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特開2024-109855ピロロ[2,3-D]ピリミジン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109855
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ピロロ[2,3-D]ピリミジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240806BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07D487/04 140
A61K31/519
A61P37/08
A61P17/00
A61P17/04
A61P29/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085235
(22)【出願日】2024-05-27
(62)【分割の表示】P 2021088059の分割
【原出願日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】62/704796
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/037366
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ユージーン ダウティ
(72)【発明者】
【氏名】ビマル クマール マルハトラ
(72)【発明者】
【氏名】イワン ヨルダン サマードジエフ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン マシュー サマズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ ウォルター ストローバック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヤヌスキナーゼ(Janus Kinase)(JAK)により媒介される状態を治療および予防するための化合物および方法を提供する。
【解決手段】ピロロ{2,3-d}ピリミジン誘導体、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬としてのそれらの使用、およびそれらを含有する医薬組成物が提供される。例えば、(S)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド、(R)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド、またはそれらの薬学的に許容できる塩である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する式Iの化合物:
【化1】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素またはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシである)
または薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
以下の構造を有する式IAの化合物:
【化2】
または薬学的に許容できるその塩。
【請求項3】
以下の構造を有する式IBの化合物:
【化3】
または薬学的に許容できるその塩。
【請求項4】
(S)-2-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できるその塩。
【請求項5】
3-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できるその塩。
【請求項6】
単離された形態での、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
炎症、自己免疫疾患、神経炎症、関節炎、リウマチ性関節炎、脊椎関節症、全身性エリトマトーデス、ループス腎炎、骨関節炎、痛風性関節炎、疼痛、発熱、肺サルコイドーシス、ケイ肺症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、血栓症、鬱血性心不全および心臓再灌流障害、心筋症、脳卒中、虚血、再灌流障害、脳浮腫、脳外傷、神経変性、肝疾患、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎炎、網膜炎、網膜症、黄斑変性症、緑内障、糖尿病(1型および2型)、糖尿病性神経障害、ウイルスおよび細菌感染、筋肉痛、内毒素ショック、毒素ショック症候群、骨粗鬆症、多発性硬化症、子宮内膜症、月経痛、腟炎、カンジダ症、癌、線維症、肥満、筋ジストロフィ、多発性筋炎、皮膚筋炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、白斑症、アルツハイマー病、皮膚潮紅、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、日光皮膚炎、ケロイド、肥厚性瘢痕、リウマチ性疾患、じん麻疹、円板状ループス、皮膚ループス、中枢神経ループス、乾癬性関節炎、喘息、アレルギー性喘息、アイカルディ・グティエール症候群およびI型インターフェロン過剰発現の他のメンデル性疾患を含むI型インターフェロノパチー、一次性進行型多発性硬化症、再発寛解型多発性硬化症、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、強皮症、円形脱毛症、瘢痕性脱毛症、痒疹、結節性痒疹、CPUO、苔癬疾患、扁平苔癬、スティーヴンス・ジョンソン症候群、脊椎症、筋炎、血管炎、天疱瘡、狼瘡、大うつ病性障害、アレルギー、ドライアイ症候群、移植片拒絶、癌、敗血症性ショック、心肺機能不全、急性呼吸器疾患、強直性脊椎炎、悪液質、慢性移植片対宿主病、急性移植片対宿主病、セリアックスプルー、特発性血小板減少性血栓性紫斑、血栓性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、シェーグレン症候群、表皮過形成、軟骨炎症、骨分解、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、少関節型若年性関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ、全身型若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎、若年性腸炎性関節炎、若年性ライター症候群、SEA症候群、若年性皮膚筋炎、若年性乾癬性関節炎、若年性強皮症、若年性全身性エリトマトーデス、若年性血管炎、少関節型関節リウマチ、多関節型関節リウマチ、全身型関節リウマチ、腸炎性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、ミオリチス、多発性ミオリチス、皮膚ミオリチス、結節性多発性動脈炎(polyarteritis nodossa)、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、硬化症、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、皮膚炎、スチル病、慢性閉塞性肺疾患、ギラン・バレー疾患、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、乾癬性表皮過形成、尋常性乾癬、滴状乾癬、逆性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、病原性リンパ球の活動に関連または起因する免疫障害、非感染性ぶどう膜炎、ベーチェット病、ならびにフォークト-小柳-原田症候群から選択される疾患または状態を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記化合物が、単離された形態での、(S)-2-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、単離された形態での、3-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できる塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患または状態が、アトピー性皮膚炎である、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患または状態が、手湿疹である、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患または状態が、皮膚ループスである、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
JAK1阻害薬が適応である障害を治療するための医薬品の製造のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の単離された形態での化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロロ[2,3-d]ピリミジン化合物およびそのような化合物の単離された形態に関する。本発明はまた、前記化合物の調製、および前記調製に使用する中間体、前記化合物を含有する組成物、およびヤヌスキナーゼ(Janus Kinase)(JAK)を阻害するための前記化合物の使用、およびJAK1により媒介される状態を治療および予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼは、タンパク質中の特定の残基のリン酸化を触媒する酵素のファミリーであり、チロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼに大きく分類される。突然変異、過剰発現、または不適当な調節、調節不全もしくは調節解除、ならびに増殖因子またはサイトカインの過剰もしくは過少産生から生じる不適当なキナーゼ活性は、癌、心血管疾患、アレルギー、喘息および他の呼吸器疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝障害、ならびにアルツハイマー病などの神経および神経変性障害を含むがそれらだけに限らない多くの疾患に関与している。不適当なキナーゼ活性は、前述のおよび関連する疾患に関与する細胞増殖、細胞分化、生存、アポトーシス、有糸分裂誘発、細胞周期制御、および細胞可動性に関連する種々の生物学的細胞応答を引き起こす。
【0003】
したがって、タンパク質キナーゼは、治療介入の標的としての酵素の重要なクラスとして浮上している。特に、細胞性タンパク質チロシンキナーゼ(JAK1、JAK2、JAK3、およびTyk2)のJAKファミリーは、サイトカインシグナル伝達において中心的な役割を果たす(Kisselevaら、Gene、2002、285、1;Yamaokaら、Genome Biology、2004、5、253)。それらの受容体と結合した後、サイトカインはJAKを活性化し、次いで、サイトカイン受容体をリン酸化し、それによって、シグナル伝達分子、特に、最終的に遺伝子発現をもたらすシグナル伝達性転写因子(STAT)ファミリーのメンバーのためのドッキング部位が形成される。多くのサイトカインは、JAKファミリーを活性化することが既知である。これらのサイトカインとしては、IFNファミリー(IFN-アルファ、IFN-ベータ、IFN-オメガ、リミチン、IFN-ガンマ、IL-10、IL-19、IL-20、IL-22)、gp130ファミリー(IL-6、IL-11、OSM、LIF、CNTF、NNT-1/BSF-3、G-CSF、CT-1、レプチン、IL-12、IL-23)、ガンマCファミリー(IL-2、IL-7、TSLP、IL-9、IL-15、IL-21、IL-4、IL-13)、IL-3ファミリー(IL-3、IL-5、GM-CSF)、単鎖ファミリー(EPO、GH、PRL、TPO)、受容体チロシンキナーゼ(EGF、PDGF、CSF-1、HGF)、およびGタンパク質共役受容体(AT1)が挙げられる。
【0004】
