(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109663
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】抗プロ/潜在型-ミオスタチン抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/26 20060101AFI20240806BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240806BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20240806BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240806BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240806BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240806BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240806BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240806BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240806BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 21/06 20060101ALI20240806BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240806BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240806BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240806BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07K16/26 ZNA
C07K16/46
C12N5/077
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P19/00
A61P21/06
A61P7/00
A61P21/00
A61P35/00
A61P9/00
A61P3/00
A61K9/08
A61K9/19
G01N33/53 D
G01N33/531 A
C07K16/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077058
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2022130847の分割
【原出願日】2015-11-06
(31)【優先権主張番号】62/187,348
(32)【優先日】2015-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/100,361
(32)【優先日】2015-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/076,230
(32)【優先日】2014-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/219,094
(32)【優先日】2015-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515120006
【氏名又は名称】スカラー ロック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SCHOLAR ROCK,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ストラウブ, ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】リー, ドン ユン
(72)【発明者】
【氏名】マコノヒー, ウィリアム ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ターナー, キャサリーン ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】マハンサッパ, ナゲッシュ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン, ジャスティン ダブリュー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体およびその使用を提供する。
【解決手段】本開示の抗体は、プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンなどのミオスタチンのプロ形態および/または潜在型形態の1つまたは複数に特異的に結合する。いくつかの実施形態ではそのような抗体は、ミオスタチンシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態ではミオスタチンシグナル伝達の阻害は、筋肉量を増加させるまたは筋萎縮症を予防するのに有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗体であって、前記重鎖可変ドメイン
が、配列番号10~11のいずれか1つに記載の配列を含む相補性決定領域3(CDRH
3)を含む、抗体。
【請求項2】
プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号22~23のいずれか1つに記載の配列を含む相補
性決定領域3(CDRL3)を含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
6個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1
、CDRL2およびCDRL3を含み、CDRH1が配列番号1~3のいずれか1つに記
載の配列を含み、CDRH2が配列番号4~9のいずれか1つに記載の配列を含み、CD
RH3が配列番号10~11のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRL1が配列番号
12~17のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRL2が配列番号18~21のいず
れか1つに記載の配列を含み、CDRL3が配列番号22~23のいずれか1つに記載の
配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
CDRH1が配列番号1または2に記載の配列を含み、CDRH2が配列番号4または
5に記載の配列を含み、CDRH3が配列番号10に記載の配列を含み、CDRL1が配
列番号12または13に記載の配列を含み、CDRL2が配列番号18または19に記載
の配列を含み、CDRL3が配列番号22に記載の配列を含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
CDRH1が配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2が配列番号6または
7に記載の配列を含み、CDRH3が配列番号11に記載の配列を含み、CDRL1が配
列番号14または15に記載の配列を含み、CDRL2が配列番号20または21に記載
の配列を含み、CDRL3が配列番号23に記載の配列を含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項7】
CDRH1が配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2が配列番号8または
9に記載の配列を含み、CDRH3が配列番号11に記載の配列を含み、CDRL1が配
列番号16または17に記載の配列を含み、CDRL2が配列番号20または21に記載
の配列を含み、CDRL3が配列番号23に記載の配列を含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項8】
配列番号24~29のいずれか1つに記載の重鎖可変ドメイン配列を含む、請求項1か
ら7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
配列番号30~35のいずれか1つに記載の軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項1か
ら8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメイ
ンを含む抗体であって、前記軽鎖可変ドメインが、配列番号22~23のいずれか1つに
記載の配列を含む相補性決定領域3(CDRL3)を含む、抗体。
【請求項11】
配列番号30の軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
プロ/潜在型ミオスタチンへの結合について、請求項1から11のいずれか一項に記載
の抗体と競合する抗体。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体と同じエピトープにおいてプロ/潜在型
ミオスタチンに結合する、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
10-6M未満である前記抗体とプロ/潜在型ミオスタチンとの間の平衡解離定数、K
dでプロ/潜在型ミオスタチンへの結合について競合する、請求項12または13に記載
の抗体。
【請求項15】
前記Kdが10-11Mから10-6Mの範囲にある、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
ヒト化抗体、ダイアボディ、キメラ抗体、Fab断片、F(ab’)2断片またはFv
断片である、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
ヒト化抗体である、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
ヒト抗体である、請求項16に記載の抗体。
【請求項19】
ヒト生殖系列配列を有するフレームワークを含む、請求項1から17のいずれか一項に
記載の抗体。
【請求項20】
IgG、IgG1、IgG2、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、Ig
G4、IgA1、IgA2、IgD、IgMおよびIgE定常ドメインからなる群より選
択される重鎖定常ドメインを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
IgG4の定常ドメインを含む、請求項20に記載の抗体。
【請求項22】
IgG1様ヒンジを生じ、鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にするSerからPro
への骨格置換を有するIgG4の定常ドメインを含む、請求項20に記載の抗体。
【請求項23】
蛍光性作用物質、発光性作用物質、酵素性作用物質および放射性作用物質からなる群よ
り選択される作用物質にコンジュゲートされている、請求項1から22のいずれか一項に
記載の抗体。
【請求項24】
成熟ミオスタチンと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、請求項1
から23のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
トランスホーミング増殖因子ベータファミリーの別のメンバーと比較してプロ/潜在型
ミオスタチンに特異的に結合する、請求項1から23のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
前記メンバーがGDF8またはアクチビンである、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
配列番号50に記載のアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号51に記載のアミノ酸
配列を有する軽鎖を含む、抗体。
【請求項28】
プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、トロイドプロテアーゼによるタンパク質
分解を介した成熟ミオスタチンの形成を阻害する抗体。
【請求項29】
トロイドプロテアーゼによるタンパク質分解を介した成熟ミオスタチンの形成を1μM
未満のIC50で阻害する、請求項28に記載の抗体。
【請求項30】
ヒトおよびネズミプロ/潜在型ミオスタチンと交差反応性である、請求項28または2
9に記載の抗体。
【請求項31】
GDF11またはアクチビンと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する
、請求項28から30のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項32】
成熟ミオスタチンと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、請求項2
8から31のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項33】
プロ/潜在型ミオスタチンを含む培地中に存在する細胞におけるミオスタチン受容体活
性化を低減する方法であって、請求項1から32のいずれか一項に記載の抗体を、タンパ
ク質分解を介した前記プロ/潜在型ミオスタチンの活性化を阻害するのに有効な量で前記
培地に送達するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記培地がプロタンパク質転換酵素をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記培地がトロイドプロテアーゼをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体が、前記トロイドプロテアーゼによるタンパク質分解を介した前記プロ/潜在
型ミオスタチンの活性化を阻害するのに有効な量で前記培地に送達される、請求項33か
ら35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞がin vitroにある、請求項33から36のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項38】
前記細胞がin vivoにある、請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ミオパチーを有する被験体を処置する方法であって、請求項1から32のいずれか一項
に記載の抗体の有効量を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項40】
前記ミオパチーが原発性ミオパチーである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記原発性ミオパチーが非活動性萎縮症を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記非活動性萎縮症が股関節骨折、待機的人工関節置換術、救命医療ミオパチー、脊髄
損傷または発作に関連する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ミオパチーが、筋肉喪失が疾患病態に続発する二次性ミオパチーである、請求項3
9に記載の方法。
【請求項44】
前記二次性ミオパチーが脱神経、遺伝性筋脱力または悪液質を含む、請求項43に記載
の方法。
【請求項45】
前記二次性ミオパチーが、筋萎縮性側索硬化症または脊髄性筋萎縮症に関連する脱神経
である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記二次性ミオパチーが、筋ジストロフィーに関連する遺伝性筋脱力である、請求項4
4に記載の方法。
【請求項47】
前記二次性ミオパチーが、腎不全、AIDS、心臓の状態、がんまたは加齢に関連する
悪液質である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記処置が前記被験体における筋力の改善を生じる、請求項39から47のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項49】
前記処置が前記被験体において代謝状態の改善を生じる、請求項39から48のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が0.1mg/kgから100mg/kgの範囲の用量で投与される、請求項
39から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が0.3mg/kgから30mg/kgの範囲の用量で投与される、請求項3
9から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体が前記被験体に静脈内投与される、請求項39から51のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項53】
前記抗体が前記被験体に皮下投与される、請求項39から51のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項54】
前記抗体が前記被験体に複数の機会に投与される、請求項39から51のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項55】
前記複数回投与が少なくとも毎月実施される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記複数回投与が少なくとも毎週実施される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
請求項1から32のいずれか一項に記載のいずれかの抗体、および担体を含む組成物。
【請求項58】
前記担体が薬学的に許容される担体である、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記抗体および前記担体が凍結乾燥形態にある、請求項57または58に記載の組成物
。
【請求項60】
前記抗体および前記担体が溶液中にある、請求項57または58に記載の組成物。
【請求項61】
前記抗体および前記担体が凍結されている、請求項57または58に記載の組成物。
【請求項62】
前記抗体および前記担体が-65℃未満またはそれに等しい温度で凍結される、請求項
57または58に記載の組成物。
【請求項63】
3個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含むタ
ンパク質をコードする単離された核酸であって、CDRH3が配列番号10または11に
記載の配列を含む、核酸。
【請求項64】
CDRH1が配列番号1、2または3に記載の配列を含む、請求項63に記載の単離さ
れた核酸。
【請求項65】
CDRH2が配列番号4~9のいずれか1つに記載の配列を含む、請求項63または6
4に記載の単離された核酸。
【請求項66】
3個の相補性決定領域(CDR):CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含むタ
ンパク質をコードする単離された核酸であって、CDRL3が配列番号22に記載の配列
を含む、核酸。
【請求項67】
CDRL1が配列番号12~17のいずれか1つに記載の配列を含む、請求項66に記
載の単離された核酸。
【請求項68】
CDRL2が配列番号18~21のいずれか1つに記載の配列を含む、請求項66また
は67に記載の単離された核酸。
【請求項69】
配列番号38~49のいずれか1つに記載の配列を含む単離された核酸。
【請求項70】
請求項63から69のいずれか一項に記載の単離された核酸を含む単離された細胞。
【請求項71】
ミオパチーを有する被験体から得られた生物学的試料を評価する方法であって、
(a)前記被験体から得られた生物学的試料のタンパク質と、プロ/潜在型ミオスタチン
に特異的に結合する抗体とを含む免疫学的反応混合物を調製するステップ;
(b)前記抗体とプロ/潜在型ミオスタチンとの間の結合複合体の形成を可能にする条件
下に前記免疫学的反応混合物を維持するステップ;および
(c)結合複合体形成の程度を決定するステップ
を含む、方法。
【請求項72】
配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列
番号29からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項73】
配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34および配列
番号35からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「TRANSFORMING GROWTH FACTOR-RELATED
ANTIBODIES AND USES THEREOF」と題され、2014年1
1月6日に出願された米国仮特許出願第62/076,230号、「TRANSFORM
ING GROWTH FACTOR-RELATED ANTIBODIES AND
USES THEREOF」と題され、2015年1月6日に出願された米国仮特許出
願第62/100,361号、「TRANSFORMING GROWTH FACTO
R-RELATED ANTIBODIES AND USES THEREOF」と題
され、2015年7月1日に出願された米国仮特許出願第62/187,348号、およ
び「ANTI-PRO/LATENT-MYOSTATIN ANTIBODIES A
ND USES THEREOF」と題され、2015年9月15日に出願された米国仮
特許出願第62/219,094号の米国特許法第119条(e)のもとの優先権を主張
する。これらの出願の各々が、すべての目的のために、全体が本明細書中に組み込まれる
。
【0002】
本開示の実施形態は、増殖因子活性の調節物質を含んでよい。いくつかの実施形態では
そのような調節物質は、抗体を含んでよく、TGF-βファミリーメンバー活性および/
または生物学を調節できる。
【背景技術】
【0003】
ミオスタチンは、筋肉量(muscle mass)を負に制御する分泌型増殖因子で
ある。過度筋肉(hypermuscular)の表現型をもたらすミオスタチン遺伝子
中の機能喪失変異が、ウシ、ヒツジ、魚類、イヌおよびヒトにおいて記載されている。ミ
オスタチン発現は、一般に骨格筋に限定されており、低レベルの発現が脂肪および心臓組
織において報告されている。ミオスタチンシグナル伝達の阻害は、筋肉のサイズの増加を
もたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の要旨
本開示の態様は、いくつかの実施形態では、ミオスタチンの形態(例えばプロミオスタ
チンおよび/または潜在型ミオスタチン)に特異的に結合する抗体に関する。例えば本明
細書で提供される抗体は、プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンなどのミ
オスタチンのプロ形態および/または潜在型形態の1つまたは複数に特異的に結合する。
いくつかの実施形態ではそのような抗体は、ミオスタチンシグナル伝達を阻害する。いく
つかの実施形態ではミオスタチンシグナル伝達の阻害は、筋肉量を増加させるまたは筋萎
縮症を予防するのに有用である。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、
ミオスタチンに結合し、プロタンパク質転換酵素および/またはトロイドプロテアーゼに
よるミオスタチンの切断を妨げる。プロミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンの切断を
妨げることは、いくつかの実施形態では、ミオスタチン活性化を妨げる。本開示のさらな
る態様は、抗原への親和性がpHに感受性である抗体に関する。いくつかの実施形態では
そのようなpH感受性抗体は、血清から抗原を排除するのに有効である。さらに、いくつ
かの実施形態では本明細書で提供される抗体は、血清から抗原(例えばプロミオスタチン
および/または潜在型ミオスタチン)を効率的に排除できるスイーピング抗体(swee
ping antibody)である。
【0005】
本開示の態様は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗体を含み、重鎖可
変ドメインは配列番号10~11のいずれか1つに記載の配列を含む相補性決定領域3(
CDRH3)を含む。いくつかの実施形態では抗体は、プロ/潜在型ミオスタチンに特異
的に結合する。いくつかの実施形態では軽鎖可変ドメインは、配列番号22~23のいず
れか1つに記載の配列を含む相補性決定領域3(CDRL3)を含む。別の実施形態では
前記抗体は、6個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、
CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含み、CDRH1は配列番号1~3のいずれ
か1つに記載の配列を含み、CDRH2は配列番号4~9のいずれか1つに記載の配列を
含み、CDRH3は配列番号10~11のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRL1
は配列番号12~17のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRL2は配列番号18~
21のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRL3は配列番号22~23のいずれか1
つに記載の配列を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では前記CDRH1は、配列番号1または2に記載の配列を含み、
CDRH2は配列番号4または5に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号10に記載
の配列を含み、CDRL1は配列番号12または13に記載の配列を含み、CDRL2は
配列番号18または19に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号22に記載の配列を
含む。
【0007】
別の実施形態では前記CDRH1は配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH
2は配列番号6または7に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号11に記載の配列を
含み、CDRL1は配列番号14または15に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号
20または21に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号23に記載の配列を含む。
【0008】
他の実施形態ではCDRH1は配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2は
配列番号8または9に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号11に記載の配列を含み
、CDRL1は配列番号16または17に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号20
または21に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号23に記載の配列を含む。
【0009】
別の実施形態では前記抗体は、配列番号25~29のいずれか1つに記載の重鎖可変ド
メイン配列を含む。いくつかの実施形態では前記抗体は、配列番号30~35のいずれか
1つに記載の軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0010】
本開示の他の態様は、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、重鎖可変ドメイン
および軽鎖可変ドメインを含む抗体を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号22~23のい
ずれか1つに記載の配列を含む相補性決定領域3(CDRL3)を含む。いくつかの実施
形態では前記抗体は、配列番号30の軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0011】
本開示のいくつかの態様は、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号2
7、配列番号28および配列番号29からなる群より選択される配列を有するポリペプチ
ドに関する。いくつかの実施形態ではポリペプチドは、可変重鎖ドメインである。いくつ
かの実施形態ではポリペプチドは、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番
号27、配列番号28または配列番号29に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なく
とも75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である
。
【0012】
本開示のいくつかの態様は、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号3
3、配列番号34および配列番号35からなる群より選択される配列を有するポリペプチ
ドに関する。いくつかの実施形態ではポリペプチドは、可変軽鎖ドメインである。いくつ
かの実施形態ではポリペプチドは、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番
号33、配列番号34または配列番号35に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なく
とも75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である
。
【0013】
本開示の別の態様は、プロ/潜在型ミオスタチンへの結合について上に記載の抗体と競
合する抗体を含む。いくつかの実施形態では前記抗体は、上に記載の抗体と同じエピトー
プにおいてプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。別の実施形態では抗体は、10-6M
未満である抗体とプロ/潜在型ミオスタチンとの間の平衡解離定数、Kdでプロ/潜在型
ミオスタチンへの結合について競合する。他の実施形態では前記抗体のKdは、10-1
1Mから10-6Mの範囲にある。
【0014】
いくつかの実施形態では抗体はヒト化抗体、ダイアボディ(diabody)、キメラ
抗体、Fab断片、F(ab’)2断片またはFv断片である。別の実施形態では抗体は
、ヒト化抗体である。別の実施形態では抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態では
抗体は、ヒト生殖系列配列を有するフレームワークを含む。別の実施形態では抗体は、I
gG、IgG1、IgG2、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、IgG4
、IgA1、IgA2、IgD、IgMおよびIgE定常ドメインからなる群より選択さ
れる重鎖定常ドメインを含む。いくつかの実施形態では抗体は、IgG4の定常ドメイン
を含む。他の実施形態では抗体は、IgG1様ヒンジを生じ、鎖間ジスルフィド結合の形
成を可能にするSerからProへの骨格置換を有するIgG4の定常ドメインを含む。
別の実施形態では抗体は、蛍光性作用物質、発光性作用物質、酵素性作用物質および放射
