(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109812
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】漁船操業認証装置、漁船操業認証方法、漁船別漁獲割当システム及び漁船別漁獲割当方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240806BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083958
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2020017687の分割
【原出願日】2020-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】318013477
【氏名又は名称】株式会社ブルーオーシャン研究所
(71)【出願人】
【識別番号】505261955
【氏名又は名称】株式会社環境シミュレーション研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 喜代志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水産資源の保護のため、漁船毎に、年間の魚種毎の漁獲物が取り決めの範囲内であることを証明する漁船操業認証装置を提供する。
【解決手段】漁船操業認証装置である資源管理サーバー101は、操業開始前に、漁船201から漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、操業時間情報及び場所情報を含む漁獲許可申請情報を受信し、受信した漁獲許可申請情報が適正と判定すると、漁獲許可申請情報に含まれる漁船情報、魚種、魚種の漁獲量、操業時間情報、所情報を含む認証コードを暗号化した暗号化認証コードを当該漁船201に送信し、漁獲許可申請情報が適正ではない場合に、暗号化認証コードを発行せず、警告情報を当該漁船201に対して送信する。加えて、当該漁船201の位置情報、魚群探知機の出力情報、操業時の様子を撮影した画像情報に基づく操業情報を操業後に受信し、該操業情報を漁獲許可申請情報と比較することにより操業の適正を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁船及び漁協との通信を行う通信装置と、
アクセス可能な資源管理サーバーとを有し、
前記資源管理サーバーは、漁船情報によって識別される各漁船に対して予め設定された、魚種及び魚種ごとの漁獲割当量、並びに操業の時間情報及び場所情報をデータベースとして保持し、
操業開始前に、前記通信装置を介して漁船から漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む漁獲許可申請情報を受信し、
前記資源管理サーバーに保持されている前記データベースを参照して受信した前記漁獲許可申請情報が適正か否かを判定する処理を行い、
前記漁獲許可申請情報が適正と判定される場合に、前記漁獲許可申請情報に含まれる漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む認証コードを発行し、前記認証コードが前記資源管理サーバーに通知されると共に、前記認証コードを暗号化した暗号化認証コードを当該漁船に対して送信し、
前記漁獲許可申請情報が適正と判定されない場合に、前記暗号化認証コードが発行されず、警告情報を当該漁船に対して送信し、
測位装置により得た当該漁船の位置情報、魚群探知機の出力情報、並びに撮影装置により得た操業時の様子を撮影した画像情報に基づいて形成された操業内容を示す操業情報を操業後に受信し、
該操業情報を前記漁獲許可申請情報と比較することによって操業が適正かどうかを判定する処理を行い、
当該操業が適正と判定される場合に、前記暗号化認証コードの暗号化を解く鍵を水揚げ漁協に対して送信し、
前記資源管理サーバーの対応する漁船及び魚種の漁獲割当量の情報を前記水揚げ漁協から受信した水揚げされた漁獲物の魚種別漁獲重量の情報によって更新する
漁船操業認証装置。
【請求項2】
漁船及び漁協との通信を行う通信装置と、アクセス可能な資源管理サーバーとを有する漁船操業認証装置による漁船操業認証方法であって、
