(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109589
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】コーティングされたガラス基板を調整するための方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20240806BHJP
C03B 18/14 20060101ALI20240806BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20240806BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
C03B18/14
B32B17/00
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071135
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2021543588の分割
【原出願日】2019-10-08
(31)【優先権主張番号】1816381.6
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(72)【発明者】
【氏名】デボラ ライスベック
(72)【発明者】
【氏名】ポール アンドリュー スキナー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス‐エックハルト ライトル
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジョン グリン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド リマー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン デイビッド サンダーソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガラス基板のシート抵抗を改善するための、コーティングされたガラス基板の調製方法を提供する。
【解決手段】コーティングされたガラス基板2を調製するための化学蒸着方法であって、前記方法は、少なくとも、(a)表面を有するガラス基板2を提供するステップと、(b)前記ガラス基板の表面にSiCOおよび/またはSiNOに基づく層3を堆積するステップと、(c)前記SiCOおよび/またはSiNOに基づく層3を、水を含むガス混合物(i)に曝露するステップと、(d)続いて、前記SiCOおよび/またはSiNOに基づく層3の上方にTCOに基づく層4、5を堆積するステップと、を順に含む、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされたガラス基板を調製するための化学蒸着方法であって、
前記方法は、少なくとも、
(a)表面を有するガラス基板を提供するステップと、
(b)前記ガラス基板の前記表面にSiCOおよび/またはSiNOに基づく層を堆積
するステップと、
(c)前記SiCOおよび/またはSiNOに基づく層を、水を含むガス混合物(i)
に曝露するステップと、
(d)続いて、前記SiCOおよび/またはSiNOに基づく層の上にTCOに基づく
層を堆積するステップと、
を順に含む、方法。
【請求項2】
前記SiCOおよび/またはSiNOに基づく層を、ステップ(c)において水を含む
ガス混合物(i)に曝露し、それにより酸化物イオンをSiCOおよび/またはSiNO
に基づく層に組み込む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)は、前記SiCOおよび/またはSiNOに基づく層上にさらなる層を
堆積することなく行われる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス混合物(i)は、酸素をも含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項5】
前記SiCOおよび/またはSiNOに基づく層は、ステップ(c)および(d)の間
に、酸素を含むガス混合物(iii)に曝される、請求項1から4のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項6】
前記ガス混合物(i)は、少なくとも1.5:1体積、好ましくは少なくとも3:1体
積の水対酸素の比を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス混合物(i)は、25~65体積%の水および2~20体積%の酸素を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)において、前記水は、少なくとも50slm(標準リットル/分)、好
ましくは少なくとも100slm、より好ましくは少なくとも150slm、最も好まし
くは少なくとも190slmの流量で送達されるが、好ましくは最大350slm、より
好ましくは最大300slm、さらにより好ましくは最大250slm、最も好ましくは
最大210slmの流量で送達される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(c)において、前記酸素は、少なくとも15slm、より好ましくは少なく
