(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109828
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】透明な脆性材料に分割線を挿入するための方法および装置、ならびに本方法によって製造可能な、分割線が設けられた要素
(51)【国際特許分類】
C03B 33/09 20060101AFI20240806BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20240806BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240806BHJP
B23K 26/55 20140101ALI20240806BHJP
【FI】
C03B33/09
B23K26/067
B23K26/064 A
B23K26/55
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024084169
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2022200984の分割
【原出願日】2019-02-11
(31)【優先権主張番号】102018103456.3
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018126381.3
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス オアトナー
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス クーニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】フランク-トーマス レンテス
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ウルリッヒ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クアト ナッターマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クルーゲ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】設けられた線に沿って被加工物を分割することによる被加工物の材料処理の方法。
【解決手段】被加工物の分離または分割を準備するための方法であって、パルス状のレーザビームの光に対して透明である被加工物が用意され、レーザビームは、光学系によって少なくとも2つの部分ビームに分割され、照射される表面の法線に対してそれぞれ異なる角度で被加工物に入射、かつ被加工物の内部で重畳するように、被加工物へと向けられ、部分ビームは、当4部分ビームの重畳領域に沿って相前後して並んだ一連の強度最大値が被加工物の内部に形成されるように、互いに干渉し合い、強度最大値における強度は、被加工物の材料が変性させられて、材料変性部の鎖状の周期的な配列が形成されるほど高く、被加工物と部分ビームとは、分割線を形成する経路に沿って位置する複数の鎖状の周期的な配列が生成されるように、互いに対して相対的に移動させられる、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(2)の分割を準備するための方法であって、
・パルス状のレーザビーム(4)の光に対して透明である被加工物(2)が用意され、
・前記レーザビーム(4)は、光学系(6)によって少なくとも2つの部分ビーム(41,42)に分割され、
2つの前記部分ビーム(41,42)は、照射される表面(21)の法線に対してそれぞれ異なる角度で前記被加工物(2)に入射するように、かつ、前記被加工物(2)の内部で重畳するように、前記被加工物(2)へと向けられ、
前記部分ビーム(41,42)は、前記部分ビーム(41,42)の重畳領域(43)に沿って相前後して並んだ一連の強度最大値(45)が前記被加工物(2)の内部に形成されるように、互いに干渉し合い、
前記強度最大値(45)における強度は、前記被加工物(2)の材料が変性させられて、材料変性部(8)の鎖状の周期的な配列(9)が形成されるほど高く、
前記被加工物(2)と前記部分ビーム(41,42)とは、分割線(11)を形成する経路に沿って位置する複数の材料変性部(8)の鎖状の周期的な配列(9)が生成されるように、互いに対して相対的に移動させられる、
方法。
【請求項2】
前記部分ビームのうちの一方(41)は、アキシコンによって生成されたベッセルビームであり、
第1の部分ビームが線焦点を形成している領域において、第2の部分ビーム(42)が前記第1の部分ビームと重畳させられる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
・前記第2の部分ビーム(42)をガウスビームとして成形するステップと、
・2つの前記部分ビーム(41,42)の強度の差が5倍以下、好ましくは3倍以下になるように、前記レーザ光を分割するステップと、
のうちの少なくとも1つのステップが設けられている、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
被加工物(2)の分割の準備をするための方法を実施するための装置であって、前記装置は、
・パルス状のレーザビーム(4)を生成するためのレーザ(3)と、
・前記レーザビーム(4)を、少なくとも2つの部分ビームに分割して、処理されるべき被加工物(2)へと向けるための光学系(6)と、
・2つの前記部分ビーム(41,42)が、照射される表面(21)の法線に対してそれぞれ異なる角度で前記被加工物(2)に入射するように、かつ、前記被加工物(2)の内部で重畳するように、さらに、前記部分ビーム(41,42)が、前記部分ビーム(41,42)の重畳領域(43)に沿って相前後して並んだ一連の強度最大値(45)が前記被加工物(2)の内部に形成されるように、互いに干渉し合うように、前記被加工物(2)と前記レーザビーム(4)とを、互いに相対的に位置決めおよび方向決めするための位置決め装置(13)と、
を含み、
・前記レーザ(3)は、前記被加工物(2)の材料を変性させて、材料変性部(8)の鎖状の周期的な配列(9)を形成するために、前記レーザパルスのパルスエネルギが十分になるように、十分なエネルギパルスを生成するように構成されており、
・前記位置決め装置(13)は、分割線(11)を形成する経路に沿って位置する複数の材料変性部(8)の鎖状の周期的な配列(9)を生成するために、部分ビームを有する前記レーザビーム(4)と前記被加工物(2)とを、互いに対して移動させるように構成されている、
装置。
【請求項5】
・前記光学系(6)は、平凸アキシコン(91)を含み、前記平凸アキシコン(91)の平坦側(95)は、入射レーザビームの方を向いており、凸側(96)は、切頭円錐の形状を有するという特徴と、
・前記光学系(6)は、平凸アキシコン(91)を含み、前記平凸アキシコン(91)の凸側(96)は、入射レーザビームの方を向いており、切頭円錐の形状を有するという特徴と、
のうちの少なくとも1つを有する、
請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記光学系(6)は、2つの前記部分ビーム(41,42)の強度の差が100倍以下、好ましくは50倍以下となるように、前記レーザ光を分割するように構成されている、
請求項4記載の装置。
【請求項7】
前記光学系(6)は、平凸アキシコン(92)であり、前記平凸アキシコン(92)の平坦側(100)の中央に、ガラス円錐(98)が配置されており、前記ガラス円錐(98)の凸側(99)は、円錐の形状を有する、
請求項4記載の装置。
【請求項8】
前記光学系(6)は、凹凸アキシコン(93)であり、凸側(101)は、切頭円錐の形状を有し、凹側(102)は、切頭円錐の輪郭を有し、
前記レーザ光を、前記アキシコンを通るように案内するために、中央開口部(103)が設けられている、
請求項4記載の装置。
【請求項9】
前記光学系(6)は、両凸アキシコンであり、前記アキシコンの2つの凸側は、それぞれ異なる母線の傾斜角を有する切頭円錐の形状を有し、
空気が充填された中央領域(108)が設けられている、
請求項4記載の装置。
【請求項10】
前記光学系(6)は、少なくとも3つの平凸アキシコンを含み、少なくとも3つの前記アキシコンの凸側は、切頭円錐の形状を有する、
請求項4記載の装置。
【請求項11】
