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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109766
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20240806BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P25/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083010
(22)【出願日】2024-05-22
(62)【分割の表示】P 2022066296の分割
【原出願日】2017-03-16
(31)【優先権主張番号】62/312,623
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518337647
【氏名又は名称】オーバス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビクター エー レビン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】神経膠腫を含むがんを処置するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】テモゾロミドによる治療歴のある患者の神経膠腫を処置するための医薬組成物であって、(a)治療有効量のエフロルニチンまたは医薬的に許容されるエフロルニチン塩と、(b)医薬的に許容される担体と、を備え、前記神経膠腫は、IDH1、IDH2、TP53、PTEN、ATRXからなる群から選択される1以上の遺伝子に突然変異を有しており、前記医薬組成物は、前記神経膠腫の進行を遅らせることを特徴とする、医薬組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テモゾロミドによる治療歴のある患者の神経膠腫を処置するための医薬組成物であって

(a)治療有効量のエフロルニチンまたは医薬的に許容されるエフロルニチン塩と、
(b)医薬的に許容される担体と、を備え、
前記神経膠腫は、IDH1、IDH2、TP53、PTEN、ATRXからなる群から
選択される1以上の遺伝子に突然変異を有しており、
前記医薬組成物は、前記神経膠腫の進行を遅らせることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記神経膠腫は、退形成星細胞腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記エフロルニチンまたは医薬的に許容されるエフロルニチン塩は、エフロルニチンで
ある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記エフロルニチンまたは医薬的に許容されるエフロルニチン塩は、エフロルニチン塩
である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記エフロルニチンは、D-エフロルニチンとL-エフロルニチンのラセミ混合物であ
る、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記エフロルニチンは、D-エフロルニチンである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記エフロルニチンは、L-エフロルニチンである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は、経口投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記神経膠腫は、IDH1遺伝子に変異を有している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記神経膠腫は、RB経路およびAKT-mTOR経路に変異を有している、請求項1
に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2016年3月24日付けの「神経膠腫を含むがんを処置するためのエフロルニチンおよびその誘導体および類似体の組成物ならびにそれらの使用方法」と題するVictor A.Levin医学博士による米国仮特許出願第62/312623号の利益を主張するもので、その内容は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、神経膠腫を含むがんを処置するためのエフロルニチンおよびその誘導体および類似体の組成物ならびにそれらの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
神経膠腫は、脳腫瘍の最もよく見られる重篤な病態の1つである。神経膠腫は、細胞タイプ、グレードおよび位置により分類される。神経膠腫は、一般に、組織学的特徴を共有している特定の細胞タイプにしたがって命名される。これらは、必ずしも神経膠腫が発生した細胞タイプとは限らない。神経膠腫の主なタイプは、上衣腫(上衣細胞)、星細胞腫(星細胞)、乏突起神経膠腫(乏突起細胞)、脳幹神経膠腫(脳幹)、視神経膠腫(視神経細胞中またはその周囲の細胞)、および混合性神経膠腫(異なるタイプの神経膠に由来する細胞)である。さらに神経膠腫は、グレードにしたがって特徴付けられ、一般にはWHO分類にしたがって決定される。グレードIは、最も進行の遅い疾患で最も予後良好の場合である最も悪性度の低いグレードであり、グレードI神経膠腫は一般に良性であるとみなされる。WHO分類のグレードIIは、次に悪性度の低いグレードである。グレードIIの神経膠腫は、高分化型であり、退形成性ではない。これらの神経膠腫は良性傾向を呈しがちで、好ましい予後を伴い得るが、時間の経過にともない、再発し、グレードが高くなる、すなわち重症度が高くなる傾向を有する。WHO分類におけるグレードの高い神経膠腫、グレードIIIおよびIVは、未分化型であるかまたは退形成性であり、明らかに悪性である。これらのグレードの場合、予後は最悪である。神経膠腫はまた、神経膠腫がある位置にしたがって、具体的には脳における膜、すなわちテントの上にあるか下にあるかによって分類され得る。テントは、小脳から大脳を分離する。テント上神経膠腫は成人により多く発生し、テント下神経膠腫は子供により多く発生する。上衣下腫または若年性毛細胞性星細胞腫(JPA)などのある種のタイプの神経膠腫は、非侵襲性であるかまたは侵襲性が非常に低い傾向を示す。
【0004】
神経膠腫の症状は、一般に中枢神経系のどの部分が侵されているかにより異なる。脳における神経膠腫は、頭痛、嘔吐、けいれん発作、局所虚脱、新たな記憶形成の障害、会話障害および腫瘍増大の結果としての脳神経障害を誘発することがある。視神経の神経膠腫は、視覚障害または失明の原因となり得る。脊髄の神経膠腫は、疼痛、虚脱、または1個所または複数個所の末端部で麻痺を誘発することがあり得る。一般的に、神経膠腫は、血流を通じて転移することはないが、髄液全体に拡散し、脊髄において滴下転移を誘発することがあり得る。
【0005】
神経膠腫の正確な原因は判明していない。1型もしくは2型神経線維腫症または結節硬化症などのある種の遺伝性遺伝子障害は、神経膠腫成長の素因となり得る。若干のがん遺伝子は、神経膠腫の発症および成長に関与する可能性がある。多くの神経膠腫は、その成長を加速する可能性があるサイトメガロウイルスに感染している。DNA修復遺伝子ERCC1、ERCC2(XPD)およびXRCC1の生殖系列(遺伝)多型は、神経膠腫のリスクを増大させる可能性がある。これは、DNA損傷の修復が改変されているかまたは
不十分であることが、神経膠腫の形成の一因となり得ることを示している。過剰のDNA損傷は、損傷乗り越え合成を通じて変異を生じさせる可能性がある。さらに、不完全なDNA修復は、エピジェネティック変化またはエピ変異を生じさせる可能性がある。かかる変異およびエピ変異は、後に自然淘汰の過程によりがんへの進行に至り得る増殖に有利な条件を伴う細胞を提供する可能性がある。DNA修復遺伝子のエピジェネティック抑制は、散発性膠芽腫への進行過程で見出されることが多い。例えば、DNA修復遺伝子MGMTプロモーターのメチル化は、かなりの割合の膠芽腫で観察された。さらに、膠芽腫によっては、MGMTタンパク質が、別のタイプのエピジェネティック変化に起因して不足している場合がある。MGMTタンパク質発現はまた、MGMTメッセンジャーRNAがMGMTタンパク質を生成する能力を阻害するマイクロRNAのレベルの増加により、低減化されることもある。メチル化MGMTプロモーターを伴わない膠芽腫では、マイクロRNA miR-181dのレベルがMGMTのタンパク質発現と逆比例的に相関していること、およびmiRー181dの直接標的はMGMT mRNA 3’UTRであることが見出された。別のDNA修復タンパク質、ERCC1の発現におけるエピジェネティック低減化は、多くの神経膠腫で認められており、場合によっては、その低減化はERCC1タンパク質発現の低減化または欠如に起因することもあった。他の事例では、低減化は、ERCC1プロモーターのメチル化に起因するものであった。数少ない事例において、低減化は、ERCC1発現に影響を及ぼすマイクロRNAにおけるエピジェネティック変化に起因した可能性がある。DNA修復遺伝子の発現が低減されると、DNA損傷が高いレベルで細胞に蓄積され得る。神経膠腫において、突然変異は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子IDH1およびIDH2で起こることが多い。これらの突然変異の結果、過剰の代謝中間体、2-ヒドロキシグルタレートが生成され得、これがヒストン改変およびDNAプロモーターメチル化において重要である鍵酵素の触媒部位に結合する。この結果、プロモーター高メチル化ならびにDNA修復遺伝子MGMTおよびERCC1などの腫瘍サプレッサー遺伝子の同時サイレンシングを誘発する可能性があるDNA CpGアイランドメチル化形質(CIMP)が生じることがある。さらに、IDH1およびIDH2における突然変異は、酸化ストレスを増加させることがあるため、DNAに対する酸化損傷の増加をもたらすこともある。
【0006】
いくつかの後天的遺伝子突然変異は、p53およびPTENにおける突然変異を含め、神経膠腫では普通に見出され、PTENをコードする遺伝子が失われることもある。これらの突然変異は、EGFRの過剰発現を招く可能性がある。しかしながら、神経膠腫に伴う超突然変異は特定の位置に制限されない。
【0007】
高グレードの神経膠腫は、高血管系腫瘍であり、浸潤する傾向を有する。前記神経膠腫は、広範囲の壊死および低酸素領域を有する。多くの場合、腫瘍の成長は、腫瘍の付近で血液脳関門の破壊を誘発する。通例、高グレードの神経膠腫は、完全な外科的切除後でさえ、脳の再発がんと一般に呼ばれているように、ほとんどの場合再び成長することになる。対照的に、低グレードの神経膠腫は、典型的には比較的ゆっくりと成長し、神経膠腫が成長するかまたは症状を誘発することがなければ、積極的治療を必要とせずに見守ることができる。
【0008】
神経膠腫に対する処置は、位置、細胞タイプおよび悪性度によって異なる。外科的切除、放射線治療および化学療法を含む併用療法が多くの場合使用される。頻繁に使用される一治療剤はテモゾロミドであり、これは血液脳関門を通過することができ、高グレード神経膠腫の処置で頻用される。モノクローナル抗体である、血管新生遮断薬ベバシズマブもまた頻繁に使用される。しかしながら、テモゾロミドの使用はそれ自体突然変異を誘発することもあり、かなりの割合の患者において予後を悪くすることもあるという証拠が増えてきている(B.E.Johnson et al.,“Mutational Analysis Reveals the Origin and Therapy-Dri
ven Evolution of Recurrent Glioma,”Science 343:189-193(2014)、参照によって本明細書に組み込まれる)。テモゾロミドの潜在的な突然変異誘発作用については、神経膠腫に対する治療過程を計画する上で考慮しなければならない。
【0009】
神経膠腫が治癒する例はほとんどない。高グレードの神経膠腫の患者についての予後は一般に悪く、高齢患者では顕著である。CBTRUS(表23、2015年度版)に基づいた、毎年悪性神経膠腫であると診断される10000人のアメリカ人のうち、約57%は診断の1年後生存しており、約41%は2年後生存しており、5年目での生存はわずか31%である。退形成性星細胞腫の患者の場合、2年目で約44%および5年目で約28%の生存率である。多形膠芽腫では、診断の1年後の生存率は37%および2年後の生存率は15%と予後はさらに悪い。低グレードの神経膠腫の場合、予後は上記より幾分楽観的であるが、かかる患者でさえ、年齢を考慮に入れると、一般的集団より死亡率はかなり高い。
【0010】
したがって、神経膠腫に対する改善された処置の必要性は高い。さらに、テモゾロミドなど、頻用されている抗新生物薬の潜在的突然変異誘発作用を回避するかまたは打ち消すことができる処置の提供が特に要望されている。下記で詳述するように、本発明で提供される処置の原理はまた、がんが典型的には新生細胞の突然変異を特徴とするように、悪性腫瘍全般に適用することができる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、神経膠腫の処置のための新規治療法を提供する。
【0012】
本発明の一態様は、神経膠腫の処置方法であって、神経膠腫を患う対象に、神経膠腫の突然変異速度を低下させて神経膠腫の進行を低減化するために治療有効量のエフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を投与する工程を含む方法である。典型的には、神経膠腫は、WHOのグレードI、グレードII、グレードIIIまたはグレードIV神経膠腫である。一実施形態において、神経膠腫は、退形成性神経膠腫、退形成性乏突起神経膠腫、および混合性退形成性乏突起星細胞腫から成る群から選択される。エフロルニチンの使用は、Levinによる米国特許第6553351号に開示されている。
【0013】
一実施形態において、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、D-エフロルニチンとL-エフロルニチンのラセミ混合物、D-エフロルニチンまたはL-エフロルニチンなどのエフロルニチンである。別の実施形態において、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、エフロルニチンの誘導体または類似体である。
【0014】
典型的には、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、アルキル化剤の投与を伴って神経膠腫の突然変異速度を低下させる。アルキル化剤は、テモゾロミドまたは別の慣用的アルキル化剤であり得る。アルキル化剤は、ある程度突然変異原性である。
【0015】
エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、経口または注射により投与され得る。
【0016】
一実施形態において、神経膠腫は、以前に放射線治療および補助アルキル化剤治療で処置されたもので、再発性/難治性退形成性神経膠腫である。放射線治療は、神経膠腫に対し慣用的に使用されている(M.D.Prados et al.,“Phase III Trial of Accelerated Hyperfractionation with or without Difluromethylornithine(DFMO)Versus Standard Fractionated Radio
therapy with or without DFMO for Newly Diagnosed Patients with Glioblastoma Multiforme,”Int.J.Rad.Oncol.Biol.Phys.49:71-77(2001))。
【0017】
神経膠腫は、IDH1、IDH2、TP53、PTENおよびATRXから成る群から選択される1種以上の遺伝子において突然変異を有し得る。神経膠腫は、メチル化されたMGMTプロモーターを有することがある。処置することができる神経膠腫の一形態は星細胞腫である。
【0018】
エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、神経膠腫の処置に使用される治療有効量の1種以上の慣用的抗新生物薬と一緒に投与され得る。前記の神経膠腫の処置で使用される1種以上の慣用的抗新生物薬は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、血管新生阻害剤、EGFR阻害剤、白金含有剤、トポイソメラーゼ阻害剤および他のクラスの薬剤から成る群から選択され得る。別の実施形態では、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を、ポリアミン輸送阻害剤と一緒に投与する。さらに別の実施形態では、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を、ポリアミン類似体と一緒に投与する。さらに別の実施形態では、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ阻害剤と一緒に投与する。さらに別の実施形態では、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を、(1)レチノイド、(2)シルバクチン化合物、(3)シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、(4)ベリノイド、(5)非ステロイド系抗炎症剤、(5)カスタノスペルミンまたはカスタノスペルミンエステル、(6)アジリジニルプトレシン化合物、(7)インターフェロン、(8)アリール置換キシロピラノシド誘導体、(9)血中グルタミン酸レベルを低下させ、脳から血液へのグルタミン酸排出を高める薬剤、(10)キトサンまたはキトサン誘導体および類似体、(11)2,4-ジスルホニルフェニルt-ブチルニトロン、(12)3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、(13)サリドマイド、(14)N-2-ピリジニル-2-ピリジンカルボチオアミド、(15)カンベンダゾール、および(16)ヒストンデメチラーゼ阻害剤から成る群から選択される薬剤と一緒に投与する。さらに別の実施形態では、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体が血液脳関門を通過する能力を増強する薬剤と一緒に投与する。
【0019】
本発明の別の態様は、
(1)治療有効量のエフロルニチンまたはエフロルニチンの誘導体もしくは類似体、
(2)場合によっては、エフロルニチンまたはエフロルニチンの誘導体もしくは類似体と併用することができる、治療有効量の少なくとも1種の追加的薬剤、および
(3)医薬的に許容し得る担体
を含む、神経膠腫処置用の医薬組成物であって、この組成物は神経膠腫の突然変異速度を低下させて神経膠腫の進行を低減化するために投与されるものとする。
【0020】
追加の薬剤は上記のとおりである。医薬組成物は、経口投与用または注射による投与用に製剤化され得る。
【0021】
慣用的な医薬的に許容し得る担体は当技術分野では既知であり、限定される訳ではないが、糖、溶媒、増粘剤、乳化剤、希釈剤、甘味料、湿潤剤、有機酸、着色料、香味料、および保存剤がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
概して、この発明は、エフロルニチン(「DFMO」)単独またはロムスチンおよび他
の化学療法剤との併用によるテモゾロミド再発性/難治性退形成性星細胞腫患者の処置に関するものである。エフロルニチンに加えて、下記でさらに詳述するように、DFMOの誘導体または類似体を使用することができる。
【0023】
AA T6輸送体基質でもあるタンパク質を構成しない中性アミノ酸(DFMOなど)は、化学療法剤により誘発されたDNA突然変異の進行を阻害することによりがん患者の寿命を延ばすことができる。
【0024】
本発明の基本原理は、概ね以下のとおりである:(1)化学療法剤はDNA突然変異を誘発する;(2)DFMOは細胞増殖および分化を中断させる;および(3)がん細胞における細胞増殖および分化を中断させることにより、DFMOはDNA突然変異を阻害し、かくして、がんの進行を抑えることになる。したがって、化学療法剤はDNA突然変異を誘発するため、DFMOをこれらの薬剤と併用すると、かかる突然変異は阻害され、そのためがん患者の生存は改善される。
【0025】
エフロルニチンは、D-エフロルニチンおよびL-エフロルニチンという2つの鏡像異性体形態で存在する。D-エフロルニチンを下の式(Ia)に示す。L-エフロルニチンを下の式(Ib)に示す。
【0026】
【化1】
【0027】
;および
【0028】
【化2】
【0029】
典型的には、エフロルニチンは、D-エフロルニチンとL-エフロルニチンのラセミ混合物として投与される。しかしながら、エフロルニチンはまた、D-エフロルニチンがL-エフロルニチンに対し比較的多く存在する混合物、またはD-エフロルニチンの純粋もしくは実質的に純粋な調製物で投与することもできる。
【0030】
エフロルニチンは、式(II)として下に示すアミノ酸L-オルニチンの構造類似体である。
【0031】
【化3】
【0032】
オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)による触媒は、ポリアミン合成における律速工程であることが知られている。ポリアミン合成の経路は、L-オルニチンで始まる。この天然アミノ酸は、通常はタンパク質に組み込まれないが、アルギニンをオルニチンと尿素に代謝する尿素回路の一部である。オルニチンは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によりプトレシンおよびCOに変換され、ポリアミン生成における律速工程であると考えられる。S-アデノシルメチオニンから与えられたプロピルアミンを加えると、プトレシンはスペルミジンに変換される。次いで、スペルミジンは、再びS-アデノシルメチオニンの脱炭酸に伴ってスペルミンシンテターゼによりスペルミンに変換される。プトレシン、スペルミジンおよびスペルミンは、哺乳類組織における3つの主要なポリアミンを代表する。ポリアミン類は、動物組織および微生物で見出され、細胞の成長および増殖において重要な役割を果たすことが知られている。神経膠腫の処置におけるエフロルニチンの作用機序は主として腫瘍細胞における突然変異の誘導の阻止を含むと考えられているが、ポリアミン類の合成に対するエフロルニチンの作用は、二次的な役割を果たし得る。
【0033】
エフロルニチンの若干の誘導体および類似体が当技術分野では知られており、これらについては下記でさらに詳述する。
【0034】
エフロルニチンは、酵素オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の不可逆的阻害剤であり、元々はトリパノソーマ症の治療薬として開発された(1~3)。エフロルニチンはまた、様々ながんの治療薬として研究されている(4)。エフロルニチンは、経口的または注射により、例えば静脈内注射または腹腔内注射などにより投与され得る。
【0035】
エフロルニチンの主たる作用はODC活性を阻害すること、およびそれによってオルニチンからのプトレシンの生成を阻害することであるということは確立されているが、抗がん剤としてのその多面的効果は、この時点でまだ十分には認識または理解されていない。腫瘍細胞に対するエフロルニチンの有効性を説明するため多くの作用が提案されている(4~6)。ポリアミン類(プトレシン、スペルミジンおよびスペルミン)はDNAおよびRNA機能において本質的役割を果たしているため、ODCを阻害すれば、腫瘍の成長および恐らくは腫瘍細胞移動を阻害することになるというのは長年支持されている定説である。エフロルニチンはまた、結腸、皮膚および膀胱の組織および細胞系ならびに臨床状況における化学的発がん物質の影響を低下させることができる(4、6)。
【0036】
しかしながら、過去数年にわたって、CNS神経膠腫に対するエフロルニチンについて以前に認識または示唆されていたのとは異なる抗腫瘍活性を示唆する新しい知見が登場した。本発明は、抗腫瘍活性についてのこの新しい基本原理に関するものである。具体的に
は、我々は、エフロルニチンの主たる抗がん効果が、ゆっくりと成長している浸潤性神経膠腫(WHOグレードIIおよびIII腫瘍)において突然変異を調節(ダウンレギュレート)する能力に委ねられていることを主張する。突然変異の発生および/または数を低減させることにより、我々は、より悪性度の高い膠芽腫(WHOグレードIV)へのがんの進行および転化の突然変異により活性化されたドライバーが発生し損ねるかまたは時間経過とともに数が減ることになるため、患者における腫瘍の成長が停止および/または減速することになると考える。
【0037】
退形成性神経膠腫患者におけるエフロルニチン-PCV対PCV(プロカルバジン/CCNU/ビンクリスチン)の補助化学療法の第3相無作為化臨床試験(7)は、この仮説についての証拠を提供する。その臨床試験は、エフロルニチン-PCV化学療法を停止後約1~1.5年続くPCV化学療法と比べた場合、エフロルニチン-PCV化学療法が無増悪生存期間(PFS)ハザード関数においてシフトを生じることを示した。その時点から以降、PFS曲線および全生存期間(OS)曲線は平行状態のままであり、10年間にわたって、交差することは無かった(7,8)。この仮説は、エフロルニチンは、退形成性神経膠腫(特に退形成性星細胞腫)が膠芽腫など、より悪性度の高い表現型へ進行するのを防御した可能性を含む。さらなる裏付けは、エフロルニチンが2種の細胞内タンパク質、p21およびp27kip-1を増加させ、それによってG1間の細胞分裂および有糸分裂の開始を停止させることができることを見出した神経芽細胞腫細胞における最近の試験からもたらされる(9,10)。
【0038】
これら2つの所見を考え合わせると、エフロルニチンは、一度に何年間も3週間ごとに2週間安全に経口投与され得、G1停止、ならびに細胞内p21およびp27kip-1の増加をもたらすことができるため、エフロルニチンは、in situで神経膠腫腫瘍細胞における突然変異速度を低下させ、それによって低グレード(WHOグレードII)神経膠腫および中グレード(WHOグレードIII)神経膠腫の膠芽腫(WHOグレードIV)への転化に対する新たな予想外の効果を提供することになる可能性が非常に高いことが示唆される。この方法は、エフロルニチンの作用により、突然変異を制限するもので、臨床試験で示されたようにこれらの腫瘍をもつ患者に長期生存という利益をもたらすことになる(7,8)。また、エフロルニチンによる処置は、低グレード神経膠腫および中グレード神経膠腫の患者では何年間も続行するべきであると示唆されている。エフロルニチンの投与により誘発された細胞内p21およびp27kip-1の増加は、この薬剤による突然変異抑制と関連しており、悪性度の高いものへの神経膠腫の進行を阻止するかまたは遅延させるという臨床結果を有する。
【0039】
さらなる結果がこの仮説を裏付けている(11)。これらの結果は、低グレード神経膠腫および中グレード神経膠腫からさらに悪性度の高い腫瘍グレードへの転化に対する突然変異の重要性を示す。この試験の前提は、再発腫瘍の成長を推進するゲノム変化が初発腫瘍の場合とは異なるため再発性または進行性神経膠腫に対する治療は失敗に帰するということであった。この試験では、同一患者から切除した23の初発低グレード神経膠腫および再発性腫瘍のエクソームの配列決定を行った。初回診断でのグレード2神経膠腫において最も多く突然変異を起こした3つの遺伝子は、試験したコホートの100%(23/23)でIDH1、83%(19/23)でTP53、および78%(18/23)でATRXであることが見出された。次に多く突然変異を起こした遺伝子であるSMARCA4は、このコホートにおける初発腫瘍の13%(3/23)で同定された。また、このコホートの9%(2/23)で同定され得る13のさらなる遺伝子が見出された。興味深いことに、症例の43%では、初発腫瘍における突然変異の少なくとも半分は、TP53、ATRX、SMARCA4およびBRAFにおけるドライバー突然変異を含め、腫瘍再発/進行では検出されなかったことから、再発性腫瘍は、その進展の非常に早い段階で初発腫瘍に由来する細胞により播種され得ることが示唆される。これは、これらの腫瘍に対する
初期の処置の重要性を強調している。また、さらなる興味の対象は、補助的テモゾロミド(TMZ)化学療法で処置された10名の患者のうち6名から得た腫瘍が高グレード神経膠腫への代替的進展経路をたどったという所見であり、これらの腫瘍は、超突然変異を示し、TMZによる突然変異誘発のサインをもつRBおよびAKT-mTOR経路におけるドライバー突然変異を隠し持っていた。これらの試験は、一次性GBM(12,13)、不対再発性腫瘍(14)および細胞培養モデル(15)の初期の見解および試験を拡大するものであった。
【0040】
全てのWHOグレードIIおよびIIIの神経膠腫がある突然変異経路をたどるとして、それらが再発または進行する場合、これらの神経膠腫を制御する論理的な一方法は、これらの腫瘍が発現し得る突然変異の速度および範囲を軽減することとなる。以前に検討したように、処置された退形成性神経膠腫患者においてエフロルニチンが突然変異速度を減じた(7,8)という因果関係を示す証明は現時点では欠如しているが、情況証拠は、腫瘍細胞突然変異の軽減におけるエフロルニチンの役割に有利に働いている。事実を思い返すと、エフロルニチンは、細胞内のp21タンパク質およびp27kip-1タンパク質を増加させることにより、神経外胚葉性腫瘍様神経膠腫である、神経芽細胞腫においてG1停止をもたらし(9,10)、ほぼ疑いなく、腫瘍細胞の突然変異速度に強い衝撃を与えることができる。生検を実施した皮膚の日光角化症の局所エフロルニチン処置は、プラセボで処置した皮膚の場合と比べて、p53陽性細胞のパーセンテージを低減させるが(22%;P=0.04)、p53突然変異の頻度は低減させないことが、以前に見出された(16)。
【0041】
この仮説は、エフロルニチンが低グレード神経膠腫および中グレード神経膠腫において突然変異速度を低下させることができるという結論を証明するかまたは裏付けることができる実験により評価され得る。しかしながら、これらの腫瘍は、一般的にヒト宿主の外側ではあまり成長しない。一実施形態は、三次元培養で成長し、最初に多数の突然変異を有することのない1種以上の慣用的細胞系を使用することである。
【0042】
別の方法は、TMZの変異原性潜在力を評価するのに使用されるのと類似した方法でBig Blue Rat-2細胞を使用することである(15)。DNA付加物を考察するのに加えて、Big Blue Rat-2細胞におけるlacl突然変異を考察したところ、0、0.5または1mMのTMZでのTMZ処置で9.1から48.9および89.7へのlacl突然変異頻度の用量依存的増加が見出された。TMZ処置群からのlacl突然変異体の配列解析は、突然変異体が非CpG部位ではGCからATへのトランジションであることを立証していたが、これは、対照処置群で観察された突然変異スペクトルとは著しく異なる。したがって、Big Blue Rat-2細胞に対し、規定された用量および持続時間のTMZ曝露を施すことにより突然変異カスケードを開始させた後、エフロルニチンで処置し得ることは想像できる。
【0043】
別の可能な方法では、約6か月の期間にわたって動物を死に至らしめる緩徐進行型IC齧歯類腫瘍を採用し、2か月、4か月および6か月目に起こっている突然変異を調べ、マウスを2群に分ける。第1群の場合、2か月目~6か月目の間、3週間/4週間飲用水中のエフロルニチン(1.5~2%)で構成されるのに対し、第2群にはエフロルニチンを与えなかった。腫瘍移植後2、4および6か月で安楽死させて得られた各腫瘍組織試料について約500遺伝子の配列決定を用いるこの方法は、突然変異頻度に対するエフロルニチンの有効性の情報および証拠を提供するのに十分なものであり得る。
【0044】
3次元培養で神経膠腫細胞または腺がん細胞を成長させ、次いで単独薬剤または薬物併用による処置の効果を評価するための前述の技術(23,24)を使用することができる。これらの技術は、当初、血清飢餓または低酸素条件下で3次元培養物からリンタンパク
質を迅速に分離するために開発されたが(25,26)、これらの技術は同じくDNAおよびRNAの分離についても十分に使えることになる。1つの方法では、単機能アルキル化剤のテモゾロミドを使用し、突然変異を生じさせ、そしてその後2用量および2回でエフロルニチンを投与して、エフロルニチンがいかにうまく腫瘍細胞の突然変異頻度を低減させるかを求めることになる。テモゾロミドおよびエフロルニチンについては3次元培養物で試験して良好な成果をあげることができるため(23,24)、各回および投与時点で500~800の遺伝子チップアレイを用いて突然変異頻度を考察するための培養条件を確立することが可能となると予測される。
【0045】
Beyらによる米国特許第5614557号は、式(III):
【0046】
【化4】
【0047】
[式中、
(1)Yは、FCH-、FCH-またはFC-であり、
(2)RおよびRは、独立して、水素、(C-C)アルキルカルボニル、または式
【0048】
【化5】
【0049】
で示される基であって、
式(III(a))において、Rは、水素、(C-C)アルキル、ベンジルまたはp-ヒドロキシベンジルであるものとし、
(3)Rは、ヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、-NRであって、式中、RおよびRは、独立して水素、(C-C)アルキル、または式(III(b))
【0050】
【化6】
【0051】
で示される基であって、
式(III(b))において、Rは、水素、C-C)アルキルまたはp-ヒドロキシベンジルであるものとする]
で示されるエフロルニチンの類似体を開示している。
【0052】
Bowlinらによる米国特許第5002879号は、式(IV)および(V):
(IV);および
【0053】
【化7】
【0054】
および
【0055】
【化8】
【0056】
[式中、
(1)Xは-CHFまたは-CHFであり、
(2)Rは、水素または-CORであり、および
(3)Rは、-OHまたは(C-C)アルコキシである]
で示されるさらなるオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤を開示している。
【0057】
