IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109573
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】改善された電気化学膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1058 20160101AFI20240806BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20240806BHJP
   C08J 9/42 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240806BHJP
   H01M 8/106 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/1062 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/1067 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/1065 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240806BHJP
【FI】
H01M8/1058
H01M8/18
C08J9/42 CEW
B32B5/18
B32B5/32
B32B27/30 D
H01M8/106
H01M8/1062
H01M8/1067
H01M8/1065
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068127
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2023512123の分割
【原出願日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】63/067,665
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア バーテルズ
(72)【発明者】
【氏名】ナビヤ ジャガーラムディ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】貫通及びその後の短絡に対して高い抵抗性を示しながら、高性能および低イオン抵抗を保持する薄い複合膜を提供する。
【解決手段】a)少なくとも2つの強化層であって、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれは微孔質ポリマーを含む、強化層、及びb)前記少なくとも2つの強化層の前記微孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に吸収され、前記微孔質ポリマー構造を閉塞的にさせるイオン交換材料(IEM)を含む、電気化学デバイスのための複合膜であって、前記複合膜は、特定の平均穿刺圧力破壊試験に従って測定したときに、少なくとも1034kPa(150psi)の平均破壊圧力を有し、そして、前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて少なくとも15体積%の総含有量で存在する、電気化学デバイスのための複合膜である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも2つの強化層であって、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれは微孔質ポリマー構造を含む、強化層、及び、
b)前記少なくとも2つの強化層の前記微孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に吸収され、前記微孔質ポリマー構造を閉塞性にさせるイオン交換材料(IEM)、
を含む、電気化学デバイスのための複合膜であって、
前記複合膜は0%RHで少なくとも10μmの厚さを有し、そして、
前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて少なくとも15体積%の総含有量で存在する、電気化学デバイスのための複合膜。
【請求項2】
前記少なくとも2つの強化層の組成は同じであるか、又は、前記少なくとも2つの強化層の組成は異なる、請求項1記載の複合膜。
【請求項3】
前記微孔質ポリマー構造は少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含むか、又は前記微孔質ポリマー構造は少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含み及び前記フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、延伸ポリフッ化ビニリデン(ePVDF)、延伸ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(eEPTFE)もしくはそれらの混合物である、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項4】
前記フッ素化ポリマーは過フッ素化延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であるか、又は前記フッ素化ポリマーは過フッ素化延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であり及び
前記複合膜は、前記複合膜に存在するすべての強化層の面積当たりの質量の合計に基づいて、少なくとも5.5g・m-2の微孔質ポリマー構造の総含有量を有するか、
前記複合膜は、前記複合膜に存在するすべての強化層の面積当たりの質量の合計に基づいて、5.5g・m-2~80g・m-2の微孔質ポリマー構造含有量の総含有量を有するか、の少なくとも1つである、請求項3記載の複合膜。
【請求項5】
前記微孔質ポリマー構造は炭化水素ポリマーを含むか、又は前記微孔質ポリマー構造は炭化水素ポリマーを含み及び前記炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン又はそれらの混合物を含む、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項6】
前記少なくとも2つの強化層は直接接触しているか、又は、
前記複合膜は、前記少なくとも2つの強化層の間にイオン交換材料の少なくとも1つの内層を含むか、のいずれかである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項7】
前記少なくとも2つの強化層は距離dだけ分離されている、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項8】
前記距離dは0%RHで0.1μm~20μmであるか、
前記距離dは0%RHで0.5μm~5μmであるか、の少なくとも1つである、請求項7記載の複合膜。
【請求項9】
前記イオン交換材料は、複数の層のイオン交換材料を含み、そして前記イオン交換材料の層は同じイオン交換材料から形成されているか、又は、
前記イオン交換材料は、複数の層のイオン交換材料を含み、そして前記イオン交換材料の第一の層はイオン交換材料の第二の層のイオン交換材料とは異なるイオン交換材料から形成されているか、のいずれかである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項10】
前記微孔質ポリマー構造は前記イオン交換材料が完全に吸収されているか、
前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの微孔質ポリマー構造は第一の表面及び第二の表面を有し、前記イオン交換材料は、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの第一の表面又は第二の表面の少なくとも一方の上に層を形成しているか、
の少なくとも1つである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項11】
前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの微孔質ポリマー構造は、第一の表面及び第二の表面を有し、そして、
前記微孔質ポリマー構造は、大部分で前記イオン交換材料が吸収されているが、前記少なくとも2つの強化層のうちの少なくとも1つの第一の表面の最も近くに、又は前記少なくとも2つの強化層のうちの少なくとも1つの第二の表面の最も近くに、又はその両方に、前記微孔質ポリマー構造の非吸収領域又は非閉塞領域の領域を含む、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項12】
前記少なくとも2つの強化層の微孔質ポリマー構造は、イオン交換材料で90%閉塞されている、請求項11記載の複合膜。
【請求項13】
前記イオン交換材料の平均当量体積は240cc/モル当量~870cc/モル当量であるか、又は前記イオン交換材料の平均当量体積は350cc/モル当量~475cc/モル当量であるか、又は前記イオン交換材料の平均当量体積は240cc/モル当量~650cc/モル当量である、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項14】
前記イオン交換材料は少なくとも1つのアイオノマーを含むか、又は前記イオン交換材料は少なくとも1つのアイオノマーを含み及び
前記少なくとも1つのアイオノマーはプロトン伝導性ポリマーを含むか、
前記少なくとも1つのアイオノマーは、相対湿度0%で1.9g/cc以上の密度を有するか、
の少なくとも1つである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項15】
前記複合膜は、0%RHで10μm~115μm、又は10μm~90μm、又は10μm~40μm、又は10μm~30μm、又は10μm~20μmの厚さを有するか、
前記複合膜は、0%RHで15μmの厚さを有するか、
前記複合膜は、0%RHで25μmの厚さを有するか、
のいずれかである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項16】
本明細書に記載の平均穿刺圧力破壊試験平均穿刺圧力破壊試験に従って測定したときに、前記複合膜は150psi~500psiの平均破壊圧力を有する、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項17】
前記複合膜の1つ以上の外面に取り外し可能に取り付けられた少なくとも1つのバッカー層をさらに含む、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項18】
少なくとも1つの電極、及び、
前記少なくとも1つの電極と接触している、請求項1又は2記載の複合膜、
を含む、電気化学デバイスのための膜電極アセンブリ。
【請求項19】
前記複合膜は前記少なくとも1つの電極に取り付けられているか、
前記少なくとも1つの電極は多孔質層を含むか、
前記少なくとも1つの電極は炭素繊維を含むか、
の少なくとも1つである、請求項18記載の膜電極アセンブリ。
【請求項20】
前記膜電極アセンブリは、
第一の表面及び第二の表面を有する第一の電極、
第一の表面及び第二の表面を有する第二の電極、及び、
請求項1又は2のいずれか1項記載の第一の表面及び第二の表面を有する複合膜、
を含む、レドックスフロー電池膜電極アセンブリであって、
前記第一の電極の前記第二の表面は前記複合膜の前記第一の表面と接触しており、前記第二の電極の前記第一の表面は前記複合膜の前記第二の表面と接触している、請求項18又は19のいずれか1項記載の膜電極アセンブリ。
【請求項21】
前記レドックスフロー電池膜電極アセンブリは、前記複合膜の第一の表面に取り付けられた第一の電極層、及び、前記複合膜の第二の表面に取り付けられた第二の電極層を含むか、
前記第一の電極層及び/又は前記第二の電極層は1~200μmの細孔サイズを有する多孔質層であるか、
の少なくとも1つである、請求項20記載の膜電極アセンブリ。
【請求項22】
前記少なくとも1つの電極は、フェルト、紙又は織物材料から選ばれる、請求項18又は19記載の膜電極アセンブリ。
【請求項23】
前記第一の電極及び/又は前記第二の電極は、アイオノマーを含む炭素/白金電極であるか、又は前記電極は、アイオノマーを含む合金を含むか、
前記第一の電極及び/又は前記第二の電極は、ドープされた炭素繊維を含むか、
の少なくとも1つである、請求項20記載の膜電極アセンブリ。
【請求項24】
前記膜電極アセンブリは、
請求項1又は2記載の複合膜であって、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、複合膜、
前記複合膜の前記第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、
前記複合膜の前記第二の表面に接着された電極触媒の第二の層、
を含む、燃料電池膜電極アセンブリである、請求項18又は19記載の膜電極アセンブリ。
【請求項25】
前記電極触媒の前記第一の層及び前記第二の層は、100nm以下の細孔サイズを有するナノポーラス層であるか、
前記電極触媒の前記第一の層及び前記第二の層は、
1つ以上のアイオノマー、
カーボンブラックなどの触媒担体、及び、
白金、
を含むか、
の少なくとも1つである、請求項24記載の膜電極アセンブリ。
【請求項26】
前記膜電極アセンブリは、
請求項1又は2記載の複合膜であって、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、複合膜、
前記複合膜の前記第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、
前記複合膜の前記第二の表面に接着された電極触媒の第二の層、
を含む、電解槽電極アセンブリである、請求項18又は19記載の膜電極アセンブリ。
【請求項27】
白金又はルテニウム触媒の層は前記複合膜に接着されている、請求項24又は26記載の膜電極アセンブリ。
【請求項28】
請求項1又は2記載の複合膜、又は請求項18又は19又は24又は27記載の膜電極アセンブリを含む、燃料電池。
【請求項29】
請求項1又は2記載の複合膜、又は請求項18又は19記載の膜電極アセンブリを含む、レドックスフロー電池。
【請求項30】
請求項1又は2記載の複合膜、又は請求項18又は19記載の膜電極アセンブリを含む、電解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、ポリマー電解質膜に関し、特に、微孔質ポリマー構造を含む少なくとも2つの強化層を有し、驚くほど高い突き刺し抵抗性を有する複合膜に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリマー電解質膜(PEM)は、燃料電池、電解槽、レドックスフロー電池などの多くの用途で重要な構成要素である。
【0003】
燃料電池において、ポリマー電解質膜(PEM)は膜電極アセンブリ(MEA)の部品である。MEAは、電力を生成する電気化学反応が起こる燃料電池のコア構成要素である。典型的なMEAは、PEM、2つの触媒層(すなわち、PEMの両側に取り付けられたアノード及びカソード)、及び、前記触媒層の2つの外側表面に取り付けられた2つのガス拡散層(GDL)を含む。PEMは2つの反応体ガス流を分離する。MEAのアノード面上において、燃料、例えば、水素ガスは酸化されて電子とプロトンが分離される。電池は、プロトンがPEMを通って移行する間に、電子は外部回路を通って移動するように設計されている。カソード面において、電子及びプロトンは酸化剤(酸素又は空気)と反応して、水及び熱を生成する。このようにして、電気化学ポテンシャルは維持され、電流は燃料電池から引き出されて有用な仕事を行うことができる。
【0004】
レドックスフロー電池は、2つの可溶性レドックス対を電気活性材料として使用し、酸化及び還元反応によってエネルギーを蓄える。典型的に、レドックスフロー電池は2つの電解質リザーバ(カチオン電解質及びアニオン電解質)を含み、そこから電解質はポンプによって電気化学セルスタックを介して循環される。セルスタックは、通常、直列又は並列に接続された複数のセルを含み、不活性電極で電気化学反応を起こすことができる。スタックの各セルは、アノード、カソード及びイオン交換膜セパレータ(例えば、ポリマー電解質膜PEM)を含み、2つのリザーバからの電解質溶液の交差混合を防ぎながら、膜セパレータを横切るイオンの拡散を可能にする。
【0005】
電解槽は、水を加水分解して水素及び酸素を生成する。電解槽で起こる反応は、アノード及びカソードで起こる反応が逆であることを除けば、燃料電池の反応と非常によく似ている。燃料電池ではアノードで水素ガスが消費され、電解槽ではカソードで水素ガスが生成される。バイポーラ電解槽(又はPEM電解槽)は、PEM燃料電池と同じタイプの電解質セパレータを使用する。電解質セパレータは、薄い固体イオン伝導膜であり、アルカリ電解槽で使用される水溶液を分離する厚い多孔質膜の代わりに使用される。
【0006】
高選択性(高コンダクタンス及び/又は低パーミアンスによる)、高耐久性及び低コストはすべて、PEMに望ましい品質である。しかしながら、実際のエンジニアリングの問題として、これらの特性の最適化では競合が発生することが多く、トレードオフを受け入れる必要がある。膜の厚さを薄くしてコンダクタンスを増加させることにより、選択性の改善を試みることができる。PEMを薄くするとコストも削減される。というのは、アイオノマーは高価であり、使用量が少なくなるためである。しかしながら、膜が薄いほど水素透過が増加し、プロトン伝導の増加による選択性の向上が損なわれ、薄い膜は厚い膜と同等又はそれ以下の選択性を示す。さらに、より薄い膜はより弱く、過酷な自動車条件に対して十分な機械的耐久性を欠くことがよくある。膜の物理的な厚さを薄くすると、他の電気化学デバイス構成要素による損傷又は穿刺の影響も受けやすくなり、セルの寿命が短くなる可能性がある。
【0007】
PEMの貫通は、PEMの両側に配置された電極層を使用するレドックスフロー電池(RFB)において特に問題となりうる。RFB電極層は、通常、多孔質層(典型的な細孔サイズ1~200ミクロン)を含む。多孔質層は、とりわけ、フェルト、紙又は織物材料を含むことができる。RFB電極は、通常、PEM電極組み立て中に電極層がPEMに対して圧縮されると、PEMを突き刺すことができる炭素繊維を含む。したがって、より高いプロトンコンダクタンスを有する膜へのアクセスは、膜貫通抵抗の要件によって制限される。
【0008】
最終的に、PEM電気化学デバイスは、ポリマー電解質膜を介して発生及び伝播するピンホールが原因で故障する可能性がある。さらに、これらのデバイスは、電子電流がPEMを通過してシステムがショートした場合にも故障する可能性がある。
【0009】
PEMの機械的抵抗及び突き刺し特性に対する抵抗を改善する最新技術のアプローチは、微孔質ポリマー構造の連続層でポリマー電解質膜を強化することを含む。微孔質ポリマー構造のこの層は、ポリマー電解質(例えばアイオノマー)が完全に吸収されているため、イオンに対して完全に伝導性がある。しかしながら、強化されたPEMでさえ、電気化学デバイス製造中のPEMの組み立て時に穿刺を受ける可能性がある。
【0010】
したがって、最新技術の複合膜よりも電気化学デバイス構成要素による貫通及びその後の短絡に対して高い抵抗性を示しながら、高性能及び低イオン抵抗を保持する薄い複合膜に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
要旨
本発明者らは、上記の問題を解決するために努力してきた。驚くべきことに、本発明者らは、所与の微孔質ポリマー構造の全含有量及び0%RHでの複合膜の厚さについて、微孔質ポリマー構造を少なくとも2つ(又はそれ以上)の強化層に分配させると、デバイス製造時の電気化学デバイスの構成要素による膜の突き刺しに対する抵抗がさらに増加することを発見した。本発明者らはまた、複合材電解質膜中の微孔質ポリマー構造(少なくとも2つの強化層の間に分配する)の全含有量が増加すると、複合材電解質膜の平均破壊圧力がさらに改善されることも発見した。最新技術の複合電解質膜と比較して、本明細書に記載の複合膜は、複合膜を組み込むことができる電気化学デバイスの構成要素による貫通に対して優れた抵抗性を示すため、これらの発見は非常に有益である。本発明者らはまた、驚くべきことに、少なくとも2つの強化層を距離dだけ離すと、デバイス製造時に電気化学デバイスの構成要素による複合膜の貫通に対する抵抗がさらに増加することを発見した。したがって、本明細書に記載の複合膜は、膜の性能を損なうことなく、デバイス製造時に電気化学デバイスの要素による貫通に対して優れた抵抗性を有する。
【0012】
1つの態様において、電気化学デバイスのための複合膜であって、
a)少なくとも2つの強化層であって、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれが微孔質ポリマー構造を含む、強化層、及び、
b)前記少なくとも2つの強化層の微孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に吸収され、前記微孔質ポリマー構造を閉塞性にさせるイオン交換材料(IEM)、
を含み、ここで、前記複合膜は、0%RHで少なくとも10μmの厚さを有する、電気化学デバイスのための複合膜は提供される。
【0013】
本開示の文脈内で、複合膜という用語は、ポリマー電解質膜(PEM)ならびに複合材電解質膜を含む。
【0014】
前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて少なくとも約20体積%の総含有量(又は量)で前記複合膜中に存在する。本開示の文脈内で、複合膜中の微孔質ポリマー構造の総含有量は、前記複合膜中に存在する(少なくとも2つの強化層に分配される)微孔質ポリマー構造の総含有量(質量又は体積)である。本開示の文脈内で、複合膜中の微孔質ポリマー構造の総含有量は、前記複合膜中の強化微孔質ポリマー構造含有量として表すこともできる。
【0015】
前記複合膜は2つの強化層を含むことができる。前記複合膜は3つの強化層を含むことができる。前記複合膜は4つの強化層を含むことができる。前記複合膜は5つの強化層を含むことができる。前記複合膜は、2層~10層の強化層を含むことができる。前記複合膜は、任意の適切な数の強化層を含むことができる。
【0016】
