(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109682
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)を標的とする撮像剤および放射線療法用薬剤
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20240806BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240806BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61P35/00
A61K31/4709
A61P43/00 111
A61K49/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078640
(22)【出願日】2024-05-14
(62)【分割の表示】P 2020523010の分割
【原出願日】2018-10-23
(31)【優先権主張番号】62/575,607
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】シン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュリダール ニマガダ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ロー
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー スラニア
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ジー ポンパー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)を標的とする撮像剤および放射線療法用薬剤、ならびにFAP-αに関連する疾患および障害の画像化および処置におけるその使用を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物である。
(式中、Aは、FAP-αの標的部分であり、Bは、光学画像化、PET画像化、SPECT画像化、または放射線療法に適した任意の光学または放射線標識官能基であり、Lは、BおよびAと化学結合を形成するよう適合された二官能基を有するリンカーである。)
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】
上記式中、
Aは、FAP-αの標的部分であり、
Bは、光学画像化、PET画像化、SPECT画像化、または放射線療法に適した任意の
光学または放射線標識官能基であり、
Lは、BおよびAと化学結合を形成するよう適合された二官能基を有するリンカーである
、化合物。
【請求項2】
Aが、以下の構造を有するFAP-α標的部分であり、
【化2】
上記式中、各yは、それぞれ独立して、0、1、および2からなる群から選択される整数
であり、
R
1x、R
2x、およびR
3x’は、それぞれ独立して、H、OH、ハロゲン、C
1-6
アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルからなる群から選択
され、
R
3xは、H、-CN、-B(OH)
2、-C(O)アルキル-、-C(O)アリール-
、-C=C-C(O)アリール、-C=C-S(O)
2アリール、-CO
2H、-SO
3
H、-SO
2NH
2、-PO
3H
2、および5-テトラゾリルからなる群から選択され、
R
4xはHであり、
R
5x、R
6x、およびR
7xは、それぞれ独立して、H、-OH、オキソ、ハロゲン、
-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、-S-C
1-6アルキル、-NR
8xR
9x、-OR
12x、-Het
2、および-Ar
2からなる群から選択され、各C
1-6
アルキルは、-OHおよびハロゲンから選択される1~3の置換基で任意に置換され、
R
8x、R
9x、およびR
12xは、それぞれ独立して、H、-OH、ハロ、-C
1-6
アルキル、-O-C
1-6アルキル、-S-C
1-6アルキル、および-AR
3からなる
群から選択され、
R
10x、R
11x、R
13x、およびR
14xは、それぞれ独立して、H、-OH、ハ
ロゲン、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキル
からなる群から選択され、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、それぞれ独立して、O、N
およびSから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含む芳香族5員または6員単
環であり、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、それぞれ独立して、-NR
10xR
11x
、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルから選
択される1~3の置換基で任意に置換され、
Het
2は、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含む非芳
香族5員または6員単環であり、Het
2は、-NR
13xR
14x、-C
1-6アルキ
ル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルから選択される1~3の置
換基で任意に置換され、
vは、0、1、2、または3であり、
【化3】
は、N含有芳香族または非芳香族5員~10員単環または二環式複素環を表し、該複素環
は、O、NおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を任意にさらに含み、
【化4】
は、前記リンカーLまたは前記レポーター部分Bに対する前記FAP-α結合リガンドの
結合点を示し、該結合点は、前記N含有芳香族または非芳香族5員~10員単環または二
環式複素環の炭素原子のいずれかを介してよい部分;
ならびにその立体異性体および薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化5】
が、以下からなる群から選択され、
【化6】
上記式中、*は前記N含有芳香族または非芳香族5員~10員単環または二環式複素環の
-(CH
2)
v-への結合点を示す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、以下の構造を有するFAP-α標的部分であり、
【化7】
上記式中、
【化8】
は、前記リンカーLまたは前記レポーター部分Bに対する前記FAP-α結合リガンドの
結合点を示し、該結合点は、前記キノリニル環の5、6、7、または8位の炭素原子のい
ずれかを介してよい部分;ならびにその立体異性体および薬学的に許容可能な塩である、
請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Aが、
【化9】
からなる群から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Aが、
【化10】
;ならびにその立体異性体からなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Aが、
【化11】
からなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
LおよびBが、(a)、(b)、(c)、および(d)からなる群から選択され、
【化12】
上記式中、
p
1、p
2、p
3、およびp
4は任意の順に並んでいてよく、
tは、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択される整数であり、
p
1、p
3、およびp
4は、それぞれ独立して0または1であり、
p
2は、0、1、2、および3からなる群から選択される整数であり、p
2が2または3
の場合、各R
1は同じでも異なっていてもよく、
m
1およびm
2は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、および6からなる群か
ら選択される整数であり、
W
1は、結合、-S-、-C(=O)-NR-、および-NR-C(=O)-からなる群
から選択され、
W
2は、結合、-S-、-CH
2-C(=O)-NR-、-C(O)-、-NRC(O)
-、-NR’C(O)NR-、-NRC(S)NR’
2-、-NRC(O)O-、-OC
(O)NR-、-OC(O)-、-C(O)NR-、-NR-C(O)-、-C(O)O
-、-(O-CH
2-CH
2)
q-、および-(CH
2-CH
2-O)
q-からなる群か
ら選択され、qは、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択され、
RまたはR’は、それぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置
換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換
アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、および-OR
4であり、R
4は、H、
アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル
、および置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、qは直前に定義したとおり
であり、
Tzは、存在してもしなくてもよいトリアゾール基であり、存在する場合には以下からな
る群から選択され、
【化13】
各R
1はそれぞれ独立して、H、C
1-C
6アルキル、C
3-C
12アリール、-(CH
2)
q-C
3-C
12アリール、-C
4-C
16アルキルアリール、または-(CH
2)
q-C
4-C
16アルキルアリールであり、R
2およびR
3は、それぞれ独立してHおよ
び-CO
2R
5であり、R
5は、H、C
1-C
6アルキル、C
3-C
12アリール、およ
びC
4-C
16アルキルアリールからなる群から選択され、R
2またはR
3の一方がCO
2R
5の場合、他方はHであり、
Vは、-C(O)-、-C(S)-、-NRC(O)-、-NRC(S)-、および-O
C(O)-からなる群から選択され;
【化14】
上記式中、p
1、p
2、p
3、m
1、m
2、Tz、W
2、R、R
1、R
2、R
3、および
Vは、上で定義したとおりであり;
(c) -L
1-、-L
2-L
3-、または-L
1-L
2-L
3-
上記式中、L
1は、-NR-(CH
2)
q-[O-CH
2-CH
2-O]
q-(CH
2)
q-C(=O)-であり、
L
2は、-NR-(CH
2)
q-C(COOR
5)-NR-であり、
L
3は、-(O=)C-(CH
2)
q-C(=O)-であり、
各qは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択
される整数であり、RおよびR
5は、上で定義したとおりであり、
(d) B-(CR
6H)
q-(CH
2)
q-C(=O)-NR-(CH
2)
q-O-ま
たはB-NR-(CH
2)
q-O-
上記式中、qおよびRはそれぞれ上で定義したとおりであり、R
6はHまたは-COO
R
5であり、
Bは、光学画像化、PET画像化、SPECT画像化、または放射線療法に適した任意の
光学または放射線標識官能基;ならびにその立体異性体および薬学的に許容可能な塩であ
る、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
Lが、
【化15】
からなる群から選択され、上記式中、uは、1、2、3、4、5、6、7および8から選
択される整数であり、RおよびR
5は、上で定義したとおりである、請求項1~8のいず
れか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Bが、18F、124I、125I、131I、および211Atからなる群から選択
される放射性同位体を含む放射性標識補助基である、請求項1~9のいずれか1項に記載
の化合物。
【請求項11】
前記放射性標識補助基が、
【化16】
からなる群から選択され、上記式中、各Xは、それぞれ独立して、
18F、
124I、
1
25I、
131I、および
211Atからなる群から選択される放射性同位体であり、各
RおよびR’は上で定義したとおりであり、各nは、それぞれ独立して、0、1、2、3
、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、
19、および20からなる群から選択される整数である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記放射性標識補助基が、
【化17】
からなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Bがキレート剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
前記キレート剤が、
【化18-1】
【化18-2】
【化18-3】
からなるキレート剤を含む、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Bが光学色素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
前記光学色素が蛍光色素である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記蛍光色素が、カルボシアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チ
アカルボシアニンおよびメロシアニン、ポリメチン、クマリン、ローダミン、キサンテン
、フルオレセイン、ホウ素ジピロメタン(BODIPY)、Cy5、Cy5.5、Cy7
、VivoTag-680、VivoTag-S680、VivoTag-S750、A
lexaFluor660、AlexaFluor680、AlexaFluor700
、AlexaFluor750、AlexaFluor790、Dy677、Dy676
、Dy682、Dy752、Dy780、DyLight547、Dylight647
、HiLyte Fluor 647、HiLyte Fluor 680、HiLyt
e Fluor 750、IRDye 800CW、IRDye 800RS、IRDy
e 700DX、ADS780WS、ADS830WS、ならびにADS832WSから
なる群から選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記光学色素が、
【化19-1】
【化19-2】
からなる群から選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物が、
【化20】
からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物が、
【化21】
;および
からなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項22】
1以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、またはアジュバントをさらに含む
、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)に関連する疾患または障害の画像化方法
であって、前記方法は、対象に請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物または請求
項21に記載の医薬組成物を投与することと、画像を取得することとを含み、前記式(I
)の化合物は、光学画像化、PET画像化またはSPECT画像化に適した放射性標識官
能基を含む、方法。
【請求項24】
線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)の阻害方法であって、前記方法は、必要
とする対象に有効量の請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物または請求項21に
記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項25】
線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)に関連する疾患または障害の処置方法で
あって、前記方法は、処置を必要とする対象に有効量の請求項1~20のいずれか1項に
記載の化合物または請求項21に記載の医薬組成物を投与することを含み、前記式(I)
の化合物は、放射線療法に適した放射性標識官能基を含む、方法。
【請求項26】
(FAP-α)に関連する疾患または障害が、増殖性疾患;組織リモデリングおよび/
または慢性炎症を特徴とする疾患;内分泌機能異常を伴う障害;ならびに血液凝固障害か
らなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記増殖性疾患が、乳がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、
肺がん、黒色腫、線維肉腫、骨・結合組織肉腫、腎細胞がん、巨細胞がん、扁平上皮がん
、および腺がんからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年10月23日出願の米国仮出願第62/575,607号の利益を
主張し、その全体がここに援用される。
【0002】
(米国連邦政府支援の研究開発)
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立がん研究所によるNIH CA197
470として米国政府の支援下でなされたものであり、米国政府は本発明に一定の権利を
有する。
【背景技術】
【0003】
線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)の発現は、悪性の乳がん、大腸がん、皮
膚がん、前立腺がんおよび膵臓がんなど、研究対象となった上皮がんの周囲90%超の間
質の線維芽細胞の表面で検出されている(非特許文献9、非特許文献18、非特許文献2
3、非特許文献20)。FAP-αは、がん関連線維芽細胞(CAF)の特徴的なマーカ
ーであり、血管新生の促進、増殖、浸潤、および腫瘍細胞死の抑制に重要な役割を果たす
(非特許文献1、非特許文献8)。健常成人組織では、FAP-αの発現は、組織リモデ
リングや創傷の治癒の部位に限られる(非特許文献20、非特許文献26、非特許文献2
、非特許文献13)。また、FAP-α陽性細胞は、胚発生中、慢性炎症、関節炎、およ
び線維症の部位に加えて、軟部組織および骨肉腫で観察される(非特許文献20、非特許
文献26)。これらの特徴から、FAP-αは、がんおよび炎症性疾患の画像化および放
射線療法の標的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0357650号明細書
【特許文献2】米国特許第9,346,814号明細書
【特許文献3】国際公開第2013/107820号
【非特許文献】
【0005】
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【非特許文献2】Bae S, Park CW, Son HK, Ju HK, Paik D, Jeon CJ, Koh GY, Kim J, Kim H. Fibroblast activation protein alpha identifies mesenchymal stromal cells from human bone marrow. Br J Haematol. 2008 Sep;142(5):827-30.
【非特許文献3】Chen ZY, Wang YX, Lin Y, Zhang JS, Yang F, Zhou QL, Liao YY. Advance of molecular imaging technology and targeted imaging agent in imaging and therapy. Biomed Res Int. 2014; 2014 : 819324. PMCID: PMC3943245.
【非特許文献4】Coenen HH, Elsinga PH, Iwata R, Kilbourn MR, Pillai MR, Rajan MG, Wagner HN Jr. Zaknun JJ. Fluorine-18 radiopharmaceuticals beyond [18F]FDG for use in oncology and neurosciences. Nuclear medicine and biology. 2010; 37:727-740.
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【非特許文献19】Ryabtsova O, Jansen K, Van Goethem S, Joossens J, Cheng JD, Lambeir AM, De Meester I, Augustyns K, Van der Veken P. Acylated Gly-(2-cyano)pyrrolidines as inhibitors of fibroblast activation protein (FAP) and the issue of FAP/prolyl oligopeptidase (PREP)-selectivity. Bioorg Med Chem Lett. 2012 May 15;22(10):3412-7.
【非特許文献20】Scanlan MJ, Raj BK, Calvo B, Garin-Chesa P, Sanz-Moncasi MP, Healey JH, Old LJ, Rettig WJ. Molecular cloning of fibroblast activation protein alpha, a member of the serine protease family selectively expressed in stromal fibroblasts of epithelial cancers. Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Jun 7;91(12):5657-61.
【非特許文献21】Scott AM, Wiseman G, Welt S, Adjei A, Lee FT, Hopkins W, Divgi CR, Hanson LH, Mitchell P, Gansen DN, Larson SM, Ingle JN, Hoffman EW, Tanswell P, Ritter G, Cohen LS, Bette P, Arvay L, Amelsberg A, Vlock D, Rettig WJ, Old LJ. A Phase I dose-escalation study of sibrotuzumab in patients with advanced or metastatic fibroblast activation protein-positive cancer. Clin Cancer Res. 2003 May;9(5):1639-47.
【非特許文献22】Tsai TY, Yeh TK, Chen X, Hsu T, Jao YC, Huang CH, Song JS, Huang YC, Chien CH, Chiu JH, Yen SC, Tang HK, Chao YS, Jiaang WT. Substituted 4-carboxymethylpyroglutamic acid diamides as potent and selective inhibitors of fibroblast activation protein. J Med Chem. 2010 Sep 23;53(18):6572-83.
【非特許文献23】Tuxhorn JA, Ayala GE, Smith MJ, Smith VC, Dang TD, Rowley DR. Reactive stroma in human prostate cancer: induction of myofibroblast phenotype and extracellular matrix remodeling. Clin Cancer Res. 2002 Sep;8(9):2912-23.
【非特許文献24】Welt S, Divgi CR, Scott AM, Garin-Chesa P, Finn RD, Graham M, Carswell EA, Cohen A, Larson SM, Old LJ, et al, Antibody targeting in metastatic colon cancer: a phase I study of monoclonal antibody F19 against a cell-surface protein of reactive tumor stromal fibroblasts. J Clin Oncol. 1994 Jun;12(6):1193-203.
【非特許文献25】Youn H., Hong K. In vivo noninvasive small animal molecular imaging. Osong Public Health Res Perspect. 2012; 3 :48-59. PMCID: PMC3738683.
