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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109546
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B25J15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013777
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023013783
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】323001683
【氏名又は名称】アサヒプリテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【弁理士】
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】村上 健也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 鋭児
(72)【発明者】
【氏名】林 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 俊智
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS03
3C707DS02
3C707FS01
3C707FT02
3C707HS14
3C707KS17
3C707KS36
3C707KT01
3C707KT05
3C707LV07
3C707NS06
(57)【要約】
【課題】フランジ部を備えるワークの搬送を効率的で安定的に行うことができるロボットハンドを提供する。
【解決手段】ロボットハンドは、第1の側面及び該第1の側面から外方へ突出する第1のフランジ部を備え、該第1のフランジ部は、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第1の空間を画定するワークを搬送するロボットのロボットアームに接続される。ロボットハンドは、ロボットアームに接続される本体部と、本体部に接続され、第1の側面を吸着するように構成される第1の吸着機構と、本体部に連結され、第1の側面から視て第1の吸着機構と同じ側に配置される第1の引っ掛け部であって、その少なくとも一部が、下方から第1の空間内に差し込まれることにより第1のフランジ部を引っ掛けるように構成される第1の引っ掛け部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側面及び該第1の側面から外方へ突出する第1のフランジ部を備え、該第1のフランジ部は、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第1の空間を画定するワークを搬送するロボットのロボットアームに接続されるロボットハンドであって、
前記ロボットアームに接続される本体部と、
前記本体部に連結され、前記第1の側面を吸着するように構成される第1の吸着機構と、
前記本体部に連結され、前記第1の側面から視て前記第1の吸着機構と同じ側に配置される第1の引っ掛け部であって、その少なくとも一部が、下方から前記第1の空間内に差し込まれることにより前記第1のフランジ部を引っ掛けるように構成される第1の引っ掛け部と
を備える、
ロボットハンド。
【請求項2】
前記本体部に連結され、前記第1の側面から視て前記第1の吸着機構の側方に配置される第2の引っ掛け部
をさらに備え、
前記ワークは、前記第1の側面に隣接する第2の側面及び該第2の側面から外方へ突出する第2のフランジ部をさらに備え、該第2のフランジ部は、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第2の空間を画定し、
前記第2の引っ掛け部は、その少なくとも一部が、下方から前記第2の空間内に差し込まれることにより前記第2のフランジ部を引っ掛けるように構成される、
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記本体部に連結され、前記第1の側面から視て、前記第1の吸着機構を挟んで前記第2の引っ掛け部の反対側に配置される第3の引っ掛け部
をさらに備え、
前記ワークは、前記第1の側面に隣接し、前記第2の側面とは異なる第3の側面及び該第3の側面から外方へ突出する第3のフランジ部をさらに備え、該第3のフランジ部は、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第3の空間を画定し、
前記第3の引っ掛け部は、その少なくとも一部が、下方から前記第3の空間内に差し込まれることにより前記第3のフランジ部を引っ掛けるように構成され、
前記第2の引っ掛け部及び前記第3の引っ掛け部は、1つの前記ワークに対し、いずれか一方が選択的に動作するように構成される、
請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記本体部に連結され、前記ワークの上面に吸着可能に構成される第2の吸着機構
をさらに備える、
請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記第1の吸着機構が前記第1の側面に対向し、前記第2の引っ掛け部及び前記第3の引っ掛け部が動作していない状態において、前記第2の引っ掛け部の下端及び前記第3の引っ掛け部の下端は、前記第1の吸着機構の上端よりも上方に位置する、
請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記第1の引っ掛け部は、前記第1の吸着機構から独立して上下方向に移動可能である、
請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記第1の吸着機構は、前記第1の側面との間に負圧空間を形成することにより前記第1の側面を吸着するように構成される吸着パッドを備え、
前記第1の引っ掛け部は、前記吸着パッドの前端よりも、前記第1の側面から遠くなるように配置される、
請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記第1の吸着機構は、前記第1の側面との間に負圧空間を形成することにより前記第1の側面を吸着するように構成される吸着パッドを備え、
前記第1の引っ掛け部は、前記上下方向における基準位置と、引っ掛け位置との間を移動するように構成され、
前記第1の引っ掛け部は、前記基準位置にあるとき、その少なくとも一部が前記第1の空間内に差し込まれていない状態となり、前記引っ掛け位置にあるとき、その少なくとも一部が前記第1の空間内に差し込まれた状態となるとともに、前記差し込まれた部分の最上端が、前記吸着パッドの最上端よりも上に位置する、
請求項6に記載のロボットハンド。
【請求項9】
ロボットアームと、
前記ロボットアームに接続される請求項1または2に記載のロボットハンドと
を備える、
搬送用ロボット。
【請求項10】
請求項1または2に記載のロボットハンドを用いた前記ワークの搬送方法であって、
前記第1の側面を前記第1の吸着機構により吸着することと、
前記第1の側面が吸着された状態で、前記第1のフランジ部に、前記第1の引っ掛け部を引っ掛けることと
を含み、
前記第1の引っ掛け部を引っ掛けることは、該第1の引っ掛け部の少なくとも一部を、下方から前記第1の空間内に差し込むことを含む、
ワークの搬送方法。
【請求項11】
第1の側面、該第1の側面の両側に隣接する第2の側面及び第3の側面、ならびに前記第1~第3の側面からそれぞれ外方へ突出する第1~第3のフランジ部、を備え、該第1~第3のフランジ部は、それぞれ、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第1~第3の空間を画定するワークを搬送するロボットのロボットアームに接続されるロボットハンドであって、
前記ロボットアームに接続される本体部と、
前記本体部に連結され、前記第1の側面と対向するように配置されたとき、前記第1の側面を吸着するように構成される第1の吸着機構と、
前記本体部に連結され、その少なくとも一部が、下方から前記第2の空間または第3の空間内に差し込まれることにより、前記第2のフランジ部または前記第3のフランジ部を引っ掛けるように構成される引っ掛け部と
を備える、
ロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ロボットのアーム先端に接続されて駆動し、荷を搬送するロボットハンドを開示する。特許文献1に開示されるロボットハンドは、荷の上面を吸着して荷を保持する第1の吸着パッドと、荷の側面を吸着して荷を保持する第2の吸着パッドと、往復動機構に連結されたフォーク爪とを備える。
【0003】
上記ロボットハンドは、荷を把持するとき、第1及び第2吸着パッドの吸着力によって荷を保持しつつ、フォーク爪を荷に向けて前進させ、荷の下方から荷の下面を支持する。一方、上記ロボットハンドは、荷を解放するとき、フォーク爪を荷から離れるように移動させ、荷の下方より後退させた後、第1及び第2吸着パッドによって保持された状態の荷を所定の場所に置き、第1及び第2吸着パッドを退避させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-079546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、上記ロボットハンドは、上記フォーク爪を備えたことにより、ロボット本体を高速動作させても荷の位置ずれや脱落が生じるおそれがない。しかしながら、フォーク爪を荷の下に前進させたり、荷の下から後退させたりする動作が必要であるため、その分の作業時間が多くなってしまう。また、荷をコンベヤ等に置く際にフォーク爪を後退させたとき、荷から吸着パッドが不意に外れると、荷の落下が避けられない。特に、上面及び側面の少なくとも一方に凹凸が形成されている荷については、吸着パッドが不意に外れる可能性が高くなる。
