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特開2024-109950たばこ組成物、たばこ含有セグメント、非燃焼加熱型香味吸引器具、及び非燃焼加熱型香味吸引システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109950
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】たばこ組成物、たばこ含有セグメント、非燃焼加熱型香味吸引器具、及び非燃焼加熱型香味吸引システム
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/16 20200101AFI20240806BHJP
   A24B 15/24 20060101ALI20240806BHJP
   A24B 3/14 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A24B15/16
A24B15/24
A24B3/14
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088796
(22)【出願日】2024-05-31
(62)【分割の表示】P 2022572155の分割
【原出願日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020215349
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】六川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】南條 大輔
(72)【発明者】
【氏名】相澤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓佑
(57)【要約】      (修正有)
【課題】十分な煙量を確保しつつ、繊維臭を低減でき、香味の程度及び持続性を向上させることができ、かつ低コストのたばこ組成物を提供する。
【解決手段】たばこシートと、葉たばこと、を含むたばこ組成物であって、たばこシートと葉たばこの質量割合が、たばこシート:葉たばこ=40~80:20~60であり、たばこ組成物がエアロゾル発生剤を含む、たばこ組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこシートと、葉たばこと、を含むたばこ組成物であって、
前記たばこシートと前記葉たばこの質量割合が、たばこシート:葉たばこ=40~80:20~60であり、
たばこ組成物がエアロゾル発生剤を含み、
前記たばこ組成物の膨嵩性が300~580cm/100gである、たばこ組成物。
【請求項2】
前記たばこシートの還元糖含有量が1.5~25.0質量%である、請求項1に記載のたばこ組成物。
【請求項3】
前記葉たばこの還元糖含有量が0.5~25.0質量%である、請求項1又は2に記載のたばこ組成物。
【請求項4】
前記たばこ組成物の還元糖含有量が0.8~25.0質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項5】
前記たばこシートのエアロゾル発生剤含有量が5.0~20.0質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項6】
前記葉たばこのエアロゾル発生剤含有量が2.0~15.0質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項7】
前記たばこシートのニコチン含有量が0.5~5.0質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項8】
前記葉たばこのニコチン含有量が0.5~5.0質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項9】
前記たばこ組成物のニコチン含有量が0.5~5.0質量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項10】
前記葉たばこのネオフィタジエン含有量が0.05質量%以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項11】
前記たばこシートのネオフィタジエン含有量が0.01~0.10質量%である、請求項1~10のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項12】
前記たばこ組成物のネオフィタジエン含有量が0.01質量%以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項13】
前記葉たばこのセンブラトリエンジオール(CBT)含有量が0.01質量%以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項14】
前記たばこシートのセンブラトリエンジオール(CBT)含有量が0.01~0.10質量%である、請求項1~13のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項15】
前記たばこ組成物のセンブラトリエンジオール(CBT)含有量が0.01質量%以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項16】
前記たばこシートの密度が0.40~0.60g/cmである、請求項1~15のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項17】
前記たばこシートが密度の異なる二種以上のたばこシートを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項18】
前記たばこシートが、密度が0.55g/cm未満の第一のたばこシートと、密度が0.55g/cm以上の第二のたばこシートとを含む、請求項17に記載のたばこ組成物。
【請求項19】
前記たばこシートに含まれる、前記第一のたばこシートと前記第二のたばこシートの質量割合が、第一のたばこシート:第二のたばこシート=50~80:20~50である、請求項18に記載のたばこ組成物。
【請求項20】
前記たばこシートが、抄造たばこシートとスラリーたばこシートを含み、
前記抄造たばこシートと前記スラリーたばこシートの質量割合が、抄造たばこシート:スラリーたばこシート=50~80:20~50である、請求項1~16のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項21】
前記第二のたばこシートのエアロゾル発生剤含有量が20.0質量%以下である、請求項18又は19に記載のたばこ組成物。
【請求項22】
前記スラリーたばこシートのエアロゾル発生剤含有量が20.0質量%以下である、請求項20に記載のたばこ組成物。
【請求項23】
0.3~2.0mmの範囲内で刻み幅が異なる二種以上の前記たばこシート、及び/又は、0.3~2.0mmの範囲内で刻み幅が異なる二種以上の前記葉たばこを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項24】
前記たばこシートの刻み幅が0.3~1.0mmの範囲内である、請求項1~23のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項25】
非燃焼加熱型香味吸引器具用のたばこ組成物である、請求項1~24のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項26】
前記たばこシートと前記葉たばこの質量割合が、たばこシート:葉たばこ=(40以上70未満):(30を超えて60以下)である、請求項1~25のいずれか一項に記載のたばこ組成物。
【請求項27】
筒状のラッパーと、該ラッパー内に請求項1~26のいずれか一項に記載のたばこ組成物が充填されたたばこ充填物と、を含むたばこ含有セグメント。
【請求項28】
前記たばこ充填物における前記たばこ組成物の充填密度が0.25~0.45g/cmである、請求項27に記載のたばこ含有セグメント。
【請求項29】
請求項27又は28に記載のたばこ含有セグメントを備える非燃焼加熱型香味吸引器具。
【請求項30】
請求項29に記載の非燃焼加熱型香味吸引器具と、
前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、
を備える非燃焼加熱型香味吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこ組成物、たばこ含有セグメント、非燃焼加熱型香味吸引器具、及び非燃焼加熱型香味吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼型香味吸引器具(シガレット)では、葉たばこを含むたばこ充填物を備えるたばこ含有セグメントを燃焼して香味を得る。該燃焼型香味吸引器具の代替として、たばこ含有セグメントを燃焼する代わりに加熱して香味を得る非燃焼加熱型香味吸引器具が提案されている。非燃焼加熱型香味吸引器具の加熱温度は、燃焼型香味吸引器具の燃焼温度より低く、例えば約400℃以下である。このように、非燃焼加熱型香味吸引器具の加熱温度は低いため、煙量を増加させる観点から、非燃焼加熱型香味吸引器具ではたばこ充填物にグリセリン等のエアロゾル発生剤が添加される。エアロゾル発生剤は加熱により気化し、エアロゾルを発生する。該エアロゾルはたばこ成分を伴い使用者に供給されるため、使用者は十分な香味を得ることができる。
【0003】
非燃焼加熱型香味吸引器具のたばこ含有セグメントでは、たばこ充填物が十分な量のエアロゾル発生剤を含有できるようにするために、たばこ充填物として、葉たばこの代わりにたばこシートを充填したたばこ充填物が通常用いられている(例えば特許文献1)。たばこシートは、たばこを含む組成物をシート形状に成形して得られるものであり、成形のためにフィラーとしてパルプなどの繊維を含む。該繊維はエアロゾル発生剤を吸収できるため、たばこシートは葉たばこよりも多くのエアロゾル発生剤を保持することができる。
【0004】
一方、特許文献2~6には、主に燃焼型香味吸引器具用として、葉たばことたばこシートとを含むたばこ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-515274号公報
【特許文献2】特表2019-503659号公報
【特許文献3】特表2013-502232号公報
【特許文献4】特開平7-184624号公報
【特許文献5】特表2018-516075号公報
【特許文献6】国際公開第2011/013478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、たばこシートはエアロゾル発生剤を多く含有することができ、非燃焼加熱型香味吸引器具の使用時に煙量を確保できる。しかし、たばこシートはパルプ等の繊維を含むため、使用時に繊維臭を感じることがある。また、たばこシートは繊維等のたばこ以外の材料を含み、またたばこシートはその製造時にたばこ成分を一部損失するため、葉たばこと比較して使用時に香味が弱く感じられ、香味の持続性も低い。さらに、たばこシートは、製造時におけるたばこ成分の一部損失により、葉たばこと比較して製造コストが高い。一方、葉たばこは、使用時に香味が強く、繊維臭もなく、低コストであるが、エアロゾル発生剤を少量しか含有できないため、煙量を十分に確保できない。
【0007】
