IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大阪製薬の特許一覧

<>
  • 特開-害虫防除具 図1
  • 特開-害虫防除具 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010998
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】害虫防除具
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20240118BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A01M1/20 D
B65D83/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112644
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 直子
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA02
2B121CA16
2B121CA31
2B121CA66
2B121CA90
2B121EA01
2B121FA01
2B121FA02
(57)【要約】
【課題】
不快害虫又は衛生害虫等に対する防除効果を発揮させるために、内包される薬効成分の揮散量を最適な状態に調整することができる害虫防除具を提供することを目的とする。
【解決手段】
精油又は精油由来成分、及び液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、前記薬剤を収容する本体容器と、前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルムを備え、揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具を作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精油又は精油由来成分の薬効成分と、液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、前記薬剤を収容する本体容器と、前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルムを備え、揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具。
【請求項2】
前記薬効成分が精油であり、薬剤全体の10~50w/v%であることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除具。
【請求項3】
前記精油が、ハッカ油、シトロネラ油、ラベンダー油、ジャスミン油、ネロリ油、ベルガモット油、オレンジ油、ゼラニウム油、イヌハッカ油、プチグレン油、カシア油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、スターアニス油、ユーカリ油、ミント油、月桃葉油、パチュリ油、レモンユーカリ油、ローズマリー油、及びタイム油からなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除具。
【請求項4】
前記揮散フィルムの膜厚が50~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の害虫防除具。
【請求項5】
精油又は精油由来成分の薬効成分と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、前記薬剤を収容する本体容器と、前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルムを備え、揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具を用いて、薬効成分の揮散を調整する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫を防除するための害虫防除具に関する。より詳細には、本発明は、不快害虫や衛生害虫等を防除する薬剤を空気中に飛散、拡散させるように構成された害虫防除具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に収容された揮発性の薬剤をその容器から徐々に放出して空気中に飛散、拡散させることにより、害虫を死滅、忌避させるなどして防除する害虫防除具が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トランスフルトリン等の薬効成分とメタノール、エタノールなどのアルコールを含む薬剤と、その薬剤を収容するPET容器と、直鎖状低密度ポリエチレンなどからなる揮散薬剤透過フィルムからなり、その揮散薬剤透過フィルムからその薬剤が徐々に揮散される薬剤収容具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-94752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
揮散される薬剤の量の調整が容易であり、薬剤の揮散性と安定性が良好で、かつ安全性の高いさらなる害虫防除具が求められている。
【0006】
本発明は、害虫に対して防除効果が高く、揮散される薬剤の量の調整がしやすい一方、安定性が良好で安全性が極めて高い害虫防除具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、精油又は精油に由来する薬効成分と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、前記薬剤を収容する本体容器と、前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルムを備え、揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であるような害虫防除具を作製することで、顕著に優れた薬剤揮散性を発揮でき、安定性と安全性にも優れる害虫防除具とできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる害虫防除具を提供する。