前記資源管理サーバーは、漁船情報によって識別される各漁船に対して予め設定された、魚種及び魚種ごとの漁獲割当量、並びに操業の時間情報及び場所情報をデータベースとして保持し、
操業開始前に、前記通信装置を介して漁船から漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む漁獲許可申請情報を受信し、
前記資源管理サーバーに保持されている前記データベースを参照して受信した前記漁獲許可申請情報が適正か否かを判定する処理を行い、
前記漁獲許可申請情報が適正と判定される場合に、前記漁獲許可申請情報に含まれる漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む認証コードを発行し、前記認証コードが前記資源管理サーバーに通知されると共に、前記認証コードを暗号化した暗号化認証コードを当該漁船に対して送信し、
前記漁獲許可申請情報が適正と判定されない場合に、前記暗号化認証コードが発行されず、警告情報を当該漁船に対して送信し、
測位装置により得た当該漁船の位置情報、魚群探知機の出力情報、並びに撮影装置により得た操業時の様子を撮影した画像情報に基づいて形成された操業内容を示す操業情報を操業後に受信し、
該操業情報を前記漁獲許可申請情報と比較することによって操業が適正かどうかを判定する処理を行い、
当該操業が適正と判定される場合に、前記暗号化認証コードの暗号化を解く鍵を水揚げ漁協に対して送信し、
前記資源管理サーバーの対応する漁船及び魚種の漁獲割当量の情報を前記水揚げ漁協から受信した水揚げされた漁獲物の魚種別漁獲重量の情報によって更新する
漁船操業認証方法。
【請求項3】
漁船及び漁協との通信を行う認証局を含み、複数の魚種毎にそれぞれ定められた漁獲枠を漁船別に配分する漁船別漁獲割当システムであって、
前記認証局がアクセス可能な資源管理サーバーは、漁船情報によって識別される各漁船に対して予め設定された、魚種及び魚種ごとの漁獲割当量、並びに操業の時間情報及び場所情報をデータベースとして保持し、
操業開始前に、前記認証局は、漁船から漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む漁獲許可申請情報を受信し、
前記認証局は、前記資源管理サーバーに保持されている前記データベースを参照して受信した前記漁獲許可申請情報が適正か否かを判定する処理を行い、
前記漁獲許可申請情報が適正と判定される場合に、前記漁獲許可申請情報に含まれる漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む認証コードを発行し、前記認証コードが前記資源管理サーバーに通知されると共に、前記認証コードを暗号化した暗号化認証コードを当該漁船に対して送信し、
前記漁獲許可申請情報が適正と判定されない場合に、前記暗号化認証コードが発行されず、警告情報を当該漁船に対して送信し、
前記漁船は、測位装置、魚群探知機、撮影装置及び操業解析装置を有する操業情報作成装置を備え、
前記測位装置により得た当該漁船の位置情報、前記魚群探知機の出力情報、並びに前記撮影装置により得た操業時の様子を撮影した画像情報に基づいて操業内容を示す操業情報が形成され、
操業後に前記操業情報及び前記暗号化認証コードを前記認証局が受信し、前記認証局において、受信した前記操業情報を前記漁獲許可申請情報と比較することによって操業が適正かどうかを判定する処理がなされ、
当該操業が適正と判定される場合に、前記暗号化認証コードの暗号化を解く鍵が水揚げ漁協に対して送信され、
前記水揚げ漁協において前記鍵によって前記暗号化認証コードが解読され、
前記水揚げ漁協によって、水揚げされた漁獲物に対して当該漁獲物が適正な手段によって漁獲されたことを保証する情報を付与することが可能とされ、
前記水揚げ漁協によって、前記水揚げされた漁獲物の魚種別漁獲重量の情報が前記認証局に送信され、
前記認証局が前記資源管理サーバーの対応する漁船及び魚種の漁獲割当量の情報を受信した前記魚種別漁獲重量の情報によって更新する
漁船別漁獲割当システム。
【請求項4】
漁船及び漁協との通信を行う認証局を含み、複数の魚種毎にそれぞれ定められた漁獲枠を漁船別に配分する漁船別漁獲割当方法であって、
