(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109952
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】レプチン受容体をアンタゴナイズする抗原結合性タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240806BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240806BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240806BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240806BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240806BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240806BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P11/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P1/04
A61P17/06
A61P9/12
A61P25/24
A61P1/16
A61P25/28
A61P17/00
A61P15/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P21/00
A61P29/00
A61P31/18
A61P37/04
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088870
(22)【出願日】2024-05-31
(62)【分割の表示】P 2023076083の分割
【原出願日】2017-11-08
(31)【優先権主張番号】62/419,062
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェスパー グロマダ
(72)【発明者】
【氏名】パナイオティス ステーヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ジュディス アルタレホス
(57)【要約】
【課題】レプチン抵抗性ならびに上昇した血清レプチンレベル、および/または過度のLEPRシグナル伝達に関連する他の状態を治療するための代替アプローチを提供する。
【解決手段】本発明は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を提供する。本発明の抗体はアンタゴニスト抗体であり、すなわち、LEPRへの本発明の抗LEPR抗体の結合は、細胞においてレプチン受容体シグナル伝達のブロックまたは下方調節を結果としてもたらす。したがって、様々な実施形態において、本発明のアンタゴニスト抗体は弱い部分アゴニスト活性を呈する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
レプチンは、主に脂肪組織により発現されるポリペプチドホルモンであり、代謝の調節、エネルギーバランスおよび摂食に関与する。レプチン活性は、レプチン受容体との相互作用、およびレプチン受容体を通じたシグナル伝達により媒介される。レプチン受容体(「LEPR」、「WSX」「OB受容体」、「OB-R」、および「CD295」としても公知)は、大きい(818アミノ酸)細胞外ドメインを有するクラスIサイトカイン受容体ファミリーの1回膜貫通型受容体である。レプチン、Ob-Rレプチン受容体または両方の上昇した発現は、無食欲または他の精神医学的摂食障害、慢性腎臓疾患悪液質、他の悪液質、例えば、鬱血性心不全悪液質、肺悪液質、放射線悪液質、およびがん悪液質、自己免疫障害、例えば、炎症性腸疾患、ループスエリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬、心臓血管疾患、高血圧、鬱病、非アルコール性脂肪肝疾患、神経変性障害、鬱病、がん、例えば、肝細胞癌、黒色腫および乳がんが挙げられるがこれらに限定されない多数の障害に寄与し得る。
【背景技術】
【0002】
高いレプチンシグナル伝達に対処するための提案される治療アプローチとしては、レプチン受容体ペプチドアンタゴニストおよびアンタゴニスト変異体、例えば、可溶性レプチン受容体バリアント、競合的LEPRアンタゴニスト、例えば抗体9F8(Fazeliら(2006年)J Immunological Methods 312巻、190~200頁)、またはレプチン受容体を標的化するナノボディ(McMurphyら、PLOS One(2014年)9巻(2号):e89895)、フィブロネクチンIIIドメイン、食欲誘発物質(例えば、グレリンおよびNPY)の使用、レプチンの下流メディエーター(例えば、メラノコルチン受容体4)のブロックおよび/またはライフスタイルの変更が挙げられる。しかしながら、そのようなアプローチは一般に有効性が限られることが示されている。したがって、レプチン抵抗性ならびに上昇した血清レプチンレベル、および/または過度のLEPRシグナル伝達に関連する他の状態を治療するための代替アプローチに対する必要性が当該技術分野において存在する。
配列表
配列表の正式なコピーを、ファイル名:2017_11_08_10271WO01_SEQ_LIST_ST25.TXT、作成日:2017年11月8日、サイズ:約87.4キロバイトのASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に本明細書と同時に提出する。このASCII形式の文書中に含まれる配列表は本明細書の一部であり、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Fazeliら(2006年)J Immunological Methods 312巻、190~200頁
【非特許文献2】McMurphyら、PLOS One(2014年)9巻(2号):e89895
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の簡単な要旨
本発明は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を提供する。本発明の抗体はアンタゴニスト抗体であり、すなわち、LEPRへの本発明の抗LEPR抗体の結合は、細胞においてレプチン受容体シグナル伝達のブロックまたは下方調節を結果としてもたらす。したがって、様々な実施形態において、本発明のアンタゴニスト抗体は弱い部分アゴニスト活性を呈する。代わりに、本発明の抗体は、例えば、対象においてレプチンの生物学的活性を下方調節するために有用である。したがって、本発明の抗体および抗原結合性断片は、上昇したレプチンシグナル伝達に関連する疾患および障害の治療処置において有用である。
【0005】
本発明の抗体は、全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)であってよく、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)2またはscFv断片)のみを含んでもよく、機能性に影響するように、例えば、残留エフェクター機能を取り除くように、修飾されていてもよい(Reddyら、2000年、J. Immunol. 164巻:1925~1933頁)。
【0006】
例示的な本発明のLEPRアンタゴニスト抗体は本明細書中の表1および表2に列記される。表1は、例示的なLEPRアンタゴニスト抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列特定番号を記載する。表2は、例示的なLEPRアンタゴニスト抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2 HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3の核酸配列特定番号を記載する。
【0007】
本発明は、表1に列記されるHCVRのアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0008】
本発明はまた、表1に列記されるLCVRのアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0009】
本発明はまた、表1に列記されるLCVRのアミノ酸配列のいずれかと対になった表1に列記されるHCVRのアミノ酸配列のいずれかを含むHCVRおよびLCVRのアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表1に列記される例示的な抗LEPR抗体のいずれか内に含有されるHCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対は、配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/10、66/10、および74/82からなる群から選択される。
【0010】
本発明はまた、表1に列記される重鎖CDR1(HCDR1)のアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCDR1を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0011】
本発明はまた、表1に列記される重鎖CDR2(HCDR2)のアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCDR2を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0012】
本発明はまた、表1に列記される重鎖CDR3(HCDR3)のアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0013】
本発明はまた、表1に列記される軽鎖CDR1(LCDR1)のアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCDR1を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0014】
本発明はまた、表1に列記される軽鎖CDR2(LCDR2)のアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCDR2を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0015】
本発明はまた、表1に列記される軽鎖CDR3(LCDR3)のアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0016】
本発明はまた、表1に列記されるLCDR3のアミノ酸配列のいずれかと対になった表1に列記されるHCDR3のアミノ酸配列のいずれかを含むHCDR3およびLCDR3のアミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表1に列記される例示的な抗LEPR抗体のいずれか内に含有されるHCDR3/LCDR3のアミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3のアミノ酸配列対は、配列番号8/16、24/16、32/16、40/16、48/16、56/16、64/16、72/16、80/16および80/88からなる群から選択される。
【0017】
本発明はまた、表1に列記される例示的な抗LEPR抗体のいずれか内に含有される6つのCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のセットを含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットは、配列番号4、6、8、12、14、16;20、22、24、12、14、16;28、30、32、12、14、16;36、38、40、12、14、16;52、54、56、12、14、16;60、62、64、12、14、16;68、70、72、12、14、16;および76、78、80、84、86、88からなる群から選択される。
【0018】
関連する実施形態では、本発明は、表1に列記される例示的な抗LEPR抗体のいずれかにより定義されるHCVR/LCVRのアミノ酸配列対内に含有される6つのCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のセットを含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。例えば、本発明は、配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/10、66/10、および74/82からなる群から選択されるHCVR/LCVRのアミノ酸配列対内に含有されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットを含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む。HCVRおよびLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定する方法および技術は当該技術分野において周知であり、それを使用して、本明細書に開示される特定のHCVRおよび/またはLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定することができる。CDRの境界を同定するために使用できる例示的な規則としては、例えば、Kabatの定義、Chothiaの定義、およびAbMの定義が挙げられる。一般的に、Kabatの定義は配列の可変性に基づき、Chothiaの定義は構造的ループ領域の位置に基づき、AbMの定義はKabatのアプローチとChothiaのアプローチとの妥協である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年);Al-Lazikaniら、J. Mol. Biol. 273巻:927~948頁(1997年);およびMartinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:9268~9272頁(1989年)を参照。抗体内のCDRの配列を同定するための公的データベースも利用可能である。
【0019】
本発明はまた、抗LEPR抗体またはその部分をコードする核酸分子を提供する。例えば、本発明は、表1に列記されるHCVRのアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるHCVRの核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0020】
本発明はまた、表1に列記されるLCVRのアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるLCVRの核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0021】
本発明はまた、表1に列記されるHCDR1のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるHCDR1の核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0022】
本発明はまた、表1に列記されるHCDR2のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるHCDR2の核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本発明はまた、表1に列記されるHCDR3のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるHCDR3の核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0024】
本発明はまた、表1に列記されるLCDR1のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるLCDR1の核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0025】
本発明はまた、表1に列記されるLCDR2のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるLCDR2の核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0026】
本発明はまた、表1に列記されるLCDR3のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるLCDR3の核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0027】
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子であって、HCVRが、3つのCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3)のセットを含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列のセットが、表1に列記される例示的な抗LEPR抗体のいずれかにより定義される、核酸分子を提供する。
【0028】
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子であって、LCVRが、3つのCDR(すなわち、LCDR1、LCDR2、LCDR3)のセットを含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列のセットが、表1に列記される例示的な抗LEPR抗体のいずれかにより定義される、核酸分子を提供する。
【0029】