特異的JAK酵素、およびJAK1を特にJAK2に対して効果的にかつ選択的に阻害する新しい化合物が依然として必要である。JAK1は、JAK1、JAK2、JAK3、およびTYK2から構成されるタンパク質キナーゼのヤヌスファミリーのメンバーである。JAK1は、すべての組織において様々なレベルで発現される。多くのサイトカイン受容体は、以下の組合せ:JAK1/JAK2、JAK1/JAK3、JAK1/TYK2、JAK2/TYK2、またはJAK2/JAK2におけるJAKキナーゼの対を介してシグナル伝達する。JAK1は、この状況で最も広く対をなすJAKキナーゼであり、γ-共通(IL-2Rγ)サイトカイン受容体、IL-6受容体ファミリー、I、II、およびIII型受容体ファミリー、ならびにIL-10受容体ファミリーによるシグナル伝達に必要とされる。動物研究から、JAK1が免疫系の発達、機能、および恒常性に必要であることが示されている。JAK1キナーゼ活性の阻害による免疫活性の調節は、JAK2依存性エリスロポエチン(EPO)およびトロンボポエチン(TPO)伝達を回避しながら(Neubauer H.ら、Cell、93(3)、397~409(1998);Parganas E.ら、Cell、93(3)、385~95(1998))、様々な免疫障害の治療に有用であることを証明できる(Murray,P.J.、J.Immunol.、178、2623~2629(2007);Kisseleva,T.ら、Gene、285、1~24(2002);O’Shea,J.J.ら、Cell、109(付録)S121~S131(2002))。
【0005】
ヒトおよび動物の両方において、アトピー性皮膚炎など、JAKに関連する障害を制御する安全で効果的な薬剤が実質的に必要とされている。現在、アトピー性皮膚炎の治療に関する市場は、苦痛および望ましくない副作用が生じるコルチコステロイドに独占されている。抗ヒスタミン剤も使用されているが、効果が不十分である。JAK1に対して選択的な効能を有するJAK阻害薬であり、ステロイド用法の代替法を提供し、アトピー性皮膚炎で持続する、またはアレルゲンもしくは原因物質の除去後にゆっくりと退行する慢性のそう痒症および炎症の消散を促進する新しい化合物が必要である。
【0006】
最近確認されたN-((1S,3S)-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドは、一般的にアブロシチニブとして知られており、内容全体を参照により本明細書に援用する、本願の譲受人に譲渡された米国特許第9,035,074号に記載されており、化学式C1421Sおよび以下の構造式を有する。
【0007】
【化1】
アブロシチニブは、JAKの非常に有望な阻害薬であり、アトピー性皮膚炎を含む様々な障害の治療にとって治療上有用であることが知られている。今回、本発明者らは、JAKの阻害薬として高い活性を示し、驚くべきことに治療指数をより高めることができ、したがって、JAK媒介障害の治療のための優れた医薬剤となる可能性があるアブロシチニブの新規代謝産物を発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9,035,074号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kisselevaら、Gene、2002、285、1
【非特許文献2】Yamaokaら、Genome Biology、2004、5、253
【非特許文献3】Murray,P.J.、J.Immunol.、178、2623~2629(2007)
【非特許文献4】Kisseleva,T.ら、Gene、285、1~24(2002)
【非特許文献5】O’Shea,J.J.ら、Cell、109(付録)S121~S131(2002)
【非特許文献6】Neubauer H.ら、Cell、93(3)、397~409(1998)
【非特許文献7】Parganas E.ら、Cell、93(3)、385~95(1998)
【非特許文献8】Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、StahlおよびWermuth著(Wiley-VCH、2002)
【非特許文献9】「Remington’s Pharmaceutical Sciences」Mack Pub.Co.、New Jersey(1991)
【非特許文献10】J.Med.Chem.2018、61(3)、1130~1152
【非特許文献11】A.L.Spek、J.Appl.Cryst.2003、36、7~13
【非特許文献12】C.F.Macrae、P.R.Edington、P.McCabe、E.Pidcock、G.P.Shields、R.Taylor、M.Towler、およびJ.van de Streek、J.Appl.Cryst.39、453~457、2006
【非特許文献13】Dolomanov,O.V.、Bourhis,L.J.、Gildea,R.J.、Howard,J.A.K.、Puschmann,H.、(2009)、J.Appl.Cryst.、42、339~341
【非特許文献14】R.W.W.Hooftら、J.Appl.Cryst.(2008)、41、96~103
【非特許文献15】H.D.Flack、Acta Cryst.1983、A39、867~881
【非特許文献16】Gooderham M.J.ら、JAMA Dermatology、155(12)、1371~1379(2019年10月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ピロロ[2,3-d]ピリミジン化合物およびそのような化合物の単離された形態に関する。本発明の単離された化合物は、より高い効能および有害作用の発生の減少を含む、予想外に有利な活性を有することが分かった。この単離された化合物は、薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせた医薬組成物において、およびJAK1により媒介される状態を治療する方法において使用することができる。
【0012】
本発明は、以下の構造を有する式Iの化合物:
【0013】
【化2】
(式中、RおよびRは独立に水素またはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシである)
または薬学的に許容できるその塩を提供する。
【0014】
他の態様では、本発明はまた、単離された形態での、式Iの化合物または薬学的に許容できる塩を提供する。
【0015】
他の態様では、本発明はまた、薬学的に許容できる賦形剤および式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明はまた、筋炎、血管炎、天疱瘡、クローン病、狼瘡、腎炎、乾癬、多発性硬化症、大うつ病性障害、アレルギー、喘息、シェーグレン疾患、ドライアイ症候群、移植片拒絶、癌、炎症性腸疾患、敗血症性ショック、心肺機能不全、急性呼吸器疾患、または悪液質を含む状態または障害を、治療上有効な量の式Iの化合物または薬学的に許容できる塩を、それを必要とする対象に投与することによって治療する方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明はまた、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、狼瘡、そう痒症、その他のそう痒性状態、哺乳動物のアレルギー性皮膚炎を含むアレルギー反応、炎症性気道疾患、再発性気道閉塞、気道過敏症、および慢性閉塞性肺疾患を含む状態または障害を、治療上有効な量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする対象に投与することを含むことによって治療する方法を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明はまた、本発明の化合物を調製する方法を提供する。
【0019】
本発明は、例としてのみ示す以下の説明からさらに理解されるであろう。以下の考察および実施例を通じて本発明の様々な態様の理解が得られるが、本発明はそのように限定されるものではない。
【0020】
用語「対象」は、ヒト、家畜、または愛玩動物を指す。
【0021】
用語「治療する」または「治療」は、疾患、障害、もしくは状態に関連する症状の緩和、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化の停止を意味する。対象の疾患および状態に応じて、用語「治療」は、本明細書で使用する場合、治癒的、姑息的、および予防的治療のうちの1つまたは複数を含んでよい。治療はまた、他の療法と組み合わせて、本発明の医薬製剤を投与することを含んでよい。
【0022】
用語「治療上有効な」は、代替療法に通常関連する有害な副作用を回避しながら、障害を予防または障害の重症度を改善する薬剤の能力を示す。語句「治療上有効な」は、語句「治療、予防、または回復に有効な」と同等であると理解すべきであり、両方とも、代替療法に通常関連する有害な副作用を回避しながら、癌、心血管疾患、または疼痛および炎症の重症度、ならびに罹患頻度において各薬剤単独での治療を上回る改善という目標を達成するであろう併用療法で使用するための、各薬剤の量を認定するように意図されている。
【0023】
「薬学的に許容できる」は、対象での使用に適していることを意味する。
【0024】
置換基がある群から「独立に選択される」と記載されている場合、各置換基は他と無関係に選択される。したがって、各置換基は、他の置換基と同一であっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、代謝産物化合物またはその塩は、実質的に単離されている。
【0025】
用語「単離された」、「精製された」、「精製された形態で」、「単離された形態で」、または「精製された物質」は、化合物、または化合物に関するその塩が、合成方法、例えば反応混合物から単離された後の化合物の物理的状態を意味する。したがって、化合物に関する用語「単離された」、「精製された」、「精製された形態で」、「単離された形態で」、または「精製された物質」は、本明細書に記載または当業者に周知の1つまたは複数の精製方法(例えば、クロマトグラフィ、再結晶など)から、本明細書に記載または当業者に周知の標準的な分析技術によって特徴付けが可能なほど十分な純度で得られた後の前記化合物の物理的状態を意味する。例として、本明細書に開示する精製技術(例えば、LC-MSおよびLC-MS/MS技術)は、主題化合物の単離された形態をもたらす。このような単離および精製技術は、化合物またはその塩を少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%含有する生成物純度をもたらすと予想される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、JAK1の調節不全に関連する疾患および状態の治療に有用な選択的JAK1モジュレーターである化合物に関する。本発明は、JAK1の調節不全に関連する疾患および状態の治療に有用な選択的JAK1モジュレーターである単離された化合物をさらに提供する。本発明はまた、そのようなJAK1モジュレーターを含むプロドラッグおよび医薬組成物ならびにそのような疾患および状態を治療および/または予防する方法を提供する。
【0027】
第1の態様では、本発明は、以下の構造を有する式Iの化合物:
【0028】
【化3】
(式中、RおよびRは独立に水素またはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシである)
または薬学的に許容できるその塩を提供する。
【0029】
以下に本発明のこの第1の態様の実施形態(E)を説明するが、便宜上、E1はこれと同一である。
【0030】
E1. 以下の構造を有する式Iの化合物:
【0031】
【化4】
(式中、RおよびRは独立に水素またはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシである)
または薬学的に許容できるその塩。
【0032】
E2. Rがヒドロキシであり、Rが水素である、E1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【0033】
E3. Rが水素であり、Rがヒドロキシである、E1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【0034】
E4. 以下の構造を有する式IAの化合物:
【0035】
【化5】
または薬学的に許容できるその塩。
【0036】
E5. 以下の構造を有する式IBの化合物:
【0037】
【化6】
または薬学的に許容できるその塩。
【0038】
E6.
