(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001096
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】FcイプシロンCAR
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20231226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231226BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231226BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231226BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231226BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231226BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231226BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231226BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20231226BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20231226BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231226BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
C12N15/24
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N1/21
A61K35/17
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/12
A61K45/00
A61K45/00 101
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
C12N5/0783
C12P21/02 C
C12N15/13
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】36
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023169963
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2020565289の分割
【原出願日】2019-05-21
(31)【優先権主張番号】62/674,936
(32)【優先日】2018-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520393015
【氏名又は名称】イミュニティーバイオ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ImmunityBio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ボイセル,ローラン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】クリンゲマン,ハンス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ダンダパット,アブヒジット
(72)【発明者】
【氏名】チンナペン,ヒマニ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】付随する持続的細胞傷害性を有して有意量で高活性CARを発現するとともに単純且つ効果的な形で容易に培養されるCAR発現NK-92細胞を提供する。
【解決手段】組換えNK細胞とりわけ組換えNK-92細胞は、FcεRIγの細胞内ドメインを有するキメラ抗原レセプター(CAR)を発現する。注目すべきこととして、FcεRIγの細胞内ドメインを有するCAR構築物は、実質的に延長された発現継続時間及び経時的に有意に長期にわたる細胞傷害性を有していた。CARは、好ましくは、CD16とオートクリン成長支援を付与するサイトカインとをさらにコードするトリシストロニック構築物として、RNA及びDNAから発現されうる。有利なことに、かかる構築物はまた、高レベルのトランスフェクション及び組換えタンパク質発現を可能にするとともに、組換えNK/NK-92細胞の迅速生成を促進する便利な選択マーカーを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え発現サイトカインと、
組換え発現CD16と、
細胞外結合ドメインとヒンジドメインと膜貫通ドメインとFcεRIγシグナリングドメインとを単一ポリペプチド鎖中に含む膜結合組換え発現キメラ抗原レセプター(CAR)と、
を含む遺伝子改変NK細胞。
【請求項2】
前記NK細胞がNK-92細胞である、請求項1に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項3】
前記組換え発現サイトカインがIL-2又はIL-15を含む、請求項1又は2に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項4】
前記組換え発現サイトカインが内質保持配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項5】
前記組換え発現CD16が、158V突然変異を有する高親和性CD16変異体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項6】
前記細胞外結合ドメインがscFvを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項7】
前記細胞外結合ドメインが、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、又は患者及び腫瘍特異的抗原に特異的に結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項8】
前記腫瘍特異的抗原が、CD19、CD20、NKG2Dリガンド、CS1、GD2、CD138、EpCAM、HER-2、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、MUC-1、B7-H4、ETA、MAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAP、WT-1、PSMA、NY-ESO1、CSPG-4、IGF1-R、Flt-3、CD276、CD123、PD-L1、BCMA、又はCD33である、請求項7に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項9】
前記細胞外結合ドメインがウイルス特異的抗原に特異的に結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項10】
前記ウイルス特異的抗原が、HIVウイルス、HPVウイルス、RSVウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、又はHCVウイルスの抗原である、請求項9に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項11】
前記FcεRIγシグナリングドメインが配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項12】
前記組換え発現サイトカイン、前記組換え発現CD16、及び前記組換え発現CARが、トリシストロニック組換え核酸から発現される、請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項13】
前記組換え発現サイトカイン及び/又は前記組換え発現CD16が、前記NK細胞のゲノムにインテグレートされた組換え核酸から発現される、請求項1~12のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項14】
サイトカインをコードする第1の配列部分と、
CD16をコードする第2の配列部分と、
細胞外結合ドメインとヒンジドメインと膜貫通ドメインとFcεRIγシグナリングドメインとを単一ポリペプチド鎖中に含むキメラ抗原レセプター(CAR)をコードする第3の配列部分と、
を含み、
前記第1、前記第2、及び前記第3の配列部分が同一核酸上にある、組換え核酸。
【請求項15】
前記核酸がトリシストロニックRNAである、請求項14に記載の組換え核酸。
【請求項16】
前記核酸がトリシストロニックDNAである、請求項14に記載の組換え核酸。
【請求項17】
前記サイトカインがIL-2又はIL15である、請求項14~16のいずれか一項に記載の組換え核酸。
【請求項18】
前記サイトカインが内質保持配列を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の組換え核酸。
【請求項19】
前記CD16が、158V突然変異を有する高親和性CD16変異体である、請求項14~18のいずれか一項に記載の組換え核酸。
【請求項20】
前記細胞外結合ドメインがscFvを含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の組換え核酸。
【請求項21】
前記細胞外結合ドメインが、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、又は患者及び腫瘍特異的抗原に特異的に結合する、請求項20に記載の組換え核酸。
【請求項22】
前記細胞外結合ドメインがウイルス特異的抗原に特異的に結合する、請求項20に記載の組換え核酸。
【請求項23】
前記ヒンジドメイン及び/又は前記膜貫通ドメインが、CD8ヒンジドメイン及び/又はCD28膜貫通ドメインを含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の組換え核酸。
【請求項24】
前記FcεRIγシグナリングドメインが配列番号2の核酸配列を有する、請求項14~23のいずれか一項に記載の組換え核酸。
【請求項25】
請求項14~24のいずれか一項に記載の組換え核酸を含む組換え細胞。
【請求項26】
前記細胞が細菌細胞である、請求項25に記載の組換え細胞。
【請求項27】
前記細胞が自家NK細胞である、請求項25に記載の組換え細胞。
【請求項28】
前記NK細胞が、任意選択的に遺伝子改変されたNK-92細胞である、請求項27に記載の組換え細胞。
【請求項29】
治療有効量の請求項1~13に記載の遺伝子改変NK細胞のいずれか1つを患者に投与することにより癌を治療することを含む、必要とする患者における癌の治療方法。
【請求項30】
ウイルス癌ワクチン、細菌癌ワクチン、酵母癌ワクチン、N-803、抗体、幹細胞移植片、及び腫瘍標的化サイトカインからなる群から選択させる少なくとも1つの追加の治療エンティティーを投与する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌が、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性白血病、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、たとえば、限定されるものではないが肉腫及び癌腫、たとえば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫から選択される、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
治療有効量の請求項1~6又は9~12に記載の遺伝子改変NK細胞のいずれか1つをを患者に投与することによりウイルス感染症を治療することを含む、必要とする患者におけるウイルス感染症の治療方法。
【請求項33】
抗ウイルス薬剤を投与する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
約1×108~約1×1011細胞/m2患者体表面積が前記患者に投与される、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
癌又はウイルス感染症の治療における、請求項1~13のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年5月22日に出願されたシリアル番号62/674,936の米国特許出願に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
配列リスト
106kbのサイズで2019年5月21日に作成され本願と共にEFS-Webを介して電子申請された104077.0004PCT_ST25と称される配列リストのASCIIテキストファイルの内容は、その全体が参照により組み込まれる。
【0003】
本発明の分野は、キメラ抗原レセプター(CAR)を発現する遺伝子改変細胞を生成するための組換え核酸及びそれを含有する細胞、とくにFcイプシロンレセプターガンマ(FcεRIγ)シグナリングドメインを有するCARを発現する改変NK及びNK-92細胞である。
【背景技術】
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、先天性免疫系の有意な成分を構成する細胞傷害性リンパ球である。ほとんどの場合、NK細胞は、循環リンパ球の約10~15%を占め、ウイルス感染細胞及び多くの悪性細胞をはじめとする標的細胞に結合し死滅させる。NK細胞による死滅は、特定抗原に対して非特異的であり、先行免疫感作なしで起こりうる。標的細胞の死滅は、典型的には、パーフォリン、グランザイム、及びグラニュライシンをはじめとする細胞溶解性タンパク質により媒介される。
【0005】
自家NK細胞は、治療エンティティーとして使用されてきた。その目的では、NK細胞は、全血の末梢血リンパ球画分から単離され、十分な数の細胞を得るために細胞培養で拡大され、次いで被験者に再注入される。自家NK細胞は、少なくともいくつかの場合には、ex vivo療法及びin vivo治療の両方で中程度の有効性が示されている。しかしながら、自家NK細胞の単離及び成長には、多くの時間とコストがかかる。そのうえ、自家NK細胞療法は、すべてのNK細胞が細胞溶解性であるとは限らないという事実によりさらに制限される。
【0006】
これらの困難の少なくともいくつかは、非ホジキンリンパ腫に罹患している被験者の血液中で発見された後in vitroで不死化された細胞溶解性癌細胞系であるNK-92細胞の使用により克服可能である(Gong et al.,Leukemia 8:652-658(1994))。NK-92細胞はNK細胞派生物であるが、NK-92細胞は、正常NK細胞であれば提示される阻害レセプターの大半を欠如し、且つ活性化レセプターの大部分を保持する。しかしながら、NK-92細胞は、正常細胞を攻撃したり、ヒトにおいて許容できない免疫拒絶反応を誘発したりしない。これらの望ましい特性に起因して、NK-92細胞は、たとえば国際公開第1998/049268号パンフレット又は米国特許出願公開第2002/068044号明細書に記載されるように、詳細に特徴付けられ、且つある特定の癌の治療で治療剤として探究された。
【0007】
同一組織に由来する腫瘍細胞から正常細胞を識別する表現型変化は、多くの場合、特異的遺伝子産物の発現の1つ以上の変化、たとえば、正常細胞表面成分の損失又は他の成分(すなわち、対応する正常非癌性組織で検出不能な抗原)の獲得に関連する。新生物細胞若しくは腫瘍細胞では発現されるが正常細胞では発現されない抗原、又は正常細胞に見いだされるレベルを実質的に超えるレベルで新生物細胞で発現される抗原は、「腫瘍特異的抗原」又は「腫瘍関連抗原」と称されている。かかる腫瘍特異的抗原は、腫瘍表現型のマーカーとして機能しうる。腫瘍特異的抗原としては、癌/精巣特異的抗原(たとえば、MAGE、BAGE、GAGE、PRAME、及びNY-ESO-1)、メラノサイト分化抗原(たとえば、チロシナーゼ、Melan-A/MART、gp100、TRP-1、及びTRP-2)、突然変異又は異常発現抗原(たとえば、MUM-1、CDK4、β-カテニン、gp100-in4、p15、及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV)、並びに腫瘍でより高レベルで発現される抗原(たとえば、CD19及びCD20)が挙げられる。
【0008】
腫瘍特異的抗原は、癌免疫療法の標的として使用されてきた。かかる療法の1つは、T細胞及びNK細胞をはじめとする免疫細胞の表面上に発現されるキメラ抗原レセプター(CAR)を利用して癌細胞に対する細胞傷害性を改善する。CARは、少なくとも1つの細胞内シグナリングドメインに結合された一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む。scFvは、標的細胞(たとえば癌細胞)上の抗原を認識し結合してエフェクター細胞活性化をトリガーする。シグナリングドメインは、レセプターによる細胞内シグナリングに重要な免疫レセプターチロシンベース活性化ドメイン(ITAM)を含有する。
【0009】