本発明はまた、HCVRおよびLCVRの両方をコードする核酸分子であって、HCVRが、表1に列記されるHCVRのアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつ、LCVRが、表1に列記されるLCVRのアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む、核酸分子を提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列記されるHCVRの核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、および表2に列記されるLCVRの核酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。本発明のこの態様によるある特定の実施形態では、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、HCVRおよびLCVRの両方は、表1に列記される同じ抗LEPR抗体に由来する。
【0030】
本発明はまた、抗LEPR抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現できる組換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上記の核酸分子、すなわち、表1に記載されるHCVR、LCVR、および/またはCDRの配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。そのようなベクターが導入された宿主細胞の他に、抗体または抗体断片の産生を可能とする条件下で宿主細胞を培養すること、およびそのようにして産生された抗体および抗体断片を回収することにより抗体またはその部分を製造する方法も本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
別の態様では、本発明は、LEPRに特異的に結合する組換えヒト抗体またはその断片および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、抗LEPR抗体と第2の治療剤との組合せである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療剤は、抗LEPR抗体と有利に組み合わせられる任意の剤である。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗LEPR抗体または抗体の抗原結合部分を使用してLEPRシグナル伝達を下方調節しまたは無効化させるための治療方法を提供する。本発明のこの態様による治療方法は、本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片を含む治療有効量の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。治療される障害は、LEPRシグナル伝達を下方調節し、もしくは無効化させることにより、またはレプチンの活性をブロックすることにより改善され、良くなり、阻害されまたは予防される任意の疾患または状態である。
【0033】
他の実施形態は以下の詳細な説明の検討から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、30mg/kgの抗LEPR抗体H4H17322P2、H4H18457P2、もしくはH4H18464、または同位体対照抗体で処置したマウスの摂食量の変化のパーセントを示す。
【0035】
【
図2】
図2は、30mg/kgの抗LEPR抗体H4H17322P2、H4H18457P2、もしくはH4H18464、または同位体対照抗体で処置したマウスの体重の変化の平均パーセントを示す。
【0036】
【
図3】
図3は、30mg/kgの抗LEPR抗体H4H17322P2、H4H18457P2、もしくはH4H18464、または同位体対照抗体で処置したマウスの平均脂肪量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明を説明する前に、本発明は記載される特定の方法および実験条件に限定されず、そのような方法および条件を変更できることが理解されるべきである。本明細書で使用される学術用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定的であることは意図されないことも理解されるべきであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0038】
別段の定義がなければ、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、特定の記載された数値に関して使用された場合の「約」という用語は、その値が記載した値から1%以下で変化してもよいことを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99および101ならびにこれらの間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0039】
本明細書に記載される方法および材料に類似のまたは同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料をこれより説明する。本明細書において言及される全ての特許、特許出願および非特許文献は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
定義
本明細書で使用される場合、「レプチン受容体」、「LEPR」などの表現は、配列番号89(UniProtKB/Swiss-Prot受託番号P48357も参照)に示されるアミノ酸配列を含むヒトレプチン受容体を指す。科学文献において使用されるLEPRの代替的な名称としては、「OB受容体」、「OB-R」および「CD295」が挙げられる。LEPRはまた、「WSX」とも称される(例えば、米国特許第7,524,937号を参照)。「LEPR」という表現は、単量体および多量体(例えば、二量体)の両方のLEPR分子を含む。本明細書で使用される場合、「単量体ヒトLEPR」という表現は、いかなる多量体化ドメインも含有または保有せず、別のLEPR分子への直接的な物理的接続なしで単一のLEPR分子として通常条件下で存在するLEPRタンパク質またはその部分を意味する。例示的な単量体LEPR分子は、配列番号90のアミノ酸配列を含む本明細書において「hLEPR.mmh」と称される分子である(例えば、本明細書の実施例3を参照)。本明細書で使用される場合、「二量体ヒトLEPR」という表現は、リンカー、共有結合、非共有結合、または抗体Fcドメインなどの多量体化ドメインを通じて互いに接続された2つのLEPR分子を含む構築物を意味する。例示的な二量体LEPR分子は、配列番号91のアミノ酸配列を含む本明細書において「hLEPR.mFc」と称される分子(例えば、本明細書の実施例3を参照)、または配列番号92のアミノ酸配列を含む本明細書において「hLEPR.hFc」と称される分子である。本明細書で使用される場合、「抗LEPR抗体」、「LEPRに特異的に結合する抗体」、「LEPR特異的結合タンパク質」などの表現は、そうでないことを具体的に指し示さない限り、全長ヒトLEPR、単量体ヒトLEPR、二量体ヒトLEPR、またはLEPR細胞外ドメインを含むもしくはそれからなる他の構築物に結合する分子を指す。
【0041】
本明細書におけるタンパク質、ポリペプチドおよびタンパク質断片への全ての言及は、非ヒト種からのものであることが明示的に特定されない限り、各々のタンパク質、ポリペプチドまたはタンパク質断片のヒトバージョンを指すことが意図される。したがって、「LEPR」という表現は、非ヒト種、例えば、「マウスLEPR」、「サルLEPR」などからのものであることが明示的に特定されない限り、ヒトLEPRを意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「細胞表面発現LEPR」という表現は、LEPRタンパク質の少なくとも一部分が細胞膜の細胞外側に露出され、かつ抗体の抗原結合部分に接近可能であるようにin vitroまたはin vivoで細胞の表面上に発現される1つまたは複数のLEPRタンパク質、またはその細胞外ドメインを意味する。「細胞表面発現LEPR」は、通常(例えば、天然または野生型状態で)LEPRタンパク質を発現する細胞の表面上に発現されるLEPRタンパク質を含むまたはそれからなることができる。あるいは、「細胞表面発現LEPR」は、通常その表面上にヒトLEPRを発現しないが、その表面上にLEPRを発現するように人工的に操作されている細胞の表面上に発現されるLEPRタンパク質を含むまたはそれからなることができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抗LEPR抗体」または「ヒトレプチン受容体に結合する抗体」などの表現は、単一の特異性を有する一価抗体の他に、LEPRに結合する第1のアームおよび第2の(標的)抗原に結合する第2のアームを含み、抗LEPRアームが本明細書の表1に記載されるHCVR/LCVRまたはCDRの配列のいずれかを含む二重特異的抗体の両方を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の抗原(例えば、LEPR)に特異的に結合しまたは相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互接続された4つのポリペプチド鎖、すなわち、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子の他に、その多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわち、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分割することができる。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRから構成され、これらはアミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並べられる。本発明の異なる実施形態では、抗LEPR抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖細胞系列配列と同一であってよく、または天然にもしくは人工的に改変されてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれより多くのCDRの対比解析に基づいて定義することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、完全抗体分子の抗原結合性断片も含む。本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合性断片」などの用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在する、酵素により得られ得る、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、任意の好適な標準技術、例えば、タンパク質消化分解または抗体可変ドメインおよび任意選択で定常ドメインをコードするDNAのマニピュレーションおよび発現を伴う組換え遺伝子操作技術を使用して、完全抗体分子に由来してよい。そのようなDNAは公知であり、かつ/または、例えば、商業的な供給元、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーなど)から容易に入手可能であり、または合成することができる。DNAは、シークエンシングすることができ、および、化学的にまたは分子生物学技術を使用して、例えば、1つまたは複数の可変および/または定常ドメインを好適な構成に並べ、またはコドンを導入し、システイン残基を作出し、アミノ酸を改変し、付加しもしくは欠失させることなどによりマニピュレーションを行うことができる。
【0046】
抗原結合性断片の非限定的な例としては以下が挙げられる:(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域(例えば、単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位。他の操作された分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインもまた本明細書で使用される「抗原結合性断片」という表現に包含される。
【0047】
抗体の抗原結合性断片は、典型的に、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意の大きさまたはアミノ酸組成であってよく、通常、1つまたは複数のフレームワーク配列に隣接するまたはそれとインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインが付随するVHドメインを有する抗原結合性断片において、VHおよびVLドメインは、互いに対して任意の好適な並びで位置してよい。例えば、可変領域は二量体であってよく、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有してよい。あるいは、抗体の抗原結合性断片は、単量体VHまたはVLドメインを含有してもよい。
【0048】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合により連結した少なくとも1つの可変ドメインを含有してよい。本発明の抗体の抗原結合性断片内に見出され得る可変および定常ドメインの非限定的な、例示的な構成としては以下が挙げられる:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CL。上記に列記される例示的な構成のいずれかなどの可変および定常ドメインの任意の構成において、可変および定常ドメインは互いに直接的に連結していてもよいし、または全体的もしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域により連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子中の隣接する可変および/または定常ドメインの間の柔軟または半柔軟な連結を結果としてもたらす少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれより多く)のアミノ酸からなるものであってよい。さらに、本発明の抗体の抗原結合性断片は、互いとのおよび/もしくは1つまたは複数の単量体VHもしくはVLドメインとの非共有結合による会合(例えば、ジスルフィド結合による)において上記に列記される可変および定常ドメインの構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでもよい。
【0049】
完全抗体分子と同様、抗原結合性断片は、単一特異的または多重特異的(例えば、二重特異的)であってよい。抗体の多重特異的な抗原結合性断片は、典型的に、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは別々の抗原にまたは同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異的抗体フォーマットなどの任意の多重特異的抗体フォーマットは、当該技術分野において利用可能なルーチン技術を使用して本発明の抗体の抗原結合性断片の文脈において使用するために適合させることができる。
【0050】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の抗LEPR抗体はヒト抗体である。本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3において、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムなもしくは部位特異的な変異生成によりまたはin vivoでの体細胞変異により導入された変異)を含んでよい。しかしながら、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDRの配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことは意図されない。
【0051】
一部の実施形態では、本発明の抗体は組換えヒト抗体であってよい。本明細書で使用される場合、「組換えヒト抗体」という用語は、組換え手段により調製され、発現され、作出されまたは単離された全てのヒト抗体を含むことが意図され、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(以下にさらに説明する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下にさらに説明する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックな動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992年)Nucl. Acids Res. 20巻:6287~6295頁を参照)または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う任意の他の手段により調製され、発現され、作出されもしくは単離された抗体などである。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、in vitroでの変異生成(または、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物が使用される場合、in vivoでの体細胞変異生成)に供され、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVHおよびVL配列に由来し、それに関するが、in
vivoでヒト抗体の生殖細胞系列レパートリー内に天然に存在しなくてもよい配列である。
【0052】