ポリカチオン性炭水化物(キトサン、水溶性キトサン誘導体、またはその塩)またはポリアミノ酸、ポリアミン、ポリペプチド、塩基性ポリマーまたは第四級アンモニウム化合物などのポリカチオンとのエフロルニチンの水溶性塩は、Hebertによる米国特許出願公開第2002/0019338号に開示されている。エフロルニチンの医薬的に許容し得る塩形態、水和物、および溶媒和物ならびにその誘導体、類似体およびプロドラッグは全て、本発明の方法および組成物で使用することができる。
【0058】
エフロルニチンのさらなる誘導体、類似体およびプロドラッグが、当技術分野では知られている。Xuによる米国特許出願公開第2010/0120727号は、エフロルニチンまたはエフロルニチンの誘導体もしくは類似体である第一の部分が、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)である第二の部分と共有結合しているコンジュゲートを開示している。NSAIDは、例えば、アスピリン、アセクロフェナック、アセメタシン、アルクロ
フェナック、アモキシプリン(amoxiprin)、アンピロン、アザプロパゾン、ベノリレート、ブロムフェナク、コリンマグネシウムサリチレート、サリチル酸コリン、セレコキシブ、クロフェゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールと共にジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、エテンザミド、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、ファイスラミン(faislamine)、フルルビプロフェン、フルフェナム酸、イブプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、アルミノプロフェン、カルプロフェン、デキシブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェンブフェン、フルノキサプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ケブゾン、ロキソプロフェン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸ナトリウム、メタミゾール、メフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェナゾン、スルフィンピラゾン、メフェナム酸、メロキシカム、サリチル酸メチル、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ネブメトン、オキサプロジン、オキサメタシン、フェニルブタゾン、プログルメタシン、ピロキシカム、ピルプロフェン、スプロフェン、ロフェコキシブ、サルサレート、サリチルサリチラート、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、スリンダク、チアプロフェン酸、トルフェナム酸、トルメチンナトリウム、およびバルデコキシブであり得る。第一の部分と第二の部分は、エステル結合、アミド結合、イミン結合、カルバミン酸結合、炭酸結合、チオエステル結合、アシルオキシカルバミン酸結合、アシルオキシ炭酸結合、アシルオキシチオカルバミン酸結合、リン酸結合、ホスホルアミデートおよびアシルオキシリン酸結合から成る群から選択される共有結合を介して結合され得る。
【0059】
Zhuらによる米国特許出願公開第2015/0306241号は、式A-B-Cで示されるコポリマーまたはその医薬的に許容し得る塩を開示しており、式中、Aは水溶性ポリマーを含み、Bはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)開裂性ポリペプチドを含み、Cは化学療法剤またはその誘導体であって、Aは第一の共有結合または第一の結合部分を通じて第一の端部でBに連結され、Bは第二の共有結合または第二の結合部分を通じて第二の端部でCに連結され、コポリマーは架橋されていないものとする。典型的には、このコポリマーでは、化学療法剤は、エフロルニチンなどのアミノ含有治療薬である。
【0060】
Shakedらによる米国特許出願公開第2002/0110590号は、速放性DFMO含有顆粒および徐放性顆粒を有するコアならびにpH反応性コーティングを含むコアを囲む外層を含む、エフロルニチン投与用の製剤を開示している。
【0061】
Teichbergらによる米国特許第9034319号は、血中グルタミン酸レベルを低下させ、脳から血液へのグルタミン酸排出を高める薬剤とエフロルニチンの併用を開示している。血中グルタミン酸レベルを低下させ、脳から血液へのグルタミン酸排出を高める薬剤は、(1)グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、アセチルオルニチントランスアミナーゼ、オルニチン-オキソ酸トランスアミナーゼ、スクシニルジアミノピメリン酸トランスアミナーゼ、4-アミノ酪酸トランスアミナーゼ、(s)-3-アミノ-2-メチルプロピオン酸トランスアミナーゼ、4-ヒドロキシグルタミン酸トランスアミナーゼ、ジヨードチロシントランスアミナーゼ、甲状腺ホルモントランスアミナーゼ、トリプトファントランスアミナーゼ、ジアミントランスアミナーゼ、システイントランスアミナーゼ、L-リシン6-トランスアミナーゼ、ヒスチジントランスアミナーゼ、2-アミノアジピン酸トランスアミナーゼ、グリシントランスアミナーゼ、分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼ、5-アミノ吉草酸トランスアミナーゼ、ジヒドロキシフェニルアラニントランスアミナーゼ、チロシントランスアミナーゼ、ホスホセリントランスアミナーゼ、タウリントランスアミナーゼ、芳香族アミノ酸トランスアミナーゼ、芳香族アミノ酸グリオキシル酸トランスアミナーゼ、ロイシントランスアミナーゼ、2-アミノヘキサン酸トランスアミナーゼ、オルニチン(リシン)トランスアミナーゼ、キヌレニン-オキソグルタル酸トランスアミナーゼ、D-4-ヒ
ドロキシフェニルグリシントランスアミナーゼ、システイン-コンジュゲートトランスアミナーゼ、2,5-ジアミノ吉草酸トランスアミナーゼ、ヒスチジノール-リン酸トランスアミナーゼ、ジアミノ酪酸-2-オキソグルタル酸トランスアミナーゼおよびudp-2-アセトアミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシグルコーストランスアミナーゼから成る群から選択され得るトランスアミナーゼ;(2)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ;(3)グルタミン酸デカルボキシラーゼ;(4)グルタミン酸-エチルアミンリガーゼ;(5)グルタミン酸N-アセチルトランスフェラーゼおよびアデニリルトランスフェラーゼから成る群から選択され得るトランスフェラーゼ;(6)グルタミン酸-1-セミアルデヒド2,1-アミノムターゼであり得るアミノムターゼ;ならびに(7)ラセマーゼであり得る。酵素を補因子と併用することができる。
【0062】
Shakedらによる米国特許第6277411号は、異なるタイプのエフロルニチンのコアを含むカプセル剤、錠剤または他の用量形態を含む調製物を開示している。
【0063】
したがって、下記でさらに詳述するように、本発明の一態様は、神経膠腫の突然変異速度を低下させて神経膠腫の進行を低減させるために治療有効量のエフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を神経膠腫患者に投与する工程を含む神経膠腫の処置方法である。典型的には、神経膠腫はWHOグレードIIまたはグレードIIIの神経膠腫である。一実施形態において、神経膠腫は、退形成性神経膠腫、退形成性乏突起神経膠腫、および混合性退形成性乏突起星細胞腫から成る群から選択される。
【0064】
上記のエフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、他の薬剤と一緒に使用され得る。エフロルニチンの医薬的に許容し得る塩形態、水和物および溶媒和物ならびにその誘導体、類似体およびプロドラッグは、個別にまたは他の薬剤と併用して使用され得る。
【0065】
Phanstiel IVによる米国特許第9150495号は、ポリアミンにより二置換された芳香族炭化水素を含む、ポリアミン輸送体選択的化合物との併用によるエフロルニチンの使用を開示している。
【0066】
Bachmannによる米国特許第9072778号は、SAM486A(S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ阻害剤、4-(アミノイミノメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン-ジアミノメチレンヒドラゾン)、ベリノイドおよび抗新生物薬との併用によるエフロルニチンの使用を開示している。
【0067】
Bachmannらによる米国特許第8597904号は、グリドバクチン、シリンゴリンおよび他のシルバクチン化合物との併用によるエフロルニチンの使用を開示している。
【0068】
Wongらによる米国特許第7718764号は、抗新生物薬として使用するための、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(配列番号1)およびそのフラグメントおよび誘導体を含む、ペプチドとのエフロルニチンのコンジュゲートを開示している。
【0069】
Guptaらによる米国特許第7655678号は、セレコキシブとの併用によるエフロルニチンの使用を開示している。Masterrerによる米国特許出願公開第2003/0203956号は、ルミラコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブおよびデラコキシブから成る群から選択されるシクロオキシゲナーゼ-2阻害剤との併用によるエフロルニチンの使用を開示している。同様に、Gernerらによる米国特許第6258845号は、非ステロイド系抗炎症性スリンダクとの併用によるエフロルニチンの使用を開示している。
【0070】
Burnsらによる米国特許第7432302号は、エフロルニチンとの併用によるポリアミン輸送阻害剤の使用を開示している。ポリアミン輸送阻害剤は、構造R-X-L-ポリアミン(式中、Rは、直鎖または分枝状C10-C50飽和または不飽和脂肪族、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキルまたはアルコキシ;C-C脂環式部分;単環もしくは多環アリール置換または非置換脂肪族;および脂肪族-置換または非置換単環もしくは多環芳香族;単環もしくは多環複素環;単環もしくは多環複素環脂肪族;アリールスルホニルであり;Xは、-CO-、-SO-、または-CH-であり;Lは、共有結合または天然に存在するアミノ酸、リシン、オルニチンまたは2,4-ジアミノ酪酸である)を有する化合物であり得る。
【0071】
Poulinらによる米国特許第7425579号は、エフロルニチンとの併用によるポリアミン輸送阻害剤の使用を開示している。ポリアミン輸送阻害剤は、式(PT-I)または(PT-II):
【0072】
【化9】
【0073】
【0074】
【化10】
【0075】
(式中、Lはリンカーであり、Rは、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり、Rは、水素またはメチルであり、0<x<3;0<y<3;2<v<5;および2<w<8である)
で示される化合物であり得る。
【0076】
Vermeulinらによる米国特許第7208528号は、エフロルニチンとの併用によるポリアミン輸送阻害剤の使用を開示している。ポリアミン輸送阻害剤は、式(PT-III):
【0077】
【化11】
【0078】
[式中:Rは、DまたはLアミノ酸;DまたはLオルニチン、脂環式、単環もしくは多環芳香族;脂肪族置換単環もしくは多環芳香族;および置換または非置換単環もしくは多環複素環から選択され、Rが置換単環もしくは多環複素環であるとき、複素環は、OH、ハロゲン、NO、NH、NH(CHCH、N((CHCH、CN、(CHCH、O(CHCH、S(CHCH、NHCO(CHCH、またはO(CFCF、COO(CHCH(式中、nは0~10である)から成る群の少なくとも一員により置換されている]
で示されるN-モノ置換ポリアミン類似体または誘導体であり得る。
【0079】
Vermeulinらによる米国特許第7160923号は、エフロルニチンとの併用によるポリアミン輸送阻害剤の使用を開示している。ポリアミン輸送阻害剤は、式R-X-Rを有し得るもので、式中、R-X-は、式R-NH-CR´R”-CO-で示され、ここで、NH-CR´R”-CO-は、バリン、アスパラギンまたはグルタミンのD形態またはL形態、またはリシンまたはアルギニンのD形態であり、式中、R”は、H、CH、CHCHまたはCHFであり;ここでRは、Hまたは、直鎖または分枝状C-C10脂肪族、脂環式、単環もしくは多環芳香族、単環もしくは多環アリール置換脂肪族、脂肪族置換単環もしくは多環芳香族、単環もしくは多環複素環、単環もしくは多環複素環置換脂肪族および脂肪族置換芳香族から成る群から選択されるヘッド基であり、Rはポリアミンである。
【0080】
Burnsらによる米国特許第7144920号は、式(PT-IV):
【0081】
【化12】
【0082】
(式中、nは、0~8であり得、アミノメチル官能基は、オルト、メタまたはパラ置換され得、Rは、水素、2-アミノエチル、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、5-アミノペンチル、6-アミノヘキシル、7-アミノヘプチル、または8-アミノオクチルであり、Rは水素であって、ポリアミンは非対称性である)
で示される化合物を含む、抗酵素活性を誘導し、ポリアミン輸送体活性を阻害するもので、エフロルニチンと共に使用され得るポリアミン類似体を開示している。
【0083】
Bergeron,Jr.による米国特許第7094808号は、式(PT-V):
【0084】
【化13】
【0085】
[式中、R~Rは、同一でも異なっていてもよく、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはシクロアルキル(これらは、場合によっては、少なくとも1つのエーテル酸素原子により中断されたアルキル鎖を有していてもよい)、または水素であり、N、N、NおよびNは、生理学的pHでプロトンを付加することができる窒素原子であり、aおよびbは、同一でも異なっていてもよい、1~4の整数であり、A、BおよびCは、同一でも異なっていてもよく、ポリアミンが:(i)ヒトまたはヒト以外の動物へのポリアミンの投与時に標的細胞により取り込まれることができ;および(ii)標的細胞による取り込み時、正に荷電した窒素原子間の静電的相互作用により標的細胞における細胞内天然ポリアミンと実質的に同じ生物学的対アニオンに競合的に結合するように、窒素原子間の距離を有効に維持する架橋基であり;投与されるポリアミンは、細胞中の生物学的対アニオンへ結合すると、細胞内ポリアミンとは生物学的に異なる形で機能するもので、天然には存在しないポリアミンである]
で示されるポリアミン輸送阻害剤を開示している。
【0086】
Rameshらによる米国特許第7030126号は、ポリアミン合成阻害剤として、エフロルニチンと併用することができる、ポリアミン類似体であるN(1),N(11)-ジエチルノルスペルミン(DENSPM)の使用を開示している。
【0087】
Burnsらによる米国特許第6963010号は、エフロルニチンと共に使用することができる疎水性ポリアミン類似体の使用を開示している。これらの類似体には、式(PT-VI)、(PT-VII)、(PT-VIII)および(PT-IX)で示される類似体がある:
【0088】
【化14】
【0089】
【0090】
【化15】
【0091】
【0092】
【化16】
【0093】
;および
【0094】
【化17】
【0095】
式(PT-VI)で示される化合物において、a、bおよびcは、独立して1~10の
範囲に含まれ;dおよびeは、独立して0~30の範囲に含まれ;各Xは、独立して炭素(C)原子または硫黄(S)原子のいずれかであり、RおよびRは、独立してHから、または直鎖または分枝状C-C50飽和または不飽和脂肪族、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキルまたはアルコキシ;C-C脂環式;単環もしくは多環アリール置換または非置換脂肪族;脂肪族置換または非置換単環もしくは多環芳香族;単環もしくは多環複素環;単環もしくは多環複素環脂肪族;C-C10アルキル;アリールスルホニル;またはシアノから成る群から選択されるか;またはRX{O}-およびRX{O}-はそれぞれ独立してHにより置換されており;*はキラル炭素位置を示し、XがCであるならば、nは1であり;XがSであるならば、nは2であり、またXがCであるならば、nが0であるようにXO基はCHであり得る。
【0096】
式(PT-VII)で示される化合物において、a、bおよびcは、独立して1~10の範囲に含まれ、dおよびeは、独立して0~30の範囲に含まれ;R、R、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、独立してHから、または直鎖または分枝状C-C50飽和または不飽和脂肪族、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキルまたはアルコキシ;C-C脂環式;単環もしくは多環アリール置換または非置換脂肪族;脂肪族置換または非置換単環もしくは多環芳香族;単環もしくは多環複素環;単環もしくは多環複素環脂肪族;C-C10アルキル;アリールスルホニル;またはシアノから成る群から選択される。