T細胞で使用されるCARの第1世代は、1つの細胞質シグナリングドメインを含有していた。たとえば、T細胞の第1世代CARの一形態は、1つのITAMを含有するFcイプシロンレセプターガンマ(FcεRIγ)由来のシグナリングドメインを含み、一方、他の一形態は、3つのITAMを含有するCD3ζ由来のシグナリングドメインを含有していた。CD3ζCART細胞は、FcεRIγCART細胞よりも腫瘍根絶効率が良いことがin vivo及びin vitro研究で示された(たとえば、Haynes,et al.2001,J.Immunology 166:182-187、Cartellieri,et al.2010,J.Biomed and Biotech,Vol.2010,Article ID 956304)。その後、かかる組換えT細胞の十分な活性化及び増殖にはある特定の共刺激シグナルが必要とされることが追加の研究で明らかにされ、第2及び第3世代CARでは、組換えCART細胞の効能を増強するために複数のシグナリングドメインを組み合わせて単一CARとした。試験されたT細胞のそうした文献学上の効果がそれほど望ましいものではなかったため、第1世代CAR及びFcεRIγシグナリングドメインは大幅に廃棄され、1つ以上の追加のシグナリングドメインとの組合せでCD3ζを使用する新たなより効率の良いCARが優先された(たとえば、Hermanson and Kaufman 2015,Frontiers in Immunol.,Vol.6,Article 195)。
【0010】
より最近では、選択されたCARはNK細胞でも発現されている。たとえば、CAR改変NK-92細胞は、CD3ζ細胞内シグナリングドメインのみを有する第1世代CARを使用している。いくつかの抗原は、B細胞リンパ腫のCD19及びCD20、乳癌、卵巣癌、及び扁平上皮細胞癌のErbB2、神経芽細胞腫のGD2、及び多発性骨髄腫のCD138を含めて、こうした第1世代CAR-NK細胞により標的とされている。NK-92系由来の第2世代CAR-NK細胞もまた、複数の癌腫のEpCAM、エプスタイン・バーウイルスのHLA-A2EBNA3複合体、多発性骨髄腫のCS1、及びHER2陽性上皮癌のErbB2を含めて、いくつかの抗原に対して生成されている。第2世代NK-92CARでCD3ζと共に使用される最も一般的な細胞内共刺激ドメインはCD28である。しかしながら、NK細胞はCD28を天然で発現しないので、CD28ドメインの潜在的効果は不明である。そのほかの第2世代CARは、NK細胞持続性を改善するためにCD3ζと共に4-1BB細胞内シグナリングドメインを組み込んでいる。他の者は、CD3ζ単独、CD28及びCD3ζ、又は4-1BB及びCD3ζと融合されたErbB2scFvを用いてさまざまな細胞内ドメインの機能を乳癌細胞に対して試験し比較した。第2世代構築物はいずれも、第1世代CARと比較して死滅を改善し、CD28及びCD3ζは65%標的溶解を有し、4-1BB及びCD3ζは62%溶解し、そしてCD3ζ単独は標的の51%を死滅させることを見いだした。4-1BB及びCD28細胞内ドメインはまた、B細胞悪性病変に対してNK-92細胞上に発現される抗CD19CARを用いて最近の研究で比較された。CD3ζ/4-1BB構築物は、細胞死滅及びサイトカイン産生でCD3ζ/CD28ほど有効でないことがさらに他の者により見いだされ、CD28及び4-1BB共刺激ドメインの示差的効果が注目された。
【0011】
第3世代NK-92CARは、CD3ζ、CD28、及び4-1BB細胞内シグナリングドメインを有する抗CD5scFvで構築され、さまざまなT細胞白血病及びリンパ腫細胞系及び原発腫瘍細胞に対する特異的且つ強力な抗腫瘍活性を実証した。かかる細胞はまた、T細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞系さらには原発腫瘍細胞の異種移植マウスモデルで疾患進行を阻害可能であった(Transl Res.2017 September;187:32-43)。さらなる例では、国際公開第2016/201304号パンフレット及び国際公開第2018/076391号パンフレットは、NK細胞及びNK-92細胞で発現される第3世代CD3ζCARの使用を教示する。
【0012】
自家NK細胞及びNK-92細胞は、生存因子及び細胞傷害能エンハンサーとして外因性IL-2を必要とする。残念ながら、IL-2の全身投与は、多くの場合、顕著な望ましくない副作用及び毒性を伴う。かかる課題を克服するために、患者への投与前にin vitroで細胞の培養及び拡大が可能である。IL-2は、十分量のNK細胞又はNK-92細胞の生成を可能するであろうが、NK細胞の大規模生産における外因性IL-2の使用は、典型的にはコスト上の制約を受ける。外因性IL-2に対する要件は、レトロウイルスベクターからのIL-2の組換え発現を小胞体に閉じ込めることにより解決された(Exp Hematol.2005 Feb;33(2):159-64を参照されたい)。かかるアプローチは、外因性IL-2に対する要件を排除した。しかしながら、レトロウイルストランスフェクション効率は、多くの場合それほど望ましくなく、複数の組換え遺伝子を発現させる場合さらに効率が悪くなるであろう。
【0013】
そのほか、NK細胞とくにNK-92細胞は、Fcレセプターを発現するようにNK-92細胞を工学操作することに多数回失敗したことにより実証されるように、多くの場合、遺伝子改変が困難である。異種発現のために複数の組換え遺伝子又は相対的に大きな組換え核酸ペイロードでNK-92細胞をトランスフェクトする場合、かかる困難はさらに複雑化する。そのほか、NK-92細胞はまた、外因性タンパク質(たとえばCD16)の組換え発現に関して予測度の顕著な欠如を呈する。機能レベル上、すべてではないにしてもほとんどのCARNK-92細胞は、おそらくCAR構築物の相対的に低い発現に起因して、相対的に高いエフェクター細胞対標的細胞比を必要とする。さらに、かかるCARNK-92細胞はまた、経時的に細胞傷害性の急速な低下を経験することにより、かかる細胞の臨床的魅力を低減させるであろう。
【0014】
したがって、多くの組換えNK-92細胞が当技術分野で公知であるとはいえ、それらのすべて又はほとんどすべては各種困難を抱えている。そのため、付随する持続的細胞傷害性を有して有意量で高活性CARを発現するとともに単純且つ効果的な形で容易に培養されるCAR発現NK-92細胞の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、FcεRIγ含有CARを発現するようにNK-92細胞を組換え核酸で効率的にトランスフェクト可能であることを発見した。予想外なことに、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARは、CARの発現レベルを有意に増加させるとともに、さらに経時的に長期にわたる細胞傷害性を伝達する。CARをコードする企図される組換え核酸は、好ましくは、CD16若しくはCD16変異体及び/又はIL-2若しくはIL-2変異体をコードする配列部分も含むトリシストロニック配置である。有利なことに、かかる組換え核酸は、トランスフェクト細胞を選択する効率的な方法を提供するだけでなく(IL-2は、オートクリン成長刺激を付与するだけでなく、共発現タンパク質の選択マーカーとしても作用するため)、優れた細胞溶解活性(たとえば、他の構築物と比較して相対的に低いエフェクター細胞対標的細胞比で)とCD16及びFcεRIγ含有CARの高い発現レベルとを有するCARNK細胞ももたらす。
【0016】
したがって、本発明の主題の一態様では、本発明者らは、サイトカインと、CD16と、膜結合キメラ抗原レセプター(CAR)と、を組換え発現する遺伝子改変NK細胞を企図する。CARは、典型的には、(i)細胞外結合ドメインと、(ii)ヒンジドメインと、(iii)膜貫通ドメインと、(iv)FcεRIγシグナリングドメインと、を単一ポリペプチド鎖中に含むであろう(たとえば、配列番号1のアミノ酸配列を有する)。
【0017】
多くの実施形態では、NK細胞はNK-92細胞であり、且つ/又は組換え発現サイトカインはIL-2若しくはIL-15であるか若しくはそれらを含む(内質保持配列をさらに含みうる)。さらなる実施形態では、CD16は高親和性CD16変異体(たとえばCD16158V)でありうる。
【0018】
必ずというわけではないが、好ましくは、細胞外結合ドメインは、腫瘍特異的抗原(たとえば、CD19、CD20、NKG2Dリガンド、CS1、GD2、CD138、EpCAM、HER-2、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、MUC-1、ETA、MAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAP、WT-1、PSMA、NY-ESO1、CSPG-4、IGF1-R、Flt-3、CD276、CD123、PD-L1、BCMA、若しくはCD33)、腫瘍関連抗原、又は患者及び腫瘍特異的抗原に特異的に結合しうるscFv、或いはウイルス特異的抗原(たとえば、HIVウイルス、HPVウイルス、RSVウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、又はHCVウイルスの抗原)に特異的に結合しうるscFvを含むであろう。
【0019】
いくつかの実施形態では、サイトカイン、CD16、及びCARは、トリシストロニック組換え核酸から発現され、一方、他の実施形態では、サイトカイン及び/又はCD16は、NK細胞のゲノムにインテグレートされた組換え核酸から発現される。
【0020】
したがって、本発明者らはまた、サイトカインをコードする第1の配列部分と、CD16をコードする第2の配列部分と、単一ポリペプチド鎖中に細胞外結合ドメインとヒンジドメインと膜貫通ドメインとFcεRIγシグナリングドメインとを含むキメラ抗原レセプター(CAR)をコードする第3の配列部分と、を含む組換え核酸を企図する。最も典型的には、第1、第2、及び第3の配列部分は、同一核酸上にある。
【0021】
いくつかの実施形態では、核酸はトリシストロニックRNAであるが、他の実施形態では、核酸はトリシストロニックDNAである。
【0022】
さらに、典型的には、サイトカインはIL-2若しくはIL15であり(内質保持配列を含んでいても含んでいなくてもよい)、CD16は158V突然変異を有する高親和性CD16変異体であり、且つ/又は細胞外結合ドメインはscFvを含むことが好ましい。以上に述べたように、細胞外結合ドメインは、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、若しくは患者及び腫瘍特異的抗原に特異的に結合しうるか、又は細胞外結合ドメインは、ウイルス特異的抗原に特異的に結合しうる。
【0023】
さらなる企図される態様では、ヒンジドメイン及び/又は膜貫通ドメインは、CD8ヒンジドメイン及び/又はCD28膜貫通ドメインを含み、一方、FcεRIγシグナリングドメインは、配列番号2の核酸配列を有しうる。
【0024】
本発明の主題のそのほかのさらなる態様では、本発明者らはまた、本明細書の以上に記載の組換え核酸を含む組換え細胞を企図する。核酸を調製及び/又は増幅する場合、組換え細胞は細菌細胞でありうる。他方、組換え核酸を発現させる場合、細胞は典型的には自家NK細胞又はNK細胞であろう(任意選択的に遺伝子改変されたNK-92細胞であってもよい)。
【0025】
そのため、本発明者らはまた、必要とする患者における癌の治療方法を企図する。かかる方法では、治療有効量の遺伝子改変NK細胞のいずれか1つを患者に投与することにより癌を治療する。そのほか所望により、企図される方法は、ウイルス癌ワクチン、細菌癌ワクチン、酵母癌ワクチン、N-803、抗体、幹細胞移植片、及び腫瘍標的化サイトカインからなる群から選択される少なくとも1つの追加の治療エンティティーを投与するさらなる工程を含みうる。
【0026】
癌の中でもとくに企図される癌としては、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性白血病、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、たとえば、限定されるものではないが肉腫及び癌腫、たとえば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫が挙げられる。
【0027】
同様に、本発明者らはまた、必要とする患者におけるウイルス感染症の治療方法を企図する。かかる方法では、治療有効量の遺伝子改変NK細胞のいずれか1つを患者に投与することによりウイルス感染症を治療する。所望又は所要により、抗ウイルス薬剤もまた投与しうる。
【0028】
治療のタイプにかかわらず、一般に、1×108~約1×1011細胞/m2患者体表面積で患者に投与することが企図される。さまざまな観点から見て、本明細書に提示される遺伝子改変NK細胞の使用は、癌又はウイルス感染症の治療が企図される。
【0029】
本発明の主題の各種目的、特徴、態様、及び利点は、添付の図面と併せて好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。図中、同じ数字は同じ構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】試験された模範的CD19-CARの模式図である。CD19-CAR変異体はすべて、抗CD19scFv領域(αCD19-scFv)とCD8由来のヒンジ領域(CD8ヒンジ)とを含む細胞外ドメインと、CD28由来の膜貫通ドメイン(CD28TM)と、を含有していた。CD19CARの細胞内ドメインは、指定された通りに異ならせた。
【
図2A】eF660で標識された抗scFv抗体を用いてフローサイトメトリーにより決定したときのCD19-CARmRNAのトランスフェクション後の
図1のCD19-CARを発現するNK-92細胞のパーセントの模範的結果である。
【
図2B】eF660で標識された抗scFv抗体で標識されたCD19-CAR発現NK-92細胞のメジアン蛍光強度(MFI)-バックグラウンドの模範的結果である。
【
図3A】5:1~0.3:1のエフェクター:標的比でCD19CAR発現NK-92細胞(エフェクター)により死滅されたNK-92細胞感受性標的癌細胞(K562)のパーセントの模範的結果を示す。
【
図3B】5:1~0.3:1のエフェクター:標的比でCD19CAR発現NK-92細胞(エフェクター)により死滅されたNK-92細胞耐性CD19陽性標的癌細胞(SUP-B15)のパーセントの模範的結果を示す。
【
図4】2:1~0.25:1のエフェクター:標的比でSUP-B15標的細胞を用いた脱顆粒アッセイにおける抗CD107a抗体で標識されたCD19-CAR発現NK-92細胞(エフェクター)のMFIの模範的結果を示す。
【
図5】各種時点におけるCD19CARmRNA構築物でトランスフェクトされたhaNK細胞上のCD19CARの表面発現の模範的結果を示す。試験されたCAR構築物はすべて、使用条件下で72時間まで検出可能発現を示し、CD19/CD28-Fc-イプシロンCARが最長発現継続時間を有していた。
【
図6】SUPB15CD19+細胞(aNK耐性細胞系)に対するCD19.taNKの細胞傷害性の模範的結果を示す。試験されたCAR構築物はすべて、24hでは同程度(最大)の細胞傷害性を示す。しかしながら、48hでは、CD19/CD3ゼータは、細胞傷害性の際立った減少を示し、一方、FcイプシロンベースCARは、エレクトロポレーションの48時間後にごくわずかな減少を示すにすぎない。
【
図7】組換えトリシストロニックDNA構築物及び対応するタンパク質産物の模範的模式図である。
【
図8】
図8に示されるプラスミドの模範的線状化形態を示す。
【
図9A】CD33陽性(CD33+)THP-1細胞が対照NK-92(aNK)細胞による細胞傷害性(特異的溶解)に対しては相対的に耐性であるが、CD33に特異的に結合するCARを発現するNK-92細胞(CD33-CAR/NK-92細胞)と共にTHP-1細胞を培養したときは高パーセントの特異的溶解が存在することを示すin vitroデータの模範的結果を示す。
【
図9B】K562細胞が対照aNK細胞及びCD33-CAR/NK-92細胞の両方により死滅されることを示すin vitroデータの模範的結果を示す。
【
図10】BT-474細胞に対するHER2.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図11】THP-1細胞に対するCD33.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図12】SUP-B15.PD-L1
+細胞に対するPD-L1.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図13】U251細胞に対するPD-L1.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図14】A-549細胞に対するEGFR.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図15】K562細胞に対するCD19.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図16】SUP-B15細胞に対するCD19.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図17】SKBr3細胞に対するCD19.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図18】MDA-MB-231細胞に対するIGF1R.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図19】さまざまな癌細胞に対するPD-L1.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図20】MDA-MB-231細胞に対するPD-L1.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性の模範的比較結果を示す。