とも20slm、さらにより好ましくは少なくとも25slm、最も好ましくは少なくと
も30slmの流量で送達されるが、好ましくは最大で55slm、より好ましくは最大
で50slm、さらにより好ましくは最大で45slm、最も好ましくは最大で40sl
mの流量で送達される、請求項4、6または7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)は、非酸化性雰囲気中で実施される、請求項1から9のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)、(c)および(d)がすべてフロートバス内で実施される、請求項1
から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)は、前記ガラス基板の前記表面を、シリコン源、炭素源および酸素源を
含むガス混合物(ii)に曝露することによって実施される、請求項1から11のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項13】
前記TCOに基づく層は、前記SiCOに基づく層上に直接堆積される、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)は、前記透明ガラス基板が少なくとも640°C、より好ましくは少な
くとも670°C、好ましくは最大760°C、より好ましくは最大740°Cの温度に
あるときに実施される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティングされたガラス基板は、最大21オーム/sq、好ましくは最大20オ
ーム/sq、好ましくは少なくとも5オーム/sq、より好ましくは少なくとも10オー
ム/sqのシート抵抗を示す、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングされたガラス基板は、ASTM D1003-13に従って試験され
たとき、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも0.8%、より好ましくは少なくと
も1%、最も好ましくは少なくとも1.2%、のヘイズ(曇り度)を示すが、好ましくは
最大5%、より好ましくは最大3%、さらにより好ましくは最大2.5%、最も好ましく
は最大2.3%のヘイズ(曇り度)を示す、請求項1から15のいずれか一項に記載の方
法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法を実行することによって調製されたコー
ティングされたガラス基板によって示されるシート抵抗を低減するための水および必要に
応じた酸素の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされたガラス基板を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電性(PV)セルまたは太陽電池は、太陽光を直流(DC)電力に変換する材料接
合デバイスである。太陽光(光子からのエネルギーからなる)にさらされると、PVセル
のp-n接合の電界が自由電子と正孔とのペアを分離し、光起電力を生成する。n側から
p側への回路は、PVセルが電気負荷に接続されているときに電子の流れを可能にし、そ
の間PVセル接合部の面積およびその他のパラメータが利用可能な電流を決定する。
【0003】
本発明の文脈では、「PVセル」という用語は、集合体の寸法、電圧および発生する電
流の強度がどのようなものであっても、およびこの構成要素の集合体が1つ以上の内部電
気接続(直列および/または並列)を有するか否かにかかわらず、太陽放射の変換によっ
て電極間に電流を発生させる構成要素の集合体を含むことを理解されたい。したがって、
本発明の意味における「PVセル」という用語は、ここでは「光起電性デバイス」または
「光起電性パネル」と同様に、「光起電性モジュール」、「太陽電池」または「太陽光パ
ネル」とも等価である。
【0004】
PVセルは、n型の材料とp型の材料とを接合し、その間に接合部と呼ばれる層を有す
る。光がない場合でも、少数の電子が接合部を横切ってn型からp型の半導体に移動し、
低電圧を生成する。光の存在下で、光子は多数の電子を追い出し、それらは接合部を横切
って流れ、電気デバイスに電力を供給するために使用され得る電流を生成する。
【0005】
従来のPVセルは、n型層およびp型層にシリコンを用いている。最新世代の薄膜PV
セルは、代わりにテルル化カドミウム(CdTe)、アモルファスまたは微結晶シリコン
、または二セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)の薄層を使用している。
【0006】
半導体接合部は、アモルファスシリコン(a-Si)のp-i-nデバイスとして、ま
たはCdTeとCIGSとのヘテロ接合(例えば、ほとんどの太陽光を通過させる薄い硫
化カドミウム層を有する)として、さまざまな方法で形成される。最も単純な形態では、
a-Siセルは、太陽にさらされると、出力が大幅に低下する(15~35%の範囲)。
安定性を高めるには、より薄い層を使用する必要があるが、これにより光吸収が低下し、
セルの効率が低下する。これにより、業界は、p-i-nセルを頂点に交互に積み重ねた
タンデムおよびトリプルジャンクションデバイスを開発するようになった。
【0007】
一般に、透明導電性酸化物(TCO)層は薄膜光起電性セルの前面電気接点を形成し、