前記複合膜は、0%相対湿度(RH)で少なくとも約10μmの厚さを有することができる。前記複合膜は、相対湿度(RH)0%で、約10μm~約115μm、又は約10μm~約100μm、又は約10μm~約90μm、又は約10μm~約80μm、又は約10μm~約75μm、又は約10μm~約70μm、又は約10μm~約60μm、又は約10μm~約50μm、又は約10μm~約40μm、又は約10μm~約30μm、又は約10μm~約20μm、又は約10μm~約15μm、又は約10μm~約12μm、又は約20μm~約60μm、又は約30μm~約60μm、又は約40μm~約60μm、又は約12μm~約30μm、又は約12μm~約20μm、又は約15μm~約30μm、又は約15μm~約20μm、又は約20μm~約30μmの厚さを有することができる。前記複合膜は、0%RHで、約10μm、又は約11μm、又は約12μm、又は約13μm、又は約14μm、又は約15μm、又は約16μm、又は約17μm、又は約18μm、又は約19μm、又は約20μm、又は約21μm、又は約22μm、又は約23μm、又は約24μm、又は約25μm、又は約30μm、又は約35μm、又は約40μm、又は約45μm、又は約50μm、又は約55μm、又は約60μm、又は約65μm、又は約70μm、又は約75μm、又は約80μm、又は約85μm、 又は約90μm、又は約95μm、又は約100μm、又は約105μm、又は約110μm、又は約115μmの厚さを有することができる。
【0017】
本開示の文脈内で、前記複合膜内の微孔質ポリマー構造の総含有量は、前記複合膜中の(少なくとも2つの強化層に分配する)微孔質ポリマー構造の面積あたりの総質量(g/m)として表すことができる。複合膜は、1つ以上のタイプの微孔質ポリマー構造を含むことができる。例えば、前記複合膜は、少なくとも2つの強化層に存在する単一タイプの微孔質ポリマー構造(例えばePTFE)を含むことができる。前記複合膜は、少なくとも2つの強化層を含むことができ、各強化層は、異なるタイプの微孔質ポリマー構造(例えば、フッ素化ポリマー及び炭化水素ポリマー)の混合物を含むことができる。前記複合膜は、少なくとも2つの強化層を含むことができ、前記少なくとも2つの強化層の第一の層は、単一タイプの微孔質ポリマー構造(例えばePTFE)を含むことができ、そして前記少なくとも2つの強化層の第二の層は、前記少なくとも2つの強化層の前記第一の層の微孔質ポリマー構造とは異なる、単一タイプの微孔質ポリマー構造(例えば、炭化水素ポリマー)を含むことができる。面積当たりの質量で表される複合膜内の微孔質ポリマー構造の総含有量(すなわち、複合膜の各強化層に存在する微孔質ポリマー構造の質量の合計を複合膜の面積で割ったもの)は、次の式を使用して正規化されうる。
【数1】
であり、上式中、Mmpsは微孔質ポリマー構造の質量(g)を表し、Acomposite複合膜は複合膜の総面積(m)を表し、マトリックス骨格密度mpsは微孔質ポリマー構造のマトリックス骨格密度(g/cm)を表す。
【0018】
マトリックス骨格密度は、連続気泡及び独立気泡を除いた固体の体積で割った固体の質量である。マトリックス骨格密度は、材料の固体部分の密度を表すため、単位は固体1cmあたりの固体のグラム数である。マトリックス骨格密度は、典型的に、ヘリウムピクノメトリー実験によって評価され、独立気泡がない場合の材料の真の固体密度を表す。非多孔質固体の場合に、マトリックスの骨格密度は幾何密度又はエンベロープ密度と同じである。この開示の文脈内で、ePTFEのマトリックス骨格密度は、約2.25g/cm であると考えることができる。トラックエッチングされた多孔質ポリカーボネートのマトリックス骨格密度は、約1.20g/cmであると考えることができる。
【0019】
前記複合膜が2種類以上の微孔質ポリマー構造を含む実施形態において、複合膜内の微孔質ポリマー構造の正規化総含有量(面積あたりの質量)は、次の式で計算することができる:
【数2】
であり、上式中、mps1は微孔質ポリマー構造1(例えばePTFE)であり、mps2は微孔質ポリマー構造2(例えばポリカーボネート)であり、mpsNは微孔質ポリマー構造N(複合膜内にN個の異なるタイプの微孔質ポリマー構造が存在する場合)である。
【0020】
前記複合膜内の微孔質ポリマー構造の正規化総含有量は、前記複合膜の全面積に基づいて、少なくとも約2.4・10-6m(すなわち2.4μm)、又は約3μm、又は約3.5μm、又は約4μm、又は約4.5μm、又は約5μm、又は約5.5μm、又は約6μm、又は約6.5μm、又は約7μm、又は約8μm、又は約8.5μm、又は約9μmであることができる。
【0021】
上述のように、前記複合膜中の微孔質ポリマー構造の総含有量は、前記複合膜中の(少なくとも2つの強化層に分配された)微孔質ポリマー構造が占める体積百分率で表すことができる。前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて、少なくとも約15体積%、又は少なくとも約20体積%、又は少なくとも約25体積%、又は少なくとも約30体積%、又は少なくとも約35体積%、又は少なくとも約40体積%、又は少なくとも約45体積%、又は少なくとも約50体積%、又は少なくとも約55体積%、又は少なくとも約60体積%、又は少なくとも約65体積%、又は少なくとも約70体積%の総含有量で存在することができる。
【0022】
前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて、約15体積%~約70体積%、又は約20体積%~約70体積%、又は約30体積%~約70体積%、又は約40体積%~約70体積%、又は約50体積%~約70体積%、又は約60体積%~約70体積%、又は約65体積%~約70体積%、又は約15体積%~約65体積%、又は約20体積%~約65体積%、又は約30体積%~約65体積%、又は約40体積%~約65体積%、又は約50体積%~約65体積%、又は約60体積%~約65体積%、又は約20体積%~約60体積%、又は約20体積%~約50体積%、又は約20体積%~約40体積%、又は約20体積%~約30体積%、又は約40体積%~約60体積%、又は約40体積%~約50体積%の総含有量で存在することができる。前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて、約20体積%、又は約25体積%、又は約30体積%、又は約35体積%、又は約40体積%、又は約45体積%、又は約50体積%、約55体積%、又は約60体積%、又は約65体積%の総含有量で存在することができる。
【0023】
前記少なくとも2つの強化層の組成は同じであってよい。あるいは、前記少なくとも2つの強化層の組成は異なっていてよい。
【0024】
前記微孔質ポリマー構造は、フッ素化ポリマーを含むことができる。前記微孔質ポリマー構造は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、延伸ポリフッ化ビニリデン(ePVDF)、延伸ポリ (エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(eEPTFE)又はそれらの混合物を含む群より選ばれる1つ以上のフッ素化ポリマーを含むことができる。好ましくは、フッ素化ポリマーは過フッ素化延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であることができる。
【0025】
前記微孔質ポリマー構造は、炭化水素ポリマーを含むことができる。炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トラックエッチングされたポリカーボネート、ポリスチレン又はそれらの混合物を含むことができる。
【0026】
前記微孔質ポリマー構造がePTFEを含む実施形態において、前記微孔質ポリマー構造の面積当たりの総質量は、前記複合膜の総面積に基づいて、少なくとも約5.5g/m、又は少なくとも約6g/m、又は少なくとも約7g/m、又は少なくとも約8g/m、又は少なくとも約9g/m、又は少なくとも約10g/m、又は少なくとも約11g/m、又は少なくとも約12g/m、又は少なくとも約14g/m、又は少なくとも約16g/mであることができる。
【0027】
前記微孔質ポリマー構造がePTFEを含む実施形態において、前記微孔質ポリマー構造の面積当たりの総質量は、前記複合膜の総面積に基づいて、約5.5g/m~約80g/m、又は約5.5g/m~約70g/m、又は約5.5g/m~約60g/m、又は約5.5g/m~約60g/m、又は約5.5g/m~約50g/m、又は約5.5g/m~約40g/m、又は約5.5g/m~約35g/m、又は約5.5g/m~約30g/m、又は約5.5g/m~約20g/m、又は約5.5g/m~約15g/mであることができる。
【0028】
前記複合膜がレドックスフロー電池用途向けであるときに、前記微孔質ポリマー構造の面積当たりの総質量は、好ましくは、前記複合膜中に存在するすべての微孔質層の面積当たりの総質量に基づいて、約5.5g/m~約35g/m、又は約5.5g/m~約16g/m、又は約5.5g/m~約14g/m、又は約5.5g/m~約12g/m、又は約5.5g/m~約10g/m、又は約9g/m~約20g/m、又は約9g/m~約15g/m、又は約10g/m~約18g/m、又は約8g/m~約15g/mであることができる。
【0029】
前記複合膜が電解槽用途向けであるときに、前記微孔質ポリマー構造の含有量は、レドックスフロー電池用途よりも高くなる可能性がある。例えば、前記複合膜が電解槽用途向けであるときに、前記微孔質ポリマー構造の面積当たりの総質量は、前記複合膜中に存在するすべての微孔質層の面積当たりの総質量に基づいて、約20g/m~約80g/m、又は約30g/m~約70g/m、又は、約20g/m~約50g/m、又は約30g/m~約60g/mであることができる。
【0030】
前記微孔質ポリマー構造がePTFEを含む実施形態において、前記微孔質ポリマー構造の面積あたりの総質量は、前記複合膜中に存在するすべての微孔質層の面積当たりの総質量に基づいて、約5.5g/m、又は約6g/m、又は約7g/m、又は約8g/m、又は約9g/m、又は約10g/m、又は約11g/m、又は約12g/m、又は約13g/m、又は約14g/m、又は約15g/m、又は 約16g/m、又は約17g/m、又は約18g/m、又は約19g/m、又は約20g/mであることができる。
【0031】
前記微孔質ポリマー構造が炭化水素ポリマーを含む実施形態において、前記微孔質ポリマー構造の面積あたりの総質量は、前記複合膜の総面積に基づいて、少なくとも約3.5g/m、又は少なくとも約4g/m、又は少なくとも約4.5g/m、又は少なくとも約5g/m、又は少なくとも約5.5g/m、又は少なくとも約6g/m、又は少なくとも約7g/m、又は少なくとも約8g/mであることができる。
【0032】
前記複合膜は、以下に記載される平均穿刺圧力破壊試験平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、少なくとも約150psi、又は少なくとも約160psi、又は少なくとも約170psi、又は少なくとも約180psi、又は少なくとも約190psi、少なくとも約200psiの平均破壊圧力を有することができる。
【0033】
前記複合膜は、以下に記載される平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、約150psi~約2000psi、又は約150psi~約1500psi、又は約150psi~約1000psi、又は約150psi~約500psi、又は約150psi~約300psi、又は約200psi~約400psi、又は約200psi~約400psiの平均破壊圧力を有することができる。
【0034】
前記複合膜は、以下に記載される平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、約150psi、又は約200psi、又は約250psi、又は約300psi、又は約350psi、又は約400psi、又は約450psi、又は約500psiの平均破壊圧力を有することができる。
【0035】
少なくとも2つの強化層は、直接接触していてもよい。あるいは、少なくとも2つの強化層は互いに接触していなくてもよい。少なくとも2つの強化層は、距離dだけ離れていてもよい。少なくとも2つの強化層が直接接触している実施形態において、距離dは約0μmであることができる。距離dは、約0.1μm~約20μm、又は約0.1μm~約15μm、又は約0.1μm~約10μm、又は約10μm~約20μm、又は約10μm~約15μm、又は約15μm~約20μm、又は約2μm~約8μm、又は約2μm~約6μm、又は約2μm~約4μm、又は約4μm~約8μm、又は約6μm~約8μm、又は約3μm~約6μm、又は約0.5μm~約10μm、又は約1μm~約10μm、又は約4μm~約6μm、又は約1μm~約5μm、又は約5μm~約10μmであることができる。距離dは、約0.1μm、又は約0.5μm、又は約1μm、又は約2μm、又は約3μm、又は約4μm、又は約5μm、又は約6μm、又は約7μm、又は約8μm、又は約9μm、又は約10μm、又は約11μm、又は約12μm、又は約13μm、又は約14μm、又は約15μm、又は約16μm、又は約17μm、又は約18μm、又は約19μm、又は約20μmであることができる。
【0036】
少なくとも2つの強化層は、イオン交換材料(IEM)の少なくとも1つの層によって分離されうる。前記イオン交換材料の少なくとも1つの層のそれぞれは、単一のイオン交換材料を含むことができる。前記イオン交換材料の少なくとも1つの層のそれぞれは、2つ以上のイオン交換材料の混合物を含むことができる。前記イオン交換材料の少なくとも1つの層のそれぞれは、少なくとも1つのアイオノマーを含むことができる。前記少なくとも1つのアイオノマーは、プロトン伝導性ポリマーを含むことができる。前記プロトン伝導性ポリマーは、炭化水素アイオノマーを含むことができる。プロトン伝導性ポリマーは、過フッ素化アイオノマーを含むことができる。前記プロトン伝導性ポリマーは、ペルフルオロスルホン酸を含むことができる。前記イオン交換材料の少なくとも1つの層のそれぞれは、約1μm~約10μmの厚さであることができる。前記イオン交換材料は、約240cc/モル当量~約870cc/モル当量、又は約240cc/モル当量~約650cc/モル当量、又は約350cc/モル当量~約475cc/モル当量の当量体積を有することができる。前記イオン交換材料は、相対湿度0%で、約1.9g/cc以上の密度を有することができる。
【0037】
前記少なくとも2つの強化層は、イオン交換材料(IEM)の1つの層によって分離されうる。前記イオン交換材料の層は、単一のイオン交換材料を含むことができる。前記イオン交換材料の層は、2つ以上のイオン交換材料の混合物を含むことができる。
【0038】
前記少なくとも2つの強化層は、イオン交換材料の2つ以上の層によって分離されうる。前記イオン交換材料の2つ以上の層のうちの少なくとも2つは、異なるイオン交換材料を含むことができる。前記イオン交換材料の2つ以上の層のうちの少なくとも2つは、同じイオン交換材料を含むことができる。
【0039】
前記少なくとも2つの強化層は、イオン交換材料(IEM)の層によって分離されてもよく、該イオン交換材料は、イオン交換材料の2つ以上の層を含み、前記少なくとも2つの強化層の間に配置されるイオン交換材料の層は、異なるイオン交換材料から形成される。
【0040】
前記少なくとも2つの強化層のそれぞれは、第一の表面及び第二の表面を有することができ、各強化層の第一の表面及び第二の表面のうちの少なくとも一方又は両方は、イオン交換材料で少なくとも部分的に含浸されうる。
【0041】
前記複合膜が2つの強化層を含む実施形態において、第一の強化層は第一の表面及び第二の表面を含むことができ、第二の強化層は第一の表面及び第二の表面を含むことができる。第一の強化層及び第二の強化層の第一の表面は、イオン交換材料で少なくとも部分的に含浸されうる。第一の強化層及び第二の強化層の第二の表面は、イオン交換材料で少なくとも部分的に含浸されうる。
【0042】
前記第一の強化層の第一の表面及び前記第二の強化層の第二の表面の両方がイオン交換材料で少なくとも部分的に含浸される実施形態において、前記第一の強化層の第一の表面のイオン交換材料は第二の強化層の第二の表面のイオン交換材料と同じであってよく、又は異なってよい。
【0043】
前記微孔質ポリマー構造は、イオン交換材料が部分的に吸収されていることができる。前記微孔質ポリマー構造は、イオン交換材料が完全に吸収されていることができる。複合膜が2つの強化層を有する実施形態において、2つの強化層の微孔質ポリマー構造は、イオン交換材料が完全に吸収されていることができる。さらに、前記複合膜は、前記複合膜の第一の表面及び第二の表面上にイオン交換材料の2つの追加の層を含むことができる。さらに、前記第一の強化層及び第二の強化層は、イオン交換材料の別の(内)層によって互いに分離されうる。1つの実施形態において、前記少なくとも2つの強化層は、距離dを形成するイオン交換材料の別の(内)層によって互いに分離されうる。前記複合膜の第一の表面上、前記複合膜の第二の表面上及び/又は2つの強化層間に配置されたイオン交換材料の層は、同じ又は異なるイオン交換材料を含むことができる。例えば、前記イオン交換材料はアイオノマーであることができる。
【0044】
少なくとも1つの前記強化層の微孔質ポリマー構造がイオン交換材料で部分的に吸収される実施形態において、前記イオン交換材料は、前記強化層の第一の表面、第二の表面又は両面に最も近くに微孔質ポリマー構造の非閉塞部分を残すことができる。前記非閉塞部分は、イオン交換材料を全く含まない微孔質ポリマー構造の部分であることができる。あるいは、非閉塞性部分は、微孔質ポリマー構造の内面へのイオン交換材料のコーティングを含むことができるが、微孔質ポリマー構造の外面上にイオン交換材料を含まない微孔質ポリマー構造の部分であることができる(すなわち、複合膜は、強化されていないイオン交換材料の層を含まないが、微孔質ポリマー構造の内部フィブリルをコーティングするイオン交換材料を含むことができる)。
【0045】
前記イオン交換材料の総平均当量体積は、約240cc/モル当量~約870cc/モル当量であることができる。イオン交換材料の平均当量体積は、約240cc/モル当量~約650cc/モル当量であることができる。イオン交換材料の平均当量体積は、約350cc/モル当量~約475cc/モル当量であることができる。イオン交換材料の総平均当量体積は、複合膜のすべてのイオン交換材料層間に分配されたイオン交換材料の総体積を含むことができる。
【0046】
前記イオン交換材料は、約400g/eq~約2000g/eqのSO の総当量(EW)を有することができる。イオン交換材料は、約470g/eq~約1275g/eqのSO の総当量(EW)を有することができる。イオン交換材料は、約700g/eq~約1000g/eqのSO の総当量(EW)を有することができる。イオン交換材料は、約710g/eqのSO の当量を有することができる。イオン交換材料は、約810g/eqのSO の当量を有することができる。イオン交換材料は、約910g/eqのSO の当量を有することができる。
【0047】
前記複合膜が直接接触して配置された2つの強化層を含む実施形態において、第一の強化層の第二の表面及び第二の強化層の第一の表面は直接接触していることができる。
【0048】
前記複合膜が互いに分離して配置された2つの強化層を含む実施形態において、第一の強化層の第二の表面及び第二の強化層の第一の表面は、イオン交換材料の層(すなわち、 イオン交換材料の内層)によって距離dだけ分離されていることができる。イオン交換材料の内層は、厚さdを有することができる。
【0049】
前記複合膜は、第一の表面及び第二の(反対側の)表面を含むことができる。複合膜の第一の表面は、第一のイオン交換材料を含むことができる。複合膜の第二の表面は、第二のイオン交換材料を含むことができる。複合膜は、少なくとも2つの強化層の間にイオン交換材料の少なくとも1つの内層を含んでもよい。
【0050】
前記複合膜が3つ以上の強化層を含む実施形態において、すべての強化層は互いに直接接触していてよい。あるいは、強化層の幾つかは互いに直接接触していてよいが、強化層の幾つかは互いに分離されていてよい(例えば、イオン交換材料の層によって)。あるいは、すべての強化層は互いに分離されていてよい。互いに分離された強化層を含む実施形態において、強化層は、イオン交換材料によって互いに分離されていてよい。例えば、複合膜は、3つ以上の強化層を含み、各強化層は、イオン交換材料の1つ以上の層によって次の強化層から分離されていてよい。さらに、外部強化層は、それらの外面にイオン交換材料を少なくとも部分的に含浸させることができる。
【0051】
前記複合膜は、その外面のそれぞれに少なくとも1つのイオン交換材料を含むことができる。さらに、複合膜は、少なくとも2つの強化層の間に少なくとも1つの内部イオン交換材料を含むことができる。少なくとも1つのイオン交換材料は、強化されていないイオン交換材料であることができる。本開示の文脈内で、強化されていないイオン交換材料は、強化層内に実質的に埋め込まれていないイオン交換材料の層であることができる。換言すれば、1つ以上の強化層を有する複合膜において、強化されていないイオン交換材料は、複合膜内のどこかに(例えば外面上又は内層として)存在するイオン交換材料の層であるが、それは実質的に1つ以上の強化層内に埋め込まれていない(又は吸収されていない)。
【0052】
