IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シアトル チルドレンズ ホスピタル, ディービーエー シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュートの特許一覧

特開2024-109943ブルトン型チロシンキナーゼに対するTALENベースのおよびCRISPR/CASベースのゲノム編集
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109943
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ブルトン型チロシンキナーゼに対するTALENベースのおよびCRISPR/CASベースのゲノム編集
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240806BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240806BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240806BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
C12N5/078
C12N15/867 Z
A61K35/28
A61P37/04
C12N15/54
C12N15/864 100Z
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】41
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088147
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2020560207の分割
【原出願日】2019-04-26
(31)【優先権主張番号】62/664,035
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515045617
【氏名又は名称】シアトル チルドレンズ ホスピタル (ディービーエイ シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュート)
【住所又は居所原語表記】1900 Ninth Ave. Seattle, WA 98101 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジェイ. ローリングス
(72)【発明者】
【氏名】コートニー クラフ
(72)【発明者】
【氏名】イラム エフ. カーン
(57)【要約】
【課題】ブルトン型チロシンキナーゼに対するTALENベースのおよびCRISPR/CASベースのゲノム編集の提供。
【解決手段】本開示は、ヒトBTK遺伝子を編集するための改善されたゲノム編集組成物および方法を提供する。本開示は、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の少なくとも1つの症候の予防、処置または軽減のためのゲノム編集された細胞をさらに提供する。本開示は、改善されたゲノム編集組成物に関する。より具体的には、本開示は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)遺伝子を編集するための、TALENベースのおよびCRISPR/Casベースのゲノム編集組成物および該ゲノム編集組成物を使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
b)ガイドRNA(gRNA)であって、配列番号9~17に記載されているヌクレオチド配列を含む、gRNA;および
c)機能的なBTK遺伝子またはその断片を含む修復テンプレート
を含むゲノム編集組成物であって、前記ゲノム編集組成物は、B細胞における内在性BTK遺伝子を修復することができる、または、B細胞のゲノムに機能的なBTK遺伝子を挿入することができる、ゲノム編集組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1に記載のゲノム編集組成物をコードするmRNA。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物をコードするcDNA。
【請求項5】
請求項1に記載のゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項6】
請求項1に記載のゲノム編集組成物を含む細胞。
【請求項7】
請求項1に記載のゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項8】
請求項5に記載のベクターを含む細胞。
【請求項9】
請求項1に記載のゲノム編集組成物によって導入された1またはそれを超えるゲノム修飾を含む細胞。
【請求項10】
前記細胞が造血細胞である、請求項6~9のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
前記細胞が造血幹または前駆細胞である、請求項6~10のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
前記細胞がCD34細胞である、請求項6~11のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項13】
前記細胞がCD133細胞である、請求項6~12のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項14】
請求項6~13のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物。
【請求項15】
請求項6~13のいずれか一項に記載の細胞と生理的に許容され得る担体とを含む組成物。
【請求項16】
細胞中のBTK遺伝子を編集するエクスビボの方法であって、請求項1に記載のゲノム編集組成物、請求項2に記載のポリヌクレオチドまたは請求項5に記載のベクターと、ドナー修復テンプレートとを前記細胞中に導入することを含み、前記ゲノム編集組成物の発現がBTK遺伝子中の標的部位に二本鎖切断を作製し、前記ドナー修復テンプレートが、前記二本鎖切断(DSB)の前記部位において、相同組換え修復(HDR)によって前記BTK遺伝子中に取り込まれる、方法。
【請求項17】
前記BTK遺伝子が、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)をもたらす1またはそれを超えるアミノ酸変異または欠失を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が造血細胞である、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が造血幹または前駆細胞である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞がCD34細胞である、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞がCD133細胞である、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
5’-3’エキソヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが前記細胞中に導入される、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
Trex2または生物学的に活性なその断片をコードするポリヌクレオチドが前記細胞中に導入される、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ドナー修復テンプレートが、DSBの5’のBTK遺伝子配列に相同な5’相同性アームと、ドナーポリヌクレオチドと、DSBの3’のBTK遺伝子配列に相同な3’相同性アームとを含む、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ドナーポリヌクレオチドが、BTK遺伝子中の1またはそれを超えるアミノ酸変異または欠失を修復するように設計されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ドナーポリヌクレオチドが、BTKポリペプチドをコードするcDNAを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ドナーポリヌクレオチドが、BTKポリペプチドをコードするcDNAに動作可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記5’および3’相同性アームの長さが、約100bp~約2500bpから独立に選択される、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記5’および3’相同性アームの長さが、約600bp~約1500bpから独立に選択される、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記5’相同性アームが約1500bpであり、3’相同性アームが約1000bpである、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記5’相同性アームが約600bpであり、3’相同性アームが約600bpである、請求項25~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ドナー修復テンプレートを細胞中に導入するためにウイルスベクターが使用される、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ウイルスベクターが組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記rAAVがAAV2由来の1またはそれを超えるITRを有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記rAAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAV10からなる群から選択される血清型を有する、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記rAAVがAAV2またはAAV6血清型を有する、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記レトロウイルスがレンチウイルスである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記レンチウイルスがインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
被験体におけるX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の少なくとも1つの症候またはXLAと関連する症状を処置、予防、または軽減する方法において使用するための組成物であって、前記被験体から採集され、かつ請求項16~39のいずれか一項に記載の方法に従って編集された細胞の集団を含む、組成物。
【請求項41】
被験体におけるX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の少なくとも1つの症候またはXLAと関連する症状を処置、予防、または軽減するための医薬の製造における、前記被験体から採集され、かつ請求項16~39のいずれか一項に記載の方法に従って編集された細胞の集団の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2018年4月27日に出願された米国仮出願第62/664,035号の優先権を主張し、その全体が、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの記述
本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ読み取り可能なフォーマットの写し(ファイル名:SECH_001_01WO_ST25.txt、記録された日:2019年4月26日、ファイルサイズ75キロバイト)。
【背景技術】
【0003】
背景
技術分野
本開示は、改善されたゲノム編集組成物に関する。より具体的には、本開示は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)遺伝子を編集するための、TALENベースのおよびCRISPR/Casベースのゲノム編集組成物および該ゲノム編集組成物を使用する方法に関する。
【0004】
関連技術の説明
X連鎖無ガンマグロブリン血症は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)遺伝子中の変異によって引き起こされる稀な免疫不全である。BTK遺伝子中の600を超える異なる変異が、X連鎖無ガンマグロブリン血症と関連付けられている。これらの変異の多くは、BTKタンパク質の不存在をもたらす。他の変異は単一のタンパク質構成要素(アミノ酸)を変化させ、これは、細胞中で急速に分解される異常なBTKタンパク質の産生を引き起こし得る。BTKは、正常なB成熟および活性化のために、BCRを介したシグナル伝達のために、および骨髄系細胞中のいくつかのシグナル伝達経路のために必要とされる。機能的なBTKを欠如する被験体は、主に未成熟なB細胞、最小の抗体産生を有し、反復する生命を脅かす感染症に罹りやすい。
【0005】
既存の処置には、これらの感染症の重度を低下させる生涯にわたって行われる静脈内免疫グロブリン治療および抗生物質治療の慎重な使用が含まれる。造血細胞移植(HCT)は、XLAの治癒をもたらす可能性を有する唯一の利用可能なアプローチである。しかしながら、HLAが合致するドナーを見出すことの困難さおよびGvHDに伴う潜在的な毒性のために、多くのXLA患者はこのアプローチで処置されていない。移植片生存の顕著な改善に関わらず、処置に関連する死亡のリスクがXLAに対する同種HCTの障害となってきた。天然の近位BTK遺伝子プロモーターの調節下にあるBTK cDNAをコードする自己不活化レンチウイルスベクター(LV)を組み込むことが開発され、ヒトXLAのマウスモデル中で評価されてきた。しかしながら、レトロウイルスおよびLVベースの遺伝子治療に伴う挿入突然変異誘発および遺伝子発現調節不全の著しいリスクが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡単な要旨
一般的には、本開示は、1つには、ヒトBTK遺伝子のゲノム編集を媒介するTALENベースのまたはCRISPRベースのゲノム編集システムおよびこれを使用する方法に関する。
【0007】
様々な実施形態において、ゲノム編集組成物は、ヒトブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)遺伝子中の標的部位を切断するTALENを含む。
【0008】
ある実施形態において、TALENは、
a)T1-F RVD HD NG HD NN NI HD NG NI NG NN NI NI NI NI HD NG;
b)T1-R RVD HD NG NI NI NN NN HD HD NI NI NN NG HD HD NG;
c)T2-F RVD NI NG HD NI NI NN NN NI HD NG NG NN NN HD HD NG;
d)T2-R RVD NI HD HD NI NI HD NN NI NI NI NI NG NG NG NI HD HD NG;
e)T3-F RVD NI NG NG NG HD HD NG NI NN HD HD NG NI NG NI NI HD NG;
f)T3-R RVD NN NN HD NG NG HD NG NG NI NN NN NI HD HD NG NG NG;
g)T4-F RVD HD HD NI NG NG NG NN NI NI NI HD NG NI NN NN NG;および
h)T4-R RVD HD HD NG HD NI NG HD HD HD NG HD NG NG NN NN NG NG;
を含む群から選択されるRVDを有するTALエフェクタードメインを含み、TALエフェクタードメインは標的部位T1、T2、T3またはT4を結合することができる。
【0009】
様々な実施形態において、ゲノム編集組成物は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと;ガイドRNA(gRNA)と;機能的BTK遺伝子またはその断片を含む修復テンプレートと;を含み、ゲノム編集システムは、B細胞中の内在性BTK遺伝子を修復するか、またはB細胞のゲノム中に機能的BTK遺伝子を挿入することができる。
【0010】
ある実施形態において、gRNAは、配列番号9~17に記載されているヌクレオチド配列を含む。
【0011】
様々な実施形態において、ポリヌクレオチドは本明細書において想定されるゲノム編集組成物をコードする。
【0012】
様々な実施形態において、mRNAは本明細書において想定されるゲノム編集組成物をコードする。
【0013】
様々な実施形態において、cDNAは本明細書において想定されるゲノム編集組成物をコードする。
【0014】
様々な実施形態において、ベクターは、本明細書において想定されるゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0015】
様々な実施形態において、細胞は、本明細書において想定されるゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0016】
様々な実施形態において、細胞は、本明細書において想定されるゲノム編集組成物をコードするmRNAを含む。
【0017】
様々な実施形態において、細胞は、本明細書において想定されるゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。
【0018】
様々な実施形態において、細胞は、本明細書において想定される1またはそれを超えるゲノム修飾を含む。
【0019】
ある実施形態において、上記細胞は造血細胞である。
【0020】
ある実施形態において、上記細胞は造血幹または前駆細胞である。
【0021】
ある実施形態において、上記細胞はCD34細胞である。
【0022】
ある実施形態において、上記細胞はCD133細胞である。
【0023】
さらなる実施形態において、組成物は、本明細書において想定される細胞を含む。
【0024】
特定の実施形態において、上記組成物は、生理学的に許容され得る担体をさらに含む。
【0025】
様々な実施形態において、細胞中のBTK遺伝子を編集する方法は、本明細書において想定されるゲノム編集組成物、ポリヌクレオチドおよびベクターの1またはそれより多くとドナー修復テンプレートとを上記細胞中に導入することを含み、上記ゲノム編集組成物の発現はBTK遺伝子中の標的部位に二本鎖切断を作製し、上記ドナー修復テンプレートは、上記二本鎖切断(DSB)の前記部位において、相同組換え修復(HDR)によって前記BTK遺伝子中に取り込まれる。
【0026】
ある実施形態において、BTK遺伝子は、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)をもたらす1またはそれを超えるアミノ酸変異または欠失を含む。
【0027】
特定の実施形態において、上記細胞は造血細胞である。
【0028】
特定の実施形態において、上記細胞は造血幹または前駆細胞である。
【0029】
特定の実施形態において、上記細胞はCD34細胞である。
【0030】
特定の実施形態において、上記細胞はCD133細胞である。
【0031】
特定の実施形態において、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはmRNAである。
【0032】
特定の実施形態において、5’-3’エキソヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが上記細胞中に導入される。
【0033】
さらなる実施形態において、Trex2または生物学的に活性なその断片をコードするポリヌクレオチドが上記細胞中に導入される。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記ドナー修復テンプレートは、DSBの5’のBTK遺伝子配列に相同な5’相同性アームと、ドナーポリヌクレオチドと、DSBの3’のBTK遺伝子配列に相同な3’相同性アームとを含む。
【0035】
様々な実施形態において、上記ドナーポリヌクレオチドは、BTK遺伝子中の1またはそれを超えるアミノ酸変異または欠失を修復するように設計されている。
【0036】
特定の実施形態において、上記ドナーポリヌクレオチドは、BTKポリペプチドをコードするcDNAを含む。
【0037】
さらなる実施形態において、上記ドナーポリヌクレオチドは、BTKポリペプチドをコードするcDNAに動作可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットを含む。
【0038】
特定の実施形態において、上記5’および3’相同性アームの長さは、約100bp~約2500bpから独立に選択される。
【0039】
様々な実施形態において、上記5’および3’相同性アームの長さは、約600bp~約1500bpから独立に選択される。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記5’相同性アームは約1500bpであり、3’相同性アームは約1000bpである。
【0041】
ある実施形態において、上記5’相同性アームは約600bpであり、上記3’相同性アームは約600bpである。
【0042】
さらなる実施形態において、上記ドナー修復テンプレートを細胞中に導入するためにウイルスベクターが使用される。
【0043】
ある実施形態において、上記ウイルスベクターは組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである。
【0044】
様々な実施形態において、上記rAAVはAAV2由来の1またはそれを超えるITRを有する。
【0045】
さらなる実施形態において、上記rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAV10からなる群から選択される血清型を有する。
【0046】
特定の実施形態において、上記rAAVはAAV2またはAAV6血清型を有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記レトロウイルスはレンチウイルスである。
【0048】
ある実施形態において、上記レンチウイルスはインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV)である。
【0049】
特定の実施形態において、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の少なくとも1つの症候またはXLAと関連する症状を処置し、予防し、または軽減する方法は、被験体から細胞の集団を採集すること、本明細書において想定されるBTK遺伝子を編集する方法に従って前記細胞の集団を編集すること、および編集された細胞の集団を前記被験体に投与すること、を含む。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
ヒトブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)遺伝子中の標的部位を切断するTALENを含むゲノム編集組成物。
(項目2)
TALENが、
i)T1-F RVD HD NG HD NN NI HD NG NI NG NN NI NI NI NI HD NG;
j)T1-R RVD HD NG NI NI NN NN HD HD NI NI NN NG HD HD NG;
k)T2-F RVD NI NG HD NI NI NN NN NI HD NG NG NN NN HD HD NG;
l)T2-R RVD NI HD HD NI NI HD NN NI NI NI NI NG NG NG NI HD HD NG;
m)T3-F RVD NI NG NG NG HD HD NG NI NN HD HD NG NI NG NI NI HD NG;
n)T3-R RVD NN NN HD NG NG HD NG NG NI NN NN NI HD HD NG NG NG;
o)T4-F RVD HD HD NI NG NG NG NN NI NI NI HD NG NI NN NN NG;および
p)T4-R RVD HD HD NG HD NI NG HD HD HD NG HD NG NG NN NN NG NG;
を含む群から選択されるRVDを有するTALエフェクタードメインを含み、
前記TALエフェクタードメインが、標的部位T1、T2、T3またはT4を結合することができる、
項目1に記載のゲノム編集組成物。
(項目3)
ゲノム編集組成物であって、
a)Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
b)ガイドRNA(gRNA);および
c)機能的BTK遺伝子またはその断片を含む修復テンプレート;
を含み、
ゲノム編集システムが、B細胞中の内在性BTK遺伝子を修復することができるか、またはB細胞のゲノム中への機能的BTK遺伝子を挿入することができる、ゲノム編集組成物。
(項目4)
gRNAが配列番号9~17に記載されているヌクレオチド配列を含む、項目3に記載のゲノム編集組成物。
(項目5)
項目1~4のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチド。
(項目6)
項目1~4のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物をコードするmRNA。
(項目7)
項目1~4のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物をコードするcDNA。
(項目8)
項目1~4のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
(項目9)
項目1~4のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物を含む細胞。
(項目10)
項目1~4のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物をコードするポリヌクレオチドを含む細胞。
(項目11)
項目8に記載のベクターを含む細胞。
(項目12)
項目1~4のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物によって導入された1またはそれを超えるゲノム修飾を含む細胞。
(項目13)
前記細胞が造血細胞である、項目9~12のいずれか一項に記載の細胞。
(項目14)
前記細胞が造血幹または前駆細胞である、項目9~13のいずれか一項に記載の細胞。
(項目15)
前記細胞がCD34細胞である、項目9~14のいずれか一項に記載の細胞。
(項目16)
前記細胞がCD133細胞である、項目9~15のいずれか一項に記載の細胞。
(項目17)
項目9~16のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物。
(項目18)
項目9~16のいずれか一項に記載の細胞と生理的に許容され得る担体とを含む組成物。
(項目19)
細胞中のBTK遺伝子を編集する方法であって、項目1~4のいずれか一項に記載のゲノム編集組成物、項目5に記載のポリヌクレオチドまたは項目8に記載のベクターと、ドナー修復テンプレートとを前記細胞中に導入することを含み、前記ゲノム編集組成物の発現がBTK遺伝子中の標的部位に二本鎖切断を作製し、前記ドナー修復テンプレートが、前記二本鎖切断(DSB)の前記部位において、相同組換え修復(HDR)によって前記BTK遺伝子中に取り込まれる、方法。
(項目20)
前記BTK遺伝子が、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)をもたらす1またはそれを超えるアミノ酸変異または欠失を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記細胞が造血細胞である、項目19または項目20に記載の方法。
(項目22)
前記細胞が造血幹または前駆細胞である、項目19~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記細胞がCD34細胞である、項目19~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記細胞がCD133細胞である、項目19~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがmRNAである、項目19~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
5’-3’エキソヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが前記細胞中に導入される、項目19~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
Trex2または生物学的に活性なその断片をコードするポリヌクレオチドが前記細胞中に導入される、項目19~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記ドナー修復テンプレートが、DSBの5’のBTK遺伝子配列に相同な5’相同性アームと、ドナーポリヌクレオチドと、DSBの3’のBTK遺伝子配列に相同な3’相同性アームとを含む、項目19~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記ドナーポリヌクレオチドが、BTK遺伝子中の1またはそれを超えるアミノ酸変異または欠失を修復するように設計されている、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記ドナーポリヌクレオチドが、BTKポリペプチドをコードするcDNAを含む、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記ドナーポリヌクレオチドが、BTKポリペプチドをコードするcDNAに動作可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットを含む、項目28に記載の方法。
(項目32)
前記5’および3’相同性アームの長さが、約100bp~約2500bpから独立に選択される、項目28~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記5’および3’相同性アームの長さが、約600bp~約1500bpから独立に選択される、項目28~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記5’相同性アームが約1500bpであり、3’相同性アームが約1000bpである、項目28~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記5’相同性アームが約600bpであり、3’相同性アームが約600bpである、項目28~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記ドナー修復テンプレートを細胞中に導入するためにウイルスベクターが使用される、項目28~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記ウイルスベクターが組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記rAAVがAAV2由来の1またはそれを超えるITRを有する、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記rAAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAV10からなる群から選択される血清型を有する、項目37または項目38に記載の方法。
(項目40)
前記rAAVがAAV2またはAAV6血清型を有する、項目37~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記レトロウイルスがレンチウイルスである、項目36に記載の方法。
(項目42)
前記レンチウイルスがインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV)である、項目41に記載の方法。