金属層は背面接点を形成する。TCOは、ドープされた酸化亜鉛(例えば、ZnO:Al
[ZAO]またはZnO:B)、フッ素でドープされた酸化スズ(SnO2:F)または
インジウムおよびスズの酸化物材料(ITO)に基づき得る。これらの材料は、例えば化
学蒸着(「CVD」)などによって化学的に堆積されるか、または例えばマグネトロンス
パッタリングによる真空堆積によって物理的に堆積される。
【0008】
TCO層は、ガラス基板上の層のスタックの一部として堆積され得る。ガラス基板に隣
接するベース層は、一般に、色の抑制を可能にし、ナトリウムイオンが任意の上にある層
に移動するのを防ぐために提供される。ベース層にはSnO2とSiO2とが使用されて
いるが、耐久性とボイド欠陥のレベルの低減という点とにおいて利点を有するSiCO(
酸化ケイ素)が代替材料である。しかしながら、SiCOベース層が不活性雰囲気で堆積
される場合、例えば、フロートバス内側では、上にあるTCO層は、光起電性セルに求め
られるシート抵抗よりも高いシート抵抗を示し得る。したがって、少なくともこの問題を
軽減するプロセスを提供することは有利となるであろう。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、コーティングされたガラス基板を調製するための化学蒸
着プロセスが提供され、
当該プロセスは、少なくとも、
(a)表面を有するガラス基板を提供するステップと、
(b)ガラス基板の表面にSiCOおよび/またはSiNOに基づく層を堆積するステッ
プと、
(c)SiCOおよび/またはSiNOに基づく層を、水を含むガス混合物(i)に曝露
するステップと、
(d)続いて、SiCOおよび/またはSiNOに基づく層の上にTCOに基づく層を堆
積するステップと、
を順に含む。
【0010】
驚くべきことに、TCOに基づく層を堆積する前に、SiCOおよび/またはSiNO
に基づく層を水を含むガス混合物(i)で処理すると、TCOに基づく層が示すシート抵
抗が改善される(すなわち、低下する)ことがわかった。
【0011】
層が特定の材料または特定の複数の材料に「基づく」と言われる本発明の文脈において
、これは、層が主に対応する当該材料または当該複数の材料からなることを意味し、これ
は通常当該材料または当該複数の材料の少なくとも約50at.%を含むことを意味する
。
【0012】
本発明の以下の記述において、特段の記載がない限り、パラメータの許容範囲の上限ま
たは下限の代替値の開示は、前述の値の一方が他方よりも非常に好ましいという指示と相
まって、前述のパラメータの各中間値は、前述の代替案のより好ましいものとより好まし
くないものとの間にあり、それ自体が、前述のあまり好ましくない値よりも好ましく、ま
た前述のあまり好ましくない値と前述の中間値との間にある各値よりも好ましいという、
言外に含まれた記載として解釈されるべきである。
【0013】
この仕様全体を通して、「備える」または「含む」(“comprising”または
“comprises”)」という用語は、指定された構成要素を含むことを意味するが
、他の構成要素の存在を排除するものではない。「実質的に~からなる(“consis
ting essentially of”または“consists essenti
ally of”)」という用語は、指定された構成要素を含むが、不純物として存在す
る材料、構成要素を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材
料、および本発明の技術的効果を達成するよりもむしろ他の目的のために追加された構成
要素を除く他の構成要素を除外することを意味する。通常、組成物に言及する場合、実質
的に一組の成分からなる組成物は、5重量%未満、通常3重量%未満、より典型的には1
重量%未満の不特定の成分を含む。
【0014】
「からなる(“consisting of”または“consists of”)」
という用語は、指定された構成要素を含み、他の構成要素を除外することを意味する。
【0015】
適切な場合はいつでも、文脈に応じて、「備える」または「含む」(“compris
es” or “comprising”)という用語の使用は、「実質的に~からなる
(“consisting essentially of”または“consists
essentially of”)」という意味を含むとも解釈され得、また、「から
なる(“consists of”または“consisting of”)」という意
味を含むとも解釈され得る。
【0016】
「x~yの範囲」などの本明細書での言及は、「xからyまで」の解釈を含むことを意
味し、したがって、値xおよびyを含む。
【0017】
本発明の文脈において、層の「厚さ」は、層の表面上の任意の所定の位置について、層
の最小寸法の方向における、層の表面での前述の所定の位置から、当該層の反対側の表面
の位置までの、層を通る距離によって表される。
【0018】
本発明の文脈において、透明材料または透明基板は、可視光を透過することが可能であ
る材料または基板であり、その結果、前述の材料の向こう側または後ろに位置する物体ま
たは画像は、前述の材料または基板を通してはっきりと見ることができる。
【0019】
本発明の文脈において、「誘導体」は、別の化学物質に構造的に関連し、それから理論
的に誘導可能な化学物質である。
【0020】
好ましくは、SiCOおよび/またはSiNOに基づく層は、SiCOに基づく層であ