【0006】
このような荷の典型例としては、ペールが挙げられる。ペールは、感染性廃棄物等、内部に種々の内容物が収容される容器である。ペールの上面及び側面は必ずしも平らではなく、しばしば凹凸を有する形状に形成されている。このようなペールは、通常、側面から外方へ突出するフランジ部を備える。ここでいうフランジ部とは、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された空間を画定する。
【0007】
本発明は、フランジ部を備えるワークの搬送を安定的かつ効率的に行うことができるロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点に係るロボットハンドは、第1の側面及び該第1の側面から外方へ突出する第1のフランジ部を備え、該第1のフランジ部は、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第1の空間を画定するワークを搬送するロボットのロボットアームに接続されるロボットハンドであって、本体部と、第1の吸着機構と、第1の引っ掛け部とを備える。本体部は、前記ロボットアームに接続される。第1の吸着機構は、前記本体部に連結され、前記第1の側面を吸着するように構成される。第1の引っ掛け部は、前記本体部に連結され、前記第1の側面から視て前記第1の吸着機構と同じ側に配置される第1の引っ掛け部であって、その少なくとも一部が、下方から前記第1の空間内に差し込まれることにより前記第1のフランジ部を引っ掛けるように構成される。
【0009】
第2観点に係るロボットハンドは、第1観点に係るロボットハンドであって、前記本体部に連結され、前記第1の側面から視て前記第1の吸着機構の側方に配置される第2の引っ掛け部をさらに備える。前記ワークは、前記第1の側面に隣接する第2の側面及び該第2の側面から外方へ突出する第2のフランジ部をさらに備え、該第2のフランジ部は、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第2の空間を画定する。前記第2の引っ掛け部は、その少なくとも一部が、下方から前記第2の空間内に差し込まれることにより前記第2のフランジ部を引っ掛けるように構成される。
【0010】
第3観点に係るロボットハンドは、第2観点に係るロボットハンドであって、前記本体部に連結され、前記第1の側面から視て、前記第1の吸着機構を挟んで前記第2の引っ掛け部の反対側に配置される第3の引っ掛け部をさらに備える。前記ワークは、前記第1の側面に隣接し、前記第2の側面とは異なる第3の側面及び該第3の側面から外方へ突出する第3のフランジ部をさらに備え、該第3のフランジ部は、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第3の空間を画定する。前記第3の引っ掛け部は、その少なくとも一部が、下方から前記第3の空間内に差し込まれることにより前記第3のフランジ部を引っ掛けるように構成され、前記第2の引っ掛け部及び前記第3の引っ掛け部は、1つの前記ワークに対し、いずれか一方が選択的に動作するように構成される。
【0011】
第4観点に係るロボットハンドは、第1観点から第3観点のいずれかに係るロボットハンドであって、前記本体部に連結され、前記ワークの上面に吸着可能に構成される第2の吸着機構をさらに備える。
【0012】
第5観点に係るロボットハンドは、第1観点から第4観点のいずれかに係るロボットハンドであって、前記第1の吸着機構が前記第1の側面に対向し、前記第2の引っ掛け部及び前記第3の引っ掛け部が動作していない状態において、前記第2の引っ掛け部の下端及び前記第3の引っ掛け部の下端は、前記第1の吸着機構の上端よりも上方に位置する。
【0013】
第6観点に係るロボットハンドは、第1観点から第5観点のいずれかに係るロボットハンドであって、前記第1の引っ掛け部は、前記第1の吸着機構から独立して上下方向に移動可能である。
【0014】
第7観点に係るロボットハンドは、第1観点から第6観点のいずれかに係るロボットハンドであって、前記第1の吸着機構は、前記第1の側面との間に負圧空間を形成することにより前記第1の側面を吸着するように構成される吸着パッドを備える。前記第1の引っ掛け部は、前記吸着パッドの前端よりも、前記第1の側面から遠くなるように配置される。
【0015】
第8観点に係るロボットハンドは、第1観点から第7観点のいずれかに係るロボットハンドであって、前記第1の吸着機構は、前記第1の側面との間に負圧空間を形成することにより前記第1の側面を吸着するように構成される吸着パッドを備える。前記第1の引っ掛け部は、前記上下方向における基準位置と、引っ掛け位置との間を移動するように構成される。前記第1の引っ掛け部は、前記基準位置にあるとき、その少なくとも一部が前記第1の空間内に差し込まれていない状態となり、前記引っ掛け位置にあるとき、その少なくとも一部が前記第1の空間内に差し込まれた状態となるとともに、前記差し込まれた部分の最上端が、前記吸着パッドの最上端よりも上に位置する。
【0016】
第9観点に係る搬送用ロボットは、ロボットアームと、前記ロボットアームに接続される第1観点から第8観点のいずれかに係るロボットハンドとを備える。
【0017】
第10観点に係る搬送方法は、第1観点から第8観点のいずれかに係るロボットハンドを用いた前記ワークの搬送方法であって、以下のことを含む。
・前記第1の側面を前記第1の吸着機構により吸着すること。
・前記第1の側面が吸着された状態で、前記第1のフランジ部に、前記第1の引っ掛け部を引っ掛けること。
なお、前記第1の引っ掛け部を引っ掛けることは、該第1の引っ掛け部の少なくとも一部を、下方から前記第1の空間内に差し込むことを含む。
【0018】
第11観点に係るロボットハンドは、第1の側面、該第1の側面の両側に隣接する第2の側面及び第3の側面、ならびに前記第1~第3の側面からそれぞれ外方へ突出する第1~第3のフランジ部、を備え、該第1~第3のフランジ部は、それぞれ、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第1~第3の空間を画定するワークを搬送するロボットのロボットアームに接続されるロボットハンドであって、本体部と、第1の吸着機構と、引っ掛け部とを備える。本体部は、前記ロボットアームに接続される。第1の吸着機構は、前記本体部に連結され、前記第1の側面と対向するように配置されたとき、前記第1の側面を吸着するように構成される。引っ掛け部は、前記本体部に連結され、その少なくとも一部が、下方から前記第2の空間または第3の空間内に差し込まれることにより、前記第2のフランジ部または前記第3のフランジ部を引っ掛けるように構成される。
【0019】
第12観点に係るロボットハンドは、第1観点から第8観点のいずれかに係るロボットハンドであって、前記第1の吸着機構は、前記第1の側面との間に負圧空間を形成することにより前記第1の側面を吸着するように構成される少なくとも2個の吸着パッドを備える。前記少なくとも2個の吸着パッドは、前記第1の側面側から視て左右方向に並ぶように配置される。前記第1の引っ掛け部は、前記少なくとも2個の吸着パッドの間に配置される。
【0020】
第13観点に係るロボットハンドは、第1観点から第8観点のいずれかに係るロボットハンドであって、前記第1の引っ掛け部は、少なくとも一部が前記第1の空間内に差し込まれる板状の支持部を有する。
【0021】
第14観点に係るロボットハンドは、第13観点に係るロボットハンドであって、前記支持部は、上端に向かうほど縮幅するテーパー部を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フランジ部を有するワークの搬送を安定的かつ効率的に行うことができるロボットハンド及び搬送用ロボット、ならびに当該ロボットハンドを用いたワークの搬送方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第一実施形態に係るロボットハンドの上面図。
図2A】ワークの斜視図。
図2B】ワークの2B-2B断面図。
図2C】フランジ部付近の縦断面図。
図3図1のロボットハンドの斜視図。
図4図1のロボットハンドの別の斜視図。
図5図1のロボットハンドの電気的構成を示すブロック図。
図6図1の第1の吸着機構を正面から視た図。
図7】第一実施形態に係る搬送方法の工程を示すフローチャート。
図8A】ワークの上面を吸着する状態を示す図。
図8B】ワークの側面を吸着する状態を示す図。
図8C】引っ掛け部により、フランジ部が引っ掛けられた状態を示す図。
図8D図8Cの状態におけるフランジ部付近の断面図。
図9】第二実施形態に係るロボットハンドの斜視図。
図10図9のロボットハンドの正面図。
図11】第二実施形態に係るロボットハンドの電気的構成を示すブロック図。
図12】ワークの配置例を示す図。
図13】第二実施形態に係る搬送方法の工程を示すフローチャート。
図14A図6の第1の吸着機構と引っ掛け部との位置関係を示す模式図。
図14B】変形例に係る第1の吸着機構と引っ掛け部との位置関係を示す模式図。