(項目43)
X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の少なくとも1つの症候またはXLAと関連する症状を処置、予防、または軽減する方法であって、被験体から細胞の集団を採集すること、項目19~42のいずれか一項に記載の方法に従って前記細胞の集団を編集すること、および編集された細胞の集団を前記被験体に投与すること、を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1A図1Aは、ヒトBTK遺伝子内のTALEN(T1~T4)切断部位の位置について注釈が付されたBTK遺伝子座の模式図を示す。図解は、原寸通りに描かれていない。
【0051】
図1B図1Bは、初代T細胞中で各TALENを用いて達成されたパーセント破壊を示す。IL-2(50ng/mL)、IL-7(5ng/mL)およびIL-15(5ng/mL)を補充されたT細胞増殖培地中で初代ヒトT細胞を培養し、CD3/CD28ビーズ(Dynabeads、Life Technologies)を用いて48時間刺激した。ビーズを除去し、細胞を一晩静置させた後、いずれかのTALEN mRNA(1μgの各RNA単量体)とともにNeon Transfectionシステムを使用して電気穿孔を行った。細胞をさらに5日間培養し、ゲノムDNAを抽出した。切断部位周囲の領域を増幅し、PCR精製キットを用いて精製した。T7エンドヌクレアーゼ(NEB)とともに200ngの精製されたPCR産物をインキュベートし、ゲル上で分析し、Licor Image Studio Liteソフトウェアを用いてパーセント破壊を定量した。その後の図面中の実験では、TALEN T3を使用した。
【0052】
図1C図1Cは、TALENを用いてBTK遺伝子を編集するためのAAVドナーテンプレートの模式図を示す。DT AAVベクターは、MNDプロモーターによって駆動される緑色蛍光タンパク質(GFP)カセットに隣接する1kbの相同性アームを有する。DT-Del AAVドナーは、TALスペーサードメイン(配列番号72)まで5’相同性アームの末端にまたがるゲノム領域の欠失を有し、第二のエクソンとイントロンの部分的欠失をもたらして、TALENによる切断を消失させる。
【0053】
図1D図1Dは、TALENおよびAAVドナーテンプレートを使用する初代T細胞中での編集を示す。棒グラフは、GFP発現の時間経過を図示する。パーセント相同組換え(HR)は、15日におけるパーセント(%)GFPとして報告されている。
【0054】
図1E図1Eは、TALENとAAVドナーの同時送達を用いた初代T細胞の編集の2日後および15日後におけるGFP発現を示す代表的なFACSプロットを示す。
【0055】
図2A図2Aは、CRISPRガイドの注釈が付されたBTK遺伝子座の模式図を示す。ヒトBTK遺伝子内のガイドRNA(G1~G9)の位置が示されている。図解は、原寸通りに描かれていない。
【0056】
図2B図2Bは、T7エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)によって決定された、ガイドG1からG9によるBTK遺伝子座でのパーセント(%)破壊を示す。パーセント破壊は、Licor Image Studio Liteソフトウェアを用いて定量した。その後の図面中の実験では、ガイドG3を使用した。
【0057】
図2C図2Cは、CRISPR-Casを用いてBTK遺伝子を編集するための3つの例示的なAAVドナーテンプレートの模式図を示す。DT AAVベクターは、MNDプロモーターによって駆動される緑色蛍光タンパク質(GFP)に隣接する1kbの相同性アームを有する。DT-PAM AAVドナーは、ガイドG3による切断を消失させるために、PAM配列中に変異(配列番号73)を有する。DT-Delベクターは、ガイドG3による切断を消失させるために、欠失(配列番号74)を有する。
【0058】
図2D図2Dは、Cas9に加えてガイドおよびAAVドナーテンプレートの同時送達を使用する初代T細胞中での編集を示す。初代ヒトCD3+T細胞を培養し、ビーズ刺激した。次いで、Cas9タンパク質と単一のガイドRNAのリボ核タンパク質複合体(RNP)で細胞を形質移入し、2時間後に、培養体積の20%でAAVドナーを添加した。2、8および15日目にGFP発現に関して細胞を分析した。15日目のGFP発現は、相同組換え修復(HDR)を示している。
【0059】
図2E図2Eは、RNPに加えてAAVドナーを用いた初代T細胞の編集の2および15日後におけるGFP発現を示す代表的なFACSプロットを示す。
【0060】
図3A図3Aは、ヒトCD34細胞編集プロトコールの模式図を示す。TPO、SCF、FLT3L(100ng/mL)およびIL3(60ng/mL)が補充されたSCGM培地中で48時間、成人の誘導されたCD34細胞を培養した後、1:1.2の比率で混合された、TALENまたはCas9タンパク質のリボ核タンパク質複合体(RNP)のいずれかおよび単一のガイドRNAとともにNeon電気穿孔システムを用いて電気穿孔を行った。sgRNAは、Trilink Biotechnologiesから購入され、5’および3’末端の3つの末端位置に化学的に修飾されたヌクレオチドを有する。2および5日目に、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【0061】
図3B図3Bは、TALEN mRNAとAAVドナーテンプレートの同時送達を使用する、CD34HSC中のBTK遺伝子座の編集を示す。成人の誘導されたCD34細胞を以前に記載されたとおりにSCGM培地中で培養した後、TALEN mRNAとともにNeon電気穿孔システムを使用して電気穿孔を行った。電気穿孔の直後に、ドナーテンプレートを担持するAAVベクターを添加した。対照は、操作されていない細胞およびヌクレアーゼの形質移入なしにAAVのみで形質導入された細胞(AAV)を含んだ。棒グラフは、5日での%GFPを図示し、HDRを示す。
【0062】
図3C図3Cは、編集の2および5日後における、モック、AAVまたはAAVプラスTALEN処理されたCD34細胞からのGFP発現を図示するFACSプロットを示す。
【0063】
図3D図3Dは、TALENおよびAAVドナーでの編集後のCD34細胞の生存率を示す。棒グラフは、編集の2および5日後における、モックおよびAAVのみおよびAAVプラスTALEN処理された細胞の生存率を表す。
【0064】
図3E図3Eは、TALEN編集されたCD34細胞に対するCFUアッセイを示す。TALEN編集された、TALENのみ、AAVのみおよびモック細胞を、編集の1日後に、コロニー形成単位(CFU)アッセイのためにMethocult培地上に播種した。簡潔に述べると、Methocult H4034培地(Stemcell Technologies)中に、500個の細胞を2つ組で播種し、12~14日間37℃でインキュベートし、その形態およびGFP発現に基づいてコロニーを数えた。CFU-E:コロニー形成単位赤血球、M:マクロファージ、GM:顆粒球、マクロファージ、G:顆粒球、GEMM:顆粒球、赤血球、マクロファージ、巨核球、BFU-E:バースト形成単位赤血球。n=3の独立のドナー。データは、平均±平均値の標準誤差として表されている。
【0065】
図4A図4Aは、RNPとAAVドナーテンプレートの同時送達を使用する、CD34HSC中のBTK遺伝子座の編集を示す。成人の誘導されたCD34細胞を以前に記載されたとおりにSCGM培地中で培養した後、RNP複合体とともにNeon電気穿孔システムを使用して電気穿孔を行った。電気穿孔の直後に、ドナーテンプレートを担持するAAVベクターを添加した。対照は、操作されていない細胞およびヌクレアーゼの形質移入なしにAAVのみで形質導入された細胞(AAV)を含んだ。棒グラフは、5日での%GFPを図示し、HDRを示す。
【0066】
図4B図4Bは、図4Aと同じ実験を示し、2および5日における、GFP発現を示す代表的FACsプロットを図示する。
【0067】
図4C図4Cは、RNPおよびAAVドナーでの編集後のCD34細胞の生存率を示す。棒グラフは、編集の2および5日後における、モックおよびAAVのみおよび(様々なRNPとAAV用量での)AAVプラスRNP処理された細胞の生存率を表す。
【0068】
図4D図4Dは、RNP編集されたCD34細胞に対するCFUアッセイを示す。RNP編集された、AAVのみ、およびモック細胞を、編集の1日後に、コロニー形成単位(CFU)アッセイのためにMethocult培地上に播種した。簡潔に述べると、Methocult H4034培地(Stemcell Technologies)中に、500個の細胞を2つ組で播種し、12~14日間37℃でインキュベートし、その形態およびGFP発現に基づいてコロニーを数えた。CFU-E:コロニー形成単位赤血球、M:マクロファージ、GM:顆粒球、マクロファージ、G:顆粒球、GEMM:顆粒球、赤血球、マクロファージ、巨核球、BFU-E:バースト形成単位赤血球。n=3の独立のドナー。データは、平均±平均値の標準誤差として表されている。
【0069】
図5A図5Aは、GFPを発現する無プロモーターAAVドナーテンプレートの模式図を示す。このベクターは、GFP、末端切断されたウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御要素(WPRE3)およびSV40ポリアデニル化シグナルを含有する。この挿入物は、いずれかの側において、BTK遺伝子座への0.5kb相同性アームによって隣接されている。
【0070】
図5B図5Bは、RNPとAAVドナーテンプレートの同時送達を用いる、CD34HSC中での無プロモーターGFPベクターを使用するBTK遺伝子座の編集を示す。棒グラフは、1、2および5日での%GFPを図示し、5日での%GFPはHDRを示す。
【0071】
図5C図5Cは、図4Aと同じ実験を示し、2および5日における、GFP発現を示す代表的FACsプロットを図示する。
【0072】
図5D図5Dは、RNPおよび無プロモーターAAVドナーでの編集後のCD34細胞の生存率を示す。棒グラフは、編集の1、2および5日後における、モックおよびAAVのみおよび(様々なRNPとAAV用量での)AAVプラスRNP処理された細胞の生存率を表す。5日での%GFPは、%HDRを示す。
【0073】
図5E図5Eは、HDRを決定するためのデジタルドロップレットPCRアッセイを示す。DNeasy Blood and Tissueキット(Qiagen)を用いて、造血幹および前駆細胞(HSPC)からゲノムDNAを単離した。編集率を評価するために、AAV挿入物内に結合するフォワードプライマーおよび相同性の領域外のBTK遺伝子座を結合するリバースプライマーを用いて、「インアウト」ドロップレットデジタルPCRを行った。対照としての役割を果たすために、ActB遺伝子に対して類似の大きさの対照アンプリコンを作製した。全ての反応は、2つ組みで行った。PCR反応液は、QX200 Droplet Generator(Bio-Rad)を用いて、液滴に分割した。UTPなしのddPCR Supermix for Probes(Bio-Rad)、900nMのプライマー、250nMのプローブ、50ngのゲノムDNAおよび1%DMSOを用いて、増幅を行った。QuantaSoftソフトウェア(Bio-Rad)を用いて、QX200 Droplet Digital PCR System(Bio-Rad)上で液滴を分析した。
【0074】
図6図6は、コドン最適化されたBTKを発現するAAVドナーテンプレートの模式図を示す。
【0075】
図7図7は、TALENプラスAAVまたはRNPプラスAAVで編集された細胞中でのHDR(相同組換え修復)対NHEJ(非相同末端結合)の比の比較を示す。
【0076】
図8A図8Aは、内在性プロモーターからコドン最適化されたBTK cDNAを発現するrAAV6ドナーベクターの模式図である。
【0077】
図8B図8Bは、XLA中で臨床的な恩恵を容易に与えると予測されるレベルで、内在性BTK遺伝子座中にBTK cDNAを導入する能力を実証する、単一のCD34ドナーから得られたデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
配列識別子の簡単な説明
配列番号1~8は、ヒトBTK遺伝子の第一および第二のイントロン中のTALEN標的部位である。
【0079】
配列番号9~17は、gRNA配列G1~G9である。
【0080】
配列番号18は、ヒトBTKポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0081】
配列番号19~24は、BTK遺伝子座に対するAAVターゲティングベクターの配列である。
【0082】
配列番号25~35は、RNPもしくはTALENに加えてAAV.MND.GFPベクターを用いてまたはRNPおよびATG.coBTK発現AAVベクターを用いて、CD34+細胞中でのHDRを決定するために使用されたオリゴおよびプローブである。
【0083】
詳細な説明
A.概要
一般的には、本開示は、1つには、改善されたゲノム編集組成物およびその使用の方法に関する。いずれかの特定の理論に拘泥することを望むものではないが、本明細書中で想定されるゲノム編集組成物は、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)と関連する症候を処置、予防または軽減するために、細胞中のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の量を増加させるために使用される。従って、本明細書において想定される組成物は、XLAを有する被験体に、根治的となり得る解決手段を与える。いずれかの特定の理論に拘泥することを望むものではないが、XLAをもたらす1またはそれを超える変異および/または欠失を有するBTK遺伝子中に機能的なBTKタンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入するゲノム編集アプローチがXLAによって引き起こされる免疫的および機能的欠損を救出し、根治的となり得る治療を与えると想定される。
【0084】
様々な実施形態において、BTK機能を増加または回復させるための、ゲノム編集戦略、組成物、遺伝的に改変された細胞およびこれらの使用方法が想定される。いずれかの特定の理論に拘泥することを望むものではないが、BTKタンパク質の機能的コピーをコードするポリヌクレオチドを導入するためのBTK遺伝子のゲノム編集が想定される。一実施形態において、BTK遺伝子の編集は、造血幹細胞(HSC)中で内在性プロモーターおよびエンハンサーの調節下にあるように、BTKタンパク質の機能的コピーをコードするポリヌクレオチドを導入することを含む。免疫細胞中での機能的BTKの回復は、XLAを有する被験体と関連する1またはそれを超える症候を効果的に処置し、予防し、および/または軽減するであろう。
【0085】
様々な実施形態において想定されるゲノム編集方法は、BTK遺伝子中の標的結合部位を結合し、切断するように設計されたTALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)変異形を含む。特定の実施形態において想定されるTALEN変異形は、標的ポリヌクレオチド配列中に二本鎖切断を導入し、ポリヌクレオチドテンプレート、例えば、ドナー修復テンプレートの存在下で相同組換え修復(HDR)、すなわち、BTK遺伝子中へのドナー修復テンプレートの相同組換えをもたらすために使用することができる。ある種の実施形態において想定されるTALEN変異形は、細胞の塩基除去修復(BER)機構またはドナー修復テンプレートの存在下での相同組換えを用いて修復することができる一本鎖DNA切断を生成するニッカーゼとして設計することも可能である。相同組換えは、二本鎖DNA切断を修復するためのテンプレートとして相同なDNAを必要とし、標的部位における治療遺伝子(例えば、BTK)をコードする発現カセットまたはポリヌクレオチドを含むドナーDNAの導入によって特定され、標的部位に隣接する領域と相同性を有する配列によっていずれかの側で隣接された無限の様々な修飾を作出するために活用することができる。
【0086】
様々な他の実施形態において想定されるゲノム編集方法は、BTK遺伝子中の標的結合部位を結合し、切断するように設計されたCRISPR/Cas系を含む。特定の実施形態において想定されるCRISPR/Cas系は、標的ポリヌクレオチド配列中に二本鎖切断を導入し、ポリヌクレオチドテンプレート、例えば、ドナー修復テンプレートの存在下で相同組換え修復(HDR)、すなわち、BTK遺伝子中へのドナー修復テンプレートの相同組換えをもたらすために使用することができる。ある種の実施形態において想定されるCRISPR/Cas系は、1またはそれを超えるガイドRNA(gRNA)によって、1またはそれを超える切断部位へガイドされることもできる。ある種の実施形態において想定されるCRISPR/Cas系は、細胞の塩基除去修復(BER)機構またはドナー修復テンプレートの存在下での相同組換えを用いて修復することができる一本鎖DNA切断を生成するニッカーゼとして設計することも可能である。相同組換えは、二本鎖DNA切断を修復するためのテンプレートとして相同なDNAを必要とし、標的部位における治療遺伝子(例えば、BTK)をコードする発現カセットまたはポリヌクレオチドを含むドナーDNAの導入によって特定され、標的部位に隣接する領域と相同性を有する配列によっていずれかの側で隣接された無限の様々な修飾を作出するために活用することができる。
【0087】
1つの好ましい実施形態において、本明細書において想定されるゲノム編集組成物は、ヒトBTK遺伝子を標的とする転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を含む。
【0088】
1つの好ましい実施形態において、本明細書において想定されるゲノム編集組成物は、ヒトBTK遺伝子を標的とするCRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系を含む。このような実施形態において、部位特異的なヌクレアーゼはCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(「Cas「エンドヌクレアーゼ」)であり、核酸ガイド分子はガイドRNA(gRNA)である。
【0089】
様々な実施形態において、DNA切断がBTK遺伝子の第一または第二のイントロン中に生成され、機能的なBTKポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むドナー修復テンプレート、すなわち、ドナー修復テンプレートが提供される場合、DSBは、DNA切断部位における相同組換えによって、テンプレートの配列を用いて修復される。好ましい実施形態において、修復テンプレートは、当該ポリヌクレオチドおよびBTKポリペプチドの発現が内在性BTKプロモーターおよび/またはエンハンサーの調節下にある部位において挿入されるように設計された機能的BTKポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0090】
1つの好ましい実施形態において、本明細書において想定されるゲノム編集組成物は、TALEN変異形とHDR効率を増加させるための1またはそれを超える末端プロセシング酵素とを含む。
【0091】
1つの好ましい実施形態において、本明細書において想定されるゲノム編集組成物は、ヒトBTK遺伝子を標的とするTALENまたはCRISPR/Casヌクレアーゼ系と、機能的BTKタンパク質をコードするドナー修復テンプレートと、および末端プロセシング酵素、例えば、Trex2とを含む。
【0092】
様々な実施形態において、ゲノム編集された細胞が想定される。ゲノム編集された細胞は、機能的なBTKポリペプチドを含み、B細胞の発達を救出し、XLAを防止する。
【0093】
従って、本明細書において想定される方法および組成物は、XLAの処置のための既存のゲノム編集戦略と比べて、飛躍的な改善を示す。
【0094】
組換え(すなわち、改変操作された)DNA、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド合成、イムノアッセイ、組織培養、形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)、酵素反応、精製のための技術ならびに関連する技術および手順は、一般に、本明細書を通じて引用および論述されている微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学および免疫学における様々な一般的なおよびより具体的な参考文献に記載されているとおりに実施され得る。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,2008年7月改訂);Short Protocols in Molecular Biology:A
Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford Univ.Press USA,1985);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober
2001 John Wiley&Sons,NY,NY);Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Edited by Julie Logan,Kirstin Edwards and
Nick Saunders,2009,Caister Academic Press,Norfolk,UK;Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Guthrie and Fink,Guide
to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press,New York,1991);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,Ed.,1984);Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,Ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Next-Generation Genome Sequencing(Janitz,2008 Wiley-VCH);PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park,Ed.,3rd Edition,2010 Humana Press);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);論文、Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998);Immunochemical Methods In Cell And
Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of
Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and CC Blackwell,eds.,1986);Roitt,Essential Immunology,6th Edition,(Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988);Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology;ならびにAdvances in Immunologyなどの学術誌の研究書を参照。
B.定義
【0095】
本開示をより詳しく記載する前に、本明細書において使用されるある種の用語の定義を与えることが、本明細書の理解にとって有益であろう。
【0096】
別段の定義がなければ、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。特定の実施形態の実施または試験において、本明細書に記載されているものと同様のまたは等価なあらゆる方法および材料を使用することができるが、本明細書には、組成物、方法および材料の好ましい実施形態が記載されている。本開示において、以下の用語が以下で定義されている。さらなる定義は、本開示を通じて記載されている。
【0097】
冠詞「a」、「an」および「the」は、その冠詞の文法的目的語の1つまたは1より多く(すなわち、少なくとも1つの、または1もしくはそれを超える)を表すために、本明細書において使用される。例として、「1つの要素(an element)」は、1つの要素(one element)または1もしくはそれを超える要素(one or more elements)を意味する。
【0098】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、当該選択肢の一方、両方またはその任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。
【0099】
用語「および/または」は、当該選択肢の一方または両方のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0100】
本明細書において使用される、「約」または「およそ」という用語は、基準の数量(quantity)、レベル、値、数、頻度、百分率、大きさ、サイズ、量(amount)、重量または長さに対して最大15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%変動する数量、レベル、値、数、頻度、百分率、大きさ、サイズ、量、重量または長さを表す。一実施形態において、「約」または「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、大きさ、サイズ、量、重量または長さについて±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%または±1%の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、大きさ、サイズ、量、重量または長さの範囲を表す。
【0101】
一実施形態において、範囲、例えば、1~5、約1~5または約1~約5は、この範囲によって包含される各数値を表す。例えば、1つの非限定的な単なる例示的な実施形態において、範囲「1~5」は、表現1、2、3、4、5;または1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5もしくは5.0;または1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9もしくは5.0に等しい。
【0102】
本明細書において使用される、「実質的に」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、大きさ、サイズ、量、重量または長さと比べて80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い数量、レベル、値、数、頻度、百分率、大きさ、サイズ、量、重量または長さを表す。一実施形態において、「実質的に同じ」とは、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、大きさ、サイズ、量、重量または長さとおよそ同じである効果、例えば、生理的効果を生じる数量、レベル、値、数、頻度、百分率、大きさ、サイズ、量、重量または長さを表す。
【0103】
本明細書全体を通じて、文脈が別段の要求をしていなければ、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、表記された工程もしくは要素または工程もしくは要素の群の包含を含意するが、任意のその他の工程もしくは要素または工程もしくは要素の群の除外を含意しないことが理解されるであろう。「からなる」という用語に続くものが何であれ、「からなる(consisting of)」によって、含み、それに限定されることが意味される。従って、「からなる」という用語は、列記された要素が必要とされるまたは必須であること、他の要素は存在し得ないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」によって、その用語の後に列記された全ての要素を含み、列記された要素に対して本開示中で指定された活性または作用を妨害せずまたは寄与しない他の要素に限定されることを意味する。従って、「から本質的になる」という用語は、列記された要素が必要とされるまたは必須であること、ただし、列記された要素の活性または作用に実質的に影響を及ぼす他の要素が存在しないことを示す。
【0104】
本明細書を通じて、「一実施形態」、「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」または「さらなる実施形態」またはこれらの組み合わせへの言及は、その実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じた様々な場所での先述の用語の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を参照するわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1またはそれを超える実施形態において、任意の適切な様式で組み合わされ得る。一実施形態における特徴の積極的列挙は、特定の実施形態においてその特徴を除外するための基礎としての役割を果たすことも理解される。
【0105】
「エクスビボ」という用語は、好ましくは天然の条件を最小限に改変した生物の外側の人工的環境において生きた組織中または生きた組織上で行われる実験または測定など、生物の外側で行われる活動を一般的に表す。特定の実施形態において、「エクスビボ」手順は、生物から採取され、通常は無菌条件下で、状況に応じて、典型的には数時間または最大約24時間(但し、最大48時間または72時間を含む)、実験装置中で培養または調節された生きた細胞または組織を伴う。ある実施形態において、このような組織または細胞は、収集及び凍結され、エクスビボ処理のためにその後融解することができる。生きた細胞または組織を使用して数日より長く続く組織培養実験または手順は典型的には「インビトロ」であると考えられるが、ある実施形態では、この用語はエクスビボと互換的に使用することができる。
【0106】
「インビボ」という用語は、生物の内側で行われる活動を一般的に表す。一実施形態において、細胞のゲノムは、インビボで改変操作され、編集され、または修飾される。
【0107】
「増強する」または「促進する」または「増加する」または「拡大する」または「強化する」によって、ビヒクルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比べて、より大きな応答(すなわち、生理的応答)を生成し、惹起し、または引き起こす、本明細書において想定されるTALEN変異形、ゲノム編集組成物またはゲノム編集された細胞の能力を一般的に表す。測定可能な応答は、本分野での理解および本明細書中の記載から特に自明である、HDRおよび/またはBTK発現の増加を含み得る。「増加された」または「増強された」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照によって生成される応答の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれを超える倍数(例えば、500、1000倍)(その間のおよび1より大きい全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)である増加を含み得る。
【0108】
「減少する」または「低下する」または「減らす」または「低減する」または「和らげる」または「除去する」または「抑制する」または「減衰させる」によって、ビヒクルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比べて、より小さな応答(すなわち、生理的応答)を生成し、惹起し、または引き起こす、本明細書において想定されるTALEN変異形、CRISPR/Cas系、ゲノム編集組成物またはゲノム編集された細胞の能力を一般的に表す。測定可能な応答は、XLAに関連する1またはそれを超える症候の減少を含み得る。「減少された」または「低減された」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照によって生成される応答(基準応答)の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれを超える倍数(例えば、500、1000倍)(その間のおよび1より大きい全ての整数および小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である減少を含み得る。
