(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109773
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】分離および電気化学的排除を使用したPFAS処理スキーム
(51)【国際特許分類】
B01D 61/02 20060101AFI20240806BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240806BHJP
B01D 61/08 20060101ALI20240806BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20240806BHJP
B01D 61/46 20060101ALI20240806BHJP
B01D 61/48 20060101ALI20240806BHJP
C02F 1/24 20230101ALI20240806BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240806BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240806BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20240806BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20240806BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240806BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20240806BHJP
【FI】
B01D61/02 500
C02F1/44 F
B01D61/08
B01D61/44 500
B01D61/46 510
B01D61/48
C02F1/24 B
B01D61/58
C02F1/32
C02F1/72 Z
C02F1/72 101
C02F1/469
C02F1/461 101C
C02F9/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083090
(22)【出願日】2024-05-22
(62)【分割の表示】P 2021570190の分割
【原出願日】2020-01-08
(31)【優先権主張番号】62/858,401
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チェン
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ピー デュークス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ケイ モールマン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンシン ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】サヴァース イー ハッジキリアーコウ
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン ジェレミアッセ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】PFASで汚染された水の供給源を処理するためのシステムを提供する。
【解決手段】本システムは、PFASで汚染された水の供給源に流体接続可能な入口、希釈液出口および濃縮液出口を有するPFAS分離ステージと、PFAS分離ステージの下流に位置し、PFAS分離ステージの出口に流体接続された入口を有するPFAS排除ステージと、を含み、PFASで汚染された水の供給源に関してオンサイトでPFASの排除を行うとともに、システムは、PFASの排除率を約99%超に維持する。PFASで汚染された水を処理する方法も提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロアルキル物質(PFAS)で汚染された水の供給源を処理するためのオン
サイトシステムであって、
PFASで汚染された水の前記供給源に流体接続可能な入口、希釈液出口および濃縮液
出口を有するPFAS分離ステージと、
前記PFAS分離ステージの下流に位置し、かつ、前記PFAS分離ステージの出口に
流体接続された入口を有する、PFAS排除ステージと、
を備え、
PFASで汚染された水の前記供給源に関するPFASの排除は、オンサイトで行われ
、前記システムは、約99%を超えるPFASの全体的な排除率を維持するように構成さ
れる、パーフルオロアルキル物質(PFAS)で汚染された水の供給源を処理するための
オンサイトシステム。
【請求項2】
前記システムは、前記PFAS分離ステージの前記希釈液中のPFASの濃度を所定の
閾値未満に維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記所定の閾値は、一兆分の70(70ppt)未満である、請求項2に記載のシステ
ム。
【請求項4】
前記所定の閾値は、12ppt未満である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
硬度除去ステージをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記PFAS分離ステージと前記PFAS排除ステージとの間に向けられた供給を調節
するように構成された制御システムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記PFAS分離ステージの前記希釈液出口の下流に位置するPFASセンサーをさら
に備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記PFAS分離ステージは、1つ以上のイオン交換モジュールを備える、請求項1に
記載のシステム。
【請求項9】
結合PFASを除去してPFAS濃縮液を生成するための前記イオン交換モジュールの
再生をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記再生は、前記イオン交換モジュールをメタノール、水およびNaOHを含む再生溶
液と接触させることを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記PFAS分離ステージは、1つ以上のナノ濾過モジュールを備える、請求項1に記
載のシステム。
【請求項12】
前記1つ以上のナノ濾過モジュールからのPFASを含む濃縮液は、前記1つ以上のナ
ノ濾過モジュールの下流の1つ以上のナノ濾過ダイアフィルトレーションモジュールを通
過することによってそのPFAS濃度を増加させる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つ以上のナノ濾過ダイアフィルトレーションモジュールは、NaClおよび/ま
たはKClの除去を目標とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記PFAS分離ステージは、電気化学的に活性な基板への吸着を伴う、請求項1に記
載のシステム。
【請求項15】
前記電気化学的に活性な基板は、粒状活性炭(GAC)を備える、請求項14に記載の
システム。
【請求項16】
