(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010986
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】飲料容器の栓及びこれを用いた飲料容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20240118BHJP
A45F 3/18 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B65D47/34 110
A45F3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112628
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】薦田 弦
【テーマコード(参考)】
2E181
3E084
【Fターム(参考)】
2E181CA01
2E181CD02
2E181CD09
3E084AA02
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084DA01
3E084EA02
3E084EB02
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA08
3E084GB01
3E084HA03
3E084HD01
3E084KA01
3E084KB01
3E084LA15
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC02
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】飲料の投入口に取り付けることができ、圧力調節が容易な飲料容器の栓及びこれを用いた飲料容器を提供する。
【解決手段】飲料容器の栓1は、ポンプ機構を備えている。ポンプ機構を操作するための操作部4は上下方向へ往復運動可能に構成されている。操作部4の上下運動と連動するようにカバー6が揺動可能に連結されている。吐出部12の吐出口12aは起立状態と伏臥状態との間で切替可能に軸支されている。収納状態では、操作部4が栓本体2の内側へ没状態となり、カバー6は伏臥状態となった吐出口12aを覆う。吐出口12aは起立方向へ付勢されているので、カバー6が開くと、自動的に吐出口12aが起立状態となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料の投入口に取付けられる飲料容器の栓であって、
前記投入口に固定される栓本体と、
前記飲料容器の内側と外側との間を連通する連通路を有する吐出部と、
前記栓本体に対して出没可能に構成された操作部を有し、前記操作部の往復運動によって前記飲料容器内に空気を送り込むポンプと
を備えたことを特徴とする飲料容器の栓。
【請求項2】
前記吐出部の吐出口側に飲み口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の飲料容器の栓。
【請求項3】
前記操作部を没状態でロック可能なロック部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の飲料容器の栓。
【請求項4】
前記吐出口側は、起立状態及び伏臥状態を切替可能に軸支され、且つ、起立する向きへ付勢されており、伏臥により前記連通路が閉塞されることを特徴とする請求項3に記載の飲料容器の栓。
【請求項5】
前記操作部の往復運動と連動して開閉運動し、前記操作部の没状態のときに閉状態となるように前記栓本体側へ軸支され、伏臥状態の前記吐出口を閉状態で覆うカバーを備えたことを特徴とする請求項4に記載の飲料容器の栓。
【請求項6】
前記吐出部は前記栓本体から脱着可能であることを特徴とする請求項5に記載の飲料容器の栓。
【請求項7】
前記ポンプは、前記操作部を解放した状態で圧力が抜ける圧抜き弁を備えたことを特徴とする請求項6に記載の飲料容器の栓。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の前記栓を備えたことを特徴とする飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧機構を備え且つ携帯性に優れた飲料容器の栓及びこれを用いた飲料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
