、セラック、バレイショデンプン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、乳糖、白糖、マルトース、D-マンニトール、エリスリトール、ブドウ糖および果糖からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0039】
結合剤として、たとえば、アラビアゴム末、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0040】
崩壊剤として、たとえば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスポビドン、アルギン酸、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプンおよびベントナイトからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0041】
滑沢剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールおよび硬化油からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0042】
コーティング剤としては、たとえば、タルク、ヒプロメロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、ステアリン酸マグネシウム、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポビドン、ポリビニルアルコールおよびマクロゴールからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0043】
懸濁化剤としては、たとえば、アルギン酸ナトリウムおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも一つの成分が挙げられる。
【0044】
防腐剤として、たとえば、パラオキシ安息香酸エチルおよびパラオキシ安息香酸ブチルからなる群から選択される少なくとも一つの成分が挙げられる。
【0045】
抗酸化剤(ポリフェノールを除く。)としては、たとえば、トコフェロールが挙げられる。
【0046】
矯味剤としては、たとえば、白糖、ハチミツ、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸ニカリウムおよび活性炭からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0047】
本実施形態において、抗炎症経口組成物は、コラーゲンおよびポリフェノールを必須成分として含むため、抗炎症効果に優れる。ここで、抗炎症は、たとえば経口免疫寛容による炎症抑制である。
また、抗炎症組成物は、好ましくはリウマチ性関節炎以外の関節炎に用いられる。
【0048】
抗炎症経口組成物は、具体的には、歩行機能における歩行距離のサポート剤、歩行機能における速度改善剤、歩行機能における階段の上り下りをする動作のサポート剤、階段昇降のスムーズさの改善剤、膝機能におけるしゃがむ動作の改善剤、膝機能における床に落ちているものを拾う動作の改善剤、および、膝機能における立ち上がり動作の改善剤からなる群から選択される一または二以上の改善剤である。
抗炎症経口組成物は、関節機能改善剤であってもよく、さらに膝関節の柔軟性および可動性の少なくとも一つのサポート剤であってもよい。
また、抗炎症経口組成物は、膝関節の違和感の軽減剤、膝機能におけるひざの曲げ伸ばしのサポート剤、膝の不快感・ひざをひねったり回すときの不快感の軽減剤、ひざの不快感・不安感を和らげること(活動に対する前向きな姿勢)のサポート剤であってもよい。
【0049】
本実施形態において、抗炎症経口組成物は、効果の実感をより高める観点から、好ましくは、コラーゲンとポリフェノールとを有効成分として含有する抗炎症経口組成物であって、コラーゲンが、非変性II型コラーゲンを含み、ポリフェノールがプロアントシアニジンならびにクルクミンを含み、錠剤であり、抗炎症経口組成物中のコラーゲンの含有量に対するポリフェノールの含有量の質量比(ポリフェノール/コラーゲン)が5以上200以下であり、高速液体クロマトグラフィーにて測定される、一錠の抗炎症経口組成物に含まれる総コラーゲン量が、0.5mg以上50mg以下であり、一錠の抗炎症経口組成物に含まれる非変性II型コラーゲンの量が、0.3mg超25mg未満であり、一錠の抗炎症経口組成物に含まれるポリフェノールの量が、50mg超250mg未満であり、抗炎症が、経口免疫寛容による炎症抑制である、組成物であり、より好ましくは、コラーゲンとポリフェノールとを有効成分として含有し、コラーゲンが、非変性II型コラーゲンを含み、ポリフェノールがプロアントシアニジンならびにクルクミンを含み、錠剤