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特開2024-109827NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞とその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109827
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞とその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240806BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 5/16 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240806BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/16
A61P35/00
A61P37/06
A61P31/00
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/17
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084149
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2022549899の分割
【原出願日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】202010527572.0
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011209420.2
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523087364
【氏名又は名称】バイオヘン セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOHENG THERAPEUTICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Suite #4-210, Governors Square, 23 Lime Tree Bay Avenue, PO Box 32311, Grand Cayman KY1-1209 (KY)
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周亜麗
(72)【発明者】
【氏名】陳功
(72)【発明者】
【氏名】姜小燕
(72)【発明者】
【氏名】任江涛
(72)【発明者】
【氏名】賀小宏
(72)【発明者】
【氏名】王延賓
(72)【発明者】
【氏名】韓露
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来の遺伝子改変免疫細胞と比較して、被験者の体内のNK細胞の殺傷作用を顕著に抑制し、それによってHvGDのリスクを低減することができるNK阻害性分子、及び該分子を発現する遺伝子改変免疫細胞を提供する。
【解決手段】NK阻害性分子であって、1つまたは複数のNK阻害性リガンド、膜貫通ドメインおよび共刺激ドメインを含み、前記NK阻害性リガンドがNK阻害性受容体に特異的に結合して、NK阻害性分子による、前記NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞に対する殺傷を阻害する。遺伝子改変免疫細胞であって、本発明のNK阻害性分子を発現し、少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。該遺伝子改変免疫細胞の、がん、感染症または自己免疫疾患の治療における使用を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NK阻害性分子であって、
1つまたは複数のNK阻害性リガンド、膜貫通ドメイン、および共刺激ドメインを含み、前記NK阻害性リガンドがNK阻害性受容体(NK inhibitory receptor、NKIR)に特異的に結合して、NK細胞による、前記NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞に対する殺傷を阻害する、NK阻害性分子。
【請求項2】
前記NK阻害性リガンドは、NKIRを標的とする抗体、或はNKIRの天然リガンドまたはそれに含まれるNKIR結合領域である、請求項1に記載のNK阻害性分子。
【請求項3】
前記NKIRは、NKG2/CD94成分、キラー細胞Ig様受容体(KIR)ファミリーメンバー、白血球Ig様受容体(LIR)ファミリーメンバー、NK細胞受容体タンパク質1(NKR-P1)ファミリーメンバー、免疫チェックポイント受容体、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(SIGLEC)ファミリーメンバー、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、Ly49ファミリーメンバーおよびキラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG1)から選択される、請求項1または2に記載のNK阻害性分子。
【請求項4】
前記NKG2/CD94成分は、NKG2A、NKG2BおよびCD94から選択され、前記KIRファミリーメンバーは、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、およびKIR3DL3から選択され、前記LIRファミリーメンバーは、LIR1、LIR2、LIR3、LIR5、およびLIR8から選択され、前記NKR-P1ファミリーメンバーは、NKR-P1BおよびNKR-P1Dから選択され、前記免疫チェックポイント受容体は、PD-1、TIGIT、CD96、TIM3およびLAG3から選択され、前記SIGLECファミリーメンバーは、SIGLEC7、およびSIGLEC9から選択され、前記Ly49ファミリーメンバーは、Ly49A、Ly49C、Ly49F、Ly49G1、およびLy49G4から選択される、請求項3に記載のNK阻害性分子。
【請求項5】
前記NKIRは、NKG2A、NKG2B、CD94、LIR1、LIR2、LIR3、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR3DL1、CEACAM1、PD1、LAIR1、SIGLEC7、SIGLEC9、およびKLRG1から選択される、請求項3または4に記載のNK阻害性分子。
【請求項6】
前記NK阻害性リガンドは、NKIRを標的とする抗体またはその機能的フラグメントであり、前記抗体またはその機能的フラグメントは、無傷の抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、線状抗体、sdAb、またはナノ抗体から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のNK阻害性分子。
【請求項7】
前記NK阻害性リガンドは、PD1、NKG2A、LIR1、KIR、SIGLEC7、SIGLEC9、および/またはKLRG1を標的とする抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載のNK阻害性分子。
【請求項8】
(i)前記NKG2Aを標的とする抗体は、(1)配列番号72に示されるCDR-L1、配列番号73に示されるCDR-L2、配列番号74に示されるCDR-L3、配列番号75に示されるCDR-H1、配列番号76に示されるCDR-H2、および配列番号77に示されるCDR-H3、または、(2)配列番号78に示されるCDR-L1、配列番号79に示されるCDR-L2、配列番号80に示されるCDR-L3、配列番号81に示されるCDR-H1、配列番号82に示されるCDR-H2、および配列番号83に示されるCDR-H3、を含み、
(ii)前記LIR1を標的とする抗体は、(1)配列番号90に示されるCDR-L1、配列番号91に示されるCDR-L2、配列番号92に示されるCDR-L3、配列番号93に示されるCDR-H1、配列番号94に示されるCDR-H2、および配列番号95に示されるCDR-H3、または、(2)配列番号96に示されるCDR-L1、配列番号97に示されるCDR-L2、配列番号98に示されるCDR-L3、配列番号99に示されるCDR-H1、配列番号100に示されるCDR-H2、および配列番号101に示されるCDR-H3、を含み、
(iii)前記KIRを標的とする抗体は、配列番号84に示されるCDR-L1、配列番号85に示されるCDR-L2、配列番号86に示されるCDR-L3、配列番号87に示されるCDR-H1、配列番号88に示されるCDR-H2、および配列番号89に示されるCDR-H3を含み、
(iv)前記SIGLEC7、SIGLEC9またはその両方を標的とする抗体は、(1)配列番号102に示されるCDR-L1、配列番号103に示されるCDR-L2、配列番号104に示されるCDR-L3、配列番号105に示されるCDR-H1、配列番号106に示されるCDR-H2、および配列番号107に示されるCDR-H3、(2)配列番号122に示されるCDR-L1、配列番号123に示されるCDR-L2、配列番号124に示されるCDR-L3、配列番号125に示されるCDR-H1、配列番号126に示されるCDR-H2、および配列番号1277に示されるCDR-H3、(3)配列番号131に示されるCDR-L1、配列番号132に示されるCDR-L2、配列番号133に示されるCDR-L3、配列番号134に示されるCDR-H1、配列番号135に示されるCDR-H2、および配列番号136に示されるCDR-H3、(4)配列番号140に示されるCDR-L1、配列番号141に示されるCDR-L2、配列番号142に示されるCDR-L3、配列番号143に示されるCDR-H1、配列番号144に示されるCDR-H2、および配列番号155に示されるCDR-H3、(5)配列番号176に示されるCDR-L1、配列番号177に示されるCDR-L2、配列番号178に示されるCDR-L3、配列番号179に示されるCDR-H1、配列番号180に示されるCDR-H2、および配列番号181に示されるCDR-H3、または(6)配列番号188に示されるCDR-L1、配列番号189に示されるCDR-L2、配列番号190に示されるCDR-L3、配列番号191に示されるCDR-H1、配列番号192に示されるCDR-H2、および配列番号193に示されるCDR-H3、を含み、および/または
(v)前記KLRG1を標的とする抗体は、(1)配列番号111に示されるCDR-L1、配列番号112に示されるCDR-L2、配列番号113に示されるCDR-L3、配列番号114に示されるCDR-H1、配列番号115に示されるCDR-H2、および配列番号116に示されるCDR-H3、(2)配列番号149に示されるCDR-L1、配列番号150に示されるCDR-L2、配列番号151に示されるCDR-L3、配列番号152に示されるCDR-H1、配列番号153に示されるCDR-H2、および配列番号154に示されるCDR-H3、(3)配列番号158に示されるCDR-L1、配列番号159に示されるCDR-L2、配列番号160に示されるCDR-L3、配列番号161に示されるCDR-H1、配列番号162に示されるCDR-H2、および配列番号163に示されるCDR-H3、または(4)配列番号167に示されるCDR-L1、配列番号168に示されるCDR-L2、配列番号169に示されるCDR-L3、配列番号170に示されるCDR-H1、配列番号171に示されるCDR-H2、および配列番号172に示されるCDR-H3、を含む、
請求項7に記載のNK阻害性分子。
【請求項9】
前記NK阻害性リガンドは、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン、コラーゲン、OCIL、シアル酸、PD-L1/PD-L2、CD155、CD112、CD113、Gal-9、FGL1、およびそれらに含まれるNKIR結合領域から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のNK阻害性分子。
【請求項10】
前記NK阻害性リガンドは、シアル酸、HLA-E細胞外領域、HLA-F細胞外領域、HLA-G細胞外領域、E-カドヘリン細胞外領域、PD-L1細胞外領域およびPD-L2細胞外領域から選択される、請求項9に記載のNK阻害性分子。
【請求項11】
(i)前記HLA-Eの細胞外領域は、配列番号31または33に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、
(ii)前記HLA-Gの細胞外領域は、配列番号35に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、
(iii)E-カドヘリン細胞外領域は、配列番号39または41に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、
(iv)PD-L1細胞外領域は、配列番号70に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、
(v)PD-L2細胞外領域は、配列番号71に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する、
請求項10に記載のNK阻害性分子。
【請求項12】
前記膜貫通ドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ζサブユニット、CD3εサブユニット、CD3γサブユニット、CD3δサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン、コラーゲン、OCILのタンパク質の膜貫通ドメインから選択される、請求項1に記載のNK阻害性分子。
【請求項13】
前記共刺激ドメインは、LTB、CD94、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD8、CD18、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、DAP10、DAP12、LAT、NKG2C、SLP76、PD-1、LIGHT、TRIM、ZAP70、およびそれらの組み合わせのタンパク質の共刺激シグナル伝達ドメインから選択される、請求項1に記載のNK阻害性分子。
【請求項14】
前記NK阻害性分子は細胞内シグナル伝達ドメインを含まない、請求項1に記載のNK阻害性分子。
【請求項15】
前記NK阻害性分子は細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項1に記載のNK阻害性分子。
【請求項16】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dのタンパク質のシグナル伝達ドメインから選択される、請求項14または15に記載のNK阻害性分子。
【請求項17】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、請求項14または15に記載のNK阻害性分子。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のNK阻害性分子をコードする、核酸分子。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項20】
(1)請求項1~17のいずれか一項に記載のNK阻害性分子を発現し、および(2)少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを特徴とする遺伝子改変免疫細胞。
【請求項21】
前記遺伝子改変免疫細胞は、キメラ抗原受容体をさらに発現し、前記キメラ抗原受容体がリガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細細胞内シグナル伝達ドメインを含むことを特徴とする、請求項20に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項22】
(1)NK阻害性分子およびキメラ抗原受容体の融合タンパク質を発現する、前記融合タンパク質がNK阻害性リガンド、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、および(2)少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを特徴とする遺伝子改変免疫細胞。
【請求項23】
前記少なくとも1種のMHC関連遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、TAP1、TAP2、LMP2、LMP7、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項20~22のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項24】
前記少なくとも1種のMHC関連遺伝子は、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項23に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項25】
前記MHC関連遺伝子はB2Mを含み、前記NK阻害性リガンドは、B2Mおよび非古典的なHLA-I分子の細胞外領域の融合分子である、請求項24に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項26】
前記非古典的なHLA-I分子は、HLA-EまたはHLA-Gである、請求項25に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項27】
前記NK阻害性分子は、配列番号46~53からなる群から選択される提示ペプチドをさらに含む、請求項25に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項28】
前記遺伝子改変免疫細胞の少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされ、前記TCR/CD3遺伝子が、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項20~27のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項29】
CD52、GR、dCK、PD1、LAG3、TIM3、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、PDCD1、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、およびGUCY1B3から選択される1種または複数種の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを特徴とする、請求項20~28のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項30】
前記リガンド結合ドメインは、TSHR、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD23、CD24、CD25、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD46、CD47、CD52、CD54、CD56、CD70、CD73、CD80、CD97、CD123、CD22、CD126、CD138、CD179a、DR4、DR5、TAC、TEM1/CD248、VEGF、GUCY2C、EGP40、EGP-2、EGP-4、CD133、IFNAR1、DLL3、kappa軽鎖、TIM3、BAFF-R、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、tEGFR、GD2、GD3、BCMA、GPRC5D、Tn抗原、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、IL-22Ra、IL-2、メソテリン、IL-llRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-β、SSEA-4、CD20、AFP、Folate受容体α、ERBB2(Her2/neu)、ErbB3、ErbB4、MUC1、MUC16、EGFR、CS1、CD138、NCAM、Claudin18.2、Prostase、PAP、ELF2M、Ephrin B2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gploo、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、Fucosyl GM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、Folate受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE-A4、MART-1、WT-1、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質、サバイビンおよびテロメラーゼ、PCTA-l/Galectin 8、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座ブレークポイント、ML-IAP、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、Cyclin Bl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B 1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES 1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸のカルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、PD1、PDL1、PDL2、TGFβ、APRIL、NKG2D、NKG2DL、およびそれらの任意の組み合わせから選択される標的に結合する、請求項20~29のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項31】
前記標的は、CD7、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD123、CD138、CD171、MUC1、AFP、Folate受容体α、CEA、PSCA、PSMA、Her2、EGFR、IL13Ra2、GD2、NKG2D、EGFRvIII、CS1、BCMA、メソテリン、Cluadin18.2、ROR1、NY-ESO-1、MAGE-A4、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項30に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項32】
前記遺伝子改変免疫細胞は、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単核細胞、NK細胞またはNKT細胞である、請求項20~31のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項33】
前記遺伝子改変免疫細胞は、CD4+/CD8+T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、CD8+T細胞、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、γδ-T細胞またはαβ-T細胞である、請求項32に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項34】
請求項1~17のいずれか一項に記載のNK阻害性分子、請求項18に記載の核酸分子、請求項19に記載のベクター、または請求項20~33のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞、および一種または複数種の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項35】
がん、感染症または自己免疫疾患を治療するための医薬の調製における、請求項1~17のいずれか一項に記載のNK阻害性分子、請求項18に記載の核酸分子、請求項19に記載のベクターまたは請求項20~33のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫療法の分野に属する。より具体的には、本発明は、1つ以上のNK阻害性リガンド、膜貫通ドメイン、および共刺激ドメインを含むNK阻害性分子に関する。NK阻害性リガンドは、NK阻害性受容体に特異的に結合して、NK細胞による、NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞を死滅させることを阻害する。
【背景技術】
【0002】
近年、癌免疫療法技術は急速に発展しており、特にキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)関連の免疫療法は、血液腫瘍の治療において優れた臨床効果を達成している。CAR-T細胞免疫療法は、腫瘍抗原を認識できるようにin vitroでT細胞を遺伝子改変し、一定数に増幅した後、患者に戻して癌細胞を殺し、腫瘍治療の目的を達成する。