安全な飲料水を確保するために、細菌や微粒子を除去するフィルター付きの携帯用浄水ボトルを利用する機会が増えている。
【0003】
このような携帯用浄水ボトルは、登山などのアウトドアの用途や災害時のような非日常の用途に限らず、水質の安全性が不明な地域での日常用途においても利用価値が高い。
【0004】
一般に、フィルター性能が高くなるほど、濾過には多くの時間を要する。よって高品質の濾過を短時間で行うためには、何らかの手段を用いて加圧する必要がある。
【0005】
また、上述のようなフィルター機能を補助する目的に限らず、加圧機構を備えた飲料容器は、介護医療において吸飲が困難な高齢者や患者を補助するためにも有用である。
【0006】
このような加圧機構を備えた液体貯蔵容器の技術については、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の携帯用浄水ボトルには、プレス式の加圧機構を備えたものも見られるが、比較的大きな力を加える必要があり、扱いが容易ではないという点において利便性が損なわれる。
【0009】
これに対して、ポンプ式の加圧機構の場合、小さい力であっても繰り返しポンピングできるので、比較的力の足りない人にとっても取り扱いが容易である。しかし、ポンプと容器が別々に構成されていることが多く、嵩張るものであれば、携帯式の飲料容器には適していない。このように、加圧操作が容易であり、且つ、携帯性に優れた飲料容器が望まれる。
【0010】
ここで、フィルターを用いた飲料容器であっても、フィルター機能を有していない介護医療用途の飲料容器であっても、単に圧力を加えることができるというだけでは目的に応じた高い利便性を得ることはできない。
【0011】
すなわち、アウトドアにおける浄水機能の使用や、介護医療現場における安全な水分補給など、目的に応じて適切な加圧を行うことが重要である。
【0012】
そこで、本発明では、飲料の投入口に取り付けることができ、圧力調節が容易な飲料容器の栓及びこれを用いた飲料容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の飲料容器の栓は、飲料の投入口に取付けられる飲料容器の栓であって、前記投入口に固定される栓本体と、前記飲料容器の内側と外側との間を連通する連通路を有する吐出部と、前記栓本体に対して出没可能に構成された操作部を有し、前記操作部の往復運動によって前記飲料容器内に空気を送り込むポンプとを備えたことを特徴とする。
【0014】
このように構成すると、操作部が栓本体に対して出没可能に構成されているので、飲料容器にコンパクトな構造でポンプ機構を設けることが可能となる。また、往復運動により圧力を生じさせる構成を採用することにより、直感的な加圧操作ができるので、微妙な圧力調節が可能となる。
【0015】
また、本発明の飲料容器の栓は、上記構成に加えて、前記吐出部の吐出口側に飲み口が設けられていることを特徴とする。
【0016】
このように構成すると、飲み口を設けることにより、ポンプ操作を行いながら飲料を飲むことが可能となる。
【0017】
また、本発明の飲料容器の栓は、上記構成に加えて、前記操作部を没状態でロック可能なロック部を備えたことを特徴とする。
【0018】
このように構成すると、出没可能に構成された操作部を没状態でロックできるので、収納状態がコンパクトになる。
【0019】
また、本発明の飲料容器の栓は、上記構成に加えて、前記吐出口側は、起立状態及び伏臥状態を切替可能に軸支され、且つ、起立する向きへ付勢されており、伏臥により前記連通路が閉塞されることを特徴とする。
【0020】
このように構成すると、吐出部の吐出口側を解放すると、付勢により吐出口側が起立し、伏臥状態の連通路の閉塞状態が自動的に解かれる。これにより、吐出部の使用可能な状態を視覚的に捉えるのが容易になるだけでなく、伏臥状態にするだけで連通路が閉塞されるので、収納時の液漏れ防止のための特別な操作を行う必要がない。
【0021】
