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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109807
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】圧力を解放できる包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083922
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2021503791の分割
【原出願日】2019-07-19
(31)【優先権主張番号】1801004382
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(71)【出願人】
【識別番号】518444956
【氏名又は名称】エスシージー・パッケージング・パブリック・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】アードプル,イッチポーン
(72)【発明者】
【氏名】マハジャロエンシリ,ジュサマス
(72)【発明者】
【氏名】ングンナワル,ブンチャード
(72)【発明者】
【氏名】ボラクンピニジ,アディサク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、内部に形成される圧力を解放できる包装体に関する。
【解決手段】包装は、製品を収納するために形成されている容器部と、可撓性フィルム部分であって、上記部分の外面に少なくとも1つの圧力解放設計を備える可撓性フィルム部分とを備えており、圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なるパターンの刻み目を備え、パターンの3つ以上の交差が形成され、少なくとも1つのパターンが閉じた形状のパターンであるようになっていることを特徴とする。また、本発明は、可撓性フィルムのための圧力解放設計に関し、圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なるパターンのマークを備え、パターンの3つ以上の交差が形成され、少なくとも1つのパターンが閉じた形状のパターンであるようになっていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を収納するために形成されている容器部と、
可撓性フィルム部分であって、前記可撓性フィルム部分の外面に少なくとも1つの圧力解放設計を備える、可撓性フィルム部分と、
を備える内部に形成される圧力を解放できる包装体において、
前記圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なるパターンの刻み目を備え、前記パターンの3つ以上の交差が形成され、少なくとも1つの前記パターンが閉じた形状のパターンであるようになっていることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なる閉じた形状のパターンの前記刻み目で形成される、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも1つの閉じた形状のパターンおよび少なくとも1つの開いた形状のパターンの前記刻み目で形成される、請求項1に記載の包装体。
【請求項4】
前記閉じた形状のパターンは、円、半円、楕円、半楕円、尖端付き楕円、尖端付き半楕円、多角形、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項5】
前記開いた形状のパターンは、直線、十字、アスタリスク、曲線、波線、V形、T形、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の包装体。
【請求項6】
前記圧力解放設計は、前記パターンの前記交差が形成され、3~17個の圧力解放箇所を作り出すように、一緒に組み合わされた少なくとも2つの円、楕円、または尖端付き楕円の前記パターンの前記刻み目で形成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項7】
前記圧力解放設計は、前記パターンの前記交差が形成され、3~17個の圧力解放箇所を作り出すように、十字パターンと組み合わされた少なくとも1つの円、楕円、または尖端付き楕円の前記パターンの前記刻み目で形成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項8】
前記パターンの前記刻み目は、前記可撓性フィルム部分の厚さを穿孔しない深さを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項9】
前記パターンの前記刻み目は、前記可撓性フィルム部分の厚さに対して20%から75%までの範囲内の前記可撓性フィルム部分の前記外面から始まる深さを有する、請求項8に記載の包装体。
【請求項10】
前記圧力解放設計は、前記可撓性フィルム部分の最も広い部分の直径に対して、7%から100%まで、または10%から100%まで及ぶ最も広い部分の直径を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項11】
前記パターンの前記刻み目は、前記可撓性フィルム部分の表面にレーザーを使用することによって形成される、請求項1から10のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項12】
前記レーザーは、ファイバレーザーまたはCOレーザーから選択され、好ましくはCOレーザーである、請求項11に記載の包装体。
【請求項13】
前記パターンの前記刻み目は、300nmから17,000nmまで、または9,300nmから10,700nmまで及ぶ波長、1ワットから30ワットまで、または10ワットから20ワットまで及ぶレーザー出力、および、6m/分から720m/分まで、または10m/分から100m/分まで及ぶレーザー走査速度を有するCOレーザーを使用することによって形成される、請求項11または12に記載の包装体。
【請求項14】
前記可撓性フィルム部分は、前記包装体に収容される前記製品と接触する層である内層フィルムと、前記製品と接触しない側面上で前記内層フィルムに積層される外層フィルムとを備える積層フィルムである、請求項1に記載の包装体。
【請求項15】
前記内層フィルムは、ポリオレフィン、または低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレン、またはポリプロピレンホモポリマー、またはポリプロピレン共重合体、またはそれらの組合せで作製される、請求項14に記載の包装体。
【請求項16】