本発明は、ヒンジ、CH2またはCH3領域中に1つまたは複数の変異を有する抗体を包含し、該変異は、例えば、製造時に所望の抗体形態の収率を向上させるために望ましいものであり得る。
【0053】
本発明の抗体は、単離された抗体であってよい。本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、同定され、かつその天然の環境の少なくとも1つの成分から分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離または除去された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内でin situの抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離ステップに供された抗体である。ある特定の実施形態によれば、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まないものであってよい。
【0054】
本発明は、抗体が由来する対応する生殖細胞系列配列と比較して重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域中に1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含む本明細書に開示される抗LEPR抗体のバリアントを含む。そのような変異は、例えば、公的な抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系列配列に対して本明細書に開示されるアミノ酸配列を比較することにより容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合性断片であって、1つまたは複数のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸が、抗体が由来する生殖細胞系列配列の対応する残基に、または別のヒト生殖細胞系列配列の対応する残基に、または対応する生殖細胞系列の残基の保存的アミノ酸置換に変異した、抗体およびその抗原結合性断片を含む(そのような配列の変更を本明細書において「生殖細胞系列変異」と総称する)。当業者は、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域の配列から開始して、1つまたは複数の個々の生殖細胞系列変異またはこれらの組合せを含む多数の抗体および抗原結合性断片を容易に製造することができる。ある特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDRの残基の全ては、抗体が由来した元々の生殖細胞系列配列において見出される残基に戻るように変異している。他の実施形態では、ある特定の残基のみが元々の生殖細胞系列配列に戻るように変異しており、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内もしくはFR4の最後の8アミノ酸内にのみ変異した残基が見出され、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内にのみ変異した残基が見出される。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDRの残基の1つまたは複数は、異なる生殖細胞系列配列(すなわち、抗体が元々由来した生殖細胞系列配列とは異なる生殖細胞系列配列)の対応する残基に変異している。さらには、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内の2つまたはそれより多くの生殖細胞系列変異の任意の組合せを含有してよく、例えば、ある特定の個々の残基が、特定の生殖細胞系列配列の対応する残基に変異していると同時に、元々の生殖細胞系列配列とは異なるある特定の他の残基が維持されているか、または異なる生殖細胞系列配列の対応する残基に変異している。1つまたは複数の生殖細胞系列変異を含有する抗体および抗原結合性断片が得られたら、それを1つまたは複数の所望の特性、例えば、結合特異性の向上、結合親和性の増加、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の向上または増進(それぞれの場合に応じて)、免疫原性の低減などについて容易に試験することができる。この一般的方法で得られた抗体および抗原結合性断片は本発明に包含される。
【0055】
本発明はまた、1つまたは複数の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗LEPR抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に記載されるHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10またはそれ未満、8またはそれ未満、6またはそれ未満、4またはそれ未満などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列を有する抗LEPR抗体を含む。ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書の表1に記載される配列に対してバリアントのHCVR、LCVRおよび/またはCDRのアミノ酸配列(例えば、保存的アミノ酸置換を含む)を含む抗LEPR抗体であって、そのようなバリアント抗体は、それにもかかわらず、本明細書に開示される例示的な抗LEPR抗体の1つまたは複数の機能および/または特性を呈する、抗LEPR抗体を提供する。
【0056】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域中の特定の抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は1つより多くのエピトープを有してよい。したがって、異なる抗体は抗原上の異なるエリアに結合してよく、また異なる生物学的効果を有してよい。エピトープは、コンホメーショナルまたはリニアのいずれであってもよい。コンホメーショナルエピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に並置されたアミノ酸により産生される。リニアエピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基により産生されるエピトープである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原上にサッカリド、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含んでよい。
【0057】
本発明は、本明細書に開示される例示的な抗LEPR抗体のいずれかに見出される1つまたは複数の可変ドメインまたはCDRのアミノ酸配列に実質的に類似または実質的に同一のアミノ酸配列を含む抗LEPR抗体およびその抗原結合性断片を含む。
【0058】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップ重み付けを使用するGAPまたはBESTFITなどのプログラムにより最適にアライメントされた時に、少なくとも95%の配列同一性、よりいっそう好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基により置換されるアミノ酸置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つまたはそれより多くのアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なる場合、配列同一性パーセントまたは類似の度合いは、置換の保存的性質による訂正のために上向きに調整されてよい。この調整を行うための手段は当業者に周知である。例えば、Pearson(1994年)Methods Mol. Biol. 24巻:307~331頁(参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例としては以下が挙げられる:(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;(2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、および(7)硫黄含有側鎖はシステインおよびメチオニン。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置き換えは、Gonnetら(1992年)Science 256巻:1443~1445頁(参照することにより本明細書に組み込まれる)に開示されるPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「中等度に保存的」な置き換えは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負でない値を有する任意の変化である。
【0059】
配列同一性とも称されるポリペプチドの配列類似度は、典型的に、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換などの、様々な置換、欠失および他の修飾に割り当てられた類似性の尺度を使用して類似の配列をマッチさせる。例えば、GCGソフトウェアは、デフォルトのパラメーターと共に使用して、密接に関連するポリペプチド間の、例えば、異なる生物の種からの相同的ポリペプチドまたは野生型タンパク質とそのムテインとの間などの、配列相同性または配列同一性を決定できるGapおよびBestfitなどのプログラムを含有する。例えば、GCGバージョン6.1を参照。ポリペプチド配列はまた、デフォルトまたは推奨されるパラメーターを使用して、GCGバージョン6.1中のプログラムであるFASTAを使用して比較することができる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリ配列と検索配列との間で最もよく重なり合う領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する(Pearson(2000年)、上掲)。異なる生物からの多数の配列を含有するデータベースに対して本発明の配列を比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトのパラメーターを使用するコンピュータープログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschulら(1990年)J. Mol. Biol. 215巻:403~410頁およびAltschulら(1997年)Nucleic Acids Res. 25巻:3389~402頁(それぞれは参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照。
【0060】
Fcバリアントを含む抗LEPR抗体
本発明のある特定の実施形態によれば、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体への抗体結合を増進または減少させる1つまたは複数の変異を含むFcドメインを含む、抗LEPR抗体が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのCH2またはCH3領域中に変異を含む抗LEPR抗体であって、変異が、酸性環境中(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲に及ぶエンドソーム中)でFcRnへのFcドメインの親和性を増加させる、抗LEPR抗体を含む。そのような変異は、動物に投与された時に抗体の血清半減期の増加を結果としてもたらし得る。そのようなFc改変の非限定的な例としては、例えば、位置250(例えば、EまたはQ);250および428(例えば、LまたはF);252(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254(例えば、SまたはT)、および256(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での改変;または位置428および/もしくは433(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)および/もしくは434(例えば、H/FまたはY)での改変;または位置250および/もしくは428での改変;または位置307もしくは308(例えば、308F、V308F)、および434での改変が挙げられる。一実施形態では、改変は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)の改変;428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)の改変;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の改変;252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)の改変;250Qおよび428Lの改変(例えば、T250QおよびM428L);ならびに307および/または308の改変(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0061】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群から選択される変異の1つまたは複数の対または群を含むFcドメインを含む抗LEPR抗体を含む。以上のFcドメインの変異および本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組合せは本発明の範囲内にあると想定される。
【0062】
本発明の抗LEPR抗体は、低減されたエフェクター機能を有する改変されたFcドメインを含んでよい。本明細書で使用される場合、「低減されたエフェクター機能を有する改変されたFcドメイン」は、改変されたFcを含む分子が、Fc部分の野生型の、天然に存在するバージョンを含む比較用分子と比べて、細胞殺傷(例えば、ADCCおよび/またはCDC)、補体活性化、食作用およびオプソニン化からなる群から選択される少なくとも1つの効果の大きさまたは程度の低減を呈するように、野生型の、天然に存在するFcドメインと比べて、改変、変異、切断などを為された免疫グロブリンの任意のFc部分を意味する。ある特定の実施形態では、「低減されたエフェクター機能を有する改変されたFcドメイン」は、Fc受容体(例えば、FcγR)への低減または減弱された結合性を有するFcドメインである。
【0063】
本発明のある特定の実施形態では、改変されたFcドメインは、ヒンジ領域中に置換を含むバリアントIgG1 FcまたはバリアントIgG4 Fcである。例えば、本発明の文脈において使用するための改変されたFcは、IgG1 Fcヒンジ領域の少なくとも1つのアミノ酸がIgG2 Fcヒンジ領域からの対応するアミノ酸で置き換えられたバリアントIgG1 Fcを含み得る。あるいは、本発明の文脈において使用するための改変されたFcは、IgG4 Fcヒンジ領域の少なくとも1つのアミノ酸がIgG2 Fcヒンジ領域からの対応するアミノ酸で置き換えられたバリアントIgG4 Fcを含み得る。本発明の文脈において使用できる非限定的な、例示的な改変されたFc領域は米国特許出願公開第2014/0243504号に記載されており(その開示は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)、改変されたFc領域の任意の機能的に同等のバリアントについても該文献に記載されている。
【0064】
本発明の文脈において使用できる他の改変されたFcドメインおよびFc改変としては、US2014/0171623;US8,697,396;US2014/0134162;WO2014/043361(これらの開示は参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載される改変のいずれかが挙げられる。本明細書に記載される改変されたFcドメインを含む抗体または他の抗原結合性融合タンパク質を構築する方法は当該技術分野において公知である。
【0065】
抗体の生物学的特徴
本発明は、ヒトLEPRに結合し、LEPRシグナル伝達をアンタゴナイズする抗体およびその抗原結合性断片を含む。そのような抗体は、本明細書において「アンタゴニスト抗体」と称されることがある。本発明の文脈において、「LEPRシグナル伝達のアンタゴニスト」は、LEPRに結合し、通常、LEPRを発現する細胞中でのLEPRとのレプチンの相互作用の結果としてもたらされる細胞内効果を阻害する抗体またはその断片を意味する。様々な実施形態では、本発明のアンタゴニスト抗体は、LEPRアゴニストの機能、および/またはLEPR部分アゴニストの機能を阻害する。ある特定の実施形態では、「LEPRシグナル伝達をアンタゴナイズする」は、例えば、レポーター細胞株中で発現される標識化バージョンのSTAT3を使用して直接的または間接的にSTAT3活性を測定または同定できる任意の方法を使用して検出できる、STAT3のレプチン刺激による転写活性化の阻害を意味する。例えば、本発明は、実施例6に記載される細胞ベースのレポーターアッセイ、または実質的に類似のアッセイにおいて、LEPRシグナル伝達を下方調節するアンタゴニスト抗体およびその抗原結合性断片を含む。本発明はまた、実施例6のアッセイ、または実質的に類似のアッセイにおいて723pM~1.8nMに及ぶIC50値を有するレプチン誘導性のLEPRシグナル伝達の完全な阻害を実証するアンタゴニスト抗体およびその抗原結合性断片を含む。本明細書の実施例5に記載されるアッセイなどの、LEPRを発現する細胞に結合する抗体を検出する細胞ベースの結合アッセイは、レプチンなしで824~3187倍および1μMのレプチンの存在下で398~3106倍の結合比でのHEK293/hLEPR-GPI細胞への結合を実証した。本発明の抗体は、1μMの過剰のレプチンの存在下でさえLEPRに結合することが発見され、これは本発明のLEPR抗体が、レプチン結合部位と重なり合わないhLEPR上の部位に結合することを指し示す。本発明はまた、レプチンシグナル伝達をアンタゴナイズするが、レプチンの非存在下で部分的なLEPRシグナル伝達の促進も行う抗LEPR抗体を含み、そのような抗体は、本明細書において「部分アゴニスト」または「LEPRシグナル伝達のアゴニズムを呈する抗体」とも称される。