【
図21】CD16及びCD19.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図22】K562細胞に対するCD19.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図23】SUP-B15細胞に対するCD19.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図24】CD19.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図25】CD16及びCD20.CARの発現の模範的比較結果を示す。
【
図26】CD20.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図27】CD16及びCD33.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図28】K562細胞に対するCD33.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図29】THP-1細胞に対するCD33.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図30】CD33.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図31】CD16及びEGFR.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図32】K562細胞に対するEGFR.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図33】A549細胞に対するEGFR.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図34】HCT116細胞に対するEGFR.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図35】EGFR.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図36】CD16及びHER2.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図37】K562細胞に対するHER2.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図38】SKBR-3細胞に対するHER2.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図39】HER2.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図40】CD16及びPD-L1.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図41】K562細胞に対するPD-L1.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図42】PD-L1.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図43】PD-L1.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図44】CD123.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図45】CD123.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図46】CD16及びCD30.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図47】K562細胞に対するCD30.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図48】THP-1細胞に対するCD30.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図49】CD30.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図50】CD16及びBCMA.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図51】BCMA.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図52】BCMA.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図53】CD16及びgp120.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図54】CAR-t-haNK細胞のGP120結合の模範的結果を示す。
【
図55】K562細胞に対するCAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図56】CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的結果を示す。
【
図57】CD16及びFAP.CARの発現の模範的結果を示す。
【
図58】FAP.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図59】CSPG4.CAR-t-haNK細胞におけるCSPG4発現の模範的結果を示す。
【
図60】SK-MEL-28細胞に対するCSPG4.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果を示す。
【
図61】IGF1R-CARとCD16とIL-2
ERとをコードする模範的トリシストロニック構築物を表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下でより詳細に記載されるように、組換えCARがFcεRIγシグナリングドメインを含む場合、組換えNK細胞(たとえばNK-92細胞)におけるCAR媒介細胞傷害性及びCAR発現が実質的に増加することを、予期せずして本発明者らは発見した。T細胞におけるかかるCARは、CD3ζ、4-1BB、又はCD28シグナリングドメインと、任意選択的に第2及び第3世代CARに通常見いだされる追加のシグナリングドメインと、を有するCARと比較して、相対的に不十分な性能を示すので、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARがNK細胞において優れた性質を有するという知見は、とりわけ予想外である。
【0032】
したがって、いくつかの実施形態では、必ずというわけではないが好ましくはCD16若しくはCD16変異体及び/又はIL-2若しくはIL-2変異体をコードする配列部分も含むトリシストロニック配置で、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARをコードする組換え核酸が企図される。本発明の主題のそのほかのさらなる有利な態様では、かかる組換え核酸は、トランスフェクト細胞を選択する効率的な方法を提供するだけでなく(IL-2はオートクリン成長刺激を付与するだけでないため)、共発現タンパク質の選択マーカーとしても作用する。
【0033】
そのため、本発明の主題は、細胞表面上にキメラ抗原レセプター(CAR)を発現する遺伝子改変NK細胞、NK-92細胞、及びそれらの派生物に関する。ただし、CARは、好ましくは、Fcイプシロンレセプターガンマ(FcεRIγ)由来の細胞内シグナリングドメインを含む。たとえば、FcεRIγの細胞質内ドメインは、配列番号1に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有しうるか、又は配列番号1に記載の配列を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、FcεRIγの細胞質内ドメインは、配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸によりコードされる。企図される組換え細胞は、1つ以上のサイトカイン及びCD16をはじめとする各種他のタンパク質をさらに発現しうる。容易に分かるであろうが、CAR及び/又は他のタンパク質は、組換え細胞により一過的に発現されうるか又は安定的に発現されうる。
【0034】
いくつかの実施形態では、CARは、CD8由来のヒンジ領域を含み、且つ/又はいくつかの実施形態では、CARは、配列番号6のアミノ酸配列(配列番号7の核酸によりコードされる)を有するCD28由来の膜貫通ドメインを含む。CD28の全長アミノ酸配列は配列番号23に示される。さらなる実施形態では、組換え細胞は、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合されたCD8ヒンジ領域を含む配列番号8の配列を有するハイブリッドタンパク質をコードする配列番号9の配列を有する核酸で遺伝子改変される。分かるであろうが、結合ドメインをヒンジ領域に付加すると機能性CARが形成されるであろう。たとえば、結合ドメインは、腫瘍関連抗原を標的とするか又はそれに特異的に結合しうる。また、好適な抗原としては、CD19、CD20、NKG2Dリガンド、CS1、GD2、CD138、EpCAM、HER-2、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、MUC-1、ETA、MAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAP、WT-1、PSMA、NY-ESO1、CSPG-4、IGF1-R、Flt-3、CD276、CD123、PD-L1、BCMA、及びCD33が挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、核酸配列の転写を促進する(誘導性)プロモーターをさらに含む。必ずというわけではないが好ましくは、核酸構築物は、核酸配列から転写されたmRNAの内部領域からの翻訳の開始を可能にする1つ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)を含むマルチシストロニックベクター又はRNAである。代替的又は追加的に、核酸構築物は、同一mRNAによりコードされる等モルレベルのポリペプチドを生成するために、T2A、P2A、E2A、又はF2Aペプチドなどの2Aペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、抗原結合タンパク質(ABP)をコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ABPは、scFv又はコドン最適化scFvである。いくつかの実施形態では、ABPは、腫瘍細胞により発現される抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、ABPは、キメラ抗原レセプター(CAR)の一部である。さらなる実施形態では、構築物は、小胞体に標的化しうるIL-2やIL-15などのサイトカインをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、NK-92細胞又は細胞系はまた、細胞表面上にCD16を発現するように遺伝子改変される。一実施形態では、NK-92細胞又は細胞系は、細胞表面上に高親和性CD16(F158V)を発現するように遺伝子改変される。
【0036】
好適なNK細胞に関して、NK細胞はすべて、本明細書に記載の使用に好適であるとみなされるので、初代NK細胞(保存、拡大、及び/又はフレッシュ細胞)、不死化された二次NK細胞、自家又は異種NK細胞(バンク、保存、フレッシュなど)、並びにより詳細に以下に記載される改変NK細胞を含むことに留意すべきである。いくつかの実施形態では、NK細胞はNK-92細胞であることが好ましい。NK-92細胞系は、インターロイキン2(IL-2)の存在下で増殖することが発見されたユニークな細胞系である(たとえば、Gong et al.,Leukemia 8:652-658(1994)を参照されたい)。NK-92細胞は、好適な培養培地での拡大後、広範な抗腫瘍細胞傷害性及び予測可能な収率を有する癌性NK細胞である。有利なことに、NK-92細胞は、さまざまな癌に対する高い細胞溶解活性を有する。
【0037】
元のNK-92細胞系は、CD56bright、CD2、CD7、CD11a、CD28、CD45、及びCD54表面マーカーを発現し、且つCD1、CD3、CD4、CD5、CD8、CD10、CD14、CD16、CD19、CD20、CD23、及びCD34マーカーを提示しなかった。培養下でのかかるNK-92細胞の成長は、1IU/mL程度の低用量でも増殖を維持するのに十分なインターロイキン2(たとえばrIL-2)の存在に依存する。IL-7及びIL-12は長期成長を支援せず、IL-1α、IL-6、腫瘍壊死因子α、インターフェロンα、及びインターフェロンγをはじめとする試験された各種他のサイトカインも同様である。初代NK細胞と比較して、NK-92は、典型的には、相対的に低いエフェクター:標的(E:T)比(たとえば1:1)でさえも高い細胞傷害性を有する。代表的なNK-92細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)にCRL-2407という名称で寄託されている。
【0038】
したがって、好適なNK細胞は、たとえばMHCクラスI分子との相互作用を低減又は消失するように突然変異された1つ以上の改変KIRを有しうる。当然ながら、1つ以上のKIRも同様に欠失させうるか又は発現を抑制しうることに留意すべきである(たとえば、miRNA、siRNAなどを介して)。最も典型的には、1つ超のKIRが突然変異、欠失、又はサイレンスされ、とりわけ企図されるKIRとしては、短い又は長い細胞質内テールを備えて2つ又は3つのドメインを有するものが挙げられる。さまざまな観点から見て、改変、サイレンス、又は欠失されるKIRとしては、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、KIR2DS5、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、及びKIR3DS1が挙げられよう。かかる改変細胞は、当技術分野で周知のプロトコルを用いて調製しうる。代替的に、かかる細胞はまた、aNK細胞(活性化ナチュラルキラー細胞)としてNantKwest(URLwww.nantkwest.comを参照されたい)から市販品としても入手しうる。次いで、かかる細胞は、以下でより詳細にさらに記載されるように追加的に遺伝子改変しCARとしうる。
【0039】
本発明の主題の他の一態様では、遺伝子工学操作NK細胞はまた、高親和性Fcγレセプター(CD16)を発現するように改変されたNK-92派生物でありうる。Fcγレセプターの高親和性変異体の配列は、当技術分野で周知であり(たとえば、Blood 2009 113:3716-3725を参照されたい)、生成及び発現の方法はすべて、本明細書に記載の使用に好適であるとみなされる。かかるレセプターの発現は、患者の腫瘍細胞(たとえばネオエピトープ)、特定腫瘍型(たとえば、her2neu、PSA、PSMAなど)、又は癌関連のもの(たとえばCEA-CAM)に特異的な抗体を用いた腫瘍細胞の特異的標的化を可能にすると考えられる。有利なことに、かかる抗体は市販されており、細胞と組み合わせて使用可能である(たとえば、Fcγレセプターに結合させて)。代替的に、かかる細胞はまた、haNK細胞としてNantKwestから市販品としても入手しうる。次いで、かかる細胞は、以下でより詳細にさらに記載されるように追加的に遺伝子改変しCARとしうる。
【0040】
本明細書で企図されるNK細胞の遺伝子改変は、多くの方法で実施可能であり、公知の方式はすべて、本明細書における使用に好適であるとみなされる。さらに、NK細胞は、DNA又はRNAでトランスフェクト可能であり、且つトランスフェクションの特定的選択は、少なくとも部分的には所望の組換え細胞型及びトランスフェクション効率に依存するであろうことを認識すべきである。たとえば、NK細胞を安定的にトランスフェクトすることが望まれる場合、ゲノムへのインテグレーションのために線状化DNAを細胞に導入しうる。他方、一過性トランスフェクションが望まれる場合、環状DNA又は線状RNA(たとえば、ポリA+テールを有するmRNA)を使用しうる。
【0041】
たとえば、NK細胞が自家NK細胞又はNK-92細胞である場合、組換え核酸は、FcεRIγシグナリングドメインを含むCARをコードするセグメントと、好ましくは、オートクリン成長刺激を提供するサイトカイン(たとえば、IL-2、ER保持配列で改変されたIL-2、IL-15、又はER保持配列で改変されたIL-15)をコードするセグメント及び/又はCD16若しくは高親和性CD16158Vをコードするセグメントと、を含むであろうことが企図される。容易に分かるであろうが、オートクリン成長刺激を提供するサイトカインの組込みは、外因性サイトカイン添加に依存しない改変組換え体を与えるであろうことから、かかる細胞の大規模生産が経済的に実現可能になるであろう。同様に、改変組換え体がCD16又は高親和性CD16158Vを発現する場合、かかる細胞は、さらに増強されたADCC特性を有するとともに、それにより改善された標的化細胞傷害性を有するであろう。