また、本発明の飲料容器の栓は、上記構成に加えて、前記操作部の往復運動と連動して開閉運動し、前記操作部の没状態のときに閉状態となるように前記栓本体側へ軸支され、伏臥状態の前記吐出口を閉状態で覆うカバーを備えたことを特徴とする。
【0022】
このように構成すると、持ち運び時等に、カバーにより吐出部が覆われるので、例えば、屋外で使うときも衛生的に扱うことが可能となる。また、カバーと操作部とが連動するので、カバーをポンプ操作に利用することも可能である。
【0023】
また、本発明の飲料容器の栓は、上記構成に加えて、前記吐出部は前記栓本体から脱着可能であることを特徴とする。
【0024】
このように構成すると、特に汚れが気になる吐出部を取り外して洗えるので、手入れが容易である。
【0025】
また、本発明の飲料容器の栓は、上記構成に加えて、前記ポンプは、前記操作部を解放した状態で圧力が抜ける圧抜き弁を備えたことを特徴とする。
【0026】
このように構成すると、飲料を飲み終わって吐出部から口を離す際、圧抜き弁を通じて
残圧が即座に除去されるので、吐出部から飲料が溢れる恐れがなく安心して使用できる。
【0027】
また、本発明の飲料容器は、請求項1から7の何れか1項に記載の前記栓を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の飲料容器の栓の使用状態を示す全体斜視図である。
【
図2】
図1の栓を液貯留部の投入口から取り外した状態を示す図である。
【
図3】吐出部を栓本体から分離した状態を示し、(a)は吐出部全体、(b)は吐出部を分解した状態の斜視図である。
【
図4】栓の中央縦断面図であり、(a)は飲み口を収納した状態、(b)は飲み口の使用状態を示す図である。
【
図6】吐出部を取り外した状態の中央縦断面図であり、(a)はカバーを閉じた状態、(b)はカバーを開いた状態を示す図である。
【
図7】ポンプの圧抜き弁の拡大図であり、(a)は加圧状態を示し、(b)は加圧解除状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態に係る飲料容器の栓及びこれを用いた飲料容器について図を用いて説明する。
【0030】
図1は、本発明の飲料容器100の栓1の使用状態を示す全体斜視図である。また、
図2は、
図1の栓1を液貯留部10の投入口10aから取り外した状態を示している。
【0031】
この飲料容器100は吸飲を補助するためのポンプ機構を備えている。このポンプ機構は、直線的な往復運動による操作で空気の圧縮を行うように構成されている。
【0032】
図1では、空気を送り込む操作を行うための操作部4が、栓本体2から上方に突出している。栓本体2は、栓1の概形を形成するものであり、本実施の形態では、可動部分を除く構成を便宜的に栓本体2と呼ぶこととする。この栓本体2は、大まかに栓本体上部2aと栓本体下部2bとに分割される。飲料を吐出するための吐出部12の吐出口12a側も上方に向けて起立した状態となっている。
【0033】
操作部4は、円柱状の側面を有し、上方の中央には、吐出部12を収容できる程度の幅で切り欠きが形成されている。この操作部4の切り欠かれた空間には、吐出部12以外にもカバー6が設けられている。
【0034】
図2を参照すると、操作部4、吐出部12及びカバー6のすべてが栓本体2の上面と面を一致させるように収納された状態が示されている。このように使用しない状態では、ほとんど凹凸の無い状態に収納されるので、他の荷物などとの干渉を防止でき、取り扱いが容易である。
【0035】
図2の栓本体2の下方に垂下しているのは、吐出部12を構成するストロー14であり、このストロー14の下端にはフィルター24が設けられている。
【0036】
一般に、フィルターに液体を通過させる際には、流れに抵抗が生じる。特に、濾過機能が高いフィルターであれば、比較的大きな抵抗が生じるため、スムーズな吸飲を行うことが困難である。このような吸飲を補助するために、本実施の形態に係る構成では、ポンプ機構が採用されている。このポンプ機構については、後に詳しく述べる。
【0037】
先ず、吐出部12の構造について説明する。
【0038】
図3は、吐出部12を栓本体2から分離した状態を示した斜視図である。
図3(a)はフィルター24(
図2参照)を取り外した吐出部12全体を示しており、(b)は吐出部12を分解した状態を示している。
