(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109965
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】高圧吸入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20240806BHJP
A61M 11/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61M11/00 D
A61M11/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089512
(22)【出願日】2024-05-31
(62)【分割の表示】P 2021505977の分割
【原出願日】2019-08-07
(31)【優先権主張番号】18188584.9
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/717,614
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519084526
【氏名又は名称】インヴォックス ベルジアム エヌヴイ
【氏名又は名称原語表記】invoX Belgium NV
【住所又は居所原語表記】Agoralaan building Abis, 3590 Diepenbeek Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】バルテルズ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルト, ユーゲン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医学的に活性な液体用の吸入装置であり、噴霧のために特に高圧を供給する吸入装置を提供する。
【解決手段】吸入装置は、ハウジング1と、リザーバ2と、機械的エネルギー4をポンプユニット3に送達するための手段に接続されたポンプユニットと、ノズル5とを備える。ポンプユニットは、中空円筒部3Aとピストン3Bとを備え、円筒部は、ピストンの上流端部3B’を受け入れるように構成された規定された第1の断面A1を有する内部空間3Cを有する。機械的エネルギーを送達するための手段は、加圧ガスであり、装置は、加圧ガスを保持するための内部容積を有する圧力室6を備え、圧力室の壁は、その内部容積を変化させるためのプランジャ7によって設けられ、プランジャは、ピストンまたは円筒部に機械的に結合されており、プランジャは、ポンプ室の断面よりも大きい断面A2を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学的に活性な液体のエアロゾルを生成するための吸入装置であって、
ハウジング(1)と、このハウジング(1)内に、前記医学的に活性な液体を貯蔵するためのリザーバ(2)と、このリザーバ(2)の下流に、機械的エネルギー(4)をポンプユニット(3)に送達するための手段に接続された、圧力を生成するための前記ポンプユニット(3)と、前記ポンプユニット(3)の下流にノズル(5)と
を備え、
前記ポンプユニット(3)は、中空円筒部(3A)とピストン(3B)とを備え、前記円筒部(3A)は、前記ピストン(3B)の上流端部(3B’)を受け入れるように構成された規定された第1の断面(A1)を有する内部空間(3C)を有し、前記円筒部(3A)および前記ピストン(3B)は、可変容積を有するポンプ室を形成するように、互いに対して直線的に移動可能であり、
前記機械的エネルギー(4)を送達するための手段は加圧ガスであり、前記吸入装置は、前記加圧ガスを保持するための内部容積を有する圧力室(6)を備え、前記圧力室(6)の壁は、前記圧力室(6)の前記内部容積を変化させるように往復直線運動を実行するように構成されたプランジャ(7)によって設けられ、
前記プランジャ(7)は、前記ポンプユニット(3)の前記ピストン(3B)または前記円筒部(3A)に機械的に結合されており、
前記プランジャ(7)が前記ポンプ室の前記断面(A1)よりも大きい断面(A2)を示す、吸入装置。
【請求項2】
前記ポンプ室の前記断面(A1)に対する前記プランジャ(7)の前記断面(A2)の比が2よりも大きい、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項3】
前記ポンプ室の前記断面(A1)に対する前記プランジャの前記断面(A2)の比が10よりも大きい、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項4】
前記加圧ガスが、
-加圧および/または液化ガスで満たされた容器(8)、または
-手動で加圧可能であり、前記加圧ガスを一時的に保持し、制御可能に放出することができる室
によって供給される、請求項1または2に記載の吸入装置。
【請求項5】
前記ピストン(3B)が中空である、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項6】
-前記ピストン(3B)は不動であり、前記ハウジング(1)または前記ノズル(5)にしっかりと取り付けられており、前記中空円筒部(3A)は、前記ハウジング(1)または前記ノズル(5)に対して移動可能である、または
-前記中空円筒部(3A)は不動であり、前記ハウジング(1)または前記ノズル(5)にしっかりと取り付けられており、前記ピストン(3B)は、前記ハウジング(1)または前記ノズル(5)に対して移動可能である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項7】
前記リザーバ(2)の方向への液体の逆流を遮断するために、逆止弁(11)が前記ポンプ室の上流に配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項8】
追加的に、前記比の増幅効果をさらに増大させるために機械的レバー機構が設けられている、請求項1から7のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項9】
前記プランジャ(7)の推進運動によって負荷可能である機械的エネルギー(12)を一時的に貯蔵するための手段が提供され、前記手段が、その貯蔵されたエネルギーを除荷することによって前記プランジャ(7)の後進運動をもたらすように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項10】
機械的エネルギー(12)を一時的に貯蔵するための前記手段が、弾性ばね、ガスばね、または磁気ばねである、請求項9に記載の吸入装置。
【請求項11】
前記ノズル(5)が衝突型である、請求項1から10のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項12】
前記ポンプ室の容積が少なくとも30μl、または少なくとも50μl、または約100から250μlに達する、請求項1から11のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項13】