本発明は、十分な煙量を確保しつつ、繊維臭を低減でき、香味の程度及び持続性を向上させることができ、かつ低コストのたばこ組成物、該たばこ組成物を含むたばこ含有セグメント、非燃焼加熱型香味吸引器具、及び非燃焼加熱型香味吸引システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の実施態様を含む。
【0009】
本発明の実施形態に係るたばこ組成物は、
たばこシートと、葉たばこと、を含むたばこ組成物であって、
前記たばこシートと前記葉たばこの質量割合が、たばこシート:葉たばこ=40~80:20~60であり、
たばこ組成物がエアロゾル発生剤を含む。
【0010】
本発明の実施形態に係るたばこ含有セグメントは、
筒状のラッパーと、該ラッパー内に本発明の実施形態に係るたばこ組成物が充填されたたばこ充填物と、を含む。
【0011】
本発明の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具は、
本発明の実施形態に係るたばこ含有セグメントを備える。
【0012】
本発明の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、
本発明の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具と、
前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分な煙量を確保しつつ、繊維臭を低減でき、香味の程度及び持続性を向上させることができ、かつ低コストのたばこ組成物、該たばこ組成物を含むたばこ含有セグメント、非燃焼加熱型香味吸引器具、及び非燃焼加熱型香味吸引システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例であって、(a)非燃焼加熱型香味吸引器具を加熱装置に挿入する前の状態、(b)非燃焼加熱型香味吸引器具を加熱装置に挿入して加熱する状態、を示す断面図である。
図3】本実施形態に係る電気加熱式デバイスの加熱チャンバに、たばこスティックを規定位置まで挿入した状態を示す断面図である。
図4図3に示される中空管ヒーターのB-B位置における横断面(B-B横断面)を示す図である。
図5】参考例における主成分得点の散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[たばこ組成物]
本実施形態に係るたばこ組成物は、たばこシートと、葉たばこと、を含む。ここで、本実施形態では、前記たばこシートと前記葉たばこの質量割合が、たばこシート:葉たばこ=40~80:20~60である。また、本実施形態に係るたばこ組成物はエアロゾル発生剤を含む。
【0016】
本発明者等は、エアロゾル発生剤を含むたばこ組成物において、たばこシートと、葉たばことを、両者の質量割合がたばこシート:葉たばこ=40~80:20~60となるようにブレンドすることで、十分な煙量を確保しつつ、繊維臭を低減でき、香味の程度及び持続性を向上させることができることを見出した。たばこシートの質量割合が40質量%以上(葉たばこの質量割合が60質量%以下)であることにより、たばこ組成物がエアロゾル発生剤を十分な量含有することができ、使用時に十分な煙量を確保することができる。また、十分な煙量が確保されることにより、エアロゾルによりたばこ成分が使用者に十分供給されるため、香味の程度及び持続性が向上する。一方、たばこシートの質量割合が80質量%以下(葉たばこの質量割合が20質量%以上)であることにより、たばこシートに含まれるパルプ等の繊維由来の繊維臭を低減できる。また、葉たばこの質量割合が増えるため、たばこ成分の含有量が増加し、香味の程度及び持続性が向上する。さらに、本実施形態ではたばこシートに葉たばこをブレンドしているため、たばこシートのみのたばこ組成物と比較して製造時のたばこ成分の損失が少なく、製造コストを低減できる。本実施形態に係るたばこ組成物は、特に非燃焼加熱型香味吸引器具用のたばこ組成物として有用である。
【0017】
本実施形態において、前記たばこシートと前記葉たばこの質量割合は、たばこシート:葉たばこ=40~80:20~60であり、(40以上70未満):(30を超えて60以下)であることが好ましく、45~69:31~55であることがより好ましく、50~69:31~50であることがさらに好ましく、55~68:32~45であることが特に好ましい。なお、たばこシートと葉たばことは外観が異なるため、たばこシートと葉たばことを含むたばこ組成物において、両者を分離してその質量を測定することが可能である。また、葉たばこにエアロゾル発生剤等の成分が付与されている場合、葉たばこの質量は前記成分を含む質量である。たばこシートも同様である。また、本実施形態に係るたばこ組成物は、たばこシートと、葉たばこと、からなることができる。
【0018】
(膨嵩性)
本実施形態に係るたばこ組成物の膨嵩性は、300~580cm/100gであることが好ましい。たばこシートは葉たばこと比較して膨嵩性が低いため、たばこシートのみのたばこ組成物では、たばこ含有セグメントにおいて所定の巻硬さを得るためにより多量のたばこ組成物を充填する必要がある。しかし、本実施形態に係るたばこ組成物は膨嵩性が高い葉たばこがブレンドされているため、たばこシートのみのたばこ組成物よりも膨嵩性が高く、たばこ含有セグメント製造時のたばこ組成物の充填量を低減できる。したがって、たばこ含有セグメントの製造コストを削減することができる。前記たばこ組成物の膨嵩性が300cm/100g以上であることにより、たばこ含有セグメント製造時のたばこ組成物の充填量を十分に低減でき、製造コストをより削減できる。前記たばこ組成物の膨嵩性は、300~500cm/100gがより好ましく、300~400cm/100gがさらに好ましく、330~380cm/100gが特に好ましい。
【0019】
なお、前記たばこ組成物の膨嵩性は、以下の方法により測定される値である。膨嵩性の測定には、ドイツのBorgwaldt社製のDD-60Aを使用することができる。膨嵩性は、試料を投入した直径95mmの測定シリンダ内に11.4kgの負荷を5秒間かけた後に求められる試料の円柱の高さから計算される数値である。つまり、膨嵩性は、試料のかたまりを一定の力で圧縮したときの刻単位重量当たりの体積を表す。
FP=(A×h5)/W [cm/100g]
FP :膨嵩性
A :試料円柱の断面積
W :試料の重量
h5 :負荷終了時の試料円柱の高さ
【0020】
(還元糖含有量)
本実施形態に係るたばこ組成物は還元糖を含むことができる。還元糖はたばこ成分の一種であり、エアロゾルにたばこらしい心地良い芳香を与えることが分かっている。還元糖としては、例えばグルコースまたはフルクトースが挙げられる。本実施形態に係るたばこ組成物において、前記たばこシートの還元糖含有量は1.5~25.0質量%が好ましく、香味の観点より2.0~15.0質量%がより好ましく、2.0~10.0質量%がさらに好ましい。前記たばこシートの還元糖含有量が1.5質量%未満である場合、口腔内の生理的な不快感を示すエアロゾルを生成する場合がある。また、還元糖含有量が25.0質量%を超える場合、エアロゾルに酸性が付与される場合がある。
【0021】
本実施形態に係るたばこ組成物において、前記葉たばこの還元糖含有量は0.5~25.0質量%が好ましく、1.0~20.0質量%がより好ましく、5.0~15.0質量%がさらに好ましい。前記葉たばこの還元糖含有量が1.0質量%未満である場合、口腔内の生理的な不快感を示すエアロゾルを生成する場合がある。また、還元糖含有量が20.0質量%を超える場合、エアロゾルに酸性が付与される場合がある。
【0022】
本実施形態に係るたばこ組成物の還元糖含有量は0.8~25.0質量%が好ましく、1.0~20.0質量%がより好ましく、2.0~15.0質量%がさらに好ましい。前記たばこ組成物の還元糖含有量が1.0質量%未満である場合、口腔内の生理的な不快感を示すエアロゾルを生成する場合がある。また、還元糖含有量が25.0質量%を超える場合、エアロゾルに酸性が付与される場合がある。なお、たばこシート、葉たばこ及びたばこ組成物の還元糖含有量は、試料を粉末にして還元糖を抽出し、高速液体クロマトグラフィで分析する方法やNIR測定法を用いて測定することができる。また、各還元糖含有量は、例えば還元糖含有量の多いバージニア種と、還元糖含有量の少ないバージニア種・バーレー種などをブレンドすることにより前記範囲内に制御することができる。
【0023】
(エアロゾル発生剤とその含有量)
本実施形態に係るたばこ組成物はエアロゾル発生剤を含む。エアロゾル発生剤は加熱により気化し、エアロゾルを発生するため、使用時の煙量を増加させることができる。本実施形態に係るたばこ組成物に含まれるエアロゾル発生剤としては、加熱により気化し、エアロゾルを発生できるものであれば特に限定されず、種々の天然物からの抽出物質および/またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル発生剤の具体例としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の多価アルコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。エアロゾル発生剤はたばこ組成物に含まれていればよく、例えばたばこシートに含まれていてもよく、葉たばこに含まれていてもよく、たばこシート及び葉たばこの両方共に含まれていてもよい。
【0024】
本実施形態に係るたばこ組成物において、前記たばこシートのエアロゾル発生剤含有量は5.0~20.0質量%が好ましく、7.5~18.0質量%がより好ましく、10.0~16.0質量%がさらに好ましい。前記たばこシートのエアロゾル発生剤含有量が5.0質量%以上であることにより、十分なエアロゾルを使用者に供給することができる。
【0025】
本実施形態に係るたばこ組成物において、前記葉たばこのエアロゾル発生剤含有量は2.0~15.0質量%が好ましく、3.0~12.0質量%がより好ましく、5.0~10.0質量%がさらに好ましい。前記葉たばこのエアロゾル発生剤含有量が2.0質量%以上であることにより、十分なエアロゾルを使用者に供給することができる。
【0026】
本実施形態に係るたばこ組成物のエアロゾル発生剤含有量は3.2~19.0質量%が好ましく、4.8~16.8質量%がより好ましく、7.0~14.8質量%がさらに好ましい。前記たばこ組成物のエアロゾル発生剤含有量が3.2質量%以上であることにより、使用者に十分な量のエアロゾルを供給できる。なお、たばこシート、葉たばこ及びたばこ組成物のエアロゾル発生剤含有量は、ガスクロマトグラフィーによって測定される。
【0027】
(ニコチン含有量)
本実施形態に係るたばこ組成物はニコチンを含むことができる。ニコチンはたばこ成分の一種であり、良好な香味に寄与する。本実施形態に係るたばこ組成物において、前記たばこシートのニコチン含有量は0.5~5.0質量%が好ましく、1.0~4.5質量%がより好ましく、1.0~4.0質量%がさらに好ましい。前記たばこシートのニコチン含有量が5.0質量%を超える場合、エアロゾルが吸入された際に不快感がもたらされる場合がある。また、前記たばこシートのニコチン含有量が0.5質量%未満である場合、エアロゾルが吸入された際に十分な吸いごたえを感じられない場合がある。
【0028】
本実施形態に係るたばこ組成物において、前記葉たばこのニコチン含有量は0.5~5.0質量%が好ましく、1.0~4.5質量%がより好ましく、1.0~4.0質量%がさらに好ましい。前記葉たばこのニコチン含有量が5.0質量%を超える場合、エアロゾルが吸入された際に不快感がもたらされる場合がある。また、前記葉たばこのニコチン含有量が0.5質量%未満である場合、エアロゾルが吸入された際に十分な吸いごたえを感じられない場合がある。