図14C】変形例に係る第1の吸着機構と引っ掛け部との位置関係を示す模式図。
図14D】変形例に係る第1の吸着機構と引っ掛け部との位置関係を示す模式図。
図14E】変形例に係る第1の吸着機構と引っ掛け部との位置関係を示す模式図。
図14F】変形例に係る第1の吸着機構と引っ掛け部との位置関係を示す模式図。
図14G】変形例に係る第1の吸着機構と引っ掛け部との位置関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明のいくつかの実施形態に係るロボットハンド、及びこのロボットハンドを用いて実行される搬送方法について説明する。ロボットハンドは、一般的な産業用ロボットのロボットアームの先端に接続され、当該産業用ロボットと協働することで、搬送用ロボットを構成する。産業用ロボットの例としては、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット、直交ロボット、パラレルリンクロボット等が挙げられる。ロボットアームは、上記産業用ロボットにおいて、ロボットベースを基端とし、伸縮、屈伸、上下移動、左右移動もしくは旋回の動作またはこられの複合動作を行うアームの部分を指す。
【0025】
<1-1.全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係るロボットハンド1の上面図である。ロボットハンド1は、本実施形態では、図示しない公知の垂直多関節ロボット(以下、単に「ロボット」とも称する)に接続される。ロボットハンド1は、上記ロボットのロボットアームの先端に接続される本体部2を備える。ロボットアームの先端に接続された状態のロボットハンド1は、XYZ座標系内でロボットアームと一体的に運動することができる。なお、ロボットアームと本体部2との接続は、接続部20を介して、ボルト止め等、公知の方法で行うことができる。本実施形態に係る接続部20は、本体部2に含まれる板状部材に形成された複数の貫通孔であり、ボルト等の締結具が取り付けられるように構成される。
【0026】
XYZ座標系は、上記ロボットのロボットベースの中心点を原点とする3軸直交座標系であり、例えば、図1のとおりに定義される。図1の定義では、Y軸がロボットの基本姿勢におけるロボットアームの伸長方向であり、Z軸が鉛直方向であり、X軸がY軸及びX軸に直交する方向である。
【0027】
本実施形態の搬送用ロボットは、ロボットハンド1により所定の位置(以下、初期位置とも称する)に配置されたワーク7を把持し、これを別の位置(以下、目標位置とも称する)にまで搬送した後、ロボットハンド1により目標位置の載置面にワーク7を載置するように構成される。ロボットハンド1の各部位は、ワーク7を適切に効率よく搬送すべく、ロボットアームと一体的に運動するのに加え、後述するxyz局所座標系内での運動を行うように構成される。以下、ワーク7について説明した後、ロボットハンド1の各部位の構成について説明する。
【0028】
<1-2.ワーク>
図2Aはワーク7の全体斜視図であり、図2Bはワーク7の2B-2B断面図である。ワーク7は、典型的にはペールである。しかしながら、後述するように、本実施形態に係るロボットハンド1は、段ボール箱等、ペール以外の荷も搬送可能である。ペールの種類は特に限定されないが、本実施形態に係るロボットハンド1は、特に、感染性廃棄物を収容し、これを安全に搬送するためのメディカルペールについて好ましく適用することができる。ペールを構成する材料も特に限定されないが、例えば合成樹脂、金属、及びこれらの組み合わせとすることができる。以下、ワーク7がペールであり、主として合成樹脂で構成される場合を例に説明する。
【0029】
図2A及び2Bに示すように、本実施形態のワーク7は、上方が開口した容器本体70と、容器本体70の開口を覆う蓋体71とを備える蓋付き容器である。ワーク7の形状は、これに限られないが、例えば平面視略矩形であり、全体として略角筒形状を有する。
【0030】
蓋体71は、天面部710と、蓋縁部711とを有する。天面部710は、ワーク7において、平面視略矩形の上面を構成する部位である。天面部710の中央には、凹凸を有する凹凸部712が形成されており、ワーク7の使用者が蓋体71を把持しやすいよう、つまみとして機能するようになっている。蓋縁部711は、天面部710の周縁から上方に立ち上がる部位である。蓋体71の上に別のワーク7を重ねて置いたとき、上側のワーク7の底面部700が蓋縁部711の内側に嵌まり込み、安定し易いようになっている。なお、ワーク7が上記メディカルペールである場合、蓋体71は、図示しないが、一度容器本体70に対して本装着されると、容器本体70から容易に取り外せないように強固に嵌まり込むよう構成される。
【0031】
容器本体70は、平面視略矩形の底面部700と、底面部700の周縁から上方に立ち上がる、略角筒状の側面部701とを有する。底面部700と側面部701とは、容器本体70の内部空間を画定する。側面部701の外面は、4つの側面702a~dを構成する。側面702a及び側面702cは互いに対向し、側面702b及び側面702dは互いに対向する。言い換えると、側面702a及び側面702b、側面702b及び側面702c、側面702c及び側面702d、側面702d及び側面702aは、コーナーを形成しつつ互いに隣接する。
【0032】
側面702a~dのうち、後述するロボットハンド1,1Aとの配置関係において、引っ掛け部3及び第1の吸着機構4に対向する側面は、本発明における第1の側面に該当する。第1の側面が側面702aであるとき、側面702b及び側面702dのうち一方が第2の側面に該当し、他方が第3の側面に該当する。第1の側面が側面702bであるとき、側面702a及び側面702cのうち一方が第2の側面に該当し、他方が第3の側面に該当する。第1の側面が側面702cであるとき、側面702b及び側面702dのうち一方が第2の側面に該当し、他方が第3の側面に該当する。第1の側面が側面702dであるとき、側面702c及び側面702aのうち一方が第2の側面に該当し、他方が第3の側面に該当する。図2Bに示すように、側面部701の上端は、容器本体70の開口を画定する。以下、側面部701の上端を、容器本体70の開口を画定する周縁701aとも称する。
【0033】
容器本体70は、側面702a~dから外方に向かって突出するフランジ部703をさらに有する。フランジ部703は、本実施形態では、側面部701の上端部全周を連続して取り巻くように形成される。以下、フランジ部703のうち、側面702a~dのそれぞれから外方に突出する部分を、フランジ部703a~dと区別して称することがある。フランジ部703a~dは、それぞれ、側面702a~dの上部に隣接する空間S11~S14であって、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された空間S11~S14を画定する(図2B及び図2C参照)。より詳細には、フランジ部703a~dは、それぞれ、周縁701aから外方に向かって突出するフランジ天面部7030と、フランジ天面部7030の周縁から下方に向かって延びるフランジ垂下部7031とを有する。側面702a~d(の上端部)と、フランジ天面部7030と、フランジ垂下部7031とにより、下方が開放された空間S11~S14が画定される。
【0034】
フランジ部703a~dのうち、後述するロボットハンド1,1Aとの配置関係において、引っ掛け部3及び第1の吸着機構4に対向するフランジ部は、本発明における第1のフランジ部に該当し、第1のフランジ部が確定する空間は、第1の空間に該当する。第1のフランジ部がフランジ部703aであるとき、フランジ部703b及びフランジ部703dのうち一方が第2のフランジ部に該当し、他方が第3のフランジ部に該当する。このとき、空間S11が第1の空間に該当し、空間S12及び空間S14のうち一方が第2の空間に該当し、他方が第3の空間に該当する。第1のフランジ部がフランジ部703bであるとき、フランジ部703a及びフランジ部703cのうち一方が第2のフランジ部に該当し、他方が第3のフランジ部に該当する。このとき、空間S12が第1の空間に該当し、空間S11及び空間S13のうち一方が第2の空間に該当し、他方が第3の空間に該当する。第1のフランジ部がフランジ部703cであるとき、フランジ部703b及びフランジ部703dのうち一方が第2のフランジ部に該当し、他方が第3のフランジ部に該当する。このとき、空間S13が第1の空間に該当し、空間S12及び空間S14のうち一方が第2の空間に該当し、他方が第3の空間に該当する。第1のフランジ部がフランジ部703dであるとき、フランジ部703c及びフランジ部703aのうち一方が第2のフランジ部に該当し、他方が第3のフランジ部に該当する。このとき、空間S14が第1の空間に該当し、空間S13及び空間S11のうち一方が第2の空間に該当し、他方が第3の空間に該当する。
【0035】
周縁701aを基端とするフランジ天面部7030の突出長さは、これに限定されないが、通常は5mm~15mm程度である。また、フランジ垂下部7031の鉛直方向の長さは、これに限定されないが、通常は5mm~35mm程度である。
【0036】
