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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109594
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/02 20060101AFI20240806BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20240806BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20240806BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20240806BHJP
   B65D 25/20 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
G09F3/02 F
G09F3/04 C
G09F3/00 E
B41M5/26
B65D25/20 Q
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071388
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2020049413の分割
【原出願日】2020-03-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷島 大介
(72)【発明者】
【氏名】三井 景
(72)【発明者】
【氏名】大矢 祐司
(57)【要約】
【課題】印字の消失が抑制可能であるとともに、視認性に優れた印字を形成することが可能なラベルの製造方法を提供する。
【解決手段】ラベルの製造方法は、金属酸化物103を含有する乳白色フィルム101を含むラベル基材100を準備する工程と、乳白色フィルム101に波長360nm以下のレーザ光104を照射することによって乳白色フィルム104にレーザ印字105する工程とを備える。乳白色フィルム101の可視光域における全光線透過率は50%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を含有する乳白色フィルムを含むラベル基材を準備する工程と、
前記乳白色フィルムに波長360nm以下のレーザ光を照射することによって前記乳白色フィルムにレーザ印字する工程とを備え、
前記乳白色フィルムの可視光域における全光線透過率が50%以下である、ラベルの製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物が、アナターゼ型の酸化チタンを含有する、請求項1に記載のラベルの製造方法。
【請求項3】
前記乳白色フィルムの内側に内面印刷層をさらに含む、請求項1または請求項2に記載のラベルの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のラベルの製造方法により製造されたラベルであって、
前記ラベルは熱収縮性である、ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラベルの製造方法およびラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ラベルに対して賞味期限等の印字を施す際には、たとえばインクジェットプリンタまたはサーマルプリンタ等の手法でラベル基材の表面にインキを印刷する方法が主流となっている。
【0003】
しかしながら、ラベルが装着された製品の輸送時におけるラベルのインキの擦れ等によって印字が消失することがあった。
【0004】
そこで、ラベルの印字については、一旦印字が施された後に消失しにくい印字の需要が存在している。その需要を満たすための1つの方法として、レーザ光の照射により印字するレーザ印字法が検討されている。レーザ印字法には、大きく分けて2つの方法がある。
【0005】
レーザ印字法の第1の方法は、レーザ発色剤を含有する透明フィルムにレーザ光を照射することによって、レーザ発色剤が発熱して透明フィルムの一部を炭化して印字する方法である。
【0006】
このような第1の方法に用いられる熱収縮性積層フィルムとして、たとえば特許文献1には、ポリエステル系樹脂を主成分としてなる(I)層、ポリエステル系樹脂とポリスチレン系樹脂とを主成分としてなる(II)層及びポリスチレン系樹脂を主成分としてなる(III)層の少なくとも3層を有し、(III)層が、(III)層を構成する樹脂100質量%に対して、レーザー発色剤を0.01~5質量%含み、80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向における熱収縮率が20%以上である熱収縮性積層フィルムが記載されている。