前記光学系(6)は、同心リング格子を含む、
請求項4記載の装置。
【請求項12】
前記光学系(6)は、同心リング格子として構成された少なくとも3つのアキシコンを含み、前記アキシコンのうちの少なくとも2つは、中央の平面領域を有する、
請求項4記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、リングビーム(170)を生成するための配列(150)を有し、
前記リングビーム(170)のビームプロファイルは、ビーム軸上では強度消失を有するが、ビーム軸の周りの円形リング上では強度最大値を有し、
前記装置は、ビーム方向において前記配列(150)の下流に配置された切頭円錐アキシコンを有し、前記切頭円錐アキシコンは、前記リングビーム(170)を中央ビーム(190)とリングビームとに分割し、
前記中央ビーム(190)および前記リングビーム(180)の出力成分は、前記アキシコンに入射する前記リングビーム(170)のビーム直径に対する前記アキシコン(135)の切頭円錐平面の比によって調整可能である、
請求項4記載の装置。
【請求項14】
前記リングビーム(170)を生成するための前記配列(150)は、2つの螺旋位相板(151,152)または2つの回折アキシコンを含む、
請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記光学系(6)は、3つの相前後して接続されたアキシコン(135)を有するアキシコントリプレットを含み、
ビームの方向において最初にあるアキシコン(135)は、発散性のリングビームを生成し、
前記発散性のリングビームは、後続するアキシコン(141)によって平行化され、前記アキシコントリプレットの最後のアキシコン(142)によって収束性のリングビームに変換される、
請求項4から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
とりわけ請求項1から3までのいずれか1項記載の方法または請求項4から15までのいずれか1項記載の装置によって製造可能な、ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)であって、
前記被加工物(2)は、2つの平面(22,24)を有し、
前記被加工物(2)は、前記被加工物(2)の内部に位置する材料変性部(17)のパターンを有し、前記材料変性部(17)は、それぞれ圧密ゾーン(16)によって取り囲まれており、
前記材料変性部(17)は、線(18)に沿って規則的な順序で配置されている、
ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項17】
前記被加工物(2)は、2つの平面(22,24)を有し、
規則的に相前後して配置された材料変性部からなる、隣り合って位置する複数の線(18)は、前記被加工物の内部に位置する平面(19)を形成し、
前記材料変性部の前記線は、前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)の前記2つの平面(22,24)のうちの一方から、反対側の側面まで到達している、
請求項16記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項18】
前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)は、ディスク形であり、前記平面(22,24)は、2つの相対する側面である、
請求項17記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項19】
前記平面は、同心の周面であり、前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)は、管形である、
請求項17記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項20】
前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)の厚さは、10μm~50mmの間、好ましくは1mm~20mmの間である、
請求項16から19までのいずれか1項記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項21】
前記材料変性部(17)の全長を前記被加工物(2)の厚さdで割った商ωに関して、
【数1】
が当てはまり、
ここで、l
iは、前記材料変性部の個々の長さを表し、なお、k=0.5、好ましくはk=0.7、とりわけk=0.9、非常に特に好ましくはk=0.95である、
請求項16から20までのいずれか1項記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項22】
とりわけ請求項1から3までのいずれか1項記載の方法または請求項4から15までのいずれか1項記載の装置によって製造可能な、ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物であって、
前記被加工物は、割断縁部(17)を有し、
前記割断縁部(17)は、規則的に鎖状に相前後して配置された材料変性部からなる複数の互いに隣り合って位置する線を有し、前記材料変性部は、前記線に沿った1~100μmの中心間間隔と、0.2~5μmの直径と、を有し、それぞれ圧密ゾーン(16)によって取り囲まれている、
ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、設けられた線に沿って被加工物を分割することによる被加工物の材料処理に関する。
【背景技術】
【0002】
設けられた線に沿ってガラス板を分割するために、亀裂を割断する方法が使用されることが多い。ガラスは、まず始めに線に沿って引っかき傷がつけられ、次いで、この線において曲げ応力を加えることによって割断される。しかしながら、この場合には、特に厚いガラスまたはガラス板の場合、線に沿った開裂によって生じた端面が、もはや線に沿って延在せず、側面に対してもはや垂直でなくなる可能性があるという問題が存在する。
【0003】
国際公開第2012/006736号では、基板の所期の分割線に沿った自己集束の非線形効果を利用して互いに離間されたフィラメントを生成することにより、超短レーザパルス(パルス長が100ps未満)の1つまたは群を用いて、基板を割断する準備をするための方法が紹介されている。
【0004】
国際公開第2017/009379号は、上記の方法の発展形態を記載しており、ここでは、基板の表面に対して斜めに延在する変性部が生成される。
【0005】
欧州特許第2931467号明細書からは、未臨界の亀裂成長による早期の自己劈開を阻止するために、追加的なプロセスパラメータとして周囲雰囲気を含めることが公知である。
【0006】
さらに、独国特許出願公開第102015116848号明細書は、レンズの球面収差によってフィラメントを作成することにより、規定された強度のゾーンを導入することを記載しており、ここでは、超短パルスレーザのガウスビームが、光軸に沿って不均一な強度分布を有する線焦点に変換される。上記の文献に記載されている方法は、材料の厚さ方向において、比較的小さい割断応力を有する非等間隔の材料変性部を生成するが、不利なことに、材料変性部の長さが、典型的には約3mm以下に制限されている。さらに、不均一な強度分布は、線焦点に対して相対的なガラス板の位置に関する所要の高い正確性に対しても、不利な影響を及ぼす。すなわち、ガラス板が線焦点の長さより格段に薄い場合であっても、板と光学系との間の間隔を正確に約50μmに維持しなければならないのである。
【0007】
欧州特許第2754524号明細書および独国特許出願公開第102013223637号明細書は、適切な光学系を用いて(好ましくは、少なくとも1つのアキシコンを使用して)ベッセルガウスビームを生成する(すなわち、ガウスビームを、ガウス形の包絡線を有するベッセルビームに変換する)ことによってフィラメントを生成する方法を記載している。このようにして生成された材料変性部は、光軸に沿ってほぼ均一に分布しており、したがって、上で挙げた方法よりも格段により大きい割断応力を必要とする。このような格段により大きい割断応力は、不利な作用を及ぼす。なぜなら、生成される変性部は、確かに比較的長い長さを有する(最大15~20mm)のだが、事前に穿孔された線に沿った後続の分割プロセスは、未臨界の亀裂成長が発生するため、基本的に成功しないからである。ベッセル状のリング状のビームを生成するためにアキシコンを使用することは、国際公開第2018/011618号、独国特許出願公開第102014116957号明細書、米国特許出願公開第2018/0005922号明細書、およびJuozas Dudutisら著の“Modification of glass using an axicon generated non-symmetrical Bessel-Gaussian beam”,Proc. SPIE 10091,Laser Applications in Microelectronic and Optoelectronic Manufacturing,20 February 2017からも公知である。
