(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109747
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】IL-12及びIL-18へのIL-15系融合
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240806BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240806BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20240806BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240806BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240806BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20240806BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240806BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240806BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20240806BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240806BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240806BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20240806BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240806BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240806BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/54
C07K16/28
C07K16/00
C07K16/24
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N15/24
C12N5/0783
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/04
A61P35/02
A61K35/15
A61K38/20
A61K35/17
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082540
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2022194613の分割
【原出願日】2018-03-06
(31)【優先権主張番号】62/467,623
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504090190
【氏名又は名称】アルター・バイオサイエンス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】マーカス, ウォーレン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】リウ, バイ
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ, リジン
(72)【発明者】
【氏名】コン, リン
(72)【発明者】
【氏名】ロード, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ヒン シー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】IL-15又は機能的断片を含む1つのドメインと、IL-12又はIL-18に特異的な結合ドメインとを有する多重特異的融合タンパク質複合体を提供する。
【解決手段】少なくとも2種の可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、第1可溶性タンパク質は、IL-15ドメインを含み、及び第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記第1又は第2可溶性タンパク質は、IL-18結合ドメインをさらに含み、前記第1又は第2可溶性タンパク質は、IL-12結合ドメインをさらに含み、第1可溶性タンパク質のIL-15ドメインは、第2可溶性タンパク質のIL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、可溶性融合タンパク質複合体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
第1可溶性タンパク質は、インターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、及び第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、
前記第1又は第2可溶性タンパク質は、IL-18結合ドメイン又はその機能的断片をさらに含み、
前記第1又は第2可溶性タンパク質は、IL-12結合ドメイン又はその機能的断片をさらに含み、
前記第1可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項2】
前記IL-15ポリペプチドは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、請求項1に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項3】
前記IL-12結合ドメインは、IL-12のp40及びp35サブユニットを含む、請求項1に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項4】
IL-12の前記p40及びp35サブユニットは、可撓性ポリペプチドリンカーによって一本鎖フォーマット内に連結されている、請求項3に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項5】
前記第1可溶性タンパク質は、配列番号2又は6の1つに規定されたアミノ酸配列を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項6】
前記第2可溶性タンパク質は、配列番号4又は8の1つに規定されたアミノ酸配列を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項7】
請求項1に記載の第2可溶性融合タンパク質複合体に共有結合されている、請求項1に記載の第1可溶性融合タンパク質複合体を含む可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項8】
前記第1可溶性融合タンパク質複合体は、前記第1可溶性融合タンパク質複合体のFcドメインを前記第2可溶性融合タンパク質複合体のFcドメインに連結するジスルフィド結合によって前記第2可溶性融合タンパク質複合体に共有結合されている、請求項7に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項9】
前記第1又は第2可溶性タンパク質は、疾患抗原及び/又は免疫チェックポイント若しくはシグナル伝達分子に結合する結合ドメインをさらに含む、請求項1に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項10】
前記疾患抗原は、新生物又は感染性疾患に関連している、請求項9に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項11】
請求項5に記載の第1可溶性タンパク質をコードする核酸配列であって、配列番号1又は5の1つに規定された配列を含む核酸配列。
【請求項12】
前記可溶性タンパク質をコードする前記配列に機能的に連結されたプロモーター、翻訳開始シグナル及びリーダー配列をさらに含む、請求項11に記載の核酸配列。
【請求項13】
請求項6に記載の第2可溶性タンパク質をコードする核酸配列であって、配列番号3又は7の1つに規定された配列を含む核酸配列。
【請求項14】
前記可溶性タンパク質をコードする前記配列に機能的に連結されたプロモーター、翻訳開始シグナル及びリーダー配列をさらに含む、請求項13に記載の核酸配列。
【請求項15】
請求項11及び/又は請求項13に記載の核酸配列を含むDNAベクター。
【請求項16】
免疫機能を増強するための方法であって、
a)複数の細胞を請求項1~10のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、前記複数の細胞は、前記IL-15ポリペプチドドメインに結合するIL-15R鎖、前記IL-12ドメインに結合するIL-12R鎖及び/又は前記IL-18ドメインに結合するIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、
b)前記IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して前記免疫細胞を活性化する工程と
を含む方法。
【請求項17】
標的細胞を殺傷するための方法であって、
a)複数の細胞を請求項1~10のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、前記複数の細胞は、前記IL-15ポリペプチドドメインに結合するIL-15R鎖、前記IL-12ドメインに結合するIL-12R鎖及び/又は前記IL-18ドメインに結合するIL-18R鎖を含む免疫細胞と、標的疾患細胞とをさらに含む、工程と、
b)前記IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して前記免疫細胞を活性化する工程と、
c)前記活性化免疫細胞によって前記標的疾患細胞を殺傷する工程と
を含む方法。
【請求項18】
前記標的細胞は、腫瘍細胞又は感染細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象における免疫応答を増強する方法であって、
a)複数の細胞を請求項1~10のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、前記複数の細胞は、前記IL-15ポリペプチドドメインに結合するIL-15R鎖、前記IL-12ドメインに結合するIL-12R鎖及び/又は前記IL-18ドメインに結合するIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、
b)前記IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して前記免疫細胞を活性化する工程と、
c)前記活性化免疫細胞を患者に投与する(又は養子移入する)工程と、
d)前記患者における免疫応答を増強する工程と
を含む方法。
【請求項20】
患者における疾患を予防又は治療する方法であって、
a)複数の細胞を請求項1~10のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、前記複数の細胞は、前記IL-15ドメインに結合するIL-15R鎖、前記IL-12ドメインに結合するIL-12R鎖及び/又は前記IL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、
b)前記IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して前記免疫細胞を活性化する工程と、
c)有効量の前記活性化免疫細胞を前記患者に投与する(又は養子移入する)工程と、 d)前記患者における前記疾患を予防又は治療するために十分な前記活性化免疫細胞を介して疾患細胞を損傷又は殺傷する工程と
を含む方法。
【請求項21】
前記疾患は、新生物又は感染性疾患である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象における免疫応答を増強する方法であって、有効量の請求項1~10のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体を前記対象に投与する工程を含む方法。
【請求項23】
新生物又は感染性疾患の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与し、それにより前記新生物又は感染性疾患を治療する工程を含む方法。
【請求項24】
前記新生物は、膠芽腫、前立腺癌、血液学的癌、B細胞新生物、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃食道癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び扁平上皮頭頚部癌からなる群から選択される、請求項21又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫細胞は、NK細胞又はサイトカイン誘導性メモリー様(CIML)NK細胞である、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記活性化免疫細胞の前記有効量は、1×104細胞/kg~1×1010細胞/kgである、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫細胞は、少なくとも週1回投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記有効量は、前記融合タンパク質複合体の約1~100μg/kgである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項29】
前記融合タンパク質複合体は、少なくとも週1回投与される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項30】
前記融合タンパク質複合体は、免疫細胞増殖、活性化マーカー、標的細胞に対する細胞傷害性及び/又はIFN-γを含む前炎症性サイトカインの産生を増加させる、請求項16~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
前記第1可溶性タンパク質は、IL-12若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、
前記第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されており、及び
前記第1可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項32】
IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含む単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項33】
前記IL-15ポリペプチドドメインは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、請求項32に記載の単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項34】
免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されている、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項35】
第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
前記第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-18結合ドメイン又はその機能的断片に融合されており、
前記第2可溶性タンパク質は、IL-18ドメインに融合されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、
前記第1可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項36】
第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
前記第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12結合ドメイン又はその機能的断片に融合されており、
前記第2可溶性タンパク質は、IL-12ドメインに融合されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、
前記第1可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項37】
前記IL-15ポリペプチドドメインは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、請求項35又は36に記載の単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項38】
インターロイキン-15ポリペプチドドメイン、第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
前記第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されており、
第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されており、
前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第1及び/又は第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質。
【請求項39】
免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)、第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質であって、
前記第1可溶性タンパク質は、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15ポリペプチドドメインを含み、及び 第2可溶性タンパク質は、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15ポリペプチドドメインを含み、
前記第1及び/又は第2可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質。
【請求項40】
前記IL-15ポリペプチドドメインは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、請求項38又は39に記載の単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、2017年3月6日に出願された米国仮特許出願第62/467,623号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、概して、多量体融合分子の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載した本発明以前には、免疫応答を増強して新生物又は感染性疾患を有する患者に治療利益を提供するための新たな戦略を開発することが急務であった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも一部には、多重特異的インターロイキン-15(IL-15)系融合タンパク質複合体が免疫細胞の刺激を強化し、疾患細胞に対するその活性を促進し、それにより結果として疾患の低減又は予防を生じさせるという驚くべき発見に基づく。これらのIL-15系融合タンパク質複合体は、疾患及び標的抗原への結合の増加も示し得る。本明細書では、IL-12及びIL-18結合ドメインを含む多重特異的IL-15系融合タンパク質複合体が提供される(
図1A、1B)。詳細には、本明細書で記載するのは、IL-12及び/又はIL-18結合ドメインに融合されたIL-15N72D:IL-15RαSu-Ig Fcスカフォールド(骨格)を含む融合タンパク質複合体である。下記で詳細に記載するように、ヒト免疫細胞を使用して特性解析すると、これらの融合タンパク質複合体は、IL-15、IL-12及びIL-18サイトカインのそれぞれの結合活性及び生物活性を示す。さらに、これらの融合タンパク質複合体は、活性化マーカーの上昇、腫瘍細胞に対する細胞傷害性の増加及びIFN-γの産生の増強を伴ってサイトカイン誘導性メモリー様(CIML)ナチュラルキラー(NK)細胞を誘導する。
【0005】
したがって、単一分子としての融合タンパク質複合体は、以前には複数の個別サイトカインの組み合わせを用いた場合にのみ観察された応答を提供するために、NK細胞上の複数のサイトカイン受容体に結合して、それらを介してシグナルを発する。さらに、これらの融合タンパク質複合体は、可溶性マルチポリペプチド複合体を提供し、精製の目的でプロテインAを結合し、NK細胞及びマクロファージ上のFcγ受容体と相互作用するために二量体を形成できるIg分子のFc領域を含み、それにより個別サイトカインの組み合わせ中に存在しない利点を融合タンパク質複合体に提供する。本明細書では、臨床グレード物質を大規模生産するために好適なこれらの融合タンパク質複合体を作成するための哺乳動物細胞発現に基づく方法が記載される。本発明の融合タンパク質複合体によって誘導されるCIML NK細胞を作成及び使用するための追加の方法も提供される。
【0006】
したがって、少なくとも2種の可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体が提供される。例えば、第1タンパク質は、IL-15ポリペプチド、例えばN72D突然変異を含む変異IL-15ポリペプチド(IL-15N72D)を含む。第2タンパク質は、免疫グロブリンFcドメイン(IL-15RαSu/Fc)に融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含む。単離された可溶性融合タンパク質複合体の第3成分は、IL-12の結合ドメインを含み、ここで、IL-12結合ドメインは、IL-15N72D又はIL-15RαSu/Fcタンパク質のいずれかに融合されている。単離された可溶性融合タンパク質複合体の第4成分は、IL-18の結合ドメインを含み、ここで、IL-18結合ドメインは、IL-15N72D又はIL-15RαSu/Fcタンパク質のいずれかに融合されている。一部の場合、IL-12及び/又はIL-18結合ドメインは、IL-15N72D及びIL-15RαSu/Fcタンパク質の両方に融合されている。他の場合、IL-12又はIL-18結合ドメインのいずれかは、IL-15N72D又はIL-15RαSu/Fcタンパク質に融合されており、別の結合ドメインは、他のタンパク質に融合されている。他の場合、この複合体は、IL-12を含まないIL-15N72D:IL-15RαSu-Ig Fcスカフォールドに融合されたIL-18結合ドメイン又はIL-12を含まないIL-15N72D:IL-15RαSu-Ig Fcスカフォールドに融合されたIL-18結合ドメインを含む。融合は、タンパク質のN末端又はC末端で作成され得る。IL-12タンパク質は、p40及びp35のIL-12サブユニットのヘテロ二量体を含み得る。代わりに、IL-12タンパク質は、p40及びp35のサブユニットが可動性のポリペプチドリンカーによって連結されている一本鎖フォーマットを含み得る。一本鎖IL-12は、p35のN末端に連結されたp40のC末端又はp40のN末端に連結されたp35のC末端のいずれかを含み得る。典型的な融合タンパク質複合体は、IL-15N72Dに共有結合されたIL-18ポリペプチド及びIL-15RαSu/Fc融合タンパク質に共有結合された一本鎖IL-12ポリペプチドを含む。代わりに、融合タンパク質複合体は、IL-15N72Dに共有結合された一本鎖IL-12ポリペプチド及びIL-15RαSu/Fc融合タンパク質に共有結合されたIL-18ポリペプチドを含む(
図1A、1B)。
【0007】
典型的な第1タンパク質は、配列番号2及び配列番号6に規定されたアミノ酸配列を含む。典型的な第2タンパク質は、配列番号4及び配列番号8に規定されたアミノ酸配列を含む。第1タンパク質をコードする典型的な核酸配列は、配列番号1及び配列番号5に規定された配列を含む。第2タンパク質をコードする典型的な核酸配列は、配列番号3及び配列番号7に規定された配列を含む。1つの態様では、核酸配列は、融合タンパク質をコードする配列に機能的に連結されたプロモーター、翻訳開始シグナル及びリーダー配列をさらに含む。また、本明細書に記載した核酸配列を含むDNAベクターが提供される。例えば、その核酸配列は、複製、発現又はその両方のためのベクター内にある。
【0008】
また、第2可溶性融合タンパク質複合体に共有結合された第1可溶性融合タンパク質複合体を含む可溶性融合タンパク質複合体が提供される。例えば、本発明の可溶性融合タンパク質複合体は、多量体化、例えば二量体化、三量体化又はさもなければ多量体化されている(例えば、四重複合体、五重複合体など)。例えば、多量体は、ホモ多量体又はヘテロ多量体である。可溶性融合タンパク質複合体は、共有結合、例えばジスルフィド結合、化学的架橋剤によって接合される。一部の場合、1種の可溶性融合タンパク質は、第1可溶性タンパク質のFcドメインを第2可溶性タンパク質のFcドメインに連結するジスルフィド結合によって別の可溶性融合タンパク質に共有結合されている。
【0009】
Fcドメイン又はその機能的断片には、IgG Fcドメイン、ヒトIgG1 Fcドメイン、ヒトIgG2 Fcドメイン、ヒトIgG3 Fcドメイン、ヒトIgG4 Fcドメイン、IgA Fcドメイン、IgD Fcドメイン、IgE Fcドメイン及びIgM Fcドメイン;マウスIgG2Aドメイン又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるFcドメインが含まれる。任意選択的に、Fcドメインには、変化した補体若しくはFc受容体結合特性又は変化した二量体化若しくはグリコシル化プロファイルを備えるFcドメインを生じさせるアミノ酸変化が含まれる。変化した補体若しくはFc受容体結合特性又は変化した二量体化若しくはグリコシル化プロファイルを備えるFcドメインを生成するアミノ酸変化は、当該技術分野において公知である。例えば、IgG1 CH2の234位及び235位(抗体コンセンサス配列に基づくナンバリング)でのロイシン残基(すなわち...P E L L G G...)のアラニン残基(すなわち...P E A A G G...)との置換は、Fcガンマ受容体結合の損失を生じさせる一方、IgG1 CH2の322位(抗体コンセンサス配列に基づくナンバリング)でのリシン残基(すなわち...K C K S L...)のアラニン残基(すなわち...K C A S L...)との置換は、補体活性化の損失を生じさせる。一部の例では、そのような突然変異は、組み合わされる。
【0010】
一部の態様では、IL-12又はIL-18結合ドメインは、ポリペプチドリンカー配列によってIL-15ポリペプチド(又はその機能的断片)に共有結合されている。同様に、IL-12又はIL-18結合ドメインは、ポリペプチドリンカー配列によってIL-15Rαポリペプチド(又はその機能的断片)に共有結合されている。任意選択的に、IL-15Rαポリペプチド(又はその機能的断片)は、ポリペプチドリンカー配列によってFcドメイン(又はその機能的断片)に共有結合されている。各ポリペプチドリンカー配列は、独立して選択され得る。任意選択的に、ポリペプチドリンカー配列は、同一である。代わりに、それらは、異なる。
【0011】
任意選択的に、本発明の可溶性融合タンパク質複合体が提供され、ここで、可溶性融合タンパク質の少なくとも1つは、1つ以上の結合ドメイン又は検出可能な標識を含む。そのような結合ドメインは、抗体、可溶性T細胞受容体、リガンド、可溶性受容体ドメイン又はその機能的断片を含み得る。そのような結合ドメインを含むIL-15系融合タンパク質複合体は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,492,118号明細書に以前に記載されている。検出可能な標識には、ビオチン、ストレプトアビジン、酵素若しくは触媒的に活性なその断片、放射性核種、ナノ粒子、常磁性金属イオン若しくは蛍光分子、燐光分子若しくは化学発光分子又はそれらの任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0012】
本発明は、本発明の可溶性融合タンパク質複合体を作成するための方法を提供する。本方法は、a)第1宿主細胞内に第1タンパク質をコードする適切な制御配列を備えるDNAベクターを導入する工程と、b)細胞又は培地中で第1タンパク質を発現させるために十分な条件下で培地中において第1宿主細胞を培養する工程と、c)宿主細胞又は培地から第1タンパク質を精製する工程と、d)第2宿主細胞内に第2タンパク質をコードする適切な制御配列を備えるDNAベクターを導入する工程と、e)細胞又は培地中で第2タンパク質を発現させるために十分な条件下で培地中において第2宿主細胞を培養する工程と、f)宿主細胞又は培地から第2タンパク質を精製する工程と、g)第1タンパク質のIL-15ドメインと第2タンパク質可溶性IL-15Rαドメインとの結合を可能にするために十分な条件下で第1及び第2タンパク質を混合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する工程とを含む。
【0013】
一部の場合、本方法は、第1及び第2タンパク質を、発現ベクターから発現したポリペプチド間のジスルフィド結合の形成を可能にするために十分な条件下で混合する工程をさらに含む。
【0014】
代わりに、本発明の可溶性融合タンパク質複合体を作成するための方法は、a)宿主細胞内に第1タンパク質をコードする適切な制御配列を備えるDNAベクター及び第2タンパク質をコードする適切な制御配列を備えるDNAベクターを導入する工程と、b)細胞又は培地中でタンパク質を発現させ、第1タンパク質のIL-15ドメインと第2タンパク質可溶性IL-15Rαドメインとの間の会合を可能にするために十分な条件下で培地中において宿主細胞を培養して可溶性融合タンパク質複合体を形成する工程と、c)宿主細胞又は培地から可溶性融合タンパク質複合体を精製する工程とによって実施される。
【0015】
1つの態様では、本方法は、第1及び第2タンパク質を、発現ベクターから発現したポリペプチド間のジスルフィド結合の形成を可能にするために十分な条件下で混合する工程をさらに含む。
【0016】
また、可溶性融合タンパク質複合体を作成するための方法であって、a)宿主細胞内に第1及び第2タンパク質をコードする適切な制御配列を備えるDNAベクターを導入する工程と、b)細胞又は培地中でタンパク質を発現させ、第1タンパク質のIL-15ドメインと第2タンパク質の可溶性IL-15Rαドメインとの間の会合を可能にして可溶性融合タンパク質複合体を形成するため、及びポリペプチド間のジスルフィド結合の形成を可能にするために十分な条件下で培地中において宿主細胞を培養する工程と、c)宿主細胞又は培地から可溶性融合タンパク質複合体を精製する工程とを含む方法も提供される。
【0017】
任意選択的に、本方法は、第1及び第2タンパク質を、発現ベクターから発現したポリペプチド間のジスルフィド結合の形成を可能にするために十分な条件下で混合する工程をさらに含む。
【0018】
一部の場合、本方法は、プロテインA親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び/又は臨床用試薬若しくは治療薬として使用するために好適な十分に純粋な融合タンパク質複合体を生成するために十分な他の標準方法(ウイルス不活化及び/又は濾過を含む)による融合タンパク質複合体の精製をさらに含む。
【0019】
本発明の可溶性融合タンパク質複合体の所定の態様では、IL-15ポリペプチドは、天然IL-15ポリペプチドと異なるアミノ酸配列を有するIL-15変異体である。ヒトIL-15ポリペプチドは、本明細書では、huIL-15、hIL-15、huIL-15、hIL-15、IL-15野生型(wt)と称され、その変異体は、天然のアミノ酸、成熟配列におけるその位置及び変異アミノ酸を使用して称される。例えば、huIL-15N72Dは、72位でのNからDへの置換を含むヒトIL-15を指す。1つの態様では、IL-15変異体は、例えば、天然IL-15ポリペプチドと比較したIL-15RβγC受容体に対する結合活性の増加によって実証されるように、IL-15アゴニストとして機能する。代わりに、IL-15変異体は、例えば、天然IL-15ポリペプチドと比較したIL-15RβγC受容体に対する結合活性の減少によって実証されるように、IL-15アンタゴニストとして機能する。
【0020】