容器本体70は、一対の把手部704をさらに有する。把手部704は、使用者がワーク7を両手で保持し易いよう、対向する一対の側面(本実施形態では、側面702a及び側面702c)上に形成される。図2Cは、把手部704付近の断面図である。把手部704は、フランジ部703a及びフランジ部703cのフランジ垂下部7031の下端から段状に延びる延出部7040と、延出部7040の両側において上下方向に延びる一対の側壁部7041とを有する。延出部7040と一対の側壁部7041とで画定される空間S2は、下方から指先を差し込める程度の大きさとなっている。従って、側面702aまたは側面702cから、延出部7040の下端部までの距離は、10mm~20mm程度であり、フランジ垂下部7031の下端から延出部7040までの距離は、8mm~15mm程度である。また、一対の側壁部7041の間の距離は、80mm~120mm程度である。
【0037】
<1-3.第一実施形態に係るロボットハンド>
図3及び図4は、ロボットハンド1をそれぞれ別の方向から視た斜視図であり、図5は、ロボットハンド1の電気的構成を示すブロック図である。図3~5に示すように、ロボットハンド1は、上述した本体部2に加え、引っ掛け部3、第1の吸着機構4、第2の吸着機構5、及び制御ユニット6を備える。引っ掛け部3、第1の吸着機構4、第2の吸着機構5及び制御ユニット6は、それぞれ、本体部2に連結されている。
【0038】
引っ掛け部3及び第1の吸着機構4は、フレーム部材33及びリニアガイド34を介して本体部2に連結されており、駆動源43によって駆動され、図3に示すxyz座標系内で運動することができる。駆動源43は、モータ等、公知の駆動源を用いることができる。フレーム部材33は、本体部2の下部に連結される部分と、z軸方向に垂下する部分とを含む枠状の部材であり、後述するように、引っ掛け部3、第1の吸着機構4、及びエアシリンダ31が固定される。これにより、フレーム部材33、引っ掛け部3、第1の吸着機構4及びエアシリンダ31は、一体的に運動することができる。
【0039】
ここで、xyz座標系は、接続部20の中心点を原点とする局所座標系であり、図3に示すとおりに定義される3軸直交座標系である。すなわち、x軸は接続部20から制御ユニット6へと向かう方向に沿って延びる軸であり、y軸は接続部20から第2の吸着機構5へと向かう方向に沿って延びる軸であり、z軸は接続部20から第1の吸着機構4へと向かう方向に沿って延びる軸である。
【0040】
ロボットハンド1は、通常、z軸が鉛直方向に沿い、x軸及びy軸で定義されるxy平面が水平となるような姿勢でワーク7の把持動作及び解放動作を行う。従って、ロボットハンド1がこれらの動作を行っているとき、z軸方向は鉛直方向(上下方向)、y軸は前後方向、x軸は左右方向と、それぞれ言い換えることもできる。この場合、上下、前後及び左右は、図3に示すように定義されるものとする。
【0041】
[第1の吸着機構]
図6は、第1の吸着機構4付近をy軸方向(正面)から視た図である。第1の吸着機構4は、ワーク7の側面702a~dのいずれか1つの面を吸着するように構成される。図6に示すように、第1の吸着機構4は、4つの吸着パッド40と、2つの固定部材41とを有する。固定部材41には、それぞれ、2つの吸着パッド40が、z軸方向に沿って配列される。2つの固定部材41は、それぞれx軸方向に沿って配列され、これにより、4つの吸着パッド40がxz平面上に2次元的に配列される。
【0042】
固定部材41は、それぞれフレーム部材33を介してリニアガイド34に連結されており、上記駆動源に駆動されて、双方が同期してy軸方向に往復動するように構成される。つまり、第1の吸着機構4は、ワーク7を把持及び解放する際、ワーク7に対して前後方向に移動可能である。第1の吸着機構4(あるいは引っ掛け部3)のy軸方向の移動量は、変位センサ44(図5参照)によって検知され、後述する制御部61に通知される。これにより、搬送対象となっているワーク7の一側面に対し、吸着パッド40の適切な位置決めが可能となる。変位センサ44は、移動量を検出できるものならどのようなものであってもよい。
【0043】
吸着パッド40は、これに限られないが、ゴム等の材料から構成される蛇腹式の真空パッドであり、中心のホース42を介して図示しない真空化装置に接続される。吸着パッド40の前端(周縁)が、全周にわたってワーク7の側面に接触した状態で、上記真空化装置による真空引きを行うと、吸着パッド40と当該側面との間に負圧空間が形成され、これによりワーク7の側面が吸着される。吸着力の強さは、ワーク7のサイズや重量に応じ、適宜調節されてもよい。吸着パッド40による吸着は、ワーク7の材質、種類によらず適用することができる。
【0044】
なお、本実施形態の吸着パッド40は、真空引きの程度に応じて、段階的に平たく潰れるように構成される。すなわち、第1の吸着機構4は、吸着するワーク7の側面上の位置において、4つの吸着パッドそれぞれの潰れ量を調節することができるように構成される。これにより、ワーク7の湾曲した側面、凹凸が形成された側面、及び鉛直方向に対して傾斜した側面等に対しても、吸着力を確実に発揮することができる。
【0045】
[引っ掛け部]
引っ掛け部3は、2つの固定部材41の間に配置される部位であり、その少なくとも一部が下方からワーク7の空間S11~S14内に差し込まれ、フランジ部703を引っ掛けて、ワーク7の保持力を強化する。引っ掛け部3は、第1の吸着機構4と同様、フレーム部材33を介してリニアガイド34に連結されており、第1の吸着機構4と一体的にy軸方向に往復動するように構成される。これに加えて、引っ掛け部3は、エアシリンダ31にも連結されており、第1の吸着機構4から独立してz軸方向に往復動するように構成される。つまり、引っ掛け部3は、ワーク7を把持及び解放する際、第1の吸着機構4から独立して上下方向に移動可能であり、上下方向における基準位置と、引っ掛け位置との間を移動することができる。
【0046】
引っ掛け部3は、ワーク7の吸着対象となる側面に対向するように配置された状態で空間S11~S14内に差し込まれるべく、板状の支持部を有することが好ましい。本実施形態の引っ掛け部3は、全体が板状であり、z軸方向の両端部のうち、より本体部2に近い方の端部が空間S11~S14内に差し込まれるように構成される。すなわち、ロボットハンド1が通常動作する姿勢において、鉛直方向上側に位置する先端部30が空間S11~S14内に差し込まれる。本実施形態に係る先端部30は、本発明における板状の支持部の一例である。引っ掛け部3が基準位置にあるとき、先端部30は、空間S11~S14内に差し込まれていない状態となり、先端部30の最上端は、第1の吸着機構4の吸着パッド40の最上端(最も上に配置される吸着パッド40うち、最上の位置)よりも下に位置する。引っ掛け部3が引っ掛け位置にあるとき、先端部30は、空間S11~S14内に差し込まれた状態となり、第1の吸着機構4の吸着パッド40の最上端よりも上に位置する。引っ掛け部3は、その厚みがフランジ天面部7030の突出長さ以下となるように構成され、具体的には、厚みは、2mm以上、10mm以下であることが好ましい。
【0047】
さらに、引っ掛け部3は、先端部30の最大幅(x軸方向に沿った最大長さ)が、一対の側壁部7041の間の距離以下となるように構成され、具体的には、最大幅は、80mm以上、110mm以下であることが好ましく、80mm以上、90mm以下であることがより好ましい。先端部30の最大幅を上記範囲とすることにより、フランジ部703のうち、把手部704が形成されている箇所に対しても、他の箇所と変わらずにフランジ部703を引っ掛けることができる。つまり、支持部は、対向するワーク7の側面に関わらず、フランジ部703を引っ掛けることができる。加えて、先端部30の最大幅を上記範囲とすることにより、ロボットハンド1のサイズを過剰に増加させることなく両側に吸着パッド40及び固定部材41を配置することができ、ロボットハンド1の把持力を安定させることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る引っ掛け部3は、先端部30が、上端に向かうほど縮幅するテーパー状となるように形成される。すなわち、本実施形態に係る先端部30は、本発明におけるテーパー部の一例でもある。係るテーパー部が形成されることにより、一対の側壁部7041の間を介して、先端部30を空間S11~S14内に差し込むことが容易となる。テーパーの形状は特に限定されないが、本実施形態のテーパーは、引っ掛け部3の材料となる矩形状の平板の上端角部分を、それぞれ縦横10mm程度除去すると形成される形状となっている。
【0049】
引っ掛け部3を構成する材料は特に限定されないが、厚みを上記範囲としつつ、内容物入りのワーク7の重量によるたわみを抑制するためには、ステンレス鋼等の金属から構成されることが好ましい。
【0050】
再び図3を参照して、引っ掛け部3は、y軸方向において、吸着パッド40の前端よりも後側に配置されることが好ましい。すなわち、(ワーク7の種類に関わらず)吸着対象となるワーク7の側面に対して、吸着パッド40の前端の方が引っ掛け部3よりも近い位置関係となることが好ましい。さらに、吸着パッド40が上記側面に対して吸着力を発揮する程度に上記側面に接近した状態においても、引っ掛け部3は、y軸方向において、吸着パッド40の前端よりも後側に位置することが好ましい。第1の吸着機構4と引っ掛け部3との位置関係をこのように構成することにより、引っ掛け部3が吸着パッド40の前端とワーク7の側面との間に存在して、第1の吸着機構4による吸着の妨げとなる事態が回避される。
【0051】
[第2の吸着機構]
第2の吸着機構5は、ワーク7の上面を吸着するように構成される。第2の吸着機構5は、これに限られないが、一対のスポンジ式真空グリッパで構成される。より具体的には、図4に示すように、第2の吸着機構5は、真空化装置を内蔵する吸着本体部51の下面に、ゴムや合成樹脂等の発泡体から構成されるスポンジパッド50が取り付けられた公知の真空グリッパとすることができる。スポンジパッド50には、厚み方向にこれを貫通する吸込孔が複数形成されており、吸着本体部51の真空化装置により、吸込孔を介して真空引きが行われる。これにより、スポンジパッド50とワーク7の上面との間に負圧空間が形成され、ワーク7の上面が吸着される。スポンジパッド50は、ワーク7の天面部の凹凸に追従できるため、ワーク7が上記ペールである場合にも十分な吸着力を発揮することができる。