【0109】
「維持する」または「保持する」または「維持」または「変化なし」または「実質的な変化なし」または「実質的な減少なし」によって、ビヒクルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比べて、実質的に類似のまたは同等な生理的応答(すなわち、下流の効果)を生成し、惹起し、または引き起こす、本明細書において想定されるTALEN変異形、ゲノム編集組成物またはゲノム編集された細胞の能力を一般的に表す。同等の応答とは、基準応答と著しく異ならないまたは測定可能に異ならない応答である。
【0110】
本明細書において使用される「特異的結合親和性」または「特異的に結合する」または「特異的に結合された」または「特異的結合」または「特異的に標的とする」という用語は、バックグラウンド結合より大きな結合親和性でのある分子の別の分子への結合、例えば、ポリペプチドのDNA結合ドメインのDNAへの結合を記載する。例えば、約10-1より大きいまたは約10-1と等しい親和性またはK(すなわち、1/Mの単位を有する、特定の結合相互作用の平衡会合定数)で、標的部位に結合しまたは標的部位と会合すれば、結合ドメインは、標的部位に「特異的に結合する」。ある実施形態において、結合ドメインは、約10-1、10-1、10-1、10-1、1010-1、1011-1、1012-1または1013-1より大きいまたは等しいKで標的部位に結合する。「高親和性」結合ドメインは、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも1010-1、少なくとも1011-1、少なくとも1012-1、少なくとも1013-1またはそれを超えるKで結合ドメインを表す。
【0111】
または、親和性は、Mの単位を有する、特定の結合相互作用の平衡解離定数(K)(例えば、10-5M~10-13Mまたはそれ未満)として定義され得る。特定の実施形態において想定されるDNA標的部位に対する1またはそれを超えるDNA結合ドメインを含むTALEN変異形の親和性は、慣用の技術、例えば、酵母細胞表面ディスプレイを用いて、または結合会合によって、または標識されたリガンドを使用する置換アッセイによって容易に決定することができる。
【0112】
一実施形態において、特異的結合の親和性は、バックグランド結合より約2倍大きい、バックグランド結合より約5倍大きい、バックグランド結合より約10倍大きい、バックグランド結合より約20倍大きい、バックグランド結合より約50倍大きい、バックグランド結合より約100倍大きいもしくはバックグランド結合より約1000倍大きい、またはさらに大きい。
【0113】
「選択的に結合する」または「選択的に結合された」または「選択的に結合している」または「選択的に標的とする」という用語は、複数のオフターゲット分子の存在下での、標的分子へのある分子の優先的な結合(オンターゲット結合)を記載する。特定の実施形態において、TALENは、TALENがオフターゲットDNA標的結合部位を結合するより、約5、10、15、20、25、50、100または1000倍頻繁に、オンターゲットDNA結合部位を選択的に結合する。
【0114】
「オンターゲット」は、標的部位配列を表す。
【0115】
「オフターゲット」は、標的部位配列と類似するが、同一ではない配列を表す。
【0116】
「標的部位」または「標的配列」は、結合および/または切断が存在するのに十分な条件が与えられれば、結合分子が結合および/または切断する核酸の部分を規定する染色体または染色体外核酸配列である。標的部位または標的配列の1つの鎖のみを参照するポリヌクレオチド配列または配列番号を参照する場合、TALEN変異形またはCRISPR/Cas系によって結合および/または切断される標的部位または標的配列は二本鎖であり、参照配列およびその相補鎖を含むことが理解されるであろう。好ましい実施形態において、標的部位はヒトBTK遺伝子中の配列である。
【0117】
「組換え」は、非相同末端結合(NHEJ)および相同組換えによるドナー捕捉を含むがこれに限定されない、2つのポリヌクレオチド間での遺伝情報の交換の過程を表す。本開示において、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同組換え修復(HDR)機序を介した細胞中での二本鎖切断の修復の間に起こるこのような交換の特殊化された形態を表す。この過程は、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経たもの)を修復するためのテンプレートとして「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝情報の導入をもたらすので、「非乗換え遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」と様々に称されている。いずれかの特定の理論に拘泥することを望むものではないが、このような導入は、切断された標的とドナー間で形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ修正および/または標的の一部となる遺伝情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存性鎖アニーリング」および/または関連する過程を伴うことができる。このような特殊化されたHRは、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチド中に取り込まれるように、しばしば、標的分子の配列の変化をもたらす。
【0118】
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の切断を表す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含むがこれらに限定されない様々な方法によって開始することができる。一本鎖切断と二本鎖切断の両方が可能である。二本鎖切断は2つの別個の一本鎖切断現象の結果として生じ得る。DNA切断は、平滑末端または粘着末端のいずれかの生成をもたらすことができる。ある実施形態において、標的化された二本鎖DNA切断のために、本明細書において想定されるポリペプチドおよびTALEN変異形、例えば、TALENなどが使用される。エンドヌクレアーゼ切断認識部位は、いずれかのDNA鎖または両方のDNA鎖上に存在し得る。
【0119】
「外因性」分子は、細胞中に通常存在しないが、1またはそれを超える遺伝学的、生化学的またはその他の方法によって細胞中に導入される分子である。例示的な外因性分子としては、小有機分子、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の修飾された誘導体または上記分子の1もしくはそれより多くを含む任意の複合体が挙げられるが、これらに限定されない。細胞中に外因性分子を導入する方法は当業者に公知であり、脂質によって媒介される導入(すなわち、中性および陽イオン性脂質を含むリポソーム)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、微粒子銃、バイオポリマーナノ粒子、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストランによって媒介される導入およびウイルスベクターによって媒介される導入が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
「内在性」分子は、特定の環境条件下において、特定の発達段階で特定の細胞中に通常存在する分子である。さらなる内在性分子としては、タンパク質を挙げることができる。
【0121】
「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域の他、そのような制御配列がコード配列および/または転写される配列に隣接しているかどうかを問わず、遺伝子産物の産生を制御するすべてのDNA領域を表す。遺伝子には、プロモーター配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界領域、ターミネーター、ポリアデニル化配列、転写後応答要素、リボソーム結合部位および配列内リボソーム進入部位などの翻訳制御配列、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座調節領域が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
「遺伝子発現」は、遺伝子中に含有されている情報の、遺伝子産物への変換を表す。遺伝子産物は、遺伝子の直接の転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたは任意の他の種類のRNA)またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャップ形成、ポリアデニル化、メチル化および編集などの過程によって修飾されたRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質も含まれる。
【0123】
本明細書において使用される「遺伝的に改変操作された」または「遺伝的に改変された」という用語は、細胞中の全遺伝物質への、DNAまたはRNAの形態の外部遺伝物質の染色体または染色体外添加を表す。遺伝子改変は、細胞のゲノム中の特定の部位に標的化または非標的化され得る。一実施形態において、遺伝子改変は部位特異的である。一実施形態において、遺伝子改変は部位特異的でない。
【0124】
本明細書において使用される「ゲノム編集」という用語は、遺伝子または遺伝子産物の発現を回復し、修正し、破壊し、および/または改変する、細胞のゲノム中の標的部位における遺伝物質の置換、欠失および/または導入を表す。特定の実施形態において想定されるゲノム編集は、必要に応じてドナー修復テンプレートの存在下で、細胞のゲノム中の標的部位にまたはその近傍にDNA損傷を生成するために、1またはそれを超えるTALEN変異形を細胞中に導入することを含む。
【0125】
本明細書において使用される「遺伝子治療」という用語は、遺伝子または遺伝子産物の発現を回復し、修正し、もしくは改変するまたは治療用ポリペプチドを発現することを目的とする細胞中の全遺伝物質中への外部遺伝物質の導入を表す。特定の実施形態において、遺伝子または遺伝子産物の発現を回復し、修正し、破壊し、もしくは改変するまたは治療用ポリペプチドを発現することを目的とするゲノム編集による細胞のゲノム中への遺伝物質の導入は、遺伝子治療と考えられる。
C.TALENベースの系
【0126】
BTK遺伝子中の標的部位をゲノム編集するのに適している本明細書中の特定の実施形態において想定されるTALEN変異形は、1またはそれを超えるDNA結合ドメインと1またはそれを超えるDNA切断ドメイン(例えば、1またはそれを超えるエンドヌクレアーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼドメイン)とを含み、本明細書において想定される1またはそれを超えるリンカーを必要に応じて含む。「再プログラムされたヌクレアーゼ」、「改変操作されたヌクレアーゼ」、「ヌクレアーゼ変異形」または「TALEN変異形」という用語は互換的に使用され、1またはそれを超えるDNA結合ドメインと1またはそれを超えるDNA切断ドメインとを含むTALENであって、BTK遺伝子中の二本鎖DNA標的配列、好ましくはヒトBTK遺伝子の第一または第二のイントロン中の標的配列、より好ましくは配列番号1~8に記載されているヒトBTK遺伝子の第一または第二のイントロン中の標的配列を結合および切断するように、親または天然に存在するTALENから設計および/または改変されているTALENを表す。TALEN変異形は、天然に存在するエフェクタードメインからまたは以前のTALEN変異形から設計および/または改変され得る。特定の実施形態において想定されるTALEN変異形は、1またはそれを超えるさらなる機能的ドメイン、例えば、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、鋳型依存性DNAポリメラーゼまたは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を示す末端プロセシング酵素の末端プロセシング酵素ドメインをさらに含み得る。
【0127】
様々な実施形態において、TALENは、BTK遺伝子、好ましくはヒトBTK遺伝子の第一または第二のイントロン中の標的配列、より好ましくは配列番号1~8に記載されているヒトBTK遺伝子の第一または第二のイントロン中の標的配列中に二本鎖切断(DSB)を導入するために再プログラムされる。「TALEN」は、TALエフェクターDNA結合ドメインと酵素ドメインを含むタンパク質を表す。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメイン(DNA鎖を切断するヌクレアーゼ)に融合することによって作製される。上記FokI制限酵素は、TALENベースの遺伝子制御系において使用するのに適した例示的酵素ドメインである。
【0128】
TALエフェクターは、Xanthomonas細菌が植物に感染するときに、そのIII型分泌系を介してXanthomonas細菌によって分泌されるタンパク質である。DNA結合ドメインは、多様な12番目および13番目のアミノ酸を有する反復され、高度に保存された33~34アミノ酸の配列を含有する。反復可変性二残基(RVD(Repeat Variable Diresidue))と称されるこれらの2つの位置は高度に可変的であり、特異的なヌクレオチド認識と強く相関する。従って、TALエフェクタードメインは、適切なRVDを含有する反復セグメントの組み合わせを選択することによって、特異的な標的DNA配列を結合するように改変操作することができる。RVDの組み合わせに対する核酸の特異性は、以下の通りである:HDはシトシンを標的とし、NIはアデニン(adenenine)を標的とし、NGはチミンを標的とし、NNはグアニンを標的とする(但し、いくつかの実施形態において、NNは、より低い特異性でアデニンも結合することができる)。
【0129】
いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、BTK遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0130】
いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0131】
いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、配列番号1~8の1つと少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、配列番号1~8の1つと少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、配列番号1~8の1つと100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0132】
いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、BTK遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
表1:標的部位
【表1A】
【0133】
いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0134】
いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、配列番号1~8の1つと少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、配列番号1~8の1つと少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、配列番号1~8の1つと100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0135】
いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、BTK遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0136】
いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、配列番号1~8の1つと少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、配列番号1~8の1つと少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれTALエフェクタードメインを含む2またはそれを超えるTALエフェクター-融合タンパク質を含み、ここで、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、配列番号1~8の1つと100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0137】
いくつかの実施形態において、TALエフェクタードメインは、表2に示されているRVD配列を含む。
表2:TALエフェクタードメインRVD
【表2A】
【0138】
TALエフェクターリピートを組み立てるための方法および組成物は、本分野において公知である。例えば、Cermakら、Nucleic Acids Research,39:12,2011,e82を参照。TALエフェクターリピートの構築のためのプラスミドは、Addgeneから市販されている。
D.CRISPR/Casベースの系
【0139】
組み合わせ遺伝子制御系は、部位特異的改変ポリペプチドおよび核酸ガイド分子を含む。本明細書において、「部位特異的改変ポリペプチド」は、核酸ガイド分子に結合するポリペプチドであって、これが結合する核酸ガイド分子によって、例えば、DNA配列などの標的核酸配列へ標的化され、標的DNA配列を改変する(例えば、標的DNAの切断、変異またはメチル化)ポリペプチドを表す。部位特異的改変ポリペプチドは、2つの部分、核酸ガイドを結合する部分と活性部分を含む。いくつかの実施形態において、部位特異的改変ポリペプチドは、部位特異的酵素活性(例えば、DNAメチル化、DNA切断、ヒストンアセチル化、ヒストンメチル化など)を示す活性部分を含み、ここで、酵素活性の部位はガイド核酸によって決定される。いくつかの事例では、部位特異的改変ポリペプチドは、標的DNAを改変する酵素活性(例えば、ヌクレアーゼ活性、メチル転移活性、脱メチル化酵素活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン化活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、光回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性)を有する。他の事例では、部位特異的改変ポリペプチドは、標的DNAと会合するポリペプチド(例えば、ヒストン)を改変する酵素活性(例えば、メチル転移酵素活性、脱メチル化酵素活性、アセチル転移酵素活性、脱アセチル化酵素、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性)を有する。いくつかの実施形態において、活性部分は、(例えば、転写を増加または減少するために)標的DNA配列の転写を調節する。
【0140】
核酸ガイドは、2つの部分;内在標的DNA配列と相補的であり、内在標的DNA配列と結合することができる第一の部分(本明細書において、「DNA結合セグメント」と称される。)と、部位特異的改変ポリペプチドと相互作用することができる第二の部分(本明細書において、「タンパク質結合セグメント」と称される。)とを含む。いくつかの実施形態において、核酸ガイドのDNA結合セグメントとタンパク質結合セグメントは、単一のポリヌクレオチド分子内に含まれる。いくつかの実施形態において、核酸ガイドのDNA結合セグメントとタンパク質結合セグメントは、核酸ガイドが互いに会合して機能的ガイドを形成する2つのポリヌクレオチド分子を含むように、それぞれが別個のポリヌクレオチド分子内に含まれる。
【0141】
核酸ガイドは、標的遺伝子のDNA配列内に含まれる標的DNA配列と特異的にハイブリッドを形成することによって、複合タンパク質/核酸遺伝子制御系の標的特異性を媒介する。本明細書における標的遺伝子への言及は、その遺伝子に対する完全長DNA配列を包含し、当該標的遺伝子に対する完全長DNA配列は、当該標的遺伝子配列(例えば、エクソンまたはイントロン)の一部を表す標的遺伝子座を複数含むであろう。各標的遺伝子座内には、本明細書に記載されている遺伝子制御系によって改変することができる、本明細書において「標的DNA配列」または「標的配列」と称されるDNA配列のより短い広がりがある。さらに、各標的遺伝子座は、遺伝子制御系によって誘導される改変の正確な位置(例えば、挿入、欠失もしくは変異の位置、DNA切断の位置または後成的修飾の位置)を表す「標的改変部位」を含む。本明細書に記載されている遺伝子制御系は単一の核酸ガイドを含み得、または複数の核酸ガイド(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超える核酸ガイド)を含み得る。
【0142】
以下に記載されているCRISPR/Cas系は、複合タンパク質/核酸系の例示的な実施形態である。
【0143】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるゲノム編集システムは、CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系であるこのような実施形態において、部位特異的改変ポリペプチドはCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(「Cas」エンドヌクレアーゼ)であり、核酸ガイド分子はガイドRNA(gRNA)である。
【0144】
Casポリペプチドは、gRNA分子と相互作用することができるポリペプチドを表し、gRNA分子と協力して、標的DNA配列に向かいまたは局在化し、天然に存在するCasタンパク質および天然に存在するCas配列と1またはそれを超えるアミノ酸残基が異なる改変操作された、変化されたまたはその他改変されたCasタンパク質を含む。
【0145】
いくつかの実施形態において、Casタンパク質はCas9タンパク質である。Cas9は、DNAの標的鎖を切断するためのHNHヌクレアーゼドメインと非標的鎖を切断するためのRuvC様ドメインとを使用するマルチドメイン酵素である。いくつかの実施形態において、WT Cas9を、DNAを切断することができない酵素的に不活性な変異体(例えば、dCas9)または標的もしくは非標的鎖の一方もしくは他方を切断することによって一本鎖DNA切断を生成することができるニッカーゼ変異体へと変換することができる選択的なドメイン不活化によって、Cas9の変異体を生成することができる。
【0146】
ガイドRNA(gRNA)は、2つのセグメント、DNA結合セグメントおよびタンパク質結合セグメントを含む。いくつかの実施形態において、gRNAのタンパク質結合セグメントは1つのRNA分子中に含まれ、DNA結合セグメントは別の別個のRNA分子中に含まれる。このような実施形態は、本明細書において、「二重分子gRNA」または「二分子gRNA」または「二重RNA」と称される。いくつかの実施形態において、gRNAは単一のRNA分子であり、本明細書において「単一ガイドRNA」または「sgRNA」と称される。「ガイドRNA」または「gRNA」という用語は包括的であり、2分子ガイドRNAとsgRNAの両方を表す。
【0147】
gRNAのタンパク質結合セグメントは、1つには、互いにハイブリッドを形成して二本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖)を形成するヌクレオチドの2つの相補的な広がりを含み、これは、Casタンパク質への結合を容易にする。
【0148】
gRNAのDNA結合セグメント(または「DNA結合配列」)は、特異的配列標的DNA配列に相補的であり、これに結合することができるヌクレオチド配列を含む。gRNAのタンパク質結合セグメントはCasポリペプチドと相互作用し、gRNA分子と部位特異的改変ポリペプチドの相互作用は内在性DNAへのCas結合をもたらし、標的DNA配列内または周囲に1またはそれを超える改変を生成する。標的改変部位の正確な位置は、(i)gRNAと標的DNA配列との間での塩基対形成相補性および(ii)標的DNA配列中のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称される短いモチーフの位置の両方によって決定される。PAM配列は、標的DNA配列へのCas結合のために必要とされる。様々なPAM配列が本分野において公知であり、本分野において公知である特定のCasエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)とともに使用するのに適している(例えば、Nat Methods.2013 Nov;10(11):1116-1121およびSci Rep.2014;4:5405参照)。いくつかの実施形態において、PAM配列は、標的改変部位の50塩基対内に位置する。いくつかの実施形態において、PAM配列は、標的改変部位の10塩基対内に位置する。本方法によって標的とされ得るDNA配列は、標的改変部位へのPAM配列の相対的な距離と配列特異的な、gRNAによって媒介されるCas結合を媒介するための特有の20塩基対配列の存在とによってのみ限定される。いくつかの実施形態において、標的改変部位は、標的遺伝子座の5’終端に位置する。いくつかの実施形態において、標的改変部位は、標的遺伝子座の3’末端に位置する。いくつかの実施形態において、標的改変部位は、標的遺伝子座のイントロンまたはエクソン内に位置する。
【0149】
いくつかの実施形態において、本開示は、gRNAをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、gRNAをコードする核酸は、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクター中に含まれる。いくつかの実施形態において、本開示は部位特異的改変ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、部位特異的改変ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクター中に含まれる。
Casタンパク質
【0150】
いくつかの実施形態において、部位特異的改変ポリペプチドはCasタンパク質である。本明細書に記載されている方法および組成物においては、S.pyogenes、S.aureus、N.meningitidis、S.thermophiles、Acidovorax avenae、Actinobacillus pleuropneumoniae、Actinobacillus succinogenes、Actinobacillus suis、Actinomyces種、Cycliphilusdenitrificans、Aminomonas paucivorans、Bacillus cereus、Bacillus smithii、Bacillus thuringiensis、Bacteroides種、Blastopirellula
marina、Bradyrhizobium種、Brevibacillus laterospoxus、Campylobacter coli、Campylobacter jejuni、Campylobacter lari、Candidatus
puniceispirillum、Clostridium cellulolyticum、Clostridium perfringens、Corynebacterium accolens、Corynebacterium diphtheria、Corynebacterium matruchotii、Dinoroseobacter shibae、Eubacterium dolichum、Gammaproteobacterium、Gluconacetobacter diazotrophicus、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus sputomm、Helicobacter canadensis、Helicobacter cinaedi、Helicobacter mustelae、Ilyobacter polytropus、Kingella kingae、Lactobacillus crispatus、Listeria ivanovii、Listeria monocytogenes、Listeriaceae bacterium、Methylocystis種、Methylosinus trichosporium、Mobiluncus mulieris、Neisseria bacilliformis、Neisseria cinerea、Neisseria
flavescens、Neisseria lactamica、Neisseria meningitidis、Neisseria種、Neisseria wadsworthii、Nitrosomonas種、Parvibaculum lavamentivorans、Pasteurella multocida、Phascolarctobacterium succinatutens、Ralstonia syzygii、Rhodopseudomonas palustris、Rhodovulum種、Simonsiella muelleri、Sphingomonas種、Sporolactobacillus vineae、Staphylococcus aureus、Staphylococcus lugdunensis、Streptococcus種、Subdoligranulum種、Tistrella mobilis、Treponema種またはVerminephrobacter eiseniae由来のCas分子を含む様々な種のCas分子を使用することができる。
【0151】
いくつかの実施形態において、Casタンパク質はCas9タンパク質またはCas9相同分子種であり、SpCas9、SpCas9-HF1、SpCas9-HF2、SpCas9-HF3、SpCas9-HF4、SaCas9、FnCpf、FnCas9、eSpCas9およびNmeCas9からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、エンドヌクレアーゼは、C2C1、C2C3、Cpf1(Cas12aとも称される)、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3およびCsf4からなる群から選択される。さらなるCas9相同分子種は、PCT国際公開第2015/071474号に記載されている。
【0152】
いくつかの実施形態において、Cas9タンパク質は、天然に存在するCas9タンパク質である。例示的な天然に存在するCas9分子は、Chylinskiら、RNA Biology 2013:10:5、727-737に記載されている。このようなCas9分子としては、クラスター1細菌科、クラスター2細菌科、クラスター3細菌科、クラスター4細菌科、クラスター5細菌科、クラスター6細菌科、クラスター7細菌科、クラスター8細菌科、クラスター9細菌科、クラスター10細菌科、クラスター11細菌科、クラスター12細菌科、クラスター13細菌科、クラスター14細菌科、クラスター15細菌科、クラスター16細菌科、クラスター17細菌科、クラスター18細菌科、クラスター19細菌科、クラスター20細菌科、クラスター21細菌科、クラスター22細菌科、クラスター23細菌科、クラスター24細菌科、クラスター25細菌科、クラスター26細菌科、クラスター27細菌科、クラスター28細菌科、クラスター29細菌科、クラスター30細菌科、クラスター31細菌科、クラスター32細菌科、クラスター33細菌科、クラスター34細菌科、クラスター35細菌科、クラスター36細菌科、クラスター37細菌科、クラスター38細菌科、クラスター39細菌科、クラスター40細菌科、クラスター41細菌科、クラスター42細菌科、クラスター43細菌科、クラスター44細菌科、クラスター45細菌科、クラスター46細菌科、クラスター47細菌科、クラスター48細菌科、クラスター49細菌科、クラスター50細菌科、クラスター51細菌科、クラスター52細菌科、クラスター53細菌科、クラスター54細菌科、クラスター55細菌科、クラスター56細菌科、クラスター57細菌科、クラスター58細菌科、クラスター59細菌科、クラスター60細菌科、クラスター61細菌科、クラスター62細菌科、クラスター63細菌科、クラスター64細菌科、クラスター65細菌科、クラスター66細菌科、クラスター67細菌科、クラスター68細菌科、クラスター69細菌科、クラスター70細菌科、クラスター71細菌科、クラスター72細菌科、クラスター73細菌科、クラスター74細菌科、クラスター75細菌科、クラスター76細菌科、クラスター77細菌科またはクラスター78細菌科のCas9の分子が挙げられる。
