(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109703
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】埋込み型の神経遮断介入
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240806BHJP
A61M 19/00 20060101ALI20240806BHJP
A61M 5/00 20060101ALI20240806BHJP
A61M 39/08 20060101ALI20240806BHJP
A61B 17/34 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
A61M25/00 520
A61M19/00
A61M5/00
A61M39/08
A61B17/34
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024079830
(22)【出願日】2024-05-16
(62)【分割の表示】P 2021513956の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】62/731,591
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519318030
【氏名又は名称】マンセル、ジョン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンセル、ジョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】埋込み可能な神経遮断デバイスを提供する。
【解決手段】トンネルデバイスの第1の端部は、第1の皮下切開を通して挿入される。トンネルデバイスは、中腋窩線に向かって患者の皮層の下を横行する。トンネルデバイスは、患者の傍腰椎線に向かって胸郭下部の上方を横行する。縦傍正中切開を、椎体及びトンネルデバイスから約3インチ側方で行う。神経の原始クラスターに向かい、傍正中切開を通して、針又はトロカールの先端を挿入し、カテーテルを、針又はトロカールに通して配置し、この針又はトロカールは、カテーテルを固定する前に除去される。カテーテルチューブは、トンネルデバイスの長さに沿って挿入される。カテーテルチューブは、遠位カテーテルに連結される。トンネルデバイスは、カテーテルチューブに沿って引き込まれる。カテーテルチューブは、経皮アクセスポートに連結される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の鎖骨と乳頭との間にある患者の胸部の外側腹側部分の第1の側で、第1の皮下切開を行うステップであって、該第1の皮下切開が、該乳頭の上外側又は代替部位にある該ステップと、
該第1の皮下切開を通して、導管を含むトンネルデバイスの第1の端部を挿入するステップと、
該第1の側で該患者の中腋窩線に向かい、該患者の皮層の下で該トンネルデバイスの該第1の端部を横行させるステップであって、該トンネルデバイスの経路が該患者の脇の下よりも低い該ステップと、
椎体の近位で、該中腋窩線から該患者の傍腰部線に向かって、該患者の胸郭の下部の上方に該トンネルデバイスの該第1の端部を横行させるステップと、
該椎体及び該トンネルデバイスの該第1の端部に隣接して及び僅かに側方に、内側外側切開を行うステップと、
神経の原始クラスターに向かい、該内側外側切開を通して、針又はトロカールの針先を挿入するステップであって、該針先が、該神経の原始クラスターに向かって配置される該ステップと、
該トンネルデバイスの長さに沿って、該導管内でカテーテルチューブの第1の端部を縫うように進行させるステップと、
該カテーテルチューブの該第1の端部を該針に通し、所定位置に固定された該遠位カテーテルを残すように引き込まれる使い捨て可能な針又はトロカールの先端との流体連通可能な連結を形成するステップと、
該第1の皮下切開を経て、該カテーテルチューブに沿って該トンネルデバイスを引き込むステップと、
該カテーテルチューブの該第1の端部の反対側で、該カテーテルチューブの第2の端部を経皮アクセスポートに連結するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記カテーテルチューブの第1の端部及び前記内側外側切開の下の前記針を閉鎖し、前記第1の皮下切開を通して前記経皮アクセスポートを取り付け、前記経皮アクセスポートから色素を注入した後に、埋め込まれたカテーテルチップから前記神経の原始クラスター上に分散された、観察された色素に応答して、該第1の皮下切開を閉鎖するステップさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腰椎1(L1)の前記患者の椎体に隣接して前記内側外側切開を行うステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
壁側腹膜を通して、前記L1の椎前腔内で前記患者の腹腔神経叢に向かい、縦傍正中線外側切開を通して前記針又はトロカールの先端を挿入し、その内部で、該針又はトロカールを引き出し且つ前記カテーテルを固定する前に、カテーテルを該針先まで縫うように進行させるステップ
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
L1の椎側面で前記患者の腰部交感神経鎖に向かい、前記内側外側切開を通して該針又はトロカールの先端を挿入し、その後、カテーテルを留置し、針又はトロカールが除去される前に該カテーテルを固定するステップ
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記患者の前記脇の下よりも低い前記第1の面の前記中腋窩線上で、第2の皮下切開を行うステップと、
該第1の皮下切開を通して、第1のトンネルデバイスの第1の端部を挿入するステップと、