前記ポンプユニット(3)が、前記ポンプ室内に少なくとも100バールの圧力を供給するように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項14】
(i)前記プランジャ(7)および
(ii)前記ピストン(3B)および/または前記円筒部(3A)が平行方向に移動可能である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項15】
-充填段階において、前記ポンプ室の容積を増やすことによって前記ポンプ室内に負のゲージ圧を供給することと、それにより
-前記負のゲージ圧により、前記ポンプ室を前記リザーバ(2)からの液体で満たすことと、
-放出段階において、前記第2の断面(A2)を有する前記圧力室(6)内に正のゲージ圧を供給することと、それにより
-前記プランジャ(7)の運動を生じさせることと、
-前記ポンプ室の容積を減少させ、その内部空間内に正圧を発生させるように、前記運動を機械的に前記ピストン(3B)または前記円筒部(3A)に伝達することと、それにより
-前記医学的に活性な液体を前記ポンプ室から前記ノズル(5)を通して放出することと
を含み、
前記圧力室(6)の圧力が増幅される、
請求項1から14のいずれか一項に規定された吸入装置を用いて液体のエアロゾルを生成する方法。
【請求項16】
前記圧力室(6)内の圧力が、加圧ガスで容器(8)に対する弁(9)を開くことによって、または前記圧力室(6)を手動で加圧することによって供給される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
その容積の減少による前記ポンプ室からの液体の前記放出に続いて、前記放出段階中に負荷された機械的エネルギー(12)を一時的に貯蔵するための手段が、前記貯蔵されたエネルギーを放出することによって、前記ポンプ室の内部空間が再び増加し、その結果、前記内部空間に負圧が発生し、前記リザーバ(2)からの医学的に活性な液体が前記ポンプ室に再充填される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記再充填段階の開始時に、前記圧力室(6)の内容物が大気に放出される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
動物またはヒトへのエアロゾル化された形態の医学的に活性な液体の吸入投与のための、請求項1から14のいずれか一項に記載の吸入装置の使用。
【請求項20】
医学的に活性な液体の吸入投与による肺の疾患または状態の治療、安定化または予防のための方法であって、前記医学的に活性な液体が請求項1から14のいずれか一項に記載の吸入装置によって生成および投与される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的に活性な液体用の吸入装置の分野に関する。特に、本発明は、噴霧のために特に高圧を供給する吸入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネブライザまたは液体用の他のエアロゾル発生器は、古くから当技術分野で知られている。とりわけ、そのような装置は、医学および治療で使用されている。医学および治療では、そのような装置は、エアロゾル、すなわちガス中に埋め込まれた小さな液滴の形で有効成分を適用するための吸入装置として機能する。このような吸入装置は、例えば特許文献1から既知である。この吸入装置の必須の構成要素は、エアロゾル化される液体が含まれるリザーバと、噴霧するために十分に高い圧力を生成するためのポンプユニットと、ノズルの形の霧化装置である。
【0003】
このような吸入装置の改良は、本発明と同じ出願人によって出願された特許文献2に開示されており、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
特定の用途に応じて、一用量あたりの噴霧液体の量は、現在利用可能なソフトミスト吸入装置では通常約15μlの範囲内であるが、より多量の一用量あたり最大250μlの送達が望ましいであろう。従来の推進剤駆動の定量吸入器でさえ、1回の作動あたり最大50~80μlの一用量の送達にのみ適している。1つの潜在的な解決策は、1回の一用量が2回以上の連続した装置作動で送達されるように、投与サイクルを1回以上繰り返すことである。しかし、これによって放出時間が長くなり、装置のポンプ室を再充填する時間も追加する必要があるという事実によってさらに長くなる。また、ユーザによる装置の繰り返しの再現可能な作動は、特に喘息治療薬などのようにすぐにその効果を発揮しなければならない活性成分に関して、問題になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0 627 230号明細書
【特許文献2】国際出願PCT/EP2018/061056号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、既知の技術の欠点を回避する装置を提供することである。装置は、たった1回の投与サイクルで、十分に短い時間に多量の医学的に活性な液体を放出することを可能にしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、医学的に活性な液体のエアロゾルを生成するための吸入装置であって、
ハウジング(1)と、このハウジング(1)内に、医学的に活性な液体を貯蔵するためのリザーバ(2)と、このリザーバ(2)の下流に、機械的エネルギー(4)をポンプユニット(3)に送達するための手段に接続された、圧力を生成するためのポンプユニット(3)と、ポンプユニット(3)の下流にノズル(5)とを備え、
ポンプユニット(3)は、中空円筒部(3A)とピストン(3B)とを備え、円筒部(3A)は、ピストン(3B)の上流端部(3B’)を受け入れるように構成された規定された第1の断面(A1)を有する内部空間(3C)を有し、円筒部(3A)およびピストン(3B)は、可変容積を有するポンプ室を形成するように、互いに対して直線的に移動可能であり、
機械的エネルギー(4)を送達するための手段は加圧ガスであり、吸入装置は、加圧ガスを保持するための内部容積を有する圧力室(6)を備え、圧力室(6)の壁は、圧力室(6)の内部容積を変化させるように往復直線運動を実行するように構成されたプランジャ(7)によって設けられ、
プランジャ(7)は、ポンプユニット(3)のピストン(3B)または円筒部(3A)に機械的に結合されており、
プランジャ(7)がポンプ室の断面(A1)よりも大きい断面(A2)を示す、吸入装置を提供する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による吸入装置によって液体のエアロゾルを生成するための方法を提供し、この方法は、
-充填段階において、ポンプ室の容積を増やすことによってポンプ室内に負のゲージ圧を供給することと、それにより
-負のゲージ圧により、ポンプ室をリザーバ(2)からの液体で満たすことと、
-放出段階において、第2の断面(A2)を有する圧力室(6)内に正のゲージ圧を供給することと、それにより