前記外層フィルムは、ポリアミド、または二軸延伸ポリアミド(BOPA)、またはポリエステル、または二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)で作製される、請求項14に記載の包装体。
【請求項17】
前記内層フィルムは、40μmから100μmの範囲内、または40μmから80μmの範囲内の厚さを有する、請求項14または15に記載の包装体。
【請求項18】
前記外層フィルムは、12μmから25μmの範囲内、または12μmから15μmの範囲内の厚さを有する、請求項14または16に記載の包装体。
【請求項19】
前記積層フィルムは、前記パターンの前記刻み目を形成するように外層フィルム側面にCOレーザーを使用することによって形成された前記圧力解放設計を有し、前記COレーザーを使用した後の前記パターンの前記刻み目の領域内の残りの積層フィルムの厚さは、30μmから75μmの範囲内である、請求項14から18のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項20】
密封包装体または電子レンジと共に使用するための加熱可能な密封包装体である、請求項1から19のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項21】
可撓性フィルム製の袋であって、前記袋の外面に前記圧力解放設計を有する袋である、請求項20に記載の包装体。
【請求項22】
トレイ状の容器部と、可撓性フィルムである封止部であって、前記封止部の外面に前記圧力解放設計を有する封止部とを備える、請求項20に記載の包装体。
【請求項23】
製品の真空パックのための、請求項20または21に記載の包装体。
【請求項24】
低温殺菌法または滅菌法によって滅菌を受けることができる前記包装体である、請求項20から23のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項25】
冷蔵または冷凍状態で使用可能である、請求項20から24のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項26】
可撓性フィルムのための圧力解放設計において、前記圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なるパターンの刻み目を備え、前記パターンの3つ以上の交差が形成され、少なくとも1つの前記パターンが閉じた形状のパターンであるようになっていることを特徴とする圧力解放設計。
【請求項27】
一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なる閉じた形状のパターンの前記刻み目で形成される、請求項26に記載の圧力解放設計。
【請求項28】
一緒に組み合わされた少なくとも1つの閉じた形状のパターンおよび少なくとも1つの開いた形状のパターンの前記刻み目で形成される、請求項26に記載の圧力解放設計。
【請求項29】
前記閉じた形状のパターンは、円、半円、楕円、半楕円、尖端付き楕円、尖端付き半楕円、多角形、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項26から28のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項30】
前記開いた形状のパターンは、直線、十字、アスタリスク、曲線、波線、V形、T形、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項28に記載の圧力解放設計。
【請求項31】
前記パターンの前記交差が形成され、3~17個の圧力解放箇所を作り出すように、一緒に組み合わされた少なくとも2つの円、楕円、または尖端付き楕円の前記パターンの前記刻み目で形成される、請求項26から29のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項32】
前記パターンの前記交差が形成され、3~17個の圧力解放箇所を作り出すように、十字パターンと組み合わされた少なくとも1つの円、楕円、または尖端付き楕円の前記パターンの前記刻み目で形成される、請求項26から30のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項33】
前記パターンの前記刻み目は、前記可撓性フィルムの厚さを穿孔しない深さを有する、請求項26から32のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項34】
前記パターンの前記刻み目は、前記可撓性フィルムの厚さに対して、20%から75%までの範囲内の前記可撓性フィルムの表面から始まる深さを有する、請求項33に記載の圧力解放設計。
【請求項35】
前記可撓性フィルムの最も広い部分の直径に対して、7%から100%まで、または10%から100%までの範囲内に最も広い部分の直径を有する、請求項26から34のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項36】
前記パターンの前記刻み目は、前記可撓性フィルムの表面にレーザーを使用することによって形成される、請求項26から35のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項37】
前記レーザーは、ファイバレーザーまたはCOレーザーから選択され、具体的にはCOレーザーが選択される、請求項36に記載の圧力解放設計。
【請求項38】
前記パターンの前記刻み目は、300nmから17,000nmまで、または9,300nmから10,700nmまで及ぶ波長、1ワットから30ワットまで、または10ワットから20ワットまで及ぶレーザー出力、および、6m/分から720m/分まで、または10m/分から100m/分まで及ぶレーザー走査速度を有するCOレーザーを使用することによって形成される、請求項36または37に記載の圧力解放設計。
【請求項39】
前記可撓性フィルムは、包装体を作製するための積層フィルムであり、前記積層フィルムは、前記包装体に収容される製品と接触する層である内層フィルムと、前記製品と接触しない側面上で前記内層フィルムに積層される外層フィルムとを備える、請求項26に記載の圧力解放設計。
【請求項40】
前記内層フィルムは、ポリオレフィン、または低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレン、またはポリプロピレンホモポリマー、またはポリプロピレン共重合体、またはそれらの組合せで作製される、請求項39に記載の圧力解放設計。
【請求項41】
前記外層フィルムは、ポリアミド、または二軸延伸ポリアミド(BOPA)、またはポリエステル、または二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)で作製される、請求項39に記載の圧力解放設計。
