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特開2024-109629第三級アミン置換クマリン化合物およびそれらの蛍光標識としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109629
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】第三級アミン置換クマリン化合物およびそれらの蛍光標識としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/04 20060101AFI20240806BHJP
   C07D 413/04 20060101ALI20240806BHJP
   C07D 417/04 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240806BHJP
   C07H 19/00 20060101ALI20240806BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240806BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240806BHJP
   C12Q 1/6839 20180101ALI20240806BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
C07D413/04
C07D417/04
A61K49/00
C07H19/00
C07H21/04 B
C12N15/11 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6839 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074722
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2020572442の分割
【原出願日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】62/812,732
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ ロマノフ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック マッコーリー
(72)【発明者】
【氏名】ナイル ハインズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】青色光励起下での強い蛍光を伴うヌクレオチド標識に適した新規な蛍光化合物を提供する。
【解決手段】式(I)の第三級アミン置換クマリン誘導体およびそれらの蛍光標識としての使用が提供される。これらの化合物は、核酸シーケンシング用途におけるヌクレオチドのための蛍光標識として使用され得る。

(式中、Xは、O、S、Se、またはNRであって、Rは、H、C1-6アルキル、またはC6-10アリールである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、その塩またはメソメリー形態:
【化1】

式中:
Xは、O、S、Se、またはNRであって、Rは、H、C1-6アルキル、または
6-10アリールであり;
、RおよびRの各々は、独立して、H、ハロ、-CN、-COH、アミノ、
-OH、C-アミド、N-アミド、NO、-SOH、-SONR、任意で置
換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で
置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシク
リル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換
されたヘテロアリールであり;
Rは、H、ハロ、-CN、-COH、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-
NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換され
たアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換
されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシク
リル、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
各RおよびRは、独立して、C1-6アルキル、-(CH-CO、-
(CH-C(O)NR、-(CH-SOH、-(CH-SO
NRであって、各p、q、nおよびtは、独立して、1、2、3、4、5または
6であり;
各Rは、独立して、ハロ、-CN、-CO、アミノ、-OH、C-アミド、N
-アミド、-NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任
意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ
、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換され
たヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリール
であり;
各RおよびRは、独立して、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルであり;
各R、R、RおよびRは、独立して、H、任意で置換された置換C1-6アル
キル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換
されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;かつ
mは、0、1、2、3、または4であり;ただし、
R、R、RおよびRの各々がHであり;各RおよびRがエチルである場合;
mは、1、2、3または4であり;
R、R、RおよびRの各々がHであり;mが1であり;Rが-COHであり
;各RおよびRがエチルである場合;Xは、NR、S、またはSeであり;かつ
R、R、RおよびRの各々がHであり;mが1であり;Rが-SOHであり
;Rが-(CH-COHであり;Rがエチルである場合;Xは、NR、O
、またはSeである。
【請求項2】
Xが、OまたはSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、NRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、-(CH-COである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化
合物。
【請求項5】
が、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルである、請求項4に記載の化合物
【請求項6】
が、C1-6アルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が、C1-6アルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が、-(CH-SOHである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合
物。
【請求項9】
が、-(CH-COである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化
合物。
【請求項10】
が、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルである、請求項9に記載の化合物
【請求項11】
Rが、H、ハロ、またはC1-6アルキルである、請求項1~10のいずれか一項に記
載の化合物。
【請求項12】
Rが、Hである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が、H、ハロ、またはC1-6アルキルである、請求項1~12のいずれか一項に
記載の化合物。
【請求項14】
が、Hである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が、H、SOH、任意で置換されたアルキル、または任意で-COHもしくは
-SOHで置換されたC1-4アルキルである、請求項1~14のいずれか一項に記載
の化合物。
【請求項16】
が、Hまたは-SOHである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が、H、-SOH、任意で置換されたアルキル、または任意で-COHもしく
は-SOHで置換されたC1-4アルキルである、請求項1~16のいずれか一項に記
載の化合物。
【請求項18】
が、Hまたは-SOHである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
各Rが、ハロ、-CN、-COH、-SOH、-SONR、または任意
で置換されたC1-6アルキルである、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
が、-COH、-SOH、-SONH、または-COH、-SOH,
もしくは-SONHで置換されたC1-6アルキルである、請求項19に記載の化合
物。
【請求項21】
Xが、O、NH、またはSであり;各R、R、R、およびRが、Hであり;R
が、-(CH-COまたはC1-6アルキルであり;Rが、C1-6アル
キル、-(CH-COまたは-(CH-SOHであり;mが、0ま
たは1であり;かつRが、-SOH、-SONH、ハロ、-COH、または-
SOHもしくは-SONHで置換されたC1-6アルキルである、請求項1に記載
の化合物。
【請求項22】
下記:
【化2-1】
【化2-2】
、それらの塩、およびメソメリー形態からなる群から選択される、請求項1に記載の化合
物。
【請求項23】
前記化合物が、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと結合している、請求項1~2
2に記載の化合物。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の化合物で標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌク
レオチド。
【請求項25】
前記化合物が、式(I)のRまたはRを介して前記ヌクレオチドまたはオリゴヌク
レオチドと結合している、請求項24に記載の標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオ
チド。
【請求項26】
式(I)のRが、-(CH-COHであり、結合が、-COH基を使用し
てアミドを形成する、請求項25に記載の標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド
【請求項27】
式(I)のRが、-COHであり、アタッチメントが、-COH基を使用してア
ミドを形成する、請求項25に記載の標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項28】
式(I-A)の化合物で標識されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド:
【化3】

、またはそのメソメリー形態の塩、その塩、メソメリー形態、
式中、Rは、-ORまたは-NRであり;
、R、およびRの各々は、独立して、H、任意で置換されたC1-6アルキル
、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換され
たアリール、または任意で置換されたヘテロアリールである。
【請求項29】
が、-OHである、請求項28に記載のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
を介したヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドへの、請求項28または29に記
載のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項31】
前記化合物が、リンカー部分を介してピリミジン塩基のC5位または7-デアザプリン
塩基のC7位と結合している、請求項24~30のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオ
チドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項32】
前記ヌクレオチドのリボースまたはデオキシリボース糖と共有結合した3’OHブロッ
キング基をさらに含む、請求項24~31のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオチドま
たはオリゴヌクレオチド。
【請求項33】
請求項24~32のいずれか一項に記載の第1の標識化ヌクレオチドおよび第2の標識
化ヌクレオチドを含むキット。
【請求項34】
前記第2の標識化ヌクレオチドが、前記第1の標識化ヌクレオチドとは異なる化合物で
標識されている、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記第1および第2の標識化ヌクレオチドが、単一レーザー波長を使用して励起可能で
ある、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
第3のヌクレオチドおよび第4のヌクレオチドをさらに含み、前記第2、第3、および
第4のヌクレオチドの各々が、異なる化合物で標識され、各標識が、他の標識から区別可
能な異なる吸収極大を有する、請求項34または35に記載のキット。
【請求項37】
前記キットが、4つのヌクレオチドを含み、前記4つのヌクレオチドの第1が、請求項
24~32のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオチドであり、前記4つのヌクレオチド
の第2が、第2の標識を担持し、第3のヌクレオチドが、第3の標識を担持し、かつ第4
のヌクレオチドが、非標識化(暗黒)である、請求項33に記載のキット。
【請求項38】
前記キットが、4つのヌクレオチドを含み、前記4つのヌクレオチドの第1が、請求項
24~32のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオチドであり、前記4つのヌクレオチド
の第2が、第2の標識を担持し、第3のヌクレオチドが、2つの標識の混合物を担持し、
かつ第4のヌクレオチドが、非標識化(暗黒)である、請求項33に記載のキット。
【請求項39】
請求項1~22のいずれか一項に記載の化合物、請求項24~32に記載の標識化ヌク
レオチドまたはオリゴヌクレオチド、または請求項33~38のいずれか一項に記載のキ
ットの、シーケンシング、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA
分析、またはタンパク質結合アッセイにおける使用。
【請求項40】
自動化シーケンシング装置上での請求項39に記載の使用であって、前記自動化シーケ
ンシング装置が、異なる波長で作動する2つのレーザーを含む、上記使用。
【請求項41】
シーケンシングアッセイにおいて請求項24~32のいずれか一項に記載の標識化ヌク
レオチドを取り込むことを含むシーケンシングの方法。
【請求項42】
前記標識化ヌクレオチドを検出することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記シーケンシングアッセイが、自動化シーケンシング装置上で実施され、前記自動化
シーケンシング装置が、異なる波長で作動する2つの光源を含む、請求項41または42
に記載の方法。
【請求項44】
本明細書に記載の式(I)の化合物を合成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先出願の参照による組込み)
本出願は、2019年3月1日に出願された米国仮出願第62/812,732号に対
する優先権の利益を主張し、これは参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
(分野)
本開示は、第三級アミン置換クマリン誘導体およびそれらの蛍光マーカーとしての使用
に関する。特に、これらの化合物は、核酸シーケンシング用途におけるヌクレオチドのた
めの蛍光標識として使用され得る。
【背景技術】
【0003】
(背景)
いくつかの刊行物および特許文献が、この開示が関係する技術常識をより完全に記載す
るために本出願中で参照される。これらの刊行物および文献の各々の開示は、参照により
本明細書に組み込まれる。
【0004】
蛍光標識を有する核酸の非放射性検出は、分子生物学における重要な技術である。組換
えDNA技術で用いられる多くの手順は、以前は、例えば32Pで放射性標識されたヌク
レオチドまたはポリヌクレオチドの使用に依存していた。放射性化合物は、核酸および他
の目的の分子の高感度検出を可能にする。しかしながら、放射性同位元素の使用には、費
用、制限された貯蔵寿命、不十分な感度、およびより重要なことに安全性の考慮といった
、深刻な制限が存在する。放射性標識の必要性を除去することで、安全上のリスクならび
に試薬の廃棄等に関連した環境への影響およびコストの両方を減少させる。非放射性蛍光
検出に適した方法として、非限定的な例として、自動化DNAシーケンシング、ハイブリ
ダイゼーション法、ポリメラーゼ連鎖反応産物のリアルタイム検出、およびイムノアッセ
イが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの用途のために、多重のスペクトル的に区別可能な蛍光標識を用いて、複数の空間
的に重複する分析物の独立した検出を達成することが望ましい。このようなマルチプレッ
クス法では、反応容器の個数を減少させ得、実験プロトコルを簡素化し、用途特異的な試
薬キットの産生を容易にする。マルチカラー自動化DNAシーケンシングシステムでは、
例えば、マルチプレックス蛍光検出により、単一の電気泳動レーンにおいて多重のヌクレ
オチド塩基の分析が可能になり、単色法よりもスループットが増加し、レーン間の電気泳
動移動度の変動に関連した不確実性が減少する。
【0006】
しかしながら、マルチプレックス蛍光検出は問題になり得、適切な蛍光標識の選択を制
約する多数の重要な要因が存在する。最初に、所定の用途において適切に解像された吸収
スペクトルおよび発光スペクトルを持つ色素化合物を発見することは難しくなり得る。ま
た、数種の蛍光色素を一緒に使用する場合、色素の吸収帯が通常は広範に分離しているた
め、同時励起により区別可能なスペクトル領域において生成する蛍光シグナルが複雑にな
り得、そのため、2種の色素でさえも、相当な蛍光励起効率を達成することは困難である
。多くの励起方法は、レーザーのような高出力光源を使用するため、色素はそのような励
起に耐えるのに十分な光安定性を有しなければならない。分子生物学の方法にとって特に
重要な最終考慮事項は、蛍光色素が、例えば、DNA合成溶媒および試薬、バッファー、
ポリメラーゼ酵素、およびリガーゼ酵素といった試薬化学とどの程度適合性でなければな
らないかである。
【0007】
シーケンシング技術が進歩するにつれて、上記のすべての制約を満たし、特に固相シー
ケンシング等といったハイスループット分子法に適した、さらなる蛍光色素化合物、それ
らの核酸コンジュゲート、および多重の色素セットの必要性が生じてきている。
【0008】
適した蛍光強度、形状、蛍光の波長極大といった蛍光特性が向上した蛍光色素分子は、
核酸シーケンシングの速度および正確性を向上させることができる。大部分の色素の蛍光
強度はそのような条件下では著しく低いため、水ベースの生物学的バッファー中でおよび
高温で測定を行う場合、強い蛍光シグナルが特に重要である。そして、色素が結合した塩
基の性質もまた、蛍光極大、蛍光強度、および他のスペクトル色素特性に影響を与える。
核酸塩基と蛍光色素との間の配列特異的相互作用は、蛍光色素の特定の設計により仕立て
ることができる。蛍光色素の構造の最適化は、ヌクレオチド取込みの効率を向上させ、シ
ーケンシングエラーのレベルを減少させ、核酸シーケンシングにおける試薬の使用量を減
らし、それゆえコストを減らすことができる。
【0009】
いくつかの光学的および技術的開発は、大きく向上した画像品質へとすでに導いている
が、終局的には乏しい光学解像度により制限されていた。概して、光学顕微鏡の光学解像
能は、使用される光の波長の約半分の間隔で配置されたオブジェクトに制限される。しか
して、実際には、光学顕微鏡で解像できるのは、かなり離れた場所(少なくとも200~
350nm)にあるオブジェクトだけである。画像の解像度を向上させ、単位表面積あた
りの解像可能なオブジェクトの数を増やす1つの方法は、より短い波長の励起光を使用す
ることである。例えば、同じ光学系で光の波長をΔλ~100nm短縮すると、解像度が
より良好となり(約Δ50nm/(約15%))、歪みの少ない画像が記録され、オブジ
ェクトの密度が認識可能面積は約35%増加する。
【0010】
特定の核酸シーケンシング法では、レーザー光を用いて色素標識化ヌクレオチドを励起
および検出する。これらの機器は、660nmで励起可能な適切な色素とともに、赤色レ
ーザーといったより長波長の光を使用する。有用な解像度を維持しつつより集密に詰まっ
た核酸シーケンシングクラスターを検出するために、より短波長の青色光源(450-4
60nm)を使用し得る。この場合、光学解像能は、より長波長の赤色蛍光色素の発光波
長ではなく、むしろ次点で最長の波長の光源、例えば532nmでの「緑色レーザー」に
より励起可能な色素の発光により制限されるであろう。したがって、シーケンシング用途
の蛍光検出に使用するための青色色素標識が必要である。
【0011】
青色色素化学および関連するレーザー技術は、例えば、DVDおよびBlu-ray(
登録商標)ディスク用の色素を生成するために改良されてきているが、これらの化合物は
、バイオ標識化には適さず、バイオマーカーとして使用することができない。
【0012】
残念ながら、ヌクレオチド標識に適した強い蛍光を発する市販の青色色素は、まだ非常
にまれである。また、水中または極性溶媒/緩衝液中で強い蛍光を発する市販の親水性青
色色素も、希少である。例えば、市販の色素Dy430およびDy415はいずれも、水
または、メタノール、エタノール、DMF、DMSOといった極性溶媒中への良好な溶解
性を有する。しかしながら、いずれの色素も、UV領域で吸収極大を示すため、青色光源
(450-460nm)での効率的な励起には適さない。本明細書に記載されているのは
、青色光励起下での強い蛍光を伴うヌクレオチド標識に適した新規な蛍光化合物である。
いくつかの例において、本開示の蛍光化合物はまた、優れた水溶性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(概要)
本出願は、第三級アミン置換クマリン誘導体に関する。それらの化合物は、特に核酸シ
ーケンシング用途におけるヌクレオチド標識化のための蛍光標識として有用となり得る。
いくつかの態様では、色素は、短波長光、最適には450~460nmの波長の光を吸収
し、450~460nmの波長を有する青色波長励起源が使用される状況において特に有
利である。青色波長励起により、蛍光発光の波長が短くなるため、単位面積あたりのより
高密度の特徴の検出および解像度が可能になる。このような色素をヌクレオチドとのコン
ジュゲートで使用すると、核酸シーケンシング法の最中に得られるシーケンシング読取り
の長さ、強度、精度、および品質に向上を見ることができる。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物またはその塩に関する:
【化1】