性作用物質からなる群より選択される作用物質にコンジュゲートされる。
【0015】
別の実施形態では抗体は、成熟ミオスタチンと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特
異的に結合する。いくつかの実施形態では抗体は、トランスホーミング増殖因子ベータフ
ァミリーの別のメンバーと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する。別の
実施形態では前記メンバーは、GDF11またはアクチビンである。
【0016】
本開示のさらなる態様は、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、トロイドプロ
テアーゼによるタンパク質分解を介した成熟ミオスタチンの形成を阻害する抗体を含む。
いくつかの実施形態では前記抗体は、トロイドプロテアーゼによるタンパク質分解を介し
た成熟ミオスタチンの形成を1μM未満のIC50で阻害する。いくつかの実施形態では
抗体は、ヒトおよびネズミプロ/潜在型ミオスタチンと交差反応性である。他の実施形態
では抗体は、GDF11またはアクチビンと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的
に結合する。別の実施形態では抗体は、成熟ミオスタチンと比較してプロ/潜在型ミオス
タチンに特異的に結合する。
【0017】
本開示の別の態様は、プロ/潜在型ミオスタチンを含む培地中に存在する細胞における
ミオスタチン受容体活性化を低減する方法であって、上に記載の抗体を、タンパク質分解
を介したプロ/潜在型ミオスタチンの活性化を阻害するのに有効な量で培地に送達するこ
とを含む方法を包含する。いくつかの実施形態では培地は、プロタンパク質転換酵素をさ
らに含む。他の実施形態では培地は、トロイドプロテアーゼをさらに含む。別の実施形態
では抗体は、トロイドプロテアーゼによるタンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタ
チンの活性化を阻害するのに有効な量で培地に送達される。いくつかの実施形態では細胞
はin vitroにある。他の実施形態では細胞はin vivoにある。
【0018】
本開示の別の態様は、ミオパチーを有する被験体を処置する方法であって、上に記載の
抗体の有効量を被験体に投与することを含む方法を含む。いくつかの実施形態ではミオパ
チーは原発性ミオパチーである。別の実施形態では原発性ミオパチーは非活動性萎縮症を
含む。他の実施形態では非活動性萎縮症は、股関節骨折、待機的人工関節置換術(ele
ctive joint replacement)、救命医療ミオパチー(criti
cal care myopathy)、脊髄損傷または発作(stroke)に関連す
る。いくつかの実施形態ではミオパチーは、筋肉喪失(muscle loss)が疾患
病態に続発する二次性ミオパチーである。他の実施形態では二次性ミオパチーは、脱神経
、遺伝性筋脱力または悪液質を含む。別の実施形態では二次性ミオパチーは、筋萎縮性側
索硬化症または脊髄性筋萎縮症に関連する脱神経である。いくつかの実施形態では二次性
ミオパチーは、筋ジストロフィーに関連する遺伝性筋脱力である。他の実施形態では二次
性ミオパチーは、腎不全、AIDS、心臓の状態、がんまたは加齢に関連する悪液質であ
る。
【0019】
本開示の別の態様は、加齢に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を
含む。加齢に関連する例示的疾患および状態は、非限定的に、筋肉減少症(加齢性筋肉喪
失)、虚弱およびアンドロゲン欠乏症を含む。
【0020】
本開示の別の態様は、非活動性萎縮症/外傷に関連する疾患または状態を有する被験体
を処置する方法を含む。非活動性萎縮症/外傷に関連する例示的疾患および状態は、非限
定的に、集中治療室(ICU)で過ごした時間に関連する筋脱力、股関節置換術、股関節
骨折、発作、床上安静、SCI、回旋筋腱板損傷、膝置換術、骨折および熱傷を含む。
【0021】
本開示の別の態様は、神経変性疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。
例示的神経変性疾患または状態は、非限定的に脊髄性筋萎縮症および筋萎縮性側索硬化症
(ALS)を含む。
【0022】
本開示の別の態様は、悪液質に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法
を含む。悪液質に関連する例示的疾患および状態は、非限定的にがん、慢性心不全、後天
性免疫不全症候群(AIDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性腎臓疾患(C
KD)を含む。
【0023】
本開示の別の態様は、まれな疾患に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する
方法を含む。例示的なまれな疾患および状態は、非限定的に骨形成不全症、孤発性封入体
筋炎および急性リンパ芽球性白血病を含む。
【0024】
本開示の別の態様は、代謝障害および/または身体組成に関連する疾患または状態を有
する被験体を処置する方法を含む。いくつかの実施形態では疾患または状態は肥満(例え
ば重度の肥満)、プラダー・ウィリー症候群、II型糖尿病または食欲不振である。しか
し代謝障害および/または身体組成に関連する追加的疾患または状態は本開示の範囲内で
ある。
【0025】
本開示の別の態様は、先天性ミオパチーに関連する疾患または状態を有する被験体を処
置する方法を含む。例示的先天性ミオパチーは、非限定的にX連鎖筋細管ミオパチー、常
染色体優性中心核ミオパチー、常染色体劣性中心核ミオパチー、ネマリンミオパチーおよ
び先天性筋線維型不均衡ミオパチー(congenital fiber-type d
isproportion myopathy)を含む。
【0026】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィーに関連する疾患または状態を有する被験体を処
置する方法を含む。例示的筋ジストロフィーは、非限定的にデュシェンヌ型、ベッカー型
、顔面肩甲上腕型(FSH)および肢帯型筋ジストロフィーを含む。
【0027】
本開示の別の態様は、泌尿婦人科関連疾患または状態、声門障害(狭窄)、外眼性ミオ
パチー、手根管(carpel tunnel)、ギランバレーまたは骨肉腫を有する被
験体を処置する方法を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では処置は、被験体において筋力の改善を生じる。他の実施形態で
は処置は、被験体において代謝状態の改善を生じる。
【0029】
いくつかの実施形態では抗体は、0.1mg/kgから100mg/kgの範囲の用量
で投与される。別の実施形態では抗体は、0.3mg/kgから30mg/kgの範囲の
用量で投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では抗体は、被験体に静脈内投与される。他の実施形態では抗体は
、被験体に皮下投与される。別の実施形態では抗体は、被験体に複数の機会に投与される
。いくつかの実施形態では、前記複数回投与は、少なくとも毎月実施される。別の実施形
態では前記複数回投与は、少なくとも毎週実施される。
【0031】
本開示のさらなる態様は、上に記載の任意の抗体および担体を含む組成物を含む。いく
つかの実施形態では前記担体は薬学的に許容される担体である。他の実施形態では抗体お
よび担体は凍結乾燥形態にある。別の実施形態では抗体および担体は溶液中にある。いく
つかの実施形態では抗体および担体は凍結されている。他の実施形態では抗体および担体
は、-65℃未満またはそれに等しい温度で凍結される。
【0032】
本開示の他の態様は、3個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2およ
びCDRH3を含むタンパク質をコードする単離された核酸を含み、CDRH3は配列番
号10または11に記載の配列を含む。いくつかの実施形態では前記CDRH1は、配列
番号1、2または3に記載の配列を含む。他の実施形態ではCDRH2は、配列番号4~
9のいずれか1つに記載の配列を含む。
【0033】
本開示の別の態様は、3個の相補性決定領域(CDR):CDRL1、CDRL2およ
びCDRL3を含むタンパク質をコードする単離された核酸を含み、CDRL3は配列番
号22に記載の配列を含む。いくつかの実施形態では前記CDRL1は配列番号12~1
7のいずれか1つに記載の配列を含む。他の実施形態ではCDRL2は配列番号18~2
1のいずれか1つに記載の配列を含む。
【0034】
本開示のさらなる態様は、配列番号38~49のいずれか1つに記載の配列を含む単離
された核酸を含む。
【0035】
本開示の別の態様は、上に記載の単離された核酸を含む単離された細胞を含む。
【0036】
本開示はいくつかの態様では、ミオパチーを有する被験体から得られた生物学的試料を
評価する方法を含む。いくつかの実施形態では方法は、被験体から得られた生物学的試料
のタンパク質と、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体とを含む免疫学的反
応混合物を調製すること;抗体とプロ/潜在型ミオスタチンとの間で結合複合体が形成さ
れることを可能にする条件下に免疫学的反応混合物を維持すること;および結合複合体形
成の程度を決定することを含む。いくつかの実施形態では方法は、被験体から得られた生
物学的試料のタンパク質と、プロミオスタチンに特異的に結合する抗体とを含む免疫学的
反応混合物を調製すること;抗体とプロミオスタチンとの間で結合複合体が形成されるこ
とを可能にする条件下に免疫学的反応混合物を維持すること;および結合複合体形成の程
度を決定することを含む。いくつかの実施形態では方法は、被験体から得られた生物学的
試料のタンパク質と、潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体とを含む免疫学的反応
混合物を調製すること;抗体と潜在型ミオスタチンとの間で結合複合体が形成されること
を可能にする条件下に免疫学的反応混合物を維持すること;および結合複合体形成の程度
を決定することを含む。いくつかの実施形態では方法は、被験体から得られた生物学的試
料のタンパク質と、成熟ミオスタチンに特異的に結合する抗体とを含む免疫学的反応混合
物を調製すること;抗体と成熟ミオスタチンとの間で結合複合体が形成されることを可能
にする条件下に免疫学的反応混合物を維持すること;および結合複合体形成の程度を決定
することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1A~1Bは、ミオスタチンのドメイン構造およびプロミオスタチンアセンブリを示す。
図1Aは、阻害性のプロドメインの後にジスルフィド結合二量体として存在するC末端増殖因子ドメインが続く、プロタンパク質として分泌されるミオスタチンを示す。
図1Bは、プロドメイン(紫色)が増殖因子(藍色)を、「ストレートジャケット」アセンブリにより封入する不活性なコンフォメーションでアセンブルされた前駆体タンパク質を示す。この図は、潜在型TGFβ1の構造の改作である。
【0038】
【
図2】
図2は、ミオスタチンの活性化が2つの異なるプロテアーゼ事象を伴い、少なくとも3つのミオスタチン種を生成することを示す。生合成前駆体タンパク質であるプロミオスタチンは、2つの別個のプロテアーゼによってプロセシングされる。この概略図で示す第1のステップは、フューリンなどのプロタンパク質転換酵素ファミリーメンバーによって行われる。この切断によって、プロドメインは成熟増殖因子から分離される。プロテアーゼのトロイドファミリーによる第2の切断事象はプロドメインを切断する。これらの切断事象によって、成熟型のミオスタチンが生成され、これは活性ミオスタチンまたは成熟ミオスタチンと称され得る。
【0039】
【
図3-1】
図3A~3Cは、Ab1が、プロテアーゼのトロイドファミリーのメンバーによるプロミオスタチンの切断を遮断することを示す。Ab1の漸増量と共にプレインキュベートしたプロミオスタチン試料を、ミオスタチン活性化アッセイにおいて分析した。レポーターアッセイ(
図3A)によるミオスタチン放出の分析後、次いで、試料を還元条件下で泳動させて、ミオスタチンのプロドメインに対して惹起された抗体によるウエスタンブロットによってプロービングした(
図3B)。トロイド切断後に生成されたプロドメインのN末端部分に対応する約18kDaのバンド(四角で囲った部分)は、Ab1の用量の増加に比例して減少した。潜在型およびプロミオスタチンの標準物質(45ngをロードした)により、プロミオスタチンが約50kDaに、およびプロドメインが約37kDaに移動したことが示される。
図3Cは、ミオスタチンの活性化が2つの異なるプロテアーゼ事象を伴い、3つの主要なミオスタチン種を生成することを示す。生合成前駆体タンパク質であるプロミオスタチンは、2つの別個のプロテアーゼによってプロセシングされる。プロミオスタチン(およびプロGDF11)の切断は、プロドメインと成熟増殖因子の間の保存されたRXXR部位で切断する、フューリン/PACE3(Paired Basic Amino acid Cleaving Enzyme 3)またはPCSK5(Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin type 5)などのプロタンパク質転換酵素によって行われる。この切断によって、潜在的複合体が産生され、この中で成熟増殖因子は、プロドメインによりその受容体に対する結合から遮蔽されている。トロイドプロテアーゼの起こり得る阻害を説明し、プロミオスタチンのさらなる切断の遮断を説明する、
図3Bを参照されたい。活性増殖因子の活性化および放出は、TLL-2(トロイド様タンパク質2)またはBMP1(骨形成タンパク質1)などのBMP/トロイドファミリーのさらなるプロテアーゼによる切断後に達成される。
【
図3-2】
図3A~3Cは、Ab1が、プロテアーゼのトロイドファミリーのメンバーによるプロミオスタチンの切断を遮断することを示す。Ab1の漸増量と共にプレインキュベートしたプロミオスタチン試料を、ミオスタチン活性化アッセイにおいて分析した。レポーターアッセイ(
図3A)によるミオスタチン放出の分析後、次いで、試料を還元条件下で泳動させて、ミオスタチンのプロドメインに対して惹起された抗体によるウエスタンブロットによってプロービングした(
図3B)。トロイド切断後に生成されたプロドメインのN末端部分に対応する約18kDaのバンド(四角で囲った部分)は、Ab1の用量の増加に比例して減少した。潜在型およびプロミオスタチンの標準物質(45ngをロードした)により、プロミオスタチンが約50kDaに、およびプロドメインが約37kDaに移動したことが示される。
図3Cは、ミオスタチンの活性化が2つの異なるプロテアーゼ事象を伴い、3つの主要なミオスタチン種を生成することを示す。生合成前駆体タンパク質であるプロミオスタチンは、2つの別個のプロテアーゼによってプロセシングされる。プロミオスタチン(およびプロGDF11)の切断は、プロドメインと成熟増殖因子の間の保存されたRXXR部位で切断する、フューリン/PACE3(Paired Basic Amino acid Cleaving Enzyme 3)またはPCSK5(Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin type 5)などのプロタンパク質転換酵素によって行われる。この切断によって、潜在的複合体が産生され、この中で成熟増殖因子は、プロドメインによりその受容体に対する結合から遮蔽されている。トロイドプロテアーゼの起こり得る阻害を説明し、プロミオスタチンのさらなる切断の遮断を説明する、
図3Bを参照されたい。活性増殖因子の活性化および放出は、TLL-2(トロイド様タンパク質2)またはBMP1(骨形成タンパク質1)などのBMP/トロイドファミリーのさらなるプロテアーゼによる切断後に達成される。
【0040】
【
図4】
図4は、細胞ベースのレポーターアッセイにおける親Ab1抗体および他の候補の性能を示す。3回の複製の平均値の標準偏差を示すが、値が小さいために、ほとんどのデータ点についてグラフ上で見えない。
【0041】
【
図5】
図5は、ある特定の抗体がプロGDF11活性化を阻害しないことをグラフで示す。
【0042】
【
図6】
図6は、平均体重変化率を評価するアッセイの結果を示す。動物の体重を毎日測定して、0日目からの体重変化率を算出した。データは、群の平均値±SEMを表す。試験42日目の各群の平均変化率データを、一元配置ANOVAの後に、PBS対照群との比較においてHolm-Sidak事後検定を使用して分析した。
**p<0.01。
【0043】
【
図7】
図7A~7Dは、組織重量を評価するアッセイの結果を示す。
図7Aは、平均腓腹筋重量を示す。
図7Bは、平均胸筋重量を示す。
図7Cは、平均ヒラメ筋重量を示す。
図7Dは、平均三頭筋重量を示す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、ビヒクル対照群(群1)との比較においてHolm-Sidak事後検定を使用して行った。データは、群の平均値±SEMを表す。
**p<0.01。棒グラフは、左から右に群1~5を示す。
【0044】
【
図8】
図8A~8Cは、組織重量を評価するアッセイの結果を示す。
図8Aは、平均前脛骨筋重量を示す。
図8Bは、平均横隔膜重量を示す。
図8Cは、平均四頭筋重量を示す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、ビヒクル対照群(群1)との比較においてHolm-Sidak事後検定を使用して行った。データは、群の平均値±SEMを表す。
*p<0.05。棒グラフは、左から右に群1~5を示す。
【0045】
【
図9】
図9A~9Bは、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率を評価するアッセイの結果を示す。
図9Aは、試験を通して週に2回体重測定した動物において算出された0日目からの体重変化率を示すグラフである。
図9Bにおいて、-4、7、14、21、および28日目に身体組成を測定するために、動物にEchoMRI(QNMR)を実施して、0日目からの除脂肪量変化率を算出した。データは、群の平均値±SEMを表す。体重および除脂肪量の両方に関して、試験28日目での各群の平均変化率データを、一元配置ANOVAの後に、IgG対照群(群2)との比較においてHolm-Sidak事後検定を使用して分析した。
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05、ns(有意ではない)。
【0046】
【
図10-1】
図10A~10Dは、筋重量を評価するアッセイの結果を示すグラフである。
図10Aは平均四頭筋重量を示し、
図10Bは平均腓腹筋重量を示し、
図10Cは平均前脛骨筋重量を示し、
図10Dは平均横隔膜重量を示す。IgG対照群と比較してAb1処置群の平均筋重量の差の百分率を、それぞれの棒グラフの上に記す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、IgG対照群(群2)との比較においてHolm-Sidak事後検定を使用して行った。データは群の平均値±SEMを表す。
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05、ns(有意ではない)。
【
図10-2】
図10A~10Dは、筋重量を評価するアッセイの結果を示すグラフである。
図10Aは平均四頭筋重量を示し、
図10Bは平均腓腹筋重量を示し、
図10Cは平均前脛骨筋重量を示し、
図10Dは平均横隔膜重量を示す。IgG対照群と比較してAb1処置群の平均筋重量の差の百分率を、それぞれの棒グラフの上に記す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、IgG対照群(群2)との比較においてHolm-Sidak事後検定を使用して行った。データは群の平均値±SEMを表す。
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05、ns(有意ではない)。
【0047】
【
図11】
図11A~11Bは、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率を評価するアッセイの結果を示す。
図11Aは、試験を通して週に2回体重測定した動物から算出された0日目からの体重変化率を示す。(
図11B)-1、6、および13日目に身体組成を測定するために、動物にEchoMRI(QNMR)を実施して、-1日目からの除脂肪量変化率を算出した。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、Dex=デキサメタゾン、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。データは、群の平均値±SEMを表す。14日目(体重に関して)および13日目(除脂肪量に関して)での各群の平均変化率データを、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して分析した。ns(有意ではない)。
【0048】
【
図12-1】
図12A~12Dは、異なる筋重量を評価するアッセイの結果を示すグラフである。
図12Aは平均腓腹筋重量(グラム)を示し、
図12Bは平均四頭筋重量(グラム)を示し、
図12Cは、PBS(IP)および通常の飲料水(群1)で処置した対照動物と比較した平均腓腹筋重量変化率を示し、
図12Dは、PBS(IP)および通常の飲料水(群1)で処置した対照動物と比較した平均四頭筋重量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、Dex=デキサメタゾン、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。
図12A~12Bに関して、エラーバーは標準偏差(SD)を表す。
図12C~12Dに関して、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。ns(有意ではない)。棒グラフは左から右に、PBS、水;PBS、dex;IgG対照;Ab1(20);およびAb1(2)を示す。
【
図12-2】
図12A~12Dは、異なる筋重量を評価するアッセイの結果を示すグラフである。
図12Aは平均腓腹筋重量(グラム)を示し、
図12Bは平均四頭筋重量(グラム)を示し、
図12Cは、PBS(IP)および通常の飲料水(群1)で処置した対照動物と比較した平均腓腹筋重量変化率を示し、
図12Dは、PBS(IP)および通常の飲料水(群1)で処置した対照動物と比較した平均四頭筋重量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、Dex=デキサメタゾン、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。
図12A~12Bに関して、エラーバーは標準偏差(SD)を表す。
図12C~12Dに関して、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。ns(有意ではない)。棒グラフは左から右に、PBS、水;PBS、dex;IgG対照;Ab1(20);およびAb1(2)を示す。
【0049】
【
図13】
図13A~13Bは、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率を評価するアッセイの結果を示す。
図13Aは、試験を通して週に2回体重測定した動物に関して算出した0日目からの体重変化率を示す。
図13Bは、-1、7、および14日目に身体組成を測定するためにEchoMRI(QNMR)を実施した動物から算出した-1日目からの除脂肪量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。データは、群の平均値±SEMを表す。
【0050】
【
図14-1】
図14A~14Dは、筋重量を評価するアッセイの結果を示す。
図14Aは、ギプス固定した脚からの平均腓腹筋重量(グラム)を示し、
図14Bは、ギプス固定した脚からの平均四頭筋重量(グラム)を示し、
図14Cは、PBS(IP)で処置して、ギプス固定していない対照動物(群1)と比較した平均腓腹筋重量変化率を示し、
図14Dは、PBS(IP)で処置して、ギプス固定していない対照動物(群1)と比較した平均四頭筋重量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。
図14A~14Bに関して、エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
図14C~14Dに関して、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。ns(有意ではない)。棒グラフは左から右に、PBS、非ギプス固定;PBS、ギプス固定;IgG対照;Ab1(20);およびAb1(2)を示す。
【
図14-2】
図14A~14Dは、筋重量を評価するアッセイの結果を示す。
図14Aは、ギプス固定した脚からの平均腓腹筋重量(グラム)を示し、
図14Bは、ギプス固定した脚からの平均四頭筋重量(グラム)を示し、
図14Cは、PBS(IP)で処置して、ギプス固定していない対照動物(群1)と比較した平均腓腹筋重量変化率を示し、
図14Dは、PBS(IP)で処置して、ギプス固定していない対照動物(群1)と比較した平均四頭筋重量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。
図14A~14Bに関して、エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
図14C~14Dに関して、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。ns(有意ではない)。棒グラフは左から右に、PBS、非ギプス固定;PBS、ギプス固定;IgG対照;Ab1(20);およびAb1(2)を示す。
【0051】
【
図15】
図15は、21日目(右上)および28日目(左上)での除脂肪量変化を評価するアッセイの結果を示す。試験した抗体の3つの異なる用量、20mg/kg/週(左下)、2mg/kg/週(中央下)、および0.5mg/kg/週(右下)、PBS対照、ならびにIgG対照の除脂肪量変化率も示す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.005、
**p<0.01、
*p<0.05)およびIgG対照に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。上のパネルに関して、棒グラフは左から右に、PBS;IgG対照、20mg/mk/週;Ab1、20mg/mk/週;Ab1、2mg/mk/週;Ab1、0.5mg/mk/週;Ab2、20mg/mk/週;Ab2、2mg/mk/週;Ab2、0.5mg/mk/週;Ab4、20mg/mk/週;Ab4、2mg/mk/週;Ab4、0.5mg/mk/週;Ab6、20mg/mk/週;Ab6、2mg/mk/週;およびAb6、0.5mg/mk/週である。
【0052】
【
図16】
図16A~16Bは、ミオスタチン前駆体型のドメイン構造および評価を示す。
図16Aは、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンのドメイン構造を示し、プロテアーゼ切断部位を示す。
図16Bは、SDS PAGEゲルにおいて泳動させた、部分的プロタンパク質転換酵素切断プロミオスタチンを示す。還元条件下では、タンパク質バンドは、プロミオスタチンモノマー(約50kD)、プロドメイン(約37kD)および増殖因子(12.5kD)からなった。
【0053】
【
図17】
図17A~17Bは、Ab1がミオスタチンに対して特異的であることを示す。
図17Aは、Ab1がプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに特異的に結合することを示し、TGFBスーパーファミリーの他のメンバー、特にGDF11の対応する型に対する結合は観察されなかった。Ab1を、表記の抗原でコーティングされたForte-Bio BLIチップに高濃度(50ug/mL)で投与して、オンレートおよびオフレートを測定して、およそのKd値を得た。結合事象を示すバイオセンサー応答の大きさを、黒色の棒グラフによってグラフ表示し、算出されたKdをオレンジ色で示す。
図17Bは、Ab1がプロミオスタチンの活性化を遮断するが、プロGDF11は遮断しないことを示している。プロタンパク質転換酵素およびトロイドプロテアーゼファミリーの両方からの酵素によって一晩タンパク質分解反応を行った後、293T細胞においてCAGAベースのレポーターアッセイを使用して成熟増殖因子の放出を測定した。結果を対照反応と比較して、アッセイにおいて放出されたプロミオスタチンまたはプロGDF11の割合を算出した。
【0054】
【0055】
【
図19】
図19は、Ab1を既存のミオスタチン抗体(AbMyo)と比較する、作用試験の持続時間の結果を示す。PBSを陰性対照として使用した。IgGを陽性対照として使用した。除脂肪量の変化を異なる投与プロトコールに従って21日後に調べた。
【0056】
【
図20】
図20は、in vitroでミオスタチン活性化を再構成するアッセイを説明する概略図である。
【0057】
【
図21】
図21A~21Bは、セリンがプロリンに置換されたIgG4サブタイプのヒト化モノクローナル抗体(Ab2)の重鎖(
図21A;配列番号50)および軽鎖(
図21B;配列番号51)を示す。これは、IgG1様ヒンジ配列を生成し、IgG4の特徴である鎖間ジスルフィド架橋の不完全な形成を最小限にする。相補性決定領域(CDR)を下線で示す。紫色:N-結合グリコシル化コンセンサス配列部位;水色:起こり得る切断部位;赤色:起こり得る脱アミド化部位;黄緑色:起こり得る異性化部位;濃い青色:起こり得るメチオニン酸化部位;太字:予想されるN末端ピログルタミン酸。
【0058】
【
図22】
図22は、生殖系列化(germlining)による免疫原性リスクの低減を示す概略図である。24H4(WT)は、概略図に示すように、フレームワーク領域内に5つの非生殖系列アミノ酸を含有する。
【0059】
【
図23-1】
図23A~23Cは、Ab1の最適化を示す。プロミオスタチンに特異的に結合する最適化された候補を選択して、それによって親和性が増加した何ダースものクローンを得た。Ab1(
図23A)と比較して酵母クローン(
図23B)の結合の増加を示すために、FACSを実施した。
図23Cは、親和性成熟改変体が、同様にoctetによってより遅いオフレートを有することを示している。
【
図23-2】
図23A~23Cは、Ab1の最適化を示す。プロミオスタチンに特異的に結合する最適化された候補を選択して、それによって親和性が増加した何ダースものクローンを得た。Ab1(
図23A)と比較して酵母クローン(
図23B)の結合の増加を示すために、FACSを実施した。
図23Cは、親和性成熟改変体が、同様にoctetによってより遅いオフレートを有することを示している。
【0060】
【
図24】
図24A~24Bは、親Ab1の可変重鎖領域(
図24A)および可変軽鎖領域(
図24B)と、親和性最適化改変体Ab3およびAb5との配列アラインメントを示す。配列識別子は、上から下に配列番号24、26、28に対応する(
図24A)。配列識別子は、上から下に配列番号30、32、34に対応する(
図24B)。相補性決定領域(CDR)は、Kabat(下線)およびIMGT命名法(太字)を使用して定義する。親Ab1からの置換を赤色で示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
詳細な記載
ミオスタチンは、TGFβスーパーファミリーのメンバーであり、2個のメンバー:ミ
オスタチン(GDF8としても公知)およびGDF11を含むサブファミリーに属してい
る。TGFβスーパーファミリーの他のメンバーと同様に、ミオスタチンおよびGDF1
1は、両方とも不活性前駆体ポリペプチド(それぞれプロミオスタチンおよびプロGDF
11と呼ばれる)として最初発現される。ドメイン構造および命名法は
図1Aに示されて
