(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109656
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用灯具、レーダモジュール及び車両
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240806BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240806BHJP
F21S 41/29 20180101ALI20240806BHJP
F21S 41/20 20180101ALI20240806BHJP
F21S 45/00 20180101ALI20240806BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20240806BHJP
【FI】
G01S7/03 240
G01S7/03 246
G01S13/931
F21S41/29
F21S41/20
F21S45/00
F21W102:13
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076583
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2021533119の分割
【原出願日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2019132826
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019135290
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019138204
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019138205
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019138206
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】桂田 善弘
(72)【発明者】
【氏名】綿野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】久保山 治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レーダデータの信頼性を確保しつつ、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具及び車両を提供する。
【解決手段】右側車両用灯具(2R)は、ランプハウジング(14)と、ランプハウジング(14)の開口部を覆うランプカバー(12)と、ランプハウジング(14)とランプカバー(12)とによって形成された灯室(S)内に配置されたロービーム用照明ユニット(3)と、電波を車両の外部に向けて出射することでレーダデータを取得するように構成されたレーダ(5)と、レーダ(5)を前記車両の外部から隠蔽するようにレーダ(5)に対向するように配置され、レーダ(5)から出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部(6)と、を備える。隠蔽部(6)は、ランプカバー(12)に一体的に形成されている。隠蔽部(6)とランプカバー(12)との境界部(B)は、レーダ(5)の視野(Fv)外に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングと、
前記ランプハウジングの開口部を覆うランプカバーと、
前記ランプハウジングと前記ランプカバーとによって形成された灯室内に配置された照明ユニットと、
電波を車両の外部に向けて出射することで前記車両の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されたレーダと、
前記レーダを前記車両の外部から隠蔽するように前記レーダに対向するように配置され、前記レーダから出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部と、
前記レーダに当接すると共に、前記隠蔽部に対する前記レーダの位置を決定するように構成された位置決め部と、を備え、
前記隠蔽部は、前記ランプカバーと一体的に形成され、
前記位置決め部は、前記隠蔽部と一体的に形成されていると共に、前記隠蔽部と前記レーダとの間に配置されている、車両用灯具。
【請求項2】
前記レーダは、
前面と、
前記前面とは反対側に位置する後面と、
前記前面と前記後面との間に位置する側面と、
を有し、
前記位置決め部は、前記レーダの前面及び側面に当接する凹部を有する、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記位置決め部は、
第1位置決め部と、
前記第1位置決め部と対向するように配置された第2位置決め部と、
を有し、
前記レーダは、前記第1位置決め部と前記第2位置決め部との間に配置されている、
請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
ランプハウジングと、
前記ランプハウジングの開口部を覆うランプカバーと、
前記ランプハウジングと前記ランプカバーとによって形成された灯室内に配置された照明ユニットと、
電波を車両の外部に向けて出射することで前記車両の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されたレーダと、
前記レーダを前記車両の外部から隠蔽するように前記レーダに対向するように配置され、前記レーダから出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部と、
前記レーダを支持及び固定するように構成された支持部材と、
前記支持部材に当接すると共に、前記隠蔽部に対する前記支持部材の位置を決定するように構成された位置決め部と、を備え、
前記隠蔽部は、前記ランプカバーと一体的に形成され、
前記位置決め部は、前記隠蔽部と一体的に形成されていると共に、前記隠蔽部と前記支持部材との間に配置されている、車両用灯具。
【請求項5】
前記レーダは、前記灯室外に配置されている、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記隠蔽部の厚さtは、以下式により規定されている、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の車両用灯具。
t=λ/2εr
1/2×n
ここで、λは前記レーダから出射される電波の波長、εrは前記隠蔽部の比誘電率、nは1以上の整数である。
【請求項7】
前記隠蔽部と前記レーダとの間の距離は、20mm以上100mm以下である、請求項1から6のうちいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の車両用灯具を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具、レーダモジュール及び車両に関する。特に、本開示は、ミリ波レーダやマイクロ波レーダ等のレーダを搭載した車両用灯具、レーダモジュール及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外部の周辺環境を示すデータを取得するように構成されたミリ波レーダ等のレーダを車両用灯具に搭載する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、車両用灯具の灯室内に配置されたミリ波レーダを車両の外部から隠蔽するために樹脂製の導光プレートがミリ波レーダの前方に配置されている。また、導光プレートに光源からの光を入射させることで外部から導光プレートの発光を視認することができる。このように、導光プレートの発光によりミリ波レーダを車両の外部から隠蔽することができると共に、導光プレートを通じてミリ波レーダからの電波を車両の外部に出射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された車両用灯具では、ミリ波レーダを隠蔽するための導光プレートを別途用意する必要があるため、車両用灯具の部品点数が増加すると共に、車両用灯具の組み立て作業の工程数が増加してしまう。この点において、ミリ波レーダ等のレーダと当該レーダを隠蔽する隠蔽部を備えた車両用灯具について改善の余地がある。
【0005】
本開示の第1の目的は、レーダによって取得されたレーダデータの信頼性を確保しつつ、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具及び車両を提供することである。
【0006】
本開示の第2の目的は、外部からの放射熱に対するレーダの信頼性を確保しつつ、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具及び車両を提供することである。
【0007】
本開示の第3の目的は、車両に対するレーダ位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができると共に、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具、レーダモジュール及び車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る車両用灯具は、
ランプハウジングと、
前記ランプハウジングの開口部を覆うランプカバーと、
前記ランプハウジングと前記ランプカバーとによって形成された灯室内に配置された照明ユニットと、
電波を車両の外部に向けて出射することで前記車両の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されたレーダと、