該第2の皮下切開に向かい、該患者の皮層の下で、該第1のトンネルデバイスの第1の端部を横行させるステップと、
該内側外側切開に向かい、該第2の皮下切開を通して、第2のトンネルデバイスの第1の端部を挿入するステップと、
該第1のトンネルデバイスの該第1の端部を、該第2のトンネルデバイスの第2の端部に連結するステップであって、該第1のトンネルデバイス及び該第2のトンネルデバイスの導管が動作可能に位置合わせされる該ステップと、
該第1のトンネルデバイス及び該第2のトンネルデバイスの該導管の長さに沿って、該カテーテルチューブの該第1の端部を縫うように進行させるステップと、
該第1の皮下切開を通して、該カテーテルチューブに沿って該第1のトンネルデバイス及び該第2のトンネルデバイスを引き込むステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月14日に出願され、「埋込み型の神経遮断介入(Implantable Nerve Blocking Intervention)」という名称の、米国仮特許出願第62/731,591号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
複合性局所疼痛症候群、慢性骨盤疼痛、及び慢性腹部疼痛などといった、急性及び慢性膵炎等の疾患により引き起こされる慢性疼痛症候群は、従来の疼痛管理介入を通じて治療するのが難しい。これらの症候群は、しばしば、内臓痛を感知する原因となる自律神経の活動を遮断するのに針を利用して麻酔薬を注入する、複雑な介入を必要とする。これらの介入は、血管構造、内臓および脊髄が近接していることと、供給血管及び退出神経根がこれらの症候群に関連する神経構造付近にあることに起因して潜在的に危険を伴う。不正確な針の留置は、内臓、脊髄、肺、又はその他の神経構造に損傷を与える可能性がある。ある場合には、椎間板、中枢神経系、又は腹腔の感染をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
潜在的な合併症のリスクを低減させるために、これらの介入は、典型的には費用のかかる蛍光透視法の使用を含み、局所解剖学に精通しており且つ介入疼痛管理技法の運用を経験した、経験豊富な疼痛専門医を必要とする。それらは医師及び患者を放射線に曝す。これら症候群のいくつかの生涯にわたる性質により、繰り返される放射線曝露の累積リスクは著しい。患者の生涯にわたる累積費用は著しい。この処置に対する即時アクセスが不十分であると、頻繁な救急来院をもたらし、オピエート嗜癖のリスクが増大する。これらの介入は有効であるが、それらの緩和持続時間は長く続かず、繰り返される注射が、経験豊富な疼痛専門医によるものであっても合併症のリスクを増大させる。したがって、慢性疼痛症候群に関する利用可能な疼痛管理介入が求められている。
【0004】
任意の特定の要素又は動作の考察を容易に明らかにするために、参照番号の最上位桁(複数可)は、その要素が初めて導入された図番号を指す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】一実施形態による、埋め込まれた皮下カテーテルデバイス100を示す図である。
【
図2】一実施形態による、皮下カテーテルデバイス200を示す図である。
【
図3】一実施形態による、トンネルデバイス300を示す図である。
【
図4】一実施形態による、埋込み型の神経ブロック介入デバイスを患者に取り付けるための、方法400を示す図である。
【
図5】一実施形態による、埋込み処置中の患者の前面像500を示す図である。
【
図6】一実施形態による、埋込み処置中の患者の側面像600を示す図である。
【
図7】一実施形態による、埋込み処置中の患者の後面像700を示す図である。
【
図8】一実施形態による、埋込み処置中の患者の後面像800を示す図である。
【
図9】一実施形態による、埋込み処置中の患者の側面像900を示す図である。
【
図10】一実施形態による、埋込み処置中のL1における患者の断面像1000を示す図である。
【
図11】一実施形態による、埋込み処置中の患者の側面像1100を示す図である。
【
図12】一実施形態による、埋込み処置中のL1における患者の断面像1200を示す図である。
【
図13】一実施形態による、色素試験中の患者の断面像1300を示す図である。
【
図14】一実施形態による、2部式トンネルデバイス1400の断面像を示す図である。
【
図15】一実施形態による、埋込み処置中の患者の側面像1500を示す図である。
【
図16】一実施形態による、患者において2部式トンネルデバイスを利用する埋込み型の神経ブロック介入デバイスを取り付けるための、方法1600を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
埋込み型の神経遮断介入カテーテル処置は、腰部交感神経鎖付近のL2からL4の腰椎体の前外側にある又は体躯及び壁側腹膜を神経支配する胸部脊髄神経付近の胸部傍脊椎腔内の、L1又はL5の椎体の前方の自律又は内臓神経構造に麻酔薬を送達するための、皮下カテーテルデバイスを取り付ける。これらの神経構造は、L1付近の腹腔神経叢、L5付近の上下腹神経叢、多数の腰部レベルにある腰部交感神経鎖、及び肋間神経の起点である胸部脊髄神経を含む。皮下カテーテルデバイスは、患者の皮膚の下に位置決めされたカテーテルに連結された経皮アクセスポートを含み、L1、L5の椎体の椎前腔もしくは前外側面、胸部傍脊椎腔又は適切なレベルの交感神経鎖付近で固定された遠位カテーテルチップで終端する。次いでブピバカインなどの麻酔薬は、経皮アクセスポートから注入し、カテーテルチューブの長さに沿って流れ、カテーテルの末端から出て、中枢神経軸又は腰部交感神経から出て行った後に、腹腔神経叢、上下腹神経叢、胸部脊髄神経をコーティングしそれによって麻酔をかけることができる。
【0007】