前記認証局がアクセス可能な資源管理サーバーは、漁船情報によって識別される各漁船に対して予め設定された、魚種及び魚種ごとの漁獲割当量、並びに操業の時間情報及び場所情報をデータベースとして保持し、
操業開始前に、前記認証局は、漁船から漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む漁獲許可申請情報を受信し、
前記認証局は、前記資源管理サーバーに保持されている前記データベースを参照して受信した前記漁獲許可申請情報が適正か否かを判定する処理を行い、
前記漁獲許可申請情報が適正と判定される場合に、前記漁獲許可申請情報に含まれる漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む認証コードを発行し、前記認証コードが前記資源管理サーバーに通知されると共に、前記認証コードを暗号化した暗号化認証コードを当該漁船に対して送信し、
前記漁獲許可申請情報が適正と判定されない場合に、前記暗号化認証コードが発行されず、警告情報を当該漁船に対して送信し、
前記漁船は、測位装置、魚群探知機、撮影装置及び操業解析装置を有する操業情報作成装置を備え、
前記測位装置により得た当該漁船の位置情報、前記魚群探知機の出力情報、並びに前記撮影装置により得た操業時の様子を撮影した画像情報に基づいて操業内容を示す操業情報が形成され、
操業後に前記操業情報及び前記暗号化認証コードを前記認証局が受信し、前記認証局において、受信した前記操業情報を前記漁獲許可申請情報と比較することによって操業が適正かどうかを判定する処理がなされ、
当該操業が適正と判定される場合に、前記暗号化認証コードの暗号化を解く鍵が水揚げ漁協に対して送信され、
前記水揚げ漁協において前記鍵によって前記暗号化認証コードが解読され、
前記水揚げ漁協によって、水揚げされた漁獲物に対して当該漁獲物が適正な手段によって漁獲されたことを保証する情報を付与することが可能とされ、
前記水揚げ漁協によって、前記水揚げされた漁獲物の魚種別漁獲重量の情報が前記認証局に送信され、
前記認証局が前記資源管理サーバーの対応する漁船及び魚種の漁獲割当量の情報を受信した前記魚種別漁獲重量の情報によって更新する
漁船別漁獲割当方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚がどこで誰によって漁獲され、どのようなルートで流通してきたかを証明するために適用される漁船操業認証装置、漁船操業認証方法、漁船別漁獲割当システム及び漁船別漁獲割当方法漁に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的な水産資源の保護のため、魚種毎、国毎、さらには船毎に、年間の漁獲量が取り決められている。例えば、TAC(Total Allowable Catch)では、魚種毎に各国に対する年間総漁獲量が決められている。このTAC制度のもとで、IQ(Individual Quota)、IVQ(Individual Vessel Quota)がある。IQとは、ある魚種の漁獲枠を個別の漁業経営者に配分する制度である。また、IVQは、漁船別に配分される漁船別漁獲割当である。日本の漁業法が改正され、2020年12月から施行されようとしている。この改正漁業法においては、200魚種の魚種を対象として漁獲量規制(TAC)、IQ、IVQが採用されている。このような水産資源の量的な管理に対応するために、例えば特許文献1には、各漁船が目的とする魚種のみが確実に漁獲できるように、魚種の判別が可能な超音波探知装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IVQのような個別割当制度を実効あるものとするためには、各漁船の水揚げ量の適正な管理に加えて、オーバーフィッシング(乱獲)や密漁等の違法操業を防止するために、各漁船の操業の監視などが必要とされる。しかしながら、全ての漁船の操業を監視することは実際には不可能である。特許文献1に記載のものは、かかる問題に対処することができないものであった。また、魚が漁獲されてから所有者が移っていく流通過程における経由情報(トレーサビリティ情報)の管理の場合も、魚に初期的に付与される情報(例えば漁師名や漁船の情報、魚種、漁獲場所、大きさや重さなど)が正しいものであことが必要とされる。
【0005】