【0003】
2017年に、2種の自家CAR-T療法が、米国でFDAの承認を取得した。一種はB細胞急性白血病用で、もう一種はびまん性B細胞非ホジキンリンパ腫用である。これら2種のCAR-T細胞は優れた臨床治療効果を持っているが、非常に高価で、調製期間が長いため、大規模な使用は非常に困難である。したがって、上記の問題を解決するには、ユニバーサルCAR-T製品を開発する必要がある。ユニバーサルCAR-Tは、健康なドナーの末梢血から分離されたT細胞を利用して調製できるため、同種異系の再注入が実現し、患者の治療待ち時間が大幅に短縮される。また、健康なドナーから得られたT細胞の生存率と機能は、患者由来のT細胞よりも優れており、CAR感染率を高め、治療効果を高めることができる。
【0004】
しかし、ユニバーサルCAR-Tセルの開発は、依然として次の2つの問題がある。(1)人工CAR-T細胞が患者に進入し、ある程度増殖した後、患者の正常な細胞または組織を攻撃し、移植片対宿主病(GvHD)を引き起こす可能性がある。(2)患者の正常な免疫系は、同種異系由来のCAR-T細胞を拒絶し、宿主対移植片反応(HvGD)を引き起こす可能性がある。現在、HvGDに対して、主にCD52、またはHLAをノックアウトすることにより、抑えまたは回避する。具体的には、CD52のノックアウトにより、ユニバーサルCAR-T細胞がアレムツズマブ(CD52抗体)に耐性をもつようにすることができるため、アレムツズマブを使用して患者のT細胞を枯渇させときに、導入されたCAR-T細胞を殺傷することを防ぐことができる。しかし、アレムツズマブを使用する場合、ユニバーサルCAR-T製品の製造および治療コストの増加になる。一方、HLA分子をノックアウトすることは、抗体または他の処理を使用しない場合にCAR-T細胞が患者のT細胞によって除去されるのを防ぐことができるが、HLA分子がノックアウトされた細胞は、患者のNK細胞によって認識され、拒絶反応を引き起こす。
【0005】
したがって、従来のユニバーサルCAR細胞療法をさらに改善する必要があり、特にCAR細胞に対するNK細胞の殺傷効果を低減し、それによってHvGDのリスクをさらに低減または回避する。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において、本発明提は、NK阻害性分子を提供する。NK阻害性分子は、1つまたは複数のNK阻害性リガンド、膜貫通ドメイン、および共刺激ドメインを含む。前記NK阻害性リガンドは、NK阻害性受容体(NK inhibitory receptor、NKIR)に特異的に結合して、NK細胞による、NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞に対する殺傷を阻害する。
【0007】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKIRを標的とする抗体またはその機能的フラグメント、あるいはNKIRの天然リガンドまたはそれに含まれるNKIR結合フラグメントである。一実施形態において、前記NKIRは、NKG2/CD94成分(例えば、NKG2A、NKG2B、CD94)、キラー細胞Ig様受容体(KIR)ファミリーメンバー(例えば、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、およびKIR3DL3)、白血球Ig様受容体(LIR)ファミリーメンバー(例えば、LIR1、LIR2、LIR3、LIR5、およびLIR8)、NK細胞受容体タンパク質1(NKR-P1)ファミリーメンバー(例えば、NKR-P1BおよびNKR-P1D)、免疫チェックポイント受容体(例えば、PD-1、TIGITおよびCD96、TIM3、LAG3)、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(SIGLEC)ファミリーメンバー(例えば、SIGLEC7、およびSIGLEC9)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、Ly49ファミリーメンバー(例えば、Ly49A、Ly49C、Ly49F、Ly49G1、およびLy49G4)、およびキラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG1)から選択される。好ましくは、前記NKIRは、PD1、NKG2A、NKG2B、CD94、LIR1、LIR2、LIR3、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR3DL1、CEACAM1、LAIR1、SIGLEC7、SIGLEC9、およびKLRG1から選択される。より好ましくは、前記NKIRは、PD1、NKG2A、CD94、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR3DL1、LIR1、CEACAM1、LAIR1、SIGLEC7、SIGLEC9、およびKLRG1から選択される。
【0008】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKIRを標的とする抗体であり、前記抗体が無傷の抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、線状抗体、sdAb、またはナノ抗体である。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、PD1、NKG2A、LIR1、KIR、SIGLEC7、SIGLEC9、および/またはKLRG1を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。
【0009】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKIRの天然リガンド、またはそれに含まれるNKIR結合フラグメントである。好ましくは、前記NK阻害性リガンドは、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン、コラーゲン、OCIL、シアル酸、免疫チェックポイントリガンド(例えば、PD-L1/PD-L2、CD155、CD112、CD113、Gal-9、FGL1など)、およびそれらに含まれるNKIR結合領域から選択される。より好ましくは、前記NK阻害性リガンドは、シアル酸、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン、PD-L1、PD-L2、およびそれらに含まれるNKIR結合領域である。より好ましくは、前記NK阻害性リガンドは、シアル酸、HLA-E細胞外領域、HLA-G細胞外領域、E-カドヘリン細胞外領域、PD-L1細胞外領域およびPD-L2細胞外領域から選択される。より好ましくは、前記NK阻害性リガンドは、EC1、およびEC2を含むE-カドヘリン細胞外領域であり、より好ましくはEC1、EC2、EC3、EC4、およびEC5を含むE-カドヘリン細胞外領域である。
【0010】
一実施形態において、NK阻害性分子に含まれる膜貫通ドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ζサブユニット、CD3εサブユニット、CD3γサブユニット、CD3δサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154であるタンパク質の膜貫通ドメイン、およびNKIR天然リガンドの膜貫通ドメイン、例えば、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン、コラーゲン、OCILの膜貫通ドメインから選択される。好ましい実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28およびCD278の膜貫通ドメインから選択される。
【0011】
一実施形態において、前記膜貫通ドメインは、配列番号9または11に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0012】
一実施形態において、NK阻害性分子に含まれる共刺激ドメインは、LTB、CD94、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD8、CD18、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、DAP10、DAP12、LAT、NKG2C、SLP76、PD-1、LIGHT、TRIM、ZAP70、およびそれらの組み合わせであるタンパク質の共刺激シグナル伝達ドメインから選択される。好ましくは、本発明の共刺激ドメインは、4-1BB、CD28、CD27、OX40、CD278、またはそれらの組み合わせに由来するものである。
【0013】
一実施形態において、前記共刺激ドメインは、配列番号13または15に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0014】
一実施形態において、NK阻害性分子は、細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。他の実施形態において、NK阻害性分子は、細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0015】
一実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dであるタンパク質のシグナル伝達ドメインから選択される。好ましくは、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζのシグナル伝達ドメインを含む。
【0016】
一実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号17または19に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0017】
本発明は、上記のNK阻害性分子をコードする核酸、および前記核酸を含むベクターをさらに提供する。
【0018】
第2の態様において、本発明提は、遺伝子改変免疫細胞を提供する。遺伝子改変免疫細胞は、(1)本発明のNK阻害性分子を発現し、および(2)少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる、ことを特徴とする。一実施形態において、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体をさらに発現する。
【0019】
一態様において、本発明提は、遺伝子改変免疫細胞を提供する。前記遺伝子改変免疫細胞は、(1)本発明のNK阻害性分子およびキメラ抗原受容体の融合タンパク質を発現し、前記融合タンパク質が、NK阻害性リガンド、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、および(2)少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる、ことを特徴とする。
【0020】
一実施形態において、MHC関連遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、TAP1、TAP2、LMP2、LMP7、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせである。
【0021】
一実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞は、少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。前記TCR/CD3遺伝子は、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0022】
好ましい実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞は、少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子および少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。前記少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子は、TRAC、TRBC、およびそれらの組み合わせから選択される。前記少なくとも1種のMHC関連遺伝子は、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせである。一実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞のTRACまたはTRBC、およびB2Mの発現が阻害されまたはサイレンシングされる。一実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞のTRACまたはTRBC、およびCIITAの発現が阻害されまたはサイレンシングされる。好ましい実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞のTRACまたはTRBC、B2MおよびCIITAの発現が阻害されまたはサイレンシングされる。好ましい実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞のTRACまたはTRBC、B2MおよびRFX5の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0023】
一実施形態において、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、CD52、GR、dCKおよび免疫チェックポイント遺伝子、例えば、PD1、LAG3、TIM3、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、PDCD1、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、およびGUCY1B3から選択される1つまたは複数の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを特徴とする。好ましくは、前記遺伝子改変免疫細胞のCD52、dCK、PD1、LAG3、TIM3、CTLA4、TIGIT、またはそれらの組み合わせが阻害されまたはサイレンシングされる。
【0024】
一実施形態において、前記リガンド結合ドメインは、TSHR、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD23、CD24、CD25、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD46、CD47、CD52、CD54、CD56、CD70、CD73、CD80、CD97、CD123、CD22、CD126、CD138、CD 179a、DR4、DR5、TAC、TEM1/CD248、VEGF、GUCY2C、EGP40、EGP-2、EGP-4、CD133、IFNAR1、DLL3、kappa軽鎖、TIM3、tEGFR、IL-22Ra、IL-2、ErbB3、ErbB4、MUC16、MAGE-A3、MAGE-A6、NKG2DL、BAFF-R、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、GPRC5D、Tn Ag、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-1 1Ra、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-β、SSEA-4、CD20、AFP、Folate受容体α、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、CS1、CD138、NCAM、Claudin18.2、Prostase、PAP、ELF2M、Ephrin B2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gploo、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、Fucosyl GMl、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、Folate受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD 179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE-A4、MART-1、WT-1、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質、サバイビンおよびテロメラーゼ、PCTA-l/Galectin 8、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座ブレークポイント、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、Cyclin Bl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B 1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES 1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸のカルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、PD1、PDL1、PDL2、TGFβ、APRIL、NKG2D、およびそれらの任意の組み合わせから選択される標的と結合する。
【0025】
一実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞は、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単核細胞、NK細胞またはNKT細胞である。好ましくは、前記遺伝子改変免疫細胞は、T細胞であり、例えば、CD4+/CD8+T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1、およびTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、γδ-T細胞、αβ-T細胞である。
【0026】
一態様において、本発明は、活性剤とする本発明のNK阻害性分子、核酸分子、ベクターまたは遺伝子改変免疫細胞、および1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0027】
一態様において、本発明は、癌、感染症または自己免疫疾患に罹患している被験者を治療する方法をさらに提供する。この方法は、有効量の、本発明によるNK阻害性分子、核酸分子、ベクター、遺伝子改変免疫細胞または医薬組成物を被験者に投与することを含む。したがって、本発明は、癌、感染症または自己免疫疾患を治療するための薬剤の製造におけるNK阻害性分子、核酸分子、ベクター、遺伝子改変免疫細胞の使用を包含する。
【0028】
一実施形態において、前記がんは、固形腫瘍または血液腫瘍である。より具体的には、前記がんは、脳神経膠腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、基底細胞がん、胆道がん、膀胱がん、骨肉腫、脳がんおよびCNSがん、乳がん、腹膜がん、子宮頸癌、絨毛がん、結腸癌および直腸がん、結合組織がん、消化器系のがん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、神経膠芽細胞腫(GBM)、肝臓がん、肝細胞腫瘍、上皮内腫瘍、腎臓がん、喉頭がん、肝臓腫瘍、肺がん、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、呼吸器系のがん、唾液腺がん、皮膚がん、扁平細胞がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮または子宮内膜がん、泌尿器系の悪性腫瘍、外陰がんおよび他のがんと肉腫、ならびにB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、エイズ関連リンパ腫、およびWaldenstromマクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)、B細胞前リンパ性白血病、芽球形質細胞様樹状細胞腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性骨髄性白血病(CML)、悪性リンパ増殖性疾患、MALTリンパ腫、有毛細胞白血病、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症、形質芽球性リンパ腫、前白血病、形質細胞様樹状細胞腫瘍、および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)から選択される。
【0029】
一実施形態において、前記感染症は、ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫によって引き起こされる感染症を含むが、これらに限定されない。
【0030】
一実施形態において、前記自己免疫疾患には、I型糖尿病、セリアック病、グレーブス病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、アジソン病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、血管炎症、悪性貧血、および全身性エリテマトーデスなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の利点は、本発明のNK阻害性分子が、NK阻害性リガンドのみを発現することと比較して、共刺激ドメインをさらに含むことであり、これにより、被験者のNK細胞による遺伝子改変免疫細胞の殺害をさらに減らす/阻害することができ、NK阻害性分子が細胞内シグナル伝達ドメインを含む場合でも、遺伝子改変免疫細胞による被験者のNK細胞の殺害を強化することができ、それによってHvGDのリスクをより良く減らし、真の同種異系再注入を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】E0-UNKi-TおよびE28-UNKi-T細胞におけるHLA-Eの発現レベルを示すものである。
図2】G0-UNKi-TおよびG28-UNKi-T細胞におけるHLA-Gの発現レベルを示すものである。
図3】ECad0-UNKi-TおよびECad28-UNKi-T細胞におけるE-カドヘリンの発現レベルを示すものである。
図4】A28-UNKi-T細胞におけるNKG2A scFvの発現レベルを示すものである。
図5】NK92-KLRG1細胞におけるKLRG1の発現レベルを示すものである。
図6】NK細胞の殺傷に対する本発明のUNKi-T細胞の阻害効果を示すものである。二元配置分散分析を使用し、T検定で統計分析を行った。*はP値が0.05未満であることを示し、**はP値が0.01未満であることを示し、***はP値が0.001未満であることを示し、有意水準に達する。
図7】A28z-UNKi-T細胞におけるNKG2A ScFvの発現レベルを示すものである。
図8】E28z-UNKi-T細胞におけるHLA-Eの発現レベルを示すものである。
図9】NK細胞の殺傷に対する本発明のUNKi-T細胞の阻害効果を示すものである。二元配置分散分析を使用し、T検定で統計分析を行った。*はP値が0.05未満であることを示し、**はP値が0.01未満であることを示し、***はP値が0.001未満であることを示し、有意水準に達する。
図10】本発明のUNKi-T細胞とNK細胞との共培養後のIFN-γ放出のレベルを示すものである。二元配置分散分析を使用し、T検定で統計分析を行った。***はP値が0.001未満であり、有意水準に達していることを示す。
図11】本発明KIRG4-UNKi-T細胞におけるKIR scFvの発現レベルを示すものである。
図12】本発明のLIRG4-UNKi-1-TおよびLIRG4-UNKi-2-T細胞におけるLIR1 scFvの発現レベルを示すものである。
図13】NK細胞の殺傷に対する本発明のUNKi-T細胞の阻害効果を示すものである。
図14】SC7G4-T細胞、SC7/SC9G4-T細胞およびK1G4-T細胞におけるscFvの発現レベルを示すものである。
図15】NK細胞の殺傷に対するSC7G4-T細胞、SC7/SC9G4-T細胞、およびK1G4-T細胞の抑制効果を示すものである。
図16】PDL1-T細胞におけるPDL1の発現レベルを示すものである。
図17】NK細胞増殖に対するPDL1-T細胞の阻害効果を示すものである。
図18】NKi-B細胞およびNKi-Huh7細胞におけるKIR scFvの発現レベルを示すものである。
図19】NK細胞の殺傷に対するNKi-B細胞とNKi-Huh7細胞の抑制効果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0034】
NK阻害性分子
1種または複数種のHLAクラスI分子の発現が減少または排除された細胞が、NK細胞によって非自己として認識され、したがって標的となって殺傷される可能性があるという報告があった。したがって、1種または複数種のNK阻害性分子の前記細胞での発現は、NK細胞に殺傷されないように前記細胞を保護することができる。
【0035】