いる。
図1Bは、成熟増殖因子が「潜在型ラッソ(latency lasso)」と呼
ばれるループによって繋がれた2個のアルファヘリックスから構成されるケージに閉じ込
められているプロミオスタチンの全体構造のカートゥーンモデルを例示する。
【0062】
成熟増殖因子の活性化および放出は、
図2に概説する数個の別々のプロテアーゼ切断事
象によって達成される。プロミオスタチンおよびプロGDF11の第1の切断ステップは
、プロドメインと成熟増殖因子との間の保存されたRXXR部位で切断するプロタンパク
質転換酵素によって実行される。この切断は、成熟増殖因子がプロドメインによってその
受容体への結合から遮蔽されている潜在型複合体を生じる。成熟、活性ミオスタチン増殖
因子の活性化および放出は、mTLL-2などのBMP/トロイドファミリー由来の追加
的プロテアーゼによる切断後に達成される(
図2)。
【0063】
ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルにおける例示的プロGDF8配列は下に提供
される。これらのプロGDF8配列において、プロタンパク質転換酵素切断部位は、太字
で示され、トロイドプロテアーゼ部位は下線で示される。いくつかの実施形態ではプロタ
ンパク質転換酵素切断部位は、配列番号52~55のアミノ酸残基240から243を含
む。いくつかの実施形態ではトロイドプロテアーゼ部位は、配列番号52~55のアミノ
酸残基74~75を含む。本明細書で提供される例示的プロGDF8配列が限定的である
ことを意図せず、他の種由来の追加的プロGDF8配列が、その任意のアイソフォームを
含め、本開示の範囲内であることは理解されるべきである。
【化1】
【0064】
ミオスタチンおよびGDF11は、90パーセントの同一性を有してそれらの成熟増殖
因子ドメイン間で比較的高い程度の保存を共有するが、それらのプロドメイン領域では2
個の間で50パーセント未満のアミノ酸同一性であり、十分に保存されていない。ミオス
タチンおよびGDF11は、II型受容体(ACTRIIA/B)と会合しているI型受
容体(ALK4/5)からなる同じ受容体に結合し、それを通じてシグナル伝達する。I
型およびII型受容体とのミオスタチンの会合(engagement)は、SMADリ
ン酸化および筋萎縮症遺伝子の転写活性化をもたらすシグナル伝達カスケードを開始させ
る。成熟増殖因子における比較的高い程度の保存は、成熟ミオスタチンとGDF11とを
区別できるモノクローナル抗体などの試薬を同定することを困難なものにしている。
【0065】
ミオパチーにおけるミオスタチンの役割
骨格筋は、体重のおよそ40%を占め、動的器官であり、1日あたり1~2%の割合で
代謝回転する。筋萎縮症は、非活動性期間中に(例えば非活動性萎縮症)および/または
増大した全身性炎症(悪液質)に応答して生じる高度に制御された異化工程である。床上
安静中などの長期の固定期間中に生じる場合がある非活動性萎縮症では、筋肉喪失が急速
に生じる。例えば1週間の入院中に平均的患者は約1.3kgの筋肉量を失う。
【0066】
筋萎縮症は、幅広い臨床状態において顕著な病的状態を生じる。筋萎縮性側索硬化症(
ALS)または脊髄性筋萎縮症(SMA)のような脱神経の疾患および筋ジストロフィー
を含む遺伝疾患では、筋力および機能の喪失は適切な処置がない高度に身体障害性の臨床
症状発現である。腎不全、AIDS、心臓の状態またはがんによる悪液質症候群では、筋
消耗は原発性状態の処置の成功をしばしば台無しにする。筋肉喪失は、加齢の自然な経過
としても生じ、その最も重症の形態は、筋肉減少症、治療介入を必要とする病的状態とし
てますます認識されるようになっている高齢者における広汎性の状態として分類されてい
る。最後に、筋萎縮症を進行させる大きな要因は非活動性である。固定は、股関節骨折、
待機的人工関節置換術、脊髄損傷、救命医療ミオパチーおよび発作などの状態の大きな群
において急速で顕著な筋肉喪失を生じる。それらの原因は様々だが、これらの徴候は顕著
な身体障害、長い身体のリハビリテーションおよび回復時間ならびに生活の質の低下をも
たらす筋脱力の特徴を共有する。
【0067】
筋萎縮症状態に関する医学的必要性は満たされていない。したがって、筋萎縮症を処置
するために、いくつかの実施形態において方法が本明細書で提供される。いくつかの実施
形態では本明細書で提供される方法は、原発性ミオパチーの処置に関する。いくつかの実
施形態では本明細書で提供される方法は、例えば脱神経、遺伝性筋脱力および悪液質の疾
患、筋肉喪失が疾患病態に続発する状態などの二次性ミオパチーの処置に関する。いくつ
かの実施形態では、非活動性萎縮症(例えば股関節骨折または脊髄損傷(SCI)に関連
する)などの原発性ミオパチーの処置のために本明細書で提供される方法は、被験体にお
いて筋肉量、強度および機能の増加を生じる。
【0068】
ミオスタチン経路阻害
筋肉関連状態の処置に向けて臨床開発の種々の段階にあるいくつかのミオスタチン経路
アンタゴニストがある。そのような経路アンタゴニストは、成熟増殖因子またはそのII
型受容体のいずれかを標的化し、大部分は複数のTGFβファミリーメンバーのシグナル
伝達に拮抗する。例えばいくつかの現在の臨床候補は、それぞれ生殖生物学、創傷治癒、
赤血球生成および血管形成の制御因子である、アクチビンA、GDF11ならびにBMP
9および10などの追加的増殖因子を遮断する。本開示の態様は、ミオスタチンに加えて
これらの因子を遮断することが、容認できない副作用のために安全に治療を受けられる患
者の集団を限定している可能性があるという認識に関する。
【0069】
したがって、プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンに結合でき、それに
よりミオスタチン活性を阻害する抗体ならびにミオパチーを伴う疾患および障害を処置す
るためのその使用が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、循環中の潜在的複
合体が優勢であることを考慮して、成熟増殖因子よりむしろ、より豊富でより長く存在す
るミオスタチン前駆体、例えばプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンを特異的に標
的化する処置が本明細書で提供される。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まな
いが、本明細書で提供される抗体は、例えばI型(ALK4/5)およびII型(ACT
RIIA/B)受容体に結合することによって、ミオスタチン経路を活性化できるミオス
タチンの「活性」形態と考えられる成熟ミオスタチンへのタンパク質分解を介したプロミ
オスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンの活性化を妨げることができる。本明細書
において使用される場合、用語「プロ/潜在型ミオスタチン」は、プロミオスタチン、潜
在型ミオスタチンまたは両方を指す。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチ
ン抗体は、プロミオスタチンに特異的に結合する。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在
型ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンに特異的に結合する。いくつかの実施形態で
は抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンおよびプロミオスタチンの両
方に特異的に結合する。
【0070】
プロ/潜在型ミオスタチンに結合する抗体
本開示は、ある特定のプロ/潜在型ミオスタチン特異的抗体(例えば本明細書でAb1
と称される抗体)が、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの成熟ミオスタ
チンへの活性化を妨げたという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。さらに
そのような抗体を使用するミオスタチン活性化の阻害は、デキサメタゾンおよびギプス固
定誘導筋萎縮症マウスモデルの両方において筋肉量の増加に有効であった。本開示の態様
は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合し、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタ
チンの成熟ミオスタチンへの活性化を阻害する抗体(例えば抗体および抗原結合性断片)
を提供する。
【0071】
抗体(複数形と互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少
なくとも1つの抗原認識部位を通じて、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチ
ドなどの標的に特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書において使用さ
れる場合、用語「抗体」は、インタクト(例えば全長)ポリクローナルまたはモノクロー
ナル抗体だけでなく、その抗原結合性断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvな
ど)、一本鎖(scFv)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、
キメラ抗体、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性
抗体)ならびに抗体のグリコシル化改変体、抗体のアミノ酸配列改変体および共有結合的
に改変された抗体を含む求められる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任
意の他の改変構成も包含する。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgAまたはIgMな
どの任意のクラス(またはそのサブクラス)の抗体を含み、抗体はいずれかの特定のクラ
スである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブ
リンは様々なクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンの5個の主なクラスがあり:I
gA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、これらのいくつかはサブクラス(アイソタ
イプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさ
らに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それ
ぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの
様々なクラスのサブユニット構造および三次元構成は周知である。
【0072】
本明細書に記載の抗体は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合でき、それによりタンパク
質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの成熟ミオスタチンへの活性化を阻害する。い
くつかの場合では本明細書に記載の抗体は、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオス
タチンの活性化を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、
80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの場合では本明細書に
記載の抗体は、プロタンパク質転換酵素(例えばフューリン)によるタンパク質分解を介
したプロミオスタチンの切断を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60
%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの場合で
は本明細書に記載の抗体は、トロイドプロテアーゼ(例えばmTLL2)によるタンパク
質分解を介したプロミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンの切断を少なくとも20%、
例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれよ
り高く阻害できる。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の阻害活性は、日常的方法によって
、例えば実施例1および
図3に記載のウエスタンブロット分析によって測定され得る。し
かし、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの切断への抗プロ/潜在型ミオ
スタチン抗体の阻害活性を測定するために追加的方法が使用され得ることは理解されるべ
きである。いくつかの実施形態ではプロ/潜在型ミオスタチン切断(例えばプロタンパク
質転換酵素および/またはトロイドプロテアーゼによる)の阻害は、阻害剤効力の尺度を
提供し、プロテアーゼ(例えばプロタンパク質転換酵素またはトロイドプロテアーゼの)
活性を半分に低減するために必要な阻害剤(例えば抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体)の
濃度であり、酵素または基質濃度に依存しない阻害定数(Ki)として反映され得る。
【0073】
いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素は(i)プロタンパク質転換酵素切断
部位を含有するタンパク質のペプチド結合を加水分解する触媒ドメイン、および(ii)
プロタンパク質転換酵素切断部位を有するrTGFに結合する結合ポケットを含む。本開
示による使用のためのプロタンパク質転換酵素の例は、非限定的にPCSK5/6、PA
CE4、PACE7およびPACE3(例えばフューリン)を含む。プロタンパク質転換
酵素は、いくつかの実施形態では、非限定的にヒト、サルまたはげっ歯類(例えばマウス
、ラット、ハムスター)を含む任意の哺乳動物から得られる。
【0074】
いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素は、PCSK5/6、PACE4、P
ACE7およびPACE3(例えばフューリン)からなる群より選択されるプロタンパク
質転換酵素に相同性である。例えばプロタンパク質転換酵素は、PCSK5/6、PAC
E4、PACE7またはPACE3(例えばフューリン)と少なくとも70%同一、少な
くとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同
一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも
99.5%同一または少なくとも約99.9%同一であってよい。
【0075】
プロタンパク質転換酵素切断部位は、いくつかの実施形態では、プロタンパク質転換酵
素(例えばPCSK5/6、PACE4、PACE7およびPACE3)によって切断さ
れ得るアミノ配列である。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、
アミノ酸配列R-X-X-Rを含み、式中Rはアルギニンであり、Xは任意のアミノ酸で
ある。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、アミノ酸配列R-X
-(K/R)-Rを含み、式中Rはアルギニンであり、Kはリシンであり、Xは任意のア
ミノ酸である。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、R-V-R
-R(配列番号57)であるアミノ酸配列を含み、式中Rはアルギニンであり、Vはバリ
ンである。ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルミオスタチンについての例示的プロ
タンパク質転換酵素切断部位は、配列番号52~55において太字で示される。いくつか
の実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、アミノ酸配列RSRR(配列番号5
6)を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では本開示による使用のためのトロイドプロテアーゼは、非限定的
に、BMP-1、mTLL-1およびmTLL-2を含む。トロイドプロテアーゼは、非
限定的にヒト、サルまたはげっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)を含む任意の
哺乳動物から得ることができる。いくつかの実施形態ではトロイドプロテアーゼは、BM
P-1、mTLL-1およびmTLL-2からなる群より選択されるトロイドプロテアー
ゼに相同性である。例えばトロイドプロテアーゼは、BMP-1、mTLL-1およびm
TLL-2と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少
なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%
同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一または少なくとも約99.9%
同一であってよい。
【0077】
トロイドプロテアーゼ切断部位は、いくつかの実施形態では、トロイド(例えばBMP
-1、mTLL-1およびmTLL-2)によって切断され得るアミノ配列である。ヒト
、ラット、マウスおよびカニクイザルミオスタチンについての例示的トロイドプロテアー
ゼ切断部位は、配列番号52~55において下線で示される。いくつかの実施形態ではト
ロイド切断部位は、アミノ酸配列QRを含み、式中Qはグルタミンであり、Rはアルギニ
ンである。
【0078】
いくつかの実施形態では本明細書に記載の抗体は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合で
き、それによりミオスタチン活性を阻害する。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体
は、ミオスタチンシグナル伝達を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、6
0%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの実施
形態ではミオスタチンシグナル伝達の阻害は、日常的方法によって、例えば実施例1に記
載のミオスタチン活性化アッセイを使用して測定され得る。しかし、追加的方法がミオス
タチンシグナル伝達活性を測定するために使用され得ることは理解されるべきである。
【0079】
例えばプロタンパク質転換酵素および/またはトロイドプロテアーゼによる、タンパク
質分解を介したミオスタチンの切断の程度は、任意の好適な方法を使用して測定および/
または定量され得ることは理解されるべきである。いくつかの実施形態ではタンパク質分
解を介したミオスタチンの切断の程度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使
用して測定および/または定量される。例えばELISAは、放出された増殖因子(例え
ば成熟ミオスタチン)のレベルを測定するために使用され得る。別の例としてプロミオス
タチン、潜在型ミオスタチンおよび/または成熟ミオスタチンに特異的に結合する抗体は
、ミオスタチン(例えばプロ/潜在型/成熟ミオスタチン)の特定の形態のレベルを測定
するため、タンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度を定量するためのELIS
Aにおいて使用され得る。いくつかの実施形態ではタンパク質分解を介したミオスタチン
の切断の程度は、免疫沈降に続いてトリプシンペプチドのSDS-PAGEもしくは質量
分析、蛍光異方性に基づく技術、FRETアッセイ、水素-重水素交換質量分析、および
/またはNMR分光法を使用して測定および/または定量される。
【0080】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンとしても公知の抗体は、それぞれおよそ25
kDaの2本の軽鎖(L)およびそれぞれおよそ50kDaの2本の重鎖(H)から構成
される四量体グリコシル化タンパク質である。ラムダおよびカッパと呼ばれる2つの型の
軽鎖が抗体において見出され得る。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて免疫グロ
ブリンは、5個の主なクラス:A、D、E、GおよびMに割り当てられてよく、これらの
いくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG
4、IgA1およびIgA2にさらに分割され得る。各軽鎖は、N末端可変(V)ドメイ
ン(VL)および定常(C)ドメイン(CL)を典型的には含む。各重鎖は、N末端Vド
メイン(VH)、3個または4個のCドメイン(CH1-3)およびヒンジ領域を典型的
には含む。VHに最も近位のCHドメインはCH1と名付けられる。VHおよびVLドメ
インは、超可変配列(相補性決定領域、CDR)の3個の領域のための足場を形成するフ
レームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)と呼ばれる比較的保存された
配列の4個の領域からなる。CDRは、抗体と抗原との特異的相互作用に関与する残基の
大部分を含有する。CDRは、CDR1、CDR2およびCDR3と称される。したがっ
て、重鎖上のCDR構成成分はCDRH1、CDRH2およびCDRH3と称され、一方
軽鎖上のCDR構成成分はCDRL1、CDRL2およびCDRL3と称される。CDR
は、Sequences of Proteins of Immunological
Interest、US Department of Health and Hu
man Services(1991年)、Kabatら編に記載のKabat CDR
を典型的には指す。抗原結合部位を特徴付けるための別の基準は、Chothiaによっ
て記載の超可変ループを指す。例えばChothia, D.ら、(1992年)J.
Mol. Biol. 227巻:799~817頁およびTomlinsonら、(1
995年)EMBO J. 14巻:4628~4638頁を参照されたい。さらに別の
基準は、Oxford Molecular’s AbM antibody mode
lingソフトウェアによって使用されるAbM定義である。一般に例えばAntibo
dy Engineering Lab Manual (Duebel, SおよびK
ontermann, R.編, Springer-Verlag、Heidelbe
rg)のProtein Sequence and Structure Analy
sis of Antibody Variable Domainsを参照されたい。
Kabat CDRに関して記載された実施形態は、Chothia超可変ループにもし
くはAbM定義ループに関して、またはこれらの方法のいずれかの組合せに関して同様に
記載された関係を使用して代替的に実行され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体および抗体をコー
ドする本開示の核酸分子は、表1に示すCDRアミノ酸配列を含む。
【表1】
【0082】
いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン結合剤(例えば抗体)は
、表1に示される抗体のいずれか1つに提供されるCDRH1、CDRH2、CDRH3
、CDRL1、CDRL2もしくはCDRL3またはそれらの組合せを含む任意の抗体(
抗原結合性断片を含む)を含む。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン結
合剤は、表1に示される抗体のいずれか1つのCDRH1、CDRH2、CDRH3、C
DRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。本開示は、表1に示される抗体のいずれ
か1つに提供されるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2また
はCDRL3を含む分子をコードする任意の核酸配列も含む。抗体重鎖および軽鎖CDR
3ドメインは、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を演じる
場合がある。したがって、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン結合剤またはその核酸分
子は、表1に示す抗体の少なくとも重鎖および/または軽鎖CDR3を含み得る。
【0083】
本開示の態様は、プロ/潜在型ミオスタチンタンパク質に結合し、6個の相補性決定領
域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびC
DRL3を含むモノクローナル抗体または抗原結合性断片に関する。
【0084】
いくつかの実施形態ではCDRH1は配列番号1~3のいずれか1つに記載の配列を含
む。いくつかの実施形態ではCDRH2は配列番号4~9のいずれか1つに記載の配列を
含む。いくつかの実施形態ではCDRH3は配列番号10~11のいずれか1つに記載の
配列を含む。CDRL1は配列番号12~17のいずれか1つに記載の配列を含む。いく
つかの実施形態ではCDRL2は配列番号18~21のいずれか1つに記載の配列を含む
。いくつかの実施形態ではCDRL3は配列番号22~23のいずれか1つに記載の配列
を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab
1について)CDRH1は配列番号1または2に記載の配列を含み、CDRH2は配列番
号4または5に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号10に記載の配列を含み、CD
RL1は配列番号12または13に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号18または
19に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号22に記載の配列を含み、抗体はプロ/
潜在型ミオスタチンに結合する。
【0086】
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab
3について)CDRH1は配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2は配列番
号6または7に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号11に記載の配列を含み、CD
RL1は配列番号14または15に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号20または
21に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号23に記載の配列を含み、抗体はプロ/
潜在型ミオスタチンに結合する。
【0087】
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab
5について)CDRH1は配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2は配列番
号8または9に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号11に記載の配列を含み、CD
RL1は配列番号16または17に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号20または
21に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号23に記載の配列を含み、抗体はプロ/
潜在型ミオスタチンに結合する。いくつかの例では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン
結合剤(例えば抗体)のいずれかは、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1
、CDRL2および/またはCDRL3に実質的に類似する1つまたは複数のCDR(例
えばCDRHまたはCDRL)配列を有する任意の抗体(抗原結合性断片を含む)を含む
。例えば抗体は、配列番号1~23のいずれか1つの対応するCDR領域と比較して5個
、4個、3個、2個または1個までのアミノ酸残基バリエーションを含有する、表1(配
列番号1~23)に示される1つまたは複数のCDR配列を含んでよい。表1に列挙され
る抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域についての完全なアミノ酸および核酸配列は下
に提供される。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0088】
いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、配列番号24~
29のいずれか1つの重鎖可変ドメインまたは配列番号30~35のいずれか1つの軽鎖
可変ドメインを含む任意の抗体を含む。いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型
ミオスタチン抗体は、配列番号24および30;25および31;26および32;27
および33;28および34;または29および35)の重鎖可変および軽鎖可変の対を
含む任意の抗体を含む。
【0089】
本開示の態様は、本明細書に記載のもののいずれかに相同性の重鎖可変および/または
軽鎖可変アミノ酸配列を有する抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を提供する。いくつかの
実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、配列番号24~29のいずれかの重鎖
可変配列または配列番号30~35のいずれか1つの軽鎖可変配列と少なくとも75%(
例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である重鎖可変配列
または軽鎖可変配列を含む。いくつかの実施形態では相同性重鎖可変および/または軽鎖
可変アミノ酸配列は、本明細書で提供されるCDR配列のいずれの内でも変化していない
。例えばいくつかの実施形態では配列バリエーションの程度(例えば75%、80%、8
5%、90%、95%、98%または99%)は本明細書で提供されるCDR配列のいず
れかを除外して重鎖可変および/または軽鎖可変配列内で生じてよい。
【0090】
2個のアミノ酸配列の「パーセント同一性」はKarlinおよびAltschul
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:5873~77頁、
1993年のとおり改変されたKarlinおよびAltschul Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA 87巻:2264~68頁、1990年のアル
ゴリズムを使用して決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、J.
Mol. Biol. 215巻:403~10頁、1990年のNBLASTおよび
XBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。BLASTタンパク質検
索は、目的のタンパク質分子に相同性のアミノ酸配列を得るためにXBLASTプログラ
ム、スコア=50、ワード長=3で実行され得る。2個の配列間にギャップが存在する場
合、ギャップBLASTがAltschulら、Nucleic Acids Res.