【0007】
特許文献1に記載の熱収縮性積層フィルムによれば、レーザー照射によるレーザー発色性、熱収縮特性、透明性、耐油性、層間接着性に優れる熱収縮性積層フィルムを提供することができるとされている。
【0008】
レーザ印字法の第2の方法は、レーザ光を照射することによって透明フィルムの内側のレーザ発色層を発色させて印字する方法である。
【0009】
レーザ印字法の第2の方法に用いられる積層体として、たとえば特許文献2には、透明フイルム基材(1)の片面にレーザ発色層(2)、インキ層(3)が順次積層されたレーザ発色性積層体において、インキ層(3)の厚みがレーザ発色層(2)の厚みの3倍以上であるレーザ発色性積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-213875号公報
【特許文献2】特開2008-279701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
たとえば牛乳およびヨーグルト等の乳製品が充填される容器に対しては透明フィルムを
用いたラベルでは遮光性能が不足するため、透明フィルムよりも遮光性能に優れた乳白色フィルムを用いたラベルが必要とされることが多い。
【0012】
しかしながら、乳白色フィルムを用いたラベルに対して、一旦印字が施された後に印字の消失を抑制することができるとともに、視認性に優れた印字を形成する方法については確立されていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここで開示された実施形態は、金属酸化物を含有する乳白色フィルムを含むラベル基材を準備する工程と、乳白色フィルムに波長360nm以下のレーザ光を照射することによって乳白色フィルムにレーザ印字する工程とを備え、乳白色フィルムの可視光域における全光線透過率が50%以下である、ラベルの製造方法である。
【0014】
ここで開示された実施形態は、上記のラベルの製造方法により製造されたラベルであって、熱収縮性であるラベルである。
【発明の効果】
【0015】
ここで開示された実施形態によれば、印字の消失が抑制可能であるとともに、視認性に優れた印字を形成することが可能なラベルの製造方法およびラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態のラベルの製造方法の一例の製造工程のフローチャートである。
図2】アナターゼ型の酸化チタン粉末の質量:ルチル型の酸化チタン粉末の質量=100:0の酸化チタン粉末にUVレーザ光を照射したときのレーザ印字を示す図である。
図3】アナターゼ型の酸化チタン粉末の質量:ルチル型の酸化チタン粉末の質量=70:30の酸化チタン粉末にUVレーザ光を照射したときのレーザ印字を示す図である。
図4】アナターゼ型の酸化チタン粉末の質量:ルチル型の酸化チタン粉末の質量=30:70の酸化チタン粉末にUVレーザ光を照射したときのレーザ印字を示す図である。
図5】アナターゼ型の酸化チタン粉末の質量:ルチル型の酸化チタン粉末の質量=0:100の酸化チタン粉末にUVレーザ光を照射したときのレーザ印字を示す図である。
図6】波長200nm以上800nm以下の光に対する透明PETフィルムと乳白色PETフィルムの全光線透過率の一例を示す図である。
図7】乳白色フィルムにレーザ印字する工程の一例を図解する図である。
図8】実施例2のラベル基材にレーザ印字する工程を図解する図である。
図9】比較例1のラベル基材にレーザ印字する工程を図解する図である。
図10】比較例2のラベル基材にレーザ印字する工程を図解する図である。
図11】比較例4のラベル基材にレーザ印字する工程を図解する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0018】
<ラベルの製造方法>
図1に、実施形態のラベルの製造方法の一例の製造工程のフローチャートを示す。図1に示すように、実施形態のラベルの製造方法は、乳白色フィルムを含むラベル基材を準備
する工程S1と、乳白色フィルムにレーザ印字する工程S2とを備える。
【0019】
<乳白色フィルムを含むラベル基材を準備する工程S1>