【0153】
いくつかの実施形態において、Cas9タンパク質は、Chylinskiら、RNA
Biology 2013 10:5、727-737;Houら、PNAS Early Edition 2013、1-6に記載されているCas9アミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、Casポリペプチドは、以下の活性の1またはそれより多くを含む。
a)ニッカーゼ活性、すなわち、核酸分子の一本鎖、例えば、非相補鎖または相補鎖を切断する能力;
b)一実施形態において、2つのニッカーゼ活性の存在である二本鎖ヌクレアーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸の両方の鎖を切断し、二本鎖切断を作出する能力;
c)エンドヌクレアーゼ活性;
d)エキソヌクレアーゼ活性;および/または
e)ヘリカーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸のらせん構造を巻き戻す能力。
【0155】
いくつかの実施形態において、Cas9は野生型(WT)Cas9タンパク質または相同分子種である。WT Cas9は、2つの触媒的に活性なドメイン(HNHおよびRuvC)を含む。gRNA特異性に基づくDNAへのWT Cas9の結合は、非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え修復(HDR)によって修復することができる二本鎖DNA切断をもたらす。いくつかの実施形態において、Cas9は、いずれかの修復機構による標的配列の修復の可能性または割合をさらに増加させるために、DNA損傷シグナル伝達タンパク質、エキソヌクレアーゼまたはホスファターゼを補充する異種のタンパク質に融合される。いくつかの実施形態において、WT Cas9は、相同組換え修復による外因性核酸配列の取り込みを促進するために、核酸修復テンプレートとともに同時発現される。
【0156】
いくつかの実施形態において、異なるCas9タンパク質の様々な酵素的特徴を十分に活用するために(例えば、異なるPAM配列選好性のため;増加または減少した酵素活性のため;細胞毒性の増加または減少したレベルのため;NHEJ、相同組換え修復、一本鎖切断、二本鎖切断などの間でのバランスを変化させるため)、様々な提供される方法において異なるCas9タンパク質(すなわち、様々な種由来のCas9タンパク質)を使用することが有利であり得る。
【0157】
いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、S.pyogenesに由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGG、NAG、NGAを認識する(Maliら、Science 2013;339(6121):823-826)。いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、S.thermophilesに由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGGNGおよび/またはNNAGAAW(W=AまたはT)を認識する(例えば、Horvathら、Science,2010;327(5962):167-170,及びDeveauら、J BACTERIOL 2008;190(4):1390-1400参照)。いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、S.mutansに由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGGおよび/またはNAAR(R=AまたはG)を認識する(例えば、Deveauら、J BACTERIOL 2008;190(4):1390-1400参照)。いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、S.aureusに由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNNGRR(R=AまたはG)を認識する。いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、S.aureusに由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGRRT(R=AまたはG)を認識する。いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、S.aureusに由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフN GRRV(R=AまたはG)を認識する。いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、N.meningitidisに由来するCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフN GATTまたはN GCTT(R=AまたはG、V=A、GまたはC)を認識する(例えば、Houら、PNAS
2013,1-6参照)。先述の実施形態において、Nは、任意のヌクレオチド残基、例えば、A、G、CまたはTのいずれでもあり得る。
【0158】
いくつかの実施形態において、Casタンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、PCT国際公開第2015/071474号またはChylinskiら、RNA Biology 2013 10:5、727-737に記載されているCasタンパク質と少なくとも90%同一であるCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、PCT国際公開第2015/071474号またはChylinskiら、RNA Biology 2013 10:5、727-737に記載されているCasタンパク質と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、PCT国際公開第2015/071474号またはChylinskiら、RNA Biology 2013
10:5、727-737に記載されているCasタンパク質と100%同一であるCasタンパク質をコードする。
Cas変異体
【0159】
いくつかの実施形態において、Casポリペプチドの1またはそれを超える特性を変化させるために、Casポリペプチドは改変操作される。例えば、いくつかの実施形態において、Casポリペプチドは、変化した酵素特性、例えば、(天然に存在するまたは他の参照Cas分子と比較して)変化したヌクレアーゼ活性または変化したヘリカーゼ活性を含む。いくつかの実施形態において、改変操作されたCasポリペプチドは、そのサイズを変化させる変化、例えば、Casポリペプチドの別の特性に対する顕著な効果なしにそのサイズを低下させるアミノ酸配列の欠失を有することができる。いくつかの実施形態において、改変操作されたCasポリペプチドは、PAM認識に影響を与える変化を含む。例えば、改変操作されたCasポリペプチドは、対応する野生型Casタンパク質によって認識されるPAM配列以外のPAM配列を認識するように変化させることができる。
【0160】
所望の特性を有するCasポリペプチドは、所望の特性を有する変異体または変化したCasポリペプチドを提供するための、天然に存在するCasポリペプチドまたは親Casポリペプチドの変化を含む多数の方法で作製することができる。例えば、親Casポリペプチド(例えば、天然に存在するまたは改変操作されたCasポリペプチド)の配列中に、1またはそれを超える変異を導入することができる。このような変異および差は、置換(例えば、保存的置換または非必須なアミノ酸の置換)、挿入または欠失を含み得る。いくつかの実施形態において、変異体Casポリペプチドは、親Casポリペプチドと比較して1またはそれを超える変異(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、30、40または50の変異)を含む。
【0161】
一実施形態において、変異体Casポリペプチドは、天然に存在するCasポリペプチドと異なる切断特性を備える。いくつかの実施形態において、CasはCasニッカーゼ変異体である。Casニッカーゼ変異体は、ただ1つの触媒的に活性なドメイン(HNHドメインまたはRuvCドメインのいずれか)を含む。Casニッカーゼ変異体はgRNA特異性に基づいてDNA結合を保持するが、DNAのただ1つの鎖を切断することができ、一本鎖切断(例えば、「ニック」)をもたらす。いくつかの実施形態において、2つの相補的Casニッカーゼ変異体(例えば、不活化されたRuvCドメインを有する1つのCasニッカーゼ変異体および不活化されたHNHドメインを有する1つのCasニッカーゼ変異体)が、2つのそれぞれの標的配列;センスDNA鎖上の1つの標的配列およびアンチセンスDNA鎖上の1つの標的配列に対応する2つのgRNAを用いて、同じ細胞中で発現される。2つの標的外ニックが二本鎖切断を生成するのに十分に近く生成される可能性は低いので、この二重ニッカーゼ系は付着二本鎖切断をもたらし、標的特異性を増加させることができる。いくつかの実施形態において、Casニッカーゼ変異体は、相同組換え修復による外因性核酸配列の取り込みを促進するために、核酸修復テンプレートとともに同時発現される。
【0162】
いくつかの実施形態において、Casは非活性化されたCas(dCas)変異体である。このような実施形態では、Casポリペプチドは、内因性酵素活性を全く含まず、DNA切断を媒介することができない。このような実施形態において、dCasは、非切断ベースの様式でDNAを改変することができる異種のタンパク質と融合され得る。例えば、いくつかの実施形態において、dCasタンパク質は転写活性化因子または転写リプレッサードメイン(例えば、クルッペル関連ボックス(KRABまたはSKD);Mad mSIN3相互作用ドメイン(SIDまたはSID4X);ERFリプレッサードメイン(ERD);MAX相互作用タンパク質1(MXI1);など)に融合される。いくつかのこのような事例では、dCas融合タンパク質は、標的DNA中の特異的な位置(すなわち、配列)へガイドRNAによって標的化され、プロモーターへのRNAポリメラーゼ結合の遮断(転写活性化因子機能を選択的に阻害する)および/または局所クロマチン状態の改変(例えば、標的DNAを改変するまたは標的DNAと会合したポリペプチドを改変する融合配列が使用される場合)など遺伝子座特異的制御を及ぼす。いくつかの事例では、変化は一過性である(例えば、転写抑制または活性化)。いくつかの事例において、変化は遺伝性である(例えば、標的DNAにまたは標的DNAと会合されたタンパク質、例えば、ヌクレオソームのヒストンに後成的修飾が施された場合)
【0163】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているCasポリペプチドは、CasポリペプチドのPAM特異性を変化させるために改変操作することができる。いくつかの実施形態において、変異体Casポリペプチドは、親CasポリペプチドのPAM特異性とは異なるPAM特異性を有する。例えば、オフターゲット部位を減少させ、特異性を改善させまたはPAM認識要求を除去するために変異体Casポリペプチドが認識するPAM配列を変化させるために、天然に存在するCasタンパク質を改変することができる。いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、PAM認識配列の長さを増加させるために改変することができる。いくつかの実施形態において、PAM認識配列の長さは、少なくとも4、5、6、7、8、9、10または15アミノ酸長である。指向性進化を用いて、異なるPAM配列を認識するおよび/または低下したオフターゲット活性を有するCasポリペプチドを生成することができる。Casポリペプチドの指向性進化のために使用することができる例示的な方法および系は、例えば、Esveltら、Nature 2011、472(7344):499-503に記載されている。
【0164】
例示的なCas変異体は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/161276号に記載されている。
gRNA
【0165】
本開示は、部位特異的改変ポリペプチドを特異的な標的DNA配列に誘導するガイドRNA(gRNA)を提供する。gRNAは、DNA標的化セグメントおよびタンパク質結合セグメントを含む。gRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA配列中の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む。従って、gRNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して、配列特異的様式で標的DNAと相互作用し、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列はgRNAが結合する標的DNA内の位置を決定する。gRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA配列内の任意の所望の配列にハイブリッド形成するために、(例えば、遺伝子改変操作によって)修飾することができる。
【0166】
ガイドRNAのタンパク質結合セグメントは、部位特異的改変ポリペプチド(例えば、Cas9タンパク質)と相互作用して、複合体を形成する。ガイドRNAは、上記DNA標的化セグメントを介して、結合されたポリペプチドを、標的DNA内の特異的なヌクレオチド配列へガイドする。ガイドRNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的であり、二本鎖のRNA二重鎖を形成するヌクレオチドの2つの広がりを含む。
【0167】
いくつかの実施形態において、gRNAは2つの別個のRNA分子を含む。このような実施形態において、2つのRNA分子のそれぞれは、2つのRNA分子の相補的ヌクレオチドがハイブリッド形成して、タンパク質結合セグメントの二本鎖のRNA二重鎖を形成するように互いに相補的であるヌクレオチドの広がりを含む。いくつかの実施形態において、gRNAは単一のRNA分子(sgRNA)を含む。
【0168】
標的遺伝子座に対するgRNAの特異性は、標的遺伝子座内の標的DNA配列に相補的である約20ヌクレオチドを含むDNA結合セグメントの配列によって媒介される。いくつかの実施形態において、対応する標的DNA配列はおよそ20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、本発明のgRNA配列のDNA結合セグメントは、標的遺伝子座内の標的DNA配列に少なくとも90%相補的である。いくつかの実施形態において、本発明のgRNA配列のDNA結合セグメントは、標的遺伝子座内の標的DNA配列に少なくとも95%、96%、97%、98%または99%相補的である。いくつかの実施形態において、本発明のgRNA配列のDNA結合セグメントは、標的遺伝子座内の標的DNA配列に100%相補的である。
【0169】
いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、BTK遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0170】
いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、表3中の配列の1つと少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。
表3:例示的なガイド配列
【表3-1】
【表3-2】
【0171】
いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、表3中の配列の1つと少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、gRNA配列のDNA結合セグメントは、表3中の配列の1つと100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0172】
いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、BTK遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、表1に列記されているものから選択される標的遺伝子の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、BTK遺伝子のエクソン内またはイントロン内、好ましくはBTK遺伝子の第二または第三のエクソン内の標的遺伝子座内の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0173】
いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、配列番号1~8の1つと少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、配列番号1~8の1つと少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの実施形態において、ゲノム編集組成物は、それぞれDNA結合セグメントを含む2またはそれを超えるgRNA分子を含み、ここで、DNA結合セグメントの少なくとも1つは、配列番号1~8の1つと100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0174】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているgRNA配列のDNA結合セグメントは、特定の標的遺伝子座または標的遺伝子に特有である標的配列を特定するための本分野において公知のアルゴリズム(例えば、Cas-OFF finder)を用いて、オフターゲット結合を最小限に抑えるように設計される。
【0175】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているgRNAは、ヌクレアーゼに対する安定性を導入する1またはそれを超える修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドを含むことができる。このような実施形態において、これらの修飾されたgRNAは、非修飾gRNAと比較して、低下した自然免疫を誘発し得る。「自然免疫応答」という用語には、サイトカイン発現および放出、特にインターフェロン、および細胞死の誘導を伴う、一般的にはウイルスまたは細菌起源の、一本鎖核酸を含む外因性核酸に対する細胞応答が含まれる。
【0176】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているgRNAは、5’末端でまたはその付近で(例えば、gRNAの5’末端の1~10、1~5または1~2ヌクレオチド内)修飾される。いくつかの実施形態において、gRNAの5’末端は、真核生物のmRNAキャップ構造またはキャップ類縁体(例えば、G(5’)ppp(5’)Gcap類縁体、m7G(5’)ppp(5’)Gcap類縁体または3’-0-Me-m7G(5’)ppp(5’)G抗リバースキャップ類縁体(ARCA))の包含によって修飾される。いくつかの実施形態において、インビトロ転写されたgRNAは、5’トリホスフェート基を除去するためのホスファターゼ(例えば、ウシ腸アルカリホスファターゼ)での処理によって修飾される。いくつかの実施形態において、gRNAは、その3’末端にまたはその付近に(例えば、gRNAの3’末端の1~10、1~5または1~2ヌクレオチド内)修飾を含む。例えば、いくつかの実施形態において、gRNAの3’末端は、1またはそれを超える(例えば、25~200)アデニン(A)残基の付加によって修飾される。
【0177】
いくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはgRNA中に存在することができるが、他の遺伝子制御系、例えば、mRNA、RNAiまたはsiRNAベースの系中にも存在し得る。いくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドは、以下の1またはそれより多くを含むことができる。
a)非連結ホスフェート酸素および/またはホスホジエステル骨格結合中の連結ホスフェート酸素の1もしくはそれより多くの一方または両方の改変、例えば、置換;
b)リボース糖の、例えば、リボース糖上の2’ヒドロキシルの構成要素の改変、例えば、置換;
c)「デホスホ」リンカーによるホスフェート部分の大規模な置換;
d)天然に存在する核酸塩基の修飾または置換
e)リボース-ホスフェート骨格の置換または修飾;
f)オリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端の修飾、例えば、末端ホスフェート基の除去、修飾もしくは置換または部分の抱合;および
g)糖の修飾。
【0178】
いくつかの実施形態において、2、3、4またはそれを超える修飾を有することができる修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドを与えるために、上に列記されている修飾は組み合わせることができる。例えば、いくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、修飾された糖および修飾された核酸塩基を有することができる。いくつかの実施形態において、gRNAの全ての塩基が修飾される。いくつかの実施形態において、gRNA分子のホスフェート基のそれぞれが、ホスホロチオエート基で置換される。
【0179】
いくつかの実施形態において、使用者の標的配列内のgRNAの選択を最適化するために、例えば、ゲノム全体にわたる総オフターゲット活性を最小化するために、ソフトウェアツールを使用することができる。オフターゲット活性は、切断以外であり得る。例えば、S.pyogenes Cas9を使用するそれぞれの可能なgRNA選択に対して、ソフトウェアツールは、ある数まで(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)のミスマッチされた塩基対を含有する、(NAGまたはNGG PAMのいずれかに先行する)ゲノム全体にわたる全ての潜在的オフターゲット配列を同定することができる。各オフターゲット配列における切断効率は、例えば、実験的に得られた重み付けスキームを用いて予想することができる。次いで、各可能なgRNAは、その予想される全てのオフターゲット切断に従って順位付けすることができ、最上位に順位付けされたgRNAが最大のオンターゲットおよび最小のオフターゲット切断を有する可能性があるgRNAに相当する。他の機能、例えば、gRNAベクター構築のための自動化された試薬設計、オンターゲットSurveyorアッセイのためのプライマー設計次世代配列決定を介したオフターゲット切断の高処理量検出および定量のためのプライマー設計も、ツール中に含めることができる。
末端プロセシング酵素
【0180】
特定の実施形態において想定されるゲノム編集組成物および方法は、TALEN変異形またはCasタンパク質および末端プロセシング酵素を使用して細胞ゲノムを編集することを含む。特定の実施形態において、単一のポリヌクレオチドは、リンカー、自己切断ペプチド配列、例えば、2A配列によって、またはIRES配列によって隔てられた、TALENまたはCasタンパク質および末端プロセシング酵素をコードする。特定の実施形態において、ゲノム編集組成物は、TALEN変異形またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと末端プロセシング酵素をコードする別個のポリヌクレオチドとを含む。
【0181】
「末端プロセシング酵素」という用語は、ポリヌクレオチド鎖の露出した末端を修飾する酵素を表す。ポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、RNA、DNAとRNAの二本鎖ハイブリッドおよび合成DNA(例えば、A、C、GおよびT以外の塩基を含有する)であり得る。末端プロセシング酵素は、1もしくはそれを超えるヌクレオチドを付加し、1もしくはそれを超えるヌクレオチドを除去し、ホスフェート基を除去もしくは修飾し、および/またはヒドロキシル基を除去もしくは修飾することによって、露出したポリヌクレオチド鎖末端を修飾し得る。末端プロセシング酵素は、エンドヌクレアーゼ切断部位においてまたは他の化学的もしくは機械的手段、例えば、剪断(例えば、細いゲージの針を通過させることによる、加熱、超音波処理、ミニビーズ転動および噴霧)、電離放射線、紫外線照射、酸素ラジカル、化学的加水分解および化学療法剤によって生成された末端において、末端を修飾し得る。
【0182】
特定の実施形態において、特定の実施形態において想定されるゲノム編集組成物および方法は、TALENまたはCRISPR/Cas系およびDNA末端プロセシング酵素を使用して細胞ゲノムを編集することを含む。
【0183】
「DNA末端プロセシング酵素」という用語は、DNAの露出した末端を修飾する酵素を表す。DNA末端プロセシング酵素は、平滑末端または付着末端(5’または3’突出を有する末端)を修飾し得る。DNA末端プロセシング酵素は、一本鎖または二本鎖DNAを修飾し得る。DNA末端プロセシング酵素は、エンドヌクレアーゼ切断部位においてまたは他の化学的もしくは機械的手段、例えば、剪断(例えば、細いゲージの針を通過させることによる、加熱、超音波処理、ミニビーズ転動および噴霧)、電離放射線、紫外線照射、酸素ラジカル、化学的加水分解および化学療法剤によって生成された末端において、末端を修飾し得る。DNA末端プロセシング酵素は、1もしくはそれを超えるヌクレオチドを付加し、1もしくはそれを超えるヌクレオチドを除去し、ホスフェート基を除去もしくは修飾し、および/またはヒドロキシル基を除去もしくは修飾することによって、露出したDNA末端を修飾し得る。
【0184】
本明細書において想定される特定の実施形態で使用するのに適したDNA末端プロセシング酵素の実例としては、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ホスファターゼ、ヒドロラーゼおよび鋳型非依存性DNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
本明細書において想定される特定の実施形態における使用に適したDNA末端プロセシング酵素のさらなる実例としては、Trex2、Trex1、膜貫通ドメインのないTrex1、Apollo、Artemis、DNA2、Exo1、ExoT、ExoIII、Fen1、Fan1、MreII、Rad2,Rad9、TdT(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)、PNKP、RecE、RecJ、RecQ、ラムダエキソヌクレアーゼ、Sox、ワクシニアDNAポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼIII、エキソヌクレアーゼVII、NDK1、NDK5、NDK7、NDK8、WRN、T7-エキソヌクレアーゼ遺伝子6、トリ骨髄芽球症ウイルス組込みタンパク質(IN)、Bloom、Antartic Phophatase、アルカリホスファターゼ、ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)、ApeI、マングビーンヌクレアーゼ、Hex1、TTRAP(TDP2)、Sgs1、Sae2、CUP、Pol mu、Polラムダ、MUS81、EME1、EME2、SLX1、SLX4およびUL-12が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
特定の実施形態において、本明細書において想定される細胞のゲノムを編集するためのゲノム編集組成物および方法は、TALENまたはCasタンパク質およびエキソヌクレアーゼを含むポリペプチドを含む。「エキソヌクレアーゼ」という用語は、3’または5’末端のいずれかにおけるホスホジエステル結合を切断する加水分解反応を介してポリヌクレオチド鎖の末端のホスホジエステル結合を切断する酵素を表す。
【0187】
本明細書において想定される特定の実施形態における使用に適したエキソヌクレアーゼの実例としては、hExoI、酵母ExoI、大腸菌(E.coli)ExoI、hTREX2、マウスTREX2、ラットTREX2、hTREX1、マウスTREX1、ラットTREX1およびラットTREX1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0188】
特定の実施形態において、DNA末端プロセシング酵素は、3’または5’エキソヌクレアーゼ、好ましくは、Trex1またはTrex2、より好ましくは、Trex2、さらに好ましくは、ヒトまたはマウスTrex2である。
E.標的部位
【0189】
特定の実施形態において想定されるヌクレアーゼ変異形は、BTK遺伝子中の任意の適切な標的配列に結合するように設計することができ、天然に存在するエフェクタードメインと比較して、新規結合特異性を有することができる。特定の実施形態において、標的部位は、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー要素などを含むがこれらに限定されない遺伝子の制御領域である。特定の実施形態において、標的部位は、遺伝子のコード領域またはスプライス部位である。特定の実施形態において、TALEN変異形またはCRISPR/Cas系およびドナー修復テンプレートは、治療用ポリヌクレオチドを挿入するように設計することができる。特定の実施形態において、TALEN変異形またはCRISPR/Cas系およびドナー修復テンプレートは、内在性BTK遺伝子制御要素または発現調節配列の調節下で治療用ポリヌクレオチドを挿入するように設計することができる。
【0190】
様々な実施形態において、TALEN変異形またはCRISPR/Cas系は、X染色体上に位置するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)遺伝子中の標的配列に結合し、切断する。BTK遺伝子は、B細胞の発達および成熟にとって不可欠であるチロシンキナーゼをコードする。BTKは、とりわけ、ブルトン無ガンマグロブリン血症チロシンキナーゼ、B細胞前駆細胞キナーゼ(BPK)、チロシンタンパク質キナーゼBTKアイソフォーム(エクソン13~17を欠如する)、ドミナントネガティブキナーゼ欠損ブルトン型チロシンキナーゼ、チロシン-タンパク質キナーゼBTKアイソフォーム(エクソン14を欠如する)、末端切断されたブルトン型無ガンマグロブリン血症チロシンキナーゼ、PSCTK1、AGMX1、無ガンマグロブリン血症(Agammaglobulinaemia)チロシンキナーゼ(ATK)、無ガンマグロブリン血症(Agammaglobulinemia)チロシンキナーゼ、チロシン-タンパク質キナーゼBTKおよびIMD1とも称される。特定の実施形態において使用される例示的なBTK参照配列番号としては、NM_000061.2、NP_000052.1、AK057105、BC109079、DA619542、DB636737、CCDS14482.1、Q06187、Q5JY90、ENSP00000308176.7、OTTHUMP00000023676、ENST00000308731.7、OTTHUMT00000057532、NM_001287344.1、NP_001274273.1、NM_001287345.1およびNP_001274274.1.が挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
特定の実施形態において、TALEN変異形またはCRISPR/Cas系は、BTK遺伝子、好ましくはヒトBTK遺伝子の第一または第二のイントロン中の標的配列、より好ましくは配列番号1~8に記載されているヒトBTK遺伝子の第一または第二のイントロン中の標的配列中に二本鎖切断(DSB)を導入する。特定の実施形態において、TALENまたはCRISPR/Cas系は、配列「ACTT」を切断することによって、配列番号1~8に記載されているBTK遺伝子の第一または第二のイントロン中の標的部位に二本鎖切断を導入するヌクレアーゼを含む。