【0066】
本発明のある特定の例示的な実施形態では、レプチンの存在下または非存在下でヒト二量体LEPR(hLEPR.hFc、配列番号92)に結合する抗LEPR抗体が提供され、本発明の抗体のいずれも、例えば、本明細書の実施例4に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、LEPR:レプチン相互作用の40%より多くのブロックを実証しない。
【0067】
本発明は、高親和性で単量体ヒトLEPRに結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、25℃での表面プラズモン共鳴による測定で、約10nM未満のKD、または37℃での表面プラズモン共鳴による測定で、約25nM未満のKDで、単量体ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mmh、配列番号90)に結合する抗LEPR抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴による測定で、25℃で、約12nM未満、約11nM未満、約10nM未満、約9nM未満、約8nM未満、約7nM未満、約6nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満または約100pM未満のKDで単量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体が提供される。
【0068】
本発明はまた、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、25℃での表面プラズモン共鳴による測定で、約5分より長いまたは37℃での表面プラズモン共鳴による測定で、約1分より長い解離半減期(t1/2)で単量体ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mmh、配列番号90)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態によれば、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴による測定で、25℃で、約5分より長い、約10分より長い、約20分より長い、約40分より長い、約50分より長い、またはそれより長いt1/2で単量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体が提供される。
【0069】
本発明はまた、高親和性で二量体ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mFc、配列番号91)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、25℃または37℃での表面プラズモン共鳴による測定で、約4nM未満のKDで二量体ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mFc、配列番号91)に結合する抗LEPR抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴による測定で、25℃で、約15nM未満、約10nM未満、約9.0nM未満、約8.0nM未満、約7.0nM未満、約6.0nM未満、約5.0nM未満、約4.0nM未満、約3.0nM未満、約2.0nM未満、約1.0nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、または約100pM未満のKDで二量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体が提供される。
【0070】
本発明はまた、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、25℃または37℃での表面プラズモン共鳴による測定で、約10分より長い解離半減期(t1/2)で二量体ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mFc、配列番号91)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態によれば、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴による測定で、25℃で、約15分より長い、約20分より長い、約30分より長い、約40分より長い、50分より長い、約60分より長い、約70分より長い、80分より長い、90分より長い、100分より長い、またはそれより長いt1/2で二量体ヒトLEPRに結合する抗LEPR抗体が提供される。
【0071】
本発明はまた、ヒトレプチンとの複合体でLEPRに結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む(「ヒトレプチンとの複合体でLEPR」は「レプチン:LEPR」という表現により表されることもある)。例えば、本発明は、hLEPRおよびヒトレプチンを含む予め形成された複合体に結合できる抗体およびその抗原結合性断片を含む。すなわち、ある特定の実施形態によれば、抗LEPR抗体とLEPRとの相互作用は、LEPRとの複合体でレプチンの存在により阻害されず、同様に、本発明のこの態様によれば、レプチンとLEPRとの相互作用は、抗LEPR抗体の存在により阻害されない。抗体またはその抗原結合性断片がヒトレプチンとの複合体でLEPRに結合するかどうかを決定するための例示的なアッセイフォーマットは本明細書の実施例4に記載される。
【0072】
本発明はまた、ヒトレプチンの存在下および/または非存在下で細胞表面発現LEPRに結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。細胞表面発現LEPRは、天然に、または抗体もしくはその抗原結合性断片がLEPR分子に結合できるように操作された細胞株において、細胞の表面上に発現されるLEPRまたはその部分(例えば、LEPRの細胞外部分)を意味する。ある特定の実施形態では、細胞表面発現LEPRは、タグまたはアンカー(例えば、本明細書の実施例6に示されるようなGPIアンカー)を介して細胞に接続されたLEPRの細胞外ドメインを含む組換え複合体を含む。本発明のこの態様によれば、レプチンの非存在下で細胞表面発現LEPRに結合することができ、かつレプチンの存在下(すなわち、レプチンが細胞表面発現LEPRに結合できる状況下)で細胞表面発現LEPRに結合することもできる抗体が提供される。すなわち、ある特定の実施形態によれば、抗LEPR抗体と細胞表面発現LEPRとの相互作用は、細胞表面発現LEPRとの複合体でレプチンの存在により阻害されない。本発明のこの態様による抗体は、抗体、細胞表面発現LEPRおよびレプチンを含む細胞の表面上の3メンバー複合体を形成することができる。抗体またはその抗原結合性断片がヒトレプチンの存在下および非存在下で細胞表面発現LEPRに結合できるかどうかを決定するための例示的なアッセイフォーマットは本明細書の実施例5に記載される。
【0073】
本発明の抗体は、上述の生物学的特徴の1つもしくは複数、またはこれらの任意の組合せを持ってよい。本発明の抗体の生物学的特徴の以上の列記は、網羅的であることを意図しない。本発明の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書中の実施例を含む本開示の検討から当業者に明らかとなるであろう。
【0074】
エピトープマッピングおよび関連技術
本発明の抗体が結合するエピトープは、LEPRタンパク質の3つまたはそれより多く(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多く)のアミノ酸の単一の連続する配列からなるものであってよい。あるいは、エピトープは、LEPRの複数の不連続のアミノ酸(またはアミノ酸配列)からなるものであってよい。一部の実施形態では、エピトープは、LEPRのレプチン結合ドメイン上またはその近くに位置する。他の実施形態では、エピトープは、LEPRのレプチン結合ドメインとは別個の領域、例えば、抗体がそのようなエピトープに結合した時にLEPRへのレプチンの結合に干渉しないLEPRの表面上の位置に位置する。
【0075】
特定の抗体により認識されるエピトープ内のアミノ酸を同定するために当業者に公知の様々な技術を使用することができる。例示的な技術としては、例えば、アラニンスキャニング変異解析、ペプチドブロット分析、およびペプチド切断解析が挙げられる。加えて、エピトープ除去、エピトープ抽出および抗原の化学修飾などの方法を用いることができる(Tomer(2000年)Protein Science 9巻:487~496頁)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用できる別の方法は、質量分析により検出される水素/重水素交換である。一般的に、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素標識した後、抗体を重水素標識化タンパク質に結合させることを伴う。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体により保護された残基(これは重水素標識されたままである)を除いて全ての残基において水素-重水素交換を起こさせる。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析に供し、それにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識化残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999年)Analytical Biochemistry 267巻(2号):252~259頁;EngenおよびSmith(2001年)Anal. Chem. 73巻:256A~265A頁を参照。その抗原と複合体で抗体のX線結晶構造解析もまた、抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる。
【0076】
本発明は、本明細書に記載される特定の例示的な抗体のいずれか(例えば、本明細書の表1に記載されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)と同じエピトープに結合する抗LEPR抗体をさらに含む。同様に、本発明はまた、本明細書に記載される特定の例示的な抗体のいずれか(例えば、本明細書の表1に記載されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)とLEPRへの結合について競合する抗LEPR抗体を含む。
【0077】
当該技術分野において公知のおよび本明細書に例示されるルーチンの方法を使用することにより、抗体が参照抗LEPR抗体と同じエピトープに結合する、またはそれと結合について競合するかどうかを決定することができる。例えば、試験抗体が本発明の参照抗LEPR抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体をLEPRタンパク質に結合させる。次に、LEPR分子に結合する試験抗体の能力を評価する。試験抗体が参照抗LEPR抗体との飽和結合に続いてLEPRに結合できる場合、試験抗体は参照抗LEPR抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方、試験抗体が参照抗LEPR抗体との飽和結合に続いてLEPR分子に結合できない場合、試験抗体は、本発明の参照抗LEPR抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合し得る。次に、追加のルーチン実験(例えば、ペプチド変異および結合解析)を実行して、実際に、試験抗体の結合の観察された欠如が参照抗体と同じエピトープに結合することによるのか、それとも立体障害(または別の現象)が観察された結合の欠如に関与するのかどうかを確認することができる。この種類の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリーまたは当該技術分野において利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的な抗体結合アッセイを使用して行うことができる。本発明のある特定の実施形態によれば、例えば、1、5、10、20または100倍過剰の1つの抗体が他の抗体の結合を、競合結合アッセイでの測定で少なくとも50%、好ましくは75%、90%またはさらには99%阻害する場合、2つの抗体は同じ(または重なり合う)エピトープに結合する(例えば、Junghansら(1990年)Cancer Res. 50巻:1495~1502頁を参照)。あるいは、1つの抗体の結合を低減させまたは取り除く抗原中の本質的に全てのアミノ酸変異が他の抗体の結合を低減させまたは取り除く場合、2つの抗体は同じエピトープに結合するとみなされる。1つの抗体の結合を低減させまたは取り除くアミノ酸変異の一部のみが他の抗体の結合を低減させまたは取り除く場合、2つの抗体は「重なり合うエピトープ」を有するとみなされる。
【0078】
抗体が参照抗LEPR抗体と結合について競合する(または結合について交差競合する)かどうかを決定するために、上記の結合方法論が2つの方向性で行われる:第1の方向性では、参照抗体を飽和条件下でLEPRタンパク質に結合させた後、LEPR分子への試験抗体の結合を評価する。第2の方向性では、試験抗体を飽和条件下でLEPR分子に結合させた後、LEPR分子への参照抗体の結合を評価する。両方の方向性において第1の(飽和)抗体のみがLEPR分子に結合できる場合、試験抗体および参照抗体はLEPRへの結合について競合すると結論付けられる。当業者により理解されるように、参照抗体と結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合しなくてよく、重なり合うまたは隣接するエピトープに結合することにより参照抗体の結合を空間的にブロックしてもよい。
【0079】
ヒト抗体の調製
本発明の抗LEPR抗体は完全にヒト抗体であり得る。完全にヒトのモノクローナル抗体などのモノクローナル抗体を生成する方法は当該技術分野において公知である。ヒトLEPRに特異的に結合するヒト抗体を作るために任意のそのような公知の方法を本発明の文脈において使用することができる。
【0080】
例えば、VELOCIMMUNE(商標)技術、または完全にヒトのモノクローナル抗体を生成するための任意の他の類似の公知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するLEPRに対する高親和性キメラ抗体が最初に単離される。下記の実験セクションにあるように、抗体は、親和性、リガンドのブロッキング活性、選択性、エピトープなどの望ましい特徴について特徴付けされ、選択される。必要であれば、マウス定常領域を所望のヒト定常領域、例えば野生型または改変IgG1またはIgG4と置き換えて、完全にヒトの抗LEPR抗体を生成する。選択される定常領域は特定の用途に従って異なってよいが、高親和性抗原結合および標的特異性の特徴は可変領域にある。ある特定の例では、完全にヒトの抗LEPR抗体は、抗原陽性B細胞から直接的に単離される。生物学的同等物
【0081】
本発明の抗LEPR抗体および抗体断片は、記載される抗体とは異なるが、ヒトLEPRに結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。そのようなバリアント抗体および抗体断片は、親配列と比較した時にアミノ酸の1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、記載される抗体の生物学的活性と本質的に同等の生物学的活性を呈する。同様に、本発明の抗LEPR抗体をコードするDNA配列は、開示される配列と比較した時にヌクレオチドの1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗LEPR抗体または抗体断片と本質的に生物学的に同等な抗LEPR抗体または抗体断片をコードする配列を包含する。そのようなバリアントアミノ酸およびDNA配列の例は上記で論じられている。
【0082】
2つの抗原結合タンパク質、または抗体が、例えば、単回投与または複数回投与のいずれかで類似の実験条件下で同じモル用量で投与された時にそれらの吸収速度および程度が有意差を示さない薬学的等価物または薬学的代替物である場合、それらは生物学的同等物であると考えられる。一部の抗体は、吸収の程度において同等であるが吸収速度において同等でない場合に同等物または薬学的代替物と考えられるが、それでも生物学的同等物と考えられ得るのは、吸収速度のそのような差異は意図的なものであり、ラベリングに反映され、例えば慢性使用に対して、効果的な身体薬物濃度の達成にとって必須ではなく、試験される特定の薬品製造物にとって医療上重要でないと考えられるためである。
【0083】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、安全性、純度、および力価において臨床的に意味のある差異がない場合に生物学的同等である。
【0084】
一実施形態では、参照製造物と生物学的製品との間での1回または複数回の切換えなしで継続された療法と比較して、有害効果のリスクの予想される増加、例えば、免疫原性の臨床的に有意な変化、または有効性の減少などがなく、患者がそのような切換えを行うことができる場合、2つの抗原結合タンパク質は生物学的同等である。
【0085】
一実施形態では、そのような機序が公知である限り、2つの抗原結合タンパク質の両方が、使用の1つまたは複数の条件について1つまたは複数の共通の作用機序により作用する場合、それらは生物学的同等である。
【0086】