【非特許文献26】Yu DM, Yao TW, Chowdhury S, Nadvi NA, Osborne B, Church WB, McCaughan GW, Gorrell MD. The dipeptidyl peptidase IV family in cancer and cell biology. FEBS J. 2010 Mar;277(5):1126-44.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FAP-αは腫瘍間質に発現しているので、抗FAP抗体は、マウスF19、シブロツ
ズマブ(F19抗体のヒト化型)、ESC11、ESC14などの悪性腫瘍の放射免疫標
的として検討されている(非特許文献24、非特許文献21、非特許文献7)。また、抗
体は、関節リウマチ等の炎症の画像化にも利用できる可能性が示されている(非特許文献
14)。しかし、抗体を分子撮像剤として用いることには、血中や非標的組織でのクリア
ランスが遅いこと(通常2~5日以上)や、非特異的な臓器取り込みといった薬物動態学
的な制限がある。一方、低分子量(LMW)の薬剤であれば、投与後、臨床的に有用な時
間内で速い薬物動態と高い特異的シグナルを示す。また、放射性標識された形で容易に合
成でき、かつ規制当局による承認過程を短縮できる可能性がある(非特許文献4、非特許
文献5、非特許文献17)。しかしながら、FAP-αの核画像化に理想的な特性を持つ
低分子量のリガンドは未だ報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一部の態様では、本開示の主題は式(I)の化合物を提供し、
【化1】
上記式中、Aは、FAP-αの標的部分であり、Bは、光学画像化、PET画像化、SP
ECT画像化、または放射線療法に適した任意の光学または放射線標識官能基であり、L
は、BおよびAと化学結合を形成するよう適合された二官能基を有するリンカーである。
【0008】
特定の態様では、Aが、以下の構造を有するFAP-α標的部分であり、
【化2】
上記式中、各yは、それぞれ独立して、0、1、および2からなる群から選択される整数
であり、R
1x、R
2x、およびR
3x’は、それぞれ独立して、H、OH、ハロゲン、
C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルからなる群
から選択され、R
3xは、H、-CN、-B(OH)
2、-C(O)アルキル-、-C(
O)アリール-、-C=C-C(O)アリール、-C=C-S(O)
2アリール、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-PO
3H
2、および5-テトラゾリルからなる群
から選択され、R
4xはHであり、R
5x、R
6x、およびR
7xは、それぞれ独立して
、H、-OH、オキソ、ハロゲン、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、-S
-C
1-6アルキル、-NR
8xR
9x、-OR
12x、-Het
2、および-Ar
2か
らなる群から選択され、各C
1-6アルキルは、-OHおよびハロゲンから選択される1
~3の置換基で任意に置換され、R
8x、R
9x、およびR
12xは、それぞれ独立して
、H、-OH、ハロ、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、-S-C
1-6ア
ルキル、および-AR
3からなる群から選択され、R
10x、R
11x、R
13x、およ
びR
14xは、それぞれ独立して、H、-OH、ハロゲン、-C
1-6アルキル、-O-
C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルからなる群から選択され、Ar
1、A
r
2、およびAr
3は、それぞれ独立して、O、NおよびSから選択される1または2個
のヘテロ原子を任意に含む芳香族5員または6員単環であり、Ar
1、Ar
2、およびA
r
3は、それぞれ独立して、-NR
10xR
11x、-C
1-6アルキル、-O-C
1-
6アルキル、および-S-C
1-6アルキルから選択される1~3の置換基で任意に置換
され、Het
2は、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含
む非芳香族5員または6員単環であり、Het
2は、-NR
13xR
14x、-C
1-6
アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルから選択される1~
3の置換基で任意に置換され、
【化3】
は、N含有芳香族または非芳香族5員~10員単環または二環式複素環を表し、該複素環
は、O、NおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を任意にさらに含み、
【化4】
は、前記リンカーLまたは前記レポーター部分Bに対する前記FAP-α結合リガンドの
結合点を示し、該結合点は、前記N含有芳香族または非芳香族5員~10員単環または二
環式複素環の炭素原子のいずれかを介してよい部分;ならびにその立体異性体および薬学
的に許容可能な塩である。
【0009】
より特定の態様では、Aが、以下の構造を有するFAP-α標的部分であり、
【化5】
上記式中、
【化6】
は、前記リンカーLまたは前記レポーター部分Bに対する前記FAP-α結合リガンドの
結合点を示し、該結合点は、前記キノリニル環の5、6、7、または8位の炭素原子のい
ずれかを介してよい部分;ならびにその立体異性体および薬学的に許容可能な塩である。
【0010】
さらに別の特定の態様では、Aが、以下からなる群から選択される。
【化7】
【0011】
別の態様では、本開示の主題は、式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
一部の態様では、本開示の主題は、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)に関
連する疾患または障害の画像化方法を提供し、前記方法は、式(I)の化合物を投与する
ことと、画像を取得することと、を含み、前記式(I)の化合物は、光学画像化、PET
画像化またはSPECT画像化に適した光学または放射性標識官能基を含む。
【0013】
別の態様では、本開示の主題は、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)の阻害
方法を提供し、前記方法は、有効量の式(I)の化合物を必要とする対象に投与すること
を含む。
【0014】
さらに別の態様では、本開示の主題は、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)
に関連する疾患または障害の処置方法を提供し、前記方法は、処置を必要とする対象に有
効量の式(I)の化合物を投与することを含み、前記式(I)の化合物は、放射線療法に
適した放射性標識官能基を含む。
【0015】
特定の態様では、(FAP-α)に関連する前記疾患または障害は、限定するものでは
ないが、乳がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、肺がん、黒色
腫、線維肉腫、骨・結合組織肉腫、腎細胞がん、巨細胞がん、扁平上皮がん、および腺が
んを含む増殖性疾患;組織リモデリングおよび/または慢性炎症を特徴とする疾患;内分
泌機能異常を伴う障害;ならびに血液凝固障害からなる群から選択される。
【0016】
本開示の主題によってその全体または一部が説明される上記の本開示の主題の特定の態
様や別の態様は、以下に詳述する添付の実施例や図面と併せて下記の説明により明らかと
なろう。
【0017】
本特許または本願のファイルにはカラーの図面が少なくとも1つ含まれている。カラー
図面を含む本特許または本願公報のコピーは、申請を行い所定の手数料を納付することに
より米国特許商標庁から取得できる。
【0018】
本開示の主題を総括したが、以降、以下の添付の図面を参照する。なお、これらの図面
は必ずしも実寸どおりではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1A、
図1Bおよび
図1Cは、代表的なFAP標的薬剤であるXY-FAP-01および[
111In]XY-FAP-02の合成経路および構造を示す。
図1Aは、リガンドの前駆体であるtert-ブチル(S)-(3-((4-((2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)カルバメートの多段階合成を示す。各工程の後、反応混合物を25gのC18カートリッジに担持させ、MeCN/水/TFAグラジエントにより精製した。中間生成物の同定は
1H-NMRにより行った。
【
図1B】
図1Bは、光学撮像剤であるXY-FAP-01の全体構造を示す。XY-FAP-01は、前駆体とIRDye800CW-NHSとの一段階反応で得た。HPLCによる精製後、主生成物を85%の収率で得た。
【
図1C】
図1Cは、SPECT用撮像剤である[
111In]XY-FAP-02の全体構造を示す。まず、前駆体とDOTA-GA(t-Bu)
4-NHSとの一段階反応により前駆体をDOTAで官能化した。未標識の生成物をHPLCで精製し、XY-FAP-02を得た。その後、
111Inで放射性標識し、HPLCで精製を行い、放射性標識生成物[
111In]XY-FAP-02を得た。
【
図2】
図2は、ヒト組換FAPに対するXY-FAP-01の阻害活性を示す。XY-FAP-01の阻害活性は発蛍光FAPアッセイキットを用いて決定した。XY-FAP-01は未処理の基質(naive substrate)でヒト組換FAPの酵素活性を濃度依存的に阻害した。XY-FAP-01の活性の片対数阻害曲線を作成し、XY-FAP-01のKi値を求めたところ1.26nMであった。
【
図3】
図3A、
図3B、および
図3Cは、XY-FAP-01および[
111In]XY-FAP-02のin vitroの結合能および特異性の評価を示す。
図3Aは、さまざまな細胞系でのXY-FAP-01における濃度依存的取り込みを示す。XY-FAP-01を、濃度を変えて(50nM~0.78nMの範囲)添加して培養した細胞をLI-CORE Pearl Impulseイメージャで画像化し、さまざまなFAP陽性細胞株およびFAP陰性細胞株における薬剤の取り込みを評価した(左図)。FAP陽性細胞株(NCIH2228、U87およびSKMEL24)ならびにFAP陰性細胞株(PC3、NCIH226およびHCT116)でのXY-FAP-01の取り込みの用量反応曲線を作成した(右図)。
図3Bは、FAP陽性細胞株におけるXY-FAP-01の取り込みの抑制を示す。25nMのXY-FAP-01を添加して培養した細胞を、DPPIVとFAPとの阻害剤であるタラボスタット、またはDPPIV単独の阻害剤であるシタグリプチンのいずれかを濃度を変えて添加し培養した。XY-FAP-01の取り込みを測定し、タラボスタットとシタグリプチンの両方について片対数阻害剤反応曲線を作成した。
図3Cは、FAP陽性U87細胞株およびFAP陰性PC3細胞株における[
111In]XY-FAP-02の取り込みを示す。細胞を1μCiの[
111In]XY-FAP-02を添加して培養し、冷PBSで洗浄した。細胞ペレットの放射線量を測定し、培養線量に標準化した。
【
図4】
図4は、腫瘍担持マウスにおける[
111In]-XY-FAP-01のex vivoの組織バイオディストリビューションを示す表である。U87腫瘍移植片とPC3腫瘍移植片とを担持させたNOD/SKIDマウスを、10μCiの[
111In]-XY-FAP-01の注射5分、0.5時間、2時間、6時間、および12時間後に屠殺し、バイオディストリビューション分析用の組織を採取した。さらに、非標識XY-FAP-02と10μCiの[
111In]-XY-FAP-01とを両方注射したマウスを注射6時間後に屠殺し、放射性標識化合物の取り込みに対するブロックの影響を調べた。データは平均値±標準偏差で示す。
aスチューデントのt検定によりPC3腫瘍とU87腫瘍との平均%ID/gを比較したところ、注射後5分、0.5時間、2時間、6時間において両群間に有意差が認められた(p<0.0001)。6時間後のブロッキング試験では、両群間に有意差は認められなかった。
bスチューデントのt検定によりPC3腫瘍とU87腫瘍の平均%ID/gを比較したところ、注射後12時間において両群間に有意差が認められた(p=0.0006)。
cスチューデントのt検定により注射6時間後のPC3腫瘍とU87腫瘍の平均%ID/gを比較したところ、6時間後のブロッキング試験の%ID/g腫瘍と6時間後の通常のバイオディストリビューションの結果との間に有意差が認められた(p<0.0001)。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、[
111In]XY-FAP-02のex vivoバイオディストリビューションの時間放射能の関係を示す。
図5Aは、U87腫瘍、PC3腫瘍、および血液中の[
111In]XY-FAP-02活性の組織の時間放射能曲線(TAC)を示す。
図5Bは、U87腫瘍、PC3腫瘍、血液、および筋肉(mm)間の%ID/gの比を示す。
【
図6】
図6は、腫瘍担持マウスにおけるXY-FAP-01の連続NIRF画像を示す。FAP陽性U87腫瘍移植片(黄色の丸)とFAP陰性PC3(赤の丸)腫瘍移植片とを担持させたNOD/SKIDマウスに10nmolのXY-FAP-01を尾静脈注入し、続いてLI-CORE Pearl Impulseイメージャで連続NIRF画像化を実施した。注射0.5時間、1時間、2.5時間、および4時間後の代表的な画像を示す。
【
図7】
図7は、脇腹上部にU87腫瘍移植片とPC3腫瘍移植片とを担持させたNOD/SKID雌マウスにおける、[
111In]XY-FAP-02の注射30分、2時間、6時間、および24時間後のSPECT-CT画像を示す。
【
図8】
図8は、脇腹上部にU87腫瘍移植片とPC3腫瘍移植片とを担持させたNOD/SKID雌マウスにおける、[
111In]XY-FAP-02の注射30分、2時間、6時間、および24時間後の三次元SPECT-CT画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本開示の主題の一部の実施形態を参照して本開示の主題
について説明するが、図面に本開示の主題の全ての実施形態が図示されているとは限らな
い。同じ参照符号は全体にわたり同じ要素を参照する。本開示の主題は、多くの異なる形
態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定するものと解釈すべきではな
く、本開示が適用される法的要件を満たすようにこれらの実施形態が提供される。実際、
前述の説明および関連する図面に提示される教示の利益を受ける本開示の主題に関連する
当業者は、本明細書に記載する本開示の主題の多くの変形例および他の実施形態を想到す
るであろう。したがって、本開示の主題は、開示する特定の実施形態に限定されず、変形
例や他の実施形態が添付の請求項の範囲に包含されることを意図していることが理解され
る。
【0021】
I.線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)を標的とする撮像剤および放射線療法
用薬剤
FAP-αは、Pro-AA(AAは任意のアミノ酸を表す)のペプチド結合の切断能
力を特徴とするプロリルオリゴペプチダーゼファミリのII型膜貫通型セリンプロテアーゼ
である。FAP-αは、その酵素活性によって生理活性シグナル伝達ペプチドを修飾する
ことにより、がんに役割を果たしていることが示されている(非特許文献12、非特許文
献6)。FAP-αの発現は、限定するものではないが、悪性の乳がん、大腸がん、皮膚
がん、前立腺がん、膵臓がんなどの上皮がん、ならびに、限定するものではないが、関節
炎、線維症などを含む炎症性疾患の周囲90%超の間質の線維芽細胞の表面で検出される
が、健康な組織ではほとんど発現しない。したがって、特異的にFAP-αを標的とする
撮像剤および放射線療法用薬剤は臨床的に重要である。
【0022】
FAP-αは、その酵素機能を果たすためにホモ二量体として存在する。FAP-αを
選択的に標的とする阻害剤が報告されている(非特許文献15、非特許文献22、非特許
文献19、非特許文献16、非特許文献10、非特許文献11)。本開示の主題は、一部
には、光学色素、放射性金属キレート錯体、およびその他の放射性標識補助基により修飾
可能なFAP-αに選択的な標的部分を提供することにより、FAP-αを標的とする画
像化および放射線療法のための基礎を提供する。
【0023】
ポジトロン放出断層撮影法(PET)などの放射性核種分子画像化は、組織浸透の制約
のない最も高度な分子画像化法である。放射性核種分子画像化は、感度および定量性が高
いという利点を有するため、臨床研究および前臨床研究に重要な役割を果たしている(非
特許文献25、非特許文献3)。標的放射免疫療法に用いるべく、多くの放射性核種、主
としてβ線放出体およびα線放出体が検討されており、これには、放射性ハロゲンおよび
放射性金属の両方が含まれる(代表的な治療用放射性核種については表1参照)。
【0024】
【0025】
FAP-αを標的とする非常に強力かつ特異的な結合部分により、FAP-αを核画像
化および放射線療法に使用できるようになる。本開示の主題は、FAP-αに対するこの
二重標的部分に基づく核画像化および放射線療法用薬剤を最初に合成するものである。
【0026】
したがって、一部の実施形態では、本開示の主題は、金属キレート剤および金属錯体を
含む、光学色素および放射性標識基による修飾に使用可能な標的部分と共役し、FAP-
αを標的とするin vivoの光学画像化、核画像化(光学、PETおよびSPECT
)、ならびに放射線療法を可能にする、強力かつ選択的なFAP-αの低分子量(LMW
)リガンド、すなわち、選択的FAP-α阻害剤を提供する。重要な点として、本開示の
化合物は、効力を大きく失うことなく、標識基と修飾、例えば共役可能である。本開示の
手法により、FAP-αに関連する画像化の用途のため、光学色素、および、限定するも
のではないが、68Ga、64Cu、18F、86Y、90Y、89Zr、111In、
99mTc、125I、124I等のPETまたはSPECT用同位元素によるFAP-
αリガンドの簡便な標識化が可能となる。さらに、本開示の手法により、FAP-αに関
連する放射線療法のため、限定するものではないが、90Y、177Lu、125I、1
31I、211At、111In、153Sm、186Re、188Re、67Cu、2
12Pb、225Ac、213Bi、212Bi、212Pb、67Ga等の放射性療法
用同位元素によるFAP-αリガンドの放射性標識が可能となる。
【0027】
特定の実施形態では、IRDye-800CW(XY-FAP-01)と共役した光学
剤が合成され、in vitroでFAP-α+ U87細胞株、およびin vivo
