(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010972
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】培地シート
(51)【国際特許分類】
A01G 24/44 20180101AFI20240118BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20240118BHJP
【FI】
A01G24/44
A01G31/00 617
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112607
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022BA12
2B022BB02
2B314NA01
2B314NA25
2B314NB04
(57)【要約】
【課題】植物を適切に生長させることができ、且つ、取扱性に優れる植物栽培用の培地シートを提供する。
【解決手段】本発明の培地シート1は、播種される部分として互いに離れた位置に設けられた複数の第一部11と、複数の第一部11と同一の素材から構成され、複数の第一部11より嵩密度が大きい第二部12と、を有し、培地シート1において、第二部12は、複数の第一部11の各々と隣接した状態で配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地シートであって、
播種される部分として互いに離れた位置に設けられた複数の第一部と、
前記複数の第一部の各々と同一の素材から構成され、前記複数の第一部の各々より嵩密度が大きい第二部と、を有し、
前記培地シートにおいて、前記第二部は、前記複数の第一部の各々と隣接した状態で配置されていることを特徴とする培地シート。
【請求項2】
前記第二部は、前記複数の第一部の各々を取り囲み、且つ、前記培地シートにおいて前記複数の第一部の各々と連続した状態で配置されている、請求項1に記載の培地シート。
【請求項3】
前記複数の第一部の各々は、前記培地シートの厚み方向における両面に露出する露出面を有する、請求項1に記載の培地シート。
【請求項4】
前記複数の第一部の各々が有する前記厚み方向の一端側の前記露出面に播種用の窪みがある、請求項3に記載の培地シート。
【請求項5】
前記複数の第一部の各々には、前記厚み方向の一端側の前記露出面から他端側の前記露出面まで前記厚み方向に沿って延びた貫通孔が配置される、請求項4に記載の培地シート。
【請求項6】
前記素材は、生分解性樹脂を含む、請求項1に記載の培地シート。
【請求項7】
前記培地シートの厚み方向において、前記複数の第一部の各々の中間位置と、前記第二部の中間位置とが、互いに異なっている、請求項1に記載の培地シート。
【請求項8】
前記第二部は、前記培地シートの厚み方向に突出した凸部を有する、請求項1に記載の培地シート。
【請求項9】
前記第二部は、曲げられた曲げ部を有する、請求項1に記載の培地シート。
【請求項10】
前記複数の第一部の各々の厚みが、前記第二部の厚みよりも大きい、請求項1に記載の培地シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用の培地シートに関する。
【背景技術】
【0002】
植物の栽培を行う際、培地の材料として、吸水性を有する発泡体及び繊維体等が用いられることがある。特に、植物の生長に必要な水及び空気を保持しやすい性質から優れた培地となり得るウレタンスポンジ等が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウレタンスポンジ製の培地は、例えば、培地中の複数の箇所に播種した後、養液等に浸漬させて水耕栽培等に用いることができる。しかしながら、これまでのウレタンスポンジ製の培地については、把持又は支持できる部分がないために持ち難い等、取り扱い難いものであった。
一方、培地として、シート状の培地(培地シート)を利用することが考えられ、この場合には、培地シートの取扱性を確保するとともに、培地シートに設けられた複数の栽培箇所にて植物を適切に栽培できることが求められる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、植物を適切に生長させることができ、且つ、取扱性に優れる植物栽培用の培地シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の培地シートは、播種される部分として互いに離れた位置に設けられた複数の第一部と、複数の第一部と同一の素材から構成され、複数の第一部より嵩密度が大きい第二部と、を有し、培地シートにおいて、第二部は、複数の第一部の各々と隣接した状態で配置されていることを特徴とする。
