(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010983
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ケーブル保持装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240118BHJP
F16C 1/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B60N2/90
F16C1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112623
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智禎
(72)【発明者】
【氏名】松山 文彦
(72)【発明者】
【氏名】福岡 達也
【テーマコード(参考)】
3B087
3J032
【Fターム(参考)】
3B087DE10
3J032AB17
(57)【要約】
【課題】破損する可能性を低くできるケーブル保持装置を提供する。
【解決手段】特定の面に沿って広がる本体部19を備え、本体部19は、特定の面が乗物の座席の着座面と相対する形態で当該本体部19を座席を構成するシート構成部材に対して取り付ける取付部20と、座席で用いられるケーブル類の少なくとも一部分を係止する係止部21とを有するケーブル保持装置11であって、本体部19は、着座面の着座領域17の中央部と相対する中央領域18が空間になっている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の面に沿って広がる本体部を備え、前記本体部は、前記特定の面が乗物の座席の着座面と相対する形態で当該本体部を前記座席を構成するシート構成部材に対して取り付ける取付部と、前記座席で用いられるケーブル類の少なくとも一部分を係止する係止部とを有するケーブル保持装置であって、
前記本体部は、前記着座面の着座領域の中央部と相対する中央領域が空間になっているケーブル保持装置。
【請求項2】
前記シート構成部材は、前記着座面に設けられるクッションパッドと、当該クッションパッドを支持するクッションパッド支持部材とを有し、
前記本体部は、前記クッションパッド支持部材の下方及びその近傍に位置する形状になっている請求項1に記載のケーブル保持装置。
【請求項3】
前記本体部は、前記特定の面に沿って環状に広がる形状であり、当該環状の中央部分の空間が前記中央領域になる請求項1又は2に記載のケーブル保持装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記特定の面に沿ってC字形状に湾曲して広がる形状であり、当該C字形状の中央部分の空間が前記中央領域になる請求項1又は2に記載のケーブル保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の面に沿って広がる本体部を備え、本体部は、特定の面が乗物の座席の着座面と相対する形態で当該本体部を座席を構成するシート構成部材に対して取り付ける取付部と、座席で用いられるケーブル類の少なくとも一部分を係止する係止部とを有するケーブル保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2020-60203号公報)には、座席を構成するシート構成部材に対して操作ケーブルが配索された状態が記載されている。具体的には、操作ケーブルは、シート構成部材としてのシートフレームに対して取付具を用いて取り付けられている。
【0003】
尚、特許文献1に記載のように操作ケーブルをシートフレームに対して取付具を用いて取り付ける場合、複数の取付具を用いてシートフレームの複数箇所にケーブル類を取り付けることになる。そのため、部品数が増加するという問題、操作ケーブルをシートフレームに取り付ける際の工程が複雑になるという問題などがある。
【0004】
そのような問題を解決するために、ケーブル類を保持するケーブル保持装置を用いる方法もある。尚、本願においてケーブル類とは、電気信号を伝える一本の電気配線又は複数本の電気配線を束ねたもの、光信号を伝える一本の光ファイバ又は複数本の光ファイバを束ねたもの、動力を伝えるワイヤなど、可撓性のある長手状の部材を指す。
【0005】
