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特開2024-109897食品用包装紙及びそれを用いた食品包装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109897
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】食品用包装紙及びそれを用いた食品包装方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240806BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086760
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2020090959の分割
【原出願日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019155104
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】山岡 麻代
(72)【発明者】
【氏名】庄司 智一
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 雄一
(57)【要約】
【課題】温かい食品を包装紙上で盛りつけ中、温かい食品を包装中あるいは包装後において、テーブルや調理台等の台の表面に摺擦しても包装外面のインキ等が落ちない包装紙を提供すること。
【解決手段】耐油性を有する基材と;顔料と、ガラス転移温度が-30~60℃ のスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂と、平均粒子径が3~6μmのワックス樹脂微粒子分散体と、水を含有する溶剤と、を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物からなる印刷層と;アルカリ可溶性樹脂と、エマルジョン型造膜性樹脂と、平均粒子径1~10μmのワックス樹脂微粒子分散体と、水性媒体とを含有し、かつ重量比率「エマルジョン型造膜性樹脂/(エマルジョン型造膜性樹脂アルカリ可溶性樹脂)」が80質量%以上である耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層と、が、この順に積層されてなる食品用包装紙。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐油性を有する基材と、
顔料と、ガラス転移温度が-30~60℃のスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂と、平均粒子径が3~6μmのワックス樹脂微粒子分散体と、水を含有する溶剤と、を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物からなる印刷層と、
アルカリ可溶性樹脂と、エマルジョン型造膜性樹脂と、平均粒子径1~10μmのワックス樹脂微粒子分散体と、水性媒体とを含有し、かつ重量比率「エマルジョン型造膜性樹脂/(エマルジョン型造膜性樹脂アルカリ可溶性樹脂)」が80質量%以上である耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層と、が
この順に積層されてなる食品用包装紙。
【請求項2】
前記水性フレキソ印刷インキ組成物が、酸価が0gKOH/g以上350mgKOH/g以下のロジン系樹脂を含有する、請求項1に記載の食品用包装紙。
【請求項3】
前記水性フレキソ印刷インキ組成物が、顔料分散用樹脂としてアルカリ可溶性樹脂及び/又は(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを含有する、請求項1又は2に記載の食品用包装紙。
【請求項4】
前記水性フレキソインキ組成物は、カーボンニュートラル可能な原材料成分がインキ組成物中10質量%以上であり、かつロジン系樹脂とスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂との固形分比率が、1:0.8~1:3.5の範囲である請求項2に記載の食品用包装紙。
【請求項5】
前記耐熱性水性コート剤組成物が含有するアルカリ可溶性樹脂のガラス転移度は110℃以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の食品用包装紙。
【請求項6】
前記耐熱性水性コート剤組成物が含有するエマルジョン型造膜性樹脂は、ガラス転移温度が-30~60℃の、スチレン-アクリル系エマルジョン型樹脂、スチレン-マレイン酸系エマルジョン型樹脂およびスチレン-マレイン酸ハーフエステル系エマルジョン型樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の食品用包装紙。
【請求項7】
前記耐熱性水性コート剤組成物が含有する水性媒体は印刷改質剤を含有し、
前記印刷改質剤は、下記式(1)で表わされる化合物、下記式(2)で表わされる化合物、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールイソブチレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、および、イソアミルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記印刷改質剤は、前記耐熱性水性コート剤組成物中、0.1~5質量%含まれる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の食品用包装紙:
(1)R-O-(C2mO)n-R