[1]
精油又は精油由来成分の薬効成分と、液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、前記薬剤を収容する本体容器と、前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルムを備え、揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具。
[2]
前記薬効成分が精油であり、薬剤全体の10~50w/v%であることを特徴とする、[1]に記載の害虫防除具。
[3]
前記精油が、ハッカ油、シトロネラ油、ラベンダー油、ジャスミン油、ネロリ油、ベルガモット油、オレンジ油、ゼラニウム油、イヌハッカ油、プチグレン油、カシア油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、スターアニス油、ユーカリ油、ミント油、月桃葉油、パチュリ油、レモンユーカリ油、ローズマリー油、及びタイム油からなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の害虫防除具。
[4]
前記揮散フィルムの膜厚が50~100μmであることを特徴とする[1]~[3]のいずれか1に記載の害虫防除具。
[5]
精油又は精油由来成分の薬効成分と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、前記薬剤を収容する本体容器と、前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルムを備え、揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具を用いて、薬効成分の揮散を調整する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、薬効成分の揮散性と安定性と安全性に優れた害虫防除具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の害虫防除具における正面図である。
図2】本発明の害虫防除具におけるА-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100ml」と同義である。本明細書で「当初配合量」、「当初比率」というときには、製造の際に配合され、製造直後にその量又はその比率になっていることを指す。
【0012】
[害虫防除具]
本発明の害虫防除具は、精油又は精油由来の薬効成分と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、前記薬剤を収容する本体容器と、前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルムを備え、揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具に関する。
【0013】
(害虫)
本明細書でいう害虫としては、限定はされないが、主に、飛翔害虫が挙げられる。飛翔害虫としては、例えば、ユスリカ、チョウバエ、ショウジョウバエ等の不快害虫や蚊、虻、ブユ等の衛生害虫が挙げられるがこれに限定されない。特に標的として好ましい対象害虫は、蚊やユスリカである。
【0014】
[害虫防除具]
以下、本件発明の害虫防除具に関する実施形態について詳しく説明する。鉛直方向は図1図2における上下方向であり、幅方向は、図1における左右方向である。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0015】
本発明の薬剤1は、精油又は精油由来の薬効成分と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する組成物であって、本発明の害虫防除具の容器を構成する本体容器2と揮散フィルム3によって収容されている。この薬剤1が揮散フィルム3を通じて外部に飛散、拡散される。
【0016】
(精油又は精油由来成分)
本発明の薬剤1に含有される精油又は精油由来成分は、植物等から抽出などの方法で取り出される物である。このような成分を単独で又は2種以上適宜組み合わせて用いることにより、蚊、蠅、虻などの害虫に作用してそれら害虫を忌避させるなどの防除効果を奏し有効成分として作用する。
【0017】
ここで、精油又は精油由来成分としては、限定はされないが、例えば、ハッカ油、シトロネラ油、ラベンダー油、ジャスミン油、ネロリ油、ベルガモット油、オレンジ油、ゼラニウム油、イヌハッカ油、プチグレン油、カシア油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、スターアニス油、ユーカリ油、スペアミント油やペパーミント油などのミント油、月桃葉油、レモンユーカリ油、ローズマリー油、パチュリ油(パチョリ油)又はタイム油などの精油;メントール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、メントン、酢酸メンチル、1、8-シネオール、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、ボルネオール、ネロール、エチルリナロール、チモール、オイゲノール、ベンジルベンゾエート、シンナミルフォーメート、ゲラニルフォーメート、リモネン、カルボン、プレゴン、カンファー、ダマスコン、シトラール、ネラール、ペリラアルデヒド、フェニルエチルアルコール、又はジフェニルオキサイド等の精油由来成分が挙げられる。
これらのうち、ハッカ油、シトロネラ油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ラベンダー油、ゼラニウム油、月桃葉油、スターアニス油、パチュリ油(パチョリ油)及びミント油からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましく、シトロネラ油、ユーカリ油、及びハッカ油、ミント油、月桃葉油、パチュリ油(パチョリ油)、及びゼラニウム油からなる群より選択される1種又は2種以上がより好ましい