乳白色フィルムを含むラベル基材を準備する工程S1は、金属酸化物を含有する乳白色フィルムを含むラベル基材を準備することにより行われる。金属酸化物を含有する乳白色フィルムの構成は、透明フィルムの表面に金属酸化物を含む他の層を設けた構成とは異なり、金属酸化物が乳白色フィルムを構成する樹脂中に練り込まれて金属酸化物がフィルム中に分散された構成を意味する。乳白色フィルムは、たとえば、金属酸化物を含有させた樹脂をフィルム状に成形すること等によって作製することができる。
【0020】
乳白色フィルムの作製に用いられる樹脂は特に限定されない。乳白色フィルムの作製に用いられる樹脂としては、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、またはポリエステル系樹脂の1種以上とポリスチレン系樹脂の1種以上との混合樹脂等を用いることができる。
【0021】
ポリエステル系樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、またはポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。PET系樹脂としては、たとえば、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンテレフタレート(PET);ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分(ジオール成分のうち最も質量割合の高い成分)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(CHDM共重合PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分(ジオール成分のうち最も質量割合の高い成分)として用い、ネオペンチルグリコール(NPG)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(NPG共重合PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分(ジオール成分のうち最も質量割合の高い成分)として用い、ジエチレングリコールを共重合成分として用いた共重合ポリエステル等のジオール変性PET;ジカルボン酸成分として、テレフタル酸を主成分(ジカルボン酸成分のうち最も質量割合の高い成分)、イソフタル酸及び/又はアジピン酸を共重合成分として用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いた共重合ポリエステル等のジカルボン酸変性PET等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂として、可塑剤を添加されたポリエチレンテレフタレート等の軟質ポリエステル系樹脂を用いてもよい。
【0022】
ポリスチレン系樹脂としては、たとえば、構成モノマーとして、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、またはクロロメチルスチレン等のスチレン系単量体を1種又は2種以上含む樹脂等を用いることができる。ポリスチレン系樹脂としては、たとえば、汎用ポリスチレン(GPPS)、スチレン-ブタジエン共重合体(たとえばSBS等)、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体(SBIS)、またはスチレン-アクリル酸エステル共重合体等を用いることができる。
【0023】
乳白色フィルムに含有される金属酸化物としては、たとえば、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ニッケル、酸化錫、酸化ネオジム、マイカ、ゼオライト、またはカオリナイト等の金属酸化物の1種以上を用いることができる。乳白色フィルムは、少なくとも乳白色フィルムに含有されている金属酸化物の色によって乳白色のような色を呈していればよい。
【0024】
乳白色フィルムに含有される金属酸化物としては、酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンとしては、たとえば、アナターゼ型の酸化チタン、またはアナターゼ型の酸
化チタンとルチル型の酸化チタンとの混合物を用いることができる。
【0025】