前記複合膜は、複合膜の第一の表面上、複合膜の第二の表面上又はその両方に配置されたバッカー層をさらに含むことができる。適切なバッカー層は、織物材料を含むことができる少なくとも1つの支持構造を含むことができ、該織物材料は、例えば、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンの織物繊維から作られたスクリム、押出もしくは配向ポリプロピレン又はポリプロピレンネッティングから作られたウェブ(ミネソタ州ミネアポリスのConwed,Inc.から市販)、及び、ポリプロピレン及びポリエステルの織物材料(ニューヨーク州ブリアルクリフのTetko Inc.から)を含むことができる。適切な不織材料は、例えばテネシー州オールドヒッコリーのReemay Inc.からのスパンボンドポリプロピレンを含むことができる。他の態様において、支持構造は、ポリエチレン(「PE」)、ポリスチレン(「PS」)、環状オレフィンコポリマー(「COC」)、環状オレフィンポリマー(「COP」)、フッ素化エチレンプロピレン(「FEP」)、ペルフルオロアルコキシアルカン(「PFA」)、エチレンテトラフルオロエチレン(「ETFE」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリスルホン(「PSU」)、ポリエーテルスルホン(「PES」)、ポリフェニレンオキシド(「PPO」)、ポリフェニルエーテル(「PPE」)、ポリメチルペンテン(「PMP」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)又はポリカーボネート(「PC」)のウェブを含むことができる。幾つかの態様において、支持構造は、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(「PS」)、環状オレフィンコポリマー(「COC」)、環状オレフィンポリマー(「COP」)、フッ素化エチレンプロピレン(「FEP」)、ペルフルオロアルコキシアルカン(「PFA」)、エチレンテトラフルオロエチレン(「ETFE」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリスルホン(「PSU」)、ポリエーテルスルホン(「PES」)、ポリフェニレンオキシド(「PPO」)、ポリフェニルエーテル(「PPE」)、ポリメチルペンテン(「PMP」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)又はポリカーボネート(「PC」)を含むことができる保護層も含む。支持構造は、場合により、金属基材(例えば、アルミニウム基材)を含む反射層を含むことができる。選択される特定の金属は、反射性がある限り、広く様々であることかできる。例示的な金属の非限定的なリストとしては、アルミニウム、ベリリウム、セリウム、クロム、銅、ゲルマニウム、金、ハフニウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、プラチナ、ロジウム、銀、タンタル、チタン、タングステン、亜鉛、又は、インコネルもしくはブロンズなどの合金が挙げられる。反射層は、場合により、2つ以上の金属の混合物又は合金を含み、場合により、上記の2つ以上の金属を含む。反射層は、場合により、3M社から入手可能なVikuiti(商標)Enhanced Specular Reflectorなどの高反射率ポリマー多層フィルムを含むことができる。さらに別の例において、反射層は、場合により、例えばフッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素などの材料を含む高反射率非金属無機誘電体多層フィルムを含むことができる。
【0053】
別の態様において、電気化学デバイスのための膜電極アセンブリであって、
少なくとも1つの電極、及び、
前記少なくとも1つの電極と接触している上記のとおりの複合膜、
を含む、膜電極アセンブリは提供される。
【0054】
前記複合膜は、少なくとも1つの電極に取り付けられることができる。複合膜は、少なくとも1つの電極に接着されうる。複合膜は、少なくとも1つの電極に取り付けられることができる。複合膜は、少なくとも1つの電極に対してプレスされることができる。複合膜は、少なくとも1つの電極に融合されうる。
【0055】
少なくとも1つの電極は繊維を含むことができる。少なくとも1つの電極は繊維状電極であることができる。少なくとも1つの電極は、繊維でドープされうる。少なくとも1つの電極は炭素繊維を含むことができる。少なくとも1つの電極は、多孔質層(典型的な細孔サイズ1~200ミクロン)を含むことができる。多孔質層は、とりわけ、フェルト、紙又は織物材料を含むことができる。
【0056】
前記膜電極アセンブリは、
第一の電極、第二の電極、及び、
前記第一の電極と前記第二の電極との間に挟まれた上記のとおりの複合膜、
を含む、レドックスフロー電池膜電極アセンブリであることができる。
【0057】
前記膜電極アセンブリは、
第一の表面及び第二の表面を有する第一の電極、
第一の表面及び第二の表面を有する第二の電極、及び、
上記のとおりの第一の表面及び第二の表面を有する複合膜、
を含み、
前記第一の電極の第二の表面は前記複合膜の第一の表面と接触しており、前記第二の電極の第一の表面は前記複合膜の第二の表面と接触している、レドックスフロー電池膜電極アセンブリであることができる。
【0058】
前記第一の電極は第一の電極層であってよく、前記第二の電極は第二の電極層であってよい。レドックスフロー電池膜電極アセンブリは、前記複合膜の第一の表面に取り付けられた第一の電極層、及び、前記複合膜の第二の表面に取り付けられた第二の電極層を含むことができる。電極は、約1~約200μmの細孔サイズを有する多孔質層であることができる。電極は、フェルト、紙又は織物材料から選択されうる。電極は、ドープされた炭素繊維を含むことができる。
【0059】
前記膜電極アセンブリは、
上記のとおりの複合膜、ここで、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、
前記複合膜の第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、
前記複合膜の第二の表面に接着された電極触媒の第二の層、
を含む、燃料電池膜電極アセンブリであることができる。
【0060】
前記燃料電池膜電極アセンブリは、流体拡散層をさらに含むことができる。流体拡散層は、ガス拡散層及び/又は液体(例えば水)拡散層であることができる。流体拡散層は、電極触媒の第一の層及び/又は電極触媒の第二の層の外面上に配置されうる。燃料電池膜電極アセンブリは、
上記のとおりの複合膜、ここで、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、
前記複合膜の第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、前記電極触媒の第一の層上に配置された第一の流体拡散層、及び、
前記複合膜の第二の表面に接着された電極触媒の第二の層、及び、前記電極触媒の第二の層上に配置された第二の流体拡散層、
を含むことができる。
【0061】
前記燃料電池膜電極アセンブリにおいて、前記第一の流体拡散層は、前記複合膜と反対側に配置されうる。前記電極触媒の第一の層は、前記複合膜と前記第一の流体拡散層との間に配置されうる。第二の第一の流体拡散層は、前記複合膜の反対側に配置されうる。前記電極触媒の第二の層は、前記複合膜と前記第二の流体拡散層との間に配置されうる。換言すれば、第一の流体拡散層及び第二の流体拡散層は、燃料電池膜電極アセンブリの最外層であることができ、前記複合膜ならびに前記電極触媒の第一の層及び第二の層を挟むことができる。
【0062】
前記燃料電池膜電極アセンブリにおいて、電極触媒の第一の層及び第二の層は、約100nm以下の細孔サイズを有するナノポーラス層であることができる。第一の電極触媒層及び第二の電極触媒層は前記複合膜に接着されている。前記電極触媒の第一の層はアノードであってよく、前記電極触媒の第二の層はカソードであってよい。
【0063】
前記燃料電池膜電極アセンブリにおいて、前記電極触媒の第一の層及び第二の層は、
1つ以上のアイオノマー、
カーボンブラックなどの触媒担体、及び、
白金、
を含む。
【0064】
前記膜電極アセンブリは、
複合膜上にラミネートされた触媒の層を有する、本明細書に記載の複合膜、及び、
電極、及び、
前記複合膜と前記電極との間に配置されたガス拡散層、
を含む、電解槽電極アセンブリであることができる。
【0065】
前記膜電極アセンブリは、
上記のとおりの複合膜、ここで、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、
前記複合膜の第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、
前記複合膜の第二の表面に接着された電極触媒の第二の層を含む、電解槽電極アセンブリであることができる。流体(例えば、ガス/水)拡散層は、前記電極触媒の外面上に配置されうる。
【0066】
別の態様において、上記のとおりの複合膜を含む電気化学デバイスが提供される。電気化学デバイスは、燃料電池、レドックスフロー電池又は電解槽であることができる。
【0067】
別の態様において、上記のとおりの複合膜又は燃料電池膜電極アセンブリを含む燃料電池が提供される。
【0068】
別の態様において、上記のとおりの複合膜又はレドックスフロー電池膜電極アセンブリを含むレドックスフロー電池が提供される。
【0069】
別の態様において、上記のとおりの複合膜又は電解槽膜電極アセンブリを含む電解槽が提供される。
【0070】
本発明者らは、上述のように、最新技術のPEMの突き刺し抵抗性が低いという問題を解決するために努力してきた。結果として、驚くべきことに、複合膜中の強化微孔質ポリマー構造の含有量(すなわち、少なくとも2つの強化層の間に分配される微孔質ポリマー構造の総含有量)を増加させると、突き刺し抵抗性が継続的に増加することが発見された。驚くべきことに、この突き刺し抵抗性の増加は、複合膜の厚さを増加させたり、又は、使用するアイオノマーの量を増加させたりすることなく達成することができる。
【0071】
さらに、本発明者らは、強化微孔質ポリマー構造の所与の総含有量について、単層で提供される同等の含有量の微孔質ポリマー構造を含むポリマー電解質膜と比較して、微孔質ポリマー構造を強化層(少なくとも2層)の多層配置で提供することにより、複合膜の突き刺し抵抗性が有意に改善されることを見出した。
【0072】
突き刺しに対する抵抗が高い複合膜を提供することにより、セル組立て時に複合膜が貫通された場合に発生する短絡による電池故障の可能性が減少する。また、短絡の発生を減少させることにより、前記複合膜で製造された電気化学デバイスの寿命を延ばすことができる。さらに、薄い複合膜では同等の強化率を持つアイオノマーの含有量を低くする必要があると考えると、複合膜の厚さを増加させることなく、他の電気化学デバイス構成要素による突き刺しに対して高度に抵抗性がある複合膜を提供することは、複合膜のイオン伝導性を高く保つことを可能にし、製造コストを削減する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図面の簡単な説明
図1A図1Aは、本開示の1つの実施形態による複合膜の断面の概略図を示す。複合膜は、互いに直接接触する2つの強化層を有する。強化層の各々は、微孔質ポリマー構造を含む。複合膜は、強化されていないイオン交換材料の2つの外層も含む。この特定の例において、両方の強化膜に同じイオン交換材料が含浸されている(他の例において、強化層に異なるイオン交換材料が含浸されていることができるが)。
【0074】
図1B図1Bは、バッカー層を有する図1Aの複合膜を示す。
【0075】
図2図2は、別の実施形態による複合膜の断面の概略図を示す。複合膜は、図1A及び1Bの複合膜と同様の構造を有するが、第一の強化層は第一のイオン交換材料が含浸され、第二の強化層は第二の(異なる)イオン交換材料が含浸されている。
【0076】
図3A図3Aは、本開示の1つの実施形態による複合膜の断面の概略図を示す。複合膜は2つの強化層を有し、各強化層は微孔質ポリマー構造を含む。2つの強化層は、イオン交換材料の内部非強化層によって分離されている。複合膜はまた、強化層の外面上に強化されていないイオン交換材料の2つの外層を含む。
【0077】
図3B図3Bは、図3Aの複合膜及び2つの電極層を含むレドックスフロー電池膜-電極アセンブリの断面の概略図を示す。
【0078】
図4図4は、本開示の別の実施形態による複合膜の断面の概略図を示す。構造は、図3の膜と同様である(イオン交換材料を含浸させた2つの強化層を有し、強化層は、2つの強化層間に配置された強化されていないイオン交換材料の内層によって分離されている)。この複合膜は、強化層の一方の外面上に強化されていないイオン交換材料の単層を有するが、反対側(すなわち、他方の強化層の外面)には強化されていないイオン交換材料の層がない。
【0079】
図5図5は、本開示の別の実施形態による複合膜の断面の概略図を示す。構造は図1の膜の構造と類似しており、2つの強化層が強化されていないイオン交換材料層を介在させずに互いに直接接触している。この例において、複合膜は、一方の外面に強化されていないイオン交換材料の単一層を有するが、反対側には強化されていないイオン交換材料の層を有していない(すなわち、強化層の一方の外面が強化されていないイオン交換材料の層でコーティングされているが、他方の強化層の外面は強化されていないイオン交換材料の層でコーティングされていない)。
【0080】
図6図6は、本開示の別の実施形態による複合膜の断面の概略図を示す。構造は図1の膜と類似しており、強化されていないイオン交換材料層が介在することなく、強化されていないイオン交換材料の外層がなく、2つの強化層が互いに直接接触している。
【0081】
図7図7は、本開示の別の実施形態による複合膜の断面の概略図を示す。この実施形態において、複合膜は、イオン交換材料を含浸させた微孔質ポリマー構造を含む3つの強化層を有する。3つの強化層はすべて互いに直接接触しており、複合膜は、複合膜の両側の外面上に配置された、強化されていないイオン交換材料の2つの外層を有する。
【0082】
図8図8は、本開示の別の実施形態による複合膜の断面の概略図を示す。この実施形態において、複合膜は3つの強化層を有し、各強化層は、イオン交換材料を含浸させた微孔質ポリマー構造を含む。強化層は、強化されていないイオン交換材料の内層によって互いに分離されている。複合膜は、複合膜の両側の外面上に、強化されていないイオン交換材料の2つの外層を有する。
【0083】
図9図9は、互いに直接接触する2つの強化層を有し、強化層の一方はイオン交換材料が完全に吸収され、他方の強化層はイオン交換材料がほとんど吸収されているが、微孔質ポリマー構造の非吸収領域又は非閉塞領域を含む、図6のものと類似の複合膜の概略図を示す。
【0084】
図10図10は、複合膜の全ePTFE含有量(mpa)に対する実施例の複合膜の平均破壊圧力(psi)を表すグラフを示す。グラフは4つのシリーズのデータを示しており、各シリーズは同等の複合膜の厚さを有する。
【0085】
図11図11は、実施例の複合膜の特性を表す表1を示す。
【0086】
図12図12は、実施例の複合膜で使用される微孔質ポリマー構造の特性を表す表2を示す。
【0087】
図13図13は、イオン交換材料(アイオノマー)の内層によって分離された強化層を有する、本開示の実施形態による複合膜を製造する方法の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
詳細な説明
本出願は、最新技術の複合膜と比較して改善された平均破壊圧力を有する電気化学デバイスのための複合膜を開示しており、これは、デバイスの組み立て時に電気化学デバイスの他の構成要素による複合膜の突き刺し抵抗性の改善につながる。理論に束縛されることを望むものではないが、複合膜に少なくとも2つの強化層を設け、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれが、微孔質ポリマー構造を含むことは、単一の強化層に提供される微孔質ポリマー構造の同様の厚さ及び含有量の複合膜と比較して、複合膜の突き刺し抵抗性の改善に有意に寄与する。さらに、所与の複合膜の厚さに対して、2つ以上の強化層の間に分配される微孔質ポリマー構造の総含有量を増加させると、複合膜の突き刺し抵抗性がさらに改善される。理論に束縛されることを望むものではないが、任意の所与の微孔質ポリマー含有量及び複合膜の厚さに対して、複合膜内の少なくとも2つの強化層の間に分離を提供することは、複合膜の突き刺し抵抗性をさらに改善することができる。
【0089】
幾つかの実施形態において、電気化学デバイスのための複合膜であって、
a)少なくとも2つの強化層、ここで、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれは微孔質ポリマー構造を含む、及び、
b)前記少なくとも2つの強化層の微孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に吸収され、前記微孔質ポリマー構造を閉塞性にさせるイオン交換材料(IEM)、
を含み、ここで、前記複合膜は、0%RHで少なくとも約10μmの厚さを有する、複合膜が提供される。
【0090】
アイオノマーを含む複合膜の組成と、異なる密度の微孔質ポリマー構造との間の意味のある比較を提供するために、体積基準の値を使用して実施形態を記載してきた。
【0091】
複合膜内の微孔質ポリマー構造の含有量の意味のある値を提供するが、これらの値を微孔質ポリマー構造の固有分子量/マトリックス骨格密度とは無関係に提供するために、正規化総質量/面積値を使用して実施形態を記載してきた。これは、幾つかの実施形態が強化層内に異なる微孔質ポリマー構造を含みうることを考慮に入れる。複合膜内の微孔質ポリマー構造の含有量はまた、面積あたりの質量で表されており、これは、単一タイプの微孔質ポリマー構造を含む実施形態における適切な測定値である。
【0092】
前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて少なくとも約20体積%の総含有量で存在しうる。複合膜は、複合膜の総面積を微孔質ポリマー構造のマトリックス骨格密度で割った値に基づいて、少なくとも約3・10-6m(すなわち、少なくとも約3μm)の総微孔質ポリマー構造含有量を有することができる。
【0093】
本開示で使用される様々な定義を以下に提供する。
【0094】
本明細書で使用されるときに、「アイオノマー」及び「イオン交換材料」という用語は、カチオン交換材料、アニオン交換材料、又はカチオン交換能力とアニオン交換能力の両方を含むイオン交換材料を指す。イオン交換材料の混合物も使用することができる。イオン交換材料は、過フッ素化又は炭化水素ベースであることができる。適切なイオン交換材料としては、例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ペルフルオロカルボン酸ポリマー、ペルフルオロホスホン酸ポリマー、スチレン系イオン交換ポリマー、フルオロスチレン系イオン交換ポリマー、ポリアリールエーテルケトンイオン交換ポリマー、ポリスルホンイオン交換ポリマー、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、(フルオロアルキルスルホニル)(フルオロスルホニル)イミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ジビニルベンゼン、ポリマーを含む又は含まない金属塩、及びそれらの混合物が挙げられる。例示的な実施形態において、イオン交換材料は、テトラフルオロエチレンとペルフルオロスルホニルビニルエステルとをプロトン形態に変換して共重合させることによって作製されるペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーを含む。
【0095】
本明細書で使用されるときに、アイオノマー又はイオン交換材料の「当量(equivalent weight」(EW)は、スルホン酸基当たりのアイオノマー中のポリマーの(分子量における)重量を指す。したがって、当量が低いほど、酸含有量が多いことを示す。アイオノマーの当量は、そのアイオノマーが0%RHでそのプロトン形態であり、不純物が無視できる場合のEWを指す。「イオン交換容量」という用語は、当量の逆数(1/EW)を指す。
【0096】
本明細書で使用されるときに、アイオノマー又はイオン交換材料の「当量体積(equivalent)volume)」は、スルホン酸基当たりのアイオノマーの体積を指す。アイオノマーの当量体積(EV)は、そのアイオノマーが純粋で、0%RHでそのプロトン形態であり、不純物が無視できる場合のEVを指す。
【0097】
本明細書で使用されるときに、「微孔質ポリマー構造」という用語は、イオン交換材料を支持し、得られる複合膜に構造的一体性及び耐久性を付加するポリマーマトリックスを指す。幾つかの例示的な実施形態において、微孔質ポリマー構造は、ノード及びフィブリル構造を有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む。他の例示的な実施形態において、微孔質ポリマー構造は、滑らかな平面、高い見かけ密度及び明確な細孔サイズを有する、トラックエッチングされたポリカーボネート膜を含む。
【0098】
本明細書で使用されるときに、微孔質ポリマー構造の内部体積は、その内部体積が、10体積%未満の低体積の空隙があり、ガスに対して高度に不透過性であり、ガーレー数が10000秒を超えることを特徴とする構造を有するときに、閉塞性又は「実質的に閉塞性」と呼ばれる。逆に、微孔質ポリマー構造の内部体積は、その内部体積が10体積%を超える大体積の空隙があり、ガーレー数が10000秒未満であるガス透過性を有することを特徴とする構造を有するときに、「閉塞されていない」と呼ばれる。
【0099】
複合膜
図1~9に示されるように、複合膜は、複数の、例えば2つ以上の、吸収強化層を含むことができる。
【0100】
図1~4に示すように、2つの強化層105a,b、205a,b、305a,b、405a,bを含む複合膜100、200、300、400が提供され、各強化層は微孔質ポリマー構造、及び、強化層105a,b、205a,b、305a,b、405a,bの微孔質ポリマー構造に含浸されたイオン交換材料(例えば、アイオノマー)110、210a,b、310、410を含む。すなわち、強化層105a,b、205a,b、305a,b、405a,bの微孔質ポリマー構造のそれぞれは、イオン交換材料110、210a,b、310、410が吸収されている。イオン交換材料110、210a,b、310、410は、内部体積を実質的に閉塞性にする(すなわち、内部体積が、低体積の空隙であり、ガスに対して非常に不透過性であることを特徴とする構造を有する)ように、強化層105a,b、205a,b、305a,b、405a,bの微孔質ポリマー構造を実質的に含浸し又は閉塞することができる。例えば、強化層105a,b、205a,b、305a,b、405a,bのそれぞれの微孔質ポリマー構造の内部体積の90%超をイオン交換材料110、210a,b、310、410で充填することによって、実質的な閉塞が発生し、複合膜は10000秒を超えるガーレー数を特徴とする。図1~4に示されるように、イオン交換材料110、210a,b、310、410は、強化層105a,b、205a,b、305a,b、405a,bの微孔質ポリマー構造の内面及び外面にしっかりと接着され、吸収強化層104a,b、204a,b、304a,b及び404a,bを形成する。
【0101】