-プランジャ(7)の運動を生じさせることと、
-ポンプ室の容積を減少させ、その内部空間内に正圧を発生させるように、運動を機械的にピストン(3B)または円筒部(3A)に伝達することと、それにより、
-医学的に活性な液体をポンプ室からノズル(5)を通して放出することとを含み、圧力室(6)の圧力は増幅される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
医学的に活性な液体のエアロゾルを生成するための吸入装置であって、
ハウジング(1)と、このハウジング(1)内に、医学的に活性な液体を貯蔵するためのリザーバ(2)と、このリザーバ(2)の下流に、機械的エネルギー(4)をポンプユニット(3)に送達するための手段に接続された、圧力を生成するためのポンプユニット(3)と、ポンプユニット(3)の下流にノズル(5)とを備え、
ポンプユニット(3)は、中空円筒部(3A)とピストン(3B)とを備え、円筒部(3A)は、ピストン(3B)の上流端部(3B’)を受け入れるように構成された規定された第1の断面(A1)を有する内部空間(3C)を有し、円筒部(3A)およびピストン(3B)は、可変容積を有するポンプ室を形成するように、互いに対して直線的に移動可能であり、
機械的エネルギー(4)を送達するための手段は加圧ガスであり、吸入装置は、加圧ガスを保持するための内部容積を有する圧力室(6)を備え、圧力室(6)の壁は、圧力室(6)の内部容積を変化させるように往復直線運動を実行するように構成されたプランジャ(7)によって設けられ、
プランジャ(7)は、ポンプユニット(3)のピストン(3B)または円筒部(3A)に機械的に結合されており、
プランジャ(7)がポンプ室の断面(A1)よりも大きい断面(A2)を示す、吸入装置によって、目的は解決される。
【0010】
有利な実施形態は、それぞれの従属請求項、後続の説明、および添付の図に記載されている。
【0011】
吸入装置は、吸入療法のために医学的に活性な液体からエアロゾルを生成するのに適している。特に、吸入装置は、医学的に活性な成分の肺送達に適した噴霧エアロゾルの用量ごとの生成および放出に適合されている。本明細書で使用される医学的に活性な液体という用語は、医学的に活性な流体も含む。
【0012】
典型的には、そのような吸入装置はハウジングと、このハウジング内に、医学的に活性な液体などの液体を貯蔵するためのリザーバとを備える。リザーバは、例えば、約1~約50mlまたは約5ml~約15mlの液体体積を貯蔵するための容積を有し得る。装置は、このリザーバの下流に、好ましくはピストンポンプまたはプランジャポンプの原理に基づくポンプユニットを備え、ポンプユニットの下流にノズルを備える。明らかに、ポンプユニットはノズルとリザーバの両方に流体的に接続されている。
【0013】
圧力の生成に役立つポンプユニットは、機械的エネルギーをポンプユニットに送達するための手段に接続されているか、またはそれによって駆動される。この手段によって、ポンプユニットは、以下でさらに詳細に説明されるように、典型的には約30バール~約300バールの範囲の必要な放出圧力を生成するのに十分な、事前定義された比較的一定のピーク量の機械的エネルギーを供給される。結果として、装置の放出または送達性能は、放出圧力がユーザによって手動で供給され、したがって放出段階中に大幅に変動する装置と比較して、非常に再現性がある。
【0014】
より具体的には、ポンプユニットは、典型的には約1μl~約500μl、または約5μl~約250μlの範囲内の容積を備えた内部空間を有する中空円筒部を備える。「円筒部」という用語は、円筒形の内面を有する部品を指し、外側ならびにライザーパイプに接触しない部分および/またはシールは、円筒形である必要はないことに留意されたい。
【0015】
ポンプユニットはさらに、ピストンを含む。円筒部の内部空間は、規定された断面(以下、「第1の」断面とも呼ばれる)を有し、ピストンの上流端部を受け入れるように構成されている。ピストンの断面が内部空間の断面と実質的に一致しなければならないことは明らかである。内部空間が実際により広い断面を有する場合、ピストンの断面に一致する断面の部分のみが「第1の断面」の本定義に使用される。したがって、代替的に、ピストンの断面を用いて本発明をさらに説明することもできる。
【0016】
さらに、円筒部およびピストンは、可変容積を有するポンプ室を形成するように、互いに対して直線的に移動可能である。したがって、容積を変更することにより、ポンプ室内の圧力はそれに応じて変更される。
【0017】
本発明によれば、機械的エネルギーを送達するための前述の手段は、加圧ガスである。
【0018】
とりわけ、既知の装置は、機械的エネルギーを送達するための手段として弾性ばねを利用し、機械的エネルギーは、放出段階の前に手動で負荷される。ばねは、原則として、無制限の数の投与サイクルを提供するという利点を有するが、そのようなばねで単一のサイクルで貯蔵することができる、したがって放出段階中に供給される機械的エネルギーの量は限定され、ポンプ室内で得られる圧力、したがって投与量および時間も同様である。
【0019】
対照的に、本発明は、はるかに高いポンプ圧を供給することができる手段を利用する。具体的な実施形態に応じて、圧力を、ポンプサイクル内で、より長い時間供給することもでき、したがって、1サイクルあたりのより多い投与量を可能にする。
【0020】
さらに、装置は「圧力室」を含む(前述のポンプ室と混同しないこと)。この圧力室は、加圧ガスを保持するための内部容積を有する。圧力室の1つの壁は、圧力室の内部容積を変化させるように往復直線運動を実行するように構成された移動可能プランジャによって設けられる。言い換えれば、プランジャは、加圧ガスを含む圧力室内の圧力の増加(または減少)によって駆動される。圧力が高いほど、プランジャに作用する力は大きくなる。
【0021】
さらに、プランジャは、ピストンまたは円筒部(ポンプユニットのこれらの構成要素のどれが移動可能であるかによる)に機械的に結合されている。その結果、プランジャが動くと、ピストンまたは円筒部が動く。言い換えれば、プランジャはピストンまたは円筒部を「駆動」し、したがって、ポンプ室内の容積(したがって圧力)の変化をもたらすことができる。
【0022】
圧力の増幅を達成するために、プランジャは、プランジャが機械的に結合されているポンプ室の(第1の)断面よりも大きい(第2の)断面を示す。このように、力が圧力と面積の積に比例するという事実を利用する「空気圧レバー」機構が提供される。面積、すなわち第1および(より大きな)第2の断面が異なるため、(圧力室内の)第1の圧力は、ポンプ室内の第2の(およびより高い)圧力に変換される。この圧力を、高い放出速度および/または短い放出時間のために有利に使用することができる。
【0023】