【0042】
当然ながら、サイトカイン及び/又はCD16若しくは高親和性CD16158Vをコードする組換え核酸は、NK細胞のゲノムにインテグレート可能であるか、又は染色体外ユニット(ウイルス送達された又は化学的、機械的、若しくは電気的トランスフェクションを介して送達された線状若しくは環状DNA又は線状RNAでありうる)として供給可能であることを認識すべきである。たとえば、IL-2ERとCD16158Vとを発現する組換えNK-92細胞は、haNK細胞として公知であり(Oncotarget 2016 Dec 27;7(52):86359-86373)、FcεRIγシグナリングドメインを含むCARをコードするセグメントを含む組換え核酸でトランスフェクト可能である。もう一度述べるが、かかる組換え核酸は、追加の免疫療法タンパク質、たとえば、N-803、TxM型化合物、IL-8トラップ、TGF-βトラップなどをコードしうるさらなるセグメントを含みうる。同様に、NK-92細胞は、IL-2をコードするcDNAですでにトランスフェクトされたものでありうる(たとえば、NK-92MI、ATCC CRL-2408)。次いで、かかる細胞は、CD16又は高親和性CD16158Vをコードするセグメントと共に、FcεRIγシグナリングドメインを含むCARをコードするセグメントを含む組換え核酸でさらにトランスフェクト可能である。
【0043】
他方、(自家、フレッシュ、培養、又は事前フリーズ)NK細胞又はNK-92細胞はまた、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARをコードするセグメントと、オートクリン成長刺激を提供するサイトカイン(たとえば、IL-2、ER保持配列で改変されたIL-2、IL-15、又はER保持配列で改変されたIL-15)をコードするセグメントと、CD16(配列番号34)又は高親和性CD16158V(配列番号36によりコードされる配列番号35)をコードするセグメントと、を含む組換え核酸でトランスフェクトしうる。最も典型的には、かかる組換え核酸は、トリシストロニック構築物として配置されるであろう。以上に述べたように、かかる構築物は、染色体外環状プラスミド、線状DNA(NK細胞のゲノムにインテグレートしうる)、又は線状RNAでありうる。かかる核酸は、典型的には、当技術分野で周知の方法(たとえば、エレクトロポレーション、リポフェクション、バリスティック遺伝子移入など)により細胞にトランスフェクトされるであろう。同様に、核酸は、組換えウイルスを介して細胞に送達しうる。したがって、本明細書に記載の使用に好適なNK細胞は、NK-92細胞(CARと、CD16又はその変異体と、サイトカイン又はその変異体と、をコードするトリシストロニック構築物でトランスフェクトしうる)、CD16若しくはその変異体又はサイトカイン若しくはその変異体を発現する遺伝子改変NK細胞又はNK-92細胞(CARと、CD16若しくはその変異体又はサイトカイン若しくはその変異体と、をコードする核酸でトランスフェクトしうる)、及びCD16又はその変異体と、サイトカイン又はその変異体と、を発現する遺伝子改変NK細胞又はNK-92細胞(CARをコードする核酸でトランスフェクトしうる)を含む。
【0044】
したがって、好ましい実施形態では、遺伝子改変NK細胞(とりわけ、細胞がCARとCD16又はその変異体とを発現する場合)は、3つの識別可能なモードの細胞死滅、すなわち、レセプター(たとえばNKG2Dレセプター)の活性化により媒介される一般的細胞傷害性、標的細胞に結合された抗体により媒介されるADCC、及びCAR媒介細胞傷害性を呈するであろうことに留意すべきである。
【0045】
そのため、トランスフェクションの方法は、少なくとも部分的には利用される核酸のタイプに依存するであろうことが認識されるべきである。したがって、ウイルストランスフェクション、化学的トランスフェクション、機械的トランスフェクションの方法はすべて、本明細書に記載の使用に好適であるとみなされる。たとえば、一実施形態では、本明細書に記載のベクターは一過的発現ベクターである。かかるベクターを用いて導入される外因性トランスジーンは、細胞の核ゲノムにインテグレートされないので、ベクター複製の不在下では、外来トランスジーンは経時的に劣化又は希釈されるであろう。
【0046】
他の一実施形態では、本明細書に記載のベクターは、細胞の安定なトランスフェクションを可能にする。一実施形態では、ベクターは、細胞のゲノムへのトランスジーンの取込みを可能にする。好ましくは、かかるベクターはポジティブ選択マーカーを有し、好適なポジティブ選択マーカーは、遺伝子を発現しない細胞を死滅させうる条件下で細胞の成長を可能にするいずれかの遺伝子を含む。例としては、限定されるものではないが、抗生物質耐性たとえばジェネティシン(Tn5由来のNeo遺伝子)が挙げられる。
【0047】
代替的又は追加的に、ベクターはプラスミドベクターである。一実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。当業者であれば理解されるであろうが、いずれの好適なベクターも使用可能であり、好適なベクターは当技術分野で周知である。
【0048】
さらに他の実施形態では、細胞は、対象タンパク質(たとえばCAR)をコードするmRNAでトランスフェクトされる。mRNAのトランスフェクションは、タンパク質の一過的発現をもたらす。一実施形態では、NK-92細胞へのmRNAのトランスフェクションは、細胞の投与の直前に実施される。一実施形態では、細胞への投与の「直前」とは、投与の約15分前~約48時間前を意味する。好ましくは、mRNAのトランスフェクションは、投与の約5時間前~約24時間前に実施される。より詳細に以下に記載されるように少なくともいくつかの実施形態では、mRNAによるNK細胞トランスフェクションは、高分率のトランスフェクト細胞でCARの予想外に一貫した強い発現をもたらした。さらに、かかるトランスフェクト細胞はまた、比較的低いエフェクター細胞対標的細胞比で高い特異的細胞傷害性を呈した。
【0049】
企図されるCARに関して、NK又はNK-92細胞は、シグナリングドメインを細胞内空間に維持しつつ、CARの一部分を細胞表面上に露出させて膜結合タンパク質としてCARを発現するように、遺伝子改変されるであろうことに留意されたい。最も典型的には、CARは、少なくとも次のエレメント、すなわち、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、及びFcεRIγシグナリングドメインを(順に)含むであろう。
【0050】
好ましい実施形態では、CARの細胞質内ドメインは、FcεRIγのシグナリングドメインを含むか又はそれからなる。注目すべきこととして、より詳細に以下に記載されるように、FcεRIγシグナリングドメインは、経時的に有意に長期にわたる細胞傷害性と同時に、CARの実質的に増加した発現レベルを提供する。たとえば、FcεRIγシグナリングドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、FcεRIγ細胞質内ドメインは、唯一のシグナリングドメインである。しかしながら、追加のエレメント、たとえば、他のシグナリングドメイン(たとえば、CD28シグナリングドメイン、CD3ζシグナリングドメイン、4-1BBシグナリングドメインなど)も含みうることを認識すべきである。これらの追加のシグナリングドメインは、FcεRIγ細胞質内ドメインの下流及び/又はFcεRIγ細胞質内ドメインの上流に位置しうる。
【0051】
いくつかの実施形態では、FcεRIγシグナリングドメインは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。
【0052】
代替実施形態では、CARの細胞質内ドメインはまた、CD3ゼータ(CD3ζ)のシグナリングドメインを含みうる。一実施形態では、CARの細胞質内ドメインは、CD3ゼータのシグナリングドメインからなる。一実施形態では、CD3ゼータシグナリングドメインは、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、CD3ゼータシグナリングドメインは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。
【0053】
CARは、いずれかの好適な膜貫通ドメインを含みうる。一態様では、CARは、CD28の膜貫通ドメインを含む。一実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列(配列番号7を有する核酸によりコードされる)を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。一実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、4-1BB膜貫通ドメインであってもよい。
【0054】
CARは、いずれかの好適なヒンジ領域を含みうる。一態様では、CARはCD8のヒンジ領域を含む。一実施形態では、CD8ヒンジ領域は、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。一実施形態では、CD8ヒンジ領域は、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。かかる領域は、配列番号5の配列を有する核酸によりコードされうる。
【0055】
したがって、企図されるCARは、シグナリングドメインに結合された膜貫通ドメインに結合されたヒンジドメインに結合された所望の抗原結合ドメインの一般構造を含むであろう。別の観点から見て、企図されるCARは、所望の結合ドメインを有しうるとともに、次いで、これは、シグナリングドメインに結合された膜貫通ドメインに結合されたヒンジドメインを含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になるハイブリッドタンパク質に結合される。たとえば、かかるハイブリッドタンパク質は、配列番号8のアミノ酸配列(核酸配列の配列番号9によりコードされる)に対して少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を有しうる。
【0056】
必ずというわけではないが最も典型的には、CARの細胞外結合ドメインは、対象抗原に特異的に結合するscFv又は他の天然若しくは合成の結合部分であろう。とくに好適な結合部分としては、単一、二重、若しくは多重標的特異性を有する小さな抗体フラグメント、βバレルメイン結合剤、ファージディスプレイ融合タンパク質などが挙げられる。好適な細胞外結合ドメインの中でもとくに好ましいドメインは、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、又は患者及び腫瘍特異的抗原に特異的に結合するであろう。腫瘍特異的抗原としては、限定されるものではないが、NKG2Dリガンド、CS1、GD2、CD138、EpCAM、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、ETA、MAGE、CAGE、BAGE、HAGE、LAGE、PAGE、NY-SEO-1、GAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAP、WT-1、PSMA、NY-ESO1、AFP、CEA、CTAG1B、及びCD33が挙げられる。限定されるものではないが追加の腫瘍関連抗原及びそれに関連する悪性病変は、表1に見いだしうる。そのほかのさらなる腫瘍特異的抗原は、限定されるものではないが、たとえば、米国特許出願公開第2013/0189268号明細書、国際公開第1999024566A1号パンフレット、米国特許第7098008号明細書、及び国際公開第2000020460号パンフレット(各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。同様に、他の好ましいドメインは、(病原性)ウイルス特異的抗原、たとえば、HIVウイルス(たとえばgp120)、HPVウイルス、RSVウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、又はHCVウイルスの抗原に特異的に結合するであろう。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
たとえば、CARは、抗CD19細胞外ドメインを含みうる。一実施形態では、抗CD19細胞外ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。一実施形態では、抗CD19細胞外ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるか又はそれから本質的になる。
【0062】
そのため、企図されるCARは、特異的癌型に関連する抗原を標的とするであろう。たとえば、標的癌としては、白血病(急性白血病(たとえば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(前骨髄球性、骨髄芽球性、骨髄単球性、単球性、及び赤白血病を含む)を含む)及び慢性白血病(たとえば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ球性白血病))、真性赤血球増加症、リンパ腫(たとえば、ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、たとえば、限定されるものではないが肉腫及び癌腫、たとえば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫が挙げられる。
【0063】
したがって、企図されるCARは、一般に、FcεRIγシグナリングドメインに(直接)結合された膜貫通ドメインに(直接)結合されたヒンジドメインに(直接)結合された細胞外結合ドメインの構造を有するであろう。そのほかのさらなる企図される態様では、企図されるCARはまた、FcεRIγシグナリングドメインに加えて又はその代わりに1つ以上のシグナリングドメインを含みうるとともに、とりわけ企図されるシグナリングドメインは、CD3ζシグナリングドメインと、4-1BBシグナリングドメインと、CD28シグナリングドメインと、を含む。したがって、たとえば、企図されるCARは、ヒンジドメイン(たとえば、配列番号5によりコードされる配列番号3又は配列番号4のCD8ヒンジ)に結合されたいずれかの結合ドメイン(たとえば、配列番号11を有する)を含みうるとともに、このヒンジドメインは、続いて、シグナリングドメイン(たとえば、配列番号1によりコードされる配列番号1のFcεRIγシグナリングドメイン、又は配列番号13のCD28シグナリングドメイン、又は配列番号14の4-1BBシグナリングドメイン、又は配列番号15のCD3ζシグナリングドメイン)に結合された膜貫通ドメイン(たとえば、配列番号7によりコードされる配列番号6のCD28TM)に結合される。
【0064】
企図されるCARの構築に関して、たとえば、国際公開第2014/039523号パンフレット、米国特許出願公開第2014/0242701号明細書、米国特許出願公開第2014/0274909号明細書、米国特許出願公開第2013/0280285号明細書、及び国際公開第2014/099671号パンフレット(各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される多くの方法によりCARを工学操作可能であることを認識すべきである。
【0065】
そのほかのさらなる企図される態様では、以上に述べたように、NK細胞は、サイトカイン及びCARが同一組換え核酸上にコードされた形で1つ以上のサイトカインを発現させて選択マーカーを提供するように、及び/又は外因性IL-2に依存しない組換え細胞を与えるように、さらに遺伝子改変しうる。したがって、本発明の主題のいくつかの態様では、NK-92細胞は、少なくとも1つのサイトカインを発現するように改変される。特定的には、少なくとも1つのサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、又はそれらの変異体である。好ましい実施形態では、サイトカインはIL-2又はその変異体であり、とりわけ好ましい変異体は内質保持シグナルを含む(たとえば、配列番号21のヒトIL-2、又は配列番号22、配列番号30、若しくは配列番号33のER保持シグナルを有するもの)。たとえば、IL-2遺伝子は、IL-2を小胞体に方向付けるシグナル配列と共にクローニングされ発現される。これはIL-2を細胞外に放出することなくオートクリン活性化に十分なレベルのIL-2の発現を可能にする(たとえば、Exp Hematol.2005 Feb;33(2):159-64)。代替的に、組換え細胞にオートクリン成長シグナルを提供するだけでなく、発現されたIL-15の少なくともいくつかを細胞から放出させて免疫刺激シグナルも提供するのに十分な量でサイトカインが発現されるように、サイトカイン(とりわけIL-15)の発現を行いうる。たとえば、かかる発現は、シグナルペプチドと内質保持配列との両方を含むヒトIL-15配列を用いて達成しうる。内質保持IL-15に対する模範的DNA配列及びタンパク質配列は、それぞれ、配列番号49及び配列番号50に示される。
【0066】