幾つかの実施形態において、イオン交換材料110、210a、210b、310、410は、2つの強化層105a,b、205a,b、305a,bの微孔質ポリマー構造に含浸されて、吸収強化層104a,b、204a,b、304a,b、404a,bを形成することに加えて、吸収強化層104a,b、204a,b、304a,b、404a,bの1つ以上の外面上の1つ以上の追加の層115a,b、215a,b、315a,b、415a,bとして提供される。他の実施形態において、イオン交換材料410、510は、吸収強化層404b、504bの外面の一方のみに提供されるが、複合膜の他方の外面には提供されない(すなわち、反対側の吸収強化層404a、504aの外面には提供されない)(図4及び5)。他の実施形態において、イオン交換材料610は、吸収強化層604a、b内の微孔質ポリマー構造605に含浸された状態で提供されるだけであり、すなわち、強化されていないイオン交換材料の追加の層を含まない(図6)。それにもかかわらず、複合膜100、200、300、400、500、600は、微孔質ポリマー構造105a,b、205a,b、305a,b又は405a,b、500a,b、600a,bが複合膜100、200、300、400、500、600、700、800、900の総体積の20%より多くを占めていることを特徴とすることができ、その総体積には、吸収強化層の体積と、存在するならば、強化されていないイオン交換材料の追加の層115a,b、215a,b、315a,b,c、415b,c、515b、715a,b及び815a,b,c,dの体積が含まれる。
【0102】
図1A及び1Bによる実施形態において、第一の吸収強化層104aは、第一の強化層105aの微孔質ポリマー構造にイオン交換材料110を吸収させることによって形成することができ、第二の吸収強化層104bは、第二の強化層105bの微孔質ポリマー構造に同じイオン交換材料110を吸収させることによって形成することができる。例えば、イオン交換材料110は、第一の強化層105aの微孔質ポリマー構造に吸収されて、第一の吸収強化層104aを形成することができ、同じイオン交換材料は、第二の強化層105bの微孔質ポリマー構造に吸収されて、第二の吸収強化層104bを形成することができる。この実施形態において、強化層105a及び105bは直接接触している。この実施形態において、複合材層は、吸収強化層04a及び104bの外面114a及び114b上に形成されたイオン交換材料の2つの外層115a及び115bを有する。イオン交換材料の層115a及び115bは、吸収強化層104a及び104bと同じイオン交換材料を含むことができる。あるいは、層115a及び/又は115bの一方又は両方のイオン交換材料は、吸収強化層104a及び104bのイオン交換材料と異なっていてもよい。両方の層115a及び115bのイオン交換材料は、同じであっても又は異なっていてもよい。
【0103】
図1Bのみに示されているが、図に示される構造のいずれか1つによる実施形態において、複合膜100はバッカー層120上に提供されてもよい(図1B)。バッカー層120は、例えば、シクロオレフィンコポリマー(COC)層などの剥離フィルムを含むことができる。幾つかの実施形態において、複合膜100は、膜電極アセンブリ(MEA)に組み込まれる前に、バッカー層120から剥離(又は他の方法で分離)されることができる。
【0104】
図2による実施形態において、複合膜200は、図1による実施形態のものと同様の構造を有することができ、2つの強化層205a、205bは互いに直接接触している。図2による実施形態において、第一の吸収強化層204aは、第一の強化層205aの微孔質ポリマー構造に第一のイオン交換材料210aを吸収させることによって形成することができ、第二の吸収強化層204bは、第二の強化層205bの微孔質ポリマー構造に、第一のイオン交換材料210aとは異なる第二のイオン交換材料210bを吸収させることによって形成することができる。これらの実施形態において、第一のイオン交換材料210aを第一の強化層205aの微孔質ポリマー構造に吸収させて、第一の吸収強化層204aを形成することができ、第二のイオン交換材料210bを第二の強化層205aの微孔質ポリマー構造に吸収させて、第二の吸収強化層204bを形成することができる。この実施形態において、複合膜200は、吸収強化層204a及び204bの外面214a及び214b上に形成された(強化されていない)イオン交換材料の2つの外層215a及び215bを有する。イオン交換材料の外層215a及び2215bの外層は、吸収強化層204a又は204bのうちの少なくとも1つと同じイオン交換材料を含むことができる。イオン交換材料の両方の外層215a及び215bのイオン交換材料は、同じであっても又は異なっていてもよい。あるいは、外層215a及び/又は215bの一方又は両方のイオン交換材料は、吸収強化層204a及び204bのものと異なっていてもよい。図示されていないが、複合膜はバッカー又は剥離層を有することができる。バッカー層は、複合膜を電気化学デバイスに組み立てる前に剥がすか又は除去することができる。
【0105】
図3Aによる実施形態において、複合膜300は、吸収強化層304a,bを形成するためにイオン交換材料310が吸収された2つの強化層305a及び305bを含むことができる。複合膜300は、第一の吸収強化層304aの外面314a上に形成された第一の層315aと、第二の吸収強化層304aの外面314b上に形成された強化されていないイオン交換材料の第二の層315bと、吸収強化層304aと304bとの間に配置された強化されていないイオン交換材料の第三の(内部)層315bとの、強化されていないイオン交換材料の3つの層を含むことができる。強化されていないイオン交換材料層315a,b,cのイオン交換材料は同じでも又は異なっていてもよく、吸収強化層304a及び/又は304bのイオン交換材料310と同じでも又は異なっていてもよい。
【0106】
図3Bは、複合膜300の最外面上に配置された2つの電極層320a及び320bの間に挟まれた、図3Aに示されるような複合膜300を含むレドックスフロー電池膜電極アセンブリ350を示す。この特定の実施形態において、電極層320aは、強化されていないイオン交換材料層315aの外面に配置又は取り付けられ、電極層320bは、強化されていないイオン交換材料層315bの外面に配置又は取り付けられる。電極層320a,bは、約1~約200μmの細孔サイズを有する多孔質層であることができる。電極層320,bは、フェルト、紙又は織物材料から選択することができる。電極層320a,bは、ドープされた炭素繊維を含むことができる。
【0107】
図4は、本開示の別の実施形態による複合膜400の断面の概略図を示す。構造は、図3Aの膜300の構造と同様である(イオン交換材料を含浸させた2つの強化層405a,bを有し、このようにして、吸収強化層304a及び304bを形成する)。吸収強化層304a,bは、2つの吸収強化層404aと404bとの間に配置された強化されていないイオン交換材料の内層415cによって分離されている。この複合膜400は、吸収強化層404bの外面上に強化されていないイオン交換材料415bの単層を有するが、反対側(すなわち、他の吸収強化層404aの外面上)には強化されていないイオン交換材料の層を有していない。
【0108】
図5は、本開示の別の実施形態による複合膜500の断面の概略図を示す。構造は図1の膜と同様であり、2つの強化層505a、505bは強化されていないイオン交換材料層を介在させずに互いに直接接触している。2つの強化層505a,bはイオン交換材料510が吸収され、吸収強化層504a及び504bを形成する。この例において、複合膜500は、複合膜の一方の外側に強化されていないイオン交換材料515bの単層を有するが(吸収強化層504bの外面514b上に配置される)、強化されていないイオン交換材料の層は反対側に配置されない(すなわち、吸収強化層504bの外面514bは、強化されていないイオン交換材料515bの層でコーティングされているが、他方の強化層504aの外面514aは、強化されていないイオン交換材料の層でコーティングされていない)。
【0109】
図6による実施形態において、複合膜600は、微孔質ポリマー構造を含む2つ(又はそれ以上)の強化層605a及び605bによって形成された、複数の、例えば、2つ以上の吸収強化層604a及び604b(又はそれ以上であるが、図示せず)を含むことができ、上記微孔質ポリマー構造は、同じであっても又は異なっていてもよいイオン交換材料610a及び610bが吸収されていることができる。図6による実施形態において、吸収強化層は、強化されていないイオン交換材料の外層又は内層を有していなくてもよい。すなわち、複合膜600は、強化されていないイオン交換材料の追加層を含まなくてもよい。
【0110】
図7による実施形態において、複合膜700は、3つの吸収強化層704a、704b及び704cを含むことができる。これらの実施形態において、吸収強化層は互いに接触している(すなわち、吸収強化層704a、704c、704bの間に強化されていないイオン交換材料の内層がない)。吸収強化層の各々は、微孔質ポリマー構造を含む強化層705a,b,cを含んでもよい。強化層705a,b,cのすべての微孔質ポリマー構造は同じであってもよい。強化層705a、705b又は705cのうちの少なくとも1つの微孔質ポリマー構造は異なることができるが、強化層705a,b,cの幾つかの微孔質ポリマー構造は同じであることができる。強化層705a、705b及び705cの微孔質ポリマー構造は、イオン交換材料710a、710b及び710cをそれぞれ完全に又は部分的に吸収して、微孔質ポリマー構造を閉塞性にし、したがって、吸収強化層704a、705b及び704cをそれぞれ形成することができる。イオン交換材料は、1つ以上のアイオノマーを含むことができる。イオン交換材料710a、710b及び710cのそれぞれは、複合膜の他のイオン交換材料のすべて又は一部と同じであっても又は異なっていてもよい。図7に示される複合膜700は、第一の吸収強化層704aの外面714a上に強化されていないイオン交換材料715aの層を有する。複合膜は、第三の吸収強化層704b(すなわち、強化層704aの反対側の最も外側の吸収強化層)の外面714b上に、強化されていないイオン交換材料の別の層715bを有する。
【0111】
図8による実施形態において、複合膜800は、3つの吸収強化層804a、804b及び804cを含むことができる。吸収強化層のそれぞれは、微孔質ポリマー構造を含む強化層805a、805b、805cを含むことができる。強化層805a,b,cのすべての微孔質ポリマー構造は同じであってもよい。強化層805a、805b又は805cのうちの少なくとも1つの微孔質ポリマー構造は異なることができるが、強化層805a,b,cの幾つかの微孔質ポリマー構造は同じであることができる。強化層805a、805b及び805cの微孔質ポリマー構造は、それぞれイオン交換材料810a、810b及び810cが完全に又は部分的に吸収されて、吸収強化層804a、804b及び804cをそれぞれ形成することができる。イオン交換材料810a、810b及び810cは、1つ以上のアイオノマーを含むことができる。イオン交換材料810a、810b及び810cのそれぞれは、複合膜の他のイオン交換材料のすべて又は一部と同じであっても又は異なっていてもよい。図8に示される複合膜800は、第一の吸収強化層804aの外面814a上に、強化されていないイオン交換材料の層815aを有する。複合膜は、第三の吸収強化層804bの外面814b上に、強化されていないイオン交換材料の別の層815bを有する。さらに、これらの実施形態において、吸収強化層804aと804cとの間に強化されていないイオン交換材料の内層815cがある。吸収強化層804cと804bとの間には、強化されていないイオン交換材料の別の内層815dがある。内層815c,dは、吸収強化層804aと804cとの間、及び吸収強化層804cと804bとの間に距離dを形成する。
【0112】
具体的には示されていないが、本明細書に記載のとおりの複合膜の他の実施形態は、3つ以上の吸収強化層を含むことができ、それぞれが、微孔質ポリマー構造と、微孔質ポリマー材料内に吸収又は部分的に吸収されたイオン交換材料とを含む強化層を含む。幾つかの実施形態において、複合膜は、複合膜の外面の1つの上に、強化されていないイオン交換材料の1つのみの外層を有することができる。幾つかの実施形態において、複合膜は、吸収された層の両方の外面上に、強化されていないイオン交換材料の外層を有することができる。幾つかの実施形態において、複合膜は、吸収強化層のうちの少なくとも2つの間に強化されていないイオン交換材料の1つ以上の内層を有することができる。幾つかの実施形態において、複合膜は、吸収強化層のそれぞれの間に強化されていないイオン交換材料の内層を有することができる。幾つかの実施形態において、複合膜は、吸収強化層のそれぞれの間に強化されていないイオン交換材料の内層と、複合膜の外面の1つの上にある強化されていないイオン交換材料の単一の外層とを有することができる。幾つかの実施形態において、複合膜は、吸収強化層のそれぞれの間に強化されていないイオン交換材料の内層と、複合膜の両方の外面上に強化されていないイオン交換材料の外層とを有することができる。
【0113】
複合膜100、200、300、400、500、600、700、800、900の吸収強化層は、2つ(又はそれ以上)の異なる微孔質ポリマー構造を含む強化層で構築されうる。例えば、図1を参照すると、第一の吸収強化層104aは、第一の微孔質ポリマー構造を含む第一の強化層105aにイオン交換材料110を吸収させることによって形成することができ、第二の吸収強化層104bは、第二の微孔質ポリマー構造を含む第二の強化層105bに同じイオン交換材料110を吸収させることによって形成することができる。これらの実施形態において、第一の強化層105aと第二の強化層105bは異なる。複合膜構造において異なるタイプの強化層を使用する原理は、図のいずれかによる実施形態に適用されうる。例えば、図2による実施形態において、第一の吸収強化層204aは、第一の微孔質ポリマー構造を含む第一の強化層205aに第一のイオン交換材料210aを吸収させることによって形成することができ、第二の吸収強化層204bは、第二の微孔質ポリマー構造205bを含む第二の強化層205bに第二のイオン交換材料210bを吸収させることによって形成することができる。これらの実施形態において、第一の強化層205aと第二の強化層205bは異なる。したがって、本明細書に記載され、図に示される複合膜において、第一の微孔質ポリマー構造は、第二の微孔質ポリマー構造と同じであっても又は異なっていてもよい。第一のイオン交換材料は、第二のイオン交換材料と同じであっても又は異なっていてもよい。
【0114】
追加の実施形態において、強化層105a,b、205a,b、305a,b、405a,b、505a,b、605a,b、705a,b,c、805a,b,cの微孔質ポリマー構造の部分(例えば、上面領域又は底面領域)は、イオン交換材料を含まず又は実質的に含まない非閉塞性(すなわち、高体積の空隙及び高ガス透過性を特徴とする構造を有する内部体積)領域(図示せず)を含むことができる。非閉塞領域の位置は、微孔質ポリマー構造の上面領域に限定されない。上記のように、非閉塞領域は、強化層のいずれか又はすべての微孔質ポリマー構造の上面領域に設けることができる。
【0115】
さらに他の実施形態において、非閉塞領域は、微孔質ポリマー構造の内面に薄いノード及びフィブリルコーティングとして存在する少量のイオン交換材料を含むことができる。しかしながら、イオン交換材料の量は、微孔質ポリマー構造を閉塞性にさせ、それによって非閉塞領域を形成するのに十分に多量でなくてもよい。
【0116】
図9は、互いに直接接触する2つの強化層905a、905bを有する、図6のものと同様の複合膜900の概略図を示す。各強化層905a、905bは、微孔質ポリマー構造を含む。強化層905aは、第一の表面911a及び第二の表面912aを有する。同様に、強化層905bは、第一の表面911b及び第二の表面912bを有する。微孔質ポリマー構造905bは、イオン交換材料910bが完全に吸収され、閉塞性吸収強化層904bを形成する。しかしながら、微孔質ポリマー構造905aは、ほとんどイオン交換材料910aが吸収されているが、強化層905aの第一の表面911aに最も近くに、微孔質ポリマー構造905aの非吸収又は非閉塞領域の領域915aを含む。本開示の文脈内で、ほとんど又は実質的に吸収されるとは、微孔質ポリマー構造がイオン交換材料で約90%閉塞されていることを意味することができる。したがって、強化層905aは、完全には閉塞性でない、部分的に吸収された強化層904aを形成する。他の同様の実施形態(図示せず)において、第一の強化層905aは、強化層905bの第二の表面912bに最も近い微孔質ポリマー構造905aの非吸収又は非閉塞領域の領域915aを含む。
【0117】
さらに、図9のものと同様の他の実施形態において、第一の強化層905aは完全に閉塞性であるが、第二の強化層910bは、強化層910bの第一の表面911b又は第二の表面912bに最も近い微孔質ポリマー構造905aの非吸収領域又は非閉塞領域の領域を含む。さらに他の実施形態(図示せず)において、強化層910a及び910bの両方は、各強化層910a及び910bの表面911a、912a、911b又は912bのうちの1つの近くに非吸収領域又は非閉塞領域の領域を含むことができる。部分的に吸収された強化層904a及び/又は904bの微孔質ポリマー構造は、イオン交換材料で約90%閉塞されうる。
【0118】
少なくとも2つの強化層間に強化されていないイオン交換材料の内層がない実施形態(図1A、1B、2、5、6、7及び9)において、少なくとも2つの強化層は直接接触していてよい(すなわち、少なくとも2つの強化層は、約0μmの距離dだけ離れていてよい)。
【0119】
複合膜が少なくとも2つの強化層の間に強化されていないイオン交換材料の内層を含む実施形態(図2、3及び8)において、少なくとも2つの強化層は距離dだけ離れていてよい。距離dは、約1μm~約10μm、又は約2μm~約8μm、又は約4μm~約6μm、又は約1μm~約5μm、又は約5μm約10μm、又は約6μm~約8μmであることができる。距離dは、約1μm、又は約2μm、又は約3μm、又は約4μm、又は約5μm、又は約6μm、又は約7μm、又は約8μm、又は約9μmで、又は約10μmであることができる。距離dは、2つの隣接する強化層間に配置された、強化されていないイオン交換材料の内層の厚さであることができる。
【0120】
微孔質ポリマー構造
複合膜は、微孔質ポリマー構造を含む少なくとも2つの強化層を有することができる。複合膜は、微孔質ポリマー構造を含む2つ以上の強化層を有することができる。例えば、複合膜は、2、3、4、5、6、7、8、9又は10層の強化層を有することができ、各強化層は微孔質ポリマー構造を含む。
【0121】
適切な微孔質ポリマー構造は、複合膜が使用される用途に大きく依存する。微孔質ポリマー構造は、好ましくは、良好な機械的特性を有し、複合膜が使用される環境において化学的及び熱的に安定であり、含浸のためにイオン交換材料とともに使用されるあらゆる添加剤に許容性がある。
【0122】
本明細書で使用されるときに、用語「微孔質(microporous)」は、細孔を有する構造を指す。様々な任意の実施形態によれば、細孔は、0.01~100ミクロン、例えば、0.05~20ミクロン又は0.1~1ミクロンの平均細孔サイズを有することができる。
【0123】
適切な微孔質ポリマー構造は、少なくとも約0.1μm、場合により約0.5μm~約230μm、又は約1μm~約100μm、又は約1μm~約50μmの厚さを有し、約0.05μm~約20μm、例えば0.1μm~1μmの平均細孔サイズを有する、層を指すことが意図されている。
【0124】
電気化学的用途のための強化層105a,b、205a,b、305a,b、405a,b、505a,b、605a,b、705a,b、805a,b、905a,bの適切な微孔質ポリマー構造は、多孔質ポリマー材料を含むことができる。多孔質ポリマー材料として、フルオロポリマー、塩素化ポリマー、炭化水素、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、コポリエーテルエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリールエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)を挙げることができる。幾つかの実施形態において、強化層の微孔質ポリマー構造は、過フッ素化多孔質ポリマー材料を含む。過フッ素化多孔質ポリマー材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、延伸ポリフッ化ビニリデン(ePVDF)、延伸ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(eEPTFE)又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0125】
幾つかの実施形態において、微孔質ポリマー構造は炭化水素材料を含む。炭化水素材料としては、ポリエチレン、膨張(膨張、エキスパンデッド、延伸又は発泡)ポリエチレン、ポリプロピレン、膨張(膨張、エキスパンデッド、延伸又は発泡)ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、トラックエッチングされたポリカーボネート又はそれらの混合物を挙げることができる。燃料電池用途に使用するのに適した過フッ素化多孔質ポリマー材料の例としては、米国特許第8,757,395号明細書の教示に従って作成されたePTFEが挙げられ、参照によりその全体を参照により本明細書に組み込まれ、そしてメリーランド州エルクトンのW.L. Gore & Associates, Inc.から様々な形態で市販されている。
【0126】
微孔質ポリマー構造がePTFEを含む実施形態において、微孔質ポリマー構造の面積当たりの総質量は、複合膜中に存在するすべての微孔性層の面積当たりの合計質量に基づいて、約5.5g/m~約20g/mであることができる。例えば、微孔質ポリマー構造がePTFEを含む実施形態において、微孔質ポリマー構造の面積当たりの総質量は、複合膜中に存在するすべての微多孔質層の面積当たりの質量の合計に基づいて、約5.5g/m、又は約5.8g/m、又は約6g/m、又は約7g/m、又は約8g/m、又は約9g/m、又は約10g/m、又は約11g/m、又は約12g/m、又は約13g/m、又は約14g/m、約15g/m、又は約16g/m、又は約17g/m、又は約18g/m、又は約19g/m、又は約20g/mであることができる。
【0127】
イオン交換材料