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立して水素またはアルキル基であって、Rの炭素数とRの炭素数の和が4以上であり、mは2または3であり、nは1、2または3である)
(2)R-O-(C2mO)-CO-CH
(式(2)中、Rは炭素数が1~4のアルキル基であり、mは2または3である)
【請求項8】
前記印刷層の塗布量(固形分)が3.0~9.0g/mであり、かつ
前記コート層の塗布量(固形分)が1.5~6.0g/mであり、
請求項1~7のいずれか一項に記載の食品用包装紙。
【請求項9】
耐油性を有する基材の一方の面に、
顔料、ガラス転移温度が-30~60℃ のスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径が3~6μmのワックス樹脂微粒子分散体、水を含有する溶剤を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物からなる印刷層を設ける工程と、
次いで、アルカリ可溶性樹脂、エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径1~10μmのワックス樹脂微粒子分散体、水性媒体を含有し、かつ重量比率「エマルジョン型造膜性樹脂/(エマルジョン型造膜性樹脂アルカリ可溶性樹脂)」が80質量%以上である耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層を設けて、該基材上に印刷層及びコート層をこの順に積層させる工程と、を含む、食品用包装紙の製造方法。
【請求項10】
前記水性フレキソ印刷インキ組成物が、酸価が0mgKOH/g以上350mgKOH/g以下のロジン系樹脂をさらに含有する、請求項9に記載の食品用包装紙の製造方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の食品用包装紙で食品を包む食品包装方法であって、
表面温度が40~60℃に加熱された金属板からなる基台に、前記コート層が前記基台の表面に接するように拡げられた前記食品用包装紙上に、食品を置く工程を含む、食品包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱された調理台等の上で使用される食品用包装紙及びそれを用いた食品包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーガー等のファストフード食品は、耐油性を有する基材に印刷が施された薄紙等で包んでお客様に提供されている。薄紙でハンバーガー等を包むにあたり、店内で調理している間にハンバーガー等が冷めないよう、40~60℃に加熱された金属板からなる調理台等の台上で作業が行われている。しかし、従来の耐油性を有する基材に印刷が施された薄紙等を用いた場合、加熱された調理台等の台の表面との摺擦によりインキが取られ、印刷が不鮮明になったり、印刷部分が台の上に堆積したりする問題が発生する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/091022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、温かい食品を包装紙上で盛りつける間や、温かい食品を包装中あるいは包装後において、テーブルや調理台等の台の表面に摺擦しても、包装外面のインキ等が落ちない包装紙を得ることである。特に40~60℃に加熱保温した調理台等の上で食品を盛りつける作業、包む作業、又は包んだ食品を滑らせて移動させる作業を行ってもインキが取られることがなく、且つ耐水耐摩性、耐油耐摩性等の塗膜物性が優れる食品用包装紙、及びそれを用いた食品包装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、下記の構成を採用することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を解決するに至った。
[1]耐油性を有する基材、下記条件1を満足するインキ組成物からなる印刷層、下記条件2及び3を満足する耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層がこの順に積層されてなる食品用包装紙であって、表面温度が40~60℃の基台上で使用される食品用包装紙。
条件1:インキ組成物が、顔料、ガラス転移温度が-30~60℃のスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径が3~6μmのワックス樹脂微粒子分散体、水を含有する溶剤を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物である。
条件2:耐熱性水性コート剤組成物が、アルカリ可溶性樹脂、エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径1~10μmのワックス樹脂微粒子分散体、水性媒体を含有する耐熱性水性コート剤組成物である。
条件3:耐熱性水性コート剤組成物において、エマルジョン型造膜性樹脂/(エマルジョン型造膜性樹脂+アルカリ可溶性樹脂)×100=60質量%以上である。
[2]インキ組成物が、さらに、酸価が0mgKOH/g及び/又は350mgKOH/g以下のロジン系樹脂を含有する[1]に記載の食品用包装紙。
[3]インキ組成物が、顔料分散用樹脂としてアルカリ可溶性樹脂及び/又はエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを含有する[1]又は[2]に記載の食品用包装紙。
[4]インキ組成物は、カーボンニュートラル可能な原材料成分がインキ組成物中10質量%以上であり、かつロジン系樹脂とスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂との固形分比率が、1:0.8~1:3.5の範囲である[2]又は[3]のいずれかに記載の食品用包装紙。
