(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109676
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】VISTAに対する受容体
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6813 20180101AFI20240806BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240806BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240806BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240806BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z ZNA
C07K16/46
C07K16/28
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 121
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/53 Y
C12Q1/6813 Z
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078260
(22)【出願日】2024-05-13
(62)【分割の表示】P 2021503008の分割
【原出願日】2019-07-22
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/000983
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(71)【出願人】
【識別番号】500033483
【氏名又は名称】ピエール、ファーブル、メディカマン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、フェレール
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ、クルサレギ
(72)【発明者】
【氏名】ヌールディンヌ、ルーキーリ
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ、デルフール
(72)【発明者】
【氏名】エドワード、テイン、トゥン、ファン、デル、ホースト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象においてVISTA介在腫瘍を診断するためのin vitro法を提供する。
【解決手段】方法は、a)前記対象の生体試料をPSGL-1核酸またはタンパク質に特異的に結合することができる試薬と接触させる工程;およびb)前記試薬と前記生体試料との結合を定量し、前記試料におけるPSGL-1の発現レベルを決定する工程を含んでなる。前記試薬はDNAプローブ、RNAプローブ、および抗PSGL-1抗体から選択されてよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてVISTA介在腫瘍を診断するためのin vitro法であって、
a)前記対象の生体試料をPSGL-1核酸またはタンパク質に特異的に結合することができる試薬と接触させる工程;および
b)前記試薬と前記生体試料との結合を定量し、前記試料におけるPSGL-1の発現レベルを決定する工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記試薬がDNAプローブ、RNAプローブ、および抗PSGL-1抗体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍微小環境の免疫浸潤物におけるPSGL-1の結合が定量される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(B)のレベルを、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づいて適当な尺度で比較することにより腫瘍をスコア化する工程をさらに含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)の発現レベルを参照レベルと比較する工程をさらに含んでなり、工程(b)におけるPSGL-1のアッセイレベルが参照レベルに比べて増加していることがVISTA介在腫瘍の指標である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記参照レベルが正常組織試料におけるPSGL-1の発現レベルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程a)が前記生体試料において前記免疫浸潤物によるVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを測定することをさらに含んでなり;かつ
工程b)が工程a)の発現レベルを対照レベルと比較することを含んでなり、
それにより、PSGL-1および/またはVISTA、CD11b、CD33、CD4、もしくはCD8のアッセイレベルがPSGL-1および/またはVISTA、CD11b、CD33、CD4、もしくはCD8の対照レベルに比べて増加していることがVISTA介在癌の指標である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
VISTA介在腫瘍が血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、または骨髄腫)、膀胱癌、乳癌、結腸癌、結合組織癌、直腸癌、胃癌、食道癌、肺癌、喉頭癌、腎臓癌、口腔癌、卵巣癌、もしくは前立腺癌、または肉腫、黒色腫、もしくは神経膠腫、またはこれらの癌のいずれかの転移からなる群から選択される、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
患者のVISTA介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬であって、前記使用は請求項1~8に係る前記患者において前記VISTA介在癌を診断する前工程を含んでなる、抗VISTA治療薬。
【請求項10】
抗VISTA抗体である、請求項9に記載の使用のための抗VISTA治療薬。
【請求項11】
前記抗VISTA抗体が、
a)Kabatにより定義される配列番号1296、1354、および1393の配列の3つのCDRを含んでなる重鎖と;Kabatにより定義される配列番号1432、1477、および1499の配列の3つのCDRを含んでなる軽鎖を含んでなる抗VISTA抗体;ならびに
b)Kabatにより定義される配列番号1296、1559、および1393の配列の3つのCDRを含んでなる重鎖と;Kabatにより定義される配列番号1432、1633、および1499の配列の3つのCDRを含んでなる軽鎖を含んでなる抗VISTA抗体
からなる群から選択される、請求項10に記載の使用のための抗VISTA治療薬。
【請求項12】
前記抗VISTA抗体がヒト化抗体である、請求項10に記載の使用のための抗VISTA治療薬。
【請求項13】
抗VISTA治療薬による治療を適合させる工程をさらに含んでなり、前記治療の適合が、
患者が抗VISTA治療薬に不応であると診断された場合には、前記抗VISTA治療薬治療の低減もしくは抑制、または
患者が抗VISTA治療薬に応答すると診断された場合には、前記抗VISTA治療薬治療の継続
である、請求項9~12のいずれか一項に記載の使用のための抗VISTA治療薬。
【請求項14】
VISTAおよびPSGL-1の相互作用に作動させるまたは拮抗させる抗体。
【請求項15】
作動性抗PSGL-1抗体または抗体フラグメントである、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
拮抗性抗PSGL-1抗体または抗体フラグメントである、請求項14に記載の抗体。
【請求項17】
PSGL-1とVISTAの細胞外ドメインとの結合を阻害または遮断し得る、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
VISTA発現細胞とPSGL-1発現T細胞との結合を阻害または遮断し得る、請求項16に記載の抗体。
【請求項19】
前記VISTA発現細胞が骨髄細胞、樹状細胞、マクロファージまたはT細胞である、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
前記VISTA発現細胞が腫瘍細胞である、請求項18または19に記載の抗体。
【請求項21】
前記PSGL-1発現細胞がT細胞である、請求項18~20のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
PSGL-1とP-セレクチン、L-セレクチンまたはE-セレクチンとの結合を遮断も阻害もしない、請求項14~21のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
請求項14~22のいずれか一項に記載の抗体と、生理学上許容可能な担体、賦形剤および/または安定剤と、を含んでなる医薬組成物。
【請求項24】
共抑制分子に対する拮抗剤または共刺激分子に対する作動剤をさらに含んでなる、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記拮抗剤が共抑制分子に対する抗体である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記共抑制分子がCD86、CD80、PDL-1、PDL-2、CTLA-4、PD1、LAG3、BTNL2、B7-H3、B7-H4、ブチロフィリン、CD48、CD244、TIM-3、CD200R、CD200、CD160、BTLA、HVEM、LAIR1、TIM1、ガレクチン9、TIM3、CD48、2B4、CD155、CD112、CD113およびTIGITからなる群から選択される、請求項24または25に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緒論
免疫療法は癌療法の分野のゲームチェンジャーとなった。免疫チェックポイントに基づく療法の開発は、息を呑むような速度で進行している。しかしながら、免疫療法に応答するのは患者の一部にすぎない。癌免疫療法における特定の課題は、このような治療の候補を特定し疾病管理の決定を導くために使用し得る、機序に基づくバイオマーカーの同定となってきた(Topalian et al., N Engl J Med, 366(26): 2443-54 (2012))。従って、患者の選択は、利益を受ける見込みのない患者における治療関連の毒性およびコストを回避するので重要な問題である。
【0002】
腫瘍抗原が応答を一度刺激しても免疫炎症性応答が活性化され続けないようにするために、複数の制御機構または「チェックポイント」が配備され、または活性化される。これらのチェックポイントは、主として、T細胞受容体が周囲の腫瘍微小環境中の細胞上のリガンドに結合し、免疫シナプスを形成し、次にこれがT細胞の機能を調節することによって呈される。
【0003】
VISTA(V-Domain Ig Suppressor of T Cell Activation)は、T細胞の活性化および免疫応答を調節する負のチェックポイント制御タンパク質である。これはB7およびCD28の両ファミリーの類似ドメインと相同性を有する単一のIg様V型ドメインと細胞内ドメインを含むI型膜貫通タンパク質である。VISTA細胞質テールドメインは、2つの潜在的タンパク質キナーゼC結合部位ならびに合体部位として働き得るプロリン残基を含み、VISTAは受容体およびリガンドの両方として働く可能性があることが示唆される。
【0004】
VISTAは、PDL-1と相同であるが、造血コンパートメントに限定される独特な発現パターンを示す。VISTAは、骨髄細胞および顆粒球で最も発現が高く、T細胞ではより低レベルで発現されるが、B細胞上には存在しない(Wang et al., JEM 208(3):577-592 (2011); Flies et al., J. Immunology 187(4):1537-1541 (2011))。VISTAは、T細胞および骨髄細胞集団において活性化または免疫誘導の際に誘導され、炎症がその発現を誘導することが示唆される(Wang et al., 前掲)。他方、腫瘍細胞ではVISTAの発現は検出されなかったが(Le Mercier et al., Cancer Res; 74:1933-44 (2014))、ヒト胃癌細胞はVISTAを低頻度で発現することが報告されている(Boger et al., OncoImmunology, 6:4, e1293215 (2017))。存在する場合には、VISTAの発現は、結腸または肺癌の腫瘍微小環境中の浸潤性CD11b+細胞に限定されていると思われる。しかしながら、腫瘍微小環境中のVISTAの発現に関連し得る腫瘍の特徴を特定するにはさらなる研究が必要とされると記載されていた(Lines et al., Cancer Immunol Res; 2(6):510-7 (2014))。
【0005】
VISTAは、T細胞上の負の受容体およびAPC上で発現される、T細胞上の未知の受容体と相互作用するリガンドの両方として働くと思われる。
【0006】
いくつかの所見が、VISTAはT細胞上の未知の受容体と相互作用するリガンドとして作用することによりT細胞応答に負の調節を行うことを示唆している。PD-L1と同様に、VISTAは、免疫を著しく抑制するリガンドである(Lines et al., Cancer Res; 74:1924-32 (2014))、PD-L1と同様に、VISTAの遮断は、前臨床腫瘍学モデルにおいて癌に対する治療免疫の生成を可能とする(Le Mercier et al., 前掲参照)。VISTAの遮断は免疫、特に、CD8+およびCD4+が介在するT細胞免疫を増強するが、VISTAの細胞外ドメインの可溶性Ig融合タンパク質(VISTA-Ig)による処置は、in vitroにおいてT細胞の増殖およびサイトカインの産生を阻害し、マウスにおいて、MCA105腫瘍細胞上のVISTAの過剰発現は、防御型の抗腫瘍免疫に干渉する(Wang et al., 前掲)。さらに、VISTA特異的モノクローナル抗体の投与は、in vivoにおいてCD4+ T細胞応答を、マウスにおいて自己免疫の生成を増強した(Wang et al., 前掲)。他方、VISTAは、他のIgスーパーファミリーメンバーとは重複しない機能的活性を有すると思われ、癌における自己免疫および免疫監視の生成に役割を果たす可能性がある。特に、Fc融合タンパク質を用いた研究は、VISTAがリガンド活性を有することを明らかに示すが(Wang et al., 前掲, Lines et al., 前掲)、受容体様シグナル伝達活性もまた記載されている(Flies et al., J Clin Invest; 124:1966-75 (2014))。実際に、T細胞上の受容体としてのVISTAの直接的な負の役割がいくつかの研究によって裏づけられている。
【0007】
免疫細胞浸潤物の組成は腫瘍実体が違えば異なるだけでなく、同じ解剖学的部位の腫瘍内でも異なることが周知である。著者らは、異なる免疫治療組合せに対する応答はおそらく患者の免疫環境によるものであると推測していた(Farkona et al., BMC Medicine 14: 73 (2016))。これに関して、PDL-1の発現は免疫攻撃を回避するように誘導されることが知られている(Sharma et al., Cell, 168: 707-23 (2017))。PDL-1の発現は、腫瘍内および腫瘍間変動を示す(Mino-Kenudson, Cancer Biol Med, 13(2): 157-70 (2016))が、抗PD-1抗体に対する客観的応答に関連している(Topalian et al., 前掲)。他方、タンパク質の作用を媒介するVISTA結合相手はまだ同定されていない(Le Mercier et al., Frontiers in Immunology, 6:418 (2015))。抗VISTA分子を用いた2つの第I相臨床試験が開始されているが、これらの治療に対する患者の応答を予測し得るバイオマーカーは存在しない。よって、VISTAの結合相手位を同定する必要があるが、それは治療薬の開発を促し、抗VISTA治療薬による処置に感受性のある患者の選択を可能とするからである。
【0008】
本明細書に記載されるものと類似または同一のあらゆる方法および材料が本発明の実施または試験に使用可能であり、本明細書には好適な方法および材料を記載する。本発明の実施には、別段の定めがない限り、従来の技術または当技術分野の技術の範囲内のタンパク質化学、分子ウイルス学、微生物学、組換えDNA技術、および薬理学が用いられる。このような技術は文献に詳細に説明されている(例えば、Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, Current Protocols; 第5版, 2002; Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第17版, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985;およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 第3版, 2001参照)。本明細書に記載の分子・細胞生物学、タンパク質生化学、酵素学および医化学・薬化学に関して使用する命名法、ならびにそれらの実験室手順および技術は、当技術分野で周知かつ慣用されている。本明細書に記載の総ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。さらに、材料、方法、および例は単に例示であって、特に断りのない限り、限定を意図するものではない。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、TRICEPS試薬を用いたCAPTIREC(商標)スクリーニング手順の流れ図を示す。対象リガンドはVISTA-Fc融合タンパク質であった。対照リガンドは抗CD28抗体であった。
【
図2】
図2は、PSGL-1のプロッターイラストである。N-グリコシル化部位は、四角で囲んだ残基で表し、実験的に観察されたペプチドは、埋めた丸で表す。
【
図3】
図3は、PSGL-1構築物Aの細胞外ドメインに対するVISTA-Fcの例示的結合アッセイの結果を示す。
【
図4】
図4は、PSGL-1構築物Bの細胞外ドメインに対するVISTA-Fcの例示的結合アッセイの結果を示す。
【
図5】
図5は、フローサイトメトリーによるHL-60細胞におけるPSGL-1の検出の例示的ヒストグラムを示す。アイソタイプおよびバックグラウンドはグレーの網掛けピークで表し、PSGL-1発現細胞は白い網掛けピークで表す。
【
図6】
図6は、VISTAとPSGL-1の間の相互作用を検出する例示的ウエスタンブロットを示す。PSGL-1を矢印で示し、PSGL-1の不完全な還元は、2本以上のバンドとなることが知られている。
【
図7】
図7は、VISTAとPSGL-1の間の相互作用を減弱する抗VISTA抗体の棒グラフを示す。各バーは、PSGL-1タンパク質に相当するバンド強度を表す。「-」の記号は、抗VISTA抗体を添加しなかったことを表す。「+」の記号は、抗VISTA抗体とのプレインキュベーションを表す。
【
図8】
図8は、フローサイトメトリーによるPBMCにおけるPSGL-1の検出の例示的ヒストグラムを示す。アイソタイプおよびバックグラウンドはグレーの網掛けピークで表し、PSGL-1発現細胞は白い網掛けピークで表す。
【
図9】
図9は、抗VISTA抗体および抗PSGL-1抗体を用いたPSGL-1の共免疫沈降を示す例示的ウエスタンブロットを示す。PSGL-1を矢印で示す。
【
図10】
図10は、ナイーブ・休止中エフェクターおよび疲弊エフェクターT細胞サブセットの例示的フローサイトメトリーアッセイにおけるPSGL-1発現を示す。
【
図11】
図11は、循環セントラルメモリーT細胞サブセットおよび循環エフェクターメモリーT細胞サブセットの例示的フローサイトメトリーアッセイにおけるPSGL-1発現を示す。
【
図12】
図12は、扁平上皮肺腫瘍上のPSGL1、VISTAおよびPDL1のmRNAの多重染色の例を示す。
【
図13】
図13は、CD4
+ T細胞からのVISTA依存性IL-2放出を阻害するPSGL-1の棒グラフを示す。
【発明の具体的説明】
【0011】
定義
別段の定めがない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解しているものと同じ意味を有する。総ての特許、特許出願、公開特許出願およびその他の刊行物は、引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。本明細書の用語に関して複数の定義が存在する場合には、別段の定めがない限り、本節のものが優先される。
【0012】
用語「約」または「およそ」は、当業者に知られている所与の値または範囲に関する通常の誤差範囲を指す。それは通常、所与の値または範囲の20%以内、例えば10%以内、または5%以内(または1%以下)を意味する。
【0013】
本明細書で使用する場合、「投与する」または「投与」は、ある物質(例えば、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体および/または抗VISTA抗体)を、それが体外に存在する場合に、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達および/または本明細書に記載されるまたは当技術分野で公知の物理的送達の他のいずれかの方法によって患者に注射する、またはそうでなければ物理的に送達する行為を指す。疾患またはその症状が治療される場合には、その物質の投与は一般に疾患またはその症状の発症後に行われる。疾患またはその症状が予防される場合には、その物質の投与は一般に疾患またはその症状の発症前に行われる。
【0014】
本明細書で使用する場合、「拮抗剤」または「阻害剤」は、標的タンパク質の生物活性のうち1以上を阻害またはそうでなければ低減し得る分子、例えば、PSGL-1、VISTAまたは本明細書に記載される異なる共抑制分子を指す。いくつかの実施形態では、PSGL-1の拮抗剤(例えば、本明細書で提供される拮抗性抗体)は、例えば、PSGL-1を発現する細胞(例えば、T細胞)および/またはVISTAを発現する細胞(例えば、VISTA保有腫瘍細胞、制御性T細胞、骨髄由来免疫抑制細胞または免疫抑制樹状細胞)の活性化および/または細胞シグナル伝達経路を阻害またはそうでなければ低減し、それにより、細胞の生物活性を拮抗剤の不在下での生物活性に比べて阻害することにより作用し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、拮抗性抗PSGL-1抗体である。いくつかの実施形態では、共抑制分子の拮抗剤(例えば、VISTA、CD86、CD80、PDL-1、PDL-2、CTLA-4、PD1、LAG3、BTNL2、B7-H3、B7-H4、ブチロフィリン、CD48、CD244、TIM-3、CD200R、CD200、CD160、BTLA、HVEM、LAIR1、TIM1、ガレクチン9、TIM3、CD48、2B4、CD155、CD112、CD113またはTIGITに対する拮抗性抗体)は、例えば、共抑制分子を発現する細胞(例えば、T細胞または抗原提示細胞)の活性化および/または細胞シグナル伝達経路を阻害またはそうでなければ低減し、それにより、細胞の生物活性を拮抗剤の不在下での生物活性に比べて阻害することにより作用し得る。いくつかの実施形態において、拮抗性分子は、拮抗性抗体、すなわち、PSGL-1、VISTAまたは本明細書に記載される異なる共抑制分子などの抗原の生物活性のうち1以上を阻害するまたは低減する抗体である。特定の拮抗性抗体は、前記抗原の生物活性のうち1以上を実質的にまたは完全に阻害する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「作動剤」または「活性剤」は、標的タンパク質の生物活性のうち1以上を活性化またはそうでなければ増強し得る、共刺激分子などの分子を指す。いくつかの実施形態では、共刺激分子の作動剤(例えば、CD154、TNFRSF25、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD28、CD40、TL1A、GITRL、41BBL、OX40L、CD70、HHLA2、ICOSL、サイトカイン、LIGHT、HVEM、CD30、CD30L、B7-H2、CD80、CD86、CD40L、TIM4、TIM1、SLAM、CD48、CD58、CD155、CD112、DR3、GITR、CD2、およびCD226の作動性抗体)は、例えば、共刺激分子を発現する細胞(例えば、T細胞または抗原提示細胞)の活性化および/または細胞シグナル伝達経路を活性化またはそうでなければ増強し、それにより、細胞の生物活性を作動剤の不在下での生物活性に比べて増強することにより作用し得る。いくつかの実施形態において、作動性分子は、作動性抗体、すなわち、抗原の生物活性のうち1以上を活性化または増強する抗体、例えば、PSGL-1、VISTAまたは本明細書に記載される異なる共抑制分子である。特定の作動性抗体は、前記抗原の生物活性のうち1以上を実質的にまたは完全に活性化する。
【0016】
用語「抗体」および「免疫グロブリン」または「Ig」は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、特に、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEなどの任意のアイソタイプのモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗体フラグメント(前記フラグメントが所望の生物学的機能を保持する限り)を包含する。特定の抗原と反応性のある抗体は、ファージもしくは類似のベクターにおける組換え抗体ライブラリーの選択などの組換え法によるか、または抗原もしくは抗原コード核酸で動物を免疫することにより作製することができる。これらの用語は、特定の分子抗原と結合することができ、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は1本の重鎖(約50~70kDa)と1本の軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分は約100~約130またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分は定常領域を含む免疫グロブリン種のポリペプチドの範囲内にB細胞のポリペプチド産物を含むことを意図する(Borrebaeck (編) (1995) Antibody Engineering, 第2版, Oxford University Press.; Kuby (1997) Immunology, 第3版, W.H. Freeman and Company, New York参照)。いくつかの実施形態では、特定の分子抗原には本明細書で提供される抗体が結合可能であり、標的PSGL-1ポリペプチド、フラグメントまたはエピトープを含む。
【0017】
抗体としてはまた、限定されるものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え生産抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、およびフラグメントが由来する抗体の結合活性の一部または総てを保持する抗体重鎖または軽鎖ポリペプチドの一部を指す上記のいずれかの機能的フラグメントが含まれる。機能的フラグメントの限定されない例としては、一本鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)2フラグメント、F(ab’)2フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fdフラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびミニボディが含まれる。特に、本明細書で提供される抗体としては、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子に免疫学的に活性な部分、例えば、抗原結合ドメインまたはVISTA抗原に結合する抗原結合部位(例えば、抗VISTA抗体の1以上の相補性決定領域(CDR))を含有する分子が含まれる。このような抗体フラグメントは、例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989); Myers (編), Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, New York: VCH Publisher, Inc.; Huston et al., Cell Biophysics, 22:189-224 (1993); Pluckthun and Skerra, Meth. Enzymol., 178:497-515 (1989)およびDay, E.D., Advanced Immunochemistry, 第2版, Wiley-Liss, Inc., New York, NY (1990)の記載を見出すことができる。本明細書で提供される抗体は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、いずれのクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、またはいずれのサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)の免疫グロブリン分子であってもよい。本明細書で提供される抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体は、作動性抗体または拮抗性抗体であり得る。
【0018】
用語「抗PSGL-1抗体」、「PSGL-1に結合する抗体」、「PSGL-1エピトープに結合する抗体」、および類似の用語は本明細書では互換的に使用され、PSGL-1ポリペプチド、例えば、PSGL-1抗原またはエピトープに結合する抗体を指す。このような抗体には、ヒト化抗体が含まれる。PSGL-1抗原に結合する抗体は、関連の抗原と交差反応する可能性がある。いくつかの実施形態では、PSGL-1に結合する抗体は、他の抗原と交差反応しない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PSGL-1抗体は、PSGL-1とP-セレクチン、L-セレクチンまたはE-セレクチンの結合を遮断も阻害もしない。PSGL-1に結合する抗体は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、または当業者に公知の他の技術によって同定することができる。抗体はPSGL-1に結合し、例えば、それがラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験技術を用いて決定した場合にいずれの交差反応性抗原よりも高い親和性でPSGL-1に結合する場合には、例えば、PSGL-1に特異的に結合する抗体である。一般に、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍を超える場合もある。例えば、抗体の特異性に関する考察については、Paul編, 1989, Fundamental Immunology 第2版 Raven Press, New York at pages 332-336を参照。いくつかの実施形態では、対象とする抗原と「結合する」抗体は、その抗体がその抗原を発現する細胞または組織を標的とする診断薬および/または治療薬として有用であるように十分な親和性で抗原と結合し、他のタンパク質とは有意に交差反応しないものである。このような実施形態において、抗体と「非標的」タンパク質の結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析または放射性免疫沈降(RIA)で決定した場合に、抗体とその特定の標的タンパク質の結合の約10%未満である。抗体と標的分子の結合に関して、「特異的結合」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的に結合する」もしくは「に対して特異的」であるという用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、ある分子の結合を、一般的には結合活性を持たない類似構造の分子である対照分子の結合と比較して決定することによって評価することができる。例えば、特異的結合は、その標的と類似の対照分子、例えば、過剰量の非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、標識された標的とプローブの結合が過剰量の非標識標的によって競合的に阻害されれば、特異的結合が示される。「特異的結合」または本明細書で使用されるような特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「と特異的に結合する」もしくは「に特異的」であるという用語は、例えば、標的に対するKDが少なくとも約10-4M、あるいは少なくとも約10-5M、あるいは少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、あるいは少なくとも約10-11M、あるいは少なくとも約10-12Mであるかまたはそれを超える分子によって示され得る。いくつかの実施形態では、「特異的結合」という用語は、分子が他のいずれのポリペプチドまたはポリペプチドエピトープとも実質的に結合せずに、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する場合の結合を指す。いくつかの実施形態では、PSGL-1またはVISTAに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体は、異種のPSGL-1またはVISTA間で保存されているPSGL-1またはVISTAのエピトープに結合する。
【0019】
「抗原」は、抗体が選択的に結合し得る所定の抗原である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテンまたはその他の天然または合成化合物であり得る。いくつかの実施形態では、標的抗原は、例えばPSGL-1ポリペプチドを含むポリペプチドである。
【0020】
用語「抗原結合フラグメント」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」および類似の用語は、抗原と相互作用し、その抗原に対する特異性および親和性を結合剤に付与するアミノ酸残基(例えば、相補性決定領域(CDR))を含んでなる抗体の一部を指す。
【0021】
用語「抗原提示細胞」または「APC」は、T細胞などの特定のリンパ球による認識のために抗原を処理および提示することによる細胞性免疫応答を媒介するヘテロな免疫細胞群を指す。APCとしては、限定されるものではないが、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞およびB細胞が含まれる。
【0022】
用語「結合する」または「結合」は、本明細書で使用する場合、分子間の相互作用による複合体の形成を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、および/またはファンデルワールス相互作用を含む非共有結合的相互作用であり得る。複合体はまた、共有結合または非共有結合、相互作用または力により相互に保持される2つ以上の分子の結合も含み得る。抗体上の単一の抗原結合部位とPSGL-1などの標的分子の単一のエピトープとの間の合計の非共有結合的相互作用の強度が、そのエピトープに対するその抗体または機能的フラグメントの親和性である。一価抗原に対する抗体の会合(k1)/解離(k-1)比(k1/k-1)が、親和性の尺度である会合定数Kである。Kの値は抗体と抗原の異なる複合体では異なり、k1およびk-1の両方に依存する。本明細書で提供される抗体の会合定数Kは、本明細書で提供されるいずれの方法によってもまたは当業者に周知のいずれの方法によっても決定することができる。1つの結合部位における親和性は、抗体と抗原の間の相互作用の真の強度をいつも表しているわけではない。多価PSGL-1など、複数の反復抗原決定基を含む複合抗原が複数の結合部位を含む抗体と接触すると、ある1つの部位での抗体と抗原の相互作用は第2の部位における反応の確率を高める。このような多価抗体および抗原間の多重相互作用の強度はアビディティーと呼ばれる。抗体のアビディティーは、その個々の結合部位の親和性よりも良好な結合能尺度となり得る。例えば、五量体IgM抗体で見られることがあるように、高いアビディティーは低い親和性を補償することができ、五量体IgM抗体は、IgGよりも親和性は低いが、その多価性によるIgMの高いアビディティーはそれが効果的に抗原と結合することを可能とする。
【0023】
用語「生体試料」は、患者または対象などの生物学的供給源から得られた試料を指す。いくつかの実施形態では、生体試料としては、限定されるものではないが、全血、部分的に精製された血液、PBMC、組織生検などが含まれる。好ましくは、生体試料は、腫瘍試料である。いくつかの好ましい実施形態において、生体試料は、組織生検(例えば、免疫浸潤物を含み得る腫瘍生検)により得られる。
【0024】
用語「遮断」またはその文法的同等表現は、抗体に関して使用する場合、抗体が結合する抗原の生物活性を妨げるまたは停止させる抗体を指す。遮断抗体としては、反応を惹起することなく抗原と会合するが、後に別のタンパク質がその抗原と会合または複合体形成することを遮断する抗体が含まれる。抗体の遮断効果は、抗原の生物活性に測定可能な変化をもたらすものであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PSGL-1抗体は、PSGL-1に対するVISTAの結合能力を遮断し、これがVISTAの抑制シグナルの阻害または遮断をもたらし得る。本明細書に記載される特定の抗PSGL-1抗体は、適当な対照(例えば、対照は供試抗体で処理されない細胞である)に比べて約98%~約100%など、VISTA発現細胞上のVISTAの抑制シグナルを阻害または遮断する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PSGL-1抗体は、PSGL-1と細胞外ドメインVISTAの結合を遮断し、かつ/またはVISTA発現細胞とPSGL-1発現細胞の結合を遮断する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PSGL-1抗体は、PSGL-1とP-セレクチン、L-セレクチン、および/またはE-セレクチンなどのVISTA以外のタンパク質との結合を遮断しない。
【0025】
用語「VISTA」または「VISTAポリペプチド」および類似の用語は、当技術分野でB7-H5、血小板受容体Gi24、GI24、Stress Induced Secreted Protein 1、SISP1、およびPP2135としても知られるヒト染色体10オープンリーディングフレーム54(Chromosome 10 Open Reading Frame 54)(VISTA)遺伝子によりコードされているポリペプチド(「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書では互換的に使用される)を指し、例えば、以下のアミノ酸配列:
【化1】
およびそのSNP変異体を含む関連のポリペプチドを含んでなる。VISTAポリペプチドは、アミノ酸配列内に、シグナル配列(残基1~32;Zhang et al., Protein Sci. 13:2819-2824 (2004)参照);免疫グロブリンドメイン-IgV様(残基33~162);および膜貫通領域(残基195~215)を含むいくつかの異なる領域を含んでなることが示されているか、または推定される。成熟VISTAタンパク質は、配列番号1のアミノ酸残基33~311を含む。VISTAタンパク質の細胞外ドメインは、配列番号1のアミノ酸残33~194を含む。関連ポリペプチドとしては、対立遺伝子変異体(例えば、SNP変異体);スプライス変異体;フラグメント;誘導体;置換、欠失、および挿入変異体;融合ポリペプチド;および種間ホモログが含まれ、好ましくは、それらはVISTAの活性を保持し、かつ/または抗VISTA免疫応答を生じるに十分なものである。VISTAは、天然型または変性型で存在し得る。本明細書に記載されるVISTAポリペプチドは、ヒト組織種もしくは別の供給源などの様々な供給源から単離され、または組換えもしくは合成法により作製され得る。「天然配列VISTAポリペプチド」は、天然由来の対応するVISTAポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる。このような天然配列VISTAポリペプチドは天然から単離することもできるし、または組換えもしくは合成手段によって生産することもできる。用語「天然配列VISTAポリペプチド」は、特に、特定のVISTAポリペプチドの天然に存在する末端切断型または分泌型(例えば、細胞外ドメイン配列)、天然に存在する変異体型(例えば、選択的スプライス形態)およびポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体を包含する。
【0026】
VISTAポリペプチドをコードするcDNA核酸配列は、例えば、以下を含んでなる。
【化2】
【0027】
本明細書に記載されるように、VISTAは、免疫応答の負のチェックポイントレギュレーターである(例えば、免疫応答を阻害または抑制する)免疫調節剤である。また本明細書に記載されるように、PSGL-1は、VISTAの受容体である。また本明細書に記載されるように、PSGL-1およびVISTAとPSGL-1および/またはVISTAに結合する薬剤(例えば、抗体)との相互作用を調節する(例えば、妨げる、阻害する、遮断する)ための方法は、例えば、VISTAの抑制シグナルを阻害または遮断するためなどに有用である。VISTAおよびPSGL-1の相互作用の調節は、免疫の活性化(例えば、T細胞の増殖などのT細胞の活性化)の増強を含む免疫応答の増強をもたらし得る。本明細書に記載されるような方法において有用な、VISTAに結合する抗体には、WO2014/197849(PCT/US2014/041388)に開示されているものが含まれる。
【0028】
VISTAポリペプチドに対するオーソログもまた当技術分野で周知である。例えば、VISTAポリペプチドに対するマウスオーソログは、V-region Immunoglobulin-containing Suppressor of T cell Activation(VISTA)(PD-L3、PD-1H、PD-XL、Pro1412およびUNQ730としても知られる)であり、ヒトポリペプチドとおよそ70%の配列同一性を有する。VISTAのオーソログはまた、チンパンジー、ウシ、ラットおよびゼブラフィッシュを含むさらなる生物にも見出すことができる。
【0029】
「VISTA発現細胞」、「VISTA発現を有する細胞」またはその文法的同等表現は、細胞表面に内因性のまたはトランスフェクトされたVISTAを発現する細胞を指す。VISTA発現細胞としては、VISTA保有腫瘍細胞、制御性T細胞(例えば、CD4+ Foxp3+制御性T細胞)、骨髄由来免疫抑制細胞(例えば、CD11b+またはCD11bhigh骨髄由来免疫抑制細胞)および/または免疫抑制樹状細胞(例えば、CD11b+またはCD11bhigh樹状細胞)が含まれる。VISTA発現細胞は、抗VISTA抗体がそれに結合可能であり、かつ/またはPSGL-1もしくはPSGL-1発現細胞はそれに結合可能である十分なレベルのVISTAをその表面に産生する。いくつかの態様において、このような結合の阻害または遮断は、治療効果を有し得る。VISTAを「過剰発現する」細胞は、VISTAを発現することが知られる同じ組織種の細胞に比べて、その細胞表面に有意に高いレベルのVISTAを有するものである。このような過剰発現は、遺伝子の増幅または転写もしくは翻訳の増大によって引き起こされ得る。VISTA過剰発現は、診断アッセイまたは予後アッセイで、細胞表面に存在するVISTAタンパク質レベルの増大を評価することによって(例えば、免疫組織化学アッセイ;FACS分析による)決定され得る。その代わりに、またはそれに加えて、例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション;(FISH;1998年10月公開のW098/45479参照)、サザンブロット法、ノーザンブロット法、またはリアルタイム定量的PCR(RT-PCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって細胞におけるVISTAコード核酸またはmRNAのレベルを測定することもできる。上記のアッセイの他、様々なin vivoアッセイが当業者に利用可能である。例えば、患者の体内の細胞を、場合により検出可能な薬剤で標識されていてもよい抗体に曝し、その抗体と患者における細胞の結合を、例えば、放射能の外部スキャンまたは従前に抗体に曝された患者から採取した生検の分析によって評価することができる。VISTA発現腫瘍細胞としては、限定されるものではないが、急性骨髄性白血病(AML)腫瘍細胞が含まれる。
【0030】
「VISTA介在疾患」、「VISTA介在障害」および「VISTA介在病態」は互換的に使用され、VISTAにより全面的にもしくは部分的に引き起こされた、またはVISTAの結果であるいずれの疾患、障害または病態も指す。このような疾患、障害または病態としては、VISTA発現細胞(例えば、腫瘍細胞、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)、免疫抑制樹状細胞(免疫抑制DC)、および/または制御性T細胞(T-regs))によるものまたは関連するものを含む、VISTAにより引き起こされるもの、またはそうでなければ関連するものが含まれる。いくつかの実施形態では、VISTAは、細胞表面に異常に(例えば、高度に)発現される。いくつかの実施形態では、VISTAは、特定の細胞種に異常に上方調節されている場合がある。他の実施形態では、正常、異常または過剰な細胞シグナル伝達は、VISTAと、VISTAと結合し得る、またはそうでなければ相互作用し得るVISTA受容体(例えば、PSGL-1)の結合により引き起こされる。
【0031】
