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特開2024-109582トリループを含む二本鎖核酸インヒビター分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109582
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】トリループを含む二本鎖核酸インヒビター分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240806BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240806BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240806BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7105
A61K48/00
A61P43/00 111
A61K9/51
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/28
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024070175
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2021534224の分割
【原出願日】2019-11-13
(31)【優先権主張番号】62/778,759
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521359667
【氏名又は名称】ディセルナ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DICERNA PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ボブ デール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二本鎖核酸インヒビター分子、標的遺伝子発現を減少させるための方法及び組成物、ならびに目的の疾患を処置するための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】二本鎖核酸インヒビター分子であって、20~65のヌクレオチドを含み、かつ特定の領域を有するセンス鎖;15~40のヌクレオチドを含むアンチセンス鎖であって、前記センス鎖及びアンチセンス鎖が別々の鎖である前記アンチセンス鎖;及び前記センス鎖の特定の領域及び前記アンチセンス鎖により形成される二本鎖を含み;その際、前記センス鎖の特定の領域が、トリループとを含み、二本鎖を形成している、前記二本鎖核酸インヒビター分子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖核酸インヒビター分子であって、
20~65のヌクレオチドを含み、かつ第1の領域(R1)及び第2の領域(R2)を
有するセンス鎖;
15~40のヌクレオチドを含むアンチセンス鎖であって、前記センス鎖及びアンチセ
ンス鎖が別々の鎖である前記アンチセンス鎖;及び
前記センス鎖の第1の領域及び前記アンチセンス鎖により形成され、15~40塩基対
の長さを有する第1の二本鎖(D1)
を含み;
その際、前記センス鎖の第2の領域が、第1のサブ領域(S1)と、第2のサブ領域(
S2)と、前記第1及び第2の領域を結合するトリループ(triL)とを含み、前記第
1及び第2の領域が、第2の二本鎖(D2)を形成している、前記二本鎖核酸インヒビタ
ー分子。
【請求項2】
前記トリループが、GAAのヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載の二本鎖核酸
インヒビター分子。
【請求項3】
前記センス鎖が、22~65、25~39、または27~35のヌクレオチドを有する
、請求項1または2に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項4】
前記アンチセンス鎖が、20~24または20~22のヌクレオチドを有する、先行請
求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項5】
前記トリループの5’末端に直接隣接しているヌクレオチドが、Cであり、前記トリル
ープの3’末端に直接隣接しているヌクレオチドが、Gである、先行請求項のいずれかに
記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項6】
前記アンチセンス鎖が、その3’末端に1~4のヌクレオチドの一本鎖オーバーハング
を有する、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項7】
前記一本鎖オーバーハングが、2ヌクレオチド長さである、請求項6に記載の二本鎖核
酸インヒビター分子。
【請求項8】
前記第1の二本鎖が、18~30、18~24、または20~22塩基対の長さを有す
る、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項9】
前記第2の二本鎖が、2~6塩基対の長さを有する、先行請求項のいずれかに記載の二
本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項10】
前記第2の二本鎖が、少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチド、例えば、二環式ヌク
レオチドを含む、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項11】
前記第2の二本鎖が、2または3塩基対の長さを有する、先行請求項のいずれかに記載
の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項12】
前記センス鎖の第1の領域が、20ヌクレオチド長さであり、前記センス鎖の第2の領
域が、7~15ヌクレオチド長さであり;
その際、前記センス鎖の第1の領域及び前記アンチセンス鎖により形成される第1の二
本鎖が、20塩基対の長さを有し;
前記センス鎖の第2の領域の第1及び第2の核酸により形成される第2の二本鎖が、2
~6塩基対の長さを有し;かつ
前記アンチセンス鎖が、22ヌクレオチド長さであり、かつその3’末端に2つのヌク
レオチドの一本鎖オーバーハングを有する、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸イ
ンヒビター分子。
【請求項13】
前記第2の二本鎖中の各ヌクレオチドがTm-上昇ヌクレオチド、例えば、二環式ヌク
レオチドである、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項14】
前記第2の二本鎖が6塩基対の長さを有する、請求項13に記載の二本鎖核酸インヒビ
ター分子。
【請求項15】
前記第2の二本鎖が、次のうちの1つまたは複数:



[式中、Bは、核酸塩基であり、R2は、HまたはCH3であり、かつWa及びWbはそれぞ
れ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または前記二環式ヌクレオチドを
別のヌクレオチドに、もしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であ
り、ここで、WaまたはWbの少なくとも一方は、前記二環式ヌクレオチドをオリゴヌクレ
オチドに結合するヌクレオチド間結合基である]
から選択される二環式ヌクレオチドである少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチドを含
む、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項16】
前記第2の二本鎖が、フラノシルである第1の環、ならびに前記フラノシルの2’-炭
素及び4’-炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む少なくとも1つの二環式ヌク
レオチドを含む、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項17】
前記フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋が:
a) 4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(式中、
Rは、H、C1~C12アルキル、または例えば、4’-CH2-NH-O-2’(BNANC
としても公知)もしくは4’-CH2-N(CH3)-O-2’(BNANC[NMe]とし
ても公知)を含む保護基である);
b) 4’-CH2-2’;4’-(CH22-2’;4’-(CH23-2’;4’-
(CH2)-O-2’(LNAとしても公知);4’-(CH2)-S-2’;4’-(C
22-O-2’(ENAとしても公知);4’-CH(CH3)-O-2’(cEtと
しても公知);及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(cMOEとしても公知)、
及びその類似体;
c) 4’-C(CH3)(CH3)-O-2’及びその類似体;
d) 4’-CH2-N(OCH3)-2’及びその類似体;
e) 4’-CH2-O-N(CH3)-2’及びその類似体;
f) 4’-CH2-C(H)(CH3)-2’及びその類似体;ならびに
g) 4’-CH2-C(=CH2)-2’及びその類似体
からなる群から選択される、請求項16に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項18】
前記トリループが、少なくとも1つのリガンドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む
、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項19】
前記トリループが、少なくとも2つのリガンドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む
、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項20】
前記リガンドが、GalNAcである、請求項18または19に記載の二本鎖核酸イン
ヒビター分子。
【請求項21】
前記GalNAcが、前記糖部分の2’-位で、前記ヌクレオチドにコンジュゲートし
ている、請求項20に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項22】
前記センス鎖及び/または前記アンチセンス鎖の5’末端に5’-リン酸模倣体をさら
に含む、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項23】
前記二本鎖核酸インヒビター分子が、脂質ナノ粒子を用いて製剤化されている、先行請
求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項24】
前記脂質ナノ粒子が、コア脂質及びエンベロープ脂質を含み、その際、前記コア脂質が
、第1のカチオン性脂質及び第1のペグ化脂質を含み、前記エンベロープ脂質が、第2の
カチオン性脂質、中性脂質、ステロール、及び第2のペグ化脂質を含む、請求項23に記
載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項25】
前記第1のカチオン性脂質が、DL-048であり、前記第1のペグ化脂質が、DSG
-mPEGであり、前記第2のカチオン性脂質が、DL-103であり、前記中性脂質が
、DSPCであり、前記ステロールが、コレステロールであり、かつ前記第2のペグ化脂
質が、DSPE-MPEGである、請求項24に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項26】
治療有効量の、先行請求項のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子と、薬
学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項27】
対象において標的遺伝子の発現を減少させるための方法であって、それを必要とする対
象に、先行請求項のいずれかに記載の二本鎖核酸インヒビター分子または医薬組成物を、
前記標的遺伝子の発現を減少させるために十分な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
前記投与が、静脈内、筋肉内、または皮下投与を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象がヒトである、請求項27または28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に援用される2018年12月12日出
願の米国特許仮出願第62/778,759号の利益を請求し、かつその出願日に基づく
【0002】
オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド(RNA、DNA及びそれらの類似体)のポリマ
ー配列である。核酸インヒビター分子は、細胞内RNAレベルを調節するオリゴヌクレオ
チドであり、がん、ウイルス感染症及び遺伝性障害の処置において当初の期待を実証して
いる。核酸インヒビター分子は、RNA干渉(RNAi)を含む多様な機構セットを介し
て、RNA発現を調節し得る。
【0003】
RNAiは、多くの真核生物において見出されている保存経路であり、その場合、二本
鎖RNA分子(dsRNA)が、dsRNAに対して相補的な配列を有する標的遺伝子の
発現を阻害する。典型的なRNAi経路では、長いdsRNA分子がダイサー酵素により
切断されて、低分子干渉RNA(「siRNA」)と呼ばれる短いRNA二本鎖になる。
siRNAは、ダイサー、トランス-活性化応答RNA結合タンパク質(TRBP)、及
びアルゴノート2(「Ago2」)と会合して、RNA誘導型サイレンシング複合体(「
RISC」)と時に称される複合体を形成することが示されている。いったん活性化され
たAgo2は、RISC複合体の配列特異性を標的mRNAの切断へと向けるためにsi
RNAのアンチセンス鎖(ガイド鎖とも呼ばれる)を使用して標的mRNAを切断するエ
ンドヌクレアーゼである。
【0004】
様々な二本鎖RNAiインヒビター分子構造が、長年にわたって開発されている。例え
ば、RNAiインヒビター分子についての当初の研究は、天然siRNAを模倣し、その
際、各鎖が、19~25ヌクレオチドのサイズを、1~5つのヌクレオチドからなる少な
くとも1つの3’-オーバーハングと共に有する二本鎖核酸分子に集中した(例えば、米
国特許第8,372,968号を参照されたい)。続いて、RNAiインヒビター分子を
活性化するためにダイサー酵素によりin vivoでプロセシングされる長い二本鎖R
NAiインヒビター分子が開発された(例えば、米国特許第8,883,996号を参照
されたい)。後の研究により、鎖のうちの1本が熱力学的安定化テトラループ構造を含む
構造を含めて、少なくとも1本の鎖の少なくとも1つの末端がその分子の二本鎖標的領域
を超えて伸長されている、伸長された二本鎖核酸インヒビター分子が開発された(例えば
、それぞれその全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,513,207号
、米国特許第8,927,705号、WO2010/033225、及びWO2016/
100401を参照されたい)。
【0005】
ある特定の事例では、in vivo投与後に経験される条件のような特異的な条件下
で望まれ得る特性を導入するために、化学修飾ヌクレオチドが核酸インヒビター分子に導
入されている。そのような化学修飾ヌクレオチドには、例えば、オリゴヌクレオチドの構
造もしくは活性を分解する、もしくはそれに干渉するヌクレアーゼもしくは他の酵素に対
して安定化するように、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを増加させるように、または
オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するように設計されたものが含まれる。
【0006】
しかしながら、新たな二本鎖核酸インヒビター分子を開発する、及び/またはそのよう
な核酸インヒビター分子に所望の特性を付与するために化学修飾ヌクレオチドを導入する
という要望を、構造及び/または化学修飾ヌクレオチドが核酸インヒビター分子活性に対
して及ぼし得るであろう何らかのマイナスの影響を最小限にする(例えば、遺伝子標的ノ
ックダウンの効力または持続期間の何らかの減少を最小限にする)という競合する要望と
釣り合わせなければならない。
【発明の概要】
【0007】
ステムループ構造を有するセンス鎖と、別のアンチセンス鎖とを有し、その際、ステム
ループ構造のループ部分がトリループを含む二本鎖核酸インヒビター分子を本明細書では
開示する。例に示されているとおり、トリループを含む二本鎖核酸インヒビターは安定し
ていて、用量依存的にin vivo標的mRNA発現を減少させる。このトリループ構
造が、その天然に存在する状況から取り出されて、化学合成二本鎖核酸インヒビター分子
に組み込まれた場合に、熱力学的に安定な立体配置を維持し得ることは意外であった。G
alNAcなどのリガンドとトリループ中のヌクレオチドとのコンジュゲートがトリルー
プの熱力学的に安定な立体配置を破壊しないこと、及び2つのGalNAcとトリループ
とのコンジュゲートが、3つのGalNAcがテトラループにコンジュゲートしているテ
トラループ含有二本鎖核酸インヒビター分子と比較して、肝細胞における効力の減少をも
たらさず、ある特定の事例では実際に、効力の改善をもたらすことが見出されたことも意
外であった。
【0008】
加えて、トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、二環式ヌクレオチドをステム
ループ構造のステム部分に組み込むことができる。国際公開WO2019/200124
において既に実証されているとおり、Tm-上昇ヌクレオチドのステム二本鎖への組み込
みは、一部では、in vivo標的mRNAノックダウンの持続期間の増強により証明
されるとおり、安定性の上昇をテトラループ含有二本鎖核酸インヒビター分子に付与し得
る。
【0009】
さらに、テトラループの代わりにトリループを使用すること、及びステムループ構造の
ステム部分への二環式ヌクレオチドの導入は、それを含む二本鎖核酸インヒビター分子の
効力を低下させることなく、より短いセンス鎖の使用を可能にする。より短いセンス鎖の
使用は、時間及び経費の両方を削減するという製造プロセス上の利点をもたらす。これは
また、投与において利点をもたらし、それというのも、その低い分子量により、分子ベー
スでより多くのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を投与することが可能である
ためである。
【0010】
上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖(S)の第1の領域(R1)とアンチセ
ンス鎖(AS)との間の第1の二本鎖(D1)及びセンス鎖の第2の領域(R2)の第1
のサブ領域(S1)と第2のサブ領域(S2)との間の第2の二本鎖(D2)を含有し、
その際、S1及びS2が、トリループ(triL)により結合している。図1A~Dを参
照されたい。加えて、ステムループ構造のステム部分は、ある特定の実施形態では、少な
くとも1つのTm-上昇ヌクレオチド、例えば、4~12のTm-上昇ヌクレオチド、例え
ば、2~6のTm-上昇ヌクレオチド塩基対、または1~6の非対合Tm-上昇ヌクレオチ
ドを含有し得る。上記ステムループ構造は、センス鎖の5’末端または3’末端に位置し
得る。
【0011】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、
20~65のヌクレオチドを含み、かつ第1の領域(R1)及び第2の領域(R2)を
有するセンス鎖;
15~40のヌクレオチドを含むアンチセンス鎖であって、上記センス鎖及びアンチセ
ンス鎖が別々の鎖であるアンチセンス鎖;
上記センス鎖の第1の領域及び上記アンチセンス鎖により形成され、15~40塩基対
の長さを有する第1の二本鎖(D1)
を含み;
その際、上記センス鎖の第2の領域(R2)が、第1のサブ領域(S1)と、第2のサ
ブ領域(S2)と、上記第1及び第2の領域を結合するトリループ(triL)とを含み
、上記第1及び第2の領域が、第2の二本鎖(D2)を形成している。
【0012】
ある特定の実施形態では、上記トリループは、GAAのヌクレオチド配列を有する。
【0013】
ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、22~65のヌクレオチドを有する。ある
特定の実施形態では、上記センス鎖は、25~39のヌクレオチドを有する。ある特定の
実施形態では、上記センス鎖は、27~35のヌクレオチドを有する。
【0014】
ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、20~24のヌクレオチドを有する
。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、20~22のヌクレオチドを有する
【0015】
ある特定の実施形態では、上記トリループの5’末端に直接隣接しているヌクレオチド
は、Cであり、上記トリループの3’末端に直接隣接しているヌクレオチドは、Gである
【0016】
ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、その3’末端に1~4のヌクレオチ
ドの一本鎖オーバーハングを有する。ある特定の実施形態では、上記一本鎖オーバーハン
グは、2ヌクレオチド長さである。
【0017】
ある特定の実施形態では、上記第1の二本鎖(D1)は、18~30塩基対の長さを有
する。ある特定の実施形態では、上記第1の二本鎖(D1)は、18~24塩基対の長さ
を有する。ある特定の実施形態では、上記第1の二本鎖(D1)は、20~22塩基対の
長さを有する。
【0018】
ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2~6塩基対の長さを有する
。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖は、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含
有せず、かつある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖は、4~10のTm-上昇ヌク
レオチドを含有し、かつ2~5塩基対の長さを有する。
【0019】
ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、25~39ヌクレオチド長さであり、上記
アンチセンス鎖は、20~24ヌクレオチド長さであり、上記第1の二本鎖は、18~2
4ヌクレオチドの長さを有し、かつ上記第2の二本鎖は、2~6塩基対の長さを有する。
ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、27~35ヌクレオチド長さであり、上記ア
ンチセンス鎖は、20~22ヌクレオチド長さであり、上記第1の二本鎖は、18~22
塩基対の長さを有し、かつ上記第2の二本鎖は、2~3塩基対の長さを有する。
【0020】
ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2塩基対の長さを有する。あ
る特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、3塩基対の長さを有する。
【0021】
ある特定の実施形態では、上記センス鎖の第1の領域(R1)は、20ヌクレオチド長
さであり、上記センス鎖の第2の領域(R2)は、7~9ヌクレオチド長さであり;
その際、上記センス鎖の第1の領域及び上記アンチセンス鎖により形成される第1の二
本鎖(D1)は、20塩基対の長さを有し;
上記センス鎖の第2の領域(R2)の第1のサブ領域(S1)及びサブ領域(S2)に
より形成される第2の二本鎖(D2)は、2または3塩基対の長さを有し、かつ上記第2
の二本鎖は、少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチドを含有し;
上記アンチセンス鎖は、22ヌクレオチド長さであり、かつその3’末端に2つのヌク
レオチドの一本鎖オーバーハングを有し;かつ
上記トリループは、GAAのヌクレオチド配列を有する。ある特定の実施形態では、R
2は、7ヌクレオチド長さであり、かつD2は、2塩基対の長さを有する。ある特定の実
施形態では、R2は、9ヌクレオチド長さであり、かつD2は、3塩基対の長さを有する
【0022】
ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)中の各ヌクレオチドは、Tm-上
昇ヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒ
ビター分子は、第2の二本鎖(D2)以外には、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有
しない。
【0023】
ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環
式ヌクレオチド、G-クランプ及びその類似体、ヘキシトールヌクレオチド、ならびに修
飾ヌクレオチドからなる群から選択され、その際、上記修飾ヌクレオチドは、糖部分の2
’-炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されていない。ある特定の実施形
態では、上記修飾ヌクレオチドは、5-ブロモ-ウラシル、5-ヨード-ウラシル、5-
プロピニル-修飾ピリミジン、2-アミノアデニン、2-チオウリジン、5Me-チオウ
リジン、またはシュードウリジンである。
【0024】
上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子が少なくとも1つの二環式ヌクレオチ
ドを含む、ある特定の実施形態では、少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式I、I
I、III、IV、Va、またはVbの構造を有する。ある特定の実施形態では、上記少
なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、またはIfの
うちの1つまたは複数の構造を有する。ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの
二環式ヌクレオチドは、式IIa、IIb、IIc、またはIIdのうちの1つまたは複
数の構造を有する。ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチド
は、式IIIa及び/またはIIIbの構造を有する。ある特定の実施形態では、上記少
なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IVa及び/またはIVbの構造を有する。
【0025】
ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、次のうちの1
つまたは複数:




である[式中、Bは、核酸塩基であり、R2は、HまたはCH3であり、かつWa及びWb
それぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または二環式ヌクレオチド
を別のヌクレオチドに、もしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基で
あり、ここで、WaまたはWbの少なくとも一方は、二環式ヌクレオチドをオリゴヌクレオ
チドに結合するヌクレオチド間結合基である]。
【0026】
ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは:

であり、この際、B、Wa、及びWbは、上記のとおりであり、かつR2は、CH3である。
【0027】
ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、フラノシルで
ある第1の環、ならびにフラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結して第2の環を形
成する架橋を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、上記フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋
は:
a) 4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(ここで
、Rは、H、C1~C12アルキル、または例えば、4’-CH2-NH-O-2’(BNA
NCとしても公知)もしくは4’-CH2-N(CH3)-O-2’(BNANC[NMe]と
しても公知)を含む保護基である);
b) 4’-CH2-2’;4’-(CH22-2’;4’-(CH23-2’;4’-
(CH2)-O-2’(LNAとしても公知);4’-(CH2)-S-2’;4’-(C
22-O-2’(ENAとしても公知);4’-CH(CH3)-O-2’(cEtと
しても公知);及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(cMOEとしても公知)、
及びその類似体;
c) 4’-C(CH3)(CH3)-O-2’及びその類似体;
d) 4’-CH2-N(OCH3)-2’及びその類似体;
e) 4’-CH2-O-N(CH3)-2’及びその類似体;
f) 4’-CH2-C(H)(CH3)-2’及びその類似体;ならびに
g) 4’-CH2-C(=CH2)-2’及びその類似体
からなる群から選択される。
【0029】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の
二本鎖以外に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。
【0030】
ある特定の実施形態では、上記トリループは、少なくとも1つのリガンドコンジュゲー
トしたヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記トリループは、2つのリガン
ドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記トリループは
、3つのリガンドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上
記リガンドは、GalNAcである。ある特定の実施形態では、上記GalNAcは、糖
部分の2’-位で、上記ヌクレオチドにコンジュゲートしている。
【0031】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子はさらに、
上記センス鎖及び/または上記アンチセンス鎖の5’末端に5’-リン酸模倣体を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を、脂質ナ
ノ粒子を用いて製剤化する。ある特定の実施形態では、上記脂質ナノ粒子は、コア脂質及
びエンベロープ脂質を含み、その際、上記コア脂質は、第1のカチオン性脂質及び第1の
ペグ化脂質を含み、上記エンベロープ脂質は、第2のカチオン性脂質、中性脂質、ステロ
ール、及び第2のペグ化脂質を含む。ある特定の実施形態では、上記第1のカチオン性脂
質は、DL-048であり、上記第1のペグ化脂質は、DSG-mPEGであり、上記第
2のカチオン性脂質は、DL-103であり、上記中性脂質は、DSPCであり、上記ス
テロールは、コレステロールであり、かつ上記第2のペグ化脂質は、DSPE-mPEG
である。
【0033】
別の態様は、治療有効量の、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸イン
ヒビター分子と、薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物を対象とする。
【0034】
別の態様は、対象において標的遺伝子の発現を減少させるための方法であって、それを
必要とする対象に、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子または医薬組成物を
、上記標的遺伝子の発現を減少させるために十分な量で投与することを含む上記方法を対
象とする。ある特定の実施形態では、上記投与ステップは、静脈内、筋肉内、または皮下
投与を含む。ある特定の実施形態では、上記対象は、ヒトである。
【0035】
本明細書に援用され、かつその一部を構成する添付の図面は、ある特定の実施形態を説
明するものであり、かつ文書による説明と一緒に、本明細書に開示の組成物及び方法のあ
る特定の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】アンチセンス鎖(「AS」)及びセンス鎖(「S」)を含み、その際、上記センス鎖がステムループ構造を含み、上記ループがトリループである、例示的な二本鎖核酸インヒビター分子の図が示されている。
図1B図1Aと同じ例示的な図が示されている。図1Bでは、上記センス鎖がさらに、上記アンチセンス鎖(AS)と共に二本鎖を形成する第1の領域(R1)と、第1のサブ領域(S1)を第2のサブ領域(S2)に結合するトリループ(triL)を含む第2の領域(R2)とに区分されており、その際、S1及びS2は、本明細書において「ステム」または「ステム二本鎖」と称される二本鎖を形成するために相互に十分に相補的である。
図1C図1A及び1Bと同じ例示的な図が図示されている。図1Cの図は、上記核酸インヒビター分子中の第1の二本鎖(D1)及び第2の二本鎖(D2)を図示している。上記第1の二本鎖(D1)は、上記センス鎖の第1の領域(R1)と上記アンチセンス鎖(AS)との間に形成される。上記第2の二本鎖(D2)または「ステム」は、上記センス鎖の第2の領域(R2)の第1のサブ領域(S1)と第2のサブ領域(S2)との間に形成される。
図1D】上記第2の二本鎖(D2)が図1Cに図示されている第2の二本鎖よりも短い例示的な二本鎖核酸インヒビター分子が図示されている。
図2A】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト1」)の構造が図示されている。コンストラクト1のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。テトラループの4つのヌクレオチドのうちの3つが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図2B】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト2」)の構造が図示されている。コンストラクト2のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。コンストラクト2の構造は、コンストラクト1の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト1のように4つのうちの3つではなく、テトラループの4つのヌクレオチドのうちの2つのみが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図2C】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト3」)の構造が図示されている。コンストラクト3のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。トリループの3つのヌクレオチドのうちの2つが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。コンストラクト3の構造は、コンストラクト2の構造と同一であるが、ただし、ステムループのループ部分が、テトラループの代わりに、トリループである。
図2D】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト4」)の構造が図示されている。コンストラクト4のセンス鎖は、ステム二本鎖中のヌクレオチドのそれぞれが二環式ヌクレオチドである3塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。上記トリループの3つのヌクレオチドのうちの2つが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図2E】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト5」)の構造が図示されている。コンストラクト5のセンス鎖は、ステム二本鎖中のヌクレオチドのそれぞれがLNAである3塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。上記トリループの3つのヌクレオチドのうちの2つが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図3A】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト1(図2Aを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Aにおいて示されているとおり、有効な用量(ED50)は、0.5726mg/kgであると計算された。
図3B】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト2(図2Bを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Bにおいて示されているとおり、ED50は、0.3604mg/kgであると計算された。
図3C】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト3(図2Cを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Cにおいて示されているとおり、ED50は、0.3144mg/kgであると計算された。
図3D】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト4(図2Dを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Dにおいて示されているとおり、ED50は、0.3012mg/kgであると計算された。
図3E】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト5(図2Eを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Eにおいて示されているとおり、ED50は、0.2325mg/kgであると計算された。
図4】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト1~5(図2A~Eを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを重ね合わせて示すグラフである。
図5】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト1~5(図2A~Eを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示す棒グラフである。
図6A】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト6」)の構造が図示されている。コンストラクト6のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。上記テトラループの4つのヌクレオチドのうちの2つは、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図6B】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト7」)の構造が図示されている。コンストラクト7のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。コンストラクト7の構造は、コンストラクト6の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト7は、テトラループの代わりに、トリループを含む。
図6C】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト8」)の構造が図示されている。コンストラクト8のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中の各ヌクレオチドがBNAである3塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。
図6D】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト9」)の構造が図示されている。コンストラクト9のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中の各ヌクレオチドがBNAである3塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。コンストラクト9の構造は、コンストラクト8の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト9は、テトラループの代わりにトリループを含有する。
図6E】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト10」)の構造が図示されている。コンストラクト10のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中の各ヌクレオチドがBNAである2塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。
図6F】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト11」)の構造が図示されている。コンストラクト11のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中の各ヌクレオチドがBNAである2塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。コンストラクト11の構造は、コンストラクト10の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト11は、テトラループの代わりにトリループを含有する。
図6G】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト12」)の構造が図示されている。コンストラクト12のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中のヌクレオチドが両方ともBNAである1塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。
図6H】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト13」)の構造が図示されている。コンストラクト13のセンス鎖は、上記ステムループ構造のステム部分中のヌクレオチドが両方ともBNAである1塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。コンストラクト13の構造は、コンストラクト12の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト13は、テトラループの代わりにトリループを含有する。
図7】コンストラクト1(図2Aを参照されたい)及びコンストラクト6~13(図6A~Hを参照されたい)をCD-1マウスに、実施例2において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントが示されている。コンストラクト7、9、及び11中にトリループが含まれることは、それぞれテトラループコンストラクト1、6、8、及び10と比較した場合に、遺伝子ノックダウンの効力を有意に低下させず、ある特定の事例では実際に、効力を向上させた。標的mRNA発現の強力な減少を示したテトラループとステム二本鎖中の二環式ヌクレオチドの単一の塩基対とを含むコンストラクト12とは対照的に、トリループと、ステム二本鎖中の二環式ヌクレオチドの単一の塩基対とを含有するコンストラクト13は、標的mRNA発現を減少させなかった。
図8】上記二本鎖核酸インヒビター分子を製剤化するために使用することができる脂質ナノ粒子(LNP)の非限定的実施形態の1つを示している。上記LNPは、次のコア脂質:DL-048(カチオン性脂質)及びDSG-mPEG(ペグ化脂質)と、次のエンベロープ脂質:DL-103(カチオン性脂質)、DSPC、コレステロール、及びDSPE-mPEG(ペグ化脂質)とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
本開示をより容易に理解するために、ある特定の用語を最初に以下に定義する。以下の
用語及び他の用語のさらなる定義を、本明細書を通して記載することもある。以下に記載
の用語の定義が、参照により援用される出願または特許における定義と矛盾する場合、本
出願に記載の定義を使用して、その用語の意味を理解されたい。
【0038】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び
「the」は、文脈上明らかに他の意味を示さない限り、複数の参照を含む。したがって
、例えば、「方法(a method)」への言及は、本明細書に記載の、及び/または
本開示などを読むことで当業者に明らかになるであろう種類の1つまたは複数の方法、及
び/またはステップを含む。
【0039】
投与する:本明細書で使用される場合、対象に組成物を「投与すること」とは、その組
成物を上記対象に与えること、適用することまたは接触させることを意味する。投与は、
例えば、局所、経口、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、髄腔内及び皮内を含む多くの経路
のいずれかにより達成され得る。
【0040】
アシル:本明細書で使用される場合、「アシル」という用語は、アルキルカルボニル、
シクロアルキルカルボニル及びアリールカルボニル部分を指す。
【0041】
アルコキシ:本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介
して分子部分に結合するアルキル基を指す。
【0042】
アルケニル:本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1
つの炭素間二重結合を有し、約2~約20個の範囲の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖
ヒドロカルビル基を指す。「置換アルケニル」は、さらに1個または複数の置換基を有す
るアルケニル基を指す。本明細書で使用される場合、「低級アルケニル」は、2~約6個
の炭素原子を有するアルケニル部分を指す。
【0043】
アルキル:本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1個~最大約20
個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。本明細書に出現する場
合は常に、数値範囲、例えば、「C1~C6アルキル」は、アルキル基が1個の炭素原子の
み、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、6個を含めた最大6個の炭素原子を含み得るこ
とを意味するが、「アルキル」という用語は、炭素原子の数値範囲が指定されていない場
合も含む。例えば、「アルキル」という用語は、C1~C10の部分範囲(例えば、C1~C
6)を指し得る。「置換アルキル」は、置換基を有するアルキル部分を指す。本明細書で
使用される場合、「低級アルキル」は、1~約6個の炭素原子を有するアルキル部分を指
す。
【0044】
アルキニル:本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素間
三重結合を有し、約2~約20個の範囲の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカル
ビル基を指す。「置換アルキニル」は、さらに1個または複数の置換基を有するアルキニ
ル基を指す。本明細書で使用される場合、「低級アルキニル」は、約2~約6個の炭素原
子を有するアルキニル部分を指す。
【0045】
アンチセンス鎖:二本鎖核酸インヒビター分子は、2本のオリゴヌクレオチド鎖、すな
わち、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含む。アンチセンス鎖またはその領域は、標的核酸
の対応する領域に、部分的に、実質的にまたは完全に相補的である。加えて、上記二本鎖
核酸インヒビター分子またはその領域のアンチセンス鎖は、その二本鎖核酸インヒビター
分子またはその領域のセンス鎖に、部分的に、実質的にまたは完全に相補的である。ある
特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、標的核酸配列に非相補的なヌクレオチドも
含み得る。上記非相補的ヌクレオチドは、上記相補性配列のいずれかの側にあっても、ま
たは上記相補性配列の両側にあってもよい。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス
鎖またはその領域が上記センス鎖またはその領域に部分的または実質的に相補的である場
合、上記非相補的ヌクレオチドは、1つまたは複数の相補性領域の間に位置し得る(例え
ば、1つまたは複数のミスマッチ)。二本鎖核酸インヒビター分子のアンチセンス鎖は、
ガイド鎖とも称される。
【0046】
およそ:本明細書で使用される場合、1つまたは複数の目的の値に適用される「およそ
」または「約」という用語は、述べられた参照値と同様の値を指す。ある特定の実施形態
では、「およそ」または「約」という用語は、別段に述べられていない限り、または別段
に文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超えるであろう場合
を除く)、述べられた参照値のいずれかの方向(上回る、または下回る)において、25
%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11
%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下
に該当する値の範囲を指す。
【0047】
アリール:本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、5個~最大19個
の範囲の炭素原子を有する芳香族単環式または多環式基を指す。「置換アリール」は、さ
らに1個または複数の置換基を有するアリール基を指す。
【0048】
二環式ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「二環式ヌクレオチド」という用語
は、二環式糖部分を含むヌクレオチドを指す。
【0049】
二環式糖部分:本明細書で使用される場合、「二環式糖部分」という用語は、4~7員
環(フラノシルを含むが、これに限定されない)を含み、その4~7員環の2個の原子を
連結して第2の環を形成する架橋を含むことにより、二環式構造をもたらす修飾糖部分を
指す。典型的には、上記4~7員環は糖である。一部の実施形態では、上記4~7員環は
フラノシルである。ある特定の実施形態では、上記架橋は、上記フラノシルの2’-炭素
と4’-炭素とを連結する。
【0050】
相補的:本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、2つのヌクレオチドが
相互に塩基対を形成することを可能にする2つのヌクレオチド間の構造的関係(例えば、
2つの相対する核酸または単一の核酸鎖の相対する領域での)を指す。例えば、相対する
核酸のピリミジンヌクレオチドと相補的なある核酸のプリンヌクレオチドは、互いに水素
結合を形成することにより、塩基対合し得る。一部の実施形態では、相補的ヌクレオチド
は、ワトソン-クリック様式で、または安定な二本鎖の形成を可能にする任意の他の様式
で塩基対合する場合もある。「完全に相補的」または100%の相補性は、第1のオリゴ
ヌクレオチド鎖または第1のオリゴヌクレオチド鎖のセグメントの各ヌクレオチドモノマ
ーが、第2のオリゴヌクレオチド鎖または第2のオリゴヌクレオチド鎖のセグメントの各
ヌクレオチドモノマーと共に塩基対を形成することができる状況を指す。100%未満の
相補性は、2つのオリゴヌクレオチド鎖(または2つのオリゴヌクレオチド鎖の2つのセ
グメント)のヌクレオチドモノマーのすべてではなく一部が相互に塩基対を形成すること
ができる状況を指す。「実質的相補性」は、相互に90%以上の相補性を示す2つのオリ
ゴヌクレオチド鎖(または2つのオリゴヌクレオチド鎖のセグメント)を指す。「十分に
相補的」は、標的mRNAによりコードされるタンパク質の量に低下が生じるような標的
mRNAと核酸インヒビター分子との間の相補性を指す。
【0051】
相補鎖:本明細書で使用される場合、「相補鎖」という用語は、他方の鎖に部分的に、
実質的にまたは完全に相補的な二本鎖核酸インヒビター分子の鎖を指す。
【0052】
シクロアルキル:本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、3~
12個の炭素、例えば、3~8個の炭素、例えば、3~6個の炭素を含む環式(すなわち
、環を含む)炭化水素基を指す。「置換シクロアルキル」は、さらに1個または複数の置
換基を有するシクロアルキル基を指す。
【0053】
デオキシリボフラノシル:本明細書で使用される場合、「デオキシリボフラノシル」と
いう用語は、下に図示するとおりの、天然に存在するDNAにおいて見出され、2’-炭
素に水素基を有する、以下に示すとおりのフラノシルを指す。
【0054】
デオキシリボヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「デオキシリボヌクレオチド
」という用語は、糖部分の2’位に水素基を有する天然ヌクレオチド(本明細書で定義す
るとおり)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0055】
dsRNAiインヒビター分子:本明細書で使用される場合、「dsRNAiインヒビ
ター分子」という用語は、センス鎖(パッセンジャー)及びアンチセンス鎖(ガイド)を
有し、その際、上記アンチセンス鎖または上記アンチセンス鎖の一部が、標的mRNAの
切断においてアルゴノート2(Ago2)エンドヌクレアーゼにより使用される、二本鎖
核酸インヒビター分子を指す。
【0056】
二本鎖:本明細書で使用される場合、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)に関する「
二本鎖」という用語は、ヌクレオチドの2つの逆平行配列の相補的塩基対合を通して形成
される構造を指す。
【0057】
添加剤:本明細書で使用される場合、「添加剤」という用語は、組成物に含まれ、例え
ば、所望の粘稠度または安定効果をもたらす、またはこれに寄与し得る非治療薬を指す。
【0058】
フラノシル:本明細書で使用される場合、「フラノシル」という用語は、4個の炭素原
