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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109713
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】がんの診断及び療法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20240806BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024080345
(22)【出願日】2024-05-16
(62)【分割の表示】P 2020524340の分割
【原出願日】2018-11-05
(31)【優先権主張番号】62/595,957
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/657,468
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/582,207
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グアン, イングイ
(72)【発明者】
【氏名】センババオグル, ヤシン
(72)【発明者】
【氏名】ターリー, シャノン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ユイレイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌の治療のための診断方法を提供する。
【解決手段】免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する方法であって、前記方法が、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定することを含み、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である前記試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として前記個体を特定する、前記方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する方法であって、前記方法が、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定することを含み、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2
前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である前記試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として前記個体を特定する、前記方法。
【請求項2】
がんを有する個体の療法を選択する方法であって、前記方法が、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定することを含み、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2
前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である前記試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として前記個体を特定する、前記方法。
【請求項3】
前記試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの前記3つ以上の発現レベルが、前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であり、前記方法が、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を前記個体に施すことをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルが、前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルが、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルが、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベル以上である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
がんを有する個体を治療する方法であって、前記方法が、
(a)前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定することであって、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2
前記試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される、決定することと、
(b)ステップ(a)で決定された前記3つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を前記個体に施すことと、を含む、前記方法。
【請求項8】
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルが、前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルが、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上であると決定される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルが、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベル以上であると決定される、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
がんを有する個体を治療する方法であって、前記方法が、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を前記個体に施すことを含み、治療前に、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている、前記方法。
【請求項12】
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルが、前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルが、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上であると決定されている、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルが、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベル以上であると決定されている、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する方法であって、前記方法が、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することを含み、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2
前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含み、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である前記試料中の前記1つ以上の遺伝子の発現レベルが、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として前記個体を特定する、前記方法。
【請求項16】
がんを有する個体の療法を選択する方法であって、前記方法が、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することを含み、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2
前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含み、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である前記試料中の前記1つ以上の遺伝子の発現レベルが、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として前記個体を特定する、前記方法。
【請求項17】
前記試料中の前記1つ以上の遺伝子の発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であり、前記方法が、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を前記個体に施すことをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルが、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上である、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
がんを有する個体を治療する方法であって、前記方法が、
(a)前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することであって、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2
前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含み、前記試料中の前記1つ以上の遺伝子の発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される、決定することと、
(b)ステップ(a)で決定された前記1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を前記個体に施すことと、を含む、前記方法。
【請求項21】
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルが、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
がんを有する個体を治療する方法であって、前記方法が、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を前記個体に施すことを含み、治療前に、前記試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含む、前記方法。
【請求項24】
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルが、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答を評価する方法であって、前記方法が、
(a)前記個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの5つ以上の発現レベルを決定することと、
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1
(b)前記試料中の前記5つ以上の遺伝子の発現レベルと、前記5つ以上の遺伝子の参照発現レベルとの比較に基づいて、前記治療を維持、調整、または停止することとを含み、
前記5つ以上の遺伝子の前記参照発現レベルと比較した、前記個体からの前記試料中における前記5つ以上の遺伝子の発現レベルの変化が、前記抗がん療法を用いる治療に対する応答を示す、前記方法。
【請求項27】
前記方法が、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルを決定することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルが、前記5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較して変化する、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルが、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の参照表現レベルと比較して変化する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記変化が、前記5つ以上の遺伝子の発現レベルの増加であり、前記治療が、調整または停止される、請求項26~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記変化が、前記5つ以上の遺伝子の発現レベルの減少であり、前記治療が、維持される、請求項26~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングする方法であって、前記方法が、
(a)前記個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの5つ以上の発現レベルを決定することと、
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1
(b)前記個体からの前記試料中における前記5つ以上の遺伝子の発現レベルを前記5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較し、それにより抗がん療法を用いる治療を受けている前記個体の前記応答をモニタリングすることとを含む、前記方法。
【請求項34】
前記方法が、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルを決定することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルが、前記5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較して変更される、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルが、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の参照表現レベルに関連して変更される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記5つ以上の遺伝子の発現レベルの増加が、前記治療に対する前記個体の応答の欠如を示す、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記5つ以上の遺伝子の発現レベルの減少が、前記治療に対する前記個体の応答を示す、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答を評価する方法であって、前記方法が、
(a)前記個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することであって、
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1
前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1を含む、決定することと、
(b)前記試料中の前記1つ以上の遺伝子の発現レベルと、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベルとの比較に基づいて、前記治療を維持、調整、または停止することとを含み、
前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較した、前記個体からの前記試料中における前記1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化が、抗がん療法を用いる治療に対する応答を示す、前記方法。
【請求項41】
前記方法が、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較して変更される、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記変化が、前記1つ以上の遺伝子の発現レベルの増加であり、前記治療が、調整または停止される、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記変化が、前記1つ以上の遺伝子の発現レベルの減少であり、前記治療が、維持される、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングする方法であって、前記方法が、
(a)前記個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することであって、
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1
前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1を含む、決定することと、
(b)前記個体からの前記試料中における前記1つ以上の遺伝子の発現レベルを前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較し、それにより前記抗がん療法を用いる治療を受けている前記個体の前記応答をモニタリングすることとを含む、前記方法。
【請求項46】
前記方法が、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルが、前記5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較して変更される、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記1つ以上の遺伝子の発現レベルの増加が、前記治療に対する前記個体の応答の欠如を示す、請求項45~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記1つ以上の遺伝子の発現レベルの減少が、前記治療に対する前記個体の応答を示す、請求項45~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
PD-L1、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなる群から選択される1つ以上の追加の遺伝子の前記試料中における発現レベルを決定することをさらに含む、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記1つ以上の追加の遺伝子が、PD-L1である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記1つ以上の追加の遺伝子が、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記方法が、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または8全ての発現レベルを決定することをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記方法が、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21の発現レベルを決定することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記方法が、前記個体からの腫瘍試料における腫瘍遺伝子変異量(TMB)スコアを決定することをさらに含む、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
がんを有する個体の療法を選択する方法であって、前記方法が、
(i)前記個体からの試料中における以下の遺伝子うちの1つ以上の発現レベルと、
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1
(ii)前記個体からの前記試料中のCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなるグループから選択される1つ以上の追加の遺伝子の発現レベル、または前記個体からの腫瘍試料中のTMBスコアと、を決定することを含み、
(i)の前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である(i)の前記1つ以上の遺伝子の発現レベルが、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として前記個体を特定し、
前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベルを下回る(i)の前記1つ以上の遺伝子の発現レベル、及び(ii)の前記1つ以上の追加の遺伝子の参照発現レベル以上である(ii)の前記1つ以上の追加の遺伝子の発現レベル、または参照TMBスコア以上である前記腫瘍試料のTMBスコアが、免疫療法のみを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として前記個体を特定する、前記方法。
【請求項57】
前記個体が、治療から利益を受け得るとして前記抗がん療法を前記個体に施すことをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記がんが、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌からなる群から選択される、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記がんが、膀胱癌である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記膀胱癌が、尿路上皮癌(UC)である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記UCが、転移性UCである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記膵臓癌が、膵管腺癌(PDAC)である、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記個体からの腫瘍が、腫瘍周囲間質区画におけるCD8+T細胞の局在化によって特徴付けられる免疫排除表現型を有する、請求項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記CD8+T細胞が、コラーゲン線維またはその近傍に局在する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記参照発現レベルが、がんを有する個体の集団から決定される、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記参照発現レベルが、発現レベルの中央値であるか、またはzスコア変換された発現レベルの主成分分析によって決定される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記発現レベルが、核酸発現レベルである、請求項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記核酸発現レベルが、mRNA発現レベルである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記mRNA発現レベルが、RNA-seq、RT-qPCR、qPCR、マルチプレックスqPCRもしくはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、ISH、またはそれらの組み合わせによって決定される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記発現レベルが、タンパク質発現レベルである、請求項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記タンパク質発現レベルが、免疫組織化学(IHC)、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、または質量分析によって決定される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記試料が、組織試料、細胞試料、全血試料、血漿試料、血清試料、またはそれらの組み合わせである、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記組織試料が、腫瘍組織試料である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記腫瘍組織試料が、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはそれらの組み合わせを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記腫瘍組織試料が、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)試料、保存記録用試料、新鮮試料、または凍結試料である、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記抑制性間質アンタゴニストが、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、ポドプラニン(PDPN)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、SMAD、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、結合組織成長因子(CTGF/CCN2)、内皮-1(ET-1)、AP-1、インターロイキン(IL)-13、リシルオキシダーゼホモログ2(LOXL2)、エンドグリン(CD105)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、血管細胞接着タンパク質1(CD106)、胸腺細胞抗原1(THY1)、ベータ1インテグリン(CD29)、血小板由来成長因子(PDGF)、PDGF受容体A(PDGFRα)、PDGF受容体B(PDGFRβ)、ビメンチン、平滑筋アクチンアルファ(ACTA2)、デスミン、エンドシアリン(CD248)、またはS100カルシウム結合タンパク質A4(S100A4)アンタゴニストである、請求項1~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記抑制性間質アンタゴニストが、ピルフェニドン、ガルニセルチブ、またはニンテダニブである、請求項1~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記抑制性間質アンタゴニストが、TGF-βアンタゴニストである、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記TGF-βアンタゴニストが、TGF-β結合アンタゴニストである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記TGF-β結合アンタゴニストが、TGF-βのそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記TGF-β結合アンタゴニストが、TGF-βのTGF-βに対する細胞受容体との結合を阻害する、請求項79または80に記載の方法。
【請求項82】
前記TGF-β結合アンタゴニストが、TGF-βの活性化を阻害する、請求項79~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記TGF-βアンタゴニストが、TGF-β1、TGF-β2、及び/またはTGF-β3を阻害する、請求項78~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記TGF-βアンタゴニストが、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3を阻害する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記TGF-βアンタゴニストが、TGF-β受容体-1(TGFBR1)、TGF-β受容体-2(TGFBR2)、及び/またはTGF-β受容体-3(TGFBR3)を阻害する、請求項78~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記TGF-βアンタゴニストが、ポリペプチド、小分子、または核酸である、請求項78~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記TGF-βアンタゴニストが、ポリペプチドである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ポリペプチドが、抗TGF-β抗体、可溶性TGF-β受容体、またはペプチドである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記ポリペプチドが、抗TGF-β抗体である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記抗TGF-β抗体が、汎特異的抗TGF-β抗体である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記抗TGF-β抗体が、フレソリムマブ、メテリムマブ、レルデリムマブ、1D11、2G7、またはそれらの誘導体である、請求項89または90に記載の方法。
【請求項92】
前記ペプチドが、ジシターチド(P144)である、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記TGF-βアンタゴニストが、小分子である、請求項86に記載の方法。
【請求項94】
前記小分子が、ガルニセルチブ(LY2157299)、LY2382770、LY3022859、SB-431542、SD208、SM16、トラニラスト、ピルフェニドン、TEW-7197、PF-03446962、及びピロールイミダゾールポリアミドからなる群から選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記TGF-βアンタゴニストが、核酸である、請求項86に記載の方法。
【請求項96】
前記核酸が、トラベデルセン(AP12009)またはベラゲンプマツセル-Lである、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記免疫療法が、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、CD40、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMGB1、またはTLRアゴニストを含む、請求項1~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記免疫療法が、PD-L1軸、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニストを含む、請求項1~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記免疫療法が、PD-L1軸アンタゴニストである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記PD-L1軸アンタゴニストが、PD-L1軸結合アンタゴニストである、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニストである、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のそのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上との結合を阻害する、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のPD-1との結合を阻害する、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のB7-1との結合を阻害する、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のPD-1及びB7-1の両方との結合を阻害する、請求項103~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、請求項102~106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記抗PD-L1抗体が、モノクローナル抗PD-L1抗体である、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記抗PD-L1抗体が、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗PD-L1抗体である、請求項107または108に記載の方法。
【請求項110】
前記抗PD-L1抗体が、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される、請求項107~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記抗PD-L1抗体が、以下の超可変領域(HVR):
(a)GFTFSDSWIHのHVR-H1配列(配列番号63)、
(b)AWISPYGGSTYYADSVKGのHVR-H2配列(配列番号64)、
(c)RHWPGGFDYのHVR-H3配列(配列番号65)、
(d)RASQDVSTAVAのHVR-L1配列(配列番号66)、
(e)SASFLYSのHVR-L2配列(配列番号67)、及び
(f)QQYLYHPATのHVR-L3配列(配列番号68)を含む、請求項107~110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS (配列番号69)のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、
(b)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR (配列番号70)のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または
(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む、請求項107~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、
(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または
(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、
(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または
(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、
(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または
(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、
(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または
(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、
(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または
(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)配列番号69のアミノ酸配列を含むVHドメイン、
(b)配列番号70のアミノ酸配列を含むVLドメイン、または
(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)配列番号69のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び
(b)配列番号70のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブである、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである、請求項101に記載の方法。
【請求項122】
前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L1との結合を阻害する、請求項121または122に記載の方法。
【請求項124】
前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L2との結合を阻害する、請求項121~123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
前記PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L1及びPD-L2の両方との結合を阻害する、請求項121~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記PD-1結合アンタゴニストが、抗PD-1抗体である、請求項121~125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
前記抗PD-1抗体が、モノクローナル抗PD-1抗体である、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記抗PD-1抗体が、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗PD-1抗体である、請求項126または127に記載の方法。
【請求項129】
追加の治療剤を前記個体に投与することをさらに含む、請求項1~128のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
前記追加の治療剤が、免疫療法剤、細胞傷害剤、成長阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記個体が、ヒトである、請求項1~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するためのキットであって、前記キットが、
(a)前記個体からの試料中における以下の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定するための試薬と、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2、任意で
(b)前記試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する説明書と、を含む、前記キット。
【請求項133】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するためのキットであって、前記キットが、
(a)前記個体からの試料中における以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定するための試薬であって、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2
前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含む、前記試薬と、任意で
(b)前記試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する説明書と、を含む、前記キット。
【請求項134】
がんに罹患する個体を治療する方法において使用するための免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法であって、治療前に、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている、前記抗がん療法。
【請求項135】
がんに罹患する個体を治療する方法において使用するための免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法であって、治療前に、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含む、前記抗がん療法。
【請求項136】
がんに罹患する個体を治療するための医薬品の製造における免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の使用であって、治療前に、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている、前記使用。
【請求項137】
がんに罹患する個体を治療するための医薬品の製造における免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の使用であって、治療前に、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルが、前記1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含む、前記使用。
【請求項138】
がんを有する個体の応答をモニタリングするためのキットであって、前記キットが、
(a)前記個体からの試料中における以下の遺伝子のうちの5つ以上の発現レベルを決定するための試薬と、
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1
任意で
(b)前記試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の前記応答をモニタリングするための説明書と、を含む、前記キット。
【請求項139】
がんを有する個体の応答をモニタリングするためのキットであって、前記キットが、
(a)前記個体からの試料中における以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定するための試薬であって、
ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1
前記1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1を含む、試薬と、
任意で
(b)前記試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の前記応答をモニタリングするための説明書と、を含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式にて電子的に提出されており、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる配列表を含む。2018年11月5日に作成された該ASCIIコピーは、50474-172WO4_Sequence_Listing_11.5.18_ST25と称され、309,531バイトのサイズである。
【0002】
本発明は、がんの治療のための診断及び療法に関する。関連キット及びアッセイも提供される。
【背景技術】
【0003】
がんは、依然としてヒトの健康に対する最も死に至る危険のある脅威のうちの1つである。米国において、がんは、毎年約130万人の新たな患者に影響を及ぼし、心疾患に続く第2の主な死亡原因であり、死亡の約4件に1件を占める。また、がんは、5年以内に第1の死亡原因として心血管疾患を上回る可能性があることも予測されている。固形腫瘍が、これらの死亡の大部分の原因である。特定のがんの医療処置における進歩は顕著であるが、全てのがんに関する全体の5年生存率は、過去20年間で約10%しか改善していない。悪性の固形腫瘍は特に転移し、制御されずに急速に成長するので、それらのタイムリーな検出及び治療が極めて困難になる。
【0004】
免疫チェックポイント阻害剤を用いたヒトでの研究では、免疫系を利用して腫瘍成を抑制し根絶するという有望性が示されている。プログラム死1(PD-1)受容体及びそのリガンドプログラム死-リガンド1(PD-L1)は、慢性感染症、妊娠、組織同種移植片、自己免疫疾患及びがんの間の免疫系反応の抑制に関与している免疫チェックポイントタンパク質である。PD-L1は、T細胞、B細胞、及び単球の表面上に発現される、阻害受容体PD-1と結合することにより免疫応答を調節する。PD-L1は、別の受容体、B7-1との相互作用によっても、T細胞機能を負に制御する。PD-L1/PD-1及びPD-L1/B7-1複合体の形成は、T細胞受容体のシグナル伝達を負に制御し、その後、T細胞活性化の下方制御、及び抗腫瘍免疫活性の抑制をもたらす。
【0005】
がんの治療における著しい前進にかかわらず、改善された診断方法及びがん療法が未だに求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌を含むがこれらに限定されないがんを有する個体を治療するための診断及び療法及び組成物を提供する。
【0007】
一態様において、本発明は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する方法を特徴とし、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定することを含み、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルは、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。
【0008】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体の療法を選択する方法を特徴とし、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定することを含み、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルは、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。
【0009】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルは、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であり、方法は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を個体に施すことをさらに含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルは、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である。いくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上である。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベル以上である。
【0010】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体を治療する方法を特徴とし、方法は、(a)個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定することであって、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される、決定することと、(b)ステップ(a)で決定された3つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を個体に施すことと、を含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルは、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される。いくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上であると決定される。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベル以上であると決定される。
【0011】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体を治療する方法を特徴とし、方法は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を個体に施すことを含み、治療前に、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルは、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルは、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベル以上であると決定されている。
【0012】
別の態様において、本発明は、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の個体からの試料中における発現レベルを有するとして特定されている個体においてがんを治療する方法を提供し、方法は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を個体に施すことを含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルは、3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると特定されている。いくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上であると特定されている。いくつかの実施形態において、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベル以上であると特定されている。
【0013】
別の態様において、本発明は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する方法を特徴とし、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することを含み、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルは、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。
【0014】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体の療法を選択する方法を特徴とし、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することを含み、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルは、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。
【0015】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であり、方法は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を個体に施すことをさらに含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である。いくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上である。
【0016】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体を治療する方法を特徴とし、方法は、(a)個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することであって、1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含み、試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルが、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される、決定することと、(b)ステップ(a)で決定された1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を個体に施すことと、を含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される。いくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上である。
【0017】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体を治療する方法を特徴とし、方法は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を個体に施すことを含み、治療前に、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上であると決定されている。
【0018】
別の態様において、本発明は、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の個体からの試料中における発現レベルを有するとして特定されている個体においてがんを治療する方法を提供し、方法は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を個体に施すことを含み、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると特定されている。いくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照レベル以上であると特定されている。
【0019】
別の態様において、本発明は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答を評価する方法を特徴とし、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子のうちの5つ以上の発現レベルを決定することと、(b)試料中の5つ以上の遺伝子の発現レベルと、5つ以上の遺伝子の参照発現レベルとの比較に基づいて、治療を維持、調整、または停止することとを含み、5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較した、個体からの試料中における5つ以上の遺伝子の発現レベルの変化は、抗がん療法を用いる治療に対する応答を示す。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルは、5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較して変化する。いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルは、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の参照表現レベルと比較して変化する。いくつかの実施形態において、変化は、5つ以上の遺伝子の発現レベルの増加であり、治療が、調整または停止される。いくつかの実施形態において、変化は、5つ以上の遺伝子の発現レベルの減少であり、治療が、維持される。
【0020】
別の態様において、本発明は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングする方法を特徴とし、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子のうちの5つ以上の発現レベルを決定することと、(b)個体からの試料中における5つ以上の遺伝子の発現レベルを5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較し、それにより抗がん療法を用いる治療を受けている個体の応答をモニタリングすることとを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルは、5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較して変化する。いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルは、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の参照表現レベルと比較して変化する。いくつかの実施形態において、5つ以上の遺伝子の発現レベルの増加は、治療に対する個体の応答の欠如を示す。いくつかの実施形態において、5つ以上の遺伝子の発現レベルの減少は、治療に対する個体の応答を示す。
【0021】
別の態様において、本発明は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答を評価する方法を特徴とし、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することであって、1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1を含む、決定することと、(b)試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルと、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルとの比較に基づいて、治療を維持、調整、または停止することとを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較した、個体からの試料中における1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化は、抗がん療法を用いる治療に対する応答を示す。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較して変化する。いくつかの実施形態において、変化は、1つ以上の遺伝子の発現レベルの増加であり、治療が、調整または停止される。いくつかの実施形態において、変化は、1つ以上の遺伝子の発現レベルの減少であり、治療が、維持される。
【0022】
別の態様において、本発明は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングする方法を特徴とし、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することであって、1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1を含む、決定することと、(b)個体からの試料中における1つ以上の遺伝子の発現レベルを1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較し、それにより抗がん療法を用いる治療を受けている個体の応答をモニタリングすることとを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルは、5つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較して変化する。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子の発現レベルの増加は、治療に対する個体の応答の欠如を示す。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子の発現レベルの減少は、治療に対する個体の応答を示す。
【0023】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、PD-L1、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなる群から選択される1つ以上の追加の遺伝子の試料中における発現レベルを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の遺伝子は、PD-L1である。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の遺伝子は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、方法は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または8全ての発現レベルを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21の発現レベルを決定することをさらに含む。
【0024】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、個体からの腫瘍試料における腫瘍遺伝子変異量(TMB)を決定することをさらに含む。
【0025】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体の療法を選択する方法を特徴とし、determining (i)個体からの試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子うちの1つ以上の発現レベルと、(ii) 個体からの試料中のCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなるグループから選択される1つ以上の追加の遺伝子の発現レベル、または個体からの腫瘍試料中のTMBスコアと、を決定することを含み、(i)の1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である(i)の1つ以上の遺伝子の発現レベルが、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定し、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルを下回る(i)の1つ以上の遺伝子の発現レベル、及び(ii)の1つ以上の追加の遺伝子の参照発現レベル以上である(ii)の1つ以上の追加の遺伝子の発現レベル、または参照TMBスコア以上である腫瘍試料のTMBスコアが、免疫療法のみを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、個体は、治療から利益を受け得るとして抗がん療法を個体に施すことをさらに含む。
【0026】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、がんは、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、がんは、膀胱癌である。いくつかの実施形態において、膀胱癌は、尿路上皮癌(UC)である。いくつかの実施形態において、UCは、転移性UCである。いくつかの実施形態において、膵臓癌は、膵管腺癌(PDAC)である。
【0027】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、個体からの腫瘍は、腫瘍周囲間質区画におけるCD8+T細胞の局在化によって特徴付けされる免疫除外表現型を有する。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞は、コラーゲン線維またはその近傍に局在する。
【0028】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルは、がんを有する個体の集団から決定される。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、発現レベルの中央値である、及び/またはzスコア変換された発現レベルの主成分分析によって決定される。
【0029】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、発現レベルは、核酸発現レベルである。いくつかの実施形態において、核酸発現レベルは、mRNA発現レベルである。いくつかの実施形態において、mRNA発現レベルは、RNA-seq、RT-qPCR、qPCR、マルチプレックスqPCRもしくはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、ISH、またはそれらの組み合わせによって決定される。
【0030】
前述の態様のいずれかの他の実施形態において、発現レベルは、タンパク質発現レベルである。いくつかの実施形態において、タンパク質発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、または質量分析によって決定される。
【0031】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、試料は、組織試料、細胞試料、全血試料、血漿試料、血清試料、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、組織試料は、腫瘍組織試料である。いくつかの実施形態において、腫瘍組織試料は、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、腫瘍組織試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)試料、保存記録用試料、新鮮試料、または凍結試料である。
【0032】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、ポドプラニン(PDPN)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、SMAD、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、結合組織成長因子(CTGF / CCN2)、内皮-1(ET-1)、AP-1、インターロイキン(IL)-13、リシルオキシダーゼホモログ2(LOXL2)、エンドグリン(CD105)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、血管細胞接着タンパク質1(CD106)、胸腺細胞抗原1(THY1)、ベータ1インテグリン(CD29)、血小板由来成長因子(PDGF)、PDGF受容体A(PDGFRα)、PDGF受容体B(PDGFRβ)、ビメンチン、平滑筋アクチンアルファ(ACTA2)、デスミン、エンドシアリン(CD248)、またはS100カルシウム結合タンパク質A4(S100A4)アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、ピルフェニドン、ガルニセルチブ、またはニンテダニブである。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、TGF-βアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、TGF-β結合アンタゴニストは、TGF-βのそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-β結合アンタゴニストは、TGF-βのTGF-βに対する細胞受容体との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-β結合アンタゴニストは、TGF-βの活性化を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β1、TGF-β2、及び/またはTGF-β3を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β受容体-1(TGFBR1)、TGF-β受容体-2(TGFBR2)、及び/またはTGF-β受容体-3(TGFBR3)を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、ポリペプチド、小分子、または核酸である。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗TGF-β抗体、可溶性TGF-β受容体、またはペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗TGF-β抗体である。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、汎特異的抗TGF-β抗体である。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、フレソリムマブ、メテリムマブ、レルデリムマブ、1D11、2G7、またはそれらの誘導体である。いくつかの実施形態において、ペプチドは、ジシターチド(P144)である。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、小分子である。いくつかの実施形態において、小分子は、ガルニセルチブ(LY2157299)、LY2382770、LY3022859、SB-431542、SD208、SM16、トラニラスト、ピルフェニドン、TEW-7197、PF-03446962、及びピロールイミダゾールポリアミドからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、核酸である。いくつかの実施形態において、核酸は、トラベデルセン(AP12009)またはベラゲンプマツセル-Lである。
【0033】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、免疫療法は、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、CD40、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMGB1、またはTLRアゴニストを含む。
【0034】
前述の態様のいずれかの他の実施形態において、免疫療法は、PD-L1軸、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニストを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法は、PD-L1軸アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L1軸アンタゴニストは、PD-L1軸結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のそのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及びB7-1の両方との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-L1抗体は、モノクローナル抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-L1抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)GFTFSDSWIHのHVR-H1配列(配列番号63)、(b)AWISPYGGSTYYADSVKGのHVR-H2配列(配列番号64)、(c)RHWPGGFDYのHVR-H3配列(配列番号65)、(d)RASQDVSTAVAのHVR-L1配列(配列番号66)、(e)SASFLYSのHVR-L2配列(配列番号67)、及び(f)QQYLYHPATのHVR-L3配列(配列番号68)の超可変領域(HVR)を含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS (配列番号69)のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、
(b)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号70)のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または
(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号69のアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号70のアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号69のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号70のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及びPD-L2の両方との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1抗体は、モノクローナル抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗PD-1抗体である。
【0035】
いくつかの実施形態において、方法は、追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、免疫療法剤、細胞傷害剤、成長阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、個体は、ヒトである。
【0036】
別の態様において、本発明は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するためのキットを特徴とし、キットは、(a)個体からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定するための試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するための説明書と、を含む。
【0037】
