(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109739
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】核酸増幅
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20240806BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082357
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2021012803の分割
【原出願日】2013-06-07
(31)【優先権主張番号】61/657,227
(32)【優先日】2012-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/782,199
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514294153
【氏名又は名称】イオニアン・テクノロジーズ・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホンファ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャロッド・プロヴァン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ロス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非特異的増幅生成物が生じない核酸増幅方法を提供する。
【解決手段】本方法は、ポリヌクレオチド及び増幅試薬混合物を組み合わせて、反応混合物を形成するステップであって、反応混合物が、溶液中で、可逆的に結合した二価イオンを含む、ステップと、可逆的に結合した二価イオンを放出するように反応混合物のpHを調整し、それによってポリヌクレオチドの増幅を開始するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリヌクレオチド及び増幅試薬混合物を組み合わせて、反応混合物を形成するステップであって、反応混合物が溶液中で可逆的に結合した二価イオンを含む、ステップと、
(b)可逆的に結合した二価イオンを放出するように反応混合物のpHを調整し、
それによってポリヌクレオチドの増幅を開始するステップと
を含む方法。
【請求項2】
二価イオンが、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、カドミウム及び鉛からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二価イオンがマグネシウムである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
増幅試薬混合物がpH感受性キレート化剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
pH感受性キレート化剤が、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸、EGTA誘導体及びEDTA誘導体からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
増幅試薬混合物が温度感受性バッファーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
温度感受性バッファーがトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応混合物のpHが温度感受性バッファーのpHに従って調整される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
反応混合物のpHが、第1の温度から第2の温度に反応混合物の温度を変化させることによって調整される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2の温度での温度感受性バッファーのpKaが、第1の温度での温度感受性バッファーのpKaより少なくとも0.4低い、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
温度感受性バッファーが-0.04℃-1~-0.015℃-1のΔpKaを有する、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1の温度が、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃である、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第2の温度が、約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
増幅試薬混合物がニッキングエンドヌクレアーゼを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
増幅試薬混合物がDNA又はRNAポリメラーゼを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
増幅試薬混合物が逆転写酵素を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
キレート化剤濃度対二価イオン濃度の比が約0.5~約2である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
第1の温度での遊離二価イオンの濃度が約0~約10mMである、請求項9~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
第2の温度での遊離二価イオンの濃度が約5mM~約50mMである、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
増幅試薬混合物が凍結乾燥形態の1つ又は複数の構成成分を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
増幅試薬混合物が凍結乾燥形態のマグネシウム塩を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
増幅試薬混合物が凍結乾燥形態のpH感受性キレート化剤を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
凍結乾燥されたマグネシウム塩がバッファー中で再構成されて、溶液中でマグネシウムイオンを形成する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
凍結乾燥されたpH感受性キレート化剤がバッファー中で再構成される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
溶液中のマグネシウムイオンがpH感受性キレート化剤に可逆的に結合する、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
バッファーが温度感受性バッファーである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
pH感受性キレート化剤が溶液中の遊離マグネシウムイオンに可逆的に結合するようにバッファーのpHが作動可能である、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ポリヌクレオチドの増幅が実質的に等温条件下で起こる、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
増幅試薬混合物と組み合わせる前にポリヌクレオチドが変性していない、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
組み合わせるステップが、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃の温度で実施される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ポリヌクレオチドの増幅が、反応混合物の温度が約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃になるまで起こらない、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ポリヌクレオチドの増幅が、第1の温度と第2の温度の間での反応混合物の温度の反復サイクルなしで起こる、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
増幅試薬混合物の1つ又は複数の構成成分が、流体装置、カートリッジ又は側方流動装置での使用に適する容器で提供される、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ポリヌクレオチドの増幅が、組み合わせるステップ(a)で形成される反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こる、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
増幅されたポリヌクレオチドを検出するステップ(c)をさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
増幅されたポリヌクレオチドの検出が、組み合わせるステップ(a)で形成される反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
反応混合物中の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は実質的に全ての二価イオンが可溶形態である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
二価イオンがpH感受性キレート化剤に可逆的に結合する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
二価イオンが遊離二価イオンを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
二価イオンが結合した二価イオンと遊離二価イオンの両方を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
溶液中の二価イオンが沈殿物の溶解から形成されない、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ポリヌクレオチドの増幅の前に、二価イオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
増幅されたポリヌクレオチドの検出の前に、二価イオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
反応混合物が、沈殿形態で結合した二価イオンを含まない、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
(a)ポリヌクレオチド及び増幅試薬混合物を組み合わせて反応混合物を形成するステップであって、増幅試薬混合物が溶液中で可逆的に結合したマグネシウムイオン、温度感受性バッファー及びpH感受性キレート化剤を含む、ステップと、
(b)反応混合物の温度を、
(i)ポリヌクレオチドの増幅が阻害されるように、pH感受性キレート化剤が溶液中の遊離マグネシウムイオンに可逆的に結合するように温度感受性バッファーのpHが作動可能である第1の温度から、
(ii)ポリヌクレオチドの増幅が進行することができるように、結合したマグネシウムイオンをpH感受性キレート化剤から放出するように温度感受性バッファーのpHが作動可能である第2の温度に調整し、
それによってポリヌクレオチドの増幅を開始するステップと
を含む方法。
【請求項46】
pH感受性キレート化剤が、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸、EGTA誘導体及びEDTA誘導体からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
温度感受性バッファーがトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
第2の温度での温度感受性バッファーのpKaが、第1の温度での温度感受性バッファーのpKaより少なくとも0.4低い、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
温度感受性バッファーが-0.04℃-1~-0.015℃-1のΔpKaを有する、請求項45~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
第1の温度が、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃である、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
第2の温度が、約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃である、請求項45~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
増幅試薬混合物がニッキングエンドヌクレアーゼを含む、請求項45~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
増幅試薬混合物がDNA又はRNAポリメラーゼを含む、請求項45~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
増幅試薬混合物が逆転写酵素を含む、請求項45~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
キレート化剤濃度対マグネシウムイオン濃度の比が約0.5~約2である、請求項45~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
第1の温度での遊離マグネシウムイオンの濃度が約0~約10mMである、請求項45~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
第2の温度での遊離マグネシウムイオンの濃度が約5mM~約50mMである、請求項45~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
増幅試薬混合物が凍結乾燥形態の1つ又は複数の構成成分を含む、請求項45~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
