(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109875
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】クラゲコラーゲンの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/614 20150101AFI20240806BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20240806BHJP
A61K 38/30 20060101ALI20240806BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20240806BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K35/614
A61K38/18
A61K38/30
A61K38/39
A61K45/00
A61P17/02
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085951
(22)【出願日】2024-05-28
(62)【分割の表示】P 2022561048の分割
【原出願日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】2005141.3
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】522392586
【氏名又は名称】ジェラゲン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JELLAGEN LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スプラッグ,アンドリュー マーンズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンを含む組成物およびクラゲコラーゲンを製造する方法を提供する。
【解決手段】創傷の治療における使用のための組成物であって、クラゲコラーゲンを含み、前記クラゲコラーゲンが微粉化粉末の形態である、組成物を提供する。また、クラゲコラーゲンを製造する方法であって、少なくとも、i)クラゲコラーゲン源から酸可溶性コラーゲンを抽出するステップと、ii)当該クラゲコラーゲンを精製して、精製されたクラゲコラーゲンの溶液を提供するステップと、を含む、方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷の治療における使用のための組成物であって、クラゲコラーゲンを含み、
前記クラゲコラーゲンが微粉化粉末の形態である、組成物。
【請求項2】
前記クラゲコラーゲンが架橋されている、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記クラゲコラーゲンが架橋されていない、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記クラゲコラーゲンがそのアテロ形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記クラゲコラーゲンがそのテロ形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記クラゲコラーゲンが架橋されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記クラゲコラーゲンの源がScyphozoa亜門由来である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記クラゲコラーゲンの源が、Rhizostomas pulmo、Rhopilema esculentum、Rhopilema nomadica、Stomolophus meleagris、Aurelia種、Cassiopea andromeda、Nemopilema nomurai、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記組成物が少なくとも1つの成長因子を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの成長因子が、多血小板血漿(PRP)、上皮成長因子38(EGF)、形質転換成長因子-ベータ(TGF-B、TGF-B2、TGF-B3)、肝細胞成長因子(HGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、顆粒球単球コロニー刺激成長因子、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子1(IGF1)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、及び/又は血管5内皮成長因子(VEGF)、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物が少なくとも1つの抗菌性化合物を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの抗菌性化合物が、ナノシルバー、ペニシリン、オフロキサシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、フルクロキサシリン、クラリスロマイシン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、メトロニダゾール、コアモキシクラブ、コトリモキサゾール(ペニシリン中)、セフトリアキソン、ピペラシリン/タゾバクタム、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、及び/又は標準治療抗菌剤、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記コラーゲンが1投与当たり0.01g/L~200g/Lの用量で投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記クラゲコラーゲンが、薬学的に許容される賦形剤及び/若しくは担体、並びに/又は薬学的に活性な成分を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記薬学的に活性な成分がリドカインである、請求項14に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
治療される前記創傷が、褥瘡、移植部位、外科創傷、潰瘍、糖尿病性潰瘍、熱傷、化学火傷、電気火傷、裂傷、擦過創、穿刺創、裂離創、血清腫、及び/又は血腫である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記微粉化粉末が1μm~1000μmの粒径を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記組成物が、治療された創傷における血管新生の改善を促進する、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記血管新生の改善が、治療されていない創傷及び又はウシコラーゲンで治療された創傷と比較したものである、請求項18に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
請求項1に記載のクラゲコラーゲンを製造する方法であって、少なくとも、
i)クラゲコラーゲン源から酸可溶性コラーゲンを抽出するステップと、
ii)前記クラゲコラーゲンを精製して、精製されたクラゲコラーゲンの溶液を提供するステップと、を含む、方法。
【請求項21】
前記方法が、
iii)架橋剤を添加して、架橋クラゲコラーゲンを形成するステップを更に含む、請求項20に記載の前記クラゲコラーゲンを製造する方法。
【請求項22】
前記架橋剤が、EDC、ゲニピン、又はポリエチレングリコール(PEG)である、請求項21に記載の前記クラゲコラーゲンを製造する方法。
【請求項23】
前記架橋剤がEDCである、請求項22に記載の前記クラゲコラーゲンを製造する方法。
【請求項24】
前記EDCが0.01%~5%の濃度である、請求項22に記載の前記クラゲコラーゲンを製造する方法。
【請求項25】
前記方法が、前記抽出されたクラゲコラーゲンをペプチダーゼで消化して、アテロクラゲコラーゲンを提供するステップを更に含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の前記クラゲコラーゲンを製造する方法。
【請求項26】
前記ペプチターゼがペプシンである、請求項25に記載の前記クラゲコラーゲンを製造する方法。
【請求項27】
前記コラーゲンをペプチダーゼで消化する前記ステップが、前記抽出ステップの後であ
り、かつ前記精製ステップの前である、請求項25又は26に記載の前記クラゲコラーゲンを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲン及びその製造に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷治癒は、多様な免疫系と生物系との間の協調的な相互作用を伴う複雑なプロセスである。長期の創傷は依然として困難な臨床的問題であり、年におよそ600万人の患者が罹患しており、経済に大きな影響を及ぼしている。
【0003】
創傷治癒は、損傷後に皮膚(又は他の臓器組織)が自己修復するプロセスである。正常な皮膚では、表皮(最外層)と真皮(内層又は深層)が定常平衡状態にあり、外部環境から遮断されている。皮膚が破れると、創傷治癒の正常な(生理学的)プロセスが始まる。創傷治癒の古典的なモデルは、連続している上に重複している3つ又は4つの段階で構成されている。
第1段階:止血。
第2段階:炎症。
第3段階:増殖。
第4段階:再構築。
【0004】
皮膚が損傷すると、一連の複雑な生化学的事象が密接に組織化されたカスケードで起こり、損傷を修復する。いくつかの潜在的刺激(局所組織虚血、バイオバーデン、壊死組織、反復性外傷など)により、創傷が炎症段階で失速し、慢性化の一因となる可能性がある。慢性創傷の重要な要素の1つは、上昇したレベルのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)である。上昇したレベルでは、MMPは、生育不能なコラーゲンのみならず、生育可能なコラーゲンも分解する。加えて、慢性創傷における線維芽細胞は、MMPの活性を制御するのに十分なレベルでMMP組織阻害剤(TIMP)を分泌しない可能性がある。これらの事象により、細胞移動に必要な足場の形成が阻止され、最終的には、細胞外マトリックス(ECM)及び肉芽組織の形成が阻止される。糖尿病性足潰瘍を含む慢性創傷の場合、関連する慢性微生物感染と炎症との組み合わせにより、毛細血管の分解(血流の低下)及び切断が引き起こされる可能性がある。したがって、糖尿病性足潰瘍(DFU)を標的とする新たな薬剤は、患部への血流を刺激し、かつ創傷治癒を促進する能力を有利に提供し得る。
【0005】
コラーゲンベースの創傷ドレッシング材は、創傷における「犠牲基質」として作用することにより、MMPレベルが上昇するという問題に対処するのに比類なく適していることが示されている。コラーゲン分解産物が肉芽組織の形成に必要な様々な細胞型に対して走化性であることも実証されている。加えて、コラーゲンベースのドレッシング材は、創傷からの浸出液を吸収し、かつ湿った創傷環境を維持する能力を有する。
【0006】
ゲル、ペースト、ポリマー、酸化再生セルロース(ORC)、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの様々な担体/結合剤を用いたいくつかの異なるコラーゲンドレッシング材が利用可能である。これらの製品に含まれるコラーゲンは、非抗原性にするために精製されたウシ、ブタ、ウマ、又はトリ源に由来する傾向がある。しかしながら、不十分な血管新生特性、疾患及びウイルス伝播のリスクの増大、並びにこれらのコラーゲンの入手に関連するかなりのコストなどのこれらのタイプのコラーゲンの使用に関連する欠点がいくつか存在する。
【0007】
したがって、上記の欠点を呈することなく、創傷の治療における使用に好適であろうコラーゲン源が特に有利であろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンに関する。以下に提示されるインビボ及びインビトロデータから明らかなように、本発明者らは、驚くべきことに、クラゲコラーゲンを含む組成物が、哺乳類コラーゲン(例えば、ウシ)の代替物として創傷の治療に有用であると同時に、同等の結果を提示し、かついくつかの優れた特性、例えば、血管新生特性、安定性の増大、低い免疫原性、並びにより低いウイルス伝播及び疾患/プリオン伝播のリスクを提供することを見出した。これは、哺乳類コラーゲンと比較してクラゲコラーゲンの物理化学的特性及びアミノ酸特性が大いに異なることを考慮すると、全く予想外の発見である。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様は、創傷の治療における使用のための組成物であって、クラゲコラーゲンを含む、組成物に関する。