別の態様において、本発明は、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するためのキットを特徴とし、キットは、(a)個体からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定するための試薬であって、1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含む、試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するための説明書と、を含む。
【0038】
別の態様において、本発明は、がんに罹患する個体を治療する方法において使用するための免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を特徴とし、治療前に、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。
【0039】
別の態様において、本発明は、がんに罹患する個体を治療する方法において使用するための免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を特徴とし、治療前に、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルが、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含む。
【0040】
別の態様において、本発明は、がんに罹患する個体を治療するための医薬品の製造における免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の使用を提供し、治療前に、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。
【0041】
別の態様において、本発明は、がんに罹患する個体を治療するための医薬品の製造における免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の使用を提供し、治療前に、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルが、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19またはCOMPを含む。
【0042】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体の応答をモニタリングするためのキットを特徴とし、キットは、(a)個体からの試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子のうちの5つ以上の発現レベルを決定するための試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための説明書と、を含む。
【0043】
別の態様において、本発明は、がんを有する個体の応答をモニタリングするためのキットを特徴とし、キットは、(a)個体からの試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定するための試薬であって、1つ以上の遺伝子が、少なくともADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1を含む、試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための説明書と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を備えた本特許または特許出願の複製は、要請、及び必要手数料の支払いに応じて、特許庁により提供されるであろう。
図1図1Aは、腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上のプログラムされた死リガンド1(PD-L1)タンパク質発現が、アテゾリズマブへの応答と関連していることを示すグラフである(フィッシャーの正確確率検定;p=0.0038)。IC2+腫瘍は、有意に高い完全奏効(CR)率(p=0.0006)を有したが、部分奏効(PR)の比率は、全てのICレベル(p=0.53)にわたって類似していた。図1Bは、IC上のPD-L1免疫組織化学(IHC)陽性に関連する遺伝子を示すグラフである。正規化されたlog変換遺伝子発現は、PD-L1 ICタンパク質発現と比較され、調整されたp値(-log10変換、y軸)及び関連の効果サイズ(x軸)がプロットされる。インターフェロンガンマ刺激(「IFNg誘導性」)遺伝子、ならびに以前に報告されたCD8 Tエフェクター及び免疫チェックポイント分子遺伝子セットは、最も劇的に上方制御された。図1C及び1Dは、CD8 Tエフェクターシグネチャスコアと、PD-L1 ICまたは応答との間の関連を示す一連のグラフである。CD8+Tエフェクターシグネチャスコア(y軸)は、PD-L1 ICスコア(図1C)、及び応答カテゴリ(図1D)に対してプロットされる。シグネチャスコアと、アテゾリズマブに対するPD-L1 IC染色(p=4.2×10-35)及び応答(p=0.0087)の両方との間に有意な正の関係が存在した。CD8 Tエフェクターシグネチャと応答との間の関連は、CR群で促進され、有意に高いCD8Tエフェクターシグネチャを有し(t検定;p=0.002)、他の3つの応答群間の違いは、有意でなかった(分散分析(ANOVA)p=0.08)。図1E及び1Fは、応答状態と腫瘍遺伝子変異量(TMB)または腫瘍ネオ抗原量(TNB)との関係を示す一連のグラフである。Foundation MedicineのFOUNDATIONONE(登録商標)(本明細書では「FMOne」とも称される)パネルによって決定されたメガベース(y軸)あたりの変異(図1E)、またはネオ抗原が発現すると予測されるそれらの変異についての全エクソームフィルタリング(図1F)が示される。両方の測定基準は、アテゾリズマブへの応答と明確に関連した(FMOne系変異の場合のウィルコクソンp = 1.4×10-7、予測されるネオ抗原の場合= 5.3×10-9)。図1Gは、発現がTMBと相関する遺伝子における集積KEGG経路を示すグラフである。TMBと相関する遺伝子における有意に(FDR <0.05)集積KEGG遺伝子セットについての調整された-log10p値が示される。主要な基礎となる生物学的プロセスを反映すると推測されるセットは、増殖(ターコイズ)、DNA損傷応答(DDR)(マゼンタ)、TGF-βシグナル伝達(オレンジ)のように色付けされる。セットごとの上位7つの遺伝子(単一遺伝子p値でランク付けされた)のみが表示される。図1Hは、異なる遺伝子発現シグネチャ間の関係、及び増殖についてのマーカーであるMKI67についての単一遺伝子発現値を示すグラフである。左側のコーナーでは、シグネチャスコア/遺伝子発現間の相関が視覚化されており、右側のコーナーでは、ピアソン相関係数が与えられる。遺伝子セットのメンバーシップが、表10に与えられる。シグネチャスコアの算出に関する情報については、実施例1を参照されたい。汎-F-TBRS:汎線維芽細胞TGF-β応答シグネチャ。図1I及び1Jは、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様(APOBEC)3A(図1I)、及びAPOBEC3B(図1J)遺伝子発現と、応答及びTMBとの関連を示す一連のグラフである。遺伝子発現について正規化され、log変換された数値は、y軸に示され、応答カテゴリ及びTMBは、x軸に示される。APOBEC3A(p=0.015)及びAPOBEC3B(p=0.0025)は、応答者における発現でより高い平均値を示した。TMBの場合、ピアソン相関係数及びp値が与えられる。遺伝子発現とTMBとの間の関係に対する傾向線がプロットされる。図1Jでは、遺伝子発現とTMBとの間の相関を算出する際に、2つの極端な発現異常値が除外された。図1Kは、DDR遺伝子の変異がTMBと関連していることを示すグラフである。遺伝子は行にあり、患者はカラムにあり、変異は黒い長方形でマークされる。上部の棒グラフはTMBを表しており、患者が高いTMBから低いTMBに選別される。下部の行は、TP53の有無にかかわらず、経路全体の変異状態を表す。遺伝子または経路に変異を保有する患者の割合が、左側に与えられる。図1Lは、DDR遺伝子のセットワイズ変異状態対応答を示すグラフである。TP53を除く1つ以上のDDR遺伝子に変異が潜伏していた場合、患者はDDR変異とラベル付けされた。応答者(CR/PR)及び非応答者(安定疾患(SD)/進行性疾患(PD))の分率が、これら2つの患者サブグループについてプロットされる。DDR変異の状態と応答との間には有意な関連が存在した(p=0.0117)。図1Mは、細胞周期制御遺伝子の変異がTMBに関連していることを示すグラフである。遺伝子は行に、患者はカラムにプロットされ、変異を伴う患者は黒い長方形でマークする。上部の棒グラフは、各患者のTMBを表し、患者は高いTMBから低いTMBに選別される。最後の行は、TP53の有無にかかわらず、全体としての経路の変異状態を表す。プロットの左側の割合は、有病率を示す。TMBと関連する有意な単一遺伝子を伴う遺伝子は、アスタリスクによってマークされる。図1Nは、応答による細胞周期制御(CCR)経路における変異状態を示すグラフである。各患者について、TP53を除き、CCR経路に属する遺伝子において任意の変異が潜伏するかを決定した。患者は、CCR経路遺伝子(複数可)において変異(複数可)が潜伏していた場合、それらは経路についての変異と称された。それ以外の場合、それらは非変異と見なされた。応答者(CR/PR)及び非応答者(SD/PD)の分率は、これら2つの患者サブグループに対してプロットされる。TP53を除くと、CCR経路の変異状態と応答との間に関連は存在しなかった(p=0.31104;表6)。図1Oは、アテゾリズマブへの応答に有意に関連するKEGG経路を示す。KEGG経路の調整された-log10p値は、応答に関連する遺伝子が有意に(調整p <0.1)集積されたことを示す。主要な基礎となる生物学的プロセスを反映すると推測されるセットは、増殖(ターコイズ)、DDR(マゼンタ)、TGF-βシグナル伝達(オレンジ)のように色付けされる。セットごとの上位7つの遺伝子(単一遺伝子p値でランク付けされた)のみが表示される。差次的に発現される遺伝子の完全なリストを表3に示す。図1Pは、TGFB1及びTGFBR2からなるTGF-β2遺伝子シグネチャ(y軸)が、アテゾリズマブに対する応答の欠如と有意に関連していたことを示すグラフである(p=9.6×10-6)。図1Qは、3つのコア軸、それらの軸を調査するアッセイ、及び患者の応答の間の関係の概略図である。図1Rは、患者の応答において明白化された差異を示すグラフである。一般化線形モデルは、従属変数として二重応答(CR/PR対SD/PD)、及び独立変数として単一の入力または入力の組み合わせ(x軸)からのスコアを使用して適合した。応答の明白化された相違の割合が、y軸にプロットされる。異なるモデル間の比較は、尤度比検定を介して行われた。DNA(TMB)及びRNAマーカー(CD8+Tエフェクター(Teff)及びTGF-β2遺伝子セット)の両方を含むモデルは、応答で観察された差異の42%を明白化し、全ての単集合モデルで有意に向上した。図1Sは、患者の応答において明白化された相違を示すグラフである。一般化線形モデルは、従属変数として二重応答(CR/PR対SD/PD)、及び独立変数として単一の入力または入力の組み合わせ(x軸)からのスコアを使用して適合した。応答の明白化された相違の割合が、y軸にプロットされる。異なるモデル間の比較は、尤度比検定を介して行われ、有意なp値は、追加変数がモデルに独立した情報を提供したことを意味する。TMB、ならびにTeff及びTGF-β2遺伝子シグネチャを含む三重モデルは、応答で観察された相違の42%を明白化し、全ての単集合及び二生物学モデルで有意に向上した。これは、3つの生物学の全てが、非冗長の説明的価値を有することを示す。図1Tは、患者の応答における明白化された相違を示すグラフである。一般化線形モデルは、従属変数として二重応答(CR/PR対SD/PD)、及び独立変数として単一の入力または入力の組み合わせ(x軸)からのスコアを使用して適合した。応答の明白化された相違の割合が、y軸にプロットされる。異なるモデル間の比較は、尤度比検定を介して行われた。TMBと応答との間の関連は、そのプロキシ測定(APOBEC3Bの発現、MKI67の発現、またはDDRセットのメンバーの変異)のそれよりも有意に強かった。APOBEC3B及びDDR遺伝子セットの変異は、TMBの直接測定とは独立した追加の明白な情報を提供しなかった。TMBをMKI67発現と組み合わせると、TMBのみでわずかに向上し、おそらく、MKI67とTFG-βとの負の関連性が考えられる(図1Hを参照されたい)。図1Uは、Teffシグネチャスコア四分位数(「クォート」)が、全生存(OS)と関連していたことを示すグラフである(p=0.0092)。Vは、TMBが全生存(OS)と関連していたことを示すグラフである(尤度比検定p=2×10-5)。図1Wは、TNBがOSに関連していたことを示すグラフである(尤度比検定p=0.00015)。図1Xは、TGFB1発現が弱い奏効と関連していたことを示すグラフである(p=0.0001)。図1Yは、TGFB1発現四分位数がOSの低下と関連していたことを示すグラフである。図1Zは、MKI67発現(左側パネル)及びDNA複製スコア(右側パネル)が、アテゾリズマブに対する応答に関連することを示す一連のグラフである。
図2図2Aは、分子サブタイプ及びその後の応答によって選別し、評価された全ての患者を表すヒートマップである。比較のために、免疫細胞(IC)及び腫瘍細胞(TC)PD-L1状態が与えられる。さらに、目的の主要な遺伝子についてのTMB及び変異状態(灰色:変異データのない患者)が示される。ヒートマップの行には、目的の遺伝子の発現(Zスコア)が示され、A:FGFR3遺伝子シグネチャ、B:Teffシグネチャ、C:抗原プロセシング機構、D:免疫チェックポイントシグネチャ、E:MKI67及び細胞周期遺伝子、F:DNA複製依存性ヒストン、G:DNA損傷修復遺伝子、H:細胞外マトリックス(ECM)組織遺伝子セット、I:TGF-β2遺伝子シグネチャ、J:血管新生シグネチャ、K:上皮間葉転換(EMT)マーカー、ならびにL:がん関連線維芽細胞遺伝子の経路にグループ化される。図2Bは、Lund(左側パネル)及びTCGAサブタイプ(右側パネル)(x軸)に対してプロットされたTMB(y軸)を示すグラフである。ゲノム的に不安定なLund(ウィルコクソン検定;p=0.0002)及びTCGA管腔IIサブタイプ(p=5.94 x 10-5)は、高いTMBの中央値を有した。UroA:尿路上皮様A、GU:ゲノム不安定、Inf:浸潤、UroB:尿路上皮様B、SCCL:SCC様。図2Cは、TMB中央値に基づいて、TMB低(灰色)及びTMB高(黒)サブグループに分割された患者を示すグラフであり、これら2つのサブグループの患者の分率は、それぞれLund(左側パネル)及びTCGA(右側パネル)分子サブタイプごとに示される。図2Dは、示された応答カテゴリのそれぞれにおける患者の分率をLund分子サブタイプで割ったものを示すグラフである。GUサブタイプは、全ての他のサブタイプと比較して有意に高い応答率を有した(フィッシャーの正確検定;p=1.6×10-5)。図2Eは、示された応答カテゴリのそれぞれにおける患者の分率をTCGAサブタイプで割ったものを示すグラフである。管腔IIサブグループは、プラチナ耐性コホートのみで以前に報告された結果と一致して、最も高い応答率を達成したが、管腔II対他のサブタイプの間の違いは有意ではなかった(フィッシャー正確検定;p=0.12)。図2Fは、TGF-βが、Lund GU及びTCGA管腔IIサブタイプにおける差次的な応答のドライバーの可能性が高いことを示すグラフである。Venn図は、さらに分析された3つのサブグループを表す:(i)GUとしてサブタイプ化されたLundであるが、TCGA管腔IIではない(GUのみ)、(ii)GU Lund 管腔II(GU及びII)の両方、または(iii)管腔IIであるが、GUではない(IIのみ)。ヒートマップは、これらのサブグループ(カラム)におけるCD8 Teff及びTGF-β2遺伝子シグネチャ、ならびにTMBの評価を示す。中央値がグループにわたって算出される前に、目的の生物学(行)が調整された。赤は高いこと、青は低いことを意味する。棒グラフに示すように、応答は3つのサブグループ間で有意に異なり(p=0.00062)、「GUのみ」及び「GU及びII」は、部分的及び/または完全な応答者の分率が高く、「IIのみ」は限られた応答を示す。Teff-TGF-βは、CD8 TeffシグネチャスコアからTGF-β2遺伝子シグネチャスコアを差し引いたものを示す。図2Gは、分子サブタイプと比較したMKI67の発現及び目的のシグネチャ、ならびにTMBの評価を示すヒートマップである。目的の生物学は、中央値がLund(左側)及びTCGA(右側)分子サブタイプ(カラム)にわたって算出される前に調整された。赤は高いこと、青は低いことを意味する。DNA rep .:DNA複製。図2Hは、Lund及びTCGAサブタイピングスキームの比較を示すヒートマップである。ヒートマップは、定義された応答のない患者を除き、評価された全ての患者を表し、カラムに配置され、最初に分子サブタイプ、次にアテゾリズマブへの応答によって選別される。左側のパネルでは、患者はTCGA系サブタイピングスキームに基づいて選別され、右側のパネルでは、患者はLund系サブタイピングスキームで選別された(図2Aのように)。IC及びTC PD-L1状態が与えられる。さらに、目的のいくつかの遺伝子についてのTMB及び変異状態(変異した、黒、または変異しない、白のいずれか;灰色は変異データのない患者を示す)が示される。ヒートマップの行は、目的の遺伝子の発現(zスコア)が示され、A:FGFR3遺伝子シグネチャ、B:Teffシグネチャ、C:抗原プロセシング機構、D:免疫チェックポイントシグネチャ、E:MKI67及び細胞周期遺伝子、F:DNA複製依存性ヒストン、G:DNA損傷修復遺伝子、H:ECM遺伝子セット、I:TGFB 2遺伝子シグネチャ、J:血管新生シグネチャ、K:EMTマーカー、ならびにL:汎-F-TBRS遺伝子(これらのシグネチャの詳細については、実施例1を参照されたい)の生物学/経路:TCGA:TCGAサブタイピング遺伝子にグループ化される。
図3図3Aは、3つの腫瘍免疫表現型の組織像を示す一連の画像である:免疫「不毛」、免疫「除外」、及び免疫「炎症」。腫瘍の3つの免疫表現型実体の1つへの分類は、CD8+T細胞の存在について免疫組織化学的に染色されたホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)分画で実行された。分類は、CD8+細胞の普及率、及び悪性上皮細胞に関する浸潤パターンに基づく。腫瘍は、CD8+細胞の普及率が低いときに「不毛」に分類された(200倍の倍率で腫瘍及び腫瘍関連間質の領域にある<10 CD8+細胞、大きな標本では、これは10の代表的な視野の平均として算出された)。CD8+細胞が、間質の主な腫瘍塊のすぐ近くまたは内部でのみ見られる場合、腫瘍は「除外」として分類された。腫瘍は、CD8+細胞が悪性上皮細胞と直接接触して、腫瘍細胞凝集体への間質浸潤の漏出または腫瘍細胞の凝集体もしくはシート中のCD8+細胞のびまん性浸潤の形で見られた場合、「炎症あり」として分類された。これらの特徴は局所的に頻繁に観察されたため、腫瘍病変におけるそのような観察はいずれも「炎症性」として分類された。H&E、ヘマトキシリン及びエオシン染色。図3Bは、CD8+T細胞及びコラーゲン間質の空間分布を視覚化するためにFFPE切片上で実施された組み合わせCD8 IHC-トリクローム染色を示す画像である。3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)染色(茶色)で輪郭が描かれたCD8+T細胞は、主にコラーゲン(青)基質(白矢印)内に局在化する。希少なCD8+T細胞が腫瘍細胞の間に散在される(緑矢印)。図3C及び3Dは、各腫瘍免疫表現型グループ内のTGF-β2遺伝子シグネチャ及び汎線維芽細胞TGF-β応答シグネチャ(汎-F-TBRS)スコアと応答状態との関係を示す一連のグラフである。TGF-β2遺伝子シグネチャ(図3C)または汎-F-TBRS(図3D)スコア(y軸)は、免疫表現型及び応答グループ別にプロットされる。図3Cは、TGF-β2遺伝子のシグネチャが免疫表現型にわたって同等であったが、除外された表現型でのみ応答と有意に関連していたことを示す(調整p=5.7×10-5;t検定p値 ボンフェローニは3つの検定に対して補正された)。相互作用の尤度比検定により、TGF-βシグネチャと応答との間の表現型特有の関係が確認された(p=0.02251)。図3Dは、汎-F-TBRSが、除外された表現型でのみの応答と有意に関連していたことを示す(調整p=0.0066;t検定p値ボンフェローニは3つの検定に対して補正された)。図3Eは、腫瘍免疫表現型に対してプロットされたTMB(y軸)を示すグラフである。がん免疫表現型間のTMBに有意差は存在しなかった(クラスカルウォリス=0.091)。
図4図4Aは、免疫蛍光により染色されたEMT6腫瘍におけるコラーゲン(緑)及びT細胞(CD3、赤)を示す一連の画像である。図4Bは、RNA配列決定(RNAseq)による全EMT6腫瘍におけるTGF-β及びPD-L1 RNAの定量化を示すグラフである。腫瘍は同所的に接種され、体積が300mmに達した際に収集された(N=5;1つの実験からのデータ)。図4Cは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による全EMT6腫瘍におけるTGF-βタンパク質の定量化を示すグラフである。接種の14日後に腫瘍を収集し、瞬間凍結し、タンパク質定量のために溶解した(N=4;1つの実験からのデータ)。図4D~4Fは、BALB/cマウスが、乳腺脂肪パッドにEMT6腫瘍細胞を同所的に接種された研究の結果を示す一連のグラフである。接種のおよそ8日後に腫瘍体積が~160mm(平均値±標準偏差、161.8±20.2mm)に達した際に、マウスは、アイソタイプ対照、抗PD-L1抗体、抗TGF-β抗体、または抗PD-L1抗体と抗TGF-β抗体との組み合わせで治療された。腫瘍は、ノギスによっておよそ8週間、週に2回測定された。腫瘍体積が32mm(検出の下限)を下回ると、CR(100%腫瘍成長阻害)とみなされた。図4Dは、2~6の独立した研究にわたるCRの割合を示す。****p<0.0001は、一元配置分散分析、Sidak多重比較検定による。図4Eは、個々のマウスそれぞれについての腫瘍成長曲線を示す。データは、10匹のマウス/グループを伴う6つの独立した実験の1つの代表からのものである。図4Fは、基準(治療の開始)と比較した腫瘍体積の変化を示す。データは、10匹のマウス/グループを伴う6つの独立した実験の1つの代表からのものである。図4Gは、図4D~4Fに記載されているように、治療開始の7日後にIHC及びデジタルイメージングによって評価された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の分布を示す一連の画像である。茶色は代表的なCD3染色を表す。スケールバー、100ミクロン。図4H~4Jは、図4D~4Fに関して説明したように、治療の開始から7日後のTILの細胞蛍光測定の一覧を示す一連のグラフである。総T細胞(図4H)、CD8+T細胞(図4I)、及びCD8+T細胞におけるグランザイムBの平均蛍光強度(MFI)(図4J)の存在量が示される(N=10の抗TGF-β抗体のみを除く全てのグループでN=15;3つの組み合わせた実験からのデータは、アイソタイプ細胞/mg平均に対する変化倍率として表される)。p<0.05;**p<0.01;****p<0.0001は、一元配置分散分析、Sidak多重比較検定による。図4Kは、図4D~4Fに記載されているように、治療の開始から7日後でのTIL局在化の定量化を示すグラフである。T細胞はIHCによって染色され(図4Gのように)、その局在化はデジタル分析された。腫瘍周辺からのCD3 T細胞の正規化された平均距離は、割合として示される(N=19~20;3つの組み合わせた実験からのデータ)。****p<0.0001は、Tukey HSD多重比較検定による。図4Lは、図4D~4Fに記載されるように、治療の開始から7日後の腫瘍におけるSMAD2/3のホスホフロー分析を示すグラフである。総細胞、CD45-、及びCD45+細胞におけるホスホ-SMAD2/3のMFIが示される。データは、アイソタイプMFI平均に対する倍率変化(FC)として表される。10匹のマウス/グループは、2つの組み合わせた実験からである。、p<0.05;**、p<0.01は、一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定、アイソタイプとの比較である。図4Mは、図4D~4Fに記載されているように、治療の開始から7日後のELISAによる血漿中のVEGF-Aタンパク質の定量化を示すグラフである。N=8は、1つの実験からのものである。p=0.0194は、一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定、アイソタイプとの比較である。図4Nは、図4D~4Fに記載されているように、治療の開始から7日後のT細胞の細胞蛍光分析を示すグラフである。GzmB+CD8T細胞の割合が示される。N=10の抗TGF-β単独を除く全てのグループでN=15。これらのデータは、アイソタイプ細胞/mg平均に対する倍率変化として表される3つの組み合わせた実験からのものである。**、p<0.01は、一元配置分散分析、Sidakの多重比較検定である。図4Oは、図4D~4Fに記載されているように、治療の開始から7日後の免疫組織化学及びデジタルイメージングにより評価されたTILの分布を示すグラフである。茶色は代表的なCD3染色を表す。スケールバー、500ミクロン。図4P~4Sは、図4D~4Fに記載されているように、治療の開始から7日後に収集された腫瘍全体のRNAseq分析を示す一連のグラフである。異なる治療アームにおけるTeffのスコア(図4P)、汎-F-TBRS(図4Q)、T細胞及びマクロファージシグネチャ(図4R)、ならびにTeff対汎-F-TBRSの比率(図4S)が示される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。図4Tは、図4D~4Fに関して説明したように、治療の開始後のTeff及びがん関連線維芽細胞リモデリング(CAF)遺伝子の発現を示すヒートマップである。抗PD-L1と組み合わせた抗TGF-βの治療的投与は、T細胞浸潤及びCAFリモデリングを促進し、完全な応答をもたらした。図4Uは、図4D~4Fに関して説明したように、治療の開始後の示された遺伝子の発現を示す一連のグラフである。抗PD-L1と組み合わせた抗TGF-βの治療的投与により、IFNG、GZMB、及びZAP70を含むTeff遺伝子の発現が増加し(上部)、LOXL2、TNC、及びPOSTNを含むCAF遺伝子の発現が減少した(下部)。RPKM、100万のマッピングされた読み取りあたりのキロベースあたりの読み取り。
図5】有効性評価可能な患者集団と全トランスクリプトーム(RNAseq)、FMOne、がん免疫表現型分類、及び全エクソーム配列決定(WES)データの重複を示すVenn図である(これらのアッセイの1つ以上についてn=326)。応答に関する遺伝子発現解析については、完全なRNAseqデータセットが使用された(n=298)。TMBまたは免疫表現型の状況下での遺伝子発現解析については、RNAseq及びFMOne(n=237)または免疫表現型(n=244)の間の交差がそれぞれ使用された。免疫表現型周辺の変異分析については、FMOne及び免疫表現型の間の交差が使用された(n=220)。応答または遺伝子変異状態とTMBとの間の関連については、完全なFMOneデータセットが使用された(n=251)。
図6図6A~6Cは、6遺伝子シグネチャ(「6TBRS」)の高発現が予後不良(図6A)及びアテゾリズマブ単独療法の有益性の欠如(図6B及び6C)と関連していることを示す一連のグラフである。図6Aは、6遺伝子のシグネチャ、TGFB1、TGFB2、及びTGFB3についてのTCGA結腸直腸癌データセットからのデータを示す。図6Bは、6遺伝子シグネチャ、TGFB1、TGFB2、及びTGFB3についてのIMvigor210 UCデータセットからのデータを示す。図6Cは、TGFB1+TGFBR2及び6遺伝子シグネチャについてのPOPLAR NSCLCデータセットからのデータを示す。
図7図7Aは、6-遺伝子シグネチャ(本明細書では「curTBRS」とも称される)の発現が、アテゾリズマブに対する応答の欠如に関連していることを示すグラフである。図7Bは、CRC患者の低い生存サブグループの、CMS4分子サブタイプにおける集積された6遺伝子シグネチャの高発現を示すグラフである。
図8A図8A~8Cは、高TMB及び高PD-L1 ICスコアが、アテゾリズマブ療法からの改善されたOSの利益と関連することを示す一連のグラフである。図8Aは、PD-L1状態によるOSを示す。
図8B図8A~8Cは、高TMB及び高PD-L1 ICスコアが、アテゾリズマブ療法からの改善されたOSの利益と関連することを示す一連のグラフである。図8Bは、TMB状態によるOSを示す。
図8C図8A~8Cは、高TMB及び高PD-L1 ICスコアが、アテゾリズマブ療法からの改善されたOSの利益と関連することを示す一連のグラフである。図8Cは、PD-L1 IC及びTMBを組み合わせた状態によるOSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌を含むがこれらに限定されないがんの治療のための診断方法及び使用、療法及び使用、ならびに組成物を提供する。本発明は、少なくとも部分的に、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体から得られた試料中の1つ以上の遺伝子(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルが、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を含むがこれに限定されない)及び抑制性間質アンタゴニスト(TGF-βアンタゴニスト、例えば抗TGF-β抗体を含むがこれに限定されない)を含む抗がん療法を用いる治療に有益であり得るか、または応答する可能性が高い個体を特定する;個体を治療するための療法を選択する;免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を含む治療の治療効果を最適化する;及び/または免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を含む治療に対する個体の応答をモニタリングする方法におけるバイオマーカー(予測バイオマーカー及び/または薬力学的バイオマーカーを含むがこれらに限定されない)として使用できるという発見に基づく。
【0046】
I. 定義
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解されるべきである。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」とは、別途指示されない限り、複数の言及を含む。
【0047】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者に容易に既知であるそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0048】
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、試料中で検出され得る指標、例えば、予測指標、診断指標、及び/または予後指標を指す。バイオマーカーは、ある特定の分子的、病理学的、組織学的、及び/または臨床的特徴によって特徴付けられる疾患または障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標としての機能を果たし得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、遺伝子である。バイオマーカーには、ポリヌクレオチド(例えば、DNA及び/またはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数の改変(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド及びポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、及び/または糖脂質系分子マーカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
かかるバイオマーカーには、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2からなる群から選択される1つ以上のバイオマーカーである。他の実施形態において、バイオマーカーは、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1からなる群から選択される1つ以上のバイオマーカーである。かかるバイオマーカーの発現は、参照レベル(例えば、患者のグループ/集団からの試料中におけるバイオマーカーの発現レベルの中央値、例えば、がんを有し、治療に対する応答性が試験されている患者;例えば、患者のグループ/集団からの試料中におけるバイオマーカーの発現レベルの中央値、例えば、がんを有し、治療に応答しないと特定された患者;事前に個体から前もって得られた試料中におけるレベル;または原発腫瘍の状況で以前に治療を受け、現在転移を経験し得る患者からの試料中におけるレベル)よりも治療(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療)に感受性または応答性の患者から得られた試料中において、より高いまたはより低いと決定され得る。
【0050】
「バイオマーカーシグネチャ」、「シグネチャ」、「バイオマーカー発現シグネチャ」、または「発現シグネチャ」という用語は、本明細書で互換的に使用され、1つのバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせを指し、それらの発現が、指標、例えば、予測指標、診断指標、及び/または予後指標となる。バイオマーカーシグネチャは、ある特定の分子的、病理学的、組織学的、及び/または臨床的特徴によって特徴付けられる疾患または障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標としての機能を果たし得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーシグネチャは、「遺伝子シグネチャ」である。「遺伝子シグネチャ」という用語は、「遺伝子発現シグネチャ」と互換的に使用され、発現が、例えば、予測的、診断的、及び/または予後の指標である、ポリヌクレオチドのうちの1つまたはその組み合わせを指す。いくつかの実施形態において、バイオマーカーシグネチャは、「タンパク質シグネチャ」である。「タンパク質シグネチャ」という用語は、「タンパク質発現シグネチャ」と互換的に使用され、発現が、例えば、予測的、診断的、及び/または予後の指標である、ポリペプチドのうちの1つまたはその組み合わせを指す。いくつかの事例において、バイオマーカーシグネチャには、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1からなる群から選択される1つ以上のバイオマーカーが含まれ、本明細書では「22遺伝子シグネチャ」とも称される。いくつかの事例において、バイオマーカーシグネチャには、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2からなる群から選択される1つ以上のバイオマーカーが含まれ、本明細書では「6遺伝子シグネチャ」とも称される。他の事例において、バイオマーカーシグネチャには、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1からなる群から選択される1つ以上のバイオマーカーが含まれ、本明細書では「汎-F-TBRS」とも称される。
【0051】
本明細書で使用される「TGFB1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然TGFB1(形質転換成長因子ベータ1)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないTGFB1、及び細胞におけるプロセシングから生じるTGFB1の任意の形態を包含する。この用語はまた、TGFB1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトTGFB1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_000660.6または配列番号1に示される。ヒトTGFB1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P01137または配列番号2に示される。
【0052】
本明細書で使用される「TGFBR2」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然TGFBR2(形質転換成長因子ベータ受容体2;TGFR-2またはTGFベータ-RIIとしても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないTGFBR2、及び細胞におけるプロセシングから生じるTGFBR2の任意の形態を包含する。この用語はまた、TGFBR2の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトTGFBR2の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001024847または配列番号3に示される。ヒトTGFBR2によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P37173または配列番号4に示される。
【0053】
本明細書で使用される「ACTA2」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然ACTA2(アルファ-アクチン-2、大動脈平滑筋アクチンまたはアルファ平滑筋アクチンとしても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないACTA2、及び細胞におけるプロセシングから生じるACTA2の任意の形態を包含する。この用語はまた、ACTA2の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトACTA2の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001141945または配列番号5に示される。ヒトACTA2によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P62736または配列番号6に示される。
【0054】
本明細書で使用される「ACTG2」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然ACTG2(アクチン、ガンマ腸平滑筋、アクチン、ガンマ2としても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないACTG2、及び細胞におけるプロセシングから生じるACTG2の任意の形態を包含する。この用語はまた、ACTG2の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトACTG2の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001615または配列番号7に示される。ヒトACTG2によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P63267または配列番号8に示される。
【0055】
本明細書で使用される「ADAM12」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然ADAM12(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質12、ADAMメタロペプチダーゼドメイン12、MCMP、CAR10、及びMLTNとしても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないADAM12、及び細胞におけるプロセシングから生じるADAM12の任意の形態を包含する。この用語はまた、ADAM12の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。スプライスバリアントは、ADAM12-Lを含み、膜貫通領域及びADAM12-S、より短いバリアントを有し、可溶性であり、かつ膜貫通及び細胞質ドメインを欠く。例示的なヒトADAM12の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_003474または配列番号9に示される。ヒトADAM12によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号O43184または配列番号10に示される。
【0056】
本明細書で使用される「ADAM19」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然ADAM19(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質19;MADDAMまたはメルトリンベータとしても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないADAM19、及び細胞におけるプロセシングから生じるADAM19の任意の形態を包含する。この用語はまた、ADAM19の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトADAM19の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_033274または配列番号11に示される。ヒトADAM19によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q9H013または配列番号12に示される。
【0057】
本明細書で使用される「COMP」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然COMP(軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質;トロンボスポンジン-5としても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCOMP、及び細胞におけるプロセシングから生じるCOMPの任意の形態を包含する。この用語はまた、COMPの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトCOMPの核酸配列は、NCBI参照配列:NM_000095または配列番号81に示される。ヒトCOMPによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P49747または配列番号82に示される。
【0058】
本明細書で使用される「CNN1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然CNN1(カルポニン1)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCNN1、及び細胞におけるプロセシングから生じるCNN1の任意の形態を包含する。この用語はまた、CNN1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトCNN1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001299または配列番号13に示される。ヒトCNN1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P51911または配列番号14に示される。
【0059】
本明細書で使用される「COL4A1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然COL4A1(コラーゲン、タイプIV、アルファI、コラーゲンアルファ-1(IV)鎖としても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCOL4A1、及び細胞におけるプロセシングから生じるCOL4A1の任意の形態を包含する。この用語はまた、COL4A1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトCOL4A1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001845または配列番号15に示される。ヒトCOL4A1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P02462または配列番号16に示される。
【0060】
本明細書で使用される「CTGF」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然CTGF(結合組織成長因子、CCN2またはIGFBP8としても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCTGF、及び細胞におけるプロセシングから生じるCTGFの任意の形態を包含する。この用語はまた、CTGFの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトCTGFの核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001901または配列番号17に示される。ヒトCTGFによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P29279または配列番号18に示される。
【0061】
本明細書で使用される「CTPS1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然CTPS1(CTPシンターゼ1)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCTPS1、及び細胞におけるプロセシングから生じるCTPS1の任意の形態を包含する。この用語はまた、CTPS1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトCTPS1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001905または配列番号19に示される。ヒトCTPS1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P17812または配列番号20に示される。
【0062】
本明細書で使用される「FAM101B」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然FAM101B(配列類似性101を有するファミリー、メンバーB、フィラミン相互作用タンパク質FAM101B、レフィリンB、またはRFLNBとしても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないFAM101B、及び細胞におけるプロセシングから生じるFAM101Bの任意の形態を包含する。この用語はまた、FAM101Bの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトFAM101Bの核酸配列は、NCBI参照配列:NM_182705または配列番号21に示される。ヒトFAM101Bによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q8N5W9または配列番号22に示される。
【0063】
本明細書で使用される「FSTL3」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然FSTL3(フォリスタチン関連タンパク質3)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないFSTL3、及び細胞におけるプロセシングから生じるFSTL3の任意の形態を包含する。この用語はまた、FSTL3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトFSTL3の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_005860または配列番号23に示される。ヒトFSTL3によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号O95633または配列番号24に示される。
【0064】
本明細書で使用される「HSPB1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然HSPB1(ヒートショックタンパク質ベータ-1、ヒートショックタンパク質27またはHSP27としても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないHSPB1、及び細胞におけるプロセシングから生じるHSPB1の任意の形態を包含する。この用語はまた、HSPB1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトHSPB1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001540または配列番号25に示される。ヒトHSPB1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P04792または配列番号26に示される。
【0065】
本明細書で使用される「IGFBP3」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然IGFBP3(インスリン様成長因子結合タンパク質3、BP-53またはIBP3としても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないIGFBP3、及び細胞におけるプロセシングから生じるIGFBP3の任意の形態を包含する。この用語はまた、IGFBP3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトIGFBP3の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001013398または配列番号27に示される。ヒトIGFBP3によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P17936または配列番号28に示される。
【0066】
本明細書で使用される「PXDC1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然PXDC1(PXドメイン含有タンパク質1)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないPXDC1、及び細胞におけるプロセシングから生じるPXDC1の任意の形態を包含する。この用語はまた、PXDC1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトPXDC1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_183373または配列番号29に示される。ヒトPXDC1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q5TGL8または配列番号30に示される。
【0067】
本明細書で使用される「SEMA7A」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然SEMA7A(セマフォリン7A、CD108またはジョンミルトンハーゲン血液型抗原としても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないSEMA7A、及び細胞におけるプロセシングから生じるSEMA7Aの任意の形態を包含する。この用語はまた、SEMA7Aの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトSEMA7Aの核酸配列は、NCBI参照配列:NM_003612または配列番号31に示される。ヒトSEMA7Aによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号O75326または配列番号32に示される。
【0068】
本明細書で使用される「SH3PXD2A」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然SH3PXD2A(SH3及びPXドメイン含有タンパク質2A)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないSH3PXD2A、及び細胞におけるプロセシングから生じるSH3PXD2Aの任意の形態を包含する。この用語はまた、SH3PXD2Aの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトSH3PXD2Aの核酸配列は、NCBI参照配列:NM_014631または配列番号33に示される。ヒトSH3PXD2Aによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q5TCZ1または配列番号34に示される。
【0069】
本明細書で使用される「TAGLN」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然TAGLN(トランスジェリン)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないTAGLN、及び細胞におけるプロセシングから生じるTAGLNの任意の形態を包含する。この用語はまた、TAGLNの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトTAGLNの核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001001522または配列番号35に示される。ヒトTAGLNによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q01995または配列番号36に示される。
【0070】
本明細書で使用される「TGFBI」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然TGFBI(形質転換成長因子、ベータ誘導)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないTGFBI、及び細胞におけるプロセシングから生じるTGFBIの任意の形態を包含する。この用語はまた、TGFBIの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトTGFBIの核酸配列は、NCBI参照配列:NM_000358または配列番号37に示される。ヒトTGFBIによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q15582または配列番号38に示される。
【0071】
本明細書で使用される「TNS1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然TNS1(テンシン-1)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないTNS1、及び細胞におけるプロセシングから生じるTNS1の任意の形態を包含する。この用語はまた、TNS1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトTNS1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_022648または配列番号39に示される。ヒトTNS1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q9HBL0または配列番号40に示される。
【0072】
本明細書で使用される「TPM1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然TPM1(トロポミオシンアルファ-1鎖)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないTPM1、及び細胞におけるプロセシングから生じるTPM1の任意の形態を包含する。この用語はまた、TPM1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。ヒトTPM1遺伝子は、選択的スプライシング及び/または2つのプロモーターの使用を介して少なくとも10バリアントをコードする。例示的なヒトTPM1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_001018005.1または配列番号41に示される。ヒトTPM1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P09493または配列番号42に示される。ヒトTPM1タンパク質アイソフォームの配列は、UniProt受託番号P09493-1、P09493-2、P09493-3、P09493-4、P09493-5、P09493-6、P09493-7、P09493-8、P09493-9、及びP09493-10に示される。いくつかの実施形態において、ヒトTPM1タンパク質は、UniProt受託番号P09493-1に示されるアミノ酸配列を有する。
【0073】
本明細書で使用される「CD8A」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD8Aを指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCD8A、及び細胞におけるプロセシングから生じるCD8Aの任意の形態を包含する。この用語はまた、CD8Aの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトCD8Aの核酸配列は、EMBL受託番号M12824または配列番号43に示される。ヒトCD8Aによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P01732-1または配列番号44に示される。
【0074】
本明細書で使用される「CXCL9」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然CXCL9(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド9)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCXCL9、及び細胞におけるプロセシングから生じるCXCL9の任意の形態を包含する。この用語はまた、CXCL9の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトCXCL9の核酸配列は、配列番号45に示される。ヒトCXCL9によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号46に示される。
【0075】
本明細書で使用される「CXCL10」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然CXCL10(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド10)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCXCL10、及び細胞におけるプロセシングから生じるCXCL10の任意の形態を包含する。この用語はまた、CXCL10の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトCXCL10の核酸配列は、配列番号47に示される。ヒトCXCL10によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号48に示される。
【0076】
本明細書で使用される「GZMA」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然GZMA(グランザイムA)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないGZMA、及び細胞におけるプロセシングから生じるGZMAの任意の形態を包含する。この用語はまた、GZMAの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトGZMAの核酸配列は、配列番号49に示される。ヒトGZMAによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号50に示される。
【0077】
本明細書で使用される「GZMB」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然GZMB(グランザイムB)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないGZMB、及び細胞におけるプロセシングから生じるGZMBの任意の形態を包含する。この用語はまた、GZMBの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトGZMBの核酸配列は、配列番号51に示される。ヒトGZMBによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号52に示される。
【0078】
本明細書で使用される「PRF1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然PRF1(パーフォリン1;ポア形成タンパク質としても知られる)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないPRF1、及び細胞におけるプロセシングから生じるPRF1の任意の形態を包含する。この用語はまた、PRF1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトPRF1の核酸配列は、配列番号53に示される。ヒトPRF1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号54に示される。
【0079】
本明細書で使用される「IFNG」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然IFNG(インターフェロン、ガンマ;本明細書ではIFN-γとも称される)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないIFNG、及び細胞におけるプロセシングから生じるIFNGの任意の形態を包含する。この用語はまた、IFNGの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトIFNGの核酸配列は、配列番号55に示される。ヒトIFNGによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号56に示される。
【0080】
本明細書で使用される「TBX21」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然TBX21(Tボックス転写因子21)を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないTBX21、及び細胞におけるプロセシングから生じるTBX21の任意の形態を包含する。この用語はまた、TBX21の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトTBX21の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_013351.1または配列番号57に示される。ヒトTBX21によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q9UL17または配列番号58に示される。
【0081】
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列PD-L1ポリペプチド、ポリペプチドバリアント、ならびに天然配列ポリペプチド及びポリペプチドバリアントの断片(これらは、本明細書においてさらに定義される)を指す。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、もしくは別の源からなど、多様な源から単離されるか、または組換え法もしくは合成法によって調製されたものであり得る。
【0082】
「天然配列PD-L1ポリペプチド」は、天然に由来する、対応するPD-L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。この用語は、「全長」のプロセシングされていないPD-L1、及び細胞におけるプロセシングから生じるPD-L1の任意の形態を包含する。この用語はまた、PD-L1の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例えば、天然配列PD-L1ポリペプチドは、PD-L1アイソフォーム1(PD-L1Iとしても知られる;例えば、UniProt受託番号Q9NZQ7-1を参照されたい)、PD-L1アイソフォーム2(PD-L1IIとしても知られる;例えば、UniProt受託番号Q9NZQ7-2を参照されたい)、またはPD-L1アイソフォーム3(例えば、UniProt受託番号Q9NZQ7-3を参照されたい)であり得る。例示的なヒトPD-L1の核酸配列は、NCBI参照配列:NM_014143または配列番号59に示される。ヒトPD-L1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q9NZQ7または配列番号60に示される。
【0083】
「PD-L1ポリペプチドバリアント」またはその変化形は、本明細書で開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列のうちのいずれかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する本明細書で定義されるPD-L1ポリペプチド、一般に活性PD-L1ポリペプチドを意味する。かかるPD-L1ポリペプチドバリアントには、例えば、天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたPD-L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD-L1ポリペプチドバリアントは、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、代替的には、少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するであろう。通常、PD-L1バリアントポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長であり、代替的には、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、もしくは289アミノ酸長、またはそれ以上である。任意に、PD-L1バリアントポリペプチドは、天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換、代替的には、天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下の保存的アミノ酸置換を有するであろう。
【0084】
「検出する」という用語は、標的分子の質的測定及び量的測定の両方を含むために本明細書で最も広義に使用される。検出するとは、単に試料中の標的分子の存在を特定すること、ならびに標的分子が検出可能なレベルで試料中に存在するかを決定することを含む。検出することは、直接的または間接的であり得る。
【0085】
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、概して、同義に使用され、概して、生物学的試料中のバイオマーカーの量を指す。「発現」とは概して、これにより情報(例えば、遺伝子コード及び/またはエピジェネティック情報)が、細胞中に存在し、機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、またはさらにポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指し得る。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、それらが選択的スプライシングによって生成された転写物もしくは分解された転写物に由来するか、または例えばタンパク質分解によるポリペプチドの翻訳後プロセシングに由来するかどうかにかかわらず、発現されたものと見なされるべきである。「発現される遺伝子」とは、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後、ポリペプチドに翻訳されるもの、及びまたRNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されないもの(例えば、転移及びリボソームRNA)を含む。1つを超える目的の遺伝子についての発現レベルは、例えば、目的の遺伝子の全ての発現レベルの中央値または平均値を計算することを包含する、当業者に既知でかつ、また本明細書に開示される凝集方法によって決定され得る。凝集の前に、目的の各遺伝子の発現レベルは、例えば1つ以上のハウスキーピング遺伝子の発現レベルに正規化することを包含する、当業者に既知でかつ、また本明細書に開示される統計的方法を用いて正規化されてもよいし、または総ライブラリーサイズに正規化されてもよいし、または測定された全遺伝子にわたる中央値または平均発現レベル値に対して正規化されてもよい。いくつかの事例において、複数の目的の遺伝子にわたる凝集の前に、各目的の遺伝子の正規化された発現レベルは、当業者に既知であり、また本明細書に開示される統計的方法を用いることによって、例えば、目的の各遺伝子の正規化発現レベルのZスコアを計算することによって標準化され得る。
【0086】
本明細書で使用される「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/または生理学的特性に基づいて、特徴付け及び/または同定される細胞及び/または他の分子実体を含有する、目的の患者及び/または個体から得られるか、またはそれに由来する組成物を指す。試料には、組織試料、初代または培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
目的のタンパク質を「発現する」試料または細胞とは、タンパク質をコードするmRNAまたはタンパク質(その断片を含む)が、試料または細胞中に存在することが決定されるものである。
【0088】
本明細書で使用される「参照発現レベル」及び「参照レベル」という用語は、別の発現レベル、例えば、予測的、診断的、予後的、及び/または治療的決定を行うために比較される、例えば、個体からの試料中おける、本明細書に記載される1つ以上の遺伝子(例えば、表1に記載のいずれかの遺伝子またはその任意の組み合わせ(例えば、表2~5のいずれか1つに記載の任意の組み合わせ)の発現レベルに対する、発現レベルを指すために互換的に使用される。例えば、参照発現レベルは、参照集団における発現レベル(例えば、参照集団、例えば、がんを有する患者の集団における発現レベルの中央値)、参照試料、及び/または参照集団において事前に割り当てられた値(例えば、カットオフ値、これは、カットオフ値を上回る及び/またはカットオフ値を下回る、抗がん療法を用いる治療に対する個体の応答性、ならびに異なる抗がん療法を用いる治療に対する個体の応答性の間の有意差に基づいて、参照集団において抗がん療法(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体))を用いて治療されている個体の第1のサブセットと、同じ参照集団において異なる抗がん療法を用いて治療されている(または抗がん療法を用いて治療されていない)個体の第2のサブセットと、を有意に(例えば、統計的に有意に)分離するために以前に決定される)に由来し得る。いくつかの実施形態において、カットオフ値は、参照集団における中央値、または発現レベルの平均値であり得る。他の実施形態において、参照レベルは、参照集団における発現レベルの上位40%、上位30%、上位20%、上位10%、上位5%、または上位1%であり得る。特定の実施形態において、カットオフ値は、参照集団における発現レベルの中央値であり得る。参照発現レベルの数値は、適応症(例えば、がん(例えば、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌))、発現レベルを検出するために使用される方法論(例えば、RNAseqまたはRT-qPCR)、及び/または試験された遺伝子の特定の組み合わせ(例えば、表1に記載の遺伝子の任意の組み合わせ;または表2~6に列挙された遺伝子の組み合わせのいずれか1つ)に応じて変わり得ることを当業者は理解するであろう。
【0089】
レベルを「上回る」(例えば、参照レベルを上回る)、「増加した発現」、「増加した発現レベル」、「増加したレベル」、「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」または「上昇したレベル」という表現は、対照(例えば、疾患もしくは障害(例えば、がん)に罹患していない1つの個体または複数の個体、内部標準(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)、または療法の実施前に得られた試料中のバイオマーカーのレベル(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法)、または基準レベルと比較(例えば、患者のグループ/集団、例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法に対する応答性について試験されているがんを有する患者からの試料中におけるバイオマーカーの発現レベルの中央値;患者のグループ/集団、例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法に応答しないとして特定されているがんを有する患者からの試料中におけるバイオマーカーの発現レベルの中央値;または、事前に個体から前もって得られた試料中におけるレベル)におけるバイオマーカーの発現レベルと比較した、個体におけるバイオマーカーの増加した発現または増加したレベルを指す。