子及び1個の酸素原子を有する5員環を含む構造を指す。
【0059】
ハロ:本明細書で使用される場合、「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、互換的で
あり、かつフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される原子を指す。
【0060】
複素環:本明細書で使用される場合、「複素環」または「複素環式」という用語は、そ
の環構造の一部として1個または複数のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含有し
、かつ3個~最大14個の範囲の炭素原子を有する非芳香族環式(すなわち、環を含む)
基を指す。「置換複素環式」または「置換複素環」は、さらに1個または複数の置換基を
有する複素環式基を指す。
【0061】
ヌクレオチド間結合基:本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド間結合基」または
「ヌクレオチド間結合」という用語は、2つのヌクレオシド部分を共有結合することが可
能な化学基を指す。典型的には、上記化学基は、ホスホまたはホスファイト基を含むリン
含有結合基である。ホスホ結合基は、ホスホジエステル結合、ホスホロジチオアート結合
、ホスホロチオアート結合、ホスホトリエステル結合、チオノアルキルホスホナート結合
、チオンアルキルホスホトリエステル結合、ホスホラミダイト結合、ホスホナート結合及
び/またはボラノホスファート結合を含むことを意図している。例えば、米国特許第3,
687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,0
23,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,26
4,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286
,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,
939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,6
77号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,82
1号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253
号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;同第5,194,599号
;同第5,565,555号;同第5,527,899号;同第5,721,218号;
同第5,672,697号及び同第5,625,050号に開示のとおり、多くのリン含
有結合が当技術分野で周知である。他の実施形態では、上記オリゴヌクレオチドは、リン
原子を含まない1個または複数のヌクレオチド間結合基、例えば、短鎖アルキルもしくは
シクロアルキルヌクレオチド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキルもしくはシクロアルキ
ルヌクレオチド間結合、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌク
レオチド間結合を含み、これらには、これに限定されないが、シロキサン骨格;スルフィ
ド、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチ
レンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格
;スルファメート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホナート及び
スルホンアミド骨格;ならびにアミド骨格を有するものが含まれる。例えば、米国特許第
5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5
,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,
264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,4
34,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,48
9,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596
,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,
240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,7
04号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,36
0号;同第5,677,437号;同第5,792,608号;同第5,646,269
号及び同第5,677,439号に開示のとおり、非リン含有結合が当技術分野で周知で
ある。
【0062】
ループ:本明細書で使用される場合、「ループ」という用語は、一本鎖の核酸によって
形成される構造を指し、その際、特定の一本鎖ヌクレオチド領域に隣接する相補性領域は
、その相補性領域間の一本鎖ヌクレオチド領域が、二本鎖形成またはワトソン-クリック
の塩基対合から除外されるような様式でハイブリッド形成する。ループは、任意の長さの
一本鎖ヌクレオチド領域である。ループの例には、ヘアピン、テトラループ、及びトリル
ープなどの構造に存在する非対合ヌクレオチドが含まれる。
【0063】
融解温度:本明細書で使用される場合、「融解温度」または「Tm」は、二本鎖核酸の
2本の鎖が別々になる温度を意味する。Tmは多くの場合に、相補性核酸またはその一部
の2本の鎖の二本鎖安定性または結合親和性の尺度として使用される。Tmは、UVスペ
クトラムを使用してハイブリダイゼーションの形成及び分解(融解)を決定することによ
り、測定することができる。ハイブリダイゼーション中に起こる塩基スタッキングは、U
V吸収の減少(淡色性)を随伴する。その結果、UV吸収の減少は、より高いTmを示す
【0064】
修飾核酸塩基:本明細書で使用される場合、「修飾核酸塩基」という用語は、天然核酸
塩基またはユニバーサル核酸塩基ではない、任意の核酸塩基を指す。適切な修飾核酸塩基
には、ジアミノプリン及びその誘導体、アルキル化プリンまたはピリミジン、アシル化プ
リンまたはピリミジン、チオラート化プリンまたはピリミジンなどが含まれる。他の適切
な修飾核酸塩基には、プリン及びピリミジンの類似体が含まれる。適切な類似体には、こ
れに限定されないが、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、N6-メチルアデニン
、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンチルアデニン、N,N
-ジメチルアデニン、8-ブロモアデニン、2-チオシトシン、3-メチルシトシン、5
-メチルシトシン、5-エチルシトシン、4-アセチルシトシン、1-メチルグアニン、
2-メチルグアニン、7-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、8-ブロモグア
ニン、8-クロログアニン、8-アミノグアニン、8-メチルグアニン、8-チオグアニ
ン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラ
シル、5-エチルウラシル、5-プロピルウラシル、5-メトキシウラシル、5-ヒドロ
キシメチルウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-(メチルアミ
ノメチル)ウラシル、5-(カルボキシメチルアミノメチル)-ウラシル、2-チオウラ
シル、5-メチル-2-チオウラシル、5-(2-ブロモビニル)ウラシル、ウラシル-
5-オキシ酢酸、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、1-メ
チルシュードウラシル、キュエオシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2-アミノプリン
、6-ヒドロキシアミノプリン、ニトロピロリル、ニトロインドリル及びジフルオロトリ
ル、6-チオプリン及び2,6-ジアミノプリンニトロピロリル、ニトロインドリル及び
ジフルオロトリルが含まれる。典型的には、核酸塩基は窒素塩基を含む。ある特定の実施
形態では、上記核酸塩基は窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080
274462号を参照されたい。
【0065】
修飾ヌクレオシド:本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオシド」という用語は、
リン酸基または修飾リン酸基(本明細書で定義するとおり)に結合しておらず、修飾核酸
塩基(本明細書で定義するとおり)、ユニバーサル核酸塩基(本明細書で定義するとおり
)または修飾糖部分(本明細書で定義するとおり)のうちの1つまたは複数を含む、糖(
例えば、デオキシリボースもしくはリボースまたはその類似体)とのN-グリコシド結合
中の複素環式窒素塩基を指す。上記修飾またはユニバーサル核酸塩基(本明細書では塩基
類似体とも称される)は一般に、ヌクレオシドの糖部分の1’位に位置し、1’位のアデ
ニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシル以外の核酸塩基を指す。ある特定の実施
形態では、上記修飾またはユニバーサル核酸塩基は、窒素塩基である。ある特定の実施形
態では、上記修飾核酸塩基は、窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第200
80274462号を参照されたい。ある特定の実施形態では、上記修飾ヌクレオチドは
、核酸塩基を含まない(非塩基性)。本開示の状況で適切な修飾もしくはユニバーサル核
酸塩基または修飾糖は、本明細書に記載されている。
【0066】
修飾ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオチド」という用語は、
リン酸基または修飾リン酸基(本明細書で定義するとおり)に結合しており、修飾核酸塩
基(本明細書で定義するとおり)、ユニバーサル核酸塩基(本明細書で定義するとおり)
または修飾糖部分(本明細書で定義するとおり)のうちの1つまたは複数を含む、糖(例
えば、リボースもしくはデオキシリボースまたはその類似体)とのN-グリコシド結合中
の複素環式窒素塩基を指す。上記修飾またはユニバーサル核酸塩基(本明細書では塩基類
似体とも称される)は一般に、ヌクレオシド糖部分の1’位に位置し、1’位のアデニン
、グアニン、シトシン、チミン及びウラシル以外の核酸塩基を指す。ある特定の実施形態
では、上記修飾またはユニバーサル核酸塩基は、窒素塩基である。ある特定の実施形態で
は、上記修飾核酸塩基は、窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080
274462号を参照されたい。ある特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、核酸塩
基を含まない(非塩基性)。本開示の状況で適切な修飾もしくはユニバーサル核酸塩基、
修飾糖部分、または修飾リン酸基は、本明細書に記載されている。
【0067】
修飾リン酸基:本明細書で使用される場合、「修飾リン酸基」という用語は、天然ヌク
レオチドで生じないリン酸基の修飾を指し、リン原子を含むリン酸模倣体、及びリン酸を
含まないアニオンリン酸模倣体(例えば、酢酸)を含む、本明細書に記載のとおりの天然
に存在しないリン酸模倣体を含む。修飾リン酸基は、本明細書に記載のとおり、例えばホ
スホロチオアートを含むリン含有ヌクレオチド間結合基、及び非リン含有結合基の両方を
含む、天然に存在しないヌクレオチド間結合基も含む。
【0068】
修飾糖部分:本明細書で使用される場合、「修飾糖部分」は、置換糖部分(本明細書で
定義するとおり)または糖類似体(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0069】
天然核酸塩基:本明細書で使用される場合、「天然核酸塩基」という用語は、5つの主
要な天然に存在するRNA及びDNAの複素環核酸塩基、すなわち、プリン塩基:アデニ
ン(A)及びグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基:チミン(T)、シトシン(C)
及びウラシル(U)を指す。
【0070】
天然ヌクレオシド:本明細書で使用される場合、「天然ヌクレオシド」という用語は、
リン酸基に結合していない天然糖部分(本明細書で定義するとおり)とのN-グリコシド
結合中の天然核酸塩基(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0071】
天然ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「天然ヌクレオチド」という用語は、
リン酸基に結合している天然糖部分(本明細書で定義するとおり)とのN-グリコシド結
合中の天然核酸塩基(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0072】
天然糖部分:本明細書で使用される場合、「天然糖部分」という用語は、リボフラノシ
ル(本明細書で定義するとおり)またはデオキシリボフラノシル(本明細書で定義すると
おり)を指す。
【0073】
核酸インヒビター分子:本明細書で使用される場合、「核酸インヒビター分子」という
用語は、オリゴヌクレオチド分子が標的遺伝子mRNA中の配列を特異的に標的とする領
域を含む、標的遺伝子の発現を減少させる、または除去するオリゴヌクレオチド分子を指
す。典型的には、核酸インヒビター分子の標的領域は、特定した標的遺伝子に核酸インヒ
ビター分子の効果を向けるために、標的遺伝子mRNA上の配列と十分に相補的である配
列を含む。上記核酸インヒビター分子は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド
、及び/または修飾ヌクレオチドを含んでよい。
【0074】
核酸塩基:本明細書で使用される場合、「核酸塩基」という用語は、天然核酸塩基(本
明細書で定義するとおり)、修飾核酸塩基(本明細書で定義するとおり)またはユニバー
サル核酸塩基(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0075】
ヌクレオシド:本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」という用語は、天然ヌク
レオシド(本明細書で定義するとおり)、または修飾ヌクレオシド(本明細書で定義する
とおり)を指す。
【0076】
ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、天然ヌク
レオチド(本明細書で定義するとおり)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義すると
おり)を指す。
【0077】
オーバーハング:本明細書で使用される場合、「オーバーハング」という用語は、二本
鎖核酸インヒビター分子のいずれかの鎖のいずれかの末端の末端非塩基対ヌクレオチド(
複数可)を指す。ある特定の実施形態では、上記オーバーハングは、第1の鎖または領域
が二本鎖を形成している相補鎖の末端を越えて伸びている、1本の鎖または領域から生じ
る。塩基対の水素結合により二本鎖を形成し得る2つのオリゴヌクレオチド領域の一方ま
たは両方は、2つのポリヌクレオチドまたは領域が共有する相補性の3’末端及び/また
は5’末端を越えて伸びる、5’末端及び/または3’末端を有し得る。二本鎖の3’末
端及び/または5’末端を越えて伸びる一本鎖領域が、オーバーハングと称される。
【0078】
医薬組成物:本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、薬理学的に有
効な量の二本鎖核酸インヒビター分子及び薬学的に許容される添加剤(本明細書で定義す
るとおり)を含む。
【0079】
薬学的に許容される添加剤:本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される添加剤
」という用語は、その添加剤が、合理的なベネフィット/リスク比に相応して、過度に有
害な副作用(例えば、毒性、刺激、及びアレルギー反応)を伴わずに、ヒト及び/または
動物での使用に適しているものであることを意味する。
【0080】
リン酸模倣体:本明細書で使用される場合、「リン酸模倣体」という用語は、リン酸基
の静電特性及び立体特性を模倣するオリゴヌクレオチドの5’末端の化学部分を指す。オ
リゴヌクレオチドの5’末端に結合し得る多くのリン酸模倣体が開発されてきた(例えば
、米国特許第8,927,513号(Prakash et al.Nucleic A
cids Res.2015,43(6):2993-3011)を参照されたい)。典
型的には、これらの5’リン酸模倣体は、ホスファターゼ耐性結合を含む。適切なリン酸
模倣体は、国際公開第WO2018/045317号(その全体が参照により本明細書に
援用される)に記載されているとおり、5’ホスホナート(例えば、5’メチレンホスホ
ナート(5’MP)及び5’-(E)-ビニルホスホナート(5’VP))、ならびにオ
リゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの糖部分(例えば、リボースもしくはデオキシ
リボース、またはその類似体)の4’炭素に結合する4’リン酸類似体(例えば、4’-
オキシメチルホスホナート、4’-チオメチルホスホナートまたは4’-アミノメチルホ
スホナート)を含む。ある特定の実施形態では、上記4’-オキシメチルホスホナートは
、式-O-CH2-PO(OH)2または-O-CH2-PO(OR)2により表され、ここ
で、Rは独立に、H、CH3、アルキル基または保護基から選択される。ある特定の実施
形態では、上記アルキル基はCH2CH3である。より典型的には、Rは独立に、H、CH
3またはCH2CH3から選択される。オリゴヌクレオチドの5’末端について、他の修飾
が開発されている(例えば、WO2011/133871を参照されたい)。
【0081】
保護基:本明細書で使用される場合、「保護基」という用語は、所望の反応の特定の条
件下で官能基を可逆的に非反応性にする基として、従来の化学的意味で使用される。所望
の反応の後、保護基を、保護した官能基を脱保護するために除去することができる。すべ
ての保護基は、合成されている分子の大部分を分解しない条件の下で、除去可能でなけれ
ばならない。
【0082】
減少させる(低下させる):本明細書で使用される場合、「減少させる(低下させる)
」という用語は、当技術分野で一般に受け入れられている、その意味を指す。核酸インヒ
ビター分子に関して、上記用語は一般に、核酸インヒビター分子の非存在下で観察される
ものを下回る、遺伝子の発現の減少、あるいはRNA分子または1つもしくは複数のタン
パク質もしくはタンパク質サブユニットをコードする同等のRNA分子のレベルの低下、
あるいは1つまたは複数のタンパク質またはタンパク質サブユニットの活性の低下を指す
【0083】
リボフラノシル:本明細書で使用される場合、「リボフラノシル」という用語は、天然
に存在するRNAで見出され、かつ2’炭素に水素基を有する、下に図示するとおりのフ
ラノシルを指す。
【0084】
リボヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」という用語は、
糖部分の2’位にヒドロキシル基を有する、天然ヌクレオチド(本明細書で定義するとお
り)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0085】
センス鎖:二本鎖核酸インヒビター分子は、2つのオリゴヌクレオチド鎖、すなわち、
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含む。上記センス鎖またはその領域は部分的に、実質的に
、または完全に、二本鎖核酸インヒビター分子のアンチセンス鎖またはその領域と相補的
である。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、上記アンチセンス鎖に非相補的であ
るヌクレオチドを含んでよい。上記非相補的ヌクレオチドは、上記相補性配列の片側にあ
ってもよいし、または相補性配列の両側にあってもよい。上記センス鎖またはその領域が
部分的にもしくは実質的に、アンチセンス鎖またはその領域と相補的である、ある特定の
実施形態では、上記非相補的ヌクレオチドは、1つまたは複数の相補性領域の間に位置し
ていてよい(例えば、1つまたは複数のミスマッチ)。上記センス鎖は、パッセンジャー
鎖とも呼ばれる。
【0086】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、マウス、ウサギ、及びヒト
を含む、任意の哺乳類を意味する。一実施形態では、上記対象はヒトである。「個体」ま
たは「患者」という用語は、「対象」と互換的であることが意図されている。
【0087】
置換基または置換(されている):本明細書で使用される場合、「置換基」または「置
換(されている)」という用語は、所与の構造中の水素ラジカルを置換基のラジカルで置
き換えることを指す。任意の所与の構造の2つ以上の位置が2つ以上の置換基で置換され
得る場合、置換基は、別段に示されていない限り、あらゆる位置で同じでも異なってもよ
い。本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、有機化合物に適合するすべての
許容される置換基を含むことが企図される。許容される置換基は、非環式及び環式、分枝
及び非分枝、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物の置換基を含む。
本開示は、いかなる方法によっても有機化合物の許容される置換基により制限されること
を意図されない。
【0088】
置換糖部分:本明細書で使用される場合、「置換糖部分」には、1つまたは複数の修飾
を含むフラノシルが含まれる。典型的には、上記修飾は、糖の2’、3’、4’または5
’炭素位置で生じる。ある特定の実施形態では、上記置換糖部分は、フラノシルの2’-
炭素を4-炭素と連結する架橋を含む二環式糖部分である。
【0089】
糖類似体:本明細書で使用される場合、「糖類似体」という用語は、フラノシルを含ま
ず、ヌクレオチドの天然に存在する糖部分を置き換えることができる構造を指し、その結
果得られるヌクレオチドは(1)オリゴヌクレオチドへの組み込み及び(2)相補的ヌク
レオチドへのハイブリッド形成ができることとなる。そのような構造は典型的には、フラ
ノシルに対する比較的単純な変化、例えば、異なる数の原子を含む環(例えば、四員、六
員または七員環);非酸素原子(例えば、炭素、硫黄または窒素)とフラノシルの酸素の
置換;または原子の数の変化及び酸素の置換の両方を含む。そのような構造は、置換糖部
分について記載したものに対応する置換を含むこともできる。糖の類似体は、より複雑な
糖置換(例えば、ペプチド核酸の非環式系)も含む。糖類似体には、限定ではないが、モ
ルホリノ、シクロヘキセニル及びシクロヘキシトールが含まれる。
【0090】
糖部分:本明細書で使用される場合、「糖部分」という用語は、天然の糖部分またはヌ
クレオチドもしくはヌクレオシドの修飾糖部分を指す。
【0091】
標的部位:本明細書で使用される場合、「標的部位」「標的配列」「標的核酸」「標的
領域」「標的遺伝子」という用語は互換的に使用され、例えば、部分的に、実質的にもし
くは完全に、または十分にその標的配列に相補的である、そのガイド/アンチセンス領域
内の配列を含有する、RNAiインヒビター分子により媒介される切断について「標的化
される」RNAまたはDNA配列を指す。
【0092】
テトラループ:本明細書で使用される場合、「テトラループ」という用語は、隣接する
ワトソン-クリックのハイブリッド形成ヌクレオチドの安定性に寄与する安定な二次構造
を形成するループ(一本鎖領域)を指す。理論に拘束されるものではないが、テトラルー
プは、スタッキング相互作用により、隣接するワトソン-クリック型塩基対を安定させ得
る。加えて、テトラループにおけるヌクレオチド間の相互作用には、これに限定されない
が、非ワトソン-クリック型塩基対合、スタッキング相互作用、水素結合、及び接触相互
作用が含まれる(Cheong et al.,Nature,1990,346(62
85):680-2、Heus and Pardi,Science,1991,25
3(5016):191-4)。テトラループは、ランダムな塩基からなる単純モデルル
ープ配列から予測されるよりも高い、隣接する二本鎖の融解温度(Tm)の上昇をもたら
す。例えば、テトラループは、少なくとも2塩基対長さの二本鎖を含むヘアピンに対して
、10mM NaHPO4中で少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃
、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、または少なくとも75℃の
融解温度を与え得る。テトラループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、
修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、テト
ラループは、4つのヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態では、テトラループは、
5つのヌクレオチドからなる。
【0093】
RNAのテトラループの例には、UNCGファミリーのテトラループ(例えば、UUC
G)、GNRAファミリーのテトラループ(例えば、GAAA)、及びCUUGのテトラ
ループを含むCUYGファミリーのテトラループが含まれる(Woese et al.
,PNAS,1990,87(21):8467-71、Antao et al.,N
ucleic Acids Res.,1991,19(21):5901-5)。RN
Aテトラループの他の例には、GANC、A/UGNN、及びUUUMテトラループファ
ミリー(Thapar et al.、WILEY INTERDISCIP. REV
RNA、2014、5(1):1-28)ならびにGGUG、RNYA、及びAGNN
テトラループファミリー(Bottaro et al.、BIOPHYS J.、20
17、113:257-67)が含まれる。DNAのテトラループの例には、d(GNN
A)ファミリーのテトラループ(例えば、d(GTTA)、d(GNRA))ファミリー
のテトラループ、d(GNAB)ファミリーのテトラループ、d(CNNG)ファミリー
のテトラループ、及びd(TNCG)ファミリーのテトラループ(例えば、d(TTCG
))が含まれる(Nakano et al.Biochemistry,2002,4
1(48):14281-14292.Shinji et al.,Nippon K
agakkai Koen Yokoshu,2000,78(2):731)。
【0094】
m-上昇ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「Tm-上昇ヌクレオチド」とい
う用語は、そのTm-上昇ヌクレオチドを含まないオリゴヌクレオチド二本鎖と比較して
、オリゴヌクレオチド二本鎖の融解温度(Tm)を上昇させるヌクレオチドを指す。Tm
上昇ヌクレオチドには、これに限定されないが、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチ
ド、G-クランプ及びその類似体、ならびにヘキシトールヌクレオチドが含まれる。修飾
糖部分または修飾核酸塩基を有するある特定の修飾ヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド
二本鎖のTmを上昇させるために使用することもできる。本明細書で使用される場合、「
m-上昇ヌクレオチド」という用語は特異的に、糖部分の2’-位において、2’-O
Meまたは2’-Fで修飾されているヌクレオチドを除外する。