所望により、企図される細胞は自殺遺伝子も発現しうる。「自殺遺伝子」という用語は、自殺遺伝子を発現する細胞のネガティブ選択を可能にするトランスジーンを意味する。自殺遺伝子は、安全系として使用され、選択剤の導入により遺伝子を発現する細胞の死滅を可能にする。これは、組換え遺伝子が突然変異を起こして無制御な細胞成長をもたらすか又は細胞自体がかかる成長を行いうる場合に望ましい。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)gpt遺伝子、及びE.コリ(E.coli)Deo遺伝子をはじめとするいくつかの自殺遺伝子系が同定されている。典型的には、自殺遺伝子は、細胞に悪影響を及ぼさないが特異的化合物の存在下では細胞を死滅させるタンパク質をコードする。そのため、自殺遺伝子は典型的には系の一部である。
【0067】
一実施形態では、自殺遺伝子はNK-92細胞で活性である。一実施形態では、自殺遺伝子はチミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。TK遺伝子は、野生型又は突然変異TK遺伝子(たとえば、tk30、tk75、sr39tk)でありうる。TKタンパク質を発現する細胞は、ガンシクロビルを用いて死滅させうる。他の一実施形態では、自殺遺伝子は、5-フルオロシトシンの存在下で細胞に対して毒性であるシトシンデアミナーゼである。Garcia-Sanchez et al.“Cytosine deaminase adenoviral vector and 5-fluorocytosine selectively reduce breast cancer cells 1 million-fold when they contaminate hematopoietic cells:a potential purging method for autologous transplantation.”Blood.1998 Jul 15;92(2):672-82。さらなる実施形態では、自殺遺伝子は、イホスファミド又はシクロホスファミドの存在下で毒性であるシトクロムP450である。たとえば、Touati et al.“A suicide gene therapy combining the improvement of cyclophosphamide tumor cytotoxicity and the development of an anti-tumor immune response.”Curr Gene Ther.2014;14(3):236-46を参照されたい。さらに他の一実施形態では、自殺遺伝子はiCasp9である。Di Stasi,(2011)“Inducible apoptosis as a safety switch for adoptive cell therapy.”N Engl J Med 365:1673-1683。Morgan,“Live and Let Die:A New Suicide Gene Therapy Moves to the Clinic”Molecular Therapy(2012);20:11-13も参照されたい。iCasp9は、低分子AP1903の存在下でアポトーシスを誘発する。AP1903は、耐容性が良好であることが臨床試験で示されているとともに養子細胞療法の状況で使用されている生物学的イナート低分子である。
【0068】
当然ながら、組換えタンパク質はすべて、個別組換え配列から発現可能であることに留意すべきである。しかしながら、多重組換え配列を発現させる場合(たとえば、CAR、CD16、サイトカイン)、組換えタンパク質をコードする少なくとも2つ又は少なくとも3つのコード領域を有するポリシストロニックユニットでコード領域を配置しうることが一般に好ましい。たとえば、トリシストロニックDNA又はRNA構築物(たとえば、FcεRIγシグナリングドメインと、CD16158Vと、IL-2ER又はIL15ERと、を有するCARをコードする)は、NK又はNK-92細胞にトランスフェクトしうる。したがって、トランスジーンは、当業者に公知のいずれかの機序により工学操作を行って発現ベクターに導入可能である。複数のトランスジーンを細胞に挿入する場合、トランスジーンは、同一発現ベクター又は異なる発現ベクターに工学操作により導入しうる。いくつかの実施形態では、細胞は、発現されるトランスジェニックタンパク質をコードするmRNAでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、細胞は、発現されるトランスジェニックタンパク質をコードするDNAでトランスフェクトされる。トランスジーンのmRNA及びDNAは、当技術分野で公知のいずれかのトランスフェクション法を用いて、たとえば、限定されるものではないが、感染、ウイルスベクター、エレクトロポレーション、リポフェクション、ヌクレオフェクション、又は「遺伝子銃」により、NK-92細胞に導入可能である。
【0069】
自明なことであろうが、企図される遺伝子改変細胞は、各種疾患、とりわけ、疾患細胞が疾患特異的抗原又は疾患関連抗原を提示する各種癌及びウイルス感染症の治療に使用可能である。そのため、本発明者らは、本明細書に記載の改変NK又はNK-92細胞により患者を治療する方法を企図する。一実施形態では、患者は、癌(たとえば腫瘍)に罹患しており、且つ改変NK-92細胞又は細胞系は、癌又は腫瘍の細胞表面上に発現される抗原に特異的なCARを発現する。一実施形態では、患者は、ウイルス感染症に罹患しており、且つ改変NK-92細胞又は細胞系は、ウイルスが感染した細胞の表面上に発現される抗原に特異的なCARを発現する。一実施形態では、患者は、細菌感染症に罹患しており、且つ改変NK-92細胞又は細胞系は、感染症を引き起こす細菌細胞の表面上に発現される抗原に特異的なCARを発現する。
【0070】
企図される改変NK又はNK-92細胞は、細胞の絶対数により個体に投与可能である。たとえば、約1000細胞/注射~約100億細胞/注射、たとえば、約、少なくとも約、若しくは多くとも約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、5×103(など)改変NK-92細胞/注射、又は端点を含めてこれらのいずれか2つの数の間のいずれかの範囲で、個体に投与可能である。他の実施形態では、改変NK-92細胞は、細胞の相対数により個体に投与可能であり、たとえば、約1000細胞~約100億細胞/キログラム個体、たとえば、約、少なくとも約、又は多くとも約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、5×103(など)改変NK-92細胞/キログラム個体、又は端点を含めてこれらのいずれか2つの数の間のいずれかの範囲で、前記個体に投与可能である。他の実施形態では、全用量は、m2体表面積、たとえば、約1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107/m2、又は端点を含めてこれらのいずれか2つの数の間のいずれかの範囲により計算しうる。平均的な人は、約1.6~約1.8m2である。好ましい実施形態では、約10億~約30億NK-92細胞が患者に投与される。
【0071】
改変NK-92細胞及び任意選択的に他の抗癌剤又は抗ウイルス剤は、癌患者又はウイルス感染患者に1回投与可能であるか、或いは複数回、たとえば、治療期間中、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23時間に1回、又は1、2、3、4、5、6、若しくは7日間に1回、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間、若しくはそれ以上に1回、又は端点を含めてこれらのいずれか2つの数の間のいずれかの範囲で投与可能である。
【0072】
一実施形態では、改変NK-92細胞が自殺遺伝子を発現する場合、改変NK-92細胞死をトリガーする作用剤が患者に投与される。一実施形態では、作用剤は、NK-92細胞による標的細胞の死滅に十分な改変NK-92細胞の投与後、ある時点で投与される。
【0073】
一実施形態では、改変NK-92細胞は患者への投与前に照射される。NK-92細胞への照射は、たとえば、米国特許第8,034,332号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。一実施形態では、自殺遺伝子を発現するように工学操作されていない改変NK-92細胞に照射される。
【0074】
さらに、企図される治療はまた、他の免疫療法エンティティーの投与を含むであろうことを認識すべきであり、とりわけ好ましい免疫療法エンティティーとしては、ウイルス癌ワクチン(たとえば、癌特異的抗原をコードするアデノウイルスベクター)、細菌癌ワクチン(たとえば、1つ以上の癌特異的抗原を発現する非発熱性E.コリ(E.coli))、酵母癌ワクチン、N-803(ALTOR Biosciences製ALT-803としても知られる)、抗体(たとえば、腫瘍関連抗原又は患者特異的腫瘍ネオ抗原に結合するもの)、幹細胞移植片(たとえば、同種又は自家)、及び腫瘍標的化サイトカイン(たとえば、腫瘍標的化抗体に結合されたIL-12であるNHS-IL12又はそのフラグメント)が挙げられる。
【実施例0075】
以下の実施例は、単に例示を目的としたものにすぎず、特許請求された本発明を限定するものと解釈すべきではない。意図される発明を成功裏に同様に実施可能にしうる当業者の利用可能なさまざまな代替技術及び手順が存在する。
【0076】
実施例1:CARmRNAの調製
図1に模式的に表されるCD19CARの各変異体をコードするDNA配列をin silicoで設計し、de novoで合成し、mRNA発現ベクターpXT7(GeneArt,Life Technologies)にサブクローニングした。SalI制限酵素(New England Biolabs)による消化により10マイクログラム(μg)のプラスミドを線状化し、製造業者の説明書に従ってQIAgenゲル精製キット(QIAgen)を用いて精製した。
【0077】
製造業者の説明書に従ってT7 mMessage mMachine Ultra転写キット(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)を用いて、mRNAのin vitro合成の鋳型として線状化DNAを使用した。このキットは、mRNAのポリAテールの長さを増加させるポリアデニル化伸長工程を含むので、in vivoでの安定性を増強する。
【0078】
陰性対照として緑色蛍光タンパク質(GFP)のmRNAを調製するとともに、6つのCD19CAR変異体のmRNAを調製した。CD19CAR変異体はすべて、抗CD19scFv領域(αCD19-scFv)(配列番号11)とCD8由来のヒンジ領域(配列番号3又は4)とを含む細胞外ドメインと、CD28由来の膜貫通ドメイン(配列番号7によりコードされる配列番号6)と、を含有していた。CD19CARの細胞内ドメインは、以下の通りであり、
図1に模式的に示される。すなわち、CAR3zは、CD3ζシグナリングドメインを含有し、CARFcReは、FcεRIγシグナリングドメイン(配列番号1)を含有し、CAR28_3zは、CD3ζシグナリングドメインに融合されたCD28シグナリングドメインを含有し、CARBB_3zは、CD3ζシグナリングドメインに融合された4-1BBシグナリングドメインを含有し、CAR28_BB_3zは、CD3ζシグナリングドメインに融合された4-1BBシグナリングドメインに融合されたCD28シグナリングドメインを含有し、CARBB_3z_28は、CD28シグナリングドメインに融合されたCD3ζシグナリングドメインに融合された4-1BBシグナリングドメインを含有していた。
【0079】
より特定的には、
図1のCD3ζシグナリングドメインを有する第一世代CARは、配列番号16(ヒト)の核酸配列を有していた。FcεRIγシグナリングドメインを有する第一世代CARは、配列番号12の核酸配列及び配列番号10のアミノ酸配列を有していた。CD28/CD3ζシグナリングドメインを有する第二世代CARは、配列番号17の核酸配列を有し、4-1BB/CD3ζシグナリングドメインを有する第二世代CARは、配列番号18の核酸配列を有していた。CD28/4-1BB/CD3ζシグナリングドメインを有する第3世代CARは、配列番号19の核酸配列を有し、4-1BB/CD3ζ/CD28シグナリングドメインを有する第3世代CARは、配列番号20の核酸配列を有していた。FcεRIγシグナリングドメインを有するさらなる第一世代CARは、配列番号25のアミノ酸配列を有していた。
【0080】
実施例2:NK-92細胞へのCD19CARmRNAのエレクトロポレーション
5%ヒトAB血清(Valley Biomedical,Winchester,VA)と、500IU/mL IL-2(Prospec,Rehovot,Israel)と、が補足されたX-Vivo10培地(Lonza,Basel,Switzerland)中でNK-92細胞を成長させた。NK-92細胞に対する製造業者のパラメーター(1250V、10ms、3パルス)に従ってNeon(商標)エレクトロポレーションデバイス(Life Technologies,Carlsbad,CA)を用いて、且つ100μlの体積中で5μgのmRNA/106細胞を用いて、細胞にmRNAをエレクトロポレートした。エレクトロポレートされた細胞を培地(上記のものと同一)中に20時間(h)維持した。
【0081】
eF660で標識された抗scFv抗体(eBioscience,San Diego,CA)を用いたフローサイトメトリーにより、NK-92細胞表面上のCD19CAR発現を決定した。
図2Aは、NK-92細胞集団における指定のCD19CARの%発現を示す。
図2Bは、指定のCD19CARがエレクトロポレートされた細胞のメジアン蛍光強度(MFI、-バックグラウンド)を示す。
図2A及び2Bから分かるように、CARFcReは、予想外なことに、細胞表面にCD19CARを発現する細胞のパーセント(75.2%)が最高であるとともにさらに最高のMFI(組換え細胞上に発現されたCARの量)を有し、28_3zがそれに続いた(61.7%)。
【0082】
実施例3:癌細胞系に対するCD19CAR発現NK-92細胞の細胞傷害性
エレクトロポレーションの20時間後、フローベースin vitro細胞傷害性アッセイを用いて、in vitroでの標的癌細胞に対するCAR発現NK-92細胞の効能を試験した。96ウェルプレート中でさまざまなエフェクター対標的比(5:1~0.3:1)で、エフェクター細胞(CD19CAR又はGFPを発現するNK-92)と、PKHGL67標識(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)標的細胞(K562、又はSUPB15、B-ALL、CD19+)と、を混合し、37℃で4hインキュベートした。ヨウ化プロピジウム(PI)(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を細胞に添加し、2h以内にAttuneフローサイトメーター(Life Technologies,Carlsbad,CA)を用いてサンプルを解析した。細胞傷害性は、PKH陽性標的集団内のPI陽性細胞の%により決定した。
【0083】
模範的結果は、
図3A及び3Bに提供される。
図3Aから分かるように、NK-92細胞は、CD19CAR発現にかかわらずK562細胞を死滅させるのに有効である。そのため、組換え細胞は、細胞傷害性を失わないであろうことに留意すべきである。これとは対照的に、GFP発現NK-92細胞は、癌細胞系SUP-B15を死滅させる効率が悪かった。SUP-B15は、CD19陽性の急性リンパ芽球性白血病細胞系であり、NK-92媒介細胞傷害性に対して耐性である。
図3Bから容易に分かるように、試験されたいずれのCD19CARの発現も、対照(GFP発現NK-92細胞)と比較してSUP-B15細胞株に対する細胞傷害活性の増加をもたらす。驚くべきことに、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARは、第2及び第3世代CARに類似したさらにはそれよりも優れた細胞傷害性を呈した。FcεRIγシグナリングドメインは、他のシグナリングドメインとの組合せではなく単一ユニットとして存在したにすぎないので、かかる所見はとくに予想外である。かかる配置は、CART細胞で使用したとき、望ましい標的化細胞傷害性の提供に失敗した。
【0084】
脱顆粒は、NK-92細胞の分泌顆粒からの溶解性タンパク質(たとえばパーフォリン及びグランザイム)の放出に必要とされるクリティカルな工程である。脱顆粒は、NK-92による標的細胞の認識により開始される。構築物の脱顆粒を試験するために、96ウェルプレート中でさまざまなエフェクター対標的比(5:1~0.3:1)でエフェクター細胞(NK-92)と非標識標的細胞(SUP-B15)とを混合し、抗CD107a(FITCコンジュゲート、BD Pharmingen,San Jose,CA)を各ウェルに添加した。CO
2インキュベーター中37℃でプレートをインキュベートし、1時間後、モネンシン(Golgi-stop)をウェルに添加した。37℃でプレートをさらに3hインキュベートし、フローサイトメトリー(Attune,Life technologies,Carlsbad,CA)によりサンプルを解析した。エフェクター+標的サンプルの%CD107a陽性からNK-92細胞単独の%CD107a陽性を減算することによりパーセント脱顆粒を決定した。模範的結果は、
図4に提供される。
【0085】
実施例4.CD19CAR発現NK-92細胞の表面発現及び癌細胞系に対する細胞傷害性.