本発明の培地シートは、互いに嵩密度が異なる第一部及び第二部を有し、嵩密度の小さい第一部では播種後に種から根が伸び易く、植物を適切に栽培することができる。一方、嵩密度の大きい第二部は、培地シートを持つ際に把持することができ、又は、第二部を利用して培地シートを支持等することができる。これにより、植物を適切に生長させることができ、且つ、取扱性に優れた植物栽培用の培地シートが実現される。
【0007】
また、第二部は、複数の第一部の各々を取り囲み、且つ、培地シートにおいて複数の第一部の各々と連続した状態で配置されていることが好ましい。
上記の構成では、嵩密度の大きい第二部が嵩密度の小さい複数の第一部の各々を取り囲んでいることで、各第一部の周辺部分を把持又は支持し易くなり、より取扱性に優れた培地シートが提供される。
【0008】
また、複数の第一部の各々は、培地シートの厚み方向における両面に露出する露出面を有することが好ましい。
上記の構成では、嵩密度の小さい第一部が培地シートを貫通した状態で設けられ、根の生長が妨害されないため、より植物の生長性に優れた培地シートが提供される。
【0009】
また、複数の第一部の各々が有する厚み方向の一端側の露出面に播種用の窪みがあることが好ましい。
上記の構成では、窪みにより安定した播種ができるため、より取扱性に優れた培地シートが提供される。
【0010】
また、複数の第一部の各々には、厚み方向の一端側の露出面から他端側の露出面まで厚み方向に沿って延びた貫通孔が配置されることが好ましい。
上記の構成では、貫通孔により根の生長が安定するため、より植物の生長性に優れた培地シートが提供される。
【0011】
また、素材は、生分解性樹脂を含むことが好ましい。
上記の構成では、栽培後に培地を培地中に植わった植物の根とまとめて廃棄処分及び肥料として再利用することが可能になるため、より取扱性に優れた培地シートが提供される。
【0012】
また、培地シートの厚み方向において、複数の第一部の各々の中間位置と、第二部の中間位置とが、互いに異なっていることが好ましい。
上記の構成では、培地シートを水耕栽培に用いる場合に、第二部が水に浸漬されにくい姿勢で培地シートを配置することができ、これにより、培地シートの破れが抑制されるため、より取扱性に優れた培地シートが提供される。
【0013】
また、第二部は、培地シートの厚み方向に突出した凸部を有することが好ましい。
上記の構成では、培地シートの剛性が高められてシート内での撓み発生が抑制されるため、より取扱性に優れた培地シートが提供される。
【0014】
また、第二部は、曲げられた曲げ部を有することが好ましい。
上記の構成では、培地シートの剛性が高められてシート内での撓み発生が抑制されるため、より取扱性に優れた培地シートが提供される。
【0015】
また、複数の第一部の各々の厚みが、第二部の厚みよりも大きいことが好ましい。
上記の構成では、培地シートを把持又は支持しやすくなるため、より取扱性に優れる培地シートが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、植物を適切に生長させることができ、且つ、取扱性に優れた植物栽培用の培地シートを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る培地シートを水耕栽培装置に適用した例を示す図であり、水耕栽培装置の断面を示す図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る培地シートの斜視図である。
【
図3A】本発明の第一実施形態に係る培地シートに含まれる複数の領域の一つを示す平面図である。
【
図3B】本発明の第一実施形態に係る培地シートに含まれる複数の領域の一つを示す側面図である。
【
図3C】本発明の第一実施形態に係る培地シートに含まれる複数の領域の一つを示す下面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態の変形例に係る培地シートの斜視図である。
【
図7】従来の培地シートに含まれる複数の領域の一つを示す平面図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る培地シートの斜視図である。
