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▶ イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109735
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】新規使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240806BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P29/00
A61P43/00 111
A61K31/519
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024082290
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2021540398の分割
【原出願日】2019-09-25
(31)【優先権主張番号】62/736,324
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】グレッチェン・スナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ピー・ウェノグル
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・オブライエン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ・ヘンドリック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炎症を特徴とする疾患または障害の治療および予防のための医薬組成物を提供する。
【解決手段】炎症または炎症に関連する疾患の治療または予防のための炎症の消散を促進する方法であって、必要とする患者にホスホジエステラーゼ1(PDE1)阻害剤を投与することを含む方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症または炎症に関連する疾患の治療または予防のための炎症の消散を促進する方法であって、必要とする患者にPDE1阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項2】
患者が、細菌感染症(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症);ウイルス感染症(例えば、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、ウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎));寄生生物感染症(例えば、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、シストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症);アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症から選択されるマクロファージによって媒介される疾患または障害に罹患している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
患者が、
a.1つ以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、Ccl2、IL-6、およびそれらの組合せから選択される)のレベル上昇;
b.1つ以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)のレベル減少;
c.M2表現型のマクロファージと比べてM1表現型のマクロファージのレベル上昇
を有する、いずれかの上記請求項に記載の方法。
【請求項4】
PDE1阻害剤が、
(A)エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体を包含する、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル
(例えば、R2およびR3は共にメチルであるか、またはR2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2は、Hであり、R3およびR4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し
(好ましくは、R3およびR4は一緒にシス配置を有し、例えば、R3およびR4を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
(iii) R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つと結合し、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよい、ピリジル(例えば、ピリジ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは、0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R1314)-であり、
ここで、R13およびR14は、独立して、H、またはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである];
(B)エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体を包含する、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、式Ia:
【化3】
[式中、
(i) R2およびR5は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R3およびR4は一緒になって、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成するか[好ましくは、R3およびR4を担持する炭素は、それぞれR配置およびS配置を有する];または、R2およびR3は、各々、メチルであり、R4およびR5は、各々、Hであるか;または、R2、R4およびR5はHであり、R3はイソプロピルであり[好ましくは、R3を担持する炭素はR配置を有する];
(ii) R6は、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)ベンジルアミノ、C1-4アルキルまたはC1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R10は、C1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリジ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
(iv)XおよびYは、独立して、CまたはNである];
(C)遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II:
【化4】
[式中、
(i) Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリジ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、または、NもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi) R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキル、または1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)もしくはC1-6アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリジ-2-イル、5-フルオロピリジ-2-イル、6-フルオロピリジ-2-イル、3-フルオロピリジ-2-イル、4-フルオロピリジ-2-イル、4,6-ジクロロピリジ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリジ-2-イル)またはC1-6アルキル(例えば、5-メチルピリジ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロで置換されている、アリール、例えばフェニル(例えば、4-フルオロフェニル)である];
(D)遊離形態または塩形態の、式III:
【化5】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R5は、-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から独立して選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R6およびR7は、独立して、H、または、C1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から独立して選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば、非置換フェニル、または、1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば、4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である];
(E)遊離形態または塩形態の、式IV
【化6】
[式中、
(i) R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)であり、ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルであり;
(ii) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii) R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;またはR3は、Hであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R4およびR5は一緒にシス配置を有し、例えば、R4およびR5を担持している炭素は、それぞれR配置およびS配置を有する)、
(iv) R6、R7およびR8は、独立して:
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリジ-2-イル、または
-S(O)2-NH2
であり;
(v) ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、R6、R7および/またはR8は、それぞれ、存在せず;また、X、YおよびZが全てCである場合、R6、R7またはR8の少なくとも1つは、-S(O)2-NH2、または、ヒドロキシで置換されているピリジ-2-イルである];
(F)遊離形態または塩形態の、式V
【化7】
[式中、
(iv) R1は、-NH(R4)であり、ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(v) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(vi) R3は、-SO2NH2または-COOHである];および
(G)遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式VI
【化8】
[式中、
(iv) R1は、-NH(R4)であり、ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルであり;
(v) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(vi) R3は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリジ-2-イルまたはピリジ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である]
から選択される化合物である、いずれかの上記請求項に記載の方法。
【請求項5】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、以下のもの:
【化9】
である、いずれかの上記請求項に記載の方法。
【請求項6】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、以下のもの:
【化10】
である、いずれかの上記請求項に記載の方法。
【請求項7】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、以下のもの:
【化11】
である、いずれかの上記請求項に記載の方法。
【請求項8】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、以下のもの:
【化12】
である、いずれかの上記請求項に記載の方法。
【請求項9】
PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤(例えば、ロリプラム)と組み合わせて投与される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