本発明者らは、各種CAR構築物の発現レベルを定量し、経時的に発現の耐久性を調べた。
図5の結果から分かるように、さまざまなCD19CAR構築物でトランスフェクトされたNK-92細胞は、72時間までそれぞれのCARを検出可能レベルで細胞表面上に発現した。予想外なことに、
図5から容易に分かるように、Fcイプシロン細胞質シグナリングドメインを含むCAR構築物は、実質的により長い継続時間の発現を有していた。また注目すべきこととして、FcεRIγシグナリングドメインのほかに1つ以上のシグナリングドメイン(たとえば、本明細書に提示された例ではCD28シグナリングドメイン)を追加しても、発現の継続時間に悪影響を及ぼさないことが観測された。実際に、FcεRIγシグナリングドメインとCD28シグナリングドメインとを有するCARでは、発現の継続時間は経時的にさらに増加するが、CD3ゼータシグナリングドメインを有するCAR構築物は、72時間の時点で及びそれ以前でさえも発現の劇的な低減を有していた。
【0086】
さらに、
図5の結果から同様に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCAR構築物の発現量はまた、CD3ゼータシグナリングドメインを有する対応する構築物よりも初期に有意に高かった。
【0087】
本発明者らは、次いで、FcεRIγシグナリングドメインを有するCAR構築物の長期にわたるより強い発現が、より高い細胞傷害率に結び付くかの試験を開始した。24時間及び48時間でのSUPB15CD19
+細胞の模範的試験結果は、
図6に表される。結果から分かるように、試験されたCAR構築物はすべて、24時間でほぼ同程度の(最大)細胞傷害性を示した。しかしながら、48時間では、CD19/CD3ゼータは、細胞傷害性の際立った減少を示した。注目すべき点として、FcイプシロンベースCARは、エレクトロポレーションの48時間後、細胞傷害活性のごくわずかな減少を示したにすぎず、
図5の長期にわたる発現結果に対応した。そのため、FcεRIγシグナリングドメインを有するCAR構築物は、実質的な臨床効果があると考えられる長期にわたる細胞傷害性を呈したことを認識すべきである。
【0088】
有利なことに、トリシストロニックRNA構築物は、優れた機能活性を有する実質的量の所望のCARを生成可能であった。かかる構築物は、CAR発現が一過性であるべき場合にとりわけ有益である。これとは対照的に、標的化CAR構築物の以下の実施例及び関連する機能データは、線状化DNAベクター構築物からのものであり、トランスフェクト細胞によるゲノムへの線状化DNAのインテグレーションを可能にして特異的CARの非一過的発現の手段を提供する。
【0089】
実施例5.トリシストロニック発現カセットのマップ。
図7は、代表的なトリシストロニック発現カセットにより生成されるDNA及びタンパク質産物を図式的に示す。
図8は、発現カセットを有するプラスミドの線状化形態を示す。
【0090】
配列番号28は、
図8に類似した構築物であるpNEUKv1_CD19CAR_CD16(158V)_ERIL-2ベクターの一部の模範的核酸配列である。配列番号29は、CD19CAR_P2A_CD16(158V)タンパク質を表す模範的トリシストロニックタンパク質(
図7に類似する)である。同様に、配列番号31は、コドン最適化CD33ScfV-P2A-CD16-IRES-erIL2トリシストロニック配列の模範的核酸配列であり、一方、配列番号32は、CD33CAR-P2A-CD16ペプチドを示す。
【0091】
作製されたそのほかのさらなる構築物として、配列番号24は、CD19K_膜貫通及びシグナリングドメインの模範的アミノ酸配列であり、配列番号26は、15AD23HC_1805843_CD19K_Eps(879~1319)の模範的核酸配列であり、且つ配列番号27は、CD28膜貫通ドメインを含まなかった15AD23HC_1805843_CD19K_Epsの模範的核酸配列である。
【0092】
実施例6.癌細胞系に対するCD33-CAR発現NK-92細胞の細胞傷害性
以下の実施例は、対照(非改変)NK-92細胞による特異的溶解(細胞傷害性)に対して耐性である細胞をCAR発現NK-92細胞により効率的に死滅させることが可能であることを実証するために提供される。本実施例では、細胞は、CD33を発現するTHP-1細胞であった。NK-92細胞は、
図8及び9に示されるように、CD33に特異的に結合する細胞外結合ドメインと、FcεRIγシグナリングドメインと、を有するCARを発現するように改変された。
【0093】
図9Aは、CD33陽性(CD33+)THP-1細胞が対照NK-92(aNK)細胞による細胞傷害性(特異的溶解)に対しては相対的に耐性であるが、CD33に特異的に結合するCARを発現するNK-92細胞(CD33-CAR/NK-92細胞)と共にTHP-1細胞を培養したときは高パーセントの特異的溶解が存在することを示すin vitroデータを提供する。さらに、CARを発現する改変NK-92細胞が相対的に低いエフェクター:標的比で死滅を呈したことに留意すべきである。
図9Bは、K562細胞が対照aNK細胞及びCD33-CAR/NK-92細胞の両方により効率的に死滅されることを示すin vitroデータを提供する。
【0094】
実施例7:FcεRIγシグナリングドメインを有するHER2-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗HER2scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたHER2-CARは、配列番号37の核酸配列を有していた。
【0095】
そのように構築されたHER2.CAR-t-haNK細胞の機能について、標準的カルセインAMベース細胞傷害性アッセイを用いてBT-474細胞に対して試験した。模範的結果は
図10に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するHER2.CAR-t-haNK細胞は、BT-474標的細胞に対して有意な細胞傷害性を呈した。
【0096】
さらなる実験では、本発明者は、
図36に例示されるようにHER2.CAR-t-haNK細胞でのHER2.CARの発現を実証した。HER2.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性は
図37の結果に示され、一方、CAR媒介細胞傷害性の結果は
図38に示される。HER2.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的データは
図39のグラフに示される。
【0097】
実施例8:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD30-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CD30scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCD30-CARは、配列番号38の核酸配列を有していた。
【0098】
CD30-CARの発現は
図46の結果で実証され、一方、組換え細胞のナチュラル細胞傷害性の結果は
図47に示される。CAR媒介細胞傷害性は
図48の結果で実証され、一方、ADCCの模範的結果は
図49のデータに示される。
【0099】
実施例9:FcεRIγシグナリングドメインを有するEGFR-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗EGFRscFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたEGFR-CARは、配列番号39の核酸配列を有した。
【0100】
そのように構築されたEGFR.CAR-t-haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いてA-549細胞に対して試験した。模範的結果は
図14に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するEGFR.CAR-t-haNK細胞は、A-549標的細胞に対して有意な細胞傷害性を呈した。EGFR.CAR-t-haNK細胞でのEGFR-CARの発現は
図31に示され、一方、ナチュラル細胞傷害性の結果は
図32に示される。EGFR.CAR-t-haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果は
図33及び
図34に示され、一方、EGFR.CAR-t-haNK細胞のADCCの結果は
図35に示される。
【0101】
実施例10:FcεRIγシグナリングドメインを有するIGF1R-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗IGF1RscFvを含み、CD8ヒンジは、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたIGF1R-CARは配列番号40の核酸配列を有し、IGF1R-CARとCD16とIL-2
ERとをコードするトリシストロニック構築物は、
図61にも模式的に例示される配列番号53の核酸配列を有していた。
【0102】
そのように構築されたIGF1R.CAR-t-haNK細胞の機能について、第2世代CAR(CD28/CD3z)と比較して標準的細胞傷害性アッセイを用いてMDA-MB-231細胞に対して試験した。模範的結果は
図18に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するIGF1R.CAR-t-haNK細胞は、MDA-MB-231標的細胞に対して第2世代CARの細胞傷害性に匹敵する有意な標的特異的細胞傷害性を呈した。
【0103】
実施例11:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD123-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CD123scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCD123-CARは、配列番号41の核酸配列を有していた。組換えNK細胞を発現するCD123-CARのCAR媒介細胞傷害性のデータは
図44に示され、
図45は、組換えNK細胞を発現するCD123-CARのADCCの模範的データを示す。
【0104】
実施例12:FcεRIγシグナリングドメインを有するPD-L1-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗PD-L1scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたPD-L1-CARは、配列番号42の核酸配列を有していた。
【0105】
そのように構築されたPD-L1.CAR-t-haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いてSUP-B15.PD-L1
+細胞に対して試験した。模範的結果は
図12に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するPD-L1.CAR-t-haNK細胞は、SUP-B15.PD-L1
+標的細胞に対して有意な細胞傷害性を呈した。
【0106】
そのように構築されたPD-L1.CAR-t-haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いてU251細胞に対してさらに試験した。模範的結果は、非トランスフェクトhaNK細胞と共に
図13に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するPD-L1.CAR-t-haNK細胞は、U251標的細胞に対して標的特異的且つ有意な細胞傷害性を呈したが、haNK対照細胞は、同一U251細胞に対して実質的にまったく細胞傷害性を有していなかった。
【0107】
PD-L1に対する標的細胞特異性に関するそのほかのさらなる実験では、本発明者らは、一般的細胞傷害性の対照としてのhaNK細胞と共にPD-L1.CAR-t-haNK細胞を用いていくつかのPD-L1陽性腫瘍細胞系を試験した。
図19から容易に分かるように、PD-L1.CAR-t-haNK細胞は、多種多様な腫瘍細胞(肺、乳房、泌尿生殖器の腫瘍細胞、及びそのほか頭頸部小細胞癌、脊索腫)にわたり優れた細胞傷害性を有していた。注目すべきこととして、PD-L1.CAR-t-haNK細胞は、細胞の大多数(>85%)を死滅させるのに4時間未満を必要とし、対照haNK細胞は12時間超を必要とした。
【0108】
図20は、各種他の対照細胞(指定のhaNK細胞)と比較して、MDA-MB-231細胞に対するPD-L1.CAR-t-haNK細胞の細胞傷害性をさらに例示する。データから分かるように、5:1のE:T比で、PD-L1.thaNKによるMDA-MB-231溶解はセツキシマブにより改善され、且つhaNK活性はセツキシマブ及びa-PD-L1の添加により改善された。プレーンPD-L1.thankは、haNK及びhaNK+セツキシマブと比較して細胞傷害活性を改善し、プレーンPD-L1.thankによる死滅は、haNK+PD-L1抗体と同程度であったが、PD-L1.thank+セツキシマブは、haNK+セツキシマブ及びhaNK+PD-L1よりも性能が優れていた。1:1のE:T比では、PD-L1.thaNK活性は、セツキシマブの有無によらず同一であり、且つPD-L1.thaNKは、hankによる内因性及びADCC媒介性死滅よりも性能が有意に優れていた。haNK活性は、セツキシマブ及びa-PD-L1の添加により改善された。
【0109】
さらなる実験では、本発明者らは、
図40に例示されるようにPD-L1.CAR-t-haNK細胞でのPD-L1.CARの発現を実証した。PD-L1.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性は
図41の結果に示され、一方、CAR媒介細胞傷害性の結果は
図42に示される。PD-L1.CAR-t-haNK細胞のADCCの模範的データは
図43のグラフに示される。
【0110】
実施例13:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD33-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗HER2scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCD33-CARは、配列番号43の核酸配列を有していた。
【0111】
そのように構築されたCD33.CAR-t-haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いてTHP-1細胞に対して試験した。模範的結果は
図11に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するCD33.CAR-t-haNK細胞は、THP-1標的細胞に対する有意な細胞傷害性を呈した。NK-92細胞でのCD33CARの強い発現を表すさらなるデータは、
図27に提示される。K562細胞に対するCD33.CAR-t-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性は
図28に示され、
図29はTHP-1細胞に対するCAR媒介細胞傷害性の結果を表す。
図30は、リツキシマブを併用してSUP-B15CD19
KO/CD20
+に対するCD33.CAR-t-haNK細胞のADCCのさらなる結果を示す。
【0112】
実施例14:FcεRIγシグナリングドメインを有するgp120-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗gp120scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたgp120-CARは、配列番号44の核酸配列を有していた。
【0113】
本発明者らは、そのように生成された細胞が
図53から分かるように有意量のCD16及びgp120CARを発現することをさらに実証した。gp120CARへのGP120の結合は、対陰性対照としての非組換えaNK細胞と対比して
図54で実証される通り示された。対応している間、そのように生成された細胞のナチュラル細胞傷害性は
図55に示され、一方、対応するADCCデータは
図56に示される。
【0114】
実施例15:FcεRIγシグナリングドメインを有するB7-H4-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗B7-H4scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたB7-H4-CARは、配列番号45の核酸配列を有していた。
【0115】
実施例16:FcεRIγシグナリングドメインを有するBCMA-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗BCMAscFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたBCMA-CARは、配列番号46の核酸配列を有していた。
【0116】
BCMA発現は、
図50の模範的結果に示されるように確認され、且つCAR媒介細胞傷害性は、
図51に示されるように標的細胞に対して実証された。同様に、
図52の結果から分かるように、組換え細胞は、標的細胞に対する抗体としてリツキシマブを用いて有意なADCCを有していた。
【0117】