であり、抗炎症経口組成物中のコラーゲンの含有量に対するポリフェノールの含有量の質量比(ポリフェノール/コラーゲン)が5以上200以下であり、高速液体クロマトグラフィーにて測定される、一錠の抗炎症経口組成物に含まれる総コラーゲン量が、0.5mg以上50mg以下であり、一錠の抗炎症経口組成物に含まれる非変性II型コラーゲンの量が、0.3mg超25mg未満であり、一錠の抗炎症経口組成物に含まれるポリフェノールの量が、50mg超250mg未満であり、抗炎症が、経口免疫寛容による炎症抑制であり、歩行機能における速度および階段の上り下りをする動作のサポート剤であって、膝機能におけるしゃがむ動作の改善剤であって、膝機能における床に落ちているものを拾う動作の改善剤である、組成物である。
なお、抗炎症経口組成物は、歩行機能における速度および階段昇降のスムーズさの改善剤であってもよく、膝機能における立ち上がり動作の改善剤であってもよい。
また、本実施形態における抗炎症経口組成物によれば、たとえば、摂取者が自立した日常生活を送る上で必要な歩く力(たとえば、一定時間で長い距離を歩く力、歩く速さの維持、階段の上り下り)を助ける機能と、ひざ関節の違和感を軽減し、ひざ関節の可動域を広げて、ひざの曲げ伸ばしをサポートする機能と、を実現することに寄与できる。
また、本実施形態における抗炎症経口組成物によれば、たとえば、継続摂取することで、ひざ関節の柔軟性、可動性をサポートすること、中高年の対象者のひざの不快感・不安感を和らげること(たとえば、活動に対する前向きな姿勢)、日常生活におけるひざの動き(たとえば、階段の上り下り、しゃがむ、床に落ちているものを拾う)をサポートすること、また運動時などに膝が気になる方のスムーズな歩行をサポートし、ひざの不快感、ひざをひねったり回すときの不快感を軽減することにも寄与できる。
【0050】
抗炎症経口組成物は、摂取が容易であるとともに効果の実感を高める観点から、好ましくは食品組成物であり、より好ましくは機能性表示食品である。
【0051】
抗炎症経口組成物は、具体的には固形製剤である。
固形製剤の剤形は、たとえば、タブレット等の錠剤、グミ、ゼリー、粉末または顆粒末であり、好ましくは錠剤である。これらの固形製剤は、糖衣層、フィルムコーティング層等の被覆層を有してもよい。
【0052】
(製造方法)
本実施形態において、抗炎症経口組成物の製造方法は、たとえばコラーゲン、ポリフェノールおよび適宜その他の成分を配合する工程を含む。抗炎症経口組成物の製造方法は、たとえばその剤形に応じて製造し、製剤とすることができる。
【0053】
(包装体)
包装体は、本実施形態における抗炎症経口組成物が包装容器内に収容されたものである。包装体とすることにより、たとえば抗炎症経口組成物の使用時の利便性を向上することができる。
包装形態の具体例として、瓶(ボトル)包装、ジャー包装、PTP包装(Press Through Package)、パウチ包装、スティック包装、SP包装(Strip Package)が挙げられる。これらの包装により抗炎症経口組成物により一旦包装して気密保存してもよい。すなわち、抗炎症経口組成物は気密包装体に収容されてもよい。さらにそれらをピロー包装してもよく、それらを箱等に格納してもよい。
また、たとえば吸湿抑制の観点から、抗炎症経口組成物とともに乾燥剤等を包装容器内に収容してもよい。
【0054】
包装容器の材料として、たとえば、樹脂材料、金属材料、ガラス等の無機材料からなる群から選択される一または二以上の材料が挙げられる。
また、必要に応じ、再生プラスチック、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックなどの環境に配慮した素材を包装材料の一部または全部に用いてもよく、環境に配慮した容器・包装を用いてもよい。
【0055】
包装容器を構成するフィルム材料の具体例として、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムやこれら樹脂フィルムにアルミニウム箔等の金属箔を蒸着等により付着させたものを用いることができる。単層のフィルム、複層のフィルム(たとえばラミネートフィルム)のどちらを用いてもよい。
【0056】
包装容器は、たとえば抗炎症経口組成物の形状に応じて選択することができる。抗炎症経口組成物が錠剤であるとき、包装容器はたとえばパウチ袋であり、好ましくはアルミパウチ袋である。パウチ袋にファスナー機能が付与されていてもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0058】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
(試験例1)抗炎症効果試験
国際公開第2012/105312号に記載のラット・アジュバント関節炎に対する発症予防効果の検討方法を参考に抗炎症効果試験を行った。
【0060】
(1)被検物質