【0090】
レベルを「下回る」(例えば、参照レベルを下回る)、「減少した発現」、「減少した発現レベル」、「減少したレベル」、「低減した発現」、「低減した発現レベル」または「低減したレベル」という表現は、対照(例えば、疾患もしくは障害(例えば、がん)に罹患していない1つの個体または複数の個体、内部標準(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)、または療法の実施前に得られた試料中のバイオマーカーのレベル(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法)、または基準レベルと比較(例えば、患者のグループ/集団、例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法に対する応答性について試験されているがんを有する患者からの試料中におけるバイオマーカーの発現レベルの中央値;患者のグループ/集団、例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法に応答しないとして特定されているがんを有する患者からの試料中におけるバイオマーカーの発現レベルの中央値;または、事前に個体から前もって得られた試料中におけるレベル)におけるバイオマーカーの発現レベルと比較した、個体におけるバイオマーカーの減少した発現または減少したレベルを指す。いくつかの実施形態において、低減した発現とは、発現がほとんどまたは全くないことである。
【0091】
本明細書で使用される「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」とは、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、または標準物を指す。一実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ患者または個体の身体の健康な及び/または非疾患部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、疾患細胞または組織に隣接する健康な及び/または非疾患の細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)であり得る。別の実施形態において、参照試料は、同じ患者または個体の身体の未治療の組織及び/または細胞から得られる。さらに別の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または一個人ではない個体の身体の健康な及び/または非疾患部分(例えば、組織または細胞)から得られる。なお別の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または一個人ではない個体の身体の未治療の組織及び/または細胞から得られる。別の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、療法(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法)の実施前に患者から得られる。
【0092】
「に基づく」という語句は、本明細書で使用されるとき、1つ以上のバイオマーカーについての情報が、例えば治療決定、添付文書上で提供される情報、またはマーケティング/宣伝指針などを伝えるために使用されることを意味する。
【0093】
「ハウスキーピングバイオマーカー」という用語は、典型的には全ての細胞型に同様に存在するバイオマーカーまたはバイオマーカーの群(例えば、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド)を指す。いくつかの実施形態において、ハウスキーピングバイオマーカーは、「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」は、本明細書において、その活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードし、典型的には全ての細胞型に同様に存在する遺伝子または遺伝子の群を指す。
【0094】
「相関する」または「相関すること」は、任意の方法で、第1の分析またはプロトコルの性能及び/または結果を第2の分析またはプロトコルの性能及び/または結果と比較することを意味する。例えば、第2のプロトコルを実行する上で第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用してもよいし、及び/または第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用して、第2の分析もしくはプロトコルが実行されるべきかを決定し得る。ポリペプチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の療法レジメンが実行されるべきかを決定し得る。ポリヌクレオチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の療法レジメンが実行されるべきかを決定し得る。
【0095】
「増幅」とは、本明細書で使用される場合、概して、所望される配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」とは、鋳型配列に対する完全な配列相補性または同一性を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシンなどのヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(鋳型にハイブリダイズ可能であるが相補的ではない配列を含むプライマーによって導入される配列改変など)、及び/または増幅中に生じる配列エラーを含み得る。
【0096】
「多重PCR」という用語は、単一の反応で2つ以上のDNA配列を増幅させる目的で、1つ超のプライマーセットを使用して単一の源(例えば、個体)から得られた核酸上で行われる単一のPCR反応を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」技術は一般に、核酸、RNA、及び/またはDNAの微量の特定の小片が、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されるように増幅される手順を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーが設計され得るように、目的の領域の末端またはそれ以降からの配列情報が利用可能でなければならず;これらのプライマーの配列は、増幅される鋳型の反対側の鎖と同一であるかまたは同様である。これらの2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の末端と一致し得る。PCRを使用して、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、及び全細胞RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージ、またはプラスミド配列などを増幅することができる。概して、Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263(1987)、及びErlich,ed.,PCR Technology,(Stockton Press,NY,1989)を参照されたい。本明細書で使用される場合、PCRは、プライマーとしての既知の核酸(DNAまたはRNA)の使用を含む、核酸試験試料を増幅する核酸ポリメラーゼ反応法の一例であると見なされるが、唯一の例ではなく、核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するために、または特定の核酸に相補的な核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するために、核酸ポリメラーゼを利用する。
【0098】
「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」または「qRT-PCR」とは、PCR産物の量がPCR反応の各ステップで測定されるPCRの一形態を指す。この技法は、例えば、Cronin et al.,Am.J.Pathol.164(1):35-42(2004)、及びMa et al.,Cancer Cell 5:607-616(2004)を含む様々な出版物中で記載されている。
【0099】
「マイクロアレイ」という用語は、基質上のハイブリダイズ可能なアレイ要素、好ましくはポリヌクレオチドプローブの規則的配置を指す。
【0100】
「全トランスクリプトームショットガン配列決定(WTSS)」とも称される「RNA-seq」という用語は、試料のRNA含有量に関する情報を得るためにcDNAを配列決定及び/または定量するためのハイスループットシークエンシング技術の使用を指す。RNAseqについて記載している出版物は、Wang et al.Nature Reviews Genetics 10(1):57-63,2009;Ryan et al.Bio Techniques 45(1):81-94,2008;及びMaher et al.Nature 458(7234):97-101,2009を含む。
【0101】
「診断」という用語は、分子的もしくは病理学的状態、疾患、または病態(例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌))の特定または分類を指すために本明細書で使用される。いくつかの実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)である。例えば、「診断」とは、特定の種類のがんの特定を指し得る。「診断」とは、例えば病理組織的基準によるか、または分子特徴によるがんの特定のサブタイプの分類も指し得る(例えば、バイオマーカーのうちの1つまたはその組み合わせの発現を特徴とするサブタイプ(例えば、特定の遺伝子、または該遺伝子によりコードされるタンパク質))。
【0102】
「腫瘍浸潤性免疫細胞」とは、本明細書で使用される場合、腫瘍またはその試料中に存在する任意の免疫細胞を指す。腫瘍浸潤性免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)、またはこれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、例えば、顆粒球(例えば、好中球、好酸球、及び好塩基球)、単球、マクロファージ(例えば、CD68/CD163 マクロファージ)、樹状細胞(例えば、指状嵌入型樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む、Tリンパ球(CD8Tリンパ球及び/またはCD4 Tリンパ球など)、Bリンパ球、または他の骨髄系列細胞であり得る。
【0103】
「腫瘍細胞」とは、本明細書で使用される場合、腫瘍またはその試料中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当該技術分野で既知であり、及び/または本明細書に記載される方法を使用して、腫瘍試料中に存在し得る他の細胞、例えば間質細胞及び腫瘍浸潤性免疫細胞と区別され得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、「個体」、「患者」または「対象」という用語は、交換可能に使用され、治療が所望される任意の単一の動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類などの非ヒト動物を含む)を指す。特定の実施形態において、本明細書の患者は、ヒトである。患者とは、「がん患者」、すなわち、がん(例えば、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌)に罹患しているか、またはがんに罹患するリスクがあるか、またはがんの1つ以上の症状に罹患する患者であり得る。
【0105】
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には細胞の無秩序な成長によって特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはこの状態を説明するものである。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病またはリンパ性悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。かかるがんのより詳細な例としては、限定するものではないが、膀胱癌(例えば、転移性UC(mUC)を含む尿路上皮癌(UC);筋肉浸潤性膀胱癌(MIBC)、及び非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC));腎臓または腎癌(例えば、腎細胞癌(RCC));小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌を含む肺癌;尿路癌;乳癌(例えば、エストロゲン受容体(ER-)、プロゲステロン受容体(PR-)、及びHER2(HER2-)陰性である、HER2 +乳癌ならびにトリプルネガティブ乳癌(TNBC);去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)などの前立腺癌;腹膜癌;肝細胞癌;胃腸癌及び胃腸間質癌を含む胃(gastric)または胃(stomach)癌;膵臓癌(例えば、膵管腺癌(PDAC));膠芽腫;子宮頸癌;卵巣癌;肝臓癌(例えば、肝細胞癌(HCC));肝細胞種;結腸癌;直腸癌;大腸癌;子宮内膜または子宮癌;唾液腺癌;前立腺癌;外陰癌;甲状腺癌;肝癌;肛門癌;陰茎癌;表在性拡散黒色腫、黒子悪性黒色腫、末端部黒子黒色腫、及び結節性黒色腫を含む黒色腫;多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病(CML);移植後リンパ増殖性疾患(PTLD);及び骨髄異形成症候群(MDS)、ならびにファコマトーシスと関連する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、メイグス症候群、脳癌、頭頸部癌、及び関連する転移が含まれる。いくつかの実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)である。
【0106】
「初期がん」または「初期腫瘍」とは、侵襲性もしくは転移性でないか、または0期、I期、もしくはII期がんとして分類されるがんを意味する。
【0107】
「進行」がんとは、元の部位または器官の外に、局所浸潤または転移のいずれかによって広がったがんである。
【0108】
「抵抗性」がんとは、化学療法剤などの抗腫瘍剤ががん患者に投与されているにもかかわらず進行するがんである。抵抗性がんの例は、白金耐性であるがんである。
【0109】
「再発性」がんとは、初期療法に応答した後に、初期の部位または遠位部位で再成長したがんである。
【0110】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、がんである。
【0111】
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、悪性であるか良性であるかにかかわらず、全ての腫瘍細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。
【0112】
「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
【0113】
本明細書で使用される「免疫炎症腫瘍」という用語は、CD8+T細胞浸潤及びPD-L1発現によって特徴付けされる腫瘍(例えば、固形腫瘍)を指す。例えば、Herbst et al.Nature 515:563-567,2014、及びHegde et al.Clin. Canc. Res.22:1865-1874,2016を参照されたい。いくつかの実施形態において、腫瘍は、CD8+細胞が悪性上皮細胞と直接接触して、腫瘍細胞凝集体への間質浸潤の漏出または腫瘍細胞の凝集体もしくはシート中のCD8+細胞のびまん性浸潤の形で観察された場合、「炎症あり」として分類された。
【0114】
本明細書で使用される「免疫除外腫瘍」という用語は、細胞外マトリックスが豊富な間質におけるT細胞の蓄積によって特徴付けされる腫瘍(例えば、固形腫瘍)を指す。例えば、Herbst et al.Nature 515:563-567,2014、及びHegde et al.Clin. Canc. Res.22:1865-1874,2016を参照されたい。免疫除外腫瘍では、T細胞の大部分が腫瘍の周囲を周回する整列したコラーゲン及びフィブロネクチン繊維に沿って遊走する。例えば、Salmon et al.J.Clin. Invest. 122:899-910,2012を参照されたい。いくつかの実施形態において、腫瘍は、CD8+細胞が主要な腫瘍塊のすぐ近くまたは内部の間質において、実質的にまたは排他的に観察される場合、免疫除外腫瘍として分類される。
【0115】
本明細書で使用される「免疫不毛腫瘍」という用語は、腫瘍または周囲の間質に浸潤するリンパ球が不足している腫瘍(例えば、固形腫瘍)を指す。例えば、Herbst et al.Nature 515:563-567,2014、及びHegde et al.Clin. Canc. Res.22:1865-1874,2016を参照されたい。いくつかの実施形態において、CD8 +細胞の普及率が低い場合(例えば、10の代表的な視野の平均として算出した場合、約200倍の倍率で腫瘍及び腫瘍関連間質の領域内における約10未満(例えば、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0のCD8+細胞)の10のCD8+細胞)、腫瘍は免疫不毛腫瘍として分類される。
【0116】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病態を含む慢性及び急性の障害または疾患を含むがこれらに限定されない、治療から利益を受け得る任意の状態である。
【0117】
本明細書で使用される「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理の経過中に行われ得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の防止、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、治療は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる。いくつかの実施形態において、抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、及び/または抗TGF-β抗体)は、疾患の発達を遅延させるため、または疾患もしくは障害(例えば、がん(例えば、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌))の進行を遅らせるために使用される。
【0118】
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、化合物(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体))、または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)含む薬学的組成物)の投薬量を患者に与える方法を意味する。本明細書に記載の方法で利用される組成物は、例えば、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、髄腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、眼窩内に、硝子体内に(例えば、硝子体内注射により)、点眼により、経口的に、局所的に、経皮的に、非経口的に、吸入により、注射により、移植により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームに入れて、または脂質組成物に入れて、投与され得る。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身に、または局所的に投与され得る。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて多様であり得る。
【0119】
「治療有効量」とは、哺乳動物における疾患または障害(例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌))を治療または予防するための治療剤の量を指す。がんの事例において、治療有効量の治療剤は、がん細胞の数を低減;原発腫瘍サイズを低減;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の阻害;及び/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。薬物が既存のがん細胞の成長の阻止及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、この薬物は細胞増殖抑制性、及び/または細胞障害性であり得る。がん療法に関して、生体内での有効性は、例えば生存期間(例えば、全生存または無増悪生存)、疾患進行までの期間(TTP)、奏効率(例えば、完全奏効(CR)及び部分奏効(PR))、奏効期間、及び/または生活の質を評価することによって測定され得る。
【0120】
「同時に」という用語は、本明細書において、投与の時間が少なくとも部分的に重複している、2つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。したがって、同時投与としては、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与を中止した後で継続する投薬レジメンが含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストは、同時に投与され得る。
【0121】
「低減または阻害」とは、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の全体的な減少をもたらす能力を意味する。低減または阻害とは、治療されている障害の症状、転移の存在もしくはサイズ、または原発腫瘍のサイズを指すことができる。
【0122】
本明細書における「負荷」用量は、概して、患者に投与される治療剤の初期用量を含み、1つ以上のその維持用量(複数可)が続く。概して、単一負荷用量が投与されるが、複数の負荷用量が本明細書で企図される。通常、投与される負荷用量(複数可)の量は、投与される維持用量(複数可)の量を超過し、及び/または負荷用量(複数可)は、治療剤の所望の定常状態における濃度を、維持用量(複数可)を用いて達成することができるものよりも早く達成するように、維持用量(複数可)よりも頻繁に投与される。
【0123】
本明細書における「維持」用量または「延長」用量は、治療期間にわたって患者に投与される治療剤の1つ以上の用量を指す。通常、維持用量は、およそ毎週、およそ2週間毎、およそ3週間毎、またはおよそ4週間毎などの治療間隔で投与される。
【0124】
「治療に対する反応」、「治療に対する反応性」、または「治療からの利益」とは、個人に対する利益を示す任意の評価項目を用いて評価され得、この評価項目としては、限定するものではないが、以下が挙げられる(1)原則及び完全な停止を含めて、疾患進行(例えば、がんの進行)のある程度までの阻害;(2)腫瘍サイズの縮小;(3)隣接する末梢器官及び/または組織へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、減少、減速または完全停止);(4)転移の阻害(すなわち減少、減速または完全停止);(5)疾患または障害(例えば、がん)に関連する1つ以上の症状をある程度軽減すること;(6)全生存期間(OS HR<1)及び無増悪生存期間(PFS HR<1)を含む、生存期間の増加または延長;及び/または(9)治療(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)含む抗がん療法を用いる治療)後の所定の時点での死亡率の低下。
【0125】
「奏効」とは、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む測定可能な応答を指す。いくつかの実施形態において、「奏効率(ORR)」とは、完全奏効(CR)率及び部分奏効(PR)率の合計を指す。
【0126】
「完全奏効」または「CR」とは、治療に応答したがんの全ての徴候の消滅(例えば、全ての標的病巣の消滅)が意図される。これは、必ずしもがんが治癒されたことを意味しない。
【0127】
本明細書で使用される「部分奏効」または「PR」とは、治療に応答した、1つ以上の腫瘍もしくは病巣のサイズ、または身体内のがんの範囲の減少を指す。例えば、いくつかの実施形態において、PRは、ベースラインSLDを参照として、標的病変の長径和(SLD)における少なくとも30%の減少を指す。
【0128】
「持続的応答」とは、治療の休止後の腫瘍成長の低下に対する持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じか、またはより小さくなり得る。いくつかの実施形態において、持続的応答は、治療期間と少なくとも同じか、治療期間の長さの少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、もしくは3.0倍か、またはそれ以上の期間を有する。
【0129】
本明細書で使用される「安定疾患」または「SD」とは、治療開始以来の最小SLDを参照として、PRに適格となる十分な標的病変の収縮も、PDに適格となる十分な増加もないことを指す。
【0130】
本明細書で使用される「進行性疾患」または「PD」とは、治療開始、または1つ以上の新たな病変の存在以来記録された最小SLDを参照として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増加を指す。
【0131】
「生存期間」という用語は、患者が生存していることを指し、全生存期間、ならびに無増悪生存期間を含む。
【0132】
本明細書中で使用される「無増悪生存期間」または「PFS」とは、治療中及び治療後の期間の長さであり、その治療されている疾患(例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌))が進行または悪化しない期間の長さを指す。無増悪生存期間には、個体が完全奏効または部分奏効を経験した時間量、ならびに個体が安定した疾患を経験した時間量が含まれ得る。
【0133】
本明細書で使用される「全生存期間」または「OS」とは、特定の期間(例えば、診断または治療の時点から6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、10年、15年、20年、または20年以上)後に生存している可能性が高い群における対象の割合を指す。
【0134】
「生存期間の延長」とは、未治療の患者と比較して(すなわち、医薬で治療されていない患者と比較して)、または指定されたレベルでバイオマーカーを発現しない患者と比較して、及び/または承認された抗腫瘍剤(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体))を用いて治療された患者と比較して、治療された患者の全生存率または無増悪生存率の増加を意味する。
【0135】
本明細書で使用される「ハザード比」または「HR」とは事象発生率の統計的定義である。本発明の目的のために、ハザード比は、実験群(例えば、治療)群/アームにおける事象(例えばPFSまたはOS)の確率を、任意の特定の時点で、対照群/アームにおける事象の確率で割ったものとして表すものとして定義される。値が1のHRは、エンドポイントの相対リスク(例えば、死亡)が「治療」群と「対照」群の両方で等しいことを示す;1より大きい値は、リスクが対照群と比較して治療群において大きいことを示す;そして1未満の値は、リスクが治療群と比較して対照群において大きいことを示す。無増悪生存期間分析における「ハザード比」(すなわち、PFS HR)は、2つの無増悪生存期間曲線の差のまとめであり、追跡期間にわたって、対照と比較した治療による死亡リスクの減少を表す。全生存期間分析における「ハザード比」(すなわち、OS HR)は、追跡期間にわたる、対照と比較した治療における死亡リスクの減少を表す、2つの全生存期間曲線間の差の概要である。
【0136】
「抗がん療法」という用語は、がんの治療において有用な療法を指す。抗がん療法剤の例には、細胞障害剤、化学療法剤、成長阻害剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及びがんを治療するための他の薬剤、例えば次の標的:PDGFR-β、BlγS、APRIL、BCMA受容体(複数可)、TRAIL/Apo2、他の生理活性及び有機化学薬剤などのうちの1つ以上と結合する、抗CD20抗体、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(イマチニブメシル酸塩))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、アンタゴニスト(例えば、中和抗体)が含まれるが、これらに限定される。これらの組み合わせもまた、本発明に含まれる。
【0137】
本明細書における「活性な」または「活性」とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドの生物学的及び/または免疫学的活性を保持するポリペプチドの形態(複数可)を指し、「生物学的」活性とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドが有する抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力以外の天然のまたは天然に存在するポリペプチドによって引き起こされる生物学的機能(阻害または刺激のいずれか)を指し、「免疫学的」活性とは、天然のまたは天然に存在するポリペプチドが有する抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力を指す。
【0138】
「アンタゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する任意の分子を含む。同様の様式で、「アゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。好適なアゴニストまたはアンタゴニストの分子としては、詳細には、アゴニストまたはアンタゴニストの抗体または抗体断片、天然ポリペプチドの断片またはアミノ酸配列バリアントが含まれる。ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを特定する方法は、ポリペプチドを候補アゴニストまたはアンタゴニスト分子と接触させることと、ポリペプチドに通常関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することとを含み得る。
【0139】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を調節する治療剤の使用を指す。免疫療法は、活性免疫療法または抑制性免疫療法であり得る。「活性免疫療法」という用語は、例えば、T細胞応答を含む免疫応答を誘導、増強、または促進する治療剤の使用を指す。「抑制性免疫療法」という用語は、例えば、T細胞応答を含む免疫応答を妨害、抑制、または阻害する治療剤の使用を指す。
【0140】
「PD-L1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するように、PD-L1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能が復元または増強される分子を指す。本明細書で使用されるPD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-1結合アンタゴニスト、ならびにPD-L1とPD-1との間の相互作用を妨害する分子(例えば、PD-L2-Fc融合体)を含む。
【0141】
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1またはB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合パートナーとの結合を阻害する分子である。詳細な態様において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及び/またはB7-1との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1またはB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(CAS登録番号:1422185-06-5)であり、MPDL3280Aとしても知られており、本明細書に記載される。別の特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70であり、本明細書に記載される。別の特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、MDX-1105であり、本明細書に記載される。別の特定の態様において、抗PD-L1抗体は、MEDI4736(デュルバルマブ)であり、本明細書に記載される。別の特定の態様において、抗PD-L1抗体は、MSB0010718C(アベルマブ)であり、本明細書に記載される。
【0142】
本明細書で使用される「PD-1結合アンタゴニスト」とは、PD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、その結合パートナーとの結合を阻害する分子である。詳細な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2との結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体及びその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1またはPD-L1を介して、媒介性シグナル伝達、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、その結果、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、CT-011(ピジリズマブ)である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MEDI-0680(AMP-514)である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストはREGN2810である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、BGB-108である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。
【0143】
「抗PD-L1抗体」及び「PD-L1に結合する抗体」という用語は、抗体がPD-L1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD-L1と結合し得る抗体を指す。一実施形態において、抗PD-L1抗体の、無関係の非PD-L1タンパク質との結合の程度は、例えばRIAにより測定されたときに、抗体の、PD-L1との結合の約10%未満である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、異なる種由来のPD-L1の間で保存されているPD-L1のエピトープと結合する。
【0144】
「抗PD-1抗体」及び「PD-1と結合する抗体」という用語は、抗体がPD-1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD-1と結合し得る抗体を指す。一実施形態において、抗PD-1抗体の、無関係の非PD-1タンパク質との結合の程度は、例えばRIAにより測定されたときに、抗体の、PD-1との結合の約10%未満である。特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、異なる種由来のPD-1の間で保存されているPD-1のエピトープと結合する。
【0145】
本明細書で定義される「抑制性間質アンタゴニスト」は、間質に関連する遺伝子または遺伝子産物(例えば、腫瘍関連間質)の生物学的活性及び/または機能を部分的もしくは完全に遮断、阻害、または中和する分子である。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、線維性腫瘍に関連する遺伝子または遺伝子産物の生物学的活性及び/または機能を部分的もしくは完全に遮断、阻害、または中和する。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストを用いた治療は、間質の低減をもたらし、それにより免疫療法の活性の増加をもたらす;例えば、免疫細胞(例えば、炎症性細胞)を活性化して線維組織(例えば、線維性腫瘍)に浸潤する能力を増強することによる。間質遺伝子アンタゴニストの標的は、当技術分野で即知であり、例えば、Turley et al.,Nature Reviews Immunology 15:669-682,2015、及びRosenbloom et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1832:1088-1103,2013を参照されたい。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、ポドプラニン(PDPN)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、SMAD、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、結合組織成長因子(CTGF / CCN2)、内皮-1(ET-1)、AP-1、インターロイキン(IL)-13、リシルオキシダーゼホモログ2(LOXL2)、エンドグリン(CD105)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、血管細胞接着タンパク質1(CD106)、胸腺細胞抗原1(THY1)、ベータ1インテグリン(CD29)、血小板由来成長因子(PDGF )、PDGF受容体A(PDGFRα)、PDGF受容体B(PDGFRβ)、ビメンチン、平滑筋アクチンアルファ(ACTA2)、デスミン、エンドシアリン(CD248)、またはS100カルシウム結合タンパク質A4(S100A4)アンタゴニストである。
【0146】
本明細書で定義される「TGF-βアンタゴニスト」は、TGF-βとTGF-β細胞受容体などの1つ以上のその相互作用パートナーとの相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する任意の分子である。いくつかの実施形態において、「TGF-β結合アンタゴニスト」は、TGF-βのその結合パートナーとの結合を阻害する分子である。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-βの活性化を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストには、TGF-βと1つ以上のその相互作用パートナーとの相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止、または妨害する抗TGF-β抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びその他の分子が含まれる。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、ポリペプチド、小分子、または核酸である。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニスト(例えば、TGF-β結合アンタゴニスト)は、TGF-β1、TGF-β2、及び/またはTGF-β3を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニスト(例えば、TGF-β結合アンタゴニスト)は、TGF-β受容体-1(TGFBR1)、TGF-β受容体-2(TGFBR2)、及び/またはTGF-β受容体-3(TGFBR3)を阻害する。
【0147】
「抗TGF-β抗体」及び「TGF-βと結合する抗体」という用語は、抗体がTGF-βを標的とする上で診断及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でTGF-βと結合し得る抗体を指す。一実施形態において、抗TGF-β抗体の、無関係の非TGF-βタンパク質との結合の程度は、例えばRIAにより測定されたときに、抗体の、TGF-βとの結合の約10%未満である。特定の実施形態において、抗TGF-β抗体は、異なる種由来のTGF-βの間で保存されているTGF-βのエピトープと結合する。いくつかの実施形態において、TGF-β抗体は、TGF-β1、TGF-β2、及び/またはTGF-β3を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-β抗体は、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3を阻害する。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、汎特異的抗TGF-β抗体である。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、例えば、米国特許第5,571,714号または国際特許出願第WO92/00330号、第WO92/08480号、第WO 95/26203号、第WO97/13844号、第WO00/066631号、第WO05/097832号、第WO06/086469号、第WO05/010049号、第WO06/116002号、第WO07/076391号、第WO12/167143号、第WO13/134365号、第WO14/164709号、もしくは第WO16/201282号に開示される任意の抗TGF-β抗体であり得、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、抗TGF-β抗体は、フレソリムマブ、メテリムマブ、レルデリムマブ、1D11、2G7、またはそれらの誘導体である。
【0148】
「血管新生阻害剤」または「抗血管新生剤」とは、血管新生、脈管形成、または望まれない血管透過性を、直接的または間接的のいずれかで阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組み換えタンパク質、抗体、またはこれらの複合体もしくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤には、血管新生因子またはその受容体の血管新生活性を妨害し、遮断する薬剤が含まれることを理解すべきである。例えば、抗血管新生剤は、上記で定義した血管新生剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF-AまたはVEGF-A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt-1受容体)に対する抗体、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ)などの抗PDGFR阻害剤である。抗血管新生剤には、天然の血管新生阻害剤、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンなども含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217-39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172-3179(2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管新生療法を列挙している表3);Ferrara&Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359-1364(1999);Tonini et al.,Oncogene,22:6549-6556(2003)、及びSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200-206(2003)を参照されたい。
【0149】
「細胞傷害剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の機能を阻害もしくは防止する物質、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、及びLuの放射性同位体);化学療法剤、例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤、核酸分解酵素などの酵素及びそれらの断片、抗生物質、及び細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらのフラグメント及び/または変異型を含む)などの毒素、ならびに下に開示される種々の抗腫瘍または抗がん薬剤を包含するものとする。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0150】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学化合物を含む。化学療法剤の例としては、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スニチブ(SUTENT(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナスネート(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Pfizer)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(SCH66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、アルキル化剤(チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなど)、アルキルスルホネート(ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなど)、アジリジン(ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなど)、エチレンイミン及びメチラメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミンを含む)、アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン)、カンプトテシン(トポテカン及びイリノテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアゾゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む)、酢酸シプロテロン、5α-還元酵素(フィナステリド及びデュタステリドを含む)、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン、アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成類似体KW-2189及びCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード(クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど)、ニトロソ尿素(カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチンなど)、エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンω1I(Angew Chem.Intl. Ed.Engl.33:183-186,1994);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団)などの抗生物質、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン、マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンノール(mopidamnol)、ニトラエリン、ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(パクリタキセル;Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(登録商標)(発色団不含)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、及びTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル、ドキセタキセル(doxetaxel);Sanofi-Aventis);クロランブシル(chloranmbucil);GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体が含まれる。
【0151】
化学療法剤としてはまた、抗エストロゲン剤及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)などの、腫瘍に対してホルモン作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例としては、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)、クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン(iodoxyfene)、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミファイン(toremifine citrate);副腎におけるエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害する、アロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)など;抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなど;ブセレリン、トリプテレリン(tripterelin)、酢酸メドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、全てのトランスレチオニン酸(transretionic acid)、フェンレチニド、ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);タンパク質キナーゼ阻害剤;脂質キナーゼ阻害剤;アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Ralf、及びH-Ras;リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤;遺伝子療法ワクチンなどのワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、及びVAXID(登録商標)、PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2;トポイソメラーゼ1阻害剤、例えば、LURTOTECAN(登録商標)など;ABARELIX(登録商標)rmRH;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体も含まれる。
【0152】
化学療法剤には、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体薬物複合体、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も含まれる。本発明の化合物と組み合わせて薬剤としての治療可能性を有する追加のヒト化モノクローナル抗体には:アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ(toralizumab)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、及びインターロイキン-12 p40タンパク質を認識するように遺伝子修飾された排他的にヒト配列の組換え完全長IgG1 λ抗体である、抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が含まれる。
【0153】
化学療法剤には、EGFRに結合するか、または他の様式でそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を阻止または低減する化合物を指す「EGFR阻害剤」も含まれ、これは代替的に「EGFRアンタゴニスト」とも称される。かかる薬剤の例には、EGFRと結合する抗体及び小分子が含まれる。EGFRと結合する抗体の例としては、MAb579(ATCC CRL HB8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb225(ATCC CRL8508)、MAb528(ATCC CRL8509)(Mendelsohnらの米国特許第4,943,533号を参照されたい)、ならびにこれらのバリアント(キメラ化225(C225またはセツキシマブ、ERBUTIX(登録商標))及び再成形ヒト225(H225)(Imclone Systems Inc.のWO96/40210を参照されたい)、IMC-11F8、完全ヒトEGFR標的抗体(Imclone);II型変異EGFRに結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載のEGFRに結合するヒト化抗体及びキメラ抗体;ならびにEGFRに結合するヒト抗体、例えば、ABX-EGFまたはパニツムマブ(WO98/50433、Abgenix/Amgenを参照されたい);EMD55900(Stragliotto et al.Eur.J.Cancer 32A:636-640(1996));EGFR結合においてEGF及びTGF-アルファの両方と競合するEGFRに対して指向されたヒト化EGFR抗体EMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3、及びE7.6.3として既知であり、かつUS6,235,883に記載の完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc);ならびにmAb806またはヒト化mAb806(Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004))が含まれる。抗EGFR抗体は、細胞傷害剤に複合され、それにより免疫複合体を生成し得る(例えば、欧州特許第659,439A2号、Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFRアンタゴニストには、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498号、ならびに以下のPCT公開第WO98/14451号、WO98/50038、WO99/09016、及びWO99/24037に記載される化合物などの小分子が含まれる。特定の小分子EGFRアンタゴニストには、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals))、PD183805(CI1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、二塩酸塩、Pfizer Inc.)、ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca)、ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca)、BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim)、PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール)、(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン)、CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド)、EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)(Wyeth)、AG1478(Pfizer)、AG1571(SU 5271、Pfizer)、及び二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2-メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が含まれる。
【0154】
化学療法剤には、「チロシンキナーゼ阻害剤」、例えば、前段落に記載のEGFR標的薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724,714(Pfizer及びOSI);二重HER阻害剤、例えば、EGFRに優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能);経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);pan-HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI-1033、Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えば、Raf-1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS-5132;非HER標的TK阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えば、PD 153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えば、CGP 59326、CGP 60261、及びCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの)、キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(tryphostin)(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);pan-HER阻害剤、例えば、CI-1033(Pfizer);Affinitac(ISIS 3521、Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標);または以下の特許公開:米国特許第5,804,396号;WO1999/09016;WO1998/43960;WO1997/38983;WO1999/06378;WO1999/06396;WO1996/30347;WO1996/33978;WO1996/3397、及びWO1996/33980のいずれかに記載されるものが含まれる。
【0155】
化学療法剤としてはまた、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、生BCG、ベバクジマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、オールトランスレチノイン酸(ATRA)、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、ならびにこれらの薬学的に許容される塩も含まれる。
【0156】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞傷害性が低く、酵素によってより活性な親形態へと活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375-382,615th Meeting Belfast(1986)、及びStella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247-267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグには、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、Dアミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、必要に応じて置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは必要に応じて置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるがこれらに限定されず、これらは、より活性な細胞傷害性遊離薬物へと変換され得る。本発明において使用するためのプロドラッグ形態に誘導体化することができる細胞傷害性薬剤の例には、上記の化学療法剤が含まれるがこれらに限定されない。
【0157】
「成長阻害剤」とは、本明細書で使用されるとき、試験管内または生体内のいずれかで細胞(例えば、その成長がPD-L1発現に依存する細胞)の成長及び/または成長を阻害する化合物または組成物を指す。したがって、成長阻害剤は、S期における細胞の割合を著しく低減するものであり得る。成長阻害剤の例には、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が含まれる。古典的なM期遮断剤としては、ビンカ類(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、アントラサイクリン抗生物質ドキソルビシン((8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止する薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤は、S期停止にも波及する。更なる情報は、Murakamiらによる“The Molecular Basis of Cancer,”Mendelsohn and Israel,eds.,第1章,題“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”WB Saunders:Philadelphia,1995)、特にp13に見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイの木に由来する抗がん薬である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセルドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体に由来する微小管のアセンブリを促進し、脱重合を防止することによって微小管を安定させ、細胞内の有糸分裂の阻害をもたらす。
【0158】
「放射線療法」とは、細胞の正常に機能する能力を制限するように、または細胞を完全に破壊するように、細胞に十分な損傷を引き起こす指向性γ線またはβ線の使用を意味する。用量及び治療期間を決定するために当該技術分野で既知の方法が多く存在することが理解される。典型的な治療は、1回の投与として与えられ、典型的な投薬量は、1日あたり10~200単位(グレイ)の範囲である。
【0159】
「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される患者にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
【0160】
「薬学的に許容される担体」とは、患者にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
「添付文書」という用語は、治療用製品の市販のパッケージに通例含まれ、かかる治療用製品の使用に関する指示、用法、用量、投与、併用療法、禁忌、及び/または警告についての情報を含む説明書を指すために使用される。
【0162】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まない。
【0163】
「製品」とは、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患もしくは障害(例えば、がん)の治療のための医薬品、または本明細書に記載のバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製造物(例えば、パッケージもしくは容器)またはキットである。特定の実施形態において、製造物またはキットは、本明細書に記載の方法を実行するためのユニットとして、販売促進、流通、または販売される。
【0164】
「小分子」という用語は、約2000ダルトン以下、好ましくは約500ダルトン以下の分子量を有する任意の分子を指す。
【0165】
「標識」という単語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドプローブなどの試薬または抗体に直接的または間接的に複合または融合され、それが複合または融合される試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能(例えば、放射性同位標識または蛍光標識)であり得、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物もしくは組成物の化学改変を触媒し得る。この用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体と結合すること(すなわち、物理的に連結すること)によるプローブまたは抗体の直接的標識化、ならびに直接的に標識化される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識化を包含することを意図する。間接的標識化の例としては、蛍光標識化された二次抗体を使用した一次抗体の検出、及び蛍光標識化されたストレプトアビジンを用いて検出され得るようなビオチンによるDNAプローブの末端標識化が含まれる。
【0166】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を具体的に包含するが、これは、それらが所望の生物活性を呈する場合に限る。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書中では「抗体」と同じ意味で用いられる。
【0167】
「天然抗体」とは、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖と結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、多数の定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し;その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0168】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から特定及び分離され、及び/または回収された抗体である。その天然環境の汚染成分は、抗体の研究的、診断的、及び/または治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。いくつかの実施形態において、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、抗体の95重量%超、及びいくつかの実施形態においては、99重量%超になるまで;(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたはシルバー染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離された抗体としては、組換え細胞内でインサイチュの抗体が含まれるが、これは、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在していないためである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0169】
「遮断」抗体または抗体「アンタゴニスト」とは、それが結合する抗原の生物活性を阻害または低減する抗体である。例えば、PD-L1特異的アンタゴニスト抗体は、PD-L1と結合し、PD-1とPD-L1及び/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を完全に阻害する。
【0170】
別途指示されない限り、「多価抗体」という表現は、3つ以上の抗原結合部位を含む抗体を表すために本明細書全体で使用される。多価抗体は、好ましくは、3つ以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般には天然配列のIgMまたはIgA抗体ではない。
【0171】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」とは、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0172】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含む可変ドメインである免疫グロブリンの他方の部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、及びCH3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含む。
【0173】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含む。
【0174】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定のセグメントが配列において抗体間で広範囲にわたって異なるという事実を指す。可変または「V」ドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの広がりにわたって均等には分布していない。代わりに、V領域は、各々9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度の可変性のより短い領域によって分離される15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変であるストレッチからなる。「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、例えば、概ねVLにおける残基24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)あたり、ならびに概ねVHにおける残基26~35(H1)、49~65(H2)、及び95~102(H3)あたり(一実施形態では、H1は概ね残基31~35あたり)からのアミノ酸残基(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))、及び/または「超可変ループ」からの残基(例えば、VLにおける残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91-96(L3)、ならびにVHにおいて26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。天然重鎖及び軽鎖可変ドメインは各々、ベータシート構造を接続し、かつある場合には、その一部を形成するループを形成する、3つの超可変領域によって接続されたベータシート立体配置を主に採用する4つのFRを含む。各鎖内の超可変領域は、FRによって近接近し一緒に保持されており、他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD. (1991)を参照されたい)。したがって、HVR及びFR配列は、一般に、VH(またはVL)において次の配列中に出現する:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0175】
本明細書の目的での「アクセプターヒトフレームワーク」とは、以下に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むか、またはアミノ酸配列変化を含有し得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列において同一である。
【0176】
本明細書で使用される「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、及び/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。概して、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。天然抗体において、H3及びL3は、これらの6つのHVRのうちで最も高い多様性を呈し、特にH3が、抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000);Johnson and Wu,Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科抗体は、軽鎖の非存在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。.