適切なイオン交換材料は、複合膜が使用される用途に依存しうる。イオン交換材料は、好ましくは、約240cc/モル当量~約870cc/モル当量、場合により、約240cc/モル当量~約650cc/モル当量、場合により、約350cc/モル当量~約475cc/モル当量の平均当量体積を有し、複合膜が使用される環境において化学的及び熱的に安定である。適切なアイオノマーは、カチオン交換材料、アニオン交換材料又はカチオン交換能力とアニオン交換能力の両方を含むイオン交換材料などのイオン交換材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、イオン交換材料は、プロトン伝導ポリマー又はカチオン交換材料を含む。イオン交換材料は、ペルフルオロカルボン酸ポリマー、ペルフルオロホスホン酸ポリマー、スチレン系イオン交換ポリマー、フルオロスチレン系イオン交換ポリマー、ポリアリールエーテルケトンイオン交換ポリマー、ポリスルホンイオン交換ポリマー、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、(フルオロアルキルスルホニル)(フルオロスルホニル)イミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ジビニルベンゼン、ポリマーを含む又は含まない金属塩及びそれらの混合物であることができる。適切なペルフルオロスルホン酸ポリマーの例としては、Nafion(登録商標)(E.I. Dupont de Nemours, Inc.、米国デラウェア州ウィルミントン)、Flemion(登録商標)(旭硝子株式会社、東京、JP)、Aciplex(登録商標)(旭化成工業株式会社、東京、JP)、Aquivion(登録商標)(SolvaySolexis S.P.A、イタリア)及び3MTM(3M Innovative Properties Company、米国)が挙げられ、これらは市販のペルフルオロスルホン酸コポリマーである。適切なペルフルオロスルホン酸ポリマーの他の例としては、米国特許第5,463,005号明細書に記載されているような過フッ素化スルホニル(コ)ポリマーが挙げられる。
【0128】
複合膜の性質
上述のように、複合膜は、微孔質ポリマー構造と、該微孔質ポリマー構造に吸収されたイオン交換材料とを含み、それによって、複合膜の突き刺し抵抗性の改善を達成する2つの異なる材料を形成する。理論に束縛されることを望むものではないが、複合膜の突き刺し抵抗性は、複数の(すなわち、少なくとも2つの)強化層における微孔質ポリマー構造の総含有量の分配によって、複合膜の構築体内の単一の強化層において提供される同じ含有量の微孔質ポリマー構造と比較して、影響を受けることができる。さらに、複合膜の突き刺し抵抗性は、複合膜内の微孔質ポリマー構造の総含有量によって影響を受けることができる。
【0129】
複合膜は、0%RHで、少なくとも約10μm、例えば、約10μm~約115μm、又は約10μm~約100μm、又は約10μm~約90μm、又は約10μm~約80μm、又は約10μm~約70μm、又は約10μm~約60μm、又は約10μm~約50μm、又は約10μm~約40μm、又は約10μm~約30μm、又は約10μm~約20μm、又は約10μm~約15μm、又は約10μm~約12μm、又は約20μm~約60μm、又は約30μm~約60μm、又は約40μm~約60μm、又は約12μm~約30μm、又は約12μm~約20μm、又は約15μm~約30μm、又は約15μm~約20μm、又は約20μm~約30μmの厚さを有することができる。複合膜は、0%RHで、約10μm、又は約11μm、又は約12μm、又は約13μm、又は約14μm、又は約15μm、又は約16μm、又は約17μm、又は約18μm、又は約19μm、又は約20μm、又は約21μm、又は約22μm、又は約23μm、又は約24μm、又は約25μm、又は約30μm、又は約35μm、 又は約40μm、又は約45μm、又は約50μm、又は約55μm、又は約60μm、又は約65μm、又は約70μm、又は約75μmの厚さを有することができる。複合膜は、0%RHで約10μm未満の厚さを有することができる。
【0130】
幾つかの実施形態において、強化層の微孔質ポリマー構造は、複合膜の総体積に基づいて約15体積%~約70体積%、又は約20体積%~約70体積%、又は約30体積%~約70体積%、又は約40体積%~約70体積%、又は約50体積%~約70体積%、又は約65体積%~約70体積%、又は約25体積%~約60体積%、又は約20体積%~約50体積%、又は約20体積%~約40体積%、又は約20体積%~約30体積%、又は約40体積%~約60体積%、又は約40体積%~約50体積%を占める(複合膜の総体積に基づく)。強化層の微孔質ポリマー構造は、複合膜の総体積に基づいて、約15体積%、又は約20体積%、又は約25体積%、又は約30体積%、又は約35体積%、又は約40体積%、又は約45体積%、又は約50体積%、又は約55体積%、又は約60体積%、又は約65体積%、又は約70体積%の量で存在しうる。
【0131】
幾つかの実施形態において、イオン交換材料110の当量体積は、約240cc/モル当量~約870cc/モル当量である。イオン交換材料は、約400g/eq~約2000g/eqのSO の総当量(EW)を有することができる。様々な実施形態において、複合膜100、200、300、400、500、600、700、800、900の酸含有量は、0%相対湿度で、1.2meq/ccより大きく、例えば、1.2meq/cc~3.5meq/ccである。様々な実施形態において、複合膜の厚さは、約10μm~約115μmである。具体的には、実施形態によれば、複合膜の厚さは約10μm~約115μmであり、複合膜の酸含有量は1.2meq/cc~3.5meq/ccに保たれる。
【0132】
複合材料中の強化層の微孔質ポリマー構造の体積%は、アイオノマーを含まない微孔質ポリマー構造によって占有される空間を指す。したがって、複合材料中の微孔質ポリマー構造の体積%は、アイオノマーを含む吸収層とは異なる。複合材料中の微孔質ポリマー構造の体積%は湿度の影響を受ける。したがって、体積%に関して以下で論じる実験は、乾燥状態(例えば、相対湿度(RH)0%)で実施される。
【0133】
幾つかの実施形態において、複合膜内の微孔質ポリマー構造の正規化総含有量は、複合膜の総面積に基づいて、少なくとも約3・10-6m、又は約3.5・10-6m、又は約4・10-6m、又は約4.5・10-6m、又は約5・10-6m、又は約5.5・10-6m、又は約6・10-6m、又は約6.5・10-6m、又は約7・10-6m、又は約8・10-6m、又は約8.5・10-6m、又は約9・10-6mであることができる。
【0134】
イオン交換材料の当量も湿度の影響も受ける。したがって、当量に関して以下で議論する実験は、水分の存在が当量体積の値に影響を与えず、異なるアイオノマー間の有意義な比較を行うことができる理想的な状態で、乾燥状態(例えば、相対湿度(RH)0%)で行われる。
【0135】
上記のように、微孔質ポリマー構造の任意の所与の含有量及び複合膜の厚さについて、2つ以上の強化層内に微孔質ポリマー構造の含有分を分配することによって、複合膜の穿刺抵抗性が劇的に改善されることは驚くべきことであり、予想外である。
【0136】
複合膜は、以下に記載する平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、少なくとも約150psiの平均破壊圧力を有することができる。例えば、複合膜は、以下に記載する平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、少なくとも約150psi、又は少なくとも約160psi、又は少なくとも約170psi、又は少なくとも約180psi、又は少なくとも約190psi、又は少なくとも約200psiの平均破壊圧力を有することができる。
【0137】
複合膜は、以下に記載する平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、約150psi~約500psiの平均破壊圧力を有することができ、又は、以下に記載する平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、約150psi~約450psi、又は約150psi~約400psi、又は約150psi~約350psi、又は約150psi~約300psi、又は約200psi~約400psi、又は約200psi~約350psiの平均破壊圧力を有することができる。
【0138】
複合膜は、以下に記載する平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、約150psi、又は約200psi、又は約250psi、又は約300psi、又は約350psi、又は約400psi、又は約450psi、又は約500psiの平均破壊圧力を有することができる。
【0139】
膜は、図13に示されるような逐次コーティングプロセスに従って調製された。強化層の間にアイオノマーの内層を有する膜については、方法1500(図13)は以下の工程を含む:
1510)バッカー層を提供し、第一のアイオノマー溶液の液体層を堆積させることにより、バッカーを第一のアイオノマー溶液でコーティングすること、
1520)第一のアイオノマー溶液の液体層の上に、微孔質ポリマー構造を含む第一の強化層をラミネート(堆積)し、前記第一の強化層の微孔質ポリマー構造に前記第一のアイオノマー溶液が吸収されるか、又は少なくとも部分的に吸収されるようにすること、
1530)場合により、ラミネートを乾燥させること、
1540)吸収された第一の強化層を第二のアイオノマー溶液の液体層でコーティングすること、
1550)第二のアイオノマー溶液の液体層の上に、微孔質ポリマー構造を含む第二の強化層をラミネート(堆積)し、前記第二の強化層の微孔質ポリマー構造に前記第二のアイオノマー溶液が吸収されるか、又は少なくとも部分的に吸収されるようにすること、
1560)場合によりラミネートを乾燥させること、
1570)バッカーから最も離れたラミネートの最外面を、第三のアイオノマー溶液の最終液体層でコーティングすること、及び、
1580)ラミネートを乾燥させること。
【0140】
場合により、製造方法は、さらなる強化層及びアイオノマー溶液の液体層及びラミネートの乾燥を用いて、工程1560)、1570)及び1580)を繰り返すことを含む。 例えば、3つの強化層を含む複合膜では、第三のアイオノマー溶液の第三の液体層を、吸収された第二の強化層の上に堆積させ、第三の強化層をアイオノマー溶液の第三の層の上に適用し、次いでラミネートを乾燥させることができる。幾つかの実施形態において、この方法は、さらなるアイオノマー及び強化層を追加すること、及びラミネートを乾燥させることを含む。
【0141】
膜電極アセンブリは、当該技術分野で知られている任意の適切な技術によって複合膜上に電極(すなわち、アノード及びカソード)を堆積させることによって調製することができる。例えば、固体電極層は、任意の適切な技術によって複合膜に対してプレスされる。あるいは、(液体)電極インクを複合膜に塗布することができる。複合材を乾燥させると、電極インクの溶媒が乾燥して固体電極層を形成することができる。誤解を避けるために、カソード又はカソード流体拡散層を適用する前に、複合膜からバッカーを除去しなければならない。アイオノマー層のそれぞれで使用されるアイオノマー溶液中のアイオノマーは、同じであっても又は異なっていてもよい。電解質複合膜に用いられる強化層は、全て同じであってもよいし、少なくとも1つの強化層が異なっていてもよい。
【実施例0142】

実施例で使用される試験手順及び測定プロトコル
バブルポイント
バブルポイントをASTM F316-86の手順に従って測定した。試験片の細孔を満たすための湿潤液としてイソプロピルアルコールを使用した。バブルポイントは、微孔質ポリマーマトリックスを覆うイソプロピルアルコールの層を通過する泡の上昇によって検出可能な最初の連続的な泡の流れを作り出すのに必要な空気の圧力である。この測定により、最大細孔サイズを推定できる。
【0143】
非接触厚さ
微孔質ポリマー構造のサンプルを平らで滑らかな金属製のアンビルの上に置き、引っ張ってしわを取り除いた。アンビル上の微孔質ポリマー構造の高さを測定し、非接触の Keyence LS-7010M デジタルマイクロメータを使用して記録した。次に、微孔質ポリマーマトリックスを含まないアンビルの高さを記録した。微孔質ポリマー構造の厚さは、アンビル上に微孔質構造が存在する場合と存在しない場合のマイクロメータの読みの差として得られた。
【0144】
面積あたりの質量
各微孔質ポリマー構造を、しわをなくすのに十分なほど歪ませ、次に、10cm片をダイを使用して切り出した。10cm片を従来の実験用はかりで計量した。次いで、面積当たりの質量(M/A)を、既知の面積に対する測定質量の比として計算した。この手順を2回繰り返し、M/Aの平均値を計算した。
【0145】
微孔質ポリマー構造の見掛け密度
微孔質ポリマー構造の見掛け密度は、次の式を使用して、非接触の厚さと面積あたりの質量のデータを使用して計算した。
【数3】
【0146】
微多孔質ポリマー構造の多孔度
微孔質ポリマー構造の多孔度は、次の式を使用して、見かけの密度及び骨格密度のデータを使用して計算した。
【数4】
【0147】
イオン交換材料(IEM)の溶液の固形分濃度
本明細書において、「溶液」及び「分散液」という用語は、イオン交換材料(IEM)を指すときに、交換可能に使用される。この試験手順は、IEMがプロトンの形をしており、他の固体が無視可能な量で存在する溶液に適している。2立方センチメートルの体積のIEM溶液を注射器に吸い込み、溶液を含む注射器の質量を固形分分析器(CEM Corporation、USAから入手)で天秤を介して測定した。2枚のガラス繊維紙 (CEM Corporation、USAから入手)の質量も測定して記録した。次いで、IEM溶液を注射器からガラス繊維紙の2つの層に堆積させた。アイオノマー溶液を含むガラス繊維紙を固形分分析器に入れ、160℃まで加熱して溶媒液を除去した。ガラス繊維紙と残留固体の質量が、温度及び時間の増加に対して変化しなくなったら、それを記録した。残留IEMは水を含まないと仮定される(すなわち、0%RHに対応するアイオノマー塊である)。その後、空になった注射器の質量を、以前と同じ天秤を使用して測定し、記録した。溶液中のアイオノマー固形分を、次の式に従って計算した。
【数5】
【0148】
IEMの当量(EW)
次の試験手順は、プロトンの形である(すなわち、無視可能な量の他のカチオンを含む)単一のアイオノマー樹脂又はアイオノマー樹脂の混合物を含み、プロトン酸及び解離塩を含む、無視可能な他のイオン種を含む溶液中にあるIEMに適している。これらの条件が満たされないならば、試験の前に、当業者に知られている適切な手順に従って溶液をイオン性不純物から精製するか、又は、不純物を特性化しなければならず、そして、EW試験の結果に及ぼす影響について補正されなければならない。
【0149】
本明細書で使用されるときに、IEMのEWは、IEMが無視可能な不純物を含む0%RHでそのプロトン形態にある場合を指す。IEMは、プロトン形態の単一のアイオノマー又はアイオノマーの混合物を含むことができる。0.2グラムの固形分を含有する、上記のように決定された固形分濃度を有するIEM溶液の量を、プラスチックカップに注いだ。アイオノマー溶液の質量は、従来の実験室スケール(Mettler Toledo、LLC、米国から入手)によって測定した。次いで、5mlの脱イオン水及び5mlの200プルーフの変性エタノール(SDA 3C、Sigma Aldrich、USA)をカップ内のアイオノマー溶液に添加する。次に、水中の2N塩化ナトリウム溶液55mlをIEM溶液に添加した。次いで、サンプルを15分間一定の攪拌下で平衡化させた。平衡化工程の後に、サンプルを1N水酸化ナトリウム溶液で滴定した。サンプル溶液をpH値7に中和するのに必要な1N水酸化ナトリウム溶液の体積を記録した。IEMのEW(EWIEM)を次のように計算した。
【数6】
【0150】
複数のIEMを組み合わせて複合膜を作成するときに、複合膜内のIEMの平均EWを次の式を使用して計算した。
【数7】
上式中、各IEMの質量分率は、すべてのIEMの総含有量に対するものである。この式は、アイオノマーブレンドを含む複合膜及び複数のアイオノマー層を含む複合膜の両方に使用した。
【0151】
イオン交換材料の当量体積(EV)
本明細書で使用されるときに、IEMの当量体積は、そのIEMが純粋であり、0%RHでそのプロトン形態であり、不純物が無視できる場合のEVを指す。EVは、次の式に従って計算される。
【数8】
【0152】
上記の手順に従って、各IEMの当量を決定した。これらの用途で使用されるIEMは、ペルフルオロスルホン酸アイオノマー樹脂であり、ペルフルオロスルホン酸アイオノマー樹脂の体積密度は、0%RHで1.9g/ccであった。
【0153】
複合膜の厚さ
測定前に少なくとも1時間、厚さを測定する部屋で複合膜を平衡化した。複合膜は、複合膜がコーティングされた基材に取り付けられたままであった。各サンプルについて、コーティング基材上の複合膜を、滑らかで平らで水平な大理石スラブの上に置いた。厚さ計(Heidenhain Corporation, USAから入手)を複合膜と接触させ、ゲージの高さの読みを膜上の格子パターンに配置された6つの異なるスポットで記録した。次に、サンプルを基材から取り外し、ゲージを基材に接触させ、高さの読み取り値を同じ6つのスポットで再度記録した。室内の特定の相対湿度(RH)での複合膜の厚さは、複合膜が存在する場合と存在しない場合のゲージの高さの読みの差として計算した。局所RHは、RHプローブ(Fluke Corporationから入手)を使用して測定した。0%RHでの厚さを、次の一般式を使用して計算した。
【数9】
上式中、パラメータλは、特定のRHでの酸基1モルあたりの水のモル数で表した、イオン交換材料の吸水量に対応する。PFSAアイオノマーでは、気相で0~100%の範囲の任意のRHでのλの値を、次の式に従って計算した。
【数10】
【0154】
複合膜の微孔質ポリマーマトリックス(MPM)体積含有量
各複合膜中の微孔質ポリマーマトリックスの体積%を、次の式に従って計算した。
【数11】
これらの例で使用された微孔質ポリマーマトリックスは、ePTFE及びトラックエッチングされた多孔質ポリカーボネートであった。ePTFEのマトリックス骨格密度は2.25g/ccであり、トラックエッチングされた多孔質ポリカーボネートは1.20g/ccであった。
【0155】
複合膜の酸含有量
複合膜の酸含有量を、次の式に従って計算した。
【数12】
【0156】
複合材微孔層のボール破裂試験
本発明に従って調製された複合膜の機械的強度は、サンプルに負荷圧力をかけることによって測定された。
サンプルを、直径45mmの開口部を備えたフレームにピンと張って固定した。フレーム内のサンプルを、チャンバー内の温度及び相対湿度がそれぞれ23℃及び80%である環境制御チャンバーを備えた島津製作所(日本)の万能試験機AG‐Iに配置した。支柱に支えられた直径6.35mmのスチールボールを、100mm/分の一定の速度で吊り下げられた膜に押し込んだ。サンプルの破断時にシステムによって生成された最大荷重を記録した。その値はボール破裂強度と呼ばれる。
【0157】
平均穿刺圧力破壊試験
サンプルを2つの多孔質炭素電極 (Sigracet 39AA Carbon Paper)の間に置き、電気的に絶縁された直径14mmの金メッキ円筒プラテンを備えたInstron モデル 5542 にロードした。サンプルと電極の領域は、プラテンに比べて過大で、プラテンを超えて延在され、穿刺に対するエッジ効果を排除した。 サンプル領域は、電極が接触してサンプルを通過しない電子短絡を生じるのを防ぐために、電極領域と比較して過大であった。膜を横切る電気抵抗は、上部プラテン及び下部プラテンに接続された Keithley 580 Micro-Ohmmeter によって測定される。サンプルに圧縮機械負荷を加えながら、上部プラテンを周囲条件で1mm/分の速度で下げ、サンプルを横切って測定される電気抵抗を、444.8N(100lbf)がかかるまで絶えず記録した。より高い圧縮圧力は、代替の計器又はより小さなプラテンのアクティブ領域でアクセスできる。膜穿刺は、電気抵抗が 18,000オームを下回ったときの圧力として定義され、サンプルを通した電極又は電極繊維の物理的接触を表す。各サンプルについて5回繰り返して試験し、5回の実行の平均を平均穿刺圧として報告する。穿刺圧力は電極材料に依存し、別の電極材料を使用すると有意に増加又は減少する可能性がある。
【数13】
【0158】

本開示の複合膜は、以下の非限定的な実施例を参照することによってよりよく理解されうる。
複合膜の酸含有量、体積及び突き刺し抵抗性などの特性ならびに試験手順及び測定プロトコルの特性を決定するために、上記のように実施した。表1は、本発明の実施形態及び比較例による複合膜の特性を示す。表2は、本発明の幾つかの態様による5つの一連の実施例及び比較例において、様々な試験手順で使用される微孔質ポリマー構造の特性を示す。
【0159】
すべての例についての本開示の態様に従って製造されたイオン交換材料
以下の例で使用されるすべてのイオン交換材料は、表1に指定された当量(EW)を有するペルフルオロスルホン酸(PFSA)ベースのアイオノマーである。複合膜の製造前のすべてのイオノマーは、溶媒として水及びエタノールの混合物をベースとする溶液の形態であり、溶媒相中の水分含有量は50%未満であった。
【0160】
一般に知られているイオン交換材料を使用して、本開示の複合膜を製造した。好ましい例は、下記一般式(a:b=1:1~9:1、n=0、1又は2)で表される固形PFSAアイオノマーを溶媒に分散又は溶解させて得られた溶液である。
【化1】
【0161】
幾つかの態様において、溶媒は、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ペンタノール及びその異性体、ヘキサノール及びその異性体、n-ヘキサンなどの炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン及びジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド及びジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン及びN-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン及びクロロホルムからなる群より選ばれる。本開示において、溶媒は、場合により、水、メタノール、エタノール、プロパノールからなる群より選ばれる。水及び上記溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0162】
シリーズ1
先行技術例1