25巻(17号):3389~3402頁、1997年に記載のとおり利用され得る。
BLASTおよびギャップBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム
(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では保存的変異は、結晶構造に基づいて決定されるプロ/潜在型ミ
オスタチンとの相互作用に残基が関与しそうにない位置でCDRまたはフレームワーク配
列に導入されてよい。本明細書において使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、ア
ミノ酸置換が行われるタンパク質の相対電荷またはサイズの特徴を変更しないアミノ酸置
換を指す。改変体は、そのような方法をまとめている参考文献、例えばMolecula
r Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambro
okら編、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory P
ress、Cold Spring Harbor、New York、1989年また
はCurrent Protocols in Molecular Biology、
F.M. Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.、N
ew Yorkにおいて見出されるような当業者に公知のポリペプチド配列を変更するた
めの方法に従って調製されてよい。アミノ酸の保存的置換は、次の群:(a)M、I、L
、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、
N;および(g)E、D内のアミノ酸の間で行われる置換を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、抗体に望ましい特性を付与する
変異を含む。例えば、天然IgG4 mAbで生じることが公知であるFabアーム交換
による起こり得る困難な状況を回避するために、本明細書で提供される抗体は、セリン2
28(EU番号付け、Kabat番号付け残基241)がプロリンに変換されてIgG1
様(CPPCP(配列番号58))ヒンジ配列が生じる安定化「Adair」変異を含む
場合がある(Angal S.ら、「A single amino acid sub
stitution abolishes the heterogeneity of
chimeric mouse/human (IgG4) antibody」Mo
l Immunol 30巻、105~108頁;1993年)。したがって、抗体のい
ずれかは、安定化「Adair」変異またはアミノ酸配列CPPCP(配列番号58)を
含んでよい。
【0093】
本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン結合剤は、任意選択で抗体定常領域またはその一
部を含んでよい。例えばVLドメインは、そのC末端でCκまたはCλなどの軽鎖定常ド
メインに付着され得る。同様にVHドメインまたはその一部は、IgA、IgD、IgE
、IgGおよびIgMならびに任意のアイソタイプサブクラスのような重鎖の全体または
一部に付着され得る。抗体は、好適な定常領域を含み得る(例えばKabatら、Seq
uences of Proteins of Immunological Inte
rest、第91~3242号、National Institutes of He
alth Publications、Bethesda、Md.(1991年)を参照
されたい)。したがって、この範囲内の抗体は、任意の好適な定常領域と組み合わされた
VHおよびVLドメイン、またはその抗原結合性部分を含み得る。
【0094】
ある特定の実施形態ではV
Hおよび/またはV
Lドメインは、生殖系列配列に復帰され
てよく、例えばこれらのドメインのFRは、生殖系列細胞によって産生されるものに適合
するように従来の分子生物学技術を使用して変異される。例えばV
Hおよび/またはV
L
ドメインは、それぞれIgHV3-30(配列番号36)および/またはIgLV1-4
4(配列番号37)の生殖系列配列に復帰されてよい。V
Hおよび/またはV
Lドメイン
のいずれかが任意の好適な生殖系列配列に復帰され得ることは理解されるべきである。他
の実施形態ではFR配列は、コンセンサス生殖系列配列から逸脱したままである。
【化8】
【0095】
いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体または抗原結合性断片は、配
列番号24~35に示す抗体のフレームワーク領域を含んでも含まなくてもよい。いくつ
かの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、ネズミ抗体であり、ネズミフレー
ムワーク領域配列を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、比較的高い親和
性で、例えば10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-
11M未満またはそれより低いKdでプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。例えば抗
プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、5pMから500nMの間、例えば50pMから10
0nMの間、例えば500pMから50nMの間の親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに
結合できる。本開示は、プロ/潜在型ミオスタチンへの結合について本明細書に記載の抗
体のいずれかと競合し、50nMまたはそれより低い(例えば20nMもしくはそれより
低い、10nMもしくはそれより低い、500pMもしくはそれより低い、50pMもし
くはそれより低い、または5pMもしくはそれより低い)親和性を有する抗体または抗原
結合性断片も含む。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の親和性および結合動態は、これに
限定されないがバイオセンサー技術(例えばOCTETまたはBIACORE)を含む任
意の好適な方法を使用して試験されてよい。
【0097】
標的抗原に「特異的に結合する」抗体は非標的抗原に結合するよりも大きな親和性、ア
ビディティ、より容易におよび/またはより長い持続時間で標的抗原に結合する。いくつ
かの実施形態では、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体が本明細書で開示
される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、プロ/潜在型
ミオスタチンのトロイド切断部位にもしくはその近くにまたはトロイドドッキング部位に
もしくはその近くに結合する。いくつかの実施形態では抗体は、トロイド切断部位または
トロイドドッキング部位の15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合に、
トロイド切断部位近く、またはトロイドドッキング部位近くに結合する。いくつかの実施
形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、トロイド切断部位またはトロイドドッ
キング部位の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14また
は15アミノ酸残基内に結合する。いくつかの実施形態では抗体は、GDF8のトロイド
切断部位にまたはその近くに結合する。例えば抗体は、配列番号62 PKAPPLRE
LIDQYDVQRDDSSDGSLEDDDYHAT(配列番号62)に記載のアミノ
配列に結合できる。他の実施形態では、本明細書で提供される抗体のいずれかは、プロ/
潜在型ミオスタチンのプロタンパク質転換酵素切断部位にもしくはその近くに、またはプ
ロタンパク質転換酵素ドッキング部位にもしくはその近くに結合する。いくつかの実施形
態では抗体は、プロタンパク質転換酵素切断部位またはプロタンパク質転換酵素ドッキン
グ部位の15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合、プロタンパク質転換
酵素切断部位近くに、またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位近くに結合する。い
くつかの実施形態では本明細書で提供する抗体のいずれかは、プロタンパク質転換酵素切
断部位またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位の1、2、3、4、5、6、7、8
、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基内に結合する。いくつかの
実施形態では抗体は、GDF8のプロタンパク質転換酵素切断部位にまたはその近くに結
合する。例えば抗体は、配列番号63に記載のアミノ酸配列に結合できる。
GLNPFLEVKVTDTPKRSRRDFGLDCDEHSTESRC(配列番号6
3)。
【0098】
一例では本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、ミオスタチンの他の形
態および/または増殖因子のTGFβファミリーの他のメンバーと比較してプロ/潜在型
ミオスタチンに特異的に結合する。増殖因子のTGFβファミリーのメンバーは、非限定
的にAMH、ARTN、BMP10、BMP15、BMP2、BMP3、BMP4、BM
P5、BMP6、BMP7、BMP8A、BMP8B、GDF1、GDF10、GDF1
1、GDF15、GDF2、GDF3、GDF3A、GDF5、GDF6、GDF7、G
DF8、GDF9、GDNF、INHA、INHBA、INHBB、INHBC、INH
BE、LEFTY1、LEFTY2、NODAL、NRTN、PSPN、TGFβ1、T
GFβ2およびTGFβ3タンパク質を含む。そのような抗体は、増殖因子のTGFβフ
ァミリーの他のメンバーと比較してはるかに高い親和性(例えば少なくとも2倍、5倍、
10倍、50倍、100倍、200倍、500倍または1,000倍高い)でプロ/潜在
型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態ではそのような抗体は、増殖因子のT
GFβファミリーの他のメンバーと比較して少なくとも1,000倍高い親和性でプロ/
潜在型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は
、GDF11または成熟ミオスタチンの1つまたは複数の形態と比較してはるかに高い(
例えば少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍または1
,000倍高い)親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態
では本明細書で提供される抗体は、GDF11(例えばプロGDF11、潜在型GDF1
1もしくは成熟GDF11)または成熟ミオスタチンの1つまたは複数の形態と比較して
少なくとも1,000倍高い親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。代替的に
またはさらに抗体は、プロ/潜在型GDF11などのTGFβファミリーの他のメンバー
と比較して、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの切断(例えばプロタン
パク質転換酵素またはトロイドプロテアーゼによる)に対してはるかに高い阻害活性(例
えば少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,00
0倍高い)を示し得る。
【0099】
いくつかの実施形態では抗体は抗原に結合するが、抗原を血漿から有効に除去できない
。したがって、いくつかの実施形態では血漿中の抗原の濃度は、抗原のクリアランスを低
減することによって増加され得る。しかし、いくつかの実施形態では本明細書で提供され
る抗体(例えばスイーピング抗体)は、抗原への親和性がpHに感受性である。そのよう
なpH感受性抗体は、中性pHで血漿中の抗原に結合でき、酸性エンドソーム中で抗原か
ら解離し、それにより抗体媒介抗原蓄積を低減し、および/または血漿からの抗原クリア
ランスを促進する。
【0100】
本開示の態様は、スイーピング抗体に関する。本明細書において使用される場合、「ス
イーピング抗体」は、pH感受性抗原結合および、中性または生理学的pHで細胞表面新
生児Fc受容体(FcRn)への少なくとも閾値レベルの結合の両方を有する抗体を指す
。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、新生児Fc受容体FcRnに中性pHで
結合する。例えばスイーピング抗体は、7.0から7.6の範囲のpHでFcRnに結合
できる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、抗原に抗原結合部位で結合でき、
細胞性FcRnに抗体のFc部分を介して結合できる。いくつかの実施形態では次いでス
イーピング抗体は、内部移行され、分解される場合がある抗原を酸性エンドソーム中に放
出できる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、もはや抗原に結合せず、次いで
(例えばエキソサイトーシスによって)細胞によって血清に戻して放出され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では血管内皮(例えば被験体の)中のFcRnは、スイーピング抗
体の半減期を延ばす。いくつかの実施形態ではミオスタチン(例えばプロミオスタチン、
潜在型ミオスタチンまたはプライムドミオスタチン(primed Myostatin
))などの抗原に結合するスイーピング抗体を、いくつかの実施形態では血管内皮細胞は
内部移行させる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、血流に戻って再循環され
る。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、その従来の対応物と比較して半減期(
例えば被験体の血清中)が増加している。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体の従
来の対応物は、スイーピング抗体の由来元である抗体を指す(例えばpH7でより大きな
親和性でFcRnに結合するように従来の抗体のFc部分を操作する前)。いくつかの実
施形態ではスイーピング抗体は、被験体の血清中でその従来の対応物と比較して少なくと
も1%、5%、10%、15%、20%、25%、35%、50%、75%、100%、
150%、200%または250%長い半減期を有する。
【0102】
いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のFc部分は、FcRnに結合する。いくつ
かの実施形態ではスイーピング抗体のFc部分は、FcRnに7.4のpHで10-3M
から10-8Mの範囲のKdで結合する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、
FcRnに7.4のpHで10-3Mから10-7M、10-3Mから10-6M、10
-3Mから10-5M、10-3Mから10-4M、10-4Mから10-8M、10-
4Mから10-7M、10-4Mから10-6M、10-4Mから10-5M、10-5
Mから10-8M、10-5Mから10-7M、10-5Mから10-6M、10-6M
から10-8M、10-6Mから10-7Mまたは10-7Mから10-8Mの範囲のK
dで結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、スイーピング抗体のCH2-CH3
ヒンジ領域に結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、プロテインAまたはプロテ
インGと同じ領域に結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、FcγRとは異なる
結合部位に結合する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体Fc領域のアミノ酸残基
AAは、FcRnへの結合のために必要である。いくつかの実施形態ではスイーピング抗
体Fc領域のアミノ酸残基AAは、FcRnへの結合に影響を与える。
【0103】
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、より高い親和性でF
cRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体
のいずれかは、pH7.4でより高い親和性でFcRnに結合するように操作される。い
くつかの実施形態ではスイーピング抗体のFcRnへの親和性は、それらの従来の対応物
と比較してそれらの薬物動態(PK)特性を伸ばすように増加される。例えばいくつかの
実施形態ではスイーピング抗体は、より低い用量での効能に起因してより少ない有害反応
を誘発する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、より少ない頻度で投与される
。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のある特定の組織型への経細胞輸送は増加さ
れる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、経胎盤性送達の効率を増強する。い
くつかの実施形態ではスイーピング抗体は、産生するためにあまり費用がかからない。
【0104】
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、低親和性でFcRn
に結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいず
れかは、pH7.4で、低親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実
施形態ではスイーピング抗体のFcRnへの親和性は、それらの従来の対応物と比較して
それらの薬物動態的(PK)特性を短くするように減少される。例えばいくつかの実施形
態ではスイーピング抗体は、画像化および/または放射免疫療法に関してさらに急速に排
除される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、自己免疫疾患に対する処置とし
て内在性病原性抗体のクリアランスを促進する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗
体は、材料胎児特異的抗体の経胎盤輸送によって生じる可能性がある有害な妊娠転帰のリ
スクを低減する。
【0105】
いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、中性または生理学的pH(例えばpH7
.4)と比較して低いpHで抗原への親和性が減少する。いくつかの実施形態ではスイー
ピング抗体は、生理学的pH(例えばpH7.4)と比較して酸性pH(例えば5.5か
ら6.5の範囲のpH)で抗原への親和性が減少する。本明細書で提供される抗体のいず
れかはpH変化に応じて抗原から解離するように操作されてよい(例えばpH感受性抗体
)ことは理解されるべきである。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピ
ング抗体は、pHに応じて抗原に結合するように操作される。いくつかの実施形態では本
明細書で提供されるスイーピング抗体は、pHに応じてFcRnに結合するように操作さ
れる。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体は、エンドサイト
ーシスによって内部移行される。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピ
ング抗体は、FcRn結合によって内部移行される。いくつかの実施形態ではエンドサイ
トーシスされたスイーピング抗体は、抗原をエンドソーム中に放出する。いくつかの実施
形態ではスイーピング抗体は、細胞表面に戻って再循環される。いくつかの実施形態では
スイーピング抗体は、細胞に結合したままである。いくつかの実施形態ではエンドサイト
ーシスされたスイーピング抗体は、血漿に戻って再循環される。本明細書で提供される抗
体のいずれかのFc部分が、異なるFcRn結合活性を有するように操作されてよいこと
は理解されるべきである。いくつかの実施形態ではFcRn結合活性は、スイーピング抗
体による抗原のクリアランス時間に影響を与える。いくつかの実施形態ではスイーピング
抗体は、長時間作用型または速効型スイーピング抗体であってよい。
【0106】
いくつかの実施形態では従来の治療用抗体をスイーピング抗体に変換することは、有効
用量を低減する。いくつかの実施形態では従来の治療用抗体をスイーピング抗体に変換す
ることは、有効用量を少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、
50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%低減する。いくつかの実
施形態では従来の治療用抗体をスイーピング抗体に変換することは、有効用量を少なくと
も1/1.5、1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/8、1/10、1/15
、1/20、1/50または1/100に低減する。
【0107】
いくつかの実施形態では治療のためのスイーピング抗体の適切な用量を選択することは
、経験的に実行され得る。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体の高用量は、FcR
nを飽和する場合があり、血清中の抗原を内部移行することなく安定化する抗体を生じる
。いくつかの実施形態では低用量のスイーピング抗体は、治療的に有効でない場合がある
。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、1日1回、1週間に1回、2週間ごとに
1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、6週間ごとに1回、8週間ごとに1回、1
0週間ごとに1回、12週間ごとに1回、16週間ごとに1回、20週間ごとに1回また
は24週間ごとに1回投与される。
【0108】
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれもスイーピング抗体になる
ように改変または操作されてよい。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体の
いずれも任意の好適な方法を使用してスイーピング抗体に変換されてよい。例えばスイー
ピング抗体を作製するための好適な方法はIgawaら、(2013年)「Engine
ered Monoclonal Antibody with Novel Anti
gen-Sweeping Activity In Vivo」、PLoS ONE
8巻(5号):e63236頁;およびIgawaら、「pH-dependent a
ntigen-binding antibodies as a novel the
rapeutic modality」、Biochimica et Biophys
ica Acta 1844巻(2014年)1943~1950頁に以前に記載されて
おり、これらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。しかし、本明細書
で提供されるスイーピング抗体を作製するための方法が限定されることを意味しないこと
は理解されるべきである。したがって、スイーピング抗体と作製するための追加的方法は
本開示の範囲内である。
【0109】
本開示のいくつかの態様は、本明細書で提供される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の
いずれかの親和性(例えばKdとして表される)がpHの変化に感受性であるという認識
に基づいている。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、比較的高いpH
(例えば7.0~7.4の範囲のpH)と比較して比較的低いpH(例えば4.0~6.
5の範囲のpH)でプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdが増加している。いくつか
の実施形態では本明細書で提供される抗体は、pHが4.0から6.5の間である場合に
、10-3M、10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8Mの範囲の
プロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdを有する。いくつかの実施形態では本明細書で
提供される抗体は、pHが7.0から7.4の間である場合に、10-6M、10-7M
、10-8M、10-9M、10-10M、10-11Mの範囲のプロ/潜在型ミオスタ
チンへの結合のKdを有する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、p
H7.0から7.4の間と比較してpH4.0から6.5の間で少なくとも2倍、少なく
とも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも
1000倍、少なくとも5000倍または少なくとも10000倍大きいプロ/潜在型ミ
オスタチンへの結合のKdを有する。
【0110】
ポリペプチド
本開示のいくつかの態様は、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号2
7、配列番号28および配列番号29からなる群より選択される配列を有するポリペプチ
ドに関する。いくつかの実施形態ではポリペプチドは可変重鎖ドメインである。いくつか
の実施形態ではポリペプチドは、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号
27、配列番号28または配列番号29に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なくと
も75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である。
【0111】
本開示のいくつかの態様は、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号3
3、配列番号34および配列番号35からなる群より選択される配列を有するポリペプチ
ドに関する。いくつかの実施形態ではポリペプチドは可変軽鎖ドメインである。いくつか
の実施形態ではポリペプチドは、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号
33、配列番号34または配列番号35に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なくと
も75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である。
【0112】
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体と競合する抗体
本開示の態様は、本明細書で提供される抗体のいずれかと競合または交差競合する抗体
に関する。抗体に関して本明細書において使用される用語「競合する」は、第1の抗体が
、第2の抗体の結合と十分に類似した様式でタンパク質(例えば潜在型ミオスタチン)の
エピトープに結合し、そのエピトープとの第1の抗体の結合の結果が、第2の抗体の非存
在下での第1の抗体の結合と比較して第2の抗体の存在下で検出可能に減少されることを
意味する。第2の抗体のそのエピトープへの結合も第1の抗体の存在下で検出可能に減少
される別の場合が可能であるが、そうである必要はない。すなわち第1の抗体は第2の抗
体のそのエピトープへの結合を、第2の抗体がそのそれぞれのエピトープへの第1の抗体
の結合を阻害することなく阻害できる。しかし、各抗体がそのエピトープまたはリガンド
との他の抗体の結合を検出可能に阻害する場合、同じ程度、より大きい程度またはより小
さい程度であるかに関わらず、抗体はそれらのそれぞれのエピトープ(複数可)の結合に
ついて互いに「交差競合する」といえる。競合するおよび交差競合する両方の抗体は、本
開示の範囲内である。そのような競合または交差競合が生じる機構(例えば立体障害、コ
ンフォメーション変化もしくは共通エピトープまたはそれらの部分への結合)に関わらず
、当業者は、そのような競合および/または交差競合抗体が包含され、本明細書で提供さ
れる方法および/または組成物に有用であり得ることを理解する。
【0113】
本開示の態様は、本明細書で提供される抗体のいずれかと競合または交差競合する抗体
に関する。いくつかの実施形態では抗体は、本明細書で提供される抗体のいずれかと同じ
エピトープにおいてまたはその近くに結合する。いくつかの実施形態では抗体は、それが
エピトープの15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合にエピトープ近く
に結合する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、本明細書
で提供される抗体のいずれかが結合するエピトープの1、2、3、4、5、6、7、8、
9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基内に結合する。
【0114】
別の実施形態では抗体は、10-6M未満の抗体とタンパク質との間の平衡解離定数K
dで本明細書で提供される抗原のいずれか(例えばプロ/潜在型ミオスタチン)への結合
について競合または交差競合する。他の実施形態では抗体は、10-11Mから10-6
Mの範囲のKdで、本明細書で提供される抗原のいずれかへの結合について競合または交
差競合する。
【0115】
本開示の態様は本明細書で提供される抗体のいずれかとプロ/潜在型ミオスタチンへの
結合について競合する抗体に関する。いくつかの実施形態では抗体は、本明細書で提供さ
れる抗体のいずれかと同じエピトープにおいてプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。例
えば、いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、プロ/潜在型ミ
オスタチンのトロイド切断部位にもしくはその近くにまたはトロイドドッキング部位にも
しくはその近くに結合する。他の実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、
プロ/潜在型ミオスタチンのプロタンパク質転換酵素切断部位にもしくはその近くにまた
はプロタンパク質転換酵素ドッキング部位にもしくはその近くに結合する。別の実施形態
では抗体は、10-6M未満の抗体とプロ/潜在型ミオスタチンとの間の平衡解離定数K
dでプロ/潜在型ミオスタチンへの結合について競合する。他の実施形態では本明細書で
提供される抗体のいずれかと競合する抗体は、10-11Mから10-6Mの範囲のKd
でプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
【0116】
本明細書で提供される抗体のいずれかは、任意の好適な方法を使用して特徴付けられて
よい。例えば1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること、すなわち「エピ
トープマッピング」である。例えばHarlowおよびLane、Using Anti
bodies、a Laboratory Manual、Cold Spring H
arbor Laboratory Press、Cold Spring Harbo
r、N.Y.、1999年の11章に記載のとおり、抗体抗原複合体の結晶構造を解析す
ること、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイおよび合成ペプチドに基づくアッセイを
含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングおよび特徴付けするための多数の好
適な方法がある。追加的例ではエピトープマッピングは、抗体が結合する配列を決定する
ために使用され得る。エピトープは、直鎖状エピトープであり得、すなわちアミノ酸の単
一のストレッチに含有され得る、または必ずしも単一のストレッチ(一次構造直鎖状配列
)に含有されていなくてもよいアミノ酸の三次元相互作用によって形成されるコンフォメ
ーショナルエピトープ(conformational epitope)であってよい
。多様な長さ(例えば少なくとも4~6アミノ酸長)のペプチドは、単離または合成(例
えば組換え的に)され、抗体との結合アッセイのために使用されてよい。別の例では抗体
が結合するエピトープは、標的抗原配列由来の重複ペプチドを使用し、抗体による結合を
決定することによる系統的スクリーニングにおいて決定され得る。遺伝子断片発現アッセ
イにより、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームは、無作為にまたは特異
的な遺伝的構築によってのいずれかで断片化され、発現された抗原断片と試験される抗体
との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えばPCRによって産生され、次いで放射性
アミノ酸の存在下でタンパク質へin vitroで転写および翻訳され得る。抗体の放
射性標識抗原断片への結合は、次いで免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。
ある特定のエピトープは、ファージ粒子の表面に提示された無作為ペプチド配列の大きな
ライブラリー(ファージライブラリー)を使用しても同定され得る。代替的に、重複ペプ
チド断片の規定のライブラリーは、簡単な結合アッセイにおいて試験抗体への結合につい
て試験され得る。追加的例では、抗原結合ドメインの変異誘発、ドメイン交換実験および
アラニンスキャンニング変異誘発は、エピトープ結合のために要求される、十分なおよび
/または必要な残基を同定するために実施され得る。例えばドメイン交換実験は、プロ/
潜在型ミオスタチンポリペプチドの種々の断片が、TGFβタンパク質ファミリーの別の
メンバー(例えばGDF11)などの密接に関連しているが抗原性が異なるタンパク質由
来の配列で置き換えられて(交換されて)いる標的抗原の変異体を使用して実施され得る
。抗体の変異体プロ/潜在型ミオスタチンへの結合を評価することによって、抗体結合へ
の特定の抗原断片の重要性が評価され得る。
【0117】
代替的に、競合アッセイは、抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決
定するために同じ抗原に結合することが公知である他の抗体を使用して実施されてよい。
競合アッセイは当業者に周知である。好適な方法のいずれか、例えば本明細書に記載のエ
ピトープマッピング法は、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体が本明細書に記載のプロ/潜
在型ミオスタチン中の特異的残基/セグメントの1つまたは複数に結合するかどうかを決
定するために適用され得る。さらに抗体と、プロ/潜在型ミオスタチン中のこれらの定義
された残基の1つまたは複数との相互作用は、日常的技術によって決定され得る。例えば
結晶構造を決定することができ、プロ/潜在型ミオスタチン中の残基と抗体中の1つまた
は複数の残基との間の距離はそれに従って決定され得る。そのような距離に基づいて、プ
ロ/潜在型ミオスタチン中の特定の残基が抗体中の1つまたは複数の残基と相互作用する
かどうかが決定され得る。さらに、競合アッセイおよび標的変異誘発アッセイなどの好適
な方法は、変異体プロ/潜在型ミオスタチンなどの別の標的と比較した、候補抗プロ/潜
在型ミオスタチン抗体のプロ/潜在型ミオスタチンへの優先的な結合を決定するために適
用され得る。
【0118】
プロ/潜在型ミオスタチンに結合する抗体の産生
多数の方法は、本開示の抗体またはその抗原結合性断片を得るために使用され得る。例
えば抗体は、組換えDNA方法を使用して産生され得る。モノクローナル抗体は、公知の
方法によりハイブリドーマの生成によっても産生され得る(例えばKohlerおよびM
ilstein(1975年)Nature、256号:495~499頁を参照された
い)。この様式で形成されたハイブリドーマは、次いで、特定の抗原に特異的に結合する
抗体を産生する1つまたは複数のハイブリドーマを同定するために酵素結合免疫吸着アッ
セイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(例えばOCTETまたはBIACORE
)解析などの標準的方法を使用してスクリーニングされる。特定の抗原の任意の形態、例
えば組換え抗原、天然に存在する形態、その任意の改変体または断片、およびその抗原性
ペプチド(例えば直鎖状エピトープとしてまたはコンフォメーショナルエピトープとして
足場内の本明細書に記載のエピトープのいずれか)は免疫原として使用され得る。抗体を
作製する1つの例示的方法は、抗体またはその断片(例えばscFv)を発現するタンパ
ク質発現ライブラリー、例えばファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをス
クリーニングすることを含む。ファージディスプレイは、例えばLadnerら、米国特
許第5,223,409号、Smith(1985年)Science 228巻:13
15~1317頁、Clacksonら、(1991年)Nature、352巻:62
4~628頁、Marksら、(1991年)J. Mol. Biol.、222巻:
581~597頁、WO92/18619、WO91/17271、WO92/2079
1、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、WO92/
09690およびWO90/02809に記載されている。
【0119】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定の抗原(例えばプロミオスタチン)は
、非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、ハムスター、またはラットを免疫化する
ために使用されてよい。一実施形態では非ヒト動物はマウスである。
【0120】
別の実施形態ではモノクローナル抗体は、非ヒト動物から得られ、次いで好適な組換え
DNA技術を使用して改変される(例えばキメラ)。キメラ抗体を作製するための種々の
アプローチは記載されている。例えばMorrisonら、Proc. Natl. A
cad. Sci. U.S.A.81巻:6851頁、1985年、Takedaら、
Nature 314巻:452頁、1985年、Cabillyら、米国特許第4,8
16,567号、Bossら、米国特許第4,816,397号、Tanaguchiら
、欧州特許公開第EP171496号、欧州特許公開第0173494号、英国特許第G
B2177096B号を参照されたい。
【0121】
追加的な抗体産生技術についてAntibodies: A Laboratory
Manual、Harlowら編、Cold Spring Harbor Labor
atory、1988年を参照されたい。本開示は、抗体のいずれかの特定の供給源、産
生の方法または他の特別な特徴に必ずしも限定されない。
【0122】
本開示のいくつかの態様は、ポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された宿主細
胞に関する。宿主細胞は、原核または真核細胞であってよい。宿主細胞に存在するポリヌ
クレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれていてもよく、または染色
体外に維持されていてもよい。宿主細胞は、細菌性、昆虫、真菌、植物、動物またはヒト
細胞などの任意の原核または真核細胞であってよい。いくつかの実施形態では真菌細胞は
、例えばSaccharomyces属のもの、具体的にはS.cerevisiae種
のものである。用語「原核生物」は、抗体または対応する免疫グロブリン鎖の発現のため
にDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクトされ得る全ての細菌を含む
。原核生物の宿主は、例えばE.coli、S.typhimurium、Serrat
ia marcescensおよびBacillus subtilisなどのグラム陰
性およびグラム陽性細菌を含んでよい。用語「真核生物」は、酵母、高等植物、昆虫なら
びに脊椎動物細胞、例えばNSOおよびCHO細胞などの哺乳動物細胞を含む。組換え産
生手順において用いられる宿主に応じて、ポリヌクレオチドによってコードされる抗体ま
たは免疫グロブリン鎖は、グリコシル化されてよい、またはグリコシル化されなくてよい
。抗体または対応する免疫グロブリン鎖は、開始メチオニンアミノ酸残基も含んでよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主はヌクレオチ
ド配列の高レベル発現に好適な条件下に維持されてよく、所望により、免疫グロブリン軽
鎖、重鎖、軽鎖/重鎖二量体もしくはインタクト抗体、抗原結合性断片または他の免疫グ
ロブリン形態の回収および精製が続いてよい;Beychok、Cells of Im
munoglobulin Synthesis、Academic Press、N.