好ましくは、第1の断面に対する第2の断面の比は、2よりも大きい、または5よりも大きい、好ましくは10よりも大きい、例えば、約10~約500の範囲内である。その結果、圧力を、約10倍~約100倍など、10倍以上に増加させることもできる。例えば、機械的エネルギーを供給するための手段は、10バールの圧力を有する加圧ガスを供給し、100バールの圧力をポンプユニットのポンプ室で得ることができ、これは、そのような高圧がエアロゾルの長い放出段階、高い放出速度、およびそれによってポンプサイクルごとに送達できる多量の液体を可能にするため特に有利である。別の潜在的な利点は、約1~約100mPa・s(cP)の範囲内の粘度を有する液体など、典型的な水性配合物よりも高い粘度を有する液体がエアロゾル化され得ることである。さらに、本発明は、衝突型ノズルなど、高い作動圧力を必要とするノズルを示す吸入装置に特に適している。本発明により、液体の粘度およびノズルタイプに応じて、1.5~2.0秒の時間内に、典型的には約1μl~約500μl、または約5μl~約250μlの範囲内の量、例えば約50μlを噴霧できる。
【0024】
一実施形態によれば、加圧ガスは、加圧ガスおよび/または液化ガスで満たされた容器によって提供される。好ましくは、容器は液化ガスを含み、一般的に知られているように、何らかの液化ガスを含む容器は(液化ガスで完全に満たされることなく)、液体ガスと平衡状態にある何らかの加圧気体(非液体)ガスも含む。潜在的に有用な液化ガスの例には、液化プロパン、n-ブタン、イソブタン、亜酸化窒素、二酸化炭素、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ヘキサフルオロアセトン、ヒドロフルオロアルカン(HFA134aまたはHFA227など)、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本発明に従って使用される好ましい液化ガスの中には、液化プロパン、プロパン/ブタン混合物、および/または亜酸化窒素がある。
【0025】
好ましくは、容器は、好ましくは交換可能なカートリッジの一部であり、その結果、容器内の残りの圧力が最小閾値を下回ったときに、容器を吸入装置のハウジングから取り外すことができ、新しいカートリッジを挿入することができる。1つのカートリッジで、例えば50~200サイクルに問題なく到達できる。
【0026】
別の実施形態によれば、加圧ガスは、手動で加圧可能であり、かつ加圧ガスを一時的に保持して制御可能に放出することができる室によって供給される。これは、圧力室内の圧力を、例えばポンプなどを繰り返し作動させることにより、手動で上げることができることを意味する。このようなポンプは、直線運動および回転運動によって作動させることができ、好ましくは吸入装置の一部である。吸入装置は、圧力を監視するための手段、および/または装置を使用するのに十分な体積の圧力が存在することを通知するための手段を備えることができる。必要な圧力に達すると、装置を使用できるようになる。圧力室の手動負荷は実際の投与の前に行われるため、一連の投与ストロークを利用する当技術分野で知られている装置の場合のように投与が中断されない。
【0027】
液化ガスを含む容器またはカートリッジを使用する実施形態は、特に快適なユーザ体験を提供するが、後者の実施形態、すなわち、オンデマンドの手動加圧ガスを使用する実施形態は、エアロゾル化される液体、例えば医学的に活性な液体に関する点を除いて、再充填の必要性から潜在的に独立しているため、非常に融通が利く。また、後者の実施形態による装置が、不活性化状態で、加圧された成分を含まないという事実は、従わなければならない適用される規制要件がより少ないという点で有利であり得る。
【0028】
一実施形態によれば、ピストンは中空である。中空空間は、ポンプ室をノズルまたはリザーバと流体的に接続するための手段として役立つことができる。このために、ピストンの下流端部が直接的または間接的にノズルと流体的に接続することができるか、またはピストンの上流端部がリザーバへの直接的または間接的な流体接続を提供してもよい。
【0029】
別の実施形態では、ピストンは中実である。この場合、ポンプ室からの出口を設けるために他の手段を講じる必要がある。これは、例えばリザーバに接続されている入口に近い位置で、ピストンの上流端部によってポンプサイクルのどの段階においても覆われないポンプ室の側壁に1つまたは複数の開口部を設けることによって達成される。次いで、開口部は、ノズルに接続される。
【0030】
一実施形態によれば、ピストンは不動であり、ハウジングまたはノズルにしっかりと取り付けられており、中空円筒部は、ハウジングまたはノズルに対して移動可能である。この実施形態は、側壁を含む室の大部分が可動式であるため、「可動室」の実施形態と呼ぶことができる。中空円筒部の運動は、機械的に結合されたプランジャによって駆動される。
【0031】
別の実施形態によれば、中空の円筒部は不動であり、ハウジングまたはノズルにしっかりと取り付けられており、ピストンは、ハウジングまたはノズルに対して移動可能である。したがって、この実施形態は、「可動ピストン」の実施形態と呼ぶことができる。ピストンの運動は、機械的に結合されたプランジャによって駆動される。
【0032】
別の実施形態によれば、円筒部およびピストンは移動可能である。両方の部品の互いに対する相対的な運動は、依然としてポンプ室の所望の容積変化をもたらす。両方の部品は、プランジャの推進運動に応じて平行または逆平行方向に移動可能であり得る。
【0033】
一実施形態では、リザーバの方向への液体の逆流を「能動的に」遮断するために、逆止弁がポンプ室の上流に配置される。ここで、「能動的に」という用語は、逆流を回避するために専用のコンポーネントが設けられていることを示す。対照的に、「受動的」手段は、特に細い管、またはノズルに向かう特別に成形された出口開口部など、単にその寸法により機能する手段である。いずれにせよ、少なくとも上記の逆流を減らすための対策を講じる必要がある。
【0034】
一実施形態では、圧力を受ける異なるサイズの面積を利用する前述の「直接」空気圧/油圧結合に加えて、前述の比の増幅効果をさらに増大させるための機械的レバー機構が提供される。言い換えれば、例えば長いが弱いストロークを短いが強いストロークに伝達する、機械的レバーなどを追加的に設けることによって、増幅をさらに増大させることができる。そのようなレバーは、例えば2アームレバーとして構成することができるか、またはレバー手段として傾斜面を使用するカム機構を利用することができる。
【0035】
別の実施形態では、プランジャの推進運動によって負荷可能である機械的エネルギーを一時的に貯蔵するための手段が提供され、この手段は、その貯蔵されたエネルギーを除荷することによってプランジャの後進運動をもたらすように構成される。
【0036】
言い換えれば、この手段(ポンプ室内の圧力の増加をもたらす機械的エネルギーを送達するための上述の手段と混同してはならない)は、ポンプ室がリザーバからの液体で再充填されるように、ポンプ室内に真空または負のゲージ圧を生成するのに役立つ。これは、この手段が、放出段階中に機械的エネルギーの量を負荷され、その量が再充填段階中に円筒部をピストンから、またはその逆に「押しのける」、したがってポンプ室の内部空間を拡大するのに十分であることによって達成される。このエネルギー量は、機械的エネルギーを送達するための手段によって供給される量よりも大幅に少なく、したがって、投与に利用可能なエネルギーは、機械的エネルギーを一時的に貯蔵するための手段の負荷によってわずかに減少するだけである。
【0037】