したがって、本発明は、漁獲物がどこで、誰によって漁獲されたかを証明するために、位置情報や画像などを活用した科学的根拠に基づく漁船操業認証装置、漁船操業認証方法、漁船別漁獲割当システム及び漁船別漁獲割当方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、漁船及び漁協との通信を行う通信装置と、
アクセス可能な資源管理サーバーとを有し、
資源管理サーバーは、漁船情報によって識別される各漁船に対して予め設定された、魚種及び魚種ごとの漁獲割当量、並びに操業の時間情報及び場所情報をデータベースとして保持し、
操業開始前に、通信装置を介して漁船から漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む漁獲許可申請情報を受信し、
資源管理サーバーに保持されているデータベースを参照して受信した漁獲許可申請情報が適正か否かを判定する処理を行い、
漁獲許可申請情報が適正と判定される場合に、漁獲許可申請情報に含まれる漁船情報、魚種及び当該魚種の漁獲量、並びに操業の時間情報及び場所情報を含む認証コードを発行し、認証コードが資源管理サーバーに通知されると共に、認証コードを暗号化した暗号化認証コードを当該漁船に対して送信し、
漁獲許可申請情報が適正と判定されない場合に、暗号化認証コードが発行されず、警告情報を当該漁船に対して送信し、
測位装置により得た当該漁船の位置情報、魚群探知機の出力情報、並びに撮影装置により得た操業時の様子を撮影した画像情報に基づいて形成された操業内容を示す操業情報を操業後に受信し、
該操業情報を漁獲許可申請情報と比較することによって操業が適正かどうかを判定する処理を行い、
当該操業が適正と判定される場合に、暗号化認証コードの暗号化を解く鍵を水揚げ漁協に対して送信し、
資源管理サーバーの対応する漁船及び魚種の漁獲割当量の情報を水揚げ漁協から受信した水揚げされた漁獲物の魚種別漁獲重量の情報によって更新する
漁船操業認証装置である。
また、本発明は、かかる漁船操業認証装置による漁船別漁獲割当システムである。
さらに、本発明は、漁船操業認証方法及び漁船別漁獲割当方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、漁船操業が適正かどうかを認証することができる。本発明は、水産資源の保護のため、漁船毎に、年間の魚種毎の漁獲量が取り決められている場合に、漁獲物が取り決めの範囲内に含まれているものであることを客観的に証明する仕組みを提供することができる。特に、漁獲した場所(操業位置)と水揚げ場の2箇所で、途中改ざんの無いことを保証することによって、認証の信頼性を高めることができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の概略を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の一部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されないものとする。
【0010】
図1は、漁獲及び水揚げ認証装置の一実施形態の全体的構成を示す概略図である。一実施形態は、陸上側システムと操業場所(漁場)の漁船の両方が連携する構成とされている。陸上側システムとして、資源管理サーバー101、認証局102、漁業協同組合(漁協と称する)103が設けられている。
【0011】
一実施形態は、TAC(年間総漁獲量)を例えば200魚種のそれぞれについて策定し、TACに基づいてある魚種の漁獲枠を漁船別に配分するIVQ(漁船別漁獲割当)を採用する例である。但し、IQ(漁業経営者別漁獲割当)を採用する場合に対しても本発明は適用できる。資源管理サーバー101は、例えばクラウドサーバーとして実現される。資源管理サーバー101は、操業情報データベース111、TACデータベース112及び漁船情報データベース113を備えている。これらのデータベースに基づいて資源管理サーバー101は、例えば200魚種のそれぞれについて、各漁船に対する漁獲割り当て量を決定し、決定された各漁船に対する漁獲割り当て量がTACデータベース112に保持される。
【0012】
認証局102は、資源管理サーバー101に対して漁船情報、操業情報などを通信によって提供し、また、資源管理サーバー101から漁獲割当(IVQ)情報などの必要な情報を取得する。例えば資源管理サーバー101は、全国的組織であり、認証局102は、都道府県単位の組織である。