生物学的同等性は、in vivoおよびin vitroの方法により実証されてよい。生物学的同等性の尺度としては、例えば、(a)血液、血漿、血清、または他の体液中の抗体またはその代謝物の濃度が時間の関数として測定されるヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験;(b)ヒトのin vivoバイオアベイラビリティデータと関係付けられ、それを合理的に予測するin vitro試験;(c)抗体(またはその標的)の適切な急性の薬理学的効果が時間の関数として測定されるヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験;および(d)抗体の安全性、有効性、またはバイオアベイラビリティまたは生物学的同等性を確立するよく制御された臨床試験が挙げられる。
【0087】
本発明の抗LEPR抗体の生物学的同等のバリアントは、例えば、残基もしくは配列を様々に置換させることまたは生物学的活性のために必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失させることにより構築されてよい。例えば、生物学的活性のために必須でないシステイン残基を欠失させまたは他のアミノ酸と置き換えて、再生時に不必要なまたは正しくない分子内ジスルフィド架橋を形成するのを防止することができる。他の文脈では、生物学的同等の抗体は、抗体のグリコシル化の特徴を改変するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を取り除くまたは除去する変異を含む抗LEPR抗体バリアントを含み得る。
【0088】
種選択性および種交差反応性
ある特定の実施形態によれば、本発明は、ヒトLEPRに結合するが他の種からのLEPRに結合しない抗LEPR抗体を提供する。本発明はまた、ヒトLEPRおよび1つまたは複数の非ヒト種からのLEPRに結合する抗LEPR抗体を含む。例えば、本発明の抗LEPR抗体は、ヒトLEPRに結合してよく、かつ、場合により、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、マカクザル(cynomologous)、マーモセット、アカゲザルまたはチンパンジーのLEPRの1つまたは複数に結合してもよいし、または結合しなくてもよい。本発明のある特定の例示的な実施形態によれば、ヒトLEPRおよびマカクザル(例えば、カニクイザル)LEPRに特異的に結合する抗LEPR抗体が提供される。本発明の他の抗LEPR抗体は、ヒトLEPRに結合するがマカクザルLEPRに結合せず、または弱くのみ結合する。
【0089】
多重特異的抗体
本発明の抗体は、単一特異的であってよく、または多重特異的(例えば、二重特異的)であってよい。多重特異的抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であってよく、または1つより多くの標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有してよい。例えば、Tuttら(1991年)J. Immunol. 147巻:60~69頁;Kuferら(2004年)Trends Biotechnol. 22巻:238~244頁を参照。本発明の抗LEPR抗体は、別の機能分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結することができ、またはそれと共発現させることができる。例えば、抗体またはその断片を、1つまたは複数の他の分子実体、例えば別の抗体または抗体断片などに(例えば、化学結合、遺伝子融合、非共有会合またはその他により)機能的に連結させて、第2の結合特異性を有する二重特異的または多重特異的抗体を製造することができる。
【0090】
本発明は、免疫グロブリンの1つのアームがヒトLEPRに結合し、免疫グロブリンの他のアームが第2の抗原に特異的である二重特異的抗体を含む。LEPR結合アームは、本明細書の表1に記載されるHCVR/LCVRまたはCDRのアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。
【0091】
本発明の文脈において使用できる例示的な二重特異的抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメインおよび第2のIg CH3ドメインの使用を伴い、第1および第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸により互いに異なり、かつ、少なくとも1つのアミノ酸の差異は、該アミノ酸の差異を欠く二重特異的抗体と比較してプロテインAへの二重特異的抗体の結合を低減させる。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインはプロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、プロテインA結合を低減または無効化させる変異、例えば、H95Rの改変(IMGTエクソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)を含有する。第2のCH3はY96Fの改変(IMGTによる;EUによるY436F)をさらに含んでよい。第2のCH3内に見出され得るさらなる改変としては以下が挙げられる:IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I);IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、およびV422I);IgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)。上記に記載される二重特異的抗体フォーマットのバリエーションは、本発明の範囲内に想定される。
【0092】
本発明の文脈において使用できる他の例示的な二重特異的フォーマットとしては、例えば、scFvベースのまたはダイアボディの二重特異的フォーマット、IgG-scFv融合物、デュアル可変ドメイン(DVD)-Ig、Quadroma、knobs-into-holes、共通軽鎖(例えば、knobs-into-holesを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用性Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異的フォーマット(以上のフォーマットの総説について、例えば、Kleinら(2012年)mAbs 4巻:6号、1~11頁、およびそこで引用される参考文献を参照)が挙げられるがこれらに限定されない。二重特異的抗体はまた、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することができ、例えば、直交化学反応性を有する非天然のアミノ酸を使用して部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成させ、次にそれを、定義された組成、価数および幾何学形状を有する多量体複合体に自己集合させる(例えば、Kazaneら、J. Am. Chem. Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照)。
【0093】
治療用配合物および投与
本発明は、本発明の抗LEPR抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、および向上した移入、送達、寛容性などを提供する他の剤と共に配合される。全ての薬剤師に公知の処方書:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAにおいて数多くの適切な配合物を見出すことができる。これらの配合物としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CAなど)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルション、エマルションカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル、およびカーボワックスを含有する半固形混合物が挙げられる。Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA(1998年)J Pharm Sci Technol 52巻:238~311頁も参照。
【0094】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化させてよい。好ましい用量は、典型的に、体重または身体表面積に従って算出される。成人患者において、通常、約0.01~約20mg/kg体重、より好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5、または約0.05~約3mg/kg体重の単回用量で本発明の抗体を静脈内に投与することが有利であり得る。状態の重篤度に応じて、治療の頻度および継続期間を調整することができる。抗LEPR抗体を投与するために効果的な投与量およびスケジュールを経験的に決定することができ、例えば、患者の進展を定期的な評価によりモニターし、それに従って用量を調整することができる。さらに、当該技術分野において周知の方法を使用して投与量の種間スケーリングを行うことができる(例えば、Mordentiら(1991年)Pharmaceut. Res. 8巻:1351頁)。
【0095】
例えば、リポソーム中へのカプセル化、マイクロ粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現できる組換え細胞、受容体媒介性のエンドサイトーシスといった様々な送達システムが公知であり、これらを本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる(例えば、Wuら(1987年)J. Biol. Chem. 262巻:4429~4432頁を参照)。導入の方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがこれらに限定されない。任意の簡便な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚の裏打ち(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収により、組成物を投与することができ、他の生物活性剤と共に投与してもよい。投与は全身性または局所的なものであり得る。
【0096】
本発明の医薬組成物は、標準的な針および注射器を用いて皮下または静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは本発明の医薬組成物を容易に送達するために適用される。そのようなペン送達デバイスは、再使用可能または使い捨て可能なものであってよい。再使用可能なペン送達デバイスは、通常、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の全ての医薬組成物が投与されるとカートリッジは空になり、空になったカートリッジを容易に廃棄して、医薬組成物を含有する新たなカートリッジと交換することができる。その後、ペン送達デバイスを再使用することができる。使い捨て可能なペン送達デバイスには交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨て可能なペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバー中に保持された医薬組成物を予め充填されている。リザーバーから医薬組成物がなくなると、デバイス全体が廃棄される。
【0097】
多数の再使用可能なペンおよび自動注入装置の送達デバイスが本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される。例としてごく少数を挙げれば、AUTOPEN(商標)(Owen
Mumford, Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達に応用される使い捨て可能なペン送達デバイスの例としてごく少数を挙げれば、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標) Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey, L.P.)、およびHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0098】
ある特定の状況において、医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer、上掲;Sefton(1987年)CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14巻:201頁を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)(1974年)CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照。さらに別の実施形態では、制御放出システムは組成物の標的に近接して置くことができ、したがって全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson(1984年)Medical Applications of Controlled Release、上掲、2巻、115~138頁を参照)。他の制御放出システムは、Langer(1990年)Science 249巻:1527~1533頁による総説において論じられている。
【0099】
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴などのための投与剤形を含んでよい。これらの注射用調製物は、公知の方法により調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、上記される抗体またはその塩を注射のために従来使用されている滅菌水性媒体または油性媒体中に溶解させ、懸濁させまたは乳化させることにより調製することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の助剤を含有する等張溶液などがあり、これらを適切な可溶化剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水添ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などと組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、これらを可溶化剤、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用することができる。このように調製された注射液は、好ましくは、適切なアンプル中に充填される。
【0100】
有利には、上記される経口または非経口での使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に適合させた単位用量の投与剤形に調製される。単位用量のそのような投与剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射液(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含有される上記の抗体の量は、通常、単位用量の投与剤形当たり約5~約500mgであり、特に注射液の形態では、上記の抗体は約5~約100mg、他の投与剤形については約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0101】
抗体の治療的使用
本発明は、それを必要とする対象にアンタゴニスト抗LEPR抗体(例えば、本明細書の表1に記載されるHCVR/LCVRまたはCDRの配列のいずれかを含む抗LEPR抗体)を含む治療用組成物を投与することを含む方法を含む。治療用組成物は、本明細書に開示される抗LEPR抗体のいずれか、またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含むことができる。
【0102】
本発明の抗体は、とりわけ、過剰のLEPRシグナル伝達を結果としてもたらす上昇したレプチンレベル(高レプチン血症)および/またはOB-Rレプチン受容体の上昇した発現に関連するまたはそれにより媒介される任意の疾患または障害の治療、予防および/または改善のために有用である。様々な実施形態では、疾患または障害は、以下に限定されないが、無食欲または他の精神医学的摂食障害、慢性腎臓疾患悪液質、他の悪液質、例えば、鬱血性心不全悪液質、肺悪液質、放射線悪液質、およびがん悪液質、自己免疫障害、例えば、炎症性腸疾患、ループスエリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬、心臓血管疾患、高血圧、鬱病、神経変性障害、がん、例えば、肝細胞癌、黒色腫および乳がんから選択される。
【0103】
本発明はまた、正常なまたは高いレプチンレベルを発現する細胞、組織および臓器においてLEPRシグナル伝達をアンタゴナイズするために有用な抗LEPR抗体およびその抗原結合性断片を含む。本明細書で使用される場合、レプチンの存在下で(野生型LEPRと比較して)増進したシグナル伝達を呈するLEPR変異体を「シグナル伝達増進型LEPR変異体」と称する。例示的なシグナル伝達増進型LEPR変異はLEPR-Q223Rである(Chagnonら(2009年)Journal of Clinical
Endocrinology & Metabolism 85巻(1号):29~34頁)。したがって、本発明は、増進されたシグナル伝達のLEPR変異体により引き起こされるまたはそれに関連する疾患および障害の治療、予防および/または改善のために有用な抗LEPR抗体およびその抗原結合性断片を含む。
【0104】
本明細書に記載される治療の方法の文脈において、抗LEPR抗体は、単剤療法(すなわち、唯一の治療剤として)としてまたは1つもしくは複数の追加の治療剤(その例は本明細書の別の箇所に記載される)と組み合わせて投与することができる。
【0105】
組合せ療法および配合物