このように、機械的エネルギーを一時的に貯蔵するための手段は、ポンプ室の容積をリセットするための手段として機能する。
【0038】
好ましくは、機械的エネルギーを一時的に貯蔵するための手段は、弾性ばね、ガスばね、または磁気ばねである。ばねは、一端がハウジングの内壁に、他端が移動可能部分(ピストンまたは円筒部)に当たるように配置される。放出段階でばねを圧縮することによってエネルギーが貯蔵され、ポンプ室の容積をリセットしつつ、ばねが緩むときに再び解放される。
【0039】
引張りばねなどを使用する場合は、それに応じて構造を調整する必要があることは明らかである。
【0040】
好ましい実施形態の1つでは、吸入装置のノズルは、液体を霧化するための高い動作圧力を示すかまたは必要とするノズルタイプから選択される。例えば、ノズルは、30~300バールなど、30バール以上の圧力、または50~300バールなど、50バール以上の圧力、または100~300バールなど、100バール以上の圧力をそれぞれ必要とし得る。
【0041】
特に有利な実施形態の1つでは、ノズルは衝突型である。そのようなノズルはよく知られており、液体の2つ以上の衝突する噴流の衝突によって、ユーザが吸入することができる液滴への微細で十分に均質な噴霧を提供する。1サイクルで霧化できる液体の量をさらに増やすために、ノズルには、ノズル出口を備えた複数の層、または1つの層に複数の対のノズル出口を設けることもできる。
【0042】
別の実施形態によれば、ノズルはローリーまたはスワール型である。
【0043】
別の実施形態では、ポンプ室の容積は、それぞれ、少なくとも15μl、または少なくとも30μl、または少なくとも50μl、または約100μl~250μlに達する。
【0044】
さらに別の実施形態では、ポンプユニットは、ポンプ室内に少なくとも30バール、好ましくは少なくとも100バール、最も好ましくは少なくとも200バールのピーク圧力を供給するように構成される。機械的エネルギーを送達するための手段は、圧力室内に少なくとも10バール、好ましくは少なくとも20バール、最も好ましくは少なくとも50バールの圧力を供給するように構成される。本明細書で使用される場合、これらの(ピーク)圧力値は、ポンプサイクル中のポンプ室内の最大圧力を指す。
【0045】
実験により、この値の量が、単一の投与サイクルだけで十分に多い量の噴霧された医学的に活性な液体をユーザに提供するのに十分であることが示されている。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、ポンプ室は、少なくとも約50μl、例えば約50μl~約500μl、または約250μlまでの内部容積を有し、少なくとも約100バールのピーク圧力を供給するように構成される。
【0047】
一実施形態では、(i)プランジャおよび(ii)ピストンおよび/または円筒部は、平行方向に移動可能である。両方のコンポーネントグループを隣同士に配置することもできるが、それぞれの移動方向が同一直線上になるように互いに整列させることもできる。
【0048】
一実施形態では、圧力室は、ハウジング内でスライドすることができるディスクなどの2つの平行なプレートによって設けられる。プレート間の距離が大きくなると、圧力室の容積が増加し、逆もまた同様である。プレートの1つは、ポンプユニットへの機械的接続または「結合」として機能し得る。したがって、圧力室が拡張するとき、「結合」プレートは、好ましくは、単独で、ポンプ室の容積を減少させる方向に移動する。放出段階の後、圧力内に蓄積されたガスを排出するために、結合プレートは所定の位置に留まり、もう一方の「圧力」プレートは、圧力室の容積が再び減少(リセット)するように移動する。再充填段階では、両方のプレートが平行に移動するため、ポンプ室の容積が拡大されるが、一方で圧力室の容積は一定に保たれる。
【0049】
本明細書で使用される「医学的に活性な液体」という用語は、広い意味で理解されるべきであり、特定の実施形態では、状態、障害または疾患、特に、動物またはヒト、好ましくはヒトの肺の状態、障害または疾患の治療、安定化または予防に有用であり得る液体または液体組成物を意味する。
【0050】
特定の実施形態では、「医学的に活性な液体」は、化合物または化合物の混合物それ自体であり得る。他の特定の実施形態では、医学的に活性な液体は、生理学的に許容される担体または液体中の成分または活性成分の溶液、懸濁液または分散液であり得る。さらに特定の実施形態では、生理学的に許容される担体液体は、水、あるいは、水と、エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどの1つもしくは複数のさらなる生理学的に許容される溶媒とを含む水性混合物であり得る。
【0051】
さらに特定の実施形態では、医学的に活性な液体は、塩化ナトリウム(生理食塩水)などの生理学的に許容される塩の水溶液であり得る。特定の実施形態において、本明細書で使用される医学的に活性な液体は、塩化ナトリウム(生理食塩水)の水溶液であり得、典型的な塩化ナトリウム濃度は、約0.5重量%~約15重量%、または約0.9重量%~約10重量%、または約2重量%~約5重量%または約4重量%の範囲内、例えば約3,0重量%であり得、濃度は最終水溶液の重量を指す。
【0052】
特定の実施形態では、本明細書で使用される「医学的に活性な液体」という用語は、少なくとも1つの活性医薬成分(API)、より具体的には少なくとも1つの吸入可能な活性医薬成分を含む医薬組成物の形態の医学的に活性な液体を指し得る。より具体的には、そのような少なくとも1つの吸入可能な活性医薬成分は、例えば、長時間作用型ムスカリン拮抗薬(LAMA)、長時間作用型ベータ作動薬(LABA)および吸入可能糖質コルチコイド(ICS)、ならびに鎮痛薬および抗糖尿病薬から、単独で、または互いに組み合わせて選択され得る。
【0053】
長時間作用型ムスカリン拮抗薬(LAMA)の例には、臭化アクリジニウム、臭化グリコピロニウムなどのグリコピロニウム塩、レベフェナシン、臭化チオトロピウムなどのチオトロピウム、臭化ウメクリジニウム、臭化オキシトロピウム、臭化フルトロピウム、臭化イプラトロピウム、塩化トロスピウム、トルテロジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
長時間作用型ベータ作動薬(LABA)の例には、アルブテロール、アルフォルモテロール、バンブテロール、ビトルテロール、ブロキサテロール、カルブテロール、クレンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、ヘキソプレナリン、イブテロール、インダカテロール、インダクテロール、イソエタリン、イソプレナリンレボサルブタモール、マブテロールメルアドリン、メタプロテレノール、オロダテロール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、リミテロール、リトドリン、サルメテロール、サルメファモール、ソテレノット、スルホンテロール、チアラムデ、テルブタリン、テルブテロールが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
