(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010996
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】オープンラック式気化装置の熱交換パネル、及び、当該熱交換パネルを備えたオープンラック式気化装置
(51)【国際特許分類】
F28D 3/02 20060101AFI20240118BHJP
F17C 9/02 20060101ALI20240118BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F28D3/02
F17C9/02
F28F1/32 F
F28F1/32 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112642
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】早田 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 進一
(72)【発明者】
【氏名】石山 弘之
【テーマコード(参考)】
3E172
3L103
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172GA15
3E172GA23
3L103AA35
3L103BB30
3L103CC03
3L103DD08
3L103DD33
3L103DD36
3L103DD42
(57)【要約】
【課題】熱交換パネルの気化性能を高める。
【解決手段】オープンラック式気化装置1の熱交換パネル3は、複数の伝熱管を備える。伝熱管2は、本体21と、本体の外周面から外方に突出する複数のフィン22とを有する。複数のフィンには、面内方向に突出する面内フィン(第1フィンF1)と、面内方向とは異なる方向に突出する面外フィン(第2フィンF2、第3フィンF3)と、が含まれる。隣り合う伝熱管の面内フィン同士は、当接する。面内フィンの突出長さL1は、面外フィンの突出長さL2、L3以下でかつ、前記複数のフィンにおいて最も短い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が外表面を流下することによって対象流体を気化させる、オープンラック式気化装置の熱交換パネルであって、
それぞれ前記対象流体が管内を流れると共に、面内方向に並ぶことによって前記熱交換パネルを構成する複数の伝熱管を備え、
前記熱媒体は、前記面内方向に直交する面外方向から前記熱交換パネルに供給され、
前記伝熱管は、本体と、前記本体の外周面から外方に突出する複数のフィンとを有し、
前記複数のフィンには、前記面内方向に突出する面内フィンと、前記面内方向とは異なる方向に突出する面外フィンと、が含まれ、隣り合う伝熱管の前記面内フィン同士は、当接し、
前記面内フィンの突出長さは、前記面外フィンの突出長さ以下でかつ、前記複数のフィンにおいて最も短いオープンラック式気化装置の熱交換パネル。
【請求項2】
請求項1に記載のオープンラック式気化装置の熱交換パネルにおいて、
前記複数のフィンは、前記本体の外周面において周方向に等間隔に設けられ、
前記伝熱管の横断面において、前記面外フィンは、前記本体の中心からの放射方向に対して、前記面内フィンから離れる方向に傾いており、
前記面外フィンの前記放射方向に対する傾斜角度は、前記面内フィンに近い面外フィンほど大きいオープンラック式気化装置の熱交換パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオープンラック式気化装置の熱交換パネルにおいて、
前記面外フィンの突出長さは、前記面内フィンから離れた面外フィンほど長いオープンラック式気化装置の熱交換パネル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載された熱交換パネルと、
前記熱交換パネルを構成する前記伝熱管の一端に取り付けられかつ、前記伝熱管に前記対象流体を供給する第1のヘッダー管と、
前記伝熱管の他端に取り付けられかつ、気化した流体が流れる第2のヘッダー管と、
前記熱交換パネルの上部に配設されかつ、前記熱交換パネルの外表面に前記熱媒体を供給するトラフと、を備えているオープンラック式気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、オープンラック式気化装置の熱交換パネル、及び、当該熱交換パネルを備えたオープンラック式気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オープンラック型の気化装置に用いられる伝熱管パネルが記載されている。この気化装置は、液化天然ガスを海水によって気化させる装置である。伝熱管パネルは、複数の伝熱管を有している。海水はトラフから伝熱管の外面に向けて流出する。