【0018】
これらの成分としては、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもでき、精油と成分の組み合わせも可能である。このような薬効成分によって、揮発量を適宜調整でき、かつ保存性が良好な害虫防除具を調製することが可能となる。
【0019】
これらの成分の当初配合量は、1種又は2種以上の上記薬効成分の合計量として、好ましくは、薬剤全体の5~80w/v%、より好ましくは10~70w/v%、さらに好ましくは、12~50w/v%であり得る。
【0020】
ここで、限定はされないが、成分同士のw/v%の当初比率としては、いずれか2種の組み合わせの場合、好ましくは、1:1~1:1000、より好ましくは、1:1~1:500であり得る。
【0021】
例えば、ユーカリ油とシトロネラ油の組み合わせで、w/v%での割合として、ユーカリ油1に対して、シトロネラ油は、1~10程度であることも好ましい。
【0022】
(液状イソパラフィン系炭化水素)
本発明に薬剤1に含有される液状イソパラフィン系炭化水素は、使用される20~30℃程度の常温において液体であり、分岐鎖を有する鎖状炭化水素であって、上述した薬効成分を均一に溶解する溶剤であるとともに、上述した薬効成分と共に揮散フィルム3を通じて外部に飛散、拡散される。
【0023】
液状イソパラフィン系炭化水素としては、使用される20~30℃程度の常温において液体であり、上述した薬効成分を均一に溶解できることから、具体的には、好ましくは、分岐鎖を有する炭素数10~30の飽和炭化水素である。この分岐鎖を有する炭素数10~30の飽和炭化水素は、それぞれの炭素数に応じた単一化合物であってもよいし、それらの炭素数のうち複数の種類の混合物であってもよい。本発明に使用される液状イソパラフィン系炭化水素は無色透明である。
【0024】
液状イソパラフィン系炭化水素は、好ましくは、分岐鎖を有する炭素数10~30の飽和炭化水素であり、より好ましくは、分岐鎖を有する炭素数11~28の飽和炭化水素、さらに好ましくは、分岐鎖を有する炭素数12~24の飽和炭化水素である。例えば、「アイソパーL」(エクソンモービル社製)、「アイソパーM」(エクソンモービル社製)、IPソルベント2028(出光興産株式会社製)、IPソルベント2835(出光興産株式会社製)等の市販品を使用してもよい。
【0025】
液状イソパラフィン系炭化水素の当初配合量は、本発明の効果をよりよく発揮する為に、薬剤全量に対して20~95w/v%含有されることが好ましく、30~90w/v%含有されることがより好ましく、50~88w/v%含有されることがさらに好ましい。
【0026】
本発明において、上記薬効成分と液状イソパラフィン系炭化水素の配合当初の割合は、薬効成分/液状イソパラフィン系炭化水素=1/19~4/1が好ましく、1/9~7/3がより好ましく、3/22~1/1であることがさらに好ましい。薬効成分と液状イソパラフィン系炭化水素の配合割合がこの範囲にあると、内包される薬効成分の揮散量が使用時期によって大きく変わらず、25℃の環境下における1日当たりの揮散量をおおよそ一定量とすることができる。
【0027】
本発明に薬剤1において、上記薬効成分、イソパラフィン系炭化水素の他にも種々の材料を含有することができる。例えば、薬剤1の残量を視認しやくするために、染料、顔料などの着色剤を配合することができ、使用者の臭覚で感知することができる香料を配合することができ、害虫の防除効果を補助するために精油を配合することができ、薬効成分の酸化を防止するためにt-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4′-メトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルへキシル、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤を配合することができ、紫外線による影響を軽減するためにトリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を配合することができる。
【0028】
本体容器2は、薬剤1を収容する容器であり、厚みの薄い略箱型形状を有しており、一の面側に開口部が設けられており、その開口部から薬剤1を充填され、その開口部を揮散フィルム3によって封止される。図1に示すように、本体容器2は、薬剤1を貯留しておく貯留部21を備えている。揮散フィルム3から揮散する薬剤1中の薬効成分の濃度は、使用開始時期、中盤・終盤の時期によって大きく変わらないように調整されることが好ましい。
【0029】
本体容器2は、内部の薬剤1が視認できるように透明性を有する樹脂によって成形されていることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの樹脂や、脂環式オレフィン系樹脂であることが好ましい。脂環式オレフィン系樹脂は、少なくともシクロプロペン、シクロブテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの単環式又は複環式の脂環式化合物を用いた重合体である。本体容器2を形成する樹脂は、単層又は積層構造のいずれであってもよい。本体容器2がこれらの材料から形成されていると、上述した透明性を確保することができるとともに、薬剤1の透過や薬剤1による変質を防止することができる。
【0030】
揮散フィルム3は、本体容器1の開口部を封止する部材であり、低密度ポリエチレンからなる。揮散フィルム3は、液状の薬剤1を通過させないが、気化した薬剤1を通すことができる。揮散フィルム3として使用される低密度ポリエチレンは、一般的なポリエチレンに比べて結晶化度が低いことから、密度が0.910~0.930であり、非結晶の部分から多くの気化した薬剤1が通過して外部に飛散される。低密度ポリエチレンのうちでも、密度が0.910~0.925であり、分岐鎖をあまり有していない直鎖状低密度ポリエチレンであることがより好ましい。このような直鎖状低密度ポリエチレンを用いることで、内包される薬剤1の揮散量が使用時期によって大きく変わらないように調整することができる。