M2活性化状態へのマクロファージ活性化を促進する方法であって、必要とする患者にPDE1阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項11】
患者が、細菌感染症(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症);ウイルス感染症(例えば、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、ウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎));寄生生物感染症(例えば、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、シストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症);アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症から選択されるマクロファージによって媒介される疾患または障害に罹患している、請求項10記載の方法。
【請求項12】
患者が、
a.1つ以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、Ccl2、IL-6、およびそれらの組合せから選択される)のレベル上昇;
b.1つ以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)のレベル減少;
c.M2表現型のマクロファージと比べてM1表現型のマクロファージのレベル上昇
を有する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤(例えば、ロリプラム)と組み合わせて投与される、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
いずれかの上記請求項に記載の方法のいずれかにおいて用いるための、PDE1阻害剤またはPDE1阻害剤を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当該技術分野は、例えばM1マクロファージからM2マクロファージへの分極化を通じた、炎症の消散の促進のためのホスホジエステラーゼ1(PDE1)阻害剤の阻害剤の投与、ならびに炎症に関連する疾患または障害の治療および予防に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホジエステラーゼ(PDE)の11種類のファミリーが同定されているが、ファミリーIのPDEであるCa2+-カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ(CaM-PDE)だけがCa2+-カルモジュリンによって活性化され、カルシウムおよび環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよびcGMP)シグナル伝達経路を媒介することが示されている。したがって、これらのPDEは、細胞内カルシウムレベルが上昇したときに刺激された状態で活性となり、環状ヌクレオチドの加水分解の増加をもたらす。公知の3種類のCaM-PDE遺伝子であるPDE1A、PDE1BおよびPDE1Cはすべて、中枢神経系組織において発現する。脳では、PDE1Aの主な発現は皮質および新線条体においてであり、PDE1Bは新線条体、前頭前皮質、海馬および嗅結節において発現し、PDE1Cはより遍在的に発現する。
【0003】
PDE4は炎症細胞および免疫細胞に見られる主要なcAMP代謝酵素であり、PDE4阻害剤は抗炎症薬として興味深いものである。しかしながら、PDE1は、サイトカインである顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)によって媒介される単球からマクロファージへの分化において誘導されるが、PDE1は、炎症反応において大きな役割を果たすと考えられていない。PDE1阻害剤であるビンポセチンは、抗炎症性であることが示されているが、ビンポセチンの抗炎症作用は、PDE遮断よりもむしろIκBキナーゼ複合体(IKK)の直接阻害によって引き起こされると考えられる。
【0004】
マクロファージは、体内での恒常性の維持および炎症の媒介に中心的な役割を果たしている。マクロファージは、微小環境シグナルに応答して異なる機能プログラムを発現する極性化の能力を有する。マクロファージにはいくつかの活性化された形態があるが、2つの主要なグループはM1およびM2と称されている。「古典的活性化マクロファージ」とも称されているM1マクロファージは、LPSおよびIFN-γによって活性化され、高レベルのIL-12および低レベルのIL-10を分泌して炎症促進作用を及ぼす。対照的に、「選択的活性化マクロファージ」とも称されているM2の呼称は、創傷治癒および組織修復のような建設的なプロセスにおいて機能するマクロファージ、およびIL-10のような抗炎症性サイトカインを産生するによって有害な免疫系活性化を遮断するマクロファージを広く指す。M2マクロファージは、高レベルのIL-10およびTGF-β、ならびに低レベルのIL-12を産生する。長期にわたるM1タイプのマクロファージは生体にとって有害であり、そのために組織の修復および回復が必要となる。
【0005】
組織が病原体に曝露されると、循環中の炎症性単球が動員され、マクロファージに分化される。一般的に、マクロファージは、細菌感染の初期段階ではM1表現型に分極する。病原体認識受容体によって細菌が認識されると、マクロファージは活性化され、TNFα、IL-1、および一酸化窒素(NO)を含む炎症促進性メディエーターを大量に産生し、侵入した生物を死滅させ、適応免疫を活性化する。例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)およびリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の感染症、ならびにマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症の初期段階にこのメカニズムが関与していると考えられている。マクロファージを介した炎症反応を迅速に制御できないと、サイトカインストームが形成されて重症敗血症の病態を引き起こす。マクロファージは、過剰な炎症反応に対抗するために、アポトーシスを起こすか、またはM2表現型に分極して、過剰な傷害から宿主を守り、創傷治癒を促進する。
【0006】
マクロファージの分極はウイルス感染にも関与しており、その中でM2表現型マクロファージは炎症を抑制し、組織の治癒を促進することもできる。インフルエンザウイルスは、M2表現型の大きな特徴であるヒトマクロファージの食細胞機能を増強して、アポトーシス細胞を除去し、炎症の消散を促進する。重症急性呼吸器症候群(SARS)-Cov感染では、M2表現型マクロファージは、STAT依存的な経路により、免疫反応を制御し、長期的な線維性肺疾患への進行から宿主を守るために重要である。さらに、呼吸器多核体ウイルス(RSV)誘発細気管支炎は、M1マクロファージとM2マクロファージの混在と密接に関連している。
【0007】
多くのウイルスは、マクロファージ分極に適応し、これを変調させるメカニズムを誘発する。ヒト単球由来マクロファージにおいて、HIV-1感染は細胞をM1様状態に傾けることが観察されており、これはM2状態のマーカー(すなわち、CD163、CD206、CCL18およびIL-10)のダウンレギュレーションおよびCCL3、CCL4およびCCL5を含むM1関連ケモカインの分泌増加と相関している。
【0008】
マクロファージ分極は、とりわけ、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アテローム性動脈硬化症、代謝性疾患、全身性エリテマトーデスなどの様々な炎症性疾患および障害においても重要な役割を果たすことも示されている。
【0009】
PDE1が炎症の消散を媒介する上で重要な役割を有すること、または、炎症性疾患に大きな影響を与えることは、これまで示されていなかった。一般的な炎症プロセスならびに炎症に関連する疾患および障害は数多くあり、そのメカニズムおよび作用はまだよく理解されていない。現在、特に脳で起こる炎症に関して、炎症ならびに炎症関連疾患および障害を治療する効果的な方法に対するほとんど満たされていないニーズがある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、化合物1で処置した場合の無菌性損傷(sterile insult)後の炎症の部位で検出された白血球の数を示す。
図2A図2Aは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出されたマクロファージの数を示す。
図2B図2Bは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出された全白血球数に対する割合で表したマクロファージの数を示す。
図3A図3Aは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出された好中球の数を示す。
図3B図3Bは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出された総白血球数に対する割合で表した好中球の量を示す。
図4A図4Aは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出された総マクロファージ数に対する割合で表したM1マクロファージの量を示す。
図4B図4Bは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出された総マクロファージ数に対する割合で表したM2マクロファージの量を示す。
図5A図5Aは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後のM2活性化状態の炎症の部位で検出されたM1マクロファージの数を示す。
図5B図5Bは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出されたM2マクロファージの数を示す
図6A図6Aは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出されたマクロファージ集団上でのCD38発現の平均蛍光強度(MFI)を示す。
図6B図6Bは、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出されたマクロファージ集団上でのCD38発現の平均蛍光強度(MFI)を示す。
図7図7は、化合物1で処置した場合の、無菌性損傷後の試験対象体における血漿中のサイトカイン産生を示す。
図8図8は、化合物2で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出されたM1活性化状態のマクロファージの数を示す。
図9図9は、化合物2で処置した場合の、無菌性損傷後の炎症の部位で検出されたM2活性化状態のマクロファージの数を示す
図10図10は、ミクログリア走化性アッセイにおけるBV2細胞の運動性に関する化合物1の結果を示す
図11A図11Aは、炎症の部位で検出された総マクロファージ数に対する割合で表したCD80+マクロファージの量を示す。
図11B図11Bは、炎症の部位で検出された総マクロファージ数に対する割合で表したiNOS+マクロファージの量を示す。
図12A図12Aは、炎症の部位で検出された総マクロファージ数に対する割合で表したArg1+マクロファージの量を示す。
図12B図12Aは、炎症の部位で検出された総マクロファージ数に対する割合で表したCD206+マクロファージの量を示す。
【発明の概要】
【0011】
驚くべきことに、本発明者らは、PDE1がある種の炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの発現を媒介すること、およびPDE1阻害剤が特異的な抗炎症効果を有することを発見した。一の態様において、PDE1の阻害はマクロファージにおける炎症活性を調節し、炎症誘発性遺伝子の発現を減少させ、それにより、マクロファージ媒介を特徴とするさまざまな障害および状態のの新規治療法を提供する。
【0012】
細胞内環状ヌクレオチドレベルの上昇によるマクロファージにおける炎症消散反応の正の調整は、治療介入のための有望な領域を提供する。PDE1Bは単球に存在し、GM-CSFなどの成長因子活性化シグナルを介してマクロファージへの分化に関与していることが知られている。Bender AT, et al., Selective up-regulation of PDE1B2 upon monocyte-to-macrophage differentiation, Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Jan 11; 102(2): 497-502。環状グアノシン一リン酸(cGMP)は、マクロファージの分化経路の重要な調節因子であることが示されている。cGMPはまた、誘導型NO合成酵素誘導およびTNFα放出などの炎症過程の調節にも役割を果たしている。したがって、PDE1Bの顕著なアップレギュレーションは、分化したマクロファージにおけるこれらのプロセスの調節において重要であり得る。このことは、本明細書に開示されているPDE1阻害剤などのPDE1阻害剤が、例えばマクロファージ活性化に関連する炎症障害に関連する疾患において有益であることが証明され得ることを示唆している。
【0013】
