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特開2024-109557選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターを使用して抗腫瘍応答を刺激する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109557
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターを使用して抗腫瘍応答を刺激する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20240806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K31/437
A61P35/00
A61P43/00 121
C07D471/04 105P
A61K31/337
A61K45/00
A61P37/04
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024062166
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2022548708の分割
【原出願日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】62/972,442
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】503345477
【氏名又は名称】コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリーンシュタイン、アンドリュー イー.
(72)【発明者】
【氏名】グラウアー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シェパード、ステイシー ピーコック
(57)【要約】
【課題】固形腫瘍を有するがん患者において免疫機能を改善する方法が提供される。
【解決手段】固形腫瘍を有するがん患者において免疫機能を改善する方法であって、有効量のがん処置及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SGRM)の投与を前記がん患者に行うことを含み、これにより、前記患者の免疫機能が改善される、前記方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍を有するがん患者において免疫機能を改善する方法であって、有効量のがん処置及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SGRM)の投与を前記がん患者に行うことを含み、これにより、前記患者の免疫機能が改善される、前記方法。
【請求項2】
前記の免疫機能の改善が、前記の固形腫瘍を有する患者において抗がん効果を生じさせるのに有効であり、これにより、腫瘍成長を遅延させる、腫瘍成長を停止させる、腫瘍量を低減させる、又はこれらの組み合わせを成す、請求項1に記載の免疫機能を改善する方法。
【請求項3】
前記の改善された免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの投与前のCD8+T細胞活性化と比較して増大したCD8+T細胞活性化を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記の改善された免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの投与前の炎症促進性サイトカイン分泌と比較して増大した炎症促進性サイトカイン分泌を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記の改善された免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの投与前のTNFα分泌と比較して増大したTNFα分泌を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記の改善された免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの投与前のIFNγ分泌と比較して増大したIFNγ分泌を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日又はこれを超える日数から選択される日数にわたる投与の後に改善される、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非ステロイド性SGRMが、下記式を有するヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む化合物、又はその塩若しくは異性体である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法:
【化1】

式中
は、5~6個の環員を有し、且つ、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環であり、前記ヘテロアリール環はそれぞれ独立してR1aから選択される1~4個の基で置換されていてもよく;
1aはそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、及びヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで前記ヘテロシクロアルキル環及びヘテロアリール環は、5~6個の環員、及びそれぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を有し;
はそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル-C1-6アルコキシ、CN、OH、NR2a2b、C(O)R2a、C(O)OR2a、C(O)NR2a2b、SR2a、S(O)R2a、S(O)2a、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され、ここで前記ヘテロシクロアルキル基は1~4個のR2c基で置換されていてもよく;
あるいは、同じ炭素に結合した2個のR基が組み合わされてオキソ基(=O)を形成しており;
あるいは、2個のR基が組み合わされて、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子とを有する、ヘテロシクロアルキル環を形成しており、ここで前記ヘテロシクロアルキル環は1~3個のR2d基で置換されていてもよく;
2a及びR2bはそれぞれ独立して水素及びC1-6アルキルからなる群より選択され;
2cはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、CN、及びNR2a2bからなる群より選択され;
2dはそれぞれ独立して水素及びC1-6アルキルからなる群より選択され、あるいは、同じ環原子に結合した2個のR2d基が組み合わされて(=O)を形成しており;
はそれぞれ1~4個のR3a基で置換されていてもよいフェニル及びピリジルからなる群より選択され;
3aはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、及びC1-6ハロアルキルからなる群より選択され;
下付き文字nは0~3の整数である。
【請求項9】
前記非ステロイド性SGRMが、レラコリラントと称される(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、請求項8に記載の方法。
【化2】
【請求項10】
前記非ステロイド性SGRMが、CORT122928と称される(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,-7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、請求項8に記載の方法。
【化3】
【請求項11】
前記非ステロイド性SGRMが、CORT113176と称される(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロP,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、請求項8に記載の方法。
【化4】
【請求項12】
前記非ステロイド性SGRMが、下記式を有するオクタヒドロ縮合アザデカリン構造化合物、又はその塩若しくは異性体である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【化5】

式中、
は、それぞれ独立してR1aから選択される1~4個の基で置換されていてもよい、ピリジン及びチアゾールからなる群より選択され、
1aはそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC3-8シクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、フェニル、ピリジン、ピラゾール、及びトリアゾールからなる群より選択され;
はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、及び-CNからなる群より選択され;
3aは、Fであり;
下付き文字nは、0~3の整数である。
【請求項13】
前記非ステロイド性SGRMが、エキシコリラントと称される((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、請求項12に記載の方法。
【化6】
【請求項14】
前記非ステロイド性SGRMが、「CORT125329」と称される((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、請求項12に記載の方法。
【化7】
【請求項15】
前記がん処置が、化学療法剤を投与することを含む、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記化学療法剤が、タキサン、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗剤、分裂抑制剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化学療法剤が、タキサンである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記化学療法剤が、ナブ-パクリタキセルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がん処置が、免疫療法剤を投与することを含む、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫療法剤が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択されるタンパク質標的を対象とする抗体チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記がん処置が、がん放射線療法、成長因子阻害剤の投与、及び抗血管新生因子の投与のうちの1又は複数を含む、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターが、選択的グルココルチコイド受容体アンタゴニストである、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コルチゾール、内因性グルココルチコイド受容体(GR)アゴニストは、免疫系を含めた多くの身体系に広範な影響を及ぼす。コルチゾール過剰は、クッシング症候群、高血糖、高血圧、ホルモン障害、精神的障害、並びに他の疾患及び障害を含めた多くの障害に関連し、これらを引き起こす。しかし、コルチゾール活性は、正常な生理的条件下であっても明白である。朝の血清コルチゾールの正常な範囲である10~20ug/dL又は276~552nMは、GRリガンド結合ドメインに関するその生化学的Kを超えるものである。朝のコルチゾール値が高いと、体が夜から日中への推移の準備をし、覚醒状態を増大させ、確実に、外的因子に対する免疫反応が緩和されることになる。コルチゾール作用は、GRへの結合によって開始する。コルチゾールに結合しているGRは、受容体のアゴニズム、細胞質NFκBシグナル伝達の転写抑制、核輸送、及び広範な免疫抑制転写プログラムの転写促進を結果として生じさせる。
【背景技術】
【0002】
グルココルチコイド受容体(GR)媒介シグナル伝達経路は、免疫系の異なる構成要素に関与する動的な生物学的効果を有し、それらのインビボ効果は予測不可能である。例えば、グルココルチコイドは、免疫抑制効果-例えば、炎症促進性サイトカインの抑制、抗炎症性サイトカインの促進、樹状細胞の阻害、ナチュラルキラー細胞の抑制、T調節性細胞の促進、及びT細胞アポトーシスの誘発-並びに免疫向上効果の両方を有することが報告されている。Hinrichs J.Immunother.2005:28(6):517-524を参照されたい。がん細胞に対するGR媒介シグナル伝達経路の効果も同様に捉え難い。GRシグナル伝達経路の活性化は、悪性リンパがんなどのある特定のタイプのがん細胞においてアポトーシスを誘発するとされている。Schlossmacher,J.Endocrino.(2011)を参照されたい。しかし、他の及び反対の効果も報告されている(例えば、米国特許第9149485号を参照されたい)。
【0003】
近年、免疫チェックポイントシグナル伝達経路を標的とする免疫療法が、がんを処置するのに有効であることが示されている。これらの経路は、免疫応答を抑制し、且つ、自己寛容を維持し、末梢組織における生理的免疫応答の持続期間及び振幅を調節し、副次的な組織損傷を最小にするのに重要である。腫瘍細胞は、免疫チェックポイントシグナル伝達経路を活性化して、腫瘍組織に対する免疫応答の有効性を減少させ得るとされている。これらの免疫チェックポイントシグナル伝達経路の多くは、免疫応答に関与する細胞、例えば、T細胞の表面に存在するチェックポイントタンパク質とこれらのリガンドとの間の相互作用によって開始されるため、薬剤によって容易に遮断され得、又は、チェックポイントタンパク質若しくはリガンド若しくは受容体の組み換え型によって調節され得る。チェックポイントタンパク質によって誘発される免疫抑制経路を遮断する剤は、一般的にチェックポイント阻害剤と称され、いくつかが市販されている。細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4、又はCTLA-4)抗体は、チェックポイントタンパク質CTLA4によって免疫抑制経路を遮断するものであり、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得たこのクラスの免疫治療薬のうちの最初のものであった。さらなる免疫チェックポイントタンパク質、例えば、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)の遮断薬による臨床所見は、持続的な臨床応答を生じる可能性を有する抗腫瘍免疫を向上させる広範且つ多様な機会を示す。
【0004】
GRは、大部分のヒト細胞において発現され、免疫細胞が特に豊富である。免疫系に対する内因性コルチゾールの効果及びかかる効果の程度、並びに、抗腫瘍免疫応答を含めた免疫応答に及ぼすこれらの可能性のある結果は、充分に理解されていない。したがって、コルチゾール過剰に関係する障害のための、免疫系に対するコルチゾールの効果のための、及び免疫関係の処置の向上のための改善された方法及び処置が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
出願人は、固形腫瘍を有するがん患者において免疫機能を改善する方法であって、有効量のがん処置及び有効量の非ステロイド性グルココルチコイド受容体(GR)調節剤(GRM)、好ましくは選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SGRM)、の投与を前記がん患者に行うことを含み、これにより、前記患者の免疫機能が改善される、前記方法を本明細書において開示する。いくつかの実施形態において、この免疫機能の改善は、前記の固形腫瘍を有する患者において抗がん効果を生じさせるのに有効であり、これにより、腫瘍成長の遅延、腫瘍成長の停止、腫瘍量(tumor load)の低減、又はこれらの組み合わせを成す。いくつかの実施形態において、改善された免疫機能は、前記非ステロイド性SGRMの投与前のCD8+T細胞活性化と比較して増大したCD8+T細胞活性化を含み;改善された免疫機能は、前記非ステロイド性SGRMの投与前の炎症促進性サイトカイン分泌と比較して増大した炎症促進性サイトカイン分泌を含み;改善された免疫機能は、前記非ステロイド性SGRMの投与前のTNFα分泌と比較して増大した腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)分泌を含み;改善された免疫機能は、前記非ステロイド性SGRMの投与前のIFNγ分泌と比較して増大したインターフェロンガンマIFNγ分泌を含み;また、これらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、免疫機能は、2~3日~数日の前記非ステロイド性GRM又はSGRMの投与(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、又はこれを超える日数にわたる投与)の後に改善される。
【0006】
いくつかの場合において、前記GRM(例えば、SGRM)は、縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド性化合物であり、ここで前記縮合アザデカリン構造は、米国特許第7,928,237号及び米国特許第8,461,172号に記載及び開示されている通りである。いくつかの場合において、前記GRM(例えば、SGRM)は、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド性化合物であり、ここで前記ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造は、米国特許第8,859,774号に記載及び開示されている通りである。いくつかの場合において、前記GRM(例えば、SGRM)は、オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド性化合物であり、ここで前記オクタヒドロ縮合アザデカリン構造は、米国特許第10,047,082号に記載及び開示されている通りである。
【0007】
いくつかの場合において、前記GRM(例えば、SGRM、例えば、非ステロイド性SGRM)は、経口投与される。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記GRMは、がん処置によって投与される。いくつかの実施形態において、前記がん処置は、がん放射線療法、成長因子阻害剤の投与、及び抗血管新生因子の投与のうちの1又は複数を含む。いくつかの実施形態において、前記がん処置は、化学療法剤又は抗体チェックポイント阻害剤の投与を含む。いくつかの実施形態において、前記GRMは、少なくとも1の化学療法剤によって投与される。いくつかの実施形態において、前記化学療法剤は、タキサン、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗剤、分裂抑制剤及びこれらの組み合わせから選択される剤である。例えば、いくつかの実施形態において、前記化学療法剤は、ナブ-パクリタキセルなどのタキサンである。いくつかの実施形態において、前記抗体チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択されるタンパク質標的を対象としている。
【0009】
免疫抑制における内因性コルチゾールの役割をより良好に理解するために、本発明者らは、正常なGC活性の生理的効果を反復するインビトロ、インビボ、及びエキソビボ系に、選択的GRアンタゴニストレラコリラントを適用した。これらのデータは、GRに拮抗することにより、ICI療法の利益を促進し得ることを示す。他の改善及び利点を本明細書において考察する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、グルココルチコイド受容体(GR)発現レベル(「GR H-スコア」)が、腫瘍及び免疫浸潤と相関することを示す。CD3+T細胞浸潤は、黒色腫及びTNBC腫瘍におけるGR発現と相関した。
【0011】
図2図2は、GR発現が、PD-L1発現と相関することを示す。
【0012】
図3A図3Aは、GR発現が、CD8+T細胞及び調節性T細胞(Treg)と正相関することを示す。
【0013】
図3B図3Bは、GR発現が、T1 T細胞と負相関し、T2 T細胞と正相関することを示す。
【0014】
図4図4は、生理学的レベルのコルチゾールの存在下でのレラコリラントによるT細胞活性化の回復を示す。CD8+細胞におけるCD137(aka41-BB)の発現は、コルチゾールによって低減し、レラコリラントによって回復た。
【0015】
図5図5は、フィトヘムアグルチニン(PHA)による刺激後の、コルチゾールによるCD3+細胞表面受容体の抑制、及びレラコリラントによるCD3+細胞表面受容体の回復を示す。
【0016】
図6A図6Aは、フィトヘムアグルチニン(PHA)による刺激後の、コルチゾールによるサイトカイン及びケモカインの抑制、並びに、レラコリラントによるサイトカイン/ケモカインレベルの回復を示す。生理学的レベルのコルチゾールは、サイトカイン及びケモカインを抑制し、この抑制をレラコリラントによって反転させた。
【0017】
図6B図6Bは、αCD3+IL-12による刺激後の、コルチゾールによるサイトカイン及びケモカインの抑制、並びに、レラコリラントによるサイトカイン/ケモカインレベルの回復を示す。生理学的レベルのコルチゾールは、サイトカイン及びケモカインを抑制し、この抑制をレラコリラントによって反転させた。
【0018】
図7図7は、レラコリラントが、EG7マウスモデルにおいて抗PD1アンタゴニスト抗体(RPM1-14)への応答を促進することを示す。RMP1-14及びレラコリラントの組み合わせをEG7腫瘍モデルにおいて評価した。レラコリラントは、このモデルにおける抗PD1抗体の効能を有意に増大させた。
【0019】
図8図8は、EG7モデルにおいてレラコリラントが抗PD1抗体の作用を向上させることを実証する、さらなるデータを提供する。
【0020】
図9図9は、EG7マウスモデルにおける血清IL-10に対する対照(群1)と比較したレラコリラント単独(群3)の効果を示す。
【0021】
図10図10は、レラコリラント+ナブパクリタキセルの組み合わせの処置により、固形腫瘍を有する患者において遺伝子発現を抑制したことを示す。抑制された遺伝子には、IL8(CXCL8)、IDO1、及びEP4(PTGER4)が含まれていた(n=46)。
【0022】
図11図11は、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルによる処置に対しての、完全寛解(CR)した患者における、選択されたバイオマーカーに対する効果の概要を示す。この患者は、好中球対リンパ球比(NLR)の減少、並びに、CD4+細胞、CD8+細胞、CD3+T細胞の変化、ptgs2及びdusp1mの発現、並びに他の変化を示した。(C1D1は、処置のサイクル1の1日目を示し;C1D15は、処置のサイクル1の15日目を示し;C4D1は、処置のサイクル4の1日目を示し、EOTは、処置の終わりを示す。)
【0023】
図12図12は、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルの組み合わせの処置によく反応したヒトがん患者の特徴及び前処置をまとめた表を提供する。(PRは、部分寛解を示し;CRは、完全寛解を示し;SDは、病状安定(腫瘍進行なし)を示す。)
【0024】
図13図13は、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルの組み合わせの処置に極めてよく反応したヒトがん患者における、NLR、GR制御遺伝子の転写、免疫調節サイトカイン、及び免疫細胞に対する効果をさらに示す。
【0025】
図14図14は、T細胞機能に対する短期レラコリラント処置の効果を示す。(腫瘍体積に対するいずれかの観察可能な効果の前にT細胞機能に対するレラコリラントの効果を評価するために行った)短期薬力学研究の結果は、平均体重及び腫瘍体積が、この時間枠の間に評価されたいずれの処置の影響も受けなかったことを示す。
【0026】
図15図15は、EG7同系モデルにおけるαPD1と組み合わせたGRアンタゴニズムの短期効果を示す。7日薬力学研究において、レラコリラント+αPD1は、脾臓(左)及び腫瘍(右)において抗原特異的T細胞を増加させた。
【0027】
図16図16は、7日EG7研究後に評価した脾臓細胞に対するレラコリラント及びαPD1の効果を示す。脾臓のCD8+T細胞におけるPD1発現(左上)及びCD69発現(右上)をCD8+T細胞の百分率として示す。CD3+CD8+T細胞を、脾臓のCD45.1+細胞(左下)のパーセントとして示す。対応のないノンパラメトリックT-検定からのP値を示す。
【0028】
図17図17は、7日EG7研究後に評価した、レラコリラント及びαPD1の効果、血清中のTNFα及びIL-6のレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
A.(導入)
GR発現をヒト腫瘍及び免疫細胞において観察したところ、その存在量は、Th2及びTreg細胞のPDL1発現及び腫瘍浸潤と正相関した一方で、Th1細胞浸潤と負相関した。インビトロで刺激されたヒトPBMCにおけるT細胞活性化及び炎症促進性サイトカイン分泌を、コルチゾールは阻害し、レラコリラントは回復させた。EG7マウスモデルにおいて、レラコリラントは、抗PD1抗体の効能を有意に増大させた。進行の固形腫瘍を有する患者におけるフェーズIのナブ-パクリタキセル組み合わせ研究において、レラコリラントは、発現IL-8、EP4、及びIDO1を全身的に抑制し、好中球対リンパ球比(NLR)を正常化した。持続的な応答をする患者のサブセットにおいて、レラコリラントは、CD3+細胞及びIFNγを増加させ、Treg及びIL-10を減少させ、既知のGR制御遺伝子の転写を抑制した。一緒に、これらのデータは、レラコリラントによって反転され得るコルチゾールの広範な免疫抑制効果を特徴付ける。
【0030】
出願人は、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SGRM)の効果を本明細書において開示する。多くのSGRMは、GRアンタゴニストである。例えば、レラコリラントは、強力且つ選択的なGRアンタゴニストである。最大半量のGR結合が0.15nMにおいて観察されたが、プロゲステロン受容体(PR)結合は1000nMを超える濃度において観察されなかった。ヒト刺激PBMCにおいて、TNF-αは、GRアゴニストによって抑制され、レラコリラントは、最大半量の効果が9nMで観察されて、TNF-α産生を回復させた。フェーズI研究において見られるものと同様の全身曝露を達成した用量で経口投与されたレラコリラントは、コルチコステロン誘発性インスリン抵抗性のラットモデルにおけるグルコース及びインスリンを正常化した。フェーズIの健康なボランティアでの研究により、忍容性、及び、プレドニゾンの単回投与の薬力学的効果を反転させる能力を実証した。GRアゴニストの薬力学的効果は、全血における、FKBP5mRNA、正準GR制御遺伝子の誘発、及び、全血における好酸球の存在量の抑制を含み、これらの両方がレラコリラントによって反転した。ミフェプリストン、ステロイド類縁体及びホルモン受容体モジュレーターとは異なり、GR逆アゴニズムは、レラコリラントによって観察されなかった。クッシング病を有する患者におけるフェーズII研究において、レラコリラントは、高血圧及びインスリン抵抗性に対する過剰なコルチゾールの効果を反転させる能力を実証した。
【0031】
出願人は、固形腫瘍を有するがん患者において免疫機能を改善する方法であって、有効量のがん処置及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SGRM)の投与を前記がん患者に行うことを含み、これにより、前記患者の免疫機能が改善される、前記方法を本明細書において開示する。かかる改善された免疫機能は、抗がん効果を生じさせるための、患者の免疫系における改善を含み得る。いくつかの実施形態において、前記の免疫機能の改善は、前記の固形腫瘍を有する患者において抗がん効果を生じさせるのに有効であり、これにより、腫瘍成長を遅延させる、腫瘍成長を停止させる、腫瘍量を低減させる、又はこれらの組み合わせを成す。いくつかの実施形態において、改善された免疫機能は、前記非ステロイド性SGRMの投与前のCD8+T細胞活性化と比較して増大したCD8+T細胞活性化を含み;改善された免疫機能は、前記非ステロイド性SGRMの投与前の炎症促進性サイトカイン分泌と比較して増大した炎症促進性サイトカイン分泌を含み;改善された免疫機能は、前記非ステロイド性SGRMの投与前のTNFα分泌と比較して増大したTNFα分泌を含み;改善された免疫機能は、前記非ステロイド性SGRMの投与前のIFNγ分泌と比較して増大したIFNγ分泌を含み;また、これらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、免疫機能は、2~3日~数日の前記非ステロイド性GRM又はSGRMの投与(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、又はこれを超える日数にわたる投与)の後に改善される。
【0032】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、前記非ステロイド性SGRMは、下記式を有するヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む化合物、又はその塩若しくは異性体である。
【化1】