例えば、特許文献2(国際公開第2022/039906号)には、長手状のケーブル類を係止可能な係止部を複数有する本体部を備えるケーブル保持装置が記載されている。そして、ケーブル類の複数箇所を本体部に係止したケーブル保持装置を、シート構成部材に取り付けている。このようなケーブル保持装置を用いることで、ケーブル類をシート構成部材に対して取り付ける際の工程が簡単になり、且つ、ケーブル類をシート構成部材に対して取り付ける際に必要な部品数が増加するという問題が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-60203号公報
【特許文献2】国際公開第2022/039906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
人が座席に座った場合の座り心地を良くするため、乗物の座席の着座面にはクッションパッドが設けられ、クッションパッドは弾性変形可能なクッションパッド支持部材などで支持されることがある。これらクッションパッド及びクッションパッド支持部材は、シート構成部材の一種である。そして、人が座席に座った場合、クッションパッドやクッションパッド支持部材などは弾性変形する。例えば、人は着座面の着座領域の中央部に座ることが多いため、その部分には大きな荷重が加わることになる。そして、クッションパッドの中でも、着座領域の中央部に対応する部位はその荷重を受けて下方に大きく沈み込む。そのため、上述のようなケーブル保持装置をシート構成部材に対して取り付けている場合、ケーブル保持装置の取付場所及び形状によっては、人が座席に座った場合の荷重がケーブル保持装置にも大きく加わって、ケーブル保持装置が破損する可能性もある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、破損する可能性を低くできるケーブル保持装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るケーブル保持装置の特徴構成は、特定の面に沿って広がる本体部を備え、前記本体部は、前記特定の面が乗物の座席の着座面と相対する形態で当該本体部を前記座席を構成するシート構成部材に対して取り付ける取付部と、前記座席で用いられるケーブル類の少なくとも一部分を係止する係止部とを有するケーブル保持装置であって、
前記本体部は、前記着座面の着座領域の中央部と相対する中央領域が空間になっている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、本体部は、着座面の着座領域の中央部と相対する中央領域が空間になっているため、人が座席に座ることで着座面の着座領域の中央部に大きな荷重が加わったとしても、その荷重は本体部には作用し難くなる。
従って、破損する可能性を低くできるケーブル保持装置を提供できる。
【0011】
本発明に係るケーブル保持装置の別の特徴構成は、前記シート構成部材は、前記着座面に設けられるクッションパッドと、当該クッションパッドを支持するクッションパッド支持部材とを有し、
前記本体部は、前記クッションパッド支持部材の下方及びその近傍に位置する形状になっている点にある。
【0012】
人が座席に座ったとしても、クッションパッド支持部材が設けられている部分及びその近傍では、クッションパッドの沈み込み量は抑制される。
本特徴構成では、本体部は、クッションパッド支持部材の下方及びその近傍に位置する形状になっているため、人が座席に座ったことによってクッションパッドが沈み込むとしても、その沈み込みは本体部には作用し難くなる。その結果、本体部は、人が座席に座ったことによる荷重によって破損する可能性が低くなる。
【0013】
本発明に係るケーブル保持装置の更に別の特徴構成は、前記本体部は、前記特定の面に沿って環状に広がる形状であり、当該環状の中央部分の空間が前記中央領域になる点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、本体部を、上記特定の面に沿って環状に広がる形状にすることで、その環状の中央部分の空間を、着座面の着座領域の中央部と相対するように配置できる。その結果、人が座席に座ることで着座面の着座領域の中央部に大きな荷重が加わったとしても、その荷重は本体部には作用し難くなる。
【0015】