る。
【0021】
好ましくは、SiCOおよび/またはSiNOに基づく層を、ステップ(c)で水を含
むガス混合物(i)に曝露し、それにより、酸化物イオンをSiCOおよび/またはSi
NOに基づく層に組み込む。好ましくは、ステップ(c)は、SiCOおよび/またはS
iNOに基づく層上にさらなる層を堆積することなく行われる。
【0022】
好ましくは、ガス混合物(i)は、酸素をも含む。あるいは、または加えて、SiCO
および/またはSiNOに基づく層は、ステップ(c)と(d)との間に、酸素を含むガ
ス混合物(iii)に曝され得る。
【0023】
好ましくは、ガス混合物(i)は、実質的に、水、酸素、および必要に応じて不活性ガ
スからなり、より好ましくは、水、酸素、および必要に応じて不活性ガスからなる。最も
好ましくは、ガス混合物(i)は、水、酸素、および不活性ガスからなる。
【0024】
好ましくは、プロセスは、実質的に、第1の態様に記載された順序のステップからなり
、好ましくは、第1の態様に記載された順序のステップからなる。
【0025】
好ましくは、ガス混合物(i)は、少なくとも1.5:1体積、より好ましくは少なく
とも3:1体積、さらにより好ましくは少なくとも4:1体積、最も好ましくは少なくと
も5.5:1体積の水対酸素の比を含むが、好ましくは最大で50:1体積、より好まし
くは最大で10:1体積、さらにより好ましくは最大で7:1体積、最も好ましくは最大
で6:1体積の水対酸素の比を含む。
【0026】
好ましい実施形態では、ガス混合物(i)は、25~65体積%の水および2~20体
積%の酸素を含む。より好ましくは、ガス混合物(i)は、40~50体積%の水および
5~10体積%の酸素を含む。
【0027】
ガス混合物(i)は、好ましくは、窒素またはヘリウムなどの不活性ガスまたはそれら
の混合物をも含む。好ましくは、不活性ガスは窒素である。こうして、このプロセスは、
そこから別個の供給ラインが延在し得る1つ以上の不活性ガスの供給源を提供することを
含み得る。好ましくは、ガス混合物(i)はまた、窒素などの少なくとも25体積%~6
5体積%の不活性ガス、より好ましくは窒素などの40体積%~50体積%の不活性ガス
をも含む。
【0028】
好ましくは、ステップ(c)において、水は、少なくとも50slm(標準リットル/
分)、より好ましくは少なくとも100slm、さらにより好ましくは少なくとも150
slm、最も好ましくは少なくとも190slmの流量で送達されるが、好ましくは最大
350slm、より好ましくは最大300slm、さらにより好ましくは最大250sl
m、最も好ましくは最大210slmの流量で送達される。
【0029】
好ましくは、ステップ(c)において、存在する場合、酸素は、少なくとも15slm
、より好ましくは少なくとも20slm、さらにより好ましくは少なくとも25slm、
最も好ましくは少なくとも30slmの流量で送達されるが、好ましくは最大で55sl
m、より好ましくは最大で50slm、さらにより好ましくは最大で45slm、最も好
ましくは最大で40slmで送達される。好ましくは、酸素は、少なくとも15slm、
より好ましくは少なくとも20slm、さらにより好ましくは少なくとも25slm、最
も好ましくは少なくとも30slmの流量でガス混合物(iii)に送達されるが、好ま
しくは最大で55slm、より好ましくは最大で50slm、さらにより好ましくは最大
で45slm、最も好ましくは最大で40slmで送達される。
【0030】
好ましくは、ステップ(c)において、存在する場合、窒素などの不活性ガスは、少な
くとも50slm(標準リットル/分)、より好ましくは少なくとも100slm、さら
により好ましくは少なくとも150slm、最も好ましくは少なくとも190slmsl
mの流量で送達されるが、好ましくは最大350slm、より好ましくは最大300sl
m、さらにより好ましくは最大250slm、最も好ましくは最大210slmで送達さ
れる。
【0031】
このプロセスは、ガラス基板、好ましくは透明なガラス基板の製造と併せて実施され得
る。一実施形態では、透明ガラス基板は、周知のフロートガラス製造プロセスを利用して
形成され得る。この実施形態では、透明なガラス基板は、ガラスリボンとも呼ばれ得る。
化学蒸着(CVD)の好ましい方法は、大気圧CVD(例えば、フロートガラスプロセス
中に実行されるオンラインCVD)である。しかしながら、このプロセスは、フロートガ
ラスの製造プロセスとは別に、またはガラスリボンの形成および切断の後に十分に利用で
きることを理解されたい。
【0032】
便利なことに、このプロセスは、フロートバス、アニーリングレール、またはレールギ
ャップのいずれかで実行され得る。レールギャップは、フロートバスとアニーリングレー
ルとの間の領域として画定される。レールギャップでは、周囲雰囲気は、フロートバスの
還元雰囲気からアニーリングレール内の酸化(大気)雰囲気に変化し得る。
【0033】
好ましくは、ステップ(b)は、非酸化性雰囲気中で実施される。本発明の文脈におい
て、「非酸化性雰囲気」という用語は、酸素、過酸化水素またはハロゲンなどの酸化剤を
含有する雰囲気を意味する。好ましくは、ステップ(b)はフロートバスで実行される。
より好ましくは、ステップ(b)および(c)の両方がフロートバスで実行される。さら
により好ましくは、ステップ(b)、(c)および(d)はすべてフロートバスで実行さ
れる。
【0034】