埋込み型の神経カテーテルでは、第1の皮下切開を、患者の鎖骨と乳首との間にある患者の胸郭の外側腹側部分の第1の側で行うことを含み、そこにポートが配置されることになる。患者の解剖学的構造及び優先性に基づけば、ポートはその他の場所に配置されてもよく、一部の患者は、肋骨上よりも肋骨縁付近での配置を、又は腹壁上の肋骨縁の下も好む可能性がある。皮下ポート用のポケットであることに加え、傍脊柱切開にトンネルさせるための開始点でもあり、このトンネルは、特定の患者のサイズ及び解剖学的構造に応じて1つ又は2つのセグメントで作製され得るものである。皮下ポートアクセス用のポケットを発生させた後、次いで導管を含むトンネルデバイスの第1の端部を、この第1の皮下切開内に挿通させる。次いでトンネルデバイスの第1の端部を、患者の皮層の下に通して第1の側で患者の中腋窩線に向かわせ、トンネルデバイス経路は、長い胸部神経などのある特定の神経を回避するよう十分に尾方に(又は「下に」)留まるよう、側方体躯に沿っている。可能な場合、トンネルは、単一の手術ステップで傍脊柱切開に対して後方に周り続ける。そうでない場合、その後、別の皮下切開がなされて、皮下で傍脊柱切開に到達するために第1のセグメントに続く第2のトンネルを発生させてもよい。背部の前方体躯皮下ポートから皮下トンネルを生じさせる前に、縦切開を、椎前又は傍脊椎部位で斜めのカテーテル留置が可能になるように正中線から十分離れた遠位カテーテルチップ留置の所望レベルで、脊椎の正中線に平行に作製する。この切開は、固定デバイスを配置するために、並びに張力ループを発生させて、埋め込まれた遠位カテーテルチップ上に牽引がもたらされるのを回避するのを助けるために、皮膚の下での解剖を含むべきである。針留置の深さを評価する標的神経の術前撮像に基づき、目盛りの付いた針又はトロカールを所望の深さに留置し、大動脈、大静脈、又は同様に回避可能な解剖学的構造などの極めて重要な構造までの、画像で推測される距離を超えずに、このましくはそのような距離未満の深さに留置する。この針のゲージは、同様に目盛りの付いたカテーテルを針のチップに通し、次いで所定の位置に残るように所定位置にカテーテルを固定しながら除去するのに十分大きい。次いでカテーテルは、トンネルデバイス導管の近位端にある皮下ポートに挿入され、トンネルデバイスの長さを経る。トンネルされたカテーテルは、患者のサイズ及び解剖学的構造に応じて、1つ又は2つのセグメントで傍脊柱切開に達してもよい。注入液の満足の行く拡がりを確認するために、椎前又は傍脊椎留置遠位カテーテル留置を通したライブ蛍光透視法の下で放射線造影剤を注入した後、遠位カテーテルセグメントは、トンネルデバイスが第1の(及びおそらくは第2の)皮下切開を経てカテーテルチューブに沿って引き込まれた後に、流体連通可能な連結を介して皮下注入ポートからトンネルされた針又はトロカールを除去した後に、近位セグメントに接続される。遠位セグメントに接続する前、非圧着アンカーを使用して、遠位セグメントをその椎前又は傍脊椎部位に固定する。次いでカテーテルチューブの近位端を、流体連通可能なコネクターで経皮アクセスポートに連結する。
【0008】
次いで埋込み型の神経遮断介入カテーテルは、注入に対する不適切な耐性に関する皮下ポートを経た注入、介入接続のいずれかでの漏れの蛍光透視的証拠、及びやはり椎前腔又は傍脊椎腔の注入部位での造影剤の満足のいく拡がりをチェックするのに、放射線造影剤色素試験を必要とすることになる。色素試験が満足の行くものになると、切開の全ては、皮下ポート、傍脊柱切開及び任意の潜在的な介入トンネリング切開にわたって閉鎖される。
【0009】
埋込み型の神経遮断カテーテル介入は、腹腔神経叢の機能に関連した慢性腹部疼痛を治療するのに行ってもよい。この構成では、内側外側切開を、第1の腰椎体(L1)に隣接させて行う。次いでカテーテルチップを、側部傍脊柱切開を通して、L1の椎前腔内の腹腔神経叢に向けて挿入する。内臓神経ブロックによる腰痛血尿症候群の治療の成功は、記述されてきた。壁側腹膜刺激を持つ患者の場合、同様のカテーテルを傍脊椎留置のために使用してもよい。
【0010】
埋込み型の神経遮断介入は、上下腹神経叢の活動に関連した慢性骨盤症候群を治療するのに行ってもよい。この構成では、側方傍脊柱切開を、第5の腰椎体(L5)に隣接させて行う。次いでカテーテルチップを、傍脊柱切開を通して、L5の椎前態様における上下腹神経叢に向けて、挿入する。慢性骨盤疼痛に苦しむ推定500万人の女性が米国内にいる。
【0011】
埋込み型の神経遮断介入は、腰部交感神経鎖の活動に関連した複雑な局所疼痛症候群を治療するのに行ってもよい。この構成では、側方傍脊柱切開を、第2、第3、又は第4の椎体(L2、L3、又はL4)の椎体に隣接させて行う。次いでカテーテルチップを、傍脊柱切開に通して、これら3つのレベル、L2、L3、又はL4の、傍脊椎態様における腰部交感神経鎖に向けて挿入する。
【0012】
腹腔神経叢は、自律神経系の3つの交感神経叢の最大のものである。これは胃の後ろ及び横隔膜脚の前の、腹部大動脈の始まりで、第1の腰椎のレベルに据えられる。腹腔神経叢は、2つの大きな神経節、腹腔神経節から構成され、神経線維の稠密網状構造はそれらを一緒に接続し、叢及び神経節は、両方の側から内臓神経を受容し、迷走神経からいくつかのフィラメントを受容する。腹腔神経叢からの数多くの2次神経叢枝は、腎臓を神経支配する腎神経叢、副腎を神経支配する副腎神経叢、脾臓及び肝臓を神経支配する脾神経叢及び肝神経叢、胃を神経支配する胃神経叢及び迷走神経枝、腸を神経支配する上及び下腸管膜神経叢、並びに男性の精巣及び女性の卵巣をそれぞれ神経支配する精巣卵巣神経叢を含む。腹腔神経叢の遮断は、構造のいずれかにおける疼痛を低減させるのに有効であった。
【0013】