【0010】
本発明の第2の態様は、前述のクラゲコラーゲンを製造する方法であって、少なくとも、
i)クラゲコラーゲン源から酸可溶性コラーゲンを抽出するステップと、
ii)当該クラゲコラーゲンを精製して、精製されたクラゲコラーゲンの溶液を提供するステップと、を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施形態がほんの一例として添付の図面を参照してこれから説明される。
【
図1】キャリパー測定によって決定される、3日目から7日目までの群平均幅(mm)の変化を示す。
【
図2】形態計測によって決定される、3日目から7日目までの群平均幅(mm)の変化を示す。
【
図3】3日目から7日目までの群平均再上皮化率(%)の変化を示す。
【
図4】3日目から7日目までの群平均肉芽組織形成スコア(
図4A)及び平均創傷面積肉芽組織形成率(%)(
図4B)の変化を示す。
【
図5】Tegadermのみ群由来のH&E染色創傷切片の代表的な画像を示す。パネルA)、B)、及びC)は、3日目に収集した創傷切片の画像を表し、パネルD)、E)、及びf)は、7日目に収集した創傷切片の画像を表す。
【
図6】クラゲコラーゲンスポンジ群由来のH&E染色創傷切片の代表的な画像を示す。パネルA)、B)、及びC)は、3日目に収集した創傷切片の画像を表し、パネルD)、E)、及びf)は、7日目に収集した創傷切片の画像を表す。
【
図7】化学修飾(チオール化)クラゲコラーゲンペースト群由来のH&E染色創傷切片の代表的な画像を示す。パネルA)、B)、及びC)は、3日目に収集した創傷切片の画像を表し、パネルD)、E)、及びf)は、7日目に収集した創傷切片の画像を表す。
【
図8】架橋クラゲコラーゲンスポンジ群由来のH&E染色創傷切片の代表的な画像を示す。パネルA)、B)、及びC)は、3日目に収集した創傷切片の画像を表し、パネルD)、E)、及びf)は、7日目に収集した創傷切片の画像を表す。
【
図9】Purocol(登録商標)群由来のH&E染色創傷切片の代表的な画像を示す。パネルA)、B)、及びC)は、3日目に収集した創傷切片の画像を表し、パネルD)、E)、及びf)は、7日目に収集した創傷切片の画像を表す。
【
図10】3日目及び7日目の異なる処理群由来のコラーゲンI染色創傷切片の代表的な画像を示す。パネルA)は、3日目のTegaderm群由来の創傷切片を示し、パネルB)は、7日目のTegaderm群由来の創傷切片を示し、パネルC)は、3日目のクラゲコラーゲンスポンジ群由来の創傷切片を示し、パネルD)は、7日目のクラゲコラーゲンスポンジ群由来の創傷切片を示し、E)は、3日目の化学修飾(チオール化)クラゲコラーゲンペースト群由来の創傷切片を示し、パネルF)は、7日目の化学修飾(チオール化)コラーゲンペースト群由来の創傷切片を示し、パネルG)は、3日目の架橋クラゲコラーゲンスポンジ群由来の創傷切片を示し、パネルH)は、7日目の架橋クラゲコラーゲンスポンジ群由来の創傷切片を示し、パネルI)は、3日目のPuracol(登録商標)群由来の創傷切片を示し、パネルL)は、7日目のPuracol(登録商標)群由来の創傷切片を示す。
【
図11】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、Tegadermのみ群由来の創傷切片(3日目)の代表的な画像を示す。
【
図12】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、Tegadermのみ群由来の創傷切片(7日目)の代表的な画像を示す。
【
図13】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、クラゲコラーゲンスポンジ群由来の創傷切片(3日目)の代表的な画像を示す。
【
図14】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、クラゲコラーゲンスポンジ群由来の創傷切片(7日目)の代表的な画像を示す。
【
図15】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、化学的に修飾(チオール化)クラゲコラーゲンペースト群由来の創傷切片(3日目)の代表的な画像を示す。
【
図16】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、化学的に修飾(チオール化)クラゲコラーゲンペースト群由来の創傷切片(7日目)の代表的な画像を示す。
【
図17】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、架橋クラゲコラーゲンスポンジ群由来の創傷切片(3日目)の代表的な画像を示す。
【
図18】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、架橋クラゲコラーゲンスポンジ群由来の創傷切片(7日目)の代表的な画像を示す。
【
図19】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、Puracol(登録商標)群由来の創傷切片(3日目)の代表的な画像を示す。
【
図20】特異的内皮細胞マーカーCD31で標識された、Puracol(登録商標)群由来の創傷切片(7日目)の代表的な画像を示す。
【
図21】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける処理群の創傷閉鎖プロファイルを「経時的な残存創傷面積%」データとして示す。これらの実験を実施例3に記載されるように行い、試験群は、対照(フィルムドレッシング材のみ)、非架橋スポンジ、0.5%EDC架橋粉末、1.0%EDC架橋粉末、Promogran(商標))であった。
【
図22】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける処理群の創傷収縮プロファイルを「創傷収縮%」データとして示す。これらの実験を実施例3に記載されるように行い、試験群は、対照(フィルムドレッシング材のみ)、非架橋スポンジ、0.5%EDC架橋粉末、1.0%EDC架橋粉末、Promogran(商標))であった。
【
図23】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける、創傷後4日目に初めて測定可能であった異なる処理群間の創傷再上皮化プロファイルを「創傷再上皮化%」として示す。これらの実験を実施例3に記載されるように行い、試験群は、対照(フィルムドレッシング材のみ)、非架橋スポンジ、0.5%EDC架橋粉末、1.0%EDC架橋粉末、Promogran(商標))であった。
【
図24】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける各実験群群の創傷の組織学的外観の代表例を示す(ほぼ同等に縮尺されている)。各創傷の中心部の高倍率図を
図25で見つけることができる。
【
図25】
図24に表示した創傷の組織学的外観の代表的な例の中央部の高倍率画像を示す。
【
図26】水和塊の血管新生(V)の進展を示す、(A)8日目、(B)12日目、及び(C)16日目の1%EDC架橋クラゲコラーゲン粉末の効果を示す。
【
図27】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける全ての処理群の創傷閉鎖プロファイルを「経時的な残存創傷面積%」データとして示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行い、試験群は、対照(フィルムドレッシング材のみ)、1.0%EDC架橋粉末、チオール化粉末、Integra(登録商標)Flowable Matrixであった。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12、42日目から63日目までn=4)。
【
図28】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける試験した全てのクラゲコラーゲン処理群の創傷閉鎖プロファイルを「経時的な残存創傷面積%」データとして示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行った。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12)。
【
図29】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおけるチオール化粉末処理群及びIntegra FM処理群の創傷閉鎖プロファイルを「経時的な残存創傷面積%」データとして示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行った。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12)。
【
図30】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける処理群の創傷収縮プロファイルを「創傷収縮%」データとして示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行い、試験群は、対照(フィルムドレッシング材のみ)、架橋スポンジ、1.0%EDC架橋粉末、チオール化粉末、Integra(登録商標)Flowable Matrixであった。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12、42日目から63日目までn=4)。
【
図31】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける試験した全てのクラゲコラーゲン処理群の創傷収縮プロファイルを「創傷収縮%」データとして示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行った。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12)。
【
図32】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおけるチオール化粉末処理群及びIntegra FM処理群の創傷収縮プロファイルを「創傷収縮%」データとして示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行った。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12)。
【
図33】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける、創傷後4日目に初めて測定可能であった異なる処理群間の創傷再上皮化プロファイルを「創傷再上皮化%」として示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行い、試験群は、対照(フィルムドレッシング材のみ)、1.0%EDC架橋粉末、チオール化粉末、Integra(登録商標)Flowable Matrixであった。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12、42日目から63日目までn=4)。
【
図34】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける、創傷後4日目に初めて測定可能であった異なる処理群間の試験した全てのクラゲコラーゲン処理群の創傷再上皮化プロファイルを「創傷再上皮化%」として示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行った。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12)。
【
図35】db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスモデルにおける、創傷後4日目に初めて測定可能であった異なる処理群間の試験したチオール化粉末処理群及びIntegra FM処理群の創傷再上皮化プロファイルを「創傷再上皮化%」として示す。これらの実験を実施例4に記載されるように行った。試験群の全ての動物の結果を平均±標準誤差で示す(35日目までn=12)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の発明を実施するための形態では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。当業者であれば、特許請求の範囲内にとどまる限り、本発明の実施形態がこれらの具体的な詳細なしに実施されてもよいことを理解するであろう。
【0013】
第1の態様では、本発明は、創傷の治療における使用のための組成物であって、クラゲコラーゲンを含む、組成物を提供する。
【0014】