前記レーダを前記車両の外部から隠蔽するように前記レーダに対向するように配置され、前記レーダから出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部と、を備える。
前記隠蔽部は、前記ランプカバーに一体的に形成されており、前記隠蔽部と前記ランプカバーとの境界部は、前記レーダの視野外に配置されている。
【0009】
上記構成によれば、隠蔽部とランプカバーとの境界部がレーダの視野外に配置されている。このため、レーダの視野内に存在する電波が当該境界部に反射された結果、当該反射電波がレーダの受信アンテナに入射することでレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。このように、車両用灯具に搭載されたレーダによって取得されるレーダデータの信頼性を確保しつつ、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0010】
本開示の一態様に係る車両用灯具は、
ランプハウジングと、
前記ランプハウジングの開口部を覆うランプカバーと、
前記ランプハウジングと前記ランプカバーとによって形成された灯室内に配置された照明ユニットと、
電波を車両の外部に向けて出射することで前記車両の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されたレーダと、
前記レーダを前記車両の外部から隠蔽するように前記レーダに対向するように配置され、前記レーダから出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部と、
前記レーダを支持するように構成された支持部材と、
を備える。
前記レーダは、前面と、前記前面とは反対側に位置する後面とを有する。
前記支持部材と前記レーダの後面との間に、前記支持部材よりも熱伝導率が低い断熱層が設けられている。
【0011】
上記構成によれば、支持部材とレーダの後面との間に断熱層が設けられているため、エンジン等の外部熱源から放射された熱が支持部材を介してレーダの後面に伝達しにくくなる。このため、外部熱源からの放射熱によってレーダ(特に、通信回路部)の動作性能が低下することが好適に防止されうる。したがって、外部からの放射熱に対するレーダの信頼性を確保しつつ、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0012】
本開示の一態様に係る車両用灯具は、
ランプハウジングと、
前記ランプハウジングの開口部を覆うランプカバーと、
前記ランプハウジングと前記ランプカバーとによって形成された灯室内に配置された照明ユニットと、
電波を車両の外部に向けて出射することで前記車両の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されたレーダと、
前記レーダを前記車両の外部から隠蔽するように前記レーダに対向するように配置され、前記レーダから出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部と、
前記レーダのアンテナ部を囲むように設けられ、前記レーダから出射された電波を吸収するように構成された電波吸収カバーと、を備える。
【0013】
上記構成によれば、レーダから出射された電波を吸収する電波吸収カバーがレーダのアンテナ部を囲むように設けられている。このため、レーダの視野内に存在する電波が隠蔽部やその他の光学部材に反射された結果、当該反射電波がレーダに受信されることでレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。このように、車両用灯具に搭載されたレーダによって取得されるレーダデータの信頼性を確保しつつ、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0014】
本開示の一態様に係る車両用灯具は、
ランプハウジングと、
前記ランプハウジングの開口部を覆うランプカバーと、
前記ランプハウジングと前記ランプカバーとによって形成された灯室内に配置された照明ユニットと、
電波を車両の外部に向けて出射することで前記車両の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されたレーダと、
前記レーダを前記車両の外部から隠蔽するように前記レーダに対向するように配置され、前記レーダから出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部と、
前記レーダに当接すると共に、前記隠蔽部に対する前記レーダの位置を決定するように構成された位置決め部と、を備える。
前記隠蔽部は、前記ランプカバーと一体的に形成されている。
前記位置決め部は、前記隠蔽部と一体的に形成されていると共に、前記隠蔽部と前記レーダとの間に配置されている。
【0015】
上記構成によれば、隠蔽部と一体的に形成された位置決め部によって隠蔽部に対するレーダの位置が決定される。また、隠蔽部はランプカバーと一体的に形成されている。このように、車両に対する車両用灯具の位置決めが完了した時点で、車両に対するレーダの位置決めも同時に完了する。したがって、車両に対するレーダの位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができると共に、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0016】
本開示の一態様に係る車両用灯具は、
ランプハウジングと、
前記ランプハウジングの開口部を覆うランプカバーと、
前記ランプハウジングと前記ランプカバーとによって形成された灯室内に配置された照明ユニットと、
電波を車両の外部に向けて出射することで前記車両の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されたレーダと、
前記レーダを前記車両の外部から隠蔽するように前記レーダに対向するように配置され、前記レーダから出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部と、
前記レーダを支持及び固定するように構成された支持部材と、
前記支持部材に当接すると共に、前記隠蔽部に対する前記支持部材の位置を決定するように構成された位置決め部と、を備える。
前記隠蔽部は、前記ランプカバーと一体的に形成されている。
前記位置決め部は、前記隠蔽部と一体的に形成されていると共に、前記隠蔽部と前記支持部材との間に配置されている。
【0017】
上記構成によれば、隠蔽部と一体的に形成された位置決め部によって隠蔽部に対する支持部材の位置が決定される。また、隠蔽部はランプカバーと一体的に形成されていると共に、支持部材によってレーダが固定及び支持されている。このように、車両に対する車両用灯具の位置決めが完了した時点で、車両に対するレーダの位置決めも同時に完了する。したがって、車両に対するレーダの位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができると共に、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0018】
本開示の一態様に係るレーダモジュールは、車両用灯具に取り付けられ、
電波を車両の外部に向けて出射することで前記車両の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されたレーダと、
前記レーダを前記車両の外部から隠蔽するように前記レーダに対向するように配置され、前記レーダから出射された電波を通過させるように構成された隠蔽部と、
前記レーダを支持及び固定するように構成された支持部材と、
を備える。
前記隠蔽部及び前記支持部材のうちの少なくとも一方は、前記車両用灯具に対する前記レーダモジュールの位置を決定するように構成された位置決め部を有する。
【0019】
上記構成によれば、隠蔽部及び支持部材のうちの少なくとも一方が車両用灯具に対するレーダモジュールの位置を決定するように構成された位置決め部を有する。このように、位置決め部によって車両用灯具に対するレーダモジュールの位置を決定することができる。また、車両に対する車両用灯具の位置決めが既に完了している場合には、車両用灯具に対するレーダモジュールの位置決めが完了した時点で、車両に対するレーダの位置決めが完了する。このように、車両に対するレーダの位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができると共に、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能なレーダモジュールを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、レーダによって取得されたレーダデータの信頼性を確保しつつ、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具及び車両を提供することができる。
【0021】
また、本開示によれば、外部からの放射熱に対するレーダの信頼性を確保しつつ、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具及び車両を提供することができる。
【0022】
また、本開示によれば、車両に対するレーダ位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができると共に、レーダを車両の外部から隠蔽することが可能な車両用灯具、レーダモジュール及び車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る左側車両用灯具及び右側車両用灯具を備えた車両の正面図である。
【
図3】隠蔽部によって反射された反射電波を示す図である。