免疫機能を増強する方法は、a)複数の細胞を本発明の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、複数の細胞は、IL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖、IL-12ドメインによって認識されるIL-12R鎖及び/又はIL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、b)IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して免疫細胞を活性化する工程とによって実施される。1つの態様では、免疫機能を増強する方法は、可溶性融合タンパク質複合体によるIL-15R、IL-12R及びIL-18Rの少なくとも2つ又は全部の組み合わせのシグナル伝達を介した免疫細胞の活性化をさらに含む。免疫機能を増強するための典型的な方法は、可溶性融合タンパク質複合体によるIL-15R、IL-12R及びIL-18Rのシグナル伝達を介したNK細胞の活性化を含む。そのような方法は、増加した活性化マーカー(すなわちCD25、CD69)、罹患細胞の細胞傷害性の上昇又はIFN-γの産生の増加を生じさせるNK細胞の活性化を含む。一部の態様では、方法には、本発明の可溶性融合タンパク質複合体によるCIML NK細胞の誘導が含まれる。
【0021】
標的細胞を殺傷するための方法は、a)複数の細胞を本発明の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、複数の細胞は、IL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖、IL-12ドメインによって認識されるIL-12R鎖及び/又はIL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞及び標的疾患細胞をさらに含む、工程と、b)IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して免疫細胞を活性化する工程と、c)活性化免疫細胞によって標的疾患細胞を殺傷する工程とによって実施される。1つの態様では、本方法は、可溶性融合タンパク質複合体によるIL-15R、IL-12R及びIL-18Rの少なくとも2つ又は全部の組み合わせのシグナル伝達を介した免疫細胞の活性化を含む。典型的な方法は、可溶性融合タンパク質複合体によるIL-15R、IL-12R及びIL-18Rのシグナル伝達を介したNK細胞、特にCIML NK細胞の活性化を含む。そのような方法は、活性化マーカー(すなわちCD25、CD69)、標的細胞に対する細胞傷害性の上昇を生じさせるNK細胞の活性化を含む。
【0022】
本発明は、患者における疾患を予防又は治療するための方法であって、a)IL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖、IL-12ドメインによって認識されるIL-12R鎖及び/又はIL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞を本発明の可溶性融合タンパク質複合体と混合する工程と、b)IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して免疫細胞を活性化する工程と、c)活性化免疫細胞を患者に投与する(又は養子移入する)工程と、d)患者における疾患を予防又は治療するために十分な活性化免疫細胞を介して疾患細胞を損傷又は殺傷する工程とを含む方法も提供する。1つの態様では、本方法は、可溶性融合タンパク質複合体によるIL-15R、IL-12R及びIL-18Rの少なくとも2つ又は全部の組み合わせのシグナル伝達を介した免疫細胞の活性化を含む。典型的な方法は、可溶性融合タンパク質複合体によるIL-15R、IL-12R及びIL-18Rのシグナル伝達を介したNK細胞、特にCIML NK細胞の活性化を含む。本方法の他の態様は、不死化免疫細胞、例えば移入前に照射され得る例えばNK-92、aNK、haNK又はtaNK細胞の使用を含む。本発明の一部の実施形態では、患者は、養子移入された細胞の移植又は生存を促進するために前治療又は予備状態調節される。予備状態調節の例には、シクロホスファミド及びフルダラビンを用いた治療が含まれる。さらに、患者は、細胞移入前及び/又は細胞移入後の養子移入された細胞の活性化、生存又は残存を促進する物質を用いて治療され得る。そのような治療の例としては、IL-2、IL-15、ALT-803又は他の免疫賦活剤の使用が挙げられる。養子細胞療法の分野において公知の他の治療的アプローチ(すなわち同種細胞療法、自家細胞療法、半分一致(haploidentical)療法、DLI療法、幹細胞療法、CAR T療法、NK92系療法及びCAR NK療法)も本明細書に記載の方法において使用され得る。
【0023】
また、患者における疾患を予防又は治療するための方法であって、a)本発明の可溶性融合タンパク質複合体を患者に投与する工程と、b)IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して患者における免疫細胞を活性化する工程と、c)患者における疾患を予防又は治療するために十分な活性化免疫細胞を介して疾患細胞を損傷又は殺傷する工程とを含む方法も提供される。
【0024】
本発明の融合タンパク質複合体の投与は、患者において免疫応答を誘導する。例えば、本発明の融合タンパク質複合体の投与は、新生物又は感染性疾患に関連する細胞に対する免疫応答を誘導する。1つの態様では、本発明の融合タンパク質複合体は、免疫細胞増殖、活性化マーカー、標的細胞に対する細胞傷害性及び/又は前炎症性サイトカインの産生を増加させる。
【0025】
本発明は、哺乳物における免疫応答を、有効量の本発明の可溶性融合タンパク質複合体を哺乳動物に投与する工程によって刺激する方法を提供する。本発明は、哺乳物における免疫応答を、有効量の本発明の任意の1つの可溶性融合タンパク質複合体を哺乳動物に投与する工程によって抑制する方法も提供する。
【0026】
新生物又は感染性疾患の治療を、それを必要とする対象において行うための方法は、本明細書に記載した可溶性融合タンパク質複合体を含む有効量の活性化免疫細胞又は医薬組成物を対象に投与する工程によって実施される。例えば、固形悪性腫瘍又は血液学的悪性腫瘍の治療を、それを必要とする対象において行うための方法は、本発明の可溶性融合タンパク質複合体によってエクスビボで活性化された有効量のCIML NK細胞を対象に投与し、それにより悪性腫瘍を治療する工程によって実施される。典型的な可溶性融合タンパク質複合体は、配列番号2及び配列番号6並びに配列番号4及び配列番号8に規定されたアミノ酸配列を含む。
【0027】
本明細書に記載した方法を用いた治療のために好適な新生物には、膠芽腫、前立腺癌、急性骨髄性白血病、B細胞新生物、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃食道癌、頭頚部癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び頭頚部扁平上皮癌が含まれる。
【0028】
本明細書に記載した方法を用いた治療にとって典型的な感染症には、ヒト免疫不全性ウイルス(HIV)又はサイトメガロウイルス(CMV)による感染症が含まれる。本明細書に記載した方法は、細菌感染症(例えば、グラム陽性菌又はグラム陰性菌)を治療するためにも有用である(例えば、参照により本明細書に組み込まれるOleksiewicz et al.2012.Arch Biochem Biophys.526:124-31を参照されたい)。
【0029】
本発明の細胞療法は、有効量の活性化免疫細胞の投与を含む。例えば、活性化NK細胞の有効量は、1×104細胞/kg~1×1010細胞/kg、例えば1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109及び1×1010細胞/kgであるか、又は白血球搬出法によって単離され得るような量である。代わりに、活性化免疫細胞は、一定量として又は体表面積(すなわち1m2当たり)に基づいて投与される。細胞は、エクスビボ活性化後に投与され得るか、又は極低温で保存して解凍(及び必要に応じて洗浄)後に投与され得る。
【0030】
融合タンパク質複合体を含む医薬組成物は、有効量で投与される。例えば、医薬組成物の有効量は、約1μg/kg~100μg/kg、例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100μg/kgである。代わりに、融合タンパク質複合体は、一定量として又は体表面積(すなわち1m2当たり)に基づいて投与される。
【0031】
融合タンパク質複合体を含む養子移入された細胞又は医薬組成物は、少なくとも月に1回、例えば月に2回、週に1回、週に2回、1日1回、1日2回、8時間毎、4時間毎、2時間毎又は毎時間投与される。養子移入された免疫細胞のための好適な投与様式には、全身性投与、静脈内投与又は局所投与が含まれる。医薬組成物のための好適な投与様式には、全身性投与、静脈内投与、局所投与、皮下投与、筋内投与、腫瘍内投与、吸入及び腹腔内投与が含まれる。
【0032】
1つの態様では、本開示は、少なくとも2種の可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体を提供し、ここで、第1可溶性タンパク質は、インターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、及び第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、第1又は第2可溶性タンパク質の一方は、IL-18結合ドメイン又はその機能的断片をさらに含み、第1又は第2可溶性タンパク質の一方は、IL-12結合ドメイン又はその機能的断片をさらに含み、第1可溶性タンパク質のIL-15ドメインは、第2可溶性タンパク質のIL-15RαSuドメインに結合して可溶性タンパク質複合体を形成する。
【0033】
1つの実施形態では、IL-15ポリペプチドは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である。
【0034】
1つの実施形態では、IL-12結合ドメインは、IL-12のp40及びp35のサブユニットを含む。1つの実施形態では、IL-12のp40及びp35のサブユニットは、可動性のポリペプチドリンカーによって一本鎖フォーマット内に連結される。
【0035】
1つの実施形態では、第1可溶性タンパク質は、配列番号2又は6の1つに規定されたアミノ酸配列を含む。
【0036】
1つの実施形態では、第2可溶性タンパク質は、配列番号4又は8の1つに規定されたアミノ酸配列を含む。
【0037】
1つの実施形態では、第1可溶性融合タンパク質複合体は、第2可溶性融合タンパク質複合体に共有結合され得る。
【0038】
1つの実施形態では、第1可溶性融合タンパク質複合体は、第1可溶性融合タンパク質複合体のFcドメインを第2可溶性融合タンパク質複合体のFcドメインに連結するジスルフィド結合によって第2可溶性融合タンパク質複合体に共有結合されている。
【0039】
1つの実施形態では、第1又は第2可溶性タンパク質は、疾患抗原を認識する結合ドメインをさらに含む。
【0040】
1つの実施形態では、第1又は第2可溶性タンパク質は、免疫チェックポイント又はシグナル伝達分子を認識する結合ドメインをさらに含む。
【0041】
1つの実施形態では、疾患抗原は、新生物又は感染性疾患と関連している。
【0042】
1つの実施形態では、第1可溶性タンパク質は、配列番号1又は5に規定された配列によってコードされる。1つの実施形態では、核酸配列は、可溶性タンパク質をコードする配列に機能的に連結されたプロモーター、翻訳開始シグナル及びリーダー配列をさらに含む。
【0043】
1つの実施形態では、第2可溶性タンパク質は、配列番号3又は7に規定された核酸配列によってコードされ得る。1つの実施形態では、核酸配列は、可溶性タンパク質をコードする配列に機能的に連結されたプロモーター、翻訳開始シグナル及びリーダー配列をさらに含む。
【0044】
1つの実施形態では、DNAベクターは、上記に列挙した核酸配列のいずれかを含み得る。
【0045】
1つの実施形態では、免疫機能を増強する方法であって、a)複数の細胞を上記の可溶性融合タンパク質複合体のいずれかと接触させる工程であって、複数の細胞は、IL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖、IL-12ドメインによって認識されるIL-12R鎖及び/又はIL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、b)IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して免疫細胞を活性化する工程とを含む方法である。
【0046】
1つの態様では、本開示は、標的細胞を殺傷するための方法であって、a)複数の細胞を上記の可溶性融合タンパク質複合体のいずれかと接触させる工程であって、複数の細胞は、IL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖、IL-12ドメインによって認識されるIL-12R鎖及び/又はIL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞及び標的疾患細胞をさらに含む、工程と、b)IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して免疫細胞を活性化する工程と、c)活性化免疫細胞によって標的疾患細胞を殺傷する工程とを含む方法を提供する。
【0047】
1つの実施形態では、標的細胞は、腫瘍細胞又は感染細胞である。
【0048】
1つの態様では、本開示は、対象における免疫応答を増強する方法であって、a)複数の細胞を上記の可溶性融合タンパク質複合体のいずれかと接触させる工程であって、複数の細胞は、IL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖、IL-12ドメインによって認識されるIL-12R鎖及び/又はIL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、b)IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して免疫細胞を活性化する工程と、c)活性化免疫細胞を患者に投与する(又は養子移入する)工程と、d)患者における免疫応答を増強する工程とを含む方法を提供する。
【0049】
1つの態様では、本開示は、患者における疾患を予防又は治療する方法であって、a)複数の細胞を可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、複数の細胞は、IL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖、IL-12ドメインによって認識されるIL-12R鎖及び/又はIL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、b)IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して免疫細胞を活性化する工程と、c)有効量の活性化免疫細胞を患者に投与する(又は養子移入する)工程と、d)患者における疾患を予防又は治療するために十分な活性化免疫細胞を介して疾患細胞を損傷又は殺傷する工程とを含む方法を提供する。
【0050】
1つの実施形態では、疾患は、新生物又は感染性疾患である。
【0051】
1つの態様では、本開示は、対象における免疫応答を増強する方法であって、有効量の上記の可溶性融合タンパク質複合体の任意のものを患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0052】
1つの態様では、本開示は、新生物又は感染性疾患の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、上記の可溶性融合タンパク質複合体のいずれかを含む有効量の医薬組成物を前記患者に投与し、それにより前記新生物又は感染性疾患を治療する工程を含む方法を提供する。
【0053】
1つの実施形態では、新生物は、膠芽腫、前立腺癌、血液学的癌、B細胞新生物、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃癌及び食道癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び頭頚部扁平上皮癌からなる群から選択される。
【0054】
1つの実施形態では、免疫細胞は、NK細胞又はサイトカイン誘導性メモリー様(CIML)NK細胞である。
【0055】
1つの実施形態では、活性化免疫細胞の有効量は、1×104細胞/kg~1×1010細胞/kgである。
【0056】
1つの実施形態では、免疫細胞は、少なくとも週に1回投与される。
【0057】
1つの実施形態では、有効量は、前記有効タンパク質複合体の1~100μg/kgである。
【0058】
1つの実施形態では、融合タンパク質複合体は、少なくとも週に1回投与される。
【0059】
1つの実施形態では、融合タンパク質複合体は、免疫細胞増殖、活性化マーカー、標的細胞に対する細胞傷害性及び/又はIFN-γを含む前炎症性サイトカインの産生を増加させる。
【0060】
好ましくは、融合タンパク質複合体は、対象における疾患細胞又は腫瘍細胞を殺傷するためにインターフェロンガンマ(IFN-γ)の血清中レベルを増加させ、且つ/又はCD4+及びCD8+T細胞並びにNK細胞を刺激する。
【0061】
他に特に規定しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者であれば一般に理解する意味と同一の意味を有する。下記の参考文献は、本発明において使用する多数の用語の一般的定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988);The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991);及びHale&Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用するように、以下の用語は、他に特に規定しない限り、下記に帰せられる意味を有する。
【0062】
「(薬)剤」は、ペプチド、核酸分子又は低分子化合物を意味する。
【0063】
「TxM」は、結合ドメインに連結されたIL-15N72D:IL-15RαSu/Fcスカフォールドを含む融合タンパク質複合体を意味する(
図1A、1B)。典型的なTxMは、IL-12及びIL-18サイトカインへの融合を含むIL-15N72D:IL-15RαSu融合タンパク質複合体である。
【0064】
「改善する」は、疾患の発症又は進行を低減させるか、抑制するか、弱めるか、縮小するか、阻止するか又は安定化させることを意味する。
【0065】
「類似体」は、同一ではないが類似する機能的又は構造的特徴を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチド類似体は、対応する天然型ポリペプチドの生物活性を保持する一方、天然型ポリペプチドと比較して類似体の機能を増強する所定の生化学的修飾を有する。そのような生化学的修飾は、例えば、リガンド結合を変化させることなく類似体のプロテアーゼ耐性、膜透過性又は半減期を増加させ得る。類似体は、非天然アミノ酸を含み得る。
【0066】
本発明は、抗体又はそのような抗体の断片が所望の生物活性を示す限りそれらを含む。また、本発明に含まれるのは、キメラ抗体、例えばヒト化抗体である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである起源からその中に導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば、当該技術分野において記載された方法を使用して、齧歯類相補性決定領域の少なくとも一部分をヒト抗体の対応する領域と置換する工程によって実施することができる。
【0067】
用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を包含することが意図されている。好ましい抗体は、抗原と反応性のモノクローナル抗体である。用語「抗体」は、抗原と反応性である2種以上の抗体の混合物(例えば、抗原と反応性である様々なタイプのモノクローナル抗体のカクテル)を包含することも意図されている。用語「抗体」は、抗体全体、その生物学的に機能的な断片、一本鎖抗体及び2つ以上の種に由来する部分を含むキメラ抗体などの遺伝子改変抗体、二官能性抗体、抗体コンジュゲート、ヒト化抗体及びヒト抗体を包含することも意図されている。同様に使用できる生物学的官能性抗体断片は、抗原に十分に結合することができる、抗体に由来するそのペプチド断片である。本明細書で使用する「抗体」は、抗体全体及び関心対象のエピトープ、抗原又は抗原断片に結合することができる任意の抗体断片(例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv)を含むことが意図されている。
【0068】
分子に「結合する」は、その分子に対する生理化学的親和性を有することを意味する。
【0069】
用語「結合ドメイン」は、抗体、一本鎖抗体、Fab、Fv、T細胞受容体結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、受容体結合ドメイン又は当該技術分野において公知である他の抗原特異的ポリペプチドを包含することが意図されている。
【0070】
本明細書で使用する用語「生物活性ポリペプチド」又は「エフェクター分子」は、本明細書で考察する所望の作用を生成できるアミノ酸配列、例えばタンパク質、ポリペプチド又はペプチド;糖又は多糖;脂質又は糖脂質、糖タンパク質又はリポタンパク質を意味する。エフェクター分子には、化学薬品も含まれる。また、企図されるのは、生物活性若しくはエフェクタータンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするエフェクター分子核酸である。したがって、好適な分子には、調節因子、酵素、抗体又は薬物並びにDNA、RNA及びオリゴヌクレオチドが含まれる。生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子は、天然型であり得るか、又は公知の成分から例えば組み換え合成若しくは化学合成によって合成され得、異種成分を含み得る。生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子は、例えば、遠心分離又はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの標準の分子サイジング技術によって判定されるように、一般に、約0.1~100KD以上~約1,000Kdまで、好ましくは約0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、30~50KDである。本発明の所望の作用には、限定されないが、例えば、増加した結合活性を備える本発明の融合タンパク質複合体を形成すること、例えば細胞増殖又は細胞死を誘導するために標的細胞を殺傷すること、疾患を予防又は治療する際に免疫応答を開始させるか又は診断目的で検出分子として作用することが含まれる。そのような検出のために、アッセイ、例えば細胞を増殖させるために細胞を培養する工程と、細胞を本発明の融合タンパク質複合体と接触させる工程と、次に融合タンパク質複合体が細胞の発達をさらに阻害するかどうかを評価する連続工程とを含むアッセイを使用し得る。
【0071】
本発明に従ったエフェクター分子を本発明の融合タンパク質複合体に共有結合させる工程は、多数の有意な利点を提供する。公知の構造のペプチドを含む単一エフェクター分子を含有する本発明の融合タンパク質複合体を生成することができる。さらに、類似のDNAベクター内で極めて様々なエフェクター分子を生成できる。すなわち、感染細胞及び疾患細胞を認識するために1ライブラリーの異なるエフェクター分子を融合タンパク質複合体に連結させることができる。さらに、治療適用のために、対象への本発明の融合タンパク質複合体の投与ではなく、融合タンパク質複合体のインビボ発現のために融合タンパク質複合体をコードするDNA発現ベクターを投与することができる。そのようなアプローチは、組み換えタンパク質の調製と典型的に関連する費用を要する精製工程を回避し、従来型アプローチに関連する抗原取り込み及びプロセッシングの複雑性を回避する。
【0072】
上述のように、本明細書に開示した融合タンパク質の成分、例えばエフェクター分子、例えばサイトカイン、ケモカイン、増殖因子、タンパク質毒素、免疫グロブリンドメイン又は他の生物活性分子及び任意のペプチドリンカーは、融合タンパク質が、それが意図される機能を有することを前提として、ほぼ任意の方法で組織化することができる。特に、融合タンパク質の各成分は、必要に応じて、少なくとも1つの好適なペプチドリンカー配列によって別の成分から間隔を空けて配置することができる。さらに、融合タンパク質は、例えば、融合タンパク質の修飾、同定及び/又は精製を促進するためにタグを含み得る。より特定の融合タンパク質について下記の実施例で記載する。
【0073】
「検出する」は、検出対象の検体の存在、非存在又は量を同定することを意味する。
【0074】
「疾患」は、細胞、組織又は臓器の正常機能を損傷又は妨害する任意の状態又は障害を意味する。疾患の例としては、新生物及びウイルス感染症が挙げられる。
【0075】
製剤又は製剤の成分の用語「有効量」及び「治療的有効量」は、単独又は組み合わせて、製剤又は成分の所望の効果を提供するのに十分な量を意味する。例えば、「有効量」は、単独又は組み合わせて、未治療の患者と比較して疾患の症状を改善するために必要とされる化合物の量を意味する。疾患の治療的処置のために本発明を実施するために使用される活性化合物の有効量は、投与方法、対象の年齢、体重及び全体的な健康状態に応じて変化する。最終的に、主治医又は獣医が適正量及び投与レジメンを決定するであろう。そのような量が「有効」量と称される。
【0076】
「断片」は、ポリペプチド又は核酸分子の一部分を意味する。この部分は、好ましくは、参照核酸分子又は参照ポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%を含有する。例えば、断片は、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個又は100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個又は1,000個のヌクレオチド又はアミノ酸を含有し得る。しかしながら、本発明は、全長ポリペプチド及び全長核酸の所望の生物活性をそれらがそれぞれ示す限り、ポリペプチド及び核酸の断片を含む。ほとんどあらゆる長さの核酸断片が利用される。例えば、長さが約10,000、約5,000、約3,000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100、約50の(全ての中間の長さを含む)塩基対の全長を有する例示的なポリヌクレオチドセグメントが本発明の多くの実施に含まれる。同様に、ほとんどあらゆる長さのポリペプチド断片が利用される。例えば、長さが約10,000、約5,000、約3,000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100又は約50の(全ての中間の長さを含む)アミノ酸長を有する例示的なポリペプチドセグメントが本発明の多くの実施に含まれる。
【0077】
用語「単離(された)」、「精製(された)」又は「生物学的に純粋な」は、様々な程度まで、その天然の状態で見られるような通常伴う成分を含まない材料を指す。「単離体」は、本来の起源又は環境からの分離の程度を意味する。「精製する」は、単離よりも高い分離の程度を意味する。
【0078】
「精製(された)」又は「生物学的に純粋な」タンパク質は、任意の不純物がタンパク質の生物学的特性に物質的に影響を与えないか、又は他の不利な結果をもたらさないように十分に他の材料を含まない。すなわち、本発明の核酸又はペプチドは、それが実質的に細胞物質、ウイルス物質若しくは組み換えDNA技術によって生成された場合には培養培地を、又は化学合成された場合には化学的前駆物質若しくは他の化学薬品を実質的に含んでいなければ精製されている。純度及び均質性は、典型的には、分析的化学技術、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動法又は高性能液体クロマトグラフィーを使用して決定される。用語「精製(された)」は、核酸又はタンパク質が電気泳動ゲル内で本質的に1つのバンドを生じさせることを意味し得る。修飾、例えばリン酸化又はグリコシル化を受けさせることのできるタンパク質に対して、様々な修飾は、別個に精製することのできる様々な単離されたタンパク質を生じさせ得る。
【0079】
同様に、「実質的に純粋」は、それに自然に付随する成分から分離されているヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。典型的には、ヌクレオチド及びポリペプチドは、それらが自然に結び付いているタンパク質及び天然型有機分子を少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%又はさらに99重量%含まない場合に実質的に純粋である。
【0080】
「単離された核酸」は、核酸がそれに由来する生体の天然型ゲノム内でそれに隣接する遺伝子を全く含まない核酸を意味する。この用語は、例えば、(a)天然型ゲノムDNA分子の一部であるが、その中でそれが自然に発生する生体のゲノム内の分子のその部分に隣接する両方の核酸分子によって隣接されていないDNA、(b)生じた分子が任意の天然型ベクター又はゲノムDNAと同一ではない方法でベクター内又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNA内に組み込まれた核酸、(c)例えばcDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成された断片又は制限断片などの別個の分子、及び(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組み換えヌクレオチド配列に及ぶ。本発明による単離された核酸分子は、合成により生成された分子及び化学的に変化されており且つ/又は修飾された骨格を有する任意の核酸をさらに含む。例えば、単離された核酸は、精製cDNA又はRNAポリヌクレオチドである。単離された核酸分子は、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子も含む。
【0081】
「単離されたポリペプチド」は、それに自然に付随する成分から分離されている本発明のポリペプチドを意味する。典型的には、ポリペプチドは、それが自然に結び付いているタンパク質及び天然型有機分子を少なくとも60重量%含まない場合に単離されている。好ましくは、調製物は、本発明の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%及び最も好ましくは少なくとも99重量%のポリペプチドである。本発明の単離されたポリペプチドは、例えば、天然起源からの抽出により、そのようなポリペプチドをコードする組み換え核酸の発現により、又はタンパク質を化学的に合成することにより得ることができる。純度は、任意の適切な方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法又はHPLC分析によって測定できる。
【0082】
「マーカー」は、疾患又は障害と結び付いている発現レベル又は活性における変化を有する任意のタンパク質又はポリヌクレオチドを意味する。
【0083】
「新生物」は、過剰な増殖又はアポトーシスの減少によって特徴付けられる疾患又は障害を意味する。本発明が使用され得る例示的な新生物には、限定されないが、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンストレーム・マクログロブリン血症、重鎖病及び例えば肉腫及び癌腫などの固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、多形膠芽腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫)が含まれる。特定の実施形態では、新生物は、多発性骨髄腫、β細胞リンパ腫、尿路上皮/膀胱癌又は黒色腫である。本明細書で使用するような「薬剤を得ること」における「得ること」は、その薬剤を合成すること、購入すること、又はさもなければ取得することを含む。
【0084】
「減少する」は、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%又は100%の負の変化を意味する。
【0085】
「参照」は、標準又は対照の条件を意味する。
【0086】
「参照配列」は、配列比較のための基準として使用される規定配列である。参照配列は、特定配列のサブセット又は全体;例えば、全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント又は完全cDNA若しくは遺伝子配列であり得る。ポリペプチドについて、参照ポリペプチド配列の長さは、一般的には、少なくとも約16個のアミノ酸、好ましくは少なくとも約20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約25個のアミノ酸、より一層好ましくは35個のアミノ酸、約50個のアミノ酸又は約100個のアミノ酸であろう。核酸について、参照核酸配列の長さは、一般的には、少なくとも約50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75個のヌクレオチド、より一層好ましくは100個のヌクレオチド若しくは約300個のヌクレオチド又はおよそ若しくはそれらの間の任意の整数である。