式中、Xは、O、S、Se、またはNRであって、Rは、H、C1-6アルキルま
たはC6-10アリールであり;
、RおよびRの各々は、独立して、H、ハロ、-CN、-COH、アミノ、
-OH、C-アミド、N-アミド、NO、-SOH、-SONR、任意で置
換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で
置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシク
リル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換
されたヘテロアリールであり;
Rは、H、ハロ、-CN、-COH、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケ
ニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたア
ミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、ま
たは任意で置換されたヘテロアリールであり;
各RおよびRは、独立して、C1-6アルキル、-(CH-CO、-
(CH-C(O)NR、-(CH-SOH、-(CH-SO
NRであって、各p、q、nおよびtは、独立して、1、2、3、4、5または
6であり;
各Rは、独立して、ハロ、-CN、-CO、アミノ、-OH、C-アミド、N
-アミド、-NO、-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任
意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ
、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換され
たヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリール
であり;
各RおよびRは、独立して、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルであり;
各R、R、RおよびRは、独立して、H、任意で置換されたC1-6アルキル
、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換され
たアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
mは、0、1、2、3、または4である。
【0015】
いくつかの態様では、R、R、RおよびRの各々がHであり;各RおよびR
がエチルである場合;mは、1、2、3または4である。いくつかの他の態様では、R、
、RおよびRの各々がHであり;mが1であり;Rが-COHであり;各R
およびRがエチルである場合;Xは、NR、S、またはSeである。いくつかの態
様では、R、R、RおよびRの各々がHであり;mが1であり;Rが-SO
であり;Rが-(CH-COHであり;Rがエチルである場合;Xは、NR
、O、またはSeである。
【0016】
いくつかの他の実施形態では、本開示の化合物は、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチ
ド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、リガンド、粒子、細胞、半固体表面(
例、ゲル)、または固体表面といった基質部分とコンジュゲートされる。コンジュゲーシ
ョンは、カルボキシル基(-COH)を介して実施してもよく、当該分野で公知の方法
を使用して、部分(ヌクレオチド等)上のアミノもしくはヒドロキシル基またはそれに結
合したリンカーと反応させて、アミドまたはエステルを形成することができる。
【0017】
本開示のいくつかの他の態様は、例えば、基質部分への共有結合を可能にするリンカー
基を含む色素化合物に関する。連結は、R基のいずれかを含む、色素の任意の位置で実施
してもよい。いくつかの実施形態では、連結は、式(I)のR、RまたはRを介し
て実施してもよい。
【0018】
本開示のいくつかのさらなる態様は、下記式により定義されるヌクレオシドまたはヌク
レオチド化合物を提供する:

N-L-Dye

式中、Nは、ヌクレオチドであり;
Lは、任意付加のリンカー部分であり;かつ
Dyeは、本開示による蛍光化合物である。
【0019】
本明細書に記載のいくつかの追加の実施形態は、式(I)の化合物で標識された部分、
とりわけヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに関する。
【0020】
いくつかの追加の開示は、本開示の色素化合物を使用するシーケンシングの方法を提供
する。
【0021】
さらなる態様によれば、本開示はまた、種々の免疫学的アッセイ、オリゴヌクレオチド
または核酸標識において、または合成によるDNAシーケンシングのために使用され得る
色素化合物(遊離またはコンジュゲート形態)を含むキットを提供する。さらに別の態様
では、本開示は、自動化された機器プラットフォーム上での合成によるシーケンシングの
サイクルに特に適した色素「セット」を含むキットを提供する。いくつかの局面にあるの
は、少なくとも1つのヌクレオチドが本明細書に記載の標識化ヌクレオチドである、1以
上のヌクレオチドを含むキットである。
【0022】
本開示のさらなる態様は、第三級アミン置換クマリン色素およびそのような色素で標識
されたヌクレオチドといった部分を含む、本開示の化合物の化学的製剤である。
【0023】
さらなる態様にあるのは、シーケンシングアッセイにおいてポリヌクレオチドに本明細
書に記載の標識化ヌクレオチドを組み込むこと、および組み込まれた標識化ヌクレオチド
を検出することを含む、シーケンシングの方法である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
本開示は、蛍光検出および合成によるシーケンシング(sequencing by
synthesis)の方法に特に適した第三級アミン置換クマリン化合物を提供する。
第三級アミン置換クマリン色素の実施形態は、水または極性溶媒/緩衝液中で強い蛍光を
呈しつつ優れた水溶性を有し、したがって、水性環境でのヌクレオチド標識およびシーケ
ンシング用途に適する。本明細書に記載の実施形態は、式(I)の構造の色素およびそれ
らの誘導体、およびそれらの塩に関する。
【化2】
【0025】
いくつかの態様では、Xは、Oである。いくつかの態様では、Xは、Sである。いくつ
かの態様では、Xは、Seである。いくつかの態様では、Xは、NRであり、Rは、
H、C1-6アルキル、またはC6-10アリールであり、一態様では、Rは、Hまた
はフェニルである。いくつかのさらなる実施形態では、mが1、2、3または4でありか
つRの1つが-COHであり;R、R、R、Rの各々がHである場合;R
よびRの各々は、独立して、C1-6アルキル、-(CH-CO、-(C
-C(O)NR、-(CH-SOH、-(CH-SO
であって、Rは、任意で置換されたC1-6アルキル、任意で置換されたカル
ボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意
で置換されたヘテロアリールである。言い換えると、Rが-COHである場合、R
とRのいずれも、-COH部分を含まない。いくつかの他の実施形態では、mが0で
あるかあるいはRが-COHではなく;R、R、R、Rの各々がHである場合
;RまたはRの少なくとも1つは、-COHを含む。
【0026】
いくつかの態様では、Rは、H、ハロ、-COH、アミノ、-OH、C-アミド、N
-アミド、-NO、-SOH、-SONH、任意で置換されたアルキル、任意で
置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任
意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘ
テロシクリル、または任意で置換されたヘテロアリールである。一態様では、Rは、Hで
ある。別の態様では、Rは、ハロである。いくつかの態様では、Rは、任意で置換された
1-6アルキルである。いくつかの態様では、Rは、-COHである。いくつかの態
様では、Rは、-SOHである。いくつかの態様では、Rは、-SONRであ
って、RおよびRは、独立してHまたは任意で置換されたC1-6アルキルである。
一態様では、Rは、-SONHである。いくつかの態様では、Rは、-CNではない
【0027】
いくつかの態様では、Rは、Hである。いくつかの態様では、Rは、ハロである。
いくつかの態様では、Rは、-CNである。いくつかの態様では、Rは、はC1-6
アルキルである。いくつかの態様では、Rは、-SONRであって、Rおよ
びRは、独立してHまたは任意で置換されたC1-6アルキルである。一態様では、R
は、-SONHである。いくつかの態様では、Rは、-CNではない。
【0028】
いくつかの態様では、Rは、Hである。いくつかの態様では、Rは、ハロである。
いくつかの態様では、Rは、-SOHである。いくつかの態様では、Rは、任意で
置換されたアルキル、例えば、C1-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態で
は、Rは、-COHまたは-SOHで任意で置換されたC1-4アルキルである。
【0029】
いくつかの態様では、Rは、Hである。いくつかの態様では、Rは、ハロである。
いくつかの態様では、Rは、-SOHである。いくつかの態様では、Rは、任意で
置換されたアルキル、例えばC1-6アルキルである。いくつかのさらなる実施形態では
、Rは、-COHまたは-SOHで任意で置換されたC1-4アルキルである。
【0030】
いくつかの態様では、Rは、-(CH-COである。さらなる実施形態
では、pは、2、3、4、または5である。Rは、HまたはC1-6アルキル、例えば
、メチル、エチル、イソプロピルまたはt-ブチルである。いくつかの他の態様では、R
は、C1-6アルキルである。
【0031】
いくつかの態様では、Rは、-(CH-SOHである。さらなる実施形態で
は、nは、2、3、4、または5である。いくつかの態様では、Rは、C1-6アルキ
ルである。
【0032】
いくつかの態様では、RおよびRの少なくとも1つは、C1-6アルキルである。
いくつかの態様では、RおよびRの両方は、C1-6アルキル、例えば、メチル、エ
チル、イソプロピルまたはt-ブチルである。いくつかの態様では、Rが-(CH
-COである場合、Rは、-(CH-SOHである。いくつかの他の
態様では、RおよびRの両方は、-(CH-COである。各pおよびn
は、独立して、1、2、3、4、または5である。
【0033】
式(I)の
【化3】
部分のベンゼン環は、Rとして示される置換基によって、任意の1つ、2つ、3つ、ま
たは4つの位置で任意で置換される。mがゼロである場合、ベンゼン環は、非置換である
。mが1より大きい場合、各Rは、同じでも異なっていてもよい。いくつかの態様では
、mは、0である。他の態様では、mは、1である。他の態様では、mは、2である。い
くつかの態様では、mは、1、2、または3であり、かつ各Rは、独立して、ハロ、-
CN、-CO、アミノ、-OH、-SOH、-SONR、または任意で
置換されたC1-6アルキルであって、Rは、HまたはC1-4アルキルである。いく
つかのさらなる実施形態では、Rは、-COH、-SOH、-SONH、また
は-COH、-SOH、もしくは-SONHで置換されたC1-6アルキルであ
る。いくつかのさらなる実施形態では、Rは、-(CHCOOHであって、xは
、2、3、4、5または6である。いくつかの実施形態では、R、R、R、Rの各
々がHであり;RおよびRが独立してC1-6アルキル、-(CH-CO
、-(CH-C(O)NR、-(CH-SOH、-(CH
-SONRであって、Rが任意で置換されたC1-6アルキル、任意で置換さ
れたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、ま
たは任意で置換されたヘテロアリールであり(すなわち、RおよびRのいずれも-C
Hを含まない);mが1である場合;
【化4】
は、以下の位置で置換される:
【化5】

一実施形態では、Rは、-COHである。別の実施形態では、Rは、-Clといっ
たハロである。なお別の実施形態では、Rは、-SONRであって、Rおよ
びRの少なくとも一方または両方は、HまたはC1-6アルキルである。
【0034】
式(I)の化合物の特別な例としては、Xが、O、SまたはNHであり;各R、R
、およびRが、Hであり;Rが、-(CH-COまたはC1-6
ルキルであり;Rが、C1-6アルキル、-(CH-COまたは-(CH
-SOHであり;mが、0または1であり;かつRが、-SOH、-SO
NR、ハロ、-COH、または-COH、SOHもしくは-SONR
で置換されたC1-6アルキルであるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、R
およびRの少なくとも一方または両方は、HまたはC1-6アルキルである。いくつ
かのさらなる実施形態では、Rが-(CH-COである場合、Rは、-
(CH-SOH、-(CH-COまたはC1-6アルキルである。
いくつかのさらなる実施形態では、RおよびRの両方は、C1-6アルキルである。
mが1である場合、
【化6】


は、以下の位置で置換される:
【化7】

一実施形態では、Rは、-COHである。別の実施形態では、Rは、クロロといっ
たハロである。なお別の実施形態では、Rは、-SONRであって、Rおよ
びRの少なくとも一方または両方が、HまたはC1-6アルキルである。
【0035】
第三級アミン置換クマリン染料の特定の例としては、
【化8-1】
【化8-2】
、およびその塩が挙げられる。
【0036】
二級アミン置換を有する追加のクマリン染料としては、
【化9】
、ならびにそれらの塩およびメソメリー形態が挙げられる。
【0037】
本開示のさらなる実施形態は、式(I-A)の構造を有する化合物に関する:
【化10】

式中、Rは、-ORまたは-NRであり、R、R、およびRの各々は、
独立して、H、任意で置換されたC1-6アルキル、任意で置換されたカルボシクリル(
例、3~8員シクロアルキル)、任意で置換されたヘテロシクリル(例、3~7員ヘテロ
シクリル)、任意で置換されたアリール(例、フェニル)、または任意で置換されたヘテ
ロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール)である。一実施形態では、Rは、-
OHである。他の実施形態では、Rは、-ORであり、Rは、任意で置換されたC
1-6アルキルである。他の実施形態では、Rは、-NRであり、各Rおよび
は、独立して、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルである。いくつかのその
ような実施形態では、Rは、Hであり、Rは、任意で置換されたC1-6アルキルで
ある。いくつかの他の実施形態では、RおよびRの各々は、独立して、任意で置換さ
れたC1-6アルキルである。いくつかの態様では、C1-6アルキルが任意で置換され
る場合、それは、カルボキシル(-COH)、アミノ(モノ、二置換アミノ、および構
造tBuOC(=O)NH-のBoc保護アミノといった保護アミノを含めた、-NH
)、-C(O)NR、-NRC(O)OR、-SOH、-SONR
、または-NRSOで任意で置換され、RおよびRは、本明細書で定義され
る。
【0038】
とりわけ有用な化合物は、本明細書に記載の色素で標識されたヌクレオチドまたはオリ
ゴヌクレオチドである。標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、カルボキシま
たはアルキル-カルボキシ基を介して本明細書に開示される色素化合物に結合して、アミ
ドまたはアルキル-アミドを形成し得る。例えば、本明細書に開示される色素化合物は、
式(I)のR、RまたはRを介してヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに結合
しているか、あるいはRは、式(I-A)である。いくつかの実施形態では、式(I)
のRまたはRは、-COHまたは-(CH-COHであり、結合は、-C
H基を使用してアミドを形成する。いくつかの実施形態では、式(I)のRは、-
COHであり、結合は、-COH基を使用してアミドを形成する。いくつかの実施形
態では、式(I-A)のRは、-OHであり、結合は、-COH基を使用してアミド
を形成する。他のいくつかの実施形態では、式(IA)のRは、--NRであっ
て、RおよびRの一方または両方は、-COHまたは-NHといった1以上の官
能基で置換されたC1-6アルキルであり、結合は、これらの官能基とアミドを形成する
。標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、リンカー部分を介して、ピリミジン
塩基のC5位置または7-デアザプリン塩基のC7位置に結合された標識を有し得る。
【0039】
標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドはまた、ヌクレオチドのリボースまたは
デオキシリボース糖に共有結合したブロッキング基を有し得る。ブロッキング基は、リボ
ースまたはデオキシリボース糖の任意の位置に結合し得る。特別な実施形態では、ブロッ
キング基は、ヌクレオチドのリボースまたはデオキシリボース糖の3’OH位置にある。
【0040】
本明細書で提供されるのは、2以上のヌクレオチドを含むキットであり、少なくとも1
つのヌクレオチドは、本開示の化合物で標識されたヌクレオチドである。キットは、2以
上の標識化ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドは、2以上の蛍光標識で標識され
てもよい。2以上の標識は、単一の励起源を使用して励起されてもよく、単一の励起源は
、レーザーであってもよい。例えば、2以上の標識の励起バンドは、スペクトルの重なり
領域での励起が両方の標識に蛍光を発するように、少なくとも部分的に重なり得る。特別
な実施形態では、2以上の標識からの発光は、発光を光学的に区別することにより標識の
少なくとも1つの存在を決定することができるように、スペクトルの異なる領域で発生す
るであろう。
【0041】
キットは、4つの標識化ヌクレオチドを含み得、4つのヌクレオチドのうちの第1のも
のは、本明細書に開示されるような化合物で標識される。このようなキットでは、4つの
ヌクレオチドの各々を、他の3つのヌクレオチドの標識と同じまたは異なる化合物で標識
することができる。したがって、1以上の化合物は、化合物が他の化合物と区別できるよ
うに、明確な吸光度極大および/または発光極大を有することができる。例えば、各化合
物は、各化合物が他の3つの化合物と区別できるように、別個の極大吸光度および/また
は発光極大を有することができる。極大以外の吸収スペクトルおよび/または発光スペク
トルの部分は異なる可能性があり、これらの違いを利用して化合物を区別することができ
ることが理解されよう。キットは、2つ以上の化合物が明確な極大吸光度を有するような
ものであり得る。本発明の化合物は、典型的には、500nm未満の領域の光を吸収する
【0042】
本明細書に記載の化合物、ヌクレオチド、またはキットは、生物学的システム(例、そ
のプロセスまたは構成要素を含む)を検出、測定、または識別するために使用してもよい
。化合物、ヌクレオチドまたはキットを使用することができる例示的な技術としては、シ
ーケンシング、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、細胞
アッセイ(例、細胞結合または細胞機能分析)、またはタンパク質アッセイ(例、タンパ
ク質結合アッセイまたはタンパク質活性アッセイ)が挙げられる。自動シーケンシング機
器といった、特定の技術を実行するための自動機器で使用することができる。シーケンシ
ング機器は、異なる波長で動作する2つのレーザーを含んでもよい。
【0043】
本明細書に開示されるのは、本開示の化合物を合成する方法である。本開示による色素
は、種々の異なる適切な出発材料から合成することができる。例えば、式(I)の化合物
は、式(II)の化合物を、式(III)の第二級アミンNHRと反応させること
により調製してもよい:
【化11】