(S)-2-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド;および、
3-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド;
からなる群から選択される化合物または薬学的に許容できるその塩。
【0039】
E7. (S)-2-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できるその塩。
【0040】
E8. 3-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できるその塩。
【0041】
E9. (S)-2-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド。
【0042】
E10. 3-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド。
【0043】
E11. 単離された形態での、実施形態E1からE10のいずれか1つに記載の化合物。
【0044】
E12. 結晶形態での、実施形態E1からE11のいずれか1つに記載の化合物。
【0045】
E13. JAK1阻害薬が適応である疾患または状態を、そのような治療を必要とする対象において予防または治療する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物、または薬学的に許容できる塩を対象に投与することを含む、方法。
【0046】
E14. 炎症性または自己免疫性状態を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩をそれに罹患している対象に投与することを含む、方法。
【0047】
E15. 実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物、および薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【0048】
E16. 炎症、自己免疫疾患、神経炎症、関節炎、リウマチ性関節炎、脊椎関節症、全身性エリトマトーデス(erythematous)、ループス腎炎、骨関節炎、痛風性関節炎、疼痛、発熱、肺サルコイドーシス、ケイ肺症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、血栓症、鬱血性心不全および心臓再灌流障害、心筋症、脳卒中、虚血、再灌流障害、脳浮腫、脳外傷、神経変性、肝疾患、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎炎、網膜炎、網膜症、黄斑変性症、緑内障、糖尿病(1型および2型)、糖尿病性神経障害、ウイルスおよび細菌感染、筋肉痛、内毒素ショック、毒素ショック症候群、骨粗鬆症、多発性硬化症、子宮内膜症、月経痛、腟炎、カンジダ症、癌、線維症、肥満、筋ジストロフィ、多発性筋炎、皮膚筋炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、白斑症、アルツハイマー病、皮膚潮紅、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、日光皮膚炎、ケロイド、肥厚性瘢痕、リウマチ性疾患、じん麻疹、円板状ループス、皮膚ループス、中枢神経ループス、乾癬性関節炎、喘息、アレルギー性喘息、アイカルディ・グティエール症候群およびI型インターフェロン過剰発現の他のメンデル性疾患を含むI型インターフェロノパチー、一次性進行型多発性硬化症、再発寛解型多発性硬化症、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、強皮症、円形脱毛症、瘢痕性脱毛症、痒疹、結節性痒疹、CPUO、苔癬疾患、扁平苔癬、スティーヴンス・ジョンソン症候群、脊椎症、筋炎、血管炎、天疱瘡、狼瘡、大うつ病性障害、アレルギー、ドライアイ症候群、移植片拒絶、癌、敗血症性ショック、心肺機能不全、急性呼吸器疾患、強直性脊椎炎、悪液質、慢性移植片対宿主病、急性移植片対宿主病、セリアックスプルー、特発性血小板減少性血栓性紫斑、血栓性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、シェーグレン症候群、表皮過形成、軟骨炎症、骨分解、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、少関節型若年性関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ、全身型若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎、若年性腸炎性関節炎、若年性ライター(Reter’s)症候群、SEA症候群、若年性皮膚筋炎、若年性乾癬性関節炎、若年性強皮症、若年性全身性エリトマトーデス、若年性血管炎、少関節型関節リウマチ、多関節型関節リウマチ、全身型関節リウマチ、腸炎性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、ミオリチス(myolitis)、多発性ミオリチス(polymyolitis)、皮膚ミオリチス(dermatomyolitis)、結節性多発性動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、硬化症、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、皮膚炎、スチル病、慢性閉塞性肺疾患、ギラン・バレー疾患、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、乾癬性表皮過形成、尋常性乾癬、滴状乾癬、逆性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、病原性リンパ球の活動に関連または起因する免疫障害、非感染性ぶどう膜炎、ベーチェット病、ならびにフォークト-小柳-原田症候群から選択される疾患または状態を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【0049】
E17. 乾癬を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を含む組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【0050】
E18. アトピー性皮膚炎を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を含む組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【0051】
E19. 手湿疹を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【0052】
E20. そう痒症を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【0053】
E21. 皮膚ループスを治療または予防する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【0054】
E22. JAK、特にJAK1の調節不全と関連する障害または状態を、その治療を必要とする対象において治療する方法であって、治療上有効な量の、実施形態E1からE12のいずれか1つに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を対象に投与することを含む、方法。
【0055】
E23. 治療または予防する障害または状態が、炎症、自己免疫疾患、神経炎症、関節炎、リウマチ性関節炎、脊椎関節症、全身性エリトマトーデス、ループス腎炎、骨関節炎、痛風性関節炎、疼痛、発熱、肺サルコイドーシス、ケイ肺症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、血栓症、鬱血性心不全および心臓再灌流障害、心筋症、脳卒中、虚血、再灌流障害、脳浮腫、脳外傷、神経変性、肝疾患、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎炎、網膜炎、網膜症、黄斑変性症、緑内障、糖尿病(1型および2型)、糖尿病性神経障害、ウイルスおよび細菌感染、筋肉痛、内毒素ショック、毒素ショック症候群、骨粗鬆症、多発性硬化症、子宮内膜症、月経痛、腟炎、カンジダ症、癌、線維症、肥満、筋ジストロフィ、多発性筋炎、皮膚筋炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、白斑症、アルツハイマー病、皮膚潮紅、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、日光皮膚炎、ケロイド、肥厚性瘢痕、リウマチ性疾患、じん麻疹、円板状ループス、皮膚ループス、中枢神経ループス、乾癬性関節炎、喘息、アレルギー性喘息、アイカルディ・グティエール症候群およびI型インターフェロン過剰発現の他のメンデル性疾患を含むI型インターフェロノパチー、一次性進行型多発性硬化症、再発寛解型多発性硬化症、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、強皮症、円形脱毛症、脊椎症、筋炎、血管炎、天疱瘡、狼瘡、大うつ病性障害、アレルギー、ドライアイ症候群、移植片拒絶、癌、敗血症性ショック、心肺機能不全、急性呼吸器疾患、強直性脊椎炎、悪液質、慢性移植片対宿主病、急性移植片対宿主病、セリアックスプルー、特発性血小板減少性血栓性紫斑、重症筋無力症、シェーグレン症候群、表皮過形成、軟骨炎症、骨分解、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、少関節型若年性関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ、全身型若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎、若年性腸炎性関節炎、若年性ライター症候群、SEA症候群、若年性皮膚筋炎、若年性乾癬性関節炎、若年性強皮症、若年性全身性エリトマトーデス、若年性血管炎、少関節型関節リウマチ、多関節型関節リウマチ、全身型関節リウマチ、腸炎性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、ミオリチス、多発性ミオリチス、皮膚ミオリチス、結節性多発性動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、硬化症、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、皮膚炎、スチル病、慢性閉塞性肺疾患、ギラン・バレー疾患、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、乾癬性表皮過形成、尋常性乾癬、滴状乾癬、逆性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、病原性リンパ球の活動に関連または起因する免疫障害、非感染性ぶどう膜炎、ベーチェット病、ならびにフォークト-小柳-原田症候群からなる群から選択される、E22に記載の方法。
【0056】
E24. 治療上有効な量が、0.01mg/kg体重/日~100mg/kg体重/日である、実施形態E13からE23に記載の方法。
【0057】
E25. 治療上有効な量が、0.1mg/kg体重/日~10mg/kg体重/日である、E24に記載の方法。
【0058】
E26. JAK1阻害薬が適応である障害を治療するための医薬品の製造のための、実施形態E1からE12のいずれかに記載の化合物の使用。
【0059】
E29. JAK1阻害薬が適応である障害の治療で使用するための、実施形態E1からE12のいずれかに記載の化合物。
【0060】
E30. JAK1阻害薬が適応である障害を治療するための医薬品の製造のための、実施形態E1からE12のいずれかに記載の単離された形態での化合物の使用。
【0061】
E31. JAK1阻害薬が適応である障害の治療で使用するための、実施形態E1からE12のいずれかに記載の単離された形態での化合物。
【0062】
E32. 実施形態E1からE12の化合物、または薬学的に許容できるその塩、および1種もしくは複数種の追加の薬理学的に有効な化合物を含む医薬組合せ。
【0063】
同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の性質もしくは順序、またはそれらの原子の空間的な配置が異なる化合物または単離された形態での化合物は、「異性体」と呼ばれる。それらの原子の空間的な配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。式I、IA、またはIBの化合物または単離された形態での化合物がシスおよびトランス-アキラルジアステレオ異性体として存在できることは、当業者なら理解されよう。一例は、式ICの化合物または単離された形態での化合物である。
【0064】
記載する化合物および単離された形態での化合物の範囲内に含まれているのは、本明細書に記載の化合物のすべての異性体(例えば、シス、トランス、またはジアステレオ異性体)単独ならびに任意の混合物である。鏡像異性体、ジアステレオ異性体、シス、トランス、シン、アンチ、溶媒和物(水和物を含む)、互変異性体、およびこれらの混合物を含むこれらの形態すべてが記載する化合物または単離された形態での化合物に含まれる。立体異性体混合物、例えば、ジアステレオ異性体の混合物は、適切な分離法による既知の方法においてそれらの対応する異性体に分離することができる。ジアステレオ異性体混合物は、例えば、分別結晶化、クロマトグラフィ、溶媒分散、および類似の手順によってそれらの個々のジアステレオ異性体に分離することができる。この分離は、1個の出発化合物のレベルで、または式I、IA、もしくはIBの化合物自体において行うことができる。鏡像異性体は、ジアステレオ異性体塩の形成によって、例えば、純粋な鏡像異性体キラル酸との塩形成によって、またはクロマトグラフィ、例えば、キラル配位子を有するクロマトグラフ基質を用いたHPLCによって、分離することができる。