【0008】
さらに、一般的な先行技術から、レンズと回折光学要素(DOE)との組み合わせからなる、複数の焦点を同時に生成するための光学系が公知である。上記の構造の欠点は、焦点の個数がわずか数桁に制限されており、また、焦点同士の間隔が一定ではなく、さらに、本明細書で追求される目的のためには格段に大き過ぎる(典型的には100μm超)ことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した分割方法に鑑みて、本発明の基礎となる課題は、分割プロセスのために、厚い厚さを有する透明な脆性基板を準備し、以下のような準備された分割線を提供すること、すなわち、大きい割断力と、これに関連する形成された縁部における貝殻状の破砕の危険性と、を伴うことなく、この分割線に沿って要素を分離することが可能となるような、準備された分割線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、独立請求項の対象によって解決される。有利な実施形態および発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明の基本的な着想は、超短パルスレーザによって導入された光学的な材料変性部により、後続の分割プロセスのための準備をすることであり、適切なビーム成形により、生成された材料変性部が、小さい割断応力σBによる制御された割断プロセスを可能にする。分割プロセスを、本発明による材料変性よりも格段に後の時点に実施してもよい。
【0012】
本発明によれば、特別なパターンで材料変性部を導入した後、厚いガラスまたはガラスセラミック要素でも容易に分割することが可能である。このようなパターンは、超短パルスレーザのレーザビームを2つの部分ビームに分割することによって実現可能であり、これら2つの部分ビームは、処理されるべき要素内の相互作用ゾーンにおいて互いに干渉し合い、これによって入射方向に、すなわち、要素の表面に設けられた分割線からこの要素の内部に向かって、規則的に離間された複数の強度最大値が形成される。レーザの強度は、強度最大値では材料変性部が発生するが、最大値と最大値との間にある最小値では、好ましくは材料変性部が発生しないか、または比較的弱くなるように設定されている。
【0013】
最大値と最大値との間の間隔は、レーザ光の波長によって決定されるので、規則的である。
【0014】
したがって、本発明は、すなわち、被加工物の分離または分割を準備するための方法であって、パルス状のレーザビームの光に対して透明である、好ましくは脆性材料からなる被加工物が用意され、レーザビームは、光学系によって少なくとも2つの部分ビームに分割され、2つの部分ビームは、照射される表面の法線に対してそれぞれ異なる角度で被加工物に入射するように、かつ被加工物の内部で重畳するように、被加工物へと向けられ、これにより、部分ビームは、当4部分ビームの重畳領域に沿って相前後して並んだ一連の強度最大値が被加工物の内部に形成されるように、互いに干渉し合い、強度最大値における強度は、被加工物の材料が変性させられて、材料変性部の鎖状の周期的な配列が形成されるほど高く、被加工物と部分ビームとは、分割線を形成する経路に沿って位置する複数の鎖状の周期的な配列が生成されるように、互いに対して相対的に移動させられる、方法を提供する。
【0015】
したがって、被加工物の分割の準備をするための方法を実施するための対応する装置は、
・パルス状のレーザビームを生成するためのレーザと、
・レーザビームを、少なくとも2つの部分ビームに分割して、処理されるべき被加工物へと向けるための光学系と、
・2つの部分ビームが、照射される表面の法線に対してそれぞれ異なる角度で被加工物に入射するように、かつ被加工物の内部で重畳するように、さらに、部分ビームが、当該部分ビームの重畳領域に沿って相前後して並んだ一連の強度最大値が被加工物の内部に形成されるように、互いに干渉し合うように、被加工物とレーザビームと、を互いに相対的に位置決めおよび方向決めするための位置決め装置と
を含み、
・レーザは、被加工物の材料を変性させて、材料変性部の鎖状の周期的な配列を形成するために、レーザパルスのパルスエネルギが十分になるように、十分なエネルギパルスを生成するように構成されており、
・位置決め装置は、分割線を形成する経路に沿って位置する複数の材料変性部の鎖状の周期的な配列を生成するために、2つの部分ビームを有するレーザビームと被加工物とを、互いに対して移動させるように構成されている。
【0016】
本発明による方法を実施するための装置の主要な要素は、入射レーザビームを2つの部分ビームに分割するための光学系である。光学系として、好ましくは、いわゆるアキシコンが使用される。
【0017】
アキシコンは、入射する「平行」なビームを、リングビームに変換する(平面波を、光軸の周りに同心円状に配置されたリング形の強度分布に変換する)円錐レンズである。焦点の代わりに、光軸に沿った線形の強度分布が得られる。アキシコンによって生成されるビームプロファイルは、光軸に沿った干渉の結果として発生する、局所的に制限されたベッセル状のビームである。本発明によれば、局所的に制限されたベッセル状のビームが、さらなる部分ビームと干渉させられる。実施例では、このさらなる部分ビームは、通常、光軸に沿って延在する中央ビームである。最も簡単な実施形態では、切頭アキシコンが使用され、すなわち、円錐先端の代わりに中央の平面が存在する。これにより、入射レーザビームは、リング形の第1の部分ビームと、本明細書では第2の部分ビームとも称される、光軸に沿って中央に延在する中央ビームと、に分割される。これらの2つの部分ビームは、光軸に沿った縦長のゾーンにおいて干渉し合う。処理されるべき材料中における所期の変性は、これらの縦長の干渉ゾーンの強度最大値において発生する。
【0018】
使用するアキシコンの具体的な形状を選択することにより、とりわけ、干渉ゾーンの位置および間隔を変化させることができる。したがって、本発明による装置の種々の実施形態は、光学系として使用されるアキシコンの具体的な構成という点でそれぞれ異なっている。
【0019】
第1の実施形態では、光学系は、平凸アキシコンであり、平凸アキシコンの平坦側は、入射レーザビームの方を向いており、凸側は、切頭円錐の形状を有する。
【0020】
さらなる実施形態では、光学系は、平凸アキシコンであり、平凸アキシコンの凸側は、入射レーザビームの方を向いており、切頭円錐の形状を有する。
【0021】
さらに別の実施形態では、光学系は、平凸アキシコンであり、平凸アキシコンの平坦側の中央に、ガラス円錐が配置されている。
【0022】
さらに別の実施形態では、光学系は、凹凸アキシコンであり、凸側は、切頭円錐の形状を有し、凹側は、切頭円錐の輪郭を有する。
【0023】
さらに別の実施形態では、光学系は、両凸アキシコンであり、アキシコンの2つの凸側は、それぞれ異なる高さの切頭円錐の形状を有する。
【0024】
さらに別の実施形態では、光学系は、少なくとも3つの平凸アキシコンを含み、少なくとも3つのアキシコンの凸側は、切頭円錐の形状を有する。
【0025】
さらに別の実施形態では、光学系は、同心リング格子として構成された少なくとも1つのアキシコンを含む。
【0026】
さらに別の実施形態では、光学系は、同心リング格子として構成された少なくとも3つのアキシコンを含む。
【0027】
光学系の特定の構成に関係なく、2つの部分ビームが、すなわちとりわけリングビームと中央ビームとが、同等の強度を有するように、適切に構成された光学系によってレーザ光が分割されることが特に好ましい。同等の強度とは、強度の差が100倍以下、好ましくは50倍以下、より好ましくは10倍以下、さらに好ましくは3倍以下、とりわけ好ましくは1.5倍以下であると理解される。これにより、被加工物の内部で重畳する部分ビームの干渉パターンで、強力な強度変化が生じることが達成される。
【0028】
