(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010964
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】機器室用ステップを備えたタンクローリ
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20240118BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20240118BHJP
B60R 19/56 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B60R3/02
B60R19/48 V
B60R19/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112594
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】笠 直亮
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AC03
3D022AD06
3D022AE01
3D022AE07
(57)【要約】
【課題】タンクローリの後部に配置するステップの提供。
【解決手段】シャシフレーム102の後方に突入防止装置120と機器室110が備えられたタンクローリ100において、突入防止装置120は、シャシフレーム102の後方下部に配置されてシャシフレーム102に固定され、機器室用ステップ200は、シャシフレーム102から延びる金具に固定されて折り畳み可能に設けられている。そして、機器室用ステップ200が畳まれた状態では、突入防止装置120より車体後方側に突出しないように収納され、機器室用ステップ200が開かれた状態では、踏み板201部分が突入防止装置120を跨ぐように車体後方に突出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後方に突入防止装置と機器室が備えられたタンクローリにおいて、
前記突入防止装置は、前記車体の後方下部に配置されて前記車体に固定され、
機器室用ステップは、前記車体から延びる金具に固定されて折り畳み可能に設けられ、
前記機器室用ステップが畳まれた状態では、前記突入防止装置より車体後方側に突出しないように収納され、
前記機器室用ステップが開かれた状態では、踏み板部分が前記突入防止装置を跨ぐように車体後方に突出すること、
を特徴とするタンクローリ。
【請求項2】
請求項1に記載のタンクローリにおいて、
前記機器室用ステップは、下面に前記突入防止装置の上面に接する当接部を備えており、
前記開かれた状態の際に、前記突入防止装置の上面と前記当接部が接すること、
を特徴とするタンクローリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクローリなど公道などで作業する車両に作業用のステップを取り付ける方法についての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクローリに備えられた機器室は、タンクに積載された気体又は液体等の積載物を供給する為に操作する機器が収められており、車両によってはタンクの後部に配置されている。ここで、大型の車両になると機器室の位置が高くなるため、特に機器室の奥に配置されている機器は操作がし難い場合がある。そのため、別途ステップなどを用意して運用されている。こうした作業車などにステップを設ける技術に関しては、特許文献1や特許文献2などのような技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、車両のフロントバンパーに関する技術が開示されている。キャブの前面下部に配置されるフロントバンパーにおいて、バンパー面に走行風の取入口を形成し、その取入口を開閉して使用時にはバンパー前方へ略水平に展開可能なステップを設け、このステップにラジエータへの走行風を案内するルーバを形成する。ステップはシャシフレームとの間で使用時の重量を支持する屈伸自在なステーを備えている。
【0004】
特許文献2には、バン型車両のリヤステップに関する技術が示されている。車体フレームの後部にステーを介してリアバンパーを取り付け、リアバンパーに上下方向に旋回自在にステップを設け、ステップには旋回高位置と低位置との何れの位置でもステップ段を構成する段差が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-147194号公報
【特許文献2】実開平6-63440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載の技術は何れもバンパーにステップを設けるもので、バンパーの位置によっては適切なステップを設けることが難しい場合がある。また、突入防止装置が設けられている場合には、突入防止装置に足をかけて作業をすることも考えられるが、突入防止装置の幅は狭く、設置位置はバンパーの真下あたりに配置されるため、足を置く場所とするには適さない。加えて、突入防止装置は寸法や強度が法令にて定められており、不要な改造は避けたいという事情があるため、突入防止装置を加工してステップを設けることは好ましくない。
【0007】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、タンクローリの後部に配置するステップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるタンクローリは、以下のような特徴を有する。
【0009】
(1)車体の後方に突入防止装置と機器室が備えられたタンクローリにおいて、
前記突入防止装置は、前記車体の後方下部に配置されて前記車体に固定され、
機器室用ステップは、前記車体から延びる金具に固定されて折り畳み可能に設けられ、
前記機器室用ステップが畳まれた状態では、前記突入防止装置より車体後方側に突出しないように収納され、