金属酸化物として酸化チタンを用いる場合には、アナターゼ型の酸化チタンを含有することが好ましい。アナターゼ型の酸化チタンはルチル型の酸化チタンと比べて耐候性が劣るため、乳白色を付与するための酸化チタンとしては、通常、ルチル型の酸化チタンが用いられる。しかしながら、金属酸化物としてアナターゼ型の酸化チタンを用いた場合には後述するレーザ光の照射により乳白色フィルムに形成される印字の視認性を向上させることができる。ただし、乳白色フィルムの耐候性を向上させる観点からは、乳白色フィルム中のアナターゼ型の酸化チタンの含有量は、乳白色フィルム全体の10質量%未満であることが好ましい。
【0026】
乳白色フィルムに形成される印字の視認性をより向上させる観点からは、金属酸化物としてアナターゼ型の酸化チタンとルチル型の酸化チタンとを用いた場合におけるアナターゼ型の酸化チタンの含有量の割合[%]は、30%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0027】
金属酸化物としてアナターゼ型の酸化チタンとルチル型の酸化チタンとを用いた場合におけるアナターゼ型の酸化チタンの含有量の割合[%]は、以下の式(i)で算出することができる。
【0028】
アナターゼ型の酸化チタンの含有量の割合[%]={100×(アナターゼ型の酸化チタンの含有量(質量))}/{(アナターゼ型の酸化チタンの含有量(質量))+(ルチル型の酸化チタンの含有量(質量))}…(i)
【0029】
図2図5に、アナターゼ型の酸化チタン粉末とルチル型の酸化チタン粉末との質量比をそれぞれ変更させた酸化チタン粉末にUV(紫外)レーザ光を以下の表1に示す照射条件で照射したときのレーザ印字を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
図2が、アナターゼ型の酸化チタン粉末の質量:ルチル型の酸化チタン粉末の質量=100:0の酸化チタン粉末にUVレーザ光を照射したときのレーザ印字を示している。
【0032】
図3が、アナターゼ型の酸化チタン粉末の質量:ルチル型の酸化チタン粉末の質量=70:30の酸化チタン粉末にUVレーザ光を照射したときのレーザ印字を示している。
【0033】
図4が、アナターゼ型の酸化チタン粉末の質量:ルチル型の酸化チタン粉末の質量=30:70の酸化チタン粉末にUVレーザ光を照射したときのレーザ印字を示している。
【0034】
図5が、アナターゼ型の酸化チタン粉末の質量:ルチル型の酸化チタン粉末の質量=0:100の酸化チタン粉末にUVレーザ光を照射したときのレーザ印字を示している。
【0035】
図2図5のそれぞれに示される「A」の文字のレーザ印字は、左、中および右の順に、それぞれ、照射レーザ光の出力が「出力弱」、「出力中」および「出力強」であるときのレーザ印字を示している。
【0036】
図2図5の記載から明らかなように、照射レーザ光の出力が「出力弱」、「出力中」および「出力強」のいずれの場合であっても、アナターゼ型の酸化チタンの含有量の割合が増加する(30%以上、70%以上、100%になる)につれてレーザ印字の視認性が向上することがわかる。
【0037】
乳白色フィルムとしては、可視光域における全光線透過率が50%以下の乳白色フィルムが用いられる。「可視光域における全光線透過率」とは、360nmよりも長く800nm以下の波長範囲の全域における光の平行入射光束に対する全透過光束の割合が50%以下であることを意味する。可視光域における全光線透過率は、赤外可視分光光度計(株式会社島津製作所製の「UV-2600」)で測定された値を用いることができる。
【0038】
乳白色フィルムは、紫外線(波長400nm以下の光)の透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。この場合には、乳白色フィルムが紫外線を透過させにくくする(乳白色フィルム中に吸収しやすくする)ことにより、紫外線が後述する内面印刷層に到達して内面印刷層のインキを飛散させることを抑制することができる。なお、「紫外線の透過率」は、400nm以下の波長範囲の全域における光の平行入射光束に対する全透過光束の割合を意味する。
【0039】
乳白色フィルムは、波長350±50nmの光に対する透過率が30%以下であることが好ましく、波長350±20nmの光に対する透過率が20%以下であることが好ましく、波長355±10nmの光に対する透過率が20%以下であることが好ましい。これらの場合にも、乳白色フィルムが紫外線を透過させにくくする(乳白色フィルム中に吸収しやすくする)ことにより、紫外線が後述する内面印刷層に到達して内面印刷層のインキを飛散させることを抑制することができる。なお、「波長350±50nmの光に対する透過率」は、350±50nmの波長範囲の全域における光の平行入射光束に対する全透過光束の割合を意味する。「波長350±20nmの光に対する透過率」は、350±20nmの波長範囲の全域における光の平行入射光束に対する全透過光束の割合を意味する。「波長355±10nmの光に対する透過率」は、355±10nmの波長範囲の全域における光の平行入射光束に対する全透過光束の割合を意味する。