【
図10】本発明のその他の実施形態に係る培地シートに含まれる複数の領域の一つを示す断面図である。
【
図11】本発明のその他の実施形態に係る培地シートに含まれる複数の領域の一つを示す断面図である(その2)。
【
図12】本発明のその他の実施形態に係る培地シートに含まれる複数の領域の一つを示す下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る培地シートを、添付の図面に示す好適な実施形態を参照して、以下に詳細に説明する。
なお、以下では、本発明に係る培地シートについて、
図1に示すように水耕栽培に利用可能な培地シートを代表例として説明する。ただし、本発明は、このようなケースに限定されず、植物栽培に利用可能な培地シートである限り、どのような栽培方式に用いられてもよく、例えば、土耕栽培用の培地シートであってもよい。
【0019】
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、特に断る場合を除き、嵩密度が大きい状態を、便宜上「硬い」とも表現し、嵩密度が小さい状態を、便宜上「軟らかい」とも表現することとする。
また、本明細書において、「嵩密度」は、物質の固体部分と物質内部の空隙を含む物質の全容積(外形容積)で物質の質量を除することで求められ、物質の全容積(外形形状によって規定される容積)当たりの質量であり、単位は[g/cm3]である。なお、嵩密度は、公知の測定方法により測定して得られる。
【0020】
また、本明細書において、特に断る場合を除き、シート状の部材の形状について説明する場合には、その部材に設けられた一方の主面から他方の主面に向かう方向を、便宜上「厚み方向」と表現する。
また、本明細書において、特に断る場合を除き、「一致」及び「同じ」という文言には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
また、本明細書において、特に断る場合を除き、培地シートを使用している状態を想定して、培地シート各部の位置及び状態等を説明することとする。その際、培地シートにおいて光が照射される側、すなわち、植物の茎が伸びる向き側を、便宜上「上側」と表現する。他方、培地シートにおいて養液の液面に対向する側、又は養液に浸漬される側、すなわち、植物の根が伸びる向き側を、便宜上「下側」と表現する。
【0021】
[培地シートを有する栽培装置]
本発明の一つの実施形態に係る培地シート(以下、培地シート1)を含む水耕栽培装置について説明する。
本発明の培地シート1は、
図1に示すように、水耕栽培用の水耕栽培装置に使用される。水耕栽培装置は、
図1に示すように培地シート1と容器2と支持棒3とを有する。なお、
図1における上下方向は、鉛直方向を示し、
図1における左右方向は、水平方向を示している。
【0022】
培地シート1は、
図2に示すように、複数の正方形状の領域10を面上に規則的に並べて配置して構成される、シート状の部材である。培地シート1中の各領域10に播種した後、深底トレー型の容器2内に貯められた養液4に各領域10の下部を浸漬させることで、各領域10にて種を発芽させて植物を生長させて植物の苗を得ることができる。つまり、水耕栽培において、培地シート1(厳密には、後述の第一部11)は、植物を生長させつつ、植物への水分及び養分を含む養液4の供給を中継する機能を担う。
【0023】
上述の通り、培地シート1は、容器2内において、培地シート1の下部が養液4に浸漬する位置にて支持される。具体的に説明すると、容器2の底部には、
図1に示すように、鉛直方向上方に延びた支持棒3が複数設けられている。そして、複数の支持棒3の各々が、培地シート1(詳しくは、後述の第二部12)に形成された支持棒孔123に差し込まれることで、培地シート1が支持棒3によって支持される。なお、支持棒3の形状は、その下端に向かって漸次的に拡径するようなテーパー形状であることが好ましい。
【0024】
<<第一実施形態>>
以下、本発明の第一実施形態について
図1~8を参照しながら説明する。上述の通り、第一実施形態に係る培地シート1は、
図1に示すように、水耕栽培用の水耕栽培装置に使用される。
【0025】
先ず、第一実施形態に係る培地シート1の基本構成について
図1、2、3A~C及び4を参照しながら説明する。
培地シート1は、