【0087】
「特異的に結合する」は、本発明のポリペプチドを認識して結合するが、試料中、例えば自然に本発明のポリペプチドを含む生物学的試料中の他の分子を実質的に認識して結合することがない化合物又は抗体を意味する。
【0088】
本発明の方法において有用な核酸分子には、本発明のポリペプチド又はその断片をコードする任意の核酸分子が含まれる。そのような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示すであろう。内因性配列との「実質的同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることができる。本発明の方法において有用な核酸分子には、本発明のポリペプチド又はその断片をコードする任意の核酸分子が含まれる。そのような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示すであろう。内因性配列との「実質的同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズする」は、様々なストリンジェンシーの条件下において、相補性ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載した遺伝子)間で二本鎖分子を形成する対又はその部分を意味する(例えば、Wahl,G.M.and S.L.Berger(1987)Methods Enzymol.152:399;Kimmel,A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507を参照されたい)。
【0089】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、約750mM未満のNaCl及び75mMのクエン酸三ナトリウム、好ましくは約500mM未満のNaCl及び50mMのクエン酸三ナトリウム、より好ましくは約250mM未満のNaCl及び25mMのクエン酸三ナトリウムとなるであろう。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、有機溶媒、例えばホルムアミドの不在下で得ることができる一方、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%のホルムアミド、より好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃及び最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含むであろう。例えば、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度及び担体DNAの包含又は除外などの様々な追加のパラメーターは、当業者に周知である。様々なレベルのストリンジェンシーは、これらの様々な条件を必要に応じて組み合わせることにより遂行される。好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム及び1%のSDS中において30℃で行われるであろう。より好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、500mMのNaCl、50mMのクエン酸三ナトリウム、1%のSDS、35%のホルムアミド及び100μg/mLの変性サケ精子DNA(ssDNA)中において37℃で行われるであろう。最も好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、250mMのNaCl、25mMのクエン酸三ナトリウム、1%のSDS、50%のホルムアミド及び200μg/mLのssDNA中において42℃で行われるであろう。これらの条件に対する有用な変化は、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0090】
ほとんどの用途について、ハイブリダイゼーションに続く洗浄工程もストリンジェンシーが異なるであろう。洗浄ストリンジェンシー条件は、塩濃度及び温度によって規定され得る。上述のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度の減少又は温度の上昇によって増加され得る。例えば、洗浄工程のためのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは、約30mM未満のNaCl及び3mMのクエン酸三ナトリウム、最も好ましくは約15mM未満のNaCl及び1.5mMのクエン酸三ナトリウムとなるであろう。洗浄工程に対するストリンジェントな温度条件として、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、より一層好ましくは少なくとも約68℃の温度が挙げられる。好ましい実施形態では、洗浄工程は、30mMのNaCl、3mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%のSDSにおいて、25℃で行われるであろう。より好ましい実施形態では、洗浄工程は、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%のSDSにおいて、42℃で行われるであろう。より好ましい実施形態では、洗浄工程は、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%のSDSにおいて、68℃で行われるであろう。これらの条件に対する追加の変化は、当業者に容易に明らかとなるであろう。ハイブリダイゼーション技術は、当業者に周知であり、例えばBenton and Davis(Science 196:180,1977);Grunstein and Hogness(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 72:3961,1975);Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,New York,2001);Berger and Kimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press,New York);及びSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに記載されている。
【0091】
「実質的に同一」は、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載したアミノ酸配列のいずれか1つ)又は核酸配列(例えば、本明細書に記載した核酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すポリペプチド又は核酸分子を意味する。好ましくは、そのような配列は、比較に使用される配列に対するアミノ酸レベル又は核酸レベルで少なくとも60%、より好ましくは80%又は85%、より好ましくは90%、95%又はさらに99%同一である。
【0092】
配列同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェア(例えば、Sequencher,Gene Codes Corporation,775 Technology Drive、Ann Arbor,MI;Vector NTI,Life Technologies,3175 Staley Rd.Grand Island,NY)を使用して測定される。そのようなソフトウェアは、様々な置換、欠失及び/又は他の修飾に対するホモロジーの程度を割り当てることによって同一又は類似の配列を一致させる。保存的置換は、典型的には、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン内の置換を含む。同一性の程度を特定するための例示的なアプローチでは、e-3~e-100の確率スコアが密接に関連する配列を示すBLASTプログラムを使用することができる。
【0093】
「対象」は、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えばウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ又はネコなどを含むが、それらに限定されない哺乳動物を意味する。対象は、好ましくは、そのような治療を必要とする哺乳動物、例えばB細胞リンパ腫又はそれに対する素因があると診断されている対象である。哺乳動物は、任意の哺乳動物、例えばヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ並びに家畜又は食用のために成長させた動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ及びヤギである。1つの好ましい実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0094】
本明細書に提供した範囲は、範囲内の全数値についての省略表現であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ又は部分範囲を含むと理解される。
【0095】
本明細書で使用する用語「治療する」及び「治療」は、症状の重症度及び/若しくは頻度の低減に影響を及ぼし、症状及び/若しくはその根本的な原因を排除し、且つ/又は損傷の改善若しくは矯正を促進するために、有害な状態、障害又は疾患に悩まされる臨床的症候性の個体への薬剤又は製剤の投与を指す。除外されないが、疾患又は状態を治療することは、障害、それに関連する状態又は症状が完全に排除されることを必要としないことが理解されるであろう。治療において使用される薬剤又は製剤は、細胞又は組織を含み得る。
【0096】
新生物を有する患者の治療は、下記のいずれかを含み得る:公知の腫瘍が初期療法(例えば、手術)によって除去された後に存在する可能性がある遺残細胞を破壊し、それにより可能性のある癌再発を防止するためのアジュバント療法(補助療法又は付加療法とも呼ばれる);癌を収縮させるために外科手技前に行われる新補助療法;典型的には急性白血病のための寛解を誘発する誘導療法;寛解を維持するために寛解が達成された後に行われる地固め療法(強化療法とも呼ばれる);寛解を延長させることを補助するためにより低用量又は低頻度で行われる維持療法;第一線療法(標準療法とも呼ばれる);第二線(又は第三線、第四線など)療法(救済療法とも呼ばれる)は、第一線療法後に疾患が応答しなかったか又は再発した場合に行われる;及び癌を有意に低減させることを期待せずに症状管理に対応するための緩和療法(対症療法とも呼ばれる)。
【0097】
用語「予防する工程」及び「予防」は、特定の有害な状態、障害若しくは疾患に罹患し易いか、又は素因のある臨床的無症候性の個体への薬剤若しくは組成物の投与に関するため、したがって症状の発生及び/又はその根本的原因の予防に関する。
【0098】
詳細に規定しない限り又は前後関係から明白でない限り、本明細書で使用する用語「又は」は、包括的であると理解される。詳細に規定しない限り又は前後関係から明白でない限り、本明細書で使用する用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、単数又は複数であると理解される。
【0099】
詳細に規定しない限り又は前後関係から明白でない限り、本明細書で使用する用語「約」は、当該技術分野における通常の容認範囲内、例えば平均値の2標準偏差内であると理解される。「約」は、標準値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%内であると理解され得る。前後関係から他のことが明白でない限り、本明細書に提供した全数値は、用語「約」によって修飾される。
【0100】
本明細書の変量のいずれかの定義における化学基のリストの列挙は、任意の単一基又は列挙した基の組み合わせとしてのその変量の定義を含む。本明細書での変量又は態様についての実施形態の列挙は、任意の単一実施形態としての又は任意の他の実施形態若しくはその部分と組み合わせた実施形態を含む。
【0101】
本明細書に提供した任意の組成物又は方法は、本明細書に提供した他の組成物のいずれか及び方法の1つ以上と組み合わせることができる。
【0102】
「含む」、「含有する」又は「を特徴とする」と同義である移行用語「含む」は、包含的又は無制限であり、追加の列挙されなかった要素又は方法の工程を排除しない。対照的に、移行句「~からなる」は、特許請求の範囲で指定されていないいかなる要素、工程又は成分も排除する。「~から本質的になる」の移行句は、特許請求の範囲を本発明の特許請求の範囲の指定された材料又は工程「及び基本的な新規の特徴に物質的に影響を与えないもの」に限定する。
【0103】
本発明の他の特徴及び利点は、下記の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明及び特許請求項から明白であろう。他に特に規定しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者であれば一般に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書に記載したものに類似しているか又は均等である方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができるが、以下では適切な方法及び材料を記載する。本明細書で言及した全ての刊行された外国の特許及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
本明細書で引用したアクセッション番号によって示されるGenbank及びNCBIの寄託は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される全ての他の公開された参照文献、文書、原稿及び科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法及び実施例は、例示することのみを意図しており、限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1A】IL-12及びIL-18結合ドメインに融合されたIL-15N72D:IL-15RαSu/Fcスカフォールドを含む様々なTxM融合タンパク質複合体を例示する概略図である。一部の場合、二量体IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体は、1種又は2種のIL-15N72D融合タンパク質を含む。
【
図1B】IL-18結合ドメインに融合されたIL-15N72D:IL-15RαSu/Fcスカフォールドを含む様々なTxM融合タンパク質複合体を例示する概略図である。
【
図2A】プロテインA樹脂上の結合及び溶出後のhIL18/IL12/TxMタンパク質含有細胞培養上清のクロマトグラフィープロファイルを示す線グラフである。
【
図2B】分取サイズ排除カラム上での溶出後のプロテインA精製hIL18/IL12/TxMタンパク質のクロマトグラフィープロファイルを示す線グラフである。
【
図2C】タンパク質凝集体からの単量体マルチタンパク質hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体の分離を証明する、分析的サイズ排除カラム上での溶出後のプロテインA/SEC精製hIL18/IL12/TxMタンパク質のクロマトグラフィープロファイルを示す線グラフである。
【
図3】ジスルフィド結合減少後のhIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル(4~12%)電気泳動法(SDS-PAGE)分析を示す写真である。左のレーン:SeeBlue Plus2マーカー、右のレーン:プロテインA精製hIL18/IL12/TxM。
【
図4A】ヒトIL-15及びヒトIgGに対して特異的な抗体へのhIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体の結合活性を示す線グラフである。
【
図4B】ヒトIL-15及びヒトIgGに対して特異的な抗体へのhIL12/IL18/TxM融合タンパク質複合体の結合活性を示す線グラフである。
【
図4C】ヒトIL-15及びヒトIL-18に対して特異的な抗体への双頭型(two headed)IL18/TxM融合タンパク質複合体の結合活性を示す線グラフである。コントロールには、アッセイフォーマットに依存して、抗CD20 TxM(2B8T2M)、ALT-803及びhIL12/IL18/TxMが含まれる。
【
図5】ALT-803と比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によって媒介されたIL-15依存性32Dβ細胞の増殖を例示する線グラフである。
【
図6】ALT-803と比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によって媒介されたIL-15依存性32Dβ細胞の増殖をさらに例示する線グラフである。
【
図7】IL-18と比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によって媒介されたIL-18感受性HEK18受容体細胞の活性化をさらに例示する線グラフである。
【
図8】IL-12と比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によって媒介されたIL-12感受性HEK12受容体細胞の活性化をさらに例示する線グラフである。
【
図9A-9B】NK細胞中でのSTAT4のリン酸化を刺激することについて培地コントロール(黒線)と比較した、hIL18/IL12/TxM(
図9A)又は組み換えIL-12、IL-18及びALT-803(rIL12+rIL18+ALT-803)の組み合わせ(
図9B)(赤線)のIL-12生物活性を示す線グラフである。
【
図9C-9D】精製ヒトNK細胞中でのp38 MAPKのリン酸化を刺激することについて培地コントロール(黒線)と比較した、hIL18/IL12/TxM(A)又は組み換えIL-12、IL-18及びALT-803(rIL12+rIL18+ALT-803)の組み合わせ(B)(赤線)のIL-18生物活性を示す線グラフである。
【
図9E-9F】aNK細胞中でのSTAT5のリン酸化を刺激することについて培地コントロール(黒線)と比較した、hIL18/IL12/TxM(A)又は組み換えIL-12、IL-18及びALT-803(rIL12+rIL18+ALT-803)の組み合わせ(B)(赤線)のIL-15生物活性を示す線グラフである。
【
図10A】aNK細胞によるIFN-γ産生を誘導することについてサイトカイン単独又は組み合わせと比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体の結合サイトカイン免疫賦活活性を例示する棒グラフである。
【
図10B】aNK細胞によるIFN-γ産生を誘導することについてALT-803又はhIL18/IL12/TxMと比較した、双頭型IL18/TxM融合タンパク質複合体のサイトカイン免疫賦活活性を例示する線グラフである。
【
図11A-11B】精製ヒトNK細胞によってCD25を誘導することについて培地コントロール(黒線)と比較した、hIL18/IL12/TxM(
図11A)又は組み換えIL-12、IL-18及びALT-803(rIL12+rIL18+ALT-803)の組み合わせ(
図11B)(赤線)の生物活性を示す線グラフである。
【
図11C-11D】精製ヒトNK細胞によってCD69を誘導することについて培地コントロール(黒線)と比較した、hIL18/IL12/TxM(
図11A)又は組み換えIL-12、IL-18及びALT-803(rIL12+rIL18+ALT-803)の組み合わせ(
図11B)(赤線)の生物活性を示す線グラフである。
【
図11E-11F】精製ヒトNK細胞によって細胞内IFN-γを誘導することについて培地コントロール(黒線)と比較した、hIL18/IL12/TxM(A)又は組み換えIL-12、IL-18及びALT-803(rIL12+rIL18+ALT-803)の組み合わせ(B)(赤線)の生物活性を示す線グラフである。
【
図12A】IL-18+IL-12+ALT-803と比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によって媒介されたヒトNK細胞の表面上の活性化マーカーCD25の誘導を例示する線グラフである。
【
図12B】IL-18+IL-12+ALT-803と比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によって媒介されたヒトNK細胞中の細胞内IFN-γの誘導を例示する線グラフである。
【
図13A】hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体(ALT-803と比較して)を用いてプライミングし、その後、ALT-803中で静止させることによって誘導されるヒトCIML NK細胞の表面上でのCD25の維持を例示する棒グラフである。
【
図13B】hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体(ALT-803と比較して)を用いてプライミングし、その後、ALT-803中で静止させ、且つIL-12+ALT-803又はK562白血病標的を用いた再刺激によって誘導されたヒトCIML NK細胞中の細胞内IFN-γのレベル増強を例示する棒グラフである。
【
図14A】再刺激なしと比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体、個々のサイトカイン又はIL-18+IL-12+ALT-803を用いてプライミングし、その後、IL-15中で静止させ、IL-12+ALT-803を用いた再刺激によって誘導されたヒトCIML NK細胞中の増殖(CTV希釈)及びIFN-γ発現を例示する輪郭プロットを示す。
【
図14B】再刺激なしと比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体、個々のサイトカイン又はIL-18+IL-12+ALT-803を用いてプライミングし、その後、ALT-803中で静止させ、IL-12+ALT-803を用いた再刺激によって誘導されたヒトCIML NK細胞中の増殖(CTV希釈)及びIFN-γ発現を例示する輪郭プロットである。
【
図15】hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体、個々のサイトカイン又はIL-18+IL-12+ALT-803を用いてプライミングし、その後、IL-15又はALT-803中で静止させ、IL-12+ALT-803を用いた再刺激によって誘導されたヒトCIML NK細胞中の増殖(CTV希釈)を例示するヒストグラムプロットを示す。
【
図16】hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体又はALT-803(IL-15N72D:IL-15Rα/Fc複合体)によって誘導されたMDA-MB-231ヒト乳癌細胞に対するヒトNK細胞の細胞傷害性を例示する棒グラフである。
【
図17A】ALT-803又は治療なしと比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によって媒介されたヒトNK細胞中の細胞内グランザイムBの誘導を例示する棒グラフである。
【
図17B】培地単独又はALT-803と比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体を用いたプライミング後の組織因子陽性SW1990ヒト膵臓腺癌細胞に対するヒトNK細胞の直接的細胞傷害性(ビヒクル棒)又は抗体依存性細胞傷害性(αTF抗体棒)を例示する棒グラフである。
【
図17C】培地単独又はALT-803と比較した、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体を用いたプライミング後の抗TF抗体又は培地単独(ビヒクル)を用いたSW1990ヒト膵臓腺癌細胞と共にインキュベートしたヒトNK細胞によるIFN-γの発現の増加を例示する棒グラフである。
【
図18A】C57BL/6マウスにおけるhIL18/IL12/TxM(20mg/kg)対PBSの投与後の脾臓重量における変化を示す棒グラフである。
【
図18B】PBSコントロールと比較した、hIL18/IL12/TxM(20mg/kg)の投与後のC57BL/6マウスの脾臓中のCD8 T細胞及びNK細胞数における変化を示す棒グラフである。
【
図18C】PBSコントロールと比較した、hIL18/IL12/TxM(20mg/kg)の投与後のC57BL/6マウスの血液中の絶対CD8 T細胞及びNK細胞のパーセンテージにおける変化を示す棒グラフである。
【
図18D】PBSコントロールと比較した、hIL18/IL12/TxM(20mg/kg)の投与後のC57BL/6マウスの血液中のCD8 T細胞及びNK細胞のパーセンテージにおける変化を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0106】
ナチュラルキラー(NK)細胞及びT細胞を利用する療法は、これらの細胞が疾患細胞を殺傷して前炎症性サイトカインを放出する能力に起因して、癌及びウイルス感染症に対する将来性のある治療として出現してきた(例えば、Fehniger TA and Cooper MA.Trends Immunol.2016;37:877-888;及びCerwenka A and Lanier LL.Nat Rev Immunol.2016 16:112-23を参照されたい)。特に関心が高いのは、持続性の非抗原特異的NK細胞エフェクター機能を示すサイトカイン誘導性メモリー様(CIML)ナチュラルキラー(NK)細胞である。これらの細胞は、飽和量のインターロイキン-12(IL-12、10ng/mL)、IL-15(50ng/mL)及びIL-18(50ng/mL)を用いた精製NK細胞の一晩の刺激後にエクスビボで誘導することができる。これらのプライミングされたNK細胞は、例えば、1)増殖の増強、2)IL-2受容体α(IL-2Rα、CD25)、パーフォリン、グランザイム及び他の活性化マーカーの発現、及び3)再刺激後の増加したインターフェロンγ(IFN-γ)産生などのメモリー様特性を示す。
【0107】
ヒト初回投与試験の第1相臨床試験におけるCIML NK細胞の初期治療的評価は、シクロホスファミド及びフルダラビンを用いて予備状態調節されていた再発性又は難治性急性骨髄性白血病(AML)を有する患者への同種半分一致NK細胞のエクスビボでのIL-12/IL-15/IL-18刺激、その後のCIML Nk細胞の養子移入を利用した。移入後、患者は、インビボで細胞を支持するために低用量IL-2を摂取した。これらの移入されてプライミングされたNK細胞は、注入の7~14日後に頻度がピークに達し、移入7日後には血液中に90%超の全NK細胞が含まれていた。雑誌刊行時に評価可能であった患者9例中、形態学的白血病を有していない状態を有する患者1例に加えて4例が完全緩解を有し、これは、養子移入されたCIML NK細胞によって媒介された前途有望な治療活性を示唆している(参照により本明細書に組み込まれるRomee,R,et al.Sci Transl Med.2016;8:357ra123を参照されたい)。
【0108】
本明細書に記載した本発明以前には、CIML NK細胞を生成するための最適な方法は、十分に解明されていなかった。本明細書に記載した本発明以前には、戦略は、哺乳動物細胞精製サイトカインと比較してグリコシル化及び潜在的に他の翻訳後修飾が異なる組み換えヒトIL-12(昆虫細胞中で生成された)、ヒトIL-18(大腸菌(E.coli)中で生成された)及びヒトIL-15(大腸菌(E.coli)中で生成された)を利用していた。組み換えサイトカインは、異なる純度及び安定性も有する可能性があり、一般に臨床用材料として利用可能ではない。さらに、各サイトカインは、固有の受容体結合、内在化及び再循環特性を有すると期待されている。
【0109】
したがって、本明細書では、IL-12及びIL-18結合ドメインを含む多重特異的IL-15系融合タンパク質複合体が提供される(
図1A、1B)。詳細には、本明細書で記載するのは、IL-12及びIL-18結合ドメインに融合されたIL-15N72D:IL-15RαSu-Ig Fcスカフォールドを含む融合タンパク質複合体である。ヒト免疫細胞を使用して特徴付けた場合、これらの融合タンパク質複合体は、IL-15、IL-12及びIL-18サイトカインのそれぞれの結合活性及び生物活性を示す。さらに、これらの融合タンパク質複合体は、活性化マーカーの上昇、腫瘍細胞に対する細胞傷害性の増加及びIFN-γの産生の増強を伴ってCIML NK細胞を誘導するように作用する。したがって、単一分子としての融合タンパク質複合体は、NK細胞上の複数のサイトカイン受容体に結合して、それらを介してシグナルを発し、以前には複数の個別サイトカインの組み合わせを用いた場合にのみ観察された相乗作用性応答を提供する。さらに、これらの融合タンパク質複合体は、可溶性マルチポリペプチド複合体を提供し、精製の目的でプロテインAを結合し、NK細胞及びマクロファージ上のFcγ受容体と相互作用するために二量体を形成できるIg分子のFc領域を含むため、それにより個別サイトカインの組み合わせ中に存在しない利点を融合タンパク質複合体に提供する。本明細書では、臨床用物質を大規模生産するために好適なこれらの融合タンパク質複合体を生成するための哺乳動物細胞発現に基づく方法が記載される。本発明の融合タンパク質複合体によって誘導されるCIML NK細胞を作成及び使用するための追加の方法も提供される。
【0110】
インターロイキン-15
インターロイキン-15(IL-15)は、エフェクターNK細胞及びCD8+メモリーT細胞の発生、増殖及び活性化に重要なサイトカインである。IL-15は、IL-15受容体α(IL-15Rα)に結合し、エフェクター細胞上のIL-2/IL-15受容体β共通γ鎖(IL-15Rβγc)複合体に対してトランスで提示される。IL-15及びIL-2は、IL-15Rβγcへの結合並びにSTAT3及びSTATS経路を通してのシグナルを共有する。しかしながら、IL-2と異なり、IL-15は、CD4+CD25+FOXP3+調節性T(Treg)細胞の維持を支持することも、活性化CD8+T細胞の細胞死を誘導することもないため、これは、多発性骨髄腫に対するIL-2の治療活性を限定する可能性がある作用である。さらに、IL-15は、エフェクターCD8+T細胞に対して抗アポトーシスシグナルを提供することが知られている唯一のサイトカインである。IL-15は、単独又はIL-15Rαとの複合体のいずれかとして投与され、実験動物モデルにおいて明確に樹立された固形腫瘍に対して強力な抗腫瘍活性を示すため、したがって癌を潜在的に治療し得る最も前途有望な免疫療法薬の1つであると同定されている。
【0111】
IL-15系癌治療薬の臨床開発を促進するため、IL-15と比較して増加した生物活性を有するIL-15突然変異体(IL-15N72D)が同定された(Zhu et al.,J Immunol,183:3598-3607,2009)。このIL-15スーパーアゴニスト(IL-15N72D)の薬物動態及び生物活性は、このスーパーアゴニスト複合体がインビボで天然サイトカインの少なくとも25倍の活性を有するようにIL-15N72D:IL-15Rα/Fc融合複合体(ALT-803)を作成することによってさらに改善された(Han et al.,Cytokine,56:804-810,2011)。
【0112】
IL-15:IL-15Rαタンパク質複合体
上述したように、IL-15:IL-15Rα融合タンパク質複合体は、天然IL-15Rαの可溶性IL-15Rαドメインに非共有的に結合したIL-15を有する複合体を意味し得る。一部の場合、可溶性IL-15Rαは、生物活性ポリペプチド及び/又はIgG Fcドメインに共有結合されている。IL-15は、IL-15又は第2生物活性ポリペプチドに共有結合されたIL-15のいずれかであり得る。IL-15:IL-15Rαタンパク質複合体の結晶構造は、本明細書に参照により組み込まれるChirifu et al.,2007 Nat Immunol 8,1001-1007に示されている。
【0113】
本明細書に描出した本発明の上記の態様又は任意の他の態様の様々な実施形態では、IL-15Rα融合タンパク質は、可溶性IL-15Rα、例えば生物活性ポリペプチドに共有結合されたIL-15Rα(例えば、IgGの重鎖定常ドメイン、IgGの重鎖定常ドメインのFcドメイン又はサイトカイン)を含む。上記の態様の本発明の他の実施形態では、IL-15は、IL-15、例えば第2生物活性ポリペプチドに共有結合されたIL-15、例えばサイトカインを含む。他の実施形態では、宿主細胞又は培地からIL-15:IL-15Rα融合タンパク質複合体を精製する工程は、IL-15:IL-15Rα融合タンパク質複合体に特異的に結合する親和性試薬上にIL-15:IL-15Rα融合タンパク質複合体を捕捉する工程を包含している。他の実施形態では、IL-15Rα融合タンパク質は、IL-15Rα/Fc融合タンパク質を含有し、親和性試薬は、Fcドメインに特異的に結合する。他の実施形態では、親和性試薬は、プロテインA又はプロテインGである。他の実施形態では、親和性試薬は、抗体である。他の実施形態では、IL-15:IL-15Rα融合タンパク質複合体を宿主細胞又は培地から精製する工程は、イオン交換クロマトグラフィーを含む。他の実施形態では、IL-15:IL-15Rα融合タンパク質複合体を宿主細胞又は培地から精製する工程は、サイズ排除クロマトグラフィーを含む。