でFAP-α+ U87腫瘍への選択的取り込みを示し、腫瘍が明確に検出された。別の
特定の実施形態では、111In標識リガンド(XY-FAP-02-[111In])
を、その前駆体から金属キレート剤により高収率および高純度で得ることができた。in
vivo試験では、FAP-α陽性U87腫瘍担持マウスにおいて、非特異的な臓器へ
の取り込みを最小限に押さえつつ、放射性トレーサが腫瘍に明確に取り込まれ、このこと
は、FAP-α発現腫瘍の特異的画像化を可能とするものである。本開示のFAP-α標
的部分は、FAP-αを標的とする画像化および処置の用途のため、当該分野で公知の光
学染料および放射性同位体と共に用いるよう適合され得る。
【0028】
より詳細には、一部の実施形態では、本開示の主題は、式(I)の一般構造を有する化
合物を提供し、
【化8】
上記式中、Aは、FAP-αの標的部分であり、Bは、光学画像化、ポジトロン放出断層
(PET)画像化、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)画像化、または放
射線療法に適した任意の光学または放射線標識官能基であり、Lは、BおよびAと化学結
合を形成するよう適合された二官能基を有するリンカーである。
【0029】
FAP-αの代表的な標的部分は、Jansenらの2014年12月4日公開の特許文献1
(Novel FAP Inhibitors)、Jansenらの2016年5月24日発行の特許文献2(Novel
FAP Inhibitors)、およびJansenらの2013年7月25日公開の特許文献3(Novel FA
P Inhibitors)に開示されており、これらの各々は、その全体が参照により援用される。
【0030】
より詳細には、Jansenらの特許文献2は、本開示の主題と用いるのに適した、式(X)
のFAP-α阻害剤、またはその立体異性体、互変異性体、ラセミ体,塩、水和物、もし
くは溶媒和物を開示し、
【化9】
上記式中、
R
1xおよびR
2xは、それぞれ独立して、H、OH、ハロゲン、C
1-6アルキル、-
O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルからなる群から選択され、
R
3xは、H、-CN、-B(OH)
2、-C(O)アルキル-、-C(O)アリール-
、-C=C-C(O)アリール、-C=C-S(O)
2アリール、-CO
2H、-SO
3
H、-SO
2NH
2、-PO
3H
2、および5-テトラゾリルからなる群から選択され、
R
4xはHであり、
R
5x、R
6x、およびR
7xは、それぞれ独立して、H、-OH、オキソ、ハロゲン、
-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、-S-C
1-6アルキル、-NR
8xR
9x、-OR
12x、-Het
2、および-Ar
2からなる群から選択され、各C
1-6
アルキルは、-OHおよびハロゲンから選択される1~3の置換基で任意に置換され、
R
8x、R
9x、およびR
12xは、それぞれ独立して、H、-OH、ハロ、-C
1-6
アルキル、-O-C
1-6アルキル、-S-C
1-6アルキル、および-AR
3からなる
群から選択され、
R
10x、R
11x、R
13x、およびR
14xは、それぞれ独立して、H、-OH、ハ
ロゲン、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキル
からなる群から選択され、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、それぞれ独立して、O、N
およびSから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含む芳香族5員または6員単
環であり、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、それぞれ独立して、-NR
10xR
11x
、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルから選
択される1~3の置換基で任意に置換され、
Het
2は、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含む非芳
香族5員または6員単環であり、Het
2は、-NR
13xR
14x、-C
1-6アルキ
ル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルから選択される1~3の置
換基で任意に置換され、
vは、0、1、2、または3であり、
【化10】
は、N含有芳香族または非芳香族5員~10員単環または二環式複素環を表し、該複素環
は、O、NおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を任意にさらに含む。
【0031】
特定の実施形態では、
【化11】
が、以下からなる群から選択され、
【化12】
上記式中、*は前記N含有芳香族または非芳香族5員~10員単環または二環式複素環の
-(CH
2)
v-への結合点を示す。
【0032】
したがって、一部の実施形態では、Aが、以下の構造を有するFAP-α標的部分であ
り、
【化13】
上記式中、各yは、それぞれ独立して、0、1、および2からなる群から選択される整数
であり、
R
1x、R
2x、およびR
3x’は、それぞれ独立して、H、OH、ハロゲン、C
1-6
アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルからなる群から選択
され、
R
3xは、H、-CN、-B(OH)
2、-C(O)アルキル-、-C(O)アリール-
、-C=C-C(O)アリール、-C=C-S(O)
2アリール、-CO
2H、-SO
3
H、-SO
2NH
2、-PO
3H
2、および5-テトラゾリルからなる群から選択され、
R
4xはHであり、
R
5x、R
6x、およびR
7xは、それぞれ独立して、H、-OH、オキソ、ハロゲン、
-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、-S-C
1-6アルキル、-NR
8xR
9x、-OR
12x、-Het
2、および-Ar
2からなる群から選択され、各C
1-6
アルキルは、-OHおよびハロゲンから選択される1~3の置換基で任意に置換され、
R
8x、R
9x、およびR
12xは、それぞれ独立して、H、-OH、ハロ、-C
1-6
アルキル、-O-C
1-6アルキル、-S-C
1-6アルキル、および-AR
3からなる
群から選択され、
R
10x、R
11x、R
13x、およびR
14xは、それぞれ独立して、H、-OH、ハ
ロゲン、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキル
からなる群から選択され、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、それぞれ独立して、O、N
およびSから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含む芳香族5員または6員単
環であり、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、それぞれ独立して、-NR
10xR
11x
、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルから選
択される1~3の置換基で任意に置換され、
Het
2は、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含む非芳
香族5員または6員単環であり、Het
2は、-NR
13xR
14x、-C
1-6アルキ
ル、-O-C
1-6アルキル、および-S-C
1-6アルキルから選択される1~3の置
換基で任意に置換され、
vは、0、1、2、または3であり、
【化14】
は、N含有芳香族または非芳香族5員~10員単環または二環式複素環を表し、該複素環
は、O、NおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を任意にさらに含み、
【化15】
は、L等のリンカー、あるいは、光学画像化、PET画像化、SPECT画像化または放
射線療法に適した光学または放射性標識官能基などのレポーター部分へのFAP-α結合
リガンドの結合点を示し、該結合点は、前記N含有芳香族または非芳香族5員~10員単
環または二環式複素環の炭素原子のいずれかを介してよい部分;ならびにその立体異性体
および薬学的に許容可能な塩である。
【0033】
特定の実施形態では、
【化16】
が、以下からなる群から選択される。
【化17】
【0034】
一部の実施形態では、Aが、以下の構造を有するFAP-α標的部分であり、
【化18】
上記式中、y、R
1x、R
2x、およびR
3x’は上で定義したとおりであり、
【化19】
は、L等のリンカー、あるいは、光学画像化、PET画像化、SPECT画像化または放
射線療法に適した光学または放射性標識官能基などのレポーター部分へのFAP-α結合
リガンドの結合点を示し、該結合点は、前記キノリニル環の5、6、7、または8位の炭
素原子のいずれかを介してよい部分;ならびにその立体異性体および薬学的に許容可能な
塩である。
【0035】
特定の実施形態では、Aが、以下からなる群から選択される。
【化20】
【0036】
より特定の実施形態では、Aが、
【化21】
;ならびにその立体異性体からなる群から選択される。
【0037】
さらに別の特定の実施形態では、Aが、以下からなる群から選択される。
【化22】
【0038】
一部の実施形態では、LとBとの組み合わせは、以下のように表すことができ、
【化23】
上記式中、構成要素p
1、p
2、p
3、およびp
4に関連するサブユニットは任意の順序
で並んでいてよく、
tは、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択される整数であり、
p
1、p
3、およびp
4は、それぞれ独立して0または1であり、
p
2は、0、1、2、および3からなる群から選択される整数であり、p
2が2または3
の場合、各R
1は同じでも異なっていてもよく、
m
1およびm
2は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、および6からなる群か
ら選択される整数であり、
W
1は、結合、-S-、-C(=O)-NR-、および-NR-C(=O)-からなる群
から選択され、
W
2は、結合、-S-、-CH
2-C(=O)-NR-、-C(O)-、-NRC(O)
-、-NR’C(O)NR-、-NRC(S)NR’
2-、-NRC(O)O-、-OC
(O)NR-、-OC(O)-、-C(O)NR-、-NR-C(O)-、-C(O)O
-、-(O-CH
2-CH
2)
q-、および-(CH
2-CH
2-O)
q-からなる群か
ら選択され、qは、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択され、
RまたはR’は、それぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置
換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換
アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、および-OR
4であり、R
4は、H、
アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル
、および置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、qは直前に定義したとおり
であり、
Tzは、存在してもしなくてもよいトリアゾール基であり、存在する場合には以下からな
る群から選択され、
【化24】
各R
1はそれぞれ独立して、H、C
1-C
6アルキル、C
3-C
12アリール、-(CH
2)
q-C
3-C
12アリール、-C
4-C
16アルキルアリール、または-(CH
2)
q-C
4-C
16アルキルアリールであり、R
2およびR
3は、それぞれ独立してHおよ
び-CO
2R
5であり、R
5は、H、C
1-C
6アルキル、C
3-C
12アリール、およ
びC
4-C
16アルキルアリールからなる群から選択され、R
2またはR
3の一方がCO
2R
5の場合、他方はHであり、
Vは、-C(O)-、-C(S)-、-NRC(O)-、-NRC(S)-、および-O
C(O)-からなる群から選択され;
Bは、光学画像化、PET画像化もしくはSPECT画像化、あるいは放射線療法に適し
た任意の光学または放射性標識官能基;ならびにその立体異性体および薬学的に許容可能
な塩である。
【0039】
一部の実施形態では、Lが、以下の一般構造を有し、
【化25】
上記式中、p
1、p
2、p
3、m
1、m
2、q、t、Tz、W
2、R、R
1、R
2、R
3
、およびVは、上で定義したとおりである。
【0040】
一部の実施形態では、Lが、-L1-、-L2-L3-、および-L1-L2-L3-
からなる群から選択され、
上記式中、L1は、-NR-(CH2)q-[O-CH2-CH2-O]q-(CH2)
q-C(=O)-であり、
L2は、-NR-(CH2)q-C(COOR5)-NR-であり、
L3は、-(O=)C-(CH2)q-C(=O)-であり、
各qは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択
される整数であり、RおよびR5は、上で定義したとおりである。
【0041】
特定の実施形態では、Lが、
-(CR6H)q-(CH2)q-C(=O)-NR-(CH2)q-O-または-NR
-(CH2)q-O-であり、
上記式中、qおよびRはそれぞれ上で定義したとおりであり、R6はHまたは-COOR
5である。
【0042】
さらに別の特定の実施形態では、Lが、以下からなる群から選択され、
【化26】
上記式中、uは、1、2、3、4、5、6、7および8から選択される整数であり、Rお
よびR
5は、上で定義したとおりである。
【0043】
適切なリンカーは、2011年3月17日公開のPomperらの米国特許出願公開第201
1/0064657号明細書「Labeled Inhibitors of Prostate Specific Membrane Ant
igen (PSMA), Biological Evaluation, and Use as Imaging Agents」、および2012
年1月12日公開のPomperらの米国特許出願公開第2012/0009121号明細書「
PSMA-Targeting Compounds and Uses Thereof」に開示されており、これら文献は、その
全体が参照により援用される。
【0044】
一部の実施形態では、Bが、
18F、
124I、
125I、
131I、および
211A
tからなる群から選択される放射性同位体を含む放射性標識補助基(radiolabeled prost
hetic group)である。代表的な放射性標識補助基としては、限定するものではないが、
以下が挙げられ、
【化27】
上記式中、各Xは、それぞれ独立して、
18F、
124I、
125I、
131I、および
211Atからなる群から選択される放射性同位体であり、各RおよびR’は上で定義し
たとおりであり、各nは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20からなる
群から選択される整数である。
【0045】
より特定の実施形態では、放射性標識補助基が、以下からなる群から選択される。
【化28】
【0046】
別の実施形態では、Bはキレート剤を含む。代表的なキレート剤としては、限定するも
のではないが、以下が挙げられる。
【化29】
【化30】
【化31】
【0047】
一部の実施形態では、Bは、光学色素、例えば、特定の実施形態では蛍光色素を含む。
別の実施形態では、蛍光色素部分が、カルボシアニン、インドカルボシアニン、オキサカ
ルボシアニン、チアカルボシアニンおよびメロシアニン、ポリメチン、クマリン、ローダ
ミン、キサンテン、フルオレセイン、ホウ素ジピロメタン(BODIPY)、Cy5、C
y5.5、Cy7、VivoTag-680、VivoTag-S680、VivoTa
g-S750、AlexaFluor660、AlexaFluor680、Alexa
Fluor700、AlexaFluor750、AlexaFluor790、Dy6
77、Dy676、Dy682、Dy752、Dy780、DyLight547、Dy
light647、HiLyte Fluor 647、HiLyte Fluor 6
80、HiLyte Fluor 750、IRDye 800CW、IRDye 80
0RS、IRDye 700DX、ADS780WS、ADS830WS、ならびにAD
S832WSを含む。
【0048】
代表的な光学色素としては、限定するものではないが、以下が挙げられる。
【化32-1】
【化32-2】
【化33】
【0049】
一部の実施形態では、本開示の主題は、以下からなる群から選択される化合物を提供す
る。
【化34】
【0050】
特定の実施形態では、当該化合物は、以下からなる群から選択される。
【化35】
【0051】
B.医薬組成物および投与
別の態様では、本開示は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、またはアジュバ
ントと混合された式(I)の化合物を含む製剤を提供する。この医薬組成物には、上記の
化合物の薬学的に許容可能な塩または水和物が含まれることを当業者は理解されよう。
【0052】
薬学的に許容可能な塩は、一般に当業者に公知であり、本明細書に記載の化合物に存在
する特定の置換基部分に応じて、比較的無毒の酸または塩基を用いて調製される活性化合
物の塩を含む。本開示の化合物が比較的酸性の官能基を有する場合、中性の形態の当該化
合物を、そのまま、もしくは好適な不活性溶剤中で接触させるか、またはイオン交換によ
り、十分な量の所望の塩基と接触させて、イオン錯体中の酸性対イオン(塩基)の1つを
置換することにより、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容可能な塩基付加塩の
例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩
、またはマグネシウム塩、あるいは類似の塩類が挙げられる。
【0053】
本開示の化合物が比較的塩基性の官能基を有する場合、中性の形態の当該化合物を、そ
のまま、もしくは好適な不活性溶剤中で接触させるか、またはイオン交換により、十分な
量の所望の酸と接触させて、イオン錯体中の酸性対イオン(酸)の1つを置換することに
より、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、
臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic acid)、リン酸、一水素
リン酸(monohydrogenphosphoric acid)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric acid)
、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水素酸、または亜リン酸な
どの無機酸に由来する塩のほか、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸
、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼン
スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較
的無毒の有機酸に由来する塩が挙げられる。また、アルギン酸等のアミノ酸の塩類、グル
クロン酸またはガラクツロン酸等の有機酸の塩も挙げられる(例えば、Berge et al, “P
harmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19参照)。
本開示の特定の化合物は、塩基性官能基と酸性官能基の両方を有し、化合物を塩基付加塩
または酸付加塩のいずれかに変換することが可能である。
【0054】
したがって、本開示の主題と使用するのに適した薬学的に許容可能な塩としては、限定
するものではないが例えば、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒
石酸水素塩、臭化物塩、エデト酸カルシウム、カルン酸塩(carnsylate)、炭酸塩、クエ
ン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセ
プト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸(glycollylarsanil
ate)、ヘキシルゾルシン酸塩(hexylresorcinate)、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩
酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸
塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ムチン酸塩(mucate)、ナ
プシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸
塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、
硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、またはテオクル酸塩が挙げられる。他の薬学的に許容
可能な塩は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.) L
ippincott, Williams & Wilkins (2000)に記載されている。
【0055】
治療および/または診断の用途において、本開示の化合物は、全身投与および表面また
は局所投与などのさまざまな投与形態用に製剤化することができる。技術および配合物は
一般に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.) Lippincott, W
illiams & Wilkins (2000)に記載されている。
【0056】
このような薬剤は、処置される特定の条件に応じて、液体または固体の剤形に製剤化し
、全身または局所に投与することができる。薬剤は、当業者に公知のように、例えば時間
的または持続的放出形態で送達することができる。製剤化および投与のための技術は、Re
mington: The Science and Practice of Pharmacy (20thed.) Lippincott, Williams & W
ilkins (2000)に記載されている。適切な経路としては、経口、頬側、吸入スプレーによ
る、舌下、直腸、経皮、経膣、経粘膜、経鼻または腸内投与;筋肉内、皮下、髄内注射な
どの非経口送達のほか、髄腔内、直接脳室内、静脈内、関節内、胸骨内、滑膜内、肝臓内
、病巣内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、もしくは眼内注射またはその他の送達形態が挙げら
れる。
【0057】
本開示の薬剤は、注射のために、例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理食
塩緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液などの水溶液に配合し、希釈してもよい。経粘
膜投与の場合、透過させる障壁に適した浸透剤を製剤に用いる。このような浸透剤は、当
該技術分野で一般に公知である。
【0058】
本開示を実施するために、本明細書に開示の組成物を全身投与に適した用量に製剤化す
るための薬学的に許容可能な不活性担体の使用は、本開示の範囲内である。本開示の組成
物、特に液剤として製剤化されるものは、担体および適切な製造法の適切な選択により、
静脈注射などにより非経口投与することができる。本化合物は、当該技術分野において公
知の薬学的に許容可能な担体を用いて、経口投与に適した用量に容易に製剤化することが
できる。このような担体を用いることで、本開示の組成物を、処置対象(例えば、患者)
の経口摂取のため、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ、スラリー、懸濁
剤などに製剤化することができる。
【0059】
また、本開示の薬剤は、経鼻または吸入送達のために当業者に公知の方法により製剤化
することができ、例えば、限定するものではないが、生理食塩水などの可溶化剤、希釈剤
、または分散物質;ベンジルアルコールなどの保存剤:吸収促進剤;およびフルオロカー
ボンを含んでよい。
【0060】
本開示での使用に適した医薬組成物は、活性成分を、その意図された目的を達成するた
めの有効な量で含む組成物を含む。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開
示を参照することで十分に当業者が実施可能な範囲にある。一般に、本開示に係る化合物
は、広い用量範囲にわたって有効である。例えば、ヒト成人の処置において使用可能な用
量の例としては、0.01~1000mg、0.5~100mg、1~50mg/日、お
よび5~40mg/日の用量である。なお、限定するものではないが、投与量の一例は1
日10~30mgである。厳密な投与量は、投与経路、化合物の投与形態、処置対象、処
置対象の体重、化合物のバイオアベイラビリティ、化合物の吸着、分布、代謝および排泄
(ADME)、化合物の毒性、ならびに担当医の嗜好および経験によって決まる。
【0061】
医薬組成物は、活性成分に加えて、活性組成物の薬学的に使用可能な製剤への加工を容
易にする賦形剤および助剤を含む、適切な薬学的に許容可能な担体を含有してもよい。経
口投与に配合された製剤は、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、または液剤の形態であってよい
。
【0062】
経口使用のための医薬製剤は、活性組成物を固体賦形剤と混ぜ合わせ、得られた混合物
を任意に粉砕し、必要に応じて適切な助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して錠剤ま
たは糖衣錠コアとすることにより得ることができる。適切な賦形剤は、詳細には、例えば
ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール等の糖;例えばトウモロコ
シデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカ
ントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボ
キシメチルセルロース(CMC)、および/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビ
ドン)等のセルロース調製物などの充填剤である。必要に応じて、例えば架橋ポリビニル
ピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの
崩壊剤を添加してもよい。
【0063】
糖衣錠コアは、好適なコーティングを施して提供される。コーティングには濃縮糖溶液
を用いることができ、この溶液は任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン
、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール(PEG)、および/または二酸化チタン
、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒または混合溶媒を含んでよい。識別のため、ま
たは活性化合物用量の異なる組み合わせを見分けるために、錠剤または糖衣錠コーティン
グに染料または顔料を添加してもよい。
【0064】
経口使用可能な医薬製剤は、ゼラチン製の押し込み型カプセル(push-fit capsules)
、ならびにゼラチン製のソフト密封カプセル、およびグリセロールまたはソルビトールな
どの可塑剤を含む。押し込み型カプセルは、活性成分を、ラクトースなどの賦形剤、デン
プンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑
剤、および任意選択の安定剤と共に混合されて含むことができる。ソフトカプセルでは、
活性組成物が、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール(PEG)
などの適切な液体に溶解または懸濁されてよい。さらに安定剤を添加してもよい。
【0065】
C.式(I)の化合物、またはその医薬組成物を用いた画像化方法
一部の実施形態では、本開示の主題は、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP-α)
に関連する疾患または障害の画像化方法を提供し、当該方法は、光学画像化、PET画像
化またはSPECT画像化に適した光学または放射性標識官能基を含む式(I)の化合物
を投与することと、画像を得ることと、を含む。
【0066】
したがって、一部の実施形態では、本開示の主題は、1以上の細胞、臓器、または組織
の画像化方法を提供し、当該方法は、画像化に適した光学的または放射性同位体標識を有
する有効量の式(I)の化合物に、細胞を曝露させること、または有効量の当該化合物を
対象に投与することを含む。一部の実施形態では、1以上の臓器または組織は、前立腺組
織、腎組織、脳組織、血管組織、または腫瘍組織を含む。
【0067】
本発明の画像化方法は、FAP-αが関与する任意の生理学的過程または特徴の画像化
に適しており、例えば、高濃度のFAP-αを示すかまたは発現する組織または標的の領
域を同定する。FAP-αが関与する生理学的過程は、限定するものではないが、(a)
増殖性疾患(限定するものではないが、がんなど);(b)組織リモデリングおよび/ま
たは慢性炎症(限定するものではないが、線維性疾患、創傷の治癒、ケロイド形成、変形
性関節症、関節リウマチ、および軟骨分解を伴う関連疾患など);ならびに(c)内分泌
性障害(限定するものではないが、グルコース代謝障害など)が含まれる。
【0068】
特定の実施形態では、放射性標識化合物はin vivoで安定である。
【0069】
特定の実施形態では、放射性標識化合物は、ポジトロン放出断層撮影法(PET)また
は単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって検出される。
【0070】
特定の実施形態では、光学的レポーティング部分は、蛍光顕微鏡法など、蛍光によって
検出される。
【0071】
特定の実施形態では、対象に投与した放射性標識化合物の放射線への長時間の被曝を防
ぐため、本開示の化合物は、体の組織から迅速に排出される。通常、本開示の化合物は、
約24時間未満の間に体内から排泄される。より一般的には、本開示の化合物は、約16
時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、90分、または60分未満の間に体
内から排泄される。例示的な化合物は、約60分~約120分間の間に除去される。特定
の実施形態では、本開示の化合物はin vivoで安定であり、例えば注射した化合物
のほぼ全量、例えば、約50%、60%、70%、80%または90%超は排泄前に体内
で代謝されない。
【0072】
さらに、in vitroでの診断および研究用途といったin vitroでの用途
では、哺乳類、特にヒトなどの霊長類の血液、尿または組織の試料、あるいは獣医学用途
について記載する動物の血液、尿または組織の試料など、上記対象の体液および細胞の試
料が使用に適している。
【0073】
別の実施形態は、式(I)の化合物を含むキットを提供する。特定の実施形態では、キ
ットは、薬学的に許容可能な担体と式(I)の化合物とを含むパッケージ化された医薬組
成物を提供する。特定の実施形態では、パッケージ化された医薬組成物は、放射性標識前
駆体と組み合わされると式(I)の化合物を生成するのに必要な反応前駆体を含む。別の
パッケージされた医薬組成物は、提供された前駆体から式(I)の化合物を調製するため
の説明書、および組成物を使用してFAP-αを発現する細胞または組織を画像化するた
めの説明書、のうちの少なくともいずれかを含む指標をさらに含む。
【0074】
特定の実施形態では、約1~約30mCiの上記放射性核種標識撮像剤と、薬学的に許
容可能な担体との組み合わせを含むキットが提供される。撮像剤と担体とは、溶液の状態
で提供されても、凍結乾燥された状態で提供されてよい。キットの撮像剤および担体が凍
結乾燥された状態の場合、キットに、水、生理食塩水、緩衝生理食塩水などの生理学的に
許容可能な無菌の再構成媒質が任意に含まれてよい。キットは、式(I)の化合物を溶液
の状態または凍結乾燥された状態で提供され、キットの成分が、NaCl、ケイ酸塩、リ
ン酸緩衝液、アスコルビン酸、ゲンチジン酸などの安定剤を任意に含んでよい。この実施
形態では、例えば、耐酸化性の還元剤を提供することによってキットの成分の安定化をさ
らに高めてもよい。このような安定剤および安定化法の決定および最適化は、十分に当業
者の技術水準の範囲内にある。
【0075】
特定の実施形態では、キットは、使用時に放射性標識された試薬と混合される放射性標
識されていない前駆体を提供する。
【0076】
撮像剤は、本開示の方法に従って当業者が使用することができる。FAP-αと接触さ
せたときに撮像部位に貯留した撮像剤の空間分布の差によって画像が生成される。空間分
布は、特定の標識に適した任意の手段、例えばガンマカメラ、PET装置、SPECT装
置などを用いて測定することができる。撮像剤の貯留の程度は、放射線放射または蛍光を
定量化するための公知の方法を用いて定量化することができる。特に有用な画像化法では
、複数の撮像剤を使用して同時検査を行う。
【0077】
一般に、検出可能な有効量の本発明の撮像剤を対象に投与する。撮像剤の「検出可能な
有効量」とは、臨床使用に利用可能な装置を用いて、許容できる画像を得るのに十分な量
と定義される。検出可能な有効量の撮像剤は、複数回の注射で投与してもよい。本発明の
撮像剤の検出可能な有効量は、個体の感受性の程度、個体の年齢、性別、体重、個体の特
異体質反応、用量決定(dosimetry)などの要因によって変わり得る。撮像剤の検出可能
な有効量は、機器およびフィルムに関連する要因によっても変わり得る。このような要因
の最適化は、十分に当業者の技術水準の範囲内にある。診断の目的に使用される撮像剤の
量および画像検査の時間は、薬剤の標識に使用する放射性核種、患者の体重、処置対象の
状態の性質および重症度、患者がこれまでに受けた治療的処置の性質、ならびに患者の特
異体質反応に依存する。最終的には、個々の患者に投与する撮像剤の量および画像検査時
間は担当医が決定する。
【0078】
D.式(I)の化合物またはその製剤組成物を用いてFAP-α関連疾患または障害を処
置する方法
別の実施形態では、本開示の式(I)の化合物は、限定するものではないが、(a)増
殖(限定するものではないが、がんを含む);(b)組織リモデリングおよび/または慢
性炎症(限定するものではないが、線維性疾患、創傷の治癒、ケロイド形成、変形性関節
症、関節リウマチ、および軟骨分解を伴う関連疾患を含む);ならびに(c)内分泌性障
害(限定するものではないが、グルコース代謝障害を含む)を含む1以上のFAP-α関
連疾患または障害に罹患した対象を処置するために使用することができる。
【0079】
したがって、一部の実施形態では、1以上のFAP-α関連疾患または障害は、限定す
るものではないが、乳がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、肺
がん、黒色腫、線維肉腫、骨・結合組織肉腫、腎細胞がん、巨細胞がん、扁平上皮がん、
および腺がんを含む増殖性疾患;組織リモデリングおよび/または慢性炎症を特徴とする
疾患;内分泌機能異常を伴う障害;ならびに血液凝固障害からなる群から選択される。
【0080】
一般に、活性薬剤または薬物送達デバイスの「有効量」とは、所望の生物学的反応を誘
発するのに必要な量を指す。当業者が理解するように、薬剤またはデバイスの有効量は、
所望の生物学的エンドポイント、送達する薬剤、医薬組成物の組成、標的組織などの要因
に依存して変化し得る。
【0081】
別の実施形態では、本方法は、培養皿または培養試験管などの制御された環境において
、本化合物と細胞または腫瘍とを導入する、好ましくは混合することにより、in vi
troまたはex vivoで実施することができる。本方法はin vivoで実施す
ることができ、この場合、接触させることは、対象内の標的を本開示の主題の少なくとも
1種の化合物に曝露させること、例えば、任意の適切な経路を介して化合物を対象に投与
することを指す。本開示の主題によれば、接触させることは、化合物を、接触させる細胞
から離れた部位で導入する、曝露するなどにより、対象の身体機能を可能とし、または流
体の自然な移動(例えば、拡散)もしくは人為的な移動(例えば、旋回)を可能にして、
化合物を標的と接触させることを含んでよい。
【0082】
本開示の方法によって処置される対象は多くの実施形態において、望ましくはヒト対象
であるが、本明細書に記載の方法は、「対象」との用語に含まれることが意図される全て
の脊椎動物種に関して有効であることを理解されたい。したがって、「対象」は、医学的
目的のための、例えば既存の状態もしくは疾患の処置、または状態もしくは疾患の発症を