「創傷の治療」という語句又は「創傷治療」という用語は、皮膚及び任意の関連組織が損傷後に自己修復する複雑なプロセスを支援する任意の治療を指す。クラゲコラーゲンの使用から利益を享受し得る創傷の例には、褥瘡、移植部位、外科創傷、潰瘍、火傷(熱傷、化学火傷、又は電気火傷)、裂傷、擦過創、穿刺創、裂離創、血清腫、及び/又は血腫が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、創傷は、表皮水疱症に関連しない。
【0015】
いくつかの実施形態では、クラゲコラーゲンは、加水分解物の形態ではない。「加水分解物形態」には、熱又はプロテアーゼ/コラゲナーゼ活性によって分解されて、コラーゲンペプチドとして定義されるコラーゲン断片及びゼラチン様分子を生成するコラーゲンの意味が含まれる。
【0016】
創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンは、そのアテロ形態であってもよい。「アテロ形態」には、ヒトにおいて抗原性を誘導することで知られているN末端及びC末端テロペプチド成分を除去することによって得られるコラーゲンの低免疫原性誘導体の意味が含まれる。テロペプチドは、概して、コラーゲンをI型ペプシンで処理することによって除去される。
【0017】
創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンは、そのテロ形態であってもよい。「テロ形態」には、テロペプチドを含む可溶性コラーゲンを生成する酸性条件下で抽出されたコラーゲンの意味が含まれる。
【0018】
創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンは、チオール化されていてもよい。「チオール化」という用語は、チオールと反応して-SH基又は「チオール」基の導入をもたらすクラゲコラーゲンを指すよう意図されている。
【0019】
創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンは、架橋されていてもよい。本発明との関連で、「架橋」という用語は、共有結合による2つの独立したコラーゲン分子の結合を指す。好ましくは、架橋されるコラーゲン分子は、原線維間架橋をもたらすコラーゲン線維の形態である。架橋チオール化クラゲコラーゲンを作製するために、「架橋剤(cross-linking agent)」又は「架橋剤(cross-linker)」が使用され得る。「架橋剤(cross-linking agent)」又は「架橋剤(cross-linker)」という用語は、ある特定の条件下で、2つの独立した分子間に共有結合を形成することができる薬剤を指す。本発明との関連で、架橋剤は、2つの独立したコラーゲン分子を共有結合するために使用される。好ましくは、架橋されるコラーゲン分子は、コラーゲン線維の形態である。好ましくは、原線維間架橋が起こる。いくつかの事例では、架橋剤は、典型的には、炭化水素鎖によって一緒に連結された2つ以上の反応性官能基で構成されている。2つ以上の官能基は必ずしも同じである必要はない。炭化水素鎖の長さを変化させて、官能基間の距離を制御することもできる。本発明との関連での炭化水素鎖の正確な長さは、限定的であるようには意図されていない。
【0020】
創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンは、架橋されていなくてもよい。
【0021】
クラゲコラーゲン源は、Scyphozoa亜門由来であり得る。創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲン源は、Rhizostomeae目(Rhizostomas pulmoを含むが、これに限定されない)、Rhopilema esculentum、Rhopilema nomadica、Stomolophus meleagris、Cassiopea種(サカサクラゲ)(Cassiopea andromedaを含むが、これに限定されない)、Semaeostomease目(Aurelia種を含む)、及び他の種、例えば、Nemopilema nomurai、Rhopilema esculentum、Rhopilema nomadica、Stomolophus meleagris、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、クラゲコラーゲン源は、Rhizostomas pulmoである。したがって、コラーゲンは、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のRhizostomas pulmoコラーゲンを含み得る。
【0022】
創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンは、少なくとも1mg/mLの濃度を有し得る。使用され得るクラゲコラーゲンの最大濃度が50mg/mLであると想定される。したがって、クラゲコラーゲンの濃度は、1mg/mL~50mg/mL、2mg/mL~50mg/mL、3mg/mL~50mg/mL、4mg/mL~50mg/mL、5mg/mL~50mg/mL、6mg/mL~50mg/mL、7mg/mL~50mg/mL、8mg/mL~50mg/mL、9mg/mL~50mg/mL、10mg/mL~50mg/mL、11mg/mL~50mg/mL、12mg/mL~50mg/mL、13mg/mL~50mg/mL、14mg/mL~50mg/mL、15mg/mL~50mg/mL、16mg/mL~50mg/mL、17mg/mL~50mg/mL、18mg/mL~50mg/mL、19mg/mL~50mg/mL、20mg/mL~50mg/mL、25mg/mL~50mg/mL、30mg/mL~50mg/mL、35mg/mL~50mg/mL、40mg/mL~50mg/mL、又は45mg/mL~50mg/mLであり得る。
【0023】
創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンは、最大少なくとも37℃の温度で安定し得る。「安定している」という用語は、所与の環境条件下で実質的に変性せず、かつその望ましい特性を維持するクラゲコラーゲンの能力を指すよう意図されている。これは、本発明の意図された使用が製品と対象との物理的接触を伴うことを考慮すると、有利な特性である。対象がヒトであると想定されるが、本発明は、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジなどの創傷治療に使用するために、獣医学業界でも利用され得る。
【0024】
創傷の治療における使用のためのクラゲコラーゲンは、ヒドロゲル、ペースト、粉末、好ましくは微粉化粉末、膜、足場、溶液、スポンジマトリックス、ナノ繊維電界紡糸マトリックスの形態、又は凍結乾燥形態であり得る。
【0025】
「ヒドロゲル」は、親水性のポリマー鎖のネットワークであり、吸収性の高い材料をもたらす。「ペースト」という用語は、通常は皮膚への外用を対象とする半固体調製物を指すよう意図されている。典型的には、医薬状況下で使用される場合、それらは脂肪基剤(例えば、ワセリン)からなり、少なくとも25%の固形物質(例えば、酸化亜鉛)である。当業者であれば、クラゲコラーゲンの選択された形態が治療される特定の創傷に依存し得ることを認識するであろう。例えば、火傷は、ヒドロゲル又は微細コラーゲンメッシュ製剤を必要とし得る。
【0026】
本発明による使用のための組成物は、追加の薬学的に活性な成分を含み得る。追加の薬学的に活性な成分には、成長因子、抗炎症剤、及び抗菌薬が含まれる。抗炎症剤の例には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリンサルサレート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、ピロキシカム、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、及びスリンダクが挙げられる。選択された抗炎症薬の濃度が治療される創傷のタイプ及び重症度に依存すると理解されている。使用され得る抗菌剤の例には、ナノシリバー、ペニシリン、オフロキサシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、及びエリスロマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。上に列記される賦形剤及び担体を含む又は含まない、前述の薬学的に活性な成分のうちの2つ以上の混合物が想定される。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明による使用のための組成物は、少なくとも1つの成長因子を更に含む。好ましい実施形態では、少なくとも成長因子は、多血小板血漿(PRP)、上皮成長因子38(EGF)、形質転換成長因子-ベータ(TGF-B、TGF-B2、TGF-B3)、肝細胞成長因子(HGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、顆粒球単球コロニー刺激成長因子、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子1(IGF1)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、及び/又は血管5内皮成長因子(VEGF)、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0028】
本発明による使用のための組成物は、少なくとも1つの抗菌性化合物を更に含み得る。好ましくは、少なくとも1つの抗菌性化合物は、ナノシリバー、ペニシリン、オフロキサシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド及びエリスロマイシン、フルクロキサシリン、クラリスロマイシン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、メトロニダゾール、コアモキシクラブ、コトリモキサゾール(ペニシリン中)、セフトリアキソン、ピペラシリン/タゾバクタム、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、及び/又は標準治療抗菌剤、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0029】
創傷の治療における使用のための組成物は、創傷への局所適用のために製剤化されていてもよい。本発明との関連での「局所適用」という用語は、治療される創傷の特定の部位へのクラゲコラーゲンの適用を指すよう意図されている。治療される創傷は、対象の皮膚上又は対象の粘膜上、例えば、口腔内部に存在し得る。本発明による使用のための組成物は、当該技術分野で既知の任意の他の経路による投与用に製剤化されていてもよい。例えば、本発明による使用のための組成物は、真空ポンプに接続された密封創傷ドレッシング材を使用した局所創傷環境への亜大気圧の適用の制御を伴う陰圧創傷療法(NPWT)(別名、真空補助閉鎖(VAC))による投与用に製剤化されていてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明による使用のための組成物は、1投与当たり0.01g/L~200g/L、好ましくは1g/L~50g/Lの用量のコラーゲンを含む。
【0031】
本発明による使用のための組成物は、小球体を使用して水相中にクリーム、バイ-ゲル、軟膏、マスク、セラム、乳液、ローション、ペースト、フォーム、エアロゾル、スティック、シャンプー、コンディショナー、パッチ、含水アルコール若しくは油性水溶液、水中油若しくは油中水若しくは多重エマルジョン、水性若しくは油性ゲル、液体、ペースト状、若しくは固体無水生成物、電界紡糸コラーゲンナノ繊維マトリックス、膜、及び/又は油分散液として製剤化されていてもよく、これらの小球体は、イオンタイプ及び/又は非イオンタイプのナノ球体及びナノカプセル又は脂質小胞などのポリマーナノ粒子であり、より好ましくは、電界紡糸コラーゲンナノ繊維マトリックス及び/又は膜である。
【0032】
本発明による使用のためのクラゲコラーゲンを含む組成物は、薬学的に許容される賦形剤及び/若しくは担体、並びに/又は薬学的に活性な成分を更に含み得る。賦形剤及び担体は、薬学的に活性な成分又はクラゲコラーゲンの安定性を高め、かつ/又はそれらの生物薬剤学的プロファイルを改善し得、これらには活性物質が結合している場合も結合していない場合もある。好適な薬学的に許容される賦形剤及び担体の例には、滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、単糖類、例えば、フルクトース、グルコース、及びガラクトース、非還元性二糖類、例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース、非還元オリゴ糖、例えば、ラフィノース及びメレジトース、非還元デンプン由来多糖類生成物、例えば、マルトデキストリン、デキストラン、及びシクロデキストリン、並びに非還元アルジトール、例えば、マンニトール及びキシリトールが挙げられ得る。更なる好適な賦形剤には、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントガム、及び/又はポリビニルピロリドンなどのセルロース調製物が含まれる。上記の賦形剤又は担体(又は任意の他の好適な等価物)のうちのいずれか2つ以上の混合物も想定される。同様の効果を有する他の物質も好適であることが理解される。