【
図4】レーダと、支持部材と、隠蔽部を示す水平方向の断面図である。
【
図5】(a)は、本実施形態に係るスペーサとレーダのみを示す正面図である。(b)は、変形例に係るスペーサとレーダのみを示す正面図である。
【
図6】レーダと、支持部材と、隠蔽部を示す水平方向の断面図である。
【
図7】第1実施形態の第2変形例に係る右側車両用灯具の垂直方向の断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る左側車両用灯具及び右側車両用灯具を備えた車両の正面図である。
【
図10】電波吸収カバーとレーダのみを示す正面図である。
【
図11】レーダと、支持部材と、隠蔽部と、電波吸収カバーを示す水平方向の断面図である。
【
図12】第3実施形態に係る左側車両用灯具及び右側車両用灯具を備えた車両の正面図である。
【
図13】右側車両用灯具の垂直方向の断面図である。
【
図14】レーダと、支持部材と、隠蔽部とを示す水平方向の断面図である。
【
図15】第3実施形態に係る位置決め部と、レーダと、隠蔽部とを示す正面図である。
【
図16】レーダと、支持部材と、隠蔽部とを示す水平方向の断面図である。
【
図17】第3実施形態の変形例に係る位置決め部と、レーダと、隠蔽部とを示す正面図である。
【
図18】第4実施形態に係る左側車両用灯具及び右側車両用灯具を備えた車両の正面図である。
【
図19】右側車両用灯具及び右側レーダモジュールの垂直方向の断面図である。
【
図20】変形例に係る位置決め部及びその周辺を示す拡大図である。
【
図21】隠蔽部によって反射された反射電波を示す図である。
【
図22】右側レーダモジュールの水平方向の断面図である。
【
図23】位置決め部と、レーダと、隠蔽部とを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態(以下、単に「本実施形態」という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0025】
本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。尚、
図1では「前後方向」は示されていないが、「前後方向」は、左右方向及び上下方向に垂直な方向である。
【0026】
また、本実施形態では、車両1の「水平方向」について言及されるが、「水平方向」は、上下方向(垂直方向)に垂直な方向であって、左右方向と前後方向を含む方向である。さらに、本実施形態では、右側車両用灯具2R及び左側車両用灯具2Lについて設定された方向(左右方向、上下方向、前後方向)は、車両1に設定された方向(左右方向、上下方向、前後方向)に一致するものとする。
【0027】
最初に、
図1を参照して本実施形態に係る車両1について説明する。
図1は、左側車両用灯具2Lと右側車両用灯具2Rを備えた車両1の正面図である。
図1に示すように、車両1の左前側に左側車両用灯具2Lが配置されていると共に、車両1の右前側に右側車両用灯具2Rが配置されている。左側車両用灯具2L及び右側車両用灯具2Rの各々は、ロービーム用照明ユニット3と、ハイビーム用照明ユニット4と、レーダ5と、レーダ5を隠蔽する隠蔽部6とを備える。
【0028】
本実施形態では、左側車両用灯具2L及び右側車両用灯具2Rは同様の構成を備えているものとする。したがって、以降の説明では、右側車両用灯具2Rの具体的構成について
図2を参照して説明する。また、説明の便宜上、左側車両用灯具2Lと右側車両用灯具2Rを総称して単に「車両用灯具2」という場合がある。
【0029】
ロービーム用照明ユニット3は、車両1の前方に向けてロービーム用配光パターンを出射するように構成されている。ハイビーム用照明ユニット4は、車両1の前方に向けてハイビーム用配光パターンを出射するように構成されている。
【0030】
レーダ5は、車両1の外部に向けて電波(例えば、ミリ波やマイクロ波)を出射することで車両1の周辺環境を示すレーダデータを取得するように構成されている。レーダ5は、例えば、ミリ波レーダ又はマイクロ波レーダである。図示しない車両制御部(車載コンピュータ)は、レーダ5から出力されたレーダデータに基づいて、車両1の周辺環境(特に、車両1の外部に存在する対象物に関する情報)を特定するように構成されている。
【0031】
レーダ5は、アンテナ部53と、通信回路部54とを備える(
図5参照)。アンテナ部53は、電波(例えば、波長が1mmから10mmのミリ波)を空中に放射するように構成された一以上の送信アンテナと、対象物によって反射された反射電波を受信するように構成された一以上の受信アンテナとを備える。アンテナ部53は、パッチアンテナ(基板上に形成された金属パターン)として構成されてもよい。送信アンテナから放射された放射電波が他車両等の対象物によって反射された上で、対象物からの反射電波が受信アンテナによって受信される。
【0032】
通信回路部54は、送信側RF(無線周波数)回路と、受信側RF回路と、信号処理回路とを備える。通信回路部は、モノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC)として構成されている。送信側RF回路は、送信アンテナに電気的に接続される。受信側RF回路は、受信アンテナに電気的に接続される。信号処理回路は、受信側RF回路から出力されたデジタル信号を処理することでレーダデータを生成するように構成されている。
【0033】
アンテナ部53と通信回路部54はケース内に収容されてもよい。また、アンテナ部53は、レドームにより覆われてもよい。
【0034】
隠蔽部6は、レーダ5を車両1の外部から隠蔽するようにレーダ5に対向するように配置されている。また、隠蔽部6は、レーダ5から出射された電波を透過させるように構成されている。隠蔽部6は、例えば、不透明な樹脂部材により構成されてもよい。特に、隠蔽部6は、黒色等の所定の色で着色された樹脂部材により構成されていてもよい。また、隠蔽部6は、多数の微細なプリズムを有するリフレックスリフレクタにより構成されてもよい。この場合、外部からの光は、リフレックスリフレクタのプリズムにより全反射されるため、リフレックスリフレクタによりレーダ5を外部から隠蔽することが可能となる。このように、隠蔽部6によってレーダ5を車両1の外部から隠蔽することができ、右側車両用灯具2Rの外観のデザイン性を向上させることが可能となる。
【0035】
図2は、右側車両用灯具2Rの垂直方向(上下方向)の断面図である。
図2に示すように、右側車両用灯具2Rは、ランプハウジング14と、ランプハウジング14の開口部を覆うランプカバー12と、支持部材8とをさらに備える。ランプハウジング14は、例えば、金属部材により形成されてもよい。ランプカバー12は、例えば、透明の樹脂部材により形成されてもよい。ロービーム用照明ユニット3及びハイビーム用照明ユニット4は、ランプハウジング14とランプカバー12とによって形成された灯室S内に配置されている。
【0036】
尚、本実施形態では、ハイビーム用照明ユニット4の代わりに、照射領域と非照射領域とを有するADB(Adaptive Driving Beam)用配光パターンを出射するADB用照明ユニットが灯室S内に配置されてもよい。また、LiDARユニットやカメラが灯室S内に配置されてもよい。
【0037】
支持部材8は、金属製のブラケットであって、レーダ5を支持及び固定するように構成されている。支持部材8は、ネジ22を介してランプハウジング14に固定されている(
図4参照)。支持部材8は、ランプハウジング14から下方に延びている。また、レーダ5及び支持部材8は、灯室S外に配置されているため、ロービーム用照明ユニット3やハイビーム用照明ユニット4から発生した熱によってレーダ5の動作が悪影響を受けることが好適に防止される。
【0038】
隠蔽部6は、ランプカバー12と一体的に形成されていると共に、ランプカバー12から下方に延びている。隠蔽部6がランプカバー12に一体的に形成されているため、隠蔽部6を右側車両用灯具2Rに取り付けるための作業工程が省略され、右側車両用灯具2Rの組み立て作業の工程数を減らすことができる。隠蔽部6とランプカバー12は、金型を用いた二色成形により一体的に形成されてもよい。隠蔽部6とランプカバー12が二色成形により一体的に形成される場合には、隠蔽部6とランプカバー12との間の境界部B又はその付近において、隠蔽部6及びランプカバー12に突出部C1,C2が形成されてしまう。このため、本実施形態では、隠蔽部6とランプカバー12との間の境界部Bがレーダ5の垂直方向の視野Fv外に配置されるように隠蔽部6とレーダ5との間の相対的位置関係が調整されている。
【0039】
このように、隠蔽部6とランプカバー12との境界部Bがレーダ5の視野Fv外に配置されているので、レーダ5の視野Fv内に存在する電波が突出部C1,C2に反射された結果、当該反射電波がレーダ5の受信アンテナに入射することでレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。このため、右側車両用灯具2Rに搭載されたレーダ5によって取得されるレーダデータの信頼性を確保しつつ、レーダ5を車両1の外部から隠蔽することができる。
【0040】
レーダ5の水平方向における視野Fh(
図4参照)は、例えば、120°から180°の範囲内であってもよい。換言すれば、レーダ5の視野Fhは、レーダ5の中心軸に対して±60°から±90°の範囲内であってもよい。レーダ5の垂直方向の視野Fvは、例えば、3°から100°の範囲内であってもよい。尚、レーダ5の視野とは、レーダ5の検出範囲と同義である。
【0041】
また、
図2に示すように、レーダ5の視野Fvの両端に隣接する角度領域としてマージン角度領域Mが定義される。マージン角度領域Mに存在する電波の強度は、視野Fvに存在する電波の強度よりも十分に小さい一方で、電波を反射する金属部材の配置がマージン角度領域M内において禁止される。マージン角度領域Mは、例えば、3°から5°の範囲内であってもよい。本実施形態では、隠蔽部6とランプカバー12との間の境界部Bは、視野Fv外に配置される一方で、マージン角度領域M内に配置されてもよい。