【請求項42】
前記内層フィルムは、40μmから100μmの範囲内、または40μmから80μmの範囲内の厚さを有する、請求項39または40に記載の圧力解放設計。
【請求項43】
前記外層フィルムは、12μmから25μmの範囲内、または12μmから15μmの範囲内の厚さを有する、請求項39または41に記載の圧力解放設計。
【請求項44】
前記パターンの前記刻み目を形成するように外層フィルム側面にCOレーザーを使用することによって形成され、前記COレーザーを使用した後の前記パターンの前記刻み目の領域内の残りの積層フィルムの厚さは、30μmから75μmの範囲内である、請求項39から43のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項45】
密封包装体または電子レンジと共に使用するための加熱可能な密封包装体と共に使用するための、請求項26から44のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項46】
前記密封包装体は、可撓性フィルム製の袋であって、前記袋の外面に前記圧力解放設計を有する袋である、請求項45に記載の圧力解放設計。
【請求項47】
前記密封包装体は、トレイ状の容器部と、前記可撓性フィルムである封止部であって、前記封止部の外面に前記圧力解放設計を有する封止部とを備える、請求項45に記載の圧力解放設計。
【請求項48】
前記密封包装体は、製品の真空パックのために使用される、請求項45または46に記載の圧力解放設計。
【請求項49】
前記密封包装体は、低温殺菌法または滅菌法によって滅菌を受けることができる、請求項45から48のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【請求項50】
前記密封包装体は、冷蔵または冷凍状態で使用可能である、請求項45から49のいずれか1項に記載の圧力解放設計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧力を解放できる包装体に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
低温殺菌法または滅菌法によって滅菌を受けることができる後で冷凍または冷蔵され得るおよび電子レンジ内で加熱され得る密封された食品包装体などの特殊な包装体が、現在人気を得ている。しかしながら、この包装体は密封包装体であるので、包装体は、包装体の内側で発生する圧力およびスチームが外側に解放されるように電子レンジ内で加熱する前に事前開封、切断、または穿孔を必要とする。そのような動作によって内側の食品は水と栄養価を失い、これにより食品は不味そうに見えるとともに、使用者にとって不都合となる。
【0003】
したがって、包装体を穿孔した後にそれに装着される弁の使用などの様々な技法を使用することによって、その中に形成される圧力またはスチームを自動的に解放することができる包装体を開発する努力が存在する。これは、弁を取り付ける製造プロセスに使用される機械の調整を必要とし、このため製造コストがより高くなる。包装体の封止マーク(sealing mark)をブロックするために化学物質でコーティングすることによってまたは剥離可能なテープを使用することによって容易に開封するために弱くなった封止エリアを作製したとき、包装体の内側に圧力が形成されると、封止マーク領域が裂け、圧力およびスチームの解放箇所を作り出す。しかしながら、そのような方法を使用すると、圧力およびスチームの解放箇所のサイズが通常大きいので、食品または水が包装体から溢れ出て電子レンジを汚す可能性がある。
【0004】
圧力およびスチームを自動的に解放するためにフィルム包装体と共に使用するように開発された別の技法は、穿孔によって線、穴、または様々な設計を形成することにより外層フィルムの表面の一部の設計領域内で厚さを減少させるためにレーザー出力を使用するものである。食品が加熱され、高圧のスチームが形成されるとき、レーザーにより穿孔された刻み目は押され、引きちぎれる。そのような方法は、実行が容易であり、前述の方法よりも低い製造コストしか必要としない。
【0005】
圧力解放設計(pressure-releasing design)を作り出すためにレーザー印加を受ける包装体を開示する文献の例は、以下の通りである。
【0006】
米国特許出願公開第2015/210463(A1)号は、外層フィルムのある部分を取り除くためにレーザーによって作製された脆弱な加工部を含む外層フィルムに熱シールおよび積層され得る熱可塑性樹脂製の内層フィルムを備えた積層フィルム包装体を開示する。レーザーの刻み目は、幅150μmおよび長さ40mmの直線などの様々なパターンであってよい。脆弱な加工部は、2.0GPa未満のヤング率を有する。加熱している間に圧力が包装体の内側で発生するとき、多くの小さい通気穴が、脆弱な加工部に形成される。
【0007】
米国特許第9505543(B2)号は、食料製品を中に収容した冷凍可能なおよび電子レンジ加熱可能な包装体などの密封包装体の作製を開示する。そのような包装体は、直線のパターン、あるいは円、楕円、三角形、または正方形等などの他のパターンであり得るCOレーザーによって形成された圧力解放システムを有する。レーザーパターンのスパンは、約5~25μmのレーザー印加により残されたフィルム厚さを有する内側領域スパンのサイズの1%から50%までである。
【0008】
米国特許出願公開第2008/260917(A1)号は、バリア層を形成するように基層に配設された第1の面および第2の面を有するポリマーの基層である基層を備える熱シール可能な複合体フィルムを開示する。基層は、約0.05~1.5mmの直径を有している圧力を解放するための穿孔を有する。この穿孔は、レーザー穿孔、ホットニードル穿孔、またはガスフレーム穿孔を使用して作製され得る。この文献に開示された穿孔は、例えば、V形、U形、T形、I形、およびX形などを有する。
【0009】
しかしながら、上記文献に開示されたレーザーを使用することによって作製される圧力解放設計は、まだいくつかの欠点を有する。例えば、円、三角形、または正方形などの閉じた形状のレーザー設計の場合、レーザー刻み目の個数またはサイズがとても小さければ、圧力およびスチームは、適時に解放することができず、積層フィルムの層間剥離、包装体への損傷、または包装体に収容される食品の汚染という結果になる。また、V形、I形、またはX形などの開いた形状のレーザー設計の場合、広範囲の引裂きが起こり得る可能性があり、すなわち、包装体の引裂きが、レーザー刻み目の端から広がる可能性があり、結果として上述した欠点になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/210463号明細書