【0003】
特許文献1に記載されている伝熱管は、管本体の周方向に等間隔で並ぶ複数のフィンを有している。複数のフィンは、トラフから流出する海水の流出方向に直交する直交方向に、管本体から突出する直交フィンと、流出方向に沿って管本体からトラフに向かって延びる仮想線と直交フィンとの間の領域に配置されたフィンとを含む。特許文献1に記載されている伝熱管は、前記領域に配置されたフィンの径方向における長さが、直交フィンよりも短くかつ、直交フィンに近いほど前記径方向における長さが長い。これにより、特許文献1に記載されている気化装置は、前記領域において互いに隣り合うフィンの間の空間における並び方向の開口長さが同一になって、各空間に海水を均一に供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の直交フィンは、伝熱管の並び方向に延びている。特許文献1に記載されている伝熱管は、直交フィンの長さが長い。このため、特許文献1に記載されている伝熱管パネルは、伝熱管同士の間隔が広い。パネルの長さ(つまり、伝熱管が並んだ方向の長さ)は、例えば気化装置の設置場所の制限を受ける。伝熱管同士の間隔が広いと、一枚のパネルに含まれる伝熱管の数が少なくなってしまう。そのため、一枚のパネルの気化能力が低下してしまう。
【0006】
また、気化装置において、伝熱管の下部は、低温の液化天然ガスと接触している。伝熱管の下部では、その外表面に氷がつきやすい。特許文献1に記載されている伝熱管は、前記領域に配置されたフィンの径方向における長さが短い。このため、伝熱管の外表面が氷で覆われると、短いフィンが氷に埋もれてしまう可能性がある。その結果、フィンによる伝熱機能が発揮できず、熱交換パネルの気化性能が低下してしまう。
【0007】
ここに開示する技術は、オープンラック式気化装置の、熱交換パネルの気化性能を高める。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する技術は、オープンラック式気化装置の熱交換パネルに係る。熱交換パネルは、熱媒体が外表面を流下することによって対象流体を気化させる。熱交換パネルは、
それぞれ前記対象流体が管内を流れると共に、面内方向に並ぶことによって前記熱交換パネルを構成する複数の伝熱管を備え、
前記熱媒体は、前記面内方向に直交する面外方向から前記熱交換パネルに供給され、
前記伝熱管は、本体と、前記本体の外周面から外方に突出する複数のフィンとを有し、
前記複数のフィンには、前記面内方向に突出する面内フィンと、前記面内方向とは異なる方向に突出する面外フィンと、が含まれ、隣り合う伝熱管の前記面内フィン同士は、当接し、
前記面内フィンの突出長さは、前記面外フィンの突出長さ以下でかつ、前記複数のフィンにおいて最も短い。
【0009】
前記の構成によると、熱交換パネルを構成する伝熱管において、面内方向に突出する面内フィンの突出長さが短い。隣り合う伝熱管の面内フィン同士は当接するが、面内フィンの突出長さが短いため、隣り合う伝熱管の間隔が狭くなる。熱交換パネルの長さを長くしなくても、一枚の熱交換パネルに含まれる伝熱管の数を多くできる。一枚の熱交換パネルの気化能力を高くできる。
【0010】
また、面内方向とは異なる方向に突出する面外フィンの突出長さが比較的長い。伝熱管の外表面に氷がついても、突出長さの長い面外フィンは氷に埋もれにくい。面外フィンの伝熱機能の低下が抑制される。
【0011】
従って、この構成の熱交換パネルは、気化性能が向上する。
【0012】
前記複数のフィンは、前記本体の外周面において周方向に等間隔に設けられ、
前記伝熱管の横断面において、前記面外フィンは、前記本体の中心からの放射方向に対して、前記面内フィンから離れる方向に傾いており、
前記面外フィンの前記放射方向に対する傾斜角度は、前記面内フィンに近い面外フィンほど大きい、としてもよい。
【0013】
面内フィンに近い位置の面外フィンは、隣り合う伝熱管における面外フィンと対向する。前述したように、面内フィンの突出長さが短く、隣り合う伝熱管の間隔が狭い場合、隣り合う伝熱管同士で対向する面外フィン同士の間隔も狭い。面外フィン同士の間隔が狭いと、当該面外フィンと面外フィンとの間を通過して伝熱管の本体まで到達する熱媒体の量が減ってしまう。これは、熱交換パネルの気化性能の向上に不利である。
【0014】