【0177】
多くのHVR描写が用いられており、これらは本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md. (1991))。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置に言及する(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRのうちの各々に由来する残基が以下に記載される。
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35b H26-H35b H26-H32 H30-H35b (Kabat 付番)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35 (Chothia 付番)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0178】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24-36または24-34(L1)、46-56または50-56(L2)、及び89-97または89-96(L3)、ならびにVHにおいて、26-35(H1)、50-65または49-65(H2)、及び93-102、94-102、または95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って付番される。
【0179】
「フレームワーク」または「FR」残基とは、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0180】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループに由来する。一般に、この配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるサブグループである。一実施形態において、VLについては、サブグループは、Kabatら(上記参照)におけるサブグループカッパIである。一実施形態において、VHについては、サブグループは、Kabatら(上記参照)におけるサブグループIIIである。
【0181】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される付番システムを指す。この付番システムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入断片(Kabatによる残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat付番は、「標準の」Kabatにより付番された配列との抗体の配列の相同性領域でのアライメントによって所与の抗体について決定され得る。
【0182】
Kabat付番システムは、一般に、可変ドメイン内の残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest. 5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md. (1991))。「EU付番システム」または「EU指標」とは、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する際に使用される(例えば、Kabatら(上記参照)で報告されているEU指標)。「KabatにあるようなEU指数」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基付番を指す。本明細書で別途指示されない限り、抗体の可変ドメイン中の残基番号への言及は、Kabat付番システムによる残基付番を意味する 本明細書で別途指示されない限り、抗体の定常ドメイン中の残基番号への言及は、EU付番システム(例えば、米国仮出願第60/640,323号、EU付番に関する図面を参照されたい)による残基付番を意味する。
【0183】
本明細書で別途示されない限り、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、Kabatら(上記参照)に従って本明細書において付番される。
【0184】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に定義される抗体断片ではなく、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指すように、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、詳細には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0185】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0186】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有し、「Fab」断片と称される2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映する名称である、残った「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、F(ab’)断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋し得る。
【0187】
本明細書の「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在することもあれば、しないこともある。本明細書で別途指定されない限り、Fc 領域または定常領域内のアミノ酸残基の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されている、EU指数とも称されるEU付番システムに従う。
【0188】
「エフェクター機能」とは、抗体アイソタイプにより異なる抗体のFc領域に起因し得る生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が含まれる。
【0189】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施形態において、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合している1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似している「二量体」構造で会合し得るように、可塑性ペプチドリンカーによって共有結合され得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
【0190】
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)もまた含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端への数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’の本明細書における表記である。F(ab’) 抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的結合もまた既知である。
【0191】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0192】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、VH-VLユニットがポリエピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生物学的分子上で2つの異なるエピトープと、または異なる生物学的分子上で各エピトープと結合し得る)、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を具体的には網羅する。かかる多重特異性抗体としては、全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、及びトリアボディ、共有結合または非共有結合した抗体断片が含まれるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」は、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープと特異的に結合し得る能力を指す。「二特異性(dual specificity)」または「二重特異性(bispecificity)」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つの異なるエピトープと特異的に結合することができる能力を指す。しかしながら、二重特異性抗体とは対照的に、二特異性抗体は、アミノ酸配列が同一である2つの抗原結合アームを有し、各Fabアームにより2つの抗原を認識し得る。二特異性により、抗体は、高い親和性で単一のFabまたはIgG分子として2つの異なる抗原と相互作用することが可能になる。一実施形態によれば、IgG1中の多重特異性抗体は、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で各エピトープと結合を形成する。「単一特異性」とは、1つのエピトープのみと結合し得る能力を指す。
【0193】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)と接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させて、2つの抗原結合部位を生成させる。ダイアボディは、二価特異性、または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)においてより詳細に記載される。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134 (2003)に記載される。
【0194】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が所有する定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMという5つの主要な抗体クラスが存在し、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分けられ得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、e、γ、及びμと称される。
【0195】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を指し、例えば、その集団を含んでいる個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、自然発生変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態において、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列は、例えば、標的との親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、生体内でのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するようにさらに改変され得、及び改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらには他の免疫グロブリンが典型的に夾雑していないという点で有利である。
【0196】
「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495-97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma 14(3):253-260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628,1991;Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597,1992、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310,2004、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093,2004、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472,2004、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132,2004を参照されたい);及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有するヒトまたはヒト様抗体を動物で産生するための技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551,1993、Jakobovits et al.,Nature 362:255-258,1993、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33,1993、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856-859,1994、Morrison,Nature 368:812-813,1994、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851,1996、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826,1996、ならびにLonberg et al.,Intern.Rev.Immunol.13:65-93,1995)を含む様々な技法によって作製され得る。
【0197】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、詳細には、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそれらが所望される生物学的活性を呈する限りそのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:6851-6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することによって産生された抗体由来である。
【0198】
「ヒト抗体」とは、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を詳細には除外する。
【0199】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト抗体に由来する配列を最小限含有するキメラ抗体である。大部分は、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望される抗体特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって代置される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって代置される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の能力をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体は、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むであろう。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525,1986、Riechmann et al.,Nature 332:323-329,1988、及びPresta,Curr.Op. Struct. Biol.2:593-596,1992を参照されたい。
【0200】
「野生型(WT)」もしくは「参照」配列または「野生型」もしくは「参照」タンパク質/ポリペプチド(参照抗体のHVRまたは可変ドメインなど)の配列は、変異の導入を通してバリアントポリペプチドが得られる参照配列であり得る。一般に、所与のタンパク質の「野生型」配列は、自然において最も一般的な配列である。同様に、「野生型」遺伝子配列は、自然において最も一般的に見られる遺伝子についての配列である。変異は、天然のプロセスを介してまたは人為的手段を介して、「野生型」遺伝子(故に、それがコードするタンパク質)中に導入され得る。かかるプロセスの産物は、元の「野生型」タンパク質または遺伝子の「バリアント」または「変異」型である。
【0201】
開始または参照ポリペプチド(例えば、参照抗体またはその可変ドメイン(複数可)/HVR(複数可))の「バリアント」または「変異」とは、(1)開始または参照ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、(2)天然または人工(人為的)変異誘発のいずれかを介して開始または参照ポリペプチドから誘導されたポリペプチドである。かかるバリアントには、例えば、本明細書では「アミノ酸残基改変」と称される、目的のポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。このため、バリアントHVRは、開始または参照ポリペプチド配列(ソース抗体または抗原結合断片のものなど)に関するバリアント配列を含むHVRを指す。アミノ酸残基改変は、本文脈では、開始または参照ポリペプチド配列(参照抗体またはその抗原結合断片のものなど)における対応する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸を指す。最終バリアントまたは変異構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせることができるが、その最終構築物が、所望の機能的特徴を保有することを条件とする。アミノ酸変化、例えば、グリコシル化部位の数または位置の変化も、ポリペプチドの翻訳後プロセスを改変し得る。
【0202】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位の間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途指示されない限り、本明細書で使用される「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、本明細書に記載の方法を含む当技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態は本明細書に記載される。
【0203】
抗体の標的分子との結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープとの「特異的結合」またはそれ「と特異的に結合する」またはそれ「と特異的」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、分子の結合を対照分子の結合と比較して決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子、例えば、過剰な標識されていない標的との競合によって決定し得る。この場合、標識された標的のプローブとの結合が過剰な標識されていない標的によって競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。本明細書に用いられる特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドまたはエピトープに対する「特異的結合」または「特異的に結合する」または「に特異的」という用語は、例えば、10-4M以下、あるいは10-5M以下、あるいは10-6M以下、あるいは10-7M以下、あるいは10-8M以下、あるいは10-9M以下、あるいは10-10M以下、あるいは10-11M以下、あるいは10-12M以下という標的についてのKd、または10-4M~10-6Mもしくは10-6M~10-10Mもしくは10-7M~10-9Mという範囲のKdを有する分子によって示され得る。抗原に対する高い親和性は、低いKd値によって測定される。一実施形態において、「特異的結合」という用語は、分子が、いずれの他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープと結合する、結合を指す。
【0204】
「親和性成熟」抗体とは、改変を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の改変を有し、かかる改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0205】
参照抗体と「同じエピトープと結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて、参照抗体のその抗原との結合を50%以上遮断する抗体、及び逆に、競合アッセイにおいて、抗体のその抗原との結合を50%以上遮断する参照抗体を指す。
【0206】
「免疫複合体」とは、細胞傷害性剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)に複合される抗体である。
【0207】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」とは、一緒に共有結合した2つの部分を有するポリペプチドを指し、これらの部分のそれぞれは、異なる特性を有するポリペプチドである。この特性は、試験管内または生体内での活性などの生物学的特性であり得る。この特性はまた、標的分子との結合、反応の触媒作用などの単純な化学的または物理的特性であり得る。これらの2つの部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、またはペプチドリンカーを介して連結され得るが、互いのリーディングフレーム内にある。
【0208】
本明細書で使用される「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた、抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち、「異種の」)所望される結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、典型的に、少なくとも受容体またはリガンドの結合部位を含む連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1、IgG2(IgG2A及びIgG2Bを含む)、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから取得され得る。Ig融合物は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の場所に、本明細書に記載されるポリペプチドまたは抗体のドメインの置換を含む。特に好ましい実施形態において、免疫グロブリン融合物は、IgG1分子のヒンジ、CH2、及びCH3、またはヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合物の作製に関して、米国特許第5,428,130号も参照されたい。例えば、本明細書における療法に有用な薬物としての有用なイムノアドヘシンとしては、免疫グロブリン配列の定常ドメインに融合される、PD-L1もしくはPD-L2の細胞外ドメイン(ECD)もしくはPD-1結合部分、またはPD-1の細胞外もしくはPD-L1もしくはPD-L2結合部分(それぞれ、PD-L1 ECD-Fc、PD-L2 ECD-Fc、及びPD-1 ECD-Fcなど)を含むポリペプチドが含まれる。細胞表面受容体のIg FcとECDとのイムノアドヘシンの組み合わせは、可溶性受容体と称されることがある。
【0209】
本明細書で特定されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、最大の配列同一性パーセントが得られるように、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、いずれの保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一である割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のための整列は、当業者が備えている技能の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、アライメントを測定するための適切なパラメータを判定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって記述され、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁(Washington D.C.,20559)に提出されており、米国著作権番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に利用可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで使用する場合はコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定されており、変動しない。
【0210】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下によって算出され、
100×分数X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によってそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解される。別途具体的に示されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0211】
本明細書で同義に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」とは、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体であり得、代替的にDNAもしくはRNAポリメラーゼによってまたは合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。このため、例えば、本明細書で定義されるポリヌクレオチドとしては、非限定的に、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であり得るか、または一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA及びRNAを含む、ハイブリッド分子が含まれる。加えて、「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、RNAもしくはDNAまたはRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。かかる領域内の鎖は、同じ分子から、または異なる分子からであり得る。これらの領域は、分子のうちの1つ以上の全てを含み得るが、より典型的には分子のうちのいくつかの一領域のみを伴う。三重らせん領域の分子のうちの1つはオリゴヌクレオチドであることが多い。「ポリヌクレオチド」という用語はcDNAを包含する。
【0212】
ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾されたヌクレオチドを含み得る。存在する場合には、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組立ての前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって遮られ得る。ポリヌクレオチドは、標識との複合などによって、合成後にさらに修飾され得る。修飾の他の種類としては、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上の類似体での置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホン酸塩、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)によるもの、及び電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、懸垂部分、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リシンなど)などを含むもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラーレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾結合(例えば、アルファアノマー核酸など)によるもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾形態などが含まれる。さらに、糖内に通常存在するヒドロキシル基のうちのいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基により代置されるか、標準的な保護基により保護されるか、もしくは活性化されて追加のヌクレオチドへの追加の結合を準備してもよく、または固体もしくは半固体支持体に複合され得る。5’及び3′末端OHをリン酸化してもよいし、またはアミンもしくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換してもよい。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル-、2’-フルオロ-、または2’-アジド-リボース、炭素環糖の類似体、α-アノマ-糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース、またはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、アクリル酸類似体、及び脱塩基ヌクレオシド類似体、例えば、メチルリボシドを含む、当該技術分野で一般的に知られているリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態も含み得る。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替的な連結基によって代置され得る。これらの代替的な連結基としては、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、“(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH(「ホルムアセタール」)に置き換えられる実施形態が挙げられるが、これらに限定されず、各RまたはR’は独立して、Hであるか、または置換もしくは非置換アルキル(1-20C)(必要に応じてエーテル(-O-)結合を含有する)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルである。ポリヌクレオチド内の全ての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNA及びDNAを含む本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0213】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」とは、一般に、約250ヌクレオチド長未満であるが、必ずしもそうではない短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、合成であり得る。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、等しく完全にオリゴヌクレオチドに適用可能である。
【0214】
「プライマー」という用語は、一般に遊離3’-OH基を提供することによって、核酸にハイブリダイズし、相補的核酸の重合を可能にし得る一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
【0215】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、同義に使用され、外因性核酸が中に導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を包含する。宿主細胞としては、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数に関わらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではない場合があるが、変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0216】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を誘導し得る。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0217】
「単離された」核酸分子は、少なくとも1つの混入核酸分子から同定及び分離される核酸分子であり、この核酸分子は、通常、核酸の天然源と関連する。単離核酸分子は、それが天然にみられる形態または状況にあるもの以外のものである。したがって、単離された核酸分子は、天然細胞中に存在する核酸分子とは区別される。しかしながら、単離された核酸分子とは、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なる染色体位置にある場合、通常は抗体を発現する細胞中に含有される核酸分子を含む。
【0218】
換的に使用され得る「変異荷重(mutational load)」、「変異荷重(mutation load)」、「変異量」、「腫瘍遺伝子変異量スコア」「TMBスコア」「組織腫瘍遺伝子変異量スコア」、及び「tTMBスコア」という用語の各々は、腫瘍組織試料(例えば、FFPE試料、保存記録用試料、新鮮試料、または凍結試料)において検出された、事前に決定されたセットの遺伝子における(例えば、事前に決定されたセットの遺伝子のコード領域における)事前に選択された単位あたり(例えば、メガベースあたり)の改変(例えば、1つ以上の改変、例えば、1つ以上の体細胞改変)のレベル(例えば、数)を指す。TMBスコアは、例えば、全ゲノムまたはエクソームベースで、またはゲノムもしくはエクソームのサブセットベースで測定することができる。特定の実施形態において、ゲノムまたはエクソームのサブセットに基づいて測定されたTMBスコアを外挿して、ゲノム全体またはエクソーム変異荷重を決定することができる。いくつかの実施形態において、TMBスコアは、個体(例えば、動物(例えば、ヒト))内の累積体細胞変異のレベルを指す。TMBスコアは、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する患者における体細胞変異の蓄積を指し得る。いくつかの実施形態において、TMBスコアは、個体の全ゲノムにおける累積変異を指す。いくつかの実施形態において、TMBスコアは、個体から収集された特定の試料(例えば、組織試料、生検)内の累積変異を指す。
【0219】
「体細胞変異」または「体細胞改変」という用語は、体細胞(例えば、生殖細胞系列の外にある細胞)中で生じる遺伝子改変を指す。遺伝子改変の例としては、点変異(例えば、単一ヌクレオチドの別のものへの交換(例えば、サイレント変異、ミスセンス変異、及びナンセンス変異))、挿入及び欠失(例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加及び/または除去(例えば、挿入欠失))、増幅、遺伝子複製、コピー数の改変(CNA)、再配列、ならびにスプライスバリアントが含まれるが、これらに限定されない。特定の変異の存在は、疾患状態(例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌))と関連し得る。
【0220】
特定の実施形態において、体細胞改変は、サイレント変異(例えば、同義的改変)である。他の実施形態において、体細胞改変は、非同義的単一ヌクレオチド変異型(SNV)である。他の実施形態において、体細胞改変は、パッセンジャー変異(例えば、クローンの適応度に検出可能な影響を及ぼさない改変)である。特定の実施形態において、体細胞改変は、例えば、その病原性が確認も除外もできない改変などの意義不明の変異(VUS)である。ある特定の実施形態において、体細胞改変は、がん表現型と関連付けられるとは識別されていない。
【0221】
特定の実施形態において、体細胞改変は、細胞分裂、成長、または生存に与える影響と関連付けられる。他の実施形態において、体細胞改変は、細胞分裂、成長、または生存に与える影響と関連付けられる。
【0222】
ある特定の実施形態において、体細胞改変の数は、サブゲノム範囲内の機能的改変を除外する。
【0223】
いくつかの実施形態において、機能的改変は、参照配列(例えば、野生型配列または変異していない配列)と比較して、細胞分裂、成長、または生存に対する影響を有する(例えば、細胞分裂、成長、または生存を促進する)改変である。ある特定の実施形態では、機能的改変は、機能的改変のデータベース、例えば、COSMICデータベース(参照により全体が本明細書に組み込まれる、Forbes et al.Nucl.Acids Res.43(D1):D805-D811,2015を参照されたい)に含まれていることによって、そうであると識別される。他の実施形態において、機能的改変は、既知の機能状態を有する(例えば、COSMICデータベースにおいて既知である体細胞改変として発生する)改変である。特定の実施形態において、機能的改変は、見込みある機能状態(例えば、腫瘍サプレッサー遺伝子中の切断)を有する改変である。特定の実施形態において、機能的改変は、ドライバー変異(例えば、クローンに、例えば細胞生存または繁殖の増加によってその微小環境において選択的優位性を付与する改変)である。他の実施形態において、機能的変化は、クローン展開を引き起こすことができる変化である。ある特定の実施形態において、機能的改変は、(a)増殖信号における自足、(b)抗増殖信号に対する、例えば、減少した非感受性、(c)減少したアポトーシス、(d)増加した複製能、(e)持続した血管新生、または(f)組織浸潤もしくは転移のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てを引き起こすことができる改変である。
【0224】
特定の実施形態において、機能的改変は、パッセンジャー変異(例えば、細胞のクローンの適合性に検出可能な影響を及ぼさない改変でない)ではない。特定の実施形態において、体細胞改変は、意義不明の変異(VUS)ではない(例えば、その病原性が確認されていなくてもよく、また除外されていなくてもよい改変ではない)。
【0225】
特定の実施形態において、事前に決定されたセットの遺伝子における事前に選択された腫瘍遺伝子中の複数(例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)の機能的改変が除外される。特定の実施形態において、事前に決定されたセットの遺伝子における事前に選択された遺伝子(例えば、腫瘍遺伝子)中の全ての機能的改変が除外される。特定の実施形態において、事前に決定されたセットの遺伝子における複数の事前に選択された遺伝子(例えば、腫瘍遺伝子)中の複数の機能的改変が除外される。特定の実施形態において、事前に決定されたセットの遺伝子における全ての遺伝子(例えば、腫瘍遺伝子)中の全ての機能的改変が除外される。
【0226】
特定の実施形態において、体細胞改変の数は、サブゲノム範囲内の生殖細胞系列変異を除外する。
【0227】
胞系列改変は、SNP、塩基置換、挿入、欠失、インデル、またはサイレント変異(例えば、同義的変異)である。
【0228】
特定の実施形態において、生殖細胞変化は、適合正常配列との比較を使用しない方法の使用によって除外される。他の実施形態において、生殖細胞系列改変は、アルゴリズムの使用を含む方法によって除外される。ある特定の実施形態では、生殖細胞系列改変は、生殖細胞系列改変のデータベース、例えば、dbSNPデータベース(参照により全体が本明細書に組み込まれる、Sherry et al.Nucleic Acids Res.29(1):308-311,2001を参照されたい)に含まれていることによって、そうであると識別される。他の実施形態では、生殖細胞系列改変は、ExACデータベース(参照により全体が本明細書に組み込まれる、Exome Aggregation Consortium et al.bioRxiv preprint,October 30,2015を参照されたい)の2つ以上のカウントに含めることにより、そうであると識別される。いくつかの実施形態では、生殖細胞系列改変は、1000 Genome Projectデータベース(参照により全体が本明細書に組み込まれる、McVean et al.Nature 491,56-65, 2012を参照されたい)に含まれていることによって、そうであると識別される。いくつかの実施形態において、生殖細胞系列改変は、ESPデータベース(Exome Variant Server,NHLBI GO Exome Sequencing Project(ESP),Seattle,WA)に含まれることによって、そうであると識別される。
【0229】
本明細書で使用される「参照TMBスコア」という用語は、例えば診断、予測、予後、及び/または治療決定を行うために、別のTMBスコアと比較されるTMBスコアを指す。例えば、参照TMBスコアは、参照試料、参照集団、及び/または所定の値におけるTMBスコアであり得る。いくつかの事例において、参照TMBスコアは、カットオフ値以上及び/またはカットオフ値以下での、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト療法などの免疫療法を用いた治療に対する個体の応答性と、非PD-L1軸結合アンタゴニスト療法を用いた治療に対する個体の応答性との間の有意差に基づいて、参照集団において、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト療法などの免疫療法を用いて治療されている個体(例えば、患者)の第1のサブセットと、同じ参照集団において、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニストなどの免疫療法を含まない非PD-L1軸結合アンタゴニスト療法を用いて治療されている個体(例えば、患者)の第2のサブセットと、を有意に分離するカットオフ値である。いくつかの事例において、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト療法などの免疫療法を用いた治療に対する個体の応答性は、カットオフ値以上の非PD-L1軸結合アンタゴニスト療法を用いた治療に対する個体の応答性と比較して有意に改善される。いくつかの事例において、非PD-L1軸結合アンタゴニスト療法を用いた治療に対する個体の応答性は、カットオフ値以下の、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト療法などの免疫療法を用いた治療に対する個体の応答性と比較して有意に改善される。
【0230】
参照TMBスコアの数値は、タイプ、TMBスコアを測定するために使用される方法論、及び/またはTMBスコアを生成するために使用される統計的方法に応じて異なり得ることを当業者は理解するであろう。
【0231】
「等価TMB値」という用語は、体細胞バリアント(例えば、体細胞変異)の数を塩基配列(例えば、約1.1 Mb(例えば、約1.125Mb)、例えば、FOUNDATIONONE(登録商標)パネルによる評価)の数で割ることによって計算できるTMBスコアに対応する数値を指す。一般に、TMBスコアは、配列決定されたゲノム領域のサイズに直線的に関連していることを理解されたい。かかる等価TMB値は、TMBスコアと比較して同等の腫瘍遺伝子変異量の程度を示し、例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)に対するがん患者の応答を予測するために、本明細書に記載の方法で互換的に使用できる。例として、いくつかの実施形態において、等価TMB値は、体細胞バリアント(例えば、体細胞変異)の数を配列決定された塩基の数で割ることによって計算できる正規化されたTMB値である。例えば、等価TMB値は、定義された数の塩基配列(例えば、約1.1Mb(例えば、約1.125Mb)、例えば、FOUNDATIONONE(登録商標)パネルによる評価)で数えられる体細胞変異の数として表すことができる。例えば、約25のTMBスコア(約1.1 Mbを超える体細胞変異の数として決定される)は、約23変異/Mbの等価TMB値に対応する。本明細書に記載されるTMBスコア(例えば、TMBスコアは、定義された数の塩基配列にわたって数えられた体細胞変異の数として表される(例えば、約1.1Mb(例えば、約1.125Mb)、例えば、FOUNDATIONONE(登録商標)パネルによる評価))は、異なる方法論(例えば、総エクソーム配列決定または全ゲノム配列決定)を使用して得られた同等のTMB値を包括する。例として、総エクソームパネルの場合、標的領域は約50Mbであり、約500体細胞変異が検出された試料は、約10変異/MbのTMBスコアと等価TMB値である。いくつかの実施形態において、ゲノムまたはエクソームのサブセット(例えば、遺伝子の所定のセット)における規定数の塩基配列(例えば、約1.1Mb(例えば、約1.125Mb)、例えば、FOUNDATIONONE(登録商標)パネルにより評価)にわたって数えられた体細胞変異の数として決定されるTMBスコアは、総エクソーム配列決定により決定されるTMBスコアから約30%未満(例えば、約30%未満、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、またはそれ以下)で逸脱する。例えば、Chalmers et al.Genome Medicine 9:34,2017を参照されたい。
【0232】
II. 診断方法及びアッセイ
免疫療法(PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)含むが、これらに限定されない)及び/または抑制性間質アンタゴニスト(TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体を含むが、これらに限定されない)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌を含むがこれらに限定されない)を有する個体を特定するための方法及び使用が本明細書で提供される。
【0233】
本明細書に記載される方法及び使用は、部分的には、個体からの試料中における1つ以上の遺伝子(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルを使用して、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法の治療効果を予測でき得るという知見に基づく。
【0234】
本明細書でさらに提供されるのは、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の療法を選択するための方法及びアッセイであり、がんを有する個体が免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高いかを決定する方法;免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法用いた治療に対するがんを有する個体の応答性を予測する方法;ならびに免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングする方法である。本明細書で提供される方法のいずれかは、個体に対して、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)(例えば、セクションIVで後述される)を含む抗がん療法を個体に投与することをさらに含み得る。
【0235】
患者試料において1つを超えるバイオマーカーの発現レベルが決定され、参照発現レベルと比較される本明細書に記載の任意の実施形態において、いくつかの実施形態では、患者試料中における各個別バイオマーカーの発現レベルは、各個別バイオマーカーの参照発現レベルと比較されることを理解されたい。例えば、TGFB1及びTGFBR1の発現レベルが個体からの試料中において決定され、TGFB1及びTGFBR1の参照発現レベルと比較される場合、いくつかの実施形態において、個体からの試料中におけるTGFB1の発現レベルは、TGFB1の参照発現レベルと比較され、個体からの試料中におけるTGFBR1の発現レベルは、TGFBR1の参照発現レベルと比較される。他の実施形態において、1つを超える目的の遺伝子の発現レベルは、例えば、目的の遺伝子の全ての発現レベルの中央値または平均値を計算することを包括する、当業者に即知であり、当業者に既知でかつ、また本明細書に開示される凝集方法によって決定され得る。凝集の前に、目的の各遺伝子の発現レベルは、例えば1つ以上のハウスキーピング遺伝子の発現レベルに正規化することを包含する、当業者に既知でかつ、また本明細書に開示される統計的方法を用いて正規化されてもよいし、または総ライブラリーサイズに正規化されてもよいし、または測定された全遺伝子にわたる中央値または平均発現レベル値に対して正規化されてもよい。いくつかの事例において、複数の目的の遺伝子にわたる凝集の前に、各目的の遺伝子の正規化された発現レベルは、当業者に既知であり、また本明細書に開示される統計的方法を用いることによって、例えば、目的の各遺伝子の正規化発現レベルのZスコアを計算することによって標準化され得る。
【0236】
A. 例示的な22遺伝子シグネチャ
いくつかの実施形態において、本明細書の方法及び使用は、22遺伝子シグネチャから選択される1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子の発現レベルを決定することを伴い、表1に記載される遺伝子が含まれる。
【0237】
例えば、個体からの試料中における表1に記載される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子の発現レベルを決定すること伴う、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定する方法が本明細書に提供され、表1に記載される1つ以上の発現レベルの変化は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの事例において、変化は、増加である。他の事例において、変化は、減少である。
表1:例示的なバイオマーカー
【0238】
本発明は、個体からの試料中における表1に記載される遺伝子の1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルを決定することを含む、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の療法を選択することをさらに提供し、表1に記載される1つ以上の発現レベルの変化は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの事例において、変化は、増加である。他の事例において、変化は、減少である。
【0239】
別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を診断または予測する方法が本明細書で提供され、個体からの試料中における1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)のバイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照発現レベルと比較することとを含み、それにより、がんを診断または予測する。いくつかの実施形態において、参照発現レベルに対する試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)は、個体を診断または予測する。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、表1に記載される。特定の実施形態において、変化は、増加である。
【0240】
さらに別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体が、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高いかを特定する方法が本明細書で提供され、個体の試料中における1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)のバイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照発現レベルと比較することとを含み、それにより、抗がん療法に応答する可能性が高い者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、参照発現レベルと比較した生物学的試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高い個体が特定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、表1に記載される。特定の実施形態において、変化は、増加である。
【0241】
他の実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法の治療効果を最適化する方法が本明細書で提供され、個体から得られた生物学的試料中における1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)のバイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照発現レベルと比較することとを含み、参照発現レベルに対する生物学的試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)は、抗がん療法に応答する可能性が高い者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、表1に記載される。特定の実施形態において、変化は、増加である。
【0242】
22遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の集団における1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルである。特定の実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)である。特定の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がんを有する個体の集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルの中央値である。他の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団における発現レベルの上位40%、上位30%、上位20%、上位10%、上位5%、または上位1%であり得る。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、Zスコア変換された発現レベルの主成分分析によって決定される。特定の実施形態において、参照発現レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、前の時点で患者から得られた生物学的試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の投与の後である。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者からの生物学的試料における1つ以上の遺伝子(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルである。他の実施形態において、参照発現レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0243】
22遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを上回る発現レベル、または発現もしくは数の上昇または増加は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載される及び/または当技術分野で知られているものなどの方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の増加を指す。特定の実施形態において、上昇した発現または数は、増加が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1のうちの1つ以上)の発現レベル/量における増加を指す。いくつかの実施形態において、上昇した発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における全体的な増加を指す。
【0244】
22遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを下回る発現レベル、または低減した(減少した)発現もしくは数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載されているような標準的な既知の方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の低減を指す。特定の実施形態において、低減した発現または数は、減少が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1のうちの1つ以上)の発現レベル/量における減少を指す。いくつかの実施形態において、低減した(減少した)発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における全体的な減少を指す。
【0245】
22遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体からの腫瘍は、腫瘍周囲間質区画におけるCD8+T細胞の局在化によって特徴付けされる免疫除外表現型を有する。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞は、コラーゲン線維またはその近傍に局在する。
【0246】
B. 例示的な6遺伝子シグネチャ
いくつかの実施形態において、本明細書の方法及び使用は、6遺伝子シグネチャから選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の遺伝子の発現レベルを決定することを伴い、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2を含む。
【0247】
例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの遺伝子の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルは、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。
【0248】
さらに別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)有する個体の療法を選択する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの遺伝子の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。
【0249】
別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を診断または予測する方法が本明細書で提供され、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの遺伝子の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することと、試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照発現レベルと比較することとを含み、それにより、がんを診断または予測する。いくつかの実施形態において、参照発現レベルに対する試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)は、個体を診断または予測する。特定の実施形態において、変化は、増加である。
【0250】
さらに別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体が、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高いかを決定する方法が本明細書で提供され、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの遺伝子の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高い者として個体を特定する。
【0251】
他の実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法の治療効果を最適化する方法が本明細書で提供され、個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの遺伝子の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することと、試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照発現レベルと比較することとを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上の発現レベルは、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高い者として個体を特定する。6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの2つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表2に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの3つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表3に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの4つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表4に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの5つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表5に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルを決定することを伴う。
【0252】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、方法は、TGFB1及び/またはTGFBR2の発現レベルを決定することを含み得る。前述の方法のいずれかにおいて、方法は、TGFB1及びTGFBR2の発現レベルを決定することを含み得る。
【0253】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19を含む。他の実施形態において、1つ以上の遺伝子は、COMPを含む。さらなる実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19及びCOMPを含む。
表2:ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの2つの遺伝子の組み合わせ
表3:ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの3つの遺伝子の組み合わせ
表4:ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの4つの遺伝子の組み合わせ
表5:ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの5つの遺伝子の組み合わせ
【0254】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であり、方法は、抗がん療法の有効量を個体に投与することをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5と、または6つ全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である。いくつかの実施形態において、試料中における表2~5に示される例示的な組み合わせのうちの1つ以上の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベル以上である。
【0255】
6遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、TGFB1及び/またはTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR1の参照発現レベル以上である。例えば、いくつかの実施形態において、TGFB1の発現レベルは、TGFB1の参照レベル以上である。いくつかの実施形態において、TGFBR1の発現レベルは、TGFBR1の参照レベル以上である。いくつかの実施形態において、TGFB1及びTGFBR1の発現レベルは、TGFB1及びTGFBR1の参照発現レベル以上である。
【0256】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19を含む。他の実施形態において、1つ以上の遺伝子は、COMPを含む。さらなる実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19及びCOMPを含む。
【0257】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかの他の実施形態において、試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルを下回り、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))のみを含む抗がん療法の有効量を個体に投与することをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5と、または6つ全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルを下回る。いくつかの実施形態において、試料中における表2~5に示される例示的な組み合わせのうちの1つ以上の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルを下回る。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照発現レベルを下回る。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19を含む。他の実施形態において、1つ以上の遺伝子は、COMPを含む。さらなる実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19及びCOMPを含む。
【0258】
例えば、6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかの特定の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の集団における1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の遺伝子(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2)の発現レベルである。特定の実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)である。特定の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がんを有する個体の集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルの中央値である。他の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団における発現レベルの上位40%、上位30%、上位20%、上位10%、上位5%、または上位1%であり得る。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、Zスコア変換された発現レベルの主成分分析によって決定される。特定の実施形態において、参照発現レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、前の時点で患者から得られた生物学的試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の投与の後である。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者からの生物学的試料における1つ以上の遺伝子(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2)の発現レベルである。他の実施形態において、参照発現レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0259】
6遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを上回る発現レベル、または発現もしくは数の上昇または増加は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載される及び/または当技術分野で知られているものなどの方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の増加を指す。特定の実施形態において、上昇した発現または数は、増加が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2のうちの1つ以上)の発現レベル/量における増加を指す。いくつかの実施形態において、上昇した発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2)の発現レベル/量における全体的な増加を指す。
【0260】
6遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを下回る発現レベル、または低減した(減少した)発現もしくは数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載されているような標準的な既知の方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の低減を指す。特定の実施形態において、低減した発現または数は、減少が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2のうちの1つ以上)の発現レベル/量における減少を指す。いくつかの実施形態において、低減した(減少した)発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2)の発現レベル/量における全体的な減少を指す。
【0261】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体からの腫瘍は、腫瘍周囲間質区画におけるCD8+T細胞の局在化によって特徴付けされる免疫除外表現型を有する。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞は、コラーゲン線維またはその近傍に局在する。
【0262】
C. 例示的な19遺伝子シグネチャ(汎-F-TBRS)
いくつかの実施形態において、本明細書の方法及び使用は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1を含む19遺伝子シグネチャから選択される1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の遺伝子の発現レベルを決定することを伴い、本明細書では汎-F-TBRSとも称される。
【0263】
例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの遺伝子の1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの1つ以上の発現レベルは、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。
【0264】
さらに別の実施形態において、がん有する個体の療法を選択する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの遺伝子の1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの1つ以上の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。
【0265】
別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を診断または予測する方法が本明細書で提供され、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの遺伝子の1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することと、試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照発現レベルと比較することとを含み、それにより、がんを診断または予測する。いくつかの実施形態において、参照発現レベルに対する試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)は、個体を診断または予測する。特定の実施形態において、変化は、増加である。