本発明は、1つまたは複数の追加の治療活性成分と組み合わせて本明細書に記載される抗LEPR抗体のいずれかを含む組成物および治療用配合物、ならびにそれを必要とする対象にそのような組合せを投与することを含む治療の方法を含む。
【0106】
本発明の抗LEPRアンタゴニスト抗体は、1つまたは複数の追加の治療活性成分、例えば、鬱血性心不全悪液質、肺悪液質およびがん悪液質、自己免疫障害、例えば、炎症性腸疾患、ループスエリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬、心臓血管疾患、高血圧、神経変性障害、鬱病、がん、例えば、肝細胞癌、黒色腫、乳がん、ならびに減少したレプチンシグナル伝達に関連するまたはそれにより引き起こされる他の疾患および障害の治療のために処方される医薬製品などと組み合わせて一緒に配合しかつ/または投与することができる。そのような追加の治療活性成分の例としては、例えば、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、ACE、ACE-I、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル(ramapril)、トランドラプリル)、アンギオテンシン受容体ブロッカー(例えば、ARB)、平滑筋弛緩剤(例えば、ヒドララジン)、長期作用性硝酸塩(例としては、例えばACE-IおよびARBを含むまたは含まない二硝酸イソソルビド)、利尿剤(例えば、ループ利尿剤、チアジド様利尿剤およびカリウム保持性利尿剤)、鉄欠乏性貧血治療(例えば、非経口性の鉄)、長期または短期作用性気管支拡張剤(例えば、β2アゴニスト、例えば、アルホルモテロール、ブフェニン、クレンブテロール、ドペキサミン、エピネフリン、フェノテロール(fentoterol)、ホルモテロール、イソエタリン(isoetarine)、イソプレナリン、イソプロテレノール、レボサルブタモール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、サルブタモール、アルブテロール、テルブタリン、チオトロピウムなど)、抗コリン剤(例えば、ヒヨスチアミン、アトロピン、フェノバルビタール、スコポラミン、ジサイクロミン、フェノバルビタール、メペンゾラートおよび組合せ、例えば、アトロピン、ヒヨスチアミン、フェノバルビタールおよびスコポラミンなど)、コルチコステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、フルニソリド、ブデソニド)、長期抗生物質(例えば、マクロライド、例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシンなど、およびメチルキサンチン、例えばテオフィリンなど)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、トルメチンなど)、5-アミノサリチル酸(5-ASA)(例えば、メサラジン)、免疫抑制剤(immunosuppressints)(例えば、プレドニゾン、TNF阻害剤、アザチオプリン、メトトレキサート、6-メルカプトプリン)、再発寛解型多発性硬化症療法(例えば、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、グラチラマー酢酸塩、ミトキサントロン、ナタリズマブ、フィンゴリモド、テリフルノミド、フマル酸ジメチル、アレムツズマブ、ダクリズマブ、CD20モノクローナル抗体、例えば、リツキシマブ、オクレリズマブおよびオファツムマブなど)、乾癬治療用の外用剤(例えば、パラアミノ安息香酸、ココナッツ油、コールタール、ジスラノール、コルチコステロイド、例えば、デソキシメタゾン、フルオシノニドなど、ビタミンD3および他のビタミンDアナログ、ソラレンなどの外用剤、ならびに、メトトレキサート、シクロスポリン、ヒドロキシカルバミド、フマル酸ジメチルなどのフマレートおよびレチノイドなどの全身剤など)、TNF-αアンタゴニスト(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブおよびセルトリズマブペゴル)、T細胞を標的化する乾癬治療(例えば、エファリズマブおよびアレファセプト)、高血圧および心臓血管疾患の治療(例えば、アスピリン、スタチン、例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンおよび組合せ、例えば、シンバスタチン+エゼチミブ、ロバスタチン+ナイアシン、およびアトルバスタチン+アムロジピンなど)、神経変性障害の療法(例えば、ジメボン、およびプロリンリッチペプチド(PRP)-1)、抗うつ剤(例えば、セルトラリン、シタロプラム、フルオキセチン、エスシタロプラム、トラゾドン、ベンラファキシン、ブプロピオン、デュロキセチン、パロキセチン、アミトリプチリン、ベンラファキシン(venlafacine)、デスベンラファキシン、およびノルトリプチリン)、および抗がん療法(例えば、ソラフェニブ、JX-594、インターロイキン-2、イピリムマブ(ヤーボイ)、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ベムラフェニブ(ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(タフィンラー)、トラメチニブ(メキニスト)、アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、エピルビシン(Ellence(登録商標))など、タキサン、例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標))およびドセタキセル(Taxotere(登録商標))など、5-フルオロウラシル(5-FU)、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))またはこれらの組合せ)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0107】
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態によれば、複数回用量の抗LEPRアンタゴニスト抗体(または抗LEPRアンタゴニスト抗体と本明細書に記載される追加の治療活性剤のいずれかとの組合せを含む医薬組成物)は、定義された時間経過にわたって対象に投与されてよい。本発明のこの態様による方法は、対象に複数回用量の本発明の抗LEPR抗体を逐次的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次的に投与する」は、抗LEPR抗体の各用量が異なる時点に、例えば、予め決定された間隔(例えば、時間、日、週または月)で隔てられた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本発明は、患者に単回の開始用量の抗LEPR抗体、その後に1つまたは複数の二次用量の抗LEPR抗体、および任意選択でその後に1つまたは複数の三次用量の抗LEPR抗体を逐次的に投与することを含む方法を含む。
【0108】
「開始用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、本発明の抗LEPR抗体の投与の時間的配列を指す。したがって、「開始用量」は治療レジメンの始めに投与される用量であり(「ベースライン用量」、「ローディング用量」、「出発用量」などとも称される)、「二次用量」は開始用量の後に投与される用量であり、「三次用量」は二次用量の後に投与される用量である。開始、二次、および三次用量の全ては、同じ量の抗LEPR抗体を含有してもよいが、通常、投与の頻度の点で互いに異なってよい。しかしながら、ある特定の実施形態では、開始、二次および/または三次用量に含有される抗LEPR抗体の量は、治療の経過の間に互いから変化させられる(例えば、適宜、上方または下方に調整される)。ある特定の実施形態では、2つまたはそれより多く(例えば、2、3、4、または5)の用量が「ローディング用量」として治療レジメンの始めに投与された後、その後の用量がより低い頻度で投与される(例えば、「維持用量」)。
【0109】
抗体の診断および解析的使用
本発明の抗LEPR抗体はまた、例えば診断目的のために、試料中のLEPR、またはLEPR発現細胞を検出および/または測定するために使用することができる。例えば、抗LEPR抗体、またはその断片は、LEPRの異常な発現(例えば、過剰発現、過少発現、発現の欠如など)により特徴付けられる状態または疾患を診断するために使用することができる。LEPRの例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を本発明の抗LEPR抗体と接触させることを含んでよく、抗LEPR抗体は検出可能な標識またはレポーター分子で標識されている。あるいは、非標識の抗LEPR抗体を、それ自体検出可能に標識された二次抗体と組み合わせて診断応用において使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、放射性同位体、例えば、3H、14C、32P、35S、もしくは125Iなど;蛍光もしくは化学発光部分、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、もしくはローダミンなど;または酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどであってよい。試料中のLEPRを検出または測定するために使用できる特定の例示的なアッセイとしては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。
【0110】
本発明によるLEPR診断アッセイにおいて使用できる試料としては、正常または病的な条件下で検出可能な量のLEPRタンパク質、またはその断片を含有する患者から得られ得る任意の組織または液体試料が挙げられる。一般に、健常患者(例えば、異常なLEPRレベルまたは活性に関連する疾患または状態に罹患していない患者)から得られる特定の試料中のLEPRのレベルが最初にベースラインの、または標準のLEPRのレベルを確立するために測定される。次に、LEPRのこのベースラインレベルを、LEPRに関連する疾患または状態を有することが疑われる個体から得られた試料において測定されたLEPRのレベルに対して比較することができる。
【実施例0111】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように行いまたは作り、使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するように提案されるものであり、本発明者らが彼らの発明とみなしているものの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確実にするための努力が為されているが、何らかの実験誤差および逸脱が考慮されるべきである。別に指し示さない限り、部は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏度であり、圧力は大気圧またはその近くである。
【0112】
(実施例1)
レプチン受容体(LEPR)に特異的に結合する抗原結合タンパク質の生成
抗LEPR抗体は、LEPRの細胞外ドメインを含む免疫原でVELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパー軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作されたマウス)を免疫化することにより得られた。抗体免疫反応は、LEPR特異的イムノアッセイによりモニターした。以前に記載された技術を使用して、完全にヒトの抗LEPR抗体を単離および精製した。
【0113】
この実施例の方法に従って生成された例示的な抗LEPR抗体のある特定の生物学的特性を以下に記載する実施例において詳細に説明する。
【0114】
(実施例2)
重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸および核酸配列
表1は、本発明の選択された抗LEPR抗体の重鎖および軽鎖可変領域ならびにCDRのアミノ酸配列特定番号を示す。対応する核酸配列特定番号を表2に記載する。
【表1】
【表2】
【0115】
抗体は、通常、本明細書において以下の命名法に従って呼称する:Fcの接頭部(例えば、「H4H」、「H1M」、「H2M」など)、その後に識別数値(例えば、「17322」、「18457」など)、その後に「P」または「N」の接尾部。したがって、この命名法によれば、抗体は本明細書において例えば「H4H17322P2」、「H4H18457P2」などのように呼称することができる。本明細書で使用される抗体名のFcの接頭部(H4H、H1MおよびH2M)は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを指し示す。例えば、「H4H」抗体はヒトIgG4 Fcを有する一方、「H1M」抗体はマウスIgG1 Fcを有する(全ての可変領域は、抗体名中の最初の「H」により示される通り、完全にヒトのものである)。当業者により理解されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体を異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができるが(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体をヒトIgG4を有する抗体に変換することができるなど)、いずれの場合においても、表1および2に示される識別数値により指し示される可変ドメイン(CDRを含む)は同じままであり、Fcドメインの性質にかかわらず結合特性は同一または実質的に類似であると予想される。
【0116】
比較用抗体。以下の実施例において使用される比較用抗体は、Fazeliら(2006年)J Immunol Methods 312巻:190~200頁およびCarpenterら(2012年)Structure 20巻(3号):487~97頁に記載されるFab 9F8を指す。
【0117】
(実施例3)
ヒトモノクローナル抗LEPR抗体の表面プラズモン共鳴由来の結合親和性および速度定数
精製された本発明の抗LEPRモノクローナル抗体への抗原結合についての平衡解離定数(K
D値)は、Biacore 4000機器を使用し、リアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して決定した。全ての結合試験は、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05%v/vの界面活性剤Tween-20を含有するpH7.4のランニングバッファー(HBS-ETランニングバッファー)中、25℃および37℃で行った。Biacoreセンサー表面を最初に、抗LEPRモノクローナル抗体を捕捉するためにモノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE、#BR-1008-39)とのアミンカップリングにより誘導体化した。抗LEPRモノクローナル抗体への結合について試験したLEPR試薬は、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現される組換えヒトLEPR細胞外ドメイン(hLEPR.MMH;配列番号90)、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現される組換えマカクザルLEPR細胞外ドメイン(mfLEPR.MMH;配列番号93)、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現される組換えマウスLEPR細胞外ドメイン(mLEPR.MMH;配列番号94)、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現される組換えラットLEPR細胞外ドメイン(rLEPR.MMH;配列番号95)、およびC末端のマウスIgG2a Fcタグと共に発現される組換えヒトLEPR細胞外ドメイン(hLEPR.mFc;配列番号91)を含んでいた。MMHタグを含むLEPR構築物は単量体LEPR構築物であり、mFcタグを含むLEPR構築物は二量体LEPR構築物である。異なる濃度のLEPR試薬を最初に、3倍連続希釈液中の100nM~3.7nMに及ぶ最終濃度でHBS-ETランニングバッファー中で調製した後、30μL/分の流速で4分間表面に捕捉させた抗LEPRモノクローナル抗体上に注入した。モノクローナル抗体に結合したLEPR試薬の解離をHBS-ETランニングバッファー中で10分間モニターした。Scrubber 2.0c曲線フィッティングソフトウェアを使用してマストランスポートリミテーションを有する1:1結合モデルに対してリアルタイム結合センサーグラムをフィッティングすることにより速度論的会合(k
a)および解離(k
d)速度定数を決定した。結合解離平衡定数(K
D)および解離半減期(t
1/2)は、以下のように速度論的速度定数から算出した:
【数1】
【0118】
25℃および37℃での本発明の異なる抗LEPRモノクローナル抗体へのhLEPR-MMH、mfLEPR-MMH、hLEPR.mFc、mLEPR-MMHまたはrLEPR-MMHの結合についての結合速度論的パラメーターを表3~13に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表4-1】
【表4-2】
【0119】
表3に示すように、25℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の全てが、5.11nM~194nMに及ぶK
D値でhLEPR-MMHに結合した。表4に示すように、37℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の全てが、11.7nM~248nMに及ぶK
D値でhLEPR-MMHに結合した。
【表5-1】
【表5-2】
【表6-1】
【表6-2】
【0120】