式中、変数X、R、R、R、R、R、R、R、およびmの各々が、本明細
書中で定義される。反応は、有機溶媒中、周囲温度または高温で行ってもよい。
【0044】
(定義)
本書で使用されるセクションの見出しは、組織化的な目的のみであり、説明されている
主題を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」お
よび「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対
象を含むことに留意されたい。本教示の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書
に記載の種々の実施形態に対して種々の修正および変形を行うことができることは当業者
には明らかであろう。したがって、本明細書に記載の種々の実施形態は、添付の特許請求
の範囲およびそれらの同等物の範囲内の他の修正および変形をカバーすることが意図され
る。
【0046】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当
業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。用語「含んでいる(inc
luding)」ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」
、「含んだ(included)」といった他の形式の使用は、限定的ではない。用語「
有している(having)」ならびに「有する(have)」、「有する(has)」
、「有した(had)」といった他の形式の使用は、限定的ではない。本明細書で使用さ
れているように、クレームの移行句(transitional phrase)中であ
っても本体部(body)中であっても、用語「含む(comprise(s))」およ
び「含んでいる(comprising)」は、オープンエンド化された意味を有すると
解釈されるべきである。即ち、上記の用語は、句「少なくとも有している(having
at least)」または「少なくとも含んでいる(including at l
east)」と同義的に解釈されるべきである。例えば、プロセスの文脈で使用される場
合、用語「含んでいる(comprising)」は、プロセスが少なくとも記載された
ステップを含むが、追加のステップを含んでもよいことを意味する。化合物、組成物、ま
たはデバイスの文脈で使用される場合、用語「含んでいる(comprising)」は
、化合物、組成物、またはデバイスが少なくとも記載された特徴または成分を含むが、追
加の特徴または成分もまた含んでもよいことを意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「共有結合した(covalently attac
hed)」または「共有結合した(covalently bonded)」は、原子間
での電子対の共有を特徴とする化学結合の形成を指す。例えば、共有結合されたポリマー
コーティングは、他の手段、例えば、接着または静電相互作用を介した表面への結合と比
較して、基板の官能化された表面と化学結合を形成するポリマーコーティングを指す。表
面に共有結合しているポリマーは、共有結合に加えて手段を介して結合することもできる
ことが理解されよう。
【0048】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、元素の周期表の列7の放射
線安定性原子のいずれか1つ、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味し、フ
ッ素および塩素が好ましい。
【0049】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、完全に飽和した(すなわち、二重結合ま
たは三重結合を含まない)直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個
の炭素原子を有してもよい(本明細書中に現れる場合は常に、「1~20」といった数値
範囲は、指定された範囲内の各整数を指す;例えば、「1~20個の炭素原子」は、アル
キル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等で、20個までの炭素原子
からなってもよいが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「アルキル」の出現も
カバーする)。アルキル基はまた、1~9個の炭素原子を有する中型アルキルであっても
よい。アルキル基はまた、1~6個の炭素原子を有するより低級のアルキルであり得た。
アルキル基は、「C1-4アルキル」または同様の呼称として指定してもよい。ほんの一
例として、「C1-6アルキル」は、アルキル鎖に1~6個の炭素原子が存在すること、
すなわち、アルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブ
チル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる群から選択されることを示す。典型的
なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル
、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、Rが上記で定義されるアルキルである
式-ORを指し、例えば「C1-9アルコキシ」であり、メトキシ、エトキシ、n-プロ
ポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、iso-ブトキシ、s
ec-ブトキシ、およびtert-ブトキシ等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、1以上の二重結合を含む直鎖または分
岐炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、
数値範囲が指定されていない用語「アルケニル」の出現もカバーする。アルケニル基はま
た、2から9個の炭素原子を有する中型アルケニルであってもよい。アルケニル基はまた
、2~6個の炭素原子を有するより低級のアルケニルであってもよい。アルケニル基は、
「C2-6アルケニル」または同様の呼称として指定してもよい。ほんの一例として、「
C2-6アルケニル」は、アルケニル鎖に2~6個の炭素原子が存在すること、すなわち
、アルケニル鎖がエテニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、プロペン-3-
イル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、ブテン-4-イル、1
-メチル-プロペン-1-イル、2-メチル-プロペン-1-イル、1-エチル-エテン
-1-イル、2-メチル-プロペン-3-イル、ブタ-1,3-ジエニル、ブタ-1,2
,-ジエニル、およびブタ-1,2-ジエン-4-イルからなる群から選択されることを
示す。典型的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、
およびヘキセニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、1以上の三重結合を含む直鎖または分
岐炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、
数値範囲が指定されていない用語「アルキニル」の出現もカバーする。アルキニル基はま
た、2~9個の炭素原子を有する中型アルキニルであってもよい。アルキニル基はまた、
2~6個の炭素原子を有するより低級のアルキニルであり得た。アルキニル基は、「C
-6アルキニル」または同様の呼称として指定してもよい。ほんの一例として、「C2-
アルキニル」は、アルキニル鎖に2~6個の炭素原子が存在すること、すなわち、アル
キニル鎖がエチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチン-1-イル、ブ
チン-3-イル、ブチン-4-イル、および2-ブチニルからなる群から選択されること
を示す。典型的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル
、およびヘキシニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」は、1つ以上のヘテロ原子、すなわち
、鎖骨格に窒素、酸素および硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の元素を含む直
鎖または分岐炭化水素鎖を指す。ヘテロアルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る
が、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロアルキル」の出現もカバーする
。ヘテロアルキル基はまた、1~9個の炭素原子を有する中型ヘテロアルキルであっても
よい。ヘテロアルキル基はまた、1~6個の炭素原子を有するより低級のヘテロアルキル
であり得た。ヘテロアルキル基は、「C1-6ヘテロアルキル」または同様の呼称として
指定してもよい。ヘテロアルキル基は、1以上のヘテロ原子を含み得る。ほんの一例とし
て、「C4-6ヘテロアルキル」は、ヘテロアルキル鎖に4~6個の炭素原子、さらには
鎖の主鎖に1以上のヘテロ原子が存在することを示す。
【0054】
用語「芳香族」は、共役π電子系を有する環または環系を指し、炭素環式芳香族(例、
フェニル)および複素環式芳香族基(例、ピリジン)の両方が挙げられる。この用語は、
環系全体が芳香族であるという条件で、単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接する
原子の対を共有する環)基を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、環骨格に炭素のみを含む芳香族環または
環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリー
ルが環系の場合、系内のすべての環は芳香族である。アリール基は、6~18個の炭素原
子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない「アリール」という用語の出現
もカバーする。いくつかの実施形態では、アリール基は、6から10個の炭素原子を有す
る。アリール基は、「C6-10アリール」、「CまたはC10アリール」、または同
様の呼称として指定され得る。アリール基の例としては、これらに限定されないが、フェ
ニル、ナフチル、アズレニル、およびアントラセニルが挙げられる。
【0056】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、「C7-14アラルキル」といった、
置換基としてアルキレン基を介して結合されたアリール基であり、ベンジル、2-フェニ
ルエチル、3-フェニルプロピル、およびナフチルアルキルが挙げられるがこれらに限定
されない。いくつかの場合では、アルキレン基は、より低級のアルキレン基(すなわち、
1-6アルキレン基)である。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、1以上のヘテロ原子、すなわち、
環骨格中の窒素、酸素および硫黄が挙げられるがこれらに限定されない、炭素以外の元素
を含む芳香族環または環系(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2以上の縮合環)
を指す。ヘテロアリールが環系である場合、系内の各環は、芳香族である。ヘテロアリー
ル基は、5~18個の環員数(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含めた、環骨格を
構成する原子の数)を有してもよいが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘ
テロアリール」の出現もカバーする。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、5
~10の環員数または5~7個の環員数を有する。ヘテロアリール基は、「5-7員のヘ
テロアリール」、「5-10員のヘテロアリール」、または同様の呼称として指定しても
よい。ヘテロアリール環の例としては、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オ
キサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル
、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニ
ル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソイ
ンドリル、およびベンゾチエニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルキル」は、置換基として、アルキレ
ン基を介して結合されたヘテロアリール基である。例としては、2-チエニルメチル、3
-チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキ
ル、イソキサゾリルアルキル、およびイミダゾリルアルキルが挙げられるが、これらに限
定されない。いくつかの場合では、アルキレン基は、より低級のアルキレン基(すなわち
、C1-6アルキレン基)である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「カルボシクリル」は、環系骨格に炭素原子のみを含む非
芳香族環状環または環系を意味する。カルボシクリルが環系である場合、2つ以上の環は
、融合、架橋、またはスピロ接続された様式で一緒に結合されてもよい。環系の少なくと
も1つの環が芳香族でない限り、カルボシクリルは、任意の程度の飽和度を有してもよい
。したがって、カルボシクリルとしては、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシ
クロアルキニルが挙げられる。カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子を有してもよ
いが、本定義は、数値範囲が指定されていない「カルボシクリル」という用語の出現もカ
バーする。カルボシクリル基はまた、3~10個の炭素原子を有する中型カルボシクリル
であってもよい。カルボシクリル基はまた、3~6個の炭素原子を有するカルボシクリル
であってもよい。カルボシクリル基は、「C3-6カルボシクリル」または同様の呼称と
して指定してもよい。カルボシクリル環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、
シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビ
シクル[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、およびスピロ[4.4]ノナニルが挙
げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、完全に飽和したカルボシクリル環
または環系を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、
およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」は、環骨格に少なくとも1つのヘテロ
原子を含む非芳香族環状環または環系を意味する。ヘテロシクリルは、融合、架橋、また
はスピロ結合の方法で一緒に結合してもよい。ヘテロシクリルは、環系の少なくとも1つ
の環が芳香族でない限り、任意の程度の飽和度を有してもよい。ヘテロ原子は、環系の非
芳香族環または芳香族環のいずれかに存在してもよい。ヘテロシクリル基は、3~20の
環員数(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含めた、環骨格を構成する原子の数)を
有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロシクリル」の出現もカ
バーする。ヘテロシクリル基はまた、3~10の環員数を有する中型ヘテロシクリルであ
ってもよい。ヘテロシクリル基はまた、3~6の環員数を有するヘテロシクリルであって
もよい。ヘテロシクリル基は、「3-6員ヘテロシクリル」または同様の呼称として指定
してもよい。好ましい6員単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、O、N、またはS
の1つから3つまで選択され、好ましい5員単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、
O、N、またはSの1つまたは2つのヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例
としては、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シノリニル、ジオキソラニル、イ
ミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、オキシラニル、オキセパニル、チエパ
ニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、4-ピペリ
ドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル
、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチアニル、1,4-オ
キサチイニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル
、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソ
ラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリ
ジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チア
ゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒド
ロフラン、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロイオフェニル、テトラヒドロチオピラニ
ル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルホリニル、ジヒドロベンゾフラニル、
ベンズイミダゾリジニル、およびテトラヒドロキノリンが挙げられるが、これらに限定さ
れない。
【0062】
「O-カルボキシ」基とは、Rが、水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、
2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリー
ル、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される、「-
OC(=O)R」基を指す。
【0063】
「C-カルボキシ」基とは、Rが、水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、
2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリー
ル、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルからなる群から選択さ
れる「C(=O)OR」基を指す。非限定的な例には、カルボキシル(すなわち、-C(
=O)OH)が含まれる。
【0064】
「スルホニル」基とは、Rが、水素、本明細書で定義される、C1-6アルキル、C
-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、
5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから選択される「-SO
R」基を指す。
【0065】
「スルフィノ」基とは、「-S(=O)OH」基を指す。
【0066】
「S-スルホンアミド」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定
義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カル
ボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロ
シクリルから選択される、「-SONR」基を指す。
【0067】
「N-スルホンアミド」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定
義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カル
ボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロ
シクリルから選択される、「-N(R)SO」基を指す。
【0068】
「C-アミド」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定義される
、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリ
ル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリル
から選択される、「-C(=O)NR」基を指す。
【0069】
「N-アミド」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定義される
、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリ
ル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリル
から選択される、「-N(R)C(=O)R」基を指す。
【0070】
「アミノ」基とは、RおよびRが、各々独立して水素、本明細書で定義される、C
1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、
6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および3-10員ヘテロシクリルから
選択される、「-NR」基を指す。非限定的な例には、遊離アミノ(すなわち、-
NH)が含まれる。
【0071】
「アミノアルキル」基とは、アルキレン基を介して接続されたアミノ基を指す。
【0072】
「アルコキシアルキル」基とは、「C2-8アルコキシアルキル」等といった、アルキ
レン基を介して結合したアルコキシ基を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、置換基は、1以上の水素原子が別の原子または基と交換さ
れた非置換の親基に由来する。特に明記しない限り、基が「置換された」と見なされる場
合、その基は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C
-Cヘテロアルキル、C-Cカルボシクリル(任意でハロ、C-Cアルキル
、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで
置換)、C-C-カルボシクリル-C-C-アルキル(任意でハロ、C-C
アルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアル
コキシで置換)、3-10員ヘテロシクリル(任意でハロ、C-Cアルキル、C
アルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、
3-10員ヘテロシクリル-C-C-アルキル(任意でハロ、C-Cアルキル、
-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置
換)、アリール(任意でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-C
ハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換)、アリール(C-C)アル
キル(任意でハロで置換、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロ
アルキル、およびC-Cハロアルコキシ)、5-10員ヘテロアリール(任意でハロ
、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC
ハロアルコキシで置換)、5-10員ヘテロアリール(C-C)アルキル(任意
でハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、および
-Cハロアルコキシで置換)、ハロ、-CN、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ
、C-Cアルコキシ(C-C)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキ
シ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C-C)アルキル(例、-CF3)、ハ
ロ(C-C)アルコキシ(例、-OCF)、C-Cアルキルチオ、アリールチ
オ、アミノ、アミノ(C-C)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル
、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンア
ミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソ
シアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニル、-SOH、
スルフィノ、-OSOアルキル、およびオキソ(=O)から独立して選択され
る1以上の置換基で置換されていることを意味する。基が「任意で置換された」と記載さ
れている場合はいつでも、その基を、上記の置換基で置換することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、置換アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は、ハロ、
-CN、SO 、-SOH、-SR、-OR、-NR、オキソ、-CON
、-SONR、-COOH、および-COORからなる群から選択さ
れる1つ以上の置換基で置換され、R、R、およびRが、各々独立して、H、アル
キル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリ
ール、および置換アリールから選択される。
【0075】
本明細書に記載の化合物は、いくつかのメソメリー形態として表すことができる。単一
の構造が描かれている場合、関連するメソメリー形式のいずれかが、意図される。本明細
書に記載のクマリン化合物は、単一の構造によって表されるが、関連するメソメリー形態
のいずれかとして等しく示すことができる。式(I)についての例示的なメソメリー構造
を以下に示す:
【化12】
【0076】
本明細書に記載の化合物の単一のメソメリー形態が示される各例において、代替のメソ
メリー形態が、等しく企図される。
【0077】
当業者によって理解されるように、本明細書に記載の化合物は、イオン化された形態、
例えば、-CO-または-SO-で存在し得る。化合物が正または負に帯電した置換
基、例えばSO を含む場合、それはまた、化合物が全体として中性であるように、負
または正に帯電した対イオンを含み得る。他の態様では、化合物は、対イオンが共役酸ま
たは塩基によって提供される塩の形態で存在し得る。
【0078】
特定のラジカル命名規則は、文脈に応じて、モノラジカルまたはジラジカルのいずれか
を含むことができることを理解されたい。例えば、置換基が分子の残りの部分への2つの
結合点を必要とする場合、置換基はジラジカルであることが理解される。例えば、2つの
結合点を必要とするアルキルとして識別される置換基には、-CH-、-CHCH
-、-CHCH(CH)CH-等のジラジカルが含まれる。他のラジカル命名規則
は、ラジカルが「アルキレン」や「アルケニレン」等のジラジカルであることを明確に示
す。
【0079】
2つの「隣接する(adjacent)」R基が「それらが結合している原子と一緒に
」環を形成すると言われるとき、それは原子の集合単位、介在結合、および2つのR基が
、記載された環であることを意味する。例えば、以下のサブ構造が存在し:
【化13】
かつRおよびRが水素およびアルキルからなる群から選択されるものとして定義され
るか、またはRおよびRがそれらが結合している原子とともにアリールまたはカルボ
シクリルを形成するものとして定義される場合、RおよびRは、水素またはアルキル
から選択され得るか、あるいは、当該サブ構造は、以下の構造を有し:
【化14】