式中
は、5~6個の環員を有し、且つ、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環であり、前記ヘテロアリール環はそれぞれ独立してR1aから選択される1~4個の基で置換されていてもよく;
1aはそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、及びヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで前記ヘテロシクロアルキル環及びヘテロアリール環は、5~6個の環員、及びそれぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を有し;
はそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル-C1-6アルコキシ、CN、OH、NR2a2b、C(O)R2a、C(O)OR2a、C(O)NR2a2b、SR2a、S(O)R2a、S(O)2a、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され、ここで前記ヘテロシクロアルキル基は1~4個のR2c基で置換されていてもよく;
あるいは、同じ炭素に結合した2個のR基が組み合わされてオキソ基(=O)を形成しており;
あるいは、2個のR基が組み合わされて、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子とを有する、ヘテロシクロアルキル環を形成しており、ここで前記ヘテロシクロアルキル環は1~3個のR2d基で置換されていてもよく;
2a及びR2bはそれぞれ独立して水素及びC1-6アルキルからなる群より選択され;
2cはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、CN、及びNR2a2bからなる群より選択され;
2dはそれぞれ独立して水素及びC1-6アルキルからなる群より選択され、あるいは、同じ環原子に結合した2個のR2d基が組み合わされて(=O)を形成しており;
はそれぞれ1~4個のR3a基で置換されていてもよいフェニル及びピリジルからなる群より選択され;
3aはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、及びC1-6ハロアルキルからなる群より選択され;
下付き文字nは0~3の整数である。
【0033】
前記非ステロイド性SGRMがヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンである方法のいくつかの実施形態において、前記非ステロイド性SGRMは、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、レラコリラントと称され、以下の構造を有する:
【化2】
【0034】
前記非ステロイド性選択的GRAがヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンである方法のいくつかの実施形態において、前記非ステロイド性SGRMは、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,-7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、CORT122928と称され、以下の構造を有する:
【化3】
【0035】
前記非ステロイド性SGRMがヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンを含む方法のいくつかの実施形態において、前記非ステロイド性SGRMは、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロP,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンであり、CORT113176と称され、以下の構造を有する:
【化4】
【0036】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、前記非ステロイド性SGRMは、下記式を有するオクタヒドロ縮合アザデカリン構造化合物、又はその塩若しくは異性体である。
【化5】

式中
は、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子と、を有するヘテロアリール環であり、前記ヘテロアリール環はそれぞれ独立してR1aから選択される1~4個の基で置換されていてもよく;
1aはそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC3-8シクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子と、を有するアリール環及びヘテロアリール環からなる群より選択され;
はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル-C1-6アルコキシ、CN、OH、NR2a2b、C(O)R2a、C(O)OR2a、C(O)NR2a2b、SR2a、S(O)R2a、S(O)2a、C3-8シクロアルキル、並びにそれぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子を有するC3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
あるいは、隣接し合う環原子上の2個のR基が組み合わされて、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子とを有する、ヘテロシクロアルキル環を形成しており、前記ヘテロシクロアルキル環は1~3個のR2c基で置換されていてもよく;
2a、R2b、及びR2cはそれぞれ独立して水素及びC1-6アルキルからなる群より選択され;
3aはそれぞれ独立してハロゲンであり;
下付き文字nは0~3の整数である。
【0037】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、前記非ステロイド性SGRMは、下記式を有するオクタヒドロ縮合アザデカリン構造化合物、又はその塩若しくは異性体である。
【化6】

式中、
は、それぞれ独立してR1aから選択される1~4個の基で置換されていてもよい、ピリジン及びチアゾールからなる群より選択され、
1aはそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC3-8シクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、フェニル、ピリジン、ピラゾール、及びトリアゾールからなる群より選択され;
はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、及び-CNからなる群より選択され;
3aは、Fであり;
下付き文字nは、0~3の整数である。
【0038】
前記非ステロイド性SGRMがオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含むいくつかの実施形態において、前記非ステロイド性SGRMは、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、エキシコリラントと称され、以下の構造を有する:
【化7】

いくつかの実施形態において、前記非ステロイド性SGRMは、化学名((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンを有し、「CORT125329」と称され、以下の構造を有するオクタヒドロ縮合アザデカリン化合物である:
【化8】
【0039】
いくつかの場合において、前記GRM(例えば、SGRM、例えば、非ステロイド性SGRM)の有効量は、1~100mg/kg/日、又は約1~20mg/kg/日の1日用量である。いくつかの実施形態において、前記GRMの1日用量は、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90又は100mg/kg/日である。いくつかの場合において、前記GRMは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80週間投与される。いくつかの実施形態において、前記GRMは、SGRMである。好ましいいくつかの実施形態において、前記GRMは、GRアンタゴニスト(GRA)であり、選択的GRAでありうる。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記GRMは、がん処置に伴い投与される。本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、前記がん処置は、化学療法剤の投与を含む。いくつかの実施形態において、前記化学療法剤は、タキサン、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗剤、分裂抑制剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、前記化学療法剤は、タキサンであり、例えば、ナブ-パクリタキセルであってよい。
【0041】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、前記がん処置は、免疫療法剤の投与を含む。例えば、本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、前記がん処置は、抗体チェックポイント阻害剤の投与を含む。そのため、いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている方法は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択される標的を対象とする抗体チェックポイント阻害剤(タンパク質標的に対する抗体)の投与を含む。いくつかの実施形態において、前記がん処置は、がん放射線療法、成長因子阻害剤の投与、及び抗血管新生因子の投与のうちの1又は複数を含む。
【0042】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、前記がん処置は、固形腫瘍に罹患している被験体を処置する方法であって、固形腫瘍に罹患しており且つ過剰なコルチゾールを有する患者を同定すること;1)選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SGRM)と、2)がん化学療法剤と、を含む組み合わせ処置を投与すること;これにより、CD8+T細胞活性化を回復させること、炎症促進性サイトカイン分泌を回復させること、又はその両方を含む、前記方法を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、T細胞数を増加させること、血漿インターフェロンγ(IFNγ)を増加させること、Treg細胞を減少させること、インターロイキン-10(IL-10)を減少させること、及びこれらの組み合わせのうちの1又は複数を含む。
【0043】
(定義)
本明細書で使用される場合、遺伝子cxcl8、ido1、及びptger4並びに他のものは、以下をいう。
【表1】
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「腫瘍」及び用語「がん」は、互換可能に使用され、両方とも、過剰な細胞分裂から生じる異常な組織成長をいう。周囲の組織に侵入する及び/又は転移し得る腫瘍は「悪性」と称される。転移しない腫瘍は「良性」と称される。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「患者」は、疾患又は状態のための医療を受けている、受ける予定である、又は受けていたヒトをいう。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」、「投与すること」、「投与される」又は「投与」は、化合物又は組成物(例えば、本明細書において記載されているもの)を被験体又は患者に提供することをいう。例えば、化合物又は組成物は、患者に経口投与され得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」又は「治療量」は、処置中である疾患の少なくとも1の症状を処置する、排除する、又は軽減するのに有効な薬理学的剤の量をいう。いくつかの場合において、「治療有効量」又は「有効量」は、検出可能な治療又は阻害効果を示すのに有用な機能性剤又は医薬組成物の量をいうことができる。前記効果は、当該分野において公知の任意のアッセイ方法によって検出され得る。前記有効量は、抗腫瘍応答を引き起こすのに有効である量であり得る。本開示の目的で、SGRMの有効量又は化学療法剤の有効量は、化学療法剤又はSGRMとそれぞれ合わされたとき、腫瘍量を低減し得る、又は、がんの改善に関係する他の所望の有益な臨床転帰を引き起こし得る量である。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」、「投与すること」、「投与される」又は「投与」は、化合物又は組成物(例えば、本明細書において記載されているもの)を被験体又は患者に提供することをいう。投与は、経口投与によるものであってよい(すなわち、被験体は、口腔を介して、丸薬、カプセル、液剤として、又は口腔を介しての投与に好適な他の形態で前記化合物又は組成物を受容する。経口投与は、頬側であってよい(前記化合物又は組成物は、口腔内で、例えば、舌下で保持されて、そこで吸収される)。投与は、注射によるもの、すなわち、前記化合物又は組成物を、針、マイクロ針、圧力注射器、或いは、皮膚を穿刺する又は前記化合物若しくは組成物に被験体の皮膚を強制的に通過させる手段を介して送達することによるものであってよい。注射は、静脈内(すなわち、静脈中に);動脈内(すなわち、動脈中に);腹腔内(すなわち、腹膜中に);筋肉内(すなわち、筋肉中に);又は他の注射経路でありうる。投与経路はまた、直腸、膣内、経皮、肺を介して(例えば、吸入による)、皮下(例えば、前記化合物又は組成物を含有する埋没物から皮膚内への吸収による)、又は他の経路によるものを含みうる。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「併用療法」は、疾患を処置するために被験体に少なくとも2つの剤を投与することをいう。前記2つの剤は、処置期間の全体又は一部にわたって任意の順序で同時に又は逐次的に投与されてよい。前記少なくとも2つの剤は、同じ又は異なる投薬レジメンにしたがって投与されてよい。いくつかの場合において、1つの剤が、計画されたレジメンにしたがって投与される一方で、他方の剤が、間欠的に投与される。いくつかの場合において、両方の剤が、間欠的に投与される。いくつかの実施形態において、前記の1つの剤、例えば、SGRMが、毎日投与され、前記の他方の剤、例えば、化学療法剤が、2、3、又は4日毎に投与される。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「化合物」は、特有の、同定可能な化学構造の分子部位を表すのに使用される。分子部位(「化合物」)は、他の分子と会合していない遊離種形態で存在していてよい。化合物はまた、他の分子(複数可)と会合していないが、にもかかわらずその化学的同一性を保持している、より大きな凝集体の部分として存在していてもよい。所定の化学構造の分子部位(「化合物」)が溶媒の分子(複数可)と会合している溶媒和物は、かかる会合形態の例である。水和物は、前記の会合している溶媒が水である溶媒和物である。「化合物」の記述は、遊離形態又は会合形態のいずれで存在しているかにかかわらず、(記述されている構造の)分子部位自体をいう。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「医薬的に許容可能な担体」は、薬剤投与と適合性であるありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などを含むことが意図される。医薬的に活性な物質のためのかかる媒体及び剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体又は剤がかかる活性化合物と適合性でない限りを除いて、前記の組成物におけるこれらの使用が企図される。追加の活性化合物が前記組成物に組み込まれてもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「副腎皮質刺激ホルモン」(ACTH)は、副腎皮質を刺激して、細胞がグルコースを合成すること、タンパク質を異化すること、遊離脂肪酸を動員すること及びアレルギー反応における炎症を阻害することを助けるグルココルチコイドホルモンを分泌する脳下垂体前葉によって産生及び分泌されるペプチドホルモンをいう。1つのかかるグルココルチコイドホルモンは、コルチゾールであり、炭水化物、脂肪、及びタンパク質代謝を調節する。健康な哺乳動物において、ACTH分泌は、厳重に調節される。ACTH分泌は、視床下部によって放出されるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)によって正に調節される。ACTH分泌は、コルチゾール及び他のグルココルチコイドによって負に調節される。
【0053】
用語「副腎ホルモン」、「副腎プレホルモン」、及び「副腎ホルモン又は副腎プレホルモン」は、副腎によって産生されるホルモンである又は当該ホルモンの前駆体であるステロイド分子をいう。本明細書で使用される場合、限定することなく、「副腎ホルモン又は副腎プレホルモン」は、17α-ヒドロキシプレグネノロン、17α-ヒドロキシプロゲステロン、11-デオキシコルチゾール、プレグネノロン、プロゲステロン、11-デオキシコルチコステロン、コルチコステロン、18-ヒドロキシコルチコステロン、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロン(アンドロステノロン、DHEA)、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S)、及びアンドロステンジオンのうちの1又は複数であってよい。本明細書で使用される場合、用語「副腎ホルモン」、「副腎プレホルモン」、及び「副腎ホルモン又は副腎プレホルモン」は、コルチゾールも同じく含まれることが意図されることが明確に記述されていない限り、コルチゾール以外のホルモン及びプレホルモンをいう。
【0054】
ACTH、コルチゾール、副腎ホルモン、副腎プレホルモン、又は他のホルモン若しくは他のステロイドの文脈において、用語「レベルを測定する」は、例えば、被験体から得られたサンプル中のコルチゾール、ACTH又は他のステロイドの量、レベル、又は濃度を求める、検出する、又は定量することをいう。前記サンプルは、例えば、患者から得られた、血液サンプル、唾液サンプル、尿サンプル、又は他のサンプルでありうる。レベルは、サンプルの画分から測定されうる。例えば、レベル(例えば、ACTH又はコルチゾール)は、血液サンプルの血漿画分において測定されてよく;血液サンプルの血清画分において測定されてよく;又は、いくつかの実施形態において、全血において測定されうる。
【0055】
用語「免疫応答」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、がん性細胞、又は、自己免疫性若しくは病的炎症の場合には正常なヒト細胞若しくは組織への選択的損傷、これらの選択的破壊、或いはヒトの体からのこれらの選択的排除を結果として生じさせる、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、並びに上記細胞又は肝臓によって産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用をいう。
【0056】
免疫系の細胞は、当該分野において一般的に使用され且つ一般的に受け入れられている専門用語にしたがって本明細書において同定される。例えば、用語「Treg」及び「Treg」は、調節性T細胞をいうのに本明細書において互換可能に使用される。「IFN」は、インターフェロンをいい、その結果、例えば、IFNγは、インターフェロンガンマをいうこととなる。「IL」は、インターロイキンをいい、その結果、例えば、IL-10は、インターロイキン10をいうこととなる。「TNF」は、腫瘍壊死因子をいい、その結果、例えば、TNFαは、腫瘍壊死因子アルファをいうこととなる。他の用語及び頭字語は、当業者によって公知であり且つ使用されている。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「チェックポイント阻害剤感受性がん」は、チェックポイント阻害剤に応答性であるがんをいう。かかる腫瘍を有する患者への1又は複数のチェックポイント阻害剤の投与は、腫瘍量の低減又はがん改善に関係する他の所望の有益な臨床転帰を引き起こし得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、句「増強するのに有効な量」は、処置中の疾患のうちの少なくとも1の症状を処置する、排除する、又は軽減する際に別の治療剤の活性を向上させるのに有効な薬理学的剤の量をいう。別のものの活性を増強するのに使用される当該剤は、疾患自体の症状を処置する、排除する、又は軽減する際に有効であっても有効でなくてもよい。いくつかの場合において、かかる増強剤は、有効ではなく、増強の効果は、かかる治療剤単独による処置と比較して、これらの2の剤の組み合わせによる処置から得られる、前記症状を緩和する程度の増大によって示され得る。いくつかの場合において、前記増強剤自体は、前記症状を処置するのに有効であり、前記の増強効果は、前記増強剤と前記治療剤との間の相乗効果によって示され得る。例えば、SGRMは、当該SGRMが単独で投与されたときにがんを処置するのに有効であり得るかにかかわらず、当該がんを処置する際にチェックポイント阻害剤の活性を増強するための増強剤として作用し得る。いくつかの実施形態において、10%~1000%の増強効果が達成され得る。いくつかの実施形態において、前記SGRMは、腫瘍を前記チェックポイント阻害剤に感受性にする、すなわち、腫瘍量の低減、又は、前記SGRMの非存在下で前記チェックポイント阻害剤によって処置されるときには別途現れない他の関係する臨床的利益を示す量で投与される。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「チェックポイントタンパク質」は、ある特定のタイプの細胞、例えば、T細胞及びある特定の腫瘍細胞の表面に存在し、チェックポイントシグナル伝達経路を誘発し得且つ免疫応答の抑制を結果として生じさせ得るタンパク質をいう。一般的に公知のチェックポイントタンパク質には、CTLA4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、B7-H3、B7-H4、TIM3、CD160、CD244、VISTA、TIGIT、及びBTLAが含まれる。(Pardoll、2012、Nature Reviews Cancer 12:252-264;Baksh、2015、Semin Oncol.2015 Jun;42(3):363-77)。例えば、CTLA4、PD-1及びPD-L1は、よく研究されており、これらのタンパク質を標的とする治療は、よく使用されている臨床治療である。
【0060】
いくつかの場合において、前記チェックポイント阻害剤は、少なくとも1種のチェックポイントタンパク質を阻害する、小分子の非タンパク質化合物である。ある実施形態において、前記チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、B7-H3、B7-H4、TIM3、CD160、CD244、VISTA、TIGIT、及びBTLAからなる群より選択されるチェックポイントタンパク質を阻害する、小分子の非タンパク質化合物である。
【0061】
いくつかの場合において、前記チェックポイント阻害剤は、少なくとも1種のチェックポイントタンパク質、例えば、PD-1、CTLA-4、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、TIM3、CD160、CD244、VISTA、TIGIT、及びBTLAに対する抗体である。いくつかの場合において、前記チェックポイント阻害剤は、PD-1、CTLA-4、PD-L1、PD-L2、AG3、B7-H3、B7-H4、TIM3、CD160、CD244、VISTA、TIGIT、及びBTLAの群から選択されるチェックポイントタンパク質のうちの2以上に対して有効である抗体である。
【0062】
いくつかの場合において、前記チェックポイント阻害剤は、チェックポイントタンパク質に対する、又は1種を超えるチェックポイントタンパク質に対する抗体である。かかる抗体チェックポイント阻害剤は、「α」と称され得、ギリシャ文字「α」が標的タンパク質の名称に先行することによって同定され得る。そのため、例えば、PD1に対する抗体チェックポイント阻害剤は、「αPD1」と称され得、CD3に対する抗体チェックポイント阻害剤は、「αCD3」と称され得る。かかる抗体チェックポイント阻害剤の投与を含む処置もまた、同様に同定され得、その結果、抗PD1抗体を使用する処置は、「αPD1」又は「αPD1処置」と称され得ることとなり、抗CD3抗体を使用する処置は、「αCD3」又は「αCD3処置」などと称され得ることとなる。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「PD-1」は、免疫グロブリンスーパーファミリーの細胞表面膜タンパク質である、プログラム細胞死タンパク質1(CD279としても公知である)をいう。PD-1は、B細胞、T細胞及びNK細胞によって発現される。PD-1の主な役割は、感染に応答する炎症の際に末梢組織におけるT細胞の活性を制限すること、並びに、自己免疫を制限することである。PD-1発現は、活性化T細胞において誘発され、PD-1のその内因性リガンドのうちの1つへの結合が、刺激性キナーゼを阻害することによってT細胞活性化を阻害する作用をする。PD-1はまた、TCR「停止シグナル」を阻害する作用もする。PD-1は、Treg細胞(調節性T細胞)において高度に発現され、これらの増殖をリガンドの存在下で増大させ得る(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「PD-L1」は、PD-1のリガンドである、プログラム細胞死リガンド1(CD274及びB7-H1としても公知である)をいう。PD-L1は、活性化T細胞、B細胞、骨髄細胞、マクロファージ、及び腫瘍細胞において見られる。PD-1、PD-L1及びPD-L2について2の内因性リガンドが存在するが、抗腫瘍治療は、抗PD-L1に焦点を当ててきた。PD-1及びPD-L1の複合体は、CD8+T細胞の増殖を阻害し、免疫応答を低減する(Topalian et al.,2012,N.Engl J.Med.366:2443-54;Brahmer et al.,2012,N.Engl J.Med.366:2455-65)。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「PD-L2」は、プログラム細胞死リガンド2をいう。PD-L2は、PD-1への結合に関してPD-L1と競合する。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「CTLA4」及び「CTLA-4」は、T細胞において排他的に発現される免疫グロブリンスーパーファミリーの構成員である細胞毒性T-リンパ球抗原4(CD152としても公知である)をいう。CTLA4は、T細胞活性化を阻害する作用をするものであり、ヘルパーT細胞活性を阻害して調節性T細胞免疫抑制活性を向上させることが報告されている。CTL4-Aの作用の正確なメカニズムは依然として調査中であるが、抗原提示細胞におけるCD80及びCD86への結合においてCD28を打ち負かす(outcompeting)こと、並びにT細胞に阻害剤シグナルを活発に送達することによってT細胞活性化を阻害することが示唆されている(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「LAG3」は、リンパ球活性化遺伝子-3(CD223とも呼ばれる)をいう。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「B7-H3」は、CD276としても公知である免疫チェックポイントタンパク質をいい;B7-H3は、多くの場合、がん細胞(例えば、一部の固形腫瘍)において過剰発現される。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「B7-H4」は、抗原提示細胞の表面に存在し得る、V-セットドメイン含有T細胞活性化阻害剤1としても公知である免疫チェックポイントタンパク質をいう。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「TIM3」は、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有タンパク質3としても公知であるタンパク質をいう。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「CD160」は、ヒトにおいてCD160遺伝子によってコードされる27キロダルトンの糖タンパク質をいう。CD160の発現は、細胞溶解性エフェクター活性を有する末梢血NK細胞及びCD8Tリンパ球と密接に関連する。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「CD244」は、「分化抗原群244」としても公知であるタンパク質をいう。これは、免疫調節性受容体シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)ファミリーの構成員である。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「VISTA」は、T細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサーとしても公知である免疫チェックポイントタンパク質をいう。これは、C10orf54遺伝子によってコードされる。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「TIGIT」(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)は、WUCAM及びVstm3とも呼ばれる免疫受容体タンパク質をいう。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「BTLA」(B-及びT-リンパ球アテニュエーター)は、BTLA遺伝子によってヒトにおいてコードされるチェックポイントタンパク質をいう。これは、CD272(分化抗原群272)とも呼ばれる。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「チェックポイント阻害剤」は、1又は複数のチェックポイントタンパク質によって誘発される免疫抑制経路を遮断する、抗体及び小分子を含めたあらゆる分子をいう。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、完全長抗体、並びに、抗体の「抗原-結合タンパク質」も含む。用語「抗原-結合タンパク質」は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体(例えば、PD-1)の1又は複数の断片をいう。抗体の「抗原-結合タンパク質」という用語内に包含される結合断片の例として、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結されている2のFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなる、dAb断片(Ward et al.,(1989) Nature 341:544-546);並びに(vi)単離相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、前記Fv断片の2のドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされているが、これらは、VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてこれらを作製することを可能にする合成リンカーによって、組み換え法を使用して接合され得る(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;及びOsbourn et al.1998,Nature Biotechnology 16:778を参照されたい)。かかる単鎖抗体もまた、抗体の「抗原-結合タンパク質」という用語内に包含されることが意図される。完全なIgG分子又は他のアイソタイプをコードする発現ベクターを発生させるために、特異的scFvのいずれのVH及びVL配列が、ヒト免疫グロブリン定常領域cDNA又はゲノム配列に連結されていてもよい。VH及びVIもまた、タンパク質化学又は組み換えDNA技術のいずれかを使用する、免疫グロブリンのFab、Fv又は他の断片の発生において使用され得る。ダイアボディなどの、単鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖において発現される二価の二重特異性抗体であるが、短すぎるため同じ鎖における2のドメイン間の対合を可能にしないリンカーを使用することにより、かかるドメインを別の鎖の補体ドメインと対にさせて2の抗原結合部位を作り出す(例えば、Holliger,P.,et al.(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994) Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0078】
抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであってよく;異種、同種異系、若しくは同系;又はこれらの修飾形態、例えば、ヒト化形態、キメラ形態などであってよい。本発明の抗体は、1又は複数のチェックポイントタンパク質に特異的又は実質的に特異的に結合する。用語「モノクローナル抗体」が、抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能である唯一種の抗原結合部位を含有する抗体分子の集団をいう一方で、用語「ポリクローナル抗体」及び「ポリクローナル抗体組成物」は、特定の抗原と相互作用することが可能である複数種の抗原結合部位を含有する抗体分子の集団をいう。モノクローナル抗体組成物は、免疫反応する特定の抗原への単一の結合親和性を典型的には示す。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「チェックポイントタンパク質に対して有効である抗体」は、チェックポイントタンパク質に結合して、免疫応答を抑制する際にチェックポイントタンパク質の機能に拮抗し得る抗体をいう。例えば、PD-1に対する抗体は、PD-1に結合して、例えばPD-1及びPD-L1間の相互作用を遮断することを通して、免疫応答におけるPD-1の阻害機能を遮断することができる抗体をいう。いくつかの場合において、抗体は、2種のチェックポイントタンパク質に対するもの、すなわち、2種のチェックポイントタンパク質に結合してこれらの機能を阻害する能力を有するものであり得る。
【0080】
用語「コルチゾール」は、副腎の束状帯によって産生される天然のグルココルチコイドホルモン(ヒドロコルチゾンとしても知られる)をいう。コルチゾールは、以下の構造を有する。
【化9】