【特許文献2】米国特許第9505543号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/260917号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、中に形成される圧力を有効に自動的に解放することができる圧力解放設計、すなわち、圧力解放箇所を形成することができ、水蒸気圧を適時に解放することができ、包装体に損傷を与えず、圧力解放設計の広範囲の引裂きを起こさない圧力解放設計を有する包装体を提供することである。より詳細には、本発明は、後で冷凍または冷蔵および電子レンジ内で加熱することができ、低温殺菌法または滅菌法によって滅菌することができ、加熱すると自動的に形成される圧力解放設計を備える真空包装体として使用することができる密封包装体を提供する。
【0012】
本発明の別の目的は、包装体に適用するための可撓性フィルムのための圧力解放設計を提供すること、特に、後で冷凍または冷蔵および電子レンジ内で加熱することができるとともに、低温殺菌法または滅菌法によって滅菌されている密封包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の実施形態は、内部に形成される圧力を解放できる包装体に関する。包装体は、製品を収納するために形成されている容器部と、可撓性フィルム部分であって、上記部分の外面に少なくとも1つの圧力解放設計を備える、可撓性フィルム部分とを備え、圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なるパターンの刻み目(score)を備え、パターンの3つ以上の交差が形成され、少なくとも1つのパターンが閉じた形状のパターンであるようになっていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の実施形態は、可撓性フィルムのための圧力解放設計に関し、圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なるパターンの刻み目を備え、パターンの3つ以上の交差が形成され、少なくとも1つのパターンが閉じた形状のパターンであるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による圧力解放設計を有する包装体は、それが圧力およびスチームを自動的に解放することができるので容易かつ便利に使用され得る。したがって包装体は、電子レンジ内で加熱する前に圧力解放開口部を作り出すために事前開封、切断、または穿孔を必要としない。また、包装体の層間剥離は、包装体が積層フィルムで作製される場合には生じない。封止マーク領域または他の領域は、破裂しない。圧力解放設計の広範囲の引裂きは、包装体が使用されている間、例えば、電子レンジ内で加熱されている間、生じない。使用者は、食品などの包装体内の内容物がその栄養価および清潔を保持し、包装体の内側の食品が汚染されないことを確実にされ得る。また、食品は、あまりに多くの水を失わない。したがって、食品は、その元の味および見た目の美味しさを保持し、例えば、肌触りは柔らかく、乾燥したり硬くなったりせず、新たに調理された食品のようである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の例示的実施形態によるトレイ状の包装体および封止部を示す図である。
図2】本発明の例示的実施形態による縦置き型袋である包装体を示す図である。
図3】本発明の例示的実施形態による中央封止式袋である包装体を示す図である。
図4】本発明による圧力解放設計の例を示す図である。
図5】本発明による包装体上の圧力解放設計の様々な位置配置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に示された任意の態様は、別段示されていない限り、本発明の他の態様への適用も包含するものとする。
【0018】
本明細書に使用される科学技術用語は、別段定められていない限り、当業者によって理解されている定義を有する。
【0019】
本発明全体を通じて、用語「約」は、本明細書に示されたまたは提示された任意の値が変化してもよいまたはずれてもよいことを示しために使用される。そのような変化またはずれは、この値を決定するために使用される設備または方法の誤差の結果であり得る。
【0020】
用語「からなる」、「備える」、「有する」、および「含む」は、オープンエンドの動詞である。例えば、1つまたは複数の構成要素またはステップ「からなる」、「備える」、「有する」、または「含む」任意の方法は、1つまたは複数の構成要素またはステップのみに限定されず、言及されていない構成要素またはステップも含む。
【0021】
本明細書で言及される任意のツール、設備、方法、材料、または化学物質は、別段示されていない限り、当業者によって一般的に使用または実施されるツール、設備、方法、材料、または化学物質を意味する。
【0022】
全ての開示された構成要素および/または方法、ならびに本発明の特許請求の範囲は、特許請求の範囲に特に示されていなくても、本発明からかなり大きく異なる試みを行うことなく要素になされる任意の行為、実施、修正、または変更から得られる本発明の態様を含むとともに、当業者の見解により本発明の態様に類似する特性、有用性、および効果を有する対象を得ることが意図される。したがって、当業者に明らかな何らかのわずかな修正または変更を含む本発明の態様に均等または類似するオブジェクトも、本発明の趣旨、範囲、および概念にあるとみなされるべきである。
【0023】
(定義)
用語「圧力解放」は、本明細書に使用されるとき、包装体の内側の圧力を生成する加熱または任意の力を受けると、中に形成される圧力、空気、および/またはスチームの自動解放機構を作り出すことができる包装体の態様、ならびに前もって計算または決定されたように適切な範囲内にあるように圧力を制御することができる包装体の態様を意味する。
【0024】
用語「可撓性フィルム」は、本明細書に使用されるとき、加熱されるとおよび/または圧力を含む力を受けると膨張特性を有するとともに、強度などの有利な特性、ならびにガス透過を防ぐ能力、印刷をサポートする能力、および熱シールされる能力を有するプラスチックフィルムを意味する。したがって、包装体は、可撓性包装体を作り出すための積層プロセスなどにおける適用に適している。
【0025】
用語「閉じた形状」は、本明細書に使用されるとき、閉じたエリアを取り囲む周辺を形成する端部で接続する直線および/または曲線によって定められる明確な境界またはエリアを有する形状を意味する。本発明による閉じた形状の例は、円、半円、楕円、半楕円、尖端付き楕円(pointed-end ellipse)、尖端付き半楕円(pointed-end semi-ellipse)、および三角形、正方形、五角形、六角形等などの多角形である。
【0026】