【0031】
揮散フィルム3の膜厚は、50~100μmであることが好ましく、さらに60~90μmであることがより好ましい。このような膜厚であれば、内包される薬剤1の揮散量が使用時期によって大きく変わらないように調整することができる。また、揮散フィルム3の酸素ガス透過度は、23℃の環境において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であることが好ましく、1200~3000cc/(m・24hr・atm)であることがより好ましい。ガス透過度がこの範囲であると、薬剤1中の薬効成分の揮散濃度が使用時期によって大きく変わらないように調整することができるとともに、害虫の防除効果を200日など長い期間持続しやすくなる。なお、ガス透過度は、JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定される値である。
【0032】
揮散フィルム3の面積は、1~50cmであることが好ましく、さらに2~40cmであることがより好ましい。
【0033】
薬剤中の初期薬効成分量は、薬剤1ml当たり、精油として50~800mg程度であり、好ましくは、80-700mg程度であり、より好ましくは、100-500mg程度である。薬剤中の薬効成分の揮散量は、溶媒の揮散量とほぼ一致していることが好ましい。当初濃度A(w/v%)を所望の日数(Y)において、可能な限り保持することが好ましい。例えば、10日時点での薬効成分残存率としては、(1-10/Y)×100%の計算値に対して、実測値が±15%程度(但し、Yは、10日より多い日数を意味する)を保持していることがより好ましい。
【0034】
[揮散調整方法]
本発明はまた、上記薬効成分と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、前記薬剤を収容する本体容器と、前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルムを備え、揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具を用いて、薬効成分の揮散を調整する方法に関する。本発明の揮散調整方法において、各種成分とその含有量、容器の性状等については、前記害虫防除具で記載した内容に準じる。
【実施例0035】
以下、本件発明における害虫防除具について、具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1-1>
20℃の室温中において、容量が150mlのメスフラスコに、シトロネラ油を75g添加し、液状イソパラフィン系炭化水素として炭素数10~16の分岐鎖を有する鎖状の炭化水素の複合物を全体量が150mlとなるまで添加し、均一に溶解するまで攪拌し、合計150mlの薬剤を得た(シトロネラ油の濃度が50w/v%)。そして、得られた薬剤6mlを図1に示すような本体容器2に入れ、酸素ガス透過度が2550cc/(m2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。この害虫防除具の空気に触れる揮散フィルムの面積は、9cmであった。
【0037】
<実施例1-2~1-11>
実施例1-1と同様にして、但し、精油の量又は種類を変更し、一部の実施例においては、揮散フィルムの面積を変更して、下記表1に記載の害虫防除具を得た。なお、使用した液状イソパラフィン系炭化水素は、実施例1-2~1-7、1-9、及び1-11においては、炭素数10~16の分岐鎖を有する鎖状の炭化水素の複合物であり、実施例1-8においては、炭素数9~16の分岐鎖を有する鎖状の炭化水素の複合物であり、実施例1-10おいては、炭素数16~24の分岐鎖を有する鎖状の炭化水素の複合物である。
【0038】
このようにして得られた各種害虫防除具を、以下の評価方法において評価した。
【0039】
〔薬効成分揮散量の増減割合試験〕
25℃の環境下で、実施例の各種害虫防除具を静置し、試験開始後10日目の時点における薬剤及び薬効成分の残存量を測定した。害虫防除具の薬効成分をアセトンで抽出し、ガスクロマトグラフィーにて薬効成分の含有量を測定した。
表中の評価結果の表示は、以下の通りである。
◎:(1-10/Y)*100(%)の計算値に対して実測値が±0%以上10%以下
〇:(1-10/Y)*100(%)の計算値に対して実測値が±10%超過15%以下
△:(1-10/Y)*100(%)の計算値に対して実測値が±15%超過45%以下
×:(1-10/Y)*100(%)の計算値に対して実測値が±45%超過
【0040】
【表1】
【0041】
試験開始後の10日経過時点における薬効成分の残存量を比較したところ、実施例の害虫防除具では、良好な薬効成分揮散プロファイルを得られることが示された。
【0042】
<実施例2-1~2-4>
メスフラスコに、単独又はシトロネラ油及びユーカリ油を表2に示す割合で添加し、液状イソパラフィン系炭化水素として炭素数10~16の分岐鎖を有する鎖状の炭化水素の複合物を添加し、均一に溶解するまで攪拌し、薬剤を得た(精油の合計濃度が約16.7w/v%)。得られた薬剤6mlを図1に示すような本体容器2に入れ、酸素ガス透過度が2550cc/(m2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。この害虫防除具の空気に触れる揮散フィルムの面積は、20cmであった。
【0043】
このようにして得られた各種害虫防除具を、以下の評価方法において評価した。
50℃の恒温槽で保管し、5日経過後に検体を取り出し、目視にて性状を確認し、フィルム面からの液の滲み出しの有無を確認した。
表中の評価結果の表示は、以下の通りである。
〇:滲みだしがなく、安定性良好
×:滲みだしが見られ、安定性に問題があるとみられる。
【0044】
【表2】
【0045】
この結果、実施例の害虫防除具は、安定性に優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0046】
1・・・薬剤
2・・・本体容器
21・・貯留部
3・・・揮散フィルム
図1
図2