【0192】
好ましい実施形態において、TALENまたはCRISPR/Cas系は二本鎖DNAを切断し、配列番号1~8に記載されているポリヌクレオチド配列中にDSBを導入する。
【0193】
好ましい実施形態において、BTK遺伝子はヒトBTK遺伝子である。
F.ドナー修復テンプレート
【0194】
標的配列中にDSBを導入するために、ヌクレアーゼ変異形が使用され得、DSBは、1またはそれを超えるドナー修復テンプレートの存在下で、相同組換え修復(HDR)機構を通じて修復され得る。特定の実施形態において、ゲノム中に配列を挿入するために、ドナー修復テンプレートが使用される。特定の好ましい実施形態において、治療用BTKポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、例えば、配列番号18を挿入するために、ドナー修復テンプレートが使用される。
【化1】
(配列番号18)
【0195】
特定の好ましい実施形態において、BTKポリペプチドの発現が内在性BTKプロモーターおよび/またはエンハンサーの調節下にあるように、ドナー修復テンプレートが、治療用BTKポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を挿入するために使用される。
【0196】
様々な実施形態において、ドナー修復テンプレートを含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、例えば、レンチウイルス、IDLVなど、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルスまたはワクシニアウイルスベクターで細胞を形質導入することによって、ドナー修復テンプレートが造血細胞、例えば、造血幹もしくは前駆細胞、またはCD34細胞中に導入される。
【0197】
特定の実施形態において、ドナー修復テンプレートは、DSB部位に隣接する1またはそれを超える相同性アームを含む。
【0198】
本明細書において使用される「相同性アーム」という用語は、ヌクレアーゼによって標的部位に導入されたDNA切断に隣接するDNA配列と同一またはほぼ同一である、ドナー修復テンプレート中の核酸配列を表す。一実施形態において、ドナー修復テンプレートは、DNA切断部位の5’のDNA配列と同一またはほぼ同一である核酸配列を含む5’相同性アームを含む。一実施形態において、ドナー修復テンプレートは、DNA切断部位の3’のDNA配列と同一またはほぼ同一である核酸配列を含む3’相同性アームを含む。好ましい実施形態において、ドナー修復テンプレートは、5’相同性アームおよび3’相同性アームを含む。ドナー修復テンプレートは、DSB部位に直接隣接したゲノム配列に対する相同性またはDSB部位から任意の数の塩基対内にあるゲノム配列に対する相同性を含み得る。一実施形態において、ドナー修復テンプレートは、約5bp、約10bp、約25bp、約50bp、約100bp、約250bp、約500bp、約1000bp、約2500bp、約5000bp、約10000bpまたはそれを超える、ゲノム配列に対して相同である核酸配列を含み、相同な配列の任意の中間の長さを含む。
【0199】
特定の実施形態において想定される相同性アームの適切な長さの実例は、独立に選択され得、約100bp、約200bp、約300bp、約400bp、約500bp、約600bp、約700bp、約800bp、約900bp、約1000bp、約1100bp、約1200bp、約1300bp、約1400bp、約1500bp、約1600bp、約1700bp、約1800bp、約1900bp、約2000bp、約2100bp、約2200bp、約2300bp、約2400bp、約2500bp、約2600bp、約2700bp、約2800bp、約2900bpまたは約3000bpまたはこれより長い相同性アームを含むがこれらに限定されず、相同性アームの全ての中間の長さを含む。
【0200】
適切な相同性アームの長さのさらなる実例としては、約100bp~約3000bp、約200bp~約3000bp、約300bp~約3000bp、約400bp~約3000bp、約500bp~約3000bp、約500bp~約2500bp、約500bp~約2000bp、約750bp~約2000bp、約750bp~約1500bpまたは約1000bp~約1500bpが挙げられるが、これらに限定されず、相同性アームの全ての中間の長さを含む。
【0201】
特定の実施形態において、5’および3’相同性アームの長さは、約500bp~約1500bpから独立に選択される。一実施形態において、5’相同性アームは約1500bpであり、3’相同性アームは約1000bpである。一実施形態において、5’相同性アームは約200bp~約600bpであり、3’相同性アームは約200bp~約600bpである。一実施形態において、5’相同性アームは約200bpであり、3’相同性アームは約200bpである。一実施形態において、5’相同性アームは約300bpであり、3’相同性アームは約300bpである。一実施形態において、5’相同性アームは約400bpであり、3’相同性アームは約400bpである。一実施形態において、5’相同性アームは約500bpであり、3’相同性アームは約500bpである。一実施形態において、5’相同性アームは約600bpであり、3’相同性アームは約600bpである。
G.ポリペプチド
【0202】
TALENおよびCasタンパク質を含むがこれらに限定されない様々なポリペプチドが本明細書において想定される。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、表2に記載されているRVDの1またはそれより多くをコードするアミノ酸配列を含む。「ポリペプチド」、「ポリペプチド断片」、「ペプチド」および「タンパク質」は、反対の指定がなければ、互換的に、慣用の意味に従って、すなわち、アミノ酸の配列として使用される。一実施形態において、「ポリペプチド」は、融合ポリペプチド及びその他の変異形を含む。ポリペプチドは、様々な周知の組換えおよび/または合成技術のいずれをも使用して調製することができる。ポリペプチドは、特定の長さに限定されず、例えば、ポリペプチドは、完全長タンパク質配列、完全長タンパク質の断片または融合タンパク質を含み得、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などの他、本分野において公知の他の修飾、天然に存在するものおよび天然に存在しないものの両方を含み得る。
【0203】
本明細書において使用される「単離されたタンパク質」、「単離されたペプチド」または「単離されたポリペプチド」などは、インビトロ合成、細胞環境からのおよび細胞の他の成分との会合からの単離および/または精製を表す、すなわち、インビボの物質を著しく伴っていない。
【0204】
特定の実施形態において想定されるポリペプチドの実例としては、TALEN、Casタンパク質、末端プロセシングヌクレアーゼ、これらの融合ポリペプチドおよび変異形が含まれるが、これらに限定されない。
【0205】
ポリペプチドには、「ポリペプチド変異形」が含まれる。ポリペプチド変異形は、1またはそれを超えるアミノ酸置換、欠失、付加および/または挿入において、天然に存在するポリペプチドと異なり得る。このような変異形は、天然に存在し得、または、例えば、上記ポリペプチド配列の1もしくはそれを超えるアミノ酸を修飾することによって合成的に生成され得る。例えば、特定の実施形態において、ポリペプチド中に1またはそれを超える置換、欠失、付加および/または挿入を導入することによって、ヒトBTK遺伝子中の標的部位を結合および切断するTALEN、CRISPR/Casなどの生物学的特性を改善することが望ましいことがあり得る。特定の実施形態において、ポリペプチドには、本明細書において想定される参照配列のいずれかと少なくとも約65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%アミノ酸同一性を有するポリペプチドが含まれ、典型的には、変異形は参照配列の少なくとも1つの生物学的活性を維持する。
【0206】
ポリペプチド変異形には、生物学的に活性な「ポリペプチド断片」が含まれる。生物学的に活性なポリペプチド断片の実例としては、DNA結合ドメイン、ヌクレアーゼドメインなどが挙げられる。本明細書において使用される「生物学的に活性な断片」または「最小の生物学的に活性な断片」という用語は、天然に存在するポリペプチド活性の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%または少なくとも5%を保持するポリペプチド断片を表す。好ましい実施形態において、生物学的活性は、標的配列に対する結合親和性および/または切断活性である。ある実施形態において、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約1700アミノ酸長のアミノ酸鎖を含むことができる。ある実施形態において、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700またはそれを超えるアミノ酸長であることが理解されるであろう。特定の実施形態において、ポリペプチドは、TALEN変異形の生物学的に活性な断片を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載されているポリペプチドは、「X」と表記される1またはそれを超えるアミノ酸を含み得る。アミノ酸配列番号中に存在する場合、「X」は任意のアミノ酸を表す。1またはそれを超える「X」残基は、本明細書において想定される特定の配列番号中に記載されているアミノ酸配列のNおよびC末端に存在し得る。「X」アミノ酸が存在しない場合、配列番号に記載されている残りのアミノ酸配列が生物学的に活性な断片と考えられ得る。
【0207】
生物学的に活性な断片は、N末端の末端切断および/またはC末端の末端切断を含み得る。特定の実施形態において、生物学的に活性な断片は、対応する野生型TALENまたはTALエフェクタードメイン配列と比較して、TALENまたはTALエフェクタードメインの1、2、3、4、5、6、7または8つのN末端のアミノ酸の欠失を欠如しまたは含み、より好ましくは、対応する野生型TALENまたはTALエフェクタードメイン配列と比較して、TALENまたはTALエフェクタードメインの4つのN末端のアミノ酸の欠失を欠如しまたは含む。特定の実施形態において、生物学的に活性な断片は、対応する野生型TALENまたはTALエフェクタードメインと比較して、TALENまたはTALエフェクタードメインの1、2、3、4または5つのC末端のアミノ酸の欠失を欠如しまたは含み、より好ましくは、対応する野生型TALENまたはTALエフェクタードメインと比較して、TALENまたはTALエフェクタードメインの2つのC末端のアミノ酸の欠失を欠如しまたは含む。特定の好ましい実施形態において、生物学的に活性な断片は、対応する野生型TALENまたはTALエフェクタードメインと比較して、TALENまたはTALエフェクタードメインの4つのN末端のアミノ酸および2つのC末端のアミノ酸の欠失を欠如し、または含む。
【0208】
上述のとおり、ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、末端切断および挿入を含む様々な方法で変化され得る。このような操作方法は、本分野において一般に公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列変異形は、DNA中の変異によって調製することができる。突然変異導入およびヌクレオチド配列改変のための方法は、本分野において周知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492)、Kunkelら、(1987,Methods in Enzymol,154:367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.ら、(Molecular Biology of the Gene,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)およびこれらの中に引用されている参考文献を参照。関心対象のタンパク質の生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換についての指針は、Dayhoffら、(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデル中に見出され得る。
【0209】
ある実施形態において、変異形は1またはそれを超える保存的置換を含有するであろう。「保存的置換」とは、ペプチド化学の分野において通常の技術を有する者が、ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標の性質が実質的に変更されないと予想するように、アミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸に置換されている置換である。修飾は、特定の実施形態において想定されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造中に施され得、ポリペプチドは、少なくともおよそを有するポリペプチドを含み、所望の特徴を有する変異形または誘導体ポリペプチドをコードする機能的分子をなお取得する。等価なまたは改善された変異形ポリペプチドを作製するために、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させることが望まれる場合、当業者は、例えば表1に従って、例えば、コードするDNA配列のコドンの1またはそれより多くを変化させることができる。
表1-アミノ酸コドン
【表1B-1】
【表1B-2】
【0210】
生物学的活性を消失させずに何れのアミノ酸残基を置換、挿入または欠失させることができるかを決定する上での指針は、DNASTAR、DNA Strider、Geneious、Mac VectorまたはVector NTIソフトウェアなどの本分野において周知のコンピュータプログラムを用いて見出すことができる。好ましくは、本明細書中に開示されているタンパク質変異形中のアミノ酸変化は保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に帯電したまたは帯電していないアミノ酸の置換である。保存的なアミノ酸変化は、その側鎖中に関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を伴う。天然に存在するアミノ酸は、一般に、4つのファミリーに分類される:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)および帯電していない極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)アミノ酸。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、時に、合わせて芳香族アミノ酸として分類される。ペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の適切な保存的置換は当業者に公知であり、一般的に、得られる分子の生物学的活性を変化させることなく施すことができる。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域中の単一のアミノ酸置換は生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する(例えば、Watsonら、Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224参照)。
【0211】
一実施形態において、2またはそれを超えるポリペプチドの発現が所望される場合には、2またはそれを超えるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書中の他の箇所に開示されているIRES配列によって隔てられることができる。
【0212】
特定の実施形態において想定されるポリペプチドには、融合ポリペプチドが含まれる。特定の実施形態において、融合ポリペプチドおよび融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。融合ポリペプチドおよび融合タンパク質は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを表す。
【0213】
別の実施形態において、2またはそれを超えるポリヌペプチドは、本明細書中の他の箇所に開示されている1またはそれを超える自己切断ポリペプチド配列を含む融合タンパク質として発現されることができる。
【0214】
一実施形態において、本明細書において想定される融合タンパク質は、1またはそれを超えるTALエフェクタードメインおよび1またはそれを超えるヌクレアーゼ、ならびに1またはそれを超えるリンカーおよび/または自己切断ポリペプチドを含む。
【0215】
一実施形態において、本明細書において想定される融合タンパク質は、TALEN変異形と、リンカーまたは自己切断ペプチドと、ならびに5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼおよび3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)を含むがこれらに限定されない末端プロセシング酵素とを含む。
【0216】
融合ポリペプチドは、シグナルペプチド、細胞透過性ペプチドドメイン(CPP)、DNA結合ドメイン、ヌクレアーゼドメインなど、エピトープタグ(例えば、マルトース結合タンパク質(「MBP」)、グルタチオンS転移酵素(GST)、HIS6、MYC、FLAG、V5、VSV-GおよびHA)、ポリペプチドリンカーおよびポリペプチド切断シグナルを含むがこれらに限定されない1またはそれを超えるポリペプチドドメインまたはセグメントを含むことができる。融合ポリペプチドは、典型的には、C末端がN末端に連結されているが、C末端がC末端に、N末端がN末端にまたはN末端がC末端にも連結され得る。特定の実施形態において、融合タンパク質のポリペプチドは任意の順序であり得る。融合ポリペプチドの所望される活性が保存される限り、融合ポリペプチドまたは融合タンパク質は、保存的に修飾された変異形、多型変異形、対立遺伝子、変異体、サブ配列および種間相同体も含むことができる。融合ポリペプチドは、化学的合成法によってもしくは2つの部分間での化学的連結によって作製され得、または他の標準的な技術を用いて、一般的に調製され得る。融合ポリペプチドを含む連結されたDNA配列は、本明細書の他の箇所に開示されている適切な転写または翻訳調節要素に動作可能に連結される。
【0217】
融合ポリペプチドは、1もしくはそれを超えるポリペプチドまたはポリペプチド内のドメインを連結するために使用することができるリンカーを必要に応じて含み得る。ペプチドリンカー配列は、各ポリペプチドがその適切な二次構造および三次構造に折り畳まれて、ポリペプチドドメインにその所望の機能を確実に発揮させるのに十分な距離によって、任意の2またはそれを超えるポリペプチド成分を隔てるために利用され得る。このようなペプチドリンカー配列は、本分野における標準的な技術を用いて融合ポリペプチド中に取り込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の要因に基づいて選択され得る:(1)柔軟な伸長した立体構造を採る能力;(2)第一および第二のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用することができる二次構造を採る能力の欠如;ならびに(3)ポリペプチド機能的エピトープと反応し得る疎水性または帯電した残基の欠如。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、AsnおよびSer残基を含有する。ThrおよびAlaなどのその他の近い中性アミノ酸も、リンカー配列中に使用され得る。リンカーとして有用に利用され得るアミノ酸配列としては、Marateaら、Gene 40:39-46,1985;Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258-8262,1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されているものが挙げられる。当該融合ポリペプチドセグメントが、機能的ドメインを分離し、立体障害を抑制するために使用することができる非必須のN末端アミノ酸領域を含有する場合には、リンカー配列は必要とされない。好ましいリンカーは、典型的には、組換え融合タンパク質の一部として合成される柔軟なアミノ酸サブ配列である。リンカーポリペプチドは、1~200アミノ酸の長さ、1~100アミノ酸の長さまたは1~50アミノ酸の長さであり得、これらの間の全ての整数値を含む。
【0218】
例示的なリンカーとしては、以下のアミノ酸配列:グリシンポリマー(G);グリシン-セリンポリマー(G1-51-5、式中、nは少なくとも1、2、3、4または5の整数である;グリシン-アラニンポリマー;アラニン-セリンポリマー;GGG;DGGGS(配列番号36);TGEKP(配列番号37)(例えば、Liuら、PNAS 5525-5530(1997));GGRR(配列番号38)(Pomerantzら、1995、上記);(GGGGS) 式中、n=1、2、3、4または5(配列番号39)(Kimら、PNAS 93,1156-1160(1996.);EGKSSGSGSESKVD(配列番号40)(Chaudharyら、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号41)(Birdら、1988,Science 242:423-426)、GGRRGGGS(配列番号42);LRQRDGERP(配列番号43);LRQKDGGGSERP(配列番号44);LRQKD(GGGS)ERP(配列番号45)が挙げられるが、これらに限定されない。または、柔軟なリンカーは、DNA結合部位およびペプチド自体の両方をモデル化することができるコンピュータプログラムを用いて(Desjarlais&Berg,PNAS 90:2256-2260(1993),PNAS 91:11099-11103(1994)またはファージディスプレイ法によって合理的に設計することができる。
【0219】
融合ポリペプチドは、本明細書に記載されているポリペプチドドメインのそれぞれの間にまたは内在性オープンリーディングフレームとドナー修復テンプレートによってコードされるポリペプチド間にポリペプチド切断シグナルをさらに含み得る。さらに、ポリペプチド切断部位は、任意のリンカーペプチド配列中に配置することができる。例示的なポリペプチド切断シグナルとしては、ポリペプチド切断認識部位、例えば、プロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、稀な制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)および自己切断ウイルスオリゴペプチドが含まれる(deFelipe and Ryan,2004,Traffic,5(8);616-26参照)。
【0220】
適切なプロテアーゼ切断部位および自己切断ペプチドは当業者に公知である(例えば、Ryanら、1997.J.Gener.Virol.78,699-722;Scymczakら、(2004)Nature Biotech.5,585-594参照)。例示的なプロテアーゼ切断部位としては、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えば、タバコエッチウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、バイモウイルス(byovirus)NIaプロテアーゼ、バイモウイルスRNA-2によってコードされるプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(イネツングロ球形ウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子およびエンテロキナーゼの切断部位が挙げられるが、これらに限定されない。その高い切断厳格性のために、一実施形態において、TEV(タバコエッチウイルス)プロテアーゼ切断部位、例えば、EXXYXQ(G/S)(配列番号46)、例えば、ENLYFQG(配列番号47)およびENLYFQS(配列番号48)(式中、Xは、任意のアミノ酸(TEVによる切断は、QとGまたはQとSの間で起こる)を表す)が好ましい。
【0221】
ある種の実施形態において、自己切断ポリペプチド部位は、2Aまたは2A様部位、配列またはドメインを含む(Donnellyら、2001.J.Gen.Virol.82:1027-1041)。特定の実施形態において、ウイルスの2Aペプチドは、アフトウイルス2Aペプチド、ポティウイルス2Aペプチドまたはカルジオウイルス2Aペプチドである。
【0222】
一実施形態において、ウイルスの2Aペプチドは、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aペプチド、ウマ鼻炎A型ウイルス(ERAV)2Aペプチド、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(TaV)2Aペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)2Aペプチド、タイロウイルス2Aペプチドおよび脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択される。
【0223】
2A部位の実例は、表2に提供されている。
表2:例示的な2A部位としては、以下の配列が挙げられる:
【表2B-1】
【表2B-2】
H.ポリヌクレオチド
【0224】
特定の実施形態において、本明細書において想定される1またはそれを超えるTALEN、TALエフェクタードメイン、Casタンパク質、ガイドRNA(gRNA)、末端プロセシング酵素および融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書において使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)およびDNA/RNAハイブリッドを表す。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得、組換え、合成または単離のいずれかであり得る。ポリヌクレオチドとしては、プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、合成RNA、合成mRNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅されたDNA、相補的DNA(cDNA)、合成DNAおよび組換えDNAが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000または少なくとも15000またはそれを超えるヌクレオチド長のヌクレオチドのポリマー形態、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはヌクレオチドのいずれかの種類の修飾された形態のいずれか、ならびに全ての中間の長さを表す。「中間の長さ」は、この文脈において、引用された値の間の任意の長さ、例えば、6、7、8、9など、101、102、103など;151、152、153など、201、202、203などを意味することが容易に理解されるであろう。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドまたは変異形は、参照配列に対して、少なくともまたは約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%,76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%,85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0225】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドはコドン最適化され得る。本明細書において使用される「コドン最適化された」という用語は、ポリペプチドの発現、安定性および/または活性を増加させるために、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド中のコドンを置換することを表す。コドン最適化に影響を与える要因としては、(i)2もしくはそれを超える生物もしくは遺伝子間でのコドンバイアスもしくは合成的に構築されたバイアス表の変動、(ii)生物、遺伝子もしくは遺伝子の組内のコドンバイアスの程度の変動、(iii)コンテクストを含むコドンの系統的変動、(iv)コドンのデコードするtRNAに従うコドンの変動、(v)トリプレットの全体的なまたは1つの位置におけるGC%に従うコドンの変動、(vi)参照配列、例えば、天然に存在する配列との類似性の程度の変動、(vii)コドン頻度カットオフの変動、(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造的特性、(ix)コドン置換の組の設計が基礎とすべきるDNA配列の機能についての従前の知識、および/または(x)各アミノ酸に対するコドンの組の系統的変動、および/または(xi)偽の翻訳開始部位の単離された除去の1またはそれより多くが挙げられるが、これらに限定されない。
【0226】
本明細書において使用される「ヌクレオチド」という用語は、リン酸化された糖とN-グリコシド結合した複素環式窒素塩基を表す。ヌクレオチドは、天然塩基および本分野で認知されている多様な修飾された塩基を含むことが理解される。このような塩基は、一般的には、ヌクレオチド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオチドは、一般的には、塩基、糖およびホスフェート基を含む。リボ核酸(RNA)では、糖はリボースであり、デオキシリボ核酸(DNA)では、糖はデオキシリボース、すなわち、リボース中に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。例示的な天然の窒素塩基には、プリンであるアデノシン(A)およびグアニジン(G)、ならびにピリミジンであるシチジン(C)およびチミジン(T)(または、RNAの場合にはウラシル(U))が含まれる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合される。ヌクレオチドは、通常、モノ、ジまたはトリホスフェートである。ヌクレオチドは、糖、ホスフェートおよび/または塩基部分において修飾されないまたは修飾されることが可能である(ヌクレオチド類縁体、ヌクレオチド誘導体、修飾されたヌクレオチド、非天然ヌクレオチドおよび非標準的なヌクレオチドとも互換的に称され、例えば、国際公開第92/07065号および国際公開第93/15187号参照)。修飾された核酸塩基の例は、Limbachら、(1994,Nucleic Acids Res.22,2183-2196)によって要約されている。
【0227】
ヌクレオチドは、ヌクレオシドのリン酸エステルとみなすこともでき、エステル化は糖のC-5に付着されたヒドロキシル基上で起こる。本明細書において使用される「ヌクレオシド」という用語は、糖とN-グリコシド結合した複素環式窒素塩基を表す。本分野において、ヌクレオシドは、天然塩基を含むこと、および周知の修飾された塩基も含むことが認識されている。このような塩基は、一般的には、ヌクレオシド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオシドは、一般的には、塩基および糖基を含む。ヌクレオシドは、糖および/または塩基部分において修飾されないまたは修飾されることが可能である(ヌクレオシド類縁体、ヌクレオシド誘導体、修飾されたヌクレオシド、非天然ヌクレオシドおよび非標準的なヌクレオシドとも互換的に称される)。同じく上述されているように、修飾された核酸塩基の例は、Limbachら、(1994,Nucleic Acids Res.22,2183-2196)によって要約されている。
【0228】
様々な例示的実施形態において、本明細書において想定されるポリヌクレオチドとしては、TALEN、CRISPR/Cas系、ガイドRNA、末端プロセシング酵素、融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびに発現ベクター、ウイルスベクターおよび本明細書において想定されるポリヌクレオチドを含む導入プラスミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0229】