【0042】
境界部Bがマージン角度領域M内に配置されていても、マージン角度領域Mに存在する電波の強度は弱いため、境界部Bによって反射された反射電波の強度は十分に弱い。このため、当該反射電波がレーダ5の受信アンテナに入射してもレーダデータには悪影響を与えない。このように、例えば、照明ユニットとレーダ5を互いに近接して配置する場合において、隠蔽部6の領域を極力小さくすることができる。
【0043】
また、レーダ5と隠蔽部6との間の相対的位置関係に関連して、前後方向における隠蔽部6とレーダ5との間の距離dは、20mm以上100mm以下に設定されてもよい。隠蔽部6とレーダ5との間の距離dが20mm以上の場合には、レーダ5から出射されて隠蔽部6によって反射された反射電波は、レーダ5の受信アンテナに至るまでに十分に減衰する。このため、レーダ5によって受信された反射電波がノイズ成分としてレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。
【0044】
一方、隠蔽部6とレーダ5との間の距離が100mm以下の場合には、レーダ5の視野内に存在する電波の一部が隠蔽部6を通過できない状況を回避することができる。即ち、隠蔽部6を通過できない電波の一部が隠蔽部6とランプカバー12との境界部Bやその他の光学部品によって反射された結果、当該反射電波がノイズ成分としてレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。
【0045】
次に、
図3を参照して隠蔽部6の前後方向における厚さtについて以下に説明する。
図3は、隠蔽部6によって反射された反射電波R1,R2を示す図である。
図3に示す隠蔽部6の厚さtは、以下式(1)によって規定される。
【数1】
ここで、λはレーダ5から出射される電波の波長である。ε
rは隠蔽部6の比誘電率、nは1以上の整数である。
【0046】
このように、隠蔽部6の厚さtが上記式(1)に規定される厚さに設定される場合には、レーダ5に対向する隠蔽部6の一方の面62で反射される反射電波R2と、当該一方の面62とは反対側に位置する隠蔽部6の他方の面63で反射される反射電波R1とが互いに弱め合う。具体的には、反射電波R2と反射電波R1との間の位相差Δθが(2m+1)π(mはゼロ以上の整数)となるため、反射電波R1と反射電波R2は互いに弱め合う。この結果、レーダ5から出射された電波に対する隠蔽部6の反射率を低くすることができる。したがって、隠蔽部6によって反射された反射電波の強度が弱くなるため、当該反射電波がレーダ5により受信されることでノイズ成分としてレーダデータに悪影響を及ぼす状況を回避することができる。例えば、レーダ5の電波の波長λが3.922mm、隠蔽部6の比誘電率εrが2、n=1とした場合に、隠蔽部6の厚さtは1.386mmとなる。
【0047】
次に、
図4を主に参照することで、レーダ5と、支持部材8と、隠蔽部6の各構造について具体的に説明する。
図4は、レーダ5と、支持部材8と、隠蔽部6とを示す水平方向の断面図である。
図4に示すように、支持部材8は、固定手段であるネジ22を介してランプハウジング14に固定されている。レーダ5は、支持部材8に設けられたランス23によって支持及び固定されている。レーダ5は、前面51と、前面51とは反対側に位置する後面52と、前面51と後面52との間に位置する側面55とを有する。レーダ5の前面51、後面52及び側面55は、レーダ5のケースの前面、後面及び側面にそれぞれ相当してもよい。レーダ5のアンテナ部53(送信アンテナ)から出射された電波は、前面51を通過することで空中に放射される。また、車両1の外部に存在する対象物によって反射された反射電波は、前面51を通過することでアンテナ部53(受信アンテナ)に入射する。
【0048】
レーダ5の後面52と支持部材8との間にはスペーサ20a,20bが設けられている。スペーサ20a,20bの熱伝導率は、支持部材8の熱伝導率よりも低くてもよい。
図5の(a)に示すように、スペーサ20a(第1スペーサの一例)は、レーダ5の後面52及び側面55に当接すると共に、レーダ5の側面55に沿って上下方向に延びている。同様に、スペーサ20b(第2スペーサの一例)は、レーダ5の後面52及び側面55に当接すると共に、レーダ5の側面55に沿って上下方向に延びている。スペーサ20aは、空気層30を介して左右方向(第1の方向の一例)においてスペーサ20bと対向している。
【0049】
このように、互いに離間した2つのスペーサ20a,20bがレーダ5と支持部材8との間に設けられているため、レーダ5の後面52と支持部材8との間に空気層30(断熱層の一例)を比較的容易に設けることができる。
【0050】
本実施形態によれば、支持部材8とレーダ5の後面52との間に断熱層として機能する空気層30が設けられているため、レーダ5の後方に存在するエンジン(外部熱源)から放射された熱が支持部材8を介してレーダ5の後面52に伝達しにくくなる。このため、エンジンからの放射熱によってレーダ5(特に、通信回路部54)の動作性能が低下することが好適に防止されうる。したがって、外部からの放射熱に対するレーダ5の信頼性を確保しつつ、レーダ5を車両1の外部から隠蔽することができる。
【0051】
この点において、スペーサ20a,20bがレーダ5と支持部材8との間に設けられない場合には、レーダ5の後面52が支持部材8に直接接触する。このため、エンジンからの放射熱は、熱伝導率が高い支持部材8からレーダ5の後面52に伝達されやすくなる。このため、エンジンからの放射熱によってレーダ5の動作性能が大きく低下してしまう虞がある。
【0052】
また、スペーサ20a,20bの熱伝導率が支持部材8の熱伝導率よりも低い場合には、エンジンからの放射熱が支持部材8を介してレーダ5により伝達されにくくなる。このため、スペーサ20a,20bは、金属部材からなる支持部材8よりも熱伝導率が低い部材により構成されてもよい。
【0053】
尚、本実施形態では、2つのスペーサ20a,20bが採用されているが、
図5の(b)に示すように4つのスペーサ20c~20fが支持部材8とレーダ5の後面52との間に設けられてもよい。この場合もスペーサ20c~20fの各々は、レーダ5の後面52及び側面55に当接する。また、スペーサ20c~20dの各々は、レーダ5の四隅のうちの一つに対応する位置に配置されてもよい。
【0054】
スペーサ20d(第2スペーサの一例)は、空気層30を介して左右方向(第1の方向の一例)においてスペーサ20c(第1スペーサの一例)と対向するように配置されている。スペーサ20e(第3スペーサの一例)は、空気層30を介して上下方向(第2の方向の一例)においてスペーサ20cに対向するように配置されている。スペーサ20f(第4スペーサの一例)は、空気層30を介して上下方向においてスペーサ20dと対向すると共に、空気層30を介して左右方向においてスペーサ20eと対向するように配置されている。
【0055】
このように、
図5の(b)に示す4つのスペーサ20c~20dを支持部材8とレーダ5との間に設けることで、レーダ5の後面52と空気層30との接触面積をさらに増大させることができる。このため、
図5の(a)に示す構造と比較して、エンジンからの放射熱がレーダ5により更に伝達しにくくなる。
【0056】
また、上記したように、レーダ5と隠蔽部6は、前後方向において距離d(
図1参照)だけ離間している。レーダ5と隠蔽部6との間の相対的位置関係は、位置決め部9a,9bによって決定される。特に、位置決め部9aに設けられた凹部92aが支持部材8の前面82上に設けられたリブ18aに係合することで、位置決め部9aは、隠蔽部6に対する支持部材8の位置を決定するように構成されている。同様に、位置決め部9bに設けられた凹部92bが支持部材8の前面82上に設けられたリブ18bに係合することで、位置決め部9bは、隠蔽部6に対する支持部材8の位置を決定するように構成されている。また、位置決め部9a,9bは、隠蔽部6と一体的に形成されていると共に、隠蔽部6とレーダ5との間に配置されている。位置決め部9aは、左右方向においてレーダ5を介して位置決め部9bに対向している。
【0057】
このように、2つの位置決め部9a,9bによって隠蔽部6に対する支持部材8の位置が決定されるため、車両1に対する車両用灯具2の位置決めが完了した時点で、車両1に対するレーダ5の位置決めも同時に完了する。従って、位置決め部9a,9bによって車両1に対するレーダ5の位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができる。
【0058】
(第1変形例)
次に、
図6を参照することで変形例に係る支持部材8aについて以下に説明する。本例に係る支持部材8aによれば、スペーサを設けずに支持部材8aとレーダ5の後面52との間に空気層30aを設けることが可能となる。
【0059】
図6に示すように、レーダ5の後面52は支持部材8aの前面82と直接接触している。支持部材8aは、支持部材8aの前面82とは反対側に位置する後面83から突出する凸部85を有する。レーダ5の後面52と当該後面52に対向する凸部85との間に空気層30a(断熱層の一例)が設けられている。また、レーダ5の側面55は、支持部材8aに形成された段差部87a,87bに当接している。レーダ5の側面55及び後面52が段差部87a,87bに当接することで、支持部材8に対するレーダ5の位置を決定することができる。
【0060】
本変形例によれば、支持部材8aの凸部85によって支持部材8aとレーダ5の後面52との間に空気層30aを比較的容易に設けることができる。特に、スペーサ等の追加となる構成部品を新たに用意せずに、後面52と支持部材8aとの間に空気層30aを設けることが可能となる。
【0061】
(第2変形例)
次に、