増幅試薬混合物が凍結乾燥形態のマグネシウム塩を含む、請求項45~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
増幅試薬混合物が凍結乾燥形態のpH感受性キレート化剤を含む、請求項45~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
凍結乾燥されたマグネシウム塩がバッファー中で再構成されて、溶液中でマグネシウムイオンを形成する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
凍結乾燥されたpH感受性キレート化剤がバッファー中で再構成される、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
溶液中のマグネシウムイオンがpH感受性キレート化剤に可逆的に結合する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
バッファーが温度感受性バッファーである、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項65】
pH感受性キレート化剤が溶液中の遊離マグネシウムイオンに可逆的に結合するようにバッファーのpHが作動可能である、請求項61~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
ポリヌクレオチドの増幅が実質的に等温条件下で起こる、請求項45~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
増幅試薬混合物と組み合わせる前にポリヌクレオチドが変性していない、請求項45~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
組み合わせるステップが、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃の温度で実施される、請求項45~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
ポリヌクレオチドの増幅が、反応混合物の温度が約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃になるまで起こらない、請求項45~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
ポリヌクレオチドの増幅が、第1の温度と第2の温度の間での反応混合物の温度の反復サイクルなしで起こる、請求項45~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
増幅試薬混合物の1つ又は複数の構成成分が、流体装置、カートリッジ又は側方流動装置での使用に適する容器で提供される、請求項45~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
ポリヌクレオチドの増幅が、組み合わせるステップ(a)で形成される反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こる、請求項45~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
増幅されたポリヌクレオチドを検出するステップ(c)をさらに含む、請求項45~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
増幅されたポリヌクレオチドの検出が、組み合わせるステップ(a)で形成される反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こる、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
反応混合物中の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は実質的に全てのマグネシウムイオンが可溶形態である、請求項45~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
マグネシウムイオンがpH感受性キレート化剤に可逆的に結合する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
マグネシウムイオンが遊離マグネシウムイオンを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
マグネシウムイオンが、結合したマグネシウムイオンと遊離マグネシウムイオンの両方を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
溶液中のマグネシウムイオンが沈殿物の溶解から形成されない、請求項45~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
ポリヌクレオチドの増幅の前に、マグネシウムイオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない、請求項45~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
増幅されたポリヌクレオチドの検出の前に、マグネシウムイオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
反応混合物が、沈殿形態で結合したマグネシウムイオンを含まない、請求項45~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬及び溶液中のpH依存性の可逆的に結合したマグネシウムイオンを含む組成物。
【請求項84】
温度感受性バッファー及びpH感受性キレート化剤をさらに含む、請求項83に記載の組成物。
【請求項85】
温度感受性バッファーがトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
温度感受性バッファーが-0.04℃-1~-0.015℃-1のΔpKaを有する、請求項84又は85に記載の組成物。
【請求項87】
pH感受性キレート化剤がエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸である、請求項84~86のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項88】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬がニッキングエンドヌクレアーゼを含む、請求項83~87のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項89】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬がDNA又はRNAポリメラーゼを含む、請求項83~88のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項90】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬が逆転写酵素を含む、請求項83~89のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項91】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬がリコンビナーゼを含む、請求項83~90のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項92】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬が凍結乾燥形態の1つ又は複数の構成成分を含む、請求項83~91のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項93】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬が凍結乾燥形態のマグネシウム塩を含む、請求項83~92のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項94】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬が凍結乾燥形態のpH感受性キレート化剤を含む、請求項83~93のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項95】
凍結乾燥されたマグネシウム塩がバッファー中で再構成されて、溶液中でマグネシウムイオンを形成する、請求項93に記載の組成物。
【請求項96】
凍結乾燥されたpH感受性キレート化剤がバッファー中で再構成される、請求項94に記載の組成物。
【請求項97】
バッファーが温度感受性バッファーである、請求項95又は96に記載の組成物。
【請求項98】
溶液中のマグネシウムイオンが沈殿物の溶解から形成されない、請求項83~97のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項99】
沈殿形態で結合したマグネシウムイオンを含まない、請求項83~98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
1つ又は複数の構成成分が、流体装置、カートリッジ又は側方流動装置での使用に適する容器で提供される、請求項83~99のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項101】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬、温度感受性バッファー、pH感受性キレート化剤及びマグネシウム塩を含む組成物。
【請求項102】
温度感受性バッファーがトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項103】
温度感受性バッファーが-0.04℃-1~-0.015℃-1のΔpKaを有する、請求項101又は102に記載の組成物。
【請求項104】
pH感受性キレート化剤がエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸である、請求項101~103のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項105】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬がニッキングエンドヌクレアーゼを含む、請求項101~104のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項106】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬がDNA又はRNAポリメラーゼを含む、請求項101~105のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項107】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬が逆転写酵素を含む、請求項101~106のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項108】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬がリコンビナーゼを含む、請求項101~107のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項109】
核酸増幅のための1つ又は複数の試薬が凍結乾燥形態の1つ又は複数の構成成分を含む、請求項101~108のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項110】
マグネシウム塩が凍結乾燥形態である、請求項101~109のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項111】
pH感受性キレート化剤が凍結乾燥形態である、請求項101~110のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項112】
凍結乾燥されたマグネシウム塩がバッファー中で再構成されて、溶液中のマグネシウムイオンを形成する、請求項110に記載の組成物。
【請求項113】
凍結乾燥されたpH感受性キレート化剤がバッファー中で再構成される、請求項111に記載の組成物。
【請求項114】
バッファーが温度感受性バッファーである、請求項112又は113に記載の組成物。
【請求項115】
溶液中のマグネシウムイオンが沈殿物の溶解から形成されない、請求項112に記載の組成物。
【請求項116】
沈殿形態で結合したマグネシウムイオンを含まない、請求項101~115のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項117】
1つ又は複数の構成成分が、流体装置、カートリッジ又は側方流動装置での使用に適する容器で提供される、請求項101~116のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項118】
(a)酵素及び試薬混合物を組み合わせて反応混合物を形成するステップであって、反応混合物は溶液中で可逆的に結合した二価イオンを含む、ステップと、
(b)可逆的に結合した二価イオンを放出するように反応混合物のpHを調整し、
それによって酵素を活性化させるステップと
を含む方法。
【請求項119】
二価イオンが、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、カドミウム及び鉛からなる群から選択される、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
試薬混合物がpH感受性キレート化剤を含む、請求項118又は119に記載の方法。
【請求項121】
試薬混合物が温度感受性バッファーを含む、請求項118~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
反応混合物のpHが温度感受性バッファーのpHに従って調整される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
反応混合物のpHが、第1の温度から第2の温度に反応混合物の温度を変化させることによって調整される、請求項118~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
酵素がDNA又はRNAポリメラーゼである、請求項118~123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