式中、Aは、描かれた二重結合を含むアリール環またはカルボシクリルである。
【0080】
(標識化ヌクレオチド)
本開示の一態様によれば、基質部分への結合に適した色素化合物、とりわけ基質部分へ
の結合を可能にするリンカー基を含む色素化合物が提供される。基質部分は、本開示の色
素をコンジュゲートさせることができる事実上任意の分子または物質であり得、非限定的
な例としては、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、リガンド、
粒子、固体表面、有機および無機ポリマー、染色体、核、生細胞、およびそれらの組合わ
せまたは集合が挙げられ得る。色素は、疎水性引力、イオン性引力、共有結合等のさまざ
まな手段により、オプションのリンカーによってコンジュゲートさせることができる。い
くつかの態様では、色素は、共有結合によって基質にコンジュゲートされる。より具体的
には、共有結合はリンカー基によるものである。場合によっては、そのような標識化ヌク
レオチドは「修飾ヌクレオチド」とも呼ばれる。
【0081】
本開示はさらに、本明細書に記載の1以上の色素、例えば、式(I)または(I-A)
の色素化合物、で標識されたヌクレオシドおよびヌクレオチドのコンジュゲート(修飾ヌ
クレオチド)を提供する。標識化ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、非限定的な例とし
て、PCR増幅、等温増幅、固相増幅、ポリヌクレオチドシーケンシング(例、固相シー
ケンシング)、ニック翻訳反応等といった、酵素合成により形成されたポリヌクレオチド
を標識するために有用である。
【0082】
生体分子への結合は、式(I)の化合物のR、R、R、R、R、R、R
しくはX位置または式(I-A)の化合物のR位置を介してもよい。いくつかの態様で
は、接続は、式(I)のR、RまたはRグループを介する。いくつかの実施形態で
は、置換基は、カルボキシルまたは置換アルキル、例えば、-COHで置換されたアル
キル、またはカルボキシル基の活性化形態、例えば、生体分子のアミノまたはヒドロキシ
ル基への結合に使用され得るアミドまたはエステルである。本明細書で使用される用語「
活性化エステル」は、穏やかな条件下で、例えば、アミノ基を含む化合物と反応すること
が可能なカルボキシル基誘導体を指す。活性化エステルの非限定的な例としては、p-ニ
トロフェニル、ペンタフルオロフェニルおよびスクシンイミドエステルが挙げられるが、
これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態では、色素化合物は、ヌクレオチド塩基を介してオリゴヌクレオチ
ドまたはヌクレオチドに共有結合され得る。例えば、標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌ
クレオチドは、リンカー部分を介して、ピリミジン塩基のC5位置または7-デアザプリ
ン塩基のC7位置に結合された標識を有し得る。標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレ
オチドはまた、ヌクレオチドのリボースまたはデオキシリボース糖に共有結合した3’-
OHブロッキング基を有し得る。
【0084】
本明細書に記載されるような新規な蛍光色素の特定の有用な用途は、生体分子、例えば
、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを標識することである。本出願のいくつかの実
施形態は、本明細書に記載されるような新規な蛍光化合物で標識化ヌクレオチドまたはオ
リゴヌクレオチドに関する。
【0085】
(リンカー)
本明細書に開示される色素化合物は、基質または別の分子への化合物の共有結合のため
の置換基位置の1つに反応性リンカー基を含んでもよい。反応性連結基は、結合(例、共
有または非共有結合)、とりわけ共有結合を形成することが可能な部分である。特別な実
施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーであってもよい。用語「切断可能なリンカ
ー」の使用は、リンカー全体が除去される必要があることを意味するものではない。切断
部位は、リンカーの一部が切断後に色素および/または基質部分に結合したままであるこ
とを保証するリンカー上の位置に配置することができる。切断可能なリンカーは、非限定
的な例として、求電子的に切断可能なリンカー、求核的に切断可能なリンカー、光切断可
能なリンカー、還元的条件下(例えば、ジスルフィドまたはアジド含有リンカー)、酸化
的条件下で切断可能であり、安全キャッチリンカーの使用を介して切断可能であり、排除
メカニズムによって切断可能であるものであってもよい。切断可能なリンカーを使用して
色素化合物を基質部分に結合させることにより、必要に応じて、検出後に標識を除去する
ことができるようになり、下流ステップでの干渉シグナルを回避することができる。
【0086】
有用なリンカー基は、PCT公開番号国際公開第2004/018493号(参照によ
り本明細書に組み込まれる)に見出され得、その例としては、遷移金属および少なくとも
部分的に水溶性の配位子から形成された水溶性ホスフィンまたは水溶性遷移金属触媒を使
用して切断され得るリンカーが挙げられる。水溶液中で、後者は少なくとも部分的に水溶
性の遷移金属錯体を形成する。そのような切断可能なリンカーを使用して、ヌクレオチド
の塩基を、本明細書に記載の色素といった標識に接続することができる。
【0087】
特別なリンカーとしては、以下の式の部分を含むものといった、PCT公開番号国際公
開2004/018493号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものが
含まれる:
【化15】
(式中、Xは、O、S、NHおよびNQを含む基から選択され、Qは、C1-10置換ま
たは非置換アルキル基であり、Yは、O、S、NHおよびN(アリル)を含む群から選択
され、Tは、水素またはC-C10置換または非置換アルキル基であり、かつ*は、部
分がヌクレオチドまたはヌクレオシドの残りの部分に接続されている場所を示す)。いく
つかの態様では、リンカーは、ヌクレオチドの塩基を、例えば、本明細書に記載の色素化
合物といった、標識に接続する。
【0088】
リンカーの追加の例としては、以下の式の部分を含むものといった、米国公開番号20
16/0040225および2019/0017111(参照により本明細書に組み込ま
れる)に開示されるものが含まれる:
【化16】
本明細書に示されるリンカー部分は、ヌクレオチド/ヌクレオシドと標識との間のリンカ
ー構造全体または部分を含んでもよい。
【0089】
特別な実施形態では、蛍光色素(フルオロフォア)とグアニン塩基との間のリンカーの
長さは、例えば、ポリエチレングリコールスペーサー基を導入することによって変更する
ことができ、それにより、グアニン塩基と当該分野で公知の他のリンケージを介して結合
した同じフルオロフォアと比較して蛍光強度を増加させる。例示的なリンカーおよびそれ
らの特性は、PCT公開番号国際公開第2007020457号(参照により本明細書に
組み込まれる)に示される。リンカーの設計、特にそれらの長さの増加により、DNA等
のポリヌクレオチドに組み込まれたときにグアノシンヌクレオチドのグアニン塩基に結合
したフルオロフォアの輝度を向上させることができる。したがって、色素がグアニン含有
ヌクレオチドに結合した蛍光色素標識の検出を必要とする分析方法で使用する場合、リン
カーが、国際公開第2007/020457号に記載されているように式-((CH
O)-のスペーサー基であって、式中nが2と50との間の整数であるものを含むと
、有利である。
【0090】
ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、糖または核酸塩基上の部位で標識され得る。当該
分野で公知のように、「ヌクレオチド」は、窒素塩基、糖、および1以上のリン酸基から
なる。RNAでは、糖は、リボースであり、DNAでは、デオキシリボース、すなわちリ
ボースに存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素塩基は、プリンまたはピリミジン
の誘導体である。プリンは、アデニン(A)およびグアニン(G)であり、ピリミジンは
、シトシン(C)およびチミン(T)、またはRNAの文脈では、ウラシル(U)である
。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合す
る。ヌクレオチドは、ヌクレオシドのリン酸エステルでもあり、糖のC-3またはC-5
に結合したヒドロキシル基でエステル化が起こる。ヌクレオチドは通常、一、二、または
三リン酸である。
【0091】
「ヌクレオシド」は構造的にヌクレオチドに類似するが、リン酸部分が欠落している。
ヌクレオシド類似体の例は、標識が塩基に連結し、糖分子に結合したリン酸基が存在しな
いものであったであろう。
【0092】
塩基は通常プリンまたはピリミジンと呼ばれるが、当業者は、ヌクレオチドまたはヌク
レオシドがWatson-Crick塩基対形成を受ける能力を変化させない誘導体およ
び類似体が利用可能であることを理解するであろう。「誘導体」または「類似体」は、コ
ア構造が親化合物と同じであるか、またはそれに非常に類似しているが、例えば、異なる
または追加の側鎖といった、誘導体ヌクレオチドまたはヌクレオシドを別の分子に結合さ
せることを可能にする、化学的または物理的修飾を有する化合物または分子を意味する。
例えば、塩基は、デアザプリンであってもよい。特別な実施形態では、誘導体は、Wat
son-Crickペアリングを受けることが可能であるべきである。「誘導体」および
「類似体」はまた、例えば、修飾された塩基部分および/または修飾された糖部分を有す
る合成ヌクレオチドまたはヌクレオシド誘導体を含む。そのような誘導体および類似体は
、例えば、Scheit,Nucleotide analogs(John Wile
y&Son,1980)およびUhlman et al.,Chemical Rev
iews 90:543-584,1990で考察されている。ヌクレオチド類似体はま
た、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、ホスホラニリ
デート、ホスホルアミデート結合等を含む修飾ホスホジエステル結合を含み得る。
【0093】
色素は、例えばリンカーを介して、ヌクレオチド塩基上の任意の位置に結合させること
ができる。特別な実施形態では、Watson-Crick塩基対形成は、得られた類似
体に対して依然として実施することができる。特定の核酸塩基標識部位としては、ピリミ
ジン塩基のC5位置または7-デアザプリン塩基のC7位置が挙げられる。上記のように
、リンカー基を使用して、色素をヌクレオシドまたはヌクレオチドに共有結合させ得る。
【0094】
特別な実施形態では、標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、酵素的に組み込
まれ、酵素的に伸長可能であり得る。したがって、リンカー部分は、化合物が核酸複製酵
素によるヌクレオチドの全体的な結合および認識を著しく妨害しないように、ヌクレオチ
ドを化合物に接続するのに十分な長さであり得る。したがって、リンカーはスペーサーユ
ニットを含むこともできる。スペーサーは、例えば、切断部位または標識からヌクレオチ
ド塩基を離す。
【0095】
本明細書に記載の色素で標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、以下の式を有
してもよい:
【化17】