図2に示すように、複数の領域10を有する。培地シート1では、複数の領域10の各々が、面上に規則的に並びに、領域10同士は互いに当接し、且つ、繋がって一枚のシートを構成している。培地シート1の外縁は、平面視で長方形の形状をなしている。なお、培地シート1は、シート状であればよく、その外縁の形状は、特に限定されず、長方形以外の形状であってもよい。例えば、培地シート1の外縁は、長方形以外の四角形、三角形、六角形、その他の多角形及び曲線を含む図形でもよく、栽培環境等に応じて適宜設計すればよい。また、培地シート1は、ロール状に巻かれた状態から適宜繰り出して使用されるものでもよい。
【0026】
複数の領域10の各々は、
図3A~C及び4に示すように、嵩密度が小さい第一部11と嵩密度の大きい第二部12とを有する。複数の領域10の各々は、第二部12が第一部11の周囲全体を囲うように配置されて構成されている。第一部11及び第二部12の境界線、並びに、領域10同士の境界線は、それぞれ正方形をなしている。これら2つの正方形状の境界線は、
図3Aに示すように、互いに平行な位置関係となるように配置されている。そのため、培地シート1を平面視した場合に、複数の領域10が有する第一部11は、規則的に離隔して浮島状に配置されている。
なお、複数の第一部11が規則的に離隔して配置されていればよく、第一部11及び第二部12の境界線、並びに、領域10同士の境界線のそれぞれの形状は、特に限定されず、正方形以外の形状であってもよい。例えば、第一部11及び第二部12の境界線、並びに、領域10同士の境界線のそれぞれの形状は、正方形以外の四角形、三角形、六角形、その他の多角形及び曲線を含む図形でもよく、栽培環境等に応じて適宜設計すればよい。また、例えば、第一部11及び第二部12の境界線、並びに、領域10同士の境界線は、互いに平行でなくてもよい。
【0027】
培地シート1を使用する際、
図1に示すように、複数の領域10の各々では、より嵩密度の小さくて軟らかい第一部11の上端面に播種して第一部11にて植物を生長させる。発芽後には、植物の根が第一部11内部を通って第一部11の下方へ伸び、植物の茎及び葉(すなわち地上部)が第一部11より上方に向かって伸びる。また、培地シート1を使用する際、
図1に示すように、複数の領域10の各々において、1個体の植物を生長させる。つまり、培地シート1では、領域10の数と同数の植物を栽培することができる。なお、培地シート1が安定して支持されていれば、各第一部11で生長させる植物の個体数は、1個体に限定されず、複数個体の植物を生長させてもよい。
【0028】
また、培地シート1を使用する際には、
図1に示すように、より嵩密度の大きくて硬い第二部12にて培地シート1を支持する。具体的に説明すると、培地シート1を容器2内に収容した状態で、第二部12のうち、支持棒3の直上に位置する部分に支持棒孔123が形成されており、この支持棒孔123に支持棒3が差し込まれることで、培地シート1が容器2内で支持される。
【0029】
そして、培地シート1にて植物が所定の段階まで生長した場合には、培地シート1における複数の領域10を互いに切り離して分離させる。ここで、各領域10を容易に切り離せるように、領域10同士の境界線にミシン目又は切り取り線が形成されているとよい。切り離された個々の領域10は、以降、1つの培地として機能し、より広い栽培空間に移設され、その場所にて植物の栽培が続行される。
【0030】
次に、本発明の第一実施形態の詳細構成について、
図1、3B及び4を参照しながら説明する。
第一実施形態において、複数の第一部11の各々と第二部12とは、同一の素材から成型され、培地シート1において連続して繋がっている。具体的に説明すると、培地シート1の基材をなす一つの部材(シート素材)を加工することで第一部11及び第二部12が成型されるため、これらは、連続体として切れ目なく繋がっている。つまり、複数の第一部11の各々の素材と第二部12の素材とは、嵩密度は異なるが、一部材、すなわち同一のシート素材によって構成されている。
【0031】
また、第一実施形態において、複数の領域10の各々の第一部11と第二部12とは、
図1、3B及び4に示すように、第一部11の下端が第二部12の下端よりも下側に位置するように成型されている。つまり、培地シート1の全体を下面側(浸漬側)から見ると、規則的に離隔して配置されている複数の第一部11が、第一部11の周辺にある第二部12よりも下方に突き出している。換言すると、培地シート1の下面側では、第一部11と第二部12との間に段差が形成され、複数の第一部11の各々が、下向きへ突き出した部分として培地シート1の下面に規則的に並んでいる。