酵素がニッキングエンドヌクレアーゼである、請求項118~123のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、核酸増幅に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの酵素(核酸と相互作用するほとんど全ての酵素及びほとんどのプロテアーゼを包含する)は、二価イオン補因子を必要とする。例えば、核酸増幅反応に関わる酵素は、補因子として二価のマグネシウムイオン(Mg++)をしばしば必要とする。
【0003】
核酸増幅は、非特異的増幅生成物を生成することができる。用いられる酵素が周囲温度でしばしば活性であるので、多くの場合、これは、増幅手順自体の前の非特異的オリゴヌクレオチドプライミング及び以降のプライマー伸長事象による。例えば、プライマー二量体化及び以降の伸長による増幅生成物が、しばしば観察される。この問題を克服するために用いられる方法は、増幅反応に関わる少なくとも1つの構成成分(例えば、酵素又は二価のマグネシウムイオン補因子)が、反応混合物の温度が適当な温度に到達するまで反応混合物から分離されているか、不活性状態に保たれる、いわゆる「ホットスタート」反応を含む。
【発明の概要】
【0004】
この開示は、酵素反応の制御方法の開発に、少なくとも一部、基づく。
【0005】
さらにこの開示は、単純な試薬を用いるホットスタート反応の利点を提供することができる、核酸増幅のための方法及び組成物の開発に、少なくとも一部、基づく。
【0006】
一態様では、本開示は、(a)ポリヌクレオチド及び増幅試薬混合物を組み合わせて、反応混合物を形成するステップであって、反応混合物が溶液中で可逆的に結合した二価イオンを含む、ステップと、(b)可逆的に結合した二価イオンを放出するように反応混合物のpHを調整し、それによってポリヌクレオチドの増幅を開始するステップとを含む方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、二価イオンは、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、カドミウム及び鉛からなる群から選択される。
【0008】
一部の実施形態では、二価イオンは、マグネシウムである。
【0009】
本発明の任意の実施形態では、増幅試薬混合物は、pH感受性キレート化剤を含むことができる。pH感受性キレート化剤は、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸(EGTA)、EGTA誘導体及びEDTA誘導体からなる群から選択することができる。溶液中の二価イオンは、pH感受性キレート化剤に可逆的に結合することが好ましい。pH感受性キレート化剤は、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸であることが好ましい。
【0010】
本発明の任意の実施形態では、増幅試薬混合物は、温度感受性バッファーを含むことができる。一部の実施形態では、温度感受性バッファーは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含むことができる。
【0011】
本発明の任意の実施形態では、反応混合物のpHは、温度感受性バッファーのpHに従って調整してもよい。
【0012】
本発明の任意の実施形態では、反応混合物のpHは、第1の温度から第2の温度に反応混合物の温度を変化させることによって調整してもよい。
【0013】
本発明の任意の実施形態では、第2の温度での温度感受性バッファーのpKaは、第1の温度での温度感受性バッファーのpKaより少なくとも0.4低い。
【0014】
本発明の任意の実施形態では、温度感受性バッファーは、-0.04℃-1~-0.015℃-1のΔpKaを有する。
【0015】
本発明の任意の実施形態では、第1の温度は、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃である。第1の温度は、約20℃~約30℃であることが好ましい。
【0016】
本発明の任意の実施形態では、第2の温度は、約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃である。第2の温度は、約50℃~約60℃であることが好ましい。
【0017】
本発明の具体的な実施形態では、第1の温度は約20℃~約30℃であり、第2の温度は約50℃~約60℃である。
【0018】
本発明の任意の実施形態では、増幅試薬混合物は、ニッキングエンドヌクレアーゼ、DNA若しくはRNAポリメラーゼ、リコンビナーゼ及び/又は逆転写酵素を含む。具体的な実施形態では、増幅試薬混合物は、ニッキングエンドヌクレアーゼ及びDNA又はRNAポリメラーゼを含む。他の実施形態では、増幅試薬混合物は、リコンビナーゼ及びDNA又はRNAポリメラーゼを含む。これらの実施形態は、逆転写酵素を任意選択で含むことができる。
【0019】
本発明の任意の実施形態では、キレート化剤濃度対二価イオン濃度の比は、約0.5~約2である。
【0020】
本発明の任意の実施形態では、第1の温度での遊離二価イオンの濃度は、約0~約10mMである。
【0021】
本発明の任意の実施形態では、第2の温度での遊離二価イオンの濃度は、約5mM~約50mMである。
【0022】
本発明の任意の実施形態では、増幅試薬混合物は、凍結乾燥形態の1つ又は複数の構成成分を含むことができる。具体的な実施形態では、増幅試薬混合物は、凍結乾燥形態のマグネシウム塩を含むことができる。凍結乾燥されたマグネシウム塩は、バッファー中で再構成して、溶液中でマグネシウムイオンを形成することができる。他の実施形態では、増幅試薬混合物は、凍結乾燥形態のpH感受性キレート化剤を含むことができる。凍結乾燥されたpH感受性キレート化剤は、バッファー中で再構成することができる。これらの実施形態によれば、バッファーは温度感受性バッファーであってもよい。一部の実施形態では、溶液中のマグネシウムイオンは、pH感受性キレート化剤に可逆的に結合する。前述の実施形態のいずれかによれば、pH感受性キレート化剤が溶液中の遊離マグネシウムイオンに可逆的に結合するようにバッファーのpHが作動可能である。増幅試薬混合物は、溶液中でpH感受性キレート化剤に可逆的に結合したマグネシウムイオンを含むことが好ましく、溶液中のマグネシウムイオンは、凍結乾燥されたマグネシウム塩の温度感受性バッファー中での再構成から形成される。
【0023】
本発明の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅は、実質的に等温条件下で起こることができる。
【0024】
本発明の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドは、増幅試薬混合物と組み合わせる前に変性していない。
【0025】
本発明の任意の実施形態では、組み合わせるステップは、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃の温度で実施される。組み合わせるステップは、約20℃~約30℃の温度で実施されることが好ましい。
【0026】
本発明の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅は、反応混合物の温度が約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃になるまで起こらない。ポリヌクレオチドの増幅は、反応混合物の温度が約50℃~約60℃になるまで起こらないことが好ましい。
【0027】
本発明の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅は、第1の温度と第2の温度の間での反応混合物の温度の反復サイクルなしで起こることができる。
【0028】
本発明の任意の実施形態では、増幅試薬混合物の1つ又は複数の構成成分は、流体装置、カートリッジ又は側方流動装置での使用に適する容器で提供することができる。
【0029】
本発明の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅は、組み合わせるステップ(a)で形成される反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こることができる。
【0030】
本発明の任意の実施形態では、本方法は(c)増幅されたポリヌクレオチドを検出するステップをさらに含むことができる。ステップ(c)を含む本方法のさらなる実施形態では、増幅されたポリヌクレオチドを検出することは、組み合わせるステップ(a)で形成される反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こることができる。
【0031】
本発明の任意の実施形態では、反応混合物中の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は実質的に全ての二価イオンは、可溶形態である。さらなる実施形態では、二価イオンは、pH感受性キレート化剤に可逆的に結合する。さらなる実施形態では、二価イオンは、遊離二価イオンを含む。他の実施形態では、二価イオンは、結合した二価イオンと遊離二価イオンの両方を含む。
【0032】
本発明の任意の実施形態では、溶液中の二価イオンは、沈殿物の溶解から形成されない。
【0033】
本発明の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅の前に、二価イオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない。
【0034】
ステップ(c)を含む本方法のさらなる実施形態では、増幅されたポリヌクレオチドの検出の前に、二価イオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない。
【0035】
本発明の任意の実施形態では、反応混合物は、沈殿形態で結合した二価イオンを含まない。
【0036】
本発明の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドは、組み合わせるステップ(a)の前に、例えば30℃、40℃、50℃又は60℃を超える温度に予熱されない。
【0037】
本発明の任意の実施形態では、増幅試薬混合物は、組み合わせるステップ(a)の前に、例えば30℃、40℃、50℃又は60℃を超える温度に予熱されない。
【0038】
本発明の任意の実施形態では、ステップ(a)でポリヌクレオチドと組み合わされる増幅試薬混合物の温度は、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃である。ステップ(a)でポリヌクレオチドと組み合わされる増幅試薬混合物の温度は、約20℃~約30℃であることが好ましい。
【0039】
別の態様では、本開示は、(a)ポリヌクレオチド及び増幅試薬混合物を組み合わせて反応混合物を形成するステップであって、増幅試薬混合物が溶液中で可逆的に結合したマグネシウムイオン、温度感受性バッファー及びpH感受性キレート化剤を含むステップと、(b)反応混合物の温度を、(i)ポリヌクレオチドの増幅が阻害されるように、pH感受性キレート化剤が溶液中で遊離マグネシウムイオンに可逆的に結合するように温度感受性バッファーのpHが作動可能である第1の温度から、(ii)ポリヌクレオチドの増幅が進行することができるように、結合したマグネシウムイオンをpH感受性キレート化剤から放出するように温度感受性バッファーのpHが作動可能である第2の温度に調整し、それによってポリヌクレオチドの増幅を開始するステップとを含む方法を提供する。
【0040】
前述の方法の任意の実施形態では、pH感受性キレート化剤は、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸、EGTA誘導体及びEDTA誘導体からなる群から選択することができる。pH感受性キレート化剤は、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸であることが好ましい。
【0041】
前述の方法の任意の実施形態では、温度感受性バッファーは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含むことができる。
【0042】
前述の方法の任意の実施形態では、第2の温度での温度感受性バッファーのpKaは、第1の温度での温度感受性バッファーのpKaより少なくとも0.4低い。
【0043】
前述の方法の任意の実施形態では、温度感受性バッファーは、-0.04℃-1~-0.015℃-1のΔpKaを有する。
【0044】
前述の方法の任意の実施形態では、第1の温度は、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃である。第1の温度は、約20℃~約30℃であることが好ましい。
【0045】
前述の方法の任意の実施形態では、第2の温度は、約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃である。第2の温度は、約50℃~約60℃であることが好ましい。
【0046】
前述の方法の任意の実施形態では、増幅試薬混合物は、ニッキングエンドヌクレアーゼ、DNA若しくはRNAポリメラーゼ、リコンビナーゼ及び/又は逆転写酵素を含むことができる。具体的な実施形態では、増幅試薬混合物は、ニッキングエンドヌクレアーゼ及びDNA又はRNAポリメラーゼを含む。他の実施形態では、増幅試薬混合物は、リコンビナーゼ及びDNA又はRNAポリメラーゼを含む。これらの実施形態は、逆転写酵素を任意選択で含むことができる。
【0047】
前述の方法の任意の実施形態では、キレート化剤濃度対マグネシウムイオン濃度の比は、約0.5~約2である。
【0048】
前述の方法の任意の実施形態では、第1の温度での遊離マグネシウムイオンの濃度は、約0~約10mMである。
【0049】
前述の方法の任意の実施形態では、第2の温度での遊離マグネシウムイオンの濃度は、約5~約50mMである。
【0050】
前述の方法の任意の実施形態では、増幅試薬混合物は、凍結乾燥形態の1つ又は複数の構成成分を含むことができる。具体的な実施形態では、増幅試薬混合物は、凍結乾燥形態のマグネシウム塩を含む。凍結乾燥されたマグネシウム塩は、バッファー中で再構成して、溶液中でマグネシウムイオンを形成することができる。他の実施形態では、増幅試薬混合物は、凍結乾燥形態のpH感受性キレート化剤を含む。凍結乾燥されたpH感受性キレート化剤は、バッファー中で再構成することができる。これらの実施形態によれば、バッファーは温度感受性バッファーであってもよい。一部の実施形態では、溶液中のマグネシウムイオンは、pH感受性キレート化剤に可逆的に結合する。前述の実施形態のいずれかによれば、pH感受性キレート化剤が溶液中で遊離マグネシウムイオンを可逆的に結合するようにバッファーのpHが作動可能である。増幅試薬混合物は、pH感受性キレート化剤に可逆的に結合した溶液中のマグネシウムイオンを含むことが好ましく、溶液中のマグネシウムイオンは、凍結乾燥されたマグネシウム塩の温度感受性バッファー中での再構成から形成される。