用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、ある程度の異常な細胞増殖と関連する障害を指す。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍または癌である。「腫瘍」は、本明細書で使用する場合、悪性であれ良性であれ、総ての新生細胞の成長および増殖、ならびに総ての前癌および癌性細胞および組織を指す。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」および「腫瘍」は、本明細書に言及される場合、相互に排他的なものではない。用語「癌」および「癌性」は、一般に制御されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指す、または記載する。癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性腫瘍が含まれる。このような癌のさらに詳しい例としては、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮性扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌(gastric or stomach cancer)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、口腔癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney or renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫、脳癌、ならびに頭頸部癌、および関連の転移が含まれる。いくつかの実施形態では、癌は血液癌であり、これは骨髄などの血液形成組織、または免疫系細胞を起源とする癌を指す。血液癌の例は、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、または急性単球性白血病(AMoL))、リンパ腫(ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)、および骨髄腫(多発性骨髄腫、形質細胞腫、限局骨髄腫または髄外性骨髄腫)である。
【0032】
「共抑制分子」(「負のチェックポイントレギュレーター」または「NCR」としても知られる)は、リガンドまたは対抗受容体が結合した後にT細胞に負のシグナルを送達することにより免疫応答(例えば、T細胞の活性化)を下方調節する分子を指す。共抑制分子の例示的機能は、調和を欠いた免疫の活性化を防ぎ、付帯する損傷を最小とし、かつ/または末梢の自己免疫寛容を維持することである。いくつかの実施形態では、共抑制分子は、抗原提示細胞により発現されるリガンドまたは受容体である。いくつかの実施形態では、共抑制分子は、T細胞により発現されるリガンドまたは受容体である。いくつかの実施形態では、共抑制分子は、抗原提示細胞およびT細胞の両方により発現されるリガンドまたは受容体である。
【0033】
「共刺激分子」は、リガンドまたは対抗受容体が結合した後にT細胞に正のシグナルを送達することにより免疫応答(例えば、T細胞の活性化)を上方調節する分子を指す。T細胞が完全に活性化されるようになるには2つのシグナルが必要とされる:1)抗原特異的シグナルは、抗原提示細胞上のペプチドMHC分子と相互作用するT細胞受容体を介して提供され;2)抗原非特異的な共刺激シグナルは、抗原提示細胞およびT細胞の膜で発現される共刺激分子間の相互作用により提供される。T細胞の共刺激は、T細胞の増殖、分化および生存をもたらす。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、抗原提示細胞により発現されるリガンドまたは受容体である。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、T細胞により発現されるリガンドまたは受容体である。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、抗原提示細胞およびT細胞の両方により発現されるリガンドまたは受容体である。
【0034】
「化学療法薬」は、作用機序に関わらず、癌の治療において有用な化学的または生物学的薬剤(例えば、小分子薬または生物製剤、例えば、抗体または細胞を含む薬剤)である。化学療法薬としては、標的療法および従来の化学療法において使用される化合物が含まれる。化学療法薬の例としては、限定されるものではないが、チオテパおよびサイトキサン(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;エチレンイミンおよびメチルメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロロメラミンを含む);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、AR1NOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(ハイカムチン(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、カンプトサール(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9-アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクロチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンなどのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンγIおよびカリケアマイシンωII(例えば、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994)参照)などの抗生物質;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連の発色タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝産物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナリン作用薬;フォリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフオルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、ユージーン、オレゴン州);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベルカリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(エルジシン(登録商標)、フィルデシン(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、タキソール(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology、プリンストン、N.J.)、アブラキサン(商標)パクリタキセルのクレモフォールフリー、アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、シャンバーグ、IL.)、およびタキソテール(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス);クロラムブシル;ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン(ベルバン(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(オンコビン(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン;ビノレルビン(ナベルビン(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロン酸;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(ゼローダ(登録商標));上記のいずれかの薬学上許容可能な塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つ以上の組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の略号CHOP、ならびに5-FUおよびロイコボビンと組み合わせたオキサリプラチン(エロキサチン(商標))を用いる投与計画の略号FOLFOXが含まれる。さらなる化学療法薬としては、メイタンシノイド(例えば、DM1とDM4)およびオーリスタチン(例えば、MMAEとMMAF)などの抗体薬物複合体として有用な細胞傷害性薬剤が含まれる。
【0035】
化学療法薬の定義にはまた、(i)腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害する働きをする抗ホルモン薬、例えば、タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標);クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、およびフェアストン(登録商標)(クエン酸トレミフェン)を含む抗エストロゲン作用薬および選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM);(ii)副腎におけるエストロゲン生産を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、アロマシン(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RI VISor(登録商標)(ボロゾール)、フェマラ(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、およびアリミデックス(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)など;(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン作用薬;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)ME阻害剤(WO2007/044515)などのタンパク質キナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路の遺伝子、例えば、PKC-α、RafおよびH-Rasの発現を阻害するもの、例えば、オブリメルセン(ゲナセンス(登録商標)、Genta Inc.);(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、アンジオザイム(登録商標))およびHER2発現阻害剤などのリボザイム;(viii)遺伝子療法ワクチン、例えば、アロベクチン(登録商標)、ロイベクチン(登録商標)、およびVAX1D(登録商標)などのワクチン;プロロイキン(登録商標)rIL-2;ルルトテカン(登録商標)などのトポイソメラーゼ1阻害剤;アバレリクス(登録商標)rmRH;(ix)ベバシズマブ(アバスチン(登録商標、Genentech)などの抗血管新生薬、(x)二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE)抗体およびキメラ抗原受容体(CAR)T細胞などの免疫調整薬;ならびに上記のいずれかの薬学上許容可能な塩、酸および誘導体も含まれる。
【0036】
「CDR」は、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VH β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2またはH3)のうちの1つ、または抗体VL β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)のうちの1つを指す。よって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在した可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知であり、例えばKabatにより、抗体可変(V)ドメイン内の超可変性の最も高い領域として定義されている(Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977); Kabat, Adv. Prot. Chem. 32:1-75 (1978))。CDR領域配列はまた、Chothiaによっても、保存されているβ-シートフレームワークの部分ではなく、従って異なる立体配座を採り得る残基と構造的に定義されている(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。どちらの術語も当技術分野でよく認識されている。CDR領域配列はまた、AbM、ContactおよびIMGTによっても定義されている。カノニカル抗体可変ドメイン内のCDRの位置は多数の構造の比較によって決定されたものである(Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997); Morea et al., Methods 20:267-279 (2000))。超可変領域内の残基の数は異なる抗体では変動するので、カノニカルな位置に対して付加的な残基は、カノニカルな可変ドメインナンバリングスキームの残基番号の横にa、b、cなどを付けて慣例的に符番される(Al-Lazikani et al., 前掲(1997))。このような術語も同様に当業者に周知である。
【0037】
用語「超可変領域」、「HVR」、または「HV」は、本明細書で使用する場合、配列が超可変であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(Ll、L2、L3)の6つの超可変領域を含んでなる。いくつかの超可変領域の描写が用いられ、本明細書に包含される。Kabat CDRは配列の可変性に基づき、最もよく使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chochiaは、その代わりに構造ループの位置に言及する(Chothia and Lesk J Mol. Bioi. 196:901-917 (1987))。Chochia CDR-HIループの末端を、Kabatナンバリング法を用いて符番すると、ループの長さによってH32とH34の間で異なる(これはKabatナンバリングスキームがH35AおよびH35Bに挿入をおくからであり、35Aも35Bも存在しなければループは32で終わり、35Aだけが存在すればループは33で終わり、35Aおよび35Bの両方が存在すればループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChochia構造ループの間の妥協案を表し、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウエアによって用いられている。「Contact」超可変領域は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づく。これらの超可変領域のそれぞれからの残基を以下に示す。
【0038】
最近、ImMunoGeneTics(IMGT) Information System(登録商標)というユニバーサルナンバリングシステムが開発され、広く採用されている (Lafranc et al., Dev. Comp. mmunol. 7(1):55-77 (2003))。IMGTは、ヒトおよびその他の脊椎動物の免疫グロブリン(IG)、T細胞受容体(TR)および主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)に特化した統合情報システムである。ここでは、CDRは、アミノ酸配列と軽鎖または重鎖内の位置の両方に関して言及される。免疫グロブリン可変ドメインの構造内のCDRの「位置」は種間で保存され、ループと呼ばれる構造で存在するので、構造的特徴に従って可変ドメイン配列をアラインするナンバリングシステムを用いることで、CDRおよびフレームワーク残基が容易に特定される。この情報は、ある種の免疫グロブリン由来のCDR残基を一般にヒト抗体由来のアクセプターフレームワークにグラフトおよび置換する場合に使用することができる。KabatナンバリングとIMGT独自ナンバリングシステムの対応もまた当業者に周知である(例えば、Lefranc et al., 前掲)。本明細書に示される例としてのシステムはKabatとChochiaを組み合わせたものである。
【0039】
【0040】
超可変領域は、次のような「延長超可変領域」を含んでなってもよい:VLでは、24~36または24~34(Ll)、46~56または50~56(L2)および89~97または89~96(L3)、VHでは、26~35または26~35A(H1)、50~65または49~65(H2)および93~102、94~102、または95~102(H3)。これらの定義のそれぞれに関して、可変ドメイン残基は、Kabat et al.,前掲によれば25と数えられる。本明細書で使用する場合、用語「HVR」および「CDR」は互換的に使用される。
【0041】
用語「定常領域」または「定常ドメイン」は、抗体と抗原の結合には直接関与しないがFc受容体との相互作用などの様々なエフェクター機能を示す、軽鎖および重鎖のカルボキシ末端を指す。この用語は、免疫グロブリンの他の部分、すなわち、抗原結合部位を含む可変ドメインに比べて保存性の高いアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメインと軽鎖のCLドメインを含む。
【0042】
ポリペプチドに関して、用語「誘導体」は、本明細書で使用する場合、PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドのフラグメント、またはPSGL-1ポリペプチドに結合する抗体の、アミノ酸残基の置換、欠失または付加の導入によって変更されたアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを指す。用語「誘導体」はまた、本明細書で使用する場合、例えば、ポリペプチドへのいずれかのタイプの分子の共有結合によって化学的に修飾されたPSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドのフラグメント、またはPSGL-1ポリペプチドに結合する抗体も指す。例えば、限定されるものではないが、PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドのフラグメント、またはPSGL-1抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって化学的に修飾されてよい。誘導体は、付加される分子のタイプまたは場所のいずれかにおいて天然のまたは出発するペプチドまたはポリペプチドとは異なる様式で修飾される。誘導体はさらに、ペプチドまたはポリペプチドに天然に存在する1以上の化学基の欠失も含む。PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドのフラグメント、またはPSGL-1抗体の誘導体は、限定されるものではないが、特異的化学切断、アセチル化、構成、ツニカマイシンの代謝合成などを含む当業者に公知の技術を用いた化学修飾により化学的に修飾され得る。さらに、PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドのフラグメント、またはPSGL-1抗体の誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含有してもよい。ポリペプチド誘導体は、本明細書に記載されるPSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドのフラグメント、またはPSGL-1抗体と類似または同一の機能を有する。
【0043】
用語「検出可能なプローブ」は、本明細書で使用する場合、検出可能なシグナルを提供する組成物を指す。この用語には、限定されるものではないが、その活性を介して検出可能なシグナルを提供する任意の蛍光団、発色団、放射性標識、酵素、抗体または抗体フラグメントなどが含まれる。
【0044】
用語「診断薬」は、対象に投与される、疾患の診断を補助する物質を指す。このような物質は、疾患を引き起こすプロセスの局在を解明する、正確に指摘する、および/または定義するために使用することができる。いくつかの実施形態では、診断薬は、本明細書で提供される抗体にコンジュゲートされた、対象に投与するかまたは対象からの試料に接触させた際に、癌、腫瘍形成、または他のいずれかのVISTA介在疾患、障害もしくは病態の診断を補助する物質を含む。
【0045】
用語「検出可能な薬剤」は、試料または対象において、本明細書で提供される抗体などの所望の分子の存在を確認するために使用できる物質を指す。検出可能な薬剤は、可視化され得る物質またはそうでなければ判定および/もしくは測定(例えば、定量による)され得る物質であり得る。
【0046】
用語「検出する」は、本明細書で使用する場合、定量的検出または定性的検出を包含する。
【0047】
用語「コードする」またはその文法的同等表現は、それが核酸分子に関して使用する場合、その天然状態にあるまたは当業者に周知の方法により操作された場合に、転写されてmRNAを生産することができ、次に翻訳されてポリペプチドおよび/またはそのフラグメントとなる核酸分子を指す。アンチセンス鎖はこのような核酸分子の相補物であり、コード配列はそれから導き出すことができる。
【0048】
用語「エピトープ」は、本明細書で使用する場合、PSGL-1ポリペプチドまたはPSGL-1ポリペプチドフラグメントなどの、抗体が結合する抗原の領域を指す。好ましくは、エピトープは、本明細書で使用する場合、PSGL-1ポリペプチドまたはPSGL-1ポリペプチドフラグメントなどの、抗体の1以上の抗原結合領域に結合し得る、および哺乳動物(例えばヒト)などの動物において抗原活性または免疫原性活性を有する、すなわち、免疫応答を惹起し得る、抗原表面に局在する領域である。免疫原性活性を有するエピトープは、動物において抗体応答を惹起するポリペプチドの部分である。抗原活性を有するエピトープは、当技術分野で周知のいずれかの方法、例えば、イムノアッセイにより決定した場合に、抗体が結合するポリペプチドの部分である。抗原性エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの化学的に活性な表面分子群からなり、特定の三次元構造的特徴ならびに特定の電荷特徴を有する。エピトープは、連続する残基によって形成されてもまたは抗原性タンパク質の折り畳みによって近接された不連続残基によって形成されてもよい。連続するアミノ酸によって形成されるエピトープは一般に変性溶媒に曝されても保持されるが、不連続アミノ酸によって形成されるエピトープは一般に前記の曝露下では失われる。いくつかの実施形態では、PSGL-1エピトープは、三次元表面特徴のPSGL-1ポリペプチドである。他の実施形態では、PSGL-1エピトープは、線形特徴のPSGL-1ポリペプチドである。一般に、抗原はいくつかのまたは多数の異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応する。
【0049】
用語「賦形剤」は、本明細書で使用する場合、希釈剤、ビヒクル、保存剤、結合剤、または分解防止剤として慣用される不活性物質を指し、限定されるものではないが、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、グリシン、ヒスチジンなど)、脂肪酸およびリン脂質(例えば、スルホン酸アルキル、カプリル酸塩など)、界面活性剤(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン性界面活性剤など)、糖類(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)およびポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)が含まれる。引用することによりその全内容が本明細書の一部とされるRemington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, PAも参照。
【0050】
ペプチドまたはポリペプチドに関して、用語「“フラグメント」は、本明細書で使用する場合、全長より少ないアミノ酸配列を含んでなるペプチドまたはポリペプチドを指す。このようなフラグメントは、例えば、アミノ末端の末端切断、カルボキシ末端の末端切断、および/またはアミノ酸配列からの残基の内部欠失から生じ得る。フラグメントは、例えば、選択的RNAスプライシングまたはin vivoプロテアーゼ活性から生じ得る。いくつかの実施形態では、PSGL-1またはVISTAフラグメントとしては、PSGL-1もしくはVISTAポリペプチドまたはPSGL-1もしくはVISTAポリペプチドに結合する抗体のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸残基、少なくとも10個の連続するアミノ酸残基、少なくとも15個の連続するアミノ酸残基、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基、少なくとも25個の連続するアミノ酸残基、少なくとも40個の連続するアミノ酸残基、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基、少なくとも60個の連続するアミノ酸残基、少なくとも70個の連続するアミノ酸残基、少なくとも80個の連続するアミノ酸残基、少なくとも90個の連続するアミノ酸残基、少なくとも100個の連続するアミノ酸残基、少なくとも125個の連続するアミノ酸残基、少なくとも150個の連続するアミノ酸残基、少なくとも175個の連続するアミノ酸残基、少なくとも200個の連続するアミノ酸残基、または少なくとも250個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、PSGL-1もしくはVISTAポリペプチドまたはPSGL-1もしくはVISTA抗原に結合する抗体のフラグメントは、そのポリペプチドまたは抗体の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つの機能を保持する。
【0051】
用語「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。FR残基は、CDRに隣接する可変ドメイン残基である。FR残基は、例えば、キメラ、ヒト化、ヒト、ドメイン抗体、ダイアボディ、線状抗体、および二重特異性抗体で存在する。
【0052】
抗体の「機能的フラグメント」は、無傷抗体に寄与する生物学的機能のいくつかまたは総てでなくとも、少なくとも標的抗原に対する特異的結合を含んでなる少なくとも1つの機能を示す。
【0053】
用語「融合タンパク質」は、本明細書で使用する場合、抗体のアミノ酸配列と、異種のポリペプチドまたはタンパク質(例えば、通常その抗体の一部ではないポリペプチドまたはタンパク質(例えば、非抗PSGL-1抗体または非抗VISTA抗体))のアミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドを指す。用語「融合」は、PSGL-1、VISTA、抗PSGL-1抗体、または抗VISTA抗体に関して使用する場合、ペプチドまたはポリペプチド、またはそのフラグメント、変異体および/もしくは誘導体と異種ペプチドまたはポリペプチドとの連結を指す。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、PSGL-1、VISTA、抗PSGL-1抗体、または抗VISTA抗体の生物活性を保持する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体VHドメイン、VLドメイン、VH CDR(1つ、2つまたは3つのVH CDR)、および/またはVL CDR(1つ、2つまたは3つのVL CDR)を含んでなり、ここで、融合タンパク質は、PSGL-1またはVISTAエピトープに結合する。
【0054】
用語「重鎖」は、抗体に関して使用する場合、アミノ末端部分が約120~130またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいてアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる5つの異なるタイプのうちの1つであり得る。異なる重鎖は大きさが異なり、α、δおよびγはおよそ450個のアミノ酸を含み、μおよびεはおよそ550個のアミノ酸を含む。軽鎖と組み合わさると、これらの異なるタイプの重鎖は、抗体、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM(IgGの4つのサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)という5つの周知のクラスの抗体を生じる。重鎖はヒト重鎖であり得る。
【0055】
用語「ヒンジ領域」は、本明細書では、IgGおよびIgA免疫グロブリンクラスの重鎖の中央部で、これらの二鎖をジスルフィド結合により連結するフレキシブルなアミノ酸ストレッチを指す。ヒンジ領域は一般に、ヒトIgG1のGlu216~Pro230のストレッチとして定義される(Burton, Mol Immunol, 22: 161-206, 1985)。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖内S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に置くことによってIgG1配列とアラインすることができる。ヒトIgG Fc部分の「CH2ドメイン」(「Cγ2」ドメインとも呼ばれる)は通常、約アミノ酸231から約アミノ酸340まで伸びる。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合しないという点で独特である。それよりもむしろ、無傷の天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に2つのN-結合分岐型炭水化物鎖が挿入されている。この炭水化物はドメインとドメインの対合の代わりとなり、CH2ドメインの安定化を補助している可能性があると推測されている(Burton, MoI Immunol, 22: 161-206, 1985)。「CH3ドメイン」は、Fc部分のCH2ドメインのC末端に残基のストレッチ(すなわち、IgGのほぼアミノ酸残基341からほぼアミノ酸残基447)を含んでなる。
【0056】
用語「宿主」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物を指す。
【0057】
用語「宿主細胞」は、本明細書で使用する場合、核酸分子でトランスフェクトされた特定の対象細胞およびそのような細胞の後代もしくは潜在的後代を指す。このような細胞の後代は、後世に生じ得る突然変異もしくは環境の影響または宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組込みのために、核酸分子でトランスフェクトされた親細胞とは同一でない場合がある。
【0058】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、天然CDR残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の対応するCDR由来の残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含むキメラ抗体である。いくつかの場合、ヒト免疫グロブリンの1以上のFR領域残基が、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含んでなり得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに精密化するために行われる。ヒト化抗体重鎖または軽鎖は、少なくとも1つまたは複数の可変ドメインのうち実質的に総てを含んでなり得、ここで、CDRの総てまたは実質的に総ては非ヒト免疫グロブリンのCDRに相当し、FRの総てまたは実質的に総てはヒト免疫グロブリン配列のFRである。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般には、ヒト免疫グロブリンのものを含んでなる。さらに詳しくは、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992); Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285-4289 (1992);ならびに米国特許第6,800,738号(2004年10月5日発行)、同第6,719,971号(2005年9月27日発行)、同第6,639,055号(2003年10月28日発行)、同第6,407,213号(2002年6月18日発行)、および同第6,054,297号(2000年4月25日発行)を参照。
【0059】
「有効量」は、有益なまたは所望の結果を果たすのに十分な量である。有効量は1回以上投与、適用または用量で投与することができる。このような送達は、個々の投与単位が使用される期間、薬剤のバイオアベイラビリティ、投与経路などを含むいくつかの変数によって決まる。いくつかの実施形態では、有効量はまた、指定された結果(例えば、細胞のPSGL-1またはVISTAの生物活性の阻害、例えば、T細胞の活性化の調節)を達成するための、本明細書で提供される抗体の量も指す。いくつかの実施形態では、この用語は、所与の疾患、障害もしくは病態および/またはそれに関連する症状の重症度および/または持続期間を軽減および/または改善するために十分な、療法(例えば、本明細書で提供される抗体)の量を指す。この用語はまた、所与の疾患、障害もしくは病態の発達もしくは進行の軽減もしくは改善、所与の疾患、障害もしくは病態の再発、発症もしくは徴候の軽減もしくは改善、および/または別の療法(例えば、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体以外の療法)の予防効果もしくは治療効果の改善もしくは増強のために必要な量も包含する。いくつかの実施形態では、抗体の有効量は、約0.1mg/kg(対象の体重kg当たりの抗体mg)~約100mg/kgである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体の有効量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kgまたは約100mg/kg(またはその中の範囲)である。
【0060】
用語「阻害する」またはその文法的同等表現は、抗体に関して使用する場合、抗体が結合する抗原の生物活性を抑制、制限または低減する抗体を指す。抗体の阻害効果は、抗原の生物活性に測定可能な変化をもたらすものであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PSGL-1抗体は、PSGL-1に対するVISTAの結合能を阻害し、これはVISTAの共抑制活性の阻害をもたらし得る。本明細書に記載される特定の抗PSGL-1抗体は、VISTA発現細胞においてVISTAの抑制シグナルを、適当な対照(例えば、対照は供試抗体で処理されない細胞である)と比較して、5%を超えて、例えば、約5%~約50%、または50%を超えて(例えば、約50%~約98%)阻害するまたは遮断する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PSGL-1抗体は、細胞外ドメインVISTAに対するPSGL-1の結合を阻害し、および/またはPSGL-1発現細胞に対するVISTA発現細胞の結合を阻害する。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PSGL-1抗体は、VISTA以外のタンパク質、例えば、P-セレクチン、L-セレクチン、および/またはE-セレクチンに対するPSGL-1の結合を阻害しない。
【0061】
用語「免疫浸潤物」または「腫瘍免疫細胞」は、限定されるものではないが、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)、樹状細胞、肥満細胞、およびマクロファージを含む、腫瘍の微小環境へ浸潤する細胞を指す。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「組合せ」は、他の療法の投与に関して、2つ以上の療法(例えば、抗PSGL-1抗体および抗VISTA抗体)の使用を指す。「組合せ」という用語の使用は、療法が対象に投与される順序または時間を(例えば、ある療法を別の療法の前、同時、後に)限定しない。VISTA介在疾患、障害または病態を有していた、有している、またはそれに感受性のある対象に対し、第1の療法は、第2の療法の投与の前(例えば、1分、45分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間)、同時、または後(例えば、1分、45分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間)に投与することができる。いずれの付加的療法も、他の付加的療法(例えば、抗PSGL-1抗体および抗VISTA抗体)といずれの順序または時間で投与可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、1以上の療法(例えば、VISTA介在疾患、障害または病態を予防、治療、管理および/または改善するために目下投与されている抗体ではない療法)と組み合わせて投与することができる。抗体と組み合わせて投与することができる療法の限定されない例としては、共抑制分子に対する拮抗剤、共刺激分子に対する作動剤、化学療法薬、放射線、鎮痛薬、麻酔薬、抗生物質、もしくは免疫調節薬または米国薬局方および/もしくは米国薬品便覧(Physician’s Desk Reference)に収載されている他のいずれの薬剤も含まれる。
【0063】
「単離された」抗体は、細胞もしくは組織供給源由来の細胞材料もしくはその他の夾雑タンパク質および/または抗体が由来する他の夾雑成分を実質的に含まないか、あるいは化学合成された際には、化学前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない。「細胞材料を実質的に含まない」という用語には、抗体が単離されたまたは組換え生産された細胞の細胞成分からその抗体が分離されている抗体調製物が含まれる。よって、細胞材料を実質的に含まない抗体には、異種タンパク質(本明細書では「夾雑タンパク質」ともよばれる)が約30%、20%、10%、または5%(乾重による)未満の抗体調製物が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体が組換え生産される場合、それは培養培地を実質的に含まず、例えば、培養培地は、タンパク質調製物の容量の約20%、10%、または5%未満である。いくつかの実施形態では、抗体が化学合成により生産される場合、それは化学前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まず、例えば、それはタンパク質の合成に関与する化学前駆体またはその他の化学物質から分離されている。従って、このような抗体調製物は、対象抗体以外の化学前駆体または化合物が約30%、20%、10%、5%(乾重による)未満である。夾雑成分としてはまた、限定されるものではないが、抗体の治療的使用に干渉すると考えられる材料も含む可能性があり、酵素、ホルモン、およびその他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)ローリー法(Lowry et al. J. Bio. Chem. 193: 265-275, 1951)で決定した場合に抗体の95重量%を超える、例えば99重量%まで、(2)スピニングカップシークエネーターの使用により少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いた還元または非還元条件下でのSDS-PAGEにより均一となるまで、精製される。単離された抗体には、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内のin situ抗体も含まれる。しかしながら通常には、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は単離される。
【0064】
「単離された」核酸分子は、核酸分子の天然源に存在する他の核酸分子から分離されているものである。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、その他の細胞材料もしくは組換え技術により生産される場合には培養培地を実質的に含まないか、または化学合成される場合には化学前駆体もしくはその他の化学物質を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体をコードする核酸分子は単離または精製される。
【0065】
用語「軽鎖」は、抗体に関して使用する場合、アミノ末端部分が約100~約110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を指す。軽鎖のおよその長さは211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)、ラムダ(λ)と呼ばれる2つの異なるタイプが存在する。軽鎖のアミノ酸配列は当技術分野では周知である。軽鎖はヒト軽鎖であり得る。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「管理する」、「管理すること」および「管理」は、疾患の治癒をもたらさないが、対象が療法(例えば、予防薬または治療薬)から引き出す有益な効果を指す。いくつかの実施形態では、VISTA介在疾患、障害または病態の進行または増悪を防ぐようにその疾患、障害または病態(その1以上の症状を含む)を「管理する」ために対象に1以上の療法(例えば、本明細書で提供される抗体などの予防薬または治療薬)を投与する。
【0067】
用語「モノクローナル抗体」は、均質または実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、この集団を形成する抗体は、微量に存在し得る天然に存在する潜在的突然変異以外は本質的に同一である。言い換えれば、モノクローナル抗体は、単細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた真核生物宿主細胞、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた原核生物宿主細胞など)の増殖から生じる均質な抗体であり、一般に、1つ、しかもただ1つのクラスおよびサブクラスの重鎖とただ1つのタイプの軽鎖を特徴とする。これらの抗体は特異性が高く、単一の抗原に向けられる。さらに、一般に様々な決定基またはエピトープに向けられた様々な抗体を含むポリクローナル抗体の調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原の単一のエピトープに向けられる。いくつかの実施形態では、「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用する場合、単一のハイブリドーマまたは他の細胞によって生産された抗体であり、この抗体は、例えばELISAまたは当技術分野で公知のその他の抗原結合もしくは競合結合アッセイにより決定した場合にVISTAエピトープだけに結合する。用語「モノクローナル」は、抗体を作製するためのいずれの特定の方法にも限定されない。例えば、本明細書で提供されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.; Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法によって作製可能であるか、または複数の技術を用いてファージライブラリーから単離可能である。クローン細胞株およびそれにより発現されるモノクローナル抗体の作製のための他の方法は当技術分野で周知である(例えば、Short Protocols in Molecular Biology, (2002) 第5版, Ausubel et al.編, John Wiley and Sons, New Yorkの第11章参照)。その他のモノクローナル抗体を生産する他の例示的方法は本明細書の実施例に示される。
【0068】
用語「天然」は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などの生物材料に関して使用する場合、自然界に見られ、ヒトによって操作されていないものを指す。
【0069】
用語「薬学上許容可能」は、本明細書で使用する場合、連邦政府または州政府の規制当局により承認されているか、または動物、より特にヒトにおける使用に関して米国薬局方、欧州薬局方またはその他の一般に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。
【0070】
「ポリクローナル抗体」は、本明細書で使用する場合、多くのエピトープを有するタンパク質に対する免疫原性応答において生成される抗体集団を指し、従って、タンパク質内の同じエピトープおよび異なるエピトープに対する様々な異なる抗体を含む。ポリクローナル抗体を生産するための方法は当技術分野で公知である(例えば、Short Protocols in Molecular Biology, (2002) 第5版, Ausubel et al.編, John Wiley and Sons, New Yorkの第11章参照)。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」およびその他の類似の用語は互換的に使用され、DNA、RNA、mRNAなどを含む。
【0072】