【0097】
式(PT-VIII)で示される化合物において、a、bおよびcは、独立して1~10の範囲に含まれ、dおよびeは、独立して0~30の範囲に含まれ;R、R、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、独立してHから、または直鎖または分枝状C-C50飽和または不飽和脂肪族、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキルまたはアルコキシ;C-C脂環式;単環もしくは多環アリール置換または非置換脂肪族;脂肪族置換または非置換単環もしくは多環芳香族;単環もしくは多環複素環;単環もしくは多環複素環脂肪族;C-C10アルキル;アリールスルホニル;またはシアノから成る群から選択される。
【0098】
式(PT-IX)で示される化合物において、a、bおよびcは、独立して1~10の範囲に含まれ、dおよびCは、独立して0~30の範囲に含まれ;ZはNRであって、Zは、-R、-CHRまたは-CRから選択されるか、またはZはNRであって、Zは、-R、-CHRまたは-CRから選択されるものとし、R、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、独立してHから、または直鎖または分枝状C-C50飽和または不飽和脂肪族、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキルまたはアルコキシ;C-C脂環式;単環もしくは多環アリール置換または非置換脂肪族;脂肪族置換または非置換単環もしくは多環芳香族;単環もしくは多環複素環;単環もしくは多環複素環脂肪族;C-C10アルキル;アリールスルホニル;またはシアノから成る群から選択される。
【0099】
Burnsらによる米国特許第6872852号は、式R-X-Rで示される化合物を含む、エフロルニチンと共に使用することができるポリアミン類似体を開示しており、上式中、RおよびRは、独立してHまたは直鎖または分枝状C-C10脂肪族、脂環式、単環もしくは多環芳香族、単環もしくは多環アリール置換脂肪族、脂肪族置換単環もしくは多環芳香族、単環もしくは多環複素環、単環もしくは多環複素環置換脂肪族および脂肪族置換芳香族、およびそれらのハロゲン化形態から成る群から選択される部分であり;Xは、2つの末端アミノ基、-(CH-NH-または-CH-Ph-CH-をもつポリアミンであるものとする。
【0100】
Vermeulenらによる米国特許第6646149号は、式R-X-R(式中
、RおよびRは、それぞれポリアミンまたはポリアミンの類似体または誘導体であり、Xは2つのポリアミン部分を連結するリンカー部分である)で示される化合物を含む、ポリアミン輸送体活性を阻害し、エフロルニチンと共に使用することができるポリアミン類似体を開示している。
【0101】
Frydmanらによる米国特許第6392098号は、式E-NH-D-NH-B-A-B-NH-D-NH-Eで示される化合物を含む、エフロルニチンと共に使用することができる配座固定化ポリアミン類似体を開示しており、上式中、Aは、C-CアルケニルおよびC-Cシクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアリールから成る群から選択され;Bは、独立して単結合およびC-Cアルキルおよびアルケニルから成る群から選択され;Dは、独立してC-Cアルキルおよびアルケニル、およびC-Cシクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアリールから成る群から選択され;Eは、独立してH、C-Cアルキルおよびアルケニルから成る群から選択されるものとする。
【0102】
Poulinらによる米国特許第6083496号は、元のポリアミンのダイマーの合成誘導体を含む、エフロルニチンと共に使用することができるポリアミン輸送の阻害剤を開示しているもので、この元のポリアミンは、元のポリアミンの炭素原子に直接結合され、2つの内部原子間に配置されているアミド基を含むように修飾されており、ダイマーは、各モノマーのアミド基に固定されたスペーサー側鎖により一緒に結合されている。
【0103】
Basuらによる米国特許第5880161号は、式R-NH-(CH-NH-(CH-NH-(CH-NH-(CH-NH-R(式中、RおよびRは、1~5の炭素を有する炭化水素鎖であり、w、x、yおよびzは、1~10の整数である)を有する分子を含む、エフロルニチンと共に使用することができるポリアミン類似体を開示しており;1つの好ましい分子はN,N19-ビス-(エチルアミノ)-5,10,15-トリアザノナデカンである。
【0104】
Lauらによる米国特許第5374658号は、エフロルニチンと共にN,N´-ビス-(3-プロピオンアルデヒド)-1,4-ジアミノブタン(スペルミンビスアルデヒド)を含む酸化されたポリアミンの使用を開示している。
【0105】
Sunkaraらによる米国特許第4952585号は、カスタノスペルミンのエステルを伴うエフロルニチンの使用を開示している。同様に、Sunkaraらによる米国特許第4792558号は、カスタノスペルミンを伴うエフロルニチンの使用を開示している。
【0106】
Hestonによる米国特許第4925835号は、エフロルニチンと一緒に使用することができる1-(4-アミノブチル)アジリジンなどのアジリジニルプトレシン化合物を開示している。
【0107】
Sunkaraらによる米国特許第4499072号は、インターフェロンを伴うエフロルニチンの使用を開示している。
【0108】
Townerらによる米国特許出願公開第2010/0076009号は、神経膠腫の処置における2,4-ジスルホニルフェニルt-ブチルニトロン(2,4-ds-PBN)を伴うエフロルニチンの使用を開示している。
【0109】
Zeldisによる米国特許出願公開第2015/0094336号は、神経膠腫の処置における3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イ
ル)ピペリジン-2,6-ジオンまたはサリドマイドを伴うエフロルニチンの使用を開示している。
【0110】
Dunn,Jr.らによる米国特許出願公開第2010/0285012号は、神経膠腫の処置におけるN-2-ピリジニル-2-ピリジンカルボチオアミドまたはカンベンダゾールを伴うエフロルニチンの使用を開示している。
【0111】
Casero,Jr.らによる米国特許出願公開第2013/0197088号は、悪性腫瘍を処置するための、オリゴアミンおよびポリアミンを含む、ヒストンデメチラーゼの阻害剤を伴うエフロルニチンの使用を開示している。
【0112】
Burnsらによる米国特許出願公開第2015/0050299号は、AMXT1426、AMXT1501、AMXT1505およびAMXT1569を含む、若干のポリアミン輸送阻害剤の1つを伴うエフロルニチンの使用を開示している。
【0113】
Ellervikらによる米国特許出願公開第2008/0027023号は、アリール置換キシロピラノシド誘導体を伴うエフロルニチンの使用を開示している。
【0114】
Phanstiel,IVらによる米国特許出願公開第2015/0017231号は、安定性が高められたポリアミン輸送阻害剤を伴うエフロルニチンの使用を開示している。ポリアミン輸送阻害剤は、構造R´HN-(CH-NH-(CH-NH-CH-R-CH-NH-(CHxx-NH-(CHyy-NHR”(式中、Rは、アントラセン、ナフタレンおよびベンゼンから成る群から選択され;R´およびR”は、独立してHおよびアルキル基から成る群から選択され;x、xx、yおよびyyは、独立して3および4から成る群から選択される)をもつ二置換アリールポリアミン化合物である。
【0115】
上記の化合物は、場合によっては、さらに置換されていてもよい。一般に、上記化合物の構造の一部であるものなど、飽和炭素原子における場合によっては存在してもよい置換基について、以下の置換基を使用することができる:C-C10アリール、N、OおよびSから選択される1~4のヘテロ原子を含むヘテロアリール、C-C10アルキル、C-C10アルコキシ、シクロアルキル、F、アミノ(NR)、ニトロ、-SR、-S(O)R、-(S(O)R、-S(O)NR、および-CONR(これらも、さらに場合によっては、置換されていてもよい)。可能性のある、場合によっては存在してもよい置換基のさらなる説明を以下に提供する。
【0116】
本発明の範囲内に含まれる上記の場合によっては存在してもよい置換基は、誘導体の活性または誘導体の安定性、特に水溶液中での誘導体の安定性に実質的な影響を及ぼすことはない。場合によっては存在してもよい置換基として使用することができる若干の頻出基についての定義を以下に提供するが、これらの定義から省かれた基があるとしても、場合によっては存在してもよい置換基についての化学的および薬理学的必要条件が満たされている限り、そのような基を、場合によっては存在してもよい置換基として使うことはできないという意味にとるべきではない。
【0117】
本明細書で用いられる場合、用語「アルキル」は、場合によって置換されていてもよい1~12の炭素原子を有する、非分枝状、分枝状または環状飽和ヒドロカルビル残基またはその組み合わせをいい、アルキル残基は、非置換のときにはCおよびHのみを含む。典型的には、非分枝状または分枝状飽和ヒドロカルビル残基は、1~6の炭素原子を有し、これを本明細書では「低級アルキル」と称す。アルキル残基が環状であり、環を含むとき、ヒドロカルビル残基が、環を形成するための最小数である、少なくとも3つの炭素原子
を含むことは言うまでもない。本明細書で用いられる場合、用語「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非分枝状、分枝状または環状ヒドロカルビル残基をいう。本明細書で用いられる場合、用語「アルキニル」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する非分枝状、分枝状または環状ヒドロカルビル残基をいい;この残基はまた、1つ以上の二重結合を含んでいてもよい。「アルケニル」または「アルキニル」の使用に関し、多くの二重結合が存在するからと言って、芳香族環を生じることはあり得ない。本明細書で用いられる場合、用語「ヒドロキシアルキル」、「ヒドロキシアルケニル」および「ヒドロキシアルキニル」は、それぞれ、置換基として1つまたはそれより多いヒドロキシル基を含むアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基をいい;下記で詳述するように、さらなる置換基が場合によっては含まれていてもよい。本明細書で用いられる場合、用語「アリール」は、芳香族性という周知の特徴を有する単環式または縮合二環式部分をいい;例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニルおよびインデニルがあり、これらは場合によっては、置換されていてもよい。本明細書で用いられる場合、用語「ヒドロキシアリール」は、置換基として1つ以上のヒドロキシル基を含むアリール基をいい;下記でさらに詳述するように、さらなる置換基が場合によっては、含まれていてもよい。本明細書で用いられる場合、用語「ヘテロアリール」は、芳香族性という特徴を有し、O、SおよびNから選択される1つまたはそれより多いヘテロ原子を含む単環式または縮合二環式環系をいう。ヘテロ原子を含むことにより、6員環の場合と同様5員環でも芳香族性が可能となる。典型的なヘテロ芳香族系には、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、テトラジニルおよびイミダゾリルなどの単環式C-Cヘテロ芳香族基、ならびにこれらの単環式ヘテロ芳香族基の1つをフェニル環またはC-C10二環式基を形成させるためのヘテロ芳香族単環式基のいずれかと縮合することにより形成される縮合二環式部分、例えばインドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾリルピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニルおよび当業者に既知の他の環系がある。環系全体にわたる非局在化電子分布に関して芳香族性という特徴を有する単環式または縮合環二環式系は全て、この定義に包含される。この定義はまた、少なくとも分子の残りの部分に直接結合されている環が、芳香族性特有のものである非局在化電子分布を含め、芳香族性という特徴を有している二環式基を包含する。典型的には、この環系は、5~12の環員原子および4以下のヘテロ原子を含み、これらのヘテロ原子は、N、OおよびSから成る群から選択されるものとする。高い頻度で、単環式ヘテロアリールは、5~6の環員原子および、N、OおよびSから成る群から選択される3以下のヘテロ原子を含み;高い頻度で、二環式ヘテロアリールは、8~10の環員原子、およびN、OおよびSから成る群から選択される4以下のヘテロ原子を含む。ヘテロアリール環構造におけるヘテロ原子の数および場所は、芳香族性および安定性の周知の制限条件に従うもので、安定性とは、生理学的温度での水への曝露に対してヘテロ芳香族基が急速に分解することもなく十分に安定していることを要求する。本明細書で用いられる場合、用語「ヒドロキシヘテロアリール(hydroxheteroaryl)」は、置換基として1つ以上のヒドロキシル基を含むヘテロアリール基をいい;下記でさらに詳述するように、さらなる置換基が場合によっては、含まれていてもよい。本明細書で用いられる場合、用語「ハロアリール」および「ハロヘテロアリール」は、それぞれ、少なくとも1つのハロ基により置換されたアリール基およびヘテロアリール基をいい、この「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群から選択されるハロゲンをいい、典型的には、ハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素から成る群から選択され;下記で詳述するように、さらなる置換基が場合によっては、含まれていてもよい。本明細書で用いられる場合、用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルキニル」は、それぞれ、少なくとも1つのハロ基により置換されたアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基をいい、この「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群から選択されるハロゲンをいい、典型的には、ハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素から成る群から選択され;下記で詳述
するように、さらなる置換基が場合によっては、含まれていてもよい。
【0118】
本明細書で用いられる場合、用語「場合によっては置換されていてもよい」は、場合によっては置換されていてもよいとされた特定の1つの基または複数の基が、非水素置換基を有していなくてもよいか、またはその基または複数の基が、得られる分子の化学作用および薬理活性と合致する1つ以上の非水素置換基を有していてもよいことを示す。特に断らなければ、存在し得る上記置換基の総数は、記載されている基の非置換形態に存在する水素原子の総数と等しいものとし;最大数より少数の上記置換基が存在し得る。カルボニル酸素(C=O)など、場合によっては存在してもよい置換基が二重結合を介して結合している場合、その基は、場合によっては存在してもよい置換基が結合している炭素原子上の2つの利用可能な価電子を取り込むため、含まれ得る置換基の総数は利用可能な価電子の数に応じて低減される。本明細書で用いられる場合、用語「置換された」は、「場合によっては置換されていてもよい」の一部として使用されてあろうと、またはそれ以外の場合であろうと、ある特定の基、部分またはラジカルを修飾するのに使用されているとき、1つ以上の水素原子が、それぞれ互いに独立して、同一または異なる1置換基または複数の置換基により置き換えられていることを意味する。
【0119】
特定された基、部分またはラジカルにおける飽和炭素原子を置換するのに有用な置換基としては、限定される訳ではないが、-Z、=O、-OZ、-SZ、=S、-NZ、=NZ、=N-OZ、トリハロメチル、-CF、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO、=N、-N、-S(O)、-S(O)NZ、-S(O)O、-S(O)OZ、-OS(O)OZ、-OS(O)O、-OS(O)OZ、-P(O)(O、-P(O)(OZ)(O)、-P(O)(OZ)(OZ)、-C(O)Z、-C(S)Z、-C(NZ)Z、-C(O)O、-C(O)OZ、-C(S)OZ、-C(O)NZ、-C(NZ)NZ、-OC(O)Z、-OC(S)Z、-OC(O)O、-OC(O)OZ、-OC(S)OZ、-NZC(O)Z、-NZC(S)Z、-NZC(O)O、-NZC(O)OZ、-NZC(S)OZ、-NZC(O)NZ、-NZC(NZ)Z、-NZC(NZ)NZがあり、ここで、Zは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから成る群から選択され、各Zは、独立して水素またはZであり、各Zは、独立してZであるかまたは、別法として、2つのZは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、場合によっては、N、OおよびSから成る群から選択される1~4の同一または異なるヘテロ原子を含んでいてもよい4、5、6または7員シクロヘテロアルキル環構造を形成し得る。具体例として、-NZは、-NH、-NH-アルキル、-N-ピロリジニル、および-N-モルホリニルを含むものとされるが、それらの特定の実施形態に限定されるわけではなく、当技術分野で知られている他の実施形態も含まれる。同様に、別の具体例として、置換アルキルは、-アルキレン-O-アルキル、-アルキレン-ヘテロアリール、-アルキレン-シクロヘテロアリール、-アルキレン-C(O)OZ、-アルキレン-C(O)NZ、および-CH-CH-C(O)-CHを含むものとされるが、それらの特定の形態に限定されるわけではなく、当技術分野で知られている他の代替形態も含まれる。1つ以上の置換基は、それらが結合している原子と一緒になって、限定されるわけではないが、シクロアルキルおよびシクロヘテロアルキルを含む環状構造を形成し得る。