したがって、第1の態様において、本発明は、1つまたは複数のNK阻害性リガンド、膜貫通ドメイン、および共刺激ドメインを含むNK阻害性分子を提供する。前記NK阻害性リガンドは、NK阻害性受容体(NK inhibitory receptor、NKIR)に特異的に結合して、NK細胞による、NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞に対する殺傷を阻害する。
【0036】
本明細書において、「NK阻害性リガンド」という用語は、NKIRに結合し、NK細胞機能(例えば、殺傷機能)を阻害することができる分子を指す。一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKIRを標的とする抗体またはその機能的フラグメント、あるいはNKIRの天然リガンドまたはそれに含まれるNKIR結合フラグメントである。NKIRの非限定的な例として、免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(Immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif、ITIM)を有するかまたはそれに結合するNK細胞表面受容体を含む。このような受容体として、NKG2/CD94成分(例えば、NKG2A、NKG2B、CD94)、キラー細胞Ig様受容体(KIR)ファミリーメンバー(例えば、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、およびKIR3DL3)、白血球Ig様受容体(LIR)ファミリーメンバー(例えば、LIR1、LIR2、LIR3、LIR5、およびLIR8)、NK細胞受容体タンパク質1(NKR-P1)ファミリーメンバー(例えば、NKR-P1BおよびNKR-P1D)、免疫チェックポイント受容体(例えば、PD-1、TIGITおよびCD96、TIM3、LAG3)、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(SIGLEC)ファミリーメンバー(例えば、SIGLEC7、およびSIGLEC9)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、Ly49ファミリーメンバー(例えば、Ly49A、Ly49C、Ly49F、Ly49G1、およびLy49G4)、およびキラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG1)を含むが、これらに限定されない。
【0037】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKIRを標的とする抗体またはその機能的フラグメントであり、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス化抗体、キメラ抗体およびその機能的フラグメントが挙げられる。抗体またはその機能的フラグメントの例として、無傷の抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、線状抗体、sdAb(VH、またはVL)、ナノ抗体(Nanobody、Nb)などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、Fab、scFv、sdAb、およびナノ抗体から選択される。
【0038】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKG2A/CD94成分を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKG2A、NKG2B、またはCD94を標的とする抗体である。NKG2/CD94は、CD94がジスルフィド結合を介して他のNKG2サブユニットと結合して構成されたヘテロダイマーである。CD94の細胞質領域は7アミノ酸残基しかなく、シグナルを伝達する構造を持っていない。NKG2ファミリーは、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2Fなどメンバーを含み、そのうち、NKG2AおよびNKG2Bは、高い相同性を有する同じ遺伝子の異なるスプライスである。NKG2A/2Bの細胞質尾部には、SHP1またはSHP-2を動員することによって抑制性シグナルを伝達する2つのITIMが含まれている。NKG2A/2Bの天然リガンドはHLA-Eである。NKG2A/2Bは、活性化受容体NKG2Cよりも高い親和性でリガンドに結合するため、NK細胞の抑制性受容体と活性化受容体の両方がHLA-Eを発現する標的細胞に結合できる場合、抑制性NKG2A/CD94が優勢になり、最終的にNK細胞の活性を阻害する。当業者で周知のNKG2A抗体を本発明に使用することができる。例えば、Z270(Immunotech,Franceから入手可能)、Z199(Beckman Coulter,USAから入手可能)、20D5(BD Biosciences Pharmingen,USAから入手可能)、P25(Morettaetal,Univ.Genova,Italyから入手可能)などが挙げられる。
【0039】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKG2Aを標的とする抗体であり、(1)配列番号72に示されるCDR-L1、配列番号73に示されるCDR-L2、配列番号74に示されるCDR-L3、配列番号75に示されるCDR-H1、配列番号76に示されるCDR-H2、および配列番号77に示されるCDR-H3、または(2)配列番号78に示されるCDR-L1、配列番号79に示されるCDR-L2、配列番号80に示されるCDR-L3、配列番号81に示されるCDR-H1、配列番号82に示されるCDR-H2、および配列番号83に示されるCDR-H3を含む。一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKG2Aを標的とする抗体であり、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。前記軽鎖可変領域は、配列番号3、7または68に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。前記重鎖可変領域は、配列番号1、5、67に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、配列番号1および3を含む抗NKG2A抗体であり、配列番号5、および7を含む抗NKG2A抗体であり、または配列番号67、および68含む抗NKG2A抗体である。
【0040】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、KIRを標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。KIR分子は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するI型膜貫通タンパク質であり、その構造として細胞外領域、膜貫通ドメイン、細胞質領域が含まれる。細胞外領域に含まれるIg様ドメインの数によって、KIRはKIR2DサブファミリーとKIR3Dサブファミリーに分けることができる。細胞質領域の長さによって、KIRはKIR2DL、KIR2DS、KIR3DL、KIR3DSなどの長い(L)タイプと短い(S)タイプに分けることもできる。ここで、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR3DL1、KIR3DL2、およびKIR3DL3の細胞質領域には2つの免疫受容体チロシンベースの抑制性モチーフ(Immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif、ITIM)が含まれ、KIR2DL5の細胞質領域には、抑制性KIR受容体であるITIMが1つ含まれる。具体的には、阻害性KIR受容体の細胞質領域に含まれるITIMがリン酸化時に、ホスファターゼSHP1、およびSHP2を動員し、細胞基質の脱リン酸化を引き起こし、結果、細胞毒性作用やサイトカイン分泌などのNK細胞エフェクター機能を阻害しまたは終了させる。発現レベルが個人によって異なるが、KIRは大部分のNK細胞で発現される。同一個体内でも、異なるNK細胞は異なるタイプのKIRを発現し、同一NK細胞はいくつかの異なるKIR分子を発現する可能性がある。KIRの認識リガンドは、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cの特定の多型エピトープを含む古典的なHLAクラスI分子である。例えば、KIR3DL2はHLA-A対立遺伝子-A3および-A11を認識し、KIR3DL1はHLA-Bw-4を認識し、KIR2DL1はHLA-Cw2、HLA-Cw4およびHLA-Cw6アイソフォームを認識する。KIRのマウスホモログはgp49B1であり、長さが335アミノ酸で、細胞質領域に2つのITIM構造が含まれている。好ましい実施形態において、KIRを標的とする抗体は、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、KIR2DL5、およびgp49B1からなる群から選択される1つまたは複数を標的とする抗体である。当業者で周知のKIR抗体を本発明に使用することができる。例えば、GL183(KIR2DL2/L3を標的とし、Immunotech,FranceおよびBeckton Dickinson,USAから入手可能)、EB6(KIR2DL1を標的とし、Immunotech,FranceおよびBeckton Dickinson,USAから入手可能)、AZ138(KIR3DL1を標的とし、Morettaetal,Univ.Genova,Italyから入手可能)、Q66(KIR3DL2を標的とし、Immunotech,Franceから入手可能)、Z27(KIR3DL1を標的とし、Immunotech,FranceおよびBeckton Dickinson,USAから入手可能)などが挙げられる。
【0041】
一実施形態において、NK阻害性リガンドはKIRを標的とする抗体であり、配列番号84に示されるCDR-L1、配列番号85に示されるCDR-L2、配列番号86に示されるCDR-L3、配列番号87に示されるCDR-H1、配列番号88に示されるCDR-H2、および配列番号89に示されるCDR-H3を含む。一実施形態において、NK阻害性リガンドはKIRを標的とする抗体であり、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。前記軽鎖可変領域は、配列番号58に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。前記重鎖可変領域は、配列番号59に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、配列番号58、および配列番号59を含む抗KIR抗体であり、そのアミノ酸配列が例えば配列番号57または60に示される。
【0042】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、LIRを標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。LIRは、免疫グロブリン様転写物(Immunoglobulin-like transcripts、ILT)または単球-マクロファージ抑制性受容体(Monocyte-macrophage inhibitory receptor、MIR)とも言う。LIRファミリーには8つのメンバーが含まれ、そのうち、LIR1(ILT2とも呼ばれる)、LIR2(ILT4とも呼ばれる)、LIR3(ILT5とも呼ばれる)、LIR5(ILT3とも呼ばれる)、およびLIR8の細胞質領域に2~4つのITIM構造が含まれる。そのうち少なくとも1つは、抑制性LIR受容体であるVXYXXL/Vモチーフである。LIR-1は、NK細胞株NKLによる、HLAクラスI分子を発現する標的細胞に対する殺傷と、CD16を介したNKLの活性化を阻害できる報告があった。マウスにおけるLIRのホモログは、PIR-AおよびPIR-Bを含むPIR(Paired Ig-like receptor)であり、ここで、PIR-AがFcRγホモダイマーの協力下で活性化シグナルを伝達し、PIR-Bがその細胞質領域に含まれる4つのITIM構造を介して抑制性シグナルを伝達する。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、LIR1、LIR2、LIR3、LIR5、LIR8またはPIR-Bを標的とする抗体である。
【0043】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、LIR1を標的とする抗体であり、(1)配列番号90に示されるCDR-L1、配列番号91に示されるCDR-L2、配列番号92に示されるCDR-L3、配列番号93に示されるCDR-H1、配列番号94に示されるCDR-H2、および配列番号95に示されるCDR-H3、または(2)配列番号96に示されるCDR-L1、配列番号97に示されるCDR-L2、配列番号98に示されるCDR-L3、配列番号99に示されるCDR-H1、配列番号100に示されるCDR-H2、および配列番号101に示されるCDR-H3を含む。一実施形態において、NK阻害性リガンドは、LIR1を標的とする抗体であり、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。前記軽鎖可変領域は、配列番号61または65に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。前記重鎖可変領域は、配列番号62または64に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、抗LIR1抗体であり、そのアミノ酸配列が配列番号63または66に示される。LIRファミリーメンバーを標的とする当分野で既知の他の抗体も本発明に使用できる。一実施形態において、NK阻害性リガンドは、免疫チェックポイント受容体(例えば、PD-1、TIGIT、CD96、TIM3、LAG3)を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。好ましい実施形態において、NKの阻害性リガンドは、PD-1を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。PD-1は主に活性化したNK細胞で発現し、CD28ファミリーに属し、268アミノ酸からなるI型膜貫通型糖タンパク質である。その構造は、主に細胞外免疫グロブリン可変領域(IgV)のような構造、疎水性膜貫通領域、および細胞内領域を含む。細胞内領域の尾部には2つの独立のチロシン残基があり、N末端のチロシン残基はITIMの形成に関与し、C末端のチロシン残基は免疫受容体チロシンベースのスイッチングモチーフ(immunoreceptor tyrosine based switch motif、ITSM)の形成に関与している。PD-1がそのリガンド(例えばPD-L1およびPD-L2)に結合した後、PD-1のITSMドメインにおけるチロシンのリン酸化が促進され、下流のプロテインキナーゼSykおよびPI3Kの脱リン酸化が引き起こされ、下流のAKT、ERKなどの経路の活性化が阻害され、結果、NKの活性が阻害される。
【0044】
好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、TIGITを標的とする抗体または機能的フラグメントである。TIGITは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、細胞外免疫グロブリン可変領域(IgV)ドメイン、1型膜貫通ドメイン、およびITIMと免疫グロブリンチロシンテール(ITT)モチーフを持つ細胞内領域により構成されている。リガンド(例えば、CD155、CD112、CD113)に結合すると、細胞内阻害シグナルの伝達を誘導し、NK細胞の活性を阻害する。
【0045】
好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、LAG3を標的とする抗体または機能的フラグメントである。LAG3は、タンパク質Igスーパーファミリーのメンバーであり、活性化したT細胞、NK細胞、B細胞、形質細胞様樹状細胞に発現する1型膜貫通タンパク質である。LAG3の4つのIgGドメインは、CD4分子と高い構造的相同性を有しているが、それらのアミノ酸相同性は20%未満である。研究によると、LAG3はT細胞とNK細胞の増殖および永続的記憶に対して負の調節作用を有する。リガンド(例えばFGL1)によって活性化されると、腫瘍細胞などの「悪い細胞」の免疫系の追跡から逃れることを促進できる。
【0046】
好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、TIM3を標的とする抗体または機能的フラグメントである。TIM3は、TIMファミリーの受容体タンパク質であり、T細胞、Treg細胞、先天免疫細胞(樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、単球)の表面に発現する。TIMファミリーのメンバーは3つの遺伝子によってコードされる。具体的には、HAVCR1はTIM1をコードし、HAVCR2はTIM3をコードし、TIMD4はTIM4をコードする。TIM3には、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ガレクチン-9(galectin-9またはGal-9)、HMGB1、およびCEACAM-1などの多種のリガンドがある。NK細胞で発現した場合、TIM3が機能不全のNK細胞のマーカーである可能性があると考えられており、TIM3の遮断はNK細胞の機能不全を逆転させることが証明された。
【0047】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKR-P1を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。NKR-P1は、ヒト、マウス、ラットのNK細胞で発現するII型膜貫通型糖タンパク質である。現在、マウスの6つのNKR-P1メンバー、即ちNKR-P1A、NKR-P1B、NKR-P1C、NKR-P1D、NKR-P1E、NKR-P1Fが検出されたが、ヒトではNKR-P1A(CD161とも呼ばれる)のみが検出された。NKR-P1分子の細胞外領域は、C型レクチン様スーパーファミリーのNK受容体ドメイン(NKD)であり、Ly49、Cd69、CD94/NKG2分子と構造が類似している。NKR-P1は主にホモダイマーの形で存在しているが、ヒトNKR-P1Aは単量体の形のものが存在する可能性がある。NKR-P1ファミリー分子の細胞質領域は、異なる種で異なる構造を持っている。例えば、NKR-P1BおよびNKR-P1Dの細胞質領域は、ITIMモチーフを含み、チロシンのリン酸化によりSHP-1を動員して、抑制性シグナルを伝達する。一方、NKR-P1Cは、膜貫通領域の正に帯電したアミノ酸を介してFc受容体に結合し、それによってSykを動員して活性化シグナルを伝達する。したがって、好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKR-P1B、またはNKR-P1Dを標的とする抗体である。
【0048】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、CEACAM1を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。CEACAM1は、CD66a、胆汁糖タンパク質(BGP)またはC-CAM1とも呼ばれ、癌胎児性抗原(CEA)遺伝子ファミリーのメンバーであり、免疫球タンパク質(Ig)スーパーファミリーに属している。活性化されたNK細胞では、CEACAM1の発現がアップレギュレーションされ、その同種親和性の相互作用(homophilic interaction)がリンパ球の細胞毒性効果の阻害に繋がる。CEACAM1は、CD66a(CEACAM1)、CD66c(CEACAM6)、およびCD66e(CEACAM5、CEA)タンパク質を含む他の既知のCEACAMタンパク質と相互作用する。ヒトでは、これまでに11の異なるCEACAM1スプライスバリアントが検出された。CEACAM1アイソフォームの命名は、細胞外免疫グロブリン様ドメインの数(例えば、4つの細胞外免疫グロブリン様ドメインを持つCEACAM1はCEACAM1-4と呼ばれる)と細胞質尾部の長さ(例えば、細胞質尾部が長いCEACAM1-4はCEACAM1-4Lと呼ばれ、細胞質尾部が短いCEACAM1-4はCEACAM1-4Sと呼ばれる)に関連している。CEACAM1のN末端ドメインはシグナルペプチドの直後から始まり、その構造はIgV型と考えられている。
【0049】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、SIGLECを標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。ヒトで16種のSIGLECタンパク質が同定され、マウスで9種のSIGLECタンパク質が同定された。前記SIGLECタンパク質は、アミノ末端V型ドメインを含む2~17個の細胞外Igドメインで構成されている。前記V-型ドメインはシアル酸結合部位を含む。Siglecは、一般的に2つのグループに分けられ、Siglec1、Siglec2、Siglec4、Siglec15により構成される第1のサブセット、およびSiglec3、Siglec5、Siglec6、Siglec7、Siglec8、Siglec9、Siglec10、Siglec11、Siglec12、Siglec14、Siglec16を含むCD33関連の第2のサブセットである。Siglec7は、p75、CD328、またはAIRMとも呼ばれ、細胞外N末端Ig様V型ドメイン、2つのIg様C2型ドメイン、および1つのITIMモチーフと1つのITIM様モチーフ領域を含む細胞質内細胞質領域を含む。Siglec7は、NK細胞、樹状細胞、単球、好中球で構成的に発現する。Siglec7がNK細胞を介した腫瘍クリアランスに対して抑制効果があることは観察された。Siglec9の構造はSiglec7と非常に似ており、それらのN末端のVグループIgドメインは約77%の総アミノ酸配列同一性を有し、異なるシアル酸結合特異性が示される。NK細胞の機能研究により、Siglec9結合シアル酸リガンドを発現する腫瘍細胞がNK細胞の活性化と腫瘍細胞の殺傷を阻害することが実証された。多くのヒト腫瘍は、Siglec9に結合するシアル酸リガンドを強力にアップレギュレートし、腫瘍が免疫を回避でき、癌が進行する。
【0050】
好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、当分野で知られている、Siglec7またはSiglec9を標的とする抗体である。例えば、抗Siglec7抗体は、ヒトSiglec7/CD328抗体(AF1138、R&D Systems)、クローン#194212(MAB1138、R&D Systems)、クローン#194211(MAB11381、R&D Systems)、クローンZ176(A22330、Beckman Coulter)、6-434(339202、Biolegend)、REA214(Miltenyl Biotec)、S7.7(MCA5782GA、BioRad)、10B2201(MBS604764、MyBioSource)、8D8(MBS690562、MyBioSource)、10B2202(MBS608694、MyBioSource)、5-386(MBS214370、MyBioSource)に由来するものである。抗Siglec9は、MAB1139(クローン#191240、R&D Systems)、AF1139(R&D Systems)、D18(SC-34936、Santa Cruz Biotechnology)、Y-12SC34938(SC3-4938、Santa Cruz Biotechnology)、AB 197981(Abeam)、AB96545(Abeam)、AB89484(クローン#MM0552-6K12、Abeam)、AB 130493(Abeam)、AB117859(クローン#3G8、Abeam)、E10-286(Becton Dickinson)に由来するものである。Siglec7とSiglec9の細胞外構造の類似性を考慮すると、両方を標的とする抗体も、本発明のNK阻害性リガンドとして作用することができる。