【0029】
本実施形態に係るたばこ組成物のニコチン含有量は0.5~5.0質量%が好ましく、1.0~4.5質量%がより好ましく、1.0~4.0質量%がさらに好ましい。前記たばこ組成物のニコチン含有量が5.0質量%を超える場合、エアロゾルが吸入された際に不快感がもたらされる場合がある。また、前記たばこ組成物のニコチン含有量が0.5質量%未満である場合、エアロゾルが吸入された際に十分な吸いごたえを感じられない場合がある。なお、たばこシート、葉たばこ及びたばこ組成物のニコチン含有量は、以下の方法により測定される値である。また、各ニコチン含有量は、例えばニコチン含有量の異なるたばこシートおよび葉たばこをブレンドすることにより前記範囲内に制御することができる。
【0030】
(ニコチン含有量の測定方法)
試料2.0gを回転棚式乾燥器(ロータリー乾燥器)に投入して、80℃±1℃、3時間で乾燥し、減少した質量から試料の水分量W(質量%)を求める。次いで質量0.5gに、蒸留水10mL、ヘキサン20mL、8mol/Lの水酸化ナトリウム溶液5mLを加え、60分間振とうして抽出操作を行う。抽出後、上澄み液(ヘキサン相)をガスクロマトグラフ(GC/FID)に供し、試料に含まれるニコチン量を定量し、その含有量Bw(質量%)を求める。これらの値から、以下の式によって絶乾質量基準での試料に含まれるニコチン成分の含有量Bd(質量%)を算出する。
Bd(質量%)=Bw/(100-W)×100
【0031】
(ネオフィタジエン含有量)
本実施形態に係るたばこ組成物はネオフィタジエンを含むことができる。ネオフィタジエンはたばこ成分の一種であり、良好な香味に寄与する。本実施形態に係るたばこ組成物において、前記たばこシートのネオフィタジエン含有量は0.01~0.10質量%が好ましく、0.01~0.07質量%がより好ましく、0.01~0.05質量%がさらに好ましい。
【0032】
本実施形態に係るたばこ組成物において、前記葉たばこのネオフィタジエン含有量は0.05質量%以上が好ましく、0.05~0.30質量%がより好ましく、0.05~0.25質量%がさらに好ましく、0.10~0.20質量%が特に好ましい。
【0033】
本実施形態に係るたばこ組成物のネオフィタジエン含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.01~0.22質量%がより好ましく、0.01~0.18質量%がさらに好ましく、0.05~0.15質量%が特に好ましい。なお、たばこシート、葉たばこ及びたばこ組成物のネオフィタジエン含有量は、以下の方法により測定される値である。また、各ネオフィタジエン含有量は例えばネオフィタジエン含有量の異なるたばこシートおよび葉たばこをブレンドすることにより前記範囲内に制御することができる。
【0034】
(ネオフィタジエン含有量の測定方法)
(1)試料2gを測り取り、円筒ろ紙にいれ脱脂綿でかるくつめた後、デジケーター中で一晩減圧乾燥してソックスレー抽出器にいれ、水浴中で20時間ジクロルメタン(約150ml)抽出する。
(2)ジクロルメタン抽出液を40℃で減圧濃縮し、50ml容メスフラスコに入れ、ジクロルメタンで50mlとする。
(3)あらかじめ秤量した50ml容ナス型フラスコに抽出液25mlを入れ、40℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより減圧乾燥後、秤量する。
(4)抽出液10mlを50mlより小さい三角フラスコにいれ、n-ヘキサデカン内部標準液200μlを加える(A液)。
(5)A液を窒素気流中で20μlに濃縮し、当該溶液についてGC/MS分析を行う。
【0035】
(センブラトリエンジオール(CBT)含有量)
本実施形態に係るたばこ組成物はたばこ成分であるセンブラトリエンジオール(CBT)を含むことができる。センブラトリエンジオール(CBT)は揮発性たばこ成分の一種であり、良好な香味に寄与する。本実施形態に係るたばこ組成物において、前記たばこシートのセンブラトリエンジオール(CBT)含有量は0.01~0.10質量%が好ましく、0.01~0.07質量%がより好ましく、0.01~0.05質量%がさらに好ましい。
【0036】
本実施形態に係るたばこ組成物において、前記葉たばこのセンブラトリエンジオール(CBT)含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.01~0.80質量%がより好ましく、0.01~0.50質量%がさらに好ましく、0.10~0.30質量%が特に好ましい。
【0037】
本実施形態に係るたばこ組成物のセンブラトリエンジオール(CBT)含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.01~0.52質量%がより好ましく、0.01~0.34質量%がさらに好ましく、0.03~0.15質量%が特に好ましい。なお、たばこシート、葉たばこ及びたばこ組成物のセンブラトリエンジオール(CBT)含有量は、以下の方法により測定される値である。100ml容量のスクリュー管に試料5gを量り取り、酢酸エチル50mlを加えよく混合した後、常温下で一昼夜静置する。混合液をろ紙を用いてろ過し、ろ液(抽出液)に無水硫酸ナトリウムを少量添加して脱水後、再度ろ紙を用いたろ過を行い、脱水後液中の酢酸エチルを減圧除去する。得られた乾固物に、酢酸エチルを加えて溶解し、当該溶液についてGC/MS分析を行う。各センブラトリエンジオール(CBT)含有量は、例えばセンブラトリエンジオール(CBT)含有量の異なるたばこシートおよび葉たばこをブレンドすることにより前記範囲内に制御することができる。
【0038】
(たばこシートの種類、物性)
本実施形態に係るたばこシートの密度は、0.40~0.60g/cmが好ましく、0.45~0.55g/cmがより好ましい。前記たばこシートの密度が0.40g/cm以上であることにより、体積当たりのたばこシートに含まれるたばこ成分の量を増加でき、香味の程度及び持続性をより向上させることができる。また、たばこシートの密度が0.60g/cm以下であることにより、加熱によりたばこシートが温まりやすく、使用初期におけるたばこ成分の気化が促進される。なお、たばこシートの密度は、単位面積あたりの重量(坪量)を定圧厚さ測定器で計測した厚さで割ることによって算出される値である。
シートたばこの密度(g/cm)=坪量(g/cm)/厚さ(cm)
【0039】
本実施形態に係るたばこシートは、一種のみのたばこシートを含んでもよく、二種以上のたばこシートを含んでもよい。たばこシートが二種以上のたばこシートを含む場合、密度の異なる二種以上のたばこシートを含むことが好ましい。密度の低いたばこシートは加熱により温まりやすく、使用初期におけるたばこ成分の気化促進に寄与できる。一方、密度の高いたばこシートは体積当たりのたばこ成分の含有量が多く、香味の程度及び持続性の向上に寄与できる。
【0040】
例えば、本実施形態に係るたばこシートは、密度が0.55g/cm未満の第一のたばこシートと、密度が0.55g/cm以上の第二のたばこシートとを含むことが好ましい。密度の低い第一のたばこシートの密度が0.55g/cm未満であることにより、加熱により温まりやすく、使用初期におけるたばこ成分の気化がより促進される。また、密度の高い第二のたばこシートの密度が0.55g/cm以上であることにより、体積当たりのたばこ成分の含有量が多くなり、香味の程度及び持続性がより向上する。第一のたばこシートの密度は0.40g/cm以上、0.55g/cm未満がより好ましく、0.45g/cm以上、0.55g/cm未満がさらに好ましい。第二のたばこシートの密度は0.55~1.00g/cmがより好ましく、0.60~0.80g/cmがさらに好ましい。なお、本実施形態に係るたばこシートは、前記第一のたばこシートと前記第二のたばこシートからなってもよい。
【0041】
本実施形態に係るたばこシートに含まれる、前記第一のたばこシートと前記第二のたばこシートの質量割合は、第一のたばこシート:第二のたばこシート=50~80:20~50であることが好ましい。密度の低い第一のたばこシートの質量割合が50質量%以上(第二のたばこシートの質量割合が50質量%以下)であることにより、加熱により温まりやすく、使用初期におけるたばこ成分の気化がより促進される。また、第一のたばこシートの質量割合が80質量%以下(第二のたばこシートの質量割合が20質量%以上)であることにより、密度の高い第二のたばこシートの質量割合が増加し、体積当たりのたばこ成分の含有量が多くなり、香味の程度及び持続性がより向上する。前記第一のたばこシートと前記第二のたばこシートの質量割合は、第一のたばこシート:第二のたばこシート=55~80:20~45がより好ましく、60~80:20~40がさらに好ましい。
【0042】
また、本実施形態に係るたばこシートは、後述する抄造たばこシートとスラリーたばこシートを含んでもよい。この場合、抄造たばこシートが前記第一のたばこシートに相当し、スラリーたばこシートが前記第二のたばこシートに相当する。たばこシートが抄造たばこシートとスラリーたばこシートを含む場合、前記抄造たばこシートと前記スラリーたばこシートの質量割合は、抄造たばこシート:スラリーたばこシート=50~80:20~50が好ましく、55~80:20~45がより好ましく、60~80:20~40がさらに好ましい。
【0043】
前記第二のたばこシート又は前記スラリーたばこシートのエアロゾル発生剤含有量は、20.0質量%以下であることが好ましい。前記エアロゾル発生剤含有量が20.0質量%以下であることにより、加熱により前記第二のたばこシート又は前記スラリーたばこシートが温まりやすく、たばこ成分の気化を十分に行うことができる。前記エアロゾル発生剤含有量は10.0~20.0質量%がより好ましく、10.0~15.0質量%がさらに好ましい。
【0044】
前記第一のたばこシート又は前記抄造たばこシートのエアロゾル発生剤含有量は特に限定されないが、例えば10.0~30.0質量%であることができ、10.0~20.0質量%が好ましい。
【0045】
(葉たばこの構成)
<定義>
本明細書において、「葉たばこ」とは、収穫されたたばこの葉、収穫されたたばこの葉が除骨及び分離され、ラミナ及び中骨等となったもの、熟成(キュアリングを含む)を経た熟成済葉たばこ、熟成済葉たばこ等が所定の大きさに刻まれたたばこ刻を含む。
【0046】
<たばこの品種>
たばこの品種は、様々なものを用いることができる。例えば、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、その他のニコチアナ-タバカム系品種、ニコチアナ-ルスチカ系品種を挙げることができる。これらの品種は、単独で用いることもできるが、目的とする香味を得るために、葉たばこの収穫から、熟成済葉たばこをたばこ刻とするまでの過程でブレンドして用いることもできる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に開示されている。
【0047】
<たばこ品種のブレンド>
上述のとおり、たばこ品種のブレンドは、葉たばこの収穫から、熟成済葉たばこをたばこ刻とするまでの過程で行うことができる。一般的に「ブレンド」とは、同一の品種または異なる品種に属するたばこの混合物を意味するが、本明細書においては、異なる熟成済葉たばこや異なるたばこ刻を組み合わせることを「ブレンド」と称することもある。また、同一品種で異なるグレードを有するたばこをブレンドすることを特に「クロスブレンド」と称することもある。