レーザ出力は、本発明によるビーム成形要素によって、とりわけガラスまたはガラスセラミックからなる透明な要素または被加工物に入射し、そのビーム分布との相互作用の結果として、この透明な要素または被加工物には、分割線から出発して要素を貫通する平面上に、材料圧密部および材料疎薄部の規則的かつ平坦なパターンが設けられる。材料圧密部の引張応力ゾーンと、材料疎薄部の引張応力ゾーンと、は重なり合っていて非常に強力であるので、被加工物の平面に沿って亀裂が伝播し、この平面に沿った後々の割断が可能となる。
【0029】
特に、本発明による方法によれば、ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物を製造可能であり、被加工物は、2つの平面と、平面上に位置する材料変性部のパターンと、を有し、材料変性部は、それぞれ圧密ゾーンによって取り囲まれている。材料変性部は、線に沿って相前後して並んでいる。材料変性部は、それぞれ、線に沿って規則的な順序で、すなわち、干渉パターンの最大値の周期に対応する順序で配置されている。隣り合って位置する複数の線によって、被加工物の内部に位置する平面が形成され、材料変性部の線は、ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物の2つの平面のうちの一方から、反対側の側面まで到達している。
【0030】
一方では、ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物は、ディスク形であり、したがって、平面は、2つの相対する側面である。他方では、ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物は、管形であり、したがって、平面は、同心の周面である。既述したように、本発明は、厚いガラスまたはガラスセラミック製の被加工物を分割するためにも特に適している。本発明は、10μm~50mmの広範囲の基板厚さに適している。したがって、本発明の有利な発展形態によれば、被加工物または基板の厚さは、1mm~25mmの範囲である。特に10mm、とりわけ20mm以上の厚い厚さの場合にも、本発明の利点が明らかである。というのは、そのような厚い被加工物の制御された分割は、さもなければ非常に困難だからである。
【0031】
好ましくは、ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物は、割断平面または割断縁部を有し、割断縁部は、規則的に鎖状に相前後して配置された材料変性部からなる複数の互いに隣り合って位置する線を有し、材料変性部は、線に沿った1~100μmの中心間間隔と、0.2~5μmの直径と、を有し、それぞれ圧密ゾーンによって取り囲まれている。
【0032】
以下では、添付の図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。同じ参照符号は、同じ要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による方法によって被加工物中に引き起こされる変性部の概略図である。
【
図2】本発明による方法によって被加工物中に引き起こされる変性部のさらなる可能な配列の概略図である。
【
図3】シングルパルス照射の場合における、変性部に沿った、被加工物の材料中に生成された割断縁部の顕微鏡画像である。
【
図4】変性部の概略図であり、部分図(a)は、変性部の概略上面図であり、部分図(b)は、変性部の概略側面図である。
【
図5】ビーム経過を示す図であり、部分図(a)は、ビーム経過の方向におけるベッセルガウスビームおよび中央ビームの経過の概略図であり、部分図(b)は、ベッセルガウスビームと中央ビームとの干渉の概略図である。
【
図6】被加工物の材料中におけるベッセルガウスビームと中央ビームとの干渉の概略図である。
【
図7】ベッセルガウスビームと中央ビームとの干渉の、計算された強度分布を示す図である。
【
図8】平凸アキシコンを使用した場合におけるビーム光路の経過を示す図であり、アキシコンの平坦側は、入射レーザビームの方を向いている。
【
図9】平凸アキシコンを使用した場合におけるビーム光路の経過を示す図であり、アキシコンの凸側は、入射レーザビームの方を向いている。
【
図10】アキシコンのさらなる実施形態を示す図である。
【
図11】凸凹アキシコンを使用した場合におけるビーム光路の経過を示す図である。
【
図12】両凸アキシコンを使用した場合におけるビーム光路の経過を示す図である。
【
図13】3つの平凸アキシコンを使用した場合におけるビーム光路の経過を示す図である。
【
図14】同心リング格子として構成されたアキシコンの正面図である。
【
図15】同心リング格子として構成されたアキシコンを使用した場合におけるビーム光路の経過を示す図である。
【
図17】同心リング格子として構成された、1つの負のアキシコンと2つの正のアキシコンとを使用した場合におけるビーム光路の経過を示す図である。
【
図18】レンズ系が下流に配置されている、位相マスクを有するさらなる実施例を示す図である。
【
図19】続いて破線焦点を形成するために使用されるリングビームの生成を伴う実施例を示す図である。
【
図20】傾斜した円錐平面とアキシコンの切頭上底との間の移行領域に対するビームリングの投影図である。
【
図21】続いて破線焦点を形成するために使用されるリングビームを生成するためのさらなる実施例を示す図である。
【
図22】3つの異なるビーム成形装置、すなわち、アキシコンを用いる第1の変形例と、位相板およびアキシコンを用いる第2の変形例と、位相板およびアキシコントリプレットを用いる第3の変形例と、における、光軸に沿った作業ボリュームにおける強度分布を示す図である。
【
図23】ベッセルビームによって、またはリングビームベースの破線焦点によって処理されたホウケイ酸ガラスの割断応力のワイブル分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および
図2は、基板表面23に対応する表面21を有する、本発明によって処理された被加工物2の断面を概略的に示す。被加工物2を処理するためのビーム源として、ここには図示されていないレーザ、好ましくはパルスレーザが使用される。ここには図示されていない部分ビーム41,42が、上から入射して、これらの部分ビーム41,42の干渉ゾーンまたは圧密ゾーンにおいて、破線焦点に対応する線18に沿って周期的に配置された複数の変性部8を生成する。後々の時点に、線18に沿って機械的に割断することにより、被加工物2を個々の部品に分割することができる。材料変性部8の領域は、
図1では一般的に、垂直に延在する線によって示されている。被加工物2は、好ましくはガラスまたはガラスセラミック基板である。シリコン、プラスチック、ラミネート、およびパイプも、本発明によって処理可能である。
【0035】
複数の平行に隣り合って延在する線18は、位置決め装置により、部分ビームの入射方向に対して垂直に被加工物2を移動させることによって生成される。ビーム源として使用されるレーザのパルス間またはバースト間の休止時間と、被加工物と本発明による装置との間の相対速度と、の間で調整を行うことにより、線9と変性部8との間の水平方向の間隔を設定することができる。
【0036】
これに代わる実施形態では、被加工物が、レーザによる変性中に光軸の方向に移動させられ、これによって1つの連続的な材料変性部がもたらされる。続いて、この変性部をエッチングによって開放することができる。これによって厚いガラスの中に、200mm未満、好ましくは100μm未満、特に好ましくは50μm未満、非常に特に好ましくは20μm未満の直径を有するフィラメント様のチャネルが生成される。
【0037】
変性部8同士は、水平方向では間隔31を置いて配置されており、垂直方向では間隔32を置いて配置されている。線9に沿った変性部8同士の垂直方向の間隔32は、1μm~100μmの範囲である。変性部は、2つの部分ビーム41と42とが干渉した結果として生じるものであるので、変性部8同士の垂直方向の間隔32、すなわち、線9に沿った変性部8の密集度は、0次干渉領域と1次干渉領域との間のエネルギ比を調整することによって設定可能である。1次の強度を0次の強度に比べて増加させると、垂直方向の間隔32が減少する。これによって1つのフィラメント様の変性チャネルが生成され、この変性チャネルを、材料のエッチングによって開放することができる。変性部8の中心同士は、垂直方向の中心間間隔33を有する。変性部の直径は、0.2μm~5μmの範囲である。直径は、チャネル自体に関連している。チャネルの周りの応力ゾーンは、材料の中にさらに伸長することがある。
【0038】