【0051】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、SIGLEC7、SIGLEC9またはその両方を標的とする抗体であり、(1)配列番号102に示されるCDR-L1、配列番号103に示されるCDR-L2、配列番号104に示されるCDR-L3、配列番号105に示されるCDR-H1、配列番号106に示されるCDR-H2、および配列番号107に示されるCDR-H3、(2)配列番号122に示されるCDR-L1、配列番号123に示されるCDR-L2、配列番号124に示されるCDR-L3、配列番号125に示されるCDR-H1、配列番号126に示されるCDR-H2、および配列番号1277に示されるCDR-H3、(3)配列番号131に示されるCDR-L1、配列番号132に示されるCDR-L2、配列番号133に示されるCDR-L3、配列番号134に示されるCDR-H1、配列番号135に示されるCDR-H2、および配列番号136に示されるCDR-H3、(4)配列番号140に示されるCDR-L1、配列番号141に示されるCDR-L2、配列番号142に示されるCDR-L3、配列番号143に示されるCDR-H1、配列番号144に示されるCDR-H2、および配列番号155に示されるCDR-H3、(5)配列番号176に示されるCDR-L1、配列番号177に示されるCDR-L2、配列番号178に示されるCDR-L3、配列番号179に示されるCDR-H1、配列番号180に示されるCDR-H2、および配列番号181に示されるCDR-H3、または、(6)配列番号188に示されるCDR-L1、配列番号189に示されるCDR-L2、配列番号190に示されるCDR-L3、配列番号191に示されるCDR-H1、配列番号192に示されるCDR-H2、および配列番号193に示されるCDR-H3を含む。上記の抗体(1)-(4)はSIGLEC7を標的とし、抗体(5)-(6)はSIGLEC7とSIGLEC9の両方を標的とする。一実施形態において、NK阻害性リガンドは、SIGLEC7、SIGLEC9またはその両方を標的とする抗体であり、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。前記軽鎖可変領域は、配列番号108、128、137、146、182、185または194に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。前記重鎖可変領域は、配列番号109、129、138、147、183、186または195に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、抗SIGLEC7、SIGLEC9または両方の抗体であり、そのアミノ酸配列が配列番号110、130、139、148、184、187または196に示されるものである。一実施形態において、NK阻害性リガンドは、LAIR1を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。LAIR1は10個のエキソンを含み、287アミノ酸からなるI型膜貫通糖タンパク質をコードし、単一の細胞外C2型Ig様ドメインを含み、その後に単一の膜貫通ドメインにリンクしたストークドメインとシグナル伝達を抑制する2つの膜貫通ITIMモチーフとが続く。LAIR1は、LIRおよびKIRファミリーのメンバーとある程度の構造的相同性を有しており、つまり、これらの分子が同じ祖先遺伝子に由来する可能性がある。LAIR1は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、およびヒトCD34+細胞を含む造血前駆細胞に発現する。ITIMモチーフが存在するため、これまでのヒトとマウスでの研究により、LAIR1が免疫抑制の役割を果たすことがわかっている。さらなる研究により、LAIR1は静止状態のNK細胞を阻害するだけでなく、活性化されたNK細胞による標的細胞に対する殺傷も阻害することが示された。
【0052】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、Ly49を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。Ly49はII型膜貫通型糖タンパク質であり、ジスルフィド結合を介してホモダイマーを形成し、ヒトKIRと同様の機能を果たし、つまり、MHC-I分子リガンドと相互作用してシグナルを伝達し、NK細胞の活性を調節する。これまでのところ、マウスLy49ファミリーには11のメンバー、つまりLy49A、Ly49B、Ly49C、Ly49D、Ly49E、Ly49F、Ly49G、Ly49H、Ly49I、Ly49P、Ly49Qが含まれる。ここで、Ly49A、Ly49C、Ly49F、Ly49G、Ly49Qはいずれも細胞質領域においてITIMモチーフを含み、チロシンキナーゼSHP-1に結合して活性化させ、リン酸化チロシンの生成を妨げることでNK細胞の活性化を阻害する。したがって、好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、Ly49A、Ly49C、Ly49F、Ly49G、またはLy49Qを標的とする抗体である。
【0053】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、KLRG1を標的とする抗体またはその機能的フラグメントである。KLRG1は、T細胞とNK細胞の活性を調節するII型膜貫通タンパク質表面共抑制性受容体である。その細胞外部分にC型レクチンドメインが含まれ、既知のリガンドがカドヘリンであり、その細胞内部分に免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)ドメインが含まれている。C型肝炎患者の末梢血中のNK細胞でのKLRG1受容体の発現は、NK細胞の数の減少および機能の低下を促進する可能性があることが文献の報告があった。そのメカニズムは、主にNK細胞の増殖を阻害し、NK細胞のアポトーシスを促進し、NK細胞からの炎症性サイトカインの放出を減少させることである。
【0054】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、KLRG1を標的とする抗体であり、(1)配列番号111に示されるCDR-L1、配列番号112に示されるCDR-L2、配列番号113に示されるCDR-L3、配列番号114に示されるCDR-H1、配列番号115に示されるCDR-H2および配列番号116に示されるCDR-H3、(2)配列番号149に示されるCDR-L1、配列番号150に示されるCDR-L2、配列番号151に示されるCDR-L3、配列番号152に示されるCDR-H1、配列番号153に示されるCDR-H2、および配列番号154に示されるCDR-H3、(3)配列番号158に示されるCDR-L1、配列番号159に示されるCDR-L2、配列番号160に示されるCDR-L3、配列番号161に示されるCDR-H1、配列番号162に示されるCDR-H2、および配列番号163に示されるCDR-H3、または、(4)配列番号167に示されるCDR-L1、配列番号168に示されるCDR-L2、配列番号169に示されるCDR-L3、配列番号170に示されるCDR-H1、配列番号171に示されるCDR-H2、および配列番号172に示されるCDR-H3を含む。一実施形態において、NK阻害性リガンドは、KLRG1を標的とする抗体であり、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。前記軽鎖可変領域は、配列番号117、155、164または173に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。前記重鎖可変領域は、配列番号118、156、165または174に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、抗KLRG1抗体である。そのアミノ酸配列が配列番号119、157、166または175に示されるものである。
【0055】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、NKIR天然リガンドまたはそれに含まれるNKIR結合領域(例えば、細胞外領域)であり、このような天然リガンドとして、非古典的なHLA-I分子(例えば、HLA-E、HLA-FおよびHLA-G)、カドヘリン(Cadherin)、コラーゲン、OCIL、シアル酸、免疫チェックポイントリガンド(例えば、PD-L1/PD-L2、CD155、CD112、CD113、Gal-9、FGL1)などを含むが、これらに限定されない。
【0056】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、非古典的なHLA-I分子またはその細胞外領域であり、より好ましくは非古典的なHLA-I分子のα1およびα2ドメインである。非古典的なHLA-I分子は、同じ染色体領域6p21.3、第6染色体の短腕に位置している。非共有結合によって結合された重鎖(α鎖)と軽鎖(ベータ鎖、B2M遺伝子によってコードされる)で構成されている。α鎖は、細胞外領域(α1、α2、α3ドメインを含む)、膜貫通ドメイン、細胞質領域の3つの部分を含む。ここで、α1とα2は、抗原結合溝を形成し、溝に入る抗原ペプチドへの結合に関与し、α3は、免疫グロブリンの定常領域ドメインと相同であり、T細胞表面分子CD8に結合する。非古典的なHLAクラスI分子は、HLA-E、HLA-F、およびHLA-Gの3つのメンバーを含む。HLA-Eは、NK細胞表面のCD94/NKG2受容体に結合することによりNK細胞の活性を調節する。HLA-Eの機能は、HLAクラスI分子(HLA-A、-B、-C、および-G)のリーダー配列に由来するペプチドに結合し、阻害性受容体CD94/NKG2Aとの相互作用によりNK細胞に提供し、それにより、NK細胞による正常レベルのHLAクラスI分子を発現する細胞に対する溶解を阻害する。生理学的条件下で、の抑制性受容体CD94/NKG2Aに対するHLA-Eの親和性は、活性化受容体CD94/NKG2Cに対する以前の親和性よりも顕著に高いため、HLA-Eの発現レベルのアップレギュレーションは、NK細胞の殺傷効果から標的細胞を保護することができる。HLA-FはNK阻害性受容体ILT2およびILT4に結合でき、この結合がILT2およびILT4抗体によって効果的に阻害されることができる。HLA-Fの機能はまだ調査中ですが、ILT2、およびILT4への結合が免疫抑制効果を持っている可能性があると推測されている。HLA-Gは、例えば、CD94/NKG2A、LIR-1、LIR-2、KIR2DL1などの多種のNK抑制性受容体を認識できる。研究によると、胎児細胞の表面にあるHLA-G分子は、母体のNK細胞の表面にあるKIRに結合することにより、NK細胞の殺傷活性を阻害し、それによって母体にHLA半異種胎児に対する免疫耐性をもたらす可能性がある。また、メラノーマ、肉腫、リンパ腫などの固形腫瘍の細胞表面に高度に発現するHLA-G分子により、腫瘍細胞がNK細胞の殺傷と溶解作用から逃げることも可能である。
【0057】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、HLA-E細胞外領域であり、配列番号31に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いはそのコード配列が配列番号32に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。他の実施形態において、NK阻害性リガンドは、HLA-E細胞外領域の変異体(Y84C変異を含む)であり、配列番号33に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いはそのコード配列が配列番号34に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0058】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、HLA-G細胞外領域であり、配列番号35に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いはそのコード配列は、配列番号36に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0059】
一実施形態において、遺伝子改変免疫細胞の内因性B2Mをノックアウトし、非古典的なHLAクラスI分子を発現してNK阻害性リガンドとする場合、同義変異(即ち、ヌクレオチド配列の変化のみでアミノ酸配列の変化はない)を持つB2M遺伝子を導入することにより非古典的なHLA-I分子と複合体を形成して阻害機能を発揮し、同時に、同義変異を持つB2M遺伝子により、内因性B2Mを標的とする遺伝子編集ツールによるノックアウトを回避することもできる。この実施形態では、NK阻害性リガンドは、B2Mと非古典的なHLAクラスI分子の細胞外領域の融合分子を含む。例えば、NK阻害性リガンドは、B2MとHLA-E細胞外領域またはHLA-G細胞外領域の融合分子を含む。一具体的な実施形態において、B2MとHLA-E細胞外領域の融合分子を含み、好ましくは、前記HLA-E細胞外領域がY84C変異(配列番号33)を含む。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、配列番号46~53からなる群から選択される提示ペプチド、ならびにB2MとHLA-E細胞外領域の融合分子を含む。B2M遺伝子の同義変異のための方法は、当業者で周知のものを用いる。好ましい実施形態において、B2Mは、配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。同義的に変異したB2M遺伝子のヌクレオチド配列は、例えば、配列番号38に示されるものである。
【0060】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは破骨細胞阻害レクチン(Osteoclast inhibitory lectin、OCIL)またはそのNKIR結合ドメインである。マウスOCILは、OCIL(Clr-bとも呼ばれる)、OCILrP1(Clr-dとも呼ばれる)、およびmOCILrP2(Clr-gとも呼ばれる)の3つのメンバーを含む。OCILは各組織で広く発現しており、その発現パターンがMHC-I分子と類似する。OCILはNKR-P1B/Dのリガンドである。研究によると、腫瘍細胞にOCILを発現させると、腫瘍細胞に対するNK細胞の殺傷効果を抑制でき、OCIL特異的抗体はこの抑制効果を逆転させることができる。
【0061】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、カドヘリンまたはその細胞外領域であり、例えば、E-カドヘリン(E-cad)、N-カドヘリン(N-cad)またはR-カドヘリン(R-cad)であり、好ましくはE-カドヘリンの細胞外領域である。カドヘリンは、主に均一な細胞間接着を媒介するカルシウム依存性膜貫通タンパク質の一種であり、NK阻害性受容体KLRG1に結合する。カドヘリン分子は、約723~748アミノ酸からなるI型膜タンパク質であり、構造としてリガンド結合に関与する細胞外領域、膜貫通ドメイン、および高度に保存された細胞質領域を含む。ここで、細胞外領域にはいくつかのカドヘリンリピートドメイン(EC)があり、リガンド結合に関与する4~5アミノ酸残基からなるリピート配列が含まれる。ヒトE-カドヘリンはCDH1遺伝子によってコードされ、現在、カドヘリンファミリーの中で最も研究されているメンバーである。したがって、好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、E-カドヘリンの細胞外領域であり、EC1、およびEC2を含む。より好ましくは、NK阻害性リガンドは、E-カドヘリンの細胞外領域であり、EC1、EC2、EC3、EC4、およびEC5を含む。より好ましくは、NK阻害性リガンドは、E-Cadであり、配列番号39または41に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いはそのコード配列は、配列番号40または42に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0062】
一実施形態において、NK阻害性リガンドはコラーゲンまたはそのNKIR結合ドメインであり、LAIR1に結合する。コラーゲン分子は、3つのα鎖で構成されるトリマーであり、α鎖がそれぞれ(グリシン-プロリン-ヒドロキシプロリン)nリピート配列を含む。LAIR1は、Gly-Pro-Hypリピート配列を認識してそれと相互作用する。このリピート配列が広く存在するため、LAIR1は多種のコラーゲン分子に広く結合することが証明された。コラーゲンXVII、XIII、XXIIIなどの膜貫通コラーゲン、およびコラーゲンI、II、IIIなどの非膜貫通コラーゲンを含むが、これらに限定されない。腫瘍細胞または腫瘍間質細胞が多種のコラーゲン分子を高度に発現することが多く、これは、免疫細胞の表面にある抑制性受容体LAIR1に結合することで抑制性シグナルを免疫細胞に伝達し、免疫回避の目的を達成する可能性がある。
【0063】
一実施形態において、NK阻害性リガンドはシアル酸またはそのNKIR結合領域であり、SIGLECファミリーメンバー(例えば、SIGLEC7、および/またはSIGLEC9)に結合する。シアル酸は脊椎動物の自然免疫系の重要な成分であり、NK細胞の殺傷活性は腫瘍細胞の表面のシアル化に関連している。腫瘍細胞のシアル化は、腫瘍細胞とNK細胞との間の物理的相互作用を妨げるだけでなく、腫瘍細胞の表面の、NK細胞と結合できる活性化リガンドをマスクすることもできる。また、腫瘍細胞の表面でのシアル化により、腫瘍細胞とNK細胞との間の免疫シナプスの形成が阻害され、それによって腫瘍に対するNK細胞の毒性が弱まる。研究によれば、腫瘍細胞の表面でのシアル化は、シグレックを介した免疫抑制シグナルを誘発することにより、NK細胞の殺傷活性を阻害することができることがわかった。Siglec7はほとんどのNK細胞の表面に発現し、腫瘍細胞の表面がα-2,8グリコシド結合によって結合されたシアル酸でNK細胞の表面のSiglec7と結合した後、NK細胞の活性化を阻害し、腫瘍細胞がNK細胞による殺傷機能から逃れることが可能となる。
【0064】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、PD-L1/PD-L2またはその細胞外領域であり、PD1に結合する。PD-L1は、抗原提示細胞(APC)、および血管内皮細胞、膵島細胞、免疫特権部位(例えば、胎盤、精巣、眼)などの非造血細胞で構成的に低発現する。I型およびII型インターフェロン、TNF-α、VEGFなどの炎症性サイトカインはPD-L1の発現を誘導することができる。PD-L2は、活性化されたマクロファージと樹状細胞でのみ発現する。腫瘍細胞自体がPD-L1の発現をアップレギュレーションすることができる。腫瘍微小環境での炎症性サイトカインもPD-L1およびPDL2の発現を誘導することができる。腫瘍細胞表面でのPD-L1およびPD-L2のアップレギュレーションされた発現は、PD-1による免疫抑制シグナルの伝達を引き起こし、NK細胞の殺傷活性を阻害することができる。好ましい実施形態において、NK阻害性リガンドは、PD-L1細胞外領域またはPD-L2細胞外領域であり、配列番号70または71に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0065】
一実施形態において、NK阻害性リガンドはCD155、CD112またはCD113またはそのNKIR結合領域であり、いずれもTIGITに結合する。CD155はTIGITの高親和性リガンドである。腫瘍表面で高度に発現するCD155がNK表面のTIGITに結合すると、腫瘍細胞に対するNK細胞の殺傷効果が阻害される。CD112およびCD113もTIGITに結合し、ただし、親和性が比較的弱い。
【0066】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、ガレクチン9(Gal-9とも呼ばれる)またはそのNKIR結合領域であり、TIM3に結合する。Gal-9は、多くの造血細胞によって広く発現しおよび分泌されるC型レクチンであり、細胞表面タンパク質の炭水化物部分に結合する。TIM3では、Gal-9がそのIgVドメインにおける炭水化物モチーフに結合し、TIM3陽性NK細胞にカルシウム流入と細胞死を誘導する。TIM3/Gal-9の相互作用が免疫応答の抑制に役割を果たすことがよく証明された。
【0067】
一実施形態において、NK阻害性リガンドは、FGL1またはそのNKIR結合領域であり、LAG3に結合する。FGL1は、フィブリノーゲンファミリーに属し、LAG3の新たに発見されたリガンドであるが、血小板結合部位やトロンビン感受性部位などの特徴的なドメインはない。FGL1タンパク質は、主に腫瘍細胞に分布しており、腫瘍間質では発現が低い。FGL1/LAG3相互作用は、B7-H1/PD-1経路とは独立した別の腫瘍免疫逃避経路であり、この経路を遮断すると、PD-1経路を遮断することと相乗効果を発揮する。
【0068】
本明細書において、用語の「膜貫通ドメイン」は、免疫細胞(例えば、リンパ球またはNKT細胞)の表面でのキメラ抗原受容体の発現を可能にし、標的細胞に対する免疫細胞の細胞応答を指示するポリペプチド構造を指す。膜貫通ドメインは、天然のものまたは合成のものであり得、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。膜貫通ドメインは、キメラ抗原受容体が標的抗原に結合するときにシグナル伝達を行うことができる。本発明において特に有用な膜貫通ドメインは、例えばTCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ζサブユニット、CD3εサブユニット、CD3γサブユニット、CD3δサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、およびNKIR天然リガンドの膜貫通ドメインに由来し得、例えば、非古典的なHLA-I分子(例えば、HLA-E、HLA-FおよびHLA-G)、カドヘリン(Cadherin)、コラーゲン、OCILなどの膜貫通ドメインが挙げられる。好ましくは、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28およびCD278の膜貫通ドメインから選択される。或いは、膜貫通ドメインは合成のものであり得、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含み得る。好ましくは、前記膜貫通ドメインは、CD8αまたはCD28に由来し、より好ましくは、配列番号9または11に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いは前記膜貫通ドメインのコード配列は、配列番号10または12に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0069】
一実施形態において、本発明のNK阻害性分子は、NK阻害性リガンドと膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジ領域をさらに含み得る。本明細書において、用語の「ヒンジ領域」は、一般的に、膜貫通ドメインをリガンド結合ドメインに連結するように機能する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。具体的には、ヒンジ領域は、リガンド結合ドメインにより高い柔軟性とアクセス可能性を提供するためのものである。ヒンジ領域は、最大300アミノ酸含み得、好ましくは10~100アミノ酸、最も好ましくは25~50アミノ酸を含む。ヒンジ領域は、全部または一部が天然分子に由来し得、例えば、全部または一部がCD8、CD4またはCD28の細胞外領域に由来し、または全部または一部が抗体定常領域に由来する。或いは、ヒンジ領域は、天然に存在するヒンジ配列に対応する合成配列であってもよく、または合成されたヒンジ配列であってもよい。好ましい実施形態において、前記ヒンジ領域は、CD8α、CD28、FcγRIIIα受容体、IgG4またはIgG1のヒンジ領域部分を含み、より好ましくは、CD8α、CD28またはIgG4ヒンジを含み、配列番号25、27または29に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いはCD28ヒンジのコード配列は、配列番号26、28または30に示されるヌクレオチド配列と少なくとも少70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0070】
本発明のNK阻害性分子は、共刺激ドメインを含む。したがって、NK阻害性リガンドがNKIRに結合すると、一方、NKIRのシグナル伝達領域を介して抑制性シグナルをNK細胞に伝達して、標的細胞(例えば本発明の遺伝子改変免疫細胞)に対する殺傷を低減することができ、他方、NK阻害性分子に含まれる共刺激ドメインを介して、標的細胞(例えば本発明の遺伝子改変免疫細胞)の内部に刺激シグナルを伝達し、増殖および生存を刺激し、それによってNK細胞の殺傷によりよく抵抗する。以前の研究により、NK細胞のNKG2A、KIR、ILT2などの抑制性受容体を標的とする抗体を使用すると、HLA-EやHLA-Gなどの抑制性分子の結合部位への結合をめぐって競合したり、抑制効果を中和したりし、NK細胞を活性化する役割を果たすことができることがわかっている。これと逆に、本発明者らは、NK阻害性受容体を標的とするNK阻害性分子を発現させることにより、NK細胞を阻害できることを初めて発見した。本発明は、共刺激ドメインを有さないNK阻害性分子に対して、共刺激ドメインを含むNK阻害性分子のほうが、NK細胞の殺傷効果に対する阻害効果がより優れることをさらに発見した。
【0071】
共刺激ドメインは、共刺激分子からの細胞内機能的シグナル伝達ドメインであり得、前記共刺激分子の細胞内部分全体またはその機能的フラグメントを含む。「共刺激分子」は、T細胞において共刺激リガンドに特異的に結合することによりT細胞の共刺激応答(例えば、増殖)を媒介する同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、クラスI MHC分子、BTLAおよびTollリガンド受容体を含むが、これらに限定されない。本発明の共刺激ドメインの非限定的な例として、LTB、CD94、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD8、CD18、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、DAP10、DAP12、LAT、NKG2C、SLP76、PD-1、LIGHT、TRIM、ZAP70、およびそれらの組み合わせのタンパク質に由来する共刺激シグナル伝達ドメインを含む。好ましくは、本発明の共刺激ドメインは、4-1BB、CD28、CD27、OX40、CD278またはその組み合わせに由来するものであり、より好ましくは4-1BB、CD28またはその組み合わせに由来するものである。一実施形態において、本発明の共刺激ドメインは、配列番号13または15に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いは該共刺激ドメインのコード配列は、配列番号14または16に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0072】