前記GACは、電気化学セル内の電極を構成する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記電気化学セル内の電極は、白金、混合金属酸化物(MMO)でコーティングされた
寸法安定性アノード(DSA)材料、グラファイトまたは鉛/鉛酸化物を含む、請求項1
6に記載のシステム。
【請求項18】
前記電気化学セルは、硫酸塩電解質をさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
イオン交換膜セパレーターをさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記吸着されたPFASは、前記電気化学セルの電気的活性化によって前記電気化学的
に活性な基板から脱着される、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記PFAS分離ステージは、泡分画を伴う、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記PFAS排除ステージは、電気化学的PFAS排除ステージを備える、請求項1に
記載のシステム。
【請求項23】
前記電気化学的PFAS排除ステージは、電気的促進酸化システムを備える、請求項2
2に記載のシステム。
【請求項24】
前記電気的促進酸化システムは、電気化学セルを備える、請求項23に記載のシステム
。
【請求項25】
前記電気化学セルは、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)電極を伴う、請求項24に
記載のシステム。
【請求項26】
前記電気化学セルは、マグネリ相酸化チタン電極を伴う、請求項24に記載のシステム
。
【請求項27】
前記マグネリ相酸化チタン電極は、n=4~10のTinO2n-1を含む、請求項2
6に記載のシステム。
【請求項28】
前記電気化学セルの電極が、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタンまたはDSA材料で
できている、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記電気化学セルは、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩および過塩素酸塩の少なくとも1つを
含む電解質を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項30】
前記PFAS排除ステージは、促進酸化プロセス(AOP)反応器を備える、請求項1
に記載のシステム。
【請求項31】
前記AOPは、UV過硫酸塩処理を伴う、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記AOPは、プラズマ処理を伴う、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
PFASで汚染された水を処理する方法であって、
PFASの第1の濃度で汚染された水の供給源からの汚染水をPFAS分離ステージの
入口に導入するステップと、
前記汚染水を前記PFAS分離ステージで処理して、PFASを実質的に含まない生成
水と前記第1のPFAS濃度よりも高い第2のPFAS濃度を有するPFAS濃縮液とを
生成するステップと、
前記PFAS濃縮液をPFAS排除ステージの入口に導入するステップと、
前記PFAS排除ステージを活性化して、前記PFAS濃縮液中の前記PFASを排除
し、PFASの排除率が、約99%を超えるステップと、を含む、PFASで汚染された
水を処理する方法。
【請求項34】
PFASの前記排除は、汚染水の前記供給源に関してオンサイトで行われる、請求項3
3に記載の方法。
【請求項35】
前記PFAS分離ステージからの前記PFAS濃縮液を処理して、PFASの第3の濃
度を有する濃縮液を生成することをさらに含み、前記第3のPFAS濃度は、前記第2の
PFAS濃度よりも高い、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
PFASの前記第3の濃度を有する前記濃縮液を前記PFAS排除ステージの前記入口
に導入することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記供給源水および/または生成水中の圧力、温度、pH、濃度、流量または全有機炭
素(TOC)レベルを監視することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記PFAS分離ステージは、1つ以上のイオン交換モジュールを備える、請求項33
に記載の方法。
【請求項39】
前記PFAS分離ステージは、1つ以上のナノ濾過モジュールを備える、請求項33に
記載の方法。
【請求項40】
前記PFAS分離ステージは、電気化学的に活性な基板への吸着を伴う、請求項33に
記載の方法。
【請求項41】
前記PFAS分離ステージ泡分画、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記PFAS排除ステージは、電気的促進酸化法を備える、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記電気的促進酸化法は、電気化学セルを備える、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記電気化学セルは、BDD電極を伴う、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記電気化学セルは、マグネリ相酸化チタン電極を伴う、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記電気化学セルは、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩および過塩素酸塩のうちの少なくとも
1つを含む電解質を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記PFAS排除ステージは、AOP反応器を備える、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記AOPは、UV過硫酸塩処理を伴う、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記AOPは、プラズマ処理を伴う、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
水処理システムを改装する方法であって、
PFAS排除ステージを準備することと、
PFAS分離ステージの下流で前記PFAS排除ステージを流体接続することと、を含
む、水処理システムを改装する方法。
【請求項51】
前記PFAS排除ステージは、電気的促進酸化法を備える、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記電気的促進酸化法は、電気化学セルを備える、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記電気化学セルは、BDD電極を伴う、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記電気化学セルは、マグネリ相酸化チタン電極を伴う、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記PFAS排除ステージは、AOP反応器を備える、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記AOPは、UV過硫酸塩処理を伴う、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記AOPは、プラズマ処理を伴う、請求項55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年6月7日に出願された“PFAS Treatment Sch