【0266】
さらに別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体が、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高いかを決定する方法が本明細書で提供され、方法は、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの遺伝子の1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの1つ以上の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高い者として個体を特定する。
【0267】
他の実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法の治療効果を最適化する方法が本明細書で提供され、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの遺伝子の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することと、試料中における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照発現レベルと比較することとを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である試料中のACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの1つ以上の発現レベルは、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に応答する可能性が高い者として個体を特定する。
【0268】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルを決定することを含む。
【0269】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であり、方法は、抗がん療法の有効量を個体に投与することをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である。いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルは、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての参照発現レベル以上である。
【0270】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)を含む。
【0271】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の集団における1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の遺伝子(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルである。特定の実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)である。特定の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がんを有する個体の集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルの中央値である。他の実施形態において、参照レベルは、参照集団における発現レベルの上位40%、上位30%、上位20%、上位10%、上位5%、または上位1%であり得る。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、Zスコア変換された発現レベルの主成分分析によって決定される。特定の実施形態において、参照発現レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、前の時点で患者から得られた生物学的試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の投与の後である。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者からの生物学的試料における1つ以上の遺伝子(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルである。他の実施形態において、参照発現レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0272】
19遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを上回る発現レベル、または発現もしくは数の上昇または増加は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載される及び/または当技術分野で知られているものなどの方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の増加を指す。特定の実施形態において、上昇した発現または数は、増加が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1のうちの1つ以上)の発現レベル/量における増加を指す。いくつかの実施形態において、上昇した発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における全体的な増加を指す。
【0273】
19遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを下回る発現レベル、または低減した(減少した)発現もしくは数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載されているような標準的な既知の方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の低減を指す。特定の実施形態において、低減した発現または数は、減少が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1のうちの1つ以上)の発現レベル/量における減少を指す。いくつかの実施形態において、低減した(減少した)発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における全体的な減少を指す。
【0274】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体からの腫瘍は、腫瘍周囲間質区画におけるCD8+T細胞の局在化によって特徴付けされる免疫除外表現型を有する。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞は、コラーゲン線維またはその近傍に局在する。
【0275】
D. 例示的な追加のバイオマーカー(例えば、CD8+T-エフェクターシグネチャ)
前述の方法のいずれか(例えば、22、6、及び19遺伝子(汎-F-TBRS)シグネチャのそれぞれに関連する上記のセクションII、サブセクションA~Cに記載されるように)は、PD-L1、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなる群から選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9)の追加の遺伝子の試料中における発現レベルを決定することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の遺伝子は、PD-L1である。他の実施形態において、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)の追加の遺伝子は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなる群から選択され、本明細書ではCD8+Tエフェクター(Teff)シグネチャとも称される。いくつかの実施形態において、方法は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または8全ての発現レベルを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の遺伝子は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21である。
【0276】
例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるTGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の22遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルを決定すること含み、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上である試料中における1つ以上のTeff遺伝子の発現レベル、及び1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の参照発現レベルを下回る1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法を患者に実施することをさらに含む。
【0277】
別の実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の6遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定すること含み、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上である試料中における1つ以上のTeff遺伝子の発現レベル、及び1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の参照発現レベルを下回る1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法を患者に実施することをさらに含む。
【0278】
別の実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の汎-F-TBRS遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定すること含み、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上である試料中における1つ以上のTeff遺伝子の発現レベル、及び1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の参照発現レベルを下回る1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法を患者に実施することをさらに含む。
【0279】
例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)有する個体の療法を選択する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA 、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるTGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の22遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルを決定すること含み、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上である試料中における1つ以上のTeff遺伝子の発現レベル、及び1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の参照発現レベルを下回る1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法を患者に実施することをさらに含む。
【0280】
別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)有する個体の療法を選択する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA 、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の6遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6 )の発現レベルを決定すること含み、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上である試料中における1つ以上のTeff遺伝子の発現レベル、及び1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の参照発現レベルを下回る1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法を患者に実施することをさらに含む。
【0281】
さらに別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)有する個体の療法を選択する方法が本明細書に提供され、方法は、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA 、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の汎-F-TBRSのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定すること含み、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上である試料中における1つ以上のTeff遺伝子の発現レベル、及び1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の参照発現レベルを下回る1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法を患者に実施することをさらに含む。
【0282】
E. 腫瘍遺伝子変異量(TMB)
前述の実施形態のいずれか(例えば、22、6、及び19遺伝子(汎-F-TBRS)シグネチャのそれぞれに関連する上記のセクションII、サブセクションA~Cに記載されるように)は、個体からの腫瘍試料中におけるTMBを決定することをさらに含み得る。TMBは、例えば、以下の実施例1または国際特許出願第PCT/US2017/055669号に記載されるような任意の好適なアプローチを使用して決定され得、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、個体は、参照TMB以上である腫瘍試料中におけるTMBを有し得る。他の実施形態において、個体は、参照TMBを下回るTMBを有し得る。
【0283】
例えば、本発明は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を用いた治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定する方法を提供し、方法は、(i)患者からの試料中におけるTGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の22遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルと、(ii)個体からの腫瘍試料のTMBスコアと、を決定することを含み、参照レベルを下回る試料中における1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベル、及び参照TMBスコア以上である腫瘍試料からのTMBスコアは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体))を含む治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0284】
本発明は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を用いた治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定する方法を提供し、方法は、(i)患者からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の6遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルと、(ii)個体からの腫瘍試料のTMBスコアと、を決定することを含み、参照レベルを下回る試料中における1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベル、及び参照TMBスコア以上である腫瘍試料からのTMBスコアは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体))を含む治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0285】
本発明は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を用いた治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定する方法を提供し、方法は、(i)患者からの試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の汎-F-TBRS遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルと、(ii)個体からの腫瘍試料のTMBスコアと、を決定することを含み、参照レベルを下回る試料中における1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベル、及び参照TMBスコア以上である腫瘍試料からのTMBスコアは、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体))を含む治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0286】
TMBを伴う前述の方法のいずれかは、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)の発現レベルを決定することをさらに含むことができる。
【0287】
F. バイオマーカー発現レベルを決定するための例示的なアプローチ
上記(例えば、22、6、及び19遺伝子(汎-F-TBRS)シグネチャのそれぞれに関連する上記のセクションII、サブセクションA~C、またはセクションII、サブセクションD及びEに記載されるように)のバイオマーカーのうちのいずれかの存在及び/または発現レベルは、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片、及び/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の好適な基準に基づいて、定性的及び/または定量的に評価され得る。免疫組織化学(「IHC」)、ウエスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液系アッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイチュハイブリダイゼーション、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例としては、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、及びTMAなど、RNASeq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、全ゲノム配列決定(WGS)、及び/または遺伝子発現の逐次分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、及び/もしくは組織アレイ分析によって実行され得る多種多様なアッセイのうちのいずれか1つを含むが、これらに限定されない、そのようなバイオマーカーを測定するための方法論は、当該技術分野において既知であり、当業者によって理解されている。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.eds.(Current Protocols In Molecular Biology,1995)、Units 2(ノーザンブロット)、4(サザンブロット)、15(免疫ブロット)、及び18(PCR分析)に見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なものなどの多重化イムノアッセイもまた、使用され得る。
【0288】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、核酸発現レベル(例えば、DNA発現レベルまたはRNA発現レベル(例えば、mRNA発現レベル)であり得る。核酸発現レベルを決定する任意の好適な方法が使用され得る。いくつかの実施形態において、核酸発現レベルは、RNAseq、RT-qPCR、qPCR、マルチプレックスqPCRまたはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、ISH、またはそれらの組み合わせを使用して決定される。
【0289】
細胞におけるmRNAの評価のための方法は周知であり、これらには、例えば、遺伝子発現の逐次分析(SAGE)、全ゲノム配列決定(WGS)、相補的DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識されたリボプローブを使用するインサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、及び関連する技術など)、及び様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用するRT-PCR(例えば、qRT-PCR)、及び例えば、分岐状DNA、SISBA、TMAなどといった他の増幅型検出方法など)が含まれる。加えて、かかる方法は、(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に調査することによって)生物学的試料における標的mRNAのレベルを決定することを可能にする1つ以上のステップを含み得る。任意に、増幅された標的cDNAの配列が、決定され得る。任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織または細胞試料中の標的mRNAなどのmRNAを検査または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験組織試料由来の試験mRNA試料及び対照組織試料由来の対照mRNA試料は、逆転写され、標識されて、cDNAプローブを生成する。プローブは、その後、固相担体上に固定された核酸のアレイにハイブリダイズされる。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が既知であるように構成される。例えば、発現が免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む治療の臨床的利益の増加または低減と相関する遺伝子のセレクションが、固体支持体上でアレイ化され得る。標識されたプローブの特定のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、プローブの導出された試料がその遺伝子を発現することを示す。
【0290】
前述の方法のいずれかの他の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、タンパク質発現レベルであり得る。特定の実施形態において、方法は、試料を、バイオマーカーの結合を許容する条件下で、本明細書に記載されるバイオマーカーと特異的に結合する抗体と接触させること、及び複合体が抗体とバイオマーカーとの間で形成されるか否かを検出することを包含する。かかる方法は、試験管内または生体内法であり得る。いくつかの事例において、例えば、個体の選択のためのバイオマーカーなどの抗体を使用して、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に適格な患者を選択する。
【0291】
タンパク質発現レベルを測定する、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される任意の方法が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS(商標)))、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫沈降、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光、放射免疫測定、ドットブロッティング、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光、質量分析法、及びHPLCからなる群から選択される方法を使用して決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤性免疫細胞において決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞において決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤性免疫細胞及び/または腫瘍細胞において決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、末梢血単核細胞(PBMC)において決定される。
【0292】
特定の実施形態において、試料中のバイオマーカータンパク質の存在及び/または発現レベル/量は、IHC及び染色プロトコルを使用して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を判定または検出する信頼できる方法であることが示されてきた。方法、アッセイ、及び/またはキットのいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーは、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1の遺伝子のタンパク質発現産物のうちの1つ以上である。一実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体を用いて試料(患者から得られた腫瘍試料など)のIHC分析を実行することと、(b)試料中のバイオマーカーの発現レベルを決定することとを含む方法を使用して決定される。いくつかの実施形態において、IHC染色強度は、参照レベルと比較して決定される。いくつかの実施形態において、参照は、参照値である。いくつかの実施形態において、参照は、参照試料(例えば、対照細胞株染色試料、非がん患者由来の組織試料、または目的のバイオマーカーについて陰性であることが決定される腫瘍試料)である。
【0293】
IHCは、形態的染色及び/またはインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、ISH)などの追加の技術と組み合わせて実行され得る。IHCの2つの一般的な方法は、直接及び間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイにより、標的抗原との抗体の結合が直接的に決定される。直接アッセイは、さらなる抗体の相互作用なしで視覚化され得る蛍光タグまたは酵素標識一次抗体などの標識された試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、非複合型一次抗体は抗原と結合し、その後、標識された二次抗体は一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識に複合される場合、発色性または蛍光発生基質が、抗原の視覚化を提供するために添加される。いくつかの二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープと反応し得るため、シグナル増幅が発生する。
【0294】
IHCに使用される一次及び/または二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識されるであろう。通常、次のカテゴリに分類できる多数のラベルが利用可能である:(a)放射性同位体、例えば、35S、14C、1251、H、及び131I;(b)コロイド金粒子;(c)希土類キレート(ユウロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フェコクリテリン(phycocrytherin)、フィコシアニン、または市販のフルオロフォア、例えば、SPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7、ならびに/または上記のうちのいずれか1つ以上の誘導体を含むが、これらに限定されない蛍光標識;(d)様々な酵素-基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号は、これらのいくつかの概説を提供する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;例えば、米国特許第4,737,456号を参照)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが含まれる。
【0295】
酵素-基質の組み合わせの例としては、例えば基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸塩を有するアルカリホスファターゼ(AP)、及び発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルアンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が含まれる。これらについての一般的な概説については、例えば、米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
【0296】
標本は、例えば、手動、または自動染色機器(例えば、Ventana BenchMark XTまたはBenchmark ULTRA instrument)を使用して、調整され得る。このように調製された標本は、スライドガラスに載せて、カバースリップで覆われ得る。その後、例えば、顕微鏡を使用して、スライド評価が決定され、当該技術分野で日常的に使用される染色強度基準が用いられ得る。一実施形態において、IHCを使用して腫瘍由来の細胞及び/または組織を検査するときには、染色は、腫瘍細胞(複数可)及び/または組織中で(試料中に存在し得る間質または周囲組織とは対照的である)一般的には決定または評価されることを理解されたい。いくつかの実施形態において、IHCを使用して腫瘍由来の細胞及び/または組織を検査するときには、染色は、腫瘍内または腫瘍周辺免疫細胞を含む腫瘍浸潤性免疫細胞中での決定または評価を含むことを理解されたい。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの存在は、>0%の試料中、少なくとも1%の試料中、少なくとも5%の試料中、少なくとも10%の試料中、少なくとも15%の試料中、少なくとも15%の試料中、少なくとも20%の試料中、少なくとも25%の試料中、少なくとも30%の試料中、少なくとも35%の試料中、少なくとも40%の試料中、少なくとも45%の試料中、少なくとも50%の試料中、少なくとも55%の試料中、少なくとも60%の試料中、少なくとも65%の試料中、少なくとも70%の試料中、少なくとも75%の試料中、少なくとも80%の試料中、少なくとも85%の試料中、少なくとも90%の試料中、少なくとも95%の試料中、またはそれ以上の試料中でIHCによって検出される。試料は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、例えば、病理学者によって、または自動画像分析によって採点され得る。
【0297】
これらの方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーは、診断抗体(すなわち、一次抗体)を使用する免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、ヒト抗原と特異的に結合する。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、ウサギ抗体である。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、直接標識される。他の実施形態において、診断用抗体は、間接標識される(例えば、二次抗体によって)。
【0298】
前述の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、試料は、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に個体から得る。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体由来の試料は、抗がん療法の実施の約2~約10週間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間)後に得られる。いくつかの実施形態において、個体由来の試料は、抗がん療法の実施の約4~約6週間後に得られる。
【0299】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルまたは数は、組織試料、初代もしくは培養の細胞もしくは細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙液、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培地、組織抽出物、例えば、ホモジナイズされた組織、腫瘍組織、細胞抽出物、またはこれらの任意の組み合わせにおいて検出される。いくつかの実施形態において、試料は、組織試料(例えば、腫瘍組織試料)、細胞試料、全血試料、血漿試料、血清試料、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、腫瘍組織試料は、この腫瘍組織試料が、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、腫瘍組織試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)試料、保存記録用試料、新鮮試料、または凍結試料である。
【0300】
例えば、前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、既知の技術(例えば、フローサイトメトリーまたはIHC)を使用して、腫瘍浸潤性免疫細胞、腫瘍細胞、PBMC、またはこれらの組み合わせにおいて検出される。腫瘍浸潤性免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が含まれるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、指状嵌入型樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む、Tリンパ球(CD8 Tリンパ球(例えば、CD8 Tエフェクター(Teff)細胞)及び/またはCD4 Tリンパ球(例えば、CD4 Teff細胞)、Bリンパ球、または他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーについての染色は、膜染色、細胞質染色、またはこれらの組み合わせとして検出される。他の実施形態において、バイオマーカーの非存在は、参照試料と比べ、試料における非存在または無染色として検出される。
【0301】
前述の方法のいずれかの特定の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、がん細胞を含有するか、それを含有することが疑われる試料中で評価される。試料は、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)に罹患している、それが疑われる、またはそれと診断された患者から得られた組織生検または転移性病変であり得る。いくつかの実施形態において、試料とは、膀胱組織、膀胱腫瘍の生検、分かっているもしくは疑われている転移性膀胱癌病変もしくは部位、または循環がん細胞、例えば、膀胱癌細胞を含むことが分かっているまたは疑われる血液試料、例えば、末梢血試料である。試料は、がん細胞(すなわち、腫瘍細胞)及び非がん細胞(例えば、T細胞またはNK細胞などのリンパ球)の両方を含み得、特定の実施形態において、がん細胞及び非がん細胞の両方を含む。組織切除片、生検、及び体液、例えば、がん/腫瘍細胞を含む、血液試料を含む生物学的試料を得る方法は、当該技術分野で周知である。
【0302】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者は、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び膵島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、及び白血病またはリンパ性悪性疾患を有する。いくつかの実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫(RCC)、例えば、進行性RCCまたは転移性RCC(mRCC))、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮系扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃(gastric)癌または胃(stomach)癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌(例えば、HCC)、肝臓癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉腫、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、頭頸部癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ種(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ファコマトーシスと関連する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍と関連付けられるものなど)、またはメイグス症候群である。いくつかの実施形態では、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC))、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌(例えば、HCC)、卵巣癌、または乳癌(例えば、TNBC)である。好ましい実施形態において、患者は、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)を有する。患者は、任意に、進行性、不応性、再発性、化学療法抵抗性、及び/または白金抵抗性型のがんを有し得る。
【0303】
特定の実施形態において、第1の試料におけるバイオマーカーの存在及び/または発現のレベル/量は、第2の試料における存在/非存在及び/または発現のレベル/量と比較して増加または上昇する。特定の実施形態において、第1の試料におけるバイオマーカーの存在/非存在及び/または発現のレベル/量は、第2の試料における存在及び/または発現のレベル/量と比較して減少または低減する。特定の実施形態において、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。
【0304】
特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、単一の試料であるか、または試験試料が得られる場合とは異なる1つ以上の時点で得られる同じ患者もしくは個体に由来する組み合わせた複数の試料である。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ患者または個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、この参照試料が、がんの初期診断中に得られ、かつ試験試料が、その後がんが転移性となったときに得られる場合に有用であり得る。
【0305】
特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1体以上の健康な個体に由来する組み合わせた複数の試料である。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1体以上の個体に由来する複数の試料の組み合わせである。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない1体以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない、疾患もしくは障害(例えば、がん)を有する1体以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。
【0306】
III.治療方法及び使用
本明細書で提供されるのは、がん(膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌を含むがこれらに限定されない)を有する個体を治療するための方法及び使用である。特定の実施形態において、がんは、UC、例えば、転移性UCなどの膀胱癌である。いくつかの事例において、本発明の方法は、本発明のバイオマーカーの発現レベルに基づく免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を含むがこれらに限定されない)及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体を含むがこれらに限定されない)を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。本明細書に記載される(例えば、セクションIV及び/または実施例において下に記載される)か、または当該技術分野において既知である、任意の免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、(例えば、抗PD-L1抗体))、抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、(例えば、抗TGF-β抗体))、または他の抗がん剤は、方法及び使用において使用され得る。本発明はさらに、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法の投与により、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を患う患者のPFS及び/またはOSを改善する方法に関する。本発明はさらに、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法の投与により、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を患う患者の応答(例えば、ORR)を改善する方法に関する。本明細書に記載される任意のバイオマーカーの発現レベルまたは数は、当該技術分野及び/または本明細書で、例えば、上記のセクションII及び/または実施例において、既知の任意の方法を使用して決定され得る。
【0307】
いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)と組み合わせた免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を用いた療法は、好ましくは、PFS及び/またはOSを含む生存を延長及び/または改善する。一実施形態において、抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)と組み合わせた免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を用いた療法は、治療されているがんについて、承認されている抗腫瘍剤または標準治療の投与によって達成される生存と比べて、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%以上、生存を延長する。別の実施形態において、抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)と組み合わせた免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を用いた療法は、治療されているがんについて、承認されている抗腫瘍剤または標準治療の投与によって達成される奏効率と比べて、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%以上、奏効率を改善する。
【0308】
A. 例示的な22遺伝子シグネチャ
いくつかの実施形態において、本明細書の方法及び使用は、22遺伝子シグネチャから選択される1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子の発現レベルを決定することを伴い、表1に記載される遺伝子が含まれる。例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書で提供され、(a)個体からの試料中における表1に示す1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子の発現レベルを決定することであって、表1に示す1つ以上の遺伝子の発現レベルが、参照発現レベルと比較して変化すると決定される、決定することと、(b)ステップ(a)で決定された1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、有効量の抗がん療法(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法)を個体に投与することとを含む。いくつかの事例において、変化は、増加である。他の事例において、変化は、減少である。
【0309】
がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書でさらに提供され、有効量の抗がん療法(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法)を個体に投与することを含み、個体からの試料中における表1に示される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子の発現レベルは、参照レベルと比較して変化することが決定されており、表1に示される1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化は、抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として個体を特定する。いくつかの事例において、変化は、増加である。他の事例において、変化は、減少である。
【0310】
別の態様において、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である、表1に示される1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子の個体からの試料中における発現レベルを有すると特定されている個体のがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体))を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。
【0311】
別の態様において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答を評価するための方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中における表1に列挙される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子の発現レベルを決定することと、(b)試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルと、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルとの比較に基づいて、治療を維持、調整、または停止することとを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較した、個体からの試料中における1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化は、抗がん療法を用いる治療に対する応答の指標である。
【0312】
別の態様において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中における表1に列挙される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子の発現レベルを決定することと、(b)個体からの試料中における1つ以上の遺伝子の発現レベルを1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較し、それにより抗がん療法を用いる治療を受けている個体の応答をモニタリングすることとを含む。
【0313】
22遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、変化は、1つ以上の遺伝子の発現レベルの増加であり、治療が、調整または停止される。前述の方法のいずれかの他の実施形態において、変化は、1つ以上の遺伝子の発現レベルの減少であり、治療が、維持される。
【0314】
22遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、5つ以上の遺伝子の発現レベルの増加は、治療に対する個体の応答の欠如を示す。前述の方法のいずれかの他の実施形態において、5つ以上の遺伝子の発現レベルの減少は、治療に対する個体の応答を示す。
【0315】
22遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の集団における1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の遺伝子(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルである。特定の実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)である。特定の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がんを有する個体の集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルの中央値である。他の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団における発現レベルの上位40%、上位30%、上位20%、上位10%、上位5%、または上位1%であり得る。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、Zスコア変換された発現レベルの主成分分析によって決定される。特定の実施形態において、参照発現レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、前の時点で患者から得られた生物学的試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の投与の後である。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者からの生物学的試料における1つ以上の遺伝子(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルである。他の実施形態において、参照発現レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0316】
22遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを上回る発現レベル、または発現もしくは数の上昇または増加は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載される及び/または当技術分野で知られているものなどの方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の増加を指す。特定の実施形態において、上昇した発現または数は、増加が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における増加を指す。いくつかの実施形態において、上昇した発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における全体的な増加を指す。
【0317】
22遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを下回る発現レベル、または低減した(減少した)発現もしくは数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載されているような標準的な既知の方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の低減を指す。特定の実施形態において、低減した発現または数は、減少が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における減少を指す。いくつかの実施形態において、低減した(減少した)発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、TGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における全体的な減少を指す。
【0318】
22遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体からの腫瘍は、腫瘍周囲間質区画におけるCD8+T細胞の局在化によって特徴付けされる免疫除外表現型を有する。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞は、コラーゲン線維またはその近傍に局在する。
【0319】
B. 例示的な6遺伝子シグネチャ
いくつかの実施形態において、本明細書の方法及び使用は、6遺伝子シグネチャから選択される1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、または6)の遺伝子の発現レベルを決定することを伴い、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2を含む。
【0320】
例えば、一実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体からの試料中においてACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの遺伝子の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することであって、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の1つ以上の発現レベルが、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される、決定することと、(b)ステップ(a))で決定された1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することとを含む。
【0321】
方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの2つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表2に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの3つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表3に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの4つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表4に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの5つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表5に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルを決定することを伴う。
【0322】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、方法は、TGFB1及び/またはTGFBR2の発現レベルを決定することを含み得る。前述の方法のいずれかにおいて、方法は、TGFB1及びTGFBR2の発現レベルを決定することを含み得る。
【0323】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19を含む。他の実施形態において、1つ以上の遺伝子は、COMPを含む。さらなる実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19及びCOMPを含む。
【0324】
別の実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含み、治療前に、試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。
【0325】
別の態様において、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の個体からの試料中における発現レベルを有すると特定されている個体のがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体))を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。
【0326】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5と、または6つ全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの2つの発現レベル、例えば、表2に示される例示的な組み合わせのいずれかは、1つ以上の遺伝子の参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの3つの発現レベル、例えば、表3に示される例示的な組み合わせのいずれかは、1つ以上の遺伝子の参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの4つの発現レベル、例えば、表4に示される例示的な組み合わせのいずれかは、1つ以上の遺伝子の参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの5つの発現レベル、例えば、表5に示される例示的な組み合わせのいずれかは、1つ以上の遺伝子の参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の参照レベル以上であると決定されている。
【0327】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、TGFB1及び/またはTGFBR2の発現レベルは、TGFB1及び/またはTGFBR2の参照発現レベル以上であると決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、TGFB1の発現レベルは、TGFB1の参照レベル以上である。いくつかの実施形態において、TGFBR1の発現レベルは、TGFBR1の参照レベル以上である。前述の方法のいずれかにおいて、TGFB1及びTGFBR2の発現レベルは、TGFB1及びTGFBR2の参照発現レベル以上であると決定されている。
【0328】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、ADAM19またはCOMPの発現レベルは、ADAM19またはCOMPの参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ADAM19の発現レベルは、ADAM19の参照レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、COMPの発現レベルは、COMPの参照レベル以上であると決定されている。さらなる実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19及びCOMPを含む。いくつかの実施形態において、ADAM19及びCOMPの発現レベルは、ADAM19及びCOMPの参照レベル以上であると決定されている。
【0329】
別の態様において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用い類治療に対するがんを有する個体の応答を評価するための方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することと、(b)試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルと、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルとの比較に基づいて、治療を維持、調整、または停止することとを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較した、個体からの試料中における1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化は、抗がん療法を用いる治療に対する応答を示す。
【0330】
別の態様において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することと、(b)個体からの試料中における1つ以上の遺伝子の発現レベルを1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較し、それにより抗がん療法を用いる治療を受けている個体の応答をモニタリングすることとを含む。
【0331】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの2つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表2に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの3つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表3に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの4つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表4に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの5つの発現レベルを決定することを含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表5に示される。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルを決定することを伴う。
【0332】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、方法は、TGFB1及び/またはTGFBR2の発現レベルを決定することを含み得る。前述の方法のいずれかにおいて、方法は、TGFB1及びTGFBR2の発現レベルを決定することを含み得る。
【0333】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19を含む。他の実施形態において、1つ以上の遺伝子は、COMPを含む。さらなる実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19及びCOMPを含む。
【0334】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、変化は、1つ以上の遺伝子の発現レベルの増加であり、治療が、調整または停止される。前述の方法のいずれかの他の実施形態において、変化は、1つ以上の遺伝子の発現レベルの減少であり、治療が、維持される。
【0335】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、5つ以上の遺伝子の発現レベルの増加は、治療に対する個体の応答の欠如を示す。前述の方法のいずれかの他の実施形態において、5つ以上の遺伝子の発現レベルの減少は、治療に対する個体の応答を示す。
【0336】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の集団における1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、または6)の遺伝子(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2)の発現レベルである。特定の実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)である。特定の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団、例えば、がんを有する個体の集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルの中央値である。他の実施形態において、参照発現レベルは、参照集団における発現レベルの上位40%、上位30%、上位20%、上位10%、上位5%、または上位1%であり得る。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、Zスコア変換された発現レベルの主成分分析によって決定される。特定の実施形態において、参照発現レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、前の時点で患者から得られた生物学的試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の投与の後である。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者からの生物学的試料における1つ以上の遺伝子(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2)の発現レベルである。他の実施形態において、参照発現レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0337】
6遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを上回る発現レベル、または発現もしくは数の上昇または増加は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載される及び/または当技術分野で知られているものなどの方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の増加を指す。特定の実施形態において、上昇した発現または数は、増加が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2のうちの1つ以上)の発現レベル/量における増加を指す。いくつかの実施形態において、上昇した発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2)の発現レベル/量における全体的な増加を指す。
【0338】
6遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを下回る発現レベル、または低減した(減少した)発現もしくは数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載されているような標準的な既知の方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の低減を指す。特定の実施形態において、低減した発現または数は、減少が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2のうちの1つ以上)の発現レベル/量における減少を指す。いくつかの実施形態において、低減した(減少した)発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及び/またはTGFBR2)の発現レベル/量における全体的な減少を指す。
【0339】
6遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体からの腫瘍は、腫瘍周囲間質区画におけるCD8+T細胞の局在化によって特徴付けされる免疫除外表現型を有する。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞は、コラーゲン線維またはその近傍に局在する。
【0340】
C. 例示的な19遺伝子シグネチャ(汎-F-TBRS)
いくつかの実施形態において、本明細書の方法及び使用は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1を含む19遺伝子シグネチャから選択される1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の遺伝子の発現レベルを決定することを伴い、本明細書では汎-F-TBRSとも称される。
【0341】
例えば、一実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの遺伝子の1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することであって、試料中のACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの1つ以上の発現レベルが、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定される、決定することと、(b)ステップ(a))で決定された1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することとを含む。
【0342】
方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルを決定することを含む。
【0343】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、ADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1から選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)の発現レベルを決定することを含み得る。
【0344】
別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含み、治療前に、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。
【0345】
別の態様において、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の個体からの試料中における発現レベルを有すると特定されている個体のがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体))を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。
【0346】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルは、1つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルは、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の参照発現レベル以上であると決定されている。
【0347】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、ADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び TPM1のうちの少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)は、1つ以上の遺伝子の参照レベル以上であると決定されている。
【0348】
別の態様において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答を評価するための方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することと、(b)試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルと、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルとの比較に基づいて、治療を維持、調整、または停止することとを含み、1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較した、個体からの試料中における1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化は、抗がん療法を用いる治療に対する応答を示す。