用語「開いた形状」は、本明細書に使用されるとき、端部で接続しない直線および/または曲線によって定められる不明確な境界またはエリアを有する形状を意味する。本発明による開いた形状の例は、直線、十字(cross)、アスタリスク、曲線、波線、V形、T形などである。
【0027】
次に、本発明は、例示的な実験および添付図面を参照してより詳細に説明されるが、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0028】
本発明による包装体は、中央で封止されている袋である中央封止式袋、製品を詰め込んだ後に密封される製品を詰め込むために3つの封止された側部および1つの開いた側部を有する袋である三方封止袋、袋が立っていることができるように底部が折り畳まれていること(本明細書で「折畳み部」と呼ばれる)を除いて三方封止袋に類似している縦置き型袋、あるいは製品を収めるとともに可撓性フィルムで密閉される容器である包装体などの市場でよく使用されるような異なる形態であってもよい。
【0029】
図1図3は、本発明による包装体の例示的実施形態を示す。
【0030】
図1は、食品またはスナックなどの製品を収納するためのトレイである容器部1と、容器部1を封止するための可撓性フィルム部分である封止部2と、封止部2の外面に形成される圧力解放設計3とを備える包装体を示す。トレイ状の実施形態に加えて、容器部1は、板、箱、ボウル、またはグラス等などの他の非限定の形状を得るためにプラスチックまたは任意の材料を成型することによって形成することも可能である。
【0031】
図2は、製品を収納するとともにこの袋の外面に圧力解放設計3を備えるための可撓性フィルム製の縦置き型袋である包装体を示す。
【0032】
図3は、製品を収納し、中央で封止される可撓性フィルム製の中央封止式袋であり、この袋の外面に圧力解放設計3を備える包装体を示す。
【0033】
本発明によれば、圧力解放設計3は、本発明による好ましい例である圧力解放設計4.1から4.8を示す図4に示されるように、パターンの3つ以上の交差が形成され、少なくとも1つの上記パターンが閉じた形状のパターンであるように一緒に組み合わされる少なくとも2つの同一または異なるパターンの刻み目を備える。
【0034】
本発明の好ましい態様では、圧力解放設計3は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なる閉じた形状のパターン刻み目で形成される。一例として、閉じた形状のパターンは、例えば、図4の設計4.1、4.2、および4.8に示されるように、円、半円、楕円、半楕円、尖端付き楕円、尖端付き半楕円、多角形、またはそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0035】
本発明の別の好ましい態様では、圧力解放設計3は、一緒に組み合わされた少なくとも1つの閉じた形状のパターンおよび少なくとも1つの開いた形状のパターン刻み目で形成される。一例として、開いた形状のパターンは、例えば、図4の設計4.3、4.4、4.5、4.6、および4.7に示されるように、直線、十字、アスタリスク、曲線、波線、V形、T形、またはそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0036】
本発明の特定の実施形態では、圧力解放設計3は、パターンの交差が形成され、3~17個の圧力解放箇所を作り出すように一緒に組み合わされた少なくとも2つの円もしくは楕円または尖端付き楕円のパターンの刻み目で形成されてもよい。
【0037】
本発明の別の特定の実施形態では、圧力解放設計3は、パターンの交差が形成され、3~17個の圧力解放箇所を作り出すように十字パターンと組み合わされた少なくとも1つの円、楕円、または尖端付き楕円のパターンの刻み目で形成されてもよい。
【0038】
圧力解放設計3は、封止部分の外面上でまたは可撓性フィルム部分のどちらかの側で1つの位置、2つの位置、または多くの位置に設けられてもよい。
【0039】
本発明によれば、圧力解放設計3は、可撓性フィルム部分の最も広い部分の直径に対して7から100%まで、好ましくは10から100%まで及ぶ最も広い部分の直径を有するべきである。好ましい実施形態によれば、パターンの刻み目は、可撓性フィルム部分の厚さを穿孔しない深さを有するとともに、可撓性フィルム部分の厚さに対して20から75%までの範囲内の可撓性フィルム部分の外面から始まる深さを有する。
【0040】
本発明によれば、パターンの刻み目は、可撓性フィルム部分の表面にレーザーを使用することによって形成することができる。レーザーは、ファイバレーザーまたはCOレーザー、好ましくはCOレーザーから選択される。
【0041】
本発明の特定の態様では、パターンの刻み目は、300から17,000nmまで、好ましくは9,300から10,700nmまで及ぶ波長、1から30ワットまで、好ましくは10から20ワットまで及ぶレーザー出力、および6から720m/分まで、好ましくは10から100m/分まで及ぶレーザー走査速度を有するCOレーザーを使用することによって形成される。
【0042】
本発明による可撓性フィルム部分の好ましい例は、包装体に収容される製品と接触する層である内層フィルムと、製品と接触しない側面上で内層フィルムに積層される外層フィルムとを備える積層フィルムである。
【0043】
一例として、内層フィルムは、ポリオレフィン、好ましくは低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレン共重合体、またはそれらの組合せで作製される。外層フィルムは、ポリアミド、好ましくは二軸延伸ポリアミド(BOPA:Biaxially-Oriented PolyAmide)、またはポリエステル、好ましくは二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET:Biaxially-Oriented PolyEthylene Terephthalate)で作製される。
【0044】
内層フィルムは、40から100μmの範囲内、好ましくは40から80μmの範囲内の厚さを有するべきである。外層フィルムは、12から25μmの範囲内、好ましくは12から15μmの範囲内の厚さを有するべきである。
【0045】
本発明による圧力解放設計は、パターンの刻み目を形成するために外層フィルム側でCOレーザーを使用することによって形成されてもよく、COレーザーを使用した後のパターンの刻み目領域内の残りの積層フィルムの厚さは、30から75μmの範囲内である。
【0046】
本発明による包装体は、製品の真空パックにおいて電子レンジで使用するための密封包装体または加熱可能な密封包装体として、および/または低温殺菌法または滅菌法によって滅菌を受けることができる包装体として、および/または冷蔵または冷凍状態で使用され得る包装体として使用するのに適している。