したがって、一の実施態様では、本発明は、炎症、および/または炎症に関連する疾患もしくは障害を治療するために種々のPDE1阻害性化合物を使用することを提供する。理論に束縛されるものではないが、この活性の考えられる1つのメカニズムは、M1活性化および炎症誘発性サイトカインの放出を減少させるように、また、IL-10などの抗炎症性サイトカインのアップレギュレーションを介してマクロファージのM2型への分極を促進するように、PDE1Bの阻害が血液におけるマクロファージ活性化および/またはCNSにおけるミクログリア活性化に影響を及ぼし得ることである。ミクログリアに関連するような炎症および/または炎症に関連する疾患もしくは障害の治療および予防についての議論は、国際公開WO2018/049417号に記載されている(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0014】
マクロファージにおけるM1型からM2型への活性化の調節は、多くの疾患における炎症経路の中心となっている。マクロファージにおけるM1からM2への分極の役割は、以下のものを含む多くの炎症関連障害において重要である:細菌感染症(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症);ウイルス感染症(例えば、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、ウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎));寄生生物感染症(例えば、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、シストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症);アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症。
【0015】
本発明の化合物によるPDE1の標的阻害は、マクロファージ活性化に影響を与え、抗炎症性サイトカイン、およびマクロファージ媒介性炎症の消散に関与する因子の産生を促進すると考えられる。
【0016】
したがって、一の実施態様では、本発明は、ホスホジエステラーゼ・タイプIの特異的阻害剤(例えばPDE1阻害剤、例えばPDE1B阻害剤)(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)を投与することを含む、炎症または炎症に関連する疾患の治療または予防のために炎症の消散を促進する方法を提供する。
【0017】
一の実施態様では、本発明は、ホスホジエステラーゼ・タイプIの特異的阻害剤(例えばPDE1阻害剤、例えばPDE1B阻害剤)(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)を投与することを含む、M2活性化状態へのマクロファージ活性化を促進する方法を提供する。
【0018】
一の実施態様では、本発明は、例えば細菌感染症(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症);ウイルス感染症(例えば、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、ウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎));寄生生物感染症(例えば、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、シストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症);アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症を含む、炎症、ならびに/または炎症および/もしくはミクログリア機能に関連する疾患もしくは障害を治療する方法であって、該治療を必要とする患者において、本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の有効量、例えば、マクロファージ活性化をM1活性化状態からM2活性化状態に促進するのに有効な量を投与することを含む方法を提供する。
【0019】
本発明のさらなる実施態様は、以下の詳細な説明および本明細書の実施例から示されるかまたは明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明の方法に用いるための化合物
一の実施態様では、本明細書に記載の治療および予防の方法で用いるためのPDE1阻害剤は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、置換されていてもよい7,8-ジヒドロ-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4-オン化合物および7,8,9-トリヒドロ-[1Hまたは2H]-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン化合物である。
【0021】
さらに別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている治療および予防の方法で用いるためのPDE1阻害剤が、本出願人自身の下記刊行物のいずれかから選択されることを提供する:米国特許出願公開第2008-0188492号A1、米国特許出願公開第2010-0173878号A1、米国特許出願公開第2010-0273754号A1、米国特許出願公開第2010-0273753号A1、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/133224号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号および国際公開第2011/153138号(それぞれの全内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0022】
本明細書に記載の方法および治療に用いるのに好適なPDE1阻害剤のさらなる例は、以下のものに見ることができる:国際公開第2006133261号A2;米国特許第8,273,750号;米国特許第9,000,001号;米国特許第9,624,230号;国際公開第2009075784号A1;米国特許第8,273,751号;米国特許第8,829,008号;米国特許第9,403,836号;国際公開第2014151409号A1、米国特許第9,073,936号;米国特許第9,598,426号;米国特許第9,556,186号;米国特許出願公開第2017/0231994号A1、国際公開第2016022893号A1、および米国特許出願公開第2017/0226117号A1(それぞれ、その全体として出典明示により本明細書の一部とする)。
【0023】
本明細書に記載の方法および治療に用いるのに適したPDE1阻害剤のさらなる例は、以下のものに見ることができる:国際公開第2018007249号A1;米国特許出願公開第2018/0000786号;国際公開第2015118097号A1;米国特許第9,718,832号;国際公開第2015091805号A1;米国特許第9,701,665号;米国特許出願公開第2015/0175584号A1;米国特許出願公開第2017/0267664号A1;国際公開第2016055618号A1;米国特許出願公開第2017/0298072号A1;国際公開第2016170064号A1;米国特許出願公開第2016/0311831号A1;国際公開第2015150254号A1;米国特許出願公開第2017/0022186号A1;国際公開第2016174188号A1;米国特許出願公開第2016/0318939号A1;米国特許出願公開第2017/0291903号A1;国際公開第2018073251号A1;国際公開第2017178350号A1;および米国特許出願公開第2017/0291901号A1;それぞれ、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。出典明示により本明細書の一部とする文献の記述が本開示の記述と矛盾する場合または両立しない場合、本開示の記述が支配的であると理解されるものとする。
【0024】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法に用いるためのPDE1阻害剤が、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体を包含する、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル
(例えば、R2およびR3は共にメチルであるか、またはR2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2は、Hであり、R3およびR4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し
(好ましくは、R3およびR4は一緒にシス配置を有し、例えば、R3およびR4を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
(iii) R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つと結合し、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよい、ピリジル(例えば、ピリジ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは、0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R1314)-であり、
ここで、R13およびR14は、独立して、H、またはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである]
で示される化合物であることを提供する。
【0025】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法に用いるためのPDE1阻害剤が、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体を包含する、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、式1a:
【化3】
[式中、
(i) R2およびR5は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R3およびR4は一緒になって、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成するか[好ましくは、R3およびR4を担持する炭素は、それぞれR配置およびS配置を有する];または、R2およびR3は、各々、メチルであり、R4およびR5は、各々、Hであるか;または、R2、R4およびR5はHであり、R3はイソプロピルであり[好ましくは、R3を担持する炭素はR配置を有する];
(ii) R6は、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)ベンジルアミノ、C1-4アルキルまたはC1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R10は、C1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリジ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
XおよびYは、独立して、CまたはNである]
であることを提供する。
【0026】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法に用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II:
【化4】
[式中、
(i) Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリジ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、または、NもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi) R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキル、または1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)もしくはC1-6アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリジ-2-イル、5-フルオロピリジ-2-イル、6-フルオロピリジ-2-イル、3-フルオロピリジ-2-イル、4-フルオロピリジ-2-イル、4,6-ジクロロピリジ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリジ-2-イル)またはC1-6アルキル(例えば、5-メチルピリジ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロで置換されている、アリール、例えばフェニル(例えば、4-フルオロフェニル)である]
で示される化合物であることを提供する。
【0027】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法に用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式III:
【化5】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R5は、-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から独立して選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R6およびR7は、独立して、H、または、C1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から独立して選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば、非置換フェニル、または、1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば、4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である]
であることを提供する
【0028】
さらに別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法に用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式IV:
【化6】
[式中、
(i) R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)であり、ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルであり;
(ii) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii) R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;またはR3は、Hであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R4およびR5は一緒にシス配置を有し、例えば、R4およびR5を担持している炭素は、それぞれR配置およびS配置を有する)、
(iv) R6、R7およびR8は、独立して:
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリジ-2-イル、または
-S(O)2-NH2
であり;
(v) ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、R6、R7および/またはR8は、それぞれ、存在せず;また、X、YおよびZが全てCである場合、R6、R7またはR8の少なくとも1つは、-S(O)2-NH2、または、ヒドロキシで置換されているピリジ-2-イルである]
であることを提供する。
【0029】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法に用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式V:
【化7】
[式中、
(i) R1は、-NH(R4)であり、ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(ii) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(iii) R3は、-SO2NH2または-COOHである]
であることを提供する。
【0030】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法に用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式VI:
【化8】
[式中、
(i) R1は、-NH(R4)であり、ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルであり;
(ii) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R3は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリジ-2-イルまたはピリジ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である]
であることを提供する。
【0031】
一の実施態様では、本開示は、本明細書に記載の方法に用いるためのPDE1阻害剤(例えば、式I、Ia、II、III、IV、V、および/またはVIで示される化合物)の投与であって、該阻害剤が、以下の化合物:
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
である、投与を提供する
【0032】
一の実施態様では、本発明は、炎症、または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、以下の化合物:
【化13】
である、投与を提供する。
【0033】
さらに別の実施態様では、本発明は、炎症、または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、以下の化合物:
【化14】
である、投与を提供する。
【0034】
さらに別の実施態様では、本発明は、炎症、または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、以下の化合物:
【化15】
である、投与を提供する。
【0035】
さらに別の実施態様では、本発明は、炎症、または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、以下の化合物:
【化16】
である、投与を提供する。
【0036】
一の実施態様では、上記の式(例えば、式I、Ia、II、III、IV、V、および/またはVI)のいずれかで示される選択的PDE1阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特にPDE1B媒介)加水分解を阻害する化合物であり、例えば、好ましい化合物は、遊離形態または塩形態で、固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて1μM未満、好ましくは500nM未満、好ましくは50nM未満、および、好ましくは5nM未満のIC50を有する。
【0037】
他に特定されていない場合または文脈から明らかでない場合、本明細書における以下の用語は、以下の意味を有する:
【0038】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」は、飽和または不飽和の炭化水素部分であり、好ましくは飽和しており、好ましくは1~6個の炭素原子を有しており、直鎖または分枝鎖であり得、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、一置換、二置換または三置換されていてもよい。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「シクロアルキル」は、飽和または不飽和の非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和しており、好ましくは3~9個の炭素原子を含むものであり、少なくとも該炭素原子のうちいくつかは非芳香族の単環式環状もしくは二環式環状または架橋環状の構造を形成し、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてもよい。シクロアルキルがNおよびOおよび/またはSから選択される1個以上の原子を含有していてもよい場合、該シクロアルキルは、ヘテロシクロアルキルでもあり得る。
【0040】
「ヘテロシクロアルキル」は、特記しない限り、飽和または不飽和の非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和しており、好ましくは3~9個の炭素原子を含むものであり、少なくとも該炭素原子のうちいくつかは非芳香族の単環式環状もしくは二環式環状または架橋環状の構造を形成し、ここで、少なくとも1個の炭素原子は、N、OまたはSと置き換えられており、該ヘテロシクロアルキルは、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてもよい。
【0041】
本明細書で用いられる場合、「アリール」は、単環式または二環式の芳香族炭化水素であり、好ましくはフェニルであり、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよい。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「ヘテロアリール」は、芳香族部分であり、ここで、該芳香環を構成する原子のうち1個以上は、炭素ではなく硫黄または窒素であり、例えばピリジルまたはチアジアゾリルであり、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてもよい。
【0043】
本発明の化合物、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、置換されていてもよい7,8-ジヒドロ-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4-オン化合物および7,8,9-トリヒドロ-[1Hまたは2H]-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン化合物、例えば、式I、Ia、II、III、IV、V、および/またはVIで示される化合物は、遊離形態または塩形態で存在し得、例えば酸付加塩として存在し得る。本明細書において、特記しない限り、「本発明の化合物」のような用語は、あらゆる形態、例えば遊離形態もしくは酸付加塩形態、または化合物が酸性置換基を含む場合には塩基付加塩形態の化合物を包含するものとして解されるべきである。本発明の化合物は、医薬としての使用を目的としており、したがって、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬的使用に適していない塩は、例えば遊離の本発明の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製に、有用であり得、したがって、それらも包含される。
【0044】
本発明の化合物は、いくつかの場合、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本発明の化合物に変わる化合物である。例えば、本発明の化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含む場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いられる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、投与される用量で自体生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)を生じる本発明の化合物のエステルを意味する。したがって、本発明の化合物がヒドロキシ基を含んでいる場合、例えば化合物-OHの場合、このような化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本発明の化合物がカルボン酸を含んでいる場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、このような化合物の酸エステルプロドラッグ、すなわち、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0045】
別の実施態様では、本発明は、また、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む、抗炎症剤として使用するための医薬組成物を提供する。
【0046】
本発明の化合物は、いくつかの場合、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本発明の化合物に変わる化合物である。例えば、本発明の化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含む場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いられる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、投与される用量で自体生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)を生じる本発明の化合物のエステルを意味する。したがって、本発明の化合物がヒドロキシ基を含んでいる場合、例えば化合物-OHの場合、このような化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本発明の化合物がカルボン酸を含んでいる場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、このような化合物の酸エステルプロドラッグ、すなわち、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0047】
別の実施態様では、本発明は、また、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の本発明の化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む、抗炎症剤として使用するための医薬組成物を提供する。