【0040】
図6に、波長200nm以上800nm以下の光に対する透明PETフィルムと乳白色PETフィルムの全光線透過率の一例を示す。図6において、実線が乳白色PETフィルムの全光線透過率を示し、破線が透明PETフィルムの全光線透過率を示している。図6の横軸が全光線透過率の測定に用いられる光の波長[nm]を示し、図6の縦軸がそれぞれの波長における全光線透過率[%]を示している。
【0041】
図6に示すように、透明PETフィルムの360nmよりも長く800nm以下の波長の光の全光線透過率は当該波長範囲の全域にわたって80%~90%である一方、乳白色PETフィルムの360nmよりも長く800nm以下の波長の光の全光線透過率は当該波長範囲の全域にわたって40%以下であることがわかる。
【0042】
なお、波長345nm、350nm、355nm、360nmおよび365nmのそれぞれのレーザ光に対する透明PETフィルムと乳白色PETフィルムの全光線透過率[%]の値は、以下の表2のとおりである。
【0043】
【表2】
【0044】
ラベル基材は、乳白色フィルムの内側に内面印刷層をさらに含んでいてもよい。内面印刷層は、それ自体では形状を維持できない層であって、形状の維持のためにはそれ自体で形状を維持することが可能な乳白色フィルム等のような基材を必要とする層である。
【0045】
ラベルの遮光性をさらに向上させる観点からは、内面印刷層として、灰色インキ印刷層を用いることが好ましい。灰色インキ印刷層は、たとえば、ラベル基材の内側に位置する乳白色フィルムの内面に灰色インキ組成物を印刷すること等によって形成することができる。灰色インキ組成物としては、たとえば、カーボンブラック等の灰色顔料とバインダー樹脂と、必要に応じて溶媒(有機溶剤、水等)とを含有するインキ等を用いることができる。なお、本明細書において、「内面」はラベルが装着された製品の表面側の面を意味しており、「外面」は消費者等から目視される側の面を意味する。
【0046】
<乳白色フィルムにレーザ印字する工程S2>
乳白色フィルムにレーザ印字する工程S2は、上記のようにして作製されたラベル基材の乳白色フィルムに波長360nm以下のレーザ光を照射することによって乳白色フィルムにレーザ印字することにより行われる。これにより、ラベル基材の乳白色フィルムにレーザ印字されたラベルが製造される。なお、レーザ印字は、たとえば賞味期限および製造年月日のような文字に限られず、たとえばQRコードのようなマークであってもよい。
【0047】
図7は、乳白色フィルムにレーザ印字する工程S2の一例を図解している。図7に示す例において、ラベル基材100は、金属酸化物103を含有する乳白色フィルム101と、乳白色フィルム101の内面上の灰色インキ印刷層102とを備えている。
【0048】
図7に示すラベル基材100の乳白色フィルム101の外面に波長360nm以下のレーザ光104を照射する。ここで、レーザ光104は、所望のレーザ印字の形状となるように走査されながら照射される。このとき、乳白色フィルム101中の金属酸化物103はレーザ光104を吸収して白色から黒色または褐色に変色する。これにより、黒色または褐色に変色した金属酸化物103が、外部より目視可能なレーザ印字105として、乳白色フィルム101の内部に形成される。このとき、金属酸化物103の周囲の乳白色フィルム101が部分的に炭化してもよい。以上により、ラベル基材100にレーザ印字105が形成されたラベルを製造することができる。
【0049】
乳白色フィルムにレーザ印字する工程S2において照射されるレーザ光104の波長は350±50nmであることが好ましく、350±20nmであることがより好ましく、355±10nmであることがさらに好ましい。これらの場合には、金属酸化物103の変色によるレーザ印字105を良好に発生させることができる。乳白色フィルム101に照射されるレーザ光104の波長が長すぎる場合には金属酸化物103の変色の程度が低く、乳白色フィルム101または内面印刷層(図7に示す構成では、灰色インキ印刷層1
02)にダメージを与えるおそれがある。乳白色フィルム101に照射されるレーザ光104の波長が短すぎる場合にはラベルの製造時の安全性に問題が生じる可能性がある。
【0050】
<ラベル>