【0095】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」または「薬理学的に有効な量
」は、意図されている薬理学的、治療的または予防的結果を生成するために有効な二本鎖
核酸インヒビター分子の量を指す。
【0096】
トリループ:本明細書で使用される場合、「トリループ」という用語は、隣接するワト
ソン-クリックのハイブリッド形成ヌクレオチドの安定性に寄与する安定な二次構造を形
成し、かつ3つのヌクレオチドからなるループ(一本鎖領域)を指す。理論に限定される
ものではないが、トリループは、そのトリループ内のヌクレオチドの非ワトソン-クリッ
ク型塩基対合及び塩基スタッキング相互作用により安定され得る(Yoshizawa
et al.,Biochemistry 1997;36,4761-4767)。ト
リループはまた、ランダムな塩基からなる単純モデルループ配列から予測されるよりも高
い、隣接する二本鎖の融解温度(Tm)の上昇をもたらし得る。トリループは、リボヌク
レオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含
み得る。トリループの例には、GNAファミリーのトリループ(例えば、GAA、GTA
、GCA、及びGGA)が含まれる(Yoshizawa 1997)。ある特定の実施
形態では、上記トリループは、GAAのヌクレオチド配列を有する。
【0097】
ユニバーサル核酸塩基:本明細書で使用される場合、「ユニバーサル核酸塩基」は、天
然に存在する核酸に典型的に見出される塩基の2つ以上と対合することができるので、二
本鎖においてそのような天然に存在する塩基を置換することができる塩基を指す。上記塩
基は、天然に存在する塩基のそれぞれと対合可能である必要はない。例えば、ある特定の
塩基は、唯一もしくは選択的にプリンと、または唯一もしくは選択的にピリミジンと対合
する。上記ユニバーサル核酸塩基は、ワトソン-クリックまたは非ワトソン-クリック相
互作用(例えば、フーグスティーン相互作用)を介した水素結合を形成することにより塩
基対合し得る。代表的なユニバーサル核酸塩基には、イノシン及びその誘導体が含まれる
【0098】
詳細な説明
本出願は、ステムループ構造を有するセンス鎖と、アンチセンス鎖とを有し、その際、
上記ステムループ構造のループ部分がトリループである二本鎖核酸インヒビター分子を提
供する。上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖(S)の第1の領域(R1)とア
ンチセンス鎖(AS)との間の第1の二本鎖(D1)及びセンス鎖の第2の領域(R2)
の第1のサブ領域(S1)と第2のサブ領域(S2)との間の第2の二本鎖(D2)を含
有し、その際、S1及びS2は、トリループ(triL)により結合している。図1A
Dを参照されたい。加えて、ステムループ構造のステム部分は、ある特定の実施形態では
、少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチド、例えば、4~12のTm-上昇ヌクレオチド
、例えば、2~6のTm-上昇ヌクレオチド塩基対を含有し得る。上記ステムループ構造
は、センス鎖の5’末端または3’末端に位置し得る。本明細書に開示のとおり、トリル
ープを含有する二本鎖核酸インヒビター分子は、標的遺伝子発現の減少において活性であ
る。さらに、ある特定の実施形態では、トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、
それらのテトラループ含有カウンターパートと比較して、標的遺伝子発現の効力を上昇さ
せ得る。
【0099】
疾患を処置するための方法及び組成物を含めて、in vitroまたはin viv
oで標的遺伝子のレベルまたは発現を減少させるために、本明細書に開示のトリループ含
有二本鎖核酸インヒビター分子及びそれを含む組成物を使用する方法も提供する。
【0100】
トリループ含有核酸インヒビター分子
本出願は、ステムループ構造を有するセンス鎖と、アンチセンス鎖とを有し、その際、
上記ステムループ構造のループ部分がトリループであり、かつ上記センス鎖及びアンチセ
ンス鎖が、それぞれ5’末端及び3’末端を有し、したがって、隣接オリゴヌクレオチド
を形成しない別々の鎖である二本鎖核酸インヒビター分子を開示する。典型的なステム/
ループ含有二本鎖核酸インヒビター分子が、上記センス鎖(「S」)及びアンチセンス鎖
(「AS」)が強調されている図1Aに示されている。
【0101】
上記センス鎖をさらに、図1B及び1Cに示されているとおり、アンチセンス鎖(AS
)と共に第1の二本鎖(D1)を形成する第1の領域(R1)と、第1のサブ領域(S1
)を第2のサブ領域(S2)に結合するループ(triL)を含む第2の領域(R2)と
に区分することができる。S1及びS2は、第2の二本鎖(D2)を形成するために相互
に十分に相補的であり、ステムまたはステム二本鎖とも称される。例えば、図1C及び1
Dを参照されたい。本明細書に記載のとおり、上記ループは、トリループである。典型的
には、上記トリループは、配列GAAを有するが、ランダムな塩基からなる単純モデルル
ープ配列から予測されるよりも高い、隣接する二本鎖の融解温度(Tm)の上昇をもたら
す他のトリループ配列を使用してもよい。上記第2の二本鎖(D2)は、少なくとも1つ
のTm-上昇ヌクレオチドを含んでよく、かつある特定の実施形態では、上記第2の二本
鎖(D2)中のヌクレオチドのすべてが、Tm-上昇ヌクレオチドであってもよい。典型
的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、上記第2の二本鎖(D2)以外には、いず
れのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸分
子は、dsRNAiインヒビター分子である。
【0102】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス鎖は、少なく
とも1つのTm-上昇ヌクレオチド及びトリループ(triL)を含有するステム二本鎖
(D2)を含有し、20~65ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記
ステム二本鎖は、2~6塩基対長さである。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス
鎖は、15~40ヌクレオチド長さである。
【0103】
ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、ステム二本鎖(D2)及びトリループ(t
riL)を含み、20~65ヌクレオチド長さであり、かつ上記アンチセンス鎖は、15
~40ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記ステム二本鎖(D2)及
び上記トリループ(triL)を含むセンス鎖の伸長部分は、上記鎖の3’末端にある。
ある特定の他の実施形態では、上記ステム(D2)及び上記トリループ(triL)を含
むセンス鎖の伸長部分は、上記鎖の5’末端にある。
【0104】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセ
ンス鎖を含み、その際、上記センス及びアンチセンス鎖は、別々の鎖であり、かつ18~
24塩基対の第1の二本鎖(D1)を形成し、その際、上記センス鎖は、第2の二本鎖(
D2)及びトリループ(triL)を含み、かつ27~35ヌクレオチド長さであり、上
記アンチセンス鎖は、20~24ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上
記センス鎖は、27~35ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記セン
ス鎖は、27~33ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は
、29~31ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D
2)は、2~6塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D
2)は、2塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形
態では、上記第2の二本鎖(D2)は、3塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオ
チドを含む。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、4塩基対の長さを
有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖
(D2)は、5塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実
施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、6塩基対の長さを有し、かついずれのTm
上昇ヌクレオチドも含まない。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、1、2
、3、または4つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを、その3’末端に有する。典
型的には、上記アンチセンス鎖の3’末端にある一本鎖オーバーハングは、2つのヌクレ
オチドからなる。
【0105】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセ
ンス鎖を含み、その際、上記センス及びアンチセンス鎖は、別々の鎖であり、かつ18~
22塩基対、例えば、20のヌクレオチドの第1の二本鎖(D1)を形成し、上記センス
鎖は、第2の二本鎖(D2)及びトリループ(triL)を含み、かつ27~35ヌクレ
オチド長さであり、上記アンチセンス鎖は、20~24ヌクレオチド長さ、例えば、22
ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、D1は、19~21塩基対の長さを
有する。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、20~22ヌクレオチド長さ
である。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、29~33ヌクレオチド長さである
。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2~6塩基対の長さを有する
。ある特定の実施形態では、D2は、2塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチ
ドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、3塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌ
クレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、4塩基対の長さを有し、かつTm
-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、5塩基対の長さを有し、
かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、6塩基対の長さ
を有し、かついずれのTm-上昇ヌクレオチドも含まない。ある特定の実施形態では、上
記アンチセンス鎖は、1~5つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを、その3’末端
に有する。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、1、2、3、または4つの
ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングをその3’末端に有する。典型的には、上記アンチ
センス鎖の3’末端にある一本鎖オーバーハングは、2つのヌクレオチドからなる。
【0106】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセ
ンス鎖を含み、その際、上記センス及びアンチセンス鎖は別々の鎖であり、かつ19~2
1塩基対の第1の二本鎖(D1)を形成し、上記センス鎖は、19~21のヌクレオチド
の第1の領域(R1)と、第1のサブ領域(S1)を第2のサブ領域(S2)に結合する
トリループ(triL)を含む7~15のヌクレオチドの第2の領域(R2)とを有し、
S1及びS2のそれぞれは、2~6ヌクレオチド長さであり、かつ第2の二本鎖(D2)
を形成するために相互に十分に相補的であり、かつ上記アンチセンス鎖は、20~24ヌ
クレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、2つのヌクレ
オチドの一本鎖オーバーハングをその3’末端に有する。ある特定の実施形態では、S1
及びS2のそれぞれは、2~5ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、D2
は、2塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態で
は、D2は、3塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実
施形態では、D2は、4塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある
特定の実施形態では、D2は、5塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含
む。ある特定の実施形態では、D2は、6塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオ
チドを含まない。
【0107】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセ
ンス鎖を含み、その際、上記センス及びアンチセンス鎖は別々の鎖であり、かつ20塩基
対の第1の二本鎖(D1)を形成し、上記センス鎖は、20のヌクレオチドの第1の領域
(R1)と、第1のサブ領域(S1)を第2のサブ領域(S2)に結合するトリループ(
triL)を含む7~9のヌクレオチドの第2の領域(R2)とを有し、上記アンチセン
ス鎖は、22ヌクレオチド長さであり、かつ2つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハング
をその3’末端に有し、かつS1及びS2のそれぞれは、二環式ヌクレオチドを含む。あ
る特定の実施形態では、S1及びS2のそれぞれは、3ヌクレオチド長さであり、かつ3
塩基対の第2の二本鎖(D2)を形成する。ある特定の実施形態では、S1及びS2のそ
れぞれは、2ヌクレオチド長さであり、かつ2塩基対の第2の二本鎖(D2)を形成する
。ある特定の実施形態では、第2の二本鎖(D2)中の各ヌクレオチドは、Tm-上昇ヌ
クレオチドであり、かつ上記二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖(D2)以外
に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含まない。
【0108】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態で
は、上記第2の二本鎖(D2)は、2~6塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態で
は、D2は、2~4塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、2塩基対
の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、3塩基対の長さを有する。ある特定
の実施形態では、D2は、4塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、
5塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、6塩基対の長さを有する。
【0109】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態で
は、第2の二本鎖(D2)は、4~10のTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ2~5塩
基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、6~8つのTm-上昇ヌクレオ
チドを含み、かつ3~4塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、6つ
のTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ3塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態で
は、D2は、4つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、2塩基対の長さを有する。ある特定
の実施形態では、D2中の各ヌクレオチドは、Tm-上昇ヌクレオチドである。
【0110】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態で
は、上記第2の二本鎖(D2)は、単一のTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ2~6塩
基対の長さを有する。本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のあ
る特定の実施形態では、第2の二本鎖(D2)は、2~6つの単一Tm-上昇ヌクレオチ
ドを含み、かつ2~6塩基対の長さを有し、その際、D2中のTm-上昇ヌクレオチドの
いずれも、塩基対を形成しない。例えば、D2は、2つのTm-上昇ヌクレオチドを含ん
でよく、かつ2~6塩基対の長さを有し、その際、その2つのTm-上昇ヌクレオチドは
、塩基対を形成しない。D2は、3つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ3~6塩基
対の長さを有してもよく、その際、その3つのTm-上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成
しない。D2は、4つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ4~6塩基対の長さを有し
てもよく、その際、その4つのTm-上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成しない。D2は
、5つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ5~6塩基対の長さを有してもよく、その
際、その5つのTm-上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成しない。D2は、6つのTm-上
昇ヌクレオチドを含み、かつ6塩基対の長さを有してもよく、その際、その6つのTm
上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成しない。
【0111】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、いずれ
のTm-上昇ヌクレオチドも含まない。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒ
ビター分子は、センス鎖またはアンチセンス鎖の第1の領域(R1)中に、いずれのTm
-上昇ヌクレオチドも含まない。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター
分子は、第2の二本鎖(D2)以外に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖(D2)中
に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。
【0112】
上記トリループ含有二本鎖核酸分子の第2の二本鎖(D2)中の1つまたは複数のTm
-上昇ヌクレオチドは、本明細書に記載の、または別段に当技術分野で利用可能なTm
上昇ヌクレオチドのいずれであってもよい。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸分
子は、第2の二本鎖(D2)中に少なくとも2つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ
第2の二本鎖中のそれぞれのTm-上昇ヌクレオチドは、同じである。ある特定の実施形
態では、上記二本鎖核酸分子は、第2の二本鎖(D2)中に、少なくとも2つの異なるT
m-上昇ヌクレオチドを含む。
【0113】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸分子のいずれでも、上記1つまたは複数の
m-上昇ヌクレオチドは、本明細書に記載の、または別段に当技術分野で利用可能な二
環式ヌクレオチドのいずれであってもよい。本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸
分子のいずれでも、上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチド
は、二環式糖部分を含み、その際、上記二環式糖部分は、そのフラノシルの2’-炭素及
び4’-炭素を連結する架橋を含む置換フラノシルである。
【0114】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のいずれでも、上記第2
の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式I、II、III、I
V、Va、またはVbの構造を有する。例えば、上記第2の二本鎖(D2)中の少なくと
も1つの二環式ヌクレオチドは、式Iの構造を有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の
少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIの構造も有し得る。上記第2の二本鎖(
D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIIの構造も有し得る。上記第
2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IVの構造も有し得
る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式Vaの構
造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、
式Vbの構造も有し得る。
【0115】
上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式Ia、Ib
、Ic、Id、Ie、またはIfのうちの1つまたは複数の構造も有し得る。上記第2の
二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIa、IIb、IIc
、またはIIdのうちの1つまたは複数の構造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中
の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIIa及び/またはIIIbの構造も有
し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IV
a及び/またはIVbの構造も有し得る。
【0116】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸分子のいずれでも、上記第2の二本鎖(D
2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチド(BN)は、次のうちの1つまたは複数で
ある:(a)メチレンオキシBN、(b)エチレンオキシBN、(c)アミノオキシBN
;(d)オキシアミノBN、(e)メチル(メチレンオキシ)BN(拘束エチルまたはc
ETとしても公知)、(f)メチレン-チオBN、(g)メチレンアミノBN、(h)メ
チル炭素環式BN、及び(i)プロピレン炭素環式BN。一実施形態では、上記少なくと
も1つのBNは、(a)メチレンオキシBNまたは(d)オキシアミノBN)であり、こ
こで、R2は、CH3である。例えば、D2中の少なくとも1つのBNは、オキシアミノB
N(d)であり、ここで、R2は、CH3である。
【0117】
二環式ヌクレオチド
本明細書に開示のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチ
センス鎖を含み、かつある特定の実施形態では、少なくとも1つの二環式ヌクレオチドを
、センス鎖中に存在するステムループ構造のステム部分に含み得る。二環式ヌクレオチド
は典型的には、4~7員環(フラノシルを含むが、これに限定されない)を含み、その4
~7員環の2個の原子を連結して第2の環を形成する架橋を含むことにより、二環式構造
をもたらす糖部分を有する。ある特定の実施形態では、上記架橋は、第1の環の2’-炭
素と4’-炭素とを連結して、第2の環を形成する。そのような二環式ヌクレオチドは、
それぞれ二環式核酸及びロック核酸についてBNA及びLNAを含む様々な名称を有する
。二環式ヌクレオチドの合成及び核酸化合物へのそれらの組み込みは、例えば、それぞれ
その全体が参照により本明細書に援用されるSingh et al.,Chem.Co
mmun.,1998,4,455-456;Koshkin et al.,Tetr
ahedron,1998,54,3607-3630;Wahlestedt et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000,97,56
33-5638;Kumar et al.,Bioorg.Med.Chem.Let
t.,1998,8,2219-2222;Singh et al.,J.Org.C
hem.,1998,63,10035-10039;米国特許第7,427,672号
、同第7,053,207号、同第6,794,499号、同第6,770,748号、
同第6,268,490号及び同第6,794,499号;米国出願公開第200402
19565号、同第20040014959号、同第20030207841号、同第2
0040192918号、同第20030224377号、同第20040143114
号及び同第20030082807号を含む文献にも報告されている。
【0118】
典型的には、上記架橋は、2~8個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋
は、3個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、4個の原子を含む。ある
特定の実施形態では、上記架橋は、5個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架
橋は、6個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、7個の原子を含む。あ
る特定の実施形態では、上記架橋は、8個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記
架橋は、8個超の原子を含む。
【0119】
ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分は、そのフラノシルの2’-炭素及び4’
-炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む置換フラノシルである。ある特定の実施
形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式Iの構造:


を有する
[式中、
Bは、核酸塩基であり;
Gは、H、OH、NH2、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニ
ル、置換C1~C6アルキル、置換C2~C6アルケニル、置換C2~C6アルキニル、アシル
、置換アシル、置換アミド、チオール、または置換チオであり;
Xは、O、S、またはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C6
アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;かつ
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式I
により表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合する
ヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbのうちの少なくとも1個は、式Iにより表さ
れるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である]。
【0120】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、Hであり、かつXは、NR1であり、ここで、
1は、ベンゼンまたはピレンである。式Iのある特定の実施形態では、Gは、Hであり
、かつXは、Sである。
【0121】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、Hであり、かつXは、Oである:

【0122】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、Hであり、かつXは、NR1であり、ここで、
1は、H、CH3、またはOCH3である:

【0123】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、OHまたはNH2であり、かつXは、Oである
【0124】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、OHであり、かつXは、Oである:

【0125】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、NH2であり、かつXは、Oである:

【0126】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、CH3またはCH2OCH3であり、かつXは、
Oである。式Iのある特定の実施形態では、Gは、CH3であり、かつXは、Oである:

【0127】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、CH2OCH3であり、かつXは、Oである:

【0128】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式IIの構造を有する:


[式中、
Bは、核酸塩基であり;
1は、CH2またはOであり;
Xは、CH2、O、S、またはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、
1~C6アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;
1がOである場合、Xは、CH2であり;
1がCH2である場合、Xは、CH2、O、S、またはNR1であり、ここで、R1は、
H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式I
Iにより表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合す
るヌクレオチド間結合基であり、かつWaまたはWbのうちの少なくとも1つは、式IIに
より表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である
]。
【0129】
式IIのある特定の実施形態では、Q1は、Oであり、かつXは、CH2である。

【0130】
式IIのある特定の実施形態では、Q1は、CH2であり、かつXは、Oである:

【0131】
式IIのある特定の実施形態では、Q1は、CH2であり、かつXは、NR1であり、こ
こで、R1は、H、CH3またはOCH3である:
【0132】
式IIのある特定の実施形態では、Q1は、CH2であり、かつXは、NHである:

【0133】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式IIIの構造を有する:


[式中、
Bは、核酸塩基であり;
2は、OまたはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アル
コキシ、ベンゼンまたはピレンであり;
Xは、CH2、O、S、またはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、
1~C6アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;
2がOである場合、Xは、NR1であり;
2がNR1である場合、Xは、OまたはSであり;
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式I
IIにより表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合
するヌクレオチド間結合基であり、かつWaまたはWbのうちの少なくとも1つは、式II
Iにより表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基で
ある]。
【0134】
式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、Oであり、かつXは、NR1である。式I
IIのある特定の実施形態では、Q2は、Oであり、かつXは、NR1であり、ここで、R
1は、C1~C6アルキルである。式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、Oであり、
かつXは、NR1であり、かつR1は、HまたはCH3である。
【0135】
式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、Oであり、かつXは、NR1であり、かつ
1は、CH3である:

【0136】
式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、NR1であり、かつXは、Oである。式I
IIのある特定の実施形態では、Q2は、NR1であり、ここで、R1は、C1~C6アルキ
ルであり、かつXは、Oである。
【0137】
式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、NCH3であり、かつXは、Oである:

【0138】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式IVの構造を有する:


[式中、
Bは、核酸塩基であり;
1及びP3は、CH2であり、P2は、CH2またはOであり、かつP4は、Oであり;か

a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式I
Vにより表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合す
るヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbのうちの少なくとも1つは、式IVにより
表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である]。
【0139】
式IVのある特定の実施形態では、P1、P2及びP3は、CH2であり、かつP4は、O
である:

【0140】
式IVある特定の実施形態では、P1及びP3は、CH2であり、P2は、Oであり、P4
は、Oである:

【0141】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式VaまたはVbの構造を有す
る:

[式中、
Bは、核酸塩基であり;
r1、r2、r3、及びr4はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、C1~C12アルキル、
置換C1~C12アルキル、C2~C12アルケニル、置換C2~C12アルケニル、C2~C12
ルキニル;置換C2~C12アルキニル;C1~C12アルコキシ;置換C1~C12アルコキシ
、OT1、ST1、SOT1、SO21、NT12、N3、CN、C(=O)OT1、C(=
O)NT12、C(=O)T1、O─C(=O)NT1T2、N(H)C(=NH)NT1
2、N(H)C(=O)NT12またはN(H)C(=S)NT12であり、ここで、
T1及びT2のそれぞれは独立に、H、C1~C6アルキル、または置換C1~C16アルキ
ルであるか;または
r1及びr2またはr3及びr4は一緒に、=C(r5)(r6)であり、ここで、r
5及びr6はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、C1~C12アルキル、または置換C1~C12
アルキルであり;かつ
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式V
により表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合する
ヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbのうちの少なくとも1つは、式Vにより表さ
れるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である。
【0142】
ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分は、そのフラノシルの2’-炭素及び4’
-炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む置換フラノシルであり、その際、フラノ
シルの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋には、これに限定されないが:
a) 4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(ここで
、Rは、H、C1~C12アルキル、または例えば、4’-CH2-NH-O-2’(BNA
NCとしても公知)、4’-CH2-N(CH3)-O-2’(BNANC[NMe]としても
公知)を含む保護基である)(その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第7
,427,672号に記載のとおり);
b) 4’-CH2-2’;4’-(CH22-2’;4’-(CH23-2’;4’-
(CH2)-O-2’(LNAとしても公知);4’-(CH2)-S-2’;4’-(C
22-O-2’(ENAとしても公知);4’-CH(CH3)-O-2’(cEtと
しても公知);及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(cMOEとしても公知)、
及びその類似体(その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第7,399,8
45号に記載のとおり);
c) 4’-C(CH3)(CH3)-O-2’及びその類似体(その全体が参照により本
明細書に援用される米国特許第8,278,283号に記載のとおり);
d) 4’-CH2-N(OCH3)-2’及びその類似体(その全体が参照により本明細
書に援用される米国特許第8,278,425号に記載のとおり);
e) 4’-CH2-O-N(CH3)-2’及びその類似体(その全体が参照により本明
細書に援用される米国特許公開第2004/0171570号に記載のとおり);
f) 4’-CH2-C(H)(CH3)-2’及びその類似体(その全体が参照により本
明細書に援用されるChattopadhyaya et al.,J.Org.Che
m.,2009,74,118-34に記載のとおり);ならびに
g) 4’-CH2-C(=CH2)-2’及びその類似体(その全体が参照により本明細
書に援用される米国特許第8,278,426号に記載のとおり)
が含まれる。
【0143】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチド(BN)は、下に示されているとお
りの(a)メチレンオキシBN、(b)エチレンオキシBN、(c)アミノオキシBN;
(d)オキシアミノBN、(e)メチル(メチレンオキシ)BN(拘束エチルまたはcE
Tとしても公知)、(f)メチレン-チオBN、(g)メチレンアミノBN、(h)メチ
ル炭素環式BN、及び(i)プロピレン炭素環式BNのうちの1つまたは複数である。