【0032】
同様に、複数の領域10の各々の第一部11と第二部12とは、
図1、3B及び4に示すように、第一部11の上端が第二部12の上端よりも上側に位置するように成型されている。つまり、培地シート1の全体を上面側(播種側)から見ると、規則的に離隔して配置される複数の第一部11が、第一部11の周辺にある第二部12よりも突き出している。換言すると、培地シート1の上面側では、第一部11と第二部12との間に段差が形成され、複数の第一部11の各々が、上向きへ突き出した部分として培地シート1の上面に規則的に並んでいる。
【0033】
また、
図3B及び4に示すように、培地シート1の厚み方向において、複数の第一部11の各々の中間位置と、第二部12の中間位置とが、互いに異なっていることが好ましい。さらに、培地シート1の厚み方向において、複数の第一部11の各々の中間位置は、第二部12の中間位置よりも、下側に位置していることがより好ましい。なお、中間位置は、第一部11及び第二部12のそれぞれにおける一端面(上端面)及び他端面(下端面)の中間位置を意味する。
【0034】
第一実施形態に係る培地シート1の第一部11と第二部12とを構成する素材は、同一の素材であり、より詳しくは、吸水性のある繊維状の天然素材であると好ましい。吸水性のある繊維状の素材は、通水性及び通気性を有し、且つ、水分と空気を内部に保持することが可能であり、植物栽培に適している。また、天然素材は、廃棄処分及びコンポスト等の肥料として再利用の容易さの観点から優れている。培地シート1を構成する天然素材は、生分解性樹脂を含有する素材が好ましく、例えばパルプ及びレーヨンのうちの少なくとも一方を含有するとよい。
【0035】
培地シート1の成型方法は、圧縮成型であり、1つの素材の第二部12を圧縮することで培地シート1を成型する。具体的に説明すると、それぞれに複数の孔が規則的に設けられた2枚の板の間に培地シート1の素材(シート素材)を挟み込み、シート素材を所定の圧力にて圧縮する。これにより、シート素材のうち、孔内に入り込んで圧縮されなかった部分が第一部11となり、板間で圧縮された部分が第二部12となる。なお、第二部12は、シート素材より嵩密度が高くなるように成型できればよく、その成型方法は圧縮成型に限定されない。例えば、第二部12は、硬化剤又は熱収縮等によって嵩密度がより高くなるように成型されてもよい。反対に、成型方法として、シート素材のうち、第一部11に相当する部分に対して、嵩密度が小さくなるような処理を施してもよい。
【0036】
続いて、複数の第一部11について
図1、2、3A~C及び4を参照しながら、より詳しく説明する。
第一実施形態に係る培地シート1において、複数の第一部11の各々は、
図2及び3A~Cに示すように第二部12と隣接している。より詳しくは、培地シート1において、
図3A及びCに示すように、複数の第一部11の各々は、その全周を第二部12に取り囲まれた状態で配置されていると好ましい。
また、第一実施形態に係る培地シート1において、複数の第一部11の各々は、
図3A~C及び4に示すように、培地シート1の両面にて露出されるように設けられている。つまり、培地シート1の厚み方向において、各第一部11の一端面(上端面)及び他端面(下端面)は、いずれも露出面であり、換言すると、各第一部11は、培地シート1を貫通する。
【0037】
そして、各第一部11の上端面には、
図3A、3B及び4に示すように、播種するための凹んだ窪み111が設けられているとよい。その場合、窪み111の開口の大きさは、播種される種よりひと回り大きい大きさであることが好ましい。各第一部11の上端面に播種する際、播種された種を第一部11に固定する固定部材を貼付することも好ましい。固定部材としては、細かいパルプ等の吸水性粉を水中に分散させてから乾燥したもの、又は、PVA(Polyvinyl alcohol)等の水溶性樹脂の水溶液を塗布して乾燥させたものを利用することがより好ましい。また、固定部材は、パルプ及びセルロース等のバイオ素材を混入させたものであることがさらに好ましい。なお、窪み111の形状は、特に限定されず、例えば、種が入る程度の深さのスリット状の切れ込みになっていてもよい。スリット状の切れ込みの向きは特に限定されないが、十字型又はH型の形状であれば、種の大きさ及び数により植え方が変えられる点で好適である。
【0038】
さらに、複数の第一部11の各々には、