【0051】
前述の方法の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅は、実質的に等温条件下で起こることができる。
【0052】
前述の方法の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドは、増幅試薬混合物と組み合わせる前に変性していない。
【0053】
前述の方法の任意の実施形態では、組み合わせるステップは、約0℃~約10℃、約10℃~約20℃、又は約20℃~約30℃の温度で実施される。組み合わせるステップは、約20℃~約30℃の温度であることが好ましい。
【0054】
前述の方法の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅は、反応混合物の温度が約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃になるまで起こらない。ポリヌクレオチドの増幅は、反応混合物の温度が約50℃~約60℃になるまで起こらないことが好ましい。
【0055】
前述の方法の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅は、第1の温度と第2の温度の間での反応混合物の温度の反復サイクルなしで起こる。
【0056】
前述の方法の任意の実施形態では、増幅試薬混合物の1つ又は複数の構成成分は、流体装置、カートリッジ又は側方流動装置での使用に適する容器で提供することができる。
【0057】
前述の方法の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅は、組み合わせるステップ(a)で形成される反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こることができる。
【0058】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は(c)増幅されたポリヌクレオチドを検出するステップをさらに含むことができる。ステップ(c)を含む本方法のさらなる実施形態では、増幅されたポリヌクレオチドを検出することは、組み合わせるステップ(a)で形成される反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こることができる。
【0059】
前述の方法の任意の実施形態では、反応混合物中の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は実質的に全ての二価イオンは、可溶形態である。さらなる実施形態では、二価イオンは、pH感受性キレート化剤に可逆的に結合してもよい。さらなる実施形態では、二価イオンは、遊離二価イオンを含むことができる。他の実施形態では、二価イオンは、結合した二価イオンと遊離二価イオンの両方を含むことができる。
【0060】
前述の方法の任意の実施形態では、溶液中の二価イオンは、沈殿物の溶解から形成されない。
【0061】
前述の方法の任意の実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅の前に、二価イオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない。
【0062】
ステップ(c)を含む前述の方法のさらなる実施形態では、増幅されたポリヌクレオチドの検出の前に、二価イオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない。
【0063】
前述の方法の任意の実施形態では、反応混合物は、沈殿形態で結合した二価イオンを含まない。
【0064】
別の態様では、本開示は、核酸増幅のための1つ又は複数の試薬及び溶液中でpH依存性の可逆的に結合したマグネシウムイオンを含む組成物を提供する。
【0065】
前述の組成物の任意の実施形態では、組成物は温度感受性バッファー及びpH感受性キレート化剤をさらに含むことができる。具体的な実施形態では、温度感受性バッファーは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含むことができる。他の具体的な実施形態では、pH感受性キレート化剤は、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸を含むことができる。組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及びエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸をさらに含むことが好ましい。
【0066】
前述の組成物の任意の実施形態では、温度感受性バッファーは、-0.04℃-1~-0.015℃-1のΔpKaを有することができる。
【0067】
前述の組成物の任意の実施形態では、核酸増幅のための1つ又は複数の試薬は、ニッキングエンドヌクレアーゼ、DNA若しくはRNAポリメラーゼ、逆転写酵素及び/又はリコンビナーゼを含むことができる。具体的な実施形態では、1つ又は複数の試薬は、ニッキングエンドヌクレアーゼ及びDNA又はRNAポリメラーゼを含む。他の実施形態では、1つ又は複数の試薬は、リコンビナーゼ及びDNA又はRNAポリメラーゼを含む。これらの実施形態は、逆転写酵素を任意選択で含むことができる。
【0068】
前述の組成物の任意の実施形態では、核酸増幅のための1つ又は複数の試薬は、凍結乾燥形態の1つ又は複数の構成成分を含むことができる。具体的な実施形態では、1つ又は複数の試薬は、凍結乾燥形態のマグネシウム塩を含むことができる。凍結乾燥されたマグネシウム塩は、バッファー中で再構成して、溶液中でマグネシウムイオンを形成することができる。他の実施形態では、1つ又は複数の試薬は、凍結乾燥形態のpH感受性キレート化剤を含むことができる。凍結乾燥されたpH感受性キレート化剤は、バッファー中で再構成することができる。これらの実施形態によれば、バッファーは温度感受性バッファーであってもよい。前述の組成物は、溶液中でpH依存性の可逆的に結合したマグネシウムイオンを含むことが好ましく、溶液中のマグネシウムイオンは、凍結乾燥されたマグネシウム塩の温度感受性バッファー中での再構成から形成される。
【0069】
前述の組成物の任意の実施形態では、溶液中のマグネシウムイオンは、沈殿物の溶解から形成されない。
【0070】
前述の組成物の任意の実施形態では、組成物は、沈殿形態で結合したマグネシウムイオンを含まない。
【0071】
前述の組成物の任意の実施形態では、1つ又は複数の構成成分は、流体装置、カートリッジ又は側方流動装置での使用に適する容器で提供される。
【0072】
別の態様では、本開示は、核酸増幅のための1つ又は複数の試薬、温度感受性バッファー、pH感受性キレート化剤及びマグネシウム塩を含む組成物を提供する。
【0073】
前述の組成物の任意の実施形態では、温度感受性バッファーは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含むことができる。
【0074】
前述の組成物の任意の実施形態では、温度感受性バッファーは、-0.04℃-1~-0.015℃-1のΔpKaを有することができる。
【0075】
前述の組成物の任意の実施形態では、pH感受性キレート化剤は、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸を含むことができる。
【0076】
組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及びエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸を含むことが好ましい。
【0077】
前述の組成物の任意の実施形態では、核酸増幅のための1つ又は複数の試薬は、ニッキングエンドヌクレアーゼ、DNA若しくはRNAポリメラーゼ、逆転写酵素及び/又はリコンビナーゼを含むことができる。具体的な実施形態では、1つ又は複数の試薬は、ニッキングエンドヌクレアーゼ及びDNA又はRNAポリメラーゼを含む。他の実施形態では、1つ又は複数の試薬は、リコンビナーゼ及びDNA又はRNAポリメラーゼを含む。これらの実施形態は、逆転写酵素を任意選択で含むことができる。
【0078】
前述の組成物の任意の実施形態では、1つ又は複数の試薬は、凍結乾燥形態の1つ又は複数の構成成分を含むことができる。具体的な実施形態では、1つ又は複数の試薬は、凍結乾燥形態のマグネシウム塩を含むことができる。凍結乾燥されたマグネシウム塩は、バッファー中で再構成して、溶液中でマグネシウムイオンを形成することができる。他の実施形態では、1つ又は複数の試薬は、凍結乾燥形態のpH感受性キレート化剤を含むことができる。凍結乾燥されたpH感受性キレート化剤は、バッファー中で再構成することができる。これらの実施形態によれば、バッファーは温度感受性バッファーであってもよい。前述の組成物は、温度感受性バッファーで再構成されて、溶液中でpH依存性の可逆的に結合したマグネシウムイオンを形成する凍結乾燥されたマグネシウム塩を含むことが好ましい。
【0079】
前述の組成物の任意の実施形態では、溶液中のマグネシウムイオンは、沈殿物の溶解から形成されない。
【0080】
前述の組成物の任意の実施形態では、組成物は、沈殿形態で結合したマグネシウムイオンを含まない。
【0081】
前述の組成物の任意の実施形態では、1つ又は複数の構成成分は、流体装置、カートリッジ又は側方流動装置での使用に適する容器で提供することができる。
【0082】
さらに別の態様では、本開示は、(a)酵素及び試薬混合物を組み合わせて、反応混合物を形成するステップであって、反応混合物が溶液中で可逆的に結合した二価イオンを含む、ステップと、(b)可逆的に結合した二価イオンを放出するように反応混合物のpHを調整し、それによって酵素を活性化させるステップとを含む方法を提供する。
【0083】
前述の方法の任意の実施形態では、二価イオンは、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、カドミウム及び鉛からなる群から選択される。
【0084】
前述の方法の任意の実施形態では、試薬混合物は、pH感受性キレート化剤を含むことができる。
【0085】
前述の方法の任意の実施形態では、試薬混合物は、温度感受性バッファーを含むことができる。
【0086】
前述の方法の任意の実施形態では、反応混合物のpHは、温度感受性バッファーのpHに従って調整してもよい。
【0087】
前述の方法の任意の実施形態では、反応混合物のpHは、第1の温度から第2の温度に反応混合物の温度を変化させることによって調整してもよい。
【0088】
前述の方法の実施形態では、酵素はDNA又はRNAポリメラーゼであってもよい。
【0089】
前述の方法の任意の実施形態では、酵素はニッキングエンドヌクレアーゼであってもよい。
【0090】
本発明の方法は、ポリヌクレオチドを、例えば実質的に等温であるか等温でない条件下で増幅する反応を含むことができる。例えば、増幅反応は、ニッキング及び伸長増幅反応(NEAR)又はリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を含むことができる。
【0091】
別の態様では、本開示は、ニッキングエンドヌクレアーゼ(例えば、N.BstNBI)、DNAポリメラーゼ(例えば、好熱性DNAポリメラーゼ)及びpH感受性キレート化剤(例えば、EGTA)を含む組成物(例えば、乾燥組成物)を特徴とする。一部の実施形態では、組成物は温度感受性バッファー(例えば、トリス)をさらに含む。実施形態では、組成物は逆転写酵素をさらに含む。一部の実施形態では、本発明の組成物又は方法は、(i)標的配列アンチセンス鎖の3’末端に相補的な3’末端の認識領域、ニッキング酵素結合部位、認識領域上流のニッキング部位及び前記ニッキング部位上流の安定化領域を有する核酸配列を含むフォワード鋳型、並びに/又は(ii)標的配列センス鎖(例えば、標的配列アンチセンス鎖の相補体)の3’末端に相補的な3’末端の認識領域、ニッキング酵素結合部位、認識領域上流のニッキング部位及び前記ニッキング部位上流の安定化領域を有するヌクレオチド配列を含むリバース鋳型を含むことができる。一部の実施形態では、組成物は、マグネシウム塩又はマグネシウムイオンをさらに含むことができる。
【0092】
一部の実施形態では、本発明の組成物又は方法は、例えば、Nt.BspQI、Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDI、Nb.BtsI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.BstNBI、Nt.CviPII、Nb.BpulOl、Nt.BpulOI及びN.BspD6Iからなる群から選択される、1つ又は複数のニッキング酵素を含むことができる。特定の実施形態では、ニッキング酵素はNt.NBst.NBI、Nb.BsmI及びNb.BsrDIからなる群から選択することができる。ニッキング酵素は、Nt.BstNBI又はN.BspD6Iであることが好ましい。当業者は、本明細書で具体的に指摘されるもの以外の様々なニッキング酵素を本発明の方法及び組成物で用いることができることを承知している。
【0093】
一部の実施形態では、本発明の組成物又は方法は、標的の認識領域に結合し、認識領域上流のニッキング酵素結合領域及びニッキング酵素結合領域上流の安定化領域も含有するオリゴヌクレオチドであってもよい、鋳型を含むことができる。「認識領域」は、標的配列上の核酸配列に相補的である、鋳型上の核酸配列であってもよい。標的配列上の認識領域は、鋳型に相補的でありそれに結合する、標的配列上のヌクレオチド配列であってもよい。「安定化領域」は、例えば、ニッキング及び/又は伸長反応のために分子を安定化するように設計されている、例えば約50%のGC含有量を有する核酸配列であってもよい。
【0094】
さらに別の態様では、本開示は、リコンビナーゼ(例えば、UvsX)、DNAポリメラーゼ及びpH感受性キレート化剤(例えば、EGTA)を含む組成物(例えば、乾燥組成物)を特徴とする。一部の実施形態では、組成物は、温度感受性バッファー(例えば、トリス)をさらに含む。本発明の組成物又は方法は、(i)一本鎖DNA結合タンパク質(例えば、gp32)、(ii)UvsY、及び(iii)密集剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))の中の1つ又は複数を含むことができる。一部の実施形態では、組成物は、マグネシウム塩又はマグネシウムイオンをさらに含むことができる。一部の実施形態では、本発明の組成物及び方法は、E.コリ(E.coli)recA及びT4バクテリオファージuvsXなどのリコンビナーゼ、ポリメラーゼ、例えばE.コリDNAポリメラーゼIクレノウ断片、Bstポリメラーゼ、ファイ-29ポリメラーゼ、バシルス・サブチリス(Bacillus subtilis)Pol I(Bsu)、PolV、並びにE.コリ及びT4からの一本鎖DNA結合タンパク質(例えばgp32タンパク質)など、工学的に作製され改変された類似体を含むことができることが好ましい。