【0065】
対象における障害を治療するための治療的使用では、本発明の化合物もしくは単離された形態での化合物、またはその医薬組成物は、経口、非経口、局所、経直腸、経粘膜、または経腸的に投与することができる。非経口投与には、全身作用を生じる間接注入または罹患範囲への直接注入が含まれる。局所投与には、局所施用によって容易に接近できる皮膚または臓器、例えば、眼または耳の治療が含まれる。これにはまた、全身作用を生じる経皮送達も含まれる。直腸投与には、坐薬の形態が含まれる。好ましい投与経路は、経口および非経口である。
【0066】
式I、IA、またはIBの化合物または単離された形態での化合物の薬学的に許容できる塩には、その酸付加塩および塩基塩が含まれる。適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、およびキシノホ酸塩(xinofoate)が挙げられる。
【0067】
適切な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例として、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオールアミン、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、および亜鉛の塩が挙げられる。
【0068】
酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩も形成することができる。適切な塩についての概説に関しては、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、StahlおよびWermuth著(Wiley-VCH、2002)を参照されたい。
【0069】
式I、IA、またはIBの化合物および単離された形態での化合物の薬学的に許容できる塩は、以下の3種の方法のうちの1種または複数種によりそれぞれ調製することができる:(i)式I、IA、またはIBの化合物または単離された形態での化合物を所望の酸または塩基と反応させる方法;(ii)式I、IA、もしくはIBの化合物もしくは単離された形態での化合物の適切な前駆体から酸もしくは塩基不安定性保護基を除去するか、または所望の酸もしくは塩基を使用して、適切な環式前駆体、例えばラクトンもしくはラクタムを開環する方法;または(iii)適切な酸もしくは塩基との反応により、または適切なイオン交換カラムを用いて、式I、IAまたはIBの化合物または単離された形態での化合物のある塩を他の塩に変換する方法。3種の反応はすべて、典型的には溶液中で実施する。生じた塩を沈殿させ、ろ過で収集してもよいし、溶媒を蒸発させて回収してもよい。生じた塩のイオン化度は、完全イオン化からほぼ非イオン化まで変化し得る。
【0070】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で周知の方法によって、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣形成、研和、乳化、カプセル化、封入、凍結乾燥、または噴霧乾燥によって製造することができる。
【0071】
本発明に従って使用する医薬組成物は、有効な化合物または単離された形態での化合物の製剤への加工を容易にし、薬学的に使用することができる賦形剤および助剤を含む1種または複数の薬学的に許容できる担体を使用して、従来の方法で製剤化することができる。適切な製剤は、選択する投与経路に依存する。薬学的に許容できる添加剤および担体は、一般に当業者に既知であり、このように本発明に含まれる。このような賦形剤および担体は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」Mack Pub.Co.、New Jersey(1991)に記載されている。本発明の製剤は、短時間作用型、速放出型、長時間作用型、および持続放出型になるように設計することができる。したがって、医薬製剤はまた、制御放出または緩放出用に製剤化することができる。
【0072】
本発明での使用に適する医薬組成物には、有効成分が意図される目的、すなわち、障害または疾患の制御または治療を達成するのに十分な量で含有されている組成物が含まれる。より詳細には、治療上有効な量は、疾患の症状/徴候の予防、軽減、もしくは改善、または治療対象の延命に有効な化合物または単離された形態での化合物の量を意味する。
【0073】
医薬組成物およびその単位剤形における本発明の化合物または単離された形態での化合物である有効成分の量は、投与の方法、特定の化合物または単離された形態での化合物の効能、および所望の濃度に応じて広く変更または調整することができる。治療上有効な量の決定は、当業者の能力の範囲内で十分に行うことができる。通常、有効成分の量は、組成物の0.01重量%~99重量%の範囲である。
【0074】
通常、有効成分の治療上有効な投与量は、約0.01~約100mg/kg体重/日、好ましくは約0.1~約10mg/kg体重/日、より好ましくは約0.3~3mg/kg体重/日、さらにより好ましくは約0.3~1.5mg/kg体重/日の範囲である。投与量は、各対象の必要量および治療している障害または疾患の重症度に応じて異なる可能性があることを理解されたい。
【0075】
所望の用量は、好都合には、1回用量、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば、1日当たり2、3、4回、またはそれ以上の副用量(sub-dose)として提供することができる。副用量自体をさらに、例えば、注入器からの複数回吸入または眼に複数回滴下することによってなど、ばらばらに間隔を置いた何回かの投与に分けることができる。
【0076】
また、投与する初期投与量は、所望の血漿濃度を速やかに達成させるために、上記の上限レベルを超えて増加させてもよいことを理解されたい。一方、初期投与量は、最適より少なくてもよく、1日投与量は、特定の状況に応じて治療中に次第に増加させてもよい。所望により、また、1日量を複数回の投与量、例えば1日当たり2~4回に分けることもできる。
【0077】
本発明の化合物および単離された形態での化合物は、薬学的に許容できる形態で単独で、または哺乳動物の免疫系を調節する1種もしくは複数種の別の薬剤または抗炎症剤と組み合わせて投与することができる。これらの薬剤として、限定するものではないが、5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)拮抗薬;LTB4、LTC4、LTD4、LTE4、CysLT1、またはCysLT2の拮抗薬などのロイコトリエン拮抗薬(LTRA)、例えば、モンテルカストまたはザフィルルカスト;ヒスタミン1型受容体拮抗薬またはヒスタミン2型受容体拮抗薬などのヒスタミン受容体拮抗薬、例えば、ロラチジン、フェキソフェナジン、デスロラチジン、レボセチリジン、メタピリレン、またはセチリジン;α1-アドレナリン受容体作動薬またはα2-アドレナリン受容体作動薬、例えば、フェニレフリン、メトキサミン、オキシメタゾリン、またはメチルノルエフリン(methylnorephrine);ムスカリンM3受容体拮抗薬、例えば、チオトロピウムまたはイプラトロピウム;二重ムスカリンM3受容体拮抗薬/β2作動薬;PDE3阻害薬、PDE4阻害薬、またはPDE5阻害薬などのPDE阻害薬、例えば、テオフィリン、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル、イブジラスト、シロミラスト、またはロフルミラスト;クロモグリク酸ナトリウムまたはネドクロミルナトリウム;非選択性阻害薬(例えば、アスピリンもしくはイブプロフェン)または選択的阻害薬(例えば、セレコキシブもしくはバルデコキシブ)などのシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬;副腎皮質ステロイド、例えば、フルチカゾン、モメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ブデソニド、シクレソニド、またはベクラメタゾン(beclamethasone);抗炎症性モノクローナル抗体、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、タネズマブ、ラニビズマブ、ベバシズマブ、またはメポリズマブ;β2作動薬、例えば、サルメテロール、アルブテロール、サルブタモール、フェノテロール、またはホルモテロール、特に、長時間作用性β2作動薬;インテグリン拮抗薬、例えば、ナタリズマブ;VLA-4拮抗薬などの接着分子阻害薬;キニンB1またはB2受容体拮抗薬;IgE経路の阻害薬(例えば、オマリズマブ)またはシクロスポリンなどの免疫抑制剤;MMP-9またはMMP-12の阻害薬などのマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害薬;タキキニンNK1、NK2、またはNK3受容体拮抗薬;エラスターゼ、キマーゼ、またはカテオプシン(catheopsin)Gの阻害薬などのプロテアーゼ阻害薬;アデノシンA2a受容体作動薬;アデノシンA2b受容体拮抗薬;ウロキナーゼ阻害薬;ドーパミン受容体作動薬(例えば、ロピニロール)、特に、ドーパミンD2受容体作動薬(例えばブロモクリプチン);IKK阻害薬などのNFκB経路のモジュレーター;JAKキナーゼ、sykキナーゼ、p38キナーゼ、SPHK-1キナーゼ、Rhoキナーゼ、EGF-R、またはMK-2の阻害薬などのサイトカインシグナル伝達経路のさらなるモジュレーター;粘液溶解薬、粘液作動薬、または鎮咳薬;抗生剤;抗ウイルス剤;ワクチン;ケモカイン;上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)遮断薬または上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)阻害薬;P2Y2作動薬などのヌクレオチド受容体作動薬;トロンボキサン阻害薬;ナイアシン;5-リポキシゲナーゼ(5-LO)阻害薬、例えば、ジロートン;VLAM、ICAM、またはELAMなどの接着因子;CRTH2受容体(DP2)拮抗薬;プロスタグランジンD2受容体(DP1)拮抗薬;造血性プロスタグランジンD2シンターゼ(HPGDS)阻害薬;インターフェロン-β;可溶性ヒトTNF受容体、例えば、エタネルセプト;HDAC阻害薬;ホスホイノシトチド(phosphoinositotide)3-キナーゼガンマ(PI3Kγ)阻害薬;ホスホイノシチド3-キナーゼデルタ(PI3Kδ)阻害薬;CXCR-1またはCXCR-2受容体拮抗薬;IRAK-4阻害薬;およびTLR-4またはTLR-9阻害薬を挙げることができ、これには具体的に名前を挙げた化合物の薬学的に許容できる塩が含まれる。薬剤は別の活性剤と一緒に投与してよく、その場合、第2の活性剤は経口または局所的に投与してよい。
【0078】
式I、IA、もしくはIBの化合物もしくは単離された形態での化合物または薬学的に許容できるその塩との併用療法で使用する適切な特異的薬剤は、スルファサラジン、メサラジン、プレドニゾン、アザチオプリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベリムマブ、ベセルトリズマブ(becertolizumab)、ナタリズマブ、ベドリズマブ、ヒドロコルチゾン、ブデソニド、シクロスポリン、タクロリムス、フェキソフェナジン、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、ウルソデオキシコール酸、オベチコール酸、抗ヒスタミン剤、リファンピン、プレドニゾン、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、ヒドロキシクロロキン、モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム、タクロリムス、レフルノミド、クロロキンおよびキナクリン、サリドマイド、リツキサン、NSAID、ソルメドロール、デポメドロールおよびデキサメタゾンである。
【0079】
化学合成
以下のスキームおよび書面による説明は、本発明の化合物の調製に関する一般的な詳細を提供する。
【0080】
【化7】
【0081】
実施例1および実施例2の両方に関係する合成経路をスキーム1に示す。第一級アミン(J.Med.Chem.2018、61(3)、1130~1152)を、トリエチルアミンを含有するジクロロメタン中で2-オキソ-1-プロパンスルホニルクロリド(クロロアセトンから2工程で調製)で処理する。次いで、得られたスルホンアミドをメタノール中で水素化ホウ素ナトリウムで処理して、ケトンを還元し、第二級アルコールの異性体混合物を得る。次いで、ピロロピリミジン環からトシル保護を除去する。次いで、記載の条件下で、第二級アルコールをSFCにより分離して、化合物IAに相当する実施例1で形成した化合物(ピーク1)、および実施例2で形成した化合物(ピーク2)を得る。
【0082】
実施例1の代替調製をスキーム2に示す。
【0083】
【化8】
【0084】
tert-ブチルジメチルシリルクロリドを含む、溶媒としてのジメチルホルムアミド、および塩基としてのピリジンを使用して、(S)-1-クロロ-2-プロパノールをシリルエーテルとして保護する。第一級塩化物をチオ酢酸カリウムで置き換えて、チオエステルを得る。チオエステルを塩素ガスで酸化して、塩化スルホニルを得る。この反応条件下で、シリル保護基を付随して除去することができる。cis-N-メチル-N-{7-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}シクロブタン-1,3-ジアミンを塩化スルホニルと反応させて、スルホンアミドを得る。次いで、水とテトラヒドロフランとの混合物中で水酸化リチウムを使用して、ピロロピリミジンからトシル保護基を除去して、SFC精製後に化合物IA(実施例1)を得る。
【0085】
【化9】
【0086】
