(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109700
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】セキュリティラベル
(51)【国際特許分類】
B42D 25/328 20140101AFI20240806BHJP
G03H 1/08 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B42D25/328 100
G03H1/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079699
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2020057984の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 彰人
(72)【発明者】
【氏名】香田 祖光
(57)【要約】
【課題】 チケットやカード、またはパスポートや査証の冊子ページ、紙幣、パッケージ、栓に添付され、真正の検証が可能なセキュリティラベルを提供すること。
【解決手段】 CGH(computer generated hologram)によって、媒体から離間して再生される3D像と、ピッチや方位角の異なる回折格子によって構成された2D像とが、隣接して再生されるセキュリティラベルであって、3D像と2D像とは、異なる視域角度において輝度の最大値を示し、3D像の輝度が最大値を示す視域角度では、2D像の輝度は、3D像の輝度の1/10以下となり、2D像の輝度が最大値を示す視域角度では、3D像の輝度は、2D像の輝度の1/10以下となる。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CGH(computer generated hologram)によって、媒体から離間して再生される3D像と、ピッチや方位角の異なる回折格子によって構成された2D像とが、隣接して再生されるセキュリティラベルであって、
前記3D像と前記2D像とは、異なる視域角度において輝度の最大値を示し、
前記3D像の輝度が最大値を示す視域角度では、前記2D像の輝度は、前記3D像の輝度の1/10以下となり、
前記2D像の輝度が最大値を示す視域角度では、前記3D像の輝度は、前記2D像の輝度の1/10以下となることを特徴とする、セキュリティラベル。
【請求項2】
前記2D像が、デジタルデータであることを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティラベル。
【請求項3】
前記3D像が、デジタルデータであることを特徴とする、請求項2に記載のセキュリティラベル。
【請求項4】
前記3D像のデジタルデータと、前記2D像のデジタルデータとが対となって認識可能となることを特徴とする、請求項3に記載のセキュリティラベル。
【請求項5】
前記デジタルデータに、パリティチェックが可能なデータを付与したことを特徴とする、請求項2乃至4のうちいずれか一項に記載のセキュリティラベル。
【請求項6】
前記デジタルデータが圧縮後に描画され、読み出し時に解凍されることを特徴とする、請求項2乃至5のうちいずれか一項に記載のセキュリティラベル。
【請求項7】
前記デジタルデータの単一データ内の描画部と非描画部との面積比率が、データに依らず等しいことを特徴とする、請求項2乃至6のうちいずれか一項に記載のセキュリティラベル。
【請求項8】
前記描画部の描画面に、金属反射層を形成したことを特徴とする、請求項7に記載のセキュリティラベル。
【請求項9】
前記描画部は、第1の描画部と第2の描画部とを含み、前記第1の描画部と前記第2の描画部との面積比率が、データに依らず等しいことを特徴とする、請求項7または8に記載のセキュリティラベル。
【請求項10】
前記第1の描画部と、前記第2の描画部との何れか一方を、前記非描画部としたことを特徴とする、請求項9に記載のセキュリティラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、チケット、カード、パスポート、査証、紙幣、パッケージなどに添付され、真正の検証が可能なセキュリティラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ干渉型のホログラムや、レーザ干渉を計算機にて計算するCGH(computer generated hologram)は、両眼視差を使って立体視できるのが特徴であり、観察者の視域を変えることで、動的な効果を持ち、一般的な印刷物では発揮できない機能を実現できることから、近年、多くのセキュリティラベルに使用されている。
【0003】
この様な動的な効果により、この種のホログラムは、媒体表面から飛び出して見えるのが特徴であるが、それは、点光源での再生が条件であり、一般的な細長の蛍光灯や、複数の照明、発光面の大きな照明にて照明した場合、再生像がボケてしまうという欠点がある。