Y.、(1979年)を参照されたい。したがって、ポリヌクレオチドまたはベクターは
、次に抗体または抗原結合性断片を産生する細胞に導入される。さらに、前述の宿主細胞
を含むトランスジェニック動物、好ましくは哺乳動物は、抗体または抗体断片の大規模産
生のために使用されてよい。
【0124】
形質転換された宿主細胞は、発酵槽で増殖され、最適な細胞増殖を達成するための任意
の好適な技術を使用して培養されてよい。発現されると、全抗体、それらの二量体、個々
の軽鎖および重鎖、他の免疫グロブリン形態または抗原結合性断片は、硫酸アンモニウム
沈殿法、親和性カラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当技術分野
の標準的手順により精製されてよい;Scopes、「Protein Purific
ation」、Springer Verlag、N.Y.(1982年)を参照された
い。次いで抗体または抗原結合性断片は、増殖培地、細胞溶解物または細胞膜画分から単
離されてよい。例えば微生物で発現された抗体または抗原結合性断片の単離および精製は
、例えば調製用クロマトグラフィー分離および、例えば抗体の定常領域に対して指向され
たモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を含むものなどの免疫学的分離などの
任意の従来の手段によってであってよい。
【0125】
本開示の態様は、モノクローナル抗体の無期限に延長される供給源を提供するハイブリ
ドーマに関する。ハイブリドーマの培養物から直接免疫グロブリンを得るための代替法と
して、不死化ハイブリドーマ細胞は、続く発現および/または遺伝子操作のための再編成
重鎖および軽鎖遺伝子座の供給源として使用されてよい。再編成抗体遺伝子は、cDNA
を産生するために適切なmRNAから逆転写されてよい。いくつかの実施形態では重鎖定
常領域は、異なるアイソタイプのものと交換されるかまたは全体が除去されてよい。可変
領域は、一本鎖Fv領域をコードするように連結されてよい。複数のFv領域は、1つよ
り多い標的への結合能力を付与するために連結されてよく、またはキメラ重鎖および軽鎖
組合せが用いられてよい。任意の適切な方法は、抗体可変領域のクローニングおよび組換
え抗体の生成のために使用されてよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする適切な核酸
が得られ、標準的組換え宿主細胞にトランスフェクトされ得る発現ベクターに挿入される
。種々のそのような宿主細胞が使用されてよい。いくつかの実施形態では哺乳動物宿主細
胞は、効率的なプロセシングおよび産生のために有利である場合がある。この目的のため
に有用な典型的な哺乳動物細胞株は、CHO細胞、293細胞またはNSO細胞を含む。
抗体または抗原結合性断片の産生は、改変組換え宿主を宿主細胞の増殖およびコード配列
の発現に適切な培養条件下で培養することによって実行されてよい。抗体または抗原結合
性断片は、培養物からそれらを単離することによって回収され得る。発現系は、生じた抗
体が培地に分泌されるように、シグナルペプチドを含める形で設計されてよいが;細胞内
産生物も可能である。
【0127】
本開示は、本明細書に記載の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードす
るポリヌクレオチドも含む。いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドによってコードさ
れる可変領域は、上に記載のハイブリドーマのいずれか1つによって産生された抗体の可
変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0128】
抗体または抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、例えばDNA、cDNA
、RNAまたは合成的に産生されたDNAもしくはRNAまたはこれらのポリヌクレオチ
ドのいずれかを単独もしくは組合せで含む組換え的に産生されたキメラ核酸分子であって
よい。いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドは、ベクターの一部である。そのような
ベクターは、好適な宿主細胞においておよび好適な条件下でベクターの選択を可能にする
マーカー遺伝子などのさらなる遺伝子を含んでよい。
【0129】
いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドは、原核または真核細胞での発現を可能にす
る発現調節配列に作動可能に連結される。ポリヌクレオチドの発現は、ポリヌクレオチド
の翻訳可能なmRNAへの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞での発現を確
実にする制御エレメントは、当業者に周知である。それらは、転写の開始を促進する制御
配列ならびに任意選択で転写の終了および転写物の安定化を促進するポリAシグナルを含
んでよい。追加的制御エレメントは、転写および翻訳エンハンサー、ならびに/または天
然で関連するもしくは異種性のプロモーター領域を含んでよい。原核生物の宿主細胞での
発現を可能にする可能性のある制御エレメントは例えばE.coliにおけるPL、La
c、TrpまたはTacプロモーターを含み、真核宿主細胞での発現を可能にする制御エ
レメントの例は、酵母におけるAOX1もしくはGAL1プロモーターまたは哺乳動物お
よび他の動物細胞におけるCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモー
ター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーもしくはグロ
ビンイントロンである。
【0130】
転写の開始に関与するエレメント以外のそのような制御エレメントはSV40ポリA部
位またはtkポリA部位などのポリヌクレオチドの下流の転写終結シグナルも含み得る。
さらに、用いられる発現系に応じて、ポリペプチドを細胞コンパートメントに向かわせる
またはそれを培地に分泌することができるリーダー配列を、ポリヌクレオチドのコード配
列に加えてよく、以前に記載されている。リーダー配列(複数可)は、翻訳、開始および
終止配列と適切なフェーズ(phase)でアセンブルされ、好ましくは、リーダー配列
は翻訳されたタンパク質またはその部分の例えば細胞外培地への分泌を導くことができる
。望ましい特徴、例えば発現される組換え産物の安定化または精製の簡略化を与えるCま
たはN末端識別ペプチドを含む融合タンパク質をコードする異種性ポリヌクレオチド配列
を、任意選択で使用してもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードす
るポリヌクレオチドは、両方の免疫グロブリン鎖または1つだけの可変ドメインをコード
してよい。同様にポリヌクレオチドは、同じプロモーターの調節下にあってよく、または
発現のために別々に調節されてよい。さらにいくつかの態様は、抗体または抗原結合性断
片の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを、任意選択で抗体
の他の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドとの組合せで含む
、遺伝子工学において従来使用されるベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルスお
よびバクテリオファージに関する。
【0132】
いくつかの実施形態では発現調節配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェ
クトできるベクター中の真核プロモーター系として提供されるが、原核生物の宿主のため
の調節配列も使用されてよい。レトロウイルス、ワクチニアウイルス、アデノ随伴ウイル
ス、ヘルペスウイルスまたはウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクター
は、ポリヌクレオチドまたはベクターを標的化された細胞集団(例えば抗体または抗原結
合性断片を発現するように細胞を操作するため)に送達するために使用されてよい。種々
の適切な方法は、組換えウイルス性ベクターを構築するために使用されてよい。いくつか
の実施形態ではポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞への送達のためにリポソー
ムに再構成されてよい。ポリヌクレオチド(例えば配列および発現調節配列をコードする
免疫グロブリン鎖の重鎖および/または軽鎖可変ドメイン(複数可))を含有するベクタ
ーは、細胞宿主の種類に応じて変化する好適な方法によって宿主細胞に移行されてよい。
【0133】
修飾
本開示の抗体または抗原結合性断片は、プロ/潜在型ミオスタチンの検出および単離の
ために、これらに限定されないが、酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材
料、放射性材料、ポジトロン放出金属、非放射性常磁性金属イオン、および親和性標識を
含む検出可能な標識で修飾されてよい。検出可能な物質は、本開示のポリペプチドに直接
または、好適な技術を使用して中間体(例えばリンカーなど)を通じて間接のいずれかで
カップリングまたはコンジュゲートされてよい。好適な酵素の非限定的例は、西洋ワサビ
ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシ
ダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;好適な補欠分子族複合体の非限定的例
はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;好適な蛍光材料の非
限定的例はビオチン、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシア
ネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたは
フィコエリトリンを含み;発光材料の例はルミノールを含み;生物発光材料の非限定的例
はルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを含み;好適な放射性材料の例は、例
えばヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、イオウ(3
5S)、トリチウム(3H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、
111In)およびテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、
ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)
、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、Lu、159Gd、149
Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、86R、188Re、
142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P
、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Seおよびスズ(113Sn、1
17Sn)などの放射性金属イオン、例えばアルファ放射体または他の放射性同位元素を
含む。検出可能な物質は、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体に直接または、好適
な技術を使用して中間体(例えばリンカーなど)を通じて間接のいずれかでカップリング
またはコンジュゲートされてよい。検出可能な物質にコンジュゲートされた抗プロ/潜在
型ミオスタチン抗体は、本明細書に記載の診断アッセイのために使用され得る。
【0134】
医薬組成物
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の1つまたは複数は、ミオパチーに関連する疾患また
は障害の緩和に使用するための医薬組成物を形成するために緩衝剤を含む薬学的に許容さ
れる担体(賦形剤)と混合されてよい。「許容される」は、担体が組成物の活性成分と適
合性でなければならず(好ましくは活性成分を安定化できる)、処置される被験体に有害
であってはならないことを意味する。緩衝剤を含む薬学的に許容される賦形剤(担体)の
例は、当業者に明らかであり、以前に記載されている。例えばRemington: T
he Science and Practice of Pharmacy 20th
Ed.(2000年)Lippincott Williams and Wilki
ns編、K. E. Hooverを参照されたい。一例では本明細書に記載の医薬組成
物は、標的抗原の異なるエピトープ/残基を認識する1個より多い抗プロ/潜在型ミオス
タチン抗体を含有する。
【0135】
本方法において使用される医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定
化剤を凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で含んでよい。(Remington: Th
e Science and Practice of Pharmacy 20th
Ed.(2000年)Lippincott Williams and Wilkin
s編、K. E. Hoover)。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用さ
れる投薬量および濃度でレシピエントに無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、または他
の有機酸などの緩衝剤;アルコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;保存剤(オ
クタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリドなど;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベ
ンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール
;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノー
ル;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約1
0残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタ
ンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパ
ラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類および
グルコース、マンノースもしくはデキストランを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレ
ート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナト
リウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZnタンパク質錯体);ならびに/また
はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(
PEG)などの非イオン性界面活性剤を含んでよい。薬学的に許容される賦形剤はさらに
本明細書に記載される。
【0136】
いくつかの例では本明細書に記載の医薬組成物は、Epsteinら、Proc. N
atl. Acad. Sci. USA 82巻:3688頁(1985年)、Hwa
ngら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77巻:4030頁
(1980年)ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号
に記載のものなどの任意の好適な方法によって調製され得る抗プロ/潜在型ミオスタチン
抗体を含有するリポソームを含む。循環時間が増強されたリポソームは米国特許第5,0
13,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コ
レステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を
含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、望ましい直径を有
するリポソームを得るために規定のポアサイズのフィルターを通して押し出される。
【0137】
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブ
ミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマク
ロエマルジョン中の、例えばコアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調
製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセロースもしくはゼラチン
マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート(methacylate))マ
イクロカプセルにも捕捉され得る。例示的技術は、以前に記載されており、例えばRem
ington、The Science and Practice of Pharm
acy 20th Ed. Mack Publishing(2000年)を参照され
たい。
【0138】
他の例では本明細書に記載の医薬組成物は、徐放性形式で製剤化されてよい。徐放性調
製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、マト
リクスは成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリク
スの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリ
レート)または、ポリ(ビニルアルコール(v nylalcohol))、ポリラクチ
ド乳酸(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7エチル-L-グルタ
メートとの共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)
(乳酸グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なミクロス
フェア)などの分解性乳酸グリコール酸共重合体、スクロースアセテートイソブチレート
およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0139】
in vivo投与のために使用される医薬組成物は、無菌でなければならない。これ
は、例えば無菌濾過膜を通じた濾過によって容易に達成される。治療用抗体組成物は、一
般に無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって貫通できるストッパー
を有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0140】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口もしくは直腸投与または吸入もしくは吹
送法による投与のための錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁物または
座薬などの単位投与形態であってよい。
【0141】
錠剤などの固体組成物を調製するために主要活性成分は、医薬用担体、例えばコーンデ
ンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸
マグネシウム、リン酸二カルシウムもしくはガムなどの従来の錠剤化成分、および本開示
の化合物の均一な混合物を含有する固体予備製剤組成物を形成するための他の医薬用希釈
剤、例えば水、または無毒性の薬学的に許容されるそれらの塩と混合されてよい。これら
の予備製剤組成物を均一と称する場合、活性成分が組成物全体に均質に分散されており、
それにより組成物が錠剤、丸剤およびカプセルなどの同等に有効な単位投与形態に容易に
分割され得ることを意味する。この固体予備製剤組成物は、次いで本開示の活性成分0.
1mgから約500mgを含有する上に記載の種類の単位投与形態に分割される。新規組
成物の錠剤または丸剤は、長期作用の利点をもたらす投与形態を提供するためにコーティ
ングまたは他の方法で配合されてよい。例えば錠剤または丸剤は、内剤(inner d
osage)および外剤(outer dosage)構成成分を含んでよく、後者は前
者を覆うエンベロープの形態にある。2個の構成成分は、胃での崩壊に抵抗するために役
立ち、内部の構成成分が十二指腸へインタクトなまま通過することまたは放出を遅らせる
ことを可能にする腸溶性層(enteric layer)によって分離されてよい。種
々の材料がそのような腸溶性層またはコーティングのために使用されてよく、そのような
材料はいくつかのポリマー酸ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコールおよび酢
酸セルロースなどの材料との混合物を含む。好適な表面活性剤は、具体的にはポリオキシ
エチレンソルビタン(例えばTween(商標)20、40、60、80または85)お
よび他のソルビタン(例えばSpan(商標)20、40、60、80または85)など
の非イオン性剤を含む。表面活性剤を含む組成物は、好都合には0.05から5%の表面
活性剤を含み、0.1から2.5%であってよい。必要に応じて他の成分、例えばマンニ
トールまたは他の薬学的に許容されるビヒクルが添加されてよいことは理解される。
【0142】
好適なエマルジョンは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、I
nfonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysa
n(商標)などの商業的に入手できる脂肪エマルジョンを使用して調製されてよい。活性
成分は、予め混合されたエマルジョン組成物に溶解されてよく、または代替的に油(例え
ばダイズ油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油もしくはアーモンド油)およびリン
脂質(例えば卵リン脂質、ダイズリン脂質もしくはダイズレシチン)と水とを混合して形
成されたエマルジョンに溶解されてもよい。他の成分、例えばグリセロールまたはグルコ
ースが、エマルジョンの張度を調整するために加えられてよいことは理解される。好適な
エマルジョンは、典型的には20%まで、例えば5から20%の油を含有する。
【0143】
エマルジョン組成物は、抗プロミオスタチン抗体をIntralipid(商標)とま
たはその構成成分(ダイズ油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによ
って調製されるものであってよい。
【0144】
吸入または吹送法のための医薬組成物は、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒ま
たはそれらの混合物中の溶液および懸濁物ならびに粉末を含む。液体または固体組成物は
、上に記載の好適な薬学的に許容される賦形剤を含有してよい。いくつかの実施形態では
組成物は、局所または全身性効果のために経口または経鼻呼吸経路によって投与される。
好ましくは無菌の薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧されて
よい。噴霧される溶液は、噴霧デバイスから直接吸われてよい、または噴霧デバイスはフ
ェイスマスク、テントもしくは間欠的陽圧呼吸器に取り付けられてよい。溶液、懸濁物ま
たは粉末組成物は、好ましくは経口または経鼻で適切な様式で製剤を送達するデバイスか
ら投与されてよい。
【0145】
疾患/障害を処置するための抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の使用
本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、ミオパチーを伴う疾患または障
害を処置するのに有効である。本明細書において使用される場合、用語「ミオパチー」は
、筋肉線維が正しく機能せず、典型的には筋脱力を生じる筋肉疾患を指す。ミオパチーは
、実際は神経筋性または筋骨格性である筋肉疾患を含む。いくつかの実施形態ではミオパ
チーは遺伝性ミオパチー(inherited myopathy)である。遺伝性ミオ
パチーは、非限定的に、ジストロフィー、筋緊張症、先天性ミオパチー(例えばネマリン
ミオパチー、マルチ/ミニコアミオパチーおよび中心核ミオパチー)、ミトコンドリアミ
オパチー、家族性周期性ミオパチー、炎症性ミオパチーならびに代謝性ミオパチー(例え
ばグリコーゲン貯蔵疾患および脂質貯蔵障害)を含む。いくつかの実施形態ではミオパチ
ーは後天性ミオパチーである。後天性ミオパチーは、非限定的に、外来物質誘導性ミオパ
チー(例えば薬物誘導性ミオパチーおよびグルココルチコイドミオパチー、アルコール性
ミオパチーおよび他の毒性作用物質によるミオパチー)、筋炎(例えば皮膚筋炎、多発性
筋炎(polymositis)および封入体筋炎)、骨化性筋炎、横紋筋融解症ならび
にミオグロビン尿症ならびに非活動性萎縮症を含む。いくつかの実施形態ではミオパチー
は非活動性萎縮症であり、骨折(例えば股関節骨折)によってまたは神経損傷(例えば脊
髄損傷(SCI))によって生じる場合がある。いくつかの実施形態ではミオパチーは、
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、腎不全による悪液質症候群
、AIDS、心臓の状態および/またはがんなどの疾患または障害に関連する。いくつか
の実施形態ではミオパチーは加齢に関連する。
【0146】
本開示の態様は、ミオパチーを有する被験体を処置する方法であって、上に記載の抗体
の有効量を被験体に投与することを含む方法を含む。いくつかの実施形態ではミオパチー
は原発性ミオパチーである。別の実施形態では原発性ミオパチーは非活動性萎縮症を含む
。他の実施形態では非活動性萎縮症は、股関節骨折、待機的人工関節置換術、救命医療ミ
オパチー、脊髄損傷または発作に関連する。いくつかの実施形態ではミオパチーは、筋肉
喪失が疾患病態に続発する二次性ミオパチーである。他の実施形態では二次性ミオパチー
は、脱神経、遺伝性筋脱力または悪液質を含む。別の実施形態では二次性ミオパチーは、
筋萎縮性側索硬化症または脊髄性筋萎縮症に関連する脱神経である。いくつかの実施形態
では二次性ミオパチーは、筋ジストロフィーに関連する遺伝性筋脱力である。他の実施形
態では二次性ミオパチーは、腎不全、AIDS、心臓の状態、がんまたは加齢に関連する
悪液質である。
【0147】
本開示の別の態様は、加齢に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を
含む。加齢に関連する例示的疾患および状態は、非限定的に筋肉減少症(加齢性筋肉喪失
)、虚弱およびアンドロゲン欠乏症を含む。
【0148】
本開示の別の態様は、非活動性萎縮症/外傷に関連する疾患または状態を有する被験体
を処置する方法を含む。非活動性萎縮症/外傷に関連する例示的疾患および状態は、非限
定的に、集中治療室(ICU)で過ごした時間に関連する筋脱力、股関節置換術、股関節
骨折、発作、床上安静、SCI、回旋筋腱板損傷、膝置換術、骨折および熱傷を含む。
【0149】
本開示の別の態様は、神経変性疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。
例示的神経変性疾患または状態は、非限定的に脊髄性筋萎縮症および筋萎縮性側索硬化症
(ALS)を含む。
【0150】
本開示の別の態様は、悪液質に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法
を含む。悪液質に関連する例示的疾患および状態は、非限定的にがん、慢性心不全、後天
性免疫不全症候群(AIDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性腎臓疾患(C
KD)を含む。
【0151】
本開示の別の態様は、まれな疾患に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する
方法を含む。例示的なまれな疾患および状態は、非限定的に骨形成不全症、孤発性封入体
筋炎および急性リンパ芽球性白血病を含む。
【0152】
本開示の別の態様は、代謝障害および/または身体組成に関連する疾患または状態を有
する被験体を処置する方法を含む。いくつかの実施形態では疾患または状態は肥満(例え
ば重度の肥満)、プラダー・ウィリー症候群、II型糖尿病または食欲不振である。しか
し代謝障害および/または身体組成に関連する追加的疾患または状態は、当業者に明らか
であり、本開示の範囲内である。
【0153】
本開示の別の態様は、先天性ミオパチーに関連する疾患または状態を有する被験体を処
置する方法を含む。例示的先天性ミオパチーは、非限定的にX連鎖筋細管ミオパチー、常
染色体優性中心核ミオパチー、常染色体劣性中心核ミオパチー、ネマリンミオパチーおよ
び先天性筋線維型不均衡ミオパチーを含む。