tert-ブチルジメチルシリルクロリドを含む、溶媒としてのジメチルホルムアミド、および塩基としてのピリジンを使用して、(R)-1-クロロ-2-プロパノールをシリルエーテルとして保護する。第一級塩化物をチオ酢酸カリウムで置き換えて、チオエステルを得る。チオエステルを塩素ガスで酸化して、塩化スルホニルを得る。シリル保護基のいくらかの損失が観察される。cis-N-メチル-N-{7-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}シクロブタン-1,3-ジアミンを塩化スルホニルと反応させて、スルホンアミドを得る。シリル保護基をトリフルオロ酢酸で切断して、第二級アルコールを得る。次いで、水とテトラヒドロフランとの混合物中で水酸化リチウムを使用して、ピロロピリミジンからトシル保護基を除去して、SFC精製後に実施例2の化合物を得る。
【0087】
実施例5に記載するように、化合物IBの調製をスキーム4に示す。cis-N-メチル-N-{7-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル}シクロブタン-1,3-ジアミンをメチル3-(クロロスルホニル)プロパノエートと反応させて、スルホンアミドを得る。スルホンアミドを水素化アルミニウムリチウムで還元して、3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(IB)を得る。
【0088】
【化10】
【0089】
実施例6に記載するように、化合物IBの代替調製をスキーム5に示す。cis-N-メチル-N-{7-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-7H-ピロロ[2,3-d]-ピリミジン-4-イル}シクロブタン-1,3-ジアミンジヒドロブロミドを、トリエチルアミンおよびエチル3-(クロロスルホニル)プロパノエートなどの塩基で処理して、エチル3-(N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)スルファモイル)プロパノエートを得る。後者のスルファモイルプロパノエートを水素化アルミニウムリチウムで還元し、後処理をして、粗生成物の3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドを得、これをさらに精製することなく使用する。後者のスルホンアミドをLiOHなどの塩基で処理して、3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(IB)を得る。
【0090】
【化11】
【0091】
本発明の化合物の合成を実行する際、当業者は、反応の進行を監視し、反応を継続すべきか、または所望の生成物を得るための後処理の準備ができているかを決定するために、後処理の前に反応混合物を試料採取し、アッセイする必要性を認識するであろう。反応混合物をアッセイする一般の方法には、薄層クロマトグラフィ(TLC)、液体クロマトグラフィ/質量分析(LCMS)、および核磁気共鳴(NMR)がある。
【0092】
当業者はまた、本発明の化合物および単離された形態での化合物が、ジアステレオ異性体または幾何異性体(例えば、シクロアルカン環上のシスおよびトランス置換)の混合物として調製され得ることを認識するであろう。これらの異性体は、シリカゲルによる順相クロマトグラフィ、逆相分取高圧液体クロマトグラフィ、または超臨界流体クロマトグラフィなどの標準的なクロマトグラフィ技術によって分離することができる。当業者はまた、本発明のいくつかの化合物がキラルであり、したがって、鏡像異性体のラセミまたはスケールミック混合物として調製することができることを認識するであろう。鏡像異性体の分離には、いくつかの方法が利用可能であり、当業者に周知である。鏡像異性体を分離するための好ましい慣例的な方法は、キラル固定相を用いる超臨界流体クロマトグラフィである。
【実施例0093】
特に明記しない限り、反応は窒素雰囲気下で行った。シリカゲルによるクロマトグラフィは、250~400メッシュのシリカゲルを使用し、加圧窒素(約10~15psi)を使用して溶媒をカラムに通して行った(「フラッシュクロマトグラフィ」)。表示がある場合、溶液および反応混合物を真空下でロータリーエバポレーションにより濃縮した。
【0094】
調製および実施例
調製1. 2-オキソプロパン-1-スルホン酸、ナトリウム塩
【0095】
【化12】
クロロアセトン(9.25g、100mmol)と亜硫酸ナトリウム(14.5g、115mmol)との混合物を含む水(100mL)を24時間撹拌した。混合物を濃縮して乾燥させ、得られた固体をメタノール(300mL)に懸濁させた。混合物を3分間超音波処理し、次いで、ろ過した。ケーキをメタノールで洗浄し、ろ液を濃縮して、表題化合物(15.5g)を得、これをさらに精製することなく直接使用した。
【0096】
調製2. 2-オキソプロパン-1-スルホニルクロリド
【0097】
【化13】
2-オキソプロパン-1-スルホン酸ナトリウム塩(15.5g、97mmol)を含む乾燥トルエン(40mL)の撹拌懸濁液にオキシ塩化リン(40mL)を添加した。混合物を3時間還流し、次いで、加熱をやめ、20℃に冷却した。混合物を減圧下で濃縮し、残留物をジクロロメタン(100mL)で処理した。混合物をろ過し、ケーキをジクロロメタン(20mL)で洗浄した。ろ液を濃縮して、表題化合物(11.8g)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ 4.76 - 4.53 (m, 2H), 2.49 (s, 3H).
【0098】
調製3. cis-N-(3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)-2-オキソプロパン-1-スルホンアミド
【0099】
【化14】
cis-N-メチル-N-(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)シクロブタン-1,3-ジアミン(2.4g、5.3mmol)を含むジクロロメタン(45mL)の溶液にトリエチルアミン(2.68g、26.5mmol)を添加した。2-オキソプロパン-1-スルホニルクロリド(1.24g、6.27mmol)を含むジクロロメタン(5mL)の溶液を0℃で添加し、混合物を20℃に温め、3時間撹拌した。混合物を飽和塩化アンモニウム(30mL)でクエンチした。層を分離し、水層をジクロロメタン(2×10mL)で2回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物を(石油エーテル:酢酸エチル、1:2)を使用するラッシュクロマトグラフィにより精製して、表題化合物(801mg)を得た。LC/MS[M+H]=491.9。
【0100】
調製4. 2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド
【0101】
【化15】
N-(3-{メチル[7-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]アミノ}シクロブチル)-2-オキソプロパン-1-スルホンアミド(0.801g、1.62mmol)を含むメタノール(10mL)の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(123mg、2.26mmol)を含む10%水酸化ナトリウム(1.6mL)およびメタノール(1.6mL)を0℃で添加した。混合物を30分間撹拌し、次いで、冷却浴から取り出し、20℃で30分間撹拌した。メタノールを減圧下で除去した。残留物を酢酸エチル(15mL)に溶解し、ブライン(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物を、0~80%の酢酸エチルを含む石油エーテルを使用するフラッシュクロマトグラフィにより精製して、表題化合物(0.76g)を得た。LC/MS[M+H]=494.2。
【0102】
調製5. 2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド
【0103】
【化16】
2-ヒドロキシ-N-(cis-3-{メチル[7-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]アミノ}シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(1.13g、2.3mmol)を含むテトラヒドロフラン(10mL)および水(10mL)の混合物に、水酸化リチウム一水和物(273mg、11.4mmol)を20℃で24時間にわたって添加した。混合物を濃縮し、0~10%のメタノールを含むジクロロメタンを使用するフラッシュクロマトグラフィにより精製した。次いで、混合物を水/アセトニトリルに溶解した、次いで凍結乾燥した。残留物を分取薄層クロマトグラフィ(ジクロロメタン:メタノール、10:1)により精製した。残留物を水/アセトニトリルに溶解し、凍結乾燥した。次いで、残留物を超臨界流体クロマトグラフィ(Chiralpak AD-H(商標)250×30mm I.D.、5μ移動相:45%メタノール(0.1%NHOH)を含むCO、流速50mL/分、温度35℃、RT3.53および4.07分)により精製して、表題化合物(552mg、71%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.64 (br s, 1H), 8.11 (s, 1H), 7.44 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.16 -
7.15 (m, 1H), 6.65 - 6.64 (m, 1H), 5.02 - 4.81 (m, 2H), 4.15 - 3.94 (m, 1H),
3.67 - 3.54 (m, 1H), 3.26 (s, 3H), 3.14 - 2.95 (m, 2H), 2.71 - 2.56 (m, 2H),
2.31 - 2.19 (m, 2H), 1.22 (d, J = 6.0 Hz, 3H), LC/MS [M+H] = 339.9.
【0104】
(実施例1)
(S)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(IA)
【0105】
【化17】
2-ヒドロキシ-N-{3-[メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ]シクロブチル}プロパン-1-スルホンアミド(532mg、1.57mmol)をSFC(Chiralpak AD-H(商標)250×30mm I.D.、5μ移動相:45%エタノール(0.1%NHOH)を含むCO、流速50mL/分、温度35℃、RT3.44分)により精製して、表題化合物(223.7mg、42%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ = 11.69 - 11.57 (m, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.43 (d, J = 9.0 Hz, 1H),
7.16 - 7.12 (m, 1H), 6.67 - 6.61 (m, 1H), 4.92 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.90 - 4.84
(m, 1H), 4.11 - 4.01 (m, 1H), 3.63 - 3.53 (m, 1H), 3.27 - 3.23 (m, 3H), 3.11 -
2.96 (m, 2H), 2.63 - 2.53 (m, 2H), 2.29 - 2.20 (m, 2H), 1.21 (d, J = 6.0 Hz,
3H), LC/MS [M+H] = 340.2.結晶性材料は酢酸エチルから調製することができる。
【0106】
単結晶X線構造
データ収集は、Bruker D8 Quest回折計を用いて室温で行った。データ収集は、オメガおよびファイスキャンからなる。三斜晶系空間群P1においてSHELXソフトウェアスイートを使用する固有位相決定法によって、構造を解明した。続いて、完全行列最小二乗法によって構造を精密化した。すべての非水素原子を見つけ、異方性変位パラメータを使用して精密化した。
【0107】
フーリエ示差マップから窒素および酸素上に位置する水素原子を見つけ、距離を制限することで精密化した。残りの水素原子を計算位置に配置し、それらのキャリア原子上に載せた。最終的な精密化は、すべての水素原子に対する等方性変位パラメータを含んだ。尤度法(Hooft 2008)を使用する絶対構造の解析を、PLATON(Spek 2003)を使用して実行した。提示した試料がエナンチオピュアであると仮定すると、結果は、絶対構造が正確に割り当てられたことを示す。この方法から、構造が正確である確率が100%であることが計算される。Hooftパラメータは(15)のEsdで0.104として報告され、Parsonパラメータは(16)のEsdで0.097として報告されている。非対称単位あたりの2つの同一分子のC13_C27での絶対立体配置は、(-S)_(-S)として確認された。最終R指数は5.9%であった。最終的な示差フーリエから、電子密度の損失または配置の間違いがなかったことが解明された。適正な結晶、データ収集、および精密化を表1にまとめる。原子座標を表2に列挙する。
【0108】
ソフトウェアおよび参考文献
SHELXTL、バージョン5.1、Bruker AXS、1997。PLATON、A.L.Spek、J.Appl.Cryst.2003、36、7~13。MERCURY、C.F.Macrae、P.R.Edington、P.McCabe、E.Pidcock、G.P.Shields、R.Taylor、M.Towler、およびJ.van de Streek、J.Appl.Cryst.39、453~457、2006。OLEX2、Dolomanov,O.V.、Bourhis,L.J.、Gildea,R.J.、Howard,J.A.K.、Puschmann,H.、(2009)、J.Appl.Cryst.、42、339~341。R.W.W.Hooftら、J.Appl.Cryst.(2008)、41、96~103。H.D.Flack、Acta Cryst.1983、A39、867~881。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2-1】
【0111】
【表2-2】
【0112】
(実施例2)