本明細書で使用する場合、用語「予防する」、「予防すること」および「予防」は、本明細書で提供される療法または療法の組合せ(例えば、本明細書で提供される抗体などの予防薬または治療薬の組合せ)の投与から得られるVISTA介在疾患、障害もしくは病態および/またはそれに関連する症状の発症、再発、徴候または拡散の全面的または部分的阻害を指す。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「予防薬」は、対象におけるVISTA介在疾患、障害もしくは病態、および/またはそれに関連する症状の発症、再発、徴候または拡散を全面的または部分的に阻害することができるいずれの薬剤も指す。いくつかの実施形態では、用語「予防薬」は、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体を指す。いくつかの他の実施形態において、用語「予防薬」は、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体以外の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、予防薬は、VISTA介在疾患、障害もしくは病態、および/またはそれに関連する症状を予防する、あるいはVISTA介在疾患、障害もしくは病態、および/またはそれに関連する症状の発症、発生、進行および/または重症度を抑制するために有用であることが知られている、または使用されていた、または目下使用されている薬剤である。いくつかの実施形態では、予防薬は、ヒト化抗PSGL-1モノクローナル抗体などのヒト化抗PSGL-1抗体である。
【0074】
用語「P-セレクチン糖タンパク質リガンド1(P-selectin glycoprotein ligand 1)」(PSGL-1、PSGL1、セレクチンPリガンド、SELPLG、CLA、およびCD162としても知られる)は、例えば、アミノ酸配列:
【化3】
を含んでなるSELPLG遺伝子によりコードされるポリペプチド(「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書では互換的に使用される)およびそのSNP変異体を含む関連のポリペプチドを指す。PSLG-1は、3つ総てのセレクチン(P-セレクチン、E-セレクチン、およびL-セレクチン)に結合するが、P-セレクチンと最も高い親和性で結合することが知られるヒトムチン型糖タンパク質リガンドである(McEver et al., J. Clin. Invest., 100(3):485-492 (1997)およびCarlow et al., Immunological Reviews, 230:75-96 (2009))。PSGL-1は、2つの120kDサブユニットを有するジスルフィド結合したホモ二量体であり、単球、リンパ球、顆粒球の表面、および一部のCD34
+幹細胞で発現される。従って、このタンパク質は、白血球を活性化された血小板またはセレクチンを発現する内皮に係留することによって炎症中の白血球輸送に役割を果たすことが知られている。PSGL-1は一般に、その高い親和性の結合活性のために、チロシンの硫酸化およびそのO-結合グリカンへのシアリルルイスx四糖(sLex)の付加という2つの翻訳後修飾を有する。SELPLG遺伝子の異常発現およびこの遺伝子の多形は、自然免疫応答および適応免疫応答の欠陥と関連している。
【0075】
当業者には自明であるように、エピトープはより大きな抗原の一部であり、例えばそれはより大きなポリペプチドフラグメントの一部であり、さらにそれは例えばより大きなポリペプチドの一部であるので、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体は、PSGL-1ポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、抗原、および/またはエピトープに結合し得る。PSGL-1は、天然型または変性型で存在し得る。本明細書に記載されるPSGL-1ポリペプチドは、ヒト組織タイプもしくは別の供給源などの様々な供給源から単離してもよいし、または組換えもしくは合成法により作製してもよい。「天然配列PSGL-1ポリペプチド」は、天然由来の対応するPSGL-1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる。このような天然配列PSGL-1ポリペプチドは、天然から単離することもできるし、または組換えもしくは合成手段によって作製することもできる。用語「天然配列PSGL-1ポリペプチド」は、特に、特異的PSGL-1ポリペプチドの天然に存在する末端切断型または分泌型(例えば、細胞外ドメイン配列)、天然に存在する変異型(例えば、選択的スプライス型)およびポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体を包含する。
【0076】
PSGL-1ポリペプチドをコードするcDNA核酸配列は、例えば、以下の配列を含んでなる。
【化4】
【化5】
【0077】
ヒトPSGL-1ポリペプチドのオーソログもまた当技術分野で周知である。例えば、PSGL-1のオーソログは、マウス(Mus musculus)、ラット(Rattus norvegicus)、イヌ(Canis lupus familiaris)、ウシ(Bos Taurus)、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、ウマ(Equus caballus)、チンパンジー(Pan troglodytes)などの生物に見出すことができる。
【0078】
「PSGL-1介在疾患」、「PSGL-1介在障害」および「PSGL-1介在病態」は互換的に使用され、PSGL-1により全面的にもしくは部分的に引き起こされるか、またはPSGL-1の結果であるいずれの疾患、障害または病態も指す。このような疾患、障害または病態には、PSGL-1発現細胞(例えば、腫瘍細胞、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)、免疫抑制樹状細胞(免疫抑制DC)、および/または制御性T細胞(T-regs))により引き起こされるまたは関連するものを含め、PSGL-1により引き起こされるまたはそうでなければ関連するものが含まれる。いくつかの実施形態では、PSGL-1は、細胞の表面に異常に(例えば、高度に)発現される。いくつかの実施形態では、PSGL-1は、特定の細胞種上に異常に上方調節される場合がある。他の実施形態において、正常な、異常なまたは過剰な細胞シグナル伝達が、PSGL-1と結合可能な、またはそうでなければ相互作用可能なPSGL-1リガンド(例えば、VISTA)へのPSGL-1の結合により引き起こされる。好ましい実施形態では、PSGL-1介在疾患は、他のリガンド(例えば、セレクチン)へではなく特定のPSGL-1リガンド(例えば、VISTA)へのPSGL-1の結合により引き起こされる。
【0079】
用語「放射線」は、治療に関して使用する場合、標的細胞(例えば、癌細胞)を死滅させるために強いエネルギーのビームを使用するタイプの処置を指す。放射線療法には、外部ビームによって投与されるX線、陽子または他の形態のエネルギーの使用が含まれる。放射線療法はまた患者の体内に置かれる放射線療法(例えば、近接照射療法)も含み、それにより、放射性物質の小型の容器が腫瘍中またはその近傍に直接移植される。
【0080】
用語「相対発現レベル」は、所与の試料におけるタンパク質の発現レベルを、同じ試料中の別の参照タンパク質および/または別の参照試料と比較して定量したものを指す。本明細書に記載される方法に関して、PSGL-1の発現レベルは、標準曲線に基づくなど絶対数値で表すこともできるし、または試料中でアッセイされる1以上の他のタンパク質(例えば、VISTA、CD11b、CD33、CD4、またはCD8)に対する相対発現レベルで表すこともできる。
【0081】
用語「組換え抗体」は、組換え手段により調製、発現、作出または単離された抗体を指す。組換え抗体は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現させた抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックおよび/またはトランスクロモゾーマルである動物(例えば、マウスまたはウシ)から単離された抗体(例えば、Taylor, L. D. et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295参照)、または他のDNA配列への免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む他のいずれかの手段によって調製、発現、作出もしくは単離された抗体であり得る。このような組換え抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有し得る(Kabat, E. A. et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)。いくつかの実施形態では、しかしながら、このような組換え抗体は、in vitro突然変異誘発(またはヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合には、in vivo体細胞突然変異誘発)を受け、従って、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列に由来しそれに関連しているもののin vivoのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内には本来存在し得ない配列である。
【0082】
本明細書で使用する場合、用語「副作用」は、療法(例えば、予防薬または治療薬)の望まれない作用および有害作用を指す。望まれない作用は、必ずしも有害ではない。療法(例えば、予防薬または治療薬)からの有害な作用は、害をもたらすものまたは不快なものまたはリスクのあるものであり得る。副作用の例としては、下痢、咳、胃腸炎、喘鳴音、悪心、嘔吐、食欲不振症、腹痛、発熱、疼痛、体重減少、脱水、脱毛、呼吸困難、不眠、目眩、粘膜炎、神経および筋肉作用、倦怠感、口渇、および食欲不振、投与部位の発疹または腫脹、発熱、悪寒および倦怠感などの風邪様症状、消化管障害およびアレルギー反応が挙げられる。患者が呈する望まれないさらなる作用は数多くあり、当技術分野で公知である。多くが米国薬品便覧(Physician’s Desk Reference)(第67版、2013年)に記載されている。
【0083】
本明細書で使用する場合、用語「対象」および「患者」は互換的に使用される。本明細書で使用する場合、いくつかの実施形態では、対象は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、VISTA介在疾患、障害または病態および/またはそれに関連する症状を有する哺乳動物(例えば、ヒト)である。別の実施形態では、対象は、VISTA介在疾患、障害または病態および/またはそれに関連する症状を発症するリスクを有する哺乳動物(例えば、ヒト)である。
【0084】
本明細書で使用する場合、「実質的に総て」は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%を指す。
【0085】
本明細書で使用する場合、用語「治療薬」は、VISTA介在疾患、障害、もしくは病態および/またはそれに関連する症状の1以上の症状の治療、予防または緩和を含め、疾患、障害または病態の治療、予防または緩和において使用可能ないずれの薬剤も指す。いくつかの実施形態では、治療薬は、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体を指す。いくつかの実施形態では、治療薬は、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体以外の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、治療薬は、VISTA介在疾患、障害、病態、および/またはそれに関連する症状の1以上の症状の治療、予防または緩和に有用であることが知られる、またはそのために使用されていた、または目下使用されている薬剤である。
【0086】
療法(例えば、治療薬の使用)の組合せは、いずれか2つ以上の単独療法の相加作用よりも有効であり得る。例えば、治療薬の組合せの相乗作用は、VISTA介在疾患、障害もしくは病態および/またはそれに関連する症状を有する対象に対して、薬剤の1または複数におけるより低用量の使用および/またはより低頻度の薬剤投与を可能とする。より低用量の治療法を使用することおよび/または療法をより低頻度で投与することができれば、VISTA介在疾患、障害もしくは病態および/またはそれに関連する症状の1以上の症状の予防、治療または緩和において療法の有効性を低下することなく、対象へのそれらの療法の投与に関連する毒性が低減される。さらに、相乗作用は、VISTA介在疾患、障害もしくは病態および/またはそれに関連する症状の1以上の症状の予防、治療または緩和において療法の有効性の向上をもたらし得る。最後に、療法(例えば、治療薬)の組合せの相乗作用は、いずれかの単独療法の使用に関連する有害なまたは望まれない副作用を回避または軽減し得る。
【0087】
用語「治療上有効な量」は、本明細書で使用する場合、所与の疾患、障害もしくは病態および/またはそれに関連する症状の重症度および/または持続期間を軽減および/または改善するために十分な治療薬(例えば、抗PSGL抗体または他のいずれかの治療薬(例えば抗VISTA抗体を含む本明細書に記載されるものを含む))の量を指す。治療薬の治療上有効な量は、所与の疾患、障害もしくは病態の進展もしくは進行の軽減もしくは改善、所与の疾患、障害もしくは病態の再発、発症もしくは徴候の軽減もしくは改善、および/または別の療法(例えば、本明細書に記載されるものを含む抗PSGL-1抗体の投与以外の療法)の予防効果もしくは治療効果の改善もしくは増強のために必要な量であり得る。
【0088】
本明細書で使用する場合、用語「療法」は、VISTA介在疾患、障害または病態の予防、管理、治療および/または改善に使用可能ないずれのプロトコール、方法および/または薬剤も指す。いくつかの実施形態では、用語「療法」は、医療従事者などの当業者に公知のVISTA介在疾患、障害または病態の治療、予防および/または改善に有用な生物学的療法、支持療法、および/またはその他の療法を指す。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」、「治療」、および「治療すること」は、1以上の療法の投与(限定されるものではないが、本明細書に記載されるものを含む抗PSGL-1抗体などの1以上の治療薬の投与を含む)から得られるVISTA介在疾患、障害または病態の進行、重症度、および/または持続期間の軽減または改善を指す。いくつかの実施形態では、このような用語は、癌(例えば、血液癌)の軽減または阻害を指す。いくつかの実施形態では、このような用語は、免疫調節(このような免疫調節はT細胞の活性化の増強から得られる)に応答する疾患、障害または病態の進行、重症度、および/または持続期間の軽減または改善を指す。
【0090】
用語「腫瘍微小環境」は、腫瘍が存在する細胞環境を指す。腫瘍微小環境は、周囲の血管、免疫細胞、線維芽細胞、骨髄由来炎症細胞、リンパ球、シグナル伝達分子および細胞外マトリックスを含み得る。
【0091】
用語「可変ドメイン」または「可変領域」は、一般に軽鎖または重鎖のアミノ末端に位置し、重鎖では約120~130アミノ酸、軽鎖では約100~110アミノ酸の長さを有し、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性において使用される、抗体の軽鎖または重鎖の部分を指す。可変ドメインは異なる抗体間で配列が広範囲に異なる。配列の変動はCDR内に集中するが、可変ドメイン内で変動の低い部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。各可変領域は、4つのFRに接続されている3つのCDRを含んでなる。軽鎖および重鎖のCDRは、抗体の抗原との相互作用を主要に担う。抗原結合には直接関与しないが、FRは分子の折り畳み、従って、抗原との相互作用のために可変領域の表面に提示されるCDRの量を決定する。いくつかの実施形態では、可変領域は、ヒト可変領域である。
【0092】
用語「Kabatと同様の可変ドメイン残基のナンバリング」または「Kabatと同様のアミノ酸位置のナンバリング」、およびその変形表現は、Kabat et al., Sequences of Proteins of lmmunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)において抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを用いると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮またはそれへの挿入に相当してより少ないアミノ酸または付加的なアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52n後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによれば残基52a)および重鎖FRの残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによれば残基82a、82b、および82cなど)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に関して、抗体の配列相同性領域における「標準」Kabatナンバリング配列とのアラインメントによって決定することができる。Kabatナンバリングシステムは一般に、可変ドメインの残基(およそ軽鎖の残基1~107および重鎖の残基1~113)を参照する場合に使用される(例えば、Kabat et al., Sequences of Immunological Interest. 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EUナンバリングシステム」または「EUインデックス」は一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域の残基を参照する場合に使用される(例えば、Kabat et al.,前掲で報告されたEUインデックス)。「Kabatと同様のEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。別段の定めがない限り、抗体の可変ドメインの残基番号の参照は、Kabatナンバリングシステムによる残基ナンバリングを意味する。例えば、AbM、Chochia、ContactおよびIMGTによるものを含む他のナンバリングシステムも記載されている。
【0093】
用語「変異体」は、PSGL-1、VISTAまたは抗PSGL-1抗体もしくは抗VISTA抗体に関して使用する場合、天然または非改変配列と比較した場合に1以上(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5)のアミノ酸配列の置換、欠失、および/または付加を含んでなるペプチドまたはポリペプチドを指す。例えば、PSGL-1またはVISTA変異体は、それぞれ天然PSGL-1またはVISTAのアミノ酸配列に対する1以上(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5)の変化から生じてよい。また例として、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体の変異体は、天然または従前に改変されてない抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体のアミノ酸配列に対する1以上(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5)の変化から生じてよい。変異体は、対立遺伝子変異体もしくはスプライス変異体など天然に存在するものであっても、または人工的に構築されたものでもよい。ポリペプチド変異体は、変異体をコードする対応する核酸分子から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、PSGL-1変異体、VISTA変異体または抗PSGL-1抗体もしくは抗VISTA抗体変異体はそれぞれ少なくともPSGL-1、VISTA、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体の機能活性を保持する。いくつかの実施形態では、抗PSGL-1抗体変異体はPSGL-1と結合し、かつ/またはPSGL-1活性に対する拮抗剤である。いくつかの実施形態では、抗VISTA抗体変異体はVISTAと結合し、かつ/またはVISTA活性に対する拮抗剤である。いくつかの実施形態では、変異体は、PSGL-1、VISTA、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体のVHまたはVL領域または下位領域をコードする核酸分子の一塩基多型(SNP)変異体によりコードされる。
【0094】
用語「ベクター」は、宿主細胞に核酸分子を導入するために使用される物質を指す。使用に適合可能なベクターには、例えば、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソームおよび人工染色体が含まれ、これらは宿主細胞の染色体への安定な組込みのために機能し得る選択配列またはマーカーを含み得る。さらに、これらのベクターは、1以上の選択マーカー遺伝子および適当な発現制御配列も含み得る。含まれ得る選択マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質もしくは毒素耐性、相補的栄養要求性欠乏、または培養培地への必須栄養素の供給不要を提供する。発現制御配列には、構成的および誘導プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含むことができ、これらは当技術分野で周知である。2つ以上の核酸分子(例えば、抗体の重鎖と軽鎖)が共発現される場合、両核酸分子は例えば単一の発現ベクターに挿入することも、または別の発現ベクターに挿入することもできる。単一のベクター発現の場合、これらのコード核酸は1つの共通の発現制御配列に機能的に連結することもできるし、または1つの誘導プロモーターおよび1つの構成プロモーターなどの異なる発現制御配列に連結することもできる。宿主細胞への核酸分子の導入は、当技術分野で周知の方法を用いて確認することができる。このような方法には、例えば、mRNAのノーザンブロットもしくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの核酸分析、または遺伝子産物の発現に関する免疫ブロット法、または導入された核酸配列もしくはその対応する遺伝子産物の発現を試験するための他の好適な分析方法が含まれる。核酸分子が目的生成物(例えば、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体)を生産するために十分な量で発現されるということは当業者には理解され、さらに、発現レベルが当技術分野で周知の方法を用いて十分な発現を得るために最適化され得ることも理解される。
【0095】
詳細な説明
本開示の実施には、特に断りのない限り、分子生物学、微生物学、遺伝学的分析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチドの合成および修飾、核酸ハイブリダイゼーション、および当技術分野の技術の範囲内の関連分野における従来技術を使用する。これらの技術は、本明細書に引用される参照文献に記載され、文献で詳細に説明されている。例えば、Maniatis et al. (1982) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sambrook et al. (1989), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sambrook et al. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987 and annual updates); Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons (1987 and annual updates) Gait (編) (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein (編) (1991) Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Birren et al. (編) (1999) Genome Analysis: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。
【0096】
PSGL-1はVISTAの受容体である
発癌の際、腫瘍細胞は、間葉細胞、血管内皮細胞および炎症細胞または免疫細胞を含む細胞外マトリックスおよび非新生宿主細胞から構成される複雑な微小環境と相互作用する。微小環境は、腫瘍特異的T細胞応答の抑制に重要な役割を果たす。腫瘍抗原が一度応答を刺激しても免疫炎症性応答が活性化され続けないようにするために、複数のチェックポイントが配備され、または活性化される。これらのチェックポイントは、主として、T細胞受容体が周囲の微小環境中の細胞上のリガンドに結合し、免疫シナプスを形成し、次にこれがT細胞の機能を調節することによって呈される。
【0097】
VISTAは、これらの免疫チェックポイントの1つである。このタンパク質は造血系に限定され、複数の癌モデルにおいて、腫瘍浸潤白血球でのみ検出され、腫瘍細胞では検出されていない。VISTAは異なる受容体/リガンドを会合させることによるT細胞への直接的影響を介してT細胞免疫に負の調節を行い、リガンドとしても受容体としても働くので免疫チェックポイントタンパク質の中でも独特である(Le Mercier, 前掲)。
【0098】
本発明者らは、今般、VISTAタンパク質の結合相手(例えば、リガンドまたは受容体)としてPSGL-1を同定した。PSGL-1は、O-結合グリカンおよびN-結合グリカンを保持する120kDaのホモ二量体膜貫通糖タンパク質であり、その最もよく知られている役割は、セレクチン結合を介した免疫細胞輸送におけるものである。PSGL-1は、リンパ系細胞、骨髄細胞、および樹状系譜において発現される(Laszik et al., Blood, 88(8): 3010-21 (1996))。ナイーブT細胞は非セレクチン結合型のPSGL-1を発現し、おそらくこれは現在知られていない他の結合相手と会合し得る(Veerman et al., Nat. Immunol. 8(5), 532-539 (2007))。腫瘍細胞での発現も見られている。最近、未知の相手の誘導を介してPSGL-1がT細胞の疲弊、従って、黒色腫の腫瘍成長を促すことが実証された(Tinoco et al., Immunity, 44: 1190-03 (2016))。
【0099】
本発明者らは、これらの2つのタンパク質間の直接的結合を実証し、PSGL-1とVISTAが共働してT細胞の活性化を妨げることを示した。実際に、両遺伝子がいくつかの腫瘍で共発現されることから、VISTAとPSGL-1の間の物理的相互作用が機能的なものの基礎にある。このような共局在を示す推定VISTA受容体は他にはなく、この関係の特異性を強調している。さらに、VISTAおよびPSGL-1腫瘍細胞微小環境中でも発現される。より具体的には、in situハイブリダイゼーションで、腫瘍微小環境中で隣接する細胞内に両遺伝子が発現されることが明らかになった。免疫浸潤物中では、どのPSGL-1発現細胞もVISTA発現細胞に隣接し、このことはPSGL-1が活性化されたVISTAの信頼性のある代用となることを示している。
【0100】
VISTA介在疾患の診断
上記のデータは、PSGL-1がVISTA介在癌などのVISTA介在障害を診断するための信頼性のあるバイオマーカーであることを示す。従って、PSGL-1核酸またはタンパク質に結合する本明細書で提供される標識核酸プローブまたは抗体などの試薬は、VISTA介在疾患、障害または病態を検出、診断、または経過観察するために診断目的で使用することができる。
【0101】
よって、第1の態様において、本発明は、対象においてVISTA介在癌を検出するためのin vitro法であって、
a)前記対象の生体試料をPSGL-1タンパク質または核酸と結合することができる試薬と接触させる工程;および
b)前記試薬と前記生体試料との結合を検出する工程
を含んでなる方法に関する。
【0102】
本方法によれば、PSGL-1の結合は、VISTA介在癌の存在を示す。好ましくは、腫瘍微小環境の免疫浸潤物におけるPSGL-1の結合は、VISTA介在癌の存在を示す。
【0103】
PSGL-1タンパク質または核酸と結合することができる試薬は、PSGL-1と特異的に結合することができる当業者に公知のいずれの試薬または化合物であってもよい。例えば、当業者は、PSGL-1と特異的にハイブリダイズするDNAまたはRNAプローブがPSGL-1に特異的に結合することをすぐに理解するであろう。同様に、当業者は、本明細書に記載されるものなどの抗PSGL-1抗体がPSGL-1と特異的に結合することをすぐに理解するであろう。
【0104】
本発明はまた、対象においてVISTA介在癌を検出するためのin vitro法であって、
a)前記対象の生体試料をPSGL-1タンパク質または核酸と結合することができる試薬と接触させる工程;および
b)前記試薬と前記生体試料との結合を定量する工程
を含んでなる方法に関する。
【0105】
本方法によれば、PSGL-1の結合は、VISTA介在癌の存在を示す。好ましくは、腫瘍微小環境の免疫浸潤物におけるPSGL-1の結合は、ISTA介在癌の存在を示す。
【0106】
当業者に自明であるように、PSGL-1への試薬の結合レベルは、以下に記載するように、当業者に公知のいずれの手段によって定量してもよい。好ましい方法には、ELISAもしくはELISPOTなどの免疫酵素アッセイ、免疫蛍光、免疫組織化学(IHC)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはFACSの使用が含まれる。
【0107】
本方法の工程b)の定量は、試料における、特に、腫瘍微小環境の免疫浸潤物におけるPSGL-1発現のレベルを直接反映したものである。よって、本方法は、上記のようにPSGL-1の発現レベルを決定することによりVISTA介在癌を特定することを可能とする。好ましい実施形態では、試料における、特に、腫瘍微小環境の免疫浸潤物におけるPSGL-1の発現レベルを参照レベルと比較する。
【0108】
さらなる好ましい実施形態によれば、本発明は、対象においてVISTA介在癌を検出するためのin vitro法であって、
a)前記対象の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルを決定する工程;および
b)工程a)の発現レベルを参照レベルと比較する工程
を含んでなり、工程a)のPSGL-1のアッセイレベルが参照レベルに比べて増加していることがVISTA介在疾患、障害または病態の指標となる方法に関する。
【0109】
本発明はまた、対象においてVISTA介在癌を診断するためのin vitro法であって、
a)前記対象の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルを決定する工程;および
b)工程a)の発現レベルを参照レベルと比較する工程
を含んでなり、工程(b)のPSGL-1のアッセイレベルが参照レベルに比べて増加していることがVISTA介在疾患、障害または病態の指標となる方法に関する。
【0110】
PSGL-1の発現レベルは、有利には、「参照レベル」または「参照発現レベル」とも呼ばれる対照細胞または試料におけるレベルに対して比較または測定される。「参照レベル」、「参照発現レベル」、「対照レベル」および「対照」は、本明細書では互換的に使用される。「対照レベル」は、一般に疾患または癌の存在しない比較可能な対照細胞で測定される独立したベースラインレベルを意味する。前記対照細胞は、癌患者であっても、腫瘍部位である組織はなお非腫瘍性の健常な組織を含んでなるので、同じ個体に由来してよい。対照細胞はまた、正常であるか、または罹患試料または試験試料が得られたものと同じ疾患を呈さない別の個体に起源してもよい。本発明の文脈の範囲内で、用語「参照レベル」は、患者の癌細胞含有試料におけるPSGL-1の試験発現レベルを評価するために使用されるPSGL-1発現の「対照レベル」を指す。例えば、患者の生体試料におけるPSGL-1レベルがPSGL-1の参照レベルより高い場合、それらの細胞はPSGL-1の高レベル発現、または過剰発現を有すると見なされる。参照レベルは複数の方法により決定することができる。よって、発現レベルは、PSGL-1保持細胞あるいはまたPSGL-1発現細胞の数に依存しないPSGL-1の発現レベルを定義し得る。従って、各患者の参照レベルはPSGL-1の参照比によって規定することができ、この参照比は、本明細書に記載される参照レベルを決定するためのいずれの方法によっても決定することができる。
【0111】
例えば、対照は所定の値であってもよく、様々な形態を採り得る。対照は中央値または平均値などの単一のカットオフ値であり得る。「参照レベル」は、どの患者にも個々に等しく適用可能な単一の数値であり得、または参照レベルは患者の特定の部分集団によって変えることができる。よって、例えば、同じ癌に関して高齢者は若年者とは異なる参照レベルを有してもよく、同じ癌に関して女性は男性とは異なる参照レベルを有してもよい。あるいは、「参照レベル」は、供試される新生細胞の組織と同じ組織に由来する非発癌性癌細胞におけるPSGL-1の発現レベルを測定することにより決定することができる。同様に、「参照レベル」は、同じ患者内の非腫瘍細胞におけるPSGL-1レベルに対する、患者の新生細胞におけるPSGL-1の特定の比であり得る。「参照レベル」はまた、腫瘍細胞を模擬するように操作され得る、または参照レベルを正確に決定する発現レベルを得る他のいずれかの様式で操作され得るin vitro培養細胞のPSGL-1レベルであってもよい。他方、「参照レベル」は、高いPSGL-1レベルを有さない群と高いPSGL-1レベルを有する群などの比較群に基づいて確立することができる。比較群の別の例は、特定の疾患、病態または症状を有する群と疾患を有さない群である。所定の値は、例えば試験集団が低リスク群、中リスク群および高リスク群などの群に等しく(または不等に)分けられる場合に設定することができる。
【0112】
参照レベルはまた、同じ癌を有する患者集団におけるPSGL-1レベルの比較によって決定することもできる。これは、例えば、患者の全コホートが、第1の軸はPSGL-1レベルを表し、第2の軸はその腫瘍細胞が所与のレベルでPSGL-1を発現するコホート内の患者数を表すグラフで表示されるヒストグラム分析によって達成することができる。同じまたは類似のPSGL-1レベルを有するコホートのサブセット集団を特定することによって2つ以上の独立した患者群を決定することができる。次に、これらの独立した群を最も良く識別するレベルに基づいて参照レベルの決定を行うことができる。参照レベルはまた2つ以上のマーカーのレベルを表すこともでき、そのうち1つがPSGL-1である。2つ以上のマーカーは、例えば各マーカーのレベルの値の比によって表すことができる。
【0113】
同様に、見掛け上健康な集団は、PSGL-1の発現に関連する病態を有することが分かっている集団が有するものとは異なる「正常」範囲を有する。従って、選択される所定の値は、個々が属するカテゴリーを考慮に入れることができる。適当な範囲およびカテゴリーは、当業者により通常の実験だけを用いて選択することができる。「高い」、「増加した」は、選択された対照に比べて高いことを意味する。一般に、対照は、適当な年齢層における見掛け上健康な正常個体に基づく。
【0114】
また、本発明による対照は、所定の値に加え、実験材料と並行して試験される材料の試料であり得ると理解される。例としては、同じ対象から同時に得られた組織または細胞、例えば、単一の生検の一部、または対象からの単細胞試料の一部が含まれる。
【0115】
好ましくは、PSGL-1の参照レベルは、正常組織試料(例えば、VISTA介在疾患、障害もしくは病態を有さない患者から得たもの、または疾患の徴候の前に同じ患者から得たもの)におけるPSGL-1の発現レベルである。
【0116】
いくつかの実施形態では、所与のタンパク質の発現は、試料中のある特定のタイプの細胞の存在の指標となる。例えば、試料中の細胞によるPSGL-1、CD4および/またはCD8の発現は、試料中のT細胞の存在の指標となり得る。同様に、試料中の細胞によるVISTA単独またはCD11bもしくはCD33との組合せにおける発現は、VISTA保持腫瘍細胞、制御性T細胞(例えば、CD4+Foxp3+制御性T細胞)、骨髄由来免疫抑制細胞(例えば、CD11b+もしくはCD11bhighおよび/またはCD33+骨髄由来免疫抑制細胞)および/または免疫抑制樹状細胞(例えば、CD11b+もしくはCD11bhigh樹状細胞)の存在の指標となり得る。好ましくは、特に腫瘍微小環境の免疫浸潤物における、VISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8の発現は、対象におけるVISTA介在癌の存在を示す。
【0117】
これらの特定の実施形態によれば、対象においてVISTA介在癌を検出するためのin vitro法は、
a)前記対象の生体試料においてPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを決定する工程;ならびに
b)工程a)のPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを参照レベルと比較する工程
を含んでなり、工程(b)のPSGL-1のアッセイレベルが参照レベルと比べて増加していることがVISTA介在疾患、障害または病態の指標となる。
【0118】
本発明はまた、対象においてVISTA介在癌を診断するためのin vitro法であって、
a)前記対象の生体試料においてPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを決定する工程;ならびに
b)工程a)のPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを参照レベルと比較する工程
を含んでなり、工程(b)のPSGL-1のアッセイレベルが参照レベルと比べて増加していることがVISTA介在疾患、障害または病態の指標となる方法に関する。
【0119】
VISTA介在疾患、障害または病態のより明確な診断は、医療従事者がより早期に予防処置または積極的治療を採り、それによりVISTA介在疾患、障害または病態の発症またはさらなる進行を予防することを可能とし得る。
【0120】
抗VISTA治療薬に対して応答感受性のある患者の特定
上記のデータは、PSGL-1がVISTA介在癌などのVISTA介在障害を診断するための信頼性のあるバイオマーカーであることを示す。このようにして特定された患者は、抗VISTA治療薬に対して応答感受性がある。
【0121】
別の態様において、本発明は、抗VISTA治療薬により治療され得る腫瘍患者を特定するためのin vitro法に関する。有利には、前記患者は、特に免疫浸潤物においてPSGL-1を発現し、PSGL-1の発現は、前記患者が抗VISTA治療薬により治療され得ることを示す。
【0122】
第1の実施形態において、本発明は、患者においてVISTA遮断薬による治療に感受性のある癌を診断するin vitro法であって、
a)前記患者の生体試料においてPSGL-1の発現レベルを決定する工程;および
b)工程a)の発現レベルを参照レベルと比較する工程;および
c)前記比較からその癌がVISTA遮断薬による治療に感受性があることを診断する工程
を含んでなる方法に関する。
【0123】
別の実施形態では、前記参照レベルは、第1の患者と同じVISTA介在癌を有する第2患者に由来する第2の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルであり、ここで、第2の患者はその治療に応答性がある。好ましい実施形態では、第1の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルが第2の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルに類似していることが、第1の患者が治療に応答性があることを示す。
【0124】
別の実施形態では、工程a)は、前記生体試料において、好ましくは、免疫浸潤物により、PSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを決定することを含んでなる。有利には、第1の生体試料におけるPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベル、またはその相対発現レベルを、第1の患者と同じVISTA介在癌を有する第2の患者由来の第2の生体試料におけるPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8の少なくとも1つの発現レベル、またはその相対発現レベルと比較し、ここで、第2の患者はその治療に応答性がある。好ましい実施形態では、第1の生体試料におけるPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベル、またはその相対発現レベルが、第2の生体試料におけるPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベル、またはその相対発現レベルと類似していることが、第1の患者が治療に応答性があることを示す。
【0125】
PSGL-1発現の測定
PSGL-1発現は、当業者に利用可能ないずれの手段によって測定することもできる。よって、PSGL-1の発現は、PSGL-1核酸(例えば、PSGL-1 mRNAまたは対応するcDNA)のレベルを測定することによりまたはPSGL-1タンパク質のレベルを測定することにより測定することができる。
【0126】
この場合、本発明による方法は、生体試料の採取とPSGL-1発現の測定の間に1または複数の中間工程を含んでなってもよく、前記工程は前記生体試料からのmRNA試料(または対応するcDNA)またはタンパク質試料の抽出に相当する。細胞試料からのmRNAまたはタンパク質の調製または抽出(およびcDNAへのその逆転写)は単に当業者に周知の常法にすぎない。
【0127】
mRNA(または対応するcDNA)またはタンパク質試料がひと度得られると、PSGL-1の発現を、mRNA(すなわち、試料中に存在する総てのmRNAもしくはcDNAにおいて)、またはタンパク質(すなわち、試料中に存在する総てのタンパク質において)のいずれかに関して測定することができる。そして、この目的で使用される方法は、形質転換のタイプ(mRNA、cDNAまたはタンパク質)および利用可能な試料のタイプによって異なる。
【0128】
マーカーの発現がmRNA(または対応するcDNA)に関して測定される場合、当業者により慣用されているいずれの方法も適用可能である。例えば、トランスクリプトーム分析などの遺伝子発現のレベルを分析するためのこれらの技術には、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応、DNAを用いる場合)、RT-PCR(逆転写-PCR、RNAを用いる場合)もしくは定量的RT-PCRまたはより大きな処理能力のためには核酸アレイ(DNAアレイおよびオリゴヌクレオチドアレイを含む)などの周知の方法が含まれる。
【0129】
用語「核酸アレイ」は、本明細書で使用する場合、マイクロチップ、スライドグラス、またはミクロスフェアサイズのビーズであり得る支持体に結合された複数の異なる核酸プローブを指す。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカ、またはシリカ、炭素、金属、無機ガラス、もしくはニトロセルロースに基づく材料からなり得る。
【0130】
これらのプローブは、cDNA(「cDNAアレイ」)、mRNA(「mRNAアレイ」)またはオリゴヌクレオチド(「オリゴヌクレオチドアレイ」)などの核酸であり得、前記オリゴヌクレオチドは一般に、およそ25~60ヌクレオチドの長さを有するために好適である。
【0131】
特定の遺伝子の発現プロファイルを決定するために、前記遺伝子の総てまたは一部に対応する核酸を標識し、次いで、そのアレイと接触させてハイブリダイゼーション条件下に置くと、前記の標識標的核酸と、チップ表面に結合されている、この核酸に相補的なプローブの間で複合体が形成される。その後、標識されたハイブリダイズ複合体の存在を検出する。
【0132】
これらの技術は、生体試料(細胞、組織など)中の特に、1つの遺伝子、または複数の遺伝子またはさらにはゲノムの総ての遺伝子(全ゲノムまたは全トランスクリプトーム)の発現レベルをモニタリングするために好適である。
【0133】
好ましい実施形態では、発現プロファイルは、定量的PCRを用いて決定される。定量的、またはリアルタイムPCRは周知であり、当業者にとって容易に利用できる技術であり、詳細な説明は不要である。
【0134】
本発明の範囲の限定と考えるべきではない特定の実施形態では、定量的PCRを用いた発現プロファイルの決定は、次のように行うことができる。簡単に述べれば、リアルタイムPCR反応を、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用いて行う。6μLのcDNAを、7.5μLのTaqMan Universal PCR Master Mix、0.75μLのプローブとプライマーの20倍混合物および0.75μlの水を含有する9μLのPCR混合物に加える。反応は、50℃で2分、次いで、95℃で10分の初期工程1回、ならびに95℃で15秒および60℃で1分を含む40回の増幅からなった。反応およびデータ取得は、ABI PRISM 7900 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を用いて行うことができる。試料中の鋳型転写産物分子の数は、対数増殖期(この時にバックグラウンド蛍光を超える蛍光シグナルが検出できる)における増殖回数(サイクル閾値またはCT)を記録することにより決定される。よって、鋳型転写産物分子の最初の数はCTに反比例する。
【0135】
別の好ましい実施形態では、発現プロファイルは、核酸マイクロアレイの使用によって決定される。
【0136】