先行技術例1は、以下の手順に従って調製された。2.8g/mの面積当たりの質量、9.6μmの厚さ、0.29g/ccの見掛け密度及び34.4psiのバブルポイントを有する第一のePTFE膜1を、強化層の微孔質ポリマー構造として使用した。EW=810g/モル当量のSO のIEM(Shanghai Gore 3F Fluoromaterials Co., LTD.、中国から入手)として、17.3%の水、71.5%のエタノール、11.2%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、理論上のウェットコーティング厚が3ミル(76.2μm)のドローダウンバーを使用して、第一のレイダウンとしてバッカー層の上面をコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定されたePTFE膜1の第一の強化層をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。第二のレイダウン時に、IEMの同じ溶液を、4ミル(101.6μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一のePTFE膜1の上面にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定されたePTFE膜1の第二の強化層をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブン内で乾燥させた。第三のレイダウン時に、EW=810g/モル当量のSO のIEM(Shanghai Gore 3F Fluoromaterials Co., LTD.、中国から入手) として、6.2%の水、89.8%のエタノール、4.0%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、3ミル(76.2μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して第二の強化層の上面にコーティングした。次いで、複合膜を165℃で再び乾燥させた。多層複合膜は完全に閉塞性であり、完全に閉塞された2つの微孔質ポリマー層の両面上及びその間にIEMの層を有していた。得られた複合膜は、0%RHで8.66ミクロンの厚さを有していた。
【0163】
比較例1.1
比較例1.1は、以下の手順に従って作製した。6g/mの面積当たりの質量、19.7μmの厚さ、0.29g/ccの見掛け密度及び34.8psiのバブルポイントを有するePTFE膜2を手で歪ませて、この状態でシワをなくし、金属フレームで拘束した。次に、EW=810g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、32.2%の水、49.6%のエタノール、18.2%の固体の溶液組成を有するPSFA溶液の第一のレイダウンをポリマー基材(バッカー材料)の上面にコーティングした。ポリマー基材(ダイセルバリューコーティング株式会社、日本から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。IEM(PFSA溶液)コーティングは、理論上のウェットコーティング厚が3ミル(76.2μm)のマイヤーバーを使用して行われた。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定されたePTFE膜2をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマー構造(ePTFE膜)はIEMが完全に吸収された。IEMはまた、微孔質ポリマー基材の底面とポリマー基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、2.5ミル(63.5μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、同じEWのIEM及び18.4%の水、73.3%のエタノール、8.3%の固形分の組成を有する溶液をePTFE膜2の上面(ポリマー基材とは反対面)上にコーティングした。次に、複合膜を165℃で再度乾燥させたところ、その時点で大部分が透明になり、微孔質ポリマー構造が完全に含浸されたことが示された。複合膜は完全に閉塞性であり、微孔質ポリマー構造の両側にIEMの層を有した。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは8.6μmであった。
【0164】
比較例1.2
比較例1.2は、異なる材料を使用したことを除いて、比較例1.1について記載したのと同じ手順に従って調製した。3.9g/mの面積当たりの質量、11.7μmの厚さ、0.34g/ccの見掛け密度及び97.5psiのバブルポイントを有するePTFE膜3を微孔質ポリマー構造として使用した。EW=710g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、26.4%の水、61.6%のエタノール、12%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、理論上のウェットコーティング厚が4ミル(101.6μm)のドローダウンバーを使用した第一のレイダウンとしてポリマー基材(バッカー基材)の上面にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに拘束されていたePTFE膜3をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマー構造(ePTFE膜)はIEMが完全に吸収された。IEMはまた、微孔質ポリマー基材の底面とポリマー基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、41%の水、53%のエタノール、6%の固形分の組成を有する同じIEMの溶液を、2ミル(50.8μm)の理論上のウェットコーティング厚でドローダウンバーを使用して、ePTFE膜3の上面(ポリマー基材の反対面)にコーティングした。次に、複合材料を165℃ で再度乾燥させたところ、大部分が透明になり、微孔質ポリマー構造が完全に含浸されたことが示された。複合膜は完全に閉塞性であり、微孔質ポリマー基材の両側にIEMの層を有した。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは7.8μmであった。
【0165】
シリーズ2
先行技術例2
先行技術例2は、以下の手順に従って調製された。まず、2つの微孔質ポリマー構造、3.1g/mの面積当たりの質量、13.3μmの厚さ、0.33g/ccの見掛け密度及び55.5psiのバブルポイントを有する第一のePTFE膜4、及び、3.0g/mの面積当たりの質量、15.2μmの厚さ、0.20g/ccの見掛け密度及び36.6psiのバブルポイントを有する第二のePTFE膜6を歪ませて、しわを除去し、金属フレームに重ねて接触させて拘束した。次に、EW=810g/モル当量のSO のIEM (Shanghai Gore 3F Fluoromatenals Co., LTD.、中国から入手)、17.3%の水、71.5%のエタノール、11.2%の固形分の溶液組成の溶液の第一のレイダウンを、ポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。ポリマー基材(ダイセルバリューコーティング株式会社、日本から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。第一のレイダウンのコーティングは、5ミル(127μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して行われた。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定されたePTFE膜4及び6を両方ともコーティングにラミネートすると、IEM溶液は微孔質ポリマー構造の細孔に吸収された。続いて、この多層複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマーマトリックスはIEMを完全に吸収した。IEMはまた、微孔質ポリマーマトリックスの底面とポリマー基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、EW=810g/モル当量のSO のIEM (Shanghai Gore 3F Fluoromaterials Co., LTD.、中国から入手)、4%の水、95.0%のエタノール、1%の固形分の溶液組成の溶液を、0.5ミル(12.7μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、複合材料の上面 (ポリマー基材の反対面)にコーティングした。次に、多層複合材料を 165℃で再度乾燥させた。この時点で大部分が透明になり、微孔質ポリマーマトリックスが完全に含浸されたことを示す。多層複合材料は、基材に結合された多層複合膜を含んだ。多層複合膜は完全に閉塞性であり、接触している微孔質ポリマー構造の両側にIEMの層を有した。得られた多層複合膜は、0%RHで7.1ミクロンの厚さを有していた。
【0166】
比較例2.1
比較例2.1は、異なる材料を使用したことを除いて、比較例1.1について記載したのと同じ手順に従って調製した。4.5g/mの面積当たりの質量、23μmの厚さ、0.2g/ccの見掛け密度及び55.8psiのバブルポイントを有するePTFE膜5を微孔質ポリマー構造として使用した。EW=810g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、33%の水、48.8%のエタノール、18.2%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、3ミル(76.2μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一のレイダウンとしてポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに拘束されていたePTFE膜5をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマー構造(ePTFE膜5)にIEMが完全に吸収された。IEMはまた、微孔質ポリマー基材の底面及びポリマー基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、35%の水、56.7%のエタノール、8.3%の固形分の組成を有する同じIEMの溶液を、3ミル(76.2μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、膜5の上面(ポリマー基材の反対面)上にコーティングした。次に、複合材料を165℃で再度乾燥させたところ、大部分が透明になり、微孔質ポリマー構造が完全に含浸されたことを示した。複合膜は完全に閉塞性であり、微孔質ポリマー基材の両側にIEMの層を有した。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは8.8μmであった。
【0167】
シリーズ3
比較例3.1
比較例3.1は、異なる材料を使用したことを除いて、比較例1.1について記載したのと同じ手順に従って調製した。10.4g/mの面積当たりの質量、62.2μmの厚さ、0.16g/ccの見掛け密度及び56.2psiのバブルポイントを有するePTFE膜7を微孔質ポリマー構造として使用した。EW=710g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、32%の水、49.8%のエタノール、18.2%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、9ミル(228.6μm) の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して第一のレイダウンでポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定されたePTFE膜7をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を対流式オーブン内で内部に空気を入れて165℃ の温度で乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマー構造(ePTFE膜7)にIEMが完全に吸収された。IEMはまた、微孔質ポリマー基材の底面とポリマー基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、41%の水、53%のエタノール、6%の固形分の組成を有する同じIEMの溶液を、3ミル(76.2μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、ePTFE膜7の上面(ポリマー基材の反対面)にコーティングした。次に、複合材料を165℃で再度乾燥させたところ、その時点で、大部分が透明になり、微孔質ポリマー構造が完全に含浸されたことを示した。複合膜は完全に閉塞性であり、微孔質ポリマー基材の両側にIEMの層を有した。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは15.3μmであった。
【0168】
発明例3.2
本発明例3.2は、以下の手順に従って調製された。3.9g/mの面積当たりの質量、11.7μmの厚さ、0.34g/ccの見掛け密度及び97.5psiのバブルポイントを有する第一のePTFE膜3を強化層の微孔質ポリマー構造として使用した。EW=710g/モル当量のSO のIEM (旭硝子株式会社から入手)として、溶液35%の水、55.1%のエタノール、9.9%の固形分の組成のPSFA溶液を、ポリマー基材(バッカー層)の上面に、5ミル(127μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一のレイダウンとしてコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、金属フレーム上に拘束された第一のePTFE膜3をコーティングにラミネートし、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマー構造(ePTFE膜3)はIEMが完全に吸収された。IEMの同じ溶液の第二のレイダウンは、5ミル(127μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一の膜3の上面 (ポリマー基材の反対面)にコーティングされた。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに拘束されていた第二の ePTFE膜3をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。同じIEM EW、38.0%の水、57.7%のエタノール、4.3%の固形分の溶液組成を有するPSFA溶液の第三のレイダウンは、3ミル(76.2μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して第二の膜3の上面にコーティングされた。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。多層複合膜は完全に閉塞性であり、約2μmの分離距離dを有する膜3の2つの完全に閉塞された微孔質ポリマー層の両側及びその間にIEMの層を有していた。得られた複合膜は、0%RHで14.5ミクロンの厚さを有していた。
【0169】
発明例3.3
本発明例3.3は、以下の手順に従って調製された。4.5g/mの面積当たりの質量、23μmの厚さ、0.20g/ccの見掛け密度及び55.8psiのバブルポイントを有するePTFE膜5を強化層の微孔質ポリマー構造として使用した。EW=710g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、33%の水、52.2%のエタノール、14.8%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、理論上のウェット コーティング厚が3ミル(76.2μm)のドローダウンバーを使用して、第一のレイダウンとしてポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、金属フレーム上に拘束された第一のePTFE膜5はコーティングにラミネートされ、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマー構造(ePTFE膜)はIEMが完全に吸収された。IEMの同じ溶液の第二のレイダウンを、6ミル(152.4μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一の膜5の複合材料の上面(ポリマー基材の反対面)にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに拘束されていた第二のePTFE膜5をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。同じIEM及びEW、10.0%の水、89.0%のエタノール、1.0%の固形分の溶液組成を有するPSFA溶液の第三のレイダウンを、1.5ミル(38.1μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して第二の膜5の上面にコーティングした。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。多層複合膜は完全に閉塞性であり、約2μmの分離距離dを有する膜5の2つの完全に閉塞された微孔質ポリマー層の両側と間にIEMの層を有していた。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは14.4μmであった。
【0170】
シリーズ4
比較例4.1
比較例4.1は、異なる材料を使用したことを除いて、比較例1.1について記載したのと同じ手順に従って調製した。10.4g/mの面積当たりの質量、62.2μmの厚さ、0.16g/ccの見掛け密度及び56.2psiのバブルポイントを有するePTFE膜7を微孔質ポリマー構造として使用した。EW=710g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、32%の水、49.8%のエタノール、18.2%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、9ミル(228.6μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して第一のレイダウンでポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。続いて膜を対流式オーブン内で内部に空気を入れ、165℃の温度で乾燥させた。第二のレイダウン時に、41%の水、53%のエタノール、6%の固形分の組成を有する同じIEMの溶液を、3ミル(76.2μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して膜7の上面にコーティングした。膜は165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで再度乾燥させた。複合膜は完全に閉塞性であり、微孔質ポリマー基材の両側にIEMの層を有した。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは15.3μmであった。
【0171】
発明例4.2
本発明例4.2は、以下の手順に従って調製された。まず、4.5g/mの面積当たりの質量、23μmの厚さ、0.20g/ccの見掛け密度及び55.8psiのバブルポイントを有する強化層としてのePTFE膜5の2つの微孔質ポリマー構造を歪ませて、しわをなくし、金属フレームに重ねて接触して拘束した。次に、EW=710g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)、33%の水、52.2%のエタノール、14.8%の固形分の溶液組成を有する溶液の第一のレイダウンを、ポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。ポリマー基材(ダイセルバリューコーティング株式会社、日本から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。コーティングは、7ミル(177.8μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して行われた。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに拘束されていた2つのePTFE膜5をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この多層複合材料を対流式オーブン内で内部に空気を入れて温度165℃で乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマーマトリックスはIEMを完全に吸収した。IEMはまた、微孔質ポリマー構造の底面とポリマー基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、EW=710g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)、33%の水、52.2%のエタノール、14.8%の固形分の溶液組成を有する溶液を、1.5ミル(38.1μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、ePTFE膜5(ポリマー基材の反対面)の上面にコーティングした。次に、多層複合材料を 165℃で再度乾燥させた。この時点で大部分が透明になり、微孔質ポリマーマトリックスが完全に含浸されたことを示している。多層複合膜は完全に閉塞性であり、触れていた微孔質ポリマーマトリックスの両側にIEMの層を有した。得られた多層複合膜の0%RHにおける厚さは14.4μmであった。
【0172】
発明例4.3
本発明例4.3は、本明細書で前述した発明の例3.3と同じ手順に従って調製した。
【0173】
発明例4.4