非変性II型コラーゲンを含む配合品として、ロンザ社製、UC-II(登録商標、以下同じ。)を用いた。メーカーCOA(試験成績書)より、今回使用したロットには、UC-II 40mgあたり、非変性II型コラーゲンを3.2mg含む。
クルクミンおよびタマリンド由来プロアントシアニジンを含む配合品として、オクトロール社製、TamaFlex(登録商標、以下同じ。)を用いた。メーカーCOA(試験成績書)より、今回使用したロットには、TamaFlex 250mgあたり、ウコン由来クルクミン 13.225mg、および、タマリンド由来プロアントシアニジン 197.325mgを含む。
【0061】
被検物質として、実施例1、比較例1および2の組成物および対照例1の媒体を準備し、それぞれ以下の量を後述の方法で経口投与した。以下において、カルボキシメチルセルロースナトリウムを適宜「CMC-Na」と略記する。
・対照例1:0.5% CMC-Na水溶液(媒体、以下同じ。)、投与液量5mL/kg
・比較例1:TamaFlexを0.5% CMC-Na水溶液に分散させた組成物、TamaFlex投与量4.2mg/kg/day、投与液量5mL/kg
・比較例2:UC-IIを0.5% CMC-Na水溶液に分散させた組成物、UC-II投与量0.66mg/kg/day、投与液量5mL/kg
・実施例1:TamaFlexおよびUC-IIを0.5% CMC-Na水溶液に分散させた組成物、被検物質投与量 (TamaFlex4.2mg+UC-II0.66mg)/kg/day、投与液量5mL/kg
【0062】
(2)アジュバント
Mycobacterium Tuberculosis H37 Ra, Desiccated (ベクトン・ディッキンソン社製)を適当量秤りとり、流動パラフィン(関東化学社製)を少量ずつ加えながら,メノウ乳棒を用いて懸濁し、5 mg/mLの懸濁液を作製した。調製はアジュバント感作日に行った。
【0063】
(3)使用動物および試験方法
雌性ラット(LEW/SsN Slc、Specific Pathogen Free:SPF、日本エスエルシー社製、5週齢)を7日間予備飼育し、試験に供した。
ラットの飼育条件は、予備飼育期間~試験期間を通して室温22±3℃、相対湿度50±20%の飼育室(照明時間8時~20時)とした。
各群につきラットを10匹用いた。すべての群に固形飼料(ラボMRストック、オリエンタル酵母工業社製)および水道水をいずれも自由に摂取させた。
【0064】
0.1mLのアジュバントを各群のラットの左後肢の足蹠皮下に注射し関節炎を誘発した。誘発日を0日目とした。
【0065】
各群のラットに、誘発日の7日前(-7日目)以降、20日後(20日目)まで、1日1回、各例の投与物質を摂食させた。
炎症の程度の指標として、各群の浮腫率および関節炎を評価した。
【0066】
(浮腫率)
0、5、9および19日目の浮腫率を以下の方法で測定した。
(測定方法および条件)
右足後肢足蹠容積を、ラット用足蹠容積測定装置(PLETHYSMOMETER MK-101CMP、室町機械社製、SOPコード:INS-160-21)を用いて測定した。
また、得られた足蹠容積より、次式により浮腫率を算出した。
浮腫率(%)=(各測定時点の足蹠容積-アジュバント投与前の足蹠容積)/アジュバント投与前の足蹠容積×100
足蹠容積の単位:mL
【0067】
(関節炎スコア)
0、5、9、19および21日目の左前肢の発赤、腫脹および強直の程度を肉眼で観察し、以下に示で0~5点のスコアを付け、10匹の平均点を評点とした。
0:正常
1:赤みが認められる
2:赤みが認められ,かつ軽度な浮腫が認められる
3:浮腫が全体に認められる
4:重度な浮腫が認められる
5:関節,組織の変形が認められる
【0068】
(4)試験結果
浮腫率および関節炎スコアの試験結果をそれぞれ
図1および
図2に示す。
図1および
図2より、対照例1および比較例1に対し、比較例2では19日目以降に緩和な浮腫率抑制効果および緩和な関節炎抑制効果があることを見出した。さらに、実施例1では、非変性II型コラーゲンとクルクミンおよびプロアントシアニジンとを併用することで、これらの相乗効果により、よりいっそう高い浮腫率抑制効果および関節炎抑制効果があることが明らかになった。
【0069】
(試験例2)コラーゲンの定量
本例では、HPLC法により、非変性II型コラーゲンとポリフェノール(クルクミンおよびプロアントシアニジン)とを含有する錠剤中の総コラーゲン量および非変性II型コラーゲン量を測定した。
【0070】
(実施例2)
試験例1と同様に、非変性II型コラーゲンの原料として、上記UC-II(ロンザ社製)を用い、クルクミンおよびプロアントシアニジンの原料として、上記TamaFlex(オクトロール社製)を用いた。なお、本例では、UC-IIおよびTamaFlexは、試験例1の被検物質に用いた原料と異なるロットのものを使用した。
【0071】