【0048】
たばこの各品種において、葉たばこは、例えば、原産地、植物内での配置、色、表面の状態、大きさ、および形状といった各特徴により等級分けされる。また、葉たばこには300を超える化学成分が含まれていると考えられており、品種が異なるたばこ間の化学的特性は異なるものとなる。また、同一の品種のたばこであっても、等級が異なると、その化学的特性が異なる場合もある。そこで、所望の特徴、及び所望の化学的特性を有するたばこ原料を得るために、上記のブレンドやクロスブレンドが行われる。
【0049】
<葉たばこの処理>
収穫された葉たばこが、初期の段階で受ける処理としては、例えば、キュアリングや原料工場における処理及び熟成などを挙げることができる。
【0050】
<キュアリング>
葉たばこは、一般的に、収穫された後の初期の段階でキュアリングという処理を受ける。キュアリングは、葉たばこを熟成させるための処理の一つであり、通常、乾燥や調湿などの工程が含まれ、葉たばこに含まれる各種酵素の働きを活性化させたりすることも含まれる。キュアリングを受けた葉たばこはケースに梱包され、一定期間、倉庫で保管された後、原料工場へ輸送される。なお、ベンゾ[a]ピレン及び低分子カルボン酸の含有量が少なく、特定の香味成分が多く含まれる葉たばこを得るために、上述のキュアリングに代えて、収穫された葉たばこに国際公開第2018/139068号に記載の処理を行ってもよい。
【0051】
<原料工場での処理・熟成>
原料工場に輸送されたキュアリングを受けた葉たばこは、解包された後、通常、調湿や除骨、分離などの処理を受け、ラミナ及び中骨等となる。その後、再乾燥されたラミナ及び中骨等はケース詰めされ、倉庫にて長期保管される。この倉庫で長期保管する工程は、熟成と称されることもある。熟成の期間は、使用されるたばこの品種や、たばこ製品が目的とする香味、熟成における温度により異なるが、一般的には、1年以上、2年以下である。熟成の一態様である、キュアリング又は上述したキュアリングに代わる処理を受け、さらに、熟成を経た葉たばこを「熟成済葉たばこ」と称する。
【0052】
なお、葉たばこをラミナ及び中骨等に処理した後にケース詰めして熟成させることを除骨後熟成と称することがある。一方で、原料工場に輸送された葉たばこに対し、除骨、分離処理を行わずに、ケース詰めして熟成させ、熟成後に除骨、分離処理を行うことを熟成後除骨と称することもある。
【0053】
<香味料>
葉たばこには香味料を付与してもよい。香味料の種類は、特に限定されず、良好な香味の付与の観点から、例えば、香料、呈味料が挙げられる。その他、任意で、着色剤、湿潤剤、保存料を含み得る。香味料や任意材料はその性状を問わず、例えば液体、固体が挙げられる。また、単独成分でも複数成分の組み合わせでもよい。
【0054】
当該香料の好適なフレーバーとしては、たばこエキスおよびたばこ成分、糖質および糖系のフレーバー、リコリス(甘草)、ココア、チョコレート、果汁およびフル-ツ、スパイス、洋酒、ハーブ、バニラ、およびフラワー系フレーバーなどから選ばれる香料を単独、あるいは組み合わせてなるものが挙げられる。
【0055】
当該香料は、例えば、「周知・慣用技術集(香料)」(2007年3月14日、特許庁発行)、「最新 香料の事典(普及版)」(2012年2月25日、荒井綜一 ・小林彰夫 ・矢島泉 ・川崎通昭 編、朝倉書店)、および「Tobacco Flavoring for Smoking Products」(1972年6月、R. J. REYNOLDS TOBACCO COMPANY)に記載されているような広範な種類の香料成分を使用することができる。
【0056】
当該香料は、例えば、イソチオシアネート類、インドールおよびその誘導体、エーテル類、エステル類、ケトン類、脂肪酸類、脂肪族高級アルコール類、脂肪族高級アルデヒド類、脂肪族高級炭化水素類、チオエーテル類、チオ-ル類、テルペン系炭化水素類、フェノールエーテル類、フェノール類、フルフラールおよびその誘導体、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、ラクトン類などから選ばれる香料を単独、あるいは組み合わせてなるものが挙げられる。冷感/温感をもたらす素材であっても良い。
【0057】
当該香料は、より具体的には、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミール油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユ-カリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオ-ル、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナ-ル、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、シトラール、マンダリン油、4-(アセトキシメチル)トルエン、2-メチル-1-ブタノール、10-ウンデセン酸エチル、ヘキサン酸イソアミル、1-フェニルエチル酢酸、ラウリン酸、8-メルカプトメントン、シネンサール、酪酸ヘキシル、植物粉末(ハーブ粉末、フラワー粉末、スパイス粉末、茶粉末:ココア粉末、キャロブ粉末、コリアンダー粉末、リコリス粉末、オレンジピール粉末、ローズピップ粉末、カモミールフラワ粉末、レモンバーベナ粉末、ペパーミント粉末、リーフ粉末、スペアミント粉末、紅茶粉末など)、カンファー、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ユ-カリプタスオイル、2-l-メントキシエタノール(COOLACT(登録商標)5)、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール(COOLACT(登録商標)10)、l-メンチル-3-ヒドロキシブチレート(COOLACT(登録商標)20)、p-メンタン-3,8-ジオール(COOLACT(登録商標)38D)、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(COOLACT(登録商標)370)、N-(4-(シアノメチル)フェニル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド(COOLACT(登録商標)400)、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド(WS-3)、エチル-2-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(WS-5)、N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(WS-12)、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチラミド(WS-23)、3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、2-l-メントキシエタン-1-オール、3-l-メントキシプロパン-1-オール、4-l-メントキシブタン-1-オール、メンチルラクテート(FEMA3748)、メントングリセリンアセタール(Frescolat MGA、FEMA3807、FEMA3808)、2-(2-l-メンチルオキシエチル) エタノール、グリオキシル酸メンチル、2-ピロリドン-5-カルボン酸メンチル、コハク酸メンチル(FEMA3810)、N-(2-(ピリジン-2-イル)-エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド(FEMA4549)、N-(エトキシカルボニルメチル)-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、およびN-(4-アミノカルボニルフェニル)-p-メンタンなどが挙げられる。
【0058】
当該呈味料は、例えば、甘味、酸味、塩味、旨味、苦味、渋味、こく味などを呈する素材が挙げられる。甘味を呈する素材は、例えば、糖類、糖アルコール、甘味料などが挙げられる。糖類は、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類などが挙げられる。甘味料は、例えば、天然甘味料、合成甘味料などが挙げられる。酸味を呈する素材は、例えば、有機酸(およびそのナトリウム塩)などが挙げられる。有機酸は、例えば、酢酸、アジピン酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸などが挙げられる。苦味を呈する素材は、例えば、カフェイン(抽出物)、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物などが挙げられる。塩味を呈する素材は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。旨味を呈する素材は、例えば、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなどが挙げられる。渋味を呈する素材は、例えば、タンニン、シブオールなどが挙げられる。
【0059】
当該着色剤は、例えば、天然色素、合成色素などが挙げられる。天然色素は、例えば、カラメル、ウコン、ベニコウジ、クチナシ、ベニバナ、カロテン、マリーゴールド、アナトーなどが挙げられる。合成色素は、例えば、タール色素、酸化チタンなどが挙げられる。
【0060】
当該湿潤剤は、例えば、脂質(ワックス、ろう、グリセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸(短鎖、中鎖、長鎖脂肪酸))、ポリオール(グリセロール、ポリエチレングリコール)などが挙げられる。
【0061】
当該保存料は、例えば、酢酸、安息香酸、プロポオン酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、ソルビン酸、酒石酸(およびこれらの塩)、ナイシンなどが挙げられる。
【0062】
葉たばこに香味料を付与する場合、葉たばこの香味料の含有量は、特に限定されないが、良好な香味の付与の観点から、例えば、通常10ppm以上であり、好ましくは10000ppm以上であり、より好ましくは50000ppm以上であり、また、通常250000ppm以下であり、好ましくは200000ppmであり、より好ましくは150000ppm以下であり、さらに好ましくは100000ppm以下である。
【0063】
<葉たばこのたばこ刻>
葉たばこは、葉たばこのたばこ刻(以下、葉たばこ刻ともいう。)であってもよい。葉たばこ刻は、熟成済葉たばこなどが、所定の大きさに刻まれたものである。葉たばこ刻に使用される熟成済葉たばこは、特に限定されないが、除骨され、ラミナ及び中骨に分離されたものを挙げることができる。
【0064】
<葉たばこ刻の調製方法>
葉たばこ刻の大きさや調製法については特段の制限はない。一例として、熟成済葉たばこを、幅を0.3mm以上、2.0mm以下、長さを3mm以上、30mm以下となるように刻んだものが挙げられる。香味発生源として考えた場合、熱伝導度等を考慮することで様々な刻み幅を設定することが可能である。このような大きさの葉たばこ刻は、後述するラッパーに充填するうえで好ましい。また、0.3~2.0mmの範囲内で刻み幅が異なる二種以上の葉たばこを用いることが、香味の程度を感じるパフのタイミングを幅広く変化させることができる観点から好ましい。例えば、刻み幅が0.3~1.2mmの第一の葉たばこと、刻み幅が0.8~1.7mmの第二の葉たばこ(第一の葉たばこより第二の葉たばこの方が、刻み幅が大きい)と、を用いることができる。刻幅を小さくすると、単位質量当たりの表面積が大きくなり、熱伝導効率が高くなる。熱伝導効率が高くなることによって、短時間でたばこ充填物を加熱することが可能となる。一方、刻幅を大きくすることによって、単位質量当たりの表面積が小さくなり、熱伝導効率が低くなるため、長時間かけてたばこ充填物を加熱することが可能となる。