【0033】
好ましい実施形態では、薬学的に活性な成分は、1%リドカインであり得る。リドカイン又は塩酸リドカインは麻酔薬であり、麻痺剤として一般に使用されている。リドカインは、最大5%リドカイン、例えば、0.1%~5%リドカイン、0.5%~5%リドカイン、1%~5%リドカイン、1.5%~5%リドカイン、2%~5%リドカイン、2.5%~5%リドカイン、3%~5%リドカイン、3.5%~5%リドカイン、4%~5%リドカイン、4.5%~5%リドカインであり得る。好ましくは、リドカインは、0.1~2%の濃度である。同じ目的に適切な更なる麻酔薬の例には、ベンゾカイン、ブタンベン、ジブカイン、リドカイン、オキシブプロカイン、プラモキシン、プロパラカイン、プロキシメタカイン、及びテトラカインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明による使用のための組成物は、褥瘡、移植部位、外科創傷、潰瘍、好ましくは糖尿病性潰瘍、熱傷、化学火傷、電気火傷、裂傷、擦過創、穿刺創、裂離創、血清腫、及び/又は血腫からなるリストから選択される創傷を治療するために使用され得る。
【0035】
本発明が、前述の医薬品の更なる存在の有無にかかわらず、創傷ドレッシング材の少なくとも一部を構成し得ることが想定される。創傷ドレッシング材は、吸収性、柔軟性、及び快適性を高め、かつ治癒を助長する環境を維持するのに役立ち得るアルギン酸塩及びセルロース誘導体などの追加の成分を含み得る。
【0036】
一実施形態では、本発明による使用のための組成物は、微粉化粉末の形態のクラゲコラーゲンを含み得る。好ましくは、微粉化粉末は、1μm~1000μmの粒径を有し、より好ましくは、微粉化粉末は、200μm~500μmの粒径を有する。
【0037】
特定の実施形態では、本発明による使用のための組成物は、コラーゲン三次元スポンジ足場の形態のクラゲコラーゲンを含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明による使用のための組成物は、治療された創傷における血管新生の改善を促進する。好ましくは、血管新生の改善は、治療されていない創傷及び/又はウシコラーゲンで治療された創傷と比較したものである。
【0039】
本発明の第2の態様では、前述のクラゲコラーゲンを製造する方法であって、少なくとも、
i)クラゲコラーゲン源から酸可溶性コラーゲンを抽出するステップと、
ii)当該クラゲコラーゲンを精製して、精製されたクラゲコラーゲンの溶液を提供するステップと、を含む、方法。
【0040】
「精製されたクラゲコラーゲンの溶液」とは、実質的に単量体であるか、あるいはコラーゲン原線維を実質的に含まない単離されたクラゲコラーゲンの溶液を指す。これに関連して、「実質的に含まない」とは、コラーゲンの2重量%未満しか原線維で構成されていないコラーゲンの溶液を指す。これらの条件下でコラーゲン溶液を維持するために、単離されたコラーゲンを、コラーゲン原線維形成を嫌う条件下で保存することができる。これは、コラーゲンが酸性条件下で保存されることを意味し得、ここで、酸性とは、pH1~pH6.5のpHを有する任意の溶液を意味するか、あるいは、コラーゲンが塩基性条件下で保存されることを意味し得、ここで、塩基性とは、pH8~pH14のpHを有する任意の溶液を意味する。非限定的な例として、コラーゲンは、0.1Mの弱酸溶液中で保存され得る。弱酸は、酢酸又は塩酸であり得る。コラーゲン溶液中のコラーゲンの濃度は、0.1mg/ml~30mg/mlの範囲内であり得る。好ましくは、コラーゲン溶液の濃度は、1mg/ml~10mg/mlである。
【0041】
解剖学的環境からクラゲコラーゲンを「単離」又は「精製」する複数の方法が存在する。これらの多くは、当業者に周知であり、日常的なものである。例えば、コラーゲンを酸抽出によってクラゲから精製することができ、それにより、クラゲの様々な解剖学的部分が酸性溶液に浸される。「浸す」又は「浸される」とは、コラーゲン分子を遊離させるためにクラゲを酸溶液中で十分な時間にわたってインキュベートするプロセスを指す。コラーゲン精製の代替の方法は酵素抽出であり、これにより、クラゲが少なくとも1つのタンパク質分解酵素とコラーゲン分子を遊離させるために解剖学的環境の分解を好む条件下で十分な時間にわたってインキュベートされる。酵素抽出法の正確な温度、pH、及びインキュベーション時間は、使用されるタンパク質分解酵素により異なる。最も好適な条件は、当業者に周知である。非限定的な例として、酵素ペプシンを、コラーゲン分子を遊離させるために酸性条件下でクラゲとインキュベートすることができる。任意の酵素が酵素抽出法で使用され得ることが想定され、上記の例は決して限定的であるようには意図されていない。
【0042】
その後、コラーゲンを、多くの異なる手段によって酸又は酵素抽出法の望ましくない夾雑物から更に単離又は精製することができる。例えば、不溶性夾雑物を遠心分離によって除去することができる。コラーゲンのより純粋な源が必要とされる場合、単離されたコラーゲンを、ゲル濾過、又は抽出プロセスの他の可溶性夾雑物からのコラーゲン分子の精製を可能にする代替のクロマトグラフィー法に供することができる。更なる精製の正確な方法は特に限定されない。タンパク質生化学者に周知であり、かつ日常的に使用されているいずれの方法も、精製又は単離されたクラゲコラーゲンを得る目的に適応させることができる。このステップにより、クラゲコラーゲンを所望の保存緩衝液に移して、精製されたクラゲコラーゲンの所望の溶液を得ることが可能になり得る。これは、精製前にクロマトグラフィー装置を所望の保存緩衝液で最初に平衡化することによって達成することができる。この目的に使用することができる周知の代替方法が多数存在する。好ましくは、本発明で使用されるコラーゲン溶液は、70%~99%純粋であり、ここで、純粋とは、コラーゲン分子に起因する溶液中の重量%を指す。より好ましくは、コラーゲン溶液は、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%純粋である。
【0043】
いくつかの実施形態では、製造する方法は、
iii)架橋剤を添加して、架橋クラゲコラーゲンを形成するステップを更に含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、架橋剤は、EDC、ゲニピン、又はポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは、架橋剤は、EDCである。EDCは、0.01%~5%、0.05%~5%、0.1%~5%、0.2%~5%、0.3%~5%、0.4%~5%、0.5%~5%、0.6%~5%、0.7%~5%、0.8%~5%、0.9%~5%、1%~5%、1.5%~5%、2%~5%、3%~5%、3.5%~5%、4%~5%、又は4.5%~5%の濃度であり得る。好ましくは、EDCの濃度は、0.5%~1%である。
【0045】
いくつかの実施形態では、クラゲコラーゲンを製造する方法は、抽出されたクラゲコラーゲンをペプチダーゼで消化して、アテロクラゲコラーゲンを提供することを更に含む。好ましくは、コラーゲンをペプチダーゼで消化するステップでは、ペプチダーゼは、ペプシンである。ペプシンは、哺乳類由来のもの、非哺乳類由来のもの(例えば、パパイン)、又は微生物由来のものであり得る。いくつかの実施形態では、コラーゲンをペプチダーゼで消化するステップは、抽出ステップの後であり、かつ精製ステップの前である。
上記のクラゲコラーゲンを製造する方法は、i)S-S結合を含むクラゲコラーゲンを提供するステップと、ii)S-S結合の還元により-SH基をS-S結合を含む当該クラゲコラーゲンに導入して、-SH基を含むコラーゲンチオールを提供するステップとを更に含み得る。
【0046】
クラゲコラーゲンが-SH基を含むために、クラゲコラーゲンは最初にS-S結合又は「ジスルフィド」基を含まなければならない。天然に存在するコラーゲンは、典型的にはS-S結合を含まない。ジスルフィド基は、いくつかの経路によってコラーゲンに組み込まれ得る。S-S結合を含むクラゲコラーゲンは、リジン残基及びヒドロキシリジン残基の一方又は両方を有するクラゲコラーゲンによって得ることができる。コラーゲンは、ポリペプチド鎖の三重らせんの形態をとり、それらのうちの1つ以上が一般にリジン残基及びヒドロキシリジン残基の一方又は両方を含む。リジン及びヒドロキシリジンは、ε-アミノ基を有するα-アミノ酸である。本明細書で使用される場合、「残基」という用語は、例えば化学反応及び結合形成によって別の物質に取り込まれた後に残る化合物の部分を指す。したがって、アミノ酸「残基」とは、ポリペプチド中に存在するアミノ酸単量体の重合形態を指す。コラーゲン中の量がリジン残基よりも4~5倍少ないが、ヒドロキシリジン残基も、本明細書に開示される方法で使用するのに十分な量で存在する。したがって、リジン残基又はヒドロキシリジン残基を含むコラーゲンは、本明細書に記載の処理の前に、式(XI)の残基を含み得、
【化1】
式中、R
5が、H又はOHである。R
5がHである場合、リジン残基が存在する。R
5がOHである場合、ヒドロキシリジン残基が存在する。
Xは、OH基及び化学結合から選択され、Yは、H及び化学結合から選択されるが、但し、X及びYの一方又は両方がコラーゲン内でペプチド結合を形成する化学結合であることを条件とする。修飾コラーゲンの一部を形成するペプチド鎖は、式(XI)中、括弧「[]」で囲まれて示される。残基は、例えば、X及びYの一方又は他方が、それぞれ、OH及びHである場合、ペプチドの末端位置にあり得る。X及びYの両方がペプチド結合である場合、リジン残基は、コラーゲンの一部を形成するペプチド鎖内で非末端である。
【0047】
リジン残基及びヒドロキシリジン残基の一方又は両方を含むクラゲコラーゲンは、好ましくは、リジン及びヒドロキシリジンの一方又は両方を含む可溶化クラゲコラーゲンである。可溶化が、ペプシン消化若しくは酸消化によって達成されて、リジン及びヒドロキシリジンの一方又は両方を含むペプシン可溶化クラゲコラーゲンを提供することができるか、又は酸消化によって達成されて、リジン及びヒドロキシリジンの一方又は両方を含む酸可溶化クラゲコラーゲンを提供することができる。
【0048】
リジン残基及びヒドロキシリジン残基の一方又は両方を含むペプシン可溶化又は酸可溶化クラゲコラーゲンなどのクラゲコラーゲンを、ジスルフィド(すなわちS-S)基を含む活性化ジカルボン酸誘導体と反応させて、S-S結合を含むコラーゲンを提供することができる。この反応では、活性化ジカルボン酸誘導体のカルボニル基が、クラゲコラーゲン中に存在するリジン残基又はヒドロキシリジン残基のe-アミノ基と反応して、アミド結合を形成することができる。
【0049】
活性化ジカルボン酸誘導体は、好ましくは、以下の式の化合物であり、
ZN-C(O)-R3-C(O)-NH-R1-S-S-R2-NH-C(O)-R3-C(O)-NZ (I)
式中、R1、R2、及びR3が独立して、二価連結基、好ましくは二価有機連結基、より好ましくは二価炭化水素連結基、例えば、1~6個の炭素原子を有するアルカンジイル基又は2~6個の炭素原子を有するアルケンジイル基若しくはアルキンジイル基を表す。更により好ましくは、R1、R2、及びR3は独立して、エタンジイル基又はプロパンジイル基を表し、最も好ましくはエタンジイル、すなわち、-CH2CH2-を表す。R1基、R2基、及びR3基は独立して、1~4個の水素原子をヒドロキシル基又はハロゲン、例えば、F又はClなどで置き換えることによって任意選択的に置換され得る。好ましい実施形態では、R1とR2は同一であり、ZNは一緒に、窒素含有複素環基、好ましくは複素環に5~6個の原子を有する窒素含有複素環基を表し、ここで、N原子は、Zが、2つの原子価が窒素に結合している二価連結基を表すように、式(I)の化合物のカルボニル基に直接結合している。複素環基は、Zが、特に2~4個の炭素原子を有するアルカンジイル、アルケンジイル、又はアルキンジイルを表し得るように、飽和又は不飽和であり得る。Zは、任意選択的に、O、S、及びNから選択される1個又は2個のヘテロ原子を含み得る。
【0050】
より好ましくは、ZNは、アリール環に5~6個の原子を有する窒素含有ヘテロアリール基であり、それらのうちの1~3個の原子は、O、N、及びSから選択されるヘテロ原子であり、それらのうちの少なくとも1個は、式(I)の化合物のカルボニル基に直接結合しているNである。更により好ましくは、ヘテロアリール基は、アリール環に5~6個の原子を有し、それらのうちの2個の原子がNである。あるいは、ZNは、式(I)の化合物のカルボニル基に直接結合している1個のN原子を有する複素環に5~6個の原子を有する窒素含有複素環基であり、Zは、α,ω-オルガノジオンジイルである。例えば、α,ω-オルガノジオンジイルは-C(O)R4C(O)-として表され得、式中、R4が、2個又は3個の炭素原子を有するアルカンジイル又はアルケンジイルである。
【0051】