【0120】
同様に、特定の基、部分またはラジカルにおける不飽和炭素原子の置換に有用な置換基には、限定されるわけではないが、-Z、ハロ、-O、-OZ、-SZ、-S、-NZ、トリハロメチル、-CF、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO、-N、-S(O)、-S(O)O、-S(O)OZ、-OS(
)OZ、-OS(O)O、-P(O)(O、-P(O)(OZ)(O)、-P(O)(OZ)(OZ)、-C(O)Z、-C(S)Z、-C(NZ)Z、-C(O)O、-C(O)OZ、-C(S)OZ、-C(O)NZ、-C(NZ)NZ、-OC(O)Z、-OC(S)Z、-OC(O)O、-OC(O)OZ、-OC(S)OZ、-NZC(O)OZ、-NZC(S)OZ、-NZC(O)NZ、-NZC(NZ)Z、および-NZC(NZ)NZがあり、式中、Z、ZおよびZは、前記の意味である。
【0121】
同様に、ヘテロアルキル基およびシクロヘテロアルキル基における窒素原子の置換に有用な置換基には、限定されるわけではないが、-Z、ハロ、-O、-OZ、-SZ、-S、-NZ、トリハロメチル、-CF、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO、-S(O)、-S(O)O、-S(O)OZ、-OS(O)OZ、-OS(O)O、-P(O)(O、-P(O)(OZ)(O)、-P(O)(OZ)(OZ)、-C(O)Z、-C(S)Z、-C(NZ)Z、-C(O)OZ、-C(S)OZ、-C(O)NZ、-C(NZ)NZ、-OC(O)Z、-OC(S)Z、-OC(O)OZ、-OC(S)OZ、-NZC(O)Z、-NZC(S)Z、-NZC(O)OZ、-NZC(S)OZ、-NZC(O)NZ、-NZC(NZ)Z、および-NZC(NZ)NZがあり、式中、Z、ZおよびZは、前記の意味である。
【0122】
本明細書に記載された化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を有し得、したがって、二重結合異性体(すなわち、EおよびZなどの幾何異性体)、鏡像体またはジアステレオマーなどの立体異性体として存在し得る。本発明は、具体的な立体異性体を特定しない場合、単離された各立体異性体形態(鏡像体として純粋な異性体、EおよびZ異性体、および立体異性体に対する他の代替形態)ならびに様々な度合のキラル純度またはEおよびZのパーセンテージでのラセミ混合物、ジアステレオマー混合物およびE異性体とZ異性体の混合物を含む、立体異性体の混合物を包含する。したがって、本明細書で描かれている化学構造は、立体異性体として純粋な形態(例、幾何的に純粋、鏡像体として純粋またはジアステレオマーとして純粋である)ならびに鏡像体および立体異性体混合物を含む例示された化合物の可能な鏡像体および立体異性体を全て包含する。鏡像体および立体異性体の混合物については、当業者に周知の分離技術またはキラル合成技術を用いてそれらの構成成分である鏡像体または立体異性体に分割することができる。本発明は、単離された各立体異性体形態およびラセミ混合物を含む様々なキラル純度での立体異性体の混合物を包含する。本発明はまた様々なジアステレオマーを包含する。特定の異性体を描くのに他の構造も示され得るが、それは単に便宜上のものであり、本発明をその描かれた異性体に限定する意図はないものとする。化学名が化合物の異性体形態を明記していないとき、その化学名は、可能な異性体形態のいずれか1つまたは化合物の異性体形態の混合物を示す。上記で述べたように、エフロルニチンは、2つの鏡像体形態で存在する。
【0123】
本化合物はまた、いくつかの互変異性体形態で存在し得、1つの互変異性体を本明細書で描いている場合、それは単に便宜上のものであり、示された形態の他の互変異性体が包含されることも理解される。したがって、本明細書で描かれている化学構造は、例示された化合物の可能な互変異性体形態を全て包含する。本明細書で用いられる用語「互変異性体」とは、非常に容易にもう1つのものに変化する異性体をいい、その結果それらは平衡状態で共存することができる;この平衡状態は、安定性という留意事項によっては、互変異性体の一方に非常に有利なこともある。例えば、ケトンおよびエノールは、1つの化合物の2つの互変異性体形態である。
【0124】
本明細書で用いられる場合、用語「溶媒和物」は、溶媒和により形成される化合物(溶媒分子と溶質の分子またはイオンの組み合わせ)、または溶質イオンまたは分子、すなわち本発明化合物と、1種以上の溶媒分子から成る凝集体を意味する。水が溶媒であるとき、対応する溶媒和物は「水和物」である。水和物の例としては、限定される訳ではないが、ヘミ水和物、モノ水和物、ジ水和物、トリ水和物、ヘキサ水和物および他の水含有種がある。本化合物の医薬的に許容し得る塩、および/またはプロドラッグはまた、溶媒和物形態でも存在し得ることは、当業者であれば理解される。溶媒和物は、典型的には、本化合物の調製の一部であるかまたは本発明の無水化合物による水分の自然吸収を通した水和により形成される。
【0125】
本明細書で用いられる場合、用語「エステル」は、分子の-COOH官能基のいずれかが-COOR官能基により置換されている本化合物のエステルを全て包含するもので、このエステルのR部分は、限定されるわけではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルおよびその置換誘導体を含む、安定したエステル部分を形成する任意の炭素含有基である。本化合物の加水分解可能なエステルは、そのカルボキシル基が加水分解可能なエステル基の形態で存在する化合物である。すなわち、これらのエステルは、医薬的に許容し得るものであり、インビボで対応するカルボン酸に加水分解され得る。
【0126】
上記置換基に加えて、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、別法として、または追加的にC-Cアシル、C-Cヘテロアシル、C-C10アリール、C-Cシクロアルキル、C-CヘテロシクリルまたはC-C10ヘテロアリール(これらはそれぞれ、場合によっては、置換されていてもよい)により置換されていてもよい。また、さらに、5~8環員を有する環を形成することができる2つの基が同一または隣接原子に存在するとき、この2つの基は、場合によっては、それらが結合している置換基における1つまたは複数の原子と一緒になって、かかる環を形成することができる。
【0127】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」などは、対応するヒドロカルビル(アルキル、アルケニルおよびアルキニル)基と同様に定義されるが、「ヘテロ」という用語は、バックボーン残基内に1~3のO、SまたはNヘテロ原子またはその組み合わせを含む基を指すもので;対応するアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基の少なくとも1つの炭素原子が、特定されたヘテロ原子の1つにより置換され、それぞれ、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基またはヘテロアルキニル基を形成する。化学的安定性の理由については、特に断らなければ、オキソ基がニトロ基またはスルホニル基における場合のようにNまたはSに存在する場合を除き、上記の基が2つを超える連続ヘテロ原子を含むことはないということもまた言うまでもない。
【0128】
本明細書で用いられる「アルキル」は、シクロアルキル基およびシクロアルキルアルキル基を含むが、用語「シクロアルキル」は、本明細書では環炭素原子を介して連結された炭素環状非芳香族基を記載するのに使用され得、「シクロアルキルアルキル」は、アルキルリンカーを通して分子に連結された炭素環状非芳香族基を記載するのに使用され得る。
【0129】
同様に、「ヘテロシクリル」は、環構成員として少なくとも1つのヘテロ原子(典型的にはN、OおよびSから選択される)を含み、C(炭素結合)またはN(窒素結合)であり得る、環原子を介して分子に連結された非芳香族環状基を記載するのに使用され得、「ヘテロシクリルアルキル」は、リンカーを通して別の分子に連結される上記の基を記載するのに使用され得る。ヘテロシクリルは、完全に飽和しているか、または部分的に飽和したものであり得るが、非芳香族であり得る。シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクリル基およびヘテロシクリルアルキル基に好適なサイズおよび置換基は、
アルキル基について上記で記載したものと同じである。ヘテロシクリル基は、典型的には環構成員としてN、OおよびSから選択される1つ、2つまたは3つのヘテロ原子を含み、このNまたはSは、複素環系でこれらの原子において通常見られる基により置換され得る。本明細書で用いられる場合、これらの用語はまた、結合している環が芳香族ではない限り、1つまたは2つの二重結合を含む環を包含する。置換されたシクロアルキル基およびヘテロシクリル基はまた、基の結合点が芳香族/ヘテロ芳香族環に対してではなくシクロアルキル環またはヘテロシクリル環に対するものであるという条件で、芳香族環またはヘテロ芳香族環と縮合したシクロアルキル環またはヘテロシクリル環を含む。
【0130】
本明細書で用いられる場合、「アシル」は、カルボニル炭素原子の2つの利用可能な価電子位置の1つで結合したアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアリールアルキルラジカルを含む基を包含し、ヘテロアシルは、カルボニル炭素以外の少なくとも1つの炭素がN、OおよびSから選択されたヘテロ原子により置換された対応する基をいう。
【0131】
アシル基およびヘテロアシル基は、カルボニル炭素原子の空いた価電子を通してそれらが結合している任意の基または分子に結合される。典型的には、それらは、ホルミル、アセチル、ピバロイル、およびベンゾイルを含むC-Cアシル基、およびメトキシアセチル、エトキシカルボニルおよび4-ピリジノイルを含むC-Cヘテロアシル基である。
【0132】
同様に、「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」は、置換または非置換、飽和または不飽和、環状または非環状のリンカーを含む、アルキレンなどの結合基を通してそれらの結合点に結合している芳香族およびヘテロ芳香族環系をいう。典型的には、リンカーはC-Cアルキルである。これらのリンカーはまた、カルボニル基を含み得るため、アシル部分またはヘテロアシル部分と同様にそれらが置換基を提供することを可能にする。アリールアルキル基またはヘテロアリールアルキル基におけるアリール環またはヘテロアリール環は、アリール基について上記で記載したのと同じ置換基により置換され得る。好ましくは、アリールアルキル基は、場合によっては、アリール基について上記で定義された基により置換されていてもよいフェニル環および非置換であるかまたは1つまたは2つのC-Cアルキル基またはヘテロアルキル基で置換されたC-Cアルキレンを含み、このアルキル基またはヘテロアルキル基は、場合によっては、閉環してシクロプロパン、ジオキソランまたはオキサシクロペンタンなどの環を形成し得る。同様に、ヘテロアリールアルキル基は、好ましくは、場合によっては、アリール基において典型的な置換基として上記で記載した基により置換されていてもよいC-C単環状ヘテロアリール基および非置換であるかまたは1つまたは2つのC-Cアルキル基またはヘテロアルキル基で置換されたC-Cアルキレンを含むか、または場合によって置換されていてもよいフェニル環またはC-C単環状ヘテロアリールおよび非置換であるかまたは1つまたは2つのC-Cアルキル基またはヘテロアルキル基で置換されたC-Cヘテロアルキレンを含み、この場合アルキル基またはヘテロアルキル基は、場合によっては、閉環してシクロプロパン、ジオキソランまたはオキサシクロペンタンなどの環を形成し得る。
【0133】
アリールアルキル基またはヘテロアリールアルキル基が場合によっては置換されていてもよいと記載されている場合、置換基は、その基のアルキルもしくはヘテロアルキル部分またはアリールもしくはヘテロアリール部分に存在してもよい。場合によってはアルキルもしくはヘテロアルキル部分に存在してもよい置換基は、アルキル基全般について上記で記載したものと同じであり;アリールもしくはヘテロアリール部分に存在してもよい置換基は、アリール基全般について上記で記載したものと同じである。
【0134】
本明細書で用いられる「アリールアルキル」基は、それらが非置換であればヒドロカルビル基であり、環およびアルキレンまたは同様のリンカーにおける炭素原子の総数により記載される。すなわち、ベンジル基はC7-アリールアルキル基であり、フェニルエチルはC8-アリールアルキルである。
【0135】
上記の「ヘテロアリールアルキル」は、結合基を通して結合されたアリール基を含む部分をいい、少なくともアリール部分の1つの環原子または結合基における1つの原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である点が「アリールアルキル」とは異なる。ヘテロアリールアルキル基は、環およびリンカーを合わせた原子の総数にしたがって本明細書で記載されており、それらには、ヘテロアルキルリンカーを通して結合されたアリール基、アルキレンなどのヒドロカルビルリンカーを通して結合されたヘテロアリール基;およびヘテロアルキルリンカーを通して結合されたヘテロアリール基が含まれる。したがって、例えば、C7-ヘテロアリールアルキルは、ピリジルメチル、フェノキシおよびN-ピロリルメトキシを含むことになる。
【0136】
本明細書で用いられる「アルキレン」は、2価ヒドロカルビル基をいう。アルキレンは2価であるため、一緒に2つの他の基と結合することができる。典型的には、アルキレンは、-(CH-(式中、nは1~8であり、好ましくはnは1~4である)で示されるが、明記されている場合、アルキレンはまた、他の基により置換され得、他の長さでもあり得、空いた価電子が鎖の反対端にある必要はない。
【0137】
一般に、置換基に含まれるアルキル、アルケニル、アルキニル、アシルまたはアリールまたはアリールアルキル基はいずれも、それ自体場合によってはさらなる置換基により置換され得る。これらの置換基について異なる説明がない場合、置換基の性質は、一次置換基それ自体に関して列挙したものと類似している。
【0138】
本明細書で用いられる場合、「アミノ」は-NHで示されるが、アミノが「置換された」または「場合によっては置換されていてもよい」として記載されている場合、この用語は、NR´R”(式中、各R´およびR”は、独立してHであるか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリールまたはアリールアルキル基であり、このアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリールまたはアリールアルキル基はそれぞれ、場合によっては対応する基について適したものとして本明細書で記載された置換基により置換されていてもよい)を包含する;R´基およびR”基およびそれらが結合している窒素原子は、飽和、不飽和または芳香族であり得、環構成員としてN、OおよびSから独立して選択される1~3のヘテロ原子を含み、場合によっては、アルキル基に適したものとして記載された置換基により置換されていてもよい3~8員環を形成するか、またはNR´R”が芳香族基である場合、場合によっては、ヘテロアリール基に典型的なものとして記載された置換基により置換されていてもよい。
【0139】
本明細書で用いられる場合、用語「炭素環」、「カルボシクリル」または「炭素環状」は、環に炭素原子のみを含む環状構造をいうが、用語「複素環」または「複素環状」は、ヘテロ原子を含む環をいう。カルボシクリルは、完全に飽和状態または部分的に飽和状態であり得るが、非芳香族であり得る。例えば、カルボシクリルは、シクロアルキルを包含する。炭素環状構造および複素環状構造は、単環状、2環状または多環状の環系を有する化合物を包含し;かかる系は、芳香族、複素環状および炭素環状の環を混合し得る。混合環系は、記載されている化合物の残りの部分に結合している環に応じて記載される。
【0140】
本明細書で用いられる場合、用語「ヘテロ原子」は、窒素、酸素または硫黄など、炭素または水素ではない原子を全て包含する。鎖または環のバックボーンまたは骨格の一部であるとき、ヘテロ原子は、少なくとも2価でなくてはならず、典型的には、N、O、Pお