図7を参照して変形例に係る右側車両用灯具200Rについて以下に説明する。
図7は、変形例に係る右側車両用灯具200Rの垂直方向の断面図である。変形例に係る右側車両用灯具200Rは、レーダ5及び支持部材80が灯室S内に配置されている点で本実施形態に係る右側車両用灯具2Rと主に相違する。
【0062】
図7に示すように、右側車両用灯具200Rは、ランプハウジング140と、ランプハウジング140の開口部を覆うランプカバー120と、ランプハウジング140とランプカバー120とによって形成された灯室S内に配置されたロービーム用照明ユニット3と図示しないハイビーム用照明ユニットとを備える。右側車両用灯具200Rは、レーダ5と、ランプハウジング140に固定され、レーダ5を支持及び固定する支持部材80と、レーダ5を車両1の外部から隠蔽するようにレーダ5に対向するように配置された隠蔽部60とをさらに備える。
【0063】
隠蔽部60は、ランプカバー120と一体的に形成されていると共に、ランプカバー120から下方に延びている。この点において、隠蔽部60とランプカバー120は、金型を用いた二色成形により一体的に形成されてもよい。隠蔽部60とランプカバー120が二色成形により一体的に形成される場合には、隠蔽部60とランプカバー120との間の境界部B2又はその付近において、隠蔽部60及びランプカバー120に突出部C3,C4が形成されてしまう。このため、本変形例では、隠蔽部60とランプカバー120との間の境界部B2がレーダ5の垂直方向の視野Fv外に配置されるように隠蔽部60とレーダ5との間の相対的位置関係が調整されている。
【0064】
このように、隠蔽部60とランプカバー120との境界部B2がレーダ5の視野Fv外に配置されているので、レーダ5の視野Fv内に存在する電波が突出部C3,C4に反射された結果、当該反射電波がレーダ5の受信アンテナに入射することでレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。このため、右側車両用灯具2Rに搭載されたレーダ5によって取得されるレーダデータの信頼性を確保しつつ、レーダ5を車両1の外部から隠蔽することができる。また、隠蔽部6とランプカバー12との間の境界部B2は、視野Fv外に配置される一方で、マージン角度領域M内に配置されてもよい。
【0065】
また、本変形例によれば、レーダ5が灯室内に配置されているため、右側車両用灯具2R全体の寸法が大型化されてしまう状況が好適に防止される。
【0066】
(第2実施形態)
以下、本開示の第2実施形態(以下、単に「本実施形態」という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。以降では、第1実施形態で説明された構成要素と同一の参照番号を有する構成要素についての詳細な説明は繰り返し行わない。
【0067】
最初に、
図8を参照して本実施形態に係る車両1Aについて説明する。
図8は、左側車両用灯具102Lと右側車両用灯具102Rを備えた車両1Aの正面図である。
図8に示すように、車両1Aの左前側に左側車両用灯具102Lが配置されていると共に、車両1Aの右前側に右側車両用灯具102Rが配置されている。左側車両用灯具102L及び右側車両用灯具102Rの各々は、ロービーム用照明ユニット3と、ハイビーム用照明ユニット4と、レーダ5と、レーダ5を隠蔽する隠蔽部6とを備える。
【0068】
本実施形態では、左側車両用灯具102L及び右側車両用灯具102Rは同様の構成を備えているものとする。したがって、以降の説明では、右側車両用灯具102Rの構成について
図9を参照して説明する。また、説明の便宜上、左側車両用灯具102Lと右側車両用灯具102Rを総称して単に「車両用灯具102」という場合がある。
【0069】
図9は、右側車両用灯具102Rの垂直方向(上下方向)の断面図である。
図9に示すように、右側車両用灯具102Rは、ランプハウジング14と、ランプハウジング14の開口部を覆うランプカバー12と、支持部材8と、電波吸収カバー7とをさらに備える。
【0070】
次に、
図10及び
図11を参照して、レーダ5と、支持部材8と、電波吸収カバー7の各構造について具体的に説明する。
図10は、電波吸収カバー7とレーダ5のみを示す正面図である。
図11は、レーダ5と、支持部材8と、隠蔽部6と、電波吸収カバー7を示す水平方向の断面図である。
【0071】
図11に示すように、支持部材8は、固定手段であるネジ22を介してランプハウジング14に固定されている。レーダ5は、支持部材8に設けられたランス23(弾性係合部材の一例)によって支持及び固定されている。レーダ5は、前面51と、前面51とは反対側に位置する後面52と、前面51と後面52との間に位置する側面55とを有する。レーダ5のアンテナ部53から出射された電波は、前面51を通じて空中に放射される。
【0072】
レーダ5と支持部材8との間にはスペーサ20a,20bが設けられている。スペーサ20a,20bの熱伝導率は、支持部材8の熱伝導率よりも低くてもよい。スペーサ20aは、左右方向においてスペーサ20bと対向している。スペーサ20a,20bの各々は、レーダ5の後面52及び側面55に当接している。このように、互いに離間した2つのスペーサ20a,20bがレーダ5と支持部材8との間に設けられているため、レーダ5の後面52と支持部材8との間に空気層30(断熱層の一例)が形成される。このように、支持部材8よりも熱伝導率が低い空気層30によって、支持部材8の後方に配置されたエンジン(図示せず)から放射された熱が支持部材8を介してレーダ5の後面52に伝達しにくくなる。このため、エンジンからの放射熱によってレーダ5(特に、通信回路部)の動作性能が低下することが好適に防止されうる。したがって、空気層30によって外部からの放射熱に対するレーダ5の信頼性を確保することができる。
【0073】
電波吸収カバー7は、レーダ5のアンテナ部53から出射された電波を吸収するように構成されている。電波吸収カバー7は、錐台として形成されたカバー本体73と、カバー本体73の内面上に設けられた電波吸収シート72とを備える。カバー本体73は、例えば、樹脂材料により形成されていてもよい。電波吸収シート72は、無機バインダーと、当該無機バインダー内に設けられた電波吸収粒子とにより形成されてもよい。電波吸収粒子の一例として、イプシロン型酸化鉄粒子や酸化チタン粒子が採用されてもよい。尚、電波吸収カバー7がカバー本体のみから構成される場合には、カバー本体は、電波吸収粒子が混入された樹脂材料により形成されてもよい。
【0074】
電波吸収カバー7は、レーダ5の視野F(水平方向の視野Fhと垂直方向の視野Fv)を囲むようにレーダ5の視野F外に配置されている。この点において、電波吸収カバー7は、レーダ5のアンテナ部53を囲むように設けられており、ネジ24(固定手段)を介して支持部材8に固定されている。特に、電波吸収カバー7のカバー本体73の端部は、ネジ24を介して支持部材8に設けられたリブ18a,18bに固定されている。また、電波吸収カバー7は、隠蔽部6によって車両1Aの外部から隠蔽されるように前後方向において隠蔽部6とレーダ5との間に配置されている。このように、隠蔽部6によって車両1Aの外部から電波吸収カバー7とレーダ5を隠蔽することができるため、右側車両用灯具102Rの外観のデザイン性が損なわれることが好適に防止されうる。
【0075】
本実施形態によれば、レーダ5から出射された電波を吸収する電波吸収カバー7がレーダ5のアンテナ部53を囲むように設けられている。このため、レーダ5の視野F内に存在する電波が隠蔽部6やその他の光学部品に反射された結果、反射電波がレーダ5のアンテナ部(特に、受信アンテナ)に入射することでレーダデータに悪影響を与える状況を好適に防止することが可能となる。このように、右側車両用灯具102Rに搭載されたレーダ5によって取得されるレーダデータの信頼性を確保しつつ、レーダ5を車両1Aの外部から隠蔽することが可能な右側車両用灯具102Rを提供することができる。特に、レーダ5は、車両1Aの外部に存在する対象物に反射された反射電波を確実に受信できる一方で、電波吸収カバー7の存在により、右側車両用灯具102R内に配置された光学部品によって内面反射された反射電波の受信を確実に回避することができる。
【0076】
また、電波吸収カバー7がレーダ5の視野F外に配置されているので、レーダ5から直接出射された視野F内の電波が電波吸収カバー7によって吸収されてしまう状況を回避することができる。さらに、電波吸収カバー7が支持部材8により固定されているため、レーダ5(アンテナ部53)に対する電波吸収カバー7の位置決め精度を高めることが可能となる。
【0077】
(第3実施形態)
以下、本開示の第3実施形態(以下、単に「本実施形態」という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。以降では、第1,2実施形態で説明された構成要素と同一の参照番号を有する構成要素についての詳細な説明は繰り返し行わない。
【0078】
最初に、
図12を参照して本実施形態に係る車両1Bについて説明する。
図12は、左側車両用灯具202Lと右側車両用灯具202Rを備えた車両1Bの正面図である。
図12に示すように、車両1Bの左前側に左側車両用灯具202Lが配置されていると共に、車両1Bの右前側に右側車両用灯具202Rが配置されている。左側車両用灯具202L及び右側車両用灯具202Rの各々は、ロービーム用照明ユニット3と、ハイビーム用照明ユニット4と、レーダ5と、レーダ5を隠蔽する隠蔽部6とを備える。
【0079】
本実施形態では、左側車両用灯具202L及び右側車両用灯具202Rは同様の構成を備えているものとする。したがって、以降の説明では、右側車両用灯具202Rの構成について
図13を参照して説明する。また、説明の便宜上、左側車両用灯具202Lと右側車両用灯具202Rを総称して単に「車両用灯具202」という場合がある。
【0080】
図13は、右側車両用灯具202Rの垂直方向(上下方向)の断面図である。