【0004】
また、再生像は奥行きがあればあるほど、ボケが顕著であるので、立体感を出すために、奥行きを付けると、ボケやすくなるというトレードオフの関係がある。
【0005】
よって、一般に、深い奥行きを持った立体感と、鮮明な再生像との両立は困難である。
【0006】
一方、この様な再生像のボケを無くすために、回折格子で構成されたボケの無いCGH技術が報告されている(例えば、クリスタグラムに関する特開2011-248279号公報(特許文献1)や、photocolorに関する国際特許出願第2017183718A1号公報(特許文献2)を参照)。
【0007】
これらの技術は、絵柄の色や輝度が両眼で変わるものの、基本的な絵柄自体は両眼で同じであるため、再生像のボケが無く、どのような環境でも視認し易いという特徴があるが、立体感に乏しいという欠点がある。また、これらの回折格子は、機械で読み取るのには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-248279号公報
【特許文献2】国際特許出願第2017183718A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情を鑑みてなされたものであって、チケットやカード、またはパスポートや査証の冊子のページ、紙幣、パッケージ、栓に添付され、真正の検証が可能なセキュリティラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成すべくなされた請求項1に記載の発明は、CGH(computer generated hologram)によって、媒体から離間して再生される3D像と、ピッチや方位角の異なる回折格子によって構成された2D像とが、隣接して再生されるセキュリティラベルであって、前記3D像と前記2D像とは、異なる視域角度において輝度の最大値を示し、前記3D像の輝度が最大値を示す視域角度では、前記2D像の輝度は、前記3D像の輝度の1/10以下となり、前記2D像の輝度が最大値を示す視域角度では、前記3D像の輝度は、前記2D像の輝度の1/10以下となることを特徴とする、セキュリティラベルである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記2D像が、デジタルデータであることを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティラベルである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記3D像が、デジタルデータであることを特徴とする、請求項2に記載のセキュリティラベルである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記3D像のデジタルデータと、前記2D像のデジタルデータとが対となって認識可能となることを特徴とする、請求項3に記載のセキュリティラベルである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記デジタルデータに、パリティチェックが可能なデータを付与したことを特徴とする、請求項2乃至4のうちいずれか一項に記載のセキュリティラベルである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記デジタルデータが圧縮後に描画され、読み出し時に解凍されることを特徴とする、請求項2乃至5のうちいずれか一項に記載のセキュリティラベルである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記デジタルデータの単一データ内の描画部と非描画部との面積比率が、データに依らず等しいことを特徴とする、請求項2乃至6のうちいずれか一項に記載のセキュリティラベルである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、前記描画部の描画面に、金属反射層を形成したことを特徴とする、請求項7に記載のセキュリティラベルである。
【0018】
請求項9に記載の発明は、前記描画部が、第1の描画部と第2の描画部とを含み、前記第1の描画部と前記第2の描画部との面積比率が、データに依らず等しいことを特徴とする、請求項7または8に記載のセキュリティラベルである。
【0019】
請求項10に記載の発明は、前記第1の描画部と、前記第2の描画部との何れか一方を、前記非描画部としたことを特徴とする、請求項9に記載のセキュリティラベルである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、チケットやカード、またはパスポートや査証の冊子のページ、紙幣、パッケージ、栓に添付され、真正の検証が可能なセキュリティラベルを提供することができる。
【0021】