【0144】
上の(a)~(i)の二環式ヌクレオチドでは、Bは、核酸塩基であり、R2は、Hま
たはCH3であり、かつWa及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、
リン部分、または二環式ヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに
結合するヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbのうちの少なくとも1つは、二環式
ヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である。
【0145】
オキシアミノBN(d)の一実施形態では、R2は、次のとおり、CH3(BNANC[N
Me]としても公知)である:
【0146】
ある特定の実施形態では、二環式糖部分及びそのような二環式糖部分を組み込む二環式
ヌクレオチドはさらに、異性配置により定義される。ある特定の実施形態では、上記二環
式糖部分またはヌクレオチドは、α-L配置である。ある特定の実施形態では、上記二環
式糖部分またはヌクレオチドは、β-D配置である。例えば、ある特定の実施形態では、
上記二環式糖部分またはヌクレオチドは、α-L配置の2’O,4’-C-メチレン架橋
(2’-O-CH2-4’)(α-L LNA)を含む。ある特定の実施形態では、上記
二環式糖部分またはヌクレオチドは、R配置である。ある特定の実施形態では、上記二環
式糖部分またはヌクレオチドは、S配置である。例えば、ある特定の実施形態では、上記
二環式糖部分またはヌクレオチドは、S-配置の4’-CH(CH3)-O-2’架橋(
すなわち、cEt)を含む。
【0147】
三環式ヌクレオチド
ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、三環式ヌクレオチドであり
得る。三環式ヌクレオチドの合成及び核酸化合物へのそれらの組み込みも、例えば、それ
ぞれその全体が参照により本明細書に援用されるSteffens et al.,J.
Am.Chem.Soc.1997;119:11548-11549;Steffen
s et al.,J.Org.Chem.1999;121(14):3249-32
55;Renneberg et al.,J.Am.Chem.Soc.2002;1
24:5993-6002;Ittig et al.,NUCLEIC ACIDS
RES.2004;32(1):346-353;Scheidegger et al
.,Chemistry 2006;12:8014-8023;Ivanova et
al.,OLIGONUCLEOTIDES 2007;17:54-65を含む文献
において報告されている。
【0148】
ある特定の実施形態では、上記三環式ヌクレオチドは、例えば、それぞれ参照により本
明細書に援用されるCJ,Bioorg.Med.Chem.2002;10:841-
854ならびに米国特許出願公開第2015/0259681号及び同第2018/01
62897号において論述されているとおりの、3’-炭素及び5’-炭素中心が、シク
ロプロパン環に縮合しているエチレンにより連結されているトリシクロヌクレオチド(ト
リシクロDNAとも呼ばれる)である。ある特定の実施形態では、上記三環式ヌクレオチ
ドは、例えば、参照により本明細書に援用される米国出願公開第2015/011205
5号において論述されているとおり、フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結して
第2の環を形成する架橋を含み、かつ第3の縮合環が、5’-炭素を、フラノシルの2’
-炭素及び4’-炭素を連結する架橋のメチレン基に連結する基から生じている置換フラ
ノシル環を含む。
【0149】
他のTm-上昇ヌクレオチド
二環式及び三環式ヌクレオチドに加えて、本明細書に記載の核酸インヒビター分子にお
いて、他のTm-上昇ヌクレオチドを使用することができる。例えば、ある特定の実施形
態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、G-クランプ、グアニジンG-クランプもしく
はその類似体(Wilds et al.,Chem,2002;114:123及びW
ilds et al.,Chim Acta 2003;114:123)、ヘキシト
ールヌクレオチド(Herdewijn,Chem.Biodiversity 201
0;7:1-59)、または修飾ヌクレオチドである。上記修飾ヌクレオチドは、例えば
、5-ブロモ-ウラシル、5-ヨード-ウラシル、5-プロピニル-修飾ピリミジン、ま
たは2-アミノアデニン(2,6-ジアミノプリンとも呼ばれる)(Deleavey
et al.,Chem.& Biol.2012;19:937-54)または2-チ
オウリジン、5Me-チオウリジン、及びシュードウリジンを含む、本明細書に記載のと
おりの修飾核酸塩基を有することができる。修飾ヌクレオチドはまた、例えば、参照によ
り本明細書に援用される米国特許第8,975,389号に記載のとおり、または本明細
書に記載のとおりであるが、ただし、上記Tm-上昇ヌクレオチドが糖部分の2’-炭素
において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されていない、修飾糖部分を有することが
できる。
【0150】
ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチドである
。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、三環式ヌクレオチドである
。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、G-クランプ、グアニジン
G-クランプまたはその類似体である。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレ
オチドは、ヘキシトールヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇
ヌクレオチドは、二環式または三環式ヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、上
記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、またはG-ク
ランプ、グアニジンG-クランプもしくはその類似体である。ある特定の実施形態では、
上記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、G-クラン
プ、グアニジンG-クランプもしくはその類似体、またはヘキシトールヌクレオチドであ
る。
【0151】
ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、上記核酸インヒビター分子
の第2の二本鎖(D2)のTmを、1つの組み込みあたり少なくとも2℃上昇させる。あ
る特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、D2のTmを、1つの組み込みあ
たり少なくとも3℃上昇させる。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチド
は、D2のTmを、1つの組み込みあたり少なくとも4℃上昇させる。ある特定の実施形
態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、D2のTmを、1つの組み込みあたり少なくとも
5℃上昇させる。
【0152】
他の修飾
本明細書に記載の二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖(D2)中の少なくと
も1つのTm-上昇ヌクレオチドに加えて、他のヌクレオチド修飾を含むことができる。
典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子の複数のヌクレオチドを、ヌクレアーゼに
対する抵抗性または免疫原性の低下などの分子の様々な特徴を改善するために修飾する。
例えば、Bramsen et al.(2009)、Nucleic Acids R
es.,37,2867-2881を参照されたい。多くのヌクレオチド修飾が、オリゴ
ヌクレオチド分野では、特に核酸インヒビター分子のために使用されてきた。そのような
修飾を、糖部分、ホスホジエステル結合、及び核酸塩基を含む、上記ヌクレオチドのいず
れの部分でも作製することができる。ヌクレオチド修飾の典型的な例には、これに限定さ
れないが、2’-F、2’-O-メチル(「2’-OMe」または「2’-OCH3」)
、及び2’-O-メトキシエチル(「2’-MOE」または「2’-OCH2CH2OC
H3」)が含まれる。修飾は、本明細書に記載のとおり、5’-炭素など、上記ヌクレオ
チドの糖部分の他の部分でも生じ得る。
【0153】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、当技術分野で公知のと
おり、かつ本明細書に記載のとおり、1’-位にあるアデニン、グアニン、シトシン、チ
ミン及びウラシル以外に1つまたは複数の修飾核酸塩基も含み得る。ある特定の実施形態
では、上記修飾またはユニバーサル核酸塩基は、窒素塩基である。ある特定の実施形態で
は、上記修飾核酸塩基は、窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080
274462号を参照されたい。ある特定の実施形態では、上記修飾ヌクレオチドは、核
酸塩基を含まない(非塩基性)。修飾核酸塩基の典型的な例は、5’-メチルシトシンで
ある。
【0154】
天然に生じるRNA及びDNAのヌクレオチド間結合は、3’-と5’-とのホスホジ
エステル結合である。修飾ホスホジエステル結合は、当技術分野で公知のとおり、かつ本
明細書に記載のとおり、リン原子を含有するヌクレオチド間結合及びリン原子を含有しな
いヌクレオチド間結合を含む、天然に存在しないヌクレオチド間結合基を含む。典型的に
は、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、本明細書に記載のとおり、1つまたは複数のリ
ン含有ヌクレオチド間結合基を含む。他の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分
子のヌクレオチド間結合基の1つまたは複数は、本明細書に記載のとおり、非リン含有結
合である。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、1つまたは複
数のリン含有ヌクレオチド間結合基及び1つまたは複数の非リン含有ヌクレオチド間結合
基を含む。
【0155】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、少なくとも1個のホス
ホロチオアートヌクレオチド間結合基を含有する。ある特定の実施形態では、上記二本鎖
核酸インヒビター分子は、10個未満、例えば、5個未満のホスホロチオアートヌクレオ
チド間結合基を含有する。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は
、4個のホスホロチオアートヌクレオチド間結合基を含有する。
【0156】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、
ヒドロキシルまたはリン酸基などの天然の置換基を含み得る。ある特定の実施形態では、
ヒドロキシル基は、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス
鎖の5’末端に結合している。ある特定の実施形態では、リン酸基は、上記二本鎖核酸イ
ンヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端に結合している。典型的
には、ホスファートは、オリゴヌクレオチド合成の前に、モノマーに添加される。他の実
施形態では、5’-リン酸化は、核酸インヒビター分子をサイトゾルに導入した後に、例
えば、サイトゾルClp1キナーゼにより天然に達成される。一部の実施形態では、上記
5’末端ホスファートは、リン酸基、例えば、5’-モノホスファート[(HO)2(O
)P-O-5’]、5’-ジホスファート[(HO)2(O)P-O-P(HO)(O)
-O-5’]または5’-トリホスファート[(HO)2(O)P-O-(HO)(O)
P-O-P(HO)(O)-0-5’]である。
【0157】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端も、
修飾することができる。例えば、一部の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子
のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、ホスホラミダート[(ΗΟ)2(O
)Ρ-ΝΗ-5’,(ΗΟ)(ΝΗ2)(O)Ρ-O-5’]に結合している。ある特定
の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖
の5’末端は、リン酸模倣体に結合している。適切なリン酸模倣体には、5’-ホスホナ
ート、例えば、5’-メチレンホスホナート(5’-MP)、5’-(E)-ビニルホス
ホナート(5’-VP)が含まれる。Lima et al.,Cell,2012,1
50-883-94;WO2014/130607。他の適切なリン酸模倣体には、その
全体が参照により本明細書に援用される国際公開WO2018/045317に記載のと
おり、オリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの糖部分(例えば、リボースまたはデ
オキシリボースまたはその類似体)の4’-炭素に結合している4-リン酸類似体が含ま
れる。例えば、一部の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/ま
たはアンチセンス鎖の5’末端は、オキシメチルホスホナートに結合しており、その際、
オキシメチル基の酸素原子は、糖部分またはその類似体の4’-炭素に結合している。他
の実施形態では、リン酸類似体は、チオメチルホスホナートまたはアミノメチルホスホナ
ートであり、その際、チオメチル基の硫黄原子またはアミノメチル基の窒素原子は、糖部
分またはその類似体の4’-炭素に結合している。
【0158】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、1つまたは複数のデオ
キシリボヌクレオチドを含む。典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、5つ未
満のデオキシリボヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒ
ビター分子は、1つまたは複数のリボヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上
記二本鎖核酸インヒビター分子のヌクレオチドのすべては、リボヌクレオチドである。
【0159】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のとおり、糖部分を含む上記二本鎖核酸イン
ヒビター分子のステム(第2の二本鎖またはD2)以外の1つまたは複数のヌクレオチド
は、これに限定されないが、二環式または三環式ヌクレオチド中に存在する修飾環構造を
含む修飾環構造及びアンロック核酸(「UNA」)を有する(例えば、Snead et
al.(2013),Molecular Therapy-Nucleic Aci
ds、2,e103(doi:10.1038/mtna.2013.36)を参照され
たい)。
【0160】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子の1つまたは2つのヌクレ
オチドは、グルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。典型的には、上記グルタ
チオン感受性部分は、上記糖部分の2’-炭素に位置しており、かつスルホニル基を含む
。ある特定の実施形態では、その全体が参照により本明細書に援用される国際公開WO2
018/045317に記載のとおり、上記グルタチオン感受性部分は、ホスホラミダイ
トオリゴヌクレオチド合成方法と適合性である。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核
酸インヒビター分子の2つよりも多いヌクレオチドが、グルタチオン感受性部分で可逆的
に修飾されている。ある特定の実施形態では、大部分のヌクレオチドが、グルタチオン感
受性部分で可逆的に修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビ
ター分子のヌクレオチドのすべて、または実質的にすべてが、グルタチオン感受性部分で
可逆的に修飾されている。
【0161】
上記少なくとも1つのグルタチオン感受性部分は典型的には、上記二本鎖核酸インヒビ
ター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端または3’末端ヌクレオチドに
位置している。しかしながら、上記少なくとも1つのグルタチオン感受性部分は、上記二
本鎖核酸インヒビター分子中の目的のいずれのヌクレオチドにも位置していてよい。
【0162】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は完全に修飾されており、
その際、上記センス鎖及びアンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドが修飾されており;典
型的には、すべてのヌクレオチドが、糖部分の2’-位において修飾されている。ある特
定の実施形態では、上記完全修飾核酸インヒビター分子は、可逆的修飾を含まない。一部
の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス鎖の少なくとも1つ、例えば
、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、
16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、2
9、30、31、32、33、34、35、または36のヌクレオチドが修飾されている
。一部の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のアンチセンス鎖の少なくとも
1つ、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、
14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24のヌクレオ
チドが修飾されている。
【0163】
ある特定の実施形態では、上記完全修飾核酸インヒビター分子は、1つまたは複数の可
逆的なグルタチオン感受性部分で修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖
核酸インヒビター分子のヌクレオチドの実質的にすべてが修飾されている。ある特定の実
施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のヌクレオチドの半分よりも多くが、可逆
的修飾以外の化学修飾で修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸イン
ヒビター分子のヌクレオチドの半分未満が、可逆的修飾以外の化学修飾で修飾されている
。修飾は、上記核酸インヒビター分子上の基で生じ得るか、または異なる修飾ヌクレオチ
ドが散在し得る。
【0164】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、1つから全部のヌクレオ
チドが2’-炭素において修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸イ
ンヒビター分子は、2’-F、2’-OMe、及び/または2’-MOEで部分的に、ま
たは完全に修飾されている。上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では
、1つから全部のリン原子が修飾されており、かつ1つから全部のヌクレオチドが糖部分
の2’-炭素において修飾されている。
【0165】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス及びアンチセ
ンス鎖のすべてのヌクレオチドは、糖部分の2’-炭素において修飾されている。上記二
本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス及びアンチセンス鎖の
すべてのヌクレオチドは、上記センス鎖の第2の領域(R2)中のヌクレオチドを除いて
、糖部分の2’-炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されている。上記二
本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス及びアンチセンス鎖の
すべてのヌクレオチドは、ステム(第2の二本鎖またはD2)中のTm-上昇ヌクレオチ
ドを除いて、糖部分の2’-炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されてい
る。上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス及びアンチ
センス鎖のすべてのヌクレオチドは、ステム(第2の二本鎖またはD2)中のTm-上昇
ヌクレオチド及びリガンド部分、例えば、GalNAcにコンジュゲートしているトリル
ープ中のヌクレオチドを除いて、糖部分の2’-炭素において、2’-Fまたは2’-O
Meで修飾されている。
【0166】
標的遺伝子発現を減少させる方法
本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、目的の任意
の標的遺伝子の標的mRNA発現を減少させる方法において使用することができる。典型
的には、mRNA発現を減少させる方法は、試料またはそれを必要とする対象に、本明細
書に記載のとおりの二本鎖核酸インヒビター分子を、標的遺伝子のmRNA発現を減少さ
せるために十分な量で投与することを含む。上記方法は、in vitroまたはin
vivoで実施することができる。
【0167】
標的RNAのレベルまたは活性は、当技術分野で現在公知であるか、または後に開発さ
れる適切な方法により決定することができる。標的RNA及び/または標的遺伝子の「発
現」を測定するために使用される方法は、標的遺伝子及びそのコードされるRNAの性質
に依存し得ることは分かり得る。例えば、上記標的RNA配列がタンパク質をコードする
場合、「発現」という用語は、標的遺伝子(ゲノム由来または外因性由来のいずれか)に
由来するタンパク質または標的RNA/転写物を指し得る。そのような場合、標的RNA
の発現は、標的RNA/転写物の量を直接的に測定することにより、または標的RNA/
転写物によりコードされるタンパク質の量を測定することにより決定することができる。
タンパク質は、タンパク質アッセイで、例えば、染色もしくは免疫ブロット法により、ま
たは、そのタンパク質が測定され得る反応を触媒する場合には、反応速度を測定すること
により測定することができる。そのような方法はすべて、当技術分野で公知であり、かつ
使用することができる。標的RNAレベルを測定すべき場合には、RNAレベルを検出す
るために当技術分野において承認されている方法を使用することができる(例えば、RT
-PCR、ノーザンブロット法など)。上記の測定を、細胞、細胞抽出物、組織、組織抽
出物または別の適切な原料物質で行うことができる。
【0168】
医薬組成物
本開示は、治療有効量の、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒ
ビター分子と、薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0169】
これらの医薬組成物を、慣例の減菌技術で滅菌してもよいし、または滅菌濾過してもよ
い。得られた水溶液を、そのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥することが
でき、その際、凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌水性添加剤と組み合わせる。製剤のpHは
典型的には、3~11、より好ましくは5~9または6~8、最も好ましくは7~8、例
えば、7~7.5であろう。
【0170】
本開示の医薬組成物は、治療的使用に適用される。したがって、本開示の一態様は、こ
れに限定されないが、疾患または状態に罹患したヒトが含まれる対象を、上記対象に治療
有効量の本開示の医薬組成物を投与することにより処置するために使用することができる
医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、上記疾患または状態は、本明細書に記
載のとおりのがんである。
【0171】
ある特定の実施形態では、本開示は、治療有効量の、本明細書に記載のとおりの医薬組
成物を、それを必要とする対象を処置するための医薬品の製造のために使用することを特
徴とする。ある特定の実施形態では、上記対象は、本明細書に記載のとおりのがんを有す
る。
【0172】
薬学的に許容される添加剤
本開示において有用な薬学的に許容される添加剤は典型的には、従来のものである。E
.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,
15th Edition(1975)によるRemington’s Pharmace
utical Sciencesは、1つまたは複数の治療用組成物の医薬送達に適した
組成物及び製剤を記載している。薬学的に許容される添加剤としての役割を果たし得る材
料のいくつかの例には、糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン
、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、
例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース
;麦芽;ゼラチン;添加剤、例えば、カカオ脂及び坐剤用ワックス;油、例えば、ラッカ
セイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリブ油、トウモロコシ油及びダイズ油;緩衝剤
、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(等張食塩水、リンゲル液);
エチルアルコール;pH緩衝液;ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコ
ール、ポリエチレングリコールなど;ならびに医薬製剤で使用される他の非毒性適合性物
質が含まれる。
【0173】
剤形
上記医薬組成物を、普通の実施に従って選択され得る任意の意図された投与経路用の従
来の添加剤と共に製剤化することができる。
【0174】
一実施形態では、上記医薬組成物は、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖
核酸インヒビター分子を含有し、かつ例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射に
よる非経口投与に適している。典型的には、本開示の医薬組成物を、非経口投与のための
液体形態で製剤化する。
【0175】
非経口投与に適した剤形は典型的には、例として、滅菌水溶液、生理食塩水、低分子量
アルコール、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチ
ン、脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルなどを含む非経口投与に適した1種また
は複数のビヒクルを含む。上記非経口製剤は、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌
薬、上記製剤を意図されているレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もし
くは増粘剤を含有し得る。適切な流動性は、例えば、界面活性剤の使用により維持するこ
とができる。上記二本鎖核酸インヒビターを含有する液体製剤を凍結乾燥し、滅菌注射用
液剤で再構成する後の使用のために貯蔵することができる。
【0176】
上記医薬組成物はまた、周知の技術を使用して、局所または経皮投与、直腸もしくは膣
内投与、眼内投与、経鼻投与、頬側投与、または舌下投与を含む他の投与経路のために製
剤化することができる。
【0177】
送達剤
本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、例えば、リ
ポソーム及び脂質、例えば、米国特許第6,815,432号、同第6,586,410
号、同第6,858,225号、同第7,811,602号、同第7,244,448号
及び同第8,158,601に開示のもの;ポリマー材料、例えば、米国特許第6,83
5,393号、同第7,374,778号、同第7,737,108号、同第7,718
,193号、同第8,137,695号及び米国特許出願公開第2011/014343
4号、同第2011/0129921号、同第2011/0123636号、同第201
1/0143435号、同第2011/0142951号、同第2012/002151
4号、同第2011/0281934号、同第2011/0286957号及び同第20
08/0152661号に開示のもの;カプシド、カプソイド、または、摂取、分布もし
くは吸収を助ける受容体標的分子を含む他の分子、分子構造または化合物の混合物に混合
する、封入する、コンジュゲートさせる、または別段に会合させることができる。
【0178】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を、脂質ナ
ノ粒子(LNP)に製剤化する。脂質-核酸ナノ粒子は典型的には、脂質を核酸と共に混
合すると自然に生じて複合体を形成する。所望の粒径分布に応じて、得られたナノ粒子混