好ましくは、ステップ(b)は、ガラス基板の表面を、シリコン源、炭素源、および酸
素源を含むガス混合物(ii)に曝露することによって実行される。
【0035】
好ましくは、シリコン源は、モノシラン、ジメチルシランまたはジシランなどのシラン
であり、好ましくはモノシランである。
【0036】
好ましくは、炭素源は、エチレン性不飽和炭化水素化合物(例えば、エチレン)、アセ
チレン性不飽和化合物(例えば、アセチレン)または芳香族化合物(例えば、トルエン)
などの不飽和炭化水素化合物であるが、一般に、周囲条件下でガス状の不飽和炭化水素を
使用するのが最も便利である。不飽和炭化水素は、好ましくはオレフィンであり、2~4
個の炭素原子を含むオレフィンであることが便利である。エチレンが特に好ましい。
【0037】
酸素源は、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、二酸化硫黄、窒素酸化物(亜酸化窒素、
一酸化窒素、または二酸化窒素)などのガス状酸化物、およびオレフィン酸化物、特にエ
チレン酸化物であり得る。好ましくは、酸素源は二酸化炭素である。
【0038】
酸素源のさらなる例は、カルボニル化合物(特にケトンおよびアルデヒド)、エーテル
およびアルコールを含む有機酸素含有化合物である。一般に、室温で少なくとも10mm
の蒸気圧を有する化合物を使用することが最も便利であり、したがって、この理由のため
に、使用される任意の酸素含有有機化合物は、通常、8以下、好ましくは4以下の炭素原
子を含む。
【0039】
ガス混合物(ii)は、好ましくは、窒素またはヘリウムなどの不活性ガスまたはそれ
らの混合物をも含む。好ましくは、不活性ガスは窒素である。
【0040】
好ましくは、TCOに基づく層は、SiCOに基づく層に直接堆積される。あるいは、
前述のTCOに基づく層は、SiCOおよび/またはSiNOに基づく層に間接的に堆積
され得る。すなわち、前述のTCOに基づく層は、SiCOおよび/またはSiNOに基
づく層上に以前に堆積された1つ以上の層上に堆積され得る。例えば、前述のTCOに基
づく層は、酸化スズに基づく層上および/またはシリカに基づく層の上に堆積され得る。
したがって、ステップ(d)は、TCOに基づく層が堆積される前に、SiCOおよび/
またはSiNOに基づく層の上に1つ以上の層を堆積することをさらに含み得る。
【0041】
好ましくは、TCOに基づく層は、1つ以上のフッ素ドープ酸化スズ(SnO2:F)
、アルミニウム、ガリウムまたはホウ素でドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO
:Ga、ZnO:B)、スズでドープされた酸化インジウム(ITO)、スズ酸カドミウ
ム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In2O3、In2O3-ZnO(IZO)、In
2O3:Ti、In2O3:Mo、In2O3:Ga、In2O3:W、In2O3:Z
r、In2O3:Nb、In2-2xMxSnxO3(MはZnまたはCu)、ZnO:
F、Zn0.9Mg0.1O:Ga、および(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、Sn
O2:Co、In2O3:Ni、In2O3:(Sn,Ni)、ZnO:Mn、およびZ
nO:Coを含む。好ましくは、TCOに基づく前述の層は、フッ素ドープ酸化スズ(S
nO2:F)に基づく。最も好ましくは、TCOに基づく前述の層は、フッ素ドープ酸化
スズ(SnO2:F)である。
【0042】
好ましくは、ステップ(d)は、SiCOおよび/またはSiNOに基づく層を、また
はTCOに基づく層が堆積される前に1つ以上の層がSiCOおよび/またはSiNOに
基づく層の上に堆積されている場合は別の層を、ガス混合物(iv)に曝露することによ
って実行される。SnO2:Fの堆積のために、ガス混合物(iv)は、好ましくはジメ
チルスズジクロリド(DMT)、酸素、蒸気、およびHFまたはトリフルオロ酢酸などの
フッ素源を含む。より好ましくは、ガス混合物(iv)はまた、窒素などの不活性ガスを
含む。
【0043】
このプロセスは、好ましくは、透明ガラス基板が450°Cから800°Cの範囲の温
度にあるときに、より好ましくは、透明ガラス基板が550°Cから770°Cの範囲の
温度にあるときに実行され得る。透明なガラス基板がこれらの好ましい温度にあるときに
CVDコーティングを堆積すると、コーティングの結晶化度がより高くなり、強靭性(熱
処理に対する耐性)を向上させ得る。
【0044】
好ましくは、ステップ(b)は、透明ガラス基板が少なくとも670°C、より好まし
くは少なくとも700°C、さらにより好ましくは少なくとも710°C、最も好ましく
は少なくとも720°Cの温度にあるが、好ましくは最大770°C、より好ましくは最
大750°C、さらにより好ましくは最大740°C、最も好ましくは最大730°Cの
温度にあるときに、実施される。
【0045】
好ましくは、ステップ(c)は、透明ガラス基板が少なくとも640°C、より好まし
くは少なくとも670°C、さらにより好ましくは少なくとも680°C、最も好ましく
は少なくとも690°Cの温度にあるが、好ましくは最大760°C、より好ましくは最
大740°C、さらにより好ましくは最大730°C、最も好ましくは最大700°Cの
温度にあるときに、実施される。
【0046】
好ましくは、ステップ(d)は、透明ガラス基板が少なくとも610°C、より好まし