特に、請求項1に対応する発明によれば、3D像と2D像の見える範囲を変えることができ、チェンジングの効果を持たせることが可能となる。
【0022】
請求項2に対応する発明によれば、媒体から再生する2D像を、デジタルデータとすることが可能となる。
【0023】
請求項3に対応する発明によれば、媒体から再生する3D像を、デジタルデータとすることが可能となる。
【0024】
請求項4に対応する発明によれば、3D像から成るデジタルデータと、2D像から成るデジタルデータが対となって、認証可能な真贋方法を実現することが可能となる。
【0025】
請求項5に対応する発明によれば、デジタルデータに、パリティチェックが可能なデータを付与することが可能となる。
【0026】
請求項6に対応する発明によれば、デジタルデータを圧縮後に描画し、読み出し時に解凍することが可能となる。
【0027】
請求項7に対応する発明によれば、前記デジタルデータの単一データ内の描画部と非描画部との面積比率が、データに依らず等しくすることができるので、異なるデータを付与しても、外観上はほとんど見分けのつかない様なセキュリティー商材とすることが可能となる。
【0028】
請求項8に対応する発明によれば、描画面に、塗布または蒸着により、例えばAl、Ni、およびAgのうちの少なくとも何れかからなる金属反射層を設けることが可能となる。
【0029】
請求項9に対応する発明によれば、デジタルデータの単一データ内の第1の描画部と第2の描画部との面積比率を、データに依らず等しくすることができるので、異なるデータを付与しても、外観上はほとんど見分けのつかない様なセキュリティー商材とすることが可能となる。
【0030】
請求項10に対応する発明によれば、前記第1の描画部と、前記第2の描画部との何れか一方を、前記非描画部に変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】は、本実施形態に係るセキュリティラベルとセキュリティラベルの記憶領域に記録された再生像を示す図である。
【
図1B】
図1Aに示すセキュリティラベルの位相シフト構造によって再生された再生像を、観察者が正面方向(
図1Aにおける上方向)から観察した状態を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係るセキュリティラベルの再生像との位置関係を示す2つの例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るセキュリティラベルの視認効果を説明するための図である。
【
図4】記録領域における要素セルの配置例を示す斜視図である。
【
図5A】セキュリティラベルにおける視域角度範囲を説明するための模式図である。
【
図5B】本実施形態に係るセキュリティラベルにおける視域角度と輝度との関係を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るセキュリティラベル及び再生像がデジタルコードである例を説明するための図である。
【
図7】セキュリティラベルが添付された積層体の断面図である。
【
図8A】デジタルコードを描画位置により形成することを説明するための図である。
【
図9】見た目の再生像は同じだが、記録されているデータが異なる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0033】
図1Aは、本実施形態に係るセキュリティラベルとセキュリティラベルの記憶領域に記録された再生像を示す図である。
【0034】
図1Aは、空間中に再生される再生像が記録されたセキュリティラベル10と、セキュリティラベル10の第1の要素セルおよび第2の要素セルに位相シフト構造として記録された再生像1、2とを例示している。
【0035】
図1Bは、
図1Aに示すセキュリティラベルの位相シフト構造によって再生された再生像を、観察者が正面方向(
図1Aにおける上方向)から観察した状態を示す平面図である。記録領域に位相シフト構造として記録された再生像1,2は、照明光下で観察することができる。言い換えれば、記録領域に位相シフト構造として記録された再生像1,2は、照明により再生像は再生される。
【0036】
再生像1,2は、複数の再生点により構成することができる。このとき、再生点の群として再生像1,2が表示される。再生点を再生する位相シフト構造は、記録領域の位相を記録する位相シフト構造と再生点の光学距離と波長から位相シフト構造における位相を計算し、その位相に対応して入射した光の位相をシフトさせる位相シフト構造として、記録領域に記録することができる。位相シフト構造は、記録領域にレリーフ構造として記録しても良いし、屈折率の変調として記録してもよい。次の方法により、位相差をレリーフ構造として記録することができる。まず、電子線レジストがガラス板上に塗布されたレジスト版に位相シフト量に応じたドーズ量の電子ビームを露光し、レジスト版を現像し、位相シフト量に応じた凹凸面を形成する。