[5]耐熱性水性コート剤組成物が含有するアルカリ可溶性樹脂のガラス転移度は110℃以上である[1]~[4]のいずれかに記載の食品用包装紙。
[6]耐熱性水性コート剤組成物が含有するエマルジョン型造膜性樹脂は、ガラス転移温度が-30~60℃の、スチレン-アクリル系エマルジョン型樹脂、スチレン-マレイン酸系エマルジョン型樹脂およびスチレン-マレイン酸ハーフエステル系エマルジョン型樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]~[5]のいずれかに記載の食品用包装紙。
[7]耐熱性水性コート剤組成物が含有する水性媒体は印刷改質剤を含有し、その印刷改質剤は、下記式(1)で表わされる化合物、下記式(2)で表わされる化合物、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールイソブチレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、および、イソアミルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種であり、水性コート剤組成物中、0.1~5質量%含まれる1.~6.のいずれかに記載の食品用包装紙。
(1)R-O-(C2mO)n-R
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立して水素またはアルキル基であって、Rの炭素数とRの炭素数の和が4以上であり、mは2または3であり、nは1、2または3である)
(2)R-O-(C2mO)-CO-CH
(式(2)中、Rは炭素数が1~4のアルキル基であり、mは2または3である)
[8]食品用包装紙が、耐油性を有する基材に、塗布量(固形分)が3.0~9.0g/mの印刷層、塗布量(固形分)が1.5~6.0g/mのコート層が順に積層されてなる[1]~[7]のいずれかに記載の食品用包装紙。
[9]耐油性を有する基材の一方の面に、
下記条件1を満足するインキ組成物からなる印刷層を設け、
次いで、下記条件2及び3を満足する耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層を設けて、該基材上に印刷層及びコート層をこの順に積層させる、表面温度が40~60℃の基台上で使用される食品用包装紙の製造方法。
条件1:インキ組成物が、顔料、ガラス転移温度が-30~60℃のスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径が3~6μmのワックス樹脂微粒子分散体、水を含有する溶剤を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物である。
条件2:耐熱性水性コート剤組成物が、アルカリ可溶性樹脂、エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径1~10μmのワックス樹脂微粒子分散体、水性媒体を含有する耐熱性水性コート剤組成物である。
条件3:耐熱性水性コート剤組成物において、エマルジョン型造膜性樹脂/(エマルジョン型造膜性樹脂+アルカリ可溶性樹脂)×100=60質量%以上である。
[10]インキ組成物が、さらに、酸価が0mgKOH/g及び/又は350mgKOH/g以下のロジン系樹脂を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物である[9]に記載の食品用包装紙の製造方法。
[11][1]~[8]のいずれかに記載の食品用包装紙で食品を包む食品包装方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明の食品用包装紙及びそれを用いた食品包装方法にについて詳細に説明する。
本発明の食品用包装紙は、耐油性を有する基材、インキ組成物(顔料、ガラス転移温度が-30~60℃のスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径が3~6μmのワックス樹脂微粒子分散体、水を含有する溶剤を含有する水性フレキソ印刷インキ組成物)からなる印刷層、耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層をこの順に積層してなる食品用包装紙であることを基本とする。さらに好ましくは、環境面からは、インキ組成物に、酸価が0mgKOH/g及び/又は350mgKOH/g以下のロジン系樹脂を含有する食品用包装紙であることを基本とする。
【0007】
<耐油性を有する基材>
耐油性を有する基材としては、耐油性を有する基材自体が十分に柔軟であり、かつ折り曲げて包装状態を維持できる性質を有することが必要であり、従来から使用されている、原紙に耐油性を付与するために、原紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂をラミネート加工、特にポリエチレンラミネート加工、又は樹脂を塗布したものが使用できる。原紙としては、坪量が15~50g/mである上質紙、純白ロール紙、さらしクラフト紙、グラシン紙等の薄紙が使用できる。坪量が15g/m未満であると、包装紙としての強度が不足する可能性がある。また坪量が50g/mを超えると、食品を包装した後において、一旦形成された基材の折り目が元に戻る可能性がある。
この耐油性を有する側の面は、包装状態において食品と接する面である。
【0008】
<インキ組成物からなる印刷層>
本発明におけるインキ組成物からなる印刷層は、顔料、ガラス転移温度が-30~60℃のスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径が3~6μmのワックス樹脂微粒子分散体、水を含有する溶剤を含有する水性印刷インキ組成物からなる印刷層である。