表5に示すように、25℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の全てが、4.16nM~179nMに及ぶK
D値でmfLEPR-MMHに結合した。表6に示すように、37℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の全てが、7.72nM~261nMに及ぶK
D値でmfLEPR-MMHに結合した。
【表7】
【表8】
【0121】
表7に示すように、25℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の全てが、443pM~11.9nMに及ぶK
D値でhLEPR-mFcに結合した。表8に示すように、37℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の全てが、527pM~15.1nMに及ぶK
D値でhLEPR-mFcに結合した。
【表9】
【表10-1】
【表10-2】
【0122】
表9に示すように、25℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の9つのうち2つが、218nMおよび264nMのK
D値でmLEPR-MMHに結合した。表10に示すように、37℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の9つのうち2つが、205nMおよび1.16μMのK
D値でmLEPR-MMHに結合した。
【表11-1】
【表11-2】
【表12-1】
【表12-2】
【0123】
表11に示すように、25℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の9つのうち5つが、328nM~943nMに及ぶKD値でrLEPR-MMHに結合した。表12に示すように、37℃において、本発明の抗LEPRモノクローナル抗体の9つのうち5つが、168nM~771nMに及ぶKD値でrLEPR-MMHに結合した。
【0124】
(実施例4)
本発明の抗LEPR抗体はhLeptinに対するhLEPR-hFcの結合をブロックしない
本発明の抗LEPRモノクローナル抗体が二量体ヒトLEPRのその天然リガンドであるヒトレプチンへの結合をブロックする能力を競合サンドイッチELISAを使用して測定した。
【0125】
ELISAのために、ヒトレプチン(hLeptin;R&D Systems、#398-LP-01M)をPBS中5μg/mLの濃度で96ウェルのマイクロタイタープレートに4℃で終夜コーティングした。その後、PBS中のBSAの0.5%(w/v)溶液を使用して非特異的結合部位をブロックした。C末端のヒトFcタグと共に発現させたLEPRタンパク質(hLEPR.hFc;配列番号92)の一定量(10nM)の細胞外ドメイン部分を段階希釈の8.5pM~500nMに及ぶ抗LEPR抗体、hLeptinタンパク質、またはアイソタイプ対照抗体を用いて滴定した。次に、これらの抗体-タンパク質またはタンパク質-タンパク質複合体を室温(RT)で1.5時間インキュベートした。その後、hLeptinをコーティングしたマイクロタイタープレートに複合体を移し、RTで2時間インキュベートし、ウェルを洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Inc、#109-035-098)を用いてプレート結合hLEPR-hFcを検出した。TMB溶液(BD Biosciences、#555214;製造者の説明書の通り、基質AおよびBを1:1の比で混合)を用いて試料の発色を行って比色反応を生じさせた後、1Mの硫酸で中和させた後にVictor X5プレートリーダーにより450nmで吸光度を測定した。Prism(商標)ソフトウェア(GraphPad)内のシグモイド用量応答モデルを使用してデータ解析を行った。プレート上のヒトレプチンへの10nMのhLEPR-hFcの結合をブロックする抗体の能力を指標として、試験した抗体の最大濃度でのブロックパーセントを算出した。算出において、抗体の存在なしでの10nMのhLEPR-hFcの結合シグナルを100%の結合または0%のブロックとする参照とし、hLEPR-hFcの存在なしでの緩衝液単独でのベースラインシグナルを0%の結合または100%のブロックとする参照とした。500nMの抗体濃度でのブロックデータを表13に要約する。
【表13】
【0126】
表13に示すように、本発明の抗LEPR抗体のいずれも、hLeptinをコーティングした表面へのhLEPR-hFcの結合の40%より多くのブロックを実証しなかった。しかしながら、陽性対照として比較用抗体およびhLeptinは、hLeptinをコーティングした表面へのhLEPR-hFcの結合の99%をブロックすることができた。アイソタイプ対照抗体は、500nMまでの濃度において測定可能なブロックを実証しなかった。
【0127】
(実施例5)
HEK293/Mycx2-hLEPR(エクト)-GPIアンカー細胞を用いるFACS分析による細胞結合
レプチン受容体LEPRは、大きい、818アミノ酸長の細胞外ドメインを有するクラスIサイトカイン受容体ファミリーの1回膜貫通型受容体である(Tartaglia(1997年)J. Biol. Chem 7:272巻(10号):6093~6頁)。LEPRは、摂食および代謝の調節に関与する脂肪組織により主に発現されるタンパク質であるレプチンに結合することができる(Friedman(2014年)J Endocrinol 223巻(1号):T1~8頁)。異なるアイソフォームのLEPRが存在して可溶型または膜結合型の受容体をもたらし、膜結合型はそれらの細胞内ドメインの長さが異なる。最も長い細胞内ドメインを有するアイソフォームは、肥満症に関するレプチンの作用の重要な部位である視床下部において高発現される(FriedmanおよびHalaas(1998年)Nature 395巻(6704号):763~70頁)。LEPRは、主に細胞体内、そしてより低い程度で細胞表面上に局在する。LEPRはリガンド誘導性の内部移行を起こして、レプチンシグナル伝達の追加のレベルの調節を加える(Sweeney(2002年)Cell Signal 14巻(8号):655~63頁)。
【0128】
本発明の抗LEPR抗体による細胞結合を評価するために、N末端のmyc-mycタグ、および、タンパク質を膜にグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)で固着できるようにGPIの付加をガイドするヒトカルボキシペプチダーゼMのC末端ペプチド配列を有するヒトLEPR(hLEPR;受託番号P48357のアミノ酸22~839、アイソフォームB)の細胞外ドメインを安定に発現するHEK293細胞株を生成させた(Marcicら(2000年)J Biol Chem. 275巻(21号):16110~8頁)。細胞株中のhLEPRは細胞内ドメインを持たないので、リガンド結合により内部移行せず、抗体および/またはリガンド結合のために利用可能なLEPRの量を大きく増加させる。10%のFBS、NEAA、ペニシリン/ストレプトマイシン、および500μg/mLのG418を含有するDMEM中で細胞株を選択した後、抗Myc抗体を使用して受容体の高い発現について選別した。HEK293/hLEPR-GPIと称する結果として得られた安定な細胞株を、10%のFBS、NEAA、およびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中に維持した。
【0129】
FACS分析のために、HEK293親細胞およびHEK293/hLEPR-GPI細胞を解離させ、96ウェルv底プレート上の2%のFBSを含有するPBS(FACS緩衝液)中に5×105細胞/ウェルでプレートした。細胞への抗hLEPR抗体の結合がレプチンの存在により影響されるかどうかを試験するために、1μMのヒトレプチン(R&D Systems、#398-LP)を含むまたは含まないFACS緩衝液を細胞と4℃で30分間インキュベートした後、FACS緩衝液中に10nMで抗LEPR抗体または対照抗体を加えた。その後に細胞を4℃で30分間インキュベートした後、洗浄し、16μg/mLのAlexa Fluor(登録商標)-647コンジュゲート二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、#109-547-003)と4℃で30分間インキュベートした。その後、BD
CytoFix(商標)(Becton Dickinson、#554655)を使用して細胞を固定し、濾過し、HyperCyt Flow Cytometer(Beckman Coulter)で解析した。全ての細胞株について非染色および二次抗体単独の対照も試験した。ForeCyt(IntelliCyt)およびFlowJoバージョン10ソフトウェアを使用して結果を解析して生存細胞の蛍光の幾何平均を決定した。次に、各試料の蛍光の幾何平均を非染色細胞の幾何平均に対して正規化して、「結合比」と称する条件当たりの相対結合を得、試験した各抗体についてこれらの結合比を表14に記録した。
【0130】
表14に示すように、10nMで試験した本発明の9つの抗LEPR抗体は、レプチンなしで824倍~3187倍、1μMのレプチンの存在下で398倍~3590倍に及ぶ結合比でHEK293/hLEPR-GPI細胞への結合を実証した。これらの結合比の類似性に基づけば、細胞上に発現されたLEPRに結合する本発明の抗LEPR抗体の能力は1μMの過剰のレプチンの存在により大きく影響されないらしく、LEPR上の抗LEPR抗体の結合部位はLEPR上のレプチン結合部位と重なり合わないことを示唆する。本発明の抗LEPR抗体は、1~9倍に及ぶ1μMのレプチンありおよびなしでの結合比を有してHEK293親細胞へのいかなる有意な結合も実証しなかった。GPIアンカーLEPRを発現する細胞への比較物の結合はレプチンの存在下で有意に低減した。アイソタイプ対照抗体および二次抗体単独の試料もまた、1~6倍に及ぶ結合比で、レプチンありまたはなしのいずれかの細胞株に有意な結合を実証しなかった。
【表14-1】
【表14-2】
【0131】
(実施例6)
本発明の抗LEPR抗体はhLeptinの存在下でレプチンシグナル伝達の完全な阻害を実証した
ヒト神経芽腫細胞株であるIMR-32細胞株中でルシフェラーゼレポーターと共に全長ヒトLEPR(hLEPR;受託番号NP_002294.2のアミノ酸1~1165)を安定に発現するレポーター細胞株を使用してLEPR活性化を介するSTAT3の転写活性化(STAT3-Luc;Qiagen、#CLS-6028L)を検出するためのバイオアッセイを開発した。IMR-32/STAT3-Luc/hLEPRと称する結果として得られた安定な細胞株を単離し、10%のFBS、NEAA、1ug/mLのピューロマイシン、100ug/mLのハイグロマイシンBおよびペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミンを添加したMEM-Earl培地(完全培地)中に維持した。
【0132】
結果として得られたバイオアッセイを使用して、レプチンの存在または非存在下でのLEPRシグナル伝達に対する本発明の抗LEPR抗体の効果を測定した。バイオアッセイのために、96ウェルフォーマットで20,000細胞/100ul/ウェルの密度で完全培地中にIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞をプレートし、翌日に培地を1%のBSAおよび0.1%のFBSを添加した適切な体積のOpti-MEM(アッセイ緩衝液)に30分間置き換えた。レプチンの非存在下での本発明の抗体の効果を測定するために、アッセイ緩衝液中で100nM~300fMに及ぶ最終濃度まで抗LEPR抗体またはアイソタイプ対照抗体を半ログで段階希釈してから細胞に加えた後、5%のCO2中37℃で終夜インキュベートした。レプチンの存在下での本発明の抗体の効果を測定するために、アッセイ緩衝液中200pMの固定した濃度のヒトレプチン(hLeptin;R&D Systems、#398-LP)を細胞に加えた直後、100nM~300fMに及ぶ最終濃度まで半ログで段階希釈した抗LEPR抗体またはアイソタイプ対照抗体を加えた。次に、試料を5%のCO2中37℃で終夜インキュベートした。次にOneGlo試薬(Promega、#E6051)を試料に加え、Envision Multilable Plate Reader(Perkin Elmer)によりLuminescentモードでルシフェラーゼ活性を測定した。相対光単位(RLU)値を得、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用い非線形回帰を使用して結果を解析した。hLeptin用量応答から得られた最大RLU値をIMR-32/STAT3-Luc/hLEPRアッセイにおいて100%の活性として定義した。
【0133】
表15に示すように、hLeptinの非存在下で試験した抗LEPR抗体は、hLeptin用量応答から得られた最大活性化のそれぞれ4%~8%の最大活性化を有してIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の弱い刺激を実証した。弱い刺激を有する1つの抗体は1.27nMのEC
50値を有した一方、別の抗体H4H18440P2は測定可能なEC
50値を有しなかった。200pMのhLeptinの存在下で、試験した抗LEPR抗体の3つは723pM(抗体H4H18457P2)~1.83nM(抗体H4H17322P2)または2.9nM(抗体H4H18464P2)に及ぶIC
50値でIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞においてレプチンの完全な阻害を実証した。試験した抗LEPR抗体の6つは、200pMのヒトレプチンの存在下でいかなる測定可能な阻害も実証しなかった。アイソタイプ対照抗体は、いずれのアッセイにおいてもIMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞のいかなる測定可能な刺激も実証しなかった。
【表15-1】
【表15-2】
【0134】
(実施例7)
異なる抗LEPRモノクローナル抗体間のOctet交差競合
Octet HTXバイオセンサープラットフォーム(Pall ForteBio Corp.)上でリアルタイムの標識フリーバイオレイヤー干渉法アッセイを使用して異なる抗LEPRモノクローナル抗体のパネル間の結合競合を決定した。全実験は、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05%v/vの界面活性剤Tween-20、1mg/mLのBSAを含有するpH7.4の緩衝液(HBS-EBT)中、1000rpmの速度でのプレートの振とうと共に25℃で行った。
【0135】
C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現される組換えヒトLEPR(hLEPR.MMH;配列番号90)への結合について2つの抗体が互いに競合できるかどうかを評価するために、20μg/mLのhLEPR-MMHを含有するウェル中にバイオセンサーチップを5分間浸漬することにより、約0.25nmのhLEPR-MMHを最初に、抗ペンタHis抗体をコーティングしたOctetバイオセンサーチップ(Fortebio Inc、#18-5122)に捕捉させた。次に、50μg/mLの第1の抗LEPRモノクローナル抗体(以下、mAb-1と称する)の溶液を含有するウェル中に210秒間浸すことにより、抗原を捕捉したバイオセンサーチップをmAb-1で飽和させた。その後に、50μg/mLの第2の抗LEPRモノクローナル抗体(以下、mAb-2と称する)の溶液を含有するウェル中にバイオセンサーチップを150秒間浸した。実験のあらゆるステップの間にバイオセンサーチップをHBS-EBT緩衝液中で洗浄した。実験の過程全体の間、リアルタイム結合応答をモニターし、あらゆるステップの最後に結合応答を記録した。mAb-1を予め複合体化させたhLEPR-MMHへのmAb-2の結合の応答を比較し、表16に示すように、異なる抗LEPRモノクローナル抗体の競合的/非競合的挙動を決定した。
【表16】
【0136】
表16に示すように、抗体H4H18439P2およびH4H18440P2は、それらの各々のエピトープへの結合について互いに競合する。LEPR抗体H4H18457P2、H4H18462P2、H4H18437P2、H4H18466P2およびH4H18508P2は、それらの各々のエピトープへの結合について互いに競合する。抗体H4H17322P2およびH4H18464P2は、H4H18439P2、H4H18440P2、H4H18457P2、H4H18462P2、H4H18437P2、およびH4H18466P2の各々のエピトープへの結合について競合しない。
【0137】
(実施例8)
ヒト化LEPRマウスにおけるLEPRアンタゴニスト抗体のin vivo有効性試験
摂食、体重および脂肪過多に対する本発明の3つの特異的アンタゴニスト抗LEPR抗体H4H17322P2、H4H18457P2およびH4H18464P2の効果を、マウスLEPRエクトドメイン配列の代わりにヒトLEPRエクトドメイン配列から構成されるレプチン受容体を発現する一匹飼いした遺伝子操作LEPRHu/Huマウスにおいて決定した。
【0138】
処置の5日前から1日前(-5日目および-1日目)の間にベースラインの1日摂食量を測定した。処置の4日前および処置の6日後(-4日目および-6日目)の脂肪過多を含む身体組成をμCTにより定量化した。0日目に32匹の12~13週齢の雄LEPR
HuHuマウスを、1日の予備処置(-1日目)からの体重に基づいて8匹のマウスの4つの群に無作為化した。0日目に、単回用量の30mg/kgアイソタイプ対照抗体、30mg/kgのH4H17322P2、30mg/kgのH4H18457P2、または30mg/kgのH4H18464P2のいずれかを皮下注射を介して各群に与えた。アイソタイプ対照抗体はいかなる公知のマウスタンパク質にも結合しない。各動物について試験の継続期間にわたって摂食量および体重を測定した。
図1は、各時点における各処置群についての平均のベースラインの1日摂食量からの摂食量の変化のパーセントを要約する。0日目からの体重の変化のパーセントを各時点において各動物について算出した。