ZN基は、1~4個の水素原子をヒドロキシル基又はハロゲン、例えば、F、Br、若しくはClで置き換えることによって、又は同じ炭素に結合した2個の水素原子を酸素原子で置き換えてカルボニル基を形成することによって任意選択的に置換され得、後者の置換は1回又は2回起こり得る。
【0052】
最も好ましくは、ZN基は、
1-イミダゾール、すなわち、
【化2】
であるか、又は1-ピロリジン-2,5-ジオン、すなわち、
【化3】
である。
好ましい活性化ジカルボン酸誘導体は、
【化4】
から選択され得る。
【0053】
活性化ジカルボン酸誘導体(I)は、2つのステップで合成され得る。最初に、式(IV)のジアミノジスルフィドを少なくとも2モル当量の式(V)のジカルボン酸無水物と反応させて、式(VI)のジカルボン酸ジアミドを得ることができる。
H
2N-R
1-S-S-R
2-NH
2 (IV)+
【化5】
HO-C(O)-R
3-C(O)-NH-R
1-S-S-R
2-NH-C(O)-R
3-C(O)-OH (VI)
式中、R
1、R
2、及びR
3は、上で定義された通りである。R
1とR
2が同一である場合、式(IV)のジアミノジスルフィドが対称的な分子であり、これにより、対称的な活性化ジカルボン酸誘導体(I)がもたらされることが明らかであろう。
【0054】
第1の反応ステップは、式(IV)のジアミノジスルフィドを水などの溶媒中に溶解させ、式(V)のジカルボン酸無水物を添加することによって行うことができる。酸無水物の添加前に塩基を添加することができるように、反応が塩基性条件下で行われることが好ましい。例えば、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10に調整することができる。ジカルボン酸無水物の添加後にpHが減少する可能性があり、更なる塩基の添加により反応中にpHを7~10の範囲内に維持することが好ましい。この反応は室温で撹拌しながら行われ得、30分~2時間以内に完了し得る。式(VI)のジカルボン酸ジアミド生成物は、塩酸水溶液などの酸を添加してpHを例えばpH1まで低下させることによって沈殿することができる。沈殿したジカルボン酸ジアミド(VI)を濾過により単離し、水で洗浄し、その後、減圧下で乾燥させることができる。
【0055】
合成の第2のステップでは、ジカルボン酸ジアミド(VI)が窒素含有複素環式化合物の添加によって活性化されて、活性化ジカルボン酸誘導体(I)が提供される。
HO-C(O)-R3-C(O)-NH-R1-S-S-R2-NH-C(O)-R3-C(O)-OH (VI)→
ZN-C(O)-R3-C(O)-NH-R1-S-S-R2-NH-C(O)-R3-C(O)-NZ (I)
式中、R1、R2、R3、及びNZは、上で定義された通りである。
【0056】
一実施形態では、窒素含有複素環式化合物は、式(VII)の化合物などのカルボジイミドであり得る。
【化6】
式中、Zは、上で定義された通りである。好ましくは、ZNは一緒に、アリール環に5~6個の原子を有する窒素含有ヘテロアリール基であり、それらのうちの1~3個の原子は、O、N、及びSから選択されるヘテロ原子であり、それらのうちの少なくとも1個はNである。カルボジイミド(VII)は、より好ましくは1,1’-カルボニル-ジイミダゾールなどである。
【0057】
ジカルボン酸ジアミド(VI)1モル当たり少なくとも2モル当量のカルボジイミドが使用されるべきである。理論的には、反応により、ジカルボン酸ジアミド(VI)1モル当たり2モル当量の二酸化炭素及び2モル当量のイミダゾールが生成される。二酸化炭素ガスの発生は、反応が進行していることを示す。反応は、減圧下で行われ得る。
【0058】
別の実施形態では、窒素含有複素環式化合物は、式(VIII)のN-ヒドロキシ複素環式化合物であり得る。
【化7】
式中、ZNは一緒に、複素環に5~6個の原子を有する窒素含有複素環基であり、それらのうちの1個はNであり、Zは、α,ω-オルガノジオンジイルである。例えば、α,ω-オルガノジオンジイルは-C(O)R
4C(O)-として表され得、式中、R
4が、2個又は3個の炭素原子を有するアルカンジイル又はアルケンジイルである。N-ヒドロキシ複素環式化合物(VIII)は、最も好ましくはN-ヒドロキシスクシンイミドである。
【0059】
第2の反応ステップは、ジカルボン酸ジアミド(VI)を無水ジメチルホルムアミドなどの溶媒中に溶解させ、その後、窒素含有複素環式化合物(VII)又は(VIII)を添加することによって行われ得る。活性化ジカルボン酸誘導体(I)が溶液から沈殿する。生成物を濾過により収集し、無水酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥させることができる。
【0060】
本発明の方法の第1のステップに戻って、リジン残基及びヒドロキシリジン残基の一方又は両方を含むソースコラーゲンを、式(I)の活性化ジカルボン酸誘導体などのジスルフィド基を含む活性化ジカルボン酸誘導体と反応させて、S-S結合を含むコラーゲン、例えば、S-S結合を含むタイプI、II、III、IV、V、VI、IX、X、及びXIのうちの1つ以上のコラーゲンを提供することができる。この反応では、活性化ジカルボン酸誘導体のカルボニル基が、コラーゲン中に存在するリジン残基又はヒドロキシリジン残基のe-アミノ基と反応してアミド結合を形成し、それにより、ジスルフィド基を組み込むことができる。反応を以下で表すことができる。
ZN-C(O)-R3-C(O)-NH-R1-S-S-R2-NH-C(O)-R3-C(O)-NZ (I)+コラーゲン-NH2→
ZN-C(O)-R3-C(O)-NH-R1-S-S-R2-NH-C(O)-R3-C(O)-NH-コラーゲン+HNZ
この反応は、活性化ジカルボン酸誘導体の両方の活性化カルボキシル基がコラーゲン、特に異なるコラーゲン三重らせん又は原線維と反応したときに、架橋コラーゲンを提供し続ける可能性がある。
ZN-C(O)-R3-C(O)-NH-R1-S-S-R2-NH-C(O)-R3-C(O)-NH-コラーゲン+コラーゲン-NH2→
コラーゲン-HN-C(O)-R3-C(O)-NH-R1-S-S-R2-NH-C(O)-R3-C(O)-NH-コラーゲン+HNZ
反応を、ソースコラーゲンを溶媒中に溶解させることによって行うことができる。ソースコラーゲンの溶解を二段階プロセスで行うことができる。第1のステップでは、ソースコラーゲンがメタノールと混合され得る。第2のステップでは、極性非プロトン性溶媒が添加される。例えば、ソースコラーゲンをメタノールとジメチルスルホキシドの混合物に添加して、膨潤させることができる。ソースコラーゲンの溶解が完了するまで、追加のジメチルスルホキシドを撹拌しながら添加することができる。その後、減圧下で蒸発させることにより、メタノールを溶液から除去することができる。この可溶化プロセスは、アテロコラーゲン及びテロコラーゲンの両方で使用することができる。
【0061】
その後、活性化ジカルボン酸誘導体を溶媒、特にジメチルスルホキシドなどの無水極性非プロトン性溶媒中に溶解させることができる。式(I)の活性化ジカルボン酸誘導体が水に感受性があるため、コラーゲンとの反応がジメチルスルホキシドなどの無水極性非プロトン性溶媒中で行われることが好ましい。その後、溶媒中に溶解した活性化ジカルボン酸誘導体がソースコラーゲン溶液に添加される。活性化ジカルボン酸誘導体のカルボニル基が、ソースコラーゲン中に存在するリジン残基又はヒドロキシリジン残基のe-アミノ基と反応して、アミド結合を形成することができる。
【0062】
ゲルが形成されるまで、混合物を室温、例えば22℃で撹拌することができる。その後、ゲルを含む混合物を、例えば12~18時間静置することができる。その後、ジメチルスルホキシドを、過剰のアセトンとブレンドし、デカンテーションによってコラーゲンゲルを収集し、次いで、更なるアセトンと再ブレンドすることによって、ゲルから抽出することができる。その後、混合物を、例えば0.5~1時間撹拌し、続いてコラーゲンを濾過により単離し、アセトンで洗浄し、その後、水-エタノール(30:70 v/v)で洗浄し、エタノールで脱水することができる。これにより、S-S結合を含むクラゲコラーゲンが提供される。
【0063】
別の実施形態では、S-S結合を含むクラゲコラーゲンは、ジスルフィド基を含む光反応性架橋剤を含むようにコラーゲン結合タンパク質を修飾し、これをクラゲコラーゲンと組み合わせて複合体を提供し、かつ複合体を照射して光反応性架橋剤を架橋してジスルフィド基をコラーゲンに組み込むことによって提供され得る。
【0064】
コラーゲンにおけるチオール基の作製を可能にする部位特異的光架橋戦略を使用することによって、この経路によりクラゲコラーゲンにタンパク質結合部位が作製される。これは、部位特異的変異誘発によってシステイン残基をコラーゲン結合タンパク質に導入することを伴う。光反応性架橋剤、好ましくはAPDPをタンパク質のシステイン-SH基に導入することができる。APDP修飾タンパク質とコラーゲンの複合体を紫外線(uv)照射によって架橋することができる。その後、ジスルフィド架橋が還元によって切断され、クラゲコラーゲンに-SH基が生成される。
【0065】
第1のステップでは、システイン残基を含むコラーゲン結合タンパク質が提供される。システイン残基は、架橋剤との反応に必要なスルフヒドリル基を含むため、必要である。コラーゲン結合タンパク質は、例えば、色素上皮由来因子(PEDF)であり得る。PEDFは、Biochemistry,2003,42(3160~3167貢)に開示されるようにYasuiらによって特定されたコラーゲン結合部位を有する既知の抗血管新生/神経栄養因子である。
【0066】
必要に応じて、システインがまだ存在しない場合、又はコラーゲン結合タンパク質が十分なシステインを含んでいない場合、システインがコラーゲン結合タンパク質に組み込まれ得る。システイン置換は、部位特異的変異誘発により、例えばコラーゲン結合部位が局在する場所(F383)及び部位の反対側の表面(Y211)に作製され得る。かかる部位特異的変異誘発を行うための方法は、J.D.J.Biol.Chem.2002,277,4223-4231及びR.R.Biochemistry 1992,31,9526-9532で見つけられる。
【0067】
その後、システイン置換の結果として導入されたスルフヒドリル基を光反応性架橋剤と反応させることができる。光反応性架橋剤は二官能性でなければならない。具体的には、光反応性架橋剤は、スルフヒドリル基と反応してジスルフィド結合を生成することができる官能基を含まなければならない。かかる好適な官能基の1つは、ピリジル-ジチオ基、すなわち、C5NH5-S-S-、特に2-ピリジルジチオである。光反応性架橋剤は、光照射下でコラーゲンと架橋することができる官能基も含まなければならない。かかる好適な官能基の1つは、アジド基、特にアリールアジド基、例えば、フェニルアジド、特にパラ-C6H4-N3である。
【0068】
N-[4-(p-アジドサリチルアミド)ブチル]-3′-(2′ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP)は、好ましい光反応性架橋剤の一例である。APDPのジスルフィド基がシステインのスルフヒドリル基と反応して、システインと光反応性架橋剤との間にジスルフィド結合を生成し、それにより、S-S基を含む光反応性架橋剤で修飾されたコラーゲン結合タンパク質が提供され得る。2-ピリジルチオンは脱離基としてこの反応の一部として遊離される。
【0069】
その後、光反応性架橋剤で修飾されたコラーゲン結合タンパク質をクラゲコラーゲンと組み合わせて、光反応性架橋剤で修飾されたコラーゲン結合タンパク質とクラゲコラーゲンの複合体を提供することができる。このステップでは、光反応性架橋剤で修飾されたコラーゲン結合タンパク質がクラゲコラーゲンのタンパク質結合部位に結合して、複合体を形成する。その後、光反応性架橋剤で修飾されたコラーゲン結合タンパク質とコラーゲンの複合体に、例えば紫外線(UV)光を照射することができる。照射により、光反応性架橋剤上に存在する架橋することができる官能基が複合体中の隣接するコラーゲンと共有結合を形成するようになる。例えば、架橋することができる官能基がフェニルアジドである場合、250~280nmの範囲内の波長での照射により、ナイトレンが生成され、その後、コラーゲン上のC-H又はC-NH2などの求核性又は活性水素基を攻撃して、C-H結合又はN-H結合にわたる挿入により架橋を生成することができる。このようにして、S-S基を含む光反応性架橋剤修飾コラーゲン結合タンパク質がコラーゲンに取り込まれて、S-S結合を含むコラーゲンが提供される。この経路によりジスルフィド基がコラーゲンタンパク質結合部位の近くに提供されることが明らかであろう。
【0070】
その後、スルフヒドリル基を、上述の方法のいずれかによって、すなわち、活性化ジカルボン酸誘導体又は光反応性架橋剤法のいずれかを使用して提供され得るS-S結合を含むコラーゲンに導入することができる。S-S結合を含むクラゲコラーゲンを好適な還元剤と反応させることができる。還元剤は、ジスルフィド結合を2つのスルフヒドリル基に還元し、それにより、ジスルフィド基が位置する活性化ジカルボン酸誘導体残基又は光反応性架橋剤残基が切断される。かかる還元は、2つの連続的なチオール-ジスルフィド交換反応によって進行し、これにより、ジスルフィド基が還元されて、スルフヒドリル(-SH)基を含むクラゲコラーゲンが生成される。