レジスト板上に形成された凹凸面上に金属層を堆積してマスタープレートを作製する。マスタープレートから電鋳により、ニッケルのシムを複製する。複製したシムをキャリア上に樹脂が塗布されたフィルムにエンボスすることでレリーフ構造を樹脂に記録できる。このため、レリーフ構造として記録された位相シフト構造は、量産性に優れている。レリーフ構造をエンボスする樹脂は、熱可塑樹脂、硬化樹脂、または、双方の複合体とできる。特に熱可塑樹脂、硬化樹脂の複合体は、高精度に位相をレリーフ構造として記録できるため高密度に再生点を記録することができ、且つそのレリーフ構造が記録された粘着性セキュリティラベルを被着体から、改ざんのため、加熱し剥がす際に、破壊するようにすることができるため、高い改ざん耐性を有することができる。
【0037】
セキュリティラベル10は、被着体に接着層を介して添付することができる。セキュリティラベル10は、ホットスタンピングにより被着体に添付することができる。セキュリティラベル10を被着体に添付することで、セキュリティラベル付き認証体を得ることができる。被着体は、印刷されたノート、印刷されたページ、印刷されたカードとできる。
【0038】
セキュリティラベル付き認証体の実例は、チケット、紙幣、カード、冊子のページ、シールである。カードは、IDカードやライセンスカード、ゲームカードとできる。IDカードは、国民IDカード、外国人在留カード、納税カードとできる。また、冊子はパスポートとできる。チケットは、金券、ギフト券、入場券とできる。シールは、パッケージの開封口や栓に添付する封止シールとできる。このパッケージは、金属パッケージ、プラスチックパッケージ、フィルムパッケージ、紙パッケージとできる。パッケージは、食品用パッケージ、医療用パッケージ、ゲームカード用パッケージとできる。
【0039】
図1Aに示す例では、再生像1は星、再生像2は月の再生像が表示されている。つまり、再生像1と再生像2は、異なってもよい。また、再生像1と再生像2のサイズは同様でもよい。具体的には、再生像1と再生像2の凸包の面積の比率は、1:2以上、2:1以下とできる。また、再生像2のサイズは再生像1のサイズより小さくてもよい。このとき、具体的には、再生像1と再生像2の凸包の面積の比率は、10:1以上、2:1未満とできる。セキュリティラベル10に対して再生像1は観察者Kに対して手前、すなわち光学コード記録体の表側に、再生像2は観察者Kに対して奥側、すなわち光学コード記録体の裏側に再生される。
【0040】
図1Aに示すように、位相シフト構造により、平面の再生像1,2が空間中にセキュリティラベル10から離間して再生されている。言い換えれば、位相シフト構造は、平面の再生像1,2を空間中に再生する。再生像1,2の形状は、曲面としてもよい。この時、観察者Kが観察する際の立体感は、再生像の再生距離、すなわち再生像1,2の中心とセキュリティラベル10の表面との距離と比例して大きくなる。しかし、再生距離を大きくしすぎると、点光源下で、像のボケが生じる。そのため、ボケが生じることのないような再生距離の範囲とする。
図1Aに示すように、セキュリティラベル10は、再生像1,2が、それぞれセキュリティラベル10の表側の空間中と裏側の空間中に再生する。これにより、再生像1,2のボケを抑えつつ、立体感を増すことができる。
【0041】
第1の要素セルおよび第2の要素セルのサイズは5μm以上、150μmとできる。このサイズは、要素セルの短辺の長さとできる。また要素セルに外接する長方形の短辺の長さとしてもよい。
【0042】
記録領域における第1の要素セルおよび第2の要素セルを、入れ子状に配置できる。これにより、再生像1,2は正面方向から観察した際に重なるように再生できる。これにより、再生像1,2の片側だけでは立体感が乏しいが、表側と裏側に、重なるように再生することによって、奥行き感を倍増できる。また、再生像1の点群により構成される面の一部と再生像2の点群により構成される面の一部とを、平行としてもよい。これにより、重層的に複合した像を表示できる。
【0043】
図2は、本実施形態に係るセキュリティラベルの再生像との位置関係を示す2つの例を示す図である。
【0044】
図2(a)および
図2(b)ともに、セキュリティラベル10から再生像1までの再生距離Z1と、セキュリティラベル10から再生像2までの再生距離Z2とが異なる場合であるが、
図2(a)は、2つの再生像1、2が、
図1Aで説明したように、セキュリティラベル10を挟んで異なる側に再生される例を示し、
図2(b)は、2つの再生像1,2が、セキュリティラベル10に対して同じ側に再生される例を示している。
【0045】
2つの再生像1,2が、セキュリティラベル10に対して同じ側に再生される場合、
図2(b)に示すように、全て手前側に再生されても、あるいは図示しないが、その逆に全て奥側に再生されても良い。
【0046】
図3は、本実施形態に係るセキュリティラベルの視認効果を説明するための図であって、
図3(a)、