くは少なくとも640°C、さらにより好ましくは少なくとも660°C、最も好ましく
は少なくとも665°Cの温度にあるが、好ましくは最大710°C、より好ましくは最
大690°C、さらにより好ましくは最大680°C、最も好ましくは最大675°Cの
温度にあるときに、実施される。
【0047】
特定の実施形態では、CVDプロセスは、ガラス基板がステップ(b)、(c)および
(d)の時点で移動している動的プロセスである。好ましくは、ガラス基板は、例えば、
ステップ(b)、(c)および/または(d)の間に3m/minを超える所定の速度で
移動する。より好ましくは、ガラス基板は、ステップ(b)、(c)および/または(d
)の間、3m/min~20m/minの速度で移動している。
【0048】
上で詳述したように、好ましくは、プロセスは、実質的に大気圧でフロートガラス製造
プロセス中に実行され得る。あるいは、プロセスは、低圧CVDまたは超高真空CVDを
使用して実行され得る。CVDは、エアロゾル式CVDまたは直接液体注入CVDを使用
して実行され得る。さらに、CVDは、マイクロ波プラズマ式CVD、プラズマCVD、
遠隔プラズマCVD、原子層CVD、燃焼CVD(火炎熱分解)、ホットワイヤCVD、
金属有機CVD、ラピッドサーマルCVD、気相エピキタシーまたは光開始CVDを使用
して実施され得る。ガラス基板は通常、フロートガラス製造施設から真空蒸着施設への保
管または便利な輸送のために、ステップ(d)の後(およびPVDコーティングの蒸着前
)にシートに切断される。
【0049】
当業者によって理解されるように、このプロセスで使用される任意のガス混合物での使
用に適した前駆体化合物は、CVDプロセスでの使用に適しているべきである。そのよう
な化合物は、ある時点で液体または固体であり得るが、揮発性であり、その結果気体混合
物中で使用するために気化し得る。ガス状態になると、前駆体化合物をガス流に含めて、
プロセス中で利用され得る。ガス前駆体化合物の任意の特定の組み合わせについて、特定
の堆積速度およびコーティングの厚さを達成するための最適な濃度および流量は変化し得
る。
【0050】
特定の実施形態では、ガス混合物は、コーティング装置を通して供給され、ステップ(
b)、(c)および(d)のそれぞれの前に、1つ以上のガス分配ビームを利用してコー
ティング装置から排出される。好ましくは、各ガス混合物は、コーティング装置を通して
供給される前に形成される。例えば、前駆体化合物は、コーティング装置の入口に接続さ
れた供給ラインで混合され得る。他の実施形態では、1つ以上のガス混合物をコーティン
グ装置内で形成され得る。
【0051】
1つ以上のガス混合物は、ガラス基板に向かって、およびガラス基板に沿って向けられ
得る。コーティング装置の利用は、1つ以上のガス混合物をガラス基板に向かっておよび
それに沿って向けるのを助ける。好ましくは、1つ以上のガス混合物は、層流でガラス基
板に向かって、およびそれに沿って向けられる。
【0052】
好ましくは、コーティング装置は、ガラス基板を横切って横方向に延在し、その上に所
定の距離で提供される。コーティング装置は、好ましくは、少なくとも1つの所定の位置
に配置される。プロセスがフロートガラス製造プロセスと併せて利用される場合、コーテ
ィング装置は、好ましくは、そのフロートバス部内に提供される。しかしながら、コーテ
ィング装置は、アニーリングレール内、および/またはフロートバスとアニーリングレー
ルとの間のギャップ内に提供され得る。
【0053】
混合物がガラス基板の表面に到達する前に事前反応を防ぐために、1つ以上のガス混合
物を前駆体化合物の熱分解温度よりも低い温度に保つことが望ましい。コーティング装置
内で、ガス混合物は、それが反応する温度よりも低い温度に維持され、ガラス基板の表面
近くの場所に送達され、ここでガラス基板は反応温度より高い温度にある。ステップ(b
)および(d)のガス混合物は、ガラス基板の表面またはその近くで反応して、その上に
所望の層を形成し得る。
【0054】
好ましくは、コーティングされるガラス基板の表面は、ガス側表面である。コーティン
グガラス製造業者は通常、ガス側表面にコーティングを堆積することを好む(フロートガ
ラスのスズ側表面と対照的に)。これは、ガス側表面へのコーティングの堆積がコーティ
ングの特性を向上させ得るためである。好ましくは、前述のガラス基板の表面は、ガラス
基板の主表面である。ガラス基板は透明であることが好ましい。透明なガラス基板は、透
明な金属酸化物ベースのガラスリボンまたはガラス板であり得る。好ましくは、ガラスリ
ボンまたはガラス板は、透明なフロートガラスリボンまたはガラス板であり、好ましくは
、低鉄フロートガラスリボンまたはガラス板である。透明フロートガラスとは、BS E
N572-1およびBSEN 572-2(2004)で定義される組成のガラスを意味
する。透明なフロートガラスの場合、Fe2O3の重量濃度は通常0.11%である。F
e2O3含有量が約0.05重量%未満のフロートガラスは、通常、低鉄フロートガラス
と呼ばれる。このようなガラスは通常、他の成分酸化物と同じ塩基組成を有する。つまり
、低鉄フロートガラスは、透明フロートガラスと同様にソーダ石灰シリカガラスでもある
。通常、低鉄フロートガラスは0.02重量%未満のFe2O3を有する。あるいは、ガ
ラスリボンまたはガラス板は、ホウケイ酸塩ベースのガラスリボンまたはガラス板、アル
カリアルミノケイ酸塩ベースのガラスリボンまたはガラス板、または酸化アルミニウムベ