【0071】
好適な還元剤には、例えば、ジチオスレイトール(DTT)、(2S)-2-アミノ-1,4-ジメルカプトブタン(DTBA)、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンHCl(TCEP塩酸塩)が挙げられる。ジチオスレイトールが好ましい還元剤である。
【0072】
還元ステップは、S-S結合を含むクラゲコラーゲンを、7.5~9.5、より好ましくは約8~9.5の範囲内、好ましくは8.0のpHのグリシン/水酸化ナトリウム緩衝液などの緩衝溶液に添加することによって行うことができる。S-S結合を含むクラゲコラーゲンは本質的に酸性である可能性があり、そうである場合、水酸化ナトリウムなどの塩基での中和が必要とされ得る。
【0073】
好ましくは、同じ緩衝液中にジスルフィド基1モル当たり少なくとも2モル当量のDTT還元剤を添加し、反応を30℃で2~6時間進行させることができる。反応の完了後、例えばHClを使用して、液体のpHを2に低下させることができる。その後、混合物を希HCl溶液で透析し、遠心分離し、凍結乾燥させて、-SH基を有するクラゲコラーゲンチオールを得ることができる。
【0074】
還元により、コラーゲン鎖にわずかな分解が引き起こされ得る。その結果として、より短い反応時間、より低いpH、及びより低い温度の全てが使用されて、あらゆる分解を最小限に抑えることができる。
【0075】
S-S結合を含むクラゲコラーゲンが光反応性架橋剤で修飾されたコラーゲン結合タンパク質を使用して提供される場合、コラーゲンチオールを形成するステップの前に修飾されたコラーゲン結合タンパク質が光反応性架橋剤を介してコラーゲンに依然として結合していることが明らかであろう。S-S結合の還元により、光反応性架橋剤のS-S結合が切断されるであろう。
【0076】
クラゲコラーゲンがリジン残基及びヒドロキシリジン残基の一方又は両方を含む場合、式(X)のリジン残基又はヒドロキシリジン残基を含むクラゲコラーゲンチオールが提供される。
【化8】
式中、R
1、R
3、及びR
5は、上で定義された通りである。例えば、R
1及びR
3は独立して、二価連結基、好ましくは二価有機連結基、より好ましくは二価炭化水素連結基、例えば、1~6個の炭素原子を有するアルカンジイル基又は2~6個の炭素原子を有するアルケンジイル基若しくはアルキンジイル基から選択される。更により好ましくは、R
1及びR
3は独立して、エタンジイル基又はプロパンジイル基を表し、最も好ましくはエタンジイル(すなわち、-CH
2CH
2-)を表す。アミノ酸残基がリジン残基である場合、R
5はHである。アミノ酸残基がヒドロキシリジン残基である場合、R
5はOHであり、Xは、OH基及び化学結合から選択され、Yは、H及び化学結合から選択されるが、但し、X及びY一方又は両方がコラーゲン内でペプチド結合を形成する化学結合であることを条件とする。修飾コラーゲンの一部を形成するペプチド鎖は、式(X)中、括弧「[]」で囲まれて示される。残基は、例えば、X及びYの一方又は他方が、それぞれ、OH及びHである場合、ペプチドの末端位置にあり得る。X及びYの両方がペプチド結合である場合、リジン残基は、コラーゲンの一部を形成するペプチド鎖内で非末端である。
【0077】
本発明は、チオール化されていてもされていなくてもよい、本明細書に開示されるクラゲコラーゲンを製造する方法であって、i)精製されたクラゲコラーゲン又はコラーゲンチオールの溶液を水性中和緩衝液と混合するステップと、ii)コラーゲン原線維が生じるのに十分な時間にわたって混合物をインキュベートするステップと、を更に含み、架橋剤がステップi)又はステップii)のいずれかで添加されて、架橋コラーゲンが提供される、方法を更に提供する。
【0078】
「中和緩衝液」という用語は、精製されたクラゲコラーゲンの溶液を希釈してpHをpH4~pH9のpHに増減させることができる任意の緩衝液を指す。コラーゲン原線維形成が進行することができるように中和緩衝液が精製されたクラゲコラーゲンの溶液のpHを増減させなければならない場合にのみ、中和緩衝液の組成は特に限定されない。更に、緩衝液は、あらゆる架橋プロセスを妨害し得るイオン、化合物、又は分子を実質的に含まないものでなければならない。したがって、未反応アミンを実質的に含まない緩衝液が特に望ましい。単なる非限定的な例として、中和緩衝液は、1×~10×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってもよく、ここで、1×又は10×とは、PBSの濃度を指す。1×PBSの組成は当業者には周知である。PBSの正確な濃度(すなわち1×、又は例えば10×)は、精製されたクラゲコラーゲンの溶液が実質的に中和されてコラーゲン原線維形成が進行することができるようにするために、精製されたクラゲコラーゲンの溶液との混合時に必要な希釈係数に完全に依存する。いくつかの実施形態では、中和緩衝液は、水酸化ナトリウムである。
【0079】
「原線維形成(fibril formation)」又は「原線維形成(fibrillogenesis)」という用語は、コラーゲン分子が凝集制御を経て、高次の十分に構造化された巨大分子集合体を形成するプロセスを指す。インビボでのコラーゲンは、主に細胞外タンパク質であり、これらが原線維状構造に凝集することにより、周辺組織及び/又は細胞外マトリックスの成分に構造的支持が提供される。コラーゲン、特に哺乳類コラーゲンの凝集は、周知の現象である。哺乳類コラーゲン及び海洋コラーゲンの異なるアイソフォームが優先的に凝集して、異なる巨大分子構造を形成する。各コラーゲンアイソフォームから形成される特有の巨大分子構造は、コラーゲンポリペプチドの物理化学的特性及び原線維形成が促進される条件によって決定される。高次コラーゲン構造、すなわち、哺乳動物又は魚から得られたコラーゲン原線維は、哺乳類及び/又は魚コラーゲンヒドロゲルを生成するためにインビボで利用されている。したがって、クラゲコラーゲンからヒドロゲルを形成するために、クラゲコラーゲンが集合して高次構造を形成することが好ましい。好ましくは、高次構造は、原線維である。
【0080】
コラーゲン原線維が形成される条件下で架橋することが知られているいずれの架橋剤も本発明における使用に好適な架橋剤であると想定される。ある特定の用途では、非細胞毒性の架橋剤を使用することが望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、架橋剤は、ゲニピン、1,4-BDDGE、又はムコクロル酸から選択され得る。好ましくは、架橋剤は、ゲニピン又は1,4-BDDGEのいずれかである。
【0081】
これから、以下の実施例及び研究を参照して、本発明を更に説明する。
【実施例0082】
実施例1-皮膚創傷治癒のマウスモデルにおけるクラゲコラーゲンスポンジ、架橋クラゲコラーゲンスポンジ、及び化学修飾(チオール化)クラゲコラーゲンペーストの効果を決定する研究。
【0083】
目的
C57BL/6Jマウスの切除皮膚創傷治癒モデルにおける、クラゲコラーゲンスポンジの性能、架橋クラゲコラーゲンスポンジの性能、化学修飾(チオール化)クラゲコラーゲンペーストの性能を、市販の創傷製品Puracol(登録商標)と比較すること。
【0084】
手順
5~6週齢の80匹の雄C57BL/6JマウスがEpistemによって提供され、各々40匹のマウスの2つのコホートに分けた。マウスの各コホートを2週間順応させ、1コホート当たり8匹のマウスを5つの処理群のうちの1つに無作為に割り付けた。0日目(創傷日)に、全ての動物に麻酔をかけ、剪毛し、各マウスの背側正中線の両側の同じ相対位置に直径6mmの切除創傷を2つ作製した。割り付けられた処理群に従って、以下のドレッシング材:事前に形成したクラゲコラーゲンスポンジ(標準又は架橋のいずれか)、化学修飾(チオール化)コラーゲンゲル、事前に切断したPuracol(登録商標)ドレッシング材、処理なしのうちのいずれか1つを各マウスの創傷腔に適用した。創傷処理を施した後、Tegadermフィルムドレッシング材を適用して各創傷を覆った。処置後、マウスを加温キャビネットに入れ、麻酔から回復させた後に待機室に戻した。全てのマウスを創傷時から個別に収容した。創傷を、あらゆる感染の兆候及びTegadermフィルムドレッシング材の剥離について、少なくとも1日1回監視した。マウスの通常の活動によってTegadermが折り畳まれるため、研究の生前段階(in-life phase)では、創傷状態の視覚的評価及び創傷幅の測定を正確に行うことができなかった。
【0085】
各コホートから、1処理群当たり4匹のマウスを創傷3日後に安楽死させ、4匹のマウスを創傷7日後に安楽死させた。マウスを頸椎脱臼によって人道的に殺処分し、両方の創傷を含む背側皮膚の条片を切除した。デジタルキャリパーを使用して創傷幅を決定し、主観的視覚スコア(1~5)も肉眼的治癒の程度に応じて創傷に割り当てた。組織学的処理及びヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色創傷横断切片の調製のために、個々の創傷を二等分し、半分を液体窒素で瞬間凍結させ、半分を10%中性緩衝ホルマリンで固定した。創傷切片の各々について、創傷幅及び再上皮化の程度を、コンピューター支援形態計測(Zeiss Axiohomeシステム)を使用して決定した。加えて、肉芽組織成熟度の主観的スコアを各創傷に割り当て、肉芽組織の面積を決定した。
【0086】
結果
各々の処理群は、創傷幅の減少(
図1及び
図2)、再上皮化率の増加(
図3)、及び肉芽組織の増加(
図4)(肉芽組織成熟度及び肉芽組織の面積の両方)によって証明されるように、3日目から7日目までの切除創傷の治癒を示した。Tegadermのみの対照群では、平均創傷幅は3日目の(4.57±0.93)mmから7日目の(3.71±0.92)mmに減少した(引用されている数値は平均±標準偏差である)。
【0087】
架橋クラゲコラーゲンスポンジ群が最大創傷閉鎖を示し、3日目の平均創傷幅が(5.11±1.46)mmであり、7日目の値が(3.16±0.80)mmであった(
図2)。最小創傷閉鎖がPuracol(登録商標)群で観察され、7日目の平均創傷幅が(3.96±1.03)mmであった。
【0088】
Tegadermのみの群の再上皮化率は、3日目の(17.2±10.5)%から7日目の(59.7±37.9)%に上昇した。Puracol(登録商標)群は、7日目に(73.2±27.1)%で最も高い再上皮化率を示し、架橋クラゲコラーゲンスポンジ群は(70.7±30.3)%で同様のレベルの再上皮化率を示した(
図3)。
【0089】
肉芽組織スコア及び肉芽組織面積(総創傷面積パーセンテージとして)は、全ての群で3日目から7日目に増加した(
図4)。Tegadermのみの群では、3日目の平均肉芽組織スコアは(1.46±0.52)であり、創傷腔の(33±24)%を肉芽組織が占めていた。7日目までに、この群の平均肉芽組織スコアは(2.08±0.51)に増加し、創傷腔の(61±31)%が肉芽組織であった。Puracol(登録商標)群は、3日目に最も低い肉芽組織スコア(1.17±0.39)を有し、創傷腔内の肉芽組織はわずか(5±6)%であったが、7日目までに、この群は(2.63±0.52)の最も高い肉芽組織スコアを有し、創傷腔の(81±20)%が肉芽組織であった。クラゲコラーゲンスポンジ群及び化学修飾(チオール化)コラーゲンペースト群が3日目にTegadermのみの群と同様の量の肉芽組織を示した一方で、架橋クラゲコラーゲンスポンジでの処理は、3日目の創傷腔内の肉芽組織のおよそ半分に関連しており、わずか(15±21)%であった。7日目の最も低い平均肉芽組織スコア(1.67±0.50)が化学修飾(チオール化)コラーゲンペースト群で観察され、創傷腔のわずか(48±41)%が肉芽組織であった。3日目の肉芽組織を示す創傷腔の割合の差異にもかかわらず、いずれのタイプのクラゲコラーゲンスポンジも7日目の同様のレベルの肉芽組織と関連しており、標準スポンジでは(2.30±0.82)のスコアであり、架橋スポンジでは(2.18±0.75)のスコアであった。
【0090】
H&E染色創傷断面の観察により、Puracol(登録商標)及び架橋クラゲコラーゲンスポンジの両方の明らかな構造が3日目に創傷を覆って見えることが示された。架橋クラゲコラーゲンスポンジでは、スポンジの下の治癒上皮の移動が容易に明らかになった。各群の創傷の代表的な画像を、
図5(Tegadermのみ)、
図6(クラゲコラーゲンスポンジ)、
図7(化学修飾(チオール化)クラゲコラーゲンペースト)、
図8(架橋クラゲコラーゲンスポンジ)、及び
図9(Puracol(登録商標))に示す。これらは、創傷していない皮膚(多くの場合、過形成性上皮層を伴う)が創傷に隣接した状態の創傷縁を示している。Tegadermドレッシング材は、画像内の皮膚の表面上の波線として見ることができる。
【0091】
コラーゲンI免疫反応性が全ての創傷切片で観察され、代表的な画像を
図10に示し、これらは、H&E画像にも示されている創傷からのものである。顕著なコラーゲン1免疫反応性を創傷縁で観察することができ、創傷腔にわたって7日目の創傷でも観察することができる。
【0092】
結論