eme Using Ion Exchange and Electrochemic
al Advanced Oxidation”と題する米国仮特許出願第62/858
,401号に基づく優先権を、米国特許法第119条(e)の下で主張し、その開示全体
は、全ての目的のためにその全体が参照によって本明細書に援用される。
(技術分野)
【0002】
本明細書に開示される態様および実施形態は、概して、水からのパーフルオロアルキル
物質(PFAS)の除去および排除の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
都市廃水、地表水、飲用水および地下水中にさまざまな汚染物質が存在することへの懸
念が高まっている。例えば、全有機炭素(TOC)に関する一般的な懸念の他に、PFA
SおよびPFAS前駆体だけでなく、水中の過塩素酸イオンも、懸念される。
【0004】
PFASは、フッ素、炭素ならびに酸素、窒素および硫黄などのヘテロ原子からなる有
機化合物である。フルオロカーボンの疎水性およびフッ素の極端な電気陰性度は、これら
および類似の化合物に特殊な特性を与える。当初、これらの化合物の多くは、集積回路の
製造においてガスとして使用されていた。これらの分子のオゾン破壊特性は、それらの使
用を制限し、大気への放出を防ぐ方法をもたらした。しかし、フッ素界面活性剤などの他
のPFASはますます人気が高まっている。PFASは、カーペット、室内装飾品、防汚
アパレル、調理器具、紙、包装などの民生品の表面処理/コーティングとして一般的に使
用されており、化学めっき、電解質、潤滑剤などに使用される化学薬品にも見られ得、こ
れは給水に最終的に行きつき得る。さらに、PFASは、水溶性フィルム形成泡(AFF
F)の主要成分として利用されている。AFFFは、世界中の軍および都市の消防訓練場
での消火活動に最適な製品である。AFFFは、石油およびガス精製所においても、火災
訓練と消防演習との両方で広く使用されている。AFFFは、流出した油/燃料を覆い、
その表面を冷却し、そして再点火を防ぐことによって機能する。AFFF中のPFASは
、100を超える米空軍基地を含む、これらの基地および製油所の多くで地下水を汚染し
ている。
【0005】
これらの化合物は、比較的少量で使用されるにも関わらず、環境に容易に放出され、そ
の環境において、その極端な疎水性および同様に自然分解の無視できる速さにより、環境
の持続性および生体内蓄積が生じる。低レベルの生体内蓄積でさえ、人間などの汚染され
た動物に深刻な健康への影響をもたらす可能性があり、若者は特に影響を受けやすいよう
である。これらの化合物が植物および微生物に及ぼす環境への影響は、まだほとんどわか
っていない。それでも、PFASの環境放出を制限するための真剣な取り組みが現在始ま
っている。
【発明の概要】
【0006】
一態様によれば、PFASで汚染された水の供給源を処理するためのオンサイトシステ
ムが提供される。このオンサイトシステムは、PFASで汚染された水の供給源に流体接
続可能な入口、希釈液出口および濃縮液出口を有するPFAS分離ステージと、PFAS
分離ステージの下流に位置しPFAS分離ステージの出口に流体接続された入口を有する
PFAS排除ステージと、を備え得る。システムによるPFASの排除は、PFASで汚
染された水の供給源に関してオンサイトで行われ得る。システムは、約99%を超えるP
FASの全体的な排除率を維持するように構成され得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、システムは、PFAS分離ステージの希釈液中のPFASの
濃度を、所定の閾値未満に維持する。例えば、所定の閾値は、米国環境保護庁の合計生涯
曝露最大基準である一兆分の70(70ppt)未満であり得る。特定の実施形態では、
所定の閾値は、12ppt未満である。
【0008】
さらなる実施形態では、システムは、硬度除去ステージを備える。いくつかの実施形態
では、システムは、PFAS分離ステージとPFAS排除ステージとの間に向けられた供
給を調節するように構成された制御システムを含む。いくつかの実施形態では、システム
は、PFAS分離ステージの希釈液出口の下流に位置するPFASセンサーを備える。
【0009】
特定の実施形態では、PFAS分離ステージは、1つ以上のイオン交換モジュールを備
える。イオン交換モジュールは、再生されて、結合PFASを除去してPFAS濃縮液を
生成し得る。いくつかの実施形態では、その再生は、イオン交換モジュールを、メタノー
ル、水およびNaOHを含む再生溶液と接触させることを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、PFAS分離ステージは、1つ以上のナノ濾過モジュールを
備える。1つ以上のナノ濾過モジュールからのPFASを含む濃縮液は、1つ以上のナノ
濾過モジュールの下流の1つ以上のナノ濾過ダイアフィルトレーションモジュールを通過
することによって、そのPFAS濃度を増加させ得る。いくつかの場合では、1つ以上の
ナノ濾過ダイアフィルトレーションモジュールは、NaClおよび/またはKClの除去
を目標とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、PFAS分離ステージは、電気化学的に活性な基板への吸着
を伴う。電気化学的に活性な基板は、粒状活性炭(GAC)を含み得る。GACは、電気
化学セル内の電極に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、電気化学セル内の電極は
、白金、混合金属酸化物(MMO)でコーティングされた寸法安定性アノード(DSA)
材料、グラファイトまたは鉛/鉛酸化物を含む。さらなる実施形態では、電気化学セルは
、硫酸塩電解質を含む。特定の実施形態では、電気化学セルは、イオン交換膜セパレータ
ーを備える。電気化学的に活性な基板に吸着されたPFASは、電気化学セルの電気的活
性化によって脱着され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、PFAS分離ステージは、泡分画を伴う。
【0013】
いくつかの実施形態では、PFAS排除ステージは、電気化学的PFAS排除ステージ
を備える。例えば、電気化学的PFAS排除ステージは、電気化学セルなどの電気的促進
酸化システムを備え得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)電極
を伴う。
【0015】
特定の実施形態では、電気化学セルは、マグネリ相酸化チタン電極、特に、TinO2
n-1(n=4~10)電極を伴う。例示的な電極は、Ti4O7である。
【0016】
いくつかの実施形態では、電気化学セルの電極は、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタ
ンまたはDSA材料でできている。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、水酸化物