【0047】
本発明の第2の実施形態は、前述の態様を有する可撓性フィルムのための圧力解放設計にも関する。
【0048】
(実験)
(サンプル包装体)
圧力解放効率試験および様々な応用に使用されるサンプル包装体を形成する方法は、試験されるサンプル包装体の態様に応じていくつかのやり方で実施されてもよい。以下は、例示である詳細である。
【0049】
試験された包装体が中央封止式袋である場合、厚さが15μmであるナイロン製の外層フィルムと、厚さが60~80μmである直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)製の内層フィルムとを備えるサンプルフィルムは、フィルムの外面に異なるサイズおよび形状を有する圧力解放設計を形成するためにCOレーザーマーカによって生成されるレーザー印加を受ける。フィルムは、漏れがないことを確実にするために検査される。次いで、圧力解放設計を有するフィルムは、袋包装体として形成される。50mlの水を含むスポンジが、袋の中に置かれる。次いで、スポンジを収容する袋は、それが密封されるように加熱される。
【0050】
試験された包装体が縦置き型袋および三方封止袋である場合、厚さが15μmであるナイロン製の外層フィルムと、厚さが60~80μmであるLLDPE製の内層フィルムとを備えるサンプルフィルムは、袋を作製するために形成プロセスを受ける。次いで、袋は、袋の外面に異なるサイズおよび形状を有する圧力解放設計を形成するためにCOレーザーマーカによって生成されるレーザー印加を受ける。袋は、漏れがないことを確実にするために検査される。50mlの水を含むスポンジが、袋の中に置かれる。次いで、スポンジを収容する袋は、それが密封されるように加熱される。
【0051】
試験された包装体が圧力解放設計を備える可撓性フィルム製の封止部を有するトレイである場合、厚さが15μmであるナイロン製の外層フィルムと、厚さが60~80μmであるLLDPE製の内層フィルムとを備えるサンプルフィルムは、フィルムの外面に異なるサイズおよび形状を有する圧力解放設計を形成するためにCOレーザーマーカによって生成されるレーザー印加を受ける。フィルムは、漏れがないことを確実にするために検査される。次いで、圧力解放設計を有するフィルムは、封止温度190℃、3秒間の1バールの圧力でMultivacのトレーシーラーT100を用いて、中に50mlの水を含むスポンジを有する包装体のトレイの蓋としてそれを封止するために加熱される。
【0052】
10~30個のサンプルなどの上で用意された多数の様々なサンプル包装体は、キーエンス製のVHX-5000顕微鏡を200倍の倍率で用いることによって漏れについて検査され、レーザー印加後の残りの積層フィルムの厚さについて測定され、パナソニック製のNE-1753の電子レンジ内で、60秒間1300ワットで加熱することによって圧力解放について試験される。
【0053】
(包装体の圧力解放効率の評価)
圧力解放効率の評価において検討されるべき3つの重要なファクタは、以下の通りである。
1.包装体の圧力解放:試験結果は、以下の通りに基準を用いて2つのセクションに分類される。
- 「良好な圧力解放」、これは、包装体が圧力解放箇所を形成し、水蒸気圧を適時に解放することができる場合であり、これは包装体の外観から見ることができ、例えば、袋または封止部は、外観を加熱する前のように密閉のままである(結果は、試験される包装体の総数に対する良好な圧力解放を伴う包装体の個数の割合で報告される)、
- 「不良な圧力解放」、これは、包装体が圧力解放箇所を形成することができるが、包装体の内側の増加する圧力を適時に解放できない場合であり、形成される圧力解放箇所があまりに小さいので、包装体に作用し、適時に解放できない過度の圧力という結果になる。したがって、フィルムは、層間剥離または広範囲の引裂きが圧力解放設計の領域、または包装体の任意の他の領域内で生じ得るようにさらに延ばされる。
2.層間剥離:積層フィルムは、電子レンジ内の加熱後に、その接合フィルムが互いから分離されるか否か検討される(結果は、試験される包装体の総数に対する層間剥離を伴う包装体の個数の割合で報告される)。
3.広範囲の引裂き:引裂きは、それが圧力解放設計の端からさらに延びるか否か検討される。
【0054】
(圧力解放効率に関する異なるパターンの影響の研究)
試験は、上述した方法を用いて行われた。この実験では、中央封止式袋の包装体は、外面上の1つの位置および2つの位置に圧力解放設計を有するフィルムで形成された。圧力解放設計は、12mmの最も広い部分の直径を有し、円、十字、3つの交差する直線で形成されるアスタリスク、および4つの交差する直線で形成されるアスタリスクである異なる形状を有する。レーザー印加後に残されているパターンの刻み目領域内の残りの積層フィルムの厚さは同様であり、これは約40μmである。結果は、表1に示されている。
【0055】
【表1】
【0056】
試験から、圧力解放設計の1つの位置を有する袋は、圧力を解放することができたが、層間剥離があったことが分かった。特に、2本の交差する直線(十字(cross))であるパターンの刻み目で形成される圧力解放設計は、圧力解放設計の端からの広範囲の引裂き、および電子レンジ内で加熱中の袋の爆発を引き起こした。一方、他の圧力解放設計は、広範囲の引裂き、および爆発問題を有さなかった。
【0057】
次に、さらなる実験は、同じ中央で長手方向に沿って互いから離れるように配設された圧力解放設計の2つの位置を有するフィルムで形成される中央封止式袋の包装体を用いて行われた。最も広い部分の直径は12mmであり、レーザー印加後に残された残りの積層フィルムの厚さは約40μmである。結果は、より多くの圧力解放箇所が存在するので、圧力解放設計の個数の増加によって袋は内側の圧力をより有効に解放することができ、層間剥離が全ての圧力解放設計において減少したことを示す。しかしながら、圧力解放設計の個数の増加は、圧力解放効率を高め、層間剥離を減少させるが、それは、まだ層間剥離をなくすことをできず、または受け入れ可能なレベルでそれをあまり生じさせなくなる。
【0058】
圧力解放効率を増加させ、層間剥離問題を解決するために、さらなる実験が圧力解放設計の2つの位置を同じ中央で長手方向に沿って互いから離れるように配設した4.5cmの折畳み部を有する20×15cmの縦置き型袋を用いて行われた。両方の位置における圧力解放設計の最も広い部分の直径は、20mmであった。結果は、表2に示されている。
【0059】
【表2】
【0060】
実験から、圧力解放設計のサイズの増加によって袋包装体が圧力をより有効に解放することができ、圧力解放設計のサイズの増加によってより大きい圧力解放箇所がもたらされるときに層間剥離がないことが分かった。
【0061】
しかしながら、表2の交差する直線であるパターンの刻み目で形成される圧力解放設計は、直線であるパターンの端から延びる引裂きを有し、これは、圧力が適時に解放されない場合に袋包装体を引裂き得ることが分かった。