一実施形態において、NK阻害性分子は細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。他の実施形態において、NK阻害性分子は、細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。即ち、NK阻害性分子は、NK阻害性リガンド、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。この実施形態において、NK阻害性リガンドとNKIRとの結合は、共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを介して、活性化シグナルを標的細胞(例えば、本発明の遺伝子改変免疫細胞)に伝達し、標的細胞によるNK細胞に対する殺傷を促進し、それによってNK細胞の殺傷に対する抑制効果をさらに高める。
【0073】
本明細書において、用語の「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能的シグナルを伝達し、細胞に特定の機能を実行することを指示するタンパク質部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、リガンド結合ドメインが抗原に結合した後の一次細胞内シグナル伝達に関与し、免疫細胞の活性化と免疫応答をもたらす。言い換えれば、細胞内シグナル伝達ドメインは、NK阻害性分子を発現する免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つを活性化することに関与する。例えば、T細胞のエフェクター機能は、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。
【0074】
一実施形態において、本発明の細胞内シグナル伝達ドメインは、抗原受容体結合後に一緒に作用して一次シグナル伝達を開始する、T細胞受容体および共受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体または変異体、および同じまたは類似の機能を有する任意の合成配列であり得る。細胞内シグナル伝達ドメインは、多数の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motifs、ITAM)を含むことができる。本発明の細胞内シグナル伝達ドメインの非限定的な例として、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものを含む。好ましい実施形態において、本発明のCARのシグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、このシグナル伝達ドメインは、配列番号17または19に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いはそのコード配列は、配列番号18または20に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0075】
一実施形態において、本発明のNK阻害性分子はシグナルペプチドをさらに含み得、これにより、T細胞などの細胞で発現される場合、新生タンパク質が小胞体にガイドされ、続いて細胞表面にガイドされる。シグナルペプチドのコアは、長い疎水性アミノ酸セグメントを含むことができ、単一のα-ヘリックスを形成する傾向がある。シグナルペプチドの末端には、一般的に、シグナルペプチダーゼによって認識および切断されるアミノ酸セグメントがある。シグナルペプチダーゼは、転座中または転座後に切断して、遊離シグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生成することができる。そして、遊離シグナルペプチドは特定のプロテアーゼによって消化される。本発明において有用なシグナルペプチドは、当業者で周知のものを用い、例えば、B2M、CD8α、IgG1、GM-CSFRαなどに由来するシグナルペプチドが挙げられる。一実施形態において、本発明において有用なシグナルペプチドは、配列番号21または23に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、或いは該シグナルペプチドのコード配列は、配列番号22または24に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する。
【0076】
少なくとも1種のMHC関連遺伝子の阻害またはサイレンシング
一実施形態において、NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞は、少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされ、例えば、少なくとも1種のMHC遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされ、または少なくとも1種のMHC遺伝子と相互作用しまたはその発現を調節する遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0077】
主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex、MHC)は元々、移植反応において主要な役割を果たすタンパク質として特徴づけられ、すべての高等脊椎動物の表面に発現し、マウスではH-2と呼ばれ、ヒト細胞ではHLAと呼ばれる。MHCは主にクラスIとクラスIIの2種類がある。クラスIMHCタンパク質は、2種のタンパク質のヘテロダイマーであり、一種がMHCI遺伝子によってコードされる膜貫通タンパク質α鎖であり、もう一種がMHC遺伝子クラスター内にない遺伝子によってコードされる細胞外タンパク質のベータ2ミクロスフェアタンパク質鎖である。α鎖は3つのドメインを含み、外来ペプチドが2つのN末端の最も変化しやすいドメインα1、α2に結合する。クラスIIMHCタンパク質もヘテロダイマーであり、MHC複合体内の遺伝子によってコードされる2つの膜貫通タンパク質を含む。クラスIMHC/抗原複合体は細胞傷害性T細胞と相互作用し、クラスIIMHCはヘルパーT細胞に抗原を提示する。また、クラスIMHCタンパク質は、ほぼすべての有核細胞と血小板(およびマウスの赤血球)で発現する傾向があるが、クラスIIMHCタンパク質はより選択的に発現する。一般的に、クラスIIMHCタンパク質は、B細胞、一部のマクロファージと単球、ランゲルハンス細胞(Langerhans cell)、樹状細胞に発現する。
【0078】
ヒトクラスIHLA遺伝子クラスターは、3つの主要遺伝子座B、CおよびAを含む。HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cは、クラスIHLA重鎖パラログである。クラスI分子はMHCα重鎖(HLA-A、HLA-B、またはHLA-Cによってコードされる)、および軽鎖(β-2微球タンパク質、B2Mによってコードされる)で構成されるヘテロダイマーである。重鎖は膜に固定されており、約45 kDaであり、8つのエクソンを含んでいる。エクソン1はリーダーペプチドをコードし、エクソン2および3はα1、およびα2ドメインをコードし、両方ともペプチドに結合し、エクソン4はα3ドメインをコードし、エクソン5は膜貫通領域をコードし、エクソン6および7は細胞質尾部をコードする。エクソン2およびエクソン3内の多型は、各クラスの分子のペプチド結合特異性をもたらす。したがって、一実施形態において、MHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされるとは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、およびB2Mからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを指す。
【0079】
ヒトクラスIIHLAクラスターは、DP、DQ、DRの3つの主要な遺伝子座を含み、クラスIクラスターおよびクラスIIクラスターの両方とも多型である。HLA-DPA1、HLA-DQA1、およびHLA-DRAは、クラスIIHLAα鎖パラログに属する。クラスII分子は、外因性ペプチドを提示することにより免疫系で主要な役割を果たし、おもに抗原提示細胞(Bリンパ球、樹状細胞、マクロファージなど)で発現する。クラスII分子は、いずれも膜に固定されているα鎖とベータ鎖からなるヘテロダイマーであり、α鎖は約33~35 kDaで、5つのエクソンを含む。エクソン1はリーダーペプチドをコードし、エクソン2および3は2つの細胞外領域をコードし、エクソン4は膜貫通ドメインをコードし、エクソン5は細胞質尾部をコードする。したがって、一実施形態において、MHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされるとは、HLA-DPA、HLA-DQ、およびHLA-DRAからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを指す。
【0080】
クラスIおよびIIMHCの発現は、多種のアクセサリータンパク質にも依存する。例えば、Tap1およびTap2サブユニットは、ペプチド抗原をクラスIHLA複合体にロードするために必要なTAPトランスポーター複合体の一部である。LMP2およびLMP7プロテアソームサブユニットは、HLAに表示するためのペプチドへの抗原のタンパク質分解において役割を果たす。LMP7を減少させると、細胞表面でのMHCクラスIの発現が減少することが示されている。MHCクラスIIの発現は、RFX複合体、CIITAなどのいくつかの正の制御因子によって誘導および発現される。RFX複合体は、RFXANK(RFXBとも呼ばれる)、RFX5、およびRFXアクセサリタンパク質(RFXAPとも呼ばれる)の3つのサブユニットで構成されている。RFX複合体は、他の転写因子とMHCクラスII分子のプロモーターとの結合を促進し、プロモーター結合の特異性を高めることにより、MHCクラスII分子の発現を促進する。CIITAはMHCクラスII発現のマスターコントローラーである。CIITAは、酸性アミノ酸が豊富なN末端と、Pro、Ser、およびThrが豊富なPST領域と、中央のGTP結合領域と、Leuリピート配列(LRR)が豊富なC末端とを含む。末端酸性領域とPST領域は転写活性化領域である。したがって、一実施形態において、MHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされるとは、TAP1、TAP2、LMP2、LMP7、RFX5、RFXAP、RFXANK、およびCIITAからなる群から選択される1つ以上の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを指す。
【0081】
したがって、一実施形態において、MHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされるとは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、TAP1、TAP2、LMP2、LMP7、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを指し、好ましくは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0082】
一実施形態において、NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞は、少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0083】
T細胞受容体(T cell receptor、TCR)は、すべてのT細胞の表面にある特徴的なマーカーであり、CD3と非共有結合してTCR/CD3複合体を形成し、抗原提示細胞表面における特異的なMHC-抗原ペプチド複合体と結合して特異的な抗原刺激シグナルを生成し、T細胞を活性化し、殺傷の役割を果たす。TCRは2つの異なるペプチド鎖で構成されるヘテロダイマーであり、通常はα/β型とγ/δ型の2つのカテゴリーに分けられ、末梢Tリンパ球の95%以上がTCRα/βを発現する。TCRα鎖はTRAC遺伝子によってコードされ、β鎖はTRBC遺伝子によってコードされる。TCRの各ペプチド鎖は、可変領域(V領域)、定常領域(C領域)、膜貫通領域、細胞質領域を含み、細胞質領域が非常に短く、抗原刺激シグナルを伝達する能力をもたない。TCR分子は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、その抗原特異性がV領域に存在する。V領域には、CDR1、CDR2、およびCDR3の3つの超可変領域があり、そのうち、CDR3は、TCRの抗原結合特異性を直接決定できるように変異が最も大きい。TCRがMHC-抗原ペプチド複合体を認識するとき、CDR1およびCDR2はMHC分子を認識してそれと結合し、CDR3が抗原ペプチドに直接結合する。CD3は、γ、δ、ε、およびζの4種のサブユニットを含み、通常、ダイマーεγ、εδ、およびζζの形で存在する。この4種のサブユニットは、いずれも保存された免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(Immunoreceptor tyrosine-based activation motif、ITAM)を含み、そのうちの2つのチロシン残基がチロシンプロテインキナーゼによってリン酸化されてT細胞に活性化シグナルを伝達する。したがって、一実施形態において、少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされるとは、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζからなる群から選択される1つ以上の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを指す。
【0084】
好ましい実施形態において、前記NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞は、少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子および少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。前記少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子は、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、およびそれらの組み合わせから選択される。前記少なくとも1種のMHC関連遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、TAP1、TAP2、LMP2、LMP7、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0085】
好ましい実施形態において、前記少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子は、TRAC、TRBC、およびそれらの組み合わせから選択される。前記少なくとも1種のMHC関連遺伝子は、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択される。一実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞のTRACまたはTRBC、およびB2Mの発現が阻害されまたはサイレンシングされる。一実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞のTRACまたはTRBC、およびCIITAの発現が阻害されまたはサイレンシングされる。好ましい実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞のTRACまたはTRBC、B2MおよびCIITAの発現が阻害されまたはサイレンシングされる。好ましい実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞のTRACまたはTRBC、B2MおよびRFX5の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0086】
一実施形態において、MHC関連遺伝子および任意のTCR/CD3遺伝子に加え、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、CD52、GR、dCK、および免疫チェックポイント遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。例えば、PD1、LAG3、TIM3、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、PDCD1、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、およびGUCY1B3が挙げられる。
【0087】
遺伝子の発現を阻害する方法または遺伝子をサイレンシングさせる方法は、当業者で周知のものを用い、例えば、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、またはCRISPRシステムにおけるCas酵素を介したDNAフラグメント化、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、shRNAなどの技術による遺伝子の不活性化を含むが、これらに限定されない。
【0088】
キメラ抗原受容体
【0089】
他の態様において、本発明の、NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞は、キメラ抗原受容体をさらに発現し得る。即ち、この実施形態において、遺伝子改変免疫細胞は、NK阻害性分子およびキメラ抗原受容体を発現し、好ましくは、前記遺伝子改変免疫細胞の少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。好ましい実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞は、少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0090】
本明細書において、用語の「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、人工的に構築されたハイブリッドポリペプチドを指し、ハイブリッドポリペプチドが一般的に1つ以上のリガンド結合ドメイン(例えば、抗体の抗原結合部分)、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、各ドメインがリンカーによって連結されている。CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、T細胞および他の免疫細胞の特異性と反応性を非MHC制限的な方法で選択された標的に向け直すことができる。非MHC制限抗原認識は、CAR細胞に抗原処理と無関係の抗原認識能力を与えることによって、腫瘍の逃避の主要なメカニズムを回避できる。また、T細胞内で発現するとき、CARは、内因性T細胞受容体(TCR)のα鎖およびβ鎖と有利にダイマー化しない。
【0091】
本明細書において、「リガンド結合ドメイン」は、リガンド(例えば、抗原)に結合できる任意の構造またはその機能的変異体を指す。リガンド結合ドメインは抗体構造であり得、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ抗体、およびそれらの機能的フラグメントを含むが、これらに限定されない。例えば、リガンド結合ドメインは、無傷の抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、線状抗体、sdAb(VHまたはVL)、ナノ抗体(Nanobody、Nb)、組換えフィブロネクチンドメイン、anticalinおよびDARPINなどを含むが、これらに限定されない。好ましくは、Fab、scFv、sdAb、およびナノ抗体から選択される。本発明において、リガンド結合ドメインは、一価または二価であり得、そして単一特異性、二重特異性または多重特異性の抗体であり得る。
【0092】
「Fab」は、パパインによる免疫グロブリン分子の切断時に生成される2つの同じのフラグメントのいずれかを指し、ジスルフィド結合によって連結された無傷の軽鎖および重鎖のN末端部分からなり、重鎖のN末端部分が、重鎖可変領域とCH1を含む。インタクトなIgGと比較して、FabにはFcフラグメントがなく、移動度と組織浸透性が高く、抗体効果を媒介することなく抗原に一価で結合できる。
【0093】
「単鎖抗体」または「scFv」は、リンカーによって連結された抗体重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)から構成される抗体である。リンカーの最適な長さおよび/またはアミノ酸組成を選択することができる。リンカーの長さは、scFvの可変領域折り畳みと相互作用に大きく影響する。実際、比較的に短いリンカー(例えば、5-10アミノ酸)を使用すれば、鎖内の折り畳みを防ぐことができる。リンカーのサイズと組成の選択については、例えば、Hollinger et al,1993Proc Natl Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448、米国特許出願公開2005/0100543、2005/0175606、2007/0014794、およびPCT出願公開WO2006/020258およびWO2007/024715を参照でき、そのすべての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。scFvは、任意の順でリンクされたVHおよびVLを含み、例えば、VH-リンカー-VL、またはVL-リンカー-VHを含むことができる。
【0094】
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」は、軽鎖が自然に欠損し、1つの可変重鎖(VHH)と2つの一般的なのCH2およびCH3領域のみを含む抗体を指し、「重鎖抗体」とも呼ばれる。
【0095】
「ナノ抗体」または「Nb」は、元の重鎖抗体と同じ構造安定性および抗原結合活性を有し、標的抗原に結合できる既知の最小単位である、単一にクローンしおよび発現されたVHH構造を指す。
【0096】
用語の「機能的バリアント」または「機能的フラグメント」は、基本的に親アミノ酸配列を含むが、該親アミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾(即ち、置換、欠失または挿入)を含む変異体を指す。前記変異体が親アミノ酸配列の生物学的活性を保持することを条件とする。例えば、抗体の場合、その機能的フラグメントはその抗原結合部分である。一実施形態において、好ましくは、前記アミノ酸修飾は、保存的修飾である。
【0097】
本明細書において、「保存的修飾」という用語は、該アミノ酸配列を含む抗体または抗体フラグメントの結合特性に有意に影響を与えたり、変更したりしないアミノ酸修飾を指す。これらの保存的修飾は、アミノ酸の置換、追加、および欠失を含む。修飾は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などの当分野で既知の標準的な技術によって、本発明のキメラ抗原受容体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基によって置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義され、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。保存的修飾は、例えば、極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または関与する残基の両親媒性の類似性に基づいて選択することができる。
【0098】
したがって、「機能的バリアント」または「機能的フラグメント」は、親アミノ酸配列と少なくとも75%同一であり、好ましくは少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、親アミノ酸の生物学的活性、例えば、結合活性を保持する。
【0099】
本明細書において、「配列同一性」という用語は、2つの(ヌクレオチドまたはアミノ酸)配列がアラインメントにおいて同じ位置に同じ残基を有する度合いを指し、通常、パーセンテージで表される。好ましくは、同一性は、比較される配列の全長にわたって決定される。したがって、まったく同じ配列の2つのコピーは、100%の同一性を有する。いくつかのアルゴリズムは、標準的なパラメータを使用して配列の同一性を決定できることが当業者であれば自明です。例えば、Blast(Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402)、Blast2(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410)、Smith-Waterman(Smith et al.(1981)J.Mol.Biol.147:195-197)およびClustalWが挙げられる。