、硫酸塩、硝酸塩および過塩素酸塩のうちの少なくとも1つを含む電解質を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、PFAS排除ステージは、促進酸化プロセス(AOP)反応
器を備える。例えば、AOPは、UV過硫酸塩処理またはプラズマ処理を伴い得る。
【0018】
一態様によれば、PFASで汚染された水を処理する方法が提供される。この方法は、
第1の濃度のPFASで汚染された水の供給源からの汚染水を、PFAS分離ステージの
入口に導入することを含み得る。この方法は、PFAS分離ステージで汚染水を処理して
、PFASを実質的に含まない生成水と第1のPFAS濃度よりも高い第2のPFAS濃
度を有するPFAS濃縮液とを生成することをさらに含み得る。この方法は、加えて、P
FAS濃縮液をPFAS排除ステージの入口に導入することと、PFAS排除ステージを
活性化してPFAS濃縮液中のPFASを排除することと、を含み得る。この方法は、約
99%を超えるPFAS排除率を有し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、PFASの排除は、汚染水の供給源に関してオンサイトで行
われる。
【0020】
さらなる実施形態では、この方法は、PFAS分離ステージからのPFAS濃縮液を処
理して、第3の濃度のPFASを有する濃縮液を生成することを含み得る。第3のPFA
S濃度は、第2のPFAS濃度よりも高い場合があり得る。第3の濃度のPFASを有す
る濃縮液は、PFAS排除ステージの入口に導入され得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、この方法は、供給源水および/または生成水における圧力、
温度、pH、濃度、流量またはTOC)レベルを監視することをさらに含み得る。
【0022】
特定の実施形態では、PFAS分離ステージは、1つ以上のイオン交換モジュールを備
える。いくつかの実施形態では、PFAS分離ステージは、1つ以上のナノ濾過モジュー
ルを備える。いくつかの実施形態では、PFAS分離ステージは、電気化学的に活性な基
板への吸着を伴う。いくつかの実施形態では、PFAS分離ステージは、泡分画を伴う。
【0023】
いくつかの実施形態では、PFAS排除ステージは、電気化学的PFAS排除ステージ
を備える。例えば、電気化学的PFAS排除ステージは、電気化学セルなどの電気的促進
酸化システムを備え得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、BDD電極を伴う。
【0025】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、マグネリ相の酸化チタン電極を伴う。
【0026】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩および過塩素酸
塩のうちの少なくとも1つを含む電解質を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、PFAS排除ステージは、AOP反応器を備える。例えば、
AOPは、UV過硫酸塩処理またはプラズマ処理を伴い得る。
【0028】
別の態様によれば、水処理システムを改装する方法が提供される。この方法は、PFA
S排除ステージを準備し、PFAS分離ステージの下流でPFAS排除ステージを流体接
続することを含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、PFAS排除ステージは、電気化学的PFAS排除ステージ
を備える。例えば、電気化学的PFAS排除ステージは、電気化学セルなどの電気的促進
酸化システムを備え得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、BDD電極を伴う。
【0031】
特定の実施形態では、電気化学セルは、マグネリ相酸化チタン電極を伴う。
【0032】
いくつかの実施形態では、PFAS排除ステージは、AOP反応器を備える。例えば、
AOPは、UV過硫酸塩処理またはプラズマ処理を伴い得る。
【0033】
添付の図面は、原寸に比例して描かれることを意図したものではない。図面においては
、さまざまな図に示される同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表される。
わかりやすくするために、全ての構成要素に全ての図面で標識が付けられているわけでは
ない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】PFASの排除から回収された水が処理水として収集されるPFAS処理システムの流れ図である。挿入した表は、システム内の特定の場所での水流のさまざまな成分のモデル化した濃度を提供する。
【
図2】PFASの排除から回収された水がPFAS分離ステージへの供給のための補給水として使用されるPFAS処理システムの流れ図である。挿入した表は、システム内の特定の場所での水流のさまざまな成分のモデル化した濃度を提供する。
【
図3】高濃度の部分的に酸化されたPFASを除去するように構成されるPFAS処理システムの流れ図である。
【
図4】ナノ濾過がPFAS分離ステージとして使用されるPFAS処理システムの流れ図である。
【
図5】ナノ濾過がPFAS分離ステージとして使用されるPFAS処理システムの流れ図である。挿入した表は、システム内の特定の場所での水流のさまざまな成分のモデル化した濃度を提供する。
【
図6】電気化学セル内においてGAC電極への吸着とGAC電極からのPFASの脱着とを使用して、水の供給源からPFASを分離する方法の流れ図である。
【
図7】PFASの電気化学的排除中に電極の表面で発生する一連の反応を示す図である。
【
図8】水の供給源から分離されたPFASを濃縮することなく、全PFAS濃度とPFOS種の濃度との両方を減少させるのに必要な時間の長さを示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1つ以上の実施形態によれば、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、PFAS
で汚染された水の供給源からのPFASの分離、濃縮および排除に関する。それらの人工
化合物は非常に安定しており、環境中での分解に対して耐性がある。それらはまた、溶解
すると負の電荷を帯びるため、高い水溶性を有し得る。それらは、発展し、防水剤および
保護コーティングとして広く使用された。一部のPFAS化合物は、現在大部分が段階的
に廃止されているが、レベルの上昇は依然として広範囲に及んでいる。例えば、PFAS
で汚染された水は、それらが製造または使用された工業地帯ならびに消防訓練が行われた
飛行場または軍事基地の近くで見つかり得る。PFASは、水または空気の移動によって
遠隔地でも見つかり得る。多くの都市の水道システムは、積極的なテストおよび処理を受
けている。本発明は、処理される負に帯電したおよび/またはフッ素化された化合物のタ
イプに限定されない。
【0036】
いくつかの特定の非限定的な実施形態では、パーフルオロオクタン酸(PFOA)およ
び/またはパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)などの一般的なPFASを水か
ら除去し得る。米国環境保護庁(EPA)は、2016年5月に、PFOSとPFOAと
の合計生涯曝露量が一兆分の70(70ppt)であるという改訂ガイドラインを作成し