【0095】
ポリヌクレオチド又は増幅されたポリヌクレオチド生成物に十分に相補的でありそれにハイブリダイズする標識プローブは、本発明の任意の態様又は実施形態で用いることができる。
【0096】
別の態様では、核酸増幅のためのポリヌクレオチド増幅試薬、例えばDNA若しくはRNAポリメラーゼ、ニッキング酵素、リコンビナーゼ及び/又は逆転写酵素、並びに、1つ又は複数の温度感受性pHバッファー、1つ又は複数のpH感受性キレート化剤、並びに、1つ又は複数の二価イオン、例えばマグネシウムイオン及び/又は1つ又は複数の二価金属塩、例えばマグネシウム塩若しくは硫酸マグネシウム、を含有する側方流動装置が提供される。一部の実施形態では、これらの構成成分の1つ又は複数は凍結乾燥してもよい。
【0097】
別の態様では、核酸増幅のためのポリヌクレオチド増幅試薬、例えばDNA若しくはRNAポリメラーゼ、ニッキング酵素、リコンビナーゼ及び/又は逆転写酵素、並びに、1つ又は複数の温度感受性pHバッファー、1つ又は複数のpH感受性キレート化剤、並びに、1つ又は複数の二価イオン、例えばマグネシウムイオン及び/又は1つ又は複数の二価金属塩、例えばマグネシウム塩若しくは硫酸マグネシウム、を含有するマイクロ流体装置が提供される。一部の実施形態では、これらの構成成分の1つ又は複数は凍結乾燥してもよい。
【0098】
別の態様では、核酸増幅のためのポリヌクレオチド増幅試薬、例えばDNA若しくはRNAポリメラーゼ、ニッキング酵素、リコンビナーゼ及び/又は逆転写酵素、並びに、1つ又は複数の温度感受性pHバッファー、1つ又は複数のpH感受性キレート化剤、並びに、1つ又は複数の二価イオン、例えばマグネシウムイオン及び/又は1つ又は複数の二価金属塩、例えばマグネシウム塩若しくは硫酸マグネシウム、を含有するカートリッジが提供される。一部の実施形態では、これらの構成成分の1つ又は複数は凍結乾燥してもよい。
【0099】
別の態様では、核酸増幅のためのポリヌクレオチド増幅試薬、例えばDNA若しくはRNAポリメラーゼ、ニッキング酵素、リコンビナーゼ及び/又は逆転写酵素、並びに、1つ又は複数の温度感受性pHバッファー、1つ又は複数のpH感受性キレート化剤、並びに、1つ又は複数の二価イオン、例えばマグネシウムイオン及び/又は1つ又は複数の二価金属塩、例えばマグネシウム塩若しくは硫酸マグネシウム、を含有する試料調製及び転移装置が提供される。一部の実施形態では、これらの構成成分の1つ又は複数は凍結乾燥してもよい。
【0100】
本明細書に記載される方法及び組成物は、反応を反応温度まで予熱する必要性なしで、核酸増幅反応を可能にすることができる。それらは、予熱なしで核酸増幅反応の選択性、感受性及び再現性の増加を可能にすることもできる。
【0101】
別の態様では、本開示は、
(a)標的を含む試料並びに(b)結合剤、結合剤によって結合したイオン、バッファー、及びイオンが結合剤によって結合しているときにイオンの存在下で第1の活性を有し、イオンが結合剤から遊離しているときにイオンの存在下で第2の異なる活性を有する少なくとも1つの構成成分を含む増幅試薬を含む試薬を含む混合物を形成するステップと、
第1の温度から第2の温度まで混合物の温度を増加させることによって、増幅試薬の少なくとも1つの構成成分の活性を第1の活性から第2の活性に変化させるのに十分な量のイオンを結合剤から放出するステップと
を含む方法を提供する。
【0102】
前述の方法の任意の実施形態では、試料は、ヒト又は動物からの試料、例えば、液体、例えば血液、血漿、血清、痰、鼻スワブ、膣スワブ、唾液、粘液又は髄液であってもよい。
【0103】
前述の方法の任意の実施形態では、標的は、ポリヌクレオチド、例えば細菌又はウイルスなどの病原体からのポリヌクレオチドであってもよい。試料中に存在する標的は、二本鎖ポリヌクレオチド又は一本鎖ポリヌクレオチドであってもよい。
【0104】
標的が二本鎖ポリヌクレオチドである前述の方法の任意の実施形態では、二本鎖ポリヌクレオチドの約50%、約35%、約25%、約15%、約7.5%、約5%又は約2.5%を超えて完全に変性させるのに十分な温度までポリヌクレオチドの温度を上げることなく、本方法を実施することができる。例えば、二本鎖ポリヌクレオチドの事実上全てがアニールされたままである温度を超えて温度を上げることなく、本方法を実施することができる。
【0105】
前述の方法の任意の実施形態では、少なくとも1つの構成成分の活性が第2の状態にある間、増幅試薬は標的を増幅することができる。増幅するステップは、混合物を形成するステップの後に標的の増幅及び/又は検出に関与するさらなる試薬と混合物を組み合わせずに実施することができる。
【0106】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は標的の存在及び/又は量を検出することをさらに含むことができる。検出することは、少なくとも約106倍、例えば少なくとも約106倍、少なくとも約107倍、少なくとも約108倍、少なくとも約109倍、少なくとも約1010倍、少なくとも約1011倍、又は少なくとも約1012倍標的の量を増幅した後に実施することができる。
【0107】
増幅することを含む前述の方法の任意の実施形態では、温度が約第2の温度にあるとき、例えば第2の温度から約15℃以内、第2の温度から約10℃以内、第2の温度から約7.5℃以内、第2の温度から約5℃以内、第2の温度から約2.5℃以内、又は事実上第2の温度のとき、増幅の総量の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は事実上全てを実施することができる。
【0108】
前述の方法の任意の実施形態では、混合物を形成するステップは、試料と接触するときに凍結乾燥形態である試薬と試料を接触させることを含むことができる。
【0109】
検出することを含む前述の方法の任意の実施形態では、検出するステップは、試料と試薬を接触させてから約25分未満、約20分未満又は約17.5分未満で実施することができる。前述の方法の任意の実施形態では、混合物を形成するステップは、混合物に隣接する周囲温度から約30℃、約25℃、約20℃、約15℃、約10℃、約5℃を超えてより高くに混合物の温度を上昇させることなく、実施することができる。例えば、混合物を形成するステップは、試薬が試薬に隣接する周囲温度程度で実施することができる。
【0110】
前述の方法の任意の実施形態では、混合物を形成するステップは、形成するステップの直前に試薬の温度を試薬の温度より高く実質的に上昇させることなく実施することができる。形成するステップの直前の試薬の温度は、試薬を囲む周囲温度とほぼ同じであってもよい。
【0111】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、混合物の温度を第1の温度より高く上昇させた後の各場合に、混合物を、(a)標的の増幅及び/若しくは検出に関与するさらなる試薬、又は(b)任意のさらなる試薬と接触させることなく実施することができる。
【0112】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、イオンの量を放出するステップの後の各場合に、(a)標的の増幅及び/若しくは検出に関与するさらなる試薬、又は(b)任意のさらなる試薬を加えずに実施することができる。
【0113】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、少なくとも1つの構成成分を第2の状態から第1の状態に戻すことなく実施することができる。
【0114】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、放出されたイオンの量の約25%、約15%、約10%又は約5%を超えて同時に再結合することなく実施することができる。
【0115】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、増幅試薬の少なくとも1つの構成成分の活性を第1の活性から第2の活性に変化させるのに十分なイオンの量を含む不溶性沈殿物と試料及び/又は標的とを接触させることなく実施することができる。
【0116】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、増幅試薬の少なくとも1つの構成成分の活性を第1の活性から第2の活性に変化させるのに十分なイオンの量を含む不溶性沈殿物と試料及び/又は標的とを接触させ、その後沈殿物を溶解することなく実施することができる。
【0117】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、混合物から放出されたイオンの量の約25%、約15%、約10%、約5%、約2.5%を超えて沈殿させることなく実施することができる。
【0118】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、増幅試薬の少なくとも1つの構成成分の活性を第2の活性から第1の活性に変化させるのに十分なイオンの量を沈殿させることなく実施することができる。
【0119】
前述の方法の任意の実施形態では、第1の温度は、混合物に隣接する周囲温度であってもよい。
【0120】
前述の方法の任意の実施形態では、80℃より高い温度、70℃より高い温度、65℃より高い温度又は60℃より高い温度まで混合物の温度を上げることなく第1の方法を実施することができる。
【0121】
前述の方法の任意の実施形態では、第1の温度は約40℃未満、約35℃未満、約30℃未満、又は約27.5℃未満であってもよい。
【0122】
前述の方法の任意の実施形態では、第2の温度は、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃又は少なくとも約55℃であってもよい。
【0123】
前述の方法の任意の実施形態では、第2の温度は、約75℃未満、約67.5℃未満、約62.5℃未満、約60℃未満又は約56.5℃以下であってもよい。
【0124】
検出することを含む前述の方法の任意の実施形態では、温度が約第2の温度にあるとき、例えば第2の温度から約15℃以内、第2の温度から約10℃以内、第2の温度から約7.5℃以内、第2の温度から約5℃以内、第2の温度から約2.5℃以内、又は事実上同じ温度のとき、検出を実施することができる。
【0125】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、第1及び第2の温度の間で混合物の温度を循環させずに実施することができる。
【0126】
前述の方法の任意の実施形態では、本方法は、混合物に存在する二本鎖ポリヌクレオチドが実質的にアニールするより低い温度と、混合物に存在する二本鎖ポリヌクレオチドが実質的に変性する第2の温度の間で混合物の温度を循環させずに実施することができる。
【0127】
前述の方法の任意の実施形態では、形成するステップ及び組み合わせるステップは、ハウジング内の流体ネットワークの中で実施することができる。ハウジングは、持ち運びのできるもの、例えば携帯できるものであってもよい。ハウジングはその中に保存される試薬を含む使い捨てハウジングであってもよく、第1の方法は試料をハウジングの流体ネットワークに導入することを含むことができる。ハウジングはバッテリーなどの内部電源、及びバッテリーによって電力を供給され、混合物の温度を第2の温度に上げるのに十分なヒーターを含むことができる。
【0128】
前述の方法の任意の実施形態では、試薬は、混合物を形成する前に凍結乾燥してもよい。
【0129】
前述の方法の任意の実施形態では、結合剤はpH感受性結合剤であってもよく、バッファーは温度感受性バッファーであってもよく、第1の温度から第2の温度に混合物の温度を上昇させることは、混合物のpHが第1のpHから第2の異なるpHに変化するようにバッファーの緩衝能力を変化させ、結合剤は第2のpHでイオンの十分な量を放出する。
【0130】
前述の方法の任意の実施形態では、少なくとも1つの構成成分は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ニッキングエンドヌクレアーゼ又はリコンビナーゼなどの酵素であってもよい。例えば、酵素は、Nt.BstNBI又はN.BspD6Iなどのニッキング酵素であってもよい。
【0131】
前述の方法の任意の実施形態では、結合剤は、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸、EGTA誘導体及びEDTA誘導体などのキレーターであってもよい。前述の方法の実施形態のいずれでも、イオンは、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、カドミウム及び鉛であってもよい。前述の方法の実施形態のいずれでも、バッファーはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンであってもよい。前述の方法の実施形態のいずれでも、増幅試薬は、NEARによって標的を増幅するのに十分な試薬の量を含むことができる。例えば、キレーターはエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸であってもよく、イオンはマグネシウムであってもよく、バッファーはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンであってもよく、少なくとも1つの構成成分はDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、Nt.BstNBI又はN.BspD6Iであってもよく、増幅試薬はNEARによって標的を増幅するのに十分な試薬の量を含むことができる。
【0132】
前述の方法の任意の実施形態では、少なくとも1つの構成成分の活性は、イオンの量が結合剤によって結合しているときより放出されたイオンの量の存在下で少なくとも約10倍高く、イオンの量が結合剤によって結合しているときより放出されたイオンの量の存在下で少なくとも約20倍高く、イオンの量が結合剤によって結合しているときより放出されたイオンの量の存在下で少なくとも約50倍高く、又はイオンの量が結合剤によって結合しているときより放出されたイオンの量の存在下で少なくとも約100倍高い。活性は、標的の増幅に関するものであってもよい。
【0133】
標的が増幅される前述の方法の任意の実施形態では、増幅率は、イオンの量が結合剤によって結合した場合より放出されたイオンの量の存在下で少なくとも約10倍高くてもよく、イオンの量が結合剤によって結合した場合より放出されたイオンの量の存在下で少なくとも約20倍高くてもよく、イオンの量が結合剤によって結合した場合より放出されたイオンの量の存在下で少なくとも約50倍高くてもよく、又はイオンの量が結合剤によって結合した場合より放出されたイオンの量の存在下で少なくとも約100倍高くてもよい。
【0134】