腹部内蔵の交感神経支配は、脊髄の前外側角から生ずる。T5~T12の節前線維は、前根と併せて脊髄から出て、交感神経鎖までの途中で白交通枝と接合する。交感神経鎖とシナプス形成するのではなく、これらの節前線維はそこを通過して最終的には腹腔神経節上でシナプス形成する。より大きい、より少ない、及び最も小さい内臓神経は、腹腔神経叢への主要な節前関与をもたらす。より大きい内臓神経は、T5~T10脊髄根にその始点を有する。神経は、胸部椎前境界に沿って、横隔膜の下腿を経て、腹腔内に移動し、そのそれぞれの側の腹腔神経節で終了する。より少ない内臓神経は、T10~T11根から生じ、より多くの神経と共に腹腔神経節の終わりに至る。最も少ない内臓神経は、T11~T12脊髄根から生じ、横隔膜を経て腹腔神経節に至る。
【0014】
腹腔神経叢の、患者間の解剖学的ばらつきは著しいが、下記の一般化を、腹腔神経節の解剖学的研究から描くことができる。神経節の数は、1から5個まで変動し、その直径は0.5から4.5cmに及ぶ。神経節は、大動脈の前方及び前外側に在る。左に位置付けられた神経節は、椎骨レベルと同程度に右側の対応物に対して均一に、さらに下位にあるが、神経節の両方の群は、腹腔動脈のレベルよりも下にある。神経節は、通常、ほぼ第1の腰椎のレベルにある。
【0015】
節後線維は、腹腔神経節から放射されて血管の経路に従い、その結果、腹部内臓を神経支配する。これらの臓器は、遠位食道、胃、十二指腸、小腸、上行及び近位横行結腸、副腎、膵臓、脾臓、肝臓、及び胆道系の多くを含む。これらの節後線維、節前内臓神経から生じる線維、及び腹腔神経節は、腹腔神経叢を構成する。横隔膜は、大動脈、大静脈、及び内臓神経を含む胸腹部構造の通過を依然として可能にしながら、胸郭を腹腔から分離する。横隔膜脚は、上方2又は3個の腰椎及び椎間板の前外側面から生じる左右相称構造である。横隔膜脚は、内蔵神経を腹腔神経節及び下の叢から有効に分離するバリアとして働く。
【0016】
腹腔神経叢は、横隔膜脚の前方にある。叢は、大動脈の前及び周りに延び、最大濃度の線維が大動脈の前方にある。
【0017】
腰部交感神経鎖は、交感神経により媒介された腎臓、尿管、性器、及び下肢の疼痛に関連した、複雑な局所疼痛症候群に関連付けられる。このカテゴリーには、幻肢疼痛、反射性交感神経ジストロフィー、灼熱痛、及び様々な末梢神経障害が含まれる。腰部交感神経鎖の治療は、凍傷、アテローム性動脈硬化症、バージャー病に続発する疼痛、及び膠原病性脈管疾患に続発する動脈炎を含む、下肢の疼痛の血管不全に続発する疼痛の緩和を支援して、下肢に対する血管処置後の血流が最大限になるようにしてもよい。
【0018】
腰部交感神経の節前線維は、腰部傍脊椎神経に沿って椎間孔から出て行く。椎間孔から出た後、腰部傍椎間神経は、孔を経て廻り戻る反回枝を出し、その結果、脊椎靭帯、髄膜、及びそのそれぞれの椎骨を神経支配する。上方腰部傍脊椎神経も、白交通枝の有髄節前線維を介して腰部交感神経鎖とインターフェースをとる。腰部神経の5つ全ては、灰白交通枝の無髄節後繊維とインターフェースをとる。腰部交感神経節のレベルでは、節前及び節後線維がシナプスを形成する。さらに、節後線維の一部は、そのそれぞれの体性神経に、灰白交通枝を介して戻る。その他の腰部交感神経節後線維は、大動脈及び下腹神経叢に移動し、交感神経幹を上下に流れて遠位神経節で終端する。
【0019】
多くの患者において、第1及び第2の腰部神経節は融着する。これらの神経節及び腰部鎖及び神経節の残りは、腰部椎体の前外側縁部に在る。腹腔は、腰部交感神経鎖の側方及び前方に在る。腰部交感神経鎖に対する腰部体性神経の近似性を考えれば、腰部交感神経節の遮断が行われたときに両方の神経経路が遮断される可能性が存在する。
【0020】
図1を参照すると、埋め込まれた皮下カテーテルデバイス100が、患者の前面像102、側面像104、及び後面像106に示されている。前面像102は、皮下カテーテル108が腋窩の下から角度を付けた状態でその上胸部に取り付けられた経皮アクセスポート110の場所を示す。側面像104は、患者の腋窩の下の中腋窩線を横切る皮下カテーテル108の継続経路を示す。後面像106は、椎体の側面に隣接して埋め込まれた遠位カテーテル112の場所で終わる、皮下カテーテル108の継続経路を示す。
【0021】
図2を参照すると、皮下カテーテルデバイス200は、患者の体外で部分的に組み立てられた状態で表示される。皮下カテーテルデバイス200は、遠位カテーテルチップ202、カテーテルチューブ204、及び経皮アクセスポート210を含む。カテーテルチューブ204は、患者の身体の曲率に順応するように十分柔軟であるが遠位カテーテルチップ202への麻酔薬の流れを妨げる皮膚の下でのチューブの曲がり又は捩れを引き起こし得るような外圧に耐えるのに十分な剛性を持つ、半剛性材料(例えば、シリコーンゴム、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ラテックス、熱可塑性エラストマーなど)で構成されてもよい。経皮アクセスポート210は、患者の皮膚の下に取り付けられ且つ患者に化合物を注入するための部位を提供する医療器具である。経皮アクセスポート210は、化合物が注入されるようにノンコアリング又はHuber針が内部に挿入される隔壁214を含む。経皮アクセスポート210の隔壁214は、カテーテルチューブ204の近位端208を経てカテーテルチューブ204と流体連通し、したがって隔壁214をから注入された化合物は、カテーテル204の内部に流れ、通過して、遠位カテーテルチップ202に向かうようになる。遠位カテーテルチップ202は、カテーテルチューブ204の第1の端部206に接続し、注入された化合物を、カテーテルチップ212を経て神経の原始クラスターに向かわせる。カテーテルチップ212は、注入された化合物が皮下カテーテルデバイス200から出て行くアパーチャーを含む。
【0022】
皮下カテーテルデバイス200は、腹腔神経叢、上下腹神経叢、又は腰部交感神経鎖の腰部交感神経節など、神経の原始クラスターを遮断するよう局所麻酔薬を送達するのに利用されてもよい。神経の原始クラスター遮断するために、ブピバカインを30から50mL、経皮アクセスポート210の隔壁から注入し、神経クラスターを被覆し且つ麻酔をかけるよう送達してもよい。
【0023】