【0349】
別の態様において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中においてACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1の遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することと、(b)個体からの試料中における1つ以上の遺伝子の発現レベルを1つ以上の遺伝子の参照発現レベルと比較し、それにより抗がん療法を用いる治療を受けている個体の応答をモニタリングすることとを含む。
【0350】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかにおいて、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルを決定することを含む。
【0351】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、ADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1から選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)の発現レベルを決定することを含み得る。
【0352】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、変化は、1つ以上の遺伝子の発現レベルの増加であり、治療が、調整または停止される。前述の方法のいずれかの他の実施形態において、変化は、1つ以上の遺伝子の発現レベルの減少であり、治療が、維持される。
【0353】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、5つ以上の遺伝子の発現レベルの増加は、治療に対する個体の応答の欠如を示す。前述の方法のいずれかの他の実施形態において、5つ以上の遺伝子の発現レベルの減少は、治療に対する個体の応答を示す。
【0354】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照レベルは、参照集団、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の集団における1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の遺伝子(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルである。特定の実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)である。特定の実施形態において、参照レベルは、参照集団、例えば、がんを有する個体の集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルの中央値である。他の実施形態において、参照レベルは、参照集団における発現レベルの上位40%、上位30%、上位20%、上位10%、上位5%、または上位1%であり得る。いくつかの実施形態において、参照発現レベルは、Zスコア変換された発現レベルの主成分分析によって決定される。特定の実施形態において、参照レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態において、参照レベルは、前の時点で患者から得られた生物学的試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の投与の後である。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者からの生物学的試料における1つ以上の遺伝子(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベルである。他の実施形態において、参照レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0355】
19遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを上回る発現レベル、または発現もしくは数の上昇または増加は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載される及び/または当技術分野で知られているものなどの方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の増加を指す。特定の実施形態において、上昇した発現または数は、増加が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1のうちの1つ以上)の発現レベル/量における増加を指す。いくつかの実施形態において、上昇した発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における全体的な増加を指す。
【0356】
19遺伝子シグネチャを含む前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、参照発現レベルを下回る発現レベル、または低減した(減少した)発現もしくは数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載されているような標準的な既知の方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のいずれかの全体の低減を指す。特定の実施形態において、低減した発現または数は、減少が、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカー(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1のうちの1つ以上)の発現レベル/量における減少を指す。いくつかの実施形態において、低減した(減少した)発現または数は、参照発現レベル、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍を超えるバイオマーカー(例えば、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及び/またはTPM1)の発現レベル/量における全体的な減少を指す。
【0357】
19遺伝子シグネチャを伴う前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体からの腫瘍は、腫瘍周囲間質区画におけるCD8+T細胞の局在化によって特徴付けされる免疫除外表現型を有する。いくつかの実施形態において、CD8+T細胞は、コラーゲン線維またはその近傍に局在する。
【0358】
D. 例示的な追加のバイオマーカー(例えば、Teff遺伝子及びCAF遺伝子)
前述の方法のいずれか(例えば、22、6、及び19遺伝子(汎-F-TBRS)シグネチャのそれぞれに関連する上記のセクションIII、サブセクションA~Cに記載されるように)は、PD-L1、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなる群から選択される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9)の追加の遺伝子の試料中における発現レベルを決定することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の遺伝子は、PD-L1である。他の実施形態において、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)の追加の遺伝子は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、方法は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または8全ての発現レベルを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の遺伝子は、CD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、及びTBX21である。
【0359】
例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC) 、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるTGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の22遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上 (例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルを決定することと、(b)ステップ(a))で決定された1つ以上のTeff遺伝子及び1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することとを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、1つ以上のTeff遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上または下回り、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。他の実施形態において、1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルは、参照発現レベルを下回り、1つ以上のTeff遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、方法は、免疫療法を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0360】
さらに別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を個体に投与することを含み、治療前に、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)の発現レベルは、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、試料中におけるTGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の22遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルは、1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の参照発現レベルを下回ると決定されている。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法を患者に実施することをさらに含む。
【0361】
別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の6遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定することと、(b)ステップ(a))で決定された1つ以上のTeff遺伝子及び1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することとを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、1つ以上のTeff遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上または下回り、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。他の実施形態において、1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、参照発現レベルを下回り、1つ以上のTeff遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、方法は、免疫療法を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0362】
例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))を含む抗がん療法を個体に投与することを含み、治療前に、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)の発現レベルは、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の6遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルは、1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の参照発現レベルを下回ると決定されている。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0363】
別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)、ならびに試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の汎-F-TBRS遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定することと、(b)ステップ(a))で決定された1つ以上のTeff遺伝子及び1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルに基づいて、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することとを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、1つ以上のTeff遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上または下回り、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。他の実施形態において、1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルは、参照発現レベルを下回り、1つ以上のTeff遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、方法は、免疫療法を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0364】
さらに別の実施形態において、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含み、治療前に、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)の発現レベルは、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベル以上であると決定されており、試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の汎-F-TBRS遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルは、1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の参照発現レベルを下回ると決定されている。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。いくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法を患者に実施することをさらに含む。
【0365】
別の態様において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答を評価するための方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中において1つ以上のTeff遺伝子(例えば、IFNG、GZMB、及びZAP70から選択される1、2、または3つのTeff遺伝子)及び/または1つ以上のCAF遺伝子(例えば、LOXL2、TNC、及びPOSTNから選択される1、2、または3つのCAF遺伝子)の発現レベルを決定することと、(b)試料中における1つ以上のTeff遺伝子及び/または1つ以上のCAF遺伝子の発現レベルと、1つ以上のTeff遺伝子及び/または1つ以上のCAF遺伝子の参照発現レベルとの比較に基づいて、治療を維持、調整、または停止することとを含み、1つ以上のTeff遺伝子及び/または1つ以上のCAF遺伝子の参照発現レベルと比較した、個体からの試料中における1つ以上のTeff遺伝子及び/または1つ以上のCAF遺伝子の発現レベルの変化は、抗がん療法を用いる治療に対する応答を示す。いくつかの実施形態において、変化は、1つ以上のTeff遺伝子(例えば、IFNG、GZMB、及び/またはZAP70)の発現レベルの増加である。いくつかの実施形態において、変化は、1つ以上のCAF遺伝子(例えば、LOXL2、TNC、及びPOSTN)の発現レベルの減少である。
【0366】
別の態様において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法が本明細書で提供され、方法は、(a)個体への免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法の実施中または実施後のある時点で、個体からの試料中において1つ以上のTeff遺伝子(例えば、IFNG、GZMB、及びZAP70から選択される1、2、または3つのTeff遺伝子)及び/または1つ以上のCAF遺伝子(例えば、LOXL2、TNC、及びPOSTNから選択される1、2、または3つのCAF遺伝子)の発現レベルを決定することと、(b)個体からの試料中における1つ以上のTeff遺伝子及び/または1つ以上のCAF遺伝子の発現レベルを、1つ以上のTeff遺伝子及び/または1つ以上のCAF遺伝子の参照発現レベルと比較し、それにより抗がん療法を用いる治療を受けている個体の応答をモニタリングすることとを含む。
【0367】
E. 腫瘍遺伝子変異量(TMB)
前述の実施形態のいずれか(例えば、22、6、及び19遺伝子(汎-F-TBRS)シグネチャのそれぞれに関連する上記のセクションIII、サブセクションA~C、またはセクションIII、サブセクションDに記載されるように)は、個体からの腫瘍試料中におけるTMBを決定すること含み得る。TMBは、例えば、実施例1または国際特許出願第PCT/US2017/055669号に記載されるような任意の好適なアプローチを使用して決定され得、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、個体は、参照TMB以上である腫瘍試料中におけるTMBを有し得る。他の実施形態において、個体は、参照TMBを下回るTMBを有し得る。
【0368】
本発明は、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が提供され、方法は、(a)(i)個体からの試料中におけるTGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の22遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベル、ならびに(ii)個体からの腫瘍試料のTMBスコアを決定することと、(b)ステップ(a))で決定された1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子及びTMBスコアの発現レベルに基づいて、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することとを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、腫瘍試料からのTMBスコアは、参照TMBスコア以上または下回り、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。他の実施形態において、1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、参照発現レベルを下回り、腫瘍試料からのTMBスコアは、参照TMBスコア以上であり、方法は、免疫療法を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0369】
本発明は、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法がさらに提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含み、治療前に、個体からの試料中におけるTGFB1、TGFBR2、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、COMP、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の22遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルは、1つ以上の22遺伝子シグネチャ遺伝子の参照発現レベルを下回ると決定されており、患者からの腫瘍試料中におけるTMBスコアは、参照TMBスコア以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0370】
本発明は、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が提供され、方法は、(a)(i)個体からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の6遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベル、ならびに(ii)個体からの腫瘍試料のTMBスコアを決定することと、(b)ステップ(a))で決定された1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子及びTMBスコアの発現レベルに基づいて、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することとを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、腫瘍試料からのTMBスコアは、参照TMBスコア以上または下回り、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。他の実施形態において、1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の発現レベルは、参照発現レベルを下回り、腫瘍試料からのTMBスコアは、参照TMBスコア以上であり、方法は、免疫療法を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0371】
本発明は、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法がさらに提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含み、治療前に、個体からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の6遺伝子シグネチャ遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルは、1つ以上の6遺伝子シグネチャ遺伝子の参照発現レベルを下回ると決定されており、患者からの腫瘍試料中におけるTMBスコアは、参照TMBスコア以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0372】
本発明は、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法が提供され、方法は、(a)(i)個体からの試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の汎-F-TBRS遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベル、ならびに(ii)個体からの腫瘍試料のTMBスコアを決定することと、(b)ステップ(a))で決定された1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子及びTMBスコアの発現レベルに基づいて、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することとを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルは、参照発現レベル以上であり、腫瘍試料からのTMBスコアは、参照TMBスコア以上または下回り、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。他の実施形態において、1つ以上の汎-F-TBRS遺伝子の発現レベルは、参照発現レベルを下回り、腫瘍試料からのTMBスコアは、参照TMBスコア以上であり、方法は、免疫療法を含む抗がん療法を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。
【0373】
本発明は、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を治療する方法がさらに提供され、方法は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を個体に投与することを含み、治療前に、個体からの試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の汎-F-TBRS遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルは、1つ以上のTeff遺伝子の参照発現レベルを下回ると決定されており、患者からの腫瘍試料中におけるTMBスコアは、参照TMBスコア以上であると決定されている。いくつかの実施形態において、免疫療法は、単独療法である。TMBを伴う前述の方法のいずれかは、個体からの試料中におけるCD8A、CXCL10、CXCL9、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、またはTBX21のTeff遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを決定することをさらに含むことができる。
【0374】
F. バイオマーカー発現レベルを決定するための例示的なアプローチ
前述の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態(例えば、22、6、及び19遺伝子(汎-F-TBRS)シグネチャのそれぞれに関連する上記のセクションIII、サブセクションA~C、またはセクションIII、サブセクションD及びEに記載されるように)において、試料は、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に個体から得る。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体由来の試料は、抗がん療法の実施の約2~約10週間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間)後に得られる。いくつかの実施形態において、個体由来の試料は、抗がん療法の実施の約4~約6週間後に得られる。
【0375】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルまたは数は、組織試料、初代もしくは培養の細胞もしくは細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙液、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培地、組織抽出物、例えば、ホモジナイズされた組織、腫瘍組織、細胞抽出物、またはこれらの任意の組み合わせにおいて検出される。いくつかの実施形態において、試料は、組織試料(例えば、腫瘍組織試料)、細胞試料、全血試料、血漿試料、血清試料、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、腫瘍組織試料は、この腫瘍組織試料が、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、腫瘍組織試料は、FFPE試料、保存記録用試料、新鮮試料、または凍結試料である。
【0376】
例えば、前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、既知の技術(例えば、フローサイトメトリーまたはIHC)を使用して、腫瘍浸潤性免疫細胞、腫瘍細胞、PBMC、またはこれらの組み合わせにおいて検出される。腫瘍浸潤性免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が含まれるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、指状嵌入型樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む、Tリンパ球(CD8 Tリンパ球(例えば、CD8 Teff細胞)及び/またはCD4 Tリンパ球(例えば、CD4 Teff細胞)、Bリンパ球、または他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーについての染色は、膜染色、細胞質染色、またはこれらの組み合わせとして検出される。他の実施形態において、バイオマーカーの非存在は、参照試料と比べ、試料における非存在または無染色として検出される。
【0377】
前述の方法のいずれかの特定の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、がん細胞を含有するか、それを含有することが疑われる試料中で評価される。試料は、例えば、がん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC))に罹患している、それが疑われる、またはそれと診断された患者から得られた組織生検または転移性病変であり得る。いくつかの実施形態において、試料は、膀胱組織、膀胱腫瘍の生検、分かっているもしくは疑われている転移性膀胱癌病変もしくは部位、または循環がん細胞、例えば、膀胱癌細胞を含むことが分かっているまたは疑われる血液試料、例えば、末梢血試料である。試料は、がん細胞(すなわち、腫瘍細胞)及び非がん細胞(例えば、T細胞またはNK細胞などのリンパ球)の両方を含み得、特定の実施形態において、がん細胞及び非がん細胞の両方を含む。組織切除片、生検、及び体液、例えば、がん/腫瘍細胞を含む、血液試料を含む生物学的試料を得る方法は、当該技術分野で周知である。
【0378】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者は、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び膵島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、及び白血病またはリンパ性悪性疾患を有する。いくつかの実施形態において、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫(RCC)、例えば、進行性RCCまたは転移性RCC(mRCC))、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮系扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃(gastric)癌または胃(stomach)癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌(例えば、HCC)、肝臓癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉腫、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、頭頸部癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ種(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ファコマトーシスと関連する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍と関連付けられるものなど)、またはメイグス症候群である。いくつかの実施形態では、がんは、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC))、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌(例えば、HCC)、卵巣癌、または乳癌(例えば、TNBC)である。好ましい実施形態において、患者は、膀胱癌(例えば、UC、例えばmUC)を有する。患者は、任意に、進行性、不応性、再発性、化学療法抵抗性、及び/または白金抵抗性型のがんを有し得る。
【0379】
特定の実施形態において、第1の試料におけるバイオマーカーの存在及び/または発現のレベル/量は、第2の試料における存在/非存在及び/または発現のレベル/量と比較して増加または上昇する。特定の実施形態において、第1の試料におけるバイオマーカーの存在/非存在及び/または発現のレベル/量は、第2の試料における存在及び/または発現のレベル/量と比較して減少または低減する。特定の実施形態において、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。
【0380】
特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、単一の試料であるか、または試験試料が得られる場合とは異なる1つ以上の時点で得られる同じ患者もしくは個体に由来する組み合わせた複数の試料である。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ患者または個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、この参照試料が、がんの初期診断中に得られ、かつ試験試料が、その後がんが転移性となったときに得られる場合に有用であり得る。
【0381】
特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1体以上の健康な個体に由来する組み合わせた複数の試料である。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1体以上の個体に由来する複数の試料の組み合わせである。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない1体以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない、疾患もしくは障害(例えば、がん)を有する1体以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。
【0382】
G. 例示的な療法アプローチ
前述の方法及び使用のいずれかの実施形態(例えば、セクションIII、サブセクションA~Fに記載されるように)において、がんの予防または治療のための、抗がん療法(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法)の用量は、上記に定義される治療されるがんの種類、がんの重症度及び過程、予防もしくは治療目的で抗がん療法が実施されるかどうか、以前の療法、患者の臨床歴及び薬物に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存するだろう。
【0383】
いくつかの実施形態において、抗がん療法(例えば、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法)は、一度にまたは一連の治療にわたって患者に好適に投与され得る。1つの典型的な日用量は、上記で言及した因子に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。数日以上にわたって繰り返される投与に関して、状態に応じて、処置は、疾患の症状の所望される抑制が発生するまで、一般に持続される。かかる用量は、間欠的に、例えば、週に1回または3週に1回(例えば、患者が、例えば、約2~約20回、または例えば、約6回の用量の抗がん療法を受けるように)投与され得る。最初のより高い負荷用量が投与されて、1つ以上のさらに低い用量が続いてもよい。しかしながら、他の投与量レジメンは有用であり得る。この療法の進行は、従来の技術及び解析によって容易にモニタリングされる。
【0384】
例えば、一般的な提案として、ヒトに投与される免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)の治療有効量は、1回以上の投与によるかどうかにかかわらず、患者の体重の約0.01~約50mg/kgである。いくつかの実施形態において、使用される治療剤(例えば、抗体)は、例えば、約0.01mg/kg~約45mg/kg、約0.01mg/kg~約40mg/kg、約0.01mg/kg~約35mg/kg、約0.01mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約25mg/kg、約0.01mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約15mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、または0.01mg/kg~約1mg/kgであり、毎日、毎週、2週毎、3週毎、または毎月使用される。いくつかの実施形態において、抗体は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投与量レジメンは有用であり得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、例えば、21日周期の1日目(3週毎、q3w)に、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約420mg、約500mg、約525mg、約600mg、約700mg、約800mg、約840mg、約900mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、または約1800mgの用量でヒトに投与される。例えば、固定用量は、約420mg、約525mg、約840mg、または約1050mgであり得る。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブは、3週間毎(q3w)に1200mgで静脈内投与される。固定用量が投与される場合、好ましくは、用量は約5mg~約2000mgの範囲である。免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)の用量は、単回用量または複数回用量(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の用量)として投与され得る。一連の用量が投与される場合、これらは、例えば、ほぼ毎週、ほぼ2週毎、ほぼ3週毎、またはほぼ4週毎に投与され得る。併用療法において投与されるアンタゴニストの用量は、単独処置と比較して低減され得る。療法の進行は、従来の技術によって容易にモニタリングされる。
【0385】
本明細書に記載される免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))(及び任意の追加の治療剤)は、良好な医療のための原則と一致する様式で製剤化、投薬、及び投与され得る。同様に、抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、良好な医療のための原則と一致する様式で製剤化、投薬、及び投与され得る。これに関連して考慮すべき要因としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が含まれる。免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、問題の障害を予防するかまたは治療するために現在使用される1つ以上の薬剤である必要はないが、任意選択でそれらと共に製剤化され、及び/またはそれらと同時に投与される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)の量、障害または治療の型、及び上記で考察される他の因子に応じる。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同じ投薬量及び投与経路によって、または本明細書に記載の投薬量の約1~99%、または適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0386】
いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))は、抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)と同時に投与される。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、同じ製剤の一部として投与される。他の実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))は、抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)とは別個に投与される。
【0387】
いくつかの実施形態において、前述の方法のうちのいずれも、追加の治療剤を投与することをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、免疫療法剤、細胞傷害剤、成長阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0388】
いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストと同時に投与される。いくつかの実施形態において、活性化共刺激分子は、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127を含み得る。いくつかの実施形態において、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127と結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、阻害性共刺激性分子に対して指向されるアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、阻害性共刺激分子は、CTLA-4(CD152としても知られる)、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼを含み得る。いくつかの実施形態において、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストは、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼと結合するアンタゴニスト抗体である。
【0389】
いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CTLA-4に対して指向されるアンタゴニスト(CD152としても知られる)、例えば、遮断抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、またはYERVOY(登録商標)としても知られる)と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、トレメリムマブ(チシリムマブまたはCP-675,206としても知られる)と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、B7-H3に対して指向されるアンタゴニスト(CD276としても知られる)、例えば、遮断抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、MGA271と組み合わせて投与され得る。
【0390】
いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CD137(TNFRSF9、4-1BB、またはILAとしても知られる)に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、ウレルマブ(BMS-663513としても知られる)と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CD40に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CP-870893と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、OX40(CD134としても知られる)に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CD27に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CDX-1127と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、TIGITに対して指向されるアンタゴニスト、例えば、抗TIGIT抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に対して指向されるアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、IDOアンタゴニストは、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られる)である。
【0391】
いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、がんワクチンと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、がんワクチンは、ペプチドがんワクチンであり、これは、いくつかの実施形態では、個人化されたペプチドワクチンである。いくつかの実施形態において、ペプチドがんワクチンは、多価長鎖ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci.104:14-21,2013を参照されたい)。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、アジュバントと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、TLRアゴニスト、例えば、Poly-ICLC(HILTONOL(登録商標)としても知られる)、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、IL-1と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、HMGB1と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、IL-10アンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、IL-4アンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、IL-13アンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、HVEMアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、例えば、ICOS-Lの投与によるICOSアゴニスト、またはICOSに対して指向されるアゴニスト抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CX3CL1を標的とする治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CXCL9を標的とする治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CXCL10を標的とする治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、CCL5を標的とする治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、LFA-1またはICAM1アゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、セレクチンアゴニストと組み合わせて投与され得る。
【0392】
化学療法剤は、投与される場合、通常、その結果分かった投薬量、または必要に応じて、薬物の複合作用もしくは化学療法剤の投与に帰せられる負の副作用に起因して低下した投薬量で投与される。かかる化学療法剤の調製及び投薬スケジュールは、製造業者の指示に従ってまたは当業者によって経験的に決定されるように使用され得る。化学療法剤がパクリタキセルである場合、好ましくは、それは、約130mg/m~200mg/m(例えば、およそ175mg/m)の用量で、例えば、3時間にわたって、3週間毎に投与される。化学療法剤がカルボプラチンである場合、好ましくは、化学療法剤は、患者の先在腎機能または腎機能及び所望の血小板最下点に基づくカルバート式を使用して、カルボプラチンの用量を計算することによって投与される。腎排泄がカルボプラチンの主要な排除経路である。体表面積に基づく経験的な用量計算と比較して、この投薬処方を使用することにより、さもなければ過少投薬(平均以上の腎機能を有する患者において)または過剰投薬(腎機能障害を有する患者において)のいずれかを引き起こし得る治療前の腎機能における患者の差を補償することが可能となる。単剤カルボプラチンを使用する4~6mg/mL/分の標的AUCが、以前に試験された患者において最適な用量範囲を提供するようである。
【0393】
上記の治療レジメンに加えて、患者は、腫瘍及び/またはがん細胞の外科的除去に供され得る。
【0394】
上述のかかる治療の組み合わせは、組み合わされた投与(2つ以上の治療剤が、同じかまたは分離した製剤中に含まれる)、ならびに免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)の投与が、追加の治療剤または薬剤の投与の前、投与と同時に、及び/または投与の後に発生し得る、分離された投与を包含する。一実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)の投与及び追加の治療薬の投与は、互いに約1ヶ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に行われる。
【0395】
免疫療法または抑制性間質アンタゴニストのいずれかが抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗TGF-β抗体)である実施形態において、投与される抗体はネイキッド抗体であり得る。投与される免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、細胞傷害剤と複合化され得る。好ましくは、複合化されるか、及び/またはそれが結合する抗原は、細胞によって取り込まれ、複合体が結合するがん細胞の殺滅におけるその治療有効性の増大をもたらす。好ましい実施形態において、細胞傷害剤は、がん細胞中の核酸を標的化するか、またはそれに干渉する。かかる細胞傷害剤の例には、マイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼ、及びDNAエンドヌクレアーゼが含まれる。
【0396】
本明細書に記載の方法で利用される組成物は、任意の好適な方法によって投与され得、これらの方法としては、例えば、静脈内に、筋肉内に、皮下に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、髄腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、眼窩内に、経口的に、局所的に、経皮的に、硝子体内に(例えば、硝子体内注射により)、非経口的に、点眼により、吸入により、注射により、移植により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームに入れて、または脂質組成物に入れて、が含まれる。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身に、または局所的に投与され得る。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて多様であり得る。いくつかの実施形態において、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内に、眼窩内に、移植により、吸入により、くも膜下腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態において、多標的チロシンキナーゼ阻害剤は、経口投与される。投薬は、投与が短期であるかまたは長期であるかに部分的には応じて、任意の適切な経路により、例えば、静脈内または皮下注射などの注射によってもよい。単回または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない、様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。
【0397】
IV.組成物及び薬学的製剤
一態様において、本発明は、部分的には、本発明のバイオマーカーを使用して、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を含むがこれらに限定されない)及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体を含むがこれらに限定されない)を含む抗がん療法から利益を受け得るがん(膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌を含むがこれらに限定されない)を有する個体を特定できるという発見に基づく。いくつかの実施形態において、個体は、免疫療法単独に応答する可能性が低い。別の態様において、本発明は、部分的には、本発明のバイオマーカーを使用して、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いて治療されるがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の治療応答をモニタリング及び/または評価できるという発見に基づく。これらの薬剤、及びそれらの組み合わせは、例えば、上記のセクションII及びIIIにおいて本明細書に記載される任意の方法及び使用の一部として、がんの治療に有用である。任意の好適な免疫療法及び/または抑制性間質アンタゴニストは、本明細書に記載される方法及び使用において使用できる。本発明の方法及びアッセイにおける使用に好適な非限定的な実施例が以下にさらに記載される。
【0398】
A.例示的な免疫療法
任意の好適な免疫療法が、本発明の状況下において使用され得る。免疫療法は、当技術分野で説明される(例えば、Chen et al.Immunity 39:1-10, 2013を参照されたい)。免疫療法は、活性免疫療法または抑制性免疫療法であり得る。いくつかの実施形態において、活性免疫療法は、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニストが含まれる。特定の実施形態において、アゴニスト(例えば、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、ICOS、HVEM、NKG2D、MICA、2B4、IL-2、IL-12、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-1、CDN、HMBG1、またはTLRアゴニスト)は、がんを有する患者の免疫応答または機能を増加、増強、または刺激する。いくつかの実施形態において、アゴニストは、リガンド(例えば、T細胞受容体リガンド)の発現及び/または活性を調節し、及び/またはリガンドとその免疫受容体との相互作用を増加または刺激し、及び/または免疫受容体と結合するリガンドにより媒介される細胞内シグナル伝達を増加もしくは刺激する。他の実施形態において、抑制性免疫療法は、PD-L1軸、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4 、またはIL-13アンタゴニストが含まれる。特定の実施形態において、アンタゴニスト(例えば、PD-L1軸、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、CD96、TIGIT、CD226、プロスタグランジン、VEGF、エンドセリンB、IDO、アルギナーゼ、MICA/MICB、TIM-3、IL-10、IL-4、またはIL-13アンタゴニスト)は、リガンド(例えば、T細胞受容体リガンド)とその免疫受容体との相互作用を阻害及び/または遮断する薬剤、またはリガンド及び/または受容体の発現及び/または活性のアンタゴニスト、またはリガンド(例えば、T細胞受容体リガンド)とその免疫受容体によって媒介される細胞内シグナル伝達を遮断する薬剤である。いくつかの実施形態において、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤である。免疫療法抗体は、以下のサブセクションDのセクションi~viiに記載される、特性のいずれかを、単独または組み合わせで有し得る。
【0399】
B.例示的なPD-L1軸結合アンタゴニスト
PD-L1軸結合アンタゴニストとしては、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。PD-1(プログラム死1)は、当該技術分野で「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、及び「SLEB2」とも称される。例示的なヒトPD-1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q15116に示される。PD-L1(プログラム死リガンド1)は、当該技術分野で「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、及び「PDL1」とも称される。例示的なヒトPD-L1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号第Q9NZQ7.1号に示される。PD-L2(プログラム死リガンド2)は、当該技術分野で「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」、及び「PDL2」とも称される。例示的なヒトPD-L2は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号第Q9BQ51に示される。いくつかの実施形態において、PD-1、PD-L1、及びPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1、及びPD-L2である。PD-L1軸結合アンタゴニストは、いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、またはPD-L2結合アンタゴニストであり得る。本明細書に列挙される実施形態のいずれかにおける使用のためのそのようなPD-L1軸結合アンタゴニスト抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L2抗体)または本明細書に記載される他の抗体(例えば、PD-L1発現レベルの検出のための抗PD-L1抗体)が、以下のサブセクションDのセクションi~viiに記載される特性のいずれかを、単独または組み合わせで有し得ることが明示的に企図される。
【0400】
(i)PD-L1結合アンタゴニスト
いくつかの事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上との結合を阻害する。他の事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1との結合を阻害する。さらに他の事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1との結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及びB7-1の両方との結合を阻害する。PD-L1結合アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、または小分子であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を阻害する小分子である。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1及びVISTAを阻害する小分子である。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、CA-170(AUPM-170としても知られる)である。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PDL1及びTIM3を阻害する小分子である。いくつかの実施形態において、小分子は、WO2015/033301及びWO2015/033299に記載される化合物である。
【0401】
いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。様々な抗PD-L1抗体が本明細書で企図され、記載される。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1、またはそのバリアントと結合し得る。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間、及び/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、キメラまたはヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。本発明の方法において有用な抗PD-L1抗体の例及びそれらを作製する方法は、国際特許出願公開第WO2010/077634号及び米国特許第8,217,149号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0402】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(CAS登録番号:1422185-06-5)である。アテゾリズマブ(Genentech)は、MPDL3280Aとしても知られており、抗PD-L1抗体である。
【0403】
アテゾリズマブは、
(a)GFTFSDSWIH(配列番号63)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号64)、及びRHWPGGFDY(配列番号65)のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列のそれぞれ、ならびに
(b)RASQDVSTAVA(配列番号66)、SASFLYS(配列番号67)、及びQQYLYHPAT(配列番号68)のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列のそれぞれを含む。
【0404】
アテゾリズマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)重鎖可変領域配列は、以下のアミノ酸配列を含み: EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号69)、及び
(b)軽鎖可変領域配列は、以下のアミノ酸配列を含む:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号70)。
【0405】
いくつかの事例において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号69に対して、もしくは配列に対して、少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号70に対して、もしくは配列に対して、少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む。
【0406】
アテゾリズマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、以下のアミノ酸配列を含み: EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号71)、及び
(b)軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む: DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号72)。
【0407】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アベルマブ(CAS登録番号:1537032-82-8)である。アベルマブは、MSB0010718Cとしても知られており、ヒトモノクローナルIgG1抗PD-L1抗体(Merck KGaA,Pfizer)である。アベルマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、以下のアミノ酸配列を含み:EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQAPGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号73)、及び
(b)軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号74)。
【0408】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号73及び配列番号74からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号73からの3つの重鎖HVR、及び配列番号74からの3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号73からの重鎖可変ドメイン、及び配列番号74からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0409】
いくつかの施形態において、抗PD-L1抗体は、デュバルバルマブ(CAS登録番号:1428935-60-7)である。デュルバルマブは、MEDI4736としても知られており、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載されるFc最適化ヒトモノクローナルIgG1カッパ抗PD-L1抗体(MedImmune,AstraZeneca)である。デュルバルマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、以下のアミノ酸配列を含み: EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGWFGELAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号75)、及び
(b)軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号76)。
【0410】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号75及び配列番号76からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号75からの3つの重鎖HVR、及び配列番号76からの3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号75からの重鎖可変ドメイン、及び配列番号76からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0411】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、MDX-1105(Bristol Myers Squibb)である。MDX-1105は、BMS-936559としても知られており、WO2007/005874に記載される抗PD-L1抗体である。
【0412】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、LY3300054(Eli Lilly)である。
【0413】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、STI-A1014(Sorrento)である。STI-A1014は、ヒト抗PD-L1抗体である。
【0414】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、KN035(Suzhou Alphamab)である。KN035は、ラクダファージディスプレイライブラリから生成された単一ドメイン抗体(dAB)である。
【0415】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、切断可能な部分またはリンカーを含み、切断されると(例えば、腫瘍微小環境内のプロテアーゼによって)、例えば、非結合立体部分を除去することにより、抗体抗原結合ドメインを活性化して、その抗原に結合される。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、CX-072(CytomX Therapeutics)である。
【0416】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR)及び/または US20160108123(Novartisに帰属する)、WO2016/000619(出願人:Beigene)、WO2012/145493(出願人:Amplimmune)、US9205148(MedImmuneに帰属する)、WO2013/181634(出願人:Sorrento)、及びWO2016/061142(出願人:Novartis)に記載される抗PD-L1抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0417】
いくつかの事例において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、PCT出願WO2010/077634号に記載される抗PD-L1である。本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体、及びそれを作製するための方法の例は、PCT出願第WO2010/077634号、第WO2007/005874号、及び第WO2011/066389号、ならびにさらに米国特許第8,217,149号、及び米国出願第2013/034559号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0418】
さらなる特定の態様において、抗PD-L1抗体は、エフェクター機能が低減されているか、または最小である。さらなる特定の態様において、最小エフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」またはグリコシル化変異から生じる。さらなる一実施形態において、エフェクターなしFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。いくつかの実施形態において、単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化される。抗体のグリコシル化は典型的には、N連結またはO連結のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化は、糖類であるN-アセイルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンもまた使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上述のトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位について)のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはトレオニン残基を別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン、または保存的置換)で置換することにより行われ得る。
【0419】
(ii)PD-1結合アンタゴニスト