図3C及び4に示すように、第一部11の上端面から下端面まで培地シート1の厚み方向に沿って延出した貫通孔112が複数設けられてもよい。これにより、第一部11にて生長させる植物の根が各貫通孔112を通じて第一部11の下端面に向かって伸び、第一部11の下端面よりも下側へさらに伸びやすくなる。なお、各貫通孔112の開口の大きさは、栽培される植物の根一本の径よりひと回り大きい大きさであることが好ましい。
【0039】
複数の第一部11の各々の嵩密度は、小さ過ぎると養液4の中で形状が崩れ、反対に大き過ぎると植物の根の生長が阻害されてしまう。そのため、各第一部11の嵩密度の値は、0.01~1.00[g/cm3]であることが好ましく、0.05~0.50[g/cm3]であることがより好ましく、0.10~0.40[g/cm3]であることが特に好ましい。
【0040】
続いて、第二部12について
図1、2、3A~C、4及び5を参照しながら、より詳しく説明する。
上述の通り、第二部12は、複数の第一部11と同一の素材からなり、培地シート1より嵩密度が大きく硬い部分である。また、培地シート1の厚み方向において、第二部12の長さ(厚み)は、
図1、3B及び4に示すように、複数の第一部11の各々の長さ(厚み)よりも小さいとよい。
【0041】
第一実施形態において、第二部12は、
図2、3A及び3Cに示すように、支持棒3と同じ数の支持棒孔123を有するとよい。支持棒孔123は、例えば、正方形の領域10の4角の近傍に、支持棒3が通る大きさにて形成されている。なお、培地シート1を支持する構成は、支持棒3を支持棒孔123に差し込んで培地シート1を支持する構成に限定されず、他の支持構造を用いてもよい。
【0042】
また、第一実施形態において、第二部12には、
図1及び2に示すように、培地シート1を厚み方向に突出したリブ状の凸部121が設けられている。この凸部121が設けられることで、培地シート1の剛性が向上し、この結果、使用中の培地シート1の撓み発生を抑制することができる。なお、リブ状の凸部121は、培地シート1において領域10同士の境界線に沿って比較的長く延在し、
図2に示すように正方格子状に配置されてもよい。ただし、凸部121の配置位置、延出方向、及び延出長さについては、特に限定されず、任意に決めることができる。
なお、第二部12には、
図5に示すように、凸部121の代わりに、又は、凸部121とともに、培地シート1を厚み方向に曲げられた曲げ部122が設けられてもよい。曲げ部122は、
図5に示すように、鋸歯状に屈曲した形状であってもよく、又は、波状(円弧状)に湾曲した形状であってもよい。
【0043】
第二部12の嵩密度は、小さ過ぎると培地シート1を保持できず、反対に大き過ぎると成型が難しくなってしまう。そのため、第二部12の嵩密度は、0.50~3.00[g/cm3]であることが好ましく、0.80~2.00[g/cm3]であることがより好ましく、1.00~1.80[g/cm3]であることが特に好ましい。
【0044】
[本発明の第一実施形態に係る培地シートの効果について]
第一実施形態に係る培地シート1が得られる効果について
図1~8を参照しながら説明する。
本発明の第一実施形態に係る培地シート1は、植物を適切に生長させることができ、且つ、取扱性に優れている。
【0045】
具体的に説明すると、従来のウレタンスポンジ製培地シート1Xは、
図6、7及び8に示すように、成型加工のされていない直方体又は立方体の形状の領域10Xが面上に並べられている。このような従来のウレタンスポンジ製培地シート1Xでは、シート各部の嵩密度に変化がなく一様であり、全体的に嵩密度が小さく軟らかい。この構成のため、従来のウレタンスポンジ製培地シート1Xについては、把持又は支持する部分を確保しにくく取扱性に優れないものであった。
【0046】
また、従来のウレタンスポンジ製培地シート1Xは、上述の通り、嵩密度が小さく軟らかい。そのため、従来のウレタンスポンジ製培地シート1Xを引き上げたり移動させたりする際に、その材料であるウレタンスポンジが変形したり、形状が崩れたり、又は、破れたりする虞があった。そのような性質を有するため、従来のウレタンスポンジ製培地シート1Xを用いて植物を栽培した際に、培地シート1の変形又は破れに起因して意図せず植物を傷つけてしまう虞があった。
【0047】
一方、ウレタンスポンジの形状を保つ目的で、スポンジの大きさを大きくすると、1つの苗あたりのウレタンスポンジの消費量が増えてしまう。このような状況は、環境的にも経済的にも好ましくないことであり、大規模の植物栽培には適さない。