本発明に係るケーブル保持装置の更に別の特徴構成は、前記本体部は、前記特定の面に沿ってC字形状に湾曲して広がる形状であり、当該C字形状の中央部分の空間が前記中央領域になる点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、本体部を、上記特定の面に沿ってC字形状に湾曲して広がる形状にすることで、そのC字形状の中央部分の空間を、着座面の着座領域の中央部と相対するように配置できる。その結果、人が座席に座ることで着座面の着座領域の中央部に大きな荷重が加わったとしても、その荷重は本体部には作用し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】着座部のシート構成部材の概略的な構成を示す図である。
【
図3】ケーブル保持装置の概略的な構成を示す図である。
【
図4】ケーブル保持装置の概略的な構成を示す図である。
【
図5】シートフレームにケーブル保持装置が取り付けられた状態を示す図である。
【
図6】ケーブル保持装置にケーブル類が係止された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して本発明のケーブル保持装置11について説明する。以下の実施形態では、ケーブル保持装置11が車両等の乗物の座席1に設けられる場合を例に説明を行う。図中において、X方向は車両などの乗物の前後方向であり、Y方向は乗物の左右方向であり、Z方向は乗物の上下方向である。
【0019】
図1は乗物の座席1の概略的な構成を示す図である。
図2は、着座部7のシート構成部材12の概略的な構成を示す図である。
図示するように、座席1は、車両などの乗物の床2に設けられるシートレール3によって下方から支持される。シートレール3は、床2に固定されるロアレール3aと、そのロアレール3aに対して摺動可能に設けられるアッパーレール3bとを有する。
図1に示す例では、アッパーレール3bの摺動方向、即ち、座席1の移動方向は、X方向に沿う方向である。X方向は乗物の前後方向であるので、座席1も乗物の前後方向に沿って移動できる。
【0020】
座席1は、複数のシート構成部材12を組み合わせて構成される。座席1は、シート構成部材12として、車両の乗員が着座する着座部7と、乗員がもたれ掛かる背もたれ部6とを有する。着座部7は、シート構成部材12として、座席1の着座面9を形成するクッションパッド8と、着座部7の骨格を形成するシートフレーム5とを有する。
【0021】
図示は省略しているが、座席1には、背もたれ部6を乗物の前後方向に揺動させるリクライニング装置、及び、座席1の全体を乗物の前後方向に移動させる前後移動装置が設けられている。リクライニング装置及び前後移動装置は、乗員がスイッチを操作して座席1に搭載されるモーター等を動作させることで背もたれ部6や座席1を動かす電動式のタイプや、通常はリクライニング装置及び前後移動装置が動作しないように機械的にロックしておき、乗員がレバーなどを操作してその機械的なロックが解除された場合に任意にリクライニング装置及び前後移動装置を動作させることができる手動式のタイプなどがある。
【0022】
例えば、乗員がリクライニング装置の操作レバー(図示せず)を操作した際の操作力が、動力を伝えるワイヤを介して背もたれ部6のロック解除用の解除レバーに伝達されると、背もたれ部6のロックが解除されて背もたれ部6がリクライニング状態となる。
【0023】
このように、座席1には、リクライニング装置及び前後移動装置の動作のための電気信号を伝える一本の電気配線又は複数本の電気配線を束ねたもの、光信号を伝える一本の光ファイバ又は複数本の光ファイバを束ねたもの、動力を伝えるワイヤなど、可撓性のある長手状の部材で構成されるケーブル類24が設けられる。ケーブル類24については後述する。
【0024】
シート構成部材12としてのシートフレーム5は、サイドフレーム13と、フロントパイプ14と、リアパイプ15と、クッションパッド支持部材16(第1クッションパッド支持部材16a、第2クッションパッド支持部材16b、第3クッションパッド支持部材16c)とを有する。シートフレーム5にクッションパッド8が覆い被せられることで、着座部7が形成される。着座部7の上面は乗員が座る着座面9になる。つまり、着座面9にはクッションパッド8が設けられる。
【0025】
サイドフレーム13は、X方向に沿って延びる部材である。Y方向に間隔を空けて2つのサイドフレーム13が設けられる。各サイドフレーム13は、アッパーレール3bに装着されている。