本発明例4.4は、異なる材料を使用したことを除いて、本発明の例3.3について記載したのと同じ手順に従って調製した。4.5g/mの面積当たりの質量、23μmの厚さ、0.20g/ccの見掛け密度及び55.8psiのバブルポイントを有するePTFE膜5を、強化層の微孔質ポリマー構造として使用した。EW=710g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、29.8%の水、56.8%のエタノール、13.4%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、4ミル(101.6μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一のレイダウンでポリマーシート基材(バッカー層)の上面にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定された第一のePTFE膜5をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマー構造はIEMを完全に吸収した。IEMはまた、微孔質ポリマー構造の底面及びポリマー基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、29.8%の水、56.8%のエタノール、13.4%の固形分の組成を有する同じIEMの溶液を、5ミル(127μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一のePTFE膜5の上面にコーティングした。金属フレーム上に予め拘束された第二のePTFE膜5をコーティングにラミネートし、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この多層複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。第三のレイダウン時に、35%の水、59%のエタノール、6%の固形分の組成の同じIEMの溶液を、2ミル(50.8μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用してコーティングした。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。多層複合膜は完全に閉塞性であり、約4μmの分離距離dを有する2つの完全に閉塞された微孔質ポリマー層の両側及びその間にIEMの層を有していた。得られた複合膜は、0%RHで14.4μmの厚さを有していた。
【0174】
シリーズ5
比較例5.1
比較例5.1は、異なる材料を使用したことを除いて、比較例1.1について記載したのと同じ手順に従って調製した。18g/mの面積当たりの質量、33.4μmの厚さ、0.53g/ccの見掛け密度及び23.7psiのバブルポイントを有するePTFE膜8を微孔質ポリマー構造として使用した。EW=810g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、32.2%の水、49.6%のエタノール、18.2%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、9ミル(228.6 μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して第一のレイダウンとしてコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定された第一のePTFE膜8をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。第二のレイダウン時に、15.1%の水、18.4%のエタノール、4.2%の固形分の組成を有する同じIEMの溶液を、1.5ミル(38.1μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用してePTFE膜8の上面にコーティングした。この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで再び乾燥した。複合膜は完全に閉塞性であり、微孔質ポリマー基材の両側にIEMの層を有していた。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは23.8μmであった。
【0175】
発明例5.2
本発明例5.2は、異なる材料を使用したことを除いて、本発明例4.2について記載したのと同じ手順に従って調製した。4.5g/mの面積当たりの質量、23μmの厚さ、0.20g/ccの見掛け密度及び55.8psiのバブルポイントを有する第一のePTFE膜5、及び、10.4g/mの面積当たりの質量、62.2μmの厚さ、0.16g/ccの見掛け密度及び56.2psiのバブルポイントを有する第二のePTFE膜7を2層の強化層の微孔質ポリマー構造として使用した。EW=810g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、32.2%の水、49.6%のエタノール、18.2%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、9ミル(228.6μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して第一のレイダウンとしてコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定された第一のePTFE膜5及び第二のePTFE膜7をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が両方のePTFE膜の細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。第二のレイダウン時に、18.4%の水、73.3%のエタノール、8.3%の固形分の組成を有する同じEWのIEM溶液を、4ミル(101.6μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して2つのePTFE膜5及び7の上面にコーティングした。この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで再び乾燥させた。多層複合膜は完全に閉塞性であり、両側にIEMの層を有し、2つの完全に閉塞された微孔質ポリマー層が互いに接触していた。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは24.1μmであった。
【0176】
発明例5.3
本発明例5.3は、以下の手順に従って調製された。まず、4.5g/mの面積当たりの質量、23μmの厚さ、0.20g/ccの見かけ密度及び55.8psiのバブルポイントを有するePTFE膜5の3つの微孔質ポリマー構造、及び、ePTFEを歪ませてしわをなくし、金属フレームに接触するように重ねて拘束した。次に、EW=810g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)、32.2%の水、49.6%のエタノール、18.2%の固形分の溶液組成の溶液の第一のレイダウンをポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。基材(ダイセルバリューコーティング株式会社、日本から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。コーティングは、9ミル(228.6μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して行われた。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定された3つのePTFE膜5をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この多層複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマーマトリックスはIEMが完全に吸収された。IEMはまた、微孔質ポリマーマトリックスの底面とポリマー基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、EW=710g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)、18.4%の水、73.3%のエタノール、8.3%の固形分の溶液組成の溶液を、2ミル (50.8μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウン バーを使用して、複合材料の上面(ポリマー基材の反対面)にコーティングした。次に、多層複合材料を165℃で再度乾燥させ、この時点で大部分が透明になり、微孔質ポリマーマトリックスが完全に含浸されたことを示す。多層複合膜は完全に閉塞性であり、接触している微孔質ポリマーマトリックスの両側にIEMの層を有していた。得られた多層複合膜の0%RHにおける厚さは24.2μmであった。
【0177】
発明例5.4
本発明例5.4は、異なる材料を使用したことを除いて、本発明例4.2について記載したのと同じ手順に従って調製した。9.9g/mの面積当たりの質量、23μmの厚さ、0.43g/ccの見掛け密度及び130psiのバブルポイントを有する第一のePTFE膜9と、同じ材料の第二のePTFE膜9を、微孔質ポリマー構造として使用した。EW=810g/モル当量のSO のIEM(旭硝子株式会社から入手)として、26.0%の水、55.0%のエタノール、19%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、9ミル(228.6μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一のレイダウンとしてポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに拘束された第一のePTFE膜9と第二のePTFE膜9をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が両方の ePTFE膜の細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。第二のレイダウン時に、18.4の%水、73.3%のエタノール、8.3%の固形分の組成を有する同じEWのIEM溶液を、2ミル(50.8μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、複合材料の上面にコーティングした。続いて、この多層複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。得られた多層複合膜は完全に閉塞性であり、両側にIEMの層を有し、2つの完全に閉塞された微孔質ポリマー層が互いに接触していた。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは24.0μmであった。
【0178】
シリーズ6
比較例6.1
比較例6.1は、異なる材料を使用したことを除いて、比較例1.1について記載したのと同じ手順に従って調製した。29.5g/mの面積当たりの質量、137μmの厚さ、0.22g/ccの見掛け密度及び43.5psiのバブルポイントを有するePTFE膜10を微孔質ポリマー構造として使用した。EW=1100g/モル当量のSO のIEM(E.I. du Pont de Nemours and Company から入手)として、38%の水、41.8%のエタノール、20.2%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、10ミル(254μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、第一のレイダウンとしてポリマー基材(バッカー層)をコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに固定されたePTFE膜10をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、複合材料を対流式オーブン内で内部に空気を入れて165℃ の温度で乾燥させた。第二のレイダウン時に、26%の水、64.2%のエタノール、9.8%の固形分の組成を有する同じIEMの溶液を、3ミル(76.2μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して複合材料の上面にコーティングした。続いて、この複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。得られた複合膜は完全に閉塞性であり、微孔質ポリマー基材の両側にIEMの層を有していた。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは38.8μmであった。
【0179】
発明例6.2
本発明例6.2は、以下の手順に従って調製された。10.4g/mの面積当たりの質量、62.2μmの厚さ、0.16g/ccの見掛け密度及び56.2psiのバブルポイントを有するePTFE膜7を、強化層の微孔質ポリマー構造として使用した。EW=1100g/モル当量のSO のIEM(E.I. du Pont de Nemours and Company から入手)として、24.4%の水、56.6%のエタノール、19.0%の固形分の溶液組成のPSFA溶液を、ポリマー基材(バッカー層)の上面にコーティングした。ポリマー基材(ダイセルバリューコーティング株式会社、日本から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。コーティングは、5ミル(127μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して行った。コーティングがまだ湿っている間に、金属フレーム上に拘束された第一のePTFE膜7がコーティングにラミネートされ、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、125℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。乾燥すると、微孔質ポリマー構造(ePTFE膜7)にIEMが完全に吸収された。IEMの同じ溶液の第二のレイダウンを、5ミル(127μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、複合材料の上面 (ポリマー基材の反対面)にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに拘束されていた第二のePTFE膜7をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、125℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。IEMの同じ溶液の第三のレイダウンを、5ミル(127μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して、複合材料の上面にコーティングした。コーティングがまだ湿っている間に、あらかじめ金属フレームに拘束されていた第三のePTFE膜7をコーティングにラミネートすると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、125℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。同じIEM及びEW、20.0%の水、76.0%のエタノール、4.0%の固形分の溶液組成を有するPSFA溶液の第四のレイダウンを、5ミル(127μm)の理論上のウェットコーティング厚のドローダウンバーを使用して複合材料の上面にコーティングした。続いて、この多層複合材料を、165℃の温度で内部に空気を入れた対流式オーブンで乾燥させた。多層複合膜は完全に閉塞性であり、約1μmの分離距離dを有する3つの完全に閉塞された微孔質ポリマー層のそれぞれの両側及びその間にIEMの層を有していた。得られた複合膜の0%RHにおける厚さは38.6μmであった。
【0180】
例の複合膜の特性を表1に示す(図11)。複合膜に使用される微孔質ポリマー構造の特性を表2(図12)に示す。突き刺し抵抗性の改善は図10に示されており、比較可能な複合膜の平均破壊圧力を本発明の複合膜の平均破壊圧力と比較し、各複合膜の微孔質ポリマー構造の正規化含有量(μm)に対してプロットされたグラフを示している。図10を参照すると、各データポイントは、以下でより詳細に論じる一連の例ごとに、微孔質ポリマー構造の正規化含有量に対する平均破壊圧力データ(psi)に関連付けられている。
【0181】
結果の考察
シリーズ1(図10で8μm Aとしてプロット)は先行技術例1を含み、WO2018/232254の例11.2に対応し、その全体が本明細書に組み込まれる。シリーズ1はさらに2つの比較例を含む。複合膜は、0%RHで約8μmの同様の厚さを有する。先行技術例1は、相互に接触して配置された微孔質ポリマー構造としてePTFEを含む2つの強化層を有し、一方、比較例1.1及び1.2は単一の強化ePTFE層を有する。ePTFEの含有量(複合膜のePTFEの面積当たりの質量として表される)は、先行技術例1及び比較例1.1において同等である(表1に示されるように、複合膜中のePTFEの面積当たりの総質量は約6g/mである)。表1に示されるように、微孔質ポリマー構造の正規化総含有量は、約2.5μmである。比較例1.2は、単一の強化層中のePTFEの含有量が低い(3.9g/m又は正規化総ePTFE含有量1.7μm)。3つの例はすべて、150psiを大きく下回った、低い平均破壊圧力を提供する。したがって、これらの複合膜は、デバイスの組み立て時に、レドックスフロー電池などの電気化学デバイスの構成要素による突き刺しを受けやすい。
【0182】
シリーズ2(図10で8μm Bとしてプロット) は、強化されていないイオン交換材料の内層によって分離された2つのePTFE強化層を有する先行技術例2(WO2018/232254の例7.3に対応)を含む。このシリーズは、単一のePTFE強化層を有する比較例2.1も含む。このシリーズにおいて、複合膜はまた、0%RHで約8μmの厚さを有する。総ePTFE含有量は、比較例2.1(4.5g/m又は2μmの正規化総ePTFE含有量)よりも先行技術例2(6.1g/m又は2.7μmの正規化総ePTFE含有量)の方が多い。存在する両方の複合膜は、150psiを下回る、低い平均破壊圧力を提供する。したがって、これらの複合膜は、デバイスの組み立て時に、レドックスフロー電池などの電気化学デバイスの構成要素による突き刺しを受けやすい。
【0183】
シリーズ3(図10に15μmAとしてプロット)は、単一のePTFE強化層を有する1つの比較例3.1と、2つのePTFE強化層を有する2つの本発明例とを含む。膜は、0%RHで約15μmの厚さを有する。比較例3.1は、本発明例3.2(7.8g/m又は3.6μmの正規化総ePTFE含有量)及び3.3(9g/m又は4μmの正規化総ePTFE含有量)よりも多い総ePTFE含有量(10.4g/m又は4.6μmの正規化総ePTFE含有量)を有し、比較例1の平均破壊圧力は許容できず、150psi未満であるが、両方の本発明例は、150psiを超える、有意に改善した平均破壊圧力を有する。
【0184】
シリーズ4(図10で15μm Bとしてプロット)は、2つのePTFE強化層を有する3つの本発明例を含む。図10において、すべての複合膜が0%RHで約15μmの同等の厚さを有するため、このシリーズは比較例4.1(比較例3.1と同じサンプル) に対してもプロットされている。これらの3つの本発明のサンプルは、同様の方法で調製され、2つの強化層にわたって分配された同じ含有量のePTFE(9g/m又は4μmの正規化総ePTFE含有量)を有した。同様にePTFEの総含有量(9g/m)を有するシリーズ3からの本発明例3.2と同様に、3つの本発明例は、すべて、ePTFEの総含有量がより多い(10.4g/m)にもかかわらず150psi未満の許容できない平均破壊圧力を有した比較例3.1/4.1とは異なり、150psiを超える同様の平均破壊圧力を有した。このシリーズでは、強化層間の分離が平均破壊圧力に有意な差をもたらさないことがわかる。
【0185】
シリーズ5(図10で25μmとしてプロット)は、18g/mの総ePTFE含有量(8μmの正規化総ePTFE含有量)を有する単一の強化ePTFE層を有する1つの比較例5.1、直接接触する2つの強化ePTFE層を有する本発明例5.1及び5.3、ならびに、直接接触する3つの強化ePTFE層を有する本発明例5.2を有した。これらの複合膜はすべて、約25μmの同等の厚さと、約13.5g/m~約20g/mのePTFEの総含有量(6~8.8μmの正規化総ePTFE含有量)とを有した。図10に示されるように、これらのより厚い膜は、シリーズ3及び4の本発明例と比較して改善された平均破壊圧力を有する。理論に拘束することを望まないが、膜中のePTFEの総含有量が増加したことにより、平均破壊圧力を改善することができる。さらに、3つのePTFE層を有する比較例5.2は、同等の総含有量のePTFEが3層ではなく2層の強化層に分配された例5.1及び5.3と比較して、有意に改善された平均破壊圧力を有した。このシリーズのすべての本発明例は、ePTFEの総含有量が単一の強化層に分配された(そして本発明例5.4と同等の総含有量を有する)比較例5.1と比較して優れた平均破壊圧力を示した。
【0186】
最後に、シリーズ6(図10で41μmとしてプロット)は、約29.5g/mの複合膜の面積当たりのePTFEの総質量を有する単一の強化ePTFE層を有する1つの比較例6.1と、3つの強化ePTFE層を有し、約31.2g/mの複合膜の面積当たりのePTFEの総質量を有する本発明例6.2とを有した。膜は、0%RHで約40μmの同等の厚さを有し、約13μmの同様の密度正規化総ePTFE含有量を有している。各サンプルは、厚さ及びePTFE含有量が高いため、150psiをはるかに超える平均破壊圧力を示した。しかしながら、本発明のサンプル6.2は、419psiまで試験した場合、試験した6.2の5つのサンプルのいずれも破壊しなかったため、比較例6.1よりも顕著な改善を示し、>419psiの最大観測可能平均破壊圧力として報告した。
【0187】
驚くべきことに、これらのデータは、複合膜中の微孔質ポリマー構造の所与の含有量について、微孔質ポリマー構造を少なくとも2つの強化層に分配させると、同じ含有量の微多孔質ポリマー構造を単一の強化層に分配させる場合と比較して、平均破壊圧力が有意に改善されることを示している。しかしながら、この観察は、0%RHで最小厚さが約10μmの膜でのみ発生する。シリーズ1及び2に示すように、0%RHで約8μmの複合膜は、強化層の数に関係なく、許容できない平均破壊圧力を有した。さらに、シリーズ5及びシリーズ6に示されるように、微孔質ポリマー構造の同等の総含有量の微孔質ポリマー構造を含む強化層の数を増加させると(例えば、0から2に、又は2から3に)、平均破壊圧力を有意に改善する。最後に、同様の複合膜構造(微孔質ポリマー構造を含む強化層の数に関して)について、複合膜中の微孔質ポリマー構造の総含有量を増加させると、平均破壊圧力が改善される。したがって、本開示による複合膜は、膜の性能を損なうことなく、デバイス製造時に電気化学デバイスの要素による突き刺しに対して優れた抵抗性を有するため、非常に望ましい。
【0188】
本発明を詳細に記載してきたが、本発明の主旨及び範囲内の変更は、当業者に容易に明らかであろう。本発明の態様、様々な実施形態の一部、及び上記及び/又は添付の特許請求の範囲に列挙された様々な特徴は、全体的又は部分的に組み合わせたり又は交換したりすることができることが理解されうる。様々な実施形態の上述の記載において、別の実施形態に言及する実施形態は、当業者によって理解されるように、他の実施形態と適切に組み合わせることができる。さらに、当業者は、上述の説明が単なる例であり、本発明を限定することを意図していないことを理解するであろう。