面内フィンに近い位置の面外フィンを、面内フィンから離れる方向に傾けると、隣り合う伝熱管同士で対向する面外フィン同士の間隔が広くなる。面外フィンと面外フィンとの間を通過して伝熱管の本体まで到達する熱媒体の量の減少が抑制される。熱交換パネルの気化性能が向上する。
【0015】
また、面外フィンの放射方向に対する傾斜角度を、面内フィンに近い面外フィンほど大きくする、言い換えると、面内フィンから離れた面外フィンほど、傾斜角度を小さくする。面外フィンの位置に応じて傾斜角度を変えることにより、隣り合う面外フィン同士の間隔を、熱交換パネルの全体において、均等にする、又は、均等に近づけることができる。これにより、面外フィンと面外フィンとの間を通過して伝熱管の本体まで到達する熱媒体の量を、均等にする、又は、均等に近づけることができることができるため、熱交換パネルの気化性能が向上する。
【0016】
前記面外フィンの突出長さは、前記面内フィンから離れた面外フィンほど長い、としてもよい。
【0017】
この構成によると、面内フィンに近い位置の面外フィンの突出長さは短い。これにより、隣り合う伝熱管同士で対向する面外フィン同士の間隔が狭くなることが抑制される。面外フィンと面外フィンとの間を通過して伝熱管の本体まで到達する熱媒体の量の減少が抑制される。熱交換パネルの気化性能が向上する。
【0018】
また、面内フィンから離れた位置の面外フィンの突出長さは長い。つまり、面外方向、又は、ほぼ面外方向に突出する面外フィンの突出長さは長い。面外方向、又は、ほぼ面外方向に突出する面外フィンは、その突出長さが長くても、他の面外フィンと干渉することがない。面外フィンの突出長さを長くすることにより、伝熱面積が拡大する。また、伝熱管の外表面が氷で覆われた場合でも、突出長さの長い面外フィンは、氷に埋もれない。面外フィンによる伝熱機能が発揮され、伝熱管の外表面に氷がついた場合でも、熱交換パネルの気化性能が高く維持される。
【0019】
ここに開示する技術は、オープンラック式気化装置に関する。このオープンラック式気化装置は、前述した熱交換パネルと、
前記熱交換パネルを構成する前記伝熱管の一端に取り付けられかつ、前記伝熱管に前記対象流体を供給する第1のヘッダー管と、
前記伝熱管の他端に取り付けられかつ、気化した流体が流れる第2のヘッダー管と、
前記熱交換パネルの上部に配設されかつ、前記熱交換パネルの外表面に前記熱媒体を供給するトラフと、を備えている。
【0020】
前述したように、熱交換パネルは、気化性能が向上するから、前記熱交換パネルを備えたオープンラック式気化装置も、その性能が向上する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、このオープンラック式気化装置の熱交換パネル、及び、当該熱交換パネルを備えたオープンラック式気化装置は、気化性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、オープンラック式気化装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、熱交換パネルの断面図(
図1のII-II断面図の一部)である。
【
図3】
図3は、熱交換パネルの変形例を示す
図2対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、ここに開示するオープンラック式気化装置、及び、そこに用いる熱交換パネルについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。尚、以下の説明は例示である。
【0024】
(オープンラック式気化装置の構成)
図1は、オープンラック式気化装置(Open Rack Vaporizer:以下、ORV)1の全体構成を示している。このORV1は、低温液体である液化天然ガス(LNG)を、熱媒体としての海水によって加熱して気化する装置である。
図1は、ORV1の要部を構成する熱交換パネル3とそれに付帯する設備とを示している。ORV1は、上下方向に伸びる伝熱管2を、水平方向に複数本、並設してパネル状にした熱交換パネル3を備えている。図示は省略するが、ORV1は、熱交換パネル3を、仕様に応じて、複数、並列に配置して構成される。
【0025】
熱交換パネル3の上側には、水平に伸びる上部ヘッダー管4が配設されている。熱交換パネル3の下側には、上部ヘッダー管4に平行となるように、水平に伸びる下部ヘッダー管5が配設されている。各伝熱管2は、その上端が上部ヘッダー管4に接続され、その下端が下部ヘッダー管5に接続されている。伝熱管2は、上部ヘッダー管4と下部ヘッダー管5とを互いに連通させる。
【0026】