ースの結晶ガラスリボンまたはガラス板である。
【0055】
コーティングされたガラス基板は、好ましくは最大21オーム/sq、より好ましくは
最大20オーム/sq、さらにより好ましくは最大19オーム/sq、最も好ましくは最
大18.5オーム/sqのシート抵抗を示すが、好ましくは少なくとも5オーム/sq、
より好ましくは少なくとも10オーム/sq、さらにより好ましくは少なくとも14オー
ム/sq、最も好ましくは少なくとも15オーム/sqのシート抵抗を示す。
【0056】
コーティングされたガラス基板は、ASTM D1003-13に従って試験した場合
、好ましくは、少なくとも0.5%、より好ましくは少なくとも0.8%、さらにより好
ましくは少なくとも1%、最も好ましくは少なくとも1.2%のヘイズ(曇り度)を示す
が、好ましくは最大5%、より好ましくは最大3%、さらにより好ましくは最大2.5%
、最も好ましくは最大2.3%のヘイズを示す。これらの好ましいヘイズ値は、光起電性
セルの効率にとって有益である。
【0057】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様のプロセスを実行することによって調製され
たコーティングされたガラス基板によって示されるシート抵抗を低減するための水および
必要に応じた酸素の使用が提供される。
【0058】
本発明の第1および第2の態様に関して上記で説明した任意の特徴はまた、本発明の他
の任意の態様に関して利用され得る。本明細書に記載の任意の発明は、必要な変更を加え
て、本明細書に記載の任意の他の発明の任意の特徴と組み合わせることができる。本発明
の一態様に適用可能な任意の特徴は、任意の組み合わせで、任意の数で使用できることが
理解されたい。さらに、それらはまた、本発明の他の態様のいずれかとともに、任意の組
み合わせおよび任意の数で使用され得る。これには、本出願の請求項の他の請求項の従属
請求項として使用されている請求項からの従属請求項が含まれるが、これに限定されない
。
【0059】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時にまたは本明細書の前に提出され、本
明細書で公衆の閲覧に向けて公開されているすべての論文および文書に向けられる。その
ようなすべての論文および文書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
本明細書に開示されたすべての特徴(付随する特許請求の範囲、要約および図面を含む
)、および/またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのすべてのステップ
は、相互に排他的であるそのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかの
組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0061】
本明細書に開示されている各特徴(付随する特許請求の範囲、要約および図面を含む)
は、特に明記しない限り、同一、同等または同様の目的を果たす代替の特徴に置き換える
ことができる。したがって、特に明記しない限り、開示される特徴は、同等または類似の
特徴の一般的な系列の一例にすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
次に、本発明は、以下の特定の実施形態によってさらに説明され、これらは、添付の図
面を参照して、限定ではなく例示として与えられる。
【
図1】本発明によるコーティングされたグレージングの断面の概略図である。
【
図2】本発明に従ってコーティングされたグレージングを調製するためのいくつかのCVD装置を組み込んだフロートガラスプロセスを実施するための設備の垂直断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、本発明の特定の実施形態によるコーティングされたグレージング1の断面を示
している。コーティングされたグレージング1は、CVDを使用して、SiCOに基づく
層3、フッ素ドープ酸化スズ(SnO
2:F)に基づく層4、および酸化スズ(SnO
2
)に基づく層5で順にコーティングされた、透明フロートガラス基板2を備える。
【0064】
上記のように、本発明のプロセスは、フロートガラスプロセスにおけるガラス基板の製
造と併せて、CVDを使用して実行され得る。フロートガラスプロセスは、通常、
図2に
示す設備10などのフロートガラス設備を利用して実行される。しかしながら、本明細書
に記載されているフロートガラス設備10は、そのような設備の例示にすぎないことを理
解されたい。
【0065】
図2に示されるように、フロートガラス設備10は、溶融ガラス19が溶融炉からガラ
ス基板が形成されるフロートバス部11へ送達される水路部20を備え得る。この実施形
態では、ガラス基板はガラスリボン8と呼ばれる。しかし、ガラス基板はガラスリボンに
限定されないことを理解されたい。ガラスリボン8は、バス部11から隣接するアニーリ
ングレール12および冷却部13を通って前進する。フロートバス部11は、溶融スズ1
5の浴が含まれる底部14、ルーフ16、反対側の側壁(図示せず)、および端壁17を
含む。ルーフ16、側壁および端壁17は共に、溶融スズ15の酸化を防ぐために非酸化
性雰囲気が維持される囲い18を画定する。
【0066】