用語「全コルチゾール」は、コルチゾール結合性グロブリン(CBG又はトランスコルチン)に結合しているコルチゾール、及び遊離コルチゾール(CBGに結合していないコルチゾール)をいう。用語「遊離コルチゾール」は、コルチゾール結合性グロブリン(CBG又はトランスコルチン)に結合していないコルチゾールをいう。本明細書で使用される場合、用語「コルチゾール」は、全コルチゾール、遊離コルチゾール、及び/又はCBGの結合したコルチゾールをいう。
【0081】
用語「糖質コルチコステロイド」(「GC」)又は「グルココルチコイド」は、グルココルチコイド受容体に結合するステロイドホルモンをいう。糖質コルチコステロイドは、21個の炭素原子、環Aにおけるα,β-不飽和ケトン、及び環Dに付着したα-ケトール基を有することを典型的には特徴とする。これらは、C-11、C-17、及びC-19における酸素化又はヒドロキシル化の程度が異なる;Rawn,「Biosynthesis and Transport of Membrane Lipids and
Formation of Cholesterol Derivatives,” in Biochemistry,Daisy et al.(eds.),1989,pg.567を参照されたい。
【0082】
本明細書で使用される場合、句「グルココルチコイド受容体モジュレーターによる処置について別途示されない(not otherwise indicated for treatment with a glucocorticoid receptor modulator)」は、肝脂肪変性を除く、グルココルチコイド受容体アンタゴニストによって有効に処置可能であることが医学界によって認識されているいずれの状態にも罹患していない患者をいう。グルココルチコイド受容体アンタゴニストによって有効に処置可能であることが当該分野において公知であり且つ医学界によって受け入れられている状態として、インターフェロン-α治療に関連する精神病、精神病性大うつ病、認知症、ストレス障害、自己免疫疾患、神経損傷、及びクッシング症候群が挙げられる。
【0083】
I型グルココルチコイド受容体(GR I)としても知られている鉱質コルチコイド受容体(MR)は、ヒトにおいてはアルドステロンによって活性化される。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「グルココルチコイド受容体」(「GR」)は、コルチゾール及び/又はコルチゾール類縁体、例えば、デキサメタゾンに特異的に結合する細胞内受容体のファミリーである、II型GRをいう(例えば、Turner & Muller,J.Mol.Endocrinol.October 1,2005 35 283-292を参照されたい)。前記グルココルチコイド受容体は、コルチゾール受容体とも称される。前記用語は、GRのアイソフォーム、組み換え型GR及び変異型GRも含む。
【0085】
用語「グルココルチコイド受容体モジュレーター」(GRM)は、GRへのGC結合を調節する、又はアゴニストへのGRの結合に関連する任意の生物学的応答を調節する任意の化合物をいう。例えば、デキサメタゾンなどの、アゴニストとして作用するGRMは、HepG2細胞(ヒト肝臓の肝細胞がん細胞株;ECACC、UK)におけるチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を増大させる。ミフェプリストンなどの、アンタゴニストとして作用するGRMは、HepG2細胞におけるチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を減少させる。TAT活性は、A.Ali et al.,J.Med.Chem.,2004,47,2441-2452による文献に概説されているように測定され得る。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター」(SGRM)は、GRへのGC結合を調節する、又はアゴニストへのGRの結合に関連する任意の生物学的応答を調節する、任意の組成物又は化合物をいう。「選択的であること(selective)」によって、前記薬物は、プロゲステロン受容体(PR)、鉱質コルチコイド受容体(MR)又はアンドロゲン受容体(AR)などの他の核受容体よりもむしろGRに優先的に結合する。かかる選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターは、MR、AR、若しくはPR、MR及びPRの両方、MR及びARの両方、AR及びPRの両方、又はMR、AR、及びPRへのその親和性よりも10倍大きい(K値の1/10)親和性で、GRに結合することが好ましい。より好ましいいくつかの実施形態において、前記選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターは、MR、AR、若しくはPR;MR及びPRの両方;MR及びARの両方;AR及びPRの両方;又はMR、AR、及びPRへのその親和性よりも100倍大きい(K値の1/100)親和性で、GRに結合する。別のいくつかの実施形態において、前記選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターは、MR、AR、若しくはPR;MR及びPRの両方;MR及びARの両方;AR及びPRの両方;又はMR、AR、及びPRへのその親和性よりも1000倍大きい(K値の1/1000)親和性で、GRに結合する。レラコリラントは、SGRMである。
【0087】
「グルココルチコイド受容体アンタゴニスト」(GRA)は、GRへのGC結合を阻害する、又はアゴニストへのGRの結合に関連する任意の生物学的応答を阻害する任意の化合物をいう。したがって、GRアンタゴニストは、化合物がデキサメタゾンの効果を阻害する能力を測定することによって同定され得る。TAT活性は、A.Ali et al.,J.Med.Chem.,2004,47,2441-2452による文献に概説されているように測定され得る。GRAは、10マイクロモル未満のIC50(最大半量の阻害濃度)を有する化合物である。その全内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,859,774号の実施例1を参照されたい。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「選択的グルココルチコイド受容体アンタゴニスト」(SGRA)は、GRへのGC結合を阻害する、又はアゴニストへのGRの結合に関連する任意の生物学的応答を調節する任意の組成物又は化合物をいう(阻害は、前記化合物の非存在下で前記応答に関して決定される)。「選択的であること(selective)」によって、前記薬物は、プロゲステロン受容体(PR)、鉱質コルチコイド受容体(MR)又はアンドロゲン受容体(AR)などの他の核受容体よりもむしろGRに優先的に結合する。前記選択的グルココルチコイド受容体アンタゴニストは、MR、AR、若しくはPR;MR及びPRの両方:MR及びARの両方;AR及びPRの両方;又はMR、AR、及びPRへのその親和性よりも10倍大きい(K値の1/10)親和性で、GRに結合することが好ましい。より好ましいいくつかの実施形態において、前記選択的グルココルチコイド受容体アンタゴニストは、MR、AR、若しくはPR;MR及びPRの両方;MR及びARの両方;AR及びPRの両方;又はMR、AR、及びPRへのその親和性よりも100倍大きい(K値の1/100)親和性で、GRに結合する。別のいくつかの実施形態において、前記選択的グルココルチコイド受容体アンタゴニストは、MR、AR、若しくはPR;MR及びPRの両方;MR及びARの両方;AR及びPRの両方;又はMR、AR、及びPRへのその親和性よりも1000倍大きい(K値の1/1000)親和性で、GRに結合する。レラコリラントは、SGRAである。
【0089】
非ステロイド性GRA、SGRA、GRM、及びSGRM化合物として、縮合アザデカリン構造(縮合アザデカリン骨格と称される場合もある)を含む化合物、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン構造(ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン骨格と称される場合もある)を含む化合物、及びオクタヒドロ縮合アザデカリン構造(オクタヒドロ縮合アザデカリン骨格と称される場合もある)を含む化合物が挙げられる。
【0090】
縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性GRA、SGRA、GRM、及びSGRM化合物として、米国特許第7,928,237号及び同第8,461,172号に記載されているものが挙げられる。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性GRA、SGRA、GRM、及びSGRM化合物として、米国特許第8,859,774号に記載されているものが挙げられる。オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性GRA、SGRA、GRM、及びSGRM化合物として、米国特許第10,047,082号に記載されているものが挙げられる。本明細書に開示されている全ての特許、特許公報、及び特許出願は、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
縮合アザデカリン構造を含む例示的なグルココルチコイド受容体アンタゴニストとして、米国特許第7,928,237号;及び米国特許第8,461,172号に記載されているものが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記縮合アザデカリンGRAは、化合物(R)-4-a-エトキシメチル-1-(4-フルオロ-フェニル)-6-(4-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H,1,2,6-トリアザ-シクロペンタ[b]ナフタレン(「CORT108297」)であり、以下の構造を有する。
【化10】
【0092】
例示的なヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物は、米国特許第8,859,774号;米国特許第9,273,047号;米国特許第9,707,223号;及び米国特許第9,956,216号に記載されており、これらの特許の全てが、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRAは、化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(米国特許第8,859,774号の実施例18)であり、「レラコリラント」として、及び「CORT125134」としても公知であり、以下の構造を有する。
【化11】
【0093】
いくつかの実施形態において、前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRAは、化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,-7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノン(「CORT122928」と称される)であり、以下の構造を有する。
【化12】
【0094】
いくつかの実施形態において、前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRAは、化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロP,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノン(「CORT113176」と称される)であり、以下の構造を有する。
【化13】
【0095】
オクトヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的なグルココルチコイド受容体アンタゴニストとして、米国特許第10,047,082号に記載されているものが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記オクタヒドロ縮合アザデカリン化合物は、化合物((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(エキシコリラント、又はCORT125281と称される)であり、以下の構造を有する。
【化14】
【0096】
いくつかの場合において、前記非ステロイド性SGRMは、CORT125329、すなわち、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、以下の構造を有する。
【化15】
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、特定の量での上記の化合物、これらの互変異性型、これらの誘導体、これらの類縁体、これらの立体異性体、これらの多形、これらの重水素化種、これらの医薬的に許容可能な塩、エステル、エーテル、代謝産物、異性体の混合物、これらの医薬的に許容可能な溶媒和物及び医薬的に許容可能な組成物などの特定の成分、並びに、前記特定の成分の特定の量での組み合わせから直接又は間接的に得られる任意の生成物を含む生成物を包含することが意図される。医薬組成物に関係するかかる用語は、活性成分(複数可)、及び、担体を構成する不活性成分(複数可)を含む生成物、並びに、直接又は間接的に、前記成分のいずれか2以上の組み合わせ、複合若しくは凝集を結果として生じさせる、或いは、前記成分の1又は複数の解離から、又は前記成分の1又は複数の他のタイプの反応若しくは相互作用から生じる任意の生成物を包含することが意図される。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物及びこれらの医薬的に許容可能な担体を混ぜ合わせることによって作製される任意の組成物を包含することが意図される。
【0098】
いくつかの実施形態において、用語「から本質的になる」は、製剤における組成物において、その活性成分が示されている活性成分のみであり、しかし、前記製剤の安定化、保存などのために他の化合物が含まれていてよいが、前記示されている活性成分の治療効果に直接関与しないことをいう。いくつかの実施形態において、用語「から本質的になる」は、組成物が、前記活性成分、及び前記活性成分の放出を容易にする構成要素を含有していることをいうことができる。例えば、前記組成物は、経時的に被験体に前記活性成分を徐放させる1又は複数の構成要素を含有し得る。いくつかの実施形態において、用語「からなる」は、組成物が、前記活性成分及び医薬的に許容可能な担体又は添加剤を含有することをいう。
【0099】
本明細書で使用される場合、GRM及びSGRMの文脈における用語「非ステロイド性」及び句「非ステロイド性骨格」は、GRM及びSGRMが、4つの縮合環において結合している、17の炭素原子を含有するステロイド骨格を有するコルチゾールと構造的相同性を共有しない、又は、これらの修飾体ではないことをいう。かかる化合物には、部分ペプチド性、擬ペプチド性及び非ペプチド性の分子実体を含めた、タンパク質の合成模倣体及び類縁体が含まれる。
【0100】
非ステロイド性GRA、SGRA、GRM、及びSGRM化合物として、縮合アザデカリン構造(縮合アザデカリン骨格と称される場合もある)を含む化合物、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造(ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン骨格と称される場合もある)を含む化合物、オクタヒドロ縮合アザデカリン構造(オクタヒドロ縮合アザデカリン骨格と称される場合もある)を含む化合物が挙げられる。縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性GRA、SGRA、GRM、及びSGRM化合物として、米国特許第7,928,237号及び同第8,461,172号に記載されているものが挙げられる。ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性GRA、SGRA、GRM、及びSGRM化合物として、米国特許第8,859,774号に記載されているものが挙げられる。オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性GRA、SGRA、GRM、及びSGRM化合物として、米国特許第10,047,082号に記載されているものが挙げられる。本明細書に開示されている全ての特許、特許公報、及び特許出願は、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
置換基は、左から右に書かれているこれらの従来の化学式によって特定される場合、構造を右から左に書くことから生じ得る化学的に同一の置換基を等しく包含し、例えば、-CHO-は、-OCH-と等価である。
【0102】
「アルキル」は、示されている炭素原子数を有する直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族ラジカルをいう。アルキルは、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6、及びC5-6などの任意の数の炭素を含み得る。例えば、C1-6アルキルとして、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられる。
【0103】
「アルコキシ」は、アルキル基を付着点に接続する酸素原子を有する当該アルキル基:アルキル-O-をいう。前記アルキル基に関して、アルコキシ基は、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得る。アルコキシ基として、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが挙げられる。
【0104】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素をいう。
【0105】
「ハロアルキル」は、水素原子の一部又は全てがハロゲン原子によって置き換えられている、上記に定義されているアルキルをいう。前記アルキル基に関して、ハロアルキル基は、トリフルオロメチル、フルオロメチルなど、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得る。
【0106】
用語「パーフルオロ」は、全ての水素がフッ素によって置き換えられている化合物又はラジカルを定義するのに使用され得る。例えば、パーフルオロメタンには、1,1,1-トリフルオロメチルが含まれる。
【0107】
「ハロアルコキシ」は、水素原子の一部又は全てがハロゲン原子によって置き換えられているアルコキシ基をいう。前記アルキル基に関して、ハロアルコキシ基は、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得る。前記アルコキシ基は、1、2、3、又はこれを超えるハロゲンによって置換されていてよい。全ての水素が、ハロゲンによって、例えばフッ素で置き換えられているとき、化合物は、過置換、例えば、過フッ素化されている。ハロアルコキシとして、限定されないが、トリフルオロメトキシ、2,2,2,-トリフルオロエトキシ、及びパーフルオロエトキシが挙げられる。
【0108】
「シクロアルキル」は、3~12環原子、又は示されている数の原子を含有する飽和又は部分不飽和単環式、縮合二環式、又は架橋多環式の環アセンブリをいう。シクロアルキルは、C3-6、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11、及びC3-12などの任意の数の炭素を有し得る。飽和単環式シクロアルキル環として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが挙げられる。飽和二環式及び多環式シクロアルキル環として、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン、及びアダマンタンが挙げられる。シクロアルキル基は、その環に1又は複数の二重又は三重結合を有する、部分不飽和であってもよい。部分不飽和である代表的なシクロアルキル基として、限定されないが、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-及び1,5-異性体)、ノルボルネン、及びノルボルナジエンが挙げられる。シクロアルキルが飽和単環式C3-8シクロアルキルであるとき、例示的な基として、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキルが飽和単環式C3-6シクロアルキルであるとき、例示的な基として、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0109】
「ヘテロシクロアルキル」は、3~12環員並びにN、O、及びSの1~4個のヘテロ原子を有する飽和環系をいう。限定されないが、B、Al、Si、及びPも含めたさらなるヘテロ原子も有用であり得る。前記ヘテロ原子はまた、酸化され得、例えば、限定されないが、-S(O)-及び-S(O)-であり得る。ヘテロシクロアルキル基は、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、又は3~12環員などの任意の数の環原子を含み得る。前記ヘテロシクロアルキル基は、1、2、3、若しくは4、又は1~2、1~3、1~4、2~3、2~4、若しくは3~4などの任意の好適な数のヘテロ原子を含み得る。前記ヘテロシクロアルキル基は、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペラジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-及び1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、又はジチアンなどの基を含み得る。前記ヘテロシクロアルキル基はまた、芳香族又は非芳香族環系と縮合して、限定されないが、インドリンを含めた構成員を形成していてもよい。
【0110】
ヘテロシクロアルキルが3~8環員及び1~3個のヘテロ原子を含むとき、代表的な構成員として、限定されないが、ピロリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、オキサン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピラゾリン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン及びジチアンが挙げられる。ヘテロシクロアルキルは、5~6環員及び1~2個のヘテロ原子を有する環を形成していてもよく、代表的な構成員として、限定されないが、ピロリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラゾリン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、及びモルホリンが挙げられる。
【0111】
「アリール」は、任意の好適な環原子数及び任意の好適な環数を有する芳香族環系をいう。アリール基は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16環原子、並びに6~10、6~12、又は6~14環員などの、任意の好適な数の環原子を含み得る。アリール基は、単環式であっても、縮合して二環式基又は三環式基を形成していても、結合によって連結してビアリール基を形成していてもよい。代表的なアリール基として、フェニル、ナフチル及びビフェニルが挙げられる。他のアリール基として、メチレン連結基を有するベンジルが挙げられる。いつくかのアリール基は、フェニル、ナフチル、又はビフェニルなどの6~12環員を有する。他のアリール基は、フェニル又はナフチルなどの6~10環員を有する。いつくかの他のアリール基は、フェニルなどの6環員を有する。アリール基は、置換されていても非置換であってもよい。
【0112】
「ヘテロアリール」は、5~16環原子を含有する単環式、縮合二環式、又は三環式の芳香族環アセンブリをいい、当該環原子のうちの1~5個がN、O、又はSなどのヘテロ原子である。限定されないが、B、Al、Si、及びPを含めたさらなるヘテロ原子も有用であり得る。前記ヘテロ原子はまた、酸化され得、例えば、限定されないが、N-オキシド、-S(O)-及び-S(O)-であり得る。ヘテロアリール基は、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、又は3~12環員などの任意の数の環原子を含み得る。前記ヘテロアリール基は、1、2、3、4、若しくは5;又は1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、又は3~5などの任意の好適な数のヘテロ原子を含み得る。ヘテロアリール基は、5~8環員及び1~4個のヘテロ原子、又は5~8環員及び1~3個のヘテロ原子、又は5~6環員及び1~4個のヘテロ原子、又は5~6環員及び1~3個のヘテロ原子を有し得る。前記ヘテロアリール基は、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-、及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソオキサゾールなどの基を含み得る。前記ヘテロアリール基はまた、フェニル環などの芳香族環系と縮合して、構成員、限定されないが、インドール及びイソインドールなどのベンゾピロール、キノリン及びイソキノリンなどのベンゾピリジン、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、フタラジン及びシンノリンなどのベンゾピリダジン、ベンゾチオフェン、並びにベンゾフランを形成することもできる。他のヘテロアリール基は、ビピリジンなどの、結合によって連結されたヘテロアリール環を含む。ヘテロアリール基は、置換されていても非置換であってもよい。
【0113】
前記ヘテロアリール基は、その環の任意の位置を介して連結され得る。例えば、ピロールとして、1-、2-、及び3-ピロールが挙げられ;ピリジンとして、2-、3-及び4-ピリジンが挙げられ;イミダゾールとして、1-、2-、4-及び5-イミダゾールが挙げられ;ピラゾールとして、1-、3-、4-及び5-ピラゾールが挙げられ;トリアゾールとして、1-、4-及び5-トリアゾールが挙げられ;テトラゾールとして、1-及び5-テトラゾールが挙げられ;ピリミジンとして、2-、4-、5-及び6-ピリミジンが挙げられ;ピリダジンとして、3-及び4-ピリダジンが挙げられ;1,2,3-トリアジンとして、4-及び5-トリアジンが挙げられ;1,2,4-トリアジンとして、3-、5-及び6-トリアジンが挙げられ;1,3,5-トリアジンとして、2-トリアジンが挙げられ;チオフェンとして、2-及び3-チオフェンが挙げられ;フランとして、2-及び3-フランが挙げられ;チアゾールとして、2-、4-及び5-チアゾールが挙げられ;イソチアゾールとして、3-、4-及び5-イソチアゾールが挙げられ;オキサゾールとして、2-、4-及び5-オキサゾールが挙げられ;イソオキサゾールとして、3-、4-及び5-イソオキサゾールが挙げられ;インドールとして、1-、2-及び3-インドールが挙げられ;イソインドールとして、1-及び2-イソインドールが挙げられ;キノリンとして、2-、3-及び4-キノリンが挙げられ;イソキノリンとして、1-、3-及び4-イソキノリンが挙げられ;キナゾリンとして、2-及び4-キノアゾリンが挙げられ;シンノリンとして、3-及び4-シンノリンが挙げられ;ベンゾチオフェンとして、2-及び3-ベンゾチオフェンが挙げられ;ベンゾフランとして、2-及び3-ベンゾフランが挙げられる。
【0114】
いくつかのヘテロアリール基として、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、及びベンゾフランなどの、5~10環員、及びN、O、又はSを含む1~3個の環原子を有するものが挙げられる。他のヘテロアリール基として、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソオキサゾールなどの、5~8環員、及び1~3個のヘテロ原子を有するものが挙げられる。いくつかの他のヘテロアリール基として、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン及びビピリジンなどの、9~12環員、及び1~3個のヘテロ原子を有するものが挙げられる。さらに他のヘテロアリール基として、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソオキサゾールなどの、5~6環員、及びN、O又はSを含む1~2個の環ヘテロ原子を有するものが挙げられる。
【0115】
いくつかのヘテロアリール基は、5~10環員、及び窒素ヘテロ原子のみを含み、例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、及びシンノリンが挙げられる。他のヘテロアリール基は、5~10環員、及び酸素ヘテロ原子のみを含み、例えば、フラン及びベンゾフランが挙げられる。いくつかの他のヘテロアリール基は、5~10環員、及び硫黄ヘテロ原子のみを含み、例えば、チオフェン及びベンゾチオフェンが挙げられる。さらに他のヘテロアリール基は、5~10環員、及び少なくとも2個のヘテロ原子を含み、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、及びシンノリンが挙げられる。
【0116】
「ヘテロ原子」は、O、S、又はNをいう。
【0117】
「塩」は、本発明の方法において使用される化合物の酸又は塩基の塩をいう。医薬的に許容可能な塩の例示的な例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)塩、及び第4級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)塩である。前記医薬的に許容可能な塩は非毒性であることが理解される。好適な医薬的に許容可能な塩についてのさらなる情報は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985に見出され得る。
【0118】
「異性体」は、同じ化学式を有するが構造的に識別可能である化合物をいう。
【0119】
「互変異性体」は、平衡で存在し且つ一方の形態から他方に容易に変換される2以上の構造異性体のうちの1つをいう。
【0120】
本発明の化合物の記載は、当業者に公知の化学結合の原理によって制限される。したがって、基が、多数の置換基のうちの1又は複数によって置換されていてよいとき、かかる置換は、化学結合の原理と適合するように、且つ、本質的には不安定ではない且つ/又は、周囲条件-例えば、水性、中性、若しくは生理的条件-下で不安定になり易いことが当業者に公知であろう化合物を生成するように選択される。
【0121】
「医薬的に許容可能な添加剤(excipient)」及び「医薬的に許容可能な担体」は、被験体への活性剤の投与及び被験体による吸収を補助する物質をいい、患者に大幅な有害毒性効果を引き起こすことなく本発明の組成物に含まれ得る。本明細書で使用される場合、これらの用語は、薬剤投与と適合するありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、抗酸化剤、等張及び吸収遅延剤などを含むことが意図される。医薬的に許容可能な添加剤の非限定例として、水、NaCl、生理食塩水、乳酸加リンゲル液、通常のスクロース、通常のグルコース、バインダー、フィラー、崩壊剤、カプセル化剤、可塑剤、潤沢剤、コーティング、甘味料、香味料及び顔料などが挙げられる。当業者は、他の医薬的添加剤が本発明において有用であることを認識するであろう。医薬的に活性な物質のためのかかる媒体及び薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体又は剤がかかる活性化合物と適合しない限りを除いて、前記の組成物におけるこれらの使用が企図される。追加の活性化合物が前記組成物に組み込まれてもよい。当業者は、他の医薬的添加剤が本発明において有用であることを認識するであろう。
【0122】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている方法は、縮合アザデカリン構造を含むGRM;ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含むGRM;又はオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含むGRMを投与することを含む併用療法を含む。
【0123】
縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとして、米国特許第7,928,237号;及び同第8,461,172号に記載されているものが挙げられ、本明細書に開示されているように調製され得、上記特許はその全体が本明細書に組み込まれる。かかる例示的なGRMは、SGRMであってよい。いくつかの場合において、前記の縮合アザデカリン構造を含むGRMは、以下の構造を有するもの、又はその塩若しくは異性体である。
【化16】