よびSから選択されることになる。
【0141】
本明細書で用いられる場合、用語「アルカノイル」は、カルボニル(C=O)基に共有結合したアルキル基をいう。用語「低級アルカノイル」は、アルカノイル基のアルキル部分がC-Cであるアルカノイル基をいう。アルカノイル基のアルキル部分は、場合によっては上記の要領で置換され得る。用語「アルキルカルボニル」も代替的に使用することができる。同様に、用語「アルケニルカルボニル」および「アルキニルカルボニル」は、それぞれ、カルボニル基に結合したアルケニル基またはアルキニル基をいう。
【0142】
本明細書で用いられる場合、用語「アルコキシ」は、酸素原子に共有結合したアルキル基をいい、このアルキル基は、ヒドロキシル基の水素原子を置換するものとして考えられ得る。用語「低級アルコキシ」は、アルコキシ基のアルキル部分がC-Cであるアルコキシ基をいう。アルコキシ基のアルキル部分は、場合によっては上記の要領で置換され得る。本明細書で用いられる場合、用語「ハロアルコキシ」は、アルキル部分が1つ以上のハロ基により置換されたアルコキシ基をいう。
【0143】
本明細書で用いられる場合、用語「スルホ」は、スルホン酸(-SOH)置換基をいう。
【0144】
本明細書で用いられる場合、用語「スルファモイル」は、構造-S(O)NHをもつ置換基をいい、この基のNH部分の窒素は、場合によっては上記の要領で置換され得る。
【0145】
本明細書で用いられる場合、用語「カルボキシル」は、構造-C(O)Hの基をいう。
【0146】
本明細書で用いられる場合、用語「カルバミル」は、構造-C(O)NHの基を指し、この基のNH部分の窒素は、場合によっては上記の要領で置換され得る。
【0147】
本明細書で用いられる場合、用語「モノアルキルアミノアルキル」および「ジアルキルアミノアルキル」は、構造-Alk-NH-Alkおよび-Alk-N(Alk)(Alk)の基を指し、ここでAlk、AlkおよびAlkは、上記のアルキル基を指す。
【0148】
本明細書で用いられる場合、用語「アルキルスルホニル」は、構造-S(O)-Alk(式中、Alkは上記のアルキル基を指す)の基を指す。用語「アルケニルスルホニル」および「アルキニルスルホニル」は、同様にそれぞれアルケニル基およびアルキニル基に共有結合したスルホニル基を指す。用語「アリールスルホニル」は、構造-S(O)-Ar(式中、Arは、上記のアリール基を指す)の基を指す。用語「アリールオキシアルキニルスルホニル」は、構造-S(O)-Alk-O-Arの基を指し、ここでAlkは上記のアルキル基であり、Arは上記のアリール基であるものとする。用語「アリールアルキルスルホニル」は、構造-S(O)-AlkArの基を指し、ここでAlkは上記のアルキル基であり、Arは上記のアリール基であるものとする。
【0149】
本明細書で用いられる場合、用語「アルキルオキシカルボニル」は、アルキル基を含むエステル置換基をいい、この場合カルボニル炭素は分子への結合点である。一例はエトキシカルボニルであり、これはCHCHOC(O)-である。同様に、用語「アルケニルオキシカルボニル」、「アルキニルオキシカルボニル」および「シクロアルキルカルボニル」は、アルケニル基、アルケニル基またはシクロアルキル基をそれぞれ含む同様のエステル置換基を指す。同様に、用語「アリールオキシカルボニル」は、アリール基を含む
エステル置換基を指し、この場合カルボニル炭素は分子への結合点である。同様に、用語「アリールオキシアルキルカルボニル」は、アルキル基を含むエステル置換基を指し、この場合アルキル基はそれ自体アリールオキシ基により置換されている。
【0150】
置換基の他の組み合わせも当技術分野では知られており、例えば、参照によって本明細書に組み込まれるJungらによる米国特許第8344162号に記載されている。例えば、用語「チオカルボニル」および「チオカルボニル」を含む置換基の組み合わせは、その基において二重結合した硫黄が通常の二重結合した酸素を置換しているカルボニル基を含む。用語「アルキリデン」および類似用語は、明記されたように、2つの水素原子が単一炭素原子から除去されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基を包含するもので、前記基は構造の残りの部分と二重結合している。
【0151】
本明細書で開示されている化合物は、生理学的pH範囲または他の範囲で塩として存在し得る。かかる塩類について下記でさらに説明する。一般に、用語「医薬的に許容し得る塩」は、本明細書で記載されている化合物から見出される特定の置換基により異なる、比較的非毒性の酸または塩基により調製される活性化合物の塩を包含するものとされる。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含むとき、塩基付加塩は、かかる化合物の中性形態を、正味そのまま、または好適な不活性溶媒中で、十分な量の所望の塩基と接触させることにより得ることができる。医薬的に許容し得る塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノまたはマグネシウム塩、または類似塩がある。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含むとき、酸付加塩は、かかる化合物の中性形態を、正味そのまま、または好適な不活性溶媒中で、十分な量の所望の酸と接触させることにより得ることができる 医薬的に許容し得る酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸または亜リン酸などの無機酸から誘導される塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸(isbutyric)、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的非毒性の有機酸から誘導される塩がある。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、グルクロン酸やガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge,S.M.ら、“Pharmaceutical Salts”,Journal of Pharmaceutical Science,1977,66,1-19参照)。本発明のある種の特定化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換させ得る塩基性官能基および酸性官能基の両方を含む。
【0152】
したがって、本発明の一態様は、神経膠腫の進行または悪性度を低減させるため化学療法剤により誘発されるDNA突然変異の進行を阻害することにより神経膠腫を処置するために治療有効量のエフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を投与することを含む神経膠腫の処置方法である。エフロルニチンの医薬的に許容し得る塩形態、水和物および溶媒和物ならびにその誘導体、類似体およびプロドラッグは全て、この方法で使用することができる。
【0153】
典型的には、神経膠腫は放射線治療および補助アルキル化剤治療で以前に処置されたもので、再発性/難治性退形成性神経膠腫である。神経膠腫は、IDH1、IDH2、TP53、PTENおよびATRXから成る群から選択される1種以上の遺伝子において突然変異を有し得る。神経膠腫は、メチル化されたMGMTプロモーターを有することがある。
【0154】
エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、単独または神経膠腫の処置に使用される治療有効量の1種以上の慣用的抗新生物薬と一緒に投与され得る。これらの薬剤に
は、限定されるわけではないが、アルキル化剤、代謝拮抗物質、血管新生阻害剤、EGFR阻害剤、白金含有剤、トポイソメラーゼ阻害剤または他のクラスの薬剤が含まれ得る。例えば、限定を意図するものではないが、これらの薬剤には、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)、テモゾロミド、プロカルバジン、プレドニゾン、ビンクリスチン、PCV(ロムスチン、プロカルバジンおよびビンクリスチンの組み合わせ)、カルボプラチン、カルボプラチン+チミジン、カルムスチン+テモゾロミド、エルロチニブ、カルボプラチン+エルロチニブ、クロレタジン、ロムスチン+クロレタジン、イマチニブ、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシ尿素+イマチニブ、イリノテカン、サリドマイド、テモゾロミド+サリドマイド、リロツムマブ、シレンジタイド、シスレチノイン酸、セレコキシブ、シスレチノイン酸+セレコキシブ、エンザスタウリン、シロリムス、エルロチニブ+シロリムス、フェンレチニド、ゲフィチニブ、ラパチニブ、テムシロリムス、チピファルニブ、ボリノスタット、ジアジクオン、メトトレキサート、メルファラン、ビンクリスチンとプレドニゾンとプロカルバジンの組み合わせ、チオグアニン、TPDCV(チオグアニン、プロカルバジン、ジブロモズルシトール、ロムスチン、ビンクリスチン)、窒素マスタードとビンクリスチンとプロカルバジンの組み合わせ、テノポシド、およびカルボプラチン+テノポシドが含まれ得る。他の薬剤および薬剤の組み合わせも当技術分野では知られている。
【0155】
一実施形態において、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、限定される訳ではないが、テモゾロミドなどのアルキル化剤の投与を伴って神経膠腫の突然変異速度を低下させる。
【0156】
エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、単独または上記の1種以上の追加的薬剤と一緒に放射線治療と併用することもできる。
【0157】
さらに、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、単独または上記の1種以上の追加的薬剤と一緒に、上記のポリアミン輸送阻害剤またはポリアミン類似体と併用することもできる。
【0158】
さらに、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、単独または上記の1種以上の追加的薬剤と一緒に、上記のS-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ阻害剤と併用することもできる。
【0159】
エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体はまた、限定されるわけではないが、(1)レチノイド、(2)グリドバクチン、シリンゴリンおよび他のシルバクチン化合物、(3)セレコキシブおよび他のシクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、(4)ベリノイド、(5)スリンダックなどの非ステロイド系抗炎症剤、(5)カスタノスペルミンおよびカスタノスペルミンエステル、(6)1-(4-アミノブチル)アジリジンなどのアジリジニルプトレシン化合物、(7)インターフェロン、(8)アリール置換キシロピラノシド誘導体、(9)血中グルタミン酸レベルを低下させ、脳から血液へのグルタミン酸排出を高める薬剤、(10)キトサンならびにキトサン誘導体および類似体、(11)2,4-ジスルホニルフェニルt-ブチルニトロン、(12)3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、(13)サリドマイド、(14)N-2-ピリジニル-2-ピリジンカルボチオアミド、(15)カンベンダゾール、および(16)ヒストンデメチラーゼ阻害剤などの他の薬剤と一緒に投与することもできる。
【0160】
別の実施形態においては、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体を、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体が血液脳関門を通過する能力を増強する薬剤と一緒に投与する。典型的には、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体が血液脳
関門を通過する能力を増強する薬剤は、
(a)式(D-III):
【0161】
【化18】
【0162】
[式中:(A)Aは、ソマトスタチン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、バソプレシン、アルファインターフェロン、エンドルフィン、ムラミルジペプチドまたはACTH4-9類似体であり、(B)Bは、インスリン、IGF-I、IGF-II、トランスフェリン、カチオン化(塩基性)アルブミンまたはプロラクチンである]
で示される構造のキメラペプチド;または式(D-III)[式中、AとBとの間のジスルフィド共役的架橋は、部分式(D-III(a)):
【0163】
【化19】
【0164】
(式中、架橋は、架橋試薬としてシステアミンおよびEDACを用いて形成される)
で示される架橋により置換されている]で示される構造のキメラペプチド;または式(D-III)[式中、AとBとの間のジスルフィド共役的架橋は、部分式(D-III(b)):
【0165】
【化20】
【0166】
(式中、架橋はグルタルアルデヒドを架橋試薬として用いて形成される)
で示される架橋により置換されている]で示される構造のキメラペプチド;
(b)ビオチン化エフロルニチンまたはその類似体もしくは誘導体に結合させたアビジンまたはアビジン融合タンパク質を含む組成物であって、インスリン、トランスフェリン、抗受容体モノクローナル抗体、カチオン化タンパク質およびレクチンから成る群から選択されるタンパク質を中に含むアビジン-ビオチン薬剤複合体が形成される組成物;
(c)ペグ化されており、エフロルニチンまたはその類似体もしくは誘導体を組み込んでおり、ポリエチレングリコール鎖が少なくとも1つの輸送可能なペプチドまたは標的薬剤にコンジュゲートされている中性リポソーム;
(d)アビジン-ビオチン結合を通してエフロルニチンまたはその類似体もしくは誘導体に結合したヒトインスリン受容体に結合するヒト化ネズミ抗体;ならびに
(e)第一のセグメントおよび第二のセグメント、すなわち:抗体の可変領域への結合後
に抗体-受容体伝達性エンドサイトーシスが行われる細胞の表面にある抗原を認識する抗体の可変領域を含み、場合によっては、さらに抗体の定常領域の少なくとも1つのドメインを含んでいてもよい第一のセグメント;およびアビジン、アビジンムテイン、化学的に修飾されたアビジン誘導体、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテインおよび化学的に修飾されたストレプトアビジン誘導体から成る群から選択されるタンパク質ドメインを含む第二のセグメントを含む融合タンパク質であって、ビオチンへの共有結合によりエフロルニチンまたはその類似体もしくは誘導体に結合している融合タンパク質
から成る群から選択される薬剤である。
【0167】
多数の治療剤を投与するとき、各治療剤は別々に投与され得るか、または2種またはそれより多い治療剤が単一医薬組成物で投与され得る。例えば、3種の治療剤を投与するとき、以下の可能性が存在する。(1)前記3種の治療剤をそれぞれ個々に投与する;この場合、各薬剤は、別々の医薬組成物中で、または薬剤用の医薬組成物を使用せずに薬剤単独として投与され得る。医薬組成物の組成および調製に関するさらなる詳細を下記に提供する。前記実施形態では、0、1、2または3種の異なる医薬組成物を使用することができる。(2)治療剤のうちの2種を単一医薬組成物で一緒に投与し、第3の治療剤を薬剤単独または別々の医薬組成物として別に投与する。(3)3種の治療剤を全て単一医薬組成物中で一緒に投与する。
【0168】
本発明の別の態様は、
(1)治療有効量の上記エフロルニチンまたはエフロルニチンの誘導体もしくは類似体;(2)場合によっては、エフロルニチンまたはエフロルニチンの誘導体もしくは類似体と一緒に使用することができる、治療有効量の少なくとも1種の上記追加的薬剤;および
(3)医薬的に許容し得る担体
を含む、神経膠腫処置用の医薬組成物である。
【0169】
慣用的な医薬的に許容し得る担体は当技術分野では既知であり、限定される訳ではないが、糖、溶媒、増粘剤、乳化剤、希釈剤、甘味料、湿潤剤、有機酸、着色料、香味料、および保存剤がある。
【0170】
一実施形態において、本発明による組成物は、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体が血液脳関門を通過する能力を増強する薬剤をさらに含むことができる。典型的には、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体が血液脳関門を通過する能力を増強する薬剤は、
(a)式(D-III):
【0171】
【化21】
【0172】
[式中:(A)Aは、ソマトスタチン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、バソプレシン、アルファインターフェロン、エンドルフィン、ムラミルジペプチドまたはACTH4-9類似体であり、(B)Bは、インスリン、IGF-I、IGF-II、トランスフェリン、カチオン化(塩基性)アルブミンまたはプロラクチンである]