【0048】
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩は、本明細書に記載および例示された方法を用い、およびそれと同様の方法により、および化学技術分野において公知の方法により、製造され得る。このような方法としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法のための出発物質は、市販されていない場合には、既知の化合物の合成と同様または類似の技術を用いて化学技術分野から選択される手順によって製造され得る。
【0049】
さまざまな出発物質および/または本発明の化合物は、米国特許出願公開第2008-0188492号A1、米国特許出願公開第2010-0173878号A1、米国特許出願公開第2010-0273754号A1、米国特許出願公開第2010-0273753号A1、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/133224号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、国際公開第2011/153138号、および米国特許第9,073,936号(それぞれの記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載されている方法を用いて製造され得る。
【0050】
本発明の化合物は、それらのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および錯体を包含する。本発明の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含み得る。本発明における二重結合の表現は、二重結合のE異性体およびZ異性体の両方を含むことを意味する。加えて、本発明の範囲内のいくつかの化合物は、1個以上の不斉中心を含み得る。本発明は、光学的に純粋な立体異性体のいずれかおよび立体異性体の組合せの使用を包含する。
【0051】
本発明の化合物は、それらの安定な同位体および不安定な同位体を包含することも意図される。安定な同位体は、同種の大量に存在する核種(すなわち元素)と比較して1つのさらなる中性子を含んでいる非放射性同位体である。そのような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物は非同位体類似体の薬物動態を測定するための有用性も有すると予想される。例えば、本発明の化合物のある位置にある水素原子を重水素(非放射性である安定な同位体)と置き換えることができる。既知の安定な同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同種の大量に存在する核種(すなわち、元素)と比較してさらなる中性子を含んでいる放射性同位体である不安定な同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、対応するI、CおよびFの豊富な種と置き換わることができる。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態研究に有用である。
【0052】
融点は未補正であり、(dec)は分解を示す。温度は摂氏度(℃)で示される;特記しない限り、操作は、室温または周囲温度、すなわち、18~25℃の範囲の温度で実施される。クロマトグラフィーとは、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーを意味する;薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲルプレートで実施される。NMRデータは、主要な特徴的プロトンのデルタ値であり、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対する百万分率(ppm)で示される。シグナル形状についての慣用の略語が使用される。結合定数(J)はHzで示される。マススペクトル(MS)について、同位体分裂によって複数のマススペクトルピークがもたらされる分子については最低質量主イオンが報告される。溶媒混合物組成は、体積百分率または体積比として示される。NMRスペクトルが複雑である場合、特徴的なシグナルだけが報告される。
【0053】
本発明の化合物の使用方法
本発明の化合物は、炎症性疾患または状態、特に炎症性疾患または状態の治療に有用である。したがって、本明細書に記載の好ましいPDE1阻害剤、例えば上記のPDE1阻害剤、例えば式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物の投与または使用は、炎症を調節する(例えば、炎症、および炎症に関連する疾患または障害を予防し、軽減し、および/または回復に向かわせる)手段を提供し、ある実施態様では、さまざまな炎症性疾患および障害の治療を提供する。
【0054】
一の実施態様では、本発明は、炎症の消散を促進する方法であって、該促進を必要とする患者にホスホジエステラーゼ・タイプIの特異的阻害剤(PDE1)の有効量を投与することを含む方法(方法1)を提供し、例えば:
【0055】
例えば、一の実施態様では、本発明は、必要とする患者にI型ホスホジエステラーゼ(PDE1)の特異的阻害剤の有効量を等することを含む、炎症または炎症と関連する疾患の治療または予防の方法(方法1)、例えば下記の方法を提供する:
【0056】
1.1.該患者が、炎症および/またはマクロファージ活性化によって媒介される疾患もしくは障害に罹患している、方法1。
【0057】
1.2.炎症の消散を促進することが、M2マクロファージの活性化を促進することを含む、方法1または1.1
【0058】
1.3.治療されるべき疾患または状態が、細菌感染症(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症);ウイルス感染症(例えば、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、ウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎));寄生生物感染症(例えば、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、シストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症);アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症から選択される、方法1または1.1。
【0059】
1.4.治療されるべき疾患または状態が、細菌感染症である、上記のいずれかの方法。
【0060】
1.5.治療されるべき疾患または状態が、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、またはマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症である、上記のいずれかの方法。
【0061】
1.6.治療されるべき疾患または状態が、ウイルス感染症である、方法1~1.3。
【0062】
1.7.ウイルス感染症が、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、またはウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎)である、方法1.6。
【0063】
1.8.治療されるべき疾患または状態が、寄生生物感染症である、方法1~1.3。
【0064】
1.9.寄生生物感染症が、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、またはシストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症である、方法1.8。
【0065】
1.10.治療されるべき疾患または状態が、アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症である、方法1~1.3。
【0066】
1.11.治療されるべき疾患または状態が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症である、方法1~1.3または1.10。
【0067】
1.12.本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の有効量を、(i)M1マクロファージの活性化を減少させるかまたは阻害するのに有効な量で、および/または(ii)1つ以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、IL6およびCcl2、またはそれらの組合せ)のレベルを減少させるのに有効な量で、必要としている患者に投与することを含む、上記のいずれかの方法。
【0068】
1.13.本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の有効量を、(i)M2マクロファージの活性化を促進するのに有効な量で、および/または(ii)抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)を促進するのに有効な量で、必要としている患者に投与することを含む、上記のいずれかの方法。
【0069】
1.14.本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の有効量を、M1表現型のマクロファージのレベルを減少させるのに有効な量で、および/またはM2表現型のマクロファージのレベルを増加させるのに有効な量で、必要としている患者に投与することを含む、上記のいずれかの方法。
【0070】
1.15.PDE1阻害剤が、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物である、上記のいずれかの方法。
【0071】
1.16.炎症が、マクロファージ(例えば、M1マクロファージ)の発現および/または活性化の増大に関連している、上記のいずれかの方法。
【0072】
1.17.PDE1阻害剤が、例えばIL1B、IL-6、TNFα、Ccl2、一酸化窒素(NO)および活性酸素種(ROS)からなる群から選択される、炎症誘発性サイトカインの発現および/または活性を鈍化させるかまたは阻害する、上記のいずれかの方法。
【0073】
1.18.PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤(例えば、ロリプラム)と組み合わせて投与される、上記のいずれかの方法。
【0074】
1.19.患者が、炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1B、IL6、TNFα、Ccl2)のレベルの増加を示している、上記のいずれかの方法。
【0075】
1.20.「PDE1阻害剤」が、例えば固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて1μM未満、好ましくは750nM未満、より好ましくは500nM未満、より好ましくは50nM未満のIC50をもって、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特に、PDE1B媒介)加水分解を選択的に阻害する化合物を表す、上記のいずれかの方法。
【0076】
1.21.PDE1阻害剤が、10nM未満のIC50をもって、PDE1(例えば、実施例1に記載のアッセイにおけるウシPDE1)の活性を阻害し、例えばPDE1阻害剤が、PDE1以外のタイプのPDEの活性を阻害せず、例えば、PDE1以外のタイプのPDEに対して少なくとも1000倍のIC50を有する、上記のいずれかの方法。
【0077】
1.22.PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、下記のもの:
【化17】
である、上記のいずれかの方法。
【0078】
1.23.PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、下記のもの:
【化18】
である、上記のいずれかの方法。
【0079】
1.24.PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、下記のもの:
【化19】
である、上記のいずれかの方法。
【0080】
1.25.PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、下記のもの:
【化20】
である、上記のいずれかの方法。
【0081】
1.26.患者が、1種類以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、Ccl2、IL-6、およびそれらの組合せから選択される)のレベル上昇を有する、上記の方法のいずれか。
【0082】
1.27.患者が、1種類以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)のレベル減少を有する、上記の方法のいずれか。
【0083】
1.28.患者が、M2表現型のマクロファージと比べてM1表現型のマクロファージのレベル上昇を有する、上記の方法のいずれか。
【0084】
1.29.患者が、さらに、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、コルチコステロイド剤またはNSAIDのうち1つ以上を投与される、上記の方法のいずれか。