式中、
及びLは独立して結合及び非置換アルキレンから選択される要素であり;
は非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR1A、NR1C1D、-C(O)NR1C1D、及び-C(O)OR1Aから選択される要素であり、ここでR1Aは水素、非置換アルキル、及び非置換ヘテロアルキルから選択される要素であり;
1C及びR1Dは、独立して非置換アルキル及び非置換ヘテロアルキルから選択される要素であり、互いに結合してそれらが結合している窒素と共に非置換の環を形成していてもよく、ここで前記環は追加の環窒素を含んでいてもよく;
は下記式を有し:
【化17】

式中、
2Gは水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CN、及び-CFから選択される要素であり;
Jはフェニルであり;
tは0~5の整数であり;
Xは-S(O)-であり;
は1~5個のR5A基で置換されていてもよいフェニルであり、
5Aは水素、ハロゲン、-OR5A1、S(O)NR5A25A3、-CN、及び非置換アルキルから選択される要素であり、
5A1は水素及び非置換アルキルから選択される要素であり、
5A2及びR5A3は独立して水素及び非置換アルキルから選択される要素である。
【0124】
いくつかの場合において、前記縮合アザデカリン化合物は
【化18】

である。
【0125】
ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとして、米国特許第8,859,774号に記載されているものが挙げられ、これらは、本明細書に開示されているように調製され得、上記特許はその全体が本明細書に組み込まれる。かかる例示的なGRMは、SGRMであってよい。いくつかの場合において、前記のヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含むGRMは、以下の構造を有するもの、又はその塩若しくは異性体である。
【化19】

式中、
は、5~6個の環員を有し、且つ、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環であり、前記ヘテロアリール環はそれぞれ独立してR1aから選択される1~4個の基で置換されていてもよく;
1aはそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、及びヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで前記ヘテロシクロアルキル環及びヘテロアリール環は、5~6個の環員、及びそれぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を有し;
はそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル-C1-6アルコキシ、CN、OH、NR2a2b、C(O)R2a、C(O)OR2a、C(O)NR2a2b、SR2a、S(O)R2a、S(O)2a、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され、ここで前記ヘテロシクロアルキル基は1~4個のR2c基で置換されていてもよく;
あるいは、同じ炭素に結合した2個のR基が組み合わされてオキソ基(=O)を形成しており;
あるいは、2個のR基が組み合わされて、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子とを有する、ヘテロシクロアルキル環を形成しており、ここで前記ヘテロシクロアルキル環は1~3個のR2d基で置換されていてもよく;
2a及びR2bはそれぞれ独立して水素及びC1-6アルキルからなる群より選択され;
2cはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、CN、及びNR2a2bからなる群より選択され;
2dはそれぞれ独立して水素及びC1-6アルキルからなる群より選択され、あるいは、同じ環原子に結合した2個のR2d基が組み合わされて(=O)を形成しており;
はそれぞれ1~4個のR3a基で置換されていてもよいフェニル及びピリジルからなる群より選択され;
3aはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、及びC1-6ハロアルキルからなる群より選択され;
下付き文字nは0~3の整数である。
【0126】
いくつかの場合において、前記非ステロイド性SGRMは、CORT125134、すなわち、(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、以下の構造を有する。
【化20】
【0127】
オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的なGRMとして、米国特許第10,047,082号に記載されているものが挙げられ、本明細書に記載されているように調製され得、この米国特許の開示内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。かかる例示的なGRMは、SGRMであってよい。いくつかの場合において、前記のオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含むGRMは、以下の構造を有するもの、又はその塩若しくは異性体である。
【化21】

式中、
は、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子と、を有するヘテロアリール環であり、前記ヘテロアリール環はそれぞれ独立してR1aから選択される1~4個の基で置換されていてもよく;
1aはそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC3-8シクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子と、を有するアリール環及びヘテロアリール環からなる群より選択され;
はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル-C1-6アルコキシ、CN、OH、NR2a2b、C(O)R2a、C(O)OR2a、C(O)NR2a2b、SR2a、S(O)R2a、S(O)2a、C3-8シクロアルキル、並びにそれぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子を有するC3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
あるいは、隣接し合う環原子上の2個のR基が組み合わされて、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子とを有する、ヘテロシクロアルキル環を形成しており、前記ヘテロシクロアルキル環は1~3個のR2c基で置換されていてもよく;
2a、R2b、及びR2cはそれぞれ独立して水素及びC1-6アルキルからなる群より選択され;
3aはそれぞれ独立してハロゲンであり;
下付き文字nは0~3の整数である。
【0128】
いくつかの実施形態において、前記オクタヒドロ縮合アザデカリン化合物は、以下の構造を有するもの、又はその塩若しくは異性体である。
【化22】