本明細書において使用される「ポリヌクレオチド変異形」および「変異形」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列または以下で定義されている厳格な条件下で参照配列とハイブリッドを形成するポリヌクレオチドと実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチドを表す。これらの用語は、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失、置換または修飾によって参照ポリヌクレオチドから区別されるポリヌクレオチドも包含する。従って、「ポリヌクレオチド変異形」および「変異形」という用語には、1またはそれを超えるヌクレオチドが付加されまたは欠失され、または修飾され、または異なるヌクレオチドで置換されているポリヌクレオチドが含まれる。これに関して、変異、付加、欠失および置換を含むある種の変化を参照ポリヌクレオチドに施すことができ、それにより、改変されたポリヌクレオチドが参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持することが本分野において十分に理解されている。
【0230】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、厳格な条件下で標的核酸配列にハイブリッド形成するヌクレオチド配列を含む。「厳格な条件」下でハイブリッド形成することは、互いに少なくとも60%同一のヌクレオチド配列がハイブリッド形成された状態を保つハイブリダイゼーションプロトコールを記載する。一般的には、厳格な条件は、所定のイオン強度およびpHにおける特定の配列に対する熱融解点(Tm)より約5℃低いように選択される。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリッド形成する(所定のイオン強度、pHおよび核酸濃度下での)温度である。標的配列は一般的に過剰に存在するので、Tmにおいて、プローブの50%が平衡状態で占有される。
【0231】
本明細書において使用される「配列同一性」または、例えば、「50%同一な配列」を含むという表記は、比較のウィンドウにわたる、ヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸ベースで配列が同一である程度を表す。従って、「配列同一性の百分率」は、比較のウィンドウにわたって2つの最適に並列された配列を比較すること、合致した位置の数を得るために、両配列中で同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が生じる位置の数を決定すること、合致した位置の数を比較のウィンドウ中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)によって除すること、および配列同一性の百分率を得るために結果に100を乗じることによって計算され得る。本明細書に記載されている参照配列のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれ、典型的には、ポリペプチド変異形は参照ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を維持する。
【0232】
2またはそれを超えるポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関係性を記載するために使用される用語には、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」および「実質的な同一性」が含まれる。「参照配列」は、長さが少なくとも12単量体単位であるが、しばしば15~18単量体単位、多くの場合少なくとも25単量体単位であり、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を包含する。2つのポリヌクレオチドは、それぞれ、(1)(すなわち、2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)2つのポリヌクレオチド間で相違する配列を含み得るので、2(またはそれを超える)ポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、配列が類似する局所領域を同定および比較するために、「比較ウィンドウ」にわたって2つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適に並列された後に、配列が同じ数の連続する位置の参照配列と比較される少なくとも6つの連続する部分、通常は、約50~約100、より通常は、約100~約150の連続する部分の概念的セグメントを表す。比較ウィンドウは、2つの配列の最適な並列のために、(付加または欠失を含まない)参照配列と比較して約20%またはそれ未満の付加または欠失(すなわち、間隙)を含み得る。比較ウィンドウを並列させるための配列の最適な並列は、アルゴリズムのコンピュータ化された実行によって(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI,USA中のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)によって、または検査および選択された様々な方法のいずれかによって生成された最良の並列(すなわち、比較ウィンドウにわたって最高の百分率相同性をもたらす)によって実施され得る。例えば、Altschulら、1997,Nucl.Acids Res.25:3389によって開示されているプログラムのBLASTファミリーも参照され得る。配列分析の詳細な論述は、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biologyのユニット19.3、John Wiley&Sons Inc.,1994-1998,15章に見出すことができる。
【0233】
本明細書において使用される「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に存在する状態で当該ポリペプチドに隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、通常当該断片に隣接する配列から取り出されたDNA断片を表す。特定の実施形態において、「単離されたポリヌクレオチド」は、相補的DNA(cDNA)、組換えポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチドまたは自然に存在せず、人の手によって作られたその他のポリヌクレオチドを表す。
【0234】
いくつかの実施形態において、本開示は、gRNAをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、gRNAをコードする核酸は、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクター中に含まれる。いくつかの実施形態において、本開示は部位特異的改変ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、部位特異的改変ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクター中に含まれる。
【0235】
様々な実施形態において、ポリヌクレオチドは、TALEN、TALエフェクタードメイン、Casタンパク質および末端プロセシング酵素を含むがこれらに限定されない本明細書において想定されるポリペプチドをコードするmRNAを含む。ある実施形態において、mRNAは、キャップ、1またはそれを超えるヌクレオチドおよび/または修飾されたヌクレオチドならびにポリ(A)テールを含む。
【0236】
特定の実施形態において、本明細書において想定されるmRNAは、エキソヌクレアーゼ分解からmRNAを保護し、mRNAを安定化し、および翻訳を促進することを補助するために、ポリ(A)テールを含む。ある実施形態において、mRNAは、3’ポリ(A)テール構造を含む。
【0237】
特定の実施形態において、ポリ(A)テールの長さは、少なくとも約10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450または少なくとも約500またはそれを超えるアデニンヌクレオチドまたは任意の中間の数のアデニンヌクレオチドである。特定の実施形態において、ポリ(A)テールの長さは、少なくとも約125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、202、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274または275またはそれを超えるアデニンヌクレオチドである。
【0238】
特定の実施形態において、ポリ(A)テールの長さは、約10~約500アデニンヌクレオチド、約50~約500アデニンヌクレオチド、約100~約500アデニンヌクレオチド、約150~約500アデニンヌクレオチド、約200~約500アデニンヌクレオチド、約250~約500アデニンヌクレオチド、約300~約500アデニンヌクレオチド、約50~約450アデニンヌクレオチド、約50~約400アデニンヌクレオチド、約50~約350アデニンヌクレオチド、約100~約500アデニンヌクレオチド、約100~約450アデニンヌクレオチド、約100~約400アデニンヌクレオチド、約100~約350アデニンヌクレオチド、約100~約300アデニンヌクレオチド、約150~約500アデニンヌクレオチド、約150~約450アデニンヌクレオチド、約150~約400アデニンヌクレオチド、約150~約350アデニンヌクレオチド、約150~約300アデニンヌクレオチド、約150~約250アデニンヌクレオチド、約150~約200アデニンヌクレオチド、約200~約500アデニンヌクレオチド、約200~約450アデニンヌクレオチド、約200~約400アデニンヌクレオチド、約200~約350アデニンヌクレオチド、約200~約300アデニンヌクレオチド、約250~約500アデニンヌクレオチド、約250~約450アデニンヌクレオチド、約250~約400アデニンヌクレオチド、約250~約350アデニンヌクレオチドまたは約250~約300アデニンヌクレオチドまたは任意の中間の範囲のアデニンヌクレオチドである。
【0239】
ポリヌクレオチドの方向性を記載する用語には、5’(通常、遊離のホスフェート基を有するポリヌクレオチドの末端)および3’(通常、遊離のヒドロキシル(OH)基を有するポリヌクレオチドの末端)が含まれる。ポリヌクレオチド配列は、5’から3’の方向性でまたは3’から5’の方向性で注釈を付けることができる。DNAおよびmRNAについては、5’から3’への鎖は、その配列がプレメッセンジャー(プレmRNA)の配列と同一であるので[DNA中のチミン(T)に代えて、RNA中ではウラシル(U)であることを除く]、「センス」、「プラス」または「コード」鎖と表記される。DNAおよびmRNAについては、RNAポリメラーゼによって転写された鎖である相補的な3’から5’への鎖は、「テンプレート」、「アンチセンス」、「マイナス」または「非コード」鎖と表記される。本明細書において使用される「逆方向性」という用語は、3’から5’への方向性で書かれた5’から3’への配列または5’から3’への方向性で書かれた3’から5’への配列を表す。
【0240】
「相補的な」および「相補性」という用語は、塩基対形成規則によって関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を表す。例えば、DNA配列の相補鎖5’ A G T C A T G 3’は、3’ T C A G T A C 5’である。後者の配列は、しばしば、左側に5’末端および右側に3’末端を有する逆相補鎖、5’ C A T G A C T 3’として書かれる。その逆相補鎖と等しい配列は、回文配列であると言われる。相補性は、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対形成規則に従って合致される「部分的」であり得る。または、核酸間で「完全な」または「全部の」相補性が存在し得る。
【0241】
本明細書において使用される「核酸カセット」または「発現カセット」という用語は、RNA、その後にポリペプチドを発現することができるベクター内の遺伝子配列を表す。一実施形態において、核酸カセットは、関心対象の遺伝子、例えば、関心対象のポリヌクレオチドを含有する。別の実施形態において、核酸カセットは、1またはそれを超える発現調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリ(A)配列および関心対象の遺伝子、例えば、関心対象のポリヌクレオチドを含有する。ベクターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10またはそれを超える核酸カセットを含み得る。カセット中の核酸がRNAに転写されることができ、必要な場合には、タンパク質またはポリペプチドに翻訳され、形質転換された細胞中での活性のために必要とされる適切な翻訳後修飾を受け、適切な細胞内区画への標的化または細胞外区画への分泌によって生物学的活性のために適切な区画へ移動されることができるように、核酸カセットは、位置的におよび順序的に正しくベクター内に配置される。好ましくは、カセットは、ベクター中への容易な挿入のために適合されたその3’および5’末端を有する、例えば、各末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。好ましい実施形態において、核酸カセットは、遺伝的障害を処置し、予防し、または軽減するために使用される治療用遺伝子の配列を含有する。カセットは、単一のユニットとして、取り出され、プラスミドまたはウイルスベクター中に挿入することができる。
【0242】
ポリヌクレオチドには、関心対象のポリヌクレオチドが含まれる。本明細書において使用される「関心対象のポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは本明細書において想定される阻害的ポリヌクレオチドの転写のためのテンプレートとしての役割を果たすポリヌクレオチドを表す。
【0243】
さらに、遺伝コードの縮重の結果として、本明細書において想定される、ポリペプチドまたはその変異形の断片をコードし得る多くのヌクレオチド配列が存在することが、当業者によって理解されるであろう。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、任意の天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する。それにも関わらず、コドン使用の差のために変動するポリヌクレオチド、例えば、ヒトおよび/または霊長類コドン選択に対して最適化されたポリヌクレオチドが、特定の実施形態において具体的に想定される。一実施形態において、特定の対立遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが提供される。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの1またはそれを超える変異の結果として変化された内在性ポリヌクレオチド配列である。
【0244】
ある実施形態において、関心対象のポリヌクレオチドはドナー修復テンプレートを含む。
【0245】
コード配列自体の長さに関わらず、特定の実施形態において想定されたポリヌクレオチドは、それらの全体的な長さが大幅に変動し得るように、本明細書の他の箇所に開示されているまたは本分野において公知である、他のDNA配列、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、さらなる制限酵素部位、多重クローニング部位、配列内リボソーム進入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRTおよびAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、転写後応答要素および自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグと組み合わされ得る。従って、特定の実施形態において、ほぼ任意の長さのポリヌクレオチド断片が利用され得ることが想定され、その全長は、好ましくは、調製の容易さおよび所期の組換えDNAプロトコールにおける使用によって制約される。
【0246】
ポリヌクレオチドは、本分野において公知の利用可能な様々な十分に確立された技術のいずれをも用いて調製され、操作され、発現され、および/または送達されることができる。所望のポリペプチドを発現するために、このポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は適切なベクター中に挿入することができる。所望のポリペプチドは、ポリペプチドをコードするmRNAを細胞中に送達することによっても発現することができる。
【0247】
ベクターの実例としては、プラスミド、自己複製配列および転位因子、例えば、Sleeping Beauty、PiggyBacが挙げられるが、これらに限定されない。
【0248】
ベクターのさらなる実例としては、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージおよび動物ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0249】
ベクターとして有用なウイルスの実例としては、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルスおよびパポバウイルス(例えば、SV40)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0250】
発現ベクターの実例としては、哺乳動物細胞中での発現のためのpClneoベクター(Promega);レンチウイルスによって媒介される遺伝子導入および哺乳動物細胞中での発現のためのpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)およびpLenti6.2/V5-GW/lacZ(Invitrogen)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本明細書に開示されているポリペプチドのコード配列は、哺乳動物細胞中でのポリペプチドの発現のために、このような発現ベクター中に連結させることができる。
【0251】
特定の実施形態において、ベクターは、エピソームのベクターまたは染色体外に維持されたベクターである。本明細書において使用される「エピソームの」という用語は、宿主の染色体のDNA中への組み込みなしに、および分裂する宿主細胞から徐々に失われることなしに複製することができるベクターを表す、すなわち、前記ベクターは染色体外でまたはエピソームで複製することも意味する。
【0252】
発現ベクター中に存在する「発現調節配列」、「調節要素」または「制御配列」は、転写および翻訳を実行するために宿主細胞タンパク質と相互作用するベクターの非翻訳領域-複製の起点、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(シャイン・ダルガーノ配列またはコザック配列)イントロン、転写後制御要素、ポリアデニル化配列、5’および3’非翻訳領域-である。このような要素は、その強度および特異性において変動し得る。使用されるベクター系および宿主に応じて、遍在性プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む任意の数の適切な転写および翻訳要素が使用され得る。
【0253】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、発現ベクターおよびウイルスベクターを含むがこれらに限定されないベクターを含む。ベクターは、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの1またはそれを超える外因性、内在性または異種の調節配列を含み得る。「内在性調節配列」は、ゲノム中の所定の遺伝子と天然に連結されている調節配列である。「外因性調節配列」は、その遺伝子の転写が連結されたエンハンサー/プロモーターによって誘導されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技術)を用いて遺伝子に並置されている調節配列である。「異種の調節配列」は、遺伝子操作されている細胞とは異なる種由来の外因性配列である。「合成」調節配列は、1もしくはそれを超える(one more)内在性および/もしくは外因性配列の要素、ならびに/または特定の治療に対して最適なプロモーターおよび/もしくはエンハンサー活性を提供するインビトロまたはインシリコで決定された配列を含み得る。
【0254】
本明細書において使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を表す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに動作可能に連結されたポリヌクレオチドを惹起し、転写する。特定の実施形態において、哺乳動物細胞中で動作するプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置するATが豊富な領域および/または転写の開始から70~80塩基上流に見出される別の配列、CNCAAT領域(Nは、任意のヌクレオチドであり得る)を含む。
【0255】
「エンハンサー」という用語は、強化された転写を与えることができる配列を含有し、いくつかの事例では、別の調節配列に対するその配向性と独立して機能することができるDNAのセグメントを表す。エンハンサーは、プロモーターおよび/または他のエンハンサー要素と協同的にまたは付加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーターおよびエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含有するDNAのセグメントを表す。
【0256】
「動作可能に連結された」という用語は、記載された成分が、その意図された様式で機能することができる関係性にある並置を表す。一実施形態において、本用語は、核酸発現調節配列(プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)と第二のポリヌクレオチド配列、例えば、関心対象のポリヌクレオチドとの間の機能的な連結であって、発現調節配列が第二の配列に対応する核酸の転写を誘導する機能的な連結を表す。
【0257】
本明細書において使用される「恒常的発現調節配列」という用語は、動作可能に連結された配列の転写を持続的にまたは連続的に許容するプロモーター、エンハンサーまたはプロモーター/エンハンサーを表す。恒常的発現調節配列は、それぞれ、幅広い様々な細胞および組織種中での発現を可能にする「遍在性」プロモーター、エンハンサーもしくはプロモーター/エンハンサーであり得、または限定された様々な細胞および組織種中での発現を可能にする「細胞特異的」、「細胞種特異的」、「細胞系列特異的」または「組織特異的」プロモーター、エンハンサーもしくはプロモーター/エンハンサーであり得る。
【0258】
特定の実施形態における使用に適した例示的な遍在性発現調節配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルス性サルウイルス40(SV40)(例えば、初期又は後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5およびP11プロモーター、短い伸長因子1-α(EF1a-短)プロモーター、長い伸長因子1-α(EF1a-長)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)、真核生物翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、熱ショックタンパク質90kDaβ、メンバー1(HSP90B1)、熱ショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA26領域(Irionsら、Nature Biotechnology 25,1477-1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、欠失された負の制御領域(negative control region deleted)、dl587revプライマー結合部位置換された(MND)プロモーター(Challitaら、J Virol.69(2):748-55(1995))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0259】
特定の実施形態において、(例えば、細胞種、細胞系列もしくは組織の一部の中のみでまたは発達の特異的段階の間に、ポリペプチドをコードする特定の核酸を発現するために)所望のポリヌクレオチド配列の細胞種特異的、系列特異的または組織特異的発現を達成するために、細胞、細胞種、細胞系列または組織特異的発現調節配列を使用することが望ましいことがあり得る。
【0260】
本明細書において使用される「条件的発現」は、誘導性発現;抑制可能な発現;特定の生理学的、生物学的または疾患状態などを有する細胞または組織中での発現を含むが、これらに限定されない任意の種類の条件的発現を表し得る。この定義は、細胞種または組織特異的発現を除外することを意図しない。ある実施形態は、関心対象のポリヌクレオチドの条件的発現を提供し、例えば、ポリヌクレオチドを発現させるまたは関心対象のポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドの発現の増加もしくは減少を引き起こす処置または条件に、例えば、細胞、組織、生物などを供することによって、発現が調節される。
【0261】
誘導性プロモーター/系の実例としては、グルココルチコイドまたはエストロゲン受容体をコードする遺伝子に対するプロモーターなどのステロイド誘導性プロモーター(対応するホルモンでの処置によって誘導可能)、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター(様々な重金属での処理によって誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンによって誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストン制御可能な系(Sirinら、2003,Gene,323:67)、クメート誘導性遺伝子スイッチ(国際公開第2002/088346号)、テトラサイクリン依存性制御系などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0262】
条件的発現は、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することによっても達成することができる。ある実施形態によると、ポリヌクレオチドは、部位特異的リコンビナーゼによって媒介される組換えのための少なくとも1つの(典型的には2つの)部位を含む。本明細書において使用される「リコンビナーゼ」または「部位特異的リコンビナーゼ」という用語には、1またはそれを超える組換え部位(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超える)を伴う組換え反応に関与する除去(excisive)または組込みタンパク質、酵素、補因子または関連するタンパク質が含まれ、野生型タンパク質(Landy,Current Opinion in Biotechnology 3:699-707(1993)参照)または変異体、誘導体(例えば、組換えタンパク質配列またはその断片を含有する融合タンパク質)、断片およびこれらの変異形であり得る。特定の実施形態において使用するのに適したリコンビナーゼの実例としては、Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3リゾルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1およびParAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0263】
ポリヌクレオチドは、幅広い多様な部位特異的リコンビナーゼのいずれかに対する1またはそれを超える組換え部位を含み得る。ベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターの組み込みのために必要とされるいずれかの部位に加えて、部位特異的リコンビナーゼに対する標的部位が必要とされることが理解されるべきである。本明細書において使用される「組換え配列」、「組換え部位」または「部位特異的組換え部位」という用語は、リコンビナーゼが認識し、結合する特定の核酸配列を表す。
【0264】
特定の実施形態において、本明細書において想定されるポリヌクレオチドには、1またはそれを超えるポリペプチドをコードする1またはそれを超える関心対象のポリヌクレオチドが含まれる。特定の実施形態において、複数のポリペプチドのそれぞれの効率的な翻訳を達成するために、ポリヌクレオチド配列は、1もしくはそれを超えるIRES配列または自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列によって分離されることができる。
【0265】
本明細書において使用される「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、シストロン(タンパク質コード領域)の開始コドン、例えば、ATGへ直接の配列内リボソーム侵入を促進し、これにより、遺伝子のcap非依存性翻訳を導く要素を表す。例えば、Jacksonら、1990.Trends Biochem Sci 15(12):477-83)およびJackson and Kaminski.1995.RNA
1(10):985-1000を参照。当業者によって一般的に利用されるIRESの例としては、米国特許第6,692,736号に記載されているものが挙げられる。本分野において公知の「IRES」のさらなる例としては、ピコルナウイルスから取得可能なIRES(Jacksonら、1990)およびウイルスまたは細胞のmRNA源から取得可能なIRES、例えば、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、血管内皮増殖因子(VEGF)(Huezら、1998.Mol.Cell.Biol.18(11):6178-6190)、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)、およびインシュリン様増殖因子(IGFII)、翻訳開始因子eIF4Gおよび酵母転写因子TFIIDおよびHAP4、Novagenから市販されている脳心筋炎(encephelomycarditis)ウイルス(EMCV)(Dukeら、1992.J.Virol 66(3):1602-9)およびVEGF IRES(Huezら、1998.Mol Cell Biol 18(11):6178-90)などが挙げられるが、これらに限定されない。IRESは、ピコルナウイルス科、ジシストロウイルス科およびフラビウイルス科種のウイルスゲノム中に、ならびにHCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)中にも報告されている。
【0266】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コンセンサスコザック配列を有するおよび所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。本明細書において使用される「コザック配列」という用語は、リボソームの小さなサブユニットへのmRNAの最初の結合を大幅に促進し、翻訳を増加する短いヌクレオチド配列を表す。コンセンサスコザック配列は、(GCC)RCCATGG(配列番号71)であり、ここで、Rはプリン(AまたはG)である(Kozak,1986.Cell.44(2):283-92およびKozak,1987.Nucleic Acids Res.15(20):8125-48)。
【0267】