で示される構造のキメラペプチド;または式(D-III)[式中、AとBとの間のジスルフィド共役的架橋は、部分式(D-III(a)):
【0173】
【化22】
【0174】
(式中、架橋は、架橋試薬としてシステアミンおよびEDACを用いて形成される)
で示される架橋により置換されている]で示される構造のキメラペプチド;または式(D-III)[式中、AとBとの間のジスルフィド共役的架橋は、部分式(D-III(b)):
【0175】
【化23】
【0176】
(式中、架橋はグルタルアルデヒドを架橋試薬として用いて形成される)
で示される架橋により置換されている]で示される構造のキメラペプチド;
(b)ビオチン化エフロルニチンまたはその類似体もしくは誘導体に結合させたアビジンまたはアビジン融合タンパク質を含む組成物であって、インスリン、トランスフェリン、抗受容体モノクローナル抗体、カチオン化タンパク質およびレクチンから成る群から選択されるタンパク質を中に含むアビジン-ビオチン薬剤複合体が形成される組成物;
(c)ペグ化されており、エフロルニチンまたはその類似体もしくは誘導体を組み込んでおり、ポリエチレングリコール鎖が少なくとも1つの輸送可能なペプチドまたは標的薬剤にコンジュゲートされている中性リポソーム;
(d)アビジン-ビオチン結合を通してエフロルニチンまたはその類似体もしくは誘導体に結合したヒトインスリン受容体に結合するヒト化ネズミ抗体;ならびに
(e)第一のセグメントおよび第二のセグメント、すなわち:抗体の可変領域への結合後に抗体-受容体伝達性エンドサイトーシスが行われる細胞の表面にある抗原を認識する抗体の可変領域を含み、場合によっては、さらに抗体の定常領域の少なくとも1つのドメインを含んでいてもよい第一のセグメント;およびアビジン、アビジンムテイン、化学的に修飾されたアビジン誘導体、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテインおよび化学的に修飾されたストレプトアビジン誘導体から成る群から選択されるタンパク質ドメインを含む第二のセグメントを含む融合タンパク質であって、ビオチンへの共有結合によりエフロルニチンまたはその類似体もしくは誘導体に結合している融合タンパク質
から成る群から選択される薬剤である。
【0177】
本発明による医薬組成物は、一実施形態において、プロドラッグを含むことができる。本発明による医薬組成物がプロドラッグを含むとき、化合物のプロドラッグおよび活性代謝産物は、当技術分野で既知の常用的技術を用いて同定され得る。例えば、Bertoliniら、J.Med.Chem.,40,2011-2016(1997);Shan
et al.,J.Pharm.Sci.,86(7),765-767;Bagshawe,Drug Dev.Res.,34,220-230(1995);Bodor,Advances in Drug Res.,13,224-331(1984);Bundgaard,Design of Prodrugs(Elsevier Pr
ess 1985);Larsen,Design and Application of Prodrugs,Drug Design and Development(Krogsgaard-Larsenら編、Harwood Academic Publishers,1991);Dearら、J.Chromatogr.B,748,281-293(2000);Spraulら、J.Pharmaceutical&Biomedical Analysis,10,601-605(1992);およびProxら、Xenobiol.,3,103-112(1992)参照。
【0178】
本発明による医薬組成物中の薬理活性化合物が、十分な酸性の官能基、十分な塩基性の官能基、または十分な酸性および十分な塩基性の官能基を両方有するとき、これらの基は、これに応じて多数の無機塩基または有機塩基、ならびに無機酸および有機酸のいずれとでも反応して医薬的に許容し得る塩を形成することができる。代表的な医薬的に許容し得る塩類には、薬理活性化合物と無機酸もしくは有機酸または無機塩基との反応により調製される塩類、例えば、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオン酸塩、ヘキシン-1,6-ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、およびマンデル酸塩を含む塩類などが含まれる。薬理活性化合物が1つ以上の塩基性官能基を有するとき、所望の医薬的に許容し得る塩は、当技術分野で利用可能な任意の適切な方法、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸による、または酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸などの有機酸、グルクロン酸またはガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸または酒石酸などのアルファ-ヒドロキシ酸、アスパラギン酸またはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸またはコハク酸などの芳香族酸、p-トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸などのスルホン酸などによる遊離塩基の処理により調製され得る。薬理活性化合物が1つ以上の酸性官能基を有する場合、所望の医薬的に許容し得る塩は、当技術分野で利用可能な任意の適切な方法、例えば、無機塩基または有機塩基、例えばアミン(第1級、第2級または第3級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物などによる遊離酸の処理により調製され得る。適切な塩の代表例としては、グリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第1級、第2級および第3級アミン、およびピペリジン、モルホリンおよびピペラジンなどの環状アミンから誘導された有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムから誘導された無機塩がある。
【0179】
固体である薬剤の場合、本発明化合物および塩が種々の結晶または多形形態で存在し得、それらは全て本発明および明記された式の範囲内に含まれるものとすることは、当業者によって理解される。
【0180】
対象における血漿中濃度は、約60μM~約1000μMであり得る。いくつかの実施形態において、血漿中濃度は、約200μM~約800μMであり得る。他の実施形態において、前記濃度は、約300μM~約600μMであり得る。さらに他の実施形態において、血漿中濃度は、約400~約800μMであり得る。別の実施形態において、血漿中濃度は、約0.5μM~約20μM、典型的には1μM~約10μMであり得る。
【0181】
本発明組成物は、医薬組成物の調製についての公知技術を用いて、例えば混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、浮揚、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥などの慣用的技術により製造され得る。医薬組成物は、医薬的に使用され得る、活性化合物の製剤化を容易にする賦形剤および助剤から選択され得る、1種以上の生理学的に許容し得る担体を用いて慣用的方法で製剤化され得る。
【0182】
適正な製剤は、選択された投与経路により異なる。注射の場合、本発明の薬剤は、好ましくはハンクス溶液、リンゲル液または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合し得る緩衝液中、水溶液に製剤化され得る。経粘膜投与の場合、透過すべきバリアに適した浸透剤を製剤に使用する。上記の浸透剤は、当技術分野では公知である。
【0183】
経口投与の場合、化合物は、活性化合物を当技術分野で知られている医薬的に許容し得る担体と合わせることにより容易に製剤化され得る。上記の担体は、処置される患者による経口摂取を目的とした、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、溶液、懸濁液などとしての本発明化合物の製剤化を可能にする。経口用の医薬調製物は、有効成分(薬剤)と混合した固体賦形剤を用い、場合によっては得られた混合物を粉砕し、所望ならば適切な助剤を添加後に顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアとすることにより得られる。好適な賦形剤には、乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む、糖などの充填剤;およびセルロース調製物、例えばトウモロコシでんぷん、小麦でんぷん、米でんぷん、ジャガイモでんぷん、ガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはポリビニルピロリドン(PVP)がある。所望ならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を加えてもよい。
【0184】
糖衣錠コアは、適切なコーティングにより提供される。この目的の場合、濃縮糖溶液が使用され得、これは、場合によっては、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含んでいてもよい。染料または顔料は、識別するため、または異なる組み合わせの活性薬剤の特性を示すため、錠剤または糖衣錠のコーティングに添加され得る。
【0185】
経口的に使用され得る医薬調製物には、ゼラチンでできた押し込み型カプセル剤、ならびに、ゼラチンおよびグリセリンまたはソルビトールなどの可塑剤でできたソフト密閉カプセル剤がある。押し込み型カプセル剤は、乳糖などの充填剤、でんぷんなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、さらに場合によっては安定剤と混合した形で有効成分を含むことができる。ソフトカプセル剤では、有効成分を、脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁させ得る。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与用の製剤は全て、経口投与に適した投薬形態を取るべきである。口腔内投与の場合、組成物は、慣用的方法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態を取り得る。
【0186】
非経口投与用の医薬製剤は、水性の溶液または懸濁液を含むことができる。適切な親油性溶媒または基剤には、ごま油などの脂肪油またはエチルオレエートもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルがある。注射用水性懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘性を高める物質を含み得る。場合によっては、懸濁液はまた、組成物の溶解性もしくは分散性を高めて高濃縮液の調製を可能にする適切な安定剤または調節剤を含んでいてもよく、または懸濁剤または分散剤を含むことができる。経口用の医薬調製物は、薬理活性剤を固体賦形剤と合わせ、
場合によっては得られた混合物を粉砕し、所望ならば適切な助剤を添加後に顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアとすることにより得られる。好適な賦形剤には、特に、乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む、糖などの充填剤;セルロース調製物、例えばトウモロコシでんぷん、小麦でんぷん、米でんぷん、ジャガイモでんぷん、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などがある。所望ならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊調節剤を加えてもよい。
【0187】
安定剤、例えば、クエン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸プロピル、還元剤、アスコルビン酸、ビタミンE、重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、BHA、アセチルシステイン、モノチオグリセロール、フェニル-α-ナフチルアミンまたはレシチンなどの酸化防止剤など、他の成分を使用することができる。また、EDTAなどのキレート剤を使用することもできる。錠剤または丸薬における滑沢剤、着色剤、香味料など、医薬組成物および製剤の領域で慣用的である他の成分も、使用することができる。また、慣用的医薬賦形剤または担体も、使用することができる。医薬賦形剤には、必ずしも限定されるわけではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類または様々なタイプのでんぷん、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコールおよび生理学的適合性がある溶媒が含まれ得る。他の医薬賦形剤も、当技術分野では周知である。代表的な医薬的に許容し得る担体には、限定されるわけではないが、水性および非水性の溶媒、分散媒質、コーティング液、抗菌剤および/または抗真菌剤、等張剤および/または吸収遅延剤などを含む、ありとあらゆる溶媒が含まれる。医薬活性物質についての上記の媒質および/または薬剤の使用は当技術分野では周知である。いずれかの慣用的媒質、担体または薬剤が一有効成分または複数の有効成分と不適合性である場合を除き、本発明による組成物でのそれらの使用が考えられる。補助的有効成分もまた、特に上記記載の組成物中に組み込むことができる。本発明で使用される化合物のいずれかを投与するためには、調製物は、FDA Office of Biologics Standards または薬物を管理する他の規制機関が要求するところの無菌状態、発熱性、全般的安全性、および純度の基準を満たすべきである。
【0188】
鼻腔内投与または吸入投与の場合、本発明による使用のための化合物は、好都合には、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体の使用により、加圧パックまたはネブライザーからのエーロゾル噴霧式の形態で送達される。加圧エーロゾルの場合、用量単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることにより決定され得る。吸入器または吹き入れ器などで使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物と乳糖またはでんぷんなどの適当な粉末基剤との粉末混合物を含む形で製剤化され得る。
【0189】
本化合物は、例えばボーラス注射または連続注入による、注射による非経口投与用に製剤化され得る。注射用製剤は、保存剤を添加した、例えばアンプルまたは多回投与用容器での単位用量形態の体裁を取り得る。本組成物は、油性または水性基剤中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態を取り得、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含み得る。
【0190】
非経口投与用医薬製剤は、水溶性形態での活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性薬剤の懸濁液は、適切な油性注射用懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒または基剤には、ごま油などの脂肪油またはエチルオレエートもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームがある。注射用水性懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘性を高める物質を
含み得る。場合によっては、懸濁液はまた、化合物の溶解性を高めて高濃縮液の調製を可能にする適切な安定剤または薬剤を含んでいてもよい。
【0191】
別法として、有効成分は、使用前に、適切な基剤、例えば滅菌発熱性物質除去蒸留水により構成するための粉末形態であり得る。本化合物はまた、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの慣用的座薬基剤を含む、座薬または停留性浣腸などの直腸用組成物で製剤化され得る。
【0192】
上記の製剤に加えて、本化合物はまた、デポー型調製物として製剤化され得る。上記の長時間作用性製剤は、埋め込み(例えば、皮下的または筋肉内的)または筋肉内注射により投与され得る。すなわち、例えば、本化合物は、適当なポリマー性または疎水性材料(例えば、許容し得る油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂により、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化され得る。
【0193】
医薬組成物はまた、適切な固体相またはゲル相の担体または賦形剤を含んでいてもよい。上記の担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖類、でんぷん、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーがある。