標的が増幅される前述の方法の任意の実施形態では、増幅率は、第1の構成成分が第1の状態にあったときと比較して少なくとも1つの構成成分が第2の状態にあるときに少なくとも約10倍高くてもよく、第1の構成成分が第1の状態にあったときと比較して少なくとも1つの構成成分が第2の状態にあるときに少なくとも約20倍高くてもよく、第1の構成成分が第1の状態にあったときと比較して少なくとも1つの構成成分が第2の状態にあるときに少なくとも約50倍高くてもよく、第1の構成成分が第1の状態にあったときと比較して少なくとも1つの構成成分が第2の状態にあるときに少なくとも約100倍高くてもよい。
【0135】
増幅することを含む前述の方法の任意の実施形態では、増幅の総量の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は事実上全ては、混合物に存在する二本鎖ポリヌクレオチドの50%、30%、20%、10%又は5%を超えて完全に変性する温度まで混合物の温度を上げずに実施することができる。例えば、第1の方法は、混合物に存在する二本鎖ポリヌクレオチドの50%、30%、20%、10%又は5%を超えて最初に完全に変性させずに実施される増幅の総量の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は事実上全てを増幅することによって実施することができる。
【0136】
例えば「XからYの間」のような本明細書に開示される全ての範囲は、その端点を含む。
【0137】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、付随する図及び以下の記載に示される。本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の記載及び図、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【
図1】鋳型なし(NTC)、100コピーの鋳型(100cp)、鋳型なしでEGTAあり(NTC+EGTA)及び100コピーの鋳型とEGTA(100cp+EGTA)を含有するNEAR反応の蛍光を表すグラフである。
【
図2】全ての場合EGTAを有し、鋳型なし(ntc)、20コピーの鋳型(20cp)及び200コピーの鋳型(200cp)を含有するNEAR反応の蛍光を表すグラフである。実線はRox標識分子ビーコン蛍光データであり、破線はSyBr II蛍光データである。
【0139】
[詳細な説明]
この開示は、反応混合物中の二価イオンを可逆的に結合することによって、二価イオン補因子を必要とする酵素の活性を制御することができるという発見に少なくとも一部基づく。例示的な方法では、反応混合物は、酵素及び試薬混合物を組み合わせることによって調製され、反応混合物は溶液中で可逆的に結合した二価イオンを含む。次に、反応混合物のpHを調整して可逆的に結合した二価イオンを放出し、それによって酵素を活性化させる。
【0140】
本開示は、二価イオン補因子を必要とする酵素が関わる任意の反応に適用できる。酵素に必須である二価イオン補因子には、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、カドミウム及び鉛が含まれる。
【0141】
例示的な適用は、反応に関わる少なくとも1つの構成成分(例えば、酵素又は二価イオン補因子)が、反応混合物の温度が適当な温度に到達するまで反応混合物から分離されているか、不活性状態に保たれる、いわゆる「ホットスタート」反応にある。
【0142】
この開示は、温度感受性バッファー及びpH感受性キレート化剤を含む新規の「ホットスタート」核酸増幅反応を可能にする。例示的な方法では、反応混合物は、反応の1つ又は複数の酵素構成成分のための補因子として必要とされる遊離マグネシウムイオンをpH感受性キレート化剤が可逆的に結合するように温度感受性バッファーのpHが作動可能であり、反応の進行が阻害される第1の温度(例えば、室温)で調製される。次に、反応混合物の温度は、結合した二価のマグネシウムイオンをpH感受性キレート化剤から放出し、反応が進行するように温度感受性バッファーのpHが作動可能である第2の温度に調整される。
本開示を考慮すると、当業者は、用いる具体的な核酸増幅方法の特性に基づいて、第1の温度、第2の温度、温度感受性バッファーの条件、及びpH感受性キレート化剤を選択することができる。高い反応温度が必要とされる場合は、用いる酵素は好熱種(例えば、テルムス・アカティクス(Thermus aquaticus))から取り出すことができる。
【0143】
例えば、ニッキング及び伸長増幅反応(NEAR)は、56℃の温度で作動することができる。反応混合物は通常室温で調製され、標的核酸、オリゴヌクレオチド、DNAポリメラーゼ、ニッキングエンドヌクレアーゼ、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンバッファー(pH8)、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸(EGTA)、1つ又は複数の塩(例えば、1つ又は複数の一価及び/又は二価のマグネシウム塩)及びdNTPを含む。このpHで、EGTAはマグネシウムイオンに比較的強く結合し、このように、ニッキング及びポリメラーゼ酵素へのマグネシウムイオンの結合を阻止する。一般に、マグネシウムイオンがない場合、反応で酵素は酵素活性を示さず、反応は効果的に停止させられる。温度を56℃に上昇させると、その温度で温度感受性バッファーのpHはpH7.4未満に低下する。このpHで、マグネシウムイオンへのEGTAの有効な結合は減少し、EGTA-マグネシウム錯体からのマグネシウムイオンの解離をもたらす。マグネシウムイオンはニッキング及びポリメラーゼ酵素と自由に相互作用してホロ酵素を形成し、増幅反応が進行する。
【0144】
本明細書で用いられるバッファー又は緩衝薬剤は、溶液のpHを調節するために用いることができる弱い酸又は塩基である。核酸増幅反応に一般に適合するバッファーを含むバッファーは、当技術分野で周知である。緩衝される溶液のpHが温度によって予想通り変わるように、多くのバッファーのpHは溶液の温度に一部依存する。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)バッファーの温度依存性を、表1に示す。
【0145】
【0146】
例示的な市販バッファー3-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(TAPS)、グリシルグリシン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、トリス、グリシンアミド、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタン-スルホン酸(HEPES)、2{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)の特性を表2に示す。
【0147】
【0148】
一部の実施形態では、温度感受性バッファーには、例えばトリシン、グリシンアミド、ビシン、グリシルグリシン、TES(トリス-ヒドロキシメチル)メチル-アミノエタンスルホン酸)、ACES((N-2-アセトアミド-2-アミノエタンスルホン酸)、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの1つ又は複数が含まれる。
【0149】
一部の実施形態では、第2の温度での温度感受性バッファーのpKaは、第1の温度での温度感受性バッファーのpKaより少なくとも1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5又は0.4低い。一部の実施形態では、第2の温度での反応混合物のpHは、第1の温度での反応混合物のpHより少なくとも1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5又は0.4低い。
【0150】
一部の実施形態では、温度感受性バッファーは、-0.010℃-1以下、例えば-0.015℃-1以下、-0.020℃-1以下、-0.025℃-1以下、又は-0.030℃-1以下のΔpKa(例えば、第1及び第2の温度の間)を有する。一部の実施形態では、温度感受性バッファーは、-0.040℃-1と-0.010℃-1、-0.015℃-1、-0.020℃-1、-0.025℃-1、及び-0.030℃-1のいずれか1つの間のΔpKa(例えば、第1及び第2の温度の間)を有する。
【0151】
pH感受性キレート化剤は、本明細書で用いるように、二価イオンが、例えば酵素の補因子として化学反応に関与することができないように、二価イオン、例えばマグネシウムイオンと可溶性錯体を形成する化学物質である。Maguireら、2002年、Biometals、15巻:203~210頁は、マグネシウム生化学のレビューを提供する。マグネシウムイオンに結合する多くのpH感受性キレート化剤は、当技術分野で公知である。pH感受性キレート化剤の例示的なクラスには、ポリアミノカルボン酸(例えば、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、NTA誘導体、イミノ二酢酸(IDA)、IDA誘導体、クエン酸、シュウ酸、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)及びジエチルトリアミン五酢酸(DTPA))、アゾベンゼン(例えば、Momotakeら、2003年、Tetrahedron Lett.、44巻:7277~80頁を参照)、及びアルコキシ酢酸(例えば、Starekら、2006年、Acta Pol.Pharm.、63巻:89~94頁を参照)が含まれる。pH感受性キレート化剤の非限定例が、本明細書に記載される。マグネシウムイオンへのほとんどのpH感受性キレート化剤の結合は、溶液のpHに依存する。pHが低下するに従い、キレート化剤への結合について、水素イオンは、マグネシウムイオンとの競合に成功する(例えば、pH依存性キレート化剤及びマグネシウム錯体の有効な安定度定数又は条件安定度定数はpHの低下に従い低下する)。
【0152】
一部の実施形態では、pH依存性キレート化剤は、一座配位pH依存性キレート化剤(例えば、本明細書に記載されるか当技術分野で公知である一座配位pH依存性キレート化剤のいずれか)である。一部の実施形態では、一座配位pH感受性キレート化剤は、クエン酸である。
【0153】
一部の実施形態では、pH依存性キレート化剤は、多座配位pH依存性キレート化剤(例えば、本明細書に記載されるか当技術分野で公知である多座配位pH依存性キレート化剤のいずれか)である。多座配位pH感受性キレート化剤は、類似した一座配位pH感受性キレート化剤によって形成されるものより安定したマグネシウム錯体を通常形成し、複数のpH感受性官能基の存在のためによりpH依存性である。これらの官能基は、pHが変化するに従い、異なるプロトン化状態を形成する。その結果、有効な安定度定数又は条件安定度定数は、pHの低下に従い低下する。一部の実施形態では、多座配位pH感受性キレート化剤は、1つ又は複数(例えば、少なくとも2つ、3つ又は4つ)のカルボキシレート及び/又はアミノ官能基を含有する(例えば、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸(EGTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EGTA誘導体、EDTA誘導体、N-メチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、NTA誘導体、DL-2-(2-メチルチオエチル)ニトリロ酢酸、(2-ヒドロキシトリメチレン)ジニトリロ四酢酸、DL-1-エチルエチレンジニトリロ四酢酸N,N-ジアミド、DL-1-メチルエチレンジニトリロ四酢酸N,N-ジアミド、エチレンジイミノジプロパン二酸(EDDM)、エチレンジイミノジ-2-プロパン酸、エチレンジイミノ二酢酸(EDDA)、N-(2-ピリジルメチル)イミノ二酢酸、1,3-フェニレンジニトリロ四酢酸、エチレンジニトリロテトラ(3-プロパン酸)、イミノ二酢酸(IDA)、IDA誘導体、シュウ酸、o,p-EDDHA(エチレンジアミン-N-(o-ヒドロキシフェニル酢酸)-N-(p-ヒドロキシフェニル酢酸)、o,o-EDDHA及びp,p-EDDHA)。
【0154】
表3は、一部の非限定的な例示的pH感受性キレート化剤のマグネシウム-リガンド安定度定数及び酸解離定数の対数を示す。
【0155】
【0156】
一部の実施形態では、マグネシウムイオン及びpH感受性キレート化剤の錯体の安定度定数の対数は、1~9(例えば、2~9、2~6及び3~6)である。
【0157】
一部の実施形態では、第1の温度は、約0℃~約30℃(例えば、約10℃~約30℃、約0℃~約5℃、約5℃~約10℃、約10℃~約15℃、約15℃~約20℃、約20℃~約25℃、又は約25℃~約30℃)である。一部の実施形態では、第2の温度は、約30℃~約100℃(例えば、約30℃~約40℃、約40℃~約50℃、約50℃~約60℃、約60℃~約70℃、約70℃~約80℃、約80℃~約90℃、又は約90℃~約100℃)である。
【0158】
本開示を考慮すれば、当業者は、核酸増幅反応で1つ又は複数の酵素反応が第1の温度で阻害され、第2の温度で許容されるように、第1の温度及び第2の温度でマグネシウムイオン結合の所望量を提供するために、1つ又は複数の温度感受性バッファー及び1つ又は複数のpH依存性キレート化剤の対を選択することができる。pH及びpH依存性キレート化剤濃度などの因子に基づくマグネシウムイオン結合及び遊離マグネシウムイオン濃度の予測を助けるアルゴリズムは、例えば、Schoenmakersら、1992年、Biotechniques、12巻:870~874頁及びFujishiroら、1995年、Comput.Biol.Med.、25巻:61~80頁に記載される。そのようなアルゴリズムのバージョンは、www.ru.nl/organphy/chelator/Chelmain.html及びmaxchelator.stanford.eduで得ることができる。
【0159】
一部の実施形態では、キレート化剤濃度対マグネシウムイオン濃度の比は、約0.1~10(例えば、約0.1~0.5、約0.2~1、約0.5~2、約1~5又は約2~10)である。
【0160】
一部の実施形態では、第1の温度での遊離マグネシウムイオンの濃度は、約0~約10mM(例えば、約0~約0.1mM、約0~約0.2mM、約0~約0.5mM、約0~約1mM、約0~約2mM、又は約0~約5mM)である。
【0161】
一部の実施形態では、第2の温度での遊離マグネシウムイオンの濃度は、約5~約50mM(例えば、約5~約10mM、約5~約20mM、約10~約20mM、又は約10~約50mM)である。
【0162】