異種の核酸転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を誘導する要素は、異種の遺伝子発現を増加させる。転写終結シグナルは、一般的には、ポリアデニル化シグナルの下流に見出される。特定の実施形態において、ベクターは、発現されるべきポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’にポリアデニル化配列を含む。本明細書において使用される「ポリA部位」または「ポリA配列」という用語は、RNAポリメラーゼIIによる新生RNA転写物の終結およびポリアデニル化の両方を誘導するDNA配列を表す。ポリアデニル化配列は、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加によってmRNA安定性を促進し、その結果、増加された翻訳効率に寄与することができる。切断およびポリアデニル化は、RNA中のポリ(A)配列によって誘導される。哺乳動物のプレmRNAに対するコアポリ(A)配列は、切断-ポリアデニル化部位に隣接する2つの認識要素を有する。典型的には、ほぼ不変のAAUAAA六量体が、UまたはGU残基に富んだより可変な要素の20~50ヌクレオチド上流に位置する。新生転写物の切断はこれらの2つの要素間で起こり、5’切断生成物への最大250のアデノシンの付加に連結される。特定の実施形態において、コアポリ(A)配列は、理想的なポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)である。特定の実施形態において、ポリ(A)配列は、SV40ポリA配列、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβグロビンポリA配列(rβgpA)、これらの変異形または本分野において公知の別の適切な異種のもしくは内在するポリA配列である。
【0268】
特定の実施形態において、1またはそれを超えるTALEN、CRISPR/Cas系、末端プロセシング酵素または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスおよびウイルス法の両方によって、造血細胞、例えば、CD34細胞中に導入され得る。特定の実施形態において、TALENもしくはCasヌクレアーゼをコードする1もしくはそれを超えるポリヌクレオチドおよび/またはドナー修復テンプレートの送達は、同一の方法によってもしくは異なる方法によっておよび/または同一のベクターによってもしくは異なるベクターによって提供され得る。
【0269】
「ベクター」という用語は、本明細書において、別の核酸分子を導入しまたは輸送することができる核酸分子を表すために使用される。導入される核酸は、一般的には、ベクター核酸分子に連結される、例えば、ベクター核酸分子中に挿入される。ベクターは、細胞中での自律的複製を誘導する配列を含み得る、または宿主細胞DNA中への組み込みを可能にするのに十分な配列を含み得る。特定の実施形態において、本明細書において想定される1またはそれを超えるポリヌクレオチドをCD34細胞に送達するために、非ウイルスベクターが使用される。
【0270】
非ウイルスベクターの実例としては、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミドおよび細菌の人工染色体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0271】
特定の実施形態において想定されるポリヌクレオチドの非ウイルス性送達の例示的な方法としては、電気穿孔、超音波穿孔、リポフェクション、微量注入、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ナノ粒子、ポリカチオンまたは脂質:核酸抱合体、裸のDNA、人工のビリオン、DEAE-デキストランによって媒介される導入、遺伝子銃および熱ショックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0272】
特定の実施形態において測定される特定の実施形態での使用に適したポリヌクレオチド送達系の実例としては、Amaxa Biosystems、Maxcyte,Inc.、BTX Molecular Delivery SystemsおよびCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されるものが挙げられるが、これらに限定されない。リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適した陽イオン性および中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liuら、(2003)Gene Therapy.10:180-187;およびBalazsら、(2011)Journal of Drug Delivery.2011:1-12を参照。抗体を標的とする、細菌由来の、非生物ナノセルベースの送達も、特定の実施形態において想定される。
【0273】
特定の実施形態において想定されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、個々の患者への投与によって、典型的には、以下に記載されているような、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または頭蓋内注入)または局所適用によって、インビボで送達することができる。または、ベクターは、個々の患者から外植された細胞(例えば、動員された末梢血、リンパ球、骨髄吸引液、組織生検など)または万能ドナー造血幹細胞など、エクスビボで細胞に送達することができ、患者中への細胞の再移植がこれに続く。
【0274】
一実施形態において、TALEN変異形もしくはCRISPR/Cas系および/またはドナー修復テンプレートを含むウイルスベクターは、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与される。または、裸のDNAまたはmRNAを投与することができる。投与は、血液または組織細胞との最終的な接触に分子を導入するために通常使用される任意の経路により、注射、注入、局所適用および電気穿孔を含むがこれらに限定されない。このような核酸を投与する適切な方法が利用可能であり、当業者に周知であって、特定の組成物を投与するために1を超える経路を使用することができるが、多くの場合、別の経路より、特定の経路がより直ちにより効果的な反応を与えることができる。
【0275】
本明細書において想定される特定の実施形態における使用に適したウイルスベクター系の実例としては、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルスおよびワクシニアウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
I.ゲノム編集された細胞
【0276】
特定の実施形態において想定される方法によって製造されたゲノム編集された細胞は、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の処置のための改善された細胞ベースの治療薬を提供する。いずれかの特定の理論に拘泥することを望むものではないが、本明細書において想定される組成物および方法は、内在性BTK発現をほとんどまたは全くもたらさず、XLAをもたらす1またはそれを超える変異および/または欠失を含むBTK遺伝子中に、機能的なBTKポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入するために使用することができ、その結果、XLAを処置するために、いくつかの実施形態においては、XLAを潜在的に治癒させるために使用され得るより強固なゲノム編集された細胞組成物を提供すると考えられる。
【0277】
特定の実施形態において想定されるゲノム編集された細胞は、自家(autologous)/自家性(autogeneic)(「自己」)または非自家(「非自己」、例えば、同種異系、同系または異種)であり得る。本明細書において使用される「自家」は、同じ被験体から得た細胞を表す。本明細書において使用される「同種異系」とは、比較する細胞に対して遺伝的に異なる、同じ種の細胞を表す。本明細書において使用される「同系」とは、比較する細胞と遺伝的に同一である、異なる被験体の細胞を表す。本明細書において使用される「異種」とは、比較する細胞と異なる種の細胞を表す。好ましい実施形態において、細胞は、哺乳動物の被験体から得られる。より好ましい実施形態において、細胞は、霊長類被験体、必要に応じて非ヒト霊長類から得られる。最も好ましい実施形態において、細胞は、ヒト被験体から得られる。
【0278】
「単離された細胞」は、天然に存在しない細胞、例えば、インビボ組織または器官から得られ、細胞外マトリックスを実質的に含まない天然に存在しない細胞、改変された(modified)細胞、改変操作された(engineered)細胞などを表す。
【0279】
本明細書において想定される組成物および方法を用いてそのゲノムを編集することができる細胞種の実例としては、細胞株、初代細胞、幹細胞、前駆細胞および分化した細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0280】
「幹細胞」という用語は、(1)長期自己再生(すなわち、元の細胞の少なくとも1つの同じコピーを生成する能力)、(2)単一細胞レベルでの、複数の、いくつかの事例ではただ1つの特殊化された細胞種への分化、および(3)組織のインビボ機能的再生をすることができる未分化細胞である細胞を表す。幹細胞は、その発達の能力に従って、全能性、多能性、複能性および寡/単能性として細分類される。「自己複製能」とは、変化していない娘細胞を産生し、特殊化された細胞種を生成する特有の能力(分化能(potency))を有する細胞を表す。自己複製能は、2通りに達成することができる。非対称細胞分裂は、親細胞と同一である1つの娘細胞と親細胞と異なる1つの娘細胞とを産生し、前駆細胞または分化した細胞である。対称細胞分裂は、2つの同一の娘細胞を産生する。細胞の「増殖」または「拡大」は、対称的に分裂する細胞を表す。
【0281】
本明細書において使用される「前駆細胞(progenitor)」または「前駆細胞(progenitor cells)」は、自己複製し、より成熟した細胞へ分化する能力を有する細胞を表す。多くの前駆細胞は、単一の系列に沿って分化するが、極めて大規模な増殖能を有し得る。
【0282】
特定の実施形態において、細胞は初代細胞である。本明細書において使用される「初代細胞」という用語は、組織から単離され、インビトロまたはエクスビボで増殖のために確立された細胞を表すために本分野において公知である。対応する細胞は、たとえ経ている場合でも集団倍加をほとんど経ておらず、したがって、継代細胞株と比べて、細胞が由来する組織の主要な機能的成分をより代表しており、そのため、インビボ状態をより忠実に表すモデルとなる。様々な組織から試料を得る方法および初代細胞株を確立する方法は、本分野において周知である(例えば、Jones and Wise,Methods Mol Biol.1997参照)。本明細書において想定される方法において使用するための初代細胞は、臍帯血、胎盤血、動員末梢血および骨髄に由来する。一実施形態において、初代細胞は造血幹または前駆細胞である。
【0283】
一実施形態において、ゲノム編集された細胞は胚性幹細胞である。
【0284】
一実施形態において、ゲノム編集された細胞は成体幹または前駆細胞である。
【0285】
一実施形態において、ゲノム編集された細胞は初代細胞である。
【0286】
好ましい実施形態において、ゲノム編集された細胞は、造血細胞、例えば、造血幹細胞、造血前駆細胞、例えば、B細胞前駆細胞、または造血細胞を含む細胞集団である。
【0287】
本明細書において使用される「細胞の集団」という用語は、本明細書の他の箇所において記載されているように、均一なまたは不均一な細胞種のあらゆる数および/または組み合わせから構成され得る複数の細胞を表す。例えば、造血幹または前駆細胞の形質導入のために、細胞の集団は、臍帯血、胎盤血、骨髄または動員末梢血から単離または取得され得る。細胞の集団は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%の編集されるべき標的細胞種を含み得る。ある実施形態において、造血幹または前駆細胞は、本分野において公知の方法を用いて、不均一な細胞の集団から単離または精製され得る。
【0288】
造血細胞の例示的な取得源としては、臍帯血、骨髄または動員末梢血が挙げられるが、これらに限定されない。
【0289】
造血幹細胞(HSC)は、生物の生存期間にわたって、成熟した血液細胞のレパートリー全体を生成することができる単分化能性造血前駆細胞(HPC)を生じる。「造血幹細胞」または「HSC」という用語は、骨髄細胞系列(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)およびリンパ球系列(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)および本分野において公知の他の血液細胞種(Fei,R.ら、米国特許第5,635,387号;McGlaveら、米国特許第5,460,964号;Simmons,P.ら、米国特許第5,677,136号;Tsukamotoら、米国特許第5,750,397号;Schwartzら、米国特許第5,759,793号;DiGuistoら、米国特許第5,681,599号;Tsukamotoら、米国特許第5,716,827号参照)を含む、生物の全ての血液細胞種を生じる多能性幹細胞を表す。致死的に照射された動物またはヒト中に移植された場合、造血幹および前駆細胞は、赤血球、好中球-マクロファージ、巨核球およびリンパ系造血細胞プールを再定着させることができる。
【0290】
本明細書において想定される方法および組成物とともに使用するのに適した造血幹または前駆細胞のさらなる実例としては、CD34CD38LoCD90CD45RA-である造血細胞、CD34、CD59、Thy1/CD90、CD38Lo/-、C-kit/CD117およびLin(-)である造血細胞ならびにCD133である造血細胞が挙げられる。
【0291】
好ましい実施形態において、CD133CD90である造血細胞。
【0292】
好ましい実施形態において、CD133CD34である造血細胞。
【0293】
好ましい実施形態において、CD133CD90CD34である造血細胞。
【0294】
造血階層を性質決定するための様々な方法が存在する。性質決定の一方法は、SLAMコードである。SLAM(シグナル伝達リンパ球活性化分子)ファミリーは、その遺伝子が1番染色体(マウス)上の単一の遺伝子座中に多くは直列に位置しており、全てが免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの部分集団に属し、元々はT細胞刺激に関与すると考えられた10を超える分子の群である。このファミリーには、CD48、CD150、CD244などが含まれ、CD150は創設メンバーであり、このため、slamF1、すなわち、SLAMファミリーメンバー1とも称される。造血階層に対するシグネチャSLAMコードは、造血幹細胞(HSC)-CD150CD48CD244;多能性前駆細胞(MPP)-CD150CD48CD244;系統拘束前駆細胞(LRP)-CD150CD48CD244;骨髄系共通前駆細胞(CMP)-lin-SCA-1-c-kitCD34CD16/32mid.;顆粒球マクロファージ前駆細胞(GMP)-linSCA-1-c-kitCD34CD16/32hi.;および巨核球-赤血球前駆細胞(MEP)-linSCA-1-c-kitCD34CD16/32lowである。
【0295】
本明細書において想定される組成物および方法によって編集される好ましい標的細胞種としては、造血細胞、好ましくはヒト造血細胞、より好ましくはヒト造血幹および前駆細胞、さらに好ましくはCD34ヒト造血幹細胞が挙げられる。本明細書において使用される「CD34+細胞」という用語は、その細胞表面上にCD34タンパク質を発現する細胞を表す。本明細書において使用される「CD34」は、細胞-細胞接着因子としてしばしば働く細胞表面糖タンパク質(例えば、シアロムチンタンパク質)を表す。CD34+は、造血幹および前駆細胞の両方の細胞表面マーカーである。
【0296】
一実施形態において、ゲノム編集された造血細胞は、CD150CD48CD244細胞である。
【0297】
一実施形態において、ゲノム編集された造血細胞は、CD34CD133細胞である。
【0298】
一実施形態において、ゲノム編集された造血細胞は、CD133細胞である。
【0299】
一実施形態において、ゲノム編集された造血細胞は、CD34細胞である。
【0300】
特定の実施形態において、造血幹および前駆細胞(HSPC)を含む造血細胞の集団は、機能的BTKポリペプチドを発現させるように編集された欠陥BTK遺伝子を含み、編集はHDRによって修復されたDSBである。
【0301】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞はB細胞前駆細胞を含む。
【0302】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、ほとんどまたは全く内在性BTK発現をもたらさないBTK遺伝子中に1またはそれを超える変異および/または欠失を含む。
J.組成物および製剤
【0303】
特定の実施形態において想定される組成物は、本明細書において想定されるとおりの、1またはそれを超えるポリペプチド、ポリヌクレオチド、これらを含むベクター、ならびにゲノム編集組成物およびゲノム編集された細胞組成物を含み得る。特定の実施形態において想定されるゲノム編集組成物および方法は、細胞または細胞の集団中のヒトBTK遺伝子中の標的部位を編集するのに有用である。好ましい実施形態において、ゲノム編集組成物は、造血細胞、例えば、造血幹もしくは前駆細胞、またはCD34細胞中でHDRによってBTK遺伝子を編集するために使用される。
【0304】
様々な実施形態において、本明細書において想定される組成物は、TALEN変異形またはCRISPR/Cas系および必要に応じて末端プロセシング酵素、例えば、3’-5’エキソヌクレアーゼ(Trex2)を含む。TALEN変異形またはCasタンパク質は、上に開示されたポリヌクレオチド送達方法、例えば、電気穿孔、脂質ナノ粒子などを介して細胞中に導入されるmRNAの形態であり得る。一実施形態において、Casタンパク質が使用される場合にはガイドRNAとともに、TALENまたはCasタンパク質をコードするmRNAと必要に応じて3’-5’エキソヌクレアーゼとを含む組成物は、上に開示されているポリヌクレオチド送達方法を介して細胞中に導入される。
【0305】
特定の実施形態において、本明細書において想定される組成物は、細胞の集団、TALEN変異形またはCRISPR/Cas系および必要に応じてドナー修復テンプレートを含む。特定の実施形態において、本明細書において想定される組成物は、細胞の集団、TALEN変異形またはCRISPR/Cas系、末端プロセシング酵素および必要に応じてドナー修復テンプレートを含む。TALEN変異形またはCRISPR/Cas系および/または末端プロセシング酵素は、上に開示されたポリヌクレオチド送達方法を介して細胞中に導入されるmRNAの形態であり得る。ドナー修復テンプレートは、別個の組成物を用いて細胞中に導入することもできる。
【0306】
特定の実施形態において、本明細書において想定される組成物は、細胞の集団、TALENまたはCRISPR/CasおよびgRNAならびに必要に応じてドナー修復テンプレートを含む。特定の実施形態において、本明細書において想定される組成物は、細胞の集団、TALENまたはCRISPR/CasおよびgRNA、3’-5’エキソヌクレアーゼならびに必要に応じてドナー修復テンプレートを含む。TALENまたはCRISPR/CasおよびgRNAおよび/または3’-5’エキソヌクレアーゼは、上に開示されたポリヌクレオチド送達方法を介して細胞中に導入されるmRNAの形態であり得る。ドナー修復テンプレートは、別個の組成物を用いて細胞中に導入することもできる。gRNAおよびCasタンパク質は、一緒にまたは別個の組成物によって細胞中に導入することもできる。Casタンパク質は、タンパク質としてまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドとして供給することができる。
【0307】
特定の実施形態において、細胞の集団は、造血幹細胞、造血前駆細胞、CD133細胞およびCD34細胞を含むがこれらに限定されない遺伝的に改変された造血細胞を含む。
【0308】
組成物には、薬学的組成物が含まれるが、これに限定されない。「薬学的組成物」は、単独でまたは1もしくはそれを超える他の治療の様式と組み合わせて、細胞又は動物に投与するための薬学的に許容され得るまたは生理的に許容され得る溶液中に調合された組成物を表す。所望であれば、組成物は、他の因子、例えば、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、小分子、化学療法薬、プロドラッグ、薬物、抗体または他の様々な薬学的に活性な因子などと組み合わせても投与され得ることも理解されるであろう。追加の因子が組成物に悪影響を与えない限り、同じく組成物中に含まれ得る他の成分には実質的に制限は存在しない。
【0309】
「薬学的に許容され得る」という用語は、合理的な便益/リスク比に相応して過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答またはその他の問題もしくは併発症なしに、健全な医学的判断の範疇内で、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適している、化合物、物質、組成物および/または剤形を表すために本明細書において使用される。
【0310】
「薬学的に許容され得る担体」という用語は、それらとともに治療用細胞が投与される希釈剤、佐剤、賦形剤またはビヒクルを表す。薬学的担体の実例は、無菌の液体、例えば、細胞培地、水および石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などであり得る。生理食塩水溶液ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、液体担体、特に注射可能溶液用液体担体として利用することもできる。特定の実施形態における適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。慣用の媒体または因子が活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物中でのその使用が想定される。補充的活性成分も、組成物中に取り込ませることもできる。
【0311】
一実施形態において、薬学的に許容され得る担体を含む組成物は被験体への投与に適している。特定の実施形態において、担体を含む組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内または動脈内)、腹腔内または筋肉内投与に適している。特定の実施形態において、薬学的に許容され得る担体を含む組成物は、脳室内、脊髄内またはくも膜下腔内投与に適している。薬学的に許容され得る担体には、無菌の、水溶液、細胞培地または分散液が含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および因子の使用は、本分野において周知である。慣用の媒体または因子が形質導入された細胞と不適合である場合を除き、薬学的組成物中でのそれらの使用が想定される。
【0312】
特定の実施形態において、本明細書において想定される組成物は、機能的BTKポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む遺伝的に改変された造血幹および/または前駆細胞と薬学的に許容され得る担体とを含む。
【0313】
特定の実施形態において、本明細書において想定される組成物は、1もしくはそれを超える変異および/もしくは欠失を含むBTK遺伝子ならびに機能的BTKポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む遺伝的に改変された造血幹および/または前駆細胞と薬学的に許容され得る担体とを含む。本明細書に想定される細胞ベースの組成物を含む組成物は、非経口投与方法によって投与することができる。
【0314】
薬学的に許容され得る担体は、担体を処置されているヒト被験体への投与に適するようにするために十分に高い純度および十分に低い毒性でなければならない。薬学的に許容され得る担体は、さらに、組成物の安定性を維持しまたは増加させるべきである。薬学的に許容され得る担体は液体または固体とすることができ、投与の計画された様式を念頭に置いて、組成物の他の成分と組み合わされたときに所望の容積(bulk)、粘度を与えるように選択される。例えば、薬学的に許容され得る担体は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えば、ラクトースおよびその他の糖、微結晶性セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、リン酸水素カルシウムなど)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩(metallic stearate)、硬化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)であり得るが、これらに限定されない。本明細書において想定される組成物のための他の適切な薬学的に許容され得る担体としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0315】
このような担体溶液は、緩衝液、希釈剤および他の適切な添加物も含有することができる。本明細書において使用される「緩衝液」という用語は、その化学的構成がpHの著しい変化なしに酸または塩基を中和する溶液または液体を表す。本明細書において想定される緩衝液の例としては、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル溶液、5%水中デキストロース(D5W)、正常な/生理的な食塩水(0.9%NaCl)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0316】
薬学的に許容され得る担体は、約7の組成物のpHを維持するのに十分な量で存在し得る。または、組成物は、約6.8~約7.4の範囲、例えば、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3および7.4のpHを有する。さらに別の実施形態において、組成物は約7.4のpHを有する。
【0317】
本明細書において想定される組成物は、無毒な薬学的に許容され得る媒質を含み得る。組成物は、懸濁液であり得る。本明細書において使用される「懸濁液」という用語は、その中で細胞が固体支持体に付着されていない非接着条件を表す。例えば、懸濁液として維持される細胞は、撹拌または揺動され得、培養皿などの支持体に付着されない。
【0318】
特定の実施形態において、本明細書において想定される組成物は懸濁液中に調合され、ここで、ゲノム編集された造血幹および/または前駆細胞は、静脈内(IV)袋などの中の許容され得る液体媒質または溶液、例えば、生理食塩水または無血清媒質内に分散される。許容され得る希釈剤としては、水、PlasmaLyte、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム(生理食塩水)溶液、無血清細胞培地および低温貯蔵に適した媒質、例えば、Cryostor(登録商標)媒質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0319】
ある実施形態において、薬学的に許容され得る担体は、ヒトまたは動物起源の天然タンパク質を実質的に含まず、ゲノム編集された細胞、例えば、造血幹および前駆細胞の集団を含む組成物を保存するのに適している。治療用組成物は、ヒト患者中に投与されることが予定されており、このため、ウシ血清アルブミン、ウマ血清およびウシ胎仔血清などの細胞培養成分を実質的に含まない。
【0320】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容され得る細胞培地中に調合される。このような組成物は、ヒト被験体に投与するのに適している。特定の実施形態において、薬学的に許容され得る細胞培地は無血清培地である。
【0321】
無血清培地は、簡略化され、より明確に確定された組成、混入物の低下した程度、潜在的な感染性因子源の除去およびより低い費用を含む、血清含有培地に比べていくつかの利点を有する。様々な実施形態において、無血清培地は無動物であり、必要に応じて無タンパク質であり得る。必要に応じて、培地は、生物薬剤学的に許容され得る組換えタンパク質を含有し得る。「無動物」培地は、成分が非動物源に由来する培地を表す。組換えタンパク質は、無動物培地中の天然の動物タンパク質を置き換え、栄養素は、合成、植物または微生物源から取得される。これに対して、「無タンパク質」培地は、タンパク質を実質的に含まないとして定義される。
【0322】
特定の組成物中で使用される無血清培地の実例としては、QBSF-60(Quality Biological,Inc.)、StemPro-34(Life Technologies)およびX-VIVO 10が挙げられるが、これらに限定されない。
【0323】
好ましい実施形態において、ゲノム編集された造血幹および/または前駆細胞を含む組成物は、PlasmaLyte中に調合される。
【0324】
様々な実施形態において、造血幹および/または前駆細胞を含む組成物は、凍結保護培地中に調合される。例えば、凍結保護剤を有する凍結保護培地が、融解後に高い細胞生存率結果を維持するために使用され得る。特定の組成物中で使用される凍結保護培地の実例としては、CryoStor CS10、CryoStor CS5およびCryoStor CS2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0325】
一実施形態において、組成物は、50:50のPlasmaLyte A対CryoStor CS10を含む溶液中に調合される。
【0326】
特定の実施形態において、組成物は、マイコプラズマ、エンドトキシンおよび微生物の混入を実質的に含まない。エンドトキシンに関する「実質的に含まない」によって、生物学的医薬品(biologic)に対してFDAが許容するより少ない細胞の用量当たりのエンドトキシン、すなわち、1日当たり5EU/kg体重の総エンドトキシン、すなわち、平均70kgの人に対して細胞の総用量当たり350EUが存在することを意味する。特定の実施形態において、本明細書において想定されるレトロウイルスベクターで形質導入された造血幹または前駆細胞を含む組成物は、約0.5EU/mL~約5.0EU/mL、または約0.5EU/mL、1.0EU/mL、1.5EU/mL、2.0EU/mL、2.5EU/mL、3.0EU/mL、3.5EU/mL、4.0EU/mL、4.5EU/mLまたは5.0EU/mLを含有する。
【0327】
ある実施形態において、1またはそれを超えるTALEN変異形またはCRISPR/Cas系および必要に応じて末端プロセシング酵素をコードする1またはそれを超えるmRNAを含むがこれらに限定されないポリヌクレオチドの送達に適した組成物および製剤が想定される。
【0328】
エクスビボ送達のための例示的な製剤は、リン酸カルシウム、電気穿孔、熱ショックおよび様々なリポソーム製剤(すなわち、脂質によって媒介される形質移入)など、本分野において公知の様々な形質移入剤の使用も含み得る。以下により詳しく記載されているように、リポソームは、わずかな水性液体を取り込む脂質二重層である。DNAは、(その電荷によって)陽イオン性リポソームの外側表面に自発的に会合し、これらのリポソームは細胞膜と相互作用するであろう。
【0329】
特定の実施形態において、薬学的に許容され得る担体溶液の製剤は、当業者に周知であり、例えば、経腸および非経口、例えば、血管内、静脈内、動脈内、骨内、脳室内、脳内、頭蓋内、脊髄内、くも膜下腔内および髄内投与および製剤を含む、様々な処置レジメンにおいて本明細書に記載されている特定の組成物を使用するための適切な投薬および処置レジメンの開発も同様に周知である。本明細書において想定される特定の実施形態は、薬学の分野において周知であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacy,volume I and volume II.22nd Edition.Edited by Loyd.V.Allen Jr.Philadelphia,PA:Pharmaceutical Press;2012に記載されているものなどの他の製剤を含み得ることが当業者によって理解されるであろう。
K.ゲノム編集された細胞治療
【0330】