【0052】
第2の吸着機構5の吸着力の強さは、ワーク7のサイズや重量に応じ、適宜調節されてもよい。スポンジパッド50による吸着は、ワーク7の種類によらず適用することができる。
【0053】
[制御ユニット]
制御ユニット6は、図5に示すように、カメラ60と、制御部61と、通信部62と、表示部63とを有し、これらは本体部2の側方に固定された筐体に格納されている。カメラ60、通信部62及び表示部63はバス線を介して制御部61に接続されている。通信部62は、ロボットハンド1が接続されるロボット側の制御部や、図示しない外部コントローラ等、外部装置との通信を行う。表示部63は、筐体の外部に向けて各種情報を表示する。表示部63は、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、及び液晶素子等から構成することができる。
【0054】
カメラ60は、イメージセンサを有し、画像データを生成するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。図4に示すように、カメラ60は、そのレンズが、制御ユニット6を格納する筐体の底面に形成された貫通孔から露出するように、筐体内に配置される。これにより、カメラ60は、筐体内に収容されながら、外部の様子を撮像することができる。カメラ60により生成された画像データは、制御部61にリアルタイムで送信される。制御部61は、カメラ60から送信された画像を画像処理することにより、搬送対象となるワーク7の決定及び初期位置の検出を行う。
【0055】
制御部61は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を有し、ROMに格納されたプログラムを読み出して実行することにより、ロボットと協働して、後述する一連の搬送動作を行う。なお、搬送用ロボットの動作場面において、ワーク7の初期位置及び目標位置は予め定められている。このため、ワーク7を初期位置から目標位置まで搬送する一連の搬送動作は、ロボットアームの動作を含め、ティーチング(教示作業)により、予め制御部61に学習される。
【0056】
制御部61は、エアシリンダ31、駆動源43、第1の吸着機構4の真空化装置、及び第2の吸着機構5の真空化装置と電気的に接続され、これらの動作を制御する。また、制御部61は、変位センサ44とも通信可能に接続されており、変位センサ44からの信号を適時に取得する。
【0057】
<1-4.搬送用ロボットの動作>
以下、本実施形態に係るロボットハンド1を含む搬送用ロボットにより実行される、ワーク7の搬送方法について説明する。以下に説明する例では、ワーク7は、感染性廃棄物を収容したメディカルペールである。ワーク7は、例えば病院等の施設において使用され、使用後は、蓋体71が容器本体70に対して本装着された状態で、所定の回収場所へ集められる。集められたワーク7は、廃棄処分施設に移送されるべく、順次輸送車両に積み込まれる。このとき、ワーク7の一部が破損する、蓋体71が容器本体70から脱落する等して感染性廃棄物が漏洩し、人がこれに接触してしまうリスクがある。しかしながら、搬送用ロボットが上記積み込み作業を行うことにより、このリスクが大幅に低減される。加えて、ワーク7の重量は30kg程度に達することもあり、これらが2段以上に積み上げられることも多いため、人の労働負担を大幅に軽減することができる。
【0058】
なお、上記のことは、輸送車両から廃棄処分施設へのワーク7の積み下ろし作業についても当てはまる。輸送車両から積み下ろされたワーク7は、通常、廃棄処分施設のベルトコンベヤ等に直接載置され、内容物とともに焼却炉に送られ、処分される。従って、上記積み下ろし作業にも、ロボットハンド1を含む搬送用ロボットは好適に使用される。
【0059】
図7は、積み込み作業を例とした搬送方法の工程を示すフローチャートである。図7に示す搬送方法は、搬送用ロボット、複数のワーク7、及び搬送車両(の積み込み部)が所定の位置に位置決めされた状態でスタートする。
【0060】
ステップST1では、カメラ60による撮像が実行される。ロボットは、ロボットアームを動作させることにより、カメラ60のレンズが複数のワーク7を捉えるように、XYZ座標内におけるロボットハンド1の位置及び姿勢を調整する。この状態において、制御部61は、カメラ60にワーク7の回収場所の撮像を実行するように指示する。この時点では、フレーム部材33は、y軸方向の基準位置にセットされ、引っ掛け部3は、z軸方向の基準位置にセットされた状態である。
【0061】
ステップST2では、搬送対象となるワーク7の特定及びワーク7の初期位置の検出が行われる。制御部61は、ステップST1でカメラ60により生成された画像データを取得し、取得した画像データに基づいて、搬送対象となるワーク7を決定し、XYZ座標内におけるその初期位置を検出する。制御部61は、検出された初期位置を示す情報を、ロボットの制御部に通知する。
【0062】
ステップST3では、ロボットハンド1の位置決め及び姿勢決めが行われる。ロボットは、ステップST2で通知された初期位置を示す情報に基づいて、ロボットアームを動作させ、ロボットハンド1を搬送対象のワーク7に近づける。このとき、ロボットハンド1は、引っ掛け部3及び第1の吸着機構4の吸着パッド40がワーク7の側面の1つ(例えば、側面702b)に対向し、第2の吸着機構5のスポンジパッド50がワーク7の上面に接触するような姿勢に調整される(図8A参照)。
【0063】
ステップST4では、第2の吸着機構5による吸着が実行される。制御部61は、第2の吸着機構5に対し、吸着を実行するように指示する。これにより、第2の吸着機構5の真空化装置が真空引きを行い、スポンジパッド50にワーク7の上面が吸着する。
【0064】
ステップST5では、フレーム部材33の位置決めが実行される。制御部61は、ステップST2で検出した初期位置に基づいて、駆動源43に対し、y軸方向に所定の距離だけフレーム部材33を移動させるように指示する。これにより、吸着パッド40の前端、つまり周縁がワーク7の側面702bに接触する程度にまで、フレーム部材33がワーク7に対して前進する。
【0065】
ステップST6では、第1の吸着機構4による吸着が実行される。制御部61は、第1の吸着機構4に対し、吸着を実行するように指示する。これにより、第1の吸着機構4の真空化装置が真空引きを行い、吸着パッド40にワーク7の側面702bが吸着する(図8B参照)。
【0066】
ステップST7では、引っ掛け部3による引っ掛けが実行される。制御部61は、エアシリンダ31に対し、引っ掛け部3をz軸方向の上方へ移動させるように、つまり、引っ掛け部3を基準位置から引っ掛け位置まで移動させるように指示する。これにより、引っ掛け部3が上昇し、先端部30が空間S11~S14に下方から差し込まれ、フランジ部703bが引っ掛かった状態となる(図8C参照)。なお、複数のワーク7の形状が同一である場合、また形状が異なっていてもフランジ垂下部7031の長さが共通である場合、z軸方向への移動距離は、これに応じた規定値とすることができる。より具体的には、z軸方向への移動距離は、図8Dに示すように、引っ掛け部3の先端がフランジ天面部7030の下面に当接するまでの距離とすることができる。ステップST4からステップST7が実行されると、ロボットハンド1がワーク7を確実に把持した状態となる。
【0067】
ステップST8では、搬送が行われる。ロボットは、ロボットアームを動作させ、ロボットハンド1がワーク7を把持した状態を維持しつつ、ロボットハンド1を目標位置の上方まで移動させる。
【0068】
ステップST9では、ワーク7の位置決めが行われる。ロボットは、ロボットアームを動作させ、ワーク7の底面部700が目標位置の載置面に接触するように、ロボットハンド1を位置決めする。このとき、制御部61は、カメラ60に目標位置及びその付近の撮像を実行させ、生成された画像データに基づいてワーク7の位置決めを行うためのデータを生成してもよい。
【0069】
ステップST10では、引っ掛け部3の退避が行われる。制御部61は、エアシリンダ31に対し、引っ掛け部3をz軸方向の下方へ移動させ、基準位置に戻すように指示する。これにより、先端部30が空間S11~S14から退避して基準位置まで下降し、フランジ部703bへの引っ掛けが解除される。
【0070】
ステップST11では、側面702bの吸着停止と、第1の吸着機構4の退避とが行われる。制御部61は、第1の吸着機構4に対し、吸着を停止するように指示する。これにより、吸着パッド40からワーク7の側面702bが解放される。また、第1の吸着機構4を含むフレーム部材33が、y軸方向の基準位置まで後退する。
【0071】
ステップST12では、上面の吸着停止が行われる。制御部61は、第2の吸着機構5に対し、吸着を停止するように指示する。これにより、スポンジパッド50からワーク7の上面が解放される。ステップST12が完了すると、ワーク7はロボットハンド1から解放された状態となる。
【0072】