式中、Dyeは、色素化合物であり;Bは、例えば、ウラシル、チミン、シトシン、アデ
ニン、グアニンといった、核酸塩基であり;Lは、存在しても存在しなくてもよい任意の
リンカー基であり;R’は、H、一リン酸、二リン酸、三リン酸、チオリン酸、リン酸エ
ステル類似体、反応性リン含有基に結合した-O-、またはブロッキング基によって保護
された-O-であり得;R’’は、H、OH、ホスホルアミダイト、または3’-OHブ
ロッキング基であり、R’’’は、HまたはOHである。R’’がホスホルアミダイトで
ある場合、R’は、酸で切断可能なヒドロキシル保護基であり、自動合成条件下でのその
後のモノマーカップリングを可能にする。
【0096】
特別な実施形態では、ブロッキング基は、色素化合物とは別個であり、独立しており、
すなわち、それに結合していない。あるいは、色素は、3’-OHブロッキング基の全部
または一部を含み得る。したがって、R’’は、色素化合物を含んでもよく含まなくても
よい3’-OHブロッキング基であり得る。
【0097】
さらに別の代替の実施形態では、ペントース糖の3’炭素上にブロッキング基はなく、
例えば、塩基に結合した色素(または色素およびリンカー構築物)は、さらなるヌクレオ
チドの取り込みに対するブロックとして作用するのに十分なサイズまたは構造であり得る
。したがって、ブロックは、色素が糖の3’位置に結合しているかどうかに関係なく、立
体障害が原因である場合もあり得、サイズ、電荷、および構造の組み合わせが原因である
場合もあり得る。
【0098】
さらに別の代替の実施形態では、ブロッキング基は、ペントース糖の2’または4’炭
素上に存在し、さらなるヌクレオチドの取り込みに対するブロックとして作用するのに十
分なサイズまたは構造であり得る。
【0099】
ブロッキング基を使用すると、修飾ヌクレオチドが組み込まれたときに伸長を停止する
といったことにより、重合を制御することが可能になる。ブロッキング効果が可逆的であ
る場合、例えば、化学的条件の変更または化学的ブロックの除去による非限定的な例とし
て、伸長を特定の時点で停止し、その後継続させることができる。
【0100】
別の特別な実施形態では、3’-OHブロッキング基は、参照により本明細書に組み込
まれる、国際公開第2004/018497号および国際公開第2014/139569
号に開示された部分を含むであろう。例えば、ブロッキング基は、アジドメチル(-CH
)または置換アジドメチル(例、-CH(CHF)NまたはCH(CHF)
)、またはアリルであり得る。
【0101】
特別な実施形態では、リンカー(色素とヌクレオチドの間)およびブロッキング基は両
方とも存在し、かつ別個の部分である。特別な実施形態では、リンカーおよびブロッキン
グ基は両方とも、実質的に同様の条件下で切断可能である。したがって、色素化合物とブ
ロッキング基の両方を除去するために必要な処理は1回だけであるため、脱保護および非
ブロック化プロセスはより効率的であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、
リンカーおよびブロッキング基は、同様の条件下で切断可能である必要はなく、代わりに
、別個の条件下で個別に切断可能である。
【0102】
本開示はまた、色素化合物を組み込んだポリヌクレオチドを包含する。そのようなポリ
ヌクレオチドは、ホスホジエステル結合で結合されたデオキシリボヌクレオチドまたはリ
ボヌクレオチドから各々構成されるDNAまたはRNAであってもよい。ポリヌクレオチ
ドは、天然に存在するヌクレオチド、本明細書に記載の標識化ヌクレオチド以外の非天然
に存在する(または修飾)ヌクレオチド、またはそれらの任意の組み合わせを、本明細書
に記載の少なくとも1つの修飾ヌクレオチド(例えば、色素化合物で標識)と組み合わせ
て含んでもよい。本開示によるポリヌクレオチドはまた、非天然骨格結合および/または
非ヌクレオチド化学修飾を含んでもよい。リボヌクレオチドおよび少なくとも1つの標識
化ヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチドの混合物からなるキメラ構造もまた企図
される。
【0103】
本明細書に記載される非限定的な例示的な標識化ヌクレオチドとしては、以下が挙げら
れる:
【化18】
式中、Lは、リンカーを表し、Rは、上記の糖残基を表す。
【0104】
いくつかの実施形態では、非限定的な例示的な蛍光色素コンジュゲートは、下記に示さ
れる:
【化19】
【0105】
(キット)
本開示はまた、修飾ヌクレオシドおよび/または色素で標識されたヌクレオチドを含む
キットを提供する。そのようなキットは、概して、少なくとも1つのさらなる成分と共に
、本明細書に記載の色素で標識された少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオ
シドを含むであろう。さらなる構成要素は、本明細書に記載の方法または以下の実施例の
セクションに記載の方法で特定される1以上の構成要素であってもよい。本開示のキット
に組み合わせることができる構成要素のいくつかの非限定的な例を以下に記載する。
【0106】
特別な実施形態では、キットは、修飾または非修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドと
ともに、本明細書に記載の色素で標識された少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌ
クレオシドを含むことができる。例えば、本開示による色素で標識された修飾ヌクレオチ
ドは、非標識または天然ヌクレオチドと組み合わせて、および/または蛍光標識化ヌクレ
オチドまたはそれらの任意の組合せと組み合わせて供給され得る。したがって、キットは
、本開示に従って色素で標識された修飾ヌクレオチド、および他の、例えば、先行技術の
色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドの組合せは、別
個の個々の成分(例、容器またはチューブごとに1つのヌクレオチドタイプ)として、ま
たはヌクレオチド混合物(例、同じ容器またはチューブ内で混合された2つ以上のヌクレ
オチド)として提供され得る。
【0107】
キットが、色素化合物で標識された複数、とりわけ2つ、または3つ、またはより特別
には4つの修飾ヌクレオチドを含む場合、異なるヌクレオチドは、異なる色素化合物で標
識されてもよく、あるいは1つは、色素化合物なしの、暗黒であってもよい。異なるヌク
レオチドが異なる色素化合物で標識されている場合、色素化合物がスペクトル的に区別可
能な蛍光色素であることがキットの特徴である。本明細書で使用される場合、用語「スペ
クトル的に区別可能な蛍光色素」は、2つ以上のそのような色素が1つのサンプルに存在
する場合に、蛍光検出装置(例えば、市販のキャピラリーベースのDNAシーケンシング
プラットフォーム)によって識別できる波長で蛍光エネルギーを放出する蛍光色素を指す
。蛍光色素化合物で標識された2つの修飾ヌクレオチドがキットの形で提供される場合、
スペクトル的に区別可能な蛍光色素が、例えば同じレーザーによって、同じ波長で励起さ
れ得ることが、いくつかの実施形態の特徴である。蛍光色素化合物で標識された4つの修
飾ヌクレオチドがキットの形で提供される場合、スペクトル的に区別可能な蛍光色素の2
つが両方ともある波長で励起され、他の2つのスペクトル的に区別可能な色素が両方とも
別の波長で励起されることが、いくつかの実施形態の特徴である。特定の励起波長は、4
88nmおよび532nmである。
【0108】
一実施形態では、キットは、本開示の化合物で標識された修飾ヌクレオチドおよび第2
の色素で標識された第2の修飾ヌクレオチドを含むものであって、色素が、少なくとも1
0nm、特に20nmから50nmの極大吸光度の差を有する。より具体的には、2つの
色素化合物は、15~40nmのストークスシフトを有し、「ストークスシフト」は、ピ
ーク吸収波長とピーク発光波長との間の距離である。
【0109】
さらなる実施形態では、キットは、蛍光色素で標識された2つの他の修飾ヌクレオチド
をさらに含むことができ、色素が、532nmで同じレーザーによって励起される。色素
は、少なくとも10nm、とりわけ20nm~50nmの極大吸光度の差を有し得る。よ
り特別には、2つの色素化合物は、20~40nmの間のストークスシフトを有し得る。
本開示の色素とスペクトル的に区別可能であり、上記の基準を満たす特定の色素は、米国
特許第5,268,486号(例えば、Cy3)もしくは国際公開第0226891号(
Alexa 532;Molecular Probes A20106)に記載される
ようなポリメチン類似体、または米国特許第6,924,372号に開示される非対称ポ
リメチンであり、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。代替色素として
は、ローダミン類似体、例えば、テトラメチルローダミンおよびその類似体が挙げられる
【0110】
代替の実施形態では、本開示のキットは、同じ塩基が2つの異なる化合物で標識されて
いるヌクレオチドを含んでもよい。第1のヌクレオチドは、本開示の化合物で標識しても
よい。第2のヌクレオチドは、スペクトル的に異なる化合物、例えば600nm未満で吸
収する「緑」の色素で標識してもよい。第3のヌクレオチドは、本開示の化合物とスペク
トル的に異なる化合物との混合物として標識してもよく、第4のヌクレオチドは、「暗」
であり標識を含まなくてもよい。したがって、簡単に言えば、ヌクレオチド1-4は、「
青」、「緑」、「青/緑」、および暗と標識してもよい。機器をさらに簡素化するために
、4つのヌクレオチドを単一のレーザーで励起された2つの色素で標識することができ、
したがって、ヌクレオチド1-4の標識は、「青1」、「青2」、「青1/青2」、およ
び暗であってもよい。
【0111】
ヌクレオチドは、本開示の2つの色素を含んでもよい。キットは、本開示の色素で標識
された2つ以上のヌクレオチドを含んでもよい。キットは、520nm~560nmの領
域で吸収する色素でヌクレオチドが標識されている別のヌクレオチドを含んでもよい。キ
ットは、非標識化ヌクレオチドをさらに含んでもよい。
【0112】
キットは、異なる色素化合物で標識された異なるヌクレオチドを有する構成に関して本
明細書で例示されるが、キットは、同じ色素化合物を有する2、3、4またはそれ以上の
異なるヌクレオチドを含み得ることが理解されるであろう。
【0113】
特別な実施形態では、キットは、修飾ヌクレオチドのポリヌクレオチドへの取込みを触
媒することができるポリメラーゼ酵素を含んでもよい。そのようなキットに含まれる他の
構成要素としては、緩衝液等が挙げられ得る。本開示に従って色素で標識された修飾ヌク
レオチド、および異なるヌクレオチドの混合物を含む他の任意のヌクレオチド成分は、使
用前に希釈される濃縮形態でキットに提供されてもよい。そのような実施形態では、適切
な希釈緩衝液も含まれてもよい。この場合も、本明細書に記載の方法で特定された1以上
の構成要素を、本開示のキットに含めてもよい。
【0114】
(シーケンシングの方法)
本開示による色素化合物を含む修飾ヌクレオチド(またはヌクレオシド)は、それ自体
で、またはより大きな分子構造またはコンジュゲートに組み込まれているかもしくは関連
しているかにかかわらず、ヌクレオチドまたはヌクレオシドに結合した蛍光標識の検出を
含む方法等の任意の分析方法で使用してもよい。この文脈において、用語「ポリヌクレオ
チドに組み込まれる」は、5’リン酸がホスホジエステル結合で第2の(修飾または非修
飾)ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基に結合し、それ自体がより長いポリヌクレオチド
鎖の一部を形成し得ることを意味し得る。本明細書に記載の修飾ヌクレオチドの3’末端
は、ホスホジエステル結合において、さらなる(修飾または非修飾)ヌクレオチドの5’
リン酸に結合されていてもされなくてもよい。したがって、1つの非限定的な実施形態で
は、本開示は、ポリヌクレオチド中に組み込まれた修飾ヌクレオチドを検出する方法を提
供し、以下を含む:(a)本開示の少なくとも1つの修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチ
ド中に組み込むこと、および(b)前記修飾ヌクレオチドに結合した色素化合物からの蛍
光シグナルを検出することによってポリヌクレオチドに組み込まれた修飾ヌクレオチドを
検出すること。
【0115】
この方法は、以下を含み得る:本開示による1つ以上の修飾ヌクレオチドが、ポリヌク
レオチドに組み込まれる、合成ステップ(a)および、ポリヌクレオチドに組み込まれる
1つ以上の修飾ヌクレオチドが、それらの蛍光を検出または定量的に測定することによっ
て検出される、検出ステップ(b)。
【0116】
本出願のいくつかの実施形態は、以下を含むシーケンシングの方法に向けられる:(a
)本明細書に記載の少なくとも1つの標識化ヌクレオチドをポリヌクレオチドに組み込こ
と、および(b)前記修飾ヌクレオチドに結合した新規な蛍光色素からの蛍光シグナルを
検出することによってポリヌクレオチドに組み込まれた標識化ヌクレオチドを検出するこ
と。
【0117】
一実施形態では、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが、ポリメラーゼ酵素の作用によ
って合成段階でポリヌクレオチドに組み込まれる。しかしながら、例えば、化学的オリゴ
ヌクレオチド合成または標識オリゴヌクレオチドの非標識オリゴヌクレオチドへのライゲ
ーション等の、修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチドに結合する他の方法を使用すること
ができる。したがって、用語「組み込んでいる(incorporating)」は、ヌ
クレオチドおよびポリヌクレオチドに関して使用される場合、化学的方法ならびに酵素的
方法によるポリヌクレオチド合成を包含することができる。
【0118】
特異的な実施形態では、合成ステップは、実行され、また、テンプレートポリヌクレオ
チド鎖を、本開示の蛍光標識された修飾ヌクレオチドを含む反応混合物とインキュベート
することを任意で含み得る。テンプレートポリヌクレオチド鎖にアニールされたポリヌク
レオチド鎖上の遊離の3’ヒドロキシル基と修飾ヌクレオチド上の5’リン酸基との間の
ホスホジエステル結合の形成を可能にする条件下で、ポリメラーゼを提供することもでき
る。したがって、合成ステップは、テンプレート鎖へのヌクレオチドの相補的塩基対形成
によって指示されるようなポリヌクレオチド鎖の形成を含み得る。
【0119】
方法のすべての実施形態では、検出ステップは、標識化ヌクレオチドが組み込まれるポ
リヌクレオチド鎖がテンプレート鎖にアニールされている間、または2つの鎖が分離され
る変性ステップの後に実行されてもよい。さらなるステップ、例えば、化学的または酵素
的反応ステップまたは精製ステップが、合成ステップと検出ステップとの間に含まれても
よい。とりわけ、標識化ヌクレオチドを組み込んでいる標的鎖は、単離または精製され、
次いでさらに処理されるか、またはその後の分析で使用されてもよい。例として、合成工
程において本明細書に記載されるように修飾ヌクレオチドで標識された標的ポリヌクレオ
チドは、引き続き、標識されたプローブまたはプライマーとして使用されてもよい。他の
実施形態では、本明細書に記載の合成ステップの生成物は、さらなる反応ステップの対象
となってもよく、そして必要に応じて、これらの後続のステップの生成物は、精製または
単離されてもよい。
【0120】
合成ステップに適した条件は、標準的な分子生物学の手法に精通した者には周知である
。一実施形態では、合成ステップは、適切なポリメラーゼ酵素の存在下でテンプレート鎖
に相補的な伸長標的鎖を形成するために、本明細書に記載の修飾ヌクレオチドを含むヌク
レオチド前駆体を使用する標準的なプライマー伸長反応に類似してもよい。他の実施形態
では、合成ステップ自体が増幅反応の一部を形成し、標的およびテンプレートポリヌクレ
オチド鎖のコピーに由来するアニールされた相補鎖からなる標識された二本鎖増幅産物を
生成してもよい。他の例示的な合成ステップとしては、ニックトランスレーション、鎖置
換重合、ランダムプライミングDNA標識等が挙げられる。合成ステップに特に有用なポ
リメラーゼ酵素は、本明細書に記載の修飾ヌクレオチドの取り込みを触媒することができ
るものである。種々の天然または修飾されたポリメラーゼを使用することができる。例と
して、熱安定性ポリメラーゼは、熱サイクル条件を使用して実施される合成反応に使用す
ることができるが、熱安定性ポリメラーゼは、等温プライマー伸長反応には望ましくはな
り得ない。本開示に従って修飾ヌクレオチドを組み込むことができる適切な熱安定性ポリ
メラーゼとしては、国際公開第2005/024010号または国際公開第061204
33号に記載されているものが挙げられ、これらの各々は、参照により本明細書に組み込
まれる。37℃といった低温で行われる合成反応では、ポリメラーゼ酵素は必ずしも熱安
定性ポリメラーゼである必要はなく、それゆえ、ポリメラーゼの選択は、反応温度、pH
、鎖置換活性等の多くの要因に依存するであろう。
【0121】
特定の非限定的な実施形態では、本開示は、核酸シーケンシング、再シーケンシング、