上部ヘッダー管4は、上部マニホールド6に連通している。下部ヘッダー管5は、下部マニホールド7に連通している。
【0027】
熱交換パネル3の上部には、水平方向に伸びるトラフ8が、伝熱管2に隣接して配設されている。トラフ8に海水が供給されると、トラフ8からあふれ出た海水が、熱交換パネル3(つまり、伝熱管2)の外表面に沿って流れ落ちる。
【0028】
LNGは、下部マニホールド7を経て下部ヘッダー管5に供給され、伝熱管2の管内に流入する。伝熱管2の管内に流入したLNGは、熱交換パネル3の表面に沿って流れ落ちる海水と熱交換することによって気化し、NGとなって、伝熱管2の上端部から上部ヘッダー管4に流出する。上部ヘッダー管4に流出したNGは、上部マニホールド6を通じて外部に送り出される。尚、LNGが上部マニホールド6に流入し、伝熱管2をダウンフローすることによってLNGが気化した後、NGが下部マニホールド7から流出するよう、ORV1を構成してもよい。
【0029】
(熱交換パネルの構成)
図2は、熱交換パネル3の断面図を示している。尚、
図2では、断面に付すべきハッチングを省略している。熱交換パネル3は、前述したように、複数の伝熱管2が面内方向に並んで構成されている。面内方向は、伝熱管パネル3が広がる方向であって、トラフ8から海水が供給される面外方向に直交する方向である。面内方向は、
図2における紙面左右方向であり、面外方向は、
図2における紙面上下方向である。
【0030】
伝熱管2は、円管状の本体21と、本体21の外周面から径方向の外方に向かって広がる複数のフィン22とを含んで構成されている。各フィン22は、本体21の外周面に対して、径方向外側に突出している。詳細な図示は省略するが、各フィン22は、伝熱管2の管軸方向、つまり、
図2における紙面に直交する方向に伸びている。
【0031】
図2の構成例において、伝熱管2は10個のフィン22を有している。10個のフィン22は、本体21の外周面において、周方向に等間隔に設けられている。伝熱管2は、面外方向に広がる平面に対し、面対称に構成されていると共に、面内方向に広がる平面に対しても、面対称に構成されている。
【0032】
10個のフィン22は、面内方向に突出する面内フィンと、面内方向とは異なる方向に突出する面外フィンとを含んでいる。
図2において、本体21から紙面右方向に突出する面内フィンを、第1フィンF1とし、第1フィンF1から反時計回り方向に各フィン22を、第2フィンF2、第3フィンF3、第4フィンF4、第5フィンF5、第6フィンF6、第7フィンF7、第8フィンF8、第9フィンF9、第10フィンF10としたときに、第1フィンF1及び第6フィンF6はそれぞれ、面内方向に突出する面内フィンであり、第2フィンF2~第5フィンF5、及び、第7フィンF7~第10フィンF10はそれぞれ、面外フィンである。面内フィンである第1フィンF1及び第6フィンF6は、面内方向に隣り合う伝熱管2の第6フィンF6及び伝熱管2の第1フィンF1と接する。
【0033】
尚、この伝熱管2は、本体21から面外方向へ突出するフィンは有していない。
【0034】
次に、各フィンの長さ及び角度について説明をする。前述したように、伝熱管2は、面外方向に広がる平面、及び、面内方向に広がる平面のそれぞれについて面対称であるため、ここでは、第1フィンF1、第2フィンF2及び第3フィンF3について説明をする。第1フィンF1、第2フィンF2及び第3フィンF3についての説明は、第6フィンF6、第5フィンF5及び第4フィンF4についても同じであり、第6フィンF6、第7フィンF7及び第8フィンF8についても同じであり、第1フィンF1、第9フィンF9及び第10フィンF10についても同じである。
【0035】
先ず、各フィンの長さについて説明する。この長さは伝熱管2の本体21の外周面(
図2に一点鎖線で示す)から、フィンの先端までの突出長さを意味する。第1フィンF1の長さL1、第2フィンF2の長さL2、及び、第3フィンF3の長さL3を比較した場合に、
図2の例では、第1フィンF1の長さL1が最も短く、第3フィンF3の長さL3が最も長く、第2フィンF2の長さL2はL1以上でL3以内の中間である。第1フィンF1の長さL1、第2フィンF2の長さL2、及び、第3フィンF3の長さL3は、L1≦L2≦L3(但し、L1<L3)の関係を満たせばよい。換言すれば、面内フィンの突出長さは、面外フィンの突出長さ以下でかつ、複数のフィンにおいて最も短い。
図2の例では、第1フィンF1から離れるに従い、フィンの長さが長くなる。
【0036】