印刷層は食品用包装紙が内部(基材の内面側)に食品を包装する場合において、基材の外面側に形成される層である。基材層の全面又は一部の面に塗布又は印刷等の任意の手段で印刷層が形成される。印刷により形成する場合には、特にフレキソ印刷により形成することが好ましい。
また、環境面が要求される場合には、本発明におけるインキ組成物からなる印刷層は、酸価が0mgKOH/g及び/又は350mgKOH/g以下のロジン系樹脂等のカーボンニュートラル可能な原材料成分を含むことができ、好ましくは、カーボンニュートラル可能な原材料成分を水性フレキソ印刷インキ組成物の固形分中に10質量%以上含有させることが好ましい。
【0009】
以下、本発明の印刷層を形成するインキ組成物について述べる。
(顔料)
インキ組成物に使用される顔料としては、従来から水性フレキソ印刷インキで使用されているものを使用できる。具体的には、無機顔料として、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料を挙げることができる。また、有機顔料として、溶解性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。上記顔料の中から、1種でも2種以上でも用いることができる。
上記顔料の水性フレキソ印刷インキ組成物中での濃度は5~60質量%であり、通常有機顔料の場合は、6~35質量%、無機顔料の場合は、30~60質量%である。
【0010】
(顔料分散用樹脂)
インキ組成物に使用される顔料分散用樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂及び/又は(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを含有しても良い。
【0011】
(アルカリ可溶型水溶性樹脂)
アルカリ可溶性樹脂としては、通常の水性フレキソ印刷インキ組成物で使用される不飽和二重結合を有するモノマーを重合させて得られる樹脂や、官能基同士の反応によって得られる樹脂などであれば、特に制限なく使用できる。
具体的には、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそのアルキルエステル、あるいはスチレン等を主なモノマー成分として共重合したアクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、スチレン-アクリル-マレイン酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの各種バインダー樹脂が好適な例として例示できる。
これらのアルカリ可溶性樹脂は、通常、塩基性化合物の存在下で水中に溶解させて水溶性樹脂ワニスとして使用される。上記アルカリ可溶性樹脂を水中に溶解するために使用する塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等を挙げられる。具体的には、上記有機アミンとしては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。上記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。その中でも塗膜物性及び再溶解性の点からは、揮発性及び不揮発性の塩基性化合物を使用することが望ましい。
インキ組成物中にアルカリ可溶性樹脂を配合する場合、その濃度としては、1.0~10.0質量%が好ましく、より好ましくは3.0~6.0質量%である。
【0012】
((エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー)
顔料分散用樹脂として含有できる(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーは、2以上のブロックを含み、それぞれのブロックは、ポリエチレンオキサイド又はポリプロピレンオキサイドで構成される。
(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーとしては、公知の方法で合成したものを採用できる。例えば、ポリエチレンオキサイドポリマーがプロピレンオキサイドと反応し、ポリ(プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーを形成したもの、別の方法として、ポリプロピレンオキサイドポリマーがエチレンオキサイドと反応し、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド)ブロックポリマーを形成したものを採用することができる。
なお、本発明で使用できる(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーは、重量平均分子量が5,000~100,000の範囲のものであり、市販品として、ADEKA社製のアデカ

シリーズ等が挙げられる。
また、水を含有する溶剤の安定性の面から、(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーのHLB値は8~20であることが好ましい。
ここで、HLB値とは、界面活性剤の分野で利用されている、分子の親水性部分と親油性部分とのバランス(hydrophile-lipophile balance)を表すものであり、上記HLB値は、下記に示すグリフィン式(一定の油に対する乳化効率の測定から求めた実験値と親水部の重量分率に基づく式)を適用して求めることができる。
〔グリフィン式〕HLB=(100/5)×親水基重量/(親水基重量+疎水基重量)
アルカリ可溶性樹脂と(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマーの合計使用量は、顔料100質量部に対して10~30質量部であることが好ましい。
【0013】
(スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂)
インキ組成物に使用されるスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂は、ガラス転移温度が-30~60℃のスチレン-アクリル系エマルジョン型樹脂で造膜性を有するものが好ましい。
また、中でもガラス転移温度が-15~55℃であることが好ましく、-10~50℃がより好ましい。
そのようなスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂としては、公知の方法で製造されるものであり、好ましくは酸価30~80mgKOH/g、であり、より好ましくは、酸価35~65mgKOH/gである。
このようなスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂のうち、ロジン系樹脂による印刷適性を向上させるために、酸価150~250mgKOH/gのアクリル系樹脂を塩基性化合物で中和した水溶性アクリル系樹脂を高分子乳化剤として用いて、スチレン系モノマー、必要に応じて(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを共重合して得られる常温で造膜するものが好適に使用できる。
環境面から、カーボンニュートラル可能な原材料成分を水性フレキソ印刷インキ組成物の固形分中に10質量%以上含有させる場合は、下記のロジン系樹脂を含有させ、好ましくは、そのロジン系樹脂とスチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂との固形分比率を、1:0.8~1:3.5の範囲にすることが好ましい。
【0014】
(ロジン系樹脂)
インキ組成物に使用しても良いロジン系樹脂としては、酸価が0mgKOH/g及び/又は350mgKOH/g以下のロジン系樹脂が使用できる。
ロジン系樹脂としては、エマルジョン及び水溶性の何れでもよい。
ロジン系樹脂エマルジョンの固形分の酸価は、好ましくは0mgKOH/g及び/又は0~150mgKOH/g、より好ましくは10~110mgKOH/gであり、アルカリ可溶型等の水溶性ロジン系樹脂の酸価は、好ましくは100~350mgKOH/g、より好ましくは120~200mgKOH/gである。
なお、酸価の範囲である0mgKOH/g及び/又は350mgKOH/gが意味するところは、確実に0mgKOH/gの態様を含むことにある。
ロジン系樹脂エマルジョンとしては、植物から抽出する等して得られた材料からなる、ロジンエステル等のロジン誘導体やロジンを、低分子乳化剤の存在下で、微細な粒子として水に分散させてなるものが利用できる。具体的には、ハリマ化成社製 ハリエスターSK218NS、SK370N、SK385NS、SK501NS、LAWTER社製 Snowpack XW-2442、XW-2551、XW-2561、XW-2582、SE780G、100G、荒川化学社製 スーパーエステル NS-121、NS-100H、E-865NT等が例示できる。
水溶性ロジン系樹脂としては、100~350mgKOH/gの酸価を有するロジン系樹脂の酸価の一部又は全部を塩基性化合物で中和して水中に溶解させたものを使用する。具体的には、日立化成社製 テスポール 150、154、158、ハリマ化成社製 ハリマックT-80、ハリエスター MSR-4、AS-5、荒川化学社製のマルキード31、32、33等が例示できる。
塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等を挙げられる。具体的には、上記有機アミンとしては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。上記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。その中でも塗膜物性及び再溶解性の点からは、揮発性及び不揮発性の塩基性化合物を使用することが望ましい。
ロジン系樹脂の酸価の中でも、酸価が0~200mgKOH/gであるロジン系樹脂が好ましく、耐水耐摩性が要求される場合は、酸価が0~100mgKOH/gであるロジン系樹脂エマルジョンが好ましい。
環境面を要求される場合は、本発明の水性フレキソ印刷インキ組成物中のロジン系樹脂は、カーボンニュートラル可能な原材料成分を水性フレキソ印刷インキ組成物の固形分中に10質量%以上となるように含有させることが好ましい。なお、カーボンニュートラル可能な原材料成分とは、植物性の材料に由来して得た原材料成分を示す。
このようなロジン樹脂は、インキ組成物中に0~20.0質量%、好ましくは3.0~20.0質量%となるように配合でき、より好ましくは4.0~10.0質量%となるように配合できる。
【0015】
(ワックス樹脂微粒子)
インキ組成物に使用されるに使用されるワックス樹脂粒子は、塗膜の耐摩擦性を向上させる目的でコールターカウンター法による平均粒子径3~6μmのものを使用する。ワックスは溶媒中に分散した状態で配合される。得られたワックス樹脂微粒子としては、好ましくは、ポリエチレン系ワックスで、具体的には、例えば、三井化学社製、ケミパールW100、W200、W300、W308、W400、W500(いずれも固形分濃度40%)等が挙げられる。ワックス樹脂微粒子分散体の添加量は、塗膜物性における耐摩擦性向上と色相への悪影響のバランスを考慮して、分散体として、水性フレキソ印刷インキ組成物100重量%中、固形分換算で1~7質量%程度とするのが好ましい。
【0016】
(水を含有する溶剤)
インキ組成物に使用される溶剤としては、水に加えて、本発明にて使用されるインキ組成物の性能低下をきたさない範囲で、水溶性有機溶剤を使用する。
水溶性有機溶剤としては、アルコールおよび多価アルコール系溶剤で、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルグリコール、グリセリン等を添加することができる。