吸入可能な糖質コルチコイド(ICS)の例には、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロピオン酸ブチキソコート、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、ロフレポニド、デキサメタゾン、エチプレドノールジクロロアセタート、デフラザコート、エチプレドノール、ロテプレドノール、RPR-106541、NS-126、ST-26が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
さらに、活性医薬成分は鎮痛薬、例えば、オピオイド鎮痛薬(例えば、モルヒネ、フェンタニル)または非オピオイド鎮痛薬(例えば、サリチル酸誘導体、例えば、アセチルサリチル酸)またはカンナビノイド(例えば、テトラヒドロカンナビノール)、インスリンなどの抗糖尿病薬から選択され得る。
【0057】
本吸入装置によって噴霧またはエアロゾル化され得る医学的に活性な液体または液体医薬組成物は、上記のような少なくとも1つの活性医薬成分を含み得るが、吸入によって投与され得る2つ以上の活性医薬成分の混合物も含み得る。
【0058】
本発明による吸入装置によってエアロゾル化され得る医学的に活性な液体または医薬組成物は、好ましくは、吸入使用に適し、適合された組成物、言い換えれば、吸入のために噴霧またはエアロゾル化され得、かつ患者による吸入に対して生理学的に許容される組成物として製剤化される。
【0059】
本発明のこの態様による吸入装置によって投与され得るか、または吸入装置およびリザーバ内に含まれ得る医学的に活性な液体または医薬組成物は、分散液、例えば、液体連続相および固体分散相を有する懸濁液の形態または溶液の形態であり得る。
【0060】
さらなる実施形態において、上記のような医学的に活性な液体または医薬組成物は、任意選択で、そして1つ以上の活性医薬成分に加えて、吸入使用に適した1つ以上の生理学的に許容される賦形剤を含み得る。組成物に含まれ得る賦形剤には、溶液のpHを調節または制御するための1つまたは複数の緩衝剤、塩、味覚マスキング剤、界面活性剤、脂質、抗酸化剤、および溶解性を増強または改善するために使用され得る、例えばエタノールまたはグリコールなどの共溶媒が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0061】
特定の実施形態では、上記のような医学的に活性な液体は、本質的に推進剤を含まなくてもよい。
【0062】
さらなる特定の実施形態において、上記のような医学的に活性な液体は、水溶液であり得、上記のような1つ以上の活性医薬成分は、水を含む液体担体溶液に溶解および可溶化される。そのような水溶液は、任意選択で、上記のような1つまたは複数の賦形剤を含み得る。
【0063】
第2の態様では、本発明はまた、上記で定義された吸入装置によって医学的に活性な液体のエアロゾルを生成するための方法に関する。繰り返しを回避するために、そのような吸入装置およびその好ましい実施形態に関する説明、ならびに医学的に活性な液体および好ましい実施形態を参照する。
【0064】
この方法は、投与サイクル全体を形成する以下のステップを含む。
-充填段階では、ポンプ室の容積を増やすことにより、ポンプ室内に負のゲージ圧が供給される。負のゲージ圧は、例えば、これらの部品のどれが移動可能であるかに応じて、ピストンおよび/または中空円筒部をそれぞれの他の部品から部分的に後退させることによって生成され得る。この作用のためのエネルギーは、好ましくは、機械的エネルギーの一時的な貯蔵のための前述の手段によって送達される。
-容積の増加および負のゲージ圧により、ポンプ室は、液体、またはより具体的には、ポンプ室が流体的に接続されているリザーバからの医学的に活性な液体で満たされる。好ましくは、リザーバを空にすることを進めることによってリザーバ内の逆圧が増加しないように、折り畳み可能なバッグが液体を収容できる。
-次の放出段階では、圧力室内に正のゲージ圧が供給される。圧力室は、ポンプ室/ピストンの第1の断面よりも大きい第2の断面を有することを想起されたい。結果として、前述の壁/プランジャは、正圧にさらされる。
-正のゲージ圧は、プランジャの推進運動に影響を与える。圧力が高く、第2の断面積が大きいほど、プランジャに作用する力が大きくなる。
-プランジャとポンプユニットの機械的結合により、運動は、ポンプ室の容積が減少するように、どちらが移動可能であるかに応じてピストンまたは円筒部に機械的に伝達または変換される。ポンプ室は、第1の断面の内部空間を有することを想起されたい。その結果、ポンプ室の内部空間内に正圧が発生する。
-ポンプ室の圧力が上昇するため、医学的に活性な液体がポンプ室からノズルを通って放出され、そこで液体が霧化される。
【0065】
ポンプ室の内部空間の第1の断面に対する圧力室の第2の断面の比が1よりも大きいため、圧力室の圧力は、この比に従ってポンプ室の圧力に対して増幅される。結果として、装置の作動ごとに(またはポンプサイクルごとに)噴霧される液体の高い送達速度および/またはエアロゾル放出の延長された持続時間が達成され得る。特に、それにもかかわらず、例えば1~3秒で約50μlの量など、多量の液体を十分に短い期間内に霧化することができる。
【0066】
一実施形態では、圧力室内の圧力は、加圧ガスで容器に対する弁を開くことによって供給される。
【0067】
したがって、一実施形態によれば、圧力室内の圧力は、放出段階の間、比較的一定に保たれる。結果として、増幅されてポンプ室に伝達される圧力も一定であり、その結果、ノズルからの噴霧された液体のより一定の体積流量がもたらされる。
【0068】
別の実施形態によれば、放出段階の開始時にのみ、加圧ガスの短いパルスが圧力室に放出され、その結果、その容積が増加するにつれて圧力が減少する。
【0069】
さらに別の実施形態では、圧力室内の圧力は、圧力室を手動で加圧することによって供給される。その結果、放出段階が始まる前に圧力が上昇する。また、放出段階では、その容積が増加するにつれて圧力が低下する。
【0070】
好ましい実施形態によれば、容積の減少によるポンプ室からの液体の放出に続いて、放出段階中に負荷された機械的エネルギーを一時的に貯蔵するための前述の手段は、貯蔵されたエネルギーを放出する。一時的に貯蔵されたエネルギーを放出することにより、ポンプ室の内部空間が再び増加する。これにより、その中に負のゲージ圧が発生し、それによってポンプ室にリザーバからの液体が再充填される。
【0071】
別の実施形態では、ポンプ室の容積を「リセット」するために必要なエネルギーは、手動で、すなわち、それぞれの部品をリセット位置に手動で押すことによって供給される。
【0072】
ポンプ室の容積が「リセット」している間に、圧力室の容積もその初期(最小)値にリセットされる。同時に、加圧ガスは、最小の労力で体積の減少が達成可能であるようにポンプ室から排出されるべきであり、すなわち、すでに加圧されているガスをさらに圧縮するために高圧に逆らって作業する必要はない。したがって、一実施形態では、再充填段階の開始時、または放出段階と再充填段階との間で、圧力室の内容物が装置から外部環境に排出される。