【0085】
例えば、一の実施態様では、本発明は、M2活性化状態へのマクロファージ活性化を促進する方法であって、炎症、または炎症に関連する疾患もしくは状態(例えば、マクロファージ媒介炎症)に罹患している患者にホスホジエステラーゼ・タイプIの特異的阻害剤(PDE1)の有効量を投与することを含む方法(方法2)を提供し、例えば:
【0086】
2.1 治療されるべき疾患または状態が、細菌感染症(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症);ウイルス感染症(例えば、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、ウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎));寄生生物感染症(例えば、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、シストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症);アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症から選択される、方法2。
【0087】
2.2 治療されるべき疾患または状態が、細菌感染症である、上記のいずれかの方法。
【0088】
2.3 治療されるべき疾患または状態が、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、またはマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症である、上記のいずれかの方法。
【0089】
2.4 治療されるべき疾患または状態が、ウイルス感染症である、方法2または2.1。
【0090】
2.5 ウイルス感染症が、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、またはウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎)である、方法2または2.4。
【0091】
2.6 治療されるべき疾患または状態が、寄生生物感染症である、方法2または2.1。
【0092】
2.7 寄生生物感染症が、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、またはシストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症である、方法2.7。
【0093】
2.8 治療されるべき疾患または状態が、アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症である、方法2または2.1。
【0094】
2.9 治療されるべき疾患または状態が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症である、方法2または2.8。
【0095】
2.10 本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の有効量を、(i)M1マクロファージの活性化を減少させるかまたは阻害するのに有効な量で、および/または(ii)1つ以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、IL6およびCcl2、またはそれらの組合せ)のレベルを減少させるのに有効な量で、必要としている患者に投与することを含む、上記のいずれかの方法。
【0096】
2.11 本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の有効量を、(i)M2マクロファージの活性化を促進するのに有効な量で、および/または(ii)抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)を促進するのに有効な量で、必要としている患者に投与することを含む、上記のいずれかの方法。
【0097】
2.12 本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載されているような式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の有効量を、M1表現型のマクロファージのレベルを減少させるのに有効な量で、および/またはM2表現型のマクロファージを増加させるのに有効な量で、必要としている患者に投与することを含む、上記のいずれかの方法。
【0098】
2.13 PDE1阻害剤が、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物である、上記のいずれかの方法。
【0099】
2.14 炎症が、マクロファージ(例えば、M1マクロファージ)の発現および/または活性化の増加に関連する、上記のいずれかの方法。
【0100】
2.15 PDE1阻害剤が、例えばIL1B、IL-6、TNFα、Ccl2、一酸化窒素(NO)、および活性酸素種(ROS)からなる群から選択される、炎症誘発性サイトカインの発現および/または活性を鈍化させるかまたは阻害する、上記のいずれかの方法。
【0101】
2.16 PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤(例えば、ロリプラム)と組み合わせて投与される、上記のいずれかの方法。
【0102】
2.17 患者が、炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1B、IL6、TNFα、Ccl2)のレベルの増加を示している、上記のいずれかの方法。
【0103】
2.18 「PDE1阻害剤」が、例えば固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて1μM未満、好ましくは750nM未満、より好ましくは500nM未満、より好ましくは50nM未満のIC50をもって、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特に、PDE1B媒介)加水分解を選択的に阻害する化合物を表す、上記のいずれかの方法。
【0104】
2.19 PDE1阻害剤が、10nM未満のIC50をもって、PDE1(例えば、実施例1に記載のアッセイにおけるウシPDE1)の活性を阻害し、例えばPDE1阻害剤が、PDE1以外のタイプのPDEの活性を阻害せず、例えば、PDE1以外のタイプのPDEに対して少なくとも1000倍のIC50を有する、上記のいずれかの方法。
【0105】
2.20 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記のもの:
【化21】
である、上記のいずれかの方法。
【0106】
2.21 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記のもの:
【化22】
である、上記のいずれかの方法。
【0107】
2.22 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、下記のもの:
【化23】
である、上記のいずれかの方法。
【0108】
2.23 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、下記のもの:
【化24】
である、上記のいずれかの方法。
【0109】
2.24 患者が、1種類以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、Ccl2、IL-6、およびそれらの組合せから選択される)のレベル上昇を有する、上記の方法のいずれか。
【0110】
2.25 患者が、1種類以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)のレベル減少を有する、上記の方法のいずれか。
【0111】
2.26 患者が、M2表現型のマクロファージと比べてM1表現型のマクロファージのレベル上昇を有する、上記の方法のいずれか。
【0112】
2.27 患者が、さらに、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、コルチコステロイド剤またはNSAIDのうち1つ以上を投与される、上記の方法のいずれか。
【0113】
本発明は、さらに、方法1以降のいずれかにおいて用いるための医薬の製造における、PDE1阻害剤、例えば式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物のいずれかの使用を提供する。
【0114】
本発明は、さらに、方法1以降のいずれかにおいて用いるための、PDE1阻害剤、例えば、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物のいずれかを提供する。
【0115】
本発明は、さらに、方法1以降のいずれかにおいて用いるための、PDE1阻害剤、例えば式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIのいずれかを含む医薬組成物を提供する。
【0116】
フレーズ「本発明の化合物」または「本発明のPDE1阻害剤」または類似の用語は、本明細書に記事されている化合物、例えば式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物のいずれかまたは全てを包含する。
【0117】
用語「治療」および「治療する」とは、疾患の症状の予防および治療または寛解、ならびに疾患の原因の治療を含むものとして、適切に理解されるべきである。
【0118】
治療方法については、用語「有効量」とは、特定の疾患または障害、および/またはその症状を治療または軽減するために、および/または炎症性サイトカイン、例えばマクロファージによって産生されるものを減少させるために、および/またはM1マクロファージの活性化を減少させるために、および/または抗炎症性サイトカイン、例えばマクロファージによって産生されるものを増加させるために、および/またはM2マクロファージ活性化を増強するために、治療有効量を包含することを意図している。
【0119】
用語「患者」としては、ヒトまたは非ヒト(すなわち、動物)の患者が挙げられる。特定の実施態様では、本発明は、ヒトおよび非ヒト動物の両方を包含する。別の実施態様では、本発明は、非ヒト動物を包含する。他の実施態様では、ヒトを包含する。
【0120】
本開示で使用される用語「を含む」は、オープンエンドであることが意図されており、記載されていないさらなる要素または方法ステップを除外するものではない。
【0121】
本発明の化合物、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、上記の式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIは、単独の治療剤として使用され得るが、他の活性薬剤と組み合わせて、または共投与のために使用され得る。
【0122】
例えば、ある実施態様では、本発明の化合物、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、上記の式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIは、他の活性薬剤と、例えば1種類以上の抗うつ薬と、例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、)セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、c)三環系抗うつ薬(TCA)、および非定型抗精神病薬から選択される遊離形態または薬学的に許容される塩形態の1種類以上の化合物と組み合わせて投与することができる(例えば、連続して、または同時に、または24時間以内に、投与することができる)。
【0123】
本発明を実施する際に使用される投与量は、もちろん、治療されるべき特定の疾患または状態、使用される特定の本発明の化合物、投与様式、および望まれる治療法などに応じて異なる。本発明の化合物は、経口、非経口、経皮または吸入を包含する適切な経路で投与することができるが、好ましくは経口で投与される。一般的には、例えば上記の疾患の治療の、満足のゆく効果は、0.01~2.0mg/kg程度の用量での経口投与で得られることが示される。より大きな哺乳動物、例えばヒトでは、経口投与のための示された1日量は、それに応じて約0.75~150mg(投与される薬物および治療される状態に応じて、例えば化合物214の場合、炎症状態の治療のために1日あたり0.5~25mg、例えば1~10mg、例えば一リン酸塩の形態で)の範囲となり、好都合には1日1回、または2~4回に分けて投与されるか、または徐放性の形態で投与される。したがって、経口投与のための単位剤形は、例えば、本発明の化合物約0.2~75または150mg、例えば、約0.2または2.0~50、75または100mg(例えば、1、2.5、5、10または20mg)を、そのための薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に含み得る。
【0124】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、従来の希釈剤または賦形剤、およびガレヌス分野(galenic art)で知られている技術を用いて調製することができる。したがって、経口投与形態としては、錠剤、カプセル剤、液剤および懸濁剤などを挙げることができる。