ステップST13では、制御部61が、直前のステップST12で解放したワーク7が、回収場所における最後のワーク7か否かを判定する。この判定には、例えばステップST1で生成された画像データを使用することができる。ステップST13で回収場所における最後のワーク7と判定されるとき(YES)、一連の搬送工程は終了する。ステップST13で回収場所における最後のワーク7ではないと判定されるとき(NO)、ステップST1が再び実行される。その後、ステップST2~ステップST13が繰り返される。
【0073】
<1-5.特徴>
上記実施形態に係るロボットハンド1では、第1の吸着機構4と搬送対象となるワーク7に対して同じ側に設置され、第1の吸着機構4と一体的にワーク7に近接する引っ掛け部3により、フランジ部703の引っ掛けが行われる。このため、ロボットハンド1は、ワーク7を一度持ち上げ、下方からこれを支持する支持部材を備える必要がない。従って、ワーク7を持ち上げた後、支持部材を運動させる工程を実行する必要がなく、搬送時間の短縮を図ることができる。ワーク7を載置する際も、ワーク7を持ち上げた状態で支持部材を退避させる工程を実行する必要がないため、さらなる搬送時間の短縮が図られる、すなわち単位時間あたりの処理能力の向上を図ることができる。加えて、ワーク7を載置面に載置した状態で上面及び側面の吸着を停止することができるので、ワーク7を落下させる可能性が低減される。
【0074】
また、ロボットハンド1は、引っ掛け部3を備えたことにより、より安定してワーク7を把持することができ、上面及び側面に対する吸着機構の吸着力が低下した場合でも、ワーク7を落下させにくい。このため、内容物が感染リスクを有するものである場合には特に好適に使用される。また、内容物に関わらず、ワーク7の側面や上面に凹凸があり、吸着力が発揮されにくい場合であっても、安定してワーク7を把持することができる。
【0075】
上記実施形態に係るロボットハンド1では、先端部30の最大幅が、ワーク7の把手部704の幅(一対の側壁部7041の間の距離)以下となるように構成される。これにより、引っ掛け部3とワーク7の対向する側面が、把手部704が形成されている面であるか否かに関わらず、引っ掛け部3による引っ掛けを実行することができる。
【0076】
上記実施形態に係るロボットハンド1では、引っ掛け部3は、ワーク7の側面に対向したとき、吸着パッド40の前端よりもワーク7の側面から遠くなるように配置される。これにより、引っ掛け部3の存在が第1の吸着機構4による吸着を妨げることがないので、段ボール箱等、フランジ部703が形成されていないワークの搬送にも適用することができる。
【0077】
<2-1.第二実施形態に係るロボットハンド>
図9は、本発明の第二実施形態に係るロボットハンド1Aの斜視図であり、図10は、ロボットハンド1Aの正面図である。ロボットハンド1Aは、ロボットハンド1と同様に、本体部2を備え、接続部20を介して公知のロボットに接続され、上記ペール等のワーク7を搬送するように構成される。すなわち、ロボットハンド1Aの全体構成及び搬送対象となるワーク7については、ロボットハンド1について説明した事項と同様のことが該当する。以下、ロボットハンド1Aの構成について説明するが、ロボットハンド1と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
ロボットハンド1Aは、ロボットハンド1と同様の引っ掛け部3に加え、さらなる引っ掛け部8及び引っ掛け部9を備える点でロボットハンド1と相違する。引っ掛け部8及び引っ掛け部9は、y軸方向(あるいは、ワーク7の側面702a~dのうち、第1の側面に該当する側面)から視て、第1の吸着機構4の側方にそれぞれ配置される。言い換えると、引っ掛け部8及び引っ掛け部9は、y軸方向から視て、第1の吸着機構4を挟んで互いの反対側に位置するように配置される。ロボットハンド1Aにおいては、引っ掛け部3は、本発明の第1の引っ掛け部に該当し、引っ掛け部8及び引っ掛け部9は、本発明の第2の引っ掛け部及び第3の引っ掛け部に該当する。なお、第2の引っ掛け部に該当するのは、引っ掛け部8及び引っ掛け部9のいずれであってもよい。第3の引っ掛け部についても同様である。
【0079】
本実施形態に係る引っ掛け部8及び引っ掛け部9は、それぞれ、L字状に曲げられた板材で構成される。これにより、引っ掛け部8及び引っ掛け部9は、それぞれ、z軸に直交する板状の固定部分と、固定部分から立ち上がる板状の支持部80及び支持部90とを有する。支持部80及び支持部90は、その主面(最も大きい面積を有する面)が、それぞれx軸に直交するように配置される。そして、ワーク7に対し、第2の側面と第3の側面とを定義すると、引っ掛け部8及び引っ掛け部9のうちいずれかにおいて、その少なくとも一部が下方から第2または第3の空間内に差し込まれることにより、第2または第3のフランジ部を引っ掛ける。このため、支持部80及び支持部90の好ましい厚み及び好ましい最大幅については、引っ掛け部3の好ましい厚み及び好ましい最大幅と同様の範囲が当てはまる。また、引っ掛け部8及び引っ掛け部9を構成する材料についても、引っ掛け部3について説明と同様のことが当てはまる。
【0080】
引っ掛け部8は、固定部分において縦移動機構82に固定され、縦移動機構82は、横移動機構81を介して本体部2に連結される。引っ掛け部9は、固定部分において縦移動機構92に固定され、縦移動機構92は、横移動機構91を介して本体部2に連結される。横移動機構81及び横移動機構91は、それぞれ、図示しない駆動機構により、本体部2に対してx軸方向(図10の左右方向)に往復動する。より詳細には、横移動機構81は、図10に示す位置(基準位置)と、基準位置より右側にある最大到達位置との間を移動することができる。同様に、横移動機構91は、図10に示す位置(基準位置)と、基準位置より左側にある最大到達位置との間を横移動機構81とは独立して移動することができる。最大到達位置は、横移動機構81及び横移動機構91の可動域に応じて適宜定まる位置である。縦移動機構82及び引っ掛け部8は、横移動機構81の移動に連動してx軸方向に往復動する。縦移動機構92及び引っ掛け部9は、横移動機構91の移動に連動してx軸方向に往復動する。
【0081】
縦移動機構82及び縦移動機構92は、それぞれ、図示しない駆動機構により、横移動機構81及び横移動機構91から独立してz軸方向(図10の上下方向)に往復動する。より詳細には、縦移動機構82及び縦移動機構92は、図10に示す位置(基準位置)と、基準位置よりも下側にある最下位置との間を互いに独立して移動することができる。最下位置は、縦移動機構82及び縦移動機構92の可動域に応じて適宜定まる位置である。以上により、引っ掛け部8及び引っ掛け部9は、本体部2に対し、互いに独立してx軸方向及びz軸方向に往復動することができる。なお、ロボットハンド1が、第1の吸着機構4が第1の側面に対向するような姿勢となっており、縦移動機構82及び縦移動機構92が基準位置にあるとき、引っ掛け部8の下端及び引っ掛け部9の下端は、第1の吸着機構4の上端よりも上方に位置する。
【0082】
図11は、ロボットハンド1Aの電気的構成を示すブロック図である。ロボットハンド1Aの制御ユニット6Aは、ロボットハンド1の制御ユニット6と共通の構成を有するが、横移動機構81及び横移動機構91、ならびに縦移動機構82及び縦移動機構92に電気的に接続され、これらの移動機構の動作を制御する点で相違する。本実施形態に係る制御ユニット6Aは、搬送対象となる1つのワーク7に対して、横移動機構81及び縦移動機構82、または横移動機構91及び縦移動機構92のいずれかの組を動作させる。つまり、引っ掛け部8及び引っ掛け部9は、いずれか一方が1つのワーク7に対して選択的に動作し、同じワーク7のフランジ部703をともに引っ掛けるような動作はしない。その理由を以下で説明する。
【0083】
<2-2.搬送用ロボットの動作>
図12は、ロボットハンド1Aが搬送動作を実行する場面における、複数のワーク7の配置例を説明する図である。図12の例では、複数のワーク7が、ワークブロックB1及びワークブロックB2を形成している。ワークブロックB1及びワークブロックB2では、それぞれ、複数のワーク7が上面視において複数の行と列を形成するように地上に2次元配列され、さらに、上下方向にも積み重ねられている。ロボットハンド1Aを含む搬送用ロボットは、ワークブロックB1及びワークブロックB2の間のスペースP1に配置される。ワーク7を搬送させる目標位置は、ワーク7a~7dの手前側にあるものとする。
【0084】
この例では、ロボットは、ワークブロックB1及びワークブロックB2から交互に1つのワーク7を選択し、搬送するように構成される。選択されるワーク7は、天面部710及び側面702a~702dのうち2面が他のワーク7と隣接しておらず、外部空間に対面しているワーク7(図12の例でいうと、ワーク7aまたはワーク7b)である。
【0085】
搬送用ロボットは、まず第1の吸着機構4がワーク7aの側面702aに対向するようにロボットハンド1Aの姿勢を決定し、続いてロボットハンド1Aにワーク7aを把持させる。このとき、ロボットハンド1Aは、引っ掛け部3をフランジ部703aに引っ掛け、引っ掛け部9をフランジ部703bに引っ掛ける。その後、ロボットハンド1Aは、ワーク7aを目標位置で解放する。次に、搬送用ロボットは、第1の吸着機構4がワーク7bの側面702aに対向するようにロボットハンド1Aの姿勢を決定し、続いてロボットハンド1Aにワーク7bを把持させる。このとき、ロボットハンド1Aは、引っ掛け部3をフランジ部703aに引っ掛け、引っ掛け部8をフランジ部703dに引っ掛ける。その後、ロボットハンド1Aは、ワーク7bを所定の位置で解放する。次に、搬送用ロボットは、ロボットハンド1Aにワーク7cを把持させる。このとき、ロボットハンド1Aは、ワーク7aに対して行ったのと同様の上記動作をワーク7cについても行う。さらに、搬送用ロボットは、ロボットハンド1Aにワーク7dを把持させる。このとき、ロボットハンド1Aは、ワーク7bに対して行ったのと同様の上記動作をワーク7dについても行う。以降、搬送用ロボットは同様の手順を繰り返し、両側のワークブロックB1及びワークブロックB2からワーク7を交互に選択し、選択した順に搬送する。なお、ワーク7dの後に搬送されるワーク7は、ワーク7aと隣接していたワーク7のいずれであってもよい。