具体的には、1錠(291mg/錠)あたり、UC-IIを22mgかつTamaFlexを137.5mg含有する錠剤を常法により作製し、その錠剤中の総コラーゲン量および非変性II型コラーゲン量を測定した。
【0072】
(総コラーゲン量の測定)
(i)以下の手順で各試料の調製を行った。
(測定試料の調製)
実施例2の錠剤をミルで粉砕し、得られた粉砕物を加水分解用試験管に約0.5gを精密に量りとった。これに20%塩酸(0.04% 2-メルカプトエタノール含有)を20mL加えて15分間脱気後、封管し、110℃で24時間加水分解した。冷却後、加水分解液を水で100mLに定容した。この溶液5mLを分取し、減圧下で濃縮乾固後、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)10mLに溶解した。これを孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液を測定試料とした。
【0073】
(標準試料の調製)
HPLC測定の標準物質としてL-ヒドロキシプロリン(≧99.0%、富士フイルム和光純薬社製)を用いた。標準物質を0.01mol/L塩酸に溶解して2.5μmol/mLの標準原液を調製した。この標準原液をクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)で希釈し、既知濃度(0.1μmol/mL)の標準試料を調製した。
【0074】
(ii)ヒドロキシプロリン含量を以下の条件で測定した。
(条件)
測定装置:LA8080高速アミノ酸分析計(日立ハイテクサイエンス社製)
カラム種:日立カスタムイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)、φ4.6mm×60mm(日立ハイテクサイエンス社製)
カラム温度:57℃
反応槽温度:135℃
移動相:タンパク質加水分解物分析法用緩衝液 PH KANTO(PH-1~PH-RG)(関東化学社製)
反応液:ニンヒドリン発色試薬(日立用ニンヒドリン発色溶液キット、富士フイルム和光純薬社製)
流速:移動相0.40mL/min,反応液0.35mL/min
検出系:紫外可視吸光度検出器、440nm
アミノ酸自動分析計タイムプログラム:表1に記載の通りとした。
【0075】
【0076】
標準試料および測定試料のそれぞれ20μLをアミノ酸自動分析計に注入し、各試料のHPLCチャートを取得した。
標準試料のヒドロキシプロリンのピーク保持時間より、測定試料中のヒドロキシプロリンを同定(定性)し、ピーク高さを測定し、ヒドロキシプロリン量を算出した。
具体的には、得られたピーク高さに基づき、以下の式(I)により測定試料中のヒドロキシプロリン含量を求めた。
ヒドロキシプロリン含量(g/100g)=S×131.13×A/B×V×D×100/W×10-6 (I)
S:標準試料の濃度(μmol/mL)
A:測定試料のピーク高さ
B:標準試料のピーク高さ
V:測定試料の定容量(mL)
D:測定試料の希釈倍率
W:検体採取量(g)
131.13:ヒドロキシプロリンの分子量
【0077】
そして、以下の式(III)により試料中の総コラーゲン量を得た。
総コラーゲン量(g/100g)=X×ヒドロキシプロリン含量(g/100g) (III)
X:ヒドロキシプロリン係数=8
【0078】
実施例2の錠剤中のヒドロキシプロリン含量は、式(I)より、0.36g/100gであった。
そして、式(III)より、実施例2の錠剤中の総コラーゲン量は、2.88g/100g、1錠(291mg)あたり8.38mgであった。
【0079】
(非変性II型コラーゲン量の測定)
上述の総コラーゲン量の測定結果を用いて、実施例2の錠剤中の非変性II型コラーゲンの含有量を以下の式(II)により得た。
組成物の単位量あたりの非変性II型コラーゲン含量(mg)=P×X×(Q÷R) (II)
P(mg/単位量mg):組成物の単位量あたりのヒドロキシプロリン量
X:ヒドロキシプロリン係数
Q(%):対照組成物中の非変性II型コラーゲン含量
R(%):対照組成物中の総コラーゲン含量
【0080】
式(II)より、試験例2で用いた錠剤1錠(291mg)中の非変性II型コラーゲン量は1.9mg/291mgであった。
【0081】
ここで、対照組成物としては試験例2における原料であるUC-IIを用いた。
式(II)のRについては、前述の方法で対照組成物中の総コラーゲン含量を測定し、R=35%であった。
また、式(II)のQについては、以下の方法で対照組成物中の非変性II型コラーゲン含量を測定し、Q=8%であった。
【0082】
(対照組成物中の非変性II型コラーゲン含量)
対照組成物中の非変性II型コラーゲン含量を、ELISA法により、Type II Collagen Detection ELISA Kit (Chondrex社製、#6018) を用いて、キット付属のプロトコールに従い測定した。