式中、
は、それぞれ独立してR1aから選択される1~4個の基で置換されていてもよい、ピリジン及びチアゾールからなる群より選択され、
1aはそれぞれ独立して水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC3-8シクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、フェニル、ピリジン、ピラゾール、及びトリアゾールからなる群より選択され;
はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、C1-6ハロアルキル、及び-CNからなる群より選択され;
3aは、Fであり;
下付き文字nは、0~3の整数である。
【0129】
いくつかの場合において、前記非ステロイド性SGRMは、エキシコリラント(CORT125281とも呼ばれる)、すなわち、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、以下の構造を有する。
【化23】
【0130】
いくつかの場合において、前記非ステロイド性SGRMは、CORT125329、すなわち、((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、以下の構造を有する。
【化24】
【0131】
(選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SGRM)の同定)
試験化合物がSGRMであるかを決定するために、前記化合物を、まず、前記GRに結合してGR媒介活性を阻害するその能力を測定するアッセイに供し、前記化合物が、グルココルチコイド受容体モジュレーターであるかを決定する。前記化合物は、グルココルチコイド受容体モジュレーターであることが確認されたら、次いで、前記化合物が、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体又は鉱質コルチコイド受容体などの非GRタンパク質と比較して、GRに特異的に結合することができるかを決定する選択性試験に供する。ある実施形態において、SGRMは、非GRタンパク質よりも実質的に高い親和性、例えば、少なくとも10倍高い親和性でGRに結合する。SGRMは、非GRタンパク質への結合と比較して、100倍、1000倍又はこれを超えて高い、GRへの結合の選択性を示し得る。
【0132】
結合
グルココルチコイド受容体に結合する試験化合物の能力は、様々なアッセイを使用して、例えば、前記試験化合物が、前記グルココルチコイド受容体への結合について、デキサメタゾンなどのグルココルチコイド受容体リガンドと競合する能力についてスクリーニングすることによって測定され得る。当業者は、かかる競合結合アッセイを実施するための多数の方法があることを認識するであろう。いくつかの実施形態において、前記グルココルチコイド受容体は、標識グルココルチコイド受容体リガンドと共にプレインキュベートされ、次いで、試験化合物と接触する。このタイプの競合結合アッセイはまた、本明細書において結合置き換えアッセイと称される場合もある。グルココルチコイド受容体に結合する標識リガンドの量の減少は、前記試験化合物が前記グルココルチコイド受容体に結合することを示す。いくつかの場合において、前記標識リガンドは、蛍光標識化合物(例えば、蛍光標識ステロイド又はステロイド類縁体)である。代替的には、前記グルココルチコイド受容体への試験化合物の結合は、標識試験化合物によって直接測定され得る。この後者のタイプのアッセイは、直接結合アッセイと称される。
【0133】
直接結合アッセイ及び競合結合アッセイは、いずれも、様々な異なるフォーマットにおいて使用され得る。前記フォーマットは、イムノアッセイ及び受容体結合アッセイにおいて使用されるものと類似していてよい。競合結合アッセイ及び直接結合アッセイを含めた結合アッセイ用の異なるフォーマットの説明については、Basic and Clinical Immunology 7th Edition(D.Stites and
A.Terr ed.) 1991;Enzyme Immunoassay,E.T.Maggio,ed.,CRC Press,Boca Raton,Florida(1980);及び「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」、P.Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Elsevier Science Publishers B.V.Amsterdam(1985)を参照されたい、これらのそれぞれが、参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
固相競合結合アッセイにおいて、例えば、試料化合物は、固体表面に結合する結合剤における特異的な結合部位について標識検体と競合し得る。このタイプのフォーマットにおいて、前記標識検体は、グルココルチコイド受容体リガンドであってよく、前記結合剤は、固相に結合するグルココルチコイド受容体であってよい。代替的には、前記標識検体は、標識グルココルチコイド受容体であってよく、前記結合剤は、固相グルココルチコイド受容体リガンドであってよい。捕捉剤に結合する標識検体の濃度は、試験化合物が前記結合アッセイにおいて競合する能力と反比例する。
【0135】
代替的には、前記競合結合アッセイが液相で行われてもよく、結合標識タンパク質を非結合標識タンパク質から分離するのに、当該分野において公知の様々な技術のいずれが使用されてもよい。例えば、結合リガンド及び過剰な結合リガンド間又は結合試験化合物及び過剰な非結合試験化合物間を識別するためのいくつかの手順が開発されている。これらには、スクロース勾配、ゲル電気泳動、又はゲル等電点電気泳動法における析出による結合複合体の同定;硫酸プロタミンによる受容体-リガンド複合体の沈殿又は水酸リン灰石における吸着;及びデキストラン-コーティングチャコール(DCC)における吸着又は固定化抗体への結合による非結合化合物又はリガンドの除去が含まれる。分離後、結合リガンド又は試験化合物の量を求める。
【0136】
代替的には、分離工程を必要としない均質な結合アッセイが実施されてもよい。例えば、グルココルチコイド受容体における標識は、当該グルココルチコイド受容体のそのリガンド又は試験化合物への結合によって改変され得る。かかる標識グルココルチコイド受容体におけるこの改変は、標識によって発せられるシグナルの減少又は増大を結果として生じさせ、その結果、前記結合アッセイの終わりの前記標識の測定が、結合状態での前記グルココルチコイド受容体の検出又は定量を可能にすることとなる。多種多様な標識が使用されうる。構成要素は、いくつかの方法のいずれか1つによって標識されうる。有用な放射性標識として、H、125I、35S、14C、又は32Pを組み込んだものが挙げられる。有用な非放射性標識として、フルオロフォア、化学発光剤、リン光剤、電気化学発光剤などを組み込んだものが挙げられる。蛍光剤は、蛍光異方性及び/又は蛍光偏光などの、タンパク質構造におけるシフトを検出するのに使用される分析技術において特に有用である。標識の選択は、必要とされる感受性、化合物との抱合の容易さ、安定性要件、及び利用可能な計装に依る。使用され得る種々の標識化又はシグナル生成系のレビューについては、その内容が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,391,904号を参照されたい。前記標識は、当該分野において周知の方法にしたがって前記アッセイの所望の構成要素に直接又は間接的にカップリングされ得る。いくつかの場合において、試験化合物は、GRへの既知の親和性を有する蛍光標識リガンド(例えば、ステロイド又はステロイド類縁体)の存在下で前記GRに接触し、結合及び遊離標識リガンドの量は、前記標識リガンドの蛍光偏光を測定することによって見積もられる。
【0137】
活性
1)HepG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ
GRへの所望の結合親和性を実証している化合物について、GR媒介活性の阻害におけるそれらの活性を試験する。前記化合物を、典型的には、チロシンアミノトランスフェラーゼアッセイ(TATアッセイ)に供し、試験化合物がデキサメタゾンによるチロシンアミノトランスフェラーゼ活性の誘発を阻害する能力を評価する。実施例1を参照されたい。本明細書に開示されている方法に好適であるGRモジュレーターは、10マイクロモル未満のIC50(最大半量の阻害濃度)を有する化合物を有する。限定されないが後述のものを含めた他のアッセイもまた、前記化合物のGR調節活性を確認するために展開され得る。
【0138】
2)細胞ベースのアッセイ
グルココルチコイド受容体を含有する全細胞又は細胞画分に関する細胞ベースのアッセイもまた、試験化合物の結合又は前記グルココルチコイド受容体の活性の調節についてのアッセイに使用され得る。本発明の方法によって使用され得る例示的な細胞タイプとして、例えば、好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、肥満細胞、並びにT細胞及びB細胞などのリンパ球などの白血球、白血病細胞、バーキットリンパ腫細胞、腫瘍細胞(マウス乳腺腫瘍ウイルス細胞を含む)、内皮細胞、線維芽細胞、心臓細胞、筋肉細胞、乳房の腫瘍細胞、卵巣がんのがん腫、子宮頸がん腫、膠芽細胞腫、肝臓細胞、腎細胞、及び神経細胞を含めたあらゆる哺乳類細胞、並びに、酵母を含めた真菌細胞が挙げられる。細胞は、初代細胞若しくは腫瘍細胞又は他のタイプの不死の細胞株であり得る。当然ながら、前記グルココルチコイド受容体は、前記グルココルチコイド受容体の内因性のもの(endogenous version)を発現しない細胞において発現され得る。
【0139】
いくつかの場合において、前記グルココルチコイド受容体の断片、並びに、タンパク質融合が、スクリーニングに使用され得る。グルココルチコイド受容体リガンドとの結合について競合する分子が所望されるとき、使用されるGR断片は、リガンド(例えば、デキサメタゾン)の結合を可能にする断片である。代替的には、前記グルココルチコイド受容体を結合させる分子を同定するための標的として、GRの任意の断片が使用され得る。グルココルチコイド受容体断片は、例えば、少なくとも20、30、40、50のアミノ酸から、グルココルチコイド受容体からアミノ酸1個を除いた全てを含有するタンパク質に至るまでのうちの、任意の断片を含み得る。
【0140】
いくつかの実施形態においては、グルココルチコイド受容体の活性化が引き金となるシグナル伝達の低減が、グルココルチコイド受容体モジュレーターを同定するのに使用される。前記グルココルチコイド受容体のシグナル伝達活性は、多くの方法で求められ得る。例えば、下流の分子事象をモニタリングして、シグナル伝達活性を測定することができる。下流事象として、グルココルチコイド受容体の刺激の結果として生じるこれらの活性又は兆候が挙げられる。不変の細胞における転写活性化及びアンタゴニズムの機能評価において有用な例示的な下流事象として、多数のグルココルチコイド応答要素(GRE)-依存性遺伝子(PEPCK、チロシンアミノトランスフェラーゼ、アロマターゼ)の上方調節が挙げられる。加えて、グルココルチコイドによって下方調節される骨芽細胞;PEPCK及びグルコース-6-ホスフェート(G-6-Pase))のグルココルチコイド媒介上方調節を示す初代肝細胞におけるオステオカルシン発現など、GR活性化の影響を受けやすい特定の細胞タイプが使用されてよい。GRE媒介遺伝子発現もまた、周知のGRE調節配列(例えば、レポーター遺伝子構築物の上流でトランスフェクトされたマウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター(MMTV))を使用してトランスフェクトされた細胞株において実証されている。有用なレポーター遺伝子構築物の例として、ルシフェラーゼ(luc)、アルカリ性ホスファターゼ(ALP)及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が挙げられる。転写抑制の機能評価は、単球又はヒト皮膚線維芽細胞などの細胞株において実施され得る。有用な機能アッセイとして、IL-1ベータ刺激IL-6発現を測定するもの;コラゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2及び種々のケモカイン(MCP-1、RANTES)の下方調節;LPS刺激サイトカイン放出、例えば、TNFα;又はトランスフェクト細胞株におけるNFkB若しくはAP-1転写因子によって調節される遺伝子の発現が挙げられる。
【0141】
全細胞アッセイにおいて試験される化合物は、細胞毒性アッセイにおいても試験され得る。細胞毒性アッセイは、把握される効果が非グルココルチコイド受容体結合細胞効果に起因する程度を決定するのに使用される。例示的ないくつかの実施形態において、前記細胞毒性アッセイは、構成的に活性な細胞(constitutively active cell)を試験化合物と接触させることを含む。細胞活性の減少が何かしらあればそれが細胞毒性効果があることを示す。
【0142】
3)さらなるアッセイ
本発明の方法において利用される組成物を同定するのに使用され得る多くのアッセイのさらなる例としては、インビボでのグルココルチコイド活性に基づくアッセイがある。例えば、推定GRモジュレーター(putative GR modulator)がグルココルチコイドによって刺激される細胞においてDNA内への3H-チミジンの取り込みを阻害する能力を評価するアッセイが使用され得る。代替的には、前記推定GRモジュレーターは、肝がん組織培養GRへの結合について3H-デキサメタゾンと競合し得る(例えば、Choi,et al.,Steroids 57:313-318,1992を参照されたい)。別の例として、推定GRモジュレーターが3H-デキサメタゾン-GR複合体の核結合を遮断する能力が使用され得る(Alexandrova et al.,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.41:723-725,1992)。推定GRモジュレーターをさらに同定するために、受容体-結合キネティクスを利用してグルココルチコイドアゴニスト及び調節剤間を区別することが可能である動的アッセイを使用してもよい(Jones,Biochem J.204:721-729,1982に記載されている)。
【0143】
別の例示的な例において、Daune,Molec.Pharm.13:948-955,1977によって;且つ米国特許第4,386,085号において記載されているアッセイが、抗グルココルチコイド活性を同定するのに使用され得る。簡潔には、副腎切除されたラットの胸腺細胞を、前記試験化合物(前記推定GRモジュレーター)を変動濃度で用いてデキサメタゾンを含有する栄養培地においてインキュベートする。H-ウリジンを細胞培養物に添加し、これを、さらにインキュベートし、ポリヌクレオチドへの放射性標識の組み込みの程度を測定する。グルココルチコイドアゴニストは、組み込まれるH-ウリジンの量を減少させる。そのため、GRモジュレーターは、この効果に対抗する。
【0144】
選択性
上記で選択されたGRモジュレーターは、次いで、選択性アッセイに供されて、これらがSGRMであるかが決定される。典型的には、選択性アッセイは、非グルココルチコイド受容体タンパク質への結合の程度について、グルココルチコイド受容体にインビトロで結合する化合物を試験することを含む。選択性アッセイは、上記で記載されているように、インビトロで又は細胞ベースの系において実施されうる。結合は、抗体、受容体、酵素などを含めた、任意の適切な非グルココルチコイド受容体タンパク質に対して試験されうる。例示的ないくつかの実施形態において、かかる非グルココルチコイド受容体結合タンパク質は、細胞表面受容体又は核受容体である。別の例示的ないくつかの実施形態において、前記非グルココルチコイド受容体タンパク質は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、又は鉱質コルチコイド受容体などのステロイド受容体である。
【0145】
MRに比してのGRに対するアンタゴニストの選択性は、当業者に公知の様々なアッセイを使用して測定され得る。例えば、特異的なアンタゴニストは、当該アンタゴニストがMRと比較してGRに結合する能力を測定することによって同定され得る(例えば、米国特許第5,606,021号;同第5,696,127号;同第5,215,916号;同第5,071,773号を参照されたい)。かかる分析は、直接結合アッセイを使用して、又は、公知のリガンドの存在下での精製されたGR若しくはMRへの競合結合を評価することによってのいずれかで実施され得る。例示的なアッセイにおいて、グルココルチコイド受容体又は鉱質コルチコイド受容体(例えば、米国特許第5,606,021号を参照されたい)を高レベルで安定して発現する細胞は、精製受容体の供給源として使用される。前記受容体への前記リガンドの親和性は、次いで直接測定される。MRへの親和性に比してGRに、少なくとも10倍、100倍、多くの場合1000倍高い親和性を示すこれらのGRモジュレーターは、本発明の方法における使用のために次いで選択される。
【0146】
前記選択性アッセイはまた、GR媒介活性を阻害するがMR媒介活性を阻害しない能力のアッセイも含み得る。かかるGR特異的調節剤を同定する1つの方法は、トランスフェクションアッセイを使用して、アンタゴニストがレポーター構築物の活性化を防止する能力を評価することである(例えば、Bocquel et al,J.Steroid Biochem Molec.Biol.45:205-215,1993;米国特許第5,606,021号、同第5,929,058号を参照されたい)。例示的なトランスフェクションアッセイにおいて、前記受容体をコードする発現プラスミド、及び受容体特異的調節エレメントに連結したレポーター遺伝子を含有するレポータープラスミドが、好適な受容体陰性宿主細胞に共トランスフェクトされる。このトランスフェクトされた宿主細胞は、コルチゾール又はその類縁体などのホルモンの存在下及び非存在下で次いで培養され、前記のレポータープラスミドのホルモン応答性プロモーター/エンハンサーエレメントを活性化することができる。次いで、このトランスフェクト及び培養された宿主細胞は、レポーター遺伝子配列の産物の誘発(すなわち、存在)についてモニタリングされる。最終的に、ホルモン受容体タンパク質(前記発現プラスミドにおける受容体DNA配列によってコードされ、前記のトランスフェクト及び培養された宿主細胞において産生される)の発現及び/又はステロイド結合能力は、アンタゴニストの存在及び非存在下で前記レポーター遺伝子の活性を決定することによって測定される。化合物のアンタゴニスト活性は、GR及びMR受容体の既知のアンタゴニストと比較して決定され得る(例えば、米国特許第5,696,127号を参照されたい)。次いで、効能が、参照アンタゴニスト化合物と比較して各化合物について観察される最大応答パーセントとして報告される。MR、PR、又はARに比してGRに対して少なくとも100倍、多くの場合、1000倍以上の活性を示すGRモジュレーターが、次いで、本明細書に開示されている方法における使用のために選択される。
【0147】
がんの診断
がんは、異常細胞の制御されない成長及び/又は広がりによって特徴付けられる。典型的には生検がなされ、当該生検からの細胞又は組織を、疑わしい状態を確認するために顕微鏡下で検査する。いくつかの場合において、診断を検証するために、細胞のタンパク質、DNA、及びRNAにおいて、さらなる試験が実施される必要がある。
【0148】
チェックポイント阻害剤感受性がんの同定
本発明のいくつかの実施形態において、方法は、少なくとも1のチェックポイント阻害剤感受性がんを有する患者を処置するのに使用される。チェックポイント阻害剤感受性がんは、チェックポイント阻害剤に応答性であるものであり、すなわち、1又は複数のチェックポイント阻害剤の投与は、腫瘍量を低減し得、又は、がん改善に関係する有益な若しくは所望の臨床結果を達成することができる。例えば、前記のチェックポイント阻害剤の投与は、がん細胞数の低減;腫瘍サイズの低減;周辺器官へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度まで遅くすること、及び/若しくは停止すること);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度まで遅くすること、及び/若しくは停止すること);腫瘍成長のある程度までの阻害;並びに/又は障害に関連する症状の1又は複数のある程度までの緩和;腫瘍のサイズの縮小;疾患から生じる症状の減少;疾患に罹患しているものの生活の質の向上;疾患を処置するために必要とされる他の医薬の用量の減少;疾患の進行の遅延;並びに/又は患者の生存の延長、のうちの1又は複数を引き起こし得る。
【0149】
チェックポイント阻害剤感受性腫瘍は、多くの場合、リガンド、例えば、チェックポイントタンパク質、PD-1又はCTLA-4にそれぞれ結合するPD-L1又はB7の高い発現を有する。これらの相互作用は、腫瘍細胞に対する免疫応答を抑制する。本明細書に開示されているように、GRM又はSGRMの投与は、他の場合にはチェックポイント阻害剤に比較的非感受性である腫瘍においてチェックポイント阻害剤感受性を誘発し得、又は、腫瘍におけるチェックポイント阻害剤感受性を向上させ得るとされている。チェックポイント阻害剤感受性腫瘍、及びチェックポイント阻害剤感受性となるように誘導され得る腫瘍の非限定例として、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膀胱がん、結腸がん、乳がん、神経膠腫、腎がん腫、胃がん、食道がん、口腔扁平細胞がん、頭部/頚部がん、黒色腫、肉腫、腎細胞腫瘍、肝細胞腫瘍、膠芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、膀胱がん、膵臓がん、胆嚢がん、胃がん、前立腺がん、子宮内膜がん、甲状腺がん及び中皮腫が挙げられる。
【0150】
iii.GR発現の同定
いくつかの実施形態において、前記チェックポイント阻害剤感受性がんは、GRがんでもある。がん細胞におけるGR発現は、常套の生化学分析のうちの1又は複数を使用することによって検査され得る。いくつかの実施形態において、GR発現は、マイクロアレイ及びRT-PCRなどの方法を使用して、GR転写発現を検出することによって決定される。他のいくつかの実施形態において、GR発現は、ウエスタンブロット分析及び免疫組織化学染色などの方法を使用してタンパク質発現を検出することによって決定される。さらに他のいくつかの実施形態において、前記GR発現は、これらの方法の組み合わせを使用して決定される。
【0151】
好ましいいくつかの実施形態においては、免疫組織化学染色を実施し、H-スコア法を使用して、がん組織におけるGRの発現を定量化する。ある例のアッセイにおいては、ホルマリン固定及びパラフィン包埋された腫瘍組織切片を脱パラフィンし、抗原回復溶液によって処理して、グルココルチコイド受容体を抗GR抗体に容易にアクセス可能にする。抗GR抗体を次いで前記組織切片によってインキュベートし、前記組織切片においてGRに結合する抗体を、抗GR抗体を認識する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート二次抗体の添加によって検出する。この二次抗体コンジュゲートにおけるHRPは、比色反応を触媒し、適切な基質との接触の際に、GRが存在する箇所において染色を生じさせる。1つのアプローチにおいて、GR染色の強度レベルは、負染色では0、弱い染色では1+、中程度の染色では2+、強い浅色では3+によって表される。www.ihcworld.com/ihc_scoring.htmを参照されたい。前記強度レベルを、各強度レベルのGR細胞の百分率と乗算し、全ての強度レベルについての結果を総計して0~300間のH-スコアを生じる。ある実施形態において、所定の閾値以上のH-スコアを有するがんタイプは、GRがんとみなされる。好ましいいくつかの実施形態において、前記閾値は150である。別のいくつかの実施形態において、GRがんは、任意の強度においてGR染色を示す少なくとも10%の腫瘍細胞を有するものである。H-スコア150の閾値を使用すると、多数のがんタイプがGRである。以下の表1を参照されたい。これらのがんタイプの大部分が、公開されている臨床試験結果によって示されているようにチェックポイント阻害剤感受性がんである。ウェブサイト「clinicaltrials.gov」を参照されたい。
【0152】
(チェックポイント阻害剤)
本明細書に開示されている方法は、少なくとも1のSGRMを少なくとも1のチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用して、がんを処置する。いくつかの実施形態において、前記チェックポイント阻害剤は、少なくとも1のチェックポイントタンパク質に対する抗体(「CIA」)である。いくつかの実施形態において、前記チェックポイント阻害剤は、1又は複数のチェックポイントタンパク質によって誘発される免疫抑制経路を遮断する小分子の非タンパク質化合物(「CIC」)である。
【0153】
i.チェックポイント阻害剤抗体(「CIA」)
ある実施形態において、前記のがんを処置する方法は、SGRMをチェックポイント阻害剤抗体と組み合わせて投与することを含む。かかる抗体は、前記チェックポイントタンパク質の免疫抑制活性を遮断し得る。多数のかかる抗体、例えば、PD-1、CTLA4、及びPD-L1に対する抗体が、がんを処置するのに有効であることが既に示されている。
【0154】
抗PD-1抗体は、黒色腫、非小細胞肺がん、膀胱がん、前立腺がん、大腸がん、頭頸部がん、トリプルネガティブ乳がん、白血病、リンパ腫及び腎細胞がんの処置に使用されている。例示的な抗PD-1抗体として、ラムブロリズマブ(MK-3475、MERCK)、ニボルマブ(BMS-936558、BRISTOL-MYERS SQUIBB)、AMP-224(MERCK)、及びピジリズマブ(CT-011、CURETECH LTD.)が挙げられる。
【0155】
抗PD-L1抗体は、非小細胞肺がん、黒色腫、大腸がん、腎細胞がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、乳がん、及び悪性血液疾患の処置に使用されている。例示的な抗PD-L1抗体として、MDX-1105(MEDAREX)、MEDI4736(MEDImmune)、MPDL3280A(GENENTECH)及びBMS-936559(BRISTOL-MYERS SQUIBB)が挙げられる。
【0156】
抗CTLA4抗体は、黒色腫、前立腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がんの処置の臨床試験において使用されている。抗CTL4Aの顕著な特徴は、初回処置後、最長で6ヶ月の遅延期間を生理的応答に必要とする、抗腫瘍効果のキネティクスである。いくつかの場合において、腫瘍は、縮小が見られる前に、処置開始後にサイズが実際に増大する場合がある(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。例示的な抗CTLA4CIAとして、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb)及びトレメリムマブ(PFIZER)が挙げられる。
【0157】
LAG3、B7-H3、B7-H4及びTIM3などの、他のチェックポイントタンパク質に対するCIAもまた、本明細書に開示されているSGRMと併用されて、がんを処置することができる。
【0158】
本開示において使用されるCIAは、特に、標的チェックポイントタンパク質、例えば、PD-1及びCTLA4が、異なるシグナル伝達経路を介して免疫応答を抑制するときには、異なるCIAの組み合わせであり得る。前記チェックポイントタンパク質のいずれかに対する複数のCIAの組み合わせ又は両方のチェックポイントタンパク質に対するものである単独のCIAは、免疫応答の向上を提供し得る。
【0159】
(CIAの生成)
CIAは、当該分野において周知の方法を使用して発現させることができる。例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)、及びColigan et al.(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL.1,pages 2.5.1-2.6.7(John Wiley & Sons 1991)を参照されたい。モノクローナル抗体は、マウスに、抗原、例えば、チェックポイントタンパク質又はそのエピトープを含む組成物を注射し、脾臓を取り除いてBリンパ球を得、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを産生させ、当該ハイブリドーマをクローニングし、前記抗原への抗体を産生する陽性クローンを選択し、前記抗原への抗体を産生する前記クローンを培養し、ハイブリドーマ培養物から前記抗体を単離することによって得ることができる。
【0160】
産生されたモノクローナル抗体は、様々な確立された技術によってハイブリドーマ培養物から単離及び精製されうる。かかる単離技術として、タンパク質-Aセファロースとの親和性クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、及びイオン交換クロマトグラフィが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12 and pages 2.9.1-2.9.3を参照されたい。METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,VOL.10,pages 79-104(The Humana Press,Inc.1992)におけるBaines et al.,「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」も参照されたい。チェックポイントタンパク質への抗体の初期の育成後、前記抗体は、シーケンシングされ、その後、組み換え技術によって調製されうる。マウス抗体及び抗体断片のヒト化及びキメラ化は、当業者に周知されている。例えば、Leung et
al.Hybridoma 13:469(1994);米国特許出願公開公報20140099254A1号を参照されたい。
【0161】
ヒト抗体は、チェックポイントタンパク質を使用する抗原投与に応答する特異的なヒト抗体を産生するように遺伝子操作されているトランスジェニックマウスを使用して産生されうる。Green et al.,Nature Genet.7:13(1994),Lonberg et al.,Nature 368:856(1994)を参照されたい。チェックポイントタンパク質に対するヒト抗体はまた、遺伝子又は染色体トランスフェクション法、ファージディスプレイ技術、又はインビトロ活性化B細胞によって構築されうる。例えば、McCafferty et al.,1990,Nature 348:552-553;米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照されたい。
【0162】
(CIAの修飾)
CIAはまた、既存のCIAに対して保存的修飾を導入することによっても産生されうる。例えば、修飾CIAは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、並びに/又は上記で産生した抗体の相手(counterparts)に相同するFc領域を含み得る。本明細書に開示されている方法に使用されうる修飾CIAは、チェックポイントシグナル伝達経路を遮断することができる所望の機能的特性を保持しなければならない。
【0163】
CIAはまた、タンパク質修飾部位を改変することによっても産生されうる。例えば、抗体のグリコシル化の部位は、グリコシル化を欠失した抗体を産生するように改変され得、かかる修飾CIAは、抗原への抗体の親和性を典型的は増大させる。抗体はまた、1又は複数のPEG基が当該抗体に付着するようになる条件下でポリエチレングリコール(PEG)と反応することによってPEG化されてもよい。PEG化は、抗体の生物学的半減期を増大させ得る。かかる修飾を有する抗体はまた、チェックポイント経路を遮断する所望の機能的特性を保持している限り、本明細書に開示されている選択的GRモジュレーターと併用されてもよい。
【0164】
ii.小分子の非タンパク質チェックポイント阻害剤化合物(「CIC」)
別のいくつかの実施形態において、がん、例えば、チェックポイント阻害剤感受性がんを処置する前記の方法は、SGRMをCICと併用する。CICは、チェックポイントタンパク質の免疫抑制機能に拮抗する小分子の非タンパク質化合物である。多くのCICは、当該分野において公知の、例えば、PCT公報であるWO2015034820、WO20130144704、及びWO2011082400に記載されているものである。
【0165】
CICはまた、当該分野において公知であり且つ例えば、欧州特許出願EP2360254に開示されているコンビナトリアルライブラリー法において多数のアプローチのいずれかを使用して同定されてもよい。かかるコンビナトリアルライブラリーとして、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な平行した固体位相又は溶液位相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「一ビーズ一化合物」ライブラリー法;及び親和性クロマトグラフィ選択を使用する合成ライブラリー法が挙げられる。上記の生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されているが、他の4つのアプローチは化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー又は小分子ライブラリーに適用可能である(Lam,K.S.(1997) Anticancer Drug Des.12:145)。
【0166】
iii.候補チェックポイント阻害剤の機能的特性の評価
候補、すなわち、上記で開示されているように、チェックポイントタンパク質、チェックポイントタンパク質のエピトープ、又はコンビナトリアルライブラリーからの試験化合物を含む抗原によって動物に免疫付与することによって生じた抗体が、抗体チェックポイント阻害剤であるかを評価するために、多数の周知のアッセイが使用されうる。非限定的な例のアッセイとして、結合アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA))、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析、細胞ベースのアッセイ、及びインビボアッセイが挙げられる。
【0167】
(結合アッセイ)
ある実施形態において、前記アッセイは、直接結合アッセイである。前記チェックポイントタンパク質は、前記チェックポイントタンパク質及び前記候補の結合が、複合体における標識チェックポイントタンパク質を検出することによって測定されうるように、放射性同位体又は酵素標識とカップリングされうる。例えば、チェックポイントタンパク質は、125I、35S、14C、又はHにより、直接的又は間接的のいずれかで標識され得、かかる放射性同位体は、放射性放出の直接計数によって又はシンチレーション計数によって検出される。候補がこれらの同種のチェックポイントタンパク質に結合する能力を決定することは、例えば、直接結合を測定することによって達成されうる。代替的には、チェックポイントタンパク質分子は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、又はルシフェラーゼによって酵素標識され得、標的チェックポイントタンパク質への前記候補の結合は、適切な基質を産物に変換することによって決定される。
【0168】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、CIA候補のその標的チェックポイントタンパク質への結合特異性を評価するのに一般的に使用される。典型的なアッセイにおいては、マイクロタイタープレートを、5μg/mlのチェックポイントタンパク質によって37℃で一晩コーティングすることによって、チェックポイントタンパク質によってコーティングする。候補CIAを含む血清サンプルは、PBS、5%血清、0.5% Tween-20において希釈され、ウエルにおいて室温で1時間インキュベートされ、続いて、同じ希釈剤において、抗ヒトIgG Fc及びIgG F(ab’)-西洋ワサビペルオキシダーゼが添加される。室温で1時間後、酵素活性をABTS基質(Sigma,St.Louis Mo.)の添加によって評価し、30分後、415~490nmにおいて読み取る。
【0169】