図3を参照すると、トンネルデバイス300の部分断面像は、第1の端部302及び導管306を含めて表示される。導管306は、トンネルデバイス300の長さに沿って進み、この導管の内部寸法は、カテーテルチューブ308の場合よりも僅かに大きい。導管306の寸法は、カテーテルチューブ308がトンネルデバイス300内を縫って進むようにするために、カテーテルチューブ308に対して提供される。トンネルデバイス300の第1の端部302は、患者の皮層の下に案内されたときに移動が容易になるような曲率を含んでいてもよい。第1の端部302は、カテーテルチューブ308の第1の端部310が内部を通過できるよう、導管306に向かって開いたアパーチャーを含んでいてもよい。
【0024】
図4を参照すると、埋込み型の神経遮断介入デバイスを患者に取り付けるための方法400は、患者の鎖骨と乳頭と間で患者の胸郭の腹側部の第1の側に、第1の皮下切開を行うことを含み、この場合、第1の皮下切開は、乳頭の上外側に見出される(ブロック402)。ステップ402の一部の実施形態では、デバイスの近位端に、アクセスポートが鎖骨と乳頭との間で、近似的鎖骨中央線の下前方胸壁上に、腹壁そのものの上に配置されてもよいが、このためにはそのアクセス中に支持するために、より大きいパドルがポートの下に必要と考えられる。方法400のブロック404では、導管を含むトンネルデバイスの第1の端部が、第1の皮下切開に挿通される。方法400のブロック406では、トンネルデバイスの第1の端部が、患者の皮層の下を横断して第1の側で患者の中腋窩線に向かい、このトンネルデバイス経路は患者の脇の下の十分下にある。方法400のブロック408では、トンネルデバイスの第1の端部は、所望の椎体レベルに隣接して、中腋窩線から患者の傍脊柱切開に向かって胸郭の下部の上方を横切る。ステップ406及び408の一部の実施形態では、1つ又は2つのトンネルが必要とされ得る。例えば、1つのトンネルは、前幹から後方傍正中線上肢領域までずっと延びてもよく、又は2つのトンネルは、患者の身体の癖及び1回の通過でトンネルを終了できないことに起因して、コネクターを接合することにより、その経路のどこかで接続されてもよい。方法400のブロック410では、側方傍脊柱切開が、椎体に隣接して及びトンネルデバイスの遠位端で行われる。方法400のブロック412では、遠位カテーテル部分が、その内部口径内に、その標的とされた神経構造までのカテーテルの通過を可能にするよう十分大きく挿入される。ブロック413では、遠位カテーテルは、深背筋膜又は筋肉に非圧着アンカーで固定する前に、造影剤の椎前拡張が確実になるように、遠位カテーテルを経て造影剤を注入する前に血液又は髄液を吸引してもよい。方法400のブロック414では、カテーテルチューブの近位端が、トンネルデバイスの長さを経て導管内を縫って進む。方法400のブロック416では、カテーテルチューブの遠位端を近位カテーテルセグメントに連結して、遠位カテーテルチップと流体連通可能な連結を形成する。方法400のブロック418では、トンネルデバイスは、第1の皮下切開を経てカテーテルチューブから引き込まれる。方法400のブロック420では、カテーテルチューブの第1の端部とは反対にあるカテーテルチューブの第2の端部が、経皮アクセスポートに連結される。ブロック421では、方法400は、閉塞又は漏洩なしに椎前腔への連通を確実にするために、近位ポートから、ライブ蛍光透視法の下、造影剤材料の注入を含んでいてもよい。
【0025】
図5を参照すると、埋込み処置中の患者の前面像500が示されている。前面像500は、第1の皮下切開506と、トンネルデバイス及び後続のカテーテルチューブに関するトンネルデバイス経路508の場所を示す。近位アクセスポートの代替の場所は、下部胸郭上又は右上若しくは正中腹部を含んでいてもよい。第1の皮下切開506は、鎖骨504と乳頭502との間の患者の胸郭の、正中軸512に対して第1の側510の腹外側に位置決めされる。第1の皮下切開506は、乳頭の上外側に位置決めされるが、その他の場所であってもよい。トンネルデバイスが第1の皮下切開506内に挿入される場合、トンネルデバイス経路508は、中腋窩線に向かって移動するときに、患者の脇の下の内容物の4~5”下を走るよう、角度が付けられる。トンネルデバイスが除去され、トンネルデバイス経路508内でカテーテルチューブによって置き換えられたとき、第1の皮下切開506は、経皮アクセスポート用のインプラントの場所になる。第1の側510は、患者の身体の右側であってもよい。
【0026】
図6を参照すると、埋込み処置中の患者の側面像600が示される。側面像600は、第1の皮下切開506から中腋窩線602を横断し、傍腰部線に隣接する椎側面に向かう、トンネルデバイス経路508の場所を示す。トンネルデバイス経路508は、中腋窩線602を横断するときに患者の腋窩604の下に位置決めされる。トンネルデバイス経路508が腋窩604の下に位置決めされる距離606は、腋窩604の内容物(例えば、腋窩リンパ節)の約4~5”インチ下である。中腋窩線602から、トンネルデバイス経路508は、L1、L5、又はその他の標的レベルの椎側面に向かって移動するにつれ、胸郭の底部に向かって下向きに湾曲する。
【0027】
図7を参照すると、埋込み処置中の患者の後面像700が示されている。後面像700は、中腋窩線602から、L1の椎体に隣接する傍脊柱線702に向かう、トンネルデバイス経路508の継続を示す。トンネルデバイスがL1の椎体の側方の位置に達すると、外側傍脊柱切開704が既に行われている。傍脊柱切開704は、その場所にトンネルデバイスが遠端位へ縫って進んで行くための処置の中間目標である。神経の原始クラスターでの、遠位カテーテル又はカテーテルセグメントの首尾良くなされた埋込みの後、遠位カテーテルチップとは反対に、遠位カテーテルセグメントをカテーテルチューブの第1の端部に連結し、流体封止された連通可能な連結を形成する。カテーテルチューブの近位端と遠位カテーテルセグメントとの間の連結は、標的とされた神経構造の直ぐ隣りの空間への、流体化合物の流れを可能にする。遠位セグメントが固定された後、連結をチェックし、皮下ポート注入からの試験注入を行って、システム全体を試験し、傍脊柱腰部切開が典型的には閉鎖される。