【0100】
リガンド結合ドメインの選択は、認識する、具体的な病状に関連する標的細胞における細胞表面マーカー、例えば腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原によって決まる。したがって、一実施形態において、本発明のリガンド結合ドメインはTSHR、CD19、CD123、CD22、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、Tn Ag、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-1 1Ra、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-β、SSEA-4、CD20、Folate受容体α、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、NCAM、Prostase、PAP、ELF2M、Ephrin B2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、Fucosyl GMl、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、Folate受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD 179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE Al、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質、サバイビンおよびテロメラーゼ、PCTA-1/Galectin 8、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座ブレークポイント、ML-IAP、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、Cyclin Bl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B 1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES 1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸のカルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、PD1、PDL1、PDL2、TGFβ、APRIL、Claudin18.2、NKG2D、およびそれらの任意の組み合わせから選択される1つまたは複数の標的に結合する。好ましくは、前記標的は、CD19、CD20、CD22、BAFF-R、CD33、EGFRvIII、BCMA、GPRC5D、PSMA、ROR1、FAP、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、CAIX、WT1、NY-ESO-1、CD79a、CD79b、GPC3、Claudin18.2、NKG2D、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。標的とされる抗原に応じて、本発明のCARは、その抗原に特異的なリガンド結合ドメインを含むように設計することができる。例えば、CD19が標的となる抗原である場合、CD19抗体を本発明のリガンド結合ドメインとして使用することができる。
【0101】
本発明において有用なCARに含まれる膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、および任意のヒンジ領域、シグナルペプチドなどの定義は、上記を参照できる。
【0102】
一実施形態において、本発明のCARは、CARの発現時間を調節するためのスイッチ構造をさらに含むことができる。例えば、スイッチ構造は、ダイマー化ドメインの形をとることができ、それと対応するリガンドに結合することによってコンフォメーション変化を誘発し、細胞外結合ドメインを露出させて標的抗原に結合させ、それによってシグナル伝達経路を活性化する。或いは、スイッチドメインを使用して、それぞれ結合ドメインおよびシグナル伝達ドメインと接続してもよく、スイッチドメインが互いに結合する場合だけ(例えば、誘導化合物の存在下で)、結合ドメインとシグナル伝達ドメインとがダイマーによって連結され、シグナル伝達経路を活性化することができる。スイッチ構造は、マスキングペプチドの形態であり得る。マスキングペプチドは、細胞外結合ドメインをマスクして、標的抗原への結合を阻止することができ、マスキングペプチドが、例えばプロテアーゼによって切断されると、細胞外結合ドメインが露出され、「通常」のCAR構造となることができる。当業者に知られている各種のスイッチ構造も本発明に使用することができる。
【0103】
一実施形態において、本発明のCARは、自殺遺伝子を含み得、即ち、外因性物質によって誘導され得る細胞死シグナルを発現させ、必要な場合(例えば、重度の毒性副作用が発生した場合)に、CAR細胞を除去する。例えば、自殺遺伝子は、CD20エピトープ、RQR8などの挿入されたエピトープの形をとることができ、必要に応じて、これらのエピトープを標的とする抗体または試薬を加えることによりCAR細胞を排除することができる。自殺遺伝子は単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-TK)であってもよく、この遺伝子により、ガンシクロビル治療によって誘発されて細胞死を引き起こすことが可能である。自殺遺伝子はiCaspase-9であってもよく、AP1903、AP20187などの化学誘導薬によってダイマー化するように誘導して、下流のCaspase3分子を活性化してアポトーシスを引き起こすことが可能である。当業者に知られている各種の自殺遺伝子を本発明に使用することができる。
【0104】
必要に応じて、NK阻害性分子が細胞内シグナル伝達ドメインを含み、かつ細胞がCARを発現するとき、本発明のNK阻害性分子およびCARが、例えば共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインである、結合領域以外の他の構造を共用することができる。したがって、この実施形態では、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、(1)本発明のNK阻害性分子およびキメラ抗原受容体の融合タンパク質を発現し、前記融合タンパク質が、NK阻害性リガンド、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインをみ、および(2)少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0105】
核酸およびベクター
本発明は、本発明のNK阻害性分子をコードする核酸配列を含む核酸分子をさらに提供する。任意で、前記核酸分子は、キメラ抗原受容体をコードする核酸配列をさらに含み得る。
【0106】
本明細書において、用語の「核酸分子」は、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの配列を含み、例えば修飾または非修飾のRNA、またはDNAであり、それぞれ一本鎖および/または二本鎖形態の線状または環状、またはそれらの混合物(ハイブリッド分子を含む)である。したがって、本発明による核酸は、DNA(例えば、dsDNA、ssDNA、cDNA)、RNA(例えば、dsRNA、ssRNA、mRNA、ivtRNA)、それらの組み合わせまたは誘導体(例えば、PNA)を含む。好ましくは、前記核酸は、DNA、またはRNAであり、より好ましくはmRNAである。
【0107】
核酸は、通常のホスホジエステル結合または非通常の結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるものようなアミド結合)を含み得る。本発明の核酸は、1種または複数種の修飾された塩基をさらに含み得、例えばトリチル化塩基および滅多にみられない塩基(例えば、イノシン)が挙げられる。化学的、酵素的、または代謝的修飾を含む他の修飾であってもよく、本発明の多鎖CARがポリヌクレオチドから発現できればよい。核酸は単離された形で提供することができる。一実施形態において、核酸は、転写制御エレメント(プロモーター、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルを含む)、リボソーム結合部位、イントロンなどの調節配列を含み得る。
【0108】
所望の宿主細胞(例えば、免疫細胞)において最適な発現を行い、或いは細菌、酵母または昆虫細胞での発現に使用するように、本発明の核酸配列に対してコドン最適化してもよい。コドン最適化とは、ターゲティング配列に存在する、特定の種の高発現遺伝子でまれなコドンを、その種の高発現遺伝子で一般的なコドンで置き換え、置換前後のコドンが同じアミノ酸をコードすることを指す。したがって、最適なコドンの選択は、宿主ゲノムのコドン使用嗜好によって決まる。
【0109】
本発明は、本発明による核酸分子を含むベクターをさらに提供する。任意で、NK阻害性分子をコードする核酸配列およびキメラ抗原受容体をコードする核酸配列が、同じベクターまたは異なるベクターに位置する。
【0110】
本明細書において、用語の「ベクター」は、(外因性)遺伝物質を宿主細胞に移すためのビヒクルとして使用される核酸分子であり、該宿主細胞において、前記核酸分子が例えば複製および/または発現することができる。
【0111】
ベクターは通常、ターゲティングベクターと発現ベクターを含む。「ターゲティングベクター」は、例えば、相同組換えによってまたは特定の部位の配列に特異的にターゲティングするハイブリッドリコンビナーゼを使用することによって、単離された核酸を細胞の内部に送達する媒体である。「発現ベクター」は、適切な宿主細胞における異種核酸配列(例えば、本発明のキメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする配列)の転写およびそれらのmRNAの翻訳に使用されるベクターである。本発明に使用できるベクターは当分野で既知のものを使用することができ、市販のものを使用することができる。一実施形態において、本発明のベクターは、プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ラウス肉腫ウイルス(RSV、ポリオーマウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)など)、ファージ、ファージミド、コスミド、および人工染色体(BACおよびYACを含む)を含むが、これらに限定されない。通常、ベクター自体はヌクレオチド配列であり、インサート(導入遺伝子)を含むDNA配列と、ベクターの「バックボーン」として機能する比較的大きな配列である。通常、遺伝子改変ベクターは、宿主細胞において自律複製する起点(ポリヌクレオチドの安定の発現が望まれる場合)、選択マーカー、および制限酵素切断部位(例えば、マルチクローニング部位、MCS)を含む。ベクターは、プロモーター、ポリアデニル化テール(polyA)、3’UTR、エンハンサー、ターミネーター、インシュレーター、オペロン、選択マーカー、レポーター遺伝子、ターゲティング配列および/またはタンパク質精製タグなどのエレメントをさらに含んでもよい。一具体的な実施形態において、前記ベクターは、インビトロで転写されたベクターである。
【0112】
遺伝子改変免疫細胞
本発明はまた、本発明のNK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞をさらに提供し、ここで、少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。一実施形態において、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、1つ以上のリガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体をさらに発現する。好ましい実施形態において、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0113】
一実施形態において、MHC関連遺伝子および任意のTCR/CD3遺伝子に加え、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、CD52、GR、dCK、および免疫チェックポイント遺伝子からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。例えば、PD1、LAG3、TIM3、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、PDCD1、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、およびGUCY1B3が挙げられる。
【0114】
必要に応じて、NK阻害性分子が細胞内シグナル伝達ドメインを含み、かつ細胞がCARを発現する場合、本発明のNK阻害性分子およびCARは、結合領域以外の他の構造を共用することができ、例えば、共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインが挙げられる。したがって、この実施形態において、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、(1)本発明のNK阻害性分子およびキメラ抗原受容体の融合タンパク質を発現し、前記融合タンパク質がNK阻害性リガンド、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、および(2)少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。好ましい実施形態において、前記遺伝子改変免疫細胞は、少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされる。
【0115】
本明細書において、用語の「免疫細胞」は、免疫系の、1種または複数種のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞殺傷活性、サイトカインの分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導)を有する任意の細胞を指す。例えば、免疫細胞は、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞またはNKT細胞、または臍帯血などの幹細胞源から得られた免疫細胞であり得る。好ましくは、免疫細胞はT細胞である。T細胞は任意のT細胞であり得、例えばインビトロで培養されたT細胞、例えば、初代T細胞、またはインビトロで培養されたJurkat、SupT1などのT細胞株からのT細胞、または被験者から得られたT細胞である。被験者の例として、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜滲出液、脾臓組織、腫瘍などの多種の供給源から入手できる。T細胞は濃縮されまたは精製されることもできる。T細胞は、発達のどの段階のものであってもよく、CD4+/CD8+T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1およびTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、γδ-T細胞、αβ-T細胞などを含むが、これに限定されない。好ましい実施形態では、免疫細胞はヒトT細胞である。T細胞は、例えばFicoll分離などの当業者で既知の様々な技術を使用して被験者の血液から得ることができる。
【0116】
NK阻害性分子および任意選択のキメラ抗原受容体は、当分野で既知の従来の方法(例えば、形質導入、トランスフェクション、形質転換などによって)を使用して免疫細胞に導入することができる。「トランスフェクション」は、核酸分子またはポリヌクレオチド(ベクターを含む)を標的細胞に導入するプロセスである。一例として、RNAトランスフェクションがあり、即ち、RNA(例えば、インビトロで転写されたRNA、ivtRNA)を宿主細胞に導入するプロセスである。この用語は、主に真核細胞での非ウイルス法に使用される。用語の「形質導入」は、一般に、ウイルスを介した核酸分子またはポリヌクレオチドの転移を説明するために使用される。動物細胞のトランスフェクションは、通常、細胞膜に一過性の細孔または「穴」を開いて、物質の取り込みを可能にすることに関わる。トランスフェクションは、リン酸カルシウムの使用、エレクトロポレーション、細胞の押し出し、またはカチオン性脂質を材料と混合して、細胞膜と融合してそれらの積荷を内部に沈着させるリポソームを生成することによって実行できる。真核生物宿主細胞をトランスフェクトするための例示的な技術として、脂質小胞媒介取り込み、熱ショック媒介取り込み、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション(リン酸カルシウム/DNA共沈殿)、マイクロインジェクション、およびエレクトロポレーションが含まれる。用語の「形質転換」は、核酸分子またはポリヌクレオチド(ベクターを含む)の細菌への非ウイルス性の移動、非動物の真核細胞(植物細胞を含む)への移動を説明するために使用される。したがって、形質転換は細菌または非動物の真核細胞の遺伝子変化であり、細胞膜が周囲から直接取り込んで、そして外因性遺伝物質(核酸分子)を取り込むことにより発生する。形質転換は人工手段で実現することができる。形質転換が起こるためには、細胞または細菌が有能な状態にある必要がある。原核生物の形質転換の場合、熱ショックを介した取り込み、無傷の細胞の細菌プロトプラストとの融合、マイクロインジェクション、およびエレクトロポレーションの技術を利用することができる。
【0117】
キットおよび医薬組成物
本発明は、本発明のNK阻害性分子、核酸分子、ベクターまたは遺伝子改変免疫細胞を含むキットを提供する。
【0118】
好ましい実施形態において、本発明のキットは、説明書をさらに含む。
【0119】
本発明は、NK阻害性分子、遺伝子改変免疫細胞、活性剤としての本発明の核酸分子またはベクター、および1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物をさらに提供する。したがって、本発明は、医薬組成物または薬剤の調製におけるNK阻害性分子、核酸分子、ベクターまたは遺伝子改変免疫細胞の使用を包含する。
【0120】
本明細書において、用語の「薬学的に許容される賦形剤」は、被験者および有効成分と薬理学的および/または生理学的に適合性がある(即ち、望ましくない局所的または全身的作用を引き起こすことなく所望の治療効果を引き出すことができる)ベクターおよび/または賦形剤を指し、当分野で既知のもの(例えば、Remington′s Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR,19th ed. Pennsylvania:Mack Publishing Company,1995を参照)を使用できる。薬学的に許容される賦形剤の例として、充填剤、結合剤、崩壊剤、コーティング、吸着剤、付着防止剤、流動促進剤、抗酸化剤、香味剤、着色剤、甘味料、溶媒、共溶媒、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、希釈剤、湿潤剤、防腐剤、乳化剤、コーティング剤、等張化剤、吸収遅延剤、安定剤および張性調整剤が含まれるが、これに限定されない。本発明の所望の医薬組成物を調製するために適切な賦形剤を選択することは当業者で周知のことである。本発明の医薬組成物に使用する例示的な賦形剤として、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロースおよび水が含まれる。一般に、適切な賦形剤の選択は、使用される活性剤、治療される疾患、および医薬組成物の所望の剤形に特に依存する。
【0121】
本発明による医薬組成物は、多種の経路による投与に適する。通常、投与は非経口的に行われる。非経口送達方法は、局所、動脈内、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、心室内、静脈内、腹腔内、子宮内、膣内、舌下または鼻腔内の投与を含む。
【0122】
本発明による医薬組成物は、固体、液体、気体または凍結乾燥の形態などの各種の形態に調製することができる。特に、軟膏、クリーム、経皮パッチ、ゲル、粉末、錠剤、溶液、エアロゾル、顆粒、丸剤、懸濁液、乳濁液、カプセル、シロップ、エリキシル剤、エキス、チンキ剤または液体エキス抽出物の形態、または必要な投与方法に特に適するの形態である。本発明の既知の、医薬品を製造するためのプロセスは、例えば、通常の混合、溶解、造粒、糖衣製造、研磨、乳化、カプセル化、包埋、または凍結乾燥のプロセスを含む。本明細書に記載される免疫細胞を含む医薬組成物は、通常、溶液の形態で提供され、好ましくは、薬学的に許容される緩衝液を含む。
【0123】
本発明による医薬組成物は、疾患の治療および/または予防に適する1種または複数種の他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。組み合わせに適する薬剤の好ましい例として、シスプラチン、メイタンシン誘導体、ラチェルマイシン(rachelmycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、メルファラン、ミトキサントロン、ソルフィマーソディウムフォトフリンII(sorfimer sodiumphotofrin II)、テモゾロミド、トポテカン、グルクロン酸トリメトレキサート(trimetreate glucuronate)、アウリスタチンE(auristatin E)、ビンクリスチンおよびドキソルビシン;リシン、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNaseおよびRNaseなどのペプチド細胞毒素;ヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イリジウム90、ビスマス210、および213、アクチニウム225、およびアスタチン213などの放射性核種;抗体指向酵素プロドラッグなどのプロドラッグ;血小板第4因子、黒色腫成長刺激タンパク質などの免疫刺激剤;抗CD3抗体またはそのフラグメントなどの抗体またはそのフラグメント、補体活性化因子、異種タンパク質ドメイン、相同タンパク質ドメイン、ウイルス/細菌タンパク質ドメインおよびウイルス/細菌ペプチドなどの既知の抗癌剤が含まれる。また、本発明の医薬組成物は、化学療法、放射線療法などの1種または複数種の他の治療方法と組み合わせて使用することもできる。
【0124】
治療への応用
本発明は、癌、感染症または自己免疫疾患に罹患している被験者を治療する方法をさらに提供する。この方法は、有効量の、本発明によるNK阻害性分子、核酸分子、ベクター、遺伝子改変免疫細胞または医薬組成物を被験者に投与することを含む。したがって、本発明は、癌、感染症または自己免疫疾患を治療するための薬剤の製造におけるNK阻害性分子、核酸分子、ベクターまたは遺伝子改変免疫細胞の使用を包含する。
【0125】
一実施形態において、有効量の本発明の免疫細胞および/または医薬組成物を被験者に直接投与する。
【0126】
他の実施形態において、本発明の治療方法は、エクスビボ治療である。具体的には、この方法は以下のステップを含む。(a)免疫細胞を含むサンプルを提供する。(b)前記免疫細胞の少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子および少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現を、インビトロで阻害しまたはサイレンシングし、本発明のNK阻害性分子および任意選択のキメラ抗原受容体を前記免疫細胞に導入し、改変された免疫細胞を取得する。(c)前記改変された免疫細胞を被験者に投与する。好ましくは、ステップ(a)で提供される免疫細胞は、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞から選択される。そして、前記免疫細胞は、当分野で既知の通常の方法によって、被験者のサンプル(特に血液サンプル)から得ることができる。また、本発明のキメラ抗原受容体およびNK阻害性分子を発現することができ、本明細書に記載の所望の生物学的エフェクター機能を実行することができる他の免疫細胞を使用することもできる。また、免疫細胞は、一般に、被験者の免疫系に適合するものを選択し、即ち、前記免疫細胞は、免疫原性応答を誘発しないものが好ましい。例えば、「汎用レシピエント細胞」を使用でき、即ち、所望の生物学的エフェクター機能的を実行する、普遍的に適合し、インビトロで成長および増幅できるリンパ球を使用することができる。このような細胞の使用は、被験者自身のリンパ球を取得および/または提供することが不要である。ステップ(c)のエクスビボ導入は、エレクトロポレーションを介して本明細書に記載の核酸またはベクターを免疫細胞に導入し、または免疫細胞をウイルスベクターで感染させることによって実施することができる。前記ウイルスベクターは、前述のレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである。他の方法として、トランスフェクション試薬(リポソームなど)または一過性RNAトランスフェクションの使用もある。