本発明はさらに、多くても500、好ましくは多くても300、多くても200、より好ましくは多くても150、多くても100、さらにより好ましくは多くても75、多くても50、多くても40、多くても30、多くても20、多くても10の異なるプローブを含んでなり、そのうち少なくとも1つがPSGL-1 mRNA(または対応するcDNA)またはタンパク質と特異的に結合する、本発明による方法の実装形態に専用のマイクロアレイに関する。好ましい実施形態では、前記マイクロアレイは、多くても500、好ましくは多くても300、多くても200、より好ましくは多くても150、多くても100、さらにより好ましくは多くても75、多くても50、多くても40、多くても30、多くても20、多くても10の異なるプローブ(従って、例えば、パンゲノミックマイクロアレイを除く)を含んでなり、そのうち少なくとも1がPSGL-1 mRNA(または対応するcDNA)と特異的にハイブリダイズする、核酸マイクロアレイである。前記マイクロアレイはまた、PSGL-1と特異的にハイブリダイズするプローブに加えて、ハウスキーピング遺伝子と特異的にハイブリダイズする少なくとも1つのプローブも含有し得る。例えば、ハウスキーピング遺伝子は、β-2-ミクログロブリン遺伝子である。
【0137】
あるいは、試料中のmRNAの量に基づいて遺伝子発現を決定するために好適な現行または今後のいずれの技術を使用することもできる。例えば、当業者は、例えば、ノーザンブロット(mRNAに関して)またはサザンブロット(cDNAに関して)の手段によるなどの標識核酸プローブとのハイブリダイゼーションによって、また、serial analysis of gene expression(SAGE)法およびその派生法、例えば、LongSAGE、SuperSAGE、DeepSAGEなどの技術を用いて、遺伝子の発現を測定することができる。
【0138】
また、出発材料として組織マイクロアレイ(TMAとしても知られる)を使用することも可能である。TMAは、多重組織学的分析を可能とするために最大1000の分離した組織コアがアレイ様式に構成されたパラフィンブロックからなる。組織マイクロアレイ技術では、臨床生検または腫瘍試料などのパラフィン包埋組織中の関心領域から0.6mm径の小さい組織コアを取り出すために中空針が使用される。次に、これらの組織コアは、正確な空間配置のアレイパターンでレシピエントパラフィンブロックに挿入される。ミクロトームを用いてこのブロックから切片をとり、顕微鏡スライドに載せ、次いで、標準的な組織学的分析の任意の方法によって分析する。各マイクロアレイブロックから100~500切片をとることができ、これらに独立して試験を行うことができる。組織マイクロアレイにおいて一般に使用される試験には、免疫組織化学、および蛍光in situハイブリダイゼーションが含まれる。mRNAレベルでの分析のためには、組織マイクロアレイ技術を蛍光in situハイブリダイゼーションと組み合わせることができる。RNAscope 2.5(Advanced Cell Diagnostics、ヘイワード、CA)を用いるin situハイブリダイゼーションの例を実施例に示す。
【0139】
最後に、試料中のmRNAの量を決定するためにマスパラレルシーケンシングを使用することができる(RNA-Seqまたは「全トランスクリプトームショットガンシーケンシング」)。この目的で、複数のマスパラレルシーケンシング法が利用可能である。このような方法は、例えば、米国特許第4,882,127号、同第4,849,077号;同第7,556,922号;同第6,723,513号;WO03/066896;WO2007/111924;US2008/0020392;WO2006/084132;US2009/0186349;US2009/0181860;US2009/0181385;US2006/0275782;EP-B1-1141399;Shendure & Ji, Nat Biotechnol., 26(10): 1135-45 (2008); Pihlak et al., Nat Biotechnol., 26(6): 676-684 (2008); Fuller et al., Nature Biotechnol., 27(11): 1013-1023 (2009); Mardis, Genome Med., 1(4): 40 (2009); Metzker, Nature Rev. Genet., 11(1): 31-46 (2010)に記載されている。
【0140】
マーカーの発現がタンパク質に関して測定される場合、PSGL-1に対する特異的抗体を使用することができる。抗PSGL-1抗体の結合は、例えば、免疫沈降、免疫化学(IHC)、ウエスタンブロット、ドットブロット、ELISA、ELISPOT、タンパク質アレイ、抗体アレイ、または免疫組織化学と組み合わせた組織アレイなど、当業者に利用可能な様々なアッセイによって検出および/または定量および/または決定することができる。使用可能な他の技術には、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、FRETまたはBRET技術、顕微鏡または組織化学法(特に、共焦点顕微鏡法および電子顕微鏡法を含む)、1または複数の励起波長の使用に基づく方法、および好適な光学的方法、例えば、電気化学的方法(ボルタンメトリーおよびアンペロメトリー技術)、原子間力顕微鏡法、および無線周波数的方法、例えば、多極性、共焦点および非共焦点共鳴分光法、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および複屈折または屈折率の検出(例えば、表面プラズモン共鳴の手段による、偏光解析法による、レゾナントミラー法の手段よるなど)、フローサイトメトリー、放射性同位体法または磁気共鳴画像法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の手段による分析;HPLC-質量分光光度法の手段による分析、液体クロマトグラフィー/質量分光光度法/質量分析(LC-MS/MS)の手段による分析が含まれる。これらの技術は総て当業者に周知であり、ここでそれらを詳細する必要はない。
【0141】
上記方法はいずれも本方法の実施に好適であるが、特にFACS、ELISA、ELISPOT、ウエスタンブロット法およびIHCを挙げることができる。好ましい方法として、ELISPOT、FACSおよびIHCが含まれる。
【0142】
腫瘍のPSGL-1状態の決定
PSGL-1への試薬の結合の決定(上記のとおり)は、処置する腫瘍のPSGL-1状態の決定を可能とする。PSGL-1状態は、既知のまたは当業者が現行使用している、一般にはPSGL-1の発現レベルの決定に基づく、いずれの方法または技術によって決定することもできる。腫瘍のPSGL-1状態に基づき、次に、患者が抗VISTA治療薬に応答するかどうかを予測することができる。
【0143】
最近、免疫学的データ(腫瘍試料内の免疫細胞のタイプ、濃度、および局在)が結腸直腸癌の病期判定に現行使用されている組織学的方法よりも患者生存率の良好な予測因子であることが明らかになった。
【0144】
さらに、臨床試験からのますます多くのエビデンスが、癌の特定のタイプにおいて免疫活性を標的とする療法の可能性を裏づけている(Robert et al., Stagg et al.)。このことが、様々な癌における免疫療法に対する予後診断および患者の選択を補助するために、標準化された臨床パラメーターに加えてin situ免疫浸潤物を定量することを目的とする「免疫スコア」などの、癌の腫瘍免疫浸潤物を特徴付けるより標準化された方法の開発につながった(例えば、Galon et al., J Pathol 232(2): 199-209 (2014); Galon et al., J Transl Med 14: 273 (2016)参照)。
【0145】
よって、本明細書に記載されるVISTA介在癌を検出または診断する方法には、腫瘍のPSGL-1スコアの決定が含まれる。
【0146】
この実施形態によれば、方法は、
a)前記対象の生体試料をPSGL-1タンパク質または核酸と結合することができる試薬と接触させる工程;
b)前記試薬と前記生体試料との結合を定量する工程;および
c)染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づいて適当な尺度と工程a)で得られた定量レベルを比較することにより腫瘍細胞をスコア化する工程を含んでなる。
【0147】
好ましい実施形態では、工程b)は、前記生体試料の腫瘍微小環境の免疫浸潤物において前記試薬とPSGL-1との結合を定量することを含んでなる。
【0148】
この好ましい実施形態によれば、方法は、
a)前記対象の生体試料をPSGL-1タンパク質または核酸と結合することができる試薬と接触させる工程;
b)前記試薬と前記生体試料との結合を定量する工程;および
c)すなわち、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当な尺度と工程a)で得られた定量レベルを比較することにより腫瘍免疫細胞をスコア化する工程
を含んでなる。
【0149】
腫瘍免疫細胞(または免疫浸潤物)は、腫瘍微小環境中に存在する免疫細胞、特に、一部のマクロファージ、単球などのような腫瘍微小環境の免疫抑制細胞を含んでなる。好ましい実施形態では、免疫浸潤物には、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)、樹状細胞、肥満細胞、およびマクロファージが含まれる。よって、この実施形態では、工程b)は、前記試薬と前記生体試料の腫瘍微小環境中に存在するリンパ球(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)、樹状細胞、肥満細胞、およびマクロファージ上のPSGL-1との結合を定量することを含んでなる。
【0150】
従来のハザード分析法はいずれも、PSGL-1の予後値を評価するために使用可能である。代表的な分析法としては、打ち切り例の存在下で生存データまたは時間事象データをモデル化するためのセミパラメトリック法としてのコックス回帰分析が含まれる(Hosmer and Lemeshow, 1999; Cox, 1972)。他の生存分析、例えば、生命表またはカプラン・マイヤー法とは対照的に、コックス法ではモデルに予測因子変数(共変量)を含めることができる。慣例の分析法を用い、例えば、コックス法は、原発腫瘍のPSGL-1発現状態と、疾患再発(無病生存期間、もしくは転移疾患までの期間)、または疾患を原因とする死亡までの期間(全生存期間)のいずれかの発生までの時間との相関に関する仮説を検定することを可能とし得る。コックス回帰分析はまた、コックス比例ハザード分析としても知られる。この方法は、患者の生存期間に対する腫瘍マーカーの予後値を検定するための標準法である。多変量モードを使用する場合、独立した予後値を有する個々の共変量が識別できるように(すなわち、最も有用なマーカー)、複数の共変量の効果が並行して検定される。陰性または陽性の「PSGL-1状態」という用語は、[PSGL-1(-)]または[PSGL-1(+)]として示すこともできる。
【0151】
試料は、癌の診断または経過観察の際に「スコア化」することができる。最も単純な形態では、スコア化は、免疫組織化学による試料の視覚的検査により判断して陰性または陽性のカテゴリーとしてもよい。より定量的なスコア化は、染色強度と採取した細胞が染色された(「陽性の」)割合という2つのパラメーターの判断を含む。
【0152】
ある実施形態では、標準化を保証するために、試料は種々の尺度でPSGL-1発現レベルのスコア化を行ってもよく、それらのほとんどは反応生成物の強度と陽性細胞のパーセンテージの評価に基づくものである(Payne et al., Predictive markers in breast cancer - the present, Histopathology 2008, 52, 82-90)。
【0153】
別の実施形態では、前記スコア化は、染色強度と陽性細胞のパーセンテージに基づく適当な尺度の使用を含んでなる。
【0154】
第1の例として、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体のIHC評価に関するクイック・オールレッド・スコアリングとの類似から、試料において、反応強度に関するスコアと染色された細胞の割合に関するスコアを合わせた0~8の総合尺度でPSGL-1発現レベルのスコア化を行うことができる(Harvey JM, Clarck GM, Osborne CK, Allred DC; J. Clin. Oncol. 1999; 17; 1474-1481)。より詳しくは、反応強度の第1の基準は0~3の尺度でスコア化され、0は「無反応」に相当し、3は「強い反応」に相当する。反応の割合の第2の基準は0~5の尺度でスコア化され、0は「無反応」に相当し、5は「反応の割合67~100%」に相当する。次に、反応強度のスコアと反応の割合のスコアを合計して総スコア0~8とする。総スコア0~2は陰性と見なし、総スコア3~8は陽性と見なす。
【0155】
この尺度によれば、本明細書において使用される腫瘍の陰性または陽性「PSGL-1状態」という用語は、オールレッド尺度でそれぞれスコア0~2または3~8に相当するPSGL-1の発現レベルを指す。
【0156】
以下の表2にオールレッド法に従ってIHC結果を解釈するための指針を示す。
【0157】
【0158】
本発明によれば、前記適当な尺度は、無反応をスコア0とし、反応の割合67~100%での強い反応をスコア8とする0~8の尺度であり得る。
【0159】
言い換えれば、これはin vitroまたはex vivoにおいて対象の腫瘍の状態を決定する方法と言え、前記方法は、(a)オールレッド尺度に従って対象の腫瘍をスコア化する工程;および(b)オールレッドスコア3~8で腫瘍の状態が[PSGL-1(+)]であることを決定する工程;または(c)オールレッドスコア0~2で腫瘍の状態を[PSGL-1(-)]であると決定する工程を含んでなる。
【0160】
本発明の特定の態様において、腫瘍は、オールレッドスコア3で[PSGL-1(+)]である。
【0161】
本発明の特定の態様において、腫瘍は、オールレッドスコア4で[PSGL-1(+)]である。
【0162】
本発明の特定の態様において、腫瘍は、オールレッドスコア5で[PSGL-1(+)]である。
【0163】
本発明の特定の態様において、腫瘍は、オールレッドスコア6で[PSGL-1(+)]である。
【0164】
本発明の特定の態様において、腫瘍は、オールレッドスコア7で[PSGL-1(+)]である。
【0165】
本発明の特定の態様において、腫瘍は、オールレッドスコア8で[PSGL-1(+)]である。
【0166】
本発明の別の特定の態様において、腫瘍は、オールレッドスコア3~8で[PSGL-1(+)]である。
【0167】
in vitroまたはex vivoにおいて対象の腫瘍細胞のPSGL-1状態を決定するための、本明細書に記載される別の特定の方法は、
(a)PSGL-1腫瘍細胞を上記のようにスコア化する工程;および
(b)スコア3~8で腫瘍細胞のPSGL-1状態が[PSGL-1(+)]であると決定する工程;または
(c)スコア0~2で腫瘍細胞のPSGL-1状態が[PSGL-1(-)]であると決定する工程
を含んでなることを特徴とする。
【0168】
in vitroまたはex vivoにおいて対象の腫瘍免疫細胞のPSGL-1状態を決定するための、本明細書に記載される別の特定の方法は、
(a)PSGL-1腫瘍免疫細胞を上記のようにスコア化する工程;および
(b)スコア3~8で腫瘍免疫細胞のPSGL-1状態が[PSGL-1(+)]であると決定する工程;または
(c)スコア0~2で腫瘍免疫細胞のPSGL-1状態が[PSGL-1(-)]であると決定する工程
を含んでなることを特徴とする。
【0169】
好ましい実施形態では、腫瘍免疫細胞(すなわち、免疫浸潤物)としては、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)、樹状細胞、肥満細胞、およびマクロファージが含まれる。よって、この実施形態において、工程a)は、前記試薬と、前記生体試料の腫瘍微小環境中に存在するリンパ球(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)、樹状細胞、肥満細胞、およびマクロファージ上のPSGL-1との結合を定量することを含んでなる。
【0170】
第2の例として、例えば、HER-2受容体のIHC評価に関する従来のスコア化との類似から、試料において、染色(優先的には、膜性染色)の強度と染色を呈する細胞の割合を統合して0~3+の合成尺度とするいくらか簡略化されたスコア化法でPSGL-1発現レベルのスコア化を行うことができる。
【0171】
簡略化尺度と呼ばれるこの尺度において、0および1+は陰性であり、2+および3+は陽性染色を表す。しかしながら、スコア1+~3+は、各陽性スコアがスコア0(陰性)と比べた場合に再発および致死性疾患の有意に高いリスクを伴い得るので陽性と記録することができるが、陽性スコア間での強度の高まりは、さらなるリスク軽減をもたらし得る。
【0172】
一般的に言えば、本明細書で使用する腫瘍の陰性または陽性「PSGL-1状態」という用語は、それぞれ簡略化尺度でスコア0~1+または2+~3+に相当するPSGL-1の発現レベルを指す。浸潤性腫瘍の完全な周辺の膜性反応だけが考慮されるべきであり、しばしば「金網」の外観になぞらえられる。現行の指針の下では、PSGL-1に関してボーダーライン(スコア2+または3+)としてスコア化された試料はさらなる評価を受ける必要がある。非限定例として、対照が期待通りではなく、アーティファクトが大部分の試料に関わり、試料が正常な乳管(内部対照)の強い膜性陽性を示して過剰な抗原賦活が示唆される場合には、IHC分析は棄却され、繰り返されるか、またはFISHもしくは他のいずれかの方法によって検定されるべきである。
【0173】
より明解にするために、以下の表3にこれらのパラメーターをまとめる。
【0174】
【0175】
適当な尺度は、腫瘍細胞または腫瘍免疫細胞の膜性反応なしをスコア0とし、10%を超える腫瘍細胞での強い完全な反応をスコア3+とする0~3+の尺度であり得る。
【0176】
より詳しくは、上記のとおり、前記の適当な尺度は、腫瘍細胞または腫瘍免疫細胞の膜性反応なしをスコア0とし;10%を超える腫瘍細胞または腫瘍免疫細胞でのかろうじて知覚できる膜性反応をスコア1+とし;10%を超える腫瘍細胞または腫瘍免疫細胞での弱~中等度の完全な膜性反応をスコア2+とし;10%を超える腫瘍細胞または腫瘍免疫細胞での強い完全な反応をスコア3+とする0~3の尺度である。
【0177】
言い換えれば、これはin vitroまたはex vivoにおいて対象の腫瘍の状態を決定する方法と言え、前記方法は、(a)上記のような簡略化尺度に従って対象の腫瘍をスコア化する工程;および(b)スコア2+もしくは3+で腫瘍の状態が[PSGL-1(+)]であると決定する工程;または(c)スコア0もしくは1+で腫瘍の状態が[PSGL-1(-)]であると決定する工程を含んでなる。
【0178】
本発明の特定の態様において、腫瘍は、スコア2+で[PSGL-1(+)]である。
【0179】
本発明の特定の態様において、腫瘍は、スコア3+で[PSGL-1(+)]である。
【0180】
本発明の別の特定の態様において、腫瘍は、スコア2+または3+で[PSGL-1(+)]である。
【0181】
別の実施形態では、in vitroまたはex vivoにおいて対象の腫瘍細胞のPSGL-1状態を決定するための方法は、
(a)上記の方法に従って前記対象のPSGL-1腫瘍細胞をスコア化する工程;および
(b)スコア2+もしくは3+で腫瘍細胞のPSGL-1状態が[PSGL-1(+)]であると決定する工程;または
(c)スコア0もしくは1+で腫瘍細胞のPSGL-1状態が[PSGL-1(-)]であると決定する工程
を含んでなり得る。
【0182】
別の実施形態では、in vitroまたはex vivoにおいて対象の腫瘍免疫細胞のPSGL-1状態を決定するための方法は、
(a)上記の方法に従って前記対象のPSGL-1腫瘍免疫細胞をスコア化する工程;および
(b)スコア2+もしくは3+で腫瘍免疫細胞のPSGL-1状態が[PSGL-1(+)]であると決定する工程;または
(c)スコア0もしくは1+で腫瘍免疫細胞のPSGL-1状態が[PSGL-1(-)]であると決定する工程
を含んでなり得る。
【0183】
好ましい実施形態では、腫瘍免疫細胞(すなわち、免疫浸潤物)としては、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)、樹状細胞、肥満細胞、およびマクロファージが含まれる。よって、この実施形態において、工程a)は、前記試薬と、前記生体試料の腫瘍微小環境中に存在するリンパ球(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)、樹状細胞、肥満細胞、およびマクロファージ上のPSGL-1との結合を定量することを含んでなる。
【0184】
一般に、検定またはアッセイの結果は、様々な形式のいずれで表示してもよい。結果は定性的に表すことができる。例えば、検定報告は特定のポリペプチドが検出されたか否かで、おそらくは検出限界の表示を伴って示すことができる。結果は半定量的に示してもよい。例えば、様々な範囲が定義されてもよく、それらの範囲に、ある程度の定量的情報を提供するスコア(使用する尺度に応じて例えば0~3+または0~8)を割り当てることができる。このようなスコアは、例えば、PSGL-1が検出される細胞の数、シグナル強度(これはPSGL-1の発現レベルまたはPSGL-1保持細胞を示し得る)などの様々な係数を表し得る。結果は、例えば、PSGL-1が検出される細胞のパーセンテージ、タンパク質濃度など、定量的に表示してもよい。
【0185】
当業者に認識されるように、検定によって提供される出力のタイプは、その検定の技術的限界およびそのポリペプチドの検出に関連する生物学的有意性によって異なる。例えば、特定のポリペプチドの場合、純粋に定性的な出力(例えば、特定の検出レベルでそのポリペプチドが検出されるか否か)が有意な情報を提供する。他の場合では、より定量的な出力(例えば、正常レベルに対する供試試料中のポリペプチドの発現レベルの比)が必要である。
【0186】
抗PSGL-1抗体
本方法において使用するための抗体は、PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドフラグメント、またはPSGL-1エピトープを含むPSGL-1に結合する抗体である。抗PSGL-1抗体には、ヒト化抗PSGL-1抗体が含まれる。また、本明細書で提供される抗PSGL-1抗体がPSGL-1ポリペプチドに結合するのを競合的に遮断する抗体(例えば、ヒト化抗PSGL-1抗体)も提供される。
【0187】
本開示はまた、PSGL-1と結合し、かつ、PSGL-1とVISTAの間の相互作用を促進するまたは相互作用に拮抗する抗体も提供する。好ましくは、抗PSGL-1抗体は、PSGL-1のVISTAへの、特に、VISTAの細胞外ドメインへの結合を阻害または遮断する。いくつかの実施形態では、抗PSGL-1抗体は、VISTA発現細胞の、例えば、骨髄細胞、樹状細胞、マクロファージまたはT細胞などのPSGL-1発現T細胞への結合を阻害または遮断する。いくつかの実施形態では、抗PSGL-1抗体は、PSGL-1の、P-セレクチン、L-セレクチンまたはE-セレクチンへの結合を遮断も阻害もしない。
【0188】
本明細書で提供される抗PSGL-1抗体(例えば、ヒト化抗PSGL-1抗体)はまた、診断薬、検出可能な薬剤または治療薬にコンジュゲートすることもできるし(例えば、抗体-薬物複合体)、または組換え的に融合させることもできる。例えば、検出可能な薬剤は、検出可能なプローブであり得る。さらに、抗PSGL-1抗体(例えば、ヒト化抗PSGL-1抗体)を含んでなる医薬組成物を含む組成物も提供される。
【0189】
抗原、例えば、PSGL-1に結合する本明細書で提供される抗体は、抗体の合成に関して当技術分野で公知の任意の方法により、特に、化学合成または組換え発現技術により作製することができる。例えば、いくつかの抗PSGL-1抗体およびそのような抗体を生産する方法は従前に記載されている(例えば、WO2005/110475、WO2003/013603;米国特許出願公開第2009/0198044号、同第2005/0266003号、同第2009/0285812号、同第2013/0011391号、および同第2015/0183870号;および米国特許第7,833,530号、および同第8,361,472号参照)。
【0190】
抗原に結合するポリクローナル抗体は、当技術分野で周知の様々な手法により生産することができる。例えば、ヒト抗原は、そのヒト抗原に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の生産を誘導するために、限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラットなどを含む様々な宿主動物に投与することができる。免疫応答を増強するために、宿主種によって様々なアジュバントが使用可能であり、限定されるものではないが、フロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリ陰イオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびに潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)が含まれる。このようなアジュバントもまた当技術分野で周知である。
【0191】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレー技術、またはその組合せの使用を含む当技術分野で公知の多様な技術を用いて作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版 1988); Hammerling et al., Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563 681 (Elsevier, N.Y., 1981)(引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる)に教示されている当技術分野で公知のものを含むハイブリドーマ法を用いて生産することができる。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用する場合、ハイブリドーマ技術によって生産される抗体に限定されない。モノクローナル抗体を生産する他の例示的方法は、例えば、KMマウス(商標)の使用など、本明細書の他所に述べられる。モノクローナル抗体を生産するさらなる例示的方法は本明細書の実施例に示される。あるいはまた、例えばWO2003/013603、WO2005/110475、WO2009/140623、Dimitroff et al., Cancer Res, 65(13): 5750-60 (2005)、Veerman et al., Nature Immunol 8(5):532-9 (2007)、Tinocco et al., Immunity 44: 1190-1203 (2016)に記載の抗体などの抗PSGL-1抗体を使用することもできる。
【0192】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を生産およびスクリーニングするための方法は、当技術分野で慣例かつ周知である。簡単に述べれば、マウスをPSGL-1抗原で免疫することができ、免疫応答が検出されれば、例えば、PSGL-1抗原に特異的な抗体がマウス血清中に検出されれば、マウスの脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次に、脾細胞を周知の技術によって任意の好適な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能なSP20細胞株由来の細胞に融合させる。限界希釈法によりハイブリドーマを選択およびクローニングする。
【0193】
さらに、RIMMS(repetitive immunization multiple sites)技術を用いて動物を免疫することもできる(引用することによりその全内容が本明細書の一部とされるKilptrack et al., 1997 Hybridoma 16:381-9)。次に、ハイブリドーマクローンを、当技術分野で公知の方法によって、所与のポリペプチドと結合し得る抗体を分泌する細胞に関してアッセイする。一般に高レベルの抗体を含有する腹水は、マウスを陽性ハイブリドーマクローンで免疫することにより作製することができる。
【0194】
よって、また、本明細書で提供される改変抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することにより抗体を作出する方法も本明細書において提供され、いくつかの実施形態では、ハイブリドーマは、PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドフラグメントまたはPSGL-1エピトープを含むPSGL-1で免役されたマウスから単離された脾細胞を骨髄腫細胞と融合させ、次いでその融合から得られたハイブリドーマをPSGL-1に結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンに関してスクリーニングすることにより作出される。
【0195】
PSGL-1とVISTAの間の相互作用を調節(例えば、増強または阻害)することができる抗PSGL-1抗体は、当業者に公知のいずれの方法によって同定してもよい。PSGL-1とVISTAの間の相互作用を検出および測定するためのアッセイの例を実験の節に記載する。これらのアッセイはいずれも、抗PSGL-1抗体がPSGL-1とVISTAの間の相互作用を調節し得るかどうかを試験するために使用することができる。
【0196】
PSGL-1を認識する(例えば、それに結合する)抗体フラグメントは、当業者に公知のいずれの技術によって作出してもよい。例えば、本明細書で提供されるFabおよびF(ab’)2フラグメントは、パパイン(Fabフラグメントを作製するため)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを作製するため)などの酵素を用いた免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって生産し得る。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含有する。さらに、本明細書で提供される抗体はまた、当技術分野で公知の様々なファージディスプレー法を用いて作製することもできる。
【0197】
例えば、抗体はまた、様々なファージディスプレー法を用いて作製することもできる。ファージディスプレー法では、機能的抗体ドメインを、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に提示される。特に、VHおよびVLドメインをコードするDNA配列を、動物cDNAライブラリー(例えば、感染組織のヒトまたはマウスcDNAライブラリー)から増幅させる。VHおよびVLドメインをコードするDNAをPCRによりscFvリンカーを用いて一緒に組換えし、ファージミドベクターにクローニングする。このベクターをエレクトロポレーションによって大腸菌に導入し、その大腸菌にヘルパーファージを感染させる。これらの方法に使用するファージは一般に、fdおよびM13を含む線維状ファージであり、VHおよびVLドメインを通常、組換えによりファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかに融合させる。特定の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば固相表面またはビーズに結合または捕捉された標識抗原または抗原を用い、選択または抗原で識別することができる。本明細書で提供される抗体を作製するために使用可能なファージディスプレー法の例は、Brinkman et al., 1995, J. Immunol. Methods 182:41-50; Ames et al., 1995, J. Immunol. Methods 184:177-186; Kettleborough et al., 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958; Persic et al., 1997, Gene 187:9-18; Burton et al., 1994, Advances in Immunology 57:191-280;PCT/GB91/01134;WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401、およびWO97/13844;および米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号、および同第5,969,108号に開示されているものが含まれ、これらはそれぞれ引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0198】
上記の参照文献に記載されるように、ファージの選択の後、そのファージから抗体コード領域を単離し、それを用いて、ヒト抗体を含む完全抗体、または他のいずれかの所望の抗原結合フラグメントを作製し、例えば下記のように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含む所望の任意の宿主で発現させることができる。Fab、Fab’およびF(ab’)2フラグメント組換え生産するための技術もまた、PCT公開第WO92/22324号;Mullinax et al., 1992, BioTechniques 12(6):864-869; Sawai et al., 1995, AJRI 34:26-34;およびBetter et al., 1988, Science 240:1041-1043(引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる)に開示されているものなどの当技術分野で公知の方法を用いて使用することができる。
【0199】
完全抗体を作出するためには、VHまたはVLヌクレオチド配列、制限部位、およびその制限部位を保護するためのフランキング配列を含むPCRプライマーを、scFvクローン中のVHまたはVL配列を増幅するために使用することができる。当業者に公知のクローニング技術を用い、PCR増幅されたVHドメインを、VH定常領域、例えば、ヒトγ4定常領域を発現するベクターにクローニングし、PCR増幅されたVLドメインを、VL定常領域、例えば、ヒトκまたはλ定常領域を発現するベクターにクローニングすることができる。VHおよびVLドメインはまた、必要な定常領域を発現するベクターにクローニングしてもよい。次に、重鎖変換ベクターおよび軽鎖変換ベクターを、当業者に公知の技術を用いて、細胞株に共トランスフェクトして、全長抗体、例えばIgGを発現する安定なまたは一過性の細胞株を作出する。
【0200】
ヒトにおける抗体のin vivo使用およびin vitro検出アッセイを含むいくつかの使用では、ヒトまたはキメラ抗体を使用することができる。完全ヒト抗体はヒト対象の治療的処置に特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いる上記のファージディスプレー法を含む当技術分野で公知の様々な方法によって作製することができる。米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号;およびWO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741もまた参照;これらはそれぞれ引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0201】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体が生産される。ヒト抗体および/または完全ヒト抗体は、当技術分野で公知のいずれの方法を用いて生産してもよい。例えば、機能的な内因性免疫グロブリンを発現することができないがヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウス。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体をマウス胚性幹細胞にランダムにまたは相同組換えにより導入することができる。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域を、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えてマウス胚性幹細胞に導入することができる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別にまたはそれと同時に非機能的とされてもよい。特に、JH領域の同型接合性の欠失は、内因性抗体の生産を妨げる。改変された胚性幹細胞を拡大培養し、胚盤胞にマイクロインジェクションを行い、キメラマウスを作出する。次に、このキメラマウスを飼育してヒト抗体を発現する同型接合性の後代を作出する。トランスジェニックマウスを選択された抗原、例えば、そのポリペプチドの総てまたは一部を用いて、規定の様式で免疫する。抗原に対するモノクローナル抗体は、免疫されたトランスジェニックマウスから従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞分化の際に再配列し、その後、クラススイッチングおよび体細胞突然変異を受ける。よって、このような技術を用いると、治療上有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を生産することができる。ヒト抗体を生産するためのこのような技術の概要については、Lonberg and Huszar (1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生産するためのこの技術およびこのような抗体を生産するためのプロトコールの詳細な考察については、例えば、引用することにより全内容が本明細書の一部とされるWO98/24893、WO96/34096、およびWO96/33735;および米国特許第5,413,923号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、および同第5,939,598号を参照。他の方法は、本明細書の実施例に詳述されている。さらに、Abgenix社(フリーモント、CA)およびGenpharm社(サンノゼ、CA)などの会社が、上記と類似の技術を用いて選択された抗原に対するヒト抗体の提供に従事することができる。
【0202】
キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。キメラ抗体を生産するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、引用することにより全内容が本明細書の一部とされるMorrison, 1985, Science 229:1202; Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214; Gillies et al., 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;および米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号、同第4,816,397号、および同第6,331,415号参照。
【0203】
ヒト化抗体は、所定の抗原に結合することができ、かつ、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域と非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するCDRを含んでなる抗体またはその変異体もしくはそのフラグメントである。ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および一般には2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、Fv)の実質的に総てを含んでなり、CDR領域の総てまたは実質的に総てが非ヒト免疫グロブリン(例えば、ドナー抗体)のものに相当し、フレームワーク領域の総てまたは実質的に総てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものに相当する。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般に、ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含んでなる。通常、この抗体は、軽鎖ならびに重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。この抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域をも含み得る。ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含むいずれのクラス、またIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むいずれのアイソタイプの免疫グロブリンから選択することもできる。通常、定常ドメインは、ヒト化抗体が細胞傷害活性を示すことが望まれる場合には補体結合定常ドメインであり、クラスは一般にIgG1である。このような細胞傷害活性が望ましくない場合には、定常ドメインはIgG2クラスであってもよい。使用可能なVLおよびVH定常ドメインの例は、いくつかの実施形態では、限定されるものではないが、Johnson et al. (1997) J. Infect. Dis. 176, 1215-1224に記載されているCκおよびCγ-1(nG1m)および米国特許第5,824,307号に記載されているものが含まれる。ヒト化抗体は、2つ以上のクラスまたはアイソタイプ由来の配列を含んでなってもよく、所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを選択することは当技術分野の通常の技術の範囲内である。ヒト化抗体のフレームワーク領域およびCDR領域は親配列に厳密に対応する必要は無く、例えば、ドナーCDRまたはコンセンサスフレームワークは、その部位のCDRまたはフレームワーク残基がコンセンサスまたはインポート抗体のいずれにも相当しないように少なくとも1つの残基の置換、挿入または欠失によって突然変異誘発してもよい。しかしながら、このような突然変異は広範囲にわたるものではない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、多くの場合では90%、または95%超が親FRおよびCDR配列の残基に相当する。ヒト化抗体は、限定されるものではないが、CDR-グラフティング(EP239400;WO91/09967;および米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、および同第5,585,089号)、ベニヤリングまたはリサーフェイシング(EP592106およびEP519596;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnicka et al., 1994, Protein Engineering 7(6):805-814;およびRoguska et al., 1994, Proc Natl Acad Sci 91:969-973)、チェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)、ならびに例えば、米国特許第6,407,213号、同第5,766,886号、WO93/17105、Tan et al., J. Immunol. 169:1119 25 (2002), Caldas et al., Protein Eng. 13(5):353-60 (2000)、Morea et al., Methods 20(3):267 79 (2000)、Baca et al., J. Biol. Chem. 272(16):10678-84 (1997)、Roguska et al., Protein Eng. 9(10):895 904 (1996)、Couto et al., Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s (1995)、Couto et al., Cancer Res. 55(8):1717-22 (1995)、Sandhu JS, Gene 150(2):409-10 (1994)、およびPedersen et al., J. Mol. Biol. 235(3):959-73 (1994)に開示されている技術を含む当技術分野で公知の様々な技術を用いて生産することができる。また、引用することにより全内容が本明細書の一部とされる米国特許出願公開第US2005/0042664A1号も参照。多くの場合、抗原結合を変更する(例えば、改善する)ために、フレームワーク領域内のフレームワーク残基を、CDRドナー抗体に由来する対応する残基で置換する。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法により、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデル化して抗原結合に重要なフレームワーク残基を特定し、配列比較により特定の位置における特異なフレームワーク残基を特定することによって特定される(例えば、引用することにより全内容が本明細書の一部とされるQueen et al.、米国特許第5,585,089号;およびReichmann et al., 1988, Nature 332:323参照)。
【0204】
シングルドメイン抗体、例えば、軽鎖を欠く抗体は、当技術分野で周知の方法によって生産することができる。Riechmann et al., 1999, J. Immunol. 231:25-38; Nuttall et al., 2000, Curr. Pharm. Biotechnol. 1(3):253-263; Muylderman, 2001, J. Biotechnol. 74(4):277302;米国特許第6,005,079号;ならびにWO94/04678、WO94/25591、およびWO01/44301参照、これらはそれぞれ引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0205】