【0039】
図3(b)に示されているように、本実施の形態では、吐出部12は、ストロー14と、このストロー14を固定する基台18と、ストロー14の吐出口12a側をカバーする飲み口16とから構成されている。このストロー14は弾性変形可能な素材で形成されている。
【0040】
ストロー14の吐出口12a側を覆うように取付けられている飲み口16は、ストロー14の吐出口12aの外形に沿って密着する形状に貫通孔16bが形成されているので、スムーズに取り外しができる。
【0041】
また、ストロー14を固定する基台18側にも、飲み口16と同様にストロー14の外形に沿った形状の貫通孔が形成されている。しかし、基台18の場合、栓本体2の外側へ向けて上方が傾斜するように貫通孔が形成されている。これにより、
図3(b)に示すような直線状の弾性変形可能なストロー14が基台18に挿通されると、先端の吐出口12a側が栓本体2の外側へ向けて反るように配置される。
【0042】
飲み口16は
図3(a)のような栓本体2の外側へ傾斜した起立状態から
図2のように収納された伏臥状態までの範囲で揺動自在に基台18へ軸支されている。したがって、外力が加わらない状態では、ストロー14の吐出口12a側と飲み口16は、
図3(a)のような起立状態となる。
【0043】
次に、栓1の内部構造について説明する。
【0044】
図4は、飲み口16の揺動面に平行な面で切断した栓1の中央縦断面図である。
図4(a)は飲み口16を収納した状態、(b)は飲み口16の使用状態を示している。
【0045】
図4(a)では、吐出部12の吐出口12a(
図1参照)側が、飲み口16の支軸16aの近傍で屈曲されて伏臥状態となっている。そして、この伏臥状態の飲み口16を覆うようにカバー6が閉じられている。また、操作部4は、栓本体2の上面と面を一致させるようにして没状態となっている。
【0046】
上述のように、ストロー14は弾性変形可能な素材で形成されているので、飲み口16の揺動に対して柔軟に追従できる。
【0047】
しかし、90度を超える角度θで屈曲するように構成されているので、屈曲部分で連通路14aが閉塞されるような変形が生じている。このような構成により、
図4(a)のように飲み口16が収納された状態では、飲料が連通路14aの閉塞位置で堰き止められるので、搬送時の液漏れを防止することができる。
【0048】
ここで、本実施の形態に係る構成では、飲み口16の揺動中心となる軸支位置は、ストロー14に対して伏臥方向へ僅かにシフトするように構成されている。このため、飲み口16の軸支位置がストロー14と重なる位置に設定されるような構成と比較して、伏臥方向への揺動により、ストロー14の先端の軌道よりも飲み口16の先端の軌道の方が一回り大きな弧を描く。したがって、
図4(a)に表れているように、伏臥状態のストロー1
4の先端は、飲み口16の先端よりも奥へ収容された状態となる。よって、この状態の飲み口16が、更にカバー6で覆われるので、衛生的な使用が可能となる。
【0049】
なお、このように飲み口16の揺動に伴ってストロー14の先端が飲み口16の内側へ収容されるように構成するためには、飲み口16に対してストロー14が摺動可能に保持されている必要がある。
【0050】
図4(b)は、カバー6が開放された使用状態を示している。
【0051】
上述のように、ストロー14は弾性変形可能な素材で形成されているので、カバー6による障壁が除去されると、弾性に基づく復元力により、基台18の傾斜する外側向きの位置まで回動により延び上がる。本実施の形態に係る構成では、このように繰り返しの屈曲に耐え、適度な弾性復元力を生じることのできる素材としてシリコン材が選択されている。
【0052】
起立状態になったストロー14では、閉塞されていた連通路14aが開放される。起立動作において、上述の伏臥に伴う揺動とは逆に、ストロー14の吐出口12a側は、飲み口16の内側を先端側へ向けて摺動しながら変形する。起立状態では、ストロー14の先端と飲み口16の先端とが一致して吸飲に適した配置となっている。
【0053】
このように、ストロー14が飲み口16の内側と適当な抵抗を生じる摺動を伴って起立状態となるので、カバー6が開放されたときに勢い良く跳ね上がることを防止できる。
【0054】