【0127】
一実施形態において、前記免疫細胞は、自己細胞または同種異系細胞、好ましくはB細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、またはNK細胞、NKT細胞、より好ましくはT細胞、NK細胞またはNKT細胞である。
【0128】
本明細書において、「自家」という用語は、ある個体に由来する材料が、後でその同一個体に再導入されることを指す。
【0129】
本明細書において、「同種異系」という用語は、任意の材料が、該材料を導入する個体と同じ種で異なる動物または異なる患者に由来するものであることを指す。1つまたは複数の遺伝子座における遺伝子が異なる場合、2つ以上の個体は互いに同種異系のものnであると見なされる。場合によっては、同じ種の各個体からの同種異系材料の遺伝子上の異なりは、抗原相互作用を発生させるのに十分である。
【0130】
本明細書において、用語の「被験者」は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物を、癌の動物モデルである被験者として有利に使用することができる。好ましくは、被験者はヒトである。
【0131】
一実施形態において、前記がんは、リガンド結合ドメインと結合する標的の発現に関連するがんである。例えば、前記がんは、脳神経膠腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、基底細胞がん、胆道がん、膀胱がん、骨肉腫、脳がんおよびCNSがん、乳がん、腹膜がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸癌および直腸がん、結合組織がん、消化器系のがん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん(胃腸がんを含む)、神経膠芽細胞腫(GBM)、肝臓がん、肝細胞腫瘍、上皮内腫瘍、腎臓がん、喉頭がん、肝臓腫瘍、肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、腺がん、扁平上皮がん)、リンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含む)、メラノーマ、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん(例えば、唇、舌、口、咽頭)、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、呼吸器系のがん、唾液腺がん、皮膚がん、扁平細胞がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮または子宮内膜がん、泌尿器系の悪性腫瘍、外陰がんおよびその他のがんと肉腫、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中等度/濾胞性NHL、中等度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度の小さな非切断細胞NHL、大きなしこりNHLを含む)、マントル細胞リンパ腫、エイズ関連リンパ腫、およびWaldenstromマクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)、B細胞前リンパ性白血病、形質細胞様樹状細胞腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性骨髄性白血病(CML)、悪性リンパ増殖性疾患、MALTリンパ腫、有毛細胞白血病、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症、形質芽球性リンパ腫、前白血病、形質細胞様樹状細胞腫瘍、および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、および標的発現に関連する他の疾患を含むが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の遺伝子改変免疫細胞または医薬組成物で治療することができる疾患は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、脳神経膠腫、膵臓がん、胃がんなどである。
【0132】
一実施形態において、前記感染症は、ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫によって引き起こされる感染症を含むが、これらに限定されない。
【0133】
一実施形態において、前記自己免疫疾患は、I型糖尿病、セリアック病、グレーブス病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、アジソン病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、血管炎症、悪性貧血、および全身性エリテマトーデスなどを含むが、これらに限定されない。
【0134】
一実施形態において、前記方法はさらに、1種または複数種の追加の化学療法剤、生物学的薬剤、薬物または治療を前記被験者に投与することを含む。この実施形態において、化学療法剤、生物学的薬剤、薬物または治療は、放射線療法、外科手術、抗体剤および/または小分子、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0135】
以下、添付の図面を参照しながら例を挙げて本発明をで詳細に説明する。なお、当業者は、添付の図面および実施例は、例示的なものにすぎず、本発明を限定するものではない。本出願の実施例および実施例の特徴は、矛盾がない限り、互いに組み合わせることができる。
【0136】
本発明のすべての例で使用されるT細胞は、Ficoll-PaqueTM PREMIUM(GE Healthcare、ロット番号17-5442-02)による白血球アフェレーシスを利用して健康なドナーから単離された初代ヒトCD4+CD8+T細胞であった。
【0137】
実施例1:NK阻害性分子を発現し、TCR/HLA-I/HLA-IIをノックアウトするUNKi-T免疫細胞の構築
【0138】
B2mシグナルペプチド(配列番号21)、NK阻害性リガンド、CD28ヒンジ領域(配列番号27)、CD28膜貫通領域(配列番号11)のコード配列を合成し、それをpGEM-T Easyベクター(Promega、ロット番号A1360)に順にクローニングし、ここで、NK阻害性リガンドは、E-カドヘリンの細胞外領域(配列番号41、ECad0プラスミドに対応する)、B2MおよびHLA-E細胞外領域の融合分子(提示ペプチド配列番号46、B2M 配列番号37、およびHLA-E細胞外領域変異体配列番号33を含み、B2Mの核酸配列は、E0プラスミドに対応する同義変異の配列番号38である)、またはB2MおよびHLA-G細胞外領域の融合分子(B2M 配列番号37、およびHLA-G細胞外領域配列番号35を含み、B2Mの核酸配列は、G0プラスミドに対応する同義変異の配列番号38である)である。ECad0、EO、およびG0プラスミドにCD28共刺激ドメイン(配列番号13)をさらに含み、ECad28、E28、およびG28プラスミドのそれぞれを得た。シーケンシングにより、プラスミドに標的配列が正しく挿入されていることを確認した。
【0139】
B2mシグナルペプチド(配列番号21)、抗NKG2A-scFv(配列番号5および7を含む)、IgG4ヒンジ領域(配列番号29)、CD28膜貫通領域(配列番号11)、CD28共刺激ドメイン(配列番号13)のコード配列を合成し、それをpGEM-T Easyベクター(Promega、ロット番号A1360)に順クローニングし、A28プラスミドが得られ、シーケンシングにより、プラスミドに標的配列が正しく挿入されていることを確認した。
【0140】
3mlのOpti-MEM(Gibco、ロット番号31985-070)を滅菌チューブに加えて上記のプラスミドを希釈した後、プラスミド:ウイルスパッケージングベクター:ウイルスエンベロープベクター=4:2:1の比率でパッケージングベクターpsPAX2(Addgene、ロット番号12260)、およびエンベロープベクターpMD2.G(Addgene、ロット番号12259)を加えた。そして、120ulのX-treme GENE HP DNAトランスフェクション試薬(Roche、ロット番号06366236001)を加え、すぐに均一に混合し、室温下で15分間インキュベートし、その後、プラスミド/ベクター/トランスフェクション試薬混合物を293T細胞のフラスコに滴下した。ウイルスを24時間および48時間で収集し、プールし、超遠心分離(25000 g、4°C、2.5時間)して、濃縮レンチウイルスを得た。
【0141】
DynaBeads CD3/CD28CTSTM(Gibco、ロット番号40203D)でT細胞を活性化し、37℃、5%CO2培養条件下1日間培養した。そして、濃縮レンチウイルスを添加し、3日間連続培養した後、NK阻害性分子を発現するT細胞が得られた。
【0142】
そして、CRISPRシステムを使用して、NK阻害性分子を発現するT細胞におけるTCR/CD3コンポーネント(具体的にはTRAC遺伝子)とMHC関連遺伝子(具体的にはB2MとRFX5)をノックアウトした。具体的には、BTX Agile Pulse Maxエレクトロポレーション機(Harvard Apparatus BTX)を使用して、400V、0.7msで10ug Cas9タンパク質および10ug sgRNA(3.3ug TRAC sgRNA(配列番号43)+3.3ug B2m sgRNA(配列番号44)+3.3ug RFX5sgRNA(配列番号45))を活性化NKi-T細胞にエレクトロトランスフェクトした。エレクトロトランスフェクトの直後に、NKi-T細胞を1mlの予熱した培地に入れ、IL-2(300IU/ml)の存在下で、37℃、5%CO2下で培養し、トリプルノックアウトUNKi-T細胞が得られた。CRISPRシステムを使用したTCR/B2M/RFC5ノックアウトを伴う野生型T細胞(すなわち、Mock T細胞)および遺伝子ノックアウトを伴わない野生型T細胞(すなわち、NT細胞)をコントロールとして使用した。
【0143】
本実施例によって調製されたUNKi-T細胞に含まれるNK阻害性分子の構造を表1に示する。
【0144】
【表1】
【0145】
11日後、FITC Mouse Anti-Human CD3(BD Pharmingen、ロット番号555916)抗体、PE mouse anti-human HLA-I(R&Dロット番号FAB7098P)、およびAPC anti-human DR,DP,DQ(biolegend、ロット番号361714)抗体を使用して、UNKi-T細胞、Mock T細胞およびNT細胞におけるTCR/HLA-I/HLA-IIの発現効率をフローサイトメーターで調べた。その結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
表2から、本発明によって調製されたUNKi-T細胞およびMock T細胞におけるTCR/B2M/RFX5の発現が効果的に阻害されまたはサイレンシングされることが分かった。
【0148】
また、フローサイトメーターを使用し、PE mouse anti-human HLA-E(biolegendロット番号342604)でUNKi-T細胞およびMock T細胞におけるHLA-E発現を検測し(図1)、PE mouse anti-human HLA-G(biolegendロット番号335906)でUNKi-T細胞およびMock T細胞におけるHLA-G発現を検測し(図2)、E-cadherin monoclonal antibody(invitrogenロット番号13-5700)、およびGoat anti-Mouse IgG(H+L)Cross-Adsorbed Secondary Antibody、Alexa Fluor 488(Invitrogen、ロット番号A-11001)でUNKi-T細胞およびMock T細胞におけるE-カドヘリン発現を検測し(図3)、Biotin-SP(long spacer)AffiniPure Goat Anti-Human IgG、F(ab′)fragment specific antibody(Jackson ImmunoResearch、ロット番号109-065-097)、およびAPC Streptavidin(BD、ロット番号554067)でUNKi-T細胞およびMock T細胞におけるanti-NKG2A scFv発現を検測した(図4)。
【0149】
図1~4から、本発明により調製されたUNKi-T細胞におけるNK阻害性分子はいずれも有効に発現されていることが分かった。
【0150】
実施例2.UNKi-T細胞のNK細胞の殺傷に対する阻害効果
【0151】
本実施例で使用したエフェクター細胞はNK92細胞であった。NK92細胞株はE-カドヘリンの受容体であるKLRG1を発現しないため、KLRG1を過剰発現するNK92細胞を最初に調製した。
【0152】
KLRG1(配列番号54)をコードする核酸配列を合成し、pGEM-T Easyベクター(Promega、ロット番号A1360)に順次クローニングし、シーケンシングにより、標的配列が正しく挿入されていることを確認した。該ベクターをSpeI酵素で消化し、精製、回収して、線形化されたベクターを得た。そして、メーカーの推奨に従って、線形化されたベクトルをテンプレートとして使用し、mMESSAGE mMACHINE(R) T7 Ultra Kitキット(Invitrogen、ロット番号AM1345)を用いてmRNAを調製し、Fastpure cell/Tissue total RNA isolation kitキット(Vazyme、ロット番号RC101-01)で精製し、精製したmRNAが得られた。そして、BTX Agile Pulse Maxエレクトロポレーション機(Harvard Apparatus BTX)を使用して、20ugの上記の調製された精製mRNAを200Vで2ms間でNK92細胞にエレクトロトランスフェクトして、NK92-KLRG1細胞を得た。16時間後、KLRG1の発現を検測した。結果を図5に示す。KLRG1でトランスフェクトされていないNK92細胞をコントロールとする。
【0153】
図5からわかるように、NK92-KLRG1細胞はKLRG1を効率的に発現できた。
【0154】
そして、本発明により調製されたUNKi-T細胞のNK細胞の殺傷に対する阻害効果を、以下の方法に従って調べた。本発明により調製されたUNKi-T細胞およびMock -T細胞をFar-Red(invitrogen、ロット番号C34564)で標識した。そして、標識されたUNKi-T細胞とMock T細胞を1×104細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートにプレーティングし、2:1のエフェクター細胞-標的細胞比でNK92細胞(HLA-E、HLA-G、またはNKG2A scFvを発現するためのUNKi-T細胞とMock T細胞)またはNK92-KLRG1細胞(E-カドヘリンを発現するためのUNKi-T細胞)を共培養した。16~18時間後、培養物におけるT細胞の割合をフローサイトメーターで検測し、NK細胞のT細胞に対する殺傷率を計算した。結果を図6に示す。
【0155】
図6からわかるように、NK阻害性分子を発現しないMock T細胞と比較して、NKG2A scFv、HLA-G、HLA-E、E-カドヘリンなどの阻害性リガンドを含むNK阻害性分子を発現するUNKi-T細胞は、T細胞に対するNK細胞の殺傷効果を大幅に低減させることができる。さらに、阻害性リガンドおよび膜貫通ドメインのみを発現するT細胞と比較して、共刺激ドメインの加入は、T細胞によるNK細胞の殺傷に対する阻害をさらに大幅に高めることができる(G0 vs G28、E0 vs E28、ECad0 vs ECad28を参照)。したがって、本発明によって調製される阻害性リガンド、膜貫通ドメインおよび共刺激ドメインを含むNK阻害性分子は、UNKi-T細胞に対するNK細胞の殺傷効果を有意に低減し、HvGDのリスクを効果的に低減することができる。
【0156】
実施例3.NK細胞に対するUNKi-T細胞の殺傷効果
実施例1に記載の方法に従って調製されたE28z-UNKi-TおよびA28z-UNKi-T細胞は、さらにCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号17)を含む点でのみE28-UNKi-TおよびA28-UNKi-T細胞と相違する。
【0157】
(1)NK阻害性分子の発現の検測
Biotin-SP(long spacer)AffiniPure Goat Anti-Human IgG、F(ab′)fragment specific antibody(Jackson ImmunoResearch、ロット番号109-065-097)およびAPC Streptavidin(BD、ロット番号554067)でA28z-UNKi-T細胞およびMock T細胞におけるanti-NKG2A scFv発現を検測した(図7)。フローサイトメーターを使用し、PE mouse anti-human HLA-E(biolegendロット番号342604)でE28z-UNKi-T細胞およびMock T細胞におけるHLA-E発現を検測した(図8)。
【0158】
上記の結果から、本発明により作製されたE28z-UNKi-T細胞およびA28z-UNKi-T細胞におけるNK阻害性分子が有効に発現できる。
【0159】
(2)CD107aの発現の検測
細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)は、細胞質基質に高濃度の、小胞の形で存在する細胞傷害性顆粒が含まれ、リソソーム関連膜タンパク質I(CD107a)は小胞膜タンパク質の主成分である。CTL細胞が標的細胞を殺傷するとき、傷害性顆粒が細胞膜に到達して細胞膜と融合し(このときCD107a分子が細胞膜表面に輸送される)、顆粒内容物の放出が引き起こされ、結果、標的細胞の死になる。このため、CD107a分子は、CTL細胞脱顆粒の高感度マーカーであり、細胞の殺傷活性を反映することができる。
【0160】
1×105個の細胞/ウェルの濃度で標的細胞(NK92細胞)を96ウェルプレートに播種し、そして、1:1の比率で各ウェルにMock T細胞、E28z-UNKi-T細胞およびA28z-UNKi-T細胞を入れ、同時に、10μl PE-anti-human CD107a(BD Pharmingen、ロット番号555801)を加え、37℃、5%CO2の培養条件下で共培養した。1時間後、Goigstop(BD Pharmingen、ロット番号51-2092KZ)を加えてさらに2.5時間インキュベートした。その後、各ウェルに5μl APC-anti human CD8(BD Pharmingen、ロット番号:555369)、および5μl FITC-anti human CD4(BD Pharmingen、ロット番号:561005)を加え、37℃で30分間インキュベートした後、CD107aの発現をフローサイトメーターで調べた。結果を図9A(CD4+T細胞毒性)および図9B(CD8+T細胞毒性)に示す。
【0161】
上記の結果から、NK阻害性分子を発現しないMock T細胞は標的細胞に対してほとんど殺傷しないことがわかった。逆に、本発明により調製したE28z-UNKi-T細胞およびA28z-UNKi-T細胞と標的細胞とを共培養した後、CD107aの発現率が有意に上昇し、本発明によるUNKi-T細胞は、NK細胞に対する殺傷効果が顕著である。
【0162】
(3)IFN-γの分泌の検測
標的細胞(NK92細胞)を96ウェルプレートに1×105細胞/ウェルで播種し、Mock T細胞、E28z-UNKi-T細胞およびA28z-UNKi-T細胞を各ウェルに1:1の比率で加え、37℃、5%CO2の培養条件下で共培養し、細胞共培養上清を18~24時間後に収集した。
【0163】
捕捉抗体Purified anti-human IFN-γ Antibody(Biolegend、ロット番号506502)を使用して96ウェルプレートに播種し、4℃で一晩インキュベートした。その後、抗体溶液が除去た。2%BSA(sigma、ロット番号V900933-1kg)を含むPBST(0.1%Tweenを含む1XPBS)溶液を250μL加え、37℃で2時間インキュベートした。その後、プレートを250μLのPBST(0.1%Tweenを含む1XPBS)で3回洗浄した。各ウェルに50μLの細胞共培養上清または標準液を加え、37℃で1時間インキュベートした後、プレートを250μLのPBST(0.1%Tweenを含む1XPBS)で3回洗浄した。その後、各ウェルに50μLの検出抗体Anti-Interferon gamma抗体(MD-1)(Biotin)(abcam、ロット番号ab25017)を加え、37℃で1時間インキュベートした後、プレートを250μLのPBST(0.1%Tweenを含む1XPBS)で3回洗浄した。さらにHRP Streptavidin(Biolegend、ロット番号405210)を加え、37℃で30分間インキュベートした後、上清を捨て、250μLのPBST(0.1%Tweenを含む1XPBS)を加え、5回洗浄した。各ウェルに50μLのTMB基質溶液を加えた。暗所で室温で30分間反応した後、1mol/Lの H2SO4を各ウェルに50μL加えて反応を停止させた。反応を停止してから30分以内に、マイクロプレートリーダーを使用して450 nmでの吸光度を検測し、標準曲線(標準品の読み取り値と濃度により描画し)によりサイトカインの含有量を計算した。結果を図10に示す。
【0164】
上記の結果から、本発明のE28z-UNKi-T細胞およびA28z-UNKi-T細胞のサイトカインIFN-γの放出レベルは、Mock T細胞のレベルよりはるかに高く、これは、NK92標的細胞に対する殺傷効果が有意に高くなった。
【0165】
実施例4.KIRまたはLIR1を標的とするUNKi-T細胞およびそのNK細胞の殺傷に対する阻害効果
B2mシグナルペプチド(配列番号21)、抗KIR-scFv(配列番号55、および56を含む)または抗LIR1 scFv(配列番号57および58を含み、または配列番号59および60を含む)、IgG4ヒンジ領域(配列番号29)、CD8α膜貫通領域(配列番号9)、CD28共刺激ドメイン(配列番号13)のコード配列を合成し、それをpLVXベクター(Public Protein/Plasmid Library(PPL)、ロット番号:PPL00157-4a)に順次クローニングし、KIRG4、LIRG4-1およびLIRG4-2プラスミドが得られ、シーケンシングにより、プラスミドに標的配列が正しく挿入されていることを確認した。
【0166】
実施例1のノックアウトおよび感染法に従ってUNKi-T細胞を調製し、FITC Mouse Anti-Human CD3(BD Pharmingen、ロット番号555916)抗体、PE mouse anti-human HLA-I(R&Dロット番号FAB7098P)、およびAPC anti-human DR,DP,DQ(biolegend、ロット番号361714)抗体を使用して、フローサイトメーターによってUNKi-T細胞、モックT細胞およびNT細胞におけるCD3/HLA-I/HLA-IIの発現効率を調べた。結果を表3に示す。
【0167】
【表3】
【0168】
表3から、本発明によって調製されたUNKi-T細胞およびモックT細胞におけるCD3/HLA-I/HLA-IIの発現が効果的に阻害されまたはサイレンシングされたことがわかった。
【0169】
Biotin-SP(long spacer)AffiniPure Goat Anti-Human IgG、F(ab′)fragment specific antibody(Jackson ImmunoResearch、ロット番号109-065-097)、およびAPC Streptavidin(BD、ロット番号554067)でKIRG4-UNKi-T細胞におけるscFv発現を検測した。結果を図11に示す。recombinant human LILRB1 protein(sino biological、ロット番号16014-H02H)を一次抗体として用い、APC anti-human IgG Fc(biolegend、ロット番号409306)を二次抗体として用い、LIRG4-UNKi-1T細胞およびLIRG4-UNKi-2T細胞におけるscFvの発現を検測した。結果を図12に示す。図11および図12から、本発明によって調製されたUNKi-T細胞のscFvがいずれも有効に発現されていることが分かった。
【0170】
実施例2の方法に従ってUNKi-T細胞とNK92細胞を共培養し、NK細胞の殺傷に対するUNKi-T細胞の阻害効果を調べた。結果を図13に示す。上記の結果から、Mock Tと比較して、本実施例で調製されたKIR(図13A)またはLIR1(図13B)を標的とするUNKi-T細胞は、T細胞に対するNK細胞の殺傷効果を大幅に低減させることができる。
【0171】
実施例5.SIGLC7、SIGLEC9、またはKLRG1を標的とするT細胞とそのNK細胞の殺傷に対する阻害効果
B2mシグナルペプチド(配列番号21)、抗SIGLEC7-scFv(配列番号130)、抗SIGLEC7/SIGLEC9-scFv(配列番号184)または抗KLRG1-scFv(配列番号119)、IgG4ヒンジ領域(配列番号29)、CD8α膜貫通領域(配列番号9)、CD28共刺激ドメイン(配列番号13)のコード配列を合成し、それをpLVXベクター(Public Protein/Plasmid Library(PPL)、ロット番号:PPL00157-4a)に順次クローニングし、SC7G4、SC7/SC9G4、およびK1G4プラスミドが得られ、シーケンシングにより、プラスミドに標的配列が正しく挿入されていることを確認した。