さらに、PSGL-1に結合する抗体は、次に、当業者に周知の技術を用いて、抗原を「模倣する」抗イディオタイプ抗体を作出するために使用することができる(例えば、Greenspan & Bona, 1989, FASEB J. 7(5):437-444; Nissinoff, 1991, J. Immunol. 147(8):2429-2438参照)。
【0206】
本明細書で提供される抗体としては、限定されるものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え生産抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のいずれかの機能的フラグメントが含まれる。機能的フラグメントの限定されない例としては、一本鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)2フラグメント、F(ab’)2フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fdフラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびミニボディが含まれる。
【0207】
特に、本明細書で提供される抗体としては、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子、例えば、PSGL-1(例えば、PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドフラグメント、PSGL-1エピトープ)に結合する抗原結合部位を含有する分子の免疫学的に活性な部分が含まれる。本明細書で提供される免疫グロブリン分子は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子であってもよい。
【0208】
抗体の変異体および誘導体としては、PSGL-1(例えば、PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドフラグメント、PSGL-1エピトープ)との結合能を保持する抗体の機能的フラグメントが含まれる。例示的機能的フラグメントとしては、Fabフラグメント(抗原結合ドメインを含有し、かつ、ジスルフィド結合により架橋された軽鎖と重鎖の一部を含んでなる抗体フラグメント);Fab’(ヒンジ領域を介したFabと重鎖のさらなる部分を含んでなる単一の抗原結合ドメインを含有する抗体フラグメント);F(ab’)2(重鎖のヒンジ領域で鎖間ジスルフィド結合により連結された2つのFab’分子;これらのFab’分子は、同じまたは異なるエピトープに向けられたものであり得る);二重特異性Fab(それぞれが異なるエピトープに向けられ得る2つの抗原結合ドメインを有するFab分子);sFvとしても知られる、可変領域を含んでなる一本鎖Fab鎖(10~25アミノ酸の鎖により相互連結された抗体の単一の軽鎖および重鎖の、可変性の抗原結合決定領域);ジスルフィド結合Fv、すなわちdsFv(ジスルフィド結合により相互連結された抗体の単一の軽鎖および重鎖の、可変性の抗原結合決定領域);ラクダ化VH(VH境界のいくつかのアミノ酸が天然ラクダ抗体の重鎖に見られるものである、抗体の単一の重鎖の、可変性の抗原結合決定領域);二重特異性sFv(それぞれが異なるエピトープに向けられ得る2つの抗原結合ドメインを有するsFvまたはdsFv分子);ダイアボディ(第1のsFvのVHドメインが第2のsFvのVLドメインと会合し、かつ、第1のsFvのVLドメインが第2のsFvのVHドメインと会合する場合に形成される二量体化sFv;ダイアボディのこれら2つの抗原結合領域は同じまたは異なるエピトープに向けられ得る);およびトリアボディ(ダイアボディと同様の形式で形成されるが、単一の複合体において3つの抗原結合ドメインが作出される三量体化sFv;これら3つの抗原結合ドメインは同じまたは異なるエピトープに向けられ得る)が含まれる。抗体の誘導体はまた、抗体合体部位の1以上のCDR配列も含む。2以上のCDR配列が存在する場合には、CDR配列は1つの足場に相互連結されてもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、一本鎖Fv(「scFv」)を含んでなる。scFvは、抗体のVHドメインとVLドメインを含んでなり、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖に存在する抗体フラグメントである。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間に、scFvが抗原結合に望まれる構造を形成することを可能とするポリペプチドリンカーをさらに含んでなる。scFvの総説としては、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore編 Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照。
【0209】
本明細書で提供される抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性またはそれを超える多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、PSGL-1ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、またはPSGL-1ポリペプチド、ならびに異種エピトープ、例えば、異種ポリペプチドもしくは固相支持体材料の両方に特異的であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、PSGL-1ポリペプチドの所与のエピトープに対して単一特異性であり、他のエピトープには結合しない。
【0210】
また、本明細書では、PSGL-1および異種ポリペプチドに結合する本明細書で提供される抗体を含んでなる融合タンパク質も提供される。いくつかの実施形態では、抗体が融合される異種ポリペプチドは、細胞表面発現PSGL-1を有する細胞の抗体を標的とするために有用である。
【0211】
また、本明細書では、PSGL-1に結合する抗体のパネルも提供される。いくつかの実施形態では、抗体のパネルは、異なる会合速度定数、異なる解離速度定数、PSGL-1に対する異なる親和性、および/またはPSGL-1に対する異なる特異性を有する。いくつかの実施形態では、これらのパネルは、約10、約25、約50、約75、約100、約125、約150、約175、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、または約1000またはそれを超える抗体を含んでなるまたはからなる。抗体のパネルは、例えば、ELISAのようなアッセイ用などの96ウェルまたは384ウェルプレートで使用することができる。
【0212】
PSGL-1結合試薬の診断使用
本明細書で提供される抗PSGL-1抗体は、本明細書に記載されるまたは当業者に公知のような古典的な免疫組織学的方法を用いて、生体試料のPSGL-1レベルをアッセイするために使用することができる(例えば、Jalkanen et al., 1985, J. Cell. Biol. 101:976-985;およびJalkanen et al., 1987, J. Cell. Biol. 105:3087-3096参照)。タンパク質の遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体に基づく方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが含まれる。好適な抗体アッセイ標識は当技術分野で公知であり、グルコースオキシダーゼなどの酵素標識;ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99Tc)などの放射性同位元素;ルミノールなどの発光標識;およびフルオレセインおよびローダミンなどの蛍光標識ならびにビオチンが含まれる。
【0213】
また、本明細書では、ヒトにおいてVISTA介在疾患、障害または病態の検出および診断も提供される。いくつかの実施形態において、診断は、a)対象に、PSGL-1に結合する有効量の標識抗体を投与すること(例えば、非経口、皮下、または腹腔内);b)投与後に、対象のPSGL-1発現部位への標識抗体の優先的集中を可能とする(かつ結合してない標識分子がバックグラウンドレベルまでクリアランスされる)一定の時間待つこと;c)バックグラウンドレベルを決定すること;およびd)対象において標識抗体を検出し、その結果、バックグラウンドレベルを上回る標識抗体の検出が、その対象がVISTA介在疾患、障害または病態を有することを示すことを含んでなる。バックグラウンドレベルは、検出された標的分子の量を特定の系に関して従前に決定された標準値と比較することを含む様々な方法によって決定することができる。
【0214】
当技術分野において、対象の大きさおよび使用するイメージングシステムが診断画像の作成に必要なイメージング部分の量を決定することは理解されるであろう。放射性同位元素部分の場合、ヒト対象に関して、注入される放射能の量は通常、99Tcで約5~20ミリキュリーの範囲である。その後、標識抗体が特異的タンパク質を含有する細胞の場所に優先的に蓄積する。in vivo腫瘍イメージングは、S.W. Burchiel et al., “Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments.” (Tumor Imagingの第13章: The Radiochemical Detection of Cancer, S.W. Burchiel and B.A. Rhodes編, Masson Publishing Inc. (1982)に記載されている。
【0215】
使用する標識のタイプおよび投与様式を含むいくつかの変数に応じて、対象の部位への標識抗体の優先的集中を可能とし、かつ、結合してない標識抗体がバックグラウンドレベルまでクリアランスされる投与後の時間は、6~48時間または6~24時間または6~12時間である。別の実施形態では、投与後の時間は5~20日または5~10日である。
【0216】
いくつかの実施形態では、VISTA介在疾患、障害または病態を診断するための方法を、例えば、最初の診断の1か月後、最初の診断の6か月後、最初の診断の1年後などに繰り返すことによってVISTA介在疾患、障害または病態の経過観察が行われる。
【0217】
標識分子の存在は、in vivoスキャニングのための当技術分野で公知の方法を用いて対象において検出することができる。これらの方法は、使用する標識のタイプによって異なる。当業者ならば、特定の標識を検出するための適当な方法を決定することができる。本明細書で提供される診断方法で使用可能な方法および装置としては、限定されるものではないが、コンピューター断層撮影法(CT)、全身スキャン、例えば、陽電子放出断層撮影法(PET)、磁気共鳴画像法(MRI)、および超音波検査が含まれる。
【0218】
いくつかの実施形態において、分子は、放射性同位元素で標識され、放射線応答性外科器械を用いて患者において検出される(Thurston et al.、米国特許第5,441,050号)。別の実施形態では、分子は蛍光化合物で標識され、蛍光応答性スキャニング器械を用いて患者において検出される。別の実施形態では、分子は陽電子放射金属で標識され、陽電子放出断層撮影法を用いて患者において検出される。さらに別の実施形態では、分子は常磁性標識で標識され、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて患者において検出される。
【0219】
抗VISTA治療薬
第1の実施形態において、抗VISTA治療薬は、VISTAチェックポイント阻害剤機能を阻害する薬剤である。VISTA阻害機能の阻害は、DNA、RNAまたはタンパク質レベルで行うことができる。複数の実施形態において、阻害核酸(例えば、dsRNA、siRNAまたはshRNA)は、VISTAの発現を阻害するために使用することができる。他の実施形態において、VISTA阻害シグナルの阻害剤は、VISTAに結合するポリペプチド、例えば、可溶性リガンド(例えば、PSGL-1-Fc)、または抗体もしくはその抗原結合フラグメント(本明細書では「抗体分子」とも呼ばれる)である。好ましくは、抗VISTA治療薬は抗体である。
【0220】
VISTA機能を阻害する抗体は、癌を治療するために特に有用である。本発明者らは、従前に、強い腫瘍成長阻害を誘導するVISTAに対する抗体を記載している(WO2014/197849およびWO2016/094837参照、両方とも引用することにより本明細書の一部とされる)。抗癌特性を有する他の抗VISTA抗体も当技術分野で記載されている(例えば、WO2014/039983A1、WO2015/145360A1、WO2015/097536、WO2017/137830、WO2017/181139参照、これらは総て引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる)。
【0221】
このような極めて特異的なおよび/または特異的な抗VISTA抗体(本明細書では「抗VISTA抗体」と呼ばれる)は、ポリクローナル(「抗VISTA PAb」)またはモノクローナル(「抗VISTA MAb」)であり得るが、治療的使用のためには、また、場合によっては、診断または他のin vitro使用のためには、モノクローナル抗体が好ましい。
【0222】
特定の実施形態において、抗体はヒト化抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合フラグメントまたはそれらの任意の組合せである。特定の実施形態において、抗体は、WO2016/094837(例えば、VHドメイン、VLドメイン、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、および/またはVL CDR3を有する、その中に記載されている5B、46A、97A、128A、146C、208A、215A、26A、164A、230A、76E1、53A、259A、33A、39A、124A、175A、321D、141A、51A、353A、または305A(例えば、WO2016/094837の表12~33))に記載されているような、VISTAポリペプチド(例えば、細胞表面発現VISTAもしくは可溶性VISTA)、VISTAフラグメント、またはVISTAエピトープに結合するヒト化モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントである。
【0223】
他の実施形態において、本発明の方法において使用される抗VISTA抗体は、(i)WO2016/094837に記載されるような抗VISTA抗体をVISTAポリペプチド(例えば、細胞表面発現VISTAもしくは可溶性VISTA)、VISTAフラグメント、またはVISTAエピトープへの結合から競合的に遮断(例えば、用量依存的に)し、かつ/または(ii)WO2016/094837に記載されているような抗VISTA抗体(例えば、ヒト化抗VISTA抗体)により結合されるVISTAエピトープに結合する抗体である。他の実施形態において、抗体は、本明細書に記載されるモノクローナル抗体5B、46A、97A、128A、146C、208A、215A、26A、164A、230A、76E1、53A、259A、33A、39A、124A、175A、321D、141A、51A、353A、または305A(例えば、表12~33)またはそれらのヒト化変異体をVISTAポリペプチド(例えば、細胞表面発現VISTAもしくは可溶性VISTA)、VISTAフラグメント、またはVISTAエピトープへの結合への結合から競合的に遮断する(例えば、用量依存的に)。他の実施形態において、抗体は、WO2016/094837(例えば、WO2016/094837の表12~33)に記載されているモノクローナル抗体5B、46A、97A、128A、146C、208A、215A、26A、164A、230A、76E1、53A、259A、33A、39A、124A、175A、321D、141A、51A、353A、もしくは305Aまたはそれらのヒト化変異体(例えば、ヒト化抗VISTA抗体)により結合される(例えば、認識される)VISTAエピトープに結合する。
【0224】
より好ましくは、本発明の方法の抗VISTA抗体は、WO2016/094837に記載の抗体26Aである。第1の実施形態において、この抗体は、3つのCDRを含んでなる重鎖と3つのCDRを含んでなる軽鎖を含んでなり、前記CDRSを表4に示す。別の実施形態では、抗VISTA抗体は、3つのCDRを含んでなる重鎖と3つのCDRを含んでなる軽鎖を含んでなり、前記CDRSを表5に示す。
【0225】
【0226】
【0227】
本開示の抗VISTAモノクローナル抗体は、VISTAに特異的に結合することができる無傷分子、および抗体フラグメント(例えば、FabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメント)の両方を含む。FabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメントは、無傷抗体のFcフラグメントを欠き、無傷抗体よりも、動物または植物の循環からより迅速にクリアランスされ、非特異的組織結合がより少ない可能性がある(Wahl et al., 1983, J. Nucl. Med. 24:316)。従って、抗体フラグメントは、他の適用の中でも治療適用に有用である。
【0228】
用語「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部、一般に、標的結合または可変領域を指す。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメントが含まれる。「Fv」フラグメントは、完全な標的認識・結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの強固な非共有結合的会合の二量体(VH-VL二量体)からなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH-VL二量体の表面の標的結合部位を画定するのは、この立体配置である。多くの場合、これら6つのCDRは抗体に標的結合特異性を付与する。しかしながら、いくつかの場合において、単一可変ドメイン(すなわち標的に特異的なCDRを3つだけ含んでなるFvの半分)であっても、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、標的を認識しそれと結合する能力を有し得る。「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含んでなり、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間に、scFvが標的結合のために望まれる構造を形成することを可能とするポリペプチドリンカーをさらに含んでなる。「シングルドメイン抗体」は、VISTAに対して十分な親和性を示す単一のVHまたはVLドメインから構成される。特定の実施形態において、シングルドメイン抗体は、ラクダ化抗体である(例えば、Riechmann, 1999, Journal of Immunological Methods 231:25-38参照)。
【0229】
Fabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’フラグメントは、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端の、抗体ヒンジ領域由来の1以上のシステインを含む数個の残基の付加により、Fabフラグメントとは異なる。F(ab’)フラグメントは、F(ab’)2ペプシン消化産物のヒンジシステインにおけるジスルフィド結合の切断によって作出される。抗体フラグメントのさらなる化学的組合せは当業者に公知である。
【0230】
本開示の抗VISTAモノクローナル抗体は、キメラ抗体であり得る。用語「キメラ」抗体は、本明細書で使用する場合、ラットまたはマウス抗体などの非ヒト免疫グロブリン由来の可変配列と一般にヒト免疫グロブリン鋳型から選択されるヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体を指す。キメラ抗体を生産するための方法は当技術分野で公知である。例えば、Morrison, 1985, Science 229(4719):1202-7; Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214-221; Gillies et al., 1985, J. Immunol. Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816397号参照、これらは引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。
【0231】
本開示の抗VISTAモノクローナル抗体はヒト化することができる。非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖または非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の標的結合部分配列)である。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、一般には2つの可変ドメインの実質的に総てを含んでなり、ここで、CDR領域の総てまたは実質的には、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FR領域の総てまたは実質的に総てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものであり、「CDRグラフト」と呼ぶことができる。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般にはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものも含んでなり得る。ヒト化抗体を設計する方法を含む抗体のヒト化の方法は当技術分野で公知である。例えば、Lefranc et al., 2003, Dev. Comp. Immunol. 27:55-77; Lefranc et al., 2009, Nucl. Acids Res. 37: D1006-1012; Lefranc, 2008, Mol. Biotechnol. 40: 101-111; Riechmann et al., 1988, Nature 332:323-7; Queen et al.に対する米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号;EP239400;PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;EP592106;EP519596; Padlan, 1991, Mol. Immunol., 28:489-498; Studnicka et al., 1994, Prot. Eng. 7:805-814; Roguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:969-973;および米国特許第5,565,332号参照、これらは総て引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。
【0232】
抗体をコードするポリヌクレオチド
また、本明細書では、PSGL-1(例えば、PSGL-1ポリペプチド、PSGL-1ポリペプチドフラグメント、PSGL-1エピトープ)に結合する本明細書で提供される抗体をコードするヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドも提供される。また、本明細書では、例えば前記に定義されるような高ストリンジェンシー、中ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で本明細書で提供される抗体または改変抗体をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドが提供される。
【0233】
また、本明細書では、VISTA(例えば、VISTAポリペプチド、VISTAポリペプチドフラグメント、VISTAエピトープ)に結合する本明細書で提供される抗体をコードするヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドも提供される。また、本明細書では、例えば前記に定義されるような高ストリンジェンシー、中ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で本明細書で提供される抗体または改変抗体をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドも提供される。
【0234】
特定の実施形態では、本明細書で提供される核酸分子は、本明細書に開示されるVHおよび/またはVLアミノ酸配列をコードする核酸配列、またはそれらの任意の組合せ(例えば、本明細書で提供される抗体、例えば、本明細書で提供される全長抗体、抗体の重鎖および/もしくは軽鎖、または一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列として)を含んでなる、またはからなる。
【0235】
抗体の組換え発現
様々な発現系が、本抗体、例えば、本明細書に記載されるような抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体を発現させるために使用可能である。1つの態様において、このような発現系は、それにより対象とするコード配列が生産され、次に精製され得るビヒクルに相当し、また、適当なヌクレオチドコード配列で一過性にトランスフェクトされた際に本発明の抗体をin situで発現し得る細胞にも相当する。
【0236】
本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含んでなるベクターを提供する。1つの実施形態では、ベクターは、本発明のIgG抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド、すなわち、Fcドメインに突然変異を有する抗体を含む。別の実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、本発明のIgG抗体の軽鎖をコードする。本発明はまた、その融合タンパク質、改変抗体、抗体フラグメント、およびプローブをコードするポリヌクレオチド分子を含んでなるベクターも提供する。
【0237】
抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体などの本明細書に開示される抗体の重鎖および/または軽鎖を発現させるために、前記重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、遺伝子が転写配列および翻訳配列に機能的に連結されるように発現ベクターに挿入する。
【0238】
「機能的に連結された」配列には、対象とする遺伝子と連続する発現制御配列と対象とする遺伝子を制御するためにトランスでまたは遠隔で働く発現制御配列の両方を含む。用語「発現制御配列」は、本明細書で使用する場合、それらが連結されているコード配列の発現およびプロセシングを果たすのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列には、適当な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列およびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;および場合によりタンパク質の分泌を高める配列が含まれる。このような制御配列の性質は宿主生物によって異なり;原核生物では、このような制御配列は一般に、プロモーター、リボゾーム結合部位、および転写終結配列を含み;真核生物では、一般に、このような制御配列はプロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、少なくともその存在が発現およびプロセシングに必須の総ての成分を含むこと意図し、また、その存在が有利である付加的成分、例えば、リーダー配列および融合相手配列も含み得る。
【0239】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すものとする。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、付加的DNAセグメントが連結され得る環状二本鎖DNAループを指す。ベクターの別のタイプはウイルスベクターであり、付加的DNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自律的複製能がある(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。
【0240】
特定のベクターは、それらが機能的に連結された遺伝子の発現を命令し得る。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態である。本明細書では、プラスミドはベクターの最も慣用される形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」は互換的に使用することができる。しかしながら、本発明は、細菌プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来エピソーム、ならびに当業者が本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖の発現を保証するために好都合であることを知っている他の総てのベクターなどのような形態の発現ベクターを含むことを意図する。当業者は、重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドが異なるベクターまたは同じベクターにクローンニングされ得ることを理解するであろう。好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、2つのベクターにクローニングされる。
【0241】
本発明のポリヌクレオチドおよびこれらの分子を含んでなるベクターは、好適な宿主細胞の形質転換のために使用することができる。用語「宿主細胞」は、本明細書で使用する場合、本抗体(例えば、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体)を発現するために組換え発現ベクターが導入された細胞を指すものとする。このような用語は特定の対象細胞だけでなくこのような細胞の後代も指すと意図されることが理解されるべきである。ある種の改変が突然変異または環境の影響のために後世に生じ得ることから、このような後代は実際には親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用されるような「宿主細胞」という用語の範囲内になお含まれる。
【0242】
形質転換は、ポリヌクレオチドを細胞宿主に導入するためのいずれの既知の方法によって行ってもよい。このような方法は当業者に周知であり、デキストラン媒介形質転換、リン酸カルシウム沈殿法、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへの封入、微粒子銃注入およびDNAの核への直接マイクロインジェクションが含まれる。
【0243】
宿主細胞は、本発明のタンパク質を発現するベクターを含む2つ以上の発現ベクターで共トランスフェクトしてもよい。特に、他の発現ベクターは、グリコシル化などの翻訳後修飾に関与する酵素をコードし得る。例えば、宿主細胞は、上記のような抗体(例えば、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体)をコードする第1のベクター、およびグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードする第2のベクターでトランスフェクトすることができる。あるいは、宿主細胞は、抗体(例えば、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体)をコードする第1のベクター、上記のようなグリコシルトランスフェラーゼをコードする第2のベクター、および別のグリコシルトランスフェラーゼをコードする第3のベクターで形質転換することもできる。哺乳動物細胞は、組換え治療用免疫グロブリンの発現のため、特に、完全組換え抗体の発現のために慣用される。例えば、HEK293またはCHO細胞などの哺乳動物細胞と、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要最初期遺伝子プロモーターエレメントを有するものなどの発現シグナルを含有するベクターの組合せが、本抗体、特に、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体を発現させるために有効な系である(Foecking et al., 1986, Gene 45:101; Cockett et al., 1990, Bio/Technology 8:2)。
【0244】
また、挿入配列の発現を調節するまたは所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞を選択することも可能である。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシングは、タンパク質の機能にとって重要であり得る。種々の宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に特徴および特定の機序を有する。対象とする発現抗体の適正な修飾およびプロセシングを保証するために適当な細胞株または宿主系が選択される。ゆえに、一次転写産物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化の細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用され得る。このような哺乳動物宿主細胞としては、限定されるものではないが、CHO、COS、HEK293、NS/0、BHK、Y2/0、3T3または骨髄腫細胞が含まれる(これらの細胞株は総てCollection Nationale des Cultures de Microorganismes、パリ、フランスまたはAmerican Type Culture Collection、マナサス VA, U.S.Aなどの公的な寄託機関から入手可能である。
【0245】
組換えタンパク質の長期高収率生産のためには、安定な発現が好ましい。本発明の1つの実施形態において、抗体(例えば、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体)を安定に発現する細胞株が操作可能である。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを使用するよりもむしろ、宿主細胞を、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、および当業者に公知の他の適当な配列、ならびに選択マーカーを含む適当な発現調節エレメントの制御下、DNAで形質転換させる。外来DNAの導入の後、操作された細胞を富化培地で1~2日増殖させてよく、次いで、選択培地に移行する。組換えプラスミドの選択マーカーは選択に対して耐性を付与し、細胞がプラスミドを染色体に安定に組み込み、細胞株として拡大培養されることを可能とする。安定細胞株を構築するための他の方法は当技術分野で公知である。特に、部位特異的組込みのための方法が開発されている。これらの方法によれば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、および他の適当な配列を含む適当な発現調節エレメントの制御下で形質転換されたDNAは、宿主細胞ゲノムの従前に切断された特異的標的部位に組み込まれる(Moele et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 104(9): 3055-3060;米国特許第5,792,632号;同第5,830,729号;同第6,238,924号;WO2009/054985;WO03/025183;WO2004/067753、これらは総て、引用することにより本明細書の一部とされる)。
【0246】
限定されるものではないが、それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞における単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler et al., Cell 11:223, 1977)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska et al., Proc Natl Acad Sci USA 48:202, 1992)、メチオニンスルホキシミドの存在下でのグルタミン酸シンターゼ遺伝子選択(Adv Drug Del Rev, 58:671, 2006、ならびにLonza Group Ltdのウェブサイトおよび文献)ならびにアデニンスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy et al., Cell 22:817, 1980)を含むいくつかの選択系が使用可能である。また、代謝拮抗物質耐性も以下の遺伝子の選択の基礎として使用可能である:メトトレキサート耐性を付与するdhfr(Wigler et al., Proc Natl Acad Sci USA 77: 357, 1980);ミコフェノール酸耐性を付与するgpt(Mulligan et al., Proc Natl Acad Sci USA 78: 2072, 1981);アミノグリコシドG-418耐性を付与するneo(Wu et al., Biotherapy 3: 87, 1991);およびハイグロマイシン耐性を付与するhygro(Santerre et al., Gene 30: 147, 1984)。組換えDNA技術に関する当技術分野で公知の方法は、所望の組換えクローンを選択するために慣例的に適用可能であり、このような方法は例えば、Ausubel et al.編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1993)に記載されている。抗体の発現レベルは、ベクターの増幅により増大させることができる。抗体を発現するベクター系においてマーカーが増幅可能である場合、培養物中に存在する阻害剤のレベルの増加はマーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅された領域は対象とする抗体(例えば、抗PSGL-1抗体または抗VISTA抗体)をコードする遺伝子と関連しているので、前記抗体の生産もまた増加する(Crouse et al., Mol Cell Biol 3: 257, 1983)。本発明の遺伝子を発現させる別法も存在し、当業者に公知である。例えば、本発明の遺伝子の上流の発現調節エレメントと結合することができる修飾ジンクフィンガータンパク質を操作により作出することができ;前記の操作型ジンクフィンガータンパク質(ZFN)を本発明の宿主細胞で発現させると、タンパク質生産の増大がもたらされる(例えば、Reik et al., Biotechnol. Bioeng., 97(5), 1180-1189, 2006)。さらに、ZFNは、所定のゲノム位置へのDNAの組込みを促し、高効率の部位特異的遺伝子付加をもたらし得る(Moehle et al, Proc Natl Acad Sci USA 104:3055, 2007)。
【0247】
本発明の抗体は、形質転換宿主細胞の培養物を所望の抗体を発現させるために必要な培養条件下で増殖させることにより作製することができる。結果として発現された抗体は次に培養培地または細胞抽出物から精製することができる。可溶型の抗体は培養上清から回収することができる。次にこれを免疫グロブリン分子の精製に関して当技術分野で公知の任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、Fcに対するプロテインAアフィニティーによるなど)、遠心分離、示差溶解度またはタンパク質精製のための他のいずれかの標準的技術によって精製することができる。好適な精製方法は当業者には自明である。
【0248】
抗体複合体および融合タンパク質
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される抗体は、診断薬、検出可能な薬剤もしくは治療薬または任意の他の分子とコンジュゲートまたは組換え的に融合される。コンジュゲートされたまたは組換え的に融合された抗体は、例えば、特定の療法の有効性を決定するなど、臨床試験手順の一部として、VISTA介在疾患、障害または病態の徴候、発症、進行および/または重症度に関して経過観察または予後診断を行うために有用であり得る。
【0249】
このような診断および検出は、例えば、抗体(例えば、抗PSGL-1抗体)を、限定されるものではないが、例えば、限定されるものではないが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどの様々な酵素;限定されるものではないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族;限定されるものではないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンなどの蛍光材料;限定されるものではないが、ルミノールなどの発光物質;限定されるものではないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどの生物発光物質;限定されるものではないが、アクリジニウム系化合物またはHALOTAGなどの化学発光物質;限定されるものではないが、ヨウ素(131I、125I、123I、および121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、および111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Snなどの放射性物質;ならびに様々な陽電子放射断層撮影法を用いる陽電子放射金属、および非放射性常磁性金属イオンを含む検出可能な物質に結合させることによって達成することができる。
【0250】
また、治療部分(または1以上の治療部分)にコンジュゲートされたまたは組換え的に融合された抗体、ならびにそれらの使用も本明細書で提供される。この抗体は、細胞毒素、例えば、細胞増殖抑制剤もしくは細胞破壊剤、治療薬または放射性金属イオン、例えば、α放射体などの治療部分にコンジュゲートするか、または組換え的に融合させることができる。細胞毒素または細胞傷害性薬剤には、細胞に有害ないずれの薬剤も含まれる。治療部分としては、限定されるものではないが、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン);アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、およびシスプラチン);アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧称、ダウノマイシン)およびドキソルビシン);抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧称、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC));オーリスタチン分子(例えば、オーリスタチンPHE、オーリスタチンF、モノメチルオーリスタチンE、ブリオスタチン1、およびドラスタチン(solastatin)10;Woyke et al., Antimicrob. Agents Chemother. 46:3802-8 (2002)、Woyke et al., Antimicrob. Agents Chemother. 45:3580-4 (2001)、Mohammad et al., Anticancer Drugs 12:735-40 (2001)、Wall et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 266:76-80 (1999)、Mohammad et al., Int. J. Oncol. 15:367-72 (1999)参照、これらは総て引用することにより本明細書の一部とされる);ホルモン(例えば、グルココルチコイド、プロゲスチン、アンドロゲン、およびエストロゲン)、DNA修復酵素阻害剤(例えば、エトポシドまたはトポテカン)、キナーゼ阻害剤(例えば、化合物ST1571、メシル酸イマチニブ(Kantarjian et al., Clin Cancer Res. 8(7):2167-76 (2002));細胞傷害性薬剤(例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンおよびそれらの類似体またはホモログ、ならびに米国特許第6,245,759号、同第6,399,633号、同第6,383,790号、同第6,335,156号、同第6,271,242号、同第6,242,196号、同第6,218,410号、同第6,218,372号、同第6,057,300号、同第6,034,053号、同第5,985,877号、同第5,958,769号、同第5,925,376号、同第5,922,844号、同第5,911,995号、同第5,872,223号、同第5,863,904号、同第5,840,745号、同第5,728,868号、同第5,648,239号、同第5,587,459)に開示されている化合物;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、R115777、BMS-214662、ならびに例えば、米国特許第6,458,935号、同第6,451,812号、同第6,440,974号、同第6,436,960号、同第6,432,959号、同第6,420,387号、同第6,414,145号、同第6,410,541号、同第6,410,539号、同第6,403,581号、同第6,399,615号、同第6,387,905号、同第6,372,747号、同第6,369,034号、同第6,362,188号、同第6,342,765号、同第6,342,487号、同第6,300,501号、同第6,268,363号、同第6,265,422号、同第6,248,756号、同第6,239,140号、同第6,232,338号、同第6,228,865号、同第6,228,856号、同第6,225,322号、同第6,218,406号、同第6,211,193号、同第6,187,786号、同第6,169,096号、同第6,159,984号、同第6,143,766号、同第6,133,303号、同第6,127,366号、同第6,124,465号、同第6,124,295号、同第6,103,723号、同第6,093,737号、同第6,090,948号、同第6,080,870号、同第6,077,853号、同第6,071,935号、同第6,066,738号、同第6,063,930号、同第6,054,466号、同第6,051,582号、同第6,051,574号、および同第6,040,305号に開示されているもの);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン;イリノテカン;SN-38;トポテカン;9-アミノカンプトテシン;GG-211(GI147211);DX-8951f;IST-622;ルビテカン;ピラゾロアクリジン;XR-5000;サイントピン;UCE6;UCE1022;TAN-1518A;TAN1518B;KT6006;KT6528;ED-110;NB-506;ED-110;NB-506;およびレベッカマイシン);ブルガレイン;ヘキスト色素33342およびヘキスト色素33258などのDNA副溝結合剤;ニチジン;ファガロニン;エピベルベリン;コラリン;β-ラパコン;BC-4-1;ビスホスホネート(例えば、アレンドロネート、シマドロネート、クロドロネート、チルドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、ネリドロネート、オルパンドロネート、リセドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、ゾレンドロネート)、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、スタチン、セリバスタチン、レスコール、ルピトール、ロスバスタチンおよびアトルバスタチン);アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,277,832号、同第5,998,596号、同第5,885,834号、同第5,734,033号、および同第5,618,709号に開示されているもの);アデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、リン酸フルダラビンおよび2-クロロデオキシアデノシン);イブリツモマブ・チウキセタン(ゼヴァリン(登録商標));トシツモマブ(ベキサール(登録商標)))ならびにそれらの薬学上許容可能な塩、溶媒和物、包接体、およびプロドラッグが含まれる。