図3(b)ともに、セキュリティラベル10から再生像1までの距離である再生距離Z1よりも、セキュリティラベル10から再生像2までの距離である再生距離Z2の方が長い。
【0047】
図3(a)は、環境照明下における再生像の視認効果の一例を示し、
図3(b)は、点光源Lを用いた場合の再生像の視認効果の一例を示している。
【0048】
図3(a)に示す通り、環境照明下では、再生距離Z2の値が大きくなると、再生像2はボケて、視認できなくなる一方、再生像1のみ視認できる。
【0049】
しかしながら、
図3(b)に示す通り、点光源Lを照射することで、再生距離Z2の値が大きくなっても、つまり、Z1<Z2の関係が成立しても、明瞭な再生像2を視認できる。そのため、再生像1と再生像2との対比による奥行き感を視認できる。
【0050】
図4は、記録領域における要素セルの配置例を示す斜視図である。
【0051】
セキュリティラベル10では、再生像1を再生する記録領域S1と、ピッチおよび方位角の異なる光を特定方向に回折する回折格子で構成された記録領域S2とが、セキュリティラベル10内に隣接して配置される。記録領域S2は、複数の記録セルを有してもよい。記録領域S2の複数の記録セルは、セル内に記録された回折格子のピッチ、方位角、または、その双方が異なる記録セルを有してもよい。
【0052】
第1の要素セルS1の面積は、
図4(a)に例示されるように、第2の要素セルS2の面積と同じにできるが、
図4(b)に例示されるように、第2の要素セルS2の面積よりも大きくできる。すなわち、S1>S2とできる。
【0053】
図4(b)に例示するように、データ記録領域の要素セルS1、S2を、隙間を開けて隣接して配置してもよい。ただし、この場合、再生像の輝度は、記録領域の面積によって暗くなる。したがって、第1および第2の要素セルの面積を変えることによって、輝度を調節することができる。
【0054】
なお、
図4(b)の様に、第1の要素セルS1と第2の要素セルS2との間に適度な空間を置いて、観察者が同時に視認することが可能な距離で、第1の要素セルS1と第2の要素セルS2とを、一定の比率で入れ子状に配置することができる。一定の比率とは、記録領域の単位エリア内での第1の要素セルの数と第2の要素セルの数を一定とすることとできる。また、第1の要素セルと第2の要素セルは同じサイズとできる。さらに、第1の要素セルと第2の要素セルは同じ形としてもよい。
【0055】
図5Aは、セキュリティラベルにおける視域角度範囲を説明するための模式図である。
【0056】
図5Bは、再生像の視域角度と輝度との関係を示す図である。
【0057】
図5Bにおいて横軸は視域角度(deg)を示し、縦軸は1.0に正規化された輝度(cd/cm
2)を示す。
【0058】
視域角度は、
図5Aに例示するように、セキュリティラベル10の法線方向に対する角度とできる。したがって、セキュリティラベル10の法線方向は、視域角度が0度となる。
【0059】
本実施形態に係るセキュリティラベル10は、再生像1と再生像2とを別々の視域角度θに再生することが可能であり、
図5Aおよび
図5Bに例示するように、再生像1が、視域角度θ1にて最も輝度が高くなるように再生し、再生像2が、視域角度θ2にて最も輝度が高くなるように再生するように、計算し、作製することができる。
【0060】
より具体的には、再生像1の輝度が最大値を示す視域角度θ1では、再生像2の輝度は、再生像1の輝度の1/10以下となり、再生像2の輝度が最大値を示す視域角度θ2では、再生像1の輝度は、再生像2の輝度の1/10以下となる。
【0061】
図6は、本実施形態に係るセキュリティラベル及び再生像がデジタルコードである例を説明するための図である。
【0062】
図6のように、第1の要素セルS1、および第2の要素セルS2の配置によりデジタルコードを記録領域に記録できる。
【0063】
図6は、第1の要素セルS1及び第2の要素セルS2の配置でデジタルコード「00101001」が記録領域に記録されている実例である。
【0064】
図6に例示するように、位相変調層のデータ記録領域には、要素セルS1,S2の配置によって、一次元コードや二次元コードを記録できる。一次元コードの実例はバーコードである。二次元コードの実例はQRコード(登録商標)である。また、アルファベット、数字の列でコードを構成してもよい。
【0065】
図7は、セキュリティラベル10が添付された積層体50の断面図である。
【0066】
セキュリティラベル10は、保護層11と、位相変調層12を積層し、位相変調層12に位相シフト構造を形成したものとできる。このセキュリティラベル10は、キャリア上に形成することができキャリア上のセキュリティラベル10を、接着層13を介して、透明層22へホットスタンピングすることによって被着体に添付できる。
【0067】