【0028】
図8を参照すると、患者の後面像800は、患者の皮膚の下の骨格構造を示している。後面像800は、L1 804の椎体に隣接する傍脊柱線702に向かう胸郭802の底部に向かって湾曲している、トンネルデバイス経路508の横行を示す。傍脊柱切開704は、標的とする神経構造804に応じて、椎体L1からL5に隣接して行われる。
【0029】
図9を参照すると、側面像900は、腹腔神経叢906に隣接するL1 804の椎前腔912に位置決めされた、遠位カテーテル904の遠位カテーテルチップ926の拡大図である。L1 804の椎体は、T12 922とL2 920との間に見出される。遠位カテーテルチップ926は、壁側腹膜902を横断するL1 804の椎体に隣接する椎前腔912内へと横行する。腹腔神経叢906は、大動脈916上の腹腔動脈918付近に位置決めされた腹腔神経節908を含む。椎前腔912の前方は、椎体の前外側面であり、腰部交感神経鎖924が椎体の縁部上に見出される。
【0030】
その使い捨て可能な置き針又はトロカールを介した遠位カテーテルチップの位置決めは、単一針経下腿/大動脈周囲腹腔神経叢遮断介入で見られる位置決めに類似している。単一針経下腿/大動脈周囲腹腔神経叢遮断は、側腹、後腹、又は上腹部疼痛が腹腔神経叢を介して交感神経で媒介されたか否かを決定する診断手技の指標として局所麻酔を使用する。局所麻酔による通常の間隔経下腿腹腔神経叢遮断は、急性膵炎及び腹腔神経叢の神経支配により媒介されるその他の急性疼痛症候群に続発する、疼痛の緩和にも有用である。局所麻酔、ステロイド、又は両方による腹腔神経叢遮断の早期実施は、急性膵炎に関連した罹患率及び死亡率を著しく低減させる。単一針大動脈周囲腹腔神経叢遮断は、がん療法からの肝臓の動脈塞栓の急性疼痛を緩和するのに、並びに内臓動脈不全に関連した腹部「アンギナ」の疼痛を治療するのにも使用される。局所麻酔による単一針動脈周囲腹腔神経叢遮断は、腹腔神経叢の神経剥離の前に、予後的に使用され得る。
【0031】
遮断前調製は、腹腔神経叢遮断に関連した低血圧を弱めるために、適切な量の経口又は静脈内流体の投与を含む。凝血障害の患者の評価は、患者が抗新生物療法を受けた又は著しいアルコール依存症歴で肝機能が低下し又は損なわれた場合に、示される。放射線撮影造影剤が使用される場合、患者の腎状態の評価が考慮されるべきである。
【0032】
患者は、腹臥位に配置され、枕を腹部の下に置いて、胸腰椎を曲げるようにする。快適にするために、患者の頭部を側方に向け、又はフェイスクレイドル枕に乗せ、腕はテーブルの両側に自由に下げるようにし、頭部の上方に置き、又は両脇に付けて置く。12番目の肋骨の下縁が特定され、T12椎体まで追跡される。次いでL1椎体の棘突起を特定し、滅菌マーカーでマークする。L1の横突起の各面の直下及び横から約2.5インチのポイントを、特定する。次いで注入部位を、消毒液で準備する。
【0033】
皮膚、皮下組織、及び筋肉組織に、針が進入するポイントで1.0%リドカインを浸潤させる。適切にサイズが決められた針を、先に麻酔がかけられた領域に、一方向に又は二方向に挿入する。針を、最初に正中線に向かって45度に向け、頭側に約15度に向けて、L1椎体との接触を確実にする。骨に接触し、深さがわかったら、針を皮下組織のレベルまで引き出し、やや正中に向け直して(正中線から約60度)、L1椎体の側面から離れるようにする。針を、椎体が最初に接触する深さに再挿入する。この時点で、骨が接触しない場合、針を徐々に3から4cm進行させ、又は大動脈から発せられる及び進行する針に伝えられる脈動がわかるまで、進行させる。大動脈の脈動がわかった場合、疼痛専門医は、遮断を経大動脈腹腔神経叢技法へと変換してもよく、又は針が配置されている深さを知ることができ、針を皮下組織内に引出し、次いで針を、大動脈に横方向に滑らせるようにやや正中に向け直してもよい。最終的に、針先は、大動脈周囲腔にあるべきである。この大動脈周囲留置は、注入された溶液の、腰部体性神経根への不注意な拡がりの発生を減少させる。次いで針のスタイレットを除去し、針のハブを点検し、存在する血液、脳脊髄液、又は尿を吸引する。
【0034】
単一針大動脈周囲技法を介した診断及び予後の遮断に関し、より短い又は速い発症の局所麻酔薬15から30mLを、針を通して投与してもよい。療法上の遮断の場合、0.5%ブピナカイン15から30mlを、針を通して投与してもよい。局所麻酔薬の毒性に関する潜在性により、全ての局所麻酔薬は、漸増的な用量で投与されるべきである。
【0035】
図10を参照すると、腹腔神経叢遮断のための針又はトロカール留置がなされた、埋込み処置中のL1での患者の断面像1000が示される。遠位カテーテル904の遠位カテーテルチップ926は、大動脈916の前方であるが後方であってもよい、腹腔神経叢906に隣接するL1 1006の椎全腔にある。遠位カテーテル904の留置は、単一針経下腿/大動脈周囲腹腔神経叢遮断介入で利用された留置に類似しており、したがって遠位カテーテルチップ926は、横隔膜脚1010を横行し、壁側腹膜902内に入って、腹腔神経叢906に到達することがわかるようになる。腹腔神経叢遮断への単一針経下腿/大動脈周囲手法により、針は、この濃縮されている叢線維の近くに配置される。腹腔神経叢と周囲構造との関係は下記の通りである:大動脈は、椎体の前方にあり且つ椎体の前縁の僅かに左にある。下大静脈は右側にあり、腎臓は大血管の後外側にある。膵臓は、腹腔神経叢の前方にある。これらの構造の全ては、後腹膜腔内にある。
【0036】
図11を参照すると、埋込み処置中の患者の側面像1100は、縦傍正中側方切開704の拡大図を示し、遠位カテーテル1102の遠位カテーテルチップ1126は、L1 804の椎体の前外側面1128内に位置決めされ、遠位カテーテルチップ1126は、腰部交感神経鎖924に向かって配置される。切開は、脊椎正中線から数センチメートル側方に、標的とされる解剖構造のトンネル視野が容易になるように、位置付けられることになる。前外側面1128は、壁側腹膜902及び横隔膜脚928を横断する椎前腔912の前方に見出される。