全ゲノムシーケンシング、一塩基多型スコアリング、ポリヌクレオチド中に組み込まれる
場合に本明細書に記載の色素で標識された修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドの検出を
含む他の任意の用途の方法を包含する。蛍光色素を含む修飾ヌクレオチドで標識されたポ
リヌクレオチドの使用に利益をもたらす他の種々の用途のいずれも、本明細書に記載の色
素を有する修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを使用することができる。
【0122】
特別な実施形態では、本開示は、合成によるポリヌクレオチドシーケンシング反応にお
ける本開示による色素化合物を含む修飾ヌクレオチドの使用を提供する。合成によるシー
ケンシングは、一般に、ポリメラーゼまたはリガーゼを使用して、5’から3’方向に成
長するポリヌクレオチド鎖に1以上のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを順次付加
して、テンプレート核酸に相補的な伸長ポリヌクレオチド鎖を形成してシーケンシングす
ることを含む。追加されたヌクレオチドの1つまたは複数に存在する塩基の同一性は、検
出または「イメージング」ステップにて決定することができる。追加された塩基の同一性
は、各ヌクレオチド取り込みステップの後に決定してもよい。次いで、テンプレートの配
列は、従来のWatson-Crick塩基対規則を使用して推測してもよい。一塩基の
同一性を決定するために本明細書に記載の色素で標識された修飾ヌクレオチドの使用は、
例えば、一塩基多型のスコアリングにおいて有用であってもよく、そのような一塩基伸長
反応は、本開示の範囲内である。
【0123】
本開示の一実施形態では、
テンプレートポリヌクレオチドの配列は、組み込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識
の検出を通じてシーケンシングされるテンプレートポリヌクレオチドに相補的な新生鎖へ
の1以上のヌクレオチドの取込みを検出することにより決定される。テンプレートポリヌ
クレオチドのシーケンシングは、適切なプライマーでプライミングすることができ(また
はヘアピンの一部としてプライマーを含むヘアピンコンストラクトとして調製することが
でき)、
発生期の鎖は、ポリメラーゼ触媒反応においてプライマーの3’末端にヌクレオチドを付
加することによって段階的に伸長される。
【0124】
特別な実施形態では、異なるヌクレオチド三リン酸(A、T、GおよびC)の各々は、
固有のフルオロフォアで標識されてもよく、そしてまた、制御されない重合を防ぐために
3’位置にブロッキング基を含む。あるいは、4つのヌクレオチドの1つが非標識(暗)
であってもよい。ポリメラーゼ酵素は、テンプレートポリヌクレオチドに相補的な新生鎖
にヌクレオチドを組み込み、ブロッキング基はヌクレオチドのさらなる取込みを防ぐ。組
み込まれなかったヌクレオチドは洗い流すことができ、組み込まれた各ヌクレオチドから
の蛍光シグナルは、レーザー励起および適切な発光フィルターを使用する電荷結合素子等
といった、適切な手段によって光学的に「読み取る」ことができる。次いで、3’-ブロ
ッキング基および蛍光色素化合物を除去(脱保護)して(同時にまたは順次)、ヌクレオ
チドをさらに組み込むために新生鎖を露出させることができる。典型的には、組み込まれ
たヌクレオチドの同一性は、各組み込みステップの後に決定されるが、これは厳密には必
須ではない。同様に、米国特許第5,302,509号(参照により本明細書に組み込ま
れる)は、固体支持体上に固定化されたポリヌクレオチドをシーケンシングする方法を開
示する。
【0125】
上に例示したように、この方法は、DNAポリメラーゼの存在下で、固定化されたポリ
ヌクレオチドに相補的な成長鎖への蛍光標識された3’ブロックヌクレオチドA、G、C
、およびTの組み込みを利用する。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドに相補的な塩
基を組み込むが、3’ブロッキング基によってそれ以上の付加が妨げられる。次いで、組
み込まれたヌクレオチドの標識を決定し、化学的切断によってブロッキング基を除去して
、さらなる重合を起こさせることができる。合成によるシーケンシング反応においてシー
ケンシングされる核酸テンプレートは、シーケンシングすることが望まれる任意のポリヌ
クレオチドであってもよい。シーケンシング反応のための核酸テンプレートは、典型的に
は、シーケンシング反応においてさらなるヌクレオチドを付加するためのプライマーまた
は開始点として機能する遊離の3’ヒドロキシル基を有する二本鎖領域を含むであろう。
シーケンシングされるテンプレートの領域は、相補鎖上のこの遊離の3’ヒドロキシル基
を突出するであろう。シーケンシングされるテンプレートの突出領域は一本鎖であっても
よいが、シーケンシングされるテンプレート鎖に相補的な鎖に「ニックが存在する」こと
を条件として、二本鎖であり、シーケンシング反応の開始のための遊離の3’OH基を提
供する。そのような実施形態では、シーケンシングは、鎖置換によって進行し得る。特別
な実施形態では、遊離の3’ヒドロキシル基を有するプライマーは、シーケンシングされ
るテンプレートの一本鎖領域にハイブリダイズする別個の成分(例、短いオリゴヌクレオ
チド)として添加されてもよい。あるいは、シーケンシングされるプライマーおよびテン
プレート鎖は各々、例えばヘアピンループ構造等の分子内二重鎖を形成することが可能な
部分的に自己相補的な核酸鎖の一部を形成してもよい。ヘアピンポリヌクレオチドおよび
それらを固体支持体に結合させ得る方法は、PCT公開番号国際公開第0157248号
および国際公開第2005/047301号に開示されており、これらの各々は、参照に
より本明細書に組み込まれる。ヌクレオチドは、成長するプライマーに連続的に添加する
ことができ、その結果、5’から3’方向にポリヌクレオチド鎖が合成される。追加され
た塩基の性質は、とりわけ、必ずしもではないが、各ヌクレオチド追加後に決定され得、
したがって、核酸テンプレートの配列情報を提供する。したがって、ヌクレオチドは、ヌ
クレオチドの5’リン酸基とのホスホジエステル結合の形成を介して、ヌクレオチドを核
酸鎖の遊離3’ヒドロキシル基に結合することによって、核酸鎖(またはポリヌクレオチ
ド)に組み込まれる。
【0126】
シーケンシングされる核酸テンプレートは、DNAまたはRNA、あるいはデオキシヌ
クレオチドおよびリボヌクレオチドからなるハイブリッド分子でさえあってもよい。核酸
テンプレートは、これらがシーケンシング反応におけるテンプレートのコピーを妨げない
という条件で、天然に存在するおよび/または天然に存在しないヌクレオチドおよび天然
または非天然の骨格結合を含んでもよい。
【0127】
特別な実施形態では、シーケンシングされる核酸テンプレートは、当該分野で公知の任
意の適切な結合方法を介して、例えば共有結合を介して、固体支持体に結合されてもよい
。特別な実施形態では、テンプレートポリヌクレオチドは、固体支持体(例、シリカベー
スの支持体)に直接結合されてもよい。しかしながら、本開示の他の実施形態では、固体
支持体の表面は、テンプレートポリヌクレオチドの直接共有結合を可能にするか、または
それ自体が固体支持体と非共有結合し得るヒドロゲルまたは高分子電解質多層を介してテ
ンプレートポリヌクレオチドを固定化するように何らかの方法で改変され得る。
【0128】
ポリヌクレオチドがシリカベースの支持体に直接結合しているアレイは、例えば、国際
公開第00006770号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているアレ
イであり、ポリヌクレオチドは、ガラス上のペンダントエポキシド基と内部アミノ基との
間の反応によってガラス支持体上に固定化される。ポリヌクレオチドについて。さらに、
ポリヌクレオチドは、例えば、国際公開第2005/047301号(参照により本明細
書に組み込まれる)に記載されるように、硫黄ベースの求核試薬と固体支持体との反応に
よって固体支持体に結合させることができる。固体支持テンプレートポリヌクレオチドの
一層さらなる別の例は、例えば、国際公開第00/31148号、国際公開第01/01
143号、国際公開第02/12566号、国際公開第03/014392号、米国特許
第6,465,178号および国際公開第00/53812号(これらの各々は、参照に
より本明細書に組み込まれる)に記載されているように、テンプレートポリヌクレオチド
がシリカベースまたは他の固体支持体上に支持されたヒドロゲルに結合している場合であ
る。
【0129】
テンプレートポリヌクレオチドを固定化することができる特定の表面は、ポリアクリル
アミドヒドロゲルである。ポリアクリルアミドヒドロゲルは、上記で引用された参考文献
および参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2005/065814号に記載さ
れている。使用し得る特定のヒドロゲルとしては、国際公開第2005/065814号
および米国公開番号第2014/0079923号に記載のものが挙げられる。一実施形
態では、ヒドロゲルは、PAZAM(ポリ(N-(5-アジドアセタミジルペンチル)ア
クリルアミド-コ-アクリルアミド))である。
【0130】
DNAテンプレート分子は、例えば、米国特許第5,419,096号に記載されてい
るように、ビーズまたは微粒子に結合させることができる。米国特許第6,172,21
8号(参照により本明細書に組み込まれる)。ビーズまたは微粒子への結合は、シーケン
ス用途に有用であり得る。ビーズライブラリーは、各ビーズに異なるDNA配列が含まれ
ている場合に調製することができる。それらを作成するための例示的なライブラリーおよ
び方法は、Nature,437,376-380(2005);Science,30
9,5741,1728-1732(2005)に記載され、これらの各々は参照により
本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のヌクレオチドを使用するそのようなビーズの
アレイのシーケンシングは、本開示の範囲内である。
【0131】
シーケンシングされるテンプレートは、固体支持体上の「アレイ」の一部を形成しても
よく、その場合、アレイは任意の便利な形態をとってもよい。したがって、本開示の方法
は、単一分子アレイ、クラスター化アレイ、およびビーズアレイを含む、すべてのタイプ
の高密度アレイに適用可能である。本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは
、固体支持体への核酸分子の固定化によって形成されたものを含むがこれらに限定されな
い、本質的に任意のタイプのアレイ上のテンプレートをシーケンシングするために使用し
てもよい。
【0132】
しかしながら、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、クラスター化さ
れたアレイのシーケンシングの文脈において特に有利である。クラスター化されたアレイ
では、アレイ上の別個の領域(しばしば部位または特徴と呼ばれる)は、多重のポリヌク
レオチドテンプレート分子を含む。概して、多重のポリヌクレオチド分子は、光学的手段
によって個別に解像可能ではなく、代わりにアンサンブルとして検出される。アレイがど
のように形成されるかに応じて、アレイ上の各部位は、1つの個々のポリヌクレオチド分
子の多重のコピー(例、部位が特定の一本鎖または二本鎖核酸種に対して均質である)、
または少数の異なるポリヌクレオチド分子の多重のコピー(例、2つの異なる核酸種の複
数のコピー)を含んでもよい。核酸分子のクラスター化されたアレイは、当技術分野で一
般に知られている技術を使用して生成してもよい。例として、各々が本明細書に組み込ま
れる国際公開第98/44151号および国際公開第00/18957号には、固定化さ
れた核酸分子のクラスターまたは「コロニー」から構成されるアレイを形成するために、
テンプレートおよび増幅産物の両方が固体支持体上に固定化されたままである核酸の増幅
方法が記載される。これらの方法に従って調製されたクラスター化アレイ上に存在する核
酸分子は、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを使用してシーケンシング
するための適切なテンプレートである。
【0133】
本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドはまた、単一分子アレイ上のテンプ
レートのシーケンシングにおいて有用である。本明細書で使用される用語「単一分子アレ
イ」または「SMA」は、固体支持体上に分布(または配列)されたポリヌクレオチド分
子の集団を指し、集団の他のすべてからの任意の個々のポリヌクレオチドの間隔は、個々
のポリヌクレオチド分子を個別に分離することが可能である。したがって、固体支持体の
表面に固定化された標的核酸分子は、いくつかの実施形態では、光学的手段によって解像
することができる可能性がある。これは、各々が1つのポリヌクレオチドを表す1以上の
別個の信号が、使用される特定のイメージングデバイスの解像可能な領域内で発生するこ
とを意味する。
【0134】
アレイ上の隣接するポリヌクレオチド分子間の間隔が少なくとも100nm、より具体
的には少なくとも250nm、さらにより具体的には少なくとも300nm、さらにより
具体的には少なくとも350nmである単一分子検出を達成し得る。したがって、各分子
は、単一分子の蛍光点として個別に解像および検出可能であり、前記単一分子の蛍光点か
らの蛍光もまた、単一ステップの光退色を示す。
【0135】
用語「個別に解像される」および「個別の解像」は、視覚化されたときに、アレイ上の
1つの分子をその隣接する分子から区別することが可能であることを指定するために本明
細書で使用される。アレイ上の個々の分子間の分離は、部分的には、個々の分子を解像す
るために使用される特定の技術によって決定される。単一分子アレイの一般的な特徴は、
公開された出願国際公開第00/06770号および国際公開第01/57248号を参
照することによって理解され、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。本
開示の修飾ヌクレオチドの1つの使用は、合成によるシーケンシング反応であるが、修飾
ヌクレオチドの有用性は、そのような方法に限定されない。実際、ヌクレオチドは、ポリ
ヌクレオチドに組み込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出を必要とする任意の
シーケンシング方法論において有利に使用し得る。
【0136】
特に、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、自動蛍光シーケンシング
プロトコル、とりわけSangerおよび同僚の連鎖停止シーケンシング法に基づく蛍光
色素ターミネーターサイクルシーケンシングにおいて使用してもよい。このような方法は
、一般に酵素とサイクルシーケンシングを使用して、蛍光標識されたジデオキシヌクレオ
チドをプライマー伸長シーケンシング反応に組み込む。いわゆるSangerシーケンシ
ング法および関連するプロトコル(Sanger型)は、標識されたジデオキシヌクレオ
チドによるランダム化された連鎖停止を利用する。
【0137】
したがって、本開示はまた、3’および2’位置の両方にヒドロキシル基を欠くジデオ
キシヌクレオチドである色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを含み、そのような修
飾ジデオキシヌクレオチドは、Sanger型シーケンシング法等での使用に適している
【0138】
3’ブロッキング基を組み込んだ本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは
、認識されるであろうように、サンガー法および関連するプロトコルにおいても有用であ
る可能性があり、なぜなら修飾ジデオキシヌクレオチドを使用することによって達成され
る同じ効果は、3’-OHブロッキング基を有する修飾ヌクレオチドを使用することによ
って達成され得る:両方とも後続のヌクレオチドの取り込みを防ぐからである。本開示に
よる、かつ3’ブロッキング基を有するヌクレオチドがSanger型シーケンシング法
で使用される場合、ヌクレオチドに結合した色素化合物または検出可能な標識は、切断可
能なリンカーを介して接続される必要がないことが理解されよう、なぜなら、各例におい
て、本開示の標識化ヌクレオチドが組み込まれる場合;その後ヌクレオチドを組み込む必
要がないため、ヌクレオチドから標識を除去する必要がないからである。
【実施例0139】
追加の実施形態は、以下の実施例にさらに詳細に開示されており、これらは、特許請求
の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0140】
〔例1.化合物I-1:7-ビス(2-カルボキシエチル)アミノ-3-(5-クロロ-
ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン〕
【化20】