【0073】
この目的のために弁を使用することが好ましい。弁は自動および手動で開閉できる。
【0074】
第3の態様では、本発明は、エアロゾル化された形態の医学的に活性な液体を動物またはヒト、好ましくはヒトに吸入投与するための本発明の第1の態様による吸入装置の使用に関する。
【0075】
第4の態様では、本発明は、医学的に活性な液体の吸入投与による肺の疾患または状態(例えば、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD))の治療、安定化または予防のための方法に関し、医学的に活性な液体は、本発明の第1の態様による吸入装置によって生成および投与される。
【0076】
これらの態様に関しても、本発明の第1および/または第2の態様に関連して上記で説明したすべての実施形態、好ましい実施形態、およびそれらの組み合わせが対応して適用されることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
以下では、本発明を添付の図を用いて説明する。
【0078】
【
図1】吸入装置の一実施形態のいくつかの構成要素の概略図である。
【
図2】充填段階の終了時における
図1の装置を示す図である。
【
図3】放出段階における
図1の装置を示す図である。
【
図4】再充填段階における
図1の装置を示す図である。
【0079】
すべての図面は原寸に比例しておらず、選択された構成要素のみを含み、本発明を説明するのに十分な詳細レベルでのみ提示されている。機能するサンプルには追加の構成要素が必要であることは明らかであるが、これらは当業者に知られており、簡潔にするためにここでは省略されている。
【0080】
図1には、吸入装置の一実施形態のいくつかの構成要素の概略図が示されている。
【0081】
描かれているのは、エアロゾルの生成に役立つ吸入装置の構成要素である。ハウジング1の内部に、液体Fを貯蔵するためのリザーバ2が配置されている。図示のリザーバ2は、液体Fを含む折り畳み可能なバッグを含む(液体は図示されていない)。リザーバ2の下流に、ポンプユニット3が配置されている。ポンプユニット3は、ポンプユニット3に機械的エネルギー4を供給する、機械的エネルギー4を送達するための手段に接続されている。
【0082】
ポンプユニット3の下流には、ノズル5が配置されている。図示の例では、ノズル5は衝突型である。
【0083】
見てわかるように、ポンプユニット3は、中空円筒部3Aおよび(この場合)中空のピストン3Bを備える。中空円筒部3Aは不動であり、ハウジング1にしっかりと取り付けられており、ピストン3Bは、ハウジング1に対して移動可能である。図示の実施形態では、プランジャ7およびピストン3Bは、平行方向に、実際には同一直線上に沿って移動可能である。
【0084】
円筒部3Aは、規定された第1の断面A1を有する内部空間3Cを有する。断面A1は任意の形状を有することができるが、好ましくは円形である。内部空間3Cは、ピストン3Bの上流端部3B’を受け入れるように構成されている。内部空間3Cがより広い場合、空間3Cの実際にピストン3Bを受け入れるのに役立つ部分のみが考慮される。円筒部3Aおよびピストン3Bは、ポンプ室を形成するように、互いに対して直線的に移動可能である。直線運動の可能性により、ポンプ室は可変容積を有する。
【0085】
本発明によれば、機械的エネルギー4を送達するための手段は、上記のように、加圧ガスである。吸入装置は、加圧ガスを保持するための内部容積を有する圧力室6を備える。圧力室6の壁は、プランジャ7によって設けられる。プランジャ7は、往復直線運動(図では上下)を実行するように構成されている。圧力室6の内部容積は、プランジャの位置に関連しており、プランジャの位置は、圧力室内の圧力に依存している。圧力が増加すると推進運動(ここでは上向き)が発生し、圧力が減少すると後進運動(ここでは下向き)が発生する。
【0086】
プランジャ7はピストン3Bに機械的に結合されており、図示されていない実施形態では、代わりにまたは追加で、円筒部3Aに結合することができる。見てわかるように、プランジャ7は、ポンプ室の断面A1よりも大きい断面A2を示す。結果として、圧力の増幅が達成され、すなわち、ポンプ室内の圧力は、断面A2対A1の比によって決定される増幅係数または比によって、圧力室6内の圧力よりも高い。
【0087】
図示の実施形態では、加圧ガスは、液化ガスを含む容器8によって供給される。ガスの一部は気体の形態で存在する(黒で描かれている液体部分の高さよりも上)。弁9は、容器8を圧力室6から分離する。
【0088】
圧力室6の排出ダクトには、さらに弁10が配置されている。逆止弁11は、リザーバ2の方向への液体の起こり得る逆流を遮断するために、ポンプ室の上流に配置されている。
【0089】
この実施形態では弾性ばねによって実現される、機械的エネルギー12を一時的に貯蔵するための手段が提供され、機械的エネルギーは、プランジャ7の推進(ここでは上向き)運動によって負荷可能である。手段12は、その貯蔵されたエネルギーを除荷することによって、以下に示されるプランジャ7の後進(ここでは下向き)運動をもたらすように配置および構成される。
【0090】
この図および後の図では、同様の部品に同様の参照番号が使用されている。後の図では、わかりやすくするために一部の参照を省略している。また、これ以降、ハウジング1は示されていない。
【0091】
図2は、ポンプ室と圧力室の容積がリセットされた、充填段階の終了時の状況を示す。ピストン3Bは、円筒部3Aに対して最大に後退した位置にあるので、ポンプ室の内部空間3Cは最大である。プランジャ7は最も低い位置にあるため、圧力室6の容積は非常に小さいか、ほぼゼロである。機械的エネルギー12を一時的に貯蔵するための手段は弛緩し、機械的エネルギーを負荷する準備ができている。
【0092】
図3には、放出段階が示されている。ここで弁9が開き、加圧ガスは容器8から圧力室6に流れることができる。プランジャ7は矢印13の方向(ここでは上向き)に移動し、プランジャに作用している力をピストン3Bに伝達する。したがって、ポンプ室に含まれる液体は、高圧下でノズル5を通して放出される。矢印14は、所望の噴霧をもたらす2つの衝突する液体ビームを示す。手段12は圧縮されているため、機械的エネルギーを一時的に貯蔵している。
【0093】
図4は、再充填段階の状況を示す。現在、弁10は開いており、加圧ガスを圧力室6から排出することができる。弁9は閉じられているため、新鮮なガスが室6に流入することはできない。ポンプ室内に負のゲージ圧が形成され、その結果、ポンプ室がリザーバ2から再充填される。流れの方向は矢印15で示されている。
【0094】
矢印13で示されるプランジャの後進運動は、機械的エネルギー12を一時的に貯蔵する手段によって駆動され、機械的エネルギー12は、そのエネルギーをポンプユニット3に、より正確には、ピストン3Bに接続されたプランジャ7に放出する。逆止弁11により、外部から中空ピストン3Bへの液体の逆流が防止される。
【0095】
プランジャ7の運動は、
図2に示すリセット位置にあるときに終了する。そこでサイクルが完了し、別のサイクルを最初から開始できる。