前記候補の結合キネティクス(例えば、結合親和性)もまた、Biacore分析(Biacore AB,Uppsala,Sweden)などの、当該分野において公知の標準アッセイによって評価することができる。ある例示的なアッセイにおいては、精製された組み換え型ヒトチェックポイントタンパク質を、標準的アミンカップリング化学及びBiacoreによって提供されるキットを使用して、第1級アミンを介してCM5チップ(カルボキシメチルデキストランコーティングされたチップ)に共有結合する。結合は、50μl/分の流量において267nMの濃度でHBS EP緩衝液(Biacore ABによって提供される)中に前記候補を流動させることによって測定する。チェックポイントタンパク質-候補会合キネティクスを3分間追跡し、解離キネティクスを7分間追跡する。会合及び解離曲線を、BIA評価ソフトウェア(Biacore AB)を使用して1:1ラングミュア結合モデルに適合させる。結合定数の見積もりにおいて結合力の影響を最小にするために、会合及び解離期に相当するデータの初期セグメントのみを適合に使用する。相互作用のK、Kon及びKoff値を測定することができる。好ましいチェックポイント阻害剤は、1×10-7M以下のKdを有するこれらの標的チェックポイントタンパク質に結合しうる。
【0170】
リガンドへの結合を介して免疫応答を遮断するチェックポイントタンパク質について、さらなる結合アッセイを用いて、前記候補が前記チェックポイントタンパク質への前記リガンドの結合を遮断する能力を、試験することができる。ある例示的なアッセイにおいては、フローサイトメトリーを使用して、トランスフェクトされたCHO細胞において発現されるチェックポイントタンパク質(例えば、PD-1)へのリガンド(例えば、PD-L1)の結合の遮断を試験する。種々の濃度の前記候補を、前記チェックポイントタンパク質を発現する細胞の懸濁液に添加して、4℃で30分間インキュベートする。非結合阻害剤を洗い流し、FITC標識リガンドタンパク質をチューブに添加し、4℃で30分間インキュベートする。FACS分析を、FACScanフローサイトメーター(Becton Dickinson,San Jose,Calif.)を使用して実施する。前記細胞の染色の平均蛍光強度(MFI)は、前記チェックポイントタンパク質に結合するリガンドの量を示す。前記候補を添加したサンプルにおける低減されたMFIは、前記候補が、前記標的チェックポイントタンパク質への前記リガンドの結合の遮断において有効であることを示している。
【0171】
例えば、PCT公報であるWO2015034820に記載されているホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイもまた、チェックポイントタンパク質-リガンド相互作用を遮断する前記候補の能力をアッセイするのに使用されうる。ある実施形態において、上記の方法において使用されるCICは、PD-1/PD-L1ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイによって測定されるIC50値が10pM以下、例えば、0.01~10pM、好ましくは、1pM以下、例えば、0.01~1pMで、PD-1/PD-L1相互作用を阻害し得る。
【0172】
(細胞ベースのアッセイ)
別のいくつかの実施形態において、候補がチェックポイント阻害剤であるかを評価するアッセイは、細胞ベースのアッセイである。米国特許第8,008,449号に記載されている混合リンパ球反応(MLR)アッセイは、T細胞増殖、IL-2及び/又はIFN-γの産生を測定するのに常套的に使用される。1つの例示的なアッセイにおいて、ヒトT細胞は、ヒトCD4T細胞富化カラム(R&D systems)を使用してPBMCから精製される。候補は、異なる濃度で多数のT細胞培養物に添加される。前記細胞は、37℃で5日間培養され、100μlの培地をサイトカイン測定用の各培養物から採取する。IFN-ガンマ及び他のサイトカインのレベルを、OptEIA ELISAキット(BD Biosciences)を使用して測定する。前記細胞をH-チミジンで標識し、さらに18時間培養し、細胞増殖について分析する。前記候補を含む培養物が、対照と比較して、T細胞増殖の増大、IL-2及び/又はIFN-ガンマの産生の増大を示すことを示している結果は、前記候補が、T細胞免疫応答の、チェックポイントタンパク質の阻害において効果的であることを示す。
【0173】
(インビボアッセイ)
別のいくつかの実施形態において、候補がチェックポイント阻害剤であるかを評価するのに使用されるアッセイは、インビボアッセイである。1つの例示的なアッセイにおいて、6~8週齢の雌性AJマウス(Harlan Laboratories)を体重によって6群にランダム化する。0日目において、これらのマウスの右脇腹に、200μlのDMEM培地に溶解させた2×10のSA1/N線維肉腫細胞を皮下移植する。これらのマウスを、PBSビヒクル、又は所定の投薬量での前記候補によって処置する。これらの動物に、1、4、8及び11日目において、前記候補又はビヒクルを含有するおよそ200μlのPBSを腹腔内注射によって投薬する。これらのマウスを腫瘍成長について週2回およそ6週間モニタリングする。電子キャリパーを使用して、上記の腫瘍を三次元的に(高さ×幅×長さ)測定し、腫瘍体積を算出する。前記腫瘍が腫瘍終点(1500mm)に到達するか又は前記マウスが15%を超える体重減少を示すときにマウスを安楽死させる。対照と比較して候補処置群においてより遅い腫瘍成長を示す、又は、腫瘍終点体積(1500mm)に到達する平均時間がより長いことを示す結果は、前記候補ががん成長の阻害において活性を有することを示す。
【0174】
併用療法
本明細書に開示されている方法は、いくつかの場合においては、チェックポイント阻害剤感受性がんの存在に起因する腫瘍量に悩まされている被験体にSGRM及びチェックポイント阻害剤の両方を投与する併用療法を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている方法は、チェックポイント阻害剤感受性がんであるとは常套的にみなされないがGRM又はSGRM投与によってチェックポイント阻害剤に感受性となるように誘導され得る腫瘍タイプの腫瘍量に悩まされている被験体にSGRM及びチェックポイント阻害剤の両方を投与する併用療法を含む。いくつかの実施形態において、前記併用療法は、処置期間の全体又は一部にわたって任意の順序で逐次的にチェックポイント阻害剤及びSGRMを共投与することを含む。
【0175】
いくつかの場合において、前記SGRM及び前記チェックポイント阻害剤は、同じ又は異なる投薬レジメンにしたがって投与される。例えば、前記GRM又はSGRMが、1日、又は2日、又は3日、又は1週間、又は他のリードイン期間の間、単独で投与され得、次いで、前記チェックポイント阻害剤が、かかる最初のGRM又はSGRMのリードイン期間に続いて投与され得る。いくつかの場合において、前記SGRMは、前記チェックポイント阻害剤が間欠的に投与される間に、計画されたレジメンにしたがって投与される。いくつかの場合において、前記チェックポイント阻害剤は、前記SGRMが間欠的に投与される間に、計画されたレジメンにしたがって投与される。いくつかの場合において、前記SGRM及び前記チェックポイント阻害剤の両方が間欠的に投与される。いくつかの実施形態において、前記SGRMが毎日投与され、前記チェックポイント阻害剤、例えば、チェックポイント阻害剤が、毎週、隔週で、3週毎に1回、4週毎に1回、又は他の間隔で投与される。いくつかの実施形態において、前記SGRMが、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、又は他の日数のリードイン期間の間、毎日投与され、次いで、前記チェックポイント阻害剤、例えば、チェックポイント阻害剤が、毎週、隔週で、3週毎に1回、4週毎に1回、又は他の間隔で投与される。前記GRM又はSGRMの投与は、前記チェックポイント阻害剤の間欠投与の時間の間に毎日又は他の定期で継続されうる。
【0176】
いくつかの場合において、前記SGRM及び前記チェックポイント阻害剤は、逐次的に又は同時に、1ヶ月当たり1回又は2回、1ヶ月当たり3回、1週間置きに、1週間当たり1回、1週間当たり2回、1週間当たり3回、1週間当たり4回、1週間当たり5回、1週間当たり6回、1日置きに、毎日、1日2回、1日3回又はこれを超える頻度で、約1日~約1週間、約2週間~約4週間、約1ヶ月間~約2ヶ月間、約2ヶ月間~約4ヶ月間、約4ヶ月間~約6ヶ月間、約6ヶ月間~約8ヶ月間、約8ヶ月間~約1年間、約1年間~約2年間、若しくは約2年間~約4年間、又はこれを超える範囲内の期間にわたって連続的に投与される。
【0177】
いくつかの実施形態において、前記併用療法は、SGRM及びチェックポイント阻害剤を共投与すること(co-administering)を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤及びSGRMの共投与は、当該2つの剤を同時に又はおよそ同時に(例えば、互いの約1、5、10、15、20、又は30分以内に)投与することを含む。
【0178】
持続期間
腫瘍量を低減させるためのSGRM及びチェックポイント阻害剤による処置の持続期間は、被験体における状態の重篤度及び前記併用療法への前記被験体の応答によって変動し得る。いくつかの実施形態において、前記SGRM及び/又は前記チェックポイント阻害剤は、約1週間~104週間(2年間)、より典型的には約6週間~80週間、最も典型的には約9~60週間の期間で投与され得る。好適な投与期間として、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~104週間も挙げられる。好適な投与期間として、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、35、40、45、48、50、52、55、60、64、65、68、70、72、75、80、85、88、90、95、96、100、及び104週間も挙げられる。概して、SGRM及び/又はチェックポイント阻害剤の投与は、所望の臨床的に有意な低減又は改善が観察されるまで継続されるべきである。本発明によるSGRM及びチェックポイント阻害剤による処置は、2年間又はさらにこれを超える長さで持続し得る。いくつかの実施形態において、前記SGRM投与の持続期間は、前記チェックポイント阻害剤のものと同じである。いくつかの実施形態において、SGRM投与の持続期間は、前記チェックポイント阻害剤のものより短い又は長い。
【0179】
いくつかの実施形態において、SGRM又はチェックポイント阻害剤の投与は、連続的ではなく、1又は複数の期間の間、停止され、続いて、投与が1又は複数の期間の間、再開されてもよい。投与を停止する好適な期間として、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~100週間が挙げられる。投与が停止する好適な期間として、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、35、40、45、48、50、52、55、60、64、65、68、70、72、75、80、85、88、90、95、96、及び100週間も挙げられる。
【0180】
(腫瘍量の低減における改善の評価)
本明細書に開示されている併用療法は、腫瘍量を低減させ得る。これらの応答を測定する方法は、例えば、http://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/docs/recist_guideline.pdfにおいて入手可能である、固形腫瘍における応答評価基準(「RECIST」)ガイドラインに記載されているように、がん治療の分野における当業者に周知である。
【0181】
1つのアプローチにおいて、前記腫瘍量は、腫瘍特異的遺伝子マーカーの発現をアッセイすることによって測定される。このアプローチは、転移性腫瘍又は容易に測定可能でない腫瘍、例えば、骨髄がんに特に有用である。腫瘍特異的遺伝子マーカーは、タンパク質、又はがん細胞に特有の若しくは非がん細胞と比較してより一層豊富である他の分子である。例えば、WO2006104474を参照されたい。腫瘍特異的遺伝子マーカーの非限定例として、肝臓がん用のアルファ-フェトプロテイン(AFP)、多発性骨髄腫用のベータ-2-マイクログロブリン(B2M);絨毛腫及び胚細胞腫瘍用のベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(ベータ-hCG);膵臓がん、胆嚢がん、胆管がん、及び胃がん用のCA19-9;卵巣がん用のCA-125及びHE4;大腸がん用のがん胎児性抗原(CEA);神経内分泌腫瘍用のクロモグラニンA(CgA);膀胱がん用のフィブリン/フィブリノーゲン;前立腺がん用の前立腺特異的抗原(PSA);並びに甲状腺がん用のサイログロブリンが挙げられる。http://www.cancer.gov/about-cancer/diagnosis-staging/diagnosis/tumor-markers-fact-sheetを参照されたい。
【0182】
腫瘍特異的遺伝子マーカーの発現レベルを測定する方法は周知である。いくつかの実施形態において、前記遺伝子マーカーのmRNAは、血液サンプル又は腫瘍組織から単離され、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)が実施されて、遺伝子マーカーの発現を定量化する。いくつかの実施形態において、ウエスタンブロット又は免疫組織化学分析は、前記腫瘍特異的遺伝子マーカーのタンパク質発現を評価するのに実施される。典型的には、前記腫瘍特異的遺伝子マーカーのレベルは、本発明の併用療法の経時的に採取される複数のサンプルにおいて測定され、レベルの減少は、腫瘍量の低減と相関する。
【0183】
別のアプローチにおいて、本明細書に開示されている併用療法による腫瘍量の低減は、体内の腫瘍サイズの低減又はがんの量の低減によって示される。腫瘍サイズの測定は、画像化ベースの技術によって典型的には達成される。例えば、コンピューター断層撮影(CT)スキャンは、既存の病変の成長又は新たな病変若しくは腫瘍転移の発生いずれかを同定することによって、腫瘍の縮小又は成長だけでなく、疾患の進行についても、正確且つ信頼性のある解剖的情報を提供することができる。
【0184】
別のアプローチにおいて、腫瘍量の低減は、機能画像化技術及び代謝画像化技術によって評価され得る。これらの技術は、かん流、酸素化及び代謝の変化を観察することにより、より早期の治療応答評価を提供し得る。例えば、18F-FDG PETは、放射性標識グルコース類縁体分子を使用して、組織代謝を評価する。腫瘍は、高度に摂取したグルコースを典型的には有し、腫瘍組織代謝の減少に相当する値の変化が、腫瘍量の低減を示す。同様の画像化技術は、Kang et al.,Korean J.Radiol.(2012) 13(4) 371-390に開示されている。
【0185】
本明細書に開示されている併用療法を受けている患者の示す腫瘍量低減度は変動し得る。いくつかの場合において、患者は、「疾患の証拠なし(NED)」とも称される、完全寛解(CR)を示し得る。CRは、試験、物理的検査及び走査によって示される全ての検出可能な腫瘍が消失したことを意味する。いくつかの場合において、本明細書に開示されている併用療法を受けている患者は、合計腫瘍体積の少なくとも50%の減少におおよそ相当するがいくらかの残存疾患の証拠が依然として残存している部分寛解(PR)を経験し得る。いくつかの場合において、深い部分寛解における前記残存疾患は、実際には、PRを有すると分類された数名の患者は実際にはCRを有するものであるような、死んだ腫瘍又は傷痕であり得る。また、処置の際に縮小を示す多くの患者は、継続される処置によってさらなる縮小を示し、CRを達成し得る。いくつかの場合において、前記併用療法を受けている患者は、縮小量が合計腫瘍体積の25%超であるがPRとする50%よりは少ないことをおおよそ意味する、やや有効(MR)を経験し得る。いくつかの場合において、前記併用療法を受けている患者は、前記腫瘍がおおよそ同じサイズでとどまる、病状安定(SD)を示し得る。SDは成長量が少ない(典型的には20若しくは25%未満)又は縮小量が少ない(やや有効が生じない限りPR未満であるいずれか。その場合、SDは、典型的には25%未満と定義される)のいずれかを含み得る。
【0186】
前記併用療法からの所望の有益な又は所望の臨床結果はまた、例えば、周辺器官へのがん細胞浸潤の低減(すなわち、ある程度まで遅くすること、及び/若しくは停止すること);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度まで遅くすること、及び/若しくは停止すること);応答速度(RR)の増大;応答の持続期間の増大;がんに関連する症状の1又は複数のある程度までの緩和;疾患を処置するために必要とされる他の医薬の用量の減少;疾患の進行の遅延;並びに/又は患者の生存の延長及び/若しくは生活の質の改善も含み得る。これらの効果を評価する方法は周知であり、及び/又は、例えば、http://cancerguide.org/endpoints.html及びRECISTガイドライン(上記参照)に開示されている。
【0187】
(医薬組成物及び投与)
GRM及びSGRM(本明細書で使用される場合、GRM及びSGRMは、非ステロイド性GRM及び非ステロイド性SGRMを含む)は、多種多様な経口、非経口及び局所剤形で調製及び投与され得る。経口調製物として、患者による摂取に好適な錠剤、丸薬、粉末、糖衣錠、カプセル、液体、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などが挙げられる。GRM及びSGRMはまた、注射、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、又は腹腔内投与されうる。また、GRM及びSGRMは、吸入、例えば、鼻腔内投与され得る。さらに、GRM及びSGRMは、経皮投与され得る。したがって、本発明はまた、医薬的に許容可能な担体又は添加剤及びGRM又はSGRMを含む医薬組成物も提供する。
【0188】
GRM及びSGRMから医薬組成物を調製するために、医薬的に許容可能な担体は、固体又は液体のいずれであってもよい。固体形態の調製物として、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェー(cachets)、座薬、及び分散性顆粒が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、バインダー、保存料、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材としても作用しうる1又は複数の物質でありうる。製剤及び投与についての技術に関する詳細は、科学文献及び特許文献においてよく記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co,Easton PA(「Remington’s))の最新版を参照されたい。
【0189】
粉末において、前記担体は、微粉化された活性構成要素、GRM又はSGRMとの混合物中にある、微粉化された固体である。錠剤において、前記の活性構成要素は、好適な割合で所要の結合特性を有する前記担体と混合されて、所望の形状及びサイズに圧縮される。
【0190】
前記粉末及び錠剤は、5%~又は10%~70%の前記の活性な化合物を好ましくは含有する。好適な担体は、炭素マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。用語「調製物」は、カプセルとなる担体としてのカプセル化材と一緒になった前記活性化合物の製剤であって、他の担体を伴う又は伴わない活性構成要素が担体に包囲されることによって、一緒になっている、前記製剤を含むことが意図される。同様に、カシェー及びロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェー、及びロゼンジは、経口投与に好適な固体剤形として使用されうる。
【0191】
好適な固体添加剤は、炭水化物又はタンパク質フィラーであり、限定されないが、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、又は他の植物に由来するデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;並びに、アラビア及びトラガカントを含むガム;並びに、ゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質が挙げられる。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又は、アルギン酸ナトリウムなどのその塩など、崩壊剤又は可溶化剤が添加されてもよい。
【0192】
糖衣錠コアは、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有していてもよい濃縮された糖溶液などの好適なコーティングを備える。前記錠剤又は糖衣錠コーティングには、製品の同定のために又は活性化合物の量(すなわち、投薬量)を特徴付けるために、染料又は顔料が添加されてよい。本発明の医薬調製物はまた、例えば、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル、並びに、ゼラチン及びコーティング、例えば、グリセロール又はソルビトールからなる軟質密封カプセルを用いて経口使用されてもよい。プッシュフィットカプセルは、ラクトース又はデンプンなどのフィラー又はバインダー、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤沢剤、及び、所望により、安定剤と混合されたGRモジュレーターを含有しうる。軟質カプセルにおいて、かかるGRモジュレーター化合物は、脂肪酸油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に、安定剤を用いて又は用いずに溶解又は懸濁されていてよい。
【0193】
液体形態調製物として、溶液、懸濁液、及びエマルジョン、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射のためには、液体調製物が、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液中で製剤化され得る。
【0194】
経口使用に好適な水溶液は、前記の活性構成要素を水に溶解すること、並びに、好適な着色料、香味料、安定剤、及び増粘剤を所望により添加することによって調製されうる。経口使用に好適な水性懸濁液は、微粉化された活性構成要素を、天然又は合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガムなどの粘性材料、並びに、天然に存在するリン脂質(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)などの分散又は湿潤剤と共に水に分散させることによって作製され得る。前記水性懸濁液は、p-ヒドロキシ安息香酸エチル又はn-プロピルなどの1又は複数の保存料、1又は複数の着色剤、1又は複数の香味剤、及びスクロース、アスパルテーム又はサッカリンなどの1又は複数の甘味剤を含有することもできる。製剤の浸透圧は調整されうる。
【0195】
使用の少し前に経口投与用の液体形態調製物に変換されることが意図される固体形態の調製物も含まれる。かかる液体形態は、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む。これらの調製物は、前記の活性構成要素に加えて、着色料、香味料、安定剤、緩衝液、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有しうる。
【0196】
油懸濁液は、SGRMを、落花生油、オリーブ油、ゴマ油若しくはココナッツ油などの植物油、又は、液体パラフィンなどの鉱物油;或いはこれらの混合物に懸濁することによって製剤化されうる。前記油懸濁液は、蜜蝋、硬質パラフィン又はセチルアルコールなどの増粘剤を含有しうる。口当たりの良い経口調製物を提供するために、グリセロール、ソルビトール又はスクロースなどの甘味剤を添加してもよい。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存されてもよい。注射可能な油ビヒクルの例として、Minto,J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93-102,1997を参照されたい。本発明の医薬製剤は、水中油エマルジョンの形態であってもよい。前記油相は、植物油若しくは鉱物油、又はこれらの混合物でありうる。好適な乳化剤として、アカシアガム及びトラガカントガムなどの天然に存在するガム、大豆レシチンなどの天然に存在するリン脂質、モノオレイン酸ソルビタンなどの脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来するエステル又は部分エステル、並びに、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどの、これらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。前記エマルジョンは、シロップ及びエリキシルの製剤におけるように、甘味剤及び香味剤を含有することもできる。かかる製剤は、鎮痛剤、保存料、又は着色剤を含有していてもよい。
【0197】
GRM及びSGRMは、アプリケータースティック、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末、及びエアロゾルとして製剤化されて、経皮によって、局所経路によって送達されうる。
【0198】
GRM及びSGRMはまた、体内に徐放するマイクロスフェアとして送達されてもよい。例えば、マイクロスフェアは、皮下に徐放する薬物含有マイクロスフェアの皮内注射を介して(Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623-645,1995を参照されたい;生分解可能及び注射可能なゲル製剤として(例えば、Gao Pharm.Res.12:857-863,1995を参照されたい);又は経口投与用マイクロスフェアとして(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669-674,1997を参照されたい)投与されうる。経皮経路及び皮内経路は、いずれも、数週間又は数ヶ月間にわたるコンスタントな送達を可能にする。
【0199】
本発明の医薬製剤は、塩として提供され得、限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含めた多くの酸と共に形成されうる。塩は、対応する遊離塩形態である水性又は他のプロトン性溶媒により可溶性である傾向がある。他の場合において、前記調製物は、4.5~5.5のpH範囲内において1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトール中の凍結乾燥粉末であってよく、使用の前に緩衝液と合わされる。
【0200】
別のいくつかの実施形態において、本発明の製剤は、細胞膜と融合する又は取り込まれるリポソームの使用によって、すなわち、エンドサイトーシスを結果として生じさせる細胞の表面膜タンパク質受容体に結合する、前記リポソームに付着した又はオリゴヌクレオチドに直接付着したリガンドを用いることによって、送達され得る。リポソームを使用することによって、リポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを担っている又は他の場合には特定の器官を優先的に対象とする場合には特に、前記標的細胞へのGRモジュレーターのインビボでの送達に焦点を合わせることができる。(例えば、Al-Muhammed,J.Microencapsul.13:293-306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698-708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576-1587,1989を参照されたい)。
【0201】
前記医薬調製物は、好ましくは単位剤形である。かかる形態において、前記調製物は、適切な量の前記活性構成要素、GRM又はSGRMを含有する単位用量に細分される。前記単位剤形は、パッケージングされた錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル内の粉末などの、別々の量の調製物を含有しているパッケージングされた調製物であってもよい。また、前記単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェー、若しくはロゼンジ自体であり得、又は、パッケージングされた形態での、適切な数のこれらのいずれかであり得る。
【0202】
単位用量調製物における活性構成要素の量は、0.1mg~10000mg、より典型的には1.0mg~6000mg、最も典型的には50mg~500mgで変動又は調整され得る。好適な投薬量としては、特定の用途及び前記活性構成要素の有効性に応じて、約1mg、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、又は2000mgが挙げられる。組成物は、所望により、他の適合する治療剤を含有することもできる。
【0203】
前記医薬調製物は、好ましくは単位剤形である。かかる形態において、前記調製物は、適切な量の本発明の化合物及び組成物を含有する単位用量に細分される。前記単位剤形は、パッケージングされた錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末などの、別々の量の調製物を含有するパッケージングされた調製物でありうる。また、前記単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェー、若しくはロゼンジ自体であり得、又は、パッケージングされた形態の、適切な数のこれらのいずれかでありうる。
【0204】
GRMは、経口投与することができる。例えば、前記GRMは、本明細書において記載されているように丸薬、カプセル、又は液体製剤として投与され得る。代替的には、GRMは、非経口投与を介して提供されうる。例えば、前記GRMは、(例えば、注射又は点滴によって)静脈内投与されうる。本明細書において記載されている化合物、及びその医薬組成物又は製剤のさらなる投与方法は、本明細書において記載されている。
【0205】
いくつかの実施形態において、前記GRMは、1回用量で投与される。他のいくつかの実施形態において、前記GRMは、1回を超える用量、例えば、2回用量、3回用量、4回用量、5回用量、6回用量、7回用量、又はこれを超える用量で投与される。いくつかの場合において、前記用量は、等価の量のものである。他の場合において、前記用量は、異なる量のものである。前記用量は、投与の持続期間にわたって増大し得又は次第に減少し得る。前記の量は、例えば、GRMの特性及び患者の特徴にしたがって変動する。
【0206】
任意の好適なGRM用量が、本明細書に開示されている方法において使用されうる。投与されるGRMの用量は、1日当たり少なくとも約300ミリグラム(mg)、又は約600mg/日、例えば、約600mg/日、約700mg/日、約800mg/日、約900mg/日、約1000mg/日、約1100mg/日、約1200mg/日、又はこれを超える用量であり得る。例えば、前記GRAがミフェプリストンであるとき、前記GRM用量は、例えば、ミフェプリストンの300mg/日、又は600mf/日、又は900mg/日、又は1200mg/日であってよい。いくつかの実施形態において、前記GRMは、経口投与される。いくつかの実施形態において、前記GRMは、少なくとも1回用量で投与される。換言すると、前記GRMは、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、又はこれを超える用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、前記GRMは、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、又はこれを超える用量で投与される。
【0207】
患者には、GRMが、少なくとも1回用量で、1又は複数の用量で、例えば、2~48時間の期間にわたって投与され得る。いくつかの実施形態において、前記GRMは、単回用量で投与される。他のいくつかの実施形態において、前記GRMは、1回を超える用量、例えば、2回用量、3回用量、4回用量、5回用量、又はこれを超える用量で、2~48時間の期間、例えば、2時間の期間、3時間の期間、4時間の期間、5時間の期間、6時間の期間、7時間の期間、8時間の期間、9時間の期間、10時間の期間、11時間の期間、12時間の期間、14時間の期間、16時間の期間、18時間の期間、20時間の期間、22時間の期間、24時間の期間、26時間の期間、28時間の期間、30時間の期間、32時間の期間、34時間の期間、36時間の期間、38時間の期間、40時間の期間、42時間の期間、44時間の期間、46時間の期間又は48時間の期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、前記GRMは、2~48時間、2~36時間、2~24時間、2~12時間、2~8時間、8~12時間、8~24時間、8~36時間、8~48時間、9~36時間、9~24時間、9~20時間、9~12時間、12~48時間、12~36時間、12~24時間、18~48時間、18~36時間、18~24時間、24~36時間、24~48時間、36~48時間、又は42~48時間にわたって投与される。
【0208】
単回又は複数回用量の製剤を、患者によって必要とされ且つ許容される投薬量及び頻度に応じて投与することができる。前記製剤は、疾患状態を有効に処置するのに充分な量の活性剤を提供しうる。そのため、ある実施形態において、GRMの経口投与のための前記医薬製剤の1日量は、1日当たり・キログラム体重当たり約0.01~約150mg(mg/kg/日)である。いくつかの実施形態において、前記1日量は、約1.0~100mg/kg/日、5~50mg/kg/日、10~30mg/kg/日、及び10~20mg/kg/日である。特に、かかる薬物が、経口投与とは対照的に、脳脊髄液(CSF)空間などの解剖学的に隔離された部位に、血液流内に、体腔内に又は器官の内腔内に投与されるときには、より低い投薬量が使用されうる。局所投与においては実質的により高い投薬量が使用されうる。非経口投与可能な製剤を調製するための実際の方法は、当業者に公知又は明らかであり、Remingtonのもの(上記)のような公開物に、より詳細に記載されている。Nieman,「Receptor Mediated Antisteroid Action,」における、Agarwal,et al.,eds.,De Gruyter,New York(1987)も参照されたい。
【0209】
GRM又はSGRMによる処置の持続期間は、対象における状態の重篤度及びGRM又はSGRMへの前記対象の応答によって変動し得る。いくつかの実施形態において、GRM及びSGRMは、約1週~104週間(2年間)、より典型的には約6週間~80週間、最も典型的には約9~60週間の期間で投与され得る。好適な投与期間として、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~104週間も挙げられる。好適な投与期間として、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、35、40、45、48、50、52、55、60、64、65、68、70、72、75、80、85、88、90、95、96、100、及び104週間も挙げられる。概して、GRM又はSGRMの投与は、所望の臨床的に有意な低減又は改善が観察されるまで継続されるべきである。本発明による前記GRM又はSGRMによる処置は、2年間又はさらにこれを超えて持続されうる。
【0210】
いくつかの実施形態において、GRM又はSGRMの投与は、連続的ではなく、1又は複数の期間の間、停止され、続いて、投与が1又は複数の期間の間、再開してもよい。投与が停止する好適な期間として、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~100週間が挙げられる。投与が停止する好適な期間として、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、35、40、45、48、50、52、55、60、64、65、68、70、72、75、80、85、88、90、95、96、及び100週間も挙げられる。
【0211】