実施例17:FcεRIγシグナリングドメインを有するGD2-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗GD2scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたGD2-CARは、配列番号47の核酸配列を有していた。
【0118】
実施例18:FcεRIγシグナリングドメインを有するFAP-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗FAPscFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたFAP-CARは、配列番号48の核酸配列を有していた。FAP-CARの発現は
図57のデータに示され、且つ標的細胞に対するFAP.CAR細胞傷害性は
図58の結果で実証された。
【0119】
実施例19:FcεRIγシグナリングドメインを有するCSPG-4-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CSPG-4scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCSPG-4-CARは、配列番号52の核酸配列を有していた。CSPG-4-CARの発現はFACS解析で確認され、且つ模範的結果は
図59に示される。このように構築された細胞はまた、
図60の模範的データに示されるように有意な細胞傷害性を呈した。
【0120】
実施例20:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD20-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CD20scFvを含み、D8ヒンジは、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCD20-CARは、配列番号51の核酸配列を有していた。
【0121】
NK-92細胞でのCD20CARの発現は、
図25の結果に示される。容易に分かるように、CD20.CARは、組換え細胞の大多数で強く発現される(以上に述べた線状化DNAのCD16と共に)。
図26は、CD20
+標的細胞に対するCD20.CARNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を表す。
【0122】
実施例21:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD19-CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する以上に記載の第1世代CARを使用した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CD19scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そして機能試験のために線状化DNAでNK-92細胞をトランスフェクトした。
【0123】
そのように構築されたCD19.CAR-t-haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いて一般的細胞傷害性を決定するためにK562細胞に対して試験した。模範的結果は
図15に示される。容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するCD19.CAR-t-haNK細胞は、K562標的細胞に対する有意な細胞傷害性を呈した。さらなる実験セットでは、対照としてのaNK細胞と比較してSUP-B15細胞を用いて標的特異的細胞傷害性を決定した。模範的結果は
図16に示される。もう一度述べるが、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するCD19.CAR-t-haNK細胞は、有意な標的特異的細胞傷害性を呈した。そのうえさらに他の一実験セットでは、SKBr3細胞を使用し、抗体としてハーセプチン及びリツキサンを用いて、標的特異的ADCCを決定した。模範的結果は
図17に示される。この場合も、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するCD19.CAR-t-haNK細胞は、有意な抗体及び標的特異的ADCCを呈した。
【0124】
図21は、対照と対比してNK-92細胞でCD16とIL-2
ERとをコードするセグメントを含む線状化DNAからのCD19.CAR発現を模範的に例示する。
図25から分かるように、発現は、大多数の細胞にわたり非常に強かった。K562細胞に対するCD19.CARt-haNK細胞のナチュラル細胞傷害性及びSUP-B15細胞に対する標的化細胞傷害性の追加の結果は、
図22及び
図23に表される。SUP-B15CD19
KO/CD20
+細胞に対するCD19.CARt-haNK細胞のADCCの模範的さらなる結果は
図24に示される。
【0125】
実施例22:NSGマウスにおけるヒト異種移植モデルでのPD-L1標的化t-haNK細胞の抗腫瘍活性
確証されたPDL1陽性異種移植モデルとしてMDA-MB-231及びHCC827を使用し、さまざまな製剤、投与レベル、及び投与経路(IV及びIT)でPDL1t-haNK細胞の効能を評価した。
【0126】
動物:動物型:NSGマウス(JAX)、雌、9~10週齢、MDA-MB-231モデル用動物数:24(フレッシュ細胞)、及びHCC827モデル用:24(フレッシュ細胞)+6(凍結保存細胞)。使用した腫瘍モデルは次の細胞系:MDA-MB-231(ヒト乳腺癌)及びHCC827(ヒト肺腺癌)であり、接種経路は両方の側腹の皮下であり、治療開始時の平均腫瘍負荷はMDA-MB-231では約100mm3及びHCC827では約75~80mm3であった。
【0127】
治療品:抗PD-L1t-haNKは、濃度:5E7細胞/mL又は2E7細胞/mLで新たに調製され照射されたものであり、媒体対照は、X-VIVO(商標)10培地であり、投与方法は、記載のごとくIV及びITであった。IV NK投与の投与量は、200μL中1E7細胞/回(新たに調製された細胞)、200μL中4E6細胞/回(凍結保存細胞)であり、IT NK投与(フレッシュ細胞のみ)では、用量は50μL中2.5E6細胞/腫瘍/回であった。投与頻度は、4週連続で週2回(M/Th又はT/F)であり、投与の初日は1日目として定義された。
【0128】
MDA-MB-231の試験設計は、以下の表3に記される(この試験は27日目に終了し、その時、A、C、及びD群の何匹かの動物は>2000mm3の総腫瘍体積に達した)。
【0129】
【0130】
HCC827の試験設計は、以下の表4に記される(この試験は29日目に終了し、その時、生存動物は再目的化され、他の研究に移された)。
【0131】
【0132】
結果:新たに調製されたPD-L1t-haNK細胞(1E7細胞/回)は、MDA-MB-231及びHCC827の両方のモデルで際立った長期持続性の腫瘍成長阻害をもたらした。
【0133】
MDA-MB-231:腫瘍静止:16日目のTGI:84%(ピーク)、26日目のTGI:79%(最終測定)。
【0134】
HCC827:腫瘍退縮:16日目のTGI:120%(ピーク)、29日目のTGI:84%(研究終了時)。
【0135】
凍結保存PDL1t-haNK細胞(4E6細胞/回)もまた、X-VIVO(商標)10培地と比較して腫瘍成長抑制で統計的に有意な効能を示した:26日目のTGI:60%(ピーク)及び29日目のTGI:40%(研究終了時)。
【0136】
新たに調製されたPDL1t-haNK細胞(1E7細胞/回)はまた、以下の表5に示されるようにMDA-MB-231モデルで転移疾患負荷の有意な減少をもたらした。
【0137】
【0138】
媒体中に存在した可視肝臓小結節の数:29±9、PD-L1t-haNK群中:0(対応のない両側t検定によるP=0.0116)。
【0139】
実施された実験に基づいて、1E7細胞/回の投与レベルの新たに調製されたPD-L1t-haNK細胞の4週間にわたる週2回のIV投与は、試験された皮下異種移植モデルの両方で際立った抗腫瘍効能を示した。すなわち、治療は、MDA-MB-231腫瘍保有マウスでは腫瘍静止をもたらし、16日目のピークTGIは84%及び試験終了時のTGIは79%であり(両時点で二元配置ANOVAによるP<0.0001であり、続いてチューキー検定による多重比較を行った)、HCC827モデルでは腫瘍退縮をもたらし、16日目のピークTGIは120%及び試験終了時のTGIは84%であった(P<0.0001)。4E6細胞/回の投与レベルの凍結保存PD-L1t-haNK細胞の4週間にわたる週2回のIV投与は、HCC827腫瘍モデルで有意な治療効能をさらに示し、ピークTGIは60%(P<0.0001)及び試験終了のTGIは40%(P<0.01)に達した。2.5E6細胞/用量/腫瘍の投与レベルの新たに調製されたPD-L1t-haNK細胞の4週間にわたる週2回のIT投与は、HCC827腫瘍の成長を効果的に抑制し、20日目に70%のピークTGI及び試験終了時に49%(p<0.001)のTGIをもたらした。
【0140】
新たに調製されたPD-L1t-haNK細胞のIV投与(1E7細胞/回)を受けた動物で顕著な有害反応が観測された。新たに調製されたPD-L1t-haNK細胞とは対照的に、凍結保存細胞(より低レベルの4E6細胞/回で投与した)は、IV投与後、動物に安全であることが分かった。PD-L1t-haNK細胞は、2つの皮下腫瘍モデルで顕著な効能を実証した。より低い4E6細胞/回レベルで投与された凍結保存細胞はまた、腫瘍成長抑制に有意な効能を示し、動物に安全であることが分かった。
【0141】
当然ながら、本明細書に提供されるすべての核酸配列に対して、対応するコードタンパク質も明示的に本明細書で企図されることを認識すべきである。同様に、すべてのアミノ酸配列に対して、対応する核酸配列も本明細書で企図される(いずれかのコドン使用頻度で)。
【0142】
本明細書に引用される特許出願、刊行物、参照文献、及び配列アクセッション番号はすべて、その全体が本願をもって参照により組み込まれる。
【0143】
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。
【0144】
本明細書及び以下の特許請求の範囲では、以下の意味を有すると定義されるものとするいくつかの用語を参照する。
【0145】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としたものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、とくに文脈上明確に示されてない限り、複数形も含むことが意図される。
【0146】
本明細書に記載の数値(たとえば、範囲を含めてpH、温度、時間、濃度、量、及び分子量)はすべて、当業者が遭遇する測定値の通常の変動を含むものと理解される。そのため、本明細書に記載の数値は、±0.1~10%、たとえば、±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%の変動を含む。必ずしも明記されるわけではないが、数値表示はすべて、「約」という用語が先行しうることを理解すべきである。そのため、約という用語は、その数値の±0.1~10%、たとえば、±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%の変動を含む。また、必ずしも明記されるわけではないが、本明細書に記載の試薬は、単に模範的なものにすぎず、かかる等価物は当技術分野で公知であるものと理解すべきである。
【0147】
当業者であれば理解されるであろうが、あらゆる目的で、とくに記載の説明の提供に関連して、本明細書に開示された範囲はすべて、範囲の端点を含むとともに、範囲の端点間のすべての値を含む。また、本明細書に開示される範囲はすべて、いずれの可能な部分範囲及びその部分範囲の組合せもすべて包含する。いずれの列挙された範囲も、十分に記述されてその範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などされうるものとして容易に認識可能である。たとえば、限定されるものではないが、本明細書で考察される各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1に容易に分解可能である。当業者であれば同様に理解されるであろうが、「~まで」、「少なくとも~」などの表現はすべて、列挙された数を含み、以上で考察したように後続的に部分範囲に分解可能な範囲を意味する。最終的に、当業者であれば理解されるであろうが、範囲は各個別のメンバーを含む。そのため、たとえば、1~3細胞を有する群は、1、2、又は3細胞を有する群を意味する。同様に、1~5細胞を有する群は、1、2、3、4、又は5細胞を有する群を意味し、他も同様である。
【0148】
また、必ずしも明記されるわけではないが、本明細書に記載の試薬は、単に模範的なものにすぎず、かかる等価物は当技術分野で公知であるものと理解すべきである。
【0149】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」とは、続いて記載される事象又は状況が発生可能又は発生不能でありその記載がその事象又は状況が発生する場合と発生しない場合とを含むことを意味する。
【0150】
「comprising(~を含む)」という用語は、組成物及び方法が、列挙された要素を含むが、他を除外しないことを意味することが意図される。組成物及び方法の定義に用いられるときの「Consisting essentially of(~から本質的になる)」とは、組合せに本質的に有意な他の要素を除外することを意味するものとする。たとえば、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求された本発明の基本的且つ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない他の要素を除外しないであろう。「Consisting of(~からなる)」とは、列挙された以外の痕跡量超の他の成分及び実質的な方法工程を除外することを意味するものとする。これらの移行句の各々により規定される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0151】
本明細書で用いられる場合、「免疫療法」とは、単独又は組合せにかかわらず標的細胞に接触したときに細胞傷害性を誘導しうる改変又は非改変のNK-92細胞、天然に存在する又は改変されたNK細胞又はT細胞の使用を意味する。
【0152】
本明細書で用いられる場合、「ナチュラルキラー(NK)細胞」とは、特異的抗原刺激の不在下で且つ主要組織適合複合体(MHC)クラスによる制約を受けずに標的細胞を死滅させる免疫系の細胞のことである。標的細胞は、腫瘍細胞又はウイルス保有細胞でありうる。NK細胞は、CD56の存在及びCD3表面マーカーの不在により特徴付けられる。
【0153】
「内因性NK細胞」という用語は、NK-92細胞系から識別される、ドナー(又は患者)に由来するNK細胞を意味するものとして用いられる。内因性NK細胞は、一般に、NK細胞が富化された不均一細胞集団である。内因性NK細胞は、患者の自家又は同種治療が意図されうる。
【0154】
「NK-92」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantKwestが所有する(これ以降では「NK-92(商標)細胞」)。不死NK細胞系は、元々は非ホジキンリンパ腫を有する患者から得られた。とくに指定がない限り、「NK-92(商標)」という用語は、元のNK-92細胞系さらには改変されたNK-92細胞系(たとえば、外因性遺伝子の導入により)を意味することが意図される。NK-92(商標)細胞及びそれらの模範的且つ非限定的改変体は、米国特許第7,618,817号明細書、同第8,034,332号明細書、同第8,313,943号明細書、同第9,181,322号明細書、同第9,150,636号明細書、及び米国出願第10/008,955号明細書(それらはすべてその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、たとえば、野生型NK-92(商標)、NK-92(商標)-CD16、NK-92(商標)-CD16-γ、NK-92(商標)-CD16-ζ、NK-92(商標)-CD16(F176V)、NK-92(商標)MI、及びNK-92(商標)CIが挙げられる。NK-92細胞は当業者に公知であり、かかる細胞はNantKwest,Inc.から容易に入手可能である。
【0155】
「aNK」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantKwestが所有する(これ以降では「aNK(商標)細胞」)。「haNK」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantKwestが所有し、細胞表面上にCD16を発現するように改変されている(これ以降では「CD16+NK-92(商標)細胞」又は「haNK(登録商標)細胞」)。いくつかの実施形態では、CD16+NK-92(商標)細胞は、細胞表面上に高親和性CD16レセプターを含む。「taNK」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantKwestが所有し、キメラ抗原レセプターを発現するように改変されている(これ以降では「CAR改変NK-92(商標)細胞」又は「taNK(登録商標)細胞」)。「t-haNK」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantkWestが所有し、細胞表面上にCD16を発現するように且つキメラ抗原レセプターを発現するように改変されている(これ以降では「CAR改変CD16+NK-92(商標)細胞」又は「t-haNK(商標)細胞」)。いくつかの実施形態では、t-haNK(商標)細胞は、細胞表面上に高親和性CD16レセプターを発現する。