【0114】
他の実施形態では、IL-15Rαは、IL-15RαSushi(IL-15RαSu)を含む。他の実施形態では、IL-15は、変異IL-15(例えば、IL-15N72D)である。他の実施形態では、IL-15:IL-15Rα融合タンパク質複合体のIL-15結合部位は、完全に占有されている。他の実施形態では、IL-15:IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体の両方のIL-15結合部位は、完全に占有されている。他の実施形態では、IL-15:IL-15Rα融合タンパク質複合体は、融合タンパク質複合体の電荷又はサイズ特性に基づいて精製される。他の実施形態では、完全に占有されたIL-15N72D:IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体は、融合タンパク質複合体の電荷特性に基づいてアニオン交換クロマトグラフィーによって精製される。他の実施形態では、完全に占有されたIL-15N72D:IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体は、低イオン強度中性pHバッファーを使用する結合条件及びイオン強度を増加させながらバッファーを利用する溶出条件を備える第4級アミン系樹脂を用いて精製される。
【0115】
所定の実施形態では、可溶性融合タンパク質複合体は、第1及び第2可溶性タンパク質を含み、第1可溶性タンパク質は、IL-12若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、及び第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、IL-15RαSuドメインは、IL-12若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されており、及び第1可溶性タンパク質のIL-15ポリペプチドドメインは、第2可溶性タンパク質のIL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する。
【0116】
所定の実施形態では、単離された可溶性融合タンパク質複合体は、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含む。所定の実施形態では、IL-15ポリペプチドドメインは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である。
【0117】
所定の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されている、単離された可溶性融合タンパク質複合体である。
【0118】
単離されたタンパク質融合複合体は、「双頭型」融合タンパク質複合体であり得る。これらの複合体は、例えば、IL-18/IL-15RαSu/Fc及びIL-15N72D融合タンパク質又はIL-15RαSu/Fc及びIL-18/IL-15N72D融合タンパク質を含む、IL-15、IL-15RαSu/Fc、インターロイキンのそれらの組み合わせにおいて変動し得る(
図1B)。同様に、これらの融合タンパク質複合体は、IL-12/IL-15RαSu/Fc及びIL-15N72D融合タンパク質又はIL-15RαSu/Fc及びIL-12/IL-15N72D融合タンパク質を含む。これらの組み合わせ及び変異体、突然変異体、同族体、類似体、修飾分子などを含む分子のタイプは、変動し得る。
【0119】
したがって、所定の実施形態では、単離された可溶性タンパク質複合体は、第1及び第2可溶性タンパク質を含み、ここで、第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、IL-15RαSuドメインは、IL-18結合ドメイン又はその機能的断片に融合されており、第2可溶性タンパク質は、IL-18ドメインに融合されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、第1可溶性タンパク質のIL-15ポリペプチドドメインは、第2可溶性タンパク質のIL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する。
【0120】
他の実施形態では、単離された可溶性融合タンパク質複合体は、第1及び第2可溶性タンパク質を含み、ここで、第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、IL-15RαSuドメインは、IL-12結合ドメイン又はその機能的断片に融合されており、第2可溶性タンパク質は、IL-12ドメインに融合されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、第1可溶性タンパク質のIL-15ポリペプチドドメインは、第2可溶性タンパク質のIL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する。
【0121】
所定の実施形態では、単離された可溶性融合タンパク質は、インターロイキン-15ポリペプチドドメイン、第1及び第2可溶性タンパク質を含み、第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片並びに免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含む第2可溶性タンパク質に連結されており、IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されており、IL-15ポリペプチドドメインは、第1及び/又は第2可溶性タンパク質のIL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する。
【0122】
別の実施形態では、単離された可溶性融合タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)、第1及び第2可溶性タンパク質を含み、ここで、第1可溶性タンパク質は、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15ポリペプチドドメイン並びにIL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15ポリペプチドドメインを含む第2可溶性タンパク質を含み、第1及び/又は第2可溶性タンパク質のIL-15ポリペプチドドメインは、IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する。
【0123】
本発明の可溶性融合タンパク質複合体の所定の実施形態では、IL-15ポリペプチドは、天然IL-15ポリペプチドと異なるアミノ酸配列を有するIL-15変異体である。ヒトIL-15ポリペプチドは、本明細書では、huIL-15、hIL-15、huIL15、hIL15、IL-15野生型(wt)と称され、その変異体は、天然のアミノ酸、成熟配列におけるその位置及び変異アミノ酸を使用して称される。例えば、huIL15N72Dは、72位でのNからDへの置換を含むヒトIL-15を指す。所定の実施形態では、IL-15変異体は、例えば、天然IL-15ポリペプチドと比較したIL-15RβγC受容体に対する結合活性の増加によって実証されるように、IL-15アゴニストとして機能する。所定の実施形態では、IL-15変異体は、例えば、天然IL-15ポリペプチドと比較したIL-15RβγC受容体に対する結合活性の減少によって実証されるように、IL-15アンタゴニストとして機能する。所定の実施形態では、IL-15変異体は、天然IL-15ポリペプチドと比較したIL-15RβγC受容体に対する結合親和性の増加又は結合活性の減少を有する。所定の実施形態では、IL-15変異体の配列は、天然IL-15配列と比較して少なくとも1つ(すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)アミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は、IL-15Rβ及び/又はIL-15RγCと相互作用するIL-15ドメイン内での1つ以上のアミノ酸置換又は欠失を含み得る。所定の実施形態では、アミノ酸変化は、成熟ヒトIL-15配列の8、61、65、72、92、101、108又は111位での1つ以上のアミノ酸置換又は欠失である。例えば、アミノ酸変化は、成熟ヒトIL-15配列の8位でのDからN又はAへの置換、61位でのDからA、65位でのNからA、72位でのNからR若しくは108位でのQからAへの置換又はこれらの置換の任意の組み合わせである。所定の実施形態では、アミノ酸変化は、成熟ヒトIL-15配列の72位でのNからDへの置換である。
【0124】
ALT-803
ALT-803は、IL-2Rβγに結合する増加した能力及び増強された生物活性を有するIL-15突然変異体を含む(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,507,222号明細書を参照されたい)。IL-15のこのスーパーアゴニスト突然変異体について、刊行物(参照により本明細書に組み込まれるZu et al.,2009 J Immunol,183:3598-3607)に記載された。可溶性IL-15α受容体融合タンパク質と組み合わせたこのIL-15スーパーアゴニスト(IL-15RαSu/Fc)は、インビトロ及びインビボでの高度に強力なIL-15活性を有する融合タンパク質複合体を生じさせる(Han et al.,2011,Cytokine,56:804-810;Xu,et al.,2013 Cancer Res.73:3075-86,Wong,et al.,2013,Oncolmmunology 2:e26442)。IL-15スーパーアゴニスト複合体は、「ALT-803」と呼ばれる、IL-15受容体α/IgG1 Fc融合タンパク質に結合したIL-15突然変異体(IL-15N72D)融合タンパク質(IL-15N72D:IL-15RαSu/Fc)を含む。
【0125】
薬物動態分析は、融合タンパク質複合体がマウスにおけるi.v.投与後に25時間の半減期を有することを示した。ALT-803は、免疫適格マウスにおいて進行性固形腫瘍及び血液学的腫瘍モデルに対する印象的な抗腫瘍活性を示す。ALT-803は、週2回又は週1回のi.v.投与レジメンを使用する単剤療法として、抗体を用いた組み合わせ療法として投与され得る。ALT-803抗腫瘍応答は、永続的である。ALT-803治療後に治癒した腫瘍担持マウスは、同一の腫瘍細胞を用いた再挑戦に対しても高度に抵抗性であり、これは、ALT-803が再導入された腫瘍細胞に対する効果的な免疫学的メモリー応答を誘導することを示した。
【0126】
ALT-803(二量体IL-15RαSu/Fc融合タンパク質と会合したIL-15N72D)の配列は、配列番号9を含む。
IL-15N72Dタンパク質配列(リーダーペプチドを含む)
METDTLLLWVLLLWVPGSTG-
[リーダーペプチド]
【化1】
【0127】
IL-15RαSu/Fcタンパク質配列(リーダーペプチドを含む)
MDRLTSSFLLLIVPAYVLS-
[リーダーペプチド]
【化2】
【化3】
【0128】
IL-12
IL-12は、様々な機能を有し、前炎症性応答及び抗炎症性応答の両方において重要な役割を果たす、IL-12、IL-23、IL-27及びIL-35からなるサイトカインファミリーのメンバーである。IL-12は、典型的には、活性化抗原提示細胞(APC)によって発現する。IL-12は、T細胞によるTh1分化及びIFN-γ産生を促進し、抗腫瘍応答の誘導において重要な役割を果たす。本明細書に記載するように、IL-15及びIL-18と組み合わせたIL-12は、CIML NK細胞を誘導し得る。
【0129】
IL-12は、αサブユニット(p35)及びβサブユニット(p40)からなるジスルフィド結合ヘテロ二量体であり、ここで、αサブユニットは、4ヘリックスバンドルの長鎖サイトカインからなり、βサブユニットは、IL-6ファミリーの非シグナル伝達受容体と相同である。IL-12の結晶構造及び突然変異誘発分析は、サブユニット相互作用のために重要なp35/p40界面でのアミノ酸残基を規定した(Yoon,et al..2000,EMBO J.9,3530-354)。例えば、p35における重要なアルギニン残基(R189)は、R189側鎖がp40上の親水性ポケット内に埋め込まれるようにp40内のアスパラギン酸(D290)と相互作用する。さらに、p40における構造変化は、これらの相互作用を最適化する際に重要な可能性がある。この情報に基づき、改善されたサブユニット相互作用を示すアミノ酸変化を含有するIL-12変異体を生成し得る。さらに、p40のN末端に連結したp35のC末端を通して又はその逆を通してのいずれかで可動性リンカーによってp40サブユニットに連結されたp35サブユニットからなるIL-12の一本鎖形を生成し得る。そのような変異体は、IL-12結合ドメインの発現、サブユニット相互作用及び/又は安定性を最適化するために本発明の融合タンパク質複合体中に組み込まれ得る。同様に、遺伝子発現、翻訳、翻訳後修飾及び/又は分泌を改善するためにIL-12遺伝子及び発現構築物を修飾し得る(すなわちコドン最適化、二次構造の除去)。
【0130】
IL-12の作用は、2つのサブユニット(IL-12Rβ1及びIL-12Rβ2)から構成される膜貫通受容体への結合によって媒介される。受容体の各サブユニットは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及びヤーヌス(Janus)ファミリーのチロシンキナーゼの結合を媒介する細胞質ドメインから構成される。IL-12結合は、β1及びβ2のヘテロ二量体化並びにシグナル伝達を可能にする高親和性受容体複合体の生成を生じさせると考えられている。このモデルでは、受容体の二量体化は、細胞質ドメインの並置並びに引き続いてのチロシンリン酸化及び受容体関連ヤーヌス(Janus)ファミリーキナーゼであるJak2及びTyk-2の活性化をもたらす。これらの活性化キナーゼは、順にチロシンをリン酸化し、シグナル伝達物質及び転写の活性化因子(STAT)ファミリーの幾つかのメンバー(STAT-1、-3及び-4)を活性化する。STATは、核に転座して、IFN-γを含む複数の免疫応答性遺伝子の転写を活性化する。IL-12:IL-12R複合体の結晶構造は、依然として決定されていないが、増加した受容体結合/シグナル伝達活性を有するIL-12変異体は、標準のスクリーニングアッセイによって単離され得る(Leong et al.2003,PNAS 100:1163-1168)。p35サブユニットのみを含むIL-12ヘテロ二量体の断片は、生物活性を示し得る。IL-12/IL-12R表面滞留時間、代謝回転及び/又は再循環を修飾するIL-12変異体も単離し得る。さらに、IL-12変異体は、免疫細胞応答、特にCIML NK細胞活性を誘導する結合されたサイトカイン活性を最適化及び/又は平衡させるために本発明の融合タンパク質複合体中に組み込まれ得る。
【0131】
IL-18
インターロイキン-18(IL-18)は、先天性及び後天性免疫応答の調節に包含される多面発現性IL-1スーパーファミリーサイトカインである。IL-12又はIL-15の環境内では、IL-18は、NK細胞及びCD4 Tヘルパー(Th)Iリンパ球内でIFN-γの強力な誘導因子である。しかしながら、IL-18は、宿主微小環境依存方法でTh2及びTh17細胞応答並びにCD8細胞傷害性細胞及び好中球の活性も調節する。IL-18の生物活性は、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球及び内皮細胞上で発現したヘテロ二量体IL-18Rα/β複合体へのIL-18の結合によって媒介され、NF-κBの活性化をもたらす下流シグナルを誘導する。さらに、IL-18の活性は、IL-18について細胞表面受容体と競合してIL-18活性を中和する高親和性の構成的に発現させた循環中IL-18結合タンパク質(IL-18BP)のレベルによって調節することができる。IL-18BPとの相互作用を低減させ、且つ/又はIL-18Rα/β複合体の結合/シグナル伝達を増加させるIL-18の変異体(例えば、アミノ酸突然変異/欠失を有する)は、IL-18活性を増強する際に有用であり得る。そのような変異体は、標準スクリーニングアッセイによって同定することができる(Kim et al.2001,PNAS 98:3304-3309)。IL-18の断片は、生物活性を示し得る。IL-18/IL-18R表面滞留時間、代謝回転及び/又は再循環を修飾するIL-18変異体も単離し得る。そのようなIL-18変異体は、免疫細胞応答、特にCIML NK細胞活性を誘導するためにIL-18活性を最適化し、且つ/又は結合されたサイトカイン活性を平衡させるために本発明の融合タンパク質複合体中に組み込まれ得る。さらに、IL-18変異体は、IL-18結合ドメインの発現及び/又は安定性を最適化するために本発明の融合タンパク質複合体中に組み込まれ得る。同様に、IL-18遺伝子及び発現構築物は、遺伝子発現、翻訳、翻訳後修飾及び/又は分泌を改善するために修飾され得る(すなわちコドン最適化、二次構造の除去)。
【0132】
抗原特異的結合ドメイン
抗原特異的結合ドメインは、疾患細胞上の標的に特異的に結合するポリペプチドからなる。代わりに、これらのドメインは、例えば、腫瘍増殖を支持するストローマ細胞上の標的又は疾患媒介性免疫抑制を支持する免疫細胞上の標的などの疾患状態を支持する他の細胞上の標的に結合し得る。抗原特異的結合ドメインとしては、当該技術分野において公知である抗体、一本鎖抗体、Fab、Fv、T細胞受容体結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、受容体結合ドメイン、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体、ミニボディ、ナノボディ、ペプチボディ又は様々な他の抗体模倣物(例えば、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アトリマー、CTLA4系分子、アドネクチン、アンチカリン、クニッツドメイン系タンパク質、アビマー、ノッチン、フィノマー、ダーピン(darpin)、アフィボディ、アフィリン、モノボディ及びアルマジロ反復タンパク質系タンパク質(Weidle,UH,et al.2013.Cancer Genomics&Proteomics 10:155-168))が挙げられる。
【0133】
所定の実施形態では、抗原特異的結合ドメインに対する抗原は、細胞表面受容体又はリガンドを含む。別の実施形態では、抗原は、CD抗原、サイトカイン若しくはケモカイン受容体若しくはリガンド、増殖因子受容体若しくはリガンド、組織因子、細胞接着分子、MHC/MHC様分子、Fc受容体、Toll様受容体、NK受容体、TCR、BCR、陽性/陰性共刺激受容体若しくはリガンド、細胞死受容体若しくはリガンド、腫瘍関連抗原又は抗原をコードするウイルスを含む。
【0134】
好ましくは、抗原特異的結合ドメインは、腫瘍細胞上の抗原に結合することができる。腫瘍特異的結合ドメインは、癌を有する患者の治療に対して承認された抗体に由来し得、リツキシマブ、オファツムマブ及びオビヌツズマブ(抗CD20抗体);トラスツズマブ及びペルツズマブ(抗HER2抗体);セツキシマブ及びパニツムマブ(抗EGFR抗体);並びにアレムツズマブ(抗CD52抗体)が挙げられる。同様に、CD20(90Y標識化イブリツモマブチウキセタン、131I標識化トシツモマブ)、HER2(アド-トラスツズマブ エムタンシン)、CD30(ブレンツキシマブベドチン)及びCD33(ジェムツツマブオゾガミシン)に対して特異的な承認された抗体エフェクター分子コンジュゲートに由来する結合ドメインを使用し得る(Sliwkowski MX,Mellman I.2013 Science 341:1192)。
【0135】
さらに、本発明の好ましい結合ドメインは、当該技術分野で知られている様々な他の腫瘍特異的抗体ドメインを含み得る。癌を治療するための抗体及びその各標的としては、ニボルマブ(抗PD-1抗体)、TA99(抗gp75)、3F8(抗GD2)、8H9(抗B7-H3)、アバゴボマブ(CA125(模倣体))、アデカツムマブ(抗EpCAM)、アフツズマブ(抗CD20)、アラシズマブペゴール(抗VEGFR2)、アルツモマブペンテテート(抗CEA)、アマツキシマブ(抗メソセリン)、AME-133(抗CD20)、アナツモマブマフェナトクス(抗TAG-72)、アポリズマブ(抗HLA-DR)、アルシツモマブ(抗CEA)、バビツキシマブ(抗フォスファチジルセリン)、ベクツモマブ(抗CD22)、ベリムマブ(抗BAFF)、ベシレソマブ(抗CEA関連抗原)、ベバシズマブ(抗VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(抗CD44 v6)、ブリナツモマブ(抗CD19)、BMS-663513(抗CD137)、ブレンツキシマブベドチン(抗CD30(TNFRSF8))、カンツズマブメルタンシン(抗ムチンCanAg)、カンツズマブラブタンシン(抗MUC1)、カプロマブペンデチド(抗前立腺癌細胞)、カルルマブ(抗MCP-1)、カツマキソマブ(抗EpCAM、CD3)、cBR96-ドキソルビシン免疫複合体(抗ルイスY抗原)、CC49(抗TAG-72)、セデリズマブ(抗CD4)、Ch.14.18(抗GD2)、ch-TNT(抗DNA関連抗原)、シタツズマブボガトクス(抗EpCAM)、シクスツムマブ(抗IGF-1受容体)、クリバツズマブテトラキセタン(抗MUC1)、コナツムマブ(抗TRAIL-R2)、CP-870893(抗CD40)、ダセツズマブ(抗CD40)、ダクリズマブ(抗CD25)、ダロツズマブ(抗インスリン様増殖因子I受容体)、ダラツムマブ(抗CD38(環状ADPリボース加水分解酵素))、デムシズマブ(抗DLL4)、デツモマブ(抗Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(抗DR5)、デュリゴツマブ(抗HER3)、デュシギツマブ(dusigitumab)(抗ILGF2)、エクロメキシマブ(抗GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(抗EpCAM)、エロツズマブ(抗SLAMF7)、エルシリモマブ(抗IL-6)、エナバツズマブ(抗TWEAK受容体)、エノチクマブ(抗DLL4)、エンシツキシマブ(抗5AC)、エピツモマブシツキセタン(抗エピシアリン)、エプラツズマブ(抗CD22)、エルツマキソマブ(抗HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(抗インテグリンαvβ3)、ファラリモマブ(抗インターフェロン受容体)、ファルレツズマブ(抗葉酸受容体1)、FBTA05(抗CD20)、フィクラツズマブ(抗HGF)、フィギツムマブ(抗IGF-1受容体)、フランボツマブ(抗TYRP1(糖タンパク質75))、フレソリムマブ(抗TGFβ)、フツキシマブ(抗EGFR)、ガリキシマブ(抗CD80)、ガニツマブ(抗IGF-I)、ジェムツズマブオゾガミシン(抗CD33)、ギレンツキシマブ(抗炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレンバツムマブベドチン(抗GPNMB)、グセルクマブ(抗IL13)、イバリズマブ(抗CD4)、イブリツモマブチウキセタン(抗CD20)、イクルクマブ(抗VEGFR-1)、イゴボマブ(抗CA-125)、IMAB362(抗CLDN18.2)、IMC-CS4(抗CSF1R)、IMC-TR1(TGFβRII)、イムガツズマブ(抗EGFR)、インクラクマブ(抗セレクチンP)、インダツキシマブラブタンシン(抗SDC1)、イノツズマブオゾガマイシン(抗CD22)、インテツムマブ(抗CD51)、イピリムマブ(抗CD152)、イラツムマブ(抗CD30(TNFRSF8))、KM3065(抗CD20)、KW-0761(抗CD194)、LY2875358(抗MET)、ラベツズマブ(抗CEA)、ランブロリズマブ(抗PDCD1)、レクサツムマブ(抗TRAIL-R2)、リンツズマブ(抗CD33)、リリルマブ(抗KIR2D)、ロルボツズマブメルタンシン(抗CD56)、ルカツムマブ(抗CD40)、ルミリキシマブ(抗CD23(IgE受容体))、マパツムマブ(抗TRAIL-R1)、マルゲツキシマブ(抗ch4D5)、マツズマブ(抗EGFR)、マブリリムマブ(抗GMCSF受容体α鎖)、ミラツズマブ(抗CD74)、ミンレツモマブ(抗TAG-72)、ミツモマブ(抗GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(抗CCR4)、モキセツモマブパスドトクス(抗CD22)、ナコロマブタフェナトクス(抗C242抗原)、ナプツモマブエスタフェナトクス(抗5T4)、ナルナツマブ(抗RON)、ネシツムマブ(抗EGFR)、ネスバクマブ(抗アンジオポエチン2)、ニモツズマブ(抗EGFR)、ニボルマブ(抗IgG4)、ノフェツモマブメルペンタン、オクレリズマブ(抗CD20)、オカラツズマブ(抗CD20)、オララツマブ(抗PDGF-Rα)、オナルツズマブ(抗c-MET)、オンツキシズマブ(抗TEM1)、オポルツズマブモナトクス(抗EpCAM)、オレゴボマブ(抗CA-125)、オトレルツズマブ(抗CD37)、パンコマブ(MUC1の抗腫瘍特異的グリコシル化)、パルサツズマブ(抗EGFL7)、パスコリズマブ(抗IL-4)、パトリツマブ(抗HER3)、ペムツモマブ(抗MUC1)、ペルツズマブ(抗HER2/neu)、ピディリズマブ(抗PD-1)、ピナツズマブベドチン(抗CD22)、ピンツモマブ(抗腺癌抗原)、ポラツズマブベドチン(抗CD79B)、プリツムマブ(抗ビメンチン)、PRO131921(抗CD20)、クイリズマブ(抗IGHE)、ラコツモマブ(抗N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(抗フィブロネクチンエキストラドメイン-B)、ラムシルマブ(抗VEGFR2)、リロツムマブ(抗HGF)、ロバツムマブ(抗IGF-1受容体)、ロレデュマブ(抗RHD)、ロベリズマブ(抗CD11&CD18)、サマリズマブ(抗CD200)、サツモマブペンデチド(抗TAG-72)、セリバンツマブ(抗ERBB3)、SGN-CD19A(抗CD19)、SGN-CD33A(抗CD33)、シブロツズマブ(抗FAP)、シルツキシマブ(抗IL-6)、ソリトマブ(抗EpCAM)、ソンツズマブ(抗エピシアリン)、タバルマブ(抗BAFF)、タカツズマブテトラキセタン(抗α-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトクス(抗CD19)、テリモマブアリトクス、テナツモマブ(抗テナシンC)、テネリキシマブ(抗CD40)、テプロツムマブ(抗CD221)、TGN1412(抗CD28)、チシリムマブ(抗CTLA-4)、チガツズマブ(抗TRAIL-R2)、TNX-650(抗IL-13)、トシツモマブ(抗CS20)、トベツマブ(抗CD140a)、TRBS07(抗GD2)、トレガリズマブ(抗CD4)、トレメリムマブ(抗CTLA-4)、TRU-016(抗CD37)、ツコツズマブセルモロイキン(抗EpCAM)、ウブリツキシマブ(抗CD20)、ウレルマブ(抗4-1BB)、バンチクツマブ(抗Frizzled受容体)、バパリキシマブ(抗AOC3(VAP-1))、バテリズマブ(抗ITGA2)、ベルツズマブ(抗CD20)、ベセンクマブ(抗NRP1)、ビシリズマブ(抗CD3)、ボロシキシマブ(抗インテグリンα5β1)、ボルセツズマブマホドチン(抗CD70)、ボツムマブ(抗腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(抗EGFR)、ザノリムマブ(抗CD4)、ザツキシマブ(抗HER1)、ジラリムマブ(抗CD147(ベイシジン(basigin)))、RG7636(抗ETBR)、RG7458(抗MUC16)、RG7599(抗NaPi2b)、MPDL3280A(抗PD-L1)、RG7450(抗STEAP1)及びGDC-0199(抗Bcl-2)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0136】
本発明に有用な他の抗体ドメイン又は腫瘍標的結合タンパク質(例えば、TCRドメイン)としては、これらに限定されないが、以下の抗原に結合するものが挙げられる(表示した癌の適応は、非限定的な例を表すことに留意されたい):アミノペプチダーゼN(CD13)、アネキシンAl、B7-H3(CD276、様々な癌)、CA125(卵巣癌)、CA15-3(癌腫)、CA19-9(癌腫)、L6(癌腫)、ルイスY(癌腫)、ルイスX(癌腫)、αフェトプロテイン(癌腫)、CA242(結腸直腸癌)、胎盤アルカリフォスファターゼ(癌腫)、前立腺特異抗原(前立腺)、前立腺酸性フォスファターゼ(前立腺癌)、表皮増殖因子(癌腫)、CD2(ホジキン病、NHLリンパ腫、多発性骨髄腫)、CD3ε(T細胞リンパ腫、肺癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、自己免疫疾患、悪性腹水)、CD19(B細胞悪性腫瘍)、CD20(非ホジキンリンパ腫、B細胞新生物、自己免疫疾患)、CD21(B細胞リンパ腫)、CD22(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、SLE)、CD30(ホジキンリンパ腫)、CD33(白血病、自己免疫疾患)、CD38(多発性骨髄腫)、CD40(リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(CLL))、CD51(転移性黒色腫、肉腫)、CD52(白血病)、CD56(小細胞肺癌、卵巣癌、メルケル細胞癌及び液体腫瘍、多発性骨髄腫)、CD66e(癌腫)、CD70(転移性腎細胞癌及び非ホジキンリンパ腫)、CD74(多発性骨髄腫)、CD80(リンパ腫)、CD98(癌腫)、CD123(白血病)、ムチン(癌腫)、CD221(固形腫瘍)、CD227(乳癌、卵巣癌)、CD262(NSCLC及び他の癌)、CD309(卵巣癌)、CD326(固形腫瘍)、CEACAM3(結腸直腸癌、胃癌)、CEACAM5(CEA、CD66e)(乳癌、結腸直腸癌及び肺癌)、DLL4(A-like-4)、EGFR(様々な癌)、CTLA4(黒色腫)、CXCR4(CD184、血液腫瘍学、固形腫瘍)、エンドグリン(CD105、固形腫瘍)、EPCAM(上皮細胞接着分子、膀胱癌、頭部癌、頚部癌、結腸癌、NHL、前立腺癌及び卵巣癌)、ERBB2(肺癌、乳癌、前立腺癌)、FCGR1(自己免疫疾患)、FOLR(葉酸受容体、卵巣癌)、FGFR(癌腫)、GD2ガングリオシド(癌腫)、G-28(細胞表面抗原糖脂質、黒色腫)、GD3イディオタイプ(癌腫)、熱ショックタンパク質(癌腫)、HER1(肺癌、胃癌)、HER2(乳癌、肺癌及び卵巣癌)、HLA-DR10(NHL)、HLA-DRB(NHL、B細胞白血病)、ヒト絨毛膜性ゴナドトロピン(癌腫)、IGF1R(固形腫瘍、血液癌)、IL-2受容体(T細胞白血病及びリンパ腫)、IL-6R(多発性骨髄腫、RA、カストルマン病、IL6依存性腫瘍)、インテグリン(ανβ3、α5β1、α6β4、α11β3、α5β5、ανβ5、様々な癌に対して)、MAGE-1(癌腫)、MAGE-2(癌腫)、MAGE-3(癌腫)、MAGE4(癌腫)、抗トランスフェリン受容体(癌腫)、p97(黒色腫)、MS4A1(膜貫通型4-ドメインサブファミリーAメンバー1、非ホジキンB細胞リンパ腫、白血病)、MUC1(乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、気管支癌及び消化器癌)、MUC16(CA125)(卵巣癌)、CEA(結腸直腸癌)、gp100(黒色腫)、MARTI(黒色腫)、MPG(黒色腫)、MS4A1(膜貫通型4-ドメインサブファミリーA、小細胞肺癌、NHL)、ヌクレオリン、Neu癌遺伝子産物(癌腫)、P21(癌腫)、ネクチン-4(癌腫)、抗(N-グリコリルノイラミン酸、乳癌、黒色腫癌)の抗原結合部位、PLAP様精巣アルカリフォスファターゼ(卵巣癌、精巣癌)、PSMA(前立腺腫瘍)、PSA(前立腺)、ROB04、TAG72(腫瘍関連糖タンパク質72、AML、胃癌、結腸直腸癌、卵巣癌)、T細胞膜貫通型タンパク質(癌)、Tie(CD202b)、組織因子、TNFRSF10B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10B、癌腫)、TNFRSF13B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13B、多発性骨髄腫、NHL、他の癌、RA及びSLE)、TPBG(栄養膜糖タンパク質、腎細胞癌)、TRAIL-R1(腫瘍壊死アポトーシス誘導性リガンド受容体1、リンパ腫、NHL、結腸直腸癌、肺癌)、VCAM-1(CD106、黒色腫)、VEGF、VEGF-A、VEGF-2(CD309)(様々な癌)。一部の他の腫瘍関連抗原標的は、概説されている(Gerber,et al,mAbs 2009 1:247-253;Novellino et al,Cancer Immunol Immunother.2005 54:187-207,Franke,et al,Cancer Biother Radiopharm.2000,15:459-76、Guo,et al.,Adv Cancer Res.2013;119:421-475,Parmiani et al.J Immunol.2007 178:1975-9)。これらの抗原の例としては、分化の群が挙げられる(CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD12w、CD14、CD15、CD16、CDwl7、CD18、CD21、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD31、CD32、CD34、CD35、CD36、CD37、CD41、CD42、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49b、CD49c、CD53、CD54、CD55、CD58、CD59、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD68、CD69、CD71、CD72、CD79、CD81、CD82、CD83、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD95、CD96、CD100、CD103、CD105、CD106、CD109、CD117、CD120、CD127、CD133、CD134、CD135、CD138、CD141、CD142、CD143、CD144、CD147、CD151、CD152、CD154、CD156、CD158、CD163、CD166、CD168、CD184、CDwl86、CD195、CD202(a、b)、CD209、CD235a、CD271、CD303、CD304)、アネキシンAl、ヌクレオリン、エンドグリン(CD105)、ROB04、アミノペプチダーゼN、-like-4(DLL4)、VEGFR-2(CD309)、CXCR4(CD184)、Tie2、B7-H3、WT1、MUC1、LMP2、HPV E6E7、EGFRvIII、HER-2/neu、イディオタイプ、MAGE A3、p53非突然変異体、NY-ESO-1、GD2、CEA、MelanA/MARTl、Ras突然変異体、gp100、p53突然変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、bcr-abl、チロシナーゼ、サバイビン(survivin)、hTERT、肉腫転座切断点、EphA2、PAP、ML-IAP、AFP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGM1、メソセリン、PSCA、MAGE Al、sLe(a)、CYPIB I、PLACl、GM3、BORIS、Tn、GloboH、ETV6-AML、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン、Tie 2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-β、MAD-CT-2及びFos関連抗原1。