図13に示すように、右側車両用灯具202Rは、ランプハウジング14と、ランプハウジング14の開口部を覆うランプカバー12と、支持部材8とをさらに備える。ランプハウジング14は、例えば、金属部材により形成されてもよい。ランプカバー12は、例えば、透明の樹脂部材により形成されてもよい。ロービーム用照明ユニット3及びハイビーム用照明ユニット4は、ランプハウジング14とランプカバー12とによって形成された灯室S内に配置されている。
【0081】
次に、
図14を主に参照することで、レーダ5と、支持部材8と、隠蔽部6の各構造について具体的に説明する。
図14は、レーダ5と、支持部材8と、隠蔽部6とを示す水平方向の断面図である。
図14に示すように、支持部材8は、固定手段であるネジ22を介してランプハウジング14に固定されている。レーダ5は、支持部材8に設けられたランス23によって支持及び固定されている。レーダ5は、前面51と、前面51とは反対側に位置する後面52と、前面51と後面52との間に位置する側面55とを有する。レーダ5の前面51、後面52及び側面55は、レーダ5のケースの前面、後面及び側面にそれぞれ相当してもよい。レーダ5のアンテナ部53(送信アンテナ)から出射された電波は、前面51を通過することで空中に放射される。また、車両1Bの外部に存在する対象物によって反射された反射電波は、前面51を通過することでアンテナ部53(受信アンテナ)に入射する。
【0082】
レーダ5の後面52と支持部材8との間にはスペーサ120a,120bが設けられている。スペーサ120a,120bの熱伝導率は、支持部材8の熱伝導率よりも低くてもよい。スペーサ120aは、レーダ5の後面52に当接すると共に、レーダ5の側面55に沿って上下方向に延びている。同様に、スペーサ120bは、レーダ5の後面52に当接すると共に、レーダ5の側面55に沿って上下方向に延びている。スペーサ120aは、空気層30を介して左右方向においてスペーサ120bと対向している。
【0083】
このように、互いに離間した2つのスペーサ120a,120bがレーダ5と支持部材8との間に設けられているため、レーダ5の後面52と支持部材8との間に空気層30(断熱層の一例)を比較的容易に設けることができる。
【0084】
本実施形態によれば、支持部材8とレーダ5の後面52との間に断熱層として機能する空気層30が設けられているため、レーダ5の後方に存在するエンジン(外部熱源)から放射された熱が支持部材8を介してレーダ5の後面52に伝達しにくくなる。このため、エンジンからの放射熱によってレーダ5(特に、通信回路部54)の動作性能が低下することが好適に防止されうる。したがって、外部からの放射熱に対するレーダ5の信頼性を確保しつつ、レーダ5を車両1Bの外部から隠蔽することができる。
【0085】
この点において、スペーサ120a,120bがレーダ5と支持部材8との間に設けられない場合には、レーダ5の後面52が支持部材8に直接接触する。このため、エンジンからの放射熱は、熱伝導率が高い支持部材8からレーダ5の後面52に伝達されやすくなる。このため、エンジンからの放射熱によってレーダ5の動作性能が大きく低下してしまう虞がある。
【0086】
また、スペーサ120a,120bの熱伝導率が支持部材8の熱伝導率よりも低い場合には、エンジンからの放射熱が支持部材8を介してレーダ5により伝達されにくくなる。このため、スペーサ120a,120bは、金属部材からなる支持部材8よりも熱伝導率が低い部材により構成されてもよい。
【0087】
次に、
図14及び
図15を参照することで位置決め部19a~19dについて以下に説明する。
図15は、位置決め部19a~19dと、レーダ5と、隠蔽部6とを示す正面図である。
図14及び
図15に示すように、位置決め部19a~19dの各々は、レーダ5に当接することで、隠蔽部6に対するレーダ5の位置を決定するように構成されている。換言すれば、レーダ5と隠蔽部6との間の相対的位置関係は、位置決め部19a~19dによって決定されている。
【0088】
位置決め部19a~19dの各々は、レーダ5の前面51と側面55に当接する凹部を有する。この点において、
図14に示すように、位置決め部19aは、前面51と側面55に当接する凹部192aを有する。位置決め部19bは、前面51と側面55に当接する凹部192bを有する。各位置決め部の凹部がレーダ5の前面51と側面55に当接することで、隠蔽部6に対するレーダ5の位置を確実に決定することができる。
【0089】
特に、各位置決め部19a~19dがレーダ5に当接した状態で、ネジ22を介してレーダ5を支持する支持部材8がランプハウジング14に固定される。このように、位置決め部19a~19dを用いることで隠蔽部6に対するレーダ5の位置を確実に決定することが可能となる。
【0090】
また、位置決め部19a~19dの各々は、隠蔽部6と一体的に形成されており、前後方向において隠蔽部6とレーダ5との間に配置されている。位置決め部19a~19dは、隠蔽部6と同一の材料(例えば、不透明な樹脂材料)により形成されてもよい。例えば、隠蔽部6と位置決め部19a~19dは、金型を用いた射出成形により一体的に形成されてもよい。
【0091】
図15に示すように、位置決め部19a(第1位置決め部の一例)は、左右方向において位置決め部19b(第2位置決め部の一例)と対向している。レーダ5は、左右方向において位置決め部19aと位置決め部19bとの間に配置されている。位置決め部19cは、上下方向において位置決め部19aと対向している。位置決め部19dは、上下方向において位置決め部19bと対向すると共に、左右方向において位置決め部19cと対向している。
【0092】
尚、本実施形態では、4つの位置決め部19a~19dによって隠蔽部6に対するレーダ5の位置が決定されているが、位置決め部の個数は4つに限定されるものではない。例えば、位置決め部の個数は2つであってもよい。この場合、左右方向において、2つの位置決め部の一方がレーダ5を介して他方の位置決め部と対向していることが好ましい。さらに、2つの位置決め部が、レーダ5の側面55に沿って延出してもよい。2以上の位置決め部を設けることで、隠蔽部6に対するレーダ5の位置を確実に決定することが可能となる。
【0093】
本実施形態によれば、隠蔽部6と一体的に形成された位置決め部19a~19dによって隠蔽部6に対するレーダ5の位置が決定されていると共に、隠蔽部6はランプカバー12と一体的に形成されている。このように、車両1Bに対する右側車両用灯具202Rの位置決めが完了した時点で、車両1Bに対するレーダ5の位置決めも同時に完了する。したがって、車両1Bに対するレーダ5の位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができると共に、レーダ5を車両1Bの外部から隠蔽することができる。
【0094】
(変形例)
次に、
図16及び
図17を参照することで変形例に係る位置決め部29a~29dについて以下に説明する。
図16は、レーダ5と、支持部材8と、隠蔽部6とを示す水平方向の断面図である。
図17は、変形例に係る位置決め部29a~29dと、レーダ5と、隠蔽部6とを示す正面図である。
【0095】
図16及び
図17に示すように、位置決め部29a~29dの各々は、レーダ5を支持及び固定する支持部材8に当接することで、隠蔽部6に対する支持部材8の位置を決定するように構成されている。本変形例では、レーダ5は支持部材8によって位置決めされているため、支持部材8と隠蔽部6との相対的位置関係の決定に伴い、レーダ5と隠蔽部6との間の相対的位置関係が決定される。
【0096】
位置決め部29a~29dの各々は、支持部材8の前面82から突出するリブ18a,18bに当接する凹部を有する。この点において、位置決め部29aは、リブ18aの前面180a及び側面182aに当接する凹部94aを有する。位置決め部29bは、リブ18bの前面180b及び側面182bに当接する凹部94bを有する。各位置決め部の凹部が支持部材8に形成されたリブに当接することで、隠蔽部6に対する支持部材8の位置を確実に決定することができる。
【0097】
特に、各位置決め部29a~29dが支持部材8に当接した状態で、支持部材8がネジ22を介してランプハウジング14に固定される。このように、位置決め部29a~29dを用いることで隠蔽部6に対する支持部材8の位置を確実に決定することが可能となる。
【0098】
また、位置決め部29a~29dの各々は、隠蔽部6と一体的に形成されており、前後方向において隠蔽部6とレーダ5との間に配置されている。位置決め部29a~29dは、隠蔽部6と同一の材料(例えば、不透明な樹脂材料)により形成されてもよい。例えば、隠蔽部6と位置決め部29a~29dは、金型を用いた射出成形により一体的に形成されてもよい。
【0099】
図17に示すように、位置決め部29a(第1位置決め部の一例)は、左右方向において位置決め部29b(第2位置決め部の一例)と対向している。レーダ5は、左右方向において位置決め部29aと位置決め部29bとの間に配置されている。位置決め部29cは、上下方向において位置決め部29aと対向している。位置決め部29dは、上下方向において位置決め部29bと対向すると共に、左右方向において位置決め部29cと対向している。
【0100】
尚、本変形例でも同様に、位置決め部の個数は4つに限定されるものではない。例えば、位置決め部の個数は2つであってもよい。この場合、左右方向において、2つの位置決め部の一方がレーダ5を介して他方の位置決め部と対向していることが好ましい。さらに、2つの位置決め部の一方が、支持部材8のリブ18aの側面182aに沿って延出している一方で、2つの位置決め部の他方が、支持部材8のリブ18bの側面182bに沿って延出してもよい。
【0101】