【0037】
遠位カテーテル1102の位置決めは、腰部交感神経節遮断介入で利用される針の位置決めに類似している。腰部交感神経節遮断を行う場合、患者は腹臥位に配置され、枕は、腰椎を優しく曲げるように腹部の下に置かれる。遮断されることになる神経の直上にある椎骨の棘突起を触診する。棘突起の直下及び棘突起から側方に3インチのポイントで、皮膚を消毒液で調製する。適切にサイズが決められた針(長さ3.5から6インチの20から25ゲージ)を、12ml注射器に取着し、皮膚に対して35から45度の角度で進行させ、椎体の側面を狙う。針は、約2インチ進めた後に、骨に衝突すべきである。針が、より浅い深さで骨と衝突する場合、おそらくは横突起に衝突している。これが生じた場合、針は、椎体の側面に衝突するよう横突起の上方に通すため、又はライブ蛍光透視法の下でその皮質上にちょうど通すため、さらに僅かに頭部に向けた軌道で方向付けるべきである。椎体により骨の接触が行われた後、針を皮下組織内に引出し、僅かに急勾配の角度に向け直し、椎体の側縁から離す。体接触が失われたら直ぐに、針をゆっくりと約0.5インチ深く進行させる。腰部交感神経鎖の近位性を体性神経に与えると、対応する腰部傍脊椎神経の分布の知覚異常が、これが生じた場合に誘発される可能性があり、針は、引き出されてさらに僅かに頭部方向に向け直されるべきである。
【0038】
次いで針を再びゆっくりと、椎体の外側縁を通るまで進行させる。針は、最終的には椎体の前外側縁に留まるべきである。蛍光透視法が使用される場合、少量の造影媒体を局所麻酔薬に添加してもよい。造影媒体は、後前位像上で椎体の前方に、及び側面像上で椎体の真横に現れるべきである。コンピューター断層撮影の指針が使用される場合、造影剤は、椎体の前外側にある交感神経鎖の周囲に見ることができる。針が所定位置にあり且つ慎重な吸引により血液又は脳脊髄液がないことが明らかになったら、1.0%の保存剤のないリドカイン12から15mlを注入する。
【0039】
図12を参照すると、腰部交感神経鎖遮断のためのカテーテル挿入用の針又はトロカールが留置されている、埋込み処置中のL1での患者の断面像1200が示される。針1102のカテーテルチップ1126は、腰部交感神経鎖の腰部交感神経節1204に隣接するL1 1202の前外側面に示される。遠位カテーテル1102及びカテーテルチップ1126の留置は、腰部交感神経節遮断介入で使用される針の留置に類似している。
【0040】
図13を参照すると、L1の椎体での、患者の断面像1300が示されており、遠位カテーテル904の遠位カテーテルチップ926は、腹腔神経叢を遮断するように位置決めされる。断面像1300は、CTスキャンの元で出現し得るように、造影材料1302の分散を示す。実際には、造影材料1302は、前後側、外側、及び側面斜位投影を使用して、カテーテル904を埋め込むために放射線撮影アシスタンス又は蛍光透視アシスタンスを使用したときに見ることが可能な蛍光色素である。
【0041】
放射線撮影の指針が使用される場合、少量の造影材料が針を通して注入され、その拡がりが放射線撮影により観察される。蛍光透視前後面像では、造影剤は、L1椎体付近の正中線の左に主に限定される。側面像の大動脈周囲腔内の造影剤に該当する、滑らかな曲線様陰影が観察され得る。或いは、コンピューター断層撮影の指針が使用される場合、造影剤は大動脈周囲に現れるべきであり、又はアデノパシー若しくは腫瘍が存在する場合、造影剤は、大動脈の左側の大動脈周囲腔に又は椎前に限定されるべきである。拡がった造影剤のこの限定が生じた場合、大動脈の周囲での造影剤のより良好な拡がりが容易になるように、カテーテルを向け直すことを考慮すべきである。
【0042】
埋め込まれた神経遮断デバイスと共に利用されるとき、造影材料1302は、カテーテルチューブの捩れ又は変形を試験する。造影材料1302が不十分であることは、カテーテルチューブの捩れ又は変形があることを検出するのに利用され得る。
【0043】
図14を参照すると、埋め込んだ神経遮断デバイスを取り付けるための2部式トンネルデバイス1400が、断面図で示されているが、トンネルデバイスはただ1つの部品であってもよい。2部式トンネルデバイス1400は、第2のトンネルデバイス1402及び第1のトンネルデバイス1404を含む。第2のトンネルデバイス1402は、第1の端部1406、第2の端部1408、及び第2のトンネルデバイス1402の長さに沿って延びる導管1414を含む。第1のトンネルデバイス1404は、第1の端部1410及び導管1412を含む。第2のトンネルデバイス1402の第2の端部1408は、第1のトンネルデバイス1404の第1の端部1410を任意選択で受け入れるように適合された拡がった部分を含むが、第1のトンネルデバイスは、前方及び後方トンネルの両方に使用することができる。第2の端部1408内への第1の端部1410の適合は、第2のトンネルデバイス1402の導管と第1のトンネルデバイス1404との位置合わせを可能にする。
【0044】
図15を参照すると、埋込み処置中の患者の側面像1500は、2部式トンネルデバイス1400と共に利用される第2の皮下切開1512の場所を示す。第1のトンネルデバイス1404は、第1の皮下切開1506を経て且つ第1のトンネルデバイス経路1508に従い、患者の腋窩1504の下の中腋窩線1502に向かって挿入されると考えられる。第1のトンネルデバイス1404が、腋窩1504の下の中腋窩線1502に到達した場合、第2の皮下切開1512が行われる。第1のトンネルデバイス1404の第1の端部1410は、第2の皮下切開1512を経て引っ張られる。次いで第2のトンネルデバイス1402の第1の端部1406は、第2の皮下切開1512を通して挿入され、胸郭の底部に向かって案内され、第2のトンネルデバイス経路1510に沿って傍腰椎線に向かう。第2のトンネルデバイス1402の第1の端部1406が椎体に到達し、且つ内側外側切開が行われた場合、第2のトンネルデバイス1402の第2の端部1408は、第1のトンネルデバイス1404の第1の端部1410に任意選択で連結され、2部式トンネルデバイスを形成する。次いでカテーテルチューブを、2部式トンネルデバイス内を縫うように進行させ、内側外側切開を通して第2のトンネルデバイス1402の第1の端部1406から出て行く。次いで組み合わせ2部式トンネルデバイスを、カテーテルチューブを経て引き込み、第1の皮下切開1506から引き出す。