投薬レジメンは、当該分野において周知の薬物動態パラメーター、すなわち、吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなども考慮する(例えば、Hidalgo-Aragones(1996) J.Steroid Biochem.Mol.Biol.58:611-617;Groning(1996) Pharmazie 51:337-341;Fotherby(1996) Contraception 54:59-69;Johnson(1995) J.Pharm.Sci.84:1144-1146;Rohatagi(1995) Pharmazie 50:610-613;Brophy(1983) Eur.J.Clin.Pharmacol.24:103-108を参照されたい;最近のRemingtonのもの、上記)。臨床医は、最先端の技術によって、個々の患者それぞれの投薬レジメン、GRモジュレーター及び処置される疾患又は状態を決定することができる。
【0212】
SGRMは、グルココルチコイド受容体を調節する際に有用であることが知られている他の活性剤、又は単独では有効でない場合があるが上記の活性剤の効能に寄与し得る補助剤と併用され得る。
【0213】
いくつかの実施形態において、共投与(co-administration)は、1つの活性剤、GRM又はSGRMを、第2の活性剤の0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20、又は24時間以内に投与することを含む。共投与は、2つの活性剤を、同時に、およそ同時に(例えば、互いの約1、5、10、15、20、若しくは30分以内)、又は逐次的に任意の順序で投与することを含む。いくつかの実施形態において、共投与は、共製剤化、すなわち、両方の活性剤を含む単一の医薬組成物を調製することによって達成されうる。他のいくつかの実施形態において、前記活性剤は、別個に製剤化され得る。別のいくつかの実施形態において、前記活性剤及び/又は補助剤は、互いに連結していても共役していてもよい。
【0214】
本発明のGRモジュレーターを含む医薬組成物を許容可能な担体において製剤化した後、これを適切な容器に投入し、指定の状態の処置のためにラベルを付すことができる。GRM又はSGRMの投与について、かかるラベルには、例えば、投与の量、頻度及び方法に関する指示が含まれうる。
【0215】
本発明の医薬組成物は、塩として提供され得、限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの酸と共に形成されうる。塩は、対応する遊離塩形態である水性又は他のプロトン性溶媒により可溶性である傾向がある。他の場合において、前記調製物は、4.5~5.5のpH範囲内において1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトール中の凍結乾燥粉末であってよく、使用の前に緩衝液と合わされる。
【0216】
別のいくつかの実施形態において、本発明の組成物は、静脈内(IV)投与又は内腔内若しくは器官の内腔内への投与などの非経口投与に有用である。投与のための製剤は、医薬的に許容可能な担体に溶解された本発明の組成物の溶液を一般的に含みうる。用いられ得る許容可能なビヒクル及び溶媒には、水及びリンガー液、等張塩化ナトリウムがある。加えて、滅菌固定油が、溶媒又は懸濁媒体として慣例的に用いられ得る。この目的で、合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドを含む任意の無菌性の固定油が用いられ得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能なものの調製物において同様に使用されうる。これらの溶液は、滅菌されており、望ましくない物質を概して含まない。これらの製剤は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌されてよい。当該製剤は、pH調整剤及び緩衝剤などのおおよその生理的条件に必要とされる医薬的に許容可能な補助物質、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有し得る。これらの製剤における本発明の組成物の濃度は広範に変動し得、選択される特定の投与形態及び患者の要求にしたがって、主に体液体積、粘度、体重などを基準にして選択される。IV投与では、前記製剤は、滅菌された注射可能な水性又は油性懸濁液などの滅菌された注射可能な調製物でありうる。この懸濁液は、これらの好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して公知の技術にしたがって製剤化されうる。前記の滅菌された注射可能な調製物はまた、1,3-ブタンジオールの溶液などの、非毒性の、非経口で許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌された注射可能な溶液又は懸濁液であってもよい。
【0217】
(併用療法)
GRM若しくはSGRM及び化学療法剤、チェックポイント阻害剤、又は他の処置(例えば、がん処置)との種々の組み合わせ、或いはかかる剤及び化合物の組み合わせが、患者を処置するのに用いられてよい。「併用療法」又は「との組み合わせ」によって、治療剤が同時に投与される及び/又は一緒に送達のために製剤化される必要があること示唆することは意図されていないが、これらの送達方法は、本明細書において記載されている範囲内である。前記のGRM又はSGRM及び前記の化学療法剤又は他の薬剤は、同じ又は異なる投薬レジメンにしたがって投与され得る。いくつかの実施形態において、前記GRM又はSGRM及び前記化学療法剤又は他の薬剤は、処置期間の全体又は一部にわたって任意の順序で逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、前記GRM又はSGRM及び前記化学療法剤又は他の薬剤は、同時に又はおよそ同時に(例えば、互いの約1、5、10、15、20、又は30分以内に)投与される。併用療法の非限定例は、前記GRM又はSGRM及び化学剤の投与により以下の通りであり、例えば、GRM又はSGRMは、「A」であり、治療レジメの一部分として与えられる、化学療法剤又は他の薬剤は、「B」である:
【0218】
A/B/AB/A/BB/B/AA/A/BA/B/BB/A/AA/B/B/BB/A/B/B
【0219】
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
【0220】
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0221】
AAA (B/A AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA)
(ここで、「n」は、括弧で囲んだサイクルが医師の裁量で繰り返され得ることを示す)。
【0222】
患者への治療化合物又は剤の投与は、もし治療に何らかの毒性があればそれを考慮した上で、かかる化合物の投与の一般的なプロトコルにしたがう。記載されている治療と組み合わせて外科的介入が適用されてもよい。
【0223】
本方法は、手術、放射線、標的療法、免疫療法、成長因子阻害剤の使用、又は抗血管新生因子などの、他の処置手段と組み合わされうる。
【0224】
この明細書において列挙されている全ての特許、特許公報、公報、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の公報又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的に且つ個々に示されているかのように、全体がここで参照により本明細書に組み込まれる。
【0225】
上記の発明は、理解の明瞭さの目的で例示及び例によっていくぶん詳しく記載されているが、添付の請求項の精神又は範囲から逸脱することなくある特定の変更及び修飾がなされてよいことが、本発明の教示に照らして、当業者に容易に明らかであろう。
【実施例0226】
以下の例は、例示としてのみ提供されるものであり、限定するものではない。当業者は、本質的に同様の結果を生じるように変化又は変更され得る様々な重要でないパラメーターを容易に理解するであろう。
【0227】
(実施例1.HepG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ)
以下のプロトコルは、HepG2細胞(ヒト肝臓の肝細胞がん細胞株;ECACC、UK)においてデキサメタゾンによるTATの誘導を測定するアッセイを記載する。HepG2細胞を、10%(v/v)ウシ胎児血清;2mM L-グルタミン及び1%(v/v)NEAAを補充したMEME培地において37℃、5%/95%(v/v)CO/空気において培養する。前記HepG2細胞を、次いで、計数し、10%(v/v)チャコールストリップFBS、2mM L-グルタミンでありフェノールレッドを含まないRPMI1640において、0.125×10細胞/mlの密度を生じるように調整し、200μlにおいて25,000細胞/ウエルで96ウエルの滅菌組織培養マイクロタイタープレートに播種し、37℃、5%COにおいて24時間インキュベートする。
【0228】
次いで、成長培地を除去し、アッセイ培地{2mM L-グルタミン+10μMフォルスコリンでありフェノールレッドを含まないRPMI1640}と置き換える。次いで、試験化合物を、100nMデキサメタゾンのチャレンジに対してスクリーニングする。次いで、化合物を、10mMストックから100%(v/v)ジメチルスルホキシドで連続半対数希釈する。次いで、8点半対数希釈曲線を作成し、続いて、アッセイ培地内で1:100希釈して、10×の最終アッセイの化合物濃度を与え、これにより、結果として、0.1%(v/v)ジメチルスルホキシド中10~0.003μMの範囲内である最終アッセイの化合物濃度を生じさせる。
【0229】
試験化合物をマイクロタイタープレートにおいて37℃、5/95(v/v)CO/空気において30分間プレインキュベートした後、100nMデキサメタゾンを添加し、次いで、その後20時間で、最適なTAT誘導を可能にする。
【0230】
次いで、HepG2細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する30μlの細胞溶解緩衝液によって4℃で15分間溶解する。次いで、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中に5.4mMチロシンナトリウム塩、10.8mMアルファケトグルタレート及び0.06mMピリドキサール5’ホスフェートを含有する155μlの基質混合物を添加することができる。37℃で2時間のインキュベーション後、15μlの10M水酸化カリウム水溶液の添加によって反応を終了させることができ、プレートを37℃でさらに30分間インキュベートしうる。TAT活性生成物はλ340nmにおける吸光度によって測定することができる。
【0231】
IC50値は、(100nMデキサメタゾンTAT刺激に対して正規化した)%阻害を化合物濃度に対してプロットすること、及びこのデータを4パラメーターロジスティク方程式にフィッティングすることによって算出することができる。IC50値は、アンタゴニストがデキサメタゾンに関する競合阻害剤であると仮定して、Cheng-Prusoff式を使用してKi(平衡解離定数)に変換することができる。
【0232】
(実施例2.レラコリラントは抗腫瘍免疫応答を刺激する)
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)への応答は、腫瘍免疫浸潤及びPD-L1発現に関連するため、本発明者らは、まず、GR発現が、ICIに応答しやすい同じタイプの腫瘍において観察されるかを評価した。黒色腫及びTNBC腫瘍において、CD3+T細胞浸潤がGR発現と相関した(図1)。GR発現はまた、細胞毒性T細胞機能を抑制するTregのマーカー、FOXP3+細胞とも相関した。National Cancer
Institute’s The Cancer Genome Atlas(TCGA;ページ「about-nci/organization/ccg/research/structural-genomics/tcga」におけるNational Cancer Institute「cancer.gov」ウェブサイトにおいてアクセス可能)からの転写産物データの分析は、GR発現が、免疫抑制細胞のマーカーと相関したことを示した。GR及びPDL1の全体的な相関を観察すると(p<2×10-16)、副腎、膀胱、及び膵臓がんにおいて相関性が特に高かった。図2は、GR発現がPD-L1発現と相関することを示す。xCell(Aran,Genome Biology2017)を使用して個々の腫瘍内の異なった細胞タイプの存在量を見積もり、GRと、CD8+T細胞、Treg、及びTh細胞との間の正相関を観察した。図3Aは、GR発現が、CD8+T細胞及び調節性T細胞(Treg))と正相関することを示す。図3Bは、GR発現が、T1 T細胞と負相関し、T2 T細胞と正相関することを示す。Tregは、CD8+T細胞が腫瘍を活性化及び排除する能力を制限するとされている。これらのデータは、GRが、ICI療法の良好な候補であると概して考えられている腫瘍分類であるT細胞浸潤が抑制された腫瘍において高くなることを示唆している。
【0233】
コルチゾールがヒトPBMCの活性化を抑制し、活性化がレラコリラントによって回復する
T細胞活性化に対するGC活性の分子的帰結を理解するために、刺激されたヒトPBMCについてコルチゾール及びレラコリラントの効果を評価した。典型的にはヒト血清において見られる400nMコルチゾール濃度は、フィトヘムアグルチニン(PHA)又はαCD3+IL-12のいずれかによる刺激の殆ど全ての表現効果を強く抑制した。CD8+細胞におけるCD137(aka41-BB)の発現を、コルチゾールによって低減し、レラコリラントによって回復した。図4は、生理学的レベルのコルチゾールの存在下でのレラコリラントによるT細胞活性化の回復を示す。CD8+細胞内でのCD137(aka41-BB)の発現を、コルチゾールによって低減し、レラコリラントによって回復した。同様の傾向が、LAG3及びCTLA4を発現するCD8+及びCD4+を含めた、PHA又はαCD3+IL-12(図5及び図6)によって刺激する他のT細胞サブセットについて観察された。図5は、フィトヘムアグルチニン(PHA)による刺激による、コルチゾールによるCD3+細胞表面受容体の抑制、及びレラコリラントによるCD3+細胞表面受容体の回復を示す。図4にも示すように、TNF-αなどの炎症性サイトカインは刺激によって誘発され、コルチゾールによって抑制され、レラコリラントによって回復した。同様のパターンが、IFNγ、IL-1β、IL-1α、及びIL-6を含めた、刺激によって誘発されるサイトカイン及びケモカイン(図6A及び図6B)について観察された。図6A及び図6Bは、フィトヘムアグルチニン(PHA)(図6A)又はαCD3(図6B)による刺激による、コルチゾールによるサイトカイン及びケモカインの抑制、並びに、レラコリラントによるサイトカイン/ケモカインレベルの回復を示す。(上清IL-12測定は、前記刺激が組み換え型IL-12を含んだため、図6Bに示されている分析から除外した)。生理学的レベルのコルチゾールは、サイトカイン及びケモカインを抑制し、この抑制はレラコリラントによって反転された。これらの結果は、正常な生理的濃度においてコルチゾールによって媒介されるT細胞活性化に対する広範な免疫抑制効果を実証しており、これらの効果は、レラコリラントにより反転された。
【0234】
レラコリラントは、同系マウスモデルにおけるT細胞機能及びαPD1応答を促進する
CD8+細胞毒性T細胞に対するコルチゾールの抑制効果、及びレラコリラントがT細胞活性化を促進する能力を、EG7同系マウスモデルにおいて評価した。EG7腫瘍細胞はオボアルブミンを発現し、前記モデルをWT又はOT-1/Rag-/-マウスの両方において研究した。前記OT-1/Rag-/-マウスのみが、トランスジェニックオボアルブミン特異的TCRを発現するT細胞を有する。前記OT-1/Rag-/-の背景では、非処置マウスも、17~20日間、腫瘍成長を制御できた(図7)。PD1アンタゴニスト抗体(RMP1-14)及びレラコリラントの組み合わせを、EG7腫瘍モデルにおいて評価した。レラコリラントは、このモデルにおいて抗PD1抗体の効能を有意に増大させた。マウスのコルチゾール合成のレベルはヒトと同等ではないため、コルチゾールを飲料水に100mg/Lで投与して、447nMの平均血清コルチゾールレベルを結果として生じさせた(データ示さず)。コルチゾール投与は、迅速な腫瘍成長を結果として生じさせた(図7)。時期尚早の死が起こったのはコルチゾール処置したマウスでは2/5、対照マウスでは0/5であった。コルチゾール処置した全てのマウスが、測定可能な腫瘍を10日目までに有していたが、対照マウスの2/5は10~20日目において検出可能な腫瘍を有していなかった。前記のOT-1/Rag-/-マウスにコルチゾール+/-レラコリラントを与えたとき、2/7において、コルチゾール+レラコリラント処置群において完全な寛解が観察されたことを組織学的に確認したが、コルチゾールのみの群では、いずれも寛解を有さなかった。対照的に、野生型(WT)マウスの飲料水へのコルチゾールの投与は、腫瘍制御又は成長に効果が無かった(データ示さず)。共にこれらのデータは、コルチゾールが細胞毒性CD8+T細胞によって腫瘍の排除を抑制すること及びレラコリラントが細胞毒性CD8+T細胞機能を回復させることを示唆している。
【0235】
PD1アンタゴニスト抗体(RMP1-14)及びレラコリラントの組み合わせを、EG7腫瘍モデルにおいて評価した。多くの報告において、コルチゾールを添加することなく、WTマウスにおけるEG7細胞に対するαPD1効果が評価されていることから、このより確立されたモデルを使用した。レラコリラント又はαPD1は、単独では、このモデルにおける有意な効果は無かった。レラコリラント及びαPD1の組み合わせは、腫瘍成長を抑制した(図8)。14日目までに、1800mmより大きい腫瘍を有していたマウスは、αPD1+レラコリラント群においては2/10であったのに較べ、αPD1単独治療群においては8/10であった。倫理的屠殺又は1800mmまでの時間もまた、αPD1単独群と比較して前記レラコリラント+αPD1群において有意に良好であった(図8)。個々のマウス腫瘍体積の軌道の評価が示すところでは、この悪性モデルは10日目~20日目に有意に制御されている。レラコリラントの効果は過剰なコルチゾール投与によって反転しまた腫瘍成長が回復し、このことは、レラコリラント効果が、コルチゾール活性のアンタゴニズムに特異的であることを実証した。研究の11日目~21日目に収集した最終の血清は、TNFαレベルが、レラコリラントの添加によって増大したが、コルチゾールの添加によって抑制されたことを示した。単離したヒト末梢血単核細胞(PBMC)において観察された効果と一致して、レラコリラントがT細胞機能及び炎症促進性サイトカイン分泌を促進する能力が、このモデルにおいて反復されている。
【0236】
固形腫瘍患者でのフェーズI研究におけるレラコリラントの全身的な効果によって、内因性GR活性のアンタゴニズムが実証される
GRは、免疫抑制転写プログラムの広範な調節因子であるため、本発明者らは、まず、全血におけるプレドニゾン及び/又はレラコリラントの転写効果を評価した。健康なボランティアのフェーズI研究において、25mg用量のプレドニゾンが、用量後4時間で大きな転写効果を結果として生じさせた。これにより、全血におけるプレドニゾン誘導遺伝子の遺伝子セットを定義した。固形腫瘍患者におけるレラコリラント+ナブ-パクリタキセルのフェーズI研究においては、前記プレドニゾン誘導遺伝子が主に抑制された。RECISTによってSDの最良総合効果又は良好と定義される、治療から利益を享受した患者においてのみ、この2つの遺伝子セットにおける有意な重複が観察された。進行性疾患を有する患者においては、プレドニゾンによって誘導された遺伝子とレラコリラント+ナブ-パクリタキセルによる投薬後に抑制された遺伝子との間に有意な重複は無かった。図10は、レラコリラント+ナブパクリタキセルの組み合わせの処置により、固形腫瘍を有する患者において遺伝子発現が抑制されたことを示す。抑制された遺伝子には、IL8(CXCL8)、IDO1、及びEP4(PTGER4)を発現する遺伝子が含まれていた(n=46)。これらの患者においては好中球対リンパ球比(NLR)もまた正常化した(p=0.01)。正準GR制御遺伝子dusp1及びptgs2(COX2)は、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルが投与された患者において抑制された。レラコリラント及びナブ-パクリタキセルによる処置後に最も抑制された遺伝子の中には、cxcl8(IL-8)、ido1、及びptger4(EP4)があった。cxcl8転写産物の低減の結果、治療後読み取り値は測定限界未満となった。これらの3つの遺伝子は、細胞毒性T細胞応答を抑制する役割を有することが知られている。全血におけるレラコリラントの全体の転写効果は、プレドニゾン効果との相反と、有効な細胞毒性T細胞応答を促進することが予期され得るプロセスの特徴と、の両方である。
【0237】
GR活性が血液の細胞組成を変えることが従来示されているため、本発明者らは、好中球及びリンパ球の存在量に対するレラコリラントの効果を評価した。ベースラインの好中球対リンパ球比は、チェックポイント阻害剤への応答を予測させるものであり、前記NLRの低減も、改善された結果に関連している(Lalani et al.Journal for ImmunoTherapy of Cancer(2018) 6:5)。まず、本発明者らは、レラコリラントが、正常なコルチゾールレベルを有する健康なボランティアにおけるNLRに影響しないことを立証した。健康なボランティアにおいて、プレドニゾンは、前記NLRの迅速且つ鋭い増大を結果として生じさせた。この効果は、レラコリラントがプレドニゾンと共投薬されたときに反転した。これらのデータは、レラコリラントが健康な個人におけるNLRに影響しないこと(ストレス又は疾患状態がコルチゾールレベルを上昇させることが予期されない条件下)及びレラコリラントが前記NLRに対するグルココルチコイドアゴニズムを反転させ得ることを立証している。進行した固形腫瘍を有する患者において、本発明者らは、ベースラインNLRが健康な被験体よりも高いことを観察した。全ての患者において最初の8又は15日で前記NLRが全体に減少した。この減少は、ベースラインNLRが上昇した患者において顕著であったが(NLR>3)、ベースラインで正常なNLRを有する患者においてはNLRの有意な変化が観察されなかった(NLR≦3)。治療の最初の15日でのNLRの減少は、レラコリラントのCmaxと相関したがパクリタキセルとは相関せず、これは、上記の効果がGRアンタゴニズムによって主として活発化することを示唆した。NLRの減少を伴う患者におでは、有意ではない傾向として、臨床的利益がより顕著であった。これらのデータは、NLRがGRアゴニストによって増加し、GRアンタゴニストによって減少することを実証している。
【0238】
小規模フェーズI固形腫瘍研究において、1人の患者が、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルによる処置後、RECIST1.1につき完全寛解を達成した。この観察結果は、患者病歴及び以前の処置ラインを考慮すると予測されなかったものである。図11は、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルによる処置に対しての完全寛解(CR)した患者における選択されたバイオマーカーに対する効果の概要を示す。この患者は、好中球対リンパ球比(NLR)の減少、並びに、CD4+細胞、CD8+細胞、CD3+T細胞の変化、ptgs2及びdusp1の発現、並びに他の変化を示した。(C1D1は、処置のサイクル1の1日目を示し;C1D15は、処置のサイクル1の15日目を示し;C4D1は、処置のサイクル4の1日目を示し、EOTは、処置の終わりを示す。)この患者において、NLRは、治療の8日後に5.5(上昇)から2.5(正常)まで下降した(図11の左上)。このNLRの改善は、GR制御転写産物ptgs2及びdusp1の低減によって達成された(図11の左下)。これらの転写産物の存在量は、後に疾患が進行するとリバウンドしてベースラインを超え、レラコリラントによる処置を中断し、デキサメタゾンを最終的に投与した。Treg(CD4+T細胞の%として)の減少並びにCD3+(単核CD45+の%として)、CD4+(CD3+の%として)、及びCD8+(CD3+の%として)の増加が観察された(図11の右上)。血漿IFN-γは僅かに増加したが、この患者においてはIL-10が減少した(図11の右下)。これらの観察結果は、免疫活性化及びコルチゾール活性のアンタゴニズムと一致している。
【0239】
この観察結果に基づいて、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルへの応答の持続期間が長い他の患者における免疫応答を評価した。ICI試験において一般的であるように、小群(57の評価可能な患者のうち10)には持続的な利益があった(図12)。このことは、これらの疾患状態、及び、いくつかの場合においては、ナブ-パクリタキセル治療への応答の持続期間の前を考えると、特に驚くべきことであった(図12)。これらの患者において、血中CD3+細胞及び血漿IFNγレベルが増大した。このことは、全血における、血中Treg、血漿IL-10レベル、及びGR制御遺伝子の転写の減少によって達成された(図13)。
【0240】
図13に示すように、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルにおいて並外れて持続性のある応答を有する患者における免疫活性の証拠がある。これらの患者は、血漿/全血においてこれらの傾向を呈した:かかる患者において見られる傾向の中には、NLRの減少(D8 p=0.006;D15 p=0.02);Treg数の減少(p=0.06);CD3+細胞数の増加(p=0.06);EOTにおいてリバウンドする、早期の全血におけるGR制御遺伝子発現(ptgs2)の減少(p=0.008);IFNγの増加(p=0.03(高い外れ値を除く));及びIL-10の減少(p=0.03)。これらの傾向は、より広範な試験集団にわたっては観察されなかった。さらに、これらの顕著な応答者におけるNLRは、ベースラインからC1D8及びC1D15に減少した(図13)。共にこれらの観察結果は、長い利益持続期間が、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルへの免疫応答に付随したことを示唆している。
【0241】
結論
レラコリラントは、健康なボランティア及び進行した固形腫瘍を有する患者において実証済の全身的なGRアンタゴニズムを備える、強力且つ選択的なGRアンタゴニストである。GR発現は、ヒト腫瘍及び免疫細胞において豊富であり、高い腫瘍GRレベルが高度の免疫浸潤及びPDL1発現に関連する。生理的濃度のコルチゾールは、インビトロでのヒトPBMC活性化を広範に抑制し、レラコリラントは、この抑制から解放させる。レラコリラントとαPD1との組み合わせを、同系マウスモデルであるEG7において実証した。レラコリラントの全身的な効果は、固形腫瘍患者及び健康なボランティアにおけるフェーズI研究におけるGRアゴニスト効果の相反(reciprocal)と一致した。
【0242】
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)への応答の重要な相関は、臨床的に明らかにされている。腫瘍内への免疫浸潤(しばしば「炎症性」腫瘍(“hot” tumors)と称される)及び腫瘍におけるPDL1発現は、チェックポイント阻害剤へのより良好な応答を予測させるものである傾向があり、GR存在量は、両方と相関する。これは、高GR、免疫浸潤、及びPDL1発現に、重複する腫瘍サブセットが存在することを示唆している。GRアンタゴニズムは、これらの浸潤した、抑制された免疫細胞を再活性化し得る。IL-8、EP4、及びIDO1のような免疫抑制シグナルの抑制と協調した、TNF-α及びIFN-γのような炎症促進性シグナルの誘発は、ICI応答に関連していた。内因性コルチゾールが、これらの経路を、ICI応答を低減することが予期される方向に調節する一方で、レラコリラントは、相反する効果を有する。低NLRは、チェックポイント阻害剤への応答を予測させるものであり、レラコリラントは、上昇したベースラインNLRを有するがん患者においてNLRを低下させる。そのため、レラコリラントの効果は、病理学的内因性コルチゾール活性を抑制し且つICI応答を促進するものであろう。
【0243】
がんを有する患者における内因性コルチゾール活性の上昇が従来報告されていたところ、レラコリラントデータによって、内因性コルチゾール活性が拮抗され得ることが確認される。GRアンタゴニストによるNLRの正常化は、がん患者におけるNLRの上昇が、部分的に、コルチゾール活性の上昇によって駆動され得ることを示唆している。合成GRアゴニストの投与による治療がこの研究において禁止されていたため、前記NLRの上昇は、合成GRアゴニストの投与によって引き起こされたものではなかった。同様に、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルにおける利益を実証している患者におけるレラコリラントによるGR制御遺伝子のアンタゴニズムは、いくらかの内因性GRアゴニスト活性が処置の前に存在したことを示唆している。ベースラインの合成ステロイドの使用は、ICIによる結果が劣ることと関連しているため、ベースラインが上昇したコルチゾール活性は、一部の患者におけるICI応答の制限の原因でありうる。
【0244】
(実施例3.固形腫瘍におけるコルチゾール効果のレラコリラントによる反転)
序論:内因性グルココルチコイド受容体(GR)アゴニストであるコルチゾールは、T細胞活性化、炎症促進性サイトカイン分泌、及び免疫細胞輸送に影響する広範な転写プログラムを制御する。GRに選択的に拮抗することにより、レラコリラントは、固形腫瘍がんにおけるコルチゾールの免疫抑制効果を反転させ得る。
【0245】
方法:免疫細胞存在量及びGR発現を、IHCによって評価し、The Cancer Genome Atlas(TCGA)データに基づいて算出した。ヒトPBMCをαCD3+IL-12+/-コルチゾール又はコルチゾール+レラコリラントによって刺激した。EG7腫瘍を担持するマウスをαPD1(RMP1-14)(ip(腹腔内)Q5D(5日毎))+/-レラコリラント(QD)(毎日)で処置した。Nanostringを介して全血mRNAを測定し、標準の全血算アッセイを使用してヘマトロジーを実施し、研究NCT02762981におけるイムノアッセイによってサイトカインを評価した。
【0246】
結果:GR発現をヒト腫瘍及び免疫細胞において観察した。その存在量は、T2、Treg、及びPDL1細胞の腫瘍浸潤と正相関し(P<.001)、T1細胞と負相関した(P<.001)。PBMCにおいて、CD8T細胞活性化(P<.001)及び炎症促進性サイトカイン分泌(TNFα P=.006、IFNγ P<.05)を、コルチゾールは阻害し、レラコリラントは回復させた。EG7同系モデルでは、レラコリラントは、αPD1の効能を増大させ(P=.007)、循環IL-10を減少させた(P<.002)。進行した固形腫瘍を有する患者において、レラコリラント+ナブ-パクリタキセルは、正準GR制御遺伝子(ptgs2 P<.001)及び免疫調節薬物標的候補をコードする遺伝子(cxcl8、ptger4、ido1;P<.001)の発現を全身的に抑制した。(図10、n=46)。小規模の患者サブセット(n=11)において、持続的な臨床応答は、T細胞カウント(P=.06)及びIFNγ(P=.03)の増加、並びに、Tregの減少に関連した。好中球対リンパ球比(NLR)も、これらの患者において正常化した(p=0.01)
【0247】
結論:レラコリラントによるT細胞活性化のエビデンスが、PBMC、同系マウス腫瘍、及びフェーズ1研究において持続的な応答を有する患者において観察された。このことは、固形腫瘍がんにおいて内因性コルチゾールによる免疫抑制を、レラコリラントが反転させ得る、という仮説を支持している。
【0248】
(実施例4.t-細胞における短期レラコリラント効果)
短期(7日)EG7薬力学研究を雌性B6 CD45.1マウスにおいて実施して、T細胞の増殖及び活性化に対するレラコリラント+αPD1の効果を評価した。E.G7-OVAマウスリンパ腫細胞を皮下接種し、CORT125134(30mg/kg、1日1回7日間、経口投与)及びRMP1-14(10mg/kg、合計で2回用量となるよう5日毎に腹腔内投与)を単独並びに組み合わせて処置したB6 CD45.1雌性マウスからの脾臓及び腫瘍部を、フローサイトメトリーを用いて分析した。先行の研究とは異なり、細胞及びサイトカインの分析を腫瘍体積の差が検出される前に同時進行させて行った(図14)。そのため、この研究においては、腫瘍体積の変化が、前記のサイトカイン又はT細胞の測定に影響し得ない。臨床症状又は体重変化に対しての処置の副作用は無かった。
【0249】
抗原特異的T細胞は、抗腫瘍免疫応答の重要なメディエーターである。EG7モデルは、モデルの抗原オボアルブミンを発現する。抗原特異的T細胞は、オボアルブミンを認識するT細胞を測定することによって定量化することができる。T細胞マーカー(例えば抗CD3及び抗CD8)と結合し且つ標識オボアルブミンテトラマーと結合する細胞は、抗原特異的T細胞と見なされる。抗原特異的T細胞は、脾臓及び腫瘍において、レラコリラント+αPD1の組み合わせによって増加した(図15)。脾臓のCD8+T細胞における、T細胞活性化のマーカーであるCD69発現も、同じく、前記の組み合わせによって増加した(図16)。レラコリラント又はαPD1は単独で、脾臓のCD8-T細胞においてPD1発現を誘発するのに充分であった。(図16)。CD3+CD8+T細胞は、前記組み合わせによって脾臓において増加した(図16)。血清におけるTNFαは、前記組み合わせによって増加した(図17)。αPD1単独ではIL-6レベルが上昇したが、レラコリラント+αPD1の組み合わせでは、IL-6が上昇することなく抗原特異的T細胞の効能及び増殖が達成された(図17)。T細胞活性化及びTNFα分泌を含めた、この観察されたインビボ効果は、単離したヒトPBMCにおいて観察されたインビトロ効果と一致している。
【0250】
結論:αPD1と共にレラコリラントを投与することにより、WTマウスにおいて脾臓及び腫瘍における抗原特異的T細胞数が増加し、その上、脾臓においてCD69発現が増加した。この組み合わせは、IL-6を上げることなく抗原特異的T細胞数を増加させるのに効果的であった。RMP1-14/CORT125134(10/30mg/kg)の併用療法は、ビヒクル対照並びに前記RMP1-14単独療法及びCORT125134単独療法と比較して、腫瘍において、CD8+細胞に対するパーセンテージで、OVAテトラマー+の有意な(p≦0.05)増加、並びに、ビヒクル対照と比較して、CD3+細胞に対するパーセンテージで、有意に(p≦0.05)より高いレベルのCD8+OVAテトラマー+を、結果として生じさせた。前記RMP1-14及びCORT125134単独療法並びに前記RMP1-14/CORT125134併用療法は、ビヒクル対照と比較して、脾臓において、CD8+細胞に対するパーセンテージで、PD-1+の有意な(p≦0.05)増加を結果として生じさせた。前記併用療法はまた、ビヒクル対照及びRMP1-14単独療法と比較して、脾臓において、CD45.1+細胞に対するパーセンテージで、有意に(p≦0.05)より高レベルのCD3+CD8+にもつながった。T細胞活性化及びTNFα分泌を含めたこれらの効果は、単離したヒトPBMCにおいて観察されたインビトロ効果と一致している。
【0251】
この明細書において列挙されている全ての特許、特許公報、公報、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の公報又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的に且つ個々に示されているかのように、全体がここで参照により本明細書に組み込まれる。加えて、上記の発明は、理解の明瞭さの目的で例示及び例によっていくぶん詳しく記載されているが、添付の請求項の精神又は範囲から逸脱することなくある特定の変更及び修飾がなされうることが、本発明の教示に照らして、当業者に容易に明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-05-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍を有するがん患者において腫瘍成長を遅延させる、腫瘍成長を停止させる、又は腫瘍成長を遅延及び停止させる方法において使用するための医薬であって、
下記構造を有してCORT122928と称される(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,-7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノン、
【化1】