た。連邦、州および/または民間団体もまた、関連する規制を発行し得る。例えば、ニュ
ーハンプシャー州は、PFOAについて12ppt、PFOSについて15ppt、パー
フルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)について18ppt、パーフルオロノナン酸
(PFNA)について11pptの地下水最大汚染物質レベル(MCL)を採用している
。いくつかの場合では、本明細書に記載のシステムは、処理水中のPFASの濃度を規制
レベル未満に維持し得る。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、PFASの変換または分解を強化するための濃縮PFA
S流を提供するために、PFASをプロセス流から分離し得る。PFAS流の濃縮により
、電気化学的酸化または光化学的酸化などの既知の方法でPFASを破壊するために必要
なエネルギー消費が削減される。
【0038】
本発明のシステムは、PFASで汚染された水の供給源に流体接続可能な入口、希釈物
出口、濃縮液出口を有するPFAS分離ステージと、PFAS分離ステージの下流に位置
しPFAS分離ステージの出口に流体接続された入口を有するPFAS排除ステージと、
を含む。処理中、PFASで汚染された水の供給源は、PFAS分離ステージの入口に導
入される。PFASは、水から分離され、PFAS富化濃縮液と飲用水および灌漑用水な
どの本来の目的のために排出され得る希釈液とを生成する。本発明のシステムは、PFA
S分離ステージの希釈液中のPFASの濃度を、合衆国、州または民間機関の基準などの
所定の閾値未満に維持し得る。本発明のシステムは、汚染水の供給源からのPFASの分
離および分離されたPFASの排除が水源に関してオンサイトで行われるという点で有利
である。通常、分離されたPFASは濃縮されてから、排除のために別の設備に輸送され
るが、これは危険であり、費用もかかる。さらに、PFASを排除すると、回収可能なF
-イオンおよびHFが生成され、これらは両方とも、ガラスエッチング、金属洗浄などの
工業プロセスや電子機器製造に役立つ。
【0039】
(PFAS分離)
化合物のクラスとしてのPFASは、炭素-フッ素結合を含む非常に安定した化合物で
あるため、処理が非常に困難である。炭素-フッ素結合は、自然界で最も強力な既知の単
結合であり、破壊に対して非常に耐性がある。PFASは、さまざまな成功の度合いで、
いくつかの既知のメカニズムによって汚染水の供給源から除去され得る。水からPFAS
を除去するための従来の活性炭吸着システムおよび方法は、より長いアルキル鎖PFAS
に効果的であることが示されているが、より短いアルキル鎖化合物を処理するとき、より
短い床寿命を有する。いくつかの従来の陰イオン交換樹脂は、より長いアルキル鎖PFA
Sに効果的であることが示されているが、より短いアルキル鎖化合物を処理するとき、よ
り短い床寿命を有する。
【0040】
(イオン交換)
いくつかの実施形態において、汚染水の供給源からのPFASの分離は、陽イオン交換
または陰イオン交換などのイオン交換プロセスを使用して達成され得る。従来の陰イオン
交換処理システムおよび方法は、通常、正に帯電した陰イオン交換樹脂ビーズがPFAS
などの陰イオン汚染物質で汚染された水の流れを受けるリード容器内に配置される、陰イ
オン交換樹脂を利用する。負に帯電した汚染物質は、正に帯電した樹脂ビーズによってト
ラップされ、清浄な水は、リード陰イオン交換容器から同じく陰イオン交換樹脂ビーズを
含有するラグ容器に流れ込む。サンプルタップは、リード交換容器内の陰イオン交換ビー
ズの大部分が汚染物質で飽和した時期を判断するためにしばしば使用される。樹脂陰イオ
ン交換ビーズの飽和が近づくと、流出水タップにおいて汚染物質のレベルが検出される。
これが発生すると、その時点でリード容器はオフラインになり、汚染水は、その時点でリ
ード容器となるラグ容器に流れ続ける。リードラグ容器構成により、常に高レベルの処理
が維持される。
【0041】
上記のように、いくつかの従来の陰イオン交換樹脂を使用して、水からPFASを除去
し得る。陰イオン交換容器内で陰イオン交換ビーズを再生するための多くの既知の方法が
存在する。いくつかの既知の方法は、塩水または苛性溶液で樹脂を洗い流すことに依存す
る。他の既知の方法は、陰イオン交換ビーズにトラップされたPFASの除去を強化する
ために、メタノールまたはエタノールなどの溶媒の添加を含み得る。効果的な樹脂再生は
、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムまたは別の塩を含有する溶液とブレンドされた溶媒
(メタノールやエタノールなど)を樹脂に通すことによって実証されている。しかしなが
ら、そのような方法によって、かなりの費用をかけて処分しなければならない大量の有毒
な再生溶液が生成され得る。また、PFASを濃縮し、廃棄物の体積を減少させるために
、廃棄物再生溶液をさらに処理する必要もある。樹脂の再生により著しい体積の有毒廃棄
物が発生するため、これは重要なステップである。
【0042】
1つ以上の実施形態によれば、PFAS分離ステージは、水からPFASを除去するた
めに、陰イオン交換樹脂などの選択的イオン交換樹脂を有するイオン交換容器を含む。P
FASで汚染された水の供給源は、PFASが選択的陰イオン交換樹脂に結合し、水から
除去されるように、イオン交換を有するPFAS分離ステージの入口に導入される。再生
溶液は、陰イオン交換樹脂からPFASを除去するために定期的に使用され、それによっ
て、陰イオン交換樹脂を再生し、除去されたPFASおよび再生溶液から構成される使用
済み再生溶液を生成する。再生溶液のPFAS濃度は、再生溶液から液体の体積を除去し
て再生溶液の部分的な再利用を可能にすることによって増加し得る。PFAS富化濃度を
有する残留溶液は、PFAS排除ステージを使用するPFAS排除のためにさらに処理さ
れ得る。
【0043】
塩溶液とアルコールとを含む再生溶液は、陰イオン交換樹脂の再生に効果的であること
が実証されている。これらの再生化学で使用される陰イオン系は、例えば、とりわけ、C
l-、OH-、SO4
2-およびNO3
-などから選択され得る。これらのイオンの全て
は、イオン交換樹脂の再生に効果的であるが、除去効率には違いがある。この除去効率の
バランスをとるために、PFAS排除ステージでの陰イオン選択の連鎖効果も存在する。
例えば、塩化物イオン溶液は、イオン交換の再生に頻繁に使用されるが、電気化学セル内
で塩素イオンが優先的に次亜塩素酸塩または塩素酸塩に駆動され、エネルギー消費量およ
びPFASの酸化の非効率性が大幅に増加するため、電気化学PFAS排除システムに影
響を与える。さらに、一部の塩化物は、酸化されて過塩素酸塩になる。これは、環境的に
持続性のある陰イオンであり、さらなる処理が必要である。陰イオン交換樹脂の再生に有
効な濃度の硫酸イオン溶液は、PFASの酸化を抑制する効果を有する。硝酸イオン溶液
および水酸化物イオン溶液はどちらも適しているが、しかしながら、MCL値を比較する
と、硝酸塩は、10ppmの1次MCLを有し、水酸化物は、溶液全体のpHに潜在的な
問題を有するであろう。硫酸イオンは、250ppmの二次MCLを有するため、水酸化
物溶液は、酸化後に硫酸で中和され得る。PFASの再生を効果的にするためには、再生
溶液内に水混和性溶媒が必要となる。本明細書に記載されているように、アルコールはこ
の目的のための有用な溶媒の例であり、メタノールが例示的なアルコールである。
【0044】