【0062】
(本発明による圧力解放設計)
圧力が適時に解放されない問題、上述した層間剥離の問題、および広範囲の引裂きの問題を解決するために、図4の設計4.1から4.4に圧力解放設計によって例示されるように、それが閉じた形状のパターンおよびより多くのパターン交差からなるように圧力解放設計に調整がなされた。この実験では、4.5cmの折畳み部を有する20×15cmの縦置き型袋が使用され、各袋は、異なる圧力解放設計を1つの位置に有する。圧力解放効率試験の結果は、表3に示されている。
【0063】
【表3】
【0064】
実験から、設計4.1および4.2による一緒に組み合わされた閉じた形状(円および尖端付き楕円)であるパターンの刻み目で形成された圧力解放設計、および設計4.3および4.4による開いた形状(十字)であるパターンと組み合わされた閉じた形状(円および尖端付き楕円)であるパターンの刻み目で形成された圧力解放設計は、広範囲の引裂きの問題を解決することできたと分かった。また、圧力解放設計のパターン交差の個数を増大することによって、圧力解放箇所の位置も増加し、広範囲の引裂きおよび層間剥離を伴わない、またはわずか10%の層間剥離を伴うより良い圧力解放という結果になった。さらに、表3による袋包装体は、たった1つの位置の圧力解放設計を有するにもかかわらず、良好な圧力解放効率を有し、これにより多くの位置の圧力解放設計を形成するためにレーザーを使用することに対して製造コスト、およびより容易に制御することができる製造プロセスの点で有利にする。また、使用者の安全性の点で、圧力解放箇所が形成される位置がそこを通じて出てくる高温水蒸気圧を有するので、より多数の圧力解放設計が、包装体を使用している間に使用者が高温スチームに曝されるというリスクをさらに増大させる。
【0065】
(圧力解放効率に関するパターン交差の個数の影響に関する研究)
相対的な例示的な設計に対する本発明の異なる圧力解放設計の圧力解放箇所を形成するパターン交差の影響を研究するために、さらなる実験が行われた。図4の設計4.5から4.7に示された圧力解放設計、および比較例である2つの部分的に重なり合う円の刻み目が形成された設計を有する中央封止式袋が使用される。圧力解放設計のサイズは、袋包装体の最大長さの10~15%である。圧力解放効率試験の結果は、表4に示される通りである。
【0066】
【表4】
【0067】
表4から、20%の層間剥離を伴う2つだけのパターン交差を有する2つの部分的に重なり合う円である比較例と比較して、3つ以上の圧力解放箇所(設計4.5から4.7)で形成される交差を有する圧力解放設計により、層間剥離および広げられる問題なしで、袋が圧力を有効に解放することができることを見つけた。
【0068】
(圧力解放効率に関する圧力解放箇所を形成するパターン交差の影響に関する研究)
圧力解放箇所を形成するパターン交差位置に関するさらなる研究は、図4の設計4.4、4.5、および4.8による圧力解放設計を研究することによって行われた。結果は、表5に以下示されている。
【0069】
【表5】
【0070】
研究から、圧力解放設計4.4の場合には、圧力解放箇所が、2つの円または尖端付き楕円が形成されるパターンと互いに交差する少なくとも1本の直線のパターンとの交差の位置に単に形成されることが分かる。言い換えれば、圧力解放箇所は、位置2、3、4、および5に形成された。圧力解放箇所が形成されたこれらの位置は、パターン交差位置であり、レーザー印加後の残りの積層フィルムの厚さが他のパターン交差位置のものよりも低い。例えば、設計4.4では、圧力解放箇所が形成された位置は、49から57μm(位置2、3、4、および5)まで及ぶ積層フィルムの同様の厚さを有し、一方、圧力解放箇所が形成されていない位置(位置1)は、他の交差位置よりもかなりより大きいフィルム厚さを有する。電子レンジ内で加熱されている間に圧力が袋の内側に形成されるとき、より低いフィルム厚さ(より低い強度)を有する交差位置は膨張し、圧力解放箇所が、袋から圧力およびスチームを解放するために形成される。したがって、袋の内側の残りの圧力は、圧力解放箇所を形成するために膨張されるより大きいフィルム厚さを有する残りの交差位置(位置1)を作るのに十分でない。また、圧力が袋の内側に発生し、パターンの刻み目領域内で同様のフィルム厚さを与えるときに、直線であるパターンの刻み目が、交差領域における張力を分散するのを助けるので、交差時に直線であるパターンの刻み目の個数の増加は、圧力解放箇所の形成を促進する。したがって、圧力解放箇所は、より容易かつ効率的に形成され得る。
【0071】
同様に、圧力解放設計4.5の圧力解放箇所の形成機構、圧力解放箇所は、交差位置1、2、および3に形成されるだけである。
【0072】
交差位置において直線または十字であるパターンの刻み目の個数の増加がない圧力解放設計4.8について、圧力解放箇所がランダムに形成され、すなわち、圧力解放箇所が、交差1から6において1から6までのうちの位置の任意の位置において形成され得る。したがって、圧力解放箇所の形成は、ランダムであり、制御することができない。
【0073】
(レーザー印加条件およびレーザー印加後の残りのフィルム厚さの影響に関する研究)
実験は、4.5cmの折畳み部を有する20×15cmの縦置き型袋にレーザー印加をかけて圧力解放設計4.2および4.4を形成することによって実施された。レーザーマーキング時間およびパターンの刻み目領域内のレーザー印加後の残りの積層フィルムの厚さに影響を及ぼすレーザー出力およびレーザー走査速度であるレーザー印加条件は調整された。結果は、表6に示されている。
【0074】
【表6】
【0075】
実験から、圧力解放設計4.2の場合には、層間剥離および広範囲の引裂きを引き起こすことなく良好な圧力解放をもたらす適切なレーザー印加条件は、レーザー出力16ワットおよびレーザー走査速度30m/分であり、これは、パターンの刻み目領域内のレーザー印加後の残りの積層フィルムの厚さを30から50μmの範囲内に与えること分かった。
【0076】
圧力解放設計4.4の場合には、層間剥離および広範囲の引裂きを引き起こすことのない良好な圧力解放を与えた適切なレーザー印加条件は、35から45μmの範囲内でパターンの刻み目領域内のレーザー印加後の残りの積層フィルムの厚さを与えるレーザー出力16ワットおよびレーザー走査速度66m/分であり、45から55μmの範囲内でパターンの刻み目領域内のレーザー印加後の残りの積層フィルムの厚さを与えるレーザー出力16ワットおよびレーザー走査速度72m/分、ならびに65から70μmの範囲内でパターンの刻み目領域内のレーザー印加後の残りの積層フィルムの厚さを与えるレーザー出力16ワットおよびレーザー走査速度78m/分である。
【0077】