多数の等温核酸増幅技術が公知であり、その例には、例えば、ニッキング及び伸長増幅反応(NEAR)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、核酸の等温及びキメラプライマー開始増幅(ICAN)、転写媒介増幅(TMA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、シグナル媒介RNA増幅技術(SMART)、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCAT)、リガーゼ増幅反応、DNAのループ媒介等温増幅(LAMP)、等温多置換増幅、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、単一プライマー等温増幅(SPIA)及び環状ヘリカーゼ依存性増幅が含まれる。ポリメラーゼ連鎖反応及びその変種を用いることもできる。これらの非等温反応は、典型的には、核酸鎖の分離を引き起こすために熱循環を用いる。等温及び非等温増幅方法は、例えば、Gillら、Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 2008年27巻:224~243頁;Mukaiら、2007年、J.Biochem.142巻:273~281頁;Van Nessら、PNAS 2003年100巻:4504~4509頁;Tanら、Anal.Chem.2005年、77巻:7984~7992頁;Lizardら、Nature Biotech.1998年、6巻:1197~1202頁;Moriら、J.Infect.Chemother.2009年15巻:62~69頁;Notomiら、NAR 2000年、28巻:e63頁;及びKurnら、Clin.Chem.2005年、51巻:10号、1973~1981頁に議論される。これらの一般的増幅技術のための他の参考文献には、例えば、米国特許第7,112,423号;第5,455,166号;第5,712,124号;第5,744,311号;第5,916,779号;第5,556,751号;第5,733,733号;第5,834,202号;第5,354,668号;第5,591,609号;第5,614,389号;及び第5,942,391号;並びに米国特許公開番号US20030082590;US20030138800;US20040058378;US20060154286;US20090081670及びUS20090017453が含まれる。上記文書の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0163】
上の増幅反応は、典型的には、補因子として二価のマグネシウムイオンを必要とする1つ又は複数の酵素、例えば、DNAポリメラーゼ、II型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、IIS型又はニッキングエンドヌクレアーゼ)、リコンビナーゼ(例えば、RecA、UvsX)、逆転写酵素、DNA依存性RNAポリメラーゼ、RNA依存性RNAポリメラーゼ、リボヌクレアーゼH酵素又はDNAリガーゼを用いる。したがって、pH依存性キレート化剤の作用によって遊離マグネシウムイオンが低減されるとき、反応を阻害することができる。
【0164】
この開示により提供される増幅反応には、実質的に等温条件下で起こる反応が含まれる。この開示には、増幅試薬混合物と組み合わせる前にポリヌクレオチドが変性していない増幅反応も含まれる。さらに、第1の温度と第2の温度の間での反応混合物の温度の反復サイクルなしでポリヌクレオチドが増幅される、増幅反応が提供される。
【0165】
ポリヌクレオチドの増幅は、ポリヌクレオチドを増幅試薬混合物と組み合わせることから形成される初期反応混合物にさらなる試薬を加えずに起こることができる。初期反応混合物にさらなる試薬を加えない一部の場合にも、増幅されたポリヌクレオチドを検出することができる。
【0166】
NEARは、核酸の等温増幅のための1つの例示的な方法である。NEAR反応は、短い標的配列を増幅するために、鎖置換DNAポリメラーゼと組み合わせてニッキングエンドヌクレアーゼ(ニッキング制限エンドヌクレアーゼ又はニッキング酵素としても知られる)を用いる。NEAR法は、例えば、US2009/0017453及びUS2009/0081670に開示され、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0167】
RPAは、核酸の等温増幅のための1つの例示的な方法である。RPAは、オリゴヌクレオチドプライマーに二重鎖DNAの相同配列と対を形成させることが可能であるリコンビナーゼとして知られる酵素を採用する。この方法では、DNA合成は、標的の二本鎖DNAの規定の点に向けられる。2つの遺伝子特異的プライマーを用いると、標的配列が存在する場合には、指数関数的な増幅反応が開始される。反応は急速に進行し、わずかな標的コピーから検出可能なレベルまで特異的増幅をもたらす。RPA法は、例えば、US7,270,981;US7,399,590;US7,777,958;US7,435,561;US2009/0029421及びWO2010/141940に開示され、その全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
等温増幅反応の構成成分は、溶液及び/又は乾燥(例えば、凍結乾燥)形態で提供することができる。構成成分の1つ又は複数が乾燥形態で提供される場合は、再懸濁又は再構成バッファー(例えば、温度感受性バッファー)を提供することもできる。
【0169】
増幅反応の特定のタイプに基づいて、反応混合物は、バッファー(例えば、温度感受性バッファー)、塩、ヌクレオチド、及び反応が進行するために必要な他の構成成分を含有することができる。
【0170】
マグネシウムは、塩、例えば硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムとして提供することができる。例えば塩の形態のマグネシウムは、溶液及び/又は乾燥(例えば、凍結乾燥)形態で提供することもできる。バッファーから再構成されると、凍結乾燥されたマグネシウム塩は解離して、酵素補因子として作用するように利用できる遊離マグネシウムイオン(Mg++)を形成する。
【0171】
一部の実施形態では、反応混合物中の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は実質的に全ての二価イオン、例えばマグネシウムイオンは、可溶形態である。溶解した二価イオンは、遊離であるかpH感受性キレート化剤に可逆的に結合してもよい。
【0172】
溶液中の一部の二価イオン、例えば溶液中のマグネシウムイオンは、酸、例えばリン酸を溶液に加えると固体として沈殿することができることが知られている。この沈殿反応は、PCRのために必要とされるマグネシウムイオンを室温で隔離するために、「ホットスタート」PCRで一般的に用いられる。PCRの初期化ステップで温度を95℃以上に上げると、マグネシウム沈殿物は溶解してマグネシウムイオンを遊離させ、酵素の補因子として作用させる。
【0173】
本発明の方法及び組成物のいずれにおいても、溶液中の二価イオン(例えばマグネシウムイオン)は、酸性条件下でマグネシウムイオンの沈殿から形成されるマグネシウム沈殿物などの沈殿物の溶解から形成されない。本発明の方法及び組成物の任意の実施形態では、反応混合物は、沈殿形態で結合した二価イオンを含まない。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドの増幅の前に、二価イオンの20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満が沈殿物を形成するか又は実質的にいずれも沈殿物を形成しない。本発明のために、乾燥又は凍結乾燥形態で提供される試薬混合物の構成成分、例えば凍結乾燥形態で提供されるマグネシウム塩は沈殿物でなく、凍結乾燥形態は沈殿形態でない。
【0174】
標的核酸は、哺乳動物(例えば、ヒト)、植物、真菌(例えば、酵母)、原生動物、細菌又はウイルスに存在する核酸であってもよい。例えば、標的核酸は、対象の生物体のゲノム(例えば、染色体)又は染色体外核酸に存在してもよい。一部の実施形態では、標的核酸は、RNA、例えばmRNAである。一部の実施形態では、標的核酸は、DNA(例えば二本鎖DNA)である。特定の実施形態では、標的核酸は、対象の生物体に特異的であり、すなわち、標的核酸は、他の生物体に見出されないか、対象の生物体に類似した生物体に見出されない。
【0175】
標的核酸は、細菌、例えばグラム陽性菌又はグラム陰性菌に存在してもよい。非限定的な例示的細菌種には、アシネトバクター属(Acinetobacter)の種のATCC5459株、アシネトバクター・カルコアセチクス(Acinetobacter calcoaceticus)、エロコッカス・ビリダンス(Aerococcus viridans)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ボルデテラ・パータスシス(Bordetella pertussis)、ボルデテラ・パラパータスシス(Bordetella parapertussis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クロストリジウム・ディフィシール(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、シトロバクター・フロインジ(Citrobacter freundii)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス・ガリナルム(Enterococcus gallinarum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロバクター・フェカリス(Enterobacter faecalis)(例えば、ATCC29212)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)(例えば、ATCC25927)、ガードネレラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)(例えば、ATCC49247)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(例えば、ATCC33495)、リステリア・モノシトゲネス(Listeria monocytogenes)(例えば、ATCC7648)、ミクロコッカス属(Micrococcus)の種のATCC14396株、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、マイコバクテリウム・カンサシー(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・ゴルドネ(Mycobacterium gordonae)、マイコバクテリウム・フォーツイツム(Mycobacterium fortuitum)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、ナイセリア・メニンギティス(Neisseria meningitis)(例えば、ATCC6250)、ナイセリア・ゴノロエ(Neisseria gonorrhoeae)、オリゲラ・ウレスラリス(Oligella urethralis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(例えば、ATCC10145)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、サルモネラ属(Salmonella)の種のATCC31194株、サルモネラ・タイフィムリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)(例えば、ATCC8101)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(例えば、ATCC25923)、スタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)(例えば、ATCC12228)、スタフィロコッカス・ルグヅネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)(例えば、ATCC49619)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)(例えば、ATCC13813)、トレポネーマ・パリヅマ(Treponema palliduma)、ビリダンス連鎖球菌群(例えば、ATCC10556)、バシラス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)、フランキセラ・フィロミラジア(Francisella philomiragia)(GAO1-2810)、フランキセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)(LVSB)、エルシニア・シュードツベルクロシス(Yersinia pseudotuberculosis)(PB1/+)、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)、O:9血清型、及びエルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)(P14-)が含まれる。一部の実施形態では、標的核酸は、アシネトバクター(Acinetobacter)、エロコッカス(Aerococcus)、バクテロイデス(Bacteroides)、ボルデテラ(Bordetella)、カンピロバクター(Campylobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、クラミジア(Chlamydia)、シトロバクター(Citrobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エシェリヒア(Escherichia)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ヘモフィルス(Haemophilus)、クレブシエラ(Klebsiella)、レジオネラ(Legionella)、リステリア(Listeria)、ミクロコッカス(Micrococcus)、モビリンカス(Mobilincus)、モラクセラ(Moraxella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ナイセリア(Neisseria)、オリゲラ(Oligella)、パスツレラ(Pasteurella)、プレボテラ(Prevotella)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、シュードモナス(Pseudomonas)、プロピオニバクテリウム(Propionibacteriumu)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トレポネーマ(Treponema)、バシラス(Bacillus)、フランキセラ(Francisella)又はエルシニア(Yersinia)から選択される細菌属の種に存在する。一部の実施形態では、標的核酸は、A群連鎖球菌又はB群連鎖球菌に見出される。