【実施例0125】
実施例1: マウスザイモサン胸膜炎モデルを用いた末梢炎症評価
無菌性炎症を誘発するために、マウスの胸膜腔にザイモサンを注射する。注射後3日目および7日目に、白血球、好中球およびマクロファージの浸潤をモニターする。様々な細胞型の検出は、以下の表1に概略示したゲーティング戦略に従って識別される。
【0126】
【表1】
【0127】
このモデルでは、ザイモサンの注射により、白血球の様々な波が動員され、それが観察および記録される。滲出液の量は24時間かけて最大に増加し、好中球は4時間以内に増加し、48時間で最大に達する。適応免疫系のリンパ球が入ってくるのは3日後と遅く、抗原を提示するマクロファージによってシグナル伝達される。消散段階は、このモデルで十分に証明されており、総マクロファージ数の減少およびM2表現型への移行を伴う。
【0128】
これらの試験では、試験対象体に化合物1および2を投与し、化合物が白血球、好中球およびマクロファージの浸潤に及ぼす影響を観察した。
【0129】
【化25】
【0130】
添付の図1~9に示すように、化合物1または2で処置した対象体は、M1からM2へのシフトを促進することによって炎症消散の増強を示したことが観察された。このデータは、処置された検体において、M1マクロファージに起因する炎症が一貫して減少し、一方でM2活性化が促進されたことを示している。図1に示すように、腹腔内へのザイモサン1mgi.p.注射は、有意な総CD45+白血球浸潤をもたらした。この白血球の総数の増加は、未処置と比較して、疾患のみの動物におけるザイモサン注射後3日目および7日目にの総マクロファージ数の一般的な増加をもたらした(図2A)。白血球の総数に基づくマクロファージの割合(図2B)は、3日目から7日目までの間にわずかに減少した。
【0131】
好中球の数は、疾患のみの動物およびビヒクル試験動物では7日目に有意に減少したが、化合物1を投与した動物はそれほど劇的な減少を示さなかった(図3A)。これらの結果は、図3Bに反映されており、CD45+白血球に対する好中球の全体的な割合が、すべての対象体について有意に低下したことを示した。
【0132】
マクロファージ上のCD38およびEgr2発現をさらに評価するために、CD38+マクロファージおよびEgr2+マクロファージの総数を分析した。CD38+マクロファージの総数は、疾患およびビヒクル3日目の動物群では増加したが、化合物1で処置した動物では3日目に減少した(図5A)。Egr2+マクロファージの数は、3日目にはすべての動物群で減少していた(図5B)。また、CD38とEgr2の両方の平均蛍光強度(MFI)も、図6Aおよび6Bのマクロファージで分析した。MFIは、細胞集団における所定のマーカーの相対的な発現に関する数値を提供する。CD38+のMFIは、すべての動物群で3日目に増加し、化合物1で処置した群で最低値を示し、7日目にはすべての群で減少した。一方、Egr2+のMFIは、未処置と比較した場合、3日目および7日目にすべての動物群で減少した。
【0133】
全体として、結果は、CD38+細胞の数は減少する傾向があり、Egr2+細胞の数および割合は増加する傾向があることを示しており、7日目の炎症性傷害の消散段階が増加する傾向を示している。また、図7に示されるように、化合物1で処置された動物はまた、対照群と比較して、3日目および7日目でより少ない炎症性バイオマーカー(MCP-1/CCL2)を示す傾向があった。
【0134】
化合物2で同様の試験を行い、その結果を図8および9に示す。2mg/kgのデキサメタゾンによる処置は、3日目または7日目のCD38+またはErg2+マクロファージ集団の数に有意な影響を及ぼさなかった。しかしながら、3mg/kgの化合物2での処置は、CD38+マクロファージの有意な低下をもたらし、7日目にはErg2+マクロファージが急激かつ有意な増加に対応した。同じ方法に従って、さらなる試験を実施した。マウスにザイモサン1mgを腹腔内注射した後、10mg/kgの化合物1を腹腔内注射した。マクロファージのレベルを、注射時、次いで、注射の4、8、16、24、48、72時間後に記録した。その結果は、図11A、11B、12Aおよび12Bに要約されている。図11Aおよび11Bに示すように、化合物1での処置は、観察したすべての時間でM1マクロファージレベルの低下をもたらし、CD80+マクロファージにおいては7日目に有意な差が観察された。これに対応して、Arg1+M2マクロファージは4時間目に増加し、CD206+M2マクロファージは2日目および3日目に対照と比較して有意に増加した。
【0135】
実施例2: ミクログリア走化性アッセイに対するPDE1阻害剤の影響
BV2細胞を、100μMのADPを含むリザーバーの上にある5μm孔のTranswell 96ウェルプレートの上部チャンバーに加え、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。インキュベーション後、同じインキュベーション条件で30分間、あらかじめ温めておいた細胞剥離溶液で細胞を回収した。この細胞剥離溶液75μlを、蛍光リーダーに対応した新しい96ウェルプレートで培養液75μlと混合した。下部チャンバー内の細胞数は、CyQuant(登録商標)GR色素を添加し、Envision蛍光リーダーで480nm EX/520nm EMで読み取ることによって決定した。CyQuant(登録商標)GR色素は、核酸と結合すると強い蛍光を示し、単一細胞までの差異を測定するのに十分な精度を備えている。図10に示されるように、PDE1阻害剤である化合物1の存在は、膜を通過するBV2細胞の運動性に対して顕著な抑制効果を示し、化合物1が炎症誘発性マーカーの放出を抑制するというさらなる証拠を提供する。
【0136】
実施例3: マウスザイモン胸膜炎モデルを用いた炎症性バイオマーカーの検出
実施例1で述べた方法によって無菌性炎症を誘発するために、マウスの胸膜腔にザイモサンを注射した。化合物1を試験対象体に投与し、様々な炎症性バイオマーカーに対する影響を観察した。4時間後に結果を記録した。対象体は、化合物1の投与後にサイトカインマーカーの明らかな減少を示した。IFNγ、IL-1β、MCP1-βおよびTNFαは、すべての血清および血漿サンプルにおいて化合物1の投与後に減少した。IL10は血清中で減少を示した。
【0137】
脂質は、受容体媒介経路を介して、細胞の成長および死、ならびに炎症/感染を含む多数の細胞応答の調節に関与することが知られている。様々な脂質が炎症の開始と消散の両方に関与している。消散促進(pro-resolving)脂質メディエーターは、アラキドン酸(AA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸から体内で自然に産生される。AAおよびDHAの代謝物を同定するためにさらなる研究を行った。それを以下の表2および3に要約している。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
AA代謝に関して上に示したように、どちらも炎症の消散につながる中間メディエーターである12-HETEおよび15-HETEは対照と比較して出現率が増加しているが、炎症誘発性メディエーターであるTXB2、PGE2およびLTB4はいずれも減少していることを示している。DHAの代謝では、いずれも炎症の解消に関係している17-HDOHE、RVD5および14-HDOHEのそれぞれが増加している。この脂質バイオマーカーのプロファイルは、試験化合物が15-LOX経路および12-LOX経路の代謝物を誘導することを示唆しており、消散を促進する経路の動員を示している。また、試験化合物は、炎症誘発性経路である5-LOXの代謝物を誘導しないことも示された。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症または炎症に関連する疾患の治療または予防のための炎症の消散を促進する方法であって、必要とする患者にPDE1阻害剤を投与することを含む方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
AA代謝に関して上に示したように、どちらも炎症の消散につながる中間メディエーターである12-HETEおよび15-HETEは対照と比較して出現率が増加しているが、炎症誘発性メディエーターであるTXB2、PGE2およびLTB4はいずれも減少していることを示している。DHAの代謝では、いずれも炎症の解消に関係している17-HDOHE、RVD5および14-HDOHEのそれぞれが増加している。この脂質バイオマーカーのプロファイルは、試験化合物が15-LOX経路および12-LOX経路の代謝物を誘導することを示唆しており、消散を促進する経路の動員を示している。また、試験化合物は、炎症誘発性経路である5-LOXの代謝物を誘導しないことも示された。
本願は、下記の態様も包含する。
[態様1]
炎症または炎症に関連する疾患の治療または予防のための炎症の消散を促進する方法であって、必要とする患者にPDE1阻害剤を投与することを含む方法。
[態様2]
患者が、細菌感染症(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症);ウイルス感染症(例えば、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、ウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎));寄生生物感染症(例えば、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、シストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症);アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症から選択されるマクロファージによって媒介される疾患または障害に罹患している、態様1記載の方法。
[態様3]
患者が、
a.1つ以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、Ccl2、IL-6、およびそれらの組合せから選択される)のレベル上昇;
b.1つ以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)のレベル減少;
c.M2表現型のマクロファージと比べてM1表現型のマクロファージのレベル上昇
を有する、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様4]
PDE1阻害剤が、
(A)エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体を包含する、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式I:
【化21】
[式中、
(i) R 1 は、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R 4 は、HまたはC 1-4 アルキルであり、R 2 およびR 3 は、独立して、HまたはC 1-4 アルキル
(例えば、R 2 およびR 3 は共にメチルであるか、またはR 2 はHであり、R 3 はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2 は、Hであり、R 3 およびR 4 は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し
(好ましくは、R 3 およびR 4 は一緒にシス配置を有し、例えば、R 3 およびR 4 を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
(iii) R 5 は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5 は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つと結合し、式A:
【化22】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R 8 、R 9 、R 11 およびR 12 は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R 10 は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよい、ピリジル(例えば、ピリジ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R 8 、R 9 またはR 10 は存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R 6 は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは、0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R 13 14 )-であり、
ここで、R 13 およびR 14 は、独立して、H、またはC 1-4 アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである];
(B)エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体を包含する、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、式Ia:
【化23】
[式中、