図2は、各処置群の動物についての体重の変化の平均パーセントを要約する。
図3は、抗体処置の6日前および6日後のμCTにより定量化した各抗体処置群の動物についての平均脂肪量を要約する。全ての結果を平均±SEMとして表す。
【0139】
図1および
図2に示すように、抗LEPRアンタゴニスト抗体で処置したマウスは、摂食量の変化のパーセントおよび体重の変化のパーセントの増加を実証した。これらの増加は、アイソタイプ対照抗体処置では観察されなかった。
図1に示すように、30mg/kgのH4H17322P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して処置の1日後(1日目)に始まりその後の時点において摂食量の有意な増加を呈した。30mg/kgのH4H18457P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して2日目に始まりその後の時点において摂食量の有意な増加を呈した。30mg/kgのH4H18464P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して2日目に始まり4日目以外のその後の時点において摂食量の有意な増加を呈した。
図2に示すように、30mg/kgのH4H17322P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して治療の4日後(4日目)に始まりその後の時点において体重変化のパーセントの有意な増加を呈した。30mg/kgのH4H18457P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して3日目に始まりその後の時点において体重変化のパーセントの有意な増加を呈した。30mg/kgのH4H18464P2で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射したマウスと比較して4日目に始まりその後の時点において体重変化のパーセントの有意な増加を呈した。
図3に描写されるように、処置前(-4日目)の群間で脂肪量の差異はなかった。30mg/kgのH4H17322P2、H4H18457P2およびH4H18464P2抗体で処置したマウスは、アイソタイプ対照抗体と比較して処置の6日後(6日目)の脂肪量の有意な増加を実証した。結論として、アイソタイプ対照抗体はそうでなかったが、LEPRアンタゴニスト抗体での処置は、マウスにおける摂食量、体重および脂肪過多を増加させた。
【0140】
(実施例9)
本発明の抗LEPR抗体が結合するヒトLEPRのエピトープの決定
本発明の抗LEPR抗体が結合するヒトLEPRのエピトープを決定するために、Luminex FLEXMAP(FM3DD、LuminexCorp)フローサイトメトリーベースの解析を利用して組換えヒトLEPRタンパク質ドメインとの抗LEPR抗体の相互作用を特徴付けた。アッセイのために、約3百万のカルボキシル化Microplex(登録商標)ミクロスフェア(Luminex、商品番号LC1000A)を洗浄し、ボルテックスし、pH6.2の0.1MのNaPO4中(活性化緩衝液)中で超音波処理した後、遠心分離して上清を除去した。ミクロスフェアを120μLの活性化緩衝液中に再懸濁し、15μLの50mg/mLのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、Thermo Scientific、商品番号24500)の後、15μLの50mg/mLの1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC、ThermoScientific、商品番号22980)を25℃で加えることにより、カルボキシル基(-COOH)を活性化した。10分後、600μLの50mMのMES(pH5)(結合緩衝液)を加えて反応液のpHを5.0に低下させ、ミクロスフェアをボルテックスし、遠心分離して上清を除去した。結合緩衝液中、マウスIgGまたはヒトIgGのいずれかを有する500μLの20μg/mLのモノクローナル抗myc抗体と活性化されたビーズを直ちに混合し、25℃で2時間インキュベートした。50μLの1Mのトリス-HCl(pH8.0)を加えることにより結合反応を停止させ、ミクロスフェアを迅速にボルテックスし、遠心分離し、1mLのDPBSで4回洗浄して、非結合のタンパク質および他の反応成分を除去した。
【0141】
一時的に発現されたLEPRタンパク質は、C末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR細胞外ドメイン(ヒトLEPR-MMH、配列番号89)、C末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR CRH1(D1)(ヒトLEPR CRH1(D1)-MMH、アミノ酸209~236のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に配列番号89のアミノ酸1~208)、C末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR CRH1(D1,D2)ドメイン(ヒトLEPR CRH1(D1,D2)-MMH、アミノ酸319~346のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に配列番号89のアミノ酸1~318)、C末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR CRH1-Ig(D1,D2,D3)ドメイン(ヒトLEPR CRH1(D1,D2,D3)-MMH、アミノ酸279~306のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に配列番号89のアミノ酸1~278)、C末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR CRH1-Ig(D2,D3)ドメイン(ヒトLEPR CRH1-Ig(D2,D3)-MMH、アミノ酸199~226のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に配列番号89のアミノ酸1~198)、C末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR Ig(D3)ドメイン(ヒトLEPR Ig(D3)-MMH、アミノ酸89~116のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に配列番号89のアミノ酸1~88)、C末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR CRH2ドメイン(ヒトLEPR CRH2-MMH、アミノ酸208~235のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に配列番号89のアミノ酸1~207)、C末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR FNIIIドメイン(ヒトLEPR FNIII-MMH、アミノ酸205~232のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に配列番号89のアミノ酸1~204)、およびC末端のmyc-mycヘキサヒスチジンタグと共に発現されたヒトLEPR Ig-CRH2-FNIIIドメイン(ヒトLEPR Ig-CRH2-FNIII-MMH、アミノ酸511~538のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグの配列番号89のアミノ酸1~510)を含み、これらを無血清CHO-S-SFM II培地(Thermo Fisher、商品番号31033020)中に懸濁させた後、遠心分離により透明化させた。上記の通りに調製した固定化された抗mycモノクローナル抗体を有するミクロスフェアのアリコートをこれらのタンパク質上清のそれぞれ(1mL)に個々に加えた。ミクロスフェアを穏やかに混合し、25℃で2時間インキュベートし、1mLのDBPSで2回洗浄し、遠心分離して上清を除去し、最後に1mLのDPBS緩衝液中に再懸濁させた。全長ヒトLEPRおよび各ヒトLEPRドメインタンパク質との個々の反応からの48μLの抗myc IgG結合ミクロスフェアを回収し、3.6mLのPBS+20mg/mLのBSA+0.05%のナトリウムアジド(ブロッキング緩衝液)中で一緒に混合した。
【0142】
この混合プールから、75μLのミクロスフェアを96ウェルフィルタープレート(Millipore、商品番号:MSBVN1250)上にウェル毎にプレートし、25μLの個々の抗ヒトLEPRモノクローナル抗体(0.5または5μg/mL)と混合し、25℃で2時間インキュベートした後、0.05%のTween 20を含む200μLのDPBS(洗浄緩衝液)で2回洗浄した。個々のミクロスフェアに結合した抗LEPR抗体レベルの量を検出および定量化するために、ブロッキング緩衝液中の2.5μg/mLのR-PhycoerythrinコンジュゲートヤギF(ab’)2抗ヒトカッパー(Southern Biotech、商品番号2063-09)(100μL)またはブロッキング緩衝液中の1.25μg/mLのR-Phycoerythrin AffiniPure F(ab’)(100μL)またはブロッキング緩衝液中の1.25μg/mLのR-Phycoerythrin AffiniPure F(ab’)2 Fragment Goat Anti-Mouse IgG、F(ab’)2 Fragment Specific(Jackson Immunoresearch、商品番号:115-116-072)(100μL)を加え、25℃で30分間インキュベートした。30分後、試料を200μLの洗浄緩衝液で2回洗浄し、150μLの洗浄緩衝液中に再懸濁させた。ミクロスフェアのメジアン蛍光強度(MFI)をLuminex Analyzerで測定した。
【0143】
Luminexベースの解析の結果を表17にまとめる。Luminex MFIシグナル強度は、本発明の9つの抗LEPR抗体が完全なヒトLEPR細胞外ドメインに結合したことを指し示す。抗LEPR抗体H4H18439P2およびH4H18440P2は、ヒトLEPRのCRH1 D2ドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体H4H17322P2およびCOMP3551は、ヒトLEPRのCRH2ドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体H4H18437P2、H4H18457P2、H4H18508P2、H4H18466P2およびH4H18462P2は、ヒトLEPRのFNIIIドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体H4H18464P2は、ヒトLEPRのIg(D3)ドメイン内のエピトープに結合した。
【表17】
【0144】
本発明の範囲は、本明細書に記載される特定の実施形態により限定されない。実際、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な改変が以上の記載および添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合し、LEPRシグナル伝達をアンタゴナイズするが、レプチンとLEPRとの相互作用をブロックしない、単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、in vitroでのレプチン結合アッセイにおける測定において、約40%より多く前記相互作用をブロックしない、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目2)
(i)表面プラズモン共鳴による測定で、約10nM未満のKDで25℃において単量体ヒトLEPRに結合すること;
(ii)表面プラズモン共鳴による測定で、約5分より長いt1/2で25℃において単量体ヒトLEPRに結合すること;
(iii)表面プラズモン共鳴による測定で、約2.0nM未満のKDで25℃において二量体ヒトLEPRに結合すること;
(iv)表面プラズモン共鳴による測定で、約20分より長いt1/2で25℃において二量体ヒトLEPRに結合すること;
(v)ヒトヒトレプチンとの複合体でヒトLEPRに結合すること;
(vi)ヒトレプチンの存在下および非存在下で細胞表面発現LEPRに結合すること;および
(vii)細胞ベースのレポーターアッセイにおいて、約3.0nM未満のIC50でレプチン誘導性のLEPRシグナル伝達を阻害すること
からなる群から選択される1つまたは複数の追加の特性を呈する、項目1に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目3)
ヒトレプチンの非存在下での細胞ベースのレポーターアッセイにおいて、LEPRシグナル伝達の少なくとも部分的な活性化を呈する、項目1または2に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目4)
ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、(a)配列番号2、配列番号42、および配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)および(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目5)
配列番号2/10、42/10、および58/10からなる群から選択されるHCVR/LCVRのアミノ酸配列対の重鎖および軽鎖CDRを含む、項目4に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目6)
配列番号2/10、42/10、および58/10からなる群から選択されるHCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む、項目5に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目7)
LEPRシグナル伝達をアンタゴナイズする、項目6に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目8)
ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合し、(a)配列番号2、配列番号42、および配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)および(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む、項目1から3のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目9)
配列番号2/10、42/10、および58/10からなる群から選択されるHCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む参照抗体と、LEPRへの結合について競合する、項目1から4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目10)
配列番号2/10、42/10、および58/10からなる群から選択されるHCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じLEPR上のエピトープに結合する、項目1から9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目11)
項目1から10のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
(項目12)
レプチンシグナル伝達に関連するまたはそれにより引き起こされる疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に項目11に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
(項目13)
前記レプチンシグナル伝達に関連するまたはそれにより引き起こされる疾患または状態が、無食欲または他の精神医学的摂食障害、慢性腎臓疾患悪液質、他の悪液質、例えば、鬱血性心不全悪液質、肺悪液質、放射線悪液質、およびがん悪液質、自己免疫障害、例えば、炎症性腸疾患、ループスエリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬、心臓血管疾患、高血圧、鬱病、非アルコール性脂肪肝疾患、神経変性障害、鬱病、がん、例えば、肝細胞癌、黒色腫および乳がんからなる群から選択される、項目12に記載の方法。
(項目14)
活性化LEPR変異に関連するまたはそれにより引き起こされる疾患または状態を治療する方法であって、それを必要とする対象に項目11に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
(項目15)
前記LEPR変異がLEPR Q223Rである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記活性化LEPR変異に関連するまたはそれにより引き起こされる疾患または状態が悪液質である、項目14または15に記載の方法。
(項目17)
第2の治療剤を前記対象に投与することをさらに含み、前記第2の治療剤が、抗うつ剤、食欲刺激剤、無食欲および悪液質の治療、COX-2阻害剤、NSAID、悪液質を伴うまたは伴わない筋肉量、筋肉機能および/または筋肉強度の損失を回復させるための治療、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の治療、HIV/AIDS感染症の治療、TNF-アルファ産生のブロッキング剤、酸化防止剤、腫瘍壊死因子(TNF)のアンタゴニスト、Bリンパ球刺激剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、キナーゼ阻害剤、ならびに化学療法剤から選択される、項目12から16のいずれか一項に記載の方法。