【0026】
フロントパイプ14は、Y方向に沿って延びて、一対のサイドフレーム13の間を連結する。リアパイプ15は、Y方向に沿って延びて、一対のサイドフレーム13の間を連結する。
【0027】
第1クッションパッド支持部材16a、第2クッションパッド支持部材16b、第3クッションパッド支持部材16cは、弾性変形可能な例えば金属製ワイヤなどで構成される。そして、第1クッションパッド支持部材16a、第2クッションパッド支持部材16b、第3クッションパッド支持部材16cは、乗員が着座面9に着座した場合にクッションパッド8に加わる荷重を、そのクッションパッド8の下方から受けるように構成されている。
【0028】
第1クッションパッド支持部材16aは、Y方向に沿って延びて、一対のサイドフレーム13の間を連結する。第2クッションパッド支持部材16bは、両端部がフロントパイプ14に装着されたU字形状になっている。第3クッションパッド支持部材16cは、第2クッションパッド支持部材16bの複数箇所に跨るように配置される。
図2に示す例では、第1クッションパッド支持部材16a、第2クッションパッド支持部材16b、第3クッションパッド支持部材16cを用いて構成されるクッションパッド支持部材16は、着座面9の着座領域17の中央部と相対する領域が空間になっている。
【0029】
図3及び
図4は、ケーブル保持装置11の概略的な構成を示す図である。
図3はケーブル保持装置11を上方から見た場合の斜視図であり、
図4はケーブル保持装置11を下方から見た場合の斜視図である。
【0030】
図示するように、ケーブル保持装置11は、特定の面に沿って広がる本体部19を備える。本体部19は、特定の面が乗物の座席1の着座面9と相対する形態で当該本体部19を座席1を構成するシート構成部材12に対して取り付ける取付部20と、座席1で用いられるケーブル類24の少なくとも一部分を係止する係止部21とを有する。上記特定の面は、本実施形態に示す例ではX-Y平面である。図示する例では、本体部19は、特定の面に沿って環状に広がる形状であり、当該環状の中央部分の空間が中央領域18になる。
【0031】
図5は、シートフレーム5にケーブル保持装置11が取り付けられた状態を示す図である。
図6は、ケーブル保持装置11にケーブル類24が係止された状態を示す図である。図示するように、ケーブル保持装置11の本体部19は、特定の面(図中ではX-Y平面)に沿って広がる形状になっている。
【0032】
本体部19は、複数の取付部20と、複数の係止部21とを有する。そして、本体部19は、取付部20を用いてシート構成部材12としてのクッションパッド支持部材16に取り付けられる。具体的には、取付部20aが第1クッションパッド支持部材16aに取り付けられ、取付部20c及び取付部20dが第3クッションパッド支持部材16cに取り付けられる。
【0033】
本体部19は、クッションパッド支持部材16の下方及びその近傍に位置する形状になっている。また、クッションパッド支持部材16は、着座面9の着座領域17の中央部と相対する領域が空間になっている。そして、本体部19は、着座面9の着座領域17の中央部と相対する中央領域18が空間になっている。
【0034】
このように、本体部19を、上記特定の面に沿って環状に広がる形状にすることで、その環状の中央部分の空間を、着座面9の着座領域17の中央部と相対するように配置できる。そして、本体部19は、着座面9の着座領域17の中央部と相対する中央領域18が空間になっているため、人が座席1に座ることで着座面9の着座領域17の中央部に大きな荷重が加わったとしても、その荷重は本体部19には作用し難くなる。また、人が座席1に座ったとしても、クッションパッド支持部材16が設けられている部分及びその近傍では、クッションパッド8の沈み込み量は抑制される。そして、本実施形態の本体部19は、クッションパッド支持部材16の下方及びその近傍に位置する形状になっているため、人が座席1に座ったことによってクッションパッド8が沈み込むとしても、その沈み込みは本体部19には作用し難くなる。その結果、本体部19は、人が座席1に座ったことによる荷重によって破損する可能性が低くなる。
【0035】