【0137】
さらに、本発明の好ましい結合ドメインには、当該技術分野において公知である、感染細胞に関連する抗原及びエピトープ標的に対して特異的である結合ドメインが含まれる。そのような標的としては、それらに限定されないが、下記の感染性因子に由来するものが挙げられ、興味深いものは下記である:HIVウイルス(特にHIVエンベロープスパイク及び/又はgp120及びgp41のエピトープに由来する抗原)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、大腸菌(Escherichia coli)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎球菌(Pneumococcus)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、インフルエンザ菌B型(influenzae B)、トレポネーマ・パリヅム(Treponema pallidum)、ライム病スピロヘータ(spirochetes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、癩菌(Mycobacterium leprae)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、インフルエンザウイルス(influenza virus)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)、単純ヘルペスウイルスI型、単純ヘルペスウイルスII型、ヒト血清パルボ様ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血球ウイルス、エプスタインバーウイルス(Epstein-Barr virus)、マウス白血病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、疣ウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳腺腫瘍ウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、西ナイルウイルス、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、トリパノソーマ・ランゲリ(Trypanosoma rangeli)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、トリパノソーマ・ロデシエンセイ(Trypanosoma rhodesiensei)、トリパノソーマ・ブルーセイ(Trypanosoma brucei)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、ウシバベシア(Babesia bovis)、エルメリア・テネラ(Elmeria tenella)、回施糸状虫(Onchocerca volvulus)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、タイレリア・パルバ(Theileria parva)、胞状条虫(Taenia hydatigena)、ヒツジ条虫(Taenia ovis)、無鉤条虫(Taenia saginata)、単包条虫(Echinococcus granulosus)、メソセストイド・コルチ(Mesocestoides corti)、マイコプラズマ・アルスリチジス(Mycoplasma arthritidis)、M.ヒオリニス(M.hyorhinis)、M.オラーレ(M.orale)、M.アルギニニ(M.arginini)、アコレプラズマ・レイドロウイ(Acholeplasma laidlawii)、M.サリバリウム(M.salivarium)及びマイコプラズマ肺炎(M.pneumoniae)。
【0138】
免疫チェックポイント阻害剤及び免疫アゴニストドメイン
他の実施形態では、結合ドメインは、免疫チェックポイント又はシグナル伝達分子若しくはそのリガンドに対して特異的であり、免疫チェックポイント抑制活性の阻害剤又は免疫賦活活性のアゴニストとして作用する。そのような免疫チェックポイント及びシグナル伝達分子及びリガンドには、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、CD28、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、B7-H5、ICOS-L、ICOS、BTLA、CD137L、CD137、HVEM、KIR、4-1BB、OX40L、CD70、CD27、CD47、CIS、OX40、GITR、IDO、TIM3、GAL9、VISTA、CD155,TIGIT、LIGHT、LAIR-1、シグレック(Siglec)及びA2aRが含まれる(Pardoll DM.2012.Nature Rev Cancer 12:252-264,Thaventhiran T,et al.2012.J Clin Cell Immunol S12:004)。さらに、本発明の好ましい抗体ドメインは、イピリムマブ及び/又はトレメリムマブ(抗CTLA4)、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、TSR-042、ANB011、AMP-514及びAMP-224(リガンドFc融合)(抗PD1)、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、アベルマブ(MSB0010718C)、デュルバルマブ(MEDI4736)、MEDI0680並びにBMS-9365569(抗PDL1)、MEDI6469(抗OX40アゴニスト)、BMS-986016、IMP701、IMP731、IMP321(抗LAG3)及びGITRリガンドを含み得る。
【0139】
T細胞受容体(TCR)
T細胞は、他の免疫細胞型(多形核細胞、好酸球、好塩基球、肥満細胞、B細胞、NK細胞)と共に免疫系の細胞成分を構成する細胞のサブグループである。生理学的条件下では、T細胞は、免疫監視及び外来抗原の排除において機能する。しかしながら、病理学的条件下では、T細胞が疾患の原因及びその伝播において主な役割を果たしているという有力な証拠が存在する。これらの疾患では、中枢性又は末梢性いずれかのT細胞の免疫寛容の崩壊が自己免疫疾患の因果関係における基本的なプロセスである。
【0140】
TCR複合体は、少なくとも7種の膜貫通タンパク質で構成される。ジスルフィド結合した(αβ又はγδ)ヘテロ二量体は、単一型抗原認識単位を形成する一方、ε鎖、γ鎖、δ鎖、ζ鎖及びη鎖からなるCD3の不変鎖は、T細胞の活性化及び細胞性免疫応答の発生をもたらすシグナル伝達経路に結合するリガンドのカップリングについての責任を担う。TCR鎖の遺伝子の多様性にもかかわらず、2つの構造特徴は、公知のサブユニット全てに共通する。第一に、それらは、おそらくαへリックス型の単一の膜貫通全域ドメインを有する膜貫通タンパク質である。第二に、全てのTCR鎖は、予測された膜貫通ドメイン内に荷電アミノ酸を有するという珍しい特徴を有する。不変鎖は、マウスとヒトとの間で保存された単一の負の電荷を有し、可変鎖は、1つ(TCR-β)又は2つ(TCR-α)の正電荷を有する。TCR-αの膜貫通配列は、多数の種において高度に保存されているため、系統発生学的に重要な機能的役割を果たす可能性がある。親水性アミノ酸であるアルギニン及びリジンを含有するオクタペプチド配列は、これらの種間で同一である。
【0141】
T細胞応答は、TCRに結合する抗原によって調節される。TCRの1つの型は、免疫グロブリンの可変(V)領域及び定常(C)領域に類似するα鎖及びβ鎖からなる膜結合型ヘテロ二量体である。TCRα鎖は、共有結合されたV-α鎖及びC-α鎖を含むが、β鎖は、C-β鎖に共有結合されたV-β鎖を含む。V-α鎖及びV-β鎖は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(ヒトではHLA複合体として公知である)と関連して超抗原又は抗原を結合することができるポケット又は間隙を形成する。Davis Ann.Rev.of Immunology 3:537(1985);Fundamental Immunology 3rd Ed.,W.Paul Ed.Rsen Press LTD.New York(1993)を参照されたい。
【0142】
TCR鎖の細胞外ドメイン(αβ又はγδ)も細胞表面での発現のため、異種性膜貫通領域に融合するように操作され得る。そのようなTCRは、CD3、CD28、CD8、4-1BB及び/又はキメラ活性化受容体(CAR)膜貫通ドメイン若しくは活性化ドメインへの融合を含み得る。TCRは、αβ鎖又はγδ鎖の1つ以上の抗原結合ドメインを含む可溶性タンパク質でもあり得る。そのようなTCRは、TCR定常ドメインを含むか又は含まないTCR可変ドメイン又はその機能的断片を含み得る。可溶性TCRは、ヘテロ二量体又は一本鎖分子であり得る。
【0143】
Fcドメイン
本発明の融合タンパク質複合体は、Fcドメインを含有し得る。例えば、hIL-18/IL12/TxMは、IL-18/IL-15N72D:IL-12/IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体を含む。IgGのFc領域を別のタンパク質のドメイン、例えば様々なサイトカイン及び可溶性受容体と結び付ける融合タンパク質について報告されている(例えば、Capon et al.,Nature,337:525-531,1989;Chamow et al.,Trends Biotechnol.,14:52-60,1996);米国特許第5,116,964号明細書及び同第5,541,087号明細書を参照されたい)。プロトタイプ融合タンパク質は、重鎖可変ドメイン及びCHlドメイン並びに軽鎖のないIgG分子に類似する分子を生じさせる、IgG Fcのヒンジ領域中のシステイン残基を通して連結されるホモ二量体タンパク質である。Fcドメインを含む融合タンパク質の二量体の性質は、他の分子との高次相互作用(すなわち二価又は二重特異性結合)の提供において有利となり得る。構造の相同性に起因して、Fc融合タンパク質は、同様のアイソタイプを有するヒトIgGのそれに匹敵するインビボ薬物動態学プロファイルを示す。IgGクラスの免疫グロブリンは、ヒト血液中で最も豊富なタンパク質の1つであり、その循環半減期は、21日間という長さに達し得る。本明細書では、IL-15又はIL-15融合タンパク質の循環半減期を延長させるため、及び/又はその生物活性を増加させるために、ヒト重鎖IgGタンパク質のFc部分に共有結合されたIL-15Rαに非共有結合によって結合されたIL-15ドメインを含有する融合タンパク質複合体が記載される。
【0144】
「Fc」の用語は、Fc受容体と称される細胞表面受容体及び補体系の幾つかのタンパク質と相互作用する抗体の定常領域である断片結晶化可能領域を指す。そのような「Fc」は、二量体形態である。天然Fcの本来の免疫グロブリン起源は、好ましくは、ヒト起源であり、免疫グロブリンのいずれでもあり得るが、IgG1及びIgG2が好ましい。天然Fc’は、共有結合(すなわちジスルフィド結合)会合及び非共有結合会合によって二量体又は多量体の形態に結合され得る単量体ポリペプチドで構成される。天然Fc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、IgE)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)に応じて1~4個の範囲内である。天然Fcの1つの例は、IgGのパパイン消化から生じるジスルフィド結合二量体である(Ellison et al.(1982),Nucleic Acids Res.10:4071-9を参照されたい)。本明細書で使用する用語「天然Fc」は、単量体、二量体及び多量体の形態の総称である。プロテインA、プロテインG、様々なFc受容体及び補体タンパク質に対する結合部位を含有するFcドメインである。一部の実施形態では、融合タンパク質複合体のFcドメインは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)及び/又は抗体依存性細胞食作用(ADCP)を媒介するためにFc受容体と相互作用することができる。他の用途では、融合タンパク質複合体は、ADCC又はADCPを効果的に媒介することができないFcドメイン(例えば、IgG4 Fc)を含む。
【0145】
一部の実施形態では、用語「Fc変異体」は、天然Fcから修飾されているが、それでもサルベージ受容体であるFcRnに対する結合部位を含む分子又は配列を指す。国際公開第97/34631号パンフレット及び同第96/32478号パンフレットは、典型的なFc変異体並びにサルベージ受容体との相互作用について記載しており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、用語「Fc変異体」は、非ヒト天然Fcからヒト化されている分子又は配列を含む。さらに、天然Fcは、本発明の融合分子に必要とされない構造的特徴又は生物活性を提供するために除去され得る部位を含む。したがって、所定の実施形態では、用語「Fc変異体」は、(1)ジスルフィド結合の形成、(2)選択された宿主細胞との不適合(3)選択された宿主細胞での発現によるN末端不均質性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、(7)抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、又は(8)抗体依存性細胞食作用(ADCP)に影響を及ぼすか又は関与する1つ以上の天然Fc部位又は残基を変化させる分子又は配列を含む。そのような変化は、これらのFc特性の任意の1つ以上を増加又は減少させ得る。Fc変異体について以下でさらに詳細に記載する。
【0146】
用語「Fcドメイン」は、天然Fc及びFc変異体分子並びに上に定義した配列を包含する。Fc変異体及び天然Fcと同様に、用語「Fcドメイン」は、抗体全体から消化されたか、又は組み換え遺伝子発現又は他の手段によって産生されたかにかかわらず、単量体又は多量体の形態の分子を含む。
【0147】
リンカー
一部の場合、本発明の融合タンパク質複合体は、IL-15又はIL-15Rαドメインと、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はIL-12サブユニットとの間に挿入された可動性リンカー配列も含む。リンカー配列は、IL-15又はIL-15Rαドメインの両方の機能的活性を可能にするため、それらに関してポリペプチドの有効な配置を可能にしなければならない。代わりに、リンカーは、機能的IL-12結合ドメインの形成を可能にしなければならない。
【0148】
所定の場合、可溶性融合タンパク質複合体はリンカーを有し、ここで、第1ポリペプチドは、ポリペプチドリンカー配列によってIL-15(又はその機能的断片)に共有結合されている。他の態様では、本明細書に記載した可溶性融合タンパク質複合体は、リンカーを有し、ここで、第2ポリペプチドは、ポリペプチドリンカー配列によってIL-15Rαポリペプチド(又はその機能的断片)に共有結合されている。
【0149】
リンカー配列は、好ましくは、提示抗原を認識するためのTCR分子の結合溝又は抗原を認識するための抗体分子の結合ドメインを効果的に配置できるペプチドを生じさせるヌクレオチド配列によってコードされている。本明細書で使用する語句「生物活性ポリペプチドをIL-15又はIL-15Rαドメインに対して効果的に配置すること」又は他の同様の語句は、IL-15又はIL-15Rαドメインに連結された生物活性ポリペプチドが、IL-15又はIL-15Rαドメインが互いに相互作用してタンパク質複合体を形成することができるように配置されることを意味することが意図される。例えば、IL-15又はIL-15Rαドメインは、免疫応答を開始若しくは阻害するため又は細胞発生を阻害若しくは刺激するための免疫細胞との相互作用を可能にするように効果的に配置される。
【0150】
本発明の融合タンパク質複合体は、好ましくは、IL-15又はIL-15Rαドメインと免疫グロブリンFcドメインとの間に挿入された可動性リンカー配列も含む。リンカー配列は、各ドメインの機能的活性を可能にするため、Fcドメイン、生物活性ポリペプチド及びIL-15又はIL-15Rαドメインの効果的な配置を可能にしなければならない。例えば、Fcドメインは、オプソニン作用、細胞溶解、肥満細胞、好塩基球及び好酸球の脱顆粒並びに他のFc受容体依存性プロセス;補体経路の活性化;並びに融合タンパク質複合体のインビボ半減期の増強を含むFc媒介性作用を刺激するために、適正な融合タンパク質複合体の形成及び/又は免疫細胞上のFc受容体若しくは補体系のタンパク質との相互作用を可能にするように効果的に配置される。
【0151】
リンカー配列は、所望の機能的活性を有する一本鎖分子を生成するために、生物活性ポリペプチドの2つ以上のポリペプチドを連結させるために使用することもできる。
【0152】
好ましくは、リンカー配列は、約7~20個のアミノ酸,より好ましくは約10~20個のアミノ酸を含む。リンカー配列は、好ましくは、単一の望ましくない立体配座に生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子を保持することがないように可動性である。リンカー配列は、例えば、認識部位を融合分子から間隔を空けるために使用できる。詳細には、ペプチドリンカー配列は、例えば、同一物を化学的に架橋結合するため及び分子の可動性を提供するために生物活性ポリペプチドとエフェクター分子との間に配置され得る。リンカーは、好ましくは、主として、可動性を提供するために、グリシン、アラニン及びセリンなどの短い側鎖を有するアミノ酸を含む。好ましくは、リンカー配列の約80又は90%以上がグリシン、アラニン又はセリン残基、特にグリシン及びセリン残基を含む。
【0153】
抗体可変領域を一緒に接合するために使用されるのに成功してきた多数の可動性リンカー設計のいずれかを含む、様々なリンカー配列を使用し得る(例えば、Whitlow,M.et al.,(1991)Methods:A Companion to Methods in Enzymology,2:97-105を参照されたい)。
【0154】
養子細胞療法
養子細胞療法(ACT)(同種及び自家造血幹細胞移植(HSCT)及び組み換え細胞(すなわちCAR T)療法)は、多数の悪性腫瘍障害にとって最適な療法である(HSCT及び養子細胞療法アプローチの総説については、Rager&Porter,Ther Adv Hematol(2011)2(6)409-428;Roddie&Peggs,Expert Opin.Biol.Ther.(2011)11(4):473-487;Wang et al.Int.J.Cancer:(2015)136,1751-1768;及びChang,Y.J.and X.J.Huang,Blood Rev,2013.27(1):55-62を参照されたい)。そのような養子細胞療法には、同種及び自家造血幹細胞移植、ドナー白血球(若しくはリンパ球)輸注(DLI)、腫瘍浸潤リンパ球の養子移入又はT細胞若しくはNK細胞(組み換え細胞、すなわちCAR T、CAR、NK、遺伝子編集T細胞若しくはNK細胞を含む、Hu et al.Acta Pharmacologica Sinica(2018)39:167-176,Irving et al.Front Immunol.(2017)8:267を参照されたい)の養子移入が含まれるが、これらに限定されない。ドナー由来細胞が放射線療法及び化学療法後の造血の再構成が必要である以上に、残存腫瘍細胞を排除するために転移細胞からの免疫学的再構成が重要である。悪性腫瘍に対する治療選択肢としてのACTの有効性は、ドナー細胞の起源、組成及び表現型(リンパ球サブセット、活性化状態)、基礎疾患、移植前状態調節レジメン及び移植後免疫支持(すなわちIL-2療法)並びに移植片内でドナー細胞によって媒介される移植片対腫瘍(GVT)効果を含む多数の因子による影響を受ける。さらに、これらの因子は、典型的には、状態調節レジメン及び/又は宿主内のドナー細胞の過剰な免疫活性(すなわち移植片対宿主疾患、サイトカイン放出症候群など)から生じる移植関連死亡率に対して平衡されなければならない。
【0155】
養子NK細胞療法を利用するアプローチに対して関心が大きく高まってきた。自家HSCTを受容している患者では、血中NK細胞数は、移植後に極めて早期に回復し、NK細胞のレベルは、プラスの転帰と相関する(Rueff et al.,2014,Biol.Blood Marrow Transplant.20,896-899)。自家NK細胞移入を用いる治療戦略は、多くの因子に起因して成功が限定されてきたが、癌に対する前途有望な免疫療法戦略としてエクスビボ活性化同種(又は半数一致)NK細胞の養子移入が出現してきた(Guillerey et al.2016.Nature Immunol.17:1025-1036)。これらの細胞の活性は、自家NK細胞と比較して自己MHC分子によって抑制される可能性が低い。多くの研究は、腫瘍細胞に対する同種応答性を発揮する半数一致NK細胞を用いた養子療法が安全であり、AML患者において有意な臨床的活性を媒介できることを証明してきた。これらの所見をさらに取り入れて、近年の研究は、NK細胞又はNK前駆体(すなわち幹細胞)のためのエクスビボ活性化/増殖法、移植前状態調節及び移植後免疫支持戦略を最適化すること;NK細胞系又は組み換え腫瘍標的化NK細胞の使用;例えば治療用抗体、免疫調節剤(レナリドミド)並びに抗KIR抗体及びチェックポイント抗体などの他の作用物質との併用療法の評価に焦点を当ててきた。各場合において、これらの戦略は、NK細胞増殖及び活性化を増強する能力を有する本発明の融合タンパク質複合体によって補完され得る。本明細書で指示したように、NK細胞と本発明の融合タンパク質複合体とのエクスビボインキュベーションは、活性化マーカーの上昇、腫瘍細胞に対する細胞傷害性の増加及びIFN-γの産生増強を示すCIML NK細胞の誘導を生じさせる。さらに、本発明の融合タンパク質複合体は、ヒトNK細胞系を活性化することができる。さらに、本発明の融合タンパク質複合体の直接投与又は本発明の融合タンパク質複合体によって活性化免疫細胞の投与により、免疫応答を増強して新生物及び感染性疾患を治療するための方法が提供される。
【0156】
医薬治療薬
本発明は、治療薬として使用するための融合タンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。1つの態様では、本発明の融合タンパク質複合体は、例えば、生理学的塩水などの医薬上許容されるバッファー中で製剤化されて、全身性で投与される。好ましい投与経路には、例えば、患者における組成物の連続的、維持的又は有効レベルを提供する膀胱内への点滴注入、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内又は皮内注射が含まれる。ヒト患者又は他の動物の治療は、生理学的に許容される担体中の治療有効量の本明細書に同定した治療薬を使用して実施される。好適な担体及びその製剤化は、例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。投与すべき治療薬の量は、投与方法、患者の年齢及び体重に依存して且つ新生物の臨床症状に伴って変動する。一般に、量は、新生物又は感染性疾患に関連する他の疾患の治療において使用される他の作用物質のために使用される量の範囲内に含まれるであろうが、所定の場合、化合物の特異性が増加するために必要となる量は、より少量になるであろう。化合物は、当業者に公知である方法によって決定されるように、対象の免疫応答を増強するか、又は新生物若しくは感染細胞の増殖、生存若しくは侵襲性を減少させる用量で投与される。
【0157】
医薬組成物の製剤化
新生物又は感染性疾患を治療するための本発明の融合タンパク質複合体の投与は、他の成分と組み合わせて、前記新生物又は感染性疾患を改善、減少又は安定化させることに効果的である治療薬の濃度を生じさせる任意の好適な手段によって行われる。本発明の融合タンパク質複合体は、任意の好適な担体物質中に任意の適切な量で含有され得、一般には組成物の総重量の1~95重量%の量で存在する。本組成物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、膀胱内、腫瘍内又は腹腔内)投与経路のために好適である剤形で提供され得る。例えば、医薬組成物は、従来型の製薬実践に従って製剤化される(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照されたい)。
【0158】
ヒトの投与量は、最初に、マウス又は非ヒト霊長類で使用された化合物の量から外挿することによって決定され、これは、当業者であれば、動物モデルと比較してヒトのための用量を修正することが当該技術分野における日常作業であることを認識しているからである。例えば、用量は、約1μg(化合物)/kg(体重)~約5,000mg(化合物)/kg(体重);又は約5mg/kg(体重)~約4,000mg/kg(体重)又は約10mg/kg(体重)~約3,000mg/kg(体重);又は約50mg/kg(体重)~約2,000mg/kg(体重);又は約100mg/kg(体重)~約1,000mg/kg(体重);又は約150mg/kg(体重)~約500mg/kg(体重)で変動し得る。例えば、用量は、約1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,050、1,100、1,150、1,200、1,250、1,300、1,350、1,400、1,450、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500又は5,000mg/kg(体重)である。代わりに、用量は、約5mg(化合物)/kg(体重)~約20mg(化合物)/kg(体重)の範囲内である。別の実施例では、用量は、約8、10、12、14、16又は18mg/kg(体重)である。好ましくは、融合タンパク質複合体は、0.5mg/kg~約10mg/kg(例えば、0.5、1、3、5、10mg/kg)で投与される。当然ながら、この投与量は、初期臨床試験の結果及び特定患者の必要に応じて、そのような治療プロトコルにおいて日常的に実施されるように上方又は下方に調整することができる。
【0159】
医薬組成物は、医薬組成物中に投与後に制御された方法で治療薬を放出する適切な賦形剤を用いて製剤化される。例には、単一又は複数の単位錠剤又はカプセル組成物、油剤、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル、マイクロスフェア、分子複合体、ナノ粒子、パッチ及びリポソームが含まれる。好ましくは、融合タンパク質複合体は、非経口投与のために好適な賦形剤中で製剤化される。
【0160】
非経口組成物
本発明の融合タンパク質複合体を含む医薬組成物は、従来型の無毒性の医薬上許容される担体及びアジュバントを含有する剤形、製剤中又は好適な送達器具又はインプラントを介して注射、注入又は移植(皮下、静脈内、筋肉内、腫瘍内、膀胱内、腹腔内)によって非経口投与される。そのような組成物の製剤化及び調製は、製剤処方の分野の当業者に周知である。製剤化は、上記のRemington:The Science and Practice of Pharmacyに見出すことができる。
【0161】
非経口使用するための本発明の融合タンパク質複合体を含む組成物は、単位剤形(例えば、単回投与用アンプル中)で提供される。代わりに、本組成物は、数回分の用量を含有し、且つ好適な保存剤が添加され得る(下記を参照されたい)バイアルで提供される。本組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、注入器具若しくは移植のための送達器具の形態であるか、又は使用前に水若しくは別の好適なビヒクルを用いて再構成すべき乾燥粉末として提示される。新生物又は感染性疾患を低減又は改善する活性物質とは別に、本組成物は、好適な非経口的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。活性治療薬は、制御放出のためにミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム中に組み込むことができる。さらに、本組成物は、懸濁化剤、可溶化剤、安定剤、pH調製剤、張度調製剤及び/又は分散剤を含み得る。
【0162】
上記に示したように、本発明の融合タンパク質複合体を含む医薬組成物は、無菌注射のために好適な形態であり得る。そのような組成物を調製するために、好適な活性治療薬は、非経口的に許容される液体ビヒクル中に溶解又は懸濁化される。使用され得る特に許容されるビヒクル及び溶媒は、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウム又は好適なバッファー、1,3-ブタンジオール、リンガー液、等張性塩化ナトリウム溶液及びデキストロース液の添加によって好適なpHに調整された水である。水性調製物は、1種以上の保存剤(例えば、メチル、エチル又はnープロピルp-ヒドロキシベンゾエート)を含有し得る。これらの化合物の1つが水にほとんど溶解しないか又はわずかにのみ溶解する場合、溶解促進剤又は可溶化剤を添加し得るか、又は溶媒が10~60重量/重量%のプロピレングリコールを含み得る。
【0163】
本発明は、新生物又は感染性疾患又はその症状を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の式の化合物を含む医薬組成物を対象(例えば、哺乳動物、例えばヒト)に投与する工程を含む方法を提供する。したがって、1つの実施形態は、新生物又は感染性疾患又はその症状に苦しんでいるか又は罹患し易い対象を治療する方法である。本方法は、疾患若しくは障害又はその症状を治療するために十分な本明細書に記載の化合物の量の治療量を、疾患又は障害が治療されるような条件下で哺乳動物に投与する工程を含む。
【0164】
本明細書に記載の方法は、そのような効果を生成するために有効量の本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の組成物を対象(そのような治療を必要とすると同定された対象を含む)に投与する工程を含む。そのような治療を必要とする対象を同定することは、対象又はヘルスケアの専門家の判断であり得、主観的(例えば、意見)又は客観的(例えば、検査若しくは診断法によって測定可能)であり得る。