【0154】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィーに関連する疾患または状態を有する被験体を処
置する方法を含む。例示的筋ジストロフィーは、非限定的にデュシェンヌ型、ベッカー型
、顔面肩甲上腕型(FSH)および肢帯型筋ジストロフィーを含む。
【0155】
本開示の別の態様は、泌尿婦人科関連疾患または状態、声門障害(狭窄)、外眼性ミオ
パチー、手根管、ギランバレーまたは骨肉腫を有する被験体を処置する方法を含む。
【0156】
本明細書に記載の方法を実施するために、上に記載の医薬組成物の有効量は、処置を必
要とする被験体(例えばヒト)に静脈内投与、例えばボーラスとしてまたは一定期間にわ
たる持続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、髄腔内、
経口、吸入または局所経路によって、などの好適な経路を介して投与され得る。ジェット
噴霧器および超音波噴霧器を含む液体製剤のための商業的に入手できる噴霧器は、投与に
有用である。液体製剤は、直接噴霧されてよく、凍結乾燥粉末は復元後に噴霧され得る。
代替的に抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、フルオロカーボン製剤および定量吸入器を
使用してエアロゾル化されてよく、または凍結乾燥され粉砕された粉末として吸入されて
よい。
【0157】
本明細書に記載の方法によって処置される被験体は、哺乳動物、より好ましくはヒトで
あってよい。哺乳動物は、これらに限定されないが家畜、スポーツ動物、愛玩動物、霊長
類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットを含む。処置を必要とするヒト被験体は、上
に記すものなどのミオパチーを伴う疾患/障害を有する、そのリスクがあるまたはそれを
有すると疑われるヒト患者であってよい。プロ/潜在型ミオスタチン関連疾患または障害
を有する被験体は、日常的医学的検査、例えば臨床検査、臓器機能検査、CTスキャンま
たは超音波によって同定され得る。そのような疾患/障害のいずれかを有すると疑われる
被験体は、疾患/障害の1つまたは複数の症状を示す場合がある。疾患/障害のリスクが
ある被験体は、その疾患/障害についてのリスク因子の1つまたは複数を有する被験体で
あってよい。
【0158】
本明細書において使用される「有効量」は、単独または1つもしくは複数の他の活性剤
との組合せのいずれかで、被験体に治療効果を付与するために必要な各活性剤の量を指す
。当業者によって認識されるとおり、有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、
年齢、身体状態、サイズ、性別および体重を含む個々の患者パラメータ、処置の期間、同
時に行われている治療(ある場合)の性質、投与の特定の経路ならびに医療関係者の知識
および専門的意見内の同様の要因などに応じて変化する。これらの要因は当業者に周知で
あり、日常的な実験程度で対処され得る。個々の構成成分またはその組合せの最大用量、
すなわち正当な医学的判断による最高安全用量が使用されることは一般に好ましい。しか
し患者が医学的根拠、心理的理由のためにまたは事実上任意の他の理由のためにより低い
用量または許容できる用量を主張できることは、当業者によって理解される。
【0159】
半減期などの経験的検討事項は、一般に投薬量の決定に寄与する。例えばヒト化抗体ま
たは完全ヒト抗体などのヒト免疫系に適合性である抗体は、抗体の半減期を延長し、かつ
宿主の免疫系によって抗体が攻撃されることを防ぐために使用されてよい。投与の頻度は
、治療の経過にわたって決定および調整されてよく、一般に、必ずではないが、ミオパチ
ーを伴う疾患/障害の処置および/または抑制および/または回復および/または遅延に
基づく。代替的に抗プロ/潜在型ミオスタチンの徐放性持続的放出(sustained
continuous release)製剤も適切である場合がある。徐放を達成す
るための種々の製剤およびデバイスは、当業者に明らかであり、本開示の範囲内である。
【0160】
一例では本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体についての投薬量は、抗体
の1回または複数回の投与を与えられた個体において経験的に決定され得る。個体は、漸
増する投薬量のアンタゴニストを与えられる。アンタゴニストの効能を評価するために、
疾患/障害の指標が追跡されてよい。
【0161】
一般に本明細書に記載の抗体のいずれかの投与について、初期候補投薬量は約2mg/
kgであってよい。本開示の目的のために典型的な一日投薬量は、上に述べる要因に応じ
て約0.1μg/kgから、3μg/kgまで、30μg/kgまで、300μg/kg
まで、3mg/kgまで、30mg/kgまで、100mg/kgまたはそれ超のいずれ
かの範囲であってよい。数日間またはそれより長くにわたる反復投与では、状態に応じて
処置は症状の望ましい抑制が生じるまでまたは、プロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾
患もしくは障害またはその症状を緩和する十分な治療レベルが達成されるまで持続される
。例示的投与レジメンは、約2mg/kgの初期用量に続く、抗体の約1mg/kgの毎
週の維持用量または続く隔週の約1mg/kgの維持用量を投与することを含む。しかし
他の投与レジメンが、医師が達成を望む薬物動態学的減衰のパターンに応じて有用である
場合がある。例えば1週間に1回から4回の投与が企図される。いくつかの実施形態では
約3μg/mgから約2mg/kg(約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/
mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kgおよび約2mg/kg
など)の範囲の投与は使用されてよい。いくつかの実施形態では投与頻度は、1週間ごと
、2週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間
ごともしくは10週間ごとに1回;または1ヵ月ごと、2ヵ月ごともしくは3ヵ月ごとも
しくはそれ超に1回である。この治療の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易
にモニタリングされる。投与レジメン(使用される抗体を含む)は、時間をわたって変化
する場合がある。
【0162】
いくつかの実施形態では正常体重の成人患者について、約0.3から5.00mg/k
gの範囲の用量が投与され得る。特定の投与レジメン、例えば用量、タイミングおよび反
復は、特定の個体およびその個体の医療歴および個々の薬剤の特性(薬剤の半減期および
他の関連する検討事項など)に依存する。
【0163】
本開示の目的のために抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の適切な投薬量は、用いられる
特異的抗体(またはその組成物)、疾患/障害の種類および重症度、抗体が予防または治
療目的で投与されるか、以前の治療、患者の病歴およびアンタゴニストへの応答ならびに
主治医の判断に依存する。いくつかの実施形態では、望ましい結果を達成する投薬量に到
達するまで、臨床医は、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を投与する。抗プロ/潜在型ミ
オスタチン抗体の投与は、投与の目的が治療的または予防的であるかに関わらず、例えば
レシピエントの生理学的状態、および熟練した医師に公知である他の要因に応じて連続的
または間欠的であってよい。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の投与は、予め選択した期
間にわたって本質的に連続的であっても、または間隔をあけた一連の用量、例えばプロ/
潜在型ミオスタチンに関連する疾患または障害が発症する前、その間またはその後のいず
れかであってもよい。
【0164】
本明細書において使用される場合、用語「処置する」は、ミオパチーを伴う疾患/障害
、疾患/障害の症状または疾患/障害に対する素因を有する被験体への、障害、疾患の症
状または疾患/障害に対する素因を治癒する(cure)、治す(heal)、緩和する
、軽減する、変える、改善する(remedy)、回復させる、改善するまたは影響を与
えるための1つまたは複数の活性剤を含む組成物の適用または投与を指す。
【0165】
プロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患/障害を緩和することは、疾患の発症(de
velopment)もしくは進行を遅らせること、または疾患の重症度を低減すること
を含む。疾患を緩和することは、必ずしも治癒的結果を要求しない。本明細書で使用する
場合、プロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患/障害の発症を「遅らせること」は、疾
患の進行を遅らせる(defer)、妨げる(hinder)、遅くする(slow)、
遅らせる(retard)、安定化するおよび/または先に延ばす(postpone)
ことを意味する。この遅らせることは、病歴および/または処置される個体に応じて様々
な時間の長さであってよい。疾患の発症を「遅らせる」もしくは緩和する、または疾患の
発病(onset)を遅らせる方法は、方法を使用しない場合と比較して所与の時間枠に
おいて疾患の1つもしくは複数の症状の発症の可能性を低減するおよび/または所与の時
間枠において症状の程度を低減する方法である。そのような比較は、統計的に有意な結果
をもたらすのに十分な数人の被験体を使用する臨床研究に典型的には基づく。
【0166】
疾患の「発症」または「進行」は、疾患の初期症状発現および/または後に続く疾患の
進行を意味する。疾患の発症は、検出可能であり得、標準的臨床技術を使用して評価され
得る。しかし発症は、検出不能である場合がある進行も指す。本開示の目的に関して発症
または進行は、症状の生物学的経過を指す。「発症」は出現(occurrence)、
再発および発病を含む。本明細書において使用される場合、ミオパチーを伴う疾患/障害
の「発病」または「出現」は、初回発病および/または再発を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、処置を
必要とする被験体にタンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの活性ミオスタチ
ンへの活性化をin vivoで少なくとも20%(例えば30%、40%、50%、6
0%、70%、80%、90%またはそれを超えて)阻害するのに十分な量で投与される
。他の実施形態では抗体は、プロ/潜在型ミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンレベル
を少なくとも20%(例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%
またはそれを超えて)低減するのに有効な量で投与される。
【0168】
医学の当業者に公知である従来の方法は、処置される疾患の種類または疾患の部位に応
じて被験体に医薬組成物を投与するために使用されてよい。本組成物は、他の従来の経路
を介して投与されてもよく、例えば経口、非経口、吸入スプレーによって、局所的、直腸
、鼻、頬側、膣または埋め込みリザーバーを介して投与され得る。本明細書において使用
される用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸
骨内、髄腔内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。さらに1、3または6ヵ
月デポー注射可能なまたは生分解性材料および方法を使用するなどの投与の注射可能なデ
ポー経路を介して被験体に投与されてもよい。
【0169】
注射可能な組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド(dimethylactami
de)、ジメチルホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭
酸エチル、イソプロピルミリステート、エタノールおよびポリオール(グリセロール、プ
ロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)などの種々の担体を含有してよ
い。静脈内注射用に水溶性抗体は、抗体および生理学的に許容される賦形剤を含有する医
薬用製剤が注入される点滴方法によって投与されてよい。生理学的に許容される賦形剤は
、例えば5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンゲル液または他の好適な賦形剤
を含んでよい。筋肉内調製物、例えば抗体の好適な可溶性塩形態の無菌製剤は、注射用水
、0.9%生理食塩水または5%グルコース溶液などの医薬用賦形剤に溶解され、投与さ
れてよい。
【0170】
一実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、部位特異的または標的化局所送達
技術を介して投与される。部位特異的または標的化局所送達技術の例は、抗プロ/潜在型
ミオスタチン抗体の種々の埋め込み可能なデポー供給源または、注入カテーテル、留置カ
テーテルもしくは針カテーテルなどの局所送達カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シ
ャントおよびステントまたは他の埋め込み可能なデバイス、部位特異的担体、直接注射ま
たは直接適用を含む。例えばPCT公開第WO00/53211号および米国特許第5,
981,568号を参照されたい。
【0171】
ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含有する治療用組成物の標的化送達も使用され
得る。受容体媒介DNA送達技術は、例えばFindeisら、Trends Biot
echnol.(1993年) 11巻:202頁、Chiouら、Gene Ther
apeutics: Methods And Applications Of Di
rect Gene Transfer(J. A. Wolff編)(1994年)、
Wuら、J. Biol. Chem. (1988年)263巻:621頁、Wuら、
J. Biol. Chem.(1994年)269巻:542頁、Zenkeら、Pr
oc. Natl. Acad. Sci. USA(1990年)87巻:3655頁
、Wuら、J. Biol. Chem.(1991年)266巻:338頁に記載され
ている。
【0172】
ポリヌクレオチド(例えば本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体をコード
するもの)を含有する治療用組成物は、遺伝子治療プロトコールでの局所投与のためにD
NA約100ngから約200mgの範囲で投与される。いくつかの実施形態では、DN
Aの約500ngから約50mg、約1μgから約2mg、約5μgから約500μgお
よび約20μgから約100μgまたはそれを超える濃度範囲も遺伝子治療プロトコール
中に使用されてよい。
【0173】
本明細書に記載の治療用ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクル
を使用して送達され得る。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルスまたは非ウイルス起源のもの
であってよい(一般にJolly、Cancer Gene Therapy(1994
年)1巻:51頁、Kimura、Human Gene Therapy(1994年
)5巻:845頁、Connelly、Human Gene Therapy(199
5年)1巻:185頁およびKaplitt、Nature Genetics(199
4年)6巻:148頁を参照されたい)。そのようなコード配列の発現は、内在性哺乳動
物または異種性プロモーターおよび/またはエンハンサーを使用して誘導され得る。コー
ド配列の発現は、構成的または制御的のいずれであってもよい。
【0174】
望ましい細胞における望ましいポリヌクレオチド(例えば本明細書に開示の抗体をコー
ドする)の送達および発現に好適なウイルスに基づくベクターは、本開示の範囲内である
。例示的なウイルスに基づくビヒクルは、これらに限定されないが、組換えレトロウイル
ス(例えばPCT公開第WO90/07936号、第WO94/03622号、第WO9
3/25698号、第WO93/25234号、第WO93/11230号、第WO93
/10218号、第WO91/02805号、米国特許5,219,740号、および第
4,777,127号;英国特許第2,200,651号ならびに欧州特許第03452
42号を参照されたい)、アルファウイルスに基づくベクター(例えばシンドビスウイル
スベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67;ATCC VR-1247
)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373;ATCC VR-1246)および
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR-923;ATCC VR-1250;A
TCC VR 1249;ATCC VR-532))およびアデノ随伴ウイルス(AA
V)ベクター(例えばPCT公開第WO94/12649号、第WO93/03769号
、第WO93/19191号、第WO94/28938号、第WO95/11984号お
よび第WO95/00655号を参照されたい)を含む。Curiel、Hum. Ge
ne Ther.(1992年)3巻:147頁に記載の不活化アデノウイルスに連結さ
れたDNAの投与も用いられ得る。
【0175】
これらに限定されないが、不活化アデノウイルス単独に連結されたまたは連結されてい
ないポリカチオン縮合(polycationic condensed)DNA(例え
ばCuriel、Hum. Gene Ther.(1992年)3巻:147頁を参照
されたい);リガンド連結DNA(例えばWu, J. Biol. Chem.(19
89年)264巻:16985頁を参照されたい);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば
米国特許第5,814,482号、PCT公開第WO95/07994号、第WO96/
17072号、第WO95/30763号および第WO97/42338号を参照された
い)ならびに核電荷中和または細胞膜との融合を含む非ウイルス性送達ビヒクルおよび方
法も用いられてよい。ネイキッドDNAも用いられてよい。例示的ネイキッドDNA導入
方法は、PCT公開第WO90/11092号および米国特許第5,580,859号に
記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用できるリポソームは、米国特許第5,4
22,120号、PCT公開第WO95/13796号、第WO94/23697号、第
WO91/14445号および欧州特許第0524968号に記載されている。追加的ア
プローチはPhilip、Mol. Cell. Biol.(1994年)14巻:2
411頁、およびWoffendin、Proc. Natl. Acad. Sci.
(1994年)91巻:1581頁に記載されている。
【0176】
本明細書に記載の方法において使用される特定の投与レジメン、例えば用量、タイミン
グおよび反復は、特定の被験体およびその被験体の医療歴に依存する。
【0177】
いくつかの実施形態では、1つより多い抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体または、抗プ
ロ/潜在型ミオスタチン抗体と別の好適な治療剤との組合せは、処置を必要とする被験体
に投与され得る。アンタゴニストは、同じ型または互いに異なっていてよい。抗プロ/潜
在型ミオスタチン抗体は、薬剤の有効性を増強するおよび/または補完するのに役立つ他
の薬剤と併せて使用されてもよい。
【0178】
ミオパチーを伴う疾患/障害に対する処置の効能は、任意の好適な方法を使用して評価
され得る。例えばミオパチーを伴う疾患/障害に対する処置の効能は、筋脱力を評価する
こと(例えば脱力のパターンおよび重症度を評価すること)、筋電図検査、血液化学を評
価すること(例えば電解質を評価する、内分泌的原因を評価すること、クレアチニンキナ
ーゼレベルを測定すること、赤血球沈降速度を決定することおよび抗核抗体アッセイを実
施すること)、ならびに生検を評価すること(例えば組織学的、組織化学的、電子顕微鏡
、生化学および遺伝子解析によって)によって評価され得る。
【0179】
ミオパチーを伴う疾患/障害を緩和することにおける使用のためのキット
本開示は、ミオパチーを伴う疾患/障害を緩和することにおける使用のためのキットも
提供する。そのようなキットは、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体、例えば本明細書に記
載のもののいずれかを含む1つまたは複数の容器を含んでよい。
【0180】
いくつかの実施形態ではキットは、本明細書に記載の方法のいずれかによる使用のため
の指示を含んでよい。含まれる指示は、本明細書に記載の標的疾患を処置する、発病を遅
らせるまたは緩和するための抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の投与の記載を含み得る。
キットは、個体が標的疾患を有するかどうかを同定することに基づいて処置に好適な個体
を選択する記載をさらに含み得る。さらに他の実施形態では、指示は、標的疾患のリスク
がある個体に抗体を投与する記載を含む。
【0181】
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の使用に関する指示は、一般に目的の処置のための投
薬量、投与スケジュールおよび投与の経路についての情報を含む。容器は、単位用量、バ
ルクパッケージ(例えば複数用量パッケージ)または部分単位用量であってよい。本開示
のキット中に供給される指示は、典型的にはラベルまたはパッケージ挿入物(例えばキッ
トに含まれる紙のシート)上の指示書であるが、機械で読み取り可能な指示(例えば磁気
または光学保存ディスク上に書き込まれた指示)も許容される。
【0182】
ラベルまたはパッケージ挿入物は組成物がミオパチーを伴う疾患または障害を処置する
、発病を遅らせるおよび/または緩和するために使用されることを示す。指示は、本明細
書に記載の方法のいずれかを実施するために提供されてよい。
【0183】
本開示のキットは、好適なパッケージ中にある。好適なパッケージは、これらに限定さ
れないが、バイアル、ビン、ジャー、可撓性パッケージ(例えばシールされたマイラーま
たはプラスチックバッグ)などを含む。吸入器、鼻投与デバイス(例えばアトマイザー)
またはミニポンプなどの注入デバイスなどの特定のデバイスとの組合せでの使用のための
パッケージも検討される。キットは、無菌アクセスポートを有してよい(例えば容器は皮
下注射針によって貫通できるストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルであ
ってよい)。容器も無菌アクセスポートを有してよい(例えば容器は皮下注射針によって
貫通できるストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成
物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体で
ある。
【0184】
任意選択でキットは、緩衝剤および解釈の情報などの追加的構成成分を提供できる。通
常キットは、容器および、容器上にまたは容器に付随してラベルまたはパッケージ挿入物
(複数可)を含む。いくつかの実施形態では本開示は、上に記載のキットの内容物を含む
製造品を提供する。
【0185】
プロ/潜在型ミオスタチンを検出するためのアッセイ
いくつかの実施形態では本明細書で提供される方法および組成物は、被験体から得られ
た試料中のプロ/潜在型ミオスタチンを検出するための方法に関する。本明細書において
使用される場合、「被験体」は、個々の生物、例えば個々の哺乳動物を指す。いくつかの
実施形態では被験体はヒトである。いくつかの実施形態では被験体は非ヒト哺乳動物であ
る。いくつかの実施形態では被験体は非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では被験
体はげっ歯類である。いくつかの実施形態では被験体はヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコまたは
イヌである。いくつかの実施形態では被験体は、脊椎動物、両生類、は虫類、魚類、昆虫
、ハエまたは線虫である。いくつかの実施形態では被験体は実験動物である。いくつかの
実施形態では被験体は、遺伝子操作されており、例えば遺伝子操作された非ヒト被験体で
ある。被験体は、いずれの性で任意の発達段階であってよい。いくつかの実施形態では被
験体は、患者または健常なボランティアである。
【0186】
いくつかの実施形態では、被験体から得られた試料中のプロ/潜在型ミオスタチンを検
出するための方法は(a)抗原が試料中に存在する場合、抗体の抗原への結合に好適な条
件下で試料を抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体と接触させ、それにより結合複合体を形成
すること、および(b)抗原に結合した抗体または抗原結合性断片のレベルを決定するこ
と(例えば結合複合体のレベルを決定すること)を含む。
【0187】
本明細書において使用される場合、結合複合体は、抗原(例えばプロ/潜在型ミオスタ
チンタンパク質)に結合した抗体(抗原結合性断片を含む)の生体分子複合体を指す。結
合複合体は、単一の特異性を有する抗体または異なる特異性を有する2つもしくはそれ超
の抗体もしくは抗原結合性断片を含んでよい。一実施形態では結合複合体は、同じ抗原上
の異なる抗原性部位を認識する2つまたはそれ超の抗体を含む。いくつかの場合では抗体
は、RNA、DNA、多糖またはタンパク質などの他の生体分子に結合している抗原に結
合できる。一実施形態では結合複合体は異なる抗原を認識する2つまたはそれ超の抗体を
含む。いくつかの実施形態では結合複合体中の抗体(例えば抗原に結合した固定化抗体)
は、それ自体が抗原として抗体(例えば検出可能に標識された抗体)に結合できる。した
がって、結合複合体は、いくつかの場合では、複数の抗原および複数の抗体または抗原結
合性断片を含む場合がある。
【0188】
結合複合体中に存在する抗原は、in situでのそれらの天然のコンフォメーショ
ンであってもなくてもよい。いくつかの実施形態では結合複合体は、抗体と精製されたタ
ンパク質抗原または抗原を含む単離されたタンパク質との間で形成され、その中で抗原は
in situでのその天然のコンフォメーションではない。いくつかの実施形態では、
結合複合体は、抗体と精製されたタンパク質抗原との間で形成され、その中で抗原はin
situでのその天然のコンフォメーションではなく、固体支持体(例えばPVDF膜
)に固定されている。いくつかの実施形態では結合複合体は、抗体と、例えばin si
tuに天然のコンフォメーション(例えば細胞表面上)に存在する細胞表面タンパク質と
で形成される。
【0189】
結合複合体中の抗体は、検出可能に標識されてもされなくてもよい。いくつかの実施形
態では結合複合体は、検出可能に標識された抗体および標識されていない抗体を含む。い
くつかの実施形態では結合複合体は、検出可能に標識された抗原を含む。いくつかの実施
形態では結合複合体中の抗体は、1つまたは複数の固体支持体に固定されている。いくつ
かの実施形態では結合複合体中の抗原は、1つまたは複数の固体支持体に固定されている
。例示的な固体支持体は、本明細書に開示されており、当業者に明らかである。結合複合
体の前述の例は限定を意図しない。結合複合体の他の例は当業者に明らかである。
【0190】
検出、診断およびモニタリング方法のいずれにおいても抗体(抗原結合性断片を含む)
または抗原は、固体支持体表面に直接または間接のいずれかでコンジュゲートされてよい
。固体支持体へのコンジュゲーションのための方法は、標準的であり、共有結合的および
非共有結合的相互作用を介して達成されてよい。コンジュゲーション方法の非限定的例は
、吸着、架橋結合、プロテインA/G抗体相互作用およびストレプトアビジン-ビオチン
相互作用を含む。コンジュゲーションの他の方法は、当業者に容易に明らかである。
【0191】
いくつかの態様では、検出、診断およびモニタリング方法は、抗原(例えばプロ/潜在
型ミオスタチン)に結合した抗体(抗原結合性断片を含む)のレベルを1つまたは複数の
参照基準と比較することを含む。参照基準は、例えばプロ/潜在型ミオスタチンを有する
または有さない被験体における対応するプロ/潜在型ミオスタチンのレベルであってよい
。一実施形態では参照基準は、プロ/潜在型ミオスタチン(例えばバックグラウンドレベ
ル)を含有しない試料において検出されるプロ/潜在型ミオスタチンのレベルである。代
替的にバックグラウンドレベルは、特定のプロ/潜在型ミオスタチンを含有する試料から
試料を非特異的抗体(例えば非免疫血清から得られた抗体)と接触させることによって決
定され得る。再度参照基準は、プロ/潜在型ミオスタチンを含有する試料(例えば陽性対
照)において検出されたプロ/潜在型ミオスタチンのレベルであってよい。いくつかの場
合、参照基準は試料中のプロ/潜在型ミオスタチンの濃度の変動と関連する一連のレベル
であってよく、試験試料中のプロ/潜在型ミオスタチンの濃度を定量するのに有用であり
得る。参照基準の前述の例は、限定ではなく、他の好適な参照基準は、当業者に容易に明
らかである。いくつかの実施形態ではプロ/潜在型ミオスタチンに結合する抗体のレベル