3-(5-クロロ-ベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.
32g、1mmol)およびビスイミノプロピオン酸(0.32g、2mmol)を無水
DMSO(5mL)に加えた。得られた混合物を室温で数分間撹拌し、DIPEA(0.
52g、4ミリモル)を加えた。得られた混合物を130℃で6時間撹拌した。室温で~
1時間静置した後、淡黄色の反応混合物を水(15mL)で希釈し、一晩撹拌した。得ら
れた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量:0.40g(88%)。生成物の純度、構
造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):
MW計算456.07。実測値m/z:(+)427(M+1)。
【0141】
〔例2.化合物I-2:7-ジエチルアミノ-3-(5-カルボキシ-ベンゾオキサゾー
ル-2-イル)クマリン〕
【化21】

3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0
.33g、1ミリモル)およびジエチルアミン(0.29g、4ミリモル)を無水DMS
O(15mL)に加えた。得られた混合物を室温で数分間撹拌し、DIPEA(0.52
g、4ミリモル)を加えた。反応混合物をコンデンサーで115℃で12時間撹拌した。
ジエチルアミン(0.14g、2ミリモル)およびDIPEA(0.26g、2ミリモル
)の追加部分を加え、115℃で5時間撹拌を続けた。次いで、溶媒の半分の量を真空下
で蒸留除去し、得られた混合物を室温で1時間放置した。得られた混合物を水(15mL
)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引濾過により収集し、水で洗浄した。収
量0.24g(62%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびL
CMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値378.12。実測値m/z:(
+)379(M+1);(-)377(M-1)
【0142】
〔代替合成〕
【化22】

エチル(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)アセテート(0.25g、1
mmol)、ジエチルアミノサリチルアルデヒド(0.19g、1mmol)、ピペリジ
ン(3滴)、および酢酸(3滴)を無水エタノール(EtOH、丸底フラスコに5mL)
。得られた混合物を室温で6時間、次いで60~65℃で12時間撹拌した。得られた沈
殿物を吸引濾過により収集し、水で洗浄した。収量:0.27g(72%)。生成物の純
度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUI
S):MW計算値378.12。実測値m/z:(+)379(M+1);(-)37
7(M-1)
【0143】
〔例3.化合物I-3:7-ジエチルアミノ-3-(5-カルボキシ-ベンズイミダゾー
ル-2-イル)クマリン〕
【化23】

3-(5-カルボキシベンズイミダゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0
.32g、1mmol)およびジエチルアミン(0.29g、4mmol)を、丸底フラ
スコ内の無水ジメチルスルホキシド(DMSO、15mL)に添加した。添加が完了した
後、混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4ミリモル)を加え
た。反応混合物をコンデンサーで115℃で12時間撹拌した。ジエチルアミン(0.1
4g、2ミリモル)およびDIPEA)0.26g、2ミリモル)の追加部分を加え、混
合物を115℃でさらに8時間加熱した。溶媒の半分の量を真空下で蒸留除去した。室温
で1時間静置した後、混合物を水(15mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物
を吸引濾過により収集し、水で洗浄した。収量:0.17g(44%)。生成物の純度、
構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS)
:MW計算377.14。実測値m/z:(+)378(M+1);(-)376(M
-1)
【0144】
〔代替合成〕
【化24】

エチル(5-カルボキシベンズイミダゾール-2-イル)アセテート(0.25g、1
mmol)、ジエチルアミノサリチルアルデヒド(0.19g、1mmol)、ピペリジ
ン(3滴)、および酢酸(3滴)を無水エタノール(EtOH、5mL)丸底フラスコ。
得られた混合物を75℃で一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引濾過により収集し、水で
洗浄した。収量:0.26g(70%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、
NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算377.14。実測
値m/z:(+)378(M+1);(-)376(M-1)
【0145】
〔例4.化合物I-4:7-[N-(3-カルボキシプロピル)-N-メチル]アミノ-
3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン〕
【化25】

3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.30g、1mm
ol)および4-(メチルアミノ)ブタン酸(0.23g、2mmol)を丸底フラスコ
内の無水DMSO(5mL)に加えた。混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA
(0.52g、4ミリモル)を加えた。反応混合物を約120℃で8時間、次いで室温で
約1時間撹拌した。淡黄色の混合物を水(15mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた
沈殿物を吸引濾過により収集した。収量:0.19g(48%)。生成物の純度、構造お
よび組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW
計算456.07。実測値m/z:(+)427(M+1)。
【0146】
〔例5.化合物I-5:7-[N-(3-カルボキシプロピル)-N-(3-スルホプロピル)
アミノ]-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン(トリエチルアンモニウム塩)〕
【化26】


〔ステップ1:7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]-N-(3
-スルホプロピル]}アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン(化合物I
-5tBu)の調製〕
【化27】

3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.3g、1ミリモ
ル)およびt-ブチル4-[N-(3-スルホ)プロピル]-アミノブタノエート(0.
56g、2ミリモル)を丸底フラスコ中の無水DMSO(3mL)に加えた。混合物を室
温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.65g、5ミリモル)をこの混合物に加えた
。反応混合物を~120℃で3時間撹拌した。溶媒の半分の量を真空下で蒸留した。混合
物を室温で1時間放置し、得られた混合物を水(10mL)で希釈し、生成物化合物I-
5tBuを、溶離液としてアセトニトリル-TEAB混合物を用いた分取HPLCにより
トリエチルアンモニウム塩として単離した。収量0.5g(76%)。純度、構造および
組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算
558.15。実測値m/z:(+)559(M+1)。
【0147】
〔ステップ2:〕トリフルオロ酢酸(3mL)を無水ジクロロメタン(25mL)中のト
リエチルアンモニオ7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]-N-
[(3-スルホナトポピル]}アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン(
0.66g、1mmol)の混合物に加えた。および混合物を室温で24時間撹拌した。
溶媒を蒸留により除去した。残留物をアセトニトリル-水混合物(1:1、10mL)に
溶解し、生成物を、溶離液としてアセトニトリル-TEAB混合物を用いた分取HPLC
により化合物I-5トリエチルアンモニウム塩として単離した。収量:0.6g(97%
)。純度、構造および組成をHPLC、NMRおよびLCMSにより確認した。。MS(
DUIS):MW計算値502.09。実測値m/z:(+)503(M+1);(-
)、501(M-1)
【0148】
〔例6:化合物I-6:7-[N-(3-カルボキシプロピル)-N-(3-スルホプロピル)
アミノ]-3-(5-クロロ-ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン(トリエチルアンモニ
ウム塩)〕
【化28】



〔ステップ1.7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]-N-(3
-スルホプロピル]}アミノ-3-[5-クロロベンゾオキサゾール-2-イル)クマリ
ン(化合物I-6tBu)の調製〕
【化29】

3-(5-クロロ-ベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.
32g、1mmol)およびt-ブチル4-[N-(3-スルホ)プロピル]-アミノブ
タノエート(0.56g、2mmol)丸底フラスコ中の無水DMSO(5mL)に加え
た。得られた混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.65g、5ミリモル
)をこの混合物に加えた。125℃で5時間撹拌した後、溶媒の半分の量を真空下で蒸留
除去した。混合物を室温で1時間放置し、次いで水-アセトニトリル1:1混合物(10
mL)で希釈し、生成物化合物I-6tBuを、アセトニトリル-TEAB混合物を用い
た分取HPLCによりトリエチルアンモニウム塩として単離した。溶離液。収量:0.3
8g(56%)。純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確認
した。MS(DUIS):MW計算576.13。実測値m/z:(+)577(M+1
)。
【0149】
〔ステップ2.〕トリエチルアンモニオ7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル
)プロピル]-N-[(3-スルホナトポピル]}アミノ-3-(5-クロロ-ベンゾオ
キサゾール-2-イル)クマリン(0.68無水ジクロロメタン(25mL)中のg、1
mmol)をトリフルオロ酢酸(3mL)で処理し、得られた混合物を室温で24時間撹
拌した。溶媒を濾別し、残留物をアセトニトリル-水11混合物(10mL)に溶解し、
溶離液としてアセトニトリル-TEAB混合物を用いた分取HPLCにより、生成物を化
合物I-6トリエチルアンモニウム塩として単離する。収量:0.6g(96%)。純度
、構造および組成をHPLCにより確認した。NMRおよびLCMS。MS(DUIS)
:MW計算値520.07。実測値m/z:(+)521(M+1);(-)、519
(M-1)
【0150】
〔例7.化合物I-7:7-[N-(3-カルボキシプロピル)-N-(3-スルホプロピル)
アミノ]-3-(ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン(トリエチルアンモニウム塩とし
て単離された)〕
【化30】



〔ステップ1.7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]-N-(3
-スルホプロピル]}アミノ-3-(ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン(化合物
I-7tBu)の調製〕
【化31】

3-(ベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.28g、1ミ
リモル)およびt-ブチル4-[N-(3-スルホ)プロピル]-アミノブタノエート(
0.56g、2ミリモル)を丸底フラスコ中の無水DMSO(5mL)。得られた混合物
を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.65g、5ミリモル)をこの混合物に加
えた。120℃で8時間撹拌した後、溶媒の半分の量を真空下で蒸留除去した。混合物を
室温で1時間放置し、次いで水-アセトニトリル1:1混合物(10mL)で希釈し、生
成物化合物I-7tBuを、溶離液としてアセトニトリル-TEAB混合物を用いた分取
HPLCによって単離した。収量:0.15g(27%)。純度、構造および組成は、H
PLC、NMRおよびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算542.1
7。実測値m/z:(+)543(M+1)。
【0151】
〔ステップ2.〕7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]-N-[
(3-スルホナトポピル]}アミノ-3-(ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン(
0.27g、0.5mmol)の混合物無水ジクロロメタン(15mL)中をトリフルオ
ロ酢酸(2mL)で処理し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を濾別し、
残留物をアセトニトリル-水1:1混合物(10mL)に溶解した。)、そして生成物を
、溶離液としてアセトニトリル-TEAB混合物を用いた分取HPLCによりトリエチル
アンモニウム塩として単離した。収率:87%。
【0152】
〔例8.化合物I-8:7-[N-(3-カルボキシプロピル)-N-(3-スルホプロ
ピル)アミノ]-3-[6-(アミノスルホニル)ベンゾオキサゾール-2-イル]クマ
リン〕
【化32】


〔ステップ1.7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]-N-(3
-スルホプロピル]}アミノ-3-[6-(アミノスルホニル)ベンゾオキサゾール-2
-イル]クマリン(化合物I-8tBu)〕
【化33】

3-[6-(アミノスルホニル)ベンゾオキサゾール-2-イル]-7-フルオロ-ク
マリン(0.18g、0.5mmol)およびt-ブチル4-[N-(3-スルホ)プロ
ピル]-アミノブタノエート(0.28g、1ミリモル)を丸底フラスコ中で無水DMS
O(3mL)と混合した。得られた混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0
.65g、5ミリモル)を加えた。120℃で7時間撹拌した後、溶媒の半分の量を真空
下で蒸留除去した。混合物を室温で1時間放置し、次いで水-アセトニトリル1:1混合
物(10mL)で希釈し、生成物化合物I-8tBuを、溶離液としてアセトニトリル-
TEAB混合物を用いた分取HPLCによって単離した。溶媒を蒸発させた後、黄色の沈
殿物を濾別した。収量:0.31g(50%)。色素の純度、構造、および組成は、HP
LC、NMR、およびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値621.
15。実測値m/z:(+)622(M+1)。
【0153】
〔ステップ2.〕7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]-N-[
(3-スルホナトポピル]}アミノ-3-[6-(アミノスルホニル)ベンゾオキサゾー
ル-2-イル]クマリン(無水ジクロロメタン(15mL)中の0.31g、0.5mm
ol)のトリフルオロ酢酸(2mL)を加え、得られた溶液を室温で24時間撹拌した。
溶媒を濾別し、残留物をアセトニトリル-水1:1混合物(10mL)に溶解し、溶媒を
再度蒸留除去した。化合物I-8を濾別し、そしてアセトニトリルで洗浄した。収量:0
.25g(87%)。
【0154】
〔例9.化合物I-9:7-[N-(3-カルボキシプロピル)-N-(3-スルホプロ
ピル)アミノ]-3-(5-クロロ-ベンズイミダゾリル-2-イル)クマリン〕
【化34】


〔ステップ1.7-{N-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]-N-(3
-スルホプロピル]}アミノ-3-[(5-クロロベンズイミダゾリル-2-イル)クマ
リン(化合物I-9tBu)の調製〕
【化35】


3-(5-クロロベンズイミダゾリル-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.3
2g、1ミリモル)およびt-ブチル4-(N-3-スルホプロピル)アミノブタノエー
ト(0.56g、2ミリモル)を丸底フラスコ中で無水DMSO(5mL)に加えた。得
られた混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.65g、5ミリモル)をこ
の混合物に加えた。120℃で15時間撹拌した後、溶媒の半分の量を真空下で蒸留除去
した。混合物を室温で1時間放置し、次いで水-アセトニトリル1:1混合物(10mL
)で希釈し、生成物化合物I-9tBuを、アセトニトリル-TEAB混合物を溶離液と
して用いた分取HPLCによりトリエチルアンモニウム塩として単離した。
【0155】
〔ステップ2.〕前のステップのトリエチルアンモニオ7-{N-[3-(t-ブチルオ
キシカルボニル)プロピル]-N-(3-スルホナトポピル)}アミノ-3-(5-クロ
ロベンズイミダゾリル-2-イル)クマリンを無水ジクロロメタン(25mL)に溶解し
、トリフルオロ酢酸(5mL)を加えた。得られた混合物を室温で24時間撹拌した。溶
媒を蒸留除去し、残留物をアセトニトリル-水1:1混合物(10mL)に溶解し、アセ
トニトリル-TEAB混合物を溶離液として使用する分取HPLCにより生成物を単離し
ました。収量:0.2g(35%)。純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよび
LCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算519.09。実測値m/z:(
+)520(M+1);(-)、518(M-1)
【0156】
〔例10.化合物I-10tBu:7-[N-(3-カルボキシプロピル)-N-(3-
スルホプロピル)アミノ]-3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)クマ
リン〕
【化36】


3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0
.17g、0.5ミリモル)およびt-ブチル4-(N-3-スルホプロピル)アミノブ
タノエート(0.28g、1ミリモル)を丸底フラスコ中で無水DMSO(5mL)と混
合した。得られた混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.65g、5ミリ
モル)を加えた。110℃で17時間撹拌した後、溶媒の半分の量を真空下で蒸留除去し
た。混合物を室温で1時間放置し、次いで水-アセトニトリル1:1混合物(10mL)
で希釈し、生成物化合物I-10tBuを、溶離液としてアセトニトリル-TEAB混合
物を用いた分取HPLCによって単離した。溶媒を蒸発させた後、黄色の沈殿物を濾別し
た。収量:0.23g(80%)。色素の純度、構造、および組成は、HPLC、NMR
、およびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算586.16。実測値m
/z:(+)587(M+1)。
【0157】
〔例11.化合物I-11tBu:7-[N-(3-カルボキシプロピル)-N-(3-
スルホプロピル)アミノ]-3-(6-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)クマ
リン〕
【化37】

3-(6-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0
.65g、2ミリモル)およびt-ブチル4-(N-3-スルホプロピル)アミノブタノ
エート(1.13g、4ミリモル)および無水DMSO(15mL)を室温で数分間撹拌
し、次いでDIPEA(1.3g、10mmol)を加えた。120℃で15時間撹拌し
た後、溶媒の半分の量を真空下で蒸留除去した。混合物を室温で1時間撹拌したままにし
、次いで水-アセトニトリル1:1混合物(10mL)で希釈し、生成物化合物I-11
tBuを、溶離液としてアセトニトリル-TEAB混合物を用いた分取HPLCによって
単離した。溶媒を蒸発させた後、黄色の沈殿物を濾別した。収量:0.66g(56%)
。色素の純度、構造、および組成は、HPLC、NMR、およびLCMSにより確認した
。MS(DUIS):MW計算586.16。実測値m/z:(+)587(M+1)。
【0158】
〔例12.化合物I-12:7-ジエチルアミノ-3-(5-カルボキシ-ベンゾチアゾ
ール-2-イル)クマリン〕
【化38】