(R)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(IC)
【0113】
【化18】
2-ヒドロキシ-N-{3-[メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ]シクロブチル}プロパン-1-スルホンアミド(532mg、1.57mmol)をSFC(Chiralpak AD-H(商標)250×30mm I.D.、5μ移動相:45%エタノール(0.1%NHOH)を含むCO、流速50mL/分、温度35℃、RT3.88分)により精製して、表題化合物(222.7mg、42%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ = 11.69 - 11.56 (m, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.43 (d, J = 9.0 Hz, 1H),
7.18 - 7.11 (m, 1H), 6.66 - 6.60 (m, 1H), 4.96 - 4.84 (m, 2H), 4.12 - 3.99 (m,
1H), 3.66 - 3.54 (m, 1H), 3.24 (s, 3H), 3.12 - 2.94 (m, 2H), 2.64 - 2.56 (m,
2H), 2.30 - 2.18 (m, 2H), 1.20 (d, J = 6.5 Hz, 3H), LC/MS [M+H] = 340.2.結晶性材料は酢酸エチルから調製することができる。
【0114】
単結晶X線構造
データ収集は、Bruker D8 Quest回折計を用いて室温で行った。データ収集は、オメガおよびファイスキャンからなる。このロットでは積層した板様結晶が得られ、収集のために結晶を分け、載置した。三斜晶系クラス空間群P1においてSHELXソフトウェアスイートを使用する固有位相決定法によって、構造を解明した。続いて、完全行列最小二乗法によって構造を精密化した。すべての非水素原子を見つけ、異方性変位パラメータを使用して精密化した。フーリエ示差マップから窒素および酸素上に位置する水素原子を見つけ、距離を制限することで精密化した。残りの水素原子を計算位置に配置し、それらのキャリア原子上に載せた。最終的な精密化は、すべての水素原子に対する等方性変位パラメータを含んだ。尤度法(Hooft 2008)を使用する絶対構造の分析を、PLATON(Spek 2003)を使用して実行した。提示した試料がエナンチオピュアであると仮定すると、結果は、絶対構造が正確に割り当てられたことを示す。この方法から、構造が正確である確率が100.0であることが計算される。Hooftパラメータは(18)のEsdで0.044として報告され、Parsonパラメータは(19)のEsdで00.050として報告されている。非対称単位あたりの2つの同一分子のC13およびC27での絶対立体配置は、(-R)_(-R)として確認された。P-1に対して偽対称。最終R指数は4.5%であった。最終的な示差フーリエから、電子密度の損失または配置の間違いがなかったことが解明された。適正な結晶、データ収集、および精密化を表3にまとめる。原子座標を表4に列挙する。
【0115】
ソフトウェアおよび参考文献
SHELXTL、バージョン5.1、Bruker AXS、1997。PLATON、A.L.Spek、J.Appl.Cryst.2003、36、7~13。MERCURY、C.F.Macrae、P.R.Edington、P.McCabe、E.Pidcock、G.P.Shields、R.Taylor、M.Towler、およびJ.van de Streek、J.Appl.Cryst.39、453~457、2006。OLEX2、Dolomanov,O.V.、Bourhis,L.J.、Gildea,R.J.、Howard,J.A.K.、Puschmann,H.、(2009)、J.Appl.Cryst.、42、339~341。R.W.W.Hooftら、J.Appl.Cryst.(2008)、41、96~103。H.D.Flack、Acta Cryst.1983、A39、867~881。
【0116】
【表3】
【0117】
【表4-1】
【0118】
【表4-2】
【0119】
(実施例3)
(S)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(IA)の代替調製
【0120】
【化19】
工程1. (S)-tert-ブチル((1-クロロプロパン-2-イル)オキシ)ジメチルシラン
(S)-(+)-1-クロロプロパン-2-オール(1.0g、10.6mmol)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)の溶液に、ピリジン(1.0g、12.7mmol)およびtert-ブチルジメチルシリルクロリド(1.91g、12.7mmol)を20℃で添加した。20℃で撹拌した後、反応を水(40mL)で希釈した。得られた混合物をメチルtert-ブチルエーテル(2×40mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、ブライン(50mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させた。溶媒を除去して、表題化合物(2.2g)を得、これをさらに精製することなく使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.96 (m, 1H), 3.42 (dd, J = 10.8, 5.9 Hz, 1H), 3.34 (dd, J = 10.7,
5.9 Hz, 1H), 1.23 (d, J = 6.1 Hz, 3H), 0.89 (s, 9H), 0.08 (d, J = 4.1 Hz, 6H).
【0121】
工程2. (S)-S-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)エタンチオエート
(S)-tert-ブチル((1-クロロプロパン-2-イル)オキシ)ジメチルシラン(2.2g、10.5mmol)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)の溶液に、チオ酢酸カリウム(2.41g、21.1mmol)およびヨウ化カリウム(17.5mg、0.10mmol)を20℃で添加した。反応を80℃に温め、20時間撹拌した。反応を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、混合物をメチルtert-ブチルエーテル(40mL×2)で抽出した。有機抽出物を集め、ブライン(60mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、溶媒を除去して表題化合物(2.40g)を得、これを精製することなく使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.91 (m, 1H), 3.00 - 2.91 (m, 2H), 2.33 (s, 3H), 1.18 (d, J = 6.1
Hz, 3H), 0.89 (s, 9H), 0.07 (d, J = 6.8 Hz, 6H).
【0122】
工程3. (S)-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホニルクロリド
Cl2(g)を、(S)-S-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)エタンチオエート(0.5g、2.01mmol)を含むジクロロメタン(20mL)および水(10mL)の溶液に0℃で5分間通過させると、溶液が黄色になった。Cl2(g)の流れを止め、反応を0℃で0.5時間撹拌した。次いで、N2(g)を反応に通気させて、無色溶液を得た。TLCが、出発材料の減失および新しいスポットの形成を示した。水(20mL)を反応混合物に添加し、次いで、これをジクロロメタン(40mL)で抽出した。有機抽出物を10%NaHCO(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させた。溶媒を除去して、粗表題化合物(0.6g)を無色の油状物として得、これを精製することなく次の工程で使用した。
【0123】
工程4. (S)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド
40mL容のバイアルに、cis-N-メチル-N-(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)シクロブタン-1,3-ジアミン(200mg、0.375mmol)、NaCO(199mg、1.88mmol)、テトラヒドロフラン(7mL)、および水(2.5mL)を添加した。2分後、実施例1の工程3(292mg)を含むテトラヒドロフラン(2mL)の溶液を添加した。得られた懸濁液を50℃に加熱し、18時間撹拌した。反応を室温に冷却し、水(20mL)を添加した。得られた混合物を酢酸エチル(20mL×2)で抽出した。有機抽出物を集め、乾燥(NaSO)させ、溶媒を除去して、粗材料を得、それをクロマトグラフィ(シリカ、EtOAc/石油エーテル、20~100%)で精製して、表題化合物(30mg)を得た。LC/MS m/z (M+H)+=494.3。
【0124】
工程5. (S)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド
(S)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(45mg、0.091mmol)を含むテトラヒドロフラン:水(5mL:1mL)の溶液に、水酸化リチウム一水和物(23.0mg、0.547mmol)を15℃で添加した。次いで、反応を60℃に温め、16時間撹拌した。水(10mL)を反応に添加し、得られた混合物を酢酸エチル(15mL×4)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥(NaSO)させ、溶媒を除去して、粗材料(30mg)を得、次いで、これをRP-HPLC(Phenomenex Gemini C-18(商標)、250×50mm、10μ、HO/CHCN+0.05%NHOH、10分かけて15~35%)で精製して、表題化合物(16mg)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 11.63 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.14 (d, J = 3.6 Hz,
1H), 6.62 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.89 (ddd, J = 17.2, 7.9, 5.9 Hz, 2H), 4.04 (m,
1H), 3.58 (m, 1H), 3.24 (s, 3H), 3.14 - 2.86 (m, 2H), 2.62 - 2.51 (m, 2H), 2.23
(m, 2H), 1.20 (d, J = 6.2 Hz, 3H);LC/MS m/z (M+H)+ = 340.1.;Chiral SFC(商標)(Chiralpak AD-3(商標)、150×4.6mm、3μ、40%MeOH(0.05%DEA)を含むCO、無勾配で10分、2.5mL/分、T=35℃)R=5.54分、99%ee。
【0125】
(実施例4)
(R)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(IC)の代替調製
【0126】
【化20】
工程1. (R)-tert-ブチル((1-クロロプロパン-2-イル)オキシ)ジメチルシラン
(R)-(-)-1-クロロプロパン-2-オール(2.0g、21.2mmol、CAS:19141-39-0)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(40mL)の溶液に、ピリジン(2.0g、25.4mmol)およびtert-ブチルジメチルシリルクロリド(3.83g、25.4mmol)を20℃で添加した。20時間撹拌した後、反応を水(60mL)で希釈し、得られた混合物をメチルtert-ブチルエーテル(2×80mL)で抽出した。有機抽出物を集め、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させた。溶媒を除去して、表題化合物(4.60g)を得、これをさらに精製することなく使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.96 (m, 1H), 3.42 (dd, J = 10.8, 5.9 Hz, 1H), 3.34 (dd, J = 10.7,
5.9 Hz, 1H), 1.23 (d, J = 6.1 Hz, 3H), 0.89 (s, 9H), 0.08 (d, J = 4.1 Hz, 6H).
【0127】
工程2. (R)-S-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)エタンチオエート
(R)-tert-ブチル((1-クロロプロパン-2-イル)オキシ)ジメチルシラン(4.60g、22.03mmol)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(40mL)の溶液に、チオ酢酸カリウム(5.03g、44.1mmol)およびヨウ化カリウム(36.6mg、0.22mmol)を添加した。80℃で20時間後、反応を室温に冷却し、水(100mL)で希釈し、得られた混合物をメチルtert-ブチルエーテル(100mL×2)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥(NaSO)させ、溶媒を除去して、表題化合物(5.0g)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.90 (m, 1H), 3.00 - 2.91 (m, 2H), 2.33 (s, 3H), 1.18 (d, J = 6.1
Hz, 3H), 0.88 (s, 9H), 0.06 (d, J = 6.7 Hz, 6H).