は、成熟ミオスタチンのレベルと比較される。いくつかの場合ではプロ/潜在型ミオスタ
チンのレベルは、試料中の不活性ミオスタチン対活性ミオスタチンの比率を決定するため
に成熟ミオスタチンと比較される。
【0192】
プロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、生物学的試料から本明細書で提供されるとおり
測定され得る。生物学的試料は、被験体または細胞から得られてよい任意の生物学的材料
を指す。例えば生物学的試料は、全血、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、尿、細胞(もしく
は細胞溶解物)または組織(例えば正常組織もしくは腫瘍組織)であってよい。いくつか
の実施形態では生物学的試料は、流体試料である。いくつかの実施形態では生物学的試料
は、固形組織試料である。例えば組織試料は、非限定的に骨格筋、心臓の筋肉、脂肪組織
および他の器官由来の組織を含んでよい。いくつかの実施形態では生物学的試料は、生検
試料である。いくつかの実施形態では固形組織試料は、当技術分野における日常的方法を
使用して流体試料にされてよい。
【0193】
生物学的試料は、細胞株の1つまたは複数の細胞も含んでよい。いくつかの実施形態で
は細胞株は、ヒト細胞、霊長類細胞(例えばベロ細胞)、ラット細胞(例えばGH3細胞
、OC23細胞)またはマウス細胞(例えばMC3T3細胞)を含む。非限定的にヒト胚
性腎臓(HEK)細胞、HeLa細胞、National Cancer Instit
uteの60種のがん細胞株(NCI60)由来のがん細胞、DU145(前立腺がん)
細胞、Lncap(前立腺がん)細胞、MCF-7(乳がん)細胞、MDA-MB-43
8(乳がん)細胞、PC3(前立腺がん)細胞、T47D(乳がん)細胞、THP-1(
急性骨髄性白血病)細胞、U87(神経膠芽腫)細胞、SHSY5Yヒト神経芽細胞腫細
胞(骨髄腫からのクローニング)およびSaos-2(骨がん)細胞を含む種々のヒト細
胞株がある。
【0194】
さらなる実施形態は、疾患または状態を有するまたは有するリスクがある被験体におい
て疾患、状態または任意のその処置(例えばミオパチーまたはミオパチー処置)をモニタ
リングするための方法であって、(a)生物学的試料を被験体から得ること、(b)プロ
/潜在型ミオスタチンを検出する抗体を使用して生物学的試料中のプロ/潜在型ミオスタ
チンのレベルを決定すること、ならびに(c)1回または複数回の機会にステップ(a)
および(b)を反復することを含む方法に関する。ミオスタチンは、筋萎縮症についての
バイオマーカーとして使用されているが、現在利用可能な商業的方法および試薬(例えば
ELISAおよびウエスタンブロットにおいて使用される抗体)は、ミオスタチンに対し
て特異的ではないか、成熟ミオスタチンだけを検出するか、またはミオスタチンを全く検
出しないかのいずれかである。したがって、疾患および/または状態(例えば筋萎縮症)
の文脈において診断目的でプロ/潜在型ミオスタチンを検出するための方法および試薬(
例えば抗体)が本明細書で提供される。一例としてプロ/潜在型ミオスタチンのレベルは
、被験体またはそれ由来の生物学的試料において疾患または状態の進行を検出またはモニ
タリングするために測定されてよい。別の例としてプロ/潜在型ミオスタチンのレベルは
、被験体またはそれ由来の生物学的試料において疾患または状態に対する処置への応答を
モニタリングするために測定されてよい。プロ/潜在型ミオスタチンのレベルが、被験体
が有する疾患もしくは状態または被験体が供され得る任意の処置レジメンに応じて異なる
場合がある任意の好適な期間にわたってモニタリングされてよいことは理解されるべきで
ある。
【0195】
別の実施形態は、上に記載の抗体、抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、ベクターまた
は細胞のいずれか1つおよび任意選択で検出のための好適な手段を含む診断用組成物に関
する。抗体は、例えば、それらを液相でまたは固相担体に結合させて利用し得るイムノア
ッセイにおける使用に適する。抗体を利用する場合があるイムノアッセイの例は、直接ま
たは間接形式での競合的および非競合的イムノアッセイである。そのようなイムノアッセ
イの例は、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、サ
ンドイッチ(免疫アッセイ(immunometric assay))、フローサイト
メトリー、ウエスタンブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫組織化学、免疫顕微鏡
検査(immuno-microscopy)、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセ
イ(lateral flow immuno-chromatographic as
say)およびプロテオミクスアレイである。抗原および抗体は、多数の異なる固体支持
体(例えば担体、膜、カラム、プロテオミクスアレイなど)に結合させてよい。固体支持
体材料の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプ
ロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、ニ
トロセルロースなどの天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよ
びマグネタイトを含む。支持体の性質は、固定されているかまたは溶液中に懸濁されてい
るか(例えばビーズ)のいずれであってもよい。
【0196】
さらなる実施形態によって、本明細書で提供される抗体(抗原結合性断片を含む)は、
組織試料、血液試料または任意の他の適切な体液試料であってよい被験体由来の生物学的
試料を得ることによって、被験体におけるプロ/潜在型ミオスタチン発現を評価するため
の方法においても使用され得る。手順は、血液試料(全血、血清、血漿)、組織試料また
はそれから単離されたタンパク質試料を、抗体と抗原との間の結合複合体の形成を可能に
する条件下で抗体と接触させることを含み得る。次いでそのような結合複合体のレベルは
、任意の好適な方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では生物学的試料は、抗
原が試料中に存在する場合に抗体のプロ/潜在型ミオスタチンタンパク質への結合、およ
び抗原に結合した抗体からなる結合複合体の形成に好適な条件下で抗体と接触させる。こ
の接触させるステップは、チューブ、プレートウェル、メンブレンバス、細胞培養皿、顕
微鏡スライドなどの反応チャンバーにおいて典型的には実施される。いくつかの実施形態
では抗体は固体支持体に固定される。いくつかの実施形態では抗原は固体支持体に固定さ
れる。いくつかの実施形態では固体支持体は、反応チャンバーの表面である。いくつかの
実施形態では固体支持体は、ポリマー性膜(例えばニトロセルロースストリップ、ポリフ
ッ化ビニリデン(PVDF)膜など)である。他の適切な固体支持体は使用されてよい。
【0197】
いくつかの実施形態では抗体は、抗原と接触させる前に固体支持体に固定される。他の
実施形態では抗体の固定は、結合複合体の形成後に実施される。さらに他の実施形態では
抗原は、結合複合体の形成の前に固体支持体に固定される。検出試薬は、固定化された結
合複合体を検出するために反応チャンバーに加えられる。いくつかの実施形態では検出試
薬は、抗原に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を含む。いくつかの実施
形態では一次抗体は、それ自体が検出可能に標識され、そのため検出試薬である。
【0198】
一態様では検出方法は、固体支持体に抗体を固定するステップ;試料(例えば生物学的
試料または単離されたタンパク質試料)を、抗原が試料中に存在する場合に抗原の抗体へ
の結合を可能にする条件下で固体支持体に適用するステップ;固体支持体から過剰な試料
を除去するステップ;検出可能に標識された抗体を、検出可能に標識された抗体の抗原結
合固定化抗体への結合を可能にする条件下で適用するステップ;固体支持体を洗浄するス
テップおよび固体支持体上の標識の存在をアッセイするステップを含む。
【0199】
いくつかの実施形態では抗原は、反応チャンバー(例えばメンブレンバス)中の抗体と
接触させる前に、PVDF膜などの固体支持体に固定される。検出試薬は、固定化された
結合複合体を検出するために反応チャンバーに加えられる。いくつかの実施形態では検出
試薬は、抗原に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を含む。いくつかの実
施形態では検出試薬は、一次抗体に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を
含む。本明細書で開示のとおり検出可能な標識は、例えば放射性同位元素、フルオロフォ
ア、発光分子、酵素、ビオチン成分、エピトープタグまたは色素分子であってよい。いく
つかの実施形態では一次抗体は、それ自体が検出可能に標識され、そのため検出試薬であ
る。好適な検出可能な標識は、本明細書に記載され、当業者に容易に明らかである。
【0200】
したがって、(a)抗原結合試薬(例えばプロ/潜在型ミオスタチン結合試薬)として
、検出可能に標識された抗体および/または非標識抗体、(b)検出試薬、ならびに任意
選択で(c)試料中の抗原を検出するための試薬を使用するための完全な指示を含む家庭
内または臨床使用に好適な診断用キット(ポイントオブケアサービス)が提供される。い
くつかの実施形態では診断キットは、固体支持体に固定された抗体および/またはプロ/
潜在型ミオスタチンを含む。本明細書に記載の固体支持体のいずれかは、診断キットへの
組み込みに好適である。好ましい実施形態では固体支持体は、プレートウェルの反応チャ
ンバーの表面である。典型的にはプレートウェルは、6個、12個、24個、96個、3
84個および1536個から選択されるいくつかのウェルを有するマルチウェルプレート
中にあるが、そのように限定されない。他の実施形態では診断キットは、検出可能に標識
された抗体を提供する。診断キットは、これらの実施形態に限定されず、キット組成物に
おける他のバリエーションは当業者に容易に明らかである。
【0201】
したがって、次の具体的な実施形態は、単なる例示として解釈され、決して本開示の残
部の限定ではないと解釈される。本明細書で引用する全ての刊行物は、本明細書で参照す
る目的または主題について参照により組み込まれる。
【実施例0202】
(実施例1:抗体の生成および選択)
抗体の概要
Ab2は、ヒトのプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに高い親和性(Fort
eBio BLIによりKd=3420pM)で結合するIgG4/ラムダアイソタイプ
の完全ヒト抗プロ/潜在型ミオスタチンモノクローナル抗体である。抗体は、0.5マイ
クロモル濃度の範囲のIC50値(アッセイの限界またはほぼ限界である)で、タンパク
質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの活性化を阻害することができる。ポリペプチ
ドの理論的分子量は、144,736Daであり、その理論的pIは6.7である。抗体
ディスプレイを使用する親和性の最適化を行って、より高い親和性の改変体Ab4および
Ab6を同定した。親和性最適化改変体を、ヒトIgG4/ラムダアイソタイプフレーム
ワークにおいて同様に構築する。
【表2】
【0203】
親抗体のプラットフォームおよび同定
親Ab1抗体は、選択のための一次抗原としてプロおよび潜在型ミオスタチンを使用し
たナイーブファージディスプレイライブラリーの選択を介して同定した。ファージ選択お
よび初回スクリーニングは、McCaffertyら(McCaffertyら、199
0年)によって記載される形式と類似の形式で従来のscFvをディスプレイするライブ
ラリーを使用して実施した。各選択ラウンドは、事前除去(pre-clearing)
(非特異的ファージ抗体を除去するため)、抗原とのインキュベーション、洗浄、溶出、
および増幅からなった。選択は、固相(イムノチューブにコーティングされたビオチン化
抗原)および溶液相(ストレプトアビジンコーティングビーズを使用して捕捉されたビオ
チン化抗原)パニング(panning)戦略の両方を使用して複数ラウンドを介して行
われた。
【0204】
全体で10,000個の個々のscFvクローンを、2つの別個の作戦を通してプロま
たは潜在型ミオスタチンに対する結合に関してスクリーニングした。第1のプログラムは
、抗原としてプロ/潜在型ミオスタチンを利用したが、第2の作戦は、抗原として潜在型
ミオスタチンを使用した。目的のscFvクローンのDNAをシークエンシングして、独
自のクローン216個を同定した。結合陽性のscFvクローンを、プロGDF11なら
びに無関係なタンパク質のパネルに対する結合に関してカウンタースクリーニングして、
プロ/潜在型ミオスタチンに関する特異性を確認した。独自のscFvクローンのパネル
から101個(GDF8特異的クローン134個中)を、さらに特徴付けるために完全長
のIgG(IgG1アイソタイプ)に変換した。
【0205】
完全長のIgG抗体を、ヒトおよびネズミのプロおよび潜在型形態のミオスタチンなら
びにGDF11に対する結合に関してELISAによってさらに特徴付けた。ミオスタチ
ンプロドメイン、プロTGFβ(ヒトおよびネズミ)、ミオスタチンの成熟増殖因子、G
DF11成熟増殖因子、アクチビンA増殖因子、およびプロアクチビンAに対する結合に
関しても、抗体をスクリーニングした。リード抗体を、ヒトおよびネズミのプロおよび潜
在型ミオスタチンと交差反応するが、GDF11ともアクチビンともTGFβタンパク質
とも相互作用しないことに基づいて選択した。
【0206】
2つの形態のエピトープビニング(epitope binning)を使用した。第
1に、ミオスタチンのプロドメインの一部とGDF11の一部とを交換したキメラ構築物
を設計して生成した。これらのキメラタンパク質を、ELISAによって、スクリーニン
グ抗体との相互作用に関してアッセイした。ビオチン化プロ/潜在型ミオスタチン抗体が
ストレプトアビジンコーティングバイオセンサーチップに固定されたForteBio
BLI機器を使用してエピトープビニングを行い、センサー応答によって抗体の交差遮断
を評価した。ELISA結合実験のデータと共に、これらのエピトープビニング実験によ
り、本発明者らの機能的に活性なリード抗体(以下を参照されたい)を、3つの異なるエ
ピトープ群(表3を参照されたい)に分離することができた。
【表3】
【0207】
抗体がプロ/潜在型ミオスタチンに結合してその活性化を阻害する能力を評価するため
に、いくつかの生化学および細胞アッセイが確立された。プロおよび潜在型ミオスタチン
に対する結合動態を、ビオチン化基質タンパク質がストレプトアビジンコーティングセン
サーチップに固定されたForteBio Octetによって測定した。スクリーニン
グからの候補の平衡解離定数を表3に示す。
【0208】
IgGがミオスタチンのシグナル伝達を阻害する能力を測定するために、ミオスタチン
活性化アッセイを開発した。mTll2(トロイドプロテアーゼはミオスタチンの活性化
を必要とする)またはフューリン(プロドメインから成熟増殖因子を切断するプロタンパ
ク質転換酵素)のいずれかを過剰発現する細胞から馴化培地を生成した。試験抗体とのプ
レインキュベーション後、プロ/潜在型ミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンを、mT
ll2およびフューリン馴化培地(プロミオスタチン)の混合物またはmTll2馴化培
地(潜在型ミオスタチン)のいずれかと共にインキュベートした。一晩のタンパク質分解
反応の後、成熟増殖因子の放出を、293T細胞におけるCAGAベースのレポーターア
ッセイを使用して測定した。抗体を、同じアッセイにおいて用量反応によってさらに確認
し、その結果を表3に示す。
【0209】
5つの親抗体(表3)は、上記のアッセイの全てにおいて一貫して強力な選択性および
活性を示し、これらをin vivoでさらに特徴付けるためにさらに選択した(実施例
2において考察される)。Ab8は、潜在型ミオスタチンを認識しないが、一貫性のため
に、プロ/潜在型ミオスタチンに対するこれらの抗体の結合および活性を要約する。
【0210】
抗体候補の作用機序を決定するために、
図3に示すようにミオスタチンのプロドメイン
に対して惹起されたポリクローナル抗体を使用してウエスタンブロットによって試料を分
析した。これによって、mTll2切断後に生成されるミオスタチンプロドメインの断片
(四角で囲った部分)の追跡が可能となった。Ab1の濃度が増加するにつれて、この断
片の生成の用量依存的な減少が認められた。この実験は、エピトープビン1の抗体が、プ
ロテアーゼのトロイドファミリーによるプロおよび潜在型ミオスタチンの切断を遮断する
ことによって作用することを示している。
【0211】
活性抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体のin vitroおよびin vivo活性に
基づいて、Ab1を、親和性成熟、生殖系列化、および製造可能性分析を含むさらなる最
適化のためのリードとして選択した。
【0212】
Ab1の最適化
Ab1抗体をさらなる最適化のために選択した。プロ/潜在型ミオスタチンの親和性を
、酵母ディスプレイを使用して最適化した。さらに、ヒト可変領域フレームワーク内の非
生殖系列アミノ酸位置の起こり得る免疫原性傾向を低減させるために、Ab1の配列を生
殖系列化した。
【0213】
酵母ディスプレイによるAb1の親和性最適化
Ab1親抗体を、酵母に基づくscFvディスプレイアプローチを使用してプロ/潜在
型ミオスタチンに対する結合に関して最適化した。簡単に説明すると、Ab1が利用する
ヒトフレームワークに対応する抗体ディープシークエンシングを使用して天然のヒト抗体
レパートリーにおいて観察されるアミノ酸頻度に基づいて、選択されたCDR位置に点変
異を導入する3つの異なるscFvライブラリーを作製した。それぞれのライブラリーは
、得られた重鎖または軽鎖のそれぞれの改変体が、それぞれのCDRに1つの置換を有し
、全体で3つの置換を有するように、それぞれのCDRに1つの点変異が導入されたAb
1配列に基づくscFvを含有した。3つのライブラリーを、FACSベースのソーティ
ングおよび選択のために使用して、プロ/潜在型ミオスタチンに対してより高い結合親和
性を有するクローンのプールを同定した(
図23)。酵母発現scFvクローンの直接結
合を使用して、哺乳動物細胞培養物において発現される完全長のIgGに転換するための
抗体を選択した。
【0214】
酵母の作戦で同定された高親和性のscFvクローンの多くは、重鎖の28位で置換を
含有した。いくつかのクローンでは、トレオニンのアスパラギンへの置換によって、CD
RH1内で非標準のN-グリコシル化モチーフが組み込まれていた。抗体の可変領域内で
のN-グリコシル化は望ましくないことがあるので、グリコシル化モチーフを含有するい
かなるクローンも、この位置でアラニンを含有するようにさらに置換した。
【0215】
次に、プロおよび潜在型ミオスタチンに対する結合動態を、親和性最適化構築物のそれ
ぞれに関してoctetによって評価して、親Ab1の動態と比較した(実施例2におい
て考察する)。クローンは全て、ミオスタチンに関して有意に増加した結合親和性を示し
、GDF11と比較した選択的結合プロファイルに基づいて、Ab3およびAb5の2つ
を選択した。
【0216】
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の一次配列および骨格
親Ab1の可変領域とその親和性最適化改変体との配列アラインメントを以下に示す。
相補性決定領域(CDR)は、Kabat(下線)およびIMGT命名法(太字)を使用
して定義される。親Ab1からの置換を、赤色の小文字で示す(下記および
図24A~2
4B)。
【化9】
【0217】
抗体操作およびアイソタイプ選択の根拠
いくつかの実施形態では、ミオスタチンの遮断にとって有用な抗体は、エフェクター機
能を欠如する。このため、ヒト化構築物に関して、IgG4-Fc領域を選択した。Ig
G4アイソタイプの抗体は、補体C1qに対する結合が不良で、したがって補体を有意に
活性化しない。これらの抗体はまた、Fcγ受容体に対する結合も弱く、そのため抗体依
存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は非効率的であるか、または存在しない。
【0218】
ネイティブIgG4 mAbに関して起こることが知られているFabアーム交換によ
る起こり得る困難な状況を回避するために、Ab1およびその改変体を、セリン228(
EU番号付け:Kabat番号付け残基241)がプロリンに変換されてIgG1様(C
PPCP(配列番号58))ヒンジ配列が生じる安定化「Adair」変異(Angal
、1993年)により操作した。この操作したFc配列を、承認された抗体Keytru
da、Mylotarg、およびTysabriの生成、ならびに現行のいくつかの後期
臨床候補mAbに使用する。
【0219】
生殖系列化および免疫原性のリスク評価
Ab1親抗体およびその改変体は、ファージディスプレイに由来する完全ヒトIgG4
(S228P)、ラムダ抗体である。抗体のFc部分は、Fabアーム交換を防止するた
めに1つの安定化変異を(上記)含有する。IgG4 Fcは、Fcガンマ受容体に対し
て測定可能な結合を有すると予想されない(実施例2を参照されたい)。
【0220】
完全ヒトナイーブファージライブラリーから単離されたAb1の可変フレームワーク領
域は、5つの非生殖系列アミノ酸を含有する(以下および
図22を参照されたい)。相補
性決定領域(CDR)は、Kabatの命名法を使用して定義され、下線で示される。非
生殖系列の残基を小文字で示す。
【化10】
【0221】
免疫原性の可能性を緩和するために、非生殖系列フレームワーク残基をその対応する生
殖系列アミノ酸に置換するAb1分子のさらなる改変体を作製した。いくつかの実施形態
では、Ab1に関する置換を、Ab3およびAb4、またはその生殖系列化が適切である
本明細書に開示される任意の抗体に同様に適用することができる。
【0222】
Ab1の可変領域と、その親和性最適化改変体との配列アラインメントを、以下に示す
。A.)重鎖、B.)軽鎖。相補性決定領域(CDR)は、Kabat(下線)およびI
MGT命名法(太字)を使用して定義する。親Ab1に存在するフレームワーク領域の置
換を小文字で示す。
【化11】
【0223】
5つの置換のうち3つは、CDR領域から離れていることが見出され、したがって、結
合に影響を及ぼさない。軽鎖の2位のプロリンはCDRL3に対してパッキングされてい
ることから、このプロリンを生殖系列のセリンに置換すると、CDRのコンフォメーショ
ンを安定化させることによって、プロ/潜在型ミオスタチンに対する結合を実際に改善す
る。
【0224】
抗体全体は、99%超がヒトである(100%から、CDRH3を除く非生殖系列AA
の%を差し引くことによって算出した)。化学コンジュゲーションは存在しない。重鎖C
DRH2配列は、生殖系列IgHV3-30配列にも存在する、起こり得る異性化傾向(
Asp-Gly)を含有する。
【0225】
(実施例2:薬理学的特徴付け)
in vitro薬理学アッセイ
全体で24個の最適化Ab1改変体を発現させて、IgG4として精製し、結合および
機能的活性の改善に関してアッセイした。これらの分子に対する変化は、親和性成熟スク
リーニングにおいてプロ/潜在型ミオスタチンに対する結合の増加を付与するCDRの変
異と共に、親可変領域に対する生殖系列化変異を含んだ(実施例1を参照されたい)。
【0226】
Ab1改変体を、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンタンパク質(ヒト、ネズ
ミ、およびカニクイザル)に対する結合を、陰性対照タンパク質の大規模スクリーニング
と共に再評価するいくつかの異なるELISAベースのアッセイにおいてスクリーニング
して、親和性成熟の結果として非特異的結合が導入されないことを確認した。陰性対照は
、GDF11タンパク質(プロGDF11、潜在型GDF11、および成熟GDF11)
、TGFβタンパク質、ならびにアクチビンタンパク質(プロアクチビン)を含んだ。さ
らに、抗体を、既に公表されたスクリーニング(Hotzelら、2012年)と類似の
スクリーニングにおいて多重特異性(急速なクリアランスが起こり得る)に関して評価し
た。多重特異性スクリーニングにおいて陰性対照タンパク質またはバキュロウイルス粒子
と有意に相互作用するいかなる抗体も、開発プログラムの候補としてさらに考慮しなかっ
た。
【0227】
Ab1の24個の最適化改変体も、プロミオスタチン活性化アッセイにおいて評価して
、その機能的効能を決定して、用量反応曲線からのEC50値を親Ab1抗体と比較した
。ほとんどの抗体は同等であるか、または改善されたEC50値を有し、このアッセイに
おいて効能の低減を示したのは少数であった。活性アッセイにおいて効能が低減した抗体
をさらなる分析から除外した。
【0228】
プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに対する結合が改善したが、プロミオスタ
チンおよび潜在型ミオスタチンに対して特異性を保持するAb1の3つの改変体を同定し
た。これらの3つの改変体および親Ab1分子の結合および活性データを、表4~7に要
約し、配列を実施例1に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0229】
細胞ベースのex vivoおよびin vivoの生物活性アッセイ
Ab1最適化改変体を、GDF8活性化アッセイにおいて用量反応試験で評価した。こ
れらの実験において、0.5μMプロミオスタチンを、漸増量の試験物質と共にプレイン
キュベートした。このプレインキュベーションステップの後、mTll2およびフューリ
ンプロテアーゼを過剰発現するHEK293細胞由来の馴化培地を添加して、プロミオス
タチンから成熟増殖因子を放出させた。30℃で一晩インキュベートした後、材料を、S
MADベースのルシフェラーゼレポータープラスミドを有する293T細胞に添加して、
放出された材料の活性を記録した。データを
図4に示す。
【0230】
他のTGFβファミリーメンバーよりも優先したミオスタチンに対する選択性
候補抗体の選択性も、結合および機能的アッセイの両方によって評価して、TGFβフ
ァミリーの他のメンバーに対して交差反応性がないことを確認した。ヒトミオスタチンと
GDF11とは、成熟増殖因子ドメインにおいて90%の同一性を共有し、プロドメイン
領域において47%の同一性を共有する。ELISAアッセイにより、ミオスタチンのプ
ロドメインからなる構築物にこの抗体が結合することが示されていることから、エピトー
プマッピング試験から、親Ab1分子がプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンのプ
ロドメイン上のエピトープを認識することが決定された。ミオスタチンのプロドメインと
GDF11は50%未満の同一性を共有し、有意な交差反応性は予想されないものの、リ
ード抗体の特異性を注意深く評価した。
【0231】
目的の抗体と陰性対照試薬との間の相互作用を検出する感度の良いアッセイを開発した
。このアッセイにおいて、ビオチン化プロGDF11またはビオチン化プロミオスタチン
を、抗体30μg/mLを含有するウェルに適用したForteBio BLIストレプ
トアビジンコーティングセンサーチップ上に固定した。検体と、チップ上に固定したタン
パク質との相互作用を、バイオセンサーチップの応答の大きさによって測定する。会合5
分後のバイオセンサー応答(プロGDF8の飽和シグナル)を2つの抗原の間で比較して
、GDF8結合に関する応答率として表した。抗体は全て、プロミオスタチンに関して測
定される確固とした結合事象と比較して、プロGDF11と最小限の相互作用を有した。
【表8】
【0232】
抗体候補もGDF11活性化アッセイにおいて評価した。このアッセイにおいて、50
nMプロGDF11を、増加濃度の抗体と共にプレインキュベートする。プレインキュベ
ーションの後、BMP-1(トロイドファミリープロテアーゼ)およびPCSK5(GD
F11に対して特異的なフューリンファミリーメンバー)を過剰発現するHEK293細
胞由来の馴化培地を添加して、タンパク質分解を介してプロGDF11を活性化した。3
0℃で一晩インキュベートした後、反応混合物をSMADベースのレポーター細胞株にお
いてGDF11活性に関して評価する。表8に示すように、抗ミオスタチン抗体は、プロ
GDF11活性化を阻害しないが、陽性対照抗体は、GDF11活性化の用量依存的阻害
を付与する。
【0233】
抗体候補の結合親和性を、ForteBio Octet Qkeディップを使用して
決定し、生体層干渉法(bio-layer interferometry)を利用し
て標識フリーのアッセイシステムを読み取った。それぞれの実験において抗原をバイオセ
ンサー(プロGDF8、プロGDF11、およびプロアクチビンに関してストレプトアビ
ジンコーティングバイオセンサー;他の全てに関して直接アミンカップリング)に固定し
て、抗体/構築物を、溶液中で高濃度(50μg/mL)で提示して、結合相互作用を測
定した。
【表9】
【0234】
抗原結合試験からの結果を表9に要約する。不良な結合応答を有するデータにフィット
させたいくつかの算出されたKd値が存在し、これらは表において弱い非特異的結合とし
て示す。
【0235】
Fc領域の機能性の評価
抗プロ/潜在型ミオスタチン療法の予想される機序は、可溶性の標的(プロ/潜在型ミ
オスタチン)に結合すること、およびタンパク質分解を介した活性化を防止することを伴