【0065】
(たばこシートの構成)
たばこシートは、熟成済葉たばこなどを含む組成物を、シート形状に成形して得られるものである。たばこシートに使用される熟成済葉たばこは、特に限定されないが、例えば、除骨され、ラミナと中骨に分離されたものを挙げることができる。また、本明細書において「シート」とは、略平行な1対の主面、及び側面を有する形状をいう。たばこシートはパルプなどの繊維を含む。
【0066】
<たばこシートの成形方法>
たばこシートは、抄造法、キャスト法、圧延法等の公知の方法で成形することができる。このような方法で成形された各種たばこシートについては、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。本明細書では、抄造法により成形されたたばこシートを「抄造たばこシート」、キャスト法(スラリー法)により成形されたたばこシートを「スラリーたばこシート」という。いずれのたばこシートもユニークな組成から親油性成分を保持しにくい。他方、たばこシートとしてグリセリン、プロピレングリコール、還元糖、アミノ酸等親水性のVaper源や加熱香気の前駆体をより保持できる性質をもつ。以下に上述の抄造たばこシート、スラリーたばこシートおよび圧延たばこシートについて概説する。
【0067】
<たばこシートの成形方法(抄造法)>
抄造法によりたばこシートを成形する方法としては、例えば、以下の工程を含む方法を挙げることができる。
(1)熟成済葉たばこを粗砕し、これを水等の溶媒と混合・攪拌することで、熟成済葉たばこから水溶性成分を抽出する工程。
(2)水溶性成分を含む水抽出物と残渣に分離する工程。
(3)水抽出物を減圧乾燥して濃縮する工程。
(4)残渣にパルプを加え、これをリファイナで繊維化して混合物を得る工程(均質化工程)。
(5)繊維化された残渣とパルプの混合物を抄紙する工程。
(6)抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加して乾燥し、たばこシートとする工程。
この方法でたばこシートを成形する場合、ニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい(特表2004-510422号公報参照)。
【0068】
<たばこシートの成形方法(キャスト法)>
キャスト法(スラリー法)によりたばこシートを成形する方法としては、例えば、以下の工程を含む方法を挙げることができる。
(1)水、パルプ及びバインダーと、熟成済葉たばこの粉砕物を混合して混合物を得る工程(均質化工程)。
(2)当該混合物を薄く延ばして(キャストして)乾燥し、たばこシートとする工程。
この方法でたばこシートを成形する場合、水、パルプ及びバインダーと、砕いた葉たばこを混合したスラリーに対して紫外線照射もしくはX線照射することでニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい。
【0069】
<たばこシートの成形方法(圧延法)>
圧延法によりたばこシートを成形する方法としては、例えば、以下の工程を含む方法を挙げることができる。
(1)水、パルプ及びバインダーと、熟成済葉たばこの粉砕物を混合して混合物を得る工程(均質化工程)。
(2)当該混合物を複数の圧延ローラーに投入して圧延する工程。
(3)圧延ローラー上の圧延成形品をドクターナイフで剥離し、ネットコンベアーに移送し、乾燥機で乾燥する工程。
この方法でたばこシートを成形する場合、目的に応じて、各圧延ローラーの表面を加温又は冷却してもよく、各圧延ローラーの回転数を調整してもよい。また、各圧延ローラーの間隔を調整することで、所望の坪量のたばこシートを得ることができる。
【0070】
<均質化工程における、たばこ繊維の平均繊維長、混合物の濾水度>
上記の各方法に記載の均質化工程において、一定の強度を有するたばこシートを得る観点から、各混合物に含まれるたばこ繊維の平均繊維長が、200μm以上、1000μm以下であり、各混合物の濾水度が、20°SR以上、50°SR以下であることが好ましい。たばこ繊維の平均繊維長は、ファイバーカウント2万以上で非偏光を使用し光学的自動分析(JISP8226-2)によって測定されるものである。濾水度は、ショッパー・リーグラ法(JIS P8121)により測定されるものである。
【0071】
<たばこシートの寸法>
たばこシートの長さ及び幅は、特段制限されることはないが、以後、一般的なたばこ刻とよく混合する後述するラッパーに充填する態様に合わせて適宜調整できる。たばこシートの厚さは、特に限定されないが、伝熱効率と強度の兼ね合いから、100μm以上、1000μm以下が好ましく、200μm以上、600μm以下がより好ましい。
【0072】
<たばこシートの組成>
たばこシートの組成は特に限定されないが、例えばたばこシートは、熟成済たばこ葉、バインダー、パルプ等の繊維、エアロゾル発生剤、香味料等を含むことができる。熟成済たばこ葉の含有量は、たばこシート全質量に対して50質量%以上、95質量%以下であることが好ましい。バインダーとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)等を挙げることができる。バインダーの含有量としては、たばこシートの全質量に対して1質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。パルプ等の繊維の含有量は特に限定されないが、たばこシートの全質量に対して1質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。香味料としては、上述した香味料が挙げられる。たばこシートに香味料が含まれる場合、香味料の含有量は特に限定されないが、良好な香味の付与の観点から、例えば、通常10ppm以上であり、好ましくは10000ppm以上であり、より好ましくは50000ppm以上であり、また、通常250000ppm以下であり、好ましくは200000ppmであり、より好ましくは150000ppm以下であり、さらに好ましくは100000ppm以下である。
【0073】
<たばこシートのたばこ刻>
たばこシートは、たばこシートのたばこ刻(以下、たばこシート刻ともいう。)であってもよい。たばこシート刻は、たばこシートが所定の大きさに刻まれたものである。たばこシート刻の大きさや調製法については特段の制限はない。一例として、たばこシートを、幅を0.3mm以上、2.0mm以下、長さを3mm以上、30mm以下となるように刻んだものが挙げられる。このような大きさのたばこシート刻は、後述するラッパーに充填するうえで好ましい。また、たばこシートの刻み幅は0.3~1.0mmであることが、たばこシート本来の香味の発現遅延を抑制できる観点から好ましい。さらに、たばこシートをべーパー源のみならず、親水性香味発生源として考えた場合、熱伝導度等を考慮することで様々な刻み幅を設定することが好ましい。また、0.3~2.0mmの範囲内で刻み幅が異なる二種以上のたばこシートを用いることが、香味の程度を感じるパフのタイミングを幅広く変化させることができる観点から好ましい。例えば、刻み幅が0.3~1.2mmの第一のたばこシートと、刻み幅が0.8~1.7mmの第二のたばこシート(第一のたばこシートより第二のたばこシートの方が、刻み幅が大きい)と、を用いることができる。刻幅を小さくすると、単位質量当たりの表面積が大きくなり、熱伝導効率が高くなる。熱伝導効率が高くなることによって、短時間でたばこ充填物を加熱することが可能となる。一方、刻幅を大きくすることによって、単位質量当たりの表面積が小さくなり、熱伝導効率が低くなるため、長時間かけてたばこ充填物を加熱することが可能となる。
【0074】
(他の添加物)
本実施形態に係るたばこ組成物は、前記たばこシート及び前記葉たばこ以外に、任意で他の添加物を含むことができる。他の添加物としては、例えば香料が担持された固体添加物としての香料担持多糖類シートが挙げられる。香料担持多糖類シートの添加は、非燃焼加熱型香味吸引物品の使用時の香喫味成分を増加できるといった利点がある。香料担持多糖類シートは、例えば特許5941988号、特許第5934799号、特許第5514953号、特許第5481574号等に開示されている。これらの他の添加物は一種を含んでもよく、二種以上を含んでもよい。しかし、たばこ組成物100質量%に対する、前記たばこシート及び前記葉たばこの合計の質量割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、93質量%以上がさらに好ましい。また、たばこ組成物は前記他の添加物を含まず、前記たばこシート及び前記葉たばこからなることができる。
【0075】
(たばこ組成物の水分含有量)
本実施形態に係るたばこ組成物の水分含有量は、たばこ組成物の全質量に対して、10質量%以上、15質量%以下を挙げることができ、11質量%以上、13質量%以下であることが好ましい。このような水分含有量であると、たばこ組成物をラッパーに充填した後の巻染みの発生を抑制できる。
【0076】
(たばこ組成物の製造方法)
本実施形態に係るたばこ組成物の製造方法は特に限定されず、前記たばこシート、前記葉たばこ、及び任意で前記他の添加物を所定の配合割合で、公知の方法で混合することにより製造することができる。
【0077】
[たばこ含有セグメント]
本実施形態に係るたばこ含有セグメントは、筒状のラッパーと、該ラッパー内に本実施形態に係るたばこ組成物が充填されたたばこ充填物と、を含む。本実施形態に係るたばこ含有セグメントは、本実施形態に係るたばこ組成物を備えるため、使用時に十分な煙量を確保しつつ、繊維臭を低減でき、香味の程度及び持続性を向上させることができる。また、該たばこ含有セグメントは低コストで製造することができる。
【0078】
たばこ充填物は、本実施形態に係るたばこ組成物が筒状のラッパー内に所定の態様で充填されたものを指す。ラッパーとしては、巻紙を筒状にしたものが挙げられるが、これに限定されない。たばこ含有セグメントは、例えばたばこ組成物が内側になるように巻紙等のラッパーによって巻装することで形成される。
【0079】
たばこ含有セグメントは、柱状の形状を有していることが好ましい。この場合には、たばこ含有セグメントの底面の幅に対するたばこ含有セグメントの長軸方向の高さで表されるアスペクト比が1以上であることが好ましいが、これに限定されない。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅は当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。例えば、底面が円である場合、その直径を認定でき、当該直径が幅、これに直交する長さが高さとなる。たばこ含有セグメントの寸法は、特に限定されないが、例えば、長さが10mm以上、70mm以下、幅が4mm以上、9mm以下である態様が挙げられる。また、たばこ含有セグメントにおけるたばこ充填物は、該たばこ充填物を加熱するヒーターとの嵌合部を有していてもよい。
【0080】