(態様)
(態様1)
a)少なくとも2つの強化層であって、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれは微孔質ポリマー構造を含む、強化層、及び、
b)前記少なくとも2つの強化層の前記微孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に吸収され、前記微孔質ポリマー構造を閉塞性にさせるイオン交換材料(IEM)、
を含む、電気化学デバイスのための複合膜であって、
前記複合膜は0%RHで少なくとも約10μmの厚さを有し、そして、
前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて少なくとも約15体積%の総含有量で存在する、電気化学デバイスのための複合膜。
(態様2)
前記少なくとも2つの強化層の組成は同じであるか、又は、前記少なくとも2つの強化層の組成は異なる、態様1記載の複合膜。
(態様3)
前記微孔質ポリマー構造は少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含み、場合により、前記フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、延伸ポリフッ化ビニリデン(ePVDF)、延伸ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(eEPTFE)又はそれらの混合物である、態様1又は2記載の複合膜。
(態様4)
前記フッ素化ポリマーは過フッ素化延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であり、場合により、
前記複合膜は、前記複合膜に存在するすべての強化層の面積当たりの質量の合計に基づいて、少なくとも約5.5g・m-2の微孔質ポリマー構造の総含有量を有するか、
前記複合膜は、前記複合膜に存在するすべての強化層の面積当たりの質量の合計に基づいて、約5.5g・m-2~約80g・m-2の微孔質ポリマー構造含有量の総含有量を有するか、の少なくとも1つである、態様3記載の複合膜。
(態様5)
前記微孔質ポリマー構造は炭化水素ポリマーを含み、場合により、前記炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン又はそれらの混合物を含む、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様6)
前記少なくとも2つの強化層は直接接触しているか、又は、
前記複合膜は、前記少なくとも2つの強化層の間にイオン交換材料の少なくとも1つの内層を含むか、のいずれかである、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様7)
前記少なくとも2つの強化層は距離dだけ分離されている、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様8)
前記距離dは0%RHで約0.1μm~約20μmであるか、
前記距離dは0%RHで約0.5μm~約5μmであるか、の少なくとも1つである、態様7記載の複合膜。
(態様9)
前記イオン交換材料は、複数の層のイオン交換材料を含み、そして前記イオン交換材料の層は同じイオン交換材料から形成されているか、又は、
前記イオン交換材料は、複数の層のイオン交換材料を含み、そして前記イオン交換材料の第一の層はイオン交換材料の第二の層のイオン交換材料とは異なるイオン交換材料から形成されているか、のいずれかである、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様10)
前記微孔質ポリマー構造は前記イオン交換材料が完全に吸収されているか、
前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの微孔質ポリマー構造は第一の表面及び第二の表面を有し、前記イオン交換材料は、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの第一の表面又は第二の表面の少なくとも一方の上に層を形成しているか、
の少なくとも1つである、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様11)
前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの微孔質ポリマー構造は、第一の表面及び第二の表面を有し、そして、
前記微孔質ポリマー構造は、大部分で前記イオン交換材料が吸収されているが、前記少なくとも2つの強化層のうちの少なくとも1つの第一の表面の最も近くに、又は前記少なくとも2つの強化層のうちの少なくとも1つの第二の表面の最も近くに、又はその両方に、前記微孔質ポリマー構造の非吸収領域又は非閉塞領域の領域を含み、場合により、非閉塞部分は、前記微孔質ポリマー構造の内面へのイオン交換材料のコーティングを含む、態様1~9のいずれか1項記載の複合膜。
(態様12)
前記少なくとも2つの強化層の微孔質ポリマー構造は、イオン交換材料で約90%閉塞されている、態様11記載の複合膜。
(態様13)
前記イオン交換材料の平均当量体積は約240cc/モル当量~約870cc/モル当量であり、場合により、前記イオン交換材料の平均当量体積は約350cc/モル当量~約475cc/モル当量であり、又は約240cc/モル当量~約650cc/モル当量である、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様14)
前記イオン交換材料は少なくとも1つのアイオノマーを含み、場合により、
前記少なくとも1つのアイオノマーはプロトン伝導性ポリマーを含み、さらに場合により、前記プロトン伝導性ポリマーは、炭化水素アイオノマー、過フッ素化アイオノマー又はペルフルオロスルホン酸を含むか、
前記少なくとも1つのアイオノマーは、相対湿度0%で約1.9g/cc以上の密度を有するか、
の少なくとも1つである、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様15)
前記複合膜は、0%RHで約10μm~約115μm、又は約10μm~約90μm、又は約10μm~約40μm、又は約10μm~約30μm、又は約10μm~約20μmの厚さを有するか、
前記複合膜は、0%RHで約15μmの厚さを有するか、
前記複合膜は、0%RHで約25μmの厚さを有するか、
のいずれかである、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様16)
本明細書に記載の平均穿刺圧力破壊試験平均穿刺圧力破壊試験に従って測定したときに、前記複合膜は約150psi~約500psiの平均破壊圧力を有する、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様17)
前記複合膜の1つ以上の外面に取り外し可能に取り付けられた少なくとも1つのバッカー層をさらに含む、先行の態様のいずれか1項記載の複合膜。
(態様18)
少なくとも1つの電極、及び、
前記少なくとも1つの電極と接触している、態様1~17のいずれか1項記載の複合膜、
を含む、電気化学デバイスのための膜電極アセンブリ。
(態様19)
前記複合膜は前記少なくとも1つの電極に取り付けられているか、
前記少なくとも1つの電極は多孔質層を含むか、
前記少なくとも1つの電極は炭素繊維を含み、場合により、前記炭素繊維は約5~約30μmの直径を有するか、
の少なくとも1つである、態様18記載の膜電極アセンブリ。
(態様20)
前記膜電極アセンブリは、
第一の表面及び第二の表面を有する第一の電極、
第一の表面及び第二の表面を有する第二の電極、及び、
態様1~17のいずれか1項記載の第一の表面及び第二の表面を有する複合膜、
を含む、レドックスフロー電池膜電極アセンブリであって、
前記第一の電極の前記第二の表面は前記複合膜の前記第一の表面と接触しており、前記第二の電極の前記第一の表面は前記複合膜の前記第二の表面と接触しており、
場合により、
前記レドックスフロー電池膜電極アセンブリは、前記複合膜の第一の表面に取り付けられた第一の電極層、及び、前記複合膜の第二の表面に取り付けられた第二の電極層を含むか、
前記第一の電極層及び/又は前記第二の電極層は約1~約200μmの細孔サイズを有する多孔質層であるか、
の少なくとも1つである、態様18又は19のいずれか1項記載の膜電極アセンブリ。
(態様21)
前記少なくとも1つの電極は、フェルト、紙又は織物材料から選ばれる、態様18~20のいずれか1項記載の膜電極アセンブリ。
(態様22)
前記第一の電極及び/又は前記第二の電極は、アイオノマーを含む炭素/白金電極であるか、又は前記電極は、アイオノマーを含む合金を含むか、
前記第一の電極及び/又は前記第二の電極は、ドープされた炭素繊維を含むか、
の少なくとも1つである、態様20又は21記載の膜電極アセンブリ。
(態様23)
前記膜電極アセンブリは、
態様1~17記載の複合膜であって、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、複合膜、
前記複合膜の前記第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、
前記複合膜の前記第二の表面に接着された電極触媒の第二の層、
を含む、燃料電池膜電極アセンブリであって、
場合により、
前記電極触媒の前記第一の層及び前記第二の層は、約100nm以下の細孔サイズを有するナノポーラス層であるか、
前記電極触媒の前記第一の層及び前記第二の層は、
1つ以上のアイオノマー、
カーボンブラックなどの触媒担体、及び、
白金、
を含むか、
の少なくとも1つである、態様18又は19記載の膜電極アセンブリ。
(態様24)
前記膜電極アセンブリは、
態様1~17のいずれか1項記載の複合膜であって、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、複合膜、
前記複合膜の前記第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、
前記複合膜の前記第二の表面に接着された電極触媒の第二の層、
を含む、電解槽電極アセンブリである、態様18又は19記載の膜電極アセンブリ。
(態様25)
白金又はルテニウム触媒の層は前記複合膜に接着されている、態様23又は24のいずれか1項記載の膜電極アセンブリ。
(態様26)
態様1~17のいずれか1項記載の複合膜、又は態様18又は19又は23又は25記載の膜電極アセンブリを含む、燃料電池。
(態様27)
態様1~17のいずれか1項記載の複合膜、又は態様18~22記載の膜電極アセンブリを含む、レドックスフロー電池。
(態様28)
態様1~17のいずれか1項記載の複合膜、又は態様18、19、24又は25記載の膜電極アセンブリを含む、電解槽。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも2つの強化層であって、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれは微孔質ポリマー構造を含む、強化層、及び、
b)前記少なくとも2つの強化層の前記微孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に吸収され、前記微孔質ポリマー構造を閉塞性にさせるイオン交換材料(IEM)、
を含む、電気化学デバイスのための複合膜であって、
前記複合膜は、本明細書に記載の平均穿刺圧力破壊試験に従って測定したときに、少なくとも1034kPa(150psi)の平均破壊圧力を有し、そして、
前記微孔質ポリマー構造は、前記複合膜の総体積に基づいて少なくとも15体積%の総含有量で存在する、電気化学デバイスのための複合膜。
【請求項2】
前記少なくとも2つの強化層の組成は同じであるか、又は、前記少なくとも2つの強化層の組成は異なるか、または前記イオン交換材料は単一のアイオノマーもしくはアイオノマーの混合物を含む、請求項1記載の複合膜。
【請求項3】
前記微孔質ポリマー構造は少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含むか、又は前記微孔質ポリマー構造は少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含み及び前記フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、延伸ポリフッ化ビニリデン(ePVDF)、延伸ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(eEPTFE)もしくはそれらの混合物である、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項4】
前記フッ素化ポリマーは過フッ素化延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であるか、又は前記フッ素化ポリマーは過フッ素化延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であり及び
前記複合膜は、前記複合膜に存在するすべての強化層の面積当たりの質量の合計に基づいて、少なくとも5.5g・m-2の微孔質ポリマー構造の総含有量を有するか、
前記複合膜は、前記複合膜に存在するすべての強化層の面積当たりの質量の合計に基づいて、5.5g・m-2~80g・m-2の微孔質ポリマー構造含有量の総含有量を有するか、の少なくとも1つである、請求項3記載の複合膜。
【請求項5】
前記微孔質ポリマー構造は炭化水素ポリマーを含むか、又は前記微孔質ポリマー構造は炭化水素ポリマーを含み及び前記炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン又はそれらの混合物を含む、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項6】
前記少なくとも2つの強化層は直接接触しているか、又は、
前記複合膜は、前記少なくとも2つの強化層の間にイオン交換材料の少なくとも1つの内層を含むか、または、
前記複合膜は前記少なくとも2つの強化層の間にイオン交換材料の少なくとも1つの内層を含み、および前記イオン交換材料の少なくとも1つの内層は、単一のイオン交換材料もしくは1超のイオン交換材料の混合物を含むか
のいずれかである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項7】
前記少なくとも2つの強化層はイオン交換材料の2つ以上の層によって分離されており、および前記イオン交換材料の2つ以上の層の少なくとも2つは異なるイオン交換材料を含むか、または前記イオン交換材料の2つ以上の層の少なくとも2つは同じイオン交換材料を含む、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項8】
前記少なくとも2つの強化層は距離dだけ分離されているか、または
前記少なくとも2つの強化層は0%RHで0.1μm~20μmである距離dだけ分離されているか、
前記少なくとも2つの強化層は0%RHで0.5μm~5μmである距離dだけ分離されているか、の少なくとも1つである、請求項1または2記載の複合膜。
【請求項9】
前記イオン交換材料は、複数の層のイオン交換材料を含み、そして前記イオン交換材料の層は同じイオン交換材料から形成されているか、又は、
前記イオン交換材料は、複数の層のイオン交換材料を含み、そして前記イオン交換材料の第一の層はイオン交換材料の第二の層のイオン交換材料とは異なるイオン交換材料から形成されているか、のいずれかである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項10】
前記微孔質ポリマー構造は前記イオン交換材料が完全に吸収されているか、
前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの微孔質ポリマー構造は第一の表面及び第二の表面を有し、前記イオン交換材料は、前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの第一の表面又は第二の表面の少なくとも一方の上に層を形成しているか、
の少なくとも1つである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項11】
前記少なくとも2つの強化層のそれぞれの微孔質ポリマー構造は、第一の表面及び第二の表面を有し、そして、
前記微孔質ポリマー構造は、大部分で前記イオン交換材料が吸収されているが、前記少なくとも2つの強化層のうちの少なくとも1つの第一の表面の最も近くに、又は前記少なくとも2つの強化層のうちの少なくとも1つの第二の表面の最も近くに、又はその両方に、前記微孔質ポリマー構造の非吸収領域又は非閉塞領域の領域を含む、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項12】
前記少なくとも2つの強化層の微孔質ポリマー構造は、イオン交換材料で90%閉塞されている、請求項11記載の複合膜。
【請求項13】
前記イオン交換材料の平均当量体積は240cc/モル当量~870cc/モル当量であるか、又は前記イオン交換材料の平均当量体積は350cc/モル当量~475cc/モル当量であるか、又は前記イオン交換材料の平均当量体積は240cc/モル当量~650cc/モル当量である、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項14】
前記イオン交換材料は少なくとも1つのアイオノマーを含むか、又は前記イオン交換材料は少なくとも1つのアイオノマーを含み及び
前記少なくとも1つのアイオノマーはプロトン伝導性ポリマーを含むか、
前記少なくとも1つのアイオノマーは、相対湿度0%で1.9g/cc以上の密度を有するか、
の少なくとも1つである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項15】
前記複合膜は、0%RHで少なくとも10μm、又は10μm~115μm、又は10μm~90μm、又は10μm~40μm、又は10μm~30μm、又は10μm~20μmの厚さを有するか、
前記複合膜は、0%RHで15μmの厚さを有するか、
前記複合膜は、0%RHで25μmの厚さを有するか、
のいずれかである、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項16】
本明細書に記載の平均穿刺圧力破壊試験に従って測定したときに、前記複合膜は1034kPa(150psi3447kPa(500psiの平均破壊圧力を有する、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項17】
前記複合膜の1つ以上の外面に取り外し可能に取り付けられた少なくとも1つのバッカー層をさらに含む、請求項1又は2記載の複合膜。
【請求項18】
少なくとも1つの電極、及び、
前記少なくとも1つの電極と接触している、請求項1又は2記載の複合膜、
を含む、電気化学デバイスのための膜電極アセンブリ。
【請求項19】
前記複合膜は前記少なくとも1つの電極に取り付けられているか、
前記少なくとも1つの電極は多孔質層を含むか、
前記少なくとも1つの電極は炭素繊維を含むか、
の少なくとも1つである、請求項18記載の膜電極アセンブリ。
【請求項20】
前記膜電極アセンブリは、
第一の表面及び第二の表面を有する第一の電極、
第一の表面及び第二の表面を有する第二の電極、及び、
請求項1又は2のいずれか1項記載の第一の表面及び第二の表面を有する複合膜、
を含む、レドックスフロー電池膜電極アセンブリであって、
前記第一の電極の前記第二の表面は前記複合膜の前記第一の表面と接触しており、前記第二の電極の前記第一の表面は前記複合膜の前記第二の表面と接触している、請求項18又は19のいずれか1項記載の膜電極アセンブリ。
【請求項21】
前記レドックスフロー電池膜電極アセンブリは、前記複合膜の第一の表面に取り付けられた第一の電極層、及び、前記複合膜の第二の表面に取り付けられた第二の電極層を含むか、
前記第一の電極層及び/又は前記第二の電極層は1~200μmの細孔サイズを有する多孔質層であるか、
の少なくとも1つである、請求項20記載の膜電極アセンブリ。
【請求項22】
前記少なくとも1つの電極は、フェルト、紙又は織物材料から選ばれる、請求項18又は19記載の膜電極アセンブリ。
【請求項23】
前記第一の電極及び/又は前記第二の電極は、アイオノマーを含む炭素/白金電極であるか、又は前記電極は、アイオノマーを含む合金を含むか、
前記第一の電極及び/又は前記第二の電極は、ドープされた炭素繊維を含むか、
の少なくとも1つである、請求項20または21記載の膜電極アセンブリ。
【請求項24】
前記膜電極アセンブリは、
請求項1又は2記載の複合膜であって、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、複合膜、
前記複合膜の前記第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、
前記複合膜の前記第二の表面に接着された電極触媒の第二の層、
を含む、燃料電池膜電極アセンブリである、請求項18又は19記載の膜電極アセンブリ。
【請求項25】
前記電極触媒の前記第一の層及び前記第二の層は、100nm以下の細孔サイズを有するナノポーラス層であるか、
前記電極触媒の前記第一の層及び前記第二の層は、
1つ以上のアイオノマー、
媒担体、及び、
白金、
を含むか、
の少なくとも1つである、請求項24記載の膜電極アセンブリ。
【請求項26】
前記膜電極アセンブリは、
請求項1又は2記載の複合膜であって、前記複合膜は第一の表面及び第二の表面を有する、複合膜、
前記複合膜の前記第一の表面に接着された電極触媒の第一の層、及び、
前記複合膜の前記第二の表面に接着された電極触媒の第二の層、
を含む、電解槽電極アセンブリである、請求項18又は19記載の膜電極アセンブリ。
【請求項27】
白金又はルテニウム触媒の層は前記複合膜に接着されている、請求項24又は26記載の膜電極アセンブリ。
【請求項28】
請求項1又は2記載の複合膜、又は請求項18又は19又は24又は27記載の膜電極アセンブリを含む、燃料電池。
【請求項29】
請求項1又は2記載の複合膜、又は請求項18又は19記載の膜電極アセンブリを含む、レドックスフロー電池。
【請求項30】
請求項1又は2記載の複合膜、又は請求項18又は19記載の膜電極アセンブリを含む、電解槽。