う。そのため、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および補体結合は、この作用機序にとって
必要ではない。Ab1およびその関連する改変体を、IgG4-Fc領域を含有するよう
に操作した。IgG4抗体は一般的に、補体成分C1qおよびFcγ受容体に対するその
結合が弱いためにエフェクター機能を欠如すると理解される。
【0236】
エフェクター機能の能力が低減されていることを証明するために、Ab1および関連す
る抗体を、ELISAによってCD64(FcgRI)およびC1qに対する結合に関し
て試験した。比較のために、Ab1のIgG1改変体も調製した。このアッセイにおいて
、IgG4抗体は全て、IgG1と比較してCD64およびC1qに対して有意に弱い結
合(1/10~1/20)を示した。EC50での相対的結合値を表10に記載する。
【表10】
【0237】
Ab1およびその関連改変体のCD64およびC1qに対する見かけの結合親和性は、
他のIgG4臨床候補抗体と類似であり、IgG1アイソタイプの抗体と比較してかなり
低減されている。したがって、IgG4抗体の公知の生物学に基づいて、抗プロ/潜在型
ミオスタチン抗体は、in vivoで認識可能なエフェクター機能を誘導しないと結論
される。
【0238】
動物モデルにおける効能
in vitro特徴付けに基づいて、4つの抗体(Ab7、Ab1、Ab8、および
Ab9)を選択して、in vivo試験において試験した。試験の目的は、これらの4
つの候補抗体がマウスの筋肉量を調節する能力を評価することであった。10匹の雌性S
CIDマウスの5つの群に、試験物質を1週間に1回、0、7、14、21、28、およ
び35日目に腹腔内(IP)注射によって投与した。試験物質の投与前(0日目)、全て
の動物に握力評価を行った。握力評価はまた、試験の最終日(42日目)にも実施した。
0日目に、全血球算定(CBC)評価のために血液を後眼窩出血を介して採取した。投与
後、動物を体重および全身健康状態の観察について毎日評価した。42日目に、握力評価
の後、動物をCO2過量投与によって屠殺して、CBC評価のために心穿刺によって血液
を採取した。血漿を調製するために、さらなる血液を採取した。様々な組織を単離して重
量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、胸筋、ヒラメ筋、三頭筋、前脛骨筋、四頭筋(
大腿直筋)、および横隔膜であった。採取した臓器は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および
鼠径部白色脂肪組織であった。組織は全て重量を測定して、瞬間凍結したが、腓腹筋は、
組織学分析のためにホルマリン(脚1)およびOCT(脚2)で固定した。
【0239】
要約
試験SCH-02における動物の平均一日体重変化率データを
図6に示す。5群全ての
動物の体重は、毎週増加した。抗体Ab1で処置した動物は、
図6に描写するように、最
大の体重増加(14.6%)を示した。Ab1で処置した動物のみが、ビヒクル(PBS
)対照群の動物と比較して平均体重変化率の統計学的に有意な増加を示した(
図6)。
【0240】
切除した筋肉の重量を
図7および8にプロットする。Ab1で処置した動物は、ビヒク
ル(PBS)対照処置動物と比較して腓腹筋(
図7A)および横隔膜(
図8B)重量の統
計学的に有意な増加、それぞれ27.6%および49.8%を示した。Ab1処置動物か
らのさらなる筋肉は、PBS対照と比較して重量の増加を示したが、これらの差は統計学
的に有意ではなかった。心臓、脾臓、腎臓、肝臓および脂肪組織の平均組織重量に関して
処置群の間に統計学的有意差はなかった。
【0241】
SCID用量反応試験
in vivo試験(上記)において、Ab1を25mg/kgで1週間に1回6週間
投与した動物は、ビヒクル(PBS)を投与した動物と比較して、体重および筋重量(腓
腹筋および横隔膜)の統計学的に有意な増加を示した。次に、Ab1のこの筋肉増強活性
を、SCIDマウスの用量反応試験においてより詳細に調べた。この試験において、筋肉
量に及ぼす効果の大きさを、Ab1の用量を60mg/kg/週もの高用量まで増加させ
ることによって増加させることができるか否か、および筋肉量に及ぼす効果の大きさを、
Ab1の用量を2mg/kg/週もの低用量に減少させることによって減少させることが
できるか否かを調べた。この試験において、Ab1の活性を、さらに2つの抗体(上記の
試験で当初試験したAb8、およびAb10)と比較した。
【0242】
10匹の雌性SCIDマウスの10個の群に試験物質を腹腔内(IP)注射(10ml
/kg)によって週に2回、0、3、7、10、14、17、21、および24日目に投
与した。試験物質の用量は以下のとおりであった:Ab1(30mg/kg、10mg/
kg、3mg/kg、および1mg/kg)、Ab10(10mg/kgおよび3mg/
kg)、ならびにAb8(10mg/kgおよび3mg/kg)。対照群にはPBSおよ
びIgG対照(30mg/kg)を投与した。処置群を表11に記載する。動物は、試験
開始時10週齢であった。体重を-4日目に測定して、投与日に対応して試験を通し週に
2回、測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、Ec
hoMRI(QNMR)によって-4、7、14、21、および28日目に測定した。抗
体の初回用量から30日後に動物をCO
2の過量投与によって屠殺して、CBC評価およ
び血漿調製のために心穿刺によって血液を採取した。さらに、試験終了時に、様々な組織
を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、四頭筋(大
腿直筋)、および横隔膜であった。筋肉を、試験マウスの左右両方の脚から切除した。分
析のために、両方の脚からの個々の筋肉の重量を合計してグラムでの平均筋重量を算出し
た。採取した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪組織であった。組織は全
て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリ
ン(左脚)およびOCT(右脚)で固定した。
【表11】
【0243】
ビヒクル(PBS)、IgG対照、およびAb1の異なる用量で処置した動物に関する
平均体重変化率および平均除脂肪量変化率データを
図9に示す。20および60mg/k
g/週の用量のAb1で処置した動物は、IgG対照処置動物と比較して試験28日目に
体重の有意な増加、それぞれ15.3%および14.4%を示した(
図9A)。Ab1(
60、20、6、および2mg/kg/週の用量)で処置した動物の4つ全ての群が、I
gG対照処置動物と比較して試験28日目に除脂肪量の統計学的に有意な増加、それぞれ
、14.1%、12.4%、17.1%、および15.5%を示した(
図9B)。
【0244】
4つの筋肉(四頭筋、腓腹筋、前脛骨筋、および横隔膜)の重量を
図10にプロットす
る。ヒラメ筋も切除したが、筋肉のサイズが小さいために、データセットは極めて変動し
た。Ab1の全ての用量で処置した動物は、IgG対照動物と比較して筋重量の統計学的
に有意な増加を示した(
図10)。IgG対照と比較した筋肉量の平均変化率を、それぞ
れの筋肉グラフ上で対応する棒グラフの上に示す。四頭筋重量の平均変化率は、最高用量
の20.5%から最低用量の10.7%までの範囲であった(
図10A)。腓腹筋重量の
平均重量変化率は、最高用量の17.7%から最低用量の15.9%までの範囲であった
(
図10B)。前脛骨筋重量の平均重量変化率は、最高用量の24.0%から最低用量の
18.0%までの範囲であった(
図10C)。横隔膜筋重量の平均重量変化率は、全ての
用量群に関して30%超であった(
図10D)。心臓、脾臓、腎臓、肝臓、および脂肪組
織の平均組織重量に関して処置群間で統計学的有意差はなかった。
【0245】
デキサメタゾン誘導筋萎縮症モデルにおけるAb1処置
健康なSCIDマウスにおいて抗ミオスタチン抗体Ab1が筋肉量を構築する能力を考
慮して、Ab1処置が、筋萎縮症を誘導する処置から動物を保護することもできるか否か
を決定した。動物を、その飲料水中のデキサメタゾンで2週間処置することによって、コ
ルチコステロイド誘導筋萎縮症モデルを確立した。選択した用量(2.5mg/kg/日
)は、除脂肪体重および個々の後肢筋肉量の有意な減少を誘導することができた。以下の
実験において、動物を、Ab1の異なる用量で処置して、このデキサメタゾン誘導筋萎縮
症から動物を保護できるか否かを決定した。
【0246】
この試験において、10匹の雄性マウス(C57BL/6)の8つの群を、13.5週
齢で試験に登録した。試験0日目に開始して、マウスに、通常の飲料水(群1~4)、ま
たはデキサメタゾンを含有する水(群5~8)のいずれかを与えた。試験物質を、週に2
回、0、3、7、および10日目に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって投与
した。試験物質および用量は以下のとおりであった:PBS(群1および5)、10mg
/kg IgG対照(群2および6)、10mg/kg Ab1(群3および7)、なら
びに1mg/kg Ab1(群4および8)。処置群を表12に記載する。試験を通して
少なくとも週に2回、体重を測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および
水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって、-1、6、および13日目に測
定した。抗体の初回用量から14日後、動物をCO
2の過量投与によって屠殺して、血漿
を調製するために心穿刺によって血液を採取した。さらに、試験終了時、様々な組織を単
離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直
筋)、および横隔膜であった。筋肉を、試験マウスの左右両方の脚から切除した。分析の
ために、両方の脚の個々の筋肉の重量を合計して、平均筋重量をグラムで算出した。採取
した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪組織であった。組織は全て、重量
を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリン(左脚
)およびOCT(右脚)で固定した。
【表12】
【0247】
この実験において、抗ミオスタチン抗体Ab1によるマウスの処置が、コルチコステロ
イド誘導筋萎縮症から動物を保護できるか否かを決定した。試験中、体重を週に2回測定
して、除脂肪量を-1、6および13日目にQNMRによって測定した。非疾患対照群(
群1)およびデキサメタゾン処置群(群5~8)の動物に関して、平均体重変化率および
平均除脂肪量変化率データを
図12に示す。14日目では、これらの処置群のいずれの間
でも平均体重変化率に有意差は認められなかった(
図11A)。デキサメタゾンで2週間
マウスを処置すると、通常の飲料水を与えた対照群(群1)と比較して除脂肪体重は有意
に減少した(群5および6)(
図11B)。しかし、デキサメタゾンおよび20mg/k
g/週の抗体Ab1の両方で処置したマウス(群7)は、対照群(群1)と比較して試験
14日目に除脂肪体重変化率の有意差を示さなかった。20mg/kg/週のAb1で処
置した動物は、デキサメタゾン処置対照群(群5および6)のいずれかと比較して、14
日目に除脂肪体重変化率の有意差を示したが、2mg/kg/週は有意差を示さなかった
。
【0248】
デキサメタゾンおよび試験物質による2週間の処置の終了時、個々の筋肉を切除して、
重量を測定した。2つの筋肉(腓腹筋と四頭筋)の重量データを
図12A~12Bにプロ
ットする。飲料水を通してデキサメタゾンを投与され、PBSまたはIgG対照抗体のい
ずれかを同様に投与された動物は、非疾患対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭
筋の有意な萎縮症を示した(群5および6)。デキサメタゾンと20mg/kg/週のA
b1の両方で処置された動物(群7)は、デキサメタゾン処置対照群(群5および6)の
いずれかと比較して筋重量の有意差を示したが、2mg/kg/週は、有意差を示さなか
った。さらに、デキサメタゾンと20mg/kg/週の抗体Ab1の両方で処置したマウ
ス(群7)は、非疾患対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋重量の有意差を示
さなかった。対照群(群1、PBSおよび水)の平均筋重量と比較した各群の平均筋重量
の差の百分率を、
図12C~12Dに示す。PBSおよびIgG対照群におけるデキサメ
タゾン処置によって誘導された腓腹筋肉量の減少率は、それぞれ、16.5%および18
.9%であった。これに対し、デキサメタゾンと20mg/kg/週のAb1の両方で処
置した動物では、腓腹筋肉量の減少は4.0%に過ぎず、これは非疾患対照群(群1)と
統計学的に異ならなかった。デキサメタゾンと2mg/kg/週のAb1の両方で処置し
た動物(群8)では、腓腹筋肉量の減少は10%に過ぎず、この群の筋肉量の減少は、P
BSおよびIgG対照群(群5および6)の減少と統計学的に異ならなかった。類似の結
果が四頭筋について見られた(
図12D)。
【0249】
ギプス固定誘導筋萎縮症モデルにおけるAb1処置
健康なSCIDマウスにおいて抗ミオスタチン抗体Ab1が筋肉量を構築する能力を考
慮して、Ab1処置が、筋萎縮症を誘導する処置から動物を保護することもできるか否か
を調べた。マウスの右脚をギプスで2週間固定することによって、非活動性萎縮症モデル
を確立した。足を足底屈位置にして右脚をこの期間ギプスで固定することにより、個々の
後肢筋肉量の有意な減少を誘導することができた。以下の実験において、動物を異なる用
量のAb1で処置して、このギプス固定誘導筋萎縮症から動物を保護する程度を決定した
。
【表13】
【0250】
この試験において、10匹の雄性マウス(C57BL/6)の8つの群を、14.5週
齢で試験に登録した。試験0日目に開始して、マウスを麻酔下に置き、足を足底屈位置に
して右後肢にギプスを固定した(群5~8)。対照群(群1~4)も麻酔下に置いたが、
後肢のギプス固定を行わなかった。試験物質を、週に2回、0、3、7、および10日目
に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって投与した。試験物質および用量は以下
のとおりであった:PBS(群1および5)、10mg/kg IgG対照(群2および
6)、10mg/kg Ab1(群3および7)、ならびに1mg/kg Ab1(群4
および8)。処置群を表13に記載する。試験を通して少なくとも週に2回、体重を測定
した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI
(QNMR)によって、-1、7、および14日目に測定した。抗体の初回用量から14
日後、動物をCO2の過量投与によって屠殺して、血漿を調製するために心穿刺によって
血液を採取した。
【0251】
さらに、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、
足底筋、前脛骨筋、および四頭筋(大腿直筋)であった。分析のために、動物の右後肢か
ら個々の筋肉の重量を収集した。採取した他の組織は、心臓、脂肪組織、および脾臓であ
った。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析の
ためにホルマリンで固定した。
【0252】
要約
この実験において、抗ミオスタチン抗体Ab1でのマウスの処置が、右後肢のギプス固
定によって誘導された非活動性筋萎縮症からマウスを保護できるか否かを試験した。試験
中、体重を週に2回測定して、除脂肪量を-1、7および14日目にQNMRによって測
定した。非疾患対照群(群1)および2週間ギプス固定した群(群5~8)の動物に関し
て、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率データを
図13に示す。右後肢のギプス固
定は、体重増加に対していかなる負の効果も及ぼさず(
図13A)、群の除脂肪量のいか
なる差も有意ではなかった(
図13B)。
【0253】
2週間の試験の終了時、個々の筋肉を切除して、重量を測定した。2つの筋肉(腓腹筋
と四頭筋)の重量データを
図14A~14Bにプロットする)。脚をギプス固定して、同
様にPBSまたはIgG対照抗体のいずれかを投与した動物は、非ギプス固定対照群(群
1)と比較して、腓腹筋および四頭筋の有意な萎縮症を示した(群5および6)。ギプス
固定して20mg/kg/週のAb1を投与した動物(群7)は、ギプス固定対照群(群
5および6)のいずれかと比較して筋重量の有意差を示したが、2mg/kg/週は、有
意差を示さなかった。さらに、20mg/kg/週の抗体Ab1で処置したギプス固定マ
ウス(群7)は、非ギプス固定対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋重量の有
意差を示さなかった。非ギプス固定対照群(群1)の平均筋重量と比較して各群の平均筋
重量の差の百分率を、
図14C~14Dに示す。PBSおよびIgG対照群におけるギプ
ス固定によって誘導された腓腹筋肉量の減少率は、それぞれ、22.8%および23.5
%であった。これに対し、20mg/kg/週のAb1で処置したギプス固定マウスでは
、腓腹筋肉量の減少は10.0%に過ぎなかった。この差は、PBSおよびIgG対照抗
体を投与したギプス固定対照群(群5および6)と統計学的に異なることが見出された。
2mg/kg/週のAb1で処置したギプス固定マウスの筋肉量の減少は、PBSおよび
IgG対照群(群5および6)の減少と統計学的に異ならなかった。類似の結果が四頭筋
について見られた(
図14D)。さらなるデータを
図15~20に提供する。
【0254】
Ab1、Ab2、Ab4、およびAb6によるSCID用量反応試験
Ab1による以前のin vivo試験は、Ab1が、健康な動物において筋肉量を増
加させることができ、ならびにマウス筋萎縮症モデル(デキサメタゾンおよびギプス固定
誘導萎縮症)において筋肉喪失を予防することができることを証明した。抗体操作の努力
により、Ab1より良好であるin vitro特徴を有する3つの抗体が同定された。
この試験において、SCIDマウスにおいて、これらの抗体のin vivo活性を、3
つの異なる用量で、既に確立されたAb1の活性と比較した。
【0255】
8匹の雌性SCIDマウスの14個の群に、週に2回、0、3、7、10、14、17
、21、および24日目に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって試験物質を投
与した。試験物質の用量は以下のとおりであった:Ab1、Ab2、Ab4、およびAb
6は、3つの異なる用量(10mg/kg、1mg/kg、および0.25mg/kg)
で投与し、IgG対照抗体は10mg/kgで投与した。処置群を表14に記載する。動
物は、試験開始時10週齢であった。投与日に対応して試験を通し、週に2回、体重を測
定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMR
I(QNMR)によって、0、7、14、21および28日目に測定した。抗体の初回用
量から28日後、動物をCO2の過量投与によって屠殺して、血漿を調製するために心穿
刺によって血液を採取した。
【0256】
さらに、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、
前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、足の長指伸筋、および横隔膜であった。筋肉を、試験マ
ウスの左右両方の脚から切除した。分析のために、両方の脚の個々の筋肉の重量を合計し
て、平均筋重量をグラムで算出した。採取した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、お
よび脂肪組織であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、左の腓
腹筋は、組織学分析のためにホルマリンで固定した。
【表14】
【0257】
(実施例3:化学/製薬科学)
Ab2は、228位でセリンをプロリンに置換したIgG4サブタイプのヒト化モノク
ローナル抗体である。これによって、IgG1様ヒンジ配列が生成され、IgG4の特徴
である鎖間ジスルフィド架橋の不完全な形成を最小限にする。Ab2の重鎖および軽鎖の
完全なアミノ酸配列を以下に示す。相補性決定領域(CDR)を下線で示す。紫色:N-
結合グリコシル化コンセンサス配列部位;水色:起こり得る切断部位;赤色:起こり得る
脱アミド化部位;黄緑色:起こり得る異性化部位;濃い青色:起こり得るメチオニン酸化
部位;太字:予想されるN末端ピログルタミン酸(
図21A~21B)。
【0258】
Ab1の分子モデリングにより、起こり得るいくつかの翻訳後改変部位が同定された。
軽鎖における2つのアスパラギン、および重鎖における7つのアスパラギンは、脱アミド
化を受けやすい。これらの残基の2つは、重鎖のCDR領域内に位置する。
【0259】
ネイティブIgG4 mAbは、2つの半分子(それぞれが、1つの重鎖と1つの軽鎖
とを含有する)が非共有結合的相互作用によってインタクト抗体構造において維持される
重鎖間ジスルフィド架橋の不完全な形成を有し得る。IgG4分子は、in vitro
およびin vivoで半分子を交換する傾向があり得、半分子のレベルは、製造バッチ
間で一貫していなければならない。IgG4構造の骨格におけるSerからProへの置
換によって、IgG1様ヒンジ配列がもたらされ、それによって鎖間ジスルフィド結合の
形成が可能となり、抗体構造を顕著に安定化させる。ヒンジ領域の完全性および安定性を
、非還元性キャピラリー電気泳動および遊離のスルフヒドリルの定量などのアッセイを使
用して、展開中に広範な特徴付けを行いながらモニタリングする。鎖交換の可能性をin
vivoでモニタリングする。
【0260】
要約
プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンの活性化を遮断するプロ/潜在型
ミオスタチン特異的抗体を、本明細書に提供する。この活性化遮断抗体を健康なマウスに
投与すると、除脂肪体重および筋肉のサイズを増加させ、筋肉増強効果を1ヵ月間維持す
るために単一の用量しか必要としない。さらに、抗体の投与は、2つの別個の筋消耗モデ
ルにおいて健康なマウスを筋萎縮症から保護する。データは、ミオスタチン活性化の遮断
が、確固とした筋成長を促進してin vivoで筋萎縮症を防止し、筋消耗の治療介入
のための代替機構を表すことを証明する。
【0261】
本開示のいくつかの実施形態を本明細書において記載し、説明してきたが、機能を行う
ための、ならびに/あるいは本明細書において記載される結果および/または1つもしく
は複数の利点を得るための、多様な他の手段および/または構造は、当業者によって容易
に想起され、そのような変更および/または改変のそれぞれは、本開示の範囲内であると
考えられる。より一般的には、本明細書において記載される全てのパラメータ、寸法、材
料、および構成は、例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および
/または構成は、特定の応用または本開示の教示が使用される応用に依存することを、当
業者は容易に理解するであろう。当業者は、単なる日常的実験を使用して、本明細書に記
載される開示の特異的実施形態に対する多くの同等物を認識するまたは確認することがで
きる。したがって、前述の実施形態は、単なる例として紹介され、添付の特許請求の範囲
およびその同等物の範囲内で、本開示は具体的に記載および特許請求される以外に実践し
てもよいと理解すべきである。本開示は、本明細書において記載されるそれぞれの個々の
特徴、システム、物品、材料、および/または方法を対象とする。さらに、2つまたはそ
れ超のそのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法の任意の組合せは、
そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない限り、
本開示の範囲に含まれる。
【0262】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「1つの(a)」および「
1つの(an)」は、それらが明らかに反対を示していない限り、「少なくとも1つ」を
意味すると理解すべきである。
【0263】
本明細書および特許請求の範囲で使用される語句「および/または」は、そのように結
合された要素、すなわち、ある場合では結合して存在し、別の場合では離れて存在する要
素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解すべきである。明らかに反対であることと
示していない限り、具体的に同定されたそのような要素に関連するか関連しないかによら
ず、「および/または」の語句によって具体的に同定された要素以外に他の要素が、任意
選択で存在してもよい。このように、非制限的な例として、「含む」などの制限のない用
語と共に使用する場合の「Aおよび/またはB」という言及は、一実施形態ではBを含ま
ないA(任意選択でB以外の要素を含む)、別の実施形態ではAを含まないB(任意選択
でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではAとBの両方(任意選択で他の要素を
含む)等を指し得る。
【0264】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義される「
および/または」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リストにある項目を
分離する場合、「または」または「および/または」は、包含的に解釈され、すなわち、
いくつかの要素または要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、1超も含み、任意
選択で追加の記載されていない項目を含むと解釈される。その反対であることを明らかに
示している、「唯一の」もしくは「まさに1つの」、または特許請求の範囲において使用
される場合の「からなる」などの用語のみが、いくつかの要素または要素のリストのうち
の厳密に1つの要素の包含を指す。一般的に、本明細書において使用される用語「または
」は、「いずれか」、「~の1つ」、「~の1つのみ」または「~のまさに1つ」などの
排他的な用語がその前にある場合、排他的代替物(すなわち、「1つまたは他方であるが
、両方ではない」)を示すとのみ解釈される。特許請求の範囲において使用される場合の
「本質的にからなる」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有する。
【0265】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つまたは複数の要素のリス
トを参照する場合の語句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける要素の任意の1つ
または複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内
に具体的に記載されるあらゆる要素の少なくとも1つを含まず、要素のリストにおける要
素の任意の組合せを除外しないと理解すべきである。この定義はまた、具体的に同定され
たそれらの要素に関係するか無関係であるかによらず、語句「少なくとも1つ」が指す要
素のリスト内で具体的に同定された要素以外の要素が任意選択で存在してもよいことを許
容する。このため、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同
等の「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等の「Aおよび/またはBの少なくとも
1つ」)は、一実施形態では、任意選択で1超のAを含む少なくとも1つのAでBは存在
しない(任意選択でB以外の要素を含む)ことを指し;別の実施形態では、任意選択で1
超のBを含む少なくとも1つのBでAは存在しない(任意選択でA以外の要素を含む)こ
とを指し;なお別の実施形態では、任意選択で1超のAを含む少なくとも1つのAと、任
意選択で1超のBを含む少なくとも1つのB(任意選択で他の要素を含む)を指し得る等
々である。
【0266】
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書において、「含む(comprising)」
、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(ha
ving)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)
」、「保持する(holding)」その他などの全ての移行句は、制限がないと理解す
べきであり、すなわち、含むがこれらに限定されないことを意味する。「からなる」およ
び「本質的にからなる」という移行句のみが、米国特許庁の米国特許審査便覧第2111
.03節に記載されているようにそれぞれ、制限的または半制限的な移行句である。
【0267】
請求項の要素を修飾するための、特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3
」等などの序数の使用は、それ自体、いかなる優先性、選択性、または1つの請求項の要
素の順位が別の請求項の要素より上であること、または方法の行為が実行される時間的順
序を暗示するものではなく、請求項の要素を区別するために、ある特定の名称を有する1
つの請求項の要素を、同じ名称(序数の使用以外の点で)を有する別の要素と区別するた
めの単なる表示として使用される。