防ぐための予防的処置のためのヒト対象;または医学的、獣医学的目的のため、または開
発の目的のための動物(ヒト以外の)対象を含んでよい。適切な動物の対象は哺乳動物を
含み、これには、限定するものではないが、ヒト、サル、類人猿などの霊長類;畜牛、雄
牛などのウシ類;ヒツジなどのヒツジ類;ヤギなどのヤギ類;ブタ、雄ブタなどのブタ類
;ウマ、ロバ、シマウマなどのウマ類;野生ネコおよびイエネコなどのネコ類;イヌなど
のイヌ類;ウサギ、野ウサギなどのウサギ類;ならびに、マウス、ラットなどのげっ歯類
が挙げられる。動物はトランスジェニック動物であってもよい。一部の実施形態では、対
象は、限定するものではないが、胎児、新生児、乳児、若年者、および成人の対象を含む
ヒトである。さらに、「対象」は、状態または疾患に罹患もしくは罹患している疑いのあ
る患者を含んでよい。このため、「対象」および「患者」との用語は、本明細書において
交換可能に使用される。一部の実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対
象はヒト以外である。
【0083】
本明細書中で使用される「処置」との用語は、当該用語が用いられる疾患または状態、
あるいはその疾患または状態の1以上の症状または徴候の逆転、緩和、進行の抑制、予防
または軽減を含みうる。
【0084】
「予防」とは、疾患、状態、症状、徴候を引き起こしたり、その重症度を悪化させたり
しないことを指す。したがって、本開示の化合物は、疾患または状態の発生または再発を
予防もしくは減少させるために予防的に投与することができる。
【0085】
II.定義
本明細書中で具体的な用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味での
み使用され、限定を目的とするものではない。別段の定義のない限り、本明細書中で使用
する全ての技術用語および科学用語は、ここに記載する主題が属する分野の当業者によっ
て一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0086】
式(I)の化合物に関する以下の用語は、当業者が十分に理解していると考えられるが
、本開示の主題の説明を容易にするために、以下に定義する。これらの定義は、本開示を
検討する際に当業者に明らかな定義を除外するものではなく、補足および例示を意図する
ものである。
【0087】
本明細書中で使用される「置換」(前に「任意に」との用語が付されることもある)お
よび「置換基」との用語は、全ての原子の原子価状態が保たれた状態で、分子の官能基を
別の官能基に変えることができることを指す。所定の構造内の2以上の位置が特定の群か
ら選択される2以上の置換基で置換可能な場合、それぞれの位置の置換基は同じでも異な
っていてもよい。また、置換基はさらに置換されてもよい(例えば、アリール基の置換基
が、別のアリール基など別の置換基を有し、その置換基が1以上の位置でさらに置換され
てよい)。
【0088】
置換基または結合基を、左から右に書く慣用的な化学式で表す場合、右から左に書いた
化学的に同一の置換基も等しく包含される。例えば、-CH2O-は-OCH2-と同一
であり、-C(=O)O-は-OC(=O)-と同一であり、-OC(=O)NR-は-
NRC(=O)O-と同一である。
【0089】
「独立して選択され」との用語を使用する場合、この用語が用いられる置換基(例えば
、R1基、R2基などのR基、または「m」や「n」などの変数)は同じでも異なってい
てもよい。例えば、R1とR2の両方が置換アルキルでも、R1が水酸基でR2が置換ア
ルキルでもよい。
【0090】
「a」、「an」または「a(n)」との用語は、本明細書中の置換基群に関して用いられる
場合は、少なくとも1つを表す。例えば、ある化合物が「an」アルキルまたはアリールで
置換される場合、この化合物は、少なくとも1つのアルキルおよび/または少なくとも1
つのアリールで任意に置換される。さらに、ある部分がR置換基で置換される場合、その
基を「R置換された」と呼ぶことがある。ある部分がR置換されている場合、その部分は
少なくとも1つのR置換基で置換され、それぞれのR置換基は任意に異なっていてよい。
【0091】
名称を有する「R」または基は、一般に、本明細書に特段の記載のない限り、その名称
を持つ基に対応すると当該技術分野で認められている構造を有する。説明を目的として、
上述の特定の代表的な「R」基を以下に定義する。
【0092】
本開示の化合物の説明は、当業者に公知の化学結合の原則によって制約される。したが
って、ある基を、多くの置換基のうちの1つ以上で置換可能な場合には、化学結合の原則
に従って、本質的に不安定ではない、あるいは/または水溶性、中性、およびいくつかの
公知の生理学的条件などの環境条件下で不安定である可能性が高いと当業者に知られてな
い化合物を与えるように置換基が選択される。例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテ
ロアリールは、当業者に公知の化学結合の原則に従って環ヘテロ原子を介して分子の他の
部分と結合され、本質的に不安定な化合物とはならない。
【0093】
別段の明示的な定義のない限り、本明細書に用いる「置換基」は、本明細書で定義する
以下の部分の1つ以上から選択される官能基を含む。
【0094】
本明細書に用いる「炭化水素」との用語は、水素と炭素とを含む任意の化学基を指す。
炭化水素は置換、未置換のいずれでもよい。当業者に公知のように、置換時には全ての原
子価を満たす必要がある。炭化水素は、不飽和、飽和、分枝状、非分枝状、環状、多環式
、または複素環式であってよい。炭化水素の例は以下にさらに定義するが、例えば、メチ
ル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、アリル、ビニル、n-ブチ
ル、tert-ブチル、エチニル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0095】
「アルキル」との用語は、単独または他の置換基の一部として、完全に飽和した直線(
すなわち、非分岐)もしくは分岐鎖状または環状の炭化水素基、あるいはその組み合わせ
を指し、完全飽和、一価非飽和または多価非飽和であってよく、指定する数の炭素原子を
含む二価または多価基を含んでよい(つまり、C1-C10は、1、2、3、4、5、6
、7、8、9、および10を含む1~10個の炭素を意味する)。特定の実施形態では、
「アルキル」との用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、1
3、14、15、16、17、18、19、および20個の炭素を含むC1-20(境界
値を含む)を指し、1~20個の炭素原子を含む炭化水素部分から水素原子を1つ取り除
くことによって得られる直線状(すなわち、「直鎖状」)、分岐状もしくは環状の飽和、
または少なくとも一部不飽和、一部の実施形態では完全不飽和の(すなわち、アルケニル
およびアルキニル)炭化水素ラジカルを指す。
【0096】
代表的な飽和炭化水素基としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プ
ロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、
n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec
-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ウンデシル、ドデシル、シ
クロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびにそれらの相
同体および異性体が挙げられる。
【0097】
「分岐鎖状」は、直線状のアルキル鎖に、メチル、エチル、プロピルなどの低級アルキ
ル基が付着しているアルキル基を指す。「低級アルキル」との用語は、1~8個程度の炭
素原子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を含むアルキル基
(すなわち、C1-8アルキル)を指す。「高級アルキル」との用語は、約10~約20
個の炭素原子、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19
、または20個の炭素原子を有するアルキル基を指す。一部の実施形態では、「アルキル
」との用語は、特にC1-8直鎖アルキルを指す。別の実施形態では、「アルキル」との
用語は、特に、C1-8分岐鎖アルキルを指す。
【0098】
アルキル基は、1つ以上のアルキル置換基で任意に置換され(「置換アルキル」)ても
よく、置換基は同じでも異なっていてもよい。「アルキル置換基」との用語は、限定する
ものではないが、アルキル、置換アルキル、ハロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ア
シル、ヒドロキシル、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ、アリールチオ、
アラルキルオキシ、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、オキソ、お
よびシクロアルキルを含む。アルキル鎖に1つ以上の酸素原子、硫黄原子、または置換も
しくは非置換の窒素原子が任意に挿入されてもよく、窒素置換基は、水素、低級アルキル
(「アルキルアミノアルキル」とも呼ばれる)、またはアリールである。
【0099】
したがって、本明細書に用いる「置換アルキル」との用語は、ここに定義するアルキル
基の1以上の原子または官能基が、例えばアルキル、置換アルキル、ハロゲン、アリール
、置換アリール、アルコキシル、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジア
ルキルアミノ、スルフェート、およびメルカプトなどの他の原子または官能基で置換され
ているアルキル基を含む。
【0100】
「ヘテロアルキル」との用語は、特段の断りのない限り、単独もしくは他の用語との組
み合わせで、少なくとも1つの炭素原子と、O、N、P、SiおよびSからなる群から選
択される少なくとも1個のヘテロ原子とからなる安定な直線もしくは分岐鎖状または環状
の炭化水素基、あるいはその組み合わせを指し、窒素原子、リン原子および硫黄原子は任
意に酸化されてよく、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されてよい。ヘテロ原子(O、N、
P、S、およびSi)はヘテロアルキル基内の任意位置、またはアルキル基が分子の他の
部分に結合する位置に存在してよい。この例としては、限定するものではないが、-CH
2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(C
H3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH25-S(O)-CH
3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH
3)3、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH=N(CH3)-CH3、O-C
H3、-O-CH2-CH3、および-CNが挙げられる。-CH2-NH-OCH3や
-CH2-O-Si(CH3)3など、最大2~3個のヘテロ原子が連続していてもよい
。
【0101】
上述のように、本明細書に使用されるヘテロアルキル基には、-C(O)NR’、-N
R’R”、-OR’、-SR、-S(O)R、および/または-S(O2)R’のように
、ヘテロ原子を介して分子の他の部分に結合する基が含まれる。「ヘテロアルキル」の後
に-NR’Rなどの特定のヘテロアルキル基が続く場合には、ヘテロアルキルおよび-N
R’R”という用語は、重複でも相互排他的なものでもないことが理解されるであろう。
むしろ、明確さを期するために特定のヘテロアルキル基について言及したものである。し
たがって、「ヘテロアルキル」との用語を、-NR’R”などの特定のヘテロアルキル基
を除外するものとして本明細書では解釈すべきではない。
【0102】
「環状」および「シクロアルキル」との用語は、約3~約10個の炭素原子、例えば、
3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子の非芳香族単環もしくは多環系を
いう。シクロアルキル基は、任意に部分的に不飽和であってよい。また、シクロアルキル
基は、本明細書で定義するアルキル置換基、オキソ、および/またはアルキレンで任意に
置換されてもよい。アルキル鎖に1つ以上の酸素原子、硫黄原子、または置換もしくは非
置換の窒素原子が任意に挿入されてもよく、窒素置換基は、水素、非置換アルキル、置換
アルキル、アリール、または置換アリールであり、複素環基を提供する。代表的な単環式
シクロアルキル環としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが
挙げられる。多環式環状シクロアルキル環としては、アダマンチル、オクタヒドロナフチ
ル、デカリン、カンファー、カンファン、およびノルアダマンチル、ならびにジヒドロナ
フタレンおよびテトラヒドロナフタレンなどの縮合環系が挙げられる。
【0103】
本明細書に用いる「シクロアルキルアルキル」との用語は、上で定義したシクロアルキ
ル基であって、同様に上で定義したアルキル基を介して親分子部分に結合されたものを指
す。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチ
ルエチルが挙げられる。
【0104】
「シクロヘテロアルキル」または「ヘテロシクロアルキル」との用語は、窒素(N)、
酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される
、同一または異なる1つ以上のヘテロ原子を含み、二重結合を1つ以上任意に含んでよい
非芳香族環系、不飽和または部分不飽和環系、例えば、置換もしくは非置換の3~10員
シクロアルキル環系を指す。
【0105】
シクロヘテロアルキル環は、縮合または他の方法により、他のシクロヘテロアルキル環
および/または非芳香族炭化水素環に任意に結合されてよい。複素環としては、酸素、硫
黄、および窒素からそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するものが挙
げられ、窒素および硫黄のヘテロ原子は、任意に酸化されてよく、窒素ヘテロ原子は、任
意に四級化されてよい。
特定の実施形態では、「複素環」との用語は、環原子の少なくとも1つが、O、S、お
よびNからそれぞれ独立して選択されるヘテロ原子である非芳香族5員、6員もしくは7
員環または多環基(窒素および硫黄のヘテロ原子は任意に酸化されてよい)を指し、限定
するものではないが、酸素、硫黄、および窒素からそれぞれ独立して選択される1~3個
のヘテロ原子を有する縮合6員環を含む2環もしくは3環系を含み、(i)各5員環は0
~2つの二重結合を有し、各6員環は0~2つの二重結合を有し、各7員環は0~3つの
二重結合を有し、(ii)窒素および硫黄のヘテロ原子は任意に酸化されてよく、(ii
i)窒素ヘテロ原子は任意に四級化されてよく、(iv)上記の複素環のいずれかがアリ
ール環またはヘテロアリール環に融合されてよい。代表的なシクロヘテロアルキル環系と
しては、限定するものではないが、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミ
ダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル
、キヌクリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアジアジナニル、テトラヒドロ
フラニルなどが挙げられる。
【0106】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」との用語は、特段の断りのない限
り、単独もしくは他の用語との組み合わせで、それぞれ環状の「アルキル」、環状の「ヘ
テロアルキル」を指す。さらに、ヘテロシクロアルキルの場合、複素環が分子の他の部分
に結合する位置にヘテロ原子が位置してもよい。シクロアルキルの例としては、限定する
ものではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロ
ヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、限
定するものではないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジ
ニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テ
トラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2
-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙
げられる。「シクロアルキレン」との用語はシクロアルキルの二価誘導体を、「ヘテロシ
クロアルキレン」との用語はヘテロシクロアルキルの二価誘導体をそれぞれを指す。
【0107】
不飽和アルキル基は、二重結合または三重結合を1つ以上有するアルキル基である。不
飽和アルキル基の例としては、限定するものではないが、ビニル、2-プロペニル、クロ
チル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1
,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-プロピニルおよび3-プロピニル、3-ブチニ
ル、ならびにその高級相同体および異性体が挙げられる。炭化水素基に限定されるアルキ
ル基は「ホモアルキル」と呼ばれる。
【0108】
より詳細には、本明細書に用いる「アルケニル」との用語は、水素分子を1つ除去する
ことで形成される炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有するC1-20(境界値を含む
)を含む直鎖もしくは分岐鎖状炭化水素部分に由来する一価基を指す。アルケニル基は、
例えば、エテニル(すなわち、ビニル)、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテ
ン-1-イル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、アレニル、およびブタジエニルを
含む。
【0109】
本明細書に用いる「シクロアルケニル」との用語は、炭素-炭素二重結合を少なくとも
1つ有する環状炭化水素を指す。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、
シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3
-シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシクロオ
クテニルが挙げられる。
【0110】
本明細書に用いる「アルキニル」との用語は、炭素-炭素三重結合を少なくとも1つ有
し、指定する数の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖C1-20炭化水素に由来する一価基
を指す。「アルキニル」の例としては、エチニル、2-プロピニル(プロパルギル)、1
-プロピニル、ペンチニル、ヘキシニル、およびヘプチニル基などが挙げられる。
【0111】
「アルキレン」との用語は、それ自体または他の置換基の一部分として、例えば、1~
20個程度の炭素原子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、1
2、13、14、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有するアル
キル基に由来する直鎖または分岐鎖二価脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基は直鎖状
、分岐鎖状、または環状である。アルキレン基は、任意に、不飽和であっても、かつ/ま
たは1つ以上の「アルキル置換基」で置換されてもよい。アルキレン基に1つ以上の酸素
原子、硫黄原子、または置換もしくは非置換の窒素原子(本明細書中「アルキルアミノア
ルキル」とも呼ばれる)が任意に挿入されてもよく、窒素置換基は前述のアルキルである
。アルキレン基の例としては、メチレン(-CH2-);エチレン(-CH2-CH2-
);プロピレン(-(CH2)3-);シクロヘキシレン(-C6H10-);-CH=
CH-CH=CH-;-CH=CH-CH2-;-CH2CH2CH2CH2-、-CH
2CH=CHCH2-、-CH2CsCCH2-、-CH2CH2CH(CH2CH2C
H3)CH2-、-(CH2)q-N(R)-(CH2)r-(式中qおよびrは、それ
ぞれ独立して、0~20程度の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)であり
、Rは、水素または低級アルキル);メチレンジオキシル(-O-CH2-O-);なら
びにエチレンジオキシル(-O-(CH2)2-O-)が挙げられる。アルキレン基は、
約2~約3個の炭素原子を有してよく、さらに6~20個の炭素を有してよい。通常、ア
ルキル(またはアルキレン)基は1~24個の炭素原子を有し、このうち、炭素数が10
以下である基が本開示の一部の実施形態である。「低級アルキル」または「低級アルキレ
ン」は、短鎖アルキルまたはアルキレン基であり、一般に8個以下の炭素原子を有する。
【0112】
「ヘテロアルキレン」との用語は、それ自体または他の置換基の一部分として、ヘテロ
アルキルに由来する二価基を指し、その例としては、限定するものではないが-CH2-
CH2-S-CH2-CH2-、-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-が挙げ
られる。ヘテロアルキレン基では、ヘテロ原子が鎖末端の一方または両方に存在してよい
(例えば、アルキレンオキソ、アルキレンジオキソ、アルキレンアミノ、アルキレンジア
ミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン結合基では、結合基を化学式で
記述する場合の向きは、結合基の方向を示すものではない。例えば、式-C(O)OR’
は、-C(O)OR’-、-R’OC(O)-の両方を表す。
【0113】
「アリール」との用語とは、特段の断りのない限り、単環、あるいは融合または共有結
合した多環(例えば、1~3環)の芳香族炭化水素置換基を指す。「ヘテロアリール」と
の用語は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子を(多環の場合にはそれぞれの環に
)1~4つ有するアリール基(または環)を指し、窒素原子や硫黄原子は任意に酸化され
、窒素原子は任意に四級化されてよい。ヘテロアリール基は炭素またはヘテロ原子を介し
て分子の他の部分に結合されてよい。アリールおよびヘテロアリール基の例としては、限
定するものでないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピ
ロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダ
ゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサ
ゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾ
リル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2
-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジ
ル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-
インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサ
リニル、3-キノリル、6-キノリルが挙げられる。上記のアリールおよびヘテロアリー
ル環系のそれぞれの置換基は、以下に挙げる許容可能な置換基の群から選択される。「ア
リーレン」との用語は二価のアリールを、「ヘテロアリーレン」との用語は、二価のヘテ
ロアリールをそれぞれ指す。
【0114】
簡潔を期するため、「アリール」との用語は、他の用語と組み合わせて用いる場合(例
えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上で定義したアリール
環とヘテロアリール環との両方を含む。したがって、「アリールアルキル」および「ヘテ
ロアリールアルキル」との用語は、アルキル基にアリール基またはヘテロアリール基が結
合している基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル、フリルメチルなど)を
指し、炭素原子が、例えば酸素原子などで置換されているアルキル基(例えば、メチレン
基)を含む(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチ
ルオキシ)プロピルなど)。しかし、本明細書に用いる「ハロアリール」との用語は、1
つ以上のハロゲンで置換されたアリールのみを包含するものとする。
【0115】
ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールが、特定の数(例えば
、「3~7員」)の環員を含む場合、「環員」との用語は、炭素またはヘテロ原子を指す
。
【0116】
さらに、本明細書に用いる、一般に以下の構造式で表される構造
【化36】
は環構造を指し、例えば、限定するものではないが、置換基のR基を含む、3炭素、4炭
素、5炭素、6炭素、7炭素等の脂肪族および/または芳香族環状化合物であって、飽和
環構造、部分飽和環構造、および不飽和環構造を含み、R基は存在してもしなくてもよく
、R基が存在する場合、環構造の利用可能な1つ以上の炭素原子のそれぞれで1以上のR
基が置換されてよい。R基の有無およびR基の数は、一般に、0から、環内の置換に利用
可能な炭素原子の数までの範囲の値をとる整数である変数「n」の値によって決定される
。R基が複数存在する場合、各R基は、他のR基ではなく、環構造内の利用可能な炭素に
おいて置換される。例えば、nが0~2の上記構造は、限定するものではないが、以下を
含む化合物群を含む。
【化37】
【0117】
環状の環構造内の結合を表す破線は、環に結合が存在してもしなくてもよいことを示す
。すなわち、環状の環構造内の結合を表す破線は、環構造が飽和環構造、部分飽和環構造
、および不飽和環構造からなる群から選択されることを示す。
【0118】
【化38】
は、ある部分が、分子の他の部分に付着する付着点を示す。
【0119】
ある原子が芳香族環または複素芳香族環に「存在しない」と定義される場合、その原子
は直接結合によって置換されている。
【0120】
上記用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「シクロアルキル」、「ヘテ
ロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「ホスホン酸」、および「ス
ルホン酸」ならびにそれらの二価誘導体)の各々は、これらの基の置換型と非置換型の両
方を含むものとする。各基の任意の置換基を以下に示す。
【0121】
アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルの一価および二価
の誘導体基の置換基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、
アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロ
シクロアルケニルとしばしば呼ばれる基など)は、0~(2m’+1)個(m’は基に存
在する炭素原子の総数)の-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-
SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R’”、-OC(O)R’、-C(O)R’、-C
O2R’,-C(O)NR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-
NR’-C(O)NR”R’”、-NR”C(O)OR’、-NR-C(NR’R”)=
NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2
R’、-CN、および-NO2からなる群から選択される基である。R’、R”、R’”
、およびR””は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置
換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換
もしくは非置換のアリール(例えば、1~3つのハロゲンで置換されたアリール)、置換
もしくは非置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、またはアリールアルキ
ル基を指してよい。本明細書に用いる「アルコキシ」基は、二価の酸素を介して分子の他
の部分に結合しているアルキルである。本開示の化合物が複数のR基を有する場合、例え
ば、R基のそれぞれは、基が複数存在する場合、それぞれ独立して、R’、R”、R’”
、およびR””基として選択される。R’とR”とが同じ窒素原子に結合している場合、
これらの基がこの窒素原子と結合して4員、5員、6員、または7員環を形成してよい。
例えば、-NR’R”は、限定するものではないが、1-ピロリジニルおよび4-モルホ
リニルを含んでよい。置換基に関する上記の説明から、「アルキル」との用語が、ハロア
ルキル(例えば、-CF3、-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3
、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)など、水素基以外の基に結合して
いる炭素原子を含む基を含むことを当業者は理解するであろう。
【0122】
上述のアルキル基の置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基(ならびにその
二価誘導体)の置換基の例はさまざまであり、例えば、0から芳香環系の開放原子価の総
数までの個数の、ハロゲン、-OR’、-NR’R”、-SR’、-SiR’R”R’”
、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-C(O)NR’R”、-OC(
O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’”、-NR”C
(O)OR’、-NR-C(NR’R”R’”)=NR””、-NR-C(NR’R”)
=NR’”-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2
R’、-CN、および-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-
C4)アルコキソ、ならびにフルオロ(C1-C4)アルキルから選択され、R’、R”
、R’”およびR””は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換の
ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシ
クロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のヘテロアリ
ールからそれぞれ独立して選択されてよい。本開示の化合物が複数のR基を有する場合、
例えば、R基のそれぞれは、基が複数存在する場合、それぞれ独立して、R’、R”、R
’”、およびR””基として選択される。
【0123】
アリール環またはヘテロアリール環の隣接する原子の2つの置換基が、式-T-C(O
)-(CRR’)q-U-を有し、TおよびUがそれぞれ独立して-NR-、-O-、-
CRR’-または単結合であり、qが0~3の整数である環を任意に形成してよい。ある
いは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接する原子の2つの置換基が、式-A-(
CH2)r-B-を有し、AおよびBがそれぞれ独立して-CRR’-、-O-、-NR
-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR’-または単結合であり
、rが1~4の整数である置換基で任意に置換されてもよい。
【0124】
このように形成された新たな環の単結合の1つが、二重結合で任意に置換されてもよい
。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接する原子の2つの置換基が、式-
(CRR’)s-X’-(C”R’”)d-を有し、sおよびdがそれぞれ独立して0~
3の整数であり、X’が-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、
または-S(O)2NR’-である環を任意に形成してよい。置換基R’、R”、R’”
、およびR””は、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアル
キル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、および
置換もしくは非置換ヘテロアリールから独立して選択されてよい。
【0125】
本明細書に用いる「アシル」との用語は、カルボキシル基の-OHが他の置換基で置換
された一般式RC(=O)-を有し、Rが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリー
ル、カルボシル、複素環、または芳香族複素環基である有機酸基を指す。このように、「
アシル」との用語は、具体的には、2-(フラン-2-イル)アセチル基、2-フェニル
アセチル基などのアリールアシル基を含む。アシル基の具体例としては、アセチルおよび
ベンゾイルが挙げられる。また、アシル基は、アミド、-RC(=O)NR’、エステル
、-RC(=O)OR’、ケトン、-RC(=O)R’、およびアルデヒド、-RC(=
O)Hを含むものとする。
【0126】
「アルコキシル」または「アルコキシ」との用語は本明細書中で交換可能に使用され、
酸素原子を介して親分子部分に結合した飽和基(すなわち、アルキル-O-)または不飽
和基(すなわち、アルケニル-O-およびアルキニル-O-)を指し、「アルキル」、「
アルケニル」および「アルキニル」との用語は上で定義したとおりであり、例えば、メト
キシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、n-ブトキシル、sec-ブト
キシル、tert-ブトキシル、n-ペントキシル、ネオペントキシル、n-ヘキソキシ
ルなど、C1-20(境界値を含む)の直線状、分枝鎖状、または環状の飽和または不飽
和オキソ-炭化水素鎖を含んでよい。
【0127】
本明細書に用いる「アルコキシアルキル」との用語は、アルキル-O-アルキルエーテ
ル、例えばメトキシエチル基またはエトキシメチル基を指す。
【0128】
「アリールオキシル」との用語は、アリール-O-基であって、アリール基が、置換ア
リールなど、上に記載したとおりである基を指す。本明細書に用いる「アリールオキシル
」との用語は、フェニルオキシルまたはヘキシルオキシル、およびアルキル、置換アルキ
ル、ハロ、またはアルコキシルで置換されたフェニルオキシルあるいはヘキシルオキシル
を指してよい。
【0129】
「アラルキル」との用語は、アリール-アルキル基であって、アリールおよびアルキル
が、置換アリールおよび置換アルキルなど、上に記載したとおりである基を指す。アラル
キル基の例としては、ベンジル、フェニルエチル、およびナフチルメチルが挙げられる。
【0130】
「アラルキルオキシル」は、アラルキル-O-基であって、アラルキル基が、上に記載
したとおりである基を指す。アラルキルオキシル基の例は、ベンジルオキシル、すなわち
C6H5-CH2-O-である。アラルキルオキシル基は任意に置換されてもよい。
【0131】
「アルコキシカルボニル」は、アルキル-O-C(=O)-基を指す。アルコキシカル
ボニル基の例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブチルオキシカルボ
ニル、およびtert-ブチルオキシカルボニルが挙げられる。
【0132】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール-O-C(=O)-基を指す。アリールオ
キシカルボニル基の例としては、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが挙
げられる。
【0133】
「アラルコキシカルボニル」は、アラルキル-O-C(=O)-基を指す。アラルコキ
シカルボニル基の例はベンジルオキシカルボニルである。
【0134】
「カルバモイル」は、式-C(=O)NH2のアミド基を指す。「アルキルカルバモイ
ル」は、R’RN-C(=O)-基であって、RおよびR’の一方が水素であり、Rおよ
びR’の他方が、上に記載したアルキルおよび/または置換アルキルである基を指す。「
ジアルキルカルバモイル」は、R’RN-C(=O)-基であって、RおよびR’が、そ
れぞれ独立して、上に記載したアルキルおよび/または置換アルキルである基を指す。
【0135】
本明細書中で使用される「カルボニルジオキシル」との用語は、式-O-C(=O)-