再生溶液中の塩化物および硫酸塩濃度は、メタノールを含まないNaOHで再生溶液を
最初にストリッピングすることによって実質的に減少され得る。樹脂をNaOHで最初に
ストリッピングすることによって、他の陰イオンの少なくとも95%超を取り除くことが
可能であり得る。使用済みのNaOH部分は、中和され得、汚染水の供給源に対して補給
水として再利用され得る。その後のメタノールおよびNaOHによるストリッピングは、
他の陰イオンなしでPFASを除去する。いくつかの場合では、最初の再生が再生溶液か
ら陰イオンのかなりの部分をストリッピングしたため、第2の再生は、より低いNaOH
濃度を使用して実行され得る。関連する陰イオンの負担なしにPFAS濃縮液を調製する
と、その後のPFAS濃縮液の処理がより効率的かつ効果的になる。
【0045】
陰イオン系の選択に関係なく、酸化の前にアルコールを除去し、濃縮液中のPFASを
さらに濃縮する必要がある。PFAS濃縮液からのメタノールの除去は、通常、蒸留など
で熱的に達成され得る。いくつかの実施形態によれば、溶液中のPFASを濃縮するため
のメタノールの除去は、耐溶剤性のナノ濾過、ダイアフィルトレーションまたはパーベー
パレーションを用いて達成され得る。再生溶液の一部を回収し、そこに溶解したPFAS
の濃度を増加させるための他の技術は、当技術分野で既知である。
【0046】
イオン交換を使用して水からPFASを除去し、イオン交換樹脂からPFASを脱着す
るための再生溶液を使用し、および残留再生溶液中のPFASの濃度を増加させるために
再生溶液の一部を除去する、水処理のためのシステムを
図1から3に示す。
【0047】
(濾過)
いくつかの実施形態において、汚染水の供給源からのPFASの分離は、膜での濾過な
どの物理的分離プロセスを使用して達成され得る。このような場合、膜は、水を通過させ
ることを可能にするのに十分であるが、PFASを保持および収集する直径の細孔を備え
る。1つ以上の実施形態によれば、PFAS分離ステージは、1つ以上の耐溶剤性ナノ濾
過ステージを含む。本発明のPFAS分離ステージで利用されるナノ濾過ステージの数お
よびナノ濾過膜のタイプは、汚染水の供給源のマトリックスに依存するであろう。一例と
して、ナノ濾過膜は、溶液中の高濃度の全懸濁固体量(TSS)、遊離塩素および特定の
重金属(Al、Mn、Fe、Znなど)に損傷を受けやすい。したがって、PFASで汚
染された水の供給源が高いTSS、遊離塩素および/または重金属を有する場合、PFA
S分離の前に、1つ以上の前処理を使用して過剰なTSS、塩素および/または重金属を
除去するべきである。
【0048】
ナノ濾過の1つ以上のステージの透過液は、PFASを実質的に含まない。ナノ濾過ス
テージの濃縮液は、PFAS富化濃度を有する。本明細書に記載されるように、濃縮液中
のPFASは、エネルギー消費を低減し、後のPFAS排除ステージの有効性を高めるた
めに、さらに富化された濃度を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ濾過PFAS分
離ステージからの濃縮液を別のナノ濾過ダイアフィルトレーションステージの入口に導入
し得、濃縮液からNaClまたはKClなどの過剰な塩を除去し、さらに、このステップ
で得られた濃縮液にPFASを濃縮する。TSS含有量が低い外部水源からの水で構成さ
れたこのステップからの希釈液は、汚染水の供給源の構成水として使用され得る。
【0049】
ナノ濾過ベースのPFAS分離ステージの特定の実施形態によれば、当該ナノ濾過を組
み込んだ本発明のシステムは、化学的沈殿などによる硬度除去のためのステージを含み得
る。硫酸カルシウムまたは硫酸マグネシウム、リン酸塩、炭酸塩などの不溶性アルカリ土
類金属塩によって導入される膜または他の下流プロセス装置の潜在的なスケールまたはフ
ァウリングが懸念される場合は、硬度除去ステージを含める必要があり得る。必要に応じ
た硬度除去ステージは、1つ以上のナノ濾過PFAS分離ステージからのPFAS富化濃
縮液を受け入れるように構成され得る。
【0050】
水からPFASを除去するために1つ以上のナノ濾過ステージを使用して水を処理し、
ナノ濾過ステージからのPFAS富化濃縮液から硬度を除去し、残留溶液中のPFASの
濃度を増加させるためにナノ濾過ダイアフィルトレーションの追加ステージを使用するシ
ステムを
図4および5に示す。
【0051】
(吸着)
いくつかの実施形態において、汚染水の供給源からのPFASの分離は、吸着プロセス
を使用して達成され得、ここで、PFASは、多孔質材料の細孔内に物理的に捕捉される
(すなわち、物理吸着)または濾過媒体上の機能との好ましい化学的相互作用を有する(
すなわち、化学吸着)。1つ以上の実施形態によれば、PFAS分離ステージは、電気化
学的に活性な基板への吸着を含み得る。PFASを吸着するために使用され得る電気化学
的に活性な基板の例は、粒状活性炭(GAC)である。GACへの吸着は、他のPFAS
分離方法と比較して、水からPFASを除去するための低コストのソリューションであり
、これにより、イオン交換容器の有害な再生溶液の大量生成ならびにナノ濾過および逆浸
透(RO)などの膜ベースの分離方法の低い回収率および高いエネルギー消費量など、他
の除去方法に関する既知の問題を潜在的に回避し得る。イオン交換と同様に、GACは吸
着によって汚染水の供給源からPFASを除去する。しかしながら、PFAS排除ステー
ジにGACを採用することは、600°Cを超える温度で焼却することによって達成され
得、これは、エネルギーとコストが非常に高くなる。
【0052】
いくつかの実施形態において、PFASの吸着除去に使用されるGACは、脱プロトン
化されたPFASなどの負に帯電した種を水から除去するその能力を増強するように改変
され得る。例えば、GACは、溶液中の負に帯電したPFASと優先的に相互作用する正
に帯電した界面活性剤でコーティングされ得る。正に帯電した界面活性剤は、セチルトリ
メチルアンモニウムクロリド(CTAC)などの第四級アンモニウムベースの界面活性剤
であり得る。本発明に有用な活性炭および当該活性炭に対して実施され得る改変は、全て
エヴォクア・ウォーター・テクノロジーズ社に帰属する、米国特許第8,932,984
号明細書、米国特許第9,914,110号明細書およびPCT/US2019/046
540に記載されており、これらの各々は、全ての目的のためにその全体が参照によって
本明細書に組み込まれる。
【0053】
本発明において、GACの吸着特性は、電気化学セル内の電極の構成要素として使用す
るのに有利である。GAC電極は、GAC、導体(グラファイトまたはカーボンブラック
など)および適切な結合剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポ
リフッ化ビニリデン(PVDF))を含む。GAC電極が電気化学セルで使用されるとき
、他の電極は、化学的におよび電気化学的に安定な電極、例えば、白金、MMOコーティ
ングDSA材料、グラファイト、Pb/PbO2、当技術分野で既知である他の物であり
得る。特定の実施形態では、陽イオン交換膜が両方のGAC電極の間に埋め込まれている
場合、電気化学セルのカソードおよびアノードの両方は、GAC電極であり得る。
【0054】
GAC電極を使用して汚染水の供給源からPFASを可逆的に吸着および脱着する一般
的なプロセスを
図6に示し、これは3ステップのプロセスとして広く説明され得る。ステ
ップ1においては、PFASで汚染された水の供給源をGAC電極の周りに循環させ、P
FASを電極の表面に吸着させたままにする。ステップ1は、水の供給源のPFAS汚染