下記構造を有してCORT113176と称される(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロP,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノン、
【化2】

下記構造を有してエキシコリラント又はCORT125281と称される((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン、
【化3】

下記構造を有してCORT125329と称される((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノン、
【化4】

及び、下記構造を有してCORT108297と称される(R)-4-a-エトキシメチル-1-(4-フルオロ-フェニル)-6-(4-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H,1,2,6-トリアザ-シクロペンタ[b]ナフタレン
【化5】

からなる群から選択される非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体アンタゴニスト(SGRA)を含み、
前記方法は有効量のがん処置及び有効量の前記非ステロイド性SGRAの投与を前記がん患者に行うことを含み、これにより、前記患者の腫瘍成長が遅延及び/又は停止される、
前記医薬。
【請求項2】
前記非ステロイド性SGRAがCORT122928である、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記非ステロイド性SGRAがCORT113176である、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
前記非ステロイド性SGRAがエキシコリラント又はCORT125281である、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
前記非ステロイド性SGRAがCORT125329である、請求項1に記載の医薬。
【請求項6】
前記非ステロイド性SGRAがCORT108297である、請求項1に記載の医薬。
【請求項7】
前記使用が、固形腫瘍を有する前記患者において腫瘍成長を遅延させるのに有効である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
前記使用が、前記非ステロイド性SGRAの投与前のCD8+T細胞活性化と比較してCD8+T細胞活性化を増大させるのに有効である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
前記使用が、前記非ステロイド性SGRAの投与前の炎症促進性サイトカイン分泌と比較して炎症促進性サイトカイン分泌を増大させるのに有効である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
前記使用が、前記非ステロイド性SGRAの投与前のTNFα分泌と比較してTNFα分泌を増大させるのに有効である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
前記使用が、前記非ステロイド性SGRAの投与前のIFNγ分泌と比較してIFNγ分泌を増大させるのに有効である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項12】
前記使用が、前記非ステロイド性SGRAの、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日又はこれを超える日数から選択される日数にわたる投与の後に、腫瘍成長を遅延させるのに有効である、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
前記がん処置が、化学療法剤を投与することを含む、請求項1~請求項12いずれか一項に記載の医薬
【請求項14】
前記化学療法剤が、タキサン、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗剤、分裂抑制剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
前記化学療法剤が、タキサンである、請求項13に記載の医薬。
【請求項16】
前記化学療法剤が、ナブ-パクリタキセルである、請求項15に記載の医薬。
【請求項17】
前記がん処置が、免疫療法剤を投与することを含む、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項18】
前記免疫療法剤が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択されるタンパク質標的を対象とする抗体チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項17に記載の医薬。
【請求項19】
前記がん処置が、がん放射線療法、成長因子阻害剤の投与、及び抗血管新生因子の投与のうちの1又は複数を含む、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の医薬。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0251
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0251】
この明細書において列挙されている全ての特許、特許公報、公報、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の公報又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的に且つ個々に示されているかのように、全体がここで参照により本明細書に組み込まれる。加えて、上記の発明は、理解の明瞭さの目的で例示及び例によっていくぶん詳しく記載されているが、添付の請求項の精神又は範囲から逸脱することなくある特定の変更及び修飾がなされうることが、本発明の教示に照らして、当業者に容易に明らかであろう。
本発明の例示的な態様を以下に記載する。
<1>
固形腫瘍を有するがん患者において免疫機能を改善する方法であって、有効量のがん処置及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SGRM)の投与を前記がん患者に行うことを含み、これにより、前記患者の免疫機能が改善される、前記方法。
<2>
前記の免疫機能の改善が、前記の固形腫瘍を有する患者において抗がん効果を生じさせるのに有効であり、これにより、腫瘍成長を遅延させる、腫瘍成長を停止させる、腫瘍量を低減させる、又はこれらの組み合わせを成す、<1>に記載の免疫機能を改善する方法。
<3>
前記の改善された免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの投与前のCD8+T細胞活性化と比較して増大したCD8+T細胞活性化を含む、<1>又は<2>に記載の方法。
<4>
前記の改善された免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの投与前の炎症促進性サイトカイン分泌と比較して増大した炎症促進性サイトカイン分泌を含む、<1>又は<2>に記載の方法。
<5>
前記の改善された免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの投与前のTNFα分泌と比較して増大したTNFα分泌を含む、<1>又は<2>に記載の方法。
<6>
前記の改善された免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの投与前のIFNγ分泌と比較して増大したIFNγ分泌を含む、<1>又は<2>に記載の方法。
<7>
前記免疫機能が、前記非ステロイド性SGRMの、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日又はこれを超える日数から選択される日数にわたる投与の後に改善される、<1>~<6>のいずれか一つに記載の方法。
<8>
前記非ステロイド性SGRMが、下記式を有するヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む化合物、又はその塩若しくは異性体である、<1>~<6>のいずれか一つに記載の方法:
【化25】

式中
は、5~6個の環員を有し、且つ、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環であり、前記ヘテロアリール環はそれぞれ独立してR 1a から選択される1~4個の基で置換されていてもよく;
1a はそれぞれ独立して水素、C 1-6 アルキル、ハロゲン、C 1-6 ハロアルキル、C 1-6 アルコキシ、C 1-6 ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C 3-8 シクロアルキル、及びC 3-8 ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、及びヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで前記ヘテロシクロアルキル環及びヘテロアリール環は、5~6個の環員、及びそれぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子を有し;
はそれぞれ独立して水素、C 1-6 アルキル、ハロゲン、C 1-6 ハロアルキル、C 1-6 アルコキシ、C 1-6 ハロアルコキシ、C 1-6 アルキル-C 1-6 アルコキシ、CN、OH、NR 2a 2b 、C(O)R 2a 、C(O)OR 2a 、C(O)NR 2a 2b 、SR 2a 、S(O)R 2a 、S(O) 2a 、C 3-8 シクロアルキル、及びC 3-8 ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され、ここで前記ヘテロシクロアルキル基は1~4個のR 2c 基で置換されていてもよく;
あるいは、同じ炭素に結合した2個のR 基が組み合わされてオキソ基(=O)を形成しており;
あるいは、2個のR 基が組み合わされて、5~6個の環員と、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子とを有する、ヘテロシクロアルキル環を形成しており、ここで前記ヘテロシクロアルキル環は1~3個のR 2d 基で置換されていてもよく;
2a 及びR 2b はそれぞれ独立して水素及びC 1-6 アルキルからなる群より選択され;
2c はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C 1-6 アルコキシ、C 1-6 ハロアルコキシ、CN、及びNR 2a 2b からなる群より選択され;
2d はそれぞれ独立して水素及びC 1-6 アルキルからなる群より選択され、あるいは、同じ環原子に結合した2個のR 2d 基が組み合わされて(=O)を形成しており;
はそれぞれ1~4個のR 3a 基で置換されていてもよいフェニル及びピリジルからなる群より選択され;
3a はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、及びC 1-6 ハロアルキルからなる群より選択され;
下付き文字nは0~3の整数である。
<9>
前記非ステロイド性SGRMが、レラコリラントと称される(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、<8>に記載の方法。
【化26】

<10>
前記非ステロイド性SGRMが、CORT122928と称される(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,-7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、<8>に記載の方法。
【化27】

<11>
前記非ステロイド性SGRMが、CORT113176と称される(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロP,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、<8>に記載の方法。
【化28】

<12>
前記非ステロイド性SGRMが、下記式を有するオクタヒドロ縮合アザデカリン構造化合物、又はその塩若しくは異性体である、<1>~<6>のいずれか一つに記載の方法。
【化29】

式中、
は、それぞれ独立してR 1a から選択される1~4個の基で置換されていてもよい、ピリジン及びチアゾールからなる群より選択され、
1a はそれぞれ独立して水素、C 1-6 アルキル、ハロゲン、C 1-6 ハロアルキル、C 1-6 アルコキシ、C 1-6 ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC 3-8 シクロアルキルからなる群より選択され;
環Jは、フェニル、ピリジン、ピラゾール、及びトリアゾールからなる群より選択され;
はそれぞれ独立して、水素、C 1-6 アルキル、ハロゲン、C 1-6 ハロアルキル、及び-CNからなる群より選択され;
3a は、Fであり;
下付き文字nは、0~3の整数である。
<13>
前記非ステロイド性SGRMが、エキシコリラントと称される((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、<12>に記載の方法。
【化30】

<14>
前記非ステロイド性SGRMが、「CORT125329」と称される((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノンであり、下記構造を有するものである、<12>に記載の方法。
【化31】

<15>
前記がん処置が、化学療法剤を投与することを含む、<1>~<14>のいずれか一つに記載の方法。
<16>
前記化学療法剤が、タキサン、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗剤、分裂抑制剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、<15>に記載の方法。
<17>
前記化学療法剤が、タキサンである、<15>に記載の方法。
<18>
前記化学療法剤が、ナブ-パクリタキセルである、<17>に記載の方法。
<19>
前記がん処置が、免疫療法剤を投与することを含む、<1>~<14>のいずれか一つに記載の方法。
<20>
前記免疫療法剤が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択されるタンパク質標的を対象とする抗体チェックポイント阻害剤を投与することを含む、<19>に記載の方法。
<21>
前記がん処置が、がん放射線療法、成長因子阻害剤の投与、及び抗血管新生因子の投与のうちの1又は複数を含む、<1>~<14>のいずれか一つに記載の方法。
<22>
前記選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターが、選択的グルココルチコイド受容体アンタゴニストである、<1>~<21>のいずれか一つに記載の方法。
【外国語明細書】