【0165】
本発明の治療方法(予防的治療を含む)は、一般に、本明細書に記載の治療有効量の化合物、例えば本明細書に記載の式の化合物の、哺乳動物、特にヒトを含むそれを必要とする対象(例えば、動物、ヒト)への投与を含む。そのような治療は、新生物、感染性疾患、障害又はその症状に苦しんでいるか、それらを有するか、罹患し易いか、又はリスク状態にある対象、特にヒトに好適に投与されるであろう。「リスク状態にある」それらの対象は、対象又はヘルスケア提供者の診断検査又は意見(例えば、遺伝子検査、酵素又はタンパク質マーカー、(本明細書に規定された)マーカー、家族歴など)による任意の客観的又は主観的決定によって決定することができる。本発明の融合タンパク質複合体は、免疫応答の増加が望ましい任意の他の障害の治療において使用され得る。
【0166】
本発明は、治療の進行を監視する方法も提供する。本方法は、対象が、疾患若しくはその症状を治療するために十分な治療量の本明細書に記載の化合物が投与されていた新生物に関連する障害若しくはその症状に苦しんでいるか、又は罹患し易い対象における診断マーカー(マーカー)(例えば、本明細書に記載の化合物、タンパク質若しくはそのインジケーターなどによって調節される本明細書で描出した任意の標的)のレベル又は診断的測定(例えば、スクリーン、アッセイ)を決定する工程を含む。本方法で決定されたマーカーのレベルは、対象の疾患状態を確定するために健常正常コントロール又は他の罹患患者のいずれかにおけるマーカーの公知のレベルと比較することができる。一部の場合、対象におけるマーカーの第2レベルが第1レベルの決定より後の時点に決定され、疾患の経過又は療法の有効性を監視するために、それらの2つのレベルが比較される。所定の態様では、対象におけるマーカーの治療前レベルは、本発明による治療を開始する前に決定される。マーカーのこの治療前レベルは、治療の有効性を決定するために治療開始後に対象におけるマーカーのレベルと比較され得る。
【0167】
併用療法
任意選択的に、本発明の融合タンパク質複合体又は本発明の融合タンパク質複合体を用いて治療された免疫細胞は、任意の他の標準療法と組み合わせて投与される。そのような方法は、当業者に公知であり、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。必要に応じて、本発明の融合タンパク質複合体又は本発明の融合タンパク質複合体を用いて治療された免疫細胞は、免疫療法、養子細胞療法、ワクチン、治療用抗体及びチェックポイント阻害剤抗体、標的化療法、手術、放射線療法又は化学療法を含むが、それらに限定されない任意の従来型の抗新生物療法と組み合わせて投与される。
【0168】
キット又は製剤系
本発明の融合タンパク質複合体又は本発明の融合タンパク質複合体を用いて治療された免疫細胞を含む医薬組成物は、新生物又は感染性疾患を改善する際に使用するためにキット又は製剤系に組み立てることができる。本発明のこの態様に従ったキット又は製剤系は、輸送手段、例えば厳重にその中に封じ込められる1つ以上の容器手段、例えばバイアル、チューブ、アンプル、瓶などを有する箱、カートン、チューブを含む。本発明のキット又は製剤系は、本発明の融合タンパク質複合体を使用するための関連する使用説明書も含み得る。1つの実施形態では、キットは、本発明の融合タンパク質複合体を使用する免疫細胞のエクスビボ治療及び/又はそのような細胞の患者への投与を可能にするための適切な容器、例えばバッグ、瓶、チューブを含む。キットは、本発明の融合タンパク質複合体を含む医療器具も含み得る。
【0169】
組み換えタンパク質の発現
一般に、本発明の融合タンパク質複合体(例えば、TxM複合体の成分)の調製は、本明細書に開示した手順及び認定された組み換えDNA技術によって実施され得る。
【0170】
一般に、組み換えポリペプチドは、好適な発現ビヒクル中での全部又は一部のポリペプチドをコードする核酸分子又はその断片を用いた好適な宿主細胞の形質転換によって生成される。分子生物学における当業者であれば、極めて広範な発現系のいずれかを使用して組み換えタンパク質を提供できることを理解するであろう。使用される正確な宿主細胞は、本発明にとって決定的に重要ではない。組み換えポリペプチドは、実質的に任意の真核生物宿主(例えば、サッカロミセス・エレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、例えばSf21細胞又は哺乳動物細胞、例えばNIH 3T3、HeLa又は好ましくはCOS細胞)中で生成され得る。そのような細胞は、広範囲の供給源(例えば、メリーランド州ロックランドのAmerican Type Culture Collection;例えばAusubel et al.,Current Protocol in Molecular Biology,New York:John Wiley and Sons,1997も参照されたい)から入手できる。トランスフェクションの方法及び発現ビヒクルの選択は、選択される宿主系に依存するであろう。形質転換法は、例えば、Ausubel et al.(上記を参照されたい)に記載されている。発現ビヒクルは、例えば、Cloning Vectors:A Laboratory Manual(P.H.Pouwels et al.,1985,Supp.1987)に提供されたものの中から選択され得る。
【0171】
組み換えポリペプチドを生成するために、様々な発現系が存在する。そのようなポリペプチドを生成するために有用な発現ベクターには、限定なしに、染色体ベクター、エピソームベクター及びウイルス由来ベクター、例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体要素由来、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなどのウイルスに由来するベクター並びにそれらの組み合わせに由来するベクターが含まれる。
【0172】
組み換えポリペプチドが発現すると、組み換えポリペプチドは、例えば、親和性クロマトグラフィーを使用して単離される。1つの例では、ポリペプチドに対して立てられた(例えば、本明細書に記載したように生成した)抗体は、カラムに付着され、組み換えポリペプチドを単離するために使用され得る。親和性クロマトグラフィー前にポリペプチドを有する細胞の溶解及び分別は、標準方法によって実施され得る(例えば、上記のAusubel et al.を参照されたい)。単離されると、組み換えタンパク質は、必要に応じて、例えば高速液体クロマトグラフィーによってさらに精製され得る(例えば、Fisher,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,eds.,Work and Burdon,Elsevier,1980を参照されたい)。
【0173】
本明細書で使用するように、本発明の生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子は、例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、タンパク質毒素、免疫グロブリンドメインなどの因子又は他の例えば酵素などの生物活性タンパク質を含み得る。また、生物活性ポリペプチドは、例えば、非タンパク質毒素、細胞傷害剤、化学療法薬、検出可能な標識、放射性物質などの他の化合物へのコンジュゲートを含み得る。
【0174】
本発明のサイトカインは、他の細胞に影響を及ぼし、細胞免疫の多数の多重効果のいずれかに対して責任を担う細胞によって生成される任意の因子によって規定される。サイトカインの例には、IL-2ファミリー、インターフェロン(IFN)、IL-10、IL-12、IL-18、IL-1、IL-17、TGF及びTNFサイトカインファミリー並びにIL-1~IL-35、IFN-α、IFN-β、IFNγ、TGF-β、TNF-α及びTNFβが含まれるが、それらに限定されない。
【0175】
本発明の1つの態様では、第1タンパク質は、インターロイキン-15(IL-15)ドメイン又はその機能的断片に共有結合された第1生物活性ポリペプチドを含む。IL-15は、T細胞の活性化及び増殖に影響を及ぼすサイトカインである。免疫細胞の活性化及び増殖に影響を及ぼすことにおけるIL-15活性は、幾つかの点でIL-2に類似するが、基本的な相違が明確に特徴付けられている(Waldmann,T A,2006,Nature Rev.Immunol.6:595-601)。
【0176】
本発明の別の態様では、第1タンパク質は、IL-15変異体(本明細書ではIL-15突然変異体とも呼ばれる)であるインターロイキン-15(IL-15)ドメインを含む。IL-15変異体は、好ましくは、天然(又は野生型)IL-15タンパク質と異なるアミノ酸配列を含む。IL-15変異体は、好ましくは、IL-15Rαポリペプチドに結合し、IL-15アゴニスト又はアンタゴニストとして機能する。好ましくは、アゴニスト活性を有するIL-15変異体は、スーパーアゴニスト活性を有する。IL-15変異体は、IL-15Rαとの関連とは無関係に、IL-15アゴニスト又はアンタゴニストとして機能し得る。IL-15アゴニストは、野生型IL-15と比較して匹敵するか又は増加した生物活性によって例示される。IL-15アンタゴニストは、野生型IL-15と比較して減少した生物活性又はIL-15媒介性応答を阻害する能力によって例示される。一部の例では、IL-15変異体は、IL-15RβγC受容体に増加又は減少した活性で結合する。一部の場合、IL-15変異体の配列は、天然IL-15配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸変化、例えば置換又は欠失を有し、そのような変化は、IL-15アゴニスト又はアンタゴニスト活性を生じさせる。好ましくは、アミノ酸の置換/欠失は、IL-15Rβ及び/又はγCと相互作用するIL-15のドメイン内にある。より好ましくは、アミノ酸の置換/欠失は、IL-15Rαポリペプチドへの結合又はIL-15変異体を生成する能力に影響を及ぼさない。IL-15変異体を生成するために好適なアミノ酸の置換/欠失は、推定又は公知のIL-15構造、IL-15と同族分子、例えば公知の構造を有するIL-2との比較に基づいて、本明細書に提供した合理的又はランダム突然変異誘発及び機能的アッセイ又は他の経験的方法を通して同定することができる。さらに、好適なアミノ酸置換は、保存的又は非保存的変化及び追加のアミノ酸の挿入であり得る。好ましくは、本発明のIL-15変異体は、成熟ヒトIL-15配列の6、8、10、61、65、72、92、101、104、105、108、109、111又は112位で1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換/欠失を含有する。特に、D8N(「D8」は、天然成熟ヒトIL-15配列内のアミノ酸及び残基の位置に関し、「N」は、IL-15変異体内のその位置で置換されたアミノ酸残基を意味する)、I6S、D8A、D61A、N65A、N72R、V104P又はQ108A置換は、アンタゴニスト活性を有するIL-15変異体を生じさせ、N72D置換は、アゴニスト活性を有するIL-15変異体を生じさせる。
【0177】
ケモカインは、サイトカインに類似して、他の細胞に曝露されると、細胞免疫の多数の多重効果のいずれかに対して責任を担う任意の化学的因子又は分子であると規定されている。好適なケモカインには、CXC、CC、C及びCX3Cケモカインファミリー並びにCCL-1~CCL-28、CXC-1~CXC-17、XCL-1、XCL-2、CX3CL1、MIP-lb、IL-8、MCP-1及びRantesが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0178】
増殖因子には、特定の細胞に曝露されると、罹患細胞の増殖及び/又は分化を誘導する任意の分子が含まれる。増殖因子には、タンパク質及び化学的分子が含まれ、その一部にはGM-CSF、G-CSF、ヒト増殖因子及び幹細胞増殖因子が含まれる。追加の増殖因子も、本明細書に記載した使用のために好適な可能性がある。
【0179】
毒素又は細胞傷害剤には、細胞に曝露されると致死的作用又は増殖への阻害作用を有する任意の物質が含まれる。より詳細には、エフェクター分子は、例えば、植物又は細菌起源の細胞毒素、例えばジフテリア毒素(DT)、志賀毒素、アブリン、コレラ毒素、リシン、サポリン、シュードモナス外毒素(PE)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質又はゲロニンであり得る。そのような毒素の生物活性断片は、当該技術分野において周知であり、例えばDT A鎖及びリシンA鎖などが含まれる。さらに、毒素は、細胞表面上で活性な物質、例えばホスホリパーゼ酵素(例えば、ホスホリパーゼC)であり得る。
【0180】
さらに、エフェクター分子は、化学療法薬、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセート、アドリアマイシン、ブレオマイシン又はシスプラスチンであり得る。
【0181】
さらに、エフェクター分子は、診断又はイメージング研究に好適な検出可能に標識された分子であり得る。そのような標識としては、ビオチン若しくはストレプトアビジン/アビジン、検出可能なナノ粒子若しくは結晶、酵素若しくはその触媒活性断片、蛍光標識、例えば緑色蛍光タンパク質、FITC、フィコエリトリン、シコム(cychome)、テキサスレッド若しくは量子ドット;放射性核種、例えばヨウ素-131、イットリウム-90、レニウム-188若しくはビスマス-212;リン光分子若しくは化学発光分子又はGd若しくは常磁性金属イオンに基づく造影剤などのPET、超音波若しくはMRIによって検出可能な標識が挙げられる。エフェクター又はタグを含むタンパク質の作成及び使用に関する開示については、例えば、Moskaug,et al.J.Biol.Chem.264,15709(1989);Pastan,I.et al.Cell 47,641,1986;Pastan et al.,Recombinant Toxins as Novel Therapeutic Agents,Ann.Rev.Biochem.61,331,(1992);“Chimeric Toxins”Olsnes and Phil,Pharmac.Ther.,25,355(1982);公開PCT出願の国際公開第94/29350号パンフレット;同第94/04689号パンフレット;同第2005046449号パンフレット及び米国特許第5,620,939号明細書を参照されたい。
【0182】
本発明のIL-15及びIL-15Rαポリペプチドは、アミノ酸配列において天然型IL-15及びIL-15Rα分子、例えばヒト、マウス若しくは他の齧歯類又は他の哺乳動物のIL-15及びIL-15Rα分子に好適に対応する。これらのポリペプチド及びコードする核酸の配列は、ヒトインターロイキン(IL15)mRNA-GenBank:Ul4407.1(参照により本明細書に組み込まれる)、ハツカネズミインターロイキン15(IL15)mRNA-GenBank:U14332.l(参照により本明細書に組み込まれる)、ヒトインターロイキン-15受容体アルファ鎖前駆体(IL15RA)mRNA-GenBank:U31628.1(参照により本明細書に組み込まれる)、ハツカネズミインターロイキン15受容体、アルファ鎖-GenBank:BC095982.1(参照により本明細書に組み込まれる)を含む文献において公知である。
【0183】
一部の状況では、例えば、sc抗体の結合価を増加させるため、本発明のタンパク質融合複合体又はコンジュゲート複合体を多価にすることが有用な可能性がある。特に、融合タンパク質複合体のIL-15ドメインとIL-15Rαドメインとの間の相互作用は、多価複合体を生成する手段を提供する。さらに、例えば、標準的なビオチン-ストレプトアビジン標識技術を使用することにより、又はラテックスビーズなどの好適な固体支持体に接合させることにより、1種のタンパク質と(同一の又は異なる)4種のタンパク質との間を共有結合的又は非共有結合的に連結することにより、多価融合タンパク質を作成することができる。化学的架橋タンパク質(例えば、デンドリマーへの架橋)も好適な多価種である。例えば、タンパク質は、ビオチン化BirAタグなどの修飾可能なタグ配列又はCys若しくはHisなどの化学反応性側鎖を有するアミノ酸残基をコードする配列を含めることによって改変され得る。そのようなアミノ酸タグ又は化学反応性アミノ酸は、融合タンパク質中の様々な位置、好ましくは生物活性ポリペプチド又はエフェクター分子の活性部位から遠位に配置され得る。例えば、可溶性融合タンパク質のC末端は、タグ又はそのような反応性アミノ酸を含む他の融合タンパク質に共有結合させることができる。2種以上の融合タンパク質を好適なデンドリマー又は他のナノ粒子に化学的に結合させて多価分子を得るために好適な側鎖を含めることができる。デンドリマーは、その表面の多数の様々な官能基のいずれか1つを有することができる合成化学ポリマーである(D.Tomalia,Aldrichimica Acta,26:91:101(1993))。本発明による使用に対する例示的なデンドリマーとしては、例えば、E9スターバーストポリアミンデンドリマー及びE9コンバスト(combust)ポリアミンデンドリマーが挙げられ、これらは、システイン残基を結合することができる。例示的なナノ粒子としては、リポソーム、コアシェル粒子又はPLGA系粒子が挙げられる。
【0184】
別の態様では、融合タンパク質複合体の一方又は両方のポリペプチドは、免疫グロブリンドメインを含む。代わりに、タンパク質結合ドメイン-IL-15融合タンパク質は、免疫グロブリンドメインに連結され得る。好ましい免疫グロブリンドメインは、他の免疫グロブリンドメインと相互作用して、上記に提供した多重鎖タンパク質を形成させる領域を含む。例えば、免疫グロブリン重鎖領域、例えばIgG1 CH2-CH3は、安定して相互作用してFc領域を作り出すことができる。Fcドメインを含む好ましい免疫グロブリンドメインは、Fc受容体又は補体タンパク質の結合活性を含むエフェクター機能及び/又はグリコシル化部位を有する領域も含む。一部の態様では、融合タンパク質複合体の免疫グロブリンドメインは、Fc受容体若しくは補体の結合活性又はグリコシル化若しくは二量体化を減少又は増強する突然変異を含有し、それにより生じたタンパク質の生物活性に影響を及ぼす。例えば、Fc受容体に対する結合を減少させる突然変異を含有する免疫グロブリンドメインを使用すると、Fc受容体を有する細胞に対して結合活性のより低い本発明の融合タンパク質を生成することができ、これは、特定の抗原を認識又は検出するように設計された試薬にとって有利な可能性がある。
【0185】
核酸及びベクター
本発明は、本発明の融合タンパク質(例えば、TxMの成分)をコードする核酸配列及び特にDNA配列をさらに提供する。好ましくは、DNA配列は、例えば、ファージ、ウイルス、プラスミド、ファージミド、コスミド、YAC又はエピソームなどの染色体外での複製に適したベクターによって運ばれる。特に、所望の融合タンパク質をコードするDNAベクターを使用すると、本明細書に記載した調製法を促進し、有意な量の融合タンパク質を得ることができる。DNA配列は、適切な発現ベクター、すなわち挿入されたタンパク質コーディング配列の転写及び翻訳に必要な要素を含有するベクターに挿入され得る。タンパク質コーディング配列を発現させるために、様々な宿主-ベクター系を利用することができる。これらには、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;酵母ベクターを含有する酵母などの微生物又はバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNAで形質転換された細菌などが含まれる。利用される宿主-ベクター系に応じて、多くの好適な転写要素及び翻訳要素のいずれか1つを使用することができる。上記のSambrook et al.,及びAusubel et al.を参照されたい。
【0186】
本発明に含まれるのは、可溶性融合タンパク質複合体を作成するための方法であって、宿主細胞内に第1タンパク質及び第2タンパク質をコードする本明細書に記載したDNAベクターを導入する工程と、細胞又は培地中で融合タンパク質を発現させ、第1タンパク質のIL-15ドメインと第2タンパク質の可溶性IL-15Rαドメインとの間の会合を可能にして可溶性融合タンパク質複合体を形成するために十分な条件下で培地中において宿主細胞を培養する工程と、宿主細胞又は培地から可溶性融合タンパク質複合体を精製する工程とを含む方法である。
【0187】
一般に、本発明による好ましいDNAベクターは、エフェクター分子をコードする配列に機能的に連結された生物活性ポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列を導入するための第1クローニング部位を5’から3’の方向に含む、ホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0188】
DNAベクターによってコードされる融合タンパク質成分は、カセット形式で提供され得る。用語「カセット」は、各成分が標準的組み換え方法によって別の成分に容易に置換され得ることを意味する。特に、カセット形式で構成されたDNAベクターは、コードされた融合タンパク質複合体が血清型を生じさせる能力を有し得るか又はそれを有する病原体に対して使用しなければならない場合に特に望ましい。
【0189】
融合タンパク質複合体をコードするベクターを作成するために、好適なリガーゼを使用して、生物活性ポリペプチドをコードする配列がエフェクターペプチドをコードする配列に連結される。提示ペプチドをコードするDNAは、例えば、好適な細胞系などの天然起源からDNAを単離するか、又は公知の合成方法、例えばリン酸トリエステル法によって得ることができる。例えば、Oligonucleotide Synthesis,IRL Press(M.J.Gait,ed.,1984)を参照されたい。合成オリゴヌクレオチドも、市販で入手可能な自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて調製され得る。生物活性ポリペプチドをコードする遺伝子は、単離されると、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は当該技術分野において公知の他の手段によって増幅させることができる。生物活性ポリペプチド遺伝子を増幅させるために好適なPCRプライマーは、PCR産物に制限酵素認識部位を付加することができる。PCR産物は、エフェクターペプチドのためのスプライス部位及び生物活性ポリペプチド-エフェクター融合タンパク質の適正な発現及び分泌のために必要なリーダー配列を含むことが好ましい。PCR産物は、リンカー配列をコードする配列又はそのような配列をライゲーションするための制限酵素部位も含むことが好ましい。
【0190】
本明細書に記載した融合タンパク質は、好ましくは、標準的組み換えDNA技術によって生成される。例えば、生物活性ポリペプチドをコードするDNA分子が単離されると、エフェクターポリペプチドをコードする別のDNA分子に配列をライゲートすることができる。生物活性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、エフェクターペプチドをコードするDNA配列に直接接合され得、より典型的には、本明細書で検討したリンカー配列をコードするDNA配列が生物活性ポリペプチドをコードする配列とエフェクターペプチドをコードする配列との間に挿入され、好適なリガーゼを使用して接合され得る。生じたハイブリッドDNA分子は、好適な宿主細胞中で発現して、融合タンパク質複合体を生成することができる。DNA分子は、ライゲーション後にコードされたポリペプチドの翻訳フレームが変更されないように、5’から3’の方向で互いにライゲートされる(すなわちDNA分子が互いにインフレームでライゲートされる)。生じたDNA分子は、インフレームの融合タンパク質をコードする。
【0191】
他のヌクレオチド配列を遺伝子構築物に含めることもできる。例えば、エフェクターペプチドに融合された生物活性ポリペプチドをコードする配列の発現を制御するプロモーター配列又は細胞表面若しくは培養培地に向けて融合タンパク質を方向付けるリーダー配列は、構築物に含められるか又はその中に構築物が挿入される発現ベクター中に存在し得る。免疫グロブリン又はCMVのプロモーターが特に好ましい。
【0192】
変異生物活性ポリペプチド、IL-15、IL-15Rα又はFcドメインのコーディング配列を得る際、当業者であれば、ポリペプチドが、生物活性を消失又は減少することなく所定のアミノ酸置換、付加、欠失及び翻訳後修飾によって改変され得ることを認識するであろう。特に、保存的アミノ酸置換、すなわち1個のアミノ酸の同様のサイズ、電荷、極性及び立体配座を備える別のアミノ酸との置換は、タンパク質機能を有意に変化させる可能性が低いことが周知である。タンパク質の構成要素である20種の標準的なアミノ酸は、大まかには以下の4つの群の保存的アミノ酸に分類される。非極性(疎水性)群は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン及びバリンを含み、極性(非荷電、中性)群は、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン及びチロシンを含み、正荷電(塩基性)群は、アルギニン、ヒスチジン及びリシンを含み、且つ負帯電(酸性)群は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。タンパク質において同じ群内の別のアミノ酸との1個のアミノ酸置換は、そのタンパク質の生物活性に有害な作用を有する可能性が低い。他の例では、アミノ酸位置への修飾を行うと、タンパク質の生物活性を減少又は増強することができる。そのような変化は、無作為に又は標的とされる残基の公知若しくは推定される構造的若しくは機能的な特性に基づく部位特異的突然変異によって導入され得る。変異タンパク質の発現に続いて、結合アッセイ又は機能性アッセイを使用して、修飾に起因する生物活性の変化を容易に評価することができる。
【0193】
ヌクレオチド配列間の相同性は、DNAハイブリダイゼーション分析によって決定され得、ここで、二本鎖DNAハイブリッドの安定性は、発生する塩基対合の程度に左右される。高温及び/又は低塩含有量の条件は、ハイブリッドの安定性を減少させ、選択される程度よりも低い相同性を有する配列のアニーリングを防止するために変化させることができる。例えば、約55%のG-C含有量を有する配列に対して、40℃~50℃、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウムバッファー)及び0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は、約60%~70%の相同性を示し、50℃~65℃、1×SSC及び0.1%のSDSのハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は、約82%~97%の相同性を示し、52℃、0.1×SSC及び0.1%のSDSのハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は、約99%~100%の相同性を示す。ヌクレオチド及びアミノ酸の配列を比較するため(及び相同性の程度を測定するため)の広範囲のコンピュータープログラムが利用可能であり、市販で入手可能及び無料の両方のソフトウェアの供給元を提供するリストは、Ausubel et al.(1999)に見出せる。容易に入手可能な配列比較及び多重配列アラインメントアルゴリズムは、それぞれBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,1997)及びClustalWプログラムである。BLASTは、ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.govで利用可能であり、ClustalWは、2.ebi.ac.uk.で利用可能である。
【0194】
融合タンパク質の成分は、それぞれがその意図される機能を実施できる限りに、ほぼ任意の順序で構成することができる。例えば、1つの実施形態では、生物活性ポリペプチドは、エフェクター分子のC末端又はN末端に置かれる。
【0195】
本発明の好ましいエフェクター分子は、そのドメインに意図される機能に資するサイズを有するであろう。本発明のエフェクター分子は、周知の化学的架橋方法を含む多様な方法によって作成し、生物活性ポリペプチドと融合させることができる。例えば、Means,G.E.and Feeney,R.E.(1974)in Chemical Modification of Proteins,Holden-Dayを参照されたい。S.S.Wong(1991)in Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking,CRC Pressも参照されたい。しかしながら、一般には、組み換え操作を使用してインフレーム融合タンパク質を作成することが好ましい。
【0196】
上述のように、融合分子又はコンジュゲート分子は、本発明に従って数種の方法で構成可能である。例示的な立体配置では、生物活性ポリペプチドのC末端は、エフェクター分子のN末端に機能的に連結される。その連結は、必要に応じて組み換え方法で達成され得る。しかしながら、別の立体配置では、生物活性ポリペプチドのN末端は、エフェクター分子のC末端に連結される。
【0197】
代わりに又は加えて、1つ以上の追加のエフェクター分子を必要に応じて生物活性ポリペプチド又はコンジュゲート複合体に挿入することができる。
【0198】
ベクター及び発現
本発明の融合タンパク質複合体(例えば、TxM)の構成成分を発現させるために多数の戦略を用いることができる。例えば、本発明の融合タンパク質複合体の1つ以上の成分をコードする構築物は、構築物を挿入するためのベクター内に制限酵素を使用して切り込みを作り、その後、ライゲーションを行うことで適切なベクターに組み込みことができる。次に、遺伝子構築物を含有するベクターは、融合タンパク質を発現させるために好適な宿主内に導入される。概して、上記のSambrook et al.を参照されたい。好適なベクターは、クローニングプロトコルに関連する因子に基づいて経験的に選択することができる。例えば、ベクターは、使用されている宿主と適合し、これに適正なレプリコンを有していなければならない。ベクターは、発現対象の融合タンパク質複合体をコードするDNA配列に順応できなければならない。好適な宿主細胞としては、真核細胞及び原核細胞、好ましくは容易に形質転換されて培養培地中で迅速な増殖を示す細胞が含まれる。詳細には、好ましい宿主細胞としては、大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtillis)などの原核生物並びに例えば動物細胞及び酵母株(例えば、S.セレビジエ(S.cerevisiae))などの真核細胞が挙げられる。哺乳動物細胞、特にJ558、NSO、SP2-O又はCHOが一般に好ましい。他の好適な宿主としては、例えば、Sf9のような昆虫細胞が含まれる。従来の培養条件が使用される。上記のSambrookを参照されたい。その後、安定性で形質転換又はトランスフェクトされた細胞系を選択できる。本発明の融合タンパク質複合体を発現する細胞は、公知の手順によって決定され得る。例えば、免疫グロブリンに連結した融合タンパク質複合体の発現は、連結した免疫グロブリンに特異的なELISA及び/又は免疫ブロット法によって決定され得る。IL-15又はIL-15Rαドメインに連結した生物活性ポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を検出するための他の方法は、実施例において開示する。
【0199】
上記で概して言及したように、宿主細胞は、所望の融合タンパク質をコードする核酸を増殖させるための調製目的で使用することができる。したがって、宿主細胞は、その中で融合タンパク質の生成が特異的に意図される原核細胞又は真核細胞を含み得る。したがって、宿主細胞としては、詳細には、融合をコードする核酸を増殖させることができる酵母、ハエ、蠕虫、植物、カエル、哺乳動物の細胞及び器官が挙げられる。使用され得る哺乳動物細胞系の非限定的な例としては、CHO dhfr細胞(Urlaub and Chasm,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980))、293細胞(Graham et al.,J Gen.Virol.,36:59(1977))又はSP2若しくはNSOなどの骨髄腫細胞(Galfre and Milstein,Meth.Enzymol.,73(B):3(1981))が挙げられる。
【0200】
所望の融合タンパク質複合体をコードする核酸を増殖させることができる宿主細胞は、昆虫(例えば、フルギペルダ(frugiperda)種)、酵母(Fleer,R.,Current Opinion in Biotechnology,3(5):486496(1992)によって総説されたように、例えばS.セレビジエ(S.cerevisiae)、S.ポンべ(S.pombe)、P.パストリス(P.pastoris)、K.ラクティス(K.lactis)、H.ポリモルファ(H.polymorpha))、真菌細胞及び植物細胞を含む非哺乳動物真核細胞を同様に包含する。例えば、大腸菌(E.coli)及びバチルス属(Bacillus)などの所定の原核生物も企図されている。
【0201】