【0172】
上記プラスミドを実施例1の方法に従ってT細胞に移し、B2M遺伝子をノックアウトして、NK阻害性分子を発現するとともにB2MがノックアウトされたNKi-T細胞(すなわち、SC7G4-T細胞、SC7/SC9G4-T細胞およびK1G4-T細胞)を得た。B2MがノックアウトされただけのT細胞をネガティブコントロール(NT)として使用した。
【0173】
Biotin-SP(long spacer)AffiniPure Goat Anti-mouse IgG、F(ab′)fragment specific antibody(Jackson ImmunoResearch、ロット番号115-066-072)、およびAPC Streptavidin(BD、ロット番号554067)でSC7G4、SC7/SC9G4およびK1G4T細胞におけるscFv発現を検測した。結果を図14に示す。上記の結果から、本発明によって調製されたNKi-T細胞のscFvがいずれも有効に発現されていることが分かった。
【0174】
実施例2に記載の方法に従って、上記のNKi-T細胞とNK92-KLRG1細胞とを共培養して、そのNK細胞殺傷に対する阻害効果を調べた。結果を図15に示す。上記の結果から、NTと比較して、本実施例によって調製されたSIGLEC7、SIGLEC9またはKLRG1を標的とするT細胞は、NK細胞のT細胞に対する殺傷効果を大幅に低減することができる。
【0175】
実施例6.PD-1を標的とするT細胞とNK細胞増殖に対するそれらの阻害効果
PDL1シグナルペプチド(配列番号121)、PDL1細胞外領域(配列番号70)、PDL1膜貫通領域(配列番号120)、CD28共刺激ドメイン(配列番号13)のコード配列を合成し、pLVXベクター(Public Protein/Plasmid Library(PPL)、ロット番号:PPL00157-4a)に順次クローニングし、PDL1プラスミドが得られ、シーケンシングにより、プラスミドに標的配列が正しく挿入されていることを確認した。
【0176】
上記プラスミドを実施例1の方法に従ってT細胞に移して、NK阻害性分子を発現するNKi-T細胞、すなわちPDL1-T細胞を得た。Anti-PD-L1Antibody(メーカー:ソレイボ、ロット番号:10084-R312-A)を用いてその発現を調べた。結果を図16に示す。上記の結果から、PDL1は有効に発現されている。未処理のT細胞をネガティブコントロール(NT)として使用した。
【0177】
上記のNKi-T細胞を培養し、細胞マイトマイシンCで処理し、2つの同種異系由来のPBMC(donor1およびdonor2)をFar-Redで標識し、T細胞:PBMC=1:2の比率で共培養を行った。2~3日ごとにハーフ培地交換処理を行っていた。8日後、細胞をカウントし、PE anti-human CD3(メーカー:biolegend、ロット番号:317308)、およびFITC anti-human CD56(メーカー:biolegend、ロット番号:362546)を使用して染色し、その後、NK細胞集団比をフローサイトメトリーにより調べた。細胞の総数*NK細胞集団比によってNK細胞の数を計算した。結果を図17に示す。上記の結果から、PD-1を標的とするNKi-T細胞は、NK細胞の増殖を顕著に阻害することができる。
【0178】
実施例7.KIRを標的とするB細胞およびHuh7細胞のNK細胞殺傷に対する阻害効果
【0179】
実施例4で調製したKIRG4プラスミドを、実施例1の方法に従って、B細胞およびHuh7細胞(肝臓がん細胞)に移し、B2M遺伝子をノックアウトして、NK阻害性分子を発現するとともにB2MがノックアウトされたNKi-B細胞とNKi-Huh7細胞を得た。B2M遺伝子がノックアウトされただけのB細胞およびHuh7細胞(NC細胞)をネガティブコントロールとして使用した。
【0180】
Biotin-SP(long spacer)AffiniPure Goat Anti-Human IgG、F(ab′)fragment specific antibody(Jackson ImmunoResearch、ロット番号109-065-097)、およびAPC Streptavidin(BD、ロット番号554067)でNKi-B細胞およびNKi-Huh7細胞におけるscFv発現を検測した。結果を図18に示す。上記の結果から、NK阻害性分子は、B細胞およびHuh7細胞において有効に発現されていることが分かった。
【0181】
実施例2の方法に従って上記で調製した細胞とNK細胞を共培養し、NK細胞の殺傷効果に対する上記細胞の阻害効果を調べた。結果を図19に示す。上記の結果から、NC細胞と比較して、本実施例によって調製されたNKi-B細胞およびNKi-Huh7細胞は、いずれもNK細胞の殺傷効果を大幅に低減することができる。
【0182】
なお、上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定することを意図するものではないことに留意されたい。当業者にとって、本発明は、様々な変化および変更を有し得る。本発明の精神および原理の範囲内で行われる変更、均等置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれることが当業者であれば理解できる。
【配列表フリーテキスト】
【0183】
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図1
図2
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図5
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図10
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図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NK阻害性分子であって、
1つまたは複数のNK阻害性リガンド、膜貫通ドメイン、および共刺激ドメインを含み、前記NK阻害性リガンドがNK阻害性受容体(NK inhibitory receptor、NKIR)に特異的に結合して、NK細胞による、前記NK阻害性分子を発現する遺伝子改変免疫細胞に対する殺傷を阻害し、前記NK阻害性分子は細胞内シグナル伝達ドメインを含まない、NK阻害性分子。
【請求項2】
前記NK阻害性リガンドは、NKIRの天然リガンド、NKIRを標的とする抗体、またはそれに含まれるNKIR結合領域である、請求項1に記載のNK阻害性分子。
【請求項3】
前記NKIRは、免疫チェックポイント受容体、NKG2/CD94成分、キラー細胞Ig様受容体(KIR)ファミリーメンバー、白血球Ig様受容体(LIR)ファミリーメンバー、NK細胞受容体タンパク質1(NKR-P1)ファミリーメンバー、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(SIGLEC)ファミリーメンバー、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、Ly49ファミリーメンバーおよびキラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG1)から選択される、請求項1または2に記載のNK阻害性分子。
【請求項4】
前記免疫チェックポイント受容体は、PD-1、TIGIT、CD96、TIM3およびLAG3から選択され、前記NKG2/CD94成分は、NKG2A、NKG2BおよびCD94から選択され、前記KIRファミリーメンバーは、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、およびKIR3DL3から選択され、前記LIRファミリーメンバーは、LIR1、LIR2、LIR3、LIR5、およびLIR8から選択され、前記NKR-P1ファミリーメンバーは、NKR-P1BおよびNKR-P1Dから選択され、前記SIGLECファミリーメンバーは、SIGLEC7、およびSIGLEC9から選択され、前記Ly49ファミリーメンバーは、Ly49A、Ly49C、Ly49F、Ly49G1、およびLy49G4から選択される、請求項3に記載のNK阻害性分子。
【請求項5】
前記NKIRは、PD1、NKG2A、NKG2B、CD94、LIR1、LIR2、LIR3、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR3DL1、CEACAM1、LAIR1、SIGLEC7、SIGLEC9、およびKLRG1から選択される、請求項3または4に記載のNK阻害性分子。
【請求項6】
前記NK阻害性リガンドは、NKIRを標的とする抗体またはその機能的フラグメントであり、前記抗体またはその機能的フラグメントは、無傷の抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、線状抗体、sdAb、またはナノ抗体から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のNK阻害性分子。
【請求項7】
前記NK阻害性リガンドは、PD1、NKG2A、LIR1、KIR、SIGLEC7、SIGLEC9、および/またはKLRG1を標的とする抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載のNK阻害性分子。
【請求項8】
(i)前記NKG2Aを標的とする抗体は、(1)配列番号72に示されるCDR-L1、配列番号73に示されるCDR-L2、配列番号74に示されるCDR-L3、配列番号75に示されるCDR-H1、配列番号76に示されるCDR-H2、および配列番号77に示されるCDR-H3、または、(2)配列番号78に示されるCDR-L1、配列番号79に示されるCDR-L2、配列番号80に示されるCDR-L3、配列番号81に示されるCDR-H1、配列番号82に示されるCDR-H2、および配列番号83に示されるCDR-H3、を含み、
(ii)前記LIR1を標的とする抗体は、(1)配列番号90に示されるCDR-L1、配列番号91に示されるCDR-L2、配列番号92に示されるCDR-L3、配列番号93に示されるCDR-H1、配列番号94に示されるCDR-H2、および配列番号95に示されるCDR-H3、または、(2)配列番号96に示されるCDR-L1、配列番号97に示されるCDR-L2、配列番号98に示されるCDR-L3、配列番号99に示されるCDR-H1、配列番号100に示されるCDR-H2、および配列番号101に示されるCDR-H3、を含み、
(iii)前記KIRを標的とする抗体は、配列番号84に示されるCDR-L1、配列番号85に示されるCDR-L2、配列番号86に示されるCDR-L3、配列番号87に示されるCDR-H1、配列番号88に示されるCDR-H2、および配列番号89に示されるCDR-H3を含み、
(iv)前記SIGLEC7、SIGLEC9またはその両方を標的とする抗体は、(1)配列番号102に示されるCDR-L1、配列番号103に示されるCDR-L2、配列番号104に示されるCDR-L3、配列番号105に示されるCDR-H1、配列番号106に示されるCDR-H2、および配列番号107に示されるCDR-H3、(2)配列番号122に示されるCDR-L1、配列番号123に示されるCDR-L2、配列番号124に示されるCDR-L3、配列番号125に示されるCDR-H1、配列番号126に示されるCDR-H2、および配列番号1277に示されるCDR-H3、(3)配列番号131に示されるCDR-L1、配列番号132に示されるCDR-L2、配列番号133に示されるCDR-L3、配列番号134に示されるCDR-H1、配列番号135に示されるCDR-H2、および配列番号136に示されるCDR-H3、(4)配列番号140に示されるCDR-L1、配列番号141に示されるCDR-L2、配列番号142に示されるCDR-L3、配列番号143に示されるCDR-H1、配列番号144に示されるCDR-H2、および配列番号155に示されるCDR-H3、(5)配列番号176に示されるCDR-L1、配列番号177に示されるCDR-L2、配列番号178に示されるCDR-L3、配列番号179に示されるCDR-H1、配列番号180に示されるCDR-H2、および配列番号181に示されるCDR-H3、または(6)配列番号188に示されるCDR-L1、配列番号189に示されるCDR-L2、配列番号190に示されるCDR-L3、配列番号191に示されるCDR-H1、配列番号192に示されるCDR-H2、および配列番号193に示されるCDR-H3、を含み、および/または
(v)前記KLRG1を標的とする抗体は、(1)配列番号111に示されるCDR-L1、配列番号112に示されるCDR-L2、配列番号113に示されるCDR-L3、配列番号114に示されるCDR-H1、配列番号115に示されるCDR-H2、および配列番号116に示されるCDR-H3、(2)配列番号149に示されるCDR-L1、配列番号150に示されるCDR-L2、配列番号151に示されるCDR-L3、配列番号152に示されるCDR-H1、配列番号153に示されるCDR-H2、および配列番号154に示されるCDR-H3、(3)配列番号158に示されるCDR-L1、配列番号159に示されるCDR-L2、配列番号160に示されるCDR-L3、配列番号161に示されるCDR-H1、配列番号162に示されるCDR-H2、および配列番号163に示されるCDR-H3、または(4)配列番号167に示されるCDR-L1、配列番号168に示されるCDR-L2、配列番号169に示されるCDR-L3、配列番号170に示されるCDR-H1、配列番号171に示されるCDR-H2、および配列番号172に示されるCDR-H3、を含む、
請求項7に記載のNK阻害性分子。
【請求項9】
前記NK阻害性リガンドは、PD-L1/PD-L2、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン、コラーゲン、OCIL、シアル酸、CD155、CD112、CD113、Gal-9、FGL1、およびそれらに含まれるNKIR結合領域から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のNK阻害性分子。
【請求項10】
前記NK阻害性リガンドは、PD-L1細胞外領域、PD-L2細胞外領域、シアル酸、HLA-E細胞外領域、HLA-F細胞外領域、HLA-G細胞外領域、およびE-カドヘリン細胞外領域から選択される、請求項9に記載のNK阻害性分子。
【請求項11】
(i)PD-L1細胞外領域は、配列番号70に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、
(ii)PD-L2細胞外領域は、配列番号71に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、
(iii)前記HLA-Eの細胞外領域は、配列番号31または33に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、
(iv)前記HLA-Gの細胞外領域は、配列番号35に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有し、
(v)E-カドヘリン細胞外領域は、配列番号39または41に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%または99%または100%の配列同一性を有する、
請求項10に記載のNK阻害性分子。
【請求項12】
前記膜貫通ドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ζサブユニット、CD3εサブユニット、CD3γサブユニット、CD3δサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン、コラーゲン、OCILのタンパク質の膜貫通ドメインから選択される、請求項1に記載のNK阻害性分子。
【請求項13】
前記共刺激ドメインは、LTB、CD94、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD8、CD18、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、DAP10、DAP12、LAT、NKG2C、SLP76、PD-1、LIGHT、TRIM、ZAP70、およびそれらの組み合わせのタンパク質の共刺激シグナル伝達ドメインから選択される、請求項1に記載のNK阻害性分子。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のNK阻害性分子をコードする、核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項16】
(1)請求項1~13のいずれか一項に記載のNK阻害性分子を発現し、および(2)少なくとも1種のMHC関連遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを特徴とする遺伝子改変免疫細胞。
【請求項17】
前記遺伝子改変免疫細胞は、キメラ抗原受容体をさらに発現し、前記キメラ抗原受容体がリガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細細胞内シグナル伝達ドメインを含むことを特徴とする、請求項16に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項18】
前記少なくとも1種のMHC関連遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、TAP1、TAP2、LMP2、LMP7、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項16または17に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項19】
前記少なくとも1種のMHC関連遺伝子は、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項18に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項20】
前記MHC関連遺伝子はB2Mを含み、前記NK阻害性リガンドは、B2Mおよび非古典的なHLA-I分子の細胞外領域の融合分子である、請求項19に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項21】
前記非古典的なHLA-I分子は、HLA-EまたはHLA-Gである、請求項20に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項22】
前記NK阻害性分子は、配列番号46~53からなる群から選択される提示ペプチドをさらに含む、請求項20に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項23】
前記遺伝子改変免疫細胞の少なくとも1種のTCR/CD3遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされ、前記TCR/CD3遺伝子が、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1622のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項24】
CD52、GR、dCK、PD1、LAG3、TIM3、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、PDCD1、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、およびGUCY1B3から選択される1種または複数種の遺伝子の発現が阻害されまたはサイレンシングされることを特徴とする、請求項1623のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項25】
前記リガンド結合ドメインは、TSHR、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD23、CD24、CD25、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD46、CD47、CD52、CD54、CD56、CD70、CD73、CD80、CD97、CD123、CD22、CD126、CD138、CD179a、DR4、DR5、TAC、TEM1/CD248、VEGF、GUCY2C、EGP40、EGP-2、EGP-4、CD133、IFNAR1、DLL3、kappa軽鎖、TIM3、BAFF-R、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、tEGFR、GD2、GD3、BCMA、GPRC5D、Tn抗原、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、IL-22Ra、IL-2、メソテリン、IL-llRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-β、SSEA-4、CD20、AFP、Folate受容体α、ERBB2(Her2/neu)、ErbB3、ErbB4、MUC1、MUC16、EGFR、CS1、CD138、NCAM、Claudin18.2、Prostase、PAP、ELF2M、Ephrin B2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gploo、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、Fucosyl GM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、Folate受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE-A4、MART-1、WT-1、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質、サバイビンおよびテロメラーゼ、PCTA-l/Galectin 8、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座ブレークポイント、ML-IAP、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、Cyclin Bl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B 1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES 1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸のカルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、PD1、PDL1、PDL2、TGFβ、APRIL、NKG2D、NKG2DL、およびそれらの任意の組み合わせから選択される標的に結合する、請求項1624のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項26】
前記標的は、CD7、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD123、CD138、CD171、MUC1、AFP、Folate受容体α、CEA、PSCA、PSMA、Her2、EGFR、IL13Ra2、GD2、NKG2D、EGFRvIII、CS1、BCMA、メソテリン、Cluadin18.2、ROR1、NY-ESO-1、MAGE-A4、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項25に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項27】
前記遺伝子改変免疫細胞は、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単核細胞、NK細胞またはNKT細胞である、請求項1626のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項28】
前記遺伝子改変免疫細胞は、CD4+/CD8+T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、CD8+T細胞、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、γδ-T細胞またはαβ-T細胞である、請求項27に記載の遺伝子改変免疫細胞。
【請求項29】
請求項1~13のいずれか一項に記載のNK阻害性分子、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、または請求項1628のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞、および一種または複数種の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項30】
がん、感染症または自己免疫疾患を治療するための医薬の調製における、請求項1~13のいずれか一項に記載のNK阻害性分子、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクターまたは請求項1628のいずれか一項に記載の遺伝子改変免疫細胞の使用。