ORのカーボネート基を指す。
【0136】
「アシルオキシル」は、アシル-O-基であって、アシルは上に記載したとおりである
基を指す。
【0137】
「アミノ」との用語は、-NH2基を指し、当該技術分野で公知のように、1つ以上の
水素ラジカルが有機ラジカルで置換されているアンモニアに由来する窒素含有基を指す。
例えば、「アシルアミノ」との用語は、アシル置換基を、「アルキルアミノ」との用語は
、アルキル置換基をそれぞれ有する特定のN置換有機ラジカルを指す。
【0138】
本明細書に用いる「アミノアルキル」は、アルキレンリンカーに共有結合しているアミ
ノ基を指す。より詳細には、「アルキルアミノ」、「ジアルキルアミノ」、および「トリ
アルキルアミノ」との用語は、それぞれ、窒素原子を介して親分子部分に結合している、
上に定義したアルキル基を1つ、2つ、あるいは3つ有するものをそれぞれ指す。「アル
キルアミノ」との用語は、構造-NHR’を有し、R’が上に定義したアルキル基である
基を指し、「ジアルキルアミノ」との用語は、構造-NR’R”を有し、R’およびR”
がそれぞれ独立してアルキル基からなる群から選択される基を指す。「トリアルキルアミ
ノ」との用語は、構造-NR’R”R’”を有し、R’、R”およびR’”がそれぞれ独
立してアルキル基からなる群から選択される基を指す。さらに、R’、R”および/また
はR’”は、ともに任意に-(CH2)k-(kは、2~6の整数)でよい。例としては
、限定するものではないが、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルア
ミノ、ジエチルアミノカルボニル、メチルエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ピペリジ
ノ、トリメチルアミノ、およびプロピルアミノが挙げられる。
【0139】
アミノ基は、-NR’Rであり、R’およびR’は、代表的には、水素、置換もしくは
非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキ
ル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、または置
換もしくは非置換ヘテロアリールから選択される。
【0140】
「アルキルチオエーテル」および「チオアルコキシル」との用語は、硫黄原子を介して
親分子部分に結合されている飽和基(すなわち、アルキル-S-)または不飽和基(すな
わち、アルケニル-S-およびアルキニル-S-)を指す。チオアルコキシル部分の例と
しては、限定するものではないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピ
ルチオ、n-ブチルチオ等が挙げられる。
【0141】
「アシルアミノ」は、アシル-NH-基であって、アシルが上に記載したとおりである
基を指す。「アロイルアミノ」は、アロイル-NH-基であって、アロイルが上に記載し
たとおりである基を指す。
【0142】
「カルボニル」との用語は、-C(=O)-基を指し、一般式R-C(=O)Hで表さ
れるアルデヒド基が含まれてよい。
【0143】
「カルボキシル」との用語は-COOH基を指す。この基は本明細書で「カルボン酸」
部分とも呼ばれる。
【0144】
本明細書に用いる「ハロ」、「ハロゲン化物」または「ハロゲン」との用語は、フルオ
ロ基、クロロ基、ブロモ基、およびヨード基を指す。さらに、「ハロアルキル」などの用
語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むものとする。例えば、「ハロ(C
1-C4)アルキル」との用語は、限定するものではないが、トリフルオロメチル、2,
2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを指す。
【0145】
「ヒドロキシル」との用語は-OH基を指す。
【0146】
「ヒドロキシアルキル」との用語は、-OH基で置換されたアルキル基を指す。
【0147】
「メルカプト」との用語は-SH基を指す。
【0148】
本明細書に用いる「オキソ」との用語は、炭素原子または他の元素に二重結合している
酸素原子を指す。
【0149】
「ニトロ」との用語は-NO2基を指す。
【0150】
「チオ」との用語は、本明細書で前述した化合物のうち、炭素原子または酸素原子が硫
黄原子で置換されているものを指す。
【0151】
「スルフェート」との用語は-SO4基を指す。
【0152】
本明細書に用いる「チオヒドロキシル」または「チオール」との用語は、式-SHの基
を指す。
【0153】
より詳細には、「スルフィド」との用語は、式-SRの基を有する化合物を指す。
【0154】
「スルホン」との用語は、スルホニル基-S(O2)Rを有する化合物を指す。
【0155】
「スルホキシド」との用語は、スルフィニル基-S(O)Rを有する化合物を指す。
【0156】
「ウレイド」との用語は、式-NH-CO-NH2の尿素基を指す。
【0157】
明細書および特許請求の範囲にわたり、特定の化学式または化学名は、全ての互変異性
体、同族体、光学異性体および立体異性体、ならびにそのような異性体および混合物が存
在する場合にはラセミ混合物を包含するものとする。
【0158】
本開示の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心もしくはキラル中心)または二重結
合を有してよく、絶対立体化学の観点から、(R)-または(S)-、あるいはアミノ酸
の場合D-またはL-として定義することができるエナンチオマー、ラセミ体、ジアステ
レオマー、互変異性体、幾何異性体、立体異性体は、本開示の範囲に包含される。本開示
の化合物は、非常に弱いため合成および/または単離できないと当該技術分野で知られて
いる化合物は含まない。本開示は、ラセミ混合物、スカレミック(scalemic)混合物、お
よび光学的に純粋な形態の化合物を含むものとする。光学活性な(R)-異性体および(
S)-異性体、またはD-異性体およびL-異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬
を用いて調製することができ、あるいは、従来の技術を用いて分割することができる。本
明細書に記載の化合物がオレフィン二重結合または他の幾何不斉中心を含む場合、特段の
記載のない限り、当該化合物はE幾何異性体とZ幾何異性体の両方を含むものとする。
【0159】
特段の記載のない限り、本明細書に図示される構造は、その構造の全ての立体化学的形
態、すなわち、各不斉中心に対するRおよびSの立体配置を含むものとする。したがって
、本化合物の1つの立体化学異性体、ならびに鏡像異性体およびジアステレオマーの混合
物も開示の範囲内である。
【0160】
本開示の特定の化合物が互変異性体の形で存在してよいことは当業者に明らかであり、
本化合物のそのような全ての互変異性体も本開示の範囲内である。本明細書に用いる「互
変異性体」との用語は、平衡状態で存在し、ある異性体から別の異性体へ容易に変換され
る2つ以上の構造異性体の1つを指す。
【0161】
本明細書に用いる「モノマー」との用語は、重合して、構成単位として重合体またはポ
リマーの基本構造に寄与することができる分子を指す。
【0162】
「ポリマー」は、相対分子量の高い分子であり、相対分子量の低い分子、すなわちモノ
マーに由来する単位の反復を複数含む構造を本質的に有する。
【0163】
「デンドリマー」は、ナノメートルスケールのサイズの分岐を多数有する星形の巨大分
子である。
【0164】
本明細書に用いる「オリゴマー」は、例えば、制限のない個数のモノマーが含まれる可
能性のあるポリマーとは異なり、数個のモノマー単位を含む。オリゴマーの例としては、
限定するものではないが、二量体、三量体、および四量体が挙げられる。
【0165】
「保護基」との用語は、化合物に存在する反応性部分の一部または全てをブロックし、
保護基が除去されるまでその部分の化学反応を阻止する化学的部分、例えば、T. W. Gree
ne, P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd ed. John Wiley & So
ns (1999)に記載されている部分を指す。異なる保護基を用いる場合、それぞれの(異な
る)保護基を異なる手段で除去できることが有利となり得る。まったく異なる反応条件で
切断される保護基を用いることにより、保護基を特異的に除去することが可能となる。例
えば、保護基は酸、塩基、水素化分解によって除去することができる。トリチル、ジメト
キシトリチル、アセタールおよびtert-ブチルジメチルシリルなどの基は酸に不安定
であり、水素化分解により除去可能なCbz基と、塩基に弱いFmoc基とで保護したア
ミノ基の存在下でカルボキシ反応性部分およびヒドロキシ反応性部分の保護に使用するこ
とができる。カルボン酸反応性部分およびヒドロキシ反応性部分は、tert-ブチルカ
ルバメートなどの酸に弱い基でブロックしたアミン、または酸と塩基との両方に安定であ
るが加水分解により除去可能なカルバメートでブロックしたアミンの存在下で、限定する
ものではないが、メチル、エチル、およびアセチルなどの塩基に弱い基でブロックするこ
とができる。
【0166】
また、カルボン酸反応性部分およびヒドロキシ反応性部分は、ベンジル基などの加水分
解により除去可能な保護基でブロックすることができ、酸と水素結合可能なアミン基は、
Fmoc基などの塩基に弱い基でブロックすることもできる。カルボン酸反応性部分は、
2,4-ジメトキシベンジルなどの酸化により除去可能な保護基でブロックすることがで
き、共に存在するアミノ基は、フッ物に弱いシリルカルバメートでブロックすることがで
きる。
【0167】
アリルブロッキング基は、酸保護基および塩基保護基の存在下で有用であるが、その理
由は、前者は安定であり、その後、金属触媒またはπ酸触媒によって除去することができ
るからである。例えば、アリルでブロックされたカルボン酸は、酸に弱いt-ブチルカル
バメート保護基または塩基に弱い酢酸アミン保護基の存在下でパラジウム(O)触媒反応
で脱保護することができる。さらに別の形態の保護基として、化合物または中間体が結合
できる樹脂がある。樹脂に結合している官能基はブロックされ、反応することができない
。樹脂から外れた官能基は反応可能となる。
【0168】
代表的なブロッキング/保護基としては、限定するものではないが、以下の部分が挙げ
られる。
【化39】
【0169】
長年の特許法の慣習に従って、用語「a」、「an」、および「the」は、特許請求の範囲
を含む本願に使用される場合、「1または2以上」を意味する。したがって、例えば、「
対象(a subject)」という場合、文脈から別異が明示され(「複数の対象」など)てい
ない限り、複数の対象を含む。
【0170】
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたり、「含む(comprise)」、「含む(comp
rises)」、および「含むこと(comprising)」との用語は、文脈上他の意味に解すべき
場合を除き、非排他的な意味で使用されている。同様に、「含む(include)」との用語
およびその文法上の変形は、非限定的であり、項目の列挙が、他の同様の項目を列挙され
た項目と置換またはこれに追加することを排除しないことが意図される。
【0171】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的のため、特段の断りのない限り、量、サイ
ズ、寸法、比率、形状、処方、パラメータ、パーセンテージ、数量、特性、および本明細
書および特許請求の範囲で使用されるその他の数値を表す全ての数値は、全ての場合にお
いて、値、量または範囲に「約」との語が明示的に付されていない場合であっても、「約
」との語で修飾されているものと理解すべきである。したがって、別異が示されない限り
、以下の本明細書および添付の特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、厳密でなく
、かつその必要もなく、所望に応じて近似値および/または大きくても小さくてもよく、
本開示の主題によって得ようとする所望の特性に応じて、許容度、換算係数、丸め、測定
誤差など、および当業者に知られている他の要因を反映する。例えば、値を参照する場合
の「約」との用語は、開示の方法を実施するか、または開示の組成物を使用するのに適切
である場合には、記載した数値から、一部の実施形態では±100%、一部の実施形態で
は±50%、一部の実施形態では±20%、一部の実施形態では±10%、一部の実施形
態では±5%、一部の実施形態では±1%、一部の実施形態では±0.5%、および一部
の実施形態では±0.1%の変動が含まれるものとする。
【0172】
さらに、1もしくは2以上の数値または数値範囲に関連して使用する場合、「約」との
語は、範囲内の全ての数値、および記載した数値の上下に境界を拡張することによる範囲
の変更を含む、全てのこのような数値を指すと理解されるべきである。端点を指定して数
値範囲を記載する場合、その範囲に包含される全ての整数およびその間の分数を含むあら
ゆる数値(例えば、「1~5」との記載は、1、2、3、4、および5、ならびにその間
の分数、例えば1.5、2.25、3.75、4.1などを含む)のほか、その範囲内の
あらゆる範囲を含む。
【実施例0173】
以下の実施例は、開示の主題の代表的な実施形態を実施するための指針を当業者に提供
するために記載するものである。本開示および当業者の一般的な水準を鑑み、以下の実施
例が例示のみを意図していること、ならびに、本開示の主題の範囲から逸脱することなく
多くの変更、変形例、および変更例を使用できることを当業者は理解することができる。
以下の合成の説明および具体例は、説明を目的とするものであり、他の方法により本開示
の化合物を生成することをいかなる方法でも限定するものと解釈すべきではない。
【0174】
[実施例1]
(実験手順)
1.1 XY-FAP-01の合成
【化40】
メチル(6-ヒドロキシキノリン-4-カルボニル)グリシネート(3):6-ヒドロ
キシキノリン-4-カルボン酸(1)210mg(1.1mmol)、メチルグリシネー
ト塩酸塩(2)143mg(1.1mmol)、HBTU420mg(1.1mmol)
、およびHOBt170mg(1.1mmol)を12mLの乾燥DMFに溶解させた。
この溶液に0.77mL(4.4mmol)のDIPEAを加えた。反応液を室温で6時
間撹拌した。溶媒を減圧除去した後、混合物を25gのC18カートリッジ(カナダ国所
在Silicycle社)に担持させ、MeCN/水/TFAのグラジエント(0:10
0:0.1~90:10:0.1)で生成物を精製した。290mgの生成物3が黄色粉
末として得られ、収率は76%であった。
1H-NMR(400MHz,CD
3OD):
δ 8.69(s,1H),7.94(d,J=7.92Hz,1H),7.57-7.
51(m,3H),7.42-7.37(m,1H),4.21(s,2H),3.81
(s,3H)。
13C-NMR(100MHz,CD
3OD):δ 172.4,160
.9,145.1,143.7,129.7,129.4,128.3,121.8,1
19.6,112.4,109.1,56.8,44.8。MS:[C
13H
13N
2O
4]
+計算261.3[M+H]
+;検出261.1。
【化41】
【0175】
メチル(6-(3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロポキシ)キノリ
ン-4-カルボニル)グリシネート(5):メチル(6-ヒドロキシキノリン-4-カル
ボニル)グリシネート(3)360mg(1.0mmol)とtert-ブチル(3-ブ
ロモプロピル)カルバメート(4)500mg(2.1mmol)とを20mLのDMF
に溶解させた。Cs
2CO
3 1g(3.0mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。ろ
過した後に溶媒を減圧除去し、残った混合物を25gのC18カートリッジ(カナダ国所
在Silicycle社)に担持させた。MeCN/水/TFAのグラジエント(0:1
00:0.1~90:10:0.1)で生成物を精製した。270mgの生成物5が得ら
れ、収率は54%であった。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ 8.68
-8.37(m,2H),8.02(d,J=9.1Hz,1H),7.80(s,1H
),7.72-7.64(m,1H),7.40(d,J=9.1Hz,1H),4.9
4(br s,1H),4.41-4.31(m,2H),4.27-4.18(m,2
H),3.85(s,3H),3.44-3.30(m,2H),2.13-2.00(
m,2H),1.43(s,9H)。
13C-NMR(100MHz,CDCl
3):δ
170.1,167.2,158.4,144.7,142.3,128.4,126
.1,124.7,119.1,103.7,79.5,60.4,52.5,41.4
,37.7,29.3,28.4。MS:[C
21H
28N
3O
6]
+計算418.5[
M+H]
+;検出418.3。
【化42】
【0176】
tert-ブチル(S)-(3((4-((2-(2-シアノピロリジン-1-イル)
-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)カルバメ
ート(7):化合物5 110mg(0.21mmol)とLiOH 30mg(1.2
mmol)とを4mLのH
2O/THF(1:1)中で6時間撹拌した。THFのほぼ全
量を減圧除去した後、混合物を25gのC18カートリッジ(カナダ国所在Silicy
cle社)に担持させ、MeCN/水/TFAのグラジエント(0:100:0.1~9
0:10:0.1)で溶出させて塩を除去した。得られた生成物6と、(S)-ピロリジ
ン-2-カルボニトリル53mg(0.4mmol)、HOBT68mg(0.4mmo
l)、HBTU152mg(0.4mmol)、およびDIPEA0.56mL(1.6
mmol)とを10mLの乾燥DMF中で混合した。6時間後に溶媒を減圧除去し、残っ
た混合物を25gのC18カートリッジ(カナダ国所在Silicycle社)に担持さ
せた。MeCN/水/TFAのグラジエント(0:100:0.1~90:10:0.1
)で生成物を精製した。99mgの生成物7が得られ、収率は80%であった。
1H-N
MR(400MHz,CDCl
3):δ 8.73(s,1H),7.95(d,J=1
0.2Hz,1H),7.68(br s,1H),7.63-7.56(m,1H),
7.56-7.48(m,1H),7.38-7.29(m,1H),5.27(br
s,1H),4.84-4.72(m,1H),4.46-4.35(m,1H),4.
33-4.20(m,1H),4.17-4.09(m,2H),3.78-3.64(
m,1H),3.59-3.46(m,1H),3.36(s,2H),2.38-2.