【0176】
例示的なクラミジアの標的核酸には、クラミジアの潜在プラスミドで見出される配列が含まれる。
【0177】
例示的なM.ツベルクロシス(M.tuberculosis)の標的核酸には、IS6110(US5,731,150を参照)及び/又はIS1081(例えば、Bahadorら、2005年、Res.J.Agr.Biol.Sci.、1巻:142~145頁を参照)で見出される配列が含まれる。
【0178】
例示的なN.ゴノレア(N.gonorrhea)の標的核酸には、NGO0469(例えば、Piekarowiczら、2007年、BMC Microbiol.、7巻:66頁を参照)及びNGO0470で見出される配列が含まれる。
【0179】
例示的なA群連鎖球菌の標的核酸には、Spy1258(例えば、Liuら、2005年、Res.Microbiol.、156巻:564~567頁を参照)、Spy0193、lytA、psaA及びply(米国特許出願公開第2010/0234245号を参照)で見出される配列が含まれる。
【0180】
例示的なB群連鎖球菌の標的核酸には、cfb遺伝子(例えば、Podbielskiら、1994年、Med.Microbiol.Immunol.、183巻:239~256頁を参照)で見出される配列が含まれる。
【0181】
一部の実施形態では、標的核酸は、ウイルスの核酸である。例えば、ウイルスの核酸は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス又はインフルエンザC型ウイルス)又はデング熱ウイルスで見出すことができる。例示的なHIV標的核酸には、Pol領域で見出される配列が含まれる。
【0182】
一部の実施形態では、標的核酸は、原生動物の核酸である。例えば、原生動物の核酸は、プラスモディウム属(Plasmodium)の種、リーシュマニア属(Leishmania)の種、トリパノソーマ・ブルーセイ・ガンビエンス(Trypanosoma brucei gambiense)、トリパノソーマ・ブルーセイ・ローデシエンス(Trypanosoma brucei rhodesiense)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、エントアメーバ属(Entamoeba)の種、トキソプラズマ属(Toxoplasma)の種、トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis)及びジアルジア・デュオデナリス(Giardia duodenalis)で見出すことができる。
【0183】
一部の実施形態では、標的核酸は、哺乳動物(例えば、ヒト)の核酸である。例えば、哺乳動物の核酸は、循環腫瘍細胞、上皮細胞又は線維芽細胞で見出すことができる。
【0184】
一部の実施形態では、標的核酸は、真菌(例えば、酵母)の核酸である。例えば、真菌の核酸は、カンジダ属(Candida)種(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))で見出すことができる。
【0185】
本発明の態様及び実施形態のいずれかで増幅生成物を検出することは、典型的には、標的核酸に対応する増幅生成物に十分に相補的であってハイブリダイズする標識プローブの使用を含む。したがって、増幅生成物の存在、量及び/又は同一性は、増幅生成物に相補的である蛍光標識プローブなどの標識プローブをハイブリダイズすることによって検出することができる。一部の実施形態では、対象の標的核酸配列の検出は、生成物がリアルタイムで測定されるように、等温増幅方法と標識プローブの併用を含む。別の実施形態では、対象の増幅された標的核酸配列の検出は、膜などの固体支持体への増幅された標的核酸の移動、及び増幅された標的核酸配列に相補的であるプローブ、例えば標識プローブで膜を探索することを含む。さらに別の実施形態では、対象の増幅された標的核酸配列の検出は、アドレス可能な位置を有する所定のアレイに整列され、増幅された標的核酸に相補的であるプローブへの、標識された、増幅された標的核酸のハイブリダイゼーションを含む。
【0186】
典型的には、増幅反応では1つ又は複数のプライマーが利用される。標的核酸の増幅は、標的核酸とハイブリダイズして、その増幅を方向付けることが可能である1つ又は複数のプライマーと標的核酸を接触させることを含む。一部の実施形態では、両方とも標的核酸とハイブリダイズするフォワード及びリバースプライマーを含むプライマー対と試料を接触させる。
【0187】
リアルタイム増幅は、エンドポイント検出と対照的に、反応の間に発光された蛍光をアンプリコン生成の指標としてモニターする。反応のリアルタイム進行は、一部の系で見ることができる。典型的には、リアルタイム法は、蛍光リポーターの検出を含む。典型的には、蛍光リポーターのシグナルは、反応での増幅生成物の量に正比例して増加する。各サイクルで蛍光発光の量を記録することによって、増幅生成物の量の最初の有意な増加が標的鋳型の初期量と相関する指数増殖期の間、増幅反応をモニターすることが可能である。核酸標的の出発コピー数が多いほど、蛍光の有意な増加が観察されるのが早い。
【0188】
一部の実施形態では、蛍光標識プローブは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に、又は、増幅された標的核酸とのDNAプローブのハイブリダイゼーションをリアルタイムで検出する方法として、試料の蛍光発光波長の変化に依存する。例えば、異なるプローブ上の蛍光発生標識の間(例えば、HybProbesを用いる)、又は同じプローブ上の蛍光団と非蛍光性失活剤の間(例えば、分子ビーコン又はTAQMAN(登録商標)プローブを用いる)で起こるFRETは、対象のDNA配列と特異的にハイブリダイズするプローブを識別することができ、このように、試料中の標的核酸の存在及び/又は量を検出することができる。一部の実施形態では、増幅生成物を識別するために用いられる蛍光標識DNAプローブは、スペクトルが異なる発光波長を有し、それらは例えば多重反応で、同じ反応管の中で増幅生成物を区別することを可能にする。例えば、多重反応は、対照核酸などの2つ以上の標的核酸の増幅生成物の同時検出を可能にする。
【0189】
一部の実施形態では、標的核酸に特異的なプローブは、同位体標識又は非同位体標識によって検出可能に標識され、代替の実施形態では、増幅された標的核酸が標識される。プローブは、標的核酸種の指標、例えば標的核酸種の増幅生成物として検出することができる。非同位体標識は、例えば、蛍光性若しくは発光性の分子、又は酵素、補因子、酵素基質若しくはハプテンを含むことができる。プローブは、RNA、DNA又は両方の混合物の一本鎖又は二本鎖の調製物とインキュベートすることができ、ハイブリダイゼーションを判定することができる。一部の例では、ハイブリダイゼーションは、例えば標識プローブからの、シグナルの増加又は減少などのシグナルの検出可能な変化をもたらす。したがって、ハイブリダイゼーションを検出することは、ハイブリダイゼーションの前の標識からのシグナルと比較して、ハイブリダイゼーションの間か後の標識プローブからのシグナルの変化を検出することを含むことができる。
【0190】
一部の方法では、増幅生成物は、フローストリップを用いて検出することができる。一部の実施形態では、1つの検出可能な標識は色を生成し、第2の標識は、固定化抗体又は抗体断片によって認識されるエピトープである。両方の標識を含有する生成物は、固定化抗体に付着し、固定化抗体の位置で色を生成する。この検出方法に基づくアッセイは、例えば、全等温増幅反応に適用することができるフローストリップ(ディップスティック)であってもよい。陽性増幅は、標的核酸の増幅の指標としてフローストリップの上でバンドを生成するが、陰性増幅はいかなるカラーバンドも生成しない。
【0191】
一部の実施形態では、標的核酸の量(例えば、コピー数)は、本明細書に開示される方法を用いて近似的に数量化することができる。例えば、標的核酸の既知量を並行反応で増幅することができ、試料から得られる増幅生成物の量は、並行反応で得られる増幅生成物の量と比較することができる。一部の実施形態では、標的核酸のいくつかの既知量を複数の並行反応で増幅することができ、試料から得られる増幅生成物の量は、並行反応で得られる増幅生成物の量と比較することができる。試料中の標的核酸が並行反応での標的核酸として反応構成成分に同様に利用できると仮定すると、試料中の標的核酸の量は、これらの方法を用いて近似的に数量化することができる。
【0192】
本明細書に開示される方法のための反応構成成分は、標的核酸の検出で使用するためのキットの形態で供給してもよい。そのようなキットでは、1つ又は複数の反応構成成分の適当な量が1つ又は複数の容器で提供されるか、基質の上に保持される(例えば、静電的相互作用又は共有結合によって)。標的核酸に特異的な核酸プローブ及び/又はプライマーを提供することもできる。反応構成成分、核酸プローブ及び/又はプライマーは、水溶液に、又は例えばフリーズドライ若しくは凍結乾燥された粉末、ペレット若しくはビーズとして懸濁してもよい。構成成分などが供給される容器(複数可)は、供給形態を保持することが可能な任意の従来の容器、例えばマイクロチューブ、アンプル、ボトル又は一体式試験装置、例えば流体装置、カートリッジ、側方流動若しくは他の類似した装置であってもよい。キットは、標的核酸の検出で使用するための標識又は非標識核酸プローブを含むことができる。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法のいずれか、例えば核酸の抽出及び/又は精製のない粗製マトリックスを用いる方法で構成成分を用いるための説明書をさらに含むことができる。
【0193】
一部の適用では、1つ又は複数の反応構成成分は、個々の、典型的には使い捨て式のチューブ又は同等の容器で、予め測定された単回使用量で提供してもよい。そのような配置では、標的核酸の存在について試験する試料を個々のチューブに加え、増幅を直接に実行することができる。
【0194】
キットで供給される構成成分の量は任意の適当な量であってもよく、製品が向かう標的市場によって決めることができる。適当な量を決定するための一般的なガイドラインは、例えば、Joseph Sambrook及びDavid W.Russell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年;及びFrederick M.Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、2003年に見出すことができる。
【実施例0195】
実施例1.EGTAによる増幅反応
pH依存性キレート化剤EGTAの有り無しで、NEAR増幅をホットスタート条件下で実施した。0又は100コピーの精製されたインフルエンザA型ウイルスRNA、及び150nMのフォワード鋳型、250nMのリバース鋳型、及び200nMの分子ビーコンプローブを用いてアッセイを設定した。鋳型及び分子ビーコンプローブの配列は、以下の通りであった:フォワード鋳型、5’-AGACTCCACACGGAGTCTACTGACAGCCAGACA-3’(配列番号1);リバース鋳型、5’-AGACTCCATATGGAGTCTTGATGGCCATCCGAA’(配列番号2);及び分子ビーコンプローブ、5’-6-Fam-CTGGTAGCCAGGCA GCGACCAG-BHQ1-3’(配列番号3)。以下の条件下で反応を実行した:100mMトリス-Cl(20℃でpH7.9)、15mM Na
2SO
4、15mM(NH
4)
2SO
4、15mM MgSO
4、14mM EGTA、1mM DTT、0.1% Triton X-100、0.3mMの各dNTP、19.2UのBst DNAポリメラーゼ及び15UのNt.BstNBIニッキング酵素。アッセイの構成成分を室温で組み合わせ、約20分の間室温に維持し、その後反応を56℃に置いた。リアルタイム蛍光を用いて反応を10分の間モニターした。EGTA及び100コピーのウイルスRNAを含む反応だけで、増幅を観察した(
図1)。
【0196】
この実施例は、増幅反応において温度感受性バッファー及びpH依存性キレート化剤を含むことが、ホットスタート条件下で増幅を向上させることを実証する。
【0197】
実施例2.EGTA及び凍結乾燥された構成成分による増幅
凍結乾燥された構成成分を用いて、ホットスタート条件下でNEAR反応を実施した。凍結乾燥された反応ペレットに、50mMトリス-HCl(20℃でpH7.75)、15mM (NH
4)
2SO
4、15mM MgSO
4及び15mM EGTAを含有する50μLの再構成バッファーを加えた。凍結乾燥されたペレットからの構成成分は、再構成後の50μLに、50nMフォワード鋳型、750nMリバース鋳型、300nM分子ビーコンプローブ、50mMトレハロース、225mMマンニトール、50mMトリス-HCl(20℃でpH8.5)、1mM DTT、5mM Na
2SO
4、0.1% Triton X-100、0.3mMの各dNTP、0.2×SYBR Green I、120UのManta DNAポリメラーゼ及び15UのNt.BstNBIニッキング酵素を含んでいた。鋳型及び分子ビーコンプローブの配列は、以下の通りであった:フォワード鋳型、5’-CGACTCCATATGGA GTCCTCGTCAGACCCAAAA-3’(配列番号4)、リバース鋳型、5’-TGACTCCATATGGAGTCTCATCTTTCCGTCCCC-3’(配列番号5)、及び分子ビーコン、5’-Rox-TCGGGGCAGACCCAAAACCCCGA-BHQ2-3’(配列番号6)。マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)BCG(ATCC190115株)からの20又は200コピーのゲノムDNAを用いて増幅を実施した。混合物は、15分の間室温に保持した。室温でのインキュベーションの後、反応を56℃に移行し、リアルタイム蛍光を用いて反応を40分の間モニターした。EGTAが反応に存在したとき、鋳型なしの対照と比較して、20又は200コピーの鋳型DNAを用いて有意な増幅が観察された(
図2)。
【0198】
この実施例は、ホットスタート条件下で、増幅反応において温度感受性バッファー及びpH依存性キレート化剤を含むことが、増幅を許容することを実証する。
【0199】
他の実施形態
本発明のいくつかの実施形態が記載されている。それにもかかわらず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な改変を加えることができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。
(a)ポリヌクレオチド及び増幅試薬混合物を組み合わせて、反応混合物を形成するステップであって、反応混合物が溶液中で可逆的に結合した二価イオンを含む、ステップと、
(b)可逆的に結合した二価イオンを放出するように反応混合物のpHを調整し、それによってポリヌクレオチドの増幅を開始するステップとを含む方法。