【0128】
工程3. (R)-2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロパン-1-スルホニルクロリド
Cl2(g)を、(R)-S-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)エタンチオエート(0.5g、2.01mmol)を含むジクロロメタン(20mL)および水(10.0mL)の溶液に0℃で5分間通過させると、溶液が黄色になった。Cl2(g)の流れを止め、反応を0℃で0.5時間撹拌した。次いで、Nを反応に通気させて、無色の溶液を得た。TLCが、出発材料の減失および新しいスポットの形成を示した。水(20mL)を反応混合物に添加し、次いで、これをジクロロメタン(40mL)で抽出した。有機抽出物を10%NaHCO(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させた。溶媒を除去して、表題化合物(0.4g)を無色の油状物として得、これを精製することなく次の工程で使用した。
【0129】
工程4. (R)-2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-N-((1S,3S)-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド
40mLのバイアルに、cis-N-メチル-N-(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)シクロブタン-1,3-ジアミン(150mg、0.281mmol)、NaCO(149mg、1.41mmol)、テトラヒドロフラン(5mL)、および水(2.0mL)を添加した。2分後、実施例2の工程3(292mg、0.75mmol)を含むTHF(2mL)の溶液を添加した。得られた懸濁液を50℃に加熱し、20時間撹拌した。反応を室温に冷却し、水(20mL)を添加した。得られた混合物をEtOAc(20mL×2)で抽出した。有機抽出物を集め、乾燥(NaSO)させ、溶媒を除去して、粗材料を得、これをクロマトグラフィ(シリカ、EtOAc/石油エーテル、20~100%)で精製して、表題化合物(60mg)およびTBS基を欠いた材料(20mg)を得た。LC/MS m/z(M+H)+=608.3(ピーク1);LC/MS
m/z(M+H)+=494.3(ピーク2)。
【0130】
工程5. (R)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド
(R)-2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(60mg、0.099mmol)を含むジクロロメタン(5mL)の溶液に、トリフルオロ酢酸(1.5mL)を0℃で添加した。15℃で16時間した後、溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル(15mL)に溶解した。混合物を飽和NaHCO(水溶液)で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、溶媒を除去して、表題化合物(50mg)を得、これを精製することなく次の工程で使用した。LC/MS m/z(M+H)+=494.3。
【0131】
工程6. (R)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド
(R)-2-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(50mg、0.10mmol)を含むテトラヒドロフラン:水(5mL:1mL)の溶液に、水酸化リチウム一水和物(42.5mg、1.01mmol)を15℃で添加した。65℃で16時間後、水(10mL)を添加し、混合物を酢酸エチル(4×10mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥(NaSO)させ、溶媒を除去して、粗材料を得、これを分取HPLC(Phenomenex Gemini C-18(商標)、250×50mm、10μ、HO/CHCN+0.05%NHOH、10分かけて15~35%)で精製して、表題化合物(18mg)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 11.63 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.43 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.15 (dd, J
= 3.6, 2.4 Hz, 1H), 6.64 (dd, J = 3.6, 1.9 Hz, 1H), 4.97 - 4.83 (m, 2H), 4.12 -
3.98 (m, 1H), 3.59 (m, 1H), 3.25 (s, 3H), 3.13 - 2.92 (m, 2H), 2.58 (m, 2H),
2.24 (m, 2H), 1.21 (d, J = 6.2 Hz, 3H).; LC/MS m/z (M+H)+ = 340.0.;Chiral SFC(Chiralpak AD-3(商標)、150×4.6mm、3μ、40%MeOH(0.05%DEA)を含むCO、無勾配で10分、2.5mL/分、T=35℃)R=6.75分、99%ee。
【0132】
(実施例5)
3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(IB)
cis-N-メチル-N-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イルシクロブタン-1,3-ジアミン(190mg)および炭酸カリウム(240mg)を含む1:1のテトラヒドロフラン:水(各5mL)溶媒混合物の撹拌混合物に、メチル3-(クロロスルホニル)プロパノエート(250mg)を10℃で添加した。混合物を室温に温め、10分間撹拌した。混合物を真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(MeOH/DCM 1:20)で精製して、メチル3-(N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)スルファモイル)プロパノエート(140mg)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4): 8.13 (s, 1H), 7.13 (d, 1H), 6.70 (d, 1H), 4.89 (m,
1H), 3.73 (s, 3H), 3.69 (m, 1H), 3.4 (m, 5H), 2.82 (m, 4H), 2.34 (m, 2H). C15H21N5O4SのMS m/z: 390.2 (M+Na)+.HPLC:Ultimate XB-C18、3pm、3.0*50mmカラム、保持時間:2.13分、移動相:0%アセトニトリル(0.1%TFA)を含む水~60%アセトニトリル(0.1%TFA)を含む水、波長:220nm。
【0133】
メチル3-(N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)スルファモイル)プロパノエート(120mg)を含む乾燥テトラヒドロフラン(5mL)の撹拌溶液に、水素化アルミニウムリチウム(50mg)を窒素下0℃で添加した。反応混合物を室温に温め、0.5時間撹拌した。混合物を、メタノールを注意深く添加してクエンチし、カラムクロマトグラフィ(MeOH/DCM、1:10)で直接精製して、3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(50mg)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4): 8.12
(s, 1H), 7.13 (d, 1H), 6.70 (d, 1H), 4.89 (m, 1H), 3.73 (m, 3H), 3.36 (s, 3H),
3.15 (m, 2H), 2.81 (m, 2H), 2.35 (m, 2H), 2.03 (m, 2H); C14H21N5O3SのMS m/z: 340.2 (M+H)+;HPLC:Ultimate XB-C18、3pm、3.0*50mmカラム、保持時間:1.85分、移動相:0%アセトニトリル(0.1%TFA)を含む水~60%アセトニトリル(0.1%TFA)を含む水、波長:220nm。
【0134】
(実施例6)
3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドの代替調製
cis-N-メチル-N-{7-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-7H-ピロロ[2,3-d]-ピリミジン-4-イル}シクロブタン-1,3-ジアミンジヒドロブロミド(988mg)を含むジクロロメタン50mLの混合物に、トリエチルアミン(562mg)およびエチル3-(クロロスルホニル)プロパノエート(743mg)を0℃で添加した。反応混合物を25℃に温め、2時間撹拌した。反応混合物を真空下で蒸発させ、シリカゲルクロマトグラフィ(Biotage、20gのシリコンカラム、石油エーテル:酢酸エチル1:0~0:1、酢酸エチル:メタノール20:1)で精製して、エチル3-(N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)スルファモイル)プロパノエートを得た。C2329のLCMS m/z:535.9(M+H)+。
【0135】
エチル3-(N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)スルファモイル)プロパノエート(700mg)を含むテトラヒドロフラン50mLの溶液に、水素化アルミニウムリチウム(74.4mg)を0℃で添加した。反応混合物を15時間25℃に温めた。反応混合物を水1mLで注意深くクエンチし、次いで、ろ過した。ろ液を真空下で蒸発させて、粗生成物の3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドを得、これをさらに精製することなく使用した。C2127のLCMS m/z:494.0(M+H)+。
【0136】
3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7-トシル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミド(400mg)を含むエタノール20mLおよび水10mLの溶液に、LiOH(97mg)を25℃で添加した。反応混合物を90℃に加熱し、2時間撹拌した。反応混合物を冷却し、真空下で蒸発させて、粗生成物を得、これを分取HPLCで精製して、181mgの3-ヒドロキシ-N-(cis-3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドを白色固体として得た。HPLC条件:カラム:DuraShell(商標)150*25mm*5μm、水(0.05%水酸化アンモニウムv/v)-アセトニトリル、1~41%B、勾配10分、維持時間1分100%B、流速25mL/分;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):
11.6 (s, 1H), 8.11 (s, 1H), 7.53 (s, 1H), 7.15 (d, 1H), 6.65 (d, 1H), 4.89 (m,
1H), 4.68 (s, 1H), 3.58 (m, 1H), 3.49 (m, 2H), 3.26 (s, 3H), 3.0 (m, 2H), 2.58
(m, 2H), 2.24 (m, 2H), 1.81 (m, 2H).