たばこ充填物におけるたばこ組成物の充填密度は、0.25~0.45g/cmであることが好ましい。前記充填密度が0.25g/cm以上であることにより、十分な巻き硬さを担保することができる。また、前記充填密度が0.45g/cm以下であることにより、たばこ組成物の充填量を低減できるため、製造コストを削減することができる。前記充填密度は0.29~0.42g/cmがより好ましく、0.30~0.39g/cmがさらに好ましい。
【0081】
[非燃焼加熱型香味吸引器具]
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具は、本実施形態に係るたばこ含有セグメントを備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具は、本実施形態に係るたばこ含有セグメントを備えるため、使用時に十分な煙量を確保しつつ、繊維臭を低減でき、香味の程度及び持続性を向上させることができる。また、該非燃焼加熱型香味吸引器具は低コストで製造することができる。
【0082】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具の一例を図1に示す。図1に示される非燃焼加熱型香味吸引器具1は、本実施形態に係るたばこ含有セグメント2と、周上に穿孔8を有する筒状の冷却セグメント3と、センターホールセグメント4と、フィルターセグメント5と、を備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具は、たばこ含有セグメント、冷却セグメント、センターホールセグメント及びフィルターセグメント以外にも、他のセグメントを有していてもよい。
【0083】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具の軸方向の長さは特に限定されないが、40mm以上、90mm以下であることが好ましく、50mm以上、75mm以下であることがより好ましく、50mm以上、60mm以下であることがさらに好ましい。また、非燃焼加熱型香味吸引器具の周の長さは16mm以上、25mm以下であることが好ましく、20mm以上、24mm以下であることがより好ましく、21mm以上、23mm以下であることがさらに好ましい。例えば、たばこ含有セグメントの長さは20mm、冷却セグメントの長さは20mm、センターホールセグメントの長さは8mm、フィルターセグメントの長さは7mmである態様を挙げることができる。なお、フィルターセグメントの長さは4mm以上、10mm以下の範囲内で選択可能である。また、その際のフィルターセグメントの通気抵抗は、セグメント当たり15mmHO/seg以上、60mmHO/seg以下であるように選択される。これら個々のセグメント長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。さらには、センターホールセグメントを用いずに、冷却セグメントの下流側にフィルターセグメントのみを配置しても、非燃焼加熱型香味吸引器具として機能させることができる。
【0084】
(たばこ含有セグメント)
たばこ含有セグメント2は、本実施形態に係るたばこ含有セグメントである。図1に示されるように、たばこ含有セグメント2が加熱されることにより、たばこ充填物に含まれるたばこ成分(香味成分)、エアロゾル発生剤及び水が気化し、吸引によりこれらはマウスピースセグメント6へ移行する。
【0085】
(冷却セグメント)
図1に示されるように、冷却セグメント3は筒状部材7で構成される態様を挙げることができる。筒状部材7は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管であってもよい。
【0086】
冷却セグメントの全表面積は、300mm/mm以上、1000mm/mm以下を挙げることができる。この表面積は、冷却セグメント通気方向の長さ(mm)当たりの表面積である。冷却セグメントの全表面積は、400mm/mm以上であることが好ましく、450mm/mm以上であることがより好ましく、一方、600mm/mm以下であることが好ましく、550mm/mm以下であることがより好ましい。
【0087】
冷却セグメントは、その内部構造が大きい全表面積を有することが望ましい。従って、好ましい実施形態において、冷却セグメントは、チャネルを形成するためにしわ付けされて、次に、ひだ付け、ギャザー付け、及び折り畳まれた薄い材料のシートによって形成されてもよい。要素の与えられた体積内の折り畳み又はひだが多いと、冷却セグメントの合計表面積が大きくなる。
【0088】
一部の実施形態において、冷却セグメントの構成材料の厚みは、5μm以上、500μm以下、例えば、10μm以上、250μm以下を挙げることができる。
【0089】
エアロゾル冷却要素は、比表面積が10mm/mg以上、100mm/mg以下である材料から形成することができる。一実施形態において、構成材料の比表面積は、約35mm/mgとすることができる。比表面積は、既知の幅及び厚みを有する材料を考慮して決定することができる。例えば、材料は、平均厚みが50μmであって変動が±2μmであるポリ乳酸とすることができる。材料が、同じく例えば200mm以上、250mm以下の間の既知の幅を有する場合は、比表面積及び密度は、計算することができる。
【0090】
筒状部材7及び後述するマウスピースライニングペーパー12には、両者を貫通する穿孔8が設けられている。穿孔8の存在により、吸引時に外気が冷却セグメント3内に導入される。これにより、たばこ含有セグメント2が加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾルが形成される。穿孔8の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5mm以上、1.5mm以下であってもよい。穿孔8の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔8は冷却セグメント3の周上に複数設けられていてもよい。
【0091】
穿孔8から導入される外気量は、使用者により吸引される気体全体の体積に対して85体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましい。前記外気量の割合が85体積%以下であることにより、外気によって希釈されることによる香味の低減を十分に抑制することができる。なお、これを別の言い方ではベンチレーション割合ともいう。ベンチレーション割合の範囲の下限は、冷却性の観点から、55体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましい。
【0092】
冷却セグメントがたばこ含有セグメントを通過する空気に与える抵抗は小さいことが好ましい。好ましくは、冷却セグメントは、非燃焼加熱型香味吸引器具の吸引抵抗に実質的に影響しない。吸込に対する抵抗(RTD)は、22℃及び101kPa(760トル)での17.5ml/秒の流量の試験の下で物体の全長に空気を押し通すのに必要な圧力である。RTDは、一般的にmmHOの単位で表され、ISO 6565:2011に従って測定される。従って、冷却セグメントの上流端から冷却セグメントの下流端までの圧力低下量は小さいことが好ましい。これを達成するために、縦方向の多孔率は50%よりも大きく、かつ冷却セグメントを通る空気流経路は、相対的に制約されないことが好ましい。冷却セグメントの縦方向多孔率は、冷却セグメントを形成する材料の断面積と冷却セグメントの内部断面積との比によって定めることができる。
【0093】
一部の実施形態において、生成したエアロゾルは、それが冷却セグメントを通って使用者に吸引される際に、温度が10℃以上低下することがある。別の一態様では温度が15℃以上、さらに別の一態様では20℃以上低下することがある。
【0094】
冷却セグメントは、金属箔、ポリマーシート、及び実質的に孔なしの紙又は厚紙を含む群から選択されたシート材料から構成されてもよい。一実施形態において、冷却セグメントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、酢酸セルロース、及びアルミニウム箔から構成される群から選択されたシート材料を含むことができる。冷却セグメントの構成材料は、生物分解性材料、例えば、孔なし紙、又はポリ乳酸のような生物分解性ポリマー、又はでんぷん系の共重合体などから作製されていてもよい。
【0095】
冷却セグメント内を通る空気流は、隣接するセグメント間で実質的に偏位しないことが好ましい。換言すれば、冷却セグメント内を通る空気流は、実質的な半径方向の偏位がなく、縦方向のセグメントに沿った流れであることが好ましい。一部の実施形態において、冷却セグメントは、縦方向延在チャネルを除いて、多孔率が低く又は実質的に孔を持たない材料から形成される。縦方向延在チャネルを定めるか又は形成するのに使用する材料、例えば、しわ付き又はギャザー付きシートは、多孔率が低く又は実質的に孔を持たない。
【0096】
上述したように、冷却セグメントは、しわ付けされた、ひだ付けされた、ギャザー加工された、又は折り畳まれた適切な構成材料のシートを含んでもよい。そのような要素の断面プロフィールは、ランダムに向いたチャネルを示す場合がある。冷却セグメントは、他の手段によって形成することができる。例えば、冷却セグメントは、縦方向延在チューブの束から形成することができる。冷却セグメントは、適切な材料の押出し、成形、積層化、射出、又は細断によって形成することができる。
【0097】
冷却セグメントは、例えば、ひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれたシート材料を巻紙で巻装して形成することができる。一部の実施形態において、冷却セグメントは、ロッド形状にギャザー付けされ、かつラッパー、例えば、濾紙の巻紙によって結び付けられたしわ付き材料のシートを含むことができる。
【0098】
冷却セグメントは、その軸方向の長さが例えば7mm以上、28mm以下のロッド形状に形成することができる。例えば、冷却セグメントの軸方向の長さは18mmとすることができる。
【0099】
一部の実施形態において、冷却セグメントは、その軸方向断面形状として実質的に円形であり、直径が5mm以上、10mm以下とすることができる。例えば、冷却セグメントの直径は、約7mmとすることができる。
【0100】
(センターホールセグメント)
センターホールセグメントは1つまたは複数の中空部を有する充填層と、該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻紙)とで構成される。例えば、図1に示されるように、センターホールセグメント4は、中空部を有する第二の充填層9と、第二の充填層9を覆う第二のインナープラグラッパー10とで構成される。センターホールセグメント4は、マウスピースセグメント6の強度を高める機能を有する。第二の充填層9は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース質量に対して、6質量%以上、20質量%以下添加されて硬化された内径φ5.0mm以上、φ1.0mm以下のロッドとすることができる。第二の充填層9は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、第二の充填層9内はほとんど流れない。センターホールセグメント4内部の第二の充填層9が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。なお、センターホールセグメント4が第二のインナープラグラッパー10を持たず、熱成型によってその形が保たれていてもよい。