実施形態のラベルの製造方法の一例により製造されたラベルは、ラベル基材100の乳白色フィルム101の内部にレーザ印字105が形成されている。したがって、レーザ印字105はその周囲の乳白色フィルム101で保護されるために、擦れ等の外的要因によるレーザ印字105の消失を抑制することができる。
【0051】
また、透明フィルムの内側にレーザ発色層(印刷層)を設けた構成の従来のラベルにおいては、乳製品等の製品に対するラベルとしては遮光性能が足りない。このような構成の従来のラベルのレーザ発色層に遮光機能を持たせることで透明フィルムを用いた場合でも遮光機能を乳白色フィルムに近づけることは可能であるが、透明フィルムは短波長のレーザ光を透過するためレーザ発色層にエネルギが集中し、レーザ発色層が飛散することがある。透明フィルムに遮光性に優れた他の印刷層を設けた場合にも同様のことが言える。
【0052】
また、上記の従来のラベルとは別に、本実施形態の乳白色フィルム101とは異なる乳白色フィルム(レーザ光の照射によって変色せず、レーザ印字が形成されない乳白色フィルム)の内側にレーザ発色層を設けた構成のラベルを用いた場合には、乳白色フィルム側からではなく、レーザ発色層側からレーザ光を照射してレーザ発色層にレーザ印字を形成する必要がある。そのため、レーザ印字の形成時にレーザ発色層が飛散しやすいという問題がある。また、レーザ発色層に形成されたレーザ印字は、乳白色フィルムを介して視認されるため、視認性に劣るという問題もある。
【0053】
実施形態のラベルの製造方法の一例により製造されたラベルにおいては、乳白色フィルム101自体にレーザ印字105が形成されているため、視認性の高いレーザ印字105とすることができる。また、内面印刷層側からレーザ光104を照射してレーザ印字105を形成する必要がないため、レーザ光104の照射による内面印刷層の飛散を抑制することができる。また、乳白色フィルム101に対するレーザ光104の透過率が十分に低い場合には、レーザ光104が内面印刷層にまで到達しにくいため、レーザ光104の照射による内面印刷層の飛散を効果的に抑制することが可能になる。特に、360nm以下の波長のレーザ光104を照射することにより、乳白色フィルム101自体の効率的な変色と内面印刷層の飛散の抑制とのバランスが良好となる。
【0054】
実施形態のラベルの製造方法の一例により製造されたラベルは、熱収縮性であることが好ましい。この場合には、円筒状容器の湾曲している側面にも熱収縮後のラベルのレーザ印字105を予め決まった位置に安定して配置することができる。すなわち、従来において、容器に装着される前のラベルはロール状に巻かれて保管される。上述した従来のレーザ印字法の第2の方法を用いた場合には、レーザ光の照射により透明フィルムの内側のレーザ発色層が飛散する。このような従来のレーザ印字法の第2の方法を用いて作製された従来のラベルをロール状に巻き回した場合には、レーザ発色層の飛散物によりラベル全体が汚染される。そのため、容器に装着した後にレーザ光を照射してレーザ印字を形成する必要がある。しかしながら、容器に装着した後にレーザ光を照射した場合には、容器とラベルとの間にレーザ発色層の飛散物が挟持される、レーザ光の照射によって容器自体が損傷を受ける、および湾曲した箇所へのレーザ印字の形成が困難であるためレーザ印字の形成領域が平坦面に限定される等の問題がある。一方、実施形態のラベルの製造方法の一例により製造されたラベルは、レーザ光の照射による内面印刷層の飛散物の発生を抑制できるため、レーザ印字が形成されたラベルをロール状に巻き回すことができる、上述のようなレーザ光の照射による容器自体の損傷を抑制することができる、およびレーザ印字の形成領域が平坦面に限定されないといった利点がある。
【実施例0055】
<実施例1>
まず、図7に示される構成の実施例1のラベル基材100を準備した。実施例1のラベル基材100は、金属酸化物103としてアナターゼ型の酸化チタンを含有する乳白色フィルム101と、乳白色フィルム101の内側の内面印刷層としての灰色インキ印刷層102とを備えている。
【0056】
次に、図7に示すように、実施例1のラベル基材100に波長355nmのUVレーザ光104を照射することによって、実施例1のラベル基材100の乳白色フィルム101の内部にレーザ印字105を形成して、実施例1のラベルを作製した。
【0057】
実施例1のラベルについて、レーザ光の照射時のインキの飛散、レーザ光の照射後のフィルムの損傷、およびレーザ印字の視認性の観点から評価を行なった。その結果を以下の表3に示す。
【0058】
<実施例2>