【0017】
(添加剤)
インキ組成物には、必要に応じて各種添加剤を使用することができる。具体的には、乾燥性を向上させるために、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために苛性ソーダ等の塩基性化合物、造膜エマルジョン等の各種添加剤を挙げることができる。
【0018】
(製造方法)
インキ組成物を従来法で製造する方法としては、場合により顔料、顔料分散用樹脂と、水を含有する溶剤とを混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、パールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、ロールミル等を利用して練肉し、さらに、スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂、環境面が要求される場合はロジン系樹脂等の所定の材料及び必要に応じて添加剤を混合する。
次いで、印刷時に希釈が必要な場合は、さらに水を含有する溶剤を加え水性フレキソ印刷インキ組成物としても良い。この水性フレキソ印刷インキ組成物を用いた印刷物の製造方法としては、紙や樹脂の表面への印刷、特に、食品パッケージの薄紙に、上記水性フレキソ印刷インキ組成物を用いてフレキソ印刷機で印刷する方法が例示できる。
【0019】
<コート層>
本発明における耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層は、アルカリ可溶性樹脂、エマルジョン型造膜性樹脂、平均粒子径1~10μmのワックス樹脂微粒子分散体、水性媒体を含有する耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層である。
コート層は包装紙が内部(基材の内面側)に食品を包装する場合において、基材の外面側の印刷層の上に塗布又は印刷等の任意の手段で形成される。なお、印刷層が基材面の全面ではなく、一部の面に形成されたときには、印刷されていない部分には、基材表面に対してコート層が直接形成されることになる。
【0020】
以下、コート層を形成する耐熱性水性コート剤組成物について説明する。
(アルカリ可溶性樹脂)
耐熱性水性コート剤組成物に使用されるアルカリ可溶性樹脂としては、通常のインキ組成物で使用される不飽和二重結合を有するモノマーを重合させて得られる樹脂や、官能基同士の反応によって得られる樹脂などでガラス転移温度が、耐熱性及び耐ブロッキング性の点から110℃以上、好ましくは、120℃以上170℃以下のものであれば、特に制限なく使用できる。
具体的には、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそのアルキルエステル、あるいはスチレン等を主なモノマー成分として共重合した水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン-アクリル系樹脂、水溶性スチレン-マレイン酸系樹脂、水溶性スチレン-アクリル-マレイン酸系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂などの各種バインダー樹脂が好適な例として例示できる。
これらのアルカリ可溶性樹脂は、通常、塩基性化合物の存在下で水中に溶解させて水溶性樹脂ワニスとして使用される。上記アルカリ可溶性樹脂を水中に溶解するために使用する塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等を挙げられる。具体的には、上記有機アミンとしては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。上記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。その中でも塗膜物性及び再溶解性の点からは、揮発性及び不揮発性の塩基性化合物を使用することが望ましい。
【0021】
(エマルジョン型造膜性樹脂)
耐熱性水性コート剤組成物に使用されるエマルジョン型造膜性樹脂、ガラス転移温度が-30~60℃のスチレン-アクリル系エマルジョン型樹脂、スチレン-マレイン酸系エマルジョン型樹脂およびスチレン-マレイン酸ハーフエステル系エマルジョン型樹脂からなる群から選ばれる 少なくとも1種で造膜性を有するものが使用できる。また、中でもガラス転移温度が-10~55℃であることが好ましく、0~50℃がより好ましい。
エマルジョン型造膜性樹脂は、中でもスチレン-アクリル系エマルジョン型樹脂が好ましい。
詳細については、上記水性印刷インキ組成物と同様であるので省略する。
スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂とアルカリ可溶性樹脂とは、保温環境下の耐摩擦性の点より、固形分換算で、スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂/(スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂+アルカリ可溶性樹脂)×100=60質量%以上となるようにする。さらに、70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であることが好ましく、95質量%以下が好ましい。
【0022】
(ワックス微粒子分散体)
耐熱性水性コート剤組成物に使用されるワックス樹脂微粒子分散体としては、塗膜の耐摩擦性を向上させる目的でコールターカウンター法による平均粒子径1~10μm、好ましくは2~9μmのものを使用する。ワックス樹脂微粒子分散体としては、好ましくは、ポリエチレン系ワックスで、具体的には、例えば、三井化学社製、ケミパールW100、W200、W300、W310、W306、W400、W410、W500、W800等が挙げられる。ワックス樹脂微粒子分散体の添加量は、塗膜物性における耐摩擦性向上と色相への悪影響のバランスを考慮して、耐熱性水性コート剤組成物100重量%中、固形分換算で1~7質量%程度とするのが好ましい。