面内フィンである第1フィンF1の突出長さが短いため、隣り合う伝熱管2の間隔は比較的狭い。ORV1における熱交換パネル3の長さ、つまり、伝熱管2が並んだ面内方向の長さは、例えばORV1の設置場所による制限を受ける。伝熱管2同士の間隔が狭いと、熱交換パネル3の長さを長くしなくても、一枚の熱交換パネル3に含まれる伝熱管2の数を多くすることができる。この熱交換パネル3は、一枚当たりの気化能力を高めることができる。
【0037】
面外フィンは、突出長さが長い。ORV1において、LNGが供給される伝熱管2の下部は、LNGが低温であるため、外表面に氷がつきやすい。そのため、熱交換パネル3の外表面が氷で覆われる場合もある。
図2に仮想的に示すように、熱交換パネル3の外表面が氷100で覆われても、面外フィンである第2フィンF2及び第3フィンF3は突出長さが長いため、第2フィンF2及び第3フィンF3が氷100に埋もれてしまうことが抑制される。その結果、面外フィンによる伝熱機能が発揮され、熱交換パネル3の気化性能が低下してしまうことが抑制される。
【0038】
次に、各フィンの角度について説明する。第1フィンF1は、前述したように、面内方向に突出している。第2フィンF2は、
図2に二点鎖線で示すように、伝熱管2の中心からの放射方向に対して、第1フィンF1から離れる方向に、角度θ2だけ傾いている。また、第3フィンF3は、伝熱管2の中心からの放射方向に対して、第1フィンF1から離れる方向に、角度θ3だけ傾いている。角度θ3は、角度θ2よりも小さい。
【0039】
第2フィンF2は、第3フィンF3よりも第1フィンF1に近い。第2フィンF2は、隣り合う伝熱管2の第5フィンF5と対向する。前述したように、面内フィンの突出長さが短く、隣り合う伝熱管2の間隔が狭い場合、第2フィンF2と第5フィンF5との間隔も狭くなる。第2フィンF2と第5フィンF5との間隔が狭いと、第2フィンF2と第5フィンF5との間を通過して本体21へ到達する海水の量が減ってしまう。これは、熱交換パネル3の気化性能の向上に不利になる。
【0040】
そこで、前述したように、第2フィンF2(及び第5フィンF5)を第1フィンF1(及び第6フィンF6)から離れる方向に傾けることにより、第2フィンF2と第5フィンF5との先端同士の間隔P1が広くなる。また、前述したように第2フィンF2の長さL2(及び第5フィンF5の長さ)は、第3フィンF3の長さL3(及び第4フィンF4の長さ)よりも短い。このことによっても、第2フィンF2と第5フィンF5との先端同士の間隔P1が広くなる。第2フィンF2と第5フィンF5との先端同士の間隔P1が広くなることによって、ここを通過して本体21へ到達する海水の量を十分に確保できる。
【0041】
また、第1フィンF1から離れた第3フィンF3の傾斜角度θ3を相対的に小さくすることによって、第3フィンF3と第2フィンF2との先端同士の間隔P2、及び、第3フィンF3と隣りの第4フィンF4との先端同士の間隔P3が、それぞれ比較的大きくなる。その結果、熱交換パネル3の全体においてフィンとフィンとの先端同士の間隔P1、P2及びP3が均等になる、又は、均等に近づけることができる。これにより、フィンとフィンとの間を通過して本体21へ到達する海水の量が、均等になる、又は、均等に近づき、熱交換パネル3の気化性能が向上する。
【0042】
ここで、前述したように、この伝熱管2においては、面外方向に突出するフィンを設けていない、つまり、第3フィンF3と第4フィンF4との間にフィンを設けてない。このことにより、第3フィンF3と第4フィンF4との先端同士の間隔P3が比較的大きくなり、熱交換パネル3の全体に、海水を均等、又は、略均等に供給することが可能になる。
【0043】
第3フィンF3及び第4フィンF4はそれぞれ、面外方向に近い方向に、伝熱管2の本体21から突出しており、第3フィンF3及び第4フィンF4は互いに略平行である。このため、第3フィンF3及び第4フィンF4の長さL3を長くしても、他のフィンと干渉することがなく、しかも、フィンとフィンとの先端同士の間隔が狭くなることもない。第3フィンF3(及び第4フィンF4)の長さL3を最も長くすることで、伝熱面積の拡大が図られる。また、伝熱管2に氷100がついた場合でも、第3フィンF3(及び第4フィンF4)が氷100に埋まってしまうことが回避される。熱交換パネル3の気化性能の低下が抑制される。
【0044】
(熱交換パネルの変形例)
図3は、熱交換パネルの変形例を示している。
図3の熱交換パネル3は、伝熱管20の構成が、
図2の熱交換パネル3とは異なる。伝熱管20は12個のフィン22を有している。12個のフィン22は、本体21の外周面において、周方向に等間隔に設けられている。伝熱管20は、面外方向に広がる平面に対し、面対称に構成されていると共に、面内方向に広がる平面に対しても、面対称に構成されている。