動物は様々な試験項目に十分に耐え、悪影響はなかった。負傷後の7日間、創傷がよく治癒し、ほとんどの動物で再上皮化の形跡が見られ、肉芽組織の量及び成熟度の両方が経時的に増加した。いずれのタイプのクラゲコラーゲンスポンジも7日目までの創傷腔における肉芽組織形成の程度に関してTegadermドレッシング材のみよりも優れており、架橋クラゲコラーゲンスポンジはより高い再上皮化率を示した。対照的に、クラゲ スポンジ及び参照製品であるPuracol(登録商標)ドレッシング材の性能は類似していた。
【0093】
この研究は、クラゲコラーゲンが、少なくとも同等の有効性を備えた、市場で販売されている既知の創傷治療用製品の好適な代替品であることを示している。これらの既知の製品は、典型的には哺乳類由来であり、それ故に、いくつかの欠点を伴う。したがって、創傷の治療に好適なコラーゲンの代替源を提供することは非常に有利である。
【0094】
実施例2-マウス創傷治癒ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料に対する抗マウスCD31抗体を使用した免疫組織化学標識。
【0095】
目的
この研究の目的は、研究18/099(皮膚創傷治癒マウスモデルにおける試験項目の効果を決定するための研究)によって得た152個のFFPEマウス創傷を切片化し、抗マウスCD31で免疫組織化学的に標識することであった。CD31は、血管新生の決定及び測定に一般的に使用されている内皮細胞マーカーである。
【0096】
手順
3日時点及び7日時点の研究18/099(皮膚創傷治癒マウスモデルにおける試験項目の効果を決定するための研究)中に得た152個のFFPEマウス創傷を3μmの厚さで切片化して、1スライド当たり2つの連続していない切片を1つのスライドに提供した。切片を帯電したスライド上にマウントし、37℃で一晩乾燥させた。
【0097】
152個のFFPE切片を脱ワックスし、再水和した後、室温で5分間、Proteinase K(Dako S3020)によるタンパク質消化を使用して抗原回復を行った。内因性ペルオキシダーゼをTBST中0.3%H2O2で15分間ブロックした後、非特異的結合を2.5%ヤギ血清で30分間ブロックした。切片を、ラットモノクローナル抗マウスCD31抗体であるクローンMEC13.3(BD Pharmingen 550274)と0.3125μg/mlで、室温で1時間インキュベートした。対応するラットモノクローナルIgG2aアイソタイプ対照を1つの試料に一次抗体と一致する濃度で含めた。未処理のマウス皮膚の試料を陽性組織対照として含めた。切片をTBSTで洗浄し、その後、抗ラットマウス吸着ポリマー(Vector ImmPress MP-7444)とインキュベートした。全ての標識がDAB(Vector ImmPact SK-4105)を使用して可視化され、切片をヘマトキシリンで対比染色した後に永久にマウントした。各々の標識スライドをその対応するブロックに対してチェックして一致を確認し、品質管理手順の一環として顕微鏡検査を行った。
【0098】
Zeiss Axioscope A1顕微鏡、AxioCam MRcカメラ、及びコンピューターワークステーションにインストールされたAxioVisionソフトウェアで構成されたAxioVision Imaging Systemを使用して、30個の代表的な画像を撮影して、画像をキャプチャした。10倍対物レンズを使用して画像を撮影した。
【0099】
創傷ドレッシング材処理群(Tegadermのみ、クラゲコラーゲンスポンジ、化学修飾(チオール化)クラゲコラーゲンペースト、架橋クラゲコラーゲンスポンジ、及びPuracol)の各々の代表的な画像を、3日目(
図11、
図13、
図15、
図17、及び
図19)及び7日目(
図12、
図14、
図16、
図18、及び
図20)に撮影した。方向付けのために、表皮を画像の一番上、すなわち、最上部にした状態で、各創傷を画像化した。
【0100】
結果及び結論
研究18/099から採取した創傷試料のマウス特異的内皮細胞マーカーCD31での標識に成功し、これは、血管新生がクラゲコラーゲンで処理したこれらの試料で起こったことを示す。
【0101】
インビボデータと同様に、上記のインビトロデータは、疾患/プリオン伝播のリスクの増大、夾雑のリスクの増大、及び哺乳類源からのコラーゲンの入手に関連するかなりのコストなどの哺乳類コラーゲンの使用に関連する不利点のない、クラゲコラーゲンが創傷の治療における使用のためのウシコラーゲンの適切な代替品であることを示している。クラゲコラーゲンと哺乳類コラーゲンの物理化学的特性及びアミノ酸特性が大きく異なることを考慮すると、この発見は驚くべきものである。
【0102】
実施例3-db/db(BKS.CG-m Dock 7m+/_+Leprdb/J)糖尿病マウスにおける全層切除創傷の治癒に対するクラゲ由来コラーゲン製剤の影響についての調査。
【0103】
目的
BKS.Cg-m Dock7m+/+Leprdb/J(db/db)糖尿病マウス(皮膚創傷治癒遅延型モデル)における創傷治癒に対する3つのクラゲ由来コラーゲン製剤の影響を調査すること。
【0104】
手順
試験用の材料:
-96ウェルプレート形成(直径約6mm)Jellagen非架橋スポンジ(-CHCl3滅菌)。
-微粉化0.5%EDC*架橋Jellagen粉末(CHCl3滅菌)(4g)。
-微粉化1%EDC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N‘-エチルカルボジイミド塩酸塩)架橋Jellagen粉末(CHCl3滅菌)(4g)。
-Promogran(商標)(プロテアーゼ調節マトリックス、Acelity(USA))。ロット1912V001、有効期限2021年2月28日。
BKS.Cg-m Dock7m+/+Leprdb/J糖尿病マウスモデル
従った方法を以下に簡潔に概説する。この研究の生前段階(live phase)を2019年9月19日から2019年10月9日の間に行った。
糖尿病マウス(BKS.Cg-m Dock7m+/+Leprdb/J、Jackson Labs(Bar Harbour,ME,USA))をおよそ9~10週齢で英国に持ち込み、研究開始前に1週間順応させた。動物を、英国内務省の規制及び糖尿病動物の特定の要件に従って維持した。動物を5つの処理群に無作為に割り付けた(表1)。
【表1】
【0105】
簡潔には、プロトコルに従って、イソフルラン及び空気を使用してマウスに麻酔をかけ、マウスの背側側腹部皮膚を切り取り、洗浄した。単一の標準化された全層創傷(10mm×10mm)を脊椎からおよそ5mm離れた左背側側腹部に作製した。滅菌生理食塩水を浸したガーゼスワブで創傷を洗浄し、滅菌ガーゼで乾燥させた。その後、15μLの滅菌生理食塩水を各創傷の表面に適用した。その後、試験用の材料を、生理食塩水で湿らせた創傷の表面に直接適用した。
【0106】
群2の創傷には、直径およそ6mm(96ウェル形成)の非架橋Jellagenスポンジを1つ適用し、群5の創傷には、6mmディスクの市販の対照薬Promogran(商標)(Acelity(USA))を適用し、群3及び群4の創傷には、5mgのEDC架橋Jellagen粉末(それぞれ、0.5%及び1.0%EDC架橋)を適用した。製品を適用した直後に、全ての創傷を半閉塞性フィルムドレッシング材Tegaderm(商標)フィルム(3M Deutschland GmbH(Germany))で覆った。このフィルムドレッシング材の状態を研究期間中毎日調べ、剥がれた場合は交換した。
【0107】
創傷後4、8、12、及び16日目に、全ての動物に再度麻酔をかけ、フィルムドレッシング材及びあらゆる遊離細片を取り除き、滅菌生理食塩水に浸したガーゼを使用して創傷(及び周縁の皮膚)を(創傷内のいずれの既存の製品も妨害することなく)穏やかに洗浄した。その後、創傷を撮影し(図示せず)、15μlの滅菌生理食塩水で湿らせ、選択した日に製品を選択した群の創傷に再適用した。
【0108】
当初、創傷後4日目に群2(非架橋Jellagenスポンジ)及び群5(Promogran(商標)、Acelity(USA))の創傷に製品を再適用することを予定していた。これらの製品のいずれも有意な分解を経験しなかったという観察を考慮して、この時点で再適用しないと決定した(治験依頼者も同意した)。しかしながら、既存の未分解製品を事前に除去することなく、創傷後8、12、及び16日目に、製品を再適用した。
【0109】
製品を再適用した後(指示されている場合)、創傷をTegaderm(商標)フィルムドレッシング材で(上記のように)再度覆い、動物を加温環境下(約35℃)で回復させた。創傷直後、その後、4、8、12、16、及び20日目に洗浄した後に、全ての創傷を較正/識別プレートと一緒にデジタル撮影した。
【0110】
全ての動物を創傷後20日目に処分した。組織切片における細胞増殖の検出の可能性を促進するために、処分する1時間前に、全ての動物に生理食塩水中5-ブロモ-2‘-デオキシウリジン(Sigma B5002)を腹腔内注射(30μg/g)した。その後、創傷及び周囲の周縁組織を全ての創傷から採取した。組織を固定し(中性緩衝ホルマリン、Sigma)、パラフィンワックスに包埋して、組織学的調査を円滑に進めた。
【0111】
概要
この研究では、治癒不良db/db糖尿病マウスにおける全層切除皮膚創傷の修復に対する3つのクラゲ由来製剤(非架橋Jellagenスポンジ、0.5%EDC架橋Jellagen粉末、及び1.0%EDC架橋Jellagen粉末)の局所適用の効果を調べた。
【0112】
これらの製剤/製品で処理した創傷の治癒を互いに比較し、市販の対照薬(Promogran(商標)プロテアーゼ調節マトリックス、Acelity(米国))で処理した創傷の治癒及び対照(フィルムドレッシング材のみ)で処理した創傷の治癒とも比較した。
【0113】
創傷治癒を、(i)新皮膚修復応答の開始及び(ii)創傷閉鎖の観点で20日間にわたって評価した。新皮膚組織形成の開始を、各時点での各群における応答した創傷の数として表した。創傷閉鎖を、全体的な観点と、その構成要素である創傷収縮及び創傷再上皮化の観点との両方で検討した。創傷閉鎖(収縮及び再上皮化)を、創傷後0、4、8、12、16、及び20日目に撮影したデジタル写真から決定した。組織学的レベルでは、創傷組織のH&E染色切片(20日目に採取したもの)を簡潔に検討し、肉芽組織形成及び再上皮化の観点で比較し、(2つのEDC架橋粉末製剤の場合)組織再生を支援するための構造的足場としてのそれらの潜在的使用の観点で比較した。
【0114】
結果の要約-創傷閉鎖
各々の創傷を、創傷直後、その後、4、8、12、16、及び20日目に、識別/較正プレートと一緒にデジタル撮影した。所与の時点での所与の創傷について、創傷閉鎖を、損傷直後(すなわち、0日目)の最初の創傷面積に対する残存創傷面積パーセンテージとして表した。全ての処理群の平均残存創傷面積パーセンテージデータを以下の表2に記載し、
図21に示す。
【0115】
【0116】
創傷閉鎖(経時的な「解放創傷面積%」の変化の観点で)を検討した際に、以下のことが観察された。
-評価した3つのJellagen製品が全て、12日目以降、「フィルムドレッシング材のみ」の対照での処理と比較して、閉鎖を有意に促進することが分かった。
【0117】
-3つのJellagen製品を比較した場合、非架橋スポンジの適用が1.0%EDC架橋粉末と同様のレベルの閉鎖をもたらし、いずれも 1.0%EDC架橋粉末に反応した場合をわずかに超えることが分かった。3つのJellagen製品処理群間で閉鎖に統計的に有意な差は観察されなかった。
【0118】
結果の要約-創傷収縮
収縮とは、創傷の「主部」内の肉芽組織の圧縮による創傷縁の求心運動である。このプロセスを駆動する「圧縮」力は、線維芽細胞系統の細胞に存在すると考えられている。この研究では、収縮率を以下のように計算した。
【表3】
非糖尿病マウスの創傷は主に収縮によって閉鎖するが、糖尿病マウス(この研究で使用したマウスなど)の創傷の収縮能力は大幅に低下している(恐らく、肉芽組織形成が不十分なため)。結果として、糖尿病動物の未処理の創傷は、非糖尿病動物の創傷を超える程度まで再上皮化によって閉鎖する傾向がある。収縮の増強が観察された場合、肉芽組織機能の改善が示唆され、これは、次いで、形成された肉芽組織の量の増加、それが形成される速度の増加、又は組織の収縮能力の増加によって説明され得る。全ての処理群の平均創傷収縮率データを表3(以下)に記載し、
図22に示す。
【表4】
【0119】
創傷収縮に対する処理の効果を検討した際に、以下のことが観察された。
-検討した全ての処理が、8日目以降、「フィルムドレッシング材のみ」の対照での処理と比較して、創傷収縮を有意に加速することが分かった。
【0120】
-3つのJellagen製品を比較した場合、収縮は1.0%EDC架橋粉末に応答してより広範になる傾向があり、これは、0.5%に応答して観察されたものよりも広範になる傾向があり、これは、次いで、非架橋スポンジに応答して観察されたものよりも広範になる傾向があった。統計分析では、1.0%EDC架橋粉末の適用が、非架橋スポンジでの処理と比較して、収縮を大幅に促進することが分かった。
【0121】
結果の要約-創傷再上皮化
所与の時点での所与の創傷について、再上皮化の面積を、損傷直後のその創傷の最初の面積のパーセンテージとして表した。全ての処理群の平均創傷再上皮化率データを表4(以下)に記載し、