レベルが高い場合、バッチモードで実行され得る。あるいは、水の供給源のPFAS汚染
レベルが低い場合、ステップ1は、シングルパスで実行され得る。ステップ2においては
、調製された合成水は、カソードがGAC電極である電気化学セルを通って循環され、イ
オン交換膜は、電極の間に埋め込まれ得る。電圧の印加または流れる電流の反転など、電
気化学セルを活性化すると、GACカソードに吸着したPFASを、電気化学セル内を循
環する合成水を脱着して濃縮することを可能にする。ステップ2の好ましい操作モードは
、バッチモードであり、濃縮PFAS水溶液は、さらなる排除処理のために収集される。
エネルギー消費を低減するために、電気化学セル内を循環する合成水に塩(Na
2SO
4
など)を追加し得、水の導電率を上昇させる。合成水に添加される塩の量は、本明細書で
説明するように、後続の排除ステップ排出規制に依存する。ステップ3は、GAC電極へ
の陽イオンの二重層吸着によるPFAS除去効率の低下を防ぐための、GAC電極のゼロ
電荷への電位バランスステップである。このステップは、PFAS脱着後に回収されたG
AC電極が電荷中性であり、吸着塩がないことを保証する。GAC電極から脱着されたP
FASは、本明細書に記載の方法を使用してさらに濃縮され得るかまたはPFAS排除ス
テージに導入され得る。
【0055】
(泡分画)
いくつかの実施形態では、汚染水の供給源からのPFASの分離は、泡分画を使用して
達成され得、汚染水の供給源で生成された泡が上昇し、水から疎水性分子を除去する。泡
分画は、通常、水槽などの水生環境で、溶解したタンパク質を水から除去するために利用
されてきた。泡分画中に、気泡は汚染された水の容器を通って上昇し、高い電荷を伴う大
きな表面積の空気-水界面を有する泡を形成する。PFAS分子の荷電基は泡の気泡に吸
着し、後で除去され得るPFAS富化表面層を形成する。気泡は、圧縮空気または窒素な
どの任意の適切なガスを使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、泡を形成する
ための気泡は、オゾンなどの酸化性ガスから形成される。本発明に有用な泡分画システム
は当技術分野で既知である。
【0056】
(PFAS排除)
濃縮流を処理してPFAS変換または分解をもたらすための様々な技術を実施し得る。
本明細書に記載のPFAS排除方法を使用する濃縮流からのPFASの排除は、溶液中に
H+およびF-イオンを生成する。
【0057】
(電気化学)
1つ以上の実施形態によれば、PFAS排除ステージは、電気的促進酸化システムを備
える電気化学的PFAS排除ステージを含み得る。電気的促進酸化システムは、水中でP
FASを分解するために使用される電気化学セルを備え得る。電気化学セルは、一般に、
2つの電極、すなわち、カソードおよびアノードを含み得る。参照電極はまた、例えば、
アノードの近くで使用され得る。
【0058】
1つ以上の実施形態によれば、カソードは、様々な材料で構成され得る。環境条件、例
えば、pHレベル、および特定のプロセス要件、例えば、洗浄またはメンテナンスに関連
するものは、カソードの選択に影響を与え得る。いくつかの非限定的な実施形態では、カ
ソードは、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタンまたはDSA材料でできている場合があ
り得る。DSA材料は、コーティングされていない場合もあり得、貴金属または金属酸化
物(PtまたはIrO2など)またはその他でコーティングされる場合もあり得る。
【0059】
1つ以上の実施形態によれば、アノードは、高酸素発生過電圧を特徴とする材料で構成
され得る。過電圧は、一般に、半反応の熱力学的に決定された還元電位と酸化還元事象が
実験的に観察される電位との間の電位差(電圧)に関し得る。この用語は、電気化学セル
の電圧効率に直接関係し得る。
【0060】
1つ以上の実施形態によれば、アノードは、水中での表面反応に対して優先性を示し得
る。水分子は、アノードのさまざまな物理的特性および/または化学組成に基づいて表面
からはじかれ得、一方非極性有機汚染物質は、容易に吸収され得る。これは、表面での直
接酸化反応を促進し得、これは、例えば、PFASの処理に特に有益であり得る。
【0061】
1つ以上の実施形態によれば、アノードは、一般式TinO2n-1(n=4以上10
以下)のマグネリ相酸化チタンで構成され得る。マグネリ相酸化チタンアノードは、他の
アノード材料と比較して、酸素発生を抑制するための優れた性能を備え得る。これにより
、表面でのPFASの直接酸化を可能にする。加えて、同様の過電圧特性を有する他の電
極と比較して、マグネリ相酸化チタンは、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)よりも安
価で、Ti/SnO2よりも堅牢で、Pb/PbO2よりも環境に優しい。PFAS排除
のための当該電極を備えるマグネリ相電極および電気化学セルは、PCT/US2019
/047922に記載されており、その開示は、全ての目的のためにその全体が参照によ
り本明細書に組み込まれる。1つ以上の実施形態によれば、アノードは、BDDで構成さ
れ得る。
【0062】
1つ以上の実施形態によれば、マグネリ相酸化チタンアノードまたはBDDアノードを
電気化学セルで使用され得る。アノードは、様々な形状、例えば、平面または円形に形成
され得る。少なくともいくつかの好ましい実施形態では、アノードは、高活性表面積、細
孔構造および/または細孔分布に関連し得るメッシュまたは泡構造によって特徴付けられ
得る。
【0063】
電気化学的PFAS排除のために選択された支持電解質は、汚染水からPFASを除去
するためのエネルギー消費を最小限に抑えるように選択され得る。表1に示すように、電
解質は、Cl-、SO4
2-、NO3
-、ClO4
-およびOH-イオンのいずれかを
含み得る。表1のエネルギー消費量データは、PFAS、特にPFOAの処理に基づいて
、源水中においてさまざまな電解質を使用することによる効率の範囲を示す範囲として示
されている。表1の電解質の中で、NO3
-およびClO4
-の両方は、PFAS排除に
効果的であるが、廃棄には重大な環境影響がある。PFOAの低減は、支持電解質として
希薄濃度のCl-溶液を採用することによって可能である。しかしながら、実際には、電
極表面で発生する主要な反応は、塩素化および酸素発生である。これらの電極表面反応に
より、溶液中に遊離塩素、塩素酸イオンおよび過塩素酸イオンが生成され、二次汚染の原
因として懸念が生じる。SO4
2-電解質は、PFAS排除に効果的であり、環境への影
響が低い。しかしながら、硫酸塩は、低濃度(20mM未満、好ましくは約5mMのSO
4
2-)でのみ有効である。この濃度範囲は、イオン交換再生プロセスには不十分である
。この結果はまた、電極の表面での強い吸着のために、SO4
2-電解質がOH・の電気
酸化的生成を促進しないことを示唆する文献とも一致する。NaOH電解質のPFAS排
除効率は、NaOH濃度に反比例するが、NaOHは、一般的な電解質の中でバランスの
取れた選択を表している。
【0064】
【0065】
操作中、上昇したPFASレベルを含有するプロセス流は、処理のために電気化学セル
に導入され得る。電気化学セルは、本明細書に記載されるように、マグネリ相酸化チタン
アノードまたはBDDアノードを含み得る。アノード材料は、少なくとも約25%の多孔
性を有し得る。アノード材料は、約100μm~約2mmの範囲の平均細孔サイズを有し