また、飲み口16の軸支位置がストロー14の延びる位置とは重ならず、伏臥側へ僅かにシフトしていることにより、飲み口16の支軸16aと基台18の軸支位置との間で回転摺動に基づく抵抗が僅かに生じる。これにより、回転の勢いが適度に抑えられ、上述のストロー14と飲み口16の内側との摺動とが協働してスムーズな起立動作が可能となる。
【0055】
このように構成されているので、水滴などが吐出口12aの先端付近に付着していた場合であっても、跳ね上げによる液滴の飛散を防止できるので、周囲を汚す心配がない。
【0056】
続いて、操作部4及びロック部8の構造について説明する。
【0057】
図5は操作部4とロック部8の分解図である。
図1を参照しながら説明したように、操作部4は円柱の中央側を飲み口16(吐出部12)とカバー6を収容可能な幅に切り欠いたような外形を有している。この操作部4の下端には、後述するポンプ20が一体に取付けられる。操作部4の側面には、周方向に略等間隔で4つの係合凸部4aが形成されている。
【0058】
一方、ロック部8は、大小の筒状部材が内外に二重に重なったような構造となっている。この内側の内筒部8aの内壁には、操作部4の係合凸部4aが上下方向へ係合可能な係合凹部8a1が形成されている。
図5には表れていないが、係合凹部8a1は4つの係合凸部4aに対向する4箇所に形成されている。
【0059】
また、係合凹部8a1に連続して解除凹部8a2が形成されている。解除凹部8a2は、没状態の操作部4のロックを解除し、上方への運動を許容するための構造である。
【0060】
操作部4の係合凸部4aは、係合凹部8a1内で周方向へ相対回転可能であり、解除凹部8a2内では出没方向へ相対的に上下動が可能である。以降、係合凸部4aと係合凹部
8a1とによる構成を係合対と呼ぶこととする。
【0061】
係合対で係合状態が形成されているときは、
図2のように栓1の上面は平らな状態となり、係合凸部4aが係合対を外れて解除凹部8a2側へ移ると、操作部4は
図1のように上方へ突出した状態となる。
【0062】
次に、操作部4とカバー6との関係について説明する。
【0063】
図6は吐出部12を取り外した状態の中央縦断面図であり、(a)はカバー6を閉じた状態、(b)はカバー6を開いた状態を示す図である。
【0064】
カバー6は栓本体2側に軸支され、揺動可能に構成されている。カバー6の揺動端6bは操作部4の内側に形成されたスライド溝4b内を摺動する。このような動作によりカバー6が吐出部12とは逆側に開かれる。
【0065】
操作部4の下方にはコイルバネ22が設けられている。このコイルバネ22は操作部4を上方へ付勢する付勢手段として作用する。よって、操作部4とロック部8との間の係合対による係合状態が解除され、係合凸部4aが解除凹部8a2側へ移ると、操作部4はコイルバネ22の付勢により上方へ持ち上げられる。
【0066】
すなわち、ロック部8による操作部4のロックが解除されることにより、操作部4と共にカバー6が開かれる。そして、カバー6が開かれることにより吐出部12がストロー14の復元力によって自動的に起立状態となる。
【0067】
次に、ポンプの構造について説明する。
【0068】
図7はポンプ20(
図6参照)の圧抜き弁20aの拡大図である。
図7(a)はポンプ20の加圧状態を示し、(b)は加圧解除状態を示す図である。
【0069】
図7(a)に示すように、ポンプ20には中空形状で内側に気道20b1が形成された弁棒20bと、パッキン20cと、このパッキン20cに対して離接する弁座20dにより圧抜き弁20aが構成されている。
【0070】
図7(a)の加圧状態では、操作部4が押し下げられることにより、弁座20dがパッキン20cに密着する。これにより、弁棒20bの気道20b1に連通する空間が閉じられるので、弁棒20bが押し下げられた分だけ液貯留部10内の圧力が増大する。
【0071】
図7(b)は、操作部4を下方へ押し下げる力が解除され、コイルバネ22の付勢により操作部4が持ち上がっている状態を表している。ユーザーが操作部4を下方へ押し下げる力を緩めると、残圧が生じている範囲内では、弁棒20bが持ち上げられ、弁座20dとパッキン20cとは密着した位置関係を維持する。
【0072】