さらにまた、植物の栽培後には、根が培地内に張り巡らされているため、根と培地とは一体のものとして取り扱われる傾向にある。しかし、根と培地とでは、廃棄及び再利用方法が異なる場合がある。その場合には、根と培地とを分別することが求められるものの、上述の理由から、培地から根を分離することが困難であり、廃棄処分したり、あるいはコンポスト等の肥料として再利用したりするのに手間を要していた。
【0048】
これに対して、第一実施形態に係る培地シート1では、複数の第一部11と、その周囲に配置された第二部12とが、同一の素材からなり、嵩密度を変えて成型されている。より嵩密度が小さく軟らかい複数の第一部11は、
図2及び5に示すように、規則的に離隔して配置されており、各第一部11に播種して、各第一部11にて植物(発芽後の植物)を生長させることができる。一方、より嵩密度が大きく硬い第二部12は、複数の第一部11の各々を取り囲むように配置されており、第二部12にて培地シート1を支持することができる。
【0049】
上述の構成により、第一部11にて植物を適切に生長させることができ、且つ、第二部12を備えることで取扱性に優れた植物栽培用の培地シート1が実現される。また、第一部11と第二部12の配置により、培地シート1では複数の植物(つまり、各第一部11にて栽培される植物)が均等に離隔して配置された状態で生長するため、それぞれの植物について、最も近接した位置にある植物の間の距離が一定以上に保たれる。これにより、植物の地上部の徒長により、その植物と近接する植物の生長を阻害する虞が軽減され、この結果、複数の植物を同時期に安定して栽培できるようになる。
【0050】
さらに、第一実施形態の培地シート1の素材(シート素材)は、パルプ及びレーヨンのうちの少なくとも一方を主成分として含有する天然素材である。このシート素材は、天然素材を主成分とするため、培地内に張り巡らされた根とともに培地を処理する際に根と培地とをまとめて廃棄及び再利用することが可能である。
【0051】
また、第一実施形態の培地シート1において、複数の第一部11の各々と第二部12とは、同一の素材であり、一つのシートとして連続して繋がった状態で成型されている。この構成により、複数の第一部11の各々と第二部12とは分離しづらく、また、第二部12を把持又は支持することで、培地シート1全体を支持することができる。そのため、培地シート1は、従来品よりも取扱性に優れている。
【0052】
また、第一実施形態の培地シート1において、複数の第一部11の各々は、
図3A~C及び4に示すように、培地シート1の両面が露出するように成型されている。この構成により、培地シート1の上端面に播種された種が発芽して植物が生長するにつれて、植物の根が第一部11を通過して第一部11の下端面から突き出るまで生長することができる。そのため、培地シート1は、植物栽培用の培地として良好なものである。
【0053】
また、第一実施形態の培地シート1において、複数の領域10の各々の第一部11と第二部12とは、
図1、3B及び4に示すように、第一部11の下端は、第二部12の下端よりも下側に位置している。この構成により、培地シート1の下面を容器2内の養液4に浸漬する際、複数の第一部11の下部は養液4に浸漬されるが、第二部12は養液4に接触せず濡れにくくなる。これにより、濡れによる第二部12の破れが抑制され、培地シート1の使用状態を適切に維持することができる。
【0054】
また、第一実施形態の培地シート1において、複数の第一部11の各々の上端面には、
図3A、3B及び4に示すように、播種するための窪み111が設けられている。この窪み111は、栽培される植物の種の大きさより一回り大きい大きさで形成されるとよい。このような窪み111を設けることにより、播種された種の移動が抑制され、窪み111内で発芽し、植物の芽が生長する。この結果、各第一部11において植物の配置位置を安定させて植物が栽培されるようになる。
【0055】
また、第一実施形態の培地シート1において、複数の第一部11の各々には、
図3C及び4に示すように、複数の貫通孔112が設けられている。各貫通孔112は、第一部11の上端面から下端面まで貫通しているとよい。このような複数の貫通孔112を設けることにより、植物の根が各貫通孔112により誘導されながら、所定方向(各貫通孔112の形成方向)に沿って伸長する。この結果、各第一部11において植物の根が良好に伸びて、より適切に植物が栽培されるようになる。
【0056】
また、第一実施形態の培地シート1において、第二部12は、