【0045】
図16を参照すると、患者において2部式トンネルデバイスを利用する埋込み型の神経遮断介入デバイスを取り付けるための方法1600は、患者の腋窩の下の第1の面の中腋窩線上で第2の皮下切開を行うことを含む(ブロック1602)。方法1600のブロック1604では、第1のトンネルデバイスの第1の端部が、第1の皮下切開内に挿通される。方法1600のブロック1606では、第1のトンネルデバイスの第1の端部が、第2の皮下切開に向かって患者の皮層の下を横行する。方法1600のブロック1606では、第2のトンネルデバイスの第1の端部が、内側外側切開に向かって第2の皮下切開内を挿通する。方法1600のブロック1608では、第1のトンネルデバイスの第1の端部が、第2のトンネルデバイスの第2の端部に連結され、そこで第1のトンネルデバイス及び第2のトンネルデバイスの導管が動作可能に位置合わせされる。方法1600のブロック1610では、カテーテルチューブの第1の端部は、第1のトンネルデバイス及び第2のトンネルデバイスの導管の長さに沿って縫うように進む。方法1600のブロック1612では、第1のトンネルデバイス及び第2のトンネルデバイスは、第1の皮下切開を通してカテーテルチューブに沿って引き込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端および遠位カテーテルセグメントを有し、前記近位端および前記遠位カテーテルセグメントが、流体の流れを提供している、カテーテルチューブと、
前記遠位カテーテルセグメントの終端に設けられている、カテーテルチップと、
前記カテーテルチップを固定するように構成されている、アンカーデバイスと、
前記カテーテルチューブの前記近位端に流体連絡しており、前記カテーテルチューブを通じて流体を注入するように構成されている、経皮アクセスポートと
を備える、埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項2】
前記アンカーデバイスは非圧着アンカーを含む、請求項1に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項3】
前記アンカーデバイスは、椎前の位置に前記遠位カテーテルセグメントを固定するように構成される、請求項1または2に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項4】
前記アンカーデバイスは、傍脊椎の位置に前記遠位カテーテルセグメントを固定するように構成される、請求項1~3の何れか1項に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項5】
前記カテーテルチューブが前記経皮アクセスポートと流体連絡している、請求項1~4の何れか1項に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項6】
前記経皮アクセスポートを通じて麻酔薬を注入し、
前記麻酔薬が前記経皮アクセスポートから前記埋め込み可能な神経遮断デバイスのチューブを通って流れることを可能にし、
自律神経または内臓神経構造の位置に近接して固定された遠位のカテーテルチップを介して前記麻酔薬が前記埋め込み可能な神経遮断デバイスを出るのを可能にして、前記麻酔薬が自律神経または内臓神経構造に接触する、
動作を実行可能な、請求項1~5の何れか1項に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項7】
前記経皮アクセスポートを通じて第2の麻酔薬を注入し、
前記第2の麻酔薬が前記経皮アクセスポートから前記埋め込み可能な神経遮断デバイスのチューブを通って流れることを可能にし、
自律神経または内臓神経構造の位置に近接して固定された前記遠位のカテーテルチップを介して前記第2の麻酔薬が前記埋め込み可能な神経遮断デバイスを出るのを可能にして、前記第2の麻酔薬が自律神経または内臓神経構造に接触する、
動作を更に実行可能な、請求項6に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項8】
前記遠位のカテーテルチップが腹腔神経叢に隣接するL1の椎前空間に固定される、請求項6または7に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項9】
前記遠位のカテーテルチップが、上下腹神経叢に隣接するL5の椎前腔に固定される、請求項6または7に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項10】
前記遠位のカテーテルチップが、腰部交感神経に隣接するL2、L3、またはL4の傍脊椎腔に固定されている、請求項6または7に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【請求項11】
前記麻酔薬が、前記自律神経または内臓神経構造に接触して、慢性腹痛、腰痛血尿症候群、慢性骨盤症候群、腰部交感神経鎖の活動に関連する複合性局所疼痛症候群、幻肢疼痛、反射性交感神経性ジストロフィー;灼熱痛、凍傷、アテローム性動脈硬化症、バージャー病もしくは膠原病性脈管疾患に続発する動脈炎に続発する痛み;急性膵炎、慢性膵炎、またはそれらの組み合わせを治療する、請求項6~10の何れか1項に記載の埋め込み可能な神経遮断デバイス。
【外国語明細書】