いくつかの事例において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上との結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1との結合を阻害する。他の事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2との結合を阻害する。さらに他の事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及びPD-L2の両方との結合を阻害する。PD-1結合アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、または小分子であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。例えば、いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られており、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、ペプチドまたは小分子化合物である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AUNP-12(PierreFabre/Aurigene)である。例えば、WO2012/168944、WO2015/036927、WO2015/044900、WO2015/033303、WO2013/144704、WO2013/132317、及びWO2011/161699を参照されたい。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を阻害する小分子である。
【0420】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。様々な抗PD-1抗体は、本明細書に開示される方法及び使用に利用され得る。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、PD-1抗体は、ヒトPD-1またはそのバリアントと結合することができる。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’) 断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、キメラまたはヒト化抗体である。他の実施形態において、抗PD-1抗体は、ヒト抗体である。
【0421】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb/Ono)は、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、及びOPDIVO(登録商標)としても知られており、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。ニボルマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、以下のアミノ酸配列を含み:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号77)、及び
(b)軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号78)。
【0422】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号77及び配列番号78からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号77からの3つの重鎖HVR、及び配列番号78からの3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号77からの重鎖可変ドメイン、及び配列番号78からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0423】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブ(CAS登録番号:1374853-91-4)である。ペンブロリズマブ(Merck)は、MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、SCH-900475、KEYTRUDA(登録商標)としても知られており、WO2009/114335に記載される抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブは、重鎖及び軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、以下のアミノ酸配列を含み:
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号79)、及び
(b)軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号80)。
【0424】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号79及び配列番号80からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号79からの3つの重鎖HVR、及び配列番号80からの3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号79からの重鎖可変ドメイン、及び配列番号80からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0425】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MEDI-0680(AMP-514;AstraZeneca)である。MEDI-0680は、ヒト化IgG4抗PD-1抗体である。
【0426】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、PDR001(CAS登録番号1859072-53-9;Novartis)である。PDR001は、PD-1とのPD-L1及びPD-L2の結合を遮断するヒト化IgG4抗PD-1抗体である。
【0427】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、REGN2810(Regeneron)である。REGN2810は、ヒト抗PD-1抗体である。
【0428】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、BGB-108(BeiGene)である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、BGB-A317(BeiGene)である。
【0429】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、JS-001(Shanghai Junshi)である。JS-001は、ヒト化抗PD-1抗体である。
【0430】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、STI-A1110(Sorrento)である。STI-A1110は、ヒト抗PD-1抗体である。
【0431】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、INCSHR-1210(Incyte)である。INCSHR-1210は、ヒト抗PD-1抗体である。
【0432】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、PF-06801591(Pfizer)である。
【0433】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011としても知られる;Tesaro/AnaptysBio)である。
【0434】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、AM0001(ARMO Biosciences)である。
【0435】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ENUM 244C8(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM 244C8は、PD-L1とPD-1との結合を遮断することなくPD-1機能を阻害する抗PD-1抗体である。
【0436】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ENUM 388D4(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM 388D4は、PD-L1のPD-1との結合を競合的に阻害する抗PD-1抗体である。
【0437】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR)及び/またはWO2015/112800(出願人:Regeneron)、WO2015/112805(出願人:Regeneron)、WO2015/112900(出願人:Novartis)、US2015/0210769(Novartisに帰属する)、WO2016/089873(出願人:Celgene)、WO2015/035606(出願人:Beigene)、WO2015/085847(出願人:Shanghai Hengrui Pharmaceutical/Jiangsu Hengrui Medicine)、WO2014/206107(出願人:Shanghai Junshi Biosciences/Junmeng Biosciences)、WO2012/145493(出願者:Amplimmune)、US9205148(MedImmuneに帰属する)、WO2015/119930(出願人:Pfizer/Merck)、WO2015/119923(出願人:Pfizer/Merck)、WO2016/032927(出願人:Pfizer/Merck)、WO2014/179664(出願人:AnaptysBio)、WO2016/106160(出願人:Enumeral)、及びWO2014/194302(出願人:Sorrento)に記載される抗PD-L1抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0438】
さらなる実施形態において、配列番号61からの重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/または配列番号62からの軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離された抗PD-1抗体が提供される。
【0439】
さらなる実施形態において、重鎖及び/または軽鎖配列を含む、単離された抗PD-1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号61)、及び
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号62)。
【0440】
さらなる特定の態様において、抗PD-1抗体は、エフェクター機能が低減されているか、または最小である。さらなる特定の態様において、最小エフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」またはグリコシル化変異から生じる。さらなる一実施形態において、エフェクターなしFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。いくつかの実施形態において、単離された抗PD-1抗体は、非グリコシル化される。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上述のトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位について)のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはトレオニン残基を別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン、または保存的置換)で置換することにより行われ得る。
【0441】
(iii)PD-L2結合アンタゴニスト
いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2の、そのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の態様において、PD-L2結合リガンドパートナーは、PD-1である。PD-L2結合アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、または小分子であり得るが、これらに限定されない。
【0442】
いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体である。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、PD-L2抗体は、ヒトPD-L2またはそのバリアントと結合することができる。いくつかの実施形態において、抗PD-L2抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L2抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’) 断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、抗PD-L2抗体は、キメラまたはヒト化抗体である。他の実施形態において、抗PD-L2抗体は、ヒト抗体である。さらなる特定の態様において、抗PD-L2抗体は、エフェクター機能が低減されているか、または最小である。さらなる特定の態様において、最小エフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」またはグリコシル化変異から生じる。さらなる一実施形態において、エフェクターなしFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。いくつかの実施形態において、単離された抗PD-L2抗体は、非グリコシル化される。
【0443】
C. 例示的な抑制性間質アンタゴニスト
任意の好適な抑制性間質アンタゴニストが、本発明の状況下において使用できる。間質遺伝子アンタゴニストの標的は、当技術分野で即知であり、例えば、Turley et al.,Nature Reviews Immunology 15:669-682,2015、及びRosenbloom et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1832:1088-1103,2013を参照されたい。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、TGF-β(例えば、TGF-β1及びTGF-β2)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、エンドグリン(CD105)、3G5抗原、FAP、CSPG4(NG2)、及び/またはポドプラニン(GP38)を含むがこれらに限定されない表面糖タンパク質を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、PECAM(CD31)、VCAM(CD106)、ICAM1(CD54)、THY1(CD90)及び/またはβ1インテグリン(CD29)を含むがこれらに限定されない接着分子を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)、VEGFR3(FLT4)、PDGFRα(CD140α)、及び/またはPDGFRβ(CD140β)を含むがこれらに限定されない成長因子受容体を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、ビメンチン、αSMA(ACTA2)及び/またはデスミンを含むがこれらに限定されない細胞内構造タンパク質を標的とする。抑制性間質アンタゴニストの他の標的には、5NT(CD73またはNT5E)RGS3、エンドシアリン(CD248)、及びFSP1(S100A4)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、がん関連線維芽細胞関連ポリペプチドを標的とする。がん関連線維芽細胞関連ポリペプチドの例には、エンドグリン(CD105)、FAP、ポドパリン、VCAM1、THY1、β1インテグリン、PDGFRα、PDGFRβ、ビメンチン、αSMA、デスミン、エンドシアリン、及び/またはFSP1が含まれるが、これらに限定されない。
【0444】
いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、TGF-β発現及び活性化を標的とする。例としては、ピルフェニドン、αvβ6抗体、ATI及びATII受容体遮断剤、ACE阻害剤、CAT-192(抗TGF-β1モノクローナルAB)、ならびにカベオリン足場ドメイン(CSD)が含まれる。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、標準的なシグナル伝達経路TBR1(例示的な阻害剤はSM305)及びSMAD3(例示的な阻害剤はSIS3)を含むTGF-βシグナル伝達経路を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、c-Abl(例示的な阻害剤はメシル酸イマチニブ)、PDGFR(例示的な阻害剤はダサチニブ)、c-kit(例示的な阻害剤はニロチニブ)、及びPKC-δ(例示的な阻害剤には、小型特異的ポリペプチド及びロットレリン誘導体が含まれる)を含む非標準的なシグナル伝達経路を含むTGF-βシグナル伝達経路を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、CTGF(例示的な阻害剤にはモノクローナルCTGF抗体が含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、CXCL12(例示的な阻害剤にはCXCL12抗体が含まれる)、CXCR4(例示的な阻害剤にはAMD3100が含まれる)、及びCCR2(例示的な阻害剤にはPF-04136309が含まれる)を含む線維細胞ホーミングの阻害を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、Src(例示的な阻害剤にはダサチニブ及びSU6656が含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、VEGFR(例示的な阻害剤にはニンテダニブ及びBIBF1120が含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、FGFR(例示的な阻害剤にはソラフェニブが含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、IL-13(例示的な阻害剤にはIL-13に対するヒト化モノクローナル抗体が含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、IL-6受容体(例示的な阻害剤にはトシリズマブが含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、TLR(例示的な阻害剤にはTLR阻害剤E5564、TAK-242が含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、Nox4(ROS)(例示的な阻害剤にはGKT136901が含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、ET-1(例示的な阻害剤にはボセンタン及び他のET受容体遮断剤が含まれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、TGF-β、PDPN、LAIR-1、SMAD、ALK、結合組織成長因子(CTGF/CCN2)、内皮-1(ET-1)、AP-1、IL-13、PDGF、LOXL2、エンドグリン(CD105)、FAP、ポドプラニン(GP38)、VCAM1(CD106)、THY1、β1インテグリン(CD29)、PDGFRα(CD140α)、PDGFRβ(CD140β)、ビメンチン、αSMA(ACTA2)、デスミン、エンドシアリン(CD248)、またはFSP1(S100A4)アンタゴニストである。
【0445】
いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、ピルフェニドン、ガルニセルチブ、ダセチニンブ、ニンテダニブ、ニロチニブ、ロトリン及び誘導体、またはソラフェニブである。
【0446】
いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストは、TGF-βアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-βのそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-βのTGF-βの細胞受容体との結合を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-βの活性化を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β1を標的とする。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β2を標的とする。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β3を標的とする。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β受容体1を標的とする。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β1、TGF-β2、またはTGF-β3のうちの1つ以上を標的とする。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β受容体2を標的とする。いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β受容体3を標的とする。一部の実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、TGF-β受容体1、TGF-β受容体2、またはTGF-β受容体3のうちの1つ以上を標的とする。
【0447】
いくつかの実施形態において、TGF-βアンタゴニストは、抗TGF-β抗体である。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、抗TGF-βと1つ以上のそのリガンドとの間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、TGF-βの活性化を阻害することができる。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、ヒト抗体である。いくつかの実施形態において、TGF-β抗体は、TGF-β1、TGF-β2、及び/またはTGF-β3を阻害する。いくつかの実施形態において、TGF-β抗体は、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3を阻害する。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、汎特異的抗TGF-β抗体である。いくつかの実施形態において、抗TGF-β抗体は、例えば、米国特許第5,571,714号または国際特許出願第WO 92/00330号、第WO 92/08480号、第WO 95/26203号、第WO 97/13844号、第WO 00/066631号、第WO 05/097832号、第WO 06/086469号、第WO 05/010049号、第WO 06/116002号、第WO 07/076391号、第WO 12/167143号、第WO 13/134365号、第WO 14/164709号、もしくは第WO 16/201282号に開示される任意の抗TGF-β抗体であり得、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、抗TGF-β抗体は、フレソリムマブ、メテリムマブ、レルデリムマブ、1D11、2G7、またはそれらの誘導体である。本明細書に列挙される実施形態のいずれかで使用するための、かかる抑制間質アンタゴニスト抗体(例えば、抗TGF-β抗体)は、以下のサブセクションDのセクションi~viiに記載される特徴のいずれかを、単独または組み合わせで有し得ることが明示的に企図される。
【0448】
いくつかの実施形態において、抑制性間質アンタゴニストを用いた治療は、組織における免疫細胞浸潤の増加が可能になる。理論に束縛されることなく、抑制性間質アンタゴニストは、標的組織内の間質を調節し、免疫細胞の標的組織への浸潤を促進する。例えば、本明細書に記載されるバイオマーカーを発現する線維性腫瘍の抑制間質アンタゴニストを用いた治療は、腫瘍内及び周囲の間質を調節し、腫瘍への免疫細胞の浸潤(例えば、免疫療法により調節)を可能にする。いくつかの実施形態において、免疫細胞浸潤の増加は、T細胞、B細胞、マクロファージ、または樹状細胞のうちの1つ以上の浸潤の増加である。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD8+T細胞及び/またはTeff細胞である。いくつかの実施形態において、個体は、抑制性間質アンタゴニストを用いた治療以前の免疫療法に抵抗性である。いくつかの実施形態において、個体は、単独療法免疫療法をすでに実施されている。
【0449】
D.抗体
i.抗体親和性
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、または抗TGF-β抗体)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0450】
一実施形態において、Kdは、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施形態において、RIAは、目的の抗体及びその抗原のFabバージョンを用いて行われる。例えば、抗体に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最低濃度の(125I)標識抗原と平衡させ、次いで、抗Fab抗体をコーティングしたプレートで結合した抗体を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881,1999)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸塩(pH9.6)中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、続いて、室温(約23℃)で2~5時間、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンによってブロッキングする。非吸着性のプレート(Nunc番号#269620)中で、100pMまたは26pM[125I]-抗原を、目的とするFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599,1997)。次に、目的とするFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が達成されることを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)継続し得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のため、捕捉プレートに移す。次に、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標);Packard)を添加し、プレートを10分間TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で計数する。20%以下の最大結合を付与する各Fabの濃度を競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
【0451】
別の実施形態に従うと、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、固定化抗原CM5チップを約10応答単位(RU)で用いて25℃で行われる。一実施形態において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5,BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化する。抗原をpH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流量で注射し、カップリングされたタンパク質の約10応答単位(RU)を達成する。抗原の注射に続いて、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応基を遮断する。動態測定のため、Fabの2倍連続希釈物(0.78nMから500nM)を、約25μl/分の流量で25℃で0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に注射する。会合速度(kon)及び解離速度 (koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2版)を使用して、会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時に適合することによって計算する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として計算する。例えば、Chen et al.,(J. Mol.Biol.293:865-881,1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオンレートが10-1-1 を超える場合、オンレートは、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗-抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用して決定することができる。
【0452】
ii.抗体断片
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、または抗TGF-β抗体)は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.(Nat.Med.9:129-134,2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol. 113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag, New York), pp. 269-315(1994)を参照されたい。WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号もまた参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加した生体内半減期を有するFab及びF(ab’)断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0453】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP 404,097,WO1993/01161、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134,2003、及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448,1993を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.(Nat.Med.9:129-134,2003)を参照されたい。
【0454】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む、抗体断片である。特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
【0455】
抗体断片は、既知の方法に従う、インタクトな抗体のタンパク分解、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)の産生を含むが、これらに限定されない、様々な技術によって作製され得る。
【0456】
iii.キメラ抗体及びヒト化抗体
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、または抗TGF-β抗体)は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855,1984)に記載される。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0457】
特定の実施形態において、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、及びFR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0458】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,(Front.Biosci.13:1619-1633,2008)において概説されており、例えば、Riechmann et al.(Nature 332:323-329,1988)、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029-10033,1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.Methods 36:25-34,2005)(特異性決定領域(SDR)移植について記載)、Padlan,(Mol.Immunol.28:489-498,1991)(「リサーフェシング」について記載)、Dall’Acqua et al.(Methods 36:43-60,2005)(「FRシャフリング」について記載)、Osbourn et al.(Methods 36:61-68,2005)、及びKlimka et al.(Br.J.Cancer,83:252-260,2000)(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載)にさらに記載される。
【0459】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「最良適合」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296,1993)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285,1992、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623,1993を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633,2008を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684,1997、及びRosok et al.J.Biol.Chem.271:22611-22618,1996を参照されたい)が含まれる。
【0460】
iv.ヒト抗体
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、または抗TGF-β抗体)は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel,(Curr.Opin. Pharmacol. 5:368-74(2001)及びLonberg(Curr.Opin. Immunol. 20:450-459,2008)に概して記載されている。
【0461】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するかもしくは動物の染色体内にランダムに組み込まれているヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,(Nat.Biotech.23:1117-1125,2005)を参照されたい。例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術を記載する)、米国特許第5,770,429号(HUMAB(登録商標) 技術を記載する)、ならびに米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標) 技術を記載する)、ならびに米国特許出願公開第2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する)も参照されたい。かかる動物により生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによりさらに修飾され得る。
【0462】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。例えば、Kozbor, (J. Immunol. 133: 3001, 1984);Brodeur et al.(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63, Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner et al.(J. Immunol.,147:86,1991)を参照されたい。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体も、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562,2006に記載されている。追加の方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を説明)及びNi(Xiandai Mianyixue,26(4):265-268,2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを説明)に記載される方法が含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,(Histology and Histopathology,20(3):927-937,2005)及びVollmers and Brandlein,(Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91,2005)にも記載される。
【0463】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。次いで、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わされ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技術は、以下に記載される。
【0464】
v.ライブラリ由来抗体
抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、または抗TGF-β抗体)は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体に関してかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.(Methods in Molecular Biology 178:1-37,O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)で概説されており、例えば、McCafferty et al.(Nature 348:552-554,1990)、Clackson et al.(Nature 352:624-628,1991)、Marks et al.(J. Mol.Biol.222:581-597,1992)、Marks and Bradbury,(Methods in Molecular Biology 248:161-175,Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.(J. Mol.Biol.338(2):299-310,2004)、Lee et al.(J. Mol.Biol.340(5):1073-1093,2004)、Fellouse,(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472,2004)、及びLee et al.(J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132,2004)にさらに記載される。
【0465】
特定のファージ提示法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別個にクローニングされ、ファージライブラリ内で無作為に組み換えられ、これがその後、Winter et al.(Ann. Rev.Immunol.,12:433-455,1994)に記載されるように抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片を提示する。免疫化供給源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、高親和性抗体を免疫原に提供する。代替的に、Griffiths et al.(EMBO J,12:725-734,1993)によって説明されるように、ナイーブレパートリーは、クローン化され(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、幅広い非自己抗原及び自己抗原に対する抗体の単一の源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter,(J.Mol.Biol.,227:381-388,1992)によって記載されるように、幹細胞由来の再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用することによっても合成的に作製されて、高度可変CDR3領域をコードし、試験管内での再配列を達成することができる。ヒト抗体ファージライブラリを記載する特許公開には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が含まれる。
【0466】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書でヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0467】
vi.多重特異性抗体
上記の態様のいずれか1つにおいて、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、または抗TGF-β抗体)は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。特定の実施形態において、結合特異性の一方は、PD-L1へのものであり、他方は、任意の他の抗原へのものである。特定の実施形態において、結合特異性の一方は、TGF-βへのものであり、他方は、任意の他の抗原へのものである。特定の実施形態において、二重特異性抗体は、PD-L1の2つの異なるエピトープと結合し得る。二重特異性抗体を使用して、PD-L1またはTGF-βを発現する細胞に細胞傷害剤を局在化し得る。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製できる。
【0468】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537,1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.EMBO J.10:3655,1991を参照されたい)、及び「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電式ステアリング効果を遺伝子操作すること(例えば、WO2009/089004A1を参照されたい)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号及びBrennan et al.Science 229:81,1985を参照されたい)、二重特異性抗体を作製するためのロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al.J.Immunol.148(5):1547-1553,1992を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448,1993を参照されたい)、一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.J.Immunol.152:5368,1994)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60,1991)に記載される三重特異性抗体を調製することによって作製され得る。
【0469】
「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0470】
本明細書の抗体または断片としては、PD-L1及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用Fab」または「DAF」も含まれる。本明細書の抗体または断片にはまた、VEGF及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含むDAFも含まれる。
【0471】
vii.抗体バリアント
特定の実施形態では、本発明の抗体(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体)のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによるか、またはペプチド合成により調製され得る。かかる修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基からの欠失、及び/または残基への挿入、及び/または残基の置換が含まれる。最終構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせてもよいが、但し、その最終構築物が、所望の特徴、例えば、抗原結合性を有することを条件とする。
【0472】
a.置換、挿入、及び欠失バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換型変異原性のための目的の部位は、HVR及びFRを含む。保存的置換は、表6において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表6において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される通りである。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングされ得る。
表6:例示的な好ましいアミノ酸置換
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性: Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0473】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0474】
ある種類の置換型バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される得られたバリアント(複数可)は、親抗体と比べて、特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加及び/または免疫原性の低減)における変更(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換型バリアントは、例えば、本明細書に記載の技術などのファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して簡便に生成され得る親和性成熟抗体である。要するに、1つ以上のHVR残基が変異され、変異型抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0475】
改変(例えば、置換)は、HVRにおいて、例えば抗体親和性を改善するために行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196,2008を参照されたい)、及び/または抗原と接触する残基で行われ得、結果として得られたバリアントVHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.(Methods in Molecular Biology 178:1-37,O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に記載される。親和性成熟のいくつかの実施形態において、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが創出される。次いで、ライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6つの残基)が無作為化されるHVR指向手法を伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3は、多くの場合に標的とされる。
【0476】
特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)がHVR内で行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であり得る。上記で提供されるバリアントVH及びVL配列のある一定の実施形態において、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0477】
変異誘発のために標的化され得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(Science,244:1081-1085,1989)に記載される「アラニンスキャニング変異誘発」と称される。この方法では、標的残基の残基または基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)を特定し、中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置き換え、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたか否かを決定する。さらなる置換は、最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。代替的に、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造は、抗体と抗原との間の接触点を同定する。かかる接触残基及び隣接する残基は置換の候補として標的とされてもよく、または排除されてもよい。バリアントは、スクリーニングして、それらが所望の特性を有するかどうかを決定され得る。
【0478】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入型バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端の融合が含まれ、これは抗体の血清半減期を増大させる。
【0479】
b. グリコシル化バリアント
特定の実施形態において、本発明の抗体を改変して、抗体がグリコシル化する程度を増加または減少させてもよい。本発明の抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を創出するかまたは除去するように、アミノ酸配列を改変することによって簡便に達成され得る。
【0480】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐状オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32,1997を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐状オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態において、特定の改善された特性によって抗体バリアントを作製するために、本発明の抗体中にオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0481】
一実施形態において、Fc領域と結合した(直接的にまたは間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546で説明されているMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指す;しかし、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸の上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠乏」抗体バリアントに関する公表文献の例には、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.(J. Mol.Biol.336:1239-1249,2004)、及びYamane-Ohnuki et al.(Biotech.Bioeng.87:614,2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例には、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545,1986)、米国特許出願第2003/0157108A1号、及びWO2004/056312A1、特に実施例11)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614,2004、Kanda,Y.et al.Biotechnol.Bioeng.94(4):680-688,2006、及びWO 2003/085107)が含まれる。
【0482】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐状オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体バリアントがさらに提供される。かかる抗体バリアントは、低減されたフコシル化機能を有しても、及び/または改善されたADCC機能を有してもよい。かかる抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546に記載されている。Fc領域に付着しているオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を含む抗体バリアントも提供される。かかる抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載されている。
【0483】
c.Fc領域バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾が、本発明の抗体のFc領域内に導入され、それによりFc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0484】
特定の実施形態において、本発明は、全てではないが、いくつかのエフェクター機能を有することにより、生体内での抗体の半減期が重要ではあるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体バリアントを企図する。試験管内及び/または生体内細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/欠乏を確認してもよい。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にし得る。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,(Annu.Rev.Immunol.9:457-492,1991)の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評定するための試験管内アッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:7059-7063,1986、及びHellstrom,I et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1499-1502,1985、米国特許第5,821,337号、Bruggemann et al.J.Exp.Med.166:1351-1361,1987を参照されたい)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい))。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に、または加えて、目的の分子のADCC活性は、生体内で、例えば、Clynes et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652-656,1998)に開示されているものなどの動物モデルにおいて、評定され得る。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認し得る。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano-Santoro et al.J.Immunol.Methods 202:163,1996、Cragg et al.Blood.101:1045-1052,2003、及びCragg et al.Blood.103:2738-2743, 2004を参照されたい)。FcRn結合及び生体内クリアランス/半減期決定も、当該技術分野で既知の方法を使用して行われ得る(例えば、Petkova et al.Int’l.Immunol. 18(12):1759-1769,2006を参照されたい)。
【0485】
低下したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号及び同第8,219,149号)。かかるFc変異は、アラニンへの残基265及び297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc変異を含む(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)。
【0486】
FcRへの改善または縮小した結合を有する特定の抗体バリアントが、記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem. 9(2):6591-6604,2001を参照されたい)。
【0487】
特定の実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0488】
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.(J.Immunol. 164:4178-4184,2000)で説明されている、改変された(すなわち、改善したまたは低減した)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす改変が、Fc領域になされる。
【0489】
母体IgGの胎児への移入に関与する、増加した半減期及び新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587,1976、及びKim et al.J.Immunol.24:249,1994)が、米国公開第2005/0014934A1号に記載されている。それらの抗体は、FcRnとのFc領域の結合を改善する、1つ以上の置換を内部に有するFc領域を含む。かかるFcバリアントは、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。
【0490】
Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan and Winter(Nature322:738-40,1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351もまた参照されたい。
【0491】
d.システイン操作された抗体バリアント
特定の実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作された抗体、例えば、「thioMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体のアクセス可能な部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を他の部分(薬物部分またはリンカー-薬物部分など)に抱合して、本明細書にさらに記載される免疫複合体を作製することができる。ある特定の実施形態において、以下の残基のうちの任意の1つ以上を、システインで置換することができる:軽鎖のV205(Kabat付番)、重鎖のA118(EU付番)、及び重鎖Fc領域のS400(EU付番)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号で説明されているように生成し得る。
【0492】
e.抗体誘導体
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分としては、限定するものではないが、水溶性ポリマーが含まれる。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、いずれの分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体と結合したポリマーの数は異なってもよく、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じ分子であっても、異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下である療法に使用されるかなどを含むが、これらに限定されない、考慮すべき事項に基づいて決定され得る。
【0493】
別の実施形態において、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体及び非タンパク質性部分の複合体が提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605,2005)。放射線は、いずれの波長のものであってもよく、これには、限定するものではないが、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に近接する細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長が含まれる。
【0494】
f.免疫複合体
本発明は、化学療法剤もしくは薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体などの1つ以上の細胞毒性剤と複合された、本明細書の抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、または抗TGF-β抗体)を含む免疫複合体も提供する。
【0495】
一実施形態では、免疫複合体は、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号及び同第5,416,064号、ならびに欧州特許第EP0425235B1号を参照されたい)、モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい)、ドラスタチン、カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.Cancer Res.53:3336-3342,1993、及びLode et al.Cancer Res.58:2925-2928,1998を参照されたい)、ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.Current Med.Chem.13:477-523,2006、Jeffrey et al.Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358-362,2006、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529-1532,2002、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343,2002、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい)、メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル(larotaxel)、テセタキセル(tesetaxel)、及びオルタタキセル(ortataxel)などのタキサン;トリコテセン、ならびにCC1065を含むがこれらに限定されない1つ以上の薬物に複合されている抗体-薬物複合体(ADC)である。
【0496】
別の実施形態では、免疫複合体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むがこれらに限定されない酵素活性毒素またはその断片に複合された、本明細書に記載される抗体を含む。
【0497】
別の実施形態において、免疫複合体は、放射性原子に抱合されて放射性複合体を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。放射性複合体の産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が含まれる。放射性複合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99もしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、MRI)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。
抗体及び細胞傷害性剤の抱合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.(Science 238:1098,1987)で記載されているように調製することができる。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への複合化のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.Cancer Res.52:127-131,1992、及び米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0498】
本明細書の免疫複合体またはADCは、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびにSVSB(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋剤試薬で調製されるかかる複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0499】
D.薬学的製剤
本発明に従って使用される、例えば、免疫療法(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)などのPD-L1軸結合アンタゴニスト)及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、抗TGF-β抗体などのTGF-βアンタゴニスト)のような治療製剤は、所望の純度を有する治療剤を、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態にある任意選択の薬学上許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、保管のために調製される。製剤に関する一般情報に関しては、例えば、Gilman et al.(eds.) The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press,1990、A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.,Pennsylvania,1990、Avis et al.(eds.) Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York,1993、Lieberman et al.(eds.) Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York,1990、Lieberman et al.(eds.),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,1990、及びWalters(ed.) Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol 119,Marcel Dekker,2002を参照されたい。
【0500】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、受容者に対し、使用される用量及び濃度で非毒性であり、これにはリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0501】
本明細書の製剤は、2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。かかる医薬品の種類及び有効量は、例えば、製剤中に存在する治療剤の量及び種類、ならびに患者の臨床的パラメータに依存する。
【0502】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及び名のカプセル)中、またはマクロ乳濁液中に取り込まれ得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されている。
【0503】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の好適な例としては、治療剤を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)など)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0504】
生体内投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0505】
V.製品及びキット
本発明の別の態様において、個体の治療、予防、及び/または診断に有用な材料を含有するキットまたは製品が提供される。
【0506】
いくつかの事例では、かかるキットまたは製品は、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を含むがこれらに限定されない)及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体を含むがこれらに限定されない)を含む抗がん療法から利益を受け得るがん(膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌を含むがこれらに限定されない)を有する個体を特定するために使用できる。かかる製品またはキットは、(a)表1に示す1つ以上の遺伝子またはその任意の組み合わせ(例えば、表2~5のうちのいずれか1つに示す任意の組み合わせ)の発現レベルを決定するための試薬と、(b)試薬を使用して、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体を特定するための説明書と、を含む。追加の態様において、(a)表1に示す1つ以上の遺伝子またはその任意の組み合わせ(例えば、表2~5のうちのいずれか1つに示す任意の組み合わせ)の発現レベルを決定するための試薬と、(b)試薬を使用して、免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び/または抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療に対するがん(例えば、膀胱癌(例えば、UC、例えば、mUC)、腎臓癌(例えば、RCC)、肺癌(例えば、NSCLC)、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、PDAC)、結腸直腸癌、または乳癌)を有する個体の応答をモニタリング及び/または評価するための説明書と、を含む。
【0507】
記載される任意のキットまたは製品は、厳重な管理下で、バイアル、管等の1つ以上の容器手段を受容するように区分化された担体手段を備えてよく、容器手段のそれぞれは、この方法において用いられる別個の要素のうちの1つを含む。この製品またはキットが核酸ハイブリダイゼーションを利用して標的核酸を検出する場合、このキットは、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチド(複数可)を含む容器、及び/または酵素、蛍光、もしくは放射性同位元素標識等のレポーター手段を備える容器も有してもよい。
【0508】
いくつかの事例において、この製品またはキットは、上述の容器と、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を含む添付文書を備える、商業的観点及びユーザの観点から望ましい材料を含む1つ以上の他の容器とを備える。ラベルは、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示される場合があり、上記のものなどの生体内での使用または試験管内での使用のいずれかに関する指示も示す場合がある。例えば、この製品またはキットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸干渉食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される希釈緩衝液を含む容器をさらに含み得る。
【0509】