上述の結果は、本発明による圧力解放設計が、レーザー印加後の残りの積層フィルムの厚さが大きくなっても、レーザー印加を受けていないフィルムの水蒸気およびガスバリア特性に類似するまたはそれとそれほど違いがない水蒸気およびガスバリア特性を与えるので、使用により適しているより少ないマーキング時間およびより大きい厚さのレーザー印加後の残りの積層フィルムを与えるレーザー印加条件を採用できることを示した。したがって、包装体は、包装体内の食品の賞味期限に影響を及ぼすことなく食品を収納するために使用されてもよい。
【0078】
また、圧力解放設計4.4を有する袋を試験にかけて、レーザー印加を受けない積層フィルム製の袋と比べて、ASTM F1249により37.8℃および90%の相対湿度で水蒸気透過率(WVTR)を決定するとともに、ASTM D3985により23℃および0%の相対湿度で酸素透過率(OTR)を決定することによって、圧力解放設計4.4を有する袋は、水蒸気透過率3.78g/m.day、および酸素透過率66.5cc/m.dayを有し、一方、レーザー印加を受けていない袋は、水蒸気透過率4.39g/m.day、および酸素透過率52.4cc/m.dayを有することが分かった。結果は、本発明による圧力解放設計を形成するためにレーザー印加を受けた積層フィルム製の袋の水蒸気透過率および酸素透過率が、レーザー印加を受けていない袋のものからあまり大きく異なっておらず、袋は、良好なバリア特性を保持することを示す。
【0079】
(圧力解放設計のサイズの影響に関する研究)
実験は、異なるサイズの圧力解放設計4.4を有する10×10cm(封止エリアを除く)の中央封止式袋を用いて実施された。圧力解放設計のサイズは、袋包装体の最大長さに基づいて、この設計の最も広い部分の直径から割合で計算されている。結果は、表7に示されている。
【0080】
【表7】
【0081】
結果から、層間剥離がとても低く(10%以下)および広範囲の引裂きのない良好な圧力解放を可能にする適切な圧力解放設計は、最も広い部分の直径が7%以上である圧力解放設計であることが分かった。層間剥離または広範囲の引裂きがない最良の結果を示す圧力解放設計は、袋包装体の最大長さに基づいて、最も広い部分の直径が10から100%の範囲内である圧力解放設計である。
【0082】
次に、圧力解放効率に対する圧力解放設計のサイズの影響に関するさらなる実験は、異なるサイズの圧力解放設計4.3および4.4ならびにレーザー印加後の様々な範囲の残りのフィルム厚さを有する20×15cmの縦置き型袋を用いて実施された。結果は、表8に示されている。
【0083】
【表8】
【0084】
表8から、適切である圧力解放設計の好ましいサイズおよびレーザー印加後の残りのフィルム厚さにより、層間剥離および広範囲の引裂きがない、または層間剥離および広範囲の引裂きがとても低い割合である良好な圧力解放効率を与えることが分かり得る。
【0085】
(包装体表面上の圧力解放設計の位置に関する研究)
実験は、図5に示されるように、袋包装体上の異なる位置に圧力解放設計4.4を有する中央封止式袋および三方封止袋を用いて実施され、袋包装体の最大長さに対して圧力解放設計の最も広い部分の直径が10%である。結果は、表9に示されている。
【0086】
【表9】
【0087】
表9から、圧力解放設計の位置は、圧力解放効率に影響を及ぼさずに、または層間剥離の問題および広範囲の引裂きの問題を引き起こさずに、様々な袋包装体上のどこでもよいことが分かり得る。
【0088】
(真空包装体として包装体を使用することに関する研究)
実験は、上述した方法により、50mlの水を含むスポンジを中に備える圧力解放設計4.4を有する中央封止式袋を用いて実施された。封止ステップ中、袋の内側の空気は、真空包装状態をシミュレートするために取り除かれた。次いで、袋サンプルは、電子レンジ内で加熱することによって圧力を解放するその能力を試験する前に、室温で6カ月間維持された。
【0089】
結果は、本発明による圧力解放設計4.4を有する袋包装体は、袋包装体が室温保管後に真空状態をなお保つことができるので真空包装体として使用することができ、電子レンジ内で加熱すると、層間剥離および広範囲の引裂きを伴わずに圧力を有効に解放することができることを示す。
【0090】
(滅菌を受ける真空包装体として包装体を使用することに関する研究)
実験は、上述した方法により、50mlの水を含むスポンジを中に備える圧力解放設計4.4を有する中央封止式袋を用いて実施された。封止ステップ中、袋の内側の空気は、真空包装状態をシミュレートするために取り除かれた。次いで、袋サンプルは、ウォータースプレー加圧レトルト(KM Grand Pack Co.,Ltd、KM-P60SS-E)において25分間90℃で滅菌を受けた。滅菌された真空袋包装体は、電子レンジ内で加熱することによって圧力を解放するその能力を試験する前に、2週間室温で維持された。
【0091】
結果は、本発明による圧力解放設計4.4を有する袋包装体は、袋包装体が滅菌および室温保管後に密封された真空状態をなお保つことができるので真空包装体として使用され得るとともに滅菌を受けられ、電子レンジ内で加熱すると、層間剥離および広範囲の引裂きを伴わずに圧力を有効に解放することができることを示す。
【0092】
(滅菌を受け、冷凍状態で保管される真空包装体として包装体を使用することに関する研究)
実験は、上述した方法により、50mlの水を含むスポンジを中に備える圧力解放設計4.4を有する中央封止式袋を用いて実施された。封止ステップ中、袋の内側の空気は、真空包装状態をシミュレートするために取り除かれた。次いで、袋サンプルは、ウォータースプレー過圧レトルトにおいて25分間90℃で滅菌を受けた。次いで、袋包装体は、電子レンジ内で加熱することによって圧力を解放するその能力を試験する前に、2週間にわたって-18℃で冷凍状態で維持された。
【0093】
結果は、本発明による圧力解放設計4.4を有する袋包装体は、袋包装体が滅菌および冷凍保管(-18℃)後に密封された真空状態をなお保つことができるので真空包装体として使用され得るとともに滅菌を受けられ、電子レンジ内で加熱すると、層間剥離および広範囲の引裂きを伴わずに圧力を有効に解放することができることを示す。
【0094】
(本発明の最良の形態)
本発明の最良の形態は、本発明の詳細な説明に記載されている通りである。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を収納するために形成されている容器部と、
可撓性フィルム部分であって、前記可撓性フィルム部分の外面に少なくとも1つの圧力解放設計を備える、可撓性フィルム部分と、
を備える内部に形成される圧力を解放できる包装体において、
前記圧力解放設計は、一緒に組み合わされた少なくとも2つの同一または異なるパターンの刻み目を備え、前記パターンの3つ以上の交差が形成され、少なくとも1つの前記パターンが閉じた形状のパターンであるようになっていることを特徴とする包装体。
【外国語明細書】