【0023】
(水を含有する溶剤)
耐熱性水性コート剤組成物に使用する溶剤としては、水を含有するものを採用できる。その具体的なものとしては上記の各種溶剤を採用できる。
【0024】
(添加剤)
耐熱性水性コート剤組成物には、本発明の目的を達成する範囲において、上記の任意の添加剤を配合し得る。
印刷改善剤として、下記式(1)で表わされる化合物、下記式(2)で表わされる化合物、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールイソブチレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、および、イソアミルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種を含有できる。
(1)R-O-(C2mO)n-R
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立して水素またはアルキル基であって、Rの炭素数とRの炭素数の和が4以上であり、mは2または3であり、nは1、2または3である)
(2)R-O-(C2mO)-CO-CH
(式(2)中、Rは炭素数が1~4のアルキル基であり、mは2または3である)
印刷改善剤は、水性コート剤組成物中、0.1~5質量%含有される。
【0025】
<食品包装紙の製造方法>
本発明の食品包装紙は、上記の基材の一方の面(包装される食品に向く面ではない面、つまり包装時において外面となる面)の少なくとも一部に対して、フレキソ印刷等の任意の手段により上記の印刷インキ組成物で印刷する。
該印刷インキ組成物による層が乾燥後、上記耐熱性水性コート剤組成物を、紙に対する公知の塗布手段又は印刷手段により、全面に塗布してコート層を得る。
得られたコート層を乾燥して、本発明の食品包装紙とする。
【0026】
<食品包装紙の用途>
本発明の包装紙は、温かい食品を包装紙上で盛りつける途中や、温かい食品を包装中、又は包装後において、油脂や水分があるテーブルや調理台等の表面に摺擦しても、包装外面のインキ等が落ちない包装紙である。特に表面を40~60℃に加熱保温した調理台や、加熱調理器等からの伝熱により40~60℃程度に加熱された台等の表面上で食品を盛りつける作業、包む作業、又は包んだ食品を移動させる作業時に台等に直に接する用途に使用される。なお、包装紙上で盛りつける作業を含めて調理とする。例えば加熱された台等の上に、本発明の包装紙を、コート層がその台表面に接するように拡げて置き、その上に、順に加熱したパンやバンズ、野菜や肉等の具材、再度パンやバンズを置くことによりハンバーガー等を作成する工程は、食品の盛りつけ又は調理に相当する。
このような用途に使用しても、包装紙上のインキが取られることがなく、且つ耐水耐摩性、耐油耐摩性等の塗膜物性が優れる食品用包装紙及びそれを用いた食品包装方法を提供する。
包装対象の食品は特に制限されず、ハンバーガー、鯛焼き、ピザ、肉まん、焼き鳥、コロッケ、焼き芋、甘栗等の調理又は保温直後の温かい状態で包装され得るものである。
本発明の食品包装紙は、耐油性を有する基材に、塗布量(固形分)が3.0~9.0g/m2の印刷層、塗布量(固形分)が1.5~6.0g/m2のコート層が順に積層されてなるものである。
印刷層は、好ましくは4.0~8.0g/m2であり、コート層は、好ましくは2.0~5.0g/m2である。
【実施例0027】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。酸価の単位はmgKOH/gである。
【0028】
<基材>
原紙(Kライナー)に印刷したものは、その試験を行う限りにおいて、薄紙に印刷した場合と結果が共通するので原紙(Kライナー)を用いて評価を行った。
【0029】
<インキ組成物からなる印刷層>
(水性フレキソ印刷インキ組成物)
顔料(フタロシアニンブルー、C.I.ピグメントブルー15:3)、下記樹脂ワニス、EO/POブロックポリマー(ADEKA社製「アデカプルロニックF-108」)、ジブチルグリコール、水の混合物をビーズミルで混練分散後、下記ロジン系樹脂、下記スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂、下記ワックス樹脂微粒子分散体、消泡剤(SNデフォーマー777♯C サンノプコ社)を表1の割合となるように加え混合して、水性フレキソ印刷インキ組成物を得た。
【0030】
(樹脂ワニス)
アルカリ可溶性樹脂(ジョンクリルHPD-671、BASF社製、ガラス転移温度120~128℃、酸価214~218mgKOH/g)、水、アンモニア水を混合し、70~90℃にて中和及び水性化を行い、さらにアンモニア水を添加してpHを8.5とすることにより、樹脂ワニス(固形分25%)を得た。
【0031】
(ロジン系樹脂)
1.エマルジョン 酸価25mgKOH/g以下(乳化剤) 固形分50% 乳化剤
2.エマルジョン 酸価100mgKOH/g 固形分50% 乳化剤
3.アルカリ可溶型 酸価130mgKOH/g アンモニア/ジエタノールアミン 固
形分50%
4.アルカリ可溶型 酸価170mgKOH/g アンモニア/ジエタノールアミン 固
形分50%
【0032】
(スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂)
1.酸価51mgKOH/g、ガラス転移温度-10℃、固形分48%
2.酸価38mgKOH/g、ガラス転移温度9℃、固形分38.5%
3.酸価62mgKOH/g、ガラス転移温度43℃、固形分45.5%
【0033】
(ワックス樹脂微粒子分散体)