【0251】
さらに、本明細書で提供される抗体は、所与の生物学的応答を改変する治療部分または薬物部分にコンジュゲートするか、または組換え的に融合させることができる。治療部分または薬物部分は、古典的化学治療薬に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、毒素、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、コレラ毒素、またはジフテリア毒素;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、γ-インターフェロン、α-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス薬、例えば、TNF-γ、TNF-γ、AIM I(国際公開第WO97/33899号参照)、AIM II(国際公開第WO97/34911号参照)、Fasリガンド(Takahashi et al., 1994, J. Immunol., 6:1567-1574)、およびVEGF(国際公開第WO99/23105号参照)、抗血管新生薬、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンまたは凝固経路の成分(例えば、組織因子);または生物反応修飾物質、例えば、リンホカイン(例えば、インターフェロンγ、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン9(「IL-9」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-12(「IL-12」)、インターロイキン-15(「IL-15」)、インターロイキン-23(「IL-23」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、および顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」))、または増殖因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))、または凝固薬(例えば、カルシウム、ビタミンK、組織因子、例えば、限定されるものではないが、ハーゲマン因子(因子XII)、高分子量キニノゲン(HMWK)、プレカリクレイン(PK)、凝固タンパク質因子II(プロトロンビン)、因子V、XIIa、VIII、XIIIa、XI、XIa、IX、IXa、X、リン脂質、およびフィブリンモノマー)を含み得る。
【0252】
また、融合タンパク質を作製するために異種タンパク質もしくはポリペプチド(またはそのフラグメント、例えば、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90もしくは約100アミノ酸のポリペプチド)と組換え的に融合されたまたは化学的にコンジュゲートされた(共有結合的または非共有結合的コンジュゲーション)抗体ならびにそれらの使用も本明細書で提供される。特に、本明細書で提供される抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)2フラグメント、VHドメイン、VH CDR、VLドメインまたはVL CDR)と異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドとを含んでなる融合タンパク質が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗体が融合されている異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、PSGL-1またはVISTAを発現する細胞などの特定の細胞種に抗体を標的化するために有用である。例えば、特定の細胞種(例えば、免疫細胞)により発現される細胞表面受容体に結合する抗体を本明細書で提供される改変抗体に融合させるまたはコンジュゲートすることができる。
【0253】
さらに、本明細書で提供される抗体を、治療部分、例えば放射性金属イオン、例えば、213Biなどのα放射体、または限定されるものではないが、131In、131LU、131Y、131Ho、131Smを含む放射性金属イオンをポリペプチドとコンジュゲートするのに有用な大環状キレーターとコンジュゲートすることができる。いくつかの実施形態では、大環状キレーターは、リンカー分子を介して抗体に結合させることができる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)である。このようなリンカー分子は当技術分野で一般に知られ、Denardo et al., 1998, Clin Cancer Res. 4(10):2483-90; Peterson et al., 1999, Bioconjug. Chem. 10(4):553-7;およびZimmerman et al., 1999, Nucl. Med. Biol. 26(8):943-50に記載されており、それぞれ引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。
【0254】
さらに、精製を容易にするために、本明細書で提供される抗体をペプチドなどのマーカー配列と融合させることもできる。いくつかの実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、とりわけpQEベクター(QIAGEN,Inc.)に提供されているタグなどのヘキサヒスチジンペプチドであり、それらの多くが市販されている。Gentz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されているように、例えば、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の好都合な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグとしては、限定されるものではないが、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する血球凝集素(「HA」)タグ(Wilson et al., 1984, Cell 37:767)および「FLAG」タグが含まれる。
【0255】
治療部分(ポリペプチドを含む)と抗体の融合またはコンジュゲーションのための方法は周知である、例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (編), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (第2版), Robinson et al. (編), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (編), pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (編), pp. 303-16 (Academic Press 1985), Thorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58; 米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、同第5,723,125号、同第5,783,181号、同第5,908,626号、同第5,844,095号、および同第5,112,946号;EP307,434;EP367,166;EP394,827;PCT公開WO91/06570、WO96/04388、WO96/22024、WO97/34631、およびWO99/04813; Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 10535-10539, 1991; Traunecker et al., Nature, 331:84-86, 1988; Zheng et al., J. Immunol., 154: 5590-5600, 1995; Vil et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:11337-11341, 1992参照、これらは引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。
【0256】
融合タンパク質は、例えば、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(「DNAシャッフリング」と総称される)の技術によって作製することができる。DNAシャッフリングは、本明細書で提供される抗体の活性を変更するために使用可能である(例えば、親和性がより高く、解離速度がより低い抗体)。一般に、米国特許第5,605,793号、同第5,811,238号、同第5,830,721号、同第5,834,252号、および同第5,837,458号;Patten et al., 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33; Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16(2):76-82; Hansson et al., 1999, J. Mol. Biol. 287:265-76;およびLorenzo and Blasco, 1998, Biotechniques 24(2):308-313参照(これらの特許および刊行物はそれぞれ引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる)。抗体、またはコードされる抗体は、組換え前にエラープローンPCR、ランダムなヌクレオチド挿入または他の方法によりランダムな突然変異を誘発することによって変更することができる。本明細書で提供される抗体をコードするポリヌクレオチドを、1以上の異種分子の1以上の成分、モチーフ、切片、部分、ドメイン、フラグメントなどと組み換えることができる。
【0257】
本明細書で提供される抗体はまた、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる米国特許第4,676,980号に記載されているように、抗体ヘテロコンジュゲートを形成するために第2の抗体とコンジュゲートすることもできる。
【0258】
PSGL-1に結合する本明細書で提供される抗体にコンジュゲートされるまたは組換え的に融合される治療部分または薬物は、所望の予防効果または治療効果を達成するために選択されるべきである。いくつかの実施形態では、抗体は、改変抗体である。臨床医または他の医療従事者は、本明細書に記載される抗体と、どの治療部分または薬物をコンジュゲートするかまたは組換えにより融合するかを判断する際に、以下を考慮するべきである:疾患の性質、疾患の重症度、および対象の状態。
【0259】
本明細書で提供される抗体(例えば、抗PSGL-1抗体または抗VISTA)はまた、イムノアッセイまたは標的抗原の精製に特に有用である固相支持体に結合させてもよい。このような固相支持体としては、限定されるものではないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが含まれる。
【0260】
医薬組成物
本明細書で提供される1以上の治療薬(例えば、抗VISTA抗体などの抗VISTA治療薬)を含有する医薬組成物(治療用製剤を含む)は、所望の純度の抗体と任意選択の生理学上許容可能な担体、賦形剤および/または安定剤を混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保存用に調製することができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, PA)。許容可能な担体、賦形剤、および/または安定剤は、使用する用量および濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、およびその他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(残基約10未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはツィーン(商標)、プルロニック(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0261】
本明細書で提供される抗VISTA治療薬、特に、抗VISTA抗体はまた、リポソーム中に処方することもできる。対象とする分子を含有するリポソームは、Epstein et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688; Hwang et al. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030;および米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載のものなどの当技術分野で公知の方法によって調製される。循環時間が延長されたリポソームは米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0262】
特に有用な免疫リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって作製することができる。所望の直径のリポソームを得るためには、規定の孔径のフィルターからリポソームを押し出す。本明細書で提供される抗体のFab’フラグメントは、Martin et al. (1982) J. Biol. Chem. 257:286-288に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介して、これらのリポソームとコンジュゲートさせることができる。場合により化学療法剤(ドキソルビシンなど)がこのリポソーム内に含有されてもよい;Gabizon et al., (1989) J. National Cancer Inst. 81(19):1484参照。
【0263】
本明細書に記載されるものなどの製剤はまた、治療される特定の適応症のために必要な2つ以上の有効化合物を含有し得る。いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)と、互いに悪影響を与えない補完的活性を有する1以上の有効化合物とを含んでなる。このような分子は、意図する目的にとって有効な量で好適に組み合わされて存在する。例えば、本明細書で提供される抗体は、2つ以上の他の治療薬と組み合わせることができる。このような併用療法は、逐次にまたは同時にまたは順に患者に投与することができる。
【0264】
本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)はまた、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれコロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルションにおける、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルなどに封入することもできる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, PAに開示されている。
【0265】
in vivo投与に使用される製剤は無菌であり得る。これは、例えば、濾過除菌膜による濾過により容易に達成される。
【0266】
徐放性調製物も調製することができる。徐放性調製物の適切な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドからなる注入可能なマイクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日より長く分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短期間でタンパク質を放出する。封入された抗体が長時間体内に残ると、37℃での水分への曝露の結果として抗体が変性または凝集する可能性があり、その結果、生物活性の損失および免疫原性の変化が起こることがある。関与する機構によって、安定化のために合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による細胞間S--S結合形成であることが見出された場合、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含量を制御し、適切な添加剤を使用し、特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより安定化が達成され得る。
【0267】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、薬学上許容可能な担体中に、治療上有効な量の本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)の1以上および場合により1以上の予防薬または治療薬(prophylactic of therapeutic agents)を含有する。このような医薬組成物は、VISTA介在疾患、障害または病態の1以上の症状の予防、治療、または緩和において有用である。
【0268】
本明細書で提供される化合物の投与に好適な医薬担体としては、特定の投与様式に好適であることが当業者に公知であるこのような任意の担体が含まれる。
【0269】
さらに、本明細書で提供される抗VISTA治療薬、特に、抗VISTA抗体は、組成物中の唯一の薬学上有効な成分として調剤されてもよいし、または他の有効成分(例えば、1以上の他の予防薬または治療薬)と組み合わせてもよい。
【0270】
組成物は、本明細書で提供される1以上の抗体を含有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、好適な医薬調製物へ、例えば、経口投与の場合には液剤、懸濁剤、錠剤、分散錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤もしくはエリキシル剤に、または非経口投与の場合には無菌液剤もしくは懸濁剤へ、ならびに経皮パッチ調製物およびドライパウダー吸入剤中に調剤される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、当技術分野において周知の技術および手順を使用して医薬組成物に調剤される(Ansel (1985) Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 第4版, p. 126参照)。
【0271】
組成物のいくつかの実施形態において、有効濃度の1以上の抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)を好適な医薬担体と混合する。いくつかの実施形態では、組成物中の化合物の濃度は、投与した際に、VISTA介在疾患、障害もしくは病態、またはその症状を治療、予防、または改善する量を送達するために有効なものである。
【0272】
いくつかの実施形態では、組成物は単位量投与用に調剤される。組成物を調剤するために、重量分率の化合物を、治療される病態が緩和される、予防される、または1以上の症状が改善されるような有効濃度で、選択した担体中に、溶解、懸濁、分散、またはそうでなければ混合する。
【0273】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、治療される患者に対して望ましくない副作用なく治療上有用な効果を示すために十分な有効量で、薬学上許容可能な担体中に含まれる。治療的有効な濃度は、常法を使用してin vitroおよびin vivo系で化合物を試験し、次いでヒトに対する用量についてそれから推定することによって、実験的に決定することができる。
【0274】
医薬組成物中の抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)の濃度は、例えば、その治療薬の物理化学的特徴、投与スケジュール、および投与される量、ならびに当業者に公知の他の因子によって異なる。
【0275】
いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、約0.1ng/mlから約50~100μg/mlまでの抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)の血清濃度を生じる。医薬組成物は、別の実施形態において、1日当たり体重1キログラム当たり約0.001mg~約2000mgの治療薬(例えば、抗体)の用量を提供する。医薬単位投与形は、単位投与形当たり約0.01mg、0.1mgまたは1mg~約500mg、1000mgまたは2000mg、およびいくつかの実施形態では約10mg~約500mgの抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)および/または他の任意選択の必須成分の組合せを提供するように調製することができる。
【0276】
抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、一度で投与することもできるし、またはある時間間隔で投与されるいくつかのより小さな用量へ分割してもよい。正確な用量および治療期間は、治療される疾患の関数であり、公知の試験プロトコールを用いて、またはin vivoもしくはin vitroの試験データから推定することによって、実験的に決定され得ることと理解される。また、濃度および投与値は、緩和される病態の重症度によって変動し得ることに留意されたい。任意の特定の対象に関して、特定の投与計画は、個々の必要性、およびこの組成物を投与する者または組成物の投与を監督する者の専門的判断に従って経時的に調整することができること、また、本明細書に示される濃度範囲は単に例示であって特許請求される組成物の範囲または実施の限定を意図したものでないことが、さらに理解されるべきである。
【0277】
抗VISTA治療薬を混合または添加すると、得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであり得る。得られる混合物の形態は、意図される投与様式および選択される担体またはビヒクル中における化合物の溶解度を含むいくつかの因子によって異なる。有効濃度は、治療される疾患、障害または病態の症状を改善するために十分であり、実験的に決定され得る。
【0278】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、適切な量の化合物またはその薬学上許容可能な誘導体を含有する単位投与形、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、無菌非経口用液剤もしくは懸濁剤、および経口用液剤もしくは懸濁剤、ならびに油-水エマルションで、ヒトおよび動物への投与のために提供される。抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、いくつかの実施形態において、単位投与形または複数回投与形で調剤および投与される。「単位投与」形は、本明細書で使用する場合、当技術分野において公知のように、個々に包装され、ヒトおよび動物対象に適した物理的に分離した単位を指す。各単位用量は、必要とされる医薬担体、ビヒクルまたは希釈剤と会合された、所望の治療効果をもたらすのに十分な所定量の治療薬を含有する。単位投与形の例としては、アンプルおよびシリンジならびに個々に包装された錠剤またはカプセル剤が含まれる。単位投与形は、その分数または倍数で投与することができる。「複数回投与」形は、分離された単位投与形で投与される、単一の容器に包装された複数の同一の単位投与形である。複数回投与形の例としては、バイアル、錠剤もしくはカプセル剤の瓶、またはパイント瓶もしくはガロン瓶が含まれる。従って、複数回投与形は、包装では分離されていない複数の単位用量である。
【0279】
いくつかの実施形態では、1以上の本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、液体医薬製剤である。薬学的に投与可能な液体組成物は、例えば、上記で定義されたような有効化合物と、任意選択の医薬アジュバントとを、例えば、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなどのような担体中に溶解させるか、分散させるか、またはそうでなければ混合し、それによって、溶液もしくは懸濁液を形成させることにより調製することができる。所望により、投与する医薬組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤など、例えば、酢酸塩、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンオレエート、および他のそのような剤などの、少量の非毒性補助物質を含有することもできる。
【0280】
このような投与形を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者に自明である;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, PA参照。
【0281】
0.005%~100%の範囲の治療薬、特に抗体を含有し、残部は非毒性担体で構成される投与形または組成物を作製することができる。これらの組成物の調製方法は、当業者に公知である。
【0282】
経口医薬投与形は、固体、ゲル、または液体である。固体投与形には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、および原末が含まれる。経口錠剤のタイプには、腸溶コーティング、糖衣、またはフィルムコーティングが施されてもよい圧縮された咀嚼可能なロゼンジおよび錠剤が含まれる。カプセル剤は硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルでもよく、顆粒剤および散剤は、当業者に公知の他の成分の組合せとともに非発泡性または発泡性の形態で提供され得る。
【0283】
いくつかの実施形態では、製剤は固体投与形である。いくつかの実施形態では、製剤はカプセル剤または錠剤である。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または同様の性質の化合物の1以上を含有し得る:結合剤;滑沢剤;希釈剤;流動促進剤;崩壊剤;着色剤;甘味剤;着香剤;湿潤剤;腸溶コーティング;およびフィルムコーティング。結合剤の例には、微晶質セルロース、トラガカントガム、グルコース溶液、アラビアガム漿、ゼラチン溶液、糖蜜、ポリビニルピロリジン、ポビドン、クロスポビドン、スクロース、およびデンプン糊が含まれる。滑沢剤には、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、セキショウシ、およびステアリン酸が含まれる。希釈剤には、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、カオリン、塩、マンニトール、およびリン酸二カルシウムが含まれる。流動促進剤には、限定されるものではないが、コロイド状二酸化ケイ素が含まれる。崩壊剤には、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、アルギン酸、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ベントナイト、メチルセルロース、寒天、およびカルボキシメチルセルロースが含まれる。着色剤には、例えば、承認済み水溶性FDおよびC色素のいずれか、その混合物;およびアルミナ水和物に懸濁された水不溶性のFDおよびC色素が含まれる。甘味剤には、スクロース、ラクトース、マンニトール、および人工甘味剤、例えば、サッカリン、ならびに任意の数の噴霧乾燥フレーバーが含まれる。着香剤には、果実などの植物から抽出された天然フレーバー、および好ましい感覚を生じる化合物の合成ブレンド、例えば、限定されるものではないが、ペパーミントおよびサリチル酸メチルが含まれる。湿潤剤には、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、およびポリオキシエチレンラウリルエーテルが含まれる。腸溶コーティングには、脂肪酸、脂肪、ろう、シェラック、アンモニア処理シェラック、および酢酸フタル酸セルロースが含まれる。フィルムコーティングには、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、および酢酸フタル酸セルロースが含まれる。
【0284】
本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、胃の酸性環境からそれを保護する組成物として提供することができる。例えば、組成物は、胃の中でその完全性を維持し、腸の中で有効化合物を放出する腸溶コーティングとして調剤することができる。組成物はまた、制酸剤または他のこのような成分と組み合わせて調剤することもできる。
【0285】
単位投与形がカプセル剤である場合、上記のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有することができる。さらに、単位投与形は、投与単位の物理的形態を改変する様々な他の材料、例えば、糖衣および他の腸溶剤を含有することもできる。化合物はまた、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤、スプリンクル、チューインガムなどの成分として投与することもできる。シロップ剤は、有効化合物に加えて、甘味剤としてスクロース、ならびにある特定の保存剤、色素および着色剤およびフレーバーを含有してもよい。
【0286】
治療薬はまた、所望の作用を損なわない他の有効材料と混合することもできるし、または所望の作用を補う材料、例えば、制酸剤、H2遮断薬、および利尿薬と混合することもできる。有効成分は、本明細書に記載されるような抗VISTA治療薬、特に、抗体、またはその薬学上許容可能な誘導体である。約98重量%までのさらに高い濃度の有効成分を含めてもよい。
【0287】
いくつかの実施形態では、有効成分の溶解を改変または維持するために、当業者に公知のように、錠剤およびカプセル製剤をコーティングすることができる。よって、例えば、それらは、腸内で消化可能な従来のコーティング、例えば、サリチル酸フェニル、ろう、および酢酸フタル酸セルロースでコーティングしてもよい。
【0288】
いくつかの実施形態では、製剤は液体投与形である。液体経口投与形には、非発泡性顆粒剤から再構成された水溶液、エマルション、懸濁液、溶液、および/または懸濁液、ならびに発泡性顆粒剤から再構成された発泡性調製物が含まれる。水溶液には、例えば、エリキシル剤およびシロップ剤が含まれる。エマルションは水中油型または油中水型である。
【0289】
エリキシル剤は、透明な加糖した水アルコール性調製物である。エリキシル剤において使用される薬学上許容可能な担体には溶媒が含まれる。シロップ剤は、糖、例えば、スクロースの高濃度水溶液であり、保存剤を含有してもよい。エマルションは、ある液体が別の液体に小球の形態で分散している二相系である。エマルションにおいて使用される薬学上許容可能な担体は、非水性液体、乳化剤、および保存剤である。懸濁液では、薬学上許容可能な懸濁化剤および保存剤が使用される。液体経口投与形に再構成される非発泡性顆粒剤において使用される薬学上許容可能な物質には、希釈剤、甘味剤、および湿潤剤が含まれる。液体経口投与形に再構成される発泡性顆粒剤において使用される薬学上許容可能な物質には、有機酸および二酸化炭素源が含まれる。上記の投与形の総てにおいて着色剤および着香剤が使用される。
【0290】
溶媒には、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコールおよびシロップが含まれる。保存剤の例には、グリセリン、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウムおよびアルコールが含まれる。エマルションに使用される非水性液の例には、鉱油および綿実油が含まれる。乳化剤の例には、ゼラチン、アラビアガム、トラガカントガム、ベントナイト、および界面活性剤、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが含まれる。懸濁化剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカントガム、ビーガムおよびアラビアガムが含まれる。甘味剤には、スクロース、シロップ、グリセリンおよび人工甘味剤、例えば、サッカリンが含まれる。湿潤剤には、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコールおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルが含まれる。有機酸には、クエン酸および酒石酸が含まれる。二酸化炭素源には、重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが含まれる。着色剤には、認可済み水溶性FDおよびC色素のいずれか、ならびにそれらの混合物が含まれる。着香剤には、果実などの植物から抽出された天然フレーバー、および好ましい味覚を生じる化合物の合成ブレンドが含まれる。
【0291】
固体投与形の場合、例えば、炭酸プロピレン、植物油、またはトリグリセリド中の溶液または懸濁液は、いくつかの実施形態において、ゼラチンカプセル中に封入される。このような溶液ならびにその調製および封入は、米国特許第4,328,245号;同第4,409,239号;および同第4,410,545号に開示されている。液体投与形の場合、例えば、ポリエチレングリコール中の溶液は、投与のために簡単に測定される十分な量の薬学上許容可能な液体担体、例えば、水で希釈することができる。
【0292】
あるいは、液体または半固体経口製剤は、有効化合物または塩を植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)およびその他のこのような担体に溶解または分散させ、これらの溶液または懸濁液を硬ゼラチンカプセルシェルまたは軟ゼラチンカプセルシェルに封入することによって調製することができる。他の有用な製剤としては、米国特許第RE28,819号および同第4,358,603号に示されているものが含まれる。簡単に述べれば、このような製剤には、限定されるものではないが、本明細書で提供される化合物、ジアルキル化モノ-またはポリ-アルキレングリコール(限定されるものではないが、1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテルを含む、ここで、350、550および750はポリエチレングリコールのおよその平均分子量を指す)、および1以上の抗酸化剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、ケファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸およびそのエステル、ならびにジチオカルバメートを含有するものが含まれる。
【0293】
他の製剤には、限定されるものではないが、薬学上許容可能なアセタールを含むアルコール水溶液が含まれる。これらの製剤において使用されるアルコールは、限定されるものではないが、プロピレングリコールおよびエタノールを含む、1以上のヒドロキシル基を有する薬学上許容可能な任意の水混和性溶媒である。アセタールには、限定されるものではないが、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタールが含まれる。
【0294】
非経口投与は、いくつかの実施形態において、皮下、筋肉内、腫瘍内、または静脈内いずれかの注射を特徴とし、これもまた本明細書において企図される。注射剤は、液体溶液もしくは懸濁液として従来の形態で、注射の前に液体に溶解もしくは懸濁させるのに適した固体形態で、またはエマルションとして調製することができる。注射剤、溶液、およびエマルションはまた1以上の賦形剤を含有する。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールである。さらに、所望により、投与される医薬組成物はまた、微量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、ならびに他のこのような薬剤、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、およびシクロデキストリンを含有することもできる。
【0295】
一定レベルの用量が維持されるような、遅延放出システムまたは徐放性システムの移植(例えば、米国特許第3,710,795号参照)も本明細書において企図される。簡単に述べれば、本明細書で提供される化合物は、例えば、体液に不溶性のポリマー外膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルの酢酸ビニルと塩化ビニリデンとエチレンとプロピレンのコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、およびエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーで囲まれた固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または無可塑ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー、例えば、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのヒドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、および部分的に加水分解した架橋ポリ酢酸ビニルの中に分散される。治療薬(例えば、抗体)は、放出速度制御段階において、ポリマー外膜を通って拡散する。このような非経口組成物に含まれる治療薬の量は、その特定の性質、ならびに化合物の活性および対象の必要性に強く依存する。
【0296】
非経口投与のための調製物には、注射にすぐに使える無菌溶液、皮下注射用錠剤を含む、使用直前に溶媒と合わせるだけの無菌の乾燥可溶性製品、例えば、凍結乾燥粉末、注射にすぐに使える無菌懸濁液、使用直前にすぐにビヒクルと合わせるだけの無菌の乾燥不溶性製品、および無菌エマルションが含まれる。溶液は水性でもまたは非水性でもよい。
【0297】
静脈内投与する場合、好適な担体には、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、ならびに増粘剤および可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含有する溶液、ならびにその混合物が含まれる。
【0298】
非経口調製物において使用される薬学上許容可能な担体には、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、バッファー、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁化剤および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、ならびに他の薬学上許容可能な物質が含まれる。
【0299】
水性ビヒクルの例には、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、等張デキストロース注射剤、滅菌水注射剤、デキストロースおよび乳酸加リンゲル注射剤が含まれる。非水性非経口ビヒクルには、植物由来の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、および落花生油が含まれる。多用量容器として包装された非経口調製物には、静菌濃度または静真菌濃度の抗菌剤を添加することができ、これには、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステルおよびp-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、ならびに塩化ベンゼトニウムが含まれる。等張剤には塩化ナトリウムおよびデキストロースが含まれる。バッファーにはリン酸塩およびクエン酸塩が含まれる。抗酸化剤には重硫酸ナトリウムが含まれる。局所麻酔剤には塩酸プロカインが含まれる。懸濁化剤および分散剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが含まれる。乳化剤には、ポリソルベート80(ツィーン(登録商標)80)が含まれる。金属イオン封鎖剤または金属イオンキレート剤にはEDTAが含まれる。医薬担体には、水混和性ビヒクル用のエチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール;ならびにpH調節用の水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸も含まれる。
【0300】
薬学上有効な抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)の濃度は、注射が所望の薬理学的効果をもたらす有効量を提供するように調節される。正確な用量は、当技術分野において公知であるように、患者または動物の年齢、体重、および状態によって異なる。
【0301】
単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアル、または針付き注射器として包装することができる。非経口投与用の総ての調製物は、当技術分野において公知であり、かつ実施されるように無菌とすることができる。
【0302】
例示として、有効化合物を含有する無菌水溶液の静脈内注入または動脈内注入は有効な投与様式である。別の実施形態様は、所望の薬理学的効果を生じるように必要に応じて注射される有効物質を含有する無菌の水性または油性溶液または懸濁液である。
【0303】
注射剤は局所投与用および全身投与用に設計される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、治療される組織に対して、少なくとも約0.1%w/w~約90%w/wまたはそれを超える濃度、いくつかの実施形態では、1%w/wを超える濃度の有効化合物を含有するように調剤される。
【0304】
抗体などの治療薬は、微粉化形態または他の好適な形態で懸濁させることができる。結果として得られる混合物の形態は、意図される投与様式、および選択される担体またはビヒクル中での化合物の溶解度を含むいくつかの因子によって異なる。有効濃度はVISTA介在疾患、障害または病態の症状を改善するために十分なものであり、実験的に決定することができる。
【0305】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、溶液、エマルション、および他の混合物として投与するために再構成することができる凍結乾燥粉末である。それらはまた固体またはゲルとして再構成および調剤してもよい。
【0306】
凍結乾燥粉末は、本明細書で提供される抗体などの治療薬またはその薬学上許容可能な誘導体を好適な溶媒に溶解させることによって調製される。いくつかの実施形態では、凍結乾燥粉末は無菌である。溶媒は、安定性を改善する賦形剤、または粉末もしくは粉末から調製された再構成溶液の他の薬理学的成分を含有してもよい。使用可能な賦形剤としては、限定されるものではないが、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、または他の好適な薬剤が含まれる。溶媒はまた、バッファー、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムバッファー、または当業者に公知の他のこのようなバッファー、いくつかの実施形態では、pHがほぼ中性のバッファーを含有してもよい。続いて、溶液を濾過除菌した後に当業者に公知の標準的な条件下で凍結乾燥を行うことによって、所望の製剤が得られる。いくつかの実施形態では、結果として得られる溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、化合物の単回用量または複数回用量を含有する。凍結乾燥粉末は、約4℃~室温などの適切な条件下で保管することができる。