全体として、被加工物の材料中には、材料圧密部と材料疎薄部との規則的なパターンが生じ、材料圧密部の引張応力ゾーンと、材料疎薄部の引張応力ゾーンと、は重なり合っていて非常に強力であるので、被加工物の平面に沿って亀裂が伝播し、この平面に沿った後々の割断が可能となる。
【0039】
線形の平行に延在する変性部を生成する代わりに、平坦な基板において、規則的または不規則な輪郭を有する内側-外側の切り抜きを生成するためにも、本発明による方法を利用することができる。このことは、補助用の切れ込みを生成しても生成しなくても実施可能である。
【0040】
さらに、本発明による方法により、フロートガラス、ダウンドローガラス、およびオーバーフロー溶融ガラスのビードを、低温領域および高温領域(ガラス温度T<上側の冷却点)にインラインで分割することができる。ダウンドローガラスおよびフロートガラスの場合には、比較的厚い厚さを有するガラスを処理することができる。ガラスリボンの幅の変動は、レーザビームを変化させる光学系が、ユニットとして可動式のブリッジに取り付けられることによって補償される。これが可能であるのは、任意の長さの破線焦点を生成することができるからである。したがって、ダウンドローガラス、オーバーフロー溶融ガラス、またはフロートガラスの厚さよりも焦点が長い場合には、厚さの変動を、再制御または再調整することなく焦点の長さによるだけで補償することができる。
【0041】
縦断面におけるビードの分割またはリボンの仕立ては、ロールツーロールプロセスの範囲内でも実施可能である。ガラスリボンは、例えば保護コーティングのようなコーティングを有することもできる。
【0042】
図3の被加工物2の顕微鏡写真において、変性部8が示されており、部分ビームは、ここでは上から破線焦点の照射方向51に照射された。ここでも、被加工物2の材料中に生成された変性部は、垂直方向の中心間間隔33を有する。この垂直方向の中心間間隔33は、図示の例では160μmである。
【0043】
以下で説明する図面では、部分ビーム41,42の入射方向には常にzが付されており、これは、
図3の破線焦点の入射方向51に対応する。
【0044】
図3は、割断平面または割断縁部17を示す。割断平面または割断縁部17は、規則的に鎖状に相前後して配置された材料変性部からなる複数の互いに隣り合って位置する線を有し、これらの材料変性部は、線に沿った1~100μmの中心間間隔と、0.2~5μmの直径と、を有し、それぞれ圧密ゾーン16によって取り囲まれている。
【0045】
図4の部分図(a)は、ビーム方向zにおける変性部8の延び具合を概略的に示す。変性部8を有する複数の圧密ゾーンまたは干渉ゾーン16が示されている。これらの圧密ゾーンまたは干渉ゾーン16は、それぞれ垂直方向の間隔32または垂直方向の中心間間隔33を置いて配置されている。複数の変性部8が1つの線18を形成しており、この線18に沿って機械的に割断することにより、被加工物2を分割することができる。
【0046】
図4の部分図(b)には、同じ構造が、z軸に沿った、すなわち部分ビームの入射方向に沿った上面図で示されている。材料変性部17を有する3つの圧密ゾーン16が示されており、これらの材料変性部17は、それぞれ水平方向の間隔31を置いて配置されている。
【0047】
図5の部分図(a)は、ビーム方向zにおいて、ここには図示されていない光学系によって生成された2つの部分ビーム41および42の位置を示す。部分ビーム42は、直径48を有する中央ビームである。部分ビーム41は、直径63を有するリングビームである。
【0048】
図5の部分図(b)に側面図で示されているように、部分ビーム41と42とは、長さ66を有する干渉領域43において干渉し合う。リング形の部分ビーム41は、開き角64を有し、この開き角64は、図示されていない光学系の幾何形状に依存する。リング形の部分ビーム41は、ベッセルビームまたはベッセルガウスビームである。
【0049】
図5の部分図(b)に示されているビーム経過は、
図6では、被加工物2の材料の内部において示されている。直径65を有する部分ビーム42は、中央ビームとして材料の中央を通過する。部分ビーム42は、干渉領域43において、直径63を有するリング形の部分ビーム41と干渉し合う。被加工物2の材料中における所期の変性は、干渉領域43の内部で発生する。
【0050】
光学系の特定の構成に限定されることなく、2つの部分ビームが、すなわちとりわけリングビームと中央ビームとが、同等の強度を有するように、レーザ光が分割されることが特に好ましい。同等の強度とは、強度の差が5倍以下、好ましくは3倍以下、とりわけ好ましくは1.5倍以下であると理解される。これにより、被加工物の内部で重畳する部分ビームの干渉パターンで、強力な強度変化が生じることが達成される。
【0051】
ベッセルビームを生成するために、例えばアキシコンによってリングビームが部分ビーム41に成形され、次いで、この部分ビーム41が線形のベッセル焦点を形成し、今度はこのベッセル焦点が、縦長の干渉領域43において、第2の部分ビーム42である中央ビームと干渉させられる。干渉領域43の長さL(66)は、リングビームの直径Drと、リングビームの開き角2α(参照符号64)と、によって、L=Dr/tanαに設定される。
【0052】
図6は、屈折率nを有する基板1の構造化されるべき材料中に集束させられる際に、ビーム特性がどのように変化するかを示す。実質的に、材料中の開き角(参照符号71)α’は、sinα=nsinα’の屈折の法則によれば、空気中の開き角αよりも小さくなる。
【表1】
【0053】
図7において、
図6の状況は、レーザビームを通る縦断面における強度分布として示されている。ビーム方向zに、複数の相前後して配置された強度最大値45が延在しており、これらの強度最大値45は、ベッセルガウスビーム41と中央ビーム42との干渉によって引き起こされる。干渉領域43の強度最大値45は、それぞれ間隔33を置いて位置している。
【0054】
干渉によって生成される強度最大値の間隔33の周期は、ビーム源の中心波長λと、リングビームの開き角2αと、によって、
P=2λ/sin2α
に設定されている。
【0055】
本発明の好ましい実施形態によれば、干渉ゾーンは、部分ビーム41,42のレーザ波長と、ビームパラメータ(とりわけ開き角)と、を適切に選択することによって、すべての変性部iの個々の長さliの合計(ビーム方向で測定した場合)を基板の厚さdで割った商ωが、好ましい実施形態によれば0.5を超えるように、好ましくは0.7を超えるように、特に好ましくは0.9を超えるように、形成される。
【0056】
したがって、本発明の1つの実施形態によれば、本発明による被加工物2は、線18に沿って複数の材料変性部17を有し、これに関して、
【数1】
が当てはまり、なお、k=0.5、好ましくはk=0.7、特に好ましくはk=0.9、非常に特に好ましくはk=0.95である。
【0057】
図8は、平凸アキシコン91を含む光学系6の第1の実施形態を示す。直径48を有するレーザビームが、アキシコン91の平坦側95に入射し、このアキシコン91によって、直径63を有するリング形の部分ビーム41と、直径65を有する中央に延在する部分ビーム42と、に分割される。アキシコンの凸側96は、切頭円錐の形状を有する。2つの部分ビーム41と42とは、干渉領域43において干渉し合う。
図7に示されているように、干渉領域43は、アキシコン91の光軸に沿って周期的な間隔で繰り返されている。アキシコンの幾何学的パラメータを変更することにより、干渉領域43の位置および範囲に対して影響を与えることができる。このような幾何学的パラメータには、アキシコン91の凸側96を形成する切頭円錐の母線の傾きと高さとが含まれる。
【0058】
切頭平面の幅に対するビーム幅48の比は、2つの部分ビーム41および42の出力比を決定する。好ましくは、上記の比は、これらの部分ビームができるだけ同じ出力を有するように選択可能である。したがって、本発明の発展形態では、切頭平面に対するビーム幅48の比を、部分ビーム41,42の出力比が0.75~1.25の範囲になるように選択可能である。上記の比は、関連する光学要素の構成および配置によって、とりわけ切頭アキシコンの形状によって調整可能である。
【0059】
図9の光学系6の実施形態では、平凸アキシコン91は、凸側95が入射ビームの方を向くように、かつ平坦側96が入射レーザビームとは逆の方向を向くように、ビーム光路上に配置される。アキシコン91をこのように配置した場合にも、入射レーザビームが2つの部分ビーム41および42に分割され、これら2つの部分ビーム41と42とが干渉領域43において干渉し合う。
図9の配置の場合には、干渉領域43は、