【0013】
資源管理サーバー101及び認証局102の役割の一つは、漁船からの操業申請の審査である。申請された操業位置・日時及び漁法等が違法漁業や禁漁事項に抵触しないかどうかを判定する。他の役割は、申請漁船の適正水揚げの審査である。水揚げ港・日時・漁獲量のチェックをするとともに、オブザーバー情報を含む操業情報を漁船から収集して、TAC規制や申請漁船の割当漁獲量を超えていないかを操業情報に基づいて審査する。
【0014】
例えば資源管理サーバー101は、全国的組織であり、認証局102は、都道府県単位の組織である。さらに、認証局102と漁協103の間で高速通信網(例えば5G)を介して情報の送受信がなされる。漁協103は、水揚げ漁港単位で設立されている。漁協103は、水揚げ、漁獲物のせりなどの管理を行い、せりにおいて、トレーサビリティの開始点(原産地証明)及び食の安全情報を漁獲物に対して付与する。これらのトレーサビリティ情報等は、認証コード104に基づいて作成される。
【0015】
認証コードは、例えばインターネット105を介して漁船201からの申請によって認証局102が発行する。漁船201が出航前などで港、沿岸等にいる場合には、携帯電話回線を通じて認証局102に対して自船情報を付加した漁獲許可申請情報を送信する。携帯電話回線に限らず通信衛星211を介した衛星電話で認証コードを申請してもよい。
【0016】
認証局102では、申請漁船から送られてきた漁船情報(漁船識別番号・操業位置等)をもとに、資源管理サーバー101内に登録された申請漁船の漁獲可能な割当残量(IQ)や操業位置及び日時等の禁漁成否を確認し、適正と判断したら、認証コードが改竄されることを防止するために、暗号化認証コード(仮の認証コード)を漁船201に対して発行する。認証コードには、一例として、漁船名、有効期間、魚種、漁獲地域、漁獲量、漁法、水揚げ港などの情報が含まれている。認証局102が発行した認証コードの内容が資源管理サーバー101に対して通知され、資源管理サーバー101が漁船201がどのような操業を行なおうとするかを把握することができる。漁獲許可申請が漁獲割当量超過や禁漁事項に抵触した場合は「不許可」となり、認証コードは発行されず、警告情報が送られる。
【0017】
漁船201が実際に操業する場合に、発行された認証コードの情報に基づく操業(適正な操業)を行なうことを担保するために(自動オブザーバー機能)、操業情報作成装置(データロガーと称する)202が漁船201に備えられている。また、漁船201は、魚群探知機203、GNSS(Global Navigation Satellite System/全地球航法衛星システム)受信機204、操業時の様子を撮影するための撮影装置205及び自動船舶識別装置AIS(Automatic Identification System)206を備えている。
【0018】
魚群探知機203は、高精度魚群探知機であって、探知した魚の種類も判別することができる。さらに、図示しないが、操業場所の水温等の情報も取得される。GNSS受信機204は、GPS、GLONASS、Galileo 、準天頂衛星(QZSS)等の測位衛星212(
図1参照)を使用した測位システムの総称のことである。例えば最近では、準天頂衛星システム(みちびき)の運用が開始されることによって、GPSを補い、より高精度の測位が可能となりつつある。
【0019】
例えば揚網状況や漁獲物の確認が可能な位置に、魚種、魚体長、漁法などを判定するための撮影装置205が設置される。又は、漁獲作業員のヘルメット等に取り付けられた撮影装置205を使って、漁獲物の写真を自動的に収集する。撮影した画像には、仮認証番号や日時・位置情報が付加される。
【0020】
AIS206は、識別符号、船名、位置、針路、速力、目的地などのデータを発信するVHF帯デジタル無線機器であり、受信したデータを海図上やレーダー画面上に表示することができる。漁船201の周辺海域に他の漁船201a,201bが存在する場合には、他の漁船201a,201bのAISによって漁船201の位置等の情報が取得される。操業情報中に含まれる漁船201の位置情報は、他の漁船201a,201bのAISによって取得された情報によって正しいかどうかが検証される。AIS情報取得圏内は、搭載機器のクラスにより自船周り30~70km以内である。若し、AIS情報取得圏内に他船が航行していない場合は、操業前後に取得したAISが代用される。