【符号の説明】
【0096】
1 ハウジング
2 リザーバ
3 ポンプユニット
3A 中空円筒部
3B ピストン
3C 内部空間
4 機械的エネルギーを送達するための手段
5 ノズル
6 圧力室
7 プランジャ
8 容器
9,10 弁
11 逆止弁
12 機械的エネルギーの一時的な貯蔵のための手段
13,14,15 矢印
A1 第1の断面
A2 第2の断面
F 液体
【0097】
以下の番号付き項目のリストは、本発明に含まれる実施形態である。
【0098】
項目1
医学的に活性な液体のエアロゾルを生成するための吸入装置であって、
ハウジング(1)と、このハウジング(1)内に、医学的に活性な液体を貯蔵するためのリザーバ(2)と、このリザーバ(2)の下流に、機械的エネルギー(4)をポンプユニット(3)に送達するための手段に接続された、圧力を生成するためのポンプユニット(3)と、ポンプユニット(3)の下流にノズル(5)と
を備え、
ポンプユニット(3)は、中空円筒部(3A)とピストン(3B)とを備え、円筒部(3A)は、ピストン(3B)の上流端部(3B’)を受け入れるように構成された規定された第1の断面(A1)を有する内部空間(3C)を有し、円筒部(3A)およびピストン(3B)は、可変容積を有するポンプ室を形成するように、互いに対して直線的に移動可能である、吸入装置において
機械的エネルギー(4)を送達するための手段は加圧ガスであり、吸入装置は、加圧ガスを保持するための内部容積を有する圧力室(6)を備え、圧力室(6)の壁は、圧力室(6)の内部容積を変化させるように往復直線運動を実行するように構成されたプランジャ(7)によって設けられ、プランジャ(7)は、ピストン(3B)または円筒部(3A)に機械的に結合されており、プランジャ(7)がポンプ室の断面(A1)よりも大きい断面(A2)を示すことを特徴とする、吸入装置。
【0099】
項目2
比が10よりも大きい、項目1に記載の吸入装置。
【0100】
項目3
加圧ガスが
-加圧および/または液化ガスで満たされた容器(8)、または
-手動で加圧可能であり、加圧ガスを一時的に保持し、制御可能に放出することができる室
によって供給される、項目1または2に記載の吸入装置。
【0101】
項目4
ピストン(3B)が中空である、項目1から3のいずれかに記載の吸入装置。
【0102】
項目5
-ピストン(3B)は不動であり、ハウジング(1)またはノズル(5)にしっかりと取り付けられており、中空円筒部(3A)は、ハウジング(1)またはノズル(5)に対して移動可能である、または
-中空円筒部(3A)は不動であり、ハウジング(1)またはノズル(5)にしっかりと取り付けられており、ピストン(3B)は、ハウジング(1)またはノズル(5)に対して移動可能である、
上記の項目のいずれかに記載の吸入装置。
【0103】
項目6
リザーバ(2)の方向への液体の逆流を遮断するために、逆止弁(11)がポンプ室の上流に配置されている、前述の項目のいずれかに記載の吸入装置。
【0104】
項目7
追加的に、前述の比をさらに増大させるために機械的レバー機構が設けられている、前述の項目のいずれかに記載の吸入装置。
【0105】
項目8
プランジャ(7)の推進運動によって負荷可能である機械的エネルギー(12)を一時的に貯蔵するための手段が提供され、この手段が、その貯蔵されたエネルギーを除荷することによってプランジャ(7)の後進運動をもたらすように構成されている、前述の項目のいずれかに記載の吸入装置。
【0106】
項目9
機械的エネルギー(12)を一時的に貯蔵するための手段が、弾性ばね、ガスばね、または磁気ばねである、項目8に記載の吸入装置。
【0107】
項目10
ノズル(5)が衝突型であり、および/またはポンプ室の容積が少なくとも30μl、または少なくとも50μl、または約100~約250μlに達し、ポンプユニット(3)が、ポンプ室内に少なくとも100バールの圧力を供給するように構成されている、前述の項目のいずれかに記載の吸入装置。
【0108】
項目11
(i)プランジャ(7)および(ii)ピストン(3B)および/または円筒部(3A)が平行方向に移動可能である、前述の項目のいずれかに記載の吸入装置。
【0109】
項目12
-充填段階において、ポンプ室の容積を増やすことによってポンプ室内に負のゲージ圧を供給することと、それにより
-負のゲージ圧により、ポンプ室をリザーバ(2)からの液体で満たすことと、
-放出段階において、第2の断面(A2)を有する圧力室(6)内に正のゲージ圧を供給することと、それにより
-プランジャ(7)の運動を生じさせることと、
-ポンプ室の容積を減少させ、その内部空間内に正圧を発生させるように、運動を機械的にピストン(3B)または円筒部(3A)に伝達することと、それにより
-医学的に活性な液体をポンプ室からノズル(5)を通して放出することと
を含み、
圧力室(6)の圧力が増幅される、
項目1に規定された吸入装置による液体のエアロゾルの生成方法。
【0110】
項目13
圧力室(6)内の圧力が、加圧ガスで容器(8)に対対する弁(9)を開くことによって、または圧力室(6)を手動で加圧することによって供給される、項目11に記載の方法。
【0111】
項目14
容積の減少によるポンプ室からの液体の放出に続いて、放出段階中に負荷された機械的エネルギー(12)を一時的に貯蔵するための手段が、貯蔵されたエネルギーを放出することによって、ポンプ室の内部空間が再び増加し、その結果、内部に負圧が発生し、リザーバ(2)からの医学的に活性な液体がポンプ室に再充填される、項目12または13に記載の方法。
【0112】
項目15
再充填段階の開始時に、圧力室(6)の内容物が大気に放出される、項目12から14のいずれかに記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学的に活性な液体のエアロゾルを生成するための吸入装置であって、
ハウジング(1)と、このハウジング(1)内に、前記医学的に活性な液体を貯蔵するためのリザーバ(2)と、このリザーバ(2)の下流に、機械的エネルギー(4)をポンプユニット(3)に送達するための手段に接続された、圧力を生成するための前記ポンプユニット(3)と、前記ポンプユニット(3)の下流にノズル(5)と
を備え、
前記ポンプユニット(3)は、中空円筒部(3A)とピストン(3B)とを備え、前記円筒部(3A)は、前記ピストン(3B)の上流端部(3B’)を受け入れるように構成された規定された第1の断面(A1)を有する内部空間(3C)を有し、前記円筒部(3A)および前記ピストン(3B)は、可変容積を有するポンプ室を形成するように、互いに対して直線的に移動可能であり、
前記機械的エネルギー(4)を送達するための手段は加圧ガスであり、前記吸入装置は、前記加圧ガスを保持するための内部容積を有する圧力室(6)を備え、前記圧力室(6)の壁は、前記圧力室(6)の前記内部容積を変化させるように往復直線運動を実行するように構成されたプランジャ(7)によって設けられ、
前記プランジャ(7)は、前記ポンプユニット(3)の前記ピストン(3B)または前記円筒部(3A)に機械的に結合されており、
前記プランジャ(7)が前記ポンプ室の前記断面(A1)よりも大きい断面(A2)を示す、吸入装置。