図2及び5に示すように、培地シート1の厚み方向において突出した凸部121、及び培地シート1の厚み方向に起伏するように曲がった曲げ部122のうちの少なくとも一方を有する。このような凸部121及び曲げ部122を第二部12に設けることで、培地シート1の剛性が向上し、この結果、使用中の培地シート1の撓み発生を抑制することができる。これにより、培地シート1の、植物栽培用の培地としての取扱性が益々向上する。
【0057】
<<本発明の第二実施形態>>
上述した第一実施形態に係る培地シート1では、複数の第一部11の各々に播種される種は1つであることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、
図9に示すように、複数の第一部11Aの各々に播種される種は複数であってもよい。このような構成の複数の第一部11Aの各々を有する培地シート1Aを、第二実施形態とし、以下、
図9を参照しながら詳細に説明する。
第二実施形態では、水耕栽培装置の基本構成及び使用方法が第一実施形態と共通する一方で、
図9に示すように、複数の第一部11Aの各々の形状が第一実施形態と相違する。
具体的に説明すると、第二実施形態において、複数の領域10Aの各々の形状は、
図9に示すように、所定方向に長く延びた略長方形である。また、各領域10Aの形状に合わせ、第一部11Aの形状も略長方形である。このような形状により、各第一部11Aでは複数の種が一列に並べて複数播種される。この場合に播種される種は、4つ以上であることが好ましい。この構成により、培地シート1Aにおいて播種可能な面積(すなわち、複数の第一部11Aが占める面積)がより大きくなるため、一枚の培地シート1Aを用いた場合の栽培量、つまり、栽培の効率が向上する。
【0058】
<<本発明に関するその他の実施形態>>
以上までに、本発明の培地シート1に関して、幾つかの実施形態を例に挙げて説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0059】
本発明の培地シートは、互いに離れた位置に設けられた複数の第一部と、複数の第一部と同一の素材から構成され、複数の第一部より嵩密度が大きい第二部と、を有していればよい。また、本発明の培地シートは、複数の第一部の各々と第二部が隣接した状態で配置されていればよく、上述した実施形態以外の形状であってもよい。
具体的に説明すると、上述した第一実施形態に係る培地シート1では、厚み方向において、複数の第一部11と第二部12との中間位置が互いに異なっていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、
図10に示すように、培地シート1Bにおいて、複数の第一部11Bの各々の中間位置と第二部12Bの中間位置とが厚み方向に重なっていてもよい(一致してもよい)。
【0060】
また、上述した第一実施形態に係る培地シート1では、複数の第一部11と第二部12との間で、厚み方向における上面の位置が互いに異なっている。ただし、これに限定されるものではなく、
図11に示すように、培地シート1Cにおいて、複数の第一部11Cの上面の位置と、第二部12Cの上面の位置とが厚み方向に重なっていてもよい(一致してもよい)。
上述の構成によれば、第一実施形態と比較すると、複数の第一部11Cの各々の下端が、第二部12Cの下端に対して、相対的に下側へ配置されやすくなる。このような構成の培地シート1Cを使用した場合には複数の第一部11Cが養液4に浸漬されやすくなる一方で、第二部12Cが濡れ難くなる。
【0061】
また、上述した第一実施形態に係る培地シート1では、直径の小さい複数の貫通孔112が規則的に離隔して配置されている。ただし、これに限定されるものではなく、
図12に示すように、培地シート1Dにおいて、複数の貫通孔112Dが、長い直線状のスリットをなすように形成されてもよい。このような構成の培地シート1Dを使用した場合には、各貫通孔112Dにおいて、植物の根が良好に伸びて、貫通孔内部を通りしやすくなる。なお、
図12は、変形例に係る培地シート1Dに設けられた複数の領域10Dの各々を下面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1、1A、1B、1C、1D 培地シート
2 容器
3 支持棒
4 養液
10、10A、10B、10C、10D 領域(培地)
11、11A、11B、11C、11D 第一部
12、12A、12B、12C、12D 第二部
111 窪み
112 貫通孔
113 支持材
121 凸部
122 曲げ部
123 支持棒孔