まず、図8に示されるように、金属酸化物103としてアナターゼ型の酸化チタンを含有する乳白色フィルム101からなる実施例2のラベル基材を準備した。
【0059】
次に、図8に示すように、実施例2のラベル基材に波長355nmのUVレーザ光104を照射することによって、実施例2のラベル基材の乳白色フィルム101の内部にレーザ印字105を形成して、実施例2のラベルを作製した。
【0060】
実施例2のラベルについて、レーザ光の照射時のインキの飛散、レーザ光の照射後のフィルムの損傷、およびレーザ印字の視認性の観点から評価を行なった。その結果を以下の表3に示す。
【0061】
<比較例1>
まず、図9に示される構成の比較例1のラベル基材200を準備した。比較例1のラベル基材200は、透明フィルム201と、透明フィルム201の内側の従来から公知の白色インキ印刷層202とを備えている。
【0062】
次に、図9に示すように、比較例1のラベル基材200に波長355nmのUVレーザ光104を照射した。しかしながら、UVレーザ光104は、透明フィルム201を透過して白色インキ印刷層202を破損して破損部分205が生じたのみであって、レーザ印字を形成することはできなかった。
【0063】
UVレーザ光104の照射後の比較例1のラベル基材200について、レーザ光の照射時のインキの飛散、レーザ光の照射後のフィルムの損傷、およびレーザ印字の視認性の観点から評価を行なった。その結果を以下の表3に示す。
【0064】
<比較例2>
まず、図10に示される構成の比較例2のラベル基材300を準備した。比較例2のラベル基材300は、金属酸化物103としてアナターゼ型の酸化チタンを含有する乳白色フィルム101と、乳白色フィルム101の灰色インキ印刷層102とを備えている。
【0065】
次に、図10に示すように、比較例2のラベル基材300に波長10600nmのCO2レーザ光304を照射した。しかしながら、CO2レーザ光304は、乳白色フィルム101および灰色インキ印刷層102を破損して破損部分305が生じたのみであって、レ
ーザ印字を形成することはできなかった。
【0066】
CO2レーザ光304の照射後の比較例2のラベル基材300について、レーザ光の照
射時のインキの飛散、レーザ光の照射後のフィルムの損傷、およびレーザ印字の視認性の観点から評価を行なった。その結果を以下の表3に示す。
【0067】
<比較例3>
灰色インキ印刷層102を設けなかったこと以外は比較例2と同様にして比較例3のラベル基材を準備した。したがって、比較例3のラベル基材は、金属酸化物103としてアナターゼ型の酸化チタンを含有する乳白色フィルム101のみから構成されている。
【0068】
次に、比較例2と同一の方法および同一の条件で、波長10600nmのCO2レーザ
光を照射した。しかしながら、比較例3のラベル基材においても、CO2レーザ光は、乳
白色フィルム101を破損して破損部分を生じさせたのみであって、レーザ印字を形成することはできなかった。
【0069】
比較例3のラベル基材について、レーザ光の照射時のインキの飛散、レーザ光の照射後のフィルムの損傷、およびレーザ印字の視認性の観点から評価を行なった。その結果を以下の表3に示す。
【0070】
<比較例4>
まず、図11に示される構成の比較例4のラベル基材400を準備した。比較例4のラベル基材400は、金属酸化物103としてアナターゼ型の酸化チタンを含有する乳白色フィルム101と、乳白色フィルム101の灰色インキ印刷層102とを備えている。
【0071】
次に、図11に示すように、比較例4のラベル基材400に波長1060nmのYVO4レーザ光404を照射することによって、比較例4のラベル基材400の乳白色フィル
ム101の内部にレーザ印字105を形成して、比較例4のラベルを作製した。YVO4
レーザ光404の照射によって、乳白色フィルム101の内部にレーザ印字105を形成することができたが、乳白色フィルム101の一部および灰色インキ印刷層102を破損して破損部分405が生じた。
【0072】
比較例4のラベルについて、レーザ光の照射時のインキの飛散、レーザ光の照射後のフィルムの損傷、およびレーザ印字の視認性の観点から評価を行なった。その結果を以下の表3に示す。
【0073】
<比較例5>
灰色インキ印刷層102を設けなかったこと以外は比較例4と同様にして比較例5のラベル基材を準備した。したがって、比較例5のラベル基材は、金属酸化物103としてアナターゼ型の酸化チタンを含有する乳白色フィルム101のみから構成されている。
【0074】