合物を、任意選択で、例えば、サーモバレル押し出し機、例えば、LIPEX(登録商標
)押し出し機(Northern Lipids,Inc)を用いてポリカーボネート膜
(例えば、カットオフ100nm)を通して押し出すことができる。治療的使用のための
脂質ナノ粒子を調製するため、上記ナノ粒子を形成するために使用した溶媒(例えば、エ
タノール)を除去すること及び/または緩衝液を交換することが望ましい場合があり、こ
れは、例えば、透析または接線流濾過により達成することができる。核酸干渉分子を含む
脂質ナノ粒子を製造する方法は、例えば、米国特許出願公開第2015/0374842
号及び同第2014/0107178号に開示のとおり、当技術分野で公知である。
【0179】
ある特定の実施形態では、上記LNPは、カチオン性リポソーム及びペグ化脂質を含む
コア脂質成分を含む。上記LNPは、さらに、1つまたは複数のエンベロープ脂質、例え
ば、カチオン性脂質、構造もしくは中性脂質、ステロール、ペグ化脂質、またはそれらの
混合物を含み得る。
【0180】
LNPで使用するカチオン性脂質は、例えば、米国特許出願公開第2015/0374
842号及び同第2014/0107178号に論述されているとおり、当技術分野で公
知である。典型的には、上記カチオン性脂質は、生理学的pHで正味の正電荷を有する脂
質である。ある特定の実施形態では、上記カチオン性リポソームは、DODMA、DOT
MA、DL-048、またはDL-103である。ある特定の実施形態では、上記構造ま
たは中性脂質は、DSPC、DPPCまたはDOPCである。ある特定の実施形態では、
上記ステロールはコレステロールである。ある特定の実施形態では、上記ペグ化脂質は、
DMPE-PEG、DSPE-PEG、DSG-PEG、DMPE-PEG2K、DSP
E-PEG2K、DSG-PEG2K、またはDSG-mPEGである。一実施形態では
、上記カチオン性脂質はDL-048であり、上記ペグ化脂質はDSG-mPEGであり
、上記1つまたは複数のエンベロープ脂質は、DL-103、DSPC、コレステロール
、及びDSPE-mPEGである。例えば、上記二本鎖核酸インヒビター分子を製剤化す
るために使用することができるLNPの1つの非限定的実施形態を示す図8を参照された
い。
【0181】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、上記オ
リゴヌクレオチドの送達を目的の組織へと向けるリガンドに共有結合でコンジュゲートさ
れる。多くのそのようなリガンドが探索されている。例えば、Winkler,Ther
.Deliv.4(7):791-809(2013)を参照されたい。例えば、上記二
本鎖核酸インヒビター分子を1つまたは複数の糖リガンド部分(例えば、N-アセチルガ
ラクトサミン(GalNAc))にコンジュゲートし、上記オリゴヌクレオチドの取り込
みを肝臓に向けることができる。例えば、米国特許第5,994,517号;米国特許第
5,574,142号;WO2016/100401を参照されたい。ある特定の実施形
態では、上記1種または複数のリガンドを、上記二本鎖核酸インヒビター分子のトリルー
プ中の1つまたは複数のヌクレオチドにコンジュゲートする。
【0182】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、上記トリループにおい
て2つまたは3つの糖リガンド部分にコンジュゲートしている。一実施形態では、上記ト
リループ中のヌクレオチドのうちの2つが、糖リガンド部分にコンジュゲートしている。
別の実施形態では、上記トリループ中のヌクレオチドのうちの3つが、糖リガンド部分に
コンジュゲートしている。ある特定の実施形態では、上記糖リガンド部分は、GalNA
cである。一実施形態では、上記糖リガンド部分は、GalNAcであり、かつ上記トリ
ループ中のヌクレオチドのうちの2つにコンジュゲートしている。一実施形態では、Ga
lNAcは、上記GAAトリループのAAヌクレオチドにコンジュゲートしている。使用
することができる他のリガンドには、これに限定されないが、マンノース-6-ホスファ
ート、コレステロール、ホラート、トランスフェリン、及びガラクトースが含まれる(他
の具体的な例示的なリガンドについては、例えば、WO2012/089352を参照さ
れたい)。
【0183】
上記リガンドは、上記オリゴヌクレオチドの送達を目的の組織に向けることができる限
り、ヌクレオチドの任意の部分にコンジュゲートしていてよい。ある特定の実施形態では
、上記リガンド(例えば、GalNAc)は、上記糖部分の2’-位で、ヌクレオチドに
コンジュゲートしている。
【0184】
投与/処置方法
一実施形態は、障害を処置する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載の
とおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を含む医薬組成物を投与することを
含む上記方法を対象とする。
【0185】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、増殖性、炎症性、自己免疫
性の神経、眼、呼吸、代謝、皮膚、聴覚、肝臓、腎臓疾患、または感染症に関連する症状
を処置または予防するために有用であり得る。一実施形態は、増殖性、炎症性、自己免疫
性の神経、眼、呼吸、代謝、皮膚、聴覚、肝臓、腎臓疾患、または感染症を処置する方法
であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載のとおりの二本鎖核酸インヒビター分子
を含む医薬組成物を投与することを含む上記方法を対象とする。
【0186】
ある特定の実施形態では、上記障害は、希少疾患、慢性肝疾患、慢性腎疾患、心臓血管
疾患またはウイルス性感染症である。ある特定の実施形態では、上記障害は、原発性高シ
ュウ酸尿症(PH1、PH2、またはPH3)または特発性高シュウ酸尿症を含む高シュ
ウ酸尿症である。ある特定の実施形態では、上記障害は、慢性腎臓障害(CKD)である
。ある特定の実施形態では、上記障害は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症である。あ
る特定の実施形態では、上記障害は、アルファ-1抗トリプシン(A1AT)不全症であ
る。
【0187】
ある特定の実施形態では、上記障害は、がんである。そのようながんの非限定的例には
、胆管癌、膀胱癌、移行上皮癌、尿路上皮癌、脳癌、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、乳癌
、化生性癌、子宮頸癌、子宮頸部扁平上皮癌、直腸癌、結腸直腸癌、結腸癌、遺伝性非ポ
リポーシス大腸癌、結腸直腸腺癌、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮内膜癌、子宮内膜
間質肉腫、食道癌、食道扁平上皮癌、食道腺癌、眼内黒色腫、ブドウ膜黒色腫、胆嚢癌、
胆嚢腺癌、腎細胞癌、明細胞腎細胞癌、移行上皮癌、尿路上皮癌、ウィルムス腫瘍、白血
病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病
(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、肝臓癌
、肝臓癌腫、肝細胞癌(hepatoma)、肝細胞癌腫(hepatocellula
r carcinoma)、胆管癌、肝芽腫、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、中皮
腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、マントル細胞リ
ンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前駆T細胞リンパ芽球性リンパ腫/白血
病、末梢T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌(NPC)、神経芽細胞腫、口腔咽頭
癌、口腔扁平上皮癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵管腺癌、偽乳頭状腫瘍、腺房細胞癌が
含まれる。前立腺癌、前立腺腺癌、皮膚癌、黒色腫、悪性黒色腫、皮膚黒色腫、小腸癌、
胃癌(stomach cancer)、胃癌腫(gastric carcinoma
)、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮癌、または子宮肉腫。典型的には、本開示は、治
療有効量の本明細書に記載のとおりの医薬組成物を投与することにより、肝臓癌、肝臓癌
腫、肝細胞癌(hepatoma)、肝細胞癌腫(hepatocellular ca
rcinoma)、胆管癌及び肝芽腫を処置する方法を特徴とする。
【0188】
一部の実施形態では、本開示は、対象において標的遺伝子の発現を減少させるための方
法であって、それを必要とする対象に、医薬組成物を、上記標的遺伝子の発現を減少させ
るために十分な量で投与することを含み、その際、上記医薬組成物が、本明細書に記載の
とおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子と、同じく本明細書に記載のとおり
の薬学的に許容される添加剤とを含む上記方法を提供する。
【0189】
上記標的遺伝子は、任意の哺乳類からの標的遺伝子、例えば、ヒト標的遺伝子であり得
る。任意の標的遺伝子を、本方法に従ってサイレンシングすることができる。ある特定の
実施形態では、例えば、AGXT、GRHPR、HOGA1、HAO1、SERPINA
1、またはLDHAを含む、上記標的遺伝子は、慢性肝疾患または慢性腎臓疾患と関連す
る。ある特定の実施形態では、例えば、HBV遺伝子またはHCV遺伝子を含む、上記標
的遺伝子は、ウイルス性感染症と関連する。ある特定の実施形態では、例えば、APOC
3またはPCSK9を含む、上記標的遺伝子は、心臓血管疾患と関連する。ある特定の実
施形態では、例えば、ALDH2を含む、上記標的遺伝子は、アルコール代謝及び肝臓機
能と関連する。
【0190】
他の例示的な標的遺伝子には、これに限定されないが、KRAS、VII因子、Eg5
、PCSK9、TPX2、apoB、SAA1、TTR、PDGFベータ遺伝子、Erb
-B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺
伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、
MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL-2遺伝子、サイクリンD遺伝子、
VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT-
1遺伝子、ベータ-カテニン遺伝子、c-MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子
、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI
遺伝子、トポイソメラーゼIIアルファ遺伝子、p73遺伝子、p21(WAF1/CI
P1)遺伝子、p27(KIP1)遺伝子、PPM1D遺伝子、RAS遺伝子、カベオリ
ンI遺伝子、MIB I遺伝子、MTAI遺伝子、M68遺伝子、腫瘍抑制因子遺伝子の
変異、p53腫瘍抑制因子遺伝子、及びそれらの組合せが含まれる。
【0191】
投薬及びスケジュール
典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子を、非経口投与する(例えば、静脈内、
筋肉内、または皮下投与を介して)。他の実施形態では、上記医薬組成物を、局所投与ま
たは全身投与により送達する。しかしながら、本明細書に開示の医薬組成物を、例えば、
頬側、舌下、直腸、膣、尿道内、局所、眼内、鼻腔内、及び/または耳内を含む当技術分
野で公知の任意の方法により投与することもでき、その投与は、錠剤、カプセル剤、顆粒
剤、水性懸濁剤、ゲル剤、噴霧剤、坐剤、軟膏剤(salves)、軟膏剤(ointm
ents)などを含み得る。
【0192】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子を、1日にレシピエントの
体重1キログラム当たり20マイクログラム~10ミリグラム、1キログラム当たり10
0マイクログラム~5ミリグラム、1キログラム当たり0.1ミリグラム~5.0ミリグ
ラム、1キログラム当たり0.25ミリグラム~5.0ミリグラム、または1キログラム
当たり0.2ミリグラム~3.0ミリグラムの投薬量で投与する。典型的には、上記二本
鎖核酸インヒビター分子を、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり約0.25ミ
リグラム~2.0ミリグラム、例えば、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり0
.3ミリグラム、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり0.5ミリグラム、また
は1日にレシピエントの体重1キログラム当たり1ミリグラムの投薬量で投与する。
【0193】
本開示の医薬組成物は、毎日、または断続的に投与することができる。例えば、上記二
本鎖核酸インヒビター分子の断続的投与を、週に1~6日、月に1~6日、週1回、隔週
1回、1か月に1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、または年に1回もしくは2
回投与することができるか、または複数年、月、週、または1日用量に分割することがで
きる。一部の実施形態では、断続的投薬は、初回の二本鎖核酸インヒビター分子投与、続
く、最大1週間、最大1ヶ月、最大2ヶ月、最大3ヶ月または最大6ヶ月以上にわたる投
与のない休息期間の周期での投与を意味し得るか、または1日おき、1週間おき、1ヶ月
おき、または1年おきでの投与を意味し得る。
【0194】
上記二本鎖核酸インヒビター分子の治療有効量は、投与経路及び患者の身体的特徴、例
えば、対象の体格及び体重、疾患の進行または侵入の程度、対象の年齢、健康状態、及び
性別に依存し得、かつこれら及び他の要因に応じて、必要な場合には調節することができ
る。
【実施例0195】
実施例1:トリループ及びテトラループを含有する二本鎖核酸インヒビター分子のin
vivo用量応答
様々なステム長さに加えて、テトラループ及びトリループを含有する二本鎖核酸インヒ
ビター分子を用量反応研究において評価した。雌のCD-1マウスを研究群に分け、その
群に割り当てられた試験核酸インヒビター分子を投与した。4匹の雌のCD-1マウスに
それぞれ、5種の試験核酸インヒビター分子のそれぞれを0.1mg/kg、0.2mg
/kg、0.4mg/kg、0.8mg/kg、1.6mg/kg、及び3.2mg/k
gで投与した。加えて、4匹の対照CD-1マウスにプラセボ(PBS)を投与したので
、総試料サイズはマウス124匹であった。投与は皮下及び単回用量であり、投与4日後
にマウスを屠殺した。薬力学研究を行い、かつ肝臓試料をRT-qPCRのために採取し
た。組織試料をQIAzol(登録商標)Lysis試薬中で、TissueLyser
II(Qiagen、Valencia、CA)を使用して均質化した。次いで、RN
Aを、製造者指示書(ThermoFisher Scientific、Waltha
m、MA)に従ってMagMAX技術を使用して精製した。高容量cDNA逆転写キット
(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を使用し
て、cDNAを調製した。標的配列のためのプライマーをPCRのために、CFX384
Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad
Laboratories,Inc.,Hercules,CA)で使用した。
【0196】
実施例1において使用された5種の試験核酸インヒビター分子(コンストラクト1~5
)は図2A~Eに示されている。GalNAc及び二環式ヌクレオチドにコンジュゲート
しているループ中のヌクレオチドを除いて、試験核酸インヒビター分子中の他のすべての
ヌクレオチドは、糖部分の2’-位において、2’-Fまたは2’-OMeのいずれかで
修飾されている。上記試験核酸インヒビター分子は、次の点において異なった:ループ部
分の長さ(テトラループ対トリループ);ステム部分の長さ(6塩基対対3塩基対);二
環式ヌクレオチドの存在または非存在;及びループ中のGalNAcの数(2対3)。図
2A~E中の核酸インヒビター分子を、次の表にまとめる:
表1:図1中の試験核酸インヒビター
【0197】
長ステム(6塩基対)テトラループコンストラクト1及び2は同一であり、唯一の差違
は、ループ中のGalNAcの数(3対2)である。長ステムコンストラクト2は、長ス
テムコンストラクト3と同一であるが、ただし、コンストラクト2はテトラループを有す
る一方で、コンストラクト3はトリループを有する。長ステムコンストラクト3は、短ス
テム(3塩基対)コンストラクト4と同一であるが、ただし、コンストラクト3は、6塩
基対のステム二本鎖を有し、二環式ヌクレオチドを有さない一方で、コンストラクト4は
、3塩基対のステム二本鎖を有し、ステム二本鎖中のヌクレオチドのすべてが二環式ヌク
レオチドである。短ステムコンストラクト4及び5は、同一であり、唯一の差違は、コン
ストラクト4のステムには6つのBNANC[NMe]が存在し、かつコンストラクト5の
ステムには6つのLNA二環式ヌクレオチドが存在することである。コンストラクト4中
で使用される二環式ヌクレオチドはBNANC[NMe]であり、その際、二環式ヌクレオ
チドの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋は、4’-CH2-N(CH3)-O-2
’である。コンストラクト5で使用される二環式ヌクレオチドはLNAであり、その際、
二環式ヌクレオチドの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋は、4’-(CH2)-
O-2’である。
【0198】
非線形回帰分析(GraphPad Prismソフトウェア)を使用して、log[
mg/kg]に関してPBSと比べて50%パーセントの標的遺伝子残留に基づき、有効
用量(ED50)曲線を計算した。テトラループ長ステム(6塩基対)核酸分子を、トリル
ープの長ステム核酸分子と比較した。加えて、BNANC[NMe]を含有するトリループ
短ステム(3塩基対)核酸インヒビター分子を、LNAを含有する対応するトリループ短
ステム核酸分子と比較した。これらをまた、二環式ヌクレオチドを含まないトリループ及
びテトラループ長ステム(ステム中に6塩基対)核酸分子と比較した。図3及び4におい
て示されているとおり、2つまたは3つのいずれかのGalNAcを含む対応するテトラ
ループ核酸分子(コンストラクト1及び2)と比較して、トリループ長ステム核酸インヒ
ビター分子(コンストラクト3)及び短ステム中に二環式ヌクレオチドを含むトリループ
短ステム核酸分子(コンストラクト4及び5)の両方が、同様の効力の標的遺伝子ノック
ダウンを示した。
【0199】
実施例2:標的遺伝子ノックダウンについての、テトラループ及びトリループを含有する
二本鎖核酸インヒビター分子のin vivo効力
雌のCD-1マウスを研究群に分け、その群に割り当てられた試験核酸インヒビター分
子を投与した。実施例2で使用された試験核酸インヒビター分子(コンストラクト6~1
3)は、図6A~Hに示されている。コンストラクト1(図2Aを参照されたい)も使用
した。GalNAc及び二環式ヌクレオチドにコンジュゲートしているループ中のヌクレ
オチドを除いて、試験核酸インヒビター分子中の他のすべてのヌクレオチドは、糖部分の
2’-位において、2’-OMeまたは2’-Fのいずれかで修飾されている。上記試験
核酸インヒビター分子は、次の点において異なった:ループ部分の長さ(テトラループ対
トリループ);ステム部分の長さ(6塩基対、3塩基対、2塩基対、及び1塩基対);及
び二環式ヌクレオチドの存在または非存在。図6A~H中の核酸インヒビター分子を次の
表にまとめる:
表2:図6中の試験核酸インヒビター
【0200】
長ステム(6塩基対)コンストラクト6及び7は同一であり、唯一の差違は、ループ中
のヌクレオチドの数(テトラループ対トリループ)である。コンストラクト1はコンスト
ラクト6と同一であるが、ただし、コンストラクト1は、テトラループにコンジュゲート
している3つのGalNAcを含有する一方で、コンストラクト6は、テトラループにコ
ンジュゲートしている2つのGalNAcを含有する。コンストラクト8(3塩基対ステ
ム)は、コンストラクト9と同一であるが(3塩基対ステム)、ただし、コンストラクト
8はテトラループを有する一方で、コンストラクト9はトリループを有する。コンストラ
クト10及び11(2塩基対ステム)は同一であり、唯一の差違は、コンストラクト10
がテトラループを有する一方で、コンストラクト11がトリループを有することである。
コンストラクト12及び13(1塩基対ステム)は同一であり、唯一の差違は、コンスト
ラクト12がテトラループを有する一方で、コンストラクト13がトリループを有するこ
とである。コンストラクト8~13で使用される二環式ヌクレオチドは、BNANC[NM
e]である。
【0201】
動物に、単回0.5mg/kg用量の、割り当てられた試験核酸インヒビター分子を皮
下投与し、マウスを投与4日後に屠殺した。肝臓組織を、2つの4mmパンチの生検を採
取することにより収集し、これを、後のmRNA分析のために、Invitrogen(
商標)RNAlater(商標)溶液(Thermo Fisher Scientif
ic,Waltham,MA)中で貯蔵した。組織試料を、QIAzol(登録商標)L
ysis試薬中で、TissueLyser II(Qiagen,Valencia,
CA)を使用して均質化した。次いで、RNAを、製造者指示書(ThermoFish
er Scientific、Waltham、MA)に従ってMagMAX技術を使用
して精製した。高容量cDNA逆転写キット(ThermoFisher Scient
ific、Waltham、MA)を使用して、cDNAを調製した。標的配列のための
プライマーをPCRのために、CFX384 Real-Time PCR Detec
tion System(Bio-Rad Laboratories,Inc.,He
rcules,CA)で使用した。
【0202】
トリループ試験核酸インヒビター分子(コンストラクト7、9、11、及び13)を、
試験核酸分子の対応するテトラループバージョン(それぞれコンストラクト1、6、8、
10、及び12)と比較した。図7で実証されているとおり、トリループを含有する試験
核酸インヒビター分子は、6塩基対、3塩基対、及び2塩基対コンストラクトについて、
対応するテトラループ試験核酸分子と比較して、標的遺伝子mRNAの同様のノックダウ
ンを示した。2つのGalNAcにコンジュゲートしているトリループを含有し、かつス
テム中に2つの塩基対を有するコンストラクト11は、3つのGalNAcにコンジュゲ
ートしているトリループを含有し、かつステム中に6つの塩基対を有するコンストラクト
1よりも高い効力を有した。トリループをステム中の1塩基対と共に含むコンストラクト
13は、標的遺伝子mRNAのノックダウンを示さなかったが、テトラループ及びステム
中の1塩基対を含むコンストラクト12は、標的遺伝子mRNAの実質的なノックダウン
を示した。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-05-21
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0033
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0033】
別の態様は、治療有効量の、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸イン
ヒビター分子と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を対象とする。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0057
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0057】
賦形剤:本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、組成物に含まれ、例え
ば、所望の粘稠度または安定効果をもたらす、またはこれに寄与し得る非治療薬を指す。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0078
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0078】
医薬組成物:本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、薬理学的に有
効な量の二本鎖核酸インヒビター分子及び薬学的に許容可能な賦形剤(本明細書で定義す
るとおり)を含む。
【誤訳訂正4】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0079
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0079】
薬学的に許容可能な賦形剤:本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な賦形剤
」という用語は、その賦形剤が、合理的なベネフィット/リスク比に相応して、過度に有
害な副作用(例えば、毒性、刺激、及びアレルギー反応)を伴わずに、ヒト及び/または
動物での使用に適しているものであることを意味する。
【誤訳訂正5】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0168
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0168】
医薬組成物
本開示は、治療有効量の、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒ
ビター分子と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【誤訳訂正6】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0169
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0169】
これらの医薬組成物を、慣例の減菌技術で滅菌してもよいし、または滅菌濾過してもよ
い。得られた水溶液を、そのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥することが
でき、その際、凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌水性賦形剤と組み合わせる。製剤のpHは
典型的には、3~11、より好ましくは5~9または6~8、最も好ましくは7~8、例
えば、7~7.5であろう。
【誤訳訂正7】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0172
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0172】
薬学的に許容可能な賦形剤
本開示において有用な薬学的に許容可能な賦形剤は典型的には、従来のものである。E
.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,
15th Edition(1975)によるRemington’s Pharmace
utical Sciencesは、1つまたは複数の治療用組成物の医薬送達に適した
組成物及び製剤を記載している。薬学的に許容可能な賦形剤としての役割を果たし得る材
料のいくつかの例には、糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン
、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、
例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース
;麦芽;ゼラチン;賦形剤、例えば、カカオ脂及び坐剤用ワックス;油、例えば、ラッカ
セイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリブ油、トウモロコシ油及びダイズ油;緩衝剤
、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(等張食塩水、リンゲル液);
エチルアルコール;pH緩衝液;ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコ
ール、ポリエチレングリコールなど;ならびに医薬製剤で使用される他の非毒性適合性物
質が含まれる。
【誤訳訂正8】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0173
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0173】
剤形
上記医薬組成物を、普通の実施に従って選択され得る任意の意図された投与経路用の従
来の賦形剤と共に製剤化することができる。
【誤訳訂正9】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0188
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0188】
一部の実施形態では、本開示は、対象において標的遺伝子の発現を減少させるための方
法であって、それを必要とする対象に、医薬組成物を、上記標的遺伝子の発現を減少させ
るために十分な量で投与することを含み、その際、上記医薬組成物が、本明細書に記載の
とおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子と、同じく本明細書に記載のとおり
の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む上記方法を提供する。
【外国語明細書】