特定の実施形態において想定される方法によって製造されたゲノム編集された細胞は、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の予防、処置および軽減において使用するためのまたはXLAと関連する少なくとも1つの症候もしくはBTK遺伝子中に変異を引き起こすXLAを有する被験体を予防し、処置し、または軽減するための改善された薬物製品を提供する。本明細書において使用される「薬物製品」という用語は、本明細書において想定される組成物および方法を用いて産生される遺伝的に改変された細胞を表す。特定の実施形態において、薬物製品は遺伝的に改変された造血幹細胞または前駆細胞、例えばCD34細胞を含む。遺伝的に改変された造血幹または前駆細胞はB細胞系列全体を生じさせるのに対して、BTK遺伝子中にXLAを引き起こす1またはそれを超える変異および/または欠失を含む非改変細胞はB細胞の発達に欠陥がある。
【0331】
特定の実施形態において、編集され得る造血幹または前駆細胞は、非機能的なまたは破壊された、除去されたまたは部分的に欠失されたBTK遺伝子を含み、これにより、BTK発現を低減または除去し、正常なB細胞の発達を抑止する。
【0332】
特定の実施形態において、ゲノム編集された造血幹または前駆細胞は、非機能的なまたは破壊された、除去されたまたは部分的に欠失されたBTK遺伝子を含み、これにより、内在性BTK発現を低減または除去し、正常なB細胞の発達を回復する機能的なBTKポリペプチドをコードする、BTK遺伝子中に挿入されたポリヌクレオチドをさらに含む。
【0333】
特定の実施形態において、ゲノム編集された造血幹または前駆細胞は、XLAと診断されたまたはXLAを有すると疑われる被験体に根治的、予防的または改善的治療を提供する。
【0334】
様々な実施形態において、ゲノム編集組成物は、遺伝子治療を必要とする被験体の細胞、組織または器官への直接的な注射によって、インビボで、例えば、骨髄へ投与される。様々な他の実施形態において、細胞は、本明細書において想定されるTALEN変異形またはCRISPR/Cas系によってインビトロまたはエクスビボで編集され、必要に応じて、エクスビボで増やされる。次いで、ゲノム編集された細胞は、治療を必要とする被験体に投与される。
【0335】
本明細書において想定されるゲノム編集方法において使用するための好ましい細胞としては、自家/自家性(「自己」)細胞、好ましくは造血細胞、より好ましくは造血幹または前駆細胞、さらにより好ましくはCD34細胞が挙げられる。
【0336】
本明細書において使用される「個体」および「被験体」という用語は、しばしば互換的に使用され、本明細書の他の箇所において想定される、TALENまたはCRISPR/Cas、ゲノム編集組成物、遺伝子治療ベクター、ゲノム編集ベクター、ゲノム編集された細胞および方法によって処置することができるXLAの症候を呈する任意の動物を表す。適切な被験体(例えば、患者)としては、実験動物(マウス、ラット、ウサギまたはモルモットなど)、畜産動物(farm animals)および家庭用動物またはペット(ネコまたはイヌなど)が挙げられる。非ヒト霊長類、好ましくは、ヒト被験体が挙げられる。典型的な被験体としては、XLAを有する、XLAと診断されたまたはXLAを有するリスクがあるヒト患者が挙げられる。
【0337】
本明細書において使用される「患者」という用語は、本明細書の他の箇所において想定される、TALENまたはCRISPR/Cas、ゲノム編集組成物、遺伝子治療ベクター、ゲノム編集ベクター、ゲノム編集された細胞および方法によって処置することができるXLAと診断された被験体を表す。
【0338】
本明細書において使用される「処置」または「処置する」には、XLAの症候または病状に対して任意の有益なまたは望ましい効果が含まれ、XLAの1またはそれを超える測定可能なマーカーの最小限の低下さえ含まれ得る。処置は、XLAの進行の遅延を必要に応じて伴うことができる。「処置」は、XLAまたはその関連する症候の完全な根絶または治癒を必ずしも示さない。
【0339】
本明細書において使用される「予防する」および「予防」、「予防された」、「予防している」などの類似の用語は、XLAの発生または再発の可能性を抑制し、阻止し、または低減するためのアプローチを示す。本用語は、XLAの発症もしくは再発を遅延させること、またはXLAの発生もしくは再発を遅延させることも表す。本明細書において使用される「予防」および類似の用語は、その発症または再発前に、XLAの強さ、作用、症候および/または負荷を低減することも含む。
【0340】
本明細書において使用される「の少なくとも1つの症候を軽減する」という用語は、XLAの1またはそれを超える症候を減少させることを表す。特定の実施形態において、軽減されるXLAの1またはそれを超える症候としては、気管支炎(気道感染)、慢性の下痢、結膜炎(目の感染)、中耳炎(中耳の感染)、肺炎(肺の感染)、副鼻腔炎(副鼻腔の炎症)、皮膚感染症、上気道感染症;細菌、ウイルスおよびその他の微生物による感染症;Haemophilus influenzae、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)およびブドウ球菌感染症を含むがこれらに限定されない細菌感染を含むがこれらに限定されない一般的な感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0341】
本明細書において使用される「量」という用語は、臨床的結果を含む有益なまたは所望の予防的または治療的結果を達成するのに十分な、TALEN変異形もしくはCRISPR/Cas系、ゲノム編集組成物またはゲノム編集された細胞の「有効量」または「有効な量」を表す。
【0342】
「予防的に有効な量」は、所望の予防的結果を達成するのに十分な、TALEN変異形もしくはCRISPR/Cas系、ゲノム編集組成物またはゲノム編集された細胞の量を表す。典型的には、但し、必ずというわけではないが、予防的用量は、疾患の前にまたは疾患の初期段階で被験体において使用されるので、予防的に有効な量は治療的に有効な量より少ない。
【0343】
TALEN変異形もしくはCRISPR/Cas系、ゲノム編集組成物またはゲノム編集された細胞の「治療的に有効な量」は、疾患状態、個体の年齢、性別および体重ならびに個体中に所望の応答を惹起する能力などの要因に従って変動し得る。治療的に有効な量は、治療的に有益な効果が任意の毒性または有害な効果を上回る量でもある。「治療的に有効な量」という用語は、被験体(例えば、患者)を「処置する」のに有効である量を含む。治療的な量が示されている場合、投与されるべき特定の実施形態において想定される組成物の正確な量は、仕様に照らしてならびに年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度および患者(被験体)の症状における個々の差を考慮して、医師によって決定することができる。
【0344】
ゲノム編集された細胞は、骨髄切除治療を受けたまたは受けていない個体中に、骨髄または臍帯血移植片の一部として投与され得る。一実施形態において、本明細書において想定されるゲノム編集された細胞は、化学的切除または放射線切除骨髄療法を受けた個体に、骨髄移植片の中で投与される。
【0345】
一実施形態において、ゲノム編集された細胞の用量が被験体に静脈内送達される。好ましい実施形態において、ゲノム編集された造血幹細胞は、被験体に静脈内投与される。
【0346】
例示的な一実施形態において、被験体に与えられるゲノム編集された細胞の有効量は、少なくとも2×10細胞/kg、少なくとも3×10細胞/kg、少なくとも4×10細胞/kg、少なくとも5×10細胞/kg、少なくとも6×10細胞/kg、少なくとも7×10細胞/kg、少なくとも8×10細胞/kg、少なくとも9×10細胞/kgまたは少なくとも10×10細胞/kgまたはそれを超える細胞/kgであり、全ての中間の細胞の用量を含む。
【0347】
別の例示的な実施形態において、被験体に与えられるゲノム編集された細胞の有効量は、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、約9×10細胞/kgまたは約10×10細胞/kgまたはそれを超える細胞/kgであり、全ての中間の細胞の用量を含む。
【0348】
別の例示的な実施形態において、被験体に与えられるゲノム編集された細胞の有効量は、約2×10細胞/kg~約10×10細胞/kg、約3×10細胞/kg~約10×10細胞/kg、約4×10細胞/kg~約10×10細胞/kg、約5×10細胞/kg~約10×10細胞/kg、2×10細胞/kg~約6×10細胞/kg、2×10細胞/kg~約7×10細胞/kg、2×10細胞/kg~約8×10細胞/kg、3×10細胞/kg~約6×10細胞/kg、3×10細胞/kg~約7×10細胞/kg、3×10細胞/kg~約8×10細胞/kg、4×10細胞/kg~約6×10細胞/kg、4×10細胞/kg~約7×10細胞/kg、4×10細胞/kg~約8×10細胞/kg、5×10細胞/kg~約6×10細胞/kg、5×10細胞/kg~約7×10細胞/kg、5×10細胞/kg~約8×10細胞/kgまたは6×10細胞/kg~約8×10細胞/kgであり、全ての中間の細胞の用量を含む。
【0349】
投薬量のいくらかの変動が、処置されている被験体の症状に応じて必ず起こるであろう。投与に責任を有する者が、いずれにしても、個別の被験体に対して適切な決定をするであろう。
【0350】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞治療は、XLAまたはXLAと関連する症状を処置し、予防し、または軽減するために使用され、内在性BTK発現をほとんどまたは全くもたらさないBTK遺伝子中に1またはそれを超える変異および/または欠失を有する被験体に、治療的に有効量の本明細書に想定されるゲノム編集された細胞を投与することを含む。一実施形態において、ゲノム編集された細胞治療は機能的な内在性BTK発現を欠くが、機能的なBTKポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0351】
様々な実施形態において、被験体は、被験体中でのBTK発現を増加させるのに有効な、機能的BTKポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含むゲノム編集された細胞の量を投与される。特定の実施形態において、BTK遺伝子中に1またはそれを超える有害な変異または欠失を含むゲノム編集された細胞中の外因性ポリヌクレオチドからのBTK発現の量は、内在性BTK発現と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2倍、少なくとも5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍または少なくとも約1000倍またはそれを超えて増加される。
【0352】
適切な投与の経路および本明細書において想定されるゲノム編集された細胞を含む有効量の組成物の妥当な投薬量を決定するために、当業者は、日常的な方法を使用することができるであろう。ある種の治療においては、本明細書に想定される薬学的組成物の複数回投与が治療を実施するために必要とされ得ることを認識することも当業者に公知であろう。
【0353】
ゲノム編集された造血幹および前駆細胞治療による処置に適した被験体を処置するために使用される主要な方法の1つは輸血である。このため、本明細書において想定される組成物および方法の主な最終目標の1つは、輸血の回数を減らすことまたは輸血の必要性を失くすことである。
【0354】
特定の実施形態において、薬物製品は1回投与される。
【0355】
ある実施形態において、薬物製品は、1年、2年、5年、10年またはそれを超える長さにわたって、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10回またはそれを超える回数投与される。
【0356】
本明細書中に引用されている全ての刊行物、特許出願および発行済み特許は、
それぞれの個別の刊行物、特許出願または発行済み特許が参照によって組み込まれることが具体的にかつ個別的に示されているごとく、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0357】
理解を明確にする目的で、例示および例によって、先述の実施形態を幾分詳しく記載してきたが、本明細書に想定される教示に照らして、添付の特許請求の精神または範囲から逸脱することなく、ある種の変更および改変が実施形態に施され得ることが当業者に自明であろう。以下の実施例は、例示のためにのみ提供されており、限定のために提供されているものではない。当業者は、本質的に類似の結果を与えるように変更または改変することができる様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例0358】
[実施例1]
ヒトBTK遺伝子のイントロン2中の標的部位におけるTALENベースのゲノム編集
【0359】
ヒトBTK遺伝子内の標的部位T1~T4に対してTALENを生成した。(図1A)TALENの配列は、以下のとおりであった。
表2:TALエフェクタードメインRVD
【表2C】
【0360】
図1Bは、初代T細胞中で各TALENを用いて達成されたパーセント破壊を示す。IL-2(50ng/mL)、IL-7(5ng/mL)およびIL-15(5ng/mL)を補充されたT細胞増殖培地中で初代ヒトT細胞を培養し、CD3/CD28ビーズ(Dynabeads、Life Technologies)を用いて48時間刺激した。ビーズを除去し、細胞を一晩静置させた後、いずれかのTALEN mRNA(1μgの各RNA単量体)とともにNeon Transfectionシステムを使用して電気穿孔を行った。細胞をさらに5日間培養し、ゲノムDNAを抽出した。切断部位周囲の領域を増幅し、PCR精製キットを用いて精製した。T7エンドヌクレアーゼ(NEB)とともに200ngの精製されたPCR産物をインキュベートし、ゲル上で分析し、Licor Image Studio Liteソフトウェアを用いてパーセント破壊を定量した。その後の図面中の実験では、TALEN T3を使用した。
【0361】
図1Cは、TALENを用いてBTK遺伝子を編集するためのAAVドナーテンプレートの模式図を示す。DT AAVベクターは、MNDプロモーターによって駆動される緑色蛍光タンパク質(GFP)カセットに隣接する1kbの相同性アームを有する。DT-Del AAVドナーは、TALスペーサードメインまで5’相同性アームの末端にまたがるゲノム領域の欠失を有し、第二のエクソンとイントロンの部分的欠失をもたらして、TALENによる切断を消失させる。
【0362】
図1Dは、TALENおよびAAVドナーテンプレートを使用する初代T細胞中での編集を示す。棒グラフは、GFP発現の時間経過を図示する。パーセント相同組換え(HR)は、15日におけるパーセント(%)GFPとして報告されている。
【0363】
図1Eは、TALENとAAVドナーの同時送達を用いた初代T細胞の編集の2日後および15日後におけるGFP発現を示す代表的なFACSプロットを示す。
【0364】
[実施例2]
ヒトBTK遺伝子のイントロン2中の標的部位におけるCRISPR/Casゲノム編集
【0365】
ガイドRNA位置G1~G9に対応するヒトBTK遺伝子内の標的部位に対してTALENを生成した。(図2A)。gRNA配列は、以下のとおりであった。
【表4-1】
【表4-2】
【0366】
図2Bは、T7エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)によって決定された、ガイドG1からG9によるBTK遺伝子座でのパーセント(%)破壊を示す。パーセント破壊は、Licor Image Studio Liteソフトウェアを用いて定量した。その後の図面中の実験では、ガイドG3を使用した。
【0367】
図2Cは、CRISPR-Casを用いてBTK遺伝子を編集するための3つの例示的なAAVドナーテンプレートの模式図を示す。DT AAVベクターは、MNDプロモーターによって駆動される緑色蛍光タンパク質(GFP)に隣接する1kbの相同性アームを有する。DT-PAM AAVドナーは、ガイドG3による切断を消失させるために、PAM配列中に変異を有する。DT-Delベクターは、ガイドG3による切断を消失させるために、欠失を有する。
【0368】
[実施例3]
Cas9タンパク質と単一のガイドRNAのリボ核タンパク質複合体(RNP)およびAAVドナーの同時送達による初代T細胞中でのCRISPR/Casゲノム編集
【0369】
図2Dは、Cas9に加えてガイドおよびAAVドナーテンプレートの同時送達を使用する初代T細胞中での編集を示す。初代ヒトCD3+T細胞を培養し、ビーズ刺激した。次いで、Cas9タンパク質と単一のガイドRNAのリボ核タンパク質複合体(RNP)で細胞を形質移入し、2時間後に、培養体積の20%でAAVドナーを添加した。2、8および15日目にGFP発現に関して細胞を分析した。15日目のGFP発現は、相同組換え修復(HDR)を示している。
【0370】
図2Eは、RNPに加えてAAVドナーを用いた初代T細胞の編集の2および15日後におけるGFP発現を示す代表的なFACSプロットを示す。
【0371】
[実施例4]
CRISPR/CasまたはTALENベースの系によるCD34+T細胞中でのゲノム編集
【0372】
図3Aは、ヒトCD34細胞編集プロトコールの模式図を示す。TPO、SCF、FLT3L(100ng/mL)およびIL3(60ng/mL)が補充されたSCGM培地中で48時間、成人の誘導されたCD34細胞を培養した後、1:1.2の比率で混合された、TALENまたはCas9タンパク質のリボ核タンパク質複合体(RNP)のいずれかおよび単一のガイドRNAとともにNeon電気穿孔システムを用いて電気穿孔を行った。sgRNAは、Trilink Biotechnologiesから購入され、5’および3’末端の3つの末端位置に化学的に修飾されたヌクレオチドを有する。2および5日目に、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【0373】
図3Bは、TALEN mRNAとAAVドナーテンプレートの同時送達を使用する、CD34HSC中のBTK遺伝子座の編集を示す。成人の誘導されたCD34細胞を以前に記載されたとおりにSCGM培地中で培養した後、TALEN mRNAとともにNeon電気穿孔システムを使用して電気穿孔を行った。電気穿孔の直後に、ドナーテンプレートを担持するAAVベクターを添加した。対照は、操作されていない細胞およびヌクレアーゼの形質移入なしにAAVのみで形質導入された細胞(AAV)を含んだ。棒グラフは、5日での%GFPを図示し、HDRを示す。
【0374】
図3Cは、編集の2および5日後における、モック、AAVまたはAAVプラスTALEN処理されたCD34細胞からのGFP発現を図示するFACSプロットを示す。
【0375】
図3Dは、TALENおよびAAVドナーでの編集後のCD34細胞の生存率を示す。棒グラフは、編集の2および5日後における、モックおよびAAVのみおよびAAVプラスTALEN処理された細胞の生存率を表す。
【0376】
図3Eは、TALEN編集されたCD34細胞に対するCFUアッセイを示す。TALEN編集された、TALENのみ、AAVのみおよびモック細胞を、編集の1日後に、コロニー形成単位(CFU)アッセイのためにMethocult培地上に播種した。簡潔に述べると、Methocult H4034培地(Stemcell Technologies)中に、500個の細胞を2つ組で播種し、12~14日間37℃でインキュベートし、その形態およびGFP発現に基づいてコロニーを数えた。CFU-E:コロニー形成単位赤血球、M:マクロファージ、GM:顆粒球、マクロファージ、G:顆粒球、GEMM:顆粒球、赤血球、マクロファージ、巨核球、BFU-E:バースト形成単位赤血球。n=3の独立のドナー。データは、平均±平均値の標準誤差として表されている。
【0377】
図4Aは、RNPとAAVドナーテンプレートの同時送達を使用する、CD34HSC中のBTK遺伝子座の編集を示す。成人の誘導されたCD34細胞を以前に記載されたとおりにSCGM培地中で培養した後、RNP複合体とともにNeon電気穿孔システムを使用して電気穿孔を行った。電気穿孔の直後に、ドナーテンプレートを担持するAAVベクターを添加した。対照は、操作されていない細胞およびヌクレアーゼの形質移入なしにAAVのみで形質導入された細胞(AAV)を含んだ。棒グラフは、5日での%GFPを図示し、HDRを示す。
【0378】
図4Bは、図4Aと同じ実験を示し、2および5日における、GFP発現を示す代表的FACsプロットを図示する。
【0379】
図4Cは、RNPおよびAAVドナーでの編集後のCD34細胞の生存率を示す。棒グラフは、編集の2および5日後における、モックおよびAAVのみおよび(様々なRNPとAAV用量での)AAVプラスRNP処理された細胞の生存率を表す。
【0380】
図4Dは、RNP編集されたCD34細胞に対するCFUアッセイを示す。RNP編集された、AAVのみ、およびモック細胞を、編集の1日後に、コロニー形成単位(CFU)アッセイのためにMethocult培地上に播種した。簡潔に述べると、Methocult H4034培地(Stemcell Technologies)中に、500個の細胞を2つ組で播種し、12~14日間37℃でインキュベートし、その形態およびGFP発現に基づいてコロニーを数えた。CFU-E:コロニー形成単位赤血球、M:マクロファージ、GM:顆粒球、マクロファージ、G:顆粒球、GEMM:顆粒球、赤血球、マクロファージ、巨核球、BFU-E:バースト形成単位赤血球。n=3の独立のドナー。データは、平均±平均値の標準誤差として表されている。
【0381】
図5Aは、GFPを発現する無プロモーターAAVドナーテンプレートの模式図を示す。このベクターは、GFP、末端切断されたウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御要素(WPRE3)およびSV40ポリアデニル化シグナルを含有する。この挿入物は、いずれかの側において、BTK遺伝子座への0.5kb相同性アームによって隣接されている。
【0382】
図5Bは、RNPとAAVドナーテンプレートの同時送達を用いる、CD34HSC中での無プロモーターGFPベクターを使用するBTK遺伝子座の編集を示す。棒グラフは、1、2および5日での%GFPを図示し、5日での%GFPはHDRを示す。
【0383】
図5Cは、図4Aと同じ実験を示し、2および5日における、GFP発現を示す代表的FACsプロットを図示する。
【0384】
図5Dは、RNPおよび無プロモーターAAVドナーでの編集後のCD34細胞の生存率を示す。棒グラフは、編集の1、2および5日後における、モックおよびAAVのみおよび(様々なRNPとAAV用量での)AAVプラスRNP処理された細胞の生存率を表す。5日での%GFPは、%HDRを示す。
【0385】
図5Eは、HDRを決定するためのデジタルドロップレットPCRアッセイを示す。DNeasy Blood and Tissueキット(Qiagen)を用いて、造血幹および前駆細胞(HSPC)からゲノムDNAを単離した。編集率を評価するために、AAV挿入物内に結合するフォワードプライマーおよび相同性の領域外のBTK遺伝子座を結合するリバースプライマーを用いて、「インアウト」ドロップレットデジタルPCRを行った。対照としての役割を果たすために、ActB遺伝子に対して類似の大きさの対照アンプリコンを作製した。全ての反応は、2つ組みで行った。PCR反応液は、QX200 Droplet Generator(Bio-Rad)を用いて、液滴に分割した。UTPなしのddPCR Supermix for Probes(Bio-Rad)、900nMのプライマー、250nMのプローブ、50ngのゲノムDNAおよび1%DMSOを用いて、増幅を行った。QuantaSoftソフトウェア(Bio-Rad)を用いて、QX200 Droplet Digital PCR System(Bio-Rad)上で液滴を分析した。
【0386】
図6は、コドン最適化されたBTKを発現するAAVドナーテンプレートの模式図を示す。
【0387】
[実施例5]
AAV標的化ベクター配列
#DT(#1177)(配列番号19)
【0388】
BTK遺伝子座に対するAAV標的化ベクター。このベクターは、MNDプロモーター、eGFP(強化された緑色蛍光タンパク質)およびSV40ポリアデニル化シグナルを含有し、約1kbの相同性アームが隣接している。
DT-Del(#1233)(配列番号20)
【0389】
このベクターは、MNDプロモーター、eGFPおよびSV40ポリアデニル化シグナルを含有する。この挿入物は、いずれかの側に、BTK遺伝子座へのおよそ1kbの相同性アームが隣接している。このベクターは、BTK TALEN T3とともに使用するために特異的に設計されている。TALEN結合部位は、TALENによる切断を消失させるために欠失されている。
DT-PAM 1254(配列番号21)
【0390】
このベクターは、MNDプロモーター、eGFPおよびSV40ポリアデニル化シグナルを含有する。この挿入物は、いずれかの側に、BTK遺伝子座へのおよそ1kbの相同性アームが隣接している。ガイドによる修復テンプレートの切断を消失させるためにPAM部位が欠失されているので、このベクターは、BTKガイドG3とともに働くように設計されている。
DT-PAM mut(#1251)(配列番号22)
【0391】
このベクターは、MNDプロモーター、eGFPおよびSV40ポリアデニル化シグナルを含有する。この挿入物は、いずれかの側に、BTK遺伝子座へのおよそ1kbの相同性アームが隣接している。ガイドG3による切断を消失させるために、PAM部位は変異されている。
ATG-DT-Del(#1375)(配列番号23)
【0392】
このベクターは、eGFP、末端切断されたウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御要素(WPRE3)およびSV40ポリアデニル化シグナルを含有し、BTK遺伝子座への0.5kbの相同性アーム(rams)が隣接している。このベクターは、BTKガイドG3とともに働くように設計されている。
ATG-BTK DT-DEL(#1379)(配列番号24)
【0393】
このベクターは、コドン最適化されたBTK cDNA、末端切断されたウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御要素(WPRE3)およびSV40ポリアデニル化シグナルを含有する。この挿入物は、いずれかの側において、BTK遺伝子座への0.5kb相同性アームが隣接しており、BTKガイドG3とともに働くように特別に設計されている。
【0394】
[実施例6]
CRISPR/CasまたはTALENベースを有するCD34+T細胞中のHDR:NHEJ比
要約
【0395】
図7は、(rAAV6標的化ベクターとともに同時送達された場合の)RNPによる相同組換え修復:非相同末端結合の比とTALENプラットフォームによる相同組換え修復:非相同末端結合の比の比較を図示する変異原性NHEJの代わりにHDRを用いて切断を修復するように細胞が準備されていることを意味するので、より高いHDR:NHEJ比が好ましい。
【0396】
両ヌクレアーゼプラットフォームによって高レベルのHDRが達成されるが、RNP+AAV送達と比べて、TALEN+AAVに対して、HDR:NHEJ比がより高い。
【0397】
図8A~8Bは、RNPおよびX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)において臨床的な恩恵を直ちに与えると予測されるレベルで、内在性BTK遺伝子座中にコドン最適化されたBTK cDNAを発現するように設計されたrAAV6 BTK cDNA標的化ベクターで処理されたCD34細胞中でのHDR編集を例示する。
結果
【0398】
図7は、TALENプラスAAVまたはRNPプラスAAVで編集された細胞中でのHDR(相同組換え修復)対NHEJ(非相同末端結合)の比の比較を示す。TPO、SCF、FLT3LおよびIL6(100ng/mL)を補充されたSCGM培地中で、成人の誘導されたCD34細胞を48時間培養した後に、Neonを用いて電気穿孔を行った。0.5μgの各TALEN単量体または2μgのRNP(1:1.2のCas9:ガイド比)のいずれかで細胞を形質移入した後、3%の培養体積でAAVを形質導入した。5日目に、培養された細胞からゲノムDNAを抽出し、HDR割合を決定するためにddPCRを行った。
【0399】
編集率を評価するために、AAV挿入物内に結合するフォワードプライマーおよび相同性の領域外のBTK遺伝子座を結合するリバースプライマーを用いて、「インアウト」ドロップレットデジタルPCRを行った。対照としての役割を果たすために、CCR5遺伝子に対して類似の大きさの対照アンプリコンを作製した。全ての反応は、2つ組みで行った。PCR反応液は、QX200 Droplet Generator(Bio-Rad)を用いて、液滴に分割した。UTPなしのddPCR Supermix for Probes(Bio-Rad)、900nMのプライマー、250nMのプローブおよび50ngのゲノムDNAを用いて、増幅を行った。QuantaSoftソフトウェア(Bio-Rad)を用いて、QX200 Droplet Digital PCR System(Bio-Rad)上で液滴を分析した。さらに、切断部位周囲の領域を増幅し、ゲルを抽出し、NHEJ割合を決定するために、ICE(CRISPR編集の推測)分析に供した。HDR対NHEJの比をグラフ上にプロットした。色は、独立したCD34ドナーを表す。データは、平均±平均値の標準誤差として表されている。
【0400】
変異原性NHEJの代わりにHDRを用いて切断を修復するように細胞が準備されていることを意味するので、より高いHDR:NHEJ比が好ましい。RNPプラットフォームによってより高レベルのHDRが達成されるが、RNP+AAV送達と比べて、TALEN+AAVに対して、HDR:NHEJ比が相対的により高い。
【0401】
図8A~8Bは、RNPおよび首尾よく編集されたHSC中でコドン最適化されたBTK cDNAを発現するように設計されたrAAV6 BTK cDNA標的化ベクターで処理されたCD34細胞中でのHDR編集を示す。図8Aは、内在性プロモーターからコドン最適化されたBTK cDNAを発現するrAAV6ドナーベクターの模式図である。前述されているとおりに、成人の誘導されたCD34細胞を培養した後に、Neon機器を用いて電気穿孔を行った。5μgのRNP(1:1.2のCas9:ガイド比)でHSC細胞を形質移入した後、600および1200のMOIでAAVを形質導入した。5日目に、培養された細胞からゲノムDNAを抽出し、HDR割合を決定するためにドロップレットデジタルPCR(ddPCR)アッセイを行った。
【0402】
編集率を評価するために、AAV挿入物内に結合するフォワードプライマーおよび相同性の領域外のBTK遺伝子座を結合するリバースプライマーを用いて、「インアウト」ドロップレットデジタルPCRを行った。対照としての役割を果たすために、CCR5遺伝子に対して類似の大きさの対照アンプリコンを作製した。全ての反応は、2つ組みで行った。PCR反応液は、QX200 Droplet Generator(Bio-Rad)を用いて、液滴に分割した。UTPなしのddPCR Supermix for Probes(Bio-Rad)、900nMのプライマー、250nMのプローブおよび50ngのゲノムDNAを用いて、増幅を行った。QuantaSoftソフトウェア(Bio-Rad)を用いて、QX200 Droplet Digital PCR System(Bio-Rad)上で液滴を分析した。
【0403】
図8Bでは、XLA中で臨床的な恩恵を容易に与えると予測されるレベルで、内在性BTK遺伝子座中にBTK cDNAを導入する能力を実証する、単一のCD34ドナーから得られたデータが明確に示されている。
【0404】
表5は、RNPまたはTALENに加えてAAV.MND.GFPベクターを用いて標的化されたCD34+細胞中のHDRを決定するためのオリゴおよびプローブのリストを与える。
表5
【表5】
【0405】
表6は、RNPおよびATG.coBTK発現AAVベクターを用いて標的化されたCD34+細胞中のHDRを決定するためのオリゴおよびプローブのリストを与える。対照CCR5オリゴ/プローブは、GFPベクターに対するものと同じである。
表6
【表6-1】
【表6-2】
【0406】
一般に、以下の特許請求の範囲では、使用されている用語は、本明細書および特許請求の範囲中に開示されている具体的な実施形態に特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではなく、かかる特許請求の範囲の権利が及ぶ均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8A
図8B
【配列表】
2024109943000001.app
【外国語明細書】