上述したように、ケーブル類24は、複数の箇所で係止部21によって係止されることで、本体部19と一体になっている。例えば、ケーブル類24は、本体部19が座席1に取り付けられる前に、予め本体部19に係止される。そして、ケーブル類24が本体部19に係止された状態のケーブル保持装置11が持ち運ばれ、その後、座席1に取り付けられる。そのため、座席1の下方の狭い空間でケーブル類24をシート構成部材12に取り付けるといった難しい作業は不要になる。
【0036】
尚、ケーブル保持装置11の本体部19に係止されたケーブル類24には、係止部21で係止される係止部分24a(即ち、自由に動くことができない部分)と、係止部21で係止されていない非係止部分24b(即ち、自由に動くことができる部分)とが存在する。ケーブル類24の全体を本体部19に対して係止して固定するのではなく、係止部21で係止されてない非係止部分24bを設けているのは、ケーブル類24の一部が自由に移動できる余地を意図的に大きく残すためである。
【0037】
例えば、ケーブル類24の一端が、座席1に取り付けられるケーブル保持装置11の本体部19に係止され、ケーブル類24の他端が、乗物の床等に設けられる機器などに固定される場合がある。そのような状態で、上述した前後移動装置を用いて座席1が乗物の前後方向に移動させられると、即ち、ケーブル保持装置11が乗物の床等に対して相対移動させられると、ケーブル類24の一端と他端との相対距離が変化する。そのため、ケーブル保持装置11の本体部19に係止されるケーブル類24の一端と乗物の床等に設けられる機器などに固定されるケーブル類24の他端との間の部分のケーブル類24に、自由に移動できる余地が大きく残されていない場合、その部分のケーブル類24に強い張力が加わる、或いは、無理に屈曲させられるといった事象が発生し、ケーブル類24が損傷する可能性がある。それに対して、ケーブル類24に自由に移動できる余地が大きく残されている場合、そのような事象は発生し難い。
【0038】
但し、ケーブル類24の一部が自由に移動できる余地を意図的に大きく残している場合、ケーブル類24の非係止部分24bは、ケーブル保持装置11の本体部19から離れて自在に移動できるため、他の部材に引っ掛かったり挟まれたりする可能性がある。例えば、ケーブル類24が本体部19に係止された状態のケーブル保持装置11を持ち運ぶ場合や梱包用の箱に入れる場合、ケーブル類24の非係止部分24bが他の部材に引っ掛かったり挟まれたりする可能性がある。他にも、ケーブル類24が本体部19に係止された状態のケーブル保持装置11をシート構成部材12に取り付ける場合、ケーブル類24が本体部19に係止された状態のケーブル保持装置11がシート構成部材12に取り付けられた後、座席1が、上述した前後移動装置を用いて乗物の前後方向に移動させられる場合などに、ケーブル類24の非係止部分24bが他の部材に引っ掛かったり挟まれたりする可能性がある。
【0039】
そのような問題に鑑みて、本実施形態のケーブル保持装置11の本体部19は、少なくとも一部分が係止部21によって係止されたケーブル類24のうち、係止部21によって係止されていない非係止部分24bが所定の方向へ移動することを規制する規制部22を有する。
【0040】
つまり、規制部22によって、非係止部分24bのケーブル類24が他の部材と干渉することを抑止できる。そして、ケーブル類24の非係止部分24bが他の部材に引っ掛かったり挟まれたりすることが抑止される。その結果、ケーブル類24が損傷する可能性を低くすることができる。また、ケーブル類24が係止されたケーブル保持装置11をシート構成部材12に対して取り付ける際にも、ケーブル類24の非係止部分24bがシート構成部材12に引っ掛かったりすることが規制部22によって抑止される。その結果、ケーブル類24の非係止部分24bがシート構成部材12への取り付けの邪魔になることも抑止される。加えて、ケーブル保持装置11の係止部21でケーブル類24を係止した状態では、ケーブル類24の非係止部分24bは、あらゆる方向に自由に動くことができるのではなく、動く方向が規制部22によって規制される。その結果、ケーブル保持装置11でのケーブル類24のまとまりが良くなる。そのため、ケーブル保持装置11の係止部21でケーブル類24を係止した状態で例えばそれらを梱包用の箱の中に入れ易くなる等、それらを搬送し易くなるといった利点がある。
【0041】
特に、規制部22は、特定の面(図中ではX-Y平面)と交差する方向(図中ではZ方向に沿う方向)に本体部19から延びる一つ又は複数の延伸部材23を用いて構成される。