【0156】
「改変NK-92細胞」とは、外因性遺伝子又はタンパク質、たとえば、Fcレセプター、CAR、サイトカイン(たとえばIL-2若しくはIL-15)、及び/又は自殺遺伝子を発現するNK-92細胞を意味する。いくつかの実施形態では、改変NK-92細胞は、Fcレセプター、CAR、サイトカイン(たとえばIL-2若しくはIL-15)、及び/又は自殺遺伝子などのトランスジーンをコードするベクターを含む。一実施形態では、改変NK-92細胞は、少なくとも1つトランスジェニックタンパク質を発現する。
【0157】
本明細書で用いられる場合、「非照射NK-92細胞」とは、照射されていないNK-92細胞のことである。照射は、細胞を成長不能及び増殖不能にする。最適な活性を保持するために照射と注入との間の時間を4時間以下にすべきであるので、NK-92細胞は、患者の治療前に治療施設で又はどこか他の地点で照射されるであろうと想定される。代替的に、NK-92細胞は、他の機序により増殖を防止しうる。
【0158】
本明細書で用いられる場合、NK-92細胞の「不活性化」とは、それを成長不能にすることである。不活性化はまた、NK-92細胞の死を意味しうる。NK-92細胞は、治療適用で病理診断に関連する細胞のex vivoサンプルを効果的にパージした後、又は生体内に存在する多くの又はすべての標的細胞を効果的に死滅させるのに十分な時間で哺乳動物の体内に存在した後、不活性化しうると想定される。不活性化は、NK-92細胞が感受性である不活性化剤を投与することによりに誘発しうるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
本明細書で用いられる場合、「細胞傷害性」及び「細胞溶解性」という用語は、NK-92細胞などのエフェクター細胞の活性を記述するために用いられるとき、同義であることが意図される。一般的には、細胞傷害活性とは、さまざまな生物学的、生化学的、又は生物物理学的機序のいずれかにより標的細胞を死滅させることを意味する。細胞溶解とは、より具体的には、エフェクターが標的細胞の形質膜を溶解してその物理的完全性を破壊する活性を意味する。この結果、標的細胞の死滅を生じる。理論により拘束されることを望むものではないが、NK-92細胞の細胞傷害作用は、細胞溶解に起因するものと考えられる。
【0160】
細胞/細胞集団に対する「死滅」という用語は、その細胞/細胞集団の死をもたらし得るいずれのタイプの操作も含むことを指す。
【0161】
「Fcレセプター」という用語は、Fc領域として知られる抗体の一部に結合することにより免疫細胞の保護機能に寄与するある特定の細胞(たとえばナチュラルキラー細胞)の表面上に見いだされるタンパク質を意味する。細胞のFcレセプター(FcR)への抗体のFc領域の結合は、抗体媒介食作用又は抗体依存細胞媒介細胞傷害性(ADCC)を介して細胞の食細胞活性又は細胞傷害活性を刺激する。FcRは、それらが認識する抗体のタイプに基づいて分類される。たとえば、Fcγレセプター(FCγR)は、抗体のIgGクラスに結合する。FCγRIII-A(CD16とも呼ばれる、配列番号34)は、IgG抗体に結合してADCCを活性化する低親和性Fcレセプターである。FCγRIII-Aは、典型的にはNK細胞に見いだされる。NK-92細胞は、FCγRIII-Aを発現しない。Fcイプシロンレセプター(FcεR)は、IgE抗体のFc領域に結合する。
【0162】
本明細書で用いられる場合、「キメラ抗原レセプター」(CAR)という用語は、細胞内シグナリングドメインに融合された細胞外抗原結合ドメインを意味する。CARは、T細胞又はNK細胞で発現されて細胞傷害性を増加させうる。一般的には、細胞外抗原結合ドメインは、対象の細胞に見いだされる抗原に特異的なscFvである。CAR発現NK-92細胞は、scFvドメインの特異性に基づいて、ある特定の抗原を細胞表面上に発現する細胞を標的とする。scFvドメインは、腫瘍特異的抗原及びウイルス特異的抗原をはじめとするいずれかの抗原を認識するように工学操作可能である。たとえば、CD19CARは、いくつかの癌により発現される細胞表面マーカーCD19を認識する。
【0163】
本明細書で用いられる「腫瘍特異的抗原」という用語は、癌細胞又は新生物細胞には存在するが癌細胞と同一の組織又は系統に由来する正常細胞では検出不能な抗原を意味する。本明細書で用いられる腫瘍特異的抗原はまた、腫瘍関連抗原、すなわち、癌細胞と同一の組織又は系統に由来する正常細胞と比較してより高レベルで癌細胞に発現される抗原を意味する。
【0164】
本明細書で用いられる「ウイルス特異的抗原」という用語は、ウイルス感染細胞には存在するがウイルス感染細胞と同一の組織又は系統に由来する正常細胞では検出不能な抗原を意味する。一実施形態では、ウイルス特異的抗原は、感染細胞の表面上に発現されるウイルスタンパク質である。
【0165】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、同義的に用いられ、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド又はそれらのアナログのどれかの任意の長さのポリマー形のヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、いずれかの3次元構造を有しうるとともに、いずれかの既知又は未知の機能を発揮しうる。ポリヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、次のもの、すなわち、遺伝子又は遺伝子断片(たとえば、プローブ、プライマー、EST、又はSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、いずれかの配列の単離されたDNA、いずれかの配列の単離されたRNA、核酸プローブ及びプライマーが挙げられる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドやヌクレオチドアナログなどの改変ヌクレオチドを含みうる。存在する場合、ヌクレオチド構造の改変は、ポリヌクレオチドのアセンブリー前又はアセンブリー後に付与可能である。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分が介在可能である。ポリヌクレオチドは、標識成分のコンジュゲーションなどにより重合後にさらに改変可能である。この用語はまた、二本鎖分子及び一本鎖分子の両方を意味する。とくに明記されていない限り又は必要とされない限り、ポリヌクレオチドである本発明のいずれの実施形態も、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが知られている又は予測される2つの相補的部分の一本鎖形態の各々と、の両方を包含する。
【0166】
ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基、すなわち、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ポリヌクレオチドがRNAであるときはチミンの代わりにウラシル(U)の特異的配列で構成される。そのため、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表現である。
【0167】
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」とは、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性を意味する。相同性は、比較を目的としてアライメントしうる各配列中の位置を比較するにより決定可能である。比較される配列の位置が同一塩基又はアミノ酸により占領されるとき、分子はその位置で相同である。配列間の相同性の程度は、配列により共有されるマッチ位置又は相同位置の数の関数である。
【0168】
本明細書で用いられる場合、「パーセント同一性」とは、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列同一性を意味する。パーセント同一性は、比較を目的としてアライメントしうる各配列の位置を比較するにより決定可能である。比較された配列の位置が同一塩基又はアミノ酸により占領されるとき、分子はその位置で同一である。相同ヌクレオチド配列は、本明細書に示されるヌクレオチド配列の天然に存在する対立遺伝子変異体及び突然変異をコードする配列を含む。相同ヌクレオチド配列は、ヒト以外の哺乳動物種のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。相同アミノ酸配列は、保存的アミノ酸置換を含有する並びにポリペプチドが同一結合及び/又は活性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、相同アミノ酸配列は、15以下、10以下、5以下、又は3以下の保存的アミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、本明細書に記載の配列に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも85%、又はそれを超えるパーセント同一性を有する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、本明細書に記載の配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。パーセント同一性は、たとえば、スミス・ウォーターマンアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482-489)を用いるGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for UNIX,Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)によりデフォルト設定を用いて決定可能である。パーセント配列同一性の決定に好適なアルゴリズムとしては、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムが挙げられ、それぞれ、Altschul et al.(Nuc.Acids Res.25:3389-402,1977)及びAltschul et al.(J.Mol.Biol.215:403-10,1990)に記載されている。BLAST解析を実施するソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を介してパブリックに利用可能である(インターネットのncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、及びXは、アライメントの感度及びスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列用として、BLASTPプログラムは、ワード長3及び期待値(E)10及びBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1989を参照されたい)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4をデフォルトとして用いる。
【0169】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、特定種における発現に対してコドン最適化され、たとえば、マウス配列は、ヒトにおける発現にコドン最適化可能である(コドン最適化核酸配列によりコードされるタンパク質の発現)。そのため、いくつかの実施形態では、コドン最適化核酸配列は、本明細書に記載の核酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも85%、又はそれを超えるパーセント同一性を有する。いくつかの実施形態では、コドン最適化核酸配列は、本明細書に記載の配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0170】
「発現する」という用語は、遺伝子産物(たとえばタンパク質)の生成を意味する。発現を参照するときの「一過性」という用語は、ポリヌクレオチドが細胞のゲノムに導入されないことを意味する。発現を参照するときの「安定な」という用語は、ポリヌクレオチドが細胞のゲノムに導入されるか又はトランスジーンの発現を維持するためにポジティブ選択マーカーが利用される(すなわち、ある特定の成長条件下で利益に与る細胞により発現される外因性遺伝子)ことを意味する。
【0171】
「サイトカイン(cytokine)」又は「サイトカイン(cytokines)」という用語は、免疫系の細胞に影響を及ぼす生物学的分子の一般的クラスを意味する。模範的サイトカインとしては、限定されるものではないが、インターフェロン及びインターロイキン(IL)、とくにIL-2、IL-12、IL-15、IL-18、及びIL-21が挙げられる。好ましい実施形態では、サイトカインはIL-2である。
【0172】
本明細書で用いられる場合、「ベクター」という用語は、たとえばトランスフォーメーションのプロセスにより許容細胞内に配置されたときにベクターが複製されうるようにインタクトレプリコンを含む非染色体核酸を意味する。ベクターは、細菌などのある細胞タイプでは複製しうるが、哺乳動物細胞などの他の細胞では複製能力が制限されるか又はまったくない。ベクターは、ウイルス又は非ウイルスでありうる。核酸を送達するための模範的非ウイルスベクターとしては、ネイキッドDNA、単独又はカチオン性ポリマーとの組合せでカチオン性脂質と複合体化されたDNA、アニオン性及びカチオン性リポソーム、不均一ポリリシン、規定長オリゴペプチド、ポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーで縮合されたDNAを含むDNA-タンパク質複合体及び粒子(いくつかの場合にはリポソームに含まれる)、並びにウイルスとポリリシン-DNAとを含む三元複合体の使用が挙げられる。一実施形態では、ベクターはウイルスベクター、たとえばアデノウイルスである。ウイルスベクターは当技術分野で周知である。
【0173】
本明細書で用いられる場合、タンパク質発現を参照するときの「標的化」という用語は、限定されるものではないが、細胞内又はその外部の適切な行き先にタンパク質又はポリペプチドを方向付けることを含むことが意図される。標的化は、典型的には、ポリペプチド鎖中のアミノ酸残基のストレッチであるシグナルペプチド又は標的化ペプチドを介して達成される。これらのシグナルペプチドは、ポリペプチド配列内のいずれかの位置に配置可能であるが、多くの場合、N末端に配置される。ポリペプチドはまた、C末端にシグナルペプチドを有するように工学操作可能である。シグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞外セクション位置に向けて形質膜、ゴルジ、エンドソーム、小胞体、及び他の細胞区画に方向付けることが可能である。たとえば、C末端に特定アミノ酸配列(たとえばKDEL)を有するポリペプチドは、ER管腔内に保持されるか又はER管腔に戻るように輸送される。
【0174】
本明細書で用いられる場合、腫瘍の標的化を参照するときの「標的化する」という用語は、NK-92細胞が腫瘍細胞(すなわち標的細胞)を認識し死滅させる能力を意味する。これとの関連で「標的化された」という用語は、たとえば、NK-92細胞により発現されたCARが腫瘍により発現された細胞表面抗原を認識し結合するに能力を意味する。
【0175】
本明細書で用いられる場合、「トランスフェクトする」という用語は、細胞への核酸の挿入を意味する。トランスフェクションは、細胞への核酸の進入を可能にするいずれかの手段を用いて実施しうる。DNA及び/又はmRNAは、細胞にトランスフェクトしうる。好ましくは、トランスフェクト細胞は、核酸によりコードされる遺伝子産物(すなわちタンパク質)を発現する。
【0176】
「自殺遺伝子」という用語は、トランスジーンを発現する細胞のネガティブ選択を可能にするトランスジーンを意味する。自殺遺伝子は、安全系として使用され、選択剤の導入により遺伝子を発現する細胞の死滅を可能にする。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)gpt遺伝子、及びE.コリ(E.coli)Deo遺伝子をはじめとするいくつかの自殺遺伝子系が同定されている(たとえば、Yazawa K,Fisher W E,Brunicardi F C:Current progress in suicide gene therapy for cancer.World J.Surg.2002 July;26(7):783-9も参照されたい)。一実施形態では、自殺遺伝子はチミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。TK遺伝子は、野生型又は突然変異TK遺伝子(たとえば、tk30、tk75、sr39tk)でありうる。TKタンパク質を発現する細胞は、ガンシクロビルを用いて死滅させうる。
前記癌が、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性白血病、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、及び固形腫瘍から選択される、請求項22又は23に記載の組成物。