図8の配置の場合よりもアキシコン91のより近くに位置している。
【0060】
図10の光学系6の実施形態では、平凸アキシコン92が使用され、この平凸アキシコン92の凸側99は、円錐の形状を有する。アキシコン92の平坦側100の中央に、ガラス円錐98が配置されている。ここでも、凸側99が、リング形の部分ビーム41を生成する。平坦側100に設けられた円錐構造体98によって、互いに対して平行に、かつ光軸に対して平行に延在する2つの中央ビーム104aおよび104bが生成される。2つの中央ビーム104aおよび104bは、2つの干渉領域105aおよび105bにおいて部分ビーム41と干渉し合い、これら2つの干渉領域105aおよび105bも、光軸に対して平行に延在している。干渉領域105aおよび105bは、さらなるビーム経過にわたって周期的に繰り返し生じる。
【0061】
図11の光学系6の実施形態では、凸凹アキシコン93が使用される。ここでも、凸側101は、切頭円錐の形状を有する。凹側102の輪郭は、切頭円錐の形状を有する。アキシコン93は、空気が充填された中央領域103を中央に有し、入射レーザビームは、この中央領域103を無影響に通過して、中央に延在する部分ビーム42を形成する。この実施形態においても、アキシコン93は、リング形の部分ビーム41を生成し、このリング形の部分ビーム41は、干渉領域43において中央ビーム42と干渉し合う。干渉領域43は、さらなるビーム経過にわたって周期的に繰り返し生じる。
【0062】
図12の光学系6の実施形態では、第1の凸側106および第2の凸側107を有する両凸アキシコン94が使用される。2つの凸側106および107は、それぞれ切頭円錐の形状を示しているが、母面の傾き角がそれぞれ異なっている。さらに、中央開口部103が設けられており、この中央開口部103は、入射レーザビームを無影響に通過させ、これによって中央に延在する部分ビーム42を生成する。部分ビーム42は、干渉領域43においてリング形の部分ビーム41と干渉し合う。干渉領域43は、さらなるビーム経過にわたって周期的に繰り返し生じる。
【0063】
図13の光学系6の実施形態では、第1のアキシコン91aと、第2のアキシコン91bと、第3のアキシコン91cと、が使用される。第1のアキシコン91aの平坦側は、入射ビームの方を向いており、
図8に示されている実施形態と同様に、リング形の部分ビーム41aおよび中央ビーム42aを生成し、リング形の部分ビーム41aと中央ビーム42aとが、干渉領域43aにおいて重畳している。第2のアキシコン91bの凸側は、入射ビームの方を向いており、2つの部分ビーム41aおよび42aを、平行に延在するビームに変換し、この平行に延在するビームは、第2のアキシコン91bの平坦側から出射し、続いて、第3のアキシコン91cの平坦側に入射し、この第3のアキシコン91cによって、部分ビーム41bと、中央に延在する部分ビーム42bと、に分割される。部分ビーム41bと42bとは、処理されるべき被加工物の内部に位置する干渉領域43bにおいて干渉し合う。干渉領域43bは、さらなるビーム経過にわたって周期的に繰り返し生じる。
【0064】
図14の光学系6の実施形態では、アキシコンは、同心リング格子として構成されている。このことはつまり、アキシコンが、位相マスクであるガラス体81からなっていて、このガラス体81に、溝高さ82を有する溝が設けられていることを意味し、このことは、
図16に垂直断面の側面図で示されている。
【0065】
ビーム方向におけるガラス体81の正面図では、溝の最も高い箇所が、同心リングとして現れている(
図14)。
図15は、同心リング格子として構成されたガラス体81を使用した場合におけるビーム光路を示す。直径48を有するレーザビームが格子に入射し、部分ビーム41と42とに分割される。部分ビーム42は、直径47を有し、このことはつまり、部分ビーム42が、実質的にガラス体81またはリング格子として構成されたアキシコンの直径全体にわたって延在していることを意味する。部分ビーム41と42とは、81の平坦側から出射し、干渉領域43において干渉し合い、干渉領域43は、処理されるべき被加工物の材料中において、ビーム方向に周期的に繰り返し生じる。
【0066】
図17の光学系6の実施形態によれば、同心リング格子として構成された3つのアキシコンまたはガラス体、すなわち第1のガラス体81aと、第2のガラス体81bと、第3のガラス体81cと、が使用される。第2のガラス体81bおよび第3のガラス体81cの両方は、それぞれ中央に配置された中央領域110aまたは110bを含む。これらの中央領域110aおよび110bの下および上には、ガラス体81bおよび81cの、同心リング格子として構成された領域が位置している。
【0067】
入射レーザビームは、まず始めに第1のアキシコン81aに入射し、この第1のアキシコン81aによって、光軸に対して斜めに延在するリング形のビーム111に変換される。ビーム111は、第2のアキシコン81bによって管状に延在する部分ビーム112に変換され、今度はこの管状に延在する部分ビーム112が、第3のアキシコンまたはガラス体81cによって部分ビーム41に変換される。第2のガラス体81bと第3のガラス体81cとの間には、中央に延在する部分ビーム42をさらに成形するために、ビーム変換器83が配置されている。ビーム変換器83は、例えば、望遠鏡またはビーム減衰器とすることができる。既述した光学系6の実施形態のように、部分ビーム41と42とは、干渉領域43において干渉し合い、干渉領域43は、さらなるビーム経過にわたって周期的に繰り返し生じる。
【0068】
光学系6の種々の実施形態に基づいて上述した装置は、被加工物2の分割を準備するための方法を実施するために使用される。パルス状のレーザビームの光に対して透明である被加工物2が用意された後、レーザビームは、光学系6によって少なくとも2つの部分ビーム41,42に分割される。2つの部分ビーム41,42は、照射される表面21の法線に対してそれぞれ異なる角度で被加工物2に入射するように、かつ被加工物2の内部で重畳するように、被加工物2へと向けられる。部分ビーム41,42は、当該部分ビーム41,42の重畳領域43に沿って相前後して並んだ一連の強度最大値45が被加工物2の内部に形成されるように、互いに重畳または干渉し合う。強度最大値45における強度は、被加工物2の材料が変性させられて、材料変性部8の鎖状の周期的な配列9が形成されるほど高い。その間に、被加工物2と部分ビーム41,42とは、分割線11を形成する経路に沿って位置する複数の材料変性部8の鎖状の周期的な配列9が生成されるように、互いに対して相対的に移動させられる。後々の工程で、分割線11に沿って機械的に割断することにより、被加工物2を複数の部品に分割することができる。
【0069】
図5,
図6,
図8~
図13および
図17の実施例は、ビームの方向に延在する周期的に変調される焦点を生成し、ひいては、周期的に中断される細長い線形の変性ゾーンを生成するために、部分ビームである円錐状のビームまたはベッセル状のビームが干渉させられるという点で共通している。他のビーム形状も考えられるが、これも、本発明の特に好ましい実施形態である。したがって、実施例に限定されることなく一般的に、本発明の好ましい発展形態として、部分ビームのうちの一方41は、アキシコンによって生成されたビームまたはベッセルビームであり、第1の部分ビームが線焦点を形成している領域において、第2の部分ビーム42が第1の部分ビームと重畳させられる。
【0070】
前述した各実施例はさらに、第2の部分ビームが平行ビームである点において共通している。したがって、さらなる好ましい実施形態によれば、第2の部分ビーム42が平行ビームとして成形される。ここでも、他の変形例が考えられる。したがって、それぞれ異なる先端角度が付けられた2つのアキシコンが、部分ビームを生成するようにしてもよい。したがって、この場合には、それぞれ異なる収束角度を有する2つのベッセル状のビームまたは2つの円錐状のビームが干渉させられることとなろう。図面からも分かるように、本発明のさらなる発展形態によれば、互いに同一線上にある部分ビーム41,42が一般的に好ましい。
【0071】