前記機器室用ステップが開かれた状態では、踏み板部分が前記突入防止装置を跨ぐように車体後方に突出すること、
を特徴とする。
【0010】
上記(1)に記載の態様により、タンクローリの機器室内部に備えられる機器の操作をするにあたって、機器室用ステップを用い、作業者が作業しやすい環境を提供することができる。これは、機器室用ステップが突入防止装置を跨いで車両後方に突出するように配置され、作業者の作業しやすい足場が確保できるためである。突入防止装置の上面は幅が狭いので、その上に足をかけて作業をすることは好ましくない。一方、機器室に備えられた機器を操作するためには、所定の広さの踏み板を必要とする。このため、突入防止装置をかわして作業用の足場として機器室用ステップを用意することで、作業性を向上しつつ、突入防止装置に加工を施す必要がないために、法令上の問題も解決することができる。
【0011】
(2)(1)に記載のタンクローリにおいて、
前記機器室用ステップは、下面に前記突入防止装置の上面に接する当接部を備えており、
前記開かれた状態の際に、前記突入防止装置の上面と前記当接部が接すること、
が好ましい。
【0012】
上記(2)に記載の態様により、機器室用ステップの当接部と突入防止装置の上面とが当接することで、機器室用ステップにかかる荷重の一部を突入防止装置に分散して負担させることができる。このため、機器室用ステップの形状を単純化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の、タンクローリの側面図である。
【
図2】本実施形態の、タンクローリの背面図である。
【
図3】本実施形態の、機器室用ステップの周辺を示す側面断面図である。
【
図4】本実施形態の、機器室用ステップの周辺を示す拡大背面図である。
【
図5】本実施形態の、機器室用ステップの周辺を示す平面図である。
【
図6】本実施形態の、踏み板が収納されている状態を示す側面断面図である。
【
図7】本実施形態の、機器室ステップ部分拡大側面図である。
【
図8】本実施形態の、機器室ステップ部分拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、本実施形態の、タンクローリ100の側面図を示す。タンクローリ100は、運転席を備えるキャブ101と、シャシフレーム102の上にサブフレームを介して備えられたタンク105と、その最後尾に機器室110が備えられている。機器室110の内部には、タンク105に接続する図示しないバルブや圧力計などが備えられており、タンクローリ100のタンク105に積載された積載物(気体や液体)を設備側に供給する際に操作する。機器室110には開閉扉111が備えられており、
図1に示す開状態で保持するような図示しない保持機構が備えられている。
【0015】
図2に、タンクローリ100の背面図を示す。
図3に、機器室用ステップ200の周辺を側面断面図として示す。
図4に、機器室用ステップ200の周辺を拡大背面図として示す。
図5に、機器室用ステップ200の周辺を平面図として示す。タンクローリ100には、バンバー115と突入防止装置120が備えられている。突入防止装置120は法令の定めにしたがってシャシフレーム102に取り付けられており、必要な大きさ及び剛性を有している。突入防止装置120の取り付けは、ステー金具125を用いている。ステー金具125はシャシフレーム102に固定されており、突入防止装置120を強固に保持できるように剛性の高い構造となっている。
【0016】
突入防止装置120とバンパー115の間に、機器室用ステップ200が備えられている。機器室用ステップ200は、ステップ用枠202と踏み板201よりなり、ステップ用枠202は背面視でロの字状に構成され、その開口部に踏み板201が収まるような形になっている。ステップ用枠202の上部はバンパー115の下部にボルトを用いて固定される。ボルト固定を採用しているため、機器室用ステップ200は後付けが可能であるが、溶接などによる接合方法を用いることを妨げない。また、本実施形態では省略しているが、ステップ用枠202とバンパー115の間に高さ調整用のシムとして鋼板などを挟んでも良い。
【0017】
踏み板201の端部には蝶番201bが設けられており、ステップ用枠202の下部に固定されているので、
図6に示すように踏み板201は蝶番201bの軸を中心に回動可能な構造となっている。踏み板201は、長さ700mm、幅240mm程度の長方形に構成され、その上表面には滑り止めの目的で凹凸が設けられている。必要に応じて滑り止め塗装やゴムなどの滑り止め防止材を貼り付けることを妨げない。
【0018】
図7には、機器室ステップ部分拡大側面図を示す。
図8には、機器室ステップ部分拡大背面図を示す。
図7は
図3の部分拡大図に相当し、
図8は
図4の部分拡大図に相当する。踏み板201の形状は、
図8に示すように車両幅方向の両端部が上方に折り曲げられ、
図7に示すように車両長さ方向後端部が下方に折り曲げられて形成されている。また、その裏面に接するように裏板201gが配置され、裏板201gは
図7に示すように側面視で断面略L字状に折り曲げられ、その下面にはリブ201aが4つ等間隔に配置され取り付けられている。
【0019】
また、踏み板201と突入防止装置120の当接面には緩衝材201dが、ステップ用枠202と突入防止装置120との当接面には緩衝材201eが、それぞれ貼り付けて備えられている。緩衝材201d、緩衝材201eは例えばNBRなどのゴム製部材が用いられ、踏み板201が当接する際の衝撃などを吸収する機能を有する。より詳しくは、緩衝材201dは裏板201gに貼り付けられ、突入防止装置120と裏板201gが直接接触するのを防いでいる。緩衝材201eは、底板202dに貼り付けられ、底板202dと突入防止装置120が直接接触するのを防いでいる。このような構造とすることで、踏み板201を突入防止装置120に当接される際や踏み板201に作業者が乗った際の衝撃などで踏み板201や突入防止装置120が傷つくことを抑制する。