エチル(5-カルボキシベンズチアゾール-2-イル)アセテート(0.27g、1m
mol)、ジエチルアミノサリチルアルデヒド(0.21g、1.1mmol)、ピペリ
ジン(5滴)、および酢酸(5滴)を無水エタノール(5mL)そして得られた混合物を
60-65℃で7時間撹拌し、次いで室温で一晩放置した。得られたオレンジ色の沈殿物
を吸引濾過により収集し、水で洗浄した。収量:0.28g(72%)。
【0159】
〔代替合成〕
【化39】


7-ジエチルアミノ-3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン
(0.84g、2mmol)および濃硫酸(5mL)を室温で数分間撹拌し、次いで溶液
を150℃で2時間加熱した。混合物を室温で1時間撹拌したままにし、次いで氷水(5
0g)で希釈し、反応混合物を一晩撹拌したままにした。黄色の沈殿物を濾別した。収量
:0.51g(65%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびL
CMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算394.10。実測値m/z:(+
)395(M+1);(-)393(M-1)
【0160】
〔例13.化合物I-13:7-ジエチルアミノ-3-(5-カルボキシ-1-フェニル
ベンイミダゾール-2-イル)クマリン〕
【化40】

エチル(5-カルボキシ-1-フェニルベンイミダゾール-2-イル)アセテート(0
.16g、1ミリモル)およびジエチルアミノサリチル酸アルデヒド(0.21g、1.
1ミリモル)を無水エタノール(7mL)に溶解した。ピペリジン(5滴)および酢酸(
5滴)を加え、得られた混合物を80℃で5時間撹拌し、次いで室温で一晩放置した。得
られたオレンジ色の沈殿物を吸引濾過により収集し、水で洗浄した。収量:0.16g(
70%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより確
認した。MS(DUIS):MW計算453.17。実測値m/z:(+)454(M+
1);(-)452(M-1)
【0161】
〔例14.化合物I-14:3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7
-[3-(エチルオキシカルボニル)プロピル]アミノ-クマリン。〕
【化41】


3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0
.65g、2ミリモル)および4-アミノブタン酸エチル塩酸塩(0.5g、3ミリモル
)を無水DMSO(5mL)に加えた。添加が完了した後、混合物を室温で数分間撹拌し
、次いでジイソプロピルエチルアミン(0.65g、5ミリモル)を加えた。反応混合物
を温度110℃で3時間撹拌した。室温で1時間静置した後、黄色の半固体反応混合物を
水(10mL)で希釈し、一晩撹拌したままにした。得られた沈殿物を吸引濾過により収
集した。収量0.5g(58%)。色素の純度、構造、および組成は、HPLC、NMR
、およびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算436.13。実測値m
/z:(+)437(M+1);(-)、435(M-1)
【0162】
〔例15.化合物I-15:3-(6-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7
-[3-(エチルオキシカルボニル)プロピル]アミノ-クマリン〕
【化42】


3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0
.32g、1ミリモル)および4-アミノブタン酸エチル塩酸塩(0.5g、3ミリモル
)を無水DMSO(5mL)に加えた。添加が完了した後、混合物を室温で数分間撹拌し
、次いでジイソプロピルエチルアミン(0.39g、3ミリモル)を加えた。反応混合物
を温度120℃で3時間撹拌した。室温で1時間静置した後、黄色の半固体反応混合物を
水(10mL)で希釈し、酢酸(1mL)で酸性化し、一晩撹拌したままにした。得られ
た沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0.21g(48%)。色素の純度、構造、お
よび組成は、HPLC、NMR、およびLCMSにより確認した。MS(DUIS):M
W計算436.13。実測値m/z:(+)437(M+1);(-)、435(M-
1)
【0163】
〔例16.化合物I-16:7-(3-カルボキシプロピル)アミノ-3-(5-クロロ
ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン〕
【化43】


3-(5-クロロベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.3
2g、1ミリモル)および4-アミノブタン酸(0.21g、2ミリモル)を、丸底フラ
スコ中の無水DMSO(5mL)に加えた。添加が完了した後、混合物を室温で数分間撹
拌し、次いでジイソプロピルエチルアミン(0.52g、4ミリモル)を加えた。反応混
合物を温度135℃で7時間撹拌した。4-アミノブタン酸(0.1g、1ミリモル)お
よびジイソプロピルエチルアミン(0.26g、2ミリモル)の追加部分を加え、135
℃で5時間加熱を続けた。室温で1時間静置した後、淡黄色の反応混合物を水(15mL
)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0.12g
(30%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCMSにより
確認した。MS(DUIS):MW計算値398.07。実測値m/z:(+)399(
M+1)
【0164】
〔例17.化合物I-17:7-(3-カルボキシプロピル)アミノ-3-(5-ベンゾ
オキサゾール-2-イル)クマリン。〕
【化44】

3-(ベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0.28g、1m
mol)および4-アミノブタン酸(0.21g、2mmol)を無水DMSO(5mL
)に溶解し、混合物を撹拌して室温で数分間、ジイソプロピルエチルアミン(0.26g
、2ミリモル)を加えた。反応混合物を125℃の温度で7時間撹拌した。4-アミノブ
タン酸(0.1g、1ミリモル)およびジイソプロピルエチルアミン(0.13g、1ミ
リモル)の追加部分を加え、加熱を125℃で3時間続けた。淡黄色の反応混合物を水(
10mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引濾過により収集した。収量0
.08g(23%)。生成物の純度、構造および組成は、HPLC、NMRおよびLCM
Sにより確認した。MS(DUIS):MW計算値364.11。実測値m/z:(+)
365(M+1)
【0165】
〔例18.化合物I-18:3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7
-(3-スルホプロピル)アミノ-クマリン〕
【化45】

3-(5-カルボキシベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(0
.33g、1ミリモル)および3-アミノプロパンスルホン酸(0.42g、3ミリモル
)を無水DMSO(5mL)に加えた。添加が完了した後、混合物を室温で数分間撹拌し
、次いでジイソプロピルエチルアミン(0.39g、3ミリモル)を加えた。反応混合物
を125℃の温度で7時間撹拌した。溶媒の半分の量を真空下で蒸留除去した。混合物を
室温で1時間撹拌したままにし、次いで水-アセトニトリル1:1混合物(10mL)で
希釈し、そして生成物を、溶離液としてアセトニトリル-TEAB混合物を用いた分取H
PLCによって単離した。溶媒を蒸発させた後、黄色の沈殿物をアセトニトリル(3mL
)で粉砕し、濾別した。収量:0.06g(14%)。色素の純度、構造、および組成は
、HPLC、NMR、およびLCMSにより確認した。MS(DUIS):MW計算値4
44.06。実測値m/z:(+)445(M+1)。
【0166】
〔例19.蛍光強度の比較〕
例示的色素溶液の蛍光強度(エタノール-水1:1;極大励起波長450nmで)を、
同じスペクトル領域の標準色素と比較した。結果を表1に示し、蛍光ベースの分析用途の
ための例示的色素の顕著な利点を示す。
【表1】
【0167】
〔例20.完全に機能的なヌクレオチドコンジュゲートの合成のための一般的手順〕
本明細書に開示されるクマリン蛍光色素を、適切なアミノ置換アデニン(A)およびシ
トシン(C)ヌクレオチド誘導体A-LN3-NHまたはC-LN3-NHとカップ
リングした:
【化46】
【0168】
以下のアデニン例示的スキームに従って、適切な試薬で色素のカルボキシル基を活性化
した後:
【化47】

【0169】
アデニンカップリングのための一般的な製品を、下記に示す:
【化48】



ffA-LN3-Dyeは、LN3リンカーを持ち、本明細書に開示されるクマリン色
素で標識された完全に官能化されたAヌクレオチドを指す。各構造のR基は、コンジュゲ
ーション後のクマリン色素部分を指す。
【0170】
色素(10μmol)を5mL丸底フラスコの中へ入れて乾燥させ、無水ジメチルホル
ムアミド(DMF、1mL)に溶解してから、溶媒をin vacuoで蒸留除去する。
この手順を2回繰り返す。乾燥した色素を無水N,N-ジメチルアセトアミド(DMA、
0.2mL)に室温で溶解する。N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシ
ンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU、1.5eq.、15μmo
l、4.5mg)を色素溶液に加え、次いでDIPEA(3eq.、30μmol、3.
8mg、5.2μL)をマイクロピペットを介してこの溶液に添加する。反応フラスコを
窒素ガス下で密閉する。反応の進行を、TLC(溶離液アセトニトリル-水1:9)およ
びHPLCによりモニターする。一方、適切なアミノ置換ヌクレオチド誘導体(A-LN
3-NH、20mM、1.5eq、15μmol、0.75mL)の溶液をin va
cuoで濃縮し、水(20μL)に再溶解する。DMA中の活性化色素の溶液を、N-L
N3-NHの溶液が入っているフラスコに移す。より多くのDIPEA(3eq、30
μmol、3.8mg、5.2μL)をトリエチルアミン(1μL)と一緒に加える。カ
ップリングの進行を、TLC、HPLC、LCMSにより1時間ごとにモニターする。反
応が完了したら、トリエチルアミン重炭酸緩衝液(TEAB、0.05M~3mL)をピ
ペットを介して反応混合物に加える。完全に官能化されたヌクレオチドの最初の精製を、
クエンチされた反応混合物をDEAE-Sephadex(登録商標)カラムに通して、
残りの未反応色素の大部分を除去することにより実施する。例えば、Sephadex(
登録商標)を、空の25g Biotageカートリッジ、溶媒系TEAB/MeCNに
注ぐ。Sephadex(登録商標)カラムからの溶液を、in vacuoで濃縮する
。残りの材料を、20μmナイロンフィルターでろ過する前に、最小量の水とアセトニト
リルに再溶解する。ろ過した溶液を、分取HPLCで精製する。調製した化合物の組成を
、LCMSで確認する。
【0171】
シトシンカップリングの一般的な生成物は、上記と同様の手順に従って、下記に示すと
おりである。
【化49】



ffC-LN3-色素は、LN3リンカーを持ち、本明細書に開示されているクマリン
色素で標識された完全に官能化されたCヌクレオチドを指す。各構造のR基は、コンジュ
ゲーション後のクマリン色素部分を指す。
【0172】
〔例21.式(I)の化合物のアミド誘導体の調製〕
本明細書に記載のいくつかの追加の実施形態は、式(I)の化合物のアミド誘導体およ
びそれを調製する方法に関連し、方法は、カルボン酸活性化を介して式(Ia)の化合物
を式(Ia’)の化合物に変換すること:
【化50】


および式(Ia’)の化合物を式(Am)の第一級または第二級アミンと反応させて、式
(Ib)のアミド誘導体に到達することを含む:
【化51】


式中、変数X、R、R、R、R、R、およびRは、本明細書中で定義され;R
’は、カルボキシル活性化剤(N-ヒドロキシスクシンイミド、ニトロフェノール、ペン
タフルオロフェノール、HOBt、BOP、PyBOP、DCC等といったもの)の残留
部分であり;RおよびRの各々は、独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アル
ケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10
員ヘテロアリール、3-10員ヘテロシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、または
(ヘテロシクリル)アルキルである。
【0173】
〔式(Ib)の化合物を調製するための一般的な手順〕
式(Ia)の適切な色素(0.001モル)を適切な無水有機溶媒(DMF、1.5m
L)に溶解する。この溶液に、TSTU、BOP、PyBOP等のカルボキシル活性化試
薬を添加する。この反応混合物を室温で約20分間撹拌し、次いで適切なアミン誘導体を
加える。反応混合物を一晩撹拌し、濾過し、過剰の活性化試薬を水中の0.1MTEAB
溶液でクエンチする。溶媒を真空で蒸発させ、残留物をTEAB溶液に再溶解し、HPL
Cで精製する。
【0174】
例えば、化合物I-2の第一級および第二級アミド誘導体を調製した:
【化52】

【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、その塩またはメソメリー形態で標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド
【化1】
式中:
Xは、Oであり
、RおよびRの各々は、Hであり
Rは、Hであり
各RおよびRは、 1-6 アルキルであり
各Rは、独立して-CO、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド-SOH、-SONR、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
各RおよびRは、独立して、Hまたは任意で置換されたC1-6アルキルであり;
、任意で置換された置換C1-6アルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;かつ
mは、1、2、3、または4であり
式(I)の化合物は、R、R、RおよびR Hであり;mが1であり;Rが-COHであり;RおよびRがエチルである化合物ではなく;かつ
前記化合物が、式(I)のR を介して前記ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと結合している、
標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
各R-COH、-SOH、-SONR、または任意で置換されたC1-6アルキルである、請求項に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド
【請求項3】
式(I)のRが、-COHであり、アタッチメントが、-COH基を使用してアミドを形成、請求項に記載の標識化されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
式(I-A)の化合物、またはそのメソメリー形態の塩、その塩、メソメリー形態で標識されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド:
【化2】
式中、Rは、-ORまたは-NRであり;
、R、およびRの各々は、独立して、H、任意で置換されたC1-6アルキル、任意で置換されたカルボシクリル、任意で置換されたヘテロシクリル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
式(I-A)の化合物がR を介して前記ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと結合している
【請求項5】
前記化合物が、リンカー部分を介してピリミジン塩基のC5位または7-デアザプリン塩基のC7位と結合している、請求項のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記ヌクレオチドのリボースまたはデオキシリボース糖と共有結合した3’OHブロッキング基をさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
請求項のいずれか一項に記載の第1の標識化ヌクレオチドおよび第2の標識化ヌクレオチドを含むキット。
【請求項8】
前記第2の標識化ヌクレオチドが、前記第1の標識化ヌクレオチドとは異なる化合物で標識されている、請求項に記載のキット。
【請求項9】
前記第1および第2の標識化ヌクレオチドが、単一レーザー波長を使用して励起可能である、請求項に記載のキット。
【請求項10】
第3のヌクレオチドおよび第4のヌクレオチドをさらに含み、前記第2、第3、および第4のヌクレオチドの各々が、異なる化合物で標識され、各標識が、他の標識から区別可能な異なる吸収極大を有する、請求項またはに記載のキット。
【請求項11】
前記キットが、4つのヌクレオチドを含み、前記4つのヌクレオチドの第1が、請求項のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオチドであり、前記4つのヌクレオチドの第2が、第2の標識を担持し、第3のヌクレオチドが、第3の標識を担持し、かつ第4のヌクレオチドが、非標識化(暗黒)である、請求項に記載のキット。
【請求項12】
前記キットが、4つのヌクレオチドを含み、前記4つのヌクレオチドの第1が、請求項のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオチドであり、前記4つのヌクレオチドの第2が、第2の標識を担持し、第3のヌクレオチドが、2つの標識の混合物を担持し、かつ第4のヌクレオチドが、非標識化(暗黒)である、請求項に記載のキット。
【請求項13】
請求項1に記載の標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、または請求項12のいずれか一項に記載のキットの、シーケンシング、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、またはタンパク質結合アッセイにおける使用。
【請求項14】
自動化シーケンシング装置上での請求項13に記載の使用であって、前記自動化シーケンシング装置が、異なる波長で作動する2つのレーザーを含む、上記使用。
【請求項15】
シーケンシングアッセイにおいて請求項のいずれか一項に記載の標識化ヌクレオチドを取り込むことを含むシーケンシングの方法。
【請求項16】
前記標識化ヌクレオチドを検出することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シーケンシングアッセイが、自動化シーケンシング装置上で実施され、前記自動化シーケンシング装置が、異なる波長で作動する2つの光源を含む、請求項15または16に記載の方法。
【外国語明細書】