【0021】
図2を参照してデータロガー202の一例について説明する。データロガー202は、通信モジュールとして、携帯通信モジュール221、衛星通信モジュール222、無線通信モジュール223及びシリアル通信モジュール224を備えている。携帯通信モジュール221及び衛星通信モジュール222は、データロガー202と認証局102及び漁協103との間の通信を行なう。沿岸では、携帯通信モジュール221が使用され、沖合では、衛星通信モジュール222が使用される。大容量の操業情報を伝送するために、高速通信例えば5Gが使用される。
【0022】
無線通信モジュール223は、撮影装置205からの画像データを取り込んだり、ユーザーインターフェースとしてのタブレット(図示せず)と通信を行なったりするために設けられている。シリアル通信モジュール224は、魚群探知機203の操業時の画像データ、魚種データ、水温データ等を取り込んだり、GNSS受信機204からの測位データを取り込んだり、AIS206の情報を取り込んだりするために設けられている。
【0023】
シリアル通信モジュール224を通じて取り込まれた魚群探知機203及びGNSS受信機204からの情報がGNSS及び機器情報解析部225によって解析される。解析結果(位置情報、魚種情報、体長情報など)がデータベース227に蓄積される。解析を行なわないで、生のデータを使用してもよいが、データ量が膨大となるおそれがある。シリアル通信モジュール224を通じて取り込まれたAIS情報(他船の情報)がAIS情報解析部226によって解析される。解析結果がデータベース228に蓄積される。さらに、撮影装置205によって撮影された例えば操業時の画像がデータベース229に蓄積される。
【0024】
データベース227、228及び229に蓄積されている情報を使用して操業解析部230が操業内容を示す操業情報を作成する。操業終了後に、水揚げ許可を得るために、操業情報は、漁船201から携帯通信モジュール221又は衛星通信モジュール222を介して認証局102及び/又は漁協103に対して送信される。
【0025】
操業情報を受け取った認証局102又は漁協103は、漁船201が行なった操業が事前に申請されたものかどうかを判定する。判定に際して資源管理サーバー101の操業情報データベースを参照して他の漁船のAIS情報に基づいて申請漁船の位置情報、操業方法などが正しいかどうかが検証される。判定の結果、操業が申請されたもの(すなわち、正しい)と判定されると、認証局102又は漁協103から暗号化認証コードの暗号を解読する暗号カギが与えられる。また、操業情報が資源管理サーバー101に対して送信される。一方、操業が申請されたものではない(すなわち、不正)と判定されると、認証局102又は漁協103からその旨の通知がなされ、暗号カギが与えられない。このように、操業と水揚げの2箇所において認証を行うことで、漁船毎の操業が適正かどうかを正確に把握できる。
【0026】
認証処理部231は、暗号カギの受信と受信した暗号カギによる暗号化認証コードの解読を行なう。なお、データロガー202に設けられているGNSS及び機器情報解析部225、AIS情報解析部226、操業解析部230及び認証処理部231は、1又は複数のマイクロプロセッサのソフトウェア処理によって実現される機能である。
【0027】
図3を参照して本発明の一実施形態の時間的な作業(処理)の流れについて説明する。漁船201は、衛星通信機器或いは携帯通信機器を用いて自船と認証局102間の通信により、操業直前に自船情報を付加した漁獲許可(認証コード)を申請するため情報を送信する(経路S1)。
【0028】
認証局102では、申請漁船201から送られてきた漁船情報(漁船識別番号・操業位置等)をもとに、資源管理サーバー101内に登録された申請漁船の漁獲可能な割当残量や操業位置及び日時等の禁漁成否を確認し、申請が適正と判断したら暗号化された仮の認証コードを発行する(経路S2)。申請が漁獲割当量超過や禁漁事項に抵触する場合は「不許可」となり、認証コードは発行されず、警告情報が送られる。
【0029】