【0086】
以上のように、複数のワーク7が互いに隣接するように配列されているとき、搬送対象となるワーク7においては、基本的に隣接する2つの側面から突出する2つのフランジ部を引っ掛けることしかできない。このため、同一のワーク7に対して動作するのは、引っ掛け部3と、引っ掛け部8または引っ掛け部9のいずれかとなる。以上が、引っ掛け部8及び引っ掛け部9が選択的に動作する理由である。なお、図12に示すのはあくまで一例であり、複数のワーク7はどのように配列されてもよいし、ワーク7の搬送順序も上述の例に特に限定されない。また、配列される複数のワーク7において、側面702a~dの向きが揃えられておらず、互いに異なっていたとしても、ロボットハンド1Aの上記動作に特に支障はない。
【0087】
図13は、ロボットハンド1Aを含むロボットにより実行される、搬送方法の工程を示すフローチャートである。以下、図12のように、ロボットが複数のワーク7で形成される、2つのワークブロックの間に配置されている場合を例に、ワーク7の搬送方法について説明する。
【0088】
ステップST21は、ステップST1と同様であり、カメラ60による撮像、及びロボットハンド1Aの位置及び姿勢の調整が行われる。ステップST21では、ステップST1と同様に、ロボットハンド1Aの引っ掛け部3は、z軸方向の基準位置にセットされた状態である。横移動機構81及び横移動機構91が、それぞれx軸方向の基準位置にセットされ、縦移動機構82及び縦移動機構92が、それぞれz軸方向の基準位置にセットされた状態である。このとき、引っ掛け部8及び引っ掛け部9の下端は、それぞれ、第2の吸着機構5のスポンジパッド50の下端よりもz軸方向の本体部2側に位置し、以降のステップST21~ST27において、複数のワーク7と干渉しないようになっている。
【0089】
ステップST22では、ステップST2と同様にして、搬送対象となるワーク7の特定及びワーク7の初期位置の検出が行われる。ここで搬送対象として特定されるワーク7は、上述したように、現時点のワークブロックにおいて、天面部710及び2つの側面が外部空間に対面しているワーク7である。ここで、制御部61は、特定した搬送対象となるワーク7に応じて、後のステップST28で、引っ掛け部8及び引っ掛け部9のいずれを動作させるかを決定する。
【0090】
ステップST23~ステップST26は、それぞれ、既に説明したステップST3~ステップST6と同様であるため、再度の説明を省略する。なお、ステップST25では、ステップST26で吸着が実行されたときに、上面視において、引っ掛け部8及び引っ掛け部9が、ワーク7の上面のy軸方向中央付近に位置するように、フレーム部材33の位置決めが実行される。また、ステップST26で第1の吸着機構4により吸着されたワーク7の側面は、本発明の第1の側面に相当する。
【0091】
ステップST27では、ステップST7と同様にして、引っ掛け部3による第1のフランジ部の引っ掛け(1回目の引っ掛け)が実行される。
【0092】
ステップST28では、引っ掛け部8または引っ掛け部9による、第2または第3のフランジ部の引っ掛け(2回目の引っ掛け)が実行される。例えば、同じループにおけるステップST22において、引っ掛け部8を動作させることが決定された場合、制御部61は、まず横移動機構81を基準位置からx軸方向に沿って右に移動させる。横移動機構81の移動距離は、ワーク7の寸法に応じた規定値とすることができ、ここでは、上面視において、引っ掛け部8の左右方向の内端が、ワーク7における外端(通常は、第2または第3のフランジ部の外端に一致する)よりも右に位置するように、制御部61が横移動機構81を移動させる。次に、制御部61は、縦移動機構82を基準位置からz軸方向に沿って下に移動させる。縦移動機構82の移動距離は、ワーク7の寸法に応じた規定値とすることができ、ここでは、引っ掛け部8の支持部80の上端が、把手部704の下端よりも下に位置するように、制御部61が縦移動機構82を移動させる。
【0093】
続いて、制御部61は、横移動機構81をx軸方向に沿って左に移動させ、支持部80の主面を第2または第3の側面に接近させる。横移動機構81の移動距離は、ワーク7の寸法に応じた規定値とすることができ、ここでは、支持部80の上端が、第2または第3の空間の直下に位置するように、制御部61が横移動機構81を移動させる。次に、制御部61は、縦移動機構82をz軸方向に沿って上に移動させる。縦移動機構82の移動距離は、フランジ部703の寸法に応じた規定値とすることができ、より具体的には、支持部80の上端が、フランジ天面部7030の下面に当接するまでの距離とすることができる。これにより、引っ掛け部8が上昇し、支持部80の少なくとも一部が第2または第3の空間に下方から差し込まれることにより、第2または第3のフランジ部が引っ掛けられた状態となる。
【0094】
以上が引っ掛け部8による2回目の引っ掛けの手順であるが、引っ掛け部9による2回目の引っ掛けも、同様の要領で行うことができる。つまり、制御部61は、まず横移動機構91を基準位置からx軸方向に沿って左に移動させ、続いて縦移動機構92を基準位置からz軸方向に沿って下に移動させる。さらに、制御部61は、横移動機構91をx軸方向に沿って右に移動させ、支持部90の主面を第2または第3の側面に接近させ、支持部90の上端が、第2または第3の空間の直下に位置するようにする。次に、制御部61は、縦移動機構92をz軸方向に沿って上に移動させる。これにより、引っ掛け部9が上昇し、支持部90の少なくとも一部が第2または第3の空間に下方から差し込まれることにより、第2または第3のフランジ部が引っ掛けられた状態となる。
【0095】
次のステップST29及びステップST30では、ステップST8及びステップST9と同様、ワーク7の目標位置までの搬送及び位置決めが行われる。
【0096】
ステップST31では、引っ掛け部3、及び、引っ掛け部8または引っ掛け部9の退避が行われる。引っ掛け部3の退避手順は、ステップST10と同様である。引っ掛け部8による第2または第3のフランジ部の引っ掛けが行われているとき、制御部61は、まず、縦移動機構82をz軸方向に沿って下に移動させ、支持部80の上端が把手部704の下端よりも下に位置するようにする。これにより、第2または第3のフランジ部への引っ掛けが解除された状態となる。次に、制御部61は、横移動機構81をx軸方向に沿って右に移動させ、支持部80の主面を第2または第3の側面から遠ざける。続いて、制御部61は、縦移動機構82をz軸方向に沿って上に移動させ、z軸方向の基準位置に復帰させる。続いて、制御部61は、横移動機構81をx軸方向に沿って左に移動させ、横移動機構81をx軸方向の基準位置に復帰させる。
【0097】
以上の手順により、引っ掛け部8の退避が完了するが、引っ掛け部9の退避も、同様の要領で行うことができる。つまり、制御部61は、まず縦移動機構92をz軸方向に沿って下に移動させ、第2または第3のフランジ部への引っ掛けを解除する。次に、制御部61は、横移動機構91をx軸方向に沿って左に移動させ、支持部90の主面を第2または第3の側面から遠ざける。続いて、制御部61は、縦移動機構92をz軸方向に沿って上に移動させ、z軸方向の基準位置に復帰させる。続いて、制御部61は、横移動機構91をx軸方向に沿って右に移動させ、横移動機構91をx軸方向の基準位置に復帰させる。このようにして引っ掛け部9の退避が完了する。なお、引っ掛け部3の退避、及び、引っ掛け部8または引っ掛け部9の退避は、いずれが先行して行われてもよく、同時並行して行われてもよい。
【0098】
ステップST32及びステップST33では、ステップST11及びステップST12と同様、第1の吸着機構4の吸着停止、及び第2の吸着機構5の吸着停止が行われる。これにより、ワーク7がロボットハンド1Aから解放された状態となる。
【0099】
ステップST34では、制御部61が、直前に解放したワーク7が、当該ワーク7が属していたワークブロックにおける最後のワーク7か否かを判定する。ステップST34でワークブロックにおける最後のワーク7と判定されるとき(YES)、次のステップST35が実行される。最後のワーク7ではないと判定されるとき(NO)、他方のワークブロックについて、ステップST21が再び実行される。その後、ステップST22~ステップST34が繰り返される。
【0100】
ステップST35では、制御部61が、ステップST13と同様に、直前に解放したワーク7が、回収場所における最後のワーク7か否かを判定する。つまり、直前に解放したワーク7が属していない方のワークブロックにおいても、最後のワーク7が搬送済みか否かを判定する。ステップST35で回収場所における最後のワーク7と判定されるとき(YES)、一連の搬送工程は終了する。ステップST35で回収場所における最後のワーク7ではないと判定されるとき(NO)、ステップST21が再び実行される。その後、ステップST22~ステップST34が繰り返される。
【0101】
<2-3.特徴>