【0020】
ステップ用枠202は、
図4に示すように上枠202b、側枠202c、底枠202dで構成される。上枠202bは略矩形の鋼板で構成され、ステップ用枠202をバンパー115の下部に取り付けるための図示しないボルト孔が設けられている。側枠202cは上面視の断面が略L字状の鋼材で構成(
図5に示す)され、貫通孔202aが設けられている。底枠202dは側面視の断面が略L字状の鋼材で構成され、ステップ用枠202に後述する蝶番201b(踏み板201)を取り付けるためのボルト孔が設けられている。
【0021】
図6に、踏み板201が収納されている状態を側面断面図に示す。
図6は
図3に対応する図面であり、踏み板201が折り畳まれて収納された状態を示している。前述した様に蝶番201bの軸を中心に踏み板201が回動して、
図6に示される踏み板201は折り畳まれた状態から、
図3に示される突出する状態に変化させることができる。
【0022】
踏み板201の裏側であって長さ方向端部には、スライドロックピン201cがそれぞれ設けられており、スライドロックピン201cはステップ用枠202に設けられた貫通孔202aに係合する。踏み板201を畳んだ状態で、スライドロックピン201cをスライドさせ、貫通孔202aと係合させることで、踏み板201をその位置に保持することが可能である。
【0023】
本実施形態のタンクローリ100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0024】
まず、本実施形態のタンクローリ100は、機器室用ステップ200を備えることで、機器室110の操作が容易になる。これは、シャシフレーム102の後方に突入防止装置120と機器室110が備えられたタンクローリ100において、突入防止装置120は、シャシフレーム102の後方下部に配置されてシャシフレーム102に固定され、機器室用ステップ200は、シャシフレーム102から延びる金具に固定されて折り畳み可能に設けられている。そして、機器室用ステップ200が畳まれた状態では、突入防止装置120より車体後方側に突出しないように収納され、機器室用ステップ200が開かれた状態では、踏み板201部分が突入防止装置120を跨ぐように車体後方に突出するからである。
【0025】
更に、底枠202dは突入防止装置120の前端よりも前方に突出している。すなわち、底枠202dと踏み板201により、突入防止装置120の幅に加え、底枠202dの前方突出分(本実施形態では約60mm)と踏み板201の突出分(本実施形態では約160mm)とを加えた十分に広い幅a(合計300mm)に渡り足を載せるための略平坦な面が形成される(
図7を参照のこと)。
【0026】
したがって、上述の通り機器室用ステップ200により、作業者の足を載せるのに十分に広くかつ略平坦な面が形成されるために、作業性が向上する。突入防止装置120に足をかけて作業をすることも考えられるが、突入防止装置120は足をかけて作業することを前提に作られていないものの、追突車両の潜り込みを防ぐ目的で作られているので強度の面では問題ないが、幅が狭い為に足をかけるには不都合である。しかし、機器室用ステップ200の踏み板201を設けることで、格段に作業がし易くなる。特に、機器室110に備えられる機器はレイアウトの都合上奥の方に配置されていることもあり、安定した姿勢で作業が出来ることが望ましい。したがって、踏み板201が設けられて作業性が改善することで、作業効率や安全性の向上が期待できる。
【0027】
また、機器室用ステップ200の踏み板201は
図6に示すように畳んだ状態でスライドロックピン201cを用いて貫通孔202aと係合させ、その姿勢を維持することが可能である。タンクローリ100を移動する際には、機器室用ステップ200の踏み板201はタンクローリ100から突出していない状態であることが望ましいので、畳んで収納する機能によって、車両の後端からはみ出さないような状態にする。
【0028】
また、機器室用ステップ200の踏み板201は、
図3に示すように展開した状態で、突入防止装置120を跨ぐように設けられているので、突入防止装置120の構造を変えるような加工をせずに機器室用ステップ200の取り付けが可能である。突入防止装置120は法令で定められた剛性を必要とするため、構造を変えるような加工をして機器室用ステップ200を取り付けることは望ましくない。構造を変えるような加工することで突入防止装置120の本来の強度が低下する様なことがあってはならないからである。構造を変えるような加工をして取り付けするためには、突入防止装置120に加工をした上で、改めて許可を取得するなどの煩雑な手続きが必要となる。したがって、突入防止装置120に対して構造を変えるような加工を加えずに機器室用ステップ200を取り付けることができることは好ましい。
【0029】
また、機器室用ステップ200の下面が突入防止装置120に当接し、その当接面に当たる高さについて緩衝材201eにて調整する形を採っている。また、緩衝材201dが設けられている面でも突入防止装置120に当接するように設計されている。この結果、機器室用ステップ200は突入防止装置120に対して2面で当接するので、機器室用ステップ200に作業者が乗った場合に、しっかりと作業者の重量を分散して支持することに繋がる。よって、作業者は安全に機器室110内部に収められた機器の操作を行うことができる。また、ステップ使用時のみ突入防止装置120を利用することで、ステップ用枠202の部材を最小限の強度に抑えることができる。
【0030】
以上、本発明に係るタンクローリに関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態で機器室用ステップ200は手動で開閉する構成としているが、駆動装置を取り付けて自動で開閉する構成を採用することを妨げない。
【符号の説明】
【0031】
100 タンクローリ
102 フレーム
110 機器室
120 突入防止装置
200 ステップ
201 踏み板