本実施形態によれば、隠蔽部6と一体的に形成された位置決め部29a~29dによって隠蔽部6に対する支持部材8の位置が決定される。また、隠蔽部6はランプカバー12と一体的に形成されていると共に、支持部材8によってレーダ5が固定されている。このように、車両1Bに対する右側車両用灯具202Rの位置決めが完了した時点で、車両1Bに対するレーダ5の位置決めも同時に完了する。したがって、車両1Bに対するレーダ5の位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができると共に、レーダ5を車両1Bの外部から隠蔽することができる。
【0102】
(第4実施形態)
以下、本開示の第4実施形態(以下、単に「本実施形態」という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。以降では、第1実施形態から第3実施形態で説明された構成要素と同一の参照番号を有する構成要素についての詳細な説明は繰り返し行わない。
【0103】
最初に、
図18を参照して本実施形態に係る車両1Cについて説明する。
図18は、左側車両用灯具302Lと右側車両用灯具302Rを備えた車両1Cの正面図である。
図18に示すように、車両1Cの左前側に左側車両用灯具302Lが配置されていると共に、車両1Cの右前側に右側車両用灯具302Rが配置されている。左側車両用灯具302L及び右側車両用灯具302Rの各々は、ロービーム用照明ユニット3と、ハイビーム用照明ユニット4とを備える。
【0104】
また、左側レーダモジュール17Lが左側車両用灯具302Lの下方に配置されている。右側レーダモジュール17Rが右側車両用灯具302Rの下方に配置されている。左側レーダモジュール17Lと右側レーダモジュール17Rの各々は、レーダ5と、レーダ5を隠蔽する隠蔽部6aとを備える。
【0105】
本実施形態では、左側車両用灯具302L及び右側車両用灯具302Rは同様の構成を備えているものとする。したがって、以降の説明では、右側車両用灯具302Rの具体的構成についてのみ
図19を参照して説明する。また、説明の便宜上、左側車両用灯具302Lと右側車両用灯具302Rを総称して単に「車両用灯具302」という場合がある。
【0106】
同様に、左側レーダモジュール17Lは右側レーダモジュール17Rと同様の構成を備えているものとする。したがって、以降の説明では、右側レーダモジュール17Rの具体的構成についてのみ
図19を参照して説明する。また、説明の便宜上、左側レーダモジュール17Lと右側レーダモジュール17Rを総称して単に「レーダモジュール17」という場合がある。
【0107】
隠蔽部6aは、レーダ5を車両1Cの外部から隠蔽するようにレーダ5に対向するように配置されている。また、隠蔽部6aは、レーダ5から出射された電波を透過させるように構成されている。隠蔽部6aは、例えば、不透明な樹脂部材により構成されてもよい。特に、隠蔽部6aは、黒色等の所定の色で着色された樹脂部材により構成されていてもよい。また、隠蔽部6aは、多数の微細なプリズムを有するリフレックスリフレクタにより構成されてもよい。この場合、外部からの光は、リフレックスリフレクタのプリズムにより全反射されるため、リフレックスリフレクタによりレーダ5を外部から隠蔽することが可能となる。このように、隠蔽部6aによってレーダ5を車両1Cの外部から隠蔽することができ、右側車両用灯具302Rの外観のデザイン性を向上させることが可能となる。
【0108】
図19は、右側車両用灯具302R及び右側レーダモジュール17Rの垂直方向(上下方向)の断面図である。
図19に示すように、右側車両用灯具302Rは、ランプハウジング14aと、ランプハウジング14aの開口部を覆うランプカバー12aをさらに備える。ランプハウジング14aは、例えば、金属部材により形成されてもよい。ランプカバー12aは、例えば、透明の樹脂部材により形成されてもよい。ロービーム用照明ユニット3及びハイビーム用照明ユニット4は、ランプハウジング14aとランプカバー12aとによって形成された灯室S内に配置されている。
【0109】
尚、本実施形態では、ハイビーム用照明ユニット4の代わりに、照射領域と非照射領域とを有するADB(Adaptive Driving Beam)用配光パターンを出射するADB用照明ユニットが灯室S内に配置されてもよい。また、LiDARユニットやカメラが灯室S内に配置されてもよい。
【0110】
図19に示すように、右側レーダモジュール17Rは、支持部材8aをさらに備える。支持部材8aは、金属製のブラケットであって、レーダ5を支持及び固定するように構成されている。支持部材8aは、ネジ22を介してランプハウジング14aに固定されている(
図22参照)。また、右側レーダモジュール17Rが右側車両用灯具302Rの灯室S外に配置されているため、ロービーム用照明ユニット3やハイビーム用照明ユニット4から発生した熱によってレーダ5の動作が悪影響を受けることが好適に防止される。
【0111】
また、支持部材8aは、上端部において、ランプハウジング14aに形成された溝部142に係合する位置決め部80a(第2位置決め部の一例)を有すると共に、ランプハウジング14aから下方に延びている。位置決め部80aは、例えば、左右方向に延びる係合突起部として形成されてもよい。また、溝部142は、左右方向に延びるように形成されてもよい。位置決め部80aは、溝部142に係合することで、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置を決定するように構成されている。換言すれば、位置決め部80aの外側面が溝部142の内壁面に当接することで、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置が決定されうる。
【0112】
隠蔽部6aは、上端部において、ランプカバー12aに形成された溝部122に係合する位置決め部65(第1位置決め部の一例)を有すると共に、ランプカバー12aから下方に延びている。位置決め部65は、例えば、左右方向に延びる係合突起部として形成されてもよい。また、溝部122は、左右方向に延びるように形成されてもよい。位置決め部65は、溝部122に係合することで、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置を決定するように構成されている。換言すれば、位置決め部65の外側面が溝部122の内壁面に当接することで、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置が決定されうる。
【0113】
尚、隠蔽部6aの位置決め部65は、係合突起部として形成されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、
図20に示すように、変形例に係る隠蔽部6Aは、左右方向に延びる係合溝部として形成された位置決め部65Aを有してもよい。また、変形例に係るランプカバー12aAは、左右方向に延びる係合突起部122Aを有してもよい。位置決め部65Aは、係合突起部122Aに係合することで、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置を決定するように構成されている。換言すれば、係合突起部122Aの外側面が位置決め部65Aの内壁面に当接することで、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置が決定されてもよい。
【0114】
また、隠蔽部6aとランプカバー12aとの間の境界(即ち、位置決め部65の周辺)がレーダ5の垂直方向の視野Fv外に配置されるように隠蔽部6aとレーダ5との間の相対的位置関係が調整されてもよい。
【0115】
隠蔽部6aとランプカバー12aとの間の境界がレーダ5の視野Fv外に配置されているので、レーダ5の視野Fv内に存在する電波が当該境界によって反射された結果、当該反射電波がレーダ5の受信アンテナに入射することでレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。このため、右側車両用灯具302Rに搭載されたレーダ5によって取得されるレーダデータの信頼性を確保することができる。
【0116】
レーダ5の水平方向における視野Fh(
図22参照)は、例えば、120°から180°の範囲内であってもよい。換言すれば、レーダ5の視野Fhは、レーダ5の中心軸に対して±60°から±90°の範囲内であってもよい。レーダ5の垂直方向の視野Fvは、例えば、3°から100°の範囲内であってもよい。尚、レーダ5の視野とは、レーダ5の検出範囲と同義である。
【0117】
レーダ5と隠蔽部6aとの間の相対的位置関係に関連して、前後方向における隠蔽部6aとレーダ5との間の距離dは、20mm以上100mm以下に設定されてもよい。隠蔽部6aとレーダ5との間の距離dが20mm以上の場合には、レーダ5から出射されて隠蔽部6aによって反射された反射電波は、レーダ5の受信アンテナに至るまでに十分に減衰する。このため、レーダ5によって受信された反射電波がノイズ成分としてレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。
【0118】
一方、隠蔽部6aとレーダ5との間の距離が100mm以下の場合には、レーダ5の視野内に存在する電波の一部が隠蔽部6aを通過できない状況を回避することができる。即ち、隠蔽部6aを通過できない電波の一部が隠蔽部6aとランプカバー12aとの間の境界やその他の光学部品によって反射された結果、当該反射電波がノイズ成分としてレーダデータに悪影響を与える状況を回避することができる。
【0119】
次に、
図21を参照して隠蔽部6aの前後方向における厚さt1について以下に説明する。
図21は、隠蔽部6aによって反射された反射電波R1,R2を示す図である。
図21に示す隠蔽部6aの厚さt1は、以下式(2)によって規定される。
【数2】
ここで、λはレーダ5から出射される電波の波長である。εrは隠蔽部6aの比誘電率、nは1以上の整数である。
【0120】