得る。電気化学セルは、本明細書に記載されるような電解質を含み得、電圧は、所望のレ
ベルの処理を提供するために、本明細書に記載されるようにアノードに印加され得る。様
々な前処理および/または後処理ユニット操作もまた、統合され得る。生成流は、追加の
処理のためにさらなるユニット操作に向けられ得るか、使用場所に送られるかまたは他の
方法で排出され得る。電気化学セルの極性は、メンテナンスを容易にするためなど、所望
の場合、定期的に反転され得る。
【0066】
1つ以上の実施形態によれば、
図7に示す式1から5は、BDDまたはマグネリ相酸化
チタン(Ti
nO
2n-1)アノードを用いた電気化学的PFAS除去の基本となるメカ
ニズムを表し得る。反応は、一般に、コルベ型酸化として特徴付けられ得る。反応は、十
分な正の電圧を印加することによって、電極表面でカルボン酸イオンのカルボン酸ラジカ
ルへの直接酸化(式1)から始まる。続いて、カルボキシレートラジカルは、脱炭酸され
てパーフルオロアルキルラジカルとなる(式2)。パーフルオロアルキルラジカルは、電
極表面で陽極的に生成されるヒドロキシル遊離基とカップリングすることによってパーフ
ルオロアルコールに変換され(式3)、これはさらに脱フッ素化されてパーフルオロフッ
化カルボニル(式4)になり、最終的に鎖内の1つの炭素を失うことによって副生成物と
してパーフルオロカルボン酸に加水分解される(式5)。反応1から5は、一般に、PF
ASからの全ての炭素が最終的に無機CO
2、H
+、およびF
-にストリッピングされる
まで繰り返され得る。
【0067】
(光化学的処理)
1つ以上の実施形態によれば、PFAS排除ステージは、PFASの光化学的処理を含
み得る。例えば、紫外線(UV)処理は、PFASの分解に効果的であることが示されて
いる。UV処理は一般に、さまざまな有機種を排除するために酸化塩のUV活性化を利用
する。任意の強力な酸化剤を使用し得る。いくつかの非限定的な実施形態では、過硫酸化
合物を使用し得る。少なくともいくつかの実施形態では、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナ
トリウムおよび/または過硫酸カリウムを使用し得る。他の強力な酸化剤、例えば、オゾ
ンまたは過酸化水素をも使用し得る。汚染水の供給源には、酸化剤を投与し得る。
【0068】
1つ以上の実施形態によれば、酸化剤が投与された汚染水の供給源は、UV光源に曝さ
れ得る。例えば、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、1つ以上のUVランプの
使用を含み得、各々は、電磁スペクトルのUV範囲内の所望の波長で光を放出する。例え
ば、いくつかの実施形態によれば、UVランプは、約180nmから約280nmの範囲
の波長を有し得、いくつかの実施形態では、約185nmから約254nmの範囲の波長
を有し得る。さまざまな態様によると、過硫酸塩と紫外線との組み合わせは、いずれかの
成分を単独で使用するよりも効果的である。
【0069】
有機化合物を除去するためのUV処理は、実施され得るエヴォクアウォーターテクノロ
ジーズ社(ペンシルベニア州、ピッツバーグ)から市販されているVANOX(登録商標
)AOPシステムを含めて、一般的に知られている。全てエヴォクアウォーターテクノロ
ジーズ社に帰属する米国特許8,591,730号明細書、米国特許8,652,336
号明細書、米国特許8,961,798号明細書、米国特許出願公開第2016/020
77813号明細書、米国特許出願公開第2018/0273412号明細書およびPC
T/US2019/051861を含む、いくつかの関連する特許および特許出願の刊行
物を、全ての目的のためにその全体を参照により本明細書に援用する。
【0070】
(プラズマ)
1つ以上の実施形態によれば、PFAS排除ステージは、プラズマ処理を含み得る。プ
ラズマは通常、ガスまたはガスの混合物の存在下で低圧または大気圧の高電圧放電を使用
して生成され、自由電子、部分的にイオン化されたガスイオンおよび完全にイオン化され
たガスイオンを生成する。水生環境における自由電子およびイオン種は、汚染された水の
サンプル中のPFASおよびその他の有機物の分解を引き起こし得る。プラズマによるP
FASの分解は、文献で実証および証明されている。報告によると、プラズマによって生
成された電子は、主にPFASの分解に関与し得るが、ヒドロキシルラジカルなどのプラ
ズマによって生成された二次酸化種は、反応の開始に重要な役割を果たさない。
【0071】
1つ以上の実施形態によれば、1つ以上のセンサーは、PFAS排除ステージの上流お
よび/または下流のPFASのレベルを測定し得る。コントローラは、PFASレベルを
断続的または継続的に監視するために、センサーからの入力を受け取り得る。監視は、オ
ンサイトまたはリモートのいずれかで、リアルタイムにまたはラグを有して行われ得る。
検出されたPFASレベルは、規制当局によって指示されるなどのように、許容できない
と見なされ得る閾値レベルと比較され得る。pH、流量、電圧、温度およびその他の濃度
などの追加の特性は、システム全体のさまざまな相互接続または相互関係センサーによっ
て監視され得る。コントローラは、センサー入力に応答して、様々な操作パラメータ、す
なわち印加電圧を調整するために、1つ以上の制御信号を送信し得る。
【0072】
別の態様によれば、PFASで汚染された水を処理する方法が提供される。この方法は
、第1の濃度のPFASで汚染された水の供給源からの汚染水をPFAS分離ステージの
入口に導入することと、PFAS分離ステージにおいて汚染水を処理してPFASおよび
第1のPFAS濃度よりも高い第2のPFAS濃度を有するPFAS濃縮液を実質的に含
まない生成水を生成することと、を含み得る。この方法は、PFAS濃縮液をPFAS排
除ステージの入口に導入することと、PFAS排除ステージを活性化してPFAS濃縮液
中のPFASを排除することと、をさらに含み得る。PFASの排除率は、約99%超で
あり得る。PFASの排除は、汚染水の供給源に関してオンサイトで行われる。
【0073】
いくつかの実施形態では、PFASで汚染された水を処理する方法は、PFAS分離ス
テージからのPFAS濃縮液を処理して、第3のPFAS濃度を有する濃縮液を生成する
ことを含み得、第3のPFAS濃度は、第2のPFAS濃度より高い。PFASで汚染さ
れた水を処理する方法は、第3の濃度のPFASを有する濃縮液をPFAS排除ステージ
の入口に導入することをさらに含み得る。いくつかの場合では、源水および/または生成
水の圧力、温度、pH、濃度、流量またはTOCレベルなどのプロセス条件が処理中に監
視される。
【0074】
別の態様によれば、本明細書に記載されるような水処理システムを改装する方法が提供
される。この方法は、PFAS排除モジュールを提供し、PFAS分離ステージの下流で
PFAS排除モジュールを流体接続することを含み得る。PFAS分離ステージおよび/
またはPFAS排除ステージは、本明細書に記載のPFAS分離ステージおよび/または
PFAS排除ステージであり得る。例えば、イオン交換、ナノ濾過または電気化学的に活
性な基板への吸着を含むPFAS分離ステージおよび/または電気化学セル、UV過硫酸
塩処理またはプラズマ処理を含むPFAS排除ステージである。
【実施例0075】
これらおよび他の実施形態の機能および利点は、以下の実施例からよりよく理解され得
る。これらの例は、本来例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定するとは見なさ
れない。