(i) R 2 およびR 5 は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R 3 およびR 4 は一緒になって、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成するか[好ましくは、R 3 およびR 4 を担持する炭素は、それぞれR配置およびS配置を有する];または、R 2 およびR 3 は、各々、メチルであり、R 4 およびR 5 は、各々、Hであるか;または、R 2 、R 4 およびR 5 はHであり、R 3 はイソプロピルであり[好ましくは、R 3 を担持する炭素はR配置を有する];
(ii) R 6 は、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)ベンジルアミノ、C 1-4 アルキルまたはC 1-4 アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R 10 は、C 1-4 アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換であってもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリジ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
(iv)XおよびYは、独立して、CまたはNである];
(C)遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II:
【化24】
[式中、
(i) Xは、C 1-6 アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリジ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC 1-6 アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R 1 、-N(R 2 )(R 3 )、または、NもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC 3-7 シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R 1 は、C 1-6 アルキル、ハロC 1-6 アルキル、-OHまたは-OC 1-6 アルキル(例えば、-OCH 3 )であり;
(v) R 2 およびR 3 は、独立して、HまたはC 1-6 アルキルであり;
(vi) R 4 およびR 5 は、独立して、H、C 1-6 アルキル、または1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)もしくはC 1-6 アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C 1-6 アルキル(例えば、メチル)、ハロC 1-6 アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリジ-2-イル、5-フルオロピリジ-2-イル、6-フルオロピリジ-2-イル、3-フルオロピリジ-2-イル、4-フルオロピリジ-2-イル、4,6-ジクロロピリジ-2-イル)、ハロC 1-6 アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリジ-2-イル)またはC 1-6 アルキル(例えば、5-メチルピリジ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロで置換されている、アリール、例えばフェニル(例えば、4-フルオロフェニル)である];
(D)遊離形態または塩形態の、式III:
【化25】
[式中、
(i) R 1 は、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R 2 およびR 3 は、独立して、HまたはC 1-6 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R 4 は、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R 5 は、-C(=O)-C 1-6 アルキル(例えば、-C(=O)-CH 3 )およびC 1-6 ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から独立して選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R 6 およびR 7 は、独立して、H、または、C 1-6 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から独立して選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば、非置換フェニル、または、1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC 1-6 アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC 1-6 アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば、4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である];
(E)遊離形態または塩形態の、式IV
【化26】
[式中、
(i) R 1 は、C 1-4 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R 2 )であり、ここで、R 2 は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルであり;
(ii) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii) R 3 、R 4 およびR 5 は、独立して、HまたはC 1-4 アルキル(例えば、メチル)であるか;またはR 3 は、Hであり、R 4 およびR 5 は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R 4 およびR 5 は一緒にシス配置を有し、例えば、R 4 およびR 5 を担持している炭素は、それぞれR配置およびS配置を有する)、
(iv) R 6 、R 7 およびR 8 は、独立して:
H、
1-4 アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリジ-2-イル、または
-S(O) 2 -NH 2
であり;
(v) ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、R 6 、R 7 および/またはR 8 は、それぞれ、存在せず;また、X、YおよびZが全てCである場合、R 6 、R 7 またはR 8 の少なくとも1つは、-S(O) 2 -NH 2 、または、ヒドロキシで置換されているピリジ-2-イルである];
(F)遊離形態または塩形態の、式V
【化27】
[式中、
(iv) R 1 は、-NH(R 4 )であり、ここで、R 4 は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(v) R 2 は、HまたはC 1-6 アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(vi) R 3 は、-SO 2 NH 2 または-COOHである];および
(G)遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式VI
【化28】
[式中、
(iv) R 1 は、-NH(R 4 )であり、ここで、R 4 は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルであり;
(v) R 2 は、HまたはC 1-6 アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(vi) R 3 は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C 1-6 アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリジ-2-イルまたはピリジ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である]
から選択される化合物である、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様5]
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、以下のもの:
【化29】
である、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様6]
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、以下のもの:
【化30】
である、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様7]
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、以下のもの:
【化31】
である、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様8]
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される形態の、以下のもの:
【化32】
である、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様9]
PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤(例えば、ロリプラム)と組み合わせて投与される、上記態様のいずれかに記載の方法。
[態様10]
M2活性化状態へのマクロファージ活性化を促進する方法であって、必要とする患者にPDE1阻害剤を投与することを含む、方法。
[態様11]
患者が、細菌感染症(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)およびマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の感染症);ウイルス感染症(例えば、アフリカ豚コレラウイルス(African Swine Fever Virus)、豚コレラウイルス(Classical Swine Fever Virus)、デングウイルス(Dengue Virus)、口蹄疫ウイルス(Foot and Mouth Disease Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)(例えば、HIV1)、A型インフルエンザウイルス(Influenza A Virus)、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus-2)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)、豚仮性狂犬病ウイルス(Porcine Pseudorabies Virus)、呼吸器多核体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、ウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎));寄生生物感染症(例えば、テニア・クラシセプス(Taenia crassiceps)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)、シストソーマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)の感染症);アトピー性皮膚炎;肺炎;心血管疾患、例えばアテローム動脈硬化症;肥満症およびインスリン抵抗性;喘息;肺線維症;心臓閉塞性肺疾患(cardiac obstructive pulmonary disease)(COPD);神経障害性疼痛;脳卒中;糖尿病;敗血症;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);自己免疫性肝炎;全身性エリテマトーデス(SLE);創傷治癒;胸膜炎;腹膜炎;および嚢胞性線維症から選択されるマクロファージによって媒介される疾患または障害に罹患している、態様10記載の方法。
[態様12]
患者が、
a.1つ以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、Ccl2、IL-6、およびそれらの組合せから選択される)のレベル上昇;
b.1つ以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)のレベル減少;
c.M2表現型のマクロファージと比べてM1表現型のマクロファージのレベル上昇
を有する、態様10または11記載の方法。
[態様13]
PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤(例えば、ロリプラム)と組み合わせて投与される、態様10~12のいずれかに記載の方法。
[態様14]
いずれかの上記態様に記載の方法のいずれかにおいて用いるための、PDE1阻害剤またはPDE1阻害剤を含む医薬組成物。
【外国語明細書】