【0101】
(フィルターセグメント)
フィルターセグメントの構成は特に限定されないが、単数または複数の充填層から構成されてよい。充填層の外側は一枚または複数枚の巻紙で巻装されてよい。フィルターセグメントのセグメント当たりの通気抵抗は、フィルターセグメントに充填される充填物の量、材料等により適宜変更することができる。例えば、充填物が酢酸セルロース繊維である場合、フィルターセグメントに充填される酢酸セルロース繊維の量を増加させれば、通気抵抗を増加させることができる。充填物が酢酸セルロース繊維である場合、酢酸セルロース繊維の充填密度は0.13~0.18g/cmであることができる。なお、通気抵抗は通気抵抗測定器(商品名:SODIMAX、SODIM製)により測定される値である。
【0102】
フィルターセグメントの周の長さは特に限定されないが、16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。フィルターセグメントの軸方向の長さは4~10mmを選択可能であり、その通気抵抗が15~60mmHO/segとなるように選択される。フィルターセグメントの軸方向の長さは5~9mmが好ましく、6~8mmがより好ましい。フィルターセグメントの断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等であることができる。また、フィルターセグメントには香料を含んだ破壊性カプセル、香料ビーズ、香料を直接添加していてもよい。
【0103】
図1に示されるように、センターホールセグメント4と、フィルターセグメント5とはアウタープラグラッパー(外側巻紙)11で接続できる。アウタープラグラッパー11は、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこ含有セグメント2と、冷却セグメント3と、接続済みのセンターホールセグメント4及びフィルターセグメント5とは、マウスピースライニングペーパー12により接続できる。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー12の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つのセグメントを入れて巻くことで接続することができる。なお、これらのセグメントは複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。
【0104】
[非燃焼加熱型香味吸引システム]
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具と、該非燃焼加熱型香味吸引器具のたばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、を備えることができる。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具及び前記加熱装置以外に、他の構成を有していてもよい。
【0105】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例を図2に示す。図2に示される非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具1と、非燃焼加熱型香味吸引器具1のたばこ含有セグメントを外側から加熱する加熱装置13とを備える。
【0106】
図2(a)は非燃焼加熱型香味吸引器具1を加熱装置13に挿入する前の状態を示し、図2(b)は非燃焼加熱型香味吸引器具1を加熱装置13に挿入して加熱する状態を示す。図2に示される加熱装置13は、ボディ14と、ヒーター15と、金属管16と、電池ユニット17と、制御ユニット18とを備える。ボディ14は筒状の凹部19を有し、凹部19の内側側面であって、凹部19に挿入される非燃焼加熱型香味吸引器具1のたばこ含有セグメントと対応する位置に、ヒーター15及び金属管16が配置されている。ヒーター15は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット18からの指示により電池ユニット17より電力が供給され、ヒーター15の加熱が行われる。ヒーター15から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管16を通じて非燃焼加熱型香味吸引器具1のたばこ含有セグメントへ伝えられる。
【0107】
図2(b)においては、模式的に図示しているため、非燃焼加熱型香味吸引器具1の外周と金属管16の内周との間に隙間があるが、実際は、熱を効率的に伝達する目的で非燃焼加熱型香味吸引器具1の外周と金属管16の内周との間に隙間は無い方が望ましい。なお、加熱装置13は非燃焼加熱型香味吸引器具1のたばこ含有セグメントを外側から加熱するが、内側から加熱するものであってもよい。
【0108】
加熱装置による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150℃以上400℃以下であることがより好ましく、200℃以上350℃以下であることがさらに好ましい。なお、加熱温度とは加熱装置のヒーターの温度を示す。
【0109】
[非燃焼加熱式たばこ製品]
本実施形態に係る非燃焼加熱式たばこ製品は、電気加熱式デバイスと、前記電気加熱式デバイスと共に用いられる非燃焼加熱式たばこスティックと、を備える。前記非燃焼加熱式たばこスティックは、本実施形態に係るたばこ組成物を含むたばこ充填物と当該たばこ充填物を巻装する巻紙とを有するたばこロッド部と、前記たばこロッド部と共にチップペーパーによって巻装されることによって前記たばこロッド部と同軸に連結されたマウスピース部と、前記マウスピース部に設けられた通気孔と、を備える。前記電気加熱式デバイスは、前記非燃焼加熱式たばこスティックを挿入可能な加熱チャンバを内部に形成するように規定された中空管ヒーターを有する。前記中空管ヒーターは、前記非燃焼加熱式たばこスティックの挿入時に、前記たばこロッド部を外周側から圧縮するための圧縮筒部と、前記圧縮筒部の少なくとも一部によって形成され、前記たばこロッド部を外周側から加熱するための加熱壁部と、を有する。前記たばこロッド部の横断面積は、前記圧縮筒部の内空横断面積に比べて相対的に大きく、前記圧縮筒部に挿入された前記たばこロッド部が前記圧縮筒部の内壁面によって圧縮されるように規定されている。
【0110】
一例として、本実施形態に係る電気加熱式デバイスの加熱チャンバ60に、たばこスティック100を規定位置まで挿入した状態を図3に示す。また、図3に示される中空管ヒーター21のB-B位置における横断面(B-B横断面)を図4に示す。図4において、たばこスティック100の原形時における横断面方向の外形(輪郭)を符号L2にて示す。
【0111】
図3に示されるように、中空管ヒーター21における圧縮筒部63における上端から台座部73における位置決め用底面731に至るまでの圧縮筒部63の軸方向長さは、たばこロッド部110の長さ寸法よりも大きい。したがって、中空管ヒーター21内における加熱チャンバ60の規定位置まで挿入されたたばこスティック100は、たばこロッド部110全体とマウスピース部120の一部が圧縮筒部63に挿入される。これにより、たばこロッド部110全体とマウスピース部120の一部が、一対の挟持壁部631、631における内壁面631A、631A間に挟み込まれることによって、これらが外周側から圧縮されることとなる。
【0112】
そして、使用者によって電気加熱式デバイスの操作ボタンが所定のオン操作がなされると、制御部は電源から中空管ヒーター21へと電力供給を開始させ、たばこスティック100におけるたばこロッド部110を加熱する加熱制御が開始される。加熱制御が開始されると、中空管ヒーター21における圧縮筒部63の加熱壁部RHに設置されたヒーター素子23が通電されることで加熱壁部RHが発熱する。これにより、たばこスティック100のたばこロッド部110に含まれるたばこ充填物111を燃焼させることなく加熱し、エアロゾル発生剤とたばこ香味成分とを含む蒸気を生成することができる。
【0113】
本実施形態に係る中空管ヒーター21の圧縮筒部63は、その軸方向における全領域が加熱壁部RHとして形成されている。そのため、中空管ヒーター21の作動時においては、圧縮筒部63(加熱壁部RH)によってたばこロッド部110を圧縮した状態で当該たばこロッド部110を加熱することができる。このように、たばこロッド部110を外周側から圧縮加熱することで、加熱壁部RH(ヒーター素子23)の発熱を効率的にたばこロッド部110のたばこ充填物111に伝達することができる。その結果、たばこロッド部110のたばこ充填物111が効率的に加熱されることで、エアロゾル及び香味成分のデリバリー量を増やすことができる。
【実施例0114】
以下、本実施形態の具体例について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0115】
[実施例1]
(1)たばこシートの製造
熟成済葉たばこ(ラミナ:66質量部、中骨:8質量部)、セルロースパルプ11質量部、およびグリセリン15質量部を用いて、前記抄造法によりたばこシートを製造した。該たばこシートのエアロゾル発生剤(グリセリン)の含有量は15.0質量%であった。該たばこシートの還元糖の含有量は4.0質量%であった。該たばこシートのニコチンの含有量は1.94質量%であった。該たばこシートのネオフィタジエンの含有量は0.037質量%であった。該たばこシートのセンブラトリエンジオール(CBT)の含有量は0.031質量%であった。該たばこシートの密度は0.48g/cmであった。なお、各成分の含有量及び密度は前述した方法により測定した。
【0116】
(2)葉たばこの製造
葉たばことして、黄色種(黄色種A:20質量部、黄色種B:20質量部、黄色種C:5質量部、黄色種D:40質量部、)、オリエント種5質量部、及びバーレー種10質量部を混合した葉たばこを用いた。該葉たばこにエアロゾル発生剤としてのグリセリンをその含有量が7.5質量%になるように添加した。該葉たばこの還元糖の含有量は9.0質量%であった。該葉たばこのニコチンの含有量は2.64質量%であった。該葉たばこのネオフィタジエンの含有量は0.160質量%であった。該葉たばこのセンブラトリエンジオール(CBT)の含有量は0.158質量%であった。なお、各成分の含有量は前述した方法により測定した。
【0117】
(3)たばこ組成物の調製
前記たばこシートと前記葉たばこをそれぞれ幅0.8mmに裁刻し、たばこシートと葉たばこの質量割合が、たばこシート:葉たばこ=80:20となるように両者を混合することで、たばこ組成物を調製した。
【0118】
(4)たばこ含有セグメントの製造
前記たばこ組成物を、前記たばこ組成物が内側になるように巻紙によって巻装することで、たばこ含有セグメントを作製した。該たばこ含有セグメントのたばこ充填物におけるたばこ組成物の充填密度は0.34g/cmであった。
【0119】
(5)非燃焼加熱型香味吸引器具の製造
前記たばこ含有セグメントを用いて、前述した図1に示される非燃焼加熱型香味吸引器具を製造した。
【0120】
[実施例2~5、比較例1~6]
たばこ組成物の調製において、たばこシートと葉たばこの質量割合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にたばこ組成物を調製した。また、該たばこ組成物を用いて、実施例1と同様にたばこ含有セグメント及び非燃焼加熱型香味吸引器具を製造した。
【0121】