しかし、残圧によって持ち上げられる弁棒20bが上死点に達すると、コイルバネ22の付勢により弁座20dは操作部4と共に更に上昇できるように構成されているので、パッキン20cと弁座20dとの間に隙間が生じる。
【0073】
これにより、
図7(b)に示すように、弁棒20bの気道20b1を通じて液貯留部10内の残圧が解放される。
【0074】
このように構成されているので、ユーザーは飲み口16に口を当てて飲料を飲みながら
操作部4を押し下げることで、吸飲を補助することができる。
【0075】
また、操作部4を押し下げる力を緩めると、残圧が即座に解消されるので、意図した通りの液流を生じさせるための調節が容易になる。すなわち、残圧が生じたまま口を離して飲料が吹き出したり、吸飲中に液体の流れが滞ったりというような意図しない反応が生じ難い。
【0076】
本実施の形態に係る構成では、フィルター24が装着され、浄水機能を有した飲料容器を例として示したが、直感的に流量を微調整できる構成を利用して、介護医療の現場で使用することも可能である。
【0077】
フィルター24が用いられていない場合、より直接的に操作部4の動きが液流の流れとして現れるので、高齢者や患者に対して微妙な調節によって水分補給を行うことが可能である。また、操作部4から手を離すことによって即座に残圧が解消するので、安全に利用することが可能である。
【0078】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、さらに以下のような変形例も含まれる。
【0079】
(1)上記の実施の形態では、吐出部12を起立状態になるように付勢する手段として、栓本体2の外側へ向けて傾斜して形成された、ストロー14を保持する基台18の構造と、弾性復元力を生じることのできるストロー14の素材との組み合わせにより実現する構成を例として示した。しかし、吐出部12の吐出口12a側を起立方向へ向けて付勢することができる構成であれば、バネ部材等の別部材を付勢手段として用いて外側へ回動させる構成であっても構わない。
【0080】
(2)上記の実施の形態では、操作部4とロック部8との間の構成について、操作部4側に凸構造(係合凸部4a)、ロック部8側に凹構造(係合凹部8a1)を設けることにより係合対を構成した例を示した。しかし、操作部4を栓1の中に没状態でロックすることができ、且つ、ロック部8の周方向への相対回転によりロック及び解除を選択できる構成であれば、操作部4側に凹構造、ロック部8側に凸構造となる組み合わせでも構わない。さらに、係合可能であれば、両方とも凸構造となるような組み合わせでも良い。
【0081】
(3)上記の実施の形態では、コイルバネ22によって操作部4を上方へ付勢する構成を例として示した。しかし、ポンプ20の加圧を解除すると共に、カバー6を開放する向きへ付勢される構成であれば、カバー6に対して直接付勢手段が設けられていても構わない。例えば、カバー6が開く向きに板バネ等の弾性部材によって付勢されるような構成でも良い。
【0082】
(4)上記の実施の形態では、単に飲料容器の栓として説明を行った。これは、外側に設けられる外栓や、カバーを必要とする中栓など、様々な形態の栓体を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の飲料容器の栓及びこれを用いた飲料容器は、微妙な圧力調整を直感的に行うことにより吸飲を補助できるので、アウトドアスポーツから介護の分野にまで安全に利用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 栓
2 栓本体
2a 栓本体上部
2b 栓本体下部
2b1 嵌合凸部(嵌合対の一方)
4 操作部
4a 係合凸部(係合対の一方)
4b スライド溝
6 カバー
6a 支軸
6b 揺動端
8 ロック部
8a 内筒部
8a1 係合凹部(係合対の他方)
8a2 解除凹部
8b 外筒部
8b1 嵌合凹部(嵌合対の他方)
10 液貯留部
10a 投入口
12 吐出部
12a 吐出口
14 ストロー
14a 連通路
16 飲み口
16a 支軸
16b 貫通孔
18 基台
20 ポンプ
20a 圧抜き弁
20b 弁棒
20b1 気道
20c パッキン
20d 弁座
22 コイルバネ(付勢手段)
24 フィルター
100 飲料容器
θ 屈曲の角度