【0137】
生物学的評価
1mMのATPにおけるJAK Caliper酵素アッセイ
被験物を、30mMのストック濃度になるようにジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。11点半対数希釈シリーズをDMSO中で作製し、最大濃度を600μMとした。試験化合物プレートには、100%阻害を定義するために既知の阻害薬を入れた陽性対照ウェル、および阻害なしを定義するためにDMSOを入れた陰性対照ウェルも含めた。化合物プレートを、1~60倍に希釈して、最大最終アッセイ化合物濃度を10μM、DMSO濃度を2%にした。被験物およびアッセイ対照を、384ウェルプレートに添加した。反応混合物は、20mMのHEPES、pH7.4、10mMの塩化マグネシウム、0.01%のウシ血清アルブミン(BSA)、0.0005%のTween20、1mMのATP、および1μMのペプチド基質を含有していた。JAK1およびTYK2アッセイは、1μMのIRStideペプチド(5FAM-KKSRGDYMTMQID)を含有しており、JAK2およびJAK3アッセイは、1μMのJAKtideペプチド(FITC-KGGEEEEYFELVKK)を含有していた。アッセイを、20nMのJAK1、1nMのJAK2、1nMのJAK3、または1nMのTYK2酵素を添加することによって開始し、JAK1では3時間、JAK2では60分間、JAK3では75分間、またはTYK2では135分間、室温でインキュベートした。酵素濃度およびインキュベーション時間を、新たな酵素調製物ごとに最適化し、確実に20%~30%リン酸化するように経時的にわずかに変更した。10mMのEDTA、0.1%のコーティング試薬、および100mMのHEPES、pH=7.4の最終濃度物でアッセイを停止させた。アッセイプレートを、Caliper Life Science Lab Chip 3000(LC3000)機器上に置き、各ウェルから、適切な分離条件を使用して試料採取して、非リン酸化およびリン酸化ペプチドを測定した。データを表5に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
細胞効能アッセイ:ヒト全血、ヒトケラチノサイト、およびIFNγプライム化THP-1細胞におけるサイトカイン誘導性STATリン酸化
Shulman施設内審査委員会により承認されたPfizerプロトコル(プロトコル番号GOHW RDP-01)に従って、ヒト全血を、健常ドナーから静脈穿刺を介してナトリウムヘパリンが入っているバキュテイナ採血管に収集した。血液を使用前に37℃に温めた。ヒト全血を、96ウェル深型ウェルV底プレート中にアリコート(90μL/ウェル)し、最大60μMの様々な濃度(0.2%DMSO最終)の化合物(5μL/ウェル)を用いて37℃で60分間処理した。これに続いて、IFNα(5000U/mL)、IFNγ(100ng/mL)、IL-6(50ng/mL)、IL-10(30ng/mL)、IL-12(30ng/mL)、IL-15(30ng/mL)、IL-21(50ng/mL)、IL-23(25ng/mL)、IL-27(1000ng/mL)、EPO(2U/mL)、TSLP(50ng/mL)またはPBSでチャレンジし、15分間インキュベートした。サイトカイン刺激の15分前に抗細胞表面抗体を添加し、IL-6処理およびTSLP処理試料には抗CD3-BV421(0.5μL/ウェル)を、IFNγ処理試料には抗CD14-BV421(0.5μL/ウェル)を添加した。試料を温かい1倍溶解/固定緩衝液(700μL/ウェル)で処理して活性化を終了させ、37℃で20分間インキュベートして、赤血球を溶解させた。プレートを300xgで5分間遠心分離し、上清を吸引し、ウェル当たり800μLの染色緩衝液(0.1%FBSおよび0.01%アジ化ナトリウムを含有するD-PBS)で細胞を洗浄した。洗浄した細胞ペレットをウェル当たり350μLの予め冷やした90%メタノールに再懸濁させ、4℃で30分間インキュベートした。90%メタノールの除去後、細胞を染色緩衝液で1回洗浄した。すべての試料を、ウェル当たり150μLの、1:150希釈の所望の抗リン酸化STAT抗体を含む染色緩衝液に最終的に再懸濁させ、IFNγ処理試料では抗pSTAT1-AF647;IL-6処理試料では抗pSTAT1-AF488および抗pSTAT3-AF647;IFNα、IL-10、IL-21、IL-23、およびIL-27処理試料では抗pSTAT3-AF647;IL-12処理試料では抗pSTAT4-AF647;EPO、IL-15、およびTSLP処理試料では抗pSTAT5-AF-647で行った。
【0140】
ヒト初代ケラチノサイトをサプリメントキットと共にDermaLife(商標)培地で培養して、細胞集団を拡大させた。アッセイには細胞の継代2~5代目を使用した。約80%集密状態で細胞を採取し、温かいDermaLife(商標)培地に懸濁させ、96ウェル深型ウェルV底プレート中にアリコート(90μL/ウェル)にし、37℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞を化合物(0.0003~20μM)で60分間処理し、続いて、IL-4(2ng/mL)またはIL-13(20ng/mL)で37℃で15分間刺激した。IL-22誘導性pSTAT3アッセイでは、ケラチノサイトを24ウェルプレートに播種し、18時間培養した。細胞をDermaLife(商標)基本培地に切り替え、化合物(0.0003~20μM)で60分間処理し、次いで、IL-22(100ng/mL)で30分間刺激した。0.25%トリプシン/EDTA処理によって細胞を剥離した。刺激したケラチノサイトを2%パラホルムアルデヒドで固定し、90%メタノールで透過処理した。固定し透過処理した細胞を、IL-4およびIL-13処理試料ではAlexaFluor647(商標)標識抗pSTAT6抗体(1~150希釈)で、IL-22処理試料ではAlexaFluor647標識抗pSTAT3(1~150希釈)で染色した。
【0141】
THP-1細胞を、10%FBS、50μMの2-メルカプトエタノール、50U/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、および2mMのL-グルタミンを含有するRPMI1640培地で維持した。THP-1細胞をIFNγ(20ng/mL)で18時間処理した。IFNγプライム化THP-1細胞をRPMI1640培地に再懸濁させ、化合物(0.0003~20μM)で60分間処理し、続いて、IL-31(1μg/mL)でさらに10分間刺激した。次いで、2%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、90%メタノールで透過処理した。固定し透過処理した細胞を、AlexaFluor647(商標)標識抗pSTAT3抗体(1~150希釈)で染色した。
【0142】
4℃で一晩インキュベートした後、抗pSTATで染色した試料を96ウェルポリプロピレンU底プレートに移し、HTSプレートローダーを装備したLSR Fortessa(商標)でフローサイトメトリー分析を行った。ヒト全血試料に関して、pSTATヒストグラム解析のために、IFNα、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、IL-23、およびIL-27処理試料ではリンパ球集団を、IFNγ処理試料ではCD14細胞を、IL-6およびTSLP処理試料ではCD3細胞を、EPO処理試料では全事象(全集団)をゲーティングした。IL-4、IL-13、IL-22、およびIL-31アッセイでは、ケラチノサイトおよびTHP-1細胞の全集団をゲーティングした。バックグラウンド蛍光を、非刺激細胞を使用して定義し、約0.5%のゲーティングされた集団を含むようにゲートをピークの裾に置いた。ヒストグラム統計解析は、FACSDivaバージョン8.0を使用して行った。pSTATのレベルを評価する相対蛍光単位は、陽性集団の百分率とその平均蛍光を掛けることによって計算した。阻害曲線および半最大阻害濃度(IC50)値は、Prism(商標)ソフトウェア(バージョン8)またはActivity Baseデータ分析ソフトウェア(ID Business Solutions)を使用して決定した。
【0143】
サイトカイン誘導性STATリン酸化に対する細胞効能
実施例1および3ならびに実施例5および6に従って調製した式IAおよびIBの化合物はそれぞれ、アブロシチニブを摂取するとヒト代謝においてin vivoで形成され、ヒトケラチノサイト、インターフェロンγプライム化THP-1細胞、またはヒト全血におけるIL-4、IL-13、IL-22、IL-31、およびTSLP誘導性のSTATリン酸化に対して、強力なJAK1阻害薬であるアブロシチニブと同様の活性を示す。Gooderham M.J.ら、JAMA Dermatology、155(12)、1371~1379(2019年10月)。特に、アブロシチニブのように、これらの化合物はすべて、JAK1非依存経路を介してシグナルを伝達するサイトカインとは対照的にJAK1依存経路を介してシグナルを伝達するサイトカインに対してより効能があり、そのため、主にJAK1への影響を介して薬理活性に寄与すると考えられる。同様のシグナル伝達経路におけるアブロシチニブならびに式IAおよびIBの化合物の細胞効能の比較を表6に示す。
【0144】
【表6】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する式Iの化合物:
【化1】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素またはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシであり、Rが水素である場合、Rはヒドロキシである)
または薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
以下の構造を有する式IAの化合物:
【化2】
または薬学的に許容できるその塩。
【請求項3】
以下の構造を有する式IBの化合物:
【化3】
または薬学的に許容できるその塩。
【請求項4】
(S)-2-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できるその塩。
【請求項5】
3-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できるその塩。
【請求項6】
単離された形態での、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
炎症、自己免疫疾患、神経炎症、関節炎、リウマチ性関節炎、脊椎関節症、全身性エリトマトーデス、ループス腎炎、骨関節炎、痛風性関節炎、疼痛、発熱、肺サルコイドーシス、ケイ肺症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、血栓症、鬱血性心不全および心臓再灌流障害、心筋症、脳卒中、虚血、再灌流障害、脳浮腫、脳外傷、神経変性、肝疾患、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎炎、網膜炎、網膜症、黄斑変性症、緑内障、糖尿病(1型および2型)、糖尿病性神経障害、ウイルスおよび細菌感染、筋肉痛、内毒素ショック、毒素ショック症候群、骨粗鬆症、多発性硬化症、子宮内膜症、月経痛、腟炎、カンジダ症、癌、線維症、肥満、筋ジストロフィ、多発性筋炎、皮膚筋炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、白斑症、アルツハイマー病、皮膚潮紅、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、日光皮膚炎、ケロイド、肥厚性瘢痕、リウマチ性疾患、じん麻疹、円板状ループス、皮膚ループス、中枢神経ループス、乾癬性関節炎、喘息、アレルギー性喘息、アイカルディ・グティエール症候群およびI型インターフェロン過剰発現の他のメンデル性疾患を含むI型インターフェロノパチー、一次性進行型多発性硬化症、再発寛解型多発性硬化症、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、強皮症、円形脱毛症、瘢痕性脱毛症、痒疹、結節性痒疹、CPUO、苔癬疾患、扁平苔癬、スティーヴンス・ジョンソン症候群、脊椎症、筋炎、血管炎、天疱瘡、狼瘡、大うつ病性障害、アレルギー、ドライアイ症候群、移植片拒絶、癌、敗血症性ショック、心肺機能不全、急性呼吸器疾患、強直性脊椎炎、悪液質、慢性移植片対宿主病、急性移植片対宿主病、セリアックスプルー、特発性血小板減少性血栓性紫斑、血栓性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、シェーグレン症候群、表皮過形成、軟骨炎症、骨分解、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、少関節型若年性関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ、全身型若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎、若年性腸炎性関節炎、若年性ライター症候群、SEA症候群、若年性皮膚筋炎、若年性乾癬性関節炎、若年性強皮症、若年性全身性エリトマトーデス、若年性血管炎、少関節型関節リウマチ、多関節型関節リウマチ、全身型関節リウマチ、腸炎性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、ミオリチス、多発性ミオリチス、皮膚ミオリチス、結節性多発性動脈炎(polyarteritis nodossa)、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、硬化症、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、皮膚炎、スチル病、慢性閉塞性肺疾患、ギラン・バレー疾患、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、乾癬性表皮過形成、尋常性乾癬、滴状乾癬、逆性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、病原性リンパ球の活動に関連または起因する免疫障害、非感染性ぶどう膜炎、ベーチェット病、ならびにフォークト-小柳-原田症候群から選択される疾患または状態を治療または予防のための、請求項7に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記化合物が、単離された形態での、(S)-2-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項8に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記化合物が、単離された形態での、3-ヒドロキシ-N-(3-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロブチル)プロパン-1-スルホンアミドまたは薬学的に許容できる塩である、請求項8に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記疾患または状態が、アトピー性皮膚炎である、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記疾患または状態が、手湿疹である、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記疾患または状態が、皮膚ループスである、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項14】
JAK1阻害薬が適応である障害を治療するための医薬品の製造のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の単離された形態での化合物の使用。