キャリアは、プラスチックフィルムとできる。プラスチックフィルムの材質は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)とできる。また、プラスチックフィルムは、樹脂を塗布して形成されたコート層を有してもよい。
【0068】
位相変調層12は、多層とできる。位相変調層12は、エンボス層、反射層、マスク層を順に積層した構成とできる。なお、マスク層は省略できる。保護層11の材質は、熱可塑性ポリマーとできる。エンボス層の材質は、硬化ポリマーとできる。反射層の材質は、無機とできる。保護層11とエンボス層は、コーティングにより形成できる。反射層は堆積により形成できる。堆積は、物理堆積、化学体積とできる。物理堆積は、真空蒸着、スパッタとできる。マスク層はインクを印刷することで形成できる。印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷とできる。インキは、油性インキ、水系インキとできる。またインキは、UVインキとしてもよい。
【0069】
エンボス層は、単層または複合層とできる。複合層は、レリーフ層、中間部、アンカー層で構成できる。レリーフ層は、硬化ポリマーとできる。アンカー層は、熱硬化ポリマーとできる。中間層は、混合体とできる。
【0070】
保護層11の材料は、樹脂と滑剤の混合体とすることができる。樹脂は、熱可塑性樹脂とできる。樹脂の実例は、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂とできる。また、滑剤としてはポリエチレンパウダー、パラフィンワックス、シリコーン、カルナバロウ等のワックスを使用できる。これらは剥離層11として、基材層上にグラビア印刷法やマイクログラビア法等、公知の塗布方法によって形成できる。剥離層11の厚みは、0.5μm及至5μmの範囲内とできる。
【0071】
単層のエンボス層の材質は、ポリアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリアクリルアクリレートとできる。レリーフ層の材質は、ポリアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリアクリルアクリレートとできる。中間部の材質は、ポリアクリレート、ポリウレタンアクリレートの混合とできる。アンカー層の材質は、ポリウレタンアクリレートとできる。
【0072】
また、熱加圧により透明層21、セキュリティラベル10、透明層22、および反射散乱層23の順で積層し熱圧着し一体化し積層体とできる。積層体はカード、タグ、冊子のページとできる。これにより、セキュリティラベル付き認証体を形成できる。
【0073】
その場合、透明層21、透明層22、および反射散乱層23を同一材料とできる。透明層21、透明層22、および反射散乱層23の材料としては、例えばポリカーボネートとできるが、それ以外にも、例えば、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の熱硬化性樹脂、あるいはこれらの混合物、さらにはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料等を使用できる。
【0074】
透明層22には、例えばAlによって蒸着を行い、透明層21、透明層22、反射散乱層23と熱圧着した後、レーザにて、透明層21側から部分的に金属蒸着層の剥離を行うことによって、位相変調層12の表層を形成する反射層を形成できる。
【0075】
反射層の材料は、金属または金属化合物、酸化ケイ素とできる。金属化合物は、酸化金属、金属硫化物、フッ化金属とできる。これら金属化合物は、化学変化しにくく、記録領域に記録された再生像を長期間保持できる。
【0076】
金属硫化物は、硫化亜鉛とできる。金属酸化物は、酸化チタンとできる。金属フッ化物はフッ化マグネシムとできる。金属は、アルミニウム、銀、スズ、ニッケル、クロム、金の単体、または合金とできる。特にアルミニウムは不働態層を形成するため、耐久性が高く、記録領域に記録された再生像を長期間保持できる。
【0077】
また、反射散乱層23として、照明角度又は観察角度に応じて色が変化する機能性インキを使用できる。このような機能性インキとしては、例えば、光学的変化インキ(Optical Variable Ink)、カラーシフトインキ及びパールインキを使用できる。
【0078】
このようにして、位相変調層12にデジタルコードCを形成することができる。
【0079】
次に、デジタルコードを要素セルS1、S2の配置により記録することについて説明する。
【0080】
セキュリティラベル10は、要素セルS1、S2の配置によってデジタルコードを記録することができる。デジタルコードはデータを保持することができる。
【0081】
図8Aは、デジタルコードを描画位置により形成することを説明するための図である。
【0082】
【0083】
図8Aで説明されるように、デジタルコードは、要素セルの配置により記録領域に記録できる。
【0084】