表1に、各実施例、比較例において調製したたばこ組成物の、たばこシートと葉たばこの質量割合、膨嵩性、エアロゾル発生剤含有量、還元糖含有量、ニコチン含有量、ネオフィタジエン含有量、CBT含有量を示す。なお、膨嵩性及び各成分の含有量は前述した方法により測定した。
【0122】
【表1】
【0123】
[評価]
各実施例、比較例において製造した非燃焼加熱型香味吸引器具について、10人のパネラーにより評価した。評価は「香味の程度」、「香味の持続性」、「繊維臭」、及び「煙量及び持続性」の四項目について、全15回のパフを通した総合の評価として行った。各項目について、1(香味が弱い、香味の持続性が低い、繊維臭が多い、煙量が少なく持続性が低い)~5(香味が強い、香味の持続性が高い、繊維臭が少ない、煙量が多く持続性が高い)の評点で評価した。各項目において、評点が3以上であれば良好であり、評点が2以下であれば不良と判断した。結果を表2に示す。なお、表2は10人のパネラーの評点の平均値を示す。また、10人のパネラーは、濃度の異なる数種類のサンプルを用いて訓練が十分に行われており、「香味の程度」、「香味の持続性」、「繊維臭」、及び「煙量及び持続性」の評点並びに評価の閾値が等しく、パネラー間で統一化されていることが確認されている。
【0124】
【表2】
【0125】
表2に示されるように、実施例1~5では全ての評価項目において評点が3以上であったのに対し、比較例1~6では評点が1又は2の評価項目があった。したがって、本実施形態に係る実施例1~5のたばこ組成物を用いた非燃焼加熱型香味吸引器具は、比較例1~5のたばこ組成物を用いた非燃焼加熱型香味吸引器具と比較して、香味の程度と持続性、繊維臭、並びに煙量及び持続性の全てにおいて良好であることがわかった。
【0126】
[参考例]
上述の実施例および比較例の一部について、「ネオフィタジエン」、「センブラトリエンジオール(CBT)」、「還元糖」を変数として主成分分析を実施した。結果を表3に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
表3の主成分分析結果に示されるように、第一主成分の因子負荷量は全体の62.67%、第二主成分の因子負荷量は全体の91.51%となり、全体の約9割を説明出来ていることとなる。主成分負荷量によると、第一主成分はネオフィタジエンおよびセンブラトリエンジオール(CBT)との関係が高く、第二主成分は還元糖との関係が高い。また、主成分得点の散布図を図5に示す。図5に示される主成分得点の散布図によると、第一、第二、第四象限に葉たばこがプロットされ、第三象限にたばこシート、およびたばこシートと葉たばこを含むたばこ組成物がプロットされている。すなわち、たばこシートに葉たばこを混合することによって、たばこ内容成分を補填していることが分かる。本実施例ではたばこシートに葉たばこを混合することにより第一象限に近づいているが、葉たばこ同士の混合の割合を変えることによって、第二および第四象限に近づけることも可能である。ただし、前述のとおり、たばこシートは還元糖などの親水性素材、および、グリセリン、プロピレングリコール等の葉たばこに保持することが難しい成分等をより保持することができる。このため、葉たばことたばこシートをある一定の比率で混合することによって、使用時に使用者へ十分な香味を伴ったエアロゾルを供給できる。
【0129】
[実施例6~10]
実施例1と同様の方法により、たばこシート及び葉たばこを製造した。該たばこシートを、幅0.5mm、1.0mm、1.5mmにそれぞれ裁刻した。また、該葉たばこを幅0.8mmに裁刻した。表4に示される刻み幅を有するたばこシートと、葉たばこを、たばこシート:葉たばこ=60:40(質量割合)となるように混合することで、各実施例のたばこ組成物を調製した。該たばこ組成物を用いて実施例1と同様に非燃焼加熱型香味吸引器具を製造した。各実施例の非燃焼加熱型香味吸引器具について、香味の程度を実施例1と同様に評価した。パフは15回行い、1~5回目、6~10回目、11~15回目の3タームに分けて、各タームにおける香味の程度を評価した。結果を表4に示す。
【0130】
【表4】
【0131】
表4に示されるように、刻み幅の異なるたばこシートを混合することによって、熱伝導率の違いから、香味の程度を感じるパフのタイミングを変化させることができる。非燃焼加熱型香味吸引器具の加熱温度や製品の特長に応じて刻み幅やその組み合わせを変えることにより、さらに香味に変化をもたらすこともできる。また、実施例6~8と、実施例9及び10との比較より、たばこシートの刻み幅が1.0mm以下であることにより、たばこシート本来の香味の発現遅延を十分に抑制できる。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]たばこシートと、葉たばこと、を含むたばこ組成物であって、
前記たばこシートと前記葉たばこの質量割合が、たばこシート:葉たばこ=40~80:20~60であり、
たばこ組成物がエアロゾル発生剤を含む、たばこ組成物。
[2]前記たばこ組成物の膨嵩性が300~580cm/100gである、[1]に記載のたばこ組成物。
[3]前記たばこシートの還元糖含有量が1.5~25.0質量%である、[1]又は[2]に記載のたばこ組成物。
[4]前記葉たばこの還元糖含有量が0.5~25.0質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[5]前記たばこ組成物の還元糖含有量が0.8~25.0質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[6]前記たばこシートのエアロゾル発生剤含有量が5.0~20.0質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[7]前記葉たばこのエアロゾル発生剤含有量が2.0~15.0質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[8]前記たばこシートのニコチン含有量が0.5~5.0質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[9]前記葉たばこのニコチン含有量が0.5~5.0質量%である、[1]~[8]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[10]前記たばこ組成物のニコチン含有量が0.5~5.0質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[11]前記葉たばこのネオフィタジエン含有量が0.05質量%以上である、[1]~[10]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[12]前記たばこシートのネオフィタジエン含有量が0.01~0.10質量%である、[1]~[11]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[13]前記たばこ組成物のネオフィタジエン含有量が0.01質量%以上である、[1]~[12]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[14]前記葉たばこのセンブラトリエンジオール(CBT)含有量が0.01質量%以上である、[1]~[13]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[15]前記たばこシートのセンブラトリエンジオール(CBT)含有量が0.01~0.10質量%である、[1]~[14]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[16]前記たばこ組成物のセンブラトリエンジオール(CBT)含有量が0.01質量%以上である、[1]~[15]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[17]前記たばこシートの密度が0.40~0.60g/cmである、[1]~[16]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[18]前記たばこシートが密度の異なる二種以上のたばこシートを含む、[1]~[17]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[19]前記たばこシートが、密度が0.55g/cm未満の第一のたばこシートと、密度が0.55g/cm以上の第二のたばこシートとを含む、[18]に記載のたばこ組成物。
[20]前記たばこシートに含まれる、前記第一のたばこシートと前記第二のたばこシートの質量割合が、第一のたばこシート:第二のたばこシート=50~80:20~50である、[19]に記載のたばこ組成物。
[21]前記たばこシートが、抄造たばこシートとスラリーたばこシートを含み、
前記抄造たばこシートと前記スラリーたばこシートの質量割合が、抄造たばこシート:スラリーたばこシート=50~80:20~50である、[1]~[17]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[22]前記第二のたばこシート又は前記スラリーたばこシートのエアロゾル発生剤含有量が20.0質量%以下である、[19]~[21]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[23]0.3~2.0mmの範囲内で刻み幅が異なる二種以上の前記たばこシート、及び/又は、0.3~2.0mmの範囲内で刻み幅が異なる二種以上の前記葉たばこを含む、[1]~[22]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[24]前記たばこシートの刻み幅が0.3~1.0mmの範囲内である、[1]~[23]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[25]非燃焼加熱型香味吸引器具用のたばこ組成物である、[1]~[24]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[26]前記たばこシートと前記葉たばこの質量割合が、たばこシート:葉たばこ=(40以上70未満):(30を超えて60以下)である、[1]~[25]のいずれかに記載のたばこ組成物。
[27]筒状のラッパーと、該ラッパー内に[1]~[26]のいずれかに記載のたばこ組成物が充填されたたばこ充填物と、を含むたばこ含有セグメント。
[28]前記たばこ充填物における前記たばこ組成物の充填密度が0.25~0.45g/cmである、[27]に記載のたばこ含有セグメント。
[29][27]又は[28]に記載のたばこ含有セグメントを備える非燃焼加熱型香味吸引器具。
[30][29]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器具と、
前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、
を備える非燃焼加熱型香味吸引システム。
【符号の説明】
【0132】
1 非燃焼加熱型香味吸引器具
2 たばこ含有セグメント
3 冷却セグメント
4 センターホールセグメント
5 フィルターセグメント
6 マウスピースセグメント
7 筒状部材
8 穿孔
9 第二の充填層
10 第二のインナープラグラッパー
11 アウタープラグラッパー
12 マウスピースライニングペーパー
13 加熱装置
14 ボディ
15 ヒーター
16 金属管
17 電池ユニット
18 制御ユニット
19 凹部
図1
図2
図3
図4
図5