【0307】
注射用水を用いてこの凍結乾燥粉末を再構成すると、非経口投与において使用するための製剤が得られる。再構成のために、凍結乾燥粉末を滅菌水または他の好適な担体に添加する。正確な量は、選択される化合物によって異なる。このような量は実験的に決定することができる。
【0308】
局部用混合物は、局所投与および全身投与に関して記載した通りに調製される。結果として得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであり得、クリーム、ゲル、軟膏、エマルション、溶液、エリキシル剤、ローション剤、懸濁液、チンキ剤、パスタ剤、フォーム剤、エアロゾル剤、灌注剤、スプレー剤、坐剤、包帯、皮膚パッチ、または局部投与に好適な他の任意の製剤として調剤することができる。
【0309】
本明細書に提供される治療薬は、吸入によるなどの局部適用のためのエアロゾル剤として調剤することができる(例えば、炎症性疾患、特に喘息の治療に有用なステロイドの送達のためのエアロゾル剤を記載している米国特許第4,044,126号、同第4,414,209号、および同第4,364,923号参照)。気道への投与のためのこれらの製剤は、単独で、またはラクトースなどの不活性担体と組み合わせて、ネブライザー用のエアロゾルまたは溶液の形態をとってもよく、または吹送用の超微粉末としてもよい。このような場合、製剤の粒子は、いくつかの実施形態では、50ミクロン未満、いくつかの実施形態では、10ミクロン未満の直径を有する。
【0310】
治療薬は、局所適用または局部適用のために、例えば、皮膚および眼などの粘膜への局部適用のために、ゲル、クリーム、およびローション剤の形態で、ならびに眼への適用または槽内適用もしくは脊髄内適用のために調剤することができる。局部投与は、経皮送達のために、眼もしくは粘膜への投与または吸入療法のためにも企図される。有効化合物単独、または他の薬学上許容可能な賦形剤と組み合わせた鼻用溶液も投与することができる。
【0311】
これらの溶液、特に、眼への使用を目的とした溶液は、適当な塩で0.01%~10%等張液、pH約5~7として処方することができる。
【0312】
他の投与経路、例えば、イオン導入装置および電気泳動装置を含む経皮パッチ、ならびに直腸投与も本明細書において企図される。
【0313】
イオン導入装置および電気泳動装置を含む経皮パッチは当業者に周知である。例えば、このようなパッチは、米国特許第6,267,983号、同第6,261,595号、同第6,256,533号、同第6,167,301号、同第6,024,975号、同第6,010715号、同第5,985,317号、同第5,983,134号、同第5,948,433号、および同第5,860,957号に開示されている。
【0314】
直腸投与用の医薬投与形は、全身作用のための直腸用坐剤、カプセル剤、および錠剤である。直腸用坐剤は本明細書において使用され、体温で融解または軟化して1以上の薬理学的または治療的に有効な成分を放出する、直腸に挿入するための固体本体を意味する。直腸用坐剤において使用される薬学上許容可能な物質は、基剤またはビヒクルおよび融点を上昇させる薬剤である。基剤の例としては、カカオ脂(テオブロマ脂)、グリセリン-ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、ならびに脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの適当な混合物が含まれる。様々な基剤の組合せを使用することができる。坐剤の融点を上昇させる薬剤には、鯨ろうおよびろうが含まれる。直腸用坐剤は、圧縮法または成形によって調製することができる。直腸用坐剤の重量は、いくつかの実施形態では、約2~3gmである。
【0315】
直腸投与用の錠剤およびカプセル剤は、経口投与用の製剤と同じ薬学上許容可能な物質を用いて、経口投与用の製剤と同じ方法によって製造することができる。
【0316】
本明細書で提供される治療薬(例えば、抗体)および他の組成物はまた、特定の組織、受容体、または治療される対象の身体の他の領域へ標的化されるように調剤されてもよい。このような多くの標的化法が当業者に周知である。本組成物に使用するためのこのような総ての標的化法が本明細書において企図される。標的化法の非限定例については、例えば、米国特許第6,316,652号、同第6,274,552号、同第6,271,359号、同第6,253,872号、同第6,139,865号、同第6,131,570号、同第6,120,751号、同第6,071,495号、同第6,060,082号、同第6,048,736号、同第6,039,975号、同第6,004,534号、同第5,985,307号、同第5,972,366号、同第5,900,252号、同第5,840,674号、同第5,759,542号、および同第5,709,874号参照。
【0317】
いくつかの実施形態において、組織標的化リポソーム、例えば、腫瘍標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液もまた、薬学上許容可能な担体として好適であり得る。これらは、当業者に周知の方法に従って調製することができる。例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるようにリポソーム製剤を調製することができる。簡単に述べれば、卵ホスファチジルコリンと脳ホスファチジルセリン(7:3のモル比)をフラスコの内側で乾燥させることによって多重ラメラ小胞(MLV)のようなリポソームを形成することができる。二価のカチオンを欠いているリン酸緩衝食塩水(PBS)中の本明細書で提供される化合物の溶液を添加し、脂質膜が分散されるまでフラスコを振盪する。得られた小胞を洗浄して、封入されていない化合物を除去し、遠心分離によってペレット化し、その後、PBSに再懸濁させる。
【0318】
治療、予防および/または緩和の方法
別の態様において、本発明はまた、患者においてVISTA介在疾患障害または病態の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に関する。本明細書では、VISTA介在疾患、障害または病態、特に、VISTA介在癌などの疾患、障害または病態の1以上の症状の予防、治療および/または緩和において使用するための、本明細書で提供される抗VISTA-療法(例えば、抗VISTA抗体)が提供される。有利には、前記VISTA介在疾患、障害または病態は、本明細書で提供される方法の1つによって従前に検出または診断されている。
【0319】
ある実施形態において、本発明は、患者におけるVISTA介在疾患、障害、または病態の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に関し、前記VISTA介在疾患、障害または病態は、本明細書で提供される方法の1つによって従前に検出または診断されている。よって、言い換えれば、本発明は、患者におけるVISTA介在疾患、障害、または病態を治療するための抗VISTA治療薬に関し、この抗VISTA治療薬は、上記の方法を用いてVISTA介在疾患、障害、または病態と診断された患者に投与される。
【0320】
いくつかの実施形態では、本明細書において、VISTA介在疾患、障害もしくは病態の管理、予防、もしくは治療および/またはVISTA介在疾患、障害もしくは病態の1以上の症状の緩和において使用するための本明細書で提供される1以上の抗体(例えば、抗VISTA抗体)を含んでなる組成物が提供される。例示的なVISTA介在疾患、障害または病態としては、細胞増殖性障害、腫瘍、および移植片対宿主病(GVHD)、またはそれらの症状が含まれる。好ましくは、前記VISTA介在疾患、障害または病態は癌である。
【0321】
よって本明細書において、患者においてVISTA介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)が提供され、前記使用は、
a)前記対象の生体試料をPSGL-1核酸またはタンパク質に特異的に結合することができる試薬と接触させること;および
b)前記試薬と前記生体試料との結合を定量し、前記試料におけるPSGL-1の発現レベルを決定すること
を含んでなる。
【0322】
好ましい実施形態によれば、本使用は、対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当な尺度と比較することにより腫瘍をスコア化する工程をさらに含んでなる。
【0323】
別の実施形態では、本発明は、患者におけるVISTA介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に関し、前記使用は、上記のような前記腫瘍のPSGL-1状態の事前の決定を含んでなる。この実施形態によれば、[PSGL-1(+)]である腫瘍はVISTA介在癌の指標となり、よって、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)による治療に応答し得る。
【0324】
別の好ましい実施形態によれば、本使用は、対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを参照レベルと比較することをさらに含んでなる。
【0325】
この好ましい実施形態によれば、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、患者におけるVISTA介在癌の治療において使用するためのものであり、前記使用は、
a)前記対象の生体試料における、例えば、前記生体試料中の腫瘍微小環境の免疫浸潤物によるPSGL-1の発現レベルを決定すること;
b)工程a)の発現レベルを参照レベルと比較すること;および
c)工程a)の発現レベルが参照レベルよりも高い場合にVISTA介在癌を判定すること
を含んでなる。
【0326】
別の好ましい実施形態によれば、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、患者におけるVISTA介在癌の治療において使用するためのものであり、前記使用は、
a)前記対象の生体試料における、例えば、前記生体試料中の腫瘍微小環境の免疫浸潤物によるPSGL-1の発現レベルを決定すること;
b)工程a)の発現レベルを参照レベルと比較すること;および
c)工程a)の発現レベルが参照レベルよりも高い場合にVISTA介在癌を診断すること
を含んでなる。
【0327】
有利には、本発明の方法は、
・対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当な尺度と比較することにより腫瘍をスコア化する工程;および
・対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを参照レベルと比較する工程
の両方を含んでなる。
【0328】
有利には、抗VISTA治療薬の上記使用は、上記で詳細に述べたようにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを決定することをさらに含んでなる。このような場合、PSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベル、またはその相対発現レベルが参照レベルより高ければ、VISTA介在癌を示す。
【0329】
別の実施形態によれば、本発明は、患者におけるVISTA介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に向けられ、前記使用は、 a)前記対象の生体試料をPSGL-1核酸またはタンパク質に特異的に結合することができる試薬と接触させること;および
b)前記試薬と前記生体試料との結合を定量すること、よって、前記試料におけるPSGL-1の発現レベルを決定すること;および
c)工程a)のレベルに基づいて抗VISTA治療薬の治療を適合させること
を含んでなる。
【0330】
好ましい実施形態によれば、本使用は、対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当な尺度と比較することにより腫瘍をスコア化する工程をさらに含んでなる。
【0331】
別の実施形態では、本発明は、患者におけるVISTA介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に関し、前記使用は、上記のような前記腫瘍のPSGL-1状態の事前の決定を含んでなる。この実施形態によれば、[PSGL-1(+)]である腫瘍はVISTA介在癌の指標となり、よって、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)による治療に応答し得る。
【0332】
別の好ましい実施形態によれば、本使用は、対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを参照レベルと比較することをさらに含んでなる。
【0333】
前記の抗VISTA治療薬治療の適合は、以下からなり得る:
患者が抗VISTA治療薬に不応であると診断された場合には、前記抗VISTA治療薬治療の低減もしくは抑制、または
患者が抗VISTA治療薬に応答すると診断された場合には、前記VISTA治療薬治療の継続。
【0334】
工程a)の発現レベルと参照レベルの間でPSGL-1発現に違いがあれば、患者は前記治療に応答している。例えば、工程a)の発現レベルと治療される前に得られた患者由来の第2の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルの間のPSGL-1発現の違いは、前記患者が前記治療に応答しているかどうかを示す。有利には、治療される前に得られた患者由来の第2の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルに比べて工程a)のPSGL-1発現レベルが高ければ、前記患者が前記治療に応答していることを示す。
【0335】
いくつかの実施形態では、上記使用は、PSGL-1に加えてVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを決定すること、および第1の生体試料におけるPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベル、またはその相対発現レベルを、治療される前に得られた患者由来の第2の生体試料におけるPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベル、またはその相対発現レベルと比較することを含んでなる。この場合、第2の生体試料におけるPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルまたは相対発現レベルに比べて、第1の生体試料における差次的なPSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルまたは相対発現レベルが、患者が治療に応答していることを示す。
【0336】
この方法のいくつかの態様において、この治療は、本明細書に記載されるような抗VISTA抗体および/または抗PSGL-1抗体を投与することを含む。
【0337】
いくつかの態様において、この方法は、第1の生体試料が腫瘍微小環境の免疫浸潤物を含んでなることを含む。
【0338】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるようなもの、またはその組成物を含む、治療上有効な量の抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)を対象に投与することにより本明細書に記載される疾患、障害または病態を予防または治療するための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、疾患、障害または病態を治療するための方法は、抗VISTA抗体ならびに薬学上許容可能な担体、賦形剤および/または安定剤を含んでなる、治療上有効な量の医薬組成物を対象に投与することを含んでなる。本明細書で提供される方法はまた、場合により、本明細書に記載されるもの(例えば、抗VISTA抗体)などの少なくとも1つの付加的治療薬を、別の治療としてまたは組み合わせて含むことができる。また、VISTA介在疾患、障害または病態などの疾患、障害または病態の1以上の症状の治療、予防、および/または緩和において使用するための、本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)を含んでなる組成物(医薬組成物を含む)も本明細書に記載される。例示的VISTA介在疾患、障害または病態としては、細胞増殖性障害(例えば、癌もしくは腫瘍)またはその症状が含まれる。
【0339】
いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害などのVISTA介在疾患、障害、または病態の1以上の症状の予防、治療および/または緩和において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)を含んでなる組成物が本明細書に記載される。細胞増殖性障害には、癌または腫瘍形成、またはその症状が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害は、VISTAの発現および/または活性の増強に関連する。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害は、癌細胞の表面のVISTA発現の増強に関連する。
【0340】
別の態様において、本発明はまた、患者におけるPSGL-1介在疾患障害または病態の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に関連する。PSGL-1介在疾患、障害または病態、特に、PSGL-1介在癌などの疾患、障害または病態の1以上の症状の予防、治療および/または緩和において使用するための、本明細書で提供される抗VISTA-療法(例えば、抗VISTA抗体)が本明細書で提供される。有利には、前記PSGL-1介在疾患、障害または病態は、本明細書で提供される方法の1つにより従前に検出または診断されている。
【0341】
ある実施形態において、本発明は、患者におけるPSGL-1介在疾患、障害、または病態の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に関し、前記PSGL-1介在疾患、障害または病態は、本明細書で提供される方法の1つにより従前に検出または診断されている。よって、言い換えれば、本発明は、患者におけるPSGL-1介在疾患、障害、または病態を治療するための抗VISTA治療薬に関し、この抗VISTA治療薬は、上記の方法を用いてPSGL-1介在疾患、障害、または病態と診断された患者に投与される。
【0342】
いくつかの実施形態では、PSGL-1介在疾患、障害もしくは病態の管理、予防、もしくは治療および/またはPSGL-1介在疾患、障害もしくは病態の1以上の症状の緩和において使用するための本明細書で提供される1以上の抗体s(例えば、抗VISTA抗体)を含んでなる組成物が本明細書で提供される。例示的PSGL-1介在疾患、障害または病態としては、細胞増殖性障害、腫瘍、および移植片対宿主病(GVHD)、またはその症状が含まれる。好ましくは、前記PSGL-1介在疾患、障害または病態は癌である。
【0343】
よって、本明細書では、患者におけるPSGL-1介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)が提供され、前記使用は、
c)前記対象の生体試料をPSGL-1核酸またはタンパク質に特異的に結合することができる試薬と接触させること;および
d)前記試薬と前記生体試料との結合を定量すること、よって、前記試料におけるPSGL-1の発現レベルを決定すること
を含んでなる。
【0344】
好ましい実施形態によれば、本使用は、対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当な尺度と比較することにより腫瘍をスコア化する工程をさらに含んでなる。
【0345】
別の実施形態では、本発明は、患者におけるPSGL-1介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に関し、前記使用は、上記のような前記腫瘍のPSGL-1状態の事前の決定を含んでなる。この実施形態によれば、[PSGL-1(+)]である腫瘍がPSGL-1介在癌の指標となり、よって、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)による治療に応答し得る。
【0346】
別の好ましい実施形態によれば、本使用は、対象の生体試料(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを参照レベルと比較することをさらに含んでなる。
【0347】
この好ましい実施形態によれば、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、患者におけるPSGL-1介在癌の治療において使用するためのものであり、前記使用は、
d)前記対象の生体試料における、例えば、前記生体試料の腫瘍微小環境の免疫浸潤物によるPSGL-1の発現レベルを決定すること;
e)工程a)の発現レベルを参照レベルと比較すること;および
f)工程a)の発現レベルが参照レベルより高い場合にPSGL-1介在癌を判定すること
を含んでなる。
【0348】
別の好ましい実施形態によれば、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、患者におけるPSGL-1介在癌の治療において使用するためのものであり、前記使用は、
d)前記対象の生体試料における、例えば、前記生体試料の腫瘍微小環境の免疫浸潤物によるPSGL-1の発現レベルを決定すること;
e)工程a)の発現レベルを参照レベルと比較すること;および
f)工程a)の発現レベルが参照レベルより高い場合にPSGL-1介在癌を判定すること
を含んでなる。
【0349】
有利には、本発明の方法は、
・対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当な尺度と比較することにより腫瘍をスコア化する工程;および
・対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを参照レベルと比較する工程
の両方を含んでなる。
【0350】
有利には、抗VISTA治療薬の上記使用は、上記で詳細に述べたようにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベルを決定することをさらに含んでなる。この場合、PSGL-1ならびにVISTA、CD11b、CD33、CD4、およびCD8のうち少なくとも1つの発現レベル、またはその相対発現レベルが参照レベルより高ければ、PSGL-1介在癌を示す。
【0351】
別の実施形態によれば、本発明は、患者におけるPSGL-1介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に向けられ、前記使用は、
d)前記対象の生体試料をPSGL-1核酸またはタンパク質に特異的に結合することができる試薬と接触させること;および
e)前記試薬と前記生体試料との結合を定量すること、よって、前記試料におけるPSGL-1の発現レベルを決定すること;および
f)工程a)のレベルに基づいて抗VISTA治療薬の治療を適合させること
を含んでなる。
【0352】
好ましい実施形態によれば、本使用は、対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当な尺度と比較することにより腫瘍をスコア化する工程をさらに含んでなる。
【0353】
別の実施形態では、本発明は、患者におけるPSGL-1介在癌の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)に関し、前記使用は、上記のような前記腫瘍のPSGL-1状態の事前の決定を含んでなる。この実施形態によれば、[PSGL-1(+)]である腫瘍がPSGL-1介在癌の指標となり、よって、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)による治療に応答し得る。
【0354】
別の好ましい実施形態によれば、本使用は、対象の生体試料における(例えば、腫瘍微小環境の免疫浸潤物による)PSGL-1の発現レベルを参照レベルと比較することをさらに含んでなる。
【0355】
前記の抗VISTA治療薬治療の適合は、以下からなり得る:
患者が抗VISTA治療薬に不応であると診断された場合には、前記抗VISTA治療薬治療の低減もしくは抑制、または
患者が抗VISTA治療薬に応答すると診断された場合には、前記VISTA治療薬治療の継続。
【0356】
工程a)の発現レベルと参照レベルの間でPSGL-1発現に違いがあれば、患者は前記治療に応答している。例えば、工程a)の発現レベルと治療される前に得られた患者由来の第2の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルの間のPSGL-1発現の違いは、前記患者が前記治療に応答しているかどうかを示す。有利には、治療される前に得られた患者由来の第2の生体試料におけるPSGL-1の発現レベルに比べて工程a)のPSGL-1発現レベルが高ければ、前記患者が前記治療に応答していることを示す。
【0357】
治療、予防される、またはその症状が本明細書で提供される抗体により緩和され得る細胞増殖性障害の例としては、限定されるものではないが、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、または骨髄腫)、膀胱癌、乳癌、結腸癌、結合組織癌、直腸癌、胃癌、食道癌、肺癌、喉頭癌、腎臓癌、口腔癌、卵巣癌、もしくは前立腺癌、または肉腫、黒色腫、もしくは神経膠腫、またはこれらの癌のいずれもの転移が含まれる。例示的血液癌としては、限定されるものではないが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性単球性白血病(AMoL)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、限局性骨髄腫または髄外性骨髄腫が含まれる。
【0358】
いくつかの実施形態では、血液癌はリンパ腫である。他の実施形態では、血液癌は白血病である。いくつかの実施形態では、血液癌は骨髄腫である。別の実施形態では、血液癌は急性骨髄性白血病(AML)である。別の実施形態では、血液癌は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、血液癌は慢性骨髄性白血病(CML)である。別の実施形態では、血液癌は慢性リンパ球性白血病(CLL)である。別の実施形態では、血液癌は急性単球性白血病(AMoL)である。別の実施形態では、血液癌はホジキンリンパ腫である。別の実施形態では、血液癌は非ホジキンリンパ腫である。別の実施形態では、血液癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態では、血液癌は形質細胞腫である。別の実施形態では、血液癌は限局性骨髄腫である。別の実施形態では、血液癌は髄外性骨髄腫である。
【0359】
いくつかの実施形態では、血液癌は、骨髄異形成症候群、急性白血病、例えば、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病、T前駆細胞急性リンパ芽球性白血病、バーキット白血病(バーキットリンパ腫)、または急性二重表現型白血病;慢性白血病、例えば、慢性骨髄性リンパ腫、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性単球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、またはB細胞前リンパ球性白血病;有毛細胞リンパ腫;T細胞前リンパ球性白血病;またはリンパ腫、例えば、組織球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症)、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞新生物(例えば、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、単クローン性免疫グロブリン沈着症、またはH鎖病)、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫(セザリー症候群)、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖症(例えば、原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫またはリンパ腫様丘疹症)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、非特定型未分化大細胞型リンパ腫、ホジキンリンパ腫または結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫である。
【0360】
本明細書に記載される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、治療目的でヒトに投与することができる。さらに、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、獣医学的目的のためにまたはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応するVISTAを発現する非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類、ブタ、ラット、またはマウス)に投与することもできる。後者に関して、このような動物モデルは、本明細書で提供される抗体の治療効力を評価する(例えば、用量および投与の経過を試験する)ために有用であり得る。
【0361】
いくつかの実施形態では、抗VISTA治療薬は、VISTAのPSGL-1への結合におより媒介されるT細胞機能を調節する方法において使用可能な抗体である。このような方法は、T細胞を本明細書に記載される抗VISTA抗体に接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、抗PSGL-1抗体は、PSGL-1のP-セレクチン、L-セレクチンまたはE-セレクチンへの結合を遮断も阻害もしない。いくつかの実施形態では、T細胞機能を調節するための方法は、本明細書で提供される抗VISTA抗体を含んでなる有効量の組成物を対象に投与することを含む。いくつかの態様において、調節されるT細胞機能には、T細胞の活性化の増増強が含まれる。このようなT細胞の活性化は、T細胞の増殖の増大をさらに含み得る。免疫応答の調節をアッセイするための方法は当業者に周知であり、当業者はこのようなアッセイを容易に行うことができると理解される。
【0362】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるものを含む、抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)または抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)を含んでなる組成物は単独で、または別の化合物もしくは治療と組み合わせて使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、他の化合物は、共抑制分子に対するアンタゴニストまたは共刺激分子に対するアゴニストである。このような実施形態において、この併用療法は、活性化されたT細胞による免疫系の、化合物または治療のいずれかの個々の投与よりも大きい再活性化またはde novo活性化をもたらす。この免疫系の活性化は、癌治療(例えば、血液癌治療)に関するものを含め、VISTA介在疾患、障害または病態の治療において極めて有益な生理反応をもたらし得る。
【0363】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、治療上有効な量の抗VISTA抗体を治療上有効な量の、共抑制分子に対するアンタゴニストと組み合わせて投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、共抑制分子は、CD86、CD80、PDL-1、PDL-2、CTLA-4、PD1、LAG3、BTNL2、B7-H3、B7-H4、ブチロフィリン、CD48、CD244、TIM-3、CD200R、CD200、CD160、BTLA、HVEM、LAIR1、TIM1、ガレクチン9、TIM3、CD48、2B4、CD155、CD112、CD113およびTIGITからなる群から選択される。共抑制分子に対するアンタゴニストには、共抑制分子に対する抗体が含まれる。Mercier et al., Frontiers in Immunology, 6:418 (2015)、Kyi et al., FEBS Letters, 588:368-376 (2014)およびPardoll, Nature Reviews, 12:252-264 (2012)に記載されているものなど、他の共抑制分子に対するアンタゴニストも当技術分野で周知であることが認識される。この実施形態によれば、本発明は、上記のようにVISTA介在腫瘍の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)の使用に関し、前記使用は、共抑制分子に対するアンタゴニストの投与をさらに含んでなり、前記共抑制分子は、CD86、CD80、PDL-1、PDL-2、CTLA-4、PD1、LAG3、BTNL2、B7-H3、B7-H4、ブチロフィリン、CD48、CD244、TIM-3、CD200R、CD200、CD160、BTLA、HVEM、LAIR1、TIM1、ガレクチン9、TIM3、CD48、2B4、CD155、CD112、CD113およびTIGITからなる群から選択される。
【0364】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、治療上有効な量の抗VISTA抗体を、治療上有効な量の、共刺激分子に対するアゴニストと組み合わせて投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、CD154、TNFRSF25、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD28、CD40、TL1A、GITRL、41BBL、OX40L、CD70、HHLA2、ICOSL、サイトカイン、LIGHT、HVEM、CD30、CD30L、B7-H2、CD80、CD86、CD40L、TIM4、TIM1、SLAM、CD48、CD58、CD155、CD112、DR3、GITR、CD2、およびCD226からなる群から選択される。共刺激分子に対するアゴニストには、共刺激分子に対するアゴニスト抗体が含まれる。Mercier et al., Frontiers in Immunology, 6:418 (2015)、Kyi et al., FEBS Letters, 588:368-376 (2014)およびCapece et al., J. Biomed. Biotechnol. 2012:926321, 第17頁 (2012)に記載されているものなど、共刺激分子に対するアゴニストは当技術分野で周知であることが認識される。この実施形態によれば、本発明は、上記のようにVISTA介在腫瘍の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)の使用に関し、前記使用は、共刺激分子に対するアゴニストの投与をさらに含んでなり、前記共刺激分子は、CD154、TNFRSF25、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD28、CD40、TL1A、GITRL、41BBL、OX40L、CD70、HHLA2、ICOSL、サイトカイン、LIGHT、HVEM、CD30、CD30L、B7-H2、CD80、CD86、CD40L、TIM4、TIM1、SLAM、CD48、CD58、CD155、CD112、DR3、GITR、CD2、およびCD226からなる群から選択される。
【0365】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、治療上有効な量の抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)を、治療上有効な量の本明細書に記載される化学療法薬または本明細書に記載される放射線療法などの、癌治療のための従来型の療法と組み合わせて投与することを含み得る。この実施形態によれば、本発明は、上記のようにVISTA介在腫瘍の治療において使用するための抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)の使用に関し、前記使用は、治療上有効な量の本明細書に記載される化学療法薬または本明細書に記載される放射線療法などの、癌治療のための従来型の療法の投与をさらに含んでなる。
【0366】
限定されるものではないが、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、その抗体を発現することができる組換え細胞、受容体介在エンドサイトーシス(Wu and Wu, J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987)参照)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などを含む様々な送達系が知られ、抗VISTA治療薬(例えば、本明細書に記載されるような抗VISTA抗体)を投与するために使用することができる。治療薬(例えば、本明細書で提供される抗VISTA抗体)、または医薬組成物を投与する方法には、限定されるものではないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、腫瘍内、および皮下)、硬膜外、および粘膜(例えば、鼻腔内および経口経路)が含まれる。いくつかの実施形態では、治療薬(例えば、本明細書で提供される抗VISTA抗体)、または医薬組成物は、鼻腔内、筋肉内、静脈内、腫瘍内、または皮下に投与される。これらの治療薬、または組成物は、例えば、注入またはボーラス注射、上皮または皮膚粘膜内面(例えば、口腔粘膜、鼻腔粘膜、直腸粘膜および腸管粘膜など)からの吸収によるなど、いずれの好都合な経路によって投与してもよく、他の生物学的に有効な薬剤とともに投与してもよい。投与は全身的でも局所でもよい。さらに、例えば吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を用いた製剤の使用による肺投与を使用することもできる。例えば、米国特許第6,019,968号、同第5,985,320号、同第5,985,309号、同第5,934,272号、同第5,874,064号、同第5,855,913号、同第5,290,540号、および同第4,880,078号;ならびにPCT公開第WO92/19244号、同第WO97/32572号、同第WO97/44013号、同第WO98/31346号、および同第WO99/66903号参照、これらはそれぞれ引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。
【0367】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療薬、または医薬組成物を、治療を要する領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、限定されるものではないが、局所注入によるか、局所投与による(例えば、鼻腔内スプレーによる)か、注射(特に、腫瘍内注射)によるか、またはインプラントの手段によって達成することができ、このインプラントは、シラスティック膜などの膜、または繊維を含む、多孔性、非多孔性、またはゼラチン性材料のものである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体を投与する場合、抗体が吸収しない材料を用いるように注意しなければならない。
【0368】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療薬は、小胞、特に、リポソーム内で送達することができる(Langer, 1990, Science 249:1527-1533; Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (編), Liss, New York, pp. 353-365 (1989); Lopez-Berestein, 同書, pp. 317-327参照;概要は同書を参照)。
【0369】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療薬は、放出制御または徐放系で送達することができる。いくつかの実施形態では、制御放出または徐放を達成するためにポンプを用いてもよい(Langer, 前掲; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:20; Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507; Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574参照)。別の実施形態では、本明細書で提供される治療薬(例えば、本明細書で提供される抗体)または組成物の放出制御または徐放を達成するためにポリマー材料を使用することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (編), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983, J., MacroMol. Sci. Rev. MacroMol. Chem. 23:61参照;また、Levy et al., 1985, Science 228:190; During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 7 1:105); 米国特許第5,679,377号;同第5,916,597号;同第5,912,015号;同第5,989,463号;同第5,128,326号;PCT公開第WO99/15154号;および同第WO99/20253号も参照)。徐放性製剤において使用されるポリマーの例としては、限定されるものではないが、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリアンヒドリド、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが含まれる。いくつかの実施形態では、徐放性製剤において使用されるポリマーは、不活性であり、浸出性の不純物を含まず、保存時に安定であり、無菌であり、かつ生分解性である。さらに他の実施形態では、制御放出または徐放系を、治療標的、例えば、鼻腔または肺の近位に配置することができ、よって、全身用量の一部を必要とするだけである(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, 前掲, vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。制御放出系はLanger (1990, Science 249:1527-1533)により総説されている。当業者に公知のいずれの技術も、本明細書で提供される1以上の抗体を含んでなる徐放性製剤を作製するために使用可能である。例えば、米国特許第4,526,938号、PCT公開WO91/05548、PCT公開WO96/20698、Ning et al., 1996, Intratumoral Radioimmunotherapy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel,” Radiotherapy & Oncology 39:179-189、Song et al., 1995, “Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions,” PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397、Cleek et al., 1997, “Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application,” Pro. Int’l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854、およびLam et al., 1997, “Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery,” Proc. Int’l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760参照。
【0370】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法において有用な組成物は、1つ、2つまたはそれを超える本明細書で提供される抗体(例えば、抗VISTA抗体)を含んでなる。別の実施形態では、本明細書で提供される方法において有用な組成物は、1つ、2つまたはそれを超える本明細書で提供される抗体と本明細書で提供される抗体以外の治療薬とを含んでなる。いくつかの実施形態では、薬剤は、VISTA介在疾患、障害または病態の1以上の症状の予防、治療および/または緩和に有用であることが知られているか、またはそのために使用されていたか、またはそのために目下使用されている。治療薬に加え、本明細書で提供される組成物はまた担体も含んでなり得る。
【0371】
本明細書で提供される組成物には、単位投与形の調製に使用することができる医薬組成物(例えば、対象または患者への投与に好適な組成物)の製造において有用なバルク組成物が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は医薬組成物である。このような組成物は、予防上または治療上有効な量の1以上の治療薬(例えば、抗VISTA治療薬、例えば、本明細書で提供される抗VISTA抗体、または他の治療薬)、および薬学上許容可能な担体を含んでなる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象に対する投与経路に好適なように調剤される。