動作中、溶融ガラス19は、調整トウィール(tweel)21の下の水路20に沿っ
て、制御された量でスズ浴15の表面に下向きに流れる。溶融ガラス19は、溶融スズ表
面上で、重力および表面張力の影響下でならびに特定の機械的影響の下で、横方向に広が
り、スズ浴15を横切って前進しガラスリボン8を形成する。ガラスリボン8は、リフト
アウトロール22上でバス部11から取り出され、その後、整列されたロール上のアニー
リングレール12および冷却部13を通って運ばれる。コーティングの堆積は、好ましく
はフロートバス部11で行われるが、堆積は、ガラス製造ラインに沿って、例えば、フロ
ートバス11とアニーリングレール12との間のギャップ28で、またはアニーリングレ
ール12でさらに行われることが可能であり得る。
【0067】
図2に示されるように、4つのCVD装置9、9A、9B、9Cがフロートバス部11
内に示されている。こうして、必要なコーティング層の頻度および厚さ、ならびにステッ
プ(c)で必要とされるガス混合物(i)の量に応じて、CVD装置9、9A、9B、9
Cの一部またはすべてを使用することが望ましい場合があり得る。1つ以上の追加のコー
ティング装置(図示せず)を提供し得る。1つ以上のCVD装置は、代替的または追加的
に、レールギャップ28内に配置され得る。任意の副産物は、コーター抽出スロットを介
して、次に汚染防止プラントを介して除去される。例えば、一実施形態では、SiCO層
は、CVD装置9Aを利用して形成され、水、酸素および窒素のガス混合物は、CVD装
置9を利用して供給され、隣接する装置9Bおよび9Cは、フッ素ドープ酸化スズ層を形
成するために利用される。
【0068】
フロートバスを備える溶融スズ15の酸化を防止するために、適切な非酸化性雰囲気、
一般に窒素または窒素が支配的である窒素および水素の混合物がフロートバス部11内に
維持され得る。雰囲気ガスは、分配マニホルド24に動作可能に結合された導管23を介
して送られる。非酸化性ガスは、外気の侵入を防ぐために、通常の損失を補償し、周囲大
気圧より約0.001~約0.01程度高いわずかな正圧を維持するのに十分な速度で導
入される。本発明を説明する目的で、上記の圧力範囲は、通常の大気圧にあたると見なさ
れる。
【0069】
CVDは一般的に実質的に大気圧で実行される。こうして、フロートバス部11、アニ
ーリングレール12、および/またはフロートバス11とアニーリングレール12との間
のギャップ28内の圧力は、実質的に大気圧であり得る。フロートバス部11および囲い
18内の所望の温度領域を維持するための熱は、囲い18内の放射ヒーター25によって
提供される。冷却部13が囲まれておらず、したがってガラスリボン8が周囲大気に開放
されているので、レール12内の雰囲気は、通常は大気である。続いて、ガラスリボン8
を周囲温度まで冷却する。ガラスリボン8を冷却するために、周囲空気は、冷却部13内
のファン26によってガラスリボン8に対して向けられ得る。それを通って運ばれるにつ
れて、所定の領域に従ってガラスリボン8の温度を徐々に低下させるために、ヒーター(
図示せず)をもアニーリングレール12内に設け得る。
【実施例0070】
CVを使用して、すべての層の堆積ならびに水および水と酸素とへの層の曝露を実行し
た。以下の表1に示すすべての例を、3.2mmのソーダ石灰シリカガラス基板を使用し
てフロートライン上で作成した。比較例1~3および例4~7は、11m/minの平均
ライン速度でコーティングされた。SiCOのベース層の堆積を、すべての実施例につい
て725°Cのガラス温度で実施した。
【0071】
SiCO層を、次の構成要素を有するシングルコーターを使用してガラス表面上に堆積
した。
・N2キャリアガス、C2H4、SiH4およびCO2。
SnO2層を、次の構成要素を有するシングルコーターを使用してガラス表面上に堆積し
た。
・N2キャリアガス、O2、二塩化ジメチルスズおよびH2O。
SnO2:F層を、次の構成要素を有する各例の2つのコーターを使用してガラス表面上
に堆積した。
・N2キャリアガス、O2、二塩化ジメチルスズ、HFおよびH2O。
SiCO層の水または水と酸素とへの曝露を、次の構成要素を有するシングルコーターを
使用して実行した。
・N2キャリアガス、水および必要に応じてO2。
【0072】
層の厚さは、SiCO(30~80nm)、SnO2:F(320~370nm)およ
びSnO2(50~100nm)であった。例のヘイズ値を、BYK-ガードナーヘイズ
メーターを使用してASTM D1003-13標準に従って測定した。シート抵抗を、
市販の4点プローブを用いた4点プローブ法に従って測定した。
【0073】
【0074】
【0075】
上記の表2の結果からわかるように、SiCO層を水に曝露すると、最終製品のシート
抵抗が改善(低下)する。水への暴露はまた、PVセルに有益なより高いヘイズをも提供
する。
【0076】
水と酸素との両方の組み合わせにSiCO層を曝露すると、シート抵抗がさらに低下す
る。
【0077】
表2に示されるa*およびb*の値は、この手法を使用するときに適切な中間色を実現
しうることを示している。
CVを使用して、すべての層の堆積ならびに水および水と酸素とへの層の曝露を実行した。以下の表1に示すすべての例を、3.2mmのソーダ石灰シリカガラス基板を使用してフロートライン上で作成した。比較例1~3および例4~7は、11m/minの平均ライン速度でコーティングされた。SiCOのベース層の堆積を、すべての実施例について725℃のガラス温度で実施した。