図23に示す。
【表5】
【0122】
創傷再上皮化に対する処理の効果を検討した際に、以下のことが観察された。
-Jellagen処理群を検討した場合、非架橋スポンジの適用がEDC架橋粉末の適用よりも効果的であることが分かった。
【0123】
-非架橋スポンジに応答した再上皮化は、8日目、12日目、及び16日目にPromogran(商標)処理群で観察されたものを超え、20日目ではそれよりも低いことが分かった。
【0124】
-EDC架橋粉末に応答した再上皮化は、研究の大半で「フィルムドレッシング材のみ」の対照での処理に応答したものよりも低い傾向があったが、20日目の研究結論の時点では同様のレベルの再上皮化が達成されていた。
【0125】
結果の要約-新皮膚組織生成の開始
研究の全ての創傷を8日目まで毎日、その後、10、12、14、16、及び20日目に視覚的に評価して、「治癒」状態を確立した。創傷が中央創傷領域内で「新皮膚組織生成活性」を呈しているかについて、創傷を各々スコア化した。2名の独立した観察者によりスコア化が独立して行われ、各評価時点の「新皮膚組織生成活性」を呈する平均創傷%を処理群間で比較した。各日の各処理群における応答した創傷の数を表5に提示する。各群の応答までの平均時間を表6に示す。「フィルムドレッシング材のみ」の処理群における10個の創傷のうち10個が研究期間中に応答しなかったため、この群の「応答までの時間」の平均値が20を超える未知の値であることに留意されたい。
【表6】
【表7】
【0126】
「フィルムドレッシング材のみ」の対照での処理と比較して、3つ全てのJellagen製品の適用により、中央創傷領域内で「新皮膚組織形成」の開始が促進された。調査した3つのJellagen処理のうち、1.0%EDC架橋粉末が最も迅速な「開始」をもたらし、0.5%EDC架橋粉末が続き、最後に非架橋スポンジが続いた。3つの製品は全て、Promogran(商標)よりも効果的ではないにせよ、同等に効果的であった。
【0127】
結果の要約-創傷組織学
創傷組織を、周囲の創傷を囲む皮膚と一緒に、創傷後20日目の研究の終了時に各動物から採取した。組織試料を固定、処理し、パラフィンワックスに包埋した。切片(約6μm)を各創傷の中心から頭尾方向に採取した。これらの切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、デジタルスキャンした。各実験群における創傷の外観の代表的な例を
図24及び25に提示する。各群の創傷の肉芽組織沈着の典型的なレベル及び創傷再上皮化の程度を以下に記載する。
【0128】
対照で処理した創傷は、限定された肉芽組織形成及び限定された再上皮化を呈した(いずれも創傷縁に限定された)。
【0129】
非架橋スポンジの適用により、対照と比較して肉芽組織形成及び再上皮化の増加がもたらされた。肉芽組織は創傷基部全体にわたって形成されたが、「質」にばらつきがあることが分かった。創傷の大半に明らかな製品残留はなかった。
【0130】
両方のEDC架橋粉末の適用により、創傷の大半で肉芽組織形成の増加がもたらされ、再上皮化は最小限に抑えられた。これらの製品は、肉芽組織沈着の足場として機能するように見え、完全に細胞化されると、再上皮化を支援する可能性がある。全体的な創傷画像及び組織学的外観に基づいて、これらの製品は20日間の研究期間にわたって有意な分解を経験していないように見える。
【0131】
EDC架橋クラゲコラーゲン粉末が、創傷縁から新たな血管への成長を促進するように見えた。これは1.0%粉末で最も顕著であり、創傷表面の水和塊の外縁から進む赤みとして肉眼で見え、組織切片上でも明らかであった(
図26)。
【0132】
研究成果
この研究で評価した3つのJellagen製品が全て、治癒不良db/db糖尿病マウスモデルにおける創傷の治癒にプラスの影響を与えることが分かった。
【0133】
非架橋コラーゲンスポンジが、収縮及び再上皮化の両方を促進することによって創傷閉鎖を促進し、肉芽組織形成を促進することが分かった。このスポンジ材料は広範な圧縮及び限定された分解を受け、創傷組織に取り込まれないように見えた。
【0134】
架橋粉末は、主に創傷収縮プロセスを促進することによって創傷閉鎖を促進し、これは、肉芽組織形成の足場として機能するこれらの製品の能力によって説明され得る。
【0135】
実施例4-db/db(BKS.Cg-m Dock7m+/+Leprdb/J)糖尿病マウスにおける全層切除創傷の治癒に対するクラゲ由来コラーゲン製剤の影響についての調査。
目的
BKS.Cg- m Dock7m+/+Leprdb/J(db/db)糖尿病マウス(皮膚創傷治癒遅延型モデル)における創傷治癒に対する3つのクラゲ由来コラーゲン製剤の影響を調査すること。
【0136】
手順
試験用の材料:
-架橋クラゲコラーゲンスポンジ(Jellagen)。500μLのAMY2(4.5mg/mL)を使用して24ウェルプレートに作製。1%EDC架橋(CHCl3滅菌)。製造日2020年10月。スポンジを創傷サイズに切る。
-微粉化1%EDC*架橋クラゲコラーゲン粉末(Jellagen)(CHCl3滅菌)(個々の創傷アリコート約2.5mg)。
-微粉化チオール化クラゲコラーゲン粉末(Jellagen)(CHCl3滅菌)(個々の創傷アリコート約2.5mg)。
-対照薬:Integra(登録商標)Flowable Wound Matrix(Integra Lifesciences Inc.(Princeton,USA))。製品コード:FDR 301、ロット:4679547、有効期限2021年9月30日。
【0137】
BKS.Cg-m Dock7m+/+Leprdb/J糖尿病マウスモデル
従った方法を以下に簡潔に概説する。
糖尿病マウス(BKS.Cg-m Dock7m+/+Leprdb/J、Jackson Labs(Bar Harbour,ME,USA))をおよそ9~10週齢で英国に持ち込み、研究開始前に1週間順応させた。動物を、英国内務省の規制及び糖尿病動物の特定の要件に従って維持した。動物を5つの処理群に無作為に割り付けた(表7)。
【表8】
【0138】
簡潔には、プロトコルに従って、イソフルラン及び空気を使用してマウスに麻酔をかけ、マウスの背側側腹部皮膚を切り取り、洗浄した。単一の標準化された全層創傷(10mm×10mm)を脊椎からおよそ5mm離れた左背側側腹部に作製した。滅菌生理食塩水を浸したガーゼスワブで創傷を洗浄し、滅菌ガーゼで乾燥させた。その後、15μLの滅菌生理食塩水を各創傷の表面に適用した。その後、試験用の材料を、生理食塩水で湿らせた創傷の表面に直接適用した。
【0139】
再適用日(上の表7を参照のこと)に、動物に再度麻酔をかけ、フィルムドレッシング材及びあらゆる遊離細片を取り除き、滅菌生理食塩水に浸したガーゼを使用して創傷(及び周縁の皮膚)を(創傷内のいずれの既存の製品も妨害することなく)穏やかに洗浄した。その後、創傷を撮影し(図示せず)、15μlの滅菌生理食塩水で湿らせ、選択した日に製品を選択した群の創傷に再適用した。製品を再適用した後(指示されている場合)、創傷をTegaderm(商標)フィルムドレッシング材で再度覆い、動物を加温環境下(約35℃)で回復させた。創傷直後、及び創傷後4、8、12、16、20、24、28、35、42、49、56、及び63日目に、創傷を較正/識別プレートと一緒にデジタル撮影した。
【0140】
創傷後35日目に、各群から8匹の動物を屠殺した。残りの全ての動物を創傷後63日目に処分した。
【0141】
結果の要約-創傷閉鎖
各々の創傷を、創傷直後、その後、4、8、12、16、20、24、28、35、42、49、56、及び63日目に、識別/較正プレートと一緒にデジタル撮影した。所与の時点での所与の創傷について、創傷閉鎖を、損傷直後(すなわち、0日目)の最初の創傷面積に対する残存創傷面積パーセンテージとして表した。全ての処理群の平均残存創傷面積パーセンテージデータを
図27に示す。スポンジの存在により、架橋スポンジ処理群の創傷縁を明確に視覚化することが必ずしも可能ではなかったため、その試験群の値を
図27に含めていない。
【0142】
創傷閉鎖(経時的な「解放創傷面積%」の変化の観点で)を検討した際に、以下のことが観察された。
-検討した全ての処理が、「フィルムドレッシング材のみ」の対照での治療と比較して、創傷後少なくとも35日まで閉鎖を増加させることが分かった。チオール化粉末処理群及び対照処理群を除いて、創傷治癒のいくらかの退行が全ての群で35日目から63日目の間に認められた。
【0143】
-評価したJellagen製品が各々、少なくとも12日目以降、「フィルムドレッシング材のみ」の対照での処理と比較して、創傷閉鎖を有意に促進することが分かった(1.0%EDC架橋粉末及びチオール化粉末の場合は4日目)(
図27)。
【0144】
-2つのJellagen製品を比較した場合、チオール化粉末を適用した創傷は35日目まで最大応答を示し(n=12)、1%EDC架橋粉末が続いた(
図28)。それよりも後の時点(35日目以降)では有意差は認められなかった(n=4)。
【0145】
-チオール化粉末をIntegra製品と比較すると、非常に類似した閉鎖プロファイルが35日目まで観察され(n=12)(
図29)、チオール化粉末では42日目から63日目までわずかに増加した閉鎖が観察された(n=4)(
図27)。
【0146】
結果の要約-創傷収縮
収縮とは、創傷の「主部」内の肉芽組織の圧縮による創傷縁の求心運動である。このプロセスを駆動する「圧縮」力は、線維芽細胞系統の細胞に存在すると考えられている。この研究では、収縮率を以下のように計算した。
【表9】
【0147】
非糖尿病マウスの創傷は主に収縮によって閉鎖するが、糖尿病マウス(この研究で使用したマウスなど)の創傷の収縮能力は大幅に低下している(恐らく、肉芽組織形成が不十分なため)。結果として、糖尿病動物の未処理の創傷は、非糖尿病動物の創傷を超える程度まで再上皮化によって閉鎖する傾向がある。収縮の増強が観察された場合、肉芽組織機能の改善が示唆され、これは、次いで、形成された肉芽組織の量の増加、それが形成される速度の増加、又は組織の収縮能力の増加によって説明され得る。全ての処理群の平均創傷収縮率データを
図30に示す。
【0148】
創傷収縮に対する処理の効果を検討した際に、以下のことが観察された。
-検討した全ての処理が、「フィルムドレッシング材のみ」の対照での治療と比較して、創傷後少なくとも35日まで創傷収縮を有意に増加させることが分かった。
【0149】
-評価した3つのJellagen製品が各々、少なくとも12日目以降、「フィルムドレッシング材のみ」の対照での処理と比較して、創傷収縮を有意に促進することが分かった(架橋スポンジの場合は4日目、1%EDC架橋粉末の場合は8日目、チオール化粉末の場合は8日目でほぼ有意)(
図30)。
【0150】
-3つのJellagen製品を比較した場合(
図31)、チオール化粉末を適用した創傷は35日目まで最大収縮を示し(n=12)、架橋スポンジ及び1%EDC架橋粉末はわずかに低い収縮を促進し、Integra製品と同等であった(
図30)。
【0151】
-チオール化粉末をIntegra製品と比較した場合(
図32)、収縮の増加がチオール化粉末で観察され、20日目及び28~42日目に統計的有意性に達し(p≦0.029)、16日目及び24日目にほぼ有意であった(それぞれ、p=0.060及び0.068)。
【0152】
結果の要約-創傷再上皮化
所与の時点での所与の創傷について、再上皮化の面積を、損傷直後のその創傷の最初の面積のパーセンテージとして表した。全ての処理群の平均創傷再上皮化率データを表4(以下)に記載し、
図33に示す。スポンジが配置されたままの状態では架橋スポンジを適用した創傷の再上皮化を正確に測定することができなかったため、その処理の結果を
図33に含めていない。
【0153】
創傷再上皮化に対する処理の効果を検討した際に、以下のことが観察された。
-検討した全ての処理が、「フィルムドレッシング材のみ」の対照での治療と比較して、創傷後少なくとも35日まで創傷再上皮化を増加させることが分かった。
【0154】
-Jellagen 1%EDC架橋粉末製品及びJellagenチオール化粉末製品がいずれも、少なくとも16日目以降、「フィルムドレッシング材のみ」の対照と比較して、創傷収縮を有意に促進することが分かった。具体的には、チオール化粉末を適用した創傷は、12日目から35日目まで対照創傷と比較して有意に増加した創傷再上皮化を示し(p≦0.007)、1%EDC架橋粉末製品を適用した創傷は、16日目から35日目まで対照創傷と比較して有意に増加した創傷再上皮化を示し(p≦0.028)、12日目はほぼ有意であった(p=0.052)。
【0155】
-1%EDC架橋粉末をチオール化粉末と比較した場合(
図34)、チオール化粉末を適用した創傷が35日目まで最大再上皮化を示し(n=12)、1%EDC架橋粉末はわずかに低い再上皮化促進した。
【0156】
-チオール化粉末をIntegra製品と比較した場合(
図34)、Integra製品が創傷後35日までわずかに増加したレベルの再上皮化を概ね示し、16、28、及び35日目に有意に達した(p≦0.039)。しかしながら、チオール化粉末は、創傷後8日目に再上皮化の有意な増加を示した(p=0.010)。