所望の融合タンパク質をコードする核酸は、細胞をトランスフェクトするための標準的技術によって宿主細胞内に導入され得る。用語「トランスフェクトする」又は「トランスフェクション」は、リン酸カルシウム共沈法、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、ウイルス形質導入法及び/又はウイルス組み込み法を含む、核酸を宿主細胞内に導入するための全ての従来技術を包含することが意図されている。宿主細胞をトランスフェクトするために好適な方法は、上記のSambrook et al.及び他の実験室用教科書に見出すことができる。
【0202】
様々なプロモーター(転写開始調節領域)が本発明によって使用され得る。適切なプロモーターの選択は、提案される発現宿主に依存する。異種起源に由来するプロモーターは、それらが選択された宿主において機能的である限り使用され得る。
【0203】
プロモーターの選択は、ペプチド又はタンパク質の生成の所望の効率及びレベルにも依存する。例えば、tacなどの誘導性プロモーターは、大腸菌(E.coli)におけるタンパク質発現のレベルを劇的に増加させるために使用されることが多い。タンパク質の過剰発現は、宿主細胞にとって有害な場合がある。結果として、宿主細胞増殖が制限される可能性がある。誘導性プロモーター系の使用は、宿主細胞が遺伝子発現の誘導に先立って許容可能な密度で培養されることを可能にし、それにより生成物のより高い収率が促進される。
【0204】
様々なシグナル配列が本発明に従って使用され得る。生物活性ポリペプチドコーディング配列に相同性のシグナル配列が使用され得る。代わりに、発現宿主における効率的な分泌及びプロセッシングのために選択又は設計されているシグナル配列も使用され得る。例えば、好適なシグナル配列/宿主細胞対には、枯草菌(B.subtilis)における分泌に対する枯草菌(B.subtilis)sacBシグナル配列及びサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のα接合因子又はP.パストリス(P.pastoris)分泌に対するP.パストリス(P.pastoris)酸性フォスファターゼpohIシグナル配列が含まれる。シグナル配列は、シグナルペプチターゼ切断部位をコードする配列を通して、又は架橋が下流のTCR配列の正確なリーディングフレームを保証する、通常10個よりも少ないコドンからなる短いヌクレオチド架橋によってタンパク質コーディング配列に直接的に接合され得る。
【0205】
転写及び翻訳を増強する要素は、真核生物のタンパク質発現系において同定されてきた。例えば、異種プロモーターのいずれかの側にカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーター1,000bpを配置すると、植物細胞における転写レベルを10倍~400倍上昇させ得る。発現構築物は、適切な翻訳開始配列も含むはずである。正確な翻訳開始のためコザック(Kozak)コンセンサス配列を含むように発現構築物を修飾すると、翻訳のレベルを10倍増加させることができる。
【0206】
マーカーが関心対象の遺伝子と異なる部位で組み込まれ得るように、発現構築物の一部又はそれからの分離体であり得る(例えば、発現ベクターによって運ばれる)選択マーカーが使用されることが多い。例としては、抗生物質に耐性を付与する(例えば、大腸菌(E.coli)宿主細胞にアンピシリン耐性を付与するbla、広範囲の原核細胞及び真核細胞にカナマイシン耐性を付与するnptII)又は宿主が最少培地上で増殖することを可能にする(例えば、HIS4は、P.パストリス(P.pastoris)又はHis-S.セレビジエ(S.cerevisiae)がヒスチジン不在下で増殖することを可能にする)マーカーが挙げられる。選択性マーカーは、マーカーの独立した発現を可能にするために、それ自体の転写及び翻訳の開始領域並びに停止調節領域を有する。抗生物質耐性がマーカーとして使用される場合、選択のための抗生物質の濃度は、抗生物質に応じて変化するが、一般には培地1mL当たり抗生物質10μg~600μgの範囲内である。
【0207】
発現構築物は、公知の組み換えDNA技術(Sambrook et al.,1989;Ausubel et al.,1999)を利用することによって構築される。制限酵素の消化及びライゲーションは、DNAの2つの断片を連結するために使用される基本的な工程である。DNA断片の端部は、ライゲーションに先立って修飾を必要とする場合があり、これは、オーバーハングの充填、ヌクレアーゼ(例えば、ExoIII)を用いた断片の末端部分の欠失、部位特異的突然変異誘発又はPCRによる新規な塩基対の付加によって遂行され得る。ポリリンカー及びアダプターを使用すると、選択された断片の接合を促進できる。発現構築物は、典型的には、大腸菌(E.coli)の制限、ライゲーション及び形質転換の繰り返しを使用する段階で組み立てられる。発現構築物を構築するために好適な多数のクローニングベクターは、当該技術分野において公知であり(Ausubel et al.,1999で言及されたλZAP及びpBLUESCRIPT SK-1、Stratagene、La Jolla,CA、pET,Novagen Inc.Madison,WI)、特定の選択は、本発明にとって重要ではない。クローニングベクターの選択は、宿主細胞内への発現構築物の導入のために選択された遺伝子移入系による影響を受ける。各段階の終了時、生じた構築物は、制限、DNA配列、ハイブリダイゼーション及びPCR分析によって分析され得る。
【0208】
発現構築物は、直鎖状若しくは環状のいずれかのクローニングベクター構築物として宿主に形質転換され得るか、又はクローニングベクターから除去されて、そのまま使用されるか若しくは送達ベクター上に導入され得る。送達ベクターは、選択された宿主細胞型において発現構築物の導入及び維持を促進する。発現構築物は、多数の公知の遺伝子移入系(例えば、天然コンピテンス、化学的に媒介された形質転換、プロトプラスト形質転換、エレクトロポレーション、微粒子銃形質転換、トランスフェクション又はコンジュゲーション)によって宿主細胞に導入される(Ausubel et al.,1999;Sambrook et al.,1989)。選択される遺伝子移入系は、使用される宿主細胞及びベクター系に依存する。
【0209】
例えば、発現構築物は、プロトプラスト形質転換法又はエレクトロポレーション法により、S.セレビジエ(S.cerevisiae)細胞内に導入され得る。S.セレビジエ(S.cerevisiae)のエレクトロポレーション法は、容易に遂行され、スフェロプラスト形質転換に匹敵する形質転換効率をもたらす。
【0210】
本発明は、関心対象の融合タンパク質を単離するための生産方法をさらに提供する。この方法では、その中へ調節配列に機能的に連結された関心対象のタンパク質をコードする核酸が導入されている宿主細胞(例えば、酵母、真菌、昆虫、細菌又は動物細胞)が、関心対象の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写を刺激するため、培養培地において生産規模で増殖される。続いて、関心対象の融合タンパク質は、採取された宿主細胞又は培養培地から単離される。標準的なタンパク質精製技術を使用すると、培地又は採取された細胞から関心対象のタンパク質を単離することができる。特に、精製技術を使用すると、ローラーボトル、スピナーフラスコ、組織培養プレート、バイオリアクター又は発酵槽を含む様々な実装から大規模で(すなわち少なくともミリグラム量で)所望の融合タンパク質を発現させて精製することができる。
【0211】
発現したタンパク質融合複合体は、公知の方法によって単離及び精製することができる。典型的には、培養培地は、遠心分離又は濾過され、次に上清が親和性若しくは免疫親和性クロマトグラフィー、例えばプロテインA若しくはプロテインG親和性クロマトグラフィー又は発現した融合複合体を結合するモノクローナル抗体の使用を含む免疫親和性プロトコルによって精製される。本発明の融合タンパク質は、公知の技術の適切な組み合わせによって分離及び精製され得る。これらの方法としては、例えば、塩沈澱法及び溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過及びSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの分子量の差を利用する方法、イオン交換カラムクロマトグラフィーなどの電荷の差を利用する方法、親和性クロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法並びに等電点電気泳動法、Ni-NTAなどの金属親和性カラムにおける等電点の差を利用する方法が挙げられる。これらの方法に関連する開示については、一般に、上記のSambrook et al.及びAusubel et al.を参照されたい。
【0212】
本発明の融合タンパク質は、実質的に純粋であることが好ましい。すなわち、融合タンパク質は、融合タンパク質が好ましくは少なくとも80%又は90%~95%の均一性(重量/重量)で存在するように、自然界でそれに付随する細胞置換物質から単離されている。少なくとも98%~99%の均一性(重量/重量)を有する融合タンパク質が多くの医薬、臨床及び研究の用途のために最も好ましい。実質的に精製されると、融合タンパク質は、治療適用に対して汚染物質を実質的に含まないはずである。部分的又は実質的純度に精製されると、可溶性タンパク質は、治療に使用され得るか、又は本明細書に開示したインビトロ若しくはインビボアッセイを実施する際に使用され得る。実質的な純度は、クロマトグラフィー及びゲル電気泳動などの様々な標準的な技術によって特定され得る。
【0213】
本発明の融合タンパク質複合体は、癌性若しくは感染しているか、又は1種以上の疾患に感染する可能性のある様々な細胞と共にインビトロ又はインビボで使用するために好適である。
【0214】
ヒトインターロイキン-15(huIL-15)は、抗原提示細胞上で発現したヒトIL-15受容体α鎖(huIL-15Rα)によって免疫エフェクター細胞にトランス提示される。IL-15Rαは、主として細胞外sushiドメイン(huIL-15RαSu)を通して高い親和性(38pM)でhuIL-15に結合する。本明細書で記載するように、huIL-15及びhuIL-15RαSuドメインは、マルチドメイン融合複合体を構築するためのスカフォールドとして使用され得る。
【0215】
IgGドメイン、特にFc断片は、承認された生物学的薬物を含む、多数の治療用分子のための二量体のスカフォールドとして使用されて成功を収めてきた。例えば、エタネルセプトは、ヒトIgG1のFcドメインに連結された可溶性ヒトp75腫瘍壊死因子(TNF-α)受容体(sTNFR)の二量体である。この二量体化は、エタネルセプトが単量体sTNFRよりもTNF-α活性を阻害することにおいて最大1,000倍強力になることを可能にし、単量体形態よりも5倍長い血清半減期を有する融合体を提供する。その結果として、エタネルセプトは、インビボでのTNF-αの炎症促進活性の中和に効果的であり、多数の異なる自己免疫適応についての患者の転帰を改善する。
【0216】
その二量体化活性に加えて、Fc断片は、補体活性化及びナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、食細胞及び樹状細胞上で提示されるFcγ受容体との相互作用を通して細胞傷害性エフェクター機能も提供する。抗癌性治療用抗体及び他の抗体ドメインFc融合タンパク質の状況において、これらの活性は、動物腫瘍モデル及び癌患者において観察される有効性に重要な役割を果たす可能性が高い。しかしながら、これらの細胞傷害性エフェクター応答は、多数の治療用途で十分でない可能性がある。したがって、Fcドメインのエフェクター活性に対する改善及び拡大並びに標的化治療分子による疾患部位に対する、T細胞活性を含む細胞溶解性免疫応答を動員する他の手段の開発に相当に大きい関心が寄せられてきた。IgGドメインは、従来のハイブリドーマ融合テクノロジーによって生成される製品の質及び量を改善するため、二重特異性抗体を形成するためのスカフォールドとして使用されてきた。これらの方法は、他のスカフォールドの欠点を回避するが、臨床的開発及び使用を支持するのに十分なレベルで哺乳動物細胞中において二重特異性抗体を生成するのは困難であった。
【0217】
ヒト由来免疫賦活性多量体スカフォールドを開発する試みでは、ヒトIL-15(huIL-15)及びIL-15受容体ドメインが使用された。huIL-15は、高い結合親和性(平衡解離定数(KD)約10-11M)でhuIL-15受容体α鎖(huIL-15Rα)と会合する、サイトカインの小さい4αヘリックスバンドルファミリーのメンバーである。生じた複合体は、次に、T細胞及びNK細胞の表面上で提示されたヒトIL-2/15受容体β/共通γ鎖(huIL-15RβγC)複合体にトランス提示される。このサイトカイン/受容体相互作用は、ウイルス感染細胞及び悪性細胞を根絶するのに重要な役割を果たすエフェクター細胞及びNK細胞の増殖及び活性化をもたらす。通常、huIL-15及びhuIL-15Rαが引き続いて分泌され、細胞表面上でヘテロ二量体分子として提示される複合体を細胞内で形成するために樹状細胞内で同時生成される。したがって、huIL-15とhuIL-15Rαとの相互作用の特徴は、これらの鎖間結合ドメインがヒト由来免疫賦活性スカフォールドとして機能し、標的特異的結合が可能な可溶性二量体分子を作成できたことを示唆している。
【0218】
本発明の実施は、他に特に指示しない限り、当業者の知識の範囲内に明確に含まれる分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来型技術を使用する。そのような技術は、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(Gait,1984);“Animal Cell Culture”(Freshney,1987);“Methods in Enzymology”、“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(Miller and Calos,1987);“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994);“Current Protocols in Immunology”(Coligan,1991)などの文献で十分に説明されている。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの生成に適用することができ、したがって本発明を生成及び実施する際に考慮に入れることができる。下記のセクションでは、特定の実施形態のために特に有用な技術について考察する。
【0219】
下記の実施例は、当業者に本発明のアッセイ、スクリーニング及び治療方法の作成方法及び使用方法についての詳細な開示及び説明を提供できるように提示するものであり、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を限定することを意図していない。
【実施例0220】
実施例1:IL-15、IL-12及びIL-18ドメインを含む融合タンパク質複合体の生成及び特性解析
癌又は感染性疾患を治療するための重要な治療アプローチは、疾患細胞に対する免疫細胞活性を増強することに依存する。この戦略は、免疫細胞をエクスビボで刺激し、その後の養子移入及び/又は患者におけるインビボでの免疫細胞のレベル又は活性を増加させることを含む。これらのアプローチに包含される免疫細胞は、天然(すなわちNK細胞)又は適応的(すなわちT細胞)免疫系の細胞であり得る。
【0221】
免疫活性を増強するための1つのアプローチは、免疫細胞に免疫賦活性サイトカインを提供することである。そのようなサイトカインは、当該技術分野において公知であり、単独で又は他のサイトカイン若しくは薬剤と組み合わせて使用することができる。下記で詳細に説明するように、IL-12及び/又はIL-18結合ドメインに融合されたIL-15N72D:IL-15RαSu/Fcスカフォールドを含む融合タンパク質複合体を生成した(
図1A及び
図1B)。これらの融合タンパク質複合体は、NK細胞に結合すること及びサイトカイン受容体のそれぞれを介して細胞応答をシグナル伝達することに利点を有する。Ig分子のFc領域は、可溶性マルチポリペプチド複合体を提供するための二量体を形成し、精製の目的でプロテインAを結合し、NK細胞及びマクロファージ上のFcγ受容体と相互作用することができるため、それにより個別サイトカインの組み合わせ中に存在しない利点を融合タンパク質複合体に提供する。さらに、IL-15N72DドメインとIL-15RαSuドメインとの間の相互作用は、単一免疫賦活性融合タンパク質複合体中にIL-15N72D、IL-12及びIL-18(及び場合により他のタンパク質ドメイン又は薬剤)を連結するための手段を提供する。
【0222】
詳細には、IL-12及び/又はIL-18ドメインをIL-15N72D及びIL-15RαSu/Fc鎖に連結する構築物を作成した。IL-12の場合、成熟サイトカインは、活性一本鎖形を生成するために可動性リンカーを介して連結され得る2つのポリペプチドサブユニット(p40及びp35)からなる。一部の場合、IL-12又はIL-18ポリペプチドのいずれかがIL-15N72D及び/又はIL-15RαSu/Fc鎖のN末端に連結されている。他の場合、IL-12又はIL-18ポリペプチドは、IL-15N72D及び/又はIL-15RαSu/Fc鎖のN末端に連結されている。IL-12及び/又はIL-18結合ドメインに融合されたIL-15N72D:IL-15RαSu/Fcスカフォールドを含む特異的融合タンパク質複合体について下記で記載する。
【0223】
1)IL-12/IL-15RαSu/Fc及びIL-18/IL-15N72D融合タンパク質を含む融合タンパク質複合体を生成した。ヒトIL-12サブユニット配列及びヒトIL-18配列は、UniProt社のウェブサイトから入手し、これらの配列のDNAは、Genewiz社によって合成された。詳細には、IL-12の一本鎖バージョンを生成するためにIL-12サブユニットβ(p40)をIL-12サブユニットα(p35)に連結し、その後、IL-12配列をIL-15RαSu/Fc鎖に直接的に連結する構築物を作成した。合成されたIL-12配列は、オーバーラッピングPCRによってIL-15RαSu/FcのN末端コーディング領域に連結させた。IL-15RαSu/FcのN末端に連結したIL-12を含む構築物の核酸配列及びタンパク質配列を下記に示す。
【0224】
IL-12/IL-15RαSu/Fc構築物の核酸配列(シグナルペプチド配列を含む)は、下記の通りである(配列番号1)。
(シグナルペプチド)
atgaagtgggtgaccttcatcagcctgctgttcctgttctccagcgcctactcc
(ヒトIL-12サブユニットβ(p40))
【化4】
(リンカー)
ggaggtggcggatccggaggtggaggttctggtggaggtgggagt
(ヒトIL-12サブユニットα(p35))
【化5】
(ヒトIL-15Rαsushiドメイン)
【化6】
(ヒトIgG1 CH2-CH3(Fc)ドメイン)
【化7】
【0225】
IL-12/IL-15RαSu/Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(シグナルペプチド配列を含む)は、下記の通りである(配列番号2)。
(シグナルペプチド)
MKWVTFISLLFLFSSAYS
(ヒトIL-12サブユニットβ(p40))
【化8】
(リンカー)
GGGGSGGGGSGGGGS
(ヒトIL-12サブユニットα(p35))
【化9】
(ヒトIL-15Rαsushiドメイン)
【化10】
(ヒトIgG1 CH2-CH3(Fc)ドメイン)
【化11】
【0226】
一部の場合、リーダーペプチドは、可溶性であるか又は分泌され得る成熟形を生成するために無傷ポリペプチドから切断される。
【0227】
オーバーラッピングPCRにより、合成したIL-18配列をIL-15N72DのN末端コーディング領域に連結させる構築物も作成した。IL-15N72DのN末端に連結したIL-18を含む構築物の核酸配列及びタンパク質配列を下記に示す。
【0228】
IL-18/IL-15N72D構築物の核酸配列(リーダー配列を含む)は、下記の通りである(配列番号3)。
(シグナルペプチド)
atgaagtgggtgaccttcatcagcctgctgttcctgttctccagcgcctactcc
(ヒトIL-18)
【化12】
(ヒトIL-15N72D)
【化13】
【0229】
IL-18/IL-15N72D融合タンパク質のアミノ酸配列(リーダー配列を含む)は、下記の通りである(配列番号4)。
(シグナルペプチド)
MKWVTFISLLFLFSSAYS
(ヒトIL-18)
【化14】
(ヒトIL-15N72D)
【化15】
【0230】
一部の場合、リーダーペプチドは、可溶性であるか又は分泌され得る成熟形を生成するために無傷ポリペプチドから切断される。
【0231】
IL-12/IL-15RαSu/Fc及びIL-18/IL-15N72D構築物は、以前に記載されたように発現ベクター内にクローニングし(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,507,222号明細書、実施例1)、且つ発現ベクターをCHO細胞内にトランスフェクトした。CHO細胞中の2つの構築物の共発現は、可溶性IL-18/IL-15N72D:IL-12/IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体(hIL18/IL12/TxMと呼ばれる)の形成及び分泌を可能にした。hIL18/IL12/TxMタンパク質は、プロテインA親和性クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーによってCHO細胞培養上清から精製すると、IL-12/IL-15RαSu/Fc二量体及びIL-18/IL-15N72D融合タンパク質からなる可溶性(非凝集化)融合タンパク質複合体をもたらした(
図2A~2C)。
【0232】
プロテインA精製IL-18/IL-15N72D:IL-12/IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体の還元状態下SDS-PAGE分析を
図3に示す。約90kDa及び約30kDaでの可溶性IL-12/IL-15RαSu/Fc及びIL-18/IL-15N72Dタンパク質に対応するバンドがそれぞれ観察された(
図3)。
【0233】
2)第2アプローチのために、IL-18/IL-15RαSu/Fc及びIL-12/IL-15N72D融合タンパク質を含む類似の融合タンパク質複合体を生成した。詳細には、構築物は、IL-18をIL-15RαSu/Fc鎖に直接的に結合させることによって作成した。合成されたIL-18配列は、オーバーラッピングPCRによってIL-15RαSu/FcのN末端コーディング領域に連結されている。IL-15RαSu/FcのN末端に連結したIL-18を含む構築物の核酸配列及びタンパク質配列を下記に示す。
【0234】
IL-18/IL-15RαSu/Fc構築物の核酸配列(シグナルペプチド配列を含む)は、下記の通りである(配列番号5)。
(シグナルペプチド)
atgaagtgggtgaccttcatcagcctgctgttcctgttctccagcgcctactcc
(ヒトIL-18)
【化16】
(ヒトIL-15Rαsushiドメイン)
【化17】
(ヒトIgG1 CH2-CH3(Fc)ドメイン)
【化18】
【0235】
IL-18/IL-15RαSu/Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(シグナルペプチド配列を含む)は、下記の通りである(配列番号6)。
(シグナルペプチド)
MKWVTFISLLFLFSSAYS
(ヒトIL-18)
【化19】
(ヒトIL-15Rαsushiドメイン)
【化20】
(ヒトIgG1 CH2-CH3(Fc)ドメイン)
【化21】
【0236】
一部の場合、リーダーペプチドは、可溶性であるか又は分泌され得る成熟形を生成するために無傷ポリペプチドから切断される。
【0237】
オーバーラッピングPCRにより、合成したIL-12配列をIL-15N72DのN末端コーディング領域に連結させる構築物も作成した。上述のように、IL-12の一本鎖バージョン(p40-リンカー-p35)を使用した。IL-12/IL-15N72D構築物の核酸配列(リーダー配列を含む)は、下記の通りである(配列番号7)。
(シグナルペプチド)
atgaagtgggtgaccttcatcagcctgctgttcctgttctccagcgcctactcc
(ヒトIL-12サブユニットβ(p40))
【化22】
(リンカー)
ggaggtggcggatccggaggtggaggttctggtggaggtgggagt
(ヒトIL-12サブユニットα(p35))
【化23】
(ヒトIL-15N72D)
【化24】
【0238】
IL-12/IL-15N72D融合タンパク質のアミノ酸配列(リーダー配列を含む)は、下記の通りである(配列番号8)。
(シグナルペプチド)
MKWVTFISLLFLFSSAYS
(ヒトIL-12サブユニットβ(p40))
【化25】
(リンカー)
GGGGSGGGGSGGGGS
(ヒトIL-12サブユニットα(p35))
【化26】
(ヒトIL-15N72D)
【化27】
【0239】
一部の場合、リーダーペプチドは、可溶性であるか又は分泌され得る成熟形を生成するために無傷ポリペプチドから切断される。
【0240】
IL-18/IL-15RαSu/Fc及びIL-12/IL-15N72D構築物は、以前に記載されたように発現ベクター内にクローニングし(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,507,222号明細書、実施例1)、且つ発現ベクターをCHO細胞内にトランスフェクトした。CHO細胞中の2つの構築物の共発現は、プロテインA親和性クロマトグラフィー及び他のクロマトグラフィー法によって精製され得る可溶性IL-12/IL-15N72D:IL-18/IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体(hIL12/IL18/TxMと呼ばれる)の形成及び分泌を可能にした。
【0241】
3)IL-18/IL-15RαSu/Fc及びIL-18/IL-15N72D融合タンパク質を含むか、又はIL-12/IL-15RαSu/Fc及びIL-12/IL-15N72D融合タンパク質を含む類似の融合タンパク質複合体を生成し得る。IL-18/IL-15RαSu/Fc及びIL-15N72D融合タンパク質又はIL-15RαSu/Fc及びIL-18/IL-15N72D融合タンパク質を含む「双頭型」融合タンパク質複合体を生成し得る(
図1B)。同様に、IL-12/IL-15RαSu/Fc及びIL-15N72D融合タンパク質又はIL-15RαSu/Fc及びIL-12/IL-15N72D融合タンパク質を含む「双頭型」融合タンパク質複合体を生成し得る。そのような複合体は、上記に記載したように生成した。
【0242】
実施例2:hIL18/IL12/TxM及びhIL12/IL18/TxM融合タンパク質複合体の活性のインビトロ特性解析
ELISAに基づく方法は、hIL18/IL12/TxM及びhIL12/IL18/TxM融合タンパク質複合体の形成を確証した。
図4Aでは、トランスフェクトしたCHO細胞からの培養上清中のIL-18/IL-15N72D:IL-12/IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体が、捕捉抗体である抗ヒトIL-15抗体(MAB647、R&D Systems)及びホースラディッシュペルオキシダーゼに抱合した検出抗体を用いるhuIgG1/IL15特異的ELISAを使用して検出された。これを、公知の濃度を有する類似の抗体TxM融合タンパク質複合体(2B8T2M)と比較した。hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体からのシグナルを2B8 T2Mコントロールのシグナルと比較すると、融合タンパク質濃度を推定することができる。hIL12/IL18/TxM融合タンパク質複合体から類似の結果が得られた(
図4B)。精製「双頭型」IL-18/TxM複合体について、抗IL-18捕捉抗体及び抗IL-15検出抗体を用いるELISAにより、融合タンパク質複合体の形成が立証された(
図4C)。これらのアッセイからの結果は、可溶性IL-18/IL-15N72D、IL-12/IL-15RαSu/Fc、IL-12/IL-15N72D及びIL-18/IL-15RαSu/Fcタンパク質がCHO細胞中で生成できること、並びにhIL18/IL12/TxM及びhIL12/IL18/TxM融合タンパク質複合体が形成されて培養培地中に分泌され得ることを証明している。
【0243】
hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体のIL-15免疫賦活活性を評価するために、マウス造血細胞系であるIL-15依存性32Dβ細胞の増殖を評価した。hIL18/IL12/TxMのレベルを増加させながら200μLのRPMI:10%のFBS培地中の32Dβ細胞(10
4細胞/ウエル)に添加し、細胞を37℃で2日間インキュベートした。次に、WST-1増殖試薬(10μL/ウエル)を添加した。4時間後、450nmで吸光度を測定し、代謝的に活性な細胞によるWST-1の可溶性ホルマザン色素への切断に基づいて細胞増殖を決定した。IL-15N72D:IL-15RαSu/Fc複合体(ALT-803)の生物活性は、陽性コントロールとして評価した。
図5に示したように、hIL18/IL12/TxMは、32Dβ細胞の細胞増殖を促進することができたため、これによりIL-15活性が証明された。hIL18/IL12/TxMの活性は、おそらくIL-18のIL-15N72Dドメインへの連結に起因して、ALT-803の活性と比較して減少した。
【0244】
hIL18/IL12/TxMのIL-15活性をさらに評価するため、濃度を増加させながらhIL18/IL12/TxMを200μLのIMDM:10%のFBS培地中の32Dβ細胞に添加し、37℃で3日間インキュベートした。次に、PrestoBlue細胞生存性判定試薬(20μL/ウエル)を添加した。4時間後、570nm(正規化のために600nmの参照波長を用いる)で吸光度を測定し、代謝的に活性な細胞によるレザズリン系溶液であるPrestoBlueの減少に基づいて細胞増殖を決定した。次に、吸光度とタンパク質濃度との関係に基づいて、hIL18/IL12/TxMに対するIL-15生物活性の50%有効濃度(EC
50)を決定した。ALT-803の生物活性は、陽性コントロールとして評価した。
図6に示したように、hIL18/IL12/TxMは32Dβ細胞の細胞増殖を促進することができたため、これによりIL-15活性が証明された。hIL18/IL12/TxMの活性は、おそらくIL-18のIL-15N72Dへの連結に起因して、ALT-803の活性と比較して減少した。
【0245】
hIL18/IL12/TxMのIL-18活性を評価するために、IL-18レポーターHEK-Blue IL-18(HEK18)細胞の活性化を評価した。濃度を増加させながらhIL18/IL12/TxMを200μLのIMDM:10%のFBS HEK-Blue培地中のHEK18細胞(5×10
4細胞/ウエル)に添加し、37℃で20~22時間インキュベートした。次に、培養上清(20μL/ウエル)をQUANTI-Blue試薬(180μL/ウエル)に添加した。20時間後、吸光度を650nmで測定し、分泌型胎盤アルカリフォスファターゼ(SEAP)検出試薬であるQUANTI-Blueの減少に基づいて細胞活性化を決定した。次に、吸光度とタンパク質濃度との関係に基づいて、hIL18/IL12/TxMのIL-18生物活性の50%有効濃度(EC
50)を決定した。組み換えIL-18の生物活性は、陽性コントロールとして評価した。
図7に示したように、hIL18/IL12/TxMは、HEK18細胞を活性化することができたため、これによりIL-18活性が証明された。hIL18/IL12/TxMの活性は、おそらくIL-18のIL-15N72Dへの連結に起因して、組み換えIL-18の活性と比較して減少した。
【0246】
hIL18/IL12/TxMのIL-12活性を評価するために、IL-12レポーターHEK-Blue IL-12(HEK12)細胞の活性化を評価した。濃度を増加させながらhIL18/IL12/TxMを200μLのIMDM:10%のFBS HEK-Blue培地中のHEK12細胞(5×10
4細胞/ウエル)に添加し、37℃で20~22時間インキュベートした。次に、培養上清(20μL/ウエル)をQUANTI-Blue試薬(180μL/ウエル)に添加した。20時間後、吸光度を650nmで測定し、分泌型胎盤アルカリフォスファターゼ(SEAP)検出試薬であるQUANTI-Blueの減少に基づいて細胞活性化を決定した。次に、吸光度とタンパク質濃度との関係に基づいて、hIL18/IL12/TxMのIL-12生物活性の50%有効濃度(EC
50)を決定した。組み換えIL-12の生物活性は、陽性コントロールとして評価した。
図8に示したように、hIL18/IL12/TxMは、組み換えIL-12と同様に、HEK12細胞を活性化することができたため、これによりIL-12活性が証明された。
【0247】
各サイトカイン(IL-12、IL-18及びIL-15)の個々の活性をさらに証明するために、各サイトカインによる受容体シグナル伝達(IL-12:STAT4、IL-18:p38 MAPK及びIL-15:STAT5)に応答して独自にリン酸化されるタンパク質を利用して、フローサイトメトリーに基づく細胞内リンタンパク質アッセイが開発された。NK92(aNK)細胞又は精製ヒトNK細胞(>95%のCD56