図18は、さらなる実施例を示し、ここでは、図面の左から入射したレーザビームが要素120に入射し、この要素120は、-一般性を制限することなく-反射格子または位相マスクとして、すなわち一般的には、回折作用を有する光学要素として構成されている。対応する変換装置も可能である。要素120から発せられた0次および±1次の部分ビーム41,42は、本実施例では4f構造として配置されている後続の2レンズ式のレンズ系によって、干渉領域43において重畳させられる。レンズ系は、焦点距離123を有する結像レンズ121と、焦点距離124を有する対物レンズ122と、を含む。結像レンズ121の後方には、焦点距離123の間隔を置いて、4f構造のフーリエ平面125が位置している。一般的に、図示の例に限定されることなく、本発明の1つの実施形態によれば、光学系6は、レーザビームを、0次も含み得る、複数の(2つ以上の)それぞれ異なる回折次数によって形成される部分ビームに分割する回折要素を含み、光学系はさらに、これらの部分ビームが、被加工物中において重畳させられるように構成されている。
【0072】
図19のさらなる実施形態では、入射ガウスビーム4の強度は、2つの平凸アキシコン131および132を適切に配置することによって(第1のアキシコン配列130:アキシコン131および132の凸側または上面が互いに向かい合う)、まず始めにドーナツビーム/リングビーム170に変換される。ビームは、ドーナツビームまたはリングビーム170と称され、このドーナツビームまたはリングビーム170のビームプロファイルは、ビーム軸上では強度消失を有するが、ビーム軸の周りの円形リング上では少なくとも1つの強度最大値を有する。リング形の強度最大値の直径は、このアキシコン配列130における2つのアキシコン131,132の相互の間隔によって、かつ/または2つのアキシコン131,132の互いの間隔によって決定される。ドーナツビーム170は、さらなる光学要素に、好ましくは切頭先端を有する逆アキシコン135に、または平行平面板と逆切頭アキシコン(第3のアキシコン135)とを接合させた組み合わせに入射し、このさらなる光学要素により、発散性のリング形の部分ビーム180と、偏向させられていない中央ビーム190と、に分割される。次に、発散性のリングビーム180は、(2つの互いに離間された平凸アキシコン141および142を有する)第2のアキシコン配列140によってまず始めに平行化され、続いて、偏向させられていない中央ビームと共に光軸上で再び収束させられる。重畳ボリューム/干渉ボリュームの位置は、第2のアキシコン配列140の最後のアキシコン142の位置によって決定される。干渉ボリューム内の破線焦点165の周期は、上記と同様に、リングビームの収束角度から得られ、中央ビーム190およびリングビーム180の出力成分は、アキシコン135に入射するビームのビーム直径に対する、利用されるアキシコン135の切頭円錐平面の比によって調整可能である(
図20)。もちろん、第2のアキシコン配列140において、2つのアキシコン141,142の代わりに切頭アキシコンを使用することも可能であり、このことは、一般的にビーム品質のさらなる改善をもたらす。
【0073】
図20は、例として、第1のアキシコン配列130の出力部におけるドーナツビーム170の可能な強度分布を示し、
図20の右側には、切頭アキシコン145の凹側に対するドーナツビーム170のビーム平面およびビーム出力の投影図を示す。アキシコン145の中央の切頭平面148を通過するビームの成分が大きくなるにつれて、中央ビーム190の強度が大きくなり、ひいては破線状の焦点線の発現、すなわちコントラスト比が強力になる。入射するリングビーム180の内側直径、すなわち自由直径が、プリズムの切頭上面の直径D
planよりも大きい場合には、ベッセルビームの、先行技術から公知の直線状の途切れのない焦点が、干渉ボリューム内に形成される。
【0074】
図19の第1のアキシコン配列130の、好ましくはガラスから製造されるアキシコン131,132の代わりに、それぞれ、回折アキシコン、リング格子、または(例えば、米国特許第8335034号明細書に記載されているような)螺旋位相板151または152を使用すると、さらなる実施形態が得られる(
図21)。2つの螺旋位相板151,152は、ドーナツビームを生成するための配列150を形成している。
図19に示されている実施形態の第1のアキシコン配列130も、ドーナツビームを生成するためのそのような配列150である。螺旋位相板を使用する場合には、好ましくは、第1の螺旋位相板151によって生成されたリングビーム180を、第2の螺旋位相板152によって平行化できるようにするために、螺旋位相板151,152の回転方向が互いに逆向きに方向決めされていることに注意すべきである。
【0075】
図19および
図21の例は、ドーナツビームを生成するための配列150が、焦点で干渉させられる部分ビームの強度を調整可能にする、切頭円錐アキシコン135と組み合わせられているという点において共通している。したがって、1つの実施形態では、被加工物2の分割を準備するための装置は、ドーナツビームまたはリングビーム170を生成するための配列150を有し、ドーナツビームまたはリングビーム170のビームプロファイルは、ビーム軸上では強度消失を有するが、ビーム軸の周りの円形リング上では強度最大値を有し、当該装置は、ビーム方向において配列150の下流に配置された切頭円錐アキシコンを有し、切頭円錐アキシコンは、リングビーム170を中央ビーム190とリングビームとに分割し、中央ビーム190およびリングビーム180の出力成分は、アキシコンに入射するリングビーム170のビーム直径に対するアキシコン135の切頭円錐平面の比によって調整可能である。
【0076】
図19および
図21の実施例はさらに、アキシコン135,141,142のトリプレットという点で共通しており、これらのアキシコン135,141,142によって、まず始めに発散性のリングビーム180が生成され、次いで、アキシコン141によって偏向されて、軸平行なビームが生成され、続いて、最後のアキシコン142によって集束させられ、これにより、偏向されていない中央ビームと共に光軸上で再び収束させられる。したがって、本発明のさらに別の実施形態では、特定の例に限定されることなく、光学系6は、3つの相前後して接続されたアキシコン135,141,142を有するアキシコントリプレットを含み、ビームの方向において最初にあるアキシコン135は、発散性のリングビームを生成し、発散性のリングビームは、後続するアキシコン141によって平行化され、アキシコントリプレットの最後のアキシコン142によって収束性のリングビームに変換される。中央の偏向されていないビームを、アキシコンの開口部を介してアキシコンを通るように案内することもできる。さらに、トリプレットの第1のアキシコン135は、必ずしも逆アキシコンでなくてもよい。凸アキシコンを使用し、中間焦点の通過後に発散性のビームを生成することも可能である。
【0077】
焦点における強度分布に対して個々の光学要素が与える影響を推定可能にするために、100mWの平均ビーム出力で、Pharos UKPレーザ(1030nm,100kHzの繰り返し周波数)の10psパルス(4バースト)が順次に結像され、なお、変形例1では、まず始めに1つのアキシコンのみによって結像され、変形例2では、2つの位相板と1つのアキシコンとの組み合わせによって結像され、変形例3では、2つの位相板と3つのアキシコンとの組み合わせ(中央のアキシコンは、上述したように切頭アキシコンであり、すべてのアキシコンは、20°の上底角度を有する)によって結像され、そして、顕微鏡対物レンズが被せ嵌められたカメラ(例えば、Coherent Lasercam HR型)を使用して、このカメラを光軸に沿って焦点領域にわたって連続的に移動させ、この際に、焦点におけるレーザビームの横方向の強度分布を記録することにより、焦点における強度分布が測定される。このようにして記録されたビデオから、相対単位での焦点領域における光軸上の強度分布を特定することができる。
【0078】
図22は、このようにして測定された強度分布を焦点線に沿って示す。
【0079】
図22の部分図(a)は、変形例1(アキシコンによって入射ガウスビームを集束させる)における強度分布と、変形例2(ガウスビームをリングビームに変換し、続いて、アキシコンによって集束させる)における強度分布と、を示し、これらの強度分布は、光軸に沿った長手方向において非常に類似した推移を有する。これに対して、部分図(b)は、変形例3(複数の位相板の組み合わせによって生成されたリングビームを3つのアキシコンによって結像させ、アキシコンのうちの1つは、切頭アキシコン135であり、2つのアキシコン141および142は、第2のアキシコン配列140を形成する)を使用した場合における、焦点領域における光軸に沿った強度分布を示す。この場合、強度分布の包絡線は、変形例2と同様の特徴(光学系に面している側では強度増加が強力であり、光学系から離れている側では格段に緩慢に減少する)を有しているが、周期的に配置された多数の強度最大値および強度最小値が存在しており、強度最小値は、ゼロに近似する強度を有する。