【0045】
図3において、本体21から紙面右方向に突出する面内フィンを、第1フィンF1とし、第1フィンF1から反時計回り方向に各フィン22を、第2フィンF2、第3フィンF3、第4フィンF4、第5フィンF5、第6フィンF6、第7フィンF7、第8フィンF8、第9フィンF9、第10フィンF10、第11フィンF11,第12フィンF12としたときに、第1フィンF1及び第7フィンF7はそれぞれ、面内方向に突出する面内フィンであり、第2フィンF2~第6フィンF6、及び、第8フィンF8~第12フィンF12はそれぞれ、面外フィンである。第4フィンF4及び第10フィンF10はそれぞれ、面外方向に突出するフィンである。
【0046】
次に、各フィンの長さについて説明する。第1フィンF1の長さL1、第2フィンF2の長さL2、及び、第3フィンF3の長さL3を比較した場合に、
図3の例では、第1フィンF1の長さL1が最も短く、第3フィンF3の長さL3が最も長く、第2フィンF2の長さL2はL1以上でL3以内の中間である。第1フィンF1の長さL1、第2フィンF2の長さL2、及び、第3フィンF3の長さL3は、L1≦L2≦L3(但し、L1<L3)の関係を満たせばよい。
図3の例では、第1フィンF1から離れるに従い、フィンの長さが長くなる。尚、第4フィンF4の長さL4は、第3フィンF3の長さL3と同じか、それよりも長くすればよい。
【0047】
面内フィンである第1フィンF1の長さL1を短くすることで、この熱交換パネル3においても、隣り合う伝熱管20の間隔が狭くなるから、一枚の熱交換パネル3に含まれる伝熱管20の数を多くすることができる。この熱交換パネル3は、一枚当たりの気化能力を高めることができる。
【0048】
また、面外フィンである、第2フィンF2、第3フィンF3及び第4フィンF4の突出長さL2、L3及びL4がそれぞれ長いため、これらのフィンが氷に埋もれてしまうことが抑制される。その結果、面外フィンによる伝熱機能が発揮され、熱交換パネル3の気化性能が低下してしまうことが抑制される。
【0049】
次に、各フィンの角度θ2及びθ3について説明する。面外フィンの傾斜角度は、第1フィンF1から離れるに従い小さくなる。具体的に、第2フィンF2の傾斜角度θ2は、第3フィンF3の傾斜角度θ3よりも大きい。
【0050】
第2フィンF2の傾斜角度θ2を比較的大きくすることにより、第2フィンF2と、隣りの伝熱管20の第6フィンF6との先端同士の間隔P1を広くできる。また、第2フィンF2の長さL2が相対的に短いため、このことによっても、第2フィンF2と第6フィンF6との先端同士の間隔P1が広くなる。第2フィンF2と、隣りの伝熱管20の第6フィンF6との間を通過して本体21へ到達する海水の量を十分に確保できる。
【0051】
また、第3フィンF3の傾斜角度θ3を相対的に小さくすることによって、第3フィンF3と第2フィンF2との間隔P2、及び、第3フィンF3と第4フィンF4との間隔P3が、それぞれ比較的大きくなる。その結果、熱交換パネル3の全体においてフィンとフィンとの先端同士の間隔P1、P2及びP3が均等になる、又は、均等に近づけることができる。これにより、フィンとフィンとの間を通過する熱媒体の量が、均等になる、又は、均等に近づき、熱交換パネル3の気化性能が向上する。
【0052】
また、第3フィンF3及び第4フィンF4の長さL3及びL4を長くすることにより、フィン同士が干渉することなくかつ、フィンとフィンとの先端同士の間隔を狭くすることなく、伝熱面積の拡大が図られる。また、伝熱管20に氷がついた場合でも、第3フィンF3及び第4フィンF4が氷に埋まってしまうことが回避される。熱交換パネル3の気化性能の低下が抑制される。
【0053】
尚、伝熱管2、20の構成例は、ここに挙げた構成例に限らない。伝熱管が有するフィンの数は、適宜の数に設定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 オープンラック式気化装置
2 伝熱管
20 伝熱管
21 本体
22 フィン
4 上部ヘッダー管(第2のヘッダー管)
5 下部ヘッダー管(第1のヘッダー管)
8 トラフ
F1 第1フィン(面内フィン)
F2 第2フィン(面外フィン)
F3 第3フィン(面外フィン)
F4 第4フィン(面外フィン)
F5 第5フィン(面外フィン)
F6 第6フィン(面内フィン、面外フィン)
F7 第7フィン(面内フィン、面外フィン)
F8 第8フィン(面外フィン)
F9 第9フィン(面外フィン)
F10 第10フィン(面外フィン)
F11 第11フィン(面外フィン)
F12 第12フィン(面外フィン)