図8Aに示す例では、25個の要素セルからなる単位とする記録領域のうち、8つの要素セルでデジタルコードを記録している。単位とする要素セルの数が同じであっても、
図8A(a)、
図8A(b)、および
図8A(c)に示すように、異なるデジタルコードとすることができる。
【0085】
また、
図8A(a)のような描画パターンに「0」、
図8A(b)のような描画パターンに「1」、
図8A(c)のような描画パターンに「2」を割り当てることで、
図8B(a)のように、3進数でデータを記録できる。
図8B(a)のような3進数のデータの記録は、
図8B(b)に例示するように、モチーフとして形成されたデータ記録領域(月)のモチーフ中に埋め込んで記録でき、データ記録領域を拡大観察することによって、
図8B(a)のような配置を読み取ることができる。
【0086】
また、単位当たりの要素セルの数が同じでも、異なるコードとすることが可能であることから、視認される再生像は同じだが、記録されているデータは異なるようにすることができる。言い換えれば、一連のデータ内の第1の要素セルと第2の要素セルとの比率(例えば、8:17)を、記録されたデータに依らず一定とすることができる。なお、第1の要素セルまたは第2の要素セルを平坦に換えてもよい。
【0087】
なお、記録領域の一部の要素セルを、平坦とすることにより、要素セルの面積比率を下げることができる。逆に、平坦な記録領域の一部に要素セルを配置することにより描画部の面積比率を上げることができる。この平坦な記録領域は、回折格子に換えてもよい。
【0088】
図9は、見た目の再生像は同じだが、記録されているデータが異なる例を示す図である。
【0089】
図9(a)の場合と、
図9(b)の場合とでは、観察者Kが見る再生像1は同じであるが、
図9(a)の場合と、
図9(b)の場合とで、3進数の表示例は異なっており、異なるデータを表すことができる。また、このようなデータに、パリティチェックが可能なパリティビットを付与することもできる。
【0090】
このような特性により、セキュリティラベル10は、高い偽造性を有し、また美観に優れたラベルである。このセキュリティラベル10を被着体に添付することで被着体の真正を確実に検証できる。
【0091】
本発明の実施形態に係るカードの具体的な製造について、以下の実施例において、
図7を参照しながら説明する。
【実施例0092】
透明層21の材料として、SABIC社の商品名LEXAN、型番SD8B14、厚み100μmを用いた。また、透明層22の材料として、SABIC社の商品名LEXAN、型番SD8B94、厚み100μmを用いた。また、反射散乱層23の材料として、SABIC社の商品名LEXAN、型番SD8B24、厚み200μmを用いた。
【0093】
透明層22にキャリア上に形成されたセキィリティラベル10を部分的にホットスタンピングして添付した後、透明層21、セキィリティラベル10、透明層22、反射散乱層23を積層し、180度のプレートで加熱圧着し、その後冷却を施した。その後、85×54mmの形状になる様に抜き加工をし、カードを得た。
【0094】
再生像はセキュリティラベル10の表側に、セキュリティラベル10から2mmの距離で複数の再生点の群として星の像を再生する複数の第1の要素セルと、セキュリティラベル10の裏側に、8mmの距離で複数の再生点の群として月の像を再生する複数の第2の要素セルとを、入れ子状にセキュリティラベル10の位相変調層12のデータ記録領域に、位相シフト構造として形成した。点光源下でセキュリティラベル10が添付されたカードを観察すると、星と月のモチーフで再生するものをセキュリティラベル10に対して10mmで再生し、奥行きを視認できた。また、面光源や間接照明による環境照明下においては、手前に2mmで再生する星の再生像しか視認する事ができなかったが、点光源の照射によって、奥側に8mmで再生する月の再生像を視認する事が可能となった。
【0095】
[電鋳版の作製]
電子線描画にてレジスト版上に凹凸面としてレリーフ構造を形成されたマスターを形成し、そのマスターの表面に導電膜を堆積により形成した後、電鋳によりシムを複製した。
【0096】
[転写箔の作製]
また、セキュリティラベルは、PETフィルムのキャリア上に剥離可能な保護層11を塗布により形成後、前駆体を乾燥後の厚みが3μmとなるように保護層11上に塗布してエンボス層を形成し、そのエンボス層の表面に電鋳により形成された凹凸面を有するシムを熱とUV照射にて加圧、エンボスし、凹凸面によりレリーフ構造をエンボス層に形成した。その後、レリーフ構造が形成されたエンボス層の表面にアルミニウムの反射層を真空蒸着で形成した。さらに、反射層上に、接着材を塗布し接着層を形成した。なお、これら塗布する材料は、溶剤で希釈してもよい。
【0097】
以上の実施例のように、本発明の実施形態に係るカード50を良好に製造できることが確認された。
【0098】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。