【0372】
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として常法に従って調剤される。一般に、静脈内投与用の組成物は、無菌等張水性バッファー中の溶液である。必要であれば、組成物は、可溶化剤および注射部位の痛みを軽減するためにリドカインまたはリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。しかしながら、このような組成物は、静脈内以外の経路によって投与してもよい。
【0373】
本明細書で提供される組成物の成分は、個別にまたは併せて混合するかのいずれかで、単位投与形で、例えば、凍結乾燥粉末、または無水濃縮物として、有効剤の量を表示するアンプルまたは小袋などの密封容器中で供給される。組成物を注入により投与する場合、無菌製薬等級の水または食塩水を含有する注入ビンで分配することができる。組成物を注射により投与する場合、投与前に成分を混合できるように注射用滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができる。
【0374】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体の量を表示するアンプルまたは小袋などの密封容器中に包装される。いくつかの実施形態では、抗体は、密封容器中の乾燥滅菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給され、例えば、対象へ投与するための適切な濃度に、水または食塩水で再構成することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、少なくとも0.1mg、少なくとも0.5mg、少なくとも1mg、少なくとも2mg、または少なくとも3mg、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、または少なくとも100mgの単位用量で、密封容器中の乾燥滅菌凍結乾燥粉末として供給される。凍結乾燥抗体は、その当初の容器において2~8℃で保存することができ、抗体は、再構成された後12時間以内、例えば、6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与することができる。別の実施形態では、抗体は、抗体の量および濃度を示す密封容器中に液体形態で供給される。いくつかの実施形態では、液体形態の抗体は密封容器中に、少なくとも0.1mg/ml、少なくとも0.5mg/ml、または少なくとも1mg/ml、例えば、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも60mg/ml、少なくとも70mg/ml、少なくとも80mg/ml、少なくとも90mg/ml、または少なくとも100mg/mlで供給される。
【0375】
VISTA介在疾患、障害または病態の1以上の症状の予防、治療および/または緩和に有効であると思われる本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)または組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。
【0376】
よって、約0.1μg/ml~約450μg/ml、いくつかの実施形態では、少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.2μg/ml、少なくとも0.4μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも0.6μg/ml、少なくとも0.8μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも1.5μg/ml、例えば、少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも30μg/ml、少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも75μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも400μg/ml、または少なくとも450μg/mlの血清力価をもたらす抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)または組成物の用量を、VISTA介在疾患、障害または病態の1以上の症状の予防、治療および/または緩和のためにヒトに投与することができる。さらに、最適な用量範囲を特定する助けとするために場合によりin vitroアッセイを用いてもよい。製剤に使用する正確な用量はまた、投与経路、VISTA介在疾患、障害または病態の重症度によっても異なり、医師の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。
【0377】
有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から推定してもよい。
【0378】
本明細書で提供される抗体に関して、患者に投与する用量は、いくつかの実施形態では、0.1mg/kg~100mg/kg患者体重であり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与する用量は、約1mg/kg~約75mg/kg患者体重である。いくつかの実施形態では、患者に投与する用量は、1mg/kg~20mg/kg患者体重、例えば、1mg/kg~5mg/kg患者体重である。一般に、ヒト抗体のヒト体内での半減期は、外来ポリペプチドに対する免疫応答のために他種由来の抗体よりも長い。従って、多くの場合、より低用量のヒト抗体および低頻度の投与が可能である。さらに、本明細書で提供される抗体の用量および投与頻度は、例えば脂質化などの修飾により抗体の取り込みおよび組織浸透を高めることによって低減され得る。
【0379】
いくつかの実施形態において、VISTA介在疾患、障害または病態の1以上の症状を予防、治療または緩和するために、およそ100mg/kg以下、およそ75mg/kg以下、およそ50mg/kg以下、およそ25mg/kg以下、およそ10mg/kg以下、およそ5mg/kg以下、およそ1mg/kg以下、およそ0.5mg/kg以下、またはおよそ0.1mg/kg以下の本明細書で提供される抗体が5回、4回、3回、2回または1回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は約1~12回投与され、これらの用量は、医師により決定されるように、必要に応じて、例えば、毎週、隔週、毎月、隔月、3か月毎などで投与され得る。いくつかの実施形態では、より低用量(例えば、1~15mg/kg)を高頻度(例えば、3~6回)で投与することができる。他の実施形態では、より高用量(例えば、25~100mg/kg)を低頻度(例えば、1~3回)で投与することができる。しかしながら、当業者には自明であるように、他の投与量およびスケジュールも容易に決定可能であり、本開示の範囲内にある。
【0380】
いくつかの実施形態では、VISTA介在疾患の1以上の症状を予防、治療および/または緩和するために、およそ100mg/kg、およそ75mg/kg以下、およそ50mg/kg以下、およそ25mg/kg以下、およそ10mg/kg以下、およそ5mg/kg以下、およそ1mg/kg以下、およそ0.5mg/kg以下、およそ0.1mg/kg以下の本明細書で提供される抗体が徐放性製剤で、ヒトなどの対象に投与される。別のいくつかの実施形態では、VISTA介在疾患、障害または病態の1以上の症状を予防、治療および/または緩和するために、およそ100mg/kg、およそ75mg/kg以下、およそ50mg/kg以下、およそ25mg/kg以下、およそ10mg/kg以下、およそ5mg/kg以下、およそ1mg/kg以下、およそ0.5mg/kg以下、またはおよそ0.1mg/kg以下の本明細書で提供される抗体の、徐放性製剤ではなくボーラスが、ヒトなどの対象に投与され、ある特定の期間の後に、およそ100mg/kg、およそ75mg/kg以下、およそ50mg/kg以下、およそ25mg/kg以下、およそ10mg/kg以下、およそ5mg/kg以下、およそ1mg/kg以下、およそ0.5mg/kg以下、またはおよそ5mg/kg以下の本明細書で提供される抗体が徐放性として、対象に(例えば、鼻腔内または筋肉内に)1回、2回、3回または4回投与される。この実施形態によれば、ある特定の期間は、1~5日、1週間、2週間、または1か月であり得る。
【0381】
いくつかの実施形態では、単回用量の本明細書で提供される抗体がVISTA介在疾患、障害または病態の1以上の症状を予防、治療および/または緩和するために、1年にわたって隔週(例えば約14日)の間隔などで、1回以上、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23回、24回、25回、または26回などで患者に投与され、その用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(例えば、毎月の各用量は同じであってもなくてもよい)からなる群から選択される。
【0382】
いくつかの実施形態では、単回用量の本明細書で提供される抗体が、VISTA介在疾患、障害または病態の1以上の症状を予防、治療および/または緩和するために、1年にわたって約毎月(例えば約30日)の間隔などで、1回以上、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回などで患者に投与され、その用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(例えば、毎月の各用量は同じであってもなくてもよい)からなる群から選択される。
【0383】
いくつかの実施形態では、単回用量の本明細書で提供される抗体が、VISTA介在疾患、障害または病態の症状を予防、治療および/または緩和するために、1年にわたって約隔月(例えば約60日)の間隔などで、1回以上、例えば、2回、、3回、4回、5回、6回などで、患者に投与され、その用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(例えば、隔月の各用量は同じであってもなくてもよい)からなる群から選択される。
【0384】
いくつかの実施形態では、単回用量の本明細書で提供される抗体が、VISTA介在疾患障害または病態の1以上の症状を予防、治療および/または緩和するために、1年にわたって約3か月毎(例えば約120日)の間隔で、1回以上、例えば、2回、3回、または4回などで、患者に投与され、その用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(例えば、3か月毎の各用量は同じであってもなくてもよい)からなる群から選択される。
【0385】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体の用量に関する患者への投与経路は、鼻腔内、筋肉内、静脈内、またはそれらの組合せであるが、本明細書に記載される他の経路も許容される。各用量は、同一の投与経路によって投与されても投与されなくてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、本明細書で提供される同じまたは異なる抗体の他の用量と同時にまたは逐次に、複数の投与経路によって投与されてもよい。
【0386】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、対象に予防的または治療的に投与される。抗VISTA治療薬(例えば、抗VISTA抗体)は、VISTA介在疾患、障害もしくは病態、またはその症状を予防、軽減または緩和するために対象に予防的または治療的に投与することができる。
【0387】
キット
また、1以上の本明細書で提供される抗体(例えば、抗PSGL-1および/または抗VISTA抗体)などの本明細書で提供される医薬組成物の成分の1以上を充填した1以上の容器を含んでなる医薬パックまたはキットも本明細書で提供される。場合により、このような容器に、医薬品または生物製剤の製造、使用または販売に関する政府機関によって規定された形式で注意事項を添えることがき、この注意事項は、ヒト投与に関する製造、使用または販売当局による承認を表す。いくつかの実施形態では、このキットは添付文書を含んでなる。用語「添付文書」は、治療用製品の市販包装に慣例的に含まれ、適応、用法、用量、投与、禁忌に関する情報および/またはこのような治療用製品の使用に関する警告、ならびに使用説明を含む説明書を指して使用される。
【0388】
また、上記方法において使用可能名キットも本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書で提供される抗体(例えば、抗PSGL-1および/または抗VISTA抗体)、例えば、単離された抗体(例えば、抗PSGL-1および/または抗VISTA抗体)を1以上の容器に含んでなる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるキットは、実質的に単離されたPSGL-1またはVISTAを対照として含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるキットは、PSGL-1および/またはVISTAと反応しない対照抗体をさらに含んでなる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるキットは、PSGL-1および/またはVISTAに対する改変抗体の結合を検出するための手段を含む(例えば、抗体を蛍光化合物、酵素基質、放射性化合物もしくは発光化合物などの検出可能な基質にコンジュゲートさせてもよいし、または第1の抗体を認識する第2の抗体を検出可能な基質にコンジュゲートさせてもよい)。いくつかの実施形態では、キットは、組換え的に生産されたまたは化学的に合成されたPSGL-1および/またはVISTAを含み得る。このキットに提供されるPSGL-1および/またはVISTAはまた固相支持体に結合させてもよい。いくつかの実施形態では、上記キットの検出手段は、PSGL-1および/またはVISTAが結合された固相支持体を含む。このようなキットはまた、非結合型のリポーター標識抗ヒト抗体を含み得る。いくつかの実施形態では、PSGL-1および/またはVISTAへの抗体の結合は、リポーター標識抗体の結合により検出することができる。
【0389】
本開示の様々な実施形態の活性に実質的に影響を及ぼさない改変も本明細書で提供されると理解される。よって、以下の実施例は本開示を説明するものであって限定することを意図しない。
【実施例0390】
実施例I
VISTAに対する受容体の同定
本実施例は、TRICEPS(商標)に基づくリガンド-受容体捕捉システムであるCAPTIREC(商標)(Dualsystems Biotech AG)を用いてVISTAの受容体の同定を初めて記載する。
【0391】
対象リガンドとしてVISTA-Fc融合タンパク質および対照リガンドとして抗CD28抗体を用いるCAPTIREC(商標)法をヒト初代T細胞から単離されたナイーブT細胞に対して行った。以下の実験で使用したVISTA-Fc融合タンパク質構築物のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を以下に示す。
VISTA-Fc融合タンパク質ヌクレオチド配列(下線の配列はVISTAをコードし;太字の配列はヒトIgG1抗体のFcフラグメントをコードする)
【化6】
【0392】
VISTA-Fc融合タンパク質アミノ酸配列(下線の配列はVISTAであり;太字の配列はヒトIgG1抗体のFcフラグメントである)
【化7】
【0393】
CAPTIREC(商標)法の概要を
図1に示す。簡単に述べれば、VISTA-Fc融合タンパク質および抗CD28抗体をそれぞれTRICEPS(商標)にカップリングさせた。ナイーブヒトT細胞を市販の初代ヒトT細胞から単離した。ナイーブT細胞表面糖タンパク質を選択的に酸化した。酸化したナイーブT細胞の細胞表面へのリガンドの結合および受容体のカップリングを行った。反応したT細胞を次いで溶解させ、得られた溶解液をリガンド-受容体タンパク質複合体に関してアフィニティー精製した。精製されたタンパク質を次いでトリプシン消化により切断し、それにより、受容体ペプチドを放出させた。得られた受容体ペプチドを液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)により分析した。統計分析を可能とするために、実験を生物学的3反復で行った。
【0394】
ナイーブT細胞の単離は、ALLCELLS(アラメダ、CA)から購入した健常ドナーのヒト初代T細胞からのナイーブT細胞の負の選択により行った。所望の細胞に負の選択を行うために、ミルテニー・ナイーブ・パンT細胞単離キット(#130-097-095)を製造者のプロトコールに従って使用した。簡単に述べれば、末梢血単核細胞(PBMC)をMACSランニングバッファーに再懸濁させ、HLA-DR、CD14、CD15、CD16、CD19、CD25、CD36、CD56、CD57、CD45RO、CD123、CD244、CD235aおよび抗TCR γ/δに対するモノクローナル抗ヒト抗体のビオチンコンジュゲートの混合物とともに5分間インキュベートした後に、モノクローナル抗CD61および抗ビオチン抗体にコンジュゲートされた抗ビオチン磁性ビーズとともに10分のインキュベーションを行った。次いで、autoMACS Separator(Miltenyi Biotech、サンディエゴ CA)を用いてナイーブT細胞に対して負に選択を行った。1回のTRICEPS(商標)リガンド捕捉反応につき100×106個のナイーブT細胞を使用した。
【0395】
TRICEPS(商標)へのVISTA-Fc融合タンパク質または抗CD28抗体のカップリング、ナイーブT細胞の表面糖タンパク質の選択的酸化、酸化したT細胞の細胞表面へのリガンドの結合および受容体のカップリング、T細胞の溶解、細胞溶解液のアフィニティー精製、およびトリプシンでの消化を含む、CAPTIREC(商標)の残りの工程を、Frei et al., Nat. Protoc., 8(7):1321-1336 (2013)およびFrei et al., Nat. Biotechnol., 30(10):997-1001 (2012)に記載されている改変法に従って行った。
【0396】
得られた受容体ペプチドを、エレクトロスプレーイオン原を備えたThermo LTQ Orbitrap XL分光計でのLC-MS/MSにより分析した。これらの試料を、10cm C18充填カラムを用い、120分グラジェントで、データ依存型取得モードにて測定した。CAPTIREC(商標)データセットの6つの個々の試料を統計的ANOVAモデルで分析した。このモデルでは、測定誤差はガウス分布に従うと仮定し、個々の特徴をタンパク質の存在量の増幅として捉え、この冗長性を明確に説明する。これは各タンパク質の差次的存在量をリガンドと対照試料の総ての一対比較で検定し、p値を報告する。次に、多重比較向けに実験規模の偽陽性率(FDR)を制御するためにp値を補正する。
【0397】
ペプチド同定では、FDR≦1%となるようにフィルタリングを行い、MS1に基づく標識フリーアプローチを用いて定量する。MS1定量については、プロテオミクスソフトウエア用の非線形DYNAMICS Progenesis QIを用い、特異なペプチドの総てを考慮するように設定した。同定されたタンパク質に対して、Uniprotにより提供されている情報を用い、膜、分泌、グリコシル化という用語に関してフィルタリングを行った。この分析では、1つのペプチドのみに頼るタンパク質同定は考慮しなかった。
【0398】
処理されたCAPTIREC(商標)データをタンパク質レベルに対するボルカノプロット(統計的有意性に対する変化倍率をプロットする)の形でグラフ化した。全タンパク質に対して得られた補正p値を、2つの実験受験間のフォールドエンリッチメントの大きさに対してプロットする。受容体候補のスペースをエンリッチメントファクター>4倍および統計的有意性(FDR補正p値<0.01)により定義する。
【0399】
観察された糖タンパク質のうち、CD28は対照データセットにおいて5つのペプチドで同定された。これはCAPTIREC(商標)ワークフローの成功を示した。PSGL-1は6つのペプチドで同定され、VISTA自体もまた、VISTA-Fc融合タンパク質データセットにおいて12のペプチドで同定された(表6参照)。
【0400】
【0401】
同定された結合相手PSGL-1に関して、プロッターイラストが作成され(
図2)、これにはN-グリコシル化部位(四角で囲まれた残基)および実験的に観察されたペプチド(埋めた丸)の注釈がついている(Omasits et al., Bioinformatics: advance online pub., October, 2013)。このマッピングは、検出された6つのペプチドが総てPSGL-1の細胞内ドメインに局在することを示す。PSGL-1の細胞外ドメインの分析から、ドメインの大きさに関わらず細胞外ドメインにはトリプシンペプチド切断部位がほとんど存在しないことが明らかである。PSGL-1は3つのN-グリコシル化部位を含み、これらの部位を有するペプチドは、上記のLC-MS/MS分析から失われていたと思われる。可能性のある残りのペプチドは、長すぎるか、短すぎるか、またはタンパク質選別中に処理されて、PSGL-1の細胞内ドメインにマッピングされるペプチドのみが検出されたという所見に根拠を与える。
【0402】
上記の分析から、PSGL-1は、VISTAに対するヘテロ親和性の結合相手であると決定された。VISTAは造血細胞で発現される広域ネガティブチェックポイントレギュレーターであることが従前に示されているので(Lines et al., Cancer Res., 74(7)1924-1932 (2014))、VISTAのPSGL-1との相互作用はT細胞の抑制をもたらす可能性がある。従って、PSGL-1および/またはVISTAを標的とする薬剤、例えば、抗PSGL-1抗体および/または抗VISTA抗体を用いてその相互作用に干渉(例えば、阻害または遮断)すれば、活性化されたT細胞を介して免疫系の再活性化またはde novo活性化をもたらし得る。この免疫系の活性化は、癌治療(例えば、血液癌治療)に関するものを含め、VISTA介在疾患、障害または病態の治療において極めて有益な生理反応をもたらすであろう。
【0403】
実施例II
VISTAのPSGL-1への結合
本実施例は、PSGL-1に対するVISTAの結合特性を記載する。
【0404】
VISTA-Fc融合タンパク質(例えば、実施例Iに記載)を固相表面に固定し、PSGL-1の細胞外ドメインへのその結合をアッセイした。これらの実験のために、PSGL-1の細胞外ドメインを含有する2つの異なる構築物を作製した。両構築物をIgGκシグナル配列およびFcフラグメントに融合させた。さらに、適正な機能に重要である可能性のあるプロペプチド配列またはタンデムリピートユニットを付加した(例えば、Cummings R.D., Brazilian J Med Biol Res, 32:519-28 (1999)参照)。PSGL-1とP-セレクチンの高親和性結合に重要であることが知られている(Sako et al., Cell, 75(6):1179-86 (1993); Yang et al., Thrombosis and Haemostasis, 81(1):1-7 (1999); Carlow et al., Immunol Rev 230(1):75-96 (2009); Kumar et al., Blood, 88(10):3872-9 (1996); Cummings R.D., Brazilian J Med Biol Res, 32:519-28 (1999))タンパク質の適正な翻訳後修飾を保証するためのGCNT1およびFUT3グリコシルトランスフェラーゼを発現する構築物で細胞を同時トランスフェクトした。PSGL-1構築物のアミノ酸配列を以下に示す。
【0405】
PSGL-1構築物A-アミノ酸配列(IgGκシグナル配列およびプロペプチド配列を有するFc融合PSGL-1)。IgGκシグナル配列=斜体;プロペプチド配列=太字;Fc配列=下線。
【化8】
【0406】
PSGL-1構築物B-アミノ酸配列(IgGκシグナル配列およびタンデムリピートユニットを有するFc融合PSGL-1)。IgGκシグナル配列=斜体;タンデムリピートユニット=太字;Fc配列=下線。
【化9】
【0407】
これらの実験では、PSGL-1構築物A(PSGL-1A)および構築物B(PSGL-1B)を固定VISTA-Fcに対して試験した。
【0408】
固定VISTA-Fc試料をカルシウム(1.5mM塩化カルシウム)およびマグネシウム(1.0mM塩化マグネシウム)を含有するHEPES緩衝生理食塩水(HBS)中で平衡化した。同じバッファーをランニングバッファーとして使用した。PSGL-1AまたはPSGL-1Bを含有する試料(カルシウムおよびマグネシウムも含有する)を、固定VISTA-Fcを含む固相表面に流速60μl/分で流し、表面を3秒パルスのグリシン(pH1.5)で再生した後、接触時間120秒および解離300秒とした。6種類の異なる濃度のPSGL-1AおよびPSGL-1Bをアッセイした(0.3μM、0.60μM、1.20μM、2.4μM、4.8μMおよび9.6μM)。
【0409】
これらの実験で2つの異なる分析を行った:(1)二状態結合モデル;および(2)平衡親和性分析(1:1モデル)。PSGL-1Aでは、二状態結合モデルは32.1μMの結合親和性(K
D)を示し、1:1モデルは3.01μMのK
Dを示した(
図3)。PSGL-1Bでは、二状態結合モデルは5.09μMのK
Dを示し、1:1モデルは4.76μMのK
Dを示した(
図4)。
【0410】
上記の分析は、PSGL-1AおよびPSGL-1Bの両構築に関して正味のシグナル 応答が存在したことを示した。得られたセンソグラムは、結合および解離に関連する特徴を示す。この親和性評価は質的なものであったことに留意されたい。結合の量的評価は、表面活性が本実験の活性より大きい場合(例えば、精製PSGL-1構築物で>0.5%)に可能であり得る。さらに、これらの実験では、PSGL-1Aの注入を用いると次の実施に試料のキャリーオーバーが生じる。これらの実験では、評価されるVISTAとPSGL-1の親和性は、PSGL-1A約3μM)およびPSGL-1B(約5μM)と比較的類似していた。
【0411】
実施例III
VISTAの細胞上のPSGL-1への結合
本実施例は、二官能性架橋アプローチを用いた前骨髄球性細胞株(HL-60;ATCC、CCL-240)により発現されるPSGL-1へのVISTAの結合を記載する。
【0412】
これらの実験では、PSGL-1の発現を、KPL-1と呼称されるPEコンジュゲート抗PSGL-1モノクローナル抗体(Abcam;ab78188)を用いて評価した。HL-60細胞によるPSGL-1の発現を、標準法を用いたフローサイトメトリーにより検出した(
図5)。PSGL-1タンパク質のコピー数は、細胞当たりおよそ263,000±2,800であると見積もられた。
【0413】
また、これらの実験において、VISTA-Fc融合タンパク質(実施例Iに記載)の試料ならびに抗CD28抗体(BioXcell、BE0248)およびIgG1-Fc(R&D Systems;110-HG-100)の陰性対照を、製造推奨条件を用いて、二官能性リンカー(Sulfo-SBED-ThermoFisher Scientific;33073)に共有結合させた。得られた試料をHL-60細胞とともに、暗所にて室温で30分間インキュベートした。架橋は、UV光源を用いて20分間、光で活性化した。次に、細胞を溶解させ、プロテインAセファロースプルダウンを行った。これらの試料に対して抗PSGL-1ポリクローナル抗体(R&D Systems;AF3345)またはストレプトアビジン-HRPを用いてウエスタンブロットを行った。
【0414】
図6に示されるように、VISTA-FcはPSGL-1と相互作用するが、陰性アイソタイプ対照IgG-Fcまたは抗CD28抗体とは相互作用しない。
【0415】
この相互作用の特異性を確認するために更なる実験を行った。Sulfo-SBED標識タンパク質をHL-60細胞とともにインキュベートする前にその細胞に抗VISTAモノクローナル抗体を加えたこと以外は上記の実験を繰り返した。分析はImageQuantを用いて行った。
【0416】
図7に示されるように、抗VISTA抗体を加えると、VISTAとPSGL-1の相互作用に減弱化が生じた。
【0417】
これらの実験は、HL-60細胞上で発現されたPSGL-1がVISTAの結合相手であることを示す。これらの実験はまた、この相互作用が特異的であり、抗VISTA遮断抗体により減弱化されることを示す。
【0418】
実施例IV
PBMC上のPSGL-1へのVISTAの結合
本実施例は、架橋アプローチを用いる、末梢血単核細胞(PBMC)により発現されるPSGL-1へのVISTAの結合を記載する。
【0419】
これらの実験では、PSGL-1の発現を、KPL-1と呼称されるPEコンジュゲート抗PSGL-1モノクローナル抗体(Abcam;ab78188)を用いて評価した。PBMCによるPSGL-1の発現を、標準法を用いたフローサイトメトリーにより検出した(
図8)。PSGL-1タンパク質のコピー数は、細胞当たりおよそ38,000であると見積もられた。
【0420】
さらに、PBMCを未処理とするか、または架橋剤(10mM BS3;ThermoFisher Scientific;21580)とともに氷上で90分間インキュベートした。必要であれば架橋反応を急冷した後、細胞を溶解させ、得られた溶解液をハーセプチンおよびGammaBind Plus Sepharose(GE Healthcare;17-0886-01)でプレクリアリングした。得られた試料を抗VISTA抗体または抗PSGL-1抗体(KPL-1)のいずれかで一晩免疫沈降させた。これらの免疫沈降試料を、抗PSGL-1ポリクローナル抗体(R&D Systems;AF3345)を用いたウエスタンブロットによりアッセイした。
【0421】
図9のライン4に示されるように、抗VISTA抗体による免疫沈降の後、架橋後では、PSGL-1特異的バンドは検出されなかった。例えば、VISTA-PSGL-1複合体形成時に特定のエピトープが遮断され、それにより免疫沈降が妨げられたためであり得る。BS
3で処理したPBMCでは、いくつかのより高分子量の複合体(約250~450kDa)の抗PSGL-1抗体が沈降し(
図9、最後のレーン)、これもPSGL-1陽性であった。
【0422】
これらの実験では、抗VISTA抗体および抗PSGL-1抗体は両方とも、いずれの架橋剤でも処理しなかったPBMCから約240kDaのタンパク質を沈降させた。この複合体はPSGL-1陽性であり、PSGL-1がVISTAと相互作用することを示している(
図9、レーン3および5)。アイソタイプ対照抗体による免疫沈降では、このようなバンドは生じなかった(
図9、レーン1および2)。
【0423】
これらの実験は、PBMC上で発現されたPSGL-1がVISTAの結合相手であることを示す。
【0424】
実施例V
PSGL-1の発現
本実施例は、様々なT細胞サブセットにおけるPSGL-1の発現を記載する。
【0425】
これらの実験では、PSGL-1の発現を、PEコンジュゲート抗ヒトCD162抗体を用いて評価した。以下のT細胞サブセットを評価した:ナイーブな休止中の細胞(例えば、レポート表現型:CD45RO-/CD45RA+/CCR7+/CD62L+/CD27+/CD28+/CD127+)、エフェクター細胞(例えば、レポート表現型:CD45RO+/CD57+/CD279-/CD95+/CCR7-/CD62L-)、疲弊エフェクター細胞(例えば、レポート表現型:CD45RO+/CD57+/CD279+/CD95+/CD45RA-/CCR7-/CD62L-)および循環メモリー細胞(例えば、レポート表現型:セントラル:CD45RO+/CD45RA-/CCR7+/CD62L+、またはエフェクター:CD45RO+/CD45RA-/CCR7-/CD62L+)。
【0426】
これらの実験では、ヒトPBMC試料をALLCELLS(エメリービル、CA)から入手した。2種類のT細胞マーカーパネルを次のように作製した:
a.パネル1:T細胞マーカー+エフェクター/疲弊エフェクター特異的マーカー
i.CD45RA-FITC
ii.CD45RO-PerCP-eFluor 710
iii.CD197(CCR7)-Brilliant Violet 510
iv.CD62L-APC-eFluor 780
v.CD57-Pacific Blue
vi.CD95(Fas)-PE-Cy7
vii.CD279-APC
viii.CD162-PE
b.パネル2:T細胞マーカー+ナイーブ/休止中の特異的マーカー
ix.CD45RA-FITC
x.CD45RO-PerCP-eFluor 710
xi.CD197(CCR7)-Brilliant Violet 510
xii.CD62L-APC-eFluor 780
xiii.CD27-Pacific Blue
xiv.CD28-PE-Cy7
xv.CD127-APC
xvi.CD162-PE
【0427】
これらの実験では、各パネルにおよそ1×106個の細胞およびFcRブロッキング試薬(Miltenyl-Biotec、130-092-247)を各抗体に対する適当なアイソタイプ対照とともに加え、暗所にて4℃で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、各試料についてMACSQuantアナライザーで蛍光強度中央値(MFI)を計算した。MFI値は、Quantum Simply Cellular抗マウスIgGキット(Bangs Laboratories、815B)を用いて定量した。生存力のある集団(DAPI陰性)から1蛍光団につき1×105イベントを収集し、分析のためにFlowJoにエクスポートした。
【0428】
図10および11に示されるように、PSGL-1はナイーブ/休止中、エフェクター、疲弊エフェクター、ならびに循環セントラルおよびエフェクターの両T細胞サブセットに存在していた。
図10および11に示されるように、、PSGL-1発現は、ナイーブおよび疲弊T細胞に比べてエフェクターサブタイプにおいて上昇していた。エフェクターサブセットでの発現レベルが最も高く、ナイーブ/休止中サブセットでの発現レベルが最も低かった。表7は、各サブセットにおけるPSGL-1発現に関するコピー数を示す。
【0429】
【0430】
これらの実験は、PSGL-1がヒトPBMCの様々なT細胞サブセットにおいて差次的に発現されることを示す。
【0431】
実施例VI
VISTAおよびPSGL-1発現のin silico分析
【0432】
本実施例は、いくつかの適応症においてVISTA発現がPSGL1と相関していることを示す。
【0433】
Cancer Genome Atlas(TCGA)は、次世代シークエンシングおよびマイクロアレイに基づく方法を含むハイスループット技術を用いた癌ゲノムプロファイルの包括的分析を提供する。TCGAに寄託されたデータは、ヌクレオチド配列および遺伝子発現の両方に関する情報を含む。よって、Cancer GenomicsのcBioportalサイト(http://www.cbioportal.org/)は、大規模な癌ゲノミクスデータセットの可視化、分析およびダウンロードを提供する。これにはTCGAからのゲノミクス、トランスクリプトミクス研究が含まれる。
【0434】
各TCGA適応症に関して、cBioportalサイトに、発現がVISTAと最も相関があるmRNAを特定するようにクエリを出した。この相関分析はスピアマン検定を用いて行った。統計学的結果(p値<0.05)を表8に報告する;mRNAはVISTAとの相関に基づいてランク付けされている。
【0435】
【0436】
表8は、いくつかの癌で、PSGL1発現がVISTA発現によく相関していることを示す。この相関はNSCCLCで最も高い。比較すると、他の推定受容体(すなわち、VSIG3およびVSIG8)は低い相関しか示さなかった。
【0437】
実施例VII
RNA Scopeを用いたVISTAおよびPSGL1 mRNA発現の評価 本実施例は、肺扁平上皮癌(SCC)および腺癌(ADK)組織マイクロアレイ(TMA)におけるVISTAおよびPSGL1のmRNA発現および共局在のパターンを示す。
【0438】
材料および方法
パラフィン包埋した肺SCCおよびADK TMAブロック(各3ブロック)を新たに切片とし、スライドグラスに加工した後にin situハイブリダイゼーション(ISH)技術工程を行った。切り出した組織試料を新鮮な10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に入れ、室温(RT)で16~32時間置いた。この試料を次に脱水し、パラフィンに包埋し、5±1μmの切片とし、Superfrost(登録商標)Plusスライドに載せた。これらのスライドを乾燥器にて60℃で1時間焼き付けた。
【0439】
5μm厚の組織切片をキシレン中で脱パラフィンした後、エタノールシリーズで脱水した。次に、組織切片を、ホットプレートを用いて沸騰温度(100℃~103℃)に維持したクエン酸バッファー(10nmol/L、pH6)中で15分間インキュベートし、脱イオン水ですすぎ、すぐにHybEZハイブリダイゼーションオーブン(Advanced Cell Diagnostics、ヘイワード、CA)内で、40℃で30分間、10μg/mLプロテアーゼ(Sigma-Aldrich、セントルイス、MO)で処理した。
【0440】
処理した組織切片を次に、RNAscope(登録商標)2.5アッセイ(Sigma-Aldrich、セントルイス、MO)を製造者の説明書に従って用いて、PSGL-1プローブまたはVISTAプローブとハイブリダイズさせた。
【0441】
これらのスライドをヘマトキシリンおよびエオジンで染色して各コアの品質の確認と顕微鏡的評価を行った。検査は標準的な光学顕微鏡を用い、20~40倍の倍率で行った。データの取得にはエクセルシートを使用した。
【0442】
陰性対照および陽性対照の確認は2つの特異的プローブを用いて行った。これらのスコアを評価して、夾雑がないこと(陰性プローブ)およびユビキタスmRNAが存在すること(陽性プローブ)を確認した。このプロトコールは手動で行った。
【0443】
標識組織を、各標的に関してダブルスコアリングシステムの半定量的方法を用いて評価した。
【0444】
組織分布スコアリングシステムは0~3の範囲であり、集団(免疫浸潤物)内の陽性細胞の程度を表し、免疫スコアとして見なした。
【0445】
免疫スコア序列システム: 次のように0~3の範囲とした:
・0: 不在
・1: 低
・2: 中
・3: 高
【0446】
ACD序列システム、すなわち、RNAscope(登録商標)2.5アッセイの製造者(Advanced Cell Diagnostics、ヘイワード、CA)により推奨されている序列システムを用いて細胞内のRNAドットの量を評価した。RNAscopeは個々のRNA分子を検出するので、各ドットは、単一のRNA分子を表す。このシステムの範囲は細胞質におけるドットの数および/またはクラスターに関して0~4(0:ドットなし;4:多数のドットおよびクラスター)であり、細胞内スコアリングシステムと見なすことができた。
【0447】
結果
肺SCC TMA
3種類の肺SCC TMAを分析した。各患者3反復のコアが存在した。
【0448】
【0449】
腫瘍微小環境(免疫細胞浸潤物)では、ほとんどの場合でVISTAおよびPSGL-1の両方のmRNAの標識が見られた。陽性標識細胞は骨髄様の形態(マクロファージに関連)を示した。しかしながら、時折、いくらかの陽性ドットがリンパ球(両方のmRNA)および好中球(VISTAのみ)に見られた。
【0450】
腫瘍微小環境浸潤物内ではVISTA mRNAが優勢であった。総ての肺SCCコアがこの標的をある程度発現していた。ドットは細胞質内に小さいが多数見られた。時折、内皮細胞がVISTAドットを示した。陽性mRNA VISTA腫瘍細胞がコアの80%超に見られた。
【0451】
VISTAに比べ、PSGL-1 mRNA発現は腫瘍微小環境浸潤物内に低かった。ドットは細胞質内にVISTAドットよりも大きいが少数で見られた。腫瘍細胞は時折PSGL-1 mRNAを発現し(コアの30%)、ほとんどの場合、ACDグレード(すなわち、細胞質内のドットの数)は極めて低かった。
【0452】
PSGL-1 mRNAでは35%であったのに対し、ほとんど総てのコアが中~高の陽性VISTA-mRNA標識を示した。両標的とも陰性を示したコアはなく、すなわち、コアはそれぞれVISTA、PSGL-1のいずれか、または両方に関して陽性であった。これらの結果を表10にまとめる。
【0453】
【0454】
結論として:
・腫瘍微小環境内ではVISTAおよびPSGL-1 mRNAの共局在が見られ、その例を
図12に示す;
・PSGL1陽性細胞のほとんど総てがVISTA陽性細胞に隣接していた;
・各コアでは、PSGL-1とVISTAの両方を発現している細胞が少なくともいくらか見られた;
・VISTA陽性細胞はPSGL-1陽性細胞に隣接せずに見られた。いくつかのVISTA陽性細胞は、PSGL-1陽性細胞との明らかな隣接なく見られた。しかしながら、VISTA陽性細胞に隣接していないPSGL-1陽性細胞は見られず、このことはPSGL-1陽性細胞が常にVISTA陽性細胞に隣接していたことを意味する。これは1つには、免疫浸潤物にはVISTA陽性細胞が優性であったことによるものであった。
【0455】
肺ADK TMA
3種類の肺ADK TMAを分析した。各患者4反復のコアが存在した。
【0456】
【0457】
肺SCCについて、腫瘍微小環境(免疫細胞浸潤物)にVISTAおよびPSGL-1 mRNA標識が見られた。陽性標識細胞は骨髄様の形態(マクロファージに関連)を示した。しかしながら、時折、いくらかの陽性ドットがリンパ球(両方の標的)および好中球(VISTAのみ)に見られた。
【0458】
肺ADKでのVISTAおよびPSGL-1の両方の発現パターンは、肺SCCで見られたものと極めて類似していた。
【0459】
コアの50%より多くが VISTA mRNAに関して高い陽性標識を示し、コアのおよそ50%が陽性PSGL1 mRNA標識を示した。PSGL-1では、少数のコアが陰性と見られた(7%)。これらの結果を表12にまとめる。
【0460】
【0461】
肺SCCと同様に、肺ADKでもVISTA mRNAとPSGL-1 mRNAの間には類似の共局在または関係性のパターンが見られた。
【0462】
二重RNAscopeによるVISTA mRNAおよびPSGL-1 mRNAの発現パターンの半定量的分析は、これらの標的が頻繁に共局在しているか、または腫瘍微小環境中の隣接する細胞内で発現されていることを明らかにした。VISTA mRNAはPSGL1よりも多く発現されると見られた。しかしながら,総ての肺SCCコアおよび肺ADKコアの83%が両標的を発現していた。
【0463】
RNAscopeは、PSGL-1がVISTA発現細胞と同じ細胞でまたはその近傍で発現され得ることを明らかにする。
【0464】
実施例VIII
IL-2はPSGL-1Fc+/-抗VISTAまたは抗PSGL1抗体の存在下でCD4
+
T細胞から放出する(72時間)
本実施例は、T細胞活性化のPSGL-1介在阻害を記載する。
【0465】
方法:
実験は3反復で行った。
【0466】
CD4+T細胞を2名のヒト健常ドナーからMilenyiキットを用いた負の選択により単離した。
【0467】
抗CD3抗体(eBiosciencesにより市販、BioxCell ref BE0001-2クローンOKT3 ロット640417J1(mIgG2a))を96ウェルプレート内に、100μl中2.5μg/ml濃度で37℃にて4時間コーティングした。次に、これらのプレートをPBSで2回洗浄した。C9G4抗体およびPSGL-1-Fc融合タンパク質を100μl中224nM濃度で4℃にて一晩、3反復でコーティングした。
【0468】
これらのプレートをPBSで4回洗浄した。100.000のCD4+T細胞を各ウェルの、WO2014/197849に記載されている抗VISTA抗体26A(10μg/ml)(より具体的には、使用した抗体は、WO2014/197849に記載されているような以下のCDR配列を有するヒト化抗体であった:CDRH1:配列番号1297、CDRH2:配列番号1559、CDRH3:配列番号1394、CDRL1:配列番号1432、CDRL2:配列番号1477、およびCDRL3:配列番号1499、またはWO2015/162292Aに記載されている対照抗体C9G4)を伴ってまたは伴わずに、抗CD28抗体(2.5μg/ml)を含有する200μl培地に加えた。
【0469】
72h時間のインキュベーションの後、上清を取り出し、1200rpmで5分間回転させた。遠心分離の後、上清を新しい96ウェルプレートに移し、IL-2をアッセイするまで-80℃で冷凍した。
【0470】
上清中のIL-2濃度を、市販のキット(BD(商標)CBA Human IL2 Flex Set、Ref#558270)を用いて測定した。
【0471】
結果:
PSGL-1の免疫抑制特性を調べるために、このタンパク質の存在または不在下で刺激した後にT細胞の活性化状態を調べた。このために、まず、PSGL-1の細胞外ドメインとヒトIgGのFc領域からなるPSGL-1-Fc融合タンパク質を作出した。次に、CD4+T細胞を、PSGL-1-Fcまたは対照IgGの存在下で、抗CD3抗体およびCD28により活性化した。これらの細胞の活性化のマーカーとしてIL-2の放出をモニタリングした。
【0472】
図13に示されるように、対照、すなわち、同じ濃度でコーティングした無関連のタンパク質(c9G4)に比べて、PSGL-1の存在下でのT細胞のインキュベーションは、T細胞の活性化のマーカーであるIL-2に2倍の低下を誘導する。得られた結果は2名の異なるドナーで類似していた。よって、PSGL-1はT細胞の活性化を阻害する。
【0473】
抗VISTA抗体の添加はこの阻害を部分的に逆転させる(
図13参照)。実際に、阻害の50%超が抗VISTA抗体により軽減された。対照抗体(c9G4)の添加はPSGL1-FcによるIL-2放出の阻害に影響を及ぼさず、このことは抗VISTA抗体で見られた効果の特異性を強調する。抗VISTA抗体添加時のこの特異的な逆転は、T細胞の活性化のPSGL-1依存的阻害が少なくとも部分的にVISTAにより媒介されることを示す。
【0474】
これらの結果から、VISTAとPSGL1が物理的および機能的の両面で相互作用することが確認される。この相互作用の中断(ここでは抗VISTA抗体による)は、IL-2の放出、ひいてはT細胞の活性化を促進する。