+)の1μg/mLのhIL18/IL12/TxMを用いた短時間(5~15分間)の刺激後、組み換えIL-12(l0ng/mL)、IL-18(50ng/mL)及びALT-803(50ng/mLのIL-15活性)の任意選択的組み合わせを用いて見られる応答と類似の応答が生じた(
図9A~F)。これらの結果は、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体のサイトカインドメインの各々がその特異的な免疫賦活性生物活性を維持していることを証明している。
【0248】
IL-12、IL-18及びIL-15活性の組み合わせがこれらのサイトカインいずれかの単独よりもNK細胞によるIFN-γ産生を誘導することに有効であることは公知である。hIL18/IL12/TxM複合体の結合サイトカイン活性を評価するために、aNK細胞をhIL18/IL12/TxM複合体(50nM)、IL-12(0.5nM)、IL-18(3nM)及びALT-803(10nM)の組み合わせ又は各サイトカイン単独と共にインキュベートした。2日後、培養上清中のIFN-γレベルを、ELISA法を用いて決定した。
図10Aに示したように、IL-12、IL-18及びALT-803単独は、aNK細胞にほとんど作用を示さなかったが、IL-12+ALT-803及びIL-18+ALT-803の組み合わせは、aNK細胞によるIFN-γの低レベルの産生を誘導した。しかしながら、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体単独並びにIL-12+IL-18及びIL-12+IL-18+ALT-803の組み合わせは、aNK細胞によるIFN-γの高レベルの産生を示した。これらの結果は、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体が結合IL-12、IL-18及びIL-15サイトカインの予想された免疫賦活活性を示すことを立証している。2つの「双頭型」IL-18/TxM複合体を用いた類似の研究は、この複合体がaNK細胞によるIFN-γを誘導する能力を証明したが、その度合いは、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体より低かった(
図10B)。
【0249】
実施例3:hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によるNK細胞様のサイトカイン誘導性メモリーの誘導
以前の研究は、サイトカイン誘導性メモリー様NK細胞が、飽和量のIL-12(10ng/mL)、IL-15(50ng/mL)及びIL-18(50ng/mL)を用いた精製NK細胞の一晩の刺激後にエクスビボで誘導できることを証明している。これらの細胞は、例えば、1)増殖の増強、2)IL-2受容体α(IL-2Rα、CD25)及び他の活性化マーカーの発現、及び3)IFN-γ産生の増加などのメモリー様特性を示す。hIL18/IL12/TxMがサイトカイン誘導性メモリー様NK細胞の生成を促進する能力を評価するために、精製ヒトNK細胞(>95%のCD56
+)(5×10
6細胞/mL)を、18時間にわたり1μg/mLのhIL18/IL12/TxM又は組み換えIL-12(10ng/mL)、IL-18(50ng/mL)及びALT-803(50ng/mLのIL-15活性)の最適組み合わせを用いて刺激した。サイトカイン誘導性メモリー様細胞の誘導は、抗体染色及びフローサイトメトリー法によって決定される増加した細胞表面CD25及びCD69(刺激マーカー)発現及び細胞内IFN-γレベルとして評価した。結果は、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体がヒトNK細胞との一晩のインキュベーション後、IL-12、IL-18及びIL15の最適な組み合わせと類似する程度までCD25、CD69及び細胞内IFN-γを誘導できることを示した(
図11A~
図11F)。したがって、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体との一晩のインキュベーションは、サイトカイン誘導性メモリー様NK細胞を生成することができる。
【0250】
以前の研究は、サイトカイン誘導性メモリー様NK細胞が、飽和量のIL-12(10ng/mL)、IL-15(50ng/mL)及びIL-18(50ng/mL)を用いた精製NK細胞の一晩の刺激後にエクスビボで誘導され得ることを証明している。これらの細胞は、例えば、1)増殖の増強、2)IL-2受容体α(IL-2Rα、CD25)の発現、3)IFN-γ産生の増加、及び4)パーフォリン及びグランザイムによって媒介された細胞傷害性の増強などのメモリー様特性を示す。hIL18/IL12/TxMがサイトカイン誘導性メモリー様NK細胞の生成を促進する能力を評価するために、濃度を増加させながらhIL18/IL12/TxM又は組み換えIL-12(10ng/mL)、IL-18(50ng/mL)及びALT-803(50ng/mLのIL-15、3.88nM)の最適組み合わせを用いて12~18時間にわたって精製ヒトNK細胞(>95%のCD56
+)(5×10
6細胞/mL)を刺激した。活性化前サイトカイン誘導性メモリー様細胞表現型の誘導は、抗体染色及びフローサイトメトリー法によって決定されるような増加した細胞表面CD25の発現及び細胞内IFNγレベルとして評価した。
図12A及び12Bに示したように、hIL18/IL12/TxMは、ヒトNK細胞との一晩のインキュベーション後、IL-12、IL-18及びALT-803の最適な組み合わせと類似する程度までCD25及び細胞内IFN-γを誘導することができた。
【0251】
hIL18/IL12/TxMによるサイトカイン誘導性メモリー様NK細胞の生成を証明するために、一次ヒトNK細胞(2×10
6/mL)を、16時間にわたり上述のようにhIL18/IL12/TxM(38.8nM)を用いてプライミングし、プライミングされたNK細胞がサイトカイン誘導性メモリー様NK細胞に分化することを可能にするために低用量ALT-803(77.6pM、1ng/mLのIL-15と同等)中で洗浄して静止させた。サイトカイン(IL-12(10ng/mL)及びALT-803(50ng/mL、IL-15と同等))又は白血病標的(K562細胞、5:1の比率)を用いた6時間の再刺激後のCD25発現の維持及びIFN-γ産生の増強は、ブレフェルジンA及びモネンシンの存在下において、サイトカイン誘導性メモリー様NK細胞を生成するための相関物として評価した。全ての場合、hIL18/IL12/TxMを用いたプライミングは、コントロールとしての低用量IL-15(77.6pMのALT-803)と比較して、サイトカイン及び白血病標的を用いた再刺激後にCD25のレベルの増強を生じさせた(
図13B)。
【0252】
hIL18/IL12/TxM又は異なるサイトカインの組み合わせを用いる短時間のプライミングが、その後、低用量ALT-803又はIL-15中で静止させ、IL-12及びIL-15を用いて再刺激された場合にヒトNK細胞に及ぼす影響をさらに比較するために、類似の研究を実施した。これらの試験について、CIML NK細胞の増殖及びIFN-γ産生を免疫活性化の尺度として評価した。
図14A及びBに示したように、ヒトNK細胞は、CellTrace Violetを用いて標識し、上述のように培地単独、IL-12(0.5nM)、IL-18(3nM)、ALT-803(10nM)、ALT-803(10nM)+IL-18(3nM)、ALT-803(10nM)+IL-18(3nM)+IL-12(0.5nM)又はhIL18/IL12/TxM(10nM)を用いてプライミングした。プライミング後、細胞を洗浄し、1ng/mLのIL-15(
図14A)又は75pMのALT-803(
図14B)を含有する培地中で維持し、再刺激しないままか又は10ng/mLのIL-12+50ng/mLのIL-15を用いて再刺激した。CIML NK細胞の増殖は、CellTrace Violet標識の希釈率によって決定し、細胞内IFN-γ発現は、細胞内染色及びフローサイトメトリーによって決定した。プライミングなし又は個別サイトカイン、ALT-803+IL-18又はALT-803+IL-18+IL-12を用いたプライミングと比較して、NK細胞は、hIL18/IL12/TxMを用いたプライミング及びその後のIL-15又はALT-803中での静止、その後のIL-12+IL-15を用いた再刺激によってより高レベルのIFN-γを発現した。詳細には、hIL18/IL12/TxMを用いたプライミングによって生成されたCIML NK細胞は、標準のhIL18+IL12+ALT-803の組み合わせを用いてプライミングされたNK細胞の約74%及び個別サイトカインを用いてプライミングされたNK細胞の50~60%と比較して、>83%がIFN-γを発現することが見出された。hIL18/IL12/TxMを用いてプライミングされたCIML NK細胞は、CellTrace Violet希釈率によって測定した場合、hIL18+IL12+ALT-803又は個別サイトカインを用いてプライミングされたNK細胞より大きい増殖も示した(
図15)。これらの結果は、ヒトNK細胞のhIL18/IL12/TxMを用いた短時間プライミングが、hIL18+IL12+IL-15を用いたプライミングと同等又はそれより良好なCIML NK細胞(すなわち増加した増殖及び免疫活性化(CD25、IFN-γ発現))を生じさせ得ることを確証している。
【0253】
さらに、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体がヒト腫瘍細胞に対するヒトNK細胞の細胞傷害性に及ぼす作用についても研究した。ヒト乳癌細胞(MDA-MB-231)(Celltrace violet標識)を精製ヒトNK細胞(2例の独立ドナー;NK1及びNK2)(E:T比;1:1)と共に、コントロールとしてのhIL18/IL12/TxM複合体(10nM)又はALT-803(10nM)の存在下でインキュベートした。2日後、死滅腫瘍細胞(Violet
+PI
+)のパーセンテージは、ヨウ化プロピジウム(PI)を用いた染色後にフローサイトメトリーによって評価した。
図16に示したように、hIL18/IL12/TxMは、ALT-803と比較して、乳癌細胞に対してより効果的なヒトNK細胞の細胞傷害性を有意に誘導した。これらの結果は、IL-12、IL-18及びIL-15の併用治療が抗腫瘍NK細胞活性を増強する能力と一致している。
【0254】
hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体は、ALT-803又は治療なしと比較して、ヒトNK細胞中でのグランザイムBの発現を増強することもできた(
図17A)。さらに、これらのhIL18/IL12/TxM活性化NK細胞は、IFNγの産生増強(
図17C)を含む、ヒト腫瘍標的に対する直接又は抗体媒介性細胞傷害性アッセイ(
図17B)でもより効果的であった。したがって、hIL18/IL12/TxMとの一晩のインキュベーションは、サイトカイン誘導性メモリー様NK細胞に関連する表現型を生成することができる。
【0255】
実施例4:hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体によって刺激された免疫細胞の抗腫瘍活性
hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体が、インビボ抗腫瘍活性を有するサイトカイン誘導性メモリー様NK細胞を誘導する能力についても評価される。脾臓NK細胞は、マウスから標準方法によって単離され、1μg/mLのhIL18/IL12/TxM、組み換えIL-12(10ng/mL)、IL-18(50ng/mL)及びALT-803(50ng/mLのIL-15活性)の組み合わせ及びALT-803単独(50ng/mLのIL-15活性)を用いて18時間にわたり5×106細胞/mLで刺激される。細胞は、その後、洗浄され、皮下RMA-Sリンパ腫を担持し、細胞移入前の3時間にわたり5Gyの全身照射を受容したC57BL/6マウスにi.v.で養子移入される(1×106細胞/マウス)。マウスの生存が監視される。IL-12+IL-18+ALT-803活性化NK細胞(CIML NK細胞)を用いて治療された腫瘍担持マウスは、ALT-803活性化NK細胞を用いて治療されたマウスより長期間生存すると予想される(Ni,J,et al.J.Exp.Med.2012 209:2351-2365)。hIL18/IL12/TxM活性化NK細胞を受容した腫瘍担持マウスの長期間の生存は、hIL18/IL12/TxMが免疫細胞のインビボ抗腫瘍活性を増強するエクスビボ薬として機能し得るという証拠を提供するであろう。
【0256】
同様に、精製ヒトNK細胞は、1μg/mLのhIL18/IL12/TxM、組み換えIL-12(10ng/mL)、IL-18(50ng/mL)及びALT-803(50ng/mLのIL-15活性)の組み合わせ又はALT-803単独(50ng/mLのIL-15活性)を用いて18時間にわたり5×106細胞/mLで刺激される。細胞は、その後、洗浄され、K562白血病細胞を担持し、細胞移入後に低用量rhIL-2を受容したNSGマウスにi.v.で養子移入される(1×106細胞/マウス)。マウスの生存が監視される。IL-12+IL-18+ALT-803活性化NK細胞(CIML NK細胞)を用いて治療された腫瘍担持マウスは、ALT-803活性化NK細胞を用いて治療されたマウスより長期間生存すると予想される(Romee,R,et al.Sci Transl Med.2016;8:357ra123)。hIL18/IL12/TxM活性化ヒトNK細胞を受容した腫瘍担持マウスの長期間の生存は、hIL18/IL12/TxMが免疫細胞のインビボ抗腫瘍活性を増強するエクスビボ薬として機能し得るという証拠を提供するであろう。
【0257】
例えば、再発性又は難治性の急性骨髄性白血病(AML)などの悪性腫瘍を有する患者を治療するために(Romee,R,et al.Sci Transl Med.2016;8:357ra123)、患者は、シクロホスファミド及びフルダラビンを用いて前状態調節により治療され、その後、16~24時間にわたりhIL18/IL12/TxM又はhIL12/IL18/TxMと共にエクスビボでインキュベートされた同種半分一致NK細胞から精製されたCIML NK細胞を用いて治療される。細胞移入後、患者は、インビボでの細胞を支持するために低用量IL-2を受容することができる。抗腫瘍応答(客観的応答、無病生存、全生存、再発までの時間など)が評価され、hIL18/IL12/TxM又はhIL12/IL18/TxMが、悪性腫瘍を有する患者におけるヒト免疫細胞の抗腫瘍活性を増強するためのエクスビボ薬として機能し得るという証拠を提供するであろう。類似の研究は、他の血液学的又は固形腫瘍又は感染性疾患を有する患者において実施されるであろう。
【0258】
これらの研究の各々では、NK細胞の残存及び機能性を移入後に評価することができる。例えば、PBMCは、患者から移入の7~14日後に単離することができ、Ki67陽性(増殖マーカー)ドナーNK細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって決定することができる。NK細胞は、腫瘍細胞を用いて再刺激し、IFN-γ産生のレベルは、フローサイトメトリーによって評価することもできる。これらの研究の結果は、hIL18/IL12/TxM又はhIL12/IL18/TxMを用いたエクスビボでの移入前治療がインビボでのそれらのその後の免疫応答を増強するかどうかを示すであろう。
【0259】
実施例5:hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体のマウスへの投与後の免疫賦活作用
上記に示したように、hIL18/IL12/TxM融合タンパク質複合体は、インビトロの免疫細胞の増殖及び応答を刺激することに高度に有効であった。これらの複合体のインビボでの活性を評価するために、雌性C57BL/6マウスに20mg/kgのhIL18/IL12/TxM又はコントロールとしてのPBSを腹腔内注射した。3日後、マウスを犠死させ、血液及び脾臓試料を採取して、CD8 T細胞(CD8)、CD4 T細胞(CD4)、B細胞(CD19)及びNK細胞(NKp46)に対する抗体を用いた染色後にフローサイトメトリーによって測定されるような免疫細胞サブセットにおける変化を決定した。
図18Aに示したように、hIL18/IL12/TxM治療は、PBSコントロール治療マウスと比較して、脾臓の重量における2.5倍の増加を生じさせた。しかしながら、20mg/kgのhIL18/IL12/TxM治療を用いた臨床的傷害性の徴候は見られなかった。hIL18/IL12/TxMの投与も、PBSコントロールと比較して、治療されたマウスの脾臓においてCD8 T細胞のパーセンテージにおける2倍を超える増加及びNK細胞のパーセンテージにおける5.5倍の増加を生じさせた(
図18B)。さらに、PBSと比較して、hIL18/IL12/TxMを用いたマウスの治療後、血液中の絶対細胞数は、CD8 T細胞について6.4倍及びNK細胞について23倍に増加し、血球パーセンテージは、CD8 T細胞について3.9倍及びNK細胞について13倍に増加した(
図18C及び
図18D)。この研究の結果は、hIL18/IL12/TxMの投与が、マウスにおいて過剰な傷害性を誘発することなく、免疫細胞、特にCD8 T細胞及びNK細胞に免疫賦活作用を提供することを明確に示す。
【0260】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と結び付けて記載してきたが、上記の説明は、例示することを意図しており、添付の請求項の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではない。他の態様、利点及び修飾形態は、以下の請求項の範囲内に含まれる。
【0261】
本明細書で言及した特許文献及び学術文献は、当業者であれば利用可能な知識を確立する。本明細書中に引用した米国特許及び公開又は未公開の米国特許出願の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中に引用される公開された外国特許及び外国特許出願の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用したアクセッション番号によって示されるGenbank及びNCBIの寄託は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用した他の公開された文献、文書、原稿、学術文献の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0262】
本発明をその好ましい実施形態を参照して具体的に示すと共に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱しない限り、様式及び詳細について多様な変更形態が可能であることが当業者に理解されるであろう。
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
少なくとも2種の可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
第1可溶性タンパク質は、インターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、及び第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、
前記第1又は第2可溶性タンパク質は、IL-18結合ドメイン又はその機能的断片をさらに含み、
前記第1又は第2可溶性タンパク質は、IL-12結合ドメイン又はその機能的断片をさらに含み、
前記第1可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
[2]
前記IL-15ポリペプチドは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、[1]に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
[3]
前記IL-12結合ドメインは、IL-12のp40及びp35サブユニットを含む、[1]に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
[4]
IL-12の前記p40及びp35サブユニットは、可撓性ポリペプチドリンカーによって一本鎖フォーマット内に連結されている、[3]に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
[5]
前記第1可溶性タンパク質は、配列番号2又は6の1つに規定されたアミノ酸配列を含む、[2]~[4]のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
[6]
前記第2可溶性タンパク質は、配列番号4又は8の1つに規定されたアミノ酸配列を含む、[2]~[4]のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
[7]
[1]に記載の第2可溶性融合タンパク質複合体に共有結合されている、[1]に記載の第1可溶性融合タンパク質複合体を含む可溶性融合タンパク質複合体。
[8]
前記第1可溶性融合タンパク質複合体は、前記第1可溶性融合タンパク質複合体のFcドメインを前記第2可溶性融合タンパク質複合体のFcドメインに連結するジスルフィド結合によって前記第2可溶性融合タンパク質複合体に共有結合されている、[7]に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
[9]
前記第1又は第2可溶性タンパク質は、疾患抗原及び/又は免疫チェックポイント若しくはシグナル伝達分子に結合する結合ドメインをさらに含む、[1]に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
[10]
前記疾患抗原は、新生物又は感染性疾患に関連している、[9]に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
[11]
[5]に記載の第1可溶性タンパク質をコードする核酸配列であって、配列番号1又は5の1つに規定された配列を含む核酸配列。
[12]
前記可溶性タンパク質をコードする前記配列に機能的に連結されたプロモーター、翻訳開始シグナル及びリーダー配列をさらに含む、[11]に記載の核酸配列。
[13]
[6]に記載の第2可溶性タンパク質をコードする核酸配列であって、配列番号3又は7の1つに規定された配列を含む核酸配列。
[14]
前記可溶性タンパク質をコードする前記配列に機能的に連結されたプロモーター、翻訳開始シグナル及びリーダー配列をさらに含む、[13]に記載の核酸配列。
[15]
[11]及び/又は[13]に記載の核酸配列を含むDNAベクター。
[16]
免疫機能を増強するための方法であって、
a)複数の細胞を[1]~[10]のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、前記複数の細胞は、前記IL-15ポリペプチドドメインに結合するIL-15R鎖、前記IL-12ドメインに結合するIL-12R鎖及び/又は前記IL-18ドメインに結合するIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、
b)前記IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して前記免疫細胞を活性化する工程と
を含む方法。
[17]
標的細胞を殺傷するための方法であって、
a)複数の細胞を[1]~[10]のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、前記複数の細胞は、前記IL-15ポリペプチドドメインに結合するIL-15R鎖、前記IL-12ドメインに結合するIL-12R鎖及び/又は前記IL-18ドメインに結合するIL-18R鎖を含む免疫細胞と、標的疾患細胞とをさらに含む、工程と、
b)前記IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して前記免疫細胞を活性化する工程と、
c)前記活性化免疫細胞によって前記標的疾患細胞を殺傷する工程と
を含む方法。
[18]
前記標的細胞は、腫瘍細胞又は感染細胞である、[17]に記載の方法。
[19]
対象における免疫応答を増強する方法であって、
a)複数の細胞を[1]~[10]のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、前記複数の細胞は、前記IL-15ポリペプチドドメインに結合するIL-15R鎖、前記IL-12ドメインに結合するIL-12R鎖及び/又は前記IL-18ドメインに結合するIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、
b)前記IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して前記免疫細胞を活性化する工程と、
c)前記活性化免疫細胞を患者に投与する(又は養子移入する)工程と、
d)前記患者における免疫応答を増強する工程と
を含む方法。
[20]
患者における疾患を予防又は治療する方法であって、
a)複数の細胞を[1]~[10]のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体と接触させる工程であって、前記複数の細胞は、前記IL-15ドメインに結合するIL-15R鎖、前記IL-12ドメインに結合するIL-12R鎖及び/又は前記IL-18ドメインによって認識されるIL-18R鎖を含む免疫細胞をさらに含む、工程と、 b)前記IL-15R、IL-12R及び/又はIL-18Rのシグナル伝達を介して前記免疫細胞を活性化する工程と、
c)有効量の前記活性化免疫細胞を前記患者に投与する(又は養子移入する)工程と、 d)前記患者における前記疾患を予防又は治療するために十分な前記活性化免疫細胞を介して疾患細胞を損傷又は殺傷する工程と
を含む方法。
[21]
前記疾患は、新生物又は感染性疾患である、[20]に記載の方法。
[22]
対象における免疫応答を増強する方法であって、有効量の[1]~[10]のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体を前記対象に投与する工程を含む方法。
[23]
新生物又は感染性疾患の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、[1]~[10]のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与し、それにより前記新生物又は感染性疾患を治療する工程を含む方法。
[24]
前記新生物は、膠芽腫、前立腺癌、血液学的癌、B細胞新生物、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃食道癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び扁平上皮頭頚部癌からなる群から選択される、[21]又は[23]に記載の方法。
[25]
前記免疫細胞は、NK細胞又はサイトカイン誘導性メモリー様(CIML)NK細胞である、[16]~[21]のいずれか一項に記載の方法。
[26]
前記活性化免疫細胞の前記有効量は、1×104細胞/kg~1×1010細胞/kgである、[20]に記載の方法。
[27]
前記免疫細胞は、少なくとも週1回投与される、[20]に記載の方法。
[28]
前記有効量は、前記融合タンパク質複合体の約1~100μg/kgである、[22]又は[23]に記載の方法。
[29]
前記融合タンパク質複合体は、少なくとも週1回投与される、[22]又は[23]に記載の方法。
[30]
前記融合タンパク質複合体は、免疫細胞増殖、活性化マーカー、標的細胞に対する細胞傷害性及び/又はIFN-γを含む前炎症性サイトカインの産生を増加させる、[16]~[29]のいずれか一項に記載の方法。
[31]
第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、前記第1可溶性タンパク質は、IL-12若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、
前記第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されており、及び
前記第1可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
[32]
IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含む単離された可溶性融合タンパク質複合体。
[33]
前記IL-15ポリペプチドドメインは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、[32]に記載の単離された可溶性融合タンパク質複合体。
[34]
免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されている、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
[35]
第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、前記第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-18結合ドメイン又はその機能的断片に融合されており、
前記第2可溶性タンパク質は、IL-18ドメインに融合されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、
前記第1可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
[36]
第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
前記第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12結合ドメイン又はその機能的断片に融合されており、
前記第2可溶性タンパク質は、IL-12ドメインに融合されたインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインを含み、
前記第1可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質複合体。
[37]
前記IL-15ポリペプチドドメインは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、[35]又は[36]に記載の単離された可溶性融合タンパク質複合体。
[38]
インターロイキン-15ポリペプチドドメイン、第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
前記第1可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されており、
第2可溶性タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)を含み、前記IL-15RαSuドメインは、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されており、
前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記第1及び/又は第2可溶性タンパク質の前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質。
[39]
免疫グロブリンFcドメインに融合されたインターロイキン-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)、第1及び第2可溶性タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質であって、
前記第1可溶性タンパク質は、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15ポリペプチドドメインを含み、及び第2可溶性タンパク質は、IL-12及び/若しくはIL-18結合ドメイン又はその機能的断片に連結されたインターロイキン-15ポリペプチドドメインを含み、
前記第1及び/又は第2可溶性タンパク質の前記IL-15ポリペプチドドメインは、前記IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、単離された可溶性融合タンパク質。
[40]
前記IL-15ポリペプチドドメインは、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、[38]又は[39]に記載の単離された可溶性融合タンパク質複合体。
第1の可溶性融合タンパク質複合体が、前記第1の可溶性融合タンパク質複合体のFcドメインを第2の可溶性融合タンパク質複合体のFcドメインに連結するジスルフィド結合によって前記第2の可溶性融合タンパク質複合体に共有結合されている、請求項1に記載の単離された可溶性融合タンパク質複合体。