申請が許可され、暗号化認証コードが発行された場合、漁船201が操業を行ない、操業時にデータロガー202によって操業情報が取得される。操業情報の中の一つの情報は、漁獲位置情報である。漁船201には、GNSS(全球測位衛星システム)受信機204と接続されたデータロガー202が搭載されている。データロガー202によって、自船位置情報(日時・緯度・経度・標高等)がリアルタイムに取得される。収集した自船の位置情報から航跡データが得られる。この航跡データを用い、漁法特有の操業時の航跡パターンから正確な操業位置(漁場位置)及び漁法情報が自動抽出される。
【0030】
また、AISと連携して、自船周辺を航行する他船(漁船201a,201b)の位置情報(識別番号・日時・緯度・経度・船種・トン数等)がリアルタイムに取得される。他船(漁船201a,201b)のAIS情報は、他船の操業位置・日時を証明する客観的な証拠となる。したがって、他船のAIS情報によって、自船(漁船201)の操業位置情報の改竄や不備を防止することができる。
【0031】
漁船201は、魚種別漁獲量判定が可能な高精度な魚群探知機203を備えており、魚群探知機203により得られた画像を解析することによって、漁獲する魚群の魚種や適正魚体長を判定するとともに、資源管理に必要な情報を収集する。これにより、事前に適正漁獲の可否や混獲の危険性を判断する。撮影装置205によって取得された画像データを操業情報が含むので、この画像データから揚網状況や漁獲物の確認が可能となる。撮影した画像には、仮認証番号や日時・位置情報が付加される。
【0032】
操業が終了すると、漁船201が操業完了通知を漁協(水揚げ漁協)103に高速通信(例えば5G)によって送信する(経路S4)。漁協103は、漁船201の水揚げ港、操業終了日時などの情報を認証局102に対して送信する(経路S5)。
【0033】
漁船201の操業が終了した時、又は水揚げのため帰港した時に、収集した操業情報(航跡・AIS・高精度魚探画像(エコ―グラム)・カメラ画像等を含む大容量データ又はこれらを解析した結果のデータ)と、操業時に受け取った暗号化認証コードを高速通信(例えば5G)により、水揚げ許可を得るために漁協103を介して認証局102に送信する(経路S6)。漁協103が漁船201のために暗号解除の申請を行なう。
【0034】
認証局102では、送られてきた操業情報等を資源管理サーバーに転送後、審査を行い適正ならば暗号カギ(暗号解除コード)を発行し、暗号カギを漁協103に送信する(経路S7)。漁協103は、暗号カギを使用して暗号化認証コードを解読する(S8)。また、漁船201に対して水揚げ(S9)を許可する。審査の結果、適正でないと判定されると、暗号カギが発行されず、その審査結果が漁協103に送信される。この場合、漁協103は、漁船201に対して水揚げを許可しない。
【0035】
解読された認証コードには、漁船名、有効期間、魚種、漁獲地域、漁獲量、漁法、水揚げ港などの情報が含まれている。漁協103は、これらの情報に基づいて水揚げされる魚種、魚種別漁獲重量等を検査する。魚種、魚種別漁獲重量等の情報を認証局102に対して送信される(経路S10)。資源管理サーバー101は、申請漁船201の漁獲割当量等を更新して、資源管理に活用する。漁獲物が認証コードの内容と齟齬する場合には、その漁獲物の水揚げを禁止する。
【0036】
水揚げ後、暗号解除された正式な認証コードを得た漁獲物は、セリにおいて、この正式な認証コードにより漁獲物が適正な手段により漁獲されたことを保証する認証情報が例えばラベルなどによって付加される(S11)。認証情報を付与された漁獲物は、トレーサビリティの開始点(原産地証明)及び食の安全情報を付加されてマーケットに流通する。認証コードに含まれている情報がトレーサビリティの初期情報として、最終消費者までの製品情報として利用される。
【0037】
上述した本発明の一実施形態によれば、漁船操業のオブザーバー機能によって違法操業及び密漁を防止することができる。また、水揚げがされるたびに、TACの情報を更新できるので、タイムリーな資源管理を行なうことができる。さらに、原産地表示を含む正しいトレーサビリティ情報を付加することによって、安心安全な水産物の提供と魚食振興に寄与することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
101:資源管理サーバー、102:認証局、103:漁協、201:漁船、
202:データロガー、203:魚群探知機、204:GNSS受信機、
205:撮影装置、206:AIS