上記実施形態に係るロボットハンド1Aは、上述したロボットハンド1と同様の利点を有する。加えて、ロボットハンド1Aは、引っ掛け部8及び引っ掛け部9がさらに備わっていることにより、フランジ部703を有するワーク7をより安定的に把持しながら移動させることができる。また、引っ掛け部8及び引っ掛け部9は、それぞれ独立して動作することができる。これにより、ロボットハンド1Aに対するワーク7の配列方向によらず、搬送対象のワーク7のフランジ部703の2か所を引っ掛けることができるとともに、一方の引っ掛け部が他のワーク7と干渉し、ワークブロックを崩してしまう懸念がない。
【0102】
<3.変形例>
以上、いくつかの実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0103】
(1)引っ掛け部3の形状は、上記実施形態のものに限られない。例えば、先端部30に加えて、またはこれに代えて、任意の厚みに変えられるようなアタッチメント部品を設け、フランジ天面部7030の突出長さに応じて、先端部30の厚みを調整できる構成としてもよい。先端部30の形状は適宜変更されてもよく、より具体的には、先端部30のテーパーは省略されてもよいし、正面視においてU字形やY字形となるように構成されてもよい。先端部30としては、強度さえ担保できれば板状である必要はなく、フック状、あるいは棒状のものを用いても良い。引っ掛け部3の全体的な形状も上記実施形態のものに限られず、例えば上下方向に延びる形状でなくてもよい。また、フランジ天面部7030の下面との摩擦を増し、さらに引っ掛けの安定性を高めるべく、引っ掛け部3の先端には適宜凹凸が形成されてもよい。以上のことは、引っ掛け部8及び引っ掛け部9についても同様である。さらに、引っ掛け部3は、z軸方向への往復動に代えてまたは加えて、x軸に平行な軸周りを回動することでフランジ部703を引っ掛けたり、引っ掛けを解除したりするように構成することもできる。同様に、引っ掛け部8及び引っ掛け部9の少なくとも1つは、z軸方向への往復動に代えてまたは加えて、y軸に平行な軸周りを回動することでフランジ部703を引っ掛けたり、引っ掛けを解除したりするように構成することもできる。
【0104】
(2)吸着パッド40の配置及び数は、上記実施形態のものに限られず、適宜変更することができる。ただし、充分な吸着力を発揮する観点からは、吸着パッド40の数は少なくとも2つ以上であることが好ましく、これらは上記実施形態のように、y軸方向から視て(吸着対象の側面から視て)左右方向に配置されることがより好ましい。また、吸着パッド40自体の種類も変更することができ、第2の吸着機構5と同様、スポンジパッドとしてもよい。反対に、第2の吸着機構5の構成も適宜変更することができ、スポンジパッド50を他の種類の吸着パッドとしてもよい。
【0105】
(3)(1)及び(2)に加えて、引っ掛け部3と第1の吸着機構4との位置関係を含む構成は、上記実施形態のものに限られず、適宜変更することができる。図14Aは、図6に示す引っ掛け部3、固定部材41、及び吸着パッド40の構成及び位置関係を模式的に表す図であるが、このような構成及び位置関係は、例えば図14B~14Gに示すように、また、これら以外にも変更することができる。図14Bは、吸着パッド40の数等が変更された例を示す。図14C図14Eは、y軸方向から視て、引っ掛け部3と吸着パッド40が上下方向に並んで配置された例を示す。すなわち、引っ掛け部3のx軸方向の位置は、吸着パッド40(2つの固定部材41)の間に限られない。図14Fは、引っ掛け部3と吸着パッド40が上下方向及び左右方向に配置される例を示す。図14Gは、ロボットハンド1が、引っ掛け部3を2つ以上備える例を示す。上記のいずれの場合においても、引っ掛け部3が引っ掛け位置にあるとき、空間S11~S14のいずれかに差し込まれた部分の最上端が、吸着パッド40の最上端よりも上に位置するように構成されることが好ましい。
【0106】
(4)エアシリンダ31は、モータ等、別の駆動源とすることもできる。なお、ステップST7及びステップST27における引っ掛け部3のz軸方向の移動距離は、規定値ではなく、それぞれステップST1及びステップST21で撮像された画像データに基づいた演算等、他の方法に基づいてその都度決定されてもよい。また、引っ掛け部3のz軸方向の移動距離は、センサにより制御部61に監視されてもよい。さらに、センサにより引っ掛け部3の先端がフランジ天面部7030の下面に接触したことを検知し、そこで引っ掛け部3の移動を停止する構成としてもよい。
【0107】
引っ掛け部3と同様に、ステップST28における引っ掛け部8または引っ掛け部9(より正確には、横移動機構81または横移動機構91)のx軸方向の移動距離は、規定値ではなく、ステップST21で撮像された画像データに基づいた演算等、他の方法に基づいてその都度決定されてもよい。また、ステップST28における引っ掛け部8または引っ掛け部9(より正確には、縦移動機構82または縦移動機構92)のz軸方向の移動距離は、規定値ではなく、ステップST21で撮像された画像データに基づいた演算等、他の方法に基づいてその都度決定されてもよい。上記移動距離は、適宜センサにより制御部61に監視されてもよい。また、制御部61は、搬送対象のワーク7が他のワーク7と隣接していない場合等、状況に応じて引っ掛け部8及び引っ掛け部9を1つのワーク7に対して協働させてもよい。
【0108】
(5)フレーム部材33は、x軸方向及びz軸方向の少なくとも一方に移動可能に構成されてもよい。同様に、第2の吸着機構5は、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の少なくとも一方に移動可能に構成されてもよい。横移動機構81、横移動機構91、縦移動機構82及び縦移動機構92のうち少なくとも1つは、y軸方向に移動可能に構成されてもよい。
【0109】
(6)変位センサ44、通信部62、及び表示部63の少なくとも1つは、省略されてもよい。また、第2の吸着機構5は、省略されてもよい。さらに、ロボットハンド1Aにおいて、引っ掛け部8及び引っ掛け部9のいずれか一方は、省略されてもよい。
【0110】
(7)制御ユニット6及び制御ユニット6Aの構成は、上記実施形態のものに限られず、適宜変更することができる。例えば、制御ユニット6及び制御ユニット6Aの各要素は、1つの筐体内にまとめられていなくてもよく、それぞれの配置も適宜変更することができる。また、制御部61は、CPUに加えてまたはこれに代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。また例えば、カメラ60は、ロボットハンド1及びロボットハンド1Aとは別体として構成されてもよい。
【0111】
(8)XYZ座標系及びxyz座標系の定義は、それぞれ上記実施形態のものに限られない。また、全体座標系及び局所座標系について、3軸直交座標系以外の座標系を使用してもよい。
【0112】
(9)フランジ部703を有するワーク7は、上記実施形態のような形状に限られない。また、ワーク7を構成する材質も、合成樹脂以外であってもよい。
【0113】
(10)上記実施形態に係る搬送方法の工程を実行する順序は、適宜変更することができる。例えば、ステップST5~ステップST7の後にステップST4が実行されてもよい。同様に、ステップST25~ステップST28の後にステップST24が実行されてもよいし、ステップST27の前、あるいはステップST27と並行してステップST28が実行されてもよい。また、ステップST10~ステップST11の前にステップST12が実行されてもよい。同様に、ステップST31~ステップST32の前にステップS33が実行されてもよい。また、ステップST13、ステップST34及びステップS35のうち少なくとも1つは、省略されてもよい。
【0114】
(11)ロボットハンド1及びロボットハンド1Aは、ワーク7を一度持ち上げ、下方からこれを支持する支持部材をさらに備えていてもよい。支持部材は、例えば公知のフォーク爪のような構成とすることができる。制御部61は、このような支持部材を、個々のワーク7の重量等に応じて、必要と判断される場合に補助的に動作させてもよい。このようにすることで、一連の搬送工程全体としては上述した搬送時間の短縮を図ることができる。また、支持部材を退避させる際も、少なくとも1つの引っ掛け部によりワーク7を支えることができるため、ワーク7が落下するおそれを低減することができる。
【0115】
(12)ロボットハンド1Aから引っ掛け部3を省略し、本体部2、第1の吸着機構4、及び引っ掛け部8または引っ掛け部9を少なくとも備えるロボットハンドを構成してもよい。このロボットハンドは、第1の側面、該第1の側面の両側に隣接する第2の側面及び第3の側面、ならびに前記第1~第3の側面からそれぞれ外方へ突出する第1~第3のフランジ部、を備え、該第1~第3のフランジ部は、それぞれ、上方及び側方が閉塞されるとともに、下方が開放された第1~第3の空間を画定するワーク7に適用することができる。このロボットハンドにおいて、第1の吸着機構4は、第1の側面を吸着するように構成される。そして、引っ掛け部8または引っ掛け部9は、その少なくとも一部が、下方から第2または第3の空間内に差し込まれることにより、第2または第3のフランジ部を引っ掛けるように構成される。すなわち、ロボットハンドは、第1のフランジ部を引っ掛けるように構成される引っ掛け部を備えずに、第2のフランジ部及び第3のフランジ部の少なくとも一方を引っ掛けるように構成される引っ掛け部を備えることができる。
【符号の説明】
【0116】
1,1A ロボットハンド
2 本体部
3 引っ掛け部
4 第1の吸着機構
5 第2の吸着機構
7 ワーク
8 引っ掛け部
9 引っ掛け部
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G