本明細書に記載されるキットまたは製品は、多数の実施形態を有し得る。一事例において、キットまたは製品は、容器と、当該容器上のラベルと、当該容器内に収容された組成物と、を含み、組成物は、厳しい条件下で、本明細書に列挙される遺伝子(例えば、表1に示される遺伝子、または表2~5に示される遺伝子の任意の組み合わせ)の相補体に対してハイブリダイズする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、当該容器上のラベルは、組成物を使用して、試料中の本明細書に列挙される遺伝子(例えば、表1に記載される遺伝子、または表2~5に示される遺伝子の任意の組み合わせ)の存在を評価し得ることを示しており、このキットは、特定試料タイプにおける遺伝子RNAまたはDNAの存在を評価するために、ポリヌクレオチド(複数可)を使用するための説明書を含む。
【0510】
オリゴヌクレオチドベースの製品またはキットの場合、製品またはキットは、例えば、(1)オリゴヌクレオチド、例えば、タンパク質をコードする核酸配列にハイブリダイズする、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、または(2)核酸分子を増幅させるために有用な一対のプライマーを含む。製品またはキットはまた、例えば、緩衝剤、防腐剤、またはタンパク質安定化剤を含むことができる。製品またはキットは、検出可能な標識(例えば、酵素または基質)を検出するのに必要な構成要素をさらに含むことができる。製品またはキットは、アッセイされ、試験試料と比較され得る、対照試料を含んでも、または一連の対照試料をさらに含むことができる。製品またはキットの各成分は、個別の容器内に封入されてもよく、様々な容器の全ては、キットを使用して行われたアッセイの結果の解釈のための説明書と共に単一のパッケージ中にあってもよい。
【0511】
免疫療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特性するためのキットが本明細書で提供され、キットは、(a)個体からの試料中における表1に示される遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルを決定するための試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するための説明書と、を含む。
【0512】
別の例において、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を用いた治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリング及び/または評価するためのキットが本明細書で提供され、キットは、(a)個体からの試料中における表1に示される遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の発現レベルを決定するための試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリング及び/または評価するための説明書と、を含む。
【0513】
例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗- TGF-β抗体)を用いた治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するためのキットが本明細書で提供され、キットは、(a)個体からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定するための試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するための説明書と、を含む。
【0514】
さらに別の例において、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を用いた治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリング及び/または評価するためのキットが本明細書で提供され、キットは、(a)個体からの試料中におけるACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2の遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定するための試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリング及び/または評価するための説明書と、を含む。
【0515】
前述の実施形態のいずれかにおいて、キットは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)の発現レベルを決定するための試薬を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての発現レベルを決定するための試薬を含む。いくつかの実施形態において、キットは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの2つの発現レベルを決定するための試薬を含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表2に示される。いくつかの実施形態において、キットは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの3つの発現レベルを決定するための試薬を含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表3に示される。いくつかの実施形態において、キットは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの4つの発現レベルを決定するための試薬を含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表4に示される。いくつかの実施形態において、キットは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2のうちの5つの発現レベルを決定するための試薬を含み、例えば、任意の例示的な組み合わせが、表5に示される。いくつかの実施形態において、キットは、ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、及びTGFBR2の発現レベルを決定することを含む。
【0516】
前述の方法のいずれかにおいて、キットは、TGFB1及び/またはTGFBR2の発現レベルを決定することを含み得る。前述の方法のいずれかにおいて、キットは、TGFB1及びTGFBR2の発現レベルを決定することを含み得る。
【0517】
前述のキットのいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、少なくともADAM19またはCOMPを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19を含む。他の実施形態において、1つ以上の遺伝子は、COMPを含む。さらなる実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19及びCOMPを含む。
【0518】
例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗- TGF-β抗体)を用いた治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するためのキットが本明細書で提供され、キットは、(a)個体からの試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定するための試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定するための説明書と、を含む。
【0519】
さらに別の例において、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制間質アンタゴニスト(例えば、TGF-βアンタゴニスト、例えば、抗TGF-β抗体)を用いた治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリング及び/または評価するためのキットが本明細書で提供され、キットは、(a)個体からの試料中におけるACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の遺伝子のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定するための試薬と、任意で(b)試薬を使用して、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリング及び/または評価するための説明書と、を含む。
【0520】
前述の方法のいずれかにおいて、キットは、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19)の発現レベルを決定するための試薬を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または19全ての発現レベルを決定するための試薬を含む。いくつかの実施形態において、キットは、ACTA2、ACTG2、ADAM12、ADAM19、CNN1、COL4A1、CTGF、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、及びTPM1の発現レベルを決定するための試薬を含む。
【0521】
前述のキットのいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、ADAM19、ACTG2、CNN1、CTPS1、FAM101B、FSTL3、HSPB1、IGFBP3、PXDC1、SEMA7A、SH3PXD2A、TAGLN、TGFBI、TNS1、またはTPM1のうちの少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)を含む。
【実施例0522】
VI.実施例
以下は、本発明の方法の実施例である。上述の概要を考慮すると、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。以下の実施例は、限定するためではなく例示として提供される。
【0523】
材料及び方法
A.研究デザイン、患者コホート、PD-L1試験、応答評価
この分析の試料は、IMvigor210から収集され、転移性尿路上皮癌(mUC)患者におけるアテゾリズマブ(3週間ごとに1200 mg(q3w))を調査する単一アームの第II相試験(臨床治験識別子:NCT02108652)であった。治験の主要なエンドポイントは、10%を超える部分応答(PR)率を達成することであった(固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)v1.1)。以前のプラチナ系化学療法に失敗している患者、またはプラチナ系化学療法に適格ではなかった未治療の患者が適格である。主要エンドポイントは、以前に治療された及び未治療の集団の両方で満たされていた。全ての患者は、研究登録前の2年間に腫瘍組織を採取されている必要があった。組織を、最初にPD-L1分析(Ventanaプラットフォームを使用したSP142抗体)に使用した。PD-L1陽性を、腫瘍組織の免疫成分における染色した細胞の5%を上回るとして定義した。追加の組織を探索的分析に使用した。全ての患者は、応答評価を促進する基準で測定可能な疾患を有した。RECIST v1.1を、治療に対する応答を評価するために使用した。断面イメージングを、6週ごとに実行した。全ての患者は、この分析に対して適切な倫理的承認を与えた。
【0524】
B.PD-L1免疫組織化学(IHC)
PD-L1 IHCは、Powles et al.Nature 515:558-562,2014において、以前に記載されている。要するに、事前にスクリーニングされた生検を、保存記録用パラフィン包埋組織から収集した。患者は、研究への参加前に組織を中央研究所に送ることが求められた。試料を、スクリーニングの際に処理した。FFPE腫瘍組織を、独自の診断用抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体(SP142)を使用した免疫組織化学により、PD-L1に対して予見的に染色した。マクロファージ、樹状細胞、及びリンパ球を含む腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1発現について試料をスコア化した。検体を、<1%、≧1%であるが<5%、≧5%であるが<10%、または≧10%の腫瘍浸潤免疫細胞がPD-L1陽性であった場合にそれぞれ、免疫組織化学IC 0、1、2、または3としてスコア化した。異なる時点または試料からの複数の検体を含む患者のPD-L1スコアは、最も高いスコアに基づいた。このアッセイを、IC1及びIC2カットオフでの臨床治験における試験的使用のために検証した。腫瘍細胞(TC)上のPD-L1発現の診査分析を実施した。検体を、<1%、≧1%であるが<5%、≧5%であるが<50%、または≧50%の腫瘍細胞がPD-L1陽性であった場合にそれぞれ、免疫組織化学TC0、TC1、TC2、またはTC3としてスコア化した。
【0525】
C.核酸試料調製
各症例の病理的診断を、H&E染色スライドの審査で確認し、核酸抽出に達した全ての試料は、最低20%の腫瘍細胞が含まれた。H&E画像を、病理学者によってマクロダイセクションのためにマークした。RNA(High Pure FFPET RNA Isolation Kit,Roche)及びDNA(QIAAMP(登録商標)DNA FFPE TissueKit,Qiagen)を、その後、マクロダイセクションされた切片から抽出した。
【0526】
図5は、既知のPD-L1 ICステータス、及び全エクソーム配列決定、FMOne系変異プロファイリング、RNA配列決定、及びがん免疫表現型検査で分析された他の分子データポイントの少なくとも1つを有する有効性評価可能な患者の数を示す。表7は、バイオマーカー評価可能患者(BEP)集団の人口統計学的詳細を示す。RNA配列決定データが生成された患者を代表的なBEPとして選択し、主要な臨床的共変量の分布を治療意図(ITT)集団と比較して列挙し、有効性評価可能な患者のみを評価した。患者の数及び割合(括弧内)の両方を表示した。BCG:カルメット・ゲラン桿菌、ECOG:米国東海岸癌臨床試験グループ。
表7:ITT及びBEP集団の人口統計
【0527】
D.変異プロファイリング(全エクソーム配列決定(WES)及びFOUNDATIONONE(登録商標)(FMOne)パネル)
250人の患者のWESデータを生成し、HISEQ(登録商標)2500(ILLUMINA(登録商標))シーケンサーで、AgilentSURESELECT(登録商標)v5(51 MB)キットを使用して、腫瘍及び末梢血単核細胞の両方から抽出されたDNAを配列決定した。FASTQ形式読み取りを、GSNAP (Wu et al.Bioinformatics 26:873-881, 2010、Wu et al.Methods Mol.Biol.1418:283-334, 2016) バージョン‘2013-10-10’(パラメータ:’-M 2 -n 10 -B 2 -i 1 --ペアマックス-dna=1000 --末端閾値=1000 --gmap-モード=なし--クリップ-重複’)を使用してヒト参照ゲノム(NCBI Build 38)に整列した。結果として生じたBAMファイル内の重複する読み取りを、PicardToolsを使用してマークし、挿入欠失を、GATK IndelRealignerツールを使用して再配列した。
【0528】
体細胞バリアントを、Lofreq v2.1.2(Wilm et al.Nucleic Acids Res.40:11189-11201、2012)及びStrelka(Saunders et al.Bioinformatics 28:1811-1817, 2012)コールのユニオンを使用して呼び出した。インデルの品質を「lofreq indelqual -dindel」を使用して配列に割り当て、体細胞変異を「--call-indels」オプションと共に「lofreq somatic」を使用して呼び出した。Strelka系体細胞変異を、Strelkaが提供する構成ファイル「strelka_config_bwa_default.ini」を使用して呼び出し、「isSkipDepthFilters = 0」の代わりに「isSkipDepthFilters = 1」を設定することが唯一変更された。体細胞変異を、Refseq系遺伝子モデルで、Ensembl Variant Effect Predictor(McLaren et al.Genome Biol.17:122,2016)を使用して、転写産物に対する効果について注釈付けした
【0529】
発現した変異を特定するために、RNAseq整列を、RパッケージVariantTools(Lawrence et al.VariantTools: Tools for Working with Genetic Variants Version 1.12.0)からのtallyVariants関数を使用して、エクソームデータにおいて特定された体細胞変異について集計した。各変異のネオ抗原の潜在性を、NetMHCcons (Karosiene et al.Immunogenetics 64:177-186, 2012)によって予測される最小IC50値に基づいて、対象のHLA遺伝子型を特定し、変異を含む全てのHLA対立遺伝子、及び8~11量体ペプチドにわたって最適なHLA-ネオエピトープペアを割り当てた後に予測した。HLA 遺伝子型解析を、Polysolver(Shukla et al.Nat.Biotech.33:1152-1158, 2015)を使用して、末梢血単核細胞(PBMC)の全エクソームデータに対して行った。
【0530】
加えて、DNAを293人の患者からの10ミクロンのFFPE切片から抽出し、ニューヨーク州公認の臨床検査改善修正法(CLIA)、及び標的化された次世代シーケンシング(NGS)系ゲノムプロファイリングのための米国病理学会(CAP)認定の研究所(Foundation Medicine,Cambridge,MA)に提示した。アダプタ連結したDNAは、395のがん関連遺伝子の全てのコーディングエクソンに加えて、がんで頻繁に再配置された31の遺伝子からイントロンを選択するハイブリッド捕獲を受けた(FMOneパネル)。
【0531】
捕獲されたライブラリを、ILLUMINA(登録商標)HISEQ(登録商標)2500で、51 MbのAgilentSURESELECT(登録商標)v5キットを使用して、>500x(DNA)または~3Mユニーク読み取り(RNA)のエクソン適用範囲深度の中央値で配列決定し、結果として得られた配列を、前述(Frampton et al.Nat.Biotechnol.31:1023-1031,2013)のように、塩基置換、小さな挿入及び削除(挿入欠失)、コピー数改変(局所的増幅及びホモ接合性の削除)、ならびに遺伝子融合/再配列について分析した。1000ゲノムプロジェクト(dbSNP142)からの頻繁な生殖細胞バリアントを削除した。不純な臨床検体における変異検出精度(感度及び特異性)を最大化するには、試験を、≧5%の変異対立遺伝子頻度(MAF)、≧10%のMAFで挿入欠失、≧99%の精度、及び>99%の感度でベイトされたイントロン/エクソン内で発生する融合(Framptonら(上記参照))で塩基置換を検出するために、以前に最適化及び検証した。がんにおける体細胞変異のカタログ(COSMIC v62)に登録されている既知の確認された体細胞改変を、対立遺伝子頻度≧1%で呼び出す(Forbes et al.Nucleic Acids Res.39:D945-D950, 2011)。
【0532】
FMOneパネルから、検出されたコーディング領域(同義改変を含む置換及び挿入欠失)における短いバリアントの数から腫瘍遺伝子変異量を計算した。既知及び予測される生殖細胞の改変、ならびに既知の体細胞及び可能性のある体細胞バリアントはカウントしない。Mbあたりの変異量は、カウントされた変異の数をFMOneパネルのゲノム標的領域のMbで割ったものである。特に明記しない限り、FMOne系変異量を、変異量に関する全ての分析に使用した。
【0533】
E. アテゾリズマブまたは変異量に対する変異及び応答の間の関連
各遺伝子について、既知または可能性のある変異がその遺伝子に対して報告された場合、患者を変異体と称した。経路系分析について、経路内の任意の遺伝子が既知のまたは可能性のある変異を有すると報告された場合、患者を経路内の変異体と称した。それ以外の場合、患者を非変異体とみなした。フィッシャーの正確確率検定を使用して、応答者(完全応答者及び部分応答者)及び非応答者(安定した進行性疾患)の間で変異患者の数が異なるかを特定した。ウィルコクソンの符号順位検定を使用して、変異状態及び変異量の間の関連を試験した。単一遺伝子のp値は、Benjamini及びHochberg補正を使用して実行した試験の数に対して修正した。経路系分析では、名目上のp値を報告した。
【0534】
F. 遺伝子発現プロファイル
TRUSEQ(登録商標)RNAアクセス技術(ILLUMINA(登録商標))を使用して368人の患者について全トランスクリプトームプロフィールを生成した。リボソームリードを除去するために、RNAseq読み取りを最初にリボソームRNA配列と整列した。残りの読み取りを、GSNAP (Wu et al.Bioinformatics 26:873-881, 2010、Wu et al.Methods Mol.Biol.1418:283-334, 2016) バージョン‘2013-10-10’を使用して、ヒト参照ゲノム(NCBI Build 38)に整列し、75塩基配列あたり最大2つのミスマッチを許可する(パラメータ:‘-M 2-n10-B2 -i1-N1-w200000-E1--ペアマックス-rna=200000--クリップ-重複)。遺伝子発現レベルを定量化するために、各RefSeq遺伝子のエクソンにマッピングされた読み取り数を、R/BioconductorパッケージGenomicAlignmentsによって提供される機能を使用して、鎖特異的な様式で計算した(Lawrence et al.PLoS Comput. Biol.0:e1003118, 2013)。
【0535】
G. 差次的遺伝子発現及び変異量またはPD-L1 IHCとの関連
R/BioconductorパッケージarrayQualityMetrics(Kauffmann et al.Genomics 95:138-142, 2010)を使用して品質管理を行った後、M値のトリミング平均値(TMM)を使用してカウントデータを正規化し、voomを用いて、関連する精密重量で100万分のlogカウントに変換した(Law et al.Genome Biol.15:R29,2014)。
【0536】
免疫細胞(IC)でのPD-L1タンパク質染色に関連する遺伝子を特定するために、各遺伝子の正規化、応答変数としてのlog変換発現、及び独立変数としてのPD-L1陽性(ICp)として特定される免疫細胞のlog変換割合を使用して、線形回帰モデルを適合した。報告された効果のサイズは、モデル近似からの係数を表し、log変換ICpの標準偏差の2倍に回帰の勾配を掛けたものである。図1Cは、PD-L1 IC陽性条件のみの効果サイズ及び調整されたp値をプロットした。
【0537】
アテゾリズマブへの応答に関連する生物学を特定するために、患者を応答者(完全応答者及び部分応答者)及び非応答者(安定した進行性疾患)に分類した。これら2つのグループ間で差次的に発現される遺伝子を、R/Bioconductorパッケージlimmaを使用して決定し(Ritchie et al.Nucleic Acids Res.43:e47,2015)、中程度のt検定を使用して遺伝子発現の変化を推定する経験的ベイジアンアプローチを実行する。
【0538】
腫瘍の変異量に関連する遺伝子を特定するために、各遺伝子の正規化、応答変数及び変異量としてのlog変換発現、バッチ、ならびに独立変数としてコホートを使用して、線形回帰モデルを適合した(後者2つが、TMBと相関することが見出されたため)。Rの分散分析()関数を使用して、F検定のp値を計算した。報告された効果サイズは、モデルの近似からの係数を表し、TMBの標準偏差の2倍で調整した。
【0539】
H. 京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)を使用した遺伝子セット集積解析
関連試験(応答または変異量を伴う遺伝子発現)に続いて、Fios Genomicsを、超幾何分布検定(Falcon et al.Bioinformatics 23:257-258, 2007)を使用してKEGG経路のメンバーシップを集積するために上位1,000遺伝子(p値でランク付けした)を分析し、上方及び下方制御された遺伝子を別々に評価した。集積p値を、Benjamini及びHochberg法を使用して試験した経路の数に対して補正した。集積分析の完全な結果を、表8(応答)及び表9(変異量)に報告した。表8に、応答(CR/PR対SD/PD)によって 差次的に発現される遺伝子において有意に(FDR<0.1)集積されたKEGG遺伝子セットを列挙した。「方向」は、カテゴリが応答者の遺伝子の上方(「上方」)または下方制御(「下方」)において集積されたかを示す。「特定された遺伝子」は、応答に関連していることを見出した特定のカテゴリ内の全ての遺伝子を列挙した。「S」はこれらの遺伝子の数を示し、「N」はカテゴリ内の遺伝子の総数を示し、同時に、「p(調整)」は調整された集積p値を保持する(超幾何検定)。表9に、TMBと相関する遺伝子における有意に(FDR<0.05)集積されたKEGG遺伝子セットを列挙した。「方向」は、カテゴリが、TMBと相関する陽性(「上方」)または陰性(「下方」)遺伝子において集積されたかを示す。「特定された遺伝子」は、TMBと相関していることが見出された特定のカテゴリ内の全ての遺伝子を列挙した。「S」、「N」、及び「p(調整)」は、表8の通りである。
表8:応答に関連する経路
表9:TMBに関連する経路
【0540】
I. シグネチャに使用される遺伝子セット
KEGG経路には、大まかに関連する機能しか有しない多数の遺伝子が含まれているため、本文に記載されている4つのコアバイオロジーの洗練された遺伝子セット(表10)を構築した。詳細には、
(i)DNA損傷修復遺伝子については、Lange et al.Nat.Rev.Cancer 11:96-110,2011に記載される遺伝子セットを使用し、
(ii)細胞周期制御性遺伝子については、TCGAが膀胱癌において頻繁に報告されると報告したp53/Rb経路内の遺伝子を使用し(The Cancer Genome Atlas Research Nature 507:315-322,2014)、
(iii)CD8 Tエフェクター遺伝子については、以前に公開されたシグネチャ(Rosenberg et al.Lancet 387:1909-1920, 2016、Balar et al.Lancet 389:67-76, 2017)を使用し、及び
(iv)TGF-βについては、3つの異なるシグネチャを検討した。最初に、経路のインプットをモニタリングするために、リガンド(TGFB1、TGFB2、及びTGFB3)及び受容体(TGFBR1、TGFBR2、及びTGFBR3)をIMvigor210における結果と関連付けるために評価した。TGFB1及びTGFBR2は、結果と有意に関連しており(それぞれ、調整p=8.956x10-3、及び調整p=1.070x10-2)、この2つをTGF-βの2遺伝子シグネチャとして使用した。次に、経路のアウトプットをモニタリングするために、以下に記載するように、汎線維芽細胞TGF-β応答シグネチャ(汎-F-TBRS)を生成した。さらに、図2Aでは、細胞外マトリックスの組織化に関与していると報告される遺伝子のより大きなセットをさらに示す(Sjodahl et Cancer. Res.18:3377-3386,2012)。
【0541】
J. シグネチャスコアの算出
遺伝子発現分析のために、シグネチャにおける各遺伝子の発現を、最初にZスコア変換した。次に、主成分分析を実行し、主成分1を抽出して遺伝子シグネチャスコアとした。このアプローチは、セット内の相関性の高い(または反相関性の)遺伝子の最大遮断でのセットのスコアを集中させるという利点を有し、一方で、遺伝子からの低下した重み付けの寄与は、他のセットメンバーでは追跡しない。
【0542】
K. 遺伝子シグネチャスコアまたは腫瘍遺伝子変異量及び目的の特性の間の関連
以下は、実施例全体の様々な試験に使用された検定法であり、
(i)応答との関連については、有効性を評価できる患者のみを考慮し、これらは、特に明記されていない限り、応答者(CR/PR)及び非応答者(SD/PD)にグループ化し、
(ii)二重特性、例えば応答と、正常に分布する連続的な特性との関連については、かかる遺伝子発現スコア、2試料のt検定を実行し、1つの遺伝子シグネチャ内で複数の対試験が実行された場合-特性の組み合わせ、p値は、Bonferroniで補正し、
(iii)二重特性、例えば応答または変異の状態と、傾斜分布を示したTMBとの関連付けについて、ウィルコクソン符号順位検を実行した。TMBをlog 変換し、0TMBを有する1人の外れ値患者を分析から除外し、
(iv)2つのカテゴリ的特性、例えば、応答及びICレベルの間の関連の評価のために、フィッシャーの正確確率検定を実行し、
(v)免疫表現型との関連については、免疫表現型を順序付けされた因子(不毛<除外<浸潤)として扱い、ANOVAを使用して尤度比検定のp値を算出した。これからの例外は、クラスカルウォリスH検定が使用されたTMBとの関連を試験することであり、
(vi)尤度比検定を、遺伝子発現シグネチャスコアなどの連続的特性と、ICレベルなどの2つ以上のグループの分類的特性との間の関連を試験するためにも使用した。さらに、同じ試験を使用して2つの特性間の相互作用を評価し、2つの特性が2つの独立変数として含まれているモデルと、これら2つの変数間の相互作用項を含むモデルとを比較した。
【0543】
logスケールでのTMBの視覚化では、変異を有しない患者を除外した(正確なバイオマーカー評価可能集団に応じて、これは1人または2人の患者のみであった)。全てのグラフで、各グループ内の患者数を上部に示した。
【0544】
L. 応答における説明される差異
一般化線形モデルは、従属変数として二重応答(CR/PR対SD/PD)、及び独立変数として異なるシグネチャまたはTMBの単一/組み合わせからのスコアを使用して適合した。ロジスティック回帰の疑似-Rを、患者の応答における「説明される分散」の尺度、すなわち、生物学的インプットの寄与に起因し得る患者の応答の変動の割合として抽出した(Dobson et al.An Introduction to Generalized Linear Models. Chapman and Hall/CRC Press,2008を参照されたい)。
【0545】
M.分子サブタイピング
TCGAサブタイプを、Rosenbergら(上記参照)に記載される方法論に従って割り当てた。
【0546】
Lundサブタイプを割り当てるために、1038遺伝子についての遺伝子発現の重心のデータセットをSjodahlらによって提供した(Sjodahl et al.Clin. Cancer Res.18:3377-3386,2012、Sjodahl et al.Am.J.Pathol. 183:681-691,2013)。報告されたRNAseqデータにおいて検出された遺伝子と重複する884重心の削減されるセットを使用して、分子サブタイプ(MS1a、MS1b、MS2a1、MS2a2、MS2b1、MS2b2.1、及びMS2b2.2)を割り当てた。これらの重心はマイクロアレイの遺伝子発現プロファイルに基づいていたため、RNA配列決定のような別のプラットフォームに単純に引き継ぐことはできず、これらの884遺伝子及び重心の中央値(log2)発現レベル間のスピアマン相関距離を算出することにより、分子サブタイプの割り当てを実行することを選択した。ランク系アプローチを使用する際に、プラットフォーム特有の影響を最小限にすることを目指した(しかしながら、Spearmanの代わりにPearsonを使用すると非常に類似した結果が得られたことは注目に値する)。各試料に最短距離を有する分子サブタイプを割り当てた。その後、クラスターMS1a及びMS1bは、それぞれ、尿路上皮A、MS2a1、及びMS2a2と結合し、ゲノム的に不安定なサブタイプであり、クラスターMS2b1、MS2b2.1、及びMS2b2.2は、それぞれ浸潤、尿路上皮B、及び基底/SCC様サブタイプと同等である。
【0547】
「尿路上皮様」は、元の「尿路基底」の代わりとして最近提案されていることに注意されたい(Lerner et al.Bladder Cancer 2:37-47,2016)。明細書では、更新された用語を使用する。同様に、「基底/ SCC様」は、現在では元の「SCC様」よりも好まれる。
【0548】
N. サブタイプヒートマップに使用される遺伝子セット
Lundサブタイプ標識を、上述されるように割り当てた。これらのサブタイプ及びこの原稿で検討されている生物学の様々な軸の関係をよりよく理解するために、図2A及び2Hは、13の生物学からの追加の遺伝子(すなわち、サブタイプの割り当てに必ずしも使用されなかった遺伝子)の遺伝子発現値を示す。表示される遺伝子は、次のように構築されたより大きな遺伝子セットの代表的なメンバーである:
A:Sjodahl et al.2012(上記参照)によって報告されたFGFR3遺伝子シグネチャ(代表を選択した)、
B:CD8 Tエフェクターシグネチャ(Rosenbergら(上記参照))、
C:Senbabaoglu et al.Genome Biol.17:231,2016によって報告された抗原処理機構、
D:免疫チェックポイントシグネチャ、
E:MKI67及び応答との関連付けのための遺伝子セットの集積に寄与した細胞周期遺伝子(KEGG)を選択(表8)、
F:DNA複製依存ヒストン(表8で発見されたヒストンの代表)、
G:上記で導入したDNA損傷修復遺伝子セットの選択メンバー、
H:Sjodahl et al.2012によって報告された細胞外マトリックス組織(ECM)セット(代表を選択した)、
I:TGF-βの2遺伝子シグネチャ、
J:Sjodahl et al.2012によって報告された血管新生シグネチャ(代表を選択した)、
K:Damrauer et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 111:3110-3115,2014によって報告された上皮間葉移行(EMT)マーカー、
L: 後述されるように決定される汎-F-TBRS、及び
TCGA:The Cancer Genome Atlas Research Nature(上記参照)で報告されているように、TCGAサブタイプ特異的に発現する遺伝子(図2H)。
【0549】
O. CD8/トリクロームデュアル染色
組み合わせたCD8/トリクロームデュアル染色を、4μmFFPE分画で実行した。IHC手順を、最初に抗ヒトCD8ウサギモノクローナル抗体SP16(Spring Bioscience;カタログ番号M3160)を1:100希釈で室温で1時間使用し、続いて抗原検索をCell Conditioning 1試薬(CC1、Ventana Medical Systems;カタログ番号950-124)を使用して実行した。OMNIMAP(商標)DABキット (Ventana、カタログ番号760-149)を使用して、特異的に結合した一次抗体を可視化した IHC手順が完了し、蒸留水ですすいだ後、スライドは、Bouinの固定液で60℃で1時間固定した後、前述のように、Weigertのヘマトキシリン、Biebrichのスカーレット酸フクシン、リンモリブデン-リンタングステン酸、及びアニリンブルーで構成される通常の三重染色液を使用した(Laboratory Methods in Histotechnology, Armed Forces Institute of Pathology,1992,p.132)。染色手順の最後に、スライドをエタノール濃度を上げながら脱水し、キシレンに浸し、合成封入剤を使用してカバーガラスをかけた。
【0550】
P. 生体内研究
EMT6マウス乳癌細胞株を、American Type Culture Collection (Manassas,VA)から入手した。細胞を、Roswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地と、2mM L-グルタミンと、10%ウシ胎児血清(HYCLONE(登録商標))で培養した。対数増殖期の細胞を遠心分離し、Hankの平衡塩類溶液(HBSS)で1回洗浄し、カウントして、50%HBSS及び50%MATRIGEL(商標) (BD Biosciences)に1x10細胞/mLの濃度で再懸濁し、マウスに注入した。雌のBalb/cマウスを Charles River Laboratories (Hollister, CA)から入手した。マウスを標準的なげっ歯類のマイクロ隔離飼育器に収容し、腫瘍細胞の移植前に少なくとも3日間についての条件を研究するために順化した。動物は8~10週齢であった。健康で明らかな異常がないと思われる動物のみを研究に使用した。マウスの左乳房脂肪パッド#5に、100μlのHBSS MATRIGEL(商標)(1:1)中の1x10EMT6細胞を接種した。腫瘍の体積が130~230mmに達したとき(接種後約8日)に、動物を腫瘍体積に基づいて治療群に分け、アイソタイプコントロール抗体、抗PD-L1(10mg/kgの初回用量、続いて5mg/kgの用量)、抗TGFベータ(10mg/kg)、または抗PD-L1と抗TGFベータとの組み合わせで治療した。治療開始の7日後、マウスを安楽死させ、IHCまたはフローサイトメトリー分析のために腫瘍を採取した。有効性試験では、抗体を週3回3週間投与した(初回用量は静脈内投与、その後は腹腔内投与)。腫瘍を、ノギスによって週に2回測定し、腫瘍体積を改良版の楕円式である1/2×(長さx幅)を使用して計算した。腫瘍体積が32mm(検出の下限)を下回ると、完全退縮(CR)(100%腫瘍成長阻害)とみなした。腫瘍の体積が2000 mmを超えた場合、マウスを安楽死させた。研究中に体重減少がなく、有害な臨床症状を示さなかったため、安楽死の基準を満たしたマウスは存在しなかった。明細書での全ての動物研究は、Genentechの動物実験委員会及び使用委員会によって承認された。研究で使用されるグループサイズは、有意義なデータを生成するために必要な最小サイズであると推定した。
【0551】
Q. マウスからの腫瘍全体のRNA及びタンパク質の定量
未処理のEMT6腫瘍におけるTGF-βアイソフォームの存在量を、RNAseq及びELISAによって、それぞれRNA及びタンパク質レベルの両方で分析した。RNAseq分析のために、平均サイズ300mmの腫瘍を収集した。TGF-βタンパク質のELISA定量化のために、乳房脂肪パッドへの接種の14日後に腫瘍を収集し、急速冷凍し、続いてTissueLyser破壊システム(Qiagen)での放射免疫沈降アッセイ(RIPA)バッファーで溶解した。総タンパク質をビシンコニン酸(BCA)アッセイによって定量化し、総タンパク質インプットを試料にわたって正規化した。試料中のTGF-βを酸で活性化し、ELISAキットの指示に従って測定した(マウスTGF-β1及びTGF-β2、R&D Systems;Mouse TGF-β3,LSBio)。処置開始から7日後に収集された血漿においてMouse VEGF QUANTIKINE(登録商標)ELISA Kit(R&D Systems)を使用して、VEGFを定量した。
【0552】
R. フローサイトメトリー用の単一細胞懸濁液及び抗体染色の準備
腫瘍を処置開始の7日後に収集した。腫瘍を秤量し、ディスパーゼ(Life Technologies)、コラゲナーゼP、及びDNaseI(Roche)のカクテルを使用して37℃で45分間酵素消化して、単一細胞懸濁液を得た。細胞はをVI-CELL(登録商標)XR(Beckman Coulter)を使用してカウントした。
【0553】
ホスホ-SMAD(pSMAD)染色については、製造元の指示に従って、BD PHOSFLOW(商標)Lyse/Fix Buffer、及びBD PHOSFLOW(商標)Perm Buffer III(BD Biosciences)を使用して、細胞を固定及び透過処理した。細胞を、リン酸化型のSMAD2及びSMAD3に指向するフィコエリトリン(PE)複合抗体で0.08μg/mlの濃度で氷上で1時間染色した(clone O72-670,BD Biosciences,San Jose,CA)。T細胞染色については、最初に細胞をマウスBD Fcブロック (clone 2.4G2, 5 μg/ml, BD Biosciences) 及び生存染色 (LIVE/DEAD(登録商標)Aqua Fixable Dead Cell Stain,Invitrogen)と共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞をCD45(BV605,clone 30-F11,0.67μg/ml,BD Biosciences)、TCRb (PE,clone H57-597,2μg/ml,Biolegend)、CD8(APC-Cy7,clone 53-6.7,1μg/ml,Biolegend) の抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞を固定し、透過処理(EBIOSCIENCE(商標)Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set,Thermo Fisher Scientific Inc.)してグランザイムB(FITC,clone NGZB,5μg/ml,EBIOSCIENCE(商標),Thermo Fisher Scientific Inc.)について染色した。
【0554】
フローサイトメトリーデータを、BD LSRFORTESSA(商標)細胞分析機器またはFACSYMPHONY(商標)(BD Biosciences)を用いて収集し、FLOWJO(登録商標)Software (Version 10.2,FlowJo,LLC)を使用して分析した。
【0555】
S. マウス組織での免疫組織化学
腫瘍を処置開始の7日後に収集した。腫瘍を10%中性緩衝ホルマリン(NBF)で固定し、パラフィン包埋した。IHCをSUPERFROST(商標)Plusガラススライド上に乗せ、厚さ4μmのパラフィン包埋組織切片で実行した。染色をLAB VISION(商標)Autostainer(ThermoFisher Scientific)で実行した。切片を脱パラフィンし、脱イオン水に再水和した。抗原検索を、1xDAKO Target Retrieval Solution(Agilent Technologies)で20分間99℃で実行し、74℃に冷却した。続いて、内因性ペルオキシダーゼを、3%Hで4分間室温でインキュベートすることによりクエンチした。CD3(ThermoFisher Scientific,clone SP7,カタログ番号 RM-9107-S,1:200希釈) を ABC Peroxidase Elite Detection Kit (Vector Laboratories,カタログ番号PK-6100)を伴う抗ウサギ(7.5μg/mL)二次抗体を使用して検出した。切片をMayerのヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、永久封入剤で封入し、カバーガラスで覆った。
【0556】
T. 汎線維芽細胞TGF-β応答シグネチャ(汎-F-TBRS)の生成
膀胱(PHBR、初代正常膀胱線維芽細胞、PCS-420-013(商標)、ATCC)、結腸(CCD-18Co、CRL-1459(商標)、ATCC)、乳房(HMF、#7630、ScienCell Research Laboratories)、肺(IMR90、CCL-186(商標)、ATCC)、膵臓(HPaSteC、#3836、ScienCell Research Laboratories)、及び卵巣(HOF、#7336、ScienCell Research Laboratories)からの初代線維芽細胞を、24時間2連で(1)対照、(2)TGF-β1(10ng/mL、#)、または(3)TGF-β1(10ng/mL)+TGF-β阻害剤ガルニセルチブ(10 μM)を用いた処置前に一晩血清飢餓状態にした。TGF-β誘導遺伝子を、上記の3つの条件を比較するRNAseqトランスクリプトーム解析によって特定した。F-TBRSを、(1)対照群と比較して、TGF-β1処置群では少なくとも2倍高い発現レベル(偽発見率(FDR)0.1)、(2)TGF-β1+処置単独(FDR 0.1)と比較して、TGF-β1+阻害剤群では少なくとも2倍低い発現レベル、(3)全ての6つの線維芽細胞型において基準(1)及び(2)を満たす基準を使用して決定した。これらの3つの基準(n=79)を通過した遺伝子を、阻害の強さ(対照対TGF-β1+TGF-β阻害剤)に従ってランク付けし、汎組織19遺伝子F-TBRSを定義するために、100万平均値減少あたり少なくとも5カウントで選別した。
【0557】
U. 汎組織6遺伝子F-TBRSの生成(6遺伝子シグネチャ)
上述される19遺伝子汎-F-TBRSデータに基づいて汎組織6遺伝子F-TBRSを開発したが、TGF-β経路成分(TGFB1及びTGFBR2)及び標的(CTGF、ADAM19、ACTA2、及びCOMP)をさらに優先した。6遺伝子シグネチャの予測値を検証するために、予後効果(一変量連続Cox比例ハザード回帰モデルを使用)及び予測効果(中央値カットオフを用いたログランク検定を使用)のハザード比を算出し、アテゾリズマブ臨床治験における予測効果のハザード比を算出した。分析は、6遺伝子シグネチャの高発現が、UC、非小細胞肺癌(NSCLC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膵管腺癌(PDAC)治験におけるアテゾリムマブ(アテゾ)単剤療法に対する応答の欠如と関連していることを示した。例えば、図6B及び6Cを参照し、IMvigor210及びPOPLAR研究(NCT01903993)からのデータをそれぞれ示す。さらに、TCGA結腸直腸癌(CRC)データセットでは、6遺伝子シグネチャの高発現も全体的な生存率の低下に大きく関連し、CMS4分子サブタイプにおいて集積され、CRC患者の生存率の低いサブグループと相関する(Guinney et al.Nat.Med.21(11):1350-1356,2015)。図6A、7A、及び7Bを参照されたい。
【0558】
V. マクロファージ及びT細胞TGF-β応答シグネチャ(M及びT細胞TBRS)
マクロファージ及びT細胞特異的TBRSを、Calon et al.Nat.Genet.47:320-329,2015から採用し、それぞれ1178及び69遺伝子である。シグネチャスコアを、(1)EMT6 RNAseqデータでのシグネチャ遺伝子の第1の主成分(PC1)を導出する、(2)PC1と少なくとも0.8のスピアマン順位相関を有するシグネチャ遺伝子を取得する、及び(3)ステップ(2)からの遺伝子のZスコアの平均を取ることによって算出した。ステップ(2)でのフィルタリングは、M-TBRS及びT-細胞-TBRSそれぞれについて101及び10遺伝子をもたらした。
【0559】
W. T細胞浸潤の統計分析
明視野画像を、Hamamatsu NanoZoomer自動スライドスキャンプラットフォームによって最終倍率200倍で取得した。画像を、MATLAB(登録商標)ソフトウェアパッケージ(MathWorks)の2016bバージョンで分析した。目的の領域(ROI)を病理学者によって定義した。ROI境界内のCD3+でマークされた細胞を、強度しきい値及び単純な形態学的フィルタリングによって特定した。免疫細胞浸潤を、各スライド(すなわち、各マウス)について、そのスライド上のROI内の全てのCD3+マークされた細胞にわたるROI境界までの平均値最短距離を算出することによって評価した。次に、ROI境界からROI中心までの最大距離で割ることにより、スライドごとに平均距離を正規化した。次に、正規化した平均距離を3つの研究(666、1430、1436)でプールし、固定カテゴリ変数としての処置群及びROI領域及びROI内のCD3+細胞の総数を共変量として線形回帰によって分析した。共変量調整平均値及び95%信頼区間を、各処理群について報告した。治療群間の対比較を、Tukeyの正直有意差(HSD)検定を使用して行った。全ての分析はRを使用して実行し、距離の算出をRパッケージ「spatstat」を使用して行った(Baddeley et al.Spatial Point Patterns: Methodology and Applications with R. Chapman and Hall/CRC Press,2015)。
【0560】
実施例1:既存の腫瘍免疫は、炎症性腫瘍における完全応答と関連する
多くのヒト固形腫瘍は、3つの異なる免疫表現型のうちの1つを示す:強固なCD8+T細胞浸潤及びPD-L1発現によって特徴付けされる「免疫炎症」表現型、T細胞が細胞外マトリックスに富む間質に蓄積する「免疫除外」表現型、及び腫瘍または周囲の間質内に浸潤しているリンパ球が明らかに少ない、「免疫不毛」の表現型。炎症性腫瘍は、免疫除外または免疫不毛の表現型と比較して、チェックポイントの遮断に対する応答が高いと考えられる。しかしながら、この関連は、大規模な臨床治験の状況下または単一の腫瘍型内で体系的に試験されていない。mUCでのアテゾリズマブ療法への応答を理解するために、統合された分子及び組織学的分析と、逆翻訳アプローチとを組み合わせて、所見を機能的に試験した。
【0561】
アテゾリズマブを用いたPD-L1遮断の臨床活性の調査のために、進行性mUCを有する429人の患者を第二相単群臨床治験に登録した(IMvigor210;NCT02108652)。客観的奏効率をRECIST v1.1に従って評価し、治験のエンドポイントとして機能した。完全奏効(CR)または部分奏効を達成した患者を応答者として分類し、安定した疾患(SD)または進行性疾患(PD)を示した非応答者と比較した。基準腫瘍での腫瘍浸潤性免疫細胞(IC)におけるPD-L1発現及び応答(客観的奏効率)の関連の評価は、主要評価項目であった。PD-L1 IC状態を、腫瘍微小環境(TME)におけるPD-L1陽性免疫細胞の割合によって定義した:IC0(<1%)、IC1(≧1%であるが<5%)、及びIC2+(≧5%)。
【0562】
以前に患者のより小さなコホートで見られたように、ICでのPD-L1発現は応答と有意に関連しており、高いPD-L1発現(IC2+)を有する腫瘍は最高のCR率を示した(図1A)。低いPD-L1 ICスコア(IC0/1)を有する患者と比較して、高いPD-L1 ICスコア(IC2/3)を有する患者においてアテゾリズマブからの改善されたOSの利益を観察した(図8A)。298人のIMvigor210参加者からの前処理組織における全トランスクリプトームRNA配列決定を実施し、アテゾリズマブへの応答に関連する機能を評価し、ICでのPD-L1発現に関連する発現レベルを有する遺伝子を特定した(図1B)。インターフェロン-γ(IFN-γ)誘導性遺伝子は、最も高度に相関していた。その多くがIFN-γ刺激遺伝子である、CD8+Tエフェクター(Teff)細胞及び免疫チェックポイント分子(表10)に関連する遺伝子セットが、最も異なる発現を示した(図1B及び1C)。CD8+Teff遺伝子セットは、特にCRとの応答にも有意に関連していた(図1D)。CD8+Teffスコアの四分位数は、全生存率と関連していた(図1U)。これは、ICでのPD-L1発現が、既存のCD8+T細胞免疫及び適応免疫抑制を有するが、依然として抗PD-L1療法に応答する用意ができている腫瘍組織をマークすることを示唆する。
表10:シグネチャ分析に使用される遺伝子セット
【0563】
実施例2:増殖、APOBEC発現、またはDNA損傷修復欠損によって誘導される腫瘍遺伝子変異量(TMB)は、アテゾリズマブへの応答に関連する
膀胱癌は、黒色腫及び非小細胞肺癌と共に、ヒトがんの中で最も高い体細胞TMBの1つを特徴とする。アテゾリズマブへの応答はmUCのTMBと有意に関連しており、この関連は完全なIMvigor210データセットでも有意であった(図1E)。TMBの関連は、免疫原性ネオ抗原の可能性の増加を介している可能性が高く、これと一致して、予測腫瘍ネオ抗原負荷(TNB)も応答と有意に関連していた(図1F)。TMB及びTNBもOSに関連した(図1V及び1W)。例えば、TMBの中央値をカットオフとして使用すると、低いTMBを有する患者に比べて高いTMBを有する患者においてアテゾリズマブからの改善されたOSの利益を観察した(図8B)。アテゾリズマブからの改善されたOSを、高いTMB及びPD-L1 ICスコアの両方を有する患者においてさらに観察した(図8C)。
【0564】
次に、mUCにおけるTMBの転写及び変異性相関を評価した。第1に差次的遺伝子発現分析を行い、続いて遺伝子セット集積分析を実施した。TMBに最も関連する経路は、細胞周期、DNA複製、及びDNA損傷、検出、及び修復に関与するものであった(図1G、表9)。これらの経路のシグネチャはMKI67と、したがって増殖と相関していた(図1H)。第2に、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様3A(APOBEC3A)、及びAPOBEC3B、膀胱及び他のがんで上方制御される2つのシチジンデアミナーゼの発現レベルは、TMB及び応答と弱いが有意に相関していた(図1I及び1J)。第3に、DNA損傷応答(DDR)のメンバーにおける機能喪失型変異を調査するか、または増殖率との関連から、TMBとの相関について細胞周期制御因子遺伝子セットを調査した。DDR遺伝子セットに1つ以上の変異を有する腫瘍は、TP53を含む場合と含まない場合(「w/o」)との両方で、有意に高い応答率及びTMBを示した(図1K及び1L、表11)。表11は、DNA修復(DDR)及び細胞周期制御遺伝子セットが、TP53を含む場合または含まない場合の、応答(CR/PR対SD/PD)及びTMB(「カテゴリ」)の関連について試験したことを示す。遺伝子セット(「n変異」)に属する遺伝子に少なくとも1つの変異を有する患者の数、効果サイズ(「推定」)、及び名目上のp値を報告する。MKI67発現及びDNA複製スコアは、アテゾリズマブへの応答とも関連した(図1Z)。
表11:DNA修復及び細胞周期制御経路の変異状態及び応答とTMBとの関連
【0565】
細胞周期制御セットに1つ以上の変異を有する腫瘍も、有意に高いTMB及び応答率を示したが、ここでの応答との関連はTP53によって引き起こされた(図1M及び1N、表11及び12)。まとめると、これらの結果は、増殖、APOBEC活性、及びDDRまたは細胞周期制御の欠損を含む複数の要因が膀胱癌のTMBに寄与し、PD-L1遮断に対する応答の増加につながることを示す。表12において、各試験した遺伝子について、記号及び変異患者の数を示す。変異状態との関連を、応答(CR/PR対SD/PD)及びTMB(「カテゴリ」)の両方について試験した。効果サイズ(「推定」)、名目上の(「p」)、及び調整されたp値(「p(調整)」)を報告した。最後の2列は、所与の遺伝子がDDR及び/または細胞周期制御(「CCReg」)遺伝子セットのメンバーであるかを示す。
表12:単一遺伝子の変異状態と応答及びTMBとの関連
【0566】
実施例3:TGF-β軸は一次免疫回避に関連する
次に、CD8+T細胞免疫及びTMBを超えて、応答に関連する任意の追加機能を特定することを求めた。増殖及びTMBの間の正の関係と一致して、DNA複製、細胞周期、及びヒストンに関連する遺伝子セットを応答者において有意に集積した(図1O、表8)。遺伝子セット集積分析はまた、サイトカイン-サイトカイン受容体遺伝子セットを非応答に関連する唯一の特徴として特定した(図1O、表8)。重要なことに、この経路内で最も有意に関連する遺伝子は、IFNGR1、ならびにTGFB1、ACVR1、及びTGFBR2を含むTGF-βシグナル伝達経路に関与する遺伝子であった。IFN-γは抗腫瘍免疫に好ましい影響を有することが知られているが、このサイトカインは、チェックポイント療法及び後天性免疫回避に対する主要な抵抗における主要なプレーヤーとしても出現する。mUCを有する患者の大きなコホートでは、IFNGR1発現が非応答者において集積されていたのに対し、応答者においてIFN-γの発現が有意に増強されていることを観察した。これは、IFN-γシグナル伝達が複数のT細胞阻害性リガンドの発現を促進し、T細胞を抑制するエピジェネティックなメカニズムを誘導することを示唆する最近の研究と一致する。
【0567】
TGF-βは、複数の腫瘍型における予後不良に関連する多面的サイトカインである。TGF-βシグナル伝達は一般に、免疫抑制、血管新生、転移、上皮間葉移行(EMT)、線維芽細胞の活性化、及び形成異常を促進することにより、進行性がんにおいて腫瘍形成促進的役割を果たすと考えられている。IMvigor210では、TGFB1及びTGFBR2で構成される2つの上位スコアTGF-β経路遺伝子に基づくシグネチャは、非応答者での平均値発現の増加を示した(図1P)。TGFB1発現は、奏功の悪さに関連しており、四分位数で分割すると、低減されたOSにも関連していた(図1X及び1Y)。上昇されたTGF-β発現がT制御細胞機能、EMT、及び/または間質関連免疫抑制の増加を示す可能性があることを考えると、アテゾリズマブへの応答を制限する上で重要な役割を果たす可能性が高い。
【0568】
実施例4:3つのコア経路が抗PD-L1療法に対する応答及び抵抗を促進する
総称すると、これらのデータは、膀胱癌におけるチェックポイント阻害への応答が、3つの中心的な生物学的軸の組み合わせによって決定されることを示唆し、既存のT細胞免疫及びTMBは、アテゾリズマブへの応答に積極的に関連しているが、TGF-β経路活性は疾患の進行及び応答の欠如に関連する(図1Q)。
【0569】
これら3つの経路が互いにどのように関連しているかを詳細に理解し、結果の予測におけるそれらの相対的な重要性を明らかにするために、競合するモデルの統計分析を実施した。ロジスティック回帰の疑似-Rを、全体的な患者の反応における「説明される分散」の尺度として使用した(すなわち、生物学的インプットに起因し得る患者の応答の変動の割合)(例えば、Dobsonら(上記参照))。単一インプットを考慮した場合、CD8+Teffシグネチャは患者の応答における変動の5%を説明したが、2遺伝子TGF-βシグネチャは16%を説明し、TMBは30%を説明した(図1R)。次に、これらの3つの生物学的インプットに互換性があるか、またはそれらが独立して応答の予測に寄与するかを求めた。全ての3軸を組み合わせたモデルは、患者の応答において説明される分散が42%に増加し、各単軸モデルよりも改善された(図1R)。全ての3軸を組み合わせたモデルは、全ての2軸モデルでも有意に改善され(図1S)、各軸によって提供される情報が他の2つから少なくとも部分的に独立していることを示す。
【0570】
実施例5:分子分類学は応答及び抵抗の促進要因間の関係を明らかにする
上述される3つの経路(すなわち、既存のT細胞免疫、TMB、及びTGF-β経路活性)の現在のフレームワークの力を強調し、TGF-βシグナル伝達の関連性を説明するために、確立された腫瘍分子サブタイピング及び3つの経路の関係を調査した。遺伝子発現に基づく複数の分類学的分類法が最近説明された(Lernerら(以前))。以前に、The Cancer Genome Atlas(TCGA)分類学(Calon et al.Nat.Genet. 47:320-329,2015)をIMvigor210試料に適用したが、Lund分類学(Sjodahl et al.Clin. Cancer Res.18:3377-3386,2012、Sjodahl et al.Am.J.Pathol. 183:681-691,2013)もさらに調査し、これはさらにmUCがゲノム的に不安定な(GU)サブタイプを含むように分類する(図2A)。TMBの重要性が示されていることから、GUサブタイプは応答者を有意に集積するという仮説を立てた。実際に、GUは、高TMB腫瘍に集積されており(図2A~2C)、他のLundサブタイプ(17.6%)よりもはるかに高い奏効率(47.2%)を示した(図2D)。GUサブタイプにおける応答率の上昇は、TCGAサブタイプ間で観察された差異を超えたが(図2E)、予想外に、TCGA管腔IIサブタイプが同様に高TMB腫瘍に集積されるため、これは変異量に起因するものではない(図2B及び2C)。代わりに、TCGA管腔IIのみ、Lund GUのみ、またはその両方として分類された患者を個別に評価することにより、差異の原因を特定した(図2F)。管腔II腫瘍は、それらのLund標識に関係なく、より高いCD8+Teff遺伝子発現を有したが、GUとしても分類された管腔II腫瘍のみは、低いTGF-βの特徴を示した。したがって、好ましくないTGF-βシグネチャは、好ましくないCD8 Teff対TGF-βの比率を導き、この患者グループにおける高いTMBを捏造し、応答の低下をもたらした。
【0571】
The Cancer Genome Atlas(TCGA)によって定義された発現サブタイプ及びIMvigor210の個々のコホートにおけるアテゾリズマブ単剤療法に対する臨床反応の間の関連が特定されている。TMBは応答に強く関連しており、さらに、遺伝子発現のパターンによって少なくとも部分的に捕捉されていることを見出した。これを念頭に置いて、ゲノム的に不安定な(GU)サブタイプが含まれる(図2A)UCについての代替的な分子分類であるLund分類学を検討した(Sjodahl et al.Clin. Cancer Res.18:3377-3386,2012、Sjodahl et al.Am.J.Pathol. 183:681-691,2013)。
【0572】
Lund GUサブタイプは、他のLundサブタイプよりも劇的に高い応答率を示し(図2D)、高TMB腫瘍が強く集積されていた(図2B及び2C)。Lund GUサブタイプはTP53(34%)及びRB1(43%)についても最も高い変異率を有し、増殖及び変異の間の関連と一致する(図2A)。
【0573】
基底/SCC様(SCCL)及び尿路上皮様B(UroB)サブタイプは、CD8+Tエフェクター遺伝子の高い発現、及びICでの高いPD-L1発現を含むそれらの相関と関連していた(図2A)。これらの腫瘍はGU腫瘍と同様のCR率を示したが、全体的な応答率は低かった(図2D)。これは、低いTMB及びTGF-βシグネチャの相対的な集積が原因であり得る(図2A及び2G)。
【0574】
尿路上皮様A(UroA)腫瘍は、例えば、高いFGFR3、TP63、及びWNT7B発現などのTCGA分類により、管腔Iサブタイプと多くの分子的特徴を共有していた(図2H)。UroAサブタイプにおいて観察された最小応答率は、低いTMB及び制限された既存の免疫を反映している可能性が高い。
【0575】
Lund浸潤サブタイプは、T細胞及び筋線維芽細胞の両方が存在することから、そのように命名された。この分類に沿って、浸潤腫瘍は、CD8+Tエフェクター遺伝子の発現が上昇されていたが、TGF-β、間質活性化及び血管新生、細胞外マトリックス、ならびにEMTを含む、腫瘍形成促進及び免疫抑制経路に関連する遺伝子の相対的発現がさらに最高であり、TGF-βシグネチャに対するCD8+Tエフェクターの好ましくない比率につながる(図2A及び2G)。浸潤サブタイプはまた、TMBの最も低い中央値を有し(図2B及び2C)、これは、好ましくないCD8+Tエフェクター対TGF-βの比率との組み合わせで、最も低い応答率を示す浸潤サブタイプと一致している(図2D)。
【0576】
実施例6:TGF-β経路の活性化は、免疫除外腫瘍において抗PD-L1への応答を制限する
TGF-βシグナル伝達と間質成分の関係及び間質細胞がCD8+T細胞に及ぼす可能性のあるマイナスの影響を考慮して、次に腫瘍免疫表現型及びアテゾリズマブへの応答の関係を調査した。免疫組織化学を使用してCD8+T細胞浸潤を評価し、TMEにおけるCD8+T細胞の存在及び位置に基づいて、腫瘍を免疫不毛、免疫除外、または免疫炎症表現型に分類した(図3A)。膀胱腫瘍の大幅な割合(およそ48%)が免疫除外表現型を示したのに対し、免疫不毛及び免疫炎症腫瘍はそれぞれおよそ26%を占めていた。免疫除外表現型は、主に腫瘍周囲間質区画内にあるCD8+T細胞の局在によって特徴付けられ、コラーゲン繊維に並置されていた(トリクローム染色により明らかにされた;図3B)。
【0577】
免疫除外腫瘍におけるCD8 T細胞の線維形成性間質への近接性(図3A及び3B)、ならびにTGF-βリガンド及び受容体遺伝子発現の応答の欠如(図1O)の関連は、どちらもTGF-β経路に関係する。この経路の役割を詳細に理解するために、2つの異なる遺伝子シグネチャを検討した。第1は、経路へのインプットを表す2遺伝子シグネチャ(前述されるTGFB1及びTGFBR2)である。2遺伝子インプットシグネチャは、免疫表現型にわたって発現レベルに差異を示さなかったが、免疫除外腫瘍のみで非応答者において上昇した(図3C)。第2のシグネチャは、様々な組織からの線維芽細胞において特にTGF-β経路アウトプットを測定するために開発した。「汎線維芽細胞TGF-β応答シグネチャ」(汎-F-TBRS)には、6つの組織に由来するヒト初代線維芽細胞株のパネルにわたるTGFB1によって強く特異的に誘導される19遺伝子が含まれる。2遺伝子のシグネチャと同様に、免疫除外腫瘍における応答の欠如は、より高い汎-F-TBRSスコアと有意に関連していた(図3D)。2遺伝子シグネチャとは異なり、汎-F-TBRSスコアは、免疫炎症性腫瘍及び免疫除外腫瘍の両方で上昇した。ただし、2遺伝子TGF-βシグネチャと一致して、汎-F-TBRSは非応答者及び免疫除外腫瘍のみの応答者を層別化し、治療が進行した患者において有意に集積された。これらの結果は、TGF-β経路遺伝子及び非応答の間に観察された関連が、少なくとも部分的には、組織の微小環境(TME)における線維芽細胞へのこの経路の影響に起因し得ることを示唆する。
【0578】
実施例7:TGF-β阻害はT細胞浸潤及び抗PD-L1に対する治療応答を改善する
おそらく、バイオマーカー分析の最も予想外の影響は、IMvigor210におけるTGF-β経路及びアテゾリズマブへの応答の欠如の関連である(図1O、1P、3C、及び3D)。TGF-βシグナル伝達は、初期での腫瘍成長を直接的に妨害する、腫瘍EMT及び転移を促進する、T制御細胞の発達を促進する、腫瘍の間質包囲を促進するなどの腫瘍及び免疫系の両方に多くの複雑な影響を有することができる。免疫除外表現型における汎-F-TBRSレベルの上昇を観察すると、活性化された間質に対するTGF-βシグナル伝達の効果が、T細胞の流入及び有効性の両方の制限につながり得ることが示唆された。実際に、活性化されたCD8+T細胞は、免疫除外腫瘍には存在せず(免疫不毛腫瘍とは対抗する、図3A)、それらはTMBの低下を示さず(図3E)、間質関門による腫瘍実質からのT細胞の物理的除外は、このグループの療法に対する応答を制限する重要な特徴であったことを示唆している。
【0579】
したがって、TGF-β-活性化間質についてのバリアの役割を調査するためにマウスモデルを確立した。この目的のために、EMT6マウス乳癌モデルを利用し、これは、T細胞がコラーゲン線維(図4A)及び全てのTGF-βアイソフォームと関連して腫瘍の周辺に局在する免疫除外表現型を再現するためであり、PD-L1はTME内で発現される(図4B及び4C)。EMT6腫瘍細胞をBALB/cマウスに同所移植した。腫瘍がおよそ160mmに達したら、汎特異的TGF-β遮断抗体である抗PD-L1及び/または1D11を用いた治療を開始した。1D11治療は、TGF-βシグナル伝達を低減させ、これは、腫瘍(図4L)におけるリン酸化SMAD2/3及び血漿(図4M)におけるVEGF-Aのレベルの低減によって示される。腫瘍が確立されたマウスにおけるPD-L1及びTGF-βの二重遮断は、大部分のマウスで完全な腫瘍退縮をもたらしたが、抗PD-L1単独では、より少ない完全な退行をもたらした(図4D~4F)。TGF-β単独の遮断は、生体内での腫瘍成長に影響を及ぼさなかった(図4D~4F)。二重抗体遮断は、腫瘍浸潤性T細胞の存在量の増加をさらにもたらした(図4G~4I及び4O)。グランザイムBレベルも、併用療法アームにおいてCD8+T細胞ごとに増加した(図4J及び4N)。特に、PD-L1及びTGF-β遮断の組み合わせにより、T細胞の分布が、大部分が腫瘍周辺の局在からより腫瘍内のパターンに改変した(図4G、4K、及び4O)。したがって、TGF-β及びPD-L1の二重遮断により、腫瘍島へのT細胞の局在が促進され、治療応答が改善された。
【0580】
この二重遮断に対する応答の根底にあるメカニズムを詳細に理解するために、4つの治療条件のそれぞれからの腫瘍に対してRNA配列決定を実行した。ヒト腫瘍の分析に使用されたCD8+Teffシグネチャは、抗PD-L1及び抗TGF-βの組み合わせを用いて治療されたマウス腫瘍で上昇した(図4P及び4T)。Teff遺伝子シグネチャの発現を増加させる抗PD-L1単剤療法にもかかわらず、効果は有意ではなかった(図4P)。これらの結果は、TGF-βの阻害が抗PD-L1の効果を有意な方法で増強し、抗腫瘍免疫を増強することを示唆した。次に、腫瘍内の異なる間質細胞集団におけるTGF-β発現シグネチャを評価した。汎-F-TBRSは、併用治療で有意に減少した(図4Q)。対照的に、T細胞またはマクロファージに関連するTBRSの低減は観察されなかった(図4R)。これらの結果と一致して、EMT6腫瘍のリン流分析は、併用療法後に、pSMAD2/3によって反映されるように、TGF-βシグナル伝達がCD45-で有意に低減したが、CD45+細胞では低減しなかったことを示した(図4L)。TMEシグネチャ及びTMEにおける汎-F-TBRSの競合する効果は、Teff及び汎-F-TBRSの比率と統合できる。この比率スコアは、対照及び単一抗体治療と比較して、併用治療において増加を示した(図4S)。抗PD-L1及び抗TGF-βの組み合わせで治療したマウス腫瘍では、CD8+Teff遺伝子の発現が上昇したが、がん関連線維芽細胞(CAF)リモデリング遺伝子の発現は減少した(図4T及び4U)。例えば、IFNG、GZMB、及びゼータ鎖関連プロテインキナーゼ70(ZAP70)の発現は、抗PD-L1及び抗TGF-βの組み合わせを用いて治療されたマウス腫瘍で上昇し、リシルオキシダーゼホモログ2(LOXL2)、テネイシンC(TNC)、及びペリオスチン(POSTN)は、抗PD-L1及び抗TGF-βの組み合わせを用いて治療されたマウス腫瘍で減少した(図4U)。理論に拘束されることなく、TGF-β及びPD-L1の二重治療的遮断により、CAFを再プログラミングして間質構造を変更することにより、免疫除外腫瘍を炎症性腫瘍に切り替えることができ得る。
【0581】
要するに、TGF-βの遮断は、抗PD-L1抗体と相乗作用して、腫瘍床のCD8+Teff細胞数を増加させ、強力な抗腫瘍免疫を推進することができる。上昇されたTGF-βシグナルは追加の結果を有し得るが、これらの結果は、免疫除外群のTGF-β活性化間質がTeff機能を抑制し、腫瘍自体へのT細胞の侵入を物理的に制限するという考えと一致する。
【0582】
汎がんシグネチャ
mUCにおけるアテゾリズマブの有効性を試験する第二相の単群試験に登録された患者におけるチェックポイント遮断に対する応答及び一次免疫回避に関連する分子、細胞、ならびに腫瘍の遺伝因子の包括的な評価を実施した。この分析に使用されたコホートのサイズが大きいことを考えると、応答の可能性を左右する腫瘍の特性に関するいくつかの重要な機能的結論に達した。実際に、3つの生物学的軸が異なる独立した役割を果たすことを見出し、それは(1)ICでのPD-L1発現及びCD8+Teff活性の遺伝子発現または組織学的相関によって表される、既存の免疫、(2)直接的に測定されるが、増殖及びDNA損傷応答の分子シグネチャ、またはこれらのプロセスに影響を与える機能喪失型変異にも反映される、TMB、ならびに(3)TGF-β経路シグナル伝達である。それぞれが応答の多元的根拠に大きく貢献するが、TGF-βシグナル伝達及びTMBは、共に膀胱癌についての最大の説明を提供する。
【0583】
非応答免疫排除mUC腫瘍におけるTGF-βシグネチャの集積、ならびに高いTMB及び/または非応答について集積されたLundサブタイプにおける既存の免疫の相殺における可能な役割に基づいて、TGF-βシグナル伝達は、抗腫瘍免疫を妨げ得ると仮定した。この仮説を試験し、免疫チェックポイント遮断に対する応答を抑制するTGF-βの機能的役割を詳細に理解するために、患者における免疫除外腫瘍のいくつかの側面をエミュレートするマウスモデルを使用した。このモデルでは、TGF-β及びPD-L1シグナル伝達の同時阻害により、腫瘍が除外表現型から炎症表現型に変換され、CD8+Teff細胞による腫瘍浸潤が増強され、腫瘍退縮が著しく増加した。
【0584】
明細書で説明される免疫療法への応答の多元的根拠は、膀胱癌以外の他の腫瘍型にも適用できると予想され、免疫チェックポイント遮断に対する汎がん応答率は、3つの軸全てを考慮することでさらに改善され得る。同様に、抗PD-L1療法への応答及び抵抗の決定因子は、他の免疫チェックポイント阻害剤にも及ぶと予想される。
【0585】
全体として、これらのデータは、例えば、免疫療法(例えば、抗PD-L1抗体などのPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ))及び抑制性間質アンタゴニスト(例えば、抗TGF-β抗体などのTGF-βアンタゴニスト)を含む抗がん療法に対するがん患者(例えば、膀胱癌患者)の応答を予測及びモニタリングするための予測及び薬力学的バイオマーカーとして、本明細書に記載されるバイオマーカー及びシグネチャ(例えば、汎-F-TBRS)の使用を支持する。
【0586】
VII. 他の実施形態
前述の発明は、明確な理解のために例証及び例によっていくらか詳細に記載されているが、説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図1-10】
図1-11】
図1-12】
図1-13】
図1-14】
図1-15】
図1-16】
図1-17】
図1-18】
図1-19】
図1-20】
図1-21】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図4-7】
図4-8】
図4-9】
図4-10】
図4-11】
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
【配列表】
2024109713000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得るがんを有する個体を特定する方法であって、前記方法が、前記個体からの試料中において以下の遺伝子のうちの3つ以上の発現レベルを決定することを含み、
ACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2
前記3つ以上の遺伝子の参照発現レベル以上である前記試料中のACTA2、ADAM19、COMP、CTGF、TGFB1、またはTGFBR2のうちの3つ以上の発現レベルが、免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む抗がん療法を用いる治療から利益を受け得る者として前記個体を特定する、前記方法。
【外国語明細書】