【0194】
医薬組成物は、当技術分野で知られている様々な方法により投与され得る。投与経路および/または方式は、所望の結果により異なる。投与経路によって、薬理活性剤は、1種または複数種の治療剤を酸および薬剤を不活化し得る他の化合物の作用から守る材料で被覆されていてもよい。慣用的薬務を採用して、対象への上記医薬組成物の投与に適した製剤または組成物を提供することができる。限定されるわけではないが、例えば、静脈内投与、非経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与または経口投与など、任意の適切な投与経路を採用することができる。処置される悪性腫瘍または他の疾患、障害または状態の重症度、ならびに処置される対象に影響を及ぼす他の条件によって、医薬組成物の全身的送達または局所的送達のいずれかが処置の過程で使用され得る。上記医薬組成物は、上記医薬組成物で処置することを意図されたのと同じ疾患または病態であり得るか、関連疾患または病態であり得るか、または関連のない疾患または病態でさえあり得る、特定の疾患または病態の処置を意図した追加的治療剤と一緒に投与することができる。
【0195】
上記で詳述したところによると、エフロルニチンおよびその誘導体または類似体は、神経膠腫の処置に、特に神経膠腫がさらに悪性度の高い病態に進行するのを阻害するかまたは遅らせるのに関し有効なものとして報告されている。しかしながら、がんの全ての形態は、悪性腫瘍細胞における突然変異と関連しているため、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、悪性腫瘍細胞における突然変異を阻止することにより、同じく他の悪性腫瘍の進行を阻害するかまたは遅らせるため同様に投与され得る。エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、多くのタイプのがんの進行を遅らせ、多くのタイプのがんにおける突然変異を阻止するのに使用され得るが、特に、エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、神経芽細胞腫を処置するのに使用され得る。エフロルニチンまたはその誘導体もしくは類似体は、p21(waf1/cip1)およびp27kip-1の濃度を高めるが、このことが細胞周期停止の誘因として作用する。上記の所見が該当する腫瘍タイプには、白血病、すい臓がん、神経芽細胞腫、乳がんおよび胃がんが含まれる。上記のことは、以下の参考文献で検討されている:(i)P.M.Bauer et
al.,“Role of p42/p44 Mitogen-Activated-Protein Kinase and p21waf1/cip1 in the Regulation of Vascular Smooth Muscle Cell
Proliferation by Nitric Oxide,”Proc.Nat
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T lymphoblastic Leukemia Cells,”Leuk.Res.24:119-127(2000);(iii)H.Guo et al.,“RhoA Stimulates IEC-6 Cell Proliferation by Increasing Polyamine-Dependent Cdk2 Activity,”Am.J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol.285:G704-713(2003);(iv)L.Li et al.,“JunD Stabilization Results in Inhibition of Normal Intestinal Epithelial Cell Growth through P21 after Polyamine Depletion,”Gastroenterology 123:764-779(2002);(V)M.Li et al.,“Chemoprevention of Mammary Carcinogenesis in a Transgenic Mouse Model by Alpha-Difluoromethylornithine(DFMO)in the Diet Is associated with Decreased Cyclin D1 Activity,”Oncogene 22:2568-2572(2003);(vi)A.Mohammed et al.,“Eflornithine(DFMO)Prevents Progression of
Pancreatic Cancer by Modulating Ornithine Decarboxylase Signaling,”Cancer Prev.Res.7:1198-1209(2014);(vii)T.Nemoto et al.,“p53 Independent G(1)arrest Induced by DL-Alpha-Difluoromethylornithine,”Biochem.Biophys.Res.Commun.280:848-854(2001);(viii)“R.M.Ray et al.,“Polyamine Depletion Arrests Cell Cycle and Induces Inhibitors p21(Waf1/Cip1),p27(Kip1),and p53 in IEC-6 Cells,”Am.J Physiol.276:C684-691(1999);(ix)R.J.Rounbehler et al.,“Targeting Ornithine Decarboxylase Impairs Development of MYCN-Amplified Neuroblastoma,”Cancer Res.69:547-553(2009);(x)J.Singh et al.,“Modulation of Azoxymethane-Induced Mutational Activation of ras Protooncogenes by Chemopreventive Agents in Colon Carcinogenesis,”Carcinogenesis 15:1317-1323(1994);(xi)R.Singh et al.,“Activation of Caspase-3 Activity and Apoptosis in MDA-MB-468 Cells by N(omega)-Hydroxy-L-Arginine,an Inhibitor of Arginase,Is Not Solely Dependent on Reduction in Intracellular Polyamines,”Carcinogenesis 22:1863-1869(2001);(xii)L.Tao et al.,“Altered Expression of c-myc,p16 and p27 in Rat
Colon Tumors and Its Reversal by Short-Term Treatment with Chemopreventive Agents.”Carcinogenesis 23:1447-1454(2002);(x
iii)C.J.Wallick et al.,“Key Role for p27Kip1,Retinoblastoma Protein Rb,and MYCN in Polyamine Inhibitor-Induced G1 Cell Cycle Arrest in MYCN-Amplified Human Neuroblastoma Cells,”Oncogene 24:5606-5618(2005);(xiv)Q.Xiang et al.,“[Apoptotic Induction of Human Lung Carcinoma A549 Cells by DFMO through Fas/FasL Pathway],”Ai Zheng 12:1260-1263(2003);ならびに下記参考文献(9)および(10)
【0196】
以下、実施例により本発明を説明する。この実施例は、説明を目的としたものに過ぎず、本発明の制限を意図したものではない。
【実施例0197】
エフロルニチンの毒性
再発時に処置されたAG患者およびGBM患者の元々の第2相無作為化試験(Levinら、1992)から得たエフロルニチンにより生じる毒性を表1に示す。この試験では、エフロルニチンを、21日間のうちの14日間8時間ごとに3.6g/mの用量で投与した。この用量では、エフロルニチンを投与された患者の13%、16%、3%および1%が、それぞれ1から4の毒性グレードの下痢を訴えた。例外的事例では、1日エフロルニチン投薬量を1日3回から1回の用量を減らして4~6回に分割することで、消化管に対する経口エフロルニチンの浸透圧負荷に起因すると考えられる下痢が有効に軽減されると判明したことが注目された。この試験において、血液毒性は、エフロルニチンの1回用量低減という点でこれをほとんど必要としない非常に許容性の高いものであると思われた。
【0198】
【表1】
【0199】
新たに診断されたAG患者およびGBM患者の補助的、放射線照射後、化学療法についてのエフロルニチンとPCV併用対PCVの第3相試験(7)においてPCVと組み合わせたエフロルニチンにより生じる毒性を表2に要約する(N=500)。本明細書で用いられる場合、用語「毒性」は、副作用の重症度とは関係なく、上記表2で示した副作用のいずれか1つまたは処置経過において起こり得る副作用を指す。この表では、28日間のうち14日間8時間ごとに3.0g/mでのエフロルニチンに起因するかもしれない特異的毒性を要約する。エフロルニチンPCV併用アーム対PCV単独アームにおいて統計学的に有意に高い唯一の有害事象は、下痢であった(p=0.013)。
【0200】
【表2】
【0201】
以下の刊行物は参照によって本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、下記に付した番号によって本明細書で示されている。この刊行物リストにおける任意の刊行物が含ま
れていることは、本明細書に示された任意の刊行物によるものが先行技術であるということの容認としてとらえるべきではない。
1.Metcalf R,Bey P,Danzin C,Jung MJ,Casara P,Vevert JP.Catalytic irreversible inhibition of mammalian ornithine decarboxylase(EC 4.1.1.17)by substrate and analog
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3.Bacchi CJ,Nathan HC,Hutner SH,McCann PP,Sjoerdsma A.Polyamine metabolism:a potential therapeutic target in trypanosomes.Science.Oct 17 1980;210(4467):332-334.4.Shantz LM,Levin VA.Regulation of ornithine decarboxylase during oncogenic transformation:mechanisms and therapeutic potential.Amino Acids.Aug 2007;33(2):213-223.
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glioma and adenocarcinoma cell lines grown in normoxia and hypoxia in monolayer
and three-dimensional cultures.Proteome
Sci.Jan 25 2012;10(1):5.
[発明の効果]
本発明は、本明細書に記載の方法および組成物を含め、神経膠腫、特に低グレード(WHOグレードII)および中グレード(WHOグレードIII)の神経膠腫の新規で有効な処置方法を提供するもので、これらの神経膠腫が高いグレードに進行するのを阻止することができる。本発明の方法および組成物は、退形成性神経膠腫(特に退形成性星細胞腫)が膠芽腫など、より悪性度の高い表現型へ進行するのを防ぐことができる。前記の方法および組成物は、忍容性が良好であり、重大な副作用を生じることもなく、他の抗新生物剤と一緒に使用することができる。
【0202】
本発明による方法は、神経膠腫の処置のための医薬を調製するための産業上の利用可能性を有する。本発明による組成物は、特に神経膠腫の処置のための医薬組成物として産業上の利用可能性を有する。
【0203】
本発明の方法の請求項は、自然の法則の一般的な適用を超えるものである特定の方法工程を提供しており、本方法工程を実践する者が、請求項に記載または包含された自然の法則の特定の適用に加えて、当技術分野における慣用的な既知の工程以外の工程を採用することを必要とするため、請求項に記載された特定の適用に請求の範囲は制限される。状況によっては、これらの請求項は、既存薬物の新たな使用方法を対象とすることもある。
【0204】
本明細書で説明的に記載された本発明は、特には本明細書で開示されていない、何らかの要素や制限が存在しなくても好適に実践され得る。すなわち、例えば、用語「含む」、「包含する」、「含有する」などは、広い範囲で制限を伴わずに解釈される。さらに、本明細書で用いられる用語および表現は、制限のためではなく、記述のための用語として使用されており、示され、記載された任意の将来的均等内容のものまたはその任意の部分を排除する用語および表現の使用は意図されておらず、様々な変更が請求された本発明の範囲内で可能であることが分かる。すなわち、本発明を好ましい実施形態および任意の特徴により具体的に開示したが、本明細書で開示された発明の変更および変形は当業者により再選別され得ること、およびそのような変更および変形も本明細書で開示された発明の範囲内に含まれるとみなされることが理解されるべきである。本発明は、本明細書において広範かつ包括的に記載されている。一般的な開示の範囲内に含まれるより狭い種および亜属の分類もそれぞれ、これらの発明の一部を形成する。この場合、各発明の一般的記述は、削除された材料が明確にそこに存在したかどうかとは関係なく、属から対象物を全て除く但し書きまたは消極的制限と共に含まれる。
【0205】
さらに、本発明の特徴または態様が、マーカッシュグループに関して記載されている場合、当技術分野の教育を受けた者であれば、本発明がまた、それによりマーカッシュグループの何らかの個々の構成員または構成員のサブグループに関して記載されていることを認めるはずである。また、上記の記載は、説明的なものであって、制限的なものを意図していないことも理解される。上記の記載を検討すれば、当業者にとって、多くの実施態様が明白なものとなるはずである。したがって、本発明の範囲は、上記の記載を参照した上でなく決定されるべきであり、添付の請求の範囲を参照して、それらの請求項を題目とする均等内容物の完全な範囲も考慮して決定されるべきである。特許刊行物を含む、全ての論文および参考文献の開示については、参照によって本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テモゾロミドによる治療歴のある患者の神経膠腫を処置するための医薬組成物であって、
(a)治療有効量のエフロルニチンまたは医薬的に許容されるエフロルニチン塩と、
(b)医薬的に許容される担体と、を備え、
前記神経膠腫は、IDH1、IDH2、TP53、PTEN、ATRXからなる群から選択される1以上の遺伝子に突然変異を有していることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物は、前記神経膠腫の進行を遅らせることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記神経膠腫は、退形成星細胞腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記エフロルニチンまたは医薬的に許容されるエフロルニチン塩は、エフロルニチンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記エフロルニチンまたは医薬的に許容されるエフロルニチン塩は、エフロルニチン塩である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記エフロルニチンは、D-エフロルニチンとL-エフロルニチンのラセミ混合物である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記エフロルニチンは、D-エフロルニチンである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記エフロルニチンは、L-エフロルニチンである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物は、経口投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記神経膠腫は、IDH1遺伝子に変異を有している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記神経膠腫は、RB経路およびAKT-mTOR経路に変異を有している、請求項1に記載の医薬組成物。