このように、隠蔽部6aの厚さt1が上記式(2)に規定される厚さに設定される場合には、レーダ5に対向する隠蔽部6aの一方の面62aで反射される反射電波R2と、当該一方の面62aとは反対側に位置する隠蔽部6aの他方の面63aで反射される反射電波R1とが互いに弱め合う。具体的には、反射電波R2と反射電波R1との間の位相差Δθが(2m+1)π(mはゼロ以上の整数)となるため、反射電波R1と反射電波R2は互いに弱め合う。この結果、レーダ5から出射された電波に対する隠蔽部6aの反射率を低くすることができる。したがって、隠蔽部6aによって反射された反射電波の強度が弱くなるため、当該反射電波がレーダ5により受信されることでノイズ成分としてレーダデータに悪影響を及ぼす状況を回避することができる。例えば、レーダ5の電波の波長λが3.922mm、隠蔽部6aの比誘電率εrが2、n=1とした場合に、隠蔽部6aの厚さt1は1.386mmとなる。
【0121】
次に、
図22を主に参照することで、右側レーダモジュール17Rの具体的構造について以下に説明する。
図22は、右側レーダモジュール17Rの水平方向の断面図である。
図22に示すように、支持部材8aは、固定手段であるネジ22を介してランプハウジング14aに固定されている。つまり、支持部材8aは、ネジ22を介して右側車両用灯具302Rに固定されている。レーダ5は、支持部材8aに設けられたランス23によって支持及び固定されている。レーダ5は、前面51と、前面51とは反対側に位置する後面52と、前面51と後面52との間に位置する側面55とを有する。レーダ5のアンテナ部53(送信アンテナ)から出射された電波は、前面51を通過することで空中に放射される。また、車両1Cの外部に存在する対象物によって反射された反射電波は、前面51を通過することでアンテナ部53(受信アンテナ)に入射する。
【0122】
レーダ5の後面52と支持部材8aとの間にはスペーサ20a,20bが設けられている。スペーサ20a,20bの熱伝導率は、支持部材8aの熱伝導率よりも低くてもよい。スペーサ20aは、レーダ5の後面52及び側面55に当接すると共に、レーダ5の側面55に沿って上下方向に延びている。同様に、スペーサ20bは、レーダ5の後面52及び側面55に当接すると共に、レーダ5の側面55に沿って上下方向に延びている。スペーサ20aは、空気層30を介して左右方向においてスペーサ20bと対向している。
【0123】
このように、互いに離間した2つのスペーサ20a,20bがレーダ5と支持部材8aとの間に設けられているため、レーダ5の後面52と支持部材8aとの間に空気層30(断熱層の一例)を比較的容易に設けることができる。
【0124】
本実施形態によれば、支持部材8aとレーダ5の後面52との間に断熱層として機能する空気層30が設けられているため、レーダ5の後方に存在するエンジン(外部熱源)から放射された熱が支持部材8aを介してレーダ5の後面52に伝達しにくくなる。このため、エンジンからの放射熱によってレーダ5(特に、通信回路部54)の動作性能が低下することが好適に防止されうる。したがって、外部からの放射熱に対するレーダ5の信頼性を確保しつつ、レーダ5を車両1Cの外部から隠蔽することができる。
【0125】
この点において、スペーサ20a,20bがレーダ5と支持部材8aとの間に設けられない場合には、レーダ5の後面52が支持部材8aに直接接触する。このため、エンジンからの放射熱は、熱伝導率が高い支持部材8aからレーダ5の後面52に伝達されやすくなる。このため、エンジンからの放射熱によってレーダ5の動作性能が大きく低下してしまう虞がある。
【0126】
また、スペーサ20a,20bの熱伝導率が支持部材8aの熱伝導率よりも低い場合には、エンジンからの放射熱が支持部材8aを介してレーダ5により伝達されにくくなる。このため、スペーサ20a,20bは、金属部材からなる支持部材8aよりも熱伝導率が低い部材により構成されてもよい。
【0127】
次に、
図22及び
図23を参照することで位置決め部39a~39d(第3位置決め部の一例)について以下に説明する。
図23は、位置決め部39a~39dと、レーダ5と、隠蔽部6aとを示す正面図である。
図22及び
図23に示すように、位置決め部39a~39dの各々は、隠蔽部6aと一体的に形成されている。位置決め部39a~39dの各々は、ネジ125を介して支持部材8aに固定されることで、隠蔽部6aに対する支持部材8aの位置を決定するように構成されている。換言すれば、レーダ5と隠蔽部6aとの間の相対的位置関係は、位置決め部39a~39dによって決定されている。
【0128】
また、位置決め部39a~39dの各々は、前後方向において隠蔽部6aと支持部材8aとの間に配置されている。位置決め部39a~39dは、隠蔽部6aと同一の材料(例えば、不透明な樹脂材料)により形成されてもよい。例えば、隠蔽部6aと位置決め部39a~39dは、金型を用いた射出成形により一体的に形成されてもよい。
【0129】
図23に示すように、位置決め部39aは、左右方向において位置決め部39bと対向している。レーダ5は、左右方向において位置決め部39aと位置決め部39bとの間に配置されている。位置決め部39cは、上下方向において位置決め部39aと対向している。位置決め部39dは、上下方向において位置決め部39bと対向すると共に、左右方向において位置決め部39cと対向している。
【0130】
尚、本実施形態では、4つの位置決め部39a~39dによって隠蔽部6aに対する支持部材8aの位置が決定されているが、位置決め部の個数は4つに限定されるものではない。例えば、位置決め部の個数は2つであってもよい。この場合、左右方向において、2つの位置決め部の一方がレーダ5を介して他方の位置決め部と対向していることが好ましい。さらに、2つの位置決め部が、上下方向に延出してもよい。2以上の位置決め部を設けることで、隠蔽部6aに対する支持部材8aの位置を確実に決定することが可能となる。
【0131】
本実施形態によれば、位置決め部39a~39dの各々によって隠蔽部6aに対する支持部材8aの位置が決定される。また、レーダ5は支持部材8aに支持及び固定されている。このように、レーダ5は支持部材8aによって位置決めされているため、支持部材8aと隠蔽部6aとの間の相対的位置関係の決定に伴い、レーダ5と隠蔽部6aとの間の相対的位置関係が決定される。
【0132】
さらに、本実施形態では、
図19に示すように、隠蔽部6aに設けられた位置決め部65及び支持部材8aに設けられた位置決め部80aの両方によって右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置が確実に決定される。このように、2つの位置決め部65,80aによって右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置を決定することができる。また、車両1Cに対する右側車両用灯具302Rの位置決めが既に完了している場合には、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置決めが完了した時点で、車両1Cに対するレーダ5の位置決めが完了する。即ち、以下の工程に従って、レーダ5が車両1Cに搭載される。
1)右側レーダモジュール17Rの組み立て工程(右側レーダモジュール17Rに対するレーダ5の位置が決定される。)
2)右側レーダモジュール17Rを右側車両用灯具302Rに取り付ける工程(右側車両用灯具302Rに対するレーダ5の位置が決定される。)
3)右側車両用灯具302Rを車両1Cに取り付ける工程(車両1Cに対するレーダ5の位置が決定される。)
【0133】
したがって、車両1Cに対するレーダ5の位置決めを比較的容易に且つ確実に行うことができると共に、レーダ5を車両1Cの外部から隠蔽することが可能な右側レーダモジュール17Rを提供することができる。
【0134】
また、位置決め部65,80aによって右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置が決定された状態で支持部材8aがランプハウジング14aに固定される。このため、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置が確実に決定された状態で右側レーダモジュール17Rが右側車両用灯具302Rに固定される。
【0135】
尚、本実施形態の説明では、2つの位置決め部65,80aによって右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置が決定されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、位置決め部は、隠蔽部6a又は支持部材8aのうちいずれか一方のみに設けられてもよい。この場合、2つの位置決め部65,80aのうちのいずれか一方のみによって右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置が決定されうる。例えば、位置決め部80a及び溝部142は上面視において十字状に形成されてもよい。この場合、位置決め部80aが溝部142に係合されることで、右側車両用灯具302Rに対する右側レーダモジュール17Rの位置を確実に決定することが可能となる。
【0136】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0137】
本出願は、2019年7月18日に出願された日本国特許出願(特願2019-132826号)に開示された内容と、2019年7月23日に出願された日本国特許出願(特願2019-135290号)に開示された内容と、2019年7月26日に出願された日本国特許出願(特願2019-138204号)に開示された内容と、2019年7月26日に出願された日本国特許出願(特願2019-138205号)に開示された内容と、2019年7月26日に出願された日本国特許出願(特願2019-138206号)に開示された内容と、を適宜援用する。