次に、比較例4と同一の方法および同一の条件で、波長1060nmのYVO4レーザ
光を照射した。YVO4レーザ光404の照射によって、乳白色フィルム101の内部に
レーザ印字105を形成することができたが、乳白色フィルム101の一部が破損して破損部分405が生じた。
【0075】
比較例5のラベル基材について、レーザ光の照射時のインキの飛散、レーザ光の照射後のフィルムの損傷、およびレーザ印字の視認性の観点から評価を行なった。その結果を以下の表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3の「フィルム」の欄において、「乳白色」は乳白色フィルムを用いたことを意味しており、「透明」は透明フィルムを用いたことを意味している。
【0078】
表3の「内面印刷層」の欄において、「灰色」は内面印刷層として灰色インキ印刷層を用いたことを意味し、「白色」は内面印刷層として白色インキ印刷層を用いたことを意味し、「無し」は内面印刷層が設けられていないことを意味している。
【0079】
表3の「遮光性能」の欄において、「A」は遮光性能に優れることを意味し、「C」は通常の遮光性能を有することを意味し、「B」は「A」と「C」との間の遮光性能を有することを意味している。
【0080】
表3の「照射レーザ光」の欄において、「UV」は波長355nmのUVレーザ光が照射されたことを意味し、「CO2」は波長10600nmのCO2レーザ光が照射されたことを意味し、「YVO4」は波長1060nmのYVO4レーザ光が照射されたことを意味している。
【0081】
表3の「レーザ光の照射時のインキの飛散」の欄において、「A」はレーザ光の照射時に内面印刷層からインキが飛散しなかったことを意味し、「C」はレーザ光の照射時に内面印刷層からインキが飛散したことを意味し、「無し」は内面印刷層が設けられていないためにインキが飛散しなかったことを意味している。
【0082】
表3の「レーザ光の照射後のフィルムの損傷」の欄において、「A」はレーザ光の照射後にフィルムに損傷が見られなかったことを意味し、「B」はレーザ光の照射後にフィルムに部分的に損傷が見られたことを意味し、「C」はレーザ光の照射後にフィルムに大きな損傷が見られたことを意味している。
【0083】
表3の「レーザ印字の視認性」の欄において、「A」はレーザ印字が視認により明確に確認できたことを意味し、「C」はレーザ印字が全く確認できなかったことを意味している。
【0084】
表3に示すように、金属酸化物103としてアナターゼ型の酸化チタンを含有する乳白色フィルム101を備えたラベル基材に波長355nmのUVレーザ光を照射してレーザ印字を形成した実施例1~2は、実施例1~2のフィルムの条件およびレーザ光の照射条件を満たさない比較例1~5と比べて、レーザ光の照射時のインキの飛散、レーザ光の照射後のフィルムの損傷、およびレーザ印字の視認性のいずれの評価も優れる結果となった。
【0085】
以上のように実施形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態およ
び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0086】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
100,200,300,400 ラベル基材、101 乳白色フィルム、102 灰色インキ印刷層、103 金属酸化物、104 UVレーザ光、105 レーザ印字、201 透明フィルム、202 白色インキ印刷層、205,305,405 破損部分、304 CO2レーザ光、404 YVO4レーザ光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を含有する乳白色フィルムを含むラベル基材を準備する工程と、
前記乳白色フィルムに波長360nm以下のUVレーザ光を照射することによって前記乳白色フィルムにレーザ印字する工程とを備え、
前記乳白色フィルムの可視光域における全光線透過率が50%以下であり、
前記ラベル基材は、前記乳白色フィルムの内面側に内面印刷層をさらに含み、
前記乳白色フィルムの波長350±50nmの光に対する透過率は30%以下であり、
前記乳白色フィルムにレーザ印字する工程は、前記乳白色フィルムの外面側から波長360nm以下の前記UVレーザ光を照射する工程を備える、ラベルの製造方法。
【請求項2】
前記内面印刷層が遮光性を有する、請求項1に記載のラベルの製造方法。
【請求項3】
前記内面印刷層はカーボンブラックを含有する、請求項1のラベルの製造方法。