1.ケミパールW400 粒径4.0μm(コールカウンター法)、三井化学
2.ケミパールW100 粒径3.0μm(コールカウンター法)、三井化学
3.ケミパールW500 粒径2.5μm(コールカウンター法)、三井化学
4.ケミパールW200 粒径6.0μm(コールカウンター法)、三井化学
5.ケミパールW800 粒径8.0μm(コールカウンター法)、三井化学
【0034】
【表1】
【0035】
<耐熱性水性コート剤組成物からなるコート層>
(耐熱性水性コート剤組成物)
アルカリ可溶型水溶性樹脂、スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜樹脂、ポリエチレンワックス、消泡剤、界面活性剤、印刷改質剤、水を表2の割合となるように加え混合して、耐熱性水性コート剤組成物を得た。
【0036】
(スチレン-アクリル系エマルジョン型造膜性樹脂)
1.酸価60mgKOH/g、ガラス転移温度50℃、固形分46%
2.酸価52mgKOH/g、ガラス転移温度14℃、固形分49%
3.酸価38mgKOH/g、ガラス転移温度9℃、固形分38.5%
【0037】
(アルカリ可溶性樹脂)
1.酸価240mgKOH/g、ガラス転移温度155℃、固形分27%
2.酸価216mgKOH/g、ガラス転移温度124℃、固形分25%
【0038】
(ワックス樹脂微粒子(ポリエチレンワックス))
1.ケミパールW400 粒径4.0μm(コールカウンター法)、三井化学
2.ケミパールW800 粒径8.0μm(コールカウンター法)、三井化学
【0039】
(消泡剤)
・SNデフォーマー777♯C サンノプコ社
(界面活性剤)
・EO/PO系界面活性剤
(印刷改質剤)
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール
【0040】
【表2】
【0041】
(耐水耐摩性)
原紙(Kライナー)に200線ハンドプルーファーにて水性フレキソ印刷インキ組成物及び耐熱性水性コート剤組成物を展色し、その展色物を、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて評価した。
評価条件:200g×2回、当紙:カナキン布に水5滴を滴下したもの
◎ :塗膜取られなし。
○ :当紙にわずかにインキが付着。展色物のインキがわずかに取れているもの。
○△:当紙全面にインキが薄く付着。展色物のインキがわずかに取れているもの。
△ :当紙全面にインキが薄く付着。展色物のインキが取れ、一部原紙が見える。
× :当紙全面にインキが濃く付着。展色物についてもインキが取れ、原紙の大部分が見える。
【0042】
(耐摩性)
原紙(Kライナー)に200線ハンドプルーファーにて水性フレキソ印刷インキ組成物及び耐熱性水性コート剤組成物を展色し、その展色物を、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて評価した。
評価条件:200g×100回、当紙:カナキン布
◎ :塗膜取られなし。
◎○:当紙に極わずかにインキが付着。展色物のインキが極わずかに取れている。
〇 :当紙にわずかにインキが付着。展色物のインキがわずかに取れている。
〇△:当紙全面にインキが薄く付着。展色物のインキがわずかに取れている。
△ :当紙全面にインキが付着。展色物のインキが取れ、一部原紙が見える。
× :当紙全面にインキが濃く付着。展色物についてもインキが取られ、原紙の大部分が見える。
【0043】
(耐油耐摩性)
原紙(Kライナー)に200線ハンドプルーファーにて水性フレキソ印刷インキ組成物及び耐熱性水性コート剤組成物を展色し、その展色物を、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて評価した。
評価条件:200g×2回、当紙:カナキン布にサラダ油を5滴滴下したもの
◎ :塗膜取られなし。
◎○:当紙に極わずかにインキが付着。展色物のインキが極わずかに取れている。
〇 :当紙にわずかにインキが付着。展色物のインキがわずかに取れている。
〇△:当紙全面にインキが薄く付着。展色物のインキがわずかに取れている。
△ :当紙全面にインキが付着。展色物のインキが取れ、一部原紙が見える。
× :当紙全面にインキが濃く付着。展色物についてもインキが取られ、原紙の大部分が見える。
なお、上記原紙(Kライナー)に印刷したものは、その試験を行う限りにおいて、薄紙に印刷した場合と結果が共通する。
【0044】
(耐摩性(50℃)
原紙(Kライナー)に200線ハンドプルーファーにて水性フレキソ印刷インキ組成物及び耐熱性水性コート剤組成物を展色し、その展色物を、50℃環境下で1時間置いた後、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて50℃環境下で評価した。
評価条件:200g×100回、当紙:カナキン布
◎ :塗膜取られなし。
◎○:当紙に極わずかにインキが付着。展色物のインキが極わずかに取れている。
〇 :当紙にわずかにインキが付着。展色物のインキがわずかに取れている。
〇△:当紙全面にインキが薄く付着。展色物のインキがわずかに取れている。
△ :当紙全面にインキが付着。展色物のインキが取れ、一部原紙が見える。
× :当紙全面にインキが濃く付着。展色物についてもインキが取られ、原紙の大部分が見える。
【0045】
【表3】
【0046】
本発明に沿った各実施例によれば、耐水耐摩性、耐摩性、耐油耐摩性及び50℃での耐摩性に優れていた。これに対し、ワックス樹脂粒子を含有しないインキ組成物を使用した比較例1、ワックス樹脂粒子分散体の粒径が小さい比較例2、及びワックス樹脂粒子分散体の粒径が大きい比較例3によれば、50℃での耐摩性に劣っていた。また、コート剤組成物が条件3を満たさない比較例4及び、コート剤組成物がワックス樹脂粒子を含有しない比較例5によれば、いずれも50℃での耐摩性に劣っていた。