17(m,4H),1.42(s,9H),1.35-1.27(m,2H)。
13C-
NMR(100MHz,CDCl
3):δ 167.6,167.5,157.9,15
6.2,146.3,130.2,125.7,123.7,119.3,118.0,
103.3,79.0,65.9,46.8,45.7,42.2,37.6,29.8
,29.3,28.4,25.1。MS:[C
25H
32N
5O
5]
+計算482.6[
M+H]
+;検出482.3。
【化43】
【0177】
XY-FAP-01。化合物7(1mg、1.7μmol)を1mLのTFA/塩化メ
チレン(1:1)の溶液中で2時間処理した。溶媒を減圧除去し、残った物質を0.5m
LのDMSOに再溶解させた。この溶液にLICOR800CW-NHSエステル0.5
mg(0.43μmol)とEt3N10μLとを加えた。室温で1時間の後、溶媒を除
去し、生成物をHPLCで精製した。0.5mgの生成物が得られ、収率は85%であっ
た。HPLC条件:カラム Phenomenex社製Luna 10×250mm、1
0u。グラジエント MeCN/H2O/TFA10:90:0.1~MeCN/H2O
/TFA80:20:0.1、流速3mL/分で15分以内。生成物は10.1分に溶出
した。MS:[C66H76N7O17S4]+計算1366.4[M+H]+;検出1
366.8。
【0178】
1.2 XY-FAP-02の合成
【化44】
2,2’、2”-(10-(1-カルボキシ-4-((3-((4-((2-((S)
-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6
-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7,10-テトラ
アザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸(XY-FAP-02):化合物7
(15mg、31.3μmol)を1mLのTFA/塩化メチレン(1:1)の溶液中で
1時間処理した。減圧下で溶媒を除去し、残った物質をDMF0.5mLに再溶解させた
。この溶液にDIPEA(27μL、156.5μmol)を加えた後、0.5mLのD
MFに溶解させたDOTA-GA(t-Bu)
4-NHS(25mg、31.3μL)を
滴下した。反応混合物を常温で4時間撹拌した後、減圧濃縮した。t-Buで保護した中
間体を、さらに精製を行わずに、TFA、H
2Oおよびトリエチルシラン(TES)の混
合溶液(95:2.5:2.5)1mLを用いてin situで脱保護した。次に、反
応混合物を濃縮してセミ分取HPLCで精製し、生成物を白色の固体として得た(8.5
mg、収率33%)。MS:[C
39H
54N
9O
12]
+計算840.9[M+H]
+
;検出840.5。HPLC(10mm×250mm Phenomenex社製Lun
a C18カラム、10μm、移動層 水/アセトニトリル/TFA 95:5:0.1
%~75:25:0.1%、20分間、流速5mL/分)を実施したところ、XY-FA
P-02が11.8分に溶出した。
【化45】
【0179】
XY-FAP-02-[In]。113/115インジウム(III)2,2’,2”-
(10-(1-カルボキシ-4-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリ
ジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プ
ロピル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン
-1,4,7-トリイル)トリアセテート(XY-FAP-02-[In]):1mLの
0.2M AcONaにXY-FAP-02 2mg(2.4μmol)を溶解させた溶
液に、水0.5mLに溶解させたIn(NO3)3 1.4mg(4.6μmol)を加
え、60℃の槽で30分間加温した。常温に冷却後、セミ分取HPLCで混合物を精製し
た。生成物が白色の固体として得られた(1.8mg、収率79%)。MS:[C39H
51N9O12In]+計算951.7[M+H]+;検出952.5。HPLC(10
mm×250mm Phenomenex社製Luna C18カラム、10μm、移動
層 水/アセトニトリル/TFA 95:5:0.1%~75:25:0.1%、20分
間、流速5mL/分)を実施したところ、XY-FAP-02-[In]が14.0分に
溶出した。
【0180】
1.3 放射性標識法。簡潔に記載すると、20mLの0.2M NaOAcにXY-
FAP-02 20mgを溶解させた溶液を、4.6mCiの111InCl3溶液(カ
ナダ国オタワ州所在Nordion)10mLに加え、最終pHを5.5~6に調整した
。混合物を30分間70℃の水浴で加温し、反応完了後、HPLCで精製するため200
mLの水で希釈した。Phenomenex社製C18Lunaカラム4.6×250m
m2(カリフォルニア州トーランス所在)を使用し、水(0.1% TFA)(A)およ
びMeCN(0.1% TFA)(B)を溶出溶媒に用いて流速0.6mL/分で溶液を
精製した。精製にA88%およびB12%のイソクラクチック溶液を用い、標識化された
化合物111In-XY-FAP-02が18.6分で先に溶出し、続いて標識されてい
ない出発物質が23.5分で溶出した。純生成物として3.2mCiの標識化合物が69
%の収率で得られた。同一条件で反応を別途行ったところ収率は74%であった。回収し
た放射性物質を20mLの水で希釈し、活性化Sep-Pak(WAT020515、マ
サチューセッツ州ミルフォード所在Waters製)に担持させた。Sep-Pakを1
0mLの水で湿らせた後、1.5mLのエチルアルコールで111In-XY-FAP-
02を溶出させた。エチルアルコールを穏やかなN2流(合計体積<50μL)で揮発さ
せた。得られた溶液を生理食塩水で製剤化し、画像化およびバイオディストリビューショ
ン試験を行った。
【0181】
1.4 FAP阻害アッセイ。XY-FAP-01の阻害活性を、発蛍光FAPアッセ
イキット(カリフォルニア州サンディエゴ所在BPS Bioscience)を用いて
測定した。簡潔に記載すると、XY-FAP-01、DPP基材、およびヒト組換FAP
を96ウェルプレートに担持させ、酵素反応を開始させた。反応物を室温で10分間放置
した後、VICTOR3 Vマルチラベルプレートリーダー(マサチューセッツ州ウォル
サム所在PerkinElmer Inc.)を用いて蛍光を測定した。XY-FAP-
01のIC50値(酵素活性を50%阻害するXY-FAP-01の濃度)を決定するた
めに、データを標準化し、片対数阻害曲線を作成し、続いてチェン=プルソフ変換を用い
て酵素阻害定数(Ki)を求めた。片対数阻害曲線の作製およびIC50値の決定は、G
raphPad Prism(カリフォルニア州サンディエゴ所在)を用いて行った。
【0182】
1.5 細胞株。神経膠芽腫(U-87-MG)、黒色腫(SK-MEL-24)、前
立腺がん(PC-3)、非小細胞肺がん(NCI-H2228)、大腸がん(HCT 1
16)、および肺扁平上皮がん(NCI-H226)の6種類のヒトがん細胞株を用いて
、FAPとの結合を評価した。U-87-MG、SK-MEL-24およびNCI-H2
228の各細胞株はFAP発現のレベルが高く[FAP陽性(+)]、PC-3、NCI
-H226およびHCT 116細胞は、FAP発現のレベルが非常に低い[FAP陰性
(-)]ことが文献から確認された。このような発現プロファイルを、APC標識抗FA
P抗体(ミネソタ州ミネアポリス所在R&D Systems)を用いたフローサイトメ
トリーおよび定量的リアルタイムPCRでさらに確認した。細胞株は全てAmerica
n Type Culture Collection(バージニア州マナサス所在AT
CC)から購入した。
【0183】
U-87-MG細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)(ミズーリ州セントルイス所
在Sigma-Aldrich)および1%のペニシリン-ストレプトマイシン(バージ
ニア州マナサス所在Corning Cellgro)を含むMEM培地(バージニア州
マナサス所在Corning Cellgro)上で、炭酸水素ナトリウム(Corni
ng)、ピルビン酸ナトリウム(メリーランド州ゲイザースバーグ所在Gibco)、お
よびMEM非必須アミノ酸(Gibco)を添加して維持した。SK-MEL-24細胞
は、15%のFBSと1%のペニシリン-ストレプトマイシンとを含むMEM培地上で、
重炭酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、およびMEM非必須アミノ酸を添加して維持
した。PC-3細胞は、Ham’s F-12K培地(Corning Cellgro
)上で10%のFBSと1%のペニシリン-ストレプトマイシンとを添加して培養した。
NCI-H2228、NCI-H226、およびHCT 116の各細胞は、RPMI
1640培地(Corning Cellgro)で10%のFBSと1%のペニシリン
-ストレプトマイシンとを添加して培養した。全ての培養細胞は、加湿培養器内で37℃
、5%の炭酸ガス(CO2)下に維持した。
【0184】
1.6 細胞取り込み試験。細胞取り込み試験および特異的結合試験は全て、再現性を
保障するため3回実施した。細胞を0.05%トリプシン(Corning)で分離し、
結合緩衝液中100万細胞のアリコートに再懸濁し、XY-FAP-01を、濃度(50
nM~0.78nM)を変えて添加し37℃、5%のCO2で1時間培養した。XY-F
AP-02の特異的取り込みの評価では、細胞を、FAPとDPP-IVとに特異的な阻
害剤(Val-boroPro、マサチューセッツ州バーリントン所在Millipor
eSigma)、またはDPP-IVに特異的な阻害剤(Sitagliptin、テキ
サス州ダラス所在Santa Cruz Biotechnology、Inc.)を、
濃度(10-19M~10-4Mの範囲)を変えて用いてあらかじめブロックした後、結
合緩衝液中で25nMのXY-FAP-02溶液を加えて37℃、5%のCO2で1時間
培養した。細胞を氷冷PBS(1x)で3回洗浄し細胞取り込みを中断させた。細胞を結
合緩衝液に再懸濁し、画像化のため96ウェルプレートに移した。LI-CORE Pe
arl Impulseイメージャ(ネブラスカ州リンカーン所在)で励起波長785n
m、発光波長検出800nmで画像を取得した。LI-CORE Pearl Impu
lseソフトウェア(バージョン2.0)で画像を解析し、蛍光強度をバックグラウンド
信号に対して補正し、ウェル面積に正規化した。
【0185】
111In-XY-FAP-02の細胞取り込みも評価した。細胞アリコート(100
万)を、1μCiの111In-XY-FAP-02の生理食塩水溶液を添加して37℃
、5%のCO2で30分間培養した。細胞を冷PBS(1x)で3回洗浄し、細胞ペレッ
トの放射能を1282 CompuGamma CSガンマウェルカウンター(メリーラ
ンド州ゲイザースバーグ所在Pharmacia/LKB Nuclear、Inc.)
で測定した。投与放射能の取り込み率は、基準線量の試料と比較して算出した。
【0186】
1.7 小動物の近赤外蛍光(NIRF)画像化。LI-CORE Pearl Im
pulseイメージャにより励起波長785nm、検出波長800nmでNIRF画像を
取得した。画像化試験に供するマウスを3%のイソフルオラン(v/v)で麻酔し、撮像
実施中は1.5%イソフルオランで麻酔を保った。FAP+のU-87-MG腫瘍異種移
植片とFAP-のPC-3腫瘍異種移植片とを担持させたNOD/SKIDマウスに10
nmolのXY-FAP-01を経尾静脈注射し、トレーサの注射後30分、1時間、2
時間、2.5時間、および4時間に画像を取得した。データをLI-COR Pearl
Impulseソフトウェア(バージョン2.0)を用いて表示および解析した。
【0187】
1.8 小動物のSPECT-CT画像化。FAP+のU-87-MG腫瘍異種移植片
とFAP-のPC-3腫瘍異種移植片とを担持させたNOD/SKIDマウスにSPEC
T-CT試験を実施した。画像化試験では、マウスを3%のイソフルランで麻酔した後、
スキャナー台に配置し外部光源で保温した。撮像実施中はイソフルランの濃度を1.5%
に減らした。200μLの生理食塩水に300μCiの111In-XY-FAP-02
を溶解させた溶液をマウスに注射し、放射性トレーサの注射後所定の時点(30分、2時
間、6時間、および24時間後)に、CTを備えたSPECTスキャナー(カリフォルニ
ア州ノースリッジ所在Gamma Medica-Ideas)でSPECT-CT画像
化を実施した。解剖学的コレジストレーションのために、各SPECTスキャンの終了時
にCTスキャンを実施した。取得したデータの組を、付属のGamma Medica-
Ideasソフトウェアを用いて再構成し、Amiraソフトウェア(オレゴン州ヒルズ
ボロ所在FEI)を用いて最終的にデータの可視化と画像の生成とを行った。
【0188】
1.9 ex vivoバイオディストリビューション。FAP+のU-87-MG腫
瘍異種移植片とFAP-のPC-3腫瘍異種移植片とを担持させたNOD/SKIDマウ
スに、200μLの生理食塩水に溶解させた10μCiの111In-XY-FAP-0
2の溶液を経尾静脈注射した。注射5分、30分、2時間、6時間、および12時間後に
、マウス(n=4)をCO2で窒息させて屠殺し、すぐに心臓穿刺により採血を行った。
さらに、バイオディストリビューション分析用に、心臓、肺、肝臓、胃、膵臓、脾臓、脂
肪、腎臓、小腸、大腸、膀胱、筋肉、大腿骨、FAP+のU-87-MG異種移植片、お
よびFAP-のPC-3異種移植片を採取した。各組織を秤量し、2480 Wizar
d2自動ガンマカウンター(マサチューセッツ州ウォルサム所在PerkinElmer
)で放射能を測定した。放射能の測定値は減衰量を補正し、初期線量の標準希釈の試料と
比較して1グラムあたりの注入線量率(%ID/g)を計算した。
【0189】
ブロッキング試験では、マウス(各群につきn=5)に、200μLの生理食塩水に溶
解させた非標識XY-FAP-02(50μg/マウス1匹)および10μCiの111
In-XY-FAP-02を同時注射した。200μLの生理食塩水に溶解させた10μ
Ciの111In-XY-FAP-02の溶液を注射したマウス(n=5)を対照群とし
た。注射6時間後にマウスを屠殺し、組織を採取し、ガンマウェルカウンターで放射能を
測定した。
【0190】
1.10 データ解析。データは平均±標準偏差(SD)で表す。分析にはPrism
ソフトウェア(カリフォルニア州サンディエゴ所在GraphPAD)を用い、スチュー
デントの両側t検定を用いて統計的有意性を計算した。P値<0.05を有意とした。
【0191】
1.11 異種移植腫瘍モデル。1%のFBSを添加したRPMI 1640培地で培
養した100万のU87(FAP+)細胞とPC3細胞(FAP-)とを、6週齢のNO
D/SCIM雌マウスの左右上腹部に皮下注射した。マウスの腫瘍サイズをモニターし、
腫瘍サイズが約100mm3に達した時点で光学的画像化またはSPECT/CT画像化
に供した。
【0192】
[実施例2]
代表的な結果
2.1 FAP阻害アッセイ。XY-FAP-01はヒト組換FAPに対し高い結合親
和性を示した。化合物の酵素阻害定数(Ki)を求めたところ1.26nMであった。
【0193】
2.2 細胞取り込み試験。FAP陽性細胞株はXY-FAP-01の濃度依存的な取
り込みを示したが、FAP陰性細胞株は全ての濃度でXY-FAP-01と有意な結合を
示さなかった(例えば、
図3A参照)。25nMの濃度でXY-FAP-01の結合の飽
和が観察され、以降、この値を全ての結合阻害試験のベース濃度として用いた。FAPと
DPP-IVとに特異的な阻害剤で事前にブロックした場合、FAP陽性細胞でXY-F
AP-01の結合が有意に阻害された(
図3B)。興味深いことに、この現象は、DPP
-IVに特異的な阻害剤で事前にブロックしたFAP陽性細胞株では観察されなかった。
DPPIVをブロッキングしてもXY-FAP-01の結合能は変化しなかったので、こ
の結果は、XY-FAP-01がDPPIVよりもFAPに対して特異的であることを示
す。
【0194】
同様の特異性は放射性類似体である
111In-XY-FAP-02でも観察された。
FAP陽性細胞株であるU-87-MGは、培養後に投与放射性線量の30%超の取り込
みを示したが、FAP陰性細胞株であるPC-3では、投与線量の取り込みは0.01%
であった(
図3C)。まとめると、これらの結果は、in vitroでのFAPの結合
におけるXY-FAP-01および
111In-XY-FAP-02の特異性を支持する
ものである。
【0195】
2.3 ex vivoバイオディストリビューション。
111In-XY-FAP-
02のex vivoでのバイオディストリビューションは、観察した画像化の結果と相
関していた(
図4)。最初は、血液プールの放射能が非常に高く、注射後30分で10%
ID/g以上であった。血液プールの放射能は、化合物のクリアランスにより、分布2時
間後に大きく低下し、注射2時間後は5%ID/g未満にとどまった(
図5A)。また、
高い放射能は、投与2時間後までに膵、小腸、膀胱でも認められた。陽性腫瘍の取り込み
は注射後30分後にピークに達し、6時間後まで%ID/gは13~11%にとどまった
。注入12時間後に腫瘍での排出が観察され、%ID/gが5%未満に低下した。FAP
陰性のPC-3異種移植片においては、どの時点でも%ID/gが3.5%未満であった
。
【0196】
111In-XY-FAP-02とコールドな化合物(cold compound)とを同時に注
入すると、U-87異種移植片のトレーサの取り込みが有意にブロックされ、%ID/g
はブロックなしの場合の11.20%に対し、ブロックありの場合は0.27%に低下し
た(p<0.0001)。さらに、コールドな化合物でブロックすると、全ての組織の%
ID/gが大きく低下し、値はほとんど0.1%未満となった。この取り込みの低下は、
非標的組織へのトレーサの非特異的結合のブロック、およびU-87異種移植片でのFA
Pの特異的結合のブロックに起因する可能性が非常に高い。
【0197】
2.4 小動物の近赤外蛍光(NIRF)画像化。XY-FAP-01のNIRF画像
化では、注射30分後という短時間にU-87-MG異種移植片でトレーサの特異的な取
り込みを示した(
図6)。1時間の分布後、膀胱経由のトレーサのクリアランスが観察さ
れ、FAP陽性異種移植片でトレーサ取り込みが維持されていた。一方、FAP陰性腫瘍
では、トレーサの有意な取り込みは画像化のどの時点でも観察されなかった。
【0198】
(参考文献)
本明細書で引用した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、本開示の主題
が属する当業者の水準を示すものである。本明細書で引用した全ての刊行物、特許出願、
特許、およびその他の文献(例えば、ウェブサイト、データベースなど)は、個々の刊行
物、特許出願、特許、およびその他の文献のそれぞれが、具体的かつ個別に、参照により
本明細書に援用されているのと同程度に、その全体が参照により本明細書に援用される。
多くの特許出願、特許、および他の文献を本明細書に引用したが、そのような引用は、こ
れらの文献のいずれかが、当該技術分野における共通の一般的知識の一部を形成すること
を認めるものではないということが理解される。
【0199】
本明細書と援用された文献とが矛盾する場合は、本明細書(参照援用された文献に基づ
く明細書の補正を含む)が優先するものとする。特段の指定の限り、用語は、技術分野に
おいて標準的に認められた意味を本明細書に用いる。本明細書では、各種用語の標準的な
略語を使用する。
【0200】
前述の主題を、理解を明確にすることを目として、例示および実施例を用いてある程度
詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲内で一定の変更および改変を実施できることを
当業者は理解するであろう。