【0080】
図23は、変形例1(右側の曲線であり、1つのアキシコンを用いる)または変形例3(左側の曲線であり、2つの位相板とアキシコントリプレットとによって破線焦点を生成する)に従ってフィラメント化された、厚さ1mmのホウケイ酸ガラスにおける割断応力分布の変化を示す。このために、上で既述したPharosレーザによって3.5μmのピッチで材料変性部が導入された(1030nm/繰り返し周波数1kHz/平均パルス出力980mW/パルス持続時間10ps/4バーストパルス)。その結果、割断応力が大幅に減少した。すなわち、例えば、95%の割断確率では、破線焦点によって材料処理した場合における割断応力は、純粋にアキシコンを有する配列によって生成されたベッセルビームによって処理した場合に比べて約15%低くなった。
【符号の説明】
【0081】
2 被加工物
3 レーザ
4 レーザビーム
6 光学系
8 材料変性部
9 8の周期的な配列
11 分割線
13 位置決め装置
16 圧密ゾーン
17 割断縁部
18 平行に延在する線
19 材料変性部を有する平面
41,42 部分ビーム
41a,41b,42a,42b 複数のアキシコンを使用した場合における部分ビーム
21 2の表面
22,24 2の平面
31 変性部同士の水平方向の間隔
32 変性部同士の垂直方向の間隔
33 変性部同士の垂直方向の中心間間隔
43 41,42の重畳領域または干渉領域
43a,43b 複数のアキシコンを使用した場合における重畳領域または干渉領域
45 強度最大値
47 42の直径
48 レーザビームの直径
63 41の直径
64 41の開き角
66 45の長さ
51 破線焦点の入射方向
71 2の材料中における41の開き角
81 位相マスクのガラス体
81a,81b,81c 同心リング格子として構成されたアキシコン
82 位相マスクの溝高さ
83 ビーム変換器
91 平凸アキシコン
91a,91b,91c 複数のアキシコンを使用した場合における平凸アキシコン
92 平坦側に設けられた円錐構造体を有する平凸アキシコン
93 凸凹アキシコン
94 両凸アキシコン
95 91の平坦側
96 91の凸側
98 97の平坦側に設けられた円錐構造体
99 97の凸側
100 92の平担側
101 93の凸側
102 93の凹側
103 93の中央開口部
104a,104b 92を使用した場合における中央ビーム
105a,105b 92を使用した場合における干渉領域
106 94の第1の凸側
107 94の第2の凸側
108 94の中央領域
109 81の平坦側
110a,110b 81の平坦な中央領域
111 部分ビーム
120 回折作用を有する要素
121 結像レンズ
122 対物レンズ
123 121の焦点距離
124 122の焦点距離
125 4f構造のフーリエ平面
130 第1のアキシコン配列
131 130の第1のアキシコン
132 130の第2のアキシコン
135 第3のアキシコン
140 第2のアキシコン配列
141 140の第1のアキシコン
142 140の第2のアキシコン
145 平切頭アキシコン
148 145の平坦な平面
150 ドーナツビームを生成するための装置
151 150の第1の螺旋位相板
152 150の第2の螺旋位相板
165 破線焦点
170 ドーナツビーム
180 リングビーム
190 中央ビーム
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)であって、
前記被加工物(2)は、前記被加工物(2)の内部または少なくとも1つの表面上に位置する鎖状の周期的な配列(9)の材料変性部(17)の少なくとも1つのパターンを有し、前記材料変性部(17)は、それぞれ圧密ゾーン(16)によって取り囲まれており、
前記材料変性部(17)は、1つの線(18)に沿って規則的な順序で配置されている、
ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項2】
前記材料変性部の複数の線は、前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)の2つの平面のうちの一方から、反対側の側面まで到達している、
請求項1記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項3】
前記被加工物(2)は、2つの平面(22,24)を有し、
規則的に相前後して配置された材料変性部からなる、隣り合って位置する複数の線(18)は、前記被加工物の内部に位置する平面(19)を形成し、
前記材料変性部の複数の線は、前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)の前記2つの平面(22,24)のうちの一方から、反対側の側面まで到達している、
請求項1記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項4】
前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)は、ディスク形であり、前記平面(22,24)は、2つの相対する側面である、
請求項2または3記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項5】
前記平面は、同心の周面であり、前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)は、管形である、
請求項2記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項6】
前記ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)の厚さは、10μm~50mmの間である、
請求項1から5までのいずれか1項記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項7】
前記材料変性部は、前記複数の線に沿った1~100μmの中心間間隔と、0.2~5μmの直径と、を有する、
請求項3記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項8】
前記材料変性部(17)の全長を前記被加工物(2)の厚さdで割った商ωに関して、
【数1】
が当てはまり、
ここで、l
iは、前記材料変性部の個々の長さを表し、なお、k=0.
5である、
請求項1から6までのいずれか1項記載のガラスまたはガラスセラミック製の被加工物(2)。
【請求項9】
被加工物(2)の分割の準備をするための方法を実施するための装置によって製造可能な、ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物であって、
前記装置は、
・パルス状のレーザビーム(4)を生成するためのレーザ(3)と、
・前記レーザビーム(4)を、少なくとも2つの部分ビームに分割して、処理されるべき被加工物(2)へと向けるための光学系(6)と、
・2つの前記部分ビーム(41,42)が、照射される表面(21)の法線に対してそれぞれ異なる角度で前記被加工物(2)に入射するように、かつ、前記被加工物(2)の内部で重畳するように、さらに、前記部分ビーム(41,42)が、前記部分ビーム(41,42)の重畳領域(43)に沿って相前後して並んだ一連の強度最大値(45)が前記被加工物(2)の内部に形成されるように、互いに干渉し合うように、前記被加工物(2)と前記レーザビーム(4)とを、互いに相対的に位置決めおよび方向決めするための位置決め装置(13)と、
を含み、
・前記レーザ(3)は、前記被加工物(2)の材料を変性させて、材料変性部(8)の鎖状の周期的な配列(9)を形成するために、前記レーザビーム(4)のパルスエネルギが十分になるように、十分なエネルギパルスを生成するように構成されており、
・前記位置決め装置(13)は、分割線(11)を形成する経路に沿って位置する複数の材料変性部(8)の鎖状の周期的な配列(9)を生成するために、部分ビームを有する前記レーザビーム(4)と前記被加工物(2)とを、互いに対して移動させるように構成されており、
前記被加工物は、割断縁部(17)を有し、
前記割断縁部(17)は、規則的に鎖状に相前後して配置された材料変性部からなる複数の互いに隣り合って位置する複数の線を有し、前記材料変性部は、前記複数の線に沿った1~100μmの中心間間隔と、0.2~5μmの直径と、を有し、それぞれ圧密ゾーン(16)によって取り囲まれている、
ガラスまたはガラスセラミック製の被加工物。
【外国語明細書】