図6に示す例では、規制部22は、一つの延伸部材23を用いて構成される。この規制部22は、本体部19の表面において直線状に延びる所定の領域(直線状領域10)から、Z方向に沿う方向に延びる一つ又は複数の延伸部材23を用いて構成される。具体的には、規制部22は、本体部19から見てケーブル類24が配置されている側で、Z方向に沿う方向に突出する形状になっていることが好ましい。図中では、規制部22は、本体部19から座席1の下方側に向けて突出する形状になっている。
【0042】
このように、特定の面に沿って広がる本体部19に沿ってケーブル類24が引き回される場合、特定の面と交差する方向に本体部19から延びる一つ又は複数の延伸部材23を用いて、ケーブル類24が所定の方向に移動することを規制できる。また、規制部22は、本体部19の表面の狭い範囲でケーブル類24が所定の方向に移動することを規制するのではなく、本体部19の表面において直線状領域10の長さにわたって、即ち、本体部19の表面の広い範囲で、ケーブル類24が所定の方向に移動することを規制できる。
【0043】
更に、本実施形態では、座席1は乗物の前後方向に沿って移動可能であり、上記所定の方向(即ち、非係止部分24bの移動が規制される方向)は、前後方向と直交する方向である。つまり、本実施形態のように座席1がシートレール3を用いて乗物の前後方向に沿って移動可能である場合、規制部22は、その前後方向と直交する方向、即ち、上記シートレール3と直交する方向(即ち、シートレール3へ向かう方向)へケーブル類24が移動することを規制できる。その結果、非係止部分24bのケーブル類24がシートレール3の部材と干渉することを規制部22によって抑止できる。
【0044】
<別実施形態>
上記実施形態では、ケーブル保持装置11及び座席1の構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
【0045】
例えば、規制部22の形状及び数は適宜変更可能である。例えば、
図7は、規制部22が、複数の延伸部材23を用いて構成された例を示す図である。図示するように、複数の細長い延伸部材23が直線状領域10に並んで設けられている。この規制部22でも、非係止部分24bが所定の方向へ移動することを規制できる。
また、規制部22を本体部19のどの部分に設けるのかについても適宜設定可能である。
【0046】
ケーブル保持装置11の本体部19の形状も適宜変更可能である。例えば、
図8に示す本体部19は、特定の面(図中ではX-Y平面)に沿ってC字形状に湾曲して広がる形状であり、当該C字形状の中央部分の空間が中央領域18になっている。本体部19をこのような形状にすることで、そのC字形状の中央部分の空間を、着座面9の着座領域17の中央部と相対するように配置できる。その結果、人が座席1に座ることで着座面9の着座領域17の中央部に大きな荷重が加わったとしても、その荷重は本体部19には作用し難くなる。
【0047】
ケーブル保持装置11の取付部20及び係止部21の形状及び数なども適宜変更可能である。例えば、複数のケーブル類24の端末を接続するジョイントピースをケースに収容することで複数のケーブル類24を連結する公知の連結装置をケーブル保持装置11に取り付け、ケーブル保持装置11から延出するケーブル類24を係止部21に係止するようにしてもよい。
【0048】
クッションパッド支持部材16の形状及び数も適宜変更可能である。
【0049】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、破損する可能性を低くできるケーブル保持装置に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 :座席
7 :着座部
8 :クッションパッド
9 :着座面
10 :直線状領域
11 :ケーブル保持装置
12 :シート構成部材
16 :クッションパッド支持部材
16a :第1クッションパッド支持部材
16b :第2クッションパッド支持部材
16c :第3クッションパッド支持部材
17 :着座領域
18 :中央領域
19 :本体部
20 :取付部
20a :取付部
20c :取付部
20d :取付部
21 :係止部
22 :規制部
23 :延伸部材
24 :ケーブル類
24a :係止部分
24b :非係止部分